(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2019215834
(43)【国際公開日】20191114
【発行日】20200528
(54)【発明の名称】フレキシブル発光デバイスの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20200501BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200501BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20200501BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20200501BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20200501BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20200501BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200501BHJP
【FI】
   !H05B33/10
   !H05B33/14 A
   !H05B33/02
   !H01L27/32
   !H01L33/00 L
   !G09F9/00 338
   !G09F9/30 310
   !G09F9/30 308Z
   !G09F9/00 302
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
【出願番号】2019564180
(21)【国際出願番号】JP2018017903
(22)【国際出願日】20180509
(11)【特許番号】6674592
(45)【特許公報発行日】20200401
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
【住所又は居所】大阪府堺市堺区匠町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 克彦
【住所又は居所】大阪府堺市堺区匠町1番地 堺ディスプレイプロダクト株式会社内
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC45
3K107DD16
3K107DD17
3K107EE03
3K107FF15
3K107GG52
5C094AA43
5C094AA44
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5C094DA06
5C094DA13
5F142AA86
5F142BA32
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5F142FA42
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5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435BB05
5G435HH05
5G435KK05
(57)【要約】
本開示のフレキシブル発光デバイスの製造方法によれば、積層構造体(100)の樹脂膜(30)の中間領域(30i)とフレキシブル基板領域(30d)とを分割した後、フレキシブル基板領域(30d)とガラスベース(10)との界面を剥離光で照射する。積層構造体(100)をステージ(210)に接触させた状態で、積層構造体(100)を第1部分(110)と第2部分(120)とに分離する。第1部分(110)は、ステージ(210)に接触した複数の発光デバイス(1000)を含み、発光デバイス(1000)は、複数の機能層領域(20)とフレキシブル基板領域(30d)を有する。第2部分(120)は、ガラスベース(10)と中間領域(30i)とを含む。剥離光で照射する工程は、配列された複数の光源から前記剥離光を形成し、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、中間領域(30i)とガラスベース(10)との界面の少なくとも一部に対する剥離光の照射強度を、フレキシブル基板領域(30d)とガラスベース(10)との界面に対する剥離光の照射強度よりも低下させる工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備える積層構造体を用意する工程と、
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とを分割する工程と、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する工程と、
前記積層構造体の前記第2の表面をステージに接触させた状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する工程と、
を含み、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含み、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、
配列された複数の光源から前記剥離光を形成し、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度よりも低下させる工程を含む、フレキシブル発光デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記剥離光は、非コヒーレント光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記剥離光は、レーザ光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の前記形状は、前記第1の表面に垂直な方向から視たとき、切り欠き、突出部、および/または曲線状の輪郭を有している、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の個数、および、
前記積層構造体の前記第1部分に含まれる前記発光デバイスの個数は、いずれも複数である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調することを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向に延びるラインビームであり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を、前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させることによって実行される、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向、および前記第1の方向に交差する第2の方向に延びる面状光であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を静止または移動させることによって実行される、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第2の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記中間領域の幅の50%以上の幅を有する、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、1mm以上の幅を有する、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部における前記剥離光の照射強度と、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度との差異は、50mJ/cm2以上である、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記積層構造体を前記第1部分と前記第2部分とに分離する工程を行った後、
前記ステージに接触した前記発光デバイスに対して、処理を実行する工程を更に含む、請求項1から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備え、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とが分割されている、積層構造体を支持するステージと、
前記ステージに支持されている前記積層構造体における前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置と、
を備え、
前記剥離光照射装置は、
前記剥離光を形成する、配列された複数の光源を有しており、
前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度よりも低下させる、
フレキシブル発光デバイスの製造装置。
【請求項18】
前記複数の光源のそれぞれは、非コヒーレント光源である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項19】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記複数の光源は、それぞれ、半導体レーザ素子である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項20】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記剥離光照射装置は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調する駆動回路を有する、請求項17または18に記載の製造装置。
【請求項21】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項20に記載の製造装置。
【請求項22】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項21に記載の製造装置。
【請求項23】
前記ステージが前記積層構造体の前記第2の表面に接触した状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する駆動装置を更に備え、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含む、請求項17から22のいずれかに記載の製造装置。
【請求項24】
ガラスベースと前記ガラスベース上の合成樹脂フィルムとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置であって、
それぞれが紫外光を放射して前記剥離光を形成する複数の発光ダイオードと、
前記複数の発光ダイオードを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路を制御することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調するコントローラと、
を備える剥離光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブル発光デバイスの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルディスプレイの典型例は、ポリイミドなどの合成樹脂から形成されたフィルム(以下、「樹脂膜」と称する)と、樹脂膜に支持されたTFT(Thin Film Transistor)およびOLED(Organic Light Emitting Diode)などの素子を備えている。樹脂膜はフレキシブル基板として機能する。OLEDを構成する有機半導体層は水蒸気によって劣化しやすいため、フレキシブルディスプレイは、ガスバリア膜(封止用フィルム)によって封止されている。
【0003】
上記のフレキシブルディスプレイの製造は、樹脂膜が上面に形成されたガラスベースを用いて行われる。ガラスベースは、製造工程中、樹脂膜の形状を平面状に維持する支持体(キャリア)として機能する。樹脂膜上にTFT素子およびOLEDなどの発光素子、およびガスバリア膜などが形成されることにより、ガラスベースに支持された状態でフレキシブルディスプレイの構造が実現する。その後、フレキシブルディスプレイはガラスベースから剥離され、柔軟性を獲得する。TFT素子およびOLEDなどの発光素子が配列された部分を全体として「機能層領域」と呼ぶことができる。
【0004】
従来技術によれば、複数のフレキシブルディスプレイを含むシート状の構造物をガラスベースから剥離した後、このシート状の構造物に対して光学部品などの実装が行われる。その後、シート状の構造物から複数のフレキシブルデバイスが分割される。この分割は、例えばレーザビームの照射によって行われる。
【0005】
特許文献1は、個々のフレキシブルディスプレイをガラスベース(支持基板)から剥離するため、個々のフレキシブルディスプレイとガラスベースとの界面をレーザ光で照射する方法を開示している。特許文献1に開示されている方法によれば、剥離光照射の後、個々のフレキシブルディスプレイが分割され、それぞれのフレキシブルディスプレイがガラスベースから剥がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−48619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の製造方法によれば、複数のフレキシブルディスプレイを含むシート状の構造物に例えば封止フィルム、偏光板および/または放熱シートなどの高価な部品を実装した後、レーザビームの照射による分割を行うため、レーザビームの照射によって分割される不要部分、すなわち最終的にディスプレイを構成しない部分は全くの無駄になる。また、ガラスベースから剥離された後、剛性を有しない複数のフレキシブルディスプレイをハンドリングすることが難しいという課題もある。
【0008】
このような課題は、発光素子としてOLEDを有するフレキシブルディスプレイに限定されず、発光素子として無機半導体材料から形成されたマイクロLED(μLED)を有するフレキシブル発光デバイスの製造に際しても発生し得る。
【0009】
本開示は、上記の課題を解決することができる、フレキシブル発光デバイスの製造方法および製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のフレキシブル発光デバイスの製造方法は、例示的な実施形態において、第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、前記第1の表面を規定するガラスベース;TFT層および発光素子層を含む機能層領域;前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;を備える積層構造体を用意する工程と、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とを分割する工程と、前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する工程と、前記積層構造体の前記第2の表面をステージに接触させた状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する工程と、を含み、前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含み、前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、配列された複数の光源から前記剥離光を形成し、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度よりも低下させる工程を含む。
【0011】
ある実施形態において、前記剥離光は、非コヒーレント光である。
【0012】
ある実施形態において、前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、前記剥離光は、レーザ光である。
【0013】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の前記形状は、前記第1の表面に垂直な方向から視たとき、切り欠き、突出部、および/または曲線状の輪郭を有している。
【0014】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の個数、および、前記積層構造体の前記第1部分に含まれる前記発光デバイスの個数は、いずれも複数である。
【0015】
ある実施形態において、前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調することを含む。
【0016】
ある実施形態において、前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている。
【0017】
ある実施形態において、前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある。
【0018】
ある実施形態において、前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向に延びるラインビームであり、前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を、前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させることによって実行される。
【0019】
ある実施形態において、前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向、および前記第1の方向に交差する第2の方向に延びる面状光であり、前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を静止または移動させることによって実行される。
【0020】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している。
【0021】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第2の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している。
【0022】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記中間領域の幅の50%以上の幅を有する。
【0023】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、1mm以上の幅を有する。
【0024】
ある実施形態において、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部における前記剥離光の照射強度と、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度との差異は、50mJ/cm2以上である。
【0025】
ある実施形態において、前記積層構造体を前記第1部分と前記第2部分とに分離する工程を行った後、前記ステージに接触した前記発光デバイスに対して、処理を実行する工程を更に含む。
【0026】
本開示のフレキシブル発光デバイスの製造方法は、例示的な実施形態において、第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、前記第1の表面を規定するガラスベース;TFT層および発光素子層を含む機能層領域;前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;を備え、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とが分割されている、積層構造体を支持するステージと、
前記ステージに支持されている前記積層構造体における前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置と、を備え、前記剥離光照射装置は、前記剥離光を形成する、配列された複数の光源を有しており、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度よりも低下させる。
【0027】
ある実施形態において、前記複数の光源のそれぞれは、非コヒーレント光源である。
【0028】
ある実施形態において、前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、前記複数の光源は、それぞれ、半導体レーザ素子である。
【0029】
ある実施形態において、前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、前記剥離光照射装置は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調する駆動回路を有する。
【0030】
ある実施形態において、前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている。
【0031】
ある実施形態において、前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある。
【0032】
雨前記ステージが前記積層構造体の前記第2の表面に接触した状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する駆動装置を更に備え、前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含む。
【0033】
本開示の剥離光照射装置は、例示的な実施形態において、ガラスベースと前記ガラスベース上の合成樹脂フィルムとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置であって、それぞれが紫外光を放射して前記剥離光を形成する複数の発光ダイオードと、前記複数の発光ダイオードを駆動する駆動回路と、前記駆動回路を制御することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調するコントローラとを備える。
【発明の効果】
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記の課題を解決する、フレキシブル発光デバイスの新しい製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本開示によるフレキシブル発光デバイスの製造方法に用いられる積層構造体の構成例を示す平面図である。
【図1B】図1Aに示される積層構造体のB−B線断面図である。
【図1C】積層構造体における樹脂膜の構成例を示す平面図である。
【図1D】積層構造体における樹脂膜の他の構成例を示す平面図である。
【図1E】積層構造体の他の例を示す断面図である。
【図1F】積層構造体の更に他の例を示す断面図である。
【図2】積層構造体の分割位置を模式的に示す断面図である。
【図3A】ステージが積層構造体を支持する直前の状態を模式的に示す図である。
【図3B】ステージが積層構造体を支持している状態を模式的に示す図である。
【図3C】剥離光によって積層構造体のガラスベースと樹脂膜との界面を照射している状態を模式的に示す図である。
【図4】剥離光照射装置のレーザ光源から出射されたレーザ光(剥離光)で積層構造体を照射する様子を模式的に示す斜視図である。
【図5】剥離光照射装置における信号、データ、および指令の流れを模式的に示すブロック図である。
【図6】ラインビーム光源に用いられ得る半導体レーザ素子の基本構成を模式的に示す斜視図である。
【図7A】ラインビーム光源の構成例と走査中における半導体レーザ素子から出射されたレーザ光の光強度分布の例を模式的に示す図である。
【図7B】ラインビーム光源の構成例と走査中における半導体レーザ素子から出射されたレーザ光の光強度分布の他の例を模式的に示す図である。
【図8】ラインビーム光源の他の構成例を模式的に示す斜視図である。
【図9】剥離光の照射強度のY軸方向分布の例を模式的に示す図である。
【図10】剥離光の照射強度のY軸方向分布の他の例を模式的に示す図である。
【図11】剥離光の照射強度のY軸方向分布の更に他の例を模式的に示す図である。
【図12】剥離光の照射強度のY軸方向分布の更に他の例を模式的に示す図である。
【図13】剥離光の照射強度のX軸方向(走査方向)分布の例を模式的に示す図である。
【図14】剥離光の照射強度のX軸方向分布の他の例を模式的に示す図である。
【図15A】剥離光の照射強度のX軸方向分布の更に他の例を模式的に示す図である。
【図15B】剥離光の照射強度のX軸方向分布の更に他の例を模式的に示す図である。
【図16A】剥離光の照射後に積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する前の状態を模式的に示す断面図である。
【図16B】積層構造体を第1部分と第2部分とに分離した状態を模式的に示す断面図である。
【図17】剥離装置で積層構造体から分離されたガラスベースを示す斜視図である。
【図18】ステージからガラスベースが除去される状態を示す斜視図である。
【図19】ステージからガラスベースが除去された状態を示す斜視図である。
【図20】ステージからガラスベースが除去された状態を示す断面図である。
【図21】ステージから離れたフレキシブル発光デバイスを示す断面図である。
【図22】ステージに接触した複数の発光デバイスに固着された他の保護シートを示す断面図である。
【図23】複数の発光デバイスにそれぞれ実装される複数の部品を載せたキャリアシートを示す断面図である。
【図24A】本開示の実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの製造方法を示す工程断面図である。
【図24B】本開示の実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの製造方法を示す工程断面図である。
【図24C】本開示の実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの製造方法を示す工程断面図である。
【図24D】本開示の実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの製造方法を示す工程断面図である。
【図25】フレキシブル発光デバイスにおける1個のサブ画素の等価回路図である。
【図26】製造工程の途中段階における積層構造体の斜視図である。
【図27A】Y軸方向に配列された1列の発光ダイオード素子を備えるラインビーム光源214の上面を模式的に示す図である。
【図27B】図27Aに示されるラインビーム光源のB−B線断面である。
【図27C】積層構造体100に対するラインビーム光源の移動方向を示す図である。
【図28A】Y軸方向に配列された複数列の発光ダイオード素子を備えるラインビーム光源214の上面を模式的に示す図である。
【図28B】図28Aに示されるラインビーム光源のB−B線断面である。
【図28C】積層構造体に対するラインビーム光源の移動方向を示す図である。
【図28D】図28Aのラインビーム光源が形成しつつある照射領域を模式的に示平面図である。
【図28E】ラインビーム光源の走査中に、個々の発光ダイオードを流れる電流を時間的に変調することによって形成された照射領域の例を示す平面図である。
【図29】多数の発光ダイオード素子がマトリックス状に配列された面光源の例を模式的に示す上面図である。
【図30】多数の発光ダイオード素子がマトリックス状に配列された面光源の他の例を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を参照しながら、本開示によるフレキシブル発光デバイスの製造方法および製造装置の実施形態を説明する。「発光デバイス」の例は、ディスプレイおよび照明装置を含む。以下の説明において、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。本発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供する。これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図しない。
【0037】
<積層構造体>
図1Aおよび図1Bを参照する。本実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの製造方法では、まず、図1Aおよび図1Bに例示される積層構造体100を用意する。図1Aは、積層構造体100の平面図であり、図1Bは、図1Aに示される積層構造体100のB−B線断面図である。図1Aおよび図1Bには、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有するXYZ座標系が示されている。
【0038】
積層構造体100は、ガラスベース(マザー基板またはキャリア)10と、それぞれがTFT層20Aおよび発光素子層20Bを含む複数の機能層領域20と、ガラスベース10と複数の機能層領域20との間に位置してガラスベース10に固着している合成樹脂フィルム(以下、単に「樹脂膜」と称する)30と、複数の機能層領域20を覆う保護シート50を備えている。積層構造体100は、更に、複数の機能層領域20と保護シート50との間において、機能層領域20の全体を覆うガスバリア膜40を備えている。積層構造体100は、バッファ層などの図示されていない他の層を有していてもよい。
【0039】
本実施形態における発光素子層20Bは、例えば、2次元的に配列された複数のOLED素子を有している。本開示における「発光素子層」は、発光素子の2次元アレイを意味する。個々の発光素子は、OLED素子に限定されず、マイクロLED素子であってもよい。また、本実施形態におけるフレキシブル発光デバイスの典型例は、「フレキシブルディスプレイ」であるが、「フレキシブル照明装置」であってもよい。
【0040】
積層構造体100の第1の表面100aはガラスベース10によって規定され、第2の表面100bは保護シート50によって規定されている。ガラスベース10および保護シート50は、製造工程中に一時的に用いられる部材であり、最終的なフレキシブル発光デバイスを構成する要素ではない。
【0041】
図示されている樹脂膜30は、複数の機能層領域20をそれぞれ支持している複数のフレキシブル基板領域30dと、個々のフレキシブル基板領域30dを囲む中間領域30iとを含む。フレキシブル基板領域30dと中間領域30iは、連続した1枚の樹脂膜30の異なる部分にすぎず、物理的に区別される必要はない。言い換えると、樹脂膜30のうち、各機能層領域20の真下に位置している部分がフレキシブル基板領域30dであり、その他の部分が中間領域30iである。
【0042】
複数の機能層領域20のそれぞれは、最終的にフレキシブル発光デバイスのパネル(例えば「ディスプレイパネル」)を構成する。言い換えると、積層構造体100は、分割前の複数のフレキシブル発光デバイスを1枚のガラスベース10が支持している構造を有している。各機能層領域20は、例えば厚さ(Z軸方向サイズ)が数十μm、長さ(X軸方向サイズ)が12cm程度、幅(Y軸方向サイズ)が7cm程度のサイズを持つ形状を有している。これらのサイズは、必要な表示画面または発光面領域の大きさに応じて任意の大きさに設定され得る。
【0043】
次に図1Cを参照して、本実施形態におけるフレキシブル基板領域30dおよび中間領域30iの構成例をより詳しく説明する。図1Cは、本実施形態における樹脂膜30におけるフレキシブル基板領域30dおよび中間領域30iのレイアウトの例を示す平面図である。
【0044】
図示されている例において、個々のフレキシブル基板領域30dの形状は、切り欠き30U、突出部30V、および曲線状輪郭部分30Wを有している。フレキシブル基板領域30dの形状は、図1Aに示されるフレキシブル発光デバイスの形状に整合している。本実施形態におけるフレキシブル発光デバイスは、単純な矩形とは異なる形状を有している。この形状は、例えば、ディスプレイ装置として狭額縁のフレキシブル発光デバイスが搭載されるスマ−トフォン、タブレット端末、テレビジョンセットなどの電子機器の設計に応じている。より詳細には、このような電子機器には、ディスプレイ装置とは別に、カメラ、スピーカ、物理的スイッチなどの部品が実装され得る。図1Cに示されるフレキシブル基板領域30dの切り欠き30Uは、このような部品が配置される領域に設けられ得る。
【0045】
なお、複数のフレキシブル基板領域30dは、対応するフレキシブル発光デバイスの配置に対応して、行および列状に、2次元的に配列されている。中間領域30iは、直交する複数のストライプから構成され、格子パターンを形成している。ストライプは、フレキシブル基板領域30dの凹凸形状に応じた幅広部分および幅狭部分を含み得る。本実施形態における各ストライプの幅は、例えば1〜10mm程度である。樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dは、最終製品の形態において、個々のフレキシブル発光デバイスの「フレキシブル基板」として機能する。これに対して、樹脂膜30の中間領域30iは、最終製品を構成する要素ではない。
【0046】
本開示の実施形態において、積層構造体100の構成は、図示されている例に限定されない。1枚のガラスベース10に支持されている機能層領域20の個数(発光デバイスの個数)は、複数である必要はなく、単数であってもよい。機能層領域20が単数である場合、樹脂膜30の中間領域30iは、1個の機能層領域20の周りを囲む単純なフレームパターンを形成する。
【0047】
図1Dは、1枚のガラスベース10に支持されている発光デバイスの個数が1個である場合の樹脂膜30の構成例を示す平面図である。この例におけるフレキシブル基板領域30dの形状は、切り欠き30Uおよび突出部30Vを有している。このフレキシブル基板領域30dの形状は、大型のテレビまたはモニタに用いられ得るフレキシブル発光デバイスの形状に整合している。フレキシブル基板領域30dの切り欠き30Uは、カメラ、スピーカ、物理的スイッチなどの部品が実装される領域に設けられ得る。この例の1個のフレキシブル発光デバイスは、例えば1.5m×0.9mのサイズを有するガラスベース10上に形成され得る。
【0048】
各図面に記載されている各要素のサイズまたは比率は、わかりやすさの観点から決定されており、実際のサイズまたは比率を必ずしも反映していない。
【0049】
本開示の製造方法に用いられ得る積層構造体100は、図1Aおよび図1Bに示される例に限定されない。図1Eおよび図1Fは、それぞれ、積層構造体100の他の例を示す断面図である。図1Eに示される例において、保護シート50は、樹脂膜30の全体を覆い、樹脂膜30よりも外側に拡がっている。図1Fに示される例において、保護シート50は、樹脂膜30の全体を覆い、かつ、ガラスベース10よりも外側に拡がっている。後述するように、積層構造体100からガラスベース10が隔離された後、積層構造体100は、剛性を有しないフレキシブルな薄いシート状の構造物になる。保護シート50は、ガラスベース10の剥離を行う工程、および、剥離後の工程において、機能層領域20が外部の装置または器具などに衝突したり、接触したりしたとき、機能層領域20を衝撃および摩擦などから保護する役割を果たす。保護シート50は、最終的に積層構造体100から剥がし取られるため、保護シート50の典型例は、接着力が比較的小さな接着層(離型剤の塗布層)を表面に有するラミネート構造を有している。積層構造体100のより詳細な説明は、後述する。
【0050】
<発光デバイスの分割>
本実施形態のフレキシブル発光デバイスの製造方法によれば、上記の積層構造体100を用意する工程を実行した後、樹脂膜30の中間領域30iと複数のフレキシブル基板領域30dのそれぞれとを分割する工程を行う。
【0051】
図2は、樹脂膜30の中間領域30iと複数のフレキシブル基板領域30dのそれぞれとを分割する位置を模式的に示す断面図である。照射位置は、個々のフレキシブル基板領域30dの外周に沿っている。図2において、矢印で示される位置を切断用のレーザビームで照射し、積層構造体100のうちでガラスベース10以外の部分を複数の発光デバイス(例えばディスプレイパネル)1000とその他の不要部分とに切断する。切断により、個々の発光デバイス1000と、その周囲との間に数十μmから数百μmの隙間が形成される。このような切断は、レーザビームの照射に代えて、固定刃や回転刃を有するカッターによって行うことも可能である。ただし、図1Cに示したように、フレキシブル基板領域30dの外周は複雑な凹凸および湾曲を有しているため、レーザビームの照射によって切断することが望ましい。切断後も、発光デバイス1000およびその他の不要部分は、ガラスベース10に固着されている。
【0052】
レーザビームによって切断を行う場合、レーザビームの波長は、赤外、可視光、紫外のいずれの領域にあってもよい。ガラスベース10に及ぶ切断の影響を小さくすると言う観点からは、波長が緑から紫外域に含まれるレーザビームが望ましい。例えば、Nd:YAGレーザ装置によれば、2次高調波(波長532nm)、または3次高調波(波長343nmまたは355nm)を利用して切断を行うことができる。その場合、レーザ出力を1〜3ワットに調整して毎秒500mm程度の速度で走査すれば、ガラスベース10に損傷を与えることなく、ガラスベース10に支持されている積層物を発光デバイスと不要部分とに切断(分割)することができる。
【0053】
本開示の実施形態によれば、上記の切断を行うタイミングが従来技術に比べて早い。樹脂膜30がガラスベース10に固着した状態で切断が実行されるため、隣接する発光デバイス1000の間隔が狭くても、高い正確度および精度で切断の位置合わせが可能になる。このため、隣接する発光デバイス1000の間隔を短縮して、最終的に不要になる無駄な部分を少なくできる。また、従来技術では、ガラスベース10から剥離した後、樹脂膜30の表面(剥離表面)の全体を覆うように、偏光板、放熱シート、および/または電磁シールドなどが張り付けられることがある。そのような場合、切断により、偏光板、放熱シート、および/または電磁シールドも発光デバイス1000を覆う部分と、その他の不要な部分とに分割される。不要な部分は無駄に廃棄されることになる。これに対して、本開示の製造方法によれば、後に説明するように、このような無駄の発生を抑制できる。
【0054】
<剥離光照射>
樹脂膜30の中間領域30iと複数のフレキシブル基板領域30dのそれぞれとを分割した後、剥離光照射装置により、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dとガラスベース10との界面を剥離光で照射する工程を行う。
【0055】
図3Aは、ステージ210が積層構造体100を支持する直前の状態を模式的に示す図である。本実施形態におけるステージ210は、吸着のための多数の孔を表面に有する吸着ステージである。積層構造体100は、積層構造体100の第2の表面100bがステージ210の表面210Sに対向するように配置され、ステージ210によって支持される。
【0056】
図3Bは、ステージ210が積層構造体100を支持している状態を模式的に示す図である。ステージ210と積層構造体100との配置関係は、図示される例に限定されない。例えば、積層構造体100の上下が反転し、ステージ210が積層構造体100の下方に位置していてもよい。
【0057】
図3Bに示される例において、積層構造体100は、ステージ210の表面210Sに接しており、ステージ210は積層構造体100を吸着している。
【0058】
次に、図3Cに示されるように、樹脂膜30とガラスベース10との界面を剥離光216で照射する。図3Cは、図の紙面に垂直な方向に延びるライン状に成形された剥離光216によって積層構造体100のガラスベース10と樹脂膜30との界面を照射している状態を模式的に示す図である。樹脂膜30の一部は、ガラスベース10と樹脂膜30との界面において、剥離光216を吸収して分解(消失)する。剥離光216で上記の界面をスキャンすることにより、樹脂膜30のガラスベース10に対する固着の程度を低下させる。剥離光216の波長は、典型的には紫外域にある。剥離光216の波長は、剥離光216がガラスベース10には、ほとんど吸収されず、できるだけ樹脂膜30によって吸収されるように選択される。ガラスベース10の光吸収率は、例えば波長が343〜355nmの領域では10%程度だが、308nmでは30〜60%に上昇し得る。
【0059】
以下、本実施形態における剥離光の照射を詳しく説明する。
【0060】
<剥離光照射装置1>
本実施形態における剥離光照射装置は、剥離光216を出射するラインビーム光源を備えている。ラインビーム光源は、レーザ装置と、配列された複数のレーザ光源を備えている。本実施形態におけるレーザ光源の典型例は、半導体レーザ素子(レーザダイオード、LDともいう)である。これに対して、従来の剥離光照射装置の典型例は、エキシマレーザなどのガスレーザ装置、またはYAGレーザなどの固体レーザ装置と、それらのレーザ装置から出射されたスポットビーム状のレーザ光をラインビーム状に成形するレンズやプリズムなどから構成された光学系とを組み合わせたものである。本開示では、剥離光照射装置を単に「剥離装置」と呼ぶ。なお、従来の剥離装置では、1m以上のライン長さを有するラインビームを得ようとすると、レーザ光を成形する光学系が巨大になりすぎて製造が困難になること、およびそれに伴いラインビームの品質(均一性)の低下が不可避であることから、G6H基板サイズ(1800mm×750mmの短辺側)程度に対応するラインビーム(ビーム長さが750mm程度まで)が限界であった。
【0061】
図4は、本実施形態における剥離装置220のラインビーム光源214から出射されたラインビーム(剥離光216)で積層構造体100を照射する様子を模式的に示す斜視図である。わかりやすさのため、ステージ210、積層構造体100、およびラインビーム光源214は、図のZ軸方向に離れた状態で図示されている。剥離光216の照射時、積層構造体100の第2の表面100bはステージ210に接している。このように配列された複数のレーザ光源を使用することにより、ラインビーム状の剥離光のライン長さを容易に1m以上とすることができ、従来の剥離装置では対応できなかったG8基板(2400mm×2200mm)やそれ以上の超大型基板への対応も可能となる。
【0062】
図4に例示される剥離装置220は、積層構造体100におけるラインビームの照射位置をラインビームに交差する方向(走査方向)に移動させるようにラインビーム光源214を移動させる移動装置230を備えている。図示されている移動装置230は、支持台270と、ラインビーム光源214の移動を案内するガイドレール246とを備えている。移動装置230は、例えばモータなどのアクチュエータを備えており、ラインビーム光源214を移動させることができる。モータは、直流モータ、3相交流モータ、ステッピングモータなどの回転電気機械であってもよいし、リニアモータまたは超音波モータであってもよい。超音波モータを使用した場合、その他のモータと比べて高精度な位置決めが可能になる。また、静止時の保持力が大きく、無通電で保持できるため、静止時の発熱が少ない。
【0063】
次に図5を参照する。図5は、剥離装置220における信号、データ、および指令の流れを模式的に示すブロック図である。
【0064】
コントローラ260は、典型的にはコンピュータである。コントローラ260の一部または全部は、汎用的または専用的なコンピュータシステムであり得る。コンピュータシステムとは、OS(オペレーティングシステム)および、必要に応じて周辺機器等のハードウェアを含むものとする。コントローラ260は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であるメモリ274に接続されている。メモリ274には、剥離装置220の動作を規定するプログラムが格納されている。
【0065】
図5では、簡単のため、単数のメモリが記載されているが、現実のメモリ274は、複数の同一または異なる種類の記録装置であり得る。メモリ274の一部は、不揮発性メモリであり、他の一部はランダムアクセスメモリであってもよい。メモリ274の一部または全体は、着脱容易な光ディスクおよび固体記録素子であってもよいし、ネット積層構造体上にあるクラウド型の記憶装置であってもよい。
【0066】
コントローラ260は、温度センサおよびイメージセンサなどのセンサ276に接続されている。このようなセンサ276によって、積層構造体100上におけるラインビームの照射位置を検知したり、照射によって積層構造体100上に現れた物理的または化学的変化を観察したりすることができる。
【0067】
コントローラ260は、メモリ274に保持されているプログラムに従い、必要に応じてセンサ276の出力に基づいて、適切な指令をレーザ駆動回路(LD駆動回路)280および移動装置駆動回路290に対して発する。LD駆動回路280は、コントローラ260の指令に従って、ラインビーム光源214から出るラインビームの照射強度を調整する。移動装置駆動回路290は、コントローラ260の指令に従って、移動装置230の動作を調整する。
【0068】
移動装置駆動回路290により、例えばモータの回転角度および回転速度が制御され、ラインビーム光源214とステージ210との相互配置関係が調節される。この例では、簡単のため、固定されたステージ210に対してラインビーム光源214がX軸方向に移動するが、本実施形態における剥離装置は、この例に限定されない。ステージ210が移動し、ラインビーム光源214が固定されていてもよい。また、ステージ210およびラインビーム光源214の両方が、同一または異なる方向に移動してもよい。ステージ210が重量の大きな積層構造体100を支えて移動する場合、例えばエアースライダなどの軸受が用いられ得る。
【0069】
ラインビーム光源214は、配列された複数の半導体レーザ素子を備えており、各半導体レーザ素子はLD駆動回路280に接続されている。LD駆動回路280は、後述するモニタ用フォトダイオードから出力された電気信号を受け取り、半導体レーザ素子の光出力を所定レベルに調整する。
【0070】
<半導体レーザ素子>
図6は、ラインビーム光源214に用いられ得る半導体レーザ素子の基本構成を模式的に示す斜視図である。図6に示されている半導体レーザ素子300は、レーザ光を出射する発光領域(エミッタ)324を含む端面(ファセット)326aを持つ半導体積層構造322を有している。この例における半導体積層構造322は、半導体基板320上に支持されており、p側クラッド層322a、活性層322b、およびn側クラッド層322cを含んでいる。半導体積層構造322の上面326bには、ストライプ状のp側電極312が設けられている。半導体基板320の裏面には、n側電極316が設けられている。p側電極312からn側電極316に向かって、閾値を超える大きさの電流が活性層322bの所定領域を流れることにより、レーザ発振が生じる。半導体積層構造322の端面326aは、不図示の反射膜によって覆われている。レーザ光は、発光領域324から反射膜を介して外部に出射される。
【0071】
一般に、発光領域324のY軸方向サイズEyは、X軸方向サイズExよりも小さい。このため、発光領域324から出射されたレーザ光は、回折効果により、Y軸方向に広がる。本開示の実施形態では、この回折効果を利用してラインビームの形成を行うことができる。なお、発光領域324の前面にレンズ、回折素子、スリットなどの光学素子を配置して、レーザ光のビーム成形を行ってもよい。
【0072】
半導体レーザ素子300は、発振波長および光出力に応じて、種々の半導体材料から形成され、多様な構造およびサイズを有し得る。紫外領域に属する波長(例えば300〜350nm)を持つレーザ光が必要な場合、半導体レーザ素子300の半導体積層構造322は、AlGaN系またはInAlGaN系の窒化物半導体から好適に形成され得る。半導体レーザ素子300の発振波長は、例えば200nm〜350nmの範囲内に設定され得る。p側クラッド層322aにリッジストライプを設けて水平横方向の光閉じ込めを行ってもよい。活性層322bは、1個または複数の量子井戸構造を含んでいてもよい。半導体積層構造322は、光ガイド層、バッファ層、およびコンタクト層などの他の半導体層を含んでいてもよい。基板320がサファイア基板である場合、n側電極316は、基板320に対してp側電極312が設けられる側に配置される。
【0073】
図6に示される構成は、半導体レーザ素子300の構成の典型的な一例にすぎず、説明を簡単にするため、単純化されている。この単純化された構成の例は、本開示の実施形態をなんら限定するものではない。面発光型の半導体レーザ素子を用いてラインビームを形成することも可能である。なお、他の図面では、簡単のため、n側電極316などの構成要素の記載を省略する場合がある。
【0074】
<ラインビーム光源の構成例>
図7Aを参照する。ラインビーム光源214は、複数の半導体レーザ素子300と、これらの半導体レーザ素子300を支持する複数の支持体214Aとを備える。半導体レーザ素子300および支持体214Aは、筐体214Bの内部に収容されている。支持体214Aは、熱伝導率の高い良導体、例えば銅などの金属や窒化アルミニウムなどのセラミック材料から好適に形成される。筐体214Bが例えば不図示の透光性カバーによって塞がれることにより、筐体214Bの内部は大気雰囲気から遮蔽され得る。筐体214Bの内部は、例えば、半導体レーザ素子300にとって不活性なガスによって充填される。各半導体レーザ素子300には、不図示の配線(メタルワイヤまたはメタルリボンなど)を介して給電が行われる。動作時における半導体レーザ素子300の昇温を抑制するため、ペルチェ素子などの熱電冷却素子(不図示)を半導体レーザ素子300の近傍に配置してもよい。支持体214Aには、水冷のための内部チャネル、および空冷のためのフィンが設けられてもよい。
【0075】
各半導体レーザ素子300の出射側における端面326aとは反対の側に位置する端面326cの近傍には、不図示のフォトダイオードが配置されている。この端面326cは相対的に高い反射率を持つ反射膜によって覆われているが、半導体レーザ素子300の内部で発振しているレーザ光の一部は、端面326cから外部に漏れ出てくる。この漏れ出たレーザ光をフォトダイオードで検出することにより、端面326aから出射されるレーザ光の強度をモニタすることができる。フォトダイオードの出力は、前述したように、パワーコントロールに利用される。
【0076】
図7Aの例において、Y軸に平行な同一ラインに沿って11個の半導体レーザ素子300が配列されている。半導体レーザ素子300の個数は、この例に限定されず、10個以下であってもよいし、12個以上であってもよい。大面積領域を照射するための長いラインビームを形成したり、照射強度の空間分布を高い分解能で変調したりするためには、50個または100個を超える半導体レーザ素子300が同一ライン状に配列され得る。各半導体レーザ素子300は、図6の半導体レーザ素子300と同様の構成を持ち得る。半導体レーザ素子300のそれぞれの発光領域324から出射されたレーザ光(剥離光216)は、この同一ラインに平行に拡がってラインビームを形成する。
【0077】
図7Aには、XY平面に平行な矩形の走査面SCと、レーザ光(剥離光216)が走査面SC上に形成する照射領域218とが模式的に示されている。走査面SCは、積層構造体100における樹脂膜30とガラスベース10との界面に相当する。
【0078】
図7Aには、参考のため、ある時刻における照射領域218における照射強度ISのX軸方向分布と、Y軸方向分布とが示されている。照射強度ISのX軸方向分布は、狭く、単峰性を示す。これに対して、照射強度ISのY軸方向分布は、11個の半導体レーザ素子300からそれぞれ出射されたレーザ光が重畳してライン状に延びているため、11個のピークを有している。
【0079】
前述したように、個々の半導体レーザ素子300から出射されたレーザ光は、回折効果によって所定の方向(この例ではY軸方向)に広がる傾向がある。この性質は、Y軸方向に延びるラインビームを形成するために適している。一方、X軸方向への拡がりを抑制して、単位面積あたりの照射エネルギ(照射強度:単位はジュール/cm2)を高めるために、シリンドリカルレンズなどの光学素子を用いてもよい。そのような光学素子を用いてレーザ光をX軸方向にフォーカスすると、走査面SC上の照射領域218の幅(X軸方向サイズ)を例えば0.2mm程度またはそれ以下に狭くすることができる。
【0080】
ラインビームの照射強度を高めるには、半導体レーザ素子300の配列ピッチを縮小して、半導体レーザ素子300の個数密度を高めることが好ましい。例えば、1mm〜5mm間隔(配列ピッチ:隣接する光源の中心間距離)で100個またはそれ以上の個数の半導体レーザ素子300を直線上に配列してもよい。このように高密度で配列された半導体レーザ素子300を用いる場合、半導体レーザ素子300から走査面SCまでの距離を例えば10mmにすると、例えば1mm〜5mmの高い空間分解能で照射強度を変調することが可能になる。高い空間分解能を実現するため、個々の半導体レーザ素子300から出射されたレーザ光の断面が広がらないようにする光学素子(コリメートまたは集束のための光学系)をレーザ光の光路上に配置しても良い。
【0081】
次に図7Bを参照する。図7Bは、ラインビーム光源214を図7Aに示される位置からX軸の正方向に並進移動させた状態を示している。照射領域218も、ラインビーム光源214の移動に伴って並進移動している。なお、図7Bの状態において、各半導体レーザ素子300の出力は図7Aの状態に比べて低下させている。各半導体レーザ素子300の出力は、同じタイミングで増減される必要はない。言い換えると、ラインビームの走査中において、照射強度ISのX軸方向分布のみならず、Y軸方向分布をも様々に変化させることができる。
【0082】
このように配列された複数の半導体レーザ素子300を用いることにより、照射領域218の位置に応じて半導体レーザ素子300の出力を時間的および/または空間的に変調することができる。このため、走査面SC上の照射強度の分布を制御することができる。
【0083】
図8は、複数の半導体レーザ素子300を備えるラインビーム光源214の他の構成例を示す斜視図である。この例において、2列の半導体レーザ素子300は、スタッガパターン(千鳥配列)を有している。2列の中心間距離を短縮することにより、全体として1本のラインビームを形成することも可能である。更に、第1の列に属する半導体レーザ素子300の光軸と、第2の列に属する半導体レーザ素子300の光軸とが積層構造体100上で交差するように半導体レーザ素子300の方位を調整すれば、実質的に1本のラインビームを形成することができる。
【0084】
本開示の実施形態における「ラインビーム光源」によれば、剥離光の照射領域が1本のラインである必要はなく、走査方向に交差する方向に照射領域が連続または不連続に分布しておればよい。言い換えると、ラインビーム光源がラインに沿って配列された複数の光源を備えていればよい。また、そのようなラインの本数は単数に限られず、2本またはそれ以上の本数であってもよい。
【0085】
次に図9を参照する。図9は、剥離光216の照射強度のY軸方向分布の例を模式的に示す図である。図9におけるグラフの横軸は、照射領域のY軸座標値を示し、縦軸は照射強度を示している。照射強度の単位は、単位面積あたりのエネルギ密度(例えば[mJ/cm2])によって示される。図9のグラフでは、照射強度の具体的な数値は記載されていない。照射強度は、例えば0mJ/cm2以上500mJ/cm2以下の範囲内における値を示す。
【0086】
図9におけるグラフ中の破線で示された曲線は、照射強度のY軸方向の分布I(Y)を示している。照射強度のY軸方向分布I(Y)は、ラインビーム光源214が有する複数の半導体レーザ素子300(図7Aなど)から出射されたレーザ光の光強度分布の重ね合わせによって規定される。個々の半導体レーザ素子300から出射されたレーザ光の光強度分布は、レンズなどの光学素子を用いて成形され得る。図示されている光強度分布は、単なる一つの例にすぎない。なお、図9中における一点鎖線の直線は、剥離に必要な照射強度の閾値レベルThを示している。閾値レベルThは、例えば250〜300mJ/cm2である。この閾値レベルThよりも低い照射強度の剥離光が照射された領域では、樹脂膜30による剥離光の吸収量が不充分になるため、その領域の樹脂膜30はガラスベース10から剥離しないで固着した状態を維持する。
【0087】
図9におけるグラフの上方には、参考のため、YZ面に平行な積層構造体100の断面が示されている。ガラスベース10は位置Y0から位置Y5まで広がっている。左側の発光デバイス1000は、位置Y1から位置Y2までの領域にあり、右側の発光デバイス1000は位置Y3から位置Y4までの領域にある。言い換えると、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dは、位置Y1から位置Y2までの領域と、位置Y3から位置Y4までの領域に相当する。一方、樹脂膜30の中間領域30iは、位置Y0から位置Y1までの領域、位置Y2から位置Y3までの領域、および、位置Y4から位置Y5までの領域に相当する。
【0088】
図9の例において、剥離光の照射強度分布I(Y)は、位置Y1から位置Y2までの領域、および位置Y3から位置Y4までの領域において、閾値レベルThを超えている。言い換えると、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dとガラスベース10との界面は、閾値レベルThを超える照射強度の剥離光で照射される。一方、位置Y0から位置Y1までの領域、位置Y2から位置Y3までの領域、および位置Y4から位置Y5までの領域のそれぞれは、剥離光の照射強度分布I(Y)は閾値レベルThよりも低い部分を含んでいる。
【0089】
スキャン中に剥離光の照射強度分布I(Y)が示す最低値は、典型的には0mJ/cm2であるが、閾値レベルThよりも低ければ、0mJ/cm2を超える値であってもよい。
【0090】
なお、非晶質半導体をラインビーム状のレーザ光照射によって加熱して結晶化する場合、結晶性を均一化するため、照射強度分布は一様であることが望まれる。これに対して、本実施形態における剥離を行う場合、剥離が必要な界面における剥離光の照射強度が閾値レベルThを超えていれば、ラインビームの照射強度に一様性は必要ない。
【0091】
図9の例において、剥離光の照射強度分布I(Y)は、多数のピークを有しているが、本開示の実施形態は、このような例に限定されない。例えば図10に示される例のように、剥離光の照射強度分布I(Y)の一部が直線的であってもよい。図10の例では、ラインビーム光源214の個々の半導体レーザ素子300(図7Aなど)から出力されるレーザ光の光強度分布は、それぞれの光軸中心で平坦な「トップハット」型である。上述のように、剥離が必要な界面における剥離光の照射強度が閾値レベルThを超えていれば、ラインビームの照射強度に一様性は必要ない。このため、複数の半導体レーザ素子300の光出力は、相互に異なっていてもよい。
【0092】
本実施形態では、照射強度分布I(Y)のうち、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との界面に対するレーザ光の照射強度を、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dとガラスベース10との界面に対するレーザ光の照射強度よりも低下させる。
【0093】
図11は、図9に示されるY軸方向分布I(Y)とは、異なる断面におけるY軸方向分布I(Y)の例を示している。この断面は、図1Cに示されるフレキシブル基板領域30dの突出部30Vおよび切り欠き30Uを横切る断面である。
【0094】
図11に示される断面において、2個の発光デバイス1000のそれぞれの中央は、樹脂膜30の中間領域30iとともにガラスベース10から剥離されずにガラスベース10に固着するべき部分を含んでいる。
【0095】
図11の例では、ラインビーム光源214を構成する一部の半導体レーザ素子の出力を低下させることにより、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との界面において、Y軸方向分布I(Y)を局所的に閾値レベルThよりも低下させている。照射強度が閾値レベルThよりも低い部分のうち、フレキシブル基板領域30dの切り欠き30Uに対応する部分が、ストライプ状の「低照射領域」における「幅広部」を形成する。
【0096】
図12は、図11の断面と同じ断面におけるY軸方向分布I(Y)の他の例を示している。図12のY軸方向分布I(Y)は、27個以上の半導体レーザ素子が配列されたラインビーム光源214によって実現され得る。この例において、個々の半導体レーザ素子から放射されたレーザ光は、図11の例に比べて、より高い空間分解能で変化するY軸方向分布I(Y)を実現できる。なお、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との界面では、照射強度はゼロであってもよい。
【0097】
本開示の実施形態によれば、ラインビーム光源214が複数のレーザ光源を備えているため、個々のレーザ光源の出力を調整することにより、ラインビームにおける照射強度を空間的および時間的に変調できる。このため、積層構造体100が有する発光デバイス1000の形状、サイズ、および配置に応じた照射強度の空間分布を容易に実現できる。より具体的には、ラインビームにおける照射強度の空間的分布を走査中に時間的に変化させることにより、例えば図1Cまたは図1Dに示されるような形状を有するフレキシブル基板領域30dに対して、剥離に必要な照射強度で剥離光を照射するとともに、樹脂膜30の中間領域30iに対しては、剥離を生じさせない照射強度で剥離光を照射することができる。また、対象とする積層構造体100の種別または設計が変更された場合にも柔軟な対応が可能になる。
【0098】
剥離光の照射強度を剥離に必要なレベルよりも低くする領域は、樹脂膜30の中間領域30iの全体である必要はない。樹脂膜30の中間領域30iの一部がガラスベース10に固着していれば、積層構造体100の不要な部分の全体をガラスベース10に残すことができる。本開示の実施形態によれば、積層構造体100の不要な部分を、その形状に応じた広い範囲においてガラスベース10に残すことが容易になる。
【0099】
なお、レーザ光源の典型例は、半導体レーザ素子であるが、本開示の実施形態は、この例に限定されない。半導体レーザ素子を用いる場合、小型軽量のラインビーム光源を実現できる利点がある。しかし、積層構造体100を移動させて走査を行う場合、複数のレーザ光源のそれぞれが半導体レーザ素子に比べて大きなレーザ装置であっても問題ない。レーザ光源の発振波長が樹脂膜の剥離に適した範囲から外れている場合、波長変換素子により、高調波に変換して使用してもよい。
【0100】
次に図13を参照する。図13は、剥離光216の照射強度のX軸方向(走査方向)分布の例を模式的に示す図である。図13におけるグラフの横軸は、照射位置のX軸座標値を示し、縦軸は照射強度を示している。図13におけるグラフ中の実線は、照射強度のX軸方向の分布I(X)を示している。一点鎖線の直線は、剥離に必要な照射強度の閾値レベルThを示している。
【0101】
図13におけるグラフの上方には、参考のため、XZ面に平行な積層構造体100の断面が示されている。この断面は、図9の断面に直交する関係にある。ガラスベース10は位置X0から位置X5まで広がっている。図中の左側の発光デバイス1000は、位置X1から位置X2までの領域にあり、右側の発光デバイス1000は位置X3から位置X4までの領域にある。言い換えると、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dは、位置X1から位置X2までの領域と、位置X3から位置X4までの領域に相当する。一方、樹脂膜30の中間領域30iは、位置X0から位置X1までの領域(幅:W1)、位置X2から位置X3までの領域(幅:W3)、および、位置X4から位置X5までの領域(幅:W3)に相当する。なお、図13における樹脂膜30の左端に位置する中間領域30i(幅:W1)には、照射強度が閾値レベルThよりも低い領域(幅:S1)が形成されている。一方、図13における樹脂膜30の右端に位置する中間領域30iの(幅:W2)には、照射強度が閾値レベルThよりも低い他の領域(幅:S2)が形成されている。ここで、W1>S1、および、W2>S2が成立している。幅S1は幅W1の50%以上、幅S2は幅W2の50%以上であることが好ましい。
【0102】
照射強度のX軸方向分布I(X)は、剥離光のスキャン全体(総和または積分値)を示している。例えば剥離光の照射位置(ラインビームの中心線の位置)が位置X0から位置X1まで移動している時、位置X1から位置X5までの領域は剥離光で照射されておらず、その時の位置X1から位置X5までの領域における剥離光の照射強度は当然にゼロである。
【0103】
剥離光216のライン幅(短軸寸法、X軸方向サイズ)は、例えば0.2mm程度であり得る。この寸法は、ある時刻における、樹脂膜30とガラスベース10との界面における照射領域の大きさを規定する。剥離光216は、パルス状または連続波として照射され得る。パルス状の照射は、例えば毎秒200回程度の周波数(1秒間のショット数)で行われ得る。パルス状の剥離光216を用いる場合、連続する2回のショットで照射領域が部分的に重なるように走査速度が決定される。例えば、剥離光216のライン幅(短軸寸法、X軸方向サイズ)が0.2mmの場合において、照射位置がX軸方向に沿って毎秒20mm移動するとき、毎秒100回未満のショット数であれば、各ショット間に隙間が発生し得る。従って、毎秒100回を超えるショット数が必要になる。
【0104】
照射位置の位置決め精度は、ラインビーム光源214の機械的な送り精度に依存する。剥離光216のライン幅(短軸寸法、X軸方向サイズ)が例えば40μmである場合、ラインビーム光源214を20μm単位でステップ的に移動させると、連続する2回のショットによる照射領域のオーバーラップ量を50%にすることができる。ラインビーム光源214を30μm単位でステップ的に移動させると、連続する2回のショットによる照射領域のオーバーラップ量を75%にすることができる。照射領域のオーバーラップ量を制御すれば、レーザ光源の出力そのものを変調することなく、照射強度を変化させることも可能になる。
【0105】
剥離光の照射位置をステップ送りする場合、「ラインビーム光源214のステップ移動」と「剥離光のパルス照射」とを繰り返すことができる。この場合、剥離光の照射は、ステージ210に対するラインビーム光源214の相対的な移動が停止しているときに実行され得る。停止している物体をレーザ光で照射することは、移動している物体をレーザ光で照射することに比べて、照射強度を目標値に調整することが容易である。例えば、停止位置における照射パルスの回数または照射時間を増減することにより、照射強度を調整することができる。また、本開示の実施形態によれば、光源に半導体レーザ素子を用いるため、半導体レーザ素子の発振状態を調整して照射強度を制御しやすい利点もある。
【0106】
照射位置の移動速度(走査速度)が所定値に固定されているとき、毎秒のショット数を増減することにより、照射強度を変調することができる。逆に、毎秒のショット数が固定されているとき、照射位置の移動速度(走査速度)を増減することにより、照射強度を変調することができる。他のパラメータ、例えばラインビーム光源214から積層構造体100までの光学距離などを変化させることにより、照射強度を変調することも可能である。なお、ラインビーム光源214とガラスベース10との間にメカニカルシャッタを配置し、このシャッタによって剥離光の光路を遮断しても低照射領域を形成することが可能である。
【0107】
図13からわかるように、この例では、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との界面の少なくとも一部に対する剥離光の照射強度が、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dとガラスベース10との界面に対する剥離光の照射強度よりも低下している。この「少なくとも一部」の領域を「低照射領域」または「非剥離領域」と呼んでもよい。図13の例において、低照射領域は、ガラスベース10の外縁に沿って延びる2本の平行なストライプ領域(幅S1の領域と幅S2の領域)を含んでいる。2本のストライプ領域は、それぞれ、図5Aおよび図5Dに示される弱い剥離光216の照射によって形成され得る。この2本のストライプ領域では、剥離光216の照射強度が閾値レベルThよりも低いため、樹脂膜30の中間領域30iがガラスベース10に固着したままになる。
【0108】
図9および図11を参照して説明したように、本開示の実施形態では、剥離光の照射位置をX軸に沿って移動させるとき(スキャン時)において、照射強度のY軸方向の分布を変化させる。このため、「低照射利用域」を規定するストライプ領域のいずれかは、樹脂膜30の中間領域30iに応じた幅広部および/または幅狭部を有し得る。このように「低照射利用域」の形状およびサイズを樹脂膜30の中間領域30iの形状およびサイズに整合させることにより、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との間の固着の程度を全体として向上させることが可能になる。なお、「低照射利用域」が樹脂膜30の中間領域30iからはみ出してフレキシブル基板領域30dに拡がることは望ましくない。
【0109】
図14は、剥離光216のスキャンの途中において、照射強度を一時的に閾値レベルThよりも低くする例を示している。具体的には、位置X2から位置X3までの領域の一部(幅:S3)で、照射強度が閾値レベルThよりも低下している。この例において、樹脂膜30の中間領域30iとガラスベース10との界面の「低照射領域」は、2本のストライプ領域に加えて、これらに平行な1本の中間ストライプ領域(幅:S3)を含んでいる。これらのストライプ領域の幅S1、S2、S3は、いずれも、例えば1mm以上、ある例においては3mm以上である。
【0110】
図13および図14の例では、X軸の方向に沿って2個の発光デバイス1000が配列されている。Nを3以上の整数として、N個の発光デバイス1000がX軸の方向に沿って配列されている場合、隣り合う2個の発光デバイス1000に挟まれる中間領域30iが形成するストライプの総数はN−1個である。N−1個のストライプの全てに低照射領域を設ける必要はない。また、1本のストライプを構成する中間領域30iについて複数の低照射領域を設けてもよい。
【0111】
図13および図14の例では、幅S1の低照射領域、および幅S2の低照射領域は、いずれも、樹脂膜30の外縁に達しているが、本開示の実施形態は、この例に限定されない。例えば図15Aおよび図15Bに示すように、低照射領域の形態は多様であり得る。図15Aおよび図15Bは、それぞれ、剥離光の照射強度のX軸方向分布の更に他の例を模式的に示す図である。これらの図には、図13の左側に位置する発光デバイス1000を囲む中間領域30iとガラスベース10との界面における照射強度の変調パターンが例示されている。
【0112】
図15Aに示される例において、樹脂膜30の外縁に沿って延びるストライプ状の低照射領域(幅:S1)は、樹脂膜30の外縁に達していない。剥離光の照射強度は、剥離光がガラスベース10を照射する前から閾値レベルThを超えていてもよい。また、図15Aに示される位置X1から位置X3までの領域におけるように、照射強度は徐々に変化してもよい。照射強度が徐々に変化する場合、「低照射領域」の幅(走査方向のサイズ)は、照射強度が閾値レベルThよりも低い領域の幅と定義することができる。
【0113】
図15Bに示される例において、低照射領域は、相対的に幅の狭い複数本のストライプによって構成されている。このような低照射領域は、例えば、パルス状の剥離光を照射するとき、連続するショット間で照射領域が重なり合わないようにすれば実現できる。
【0114】
なお、照射強度を相対的に低下させることにより、樹脂膜30の中間領域30iの少なくとも一部をガラスベース10に固着させるには、「その少なくとも一部」における照射強度を閾値レベルThよりも低くすることが望ましい。しかしながら、閾値レベルThよりも低くしない場合でも、剥離するべき領域における照射強度よりも低い照射強度を実現すことにより、中間領域30iはガラスベース10に残りやすくなる。剥離するべき領域における照射強度と低照射領域における照射強度の差が50mJ/cm2以上あれば、充分な効果が得られる。
【0115】
本実施形態では、剥離光は、ガラスベース10の外縁に平行な方向(第1の方向)に延びるラインビームであり、走査方向は第1の方向に直交する第2の方向である。しかし、第1の方向と第2の方向とは直交している必要はなく、交差していればよい。
【0116】
上記の例では、図4を参照しながら説明したように、固定されたステージ210に対してラインビーム光源214の位置を移動させることによって剥離光の照射位置を移動(スキャン)させている。しかし、本発明の実施形態は、この例に限定されない。ラインビーム光源214を固定し、ステージ210を移動させることによって剥離光のスキャンを行ってもよい。また、ラインビーム光源214およびステージ210の両方を移動させることによって剥離光のスキャンを行ってもよい。
【0117】
<剥離光照射装置2>
上記の実施形態における剥離光照射装置が備える複数の光源は、それぞれ、複数の半導体レーザ素子であるが、本開示の剥離光照射装置は、この例に限定されない。剥離光は、レーザ光源のようなコヒーレント光源の代わりに、非コヒーレント光源から放射されてもよい。以下、複数の発光ダイオード素子から放射された剥離光で合成樹脂膜とガラスベースとの界面を照射する例を説明する。
【0118】
剥離光を放射する光源として、発光ダイオード素子は、半導体レーザ素子よりも低コストで入手することが可能であり、また、アイセーフティの観点からは、装置設計や取り扱いについて、より容易となる。紫外光を放射する発光ダイオード(UV−LED)素子は、例えば縦3.5mm×横3.5mm×厚さ1.2mmのサイズを有している。複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられて使用され得る。この場合も、複数の発光ダイオード素子を配列させて使用することにより、従来の剥離装置では対応できなかったG8基板(2400mm×2200mm)やそれ以上の超大型基板への対応が可能となる。
【0119】
発光ダイオード素子も、前述した半導体レーザ素子と同様に、駆動電流の大きさを調整することにより、その発光強度が制御される。従って、複数の発光ダイオード素子を1次元または2次元的に配列した状態において、個々の発光ダイオード素子を流れる駆動電流を変調することにより、剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調することができる。
【0120】
発光ダイオード素子の配列ピッチは、例えば3mm以上10mm以下の範囲にある。発光ダイオード素子から放射される光は、レーザ光とは異なり、インコヒーレント(非コヒーレント)光である。発光ダイオード素子から放射される光の波長は、例えば300nm以上380nm以下の範囲にある。配列された複数の発光ダイオード素子のそれぞれから放射された剥離光の照射強度は、100mJ/cm2以上300mJ/cm2以下の範囲にある。
【0121】
個々の発光ダイオード素子から放射された光は、Z軸方向を中心として拡がる。この光は、Z軸からの傾きである放射角度θに依存した相対放射強度の分布(指向性)を示す。ある例において、発光ダイオード素子の相対放射強度は、θ=45°で約75%、θ=65°で約50%であり得る。発光ダイオード素子の指向性は、レンズおよび/またはリフレクタを配置することにより、調節され得る。
【0122】
市販されている発光ダイオード素子によれば、例えば電圧:3.85ボルト、電流:1000ミリアンペアの駆動条件で波長365nmの紫外光を1450ミリワットの出力で放射することができる。
【0123】
図27A、図27Bおよび図27Cを参照しながら、複数の発光ダイオード素子が配列されたラインビーム光源の例を説明する。
【0124】
図27Aは、Y軸方向に配列された複数の発光ダイオード素子400を備えるラインビーム光源214の上面を模式的に示している。図27Bは、図27Aに示されるラインビーム光源214のB−B線断面である。図27Bには、積層構造体100も記載されている。図27Cは、積層構造体100に対するラインビーム光源214の移動方向を示す図である。
【0125】
図27Aに示されるように、ラインビーム光源214は駆動回路280Aに接続され得る。駆動回路280Aは、個々の発光ダイオード素子400を流れる電流の大きさを変調することができる。駆動回路280Aは、コントローラ260に接続され得る。コントローラ260は、駆動回路280Aの動作を制御することにより、ラインビーム光源214から放射される剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調する。
【0126】
この例において、発光ダイオード素子400から放射された紫外光は、単位面積あたりの照射エネルギ(照射強度:単位はジュール/cm2)を高めるために、シリンドリカルレンズ410を通って積層構造体100のガラスベース10に入射する。紫外光はX軸方向にフォーカスされるため、剥離が生じる界面(剥離面)における照射領域の幅(X軸方向サイズ)を例えば0.2mm程度またはそれ以下に狭くすることができる。シリンドリカルレンズ410は、X軸方向におけるフォーカスは行わないため、照射領域のY軸方向サイズは短縮されない。
【0127】
剥離光の照射強度を更に高めるためには、発光ダイオード素子400の配列ピッチを縮小して発光ダイオード素子400の個数密度を高めればよい。例えば、個々の発光ダイオード素子400のサイズが前述した大きさを有する場合、3.5mm〜10mm間隔(配列ピッチ:隣接する光源の中心間距離)で数10個または100個以上の個数の発光ダイオード素子400を配列してもよい。より小さな発光ダイオード素子400を用いる場合は、例えば2mm〜10mm間隔で配置することも可能である。発光ダイオード素子400の配列ピッチは5mm以下であることが好ましい。
【0128】
指向性の高い発光ダイオード素子400を高密度で配列する場合、発光ダイオード素子400から剥離面までの距離を例えば1.5〜5mmにすると、シリンドリカルレンズなどの光学素子が無くとも、2mm〜10mmの空間分解能で照射強度を変調することも可能になる。
【0129】
図27Cに示すように積層構造体100に対してラインビーム光源214を移動させながら、個々の発光ダイオードを流れる電流を変調する。その結果、配列された複数の半導体レーザ素子300を有するラインビーム光源214を用いる実施形態と同様の剥離光照射を実現することができる。
【0130】
ラインビーム光源214の空間分解能を高めるため、発光ダイオード素子400を複数列に並べてもよい。
【0131】
図28Aは、Y軸方向に配列された複数列の発光ダイオード素子400を備えるラインビーム光源214の上面を模式的に示している。図28Bは、図28Aに示されるラインビーム光源214のB−B線断面である。図28Bには、積層構造体100も記載されている。図28Cは、積層構造体100に対するラインビーム光源214の移動方向を示す図である。
【0132】
このラインビーム光源214も駆動回路280Aに接続され得る。コントローラ260は、駆動回路280Aの動作を制御することにより、ラインビーム光源214から放射される剥離光を時間的および/または空間的に変調する。
【0133】
この例のラインビーム光源214は、それぞれがY軸方向に延びる5列の発光ダイオード素子400を備えている。Y軸方向における5列の発光ダイオード素子400の位置は、それぞれ、異なる。配列ピッチをPとするとき、発光ダイオード列の位置は、隣接する列の間で、Y軸方向にP/5ずつシフトしている。
【0134】
このラインビーム光源214は、個々の発光ダイオード素子400による照射領域の一辺がP/5程度に長さになるように集光するレンズシート420を有している。このようなレンズシート420を透過した紫外光は、剥離面にドット状の照射領域を形成し得る。
【0135】
図28Cに示すように積層構造体100に対してラインビーム光源214を移動させると、複数の照射領域がオーバーラップするため、剥離面の全体を紫外光で照射することが可能になる。また、積層構造体100に対してラインビーム光源214を移動させながら、個々の発光ダイオードを流れる電流を変調することにより、空間的および時間的な変調を実行することができる。
【0136】
図28Dは、図28Aのラインビーム光源214が形成しつつある照射領域218を模式的に示す図である。ラインビーム光源214の走査中に、一部の発光ダイオード素子400を消灯することにより、発光ダイオード素子400のサイズよりも小さな幅で非照射領域を形成することができる。
【0137】
図28Eは、ラインビーム光源214の走査中に、個々の発光ダイオード素子400を流れる電流を時間的に変調することによって形成された照射領域218の例を示している。照射領域および非照射領域のパターンが高い空間分解能で形成され得ることがわかる。
【0138】
このように、図28Aに例示される発光ダイオード素子400の配列によれば、図27Aに例示されている発光ダイオード素子400の配列による場合に比べて、より空間分解能の高い変調が可能になる。
【0139】
剥離光の照射は、積層構造体100に対して複数の光源を静止させた状態で行ってもよい。
【0140】
図29は、多数の発光ダイオード素子400がマトリックス状に配列された面光源215の例を模式的に示す上面図である。縦、横の発光ダイオードの配列個数は、使用する基板サイズに応じて任意に設定すればよく、この場合もG8サイズやそれ以上の超大型基板に対応する剥離装置の実現が可能となる。また、この例における面光源215を用いると、ディスプレイと同様にして様々なパターンの輝度分布を形成することができる。面光源215も前述の駆動回路280Aに接続され、駆動回路280Aはコントローラ260に接続され得る。
【0141】
積層構造体100および面光源215を共に静止した状態で剥離光照射を行う場合、光スキャンのための精密な駆動装置が不要になる。また、従来の固定されたラインビーム光源に対して積層構造体100を移動させながら剥離光照射を行う場合は、積層構造体100の移動のために積層構造体100の少なくとも2倍の面積を持つエリアが必要であった。しかし、本開示の実施形態によれば、そのような積層構造体100の移動に必要な余分のエリアが不要になり、装置の設置面積が半減する利点がある。
【0142】
図30は、多数の発光ダイオード素子400がマトリックス状に配列された面光源215の他の例を模式的に示す上面図である。この例における面光源215は、剥離光の照射領域にあわせて発光ダイオード素子400の配置が決定されている。
【0143】
なお、図29および図30に示されている面光源215を用いる場合、積層構造体100に対して面光源215を静止させて剥離光照射を行う必要はない。積層構造体100に対する面光源215の相対位置をシフトさせながら剥離光の照射を行っても良い。静止した状態では、面光源215から放射された光が剥離面上でドットまたはライン状の照射領域を形成する場合でも、積層構造体100に対する面光源215の相対位置をシフトさせることにより、照射強度の空間的な分布形状を変化させことが可能である。積層構造体100に対する面光源215の相対位置のシフト量は、発光ダイオード素子の配列ピッチ未満であってもよいし、配列ピッチ以上であってもよい。
【0144】
また、剥離するべき面内を複数の領域に区分し、ステッパによる順次露光と同様に、各領域を剥離光のフラッシュで照射してもよい。
【0145】
このように発光ダイオード素子を用いることにより、比較的に高価な半導体レーザ素子を用いるよりも多数の光源を用いて剥離光照射を実行することが低コストで可能になる。また、個々の発光ダイオード素子から剥離光を放射する時間を長くすることも容易であるため、各発光ダイオード素子の光出力が小さくても、照射時間を調整することにより、剥離に必要な照射エネルギを達成できる。さらには、レーザ光を使用しないため、人間の眼に対する安全性(アイセーフ)の面でも有利である。
【0146】
<リフトオフ>
図16Aは、剥離光の照射後、積層構造体100がステージ210に接触した状態を記載している。この状態を維持したまま、ステージ210からガラスベース10までの距離を拡大する。このとき、本実施形態におけるステージ210は積層構造体100の発光デバイス部分を吸着している。
【0147】
不図示の駆動装置がガラスベース10を保持してガラスベース10の全体を矢印Lの方向に移動させることにより、剥離(リフトオフ)が実行される。ガラスベース10は、不図示の吸着ステージによって吸着した状態で吸着ステージとともに移動し得る。ガラスベース10の移動の方向は、積層構造体100の第1の表面100aに垂直である必要はなく、傾斜していてもよい。ガラスベース10の移動は直線運動である必要はなく、回転運動であってもよい。また、ガラスベース10が不図示の保持装置または他のステージによって固定され、ステージ210が図の上方に移動してもよい。
【0148】
図16Bは、こうして分離された積層構造体100の第1部分110と第2部分120とを示す断面図である。図17は、積層構造体100の第2部分120を示す斜視図である。図17では、ガイドレール246などの記載は省略しているし、中間領域30iの形状も簡略化して凹凸の記載を省略している。積層構造体100の第1部分110は、ステージ210に接触した複数の発光デバイス1000を含む。各発光デバイス1000は、機能層領域20と、樹脂膜30の複数のフレキシブル基板領域30dとを有している。これに対して、積層構造体100の第2部分120は、ガラスベース10と、樹脂膜30の中間領域30iとを有している。樹脂膜30の中間領域30iは、少なくとも一部の低照射領域において、ガラスベース10に固着している。このため、樹脂膜30の中間領域30iの全体がガラスベース10に付着して状態でステージ210から離れていく。
【0149】
図17の例では、剥離光の照射プロセスと剥離プロセスの両方が、ステージ210を備える剥離装置220によって実行されている。本開示の実施形態は、このような例に限定されない。剥離光の照射プロセスは、ステージ210を備える剥離装置によって実行し、剥離プロセスは、ステージ210とは異なる他のステージを備える他の装置を用いて実行してもよい。この場合、剥離光の照射後に、積層構造体100をステージ210から不図示の他のステージに移動させる必要がある。同一のステージを用いて剥離光の照射プロセスと剥離プロセスの両方を実行すれば、ステージ間で積層構造体を移動させる工程を省くことができる。
【0150】
上述のように、本実施形態において積層構造体100を第1部分110と第2部分120とに分離する工程は、ステージ210が積層構造体100の第2の表面100bを吸着している状態で実行される。この分離工程で重要な点は、積層構造体100のうち、発光デバイス1000を構成しない不要な部分がガラスベース10とともにステージ210から離れることにある。本実施形態では、図2に示される切断工程、すなわち、積層構造体100のうちでガラスベース10以外の部分を複数の発光デバイス1000とその他の不要部分とに切断する工程を剥離光の照射前に行う。このように切断工程を剥離光照射工程の前に行うことが、図16Bおよび図17に示される分離を実現するために有効である。また、発光デバイス1000を構成しない不要な部分をガラスベース10に残すため、その不要な部分の一部はガラスベース10に固着するように剥離光の照射強度を変調している。
【0151】
<剥離後の工程>
図18は、ステージ210に吸着された状態にある積層構造体100の第1部分110(発光デバイス1000)と、ステージ210から離れた位置にある第2部分120(ガラスベース10と付着物)とを示す斜視図である。積層構造体100のうち、発光デバイス1000を構成しない不要な部分がガラスベース10に付着している。
【0152】
図19は、ステージ210に吸着された状態にある積層構造体100の第1部分110を示す斜視図である。ステージ210に支持された積層構造体100の第1部分110は、行および列状に配列された複数の発光デバイス1000である。図19の例においては、樹脂膜30のうち、フレキシブル基板領域30dの表面(剥離表面)30sが露出している。
【0153】
本実施形態によれば、発光デバイス1000と、そのフレキシブル基板として機能する樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dとが、図1Aなどに示されるような複雑な平面形状を有していても、発光デバイス1000をその他の不要な部分から適切に分離することができる。これは、前述したように、剥離光のスキャンを行うときに剥離光の照射強度の空間分布を時間的に変化させることにより、樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dに対して選択的に剥離に必要な照射強度を与えることによって実現される。その結果、樹脂膜30の中間領域30iも、その全体がガラスベース10に固着した状態を維持できる。
【0154】
図20は、ステージ210が発光デバイス1000を吸着している状態を示す断面図である。この断面は、ZX面に平行な断面である。図20のZ軸の方向は、図18および図19のZ軸の方向から反転している。
【0155】
ステージ210に接触した複数の発光デバイス1000のそれぞれに対しては、順次または同時に、様々な処理を実行することができる。
【0156】
発光デバイス1000に対する「処理」は、複数の発光デバイス1000のそれぞれに、誘電体および/または導電体のフィルムを貼ること、クリーニングまたはエッチングを行うこと、ならびに、光学部品および/または電子部品を実装することを含み得る。具体的には、個々の発光デバイス1000のフレキシブル基板領域30dに対して、例えば、偏光板、封止フィルム、タッチパネル、放熱シート、電磁シールド、ドライバ集積回路などの部品が実装され得る。シート状の部品には、光学的、電気的、または磁気的な機能を発光デバイス1000に付加し得る機能性フィルムが含まれる。
【0157】
複数の発光デバイス1000がステージ210に吸着した状態で支持されているため、各発光デバイス1000に対する様々な処理が効率的に実行できる。
【0158】
ガラスベース10から剥離された樹脂膜30の表面30sは、活性であるため、表面30sを保護膜で覆ったり、疎水化の表面処理を行ったりした後、その上に各種の部品を実装してもよい。
【0159】
図21は、シート状の部品(機能性フィルム)60が実装された後、発光デバイス1000がステージ210から取り外された状態を模式的に示す断面図である。
【0160】
従来技術によれば、発光デバイス1000を分割する前に樹脂膜をガラスベースから剥離するため、その後の処理を行うときには、多数の発光デバイス1000が一枚の樹脂膜に固着した状態にある。そのため、個々の発光デバイス1000に対して効率的な処理を実行することが困難である。また、シート状の部品を取り付けた後に、発光デバイス1000を分割する場合、シート状部品のうち、隣接する2個の発光デバイス1000の中間領域に位置する部分は無駄になる。
【0161】
これに対して、本開示の実施形態によれば、ガラスベース10から剥離した後も多数の発光デバイス1000がステージ210上に整然と配列されているため、個々の発光デバイス1000に対して、順次または同時に、様々な処理を効率的に実行することが可能になる。
【0162】
積層構造体100を第1部分110と第2部分120とに分離する工程を行った後、図22に示すように、ステージ210に接触した複数の発光デバイス1000に他の保護シート(第2の保護シート)70を固着する工程を更に実行してもよい。第2の保護シート70は、ガラスベース10から剥離した樹脂膜30のフレキシブル基板領域30dの表面を一時的に保護する機能を発揮し得る。第2の保護シート70は、前述の保護シート50と同様のラミネート構造を有し得る。保護シート50を第1の保護シート50と呼ぶことができる。
【0163】
第2の保護シート70は、ステージ210に接触した複数の発光デバイス1000のそれぞれに対して上記の様々な処理を実行した後、複数の発光デバイス1000に固着されてもよい。
【0164】
第2の保護シート70を付着した後、発光デバイス1000に対するステージ210による吸着を停止すると、第2の保護シート70に固着された状態にある複数の発光デバイス1000をステージ210から離すことができる。その後、第2の保護シート70は、複数の発光デバイス1000のキャリアとして機能し得る。これは、ステージ210から第2の保護シート70への発光デバイス1000の転写である。第2の保護シート70に固着された状態にある複数の発光デバイス1000のそれぞれに対して、順次または同時に、様々な処理を実行してもよい。
【0165】
図23は、複数の発光デバイス1000にそれぞれ実装される複数の部品(機能性フィルム)80を載せたキャリアシート90を示す断面図である。このようなキャリアシート90を矢印Uの方向に移動させることにより、各部品80を発光デバイス1000に取り付けることが可能である。部品80の上面は、発光デバイス1000に強く付着する接着層を有している。一方、キャリアシート90と部品80との間は、比較的弱く付着している。このようなキャリアシート90を用いることにより、部品80の一括的な「転写」が可能になる。このような転写は、複数の発光デバイス1000がステージ210に規則的に配置された状態で支持されているため、容易に実現する。
【0166】
以下、図2の分割を行う前における積層構造体100の構成をより詳しく説明する。
【0167】
まず、図24Aを参照する。図24Aは、表面に樹脂膜30が形成されたガラスベース10を示す断面図である。ガラスベース10は、プロセス用の支持基板であり、その厚さは、例えば0.3〜0.7mm程度であり得る。
【0168】
本実施形態における樹脂膜30は、例えば厚さ5μm以上100μm以下のポリイミド膜である。ポリイミド膜は、前駆体であるポリアミド酸またはポリイミド溶液から形成され得る。ポリアミド酸の膜をガラスベース10の表面に形成した後に熱イミド化を行ってもよいし、ポリイミドを溶融または有機溶媒に溶解したポリイミド溶液からガラスベース10の表面に膜を形成してもよい。ポリイミド溶液は、公知のポリイミドを任意の有機溶媒に溶解して得ることができる。ポリイミド溶液をガラスベース10の表面10sに塗布した後、乾燥することによってポリイミド膜が形成され得る。
【0169】
ポリイミド膜は、発光デバイスがボトムエミッション型のフレキシブルディプレイの場合、可視光領域の全体で高い透過率を実現することが好ましい。ポリイミド膜の透明度は、例えばJIS K7105−1981に従った全光線透過率によって表現され得る。全光線透過率は80%以上、または85%以上に設定され得る。一方、トップエミッション型のフレキシブルディスプレイの場合には透過率の影響は受けない。
【0170】
樹脂膜30は、ポリイミド以外の合成樹脂から形成された膜であってもよい。ただし、本開示の実施形態では、薄膜トランジスタを形成する工程において、例えば350℃以上の熱処理を行うため、この熱処理によって劣化しない材料から樹脂膜30は形成される。
【0171】
樹脂膜30は、複数の合成樹脂層の積層体であってもよい。本実施形態のある態様では、フレキシブルディスプレイの構造物をガラスベース10から剥離するとき、ガラスベース10を透過する紫外線レーザ光を樹脂膜30に照射するレーザリフトオフが行われる。樹脂膜30の一部は、ガラスベース10との界面において、このような紫外線レーザ光を吸収して分解(消失)する必要がある。また、例えば、ある波長帯域のレーザ光を吸収してガスを発生する犠牲層(金属または非晶質シリコンから形成された薄層)をガラスベース10と樹脂膜30との間に配置しておけば、そのレーザ光の照射により、樹脂膜30をガラスベース10から容易に剥離することができる。犠牲層を設けると、アッシュの生成が抑制されるという効果も得られる。
【0172】
<研磨処理>
樹脂膜30の表面30x上にパーティクルまたは凸部などの研磨対象(ターゲット)が存在する場合、研磨装置によってターゲットを研磨し平坦化してもよい。パーティクルにどの異物の検出は、例えばイメージセンサによって取得した画像を処理することによって可能である。研磨処理後、樹脂膜30の表面30xに対する平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理は、平坦性を向上させる膜(平坦化膜)を樹脂膜30の表面30xに形成する工程を含む。平坦化膜は樹脂から形成されている必要はない。
【0173】
<下層ガスバリア膜>
次に、樹脂膜30上にガスバリア膜を形成してもよい。ガスバリア膜は、種々の構造を有し得る。ガスバリア膜の例は、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などの膜である。ガスバリア膜の他の例は、有機材料層および無機材料層が積層された多層膜であり得る。このガスバリア膜は、機能層領域20を覆う後述のガスバリア膜から区別するため、「下層ガスバリア膜」と呼んでもよい。また、機能層領域20を覆うガスバリア膜は、「上層ガスバリア膜」と呼ぶことができる。
【0174】
<機能層領域>
以下、TFT層20Aおよび発光素子層20Bなどを含む機能層領域20、ならびに上層ガスバリア膜40を形成する工程を説明する。
【0175】
まず、図24Bに示されるように、複数の機能層領域20をガラスベース10上に形成する。ガラスベース10と機能層領域20との間には、ガラスベース10に固着している樹脂膜30が位置している。
【0176】
機能層領域20は、より詳細には、下層に位置するTFT層20Aと、上層に位置する発光素子層20Bとを含んでいる。TFT層20Aおよび発光素子層20Bは、公知の方法によって順次形成される。発光デバイスがディスプレイの場合、TFT層20Aは、アクティブマトリクスを実現するTFTアレイの回路を含む。発光素子層20Bは、各々が独立して駆動され得る発光素子(OLED素子および/またはマイクロLED素子)のアレイを含む。
【0177】
マイクロLED素子のチップサイズは、例えば、100μm×100μmよりも小さい。マイクロLED素子は、放射する光の色または波長に応じて異なる無機半導体材料から形成され得る。同一の半導体チップが組成の異なる複数の半導体積層構造を含み、それぞれの半導体積層構造から異なるR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の光が放射されてもよい。また、周知のように、紫外光を放射する半導体チップ、または青色光を放射する半導体チップと、種々の蛍光体材料とを組み合せることにより、R、G、Bの光を放射させてもよい。
【0178】
TFT層20Aの厚さは例えば4μm程度であり、OLED素子を含む発光素子層20Bの厚さは、例えば1μmである。マイクロLED素子を含む発光素子層20Bの厚さは、例えば10μm以上であり得る。
【0179】
図25は、発光デバイスの一例であるディスプレイにおけるサブ画素の基本的な等価回路図である。ディスプレイの1個の画素は、例えばR、G、Bなどの異なる色のサブ画素によって構成され得る。図25に示される例は、選択用TFT素子Tr1、駆動用TFT素子Tr2、保持容量CH、および発光素子ELを有している。選択用TFT素子Tr1は、データラインDLと選択ラインSLとに接続されている。データラインDLは、表示されるべき映像を規定するデータ信号を運ぶ配線である。データラインDLは選択用TFT素子Tr1を介して駆動用TFT素子Tr2のゲートに電気的に接続される。選択ラインSLは、選択用TFT素子Tr1のオン/オフを制御する信号を運ぶ配線である。駆動用TFT素子Tr2は、パワーラインPLと発光素子ELとの間の導通状態を制御する。駆動用TFT素子Tr2がオンすれば、発光素子ELを介してパワーラインPLから接地ラインGLに電流が流れる。この電流が発光素子ELを発光させる。選択用TFT素子Tr1がオフしても、保持容量CHにより、駆動用TFT素子Tr2のオン状態は維持される。
【0180】
TFT層20Aは、選択用TFT素子Tr1、駆動用TFT素子Tr2、データラインDL、および選択ラインSLなどを含む。発光素子層20Bは発光素子ELを含む。発光素子層20Bが形成される前、TFT層20Aの上面は、TFTアレイおよび各種配線を覆う層間絶縁膜によって平坦化されている。発光素子層20Bを支持し、発光素子層20Bのアクティブマトリクス駆動を実現する構造体は、「バックプレーン」と称される。
【0181】
図25に示される回路要素および配線の一部は、TFT層20Aおよび発光素子層20Bのいずれかに含まれ得る。また、図25に示されている配線は、不図示のドライバ回路に接続される。
【0182】
本開示の実施形態において、TFT層20Aおよび発光素子層20Bの具体的な構成は多様であり得る。これらの構成は、本開示の内容を制限しない。TFT層20Aに含まれるTFT素子の構成は、ボトムゲート型であってもよいし、トップゲート型であってもよい。また、発光素子層20Bに含まれる発光素子の発光は、ボトムエミション型であってもよいし、トップエミション型であってもよい。発光素子の具体的構成も任意である。
【0183】
TFT素子を構成する半導体層の材料は、例えば、結晶質のシリコン、非晶質のシリコン、酸化物半導体を含む。本開示の実施形態では、TFT素子の性能を高めるために、TFT層20Aを形成する工程の一部が350℃以上の熱処理工程を含む。
【0184】
<上層ガスバリア膜>
上記の機能層を形成した後、図24Cに示されるように、機能層領域20の全体をガスバリア膜(上層ガスバリア膜)40によって覆う。上層ガスバリア膜40の典型例は、無機材料層と有機材料層とが積層された多層膜である。なお、上層ガスバリア膜40と機能層領域20との間、または上層ガスバリア膜40の更に上層に、粘着膜、タッチスクリーンを構成する他の機能層、偏光膜などの要素が配置されていてもよい。上層ガスバリア膜40の形成は、薄膜封止(Thin Film Encapsulation:TFE)技術によって行うことができる。発光素子層20BがOLED素子を含む場合、封止信頼性の観点から、薄膜封止構造のWVTR(Water Vapor Transmission Rate)は、典型的には1×10-4g/m2/day以下であることが求められている。本開示の実施形態によれば、この基準を達成している。上層ガスバリア膜40の厚さは例えば1.5μm以下である。
【0185】
図26は、上層ガスバリア膜40が形成された段階における積層構造体100の上面側を模式的に示す斜視図である。1個の積層構造体100は、ガラスベース10に支持された複数の発光デバイス1000を含んでいる。図26に示される例において、1個の積層構造体100は、図1Aに示される例よりも多くの機能層領域20を含んでいる。前述したように、1枚のガラスベース10に支持される機能層領域20の個数は任意である。
【0186】
<保護シート>
次に図24Dを参照する。図24Dに示されるように、積層構造体100の上面に保護シート50を張り付ける。保護シート50は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ塩化ビニル(PVC)などの材料から形成され得る。前述したように、保護シート50の典型例は、離型剤の塗布層を表面に有するラミネート構造を有している。保護シート50の厚さは、例えば50μm以上200μm以下であり得る。
【0187】
こうして作製された積層構造体100を用意した後、前述の製造装置(剥離装置220)を用いて本開示による製造方法を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の実施形態は、新しいフレキシブル発光デバイスの製造方法を提供する。フレキシブル発光デバイスは、スマートフォン、タブレット端末、車載用ディスプレイ、および中小型から大型のテレビジョン装置に広く適用され得る。また、フレキシブル発光デバイスは、照明装置としても利用され得る。
【符号の説明】
【0189】
10・・・ガラスベース、20・・・機能層領域、20A・・・TFT層、20B・・・発光素子層、30・・・樹脂膜、30d・・・樹脂膜のフレキシブル基板領域、30i・・・樹脂膜の中間領域、40・・・ガスバリア膜、50・・・保護シート、100・・・積層構造体、210・・・ステージ、220・・・剥離光照射装置(剥離装置)、260・・・コントローラ、300・・・半導体レーザ素子、1000・・・発光デバイス
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図29】
【図30】

【手続補正書】
【提出日】20191120
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備える積層構造体を用意する工程と、
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とを分割する工程と、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する工程と、
前記積層構造体の前記第2の表面をステージに接触させた状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する工程と、
を含み、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含み、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、
配列された複数の光源から前記剥離光を形成し、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの剥離に必要な照射強度の閾値レベルThよりも低下させ、前記閾値レベルThよりも低下させた照射強度の剥離光で、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの前記界面を照射し前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対しては、前記閾値レベルThを超える照射強度の剥離光で照射する、工程を含む、フレキシブル発光デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記剥離光は、非コヒーレント光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記剥離光は、レーザ光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の前記形状は、前記第1の表面に垂直な方向から視たとき、切り欠き、突出部、および/または曲線状の輪郭を有している、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の個数、および、
前記積層構造体の前記第1部分に含まれる前記発光デバイスの個数は、いずれも複数である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調することを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向に延びるラインビームであり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を、前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させることによって実行される、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向、および前記第1の方向に交差する第2の方向に延びる面状光であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を静止または移動させることによって実行される、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第2の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記中間領域の幅の50%以上の幅を有する、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、1mm以上の幅を有する、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部における前記剥離光の照射強度と、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度との差異は、50mJ/cm2以上である、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記積層構造体を前記第1部分と前記第2部分とに分離する工程を行った後、
前記ステージに接触した前記発光デバイスに対して、処理を実行する工程を更に含む、請求項1から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備え、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とが分割されている、積層構造体を支持するステージと、
前記ステージに支持されている前記積層構造体における前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置と、
を備え、
前記剥離光照射装置は、
前記剥離光を形成する、配列された複数の光源を有しており、
前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの剥離に必要な照射強度の閾値レベルThよりも低下させ、前記閾値レベルThよりも低下させた照射強度の剥離光で、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの前記界面を照射し
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対しては、前記閾値レベルThを超える照射強度の剥離光で照射する、フレキシブル発光デバイスの製造装置。
【請求項18】
前記複数の光源のそれぞれは、非コヒーレント光源である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項19】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記複数の光源は、それぞれ、半導体レーザ素子である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項20】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記剥離光照射装置は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調する駆動回路を有する、請求項17または18に記載の製造装置。
【請求項21】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項20に記載の製造装置。
【請求項22】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項21に記載の製造装置。
【請求項23】
前記ステージが前記積層構造体の前記第2の表面に接触した状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する駆動装置を更に備え、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含む、請求項17から22のいずれかに記載の製造装置。

【手続補正書】
【提出日】20200203
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備える積層構造体を用意する工程と、
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とを分割する工程と、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する工程と、
前記積層構造体の前記第2の表面をステージに接触させた状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する工程と、
を含み、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含み、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、
配列された複数の光源から前記剥離光を形成し、前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの剥離に必要な照射強度の閾値レベルThよりも低下させ、前記閾値レベルThよりも低下させた照射強度の剥離光で、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの前記界面を照射し、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対しては、前記閾値レベルThを超える照射強度の剥離光で照射する、工程を含む、フレキシブル発光デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記剥離光は、非コヒーレント光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記剥離光は、レーザ光である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の前記形状は、前記第1の表面に垂直な方向から視たとき、切り欠き、突出部、および/または曲線状の輪郭を有している、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の個数、および、
前記積層構造体の前記第1部分に含まれる前記発光デバイスの個数は、いずれも複数である、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調することを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向に延びるラインビームであり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を、前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させることによって実行される、請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記剥離光は、前記ガラスベースの外縁に平行な第1の方向、および前記第1の方向に交差する第2の方向に延びる面状光であり、
前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を前記剥離光で照射する工程は、前記剥離光による前記界面上の照射領域を静止または移動させることによって実行される、請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第1の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記第2の方向に沿って延びる複数本の平行なストライプ領域を含み、
前記複数本の平行なストライプ領域のいずれかは、幅広部および/または幅狭部を有している、請求項9から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、前記中間領域の幅の50%以上の幅を有する、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部は、1mm以上の幅を有する、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の前記少なくとも一部における前記剥離光の照射強度と、前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対する前記剥離光の照射強度との差異は、50mJ/cm2以上である、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記積層構造体を前記第1部分と前記第2部分とに分離する工程を行った後、
前記ステージに接触した前記発光デバイスに対して、処理を実行する工程を更に含み、
前記処理は、前記発光デバイスに、誘電体および/または導電体のフィルムを貼ること、クリーニングまたはエッチングを行うこと、ならびに、光学部品および/または電子部品を実装することのいずれかを含む、請求項1から15のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
第1の表面と第2の表面とを有する積層構造体であって、
前記第1の表面を規定するガラスベース;
TFT層および発光素子層を含む機能層領域;
前記ガラスベースと前記機能層領域との間に位置して前記ガラスベースに固着している合成樹脂フィルムであって、前記機能層領域を支持しているフレキシブル基板領域と、前記フレキシブル基板領域を囲む中間領域とを含む合成樹脂フィルム;および、
前記機能層領域を覆い、前記第2の表面を規定する保護シート;
を備え、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記フレキシブル基板領域とが分割されている、積層構造体を支持するステージと、
前記ステージに支持されている前記積層構造体における前記合成樹脂フィルムと前記ガラスベースとの界面を剥離光で照射する剥離光照射装置と、
を備え、
前記剥離光照射装置は、
前記剥離光を形成する、配列された複数の光源を有しており、
前記複数の光源の出力を前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域の形状に応じて時間的および空間的に変調し、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの界面の少なくとも一部に対する前記剥離光の照射強度を、前記合成樹脂フィルムの剥離に必要な照射強度の閾値レベルThよりも低下させ、前記閾値レベルThよりも低下させた照射強度の剥離光で、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域と前記ガラスベースとの前記界面を照射し、
前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域と前記ガラスベースとの前記界面に対しては、前記閾値レベルThを超える照射強度の剥離光で照射する、フレキシブル発光デバイスの製造装置。
【請求項18】
前記複数の光源のそれぞれは、非コヒーレント光源である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項19】
前記発光素子層は、配列された複数のマイクロLEDを含み、
前記複数の光源は、それぞれ、半導体レーザ素子である、請求項17に記載の製造装置。
【請求項20】
前記複数の光源は、それぞれ、複数の発光ダイオード素子であり、
前記剥離光照射装置は、前記複数の発光ダイオード素子のそれぞれを流れる駆動電流を変調することにより、前記剥離光の照射強度を時間的および/または空間的に変調する駆動回路を有する、請求項17または18に記載の製造装置。
【請求項21】
前記複数の発光ダイオード素子は、1列または複数列に並べられている、請求項20に記載の製造装置。
【請求項22】
前記複数の発光ダイオード素子の配列ピッチは、3mm以上10mm以下の範囲にある、請求項21に記載の製造装置。
【請求項23】
前記ステージが前記積層構造体の前記第2の表面に接触した状態で、前記ステージから前記ガラスベースまでの距離を拡大することにより、前記積層構造体を第1部分と第2部分とに分離する駆動装置を更に備え、
前記積層構造体の前記第1部分は、前記ステージに接触した発光デバイスを含み、前記発光デバイスは、前記機能層領域と前記合成樹脂フィルムの前記フレキシブル基板領域とを有しており、
前記積層構造体の前記第2部分は、前記ガラスベースと、前記合成樹脂フィルムの前記中間領域とを含む、請求項17から22のいずれかに記載の製造装置。
【国際調査報告】