(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2019021801
(43)【国際公開日】20190131
【発行日】20200716
(54)【発明の名称】皮膚外用剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20200619BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200619BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200619BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200619BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200619BHJP
【FI】
   !A61K8/31
   !A61K8/06
   !A61Q19/00
   !A61K8/73
   !A61K8/86
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
【出願番号】2019532486
(21)【国際出願番号】JP2018025929
(22)【国際出願日】20180709
(31)【優先権主張番号】2017146650
(32)【優先日】20170728
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】2018055128
(32)【優先日】20180322
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区六角橋三丁目27番1号
(71)【出願人】
【識別番号】517266414
【氏名又は名称】松田 就人
【住所又は居所】東京都港区赤坂3丁目15番9号 ACRビル2階
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松田 就人
【住所又は居所】東京都港区赤坂3丁目15番9号 ACRビル2階
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区六角橋3丁目27番1号 学校法人神奈川大学内
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区六角橋3丁目27番1号 学校法人神奈川大学内
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区六角橋3丁目27番1号 学校法人神奈川大学内
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC432
4C083AD282
4C083BB01
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
本発明は、ワセリンを含みながらも使用感に優れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
本発明に係る皮膚外用剤は、ワセリンからなるか又はワセリンを含み25℃において粘度が5000mPa以上である液体若しくは半固体である油相と、水相と、水酸基を有する重縮合ポリマー粒子及び/又は閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体と、を含み、重縮合ポリマー粒子及び/又は閉鎖小胞体が油相及び水相の界面に介在するO/W型エマルション構造を有する。油相の含有量は、皮膚外用剤の総量に対して70質量%以下であることが好ましい。ワセリンの含有量は、前記皮膚外用剤の総量に対して2質量%以上70質量%以下であることが好ましい。25℃における粘度は、400000mPa・s以下であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワセリンからなるか又はワセリンを含み25℃において粘度が5000mPa・s以上である液体若しくは半固体である油相と、水相と、水酸基を有する重縮合ポリマー粒子及び/又は閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体と、を含み、前記重縮合ポリマー粒子及び/又は前記閉鎖小胞体が前記油相及び前記水相の界面に介在するO/W型エマルション構造を有する皮膚外用剤。
【請求項2】
前記油相の含有量は、前記皮膚外用剤の総量に対して70質量%以下である請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記ワセリンの含有量は、前記皮膚外用剤の総量に対して2質量%以上70質量%以下である請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
25℃における粘度は、400000mPa・s以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワセリンは、安全性及び皮膚保護作用・保湿作用に優れることから、皮膚外用剤の基剤として広く用いられている。しかしながら、ワセリンはべたつく性質を有しているため、ワセリンを配合した製剤は使用感が悪いものとなる。
【0003】
ワセリンに起因するべたつき感を改善するため、例えば特許文献1には、ワセリンを高濃度で含み、融点及び糸引き値を特定の値に調整してなる外用剤が報告されている。このように融点及び糸引き値を調整することにより、ワセリンに起因する外用剤のべたつきを抑制することができる。しかしながら、このような外用剤において、ワセリンは乳化されておらず、単に液状油剤によって希釈されているに過ぎない。塗布により、ワセリンを含む油性物質が皮膚に直接接触するため、べたつき感を抑制することができず、その使用感は必ずしも十分なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−222585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、ワセリンを含みながらも使用感に優れた皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以上の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、特定の重縮合ポリマー粒子又は閉鎖小胞体を用いてワセリンを乳化することで、ワセリンを含み使用感に優れた皮膚外用剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
(1)ワセリンからなるか又はワセリンを含み25℃において粘度が5000mPa・s以上である液体又は半固体である油相と、水相と、水酸基を有する重縮合ポリマー粒子及び/又は閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体と、を含み、前記重縮合ポリマー粒子及び/又は前記閉鎖小胞体が前記油相及び前記水相の界面に介在するO/W型エマルション構造を有する皮膚外用剤。
【0008】
(2)前記ワセリンの含有量は、前記皮膚外用剤の総量に対して70質量%以下である(1)に記載の皮膚外用剤。
【0009】
(3)前記ワセリンの含有量は、前記皮膚外用剤の総量に対して2質量%以上70質量%以下である(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
【0010】
(4)25℃における粘度は、400000mPa・s以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワセリンを含みながらも使用感に優れた皮膚外用剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1〜3において得られた試料を24時間静置した後の写真図である。
【図2】(a)実施例4において高圧乳化処理前の試料の光学顕微鏡写真図、(b)1パスの高圧乳化処理後の試料を24時間静置した後の光学顕微鏡写真図、(c)2パスの高圧乳化処理後の試料を24時間静置した後の光学顕微鏡写真図、(d)3パスの高圧乳化処理後の試料を24時間静置した後の光学顕微鏡写真図である。
【図3】実施例2において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。
【図4】実施例3において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。
【図5】実施例11〜15において得られた試料を24時間静置した後の写真図である。
【図6】実施例16〜23において得られた試料を48時間静置した後の写真図である。
【図7】(a)(b)実施例7において得られた試料を80℃の水に滴下した直後の写真図、(c)実施例7において得られた試料を80℃の水に滴下して5分後の写真図である。
【図8】(a)(b)比較例1において得られた試料を80℃の水に滴下した直後の写真図、(c)比較例1において得られた試料を80℃の水に滴下して5分後の写真図である。
【図9】実施例7において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。
【図10】比較例1において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
本発明に係る皮膚外用剤は、ワセリンからなるか又はワセリンを含み25℃における粘度が5000mPa・s以上である液体若しくは半固体である油相と、水相と、水酸基を有する重縮合ポリマー粒子及び/又は閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体と、を含む。そして、この皮膚外用剤は、重縮合ポリマー粒子及び/又は前記閉鎖小胞体は、油相及び水相の界面に介在するO/W型エマルションからなる。
【0015】
<重縮合ポリマー粒子、閉鎖小胞体>
重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体は、水相及びワセリンを含む油相の界面に介在し、ファンデルワールス力を介して乳化状態を構成することから、水相及び油相の組成や条件にかかわらず、良好な乳化状態を構成することができる。本発明者らによって、このような乳化方法では、常温にて高粘性のワセリンを極めて安定的に乳化させることができ、また、ワセリンを含む油相を重縮合ポリマー粒子又は閉鎖小胞体が物理的に被覆した乳化構造を有することで、皮膚外用剤の粘性を低く抑えられることが分かった。そして、このような皮膚外用剤は、塗布等により外力が印加されて油相に含まれるワセリンが皮膚上に延伸される時油相と皮膚の間に水相が存在するため皮膚上でのべたつき感が抑制できる。また、皮膚外用剤は、その伸びが良く、広く且つ均一に塗布することができる。驚くべきことに、本発明の皮膚外用剤は肌上に薄く塗布した場合でも、十分に被膜感(保水性)が高い。特に、皮膚に対する保水性は、通常の市販のワセリン製剤に比べて著しく高い。これは、皮膚に塗布されて力が加わることによりエマルション粒子は破壊されるが、エマルションの場合、皮膚とワセリンの間に水分が存在しながら、重縮合ポリマー粒子又は閉鎖小胞体が両者の接着性を高めているため、皮膚に水分を与えながらその蒸散を防止するためであると考えられる。
【0016】
本発明の安定化されたワセリンを含む油剤の乳化状態は、重縮合ポリマー粒子又は閉鎖小胞体を用いて乳化することによって達成されるものである。なお、ワセリンのような粘度の高い油剤は従来の界面活性剤等で乳化することができない。
【0017】
また、このようにして安定化されたワセリンを含む油剤の乳化構造は、皮膚外用剤を水で希釈することによって破壊されることがない。したがって、本発明の皮膚外用剤は水で容易に希釈することができ、濃度や粘度を適宜調整することができる。一方で、特許文献1のような方法により得られるワセリン含有皮膚外用剤を用いた場合には、水で希釈することができない。
【0018】
水酸基を有する重縮合ポリマーは、天然高分子又は合成高分子のいずれであってもよく、乳化剤の用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、又はその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0019】
糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、シロキクラゲ多糖体等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。
【0020】
閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質としては、特に限定されないが、下記の一般式1で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体が挙げられる。
【0021】
一般式1
【化1】
【0022】
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。
【0023】
両親媒性物質としては、リン脂質やリン脂質誘導体等、特に疎水基と親水基とがエステル結合したものを採用してもよい。
【0024】
リン脂質としては、下記の一般式2で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
【0025】
一般式2
【化2】
【0026】
また、下記の一般式3で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩を採用してもよい。
【0027】
一般式3
【化3】
【0028】
更に、リン脂質として卵黄レシチン又は大豆レシチン等のレシチンを採用してもよい。
【0029】
重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体の総量としては、特に限定されないが、O/W型エマルションの総量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。一方で、重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体の総量としては、O/W型エマルションの総量に対し、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であってよい。
【0030】
重合性ポリマー粒子及び閉鎖小胞体の平均粒子径は、エマルション形成前では8nm〜800nm程度であるが、O/W型エマルション構造においては8nm〜500nm程度である。なお、重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体は、一方のみが含まれても、双方が含まれてもよい。双方が含まれる場合には、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してよい。なお、本発明において「平均粒子径」とは、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求めた値である。
【0031】
<ワセリン>
ワセリンは、O/W型エマルション構造の油相を主として構成するものである。
【0032】
本発明の皮膚外用剤において使用するワセリンとしては、例えば、サンホワイトP−150、サンホワイトP−200、サンホワイトS−200(以上、日興リカ社製)、ノムコートW(日清オイリオ社製)、CROLATUM V(クローダジャパン社製)、ペレンスノー、ウルティマホワイト、ワセリンベースNo.4(以上、ペンレコ社製)、PROTOPET Super White、SONNECONE DM1、SONNECONE CM、MINERAL GELLY#10、MINERAL GELLY#14、MINERAL GELLY#17、SONOJELL#4、SONOJELL#9(以上Sonneborn社製)等の市販のワセリンを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0033】
ワセリンの総量は、皮膚外用剤に対し1質量%〜80質量%の量であってよい。また、ワセリンの保湿性を十分に得る点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが特に好ましい。ワセリンの総量が所要量以上であることにより、塗布後の被膜感を十分得ることができる一方、本発明の一実施形態に係る皮膚外用剤は、このレベルの量のワセリンを含むにもかかわらず、低粘性を呈し、使用感に優れる。ワセリンの総量は、べたつきを抑制する点で、皮膚外用剤に対し70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%未満であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。ワセリンの総量が少ないほど、皮膚外用剤の粘度を低くすることができ、その結果伸びの良い皮膚外用剤が得られる。結果的に、ワセリンの含有量を少なくし、薄く塗布した方が、十分に被膜感(保水性)を得ることができる点で優れる。
【0034】
ワセリンを含む油相の総量は、皮膚外用剤に対し1質量%〜80質量%の量であってよい。また、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上であってよい。一方で、ワセリンの総量は、皮膚外用剤に対し70質量%以下、60質量%以下、50質量%未満、40質量%以下であってよい。
【0035】
なお、油相は、ワセリン以外に後述する任意成分を含んでいてもよい。
【0036】
<水相>
水相は、O/W型エマルション構造において、油相としてのワセリンを分散する媒体である。
【0037】
水相の含有量は、特に限定されないが、皮膚外用剤に対し20質量%〜99.99質量%の量であってよく、25質量%〜98.5質量%であることが好ましく、30質量%〜98質量%の量であることがより好ましい。
【0038】
なお、水相は、水以外に後述する任意成分を含んでいてもよい。
【0039】
<任意成分>
本発明の皮膚外用剤には、本発明の効果を増強又は補強、他の効果を付与する目的で、上記必須成分以外の任意成分を含むことができる。このような任意成分としては、多価アルコール及び/又はグリコールエーテル類、界面活性剤、液状油、細胞賦活化成分、抗菌成分、抗炎症成分、消炎鎮痛成分、鎮痒成分、ビタミン類、局所麻酔成分、保湿成分、美白成分、抗酸化成分、老化防止成分、角質柔軟成分、血行促進成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、収斂成分、育毛成分、抗ヒスタミン成分、防腐成分、その他の添加剤等が挙げられる。
【0040】
なお、これらの任意成分は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その配合量は当業者に公知の範囲から適宜選択することができる。また、以下の複数の成分に該当するものは、本発明において、その該当する各種の成分としての作用を奏する。
【0041】
上記のような任意成分は、その親水性・親油性の程度により、水相又は油相に分配される。ワセリン以外の油相に含まれる成分の含有量は、特に限定されないが、皮膚外用剤に対し50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。また、水以外の水相に含まれる成分の含有量は、特に限定されないが、皮膚外用剤に対し50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の皮膚外用剤の粘度は、400000mPa・s以下であることが好ましく、200000mPa・s以下であることがより好ましく、5000mPa・s以下であることがさらに好ましく、3000mPa・s以下であることが好ましい。一方、粘度は、例えば、10mPa・s以上、20mPa・s以上、50mPa・s以上であってよく、100mPa・s以上、200mPa・s以上であってもよい。ここで、本発明において、「粘度」とは、芝浦システム株式会社製、B型粘度計 VSA1型を用いて、25℃、1minの条件で測定した値をいう。上述したように、本発明では、ワセリンを含むにもかかわらず、低粘性の皮膚外用剤を提供することができる。なお、通常市販されているワセリンは、25℃ではB型粘度計での測定ができないほど固い。
【0043】
本発明の皮膚外用剤は、撹拌等で容易に乳化状態を形成できるものであり、乳化状態においてO/W型エマルション構造を有し安定に乳化状態を維持することができる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤は、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ゲル状等の種々の形態をとってよい。
【0045】
以上のようにして、増粘剤や乳化補助剤を用いなくても安定に乳化されたワセリンを含むO/Wエマルション型皮膚外用剤を得ることができる。そしてまた、このような本発明の皮膚外用剤は、O/Wエマルション型構造を有しており、従来の課題であったワセリン特有のべたつき感が著しく抑制されており、肌への違和感・不快感なく塗布することができる。
【0046】
<製造方法>
本発明に係る皮膚外用剤は、閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの単粒子の分散した水に、融点以上に加熱して溶融させたワセリンからなるか又はワセリンを含む油を滴下して撹拌混合することにより製造することができる。
【0047】
閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの単粒子の分散した水の製造方法は、例えば特許3855203号において従来公知であるため省略する。なお、各成分の配合量や任意成分については上述したとおりである。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<分散安定性試験>
[実施例1]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液25gにイオン交換水を20g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン5gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、450mPa・sであった。
【0050】
[実施例2]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液25gにイオン交換水を10g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン15gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン30質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、800mPa・sであった。
【0051】
[実施例3]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液25gを90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン25gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン50質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、2450mPa・sであった。
【0052】
[実施例4]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液60gにイオン交換水を48g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン12gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、各成分の比率は、実施例1と同様である。その後、株式会社スギノマシン社製スターバーストミニを用いて、温度25℃、圧力150MPaの条件下で、1〜3パス高圧乳化を行った。
【0053】
[実施例5]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液10gにイオン交換水を35g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン5gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.10質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0054】
[実施例6]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液10gにイオン交換水を25g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン15gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン30質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.10質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0055】
[実施例7]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液10gにイオン交換水を15g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン25gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン50質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.10質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0056】
[実施例8]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液5gにイオン交換水を40g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン5gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.05質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0057】
[実施例9]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液5gにイオン交換水を30g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン15gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン30質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.05質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0058】
[実施例10]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液5gにイオン交換水を20g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン25gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン50質量%、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.05質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0059】
[実施例11]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−10)の6質量%分散液50gにイオン交換水を40g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン10gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油3質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、10.2mPa・sであった。
【0060】
[実施例12]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−10)の6質量%分散液50gにイオン交換水を30g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン20gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン20質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油3質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、31.2mPa・sであった。
【0061】
[実施例13]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−10)の6質量%分散液50gにイオン交換水を20g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン30gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン30質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油3質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、93.78mPa・sであった。
【0062】
[実施例14]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−10)の6質量%分散液50gにイオン交換水を10g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン40gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン40質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油3質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、104.65mPa・sであった。
【0063】
[実施例15]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−10)の6質量%分散液50gを90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン50gを滴下した(混合後の液体の総量に対し、白色ワセリン50質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油3質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、377.15mPa・sであった。
【0064】
[実施例16]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を70g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン10gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン10質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、30.25mPa・sであった。
【0065】
[実施例17]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を60g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン20gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン20質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、35.475mPa・sであった。
【0066】
[実施例18]
ポリオキシチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を50g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン30gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン30質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、48.675mPa・sであった。
【0067】
[実施例19]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を40g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン40gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン40質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、103.95mPa・sであった。
【0068】
[実施例20]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を30g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン50gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン50質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、459.25mPa・sであった。
【0069】
[実施例21]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を20g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン60gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン60質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、43752mPa・sであった。
【0070】
[実施例22]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gにイオン交換水を10g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン70gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン70質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。この乳化物の粘度を測定したところ、358870mPa・sであった。
【0071】
[実施例23]
ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油(HCO−80)の30質量%分散液20gを90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン80gを滴下した(乳化物の総量に対し、白色ワセリン80質量%、ポリオキシエチレン硬化効果ヒマシ油6質量%)。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、この液体は粘度が高く、B型粘度計により粘度を測定することができなかった。
【0072】
実施例1〜3において得られた試料をガラス瓶に移し、24時間静置した後の乳化状態を観察した。図1は、実施例1〜3において得られた試料を24時間静置した後の写真図である。このように、実施例1〜3において得られたワセリンの乳化物は安定な状態を維持していた。
【0073】
図2(a)は、実施例4において高圧乳化処理前の試料の光学顕微鏡写真図であり、図2(b)、(c)、(d)は、それぞれ1パス、2パス、3パスの高圧乳化処理後の試料を24時間静置した後の光学顕微鏡写真図である。図2(a)から、高圧乳化処理前の試料においても、乳化粒子が確認された。そして、その後、高圧乳化処理を施すことにより、乳化粒子について容易に微粒子化できることが分かった。
【0074】
図3は、実施例2において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。また、図4は、実施例3において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。図3及び4から、乳化粒子が確認された。
【0075】
実施例11〜15において得られた試料をガラス瓶に移し、24時間静置した後の乳化状態を観察した。図5は、実施例11〜15において得られた試料を24時間静置した後の写真図である。このように、実施例11〜15において得られたワセリンの乳化物も安定な状態を維持していた。
【0076】
実施例16〜23において得られた試料をガラス瓶に移し、24時間静置した後の乳化状態を観察した。図6は、実施例16〜23において得られた試料を24時間静置した後の写真図である。このように、実施例16〜23において得られたワセリンの乳化物も安定な状態を維持していた。
【0077】
このように、重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体のいずれを乳化剤として用いた場合であっても、ワセリンが安定的に乳化されO/W型エマルション構造を形成していることが分かった。
【0078】
<先行技術との性能の比較:希釈試験及び顕微鏡観察>
[比較例1]
特許文献1の処方例4にしたがってワセリンを含有するクリームを製造した。具体的には、白色ワセリン(クロラータムV)40.0質量%、白色ワセリン(MINERALJELLY#10)10.0質量%、シア脂3.0質量%、ジグリセリン2.0質量%、ジプロピレングリコール3.0質量%、ヒドロキシエチルウレア1.0質量%、カルボキシビニルポリマー0.5質量%、キサンタンガム0.1質量%、ヒアルロン酸ナトリウム0.02質量%、ステアリン酸グリセリル3.5質量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油2.5質量%、ベヘニルアルコール2.0質量%、ステアリルアルコール2.0質量%、加水分解大豆タンパク0.2質量%、タンブリッサトリコフィラ葉エキス0.1質量%、イオン交換水30.38質量%を混合し、乳化させた。得られた液体は、白色の乳化物であった。なお、この液体は粘度が高く、B型粘度計により粘度を測定することができなかった。
【0079】
実施例7において得られた試料と、比較例1において得られた試料とを80℃の水に滴下し、その様子を観察した。図7(a)(b)は、実施例7において得られた試料を80℃の水に滴下した直後の写真図であり、図7(c)は、実施例7において得られた試料を80℃の水に滴下して5分後の写真図である。また、図8(a)(b)は、比較例1において得られた試料を80℃の水に滴下した直後の写真図であり、図8(c)は、比較例1において得られた試料を80℃の水に滴下して5分後の写真図である。
【0080】
図7(a)〜(c)より、実施例7において得られた試料は、容易に水に分散したことから、希釈後も安定なO/W型エマルションを形成していることが分かった。これに対し、図8より、比較例1において得られた試料は水に分散せず、5分経過後に油滴が分離していることが分かった。
【0081】
実施例7及び比較例1において得られた試料について、光学顕微鏡観察を行った。図9は、実施例7において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。また、図10は、比較例1において得られた試料の光学顕微鏡写真図である。図9より、実施例7においてはO/W型エマルションを形成するのに対し、比較例1においてはO/W型エマルションが形成されないことが分かった。
【0082】
<官能評価>
[実施例24]
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液60gを90℃で加熱撹拌しながら、90℃で加熱した白色ワセリン40gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0083】
実施例24において得られた試料及び日本薬局方白色ワセリンについて、20〜40代の15名のパネラー(女性12名、男性3名)により官能評価を行った。具体的には、右手の甲、右前腕及び右半顔に、実施例24において得られた試料を、左手の甲、左前腕及び左半顔に、日本薬局方白色ワセリンを塗布して、それぞれの「伸びの良さ」、「なじみの早さ」、「なめらかさ」、「べとつきとサラッと感」、「被膜感」を、「非常に良い」(2)、「良い」(1)、「良くも悪くもない」(0)、「悪い」(−1)、「非常に悪い」(−2)の5段階評価で行った。
【0084】
表1〜5に、実施例24において得られた試料及び日本薬局方白色ワセリンについての「伸びの良さ」(表1)、「なじみの早さ」(表2)、「なめらかさ」(表3)、「べとつきとサラッと感」(表4)、「被膜感」(表5)の官能評価の結果をそれぞれ示す。また、表6にパネラー15名の官能評価結果の数値(上記2〜−2の数値)の合計値を示す。以上のように、実施例24において得られた試料は、「被膜感」(保湿性)を維持しながらも、従来のワセリンよりも「伸びの良さ」、「なじみの早さ」、「なめらかさ」、「べとつきとサラッと感」という使用感が高いものであることが分かった。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
<角層水分量及び経皮水分蒸散量の評価>
[実施例25] 10質量%ワセリン試料
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液50gにイオン交換水を40g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃に加熱した白色ワセリン10gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
[実施例26] 20質量%ワセリン試料
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液50gにイオン交換水を30g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃に加熱した白色ワセリン20gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0092】
[実施例27] 30質量%ワセリン試料
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液50gにイオン交換水を20g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃に加熱した白色ワセリン30gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0093】
[実施例28] 40質量%ワセリン試料
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液50gにイオン交換水を10g加えて調製した分散液を90℃で加熱撹拌しながら、90℃に加熱した白色ワセリン40gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0094】
[実施例29] 50質量%ワセリン試料
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースの0.5質量%分散液50gを90℃で加熱撹拌しながら、90℃に加熱した白色ワセリン50gを滴下した。全量滴下後、撹拌しながら、さらに5分間加熱を維持した。その後撹拌しながら冷却した。得られた液体は、白色の乳化物であった。
【0095】
実施例25〜29において得られた試料及び日本薬局方白色ワセリンについて、使用による皮膚の角質水分量及び経皮水分蒸散量の評価を行った。具体的には、被験対象は、40代男性、試験期間は、実施例26では2017年12月のうち2週、実施例25、27〜29では2018年2〜4月のうち2週間(実施例25のみ4週間)とした。また、測定機器としては、Multi Probe Adapter MPA6(ドイツCourage+Khazaka社製)を用い、角層水分測定の測定プローブとしてCorneometer CM825、経皮水分蒸散量測定の測定プローブとしてTewameter TM300をそれぞれ用い、温度20度、湿度50%の条件で測定した。
【0096】
左手背内側半分及び左頬の内側半分に日本薬局方白色ワセリンを、右手背内側半分及び右頬の内側半分に実施例25〜29において得られた試料をそれぞれ、午前7時、午後2時及び午後8時の1日3回、ワセリン量は左右それぞれの部位で2FTU(人差し指の第一関節に乗る量(1FTU)の2倍量)の量を2週間(実施例25のみ4週間)塗布した。左右の手背外側半分及び頬の外側半分にはいずれの試料も塗布せずコントロールとした。この期間の前後の左手背、右手背、左頬及び右頬の角層水分量及び経皮水分蒸散量を評価した。
【0097】
表7〜11に角層水分量の測定結果を示す。なお、表7〜11における角層水分量は、おでこ、Tゾーン、頭皮、頬、目尻、こめかみ、口元、上半身、背中及び首では、50未満で「非常に乾燥」、50以上60以下で「乾燥」、60超で「十分な水分」と評価される。また、腕、手、足及び肘では、35未満で「非常に乾燥」、35以上50以下で「乾燥」、50超で「十分な水分」と評価される。
【0098】
実施例25〜29において得られた試料では、手背及び頬のいずれの箇所においても、試験前に比べて角層水分量が大幅に上昇した。これに対し、日本薬局方白色ワセリンではこのような大幅な上昇の効果は見られなかった。したがって、重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体によって乳化することにより、ワセリンが高い保湿効果を有するものとなったことが分かる。
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
【0103】
【表11】
【0104】
表12〜16に経皮水分蒸散量の測定結果を示す。なお、表12〜16における経皮水分蒸散量は、0〜10で「非常に良い状態」、10〜15で「良い状態」、15〜25で「普通」、25〜30で「やや悪い状態」、30以上で「かなり悪い状態」と評価される。
【0105】
実施例25〜29において得られた試料では、手背及び頬のいずれの箇所においても、試験前に比べて経皮水分蒸散量が大幅に低下した。これに対し、日本薬局方白色ワセリンではこのような大幅な低下の効果は見られなかった。したがって、重縮合ポリマー粒子及び閉鎖小胞体によって乳化することにより、ワセリンが高い角質バリア機能改善効果、肌質改善効果を有するものとなったことが分かる。
【0106】
【表12】
【0107】
【表13】
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
【表16】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【国際調査報告】