(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2019150532
(43)【国際公開日】20190808
【発行日】20200206
(54)【発明の名称】データの書き込み方法、検査方法、スピン素子の製造方法及び磁気抵抗効果素子
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20200110BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20200110BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20200110BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20200110BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20200110BHJP
【FI】
   !G11C11/16 240
   !G11C11/16 100C
   !H01L27/105 447
   !H01L29/82 Z
   !H01L43/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】2018531678
(21)【国際出願番号】JP2018003451
(22)【国際出願日】20180201
(11)【特許番号】6462191
(45)【特許公報発行日】20190130
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋二丁目5番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智生
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目9番1号 TDK株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽平
【住所又は居所】東京都港区芝浦三丁目9番1号 TDK株式会社内
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA07
4M119AA20
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4M119KK14
5F092AA15
5F092AC12
5F092AC25
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5F092BB23
5F092BB43
5F092BC03
5F092BE25
5F092GA01
(57)【要約】
本発明の一態様にかかるデータの書き込み方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子において、印加パルスのパルス幅をtとした際に、前記通電部の前記第1の方向に、所定の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷する。E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子において、
印加パルスのパルス幅をtとした際に、前記通電部の前記第1の方向に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷する、データの書き込み方法;
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【請求項2】
前記非磁性層がMgOであり、前記関係式(1)においてA=−0.18264、B=13.2554、C=0.22749、D=0.2を満たす、
または、前記非磁性層がMgAlであり、前記関係式(1)においてA=−0.13792、B=6.98、C=0.20832、D=0.2を満たす、請求項1に記載のデータの書き込み方法。
【請求項3】
前記パルス幅が1sec以下であり、前記通電部の前記第1の方向に付加するエネルギーが0.2mΩA以下である、請求項1または2に記載のデータの書き込み方法。
【請求項4】
前記通電部がスピン軌道トルク配線であり、前記素子部が第1強磁性層と第2強磁性層とこれらに挟まれた非磁性層とを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデータの書き込み方法。
【請求項5】
前記通電部が磁壁を備える磁気記録層であり、前記素子部が前記磁気記録層側から非磁性層と第3強磁性層とを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデータの書き込み方法。
【請求項6】
第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子において、
印加パルスのパルス幅をtとした際に、前記通電部の前記第1の方向に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷する、検査方法;
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【請求項7】
前記非磁性層がMgOであり、前記関係式(1)においてA=−0.18264、B=13.2554、C=0.22749、D=0.2を満たす、
または、前記非磁性層がMgAlであり、前記関係式(1)においてA=−0.13792、B=6.98、C=0.20832、D=0.2を満たす、請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
請求項6に記載の検査方法により前記スピン素子を検査する工程を有する、スピン素子の製造方法。
【請求項9】
第1の方向に延在する通電部と、
前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子と、
前記通電部の前記第1の方向に、印加パルスのパルス幅をtとした際に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷できるエネルギー源と、
を備える磁気抵抗効果素子;
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データの書き込み方法、検査方法、スピン素子の製造方法及び磁気抵抗効果素子に関する。
【背景技術】
【0002】
二つの強磁性層の磁化の相対角の変化に基づく抵抗値変化(磁気抵抗変化)を利用した素子として、強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子等が知られている。
【0003】
近年、磁気抵抗変化を利用したスピン素子(スピントロニクスを利用した素子)の中でも、スピン軌道トルク(SOT)を利用したスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子や、磁壁の移動を利用した磁壁移動型磁気記録素子に注目が集まっている。
【0004】
例えば、非特許文献1にはスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子が記載されている。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じた純スピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により誘起される。磁気抵抗効果素子内にSOTを誘起するための電流は、磁気抵抗効果素子の積層方向と交差する方向に流す。磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流す必要がなく、磁気抵抗効果素子の長寿命化が期待されている。
【0005】
また例えば、特許文献1には磁壁移動型磁気記録素子が記載されている。磁壁移動型磁気記録素子は、磁気記録層内における磁壁を移動させることで、抵抗値変化が段階的になる。抵抗値が段階的に変化することで、多値のデータ記録が可能である。また「0」、「1」のデジタル的なデータ記録でなく、アナログ的なデータ記録が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5441005号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S.Fukami, T.Anekawa, C.Zhang and H.Ohno, Nature Nano Tec (2016). DOI:10.1038/NNANO.2016.29.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらのスピン素子は、データの書き込みを行う際に、素子部(磁気抵抗効果を発現する機能部、磁気抵抗効果素子)の積層方向に電流を流す必要がない。そのため、素子部の絶縁破壊をほとんど考慮する必要がなく、原理的には大きな書き込み電流を流すことができると考えられていた。
【0009】
しかしながら、本発明者らは鋭意検討の結果、素子部の積層方向に書き込み電流を流す必要がない3端子型のスピン素子であっても所定のエネルギーを通電部に負荷すると、素子部の抵抗値が著しく低下してしまうことを見出した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、安定的にデータを書き込むことができるデータの書き込み方法、及び、この書き込み方法を実現できる磁気抵抗効果素子を提供する。また素子部の抵抗値変化を利用して素子のスクリーニングを行う検査方法及び製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0012】
(1)第1の態様にかかるデータの書き込み方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子において、印加パルスのパルス幅をtとした際に、前記通電部の前記第1の方向に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷する。
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【0013】
(2)上記態様にかかるデータの書き込み方法において、前記非磁性層がMgOであり、前記関係式(1)においてA=−0.18264、B=13.2554、C=0.22749、D=0.2を満たす、または、前記非磁性層がMgAlであり、前記関係式(1)においてA=−0.13792、B=6.98、C=0.20832、D=0.2を満たす構成でもよい。
【0014】
(3)上記態様にかかるデータの書き込み方法において、前記パルス幅が1sec以下であり、前記通電部の前記第1の方向に付加するエネルギーが0.2mΩA以下であってもよい。
【0015】
(4)上記態様にかかるデータの書き込み方法において、前記通電部がスピン軌道トルク配線であり、前記素子部が第1強磁性層と第2強磁性層とこれらに挟まれた非磁性層とを備えてもよい。
【0016】
(5)上記態様にかかるデータの書き込み方法において、前記通電部が磁壁を備える磁気記録層であり、前記素子部が前記磁気記録層側から非磁性層と第3強磁性層とを備えてもよい。
【0017】
(6)第2の態様にかかる検査方法は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子において、印加パルスのパルス幅をtとした際に、前記通電部の前記第1の方向に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷する。
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【0018】
(7)上記態様にかかる検査方法において、前記非磁性層がMgOであり、前記関係式(1)においてA=−0.18264、B=13.2554、C=0.22749、D=0.2を満たす、または、前記非磁性層がMgAlであり、前記関係式(1)においてA=−0.13792、B=6.98、C=0.20832、D=0.2を満たす構成でもよい。
【0019】
(8)第3の態様にかかるスピン素子の製造方法は、上記態様にかかる検査方法により前記スピン素子を検査する工程を有する。
【0020】
(9)第4の態様にかかる磁気抵抗効果素子は、第1の方向に延在する通電部と、前記通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部と、を備えるスピン素子と、前記通電部の前記第1の方向に、印加パルスのパルス幅をtとした際に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷できるエネルギー源と、を備える。
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
前記関係式(1)において、A、B、C、Dは前記非磁性層に応じて決定する定数である。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態にかかるデータの書き込み方法及び磁気抵抗効果素子によれば、安定的にデータを書き込むことができる。また本実施形態にかかる検査方法及び製造方法によれば、素子部の抵抗値変化を利用して素子のスクリーニングを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかるスピン素子の一例であるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の断面模式図である。
【図2】本実施形態にかかるスピン素子の一例である磁壁移動型磁気記録素子の断面模式図である。
【図3】印加パルスのパルス幅とブレイクダウンに至るエネルギーとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0024】
「データの書き込み方法」
本実施形態にかかるデータの書き込み方法は、3端子型のスピン素子の通電部に、所定のエネルギー以下のエネルギーを負荷する方法である。
【0025】
3端子型のスピン素子は、第1の方向に延在する通電部と、通電部の一面に積層され、非磁性層と強磁性層とを含む素子部とを備える。3端子型のスピン素子は、通電部に沿って電流が流れることでデータを書き込み、素子部と通電部の一端との間に電流が流れることでデータを読み出す。3端子型のスピン素子は、通電部の素子部を挟む位置に、書き込み電流を印加するための2つの端子と、素子部の通電部と反対側の端面に、読み出し電流を印加するための1つの端子とを有する。以下、3端子型のスピン素子の具体例について説明する。
【0026】
(スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子)
図1は、本実施形態にかかるスピン素子の一例であるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の断面模式図である。図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10は、素子部1とスピン軌道トルク配線(通電部)2とを備える。スピン軌道トルク配線2の素子部1を挟む位置には、導電性を有する第1電極3及び第2電極4を備える。
以下、通電部が延在する第1の方向をx方向、素子部1の積層方向(第2の方向)をz方向、x方向及びz方向のいずれにも直交する方向をy方向と規定して説明する。
【0027】

<スピン軌道トルク配線>
スピン軌道トルク配線2は、x方向に延在する。スピン軌道トルク配線2は、第1強磁性層1Aのz方向の一面に接続されている。スピン軌道トルク配線2は、第1強磁性層1Aに直接接続されていてもよいし、他の層を介し接続されていてもよい。
【0028】
スピン軌道トルク配線2は、電流Iが流れるとスピンホール効果によってスピン流が生成される材料からなる。かかる材料としては、スピン軌道トルク配線2中にスピン流が生成される構成のものであれば足りる。従って、単体の元素からなる材料に限らないし、スピン流を生成しやすい材料で構成される部分とスピン流を生成しにくい材料で構成される部分とからなるもの等であってもよい。
【0029】
スピンホール効果とは、材料に電流Iを流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流Iの向きと直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果によりスピン流が生み出されるメカニズムについて説明する。
【0030】
スピン軌道トルク配線2の両端に電位差を与えると、スピン軌道トルク配線2に沿って電流Iが流れる。電流Iが流れると、一方向に配向した第1スピンS1と、第1スピンS1と反対方向に配向した第2スピンS2とが、それぞれ電流と直交する方向に曲げられる。例えば、第1スピンS1は進行方向に対しz方向に曲げられ、第2スピンS2は進行方向に対して−z方向に曲げられる。
【0031】
通常のホール効果とスピンホール効果とは運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通する。一方で、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果では磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる点が大きく異なる。
【0032】
非磁性体(強磁性体ではない材料)では第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しいので、図中で+z方向に向かう第1スピンS1の電子数と−z方向に向かう第2スピンS2の電子数が等しい。この場合、電荷の流れは互いに相殺され、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0033】
第1スピンS1の電子の流れをJ、第2スピンS2の電子の流れをJ、スピン流をJと表すと、J=J−Jで定義される。スピン流Jは、図中のz方向に流れる。図1において、スピン軌道トルク配線2の上面には後述する第1強磁性層1Aが存在する。そのため、第1強磁性層1Aにスピンが注入される。
【0034】
スピン軌道トルク配線2は、電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかによって構成される。
【0035】
スピン軌道トルク配線2の主構成は、非磁性の重金属であることが好ましい。ここで、重金属とは、イットリウム以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。これらの非磁性金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。
【0036】
電子は、一般にそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動く。これに対し、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属はスピン軌道相互作用が大きく、スピンホール効果が強く作用する。そのため、電子の動く方向は、電子のスピンの向きに依存する。従って、これらの非磁性の重金属中ではスピン流Jが発生しやすい。
【0037】
またスピン軌道トルク配線2は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属とは、強磁性金属、あるいは、反強磁性金属を指す。非磁性金属に微量な磁性金属が含まれるとスピンの散乱因子となる。スピンが散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。スピン軌道トルク配線2の主構成は、反強磁性金属だけからなってもよい。
【0038】
一方で、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生したスピン流が添加された磁性金属によって散乱され、結果としてスピン流が減少する作用が強くなる場合がある。そのため、添加される磁性金属のモル比はスピン軌道トルク配線を構成する元素の総モル比よりも十分小さい方が好ましい。添加される磁性金属のモル比は、全体の3%以下であることが好ましい。
【0039】
スピン軌道トルク配線2は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体とは、物質内部が絶縁体、あるいは、高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。この物質にはスピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。そこで外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。これがトポロジカル絶縁体であり、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
【0040】
トポロジカル絶縁体としては例えば、SnTe、Bi1.5Sb0.5Te1.7Se.3、TlBiSe、BiTe、Bi1−xSb、(Bi1−xSbTeなどが好ましい。これらのトポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
【0041】
<素子部>
素子部1は、第1強磁性層1Aと第2強磁性層1Bとこれらに挟まれた非磁性層1Cとを備える。素子部1は、スピン軌道トルク配線2と交差する第2の方向(z方向)に積層されている。
【0042】
素子部1は、第1強磁性層1Aの磁化M1Aと第2強磁性層1Bの磁化M1Bの相対角が変化することにより抵抗値が変化する。第2強磁性層1Bの磁化M1Bは一方向(z方向)に固定され、第1強磁性層1Aの磁化M1Aの向きが、磁化M1Bに対して相対的に変化する。第2強磁性層1Bは固定層、参照層などと表記され、第1強磁性層1Aは自由層、記録層などと表記されることがある。保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性層1Bの保磁力を第1強磁性層1Aの保磁力よりも大きくする。交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)のMRAMに適用する場合には、第2強磁性層1Bの磁化M1Bを反強磁性層との交換結合によって固定する。
【0043】
素子部1の積層構成は、公知の磁気抵抗効果素子の積層構成を採用できる。例えば、各層は複数の層からなるものでもよいし、第2強磁性層1Bの磁化方向を固定するための反強磁性層等の他の層を備えてもよい。第2強磁性層1Bは固定層や参照層、第1強磁性層1Aは自由層や記憶層などと呼ばれる。
【0044】
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1Bは、磁化M1A,M1Bの磁化容易軸がz方向に配向した垂直磁化膜でも、磁化容易軸がxy面内方向に配向した面内磁化膜でもよい。
【0045】
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1Bは、強磁性材料を適用できる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を用いることができる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feを例示できる。また第1強磁性層1Aが面内磁化膜の場合は、例えば、Co−Ho合金(CoHo)、Sm−Fe合金(SmFe12)等を用いることが好ましい。
【0046】
第1強磁性層1A及び第2強磁性層1BにCoFeSi等のホイスラー合金を用いると、磁気抵抗効果をより強く発現することができる。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1−aFeAlSi1−b、CoFeGe1−cGa等が挙げられる。
【0047】
第2強磁性層1Bには、IrMn,PtMnなどの反強磁性材料からなる層を積層してもよい。シンセティック強磁性結合の構造とすることで、第2強磁性層1Bの漏れ磁場が、第1強磁性層1Aに与える影響を軽減できる。
【0048】
非磁性層1Cは、公知の材料を用いることができる。例えば、Al、SiO、MgO、及び、MgAl等を用いることができる。これらの他にも、上記酸化物のAl、Si、Mgの一部が、Zn、Be等に置換された材料等も用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、スピンを効率よく注入できる。
【0049】
素子部1は、その他の層を有していてもよい。第1強磁性層1Aの非磁性層1Cと反対側の面に下地層を有していてもよい。スピン軌道トルク配線2と第1強磁性層1Aとの間に配設される層は、スピン軌道トルク配線2から伝播するスピンを散逸しないことが好ましい。例えば、銀、銅、マグネシウム、及び、アルミニウム等は、スピン拡散長が100nm以上と長く、スピンが散逸しにくいことが知られている。この層の厚みは、層を構成する物質のスピン拡散長以下であることが好ましい。層の厚みがスピン拡散長以下であれば、スピン軌道トルク配線2から伝播するスピンを第1強磁性層1Aに十分伝えることができる。
【0050】
(磁壁移動型磁気記録素子)

図2は、本実施形態にかかるスピン素子の一例である磁壁移動型磁気記録素子20の断面模式図である。図2に示す磁壁移動型磁気記録素子20は、素子部11と磁気記録層(通電部)12とを備える。磁気記録層12の素子部11を挟む位置には、導電性を有する第1電極3及び第2電極4を備える。
【0051】
<素子部>
素子部11は、第1強磁性層11Aと非磁性層11Bとを備える。第1強磁性層11A及び非磁性層11Bは、図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10と同様のものを用いることができる。
【0052】
<磁気記録層>
磁気記録層12は、x方向に延在している。磁気記録層12は、内部に磁壁12Aを有する。磁壁12Aは、互いに反対方向の磁化を有する第1の磁区12Bと第2の磁区12Cとの境界である。図2に示す磁壁移動型磁気記録素子20は、第1の磁区12Bが+x方向に配向した磁化を有し、第2の磁区12Cが−x方向に配向した磁化を有する。
【0053】
磁壁移動型磁気記録素子20は、磁気記録層12の磁壁12Aの位置によって、データを多値で記録する。磁気記録層12に記録されたデータは、第1強磁性層11A及び磁気記録層12の積層方向の抵抗値変化として読み出される。磁壁12Aが移動すると、磁気記録層12における第1の磁区12Bと第2の磁区12Cとの比率が変化する。第1強磁性層11Aの磁化は、第1の磁区12Bの磁化と同方向(平行)であり、第2の磁区12Cの磁化と反対方向(反平行)である。磁壁12Aがx方向に移動し、z方向から見て第1強磁性層11Aと重畳する部分における第1の磁区12Bの面積が広くなると、磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は低くなる。反対に、磁壁12Aが−x方向に移動し、z方向から見て第1強磁性層11Aと重畳する部分における第2の磁区12Cの面積が広くなると、磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は高くなる。磁壁移動型磁気記録素子20の抵抗値は、第1強磁性層11Aに電気的に接続された上部電極と、第1電極3又は第2電極4との間で測定される。
【0054】
磁壁12Aは、磁気記録層12の延在方向に電流を流す、又は、外部磁場を印加することによって移動する。例えば、第1電極3から第2電極4に電流パルスを印加すると、第1の磁区12Bは第2の磁区12Cの方向へ広がり、磁壁12Aが第2の磁区12Cの方向へ移動する。つまり、第1電極3及び第2電極4に流す電流の方向、強度を設定することで、磁壁12Aの位置が制御され、磁壁移動型磁気記録素子20にデータが書き込まれる。
【0055】
磁気記録層12は、磁性体により構成される。磁気記録層12を構成する磁性体は、第1強磁性層11Aと同様のものを用いることができる。また磁気記録層12は、Co、Ni、Pt、Pd、Gd、Tb、Mn、Ge、Gaからなる群から選択される少なくとも一つの元素を有することが好ましい。例えば、CoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜、MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料が挙げられる。MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料等のフェリ磁性体は飽和磁化が小さく、磁壁を移動するために必要な閾値電流を下げることができる。またCoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜は、保磁力が大きく、磁壁の移動速度を抑えることができる。
【0056】
ここまで、所定のスピン素子の具体例について説明した。スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10と磁壁移動型磁気記録素子20は、データの書込み時に素子部1,11と交差する方向に延在する通電部2,12に、書き込み電流を流すという点で共通する。スピン素子は、データの書込み時に素子部と交差する方向に延在する通電部に、書き込み電流を流すものであれば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10及び磁壁移動型磁気記録素子20に限られるものではない。
【0057】
(データの書き込み)
本実施形態にかかるデータの書き込み方法は、上記の3端子型のスピン素子にデータを書き込むためのエネルギーを負荷する際に、通電部2、12のx方向に、以下の関係式(1)で表記されるエネルギー以下のエネルギーを負荷する。
E=(A+Bt−1+D ・・・(1)
関係式(1)において、Eは通電部に印加されるエネルギー(×10−3mΩA)であり、tは印加する印加パルスのパルス幅であり、A、B、C、Dは非磁性層1C、11Bに応じて決定する定数である。
【0058】
3端子型のスピン素子の通電部2、12に与えるエネルギーが上記の関係式(1)で表されるエネルギー以下であれば、スピン素子にデータを安定的に記録することができる。
【0059】
3端子型のスピン素子は、データの書き込みを行う際に、素子部1、11の積層方向に電流を流す必要がない。そのため、通電部2、12を構成する配線材料がエレクトロマイグレーションを起こすほど大きなエネルギーを与えない限り、通電部2、12に与えるエネルギーに制限はないと考えられていた。
【0060】
しかしながら、実際の検討を行ったところ、上記の関係式(1)以上のエネルギーを通電部2、12に負荷を繰り返し与える(繰り返し書き込みを行う)と、素子部1、11の抵抗が一定の水準まで低下してしまうことが分かった。この原因は明確ではないが、通電部2、12のx方向に大きな電位差が与えられると、素子部1、11の第1電極3側の端面と第2電極4側の端面との間にも電位差が生じ、非磁性層1C、11Bの絶縁性が低下すると考えられる。素子部1、11の抵抗が使用途中で変化すると、磁化の相対角の違いに応じた抵抗値変化を適切に捉えることができなくなる。
【0061】
関係式(1)における定数A、B、C、Dは非磁性層1C、11Bを構成する材料によって決定される。例えば、非磁性層1C、11BがMgOの場合は、A=−0.18264、B=13.2554、C=0.22749、D=0.2であり、非磁性層がMgAlの場合は、関係式(1)においてA=−0.13792、B=6.98、C=0.20832、D=0.2である。
【0062】
ここで非磁性層1C、11Bを構成する材料は、定数A、B、C、Dが求められているMgO、MgAlに限られるわけではない。MgOはNaCl型の結晶構造を有し、MgAlはスピネル型の結晶構造を有する。異なる結晶構造を有するにも関わらず同じ関係式(1)で表現されていることから、MgO、MgAl以外の材料の場合にも一般化できる。MgO、MgAl以外の材料を非磁性層として用いる場合は、実際の素子で素子部1、11の抵抗が一定の水準まで低下する値を求め、定数A、B、C、Dをフィッティングにより規定する。定数A、B、C、Dが求めることで、印加できるエネルギーの範囲が明確になる。
【0063】
また3端子型のスピン素子にデータを書き込む際には、印加パルスのパルス幅は1sec以下とし、通電部2、12に負荷するエネルギーは0.2mΩA以下とすることが好ましい。
【0064】
上述のように、本実施形態にかかるデータの書き込み方法によると、3端子型のスピン素子のx方向に大きなエネルギーが加わることを避けることができる。その結果、素子部の抵抗値が急激に低下することを避けることができ、安定的なデータの書き込みを行うことができる。
【0065】
「スピン素子の製造方法」
本実施形態にかかるスピン素子の製造方法は、スピン素子を作製する第1工程と、スピン素子を検査する第2工程とを備える。
【0066】
(第1工程)
第1工程は、第1の方向に延在する通電部を形成する工程と、通電部の一面に非磁性層と強磁性体とを含む素子部を形成する工程と、を有する。
【0067】
スピン素子は、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10(図1)の場合でも、磁壁移動型磁気記録素子(図2)の場合でも、フォトリソグラフィー等の技術を用いて作製する。
【0068】
例えば、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子の場合、以下の手順で作製する。まず基板に貫通孔を開け、貫通孔を導電体で充填することで、第1電極3及び第2電極4を作製する。次いで、通電部となるスピン軌道トルク配線2の基となる層を積層し、フォトリソグラフィーの技術を用い、配線上に加工する。最後に、第1強磁性層1Aの基となる層、非磁性層1Cの基となる層、第2強磁性層1Bの基となる層を重に積層し、フォトリソグラフィーの技術を用い、素子部1を加工する。
【0069】
磁壁移動型磁気記録素子20の場合は、素子部11を作製する際に積層する層の構成が異なるだけである。そのため、上述の工程と同様の手順で、磁壁移動型磁気記録素子20を作製できる。
【0070】
スピン素子は、個別に作製してもよいし、ウェハ上に多数の素子を一括で作製してもよい。製造効率の観点からは、ウェハ上に多数の素子を一括で作製することが好ましい。
【0071】
(第2工程)
第2工程では、印加パルスのパルス幅をtとした際に、スピン素子の通電部の第1の方向に、上記の関係式(1)で表記されるエネルギー以下のエネルギーを負荷する。
【0072】
上述のように原則としてスピン素子は、上記の関係式(1)で表記されるエネルギーを負荷されても、非磁性層1C、11Bの絶縁性は維持される。一方で、スピン素子に欠陥等が含まれている場合は、この限りではない。すなわち、上記関係式(1)以下のエネルギーを負荷された場合でも、素子部1、11の抵抗が一定の水準まで低下してしまうことがある。
【0073】
そこで、スピン素子に上記関係式(1)で表記されるエネルギーを印加することで、良品のスピン素子と不良品のスピン素子を、素子部1、11の抵抗値でスクリーニングすることができる。不良品のスピン素子は、エネルギーが付加されることで素子抵抗が急激に低下する。
【0074】
スクリーニングの精度を高める場合は、上記の関係式(1)で表記されるエネルギーをスピン素子に印加する。マージンを持たせる場合は、上記の関係式で表記されるエネルギー以下のエネルギーをスピン素子に印加する。
【0075】
エネルギーの負荷は、複数の素子が存在するウェハの状態で行ってもよいし、ウェハ上に作製された各素子をチップ化した後に行ってもよい。製造効率を高めるためには、ウェハの状態でパルス電流を各素子に印加することが好ましい。
【0076】
上述のように、本実施形態にかかるスピン素子の製造方法によれば、不良品を簡便に除くことができる。一つのウェハ上には、数千個のスピン素子が作製される場合もあり、不良品を簡便に除くことができると、スピン素子の製造効率が改善する。また本実施形態にかかるスピン素子の検査方法によれば、簡便に良品と不良品とをスクリーニングすることができる。
【0077】
「磁気抵抗効果素子」
本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子は、スピン素子と、エネルギー源とを備える。スピン素子は上述のものが用いられる。エネルギー源は、スピン素子の通電部のx方向に、印加パルスのパルス幅をtとした際に、関係式(1)で表記されるエネルギーE以下のエネルギーを負荷できる。本実施形態にかかる磁気抵抗効果素子は、エネルギー源に接続される制御部を有してもよい。制御部は、印加パルスのパルス幅に応じて、関係式(1)からエネルギー源から出力されるエネルギー量を決定する。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
図1に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10を作製した。熱酸化Si基板上にタングステン(W)を3nm積層した。そしてこのタングステンからなる層を幅50nm、長さ300nmに加工し、スピン軌道トルク配線2とした。そしてその周囲を、酸化シリコンからなる絶縁膜で被覆した。
【0080】
次いで、スピン軌道トルク配線2及び絶縁膜上に、CoFeB(厚み1nm)、MgAl(厚み3nm)、CoFeB(厚み1nm)、Ta(厚み0.4nm)、[Co(厚み0.4nm)/Pt(厚み0.8nm)]、Co(厚み0.4nm)、Ru(厚み0.4nm)、[Co(厚み0.4nm)/Pt(厚み0.8nm)]、Co(厚み0.4nm)、Pt(厚み10nm)の順で層を形成した。そして、作製した層を350℃でアニールしたのち、50nm×50nmの角形に加工し、素子部1を作製した。最初に積層したCoFeBが第1強磁性層1Aに対応し、MgAlが非磁性層1Cに対応し、SAF(synthetic antiferromagnetic)構造が第2強磁性層1Bに対応する。第1強磁性層1Aは垂直磁化膜である。
【0081】
上記の手順で作製したスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子10の第1電極3と第2電極4の間にパルス電流を印加した。印加したパルス電流のパルス幅は10nsecとした。印加するエネルギーは少しずつ大きくしていった。その結果、80×10−3ΩAで素子抵抗が急激に低下した(ブレイクダウンした)。
【0082】
同様の検討を印加するパルス幅を変えながら行った。図3は、印加パルスのパルス幅とブレイクダウンに至るエネルギーとの関係を示す。図3に示すMgAlについてのグラフは、E=(−0.13792+6.98t0.20832−1+0.2でフィッティングできた。
【0083】
(実施例2)

実施例2は、非磁性層1CをMgOに変えた点が実施例1と異なる。図3に示すように、非磁性層1CがMgOの場合も実施例1と同様の曲線が得られた。図3に示すMgOについてのグラフは、E=(−0.18264+13.2554t0.22749−1+0.2でフィッティングできた。
【0084】
(実施例3)

実施例3は、非磁性層の厚みを2nmとし、素子部1の平面視サイズを100nm×100nmとした点が実施例1と異なる。実施例3の場合も実施例1と同じフィッティング曲線が得られた。すなわち、非磁性層の厚み、大きさは、ブレイクダウンに影響しないことが確認された。
【符号の説明】
【0085】
1、11 素子部
1A、11A 第1強磁性層
1B 第2強磁性層
1C、11B 非磁性層
2 スピン軌道トルク配線
3 第1電極
4 第2電極
10 スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子
12 磁気記録層
12A 磁壁
12B 第1の磁区
12C 第2の磁区
20 磁壁移動型磁気記録素子
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】