(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2018020811
(43)【国際公開日】20180201
【発行日】20190516
(54)【発明の名称】電解液及び電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20190419BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20190419BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20190419BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20190419BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20190419BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20190419BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20190419BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20190419BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20190419BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20190419BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20190419BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20190419BHJP
   H01M 6/16 20060101ALI20190419BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20190419BHJP
   H01M 8/18 20060101ALN20190419BHJP
【FI】
   !H01M10/0567
   !H01M10/054
   !H01M12/06 G
   !H01M12/08 K
   !H01M4/38 Z
   !H01G11/64
   !H01G11/30
   !H01G11/60
   !H01G11/62
   !H01M4/46
   !H01M10/0568
   !H01M10/0569
   !H01M6/16 A
   !H01M8/02
   !H01M8/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
【出願番号】2018529386
(21)【国際出願番号】JP2017019535
(22)【国際出願日】20170525
(31)【優先権主張番号】2016146302
(32)【優先日】20160726
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆平
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号 株式会社村田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】中山 有理
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号 株式会社村田製作所内
(72)【発明者】
【氏名】窪田 忠彦
【住所又は居所】福島県郡山市日和田町高倉字下杉下1番地の1 ソニーエナジー・デバイス株式会社内
【テーマコード(参考)】
5E078
5H024
5H029
5H032
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
5E078AA05
5E078BA12
5E078BA27
5E078BA30
5E078BA42
5E078BA44
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5E078FA02
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5E078ZA12
5H024AA07
5H024AA11
5H024CC03
5H024FF14
5H024FF19
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM07
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5H029DJ09
5H029HJ02
5H032AA02
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5H032AS11
5H032CC17
5H050AA07
5H050BA15
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB11
5H126AA03
5H126BB10
(57)【要約】
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル又はその誘導体が添加されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル又はその誘導体が添加された電解液。
【請求項2】
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液。
【請求項3】
電気化学デバイスは硫黄を含む材料から成る正極を備えている請求項1又は請求項2に記載の電解液。
【請求項4】
スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む請求項1又は請求項2に記載の電解液。
【請求項5】
マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る請求項4に記載の電解液。
【請求項6】
ハロゲンを含む分子は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成る請求項5に記載の電解液。
【請求項7】
スルホンは、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホン又はアルキルスルホン誘導体である請求項4に記載の電解液。
【請求項8】
アルキルスルホンは、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−n−プロピルスルホン、メチル−i−プロピルスルホン、メチル−n−ブチルスルホン、メチル−i−ブチルスルホン、メチル−s−ブチルスルホン、メチル−t−ブチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチル−n−プロピルスルホン、エチル−i−プロピルスルホン、エチル−n−ブチルスルホン、エチル−i−ブチルスルホン、エチル−s−ブチルスルホン、エチル−t−ブチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、ジ−i−プロピルスルホン、n−プロピル−n−ブチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、i−ブチルエチルスルホン、s−ブチルエチルスルホン及びジ−n−ブチルスルホンから成る群より選ばれた少なくとも1種類のアルキルスルホンであり、
アルキルスルホン誘導体はエチルフェニルスルホンである請求項7に記載の電解液。
【請求項9】
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル、又は、その誘導体が添加された電解液を備えている電気化学デバイス。
【請求項10】
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液を備えている電気化学デバイス。
【請求項11】
硫黄を含む材料から成る正極を備えている請求項9又は請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
電解液は、スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む請求項9又は請求項10に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項14】
ハロゲンを含む分子は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成る請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
スルホンは、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホン又はアルキルスルホン誘導体である請求項12に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
アルキルスルホンは、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−n−プロピルスルホン、メチル−i−プロピルスルホン、メチル−n−ブチルスルホン、メチル−i−ブチルスルホン、メチル−s−ブチルスルホン、メチル−t−ブチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチル−n−プロピルスルホン、エチル−i−プロピルスルホン、エチル−n−ブチルスルホン、エチル−i−ブチルスルホン、エチル−s−ブチルスルホン、エチル−t−ブチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、ジ−i−プロピルスルホン、n−プロピル−n−ブチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、i−ブチルエチルスルホン、s−ブチルエチルスルホン及びジ−n−ブチルスルホンから成る群より選ばれた少なくとも1種類のアルキルスルホンであり、
アルキルスルホン誘導体はエチルフェニルスルホンである請求項15に記載の電気化学デバイス。
【請求項17】
電解液によって電解質層が構成された電池である請求項9又は請求項10に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解液及び電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム電池において用いられるマグネシウムは、リチウムに比べて資源的に豊富で遙かに安価であり、酸化還元反応によって取り出すことができる単位体積当たりの電気量が大きく、電池に用いた場合の安全性も高い。それ故、マグネシウム電池は、リチウムイオン電池に代わる次世代の二次電池として注目されている。しかしながら、マグネシウム電池には、サイクル特性に乏しいという課題がある。サイクル特性の劣化は、硫黄、又は、電池の放電に伴い生成する硫黄の還元体が、負極を構成するマグネシウム系材料の界面まで拡散し、腐食反応を起こすことで硫黄が消費され、正極中の活物質である硫黄が減少することに起因すると考えられる。
【0003】
一方、リチウムイオン電池では電解液中に数%若しくはそれ以下の添加剤を混ぜることで正極若しくは負極にSEI(Solid Electrolyte Interface)と呼ばれる被膜を形成し、サイクル劣化を抑制させるという手法が汎用されている(例えば、K. Xu, Chem. Rev., 2014, 114, 11503-11618 参照)。また、マグネシウム−イオン二次電池と同じく硫黄を正極に用い、負極にリチウムを用いるリチウム−硫黄二次電池においては、サイクル劣化抑制のために、電解液への添加剤として、屡々、LiNO3が用いられている(例えば、D. Aurbach et. al., J. Electrochem. Soc., 2009, 156, A694-A702 参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K. Xu, Chem. Rev., 2014, 114, 11503-11618
【非特許文献2】D. Aurbach et. al., J. Electrochem. Soc., 2009, 156, A694-A702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マグネシウム−硫黄二次電池においては、サイクル特性向上のための、電解液への添加物の開発が未開拓の状況である。
【0006】
従って、本開示の目的は、サイクル特性向上を図ることができる添加物(添加剤)が添加された電解液、及び、係る電解液を用いた電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る電解液は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル[2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl free radical、TEMPO、下記の構造式(1−1)参照]又はその誘導体が添加されている。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る電解液は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加されている。
【0009】
【0010】
上記の目的を達成するための本開示の第1の態様に係る電気化学デバイスは、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル、又は、その誘導体が添加された電解液を備えている。
【0011】
上記の目的を達成するための本開示の第2の態様に係る電気化学デバイスは、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液を備えている。
【0012】
【発明の効果】
【0013】
本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液あるいは電気化学デバイスにあっては、電解液に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル又はその誘導体が添加されており、あるいは又、構造式(1−1)、構造式(1−2)、構造式(1−3)、構造式(1−4)又は構造式(1−5)を有する物質の少なくとも1種類が添加されているので、優れたサイクル特性を示す電解液、電気化学デバイスを提供することができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1の電気化学デバイス(電池)の模式的な分解図である。
【図2】図2A及び図2Bは、実施例1A及び実施例1Bの電解液を備えたマグネシウム二次電池において、充放電サイクル数と放電容量維持率との関係をプロットした図である。
【図3】図3A及び図3Bは、実施例1A及び実施例1Bの電解液を備えたマグネシウム二次電池において、放電1サイクル目の放電容量維持率を100%としたときの放電5サイクル目の放電容量維持率(単位:%)を示す図である。
【図4】図4は、実施例2の電気化学デバイス(キャパシタ)の模式的な断面図である。
【図5】図5は、実施例2の電気化学デバイス(空気電池)の概念図である。
【図6】図6は、実施例2の電気化学デバイス(燃料電池)の概念図である。
【図7】図7は、本開示の電気化学デバイス(電池)の概念図である。
【図8】図8は、実施例3におけるマグネシウム二次電池(円筒型のマグネシウム二次電池)の模式的な断面図である。
【図9】図9は、実施例3におけるマグネシウム二次電池(平板型のラミネートフィルム型マグネシウム二次電池)の模式的な断面図である。
【図10】図10は、実施例1において説明した本開示におけるマグネシウム二次電池を電池パックに適用した場合の実施例3における回路構成例を示すブロック図である。
【図11】図11A、図11B及び図11Cは、それぞれ、実施例3における本開示の適用例(電動車両)の構成を表すブロック図、実施例3における本開示の適用例(電力貯蔵システム)の構成を表すブロック図、及び、実施例3における本開示の適用例(電動工具)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1のマグネシウム二次電池の応用例)
5.その他
【0016】
〈本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液、及び、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス、全般に関する説明〉
以下の説明において、電解液に添加される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル又はその誘導体、又は、構造式(1−1)、構造式(1−2)、構造式(1−3)、構造式(1−4)若しくは構造式(1−5)を有する物質を、便宜上、『本開示における添加物(添加剤)』と呼ぶ場合がある。
【0017】
本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液において、電気化学デバイスは硫黄(S)を含む材料から成る正極を備えている形態とすることができる。また、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスは、硫黄(S)を含む材料から成る正極を備えている形態とすることができる。
【0018】
上記の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液は、あるいは又、上記の好ましい形態を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスにおける電解液は、スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む構成とすることができる。そして、この場合、マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る構成とすることができ、ここで、Xは、ハロゲンを含む分子、−SO4、−NO3、又は、ヘキサアルキルジシアジド基から成る構成とすることができる。具体的には、ハロゲンを含む分子(ハロゲン化物)は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成る構成とすることができ、より具体的には、塩化マグネシウム(MgCl2)、臭化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化マグネシウム(MgI2)を挙げることができる。
【0019】
あるいは又、マグネシウム塩は、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO42)、硝酸マグネシム(Mg(NO32)、硫酸マグネシム(MgSO4)、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF42)、テトラフェニルホウ酸マグネシウム(Mg(B(C6542)、ヘキサフルオロリン酸マグネシウム(Mg(PF62)、ヘキサフルオロヒ酸マグネシウム(Mg(AsF62)、パーフルオロアルキルスルホン酸マグネシウム((Mg(Rf1SO32)、但し、Rf1はパーフルオロアルキル基)、パーフルオロアルキルスルホニルイミド酸マグネシウム(Mg((Rf2SO22N)2、但し、Rf2はパーフルオロアルキル基)、及び、ヘキサアルキルジシアジドマグネシウム((Mg(HRDS)2)、但し、Rはアルキル基)から成る群より選択された少なくとも1種類のマグネシウム塩である形態とすることができる。尚、上記の塩化マグネシウムから(Mg(HRDS)2)までに挙げたマグネシウム塩を、便宜上、『マグネシウム塩−A』と呼ぶ。そして、マグネシウム塩−Aにおいて、マグネシウム塩に対するスルホンのモル比は、例えば、4以上、35以下とすることが好ましく、6以上、16以下とすることがより好ましく、7以上、9以下とすることが一層好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0020】
あるいは又、マグネシウム塩として、水素化ホウ素マグネシウム(Mg(BH42)を挙げることができる。このように、使用するマグネシウム塩が、水素化ホウ素マグネシウム(Mg(BH42)から成り、ハロゲン原子を含まないと、電気化学デバイスを構成する各種部材を耐食性の高い材料から作製する必要が無くなる。尚、このような電解液は、水素化ホウ素マグネシウムをスルホンに溶解させることによって製造することができる。水素化ホウ素マグネシウム(Mg(BH42)から成るマグネシウム塩を、便宜上、『マグネシウム塩−B』と呼ぶ。このような本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液は、スルホンから成る溶媒にマグネシウム塩−Bが溶解したマグネシウムイオン含有非水系電解液である。電解液中のマグネシウム塩−Bに対するスルホンのモル比は、例えば、50以上、150以下であり、典型的には、60以上、120以下であり、好ましくは、65以上、75以下であるが、これに限定するものではない。
【0021】
そして、これらの構成において、スルホンを、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホン又はアルキルスルホン誘導体とすることができる。R1、R2の種類(炭素数及び組み合わせ)は特に限定されず、必要に応じて選ばれる。R1、R2の炭素数は、いずれも、好ましくは4以下であるが、これに限定するものではない。また、R1の炭素数とR2の炭素数との和は、好ましくは、4以上、7以下であるが、これに限定するものではない。R1、R2として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基を挙げることができる。
【0022】
アルキルスルホンとして、具体的には、ジメチルスルホン(DMS)、メチルエチルスルホン(MES)、メチル−n−プロピルスルホン(MnPS)、メチル−i−プロピルスルホン(MiPS)、メチル−n−ブチルスルホン(MnBS)、メチル−i−ブチルスルホン(MiBS)、メチル−s−ブチルスルホン(MsBS)、メチル−t−ブチルスルホン(MtBS)、エチルメチルスルホン(EMS)、ジエチルスルホン(DES)、エチル−n−プロピルスルホン(EnPS)、エチル−i−プロピルスルホン(EiPS)、エチル−n−ブチルスルホン(EnBS)、エチル−i−ブチルスルホン(EiBS)、エチル−s−ブチルスルホン(EsBS)、エチル−t−ブチルスルホン(EtBS)、ジ−n−プロピルスルホン(DnPS)、ジ−i−プロピルスルホン(DiPS)、n−プロピル−n−ブチルスルホン(nPnBS)、n−ブチルエチルスルホン(nBES)、i−ブチルエチルスルホン(iBES)、s−ブチルエチルスルホン(sBES)及びジ−n−ブチルスルホン(DnBS)から成る群より選ばれた少なくとも1種類のアルキルスルホンを挙げることができる。また、アルキルスルホン誘導体として、エチルフェニルスルホン(EPhS)を挙げることができる。そして、これらのスルホンの内でも、EnPS、EiPS、EsBS及びDnPSから成る群より選ばれた少なくとも1種類が好ましい。
【0023】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスは、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液によって電解質層が構成された電池(具体的には、一次電池又は二次電池)である形態とすることができる。
【0024】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスにおける電解液を、以下、総称して、『本開示の電解液等』と呼ぶ。
【0025】
マグネシウム塩−Aを用いる本開示の電解液等は、例えば、
マグネシウム塩−Aが可溶な低沸点溶媒にマグネシウム塩−Aを溶解させ、次いで、スルホンを溶解させ、その後、低沸点溶媒を除去して電解液を得た後、この電解液に本開示における添加物を溶解させる、
各工程に基づき製造することができる。
【0026】
マグネシウム塩−Aが可溶な低沸点溶媒として、マグネシウム塩−Aが可溶な溶媒の内、選択するスルホンよりも沸点の低い溶媒であれば、基本的にはどのようなものを用いてもよく、必要に応じて選ばれるが、好適にはアルコールが用いられる。アルコールは、一価アルコールでも多価アルコールでもよく、飽和アルコールでも不飽和アルコールでもよい。アルコールとして、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブタノール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブタノール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブタノール)、1−ペンタノール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アルコールとして、脱水アルコールを用いることが好ましい。
【0027】
具体的には、先ず、アルコールにマグネシウム塩−Aを溶解させる。マグネシウム塩−Aとして、好適には、無水マグネシウム塩を用いることができる。通常、マグネシウム塩−Aは、スルホンには溶解しないが、アルコールには良く溶解する。こうして、アルコールにマグネシウム塩−Aを溶解させると、マグネシウムにアルコールが配位する。次に、マグネシウム塩−Aを溶解したアルコールにスルホン及び本開示における添加物を溶解させる。その後、この溶液を減圧下で加熱することによってアルコールを除去する。こうしてアルコールを除去する過程で、マグネシウムに配位したアルコールがスルホンと交換(あるいは置換)する。以上により、本開示の電解液等を製造することができる。
【0028】
このように、非エーテル系溶媒であるスルホンを用いて、マグネシウム金属に対して使用可能で、室温で電気化学的に可逆なマグネシウムの析出溶解反応を示すマグネシウムイオン含有非水系電解液を得ることができる。そして、エネルギー密度の向上を図ることができるし、この電解液は組成が単純であるため、電解液自体のコストの大幅な低減を図ることができる。
【0029】
あるいは又、本開示の電解液等は、スルホン及び非極性溶媒から成る溶媒、並びに、溶媒に溶解したマグネシウム塩−A及び本開示における添加物を有する。
【0030】
非極性溶媒は、必要に応じて選ばれるが、好適には、比誘電率及びドナー数がいずれも20以下である非水系溶媒である。非極性溶媒として、より具体的には、例えば、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル及び鎖状炭酸エステルから成る群より選ばれた少なくとも1種類の非極性溶媒を挙げることができる。芳香族炭化水素として、例えば、トルエン、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1−メチルナフタレン等を挙げることができる。エーテルとして、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。ケトンとして、例えば、4−メチル−2−ペンタノン等を挙げることができる。エステルとして、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等を挙げることができる。鎖状炭酸エステルとして、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等を挙げることができる。
【0031】
スルホン、マグネシウム塩−A及び本開示における添加物については、上述したとおりである。そして、マグネシウム塩−Aに対するスルホンのモル比は、例えば、4以上、20以下とすることがより好ましく、6以上、16以下とすることがより好ましく、7以上、9以下とすることが一層好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
マグネシウム塩−A及び本開示における添加物、並びに、非極性溶媒を用いる本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液は、例えば、
マグネシウム塩−Aが可溶な低沸点溶媒にマグネシウム塩−Aを溶解させ、次いで、スルホンを溶解させ、その後、低沸点溶媒を除去して電解液を得た後、この電解液に本開示における添加物を溶解させ、次いで、非極性溶媒を混合する、
各工程に基づき製造することができる。
【0033】
具体的には、先ず、アルコールにマグネシウム塩−Aを溶解させる。これによって、マグネシウムにアルコールが配位する。マグネシウム塩−Aとして、好適には、無水マグネシウム塩を用いることができる。次に、マグネシウム塩を溶解したアルコールにスルホン及び本開示における添加物を溶解させる。その後、この溶液を減圧下で加熱することによってアルコールを除去する。こうしてアルコールを除去する過程で、マグネシウムに配位したアルコールがスルホンと交換(あるいは置換)する。次に、アルコールを除去した溶液に非極性溶媒を混合する。以上により、本開示の電解液等を製造することができる。
【0034】
溶媒として、その他、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフランを挙げることができ、これらの内、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液によって電解質層が構成された電池(一次電池あるいは二次電池)とするとき、電池として、マグネシウム系材料から成る負極、具体的には、マグネシウム、マグネシウム合金あるいはマグネシウム化合物から成る負極(具体的には、負極活物質)を有する電池を挙げることができ、より具体的な二次電池として、マグネシウム電池、空気電池、燃料電池を挙げることができる。
【0036】
また、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液によって電解質層が構成された電池とするとき、例えば、硫黄(S)、フッ化黒鉛((CF)n)、各種の金属[例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)等]の酸化物やハロゲン化物、硫化物、セレナイド等を正極活物質として用いた正極を用いることができるが、これに限定するものではない。正極は、例えば、正極集電体の表面に正極活物質層が形成された構造とすることができる。但し、正極は、正極集電体を備えず、正極活物質層のみから成る構造とすることもできる。正極集電体は、例えば、アルミニウム箔等の金属箔から成る。正極活物質層は、必要に応じて導電助剤及び結着剤の内の少なくとも1種類を含んでいてもよい。
【0037】
導電助剤として、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料を挙げることができ、これらの1種類又が2種類以上を混合して用いることができる。炭素繊維として、例えば、気相成長炭素繊維(Vapor Growth Carbon Fiber:VGCF)等を用いることができる。カーボンブラックとして、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を用いることができる。カーボンナノチューブとして、例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、ダブルウォールカーボンナノチューブ(DWCNT)等のマルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)等を用いることができる。導電性が良好な材料であれば、炭素材料以外の材料を用いることもでき、例えば、Ni粉末のような金属材料、導電性高分子材料等を用いることもできる。結着剤として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)系樹脂等の高分子樹脂を用いることができる。また、結着剤として導電性高分子を用いてもよい。導電性高分子として、例えば、置換又は無置換のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及び、これらから選ばれた1種類又は2種類から成る(共)重合体等を用いることができる。
【0038】
負極を構成する材料(具体的には、負極活物質)として、例えば、上述したとおり、マグネシウム金属単体、マグネシウム合金あるいはマグネシウム化合物を挙げることができる。負極は、例えば、板状材料あるいは箔状材料から作製されるが、これに限定するものではなく、粉末を用いて形成(賦形)することも可能である。場合によっては、スルホン及びマグネシウム塩を含む電解液(本開示における添加物を除いた本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液組成)を用いて、電解メッキ法に基づき負極を製造することもできる。負極における集電体を構成する材料として、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等の金属箔を挙げることができる。
【0039】
あるいは又、負極の表面近傍に負極活物質層が形成された構造とすることができる。負極活物質層として、マグネシウム(Mg)、炭素(C)、酸素(O)、硫黄(S)及びハロゲンを少なくとも含む、マグネシウムイオン伝導性を有する層を挙げることができる。このような負極活物質層は、40eV以上60eV以下の範囲にマグネシウム由来の単一のピークを有することが好ましい。ハロゲンとして、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)から成る群より選ばれた少なくとも1種類を挙げることができる。そして、この場合、負極活物質層の表面から2×10-7mまでの深さに亙り、40eV以上60eV以下の範囲にマグネシウム由来の単一のピークを有することがより好ましい。負極活物質層が、その表面から内部に亙り、良好な電気化学的活性を示すからである。また、同様の理由から、マグネシウムの酸化状態が、負極活物質層の表面から深さ方向に2×10-7nmに亙りほぼ一定であることが好ましい。ここで、負極活物質層の表面とは、負極活物質層の両面の内、電極の表面を構成する側の面を意味し、裏面とは、この表面とは反対側の面、即ち、集電体と負極活物質層の界面を構成する側の面を意味する。負極活物質層が上記の元素を含んでいるか否かはXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)法に基づき確認することができる。また、負極活物質層が上記ピークを有すること、及び、マグネシウムの酸化状態を有することも、XPS法に基づき、同様に確認することができる。
【0040】
正極と負極とは、両極の接触による短絡を防止しつつ、マグネシウムイオンを通過させる無機セパレータあるいは有機セパレータによって分離されている。無機セパレータとして、例えば、ガラスフィルター、グラスファイバーを挙げることができる。有機セパレータとして、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等から成る合成樹脂製の多孔質膜を挙げることができ、これらの2種類以上の多孔質膜を積層した構造とすることもできる。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、且つ、シャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
【0041】
電解質層を、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液、及び、電解液を保持する保持体から成る高分子化合物から構成することができる。高分子化合物は、電解液によって膨潤されるものであってもよい。この場合、電解液により膨潤された高分子化合物はゲル状であってもよい。高分子化合物として、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネートを挙げることができる。特に、電気化学的な安定性の観点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。電解質層を、固体電解質層とすることもできる。
【0042】
以上に説明した構成を有するマグネシウム二次電池においては、電気化学デバイス(電池)の概念図を図7に示すように、充電時、マグネシウムイオン(Mg2+)が正極から電解質層を通って負極に移動することにより電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄電する。放電時には、負極から電解質層を通って正極にマグネシウムイオンが戻ることにより電気エネルギーを発生させる。
【0043】
本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスを本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電解液によって電解質層が構成された電池(一次電池あるいは二次電池)とするとき、係る電池は、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、スマートフォン、コードレス電話の親機や子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、携帯音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、心臓ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコンディショナー、テレビジョン受像機、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗浄器、洗濯機、乾燥機、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機、鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等の駆動用電源又は補助用電源として使用することができる。また、住宅をはじめとする建築物又は発電設備用の電力貯蔵用電源等に搭載し、あるいは、これらに電力を供給するために使用することができる。電気自動車において、電力を供給することにより電力を駆動力に変換する変換装置は、一般的にはモータである。車両制御に関する情報処理を行う制御装置(制御部)としては、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う制御装置等が含まれる。また、電池を、所謂スマートグリッドにおける蓄電装置において用いることもできる。このような蓄電装置は、電力を供給するだけでなく、他の電力源から電力の供給を受けることにより蓄電することができる。他の電力源としては、例えば、火力発電、原子力発電、水力発電、太陽電池、風力発電、地熱発電、燃料電池(バイオ燃料電池を含む)等を用いることができる。
【0044】
二次電池、二次電池に関する制御を行う制御手段(制御部)、及び、二次電池を内包する外装を有する電池パックにおける二次電池に、上記の各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を適用することができる。この電池パックにおいて、制御手段は、例えば、二次電池に関する充放電、過放電又は過充電の制御を行う。
【0045】
二次電池から電力の供給を受ける電子機器における二次電池に、上記の各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を適用することができる。
【0046】
二次電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置、及び、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置(制御部)を有する電動車両における二次電池に、上記の各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を適用することができる。この電動車両において、変換装置は、典型的には、二次電池から電力の供給を受けてモータを駆動させ、駆動力を発生させる。モータの駆動には、回生エネルギーを利用することもできる。また、制御装置(制御部)は、例えば、二次電池の電池残量に基づいて車両制御に関する情報処理を行う。この電動車両には、例えば、電気自動車、電動バイク、電動自転車、鉄道車両等の他、所謂ハイブリッド車が含まれる。
【0047】
二次電池から電力の供給を受け、及び/又は、電力源から二次電池に電力を供給するように構成された電力システムにおける二次電池に、上記の各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を適用することができる。この電力システムは、およそ電力を使用するものである限り、どのような電力システムであってもよく、単なる電力装置も含む。この電力システムは、例えば、スマートグリッド、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)、車両等を含み、蓄電も可能である。
【0048】
二次電池を有し、電力が供給される電子機器が接続されるように構成された電力貯蔵用電源における二次電池に、上記の各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイス(あるいは、二次電池)を適用することができる。この電力貯蔵用電源の用途は問わず、基本的にはどのような電力システム又は電力装置にも用いることができるが、例えば、スマートグリッドに用いることができる。
【0049】
あるいは又、電気化学デバイスとして、キャパシタ、センサ、マグネシウムイオンフィルタ等を挙げることもできる。キャパシタは、正極、負極、及び、正極と負極に挟まれ、電解液が含浸されたセパレータを備えている。
【実施例1】
【0050】
実施例1は、本開示の第1の態様〜第2の態様に係る本開示の電解液及び本開示の第1の態様〜第2の態様に係る電気化学デバイスに関する。
【0051】
実施例1の電解液は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル[上記の構造式(1−1)参照]又はその誘導体が添加されている。あるいは又、実施例1の電解液は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、上記の構造式(1−1)、構造式(1−2)、構造式(1−3)、構造式(1−4)又は構造式(1−5)を有する物質の少なくとも1種類が添加されている。また、実施例1の電気化学デバイス(あるいは、二次電池)は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル[上記の構造式(1−1)参照]又はその誘導体が添加された電解液を備えている。あるいは又、実施例1の電気化学デバイス(あるいは、二次電池)は、マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、上記の構造式(1−1)、構造式(1−2)、構造式(1−3)、構造式(1−4)又は構造式(1−5)を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液を備えている。即ち、実施例1の電気化学デバイスは、具体的には、実施例1の電解液によって電解質層が構成された電池(より具体的には、一次電池あるいは二次電池であり、負極(具体的には、負極活物質)がマグネシウム系材料から構成された一次電池あるいは二次電池)である。更には、実施例1にあっては、電気化学デバイスは硫黄(S)を含む材料から成る正極を備えている。
【0052】
実施例1において、電解液は、スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む。そして、マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る。ここで、Xは、ハロゲンを含む分子、−SO4、−NO3、又は、ヘキサアルキルジシアジド基から成る。具体的には、ハロゲン化物(ハロゲンを含む分子)は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成り、より具体的には、実施例1にあっては、MgCl2又はMgBr2から成る。あるいは又、マグネシウム塩は、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO42)、硝酸マグネシム(Mg(NO32)、硫酸マグネシム(MgSO4)、テトラフルオロホウ酸マグネシウム(Mg(BF42)、テトラフェニルホウ酸マグネシウム(Mg(B(C6542)、ヘキサフルオロリン酸マグネシウム(Mg(PF62)、ヘキサフルオロヒ酸マグネシウム(Mg(AsF62)、パーフルオロアルキルスルホン酸マグネシウム((Mg(Rf1SO32)、但し、Rf1はパーフルオロアルキル基)、パーフルオロアルキルスルホニルイミド酸マグネシウム(Mg((Rf2SO22N)2、但し、Rf2はパーフルオロアルキル基)、及び、ヘキサアルキルジシアジドマグネシウム((Mg(HRDS)2)、但し、Rはアルキル基)から成る群より選択された少なくとも1種類のマグネシウム塩から成る。スルホンは、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホンから成り、具体的には、エチル−n−プロピルスルホン(EnPS)から成る。
【0053】
以下のようにして、実施例1Aの電解液(MgCl2−EnPS)を調製した。
【0054】
試薬の計量及び混合はグローブボックス内(アルゴンガス雰囲気/露点−80゜C乃至−90゜C)で行った。以下の実施例においても同様である。脱水メタノール100ミリリットルをスターラを用いて撹拌しながら、無水塩化マグネシウム(II)(MgCl2)3.81グラムを加えた。MgCl2をメタノールに溶解させる際に若干の発熱があることを、接触型温度計による反応容器外部の温度測定により確認した。この発熱は、メタノールがMgに配位する際の反応熱によるものであり、メタノール中のMgにメタノールが配位した構造を有していると考えられる。また、MgCl2溶解後も若干の白濁があった。これは、メタノール中に残存している水とMgとが反応し、Mg(OH)2が生成したことによるものと考えられる。白濁は極僅かであるため、濾過せずに操作を継続した。
【0055】
MgCl2溶解後、スターラを用いて撹拌しながら、EnPS43.6グラムを加えた。そして、大気が混入しない状態にこの溶液を保ちながらグローブボックス外に出し、ロータリーポンプを用いて減圧しながら、120゜C、2時間、加熱、攪拌することで、メタノールを除去した。メタノールが減少すると白色沈殿が生成したが、減圧加熱を継続すると、生成した沈殿物は溶解した。この溶解度の変化は、Mgの配位子がメタノールからEnPSに交換したことによるものであると考えられる。メタノールの除去を、1H NMR測定によって確認した。
【0056】
メタノール除去後の試料にはMgCl2をメタノールに溶解した際の白濁が残っていたため、グローブボックス内にて濾過(ポア径0.45μm;Whatman 製)した。得られた電解液は、Mg:Cl:EnPS=1:2:8(モル比)、Mg濃度0.95モル/リットルであった。そして、濾過後の電解液に、構造式(1−1)で示した物質(TEMPO)を所定量、加えた。
【0057】
また、以下のようにして、実施例1Bの電解液(MgBr2−EnPS)を調製した。即ち、EnPS43.6グラムに無水臭化マグネシウム(II)(MgBr2)3.70グラムを加え撹拌することで溶解させ、電解液を調製した。そして、得られた電解液に、構造式(1−1)で示した物質(TEMPO)を所定量を加え、スターラを用いて撹拌し溶解させた。
【0058】
そして、正極に硫黄(S)を含み(即ち、正極活物質として、硫黄が用いられた正極を備え)、陰極にマグネシウムを含むマグネシウム−硫黄二次電池(コイン電池CR2016タイプ)を作製した。具体的には、マグネシウム(Mg)を負極、硫黄(S)を正極として、コイン電池を作製した。そして、構造式(1−1)で示した物質(TEMPO)の添加率とサイクル特性との関係を調べた。試験条件を以下の表1に示す。
【0059】
〈表1〉
放電条件 :0.1ミリアンペア(定電流)/カットオフ電圧0.7ボルト
充電条件 :0.1ミリアンペア(定電流)/カットオフ電圧2.5ボルト
【0060】
尚、正極23は、硫黄(S8)10質量%、導電助剤としてケッチェンブラック60質量%、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)30質量%を瑪瑙製の乳鉢を用いて混合した。そして、アセトンで馴染ませながらローラーコンパクターを用いて10回程度圧延成型した。その後、70゜Cの真空乾燥で12時間乾燥した。こうして、正極を得ることができた。
【0061】
このコイン電池10を分解した状態を図1の模式図に示すが、コイン電池缶21にガスケット22を載せ、硫黄から成る正極23、グラスファイバー製のセパレータ24、直径1.5mm、厚さ0.25mmのMg板から成る負極25、厚さ0.5mmのステンレス鋼板から成るスペーサ26、コイン電池蓋27の順に積層した後、コイン電池缶21をかしめて封止した。スペーサ26はコイン電池蓋27に予めスポット溶接しておいた。セパレータ24には、実施例1Aあるいは実施例1Bの電解液が含まれている。前述したとおり、電解液は、 MgCl2:EnPS=1:8(モル比)、あるいは、MgBr2:EnPS=1:16(モル比)から成り、モル濃度は0.5モル/リットルである。
【0062】
所定濃度のTEMPOを含んだ実施例1A及び実施例1Bの電解液を用いたマグネシウム−硫黄二次電池において、充放電サイクル数と放電容量維持率(単位:%)との関係をプロットした図を、それぞれ、図2A及び図2Bに示す。尚、放電容量維持率(単位:%)は、第1サイクル目の放電容量を100%としたときの、各放電サイクルにおける放電容量の割合である。TEMPO添加率を、0.25質量%(図2A及び図2Bにおいて白丸印で示す)、0.50質量%(図2A及び図2Bにおいて黒三角印で示す)、0.75質量%(図2A及び図2Bにおいて白三角印で示す)、1.0質量%(図2A及び図2Bにおいて白四角印で示す)とした。また、TEMPO添加率0%のデータを図2A及び図2Bにおいて黒丸印で示す。それぞれの試験においては、2つのマグネシウム−硫黄二次電池を用い、データは平均値で示す。TEMPO添加率により多少のばらつきはあるものの、マグネシウム塩としてMgCl2を用いた実施例1A及びMgBr2を用いた実施例1Bにおいて、TEMPOの添加によって、放電容量及び放電容量維持率は、TEMPOを添加していない比較例1A、比較例1Bのマグネシウム−硫黄二次電池と比較して、高い値を維持していることが判る。また、実施例1A及び実施例1Bの電解液を用いたマグネシウム二次電池において、放電1サイクル目の放電容量維持率を100%としたときの放電5サイクル目の放電容量維持率(単位:%)を、図3A及び図3Bに示す。比較例1Aの放電容量維持率が28%であるのに対して、実施例1Aにあっては、TEMPOを0.5質量%、0.75質量%添加した場合では40%の放電容量維持率が得られた。また、比較例1Bの放電容量維持率が32%であるのに対して、実施例1Bにあっては、TEMPOを0.5質量%、0.75質量%添加した場合では50%の放電容量維持率が得られた。
【0063】
以上の結果から、TEMPOを添加することでマグネシウム−硫黄二次電池のサイクル特性が向上することが判明した。尚、構造式(1−2)、構造式(1−3)、構造式(1−4)、構造式(1−5)といった他のTEMPO骨格を有する物質でも同様の効果が得られた。TEMPO又はその誘導体、あるいは又、上記の構造式を有する物質(『TEMPO等』と総称する)はフリーラジカルであるため、放電に伴い生成する硫黄の還元体である負の電荷を帯びたポリサルファイドと親和性を有することが予想される。そして、これにより負の電荷を帯びたポリサルファイドとTEMPO等とが配位する結果、ポリサルファイドとマグネシウムの消費(腐食)反応が抑制されると想定される。
【実施例2】
【0064】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の電気化学デバイスは、模式的な断面図を図4に示すように、キャパシタから成り、実施例1の電解液が含浸されたセパレータ33を介して、正極31及び負極32が対向して配置されている。尚、セパレータ33、正極31及び負極32の少なくとも1つの表面に、実施例1の電解液が含浸されたゲル電解質膜を配置してもよい。参照番号35,36は集電体を示し、参照番号37はガスケットを示す。
【0065】
あるいは又、実施例2の電気化学デバイスは、概念図を図5に示すように、空気電池から成る。この空気電池は、例えば、水蒸気を透過し難く酸素を選択的に透過させる酸素選択性透過膜47、導電性の多孔質材料から成る空気極側集電体44、この空気極側集電体44と多孔質正極41の間に配置され導電性材料から成る多孔質の拡散層46、導電性材料と触媒材料を含む多孔質正極41、水蒸気を通過し難いセパレータ及び電解液(又は、電解液を含む固体電解質)43、マグネシウムイオンを放出する負極42、負極側集電体45、及び、これらの各層が収納される外装体48から構成されている。
【0066】
酸素選択性透過膜47によって空気(大気)51中の酸素52が選択的に透過され、多孔質材料から成る空気極側集電体44を通過し、拡散層46によって拡散され、多孔質正極41に供給される。酸素選択性透過膜47を透過した酸素の進行は空気極側集電体44によって部分的に遮蔽されるが、空気極側集電体44を通過した酸素は拡散層46によって拡散され、広がるので、多孔質正極41全体に効率的に行き渡るようになり、多孔質正極41の面全体への酸素の供給が空気極側集電体44によって阻害されることがない。また、酸素選択性透過膜47によって水蒸気の透過が抑制されるので、空気中の水分の影響による劣化が少なく、酸素が多孔質正極41全体に効率的に供給されるので、電池出力を高くすることが可能となり、安定して長期間使用可能となる。
【0067】
あるいは又、実施例2の電気化学デバイスは、概念図を図6に示すように、燃料電池から成る。この燃料電池は、例えば、正極61、正極用電解液62、正極用電解液輸送ポンプ63、燃料流路64、正極用電解液貯蔵容器65、負極71、負極用電解液72、負極用電解液輸送ポンプ73、燃料流路74、負極用電解液貯蔵容器75、イオン交換膜66から構成されている。燃料流路64には、正極用電解液貯蔵容器65、正極用電解液輸送ポンプ63を介して、正極用電解液62が連続的又は断続的に流れており(循環しており)、燃料流路74には、負極用電解液貯蔵容器75、負極用電解液輸送ポンプ73を介して、負極用電解液72が連続的又は断続的に流れており(循環しており)、正極61と負極71との間で発電が行われる。正極用電解液62として、実施例1の電解液に正極活物質を添加したものを用いることができ、負極用電解液72として、実施例1の電解液に負極活物質を添加したものを用いることができる。
【0068】
電気化学デバイスにおける負極は、以下の方法で製造することもできる。即ち、MgCl2とEnPS(エチル−n−プロピルスルホン)とをMgCl2:EnPS=1:8(モル比)の割合で含むMg電解液(Mg−EnPS)を準備し、このMg電解液を用いて、電解メッキ法に基づきCu箔上にMg金属を析出させて、負極活物質層としてMgメッキ層をCu箔上に形成する。このようにして得られたMgメッキ層の表面をXPS法に基づき分析した結果、Mgメッキ層の表面にMg、C、O、S及びClが存在することが明らかになり、また、表面分析で観察されたMg由来のピークは分裂しておらず、40eV以上60eV以下の範囲にMg由来の単一のピークが観察された。更には、Arスパッタ法に基づき、Mgメッキ層の表面を深さ方向に約200nm掘り進め、その表面をXPS法に基づき分析した結果、Arスパッタ後におけるMg由来のピークの位置及び形状は、Arスパッタ前におけるピークの位置及び形状と比べて変化がないことが明らかになった。MgBr2とEnPSとをMgBr2:EnPS=1:8(モル比)の割合で含むMg電解液、MgBr2とEiPS(エチル−i−プロピルスルホン)とをMgBr2:EiPS=1:8(モル比)の割合で含むMg電解液を用いたときにも、同様の結果を得ることができた。
【実施例3】
【0069】
実施例3においては、本開示の電気化学デバイス(具体的には、マグネシウム二次電池)、及び、その適用例について説明する。
【0070】
実施例1において説明した本開示におけるマグネシウム二次電池は、二次電池を駆動用・作動用の電源又は電力蓄積用の電力貯蔵源として利用可能な機械、機器、器具、装置、システム(複数の機器等の集合体)に対して、特に限定されることなく、適用することができる。電源として使用されるマグネシウム二次電池(具体的には、マグネシウム−硫黄二次電池)は、主電源(優先的に使用される電源)であってもよいし、補助電源(主電源に代えて、又は、主電源から切り換えて使用される電源)であってもよい。マグネシウム二次電池を補助電源として使用する場合、主電源はマグネシウム二次電池に限られない。
【0071】
本開示におけるマグネシウム二次電池(具体的には、マグネシウム−硫黄二次電池)の用途として、具体的には、ビデオカメラやカムコーダ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、テレビジョン受像機、各種表示装置、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、音楽プレーヤ、携帯用ラジオ、電子ブックや電子新聞等の電子ペーパー、PDAを含む携帯情報端末といった各種電子機器、電気機器(携帯用電子機器を含む);玩具;電気シェーバ等の携帯用生活器具;室内灯等の照明器具;ペースメーカや補聴器等の医療用電子機器;メモリカード等の記憶用装置;着脱可能な電源としてパーソナルコンピュータ等に用いられる電池パック;電動ドリルや電動鋸等の電動工具;非常時等に備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステム等の電力貯蔵システムやホームエネルギーサーバ(家庭用蓄電装置)、電力供給システム;蓄電ユニットやバックアップ電源;電動自動車、電動バイク、電動自転車、セグウェイ(登録商標)等の電動車両;航空機や船舶の電力駆動力変換装置(具体的には、例えば、動力用モータ)の駆動を例示することができるが、これらの用途に限定するものではない。
【0072】
中でも、本開示におけるマグネシウム二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電力供給システム、電動工具、電子機器、電気機器等に適用されることが有効である。電池パックは、本開示におけるマグネシウム二次電池を用いた電源であり、所謂組電池等である。電動車両は、本開示におけるマグネシウム二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車等)であってもよい。電力貯蔵システム(電力供給システム)は、本開示におけるマグネシウム二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システム(電力供給システム)では、電力貯蔵源である本開示におけるマグネシウム二次電池に電力が蓄積されているため、電力を利用して家庭用の電気製品等が使用可能となる。電動工具は、本開示におけるマグネシウム二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリル等)が可動する工具である。電子機器や電気機器は、本開示におけるマグネシウム二次電池を作動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
【0073】
以下、円筒型のマグネシウム二次電池及び平板型のラミネートフィルム型のマグネシウム二次電池を説明する。
【0074】
円筒型のマグネシウム二次電池100の模式的な断面図を図8に示す。マグネシウム二次電池100にあっては、ほぼ中空円柱状の電極構造体収納部材111の内部に、電極構造体121及び一対の絶縁板112,113が収納されている。電極構造体121は、例えば、セパレータ126を介して正極122と負極124とを積層して電極構造体を得た後、電極構造体を捲回することで作製することができる。電極構造体収納部材(電池缶)111は、一端部が閉鎖され、他端部が開放された中空構造を有しており、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等から作製されている。電極構造体収納部材111の表面にはニッケル(Ni)等がメッキされていてもよい。一対の絶縁板112,113は、電極構造体121を挟むと共に、電極構造体121の捲回周面に対して垂直に延在するように配置されている。電極構造体収納部材111の開放端部には、電池蓋114、安全弁機構115及び熱感抵抗素子(PTC素子、Positive Temperature Coefficient 素子)116がガスケット117を介してかしめられており、これによって、電極構造体収納部材111は密閉されている。電池蓋114は、例えば、電極構造体収納部材111と同様の材料から作製されている。安全弁機構115及び熱感抵抗素子116は、電池蓋114の内側に設けられており、安全弁機構115は、熱感抵抗素子116を介して電池蓋114と電気的に接続されている。安全弁機構115にあっては、内部短絡や、外部からの加熱等に起因して内圧が一定以上になると、ディスク板115Aが反転する。そして、これによって、電池蓋114と電極構造体121との電気的接続が切断される。大電流に起因する異常発熱を防止するために、熱感抵抗素子116の抵抗は温度の上昇に応じて増加する。ガスケット117は、例えば、絶縁性材料から作製されている。ガスケット117の表面にはアスファルト等が塗布されていてもよい。
【0075】
電極構造体121の捲回中心には、センターピン118が挿入されている。但し、センターピン118は、捲回中心に挿入されていなくともよい。正極122には、アルミニウム等の導電性材料から作製された正極リード部123が接続されている。具体的には、正極リード部123は正極集電体に取り付けられている。負極124には、銅等の導電性材料から作製された負極リード部125が接続されている。具体的には、負極リード部125は負極集電体に取り付けられている。負極リード部125は、電極構造体収納部材111に溶接されており、電極構造体収納部材111と電気的に接続されている。正極リード部123は、安全弁機構115に溶接されていると共に、電池蓋114と電気的に接続されている。尚、図8に示した例では、負極リード部125は1箇所(捲回された電極構造体の最外周部)であるが、2箇所(捲回された電極構造体の最外周部及び最内周部)に設けられている場合もある。
【0076】
電極構造体121は、正極集電体上に(具体的には、正極集電体の両面に)正極活物質層が形成された正極122と、負極集電体上に(具体的には、負極集電体の両面に)負極活物質層が形成された負極124とが、セパレータ126を介して積層されて成る。正極リード部123を取り付ける正極集電体の領域には、正極活物質層は形成されていないし、負極リード部125を取り付ける負極集電体の領域には、負極活物質層は形成されていない。
【0077】
マグネシウム二次電池100の仕様を以下の表2に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0078】
〈表2〉
正極集電体 厚さ20μmのアルミニウム箔
正極活物質層 片面当たり厚さ50μm
正極リード部 厚さ100μmのアルミニウム(Al)箔
負極集電体 厚さ20μmの銅箔
負極活物質層 片面当たり厚さ50μm
負極リード部 厚さ100μmのニッケル(Ni)箔
【0079】
マグネシウム二次電池100は、例えば、以下の手順に基づき製造することができる。
【0080】
即ち、先ず、正極集電体の両面に正極活物質層を形成し、負極集電体の両面に負極活物質層を形成する。
【0081】
その後、溶接法等を用いて、正極集電体に正極リード部123を取り付ける。また、溶接法等を用いて、負極集電体に負極リード部125を取り付ける。次に、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムから成るセパレータ126を介して正極122と負極124とを積層し、捲回して、(より具体的には、正極122/セパレータ126/負極124/セパレータ126の電極構造体(積層構造体)を捲回して)、電極構造体121を作製した後、最外周部に保護テープ(図示せず)を貼り付ける。その後、電極構造体121の中心にセンターピン118を挿入する。次いで、一対の絶縁板112,113で電極構造体121を挟みながら、電極構造体121を電極構造体収納部材(電池缶)111の内部に収納する。この場合、溶接法等を用いて、正極リード部123の先端部を安全弁機構115に取り付けると共に、負極リード部125の先端部を電極構造体収納部材111に取り付ける。その後、減圧方式に基づき実施例1の電解液を注入して、電解液をセパレータ126に含浸させる。次いで、ガスケット117を介して電極構造体収納部材111の開口端部に電池蓋114、安全弁機構115及び熱感抵抗素子116をかしめる。
【0082】
次に、平板型のラミネートフィルム型の二次電池を説明する。二次電池の模式的な分解斜視図を図9に示す。この二次電池にあっては、ラミネートフィルムから成る外装部材200の内部に、基本的に前述したと同様の電極構造体221が収納されている。電極構造体221は、セパレータ及び電解質層を介して正極と負極とを積層した後、この積層構造体を捲回することで作製することができる。正極には正極リード部223が取り付けられており、負極には負極リード部225が取り付けられている。電極構造体221の最外周部は、保護テープによって保護されている。正極リード部223及び負極リード部225は、外装部材200の内部から外部に向かって同一方向に突出している。正極リード部223は、アルミニウム等の導電性材料から形成されている。負極リード部225は、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性材料から形成されている。
【0083】
外装部材200は、図9に示す矢印Rの方向に折り畳み可能な1枚のフィルムであり、外装部材200の一部には、電極構造体221を収納するための窪み(エンボス)が設けられている。外装部材200は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。二次電池の製造工程では、融着層同士が電極構造体221を介して対向するように外装部材200を折り畳んだ後、融着層の外周縁部同士を融着する。但し、外装部材200は、2枚のラミネートフィルムが接着剤等を介して貼り合わされたものでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムから成る。金属層は、例えば、アルミニウム箔等から成る。表面保護層は、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等から成る。中でも、外装部材200は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。但し、外装部材200は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレン等の高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。具体的には、ナイロンフィルム(厚さ30μm)と、アルミニウム箔(厚さ40μm)と、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)とが外側からこの順に積層された耐湿性のアルミラミネートフィルム(総厚100μm)から成る。
【0084】
外気の侵入を防止するために、外装部材200と正極リード部223との間、及び、外装部材200と負極リード部225との間には、密着フィルム201が挿入されている。密着フィルム201は、正極リード部223及び負極リード部225に対して密着性を有する材料、例えば、ポリオレフィン樹脂等、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂から成る。
【0085】
次に、本開示におけるマグネシウム二次電池の幾つかの適用例について具体的に説明する。尚、以下で説明する各適用例の構成は、あくまで一例であり、構成は適宜変更可能である。
【0086】
電池パックは、1つの本開示におけるマグネシウム二次電池を用いた簡易型の電池パック(所謂ソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器等に搭載される。あるいは又、2並列3直列となるように接続された6つの本開示におけるマグネシウム二次電池から構成された組電池を備えている。尚、マグネシウム二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。
【0087】
本開示におけるマグネシウム二次電池を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図を図10に示す。電池パックは、セル(組電池)1001、外装部材、スイッチ部1021、電流検出抵抗器1014、温度検出素子1016及び制御部1010を備えている。スイッチ部1021は、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を備えている。また、電池パックは、正極端子1031及び負極端子1032を備えており、充電時には正極端子1031及び負極端子1032は、それぞれ、充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子1031及び負極端子1032は、それぞれ、電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0088】
セル1001は、複数の本開示におけるマグネシウム二次電池1002が直列及び/又は並列に接続されることで、構成される。尚、図10では、6つのマグネシウム二次電池1002が、2並列3直列(2P3S)に接続された場合を示しているが、その他、p並列q直列(但し、p,qは整数)のように、どのような接続方法であってもよい。
【0089】
スイッチ部1021は、充電制御スイッチ1022及びダイオード1023、並びに、放電制御スイッチ1024及びダイオード1025を備えており、制御部1010によって制御される。ダイオード1023は、正極端子1031からセル1001の方向に流れる充電電流に対して逆方向、負極端子1032からセル1001の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード1025は、充電電流に対して順方向、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例ではプラス(+)側にスイッチ部を設けているが、マイナス(−)側に設けてもよい。充電制御スイッチ1022は、電池電圧が過充電検出電圧となった場合に閉状態とされて、セル1001の電流経路に充電電流が流れないように制御部1010によって制御される。充電制御スイッチ1022が閉状態となった後には、ダイオード1023を介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合に閉状態とされて、セル1001の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部1010によって制御される。放電制御スイッチ1024は、電池電圧が過放電検出電圧となった場合に閉状態とされて、セル1001の電流経路に放電電流が流れないように制御部1010によって制御される。放電制御スイッチ1024が閉状態となった後には、ダイオード1025を介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合に閉状態とされて、セル1001の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部1010によって制御される。
【0090】
温度検出素子1016は例えばサーミスタから成り、セル1001の近傍に設けられ、温度測定部1015は、温度検出素子1016を用いてセル1001の温度を測定し、測定結果を制御部1010に送出する。電圧測定部1012は、セル1001の電圧、及びセル1001を構成する各マグネシウム二次電池1002の電圧を測定し、測定結果をA/D変換して、制御部1010に送出する。電流測定部1013は、電流検出抵抗器1014を用いて電流を測定し、測定結果を制御部1010に送出する。
【0091】
スイッチ制御部1020は、電圧測定部1012及び電流測定部1013から送られてきた電圧及び電流を基に、スイッチ部1021の充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を制御する。スイッチ制御部1020は、マグネシウム二次電池1002のいずれかの電圧が過充電検出電圧若しくは過放電検出電圧以下になったとき、あるいは又、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部1021に制御信号を送ることにより、過充電及び過放電、過電流充放電を防止する。充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024は、例えばMOSFET等の半導体スイッチから構成することができる。この場合、MOSFETの寄生ダイオードによってダイオード1023,1025が構成される。MOSFETとして、pチャネル型FETを用いる場合、スイッチ制御部1020は、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024のそれぞれのゲート部に、制御信号DO及び制御信号COを供給する。充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024は、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によって導通する。即ち、通常の充電及び放電動作では、制御信号CO及び制御信号DOをローレベルとし、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を導通状態とする。そして、例えば過充電若しくは過放電の際には、制御信号CO及び制御信号DOをハイレベルとし、充電制御スイッチ1022及び放電制御スイッチ1024を閉状態とする。
【0092】
メモリ1011は、例えば、不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等から成る。メモリ1011には、制御部1010で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各マグネシウム二次電池1002の初期状態におけるマグネシウム二次電池の内部抵抗値等が予め記憶されており、また、適宜、書き換えが可能である。また、マグネシウム二次電池1002の満充電容量を記憶させておくことで、制御部1010と共に例えば残容量を算出することができる。
【0093】
温度測定部1015では、温度検出素子1016を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行い、また、残容量の算出における補正を行う。
【0094】
次に、電動車両の一例であるハイブリッド自動車といった電動車両の構成を表すブロック図を図11Aに示す。電動車両は、例えば、金属製の筐体2000の内部に、制御部2001、各種センサ2002、電源2003、エンジン2010、発電機2011、インバータ2012,2013、駆動用のモータ2014、差動装置2015、トランスミッション2016及びクラッチ2017を備えている。その他、電動車両は、例えば、差動装置2015やトランスミッション2016に接続された前輪駆動軸2021、前輪2022、後輪駆動軸2023、後輪2024を備えている。
【0095】
電動車両は、例えば、エンジン2010又はモータ2014のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン2010は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジン等である。エンジン2010を動力源とする場合、エンジン2010の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置2015、トランスミッション2016及びクラッチ2017を介して前輪2022又は後輪2024に伝達される。エンジン2010の回転力は発電機2011にも伝達され、回転力を利用して発電機2011が交流電力を発生させ、交流電力はインバータ2013を介して直流電力に変換され、電源2003に蓄積される。一方、変換部であるモータ2014を動力源とする場合、電源2003から供給された電力(直流電力)がインバータ2012を介して交流電力に変換され、交流電力を利用してモータ2014を駆動する。モータ2014によって電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置2015、トランスミッション2016及びクラッチ2017を介して前輪2022又は後輪2024に伝達される。
【0096】
図示しない制動機構を介して電動車両が減速すると、減速時の抵抗力がモータ2014に回転力として伝達され、その回転力を利用してモータ2014が交流電力を発生させるようにしてもよい。交流電力はインバータ2012を介して直流電力に変換され、直流回生電力は電源2003に蓄積される。
【0097】
制御部2001は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源2003は、実施例1において説明した1又は2以上のマグネシウム二次電池(図示せず)を備えている。電源2003は、外部電源と接続され、外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積する構成とすることもできる。各種センサ2002は、例えば、エンジン2010の回転数を制御すると共に、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。各種センサ2002は、例えば、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等を備えている。
【0098】
尚、電動車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、電動車両は、エンジン2010を用いずに電源2003及びモータ2014だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0099】
次に、電力貯蔵システム(電力供給システム)の構成を表すブロック図を図11Bに示す。電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅及び商業用ビル等の家屋3000の内部に、制御部3001、電源3002、スマートメータ3003、及び、パワーハブ3004を備えている。
【0100】
電源3002は、例えば、家屋3000の内部に設置された電気機器(電子機器)3010に接続されていると共に、家屋3000の外部に停車している電動車両3011に接続可能である。また、電源3002は、例えば、家屋3000に設置された自家発電機3021にパワーハブ3004を介して接続されていると共に、スマートメータ3003及びパワーハブ3004を介して外部の集中型電力系統3022に接続可能である。電気機器(電子機器)3010は、例えば、1又は2以上の家電製品を含んでいる。家電製品として、例えば、冷蔵庫、エアコンディショナー、テレビジョン受像機、給湯器等を挙げることができる。自家発電機3021は、例えば、太陽光発電機や風力発電機等から構成されている。電動車両3011として、例えば、電動自動車、ハイブリッド自動車、電動オートバイ、電動自転車、セグウェイ(登録商標)等を挙げることができる。集中型電力系統3022として、商用電源、発電装置、送電網、スマートグリッド(次世代送電網)を挙げることができるし、また、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所、風力発電所等を挙げることもできるし、集中型電力系統3022に備えられた発電装置として、種々の太陽電池、燃料電池、風力発電装置、マイクロ水力発電装置、地熱発電装置等を例示することができるが、これらに限定するものではない。
【0101】
制御部3001は、電力貯蔵システム全体の動作(電源3002の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源3002は、実施例1において説明した1又は2以上のマグネシウム二次電池(図示せず)を備えている。スマートメータ3003は、例えば、電力需要側の家屋3000に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能である。そして、スマートメータ3003は、例えば、外部と通信しながら、家屋3000における需要・供給のバランスを制御することで、効率的で安定したエネルギー供給が可能となる。
【0102】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統3022からスマートメータ3003及びパワーハブ3004を介して電源3002に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機3021からパワーハブ3004を介して電源3002に電力が蓄積される。電源3002に蓄積された電力は、制御部3001の指示に応じて電気機器(電子機器)3010及び電動車両3011に供給されるため、電気機器(電子機器)3010の作動が可能になると共に、電動車両3011が充電可能になる。即ち、電力貯蔵システムは、電源3002を用いて、家屋3000内における電力の蓄積及び供給を可能にするシステムである。
【0103】
電源3002に蓄積された電力は、任意に利用可能である。そのため、例えば、電気料金が安価な深夜に集中型電力系統3022から電源3002に電力を蓄積しておき、電源3002に蓄積しておいた電力を電気料金が高い日中に用いることができる。
【0104】
以上に説明した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)毎に設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)毎に設置されていてもよい。
【0105】
次に、電動工具の構成を表すブロック図を図11Cに示す。電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料等から作製された工具本体4000の内部に、制御部4001及び電源4002を備えている。工具本体4000には、例えば、可動部であるドリル部4003が回動可能に取り付けられている。制御部4001は、電動工具全体の動作(電源4002の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPU等を備えている。電源4002は、実施例1において説明した1又は2以上のマグネシウム二次電池(図示せず)を備えている。制御部4001は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、電源4002からドリル部4003に電力を供給する。
【0106】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した電解液の組成、製造に用いた原材料、製造方法、製造条件、電解液の特性、電気化学デバイスや電池の構成、構造は例示であり、これらに限定するものではなく、また、適宜、変更することができる。本開示の電解液を有機ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシドやポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF))と混合してゲル電解質として使用することもできる。
【0107】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《電解液・・・第1の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル又はその誘導体が添加された電解液。
[A02]《電解液・・・第2の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液。
[A03]《電解液・・・第3の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
ラジカル捕捉剤が添加されている電解液。
[A04]ラジカル捕捉剤は、以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類から成る[A03]に記載の電解液。
[A05]《電解液・・・第4の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイス用の電解液であって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液。
[A06]電気化学デバイスは硫黄を含む材料から成る正極を備えている[A01]乃至[A05]のいずれか1項に記載の電解液。
[A07]スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む[A01]乃至[A06]のいずれか1項に記載の電解液。
[A08]マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る[A07]に記載の電解液。
[A09]ハロゲンを含む分子は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成る[A08]に記載の電解液。
[A10]スルホンは、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホン又はアルキルスルホン誘導体である[A07]乃至[A09]のいずれか1項に記載の電解液。
[A11]アルキルスルホンは、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−n−プロピルスルホン、メチル−i−プロピルスルホン、メチル−n−ブチルスルホン、メチル−i−ブチルスルホン、メチル−s−ブチルスルホン、メチル−t−ブチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチル−n−プロピルスルホン、エチル−i−プロピルスルホン、エチル−n−ブチルスルホン、エチル−i−ブチルスルホン、エチル−s−ブチルスルホン、エチル−t−ブチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、ジ−i−プロピルスルホン、n−プロピル−n−ブチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、i−ブチルエチルスルホン、s−ブチルエチルスルホン及びジ−n−ブチルスルホンから成る群より選ばれた少なくとも1種類のアルキルスルホンであり、
アルキルスルホン誘導体はエチルフェニルスルホンである[A10]に記載の電解液。
[B01]《電気化学デバイス・・・第1の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシフリーラジカル、又は、その誘導体が添加された電解液を備えている電気化学デバイス。
[B02]《電気化学デバイス・・・第2の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液を備えている電気化学デバイス。
[B03]《電気化学デバイス・・・第3の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
ラジカル捕捉剤が添加されている電解液を備えている電気化学デバイス。
[B04]ラジカル捕捉剤は、以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類から成る[B03]に記載の電気化学デバイス。
[B05]《電気化学デバイス・・・第4の態様》
マグネシウム系材料から成る負極を備えた電気化学デバイスであって、
以下の構造式を有する物質の少なくとも1種類が添加された電解液を備えている電気化学デバイス。
[B06]硫黄を含む材料から成る正極を備えている[B01]又は[B02]に記載の電気化学デバイス。
[B07]電解液は、スルホン、及び、スルホンに溶解したマグネシウム塩を含む[B01]乃至[B06]のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
[B08]マグネシウム塩は、MgXn(但し、nは1又は2であり、Xは、1価又は2価のアニオン)から成る[B07]に記載の電気化学デバイス。
[B09]ハロゲンを含む分子は、MgX2(X=Cl,Br,I)から成る[B08]に記載の電気化学デバイス。
[B10]スルホンは、R12SO2(但し、R1、R2はアルキル基を表す)で表されるアルキルスルホン又はアルキルスルホン誘導体である[B07]乃至[B09]のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
[B11]アルキルスルホンは、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−n−プロピルスルホン、メチル−i−プロピルスルホン、メチル−n−ブチルスルホン、メチル−i−ブチルスルホン、メチル−s−ブチルスルホン、メチル−t−ブチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチル−n−プロピルスルホン、エチル−i−プロピルスルホン、エチル−n−ブチルスルホン、エチル−i−ブチルスルホン、エチル−s−ブチルスルホン、エチル−t−ブチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、ジ−i−プロピルスルホン、n−プロピル−n−ブチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、i−ブチルエチルスルホン、s−ブチルエチルスルホン及びジ−n−ブチルスルホンから成る群より選ばれた少なくとも1種類のアルキルスルホンであり、
アルキルスルホン誘導体はエチルフェニルスルホンである[B10]に記載の電気化学デバイス。
[B12]電解液によって電解質層が構成された電池である[B01]乃至[B11]のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【符号の説明】
【0108】
10・・・コイン電池、21・・・コイン電池缶、22・・・ガスケット、23・・・正極、24・・・セパレータ、25・・・負極、26・・・スペーサ、27・・・コイン電池蓋、31・・・正極、32・・・負極、33・・・セパレータ、35,36・・・集電体、37・・・ガスケット、41・・・多孔質正極、42・・・負極、43・・・セパレータ及び電解液、44・・・空気極側集電体、45・・・負極側集電体、46・・・拡散層、47・・・酸素選択性透過膜、48・・・外装体、51・・・空気(大気)、52・・・酸素、61・・・正極、62・・・正極用電解液、63・・・正極用電解液輸送ポンプ、64・・・燃料流路、65・・・正極用電解液貯蔵容器、71・・・負極、72・・・負極用電解液、73・・・負極用電解液輸送ポンプ、74・・・燃料流路、75・・・負極用電解液貯蔵容器、66・・・イオン交換膜、100・・・マグネシウム二次電池、111・・・電極構造体収納部材(電池缶)、112,113・・・絶縁板、114・・・電池蓋、115・・・安全弁機構、115A・・・ディスク板、116・・・熱感抵抗素子(PTC素子)、117・・・ガスケット、118・・・センターピン、121・・・電極構造体、122・・・正極、123・・・正極リード部、124・・・負極、125・・・負極リード部、126・・・セパレータ、200・・・外装部材、201・・・密着フィルム、221・・・電極構造体、223・・・正極リード部、225・・・負極リード部、1001・・・セル(組電池)、1002・・・マグネシウム二次電池、1010・・・制御部、1011・・・メモリ、1012・・・電圧測定部、1013・・・電流測定部、1014・・・電流検出抵抗器、1015・・・温度測定部、1016・・・温度検出素子、1020・・・スイッチ制御部、1021・・・スイッチ部、1022・・・充電制御スイッチ、1024・・・放電制御スイッチ、1023,1025・・・ダイオード、1031・・・正極端子、1032・・・負極端子、CO,DO・・・制御信号、2000・・・筐体、2001・・・制御部、2002・・・各種センサ、2003・・・電源、2010・・・エンジン、2011・・・発電機、2012,2013・・・インバータ、2014・・・駆動用のモータ、2015・・・差動装置、2016・・・トランスミッション、2017・・・クラッチ、2021・・・前輪駆動軸、2022・・・前輪、2023・・・後輪駆動軸、2024・・・後輪、3000・・・家屋、3001・・・制御部、3002・・・電源、3003・・・スマートメータ、3004・・・パワーハブ、3010・・・電気機器(電子機器)、3011・・・電動車両、3021・・・自家発電機、3022・・・集中型電力系統、4000・・・工具本体、4001・・・制御部、4002・・・電源、4003・・・ドリル部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際調査報告】