(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2018225783
(43)【国際公開日】20181213
【発行日】20200409
(54)【発明の名称】医薬品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20200313BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20200313BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20200313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20200313BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200313BHJP
【FI】
   !A61K33/00
   !A61K47/12
   !A61K47/22
   !A61K45/00
   !A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】2019523943
(21)【国際出願番号】JP2018021694
(22)【国際出願日】20180606
(31)【優先権主張番号】2017112114
(32)【優先日】20170606
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517200061
【氏名又は名称】株式会社Atomis
【住所又は居所】京都府京都市上京区梶井町448−5 クリエイション・コア京都御車208室
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】浅利 大介
【住所又は居所】京都府京都市上京区梶井町448−5 クリエイション・コア京都御車208室
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎司
【住所又は居所】京都府京都市上京区梶井町448−5 クリエイション・コア京都御車208室
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB31
4C076CC07
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4C084MA56
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4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB07
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4C086HA07
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4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB07
(57)【要約】
本発明は、優れた医薬品組成物を提供することを目的とする。本発明に係る医薬品組成物は、免疫が関与する疾患に対する医薬品組成物であって、金属有機構造体を含んだ医薬品組成物を含んでいる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫が関与する疾患に対する医薬品組成物であって、金属有機構造体を含んだ医薬品組成物。
【請求項2】
免疫シグナル伝達物質を更に含んでいる、請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
前記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部は、前記金属有機構造体の細孔内に含まれている、請求項1又は2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
前記金属有機構造体は、生体内で分解して前記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を放出するように構成されている、請求項3に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記免疫シグナル伝達物質は、分子量が1000以下の低分子である、請求項2乃至4の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
前記免疫シグナル伝達物質は、25℃及び100kPaにおいて気体である、請求項5に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
前記免疫シグナル伝達物質は、ケラチノサイト、単球、リンパ球、又は顆粒球に作用する因子である、請求項2乃至6の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記金属有機構造体は、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カリウム、及びナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属元素を含んでいる、請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
経口投与、経皮投与、及び/又は粘膜投与されるように構成されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
皮内注射、皮下注射、又は筋肉内注射により投与されるように構成されている、請求項1乃至8の何れか1項に記載の医薬品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な医薬品組成物が開発されている。他方、医学とは全く異なるガス分離などの分野で、金属有機構造体(Metal−Organic Framework; MOF)又は多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer; PCP)と呼ばれる物質群が注目を集めている。金属有機構造体は、金属と多座配位子との組み合わせにより、細孔を有する構造体を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2004/037895号公報
【特許文献2】国際公開2009/042802号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】David Farrusseng, Metal−Organic Frameworks: Applications from Catalysis to Gas Storage, Wiley, 2011
【非特許文献2】Yabing He et al. Methane Storage in Metal−Organic Frameworks, Chem Soc Rev, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた医薬品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
[1]免疫が関与する疾患に対する医薬品組成物であって、金属有機構造体を含んだ医薬品組成物。
[2]免疫シグナル伝達物質を更に含んでいる、[1]に記載の医薬品組成物。
[3]前記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部は、前記金属有機構造体の細孔内に含まれている、[1]又は「2」に記載の医薬品組成物。
[4]前記金属有機構造体は、生体内で分解して前記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を放出するように構成されている、[3]に記載の医薬品組成物。
[5]前記免疫シグナル伝達物質は、分子量が1000以下の低分子である、[2]〜[4]の何れかに記載の医薬品組成物。
[6]前記免疫シグナル伝達物質は、25℃及び100kPaにおいて気体である、[5]に記載の医薬品組成物。
[7]前記免疫シグナル伝達物質は、ケラチノサイト、単球、リンパ球、又は顆粒球に作用する因子である、[2]〜[6]の何れかに記載の医薬品組成物。
[8]前記金属有機構造体は、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カリウム、及びナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属元素を含んでいる、[1]〜[7]の何れかに記載の医薬品組成物。
[9]経口投与、経皮投与、及び/又は粘膜投与されるように構成されている、[1]〜[8]の何れかに記載の医薬品組成物。
[10]皮内注射、皮下注射、又は筋肉内注射により投与されるように構成されている、[1]〜[8]の何れかに記載の医薬品組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、優れた医薬品組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】図1Aは、金属有機構造体AP004〔MIL−100(Fe)〕のCO吸着プロファイルである。
【図1B】図1Bは、金属有機構造体AP004〔MIL−100(Fe)〕のNO吸着プロファイルである。
【図2】図2は、金属有機構造体AP104(BioMIL−3)のNO吸着プロファイルである。
【図3】図3は、IL−6産出量の測定結果を示す図である。
【図4A】図4Aは、IL−6産出量の測定結果を示す図である。
【図4B】図4Bは、IL−6産出量の測定結果を示す図である。
【図5】図5は、IL−6産出量の測定結果を示す図である。
【図6A】図6Aは、TNF−α産出量の測定結果を示す図である。
【図6B】図6Bは、TNF−α産出量の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、TNF−α産出量の測定結果を示す図である。
【図8A】図8Aは、IL−1β産出量の測定結果を示す図である。
【図8B】図8Bは、IL−1β産出量の測定結果を示す図である。
【図9】図9は、IL−1β産出量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一態様に係る医薬品組成物について説明する。
【0010】
本発明に係る医薬品組成物は、免疫が関与する疾患(以下、免疫疾患ともいう)に対する医薬品組成物である。この医薬品組成物は、金属有機構造体を含んでいる。また、この組成物は、免疫機能を調整するための組成物である。
【0011】
本発明に係る医薬品組成物が対象とする免疫疾患としては、例えば、自己免疫疾患、癌、アレルギー、及び感染症が挙げられる。自己免疫疾患としては、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、シェーングレン症候群、パセドウ病、ギラン・バレー症候群、全身性エリトマトーデス、動脈硬化症、高血圧症、1型糖尿病、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、及び骨粗鬆症が挙げられる。感染症としては、例えば、ウイルス疾患、細菌疾患、真菌疾患、マラリア、ニューモシスティスカリニ肺炎、レーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、及びトリパノソーマ感染が挙げられる。また、本発明に係る医薬品組成物は、臓器移植時の拒絶反応を予防する為の免疫抑制剤として使用することもできる。
【0012】
金属有機構造体は、金属と多座配位子との組み合わせによって構成されている。金属有機構造体が免疫疾患に作用する機構は詳らかではないが、本発明者らは、金属有機構造体の金属及び/又は配位子が抗原及び/又は免疫細胞と相互作用することに起因しているのではないかと推測している。なお、ここで「多座配位子」とは、二座以上の配位子を意味している。
【0013】
上記金属有機構造体の種類に特に制限はない。金属イオンの種類及び配位数と、多座配位子の種類及びトポロジーとを適切に組み合わせることにより、所望の構造を有する金属有機構造体を製造することができる。金属有機構造体は、生体内で分解するように構成されていてもよい。この場合、金属有機構造体を構成する金属及び配位子が露出しやすくなることにより、金属有機構造体の医薬品化合物としての機能がより高くなり得る。なお、金属有機構造体は、結晶性であってもよく、非晶質であってもよい。
【0014】
金属有機構造体を構成する金属元素としては、例えば、アルカリ金属(第1族)、アルカリ土類金属(第2族)、及び遷移金属(第3族〜第12族)に属する任意の元素が挙げられる。これらのうち、生体適合性の観点から、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルミニウム、カリウム、及びナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属元素を用いることが特に好ましい。但し、これら以外の金属元素を用いる場合であっても、金属有機構造体としての生体適合性が担保されていれば問題はない。
【0015】
金属有機構造体を構成する多座配位子は、典型的には有機配位子であり、例えば、カルボン酸アニオン、並びに、複素環化合物が挙げられる。カルボン酸アニオンとしては、例えばジカルボン酸又はトリカルボン酸が挙げられる。具体的には、例えば、クエン酸、リンゴ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメシル酸、及びこれらの誘導体のアニオンが挙げられる。複素環化合物としては、例えば、ビピリジン、イミダゾール、アデニン、及びこれらの誘導体が挙げられる。或いは、配位子は、アミン化合物、スルホン酸アニオン又はリン酸アニオンであってもよい。なお、金属有機構造体は、単座配位子を更に含んでいてもよい。
【0016】
金属有機構造体を構成する金属及び配位子の組み合わせは、その機能や所望する細孔のサイズに応じて、適宜決定することができる。なお、金属有機構造体は、2種類以上の金属元素を含んでいてもよく、2種類以上の配位子を含んでいてもよい。また、金属有機構造体は、ポリマーなどにより表面修飾されていてもよい。
【0017】
金属有機構造体の具体例としては、例えば、非特許文献2の表1に挙げられているものを使用することができる。或いは、金属有機構造体として、以下の表1乃至3に示すものを使用してもよい。なお、これらは非限定的な列挙であり、これら以外の金属有機構造体を用いてもよい。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
特に好ましい金属有機構造体としては、以下のものが挙げられる。
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
金属有機構造体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。金属有機構造体の医薬品組成物中の含有量は、例えば1×10−7質量%以上とし、好ましくは1×10−6質量%以上とし、より好ましくは5×10−6質量%以上とする。
【0029】
本発明の一態様に係る医薬品組成物は、免疫シグナル伝達物質を更に含んでいてもよい。このような構成を採用することにより、医薬品組成物を投与する効果を更に向上させることができる。なお、ここで「免疫シグナル伝達物質」とは、免疫細胞の活性化や分化などを誘導するための免疫シグナルを伝達するために使用される任意の物質を意味している。免疫シグナル伝達物質は、例えば、インターロイキン、ケモカイン、インターフェロン、造血因子、細胞増殖因子、及び細胞壊死因子などのサイトカインであってもよく、後述する気体分子などの小分子であってもよい。なお、ここで「小分子」とは、分子量が1000以下の分子を意味している。
【0030】
免疫シグナル伝達物質は、例えば、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞など)、単球(マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞など)、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球など)、及び/又はケラチノサイトに作用する因子である。免疫シグナル伝達物質は、例えば、リンパ球の一種であるヘルパーT細胞の、Th1細胞、Th2細胞、Treg細胞、Th17細胞、Tfh細胞、及びメモリーT細胞などの各系列への分化を誘導するための因子であってもよい。免疫シグナル伝達物質がTh1細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、癌治療薬用及び感染症治療薬用に使用することができる。免疫シグナル伝達物質がTh2細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、感染症治療薬用及び生活習慣病治療薬用に使用することができる。免疫シグナル伝達物質がTreg細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、アレルギー治療薬用又は臓器移植用に使用することができる。免疫シグナル伝達物質がTh17細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、感染症治療薬用に使用することができる。免疫シグナル伝達物質がTfh細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、感染症治療薬用に使用することができる。免疫シグナル伝達物質がメモリーT細胞を誘導する場合、本発明に係る医薬品組成物は、例えば、感染症治療薬用又は癌治療薬用に使用することができる。
【0031】
上記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部は、上記金属有機構造体の細孔内に含まれていることが好ましい。これにより、免疫シグナル伝達物質のより安定的且つ定量的な投与が可能となる。なお、免疫シグナル伝達物質の他の一部は、金属有機構造体の表面に付着していてもよい。また、免疫シグナル伝達物質のほぼ全部が金属有機構造体の細孔内に含まれていてもよい。
【0032】
なお、上記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部が上記金属有機構造体の細孔内に含まれている場合、金属有機構造体は、不可逆的な吸着脱着プロファイルを有することが好ましい。即ち、金属有機構造体は、同一圧力において、脱着時における吸着量が、吸着時における吸着量より大きいことが好ましい。特に、金属有機構造体は、真空状態から加圧状態への吸着を行った後に加圧状態からの真空状態への脱着を行った際の吸着残存量がゼロでないことが好ましい。このような場合、低圧条件下(例えば大気圧下)においても、金属有機構造体の細孔内に免疫シグナル伝達物質を保持しやすくなる。
【0033】
また、免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部が金属有機構造体の細孔内に含まれている場合、金属有機構造体は、生体内で分解して前記免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を放出するように構成されていることが好ましい。これにより、免疫シグナル伝達物質の投与量及び放出速度などの微調整を行うことができる。また、金属有機構造体を構成する金属及び配位子が露出しやすくなり、金属有機構造体自体の医薬品化合物としての機能が更に向上し得る。
【0034】
上述した通り、免疫シグナル伝達物質は、小分子であってもよい。この場合、免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を金属有機構造体の細孔内に含有させることが容易になる。なお、ここで「小分子」とは、分子量が1000以下の分子を意味している。
【0035】
免疫シグナル伝達物質は、25℃及び100kPa(SATP)において気体であることがより好ましい。この場合、免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を金属有機構造体の細孔内に含有させることが更に容易になる。
【0036】
近年、気体分子などの小分子が免疫シグナル伝達物質として機能していることが明らかになりつつある。例えば、一酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素及びメタンなどの気体分子は、免疫担当細胞に作用していることが明らかになっている。しかしながら、従来、気体分子などの小分子を安定的且つ定量的に生体内に投与する方法は全く知られておらず、当業者は試みもしていなかった。これに対し、本発明者らは、気体分子などの小分子を金属有機構造体と共に用いることにより、気体分子などの小分子を、安定的且つ定量的に生体内に投与し得ることを見出した。
【0037】
免疫シグナル伝達物質としての小分子又は気体分子には、特に制限はない。このような免疫シグナル伝達物質としては、例えば、下記表10に示す化合物が挙げられる。なお、これらは非限定的な列挙であり、これら以外の小分子又は気体分子を用いてもよい。
【0038】
【表10】
【0039】
免疫シグナル伝達物質は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。免疫シグナル伝達物質の医薬品組成物中の含有量は、例えば1×10−7〜40質量%の範囲内とし、好ましくは1×10−6〜30質量%の範囲内とし、より好ましくは5×10−5〜25質量%の範囲内とする。
【0040】
なお、金属有機構造体の細孔内に免疫シグナル伝達物質の少なくとも一部を含有させる場合、その方法に制限はない。例えば、金属有機構造体の溶液又は分散液と免疫シグナル伝達物質の溶液又は分散液とを混合してもよい。或いは、固体の金属有機構造体を免疫シグナル伝達物質又はその溶液若しくは分散液にさらしてもよい。特に、免疫シグナル伝達物質が気体である場合には、金属有機構造体を当該気体にさらしてもよい。
【0041】
本発明の一態様に係る医薬品組成物は、金属有機構造体以外の成分を更に含んでいてもよい。例えば、医薬品組成物は、TLRリガンド、RLRリガンド、NLRリガンド及び環状ジヌクレオチドなどの免疫賦活化剤を更に含んでいてもよい。
【0042】
本発明の一態様に係る医薬品組成物は、例えば、溶媒に溶解又は分散させた状態で使用することができる。溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、又は油脂を使用することができる。
【0043】
本発明に係る医薬品組成物は、任意の方法により対象に投与されうる。ここで「対象」とは、実用段階において医薬品組成物を投与して免疫応答を誘導し得るいずれかの動物、典型的にはヒトを含む哺乳類、例えばマウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サル、チンパンジー、フェレット、モグラ等を意味する。特に好ましい対象は、ヒトである。
【0044】
本発明の一態様に係る医薬品組成物は、例えば、経口投与、経皮投与、及び/又は粘膜投与されるように構成されている。
【0045】
経口投与を行う場合、医薬品組成物は、経口投与に通常使用されるいずれかの製剤、例えば錠剤(口腔内崩壊錠も含む)、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、チュアブル錠、カプセル剤、ゼリー剤、エキス剤、エリキシル剤、液剤、懸濁剤、酒精剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、チンキ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、及び流エキス剤などが挙げられる。これらの組成物の区分、定義、性質、製法等は、当該技術分野において周知であり、例えば日本薬局方第16版を参照されたい。
【0046】
経皮投与を行う場合、医薬品組成物は、経皮投与に通常使用されるいずれかの製剤、例えばリニメント剤若しくはローション剤外用液剤、エアゾール剤などの外用スプレー剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゲル剤、又は、テープ剤若しくはパップ剤などの貼付剤であってよい。これらの組成物の区分、定義、性質、製法等は、当該技術分野において周知であり、例えば日本薬局方第16版を参照されたい。
【0047】
粘膜投与を行う場合、医薬品組成物は、粘膜投与、例えば舌下、経鼻、頬側、直腸又は膣投与に通常使用されるいずれかの製剤、例えばゲル剤(ゼリー剤)、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤などの半固形剤、液剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、フィルム剤や錠剤、口腔内崩壊錠等の固形製剤、エアゾール剤のような粘膜用スプレー剤、吸引剤等であってよい。これらの組成物の区分、定義、性質、製法等は、当該技術分野において周知であり、例えば日本薬局方第16版を参照されたい。
【0048】
本発明の一態様に係る医薬品組成物は、例えば、皮内注射、皮下注射、又は筋肉内注射により投与されるように構成されている。皮内、皮下、又は筋肉内投与を行う場合、医薬組成物は、例えば液剤、懸濁剤、クリーム剤などの注射投与可能なある程度の流動性を有する様態であればよい。これらの組成物の区分、定義、性質、製法等は、当該技術分野において周知であり、例えば日本薬局方第16版を参照されたい。
【0049】
医薬品組成物は、必要に応じて、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤は、基剤の主成分、金属有機構造体との適合性、意図する投与レジメン等に応じて、例えば、皮膚透過性増強剤、等張化剤、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、溶解剤、溶解補助剤、懸濁化剤、充填剤、pH調節剤、安定化剤、吸収促進剤、放出速度制御剤、着色剤、可塑剤、粘着剤等、又はそれらの2種以上の組合せから選択され得る。
【実施例】
【0050】
[サンプル調製]
(比較例1)
生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬)をサンプル溶液とした。
【0051】
(実施例1)
生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬)10mLにZIF−8(Basolite Z1200、SIGMA−ALDRICH)1mgを添加混合しサンプル溶液とした。
【0052】
(実施例2)
生理食塩水(大塚生食注、大塚製薬)100mLにNO(一酸化窒素、京都帝酸)を室温下で6時間バブリングし、NO飽和生理食塩水を調製した。当該溶液10mLにZIF−8(Basolite Z1200、SIGMA−ALDRICH)1mgを添加混合しサンプル溶液とした。
【0053】
以上の構成を下記表11に示す。
【0054】
【表11】
【0055】
(実施例3〜31)
免疫シグナル伝達物質として下記表12に示すものを用いたことを除いては、実施例2と同様にして、サンプル溶液を調製した。
【0056】
【表12】
【0057】
(実施例32〜141)
金属有機構造体として下記表13乃至15に示すものを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、サンプル溶液を調製した。なお、表13乃至15中の略称は、それぞれ、表1乃至3に記載したものと同様である。
【0058】
【表13】
【0059】
【表14】
【0060】
【表15】
【0061】
[腹腔内細胞(PEC細胞)の採取]
4重量%チオグリコール酸溶液2mLをマウスに腹腔内投与し、3日後腹腔内の細胞を取り出した。これをPBS(Phosphate Buffered Saline )で洗浄した。
【0062】
[サンプル刺激]
24ウェルプレートにPEC細胞1×10cells/wellで分注し、各サンプルを添加し、24時間インキュベートした。
【0063】
[サイトカイン測定]
各サイトカイン(TNF−α、IL−6、IFN−γ、IL−12p40、IL−10)に対応したELISAキット(Quantikine ELISA kit, R&D Systems)を使用して、細胞培養液上清50μL/wellを用いて評価を行った。その結果を下記表16に示す。
【0064】
【表16】
【0065】
−:比較例1の2倍未満のサイトカイン放出量
+:比較例1の2倍以上3倍未満のサイトカイン放出量
++:比較例1の3倍以上のサイトカイン放出量
【0066】
[金属有機構造体の合成]
表4乃至表9に示した金属有機構造体を準備した。これらのうち、公知物質については、文献法に従って合成した。新規物質については、金属硝酸塩と配位子とをDMF存在下で水熱処理することによって合成した。
【0067】
[金属有機構造体の吸着特性評価]
吸着量の測定は、BELSORP−max12(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて行った。なお、金属有機構造体は、粉末状態のものを使用した。その結果の一部を、図1A、図1B及び図2に示す。図1Aは、AP004〔MIL−100(Fe)〕のCO吸着プロファイルである。図1Bは、AP004〔MIL−100(Fe)〕のNO吸着プロファイルである。図2は、AP104(BioMIL−3)のNO吸着プロファイルである。これらの例では、吸着脱着プロファイルが不可逆的であった。即ち、同一圧力において、脱着時における吸着量が、吸着時における吸着量より大きかった。また、真空状態から加圧状態への吸着を行った後に加圧状態からの真空状態への脱着を行った際の吸着残存量がゼロでなかった。
【0068】
[金属有機構造体への免疫シグナル伝達物質の導入]
下記の一部の例において、金属有機構造体に免疫シグナル伝達物質を導入した化合物を使用した。具体的には、まず、窒素フロー下で、金属有機構造体を加熱してデガス処理を行った。次に、室温に戻したサンプルを、免疫シグナル伝達物質にさらした。特に、免疫シグナル伝達物質が気体である場合には、室温に戻したサンプルをガスフローにさらした。次に、室温下で窒素フローを行って、余分な免疫シグナル伝達物質を排出した。このようにして、金属有機構造体に免疫シグナル伝達物質を導入した化合物を得た。
【0069】
なお、上記化合物については、その一部を窒素フロー下で加熱した際に、検知管で免疫シグナル伝達物質が検出されることを確認した。このようにして、金属有機構造体に免疫シグナル伝達物質が導入されていることを確認した。
【0070】
[マウス由来腹腔マクロファージを用いたサイトカイン産生量測定(ELISA法)]
C57BL/6マウス(7週齢メス)に2mLの4%チオグリコール酸培地(Difco Laboratories)を投与し、腹腔マクロファージを採取した。1×105cells/wellの腹腔マクロファージを、96ウェルプレートに100μLずつ添加した。各ウェルに、RPMI培地にて希釈した各サンプル溶液(100μg/mL)を100μLずつ添加し、24時間インキュベートした。これらの培養上清50μL/wellを採取し、マウスIL−6、マウスIL−1β、及びマウスTNF−α用のELISAキット(Quantikine ELISA kit、R&D systems)を用いて、各サイトカイン産生量の定量を行った。なお、試験は各6回行い、平均値及び標準偏差を計算した。
【0071】
まず、金属有機構造体を用いた場合と、金属又は配位子のみを用いた場合とを比較した。各組成を以下の表1に示す。表中、MOFは金属有機構造体を意味し、LPSはポジティブコントロールとして付加されるリポ多糖(Salmonella minnesota R595)を意味し、Glyはグリセリンを意味している。また、IL−6産出量の測定結果を、図3に示す。
【0072】
【表17】
【0073】
図3に示す通り、金属有機構造体を用いた場合と、金属又は配位子のみを用いた場合とで、IL−6産出量に有意な差が見られた。特に、金属有機構造体を高濃度で用いた場合に、大きな免疫抑制効果が観察された。
【0074】
次に、他の金属有機構造体を用いた場合の各サイトカイン産出量を測定した。各組成を以下の表18〜22に示す。なお、一部の例においては、金属有機構造体に免疫シグナル伝達物質を吸着させたものを用いた。
【0075】
【表18】
【0076】
【表19】
【0077】
【表20】
【0078】
【表21】
【0079】
【表22】
【0080】
図4A及び図4Bは、IL−6産出量の測定結果を示す。また、図5は、免疫シグナル伝達物質としてのガス成分を含んでいる場合のIL−6産出量の測定結果を示す。
【0081】
図6A及び図6Bは、TNF−α産出量の測定結果を示す。また、図7は、免疫シグナル伝達物質としてのガス成分を含んでいる場合のTNF−α産出量の測定結果を示す。
【0082】
図8A及び図8Bは、IL−1β産出量の測定結果を示す。また、図9は、免疫シグナル伝達物質としてのガス成分を含んでいる場合のIL−1β産出量の測定結果を示す。
【0083】
表23及び24に、以上の結果を定性的に纏める。これらの結果から分かる通り、金属有機構造体を用いることにより、免疫機能の調整が可能であることが分かる。また、免疫シグナル伝達物質としてのガス成分を更に含有させることにより、免疫機能を更に調節できることが分かる。
【0084】
【表23】
【0085】
【表24】

【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【国際調査報告】