(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017159296
(43)【国際公開日】20170921
【発行日】20180419
(54)【発明の名称】省力化薬剤散布方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20180323BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20180323BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20180323BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20180323BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180323BHJP
   A01P 9/00 20060101ALI20180323BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20180323BHJP
【FI】
   !A01N25/00 102
   !A01N25/04 102
   !A01P13/00
   !A01P3/00
   !A01P7/04
   !A01P9/00
   !A01N25/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
【出願番号】2017551345
(21)【国際出願番号】JP2017007119
(22)【国際出願日】20170224
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】310004493
【氏名又は名称】清水 愼一
【住所又は居所】茨城県つくば市竹園1−5−3−1417
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 愼一
【住所又は居所】茨城県つくば市竹園1−5−3−1417
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AB02
4H011AC01
4H011AE01
4H011BA01
4H011BB00
4H011BC01
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC16
4H011DA15
4H011DD02
(57)【要約】
【課題】水環境の水面に滴下することで、水面全面に短時間で自己拡散させる薬剤の散布方法であって、ジャンボ剤及び水面展開剤の使用よりもさらに水環境への薬剤散布作業の省力化、均一拡散化を図ることができる省力化薬剤散布方法を提供する。
【解決手段】薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物である自己水面拡散型省力化薬剤を
先ず、水環境の水面に注ぎ入れ、水面で水平方向に拡散分布させ、続いて、前記自己水面拡散型省力化薬剤を、前記水平方向に拡散分布するよりも遅れて前記水環境の底部に到達する前記水面から水中へ鉛直方向に緩やかに溶解させる、逐次的二段階拡散機構によって前記薬品成分を前記水環境に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、液状、粒又は粉状の薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物で、
かつ、前記流動性の混合物が20倍の重量の、0℃より高く40℃より低い温度範囲の水中に、振り混ぜられた後、3分以内に前記水との二相に分離し、一様に、溶解、懸濁又は乳化しない薬剤であって、
前記薬剤の水環境における一箇所の投入地点から重力及び前記拡散作用成分の水面への表面吸着作用によって前記薬品成分を水面で均一分布させる水平方向の拡散機構と、
前記薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構からなる逐次的二段階拡散機構を備えることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項2】
前記薬品成分が、水より密度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項3】
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、カルボキシル基、水酸基を分子内に有する化合物の内から選ばれる1種以上を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項4】
さらに、粘度調整剤として、直鎖炭化水素を含むことを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項5】
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、大豆油、ひまし油、亜麻仁油、2−エチルヘキサノール、オレイン酸、及びオレイン酸メチルの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項6】
前記粒又は粒子の薬品成分が、1mm以下の平均粒径を示す固体粒子で、前記拡散作用成分中に懸濁されていることを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項7】
前記拡散が、請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所での投入であって、水流が存在しない条件下において、250mを超える面積であることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項8】
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、乳化性界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項9】
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
【請求項10】
請求項1に記載の自己水面拡散型省力化薬剤を、水環境水面に注ぎ入れ、水面に均一拡散させ、かつ前記薬品成分を水環境中に均一に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
【請求項11】
前記水環境が、水田であること特徴とする請求項10に記載の省力化薬剤散布方法。
【請求項12】
薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物である自己水面拡散型省力化薬剤を、
先ず、水環境の水面に注ぎ入れ、水面で水平方向に拡散分布させ、続いて、前記自己水面拡散型省力化薬剤を、前記水平方向に拡散分布するよりも遅れて前記水環境の底部に到達する前記水面から水中へ鉛直方向に緩やかに溶解させる、逐次的二段階拡散機構によって前記薬品成分を前記水環境に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
【請求項13】
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積100mを超える範囲に拡散することを特徴とする請求項12に記載の省力化薬剤散布方法。
【請求項14】
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積250mを超える範囲に拡散することを特徴とする請求項12に記載の省力化薬剤散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流及び水の移動がなくても或いは少なくても、水環境の水面に注ぎ入れることで、広範囲の水面全面に短時間で自己拡散する薬剤であって、薬剤散布作業の省力化、均一拡散化を図ることができる、自己水面拡散型省力化薬剤に関する。また、薬剤の新しい輸送方法に関する。なお、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤の薬剤型をスプレッディング・サスペンション(SS:Spreading Suspension)と名付けた。
【背景技術】
【0002】
水田などの水環境に使用される薬剤は、形態、物性、薬剤輸送性、散布態様などから多種の型に分類されている(非特許文献1等)。例えば、固形の粒剤、粉末、農薬原体に乳化剤などを加えた液体の製剤であって水に乳濁させて用いる乳剤、ジャンボ剤、油剤を含む水面展開剤などが知られている。
【0003】
ジャンボ剤は、特許文献1、2、非特許文献2等に開示のように、例えば水田用除草剤の投げ込み剤で水溶性パック剤と水中発泡錠剤とがあり、手で畦畔より水田に投入するだけで有効成分が水田内に水面のみならず水中に懸濁させることで薬剤成分を拡散させるというもので、農薬散布作業の省力化が図られている。
【0004】
さらに改良された特許文献3のような水田用自己拡散型粒状農薬組成物およびその施用方法も知られている。特許文献3の発明は、湛水下水田に投入後水面に浮遊し、農薬活性成分を拡散し、投入地点の土壌表面には薬剤処理跡が残らず、薬効の偏りが無い水田用自己拡散型粒状農薬組成物であって、農薬活性成分、嵩比重が1未満の閉鎖型中空体、および界面活性剤より成る水田用自己拡散型粒状農薬組成物というものである。嵩比重が1未満の閉鎖型中空体を用意する必要があり、コスト高である。
【0005】
油剤は、水に不溶の液体製剤であって、そのまま又は有機溶媒に希釈して用いられる。薬害を起こす可能性が高いため直接作物に散布して使うことは少ない。
【0006】
水面展開剤は、水田の数か所に滴下処理することで、有効成分が溶剤とともに水田全体に広がる製剤である。製剤分類上は油剤又は乳剤であり、これらを活用することで、農薬散布作業の省力化が図られている。
【0007】
例えば、水面施用の葉鞘部処理剤として、特許文献4の稲紋枯病防除組成物が提案されている。当該発明は、農薬有効成分及び水面浮遊性能を付与する基剤からなり、該農薬有効成分が基剤に溶解又は懸濁されていることを特徴とする稲紋枯病防除組成物、または水面浮遊性能を付与する基剤が、水難溶性又は不溶性高沸点溶剤及び常温で液体の0.1%以上の水溶解度を有する極性溶剤から選択される1種又は2種以上の溶剤及び界面活性剤、又は常温で固体のパラフィン類又は該パラフィン類と界面活性剤との混合物であり、該防除組成物は液剤組成物、粒剤組成物又は錠剤組成物であって、本組成物を水田に施用すると、農薬活性成分が基剤と共に水面に浮上・拡展して稲の葉鞘部に効率良く付着することによって、稲紋枯病が効率的に防除されるというものである。
【0008】
また、特許文献5の水田投げ込み用製剤が公開されている。具体的には、水に難溶性あるいは非水溶性の殺虫活性成分を比重が1以下の非極性の高沸点溶剤に溶解した農業用水面施用油剤を水溶性の容器に内包することを特徴とする水田用投げ込み製剤(請求項1)である、当該水田用投げ込み製剤を、10a当り1〜20ケ、かつ投げ込み製剤の総重量が100〜2000gになるように、湛水した水田に投げ込み施用し、水中で水溶性の容器が溶解し内容物の油剤を田面上に拡展せしめることを特徴とする水稲害虫の殺虫方法というものである。
【0009】
しかしながら、特許文献4は、農薬有効成分の水中、土壌への拡散の溶出の課題(0005)を解決すべく、農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、稲紋枯病の生態に合わせて水面と接する葉鞘部に効率良く付着させるため(0006)、水面のみに展開させる薬剤に関するものである。また特許文献5は、乳化作用のある界面活性剤が添加され、薬品成分は、水中に三次元的拡散することになるので、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤に比較して、薬剤輸送距離が低下するので、高濃度、多量で多処理地点の施用を要し、経済的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−65010号公報
【特許文献2】特開2002−3301号公報
【特許文献3】特開2001−163705号公報
【特許文献4】特開平06−336402号公報
【特許文献5】特開平05−339103号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】http://www.nichino.co.jp/products/basic/basic06.html「農薬の剤型による分類」
【非特許文献2】http://www.japr.or.jp/gijyutu/005.html「ジャンボ剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
また、ジャンボ剤であっても、比較的大きな浮遊性粒子(0.5−10mm)を水面で拡散させなければならないことや、水中での懸濁を利用する水中での三次元拡散の機構のため、薬品成分の到達距離に限界があり、100m程度の範囲で一箇所に投入するもので、まして250mを超える大面積への拡散は不可能で、水田であれば畦を歩き回り、投入する必要があり、農薬散布作業の省力化は図られているが、高齢になると畦を歩き回ることも決して容易ではない。また、ジャンボ剤は、浮遊性粒子(0.5−10mm)に薬品成分を付着させものを水溶性フィルムの袋に充填したもので、薬品成分が水面に放出されると風の影響を受けやすく、吹き寄せによって薬品成分が不均一分布になることがあり、不効問題や薬害問題を起こす。
【0013】
他方、水面展開剤でも、100m程度の範囲に一箇所投入するもので、まして250mを超える大面積へ拡散は不可能で、水田であれば畦を歩き回り、投入する必要がある。また、基材である油に溶解する薬品成分以外に適用した実用例はない。
【0014】
また、図1(A)に示すように、「水中」に乳化または懸濁する性質をもつ従来の水面展開剤2(または油剤型水面展開剤)は十分に広い範囲に拡散するものではない。すなわち水面展開剤2は、滴下と同時に水中に三次元的な拡散し、薬品成分の拡散速度は、展開距離の二乗に反比例して低下する。一般に水田用の液体の水面展開剤(固体成分含む水面展開・拡散は知られていない)には、水中への三次元的な均一な分布を期待し、乳化性・懸濁性が付与されており、乳化性・懸濁性を付与するため、乳化剤が添加されている。さらに水田への直接散布型のフロアブル剤は固体成分を水に懸濁させる製剤であるので、当然、水への懸濁性がある(http://www.greenjapan.co.jp/noyak_zaikei.htm)。
【0015】
従来から、多くの農薬等の薬剤組成物は、水で希釈するとか、水が含まれているとか、田面水に均一に溶解・乳化・懸濁させて使用されており、このような手段こそが、均一な薬剤輸送が達成されると考えられていた。そのため、特に液状の薬剤組成物においては、まったく水が関与せずそのままの散布または有機溶剤で希釈する油剤以外の薬剤で、水溶性・乳化性・懸濁性を付与していない製剤(乳化や懸濁に十分な性質及び量の界面活性剤を含まない製剤)は、これまでに存在していない。特に、水田用、養殖池、その他水面に投入する薬剤の範囲において、これまで、水溶性・乳化性・懸濁性を有さない薬剤はなかった。
【0016】
そこで、本発明は、水流及び水の移動がなくても或いは少なくても、図1(B)に示すように、水環境の水面3に滴下、注ぎ入れることで、水面全面に短時間で自己拡散する薬剤であって、ジャンボ剤及び水面展開剤よりもさらに水環境への薬剤散布作業の省力化、均一拡散化を図ることができる、従来の薬剤型に分類されない新しい薬剤型のスプレッディング・サスペンション剤として、自己水面拡散型省力化薬剤1を提供することを目的とする。このスプレッディング・サスペンション剤は、従来水面展開剤に利用できなかった固体で難溶性および不溶性の薬品成分を固体のまま使用できる実用的な薬剤型でもある。また、水面を介在する環境での薬剤処理について、逐次的二段階拡散機構を利用する省力化方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、水中に一様に、溶解性・乳化性・懸濁性を有さない薬剤を水面で拡散させることで、従来の薬剤輸送技術では限界と考えられていた一箇所への薬剤投入処理で、100mから250mを超える面積の水田等への、薬品成分の自動的な輸送を達成した。これにより、水環境への薬剤散布作業の省力化を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
すなわち、従来の薬品の一段階の水中への三次元拡散に代えて、
本発明である自己水面拡散型省力化薬剤では、
(1)自己水面拡散型省力化薬剤の重力の利用や水面への表面吸着の利用で、短時間で薬剤投入処理地点からの距離に依存しにくい薬品成分の均一分布を達成する、一段階目の水平方向の拡散機構と、
(2)水平方向の拡散より遅れて、水面から水環境底部に到達する、薬品成分の水面から水中への緩やかな溶解で拡散する、二段階目の鉛直方向の拡散機構と、
からなる、逐次的二段階拡散機構の組み合わせにより、薬剤の効率的な長距離均一輸送を達成した。
【0019】
ここで、自己水面拡散型省力化薬剤の重力の利用や水面への表面吸着を利用した、水環境での薬剤の(一段階目の)水平方向の拡散について以下説明する。
【0020】
1)まず、重力は利用するが水面への表面吸着を利用しない薬剤の水環境での展開について説明する。水面での展開・拡散に適切な極性度を有する極性基(以下、単に「適切な極性基」という)を備えない、水浮遊性の非水溶性液状組成物(以下、単に、「液状組成物」という。)が水面に投入された場合についての水面上での展開について説明する。投入直後、液状組成物の塊は、重力に起因する自重による液状組成物の塊の圧縮される方向の作用力により水面上に広がり始める。このとき、その液状組成物の展開力は、その液状組成物の塊としてまとまる方向の作用力である粘度や表面張力に対抗している。そして、その液状組成物の層の厚みは薄くなる。その後、水面に展開した液状組成物の厚みが、さらに薄くなると、液状組成物の粘度に対抗する重力に起因した自重の圧縮・展開力の作用が小さくなり、展開速度が低下する。
【0021】
さらに液状組成物の水面上の展開膜の厚みが薄くなると、適切な極性基を備えないため、液状組成物の水面への吸着力が十分でなく、重力による液状組成物の水面展開が、液状組成物の表面張力に対抗できなくなり、水面上の液状組成物の展開は停止する。この状態が、非水溶性液状組成物の塊が水面に浮いている状態である。
【0022】
2)次に、重力と共に水面への表面吸着を利用する本願発明の水環境での拡散について説明する。本願発明である自己水面拡散型省力化薬剤は、水浮遊性で、水面での拡散・拡散に適切な極性基を備える拡散作用成分が配合されている。その自己水面拡散型省力化薬剤が水面に投入された場合についての水面上での拡散について説明する。投入直後、自己水面拡散型省力化薬剤の塊は、自重による液状組成物の塊の圧縮される方向の作用力により水面上に広がり始める。このとき、その自己水面拡散型省力化薬剤の拡散力は、その液状組成物の塊としてまとまる方向の作用力である粘度や表面張力に対抗している。そして、その自己水面拡散型省力化薬剤の層の厚みは薄くなる。その後、水面に拡散した自己水面拡散型省力化薬剤の厚みが、さらに薄くなると、自己水面拡散型省力化薬剤の粘度に対抗する重力に起因した自重の圧縮・展開力の作用が小さくなり、拡散速度が低下する。
【0023】
しかし、適切な極性基を備える拡散作用成分を配合されている自己水面拡散型省力化薬剤では、自己水面拡散型省力化薬剤が水面上に吸着され、熱力学に安定化された薄膜状の拡散膜になる。このことにより、さらに自己水面拡散型省力化薬剤の水面上の拡散膜の厚みが薄くなっても、自己水面拡散型省力化薬剤の表面張力に対抗し続け、より広い範囲に水面上を拡散し続ける。
【0024】
3)最後に、重力をあまり利用せず、強い水への吸着のため、薬品成分が、水中にマイクロエマルジョンによって可溶化、乳化、懸濁し、水面のみならず水中においても、水と溶け合わない相の界面を作り出すことで、本発明が目的としない三次元拡散を起こす例を説明する。むろん、極性が強すぎる物質を含む組成物は、溶解性、乳化性、懸濁性を有し、水中への三次元拡散を起こす。そのため、その組成物は、本発明のように、水面境界で薬品成分と拡散作用成分が二層に分離することによる、二層の上層に位置する物質の重量に起因する重力効果や、水面のみへの表面吸着作用を十分に利用できず、水面上での十分に広い範囲への拡散性は低い。
【0025】
さらに、極性が強すぎる物質を含む組成物に、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分を含んでいる場合では、固体薬品成分が水中において懸濁状態となった後、すぐにその場所で水中を沈降し始める。このため、本発明が目的とする、広い範囲への効率的な薬剤輸送は達成できない。他方、拡散作用成分の極性度が適切である場合には、例え、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分であっても、水中への密度による沈降に抵抗して、拡散作用成分が、薬品成分を水面境界上に支持して本発明の逐次的二段階拡散機構によって広範囲に薬品成分を拡散させる。このように、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤は、水流が無い水環境においても、長距離の薬品成分の自動的な輸送を達成できるが、水流のある状態での応用を妨げるものではない。
【0026】
このような意味で、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤は、水面上層にとどまることによる自重の重力効果と、水面への表面吸着による、一段階目の水平拡散と、それに続く二段階目の鉛直方向の水中への拡散を組み合わせた逐次的二段階拡散機構を利用している。
【0027】
上記の課題を解決するために、より具体的には、本発明は、
(1)
少なくとも、液状、粒又は粉状の薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物で、
かつ、前記流動性の混合物が20倍の重量の、0℃より高く40℃より低い温度範囲の水中に、振り混ぜられた後、3分以内に前記水との二相に分離し、一様に、溶解、懸濁又は乳化しない薬剤であって、
前記薬剤の水環境における一箇所の投入地点から重力及び前記拡散作用成分の水面への表面吸着作用によって前記薬品成分を水面で均一分布させる水平方向の拡散機構と、
前記薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構からなる逐次的二段階拡散機構を備えることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
(2)
前記薬品成分が、水より密度が大きいことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(3)
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、カルボキシル基、水酸基を分子内に有する化合物の内から選ばれる1種以上を含んでなることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(4)
さらに、粘度調整剤として、直鎖炭化水素を含むことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(5)
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、大豆油、ひまし油、亜麻仁油、2−エチルヘキサノール、オレイン酸、及びオレイン酸メチルの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(6)
前記粒又は粒子の薬品成分が、1mm以下の平均粒径を示す固体粒子で、前記拡散作用成分中に懸濁されていることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(7)
前記拡散が、(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所での投入であって、水流が存在しない条件下において、250mを超える面積であることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
(8)
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、乳化性界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(9)
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(10)
(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤を、水環境水面に注ぎ入れ、水面に均一拡散させ、かつ前記薬品成分を水環境中に均一に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
(11)
前記水環境が、水田であること特徴とする(10)に記載の省力化薬剤散布方法。
(12)
薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物である自己水面拡散型省力化薬剤を、
先ず、水環境の水面に注ぎ入れ、水面で水平方向に拡散分布させ、続いて、前記自己水面拡散型省力化薬剤を、前記水平方向に拡散分布するよりも遅れて前記水環境の底部に到達する前記水面から水中へ鉛直方向に緩やかに溶解させる、逐次的二段階拡散機構によって前記薬品成分を前記水環境に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
(13)
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積100mを超える範囲に拡散することを特徴とする(12)に記載の省力化薬剤散布方法。
(14)
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積250mを超える範囲に拡散することを特徴とする(12)に記載の省力化薬剤散布方法。
の構成とした。
【0028】
ここで、「水環境」としては、水田、蓮田、ワサビ田、魚等の養殖池、施設、またはボウフラやその他の害虫の駆除の必要がある一般の池などが例示できる。さらに、水耕栽培や植物工場での、手動または自動的な薬剤処理に好適に適応できる。
【0029】
「薬剤」とは、水中植物、生物、水環境へ作用する、肥料、或いは殺虫、殺菌、各種予防のための農薬等の薬品成分と、薬品成分を水面に拡散させる拡散作用成分とからなる。
【0030】
薬品成分は、本発明の逐次的二段階拡散を妨げないものであれば使用できるが、単体では、水に即溶性でなく、少量溶解する或いは時間経過により少量溶解する水に難溶性(20℃の水に、10g/L未満の溶解)で、溶解することで目的作用を発揮する機能性成分であり、水より密度が大きい固形の微粉砕物で、通常は水に沈下する性質のものであってもよい。
【0031】
勿論、水より密度が小さい成分も対象にすることができる。例えば、単体で水面に散布した場合、ママコ状に凝集し、難懸濁性、難溶解性を示す性質の薬品成分の場合には、特に、本発明の拡散機能が有効に作用し、確実に拡散、溶解、目的の作用を示すことができる。薬品成分の凝集、集中、或いは非拡散に伴う、濃度ムラによる薬害を防止することができる。
【0032】
薬品成分としては、例えば、「殺菌剤」として、シメコナゾール、メタラキシル、フルトラニル、イソチアニル、プロベナゾール、ピロキロン、トリシクラゾール、バリダマイシンなどが例示でき、「殺虫剤」として、エチプロール、シラフルオフェン、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ジノテフラン、クロチアニジン、ニテンピラム、メタアルデヒド、カルタップ、BPMC、MEP、イミダクロプリド、チアメトキサム、スピノサド、ピメトロジン、クロラントラニリプロールなどが例示でき、「除草剤」として、ピラゾキシフェン、ピラゾレ−ト、ベンゾフェナップ、テフリルトリオン、ベンゾビシクロン、メソトリオン、カフェンストロール、ブタクロール、プレチラクロール、メフェナセット、ジメタメトリン、ダイムロン、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、ピラゾスルフロンエチル、ベンスルフロンメチル、メタゾスルフロン、MCPB、MCP、2.4−PA、ピリフタリド、オキサジクロメホン、シハロホップブチル、ピリミスルファンなどが例示できる。農薬登録のある薬剤に限らず種々の用途に活性が認められている多くの物質や肥料なども、薬品成分として適応できる。
【0033】
また、農薬分野に関しては、次のURLに記載されているものがある。
1)平成27年 山口県農作物病害虫・雑草防除指導基準
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/002%20mokuji.htm
2)V−1−(4)2 稲・箱施用・培土処理
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/302作物1−3 箱施用・培土処理.pdf
3)V−1−(4)3 稲・本田用殺菌剤
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/303作物1−7 本田用剤.pdf
4)V−7−(5)水稲除草剤の有効成分と作用特性一覧
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/175%EF%BC%98%EF%BC%88%EF%BC%95%EF%BC%89%E6%B0%B4%E7%94%B0%E9%99%A4%E8%8D%89%E5%89%A4%E3%81%AE%E6%9C%89%E5%8A%B9%E6%88%90%E5%88%86%E3%81%A8%E4%BD%9C%E7%94%A8%E7%89%B9%E6%80%A7%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf
5)雑草防除ガイド掲載農薬一覧(水稲除草剤)
http://www.agri.hro.or.jp/boujosho//boujo-guide/h26boujo-guide/h26boujoguide-pdf/42002_ine-syoki_h26.pdf
6)農薬登録情報ダウンロード - 農林水産消費安全技術センター
http://www.acis.famic.go.jp/ddata/index.htm
【0034】
拡散作用成分は、界面活性機能を有する物質であるが、油溶性成分の水中への乳化作用を有するものでなく、水面拡散作用を有する物質である。例えば、HLB1〜4の範囲の界面活性剤、分散剤などが例示できる。さらに、大豆油に代表される油脂類は、油溶性であるが、親水性基の含有量、性質、作用により、水面に浮き、水面を自己拡散(二次元)する。
特許文献4において、界面活性剤として「サーフィノール」が例示されている。そして全ての実施例で「サーフィノール」が多量に使用されている。
ここで、サーフィノールは、特表2011−512418号公報の段落0014に「サーフィノール104PG−50(商標)が、薬物の水性相への導入前に内部油相に添加された。得られた生成物は、約230nmの非常に小さい粒径を特徴とし、この実験結果は、再現可能である。このサイズ分布は、凝集を阻止するためのサーフィノール104PG−50(商標)の能力におそらく起因して均一に非常に狭い(多分散性指数(PDI)〜0.1)。」とあるように、薬品(油相)の水相への導入で微小の粒径になっていることから明らかであり、サーフィノールは油脂を水中油型に乳化する乳化性界面活性剤である。
本願発明では、薬品成分を逐次的二段階拡散機構で拡散させることから(拡散作用成分として多量の乳化性界面活性剤(薬剤100重量部に対して1〜20重量部)を含む場合、発明の目的を実現できない場合がある。
すなわち、特許文献4のサーフィノールのような乳化性界面活性剤が添加された場合、界面活性剤の添加量(段落0009の「(サーフィノール 104、エア−プロダクツ社製)界面活性剤は稲紋枯病防除組成物100重量部に対して1〜20重量部の範囲から適宜選択して使用することができる。」)では本願発明のような薬品成分の広範囲の拡散(逐次的二段階拡散機構)は実現できない、以上からも、本願発明は、特許文献4と同一ではないことを付言する。
特許文献4は、水面拡散によって、薬剤をイネの茎部に付着させる技術で、本願発明と特許文献4とでは、発明の目的、効果においてまったく異なる。より具体的には、特許文献4には、明細書段落0006に「従来の防除方法の考え方から発想を転換し、農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、稲紋枯病の生態に合わせて水面と接する葉鞘部に効率良く付着させて稲体内に吸収させ、」とあるように、水面での展開のみを考慮し、水中、土壌へ拡散を意図せず、却って水中への拡散を忌避、回避している。
他方、本願発明は、「薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構」を備えるものである。
すなわち、特許文献4の技術は「農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、」と記載されてあるように、水中、土壌への拡散を意図せず、却って回避しており、本願発明は「水環境底部に到達する」としている点、特許文献4と本願発明1とは、根本的に技術思想が異なることが明らかで、特許文献4は、本願発明をなすための動機はなく、却って、本願発明の創作に阻害的な先行技術である。
特許文献4が「局所施用」及び「葉鞘部」への付着のための「界面活性剤」を多量に含むことで「薬品成分の水面での濃度低下」により、広範な水面での展開が意図も、実現もしていないことは明らかで、さらに水中へ薬剤の拡散を意図していないことからも、特許文献4に接した当業者は、特許文献4から本願発明の水中、土壌への拡散、広範囲展開、さらには「薬品散布の省力化」を想到することは到底できるものでないことを付言する。
【0035】
以上の相違により、本願発明は、水中乳化・懸濁系による水中への拡散(三次元)よりも、少量で広範囲に効果的に均一に拡散(散布)することができる。水中乳化・懸濁系による拡散(三次元)では、水体積範囲への拡散になり、多量に散布成分を要するとともに、三次元拡散のため薬剤投入地点からの距離が遠くなると、拡散させた薬剤濃度が急激に低下する(原理的には当該薬剤濃度は投入地点距離の二乗に反比例する)。一方、水面での拡散では二層に分離することによる重力並びに拡散作用成分や薬品成分の水面への吸着が作用するために、水面上での薬剤濃度は速やかに、投入地点からの距離によらず均一になる。
【0036】
また水面は、速やかに本発明の自己水面拡散型省力化薬剤により完全に覆われ、その水面の拡散膜の水面展開圧により薬剤構成分子が水面上で押し合う構造をとることで安定化される。そのため風などによる吹き寄せに関わる不均一な薬剤分布を抑え、均一な薬剤分布状況を実現することができる。
【0037】
例えば、脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物である「動植物由来の油脂類」は、薬剤を広範囲の水面上に拡散させる拡散作用成分として、適切な親水性・疎水性バランスを持ち、拡散作用成分に溶解しない固体薬品成分を、粉砕・分散処理を行った場合、安定な懸濁液を調製できると同時に、その懸濁液が水に、乳化・懸濁しない性質を両立することができる。大豆油に代表される液状油脂類は、単独でこのような性質を両立できる好適な材料である。
【0038】
ここで、「脂肪酸」とは、「長鎖炭化水素の1価のカルボン酸である。一般的に、炭素数2−4個のものを短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)、5−12個のものを中鎖脂肪酸、12個以上の炭素数のものを長鎖脂肪酸(高級脂肪酸)と呼ぶ。炭素数の区切りは諸説がある。脂肪酸は、一般式CnHmCOOHで表せる。脂肪酸はグリセリンとエステル化して油脂を構成する。」
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8)
3分子の脂肪酸が1分子のグリセリンとエステル化して油脂を構成することが一般的であるが、グリセリンの水酸基がエステル化せず残存するものもある。
【0039】
拡散作用成分としては、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、カルボキシル基、アルコール性の水酸基など弱い極性を有する部分が分子内にある油脂類、合成樹脂添加用の可塑剤類や、その他の化学物質、を使用することができる。
【0040】
また、薬品成分が拡散作用成分を含む液状成分に不溶な場合、薬品成分を微粒子として製剤中に懸濁させる必要があり、かつ本発明が意図するように、水には懸濁しない製剤とするために、極性の強さが適切な物質が拡散作用成分として必要である。このような拡散作用成分として、大豆油、菜種油、綿実油、コーンオイル、亜麻仁油、ごま油、グレープシードオイル、オリーブ油、キャノーラ油、米油、桐油、ひまし油、ヤシ油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、またはこれらのエポキシ化など化学修飾を加えた物質、または、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などや、これらのメチルエステル、グリセリンエステルなどが好適に利用できる。また、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、リン酸トリクレシルなどの可塑剤類も拡散作用成分として使用することができる。また、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ヘキサノールなどのアルコール類も拡散作用成分として使用できる。またこれらに関わらず、水に混和せず水面上を広がる液状の物質であれば拡散作用成分として使用することができる。
【0041】
さらに、特開平6−336402(特許文献4)に記載されているように、水溶性の極性溶剤を少量添加することで、薬品成分の水面上での拡散性を向上させることができる場合がある。しかし、自己水面拡散型省力化薬剤自体の、重要な特性である、水への不溶性、非乳化性及び非懸濁性を損なうほど、過剰に添加すると、自己水面拡散性が低下し薬品成分の長距離輸送性が損なわれる。薬品成分並びに拡散作用成分の組み合わせに合わせて、前記極性溶剤の適正添加量は決められる。
【0042】
「流動性の混合物が、水中に一様に、溶解、懸濁又は乳化しない」条件は、拡散作用成分又は自己水面拡散型省力化薬剤0.25mLを水5mLに加え、5Hzで5分間振盪し、その後3分静置して、水と流動性の混合物が二相に分離することである。
【0043】
薬品成分及び拡散作用成分の他に、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤に、ドデカンなどの直鎖炭化水素を含めるとよい。直鎖炭化水素は、拡散作用成分ではなく、粘度調整剤として作用する。速やかに薬品成分を水面で拡散させるために、自己水面拡散型省力化薬剤、特に拡散作用成分の粘度を低く調整するとよい。ドデカンなどの直鎖炭化水素は、油脂類等の長鎖脂肪酸部分との親和性が高いので、拡散作用成分に適宜添加することで、水面拡散性、薬品成分の製剤中での懸濁安定性、および水への非溶解性や非懸濁性を損なうことなしに、自己水面拡散型省力化薬剤の粘度を低下させ、自己水面拡散型省力化薬剤の水面拡散速度を高める作用がある。
【0044】
粘度調整剤としては、飽和炭化水素の場合、炭素数が8以下の炭化水素は揮発性の高く引火性の高い。また、炭素数が16以上のものは徐々に粘度が高くなり粘度の調整という目的に適さない。飽和炭化水素の場合、炭素数が9から15までの炭化水素が好適である。また不飽和の炭化水素であっても、側鎖を有する炭化水素でも添加できる。この中で、入手のしやすさや、粘度の調整効果、調製した薬剤の機械的または化学的安定性の観点から、炭素数12の直鎖炭化水素のドデカンが好適である。
【0045】
また、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分の場合でも、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤では、当該薬品成分を安定的な懸濁液としているので、薬剤を水面上に投入した際、当該薬品成分が拡散作用成分によって水面上に支持され水中に沈降することなく、自己水面拡散型省力化薬剤が一体となって水面上を広がり、自動的に当該薬品成分を水面全体へ均一に分布させることができる。
本発明のスプレッディング・サスペンション剤は、さらに固体の物質と組み合わせて、外観上、粉末状、粒状、または錠剤状等の固体に加工されるものであって当該逐次的二段階拡散を実現する組成物を調製することもできが、本発明はこれらの追加の加工を妨げるものではない。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、上記構成であるので以下の効果を発揮する。農薬や肥料等の組成物の特性を、これまで例がない上記条件に設定することによって、広い水田であっても、畦から一箇所に投入することで、250mを超える大面積の水田全体への均一な薬品成分の輸送を可能にする。例えば、本発明であれば、図4で示すように、100gで、1000m以上の水面に拡散する。本発明は、一箇所の薬剤投入によって、広範囲への薬剤輸送による省力化を目的として、その効果を高める創意工夫を重ねたものであるが、水環境のある一区画の連続する水面上での薬剤処理、薬剤投入または薬剤散布を、一箇所に限定するものではない。
【0047】
さらに、従来水面展開剤に利用できなかった固体の薬品成分を固体のまま活用できる実用的な薬剤型を提案し、また、水面を介在する環境での、薬剤使用方法について経済的かつ薬剤散布作業の省力化を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(A)従来の水面展開剤と本発明(B)の展開・拡散状態の比較概念図である。
【図2】本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例に用いた薬品成分の種類と物性である。
【図3】本発明及び比較例の組成の一例である。
【図4】本発明及び比較例の拡散試験(水面)の結果である。
【図5】自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(濃度)の結果である。
【図6】管理水田での除草試験結果である。
【図7】本発明の自己水面拡散型省力化薬剤を実際の水田で実施したときの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
図1は、(A)従来の水面展開剤2と、(B)本発明の拡散状態の比較概念図である。本発明である自己水面拡散型省力化薬剤1は、水面に滴下、注ぎ入れると、水中に懸濁、乳化することなく、均一に、水面で広範囲に拡散する(両矢印)。
【0051】
図2は、本発明及び比較例に用いた薬品成分の種類と物性である。これらの原体を薬品成分として適宜調合し、拡散作用成分、他の添加物を混合して、図3に示す試験例、比較例の各機能性を示す農薬製剤を調製した。
【0052】
図3は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例の組成の一例であり、試験例A−Gが本願発明の実施例であり、拡散作用成分により薬品成分を水面で拡散させる機能を付与した。他方、比較例Aのみ、界面活性剤を添加し、水中に懸濁、乳化する機能を付与した。
【0053】
シリコンオイルは油溶性であるが、自己水面拡散型省力化薬剤に添加すると、一部の薬剤、例えば、ここでは、A6粒子の水面上での拡散性が向上する。
【0054】
他方、1,2−propanediol(プロピレングリコール)は、水にも油にも溶ける化合物で、自己水面拡散型省力化薬剤に添加すると、自己水面拡散型省力化薬剤中に懸濁させたメタアルデヒドの粒子の水面上での拡散性が向上する。
【0055】
図4は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例の拡散試験(水面)の結果である。
【0056】
・製剤の調製
図3に示した試験例及び比較例の処方で総量が約150gになるように、約450mLの容量を持つビーズミル粉砕容器に薬剤成分及び拡散作用成分を含む薬剤組成物を秤取り、さらに約150gの直径1mmのガラスビーズを加え、撹拌羽をセットする。これをビーズミル本体に装着し、約1000rpmで15分から状態により120分ぐらいまで薬剤組成物を撹拌・粉砕した。この内容物を約0.5mmの目開きのステンレスふるいでガラスビーズを取り除くと、均一な懸濁液が調製された。
【0057】
使用するガラスビーズの直径が、1mm以外の場合には、その直径に対応した目開きのふるいでガラスビーズを取り除くことができる。分散させる粒子をより細かく粉砕するためには、直径の小さなガラスビーズを使用し、一般に0.2mmから4mmぐらいのガラスまたはその他の材料のビーズの使用が好ましい。
【0058】
ただし、試験例BとCは薬品成分(原体)が拡散作用成分に均一に混和溶解するので、当該粉砕工程は必要なく、容器中で混合するだけで調製できる。
【0059】
・比較例B(市販品:図示せず)
除草剤の薬品成分A1とA4が含まれている市販フロアブル製剤(水に除草剤の薬品成分が懸濁されている製剤)を入手し、比較例Bの原料として用いた。このA1とA4の含有比率を参考に、試験例Dと比較例Aを調製した。この製剤を水で希釈することで、A1とA4の濃度を試験例Dと比較例Aに一致させたものを比較例Bとした。この製剤は水に懸濁することは確認されているが、その詳細な処方は不明である。
【0060】
入手した比較例Bの原料の薬品成分含有重量%は、
A1:30.5%
A4:15.5%
他 :残り
であり、これを水で2.5倍希釈したものを試験例Bとした。
【0061】
したがって、比較例Bの薬品成分含有重量%は、
A1:12.2%
A4: 6.2%
となる。
【0062】
・比較例C(市販:図示せず)
その薬品成分含有重量%は、
A1:3.0%
A2:9.0%
A3:1.8%
A4:1.0%
他 :残り
であり、製剤50gを個別に水溶性フィルムパック1袋に封入したものである。その使用法は、水田100mあたり1袋を水田に投入する。
【0063】
除草剤の薬品成分A1,A2,A3とA4が含まれている市販ジャンボ製剤を入手し、比較例Cとして用いた。このA1,A2,A3とA4の含有比率を参考に、試験例Aを調製したため、比較例Cは、除草剤の薬品成分A1,A2,A3とA4の濃度は、試験例Aの1/2である。水溶性パックに封入されている薬剤本体の浮遊性の粒を取り出し秤量して、試験に用いた。
【0064】
・水懸濁性の確認
調製した各薬剤の水懸濁性に関して、前記各薬剤に前期薬剤の20倍の重量の約20℃の水道水を加え約5Hzの振盪機で5分間振盪し、その後3分約25℃の室温下で静置して、水と試験薬剤が二相に分離することを確認した。比較例A−Cは、同様の振盪条件の後3分静置して、水に当該薬剤が乳化・懸濁により安定化することで、水と比較例A−Cの薬剤が二相に分離しないことを確認した。油剤型水面展開剤として販売されている三井化学アグロ製の「なげこみトレボン」(登録商標)も同条件で水懸濁性を測定したが、同条件では水と「なげこみトレボン」(登録商標)が二相に分離しないことを確認した。
【0065】
・水溶解性の確認
前記水懸濁性の確認試料を、さらに55分、約25℃の室温下で静置を続けたところ、試験例と比較例ともに変化なく、すべて水に一様に溶解することがないことを確認した。
【0066】
・拡散試験(拡散性の数値算出)
ステンレストレイ(55×40cm)の約70%まで水道水を満たし、この水面上の中央に試験例・比較例で調製した製剤を、ポリエチレンのスポイトで一滴落下させる。比較例A以外の場合、滴下した薬剤はすぐさま、ステンレストレイの水面全面に拡散した。その後滴下後1分の状態を観察した。その後、同一スポイトで、当該薬剤を空の50mLビーカーに滴下し、その重量を測定した。この重量を元に薬剤100gの最低拡散面積を算出した。比較例Aの場合は、水面上に十分に拡散しないので、滴下1分後のステンレストレイの約1%程度しか広がらなかった。一滴の重量を測定して水面拡散性を算出した。この試験例Dと比較例Aの結果を比較することによって、水に懸濁させるために界面活性剤を添加した薬剤は、その水面拡散性が低下することが明らかになった。
【0067】
図5は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(濃度)の結果である。水を張り代掻きを行った水田の中に1m×10mの長方形の形の試験区画を3区画用意した。
そして、比較例B(フロアブル(SC:Suspension Concentrate)剤)、試験例D(スプレッディング・サスペンション(SS:Spreading Suspension)剤)、比較例A(オイルフロアブル(OD:Oil Dispersion)剤)の薬剤を、それぞれの区画の一端に1g滴下した。
その後その滴下端より、2m、5m、及び8mの箇所の田面水及び土壌をサンプリングし、除草剤の薬品成分A4について濃度分析を行った。水田の水面の水は、薬剤処理後1日後に採水し、土壌は処理後3日後に採取した。
【0068】
水性懸濁液である比較例Bの薬剤の薬品成分輸送性は最も低く、比較例Aの薬剤の薬品成分輸送性は次で、試験例Dの薬品成分輸送性が最も良好であることが判明した。この結果により、水に溶解せず、乳化・懸濁しない本願発明である自己水面拡散型省力化薬剤が薬品成分輸送性に優れることが分かった。
【0069】
図6は、自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(除草活性)の管理水田での除草試験結果である。図6(A)が本願発明の試験例Aであり、図6(B)が比較例C(ジャンボ剤)の結果である。
【0070】
水を張り代掻きを行った水田の中に1m×10mの長方形の形の試験区画を2区画とコントロール用の無処理の区画を用意した。試験例Aと市販の除草ジャンボ剤(比較例C)を、それぞれの試験区画の一端に、それぞれ2.5g及び5gと、A1,A2,A3とA4濃度が同じになるように投入した。
【0071】
その後22日後に、各区画の雑草の発生状況を、薬剤投入端より、1mごとに10mまで、調査対象雑草(ヒエ、イヌホタルイ、コナギ、及び一年生広葉雑草)について雑草防除状況(防除価)を調査した。
【0072】
無処理区画と同程度の調査対象雑草の生育状況を0、調査対象雑草が完全に枯死している状態を100(満点)とし、調査日における各試験区の雑草防除状況を、研究者が目視で調査し、100点満点で評価した。実際の除草効果について評価しても、試験例A(A)の薬品成分輸送性は市販品のジャンボ剤である比較例C(B)のそれよりも優れていることが分かった。
【0073】
図7は、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤を実際の水田で実施したときの概要図である。1500mの水田に田植えを行い、図7のように小さな無処理用の区画を設定した。その14日後に、試験例Aの薬剤375gを、畦より1箇所(星印)に全量投入した。
【0074】
その後、28日後、及び52日後に、稲以外の雑草の除草効果を調査した。無処理区画と比較し、稲以外の雑草について、水田全面で完全な除草ができていることを確認できた。
【0075】
また、この結果により、試験例Aの自己水面拡散型省力化薬剤では、その水面拡散機能により、試験例Aに含まれる除草活性を持つ薬品成分が、処理後自動的に、水田全体に均一に輸送されたことを示した。
【0076】
一方、市販の比較例Bを用いた場合、水田の周囲、又は水田内を周回し15パックのジャンボ剤パックを投入しなければならない。このことを鑑みると、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤が、薬剤散布作業において極めて高い省力化性能を持つことを実証できた。
【符号の説明】
【0077】
1 自己水面拡散型省力化薬剤
2 水面展開剤
3 水面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】

【手続補正書】
【提出日】20171018
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物である自己水面拡散型省力化薬剤を、
先ず、水環境の水面に注ぎ入れ、水面で水平方向に拡散分布させ、続いて、前記自己水面拡散型省力化薬剤を、前記水平方向に拡散分布するよりも遅れて前記水環境の底部に到達する前記水面から水中へ鉛直方向に緩やかに溶解させる、逐次的二段階拡散機構によって前記薬品成分を前記水環境に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
【請求項2】
少なくとも、液状、粒又は粉状の薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物で、
かつ、前記流動性の混合物が20倍の重量の、0℃より高く40℃より低い温度範囲の水中に、振り混ぜられた後、3分以内に前記水との二相に分離し、一様に、溶解、懸濁又は乳化しない薬剤であって、
前記薬剤の水環境における一箇所の投入地点から重力及び前記拡散作用成分の水面への表面吸着作用によって前記薬品成分を水面で均一分布させる水平方向の拡散機構と、
前記薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構からなる逐次的二段階拡散機構を備える自己水面拡散型省力化薬剤を、水環境水面に注ぎ入れ、水面に均一拡散させ、かつ前記薬品成分を水環境中に均一に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流及び水の移動がなくても或いは少なくても、水環境の水面に注ぎ入れることで、広範囲の水面全面に短時間で自己拡散する薬剤であって、薬剤散布作業の省力化、均一拡散化を図ることができる、自己水面拡散型省力化薬剤に関する。また、その薬剤の新しい輸送方法、すなわち省力化薬剤散布方法に関する。
なお、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤の薬剤型をスプレッディング・サスペンション(SS:Spreading Suspension)と名付けた。
【背景技術】
【0002】
水田などの水環境に使用される薬剤は、形態、物性、薬剤輸送性、散布態様などから多種の型に分類されている(非特許文献1等)。例えば、固形の粒剤、粉末、農薬原体に乳化剤などを加えた液体の製剤であって水に乳濁させて用いる乳剤、ジャンボ剤、油剤を含む水面展開剤などが知られている。
【0003】
ジャンボ剤は、特許文献1、2、非特許文献2等に開示のように、例えば水田用除草剤の投げ込み剤で水溶性パック剤と水中発泡錠剤とがあり、手で畦畔より水田に投入するだけで有効成分が水田内に水面のみならず水中に懸濁させることで薬剤成分を拡散させるというもので、農薬散布作業の省力化が図られている。
【0004】
さらに改良された特許文献3のような水田用自己拡散型粒状農薬組成物およびその施用方法も知られている。特許文献3の発明は、湛水下水田に投入後水面に浮遊し、農薬活性成分を拡散し、投入地点の土壌表面には薬剤処理跡が残らず、薬効の偏りが無い水田用自己拡散型粒状農薬組成物であって、農薬活性成分、嵩比重が1未満の閉鎖型中空体、および界面活性剤より成る水田用自己拡散型粒状農薬組成物というものである。嵩比重が1未満の閉鎖型中空体を用意する必要があり、コスト高である。
【0005】
油剤は、水に不溶の液体製剤であって、そのまま又は有機溶媒に希釈して用いられる。薬害を起こす可能性が高いため直接作物に散布して使うことは少ない。
【0006】
水面展開剤は、水田の数か所に滴下処理することで、有効成分が溶剤とともに水田全体に広がる製剤である。製剤分類上は油剤又は乳剤であり、これらを活用することで、農薬散布作業の省力化が図られている。
【0007】
例えば、水面施用の葉鞘部処理剤として、特許文献4の稲紋枯病防除組成物が提案されている。当該発明は、農薬有効成分及び水面浮遊性能を付与する基剤からなり、該農薬有効成分が基剤に溶解又は懸濁されていることを特徴とする稲紋枯病防除組成物、または水面浮遊性能を付与する基剤が、水難溶性又は不溶性高沸点溶剤及び常温で液体の0.1%以上の水溶解度を有する極性溶剤から選択される1種又は2種以上の溶剤及び界面活性剤、又は常温で固体のパラフィン類又は該パラフィン類と界面活性剤との混合物であり、該防除組成物は液剤組成物、粒剤組成物又は錠剤組成物であって、本組成物を水田に施用すると、農薬活性成分が基剤と共に水面に浮上・拡展して稲の葉鞘部に効率良く付着することによって、稲紋枯病が効率的に防除されるというものである。
【0008】
また、特許文献5の水田投げ込み用製剤が公開されている。具体的には、水に難溶性あるいは非水溶性の殺虫活性成分を比重が1以下の非極性の高沸点溶剤に溶解した農業用水面施用油剤を水溶性の容器に内包することを特徴とする水田用投げ込み製剤(請求項1)である、当該水田用投げ込み製剤を、10a当り1〜20ケ、かつ投げ込み製剤の総重量が100〜2000gになるように、湛水した水田に投げ込み施用し、水中で水溶性の容器が溶解し内容物の油剤を田面上に拡展せしめることを特徴とする水稲害虫の殺虫方法というものである。
【0009】
しかしながら、特許文献4は、農薬有効成分の水中、土壌への拡散の溶出の課題(0005)を解決すべく、農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、稲紋枯病の生態に合わせて水面と接する葉鞘部に効率良く付着させるため(0006)、水面のみに展開させる薬剤に関するものである。また特許文献5は、乳化作用のある界面活性剤が添加され、薬品成分は、水中に三次元的拡散することになるので、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤に比較して、薬剤輸送距離が低下するので、高濃度、多量で多処理地点の施用を要し、経済的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−65010号公報
【特許文献2】特開2002−3301号公報
【特許文献3】特開2001−163705号公報
【特許文献4】特開平06−336402号公報
【特許文献5】特開平05−339103号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】http://www.nichino.co.jp/products/basic/basic06.html「農薬の剤型による分類」
【非特許文献2】http://www.japr.or.jp/gijyutu/005.html「ジャンボ剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
また、ジャンボ剤であっても、比較的大きな浮遊性粒子(0.5−10mm)を水面で拡散させなければならないことや、水中での懸濁を利用する水中での三次元拡散の機構のため、薬品成分の到達距離に限界があり、100m程度の範囲で一箇所に投入するもので、まして250mを超える大面積への拡散は不可能で、水田であれば畦を歩き回り、投入する必要があり、農薬散布作業の省力化は図られているが、高齢になると畦を歩き回ることも決して容易ではない。また、ジャンボ剤は、浮遊性粒子(0.5−10mm)に薬品成分を付着させものを水溶性フィルムの袋に充填したもので、薬品成分が水面に放出されると風の影響を受けやすく、吹き寄せによって薬品成分が不均一分布になることがあり、不効問題や薬害問題を起こす。
【0013】
他方、水面展開剤でも、100m程度の範囲に一箇所投入するもので、まして250mを超える大面積へ拡散は不可能で、水田であれば畦を歩き回り、投入する必要がある。また、基材である油に溶解する薬品成分以外に適用した実用例はない。
【0014】
また、図1(A)に示すように、「水中」に乳化または懸濁する性質をもつ従来の水面展開剤2(または油剤型水面展開剤)は十分に広い範囲に拡散するものではない。すなわち水面展開剤2は、滴下と同時に水中に三次元的な拡散し、薬品成分の拡散速度は、展開距離の二乗に反比例して低下する。一般に水田用の液体の水面展開剤(固体成分含む水面展開・拡散は知られていない)には、水中への三次元的な均一な分布を期待し、乳化性・懸濁性が付与されており、乳化性・懸濁性を付与するため、乳化剤が添加されている。さらに水田への直接散布型のフロアブル剤は固体成分を水に懸濁させる製剤であるので、当然、水への懸濁性がある(http://www.greenjapan.co.jp/noyak_zaikei.htm)。
【0015】
従来から、多くの農薬等の薬剤組成物は、水で希釈するとか、水が含まれているとか、田面水に均一に溶解・乳化・懸濁させて使用されており、このような手段こそが、均一な薬剤輸送が達成されると考えられていた。そのため、特に液状の薬剤組成物においては、まったく水が関与せずそのままの散布または有機溶剤で希釈する油剤以外の薬剤で、水溶性・乳化性・懸濁性を付与していない製剤(乳化や懸濁に十分な性質及び量の界面活性剤を含まない製剤)は、これまでに存在していない。特に、水田用、養殖池、その他水面に投入する薬剤の範囲において、これまで、水溶性・乳化性・懸濁性を有さない薬剤はなかった。
【0016】
そこで、本発明は、水流及び水の移動がなくても或いは少なくても、図1(B)に示すように、水環境の水面3に滴下、注ぎ入れることで、水面全面に短時間で自己拡散する薬剤であって、ジャンボ剤及び水面展開剤よりもさらに水環境への薬剤散布作業の省力化、均一拡散化を図ることができる、従来の薬剤型に分類されない新しい薬剤型のスプレッディング・サスペンション剤として、自己水面拡散型省力化薬剤1を提供することを目的とする。このスプレッディング・サスペンション剤は、従来水面展開剤に利用できなかった固体で難溶性および不溶性の薬品成分を固体のまま使用できる実用的な薬剤型でもある。また、水面を介在する環境での薬剤処理について、逐次的二段階拡散機構を利用する省力化方法、すなわち省力化薬剤散布方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、水中に一様に、溶解性・乳化性・懸濁性を有さない薬剤を水面で拡散させることで、従来の薬剤輸送技術では限界と考えられていた一箇所への薬剤投入処理で、100mから250mを超える面積の水田等への、薬品成分の自動的な輸送を達成した。これにより、水環境への薬剤散布作業の省力化を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
すなわち、従来の薬品の一段階の水中への三次元拡散に代えて、
本発明である自己水面拡散型省力化薬剤では、
(1)自己水面拡散型省力化薬剤の重力の利用や水面への表面吸着の利用で、短時間で薬剤投入処理地点からの距離に依存しにくい薬品成分の均一分布を達成する、一段階目の水平方向の拡散機構と、
(2)水平方向の拡散より遅れて、水面から水環境底部に到達する、薬品成分の水面から水中への緩やかな溶解で拡散する、二段階目の鉛直方向の拡散機構と、
からなる、逐次的二段階拡散機構の組み合わせにより、薬剤の効率的な長距離均一輸送を達成した。
【0019】
ここで、自己水面拡散型省力化薬剤の重力の利用や水面への表面吸着を利用した、水環境での薬剤の(一段階目の)水平方向の拡散について以下説明する。
【0020】
1)まず、重力は利用するが水面への表面吸着を利用しない薬剤の水環境での展開について説明する。水面での展開・拡散に適切な極性度を有する極性基(以下、単に「適切な極性基」という)を備えない、水浮遊性の非水溶性液状組成物(以下、単に、「液状組成物」という。)が水面に投入された場合についての水面上での展開について説明する。投入直後、液状組成物の塊は、重力に起因する自重による液状組成物の塊の圧縮される方向の作用力により水面上に広がり始める。このとき、その液状組成物の展開力は、その液状組成物の塊としてまとまる方向の作用力である粘度や表面張力に対抗している。そして、その液状組成物の層の厚みは薄くなる。その後、水面に展開した液状組成物の厚みが、さらに薄くなると、液状組成物の粘度に対抗する重力に起因した自重の圧縮・展開力の作用が小さくなり、展開速度が低下する。
【0021】
さらに液状組成物の水面上の展開膜の厚みが薄くなると、適切な極性基を備えないため、液状組成物の水面への吸着力が十分でなく、重力による液状組成物の水面展開が、液状組成物の表面張力に対抗できなくなり、水面上の液状組成物の展開は停止する。この状態が、非水溶性液状組成物の塊が水面に浮いている状態である。
【0022】
2)次に、重力と共に水面への表面吸着を利用する本願発明の水環境での拡散について説明する。本願発明である自己水面拡散型省力化薬剤は、水浮遊性で、水面での拡散・拡散に適切な極性基を備える拡散作用成分が配合されている。その自己水面拡散型省力化薬剤が水面に投入された場合についての水面上での拡散について説明する。投入直後、自己水面拡散型省力化薬剤の塊は、自重による液状組成物の塊の圧縮される方向の作用力により水面上に広がり始める。このとき、その自己水面拡散型省力化薬剤の拡散力は、その液状組成物の塊としてまとまる方向の作用力である粘度や表面張力に対抗している。そして、その自己水面拡散型省力化薬剤の層の厚みは薄くなる。その後、水面に拡散した自己水面拡散型省力化薬剤の厚みが、さらに薄くなると、自己水面拡散型省力化薬剤の粘度に対抗する重力に起因した自重の圧縮・展開力の作用が小さくなり、拡散速度が低下する。
【0023】
しかし、適切な極性基を備える拡散作用成分を配合されている自己水面拡散型省力化薬剤では、自己水面拡散型省力化薬剤が水面上に吸着され、熱力学に安定化された薄膜状の拡散膜になる。このことにより、さらに自己水面拡散型省力化薬剤の水面上の拡散膜の厚みが薄くなっても、自己水面拡散型省力化薬剤の表面張力に対抗し続け、より広い範囲に水面上を拡散し続ける。
【0024】
3)最後に、重力をあまり利用せず、強い水への吸着のため、薬品成分が、水中にマイクロエマルジョンによって可溶化、乳化、懸濁し、水面のみならず水中においても、水と溶け合わない相の界面を作り出すことで、本発明が目的としない三次元拡散を起こす例を説明する。むろん、極性が強すぎる物質を含む組成物は、溶解性、乳化性、懸濁性を有し、水中への三次元拡散を起こす。そのため、その組成物は、本発明のように、水面境界で薬品成分と拡散作用成分が二層に分離することによる、二層の上層に位置する物質の重量に起因する重力効果や、水面のみへの表面吸着作用を十分に利用できず、水面上での十分に広い範囲への拡散性は低い。
【0025】
さらに、極性が強すぎる物質を含む組成物に、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分を含んでいる場合では、固体薬品成分が水中において懸濁状態となった後、すぐにその場所で水中を沈降し始める。このため、本発明が目的とする、広い範囲への効率的な薬剤輸送は達成できない。他方、拡散作用成分の極性度が適切である場合には、例え、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分であっても、水中への密度による沈降に抵抗して、拡散作用成分が、薬品成分を水面境界上に支持して本発明の逐次的二段階拡散機構によって広範囲に薬品成分を拡散させる。このように、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤は、水流が無い水環境においても、長距離の薬品成分の自動的な輸送を達成できるが、水流のある状態での応用を妨げるものではない。
【0026】
このような意味で、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤は、水面上層にとどまることによる自重の重力効果と、水面への表面吸着による、一段階目の水平拡散と、それに続く二段階目の鉛直方向の水中への拡散を組み合わせた逐次的二段階拡散機構を利用している。
【0027】
上記の課題を解決するために、より具体的には、本発明は、
(1)
少なくとも、液状、粒又は粉状の薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物で、
かつ、前記流動性の混合物が20倍の重量の、0℃より高く40℃より低い温度範囲の水中に、振り混ぜられた後、3分以内に前記水との二相に分離し、一様に、溶解、懸濁又は乳化しない薬剤であって、
前記薬剤の水環境における一箇所の投入地点から重力及び前記拡散作用成分の水面への表面吸着作用によって前記薬品成分を水面で均一分布させる水平方向の拡散機構と、
前記薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構からなる逐次的二段階拡散機構を備えることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
(2)
前記薬品成分が、水より密度が大きいことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(3)
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、カルボキシル基、水酸基を分子内に有する化合物の内から選ばれる1種以上を含んでなることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(4)
さらに、粘度調整剤として、直鎖炭化水素を含むことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(5)
前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分が、大豆油、ひまし油、亜麻仁油、2−エチルヘキサノール、オレイン酸、及びオレイン酸メチルの内から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(6)
前記粒又は粒子の薬品成分が、1mm以下の平均粒径を示す固体粒子で、前記拡散作用成分中に懸濁されていることを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(7)
前記拡散が、(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所での投入であって、水流が存在しない条件下において、250mを超える面積であることを特徴とする自己水面拡散型省力化薬剤。
(8)
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、乳化性界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(9)
前記自己水面拡散型省力化薬剤から、界面活性剤を1〜20重量%含むものを除くことを特徴とする(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤。
(10)
(1)に記載の自己水面拡散型省力化薬剤を、水環境水面に注ぎ入れ、水面に均一拡散させ、かつ前記薬品成分を水環境中に均一に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
(11)
前記水環境が、水田であること特徴とする(10)に記載の省力化薬剤散布方法。
(12)
薬品成分と、前記薬品成分に溶解又は吸着し、或いは前記薬品成分を被覆し、前記薬品成分を沈降させることなく水面上に支持し、前記水面で前記薬品成分を拡散させる液状の拡散作用成分を含んでなる流動性の混合物である自己水面拡散型省力化薬剤を、
先ず、水環境の水面に注ぎ入れ、水面で水平方向に拡散分布させ、続いて、前記自己水面拡散型省力化薬剤を、前記水平方向に拡散分布するよりも遅れて前記水環境の底部に到達する前記水面から水中へ鉛直方向に緩やかに溶解させる、逐次的二段階拡散機構によって前記薬品成分を前記水環境に拡散させることを特徴とする省力化薬剤散布方法。
(13)
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積100mを超える範囲に拡散することを特徴とする(12)に記載の省力化薬剤散布方法。
(14)
水流が存在しない水環境下において、前記自己水面拡散型省力化薬剤の一箇所の投入によって、前記薬品成分が、前記水環境の水面面積250mを超える範囲に拡散することを特徴とする(12)に記載の省力化薬剤散布方法。
の構成とした。
【0028】
ここで、「水環境」としては、水田、蓮田、ワサビ田、魚等の養殖池、施設、またはボウフラやその他の害虫の駆除の必要がある一般の池などが例示できる。さらに、水耕栽培や植物工場での、手動または自動的な薬剤処理に好適に適応できる。
【0029】
「薬剤」とは、水中植物、生物、水環境へ作用する、肥料、或いは殺虫、殺菌、各種予防のための農薬等の薬品成分と、薬品成分を水面に拡散させる拡散作用成分とからなる。
【0030】
薬品成分は、本発明の逐次的二段階拡散を妨げないものであれば使用できるが、単体では、水に即溶性でなく、少量溶解する或いは時間経過により少量溶解する水に難溶性(20℃の水に、10g/L未満の溶解)で、溶解することで目的作用を発揮する機能性成分であり、水より密度が大きい固形の微粉砕物で、通常は水に沈下する性質のものであってもよい。
【0031】
勿論、水より密度が小さい成分も対象にすることができる。例えば、単体で水面に散布した場合、ママコ状に凝集し、難懸濁性、難溶解性を示す性質の薬品成分の場合には、特に、本発明の拡散機能が有効に作用し、確実に拡散、溶解、目的の作用を示すことができる。薬品成分の凝集、集中、或いは非拡散に伴う、濃度ムラによる薬害を防止することができる。
【0032】
薬品成分としては、例えば、「殺菌剤」として、シメコナゾール、メタラキシル、フルトラニル、イソチアニル、プロベナゾール、ピロキロン、トリシクラゾール、バリダマイシンなどが例示でき、「殺虫剤」として、エチプロール、シラフルオフェン、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ジノテフラン、クロチアニジン、ニテンピラム、メタアルデヒド、カルタップ、BPMC、MEP、イミダクロプリド、チアメトキサム、スピノサド、ピメトロジン、クロラントラニリプロールなどが例示でき、「除草剤」として、ピラゾキシフェン、ピラゾレ−ト、ベンゾフェナップ、テフリルトリオン、ベンゾビシクロン、メソトリオン、カフェンストロール、ブタクロール、プレチラクロール、メフェナセット、ジメタメトリン、ダイムロン、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、ピラゾスルフロンエチル、ベンスルフロンメチル、メタゾスルフロン、MCPB、MCP、2.4−PA、ピリフタリド、オキサジクロメホン、シハロホップブチル、ピリミスルファンなどが例示できる。農薬登録のある薬剤に限らず種々の用途に活性が認められている多くの物質や肥料なども、薬品成分として適応できる。
【0033】
また、農薬分野に関しては、次のURLに記載されているものがある。
1)平成27年 山口県農作物病害虫・雑草防除指導基準
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/002%20mokuji.htm
2)V−1−(4)2 稲・箱施用・培土処理
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/302作物1−3 箱施用・培土処理.pdf
3)V−1−(4)3 稲・本田用殺菌剤
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/303作物1−7 本田用剤.pdf
4)V−7−(5)水稲除草剤の有効成分と作用特性一覧
http://www.nrs.pref.yamaguchi.lg.jp/hp_open/a1720160/00000008/175%EF%BC%98%EF%BC%88%EF%BC%95%EF%BC%89%E6%B0%B4%E7%94%B0%E9%99%A4%E8%8D%89%E5%89%A4%E3%81%AE%E6%9C%89%E5%8A%B9%E6%88%90%E5%88%86%E3%81%A8%E4%BD%9C%E7%94%A8%E7%89%B9%E6%80%A7%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf
5)雑草防除ガイド掲載農薬一覧(水稲除草剤)
http://www.agri.hro.or.jp/boujosho//boujo-guide/h26boujo-guide/h26boujoguide-pdf/42002_ine-syoki_h26.pdf
6)農薬登録情報ダウンロード - 農林水産消費安全技術センター
http://www.acis.famic.go.jp/ddata/index.htm
【0034】
拡散作用成分は、界面活性機能を有する物質であるが、油溶性成分の水中への乳化作用を有するものでなく、水面拡散作用を有する物質である。例えば、HLB1〜4の範囲の界面活性剤、分散剤などが例示できる。さらに、大豆油に代表される油脂類は、油溶性であるが、親水性基の含有量、性質、作用により、水面に浮き、水面を自己拡散(二次元)する。
特許文献4において、界面活性剤として「サーフィノール」が例示されている。そして全ての実施例で「サーフィノール」が多量に使用されている。
ここで、サーフィノールは、特表2011−512418号公報の段落0014に「サーフィノール104PG−50(商標)が、薬物の水性相への導入前に内部油相に添加された。得られた生成物は、約230nmの非常に小さい粒径を特徴とし、この実験結果は、再現可能である。このサイズ分布は、凝集を阻止するためのサーフィノール104PG−50(商標)の能力におそらく起因して均一に非常に狭い(多分散性指数(PDI)〜0.1)。」とあるように、薬品(油相)の水相への導入で微小の粒径になっていることから明らかであり、サーフィノールは油脂を水中油型に乳化する乳化性界面活性剤である。
本願発明では、薬品成分を逐次的二段階拡散機構で拡散させることから(拡散作用成分として多量の乳化性界面活性剤(薬剤100重量部に対して1〜20重量部)を含む場合、発明の目的を実現できない場合がある。
すなわち、特許文献4のサーフィノールのような乳化性界面活性剤が添加された場合、界面活性剤の添加量(段落0009の「(サーフィノール 104、エア−プロダクツ社製)界面活性剤は稲紋枯病防除組成物100重量部に対して1〜20重量部の範囲から適宜選択して使用することができる。」)では本願発明のような薬品成分の広範囲の拡散(逐次的二段階拡散機構)は実現できない、以上からも、本願発明は、特許文献4と同一ではないことを付言する。
特許文献4は、水面拡散によって、薬剤をイネの茎部に付着させる技術で、本願発明と特許文献4とでは、発明の目的、効果においてまったく異なる。より具体的には、特許文献4には、明細書段落0006に「従来の防除方法の考え方から発想を転換し、農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、稲紋枯病の生態に合わせて水面と接する葉鞘部に効率良く付着させて稲体内に吸収させ、」とあるように、水面での展開のみを考慮し、水中、土壌へ拡散を意図せず、却って水中への拡散を忌避、回避している。
他方、本願発明は、「薬品成分を前記水面から水中への緩やかな溶解で拡散させ、前記水平方向の拡散より遅れて前記水面から前記水環境底部に到達する鉛直方向の拡散機構」を備えるものである。
すなわち、特許文献4の技術は「農薬有効成分を水稲の根又は茎葉部から吸収させるのではなく、」と記載されてあるように、水中、土壌への拡散を意図せず、却って回避しており、本願発明は「水環境底部に到達する」としている点、特許文献4と本願発明1とは、根本的に技術思想が異なることが明らかで、特許文献4は、本願発明をなすための動機はなく、却って、本願発明の創作に阻害的な先行技術である。
特許文献4が「局所施用」及び「葉鞘部」への付着のための「界面活性剤」を多量に含むことで「薬品成分の水面での濃度低下」により、広範な水面での展開が意図も、実現もしていないことは明らかで、さらに水中へ薬剤の拡散を意図していないことからも、特許文献4に接した当業者は、特許文献4から本願発明の水中、土壌への拡散、広範囲展開、さらには「薬品散布の省力化」を想到することは到底できるものでないことを付言する。
【0035】
以上の相違により、本願発明は、水中乳化・懸濁系による水中への拡散(三次元)よりも、少量で広範囲に効果的に均一に拡散(散布)することができる。水中乳化・懸濁系による拡散(三次元)では、水体積範囲への拡散になり、多量に散布成分を要するとともに、三次元拡散のため薬剤投入地点からの距離が遠くなると、拡散させた薬剤濃度が急激に低下する(原理的には当該薬剤濃度は投入地点距離の二乗に反比例する)。一方、水面での拡散では二層に分離することによる重力並びに拡散作用成分や薬品成分の水面への吸着が作用するために、水面上での薬剤濃度は速やかに、投入地点からの距離によらず均一になる。
【0036】
また水面は、速やかに本発明の自己水面拡散型省力化薬剤により完全に覆われ、その水面の拡散膜の水面展開圧により薬剤構成分子が水面上で押し合う構造をとることで安定化される。そのため風などによる吹き寄せに関わる不均一な薬剤分布を抑え、均一な薬剤分布状況を実現することができる。
【0037】
例えば、脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物である「動植物由来の油脂類」は、薬剤を広範囲の水面上に拡散させる拡散作用成分として、適切な親水性・疎水性バランスを持ち、拡散作用成分に溶解しない固体薬品成分を、粉砕・分散処理を行った場合、安定な懸濁液を調製できると同時に、その懸濁液が水に、乳化・懸濁しない性質を両立することができる。大豆油に代表される液状油脂類は、単独でこのような性質を両立できる好適な材料である。
【0038】
ここで、「脂肪酸」とは、「長鎖炭化水素の1価のカルボン酸である。一般的に、炭素数2−4個のものを短鎖脂肪酸(低級脂肪酸)、5−12個のものを中鎖脂肪酸、12個以上の炭素数のものを長鎖脂肪酸(高級脂肪酸)と呼ぶ。炭素数の区切りは諸説がある。脂肪酸は、一般式CnHmCOOHで表せる。脂肪酸はグリセリンとエステル化して油脂を構成する。」
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8)
3分子の脂肪酸が1分子のグリセリンとエステル化して油脂を構成することが一般的であるが、グリセリンの水酸基がエステル化せず残存するものもある。
【0039】
拡散作用成分としては、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、カルボキシル基、アルコール性の水酸基など弱い極性を有する部分が分子内にある油脂類、合成樹脂添加用の可塑剤類や、その他の化学物質、を使用することができる。
【0040】
また、薬品成分が拡散作用成分を含む液状成分に不溶な場合、薬品成分を微粒子として製剤中に懸濁させる必要があり、かつ本発明が意図するように、水には懸濁しない製剤とするために、極性の強さが適切な物質が拡散作用成分として必要である。このような拡散作用成分として、大豆油、菜種油、綿実油、コーンオイル、亜麻仁油、ごま油、グレープシードオイル、オリーブ油、キャノーラ油、米油、桐油、ひまし油、ヤシ油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、またはこれらのエポキシ化など化学修飾を加えた物質、または、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などや、これらのメチルエステル、グリセリンエステルなどが好適に利用できる。また、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、リン酸トリクレシルなどの可塑剤類も拡散作用成分として使用することができる。また、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ヘキサノールなどのアルコール類も拡散作用成分として使用できる。またこれらに関わらず、水に混和せず水面上を広がる液状の物質であれば拡散作用成分として使用することができる。
【0041】
さらに、特開平6−336402(特許文献4)に記載されているように、水溶性の極性溶剤を少量添加することで、薬品成分の水面上での拡散性を向上させることができる場合がある。しかし、自己水面拡散型省力化薬剤自体の、重要な特性である、水への不溶性、非乳化性及び非懸濁性を損なうほど、過剰に添加すると、自己水面拡散性が低下し薬品成分の長距離輸送性が損なわれる。薬品成分並びに拡散作用成分の組み合わせに合わせて、前記極性溶剤の適正添加量は決められる。
【0042】
「流動性の混合物が、水中に一様に、溶解、懸濁又は乳化しない」条件は、拡散作用成分又は自己水面拡散型省力化薬剤0.25mLを水5mLに加え、5Hzで5分間振盪し、その後3分静置して、水と流動性の混合物が二相に分離することである。
【0043】
薬品成分及び拡散作用成分の他に、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤に、ドデカンなどの直鎖炭化水素を含めるとよい。直鎖炭化水素は、拡散作用成分ではなく、粘度調整剤として作用する。速やかに薬品成分を水面で拡散させるために、自己水面拡散型省力化薬剤、特に拡散作用成分の粘度を低く調整するとよい。ドデカンなどの直鎖炭化水素は、油脂類等の長鎖脂肪酸部分との親和性が高いので、拡散作用成分に適宜添加することで、水面拡散性、薬品成分の製剤中での懸濁安定性、および水への非溶解性や非懸濁性を損なうことなしに、自己水面拡散型省力化薬剤の粘度を低下させ、自己水面拡散型省力化薬剤の水面拡散速度を高める作用がある。
【0044】
粘度調整剤としては、飽和炭化水素の場合、炭素数が8以下の炭化水素は揮発性の高く引火性の高い。また、炭素数が16以上のものは徐々に粘度が高くなり粘度の調整という目的に適さない。飽和炭化水素の場合、炭素数が9から15までの炭化水素が好適である。また不飽和の炭化水素であっても、側鎖を有する炭化水素でも添加できる。この中で、入手のしやすさや、粘度の調整効果、調製した薬剤の機械的または化学的安定性の観点から、炭素数12の直鎖炭化水素のドデカンが好適である。
【0045】
また、比重が1以上の粒状または粉末上の固体薬品成分の場合でも、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤では、当該薬品成分を安定的な懸濁液としているので、薬剤を水面上に投入した際、当該薬品成分が拡散作用成分によって水面上に支持され水中に沈降することなく、自己水面拡散型省力化薬剤が一体となって水面上を広がり、自動的に当該薬品成分を水面全体へ均一に分布させることができる。
本発明のスプレッディング・サスペンション剤は、さらに固体の物質と組み合わせて、外観上、粉末状、粒状、または錠剤状等の固体に加工されるものであって当該逐次的二段階拡散を実現する組成物を調製することもできが、本発明はこれらの追加の加工を妨げるものではない。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、上記構成であるので以下の効果を発揮する。農薬や肥料等の組成物の特性を、これまで例がない上記条件に設定することによって、広い水田であっても、畦から一箇所に投入することで、250mを超える大面積の水田全体への均一な薬品成分の輸送を可能にする。例えば、本発明であれば、図4で示すように、100gで、1000m以上の水面に拡散する。本発明は、一箇所の薬剤投入によって、広範囲への薬剤輸送による省力化を目的として、その効果を高める創意工夫を重ねたものであるが、水環境のある一区画の連続する水面上での薬剤処理、薬剤投入または薬剤散布を、一箇所に限定するものではない。
【0047】
さらに、従来水面展開剤に利用できなかった固体の薬品成分を固体のまま活用できる実用的な薬剤型を提案し、また、水面を介在する環境での、薬剤使用方法について経済的かつ薬剤散布作業の省力化を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(A)従来の水面展開剤と本発明(B)の展開・拡散状態の比較概念図である。
【図2】本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例に用いた薬品成分の種類と物性である。
【図3】本発明及び比較例の組成の一例である。
【図4】本発明及び比較例の拡散試験(水面)の結果である。
【図5】自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(濃度)の結果である。
【図6】管理水田での除草試験結果である。
【図7】本発明の自己水面拡散型省力化薬剤を実際の水田で実施したときの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0050】
図1は、(A)従来の水面展開剤2と、(B)本発明の拡散状態の比較概念図である。本発明である自己水面拡散型省力化薬剤1は、水面に滴下、注ぎ入れると、水中に懸濁、乳化することなく、均一に、水面で広範囲に拡散する(両矢印)。
【0051】
図2は、本発明及び比較例に用いた薬品成分の種類と物性である。これらの原体を薬品成分として適宜調合し、拡散作用成分、他の添加物を混合して、図3に示す試験例、比較例の各機能性を示す農薬製剤を調製した。
【0052】
図3は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例の組成の一例であり、試験例A−Gが本願発明の実施例であり、拡散作用成分により薬品成分を水面で拡散させる機能を付与した。他方、比較例Aのみ、界面活性剤を添加し、水中に懸濁、乳化する機能を付与した。
【0053】
シリコンオイルは油溶性であるが、自己水面拡散型省力化薬剤に添加すると、一部の薬剤、例えば、ここでは、A6粒子の水面上での拡散性が向上する。
【0054】
他方、1,2−propanediol(プロピレングリコール)は、水にも油にも溶ける化合物で、自己水面拡散型省力化薬剤に添加すると、自己水面拡散型省力化薬剤中に懸濁させたメタアルデヒドの粒子の水面上での拡散性が向上する。
【0055】
図4は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤及び比較例の拡散試験(水面)の結果である。
【0056】
・製剤の調製
図3に示した試験例及び比較例の処方で総量が約150gになるように、約450mLの容量を持つビーズミル粉砕容器に薬剤成分及び拡散作用成分を含む薬剤組成物を秤取り、さらに約150gの直径1mmのガラスビーズを加え、撹拌羽をセットする。これをビーズミル本体に装着し、約1000rpmで15分から状態により120分ぐらいまで薬剤組成物を撹拌・粉砕した。この内容物を約0.5mmの目開きのステンレスふるいでガラスビーズを取り除くと、均一な懸濁液が調製された。
【0057】
使用するガラスビーズの直径が、1mm以外の場合には、その直径に対応した目開きのふるいでガラスビーズを取り除くことができる。分散させる粒子をより細かく粉砕するためには、直径の小さなガラスビーズを使用し、一般に0.2mmから4mmぐらいのガラスまたはその他の材料のビーズの使用が好ましい。
【0058】
ただし、試験例BとCは薬品成分(原体)が拡散作用成分に均一に混和溶解するので、当該粉砕工程は必要なく、容器中で混合するだけで調製できる。
【0059】
・比較例B(市販品:図示せず)
除草剤の薬品成分A1とA4が含まれている市販フロアブル製剤(水に除草剤の薬品成分が懸濁されている製剤)を入手し、比較例Bの原料として用いた。このA1とA4の含有比率を参考に、試験例Dと比較例Aを調製した。この製剤を水で希釈することで、A1とA4の濃度を試験例Dと比較例Aに一致させたものを比較例Bとした。この製剤は水に懸濁することは確認されているが、その詳細な処方は不明である。
【0060】
入手した比較例Bの原料の薬品成分含有重量%は、
A1:30.5%
A4:15.5%
他 :残り
であり、これを水で2.5倍希釈したものを試験例Bとした。
【0061】
したがって、比較例Bの薬品成分含有重量%は、
A1:12.2%
A4: 6.2%
となる。
【0062】
・比較例C(市販:図示せず)
その薬品成分含有重量%は、
A1:3.0%
A2:9.0%
A3:1.8%
A4:1.0%
他 :残り
であり、製剤50gを個別に水溶性フィルムパック1袋に封入したものである。その使用法は、水田100mあたり1袋を水田に投入する。
【0063】
除草剤の薬品成分A1,A2,A3とA4が含まれている市販ジャンボ製剤を入手し、比較例Cとして用いた。このA1,A2,A3とA4の含有比率を参考に、試験例Aを調製したため、比較例Cは、除草剤の薬品成分A1,A2,A3とA4の濃度は、試験例Aの1/2である。水溶性パックに封入されている薬剤本体の浮遊性の粒を取り出し秤量して、試験に用いた。
【0064】
・水懸濁性の確認
調製した各薬剤の水懸濁性に関して、前記各薬剤に前期薬剤の20倍の重量の約20℃の水道水を加え約5Hzの振盪機で5分間振盪し、その後3分約25℃の室温下で静置して、水と試験薬剤が二相に分離することを確認した。比較例A−Cは、同様の振盪条件の後3分静置して、水に当該薬剤が乳化・懸濁により安定化することで、水と比較例A−Cの薬剤が二相に分離しないことを確認した。油剤型水面展開剤として販売されている三井化学アグロ製の「なげこみトレボン」(登録商標)も同条件で水懸濁性を測定したが、同条件では水と「なげこみトレボン」(登録商標)が二相に分離しないことを確認した。
【0065】
・水溶解性の確認
前記水懸濁性の確認試料を、さらに55分、約25℃の室温下で静置を続けたところ、試験例と比較例ともに変化なく、すべて水に一様に溶解することがないことを確認した。
【0066】
・拡散試験(拡散性の数値算出)
ステンレストレイ(55×40cm)の約70%まで水道水を満たし、この水面上の中央に試験例・比較例で調製した製剤を、ポリエチレンのスポイトで一滴落下させる。比較例A以外の場合、滴下した薬剤はすぐさま、ステンレストレイの水面全面に拡散した。その後滴下後1分の状態を観察した。その後、同一スポイトで、当該薬剤を空の50mLビーカーに滴下し、その重量を測定した。この重量を元に薬剤100gの最低拡散面積を算出した。比較例Aの場合は、水面上に十分に拡散しないので、滴下1分後のステンレストレイの約1%程度しか広がらなかった。一滴の重量を測定して水面拡散性を算出した。この試験例Dと比較例Aの結果を比較することによって、水に懸濁させるために界面活性剤を添加した薬剤は、その水面拡散性が低下することが明らかになった。
【0067】
図5は、本発明である自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(濃度)の結果である。水を張り代掻きを行った水田の中に1m×10mの長方形の形の試験区画を3区画用意した。
そして、比較例B(フロアブル(SC:Suspension Concentrate)剤)、試験例D(スプレッディング・サスペンション(SS:Spreading Suspension)剤)、比較例A(オイルフロアブル(OD:Oil Dispersion)剤)の薬剤を、それぞれの区画の一端に1g滴下した。
その後その滴下端より、2m、5m、及び8mの箇所の田面水及び土壌をサンプリングし、除草剤の薬品成分A4について濃度分析を行った。水田の水面の水は、薬剤処理後1日後に採水し、土壌は処理後3日後に採取した。
【0068】
水性懸濁液である比較例Bの薬剤の薬品成分輸送性は最も低く、比較例Aの薬剤の薬品成分輸送性は次で、試験例Dの薬品成分輸送性が最も良好であることが判明した。この結果により、水に溶解せず、乳化・懸濁しない本願発明である自己水面拡散型省力化薬剤が薬品成分輸送性に優れることが分かった。
【0069】
図6は、自己水面拡散型省力化薬剤の拡散試験(除草活性)の管理水田での除草試験結果である。図6(A)が本願発明の試験例Aであり、図6(B)が比較例C(ジャンボ剤)の結果である。
【0070】
水を張り代掻きを行った水田の中に1m×10mの長方形の形の試験区画を2区画とコントロール用の無処理の区画を用意した。試験例Aと市販の除草ジャンボ剤(比較例C)を、それぞれの試験区画の一端に、それぞれ2.5g及び5gと、A1,A2,A3とA4濃度が同じになるように投入した。
【0071】
その後22日後に、各区画の雑草の発生状況を、薬剤投入端より、1mごとに10mまで、調査対象雑草(ヒエ、イヌホタルイ、コナギ、及び一年生広葉雑草)について雑草防除状況(防除価)を調査した。
【0072】
無処理区画と同程度の調査対象雑草の生育状況を0、調査対象雑草が完全に枯死している状態を100(満点)とし、調査日における各試験区の雑草防除状況を、研究者が目視で調査し、100点満点で評価した。実際の除草効果について評価しても、試験例A(A)の薬品成分輸送性は市販品のジャンボ剤である比較例C(B)のそれよりも優れていることが分かった。
【0073】
図7は、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤を実際の水田で実施したときの概要図である。1500mの水田に田植えを行い、図7のように小さな無処理用の区画を設定した。その14日後に、試験例Aの薬剤375gを、畦より1箇所(星印)に全量投入した。
【0074】
その後、28日後、及び52日後に、稲以外の雑草の除草効果を調査した。無処理区画と比較し、稲以外の雑草について、水田全面で完全な除草ができていることを確認できた。
【0075】
また、この結果により、試験例Aの自己水面拡散型省力化薬剤では、その水面拡散機能により、試験例Aに含まれる除草活性を持つ薬品成分が、処理後自動的に、水田全体に均一に輸送されたことを示した。
【0076】
一方、市販の比較例Bを用いた場合、水田の周囲、又は水田内を周回し15パックのジャンボ剤パックを投入しなければならない。このことを鑑みると、本発明の自己水面拡散型省力化薬剤が、薬剤散布作業において極めて高い省力化性能を持つことを実証できた。
【符号の説明】
【0077】
1 自己水面拡散型省力化薬剤
2 水面展開剤
3 水面
【国際調査報告】