(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017179167
(43)【国際公開日】20171019
【発行日】20181004
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/14 20060101AFI20180907BHJP
【FI】
   !B29C65/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】2018511833
(21)【国際出願番号】JP2016061977
(22)【国際出願日】20160414
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中之島三丁目2番4号
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓巳
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中之島三丁目2番4号 帝人株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】長倉 裕規
【住所又は居所】大阪府大阪市北区中之島三丁目2番4号 帝人株式会社内
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA23
4F211AA28
4F211AA29
4F211AA34
4F211AB18
4F211AD16
4F211AR06
4F211TA03
4F211TA06
4F211TC06
4F211TD11
4F211TH24
4F211TN26
(57)【要約】
本発明の課題は、スプリングバックが低減され、かつ接合強度を高く維持できる接合体の製造方法を提供することにある。上記課題は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aを加熱し、当該接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触して接合体を製造する方法であって、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触して形成した接触面cは三次元曲面を含み、接触予定表面aは、接触予定表面aを選択的に赤外線照射できる赤外線照射機構を用いて加熱し、接合する接合体の製造方法によって解決することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均繊維長が1mm〜100mmである炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aを加熱し、当該接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触させて接合体を製造する方法であり、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触して形成した接触面cは三次元曲面を含み、
接触予定表面aを選択的に赤外線照射できる赤外線照射機構を用いて、接触予定表面aを加熱し、成形体Aと成形体Bとを接合する接合体の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bをあらかじめ加熱した状態で当該接触予定表面aと接触させる、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
成形体Aに含まれる炭素繊維が、成形体Aの面内方向にランダムに分散している、請求項1〜2のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記赤外線照射機構が、接触予定表面a以外の成形体Aの表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を有する機構である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記遮蔽体は、赤外線を吸収する赤外線吸収体であるか、または赤外線を反射する赤外線反射体である、請求項4に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記赤外線照射機構が、成形体Aに赤外線受光部を設け、該赤外線受光部上に接触予定表面aを配置した機構である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記赤外線受光部は、繊維状、粉体状、シート状、ブロック状の成形体またはこれらの組み合わせである、請求項6に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記赤外線受光部は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Dである、請求項6または7のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記成形体Dは、成形体Aとの一体成形により当該成形体Aと一体化されている、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記成形体Aに含まれる炭素繊維の体積割合(Vfa)と、前記成形体Dの炭素繊維の体積割合(Vfd)の関係が
0.5≦Vfd/Vfa≦1.0
である、請求項8または9に記載の接合体の製造方法。
ここで、炭素繊維の体積割合は、下記式
成形体(A、D)の炭素繊維の体積割合(Vfa、Vfd)
=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積)
で表される。
【請求項11】
前記炭素繊維の体積割合(Vfa)が5〜70%である請求項10に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記赤外線照射機構として、前記遮蔽体を用いる、請求項4〜11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触して接合体を製造する方法である。詳細には、スプリングバックが低減され十分な強度を備えた炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む成形体と、熱可塑性樹脂を含む成形体の接合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を用いた複合材料は、その高い比強度、比剛性を利用して、軽量化が求められている分野への適用が期待されている。特にマトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合は生産性の観点から有望であるが、接合、トリミング、加飾といった二次加工方法は未だ発展途上である。
【0003】
特に接合方法に関しては、様々な方法が検討されている。まず、リベットや接着剤を用いた方法が挙げられる。しかし、リベットでは穴あけ工程が必要であり、接着剤では塗布工程、硬化工程が必要となる。これらは工程が多くなることと、リベットや接着剤といった接合部材による重量増があるため好ましくない。一方、熱可塑性樹脂を含む成形体を用いることで、成形体同士の接合方法としては超音波溶着、振動溶着、熱板溶着、または赤外線加熱溶着などの溶着方法を適用することができる。溶着は、高い接合強度、材料のリサイクルの観点から有用な接合方法であり、特に赤外線を用いた加熱溶着は、複雑形状を持った大型成形品の溶着に適している。
【0004】
赤外線加熱を用いた溶着に関する技術を開示した技術文献としては、特許文献1や特許文献2などが挙げられる。特許文献1は赤外線ヒータで接触予定表面を予熱した炭素繊維複合材料を振動溶着する接合方法が記載されている。また、特許文献2は赤外線加熱を用いた溶着装置に関する記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−014113号公報
【特許文献2】実用新案登録第3175513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、炭素繊維と熱可塑性樹脂を含む成形体に特許文献1に記載の接合方法を用いた場合、成形体が高い熱伝導率を有するため接触予定表面以外の熱可塑性樹脂も加熱溶融してしまう。その結果、得られた接合体の接触面周辺では加熱痕が残り、接合体の外観が不良となる。特に接触予定表面を用いて形成される接触面が三次元曲面を持つ場合、接触面が平面のみの単純な接触面の場合に比べ、温度ムラが発生しやすく、均一に加熱することが難しい。このため特に接合体の外観不良が起こりやすくなる。
【0007】
また、本発明における更なる課題としては、成形体Aに含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が1mm〜100mmの範囲内にある場合、成形体Aを加熱した際にスプリングバックが生じやすく、この場合には得られた接合体の物性低下が問題となる。
本発明は、これら事情に鑑みてなされたもので、スプリングバックが低減され、かつ接合強度を高く維持できる接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示した手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
【0009】
[1] 重量平均繊維長が1mm〜100mmである炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aを加熱し、当該接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触させて接合体を製造する方法であって、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触して形成した接触面cは三次元曲面を含み、
接触予定表面aを選択的に赤外線照射できる赤外線照射機構を用いて、接触予定表面aを加熱し、成形体Aと成形体Bとを接合する接合体の製造方法。
[2] 前記熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bをあらかじめ加熱した状態で当該接触予定表面aと接触させる、上記[1]に記載の接合体の製造方法。
[3] 成形体Aに含まれる炭素繊維が、成形体Aの面内方向にランダムに分散している、上記[1]〜[2]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
[4] 前記赤外線照射機構は、接触予定表面a以外の成形体Aの表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を有する機構である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
[5] 前記遮蔽体は、赤外線を吸収する赤外線吸収体であるか、または赤外線を反射する赤外線反射体である、上記[4]に記載の接合体の製造方法。
[6] 前記赤外線照射機構が、成形体Aに赤外線受光部を設け、該赤外線受光部上に接触予定表面aを配置した機構である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
[7] 前記赤外線受光部は、繊維状、粉体状、シート状、ブロック状の成形体またはこれらの組み合わせである、上記[6]に記載の接合体の製造方法。
[8] 前記赤外線受光部は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Dである、上記[6]または[7]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
[9] 前記成形体Dは、成形体Aとの一体成形により当該成形体Aと一体化されている、上記[8]に記載の接合体の製造方法。
[10] 前記成形体Aに含まれる炭素繊維の体積割合(Vfa)と、前記成形体Dの炭素繊維の体積割合(Vfd)の関係が
0.5≦Vfd/Vfa≦1.0
である、上記[8]または[9]に記載の接合体の製造方法。
ここで、炭素繊維の体積割合は、下記式
成形体(A、D)の炭素繊維の体積割合(Vfa、Vfd)
=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積)
で表される。
[11] 前記炭素繊維の体積割合(Vfa)が5〜70%である上記[10]に記載の接合体の製造方法。
[12] 前記赤外線照射機構として、前記遮蔽体を用いる、上記[4]〜[11]のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の赤外線照射機構を用いることで、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触して形成した接触面cが三次元曲面を含んだ場合においても、接触予定表面aのみを選択的に加熱させることが可能である。したがって、通常の熱可塑性樹脂より高い赤外線吸収率や、高い熱伝導率を有する成形体Aを用いても、スプリングバックが少なく、良好な物性を持つ接合体を得ることができる。また、また特定の赤外線照射機構を用いるので、本発明は接合体の生産性に優れた接合体の製造方法である。更にそのようにして得られた接合体は、例えば、自動車の構造部品等の優れた溶着強度が要求される用途に用いることが可能であり、車体の軽量化などを確実なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】三次元曲面を含む成形体の一例を示した模式図
【図2】遮蔽体を用いて接合を行う場合の一例を示した模式図
【図3】赤外線受光部を用いて接合を行う場合の一例を示した模式図
【図4】赤外線ヒータの配置の一例を示した模式図
【図5】赤外線ヒータの配置の別の一例を示した模式図
【図6】成形体Dを設けて接合体を作成した一例を示した模式図
【図7】成形体Dを設けないで接合体を作成した一例を示した模式図
【図8】成形体Dを設けて接合体を作成したとき、スプリングバックと外観を評価した一例を示した模式図
【図9】成形体Dを設けないで接合体を作成したとき、スプリングバックと外観を評価した一例を示した模式図
【図10】成形体Dを設けて接合体を作成したとき、接触予定表面aの範囲を示した一例を示した模式図
【図11】成形体Dを設けないで接合体を作成したとき、接触予定表面aの範囲を示した一例を示した模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明における接合体は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aを加熱し、当該接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触して、成形体Aと成形体Bとを接合されたものである。
【0013】
[成形体A]
本発明で用いる成形体Aとは、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体である。ここで、当該成形体Aおよび後述の成形体Bは、少なくとも一つの面形状を有する構造体をいい、厚みを有する面状体の成形体を代表例として以下説明する。なお、本発明において、接触面cとは、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触して形成したものであるが、接触面c、接触予定表面aおよび接触予定表面bはいずれも三次元曲面を含むものであって、例えば複数の三次元曲面を有していてもよい。
【0014】
(成形体Aに含まれる炭素繊維)
炭素繊維としては、一般的にポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが知られているが、本発明においてはこれらのいずれの炭素繊維であっても好適に用いることができる。
【0015】
なかでも、本発明においては引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。炭素繊維としてPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は100GPa〜600GPaの範囲内であることが好ましく、200GPa〜500GPaの範囲内であることがより好ましく、230GPa〜450GPaの範囲内であることがさらに好ましい。また、引張強度は2000MPa〜10000MPaの範囲内であることが好ましく、3000MPa〜8000MPaの範囲内であることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる炭素繊維は、表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。サイジング剤が付着している炭素繊維を用いる場合、当該サイジング剤の種類は、炭素繊維およびマトリックス樹脂の種類に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
【0017】
(成形体Aに含まれる炭素繊維の繊維長)
本発明に用いられる炭素繊維は不連続繊維であることが好ましい。不連続繊維の中でも、重量平均繊維長が1mm〜100mmの範囲内にあるものが挙げられる。重量平均繊維長として、好ましくは2mm〜80mm、より好ましくは5mm〜50mmである。
【0018】
重量平均繊維長が1mm以上の不連続繊維では、スプリングバックが生じ易くなる。ここでスプリングバックとは、以下に説明する現象を言う。すなわち、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体を加熱した際に、熱可塑性樹脂の軟化とともに炭素繊維の応力が緩和される。その結果、炭素繊維の応力が緩和されることによって、成形体の板厚方向に炭素繊維が立ちあがる現象をスプリングバックという。この現象の発生により、成形体の見かけの板厚が大きくなったり、炭素繊維が成形体表面から浮き出る現象が見られる。更に、成形体の機械的な物性が低下したり、外観不良を起こすことがある。なお、重量平均繊維長が1mmより小さい不連続繊維や連続繊維においてスプリングバックは通常は起こりにくい。
【0019】
成形体Aに含まれる炭素繊維の重量平均繊維長が1mm〜100mmの範囲内にある場合、接合のために成形体Aを加熱した際に通常はスプリングバックが生じやすい。この場合には得られた接合体の物性低下が問題となるが、本発明における赤外線照射手段を用いれば、該課題を好適に解決することができる。
本発明においては繊維長が互いに異なる炭素繊維を併用してもよい。換言すると、本発明に用いられる炭素繊維は、重量平均繊維長に単一のピークを有するものであってもよく、あるいは複数のピークを有するものであってもよい。
【0020】
炭素繊維の重量平均繊維長は、例えば、成形体から無作為に抽出した複数本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し求めることができる。重量平均繊維長は、材料物性への寄与度の観点から繊維長の長いものを重視するように計算されている平均繊維長であり、本発明の特徴を表すに際して好ましい。個々の炭素繊維の繊維長をLiとすると、重量平均繊維長(Lw)は、次式により求められる。
Lw=(ΣLi2)/(ΣLi)
成形体からの炭素繊維の抽出は、例えば、複合材料に対し、500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて熱可塑性樹脂を除去することによって行うことができる。
【0021】
(成形体Aに含まれる炭素繊維の形態)
本発明における繊維の形態は、上記の様に重量平均繊維長が特定数値範囲内の不連続繊維である。本発明の製造方法の目的を損なわない範囲で、成形可能な範囲で他の形態の繊維が含まれていても良い。その他の繊維が連続繊維である場合には、織物であっても、炭素繊維を一方向に配置した一方向材であっても良い。
炭素繊維の状態が不連続繊維のものとしては、不連続の炭素繊維を成形体Aの面内方向にランダムに分散して重なるように配置したものが挙げられる。この場合、炭素繊維は成形体中に炭素繊維束のままの状態で存在していてもよい。また炭素繊維束と単糸の状態が混在していても良く、完全に開繊されて単糸の状態になっていても良い。
ここで、面内方向とは、板厚方向に対して垂直な方向をいう。炭素繊維が面内方向に配置されていると、成形体Aの面内方向は熱伝導率が高くなる。その結果、接触予定表面aが赤外線により照射された際、接触予定表面a以外の周辺の表面部分も熱伝導により加熱されやすい。
【0022】
(成形体Aの熱伝導率)
本発明における成形体Aの面内方向は熱伝導率が高い場合(例えば成形体Aに含まれる炭素繊維が、成形体Aの面内方向にランダムに分散した成形体など)、接触予定表面a以外の周辺の表面部分に熱が伝わりやすく加熱されやすい。したがって、本発明で用いる赤外線照射機構は面内方向の熱伝導率が高い成形体において特に有効である。炭素繊維の形態により成形体Aの熱伝導率は異なるが、本発明が有効となる成形体Aの面内方向の熱伝導率は0.5W/m・K以上1000W/m・K以下である。より好ましくは、熱伝導率は1W/m・K以上700W/m・K以下である。
【0023】
(成形体Aの接触予定表面a)
成形体Aは、成形体Bの接触予定表面bと接触させて接合する接触予定表面aを有する。接触予定表面aは成形体Aの表面の一部であり、接合の際に、接触予定表面aは後述の赤外線照射機構により加熱される。このとき、接触予定表面aはその全体が加熱されても良いし、接触予定表面aの一部分が加熱されても良い。加熱された接触予定表面aは、接触予定表面bと接触して、好ましくは加圧され、その後、熱可塑性樹脂が変形しない温度(通常は熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)未満)まで冷却することで目的とする接合体を得ることができる。
当該接触予定表面aと接触予定表面bは、互いに接触して、三次元曲面を有する接触面cを形成する。接触面cについては後述する。
【0024】
(成形体Aに含まれる炭素繊維の体積割合(Vfa))
本発明における成形体Aに含まれる炭素繊維について、下記式で定義される炭素繊維の体積割合(Vfa)については、5〜70%であることが好ましく、10〜60%であることがより好ましく、20〜50%が更により好ましい。
Vfa=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積)
成形体aのVfaが5%以上であると、赤外線照射機構から照射される赤外線を効率良く吸収することができ、Vfaが70%以下であることで、接触面に熱可塑性樹脂が溶着に十分な量が存在するため高い接合強度を得ることができる。
【0025】
(成形体Aに含まれる熱可塑性樹脂)
本発明において、成形体Aに含まれる樹脂は熱可塑性樹脂である。
その熱可塑性樹脂として具体的にはポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。より詳細には、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂が挙げられる。特にコストと物性の兼ね合いからポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。また、ポリアミド(以下、PAと略記することがあり、ナイロンとの別称を用いることもある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタムとも言い、より正確にはポリε−カプロラクタム)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカンアミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカンアミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカンアミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカンアミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカンアミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタルアミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタルアミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタルアミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、およびポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0026】
(成形体Aに含まれるその他の物質)
成形体Aには本発明の目的を損なわない範囲で、炭素繊維以外の各種フィラー、添加剤を含んでも良い。フィラ―としては、例えば、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機繊維、ポリエステルやポリアミドなどの有機繊維を挙げることができるがこの限りではない。添加剤としては、例えば、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられるがこの限りではない。また、本発明の目的を害さない範囲であれば、熱硬化性樹脂を一部に含んでいても構わない。
【0027】
(成形体Aの形状)
成形体Aの形状に制限はないが、シート状や板状のような面状であることが好ましく、あらゆる方向に平面、曲面を持っていてもよい。成形体Aが有する曲面には、接触面cと同様の三次元曲面を含む形状であることができる。好ましくは、接触面cと同一の三次元曲面である。また、成形体Aの製造方法にも制限はなく、例えば、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などによる製造方法が挙げられる。
【0028】
[成形体B]
本発明で用いる成形体Bとは、熱可塑性樹脂を含む成形体である。
【0029】
(接触予定表面b)
成形体Bは、成形体Aの接触予定表面aと接触させて接合する接触予定表面bを有する。接触予定表面bは成形体Bの表面の一部であり、接合の際に、接触予定表面bは後述の赤外線照射機構により加熱されるのが好ましい。このとき、接触予定表面bはその全体が加熱されても良いし、接触予定表面bの一部分が加熱されても良い。必要に応じて加熱された接触予定表面bと、加熱された接触予定表面aとを接触して、好ましくは加圧され、その後、熱可塑性樹脂が変形しない温度(通常は熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)未満)まで冷却することで目的とする接合体を得ることができる。
【0030】
(成形体Bに含まれる熱可塑性樹脂)
成形体Bは成形体Aと接触予定表面aを介して溶着することを考慮すると、成形体Bに含まれる熱可塑性樹脂は、成形体Aに含まれる熱可塑性樹脂と相溶する熱可塑性樹脂を用いれば良い。具体的には、前述の(成形体Aに含まれる熱可塑性樹脂)の項目で述べた熱可塑性樹脂と同様の樹脂を用いる事ができる。
成形体Bに含まれる熱可塑性樹脂が成形体Aと同じ種類の熱可塑性樹脂である場合、高い接合強度が得られることや成形体材料のリサイクルが容易となる観点から好ましい。
【0031】
(成形体Bに含まれるその他の物質)
成形体Bには本発明の目的を損なわない範囲で、炭素繊維以外の各種フィラー、添加剤を含んでも良い。フィラ―としては、例えば、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維などの無機繊維、ポリエステルやポリアミドなどの有機繊維を挙げることができるがこの限りではない。添加剤としては、例えば、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられるがこの限りではない。また、本発明の目的を害さない範囲であれば、熱硬化性樹脂を一部に含んでいても構わない。
【0032】
(成形体Bの形状)
成形体Bの形状に制限はないが、シート状や板状のような面状であることが好ましく、あらゆる方向に平面、曲面を持っていてもよい。成形体Bが有する曲面は、接触面cと同様の三次元曲面を含む形状であることができる。また、成形体Bが有する曲面は、接触面cと同一の三次元曲面であることが好ましい。さらに好ましくは、接触予定表面bは接触予定表面aと同一の三次元曲面であるとよい。また、成形体Bの製造方法にも制限はなく、例えば、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などによる製造方法が挙げられる。
【0033】
[接触面c]
本発明の接合体の製造方法において、接触予定表面aと接触予定表面bとを接触させて形成した接触面cは三次元曲面を含むものである。なお、接触面cとは、接触予定表面aと接触予定表面bを加熱前に接触して形成させた接触面である。三次元曲面とは平面を変形させることによって成立できない曲面、つまり、伸縮することなしに平面に展開できない曲面のことを指す。具体的には半球状面、球状面、球状面と平面を組合せた曲面、可展面と平面の組合せた曲面(但し、組み合わせた面が可展面となるものを除く。)、可展面と可展面の組合せた曲面(但し、組み合わせた面が可展面となるものを除く。)などが挙げられる。より詳しくは、例えば、球体や楕円体の表面を構成する曲面の一部分が挙げられる。
【0034】
本発明における赤外線照射機構を用いないで三次元曲面部分に赤外線を当てると、加熱した際の温度ムラが大きくなりやすい。接触面cは三次元曲面を持ち、接触予定表面aは加熱される面の曲率に応じて加熱効率が異なるためである。このため成形体Aは局部的に過剰に加熱される箇所が生まれ、結果として成形体Aの接触予定表面aの周辺で外観不良を起こしやすくなる。さらに、加熱される箇所が炭素繊維の重量平均繊維長が1mm〜100mmの範囲内にある不連続な炭素繊維が含まれた成形体Aの場合には、前述したようにスプリングバックが発生しやすくなる。
【0035】
接合体を製造するための、成形体Aと成形体Bの具体例としては、例えば図1のような場合が挙げられる。図1は大きな曲率を持つ平面状の成形体Aに、底面全体が三次元曲面でできた箱状の成形体Bを接合する場合である。図1において、接触予定表面aと接触予定表面bとは互いが隙間なく接触し、加圧されて三次元曲面有する形状で形成される接触面を介して接合される。図1の場合、接触予定表面aと接触予定表面bとは、一方がゆるやかな凸形状の三次元曲面を有し、他方が同様にゆるやかさを持つ凹形状の三次元曲面を有しており、接触予定表面aと接触予定表面bとは、互いに全面が重なり合って接触面cを構成する。
【0036】
このような接触面cを持つ成形体は、成形体同士を接触面で擦り合わせることが出来ない場合があるため、振動溶着を用いることが極めて困難である。したがって、本発明による赤外線加熱による溶着が極めて効果が大きい。また、三次元曲面を持つ接触面cが、溶着時の加圧方向に1mm以上の長さを有することが好ましい。接触面cが加圧方向に1mm以上の長さを有し、接触面の曲率や角度の変化が大きいほうが好ましい。
【0037】
本発明の製造方法は、接触面cが2000mm以上の面積を持つ場合に特に有効である。従来から知られている超音波を用いた溶着方法は、三次元形状(例えば三次元曲面)を有する2つの成形体同士の接触面でもホーンを製作できる範囲であれば溶着可能である。しかし、広い面積に均等に超音波振動を伝えるホーンを製作するのは難しく、接触面が2000mm以上の面積を持つ場合には、超音波溶着では安定した溶着が極めて難しい。このような超音波溶着では安定した溶着が難しい場合に、本発明の製造方法が非常に有効である。
【0038】
[赤外線照射機構]
本発明においては、上記成形体Aの接触予定表面aと上記成形体Bの接触予定表面bを接合する接合体の製造方法であって、接触予定表面aを選択的に照射できる赤外線照射機構を用いて加熱する。好ましくは、上記成形体Aの接触予定表面aを、成形体Bの接触予定表面bと共に加熱し、接合する製造方法であることである。
赤外線照射機構が照射する赤外線発生源の種類としては特に限定はないが、例えばレーザ、ハロゲンヒータ、カーボンヒータ、セラミックヒータなどが挙げられ、各ヒータから照射される赤外線はそれぞれ異なる赤外線波長域を持つ。赤外線はしばしばその波長により遠赤外線、中赤外線、近赤外線などに分類される。本発明の成形体Aには炭素繊維が含まれているため、上記のどの波長域でも赤外線吸収率が高く、ヒータの種類は制限されない。
【0039】
本発明における赤外線照射機構としては、例えば、以下のような形態から構成されるものを挙げることが出来る。このような赤外線照射機構を用いることにより、所望の接触予定表面aを選択的に加熱することができる。
(1)前記赤外線照射機構が、接触予定表面a以外の成形体Aの表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を有する機構
(2)成形体Aに赤外線受光部を設け、該赤外線受光部上に接触予定表面aを配置した機構
以下、上記(1)と(2)の機構について述べる。
【0040】
(接触予定表面a以外の成形体Aの表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を有する機構について)
本発明において、接触予定表面を選択的に赤外線照射できる赤外線照射機構を用いる好ましい例としては、赤外線照射機構が、接触予定表面a以外の成形体Aの表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を設けた機構である。
図2は、遮蔽体(図2中の2)を用い、接触予定表面a以外の成形体A(図2中の3)の表面に、赤外線が照射されるのを防ぐ遮蔽体を設けた機構を例示する模式図である。
【0041】
遮蔽体の材質については、赤外線を吸収および/または反射することが出来る材質であることが好ましい。すなわち遮蔽体は、赤外線を吸収する物質(赤外線吸収体)または赤外線を反射する物質(赤外線反射体)であることが好ましい。加工性、耐熱性、耐久性の観点からは金属が好ましく、例えば銅、アルミニウム、鉄、チタンなどが挙げられる。中でも熱伝導率が高く比重の小さいアルミニウムが特に好ましい。遮蔽体の厚みについては、赤外線発生源と成形体Aの間の空間に挿入して配置する必要があることから、0.1mm〜30mmの厚みであることが好ましい。より好ましい遮蔽体の厚みはは0.2〜10mmである。0.1mmよりも薄いと遮蔽体としての形状安定性が悪く、30mmよりも厚くなると赤外線発生源(例えば図2中の1)と成形体A(図2中の3)の間への出し入れが困難となる。
【0042】
また、遮蔽体の形状に制限はなく、図2中の2として示した板状だけでなく、成形体Aの接触予定表面aのみを遮蔽しないような形状に沿って、凹凸や曲面を持っていてもよい。これらの形状を組み合わせることにより、複雑な形状の成形体Aであっても、その接触予定表面aを選択的に赤外線にて加熱することができ、成形体Bと接合することができる。
遮蔽体の設置位置は、赤外線発生源と成形体Aの間で、成形体Aに直接接触していないことが好ましい。遮蔽体が成形体Aに接触してしない場合には、成形体Aの加熱が適正に行われ、接合可能な温度を保つことが容易になる。逆に遮蔽体と成形体Aが接触している場合には、遮蔽体に吸収された熱が成形体Aに伝わり、成形体Aにおいて接合に無関係な部分まで加熱される場合があり好ましくない。または、逆に、加熱された成形体Aから熱が遮蔽体に伝わり、遮蔽体から発散されることで成形体Aの加熱を阻害される場合があり好ましくない。
【0043】
接触予定表面aと遮蔽体との距離(例えば図2中のα)は0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。接触予定表面aと遮蔽体との距離が10mm以下であれば、赤外線発生源から発せられる赤外線が放射状に広がらない。故に、接触予定表面aを超えた広い領域が加熱されてしまう懸念が低くなる。一方、好ましい接触予定表面aと遮蔽体との距離の下限は0.1mmである。距離が0.1mm未満であると、距離の制御が困難である場合や、上述した遮蔽体と成形体Aが接触している状態と同じ現象が発生する場合があり好ましくない。
【0044】
接触予定表面aと赤外線発生源との距離(例えば図2中のβ)は1mm以上30mm以下であることが好ましい。接触予定表面aと赤外線発生源との距離が1mm以上であると、成形体Aのスプリングバックにより成形体Aがヒータに接触するおそれが少なくなる。接触予定表面aと赤外線発生源との距離が30mm以下であれば、赤外線を受ける接触予定表面aの面積当たりの受けるエネルギーが低下しない。その結果、成形体Aの接触予定表面aを加熱させるための時間が長くならない。接触予定表面aと赤外線発生源との距離は2mm以上15mm以下であることがより好ましく、3mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
また、接触予定表面aと赤外線発生源との距離(例えば図2中のβ)は、接触予定表面aと遮蔽体との距離(例えば図2中のα)の2倍超(β>2α)の関係を満たすことが好ましい。具体的には接触予定表面aと赤外線発生源との距離が5mmの場合、接触予定表面と遮蔽体との距離は2.5mmよりも小さく設定する必要がある。この関係を満たす事で、良好な外観と物性を持つ接合体を得ることができる。なお、接触予定表面が3次元曲面を有するため、場所によって接触予定表面aまでの距離は異なってくるが、当該距離は接触予定表面aまでの平均距離とする。
【0046】
[赤外線受光部]
本発明における、赤外線照射機構は、成形体Aに赤外線受光部を設け、該赤外線受光部上に接触予定表面aを配置した機構であってもよい。
図3は、成形体Aに赤外線受光部を設け、これに接触予定表面aを配置した場合の模式図である。赤外線受光部の材質については、赤外線吸収率が成形体Aと同じかそれよりも大きな値を有する材料を用いる方が好ましい。接合予定表面aが配置されている赤外線受光部のみを加熱することが容易になるからである。より好ましくは赤外線吸収率が成形体Aよりも大きい材料を用いることである。赤外線受光部の形態については、例えば繊維状、粉体状、シート状、ブロック状の成形体またはこれらの組合せなどが挙げられる。
【0047】
赤外線受光部の具体例としては、赤外線吸収率が成形体Aと同じか大きい材料を含んでいることであり、成形体Aと赤外線の吸収しやすさが同じかそれよりも赤外線を吸収しやすい構成・組成を有する材質を持った成形物を採用することができる。より具体的には赤外線を吸収しやすい物質を配合した成形体や、あるいは既に成形体中に配合されている材料の中で赤外線吸収率の高い材料の配合割合を増した成形体を挙げることができる。ここで赤外線吸収率の高い物質として炭素材料が挙げられ、熱可塑性樹脂に配合される材料としてカーボンブラックや炭素繊維を挙げることができる。すなわち、成形体Aにカーボンブラックを新たに配合させた成形体や、成形体Aよりも炭素繊維の含有量が多い成形体は赤外線受光部としての機能を有する。また本発明ではこのような赤外線受光部としての機能を有する成形体Dを用いる接合体の製造方法も好ましく採用することができる。以下、成形体Dについて説明する。
【0048】
[成形体D]
前記赤外線受光部は、赤外線吸収機能を有する炭素繊維と、熱可塑性樹脂とを含む成形体Dであってもよい。また、成形体Dは赤外線吸収機能をより高くするために炭素繊維以外の赤外線吸収剤を含んでいても良い。そのような赤外線吸収剤の具体例としては、炭素繊維以外の炭素材料であり、より具体的にはカーボンブラックを挙げることができる。
成形体Dは成形体Aと全く同じ構成のものであってもよいし異なっていても良い。構成は異なるものであることがより好ましい。成形体Dの炭素繊維の形態および熱可塑性樹脂の種類、炭素繊維の含まれる割合については、赤外線受光体としての機能を損なわない範囲であれば、特に限定はない。上述したように、赤外線吸収率の高い物質を含む場合には、短時間で効率的に赤外線受光部を加熱することができ、成形体D中に接触予定表面aを含んでいる場合には、接触予定表面aも効率よく加熱することができる。
【0049】
また、成形体Dは成形体Aと成形体Bの接合部分を構成する場合もあることから、接合に寄与する熱可塑性樹脂が一定量以上含まれていることも必要である。成形体Dの炭素繊維の体積割合Vfdは5〜70%であることが好ましく、10〜60%であることがより好ましく、20〜50%が更に好ましい。Vfdが5%以上であると、赤外線照射機構から照射される赤外線を効率良く吸収することができ、Vfdが70%以下であることで、接触面に熱可塑性樹脂が溶着に十分な量が存在するため高い接合強度を得ることができる。ここでVfdはVfaと同様に、成形体Dに含まれる炭素繊維について以下の数式で表される値である。
Vfd=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積)
更に安定した溶着を行うためには成形体Dの炭素繊維の体積割合Vfdと成形体Aの炭素繊維の体積割合Vfaの比は下記式を満たすことが好ましい。
0.5≦Vfd/Vfa≦1.0
Vfd/Vfaを1.0以下とすることで成形体Dは冷めにくく加熱時の熱量を保持しやすいこと、また溶着するための熱可塑性樹脂が多いほうが溶着は安定しやすい。また、Vfd/Vfaが0.5以上あることで赤外線吸収率を高く保つことができ効率よく溶着が実施できる。
【0050】
なお、成形体Dの炭素繊維の体積割合Vfdは、前述したVfaと同様の方法で計算することができる。成形体Dの成形体A(接触予定表面a)への取付け方に制限はないが、接着、溶着などの方法が用いられる。溶着にて取付ける場合、成形体Dと成形体Aに含まれる熱可塑性樹脂は相溶性を持っていることが好ましい。成形体Dと成形体Aに含まれる熱可塑性樹脂は同一種類の樹脂であることがより好ましい。更に成形体Dは成形体Aの成形と同時に設けて成形体Aと一体化されていてもよい。
【0051】
[接合方法]
(接触予定表面aの加熱)
本発明の接合体は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む成形体Aの接触予定表面aを加熱し、当該加熱した接触予定表面aと、熱可塑性樹脂を含む成形体Bの接触予定表面bとを接触することにより、成形体Aと成形体Bを接合して得られる。加熱時間は接触予定表面aの加熱温度が十分な温度域になるまでの時間であることが好ましい。用いる赤外線熱源によっても変化するが、具体的には1秒〜3分であることが好ましい。より好ましくは5秒〜1分である。
【0052】
具体的には、成形体Aを準備し、成形体Aの接触予定表面aを赤外線発生源に接近させて、接触予定表面aに赤外線を照射して加熱する方法が好ましい。接触予定表面aを十分に加熱した後、赤外線発生源は成形体Aから遠ざけたり、照射を停止したり、赤外線の照射を遮断したりして、接触予定表面aに赤外線発生源からの照射光が当たらないようにして加熱を終了する。
ここで、接触予定表面aの加熱温度については、成形体に含まれる熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合には、接合のし易さと樹脂の劣化を考慮すると融点+20〜100℃の範囲であることが好ましい。また、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度+10℃〜+150℃の範囲であることが好ましい。
【0053】
なお、成形体Bの接触予定表面bの加熱方法については、例えば、成形体Aと同様に接触前にあらかじめ赤外線照射機構を利用して加熱してもよい。また、別途、熱源となる赤外線ヒータや熱板溶着を用いて直接加熱方法で加熱してもよい。接触予定表面aと接触予定表面bは同時に加熱してもよいし、順次加熱してもよい。場合によっては、接触予定表面aのみ加熱してもよい。その場合、接触予定表面bは加熱された接触予定表面aと接触させることで加熱するものとなる。
【0054】
(接触工程)
加熱された接触予定表面aと接触予定表面bを接触する。加熱された接触予定表面aと接触予定表面bを接触する時期は、接触予定表面aのみを加熱し接触予定表面bを加熱していない場合は、接触予定表面aの加熱終了5秒前から加熱終了後10秒以内である。好ましくは接触予定表面aの加熱終了直後から加熱終了後5秒以内である。また接触予定表面aおよび接触予定表面bを共に加熱する場合は、接触予定表面aの加熱終了時または接触予定表面bの加熱終了時の遅い方の時点の10秒前から加熱終了後15秒以内である。好ましくは加熱終了の遅い方の時点の2秒前から加熱終了後10秒以内である。
【0055】
(加圧工程)
上記で加熱された成形体の接触予定表面を接触させた後、好ましくは互いに合わせて圧力を加えると良い。加圧する方法は、接触面を接合するに当たり十分に加圧することが出来れば特に制限は無い。加圧方法として、具体的には、油圧、空圧を利用したシリンダによる加圧、サーボモータを利用した加圧方法などがある。加圧力は接触面cの面積に対して0.1MPa〜10MPaの範囲が好ましい。さらに好ましくは0.5MPa〜5.0MPaの範囲が好ましい。0.1MPaより高い圧力では接触面を十分に加圧することが出来、十分な接合の強度が得られる。また、10MPaよりも低い圧力では加圧装置の容量が大きくならず、経済的に有利である。
【0056】
加圧はそれぞれの接触予定表面aと接触予定表面bに存在する熱可塑性樹脂が固化するまで圧力を加え続ける。具体的には、圧力をかけ続ける時間は1秒以上60秒以下が好ましいが、より好ましくは3秒以上40以下である。1秒よりも長いと熱可塑性樹脂の固化が十分なため十分な接合強度が得られる。60秒よりも短いと接合体の製造時間、すなわち接合サイクルが長くならず、経済的に有利である。所定時間の加圧の後、接合体は冷却された後に得ることができる。上記接触工程と加圧工程とは所望の金型内で行うことが出来る。その場合、加圧工程後、金型を冷却された後で金型内から取り出すことにより接合体を得る。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(成形体Aの試験片A1の作成)
炭素繊維束(東邦テナックス製テナックス(登録商標)STS40 24K、平均繊維径7μm)を重量平均繊維長15mmになるようにカットした。この炭素繊維束を金型内にランダムに分散させて配置し、次に、炭素繊維の体積割合Vfaが35%になるよう、ナイロン6フィルム(ユニチカ株式会社製エンブレム(登録商標)標準グレード、厚み25μm)を金型にセットした。用いた金型は球面の一部を切り取った形状であり、その曲率半径は5000mm、成形体が得られる曲面部分を平面に投影した時のサイズが200mm×200mmであり、板厚2.5mmとなる球状の曲面を持ったシート状の成形体が得られる形状とした。その後、金型を10MPaの圧力下で260℃の温度で10分間保持し、最後に金型を冷却して成形体を得た。この成形体から長さ100mm×幅30mm×厚み2.5mmの板を切り出し試験片A1とした(図4中の103)。図4中のX方向、Y方向、Z方向がそれぞれ長さ、幅、厚みに該当する。
得られた試験片A1は、炭素繊維が面内方向にランダムに分散しており、かかる方向において実質的に等方性である。成形体の室温での熱伝導率はレーザフラッシュ法で測定した結果2.0W/K・mであった。
【0059】
(成形体Aの試験片A2〜A4の作成)
上述した成形体Dを成形で一体化するための凹部を設けた金型を使用する以外は試験片A1と同じ方法で成形体Aの試験片A2を得た。凹部は試験片A2の長手方向に端部から50mmの位置を中心に長さ5mm、試験片A2の幅方向に幅30mm、試験片A2の厚み方向に高さ2mmの形状とした。凹部の深さ(成形体Dの高さに対応する)に関しては、必要な深さに応じて金型入れ子により適宜調整した。また、凹部によって形成されるのは赤外線受光部であるブロック状の成形体Dであり、試験片A2の接触予定表面aは、赤外線受光部である成形体Dの、板厚方向から見た表面である(図10中の107)。成形体Aの炭素繊維の体積割合Vfaが35%、成形体Dに該当する部分の炭素繊維の体積割合Vfdが33%となるように、炭素繊維束の配置、ナイロン6フィルムの配置等を調整した。また、金型における凹部の深さを1mm、0.5mmとして、成形体Dの高さが異なる試験片A3、A4を作成した。
【0060】
(試験片A5の作成)
重量平均繊維長を30mmとしたこと以外は、試験片A2と同様にして試験片A5を作成した。
【0061】
(成形体Bの試験片B1の作成)
ナイロン6(ユニチカ製ユニチカナイロン、A1030(商品名))を用い、型締め力100tの射出成型機を用いて成形体を得た。使用した金型は長さ100mm×幅100mm×厚み5mmの成形体が得られる金型を用いた。得られた成形体から長さ100mm×幅30mm×厚み5mmの板状成形体を切り出し、30mm幅×5mm厚の片方の端面(図5中の105)を試験片A1〜A5の曲率に沿うように曲面に切削加工したものを試験片B1とした。得られた試験片B1の熱伝導率をレーザフラッシュ法で測定した結果0.21W/K・mであった。
【0062】
(成形体Dの試験片D1、D2の作成)
成形体Dの一例であるブロック状の試験片D1、D2は、以下に示す操作により得た。金型入れ子を調整により板厚2mmとすること、および、繊維体積割合(Vfd)を35%、42%とすること以外は試験片A1と同様の方法で曲面を持ったシート状の成形体を得た。その後、これを長さ5mm×幅30mmの短冊状にカットしたものをそれぞれ試験片D1、D2とした。
【0063】
(試験片D1、D2の溶着方法)
赤外線受光部である試験片D1、D2を試験片A1に溶着するために、熱板溶着を用いた。まず、成形体と同じ曲率をもつヒータブロックを作成した。次に、このヒータブロックを300℃に加熱した状態で試験片A1および試験片D1(ならびに試験片A1および試験片D2)を10秒間押付けた後、直ちに、加圧治具で100Nの力で5秒間加圧し、十分冷却した後にサンプルを取出した。試験片D1、D2を設けた場所は、試験片A1の長手方向に端部から50mmの位置を中心とし、長さ5mm、試験片A1の幅方向に30mm、試験片A1の厚み方向に高さ2mmとなる場所とした。この場所に、D1(またはD2)を溶着し、試験片A2と同様の形状となるようにした。溶着によって作成した試験片をそれぞれ「A1+D1」、「A1+D2」と表現する。
【0064】
(各試験片を用いた溶着および評価方法)
赤外線発生源による試験片Aおよび試験片Bの加熱はそれぞれ図4、図5に示したように配置した。この時、試験片Aの加熱範囲の目標は試験片長手方向(図4中で示すX方向)に5mm×試験片幅方向(図4中で示すY方向)に30mmの範囲とし、この範囲を、接触予定表面aとした。すなわち、試験片A2〜A7、A1+D1、およびA1+D2の接触予定表面aは、成形体Dの、板厚方向から見た表面のみが、加熱の目標範囲である(図10中の107)。試験片Bは30mm幅×5mm厚みの端面のうち、試験片Aの曲率に沿うように切削加工した曲面(図5中の105)を加熱し、切削加工した曲面(図5中の105)を接触予定表面bとした。
【0065】
赤外線発生源はハロゲンヒータ(ウシオ電機社製 QIR200V(商品名))を用いた。加熱条件として、赤外線ヒータの出力、赤外線ヒータと成形体Aの接触予定表面aとの距離、赤外線ヒータと成形体Bの接触予定表面bとの距離、および赤外線ヒータの照射時間を適宜調整した。成形体を加熱する温度の目標は、加熱された表面が成形体を構成している熱可塑性樹脂の融点+60℃になった時点とし、その温度に到達した時点で加熱終了とした。
加熱後、成形体Aの接触予定表面aと成形体Bの接触予定表面bを接触させて加圧した。当該加圧はエアシリンダにより接触面に1MPaの圧力が加わるようにし、20秒間加圧した後、接合体を取り出した。
【0066】
接触予定表面aの周辺の外観の評価は、試験片を加熱した後の加熱痕を目視で観察することにより評価した。観察したのは、図8および図9中の106で示した部分である。評価基準は、以下の要領で試験片の長手方向の加熱痕の幅とした。
Excellent(外観良好):試験片の長手方向の加熱痕の幅が5mm(加熱目標幅)+1mm未満
Good(外観可):試験片の長手方向の加熱痕の幅が5mm(加熱目標幅)+1mm以上2mm以下
Bad(外観不良):試験片の長手方向の加熱痕の幅が5mm(加熱目標幅)+2mmより大きい
【0067】
また、スプリングバックの評価は、接触予定表面aの周辺での板厚方向の厚みの増加量を指標とした。厚みを測定したのは、上記と同様、図8および図9中の106で示した部分である。
Excellent:試験片表面より0.5mm未満
Good:試験片表面より0.5mm以上1mm未満
Bad:試験片表面より1mm以上
【0068】
[実施例1]
試験片A2を、遮蔽体を用い赤外線ヒータにより加熱するとともに、試験片B1を加熱した。このとき、ハロゲンヒータの出力は975Wに設定し、赤外線ヒータと接触予定表面aとの距離(図2中のβ)を6mm、加熱時間を10秒とした。また、遮蔽体としては、0.5mm厚みのアルミニウム板を接触予定表面a表面から2mmの距離(図2中のα)に設置し、接触予定表面a以外に照射する赤外線を反射させた。
加熱した試験片A2と試験片B1をただちに接触させ、所定の前記圧力および温度で加圧後、室温まで冷却し図6に示される接合体を得た。接触面cには三次元曲面である、球面の一部の形状が含まれていた。接触予定表面aの周辺の外観およびスプリングバックの有無を確認すると、外観は良好であり、スプリングバックは見られなかった。結果を表1、表2に示した。なお、試験片A2の接触予定表面aは上述した通り、赤外線受光部である成形体Dの、板厚方向から見た表面である(図10中の107)。
【0069】
[実施例2〜実施例8、比較例1]
実施例1と同様に、表1、表2に記載した条件でそれぞれの試験片を用いて加熱および接合し、室温まで冷却後、得られた接合体の評価を実施した。結果を表1、表2に示した。なお、成形体Dを設けていない試験片を用いた場合に得られた接合体を図7に示した(実施例2、比較例1)。更にその場合の接触予定表面aの例を図11中の107で示した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【符号の説明】
【0072】
1.赤外線ヒータ(赤外線発生源)
2.遮蔽体
3.成形体A
4.成形体B
5.赤外線受光部
103.試験片A
104.試験片B
105.成形体Aの曲率に沿うように切削加工した曲面
106.外観とスプリングバックを評価した範囲
107.接触予定表面aの例
α.接触予定表面aと遮蔽体との距離
β.接触予定表面aと赤外線発生源との距離

【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際調査報告】