(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2017183243
(43)【国際公開日】20171026
【発行日】20180816
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20180720BHJP
【FI】
   !H02M3/00 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】2018512780
(21)【国際出願番号】JP2017002531
(22)【国際出願日】20170125
(31)【優先権主張番号】2016085837
(32)【優先日】20160422
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
【住所又は居所】三重県四日市市西末広町1番14号
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
【住所又は居所】三重県四日市市西末広町1番14号
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛史
【住所又は居所】三重県四日市市西末広町1番14号 株式会社オートネットワーク技術研究所内
(72)【発明者】
【氏名】阿部 武徳
【住所又は居所】三重県四日市市西末広町1番14号 株式会社オートネットワーク技術研究所内
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB15
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FD32
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG12
5H730FG24
(57)【要約】
出力電流が大きく変化する場合に高い応答性でフィードバック制御を行うことができる電源装置を、消費電力をより抑え得る構成で実現する。
電源装置(1)は、電圧変換部(3)から出力される電流の電流変動率ΔIrを検出する変動率検出部(32)と、変動率検出部(32)で検出された電流変動率ΔIrが大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する処理速度決定部(33)と、予め設定された目標値Ita,Vtaと、電圧変換部(3)からの電流値Iout、電圧値Voutとに基づいて電圧変換部(3)に与えるPWM信号のデューティを演算し、演算で得られたデューティに設定されたPWM信号を電圧変換部(3)に出力する制御部(31)とを備える。制御部(31)は、処理速度決定部(33)で決定された処理速度で動作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子がPWM信号に応じてオンオフ動作することにより、入力された電圧を昇圧又は降圧して出力する電圧変換部と、
前記電圧変換部から出力される電流の変動率を検出する変動率検出部と、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する処理速度決定部と、
前記処理速度決定部で決定された前記処理速度で動作する構成をなし、予め設定された目標値と前記電圧変換部からの出力値とに基づいて前記電圧変換部に与えるPWM信号のデューティを演算するとともに、演算で得られたデューティに設定されたPWM信号を前記電圧変換部に出力するフィードバック制御を行う制御部と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記処理速度決定部は、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が所定の第1閾値より大きく、且つ前記電圧変換部から出力される電流の電流値が所定の第2閾値より大きい場合に前記処理速度を第1処理速度に決定し、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が前記第1閾値以下である場合、又は前記電圧変換部から出力される電流の電流値が前記第2閾値以下である場合に前記処理速度を第1処理速度より遅い第2処理速度に決定する請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記処理速度決定部は、前記処理速度を前記第2処理速度から前記第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、前記第1処理速度から前記第2処理速度への切り替えを禁止し、前記第2処理速度から前記第1処理速度に切り替えてから前記所定時間が経過した後、前記変動率検出部で検出された前記変動率が前記第1閾値以下となった場合又は前記電圧変換部から出力される電流の電流値が前記第2閾値以下となった場合に前記第1処理速度から前記第2処理速度へ切り替える請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出力電圧を所望の目標電圧で安定化させようとする電源装置の例として、例えば特許文献1のような技術が提案されている。特許文献1の電源制御装置は、電源制御対象装置に供給される出力電圧と基準電圧との差分情報に基づき、出力電圧が基準電圧と等しくなるようにデジタル制御するデジタル制御回路部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5175642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電源装置は、出力を監視しつつフィードバック制御を行い、出力電圧又は出力電流を目標値に近づけるように安定化させるが、電源装置の出力は負荷状態の影響を受け、負荷の状態が大きく変化する場合には出力電圧や出力電流が大きく変動しやすいという事情がある。このように負荷状態によって出力が大きく変動する場合にフィードバック制御を行う制御回路の処理速度が遅いと出力の安定性が不十分となる懸念があるため、制御回路は負荷状態の変化に起因する出力変動を想定した処理速度で動作可能となっていることが望ましいといえる。しかし、出力変動を想定した高い処理速度で制御回路を動作させ続けると制御回路の消費電力が増大するという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1では、上記問題の参考となる技術が提案されている。この特許文献1の電源制御装置は、対象(電源制御対象装置)の内部に設けられた機能ブロックの負荷が変化する場合にアクティブに設定して電源制御回路に入力し、電源制御対象装置の負荷の変化によって生じる出力電圧の変動を抑制する。一方で、電源制御対象装置の負荷が変化しない場合には、プロセッサ動作クロックを停止させ、デジタル制御回路部のプロセッサを停止させることで、低消費電力を実現する。具体的には、対象(電源制御対象装置)から発せられる制御信号が電源制御装置に入力されるようになっており、電源制御装置は、この制御信号の遷移に応答してデジタル制御回路部内のプロセッサが動作する。そして、電源制御装置内においてデジタル制御回路部の出力を監視し、対象(電源制御対象装置)内の負荷が変化しないと判定されたときにデジタル制御回路部内のプロセッサの動作を停止させる構成となっている。
【0006】
しかし、特許文献1の電源制御装置は、この電源制御装置による出力電圧が印加される対象(電源制御対象装置)から出力経路(出力電圧が印加される電力線)とは別の経路で制御信号(機能ブロック・クロックアクティブ信号)が送信される構成が前提のものである。つまり、出力電圧が印加される電力線とは別の経路でこのような制御信号が出力される構成のものにしか適用できない。しかも、この制御信号は、出力電圧又は出力電流の変化に対してある程度の遅れがあるため、出力電圧又は出力電流の変化を制御信号から把握することは、フィードバックの遅延を招くことになる。
【0007】
本発明は上記した事情に基づいてなされたものであり、出力電流が大きく変化する場合に高い応答性でフィードバック制御を行うことができる電源装置を、消費電力をより抑え得る構成で実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、
スイッチング素子がPWM信号に応じてオンオフ動作することにより、入力された電圧を昇圧又は降圧して出力する電圧変換部と、
前記電圧変換部から出力される電流の変動率を検出する変動率検出部と、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する処理速度決定部と、
前記処理速度決定部で決定された前記処理速度で動作する構成をなし、予め設定された目標値と前記電圧変換部からの出力値とに基づいて前記電圧変換部に与えるPWM信号のデューティを演算するとともに、演算で得られたデューティに設定されたPWM信号を前記電圧変換部に出力するフィードバック制御を行う制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
この電源装置は、電圧変換部から出力される電流の変動率を変動率検出部によって検出し、処理速度決定部は、変動率検出部で検出された電流の変動率が大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する。そして、制御部は、処理速度決定部で決定された処理速度で動作する。この構成では、負荷変動によって出力電流の変動率が相対的に大きくなった場合に、制御部の処理速度を相対的に大きくすることができる。つまり、出力電流が大きく変動する場合には処理速度を大きくすることで目標値への追従性を高めることができ、負荷変動等によって安定性が低下することを確実に抑制することができる。しかも、電圧変換部から出力される電流の変動率に基づいて処理速度を決定しているため、処理速度決定部によって処理速度を決定する上で、出力電流の変動状態がより迅速に反映されやすくなり、フィードバック制御の応答性を高めることができる。一方、出力電流の変動率が相対的に小さい場合には、制御部の処理速度を相対的に小さくすることができる。つまり、出力電流の変動率が相対的に小さく、安定性が損なわれにくい状況下では制御部の処理速度を抑え、消費電力の低減を図ることができる。
【0010】
よって、出力電流が大きく変化する場合に高い応答性でフィードバック制御を行うことができる電源装置を、消費電力をより抑え得る構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の電源装置を概略的に例示するブロック図である。
【図2】実施例1の電源装置における処理速度決定部で実行されるウェイクアップ信号及び演算速度変更要求信号の制御の流れを例示するフローチャートである。
【図3】実施例1の電源装置における制御部で実行されるフィードバック制御の流れを例示するフローチャートである。
【図4】実施例1の電源装置における出力電流の変化の例と、出力電流に応じたウェイクアップ信号、演算速度変更要求信号、マイコンの処理速度、マイコンの変化の例を概略的に示すタイミングチャートである。
【図5】実施例1の電源装置が適用される車載システムを例示するブロック図である。
【図6】実施例1の電源装置が図5の車載システムに適用された場合の制御の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明の望ましい例を示す。
処理速度決定部は、変動率検出部で検出された変動率が所定の第1閾値より大きく、且つ電圧変換部から出力される電流の電流値が所定の第2閾値より大きい場合に処理速度を第1処理速度に決定し、変動率検出部で検出された変動率が第1閾値以下である場合、又は電圧変換部から出力される電流の電流値が第2閾値以下である場合に処理速度を第1処理速度より遅い第2処理速度に決定する構成であってもよい。
【0013】
出力電流が相対的に小さいときよりも出力電流が相対的に大きいときのほうが負荷変動等に起因する出力変動の影響がより問題となりやすい。本構成では、出力電流が相対的に大きく且つ出力電流が相対的に大きい状況下では処理速度を優先して目標値への追従性を高め、上記問題をより生じにくくすることができる。逆に、出力電流の変動率が相対的に大きくても、出力電流が相対的に小さい状況下では処理速度を抑えることで消費電力の低減を優先させることができる。
【0014】
処理速度決定部は、処理速度を第2処理速度から第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、第1処理速度から第2処理速度への切り替えを禁止し、第2処理速度から第1処理速度に切り替えてから所定時間が経過した後、変動率検出部で検出された変動率が第1閾値以下となった場合又は電圧変換部から出力される電流の電流値が第2閾値以下となった場合に第1処理速度から第2処理速度へ切り替える構成であってもよい。
【0015】
このように、処理速度を第2処理速度から第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、第1処理速度から第2処理速度への切り替えを禁止することで、相対的に低い処理速度(第2処理速度)に切り替わる頻度を少なくすることができ、頻繁に第2処理速度に切り替わることに起因する追従性の低下を防ぐことができる。
【0016】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
【0017】
図1で示す電源装置1は、例えば、車両に搭載される車載用電源装置として構成されている。電源装置1は、制御装置2、電圧変換部3、電流検出部22、電圧検出部24などを備え、入力側導電路7Aに印加された直流電圧(入力電圧)を降圧又は昇圧した出力電圧を出力側導電路7Bに出力する機能を有する。
【0018】
入力側導電路7Aは、第1電源部91によって直流電圧が印加される一次側の電力線として構成され、第1電源部91の高電位側端子に電気的に接続されている。第1電源部91は、例えば、鉛蓄電池によって構成されている。なお、第1電源部91が接続される入力側導電路7Aには、オルタネータなども接続されている。
【0019】
出力側導電路7Bは、第2電源部92よって直流電圧が印加される二次側の電力線として構成され、第2電源部92の高電位側端子に電気的に接続されている。第2電源部92は、例えば、リチウムイオン電池、電気二重層コンデンサなどの蓄電装置によって構成されている。
【0020】
電圧変換部3は、スイッチング素子(例えばMOSFET)がPWM信号に応じてオンオフ動作することにより、入力側導電路7Aに印加された入力電圧を昇圧又は降圧して出力側導電路7Bに出力する構成をなし、例えば同期整流方式のDCDCコンバータとして構成されている。この電圧変換部3は、例えば、入力側導電路7Aに印加された入力電圧がPWM信号で制御されるスイッチング素子のオンオフ動作によって昇圧されて出力側導電路7Bに出力される昇圧型コンバータであってもよく、入力側導電路7Aに印加された入力電圧がPWM信号で制御されるスイッチング素子のオンオフ動作によって降圧されて出力側導電路7Bに出力される降圧型コンバータであってもよい。或いは、入力側導電路7Aに印加された入力電圧を昇圧して出力側導電路7Bに出力するモード(昇圧モード)と、入力側導電路7Aに印加された入力電圧を降圧して出力側導電路7Bに出力するモード(降圧モード)とを切り替えて行う昇降圧型コンバータであってもよい。或いは、導電路7Aに印加された入力電圧を昇圧又は降圧して導電路7Bに出力するモードと、導電路7Bに印加された入力電圧を昇圧又は降圧して導電路7Aに出力するモードとを切り替えて行う双方向型の昇降圧型コンバータであってもよい。
【0021】
以下の説明では、これらのうちの代表例として、導電路7Aに印加された入力電圧を昇圧して導電路7Bに出力する昇圧モードと、導電路7Bに印加された入力電圧を降圧して導電路7Aに出力する降圧モードとを切り替えて行う双方向型の昇降圧型コンバータの例として説明し、図1等では、導電路7Aに印加された入力電圧を昇圧して導電路7Bに出力するモード(昇圧モード)に着目して説明する。但し、あくまで例示であり、この例に限定されないことは勿論である。
【0022】
電流検出部22は出力側導電路7Bに流れる電流を検出して電圧変換部から出力される電流の大きさに対応する値を出力することができる。詳しくは、電流検出部22は、出力側導電路7Bに流れる電流に対応する電圧値を検出値として出力する構成であれば良い。例えば、電流検出部22は、出力側導電路7Bに介在する抵抗器と差動増幅器とを具備し、抵抗器の両端電圧が差動増幅器に入力され、出力側導電路7Bを流れる電流によって抵抗器に生じた電圧降下量が差動増幅器で増幅され、検出値として出力されるようになっている。
【0023】
電圧検出部24は出力側導電路7Bにおける出力電圧を検出して出力電圧の大きさに対応する値を出力することができる。詳しくは、電圧検出部24は出力側導電路7Bの電圧を反映した値(例えば、出力側導電路7Bの電圧そのもの、或いは分圧値等)を出力する。
【0024】
以下、電流検出部22から出力される検出値によって特定される出力側導電路7Bの電流値を電流値Ioutといい、電圧検出部24から出力される検出値によって特定される出力側導電路7Bの電圧値を電圧値Voutという。
【0025】
制御装置2は、図1に示すように、制御部31、変動率検出部32、処理速度決定部33を有している。
【0026】
制御部31は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を具備している。制御部31は処理部30の機能と、駆動部39の機能を有している。制御部31は、予め設定された目標値(目標値Ita、目標値Vta)と電圧変換部3からの出力値(電流値Iout、電圧値Vout)とに基づいて電圧変換部3に与えるPWM信号のデューティを演算するとともに、演算で得られたデューティに設定されたPWM信号を電圧変換部3に出力する機能を有する。この制御部31は、後述する処理速度決定部33で決定された処理速度で動作するように構成されている。
【0027】
処理部30は、例えばCPUを有してなり、第1閾値である電流変動率閾値ΔIt1、低出力電流閾値It1、第2閾値である高出力電流閾値It2、電圧変換部3から出力される電流の目標値Ita(以下、目標値Itaという)、及び電圧変換部3から出力される電圧の目標値Vta(以下、目標値Vtaという)を処理する部分である。目標値Ita、目標値Vtaは、制御部31において予め設定された値である。
【0028】
駆動部39は、電圧変換部3から出力される電流及び電圧が所定の大きさになるようにフィードバック制御を行う。詳しくは、出力側導電路7Bの電流値Iout及び電圧値Voutと、目標値Ita及び目標値Vtaとに基づき、公知のPID制御方式によるフィードバック演算によって制御量(以下、デューティという)を決定する。そして、決定したデューティのPWM信号を、電圧変換部3のスイッチング素子に対して出力する。
【0029】
変動率検出部32は、電圧変換部3から出力される電流の変動率を検出する機能を有する。変動率検出部32は、電流検出部22から出力された電流値Ioutを監視し、出力側導電路7Bに流れる電流の所定時間当たりの電流変動率ΔIr(以下、電流変動率ΔIrという)を演算して求めて出力することができる。つまり、変動率検出部32は電圧変換部3から出力される電流の電流変動率ΔIrを検出することができる。
【0030】
処理速度決定部33は、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrが大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する機能を有する。この処理速度決定部33は、電流検出部22の検出値によって特定される電流値Ioutと変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrと、処理部30で把握される電流変動率閾値ΔIt1、低出力電流閾値It1、及び高出力電流閾値It2に基づいて処理速度を決定する。具体的には、処理速度決定部33は、電流値Iout、電流変動率ΔIr、電流変動率閾値ΔIt1、低出力電流閾値It1、高出力電流閾値It2に基づいて後述するウェイクアップ信号Rsや演算速度変更要求信号RoのそれぞれをローレベルL又はハイレベルHのいずれかの状態にして出力する機能を有する。
【0031】
ウェイクアップ信号Rsは、例えば制御部31をスリープ状態や低速状態に切り替える際に用いられる。演算速度変更要求信号Roは、例えば駆動部39における処理速度の変更に用いられる。
【0032】
次に、処理速度決定部33の動作について、図2等を参照しつつ説明する。
図2で示す判定処理は、短時間毎に処理速度決定部33で行われる周期処理である。処理速度決定部33は、所定の開始条件の成立時(例えば、イグニッション信号がオフからオンに切り替わった時など)に図2の制御を開始し、その後、図2の制御を周期的に実行する。
【0033】
処理速度決定部33は、図2の判定処理の開始後、まず、検出部20の電流検出部22から出力された電流値Iout、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIr、電流変動率閾値ΔIt1、低出力電流閾値It1、高出力電流閾値It2を取得する(ステップS1)。なお、電流変動率閾値ΔIt1、低出力電流閾値It1、高出力電流閾値It2は、図2の処理を実行するプログラムの一部として記憶されていてもよく、別途メモリ等に記憶されたものをステップS1の処理で取得してもよい。
【0034】
処理速度決定部33は、ステップS1の後、ウェイクアップ信号Rsがハイレベルであるか否かを判断する(ステップS2)。
【0035】
処理速度決定部33は、ステップS2にてウェイクアップ信号Rsがハイレベルでないと判断した場合、電流検出部22の検出値によって把握される電流値Ioutが低出力電流閾値It1より大きいか否かを判断する(ステップS3)。処理速度決定部33は、ステップS3において電流値Ioutが低出力電流閾値It1より大きいと判断した場合、ウェイクアップ信号Rsをハイレベルに設定し(ステップS4)、その後、図3の判定処理を終了し、再びステップS1から処理を実行する。処理速度決定部33は、ステップS3において電流値Ioutが低出力電流閾値It1以下と判断した場合、図3の判定処理を終了し、再びステップS1から処理を実行する。
【0036】
このように、処理速度決定部33は、電流値Ioutが低出力電流閾値It1以下である間は、ウェイクアップ信号Rsをローレベルで維持し、電流値Ioutが低出力電流閾値It1より大きい場合、ウェイクアップ信号Rsをハイレベルで維持する。
【0037】
なお、制御部31は、所定のスリープ条件が成立した場合(例えば、電流値Ioutが低出力電流閾値It1以下となった場合、又は電流値Ioutが低出力電流閾値It1以下となった状態で所定条件が成立した場合など)に、ウェイクアップ信号Rsがローレベルになり、このときには、制御部31がスリープ状態に切り替わるようになっている。スリープ状態のときには、制御部31の処理速度を後述の第2処理速度より遅い第3処理速度に設定する。また、スリープ状態のときに制御部31の大部分の機能を停止させてもよい。
【0038】
処理速度決定部33は、ステップS2にてウェイクアップ信号Rsがハイレベルであると判断した場合、ステップ5の処理を行い、演算速度変更要求信号Roがハイレベルであるか否かを判断する。
【0039】
処理速度決定部33は、ステップ5にて演算速度変更要求信号Roがハイレベルであると判断した場合、ステップS6の処理を行い、演算速度変更要求信号Roがハイレベルに設定されてから所定時間(例えば、10ms)が経過したか否か(即ち、演算速度変更要求信号Roがハイレベルで維持された時間が所定時間を超えたか否か)を判断する。
【0040】
処理速度決定部33は、ステップS6において、演算速度変更要求信号Roがハイレベルに設定されてからの経過時間が所定時間に達していないと判断した場合、ステップS7の処理を行い、演算速度変更要求信号Roをハイレベルに設定し、その設定状態で処理を終了する。ステップS7の処理の後には、再びステップS1から処理を実行する。
【0041】
処理速度決定部33は、ステップS5において演算速度変更要求信号Roがハイレベルでないと判断した場合、又は、ステップS6において、演算速度変更要求信号Roがハイレベルに設定されてからの経過時間が所定時間に達したと判断した場合、ステップS8の処理を行い、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1より大きいか否かを判断する。
【0042】
処理速度決定部33は、ステップS8にて電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1より大きいと判断した場合、ステップS9の処理を行い、電圧変換部3から出力される電流値Ioutが高出力電流閾値It2よりも大きいか否かを判断する。そして、処理速度決定部33は、ステップS9にて電流値Ioutが高出力電流閾値It2より大きいと判断した場合、ステップS7の処理を行い、演算速度変更要求信号Roをハイレベルに設定し、その設定状態で処理を終了する。ステップS7の処理の終了後は、再びステップS1から処理を実行する。
【0043】
処理速度決定部33は、ステップS8にて電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1以下であると判断した場合、又はステップS9にて電流値Ioutが高出力電流閾値It2以下であると判断した場合、ステップS10の処理を行い、演算速度変更要求信号Roをローレベルに設定し、その設定状態で処理を終了する。ステップS10の処理の終了後は、再びステップS1から処理を実行する。
【0044】
このように、処理速度決定部33は、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1(第1閾値)より大きく、且つ電圧変換部3から出力される電流の電流値Ioutが高出力電流閾値It2(第2閾値)より大きい場合に演算速度変更要求信号Roをハイレベルに設定し、処理速度を第1処理速度に決定する。一方、処理速度決定部33は、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1(第1閾値)以下である場合、又は電圧変換部3から出力される電流の電流値Ioutが高出力電流閾値It2(第2閾値)以下である場合に演算速度変更要求信号Roをローレベルに設定し、処理速度を第1処理速度より遅い第2処理速度に決定する。
【0045】
次に、制御部31で実行されるフィードバック制御について、図3等を参照しつつ説明する。
図3で示すフィードバック制御は、制御部31によって実行される制御であり、周期的に繰り返される処理である。制御部31は、所定の開始条件の成立時(例えば、イグニッション信号がオフからオンに切り替わった時など)に図3の制御を開始し、その後、図3の制御を周期的に実行する。
【0046】
制御部31は、電流検出部22からの入力値(検出値)及び電圧検出部24からの入力値(検出値)によって電流値Iout及び電圧値Voutを把握する(ステップS11)。なお、偏差算出部34,35は、制御部31の一部機能をブロックとして示しており、偏差算出部34が電流値Ioutを取得し、偏差算出部35が電圧値Voutを取得する。
【0047】
制御部31は、ステップS11の後、目標値Ita、目標値Vtaを把握する(ステップS12)。図1の例では、偏差算出部34が目標値Itaを取得し、偏差算出部35が目標値Vtaを取得する。
【0048】
制御部31は、ステップS12の後、前回の処理で設定されたデューティ(即ち、前回のステップS20で設定されたデューティ)を取得する(ステップS13)。例えば、ステップS20で設定されるデューティは、演算が実行される毎に制御部31のメモリ等に記憶され、制御部31は、ステップS13の処理においてメモリ等に記憶された前回のデューティ(更新前の現在のデューティ)を取得する。
【0049】
制御部31は、ステップS13の後、ウェイクアップ信号Rsがハイレベルか否かを判断する(ステップS14)。具体的には、制御部31は、ステップS14の時点で処理速度決定部33から出力されるウェイクアップ信号Rsがハイレベルであるか否かを判断し、ハイレベルであると判断した場合、ステップS15の処理を行い、変動率検出部32から出力される演算速度変更要求信号Roを取得する。
【0050】
そして、ステップS15の後には、制御部31の処理速度(演算速度)を設定する(ステップS16)。具体的には、ステップS15の実行時に変動率検出部32から出力される演算速度変更要求信号Roがハイレベルである場合、制御部31の処理速度を第1の処理速度(相対的に処理が速くなる速度)に設定する。この場合の設定方法としては、例えば、制御部31が図3のフィードバック制御を行う周期(デューティを算出する周期)を相対的に短い第1の周期に設定する。これにより、少なくともフィードバック制御が行われる時間間隔を短くするように制御部31の処理速度が高速化される。
【0051】
一方、ステップS15の実行時に変動率検出部32から出力される演算速度変更要求信号Roがローレベルである場合、制御部31の処理速度を第1の処理速度よりも第2の処理速度(相対的に処理が遅くなる速度)に設定する。この場合、例えば、制御部31が図3のフィードバック制御を行う周期(デューティを算出する周期)を相対的に長い第2の周期に設定する。これにより、少なくともフィードバック制御が行われる時間間隔を長くするように制御部31の処理速度が低速化される。
【0052】
このように、制御部31は、第1の処理速度の状態(高速状態)と、第2の処理速度の状態(低速状態)と、第3の処理速度の状態(スリープ状態)とに切り替えられる。第1の処理速度の状態は、第2の処理速度の状態よりもフィードバック制御が行われる時間間隔が短い状態であり、第2の処理速度の状態よりも制御部31(マイクロコンピュータ)の動作クロックの周期が小さい状態(クロック周波数が大きい状態)である。第3の処理速度の状態は、第2の処理速度の状態よりも制御部31(マイクロコンピュータ)の動作クロックの周期が大きい状態(クロック周波数が小さい状態)である。
【0053】
制御部31は、ステップS16の後、ステップS17の処理を行い、偏差算出部34から出力される電流値Ioutと目標値Itaとの偏差Diを取得し、偏差Diと、予め設定された比例ゲイン、微分ゲイン、及び積分ゲインとに基づき、公知のPID演算式により電流値Ioutを目標値Itaに近づけるための操作量(デューティの増減量)を決定する。
【0054】
制御部31は、ステップS17の後、ステップS18の処理を行い、演算部37が、偏差算出部35から出力される電圧値Voutと目標値Vtaとの偏差に対応する値Dvを取得し、値Dvと、予め設定された比例ゲイン、微分ゲイン、及び積分ゲインとに基づき、公知のPID演算式により電圧値Voutを目標値Vtaに近づけるための操作量(デューティの増減量)を決定する。
【0055】
制御部31は、ステップS18の後、ステップS19の処理を行い、このステップS19では、調停部38がステップS17で決定した操作量とステップS18で決定した操作量のいずれを優先させるかを決定(調停)する。いずれを優先させるかの決定方法は様々に考えられ、例えば、演算部36,37のそれぞれで決定した操作量のうち、小さい操作量(デューティが小さくなる操作量)を優先させる方法が考えられる。なお、決定する方法はこの方法に限定されず、公知の他の方法を用いても良い。
【0056】
制御部31は、ステップS14において処理速度決定部33から出力されるウェイクアップ信号Rsがハイレベルでないと判断した場合、ステップS21の処理を行い、前回のフィードバック制御で設定されたデューティを維持する。つまり、制御部31は、ステップS21の処理を行う場合、前回のデューティを更新せずに維持し、そのデューティを調停結果として用いる。
【0057】
制御部31は、ステップS19又はステップ21の後に、ステップS20を行い、ステップS19又はステップS21での処理結果に基づいてデューティを設定する。ステップS19の後にステップS20を行う場合、調停部38は、前回のデューティにステップS19で決定した操作量を加え、新たなデューティとする。ステップS21の後にステップS20を行う場合、調停部38は、前回のデューティを新たなデューティとする。調停部38は、ステップS20で新たなデューティを設定した場合、少なくとも次にステップS20の処理が行われるまでの間、このデューティのPWM信号を電圧変換部3に対して継続して出力する。なお、制御部31は、ステップS20にてデューティの設定を行った後には、再びステップS11から演算を実行する。
【0058】
次に、主に図4を参照し、電流値Ioutの変化の例と、その変化に応じたウェイクアップ信号Rs、演算速度変更要求信号Ro、制御部31の処理速度、及び制御部31の状態の変化の例について説明する。
【0059】
図4の例では、電圧変換部3からの出力電流値Ioutが低出力電流閾値It1よりも低い場合に制御部31がスリープ状態で維持されている。図4の例では、スリープ状態のときに負荷変動などに起因して出力電流値Ioutが変化し、時間Tのタイミングで出力電流値Ioutが低出力電流閾値It1を超えている。このため、処理速度決定部33は、ほぼ時間Tと同時期に図2のステップS3においてYesを判断し、ウェイクアップ信号Rsをローレベルからハイレベルに切り替えている(図2におけるステップS4。)。このように処理速度決定部33によってウェイクアップ信号Rsがハイレベルに切り替えられると、制御部31は、その直後の時間T2でスリープ状態から所定の低速状態に変化している。これにより、制御部31の処理速度は、スリープ状態のときよりも大きくなる。
【0060】
なお、スリープ状態は、例えば、制御部31の動作クロックが生成されていない状態であってもよく、制御部31の動作クロックの周期が長い状態であってもよい。低速状態は、例えば、制御部31の一部機能が停止している状態であってもよく、制御部31の動作クロックの周期が後述する高速状態のときよりも長い状態(即ち、クロック周波数(動作周波数)が小さい状態)であってもよく、それら両方の状態であってもよい。制御部31の消費電力は処理速度に対応しており、スリープ状態に比べて低速状態のほうが大きい。
【0061】
制御部31は、スリープ状態のときに動作クロックが停止した状態、又は周期が第3周期に設定された動作クロックが生成される状態となっており、低速状態のときには周期が第2周期に設定された動作クロックが生成される状態となっている。スリープ状態のときに制御部31の動作クロックが第3周期である場合、上記第2周期は上記第3周期よりも短い周期である。また、制御部31による図3のフィードバック制御の実行周期(演算周期)は、スリープ状態のときよりも低速状態のときのほうが短くなる。
【0062】
図4の例では、時間T2で制御部31がスリープ状態から低速状態に変化した後、時間T付近で電流値Ioutが急激に変化している。このような変化が生じた時間T近くの時期に、電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1より大きくなっており、電流値Ioutが高出力電流閾値It2より大きくなっている。このような変化が生じているため、処理速度決定部33は、図2で示す周期処理のステップS8でYesの判断を行い、ステップS9でもYesの判断を行い、これらの判断に応じて時間Tのタイミングで演算速度変更要求信号Roをローレベルからハイレベルに切り替えている。このように処理速度決定部33によって演算速度変更要求信号Roがハイレベルに切り替えられると、制御部31は、その直後の時間Tで低速状態から所定の高速状態に変化している。これにより、制御部31の処理速度は、低速状態のときよりも大きくなる。
【0063】
制御部31は、低速状態のときに周期が第2周期に設定された動作クロックが生成される状態となっており、高速状態のときには周期が第1周期に設定された動作クロックが生成される状態となっている。上記第1周期は上記第2周期よりも短い周期である。更に、制御部31による図3のフィードバック制御の実行周期(演算周期)は、低速状態のときよりも高速状態のときのほうが短くなっている。
【0064】
図4の例では、時間Tで制御部31が低速状態から高速状態に変化した後、時間Tのタイミングで高速状態から低速状態への切り替え条件(演算速度変更要求信号Roがハイレベルに切り替えられてから所定時間が経過しており、且つΔIr≦ΔIt1又はIout≦It2のいずれかが成立するという条件)が成立し、演算速度変更要求信号Roがローレベルに切り替えられている。このように処理速度決定部33によって演算速度変更要求信号Roがローレベルに切り替えられると、制御部31は、その直後の時間Tで高速状態から低速状態に変化する。これにより、制御部31の処理速度は、高速状態のときよりも小さくなる。
【0065】
以上のように、電源装置1は、電圧変換部3から出力される電流の変動率を変動率検出部32によって検出し、処理速度決定部33は、変動率検出部32で検出された電流の変動率ΔIrが大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する。そして、制御部31は、処理速度決定部33で決定された処理速度で動作する。この構成では、負荷変動によって出力電流の変動率ΔIrが相対的に大きくなった場合に、制御部31の処理速度を相対的に大きくすることができる。つまり、出力電流が大きく変動する場合には処理速度を大きくすることで目標値への追従性を高めることができ、負荷変動等によって安定性が低下することを確実に抑制することができる。しかも、電圧変換部3から出力される電流の変動率ΔIrに基づいて処理速度を決定しているため、処理速度決定部33によって処理速度を決定する上で、出力電流の変動状態がより迅速に反映されやすくなり、フィードバック制御の応答性を高めることができる。一方、出力電流の変動率が相対的に小さい場合には、制御部31の処理速度を相対的に小さくすることができる。つまり、出力電流の変動率ΔIrが相対的に小さく、安定性が損なわれにくい状況下では制御部31の処理速度を抑え、消費電力の低減を図ることができる。
【0066】
よって、出力電流が大きく変化する場合に高い応答性でフィードバック制御を行うことができる電源装置1を、消費電力をより抑え得る構成で実現することができる。
【0067】
処理速度決定部33は、変動率検出部32で検出された変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1(第1閾値)より大きく、且つ電圧変換部3から出力される電流の電流値Ioutが高出力電流閾値It2(第2閾値)より大きい場合に処理速度を第1処理速度に決定し、変動率検出部32で検出された変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1(第1閾値)以下である場合、又は電圧変換部から出力される電流の電流値Ioutが高出力電流閾値It2(第2閾値)以下である場合に処理速度を第1処理速度より遅い第2処理速度に決定する。
【0068】
出力電流が相対的に小さいときよりも出力電流が相対的に大きいときのほうが負荷変動等に起因する出力変動の影響がより問題となりやすい。本構成では、出力電流が相対的に大きく且つ出力電流が相対的に大きい状況下では処理速度を優先して目標値への追従性を高め、上記問題をより生じにくくすることができる。逆に、出力電流の変動率が相対的に大きくても、出力電流が相対的に小さい状況下では処理速度を抑えることで消費電力の低減を優先させることができる。
【0069】
処理速度決定部33は、処理速度を第2処理速度から第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、第1処理速度から第2処理速度への切り替えを禁止し、第2処理速度から第1処理速度に切り替えてから所定時間が経過した後、変動率検出部32で検出された電流変動率ΔIrが電流変動率閾値ΔIt1(第1閾値)以下となった場合又は電圧変換部3から出力される電流値Ioutが高出力電流閾値It2(第2閾値)以下となった場合に第1処理速度から第2処理速度へ切り替える構成となっている。このように、処理速度を第2処理速度から第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、第1処理速度から第2処理速度への切り替えを禁止することで、相対的に低い処理速度(第2処理速度)に切り替わる頻度を少なくすることができ、頻繁に第2処理速度に切り替わることに起因する追従性の低下を防ぐことができる。
【0070】
上述した電源装置1は、図5のような車載システム100に適用すると効果的である。図5のシステムは、第1電源部91が鉛バッテリなどのメイン電源として構成され、この第1電源部91には、負荷93や負荷94が接続されている。負荷94は、第1電源部91の失陥時であっても電力供給が望まれる負荷(例えば電動パーキングブレーキ装置など)とすることができる。なお、図示はしていないが、発電機なども第1電源部91に電気的に接続されている。そして、導電路7Aには、第1電源部91(メイン電源)からの直流電圧が印加される構成となっている。一方、第2電源部92が電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池などのサブ電源として構成され、導電路7Bには、第2電源部92(サブ電源)からの直流電圧が印加される構成となっている。例えば第1電源部91(メイン電源)は、満充電時の出力電圧が第2電源部92(サブ電源)の満充電時の出力電圧よりも大きくなっており、電源装置1は、導電路7Aに入力された直流電圧を降圧又は昇圧して導電路7Bに出力する電圧変換動作と、導電路7Bに入力された直流電圧を昇圧又は降圧して導電路7A又は導電路7Cに出力する電圧変換動作とを行い得る構成となっている。導電路7A又は導電路7Cに出力する電圧変換動作を行う場合、電圧変換部3によって電圧変換された電圧を導電路7A及び導電路7Cの両方に印加するように動作してもよく、導電路7Aのみ、又は導電路7Cのみに印加するように動作してもよい。
【0071】
また、第1電源部91(メイン電源)と電源装置1との間にはスイッチ部96が設けられ、特定の状況(例えば、メイン電源の失陥やメイン電源側の地絡等)が発生したときにスイッチ部96をオフ動作させることで、第1電源部91(メイン電源)と電源装置1との間を非通電状態に切り替えることができるようになっている。また、スイッチ部96がオフ状態であっても、電源装置1の昇圧動作時に、第2電源部92(サブ電源)からの電力を負荷94等に供給することができるようになっている。
【0072】
このような車載システム100では、特定の状況(例えば、メイン電源側の地絡等)が発生し、スイッチ部96がオフ動作したときには、第2電源部92(サブ電源)からの電力によって負荷94等を動作させなければならないため、電源装置1での消費電力は極力抑える必要がある。この問題に関し、本構成の電源装置1では、上述の通り消費電力を抑え得る構成であるため、このようなシステムに適用すると有利である。また、第1電源部91(メイン電源)と電源装置1との間が非通電状態に切り替えられ、第2電源部92(サブ電源)によって負荷94等を動作させる場合、負荷変動によって出力が安定しなくなることが懸念されるが、上述した電源装置1では、出力の安定化対策もなされているため、この点でも有利である。
【0073】
この構成では、制御装置2は、例えば、図6のような流れで制御を行うことができる。図6の制御は、所定の時期(例えば、始動スイッチ(イグニッションスイッチ等)がオフ状態からオン状態に切り替わった時期)に制御装置2によって実行され、まず、ステップS101にて所定の初期化処理を行った後、ステップS102にて第2電源部92の充電を開始する。ステップS102で充電を開始する場合、制御部31が電圧変換部3を動作させ、導電路7Aに印加された直流電圧を降圧又は昇圧して導電路7Bに出力するように電圧変換動作を行うことで、第1電源部91(メイン電源)からの電力によって第2電源部92(サブ電源)を充電する。なお、制御部31は、第2電源部92の充電を、第2電源部92の出力電圧(充電電圧)が所定の目標電圧に達するまで行う。
【0074】
ステップS102にて第2電源部92の充電を開始した後、或いは第2電源部92の充電を完了した後には、処理速度決定部33が第1電源部91の失陥を監視する(ステップS103)。ステップS103で実行された第1電源部91の失陥を監視する場合、この監視を第1電源部91の失陥条件が成立するまで行う。具体的には、例えば、処理速度決定部33は、第1導電路7Aに印加された電圧が所定閾値未満となるか否かを監視し、第1導電路7Aに印加された電圧が所定閾値以上である場合には、第1電源部91の失陥条件が成立していないと判断し、ステップS103に戻って第1電源部91の失陥状態の監視を継続する。一方、第1導電路7Aに印加された電圧が所定閾値未満となった場合、処理速度決定部33は、ステップS104において第1電源部91の失陥条件が成立したと判断し、ステップS105に進んでウェイクアップ信号Rsをローレベルに切り替え、制御部31をスリープ状態にする。このように、第1電源部91が失陥した場合には制御部31がスリープ状態に切り替えられ、消費電力が抑えられる。
【0075】
処理速度決定部33は、ステップS105においてウェイクアップ信号Rsをローレベルに切り替え、制御部31をスリープ状態とした後、ステップS106においてウェイクアップ条件の監視を行う。ステップS106で実行されるウェイクアップ条件の監視は、ウェイクアップ条件が成立するまで継続する。ウェイクアップ条件は、ウェイクアップ信号Rsをローレベルからハイレベルに切り替えるための条件であり、「電流値Ioutが低出力電流閾値It1より大きくなること」の条件である。処理速度決定部33は、ウェイクアップ条件が成立した場合、ステップS107においてYesとなり、図6の制御を終了する。
【0076】
図6の制御において、ステップS107でNoが繰り返される状態は、繰り返し行われる図2の制御において、ステップS3でNoの判断が繰り返される状態に相当する。また、ステップS107の判断は、図2におけるステップS3の判断に相当し、ステップS107でYesとなる場合は、図2のステップS3でYesになる場合に相当する。
【0077】
なお、図6で示す制御は、所定の終了条件の成立時(例えば、始動スイッチ(イグニッションスイッチなど)がオフ状態に切り替わったとき)に強制的に終了させるようにしてもよい。
【0078】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、第2導電路7Bに電圧検出部及び電流検出部を設けているが、第1導電路7Aに電圧検出部及び電流検出部を設けてもよい。
(2)実施例1では、ウェイクアップ信号及び演算速度変更要求信号を制御部31とは別のハードウェア回路(処理速度決定部33)で切り替えているが、制御部31にこのような機能をもたせてもよい。
(3)実施例1では、制御部31をマイクロコンピュータで構成した例を示したが、制御部31は、マイクロコンピュータ以外のハードウェア回路で構成されていてもよい。
(4)実施例1では、出力電流の変動率の範囲を電流変動率閾値ΔIt1よりも大きい場合とΔIt1以下の場合の2つの範囲に分け、変動率ΔIがいずれの範囲に属するかに基づいて制御部31の処理速度を低速状態と高速状態の2段階に切り替える構成を例示した。しかし、出力電流の変動率の範囲を3以上の範囲に分け、変動率が大きい範囲に属するほど、処理速度を大きくするように、制御部31の処理速度を3以上の多段階に切り替えうるようにしてもよい。例えば、変動率ΔIが第1の範囲であり、出力電流が高出力電流閾値よりも大きい場合に、制御部31の動作クロックを第1周期とし且つ図3のフィードバック演算の周期を第1の設定とし、変動率ΔIが第2の範囲(第1の範囲よりも値が小さい範囲)であり、出力電流が高出力電流閾値よりも大きい場合には、制御部31の動作クロックを第2周期(第1周期よりも長い周期)とし且つ図3のフィードバック演算の周期を第2の設定(第1の設定よりも長い周期)とし、変動率ΔIが第3の範囲(第2の範囲よりも値が小さい範囲)である場合、又は出力電流が高出力電流閾値以下である場合には、制御部31の動作クロックを第3周期(第2周期よりも長い周期)とし且つ図3のフィードバック演算の周期を第3の設定(第2の設定よりも長い周期)としてもよい。
(5)実施例1では、変動率検出部32で検出された変動率ΔIが所定の第1閾値より大きく、且つ電圧変換部3から出力される電流の電流値Ioutが所定の第2閾値より大きい場合に制御部31の処理速度を上述の第1処理速度に決定した。しかし、例えば図2のS9の処理を省略し、変動率検出部32で検出された変動率ΔIが所定の第1閾値より大きい場合に制御部31の処理速度を上述の第1処理速度に決定し、変動率検出部32で検出された変動率ΔIが所定の第1閾値以下である場合に制御部31の処理速度を上述の第2処理速度に決定してもよい。
(6)実施例1では、制御部31(マイクロコンピュータ)の処理速度が低速状態のときのクロック周波数(動作周波数)が例えば0.1kHz〜1kHzであるが、これに限らず、低速状態のときのクロック周波数は0.1kHzより小さくても良く、1kHzより大きくても良い。
(7)実施例1では、制御部31(マイクロコンピュータ)の処理速度が高速状態のときのクロック周波数(動作周波数)が例えば10kHz〜50kHzであるが、これに限らず、高速状態のときのクロック周波数は10kHzより小さくても良く、50kHzより大きくても良い。
(8)実施例1では、図2のステップS6で用いる所定時間を10msとしたが、この所定時間は10msより長くても良く、10msより短くても良い。
【符号の説明】
【0079】
1…電源装置
2…制御部
3…電圧変換部
31…制御部
32…変動率検出部
33…処理速度決定部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】

【手続補正書】
【提出日】20170417
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子がPWM信号に応じてオンオフ動作することにより、入力された電圧を昇圧又は降圧して出力する電圧変換部と、
前記電圧変換部から出力される電流の変動率を検出する変動率検出部と、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が大きいほど速度を大きくする方式で処理速度を決定する処理速度決定部と、
前記処理速度決定部で決定された前記処理速度で動作する構成をなし、予め設定された目標値と前記電圧変換部からの出力値とに基づいて前記電圧変換部に与えるPWM信号のデューティを演算するとともに、演算で得られたデューティに設定されたPWM信号を前記電圧変換部に出力するフィードバック制御を行う制御部と、
を備え、
前記処理速度決定部は、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が所定の第1閾値より大きく、且つ前記電圧変換部から出力される電流の電流値が所定の第2閾値より大きい場合に前記処理速度を第1処理速度に決定し、
前記変動率検出部で検出された前記変動率が前記第1閾値以下である場合、又は前記電圧変換部から出力される電流の電流値が前記第2閾値以下である場合に前記処理速度を第1処理速度より遅い第2処理速度に決定する電源装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記処理速度決定部は、前記処理速度を前記第2処理速度から前記第1処理速度に切り替えた後、少なくとも所定時間の間、前記第1処理速度から前記第2処理速度への切り替えを禁止し、前記第2処理速度から前記第1処理速度に切り替えてから前記所定時間が経過した後、前記変動率検出部で検出された前記変動率が前記第1閾値以下となった場合又は前記電圧変換部から出力される電流の電流値が前記第2閾値以下となった場合に前記第1処理速度から前記第2処理速度へ切り替える請求項1に記載の電源装置。
【国際調査報告】