(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017158928
(43)【国際公開日】20170921
【発行日】20180322
(54)【発明の名称】酸化物焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/01 20060101AFI20180223BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20180223BHJP
【FI】
   !C04B35/01
   !C23C14/34 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
【出願番号】2017507897
(21)【国際出願番号】JP2016084248
(22)【国際出願日】20161118
(11)【特許番号】6133531
(45)【特許公報発行日】20170524
(31)【優先権主張番号】2016049341
(32)【優先日】20160314
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目1番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】掛野 崇
【住所又は居所】茨城県北茨城市華川町臼場187番地4 JX金属株式会社 磯原工場内
(72)【発明者】
【氏名】角田 浩二
【住所又は居所】茨城県北茨城市華川町臼場187番地4 JX金属株式会社 磯原工場内
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC05
4K029DC09
4K029DC21
(57)【要約】
実質的にインジウム、スズ、マグネシウム及び酸素からなり、スズがSn/(In+Sn+Mg)の原子数比で5〜15%の割合、マグネシウムがMg/(In+Sn+Mg)の原子数比で0.1〜2.0%の割合で含有されており、残部がインジウム及び酸素からなる焼結体であって、前記焼結体の表面粗さRaが0.3〜0.5μmであるときの抗折強度が140MPa以上であることを特徴とする酸化物焼結体。成膜時にターゲット割れやパーティクル発生を低減することができると共に、非晶質安定性や耐久性に優れた薄膜を形成することができるスパッタリングターゲット用酸化物焼結体を提供することを課題とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にインジウム、スズ、マグネシウム及び酸素からなり、スズがSn/(In+Sn+Mg)の原子数比で5〜15%の割合、マグネシウムがMg/(In+Sn+Mg)の原子数比で0.1〜2.0%の割合で含有されており、残部がインジウム及び酸素からなる焼結体であって、前記焼結体の表面粗さRaが0.3〜0.5μmであるときの抗折強度が140MPa以上であることを特徴とする酸化物焼結体。
【請求項2】
密度が7.1g/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化物焼結体。
【請求項3】
面積80×120μmにおいて、円相当径0.1μm以上のポアの数が30個以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化物焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ等における透明導電膜の形成に適したスパッタリングターゲット用酸化物焼結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ITO(Indium Tin Oxide)膜は、低抵抗率、高透過率、微細加工容易性等の特徴を有し、これらの特徴が、他の透明導電膜より優れていることから、フラットパネルディスプレイ用表示電極をはじめとして、広範囲の分野にわたって使用されている。現在、産業上の生産工程におけるITO膜の成膜方法の殆どは、大面積に均一性、生産性良く作製できることから、ITO焼結体をターゲットとしてスパッタする、いわゆるスパッタ成膜法である。
【0003】
ところで、膜の耐久性向上、膜の非晶質安定化、ターゲットの高密度化を目的として、ITOにマグネシウムを添加することが知られている。たとえば、特許文献1〜3には、Mg含有ITO薄膜は、膜表面が平坦でエッチング特性が向上し、膜の耐久性(耐湿性、耐高温性)が向上することが開示されている。特許文献4〜6には、成膜時に水を添加しなくとも安定なアモルファス(非晶質)膜となり、エッチング残渣が減少することが記載されている。特許文献7には、ITOにMg他5種類の元素から選ばれた1種以上の元素を5〜5000ppm含有し、密度が向上した焼結体が開示されている。
【0004】
しかしながら、ITOにMgを添加した場合、焼結体にポアが生成しやすくなり、また、焼結体の強度が低下するという問題があった。このようなポアの生成や強度低下は、スパッタリングの際のパーティクル発生やターゲット割れの一因となっていた。一方、特許文献8〜9には、Mg、Ca、Zr、Hfのうちの少なくとも1種の元素の酸化物を0.001〜0.1重量%含有する、高強度ITOスパッタリングターゲットが開示されている。これは、Mg等の酸化物を微量に添加することで強度が向上するものであるが、一方で、添加量が微量すぎるために、先述した膜の非晶質安定化などの効果が得られない。
【0005】
なお、特許文献8〜9では、曲げ強度がJIS R1601に従って測定されており、JISの規格によれば、試験片の表面粗さRaは0.2μm以下とされている。しかし、セラミックスの強度は表面粗さに大きく影響を受けるため、例えば、Raが0.2μm以下といっても、Raが0.2μmをやや下回る場合と、さらに一桁程度表面粗さが小さい場合とでは、強度が大きく異なる点を考慮する必要がある。また、実際のスパッタリングターゲットに用いられる焼結体の表面粗さをRaで0.2μm以下とするためには、多大なコストが発生し、工業生産上好ましくない。以上のことから、膜の耐久性向上、膜の非晶質安定化などの効果が得られるとともに、実用的な表面粗さの範囲で機械的強度の高い焼結体(ターゲット)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3632524号
【特許文献2】特許第4075361号
【特許文献3】特許第3215392号
【特許文献4】特許第4885274号
【特許文献5】特許第4489842号
【特許文献6】特許第5237827号
【特許文献7】特許第3827334号
【特許文献8】特許第4855964号
【特許文献9】特許第5277284号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非晶質安定性や耐久性に優れたMg含有ITO膜を形成するためのスパッタリングターゲット用酸化物焼結体であって、スパッタリングの際にターゲットの割れや、パーティクルの発生を格段に抑制することができる、抗折強度が高い酸化物焼結体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、焼結体の組成と焼結条件とを適切に調整することにより、焼結体(スパッタリングターゲット)の抗折強度を高めることができ、その結果、ノジュールの発生を抑制することができ、スパッタリング中のアーキングやパーティクルの発生を抑制することができ、成膜工程の歩留まりを向上できるとの知見を得た。本発明者らは上記の知見に基づき、下記の発明を提供する。
1)実質的にインジウム、スズ、マグネシウム及び酸素からなり、スズがSn/(In+Sn+Mg)の原子数比で5〜15%の割合、マグネシウムがMg/(In+Sn+Mg)の原子数比で0.1〜2.0%の割合で含有されており、残部がインジウム及び酸素からなる焼結体であって、前記焼結体の表面粗さRaが0.3〜0.5μmであるときの抗折強度が140MPa以上であることを特徴とする酸化物焼結体。
2)密度が7.1g/cm以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化物焼結体。
3)面積80×120μmにおいて、円相当径0.1μm以上のポアの数が30個以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の酸化物焼結体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、実質的にインジウム、スズ、マグネシウム及び酸素からなる酸化物焼結体において、焼結体の組成と焼結条件を適切に調整することにより、高い抗折強度を達成することができ、これによって、スパッタリングの際にパーティクルの発生が少なく、安定したスパッタリングが可能となるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例及び比較例の抗折強度のワイブルプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酸化物焼結体は、実質的にインジウム、スズ、マグネシウム及び酸素からなり、スズがSn/(In+Sn+Mg)の原子数比で5〜15%の割合、マグネシウムがMg/(In+Sn+Mg)の原子数比で0.1〜2.0%の割合で含有されており、残部がインジウム及び酸素からなる。ここで、Snはスズの原子数、Inはインジウムの原子数、Mgはマグネシウムの原子数をそれぞれ表しており、全金属原子であるインジウム、スズ及びマグネシウムの合計の原子数に対する、スズ及びマグネシウムの原子数比の適切濃度範囲をそれぞれ示している。
【0012】
スパッタリングターゲットは、前記酸化物焼結体を所定の直径、厚みに加工して作製することができ、透明導電膜は、前記スパッタリングターゲットをスパッタ成膜して得られる。スパッタリングターゲットと、前記酸化物焼結体の組成は同じであり、また、該スパッタリングターゲットとスパッタ成膜して得られる膜には組成の差は殆どない。また「実質的に」とは、酸化物焼結体の構成元素が、インジウム、スズ、マグネシウム、酸素の4種類のみから形成されているが、通常入手可能な原料中に含まれ、その原料製造時の通常の精製方法では除去しきれいない不可避的不純物を不可避的濃度範囲で含んでいたとしても、本発明はそれらをも含む概念であることを示すものである。すなわち、不可避的不純物は本発明に含まれるものである。
【0013】
スズは酸化インジウムに添加されると、n型ドナーとして働き、抵抗率を低下させる効果がある。市販のITOターゲットは、通常、スズ濃度Snが、Sn/(Sn+In)=10%程度である。スズ濃度が低すぎると、電子供給量が少なくなり、また、逆に多すぎると電子散乱不純物となって、どちらの場合も、スパッタによって得られる膜の抵抗率が高くなってしまう。したがって、ITOとして適切なスズの濃度範囲は、スズ濃度Snが、Sn/(In+Sn+Mg)の式で5〜15%の範囲であることから、本発明でのスズ濃度は規定されている。
【0014】
マグネシウムはITOに添加されると、膜の結晶化を妨げて、非晶質化させる効果がある。マグネシウムの濃度Mgが、Mg/(In+Sn+Mg)<0.1%であると、膜を非晶質化させる効果が殆ど無く、スパッタした膜が一部結晶化してしまう。一方、Mg/(In+Sn+Mg)>2.0%であると、スパッタして得られた非晶質の膜を結晶化させるために必要なアニール温度が260℃を超える高温となってしまい。そのようなプロセス実施のためのコスト、手間、時間を要してしまって、生産上不適当である。さらに、マグネシウムの濃度が高すぎると、高温でアニールして膜を結晶化したとしても、得られる膜の抵抗率が高くなり、透明導電膜の導電性の観点から大きな欠点となってしまう。したがって、マグネシウム濃度は、本発明で規定するように、Mg/(In+Sn+Mg)の原子比で0.1〜2.0%の割合であることが最適である。マグネシウム濃度は、このようにして決定されてものである。
【0015】
本発明において特に重要なことは、前記組成からなる酸化物焼結体において、その表面粗さRaが0.3〜0.5μmであるときの抗折強度が140MPa以上であることである。抗折強度はJIS R1601:2008に準拠して3点曲げ試験で測定する。具体的には、試料全長:40mm±0.1mm、幅:4mm±0.1mm、厚さ:3mm±0.1mm、支点間距離:30mm±0.1mm、クロスヘッドスピード:0.5mm/minとし、10個の試料についての平均値とする。抗折強度が140MPa未満であると、スパッタリング時に過度な電力が投入された場合、スパッタリングターゲット(焼結体)と該ターゲットをボンディングしているバッキングプレートの熱膨張差によって生じる応力により、焼結体に割れが発生する可能性がある。また、スパッタリング中にアーキングやパーティクルが増加することがある。
【0016】
また、本発明の酸化物焼結体は、密度が7.1g/cm以上であることが好ましい。焼結体(ターゲット)の高密度化は、スパッタ膜の均一性を高める共に、スパッタリングの際パーティクルの発生を著しく低減することができるという優れた効果を有する。本発明において、焼結体密度はアルキメデス法により、それぞれ矩形平板ターゲットの中央付近及び四隅の場所から5箇所採取したサンプルの各箇所での測定結果を、測定箇所数で割って平均値として求める。
【0017】
また、本発明の酸化物焼結体は、面積80×120μmにおいて、円相当径0.1μm以上のポアの数が30個以下であることが好ましい。不十分な焼結のために、各原料間で十分な反応が行われずに、焼結体中にポアが多数発生する。このようなやポアの存在は、焼結体の抗折強度を低下させ、抗折強度のばらつきを増加させる原因となり、また、ノジュールの発生を引き起こすため、極力低減させることがこの好ましい。ポアの個数については、焼結体(中心部)から、1.5cm角程度の大きさの試料を切り出し、その切断面を研磨して鏡面とした後、その組織を電子顕微鏡で観察する。そして、倍率1000倍で観察した、面積80×120μmの範囲に存在する円相当径が0.1μm以上のポアの個数を数える。
【0018】
通常、酸化物焼結体を製造する場合、各原料粉末を所定の割合で混合及び微粉砕して、スラリーとし、スラリーをスプレードライヤーで乾燥して造粒粉とした後、この造粒粉を成形・焼結する。しかしながら、原料に「酸化マグネシウム」を用いる場合、スラリーの粘度が上昇していまい、混合、粉砕、造粒が困難という問題があった。
原料粉末の混合が不十分であると、焼結工程において、反りやクラックの発生を招く恐れがあり、焼結体の密度も十分に上がらない。そして、そのような焼結体から製造されるターゲットをスパッタした場合、ノジュールの発生を招き、異常放電を引き起こす。さらに、ターゲットに酸化マグネシウムが偏析している高抵抗率領域と低抵抗率領域が存在することとなり、異常放電がさらに発生しやすくなる。
【0019】
スラリーの粘度を低下させる方法としては、スラリーのpHを調整する方法があるが、それにも限界があり、十分に粘度を下げるためにはスラリーの固形分を低下させる必要がある。しかしながら、固形分の低いスラリーを用いると、造粒工程での効率が著しく低下して、生産性を低下させる。
また、原料に酸化マグネシウムを用いない方法も実施されている。例えば、特許文献1の実施例には、マグネシウム原料として水酸化マグネシウムを用いており、特許文献2では、インジウム酸マグネシウム又はスズ酸マグネシウムを、特許文献6では、炭酸水酸化マグネシウムを用いている。
【0020】
しかし、水酸化マグネシウムや炭酸水酸化マグネシウムは、加熱により分解して、水や二酸化炭素を放出するため、高密度な焼結体を製造する原料としては極めて不適切である。また、インジウム酸マグネシウム、スズ酸マグネシウムを用いる場合も、事前にそれらの原料を合成する必要があり、生産性を著しく低下させる。
以上の方法に対して、後述する通り、本発明では、酸化スズ原料と酸化マグネシウム原料を混合・微粉砕してスラリーとし、別途、微粉砕してスラリーとした酸化インジウム原料と混合することにより、原料に酸化マグネシウムを用いても、高密度な焼結体を得ることを可能とした。
【0021】
本発明の酸化物焼結体の製造方法について、以下に具体的に説明する。なお、本発明の酸化物焼結体は以下の製造方法に限定されるものではなく、酸化物焼結体の特性を大きく変えない範囲でその製造条件などを適宜、変更することができる。
まず、酸化スズ及び酸化マグネシウムの所定量を秤量し、適量の純水を加えてミキサーを用いて充分な混合を行い、ビーズミルにより微粉砕しスラリーとする。また、同様に酸化インジウムを所定量秤量し、純水を加え混合・微粉砕を実施しスラリーを得る。
このとき、必要に応じ酸またはアルカリを用いてpH調整をしてスラリーの粘度を調整することができる。なお、原料粉は酸化物であるために雰囲気ガスは、特に原料の酸化を防止する等の考慮が必要ないために大気でもかまわない。
【0022】
次に、酸化スズ及び酸化マグネシウムを混合したスラリーと、酸化インジウムのスラリーとをミキサーで混合し、ビーズミルにより微粉砕を行い、原料粉が均一に混合されたスラリーを得る。微粉砕は、平均粒径(D50)1μm以下、好ましくは0.6μm以下になるまで行うことが望ましい。
次に造粒を行う。これは、原料粉の流動性を良くして、プレス成型時の充填状況を充分良好なものにするためである。バインダーの役割を果たすPVA(ポリビニルアルコール)をスラリー1kgあたり100〜200ccの割合で混合して、造粒機入口温度200〜250℃、出口温度100〜150℃、ディスク回転数8000〜10000rpmの条件で造粒する。
【0023】
次に、プレス成型を行う。所定サイズの型に造粒粉を充填し、面圧力40〜100MPa、1〜3分間保持の条件で一軸プレスして成形体を得る。面圧力が40MPa未満であると、十分な密度の成形体を得ることができず、一方、面圧力が100MPa超にする必要も無く、無駄なコストやエネルギーを要するので生産上好ましくない。
次に、CIP成形を行う。上記で得られた成型体をビニールで2重に真空パックし、圧力150〜400MPa、1〜3分保持の条件でCIP(冷間等方圧加圧法)を施す。圧力150MPa未満であると、十分なCIPの効果を得ることができず、一方、400MPa以上の圧力を加えても、成形体の密度はある一定の値以上は向上しにくくなるため、400MPa以上の面圧は生産上特に必要とされない。
【0024】
次に、焼結を行う。焼結温度は1500〜1600℃で、保持時間は4〜20時間、昇温速度は1〜5℃/分、降温は炉冷で行う。焼結温度が1500℃より低いと、焼結体の密度が充分大きくならず、1600℃を超えると炉ヒーター寿命が低下してしまう。保持時間が4時間より短いと、原料粉間の反応が充分進まず、焼結体の密度が充分大きくならない。焼結時間が20時間を超えても反応は充分起きているので、不必要なエネルギーと時間を要する無駄が生じて生産上好ましくない。また、昇温速度が1℃/分より遅いと、所定温度になるまでに不必要な時間を要してしまい、昇温速度が5℃/分より速いと、炉内の温度分布が均一に上昇せず、むらが生じてしまう。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0026】
(実施例1)
原料である酸化インジウム粉末、酸化スズ粉末及び酸化マグネシウム粉末を、原子数比でIn:Sn:Mg=90.5:9.0:0.5%となるように秤量し、まず、酸化スズ粉末と酸化マグネシウム粉末を混合した。次に、純水を加えて固形分30〜50%のスラリーとし、アンモニアを適量加えてpH調整した後、ミキサーで混合し、ビーズミルによって微粉砕を実施した。混合・微粉砕後のスラリー中の原料粉の平均粒径(D50)は0.6μm以下とした。また別途、同様の方法により、所定量秤量した酸化インジウムに純水を加えてスラリーとし、混合・微粉砕を実施した。次に、酸化スズ及び酸化マグネシウムを混合したスラリーと、酸化インジウムのスラリーとをミキサーで混合し、ビーズミルにより微粉砕を行い、原料粉が均一に混合されたスラリーとした。次に、PVA(ポリビニルアルコール)をスラリー1kgあたり125ccの割合で混合して、造粒機入口温度220℃、出口温度120℃、ディスク回転数9000rpmの条件で造粒した。
【0027】
次に、所定のサイズの型に造粒粉を充填し、面圧力150〜400MPa、1〜3分間、プレスして成形体を得た。成形体をビニールで2重に真空パックし、150〜400MPaでCIP成型した後、成形体を昇温速度3℃/分で1560℃まで昇温させ、1560℃で15時間焼結後、炉内で放冷した。上記条件で得られた焼結体の密度をアルキメデス法で測定した結果、密度は7.11g/cmであった。また、得られた焼結体から約1.5cm角程度の大きさの焼結体切り出し、切断面を研磨して鏡面とし、焼結体の組織を電子顕微鏡で観察した。倍率1000倍で観察した面積80×120μmの範囲に存在する円相当径が0.1μm以上のポアの数は19個であった。
【0028】
次に、上記焼結体から角棒状の試験片を切り出し、試験片の長手方向に#80の砥石で表面を研磨後、同じく長手方向に#400の砥石で研磨し、最終的に幅4mm、厚さ3mm、長さ5mmの試験片を10本作製した。上記試験片の表面粗さを株式会社ミツトヨ製表面粗さ測定器SJ−301で測定した結果、表面粗さRaは0.46μmであった。また、上記試験片について、試験片の表面粗さRa以外はJIS R1601:2008の測定方法に則り3点曲げ試験による抗折強度試験行った。その結果、試験片10本の抗折強度の平均値は、148MPaであった。
【0029】
(実施例2)
焼結温度を1540℃とした以外は、実施例1と同じ条件で焼結体を作製した。焼結体のアルキメデス密度は、7.11g/cmであった。また焼結体の組織観察を行い、倍率1000倍で観察した面積80×120μmの範囲に存在する円相当径0.1μm以上のポアの数は28個であった。また、抗折強度試験片の表面粗さRaは0.47μmであり、平均抗折強度は141MPaであった。
【0030】
(比較例1)
焼結温度を1480℃とした以外は、実施例1と同じ条件で焼結体を作製した。焼結体のアルキメデス密度は、7.09g/cmであった。また、焼結体の組織観察を行い、倍率1000倍で観察した面積80×120μmの範囲に存在する円相当径0.1μm以上ポアの数は42個であった。また、抗折強度試験片の表面粗さRaは0.45μmであり、平均抗折強度は128MPaであった。
【0031】
(比較例2)
参考例として、酸化マグネシウムを添加しない例を示す。原料である酸化インジウム粉末、酸化スズ粉末を、原子数比でIn:Sn=91.0:9.0とし、通常の方法を用いて造粒粉を作製し、実施例1と同様の条件で焼結体を作製した。焼結体のアルキメデス密度は7.13g/cmであった。また焼結体の組織観察を行い、倍率1000倍で観察した面積80×120μmの範囲に存在する円相当径0.1μm以上ポアの数は5個であった。また、抗折強度試験片の表面粗さRaは0.46μmであり、平均抗折強度は153MPaであった。
ちなみに、本発明は、膜の非晶質化に有効な酸化マグネシウムを添加すると、焼結体の密度が下がり、強度が低下することを改善するものであり、酸化マグネシウムを含まないITO焼結体に比べて、密度や強度が向上するという趣旨のものではない。
【0032】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の酸化物焼結体は、非晶質安定性や耐久性に優れたMg含有ITO膜を形成することができると共に、抗折強度の高いスパッタリングターゲットを提供することができるので、成膜時にターゲットの割れやパーティクルの発生を低減することができる。本発明のスパッタリングターゲット用酸化物焼結体を用いて形成した薄膜は、特にフラットパネルディスプレイやフレキシブルパネルディスプレイにおける透明導電膜として有用である。
【図1】
【国際調査報告】