(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017149673
(43)【国際公開日】20170908
【発行日】20181122
(54)【発明の名称】移動型放射線装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20181026BHJP
【FI】
   !A61B6/00 310
   !A61B6/00 300D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】2018502921
(21)【国際出願番号】JP2016056297
(22)【国際出願日】20160301
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】武本 肇
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
(72)【発明者】
【氏名】早川 徹
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093CA16
4C093EC04
4C093EC13
4C093EC52
4C093FA04
(57)【要約】
本発明によれば、使い勝手が改善された移動型放射線装置を提供することができる。下部スプロケットおよびピニオンを回転させたときに生じる中間材および支柱との間の相対移動の大きさが、X線管および中間材との間の相対移動の大きさよりも大きくなるように下部スプロケットの有効径に対するピニオンの有効径が決定されていれば、従来構成における中間材のストロークをより大きくすることができる。本発明に係る装置は、従来装置と比べて中間材がより床面側まで移動する。操作者は、中間材により視界が遮れることなく、高い操作性を感じながら装置を移動させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、前記放射線源を昇降自在に支持する鉛直方向に伸びる支柱と、前記放射線源と前記支柱とに挟まれる位置に設けられるとともに前記放射線源の昇降移動に伴って昇降移動する中間材と、一端が前記中間材に接続されているとともに、他端が前記支柱の内側に接続されている支柱内ワイヤと、前記支柱内ワイヤを支持するとともに、前記支柱の内部に設けられる前記支柱にとっての定滑車となっている支柱内プーリと、前記支柱内プーリから見て前記支柱内ワイヤの他端側に設けられているとともに、前記支柱内ワイヤを支持し、前記支柱の内部に設けられる前記支柱にとっての定滑車となっている中継プーリと、前記支柱内ワイヤに張力を付与するバネ機構を前記支柱の内部に備えている移動型放射線装置において、
前記中間材の上部に回転自在に設けられた上部スプロケットと、
前記中間材の下部に回転自在に設けられた下部スプロケットと、
前記上部スプロケットと前記下部スプロケットとにかみ合うとともに、前記放射線源に結合されているローラチェーンと、
前記下部スプロケットと回転軸を共有し、互いの位置関係が固定された状態で前記中間材に回転自在に設けられたピニオンと、
前記ピニオンにかみ合うとともに、前記支柱に設けられた鉛直方向に伸びるラックとを備え、
前記下部スプロケットの有効径が前記ラックの有効径よりも小さいことを特徴とする移動型放射線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型放射線装置において、
前記上部スプロケットは、有効径が前記下部スプロケットの有効径と同じとなっていることを特徴とする移動型放射線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動型放射線装置において、
前記支柱内ワイヤが多重となっていることを特徴とする移動型放射線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回診に用いられる移動型放射線装置に関し、特に、放射線源の高さを調節する機構を備える移動型放射線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は、従来構成の移動型放射線装置を説明している。この装置は、手押し式の台車に放射線を照射する放射線源56と放射線源56を支持する鉛直方向に伸びる支柱52を備えており、支柱52は放射線源56を摺動に支持する。放射線源56は、支柱52に支持されながら鉛直方向に移動される構成となっている。この様な装置は、電動のアシストがついており、操作者が強い力を加えて手押しをしなくても容易に移動ができるように工夫されている。
【0003】
この様な移動型放射線装置は、被検体の病室まで移動させることができる。この装置を使えば、被検体を極力移動させることなく被検体の放射線撮影をすることが可能となる。
【0004】
図14は放射線源56を上下させる機構について説明している。放射線源56は、図14左側に示すように、先端支柱54,中間材53,支柱52が連接して構成される機構により支持されている。放射線源56を上下に移動させるように力を加えると、先端支柱54,中間材53,支柱52は、この力に連動して上下動する。
【0005】
この様な移動を実現しているのは、中間材53の定滑車が構成する図14左側に示す釣瓶式の機構が一例である。放射線源56を下側に移動させようとすると、定滑車は、左回りに回転し、ワイヤが左側に巻き取られる。すると、放射線源56は、下側に移動していく。中間材53自体も放射線源56ほど速くはないが、放射線源56に差を付けられながらも下方向に移動していく。これよりこの移動速度を問題とする。
【0006】
図14右側は、放射線源56を下側に移動させたとき、放射線源56および中間材53がどのくらいの速度で移動するかを考えるときの図である。放射線源56を下側に移動させると、放射線源56と中間材53とが相対的に移動していく。このときの速度を例えば0.1m/sだったとする。ワイヤは、この速度で定滑車の左側に巻き取られていく。
【0007】
放射線源56を下側に移動させると、中間材53と支柱52とが相対的に移動していく。このときの速度は、0.1m/sになる。ワイヤが、この速度で定滑車の右側から巻き上げられていくからである。と言うことは、支柱52を基準として放射線源56は、0.2m/sの速度で下側に移動していく。つまり、この機構によれば、図15に示すように放射線源56は、中間材53の2倍の速さで移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2013−523397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来構成の移動型放射線装置には、次のような問題点がある。
すなわち、従来構成の移動型放射線装置は、装置を移動させるときに使い勝手が悪いという問題点がある。
【0010】
図16は、装置を手押しして移動させようとする際(以降、搬送状態と言う)に放射線源56と支柱52と中間材53の位置を示している。このときの中間材53の位置に注目すると、中間材53の上端が支柱52の上端よりも少し上に来ていることが分かる。これが不都合を生じる。この状態で操作者が装置を手押ししようとしたとする。装置の移動させる術者の視線に入るのが支柱52および中間材53である。本発明はこのうち中間材53に注目する。中間材53が視線にできるだけ入らないように中間材53を図16点線に示すように下側に移動させれば、図16の斜線部に示す中間材53が作る死角がなくなるので操作者の視界がさらに開けて装置の使い勝手がよくなる。
【0011】
しかしながら、中間材53の先端の位置は、自由に変更できない。図14左側は、放射線源56をめいっぱい上まで移動させた状態を示している。このときの中間材53の上端は、めいっぱい上まで移動された放射線源56を確実に支持する必要があるので、それなりの高い位置になければならない。これを下げてしまうと、放射線源56が性能上必要とされる高い位置に行かなくなってしまう。では、図14左側が意味するめいっぱい上まで上がった放射線源56を図16に示すようにめいっぱい下まで下げてみるものとする。図14左側において中間材53の先端は、所定の位置にあるとする。この状態から、放射線源56をめいっぱい下げてみたとすると、このときの中間材53の速度は、図15に示すように、放射線源56の移動速度の半分に固定される。したがって、放射線源56をめいっぱい下まで下げたとしても、中間材53は、放射線源56の移動距離の半分しか動けない。中間材53はこの位置よりも下に行けないのである。
【0012】
つまり、放射線源56をめいっぱい下まで移動させた時の中間材53の高さは、自由に設計できるものではなく、装置として求められる性能により一義的に決定されてしまう。放射線源56を所定の上端から所定の下端まで昇降移動させるように考えて装置構成を考えると、放射線源56を搬送状態に置いた時の中間材53の高さもただ一つに定まってしまうのである。結局、この時に中間材53の先端が目障りであっても、従来構成では改善する術はない。
【0013】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、装置の使い勝手が改善された移動型放射線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る移動型放射線装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線源を昇降自在に支持する鉛直方向に伸びる支柱と、放射線源と支柱とに挟まれる位置に設けられるとともに放射線源の昇降移動に伴って昇降移動する中間材と、一端が中間材に接続されているとともに、他端が支柱の内側に接続されている支柱内ワイヤと、支柱内ワイヤを支持するとともに、支柱の内部に設けられる支柱にとっての定滑車となっている支柱内プーリと、支柱内プーリから見て支柱内ワイヤの他端側に設けられているとともに、支柱内ワイヤを支持し、支柱の内部に設けられる支柱にとっての定滑車となっている中継プーリと、支柱内ワイヤに張力を付与するバネ機構を支柱の内部に備えている移動型放射線装置において、中間材の上部に回転自在に設けられた上部スプロケットと、中間材の下部に回転自在に設けられた下部スプロケットと、上部スプロケットと下部スプロケットとにかみ合うとともに、放射線源に結合されているローラチェーンと、下部スプロケットと回転軸を共有し、互いの位置関係が固定された状態で中間材に回転自在に設けられたピニオンと、ピニオンにかみ合うとともに、支柱に設けられた鉛直方向に伸びるラックとを備え、 前記下部スプロケットの有効径が前記ラックの有効径よりも小さいことを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]本発明によれば、使い勝手が改善された移動型放射線装置を提供することができる。下部スプロケットおよびピニオンを回転させたときに生じる中間材および支柱との間の相対移動の大きさが、放射線源および中間材との間の相対移動の大きさよりも大きくなるように下部スプロケットの有効径に対するピニオンの有効径が決定されていれば、従来構成における中間材のストロークをより大きくすることができる。つまり、めいっぱい上に上げた放射線源をめいっぱい下まで下げたとき、中間材はこれに追従して移動する。従来構成によればこのときの中間材の移動距離は、放射線源の移動距離の半分と決まっている。しかし本発明によれば、中間材をより長い距離移動させることができるようになる。
この様な違いがあるから、放射線源を下側に移動させる操作者からすれば、本発明に係る装置の中間材の方が従来装置に係る中間材よりも速やかに床面に向かって引っ込んでいくように感じられる。そして、本発明に係る装置は、従来装置と比べて中間材がより床面側まで移動する。操作者は、中間材により視界が遮れることなく、高い操作性を感じながら装置を移動させることができる。
【0016】
また、上述の移動型放射線装置において、上部スプロケットは、有効径が下部スプロケットの有効径と同じとなっていればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に示したものである。上部スプロケットと下部スプロケットは、同じ回転速度で回転するように互いの径が決定されていればより確実に本発明の構成を実現することができる。
【0018】
また、上述の移動型放射線装置において、支柱内ワイヤが多重となっていればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の装置をより具体的に示したものである。支柱内ワイヤが多重となっていればより安全性に優れた装置が提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、使い勝手が改善された移動型放射線装置を提供することができる。下部スプロケットおよびピニオンを回転させたときに生じる中間材および支柱との間の相対移動の大きさが、X線管および中間材との間の相対移動の大きさよりも大きくなるように下部スプロケットの有効径に対するピニオンの有効径が決定されていれば、従来構成における中間材のストロークをより大きくすることができる。本発明に係る装置は、従来装置と比べて中間材がより床面側まで移動する。操作者は、中間材による視界の遮蔽がより少なく、高い操作性を感じながら装置を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る移動型X線装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】実施例1に係る先端支柱を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るX線管の縦移動を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係るX線管の縦移動を実現する機構を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る機構の実現例を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るピニオンとローラチェーンについて説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る中間材の移動様式について説明する模式図である。
【図8】実施例1に係る中間材の移動様式について説明する模式図である。
【図9】実施例1に係る中間材の移動様式について説明する模式図である。
【図10】実施例1に係る中間材の移動様式について説明する模式図である。
【図11】本発明に係る1変形例を説明する模式図である。
【図12】本発明に係る1変形例を説明する模式図である。
【図13】従来構成に係る移動式放射線装置を説明する概念図である。
【図14】従来構成に係る移動式放射線装置を構成する各部材の相対移動を説明する模式図である。
【図15】従来構成に係る移動式放射線装置を構成する各部材の位置関係を説明する模式図である。
【図16】従来構成に係る移動式放射線装置を構成する各部材の相対移動を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、本発明に係る移動式放射線装置について説明する。本発明に係る装置は、病院の廊下を走行させて被検体のいる病室まで移動させることができる放射線装置となっている。本装置と放射線検出器とを組み合わせることにより、被検体の放射線画像を病室にいながら撮影することが可能である。X線は本発明の放射線に相当する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明に係る移動式X線装置の全体構成を示している。本発明に係る装置は、装置の基部にシャーシ1を備えている。シャーシ1は、2つの前輪1aおよび2つの後輪1bが備えられた基台1cを有している。シャーシ1は、装置を構成する他の各部を搭載している。シャーシ1は、支柱2を支持する構成である。シャーシ1は、2つの前輪および2つの後輪を備えている。
【0024】
シャーシ1には、本体部Bが備え付けられている。本体部Bには、電源装置や、バッテリー、操作パネル、放射線検出器を収納するホルダ等が備え付けられている。本体部Bには、装置を走行させるときに操作者が握るグリップGが備えられている。操作者がグリップGに力を加えれば、シャーシ1に備えられたアシスト機能が働き、操作者が与えた力を補助する構成となっている。これにより、操作者は、軽々と装置を移動させることができる。
【0025】
支柱2は、鉛直方向に伸びる部材であり、内部が中空になっている。この支柱2は、鉛直方向に伸びる中心軸周りに回転自在となっている。
【0026】
中間材3は、支柱2を延伸するように設けられている鉛直方向に縦長の部材である。支柱2は、中間材3を昇降自在に支持する。支柱2には、中間材3を受ける鉛直方向に伸びる溝が設けられており、中間材3は、この溝に沿って鉛直方向に移動することができる。中間材3は、X線管6と支柱2とに挟まれる位置に設けられるとともにX線管6の昇降移動に伴って昇降移動する。
【0027】
先端支柱4は、中間材3を更に延伸するように設けられているL形状の部材である。中間材3は、先端支柱4を昇降自在に支持する。先端支柱4は、互いに直交する2つの腕を有し、一方の腕は鉛直方向に伸びており、もう一方の腕は水平方向に伸びている。中間材3には、先端支柱4が有する鉛直方向の腕を受ける鉛直方向に伸びる溝が設けられており、先端支柱4は、この溝に沿って鉛直方向に移動することができる。
【0028】
横支柱5a,5bは、水平方向に伸びる横長の部材である。先端支柱4が有する水平方向の腕、横支柱5a,横支柱5bは、この3つで入れ子式の伸縮構造となっている。図2の左側は、当該伸縮構造を最大に引き延ばした状態を示している。図2の右側は、当該伸縮構造を最小まで押し縮めた状態を示している。この伸縮機構は、手動で操作することができる。
【0029】
X線管6は、X線を発生する装置である。X線管6は荷重物であり、相当の重さがある。X線管6は、横支柱5bにより支持されており、支柱2,中間材3,先端支柱4,横支柱5a,5bは、X線管6の荷重をシャーシ1に伝える構成となっている。X線管6の制御に関する回路は、本体部Bに収納されている。また、X線管6にはX線の広がりを制限するコリメータ7が付属されている。このコリメータ7は、X線管6の移動に追従して移動する。X線管6は、X線を照射する。
【0030】
図3は、先端支柱4の昇降移動を説明している。図3左側は、先端支柱4を最も上方まで移動させた状態を表し、図3右側は、先端支柱4を最も下方まで移動させた状態を表している。先端支柱4を上下方向に移動させると、中間材3はこれに連動して移動する。すなわち、先端支柱4をある移動量だけ一方向に移動させると、中間材3は、その移動量の一定比率で同じ方向に移動する構成となっている。
【0031】
この様に、本発明の装置によれば、X線管6の縦移動は、支柱2,中間材3,先端支柱4から構成される機構が担当し、X線管6の横移動は、先端支柱4,横支柱5a,横支柱5bで構成される機構が担当する構成になっている。なお、X線管6の回転移動は、回転基台1dが担当する。X線管6を鉛直軸周りに回転させるような力を加えると、支柱2はシャーシ1に対して自転する。すると、中間材3,先端支柱4,横支柱5a,5bおよびX線管6が支柱2との位置関係を保った状態で追従して回転する。
【0032】
支柱2は、中空となっており、支柱2の内部空間には、種々の機構が備えられている。支柱の内部空間にとっての天井にあたる内面には、ワイヤの先端を固定する固定具が設けられている。同様に、中間材3にも固定具が設けられている。
【0033】
支柱内には、巻き取りプーリ14aと螺旋プーリ14bとが備えられている。これらプーリ14a,14bは、支柱2にとっての定滑車となっており、回転軸を共有している。巻き取りプーリ14aは円柱形となっており、コイル状の溝が掘られている。一方、螺旋プーリ14bは、半径比が可変となっている輪軸を有する滑車であり、テーパ状となっている。巻き取りプーリ14aおよび螺旋プーリ14bには、ワイヤの先端を固定する固定具が設けられている。
【0034】
巻き取りプーリワイヤ12aは、一端が中間材3の固定具に固定され、他端が巻き取りプーリ14aの固定具に固定されている。巻き取りプーリワイヤ12aは巻き取りプーリ14aに巻きかけられた格好で保持されている。したがって、巻き取りプーリワイヤ12aは、巻き取りプーリワイヤ12aを起点として伸び、巻き取りプーリワイヤ12aの下側へ巻き出るように保持されている。
【0035】
支柱内ワイヤ12bは、一端が螺旋プーリ14bの固定具に固定され、他端が支柱2内部の固定具に固定されている。支柱内ワイヤ12bは螺旋プーリ14bに巻きかけられた格好で保持されている。したがって、支柱内ワイヤ12bは、螺旋プーリ14bを起点として伸び、螺旋プーリ14bの下側へ巻き出るように保持されている。
【0036】
支柱2の内部において、支柱内プーリ14と支柱2の内面に設けられた固定具との間には、支柱2にとっての定滑車となっている中継プーリ13aが備えられている。中継プーリ13aは、支柱内ワイヤ12bを支持している。支柱内ワイヤ12bは、中継プーリ13aの上側に接するように巻き掛けられた格好で保持される。中継プーリ13aは、支柱内プーリ14から見て支柱内ワイヤ12bの他端側に設けられているとともに、支柱内ワイヤ12bを支持し、支柱2の内部に設けられる支柱2にとっての定滑車となっている。
【0037】
中継プーリ13aの両側のそれぞれには、中継プーリ13aに対して移動する動滑車13bが設けられている。支柱内ワイヤ12bは、2つの動滑車13bの下側に接するように動滑車13bに巻き掛けられている。
【0038】
したがって、支柱内ワイヤ12bは、中間材3の固定具を始点として、支柱内プーリ14,動滑車13b,中継プーリ13a,動滑車13bに次々と巻き掛かって、支柱2の内面に設けられた固定具の終点まで伸びている。
【0039】
<機構の配置例>
図4に示す支柱2の内部は、動力の伝達が分かりやすいように作図がなされている。支柱2の内部の機構を図4に示すとおりにすると、支柱2の径を相当大きくしなければならなくなる。一方、図5は、図4と同様の機構をよりコンパクトに収めた配置例を示している。この様な配置例によれば、支柱2の径を小さくすることが可能である。
【0040】
図5左側は、当該配置例を支柱内プーリ14の回転軸方向から見た場合を示している。図4の説明では、支柱内プーリ14の回転軸が中継プーリ13aの回転軸と直交するように描かれているが、図5左側に示すように、互いの回転軸を一致させることもできる。また、図4の説明では、動滑車13bが回転軸と直交する方向に配列していたが、図5左側に示すように、互いの回転軸を一致させることもできる。図5右側は、当該配置例を支柱内プーリ14の回転軸の直交方向から見た場合を示している。
【0041】
<バネ機構について>
バネ機構は、2つの動滑車13bを通じて支柱内ワイヤ12bを引き下げることにより、支柱内ワイヤ12bを螺旋プーリ14bから引き取ろうとする力を発生させる。この力が中間材3の落下を引き留めることになる。バネ機構は、支柱内ワイヤ12bに張力を付与する構成であり、支柱2の内部に備えられている。
【0042】
<本発明の特徴>
本発明の特徴は、中間材3を移動させる機構にある。図4は、ラック2aとピニオン2bが描かれている。ラック2aは、支柱2に固定された鉛直に伸びる部材である。ピニオン2bは、ラック2aとかみ合っており、中間材3の下端に設けられた回転軸3cの一端に固定されている。ピニオン2bは、回転軸3cを通じて中間材3に回転自在に指示される。中間材3が支柱2に対して動くことがあれば、ピニオン2bは、ラック2a上を移動することになるから、それに合わせて回転軸3cは回転することになる。支柱2に対する中間材3の相対移動が一定だとすると、回転軸3cは、ある一定の速度で回転することになる。ラック2aは、スプロケット3b2と回転軸を共有し、互いの位置関係が固定された状態で中間材3に回転自在に設けられたピニオン2bと、ピニオン2bにかみ合うとともに、支柱2に設けられ、鉛直方向に伸びている。
【0043】
また、図4には、ローラチェーン3aとスプロケット3b1,3b2が描かれている。ローラチェーン3aは、固定具を通じて先端支柱4に固定されている。2つのスプロケット3b1,3b2は、中間材3に回転自在に備え付けられており、一方のスプロケット3b1は、中間材3の上端に、もう一方のスプロケット3b2は中間材の下端に位置している。これら2つのスプロケット3b1,3b2は、同じ径をしている。したがって、ローラチェーン3aを掴んで回すと、2つのスプロケット3b1,3b2は同じ回転速度で回転する。ローラチェーン3aは、スプロケット3b1とスプロケット3b2とにかみ合うとともに、先端支柱4を介してX線管6に結合されている。ローラチェーン3aが駆動すれば、先端支柱4およびX線管6はこの駆動に追従して縦方向に移動する。すなわち、スプロケット3b1は、有効径がスプロケット3b2の有効径と同じとなっている。スプロケット3b1は本発明の上部スプロケットに相当し、スプロケット3b2は本発明の下部スプロケットに相当する。
【0044】
ピニオン2bとスプロケット3b2とは、同じ回転軸3cを共有しているのでこの点について説明する。図6は、回転軸3cの一端にピニオン2bが、もう一端にスプロケット3b2が固定されている様子が描かれている。ピニオン2bよりもスプロケット3b2の方が少し小さい。すなわち、スプロケット3b2およびラック2aを回転させたときに生じる中間材3および支柱2との間の相対移動の大きさが、X線管6および中間材3との間の相対移動の大きさよりも大きくなるようにスプロケット3b2の有効径がラック2aの有効径よりも小さくなっている。
【0045】
先端支柱4,中間材3および支柱2からなる機構の動作について説明する。操作者がX線管6を押し下げるような力を加えると、先端支柱4がX線管6に追従して動き、それに合わせて、ローラチェーン3aが駆動する。すると、この駆動に従いスプロケット3b1,3b2が回転する。スプロケット3b2の回転力は、ピニオン2bに伝えられる。ローラチェーン3aが駆動すると、先端支柱4と中間材3とが相対移動することになる。
【0046】
スプロケット3b2が回転するということは、回転軸が共通なピニオン2bも回転するということである。ピニオン2bが回転すると中間材3と支柱2とが相対移動する。つまり、X線管6を押し下げる力を加えると、X線管6は、押し下がり、先端支柱4はその動きに追従する。中間材3は、このX線管6の移動に連動してX線管6の速度よりも遅い速度で押し下がる。
【0047】
本発明の特徴は、ピニオン2bとスプロケット3b2の大きさが違うということにある。ピニオン2bとスプロケット3b2の大きさが全く同じだったとする。このとき回転軸3cが1回転したとすると、ピニオン2bの円周とスプロケット3b2の円周は同じとなる。回転軸3cが1回転したとすると、ピニオン2bは、ラック2a上をある程度の長さだけ進むことになるし、スプロケット3b2は、ローラチェーン3aをある程度の距離だけたぐることになる。ピニオン2bの円周とスプロケット3b2の円周は同じなのだから、ピニオン2bがラック2aの上を進む距離と、ローラチェーン3aがたぐられる距離とは、同じ長さとなる。
【0048】
ピニオン2bとスプロケット3b2の大きさを変えると、ピニオン2bがラック2aの上を進む距離に対してローラチェーン3aがたぐられる距離を変えることができる。これにより、今まで一義的だったX線管6の移動速度に対する中間材3の移動速度を変更することができるようになる。
【0049】
この点について図7に基づいて説明する。図7は、スプロケット3b2の円周(有効径を基準とした円周)を1としたときにピニオン2bの円周(有効径を基準とした円周)が1.5だったときを表している。この場合、先端支柱4と中間材3との相対移動が1cmだったとすると、中間材3と支柱2との相対移動は、1.5倍の1.5cmとなる。つまり、先端支柱4と中間材3との間で起こる相対移動よりも中間材3と支柱2との間で起こる相対移動のほうが大きい。言い換えれば、回転軸3cの回転に伴ってローラチェーン3aがたぐられる距離よりもピニオン2bがラック2aの上を進む距離の方が大きい。
【0050】
図7は、この様な条件下で中間材3の移動はどうなるかという点について説明している。図7の左側は、X線管6がめいっぱい上まで上がっている状態を示している。この状態から、図7の右側は、X線管6を50cmだけ押し下げた状態を表している。この移動の内訳を見ると、まず、X線管6および先端支柱4が中間材3に対して20cm移動し、中間材3が支柱2に対し20cmの1.5倍の30cm移動している。X線管6は、これらの相対移動を合わせて支柱2に対して50cm移動する。
【0051】
これに対して図8は、図1と同じような装置で、ピニオン2bとスプロケット3b2の円周が同じものを示している。この装置は、従来通りの中間材3の移動と同じ挙動を示すのでこれについて説明する。この場合、先端支柱4と中間材3との相対移動が1cmだったとすると、中間材3と支柱2との相対移動は、同じ1cmとなる。つまり、先端支柱4と中間材3との間で起こる相対移動と中間材3と支柱2との間で起こる相対移動とは同じとなる。言い換えれば、回転軸3cの回転に伴ってローラチェーン3aがたぐられる距離とピニオン2bがラック2aの上を進む距離とは同じである。
【0052】
図8は、この様な条件下で中間材3の移動はどうなるかという点について説明している。図8の左側は、X線管6がめいっぱい上まで上がっている状態を示している。この状態から、図8の右側は、X線管6を50cmだけ押し下げた状態を表している。この移動の内訳を見ると、まず、X線管6および先端支柱4が中間材3に対して25cm移動し、中間材3が支柱2に対し同じ25cm移動している。X線管6は、これらの相対移動を合わせて支柱2に対して50cm移動する。
【0053】
図7が本願に係る構成で、図8が従来装置に相当する構成である。どちらの場合もめいっぱい上にあったX線管6が50cm下まで移動した。これら構成の間で一体何が違うのかと言えば、X線管6が50cm下まで移動した後の中間材3の位置である。X線管6がめいっぱい上にあったとき、中間材3もめいっぱい上の位置にあった。中間材3の位置は、図7の装置と図8の装置との間で違いはない。ところが、中間材3に注目すると事情が違う。図7の場合、中間材3は、めいっぱい上の位置から30cm移動した。一方、図8の場合、中間材3は、同じスタート位置から25cm移動したことになる。つまり、図7の場合の方が図8の場合よりも中間材3が5cm下に移動している。つまり、図7の装置の方が図8の装置よりも中間材3が速く動く。
【0054】
中間材3が速く動くことは、装置の操作者の視界をクリアにするメリットがある。図9,図10はこのメリットについて説明している。図9は、本発明に係る装置で、中間材3が高速に移動する装置構成となっている。図10は、従来に係る装置で、中間材3が低速に移動する装置構成となっている。図9,図10の左側はいずれもX線管6がめいっぱい上に位置している場合を意味している。このときのX線管6,先端支柱4,中間材3,支柱2の位置関係は、どちらの装置でも同じである。
【0055】
そして、図9,図10左側の状態からX線管6を搬送状態にしたのが図9,12右側の状態である。このときのX線管6の位置は図9,図10に係る装置の間で同じである。
【0056】
図7,図8を用いて説明したように、これら装置の間では、X線管6を移動させている間の中間材3の移動速度が違う。中間材3の移動速度は、図10の装置よりも図9の装置の方が速い。したがって、X線管6を下側に移動させる操作者からすれば、図9の装置の中間材3の方が図10の装置に係る中間材3よりも速やかに床面に向かって引っ込んでいくように感じられる。そして、図9の装置は、図10の装置と比べて中間材3がより床面側まで移動する。操作者は、中間材3により視界が遮れることなく、高い操作性を感じながらグリップGを握って装置を移動させることができる。
【0057】
以上のように、本発明によれば、使い勝手が改善された移動型放射線装置を提供することができる。スプロケット3b2およびラック2aを回転させたときに生じる中間材3および支柱2との間の相対移動の大きさが、X線管6および中間材3との間の相対移動の大きさよりも大きくなるようにスプロケット3b2の有効径に対するラック2aの有効径が決定されていれば、従来構成における中間材3のストロークをより大きくすることができる。つまり、めいっぱい上に上げたX線管6をめいっぱい下まで下げたとき、中間材3はこれに追従して移動する。従来構成によればこのときの中間材3の移動距離は、X線管6の移動距離の半分と決まっている。しかし本発明によれば、中間材3をより長い距離移動させることができるようになる。
【0058】
本発明は、上述の実施例に限られず下記のように変形実施することが可能である。
【0059】
(1)上述の実施例によれば、巻き取りプーリワイヤ12aおよび支柱内ワイヤ12bは、それぞれ1本しかなかったが、本発明の構成はこれに限られない。図11に示すように、巻き取りプーリワイヤ12aおよび支柱内ワイヤ12bを2重にすることができる。この様な構成とすることにより、仮に、巻き取りプーリワイヤ12aおよび支柱内ワイヤ12bの1本が断絶するようなことがあったとしても、断絶していないもう一本がX線管6を支持することでX線管6の落下を防ぐことができる。また、巻き取りプーリワイヤ12aおよび支柱内ワイヤ12bを3重以上とすることもできる。
【0060】
(2)上述の構成によれば、スプロケットおよびローラチェーンは、装置内で1組みしかなかったが、スプロケットおよびローラチェーンを多重に構成することもできる。
【0061】
(3)上述の実施例によれば、支柱内ワイヤ12bの切断を感知する構成については言及が無かったが、図12に示すようにワイヤの張りを検出するセンサ31を設けるようにしても良い。センサ31は、押し下げようとする力を付与すると押し下がり、力の付与を解除するとひとりでに押し上がるような腕を有している。センサ31は、腕が押し下がっているときは、ON,押し上がっているときはOFFとなるような電子部品である。センサ31は、腕が支柱内ワイヤ12bに押し当てられるように支柱2の内部に装着され、腕が支柱内ワイヤ12bに押し下げられることでON状態となっている。なお、センサ31の腕の先端には、球形の補強材が設けられており、支柱内ワイヤ12bによりセンサ31の腕が摩耗するのを防いでいる。
【0062】
支柱内ワイヤ12bが断絶すると、腕を押し下げていた力が消失するので、腕はひとりでに押し上がりセンサ31はOFFとなる。移動式X線装置は、この時点でセンサ31の出力に基づいてワイヤの切断を操作者に知らせる発報を実行する。このような変形例は、ワイヤが多重となっている図11のような構成に適している。すなわち、図11のような構成は、ワイヤが断絶してももう一本のワイヤにより正常な動作ができてしまう。しかしながら、これを放置していると、断絶したワイヤが絡まって支柱2内部の構造を破損させてしまうことも起こりえる。したがって、ワイヤの断絶はいち早く操作者に伝達した方がよい。なお、図11のようなワイヤが多重となっている場合は、2本の支柱内ワイヤ12bのそれぞれにセンサ31を設ける構成となる。
なお、本変形例におけるセンサ31は、腕が押し下がっているときはON,押し上がっているときはOFFとなるような電子部品となっていたが、これに変えて、腕が押し下がっているときはOFF,押し上がっているときはONとなるようなセンサ31を用いて本変形例を構成するようにしてもよい。
【0063】
(4)上述の構成によれば、スプロケット3b1の有効径は、スプロケット3b2の有効径と同じであったが、本発明はこの構成に限られない。スプロケット3b1の有効径をスプロケット3b2の有効径よりも大きくした構成とすることもできるし、スプロケット3b1の有効径をスプロケット3b2の有効径よりも小さくした構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0064】
2a ラック
2b ピニオン
3a ローラチェーン
3b1 スプロケット(上部スプロケット)
3b2 スプロケット(下部スプロケット)
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明は医用分野に適している。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際調査報告】