(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(A)ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂(A1成分)10〜100重量%および芳香族ポリカーボネート樹脂(A2成分)0〜90重量%からなる樹脂(A成分)30〜99重量部、並びに(B)ポリエステル樹脂(B成分)1〜70重量部の合計100重量部に対し、
(C)アルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理された充填材(C成分)を10〜50重量部含有し、
ゴム質重合体が3重量部以下である
樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の詳細について更に説明する。
<A1成分:ポリカーボネート−ポリジオルガノのシロキサン共重合樹脂>
本発明の樹脂組成物におけるA1成分として使用されるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂としては、下記一般式〔V〕で表されるポリカーボネートブロックおよび下記一般式〔VII〕で表されるポリジオルガノシロキサンブロックからなるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂であることが好ましい。
【0029】
【化5】
[上記一般式〔V〕において、R
1及びR
2は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数6〜14のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、それぞれ複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良く、a及びbは夫々1〜4の整数であり、Wは単結合もしくは下記一般式〔VI〕で表される基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基である。
【0030】
【化6】
(上記一般式〔VI〕においてR
11,R
12,R
13,R
14,R
15,R
16,R
17及びR
18は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜14のアリール基及び炭素原子数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる基を表し、R
19及びR
20は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基、シアノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基を表し、複数ある場合は、それらは同一でも異なっていても良く、cは1〜10の整数、dは4〜7の整数である。)
【0031】
【化7】
(上記一般式〔VII〕において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、R
9及びR
10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、e及びfは夫々1〜4の整数であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。Xは炭素数2〜8の二価脂肪族基である。)
【0032】
上記一般式〔V〕で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(1)としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、および1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0033】
なかでも、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼンが好ましく、殊に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記一般式〔VII〕で表されるカーボネート構成単位において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が特に好ましい。R
9及びR
10は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基であり、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基であり、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基が特に好ましい。上記式〔VII〕で表されるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサン(2)としては、例えば下記一般式(VIII)に示すような化合物が好適に用いられる。
【0035】
【化8】
ジオルガノシロキサン重合度を表すpは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数であり、4〜120が好ましく、30〜120がより好ましく、30〜100が更により好ましく、30〜60が最も好ましい。
【0036】
本発明の上記一般式〔VII〕に含まれる下記一般式〔IX〕で表されるポリジオルガノシロキサンブロックの含有量はポリカーボネート樹脂組成物の全重量を基準にして、1.0重量%〜10.0重量%が好ましく、より好ましくは2.0重量%〜10.0重量%であり、さらに好ましくは2.0重量%〜8.0重量%であり、最も好ましくは3.0重量%〜8.0重量%である。ポリジオルガノシロキサン成分含有量が1.0重量%未満では、低温耐衝撃性および熱安定性が充分でなく、10.0重量%を超えると成形時の外観不良や耐熱温度の低下を起こす場合があるため好ましくない。なお、かかるジオルガノシロキサン重合度、ポリジオルガノシロキサン成分含有量は、
1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0037】
【化9】
(上記一般式〔IX〕において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12の置換若しくは無置換のアリール基であり、pは自然数であり、qは0又は自然数であり、p+qは4以上150以下の自然数である。)
【0038】
本発明のA1成分として使用されるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に平均サイズが5〜18nmであるポリジオルガノシロキサンドメインが存在するポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂であることが好ましい。ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは5〜15nmであることがより好ましく、5〜12nmであることがさらにより好ましく、8〜12nmであることが最も好ましい。この平均サイズが5nm未満の場合、低温耐衝撃性が充分でなく、18nmを超えた場合、成形時の外観不良を起こす場合があるため好ましくない。
【0039】
なお、このポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズは、小角エックス線散乱法(Small Angle X−ray Scattering:SAXS)により評価される。小角エックス線散乱法とは、散乱角(2θ)が10°未満の範囲の小角領域で生じる散漫な散乱・回折を測定する方法である。この小角エックス線散乱法では、物質中に電子密度の異なる1〜100nm程度の大きさの領域があると、その電子密度差によりエックス線の散漫散乱が計測される。この散乱角と散乱強度に基づいて測定対象物の粒子径を求める。本発明のA成分として用いられるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂のマトリックス中にポリジオルガノシロキサンドメインが分散した凝集構造となる場合、ポリカーボネートマトリックスとポリジオルガノシロキサンドメインの電子密度差により、エックス線の散漫散乱が生じる。散乱角(2θ)が10°未満の範囲の各散乱角(2θ)における散乱強度Iを測定して、小角エックス線散乱プロファイルを測定し、ポリジオルガノシロキサンドメインが球状ドメインであり、粒径分布のばらつきが存在すると仮定して、仮の粒径と仮の粒径分布モデルから、市販の解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、ポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを求める。小角エックス線散乱法によれば、透過型電子顕微鏡による観察では正確に測定できない、ポリカーボネートポリマーのマトリックス中に分散したポリジオルガノシロキサンドメインの平均サイズを、精度よく、簡便に、かつ再現性良く測定することができる。
【0040】
次に、上記の好ましいポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法について以下に説明する。あらかじめ水に不溶性の有機溶媒とアルカリ水溶液との混合液中において、二価フェノール(1)と、ホスゲンや二価フェノール(1)のクロロホルメート等のクロロホルメート形成性化合物との反応により、二価フェノール(1)のクロロホルメートおよび/または末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(1)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調製する。クロロホルメート形成性化合物としてはホスゲンが好適である。
【0041】
二価フェノール(1)からのクロロホルメート化合物を生成するにあたり、上記一般式〔V〕で表されるカーボネート構成単位を誘導する二価フェノール(1)の全量を一度にクロロホルメート化合物としてもよく、又は、その一部を後添加モノマーとして後段の界面重縮合反応に反応原料として添加してもよい。後添加モノマーとは、後段の重縮合反応を速やかに進行させるために加えるものであり、必要のない場合には敢えて加える必要はない。このクロロホルメート化合物生成反応の方法は特に限定はされないが、通常、酸結合剤の存在下、溶媒中で行う方式が好適である。更に、所望に応じ、亜硫酸ナトリウム、およびハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよく、添加することが好ましい。クロロホルメート形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。また、好適なクロロホルメート形成性化合物であるホスゲンを使用する場合、ガス化したホスゲンを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。
【0042】
前記酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにピリジンの如き有機塩基、あるいはこれらの混合物などが用いられる。
【0043】
酸結合剤の使用割合も、上記同様に、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜定めればよい。具体的には、二価フェノール(1)のクロロホルメート化合物の形成に使用する二価フェノール(1)1モルあたり(通常1モルは2当量に相当)、2当量若しくはこれより若干過剰量の酸結合剤を用いることが好ましい。
【0044】
前記溶媒としては、公知のポリカーボネートの製造に使用されるものなど各種の反応に不活性な溶媒を1種単独であるいは混合溶媒として使用すればよい。代表的な例としては、例えば、キシレンの如き炭化水素溶媒、並びに、塩化メチレンおよびクロロベンゼンをはじめとするハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。特に塩化メチレンの如きハロゲン化炭化水素溶媒が好適に用いられる。
【0045】
クロロホルメート化合物の生成反応における圧力は特に制限はなく、常圧、加圧、もしくは減圧のいずれでもよいが、通常常圧下で反応を行うことが有利である。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、反応に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は他の条件に左右され一概に規定できないが、通常、0.2〜10時間で行われる。
【0046】
クロロホルメート化合物の生成反応におけるpH範囲は、公知の界面反応条件が利用でき、pHは通常10以上に調製される。
【0047】
本発明のA1成分として使用されるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造においては、このようにして二価フェノール(1)のクロロホルメートおよび末端クロロホルメート基を有する二価フェノール(1)のカーボネートオリゴマーを含むクロロホルメート化合物の混合溶液を調整した後、該混合溶液を攪拌しながら一般式〔VII〕で表わされるカーボネート構成単位を誘導するジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンを、該混合溶液の調整にあたり仕込まれた二価フェノール(1)の量1モルあたり、0.01モル/min以下の速度で加え、該ジヒドロキシアリール末端ポリジオルガノシロキサンと該クロロホーメート化合物とを界面重縮合させることにより、ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂を得る。
【0048】
本発明のA成分として用いられるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂は、分岐化剤を二価フェノール系化合物と併用して分岐化ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂とすることができる。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0049】
かかる分岐化ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の製造方法は、クロロホルメート化合物の生成反応時にその混合溶液中に分岐化剤が含まれる方法であっても、該生成反応終了後の界面重縮合反応時に分岐化剤が添加される方法であってもよい。分岐化剤由来のカーボネート構成単位の割合は、該共重合樹脂を構成するカーボネート構成単位全量中、好ましくは0.005〜1.5モル%、より好ましくは0.01〜1.2モル%、特に好ましくは0.05〜1.0モル%である。なお、かかる分岐構造量については
1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0050】
重縮合反応における系内の圧力は、減圧、常圧、もしくは加圧のいずれでも可能であるが、通常は、常圧若しくは反応系の自圧程度で好適に行い得る。反応温度は−20〜50℃の範囲から選ばれ、多くの場合、重合に伴い発熱するので、水冷又は氷冷することが望ましい。反応時間は反応温度等の他の条件によって異なるので一概に規定はできないが、通常、0.5〜10時間で行われる。場合により、得られたポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂に適宜物理的処理(混合、分画など)及び/又は化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理など)を施して所望の還元粘度[η
SP/c]のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として取得することもできる。得られた反応生成物(粗生成物)は公知の分離精製法等の各種の後処理を施して、所望の純度(精製度)のポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂として回収することができる。
【0051】
本発明のA1成分として用いられるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量は13,000〜25,000の範囲が好ましく、16,000〜25,000がより好ましく、18,000〜25,000の範囲がさらに好ましく、18,000〜24,000の範囲が最も好ましい。分子量が25,000を越えると溶融粘度が高くなりすぎて成形性に劣る場合があり、分子量が13,000未満であると機械的強度に問題が生じる場合がある。
【0052】
尚、本発明のA1成分として用いられるポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂の粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。まず、次式にて算出される比粘度(η
SP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、 比粘度(η
SP)=(t−t
0)/t
0
[t
0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(η
SP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出する。
η
SP/c=[η]+0.45×[η]
2 c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10
−4 Mv
0.83
c=0.7
A1成分の含有量は、A成分100重量%中、10〜100重量%であり、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%である。A成分の含有量が下限以上では、面衝撃特性が良好である。
【0053】
<A2成分:芳香族ポリカーボネート樹脂>
本発明のA2成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。ここで使用されるジヒドロキシ成分としては、通常芳香族ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、ビスフェノール類でも脂肪族ジオール類でも良い。ビスフェノール類としては、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ジオール類としては、例えば2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,14−テトラデカンジオール、オクタエチレングリコール、1,16−ヘキサデカンジオール、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}メタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}エタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−1−フェニルエタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}プロパン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ビフェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル}プロパン、2,2−ビス{3−t−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ブタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−4−メチルペンタン、2,2−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}オクタン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}デカン、2,2−ビス{3−ブロモ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3,5−ジメチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン、1,1−ビス{3−シクロヘキシル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}ジフェニルメタン、9,9−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレン、9,9−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル}フルオレン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,1−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロペンタン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエ−テル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、1,3−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロピル]ベンゼン、1,4−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}シクロヘキサン、4,8−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3−ビス{(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−5,7−ジメチルアダマンタン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール(イソソルビド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール(イソマンニド)、1,4:3,6−ジアンヒドロ−L−イジトール(イソイディッド)等が挙げられる。
【0055】
これらの中で芳香族ビスフェノール類が好ましく、なかでも1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、および1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、が好ましく、殊に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−スルホニルジフェノール、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。中でも強度に優れ、良好な耐久性を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが最も好適である。また、これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明のA2成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐化剤を上記のジヒドロキシ化合物と併用して分岐化ポリカーボネート樹脂としてもよい。かかる分岐ポリカーボネート樹脂に使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、またはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸およびこれらの酸クロライド等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0057】
これらの芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。その製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0058】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0059】
本発明において、重合反応においては末端停止剤を使用する。末端停止剤は分子量調節のために使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる末端停止剤としては、下記一般式〔X〕〜〔XII〕で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0060】
【化10】
[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、アルキルフェニル基(アルキル部分の炭素数は1〜9)、フェニル基、またはフェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数1〜9)であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である]。
【0062】
【化12】
[式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。]
【0063】
上記一般式〔X〕で表される単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クレゾール、p−クミルフェノール、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、およびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。また、上記一般式〔XI〕〜〔XII〕で表される単官能フェノール類は、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類であり、これらを用いて芳香族ポリカーボネート樹脂の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、樹脂の吸水率を低くする効果があり好ましく使用される。上記一般式〔XI〕の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。また、上記一般式〔XII〕の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。これら単官能フェノール類の内、上記一般式〔X〕で表される単官能フェノール類が好ましく、より好ましくはアルキル置換もしくはフェニルアルキル置換のフェノール類であり、特に好ましくはp−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールまたは2−フェニルフェノールである。これらの単官能フェノール類の末端停止剤は、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0064】
本発明のA2成分として用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸あるいはその誘導体を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。
【0065】
本発明のA2成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量は、10,000未満であると強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。なお、本発明でいう粘度平均分子量は、まず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mvを求める。
比粘度(η
SP)=(t−t
0)/t
0
[t
0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
η
SP/c=[η]+0.45×[η]
2 c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10
−4Mv
0.83
c=0.7
【0066】
本発明のA2成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂中の全Cl(塩素)量が好ましくは0〜200ppm、より好ましくは0〜150ppmである。芳香族ポリカーボネート樹脂中の全Cl量が200ppmを越えると、色相および熱安定性が悪くなるので好ましくない。
A2成分の含有量は、A成分100重量%中、0〜90重量%であり、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜50重量%である。
【0067】
<B成分:ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂(B成分)は、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオールまたはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
【0068】
ここでいう芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸が挙げられる。また、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、およびβ−ヒドロキシエトキシ安息香酸が挙げられる。特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく使用できる。芳香族ジカルボン酸は二種以上を混合して使用してもよい。なお少量であれば、該ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を一種以上混合使用することも可能である。
【0069】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。また1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等が挙げられる。また、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を含有するジオール等およびそれらの混合物等が挙げられる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0070】
またポリエステル樹脂(B成分)は少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0071】
ポリエステル樹脂(B成分)として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。また、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、等の共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0072】
またポリエステル樹脂(B成分)の末端基構造は特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合以外に、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
【0073】
かかるポリエステル樹脂(B成分)は常法に従い、特定のチタン系触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより製造されることが好ましい。
【0074】
特定のチタン系触媒に関して以下に詳細に説明する。特定のチタン系触媒とは、下記のチタン化合物と下記のリン化合物との反応生成物により得られるチタン−リン触媒である。
【0075】
チタン化合物は、下記式(I)で表されるチタン化合物(1)、または該チタン化合物(I)と下記式(II)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2)である。
(チタン化合物(1))
【0076】
【化13】
式(I)中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ互いに独立に、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表し、かつkが2または3の場合、2個または3個のR
2およびR
3は、それぞれ互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。アルキル基として、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0077】
チタン化合物(1)として、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシド等のチタンテトラアルコキシド類、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタイソプロピルトリチタネート、オクタノルマルプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート等のオクタアルキルトリチタネート類、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサイソプロピルジチタネート、ヘキサノルマルプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサアルキルジチタネート類等のアルキルチタネート類を挙げることができる。これらのなかでも、リン化合物との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドが好ましく、特にチタンテトラブトキシドがより好ましい。
(チタン化合物(2))
チタン化合物(2)は、前記チタン化合物(I)と式(II)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応物である。
【0078】
【化14】
式(II)中、mは2〜4の整数を表す。式(II)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物として、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物が好ましい。特にチタン化合物(1)との反応性がよく、また得られる重縮合触媒のポリエステルとの親和性の高いトリメリット酸無水物を用いることがより好ましい。
【0079】
チタン化合物(1)と前記式(II)の芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応は、芳香族多価カルボン酸またはその無水物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(1)を滴下して行うことが好ましい。反応は、0℃〜200℃の温度で30分間以上、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することが好ましい。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で充分である。なお、溶媒としては、所要量の式(II)の化合物またはその無水物の一部または全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくは、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼンおよびキシレン等から選ばれる。
【0080】
チタン化合物(1)と式(II)で表される化合物またはその無水物との反応モル比には限定はない。しかし、チタン化合物(1)の割合が高すぎると、得られるポリエステル樹脂の色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタン化合物(1)の割合が低すぎると重縮合反応が進みにくくなることがある。このため、チタン化合物(1)と式(II)の化合物またはその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内にコントロールされることが好ましい。この反応によって得られる反応生成物を、そのまま前述のリン化合物との反応に供してもよく、或はこれを、アセトン、メチルアルコールおよび/または酢酸エチル等からなる溶剤を用いて再結晶して精製した後、これをリン化合物と反応させてもよい。
(リン化合物)
リン化合物は、下記式(III)で表される。
【0081】
【化15】
式(III)中、R
5は、置換若しくは未置換の6〜20個の炭素原子を有するアリール基、または1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。アリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ジデシル基(R20)等が挙げられる。アリール基またはアルキル基の置換基として、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0082】
リン化合物として、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、モノテトラデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、モノアントリルホスフェート等のモノアルキルホスフェート類およびモノアリールホスフェート類が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、或は2種以上の混合物として、例えばモノアルキルホスフェートとモノアリールホスフェートとの混合物として用いられてもよい。但し、上記リン化合物を2種以上の混合物として用いる場合、モノアルキルホスフェートの比率が50%以上を占めていることが好ましく、90%以上を占めていることがより好ましく、特に100%を占めていることがさらに好ましい。
【0083】
(チタン化合物とリン化合物との反応)
チタン−リン触媒は、上記のチタン化合物と上記のリン化合物との反応生成物である。チタン−リン触媒を用いることにより製造されるポリエステル樹脂は、ゲルマニウム、アンチモンおよび他のチタン系触媒を用いた場合に比べ、耐湿熱性と熱安定性に優れる。触媒活性の高いチタン−リン触媒を用いて重合させた場合、他の触媒を使用した場合よりも製造時の色相安定剤や熱安定剤等の添加剤の添加量が少なくすみ、また不純物や副生成物も少ないことから品質はより向上かつ安定する。そのため湿熱環境下や熱環境下での添加剤の分解や、不純物や副生成物の影響が低減されることから、耐湿熱性や熱安定性に優れたものとなると推定される。
【0084】
チタン−リン触媒において、チタン化合物のチタン原子換算モル量(mTi)と、リン化合物のリン原子換算モル量(mP)との反応モル比(mTi/mP)は、1/3〜1/1の範囲内にあることが好ましく、1/2〜1/1の範囲内にあることがより好ましい。
【0085】
チタン化合物のチタン原子換算モル量とは、チタン化合物に含まれる各チタン化合物のモル量と、当該チタン化合物の1分子中に含まれるチタン原子の個数との積の合計値である。リン化合物のリン原子換算モル量とは、リン化合物に含まれる各リン化合物のモル量と、当該リン化合物の1分子中に含まれるリン原子の個数との積の合計値である。但し、上記の式(III)で表されるリン化合物は1分子当たり1個のリン原子を含むものであるから、リン化合物のリン原子換算モル量は当該リン化合物のモル量に等しい。
【0086】
反応モル比(mTi/mP)が1/1より大きくなると、すなわち、チタン化合物の量が過多になると、得られる触媒を用いて得られるポリエステル樹脂の色調不良(b値が高すぎる)になり、かつその耐熱性が低下することがある。また、反応モル比(mTi/mP)が、1/3未満になると、すなわちチタン化合物の量が過少になると、得られる触媒のポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になることがある。
【0087】
チタン−リン触媒の調製は、例えば、上記の式(III)のリン化合物と溶媒とを混合して、リン化合物の一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液に上記のチタン化合物(1)または(2)を滴下することによって行う。反応は、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは70℃〜150℃の温度において、好ましくは1分間〜4時間、より好ましくは30分間〜2時間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、または減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれであってもよいが、通常、常圧下において行われている。
【0088】
また反応に用いられる上記の式(III)のリン化合物の溶媒は、リン化合物の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、およびキシレン等から選ばれた少なくとも1種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0089】
チタン化合物とリン化合物との反応生成物は、それを反応系から、遠心沈降処理または濾過等の手段により分離された後、これを精製することなく、ポリエステル樹脂製造用触媒として用いてもよく、或は、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコールおよび/または水等により再結晶して精製し、それによって得られた精製物を触媒として用いてもよい。また、前記反応生成物を、その反応系から分離することなく、反応生成物含有反応混合物をそのまま触媒含有混合物として用いてもよい。
【0090】
チタン−リン触媒として、上記の式(I)で表される化合物(但し、kは1を表す)、すなわちチタンテトラアルコキシドと、上記の式(III)のリン化合物との反応生成物が触媒として用いられることが好ましい。
さらに、チタン−リン触媒として下記式(IV)で表される化合物が好ましく使用される。
【0091】
【化16】
式中R
6およびR
7はそれぞれ互いに独立に、2〜12個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜12個の炭素原子を有するアリール基を表す。2〜12個の炭素原子を有するアルキル基として、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。6〜12個の炭素原子を有するアリール基として、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0092】
上記の式(IV)で表されるチタン−リン触媒は、高い触媒活性を有し、これを用いて製造されたポリエステル樹脂は、良好な色調(低いb値)を有し、実用上十分に低いアセトアルデヒド、残留金属および芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとのエステルの環状三量体の含有量を有し、かつ実用上十分なポリマー性能を有する。
触媒中には、上記の式(IV)の化合物が50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましい。
【0093】
チタン−リン触媒の使用量は、そのチタン原子換算ミリモル量が重合出発原料中に含まれる芳香族ジカルボン酸成分の合計ミリモル量に対して、2〜40%となる量であることが好ましく、5〜35%であることがさらに好ましく、10〜30%であることがより一層好ましい。2%未満であると、重合出発原料の重縮合反応に対する触媒の促進効果が不十分になり、ポリエステル製造効率が不十分になり、かつ所望の重合度を有するポリエステル樹脂を得ることができないことがある。また、40%を超えると、得られるポリエステル樹脂の色調(b値)が、不十分になり黄味を帯びるようになり、その実用性が低下することがある。
【0094】
芳香族ジカルボン酸のアルキレングリコールエステルおよび/またはその低重合体の製造方法について制限はないが、通常、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、アルキレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とを、加熱反応させることによって製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートの原料として用いられるテレフタル酸のエチレングリコールエステルおよび/またはその低重合体は、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、或はテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、或はテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法により製造される。なお、上記の芳香族ジカルボン酸のアルキレングリコールエステルおよび/またはその低重合体には、それと共重合可能な他のジカルボン酸エステルが、追加成分として、本発明方法の効果が実質的に損なわれない範囲内の量含まれていてもよい。具体的には酸成分合計モル量を基準として10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲内の量で含まれていてもよい。
【0095】
共重合可能な追加成分は、酸成分とグリコール成分とのエステルまたはその無水物から選ばれる。酸成分として、例えば、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族および脂環式のジカルボン酸、並びにヒドロキシカルボン酸、例えば、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸等の1種以上が挙げられる。グリコール成分として、例えば、構成炭素数が2個以上のアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂肪族、脂環式、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。上記追記成分エステルは、単独で用いられてもよく、或はその二種以上を併用してもよい。但しその共重合量は上記の範囲内であることが好ましい。
【0096】
なお、出発原料としてテレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルを用いる場合には、ポリアルキレンテレフタレートを解重合することによって得られた回収テレフタル酸ジメチルまたはこれを加水分解して得られる回収テレフタル酸を、ポリエステルを構成する全酸成分の質量を基準として70質量%以上使用することもできる。この場合、ポリアルキレンテレフタレートはポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、特に回収されたPETボトル、回収された繊維製品、回収されたポリエステルフィルム製品、さらには、これら製品の製造工程において発生するポリマー屑等をポリエステル製造用原料源として用いることは、資源の有効活用の観点から好ましいことである。ここで、回収ポリアルキレンテレフタレートを解重合してテレフタル酸ジメチルを得る方法には特に限定はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、回収ポリアルキレンテレフタレートをエチレングリコールを用いて解重合した後、解重合生成物を、低級アルコール、例えばメタノールによるエステル交換反応に供し、この反応混合物を精製してテレフタル酸の低級アルキルエステルを回収し、これをアルキレングリコールによるエステル交換反応に供し、得られたフタル酸/アルキレングリコールエステルを重縮合すればポリエステル樹脂を得ることができる。また、上記回収された、テレフタル酸ジメチルからテレフタル酸を回収する方法にも特に制限はなく、従来方法のいずれを用いてもよい。例えばエステル交換反応により得られた反応混合物からテレフタル酸ジメチルを再結晶法および/または蒸留法により回収した後、高温高圧下で水とともに加熱して加水分解してテレフタル酸を回収することができる。この方法によって得られるテレフタル酸に含まれる不純物において、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトルイル酸、安息香酸およびヒドロキシテレフタル酸ジメチルの含有量が、合計で1ppm以下であることが好ましい。また、テレフタル酸モノメチルの含有量が、1〜5000ppmの範囲にあることが好ましい。上述の方法により回収されたテレフタル酸と、アルキレングリコールとを直接エステル化反応させ、得られたエステルを重縮合することによりポリエステル樹脂を製造することができる。
【0097】
ポリエステル樹脂(B成分)において、触媒を重合出発原料に添加する時期は、芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルおよび/またはその低重合体の重縮合反応の開始時期の前の任意の段階であればよく、さらに、その添加方法にも制限はない。例えば、芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルを調製し、この反応系内に触媒の溶液またはスラリーを添加して重縮合反応を開始してもよいし、或は、前記芳香族ジカルボン酸アルキレングリコールエステルを調製する際に出発原料とともに、またはその仕込み後に、触媒の溶液またはスラリーを、反応系に添加してもよい。
【0098】
ポリエステル樹脂(B成分)の製造反応条件にも格別の制限はない。一般に重縮合反応は、230〜320℃の温度において、常圧下、または減圧下(0.1Pa〜0.1MPa)において、或はこれらの条件を組み合わせて、15〜300分間重縮合することが好ましい。
【0099】
ポリエステル樹脂(B成分)において、反応系に、必要に応じて反応安定剤、例えばトリメチルホスフェートをポリエステル製造における任意の段階で加えてもよい。さらに必要により、反応系に酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤、その他の添加剤の1種以上を配合してもよい。特に、ポリエステル樹脂中には、少なくとも1種のヒンダードフェノール化合物を含む酸化防止剤が含まれることが好ましい。その含有量は、ポリエステル樹脂の質量に対して、1質量%以下であることが好ましい。その含有量が1質量%をこえると、酸化防止剤自身の熱劣化により、得られた生成物の品質を悪化させるという不都合を生ずることがある。
【0100】
ヒンダードフェノール化合物として、ペンタエリスリトール−テトラエキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。これらヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系二次酸化防止剤とを併用して用いることも好ましく実施される。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤のポリエステル樹脂への添加方法には特に制限はないが、好ましくはエステル交換反応、またはエステル化反応の終了後、重合反応が完了するまでの間の任意の段階で添加される。
【0101】
さらに、得られるポリエステル樹脂の色調を微調整するために、ポリエステル樹脂の製造段階において、その反応系中にアゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料および無機青色顔料の1種以上からなる整色剤を添加することができる。ポリエステル樹脂の溶融熱安定性を低下させるコバルト等を含む無機青色顔料を整色剤として用いる必要はない。従って本発明に使用されるポリエステル樹脂には実質的にコバルトが含まれていないものとなる。
【0102】
ポリエステル樹脂(B成分)は、チタン元素を0.001〜50ppm含むことが好ましく、1〜45ppmがより好ましく、さらに好ましくは1〜30ppm、最も好ましくは2〜20ppmである。含有するチタン元素が50ppmより多いと熱安定性や色相の悪化を生じる場合がある。チタン元素が0.001ppmより少ないと使用するポリエステル樹脂の触媒残量を大幅に下回っており、ポリエステル樹脂の製造が困難となることを意味しており、本組成の特徴である良好な機械強度や耐湿熱性や熱安定性が得られない場合がある。
【0103】
ポリエステル樹脂(B成分)は、通常、ハンター型色差計より得られるL値が80.0以上、b値が−2.0〜5.0の範囲にあることが好ましい。ポリエステル樹脂のL値が80.0未満であると、得られるポリエステル樹脂の白色度が低くなるため実用に供し得る高白色度成形物を得ることができないことがある。また、b値が−2.0未満であると、得られるポリエステル樹脂の黄味は少ないが、青味が増し、またb値が5.0を越えると、得られるポリエステル樹脂の黄味が強くなるため、実用上有用な成形物の製造に供することができないことがある。本発明方法により得られるポリエステル樹脂のL値はより好ましくは82以上、特に好ましくは83以上であり、b値のより好ましい範囲は−1.0〜4.5であり、特に好ましくは0.0〜4.0である。
【0104】
ポリエステル樹脂(B成分)の固有粘度には制限はないが、0.30〜1.5の範囲にあることが好ましい。該固有粘度がこの範囲内にあると、溶融成形が容易で、且つそれから得られる成形物の強度も高いものとなる。前記固有粘度のさらに好ましい範囲は、0.40〜1.2であり、特に好ましくは0.50〜1.0である。ポリエステル樹脂の固有粘度は、ポリエステル樹脂をオルソクロロフェノールに溶解し、35℃の温度において測定される。なお、固相重縮合により得られたポリエステル樹脂は、一般的にボトル等に利用する場合が多く、0.70〜0.90の固有粘度を有する場合が多い。前記の芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールとのエステルの環状三量体の含有量が0.5wt%以下であり、かつアセトアルデヒドの含有量が5ppm以下であることが好ましい。前記環状三量体は、アルキレンテレフタレート、例えばエチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート、およびヘキサメチレンテレフタレート等、並びにアルキレンナフタレート、例えば、エチレンナフタレート、トリメチレンナフタレート、テトラメチレンナフタレートおよびヘキサメチレンナフタレート等を包含する。
【0105】
B成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部中、1〜70重量部であり、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部である。下限以上であると、耐薬品性の改質効果がみられ、上限以下では、耐衝撃性が良好である。
【0106】
<C成分;アルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理された充填材>
本発明の樹脂組成物は、C成分としてアルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理された充填材を含有する。C成分の充填材としては、従来公知の充填材が使用できるが、好適に使用される充填材は、無機充填材であり、レーザー回折・散乱法で測定される平均粒径(D50(粒子径分布のメジアン径))が0.1〜300μm又は1〜100μmの無機充填材である。具体的には、C成分の充填材としては、タルク、マイカおよびワラストナイトよりなる群より選ばれる少なくとも1種の充填材を挙げることができる。
【0107】
(C−1)タルク
本発明におけるタルクとは、化学組成的には含水珪酸マグネシウムであり、一般的には化学式4SiO
2・3MgO・2H
2Oで表され、通常層状構造を持った鱗片状の粒子であり、また組成的にはSiO
2を56〜65重量%、MgOを28〜35重量%、H
2O約5重量%程度から構成されている。その他の少量成分としてFe
2O
3が0.03〜1.2重量%、Al
2O
3が0.05〜1.5重量%、CaOが0.05〜1.2重量%、K
2Oが0.2重量%以下、Na
2Oが0.2重量%以下などを含有している。より好適なタルクの組成としては、SiO
2:62〜63.5重量%、MgO:31〜32.5重量%、Fe
2O3:0.03〜0.15重量%、Al
2O
3:0.05〜0.25重量%、およびCaO:0.05〜0.25重量%が好ましい。更に強熱減量が2〜5.5重量%であることが好ましい。かかる好適な組成においては、良好な熱安定性および色相を有する樹脂組成物が得られ、更なる成形加工温度の上昇によっても良好な成形品が製造される。これにより本発明の組成物は更に高流動化が可能となり、より大型または複雑形状の薄肉成形品に対応可能となる。
【0108】
タルクの粒子径は、沈降法により測定される平均粒径が0.1〜50μm(より好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.2〜5μm、特に好ましくは0.2〜3.5μm)の範囲であることが好ましい。したがって、本発明のより好適なタルクは、上記の好ましい組成を有し、かつ平均粒径が0.1〜50μmのタルクである。更にかさ密度を0.5(g/cm
3)以上としたタルクを原料として使用することが特に好適である。かかる条件を満足するタルクとして、林化成(株)製「Upn HS−T0.8」が例示される。タルクの平均粒径は、液相沈降法の1つであるX線透過法で測定されたD50(粒子径分布のメジアン径)をいう。かかる測定を行う装置の具体例としてはマイクロメリティックス社製Sedigraph5100などを挙げることができる。
【0109】
またタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらに粉砕後のタルクは、各種の分級機によって分級処理され、粒子径の分布が揃ったものが好適である。分級機としては特に制限はなく、インパクタ型慣性力分級機(バリアブルインパクターなど)、コアンダ効果利用型慣性力分級機(エルボージェットなど)、遠心場分級機(多段サイクロン、ミクロプレックス、ディスパージョンセパレーター、アキュカット、ターボクラシファイア、ターボプレックス、ミクロンセパレーター、およびスーパーセパレーターなど)などを挙げることができる。
【0110】
さらにタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、集束剤を使用し圧縮する方法等がある。特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要の集束剤樹脂成分を本発明の樹脂組成物中に混入させない点で好ましい。
【0111】
(C−2)マイカ
マイカは、その平均粒径が5〜250μmであることが好ましい。さらに、好ましくはレーザー回折・散乱法で測定される平均粒径(D50(粒子径分布のメジアン径))が5〜50μmのマイカである。マイカの平均粒径が5μm未満では剛性向上の効果が得られにくくなる。一方250μmを超える平均粒径のマイカを含有する樹脂組成物は、機械的物性が飽和傾向にある一方で外観や難燃性が劣る場合がある。尚、マイカの平均粒径は、レーザー回折・散乱法または振動式篩分け法により測定される。レーザー回折・散乱法は、振動式篩分け法により325メッシュパスが、95重量%以上のマイカに対して行うのが好適である。それ以上の粒径のマイカに対しては、振動式篩分け法を使用するのが一般的である。本発明の振動式篩分け法は、まず振動篩器を用い使用するマイカ粉体100gを目開きの順番に重ねたJIS規格の標準篩により10分間篩分けを行う。各篩の上に残った粉体の重量を測定して粒度分布を求める方法である。
【0112】
マイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmであることが好ましい。より好ましくは0.03〜0.3μmである。アスペクト比は好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100である。また使用するマイカはマスコバイトマイカが好ましく、そのモース硬度は約3である。マスコバイトマイカはフロゴバイトなど他のマイカに比較してより高剛性および高強度を達成でき、本発明の課題をより良好なレベルにおいて解決する。したがって、本発明のより好適なマイカは、平均粒径が5〜250μm、より好ましくは5〜50μmであるマスコバイトである。かかる好適なマイカとしては例えば、山口雲母工業所製「A−21」、キンセイマテック社製「KWM−200」等が例示される。また、マイカの粉砕法としては乾式粉砕法および湿式粉砕法のいずれで製造されたものであってもよい。乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるが、一方湿式粉砕法は、マイカをより薄く細かく粉砕するのに有効である(樹脂組成物の剛性向上効果はより高くなる)。本発明では、湿式粉砕法のマイカがより好適である。
【0113】
(C−3)ワラストナイト
ワラストナイトの繊維径は0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、0.1〜3μmが更に好ましい。またそのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は3以上が好ましい。アスペクト比の上限としては30以下が挙げられる。ここで繊維径は電子顕微鏡で強化フィラーを観察し、個々の繊維径を求め、その測定値から数平均繊維径を算出する。電子顕微鏡を使用するのは、対象とするレベルの大きさを正確に測定することが光学顕微鏡では困難なためである。繊維径は、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、繊維径を測定する対象のフィラーをランダムに抽出し、中央部の近いところで繊維径を測定し、得られた測定値より数平均繊維径を算出する。観察の倍率は約1000倍とし、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。一方平均繊維長の測定は、フィラーを光学顕微鏡で観察し、個々の長さを求め、その測定値から数平均繊維長を算出する。光学顕微鏡の観察は、フィラー同士があまり重なり合わないように分散されたサンプルを準備することから始まる。観察は対物レンズ20倍の条件で行い、その観察像を画素数が約25万であるCCDカメラに画像データとして取り込む。得られた画像データを画像解析装置を使用して、画像データの2点間の最大距離を求めるプログラムを使用して、繊維長を算出する。かかる条件の下では1画素当りの大きさが1.25μmの長さに相当し、測定本数は500本以上(600本以下が作業上好適である)で行う。本発明のワラストナイトは、その元来有する白色度を十分に樹脂組成物に反映させるため、原料鉱石中に混入する鉄分並びに原料鉱石を粉砕する際に機器の摩耗により混入する鉄分を磁選機によって極力取り除くことが好ましい。かかる磁選機処理によりワラストナイト中の鉄の含有量はFe
2O
3に換算して、0.5重量%以下であることが好ましい。したがって、本発明のより好適なワラストナイトは、その繊維径が0.1〜10μm、平均粒径が5〜250μmであり、鉄の含有量はFe
2O
3に換算して0.5重量%以下のワラストナイトである。かかる好適なワラストナイトとしては例えばキンセイマテック社製「SH−1250」、「SH−1800」、関西マテック社製「KGP−H40」、NYCO社製「NYGLOS4W」等が例示される。
【0114】
本発明における充填材は、アルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理された充填材である。アルキル基を含有するシランカップリング剤としては、R
anSi(OR
b)
4−n(式中、R
a及びR
bは、それぞれ炭素原子数1〜30のアルキル基であり、nは、0〜4の整数であり;好ましくはR
aは、炭素原子数5〜25のアルキル基であり、R
bは、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、nは、1〜3の整数であり;より好ましくはR
aは、炭素原子数10〜20のアルキル基であり、R
bは、炭素原子数1〜3のアルキル基であり、nは、3の整数である)の化学式を有するシランカップリング剤を挙げることができ、例えばドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシランが例示される。
【0115】
シランカップリング剤による表面処理の方法は、特に限定されるものではなく、乾式、湿式、インテグラルブレンド等の方法で行うことができる。いずれの方法を用いてもよいが、乾式法または湿式法が好ましい。充填材がアルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理されていない場合は、面衝撃特性が悪化する。
【0116】
C成分の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して10〜50重量部であり、好ましくは20〜40重量部、さらに好ましくは20〜30重量部である。下限以上では、剛性や機械的強度が良好であり、上限以下では、熱安定性や耐衝撃性が良好である。
【0117】
<ゴム質重合体>
本発明の樹脂組成物はゴム質重合体を実質的に含有しない樹脂組成物であり、含有していたとしても上記A成分及びB成分の合計100重量部に対して3重量部以下、好ましくは1重量部以下である。ゴム質重合体とは、ゴム成分に一段または多段でビニル系単量体または該単量体との混合物を共重合したものであり、具体的にはポリブタジエン、ジエン系共重合体、ポリイソプレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレンと脂肪族ビニルとの共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、並びにシリコーン系ゴム等が挙げられる。ゴム質重合体を含有することにより、面衝撃特性が悪化する。
【0118】
<その他の添加剤について>
本発明の樹脂組成物は、上記A成分〜C成分以外にも、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種安定剤、離型剤、色剤および難燃剤等の添加剤を含むことができる。
(i)安定剤
本発明の樹脂組成物には公知の各種安定剤を配合することができる。安定剤としては、リン系安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤等が挙げられる。
【0119】
(i−1)リン系安定剤
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィン等が例示される。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、アシッドホスフェート化合物が好ましい。尚、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、これらの混合物のいずれも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様にいずれをも含むものとする。
【0120】
トリオルガノホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等が例示される。これらの中でもトリアルキルホスフェートが好ましい。かかるトリアルキルホスフェートの炭素数は、好ましくは1〜22、より好ましくは1〜4である。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリメチルホスフェートである。
【0121】
アシッドホスフェート化合物としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、およびビスフェノールAアシッドホスフェート等が例示される。これらの中でも炭素数10以上の長鎖ジアルキルアシッドホスフェートが熱安定性の向上に有効であり、該アシッドホスフェート自体の安定性が高いことから好ましい。
【0122】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0123】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が例示される。
【0124】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0125】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0126】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン等が例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0127】
好適なリン系安定剤は、トリオルガノホスフェート化合物、アシッドホスフェート化合物、および下記式(XIII)で表されるホスファイト化合物である。殊にトリオルガノホスフェート化合物を配合することが好ましい。
【0128】
【化17】
式(XIII)中、RおよびR’は炭素数6〜30のアルキル基または炭素数6〜30のアリール基またはアルキルアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0129】
上記の如く、ホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P−EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P−EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。
【0130】
また上記式(XIII)の中でもより好適なホスファイト化合物は、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0131】
(i−2)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール化合物としては、通常、樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセテート、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)アセチルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)イソシアヌレート等が例示される。
【0132】
上記化合物の中でも、本発明においてはテトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特に3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0133】
リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤はいずれかが配合されることが好ましい。殊にリン系安定剤が配合されることが好ましく、トリオルガノホスフェート化合物が配合されることがより好ましい。リン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、それぞれA成分とB成分との合計100重量部を基準として、好ましくは0.005〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.3重量部である。
【0134】
(i−3)紫外線吸収剤
本発明の樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明の樹脂組成物は良好な色相をも有することから、紫外線吸収剤の配合により屋外の使用においてもかかる色相を長期間維持することができる。
【0135】
ベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が例示される。
【0136】
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体等の2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体等が例示される。
【0137】
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノール等が例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0138】
環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等が例示される。
【0139】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が例示される。
【0140】
さらに紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレート等の単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0141】
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
【0142】
紫外線吸収剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.02〜2重量部、更に好ましくは0.03〜1重量部、最も好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0143】
(i−4)その他の熱安定剤
本発明の樹脂組成物には、上記のリン系安定剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の熱安定剤を配合することもできる。かかるその他の熱安定剤は、これらの安定剤および酸化防止剤のいずれかと併用されることが好ましく、特に両者と併用されることが好ましい。かかる他の熱安定剤としては、例えば3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(かかる安定剤の詳細は特開平7−233160号公報に記載されている)が好適に例示される。かかる化合物はIrganox HP−136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば上記社製のIrganox HP−2921が好適に例示される。本発明においてもかかる予め混合された安定剤を利用することもできる。ラクトン系安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として、好ましくは0.0005〜0.05重量部、より好ましくは0.001〜0.03重量部である。
【0144】
またその他の安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート等のイオウ含有安定剤が例示される。かかる安定剤は、本発明の樹脂組成物が回転成形に適用される場合に特に有効である。かかるイオウ含有安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.01〜0.08重量部である。
【0145】
(ii)離型剤
本発明の樹脂組成物は、その成形時の生産性向上や成形品の寸法精度の向上を目的として、更に、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイル等)、パラフィンワックス、蜜蝋等の公知の離型剤を配合することもできる。本発明の樹脂組成物は、良好な流動性を有することから圧力伝播が良好で、歪の均一化された成形品が得られる。一方で離型抵抗が大きくなるような複雑形状の成形品の場合、離型時における成形品の変形を招く恐れがある。上記特定の成分の配合は、かかる問題を樹脂組成物の特性を損なうことなく解決するものである。
【0146】
かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数は、好ましくは3〜32、より好ましくは5〜30である。一方、脂肪族カルボン酸は好ましくは炭素数3〜32、より好ましくは炭素数10〜30の脂肪族カルボン酸である。その中でも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪酸エステルは、全エステル(フルエステル)が高温時の熱安定性に優れる点で好ましい。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1〜30の範囲がより好ましい。更に脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0147】
ポリオレフィン系ワックスとしては、エチレン単独重合体、炭素原子数3〜60のα−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体、またはエチレンと炭素原子数3〜60のα−オレフィンとの共重合体等の、分子量が1,000〜10,000のものが例示される。かかる分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により標準ポリスチレン換算で測定される数平均分子量である。かかる数平均分子量の上限は、より好ましくは6,000、更に好ましくは3,000である。ポリオレフィン系ワックスにおけるα−オレフィン成分の炭素数は好ましくは60以下、より好ましくは40以下である。より好適な具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテン等が例示される。好適なポリオレフィン系ワックスはエチレン単独重合体、もしくはエチレンと炭素原子数3〜60のα−オレフィンとの共重合体である。炭素原子数3〜60のα−オレフィンの割合は、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。いわゆるポリエチレンワックスとして市販されているものが好適に利用される。
【0148】
離型剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として好ましくは0.005〜5重量部、より好ましくは0.01〜4重量部、更に好ましくは0.02〜3重量部である。
【0149】
(iii)染顔料
本発明の樹脂組成物は、更に各種の染顔料を含有し多様な意匠性を発現する成形品を提供できる。本発明で使用する染顔料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等を挙げることができる。
【0150】
本発明の樹脂組成物はメタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。メタリック顔料としては、アルミ粉が好適である。また、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を配合することにより、発光色を生かした更に良好な意匠効果を付与することができる。
【0151】
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料等を挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。
【0152】
上記の染顔料の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として、0.00001〜1重量部が好ましく、0.00005〜0.5重量部がより好ましい。
【0153】
(iv)熱線吸収能を有する化合物
本発明の樹脂組成物は熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。かかる化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化イモニウム等の金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステン等の金属ホウ化物系や酸化タングステン系近赤外線吸収剤等の近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含む)およびフラーレン等が例示される。好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
【0154】
(v)光拡散剤
本発明の樹脂組成物には、光拡散剤を配合して光拡散効果を付与することができる。かかる光拡散剤としては高分子微粒子、炭酸カルシウムの如き低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示される。かかる高分子微粒子は、既にポリカーボネート樹脂の光拡散剤として公知の微粒子である。より好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン架橋粒子等が例示される。光拡散剤の形状は球形、円盤形、柱形、および不定形等が例示される。かかる球形は、完全球である必要はなく変形しているものを含み、かかる柱形は立方体を含む。好ましい光拡散剤は球形であり、その粒径は均一であるほど好ましい。光拡散剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、更に好ましくは0.01〜3重量部である。尚、光拡散剤は2種以上を併用することができる。
【0155】
(vi)光高反射用白色顔料
本発明の樹脂組成物には、光高反射用白色顔料を配合して光反射効果を付与することができる。かかる白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーン等有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましい。かかる光高反射用白色顔料の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として3〜30重量部が好ましく、8〜25重量部がより好ましい。尚、光高反射用白色顔料は2種以上を併用することができる。
【0156】
(vii)帯電防止剤
本発明の樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩等の有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量はA成分およびB成分の合計100重量部を基準として、5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは1〜3.5重量部、更に好ましくは1.5〜3重量部の範囲である。
【0157】
帯電防止剤としては例えば、(2)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、および有機スルホン酸バリウム等の有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。かかる金属塩は前述のとおり、難燃剤としても使用される。かかる金属塩は、より具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩等が例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量はA成分およびB成分の合計100重量部を基準として、0.5重量部以下が適切であり、好ましくは0.001〜0.3重量部、より好ましくは0.005〜0.2重量部である。特にカリウム、セシウム、およびルビジウム等のアルカリ金属塩が好適である。
【0158】
帯電防止剤としては、例えば(3)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩等の有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩はA成分およびB成分の合計100重量部を基準として、0.05重量部以下が適切である。帯電防止剤としては、例えば(4)ポリエーテルエステルアミドの如きポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分とB成分との合計100重量部を基準として5重量部以下が適切である。
【0159】
(viii)酸性度調整剤
本発明の樹脂組成物には、低分子のまたはポリマー状のカルボン酸化合物や無水カルボン酸化合物からなる酸性度調整剤を配合することができる。該成分を配合することにより、樹脂組成物は溶融加工される温度領域において熱分解反応や酸化反応を発生しやすくなる。分解反応による生成物の中にはポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂と副反応を起こす物質が存在するため、加熱溶融して成形する場合や成形品に熱履歴が生じる場合は変色による色相の悪化や分子量低下などが起こる場合がある。色相の悪化や分子量低下などは高温であるほど生じやすいが、特に、塩基性雰囲気下になるとカーボネート結合の分解反応が起こり易くなる。かかる分解を抑制するには、樹脂組成物に上記の如く酸性度調整剤を添加し、樹脂酸性度を調整する方法がよい。酸性度調整剤は、弱酸性領域にpk(酸の解離定数の逆数の対数)を持つ化合物であり、中でも好ましいpkの範囲は4〜7、特に好ましくは4.5〜5.5である。低分子の酸性度調整剤としては、酢酸、プロピオン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、およびコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸、無水酢酸および無水コハク酸などの脂肪族カルボン酸の酸無水物、安息香酸の如き芳香族モノカルボン酸、並びにイソフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸などが例示される。ポリマー状の酸性度調整剤としては、例えばスチレン−アクリル酸共重合体、およびスチレン−無水マレイン酸共重合体などが例示される。
【0160】
酸性度調整剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として、0.0001〜1重量部が好ましく、0.001〜0.5重量部がより好ましい。酸性度調整剤の配合により、本発明の樹脂組成物は、更に高温の成形条件においても目的とする良好な特性を発揮することができる。
【0161】
(ix)その他の添加剤
本発明の樹脂組成物には、A成分、B成分以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、その他の流動改質剤、抗菌剤、流動パラフィンの如き分散剤、光触媒系防汚剤、フォトクロミック剤等を配合することができる。
【0162】
かかる他の樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、並びに熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)等の樹脂が挙げられる。エラストマーとしては、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。
上記の他の熱可塑性樹脂やエラストマーの含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
【0163】
<樹脂組成物の製造方法について>
本発明の樹脂組成物の調製には任意の方法が採用される。例えばA成分、B成分、C成分および任意に他の成分を予備混合し、その後、溶融混練してペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等を挙げることができる。予備混合においては必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。他の方法としては例えば、A成分としてパウダーの形態を有するものを含む場合、かかるパウダーの一部と配合する添加剤とをブレンドしてパウダーで希釈した添加剤のマスターバッチを製造し、かかるマスターバッチを利用する方法が挙げられる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器等を挙げることができるが、ベント式二軸押出機が好ましい。
【0164】
他に、各成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることができる。また一部の成分を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融混練機に供給する方法が挙げられる。特に無機充填材が配合される場合には、無機充填材は押出機途中の供給口から溶融樹脂中にサイドフィーダーの如き供給装置を用いて供給されることが好ましい。予備混合の手段や造粒に関しては、前記と同様である。なお、配合する成分に液状のものがある場合には、溶融混練機への供給にいわゆる液注装置、または液添装置を使用することができる。
【0165】
押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物等を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルター等)等を挙げることができる。
【0166】
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機等を挙げることができる。
【0167】
さらに溶融混練前にA成分およびB成分に含まれる水分が少ないことが好ましい。したがって各種熱風乾燥、電磁波乾燥、真空乾燥等の方法により、A成分またはB成分のいずれかまたは両者を乾燥した後に溶融混練することがより好ましい。溶融混練中のベント吸引度は、1〜60kPa、好ましくは2〜30kPaの範囲が好ましい。
【0168】
上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃等の影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の低減、運送または輸送時に発生する微小粉の低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状等一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0169】
<本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品について>
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0170】
また、押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
【実施例】
【0171】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお特に説明が無い限り実施例中の部は重量部、%は重量%である。なお、評価および樹脂ペレットの製造は下記の方法によって実施した。
【0172】
(I)ポリエステル樹脂の評価
(1)チタン元素含有量
アジレント・テクノロジー社製ICP質量分析装置Agilent7500csを用いて測定した。なお、試料は、秤量した試料に硫酸を添加し、マイクロウェーブ分解により樹脂を灰化後、更に硝酸を添加しマイクロウェーブ分解を行って得られた残渣金属を超純水で定容し、残渣からTi元素量を測定した。
(2)固有粘度(IV値)
樹脂組成物0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に加熱溶解した後、室温に冷却し、得られた樹脂溶液の粘度を、オストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した。得られた溶液粘度のデータから固有粘度(IV値)を求めた。
【0173】
(II)樹脂ペレットの製造
ポリカーボネート−ポリジオルガノシロキサン共重合樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、充填材および各種添加剤を表1および表2記載の配合量で、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練し、本発明の樹脂組成物からなるペレットを得た。充填材を除く各種添加剤は配合量の10〜100倍の濃度を目安に予め芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーとの予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は日本製鋼所社製:TEX30α−31.5BW−2V(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数120rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで270℃とした。
【0174】
(III)樹脂組成物の評価
(III−1)耐湿熱性
上記(II)により得られた樹脂ペレットを120℃にて約5時間乾燥させペレット中の水分率を200ppm以下にした後、射出成形機(住友重機械工業社製:SG260M−HP)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル50秒、射出速度15mm/secの条件で、長さ70mm×幅50mm×厚さ2.0mmの試験片を連続的に射出成形した。該試験片を温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したものを湿熱処理前の試験片とし、該湿熱処理前の試験片を温度80℃、相対湿度95%の恒温恒湿試験機に500時間放置して湿熱処理した後、再び温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した試験片を湿熱処理後の試験片とした。
【0175】
湿熱処理前および湿熱処理後の試験片を、異物が混入しないように粉砕し、120℃にて約5時間乾燥させ水分率を200ppm以下にした後、それぞれの粉砕サンプルについて温度280℃、荷重2.16kgfの条件下でISO1133に準拠した方法でMVR(メルトボリュームレイト)測定を行った。測定は東洋精機(株)製セミオートメルトインデクサー2A型により行った。耐湿熱性は下記式に従って計算し、湿熱処理前後の変化率(ΔMVR(耐湿熱性))を算出した。このΔMVR(耐湿熱性)が大きいほど、成形品の樹脂劣化が大きく耐湿熱性に劣ることを意味する。
ΔMVR(耐湿熱性)=100×(湿熱処理後の試験片のMVR)/(湿熱処理前の試験片のMVR)
【0176】
(III−2)熱安定性
上記(II)により得られた樹脂ペレットを120℃にて約5時間乾燥させペレット中の水分率を200ppm以下にした後、射出成形機(住友重機械工業社製:SG260M−HP)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル50秒、射出速度15mm/secの条件で、長さ70mm×幅50mm×厚さ2.0mmの試験片を連続的に射出成形し、連続成形品の試験片を得た(連続成形品の試験片の品質は、前記の湿熱処理前の試験片と実質同じである)。連続成形品の試験片を得た後、成形機を10分間停止し、成形機シリンダー内で溶融樹脂を滞留させた。成形機を停止して10分後に再び成形を開始し、再成形から2ショット目を滞留成形品の試験片とした。
【0177】
連続成形品と滞留成形品を異物が混入しないように粉砕し、120℃にて約5時間乾燥させ水分率を200ppm以下にした後、それぞれの粉砕サンプルについて温度280℃、荷重2.16kgfの条件下でISO1133に準拠した方法でMVR(メルトボリュームレイト)測定を行った。測定は東洋精機(株)製セミオートメルトインデクサー2A型により行った。熱安定性は下記式にしたがって計算し、滞留前後のMVR変化率(ΔMVR(熱安定性))を算出した。このΔMVR(熱安定性)が大きいほど、滞留時の樹脂劣化が大きく熱安定性に劣ることを意味する。
ΔMVR(熱安定性)=100×(滞留成形品の試験片のMVR)/(連続成形品の試験
片のMVR)
【0178】
(III−3)曲げ弾性率
上記(II)により得られた樹脂ペレットを120℃にて約5時間乾燥させペレット中の水分率を200ppm以下にした後、射出成形機(住友重機械工業社製:SG260M−HP)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル50秒、射出速度15mm/secの条件で試験片を成形し、ISO178に準拠した方法で曲げ弾性率の測定を実施した。本発明において剛性は、3400MPa以上であることが好ましく、4800MPa以上であることがより好ましい。
【0179】
(III−4)デュポン衝撃(面衝撃)
上記(II)により得られた樹脂ペレットを120℃にて約5時間乾燥させペレット中の水分率を200ppm以下にした後、射出成形機(住友重機械工業社製:SG260M−HP)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃で、長さ150mm×幅150mm×厚み3mmの試験片を成形した。得られた試験片を熱風乾燥機で150℃×1時間処理し、その後温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した。さらに該試験片を温度−30℃の環境下で5時間処理した後の破断エネルギーを、温度−30℃の環境下で荷重3kgの撃芯(先端形状フラット)を試験片直下に落下させた際のクラックの発生する高さから算出した。本発明においてデュポン衝撃強度は、5J以上であることが好ましく、10J以上であることがより好ましい。なお、本試験機における荷重3kgで測定可能な最大衝撃エネルギーは30Jである。
【0180】
(III−5)耐薬品性
上記(II)により得られた樹脂ペレットを120℃にて約5時間乾燥させペレット中の水分率を200ppm以下にした後、射出成形機(住友重機械工業社製:SG260M−HP)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル50秒、射出速度15mm/secの条件でISO527−1、2に準拠した試験片1A型の試験片を成形した。成形した試験片に6MPaの曲げ歪みを与え、温度23℃、相対湿度50%の環境下で30分間エッソレギュラーガソリンに浸漬した。耐薬品性の評価は、歪を与えた箇所の試験前後の外観を目視観察して行った。
○:浸漬前後で外観に変化はなく異常がないもの
×:浸漬前後で外観に変化がありクラックや割れが発生したもの
【0181】
(実施例1〜17、および比較例1〜8)
表1および表2に記載の各成分からなる樹脂組成物のペレットを製造し、上記方法にて樹脂組成物を評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0182】
(A成分)
A−1:ビスフェノールAとホスゲンとポリジオルガノシロキサン化合物から製造された粘度平均分子量24,000のポリカーボネートーポリジオルガノシロキサン共重合樹脂パウダー(ポリジオルガノシロキサン成分含有量8.2%)
A−2:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量19,700のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人(株)製:パンライトL−1225WX)
【0183】
(B成分)
B−1:以下の方法で製造したポリエチレンテレフタレート樹脂
100℃まで加熱したエチレングリコールにモノラウリルホスフェートを溶解させた溶液を攪拌しながら、チタンテトラブトキシドを含むエチレングリコールと酢酸の混合液をゆっくり添加し、チタン化合物とリン化合物との反応を完結させて触媒を製造した。次に、エチレングリコールとテレフタル酸から一般的な方法でエステルオリゴマーを生成した後、上記触媒とともに重縮合反応槽に入れて重縮合反応を行った。重縮合の進行の度合いを、反応系内における攪拌翼への負荷をモニターすることによりチェックし、所望の重合度に達したとき反応を終了させた。その後、系内の反応混合物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、冷却固化し、カッティングして、粒径が約3mm程度のポリエチレンテレフタレートの粒状ペレットを調製した。(IV=0.53、チタン元素含有量23ppm)
B−2:以下の方法で製造したポリエチレンテレフタレート樹脂
B−1を更に高速攪拌方式の流動式結晶化機を用いて半結晶化、窒素流通下で結晶化させて乾燥させ、充填式固相重合塔にて窒素流通下で固相重縮合を実施した。反応時間を調整しB−2を得た。(IV=0.77、チタン元素含有量24ppm)
B−3:Ge系触媒を用いて製造されたIVが0.52のポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製:TR−MB)。
B−4:Ge系触媒を用いて製造されたIVが0.83のポリエチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製:TR−8580H)。
B−5:Ti−Mg系触媒を用いて製造されたIVが0.84のポリエチレンテレフタレート樹脂(南亞製:7802)。
B−6:Sb系触媒を用いて製造されたIVが0.84のポリエチレンテレフタレート樹脂(南亞製:AA08E)。
【0184】
(C成分)
C−1:平均粒子径が7μmのワラストナイト(NYCO Minerals社製:NYGLOS4W)をヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理したワラストナイト
C−2:平均粒子径が7μmのワラストナイト(NYCO Minerals社製:NYGLOS4W)をオクタデシルトリメトキシシランで表面処理したワラストナイト
C−3:平均粒子径が2μmのタルク(勝光山鉱業所製:ビクトリライトTK−RC)をヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理したタルク
C−4:平均粒子径が40μmの湿式粉砕マイカ(キンセイマテック社製:KWM−200)をヘキサデシルトリメトキシシランで表面処理したマイカ
C−5(比較用):平均粒子径が40μmの湿式粉砕マイカ(キンセイマテック社製:KWM−200)
C−6(比較用):平均粒子径が40μmの湿式粉砕マイカ(キンセイマテック社製:KWM−200)をエポキシ基を含有するシランカップリング剤で表面処理したマイカ
【0185】
(その他成分)
D−1:ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Song Wong社製:Songnox 6260PW)
D−2:トリメチルホスフェート(大八化学工業社製:TMP)
D−3:ペンタエリスリトールテトラステアレート(理研ビタミン社製:EW400)
E−1(ゴム質重合体):ポリオルガノシリコンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム90重量%に、メチルメタクリレートがグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体(三菱レイヨン社製:メタブレンS2001)
【0186】
【表1】
【0187】
【表2】
【0188】
表1および表2に示すように、比較例1および比較例2はアルキル基を含有するシランカップリング剤で表面処理されていない充填材を使用しているため、実施例と比較して面衝撃特性に劣る。比較例3はゴム質重合体を含有するため、実施例と比較して面衝撃特性に劣る。比較例4はポリカーボネート樹脂の含有量が請求の範囲より少ないため、実施例と比較して面衝撃特性に劣る。比較例5はポリエステル樹脂の含有量が請求の範囲より少ないため、耐薬品性に劣る。比較例6はC成分の含有量が請求の範囲より少ないため、曲げ弾性率に劣る。比較例7はC成分の含有量が請求の範囲より多いため、熱安定性、面衝撃特性に劣る。比較例8はA1成分の含有量が請求の範囲より少ないため、面衝撃特性に劣る。