(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017119359
(43)【国際公開日】20170713
【発行日】20180802
(54)【発明の名称】超音波検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20180706BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20180706BHJP
【FI】
   !G01N29/04
   !G01N29/265
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】2017560123
(21)【国際出願番号】JP2016088864
(22)【国際出願日】20161227
(31)【優先権主張番号】2016000750
(32)【優先日】20160105
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
【住所又は居所】静岡県浜松市南区青屋町283番地
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】奈良 晃寛
【住所又は居所】静岡県浜松市南区青屋町283番地 ヤマハファインテック株式会社内
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BA01
2G047BC07
2G047CA01
2G047CB04
2G047DB03
2G047DB10
2G047GF08
2G047GG06
2G047GG23
2G047GG28
(57)【要約】
本発明の超音波検査方法は、円筒形状の被検査体を介して、前記被検査体の円筒軸に直交する直径方向の直線に関して対称に超音波送信素子と超音波受信素子とを配置し、前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信し、前記超音波発信素子から発信され前記被検査体の内部を伝搬して前記被検査体を透過した超音波を前記超音波受信素子によって受信し、前記超音波受信素子で受信した超音波の受信信号に基づき前記被検査体を検査する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の被検査体を介して、前記被検査体の円筒軸に直交する直径方向の直線に関して対称に超音波送信素子と超音波受信素子とを配置し、
前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信し、
前記超音波発信素子から発信され前記被検査体の内部を伝搬して前記被検査体を透過した超音波を前記超音波受信素子によって受信し、
前記超音波受信素子で受信した超音波の受信信号に基づき前記被検査体を検査する超音波検査方法。
【請求項2】
前記超音波送信素子と前記超音波受信素子とを前記直径方向の直線に関して対称に保持した状態で前記超音波送信素子と前記超音波受信素子とを前記直径方向に平行に移動させ、
前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信する工程は、前記超音波送信素子と前記超音波受信素子とを移動させながら前記超音波送信素子から前記超音波を送信することによって行われる請求項1に記載の超音波検査方法。
【請求項3】
前記超音波送信素子と前記超音波受信素子とを前記直径方向に平行に複数組配置し、
前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信する工程は、複数の前記超音波送信素子から前記被検査体に順次前記超音波を送信することによって行われる請求項1に記載の超音波検査方法。
【請求項4】
前記超音波受信素子を前記直径方向に平行に複数並べて配置するとともに、前記超音波送信素子を前記直径方向に沿って移動させ、
前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信する工程は、前記超音波送信素子を移動させながら前記超音波送信素子から前記超音波を送信することによって行われる請求項1に記載の超音波検査方法。
【請求項5】
前記超音波送信素子と前記超音波受信素子との間に前記被検査体がない場合の前記超音波受信素子への前記超音波の到達時刻より前に設けた時間窓の範囲に収まる超音波の受信信号を第1超音波信号として解析し、前記第1超音波信号の検知結果に基づき前記被検査体を検査する請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項6】
前記被検査体の外部の空間を経由して伝搬した超音波を前記超音波受信素子で受信するよりも先に、前記超音波受信素子に到達した超音波による第1超音波信号を検知したか否かを判定し、該第1超音波信号の検知結果に基づき被検査体を検査する請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項7】
前記超音波送信素子と前記超音波受信素子との間に、前記被検査体の外部の空間を通って前記超音波送信素子から前記超音波受信素子に到達する超音波を遮断するように遮蔽体を設けた請求項1から4のいずれか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項8】
前記被検査体の円筒軸に関して前記超音波送信素子と前記超音波受信素子を予め定められた角度だけ回転させた位置に各々さらなる超音波送信素子とさらなる超音波受信素子とを配置し、
前記被検査体の直径方向における異なる複数の位置において前記さらなる超音波送信素子から超音波を発信し、
前記さらなる超音波発信素子から発信され前記被検査体の内部を伝搬して前記被検査体を透過した超音波を前記さらなる超音波受信素子によって受信し、
前記さらなる超音波受信素子で受信した超音波の受信信号に基づき前記被検査体を検査する請求項1に記載の超音波検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状の被検査体の内部を超音波検査する方法に関する。
本願は、2016年1月5日に日本に出願された特願2016−750号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
管や筒体などの円筒形状の被検査体の内部を超音波検査する場合、被検査体に対してガイド波(管や板のように境界面を有する物体中を伝搬する横波又は板波)の励起角度で超音波を入射し、被検査体内を経由した超音波を受信側では逆向きの同じ角度で受けるように調整する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、送信超音波探触子と受信超音波探触子とを被検査管の周上に離間配置し、送信超音波探触子の入射角の被検査管の外周面の法線に対する傾き方向と、受信超音波探触子の外周面の法線に対する傾き方向とを互いに逆方向に設定することによって、送信超音波探触子から出力された超音波パルスが被検査管でガイド波の伝搬モードで伝搬し、この超音波パルスが欠陥に当接したときに、この欠陥から生じる超音波パルスに対して逆方向にガイド波の伝搬モードで伝搬する欠陥エコーを検出できるように受信超音波探触子の外周面に対する姿勢を設定する管体超音波探傷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−25817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の超音波探傷方法では、被検査体に対する超音波探触子の位置を、超音波の入射角が特定の角度(ガイド波を励起する角度)となるように設定する必要があるため、被検査体の外径が変わると、その外径に合せて調整する必要がある。この場合、被検査体の材料内の音速が予めわかっている場合には、適切な入射角を計算することが可能であるが、被検査体が積層材からなる場合や、音速データが不明な材料からなる場合は、適切な入射角を計算することが困難である。さらに、被検査体の外形が長さ方向の途中で変化してテーパ管状となるような場合にも、入射角の調整が困難となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、円筒形状の被検査体に対する入射角の面倒な位置決め作業を不要とし、被検査体の材料内の音速データが不明な場合や被検査体が積層材からなる場合、あるいは径が長さ方向の途中で変化する被検査体の場合をも容易に検査することができる超音波検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の超音波検査方法は、円筒形状の被検査体を介して、前記被検査体の円筒軸に直交する直径方向の直線に関して対称に超音波送信素子と超音波受信素子とを配置し、前記直径方向における異なる複数の位置において前記超音波送信素子から超音波を発信し、前記超音波発信素子から発信され前記被検査体の内部を伝搬して前記被検査体を透過した超音波を前記超音波受信素子によって受信し、前記超音波受信素子で受信した超音波の受信信号に基づき前記被検査体を検査する。
【0008】
前述したように被検査体内に対してガイド波を励起する角度で超音波を入射することにより、被検査体内を超音波が伝搬し、被検査体内から入射角と同じ大きさの逆向きの角度でモード変換して出てくる。したがって、被検査体内にガイド波を励起する角度で超音波を入射する超音波送信素子に対して、超音波受信素子を被検査体を介して対向した状態に配置することにより、被検査体内を伝搬してきた超音波を受信することができる。
【0009】
本発明の超音波検査方法においては、超音波送信素子と超音波受信素子とを被検査体を介して対向させた状態で被検査体の直径方向に移動させてもよい。この方法によれば、超音波送信素子の位置の変化に伴って、超音波送信素子からの超音波の送信方向は、被検査体の表面に対する入射角度が徐々に変化するように推移する。したがって、その角度がガイド波を励起する角度になると、超音波送信素子からの超音波が被検査体内に入射してガイド波に変換され、被検査体内を周方向に伝搬する。このとき、超音波受信素子は、超音波送信素子と対向した状態で移動しているので、被検査体を介して超音波送信素子と常に対向する位置に配置されており、被検査体から入射角と同じ大きさの逆向きの角度で受信することができ、その受信した超音波信号により被検査体内部を検査することができる。
この超音波検査方法であれば、超音波送信素子と超音波受信素子とを対向させて移動するだけであるので、被検査体を構成する材料内の音速データが不明な場合や、異種材料の積層材からなる場合であっても、被検査体に対する入射角度の位置決め作業が不要で、確実に検査することができる。また、超音波送信素子と超音波受信素子とが常に対向した姿勢に保持されて被検査体をスキャンするので、被検査体の径が途中で変化する場合であっても被検査体内に超音波を入射して検査することができる。
【0010】
また、本発明の超音波検査方法においては、円筒形状の被検査体の円筒軸方向に直交する方向と平行な方向に複数の超音波送信素子と複数の超音波受信素子とを前記被検査体を介して対向するように配置し、前記超音波送信素子から被検査体に超音波を送信し、前記超音波受信素子により受信した超音波の受信信号に基づき被検査体を検査することとしてもよい。
【0011】
この超音波検査方法は、超音波送信素子と超音波受信素子とを移動させる代わりに、被検査体の直径方向に平行なアレイ状に複数組並べておき、すべての超音波送信素子から同時に、あるいは順番に超音波を送信して、被検査体内を伝搬した超音波を超音波受信素子のうちのいずれかで受信する方法である。つまり、アレイ状に並べられた超音波送信素子のうち、送信方向が被検査体に対してガイド波を励起する角度となった超音波送信素子からの超音波が被検査体内に入射してガイド波として伝搬し、その超音波送信素子と対向する超音波受信素子は、被検査体に対する受信方向が入射角度と同じ大きさの逆向きの角度に設定されていることから、被検査体内を伝搬した超音波を受信することができる。
【0012】
また、本発明の超音波検査方法においては、円筒形状の被検査体に向けてこの被検査体の軸方向に直交する方向と平行な方向に超音波を送信する超音波送信素子と、該超音波送信素子に対して前記被検査体を介して反対側に配置され、前記超音波送信素子から送信される超音波を受信可能な超音波受信素子とのいずれか一方を前記超音波送信素子の送信方向と直交する前記被検査体の直径方向に平行に複数並べるとともに、他方を前記直径方向に沿って移動しながら、前記超音波送信素子から超音波を送信し、前記超音波受信素子により受信した超音波の受信信号に基づき被検査体を検査することとしてもよい。
【0013】
超音波送信素子と超音波受信素子とのいずれか一方を被検査体の直径方向にアレイ状に並べ、他方を被検査体の直径方向に移動しながら超音波検査する方法であり、アレイ状に並べられた超音波送信素子または超音波受信素子のいずれかと、移動している超音波送信素子または超音波受信素子とが、被検査体内にガイド波を励起する角度で対向したときに被検査体内の超音波検査を実施することができる。
【0014】
本発明の超音波検査方法においては、前記超音波送信素子と前記超音波受信素子との間に、前記被検査体がない場合の前記超音波受信素子への超音波の到達時刻より前に設けた時間窓の範囲に収まる超音波の受信信号を第1超音波信号として解析し、この第1超音波信号の検知結果に基づき被検査体を検査するようにしてもよい。
【0015】
本発明の超音波検査方法において、前記被検査体の外側を経由して伝搬した超音波を前記超音波受信素子で受信するよりも先に、前記超音波受信素子に到達した超音波による第1超音波信号を検知したか否かを判定し、この第1超音波信号の検知結果に基づき被検査体を検査するようにしてもよい。
【0016】
本発明の超音波検査方法において、前記超音波送信素子と前記超音波受信素子との間に、前記被検査体の外側を通って前記超音波送信素子から前記超音波受信素子に到達する超音波を遮断するように遮蔽体を設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の超音波検査方法によれば、円筒形状の被検査体に対する入射角の面倒な位置決め作業を不要とし、被検査体の材料内の音速データが不明な場合や被検査体が積層材からなる場合、径が長さ方向の途中で変化する被検査体の場合をも容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【図2】図1に示された超音波検査方法において、ガイド波を励起する角度で超音波を送受信する状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の超音波検査方法を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の超音波検査方法において受信される信号を示す波形図であり、被検査体を伝搬する透過波による超音波信号を検出するための時間窓を設定する第1の方法を示すグラフである。
【図5】第1実施形態の超音波検査方法において受信される信号を示す波形図であり、被検査体を伝搬する透過波による超音波信号を検出するための時間窓を設定する第2の方法を示すグラフである。
【図6】第1実施形態の超音波検査方法において受信される信号を示す波形図であり、被検査体を伝搬する透過波による超音波信号を検出するための時間窓を設定する第3の方法を示すグラフである。
【図7】第1実施形態の超音波検査方法において、被検査体内を伝搬する透過波による超音波を受信せず、被検査体の外側を経由した回折波による超音波のみを受信した場合を示す波形図である。
【図8】第1実施形態の超音波検査方法において、被検査体内を伝搬した透過波による超音波のみを受信した場合を示す波形図である。
【図9】本発明の第1実施形態の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置を示すブロック図である。
【図10】第1実施形態の超音波検査方法に対して、被検査体の外側に遮蔽体を設けた変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の超音波検査方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態の超音波検査方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第4実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【図16】図15に示された超音波検査方法において、ガイド波を励起する角度で超音波を送受信する状態を示す断面図である。
【図17】本発明の第6実施形態の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置を示すブロック図である。
【図18】第6実施形態の超音波検査方法に対して、被検査体の外側に遮蔽体を設けた変形例を示す断面図である。
【図19】本発明の第7実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【図20】本発明の第8実施形態の超音波検査方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
[超音波検査装置]
まず、本発明の第1実施形態の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置について説明すると、この超音波検査装置1は、図9に示すように、パルサーレシーバー部2と、探査部3と、信号処理部4とから構成されている。
パルサーレシーバー部2は、超音波駆動信号を発生する信号発生器5と、発生した超音波駆動信号を超音波送信素子6に送信する信号送信部7と、超音波受信素子8からの信号を受信する信号受信部9と、受信した信号を増幅する受信信号増幅部10とを有している。
【0020】
探査部3は、信号送信部7から送信された超音波駆動信号により被検査体11に向けて超音波を送信する超音波送信素子6と、被検査体11を伝搬して透過した超音波を受信して受信電圧信号として信号受信部9に送る超音波受信素子8とを有している。これら超音波送信素子6と超音波受信素子8とは、超音波ビームを点集束させるポイントフォーカスタイプの探触子が好ましく、内部に圧電素子からなる超音波振動素子(図示略)を有しており、超音波送信素子6では、入力される電圧信号に応じて振動素子から超音波を送信し、超音波受信素子8では、受信した超音波を振動子により電圧信号に変換して出力する。
【0021】
超音波送信素子6および超音波受信素子8は、図示略のフレーム部材によりZ軸方向に対向した状態に保持される。被検査体11は、Y軸方向に延びる円筒軸が超音波送信素子6および超音波受信素子8の対向方向(Z軸方向)に直交するように超音波送信素子6と超音波受信素子8との間に配置される。さらに、被検査体11は、円筒軸に直交する円筒形状の断面の直径がY軸およびZ軸に直交するX軸方向となるように配置される。したがって、超音波送信素子6および超音波受信素子8の先端に設けられている振動子は被検査体11に向けた状態に配置される。さらに、超音波送信素子6および超音波受信素子8は、Z−X平面において、被検査体11のX軸方向に延びる直径を通る直線に関して対称な位置となる。
被検査体11に対して超音波送信素子6および超音波受信素子8を、被検査体11の直径方向と平行なX方向、被検査体11の円筒軸方向と平行なY方向、及び被検査体11に対して離間接近するZ方向にそれぞれ移動させながら、被検査体11を超音波検査する。
すなわち、図1にも示すように、被検査体11は、その円筒軸がY軸方向となるように水平に配置される。被検査体11の円筒形断面の直径および直径と平行な直線はX軸方向となる。これらX軸およびY軸に直交する上下方向はZ軸方向となる。
超音波送信素子6および超音波受信素子8は、その対向方向(Z軸方向)には相互に離間接近するように個別に移動させられるが、X軸方向及びY軸方向には一体となって移動させられる。なお、このX軸方向及びY軸方向の移動は、被検査体11と超音波送信素子6および超音波受信素子8とを相対的に移動させればよいので、被検査体11をX軸方向及びY軸方向に移動させてもよい。
【0022】
信号処理部4は、信号発生器5における超音波駆動信号発生のための条件を設定する条件設定部31と、信号受信部9からの受信電圧信号に基づき被検査体11内の欠陥の有無を判定する欠陥判定部32と、受信電圧信号等を表示する表示部33と、超音波送信素子6および超音波受信素子8のスキャン操作を制御するスキャン制御部34と、これら条件設定部31、欠陥判定部32、表示部33、およびスキャン制御部34に各種制御値を入力する操作部35とを備えている。
【0023】
この信号処理部4はパソコン等により構成することができ、表示部(モニタ)33の画面上にタッチパネル式の操作部35を設け、その操作部35から後述する各種条件やスキャン制御部34に対する位置情報等の制御値を設定することができる。もちろん、操作部35は、キーボード等を用いてもよい。
【0024】
[超音波検査方法]
このように構成した超音波検査装置1により円筒形状の被検査体11の超音波検査を実施する方法について説明する。
検査方法の概略について図3のフローチャートに従って説明すると、被検査体11を介して超音波送信素子6と超音波受信素子8とを対向させた状態で、1ラインのスキャンを開始するための初期位置に配置する(S1)。1ラインのスキャンを開始する初期位置は図1のA−A線上の位置であり、この図1の左方向矢印で示すように被検査体11の直径方向に沿う移動を1ラインのスキャンとする。
次に、超音波送信素子6からバースト又はパルス型超音波を発信する(S2)。超音波受信素子8においては、受信される超音波について、被検査体11を回り込んで媒質(空気)を直接伝搬する回折波と、被検査体11内を透過してくる透過波とを区別し(S3)、透過波について強度を解析して(S4)、現在のスキャン位置における強度を欠陥判定部32に記録する(S5)。回折波と透過波とを区別する具体的方法は後述する。
【0025】
そして、超音波送信素子6および超音波受信素子8を対向させた姿勢を維持しながら、これら超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の円筒の直径方向(X軸方向)に所定のスキャンピッチで移動する(S6)。これを1ラインのスキャンが終了するまで繰り返し、1ラインのスキャンが終了したと判断されたら(S7)、その1ラインのスキャンのなかで、所定の強度を超える超音波信号を検知した箇所が2か所存在するか否かを判定する(S8)。所定の強度を超える超音波信号を検知した箇所が2か所存在すると認められた場合(S8の判断がYESである場合)は、表示部33に「OK」を表示し(S9)、2か所存在するとは認められなかった場合(S8の判断がNOである場合)は、表示部33に「NG」を表示して(S10)、処理を終了する。
【0026】
次に、この検査方法について、超音波の伝搬形態、及び受信される超音波の区別方法等も含めて詳細に説明する。
超音波送信素子6と超音波受信素子8とが、被検査体11を介して被検査体11の円筒軸に直交する被検査体11のX軸方向の直径を通る直線に関して対称に対向した位置(図1にA−Aで示す1ラインスキャンの初期位置)に配置される。超音波送信素子6と超音波受信素子8とは、対向した状態に保持され、超音波送信素子6は被検査体11に対してバースト又はパルス型超音波を送信する。この超音波送信素子6から送信された超音波は、被検査体11内にガイド波を励起する角度以外の角度で到達した場合は、被検査体11内を円筒状の周方向に沿って伝搬する超音波の強度が非常に小さくなるので、被検査体11内を伝播する超音波信号としては超音波受信素子8で受信されないとみなしてよい。
【0027】
図1のA−Aで示す位置から超音波送信素子6および超音波受信素子8を対向させた状態のまま、その対向方向に直交する被検査体11の直径方向(X軸方向)に移動しながら、超音波送信素子6から矢印で示すように超音波を送信する。この移動により、超音波送信素子6から送信され被検査体11に到達する超音波は、被検査体11の表面に対する送信方向の角度が徐々に変化する。超音波送信素子6から送信された超音波の、被検査体11に対する送信方向の角度が、被検査体11内にガイド波を励起する角度になると、被検査体11内に入射した超音波がガイド波に変換され、被検査体11を透過して周方向に伝搬する。例えば、被検査体11が鉄製の円筒体である場合、屈折角が90°を超える臨界角は、空気からの入射を考えると、約3.3°となる。そこで、入射角が約3.3°となる位置を超えてスキャンすることで、被検査体11内をガイド波に変換されて伝搬する可能性のある角度範囲をすべてカバーすることができる。
【0028】
このようにして超音波送信素子6から送信した超音波が被検査体11内にガイド波として透過して伝搬するとき、超音波受信素子8は、超音波送信素子6と対向した姿勢に保持されて同期して移動する。したがって、超音波受信素子8の受信方向が被検査体11に対して超音波送信素子6と同じ大きさの逆向きの角度となる姿勢で対向していることになる。このため、被検査体11内を伝搬したガイド波がモード変換して被検査体11の表面から出力される超音波を受信することができる。
図2がこの状態を模式化して示しており、超音波送信素子6からの超音波が被検査体11にガイド波を励起する角度θで入射し、被検査体11内を透過して周方向に伝搬して、同じ大きさの逆向きの角度θで超音波受信素子8に受信される。前述した鉄製の被検査体の場合、その入射角θで入射した超音波は、反対側に対向する超音波受信素子8には、被検査体11をほぼ半周分伝搬した後に受信される。
【0029】
超音波送信素子6および超音波受信素子8により被検査体11を直径方向にスキャンしていくと、図2に示すように、被検査体11の表面に直角に超音波が到達する位置を中心に、左右反対側でも同じように、超音波送信素子6からの超音波が被検査体11にガイド波を励起する角度θで入射し、被検査体11内を透過して周方向に伝搬して、同じ角度θ(大きさ同じで逆向きの角度)で超音波受信素子8に受信される位置が生じる。
したがって、超音波送信素子6および超音波受信素子8により被検査体11を直径方向にスキャンすることで、被検査体11内を伝搬した超音波を左右2か所(図2で示す位置)で受信することができる。
【0030】
ところで、超音波受信素子8によって受信される超音波は、被検査体11内を伝搬してきた超音波だけでなく、被検査体11の外側の媒質(空気)中を経由して直接到達した超音波も含まれる。前者は透過波であり、後者は回折波である。
これら超音波のうち、被検査体11内を伝搬する超音波(透過波)の音速は、被検査体11の外側を経由して空中を伝搬してくる超音波(回折波)に比べて格段に速い。したがって、超音波受信素子8には被検査体11内を伝搬してきた超音波(透過波)が先に到達し、空中を伝搬してきた超音波(回折波)がその後に到達する。
【0031】
これら受信した超音波の信号を時間波形として図形化すると図4に示すようになる。この図4は、横軸が時間で、縦軸が信号の強度(振幅)を示す。超音波受信素子8には、先に、被検査体11内を伝搬してきた透過波による第1超音波信号Uが発生し、その後、空中を伝搬してきた回折波による第2超音波信号Sが発生する。そこで、これらの信号U,Sを時間的に区別することにより、第1超音波信号Uを検知したときに、被検査体11内を伝搬して得られた超音波信号であることが識別できる。この第1超音波信号Uの強度(振幅)が低下した場合には被検査体11内に欠陥が存在していると判断できる。
つまり、第2超音波信号Sの前に生じる第1超音波信号Uの強度(振幅)が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上である場合に被検査体11が正常で、所定値未満である場合に被検査体11に欠陥が存在すると判定する。
【0032】
この超音波信号Sと超音波信号Uとを区別する方法について具体的に述べる。
バーストまたはパルス型超音波の送信タイミングを0μsecとして、超音波送信素子6および超音波受信素子8の間に被検査体11がない場合の超音波伝搬は、例えば空気を媒質として伝わってくるため、C=(超音波送信素子および超音波受信素子間距離mm)/(空気の音速m/s)×1000μsecの時刻で受信される。そこで図4に示すように、Cよりもdμsec早い時刻をBμsec、それよりfμsec早い時刻をAμsecとし、AμsecからBμsecの範囲の時間窓を設定する。このAからBまでの時間窓に収まる超音波信号をUとする。例えばC=125μsecの場合、A=100μsec,B=124μsec(d=1μsec,f=24μsec)のように時間窓を設定し、この時間窓に入る信号を超音波信号Uとすることで、超音波信号Sと超音波信号Uを区別することが出来る。
図5に示すように時間窓がCよりも前の時刻に来るように、0μsecからの遅延時間dの後に幅fの時間窓を設定する方法もある。
【0033】
超音波振動Sと超音波信号Uとの区別方法について、図6を参照してさらに他の方法を以下に具体的に述べる。
被検査体11内を伝搬してきた超音波(透過波)の強度(振幅)は、空中を伝搬してきた超音波(回折波)よりも小さい。そこで、超音波信号の強度についての閾値を第1超音波信号Uに対して、正常とする判定用に第1閾値α、第2超音波信号Sに対して第1閾値αより大きい第2閾値βの二つを設定しておく。超音波受信素子8で受信した超音波信号の強度が第1閾値α以上であった場合には、第2閾値β以上であるか否かを判定する。その超音波信号の強度が第2閾値β以上であると判定された場合に、その超音波信号を前述した第2超音波信号Sであると判定する。
【0034】
そして、この第2超音波信号Sの前に、第2超音波信号Sより小さい強度の第1超音波信号Uを受信したか否かを判定する。つまり、図6に示すように、第2閾値β以上の第2超音波信号Sを検知するよりも所定時間(例えば5μs)前に第2閾値β未満で第1閾値α以上の超音波信号を検知していたときに、これを第1超音波信号Uであると判定し、この第1超音波信号Uが検知された場合に被検査体11が正常であると判定する。第2超音波信号Sの前に第1閾値α以上の第1超音波信号Uが検知されなかった場合には、被検査体11に欠陥があるか、あるいは被検査体11を検査できていないと判定する。
【0035】
図1及び図2に示すように、被検査体11の直径方向に超音波送信素子6および超音波受信素子8をスキャンすることにより、2か所で被検査体11内をガイド波の超音波が伝搬し、被検査体11が正常な場合は図4に示すように二種類の超音波信号U,Sを検出することができる。一方、その2か所以外の位置では、被検査体11への超音波の送信角度がガイド波を励起する角度ではないため、被検査体11内を伝搬する第1超音波信号Uとしては検知されない。この場合、被検査体11の外側を経由して受信される回折波による第2超音波信号Sのみが検知されるので、図7に示すような第2超音波信号Sのみの波形となる。また、図2に示す2か所の位置においても、被検査体11内に欠陥がある場合には、第1閾値以上の第1超音波信号Uとしては検知されずに、第1閾値未満の超音波信号となる。
前述の検査方法では、この第1超音波信号Uが第1閾値以上で検知されたときに、被検査体11が正常であると判定し、そうでない場合は、被検査体11に欠陥があるか、あるいは超音波送信素子6および超音波受信素子8の送受信方向が被検査体11内にガイド波を励起する角度で配置されていないと判定する。
【0036】
以上説明した超音波検査方法においては、超音波送信素子6を円筒状被検査体11の直径方向に移動するので、超音波送信素子6から送信した超音波が被検査体11に対してガイド波を励起する角度で到達する位置で、超音波を被検査体11内に周方向に伝搬させることができる。このとき、超音波受信素子8は、被検査体11を挟んで超音波送信素子6と常に対向する位置に配置されており、被検査体11から超音波を入射角と同じ角度(大きさが同じで向きが逆の角度)で受信することができ、その受信した超音波信号により被検査体11内部を検査することができる。被検査体11の直径が変わっても、設定の変更をせずに超音波検査することができる。
【0037】
したがって、この超音波検査方法であれば、被検査体11を構成する材料内の音速データが不明な場合や、異種材料の積層材からなる場合であっても、被検査体11に対する入射角度の位置決め作業を不要とすることができる。また、超音波送信素子6および超音波受信素子8が常に対向した姿勢に保持されて被検査体11をスキャンするので、被検査体11の直径が途中で変化する場合であっても、入射角度の計算をすることなく被検査体11内に超音波を入射して検査することができる。
特に、超音波送信素子6および超音波受信素子8としてポイントフォーカス型の探触子を用いていることにより、被検査体11に所定の角度でフォーカスする超音波を送信するので、ガイド波への変換を確実にし、被検査体がテーパ状の筒体である場合も確実に検査することができる。
【0038】
なお、被検査体内を伝搬する超音波(透過波)は、被検査体内を複数周伝搬する。そして、超音波送信素子6および超音波受信素子8が図2に示す配置のときに、超音波受信素子8には、被検査体11内を周回するごとに超音波が受信されるが、一周以上周回してでてきた超音波信号は、被検査体11の外側を通って受信した超音波信号(第2超音波信号S)と混在して識別し難いため、前述の検査においては、被検査体11内を伝搬して最初に検知される超音波信号によって欠陥の有無を判定する。
【0039】
ところで、前述したように、超音波受信素子8によって受信される超音波は、被検査体11内を伝搬してきた超音波(透過波)だけでなく、被検査体11の外側を経由して空中を伝搬してきた超音波(回折波)も含まれる。前述の実施形態では、受信される超音波信号の時間的なずれを利用して被検査体11内を伝搬した超音波(第1超音波信号U)であるか否かを判定したが、欠陥が存在する場合に受信される超音波信号の強度が低下するため、被検査体11内を伝搬した超音波信号のみによって検査することも可能である。その場合は、受信した超音波信号が前述した第1閾値αより大きい場合は正常で、第1閾値αより小さい場合には欠陥が存在していると判定する。
【0040】
ただし、この検査方法を実施する場合は、被検査体11の外部を経由して空中を伝搬してくる超音波(回折波)を超音波受信素子8で受信しないようにする必要がある。
そこで、図10に示すように、被検査体11の外側を通って超音波送信素子6から超音波受信素子8に到達する超音波信号を遮断するように被検査体11の外周面上に遮蔽体41を配置して超音波検査を行う。図10に示す例では、超音波送信素子6と超音波受信素子8との対向方向に対して直交する方向に延びるブロック状の遮蔽体41を被検査体11の外周面に接した状態に配置している。遮蔽体41としては、例えばアクリル樹脂やアルミニウムを用いることができる。
この遮蔽体41を設けた状態で超音波検査することにより、前述した第2超音波信号S(図4参照)が受信されなくなり、第1超音波信号Uのみを有効に検出することができ、正確な超音波検査を実施することができる。
【0041】
この遮蔽体41を用いて超音波検査する場合、前述した第2超音波信号Sを受信しないので、図8に示すように被検査体11内を1周以上周回して伝搬する超音波信号も受信して解析対象とすることが可能である。前述したように被検査体11内を伝搬する超音波は被検査体11のほぼ半周分を伝搬して超音波受信素子8に受信されるが、ほぼ1周半、2周半伝搬する超音波も受信して解析することにより、より精度の高い検査を実施することができる。なお、被検査体11内を1周以上周回する超音波を受信して検査する場合、左右2か所で超音波信号を送受信しなくとも、そのいずれか一方のみで送受信することで検査してもよく、被検査体11の直径方向の半分(右半分又は左半分)のみスキャンすればよい。
【0042】
<第2実施形態>
以上の超音波検査は、被検査体11の特定の横断位置を直径方向にスキャンして検査する方法であったが、被検査体11の全長にわたって超音波検査する場合は、図11に示すフローチャートにしたがって処理する。この図11のフローチャートにおいて、図3のフローチャートと同じ処理の部分には同一符号を付して説明を簡略化する(以下、後述する図12のフローチャートにおいても同様とする)。
被検査体11の全長を超音波検査する場合、S1からS10までの処理を被検査体11の円筒の軸方向(Y方向)に所定ピッチで移動しながら軸の終端まで繰り返せばよい。
すなわち、S1からS10までの処理の後、その1ラインのスキャンが被検査体11の軸終端であるか否かが判断され(S11)、軸終端であると判断されなかった場合は、被検査体11の軸方向に所定の送りピッチで超音波送信素子6および超音波受信素子8を移動し(S12)、S1からの処理を繰り返す。
【0043】
この図11のフローチャートでは、1ラインのスキャンごとに表示部33に「OK」又は「NG」の表示をするようにしたが、これに加えて、又はこれに代えて、被検査体11の全長にわたって検査した後に、表示部33に「OK」又は「NG」の表示をするようにしてもよい。あるいは、S8の1ラインのスキャンで所定の強度を超える箇所が2か所存在していたと判断されなかった(S8の判断がNOである)場合には、表示部33に「NG」を表示するが、2か所存在していたと判断された(S8の判断がYESである)場合には、表示部33に「OK」と表示することなく、S11以降の処理をして、被検査体11の軸方向に超音波送信素子6および超音波受信素子8を移動し、軸終端まで検査した後(1ラインごとのスキャンのすべてでS8の判断結果がYESである場合)に、表示部33に「OK」と表示するようにしてもよい。
また、図11では、S10において表示部33に「NG」と表示した後でも、被検査体11を軸方向に移動して検査しているが、最初の1ラインスキャンの検査結果によりS10で表示部33に「NG」と表示されたら、その後の検査を終了してもよい。
【0044】
<第3実施形態>
ところで、これまで述べてきたように、1ラインごとのスキャンで、所定の強度を超える超音波信号を2か所で検知したか否かを判断することで、被検査体11の円周方向の大部分を超音波検査することができる。しかしながら、送信した超音波がガイド波に変換される入射角となる超音波送信素子6の配置は、被検査体11の表面に対して送信方向がわずかに斜めになる位置関係であるので、被検査体11に90°の角度(つまり、超音波送信素子6が被検査体11の直径方向の延長上に配置される角度)で超音波が入射する位置の付近では超音波が内部に入射してガイド波に変換しない。このため、この部分の超音波検査を実施することができない。
【0045】
そこで、前述のようにして被検査体11に対して一の直径方向にスキャンしながら超音波検査した後、被検査体11を円筒軸中心Oに例えば90°回転して、再度直径方向にスキャンしながら超音波検査する。
図12のフローチャートで説明すると、S8で所定の強度を超える箇所が2か所存在したと判定された場合に、角度を変えてラインスキャンを2回繰り返したか否かが判定され(S13)、2回繰り返していないと判定された場合は、被検査体11を円筒軸心回りに例えば90°回転した(S14)後、再度S1からの検査を実施し、S13で角度を変えて2回繰り返したと判定された場合に、表示部33に「OK」と表示する。以降は、被検査体11の円筒軸方向に所定の送りピッチで超音波送信素子6および超音波受信素子8を移動し(S11)、S1からの処理を繰り返す。
【0046】
このように、被検査体11を軸中心に回転させて、被検査体11に対する異なる二方向の直径方向でスキャンして超音波検査することにより、被検査体11の全周を検査することができる。
そして、被検査体11の特定の長さ方向位置で超音波検査した後、超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の長さ方向(Y方向)に移動した後、前述と同様にして被検査体11の直径方向にスキャンする。この操作を、超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の長さ方向(Y方向)に少しずつ移動しながら繰り返すことにより、被検査体11の全長にわたって超音波検査することができる。
なお、図12では、S10において表示部33に「NG」と表示した後でも、被検査体11を軸方向に移動して検査しているが、最初の1ラインスキャンの検査結果によりS10で表示部33に「NG」と表示されたら、その後の検査を終了してもよい。
【0047】
<第4実施形態>
図13は、本発明の超音波検査方法において、超音波送信素子6および超音波受信素子8のスキャン方法の異なる第4実施形態を示している。第1実施形態から第3実施形態の超音波検査方法では、一組の超音波送信素子6と超音波受信素子8とを用いて、これら超音波送信素子6および超音波受信素子8を対向させた状態で移動させた。第4実施形態では、超音波送信素子6と超音波受信素子8とを複数組用いて、これらをアレイ状に並べて使用する。
すなわち、複数組の超音波送信素子6と超音波受信素子8とが被検査体11の直径方向(X軸方向)に並べられるとともに、各組の超音波送信素子6および超音波受信素子8は、被検査体11を介してZ軸上に離れて配置され、Z軸方向に対向している。この状態で、各超音波送信素子6から被検査体11に超音波を送信すると、送信方向が被検査体11に対してガイド波を励起する角度(図2の角度θ参照)となった超音波送信素子6からの超音波が被検査体11内に入射され、ガイド波として被検査体11内を周方向に伝搬する。このとき、その超音波送信素子6と対向する超音波受信素子8も、入射角度と同じ大きさで逆向きの角度に設定されていることから、被検査体11内を伝搬した超音波を受信することができる。図13に示す例では、B−Bで示す位置において、超音波送信素子6から送信され被検査体11内を伝搬した超音波が超音波受信素子8に受信される。
【0048】
<第5実施形態>
また、超音波送信素子6と超音波受信素子8とのいずれか一方を被検査体11の直径方向(X方向)にアレイ状に並べて複数配置し、他方に超音波送信素子6と超音波受信素子8とのいずれか他方を1個配置して、被検査体11の直径方向(X方向)に移動しながら超音波検査する方法としてもよい。
図14には、超音波受信素子8を被検査体11の直径方向(X軸方向)にアレイ状に並べて配置し、超音波送信素子6を矢印で示す直径方向(X軸方向)に移動しながら超音波を送信して検査する方法を示している。この検査方法では、超音波送信素子6が被検査体11に対してガイド波を励起する角度(図2の角度θ参照)で超音波を送信する位置に配置されたときに、アレイ状の超音波受信素子8のうち、超音波送信素子6の位置と対向する位置関係にある超音波受信素子8(図14のB−Bで示す対向関係にある超音波受信素子)によって被検査体11内を伝搬してきた超音波を受信することができる。
図14では、1個の超音波送信素子6を被検査体11の直径方向に移動し、複数個の超音波受信素子8を被検査体11の直径方向に並べて配置したが、逆に、複数個の超音波送信素子6を被検査体11の直径方向に並べて配置し、1個の超音波受信素子8を被検査体11の直径方向に移動しながら超音波を受信する方法としてもよい。
【0049】
<第6実施形態>
次に、図15から図17を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。上述した第3実施形態においては、被検査体11に90°の角度で超音波送信素子6からの超音波が入射する部分についても超音波検査を行うために、被検査体11を円筒軸中心に90°回転させて再度直径方向にスキャンして超音波検査を行うようにしている。
【0050】
これに対して、第6実施形態においては、図15および図16に示すように、第3実施形態における超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81の組を設けている。超音波送信素子6および超音波受信素子8による被検査体11の図15の左方向(X軸方向)のスキャンが完了すると、被検査体11を円筒軸周りに回転させることなく、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81を矢印方向にスキャンさせながら超音波送信素子61から超音波を送信して、超音波送信素子6および超音波受信素子8によって超音波検査を行うことができなかった部分についても超音波検査を行うことができる。
【0051】
すなわち、図16に示すように、第2の超音波送信素子61からの超音波が被検査体11にガイド波を励起する角度θで入射し、被検査体11内を透過して円周方向に伝搬して、同じ大きさの逆向きの角度θで出射して第2の超音波受信素子81に受信される。第2の超音波送信素子61から入射角θで入射した超音波は、反対側に対向する第2の超音波受信素子81に、被検査体11をほぼ半周分伝搬した後に受信される。この超音波の伝搬箇所には、超音波送信素子6からの超音波が90°の角度で入射する部分も含まれるので、超音波送信素子6および超音波受信素子8によって超音波検査を行うことができなかった部分についても超音波検査を行うことができる。
【0052】
なお、第6実施形態においては、超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81の組を設けている。しかしながら、超音波送信素子6および超音波受信素子8と、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81との配置位置は、被検査体11の円筒軸を中心として90°の角度だけ回転させた位置に限定されない。この角度は、30°、45°等の任意の角度でも良い。また、本実施形態においては、超音波送信素子および超音波受信素子を2組設けているが、2組に限らず、より多くの組を設けてもよい。
【0053】
この第6実施形態の超音波検査方法に用いられる超音波検査装置について図17を参照して説明する。図17において、図9に示された超音波検査装置と同一の構成については同一の参照番号を付し、それらの説明は省略する。
【0054】
図17を参照すると、上述したとおり、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81の組は、超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に設けられている。第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81は、スキャン制御部34によってZ軸方向に駆動できるようになっている。第2の超音波送信素子61は、超音波送信素子6と同様に、信号送信部7に接続される。第2の超音波送信素子61は、信号送信部7から送信された超音波駆動信号により、被検査体11に向けて超音波を送信する。第2の超音波受信素子81は、超音波受信素子8と同様に、信号受信部9に接続される。第2の超音波受信素子81は、超音波受信素子8と同様に、被検査体11を伝搬して透過した超音波を受信して受信電圧信号として信号受信部9に送る。その他の動作は、図9に示された超音波検査装置と同様である。
【0055】
この第6実施形態の検査方法を実施する場合は、図10に示された超音波検査方法と同様に、超音波送信素子61から被検査体11の外部を経由して空中を伝搬してくる超音波(回折波)を超音波受信素子81で受信しないようにすることが望ましい。
そこで、図18に示すように、遮蔽体41に加え、被検査体11の外側を通って超音波送信素子61から超音波受信素子81に到達する超音波信号を遮断するように被検査体11の外周面上に遮蔽体42を配置して超音波検査を行う。図18に示す例では、超音波送信素子61と超音波受信素子81との対向方向に対して直交する方向に延びるブロック状の遮蔽体42を被検査体11の外周面に接した状態に遮蔽体41から90°回転させた位置に配置している。遮蔽体42としては、遮蔽体41と同様に例えばアクリル樹脂やアルミニウムを用いることができる。
【0056】
この遮蔽体42を設けた状態で超音波検査することにより、超音波受信素子81において前述した第2超音波信号S(図4参照)が受信されなくなり、第1超音波信号Uのみを有効に検出することができ、正確な超音波検査を実施することができる。
【0057】
<第7実施形態>
図19を参照して、本発明の第7実施形態の超音波検査方法を説明する。上述した第4実施形態においては、図13に示すように、超音波送信素子6と超音波受信素子8とを複数組用いて、これらをアレイ状に並べて使用する。第7実施形態においては、第4実施形態の構成に加えて、第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81も複数組用いて、これらをアレイ状に並べて使用する。
すなわち、第4実施形態の構成に加え、複数組の超音波送信素子61と超音波受信素子81とが被検査体11のZ軸方向の直径方向に並べられるとともに、各組の超音波送信素子61および超音波受信素子81は、被検査体11を介してX軸上に離れて配置され、X軸方向に対向している。すなわち、第7実施形態においては、複数組の超音波送信素子61と超音波受信素子81とが、複数組の超音波送信素子6と超音波受信素子8とを被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に配置されている。
【0058】
この状態で、各超音波送信素子61から被検査体11に超音波を送信すると、送信方向が被検査体11に対してガイド波を励起する角度(図16の角度θ参照)となった超音波送信素子61からの超音波が被検査体11内に入射され、ガイド波として被検査体11内を周方向に伝搬する。このとき、その超音波送信素子61と対向する超音波受信素子81も、入射角度と同じ大きさで逆向きの角度に設定されていることから、被検査体11内を伝搬して出射した超音波を受信することができる。図19に示す例では、C−Cで示す位置において、超音波送信素子61から送信され被検査体11内を伝搬した超音波が超音波受信素子81に受信される。
【0059】
なお、第7実施形態においては、複数組の超音波送信素子6および超音波受信素子8を被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に、複数組の第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81を設けている。しかしながら、複数組の超音波送信素子6および超音波受信素子8と、複数組の第2の超音波送信素子61および第2の超音波受信素子81との配置位置は、被検査体11の円筒軸を中心として90°の角度だけ回転させた位置に限定されない。この角度は、30°、45°等の任意の角度でも良い。また、本実施形態においては、複数組の超音波送信素子および超音波受信素子を2組設けているが、2組に限らず、より多くの組を設けてもよい。
【0060】
<第8実施形態>
図20を参照して、本発明の第8実施形態の超音波検査方法を説明する。上述した第5実施形態においては、図14に示すように、超音波受信素子8を被検査体11の直径方向(X軸方向)にアレイ状に並べて配置し、超音波送信素子6を矢印で示す直径方向(X軸方向)に移動しながら超音波を送信して検査する。第8実施形態においては、第5実施形態の構成に加えて、複数の超音波受信素子81を被検査体11のZ軸方向の直径方向にアレイ状に並べて配置し、超音波送信素子61を矢印で示すZ軸方向に移動しながら超音波を送信して検査する。すなわち、第8実施形態においては、超音波送信素子61と複数個の超音波受信素子81とが、超音波送信素子6と複数個の超音波受信素子8とを被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に配置されている。
【0061】
この検査方法では、超音波送信素子61が被検査体11に対してガイド波を励起する角度(図2の角度θ参照)で超音波を送信する位置に配置されたときに、アレイ状の超音波受信素子81のうち、超音波送信素子61の位置と対向する位置関係にある超音波受信素子81(図20のC−Cで示す対向関係にある超音波受信素子)によって被検査体11内を伝搬してきた超音波を受信することができる。
【0062】
第8実施形態においては、1個の超音波送信素子61を被検査体11のZ軸方向の直径方向に移動し、複数個の超音波受信素子8を被検査体11のZ軸方向の直径方向に並べて配置した。しかしながら、逆に、複数個の超音波送信素子61を被検査体11のZ軸方向の直径方向に並べて配置し、1個の超音波受信素子81を被検査体11のZ軸方向の直径方向に移動しながら超音波を受信する方法としてもよい。
【0063】
なお、第8実施形態においては、1つの超音波送信素子6および複数の超音波受信素子8を被検査体11の円筒軸を中心に90°回転させた位置に、1つの超音波送信素子61および複数の超音波受信素子81の組を設けている。しかしながら、1つの超音波送信素子6および複数の超音波受信素子8の組と、1つの超音波送信素子61および複数の超音波受信素子81の組との配置位置は、被検査体11の円筒軸を中心として90°の角度だけ回転させた位置に限定されない。この角度は、30°、45°等の任意の角度でも良い。また、本実施形態においては、超音波送信素子および超音波受信素子を2組設けているが、2組に限らず、より多くの組を設けてもよい。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、受信した超音波信号の強度(振幅)に着目して第1超音波信号Uと第2超音波信号Sを区別したが、周波数特性に着目して第1超音波信号Uと第2超音波信号Sを区別してもよい。この場合、周波数解析して二つのピークのうち特定の周波数の方を選択する、あるいは、回折波は強度が非常に強いので強度の弱いほうのピークを選択するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、超音波送信素子および/または超音波受信素子をX方向及びY方向に移動するように説明したが、被検査体をX方向及びY方向に移動してもよい。
【0065】
さらに、上述した実施形態において、被検査体11は、円筒形状である例を示した。しかしながら、被検査体の形状は、筒状であれば、筒状軸と直交する断面が楕円形状でもよい。
被検査体の断面が楕円形状であって超音波送信素子6または超音波受信素子8をスキャンさせる場合には、その楕円形状の長軸または短軸と平行に超音波送信素子6または超音波受信素子8をスキャンさせればよい。また、被検査体の断面が楕円形状であって複数の超音波送信素子6または超音波受信素子8を並設する場合には、被検査体の断面の楕円形状の長軸または短軸と平行に複数の超音波送信素子6または超音波受信素子8を設ければよい。したがって、本明細書において、「円筒形状」という文言には、円筒形の筒だけでなく、楕円形の筒も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、超音波による円筒形状の被検査体の内部検査に適用でき、円筒形状の被検査体に対する入射角の面倒な位置決め作業を不要とし、被検査体の材料内の音速データが不明な場合や被検査体が積層材からなる場合等でも被検査体の欠陥等を容易に検査することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 超音波検査装置
2 パルサーレシーバー部
3 探査部
4 信号処理部
5 信号発生器
6 超音波送信素子(検査波送信機)
7 信号送信部
8 超音波受信素子
9 信号受信部
10 受信信号増幅部
11 被検査体
21 スキャン機構部
22 ステージ
23 X方向駆動部
24 Y方向駆動部
25,26 Z方向駆動部
31 条件設定部
32 欠陥判定部
33 表示部
34 スキャン制御部
35 操作部
41 遮蔽体
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【国際調査報告】