(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2018105045
(43)【国際公開日】20180614
【発行日】20191024
(54)【発明の名称】医療システムとその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20190927BHJP
【FI】
   !A61B34/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】2018555370
(21)【国際出願番号】JP2016086311
(22)【国際出願日】20161207
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【住所又は居所】東京都八王子市石川町2951番地
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 満彰
【住所又は居所】東京都八王子市石川町2951番地 オリンパス株式会社内
(57)【要約】
演算負荷を軽減しながら、アームの干渉をより確実に回避することを目的として、本発明に係る医療システム(1)は、冗長な自由度を有する関節群(8a,8b,8c,8d)を備え、先端に取り付けた医療デバイス(9,10)を移動させる複数のアーム(6a,6b,6c,6d)と、アームを操作するための操作指令を入力する操作部(4)と、操作部に入力された前記操作指令に基づいてアームを制御する制御部(5)とを備え、制御部が、アームの干渉を予測する干渉予測部と、干渉予測部により干渉が発生すると予測された場合に、患者に与える影響の大きさに基づいて、アームの優先度を算出する優先度算出部とを備え、優先度算出部により算出された優先度が最も高いアームを他のアームから離間させる方向に動作させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームと、
該アームを操作するための操作指令を入力する操作部と、
該操作部に入力された前記操作指令に基づいて前記アームを制御する制御部とを備え、
該制御部が、前記アームの干渉を予測する干渉予測部と、該干渉予測部により干渉が発生すると予測された場合に、患者に与える影響の大きさに基づいて、前記アームの優先度を算出する優先度算出部とを備え、該優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる医療システム。
【請求項2】
前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの種類に基づいて前記優先度を算出する請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの作動状態に基づいて前記優先度を算出する請求項1または請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記医療デバイスに加わる外力を検出する外力検出手段を備え、
前記優先度算出部が、前記外力検出手段により検出された前記外力の大きさに比例した前記優先度を算出する請求項3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームの冗長な関節を動作させて、他の前記アームから離間させる方向に動作させる請求項1から請求項4のいずれかに記載の医療システム。
【請求項6】
冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームの干渉を予測する予測ステップと、
該予測ステップにおいて干渉が発生すると予測された場合に、患者に与える影響の大きさに基づいて前記アームの優先度を算出する優先度算出ステップと、
該優先度算出ステップにおいて、最も高い優先度が算出された前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる干渉回避動作ステップとを含む医療システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムとその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冗長な自由度の関節を有する複数のアームを備えた医療システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この医療システムは、各アームを構成する関節の冗長性を利用して、処置具の姿勢を変更することなくアームの各関節位置を移動させて、アームどうしの干渉やアームと障害物との干渉を回避することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/325031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の医療システムにおいて、アームに自動的に干渉回避動作を行わせるために、膨大な計算を高速で行う必要があり、高性能計算機を用いる必要がある。特に、マスタの操作によってアームの先端の処置具をリアルタイムに移動させながら、干渉を回避するには、より多くの計算をリアルタイムに行う必要があり、高コストかつ動作が不安定になるという不都合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、演算負荷を軽減しながら、アームの干渉をより確実に回避することができる医療システムとその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームと、該アームを操作するための操作指令を入力する操作部と、該操作部に入力された前記操作指令に基づいて前記アームを制御する制御部とを備え、該制御部が、前記アームの干渉を予測する干渉予測部と、該干渉予測部により干渉が発生すると予測された場合に、患者に与える影響の大きさに基づいて、前記アームの優先度を算出する優先度算出部とを備え、該優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる医療システムである。
【0006】
本態様によれば、操作者が操作部を操作して操作指令を入力すると、入力された操作指令に基づいて、制御部がアームを制御し、アームの先端に取り付けた医療デバイスによって処置対象に対し処置を行うことができる。この場合において、制御部は、冗長な自由度の関節については、これを停止させておくことにより、膨大な演算を行うことなく各関節の動作角度を求めてエンドエフェクタを適切な位置および姿勢に配置することができる。
【0007】
操作部を操作していずれかのアームを動作させている間に、制御部に設けられた干渉予測部により、複数のアームの干渉が予測される。干渉予測部によって干渉が発生することが予測された場合には、優先度算出部により優先度が算出され、優先度が最も高いアームが、他のアームから離間させる方向に動作させられる。
【0008】
この場合において、優先度は、患者に与える影響の大きさに基づいて算出されるので、患者に与える影響が小さいものほど高く設定される。これにより、優先度の最も高いアームを他のアームから離間させる方向に動作させることによって、患者に与える影響が大きなアームについて、操作部からの操作指令による動作を行わせるための計算に加えて、干渉回避動作を行わせるためのリアルタイムの計算を行う必要がない。したがって、膨大な計算によって動作が不安定になっても、患者に与える影響を低く抑えることができ、アームの干渉をより確実に回避することができる。
【0009】
上記態様においては、前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの種類に基づいて前記優先度を算出してもよい。
このようにすることで、患者に与える影響が大きい種類の医療デバイスが装着されているアームについては優先度を低くし、患者に与える影響が小さい種類の医療デバイスが装着されているアームについては優先度を高く設定することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの作動状態に基づいて前記優先度を算出してもよい。
このようにすることで、同じ医療デバイスであっても、動作状態に応じて患者に与える影響が大きい場合には優先度を低くして、他の患者に与える影響の小さい医療デバイスが装着されているアームを動作させることができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記医療デバイスに加わる外力を検出する外力検出手段を備え、前記優先度算出部が、前記外力検出手段により検出された前記外力の大きさに比例した前記優先度を算出してもよい。
このようにすることで、外力検出手段により検出される外力が大きい場合には、医療デバイスが大きな力で患者に接触している可能性が高く、動作させた場合に患者に与える影響が大きいので、優先度を低く設定して、他の患者に与える影響の小さい医療デバイスが装着されているアームを動作させることができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記制御部は、前記優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームの冗長な関節を動作させて、他の前記アームから離間させる方向に動作させてもよい。
このようにすることで、アームの先端に取り付けた医療デバイスの姿勢および位置を変化させずにアームを動作させることができる。これにより、処置対象に対する医療デバイスの状態を変化させることなく、アームどうしの干渉を回避することができる。
【0013】
また、本発明の他の態様は、冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームの干渉を予測する予測ステップと、該予測ステップにおいて干渉が発生すると予測された場合に、患者に与える影響の大きさに基づいて前記アームの優先度を算出する優先度算出ステップと、該優先度算出ステップにおいて、最も高い優先度が算出された前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる干渉回避動作ステップとを含む医療システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、演算負荷を軽減しながら、アームの干渉をより確実に回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療システムを示す全体構成図である。
【図2】図1の医療システムを示すブロック図である。
【図3】図1の医療システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る医療システム1とその制御方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る医療システム1は、図1に示されるように、患者Oを寝かせるベッド2と、該ベッド2の脇に配置された手術用ロボット3と、操作者によって操作される操作部4と、制御部5とを備えている。
【0017】
手術用ロボット3は、複数、例えば4つのアーム(第1アームから第4アーム)6a,6b,6c,6dと、各アーム6a,6b,6c,6dを支持するベース7とを備えている(図1では手前側にアーム6a、奥行側にアーム6dを表示している。)。図1に示す例では、ベース7は、ベッド2の側方にフロアから立ち上がる構造を有しているが、これに限定されるものではなく、天井に固定される構造のものでもよい。
【0018】
各アーム6a,6b,6c,6dは、それぞれ7軸以上の冗長な自由度を有する関節群8a,8b,8c,8dを備えている。
第1アーム6aの先端には、内視鏡(以下、医療デバイスとも言う。)9が装着されており、他の3つのアーム(第2アームから第4アーム)6b,6c,6dの先端にはそれぞれ処置具(以下、医療デバイスとも言う。)10が装着されている。
【0019】
各アーム6a,6b,6c,6dには、図2に示されるように、該アーム6a,6b,6c,6dを構成している各関節を動作させるモータ等の駆動部11と、該駆動部11により動作させられる各関節の角度を検出する位置・姿勢センサ12と、各アーム6a,6b,6c,6dに取り付けた医療デバイス9,10の状態を検出する状態センサ(外力検出手段)21とが備えられている。
【0020】
位置・姿勢センサ12は、各アーム6a,6b,6c,6dを構成している各関節の角度を検出して、位置・姿勢演算部18にフィードバックするようになっている。
状態センサ21は、例えば、医療デバイス9,10の先端部に取り付けた歪みゲージ等の医療デバイス9,10の先端部に作用する外力等を検出する力覚センサおよび/または医療デバイス9,10が作動しているか否かを検出するセンサである。また、状態センサ21が、医療デバイス9,10の種類の情報を出力してもよい。
【0021】
操作部4は、図1および図2に示されるように、操作者によって操作される操作入力部14と、アーム6aに装着された内視鏡9による患者Oの体内の画像を表示するモニタ13とを備えている。操作入力部14は、例えば、図2に示されるように、操作者が両手でそれぞれ把持する2つのハンドル(左ハンドルおよび右ハンドル)15,16と、切替スイッチ17とを備えていて、切替スイッチ17によって4つのアーム6a,6b,6c,6dの内のいずれか1つまたは2つのアーム、例えば、第2アーム6bおよび第3アーム6cを選択して、2つのハンドル15,16の操作により選択されたアーム6b,6cを動作させることができるようになっている。
【0022】
切替スイッチ17により選択されたアーム6b,6cが操作対象となり、選択されなかったアーム6a,6dは非操作対象となる。
操作者はモニタ13上に表示された患者Oの体内の画像において、患部とアーム6b,6cに取り付けられた処置具10の先端部とを見ながら操作入力部14を操作してアーム6b,6cおよび処置具10を動作させ患部を処置することができるようになっている。
【0023】
制御部5は、操作入力部14のハンドル操作により入力された操作指令に基づいて、操作対象となっているアーム6b,6cの各関節の目標角度(動作目標位置)を演算する位置・姿勢演算部18と、該位置・姿勢演算部18により演算された各関節の目標角度に基づいて、操作対象となっていないアーム6a,6dとの干渉を予測する干渉予測部19とを備えている。また、制御部5は、状態センサ21により検出された医療デバイス9,10の状態および干渉予測部19による予測結果に基づいて、アーム6a,6b,6c,6dの優先度を算出し、優先度の最も高いアームの情報を出力する優先駆動設定部(優先度算出部)22と、該優先駆動設定部22から出力された情報に基づいて、いずれかのアーム6a,6b,6c,6dを動作させる駆動指令生成部20とを備えている。
【0024】
位置・姿勢演算部18は、操作対象となっているアーム6b,6cの冗長な自由度を構成する関節を除く6軸の関節群8b,8cによって、操作入力部14により入力された操作指令通りの医療デバイス9,10の位置および姿勢を達成する場合の各関節の目標角度を演算するようになっている。これにより、操作指令に対応するアーム6b,6cの各関節の角度は一義的に決定されるので、少ない演算量で目標角度を演算することができる。
【0025】
また、干渉予測部19は、位置・姿勢演算部18により演算された操作対象となっているアーム6b,6cの各関節の目標角度と、操作対象となっていないアーム6a,6dの現在の各関節の角度とに基づいて、アーム6a,6b,6c,6dの機構部(図示略)どうしの干渉の有無を予測するようになっている。機構部の寸法等は予め定まっているので、各関節の角度を決定することにより、アーム6a,6b,6c,6dの機構部どうしの干渉の有無を容易に予測することができる。
【0026】
干渉予測部19により、干渉することが予測された場合には、状態センサ21から出力された医療デバイス9,10の状態に基づいて、優先駆動設定部22において優先度が算出され、最も高い優先度を有する医療デバイス9,10が装着されているアーム6a,6b,6c,6dに干渉回避動作を行わせるように、駆動指令生成部20が、駆動指令信号を生成するようになっている。
優先度は、例えば、医療デバイス9,10の状態毎に設定されたスコアを合計することにより算出することにすればよい。
【0027】
駆動指令生成部20は、操作対象となっているアーム6b,6cについては、位置・姿勢演算部18において演算された各関節の目標角度に基づいて、各関節を駆動するための駆動指令信号を生成し、駆動部11に送るようになっている。また、駆動指令生成部20は、優先駆動設定部22により、優先して干渉回避動作を行うように設定されたアーム6a,6dについては、冗長な自由度を構成する関節を含めた関節群8a,8dを動作させることにより、装着している処置具10または内視鏡9の位置および姿勢を保持したまま、他のアーム6b,6cから離間させる方向に移動させるよう、各関節の動作指令信号を生成するようになっている。
【0028】
すなわち、駆動指令生成部20は、干渉が予測され、優先して干渉回避動作を行うように設定されたアームが、操作対象となっていないアーム6a,6dである場合には、当該アーム6a,6dに干渉回避動作のみを実施させる駆動指令信号を生成するようになっている。一方、駆動指令生成部20は、優先して干渉回避動作を行うように設定されたアームが操作対象となっているアーム6b,6cである場合には、当該アーム6b,6cに、各関節への目標角度に基づいて関節を駆動させる駆動指令信号と、干渉回避動作を行わせる駆動指令信号とを合成した駆動指令信号を生成するようになっている。
【0029】
このように構成された本実施形態に係る医療システム1の制御方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る医療システム1の制御方法においては、図3に示されるように、操作入力部14の切替スイッチ17によっていずれか1つまたは2つのアーム6b,6cが操作対象に設定され(ステップS1)、操作入力部14の左ハンドル15または右ハンドル16により操作指令が入力されたか否かが判定される(ステップS2)。
【0030】
操作指令が入力された場合には、入力されたハンドル15,16に対応して操作対象に設定されているアーム6b,6cを構成している各関節の目標角度が算出される(ステップS3)。この場合には、操作対象となっているアーム6b,6cにおいては、ハンドル15,16から入力された操作指令に対応する医療デバイス10の位置および姿勢を達成し得る最小限の数の関節の目標角度が算出される。
【0031】
操作対象となっているアーム6b,6cの各関節の目標角度が算出されると、操作対象となっていないアーム6a,6dとの干渉の有無の予測演算が行われる(予測ステップS4)。
予測ステップS4による予測の結果が判定され(ステップS5)、干渉するとの予測がなされた場合には、アーム6a,6b,6c,6dの優先度が算出され(優先度算出ステップS6)、優先度が最も高いアーム6a,6b,6c,6dが干渉回避動作を行うアームとして設定される(優先度算出ステップS7)。
【0032】
優先度算出ステップS6においては、アーム6a,6b,6c,6dの先端に設けられた状態センサ21により検出された医療デバイス9,10の状態によりアーム6a,6b,6c,6dの優先度が算出される。
医療デバイス9,10の状態が医療デバイス9,10の種類である場合には、内視鏡9のように患部を観察するだけの医療デバイスは優先度が高く、把持鉗子(処置具)10のように組織に接触して処置する医療デバイスの優先度は内視鏡9より低く、高周波デバイス(処置具)10のようなエネルギデバイスの優先度が最も低くなるように算出される。
【0033】
また、医療デバイス9,10の状態が動作状態である場合には、把持鉗子10が把持中あるいは高周波デバイス10が通電中のように動作中の状態である場合に優先度が低くなるように算出される。
さらに、医療デバイス9,10の状態が外力の大きさである場合には、医療デバイス9,10の先端に加わる外力が小さいほど優先度が高くなるように算出される。
【0034】
そして、干渉回避動作を行うアームとして設定されたアーム6a,6b,6c,6dおよび操作対象となっているアーム6b,6cの各関節の駆動指令信号が、駆動指令生成部20において生成される(ステップS8)。操作対象となっていないアーム6a,6dが干渉回避動作を行うアームとして設定された場合には、駆動指令生成部20は、先端の医療デバイス9,10の位置および姿勢を維持したまま基端側の1以上の関節の位置のみを移動させるように、重畳な自由度を有する関節群8a,8dを動作させる駆動指令信号を生成する。
【0035】
一方、操作対象となっているアーム6b,6cが干渉回避動作を行うアームとして設定された場合には、駆動指令生成部20は、演算された目標角度を達成するための駆動指令信号と先端の医療デバイス10の位置および姿勢を維持したまま基端側の1以上の関節を移動させるように、重畳な自由度を有する関節群8b,8cを動作させる駆動指令信号とを合成した駆動指令信号を生成する。そして、生成された駆動指令信号に基づいて駆動部11が駆動される(干渉回避動作ステップS9)。
【0036】
また、予測ステップS4による予測の結果、干渉しないとの予測がなされた場合には、ステップS8からの処理が実施され、操作対象となっているアーム6b,6cのみについて、駆動指令生成部20により、演算された目標角度を達成するための駆動指令信号が生成され、生成された駆動指令信号に基づいて駆動部11が駆動される(干渉回避動作ステップS9)。
【0037】
このように、本実施形態に係る医療システム1とその制御方法によれば、干渉することが予測された場合に、優先度が最も高いアーム、すなわち、患者Oに与える影響が最も小さい医療デバイス9,10が備えられたアーム6a,6b,6c,6dを、他のアーム6a,6b,6c,6dから離間させる方向に動作させることにより干渉を回避するので、患者Oに与える影響が大きいアーム6a,6b,6c,6dに干渉回避動作をさせずに済むという利点がある。
【0038】
すなわち、患者Oに与える影響が大きいアーム6a,6b,6c,6dについては、操作入力部14の左ハンドル15または右ハンドル16により入力された操作指令に対応して精度よく動作させる必要があるところ、干渉回避動作を重畳すると計算量が膨大となり、動作の精度が低下することが懸念される。一方、患者Oに与える影響が小さいアーム6a,6b,6c,6dについては、計算量が膨大となって動作の精度が低下しても、患者Oに係る負担が小さく問題とならない。
したがって、演算負荷を軽減し、患者Oにかかる負担を低減しながら、アーム6a,6b,6c,6dの干渉をより確実に回避することができるという利点がある。
【0039】
なお、本実施形態においては、優先度を算出するための医療デバイス9,10の状態として、医療デバイス9,10の種類、医療デバイス9,10の動作状態および、医療デバイス9,10の先端にかかる負荷の大きさを例示したが、これら全てを指標としてもよいし、いずれか1つまたは2つを指標としてもよい。
例えば、優先度が低い順に、通電中の高周波デバイス10、先端負荷の大きな医療デバイス10、非通電中の高周波デバイス10、先端負荷の小さな内視鏡9のように予め優先度を設定しておいてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、4つのアーム6a,6b,6c,6dを有する場合について例示したが、2以上のアームであれば任意の数のアームを備えていてもよい。また、各アーム6a,6b,6c,6dの自由度も7軸以上であれば任意でよい。
【0041】
また、本実施形態においては、優先度の最も高いアーム6a,6b,6c,6dのみによって干渉回避動作を行わせることとしたが、優先度の高い方から順に複数のアーム6a,6b,6c,6dによって干渉回避動作を行わせてもよい。また、優先度の最も高いアーム6a,6b,6c,6dのみによるのでは干渉が回避できない場合には、操作対象となっているアーム6b,6cの動作を制限ないし停止させることにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 医療システム
4 操作部
5 制御部
6a 第1アーム(アーム)
6b 第2アーム(アーム)
6c 第3アーム(アーム)
6d 第4アーム(アーム)
8a,8b,8c,8d 関節群
9 内視鏡(医療デバイス)
10 処置具(医療デバイス)
19 干渉予測部
21 状態センサ(外力検出手段)
22 優先駆動設定部(優先度算出部)
O 患者
S4 予測ステップ
S6,S7 優先度算出ステップ
S9 干渉回避動作ステップ
【図1】
【図2】
【図3】

【手続補正書】
【提出日】20190409
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームと、
該アームを操作するための操作指令を入力する操作部と、
該操作部に入力された前記操作指令に基づいて前記アームを制御する制御部と
前記医療デバイスに加わる外力を検出する外力検出手段と、
を備え、
該制御部が、前記アームの干渉を予測する干渉予測部と、該干渉予測部により干渉が発生すると予測された場合に、前記外力検出手段により検出された前記外力の大きさに基づいて、前記アームの優先度を算出する優先度算出部とを備え、該優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる医療システム。
【請求項2】
前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの種類に基づいて前記優先度を補正する請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記優先度算出部が、前記アームに装着されている前記医療デバイスの作動状態に基づいて前記優先度を補正する請求項1または請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記優先度算出部により算出された前記優先度が最も高い前記アームの冗長な関節を動作させて、他の前記アームから離間させる方向に動作させる請求項1から請求項のいずれかに記載の医療システム。
【請求項5】
冗長な自由度を有する関節群を備え、先端に取り付けた医療デバイスを移動させる複数のアームの干渉を予測する予測ステップと、
前記医療デバイスに加わる外力を検出するステップと、
該予測ステップにおいて干渉が発生すると予測された場合に、検出された前記外力の大きさに基づいて前記アームの優先度を算出する優先度算出ステップと、
該優先度算出ステップにおいて、最も高い優先度が算出された前記アームを他の前記アームから離間させる方向に動作させる干渉回避動作ステップとを含む医療システムの制御方法。
【請求項6】
前記優先度算出ステップは、前記アームに装着されている前記医療デバイスの種類に基づいて前記優先度を補正する請求項5に記載の医療システムの制御方法。
【請求項7】
前記優先度算出ステップは、前記アームに装着されている前記医療デバイスの作動状態に基づいて前記優先度を補正する請求項5に記載の医療システムの制御方法。
【請求項8】
前記干渉回避動作ステップは、算出された前記優先度が最も高い前記アームの冗長な関節を動作させて、他の前記アームから離間させる方向に動作させる請求項5に記載の医療システムの制御方法。
【国際調査報告】