(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2018116595
(43)【国際公開日】20180628
【発行日】20191024
(54)【発明の名称】アレイ型超音波振動子、超音波プローブ、超音波カテーテル、手持ち手術器具及び医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20190927BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   !A61B8/00
   !H04R17/00 330L
   !H04R17/00 332A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】2018557564
(21)【国際出願番号】JP2017037211
(22)【国際出願日】20171013
(31)【優先権主張番号】2016246688
(32)【優先日】20161220
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南1丁目7番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】森本 類
【住所又は居所】東京都港区港南1丁目7番1号 ソニー株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】中田 哲博
【住所又は居所】東京都港区港南1丁目7番1号 ソニー株式会社内
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601EE01
4C601EE12
4C601EE14
4C601FE01
4C601GA19
4C601GA21
4C601GB06
4C601GB18
4C601GB19
5D019AA02
5D019AA25
5D019BB19
5D019BB28
5D019FF04
(57)【要約】
【課題】生産性及び実用性に優れ、スライス方向の超音波ビームの集束性を向上させることが可能な二次元アレイ構造のアレイ型超音波振動子、超音波プローブ、超音波カテーテル、手持ち手術器具及び医療機器を提供すること。
【解決手段】本技術に係るアレイ型超音波振動子は、振動子アレイと、抵抗素子とを具備する。振動子アレイは、超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する。抵抗素子は、エレメント列のうち、任意の超音波振動子エレメントの対の間に電気的に接続されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、
前記エレメント列のうち、任意の超音波振動子エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子と
を具備するアレイ型超音波振動子。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ型超音波振動子であって、
前記抵抗素子は、前記エレメント列のうち、全ての超音波振動エレメントの間に電気的に接続されている
アレイ型超音波振動子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアレイ型超音波振動子であって、
前記エレメント列の端の超音波振動エレメントとグランドの間に接続された接地用抵抗素子
をさらに具備するアレイ型超音波振動子。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のアレイ型超音波振動子であって、
前記振動子アレイは、前記超音波振動子エレメントを支持する基板を有し、
前記抵抗素子は前記基板の表面又は内部に実装されている
アレイ型超音波振動子。
【請求項5】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のアレイ型超音波振動子であって、
前記超音波振動子エレメントは、前記エレメント列毎に前記超音波振動子エレメントを駆動するための配線に接続されている
アレイ型超音波振動子。
【請求項6】
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、前記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する超音波プローブ。
【請求項7】
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、前記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する超音波カテーテル。
【請求項8】
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、前記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する手持ち手術器具。
【請求項9】
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、前記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子と、
前記アレイ型超音波振動子の位置を検出する位置センサと
を具備する医療機器。
【請求項10】
請求項9に記載の医療機器であって、
前記アレイ型超音波振動子と前記位置センサの出力に基づいて超音波ボリューム画像を生成する
医療機器。
【請求項11】
請求項3に記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの前記エレメント列において、前記抵抗素子と前記接地用抵抗素子の合計の抵抗値が、前記超音波振動子エレメントと駆動電源を接続する信号配線の抵抗値より大きい
アレイ型超音波振動子。
【請求項12】
請求項3に記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの前記エレメント列において、前記超音波振動子エレメントの駆動電圧の周波数をf[Hz]としたときに、前記抵抗素子の合計の抵抗値と前記超音波振動子エレメントの静電容量の合計値の積が、1/2fより小さい
アレイ型超音波振動子。
【請求項13】
請求項3に記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの前記エレメント列において、前記接地用抵抗素子の抵抗値が、前記抵抗素子の合計の抵抗値より小さい
アレイ型超音波振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、超音波診断画像の生成に利用可能なアレイ型超音波振動子、超音波プローブ、超音波カテーテル、手持ち手術器具及び医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野等で利用される超音波イメージングは、超音波振動子アレイを備える超音波プローブから観察対象物に超音波を照射し、その反射波を超音波プローブによって探知することによって観察対象物の超音波画像を生成するものである。超音波イメージングは、生体組織を透視することができ、血管の走行や腫瘍の位置と形状の把握、血管に随伴する神経の見出し等に適している。
【0003】
超音波イメージングにおけるスライス方向(超音波画像の奥行き方向)の超音波ビーム幅は、スライス分解能やコントラストに作用するため、近年はこのビーム幅を薄くすることが進められている。例えば、超音波振動子が1列に配列された一次元アレイでは、音響レンズを用いて超音波ビームを集束させることにより、スライス方向のビーム幅を薄くすることができる。
【0004】
一方、超音波振動子が平面的に配列された二次元アレイでは、スライス方向の超音波ビームの集束性を向上させるためにアポタイゼーションや位相調整といった技術が用いられる。アポタイゼーションは、二次元アレイの端の振動子の出力を小さくする技術であり、サイドローブ(主たる放射方向から外れた方向に進行する超音波)成分を抑制し、ビームの集束性を向上させるものである。また、位相調整では、振動子間の位相差を意図的に調整することで、ビームの集束性を向上させるものである(例えば、特許文献1)。
【0005】
さらに、振動子の厚みに差異を設けることにより、二次元アレイ全体でレンズ状の形状を形成し、ビームの集束性を向上させるハナフィーレンズと呼ばれる構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−097157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したアポタイゼーションや位相調整を実現するためには、それぞれの超音波振動子の出力を個別に制御する必要があり、各振動子に接続される配線数が増加するため、製造の煩雑さや製造コストが増加する。また、超音波プローブ内にマルチプレクサ等を導入する必要が生じ、超音波プローブの構造も複雑となる。
【0008】
ハナフィーレンズ構造を形成する場合にも、振動子を加工する必要が生じる。特に振動子が薄い場合には振動子の厚みに差異を設けることが困難であり、振動子の高周波化や低背化を実現することが容易ではない。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、生産性及び実用性に優れ、スライス方向の超音波ビームの集束性を向上させることが可能な二次元アレイ構造のアレイ型超音波振動子、超音波プローブ、超音波カテーテル、手持ち手術器具及び医療機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るアレイ型超音波振動子は、振動子アレイと、抵抗素子とを具備する。
上記振動子アレイは、超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する。
上記抵抗素子は、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動子エレメントの対の間に電気的に接続されている。
【0011】
この構成によれば、エレメント列に接続された配線に超音波振動子エレメントの駆動信号が供給されると、抵抗素子によって駆動信号が減衰することによってエレメント列端部の超音波振動子エレメントに供給される駆動信号の強度が小さくなり、エレメント列端部の超音波振動子エレメントから放出される超音波の出力が小さくなる(アポタイゼーション)。これにより、スライス方向における超音波ビームのビーム幅を小さくすることができ、超音波診断画像のスライス分解能やコントラストを向上させることが可能となる。また、1つエレメント列に対して1本の配線を接続すればよく、個々の超音波振動子エレメントに配線を接続する必要がないので、配線数の大幅な削減が可能である。
【0012】
上記抵抗素子は、上記エレメント列のうち、全ての超音波振動エレメントの間に電気的に接続されていてもよい。
【0013】
抵抗素子が、全ての超音波振動エレメントの間に配置されることにより、エレメント列を構成する個々の超音波振動子エレメントから放出される超音波の出力を少しずつ相違させることが可能となる。
【0014】
上記エレメント列の端の超音波振動エレメントとグランドの間に接続された接地用抵抗素子をさらに具備してもよい。
【0015】
接地用抵抗素子を設けることにより、エレメント列の端部に電荷の逃げ道を確保し、同端部への電化荷の蓄積を防止することができる。
【0016】
振動子アレイは、上記超音波振動子エレメントを支持する基板を有し、上記抵抗素子は上記基板の表面又は内部に実装されていてもよい。
【0017】
この構成によれば振動子アレイと抵抗素子を一体的に構成することが可能となり、アレイ型超音波振動子の小型化、低背化が可能となる。
【0018】
上記超音波振動子エレメントは、上記エレメント列毎に上記超音波振動子エレメントを駆動するための配線に接続されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、エレメント列毎に超音波エレメントから出射される超音波の出力を調整することができる。なお、それぞれのエレメント列においては上述の抵抗素子によって超音波エレメントから出射される超音波の出力が調整される。
【0020】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る超音波カテーテルは、アレイ型超音波振動子を具備する。
上記アレイ型超音波振動子は、超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備える。
【0021】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る手持ち器具は、アレイ型超音波振動子を具備する。
上記アレイ型超音波振動子は、超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備える。
【0022】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る医療機器は、アレイ型超音波振動子と位置センサとを具備する。
上記アレイ型超音波振動子は、超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備える。
上記位置センサは上記アレイ型超音波振動子の位置を検出する。
【0023】
上記医療機器は、上記アレイ型超音波振動子と上記位置センサの出力に基づいて超音波ボリューム画像を生成してもよい。
【0024】
上記アレイ型超音波振動子は、それぞれの上記エレメント列において、上記抵抗素子と上記接地用抵抗素子の合計の抵抗値が、上記超音波振動子エレメントと駆動電源を接続する信号配線の抵抗値より大きくてもよい。
【0025】
抵抗素子と接地用抵抗素子の合計の抵抗値を信号配線の抵抗値より大きくすることにより、各振動子エレメントにおける電圧降下を抑制することが可能である。
【0026】
上記アレイ型超音波振動子は、それぞれの上記エレメント列において、上記超音波振動子エレメントの駆動電圧の周波数をf[Hz]としたときに、上記抵抗素子の合計の抵抗値と上記超音波振動子エレメントの静電容量の合計値の積が、1/2fより小さくてもよい。
【0027】
抵抗素子の合計の抵抗値と超音波振動子エレメントの静電容量の合計値の積を1/2fより小さくすることにより、各超音波振動子エレメントから出射される超音波のRC遅延(位相のずれ)を防止することが可能である。
【0028】
上記アレイ型超音波振動子は、それぞれの上記エレメント列において、上記接地用抵抗素子の抵抗値が、上記抵抗素子の合計の抵抗値より小さくてもよい。
【0029】
接地用抵抗素子の抵抗値を抵抗素子の合計の抵抗値より小さくすることにより、エレメント列における超音波のダイナミックレンジを大きくすることが可能である。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本技術によれば、生産性及び実用性に優れ、スライス方向の超音波ビームの集束性を向上させることが可能な二次元アレイ構造のアレイ型超音波振動子、超音波プローブ、超音波カテーテル、手持ち手術器具及び医療機器を提供することが可能である。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本技術の実施形態に係るアレイ型超音波振動子の斜視図である。
【図2】同アレイ型超音波振動子の一部構成の斜視図である。
【図3】同アレイ型超音波振動子が備える振動子エレメントの平面図である。
【図4】同アレイ型超音波振動子の断面図である。
【図5】同アレイ型超音波振動子が備える振動子エレメントの配列を示す模式図である。
【図6】同アレイ型超音波振動子が備えるエレメント列の電気的接続関係を示す模式図である。
【図7】同アレイ型超音波振動子が備えるエレメント列の動作を示す模式図である。
【図8】同アレイ型超音波振動子が備える抵抗素子を示す模式図である。
【図9】同アレイ型超音波振動子が備える独立配線を示す模式図である。
【図10】同アレイ型超音波振動子が備えるエレメント列の電気的接続関係を示す模式図である。
【図11】同アレイ型超音波振動子が備えるエレメント列の電気的接続関係を示す模式図である。
【図12】同アレイ型超音波振動子を備える超音波プローブの断面図である。
【図13】同アレイ型超音波振動子を備える超音波プローブの断面図である。
【図14】アレイ型超音波振動子を備える超音波プローブのビームプロファイルを示すグラフである。
【図15】本技術の実施形態に係るアレイ型超音波振動子を備える超音波カテーテルの模式図である。
【図16】アレイ型超音波振動子を備える超音波カテーテルのビームプロファイルを示すグラフである。
【図17】本技術の実施形態に係るアレイ型超音波振動子を備える手術器具の模式図である。
【図18】本技術の実施形態に係るアレイ型超音波振動子のそれぞれのエレメント列の電気回路構成を示す模式図である。
【図19】同アレイ型超音波振動子における、抵抗素子133及び接地用抵抗素子の抵抗値の割合を示すグラフである。
【図20】同アレイ型超音波振動子のエレメント列における各振動子エレメントでの電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図21】同アレイ型超音波振動子のエレメント列における各振動子エレメントでの電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図22】同アレイ型超音波振動子のエレメント列における各振動子エレメントでの電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図23】同アレイ型超音波振動子のエレメント列における各振動子エレメントでの電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図24】同アレイ型超音波振動子のエレメント列における各振動子エレメントでの電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図25】同アレイ型超音波振動子(開口幅:5mm)の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果である。
【図26】図25に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅を示すグラフである。
【図27】図25に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【図28】同アレイ型超音波振動子(開口幅:2mm)の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果である。
【図29】図28に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅を示すグラフである。
【図30】図28に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【図31】同アレイ型超音波振動子のエレメント列におけるアポタイゼーション強度分布を示すグラフ
【図32】同アレイ型超音波振動子の構造を示す模式図である。
【図33】ハミング窓関数を示すグラフである。
【図34】同アレイ型超音波振動子(開口幅:5mm)の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果である。
【図35】図34に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅を示すグラフである。
【図36】図34に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【図37】同アレイ型超音波振動子(開口幅:2mm)の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果である。
【図38】図37に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅を示すグラフである。
【図39】図37に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施形態に係るアレイ型超音波振動子について説明する。
【0033】
[アレイ型超音波振動子の構成]
図1は本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100の斜視図であり、図2はアレイ型超音波振動子100の一部構成の斜視図である。図3はアレイ型超音波振動子100の一部構成の平面図である。図4はアレイ型超音波振動子100の断面図であり、図3のA−A線での断面図である。各図において、相互に直交する三方向をそれぞれX方向、Y方向及びZ方向とする。
【0034】
図4に示すように、アレイ型超音波振動子100は、基板101、圧電体層102、上部電極層103、下部電極層104、バッキング層105、音響整合層106、音響整合層107及び音響レンズ108を備える。
【0035】
圧電体層102、上部電極層103、音響整合層106、下部電極層104及びバッキング層105の一部は互いに分離されており、それぞれが振動子エレメント150を構成している。即ち、アレイ型超音波振動子100は振動子エレメント150のアレイである。なお、図2と図3では振動子エレメント150の数が相違しているが、図2では所定数の振動子エレメント150の図示を省略している。
【0036】
基板101は、ガラスエポキシ等からなるリジッドプリント基板やFPC(flexible printed circuits)基板等の配線基板であり、振動子エレメント150を支持し、電気的に接続する。基板101には基板内蔵抵抗素子121、配線122、独立配線123及びパッド124が設けられている。
【0037】
パッド124は基板101の表面に設けられ、各振動子エレメント150が電気的に接続される。配線122はパッド124と基板内蔵抵抗素子121を電気的に接続する。基板内蔵抵抗素子121は配線122及びパッド124を介して各振動子エレメント150が接続される。独立配線123は基板内蔵抵抗素子121に電気的に接続される。各振動子エレメント150の電気的接続については後述する。
【0038】
圧電体層102は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料からなる。圧電体層102は、下部電極層104と上部電極層103の間に設けられ、下部電極層104と上部電極層103の間に電圧が印加されると、逆圧電効果による振動を生じ、超音波を生成する。また、診断対象物からの反射波が圧電体層102に入射すると、圧電効果による分極を生じる。圧電体層102のサイズは特に限定されないが、例えば250μm角とすることができる。
【0039】
上部電極層103は圧電体層102上に設けられ、導電性材料からなり、例えばメッキやスパッタなどで成膜された金属である。なお、上部電極層103は、図4に示すように振動子エレメント150毎に分離されていてもよく、分離されていなくてもよい。
【0040】
下部電極層104はバッキング層105上に設けられ、導電性材料からなり、例えばメッキやスパッタなどで成膜された金属である。下部電極層104は、配線125を介して基板101に電気的に接続されている。
【0041】
バッキング層105は、基板101上に設けられ、振動子エレメント150の不要な振動を吸収する。バッキング層105は一般にはフィラーと合成樹脂を混合した材料等からなる。バッキング層105中には下部電極層104とパッド124を接続する配線125が設けられている。
【0042】
音響整合層106及び音響整合層107は、診断対象物と振動子エレメント150の間の音響インピーダンスの差を低減し、超音波の診断対象物への反射を防止する。音響整合層106は、合成樹脂やセラミックス材料からなる。図4に示すように音響整合層106は振動子エレメント150毎に分離され、音響整合層107は分離されていないものとすることができるがこれに限られない。
【0043】
音響レンズ108は、診断対象物に接触し、圧電体層102において生成された超音波を集束させる。音響レンズ108は例えばシリコーンゴム等からなり、そのサイズや形状は特に限定されない。
【0044】
[振動子エレメントの配列について]
図2及び図3に示すように振動子エレメント150は振動子エレメント150の厚み方向(Z方向)から見てX方向及びY方向の二方向に沿って配列する。
【0045】
アレイ型超音波振動子100の短手方向(X方向)はスライス方向(又はエレベーション方向)と呼ばれ、同方向の解像度は超音波診断画像における奥行き方向の解像度に相当する。スライス方向の振動子エレメント150の数は特に限定されず、複数であればよい。
【0046】
アレイ型超音波振動子100の長手方向(Y方向)はアジマス方向と呼ばれ、同方向の解像度は超音波診断画像における方位方向の解像度に相当する。アジマス方向の振動子エレメント150の数は特に限定されず、複数であればよい。
【0047】
なお、振動子エレメント150の厚み方向(Z方向)の解像度は超音波診断画像における距離方向の解像度に相当する。
【0048】
スライス方向における超音波ビームのビーム幅は、超音波診断画像のスライス分解能やコントラストに作用するため、このビーム幅は薄い方が好適である。アジマス方向に沿って一列に振動子エレメントが配列する一次元アレイ型超音波振動子では、音響レンズを用いることによりスライス方向におけるビーム幅を集束させることができる。
【0049】
一方でアレイ型超音波振動子100のようにスライス方向にも複数の振動子エレメントが配列する二次元アレイ型超音波振動子では、音響レンズのみで十分にスライス方向のビーム幅を集束させることが困難である。このため、一般には、アレイ端部の振動子エレメントの出力を小さく抑えること(アポタイゼーション)や振動子エレメントの超音波振動の位相差を調整することによってスライス方向のビーム幅を集束させることが行われている。
【0050】
上記アポタイゼーションや位相調整は、振動子エレメント毎に電極(本実施形態では上部電極層103及び下部電極層104に相当)に配線を施し、振動子エレメント毎に電圧や位相を制御することによって実現することが可能である。しかしながら、個々の振動子エレメントの全てに配線を施す場合、アレイ型超音波振動子から伸びる配線数が増加し、製造工程の複雑化や高コスト化の原因となる。さらに、アレイ型超音波振動子の近傍に、個々の振動子エレメントの振動を制御するためのプロセッサ(マルチプレクサ等)を搭載する必要があり、超音波プローブの内部空間が限られる場合等には利用が困難である。
【0051】
これに対し、本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100では以下のように配線が施されており、上述のような問題を回避ひつつ、スライス方向のビーム集束が実現されている。
【0052】
[振動子エレメントの配線について]
図5はアレイ型超音波振動子100における振動子エレメント150の配列を示す模式図である。同図に示すように、スライス方向(X方向)に沿った振動子エレメント150の列をエレメント列Sとする。アレイ型超音波振動子100は複数のエレメント列Sから構成されている。エレメント列Sを構成する振動子エレメント150の数及びエレメント列Sの数は特に限定されず、共に複数であればよい。
【0053】
図6は、一つのエレメント列Sの電気的接続関係を示す模式図である。同図ではそれぞれの振動子エレメント150について、圧電体層102、上部電極層103及び下部電極層104を模式的に示す。
【0054】
同図に示すように、上部電極層103は配線131によって互いに接続され、グランドGに接続されている。また、下部電極層104は配線132によって互いに接続され、独立配線123に接続されている。エレメント列Sを構成する振動子エレメント150の間には抵抗素子133が電気的に接続されている。なお、配線132は図4において配線125、パッド124及び配線122によって実現されており、抵抗素子133は基板内蔵抵抗素子121によって実現されている。なお、各抵抗素子133の抵抗値は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。例えばエレメント列Sの中央部から端部にかけて各抵抗素子133の抵抗値が次第に大きくなるように構成されていてもよい。
【0055】
アレイ型超音波振動子100を構成する複数のエレメント列Sはそれぞれが図6に示す構成を有しており、エレメント列S間では電気的に接続されていない。したがって、アレイ型超音波振動子100においては、各々のエレメント列Sに一本ずつの独立配線123が接続されている。
【0056】
以上のようにして振動子エレメント150に配線を施すことにより、アレイ型超音波振動子100では、エレメント列S毎に独立配線123から駆動信号が供給され、エレメント列S毎に圧電体層102の振動が制御される。
【0057】
図7はアレイ型超音波振動子100における振動子エレメント150から放出される超音波の出力を示す模式図である。同図において振動子エレメントから放出される超音波の出力の大きさを矢印の長さで示す。
【0058】
個々のエレメント列Sにおいては独立配線123から供給された駆動信号は抵抗素子133によって減衰されながら、抵抗素子133を介して接続された振動子エレメント150に供給される。これにより、図7に示すようにそれぞれのエレメント列Sの端部に近い振動子エレメント150ほど圧電体層102において生じる超音波の出力が小さくなる。
【0059】
このようにアレイ型超音波振動子100が備えるそれぞれのエレメント列Sで端部での超音波の出力が小さくなるため、アポタイゼーションが実現され、スライス方向のビーム幅が集束される。
【0060】
また、エレメント列Sそれぞれには独立配線123が接続されているため、エレメント列S毎に駆動信号によって超音波振動を制御することができる。即ち、アジマス方向においては駆動信号によってアポタイゼーション及び位相制御を実現することが可能である。
【0061】
以上のように、アレイ型超音波振動子100においてはアジマス方向についてはエレメント列S毎の駆動信号によって超音波の出力を調整することでき、スライス方向については抵抗素子133によって受動的に超音波の出力が調整される。アレイ型超音波振動子100において必要な配線は一つのエレメント列Sについて1本であるため、振動子エレメント150の一つずつに配線を施す場合に比べて配線数を大幅に低減することが可能である。
【0062】
なお、各振動子エレメント150の間には抵抗素子133によって実質的なローパスフィルタが形成される。しかしながら、ローパスフィルタのカットオフ周波数以下で用いることにより各エレメント列Sにおいて生じる位相ずれを抑制することが可能である。
【0063】
[振動子エレメントの配線の具体的構造]
アレイ型超音波振動子100においては、図6に示すような接続関係が実現できるものであればよく、具体的な構造は特に限定されない。しかしながら、図4に示すように基板内蔵抵抗素子121を利用すると好適である。
【0064】
図8は、基板内蔵抵抗素子121を示す模式図であり、振動子エレメント150、基板内蔵抵抗素子121及び配線131を示す。基板内蔵抵抗素子121は、電気抵抗が高い導電性材料からなり、同図に示すようにエレメント列Sの端部に向かって次第に幅が狭くなり、即ち電気抵抗が増大するような形状に形成されている。これにより、基板内蔵抵抗素子121によって図6に示す抵抗素子133を実現することができる。
【0065】
なお、基板内蔵抵抗素子121は、Ni膜、NiCr膜、Ni−P素子又はNiCrAlSi膜等をメッキ又はスパッタにて成膜し、パターニングすることによって形成することが可能である。
【0066】
なお、抵抗素子133は基板内蔵抵抗素子121以外によって実現することも可能であり、例えば、低背EPD(Embedded Passive Device)に対応した抵抗素子を利用することも可能である。
【0067】
図9は、独立配線123を示す模式図であり、振動子エレメント150、独立配線123及び配線131を示す。独立配線123は同図に示すように、スライス方向(X方向)に沿って延伸するように設けられている。
【0068】
[アレイ型超音波振動子の他の構成について]
アレイ型超音波振動子100の構成は上述のものに限られない。図10及び図11は、他の構成を有するアレイ型超音波振動子100を示す模式図である。
【0069】
図10に示すように、抵抗素子133は、全ての振動子エレメント150の間に電気的に接続されていなくてもよく、一部の振動子エレメント150の対の間に電気的に接続されていてもよい。この構造においてもエレメント列Sで端部での超音波の出力が小さくなるため、アポタイゼーションが実現され、スライス方向のビーム幅が集束される。
【0070】
また、図11に示すように、アレイ型超音波振動子100は、接地用抵抗素子134を備えてもよい。接地用抵抗素子134は、エレメント列Sの両端に位置する振動子エレメント150とグランドGの間に電気的に接続されている。
【0071】
上記構成においては、エレメント列Sの端部に蓄積された電荷が駆動信号の入力後も残存するおそれがある。これに対し、接地用抵抗素子134を設けることによりエレメント列S端部に電荷の逃げ道を確保し、エレメント列S端部への電荷の蓄積を防止することができる。
【0072】
なお、接地用抵抗素子134の抵抗値が低すぎると駆動信号入力時に電荷が逃げてしまい、高すぎると接地用抵抗素子134を設けた意味がなくなるため、適切な抵抗値とする必要がある。また、図10に示す一部の振動子エレメント150の対の間に抵抗素子133が設けられた構成に対して接地用抵抗素子134を設けても良い。
【0073】
[アレイ型超音波振動子の適用例]
本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100の適用例について説明する。
【0074】
図12及び図13は、アレイ型超音波振動子100を備える超音波プローブ11の模式図である。同図に示すように超音波プローブ11は、アレイ型超音波振動子100、アレイ型超音波振動子100を収容するケース171及び独立配線123が接続される配線接続部172を備える。
【0075】
上述のように、アレイ型超音波振動子100は、1つのエレメント列Sに対して1本の独立配線123を接続すればよいため、個々の振動子エレメント150に配線を施す構造に比較して配線数を大幅に削減することができる。
【0076】
図14は、超音波プローブから放出される超音波強度のシミュレーション結果を示すグラフであり、超音波プローブのスライス方向(X方向)の開口幅を5mmとし、測定深度3.5cmでのビームプロファイルを示す。
【0077】
図中「エレメント列駆動」は本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100を利用してアポタイゼーションを実施した場合の超音波強度、図中「独立エレメント駆動」は個々の振動子エレメントに配線を接続したアレイ型超音波振動子を利用してアポタイゼーションを実施した場合の超音波強度である。図中「音響レンズ」はアポタイゼーションを利用せず、音響レンズによる集束効果のみの場合の超音波強度である。
【0078】
本実施形態に係る「エレメント列駆動」では「音響レンズ」に比べてサイドローブ(主たる放射方向から外れた方向に進行する超音波)が大幅に低下しており、「独立エレメント駆動」に近いビームプロファイルが得られる。
【0079】
したがって、「エレメント列駆動」では「独立エレメント駆動」に対して大幅に配線数を低減しつつ、「独立エレメント駆動」と同等のダイナミックレンジを有し、視認性に優れた超音波画像を生成することが可能となる。
【0080】
図15は、アレイ型超音波振動子100を備える超音波カテーテル12の模式図である。超音波カテーテル12は例えば心腔内超音波カテーテルである。超音波カテーテル12は本体12aとカテーテル12bを備え、アレイ型超音波振動子100はカテーテル12bの先端に搭載される。
【0081】
図16は、超音波カテーテルから放出される超音波強度のシミュレーション結果を示すグラフであり、超音波プローブのスライス方向(X方向)の開口幅を2mmとした場合のビームプロファイルを示す。
【0082】
「エレメント列駆動」、「独立エレメント駆動」及び「音響レンズ」は上述のものと同義である。超音波カテーテルであっても、「エレメント列駆動」では「音響レンズ」に比べてサイドローブが大幅に低下しており、「独立エレメント駆動」に近いビームプロファイルが得られる。
【0083】
また、超音波カテーテルはカテーテルを屈曲させて操作する必要があるが、個々の振動子エレメントに配線を接続したアレイ型超音波振動子ではカテーテル内の配線数が多くなり、操作の妨げとなる。カテーテル先端部にマルチプレクサ等を搭載すればカテーテル内の配線数を削減できるが、カテーテル先端部の搭載空間は限定されており、容易ではない。このような点からも、必要な配線数が少ないアレイ型超音波振動子100は好適である。
【0084】
図17は、アレイ型超音波振動子100を備える手術器具13の模式図である。手術器具13は切開具や鉗子であり、先端部にアレイ型超音波振動子100が搭載されている。このように手術器具にアレイ型超音波振動子を搭載する場合、収容空間が小さく、開口径も小さくなるため、ダイナミックレンジが悪化する。
【0085】
これに対して本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100は上記のように高いダイナミックレンジを有するため、超音波診断の画質を向上させることが可能である。
【0086】
また、アレイ型超音波振動子100は、位置センサと共に超音波プローブに搭載することができる。位置センサは超音波プローブの位置を取得するセンサであり、例えば磁気センサとすることができる。このような構成により、アレイ型超音波振動子100が生成する2次元超音波診断画像と位置センサから出力される超音波プローブの位置関係に基づいて、3次元ボリューム画像を構築することが可能となる(特開2008−178500号公報参照)。
【0087】
上述のように本実施形態に係るアレイ型超音波振動子100はコントラストの高い超音波診断画像を生成することが可能であるため、アレイ型超音波振動子100を位置センサと共に搭載することによりコントラストの高い3次元ボリューム画像を生成することが可能となる。
【0088】
[抵抗値の詳細について]
図11に示す抵抗素子133及び接地用抵抗素子134を備えるアレイ型超音波振動子100における、抵抗素子133及び接地用抵抗素子134の抵抗値の詳細について説明する。
【0089】
図18は、アレイ型超音波振動子100のそれぞれのエレメント列Sの電気回路構成を示す模式図である。同図において、それぞれの振動子エレメント150(図11参照)によって形成される静電容量をC1〜C16として示し、抵抗素子133による抵抗をR1〜R14、接地用抵抗素子134による抵抗をRg1及びRg2として示す。なお、振動子エレメント150及び抵抗素子133の数は図18に示すものに限られない。
【0090】
図19は、抵抗素子133及び接地用抵抗素子134の抵抗値の割合を示すグラフであり、抵抗素子133及び接地用抵抗素子134の総抵抗値を100%とした場合の抵抗素子133及び接地用抵抗素子134の抵抗値割合を示すグラフである。同図において括弧内は各抵抗素子133及び接地用抵抗素子134の位置を示す。
【0091】
また、図18において、独立配線123を介してエレメント列Sと接続された電源回路180の構成を示す。電源回路180は、駆動電源181、インダクタ182、インダクタ183、抵抗素子184、抵抗素子185、抵抗素子186、抵抗素子187、キャパシタ188及びキャパシタ189を備える。さらに、エレメント列Sと駆動電源181の間の配線を信号配線190とする。信号配線190は同軸ケーブルであり、その抵抗値は例えば143Ωである。
【0092】
ここで、抵抗素子133及び接地用抵抗素子134は、エレメント列Sにおける抵抗素子133と接地用抵抗素子134の合計の抵抗値(Rg1+Rg2+R1+…+R14)が、信号配線190の抵抗値より大きいものが好適である。
【0093】
さらに、駆動電源181の駆動電圧の周波数をf[Hz]としたときに、エレメント列Sにおける抵抗素子133の合計の抵抗値(R1+…+R14)と振動子エレメント150の静電容量の合計値(C1+…+C16)の積(以下、RC)が、1/2fより小さいものが好適である。
【0094】
図20〜図24は、エレメント列Sにおける各振動子エレメント150での電圧時刻暦波形のシミュレーション結果を示すグラフである。各図において、「中央の素子」は図18中C8又はC9の振動子エレメント150を指し、「端から5番目の素子」は同図中C5又はC12の振動子エレメント150を指す。「端の素子」は同図中C1又はC16の振動子エレメント150を指す。
【0095】
抵抗素子133と接地用抵抗素子134の合計の抵抗値(以下、合計抵抗値)は図20では10Ω、図21では100Ω、図22では1kΩ、図23では10kΩ、図24では100kΩである。
【0096】
シミュレーションの解析条件は、アジマス方向(Y方向)の振動子エレメント幅:90μm、スライス方向(X方向)のアレイ型超音波振動子幅(開口幅):5mm、スライス方向(X方向)の振動子エレメント数:16、アレイ型超音波振動子厚み:120μm、印加電圧波形:100V、7MHz、Sin波、1波である。
【0097】
図20及び図21に示すように、合計抵抗値が信号配線190の抵抗値(143Ω)より小さい場合、100Vの印加電圧に対して最大電圧が3V又は20V程度であり、各振動子エレメント150の電圧降下が大きすぎる。
【0098】
一方、図22乃至図図24に示すように、合計抵抗値が信号配線190の抵抗値(143Ω)より大きい場合、100Vの印加電圧に対して最大電圧が60V又は80V程度であり、各振動子エレメント150の電圧降下は大きくない。
【0099】
このため、合計抵抗値は信号配線190の抵抗値より大きい方が好適である。
【0100】
また、RC(抵抗素子133の合計の抵抗値(R1+…+R14)と振動子エレメント150の静電容量の合計値(C1+…+C16)の積)が、1/2fより大きいと、図23及び図24に示すようにRC遅延(位相のずれ)が生じる。
【0101】
このため、RCは1/2fより小さい方が好適である。なお、図20〜図24において、Rは図中に記載の「合計抵抗値」であり、Cはいずれも65.8pFである。7MHzでの1/2fが71.4nsecであるのに対し、RCの値は図20の条件では0.658pF、図21では6.58pF、図22では65.8pF、図23では658pF、図24では6.58nFである。
【0102】
以上から、合計抵抗値は信号配線190抵抗値より大きい方が好適であり、RCは1/2fより小さい方が好適である。図22(合計抵抗値:1kΩ)に示すようにこれらの条件が満たされる場合、各振動子エレメント150の電圧降下が小さく、RC遅延の発生も防止される
【0103】
図25は、X方向の幅(開口幅)が5mmの場合のアレイ型超音波振動子100の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果であり、焦点距離は35mmである。
【0104】
図26は図25に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅(−3dB及び−6dB低下時の幅)を示すグラフであり、図27は、図25に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【0105】
これらの図に示すように、開口幅5mmの場合、合計抵抗値が1kΩのときにダイナミックレンジの向上(図25中、矢印A)及びビーム幅の縮小(図25中、矢印B)という効果が得られる。
【0106】
図28は、X方向の幅(開口幅)が2mmの場合のアレイ型超音波振動子100の音圧ビームプロファイルの別のシミュレーション結果であり、焦点距離は35mmである。
【0107】
図29は図28に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅(−3dB及び−6dB低下時の幅)を示すグラフであり、図30は、図28に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【0108】
これらの図に示すように開口幅が2mmの場合、合計抵抗値が1kΩのときにダイナミックレンジの向上(図28中、矢印A)という効果が得られる。
【0109】
このように、合計抵抗値が信号配線190抵抗値より大きく、RCが1/2fより小さい場合、アレイ型超音波振動子100のダイナミックレンジの向上やビーム幅の縮小といった効果が得られる。
【0110】
また、それぞれのエレメント列Sにおいて、接地用抵抗素子134の抵抗値(Rg1及びRg2)は、抵抗素子133の合計の抵抗値(R1+…+R14)より小さい方が好適である。図31は、エレメント列Sにおけるアポタイゼーション強度分布を示すグラフであり、バイアス値(端での強度係数)が小さい方がダイナミックレンジが大きくなる。
【0111】
より具体的には、図32に示すように、エレメント列Sの振動子エレメント150の数をn、スライス方向(X方向)のエレメント列Sの幅をw、スライス方向の中央を原点としたときの、原点からのスライス方向の距離をx、駆動電源181の駆動電圧によって端からk番目の振動子エレメント150で生じる電圧波形のピーク値をVk、Vk(1≦k≦n)の最大値をVmaxとしたときに、Vkの分布が下記(式1)に示すハミング窓関数に沿った分布となることが好適である。
【0112】
Vk/Vmax=0.54+0.46cos(2π・x/w) (式1)
【0113】
図33は、上記(式1)に示すハミング窓関数を示すグラフである。
【0114】
図34は、X方向の幅(開口幅)が5mmの場合のアレイ型超音波振動子100の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果であり、焦点距離は35mmである。
【0115】
図35は図34に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅(−3dB及び−6dB低下時の幅)を示すグラフであり、図36は、図34に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【0116】
図37は、X方向の幅(開口幅)が2mmの場合のアレイ型超音波振動子100の音圧ビームプロファイルのシミュレーション結果であり、焦点距離は35mmである。
【0117】
図38は図37に示す音圧ビームプロファイルでのビーム幅(−3dB及び−6dB低下時の幅)を示すグラフであり、図39は、図37に示す音圧ビームプロファイルでのダイナミックレンジを示すグラフである。
【0118】
これらの図に示すように、強度分布関数が上記ハミング窓関数となる場合にダイナミックレンジが大きくなり、好適である。
【0119】
このように、接地用抵抗素子134の抵抗値が抵抗素子133の合計の抵抗値より小さく、アポタイゼーション強度分布がハミング窓関数に沿った分布となるように構成することにより、アレイ型超音波振動子100のダイナミックレンジの向上といった効果が得られる。
【0120】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
【0121】
(1)
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、
上記エレメント列のうち、任意の超音波振動子エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子と
を具備するアレイ型超音波振動子。
【0122】
(2)
上記(1)に記載のアレイ型超音波振動子であって、
上記抵抗素子は、上記エレメント列のうち、全ての超音波振動エレメントの間に電気的に接続されている
アレイ型超音波振動子。
【0123】
(3)
上記(1)又は(2)に記載のアレイ型超音波振動子であって、
上記エレメント列の端の超音波振動エレメントとグランドの間に接続された接地用抵抗素子
をさらに具備するアレイ型超音波振動子。
【0124】
(4)
上記(1)から(3)のうちいずれか一つに記載のアレイ型超音波振動子であって、
上記振動子アレイは、上記超音波振動子エレメントを支持する基板を有し、
上記抵抗素子は上記基板の表面又は内部に実装されている
アレイ型超音波振動子。
【0125】
(5)
上記(1)から(4)のうちいずれか一つに記載のアレイ型超音波振動子であって、
上記超音波振動子エレメントは、上記エレメント列毎に上記超音波振動子エレメントを駆動するための配線に接続されている
アレイ型超音波振動子。
【0126】
(6)
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する超音波プローブ。
【0127】
(7)
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する超音波カテーテル。
【0128】
(8)
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子
を具備する手持ち手術器具。
【0129】
(9)
超音波振動子エレメントが2次元アレイを構成する振動子アレイであって、スライス方向に沿って複数の超音波振動子エレメントが配列するエレメント列を複数有する振動子アレイと、上記エレメント列のうち、任意の超音波振動エレメントの対の間に電気的に接続された抵抗素子とを備えるアレイ型超音波振動子と、
上記アレイ型超音波振動子の位置を検出する位置センサと
を具備する医療機器。
【0130】
(10)
上記(9)に記載の医療機器であって、
上記アレイ型超音波振動子と上記位置センサの出力に基づいて超音波ボリューム画像を生成する
医療機器。
【0131】
(11)
上記(3)から(5)のうちいずれか一つに記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの上記エレメント列において、上記抵抗素子と上記接地用抵抗素子の合計の抵抗値が、上記超音波振動子エレメントと駆動電源を接続する信号配線の抵抗値より大きい
アレイ型超音波振動子。
【0132】
(12)
上記(3)から(5)及び(11)のうちいずれか一つに記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの上記エレメント列において、上記超音波振動子エレメントの駆動電圧の周波数をf[Hz]としたときに、上記抵抗素子の合計の抵抗値と上記超音波振動子エレメントの静電容量の合計値の積が、1/2fより小さい
アレイ型超音波振動子。
【0133】
(13)
上記(3)から(5)、(11)及び(12)のうちいずれか一つに記載のアレイ型超音波振動子であって、
それぞれの上記エレメント列において、上記接地用抵抗素子の抵抗値が、上記抵抗素子の合計の抵抗値より小さい
アレイ型超音波振動子。
【符号の説明】
【0134】
11…超音波プローブ
12…超音波カテーテル
13…手術器具
100…アレイ型超音波振動子
101…基板
102…圧電体層
103…上部電極層
104…下部電極層
105…バッキング層
106、107…音響整合層
107…音響整合層
108…音響レンズ
121…基板内蔵抵抗素子
123…独立配線
133…抵抗素子
134…接地用抵抗素子
150…振動子エレメント
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【国際調査報告】