(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2018092691
(43)【国際公開日】20180524
【発行日】20191017
(54)【発明の名称】抗体の精製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/281 20060101AFI20190920BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20190920BHJP
   B01J 20/286 20060101ALI20190920BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20190920BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20190920BHJP
   B01D 15/08 20060101ALI20190920BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20190920BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20190920BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20190920BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   !B01J20/281 R
   !G01N30/88 J
   !B01J20/281 X
   !B01J20/286
   !G01N30/26 A
   !B01J20/26 L
   !B01D15/00 M
   !B01D15/08
   !B01J20/26 H
   !B01J20/28 Z
   !C07K16/00
   !C07K1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
【出願番号】2018551602
(21)【国際出願番号】JP2017040599
(22)【国際出願日】20171110
(31)【優先権主張番号】2016224782
(32)【優先日】20161118
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町二丁目2番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】松本 吉裕
【住所又は居所】神奈川県横浜市金沢区大川5−1 JNC株式会社 横浜研究所内
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4H045
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017AA11
4D017BA07
4D017BA20
4D017CA14
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA05
4D017EB02
4G066AC01B
4G066AC06B
4G066AC12B
4G066AC21B
4G066BA09
4G066BA22
4G066CA20
4G066CA54
4G066DA11
4G066EA01
4G066FA37
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA40
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
一実施形態によれば、抗体およびHCPを含む溶液を、クロマトグラフィー担体に接触させて、前記抗体と前記HCPとを分離することを含む、抗体の精製方法であって、前記クロマトグラフィー担体は、多孔性粒子を含むベース担体と、前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する化合物とを含み、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されており、前記抗体の回収率が85%以上であり、精製後の抗体溶液中の前記HCP量が45ppm未満である、方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体および宿主由来タンパク質(HCP)を含む溶液を、クロマトグラフィー担体に接触させて、前記抗体と前記HCPとを分離することを含む、抗体の精製方法であって、
前記クロマトグラフィー担体は、多孔性粒子を含むベース担体と、前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する化合物とを含み、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されており、
前記抗体の回収率が85%以上であり、精製後の抗体溶液中の前記HCP量が45ppm未満である、方法。
【請求項2】
前記方法がフロースルーモードで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の40%超が、前記疎水基で修飾されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリグアニジン、およびポリオルニチンからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、ポリアリルアミンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアリルアミンの重量平均分子量が、5,000〜15,000である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水基が、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法:
【化1】

[式中、
nは、0〜8の整数であり、
は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
【請求項8】
前記疎水基が、前記一般式(1)の構造を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一般式(1)において、nが4〜8の整数であり、RがHである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記一般式(1)において、nが0〜8の整数であり、Rがフェニル基である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記疎水基が、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物に由来する基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記疎水基が、無水吉草酸または無水安息香酸に由来する基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体およびHCPを含む溶液の電気伝導度が、22mS/cm以下である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体およびHCPを含む溶液に多価陰イオンがさらに含まれる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多価陰イオンが、クエン酸イオン、リン酸イオン、および硫酸イオンからなる群より選択される1種以上である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の精製方法に関する。より詳しくは、本発明は、抗体および宿主由来タンパク質(HCP)などの不純物を含む溶液から抗体と不純物とを分離する抗体の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーを用いてバイオ医薬品等の精製を行うことは広く知られており、種々の分子間相互作用を利用して目的物と不純物の分離が行われる。例として、静電的相互作用を利用したイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用を利用した疎水性クロマトグラフィーおよび抗体に対するアフィニティー相互作用を利用したプロテインAクロマトグラフィーなどがある。
【0003】
バイオ医薬品の精製において最も多く用いられているのは、イオン交換クロマトグラフィーである。イオン交換クロマトグラフィーは、処理液の電気伝導度が増加することで吸着能が減少することが知られている。従って、電気伝導度の高い試料においては、吸着処理を行う前に、希釈や脱塩により、電気伝導度を例えば5mS/cmまで下げる必要がある。
【0004】
このようなイオン交換クロマトグラフィーの欠点を補うため、近年は静電的相互作用に加え、疎水性相互作用、親水性相互作用、キレート相互作用などを併せ持つクロマトグラフィー担体の開発が盛んに行われている。
【0005】
このように複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体としては、Capto(登録商標)adhere、Capto(登録商標)MMC(以上、GEヘルスケア社製)、MEP HyperCel、HyperCel(商標) AX STAR(以上、Pall社製)、Eshumuno(登録商標)HCX(EMD Millipore社製)、CHT(登録商標)Ceramic Hydroxyapatite(バイオ・ラッド社製)、およびToyopearl(登録商標)MX Trp−650(東ソー社製)などが市販されている。
【0006】
これらの複数の作用を併せ持つクロマトグラフィー担体は、静電的相互作用を有するリガンドに加え、異なる原理の相互作用を有するリガンドを同一のベース担体に導入するか、あるいは、ベース担体に結合させたリガンドの一部をさらに修飾することにより得られる。このようにして得られた担体は、静電的相互作用を有するリガンドのみを担持したイオン交換クロマトグラフィー担体とは異なる選択性を有する。ベース担体に結合させるリガンドとしては、例えばポリアミンが検討されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ポリアミンをリガンドとして有するクロマトグラフィー担体およびその血液凝固因子の精製への使用が開示されている。
特許文献2には、ポリアリルアミンの架橋重合体で被覆された表面を有する多孔質吸着媒体が開示されている。
【0008】
特許文献3には、ベース担体にポリアリルアミンを結合させ、該ポリアリルアミンをさらなる官能基で修飾したクロマトグラフ媒体が開示されており、さらなる官能基として陽イオン交換基が使用されている。
特許文献5には、異なる相互作用を有する複数種の官能基を含むリガンドを付加した担体が、免疫グロブリンの精製に好適に使用され得ることが記載されている。特にアミノ基とフェニル基を有するリガンド構造体を使用した場合、免疫グロブリンをpH7でフロースルー画分にて回収できることが示唆されている。
【0009】
特許文献6には、疎水的陰イオン交換担体として知られているSperosil QMAを用いて、初乳またはその血清中に存在する免疫グロブリンをフロースルーにて分離する方法が記載されている。また、特許文献7には、色素結合型クロマト担体が、コーンフラクションII由来の免疫グロブリンをフロースルーにて他の不純物と分離する事例を示している。
特許文献8には、陰イオン交換基と芳香族基とを有する担体をフロースルーモードで使用して、抗体を精製する方法が開示されている。
【0010】
非特許文献1には、ベース担体であるセファロースFF樹脂にポリエチレンイミンを結合させ、該ポリエチレンイミンをさらにベンゾイル基で修飾したクロマトグラフィー担体が、ウシ血清アルブミン(BSA)の精製において優れた性能を発揮することが記載されている。
【0011】
このように、種々のクロマトグラフィー担体が提案されているが、精製対象物質に応じて、その物質に適した吸着力、細孔径、比表面積等の吸着および/または分離特性を有するクロマトグラフィー担体を開発することは、尽きることのない課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表平4−506030号公報
【特許文献2】特開2009−53191号公報
【特許文献3】特表2004−522479号公報
【特許文献4】特開2016−6410号公報
【特許文献5】特表2001−501595号公報
【特許文献6】米国特許第4582580号明細書
【特許文献7】豪国特許出願公告第594054号明細書
【特許文献8】特許第5064225号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of Chromatography A,1372(2014),157−165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような背景のもと、精製対象物質に適した吸着および/または分離特性を有するクロマトグラフィー担体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、多孔性粒子を含むベース担体にポリアミンを付加し、その後、ポリアミンにおけるアミノ基を疎水基で修飾して得られたクロマトグラフィー担体が、タンパク質の吸着能に優れており、タンパク質の分離精製に使用できることを見出した(特許文献4)。今般さらに検討を進めることにより、多孔性粒子を含むベース担体に、第一級アミノ基を複数有する化合物を付加し、その後、前記第一級アミノ基の一部を疎水基で修飾して得られたクロマトグラフィー担体が、特に抗体の分離精製に適した特性を有することを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、例えば以下のとおりである。
[1]抗体および宿主由来タンパク質(HCP)を含む溶液を、クロマトグラフィー担体に接触させて、前記抗体と前記HCPとを分離することを含む、抗体の精製方法であって、
前記クロマトグラフィー担体は、多孔性粒子を含むベース担体と、前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する化合物とを含み、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されており、
前記抗体の回収率が85%以上であり、精製後の抗体溶液中の前記HCP量が45ppm未満である、方法。
[2]前記方法がフロースルーモードで行われる、[1]に記載の方法。
[3]前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の40%超が、前記疎水基で修飾されている、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリグアニジン、およびポリオルニチンからなる群より選択される、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、ポリアリルアミンである、[4]に記載の方法。
[6]前記ポリアリルアミンの重量平均分子量が、5,000〜15,000である、[5]に記載の方法。
[7]前記疎水基が、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造を有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法:
【化1】

[式中、
nは、0〜8の整数であり、
は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
[8]前記疎水基が、前記一般式(1)の構造を有する、[7]に記載の方法。
[9]前記一般式(1)において、nが4〜8の整数であり、RがHである、[8]に記載の方法。
[10]前記一般式(1)において、nが0〜8の整数であり、Rがフェニル基である、[8]に記載の方法。
[10−1] nが4〜8の整数であり、RがHであり、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の40%超〜55%が前記疎水基で修飾されている、[7]に記載の方法。
[11]前記疎水基が、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルからなる群より選ばれる化合物に由来する基である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[12]前記疎水基が、無水吉草酸または無水安息香酸に由来する基である、[11]に記載の方法。
[12−1] 前記疎水基で修飾された前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、以下の一般式(a)で表される繰返し単位と一般式(b)で表される繰返し単位を含む、[8]に記載の方法:
【化2】

(式(b)中、nおよびRは、前記一般式(1)において定義したとおりである)。
[12−2]前記疎水基で修飾された前記第一級アミノ基を複数有する化合物が、親水性基であり静電的相互作用を有するアミノ基(一般式(a)における−NH基)、静電的相互作用を有するアミド基(一般式(b)における−NH−CO−基)、疎水的相互作用を有する疎水性基(一般式(b)におけるR基)を有する、[12−1]に記載の方法。
[13]前記抗体およびHCPを含む溶液の電気伝導度が、22mS/cm以下である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]前記抗体およびHCPを含む溶液に多価陰イオンがさらに含まれる、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15]前記多価陰イオンが、クエン酸イオン、リン酸イオン、および硫酸イオンからなる群より選択される1種以上である、[14]に記載の方法。
[16]前記抗体がモノクローナル抗体である、[1]〜[15]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によると、抗体およびHCPなどの不純物を含む溶液から、抗体と不純物とを分離することにより高い精製度で抗体を精製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】参考例1においてサイズ排除クロマトグラフィー分析を実施して得られたクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の一実施形態によると、抗体およびHCPなどの不純物を含む溶液をクロマトグラフィー担体に接触させて、前記抗体と前記不純物とを分離することを含む抗体の精製方法であって、前記クロマトグラフィー担体は、多孔性粒子を含むベース担体と、前記ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する化合物とを含み、前記第一級アミノ基を複数有する化合物における前記第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されている、方法が提供される。
【0019】
実施形態に係る方法において使用されるクロマトグラフィー担体は、リガンドとして第一級アミノ基を複数有する化合物を含み、さらに第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されている。このような構成のクロマトグラフィー担体を抗体の精製において使用した場合、抗体およびHCPなどの不純物を含む溶液から抗体と不純物とを分離する能力(特にHCP除去能)が高く、高い精製度および回収率で精製抗体を得ることができる。従来、イオン交換クロマトグラフィーでは、精製対象である抗体および不純物を含む溶液(以下、「抗体溶液」とも称する)の電気伝導度が高くなると、吸着能および分離能が低下することが課題となっていた。また、特に抗体医薬精製でフロースルーモードにて利用される陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて、培地や緩衝液に含まれることにより抗体溶液中にクエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン等の多価陰イオンが存在する場合にも、同様の課題があった。しかしながら、実施形態に係る方法によると、抗体溶液の電気伝導度が比較的高い場合および/または抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合においても、高い吸着能および分離能を維持することができ、高い精製度および回収率で精製抗体を得ることができる。
【0020】
このように、実施形態に係る方法は、抗体溶液の電気伝導度にかかわらず優れた吸着能および分離能を発揮するため、広範囲の抗体溶液の精製に使用可能であると言える。また、抗体培養液と同等の電気伝導度(約14mS/cm)を有する抗体溶液をそのままカラムに供することができ、従来行っていた精製前に抗体溶液を脱塩、希釈等して電気伝導度を調整する工程を行う必要がないため、より簡便に抗体の精製を行うことができる。さらに、精製前に抗体溶液から多価陰イオンを除去する必要もないため、この点でもより簡便に抗体の精製を行うことができると言える。
【0021】
1.クロマトグラフィー担体
以下、実施形態で使用するクロマトグラフィー担体の各構成要素について、順に説明する。
(1)ベース担体
クロマトグラフィー担体は、一般的に、ベース担体にリガンドが結合した構成を有する。ベース担体は多孔性粒子を含み、多孔性粒子は、リガンドとしての第一級アミノ基を複数有する化合物を導入するための官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾されている。そのような官能基で修飾され得る限り、使用される多孔性粒子は限定されないが、例えば、アガロース、デキストラン、でんぷん、セルロース、プルラン、キチン、キトサン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロースなどの多糖類およびその誘導体;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリビニルアルコールなどの有機重合体などが好ましく挙げられる。多孔性粒子は、架橋構造を形成していることが、機械的強度を確保できる点から好ましい。これらの中でも、架橋反応によってセルロース粒子の骨格が補強された架橋セルロース粒子を用いることがより好ましい。
【0022】
架橋セルロース粒子としては、クロマトグラフィー担体のベース担体として使用され得るものであれば特に制限されない。原料となるセルロースは、結晶セルロースであっても非結晶セルロースであってもよいが、強度が高いことから結晶セルロースが好ましい。
【0023】
好適に使用できる架橋セルロース粒子としては、例えば、特開2009−242770号公報に開示されている多孔性セルロースゲルが挙げられる。同公報に開示されている多孔性セルロースゲルは、未架橋セルロース粒子の懸濁液に、セルロースモノマーのモル数の6〜20倍量の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびホウ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機塩の存在下、セルロースモノマーのモル数の4〜12倍量の架橋剤と、架橋剤のモル数の0.1〜1.5倍量のアルカリとを3時間以上かけて連続滴下または分割添加する工程を含む方法で得られる。このようにして得られた架橋セルロース粒子は、機械的強度が高く、流速の速いクロマトグラフィー条件下での使用が可能であり、生産性の高い陽イオン交換クロマトグラフィー担体を与えることができる。ここで、「セルロースモノマー」とは、セルロースの構成単位であるグルコースユニットを意味する。また、セルロースモノマーのモル数(すなわち、重合度)は、グルコース1ユニットから水分を引いた量(すなわちセルロースの乾燥重量)に基づいて計算する(分子量162を1モルとする)。
【0024】
多孔性粒子の形状は特に制限されないが、機械的強度が高く、ゲル沈降性に優れ、均一な充填床を作製できることから、球状のものが好ましい。この場合、多孔性粒子の真球度は0.8〜1.0であることが好ましい。ここで「真球度」とは、多孔性粒子の短径/長径を意味する。
【0025】
球状セルロース粒子は、例えば、結晶セルロースまたは結晶領域と非結晶領域とからなるセルロースを溶解し再生することで容易に得ることができる。球状セルロース粒子の製造方法としては、例えば、特公昭55−39565号公報、特公昭55−40618号公報などに記載される酢酸エステルを経由する方法;特公昭63−62252号公報などに記載されるチオシアン酸カルシウム塩を含む溶液から製造する方法;特開昭59−38203号公報などに記載されるパラホルムアルデヒドおよびジメチルスルホキシドを含む溶液から製造する方法;特許第3663666号公報に記載される、セルロースを塩化リチウム含有アミドに溶解させたセルロース溶液から製造する方法などが挙げられる。また、球状の架橋セルロース粒子は、球状セルロース粒子を架橋することで得ることができる。
【0026】
多孔性粒子の粒子径は、10〜500μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、50〜150μmが特に好ましい。また、平均粒子径は、30〜1000μmが好ましく、40〜200μmがより好ましく、50〜100μmが特に好ましい。ここで、「粒子径」とは、各多孔性粒子の粒子径の実測値を意味し、「平均粒子径」とは、上記粒子径に基づいて算出される平均値を意味する。
【0027】
本明細書において、多孔性粒子の粒子径および平均粒子径は、例えば、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。この装置では、粒子群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折/散乱光の強度分布パターンから粒度分布を求め、それに基づいて粒子径および平均粒子径を算出する。具体的な測定装置としては、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)などを用いることができる。
【0028】
あるいは、光学顕微鏡で撮影した画像を使用して粒子径を測定することもできる。具体的には、ノギスなどを用いて画像上の粒子径を計測し、撮影倍率から元の粒子径を求める。そして、光学顕微鏡画像から求めたそれぞれの粒子径の値から、下記の式によって平均粒子径を算出する。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd)/Σ(nd
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
【0029】
多孔性粒子の多孔性は、細孔サイズ特性をもって特徴づけることができる。細孔サイズ特性を示す指標の一つとして、ゲル分配係数Kavがある。細孔サイズは、粒子の物理的強度や精製対象となる目的物質の多孔性粒子内での拡散性に影響を及ぼす。従って、細孔サイズによって、多孔性粒子中を通過する液体の流速や多孔性粒子の動的吸着容量に違いが生じる。そのため、目的に応じた細孔サイズとなるような多孔性粒子の設計が必要となる。特に動的吸着容量の観点から、多孔性粒子のゲル分配係数Kavは、重量平均分子量1.5×10Daの標準ポリエチレンオキシドをサンプルとして使用し、純水を移動相として使用した場合に、0.15〜0.6の範囲であるものが好ましく、より好ましくは0.2〜0.55であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。
【0030】
実施形態に係る発明においては、上記範囲のゲル分配係数を得られるような細孔サイズを有する多孔性粒子を使用することが、吸着特性の観点から好ましい。多孔性粒子として架橋セルロース粒子を使用する場合、そのゲル分配係数Kavは、例えば、粒子形成時のセルロースの溶解濃度を制御することにより調整することができる。
【0031】
ゲル分配係数Kavは、特定の分子量を有する標準物質(例えば、ポリエチレンオキシド)をサンプルとして使用した場合の保持容量とカラム体積との関係から、次式により求めることができる。
Kav=(Ve−V)/(Vt−V
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、Vはブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
ゲル分配係数Kavの具体的な測定方法は、例えば、L.Fischer著生物化学実験法2「ゲルクロマトグラフィー」第1版(東京化学同人)などに記載されている。
【0032】
(2)リガンド
実施形態に係る方法で使用するクロマトグラフィー担体は、リガンドとして第一級アミノ基を複数有する化合物を含み、さらに第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されている。ここで、「第一級アミノ基を複数有する化合物」は上述したベース担体に結合した状態で存在し、したがって本明細書において、用語「第一級アミノ基を複数有する化合物」とは「第一級アミノ基を複数有するリガンド」と表すこともできる。
【0033】
(第一級アミノ基を複数有する化合物)
まず、第一級アミノ基を複数有する化合物について説明する。
リガンドとして使用される第一級アミノ基を複数有する化合物は、ベース担体上の官能基と結合し得るものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどのポリアミン;キトサンなどの多糖類;ポリリジン、ポリグアニジン、ポリオルニチンなどのポリアミノ酸等が挙げられる。中でも、ポリアリルアミンおよびポリリジンが好ましく、ポリアリルアミンがより好ましい。
【0034】
第一級アミノ基を複数有する化合物の重量平均分子量は、300,000以下であってよく、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、5,000〜15,000であることが特に好ましい。ポリアリルアミンを使用する場合、重量平均分子量は150,000以下であってよく、1,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、5,000〜15,000であることが特に好ましく、10,000〜15,000であることが最も好ましい。
【0035】
ベース担体への第一級アミノ基を複数有する化合物の付加方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物が結合し得る官能基(例えば、水酸基、カルバモイル基など)で修飾された多孔性粒子と第一級アミノ基を複数有する化合物とを含む溶液を、所定の条件下で撹拌することにより行うことができる。
あるいは、ベース担体上でモノマーをグラフト重合させて、第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。この場合、モノマーとして第一級アミノ基を含む化合物を使用してもよいし、グリシジルメタクリレートのようにアミンに対して反応性の基を有するモノマーをベース担体上でグラフト重合し、その後アンモニアと反応させて第一級アミノ基を複数有する化合物を付加してもよい。
【0036】
(疎水基)
疎水基としては、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基に結合し、疎水性を有する限り特に限定されることはないが、疎水性クロマトグラフィー担体において通常用いられる疎水基が好ましい。そのような疎水基としては、飽和アルキル基および/またはフェニル基を含む基が挙げられる。飽和アルキル基は、直鎖状の飽和アルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8の直鎖状飽和アルキル基であることがより好ましく、n−ブチル基であることが特に好ましい。
【0037】
好ましい疎水基の構造として、以下の一般式(1)〜(3)のいずれかの構造が挙げられる。
【化3】

[式(1)〜(3)中、
nは、0〜8の整数であり、
は、nが0〜3の整数である場合はフェニル基であり、nが4〜8の整数である場合はHまたはフェニル基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
【0038】
言い換えると、nは、Rがフェニル基の場合に0〜8の整数であり、RがHである場合に4〜8の整数である。
上記式(1)〜(3)で表される構造における炭素原子は、炭素数1〜2のアルキル基やアルコキシ基等の置換基、例えばメチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基等を有していてもよい。
上記一般式(1)〜(3)の構造のうち、一般式(1)の構造がより好ましい。さらに好適なものとして、一般式(1)の構造のうち、nが4であることが好ましい。
【0039】
疎水基の第一級アミノ基への結合方式は、共有結合であれば特に制限されない。具体的には、例えば、酸無水物、酸塩化物、または活性エステルとアミノ基との反応によって形成されるアミド結合、あるいはエポキシ化合物またはハロゲン化物とアミノ基との反応によって形成される炭素−窒素結合であってよい。
【0040】
上記のような疎水基を導入するための化合物としては、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水エナント酸、無水カプリル酸、無水ペラルゴン酸、無水安息香酸、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどが挙げられる。すなわち、疎水基としてはこれらの化合物由来の基が好都合である。これらの化合物と第一級アミノ基を複数有する化合物とを反応させることにより、疎水基を、第一級アミノ基を複数有する化合物の第一級アミノ基に結合させることができる。上記化合物の中で、無水吉草酸および無水安息香酸がより好ましい。酸無水物は、第一級アミノ基を複数有する化合物との反応が温和な条件で収率よく進行する点から好ましい。
【0041】
第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基を、疎水基で修飾する際の方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物と疎水基を導入するための化合物とを含む溶液を、所定の条件下で撹拌することにより行うことができる。
【0042】
疎水基の構造は、以下の一般式(4)または(5)の構造であってもよい。
【化4】

[式(4)および(5)中、
は、複素環基であり、
*は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基との結合部位である]。
【0043】
の複素環基としては、特に限定されないが、窒素原子を含む複素環基が好ましく、窒素原子を有する芳香族複素環基がより好ましい。複素環基における複素環として、具体的には、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾリン、ピラジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン等が挙げられ、ピリジン、イミダゾール、およびベンズイミダゾールが好ましい。
複素環基における炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基やアルコキシ基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、およびブトキシ基であることが好ましい。
【0044】
上記式(4)で表される疎水基を、第一級アミノ基を複数有する化合物に導入するには、例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基に、メタクリル基を結合させ、さらにメタクリル基に複素環含有基を結合させる。メタクリル基は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基と、無水メタクリル酸、メタクリル酸の酸塩化物、またはメタクリル酸から誘導される活性エステル化合物などとを反応させることにより導入することができる。また、複素環含有基は、複素環基含有化合物を、第一級アミノ基に結合したメタクリル基と反応させることにより導入することができる。複素環基含有化合物は、例えば複素環基およびチオール基を含んでおり、この場合、チオール基がメタクリル基と反応する。
【0045】
上記式(5)で表される疎水基を第一級アミノ基を複数有する化合物に付加するには、例えば、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基に、アリル基を結合させ、さらにアリル基に複素環含有基を結合させる。アリル基は、第一級アミノ基を複数有する化合物における第一級アミノ基と、第一級アミノ基と結合する官能基およびアリル基を併せ持つ化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル)とを反応させることにより導入することができる。また、複素環含有基は、複素環基含有化合物を第一級アミノ基に結合したアリル基と反応させることにより導入することができる。複素環基含有化合物は、例えば複素環基およびチオール基を含んでおり、この場合、チオール基がアリル基またはアリル基から誘導される官能基と反応する。
【0046】
上記式(4)および(5)で表される疎水基の導入において使用される複素環基含有化合物は、複素環基を導入できる限り特に限定されないが、複素環基およびチオール基を含む化合物が好ましい。そのような化合物として、例えば、2−メルカプトエチルピリジン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルイミダゾール、2−メルカプト−4,5−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0047】
第一級アミノ基を複数有する化合物は、該化合物における第一級アミノ基の20〜55%が、疎水基で修飾されている。このアミノ基の修飾率は、第一級アミノ基を複数有する化合物中に存在する第一級アミノ基の全数に基づく値であり、例えば第一級アミノ基を複数有する化合物に100個の第一級アミノ基が存在する場合、そのうちの20〜55個が疎水基で修飾されていることを意味する。アミノ基の修飾率は25〜55%がより好ましい。あるいは、本発明の一実施形態においては、アミノ基の修飾率は、10〜75%であってもよい。なお、疎水基がブチル基などの飽和アルキル基を含み、フェニル基を含まない場合、アミノ基の修飾率が40%超〜55%、より好ましくは45%〜55%、あるいは50%〜55%であると、回収フラクション中のHCP量が少なく、高純度の精製抗体を得ることができる。また、疎水基がフェニル基を含む場合はアミノ基の修飾率が高くなるほど抗体回収率の低下が認められることから、抗体回収率と純度のバランスを最適化していくことが好ましい。
【0048】
第一級アミノ基を複数有する化合物と疎水基を導入するための化合物とを反応させる際に、疎水基を導入するための化合物の量を調節することにより、アミノ基の修飾率が上記範囲になるように調節することができる。アミノ基の修飾率は、疎水基を導入する前後でクロマトグラフィー担体のイオン交換容量をそれぞれ測定し、その値を比較することにより算出することができる。
【0049】
上述したリガンドは、例えば、以下の一般式(a)で表される繰返し単位と一般式(b)で表される繰返し単位を含む。
【化5】
【0050】
式(b)中、nおよびRは上記一般式(1)において定義したとおりである。本実施形態で使用するリガンドは、親水性基であり静電的相互作用を有するアミノ基(一般式(a)における−NH基)、静電的相互作用を有するアミド基(一般式(b)における−NH−CO−基)、疎水的相互作用を有する疎水性基(一般式(b)における−(CH−R基)を有することが好ましく、これら3種の基が相互に作用することによって特に好ましい特性が得られる。
【0051】
上述したように、実施形態に係る方法は、抗体溶液の電気伝導度にかかわらず使用することができ、例えば、22mS/cm程度(例えば、14〜22mS/cm)の比較的高い電気伝導度を有する抗体溶液についても高効率で精製することができる。したがって、実施形態に係る方法によると、22mS/cm以下、好ましくは2〜22mS/cm、より好ましくは6〜22mS/cmの電気伝導度を有する抗体溶液から抗体を精製することができる。
【0052】
また、上述したように、実施形態に係る方法は、抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合においても使用することができる。抗体溶液中に存在し得る多価陰イオンとしては、クエン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン等が挙げられ、クエン酸イオン、リン酸イオンおよび硫酸イオンからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0053】
2.抗体
精製対象の抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が挙げられるが、モノクローナル抗体であることが好ましい。抗体の種類としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらのFc領域などを改変した抗体などが挙げられ、分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc−融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’2、scFv、scFab、scDb、scDbFcなどが挙げられる。
【0054】
また、抗体としては、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の一部を積極的に変性させた、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体も含まれる。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の変性方法としては、例えば、Journal of PHARMACEUTICAL SCIENCES、2011、100、2104−2119に記載の方法が挙げられる。
【0055】
抗体は、単量体であっても重合体であってもよいが、単量体であることが好ましい。抗体単量体とは、1分子の抗体からなる分子である。抗体重合体とは、2分子以上の抗体の単量体が共有結合または非共有結合により重合した分子であり、例えば、二量体、三量体、多量体、凝集体、凝集塊などが挙げられる。
【0056】
抗体溶液に含まれる不純物としては、宿主由来タンパク質(HCP)の他、例えば、核酸、ウイルス、プロテインAリーク、抗体の分解物、および変性、糖鎖成分の除去、酸化、脱アミド等を受けた修飾抗体など、培養過程または他のクロマトグラフィー処理工程などで生じ得るものが挙げられる。
【0057】
抗体溶液としては、例えば、血漿、血清、乳もしくは尿などの生体から得られる組成物、遺伝子組換え技術もしくは細胞融合技術を用いて得られる抗体産生細胞、大腸菌などの菌類の培養液、またはトランスジェニック非ヒト動物、植物もしくは昆虫などから得られる組成物などが挙げられる。
【0058】
抗体産生細胞としては、例えば、宿主細胞に所望の抗体をコードする遺伝子が組み込まれた形質転換細胞などが挙げられる。宿主細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、酵母細胞などの細胞株が挙げられる。具体的には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、ラットミエローマ細胞であるYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞などが挙げられる。
【0059】
抗体産生細胞を培養する培地としては、各々の細胞の培養に適した培地であればいずれも使用することができる。例えば、血清含有培地、血清アルブミンもしくは血清分画物などの動物由来成分を含まない培地、無血清培地、無蛋白培地などが挙げられるが、好ましくは無血清培地または無蛋白培地である。また、必要に応じて、抗体産生細胞の生育に必要な生理活性物質、栄養因子などを添加することができる。これらの添加剤は、培養前に予め培地に含有させるか、培養中に添加培地または添加溶液として培地へ適宜追加供給する。添加剤は1種類でも2種以上でもよく、また、連続的に添加しても、断続的に添加してもよい。
【0060】
抗体を産生するトランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫としては、タンパク質をコードする遺伝子が細胞内に組み込まれた非ヒト動物、植物または昆虫が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、サルなどが挙げられる。植物としては、例えば、タバコ、ポテト、トマト、ニンジン、ソイビーン、アブラナ、アルファルファ、コメ、小麦、大麦、コーンなどが挙げられる。
【0061】
また、クロマトグラフィー担体に負荷される抗体溶液としては、上述したような抗体を含有する血漿、尿などの生体から得られるものの他、精製する過程で得られる抗体溶液も含まれる。具体的には、例えば、細胞除去液、沈殿物除去液、アルコール分画液、塩析分画液、クロマトグラフィー溶出液などが挙げられる。さらに、抗体溶液中に粒子などの不溶物が存在する場合には予めそれらを除去し、その後に実施形態に係る精製方法に供してもよい。粒子などの不溶物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、これらの方法を組み合わせた方法などが挙げられる。
【0062】
また、必要に応じて、抗体溶液のpH、導電率、緩衝液、塩濃度、添加物、抗体濃度、クロマトグラフィー担体の単位体積あたりの抗体負荷量などを予め好適な条件に調整してから、実施形態に係る精製方法に供してもよい。これらの調整方法としては、例えば、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法が挙げられる。
【0063】
3.精製方法
実施形態に係る抗体の精製方法は、抗体およびHCPなどの不純物を含む溶液を上述したクロマトグラフィー担体に接触させて、抗体と不純物とを分離することを含む。具体的には、カラムに上述したクロマトグラフィー担体を充填し、そこへ抗体溶液を流して、抗体または不純物のいずれか一方を選択的に担体に吸着させることにより抗体を精製することができる。あるいは、抗体と不純物を共に担体に吸着させ、溶出時の塩濃度を段階的あるいは連続的に増加させることで、クロマトグラフィー担体への親和性の違いを利用して抗体を精製することもできる。
【0064】
実施形態に係る方法で使用するクロマトグラフィー担体は抗体溶液中に含まれるHCPなどの不純物を吸着および分離する能力が高いため、実施形態に係る方法ではフロースルーモードを採用することが好ましい。ここで、フロースルーモードとは、不純物をクロマトグラフィー担体に結合させ、目的物質はクロマトグラフィー担体に結合せずに流れて回収される精製方法を言う。例えば、目的物質が抗体であり、不純物が宿主由来タンパク質(HCP)である場合、HCPがクロマトグラフィー担体に結合し、抗体はクロマトグラフィー担体に結合することなくカラム中を流れる。この時、多少であれば抗体も結合してよいが、HCPがより選択的にクロマトグラフィー担体に結合することにより、抗体が精製される。
【0065】
それに対してバインド・アンド・エリュートモードは、目的物質をクロマトグラフィー担体にいったん結合させ、その後、目的物質を溶出(エリュート)させて回収する精製方法を言う。例えば、抗体を精製する場合、まず、抗体をクロマトグラフィー担体に結合させ、不純物はクロマトグラフィー担体に結合することなくカラム中を通過させる。次いで、適切な塩濃度またはpHを有する移動相を使用して抗体のみを移動相に溶出させ、回収する。溶出方法としては、抗体とクロマトグラフィー担体との親和性が低下するような特定の塩濃度またはpHを有する緩衝液を通液して溶出させる一段階溶出法、段階的に塩濃度またはpHを変化させて抗体を溶出させるステップワイズ法、または連続的に塩濃度またはpHを変化させて抗体を溶出させるグラジエント法が挙げられる。
【0066】
クロマトグラフィー条件の設定においては、クロマトグラフィー担体に対する、抗体と不純物の親和性の違いを利用する。例えば、担体構造(リガンド種、リガンド密度、リガンド配向性、粒子径、細孔径、ベースマトリクス組成など)や、抗体および不純物の物理化学的性質(等電点、電荷、疎水性度、分子サイズ、立体構造など)の違いを考慮して条件設定する。
【0067】
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液に含まれる成分としては、緩衝能を有するものであれば特に限定はされないが、例えば、1〜300mmol/Lのリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、Tricineなどが挙げられる。また上記の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの他の塩と組み合わせて用いることもできる。さらに、緩衝液には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース、シアル酸などの糖、またはこれらの誘導体などが含まれていてもよい。
【0068】
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液のpHとしては、好ましくは2〜9の範囲であり、より好ましくは3〜8の範囲である。
抗体溶液およびカラムの洗浄または溶出に使用する緩衝液の線速度としては、好ましくは50〜1000cm/hの範囲である。
【0069】
クロマトグラフィー担体の単位体積あたりの抗体負荷量としては、好ましくは10〜500g/Lであり、より好ましくは60〜200g/Lである。
【0070】
実施形態に係る精製方法は、他の精製方法と組み合わせて実施してもよい。他の精製方法としては、抗体の精製に適した方法であればいずれも用いられるが、例えば、クロマトグラフィー、活性炭処理、アルコール分画、沈殿物除去、塩析、緩衝液交換、濃縮、希釈、ろ過、ウイルス不活性化、ウイルス除去などが挙げられる。他の精製方法としては、一つまたは複数の方法を選択してもよく、実施形態に係る精製方法の前に行っても後に行ってもよい。
また、モノクローナル抗体の製造分野では、一般的に陽イオン交換体をバインド・アンド・エリュートモードで、陰イオン交換体をフロースルーモードで用いているが、本発明のクロマトグラフィー担体を用いれば、陽イオン交換体をフロースルーモードにて使用する方法にも適応できる。
【0071】
他の精製方法がクロマトグラフィーである場合、使用される担体または膜としては、ヘパリン担体およびプロテインA担体などのアフィニティー担体、陽イオン交換担体、陽イオン交換膜、陰イオン交換担体、陰イオン交換膜、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード(マルチモーダル)担体などが挙げられる。
【0072】
実施形態に係る方法によると、85%以上、好ましくは90%以上の回収率で抗体を精製することができる。ここで、回収率とは、クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量(すなわち、精製前の抗体溶液中の抗体量)に対する抗体回収量の割合を意味する。また、上述したとおり、実施形態に係る方法において使用するクロマトグラフィー担体は、抗体溶液中のHCPなどの不純物を吸着する能力に優れるため、高い精製度で抗体を得ることができる。具体的には、精製後の抗体溶液(回収フラクション)中に含まれるHCP量は、好ましくは50ppm未満(0〜50ppm未満)であり、より好ましくは35ppm以下(0〜35ppm)であり、さらに好ましくは25ppm以下(0〜25ppm)であり、特に好ましくは10ppm以下(0〜10ppm)である。なお、上記HCP量は、式{精製後の抗体溶液におけるHCP量(ng)/精製後の抗体溶液における抗体量(mg)}から算出した値である。
【0073】
上記の好ましいHCP量は、抗体溶液の電気伝導度の高低にかかわらず達成することができ、例えば、精製前の抗体溶液の電気伝導度が6mS/cmおよび14mS/cmのいずれの場合においても、精製後の抗体溶液(回収フラクション)中に含まれるHCP量は、好ましくは45ppm未満(0〜45ppm未満)であり、より好ましくは35ppm以下(0〜35ppm)であり、さらに好ましくは25ppm以下(0〜25ppm)であり、特に好ましくは10ppm以下(0〜10ppm)である。特に、陽イオンクロマトグラフィーに供した後に実施形態に係る精製方法を実施することにより、比較的高い電気伝導度を有する抗体溶液であっても高い精製度で(すなわち、低いHCP量)精製することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合であっても、上記のような回収率およびHCP量で抗体を精製することができる。
【実施例】
【0074】
1.クロマトグラフィー担体の製造
(1)担体A(疎水基なし)
〔6%球状セルロース粒子(含水)の製造〕
6%球状セルロース粒子を、以下の手順に従って製造した。ここで、以下の(i)の工程で結晶性セルロースの濃度が6重量%である場合に、製造されるセルロース粒子を「6%球状セルロース粒子」と呼ぶ。
(i)100gのチオシアン酸カルシウム60重量%水溶液に、6.4gの結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:セオラスPH101)を加え、110〜120℃に加熱して溶解した。
(ii)この溶液に、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート6gを添加した。それを、130〜140℃に予め加熱したo−ジクロロベンゼン480mL中に滴下し、200〜300rpmにて撹拌して分散液を得た。
(iii)次いで、上記分散液を40℃以下まで冷却した。それをメタノール190mL中に注ぎ、粒子の懸濁液を得た。
(iv)得られた懸濁液を濾過分別して粒子を回収し、その粒子をメタノール190mLで洗浄した。この洗浄操作を数回行った。
(v)さらに大量の水で粒子を洗浄し、球状セルロース粒子を得た。
(vi)次いで、この球状セルロース粒子をJIS標準ふるい規格53μm〜125μmのふるいにかけて、所望の粒子径(粒子径:50〜150μm、平均粒子径:約100μm)を有する6%球状セルロース粒子(含水、セルロース溶解濃度:6重量%)を得た。
【0075】
なお、ここでの平均粒子径は、光学顕微鏡で撮影した画像を使用して測定した。具体的には、ノギスを用いて画像上の粒子径を計測し、撮影倍率から元の粒子径を求めた。そして、光学顕微鏡画像から求めたそれぞれの粒子径の値から、下記の式によって平均粒子径を算出した。
体積平均粒子径(MV)=Σ(nd)/Σ(nd
[式中、dは光学顕微鏡画像から求めた各粒子の粒子径の値を表し、nは測定した粒子の個数を表す。]
【0076】
〔架橋6%セルロース粒子の製造〕
上記で製造した6%球状セルロース粒子を架橋反応させ、架橋6%セルロース粒子を製造した。その手順は以下の通りである。
(i)上記で得られた6%球状セルロース粒子(含水)100gに121gの純水を加え、撹拌しながら加温した。30℃に到達したところで、45重量%のNaOH水溶液3.3gおよびNaBH40.5gを加え、さらに加温および撹拌した。ここでの初期アルカリ濃度は、0.69%(w/w)であった。
(ii)30分後、60gのNaSOを反応液に加え、溶解させた。混合物の温度が50℃に到達した時点から、温度を50℃に維持しながらさらに2時間撹拌を継続した。
(iii)50℃で混合物の撹拌を継続しながら、45重量%のNaOH水溶液48gと、エピクロロヒドリン50gとをそれぞれ25等分した量を、15分おきにおよそ6時間かけて添加した。
(iv)添加終了後、この混合物を温度50℃で16時間反応させた。
(v)反応混合物を40℃以下の温度に冷却した後、酢酸2.6gを加えて中和した。
(vi)反応混合物を濾過してセルロース粒子を回収し、セルロース粒子を純水で濾過洗浄して架橋6%セルロース粒子を得た。
【0077】
得られた架橋6%セルロース粒子の平均粒子径およびKav値を、以下の通り測定した。
(平均粒子径の測定)
レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)を用いて平均粒子径を測定したところ、85μmであった。
【0078】
(Kav値の測定)
ゲル分配係数Kavは、重量平均分子量1.5×105Daの標準ポリエチレンオキシドをサンプルとして用い、その保持容量とカラム体積との関係から、次式により算出した。なお、移動相としては純水を使用した。
Kav=(Ve−V)/(Vt−V
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、Vはブルーデキストランの保持容量(mL)を表す。]
上記で得られた架橋6%セルロース粒子のゲル分配係数Kavは、0.38であった。
【0079】
〔架橋6%セルロース粒子のエポキシ化〕
上記で得られた湿潤セルロース粒子3000gと純水1952gを10LのSUS容器に加え、スラリーとした。次に、エピクロロヒドリンを1764g加えた。28度まで昇温後、48.7%水酸化ナトリウム水溶液1655gを液温が30度を超えないように2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間、30度で撹拌した。次に145gの酢酸を加え、10分間撹拌した。反応終了後に、湿潤粒子を濾過して回収し、回収した湿潤粒子を6Lの純水で16回洗浄して、目的のエポキシ化セルロース粒子を得た。
【0080】
〔ポリアリルアミン付加〕
10LのSUS容器に、上記で得られたエポキシ化セルロース粒子3000gと重量平均分子量15000のポリアリルアミン15.3%水溶液PA−15C(ニットーボーメディカル株式会社)4995gを入れて、45℃で18時間撹拌した。反応終了後、湿潤粒子を濾過し、回収した湿潤粒子を6Lの純水で10回洗浄して、目的のポリアリルアミン付加セルロース粒子(担体A)を得た。このポリアリルアミン付加セルロース粒子のイオン交換容量は、0.23mmol/mLであった。イオン交換容量の測定方法は、後述するとおりである。
【0081】
(2)担体B(疎水基付加;無水吉草酸;アミノ基修飾率26%)
上記で得られた担体A 30gを90mLのメタノールで5回洗浄した。メタノール洗浄した粒子とメタノール50mLを150mL容器に加え、スラリーとした。その後、無水吉草酸0.57gとトリエチルアミン0.31gを加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、湿潤粒子を濾過し、回収した湿潤粒子を45mLのメタノールで1回、45mLの0.1M水酸化ナトリウム水溶液で1回、45mLの純水で10回洗浄して目的物を得た。得られた粒子のイオン交換容量は、0.17mmol/mLであった。
【0082】
(3)担体C(疎水基付加;無水吉草酸;アミノ基修飾率52%)
無水吉草酸の量を1.12gに、トリエチルアミンの量を0.61gに変更したことを除き、担体Bと同様の方法で担体Cを製造した。得られた粒子のイオン交換容量は、0.11mmol/mLであった。
【0083】
(4)担体D(疎水基付加;無水安息香酸;アミノ基修飾率26%)
無水吉草酸の代わりに無水安息香酸0.57gを使用したことを除き、担体Bと同様の方法で担体Dを製造した。得られた粒子のイオン交換容量は、0.17mmol/mLであった。
【0084】
(5)担体E(疎水基付加;無水安息香酸;アミノ基修飾率52%)
無水吉草酸の代わりに無水安息香酸1.36gを使用し、トリエチルアミンの量を0.60gに変更したことを除き、担体Bと同様の方法で担体Eを製造した。得られた粒子のイオン交換容量は、0.11mmol/mLであった。
【0085】
2.抗体溶液の調製
(1)抗体溶液a
〔プロテインAカラムによる精製〕
(i)使用樹脂、機器
プロテインA樹脂:KANEKA KanCap A(株式会社カネカ)
カラム:内径2.6cm、高さ40cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した培養液および溶液
培養液:モノクローナル抗体(IgG1)を産生したCHO細胞培養液(除細胞済)
A1バッファー:20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)+0.15M NaCl
A2バッファー:20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)
B1バッファー:60mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)
0.1M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
プロテインA樹脂をカラムに10cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、2カラム体積分のA1バッファーを13.25mL/minでカラムに通液し、平衡化した。以後の工程も、流速はすべて13.25mL/minで実施した。次に、培養液1400mLをカラムに通液した。3カラム体積分のA1バッファーで未吸着の培養液を洗浄後、2カラム体積分のA2バッファーを更に通液した。次に、4.8カラム体積分のB1バッファーを通液して、プロテインA樹脂に吸着したモノクローナル抗体を溶出させた。測定波長280nmで吸光度を測定することにより抗体の回収を確認し、4.8カラム体積分のうち、約2カラム体積分を回収フラクションとして回収した。溶出後のカラムに、2カラム体積分のA1バッファーと3カラム体積分の0.1M水酸化ナトリウム水溶液を通液して洗浄した。最後に、5カラム体積分のA1バッファーを通液して再平衡化した。
【0086】
〔回収フラクションのウイルス不活化処理〕
上記で得られた回収フラクションに、0.1Mのクエン酸をpHが3.4になるまで加えた。25℃で1時間静置後、1Mトリスヒドロキシアミノメタン水溶液をpHが7.0になるまで加えた。にごりが確認されたため1.2μmおよび0.45μmの孔径のフィルターを用いてろ過した。ろ液中のモノクローナル抗体の濃度は16.37mg/mLであり、HCP量は184ppmであった。
【0087】
〔溶液調製〕
上記で得られたろ液の一部を超純水で希釈した。その後、1Mトリスヒドロキシアミノメタン水溶液および5M塩化ナトリウム水溶液を使用して、pH7.0、電気伝導度6mS/cmに調整し、抗体溶液aを得た。抗体溶液aにおけるモノクローナル抗体の濃度は、10.42mg/mLであった。
【0088】
(2)抗体溶液b
溶液調製の工程において、電気伝導度を14mS/cmに調整したことを除き、抗体溶液aと同様の方法で抗体溶液bを調製した。抗体溶液bにおけるモノクローナル抗体の濃度は、10.63mg/mLであった。
【0089】
(3)抗体溶液c
〔プロテインAカラムによる精製〕
(i)使用樹脂、機器
抗体溶液aと同じ
(ii)精製に使用した培養液および溶液
培養液:モノクローナル抗体(IgG1)を産生したCHO細胞培養液(除細胞済)
A1バッファー:20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)+0.15M NaCl
A2バッファー:20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)
B2バッファー:60mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)
0.1M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
B1バッファーの代わりにB2バッファーを使用したことを除き、抗体溶液aと同様の処理を行った。
【0090】
〔回収フラクションのウイルス不活化処理〕
上記で得られた回収フラクションに、1Mの塩酸をpHが3.4になるまで加えた。25℃で1時間静置後、1M水酸化ナトリウム水溶液をpHが5.0になるまで加えた。にごりが確認されたため、1.2μmおよび0.45μm、0.2μmの孔径のフィルターを用いてろ過した。ろ液中のモノクローナル抗体の濃度は18.17mg/mlであり、HCP量は72ppmであった。
【0091】
〔溶液調整〕
上記で得られたろ液の一部を超純水で希釈した。その後、1Mトリスヒドロキシアミノメタン水溶液および5M塩化ナトリウム水溶液を使用して、pH7.0、電気伝導度6mS/cmに調整し、抗体溶液cを得た。抗体溶液cにおけるモノクローナル抗体の濃度は、10.79mg/mLであった。
【0092】
(4)抗体溶液d
溶液調製の工程において、電気伝導度を14mS/cmに調整したことを除き、抗体溶液cと同様の方法で抗体溶液dを調製した。抗体溶液dにおけるモノクローナル抗体の濃度は、10.48mg/mLであった。
【0093】
(5)抗体溶液e
〔プロテインAカラムによる精製〕
(i)使用樹脂、機器
抗体溶液aと同じ
(ii)精製に使用した培養液および溶液
培養液:モノクローナル抗体(IgG1)を産生したCHO細胞培養液(除細胞済)
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)+0.15M NaCl
A4バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)
B2バッファー:60mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)
0.1M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
プロテインA樹脂をカラムに10cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、2カラム体積分のA3バッファーを13.25mL/minでカラムに通液し、平衡化した。以後の工程も、流速はすべて13.25mL/minで実施した。次に、培養液1500mLをカラムに通液した。3カラム体積分のA3バッファーで未吸着の培養液を洗浄後、2カラム体積分のA4バッファーを更に通液した。次に、4.8カラム体積分のB2バッファーを通液して、プロテインA樹脂に吸着したモノクローナル抗体を溶出させた。測定波長280nmで吸光度を測定することにより抗体の回収を確認し、4.8カラム体積分のうち、約2カラム体積分を回収フラクションとして回収した。溶出後のカラムに、2カラム体積分のA3バッファーと3カラム体積分の0.1M水酸化ナトリウム水溶液を通液して洗浄した。最後に、5カラム体積分のA3バッファーを通液して再平衡化した。
【0094】
〔回収フラクションのウイルス不活化処理〕
上記で得られた回収フラクションに、1Mの塩酸をpHが3.4になるまで加えた。25℃で1時間静置後、1M水酸化ナトリウム水溶液をpHが5.0になるまで加えた。にごりが確認されたため、1.2μm、0.45μmおよび0.2μmの孔径のフィルターを用いてろ過した。ろ液中のモノクローナル抗体の濃度は16.5 mg/mlであり、HCP量は955ppmであった。
【0095】
〔溶液調整〕
上記で得られたろ液の一部を1Mトリスヒドロキシアミノメタン水溶液および5M塩化ナトリウム水溶液を使用して、pH7.0、電気伝導度22mS/cmに調整し、抗体溶液eを得た。抗体溶液eにおけるモノクローナル抗体の濃度は、14.00mg/mLであった。
【0096】
(6)抗体溶液f
試薬のγグロブリン人血清由来(和光純薬)を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し抗体溶液fを得た。抗体溶液fの濃度は9.43mg/mlであった。サイズ排除クロマトグラフィーで測定した単量体の純度は84.5%であった。
【0097】
(7)抗体溶液g
〔プロテインAカラムによる精製〕
(i)使用樹脂、機器
抗体溶液aと同じ
(ii)精製に使用した培養液および溶液
培養液:モノクローナル抗体(IgG1)を産生したCHO細胞培養液(除細胞済)
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)+0.15M NaCl
A4バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)
B2バッファー:60mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.5)
0.10M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
プロテインA樹脂をカラムに10cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、2カラム体積分のA3バッファーを13.25mL/minでカラムに通液し、平衡化した。以後の工程も、流速はすべて13.25mL/minで実施した。次に、培養液800mLをカラムに通液した。3カラム体積分のA3バッファーで未吸着の培養液を洗浄後、2カラム体積分のA4バッファーを更に通液した。次に、4.8カラム体積分のB2バッファーを通液して、プロテインA樹脂に吸着したモノクローナル抗体を溶出させた。測定波長280nmで吸光度を測定することにより抗体の回収を確認し、4.8カラム体積分のうち、約2カラム体積分を回収フラクションとして回収した。溶出後のカラムに、2カラム体積分のA3バッファーと3カラム体積分の0.10M水酸化ナトリウム水溶液を通液して洗浄した。最後に、5カラム体積分のA3バッファーを通液して再平衡化した。
【0098】
〔回収フラクションのウイルス不活化処理〕
上記で得られた回収フラクションに、1Mの塩酸をpHが3.4になるまで加えた。25℃で1時間静置後、1M水酸化ナトリウム水溶液をpHが5.0になるまで加えた。にごりが確認されたため、フィルターを用いてろ過した。ろ液中のモノクローナル抗体の濃度は13.10mg/mlであり、HCP量は480ppmであった。
【0099】
〔溶液調整〕
上記で得られたろ液の一部を5M塩化ナトリウム水溶液を使用して、電気伝導度22mS/cmに調整し、抗体溶液gを得た。抗体溶液gにおけるモノクローナル抗体の濃度は、12.9mg/mLであった。
【0100】
(8)抗体溶液h
〔陽イオン交換クロマトグラフィー工程〕
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:Cellufine MAX GS
カラム:内径0.5cm、高さ2.5cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液g
A6バッファー:20mM Acetate−Na緩衝液 +NaCl (pH5.0、22mS/cm)
1M NaCl水溶液
1M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに2.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、5カラム体積分のA6バッファーを0.245mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液16mLを0.245mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA6バッファーを0.245mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分の1M NaCl水溶液を0.245mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を0.245mL/minで通液して洗浄した。最後に、10カラム体積分のA6バッファーを1.0mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液16mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液2.5mL分を合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率(クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量に対する抗体回収量の割合)は96%であり、回収フラクション中のHCP量は253ppmであった。
【0101】
〔溶液調整〕
上記で得られた回収フラクションの一部を1Mトリスヒドロキシアミノメタン水溶液および5M塩化ナトリウム水溶液を使用して、pH7.0、電気伝導度22mS/cmに調整し、抗体溶液hを得た。抗体溶液hにおけるモノクローナル抗体の濃度は、9.41mg/mLであった。
【0102】
3.抗体の精製
<実施例1>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体B
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液a
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(6mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA3バッファーを0.3mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液5.4mLを0.075mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA3バッファーを0.075mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分のB2バッファーを0.3mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA3バッファーを0.3mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液5.4mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液1.8mLを合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率(クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量に対する抗体回収量の割合)は96%であり、回収フラクション中のHCP量は22ppmであった。
【0103】
<実施例2>
クロマトグラフィー担体として担体Cを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は95%であり、回収フラクション中のHCP量は23ppmであった。
【0104】
<実施例3>
クロマトグラフィー担体として担体Dを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は95%であり、回収フラクション中のHCP量は22ppmであった。
【0105】
<実施例4>
クロマトグラフィー担体として担体Eを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は90%であり、回収フラクション中のHCP量は21ppmであった。
【0106】
<比較例1>
クロマトグラフィー担体としてCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は98%であり、回収フラクション中のHCP量は114ppmであった。
【0107】
<比較例2>
クロマトグラフィー担体としてCapto Q(GEヘルスケア製)を使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は97%であり、回収フラクション中のHCP量は133ppmであった。
【0108】
<比較例3>
クロマトグラフィー担体として担体Aを使用したことを除き、実施例1と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は97%であり、回収フラクション中のHCP量は145ppmであった。
【0109】
<実施例5>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体B
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液b
A4バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(14mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA4バッファーを0.3mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液5.4mLを0.075mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA4バッファーを0.075mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分のB2バッファーを0.3mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA4バッファーを0.3ml/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液5.4mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液1.8mLを合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率は97%であり、回収フラクション中のHCP量は35ppmであった。
【0110】
<実施例6>
クロマトグラフィー担体として担体Cを使用したことを除き、実施例5と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は96%であり、回収フラクション中のHCP量は22ppmであった。
【0111】
<実施例7>
クロマトグラフィー担体として担体Dを使用したことを除き、実施例5と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は95%であり、回収フラクション中のHCP量は42ppmであった。
【0112】
<実施例8>
クロマトグラフィー担体として担体Eを使用したことを除き、実施例5と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は91%であり、回収フラクション中のHCP量は19ppmであった。
【0113】
<比較例4>
クロマトグラフィー担体としてCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用したことを除き、実施例5と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は97%であり、回収フラクション中のHCP量は147ppmであった。
【0114】
<比較例5>
クロマトグラフィー担体として担体Aを使用したことを除き、実施例5と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は99%であり、回収フラクション中のHCP量は145ppmであった。
【0115】
<実施例9>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体C
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液c
A3バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(6mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA3バッファーを0.3mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液5.4mLを0.075mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA3バッファーを0.075mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分のB2バッファーを0.3mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA3バッファーを0.3mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液5.4mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液1.8mLを合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率は95%であり、回収フラクション中のHCP量は3ppmであった。
【0116】
<比較例6>
クロマトグラフィー担体としてCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用したことを除き、実施例9と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は97%であり、回収フラクション中のHCP量は22ppmであった。
【0117】
<比較例7>
クロマトグラフィー担体としてCapto Q(GEヘルスケア製)を使用したことを除き、実施例9と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は96%であり、回収フラクション中のHCP量は27ppmであった。
【0118】
<実施例10>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体B
カラム:内径0.5cm、高さ3cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液d
A4バッファー:20mM Tris―HCl緩衝液(pH7.0)+NaCl(14mS/cm)
B2バッファー:20mM Tris―HCl緩衝液(pH7.0)+1M NaCl
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに1.5cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA4バッファーを0.3mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液5.4mLを0.075mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA4バッファーを0.075mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分のB2バッファーを0.3mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA4バッファーを0.3mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液5.4mL全量と未吸着液洗浄時のカラム洗浄液1.8mLを合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率は96%、HCP量は8ppmであった。
【0119】
<実施例11>
クロマトグラフィー担体として担体Cを使用したことを除き、実施例10と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は94%であり、回収フラクション中のHCP量は5ppmであった。
【0120】
<比較例8>
クロマトグラフィー担体としてCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用したことを除き、実施例10と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は101%であり、回収フラクション中のHCP量は50ppmであった。
【0121】
<比較例9>
クロマトグラフィー担体としてCapto Q(GEヘルスケア製)を使用したことを除き、実施例10と同じ方法で抗体の精製を実施した。モノクローナル抗体の回収率は100%であり、回収フラクション中のHCP量は52ppmであった。
【0122】
<実施例12>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体C
カラム:内径0.5cm、高さ2.5cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液e
A5バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)
1M NaCl水溶液
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに5.0cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA5バッファーを0.49mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液5.5mLを0.25mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA5バッファーを0.49mL/minで通液して洗浄した。その後、10カラム体積分の1M NaCl水溶液を1.0mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.075mL/minで通液して洗浄した。最後に、15カラム体積分のA5バッファーを1.0mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液5.5mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液2.5mL分を合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率(クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量に対する抗体回収量の割合)は96%であり、回収フラクション中のHCP量は16ppmであった。
【0123】
<実施例13>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体C
カラム:内径0.5cm、高さ2.5cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液h
A7バッファー:20mM Tris−HCl緩衝液+NaCl(pH7.0,22mS/cm)
1M NaCl水溶液
1M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに5.0cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA7バッファーを0.245mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液17mLを0.245mL/minでカラムに通液した。次いで、10カラム体積分のA7バッファーを0.245mL/minで通液して洗浄した。その後、5カラム体積分の1M NaCl水溶液を0.245mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の1M水酸化ナトリウム水溶液を0.245mL/minで通液して洗浄した。最後に、10カラム体積分のA7バッファーを0.245mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液17mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液4.9mL分を合わせて、回収フラクションとした。モノクローナル抗体の回収率(クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量に対する抗体回収量の割合)は93%であり、回収フラクション中のHCP量は2ppmであった。
【0124】
<参考例1>
(i)クロマトグラフィー担体、機器
担体:担体C
カラム:内径0.5cm、高さ5.0cm
システム:Akta avant25
(ii)精製に使用した抗体溶液および溶液
抗体溶液:抗体溶液f
A6バッファー:20mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)
1M NaCl水溶液
0.5M水酸化ナトリウム水溶液
(iii)手順
担体をカラムに5.0cmの高さまで充填した。カラムをシステムに接続し、10カラム体積分のA6バッファーを1.0mL/minでカラムに通液し、平衡化した。次に、抗体溶液20mLを0.25mL/minでカラムに通液した。次いで、5カラム体積分のA6バッファーを0.25mL/minで通液して洗浄した。その後、5カラム体積分の1M NaCl水溶液を1.0mL/minで通液した。次に、5カラム体積分の0.5M水酸化ナトリウム水溶液を0.25mL/minで通液して洗浄した。最後に、20カラム体積分のA6バッファーを1.0mL/minで通液して再平衡化した。
抗体溶液通液時のカラム通過液20mL全量と未吸着物洗浄時のカラム洗浄液4.9mLを合わせて、回収フラクションとした。抗体の回収率(クロマトグラフィー担体に負荷した抗体量に対する抗体回収量の割合)は87%であり、回収フラクション中の単量体の純度は89.8%であった。
【0125】
4.分析方法
(1)イオン交換容量
1mLのクロマトグラフィー担体(湿潤ゲルの状態でカラムに詰めた際に容積1mLを構成する量のクロマトグラフィー担体)を、50mL三角フラスコに加えた。そこに0.01mol/Lの塩酸水溶液50mLを加えて軽く振とうした。1時間室温で静置後、上澄み10mLをホールピペットで50mLビーカーに量りとった。そこにフェノールフタレイン溶液を加え、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。滴定量から塩酸の吸着量を計算し、クロマトグラフィー担体1mL当たりのイオン交換容量を求めた。
【0126】
(2)アミノ基修飾率
ベース担体に結合した第一級アミノ基を複数有する化合物のアミノ基を疎水基で修飾する前および後(以下、「疎水基での修飾前」および「疎水基での修飾後」とも称する)のクロマトグラフィー担体について、それぞれイオン交換容量を上記の方法で測定した。測定したイオン交換容量の値を用い、下式より第一級アミノ基を複数有する化合物におけるアミノ基の修飾率を計算した。
【数1】
【0127】
(3)モノクローナル抗体の回収率(%)
実施例1〜12および比較例1〜9で使用した精製前の抗体溶液および得られた回収フラクション(精製後の抗体溶液)のそれぞれについて、測定波長280nmでの吸光度を分光光度計にて測定した。吸光係数E1%1.40を用いて測定値を抗体量に換算し、式(回収フラクション中の抗体量/精製前の抗体溶液中の抗体量)×100から回収率(%)を計算した。
【0128】
(4)HCP量
抗体溶液調製工程における回収フラクション中のHCP量、ならびに実施例および比較例で得られた回収フラクション中のHCP量を、Elisa kit(Cygnus,F550)を使用して測定した。得られたHCP量および測定波長280nmでの吸光度から算出したモノクローナル抗体量を用いて、式{回収フラクション中のHCP量(ng)/回収フラクション中のモノクローナル抗体量(mg)}から、HCP量を濃度(ppm)で表した。
【0129】
(5)ポリクローナル抗体の回収率(%)
参考例1で使用した精製前の抗体溶液(抗体溶液f)および得られた回収フラクション(精製後の抗体溶液)のそれぞれについて、測定波長280nmでの吸光度を分光光度計にて測定した。吸光係数E1% 1.35を用いて測定値を抗体量に換算し、式(回収フラクション中の抗体量/精製前の抗体溶液中の抗体量)×100から回収率(%)を計算した。
【0130】
(6)サイズ排除クロマトグラフィー分析法
カラム:TSK gel SuperSW mAb HR (東ソー)
システム:Infinity1200(Agilent)
移動相:0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液+0.1M硫酸ナトリウム(pH6.7)
流速:0.7ml/min
インジェクション量:50μL
参考例1で使用した抗体溶液(抗体溶液f)および回収フラクションを移動相で10倍希釈しサイズ排除クロマトグラフィー分析を実施した。得られたクロマトグラムを図1に示す。得られたクロマトグラムから単量体と凝集体のピーク面積をそれぞれ求め、以下の計算式を用いて単量体純度を計算した。
単量体純度(%)=((単量体のピーク面積/(単量体のピーク面積+凝集体のピーク面積))×100
【0131】
上記実施例および比較例で得られた結果を、表1にまとめる。
【表1】
【0132】
表1より、実施形態に係る精製方法を使用した実施例1〜13では、高い抗体回収率が得られ、回収フラクション中の不純物(HCP)の量が少ないことが分かる。また、実施例1〜13は、抗体溶液の電気伝導度の高低にかかわらず、高い抗体回収率および低いHCP量を達成できた。さらに、多価陰イオンであるクエン酸イオンが存在する抗体溶液aおよびbを使用した場合にも(実施例1〜8)、高い抗体回収率および低い不純物量を達成できた。
【0133】
一方、他の担体を使用した比較例によると、回収フラクション中にHCPが多く含まれてしまう傾向にあり、また、HCP量は抗体溶液の電気伝導度および抗体溶液中の多価陰イオンの存在によって左右された。比較例においては、抗体溶液の電気伝導度が高い場合(比較例4、5、8および9)ならびに抗体溶液中に多価陰イオンが存在する場合(比較例1〜5)に特にHCP量が多くなった。
【0134】
抗体溶液cはHCPが除去されやすい溶液組成であるが、その溶液を用いた際も、比較例6、7に比べ、実施例7は1桁低いHCP含有量となった。
抗体溶液hは、担体Cを用いた精製の前に、抗体溶液gを陽イオン交換担体を使用してフロースルーモードで精製して得られた抗体溶液である。そのような抗体溶液hを用いた実施例13では、陽イオン交換クロマトグラフィーなしの抗体溶液gを用いた実施例12に比べて低いHCP含有量となった。
また、参考例1の結果から、担体Cをフロースルーモードで用いることでポリクローナル抗体中に含まれる不純物としての凝集体を低減させることができ、抗体純度として84.5%から89.8%に向上させることができた。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【図1】
【国際調査報告】