(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2019003824
(43)【国際公開日】20190103
【発行日】20200423
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料用プリフォーム、熱硬化性樹脂組成物、繊維強化複合材料及び繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20200331BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20200331BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20200331BHJP
【FI】
   !C08J5/04CEZ
   !C08J5/04CFC
   !C08K7/02
   !C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】2018529325
(21)【国際出願番号】JP2018021505
(22)【国際出願日】20180605
(31)【優先権主張番号】2017128608
(32)【優先日】20170630
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号
(72)【発明者】
【氏名】平野 公則
【住所又は居所】愛知県名古屋市港区大江町9番地の1 東レ株式会社 名古屋事業場内
(72)【発明者】
【氏名】富岡 伸之
【住所又は居所】愛知県名古屋市港区大江町9番地の1 東レ株式会社 名古屋事業場内
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB09
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4F072AJ04
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL16
4J002BG051
4J002CC022
4J002CD051
4J002CD081
4J002CK051
4J002DA016
4J002EF127
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4J002FA046
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD158
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、常温での取り扱いに優れ、硬化時の組成ムラの少ないプリフォーム、およびそれに用いる強化繊維への含浸性に優れた熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる繊維強化複合材料を提供することを課題とする。熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームであり、該熱硬化性樹脂組成物は、1.5℃/分の速度で昇温したときの牽引周期0.5Hzでの動的粘弾性測定における複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下するときの温度変化ΔTが、45℃以下である、繊維強化複合材料用プリフォームである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームであり、熱硬化性樹脂組成物が、1.5℃/分の速度で昇温したときの牽引周期0.5Hzでの動的粘弾性測定における複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下するときの温度変化ΔTが、45℃以下である、繊維強化複合材料用プリフォーム。
【請求項2】
熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームであり、熱硬化性樹脂組成物が単一の融点を有し、融解熱が30J/g以上である、繊維強化複合材料用プリフォーム。
【請求項3】
熱硬化性樹脂組成物が、主剤と硬化剤、または、主剤と触媒、または、主剤と硬化剤と触媒、を含み、
該熱硬化性樹脂組成物100質量%において、結晶性成分の合計の含有量が70質量%以上である、請求項1または2に記載の繊維強化複合材料用プリフォーム。
【請求項4】
熱硬化性樹脂組成物が、主剤と硬化剤、または、主剤と触媒、または、主剤と硬化剤と触媒、を含み、
該熱硬化性樹脂組成物100質量%において、含有量が10質量%以上の結晶性成分が複数存在し、該結晶性成分の中で、単一成分での融点が最も高い結晶性成分と、単一成分での融点が最も低い結晶性成分との単一成分での融点の差が60℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化複合材料用プリフォーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化複合材料用プリフォームの形成に用いる熱硬化性樹脂組成物であって、ドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームの形成に用いる熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物がドライ強化繊維基材に含浸されてなる繊維強化複合材料において、該熱硬化性樹脂組成物が硬化物として存在する、繊維強化複合材料。
【請求項7】
請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物を溶融し、ドライ強化繊維基材に含浸させながら成形する成形工程、及び、該ドライ強化繊維基材に含浸され、成形された該熱硬化性樹脂組成物を硬化させる硬化工程を有する、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料に用いられる熱硬化性樹脂組成物、プリフォームおよびそれを用いてなる繊維強化複合材料、繊維強化複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料は、強化繊維とマトリックス樹脂の利点を生かした材料設計ができるため、航空宇宙分野を始め、スポーツ分野および一般産業分野などに用途が拡大されている。
【0003】
強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維およびボロン繊維などが用いられる。また、マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれも用いられるが、強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂が用いられることが多い。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂およびシアネート樹脂などが用いられる。
【0004】
一般的に繊維強化複合材料の製造には、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法およびRTM(Resin Transfer Molding:樹脂注入成形)法、フィルムバッグ成形法、プレス成形法などの方法が適用される。特に、生産性が求められる場合には、生産性に優れるRTM成形法やフィルムバッグ成形法、プレス成形法が好ましく用いられる。
【0005】
とりわけ炭素繊維強化複合材料をはじめとした繊維強化複合材料は、近年、特に航空機用途および自動車用途向けに需要が拡大している。これら用途において、より汎用的に繊維強化複合材料を適用するために、低コスト、低環境負荷である材料が求められている。
【0006】
上記のような、従来の繊維強化複合材料の製造方法に使用しているマトリックス樹脂は、強化繊維基材への含浸性を十分とするため、常温において液状や半固形状の樹脂を使用している。常温で液状や半固形状の樹脂を使用する際には、樹脂調合設備や樹脂注入設備内に樹脂が残存しやすいため、ロスが多く発生し、液状や半固形状は取扱い難い形態である。また、例えばプリプレグ法を適用する場合、まずマトリックス樹脂のフィルムを作製し、続いて作製したフィルムを強化繊維に含浸させる工程となるが、樹脂フィルム作製時には離型性のあるフィルム等の副資材が必要となることが多く、コストが嵩みやすい。また、常温で液状や半固形状の樹脂組成物とするためには、常温で固形状の成分を多量に配合することは難しい。
【0007】
一方、電気・電子部品の分野においては、常温で取扱い性の良い固形状のエポキシ樹脂組成物を使用し、圧縮成形によって半導体を封止する方法が良く知られている。圧縮成形による半導体封止方法は、加熱プレス成形機の上型下面に半導体基板を取り付け、下型の上面内に固形状のエポキシ樹脂組成物を投入し、固形状の樹脂組成物を溶融させながら、型締めによって半導体基板表面を封止する方法である。
【0008】
特許文献1には、結晶性エポキシ樹脂とフェノールノボラック硬化剤と硬化促進剤と無機フィラーからなる、常温で固形状の圧縮成形用半導体封止エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献2には、繊維強化複合材料用途向けの結晶性エポキシ樹脂と結晶性硬化剤と硬化促進剤からなる樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、常温で固形状の樹脂組成物となる。特許文献3には、30℃で固体の結晶性エポキシ樹脂と固体の硬化剤を粉砕し、圧着後、再度粉砕して得られる、硬化後に組成ムラの発生しにくい粉末状エポキシ樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、液状エポキシ樹脂と結晶性熱硬化性樹脂と硬化剤からなる、常温でのタックが小さい樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−263493号公報
【特許文献2】特許第5315057号公報
【特許文献3】特公平3−29098号公報
【特許文献4】特開2005−298713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の材料は固形状の樹脂が加圧、加熱された時に溶融しにくく、強化繊維への含浸性が劣る材料であった。
【0012】
特許文献2に記載の材料は、硬化物とした時に結晶性を有することを狙いとしており、樹脂組成物中に含まれる結晶性成分で融けやすさが異なるため、先に融けた成分の繊維への含浸が進む結果、この材料を用いて繊維強化複合材料とした時に、樹脂の硬化物に組成ムラが発生しやすい材料であった。
【0013】
特許文献3に記載の材料は、樹脂硬化物の組成ムラが発生しにくいものと思われるが、文献中にプリプレグに用いることの記載はあるものの、プレス成形等を意識した記載はない。
【0014】
特許文献4に記載の材料は常温での取り扱い性が劣る材料であった。
【0015】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の欠点を改良し、常温での取り扱いに優れる、硬化時の組成ムラの少ないプリフォーム、およびそれに用いる強化繊維への含浸性に優れた熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明における第一の発明は以下である。
【0017】
(1)熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームであり、該熱硬化性樹脂組成物が、1.5℃/分の速度で昇温したときの牽引周期0.5Hzでの動的粘弾性測定における複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下するときの温度変化ΔTが、45℃以下である、繊維強化複合材料用プリフォーム。
【0018】
また、上記課題を解決するための本発明における第二の発明は以下である。
【0019】
(2)熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームであり、該熱硬化性樹脂組成物が単一の融点を有し、融解熱が30J/g以上である、繊維強化複合材料用プリフォーム。
【0020】
また、上記課題を解決するための本発明は以下である。
【0021】
(3)前記(1)または(2)に記載の繊維強化複合材料用プリフォームに用いる熱硬化性樹脂組成物であって、ドライ強化繊維基材を含む繊維強化複合材料用プリフォームの形成に用いる熱硬化性樹脂組成物。
【0022】
(4)前記(3)に記載の熱硬化性樹脂組成物が強化繊維基材に含浸されてなる繊維強化複合材料において、該熱硬化性樹脂組成物が硬化物として存在する、繊維強化複合材料。
【0023】
(5)前記(3)に記載の熱硬化性樹脂組成物を溶融し、ドライ強化繊維基材に含浸させながら成形する成形工程、及び、該ドライ強化繊維基材に含浸され、成形された該熱硬化性樹脂組成物を硬化させる硬化工程を有する、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、常温での取り扱い性に優れ、調製時の樹脂ロスが少なくなるとともに、強化繊維への含浸性および組成均一性に優れる繊維強化複合材料用熱硬化性樹脂組成物、プリフォームおよびそれを用いてなる繊維強化複合材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。
【0026】
本発明の繊維強化複合材料用プリフォームは熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材を含むプリフォームであり、熱硬化性樹脂組成物がドライ強化繊維基材の表面に、直接もしくは間接的に接触した形態である。例えば、ドライ強化繊維基材の上に熱硬化性樹脂組成物が存在する形態であってもよいし、熱硬化性樹脂組成物の上にドライ強化繊維基材が存在する形態であってもよいし、それを積層した形態であってもよい。また、熱硬化性樹脂と強化繊維が、フィルムや不織布などを介して間接的に接触した形態であっても良い。
【0027】
本発明における第一の発明に関する熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物を1.5℃/分の速度で昇温したときの牽引周期0.5Hzでの動的粘弾性測定における複素粘度ηが、1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下するときの温度変化ΔTが、45℃以下である。上記熱硬化性樹脂組成物の昇温時にとりうる温度は、通常は0〜300℃の範囲内である。
【0028】
上記温度変化ΔTが45℃以下であることにより、金型にセットする際の樹脂の取り扱い性に優れながら、当該組成物を適した条件で加圧、加熱した際に、当該組成物が一様に短時間で溶融するため、強化繊維への含浸性に優れるとともに、硬化物にムラがなく均一な繊維強化複合材料が得られる。
【0029】
ここで、第一の発明における熱硬化性樹脂組成物の複素粘度ηが1×10Pa・s以上の場合、当該組成物は取扱い性が良く、当該組成物が容易には流動しにくいことを示す。一方、当該組成物の複素粘度ηが1×10Pa・s以下となると、流動性に優れ、強化繊維への十分な含浸性が得られやすい状態であることを示す。
【0030】
第一の発明における熱硬化性樹脂組成物は、上記の条件において複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下するときの温度変化ΔTが45℃以下であり、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましい。ΔTが45℃を超える場合、樹脂組成物を加熱、加圧した時の溶融に時間がかかったり、得られる硬化物に組成ムラが発生したりする場合がある。なお、ΔTは小さい値であるほど好ましいが、現実的には1℃以上の値となる。
【0031】
なお、熱硬化性樹脂組成物の複素粘度ηは、動的粘弾性測定装置を用いて測定できる。樹脂サンプルをパラレルプレートにセットし、通常は0〜300℃の温度範囲内で、1.5℃/分の速度で昇温して複素粘度ηを測定する。例えば、常温または0℃付近の温度から始めて、1.5℃/分の速度で昇温して、複素粘度ηが1×10Pa・sになる時の温度及び1×10Pa・sになる時の温度を確認することで、前述の温度変化ΔTを求めることができる。なお、300℃まで昇温すると、多くの熱硬化性樹脂組成物は熱分解することから、300℃を超えて昇温させて測定することは通常ない。
【0032】
第一の発明における熱硬化性樹脂組成物は、25℃における複素粘度ηが1×10Pa・s以上であることが好ましく、3×10Pa・s以上であることがより好ましい。25℃における複素粘度ηが1×10Pa・s以上であることにより、常温では当該組成物が容易には流動せず、取り扱い性が良くなりやすい。
【0033】
係る熱硬化性樹脂組成物は、主剤と硬化剤、または、主剤と触媒、または、主剤と硬化剤と触媒、を含むことが好ましく、これらの主剤、硬化剤、触媒が結晶性成分を含むことが好ましい。主剤、硬化剤、触媒が結晶性成分を含むことにより、結晶性成分の融点以下では熱硬化性樹脂組成物が固形であり、複素粘度ηが1×10Pa・s以上であるのに対し、結晶性成分の融点を超える温度に加熱した時には当該組成物の粘度が急激に低下するため、複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下する時の温度変化ΔTを45℃以下、と制御しやすくなる。
【0034】
ここで結晶性成分とは、単一成分の状態で融点を有する成分のことであり、融点は、後述するように、JIS K 7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。
【0035】
第二の発明における熱硬化性樹脂組成物は、単一の融点を有し、融解熱が30J/g以上である。
【0036】
単一の融点を有することにより、該熱硬化性樹脂組成物を溶融させる際に各成分が均一に融解するため、強化繊維への含浸性に優れ、組成ムラのない成形体が得られる。単一の融点とならない場合、該熱硬化性樹脂組成物を加熱して溶融させる際に、溶融し始める時間に差が生じ、均一な成形体を得ることができない。
【0037】
また、融解熱が30J/g未満である場合、融解前の熱硬化性樹脂組成物が完全な固形とならず取り扱いに劣る。
【0038】
ここで、単一の融点を有するとは、後述するDSCによって測定される融解による吸熱ピークを実質的に1つしか有さないことを示す。ブロードに連続的に吸熱が続く場合であっても、ベースラインに対して明確なピークトップを1つしか有さない場合は、単一の融点と見なす。また、融解熱はDSCにより求める融点の融解による吸熱ピークのピーク面積値から算出することができる。
【0039】
第二の発明における熱硬化性樹脂組成物は、融解熱が40J/g以上であることが好ましく、50J/g以上であることが更に好ましい。融解熱が40J/g以上であることにより、融解前の熱硬化性樹脂組成物が固形となり、取り扱いに優れるとともに、加熱により結晶を融解させた際に瞬時に低粘度液体となるため、強化繊維への含浸性にも優れやすくなる。
【0040】
係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物100質量%において、全ての結晶性成分の含有量が70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、全ての結晶性成分の含有量とは、複数の異なる結晶性成分を含む場合には、それらの合計の含有量を意味する。結晶性成分の合計の含有量が70質量%以上となることで、熱硬化性樹脂組成物の常温での取り扱い性と、高温に加熱した時の強化繊維への含浸性を両立しやすくなる。
【0041】
また、係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物100質量%において、含有量が10質量%以上である結晶性成分が複数存在し、該結晶性成分の中で、単一成分融点が最も高い結晶性成分と、単一成分融点が最も低い結晶性成分との、単一成分での融点の差が60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。結晶性成分の融点の差を60℃以下とすることにより、該当組成物を加熱、加圧した時に、各成分が同時に溶融し始めやすく、得られる硬化物が均一な組成となりやすい。
【0042】
係る熱硬化性樹脂組成物には、本発明の要件を満たす範囲で、一般的に用いられる各種の熱硬化性樹脂を適用することができる。そのため、熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂などが好適に適用できる。
【0043】
本発明で用いられる主剤とは、加熱により硬化反応が進行し架橋構造を形成するモノマー成分が好ましい。主剤としては、例えば、エポキシ基を有する化合物、フェノール基を有する化合物、ビニル基を有する化合物、ビスマレイミド構造を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、オキサジン化合物、水酸基を有する化合物、アミノ基を有する化合物などの熱硬化性モノマーが好ましく使用できる。
【0044】
前述の熱硬化性樹脂の中でも、強化繊維との接着性、取り扱い性の観点から熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。そして熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、主剤としては、一分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。かかるエポキシ樹脂はエポキシ基を有する化合物1種類のみからなるものでも良く、複数種の混合物であっても良い。
【0045】
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合の主剤の具体例、つまり一分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、水酸基を複数有するフェノール化合物から得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコール化合物から得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミン化合物から得られるグリシジルアミン、カルボキシル基を複数有するカルボン酸化合物から得られるグリシジルエステルなどのエポキシ基をグリシジル基の一部として有するエポキシ樹脂や、シクロヘキセンなどの不飽和脂環化合物を酸化することにより得られるオキシラン環を構造中に含むエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる硬化剤は、主剤と共有結合することにより熱硬化性樹脂を硬化させる成分が好ましい。
【0047】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合を例に挙げると、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物を硬化剤として例示できる。硬化剤としては、アミン系、フェノール系、酸無水物系、メルカプタン系の硬化剤に大別される。アミン系の硬化剤は、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、脂肪族アミン、アミノ安息香酸エステル類、チオ尿素付加アミン、ヒドラジドなどを例示できる。フェノール系の硬化剤は、ビスフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物などを例示できる。酸無水物系の硬化剤は、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、カルボン酸無水物などを例示できる。メルカプタン系の硬化剤は、ポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂などを例示できる。
【0048】
本発明で用いられる触媒は、主剤の単独硬化反応、及び、主剤と硬化剤との結合形成による硬化反応を速やかに円滑にする成分が好ましい。
【0049】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合を例に挙げると、触媒としては、イミダゾール類、3級アミン、有機リン化合物、ウレア化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられる。
【0050】
また、係る熱硬化性樹脂組成物の形態は、特に限定されるものではなく、塊状、棒状、板状、フィルム、繊維、粉体など種々の形態のものを使用することができる。特に、含浸性の観点から、少なくとも1辺が1mm以上のサイズを有する塊状の形態が好適に用いられる。
【0051】
本発明におけるドライ強化繊維には、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維およびボロン繊維等、種々の有機および無機繊維が好ましく用いられる。中でも、軽量でありながら、強度や、弾性率等の力学物性が優れる繊維強化複合材料が得られるという理由から、炭素繊維が好適に用いられる。
【0052】
なお、本発明において、ドライ強化繊維とは、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸していない状態の強化繊維を指す。したがって、本発明の繊維強化複合材料用プリフォームは、マトリックス樹脂が強化繊維に含浸されたプリプレグとは異なるものである。ただし、本発明におけるドライ強化繊維は、少量のバインダーが含浸していてもかまわない。なお、バインダーとは、積層した強化繊維基材の層間をバインドする成分であり、硬化剤や触媒を含まない、熱硬化性ではない樹脂からなる成分が好ましい。また、後述する本発明の繊維強化複合材料においては、樹脂組成物が含浸されている状態であるから、ドライ強化繊維とは言わない。
【0053】
本発明における強化繊維は、短繊維および連続繊維いずれであってもよく、両者を併用することもできる。高い繊維体積含有率(高Vf)の繊維強化複合材料を得るためには、連続繊維が好ましく用いられる。
【0054】
本発明におけるドライ強化繊維はストランドの形態で用いられることもあるが、強化繊維をマット、織物、ニット、ブレイド、および一方向シート等の形態に加工したドライ強化繊維基材が好適に用いられる。中でも、高Vfの繊維強化複合材料が得やすく、かつ取扱い性に優れた織物が好適に用いられる。
【0055】
本発明の繊維強化複合材料とした時に高い比強度、あるいは比弾性率をもつためには、その強化繊維の繊維体積含有率Vfが、好ましくは30〜85%であり、より好ましくは35〜70%の範囲内である。ここで言う、繊維強化複合材料の繊維体積含有率Vfとは、ASTM D3171(1999)に準拠して、下記により定義され、測定される値である。つまり、ドライ強化繊維基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、当該組成物を硬化した後の状態で測定される値をいう。よって、繊維強化複合材料の繊維体積含有率Vfの測定は、繊維強化複合材料の厚みhから、下記の(式1)を用いて表すことができる。
【0056】
・繊維体積含有率Vf(%)=(Af×N)/(ρf×h×10) ・・・(式1)
・Af:ドライ強化繊維基材1枚・1m当たりの質量(g/m
・N:ドライ強化繊維基材の積層枚数(枚)
・ρf:ドライ強化繊維基材の密度(g/cm
・h:繊維強化複合材料(試験片)の厚み(mm)。
【0057】
ドライ強化繊維基材1枚・1m当たりの質量Afや、ドライ強化繊維基材の積層枚数Nおよびドライ強化繊維基材の密度ρfが明らかでない場合は、JIS K 7075(1991)に基づく燃焼法、硝酸分解法および硫酸分解法のいずれかにより、繊維強化複合材料の繊維体積含有率を測定する。この場合に用いられる強化繊維の密度は、JIS R 7603(1999)に基づき測定した値を用いる。
【0058】
具体的な繊維強化複合材料の厚みhの測定方法としては、JIS K 7072(1991)に記載されているように、JIS B 7502(1994)に規定のマイクロメーターまたはこれと同等以上の精度をもつもので測定することが好ましい。繊維強化複合材料が複雑な形状をしていて、厚みの測定ができない場合には、繊維強化複合材料からサンプル(測定用としてのある程度の形と大きさを有しているサンプル)を切り出して、測定するのが望ましい。
【0059】
本発明の繊維強化複合材料は、ドライ強化繊維基材、及び、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、熱硬化性樹脂組成物がドライ強化繊維基材に含浸されてなるものである。つまり本発明の熱硬化性樹脂組成物をドライ強化繊維基材に含浸させ、成形し、当該組成物を硬化させることで、本発明の繊維強化複合材料を得ることができる。
【0060】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させながら成形する成形工程、及び、硬化させて繊維強化複合材料とする硬化工程を有する。
【0061】
本発明の繊維強化複合材料の製造には、プレス成形法やフィルムバッグ成形法、オートクレーブ成形法など種々の方法を用いることができる。これらのうち、生産性や成形体の形状自由度という観点から、特にプレス成形法が好適に用いられる。
【0062】
フィルムバッグ成形法は、剛体オープンモールドと可撓性のフィルムの間に熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材から構成されるプリフォームを配置し、内部を真空吸引して、大気圧を付与しつつ加熱成形する、あるいは、気体や液体により加圧しつつ加熱成形することが好ましく例示される。
【0063】
プレス成形法の一例を用いて、本発明の繊維強化複合材料の製造方法について説明する。本発明の繊維強化複合材料は、特定温度に加熱した成形型内に、熱硬化性樹脂組成物とドライ強化繊維基材からなる繊維強化複合材料用プリフォームを配置した後、プレスで加圧・加熱することにより、樹脂組成物が溶融し、強化繊維基材に含浸した後、そのまま硬化することにより製造することができる。
【0064】
成形型の温度は、ドライ強化繊維基材への含浸性の点から、使用する樹脂組成物の複素粘度ηが1×10Pa・sまで低下する温度以上の温度とすることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0066】
<樹脂原料>
各実施例の熱硬化性樹脂組成物を得るために、次の樹脂原料を用いた。表1および表2中の樹脂組成物の含有割合の単位は、特に断らない限り「質量部」を意味する。
【0067】
1.主剤
・“jER”(登録商標)YX4000(三菱化学(株)製):結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂、融点=105℃
・“デナコール”(登録商標)EX−711(ナガセケムテックス(株)製):結晶性テレフタル酸型エポキシ樹脂、融点=106℃
・YSLV‐80DE(新日鉄住金化学(株)製):結晶性オキシジフェノール型エポキシ樹脂、融点=79℃
・“jER”(登録商標)YL6121H(三菱化学(株)製):結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂、融点=120℃
・YD−128(新日鉄住金化学(株)製):液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、融点なし
・“jER”(登録商標)1001(三菱化学(株)製):ガラス状固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、融点なし
・ビスフェノールAジメタクリレート(Sigma−Aldrich製):融点=73℃
・2,2’−ビフェノール(東京化成工業(株)製):融点=107℃
2.硬化剤
・“リカシッド”(登録商標)TH:1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、融点=101℃
・無水フタル酸(関東化学(株)製):融点=131℃
・無水トリメット酸(東京化成(株)製):融点=167℃
・4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル(東京化成工業(株)製):融点=72℃
・4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(東京化成工業(株)製):融点=168℃
・“PHENOLITE”(登録商標)TD2091(DIC(株)製):フェノールノボラック、融点なし
3.硬化触媒
・TPP(ケイ・アイ化成(株)製):トリフェニルホスフィン、融点=80℃
・t‐ブチルベンゾイルペルオキシド(Sigma−Aldrich製):液状、融点なし
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
表1、表2に記載した原料と配合比で主剤、硬化剤、硬化触媒を硬化反応が実質的に進まない温度/時間条件にて加熱攪拌により均一に溶融混合し、注型した後、常温で冷却することで所定の形状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0068】
<結晶性成分の融点測定>
使用した各樹脂原料の融点は、JIS K 7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により測定した。測定装置としてはPyris1 DSC(Perkin Elmer製)を使用した。結晶性成分をアルミサンプルパンに採取し、窒素雰囲気下において、10℃/minの昇温速度で測定を行う。得られたDSC曲線において、成分の融解による吸熱ピークの頂点の温度を融点として測定した。
【0069】
<熱硬化性樹脂組成物の粘度測定>
前記のように調製した熱硬化性樹脂組成物を試料として、動的粘弾性測定により測定した。測定装置にはARES−G2(TA Instruments社製)を使用した。試料を8mmのパラレルプレートにセットし、0.5Hzの牽引周期を加え、昇温速度1.5℃/分で、0〜300℃の温度範囲で測定し、複素粘度ηを測定した。得られた複素粘度ηが1×10Pa・sから1×10Pa・sまで低下する時の温度変化をΔTとして算出した。
【0070】
<熱硬化性樹脂組成物の融解熱測定>
前記のように調製した熱硬化性樹脂組成物を試料として、JIS K 7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により測定した。測定装置としてはPyris1 DSC(Perkin Elmer製)を使用した。結晶性成分をアルミサンプルパンに採取し、窒素雰囲気下において、10℃/minの昇温速度で測定を行う。得られたDSC曲線において、成分の融解による吸熱ピークのベースラインに対する面積値から融解熱(J/g)を測定した。
【0071】
<熱硬化性樹脂組成物の常温での取り扱い性>
前記のように調製した熱硬化性樹脂組成物の常温での取り扱い性を次の3段階で比較評価した。 熱硬化性樹脂組成物を手で持ち上げた際に、自重での破壊、変形、およびベタつきがないものを「A」、自重で一部欠けたり、僅かにベタつきがあるものを「B」、持ち上げた際の自重で簡単に割れたり変形してしまうものや、ベタつきがあるものを「C」とした。
【0072】
<繊維強化複合材料の作製>
下記のプレス成形法によって繊維強化複合材料を製造した。350mm×700mm×2mmの板状キャビティーを有し、所定の温度(成形温度)に保持した金型内にて、強化繊維として炭素繊維織物CO6343(炭素繊維:T300−3K、組織:平織、目付:198g/m、東レ(株)製)を9枚積層した基材の上に、前記のように調製した熱硬化性樹脂組成物を290g配置したプリフォームをセットした。その後、プレス装置で型締めを行った。この時、金型内を真空ポンプにより大気圧−0.1MPaに減圧した後、最大4MPaの圧力でプレスした。金型温度は、使用する熱硬化性樹脂組成物中に含まれる結晶性成分が有する内で最も高い融点の温度よりも10℃高い温度に設定した。プレス開始後30分で金型を開き、脱型して、繊維強化複合材料を得た。
【0073】
<ドライ強化繊維基材への樹脂含浸性>
前記の繊維強化複合材料を作製する際の樹脂の強化繊維への含浸性について、繊維強化複合材料中のボイド量を基準に次の3段階で比較評価した。
【0074】
繊維強化複合材料中のボイド量が1%未満と、ボイドが実質的に存在しないものを「A」、繊維強化複合材料の外観に樹脂未含浸部分は認められないが、繊維強化複合材料中のボイド量が1%以上であるが維強化複合材料の外観に樹脂未含浸部分が認められないものを「B」、繊維強化複合材料の外観に樹脂未含浸部分が認められるものを「C」とした。
【0075】
繊維強化複合材料中のボイド量は、平滑に研磨した繊維強化複合材料にて任意に選定した断面を平滑に研磨した面を落斜型光学顕微鏡で観察し、繊維強化複合材料中のボイドの面積率から算出した。
【0076】
<繊維強化複合材料の組成ムラ>
前記のようにして得られた繊維強化複合材料の組成ムラについて、次の3段階で比較評価した。 得られた繊維強化複合材料から均一に17箇所以上の試料を切り出してJIS K 7121:2012に従って、示差走査熱量測定(DSC)により繊維強化複合材料のTgを測定した結果、測定結果の最大値と最小値の差が15℃未満であるものを「A」、15℃以上を30℃未満であるものを「B」、30℃以上であるものを「C」とした。
【0077】
<繊維強化複合材料の曲げ強度>
前記のようにして得られた繊維強化複合材料の曲げ強度を、JIS K7074:1988に従って、幅15mm、長さ100mmとなるように切り出した試験片を、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、3点曲げ試験により測定した。クロスヘッド速度5mm/分、スパン80mm、厚子径5mm、支点径2mmで測定を行い、曲げ強度を測定した。曲げ強度は、5個の試料について測定し、繊維含有率を60質量%とした換算値を算出して、その平均を曲げ強度として求めた。
【0078】
(実施例1)
表1−1に示したように、結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)YX4000」100質量部、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」83質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から、ΔTは4℃と非常に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を93℃に有した。また、この熱硬化性樹脂組成物と強化繊維からなるプリフォームを用いて作製した繊維強化複合材料は、表面に未含浸部は無く、内部のボイドも少なく、含浸性に優れるものであった。繊維強化複合材料から均一に17箇所試料を切り出し、Tgを測定した結果、位置によるムラもほぼなく、均一な繊維強化複合材料が得られ、優れた曲げ強度特性を示した。
【0079】
(実施例2、3)
使用する主剤を、それぞれ結晶性テレフタル酸型エポキシ樹脂「“デナコール”(登録商標)EX−711」100質量部(実施例2)または結晶性オキシジフェノール型エポキシ樹脂「YSLV−80DE」100質量(実施例3)とし、使用する硬化剤である1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」の質量部数を、使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量と合せるために、それぞれ105質量部(実施例2)または88質量部(実施例3)としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。いずれの熱硬化性樹脂組成物とも、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。これらの熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られた、ΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、それぞれ単一の融点を89℃、80℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0080】
(実施例4)
使用する硬化剤を、無水フタル酸80質量部としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を96℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0081】
(実施例5)
使用する主剤を、結晶性オキシジフェノール型エポキシ樹脂「YSLV−80DE」100質量部とし、使用する硬化剤である無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」の質量部数を、使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量と合せるために85質量部としたこと以外は、実施例4と同様に実施した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を79℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、十分に均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0082】
(実施例6)
使用する主剤を、結晶性ビフェノール型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)YL6121H」100質量部とし、使用する硬化剤を無水トリメット酸110質量部としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は実施例1−4に比べるとやや高かった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を101℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0083】
(実施例7)
表1−1に示したように、結晶性テレフタル酸型エポキシ樹脂「“デナコール”(登録商標)EX−711」85質量部、ガラス状固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)1001」15質量部、および1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」94質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱は実施例1−6と比較するとやや小さいが十分に大きく、単一の融点を86℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0084】
(実施例8、9)
使用する主剤、結晶性テレフタル酸型エポキシ樹脂「“デナコール”(登録商標)EX−711」とガラス状固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)1001」の質量部数のそれぞれを、実施例8においては65質量部と35質量部、実施例9においては50質量部と50質量部とし、使用する硬化剤である1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」の質量部数を、使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量と合せるために、それぞれ79質量部(実施例8)または69質量部(実施例9)としたこと以外は、実施例7と同様に実施した。熱硬化性樹脂組成物の融解熱は実施例7よりもさらに小さいが十分に大きく、それぞれ単一の融点を85℃、82℃に有した。いずれの熱硬化性樹脂組成物とも、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。これらの熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。また、作製した繊維強化複合材料は、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0085】
(実施例10)
表1−2に示したように、結晶性テレフタル酸型エポキシ樹脂「“デナコール”(登録商標)EX−711」50質量部、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂「YD128」50質量部、および1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」93質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなかった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱は十分な値であり、単一の融点を80℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、均一な繊維強化複合材料であり、優れた曲げ強度特性を示した。
【0086】
(実施例11)
使用する熱硬化性樹脂をビニルエステル樹脂として、表1−2に示したように結晶性ビスフェノールAジメタクリレート100質量部、t‐ブチルベンゾイルペルオキシド1.5質量部、としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は非常に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を73℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、十分に均一な繊維強化複合材料であり、十分な曲げ強度を示した。
【0087】
(実施例12)
使用する熱硬化性樹脂をポリウレタン樹脂として、表1−2に示したように結晶性である2,2‘−ビフェノール100質量部、結晶性である4,4‘−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル142質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部としたこと以外は、実施例1と同様に実施した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物の粘度測定から得られたΔTの値は十分に小さい値であった。熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きく、単一の融点を79℃に有した。また、作製した繊維強化複合材料は、含浸性に優れており、十分に均一な繊維強化複合材料であったが、曲げ強度は不十分な値であった。
【0088】
(比較例1)
表2に示したように、結晶性オキシジフェノール型エポキシ樹脂「YSLV−80DE」100質量部、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル58質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物は粘度測定から、ΔTが大きかった。また、熱硬化性樹脂組成物の融解熱も十分に大きいが、単一の融点ではなく、融解ピークが2つに分離しており、この熱硬化性樹脂組成物と強化繊維からなるプリフォームを用いて作製した繊維強化複合材料は、内部に一定のボイドが見られ、繊維強化複合材料から均一に17箇所試料を切り出し、Tgを測定した結果、位置によるムラが大きかった。また、曲げ強度は十分な値であった。
【0089】
(比較例2)
表2に示したように、結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)YX4000」100質量部、フェノールノボラック「TD2091」77質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際にも崩壊、変形することはなく、常温での取り扱い性に優れるものであった。この熱硬化性樹脂組成物は粘度測定から、ΔTが大きく、融解熱も小さく、作製した繊維強化複合材料は、表面に未含浸部が見られた。
【0090】
(比較例3)
表2に示したように、結晶性ビフェニル型エポキシ樹脂「“jER”(登録商標)YX4000」20質量部、液状ビスフェノール型エポキシ「YD128」80質量部、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸「“リカシッド”(登録商標)TH」86質量部、トリフェニルホスフィン「TPP」5質量部からなる熱硬化性樹脂組成物を溶融混合した後、常温まで急冷して調製した。この熱硬化性樹脂組成物は、手で持ち上げた際に手に樹脂が付着し、顕著な変形が見られた。なお、この熱硬化性樹脂組成物は粘度測定から、0〜300℃の温度範囲で測定した粘度で1×10よりも高い粘度となることはなかった。
【0091】
【表1-1】
【0092】
【表1-2】
【0093】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、常温での取り扱い性に優れ、樹脂調製時に副資材が不要であり、樹脂ロスが少なくなるとともに、強化繊維への含浸性に優れ、硬化物の樹脂組成が均一となるため、プレス成形法などによって、より簡便に高品位の繊維強化複合材料を高い生産性で提供可能となる。これにより、特に自動車や航空機用途への繊維強化複合材料の適用が進み、これらの更なる軽量化による燃費向上、地球温暖化ガス排出削減への貢献が期待できる。
【国際調査報告】