(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO2019221287
(43)【国際公開日】20191121
【発行日】20200528
(54)【発明の名称】バイオジェット燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20200501BHJP
【FI】
   !C10G3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】2019527571
(21)【国際出願番号】JP2019019756
(22)【国際出願日】20190517
(11)【特許番号】6635362
(45)【特許公報発行日】20200122
(31)【優先権主張番号】2018096478
(32)【優先日】20180518
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518175902
【氏名又は名称】一般社団法人HiBD研究所
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区ひびきの1番8号 事業化支援センター502号室
(71)【出願人】
【識別番号】313009877
【氏名又は名称】環境エネルギー株式会社
【住所又は居所】広島県福山市曙町六丁目9番24号
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】藤元 薫
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区ひびきの1番8号事業化支援センター502号 一般社団法人HiBD研究所内
(72)【発明者】
【氏名】村上 弥生
【住所又は居所】福岡県北九州市若松区ひびきの1番8号事業化支援センター502号 一般社団法人HiBD研究所内
(72)【発明者】
【氏名】野田 修嗣
【住所又は居所】広島県福山市曙町六丁目9番24号 環境エネルギー株式会社内
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA03
4H129BA03
4H129BB05
4H129DA20
4H129DA21
4H129KA05
4H129KA11
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4H129KC02X
4H129KC03Y
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4H129KC14Y
4H129KD15Y
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD24Y
4H129KD25Y
4H129KD28X
4H129KD28Y
4H129NA23
(57)【要約】
トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる粗製油を、反応温度180℃〜350℃、圧力0.1MPa〜30MPaの条件下、水素化触媒及び異性化触媒を用いて、水素雰囲気下で、水素化、異性化、分解する反応工程を有するバイオジェット燃料の製造方法である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる粗製油を、反応温度180℃〜350℃、圧力0.1MPa〜30MPaの条件下、水素化触媒及び異性化触媒を用いて、水素雰囲気下で、水素化、異性化、分解する反応工程を有することを特徴とするバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程において、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を行うことを特徴とする請求項1記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項3】
前記反応工程において、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を同時に行うことを特徴とする請求項2記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項4】
前記脱酸素処理が、油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項5】
前記油脂脱炭酸分解触媒が、マグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかを含むことを特徴とする請求項4記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項6】
前記トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱炭酸処理して得られる粗製油が、以下のa.〜e.の要件を満たすことを特徴とする請求項4又は5に記載のバイオジェット燃料の製造方法。
a.炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を含む
b.流動点が−15℃以上である
c.芳香族炭化水素含有率が1〜15質量%である
d.酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilである
e.環状化合物含有率が15質量%以下である
【請求項7】
前記反応工程において、0.5MPa〜3MPaで反応を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項8】
前記水素化触媒が、第9族及び/又は第10族の金属を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項9】
前記異性化触媒が、固体酸触媒を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項10】
前記水素化異性化触媒が、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5の混合比からなる混合触媒であることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項11】
前記水素化異性化触媒が、水素化触媒及び異性化触媒の複合体であることを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項12】
前記水素化触媒の粒径が、前記異性化触媒の粒径よりも小さく粉化され、前記異性化触媒の表面に付着又は担持されていることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項13】
前記水素化触媒にCuが1〜10質量%添加されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法
【請求項14】
前記反応工程において、触媒相での液空間速度が、0.1〜10h−1であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項15】
前記反応工程において得られる精製油が、以下のA.〜E.の要件を満たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
A.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を60質量%以上含む
B.流動点が−40℃以下である
C.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
D.酸価値が0.015mg−KOH/g‐oil以下である
E.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られた粗製油を原料としたバイオジェット燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策が喫緊の課題となっている。この課題を解決する一つの方法としてカーボンフリーの燃料としてバイオジェット燃料の開発は、地球温暖化ガスの排出量を削減し、エネルギー循環型社会を構築するために極めて重要な開発テーマとなっている。
このテーマを解決するため、現代種々の研究が行われるとともに、それに合わせて各種の文献が報告されている。例えば、
・特許文献1には、「再生可能供給原料を水素雰囲気下で触媒を用いて水素化と脱酸素によって、処理して炭化水素フラクションを得、次いで前記フラクションを異性化し、選択的にクラッキングし、ついで、得られた、ディーゼル燃料留分・バイオジェット燃料留分・ナフサ生成物・LPGを選択的高温高圧水素ストリッパーで分離して、ディーゼル燃料留分とバイオジェット燃料留分を製造する方法。」が開示されている。
・特許文献2には、「第1段階で生物由来の油を、水素ガス雰囲気下で水素化脱酸素化触媒を用い水素化脱酸素化反応を行いn−パラフィンを生成させ、第2段階でn−パラフィンおよび水素ガスを異性化触媒の存在下で異性化反応を行いイソパラフィンおよび分離留分を生成し、第2段階で得られた200℃以上の沸点を有する留分を異性化触媒の存在下で異性化を行い、バイオジェット燃料又はジェット燃料及びバイオジェット燃料の配合油の製造方法。」が開示されている。
・特許文献3には、「トリアシルグリセロール含有油を炭化水素燃料に変換する方法であって、トリアシルグリセロール含有油と水と水素の混合物を約250℃〜約560℃でかつ約75バールでトリアシルグリセロールの少なくとも一部を変換し、水と、イソオレフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、シクロオレフィン、芳香族のうちの1種以上を含む反応流出液を得、該反応流出液を水素処理してジェット燃料を製造する方法。」が開示されている。
・特許文献4には、「パラフィン系炭化水素の供給流の水素化異性化方法であって、前記炭化水素の供給流を水素、及び結晶骨格中に鉄を有する結晶性金属珪酸塩モレキュラーシーブを含む触媒と接触させバイオディーゼル燃料及びバイオジェット燃料を得る方法。」が開示されている。
・特許文献5には、「非食用油脂を原料としてバイオジェット燃料を製造する方法であって、水素を添加せずに、触媒の存在下で液状の非食用油脂から脱酸素反応、異性化反応と芳香族化反応を介してパラフィン系炭化水素と芳香族化合物を含む反応生成物を製造する方法。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−515539号公報
【特許文献2】特許第5506791号公報
【特許文献3】特表2015−531430号公報
【特許文献4】特表2016−519692号公報
【特許文献5】国際公開2016060450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、次のような課題があった。
(1)特許文献1は原料油脂に対して、水素化脱酸素反応を行い、次いで、異性化分解反応を行う2段階の反応工程なので、水素化脱酸素反応で大量の水素を消費するとともに、この方法では、遊離脂肪酸の骨格構造を備えたノルマルパラフィンが生成することになり、その結果、異性化分解反応が厳しい反応条件となり反応が複雑で省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
(2)特許文献2は、原料油脂に対して、水素化脱酸素反応工程を有するので、大量の水素を消費し、かつ明細書の段落[0086]の実施例1で示された第1の異性化から第2の異性化(重質再循環流)までに得られる生成物はともに凝固点が−40℃を達成しておらず、流動点が高く、ジェット燃料の流動点−40℃を満たすことが困難という課題を有していた。
(3)特許文献3は、油脂を水、水素の存在下、高温高圧の水熱反応を行い、次いで水素化反応を行って、ジェット燃料を得る方法であり、省エネルギー性に欠けるとともに水素の消費量が大きいという課題や、明細書の段落[0052]および[0053]より芳香族収率32.6重量%と大きく、ASTMの0.5質量%以下を満たしていないとい課題を有している。また、流動点に関する記述や生成物の化合物に関する記述がなく、芳香族の含有率だけでなく、流動点等の他の規格を満たしているか不明である。
(4)特許文献4は明細書の段落[0014]にて約400〜約2000psig(2.86〜13.89MPa) の圧力を含む水素化異性化条件下とあり、また明細書の段落[0047]及び[0048]の実施例3の反応圧力が580psig(3.55MPa)と高圧であることから、高圧ガス対策が必要であるという課題を有していた。
(5)特許文献5は、芳香族化合物が実施例2では60.7%、実施例3のβゼオライト触媒を用いたものは69%、Yゼオライト触媒を用いたものは36.2%と、煤の元となるアロマ留分が多くジェット燃料として燃焼性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本件発明者は、上記従来の課題を解決すべく、生物由来の油脂や廃食用油等のトリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られた粗製油を原料としたバイオジェット燃料の製造方法について鋭意研究を行った。
脱酸素処理の中でも、特に油脂脱炭酸分解触媒を用いて脱炭酸処理して得られる粗製油について種々分析した結果、以下の物性を有していることがわかった。
(1)脱炭酸工程において得られる粗製油は、炭素数15〜17を主とした山なりの炭素数分布を持つ炭素数6〜25の炭化水素化合物から成る油であり、炭素数9〜15の炭化水素化合物を主とするジェット燃料より炭素数が大きく、ジェット燃料留分の収率は低いという課題があった。
(2)主となる炭化水素化合物は直鎖飽和炭化水素であり、析出点、流動点が−15℃以上なのでジェット燃料としては高過ぎるという課題があった。
(3)脱炭酸工程において、一部芳香族炭化水素が生成され、含有率が1〜20%ほどあるので、バイオジェット燃料の芳香族炭化水素含有率がMAX0.5%であることの条件を満たしていないという課題があった。
(4)脱炭酸工程にて、脂肪酸の含有量を示す酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilの生成油が得られ、脂肪酸は燃料の酸化安定性に著しく影響を与えるため、ほぼ0mg−KOH/g‐oilにする必要があるという課題があった。
【0006】
本件発明は、上記物性を有する粗製油から以下の基準(ASTM D7566−Annex2)を達成できるバイオジェット燃料を低原価で量産することができるバイオジェット燃料の製造方法を提供することを目的とする。
a.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を主とする精製油である
b.流動点が−40℃以下である
c.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
d.酸価値がほぼ0mg−KOH/g‐oil(0.015mg−KOH/g‐oil以下)である
e.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本件発明のバイオジェット燃料の製造方法は、以下の構成を有している。
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈1〉は、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる粗製油を、反応温度180℃〜350℃、圧力0.1MPa〜30MPaの条件下、水素化触媒及び異性化触媒を用いて、水素雰囲気下で、水素化、異性化、分解する反応工程を有する構成を有している。
【0008】
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化により芳香族成分の二重結合を飽和しシクロアルカン等に転化し芳香族成分の含有量を低下させることができる。
(2)水素化により原料油(粗製油)に由来する遊離脂肪酸を脱酸素し酸価値を低くすることができる。
(3)異性化や水素化分解により粗製油中の成分をシクロパラフィン、イソパラフィン、ノルマルパラフィンに転化するので、析出点及び流動点を低下させることができる。
(4)反応温度や反応圧力が低い条件での装置の運転が可能であるので、省エネルギー性に優れるとともに、装置の製造コストも大幅に低減することができる。
(5)水素化によりオレフィン類の二重結合を飽和し、パラフィン類に転化することができる。
以上の作用が得られることにより、反応工程において、バイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)を効率的に得ることができる。
【0009】
ここで、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油としては、植物油、植物脂肪、遺伝子操作によって得られた植物油や植物脂肪、動物脂肪、魚油又はこれらの混合物を挙げることができる。
具体的には、廃食用油、植物油や植物脂肪としては、ヒマワリ油、菜種油、カノーラ油、パーム油、パーム核油、大豆油、ヘンプ油、オリーブ油、荏胡麻油、リシンシード油、辛子葉油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナツ油、ヤトロファ油、松の木のパルプに含有されるトール油、食品産業から排出される油や脂肪又はこれらの混合物等の廃棄物が挙げられる。
また、動物油や動物脂肪としては、ベーコン脂肪、ラード、獣脂、乳脂、食品産業から排出される油や脂肪又はこれらの混合物等の廃棄物が挙げられる。
その他、テルペン油、魚油、ある種の藻類から採取された油脂、ダーク油、汚泥、油ヤシの果肉や種子、ココヤシの胚乳、菜種、オリーブの果実、荏胡麻やトウゴマ等の種子、ヤトロファやコウヒジュの種子等の搾油前の果実や種子廃搾油原料も挙げることができる。
【0010】
また、本件発明の反応工程において反応に供する粗製油は、上記トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる。脱酸素処理としては、油脂脱炭酸分解触媒を用いて原料油を脱炭酸する処理(例えば、特許第5353893号公報記載の方法)や、原料油にメタノールを加えてメチルエステル化する処理や、原料油を高圧下で水素化して脱酸素する処理を挙げることができるが、反応工程において所望のバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)が得られ易いことから、油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理が好ましい。この脱炭酸化処理については、後述する。
【0011】
反応温度としては、180℃〜350℃、好ましくは、200℃〜320℃が用いられる。200℃よりも低くなるにつれ高級飽和炭化水素が未分解のまま残留する傾向がみられ、また、320℃よりも高くなるにつれ、過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向がみられ、特に、180℃よりも低くなるか、350℃よりも高くなるにつれこの傾向が著しいので好ましくない。
【0012】
圧力としては、0.1MPa〜30MPaが用いられる。好ましくは0.5MPa〜3MPa、より好ましくは、0.5MPa〜2.5MPa、さらに好ましくは1MPa〜2.5MPaが用いられる。1MPaよりも低くなるにつれ、水素化が不十分となり芳香族炭化水素の含有率が増加する傾向がみられ、特に0.1MPaよりも低くなるにつれこの傾向が著しい。また、2.5MPaよりも高くなるにつれ、組成の改善が小さく、省エネルギー性を低下させる傾向がみられる。なお、本件発明の方法においては、2.5MPa以下でもバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)が得られる。
【0013】
用いる触媒は、水素化触媒及び異性化触媒であり、別々に用いても混合して用いてもよい。詳細は、後述する。
【0014】
反応槽は、固定床方式が用いられることが好ましい。反応は連続反応で行うことが好ましい。また、水素化反応と、異性化反応は、別々の反応槽で行ってもよいが、同一の反応槽で行うことが好ましい。
【0015】
水素ガスと粗製油の反応器への供給は、H/原料油=500〜5000vol/vol、好ましくは1000〜2000vol/volである。1000vol/volよりも低くなるにつれ、水素化が不十分となり反応生成物の芳香族炭化水素の含有率が増加する傾向がみられ、また、2000vol/volよりも高くなるにつれ、反応物の滞留時間が短くなり未反応物が増え水素の浪費が多くリサイクルが必要とし装置が複雑になる傾向がある。特に、500vol/volよりも低くなるか、5000vol/volよりも高くなるにつれこれらの傾向が著しい。
なお、本件発明における水素雰囲気下とは、水素ガスのみからなる雰囲気下が好ましいが、反応に影響しない範囲で、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0016】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈2〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉において、前記反応工程で、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を行う構成を有している。
この構成により、水素化触媒及び異性化触媒を別々に用いるよりも効率的にバイオジェット燃料を製造することができる。なお、後述の本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈3〉のように、1の反応槽内で反応を行ってもよいが、それぞれ反応条件(温度、圧力等)が異なる2以上の反応槽を用いて水素化を主とする反応と異性化・分解を主とする反応とを別々に行ってもよい。
【0017】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈3〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉において、前記反応工程で、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を同時に行う構成を有している。
この構成により、一段反応で、より効率的にバイオジェット燃料を製造することができる。なお、水素化、異性化、分解を同時に行うとは、反応が厳密に同時に起こることを意味するものではなく、水素化異性化触媒相の通過と共に、水素化、異性化及び分解が起こることを意味する。
【0018】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈4〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈3〉のいずれかにおいて、脱酸素処理が、油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理である構成を有している。
【0019】
油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理は、例えば、特許第5353893号公報に具体的に記載されている。具体的には、350℃〜475℃において、反応容器内で油脂脱炭酸分解触媒と油脂(トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油)を接触させる方法である。この方法では、下記の反応式により、炭素数8〜24の脂肪族炭化水素が主として生成する。
【0020】
【化1】
【0021】
また、本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈5〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈4〉において、油脂脱炭酸分解触媒が、マグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかを含む構成を有している。
【0022】
具体的には、例えば、活性化された炭素、活性コークス、及びこれらの混合物のいずれかがマグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかによってコーティングされたものを挙げることができる。
このような触媒を用いることにより、効率的に原料油の脱炭酸化を図ることができる。
【0023】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈6〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈4〉又は〈5〉において、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱炭酸処理して得られる粗製油が、以下のa.〜e.の要件を満たす構成を有している。
a.炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を含むこと
b.流動点が−15℃以上であること
c.芳香族炭化水素含有率が1〜15質量%であること
d.酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilであること
e.環状化合物含有率が15質量%以下であること
これらの構成により、バイオジェット燃料の製造により適した粗製油を得ることができる。
【0024】
a.の条件においては、例えば、炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を5%以上含み、10%以上含み得る。
b.の条件においては、流動点の上限は、10℃程度である。
c.の条件においては、芳香族炭化水素含有率は、1〜10質量%であり得る。
d.の条件においては、酸価値は、0〜10mg−KOH/g‐oilであり得る。
e.の条件においては、環状化合物含有率は、10質量%以下であり得る。
【0025】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈7〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈6〉のいずれかにおいて、反応工程において、0.5MPa〜3MPaで反応を行う構成を有している。
本件発明の方法は、このような低圧反応でも、効率的にバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)を得ることができる。
【0026】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈8〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈7〉のいずれかにおいて、水素化触媒が、第9族及び/又は第10族の金属を含む構成を有している。
第9族の金属としては、Coを挙げることができる。また、第10族の金属としては、Ni、Pd、Ptを挙げることができ、2種以上用いることが好ましい。例えば、Ni及びPdを用いることが好ましい。さらに、これらの触媒の担体として、アルミナ、シリカ、活性炭等の表面積の大きな多孔質体を用いることが好ましい。なお、Mo、W等の第6族の金属や、Ru等の第8族の金属や、Cu等の第11族の金属をさらに含んでいてもよい。
【0027】
また、本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈9〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈8〉のいずれかにおいて、異性化触媒が、固体酸触媒を含む構成を有している。
異性化触媒としては、ハロゲン化アルミニウム等のハロゲン化金属を含む触媒や、シリカアルミナ、活性アルミナ、活性白土、ゼオライト等を含む固体酸触媒などが用いられるが、ゼオライトを含む固体酸触媒が好ましい。これにより、安価な触媒で、高級オレフィンや高級パラフィンを、低級パラフィンに効率よく異性化及び/又は分解することができる。
ゼオライトとしては、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、MFIゼオライト、モルデナイト、L型ゼオライト等が挙げられる。耐熱性や遊離脂肪酸の水素化により発生する水等に対する耐水性に優れるとともに、コーキングの抑制効果が期待できるため、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、MFIゼオライトが好ましく、β型ゼオライトがより好ましい。
【0028】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈10〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈9〉のいずれかにおいて、水素化異性化触媒が、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5の混合比(質量比)からなる混合触媒である構成を有している。
【0029】
ここで、水素化異性化触媒としては、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の混合比で混合した触媒が用いられる。水素化触媒の混合比が低くなるにつれ、水素化が不十分となり反応生成物の芳香族炭化水素の含有率が増加し、過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向がみられ、又、水素化触媒の混合比が高くなるにつれ、異性化反応が抑制され、高級飽和炭化水素が未反応のまま残留し、析出点や流動点が降下しない傾向がみられる。
また、不活性物質が、水素化異性化触媒:不活性物質=10〜90:90〜10の混合比で混合されていてもよい。水素化異性化触媒が結晶性物質なので、不活性物質を介在させ、結晶性の水素化異性化触媒を分散させ水素化異性化触媒の触媒活性を高めるためである。ここで、不活性物質としては、ガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズを挙げることができる。
【0030】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈11〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈10〉のいずれかにおいて、水素化異性化触媒が、水素化触媒及び異性化触媒の複合体である構成を有している。
本件発明の水素化異性化触媒は、単に混合した状態のものであってもよいが、一体化した複合体が好ましい。複合体としては、例えば、水素化触媒粒子の表面に異性化触媒粒子を付着又は担持させたものであってもよいし、異性化触媒粒子表面に水素化触媒粒子を付着又は担持させたものであってもよいし、水素化触媒粒子及び異性化触媒粒子を混合してバインダを用いて一体化させたものであってもよい。
【0031】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈12〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈11〉のいずれかにおいて、水素化触媒の粒子の粒径が異性化触媒の粒子の粒径よりも小さく粉化され、異性化触媒の粒子表面に付着又は担持されている構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化触媒の微細粒子が異性化触媒の粒子表面に付着又は担持されていることにより、異性化触媒の粒子表面に近接した高級パラフィンの活性点が水素化触媒に移動し高級パラフィンが効率的に水素化分解され低分子パラフィン化や、異性化されイソパラフィン化される。これにより、炭素数が9〜15の炭化水素化合物の含有率を効果的に増加させることができる。
(2)芳香族炭化水素を効果的に水素化することにより、芳香族炭化水素の含有率を低下させることができる。
(3)また、水素化により、遊離脂肪酸を効果的に分解し、酸価値を低下させることができる。
【0032】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈13〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈12〉のいずれかにおいて、水素化触媒にCuが1〜10質量%添加されている構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化触媒にCuが添加されているので、水素化分解によるパラフィンの末端のメチル基のメタン化が抑制されオレフィンの水素化をスムーズに行うことができる。
(2)水素化触媒にCuが添加されているので、直鎖パラフィンをランダムに分解し、高級パラフィンを低級化させ流動点を下げることができる。
(3)トルエンを水添しシクロヘキサン、更にはジメチルシクロペンタンに、またヘキサデカン(C1634)をオクタン、ジメチルシクロヘキサン、2-メチルオクタン等に分解、異性化し低分子化することにより流動点も下げることができる。
(4)遊離脂肪酸のカルボキシル基やカルボニル基の脱酸素反応を行うことができる。
【0033】
ここで、Cuの添加量は1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%が用いられる。2質量%よりも少なくなるにつれパラフィンの末端のメチル基の解離によるメタンの生成量が増加するという傾向があり、5質量%を超えるにつれNiの水素化能力を低下させるという傾向があり、1質量%よりも少ないか10質量%よりも多いときは、これらの傾向が強いので好ましくない。なお、Cuの代わりにFeを用いてもよい。
【0034】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈14〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈13〉のいずれかにおいて、反応工程において、触媒相での液空間速度が、0.1〜10h−1である構成を有している。
触媒相での液空間速度(LHSV)を0.1〜10.0h−1に設定することにより、粗製油が水素雰囲気の中で十分な水素化、水素化分解、脱酸素分解、芳香族のナフテン化反応等を行うことができる。
【0035】
ここで、触媒相での液空間速度としては、0.1〜10.0h−1が好ましいが、より好ましくは0.2〜4.0h−1、さらに好ましくは0.2〜2.0h−1が適用される。0.2h−1よりも少なくなるにつれ過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向があり、2.0h−1を超えるにつれ、高級飽和炭化水素が未反応のまま残留するという傾向があり、0.1h−1よりも少ないか10.0h−1よりも多いときは、これらの傾向が強い。
【0036】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈15〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈14〉のいずれかにおいて、反応工程において得られる精製油が、以下のA.〜E.の要件を満たす構成を有している。
A.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を60質量%以上含む
B.流動点が−40℃以下である
C.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
D.酸価値が0.015mg−KOH/g‐oil以下である
E.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【0037】
A.の条件においては、炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
【発明の効果】
【0038】
上記のように、本件発明のバイオジェット燃料の製造方法は、ASTM D7566−Annex2の主要基準を満たすことが可能である。また、以下のような効果を有する。
(1)天然由来の粗製油を原料とするので、カーボンフリーで高品質のバイオジェット燃料を高収率で且つ低原価で製造できる。
(2)比較的低温、低操作圧力の条件下で製造できるので、例えば、高圧ガス保安法で高圧ガスの定義に含まれない1.0MPa未満の圧力での反応も可能であり、安全かつ経済的に、イソパラフィンが主体で少量の芳香族化合物を含有する高品質のバイオジェット燃料を高収率で得ることができる。
(3)得られたバイオジェット燃料は、ほぼ全てが炭化水素から成り、石油由来の原料から得られたジェット燃料と任意に混合することができる。
(4)水素化によりバイオ燃料粗製油に由来する遊離脂肪酸を脱炭酸し酸価値を著しく低下させ0mg−KOH/g−oilに近づけるとともに、異性化や水素化分解により芳香族炭化水素やオレフィン、n‐パラフィンをシクロパラフィン、イソパラフィン、ノルマルパラフィンに転化するので、析出点及び流動点を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本件発明のバイオジェット燃料の製造装置の要部模式図
【図2】実施例1〜4における生成物の組成図(C8−9)
【図3】実施例1〜4における転化率
【図4】実施例1〜4における生成物の流動点
【図5】実施例5、6における生成物の組成図(C8−9)
【図6】実施例5、6における生成物の組成図
【図7】実施例5、6における生成物の流動点
【図8】実施例7における生成物の選択率
【図9】実施例8における生成物の選択率
【図10】実施例9における生成物の炭素数分布
【図11】実施例10における生成物の炭素数分布
【図12】実施例9における生成物の組成図
【図13】実施例10における生成物の組成図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本件発明のバイオジェット燃料の製造装置を図面を用いて説明するとともに、実施例を用いて詳細に説明するが、本件発明の範囲を限定するものではない。
図1は本件発明のバイオジェット燃料の製造装置の要部模式図である。1は水素の流量をコントロールし反応器の圧力0.5MPa〜3MPaに維持する水素マスフローコントローラー、2は天然由来のトリグリセリド含有の原料油を分解して得られた粗製油を貯蔵する原料油タンク、3は輸送ポンプ、3aは原料油を150〜320℃に予熱する予熱器、4は圧力計、5は水素化異性化触媒で粗製油を水素雰囲気下で水素化、異性化、分解反応を行う固定床式反応槽、6は反応槽5を180℃〜350℃に加熱する加熱器、7は水素化異性化分解触媒、8は反応層の外部温度を測定する外部温度コントローラー、9は反応層の内部温度を測定する内部温度コントローラー、10は反応生成物の冷却器、11はバイオジェット燃料貯留部、12は保圧弁、13は気相留分の流出部である。
【0041】
以上のように構成されたバイオジェット燃料の製造装置を用いて、以下本件発明のバイオジェット燃料の製造方法について簡単に説明する。
まず、密閉状の固定床反応槽5に水素化触媒と異性化分解触媒の混合物からなる水素化異性化分解触媒7を投入し水素化異性化分解触媒7の固定床を作製する。次いで、加熱器6で固定床反応槽5の内部温度を180〜350℃前後に加熱する。水素ガスマスフローコントローラー1から水素ガスを反応槽内の圧力が0.5〜3MPaになるまで流入する。原料油タンク2から予熱器3aでバイオ燃料粗製油を150〜320℃に加熱しながら輸送ポンプ3で予熱された固定床反応槽5に輸送する。固定床反応槽5内で、空塔速度を0.1〜10.0h−1に保ちながらバイオディーゼル燃料を一段で水素化、異性化、分解反応を行いバイオジェット燃料に転化する。得られた反応生成物は冷却器10で冷却され気液分離が行われる。気液分離された液状留分はバイオジェット燃料粗製油として貯留タンクに貯留され、気相留分は流出部13から系外へ排出される。バイオジェット燃料粗製油は、図示しない精留装置に送られ、ケロシン留分として分流されバイオジェット燃料となる。
【実施例】
【0042】
1)原料(バイオ燃料粗製油)
原料として、(表2)に示す試料を用いた。
(表2)中の「HiBD粗製油」は、特許第5353893号の記載に基づいて製造されたバイオ燃料粗製油を示す。
(1)モデル化合物の検討
バイオ燃料粗製油は、原料組成によって物性が異なる。
(表1)にバイオ原料別のバイオ燃料粗製油の油性性状を示す。尚、表中「HiBD」は藤元薫の登録商標である。
【0043】
【表1】
【0044】
(表1)中の「HiBD」は、各原料を特許第5353893号の記載に基づいて製造したものである。製造方法の評価を行うためには、バイオ燃料粗製油(HiBD)は、蒸留性状から見て明らかなように、多種類の化合物が混在しているため、データが複雑で解析が極めて困難なので、モデル化合物でバイオジェット燃料を製造し製造方法を解析し評価を行った。
【0045】
(2)モデル化合物の作製
HiBD(原料:廃食用油)の組成分析では、概略ノルマルパラフィン50%、オレフィン類29%、芳香族化合物10%、酸素化合物7%、ナフテン1%であった。
HiBD中のオレフィン類は、容易に水素化されるので、オレフィン類を混合することで水素化以外の反応が進行し結果が複雑になるだけで、全体の評価には影響がないので、モデル化合物としてオレフィン類を除き、オレフィン類相当量のパラフィンを混合した。
HiBD中の直鎖炭化水素化合物の炭素数の分布は炭素数15及び17を頂点とした山形になっていることから、モデル化合物として炭素数15及び17の中間であるヘキサデカンとへプタンを選択した。
ASTM D7566 Annex2において、芳香族化合物の含有率は0.5%以下、ナフテン(シクロパラフィン)は15%以下となっている。
HiBD中のナフテンの含有量は微量であり、多くは芳香族化合物の水素化によって生成されるため、モデル化合物として芳香族化合物の含有率を15%より過剰な20%とした。芳香族化合物のモデルとしてトルエンを選択した。
HiBDには、製造方法や製造装置により若干の遊離脂肪酸が混合してくる。そこで、モデル化合物として遊離脂肪酸の代わりにオクタン酸を1%含有させた。
これらのことから、モデル化合物は、(表2)No.1に示す、n−ヘキサデカン50%+n−へプタン+29%トルエン+オクタン酸1%の混合油の組成に決定した。
【0046】
【表2】
【0047】
水素化異性化触媒として、(表3)に示す組成物を用いた。
【0048】
【表3a】
【0049】
【表3b】
【0050】
<実施例>
(表2)に記載する原料名の原料を用い、(表3a)に記載する触媒を(表3b)に記載するように調製した水素化異性化触媒を固定床反応槽に充填し、槽内を所定の温度に保ちながら、水素を200ml/minの流量で流し、(表4)の条件で実験を行った。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例で得られた生成物は、(1)GC/MS解析(C-C区間のピーク群の成分分布)、(2)GC−FID解析(転化率)、(3)流動点(℃)で評価した。
尚、流動点は、エタノールを1/4程入れたデュワー瓶に、試料を1ml採取した試験管を漬け、−100℃まで測定可能な温度計を用い、ドライアイスで、5℃刻みで温度を下げた。エタノール溶媒を5℃下げた後、3分間温度を保持した後、試験管を取り出し、試験管を横向きに傾け、5秒間静止しても流動せず(液だれが生じず)、固体状態となった試料の温度と、その温度+5℃の温度範囲を流動点とみなして測定した測定値である。
【0053】
(実施例1〜4)
分解反応の圧力依存性を確認した。原料:モデル化合物について、水素化異性化触媒として粒子混合触媒を用い、反応温度を220℃、LHSV(h−1)を0.5に一定に保ち圧力を変化させて、生成物であるバイオジェット燃料の組成の圧力依存性を確認した。粒子混合触媒は、水素化触媒として日興リカ(株)製の水素化触媒d-311L(2〜10mm粒状物)と異性化触媒として日揮触媒化成(株)製のβゼオライト触媒F05M-1308−1(Φ3.4mmX3mmのペレット)を約1:1で粒子状のまま物理混合した物((表3b)のNo.1)を用いた。
その確認結果を、(表5)〜(表7)、(図2)〜(図4)に示した。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
図2はGC/MS解析によるC8〜C9区間のピーク群の成分分布図であり、図3は転化率図であり、図4は流動点の図である。
この確認結果から明らかなように、モデル化合物について、水素化異性化触媒として粒子混合触媒を用い、反応温度を220℃、LHSVを0.5(h−1)の条件において、0.5〜2.0MPaの低い圧力で所望の反応が進行することがわかった。
【0058】
(実施例5,6)
原料として(表2)の原料No.2のHiBD粗製油1を用いた。
実施例は、生成物であるバイオジェット燃料の組成の高温時における温度依存性を確認した。圧力を2.0(MPa),LHSVを0.5(h−1)と実施例1と同様に保ち反応温度を290℃、300℃に変化させるとともに、水素化異性化触媒を付着混合触媒((表3b)のNo.2)に変えたほかは、実施例1と同一の条件で行った。尚、対比原料として、(表2)の原料No.2のHiBD粗製油1の成分分布を確認した。成分分布の算出にはGC−FIDを用いた。GC−FIDの測定と同一条件GC/MSを用いサンプル分析を行ったのち、各ピークを解析した。そのGC/MS解析結果をもとに、GC−FID測定における各結果のピークをノルマルパラフィン等にラベリングをした。ラベリング後、同類の化合物ごとにピーク面積を合計し、全体のピーク面積に対する割合を各化合物の成分分布とした。
その確認結果を、(表8)〜(表11)、(図5)〜(図7)に示した。
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
この確認結果から明らかなように、原料No.2について、水素化異性化触媒として付着混合触媒を用い、圧力を2.0(MPa),LHSVを0.5(h−1)の条件では、いずれも高品質のバイオジェット燃料として利用できることがわかった。
【0064】
(実施例7)
[異性化触媒の検討]
【0065】
流動点を降下させるためには、直鎖の炭化水素であるノルマルパラフィンから、メチル基等の枝が付いた炭化水素であるイソパラフィンへ異性化することが必須である。
【0066】
本評価においては、簡便な実験方法で触媒の異性化活性を判断できるように、ヘプタンによるモデル原料の試験を導入した。結果については、生成物の種類により、以下の3種類の反応に分類し、評価した。
【0067】
1)イソヘプタンが生成(異性化反応)
2)プロパンとイソブタンが生成(分解反応)
3)メタン、エタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサンが生成(ガス化反応)
【0068】
これらの反応のうち、1)が最も望ましい反応であり、次点で望ましい反応が2)の反応である。一方、3)の反応が起きると、メタンなどのガス状生成物が生成し、メタン等の生成分だけ精製油の収率が減少してしまうため、望ましくない反応である。
【0069】
触媒は、Ni−Pd/アルミナ触媒とY、βなどの比較的細孔径の大きいゼオライトとの複合体((表3b)のNo.3及びNo.4)であり、モデル化合物としてヘプタンを用いた。反応温度は240℃、反応圧力は2.0MPaで反応を行った。
【0070】
この試験における生成物の選択率を表12及び図8に示す。
【0071】
【表12】
【0072】
表12及び図8に示すように、β型ゼオライトもY型ゼオライトも異性化触媒として優れていることがわかった。
【0073】
(実施例8)
[反応圧力の検討]
【0074】
反応圧力を変化させた際の異性化反応に対する活性の比較評価試験を行った。
原料は、上記同様、ヘプタンを用いた。反応温度は240℃、圧力は1.0、2.0、3.0MPa、触媒は、Ni−Pd/アルミナ触媒とゼオライトとの複合体を用いた。
この試験における生成物の選択率を表13と図9に示す。
【0075】
【表13】
【0076】
いずれの圧力でも望ましい反応である異性化反応の選択率は著しく高かった。このことから、1.0〜3.0MPaの低圧でも、十分な異性化反応が進行する。
【0077】
(実施例9、10)
[粗製油から得た精製油の性状]
原料に廃食油から得られた粗製油(粗製油2および粗製油3)を用い、反応温度は240℃、圧力は2.0MPa、実施例8と同一の触媒で、精製油を得た。
【0078】
得られた精製油は、GC分析結果からの炭素数分布の算出、GC/MSを利用した成分分布の算出、全酸価および流動点の測定を行った。精製油の性状の各結果を表14〜15、および図10〜13に示す。
【0079】
【表14】
【0080】
表14及び図10、図11は、精製油の炭素数分布を示している。結果から、実施例9及び10ともに、ジェット留分であるC9―15が増加していることが分かる。
【0081】
【表15】
【0082】
表15は精製油の成分分布、酸価、流動点を示しており、さらに図12及び図13は精製油の成分分布図を示している。なお、表15中の環状化合物とは、シクロパラフィン、シクロオレフィン、芳香族化合物等のすべての環状の化合物をいう。
【0083】
精製油のシクロパラフィン及び芳香族は実施例9では各々7.3%と0%、実施例10では各々で4.4%と0%あった。ASTM規格中のシクロパラフィンと芳香族の規格値がそれぞれMax.15質量%とMax.0.5質量%であることから、実施例9及び10ともに規格値を満たした。また、酸価のASTM規格値がMax.0.015mgKOH/g−oil、流動点のASTM規格値が−40℃と定められている。表15に示すように、精製油の酸価は実施例9及び10ともに0mgKOH/g−oil、流動点は実施例9では−50〜−45℃、実施例10では−55〜−50℃であり、酸価及び流動点のASTMの規格値を満たした。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本件発明は、高品質のバイオジェット燃料を高収率で得ることができるバイオジェット燃料製造方法を提供する有意な発明である。
【符号の説明】
【0085】
1 水素ガスマスフローコントローラー
2 原料油タンク
3 輸送ポンプ
3a 予熱器
4 圧力計
5 固定床式反応槽
6 加熱器
7 水素化異性化分解触媒層
8 外部温度コントローラー
9 内部温度コントローラー
10 冷却器
11 バイオジェット燃料貯留部
12 保圧弁
13 流出部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】

【手続補正書】
【提出日】20191018
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を、マグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかを含む油脂脱炭酸分解触媒を用いて脱炭酸処理して得られる粗製油を、反応温度180℃〜350℃、圧力0.1MPa〜30MPaの条件下、Ni及びPdを含む水素化触媒及びゼオライトを含む異性化触媒を用いて、水素雰囲気下で、水素化、異性化、分解する反応工程を有することを特徴とするバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程において、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を行うことを特徴とする請求項1記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項3】
前記反応工程において、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を同時に行うことを特徴とする請求項2記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項4】
前記トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱炭酸処理して得られる粗製油が、以下のa.〜e.の要件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
a.炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を含む
b.流動点が−15℃以上である
c.芳香族炭化水素含有率が1〜15質量%である
d.酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilである
e.環状化合物含有率が15質量%以下である
【請求項5】
前記反応工程において、0.5MPa〜3MPaで反応を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項6】
前記水素化異性化触媒が、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5の混合比からなる混合触媒であることを特徴とする請求項2〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項7】
前記水素化異性化触媒が、水素化触媒及び異性化触媒の複合体であることを特徴とする請求項2〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項8】
前記水素化触媒の粒径が、前記異性化触媒の粒径よりも小さく粉化され、前記異性化触媒の表面に付着又は担持されていることを特徴とする請求項2〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項9】
前記反応工程において、触媒相での液空間速度が、0.1〜10h−1であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
【請求項10】
前記反応工程において得られる精製油が、以下のA.〜E.の要件を満たすことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のバイオジェット燃料の製造方法。
A.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を60質量%以上含む
B.流動点が−40℃以下である
C.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
D.酸価値が0.015mg−KOH/g‐oil以下である
E.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【国際調査報告】