(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018503308
(43)【公表日】20180201
(54)【発明の名称】磁気バイアスおよびスピン歳差を利用したフェライト共振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/18 20060101AFI20180105BHJP
   H01P 1/218 20060101ALI20180105BHJP
   H03B 15/00 20060101ALI20180105BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20180105BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   !H03B5/18 E
   !H01P1/218
   !H03B15/00
   !H01L29/82 Z
   !C01G49/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】2017532599
(86)(22)【出願日】20151217
(85)【翻訳文提出日】20170713
(86)【国際出願番号】US2015066461
(87)【国際公開番号】WO2016100713
(87)【国際公開日】20160623
(31)【優先権主張番号】62/093,395
(32)【優先日】20141217
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517207510
【氏名又は名称】ヴィーダ アイピー,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】VIDA IP,LLC
【住所又は居所】アメリカ合衆国,カリフォルニア州 94928,ローナート パーク,ユニット ビー1,ステイト ファーム ドライヴ 6167
【住所又は居所原語表記】6167 State Farm Drive,Unit B1,Rohnert Park,CA 94928,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】パロット,ロナルド,エイ.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94928,ローナート パーク,ステイト ファーム ドライヴ 6167
(72)【発明者】
【氏名】スウィート,アレン,エイ.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94928,ローナート パーク,ステイト ファーム ドライヴ 6167
【テーマコード(参考)】
4G002
5F092
5J006
5J081
【Fターム(参考)】
4G002AA09
4G002AD04
4G002AE02
5F092AB10
5F092AC21
5F092BD06
5F092BD13
5F092BD19
5F092FA08
5J006HD03
5J006LA02
5J081AA11
5J081BB06
5J081CC42
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5J081EE12
5J081JJ02
5J081JJ12
5J081JJ13
5J081MM09
(57)【要約】
【構成】本発明は、磁場バイアスおよび電子スピン歳差を使用して高周波電力をフェライト共振器に結合した低損失一方向性導電シートに関し、バイアス磁場に複数のフェライト共振器を配置し、このフェライト共振器の材料の電子スピンを励起し、歳差運動させるステップを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気バイアス場において相互に結合した無損失共振器によって位相ノイズの小さいマイクロ波振動を発生する方法であって、発振を維持するために必要なフィードバックエネルギーおよび位相シフト機能を提供することを特徴とする方法。
【請求項2】
相互に結合した基本共振器セルのアレイ領域を使用して、共振器をバイアスする動作磁気ギャップ長さを小さく抑える強磁性共振器の同調効率を高くすることを特徴とする方法。
【請求項3】
バイアス磁場において共振材料によって決まる周波数において、複数の強磁性共振器を結合するマイクロ波振動で電力を分配するエネルギー効率の高いことを特徴とする方法。
【請求項4】
複数のフェライト共振器をバイアス磁場に配置し、これらフェライト共振器の材料の電子スピンを励起して、歳差運動させるステップを有する磁場バイアスおよび電子スピン歳差を使用して、高周波電力をフェライト共振器に結合することを特徴とする低損失一方向性導電シート。
【請求項5】
前記バイアス磁場が、前記フェライト共振器に電子スピン歳差共鳴を誘導する静的なバイアス磁場である請求項4に記載の一方向性導電シート。
【請求項6】
前記静的なバイアス磁場が、印加された磁場に直線的に比例する歳差回転サイクルを発生する請求項5に記載の一方向性導電シート。
【請求項7】
さらに、前記バイアス磁場に直交し、かつ前記電子スピン歳差と同じ周波数をもつ時変電磁界を有し、この時変磁界が磁気結合により電子歳差と相互作用する請求項6に記載の一方向性導電シート。
【請求項8】
歳差速度の周波数で外部高周波磁界が存在しない状態において、前記バイアス磁場が存在する限り、前記フェライト共振器における電子スピン歳差がエネルギー損失なく継続する請求項7に記載の一方向性導電シート。
【請求項9】
前記バイアス磁場の強度が変化すると、このバイアス磁場の強度の変化に比例して前記電子スピン歳差の周波数も変化する請求項7に記載の一方向性導電シート。
【請求項10】
エネルギーが前記時変磁界を行き来して転移する請求項7に記載の一方向性導電シート。
【請求項11】
前記時変磁界を発生する導体に損失がない場合、放射によって消滅するまでは前記時変磁界が縮小することなく続く請求項10に記載の一方向性導電シート。
【請求項12】
前記時変磁界からのエネルギーが使用用途に移行する請求項11に記載の一方向性導電シート。
【請求項13】
電流ループ、伝送ラインおよび導波管からなる群から選択される電気信号伝送デバイスを介して前記フェライト共振器に前記時変磁界を結合する請求項12に記載の一方向性導電シート。
【請求項14】
高周波電力をフェライト共振器に結合する磁気バイアス化低損失一方向性の導電シートであって、
全体として平面状の上面および下面をもつディスク本体を有する第1結合パックと、
誘電体によって分離され、かつ前記ディスク本体の前記上面に設けられ、広いパターンを形成した、離間した平行な導体ストリップのアレイと、
前記第1結合パックの上面に設けられたフェライト共振器と、
を有することを特徴とする導電シート。
【請求項15】
前記平行な導体ストリップのアレイが、前記フェライト共振器よりも広く、かつ前記フェライト共振器に関連する終端部の影響を十分除去できるほど長い請求項14に記載の導電シート。
【請求項16】
前記導体ストリップが前記アレイの両側における端部から、前記ディスク本体の上側の前記上面の一部に設けられた薄い導体材料の拡張領域に延設された請求項15に記載の導電シート。
【請求項17】
前記導体ストリップおよび前記拡張導体領域それぞれをグラフェンから形成した請求項16に記載の導電シート。
【請求項18】
前記結合パックが第1中心線から等距離にあり、かつこの中心線に対して平行な第1平行コードおよび第2平行コードにそって切り詰められ、かつ前記第1中心線に対して垂直な第2中心線によって二分された平面からなる円形ディスク本体である請求項14に記載の導電シート。
【請求項19】
前記共振器が前記結合パックの前記上面から離間している請求項14に記載の導電シート。
【請求項20】
前記共振器が、カップ付き誘電体ペデスタルに設けられる請求項19に記載の導電シート。
【請求項21】
前記導電シートがさらに前記第1結合パックの下に設けられた第2結合パックを有し、この第2結合パックが全体として平面状に上面および下面を備えたディスク本体、および誘電体によって分離され、かつこのディスク本体の上面に設けられた離間平行導体ストリップのアレイを有し、前記第1結合パック上のこのアレイの導体ストリップに対して直交する導体ストリップからなる広いパターンを形成した請求項20に記載の導電シート。
【請求項22】
前記導電シートがさらに前記第1結合パックの下に設けられた第2結合パックを有し、この第2結合パックが全体として平面から上面および下面を備えたディスク本体、および誘電体によって分離され、かつこのディスク本体の上面に設けられた離間平行導体ストリップのアレイを有し、前記第1結合パック上のこのアレイの導体ストリップに対して直交する導体ストリップからなる広いパターンを形成した請求項14に記載の導電シート。
【請求項23】
第1磁気バイアスプレートと第2磁気バイアスプレートとの間に前記第1結合パックおよび前記第2結合パックを設けた請求項22に記載の導電シート。
【請求項24】
前記フェライト共振器がナノスケールYIG球体である請求項22に記載の導電シート。
【請求項25】
前記フェライト共振器がナノスケールYIG球体である請求項14に記載の導電シート。
【請求項26】
複数の前記結合パック上にYIG球体を設け、前記バイアス磁場の強度によって定まる周波数においてナノスケールYIG球体間の磁気結合を最適化するように離間した前記ナノスケールYIG球体のアレイを有する請求項14に記載の導電シート。
【請求項27】
前記YIG球体のアレイを高周波磁界で近隣の球体として一体に結合する請求項25に記載の導電シート。
【請求項28】
前記アレイの中のすべてのYIG球体が励起されて、前記直流(DC)磁場によって定まる周波数と同じ周波数で同時に共振するように空中の波長に比べて小さな領域内に前記YIG球体が閉じ込められた請求項26に記載の導電シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体としては電気回路用共振器、具体的には可変共振器、より具体的にはマイクロ波からミリ波まであるいはそれ以上を超える周波数範囲を結合して、各種のRF(Radio Frequency:無線高周波)およびデジタルの回路機能に対処できるように同調かつ構成可能なほぼ完ぺきな共振器として使用できる損失がきわめて低い一方向性導電シート(unidirectional conductive sheet:単指向性導電シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路を始めとする電子回路および構成部品の基本的な問題は、電荷の熱運動によるジョンソンノイズ(ジョンソン-ナイキストノイズ、即ち熱ノイズ)(Johnson noise(Johnson−Nyquist or thermal noise))である。回路法則を規定する方程式の多くは、現在電力伝達および情報伝達のための電圧および電流に関する法則である。より物理的に基本的な構成部品を実現する最新技術の改良に従って、回路および機能のために磁場法則を使用する機会が多くなってきている。本発明の目的は、回路設計に対する新規なアプローチを可能にすることである。本発明では、時間と共に変化する電圧および電流に関連し、特に電子スピンに関係する磁場に対応する物理的特性を利用する。
【0003】
より小型の構成部品および回路がさらに強く要求されるに従って、通信およびコンピュータへの要求基準を満足するために、これまで重要な性能を確立する基本的手段を工夫することもなく、ソフトウェアおよびブルートフォース的手法である大電力のマルチユニット構成を使い仕様を満たしていた。この結果、情報ロバスト性(informational robustness:耐ノイズ性のある高信号品質)と信号品質の欠如とのバランスを取るため非効率的な消費電力になっていた。
【0004】
マイクロ波が普及する前は、マイクロ波および高周波の多くは、物理的ハードウェアとして実行され、共振器および導波管は、音速ではなく光速で伝わる波を発生し、かつ導波する音響設計と同様な空洞であった。マイクロ波ハードウェアはマックスウェルの法則に従って設計され、きわめて迅速に時変電圧、電流、位相および電力の流れを利用していた。多くの設計に対して既に数学的処理が確立され、高周波電力(RF power)を発生する構成部品を設計する計算手段および無線システムやレーダーシステム用の情報を引き出す計算手段も存在している。機器はきわめてコストが高く、サイズもきわめて大きく、このサイズは1 GHzで空気中において11.81インチ波長に拘束され、そして通常この機器は周波数同調(frequency tuning:チューニング)の範囲が狭く制限されていた。
【0005】
これら制限を取り払うため、電気的伝送ライン用のストリップライン、マイクロストリップや他の構造的な構成などの平面波構造を使用する平面回路が開発された。これが半導体、ハイブリッド集積回路に繋がり、最終的にはモノリシック集積回路に繋がった。ワイヤ構成部品(wire components:リード付きディスクリート電子部品)に置き換った平面波構造は印刷配線板の自然な展開であり、同じ手段で直流(DC)からギガヘルツ(GHz)までデジタル構成部品のモノリシック集積回路に繋がった。これらの開発および各用途、コンピュータやソフトウェアにおける爆発的な使用によって、現代世界を規定するデバイスを製造する多数の半導体工場が成立した。
【0006】
電力や情報帯域の限られたリソースを使用できるのは、受益すべき人々や企業のうちの数パーセントに過ぎない点が長く尾を引く問題である。そこで長年にわたって、現在利用可能な許容能力を何倍も上回る性能が求められている。
【0007】
物理法則を最大限に利用して製造された初期のデバイスは、理論的には効率が良く、限界内で性能を発揮するが、広くは利用できなかった。現在のデバイスは、シャノン−ハートリー(Shannon−Hartley)の定理が記述するように、電磁波の情報を搬送する能力に基本的な限界があるため、性能限界に達しているが、製造効率が良いため広く展開できる可能性がある。性能限界を突破するために、現在、多大な試みが新技術の開発に向けられ、一部はナノスケール材料に向けられている。根本的なミニチュア化はサイズ縮小を実現できるだけでなく、性能を物理的最大まで引き上げることができることが望ましい。実験室では、新分子を合成し、粒子の量子挙動(quantum behavior:電子の量子力学的振舞)を制御するまでになっている。これら研究の多くでは、特に光周波数を使用した搬送波の分野において物質の磁気特性を利用するデバイスを使用している。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、高周波電力をフェライト共振器に結合する損失がきわめて低い一方向性導電シートに関する。磁場バイアス(magnetic field biasing)および電子スピン歳差運動を利用することによって、本発明デバイスの損失は、きわめて小さい。最も本質的な態様で取るアプローチでは、フェライト共振器を磁気バイアス場に配置し、歳差運動するように材料の電子スピンを励起する。歳差運動機構は、損失がなく、磁場が取り払われるまで継続する。また、本発明はエネルギーを電子に結合し、その力を外部使用用途に伝達する方法にも関する。この方法は、本質的に、マクロサイズのモノリシックなマイクロ波集積回路に使用される既存の技術に対して融和的である。この集積回路のサイズが小さくなると、高性能になる。なぜならば集積回路をナノサイズ物質から製造しているからであり、また大きさがより小さくなると、距離に関する逆2乗法則下で性能が向上するからである。
【0009】
電子回路が小型化し、ナノ単位寸法領域に移行すると、量子挙動が電子運動を支配し始める。この結果、通常はノイズが増す。本発明では、印加磁場に対して線形比例する歳差回転サイクルを発生する静的バイアス磁場に応答する電子スピン歳差共鳴を利用する。時変(time−varying)磁気ベクトルが磁気バイアス場に直交し、歳差と同じ周波数をもつ場合には、時変電磁界は磁気結合により電子歳差に対して相互作用する。この相互作用を記述する一つの方法では、透磁率Pのテンソルによって記述を行う。このテンソルは、電子体や電子群からなり、磁気結合するとともに、スピン結合する。現在、これはフェライトの結晶、通常はイットリウム・鉄・ガーネットすなわちYIGによって実現されている。なお、他の材料も使用可能である。
【0010】
歳差運動速度の周波数において外部高周波磁界が存在しない場合、電子がエネルギー損失なく歳差運動を行い、この運動はバイアス磁場が存在する限り継続する。磁場が増減すると、歳差の周波数が磁気バイアス場の強度の変化に比例して変化することになる。上記したように、時変磁界(a time−varying magnetic field:時間的に変化する磁界)(TVMF)の場合、これが歳差周波数にあると、電子と相互作用することになり、その周波数での透磁テンソルの変化としてモデル化することができる。この結果、エネルギーはTVMFを行き来して転移を行なうことになり、このTVMFを発生する導体に損失がない場合には、TVMFは、放射によって消滅するまでは、少なくなることがないだろう。
【0011】
この現象を利用するためには、エネルギーを導入し、TVMFからエネルギーを使用用途に移す必要がある。従来技術では、電子流の流れで発生するTVMFをバイアス磁場内のYIG結晶を有する共振器と結合するためにカレントループや伝送ラインや導波システムを介して使用するようなものを含んでいる。実際、TVMFはYIG共振器を対象とするマイクロ波周波数(RF)帯にあり、共振器はフィルターを形成し、電力を制限し、かつ発振の制御に利用されている。共振器での損失は蓄積エネルギーと散逸エネルギーとの相対比、即ち以下の関係に従ったQで扱われている。即ちQ=2π×Es/Ed(式中Esは蓄積エネルギー、そしてEdは散逸エネルギー/サイクル)である。
【0012】
磁場中における電子スピン歳差の損失はゼロと考えられる。そうでなければ歳差は経時的に減衰することになるが、これは観測されていない。この場合すべての観測可能な損失は結合メカニズムの結果によるものと考えられる。観測の問題は個々の観測行為が電子スピンの量子的性質のためにスピン状態に影響を与えることである。観測行為は印加電力および共振器の観測されたQの両方に関係している。コンデンサーやインダクターや抵抗器などの電子デバイスからなる電子共振器の場合、Qはコンデンサーやインダクターにおける夫々の損失および抵抗器で受ける損失などの合計の等価抵抗によって決まる。一般に、損失はある周波数範囲全体にわたる回路の応答によって測定される。即ち、Q=f/Δである。なお、fは共振中心周波数での周波数であり、Δは1/2電力点の周波数範囲である。
【0013】
YIGやその他のフェライト材料の損失については、半世紀以上も測定され、代表的には線幅(linewidth:共鳴半値幅)(単位は磁気単位のエルステッド(oersted)(Oe)である)で測定される。線幅は、fでの周波数に比例する磁気単位における共振のΔとして同様に定義される。周波数が高くなるとQが大きくなることが観察される。この作用は、ほぼ10GHz未満の周波数でも認められるが、より高い周波数での試験では、Qは同じであるか、あるいは小さくなる。試験データは20GHzまでは共振器のQに改善が認められ、これが、本発明者の検討意欲になり、研究動機になった。
【0014】
Qが周波数とともに小さくなる理由は、結合メカニズムに関連し、かつ周波数が高くなるに従って悪化するTVMF歪みに関係付けることができる。すべての磁気の流れがYIG共振器に結合し、いずれの磁界も重なり合う。この結果、バイアス場および高周波磁界の両者の位相および大きさが変化する。なお、このため、材料欠陥を原因とする損失に匹敵するほどの損失で劣化する。いずれにせよ、YIG共振器に現われるQは集中および分布要素(lumped and distributed components:集中/分布定数回路)などの競合的な技術に比較して良好であり、典型的なYIG共振器のQは、10,000MHzで、すなわち3,571ガウスのバイアス磁場では、4,000以上でありこの場合のQは0.9Oeに等しい線幅に相当する。
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の構成および操作方法に関して、他の新規な特徴を他の目的および作用効果とともに明らかにする。なお、添付図面には本発明の好適な実施態様を例示として示す。また、添付図面は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を定義するものではないことを明言しておく。本発明を特徴づける各新規性については、明細書の冒頭に記載され、本開示の一部を構成する特許請求の範囲に具体的に明らかにする。本発明は、これら特徴の任意の一つにあるのではなく、具体的に記載する機能の構造すべての特定の併用にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下の説明から、本発明および本発明の各目的および作用効果が明らかになるはずである。以下、添付図面を参照して説明していく。
【図1】本発明の磁気バイアス化高Q共振器に使用する結合パック(coupling puck)を示す簡易的に模式化した上面平面図である。
【図2】結合パック対および上部パックの上に設けたフェライト共振器を示す上部斜視図である。
【図3】共振器上下に設けた磁気バイアスプレートを示す立面における側面図である。
【図4】差動増幅器ICに実装され、かつ電子的に接続されて、磁気バイアス回路中で差動発振器となるパック体を示す上部斜視図である。
【図5】ナノスケールの結合パック対および単独の磁気バイアスプレート下の上部パックの上部に設けた複数のナノ球体フェライト(ferrite nano−spheres:フェライト・ナノ・スフェア)の層を示す一部詳細化横断面図である。
【図6】交流(AC)磁界に配列の多数のYIGナノ球体を結合して、単一の準二次元Q倍増YIG共振器(single quasi 2−diminsional Q multiplying YIG resonator)を形成する方法を示す高度に模式化した上面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
同じ構成部品を同じ参照符号で示す図1〜6を参照して本発明を説明する。これら図には、RF電力をフェライト共振器に結合する新規な、改良型の磁気バイアス化低損失一方向性(magnetic biased low loss unidirectional)導電シートデバイスを示す。好適な実施態様の場合、主構成部品は結合パック(coupling puck)10である。この結合パックは、離間し、誘電体14によって分離して、ディスク本体20の上面18にきわめて広いパターン16を形成する薄い導体ストリップ12の並列アレイからなり、このディスク本体20は共振器材料よりもかなり広く、かつ共振器に関して終端の影響(end effects:エンド作用)を十分排除できるだけ長い。薄い導体ストリップは、アレイの各側からディスク本体の上面18の一部に設けられた薄い導体材料15の拡大領域に延設する。導体ストリップおよび拡大導体領域に理想的な導体としては、最近開発されたグラフェン(Graphene:1原子厚炭素シート)導体がある。
【0018】
結合パック10については、第1および第2の平行コード22、24にそって切断された平面円形ディスク本体18として構成する。各コードは第1中心線26から等距離かつ平行で、第1中心線26に対して垂直な第2中心線28によって二等分されている。幅の大きさ寸法Xおよびその端部における曲率Rは使用用途のスケールによって規定される。このパックについては、必要な応答に応じて、共振器30(本実施例では単一の球体YIG共振器)に近接配置でき、あるいは所定の距離をおいて配置でき、従って高さおよび大きさが可変ではあるが、具体的かつ明確なカップ付きの誘電体支持体、ピンまたはペデスタル(pedestal:台座)32を使用できる。
【0019】
図2〜図4に示すように、マクロサイズの結合パックを使用して、パックユニットを構成すればよい。第1パック10については、導体ストリップ12が、第2パック40上の導体ストリップ(図2および図3には図示していない)に対して直角に位置し、パック間の寄生的結合を抑制するように固定する。これらパックは、第1磁気バイアスプレート42および第2磁気バイアスプレート44の間に設ける。この構成を試験し、一つのデバイスを使用するという技術思想の実現可能性を確認した。即ち、この技術思想は、数学的手法によってナノ共振器に拡張できる。
【0020】
一つの実施態様では、ナノスケールYIG球体または他の同様な材料から形成された球体は、ナノサイト間の磁気結合が磁場強度によって決まる周波数でサイト間の電磁気エネルギーの結合を最適化するように間隔を空ける。対象となる第1構成部品は、アレイ(球体の配列)を励起する発振器である。
【0021】
機能動作をよりよく理解してもらうために、熱ノイズの場合に何が起きるかを最初に検討する。熱ノイズ源は、二乗平均周波数偏移(mean square frequency deviation)Δωが生成するように、発振器の周波数および位相を変調する。この周波数偏移が搬送波(carrier)を変調し、二乗平均周波数偏移を式Δω=ω0KTnB/4QrPout(1)により算出する。
【0022】
熱ノイズは、(背景ノイズフロアに達する前の)搬送波ではない位相ノイズを支配するが、アップコンバート(up−converted)された1/fノイズは、搬送波に近い周波数の位相ノイズを支配する。トランジスター発振器のアップコンバートされた二乗平均周波数偏移は、次式
から算出する。
【0023】
上記式(1)および(2)は、熱ノイズおよびアップコンバートされた1/f位相ノイズはいずれも1/Qに依存していることを示す。この関係によって、YIG共振器のQファクターが、YIG同調発振器の位相ノイズおよび時間ジッターを抑制するさいの主制御ファクターになる。単一球体YIG共振器の負荷Qファクターは、幾何ファクターおよび材料ファクターに応じて600〜9000の範囲にある。発振器の共振範囲内に多数のYIG球体を配置すると、Q倍増化(Q multiplication)が生じる。アレイ配置のYIG球体(図5および図6に示す)は、近隣の球体にかかる高周波磁界(adjacent sphere−to−sphere RF magnetic fields)によって一体的に結合する。空間波長と比較して小さいスペース内にすべての球体を保持することによって、アレイ内のすべての球体を励起し、同じ周波数で同時共鳴させることができ、この周波数は直流(DC)磁場によって定まる。また、単一の共振周波数ですべての球体を一定周波数にすることによって、セクションを付加する場合と同様に大規模なマルチセクションフィルター(multi−section filter:複数の濾波器構成)の効果を実現できる。すなわちマルチセクションフィルターと全く同様に、付加したYIG球体によりフィルターの応答性が鋭くなり、その帯域幅が狭くなる。
【0024】
図4に、本発明を発振器50として実施した例を示す。この発振器50は第1差動増幅器54に接続した下部結合パック52の対、および第2差動増幅器58に接続した単一の上部パック56を有し、この上部パック56の磁場が各YIG球体を駆動するように磁場全体に入れて、下部パック対の直列帰還を構成する。図示を明確にするためにYIG球体については図示を省略してあるが、この構成の場合、YIG球体は下部の結合パック対と上部パックとの間に設けられる。導電スペーサー60が上下パック間の電流をつなげるように、YIG球体の周囲に電流が流れる。パックを構造的に支持するために、他の非導電スペーサー(図示省略)を設けてもよい。なお、回路を構築するために、異なる位相をもつパック層を結合し、これらを利用することも可能である。
【0025】
図5は、結合パック対70を示す一部詳細図を含む横断面図である。このパック対70は上面に離間導体ストリップ74のアレイを設けた第1パック72、および第1パックの導体ストリップに対し全体として直交する導体ストリップ78のアレイを有する第2パック76を有する。なお、本例では、単一のフェライトやYIG球体ではなく、多数の球体80を上部パック上に設けて、アレイを構成する。なお、このアレイは図6に示すように、アレイ82のラインにそって構成することができる。
【0026】
図6は、多数のYIG球体84のアレイ82を交流(AC)磁界の状態の下に配列して結合して、単一のQ増倍型YIG共振器を形成する方法を示す簡易的に模式化した平面図である。この共振器の場合、一個のYIG球体94のみが一対の結合パック90、92との確実な物理的連携をすることで、この回路の球体94以外の部分と結合する。そこで球体のアレイは、近隣の積層した従来の集積回路(IC)と連携させて、個々のナノYIG球体をICの各種機能に繋ぐことができる。このように構成するとコンピュータ、DAC(デジタルアナログコンバーター)、ADC(アナログデジタルコンバーター)、メモリー、およびデジタル回路やアナログ回路の両者を利用する機能に供給電力および低ジッターのクロッキングサイクル信号を適用でき、この結果としてより大型のICを構築でき、同時に節電できる。
【0027】
この構造の全体のQは、YIGフィルターの中心周波数をその3dB帯域幅によって割ったものに等しい。従って、帯域幅を狭くする多数の結合YIG球体を付加すると、Qが大きくなる。6〜87個の結合球体を使用すると、全フィルターQを6,000〜15,000の範囲の数値まで大きくできる。このような大きさのQによって熱領域および1/f領域の両者において位相ノイズが20dBほど小さくなり、またサイクル間の時間ジッター(cycle−to−cycle time jitter:隣接周期間ジッター)も10分の1に小さくなる。この種の改良によって、23GHzの発振器中心周波数までサブ1フェムト秒(sub−1fs)領域で総合ジッター性能を実現できる。
【0028】
以上の説明から、当業者は本発明を実施できるはずであり、また以上の説明は、本発明者が現時点で意図している実施の最適な態様である。以上の説明は、本発明の好適な実施態様の詳細かつ完全な開示ではあるが、本発明は図示かつ記述してきた正確な構成、寸法的な関係、および動作態様に限定されるものではない。当業者にとって各種の一部変更、代替的な構成、変更および等価構成などは自明なはずであり、いずれも好適なものであり、本発明の精神および範囲から逸脱するものではない。従って、以上の説明および図示は、特許請求の範囲によって定義された発明の範囲を制限するものではない。
【符号の説明】
【0029】
10:結合パック、第1パック
12:導体ストリップ
14:誘電体
15:導体材料
16:パターン
18:上面
20:ディスク本体
22、24:第1および第2の平行コード
26:第1中心線
28:第2中心線
30:共振器
32:ペデスタル
40:第2パック
42:第1磁気バイアスプレート
44:第2磁気バイアスプレート
50:発振器
52:下部結合パック
54:第1差動増幅器
56:上部パック
58:第2差動増幅器
60:導電スペーサー
70:結合パック対
72:第1パック
74:離間導体ストリップ
76:第2パック
78:導体ストリップ
80:球体
82:アレイ
84:YIG球体
90、92:結合パック
94:YIG球体
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【国際調査報告】