(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018505240
(43)【公表日】20180222
(54)【発明の名称】化合物を封入するためのナノ粒子、その製造および使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20180126BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180126BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20180126BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20180126BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20180126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180126BHJP
   C08F 216/16 20060101ALI20180126BHJP
【FI】
   !C08G81/00
   !A61K47/34
   !A61K9/51
   !A61K31/337
   !A61K31/4745
   !A61P35/00
   !C08F216/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】55
(21)【出願番号】2017530095
(86)(22)【出願日】20151130
(85)【翻訳文提出日】20170731
(86)【国際出願番号】EP2015078005
(87)【国際公開番号】WO2016087340
(87)【国際公開日】20160609
(31)【優先権主張番号】14382486.0
(32)【優先日】20141201
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517191921
【氏名又は名称】インノウプ、ファルマ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】INNOUP FARMA, S.L.
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、ノアイン、プラサ、セエイエネ、5−ナーベ、テ1、ポル.モチョリ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】フアン、マヌエル、イラチェ、ガレタ
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、パンプローナ、アベニダ、ピオ、ドセ、53、エセ.ヘ.イ(デ.ペ.イ)
(72)【発明者】
【氏名】フディト、ウアルテ、シガンダ
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、パンプローナ、アベニダ、ピオ、ドセ、53、エセ.ヘ.イ(デ.ペ.イ)
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ、インチャウラガ、カサダモン
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、パンプローナ、アベニダ、ピオ、ドセ、53、エセ.ヘ.イ(デ.ペ.イ)
(72)【発明者】
【氏名】ルイサ、フェルナンダ、ルイス、ガトン
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、パンプローナ、アベニダ、ピオ、ドセ、53、エセ.ヘ.イ(デ.ペ.イ)
(72)【発明者】
【氏名】ネカネ、マルティン、アルベーリャ
【住所又は居所】スペイン国ナバラ、パンプローナ、アベニダ、ピオ、ドセ、53、エセ.ヘ.イ(デ.ペ.イ)
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4J031
4J100
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD23A
4C076DD67Q
4C076EE02A
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4C076EE48A
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4C076FF32
4C076FF34
4C076FF68
4C086AA02
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4C086BA02
4C086CB22
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4C086NA11
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4C086ZB26
4J031AA16
4J031AA20
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC03
4J031AD01
4J031AF03
4J100AE03P
4J100AK32Q
4J100JA51
(57)【要約】
本発明は、新規なポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなる、生物学的に活性な化合物を封入するためのナノ粒子に関する。本発明はまた、前記コンジュゲートおよびナノ粒子の両方を生産するための方法、前記コンジュゲートまたはナノ粒子を含有する組成物、およびその適用に関する。本発明は製薬分野およびナノテクノロジー分野に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子とのエステルポリマーコンジュゲートであって、前記ヒドロキシル基末端分子がポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択される、エステルポリマーコンジュゲート。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール1,000(PEG1)、ポリエチレングリコール2,000(PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PEG6)、およびポリエチレングリコール10,000(PEG10)からなる群から選択される、請求項1に記載のエステルポリマーコンジュゲート。
【請求項3】
ヒドロキシル基末端反応性基を含有する前記ポリエチレングリコール誘導体が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項1に記載のエステルポリマーコンジュゲート。
【請求項4】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、ポリエチレングリコールメチルエーテルである、請求項3に記載のエステルポリマーコンジュゲート。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールメチルエーテルが、メトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)、メトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)、メトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)、およびメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)からなる群から選択される、請求項4に記載のエステルポリマーコンジュゲート。
【請求項6】
a)有機溶媒中でポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子とを反応させる工程、および
b)前記有機溶媒を除去する工程
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエステルポリマーコンジュゲートを生産するための方法。
【請求項7】
エステルポリマーコンジュゲートを精製する付加的工程c)を含んでなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)の溶液中のポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子との重量比が1:0.01〜0.25、好ましくは1:0.015〜0.2、より好ましくは1:0.05〜0.125である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法により得られるエステルポリマーコンジュゲート。
【請求項10】
薬物送達用のポリマーナノ粒子の製造における、請求項1〜5のいずれか一項に記載のまたは請求項9に記載のエステルポリマーコンジュゲートの使用。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のまたは請求項9に記載のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスと生物学的に活性な化合物とを含んでなる、ナノ粒子。
【請求項12】
前記生物学的に活性な化合物が抗腫瘍薬である、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
a)有機媒体中でエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物とを混合する工程、および
b)二価金属の存在下でアルコールおよび水を加えることによりエステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和する工程
を含んでなる、請求項11または12に記載のナノ粒子を生産するための方法。
【請求項14】
工程b)が、工程a)で得られた混合物に、二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えることにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程a)の混合物中のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物との重量比が、1:0.01〜0.20、好ましくは1:0.02〜0.15、より好ましくは1:0.03〜0.10である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法により得られるナノ粒子。
【請求項17】
医学において使用するための、請求項11もしくは12のいずれか一項に記載のまたは請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
i)請求項11もしくは12のいずれか一項に記載のまたは請求項16に記載の少なくとも1種類のナノ粒子と、ii)薬学上許容可能な担体またはビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項19】
抗腫瘍薬を含んでなる、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
a)38%〜47%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;
a)38%〜47%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;ならびに
a)30%〜40%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)0.08%〜1.5%のカンプトテシン、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物
からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医学において使用するための、請求項18〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬分野およびナノテクノロジー分野に包含され、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーに由来する新規なポリマーコンジュゲートのナノ粒子を用いた有効成分の封入に関する。本発明はまた、前記コンジュゲートおよびナノ粒子の両方を生産するための方法、前記コンジュゲートまたはナノ粒子を含有する組成物、およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの抗腫瘍薬を含む有効成分(薬物)の多くは非経口的に投与され、これが種々の問題を引き起こしている。経口経路による抗腫瘍薬の投与に含まれると思われる主要な利点の中でも、患者の生活の質の向上ならびに健康管理コストの削減が強調されるべきである。この投与経路は好適かつ持続的な濃度レベルで癌細胞の抗腫瘍薬物への継続的暴露を可能とするはずであり、これが次に治療係数を改善し、副作用を軽減する。
【0003】
薬物が経口的に与えられる場合、そのバイオアベイラビリティは、溶解度、消化管内での安定性、透過性、および初回通過代謝などのいくつかの要因のために一般に低い:
・低溶解度および低透過性の化合物は経口投与形の処方を困難にする。
・消化管は、粘液の急速なターンオーバーと相対的に一定の通過時間のために難しい投与部位であることが分かっている。
・薬物は腸壁、次いで、門脈循環を通過して肝臓にたどり着かなければならず、両部位は初回通過代謝の共通部位である。
・薬物の吸収もまた、特に化合物が親油性である場合には、流出機構によって制限を受け得る。例えば、上皮細胞の粘膜表面に存在する分泌輸送体P糖タンパク質が、種々の薬物(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルまたはカンプトテシン)の低くかつ変動のあるバイオアベイラビリティの一因である。
【0004】
これらの要因は、吸収(溶解度および透過性)と代謝という2つの相関のあるカテゴリーに分類でき、薬物の経口バイオアベイラビリティを最適化する際に考慮されるべきである(Hayden Thomas et al., Expert Opin Drug Metab Toxicol 2006;2(4):591-608)。
【0005】
上述の欠点を克服するための1つの可能性のある戦略が、経口薬物送達用の担体としてのポリマーナノ粒子の使用であり得る。ナノ粒子系への薬物の封入は、消化管の過酷な条件からそれらを保護し、積載された薬物を吸収細胞の表面まで導き、それらの放出を制御する。生体接着が薬物投与をさらに改善した。生体接着性薬物送達システムを持つことにはいくつかの利点がある:(i)接着の結果として、処方物が送達部位により長く留まること;(ii)特異的生体接着分子を使用することにより、例えば消化管(GI)内などの特定の部位または組織を標的とすることが可能となること;および(iii)滞留時間の延長は、薬物の放出制御と組み合わせると、投与頻度の低減をもたらし得ること(Woodley, Clin Pharmacokinet 2001;40(2):77-84)。しかしながら、十分な生体接着特性に関して、粘液層を通過した後に上皮の表面で接着相互作用を確立するためには、ナノ粒子は粘膜透過性を示さなければならない。
【0006】
キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)、乳酸およびグリコール酸のホモポリマーおよびコポリマー(PLGA)、またはメチルビニルエーテルと無水マレイン酸の間の種々のコポリマー(International Specialty Products ISP、USAからGantrez(登録商標)として上市)など、多くのポリマーが経口薬物送達用生体接着性ナノ粒子を作製するために有用な材料として記載されている。
【0007】
ナノ粒子と好適な親水性化合物の会合またはナノ粒子の好適な親水性化合物でのコーティングはそれらの物理化学的特徴を変化させ、従って、それらの分布および生物学的媒体との相互作用を改変し、封入された薬物の、その作用または吸収に理想的な部位への到達を促し得る。可能性のある戦略は、ペグ化ナノ粒子と呼ばれるポリエチレングリコール(PEG)修飾ナノ粒子の使用である。
【0008】
経口投与におけるそれらの使用に関して、ポリエチレングリコールと従来のナノ粒子への会合はこれらの担体と管腔の成分との相互作用を最小とする。この事実は、ナノ粒子の周囲に親水性コロナを形成し、タンパク質の相互作用を妨げ(Gref et al., Science 1994;263:1600-1603)消化管粘膜の保護粘液層の通過を促進する滑りのよい表面を与えるPEGの能力と関連付けられる。
【0009】
この戦略の主な欠点はポリエチレングリコールとナノ粒子の表面の会合の安定性である(Peracchia et al., Life Sci 1997;6:749-761)。タンパク質を退けるポリエチレングリコールの能力はポリマー鎖の構造、電荷、長さおよび柔軟性に依存することが知られている(Torchillin, J Microencapsul 1998;15:1-19)。ナノ粒子の表面を修飾するための方法は、主として、物理的吸着(Stolnik et al., Adv Drug Del Rev 1995;16:195-214)または2ブロックまたは3ブロックの形での共有結合(De Jaeghere et al., J Drug Target 2000;8:143-153)により行われる。共有結合が好ましいことを考慮して、ほとんどのペグ化ナノ粒子は乳酸またはグリコール酸とのポリエチレングリコールコポリマーを用いて作製されてきた。しかしながら、この共重合プロセスは、数種の触媒と特殊な化学条件の使用を必要とする(Beletsi et al., Int. J. Pharm 1999;182:187-197)。さらに、有機合成に使用される有毒な有機溶媒残留物(塩化メチレン、トルエンなど)も問題となり得る。
【0010】
ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)(PVM/MA)の表面ナノ粒子の、ポリエチレングリコールでの修飾もまた達成されている。特許WO2005/104648には、ペグ化ナノ粒子を得るための2つの異なる方法、すなわち、(i)ポリマーを脱溶媒和する前の有機溶媒中でのポリマーPVM/MAおよびポリエチレングリコールの同時インキュベーション、および(ii)生分解性ポリマーナノ粒子とポリエチレングリコール水溶液とのインキュベーションが記載されている。両方法ともそれらの表面にポリエチレングリコールが会合されたPVM/MAナノ粒子を作製するためには妥当ではあるが、単純な吸着の主な欠点は、相互作用の不安定性のためにin vivoでコーティング層が早期に欠損することである(Neal et al., J Pharm Sci 1998;87:242-1248)。
【0011】
WO2005/104648もまた、PVM/MAを欠くポリエチレングリコールのナノ粒子に比べて優れた腸管接着性を有するPVM/MAのペグ化ナノ粒子を開示している。これらのナノ粒子は、生物学的に活性な分子を封入するための高い融通性を実証した。例えば、WO2009/121997には、PVM/MAのナノ粒子の、ポリエチレングリコールによる修飾およびコーティングが相当量の化学合成薬物を封入し得るペグ化ナノ粒子の取得を可能とすることが開示されている。しかしながら、そのコーティングの安定性は低く、そのコーティング層は時間が経つと消失し得る。
【0012】
生体接着性薬物送達システムは、胃腸管粘膜表面への接着によって消化管通過時間の延長をもたらし得るが、良好な接着および通過の遅延が常にバイオアベイラビリティの改善に表れるわけではない(Davis SS. Drug Discovery Today 2005;10(4):249-257)。薬物が容易に溶解しないかまたは流出機構のために上皮膜を透過できない場合には、吸収部位での時間が不十分となり得る。WO2008/129106は、経口投与された際にP糖タンパク質の基質である薬物のバイオアベイラビリティを高めることができる、PVM/MAとシクロデキストリンを含んでなる薬物投与用の別のナノ粒子を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながらやはり、経口投与後にいくつかの薬物のバイオアベイラビリティを改善する必要がなおある。ゆえに、良好な物理化学的特性(分解性、安定性および機械的力)を併せ持つ数種の薬物の親水/疎水性と新規ポリマーから製造されたナノ粒子の改良された薬学的特徴(分布、生物接着および放出速度)を適合させるために新規な薬物投与システムを開発する(例えば、新規なポリマーおよびコポリマーを合成する)ための多大な努力がなお必要とされる。これらは薬物の吸収効率の増加、病院での灌流の代替処置の提供、この種の薬物による処置の健康管理コストの削減および患者の生活の質の改善を可能とするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の目的は、GI管内で安定であり、相当量の生物学的に活性な化合物(例えば、薬物または有効成分、特に、疎水性薬物)を封入することができ、かつ、経口投与された薬物のバイオアベイラビリティを高めることができる新規な薬物投与システムを開発すること、すなわち、従前に述べた欠点を解決する新規なポリマーコンジュゲートおよびそれから製造されたナノ粒子を提供することである。
【0015】
本発明に至る研究は、欧州連合第7次フレームワークプログラム(FP7/2007−2013)から助成金契約第NMP4−LA−2011−280761号として資金援助を受けている。
【0016】
PVM/MAとポリエチレングリコールまたはヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体との新規なエステルポリマーコンジュゲートは単純な反応により合成でき、生物学的に活性な化合物の投与にとって良好な特徴を有するナノ粒子を容易に生産するのに好適となることが認められた。PVM/MAとポリエチレングリコールまたはヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体とのこれら新規なエステルポリマーコンジュゲートにより形成されたナノ粒子は、相当量の生物学的に活性な化合物(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカンプトテシン(campthotecin))を封入すること、およびii)粘液層を通過し、腸細胞の表面と緊密に相互作用する(薬物の吸収を改善する)ことができることが特に見出された。
【0017】
驚くことに、本発明により提供されるナノ粒子は、腸管粘膜を経た前記生物学的に活性な化合物のバイオアベイラビリティの増強を可能とし、極めて長時間(例えば、ドセタキセルの場合には少なくとも72時間)のその延長された持続的血漿レベルが得られ、病院での灌流の代替投与を提供し、この種の薬物による処置の健康管理コストの削減および患者の生活の質の改善を可能とする。
【0018】
よって、第1の態様において、本発明は、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子との新規なエステルポリマーコンジュゲートに関し、前記ヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択される。
【0019】
本発明の1つの特定の変形形態では、ヒドロキシル基末端分子は、分岐がなく、かつ、置換ヒドロキシル基を持たないポリエチレングリコールである。本発明のこの変形形態では、使用されるポリエチレングリコールは好ましくは、400〜35,000Daの範囲に含まれる分子量を有し、より詳しい実施形態では、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール1,000(PEG1)、ポリエチレングリコール2,000(PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PEG6)およびポリエチレングリコール10,000(PEG10)からなる群から選択される。
【0020】
本発明の別の特定の変形形態では、ポリエチレングリコールは1個の置換ヒドロキシル基を有する。よって、本発明のこの変形形態では、ヒドロキシル基末端分子は、ヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体であり、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。より詳しい実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)であり、メトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)、メトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)、メトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)およびメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)からなる群から選択され得る。
【0021】
別の態様において、本発明は、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子とのエステルポリマーコンジュゲートを生産するための方法であって、前記ヒドロキシル基末端分子はポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択され、
a)有機溶媒中でPVM/MAと本発明のヒドロキシル基末端分子を反応させる工程、および
b)前記有機溶媒を除去する工程
を含んでなる方法に関する。
【0022】
本発明の前記方法は単純で、産業規模で適用可能である。本発明の1つの好ましい変形形態では、前記方法は、エステルポリマーコンジュゲートを精製する付加的工程c)を含んでなる。
【0023】
特定の実施形態では、工程a)の溶液中のPVM/MAとヒドロキシル基末端分子との重量比は、1:0.01〜0.25、好ましくは1:0.015〜0.2、より好ましくは1:0.05〜0.125である。
【0024】
別の態様において、本発明は、本発明の前記方法により得られるエステルポリマーコンジュゲートに関する。
【0025】
別の態様において、本発明は、薬物送達、好ましくは経口薬物送達用のポリマーナノ粒子の製造における、本発明の、または本発明の方法により得られるエステルポリマーコンジュゲートの使用に関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、本発明のエステルポリマーコンジュゲートまたは本発明の方法により得られるエステルポリマーコンジュゲートと、ii)担体とを含んでなる組成物、ならびに薬物送達、好ましくは、経口薬物送達において使用するための本発明の前記組成物に関する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、i)本発明によるエステルポリマーコンジュゲート、または本発明の方法により得られるエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスと、ii)生物学的に活性な化合物とを含んでなるナノ粒子に関する。特定の実施形態では、生物学的に活性な化合物は抗腫瘍薬である。より詳しい実施形態では、抗腫瘍薬は、ドセタキセル、カンプトテシンおよびパクリタキセルからなる群から選択され、好ましくは、抗腫瘍薬はドセタキセルである。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、
a)有機媒体中で本発明のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物を混合する工程、および
b)二価金属の存在下でアルコールおよび水を加えることによりエステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和する工程
を含んでなる、本発明によるナノ粒子を生産するための方法に関する。
【0029】
好ましくは、工程a)は、(i)本発明のエステルポリマーコンジュゲートを含有する有機溶液と(ii)生物学的に活性な化合物の有機溶液または分散液とを混合することにより行われる。
【0030】
好ましくは、工程b)は、工程a)で得られた混合物に、二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えることにより行われる。
【0031】
特定の実施形態では、二価金属は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、二価型の鉄、およびそれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは、二価金属はカルシウムである。
【0032】
さらなる特定の実施形態では、工程a)の混合物中の本発明のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物との重量比は、1:0.01〜0.20、好ましくは1:0.02〜0.15、より好ましくは1:0.03〜0.10である。
【0033】
本発明の1つの変形形態では、本発明によるナノ粒子を生産するための前記方法は、有機媒体を除去し、かつ/または場合により精製する付加的工程c)を含んでなり、例えば、それはペレットが得られるまで濾過技術または遠心分離によって成すことができる。同様に、所望により、本発明によるナノ粒子を生産するための前記方法は、形成したナノ粒子を場合により保護剤の存在下で乾燥させる付加的工程d)をさらに含んでなり得る。本発明の特定の実施形態では、この付加的工程d)は噴霧乾燥またはフリーズドライによって成される。
【0034】
これに関して、別の態様において、本発明は、本発明の前記方法により得られるナノ粒子に関する。
【0035】
別の態様において、本発明は、医学において使用するための、本発明によるナノ粒子または本発明の方法により得られるナノ粒子に関する。
【0036】
別の態様において、本発明は、医薬組成物の製造における、本発明によるナノ粒子の使用、または本発明の方法により得られるナノ粒子の使用に関する。
【0037】
さらに別の態様では、本発明は、i)少なくとも1種類の本発明によるナノ粒子、または本発明の方法により得られる少なくとも1種類のナノ粒子と、ii)薬学上許容可能な担体またはビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。本発明の特定の実施形態では、前記担体またはビヒクルは、経口経路によるその投与に許容可能な製薬賦形剤を含んでなる。
【0038】
別の態様において、本発明は、医学において使用するための本発明の前記医薬組成物に関する。
【0039】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、抗腫瘍薬を含んでなる。よって、別の態様において、本発明は、癌の予防または治療の方法において使用するための抗腫瘍薬を含んでなる本発明の前記医薬組成物に関し、またはあるいは、本発明はまた、癌の予防または治療のための薬剤の製造における、抗腫瘍薬を含んでなる本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0040】
より詳しい実施形態では、本医薬組成物は、
a)38%〜47%の、PVM/MAとポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;
a)38%〜47%の、PVM/MAとメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;ならびに
a)30%〜40%の、PVM/MAとメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)0.08%〜1.5%のカンプトテシン、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】PVM/MA、ならびにPVM/MAとポリエチレングリコール2,000(PVM/MA−PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PVM/MA−PEG6)、ポリエチレングリコール10,000(PVM/MA−PEG10)、およびメトキシポリエチレングリコール2,000(PVM/MA−mPEG2)とのエステルポリマーコンジュゲートの赤外線スペクトル。
【図2A】PVM/MAのH−NMRスペクトル。
【図2B】PVM/MAとポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート(PVM/MA−PEG2)のH−NMRスペクトル。
【図2C】PVM/MAとポリエチレングリコール6,000とのエステルポリマーコンジュゲート(PVM/MA−PEG6)のH−NMRスペクトル。
【図2D】PVM/MAとポリエチレングリコール10,000とのエステルポリマーコンジュゲート(PVM/MA−PEG10)のH−NMRスペクトル。
【図2E】PVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート(PVM/MA−mPEG2)のH−NMRスペクトル。
【図3】ポリ(無水物)ナノ粒子処方物の走査電子顕微鏡(SEM)。A)PEG2−CPT trad(カンプトテシンを封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子);B)PEG6−CPT trad(カンプトテシンを封入するPEG6でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子);C)mPEG2−CPT conj(カンプトテシンを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)。
【図4】37℃、人工胃液(0〜2時間)および人工腸液(2〜12時間)中でのインキュベーション後のDTXナノ粒子(ドセタキセルを封入する従来型のPVM/MAナノ粒子)、PEG2−DTX trad(ドセタキセルを封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)、mPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)およびPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)処方物からのドセタキセル放出プロフィール。データは平均±S.D.(n=3)として表す。
【図5】30mg/kg用量のタキソテール(登録商標)の静脈内(i.v.)投与後の血漿ドセタキセル濃度−時間プロフィール。データは平均±S.D.(各時点n=3)として表す。
【図6】30mg/kgの単回経口用量の投与後の血漿ドセタキセル濃度−時間プロフィール。動物に経口タキソテール(登録商標)、DTXナノ粒子(ドセタキセルを封入する従来型のPVM/MAナノ粒子)、PEG2−DTX trad(ドセタキセルを封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)、mPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)およびPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)処方物。A)最初の8時間内、およびB)72時間中。データは平均±S.D.(n=5)として表す。
【図7】37℃、60rpmの浸漬条件下、人工胃液(0〜2時間)および人工腸液(2〜14時間)中でのインキュベーション後の、PEG2−CPT trad(カンプトテシンを封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)、PEG6−CPT trad(カンプトテシンを封入するPEG6でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)およびmPEG2−CPT conj(カンプトテシンを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)処方物からのカンプトテシン放出プロフィール。データは平均±S.D.(n=3)として表す。
【図8】1mg/kg用量の懸濁液の静脈内(i.v.)投与後の血漿カンプトテシン濃度−時間プロフィール。データは平均±S.D.(各時点n=3)として表す。
【図9】雄ウィスターラットにおける、PEG2−CTP trad(カンプトテシンを封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)およびmPEG2−CPT conj(カンプトテシンを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)処方物の経口懸濁液の単回用量(1mg/kg)後の、カンプトテシンの血漿濃度−時間プロフィール。データは平均±S.D.(n=6)として表す。
【図10】単回用量としての経口投与2時間後の、ラットの近位回腸の縦断面における、ルモゲンレッドで蛍光標識されたナノ粒子蛍光顕微鏡画像。(A、B)ルモゲン(登録商標)レッドを封入する従来型のPVM/MAナノ粒子;(C、D)PVM/MAとルモゲン(登録商標)レッドを封入するmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(mPEG2−LUM conj)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、相当量の生物学的に活性な化合物を封入することができ、GI管内で安定であり、かつ、経口投与されたす薬物のバイオアベイラビリティを高め得る新規な薬物投与システム(新規なポリマーコンジュゲートおよびそれから作製されたナノ粒子)を提供する。
【0043】
驚くことに、PVM/MAとポリエチレングリコール(またはヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体)との新規なエステルポリマーコンジュゲートは、単純な反応により合成でき、生物学的に活性な化合物の投与にとって改善された特徴を有するナノ粒子を容易に生産するのに好適となることが見出された。特に、これら新規な、PVM/MAとポリエチレングリコール(またはヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体)とのエステルポリマーコンジュゲートにより形成されたナノ粒子は相当量の生物学的に活性な化合物を封入することができ、それらの経口バイオアベイラビリティを高めることが見出された。
【0044】
定義
本発明の理解を助ける目的で、本発明に関して使用されるいくつかの用語および表現の意味を以下に示す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)」(PVM/MA)は、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー(Specialty Products、ISPにより商標Gantrez(登録商標)ANとして上市)を意味する。よって、「PVM/MA」、ポリ(無水物)、またはGantrez(登録商標)ANは同義語であり、本明細書では区別無く使用される。Gantrez(登録商標)ANコポリマーは、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の交互単位を含み、下式を有する。
【化1】
【0046】
この重合の基本的特徴は無水マレイン酸単位がメチルビニルエーテル単位に隣接しなければならない、またその逆のことを必要とし、これにより真の交互コポリマーとなる。Gantrez(登録商標)AN構造中の無水物基は、求核置換反応機構を介したこのポリマーとヒドロキシル含有分子との相互作用を可能とする。
【0047】
Gantrez(登録商標)ANコポリマーは、水に不溶な白色粉末として供給され、製薬および医学的目的で、義歯接着剤、増粘・沈殿防止剤、および経皮パッチの作製のためのアジュバントとして広く使用されている。このコポリマーの経口毒性はかなり低く(モルモットでのLD50は約8〜9g/kgである)、従って、ナノ粒子担体の作製のための材料としても使用されている。本発明の特定の実施形態では、PVM/MAコポリマーは、80〜2,500kDa、好ましくは85〜2,000kDa、より好ましくは90〜220kDaの範囲に含まれる分子量を有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「エステル」は、少なくとも1個のエステル基を含有するエステル(PVM/MAの場合)を意味する(すなわち、PVM/MAの少なくとも1つの無水物単位はヒドロキシル基末端分子でエステル化されている)。本発明によれば、PVM/MAの少なくとも1つの無水物単位は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体から選択されるヒドロキシル基末端分子でエステル化されている。PVM/MAのエステルの非限定的な実例は、置換度が少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%であるものである。
【0049】
本明細書で使用される場合、本発明のエステルポリマーコンジュゲートの「エステル化度」(DE)または「置換度」(DS)は、本発明によるヒドロキシル基末端分子でエステル化された無水物単位のパーセンテージ、すなわち、形成されたエステル結合のパーセンテージと定義される。特定の実施形態では、エステル化度は、当業者に知られ、下記の実施例に付随する実験の部で例として記載される標準的方法によって測定することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル基末端分子」は、少なくとも1個の第1級ヒドロキシ(−OH)基を有する分子である。本発明によれば、前記ヒドロキシル基末端分子は、以下に定義されるように、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体から選択される。
【0051】
本明細書において、用語「ポリエチレングリコール」(PEG)は、2個の炭素原子が結合したエーテル基、場合により分岐エチレン基を含有する、水に可溶な親水性ポリマーであると理解される。従って、この定義には、分岐または非分岐ポリエチレングリコールが含まれる。
【0052】
PEGはポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても知られている(これら3つの名称は化学的に同義であり、エチレンオキシドのオリゴマーまたはポリマーを意味する)。この用語にはまた、末端ヒドロキシル基のうち一方の誘導体を含み、これらは修飾可能である(2末端のうちの一方)。よって、本発明によれば、1個の第1級ヒドロキシ(−OH)基を保持するポリエチレングリコール誘導体が使用可能である。
【0053】
ポリエチレングリコールは、薬物の経口、非経口および局所投与向けに承認されている(FDA)溶性ポリマーである。ポリエチレングリコールは、アルカリ媒体中、水、反応開始剤としてのモノエチレングリコールまたはジエチレングリコールの存在下でのエチレンオキシド(EO)の重合によって生産される(1,2-Epoxide Polymers: Ethylene Oxide Polymers and Copolymers”, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering; Mark, H.F. (編), John Wiley and Sons Inc., 1986, pp. 225-273)。所望の分子量(一般に粘度のインプロセス測定によって制御される)に達した際に、触媒を酸(乳酸、または酢酸など)で中和することにより重合反応を終了させる。結果として極めて単純な構造:
H−(O−CH−CH−OH
を有する直鎖ポリマーが得られ、ここで(n)はEOモノマーまたは単位の数である。この用語ポリエチレングリコールは通常、これらの分子の物理化学的特性に及ぼすヒドロキシル末端基の大きな影響を示すために用いられる。用語PEGは通常、数値と組み合わせて使用される。製薬産業では、この数字は平均分子量を示し、化粧品産業では、PEGの文字に伴う数字はその分子を形成する重合EO単位を意味する(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rowev R.C., Sheskey P. J., Weller P.J. (編), 第4版, Pharmaceutical Press and American Pharmaceutical Association, London, UK, 2003)。PEGは様々な薬局方に含まれているが、命名法は異なる(International Harmonisation: Polyethylene glycol (PEG): Pharmeuropa 1999, 11, 612-614)。Handbook of Pharmaceutical Excipients (第4版), 2003, R.C. Rowe, P.J. Sheskey and P.J. Welle編, the Pharmaceutical Press (ロンドン, UK)出版およびthe American Pharmaceutical Association (ワシントン, USA)によれば、ポリオキシエチレングリコールは、ポリエチレングリコール、マクロゴール、またはPEGとも呼ばれる。英国および欧州薬局方ではポリエチレングリコールおよびマクロゴールを用いているが、米国薬局方(USP)ではポリエチレングリコールを用いている。
【0054】
本発明の1つの変形形態では、使用されるポリエチレングリコールは好ましくは、400〜35,000Daの範囲に含まれる分子量を有する。本発明の1つの好ましい変形形態では、使用されるポリエチレングリコールは、400以上、より好ましくは1,000以上の分子量を有し、1,000〜20,000に含まれる値が特に好ましく、2,000〜10,000Daがより好ましい。本発明で使用可能なPEGの限定されない実例には、ポリエチレングリコール1,000、ポリエチレングリコール2,000、ポリエチレングリコール6,000またはポリエチレングリコール10,000(それぞれPEG1、PEG2、PEG6またはPEG10)が含まれる。
【0055】
400未満の分子量を有するPEGは室温で不揮発性の液体である。PEG600は、17〜22℃の間に含まれる融点を示し、800〜2,000の間に含まれる平均分子量を有するPEGは、低融点のペースト状材料である。分子量3,000Daを越えるPEGは固体であり、PEG35,000までが市販されている。他方、PEGの融点は分子量が大きくなるほど高くなり、沸点は最大値60℃まで上昇する。同様に、分子量が大きくなるほどその水溶解度は低下する。いずれにせよ、PEG35,000では、50%w/vに近い量が水に溶解可能である。
【0056】
毒物学的観点から、PEGはむしろ非毒性および非免疫原性と考えられる(Hermansky S.J et al., Food Chem Toxic., 1995, 33, 139-140; Final Report on the Safety Assessment of PEGs: J.A. C. T., 1993, 12, 429-457; Polyethylene glycol, 21 CFR 172.820, FDA)。WHOが定義している最大一日摂取量は10mg/kgである(Polyethylene glycols; Twenty-third report of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives; World Health Organisation, Geneva; Technical Report Series 1980, 648, 17-18)。
【0057】
ポリエチレングリコール誘導体は、それらの水溶解度、生理学的不活性、低毒性および極めて多様な条件下での安定性など、従来型PEGと同様の有利な特徴を有する。これらの誘導体には極めて多様な製品が含まれ、第1級ヒドロキシルに取って代わる官能基によって特徴付けられる。本発明によれば、ヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体が使用可能である。
【0058】
特定の実施形態では、前記のヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物は、一般式H(2m+1)(O−CH−CH)nOHを有する。それらはCmEnとして表され、ここで、mはアルキル鎖の炭素の数を示し、nは親水性部分のエチレンオキシド単位の数である。非限定的な実例は、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)としても知られるポリエチレングリコールメチルエーテル;ポリエチレングリコールエチルエーテル;ポリエチレングリコールプロピルエーテル;およびポリエチレングリコールブチルエーテルである。
【0059】
上述の群に対応するいくつかのポリオキシエチレンアルキルエーテルの化学構造を例として以下に示す:
a)HC(O−CH2−CHOH
b)H(O−CH2−CHOH
c)H(O−CH2−CHOH
d)H(O−CH2−CHOH
【0060】
本発明で使用可能なポリオキシエチレンアルキルエーテルの非限定例には、ポリエチレングリコール1,000またはメトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)のメチルエーテル;ポリエチレングリコール2,000またはメトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)のメチルエーテル;ポリエチレングリコール6,000またはメトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)のメチルエーテル;ポリエチレングリコール10,000またはメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)のメチルエーテルが含まれる。
【0061】
以下は本発明で使用可能なヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体の中でも注目され得るものである:
・ポリ(エチレングリコール)メタクリレート
・ポリ(エチレングリコール)アクリレート
・ポリ(エチレングリコール)モノラウレート
・ポリ(エチレングリコール)モノオレエート
・ポリ(エチレングリコール)(12)トリデシルエーテル
・ポリ(エチレングリコール)テトラヒドロフルフリルエーテル
【0062】
ポリエチレングリコールおよび誘導体の選択は、一般化されたシステムの特徴の調整を可能とし、それらの混合物の使用は2以上の変動因子を付加する。実用上の観点から、活性分子に対して、また各投与経路に対して最も好適なシステムを採用および選択することが重要である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「分子量」は、分子の平均モル質量と定義される。小分子とは異なり、ポリマーの分子量は1つの独自の値とならない。むしろ、あるポリマーは、例えばそのポリマーが生産される方法によって、ある分子量分布を持つ。よって、本明細書で使用される場合、ポリマーに関して分子量という用語は、分子量の分布、または平均分子量の分布を意味する。しかしながら、平均分子量を計算するためには多くの方法がある。本発明によれば、下記の実施例に付随する実験の部で例として記載されるように、本発明のプレフォームエステルポリマーの平均分子量はH−NMRにより決定され、市販のPVM/MAの平均分子量はSEC−MALLSにより決定される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、1マイクロメーター(μm)未満、好ましくは10〜900ナノメーター(nm)の範囲のサイズの球状または類似の形状のコロイド系(ナノカプセルまたはナノスフェア)を意味する。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「生物学的に活性な化合物」(BAC)は、予防または治療目的で対象、好ましくはヒトに投与される任意の小分子(例えば、薬物または薬剤の有効成分)またはその誘導体、すなわち、疾患の治療、治癒、予防もしくは診断において、またはヒトおよび動物の心身の安寧を改善するために使用可能な、900ダルトン未満の分子量を有する任意の物質または化学化合物に関する。本明細書で使用する場合、生物学的に活性な化合物に対して適用される用語「誘導体」には、前記の生物学的に活性な化合物のプロドラッグおよび類似体が含まれる。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「抗腫瘍薬」、「抗癌薬」または「抗悪性腫瘍薬」(本明細書では区別無く使用される)は一般に、癌細胞の成長および増殖を阻害または抑制する物質を意味する。抗腫瘍薬はまた、癌細胞を破壊するまたは細胞分裂に干渉する化合物、癌に関与する特定のホルモンを遮断する化合物、新血管の成長を阻害または回避する化合物(例えば、血管新生阻害剤)、DNAを傷害する薬剤(例えば、アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサロプラチン(oxaloplatin);抗代謝産物;およびトポイソメラーゼ阻害剤)、ならびに抗癌特性を有する化合物(例えば、タキサン、ビンカアルカロイド、および植物アルカロイド)を含み得る。用語「抗腫瘍薬」はまた放射線療法も含む。抗腫瘍薬はまた、癌細胞の調節を欠くタンパク質に特異的な薬剤、例えば、受容体チロシンキナーゼの阻害剤も含み得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「二価金属」には、薬学上許容可能である限り、原子価が2である任意の金属元素、例えば、アルカリ土類金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛など、または、いくつかの原子価を有する場合には、そのうち1つが2である金属元素、例えば、鉄などが含まれる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「平均径」は、水性媒体中で一緒に動くナノ粒子集団の平均直径を意味する。これらの系の平均径は、当業者に知られ、下記の実施例に付随する実験の部で例として記載される標準的方法によって測定することができる。粒子の平均径は主として、PVM/MAの量と分子量により、本発明のヒドロキシル基末端分子の性質と量により、本発明のナノ粒子中に存在する生物学的に活性な分子の性質と量により(一般に、前記成分の量または分子量が大きいほど、ナノ粒子の平均径も大きくなる)、および前記ナノ粒子の製造方法のいくつかのパラメーターにより影響を受け得る。本発明のナノ粒子は1μm未満、一般に1〜999nm、好ましくは10〜900nm、より好ましくは100〜500nm、なおより好ましくは150〜400nmの範囲に含まれる平均粒径を有することを特徴とする。特定の実施形態では、本発明のナノ粒子はおよそ約250nmの平均粒径を有する。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「薬学上許容可能な」は、化合物または化合物の組合せが処方物の他の成分と十分に適合し、かつ、業界標準により許容可能なレベルまで対象に有害でないことを意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「担体」は、有効成分または薬物が一緒に投与される希釈剤を意味する。薬学上許容可能な担体の例は現況技術において既知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルションなどのエマルション、種々のタイプの湿潤剤、無菌溶液などを含む。好適な医薬担体は、E.W. Martin,1995により“Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。好ましくは、本発明の担体は、連邦政府または州政府の規制当局により承認されているか、または米国薬局方もしくは動物、より詳しくはヒトにおける使用に関する別の一般に認知されている薬局方に列挙されている。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「予防すること」は、このような用語を適用する疾患、障害、もしくは病態、または疾病、障害、もしくは病態と関連している1以上の症状が起こらないようにする、存在しないようにする、またはそうでなければ発症または再発を遅延させることを意味する。用語「予防」は予防することの行為を意味し、「予防すること」はすぐ上に定義されている。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「治療すること」は、このような用語を適用する障害もしくは病態、またはそのような障害もしくは病態の1以上の症状を逆転させる、緩和する、またはその進行を阻害することを意味する。用語「治療」は、治療することの行為を意味し、「治療すること」はすぐ上に定義されている。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、動物、特に、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ガチョウ、およびヒトを意味する。特に好ましい対象は、両性のヒトである。
【0074】
ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)のエステルポリマーコンジュゲート
本発明は、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)(PVM/MA)とヒドロキシル基末端分子との新規なエステルポリマーコンジュゲートを提供する。本明細書で使用される用語「エステル」、「ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)」および「ヒドロキシル基末端分子」は、従前に定義され、参照により本明細書の一部とされる。よって、本発明によれば、PVM/MAポリマーの少なくとも1つの無水物単位は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体から選択されるヒドロキシル基末端分子(以下、「本発明のヒドロキシル基末端分子」という)でエステル化される。
【0075】
よって、第1の態様において、本発明は、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子とのエステルポリマーコンジュゲート(前記ヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択される)(以下、「本発明のエステルポリマーコンジュゲート」という)に関する。
【0076】
特定の実施形態では、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の無水物単位のPVM/MAポリマーが本発明のヒドロキシル基末端分子でエステル化される。例えば、少なくとも5%のエステル化度が良好な結果をもたらす。
【0077】
本発明の1つの変形形態では、ヒドロキシル基末端分子は、分岐がなく、かつ、置換ヒドロキシル基を持たないポリエチレングリコールである。本発明のこの変形形態では、使用されるポリエチレングリコールは好ましくは、400〜35,000Daの範囲に含まれる分子量を有する。本発明の1つの好ましい変形形態では、使用されるポリエチレングリコールは、400以上、より好ましくは1,000以上の分子量を有し、1,000〜20,000の範囲に含まれる値が特に好ましく、2,000〜10,000Daがより好ましい。本発明のより好ましい変形形態では、ヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコール1,000(PEG1)、ポリエチレングリコール2,000(PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PEG6)およびポリエチレングリコール10,000(PEG10)からなる群から選択されるポリエチレングリコールである。
【0078】
別の変形では、本発明のヒドロキシル基末端分子は、1個の置換ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールである。よって、本発明のこの変形形態では、ヒドロキシル基末端分子は、ヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。より詳しい実施形態では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)である。なおより好ましい実施形態では、ポリエチレングリコールメチルエーテルは、メトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)、メトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)、メトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)およびメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)からなる群から選択される。
【0079】
本発明のエステルポリマーコンジュゲートの平均分子量は広い範囲で変動し得るが、特定の実施形態では、本発明のエステルポリマーコンジュゲートは、85〜3,000kDa、好ましくは90〜2,500kDa、より好ましくは95〜250kDaの範囲に含まれる平均分子量を有する。
【0080】
本発明のエステルポリマーコンジュゲートを得るための方法
第2の態様において、本発明は、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子とのエステルポリマーコンジュゲート(前記ヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択される)(すなわち、本発明のエステルポリマーコンジュゲート)を生産するための方法(以下、「本発明の方法[l]」という)であって、
a)有機溶媒中でPVM/MAを本発明のヒドロキシル基末端分子を反応させる工程、および
b)前記有機溶媒を除去する工程
を含んでなる方法に関する。
【0081】
「本発明の方法[l]」のこの工程a)は、反応を起こさせるために、例えばアセトンなどの有機溶媒中、PVM/MA、および本発明のヒドロキシル基末端分子を溶解およびインキュベートすることを含む。この混合物のインキュベーションは好ましくは、15℃〜80℃の範囲、より好ましくは45℃〜65℃の範囲に含まれる温度で、最も好ましくは55℃での撹拌下で行われる。インキュベーション時間は1〜24時間で変動し得る。特定の好ましい実施形態では、インキュベーションは2〜4時間行われる。例えば、55℃で3時間の混合物のインキュベーションで良好な結果が得られる。あるいは、室温(R/T)、撹拌下でより長時間(24〜48時間)、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子を反応させることもできる。
【0082】
有機溶媒は、工程b)で、減圧下での蒸発、室温蒸発、または真空下での遠心分離などの任意の好適な方法によって除去される。特定の実施形態では、工程b)は、減圧下での蒸発により有機溶媒を除去することを含んでなる。
【0083】
好ましい一実施形態では、本発明の方法[1]は、本発明のエステルポリマーコンジュゲートを精製する付加的工程c)を含んでなる。1つの特定の変形形態では、付加的工程c)は、ポリマーが不溶の(ただし、未反応のヒドロキシル基末端分子は不溶でない)液体で数回洗浄すること;および未反応のヒドロキシル基末端分子の痕跡が液体中に検出されなくなるまで(例えば、薄層クロマトグラフィー、TLCにより測定する)真空下で濾過することを含んでなる。好ましい変形形態では、洗浄液は、ジクロロメタン(dichlorometane)/メタノールの混合物である。例えば、移動相として使用される混合物CHCl/CHOH(9:1)、およびTLCにおける可視化のためのヨウ素で良好な結果が得られる。
【0084】
本発明のヒドロキシル基末端分子の特定のものが、従前に「定義」の節で、また本発明のエステルポリマーコンジュゲートに関しても述べられ、参照により本明細書の一部とされる。これらによれば、本発明の方法[1]の特定の実施形態では、工程a)でPVM/MAと反応するヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコール、好ましくは、ポリエチレングリコール1,000(PEG1)、ポリエチレングリコール2,000(PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PEG6)、およびポリエチレングリコール10,000(PEG10)からなる群から選択されるポリエチレングリコールである。本発明の方法[1]の別の特定の実施形態では、工程a)でPVM/MAと反応するヒドロキシル基末端分子は、ヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、より好ましくは、ポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)、最も好ましくは、メトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)、メトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)、メトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)およびメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)からなる群から選択されるポリエチレングリコールメチルエーテルである。
【0085】
本発明の方法[1]の工程a)の溶液中のPVM/MAと本発明のヒドロキシル基末端分子との重量比は、広い範囲で変動し得るが、特定の実施形態では、PVM/MA:ヒドロキシル基末端分子の重量比は、1:0.01〜1:0.25、好ましくは1:0.015〜1:0.2、より好ましくは1:0.05〜1:0.125の範囲に含まれる。非限定的な実例では、ヒドロキシル基末端分子がポリエチレングリコールである場合、1:0.05、1:0.1、1:0.125、または1:0.25のPVM/MA:PEG重量比で良好な結果が得られる。同様に、ヒドロキシル基末端分子がメトキシ−ポリエチレングリコールである場合には、1:0.01、1:0.015、1:0.025、1:0.05、1:0.01、または1:0.2のPVM/MA:mPEG重量比で良好な結果が得られる。
【0086】
言い換えれば、本発明の方法[1]の工程a)の溶液中の本発明のヒドロキシル基末端分子とPVM/MAとの重量比は、1:4〜1:100、好ましくは1:5〜1:66、より好ましくは1:8〜1:20の範囲に含まれる。非限定的な実例では、ヒドロキシル基末端分子はポリエチレングリコールであり、1:4、1:8、1:10、または1:20のPEG:PVM/MA重量比で良好な結果が得られる。同様に、ヒドロキシル基末端分子がメトキシ−ポリエチレングリコールである場合には、1:5、1:10、1:20、1:40、1:66、または1:100のmPEG:PVM/MA重量比で良好な結果が得られる。
【0087】
a)有機溶媒中でPVM/MAと本発明のヒドロキシル基末端分子を反応させること、およびb)前記有機溶媒を除去すること含んでなる方法により生産される、本発明の方法[1]により得られるエステルポリマーコンジュゲート、すなわち、PVM/MAとヒドロキシル基末端分子とのエステルポリマーコンジュゲート(前記ヒドロキシル基末端分子は、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性を含有するその誘導体から選択される)は、本発明のさらなる態様を成す。
【0088】
本発明のエステルポリマーコンジュゲートの適用
本発明のプレフォームエステルポリマーコンジュゲートは良好な物理化学的および薬理学的特性を示しており、生物学的に活性な化合物の投与用のナノ粒子の形成において出発材料として使用され得る。よって、別の態様において、本発明は、薬物送達、好ましくは、経口薬物送達用のポリマーナノ粒子の作製における、本発明のエステルポリマーコンジュゲート、または本発明の方法[1]により得られるエステルポリマーコンジュゲートの使用に関する。
【0089】
別の態様において、本発明は、i)本発明のエステルポリマーコンジュゲート、または本発明の方法[1]により得られるエステルポリマーコンジュゲートと、ii)担体とを含んでなる組成物(以下、「本発明の組成物[1]」という)に関する。特定の実施形態では、本発明の組成物[1]は、少なくとも2%濃度(w/v)の本発明のエステルポリマーコンジュゲートまたは本発明の方法[1]により得られるエステルポリマーコンジュゲートを含んでなる。
【0090】
実例として、本発明の前記組成物[1]は、生物学的に活性な化合物の投与用のナノ粒子を製造するための基礎として使用することができる。よって、さらに別の態様では、本発明は、薬物送達、好ましくは、経口薬物送達において使用するための本発明の前記組成物[1]に関する。
【0091】
ナノ粒子
別の態様において、本発明は、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子に関する。本発明のナノ粒子は、生物学的に活性な化合物(BAC)を封入する能力を有し、薬物送達システムとして使用可能である。
【0092】
よって、場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた特定の実施形態では、ナノ粒子は生物学的に活性な化合物をさらに含んでなり、以下、本明細書では「本発明のナノ粒子」と示す。
【0093】
用語「生物学的に活性な化合物」(BAC)は、従前に定義されており、予防または治療目的で対象好ましくはヒトに投与される任意の小分子(例えば、薬物または薬剤の有効成分)またはその誘導体、すなわち、疾患の治療、治癒、予防、もしくは診断において、またはヒトおよび動物の心身の安寧を改善するために使用可能な、900ダルトン未満の分子量を有する任意の物質もしくは化学化合物を意味する。本明細書で使用する場合、小分子に適用される用語「誘導体」には、前記分子のプロドラッグおよび類似体が含まれる。
【0094】
BACは、例えば、抗腫瘍または抗悪性腫瘍薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗炎症薬、抗不整脈薬、抗高血圧薬、抗狭心症薬、抗喘息薬、抗生物質(ペニシリンを含む)、抗凝固薬、抗鬱薬、抗精神病薬、抗糖尿病薬、抗癲癇薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗ムスカリン作用薬、抗マイコバクテリア薬、抗酸化薬、解熱薬、免疫抑制薬、免疫賦活薬、抗甲状腺薬、駆虫薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗不安薬 鎮静薬(催眠薬および神経抑制薬)、収斂薬、静菌薬、β−アドレノレセプター遮断薬、血液製剤および物質、気管支拡張薬、緩衝剤、強心薬、化学療法薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳薬(去痰薬および粘液溶解薬)、診断薬、画像診断薬、利尿薬、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)などを含む、様々な既知の薬物種から選択することができる。本発明のナノ粒子は前記BACのうち1以上を配合することができる。
【0095】
本発明によるBACの例は、ドセタキセル、パクリタキセル、カンプトテシン、アクチノマイシンD、アルベンダゾール、アルドステロン、アルプラゾラム、アミオダロン、アミトリプチリン、アンプレナビル、アシマドリン、アトルバスタチン、ブニトロロール、ブスピロン、カルバマゼピン、カルベジロール、セリプロロール、シクロスポリンA、シメチジン、クロトリマゾール、コルヒチン、コルチゾン、ダウノルビシン、デブリソキン、デキサメタゾン、ジアゼパム、ジギトキシン、ジゴキシン、ジルチアゼム、ドンペリドン、ドキソルビシン、エファビレンツ、エピルビシン、エリスロマイシン、エルゴタミン、エストラジオール、エストラジオール グルクロニド、エルロチニブ、エトポシド、フェニトイン、フェンタニル、フェロジピン、フェノチアジン、フェキソフェナジン、フルオロキノロン、フルオロウラシル、FK−506、ゲンタマイシン、グリセオフルビン、ヒドロコルチゾン、イマチニブ、インジナビル、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、ケンフェロール、レボフロキサシン、リドカイン、ロペラミド、ロサルタン、ロバスタチン、メベンダゾール、メチルプレドニゾロン、メトトレキサート、ミベフラジル、メダゾロラム、ニソルジピン、モルヒネ、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、オンダンセトロン、ペンタゾシン、プラジカンテル、プレドニゾロン、プレドニゾン、ケルセチン、キニジン、ラニチジン、ラパマイシン、リファブチン、リファンピシン、リトナビル、サキナビル、シロリムス、スルファメチゾール、タクロリムス、タモキシフェン、タリノロール、テニポシド、テルフェナジン、テトラサイクリン、トポテカン、トリアムシノロン、バルスポダール、ベラパミル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ゾピクローン、それらの誘導体、およびそれらの混合物である。
【0096】
本発明のナノ粒子は特に、疎水性BAC(Biopharmaceutics Classification SystemのクラスIIおよびクラスIV)の経口経路による投与に有用である。
【0097】
本発明の1つの特定の実施形態では、本発明のナノ粒子中に存在するBACは、抗腫瘍薬(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、カンプトテシン、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル、シクロホスファミド、メトトレキサートなど)である。より詳しい実施形態では、BACは、ドセタキセル、カンプトテシンおよびパクリタキセルからなる群から選択される。なおより詳しい実施形態では、BACはドセタキセルである。
【0098】
本発明のナノ粒子は、生物の粘膜に接近する経路(例えば、経口経路など)によって投与される場合にそれらが含有するBACの分布を改変することができる。
【0099】
本発明の前記ナノ粒子は、1μm未満の、一般に1〜999nmの間、好ましくは10〜900nmの間、より好ましくは50〜550nmの間、いっそうより好ましくは100〜500nmの間、なおより好ましくは150〜400nmの間に含まれる粒径を有する。
【0100】
ナノ粒子を得るための方法
別の態様において、本発明は、
a)有機媒体中で本発明のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物を混合する工程、および
b)二価金属の存在下でアルコールおよび水を加えることによりエステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和する工程
を含んでなる、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスと生物学的に活性な化合物とを含んでなるナノ粒子(すなわち、本発明のナノ粒子)を生産するための方法(以下、「本発明の方法[2]」という)に関する。
【0101】
場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた特定の実施形態では、工程a)の有機媒体はアセトンであり、かつ、工程b)で使用されるアルコールはエタノールである。
【0102】
本発明の方法[2]を実施するために使用可能な二価金属は、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、二価型の鉄、およびそれらの組合せからなる群から選択される。場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた好ましい実施形態では、二価金属はカルシウムであり、かつ、例えばカルシウム塩から得ることができる。カルシウム塩の非限定的な実例は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、およびそれらの混合物であり、好ましくは、カルシウム塩は塩化カルシウムである。
【0103】
本発明の方法[2]の工程a)は、当業者に公知の従来の方法により、例えば、
・本発明のエステルポリマーコンジュゲートを有機媒体に溶かし、生物学的に活性な化合物を加えること;あるいはまた、
・(i)本発明のエステルポリマーコンジュゲートを含有する有機溶液と(ii)生物学的に活性な化合物の有機溶液または分散液を混合すること
によって成される。
【0104】
本発明の方法[2]の工程b)はまた、当業者に公知の従来の方法により、例えば、
・(iii)工程a)で得られた混合物にアルコールを加え、すぐに(iv)二価金属の水溶液を加えること、あるいはまた、
・(v)工程a)で得られた混合物に二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えること
によってなされる。
【0105】
本発明の方法[2]は、本明細書に記載の工程a)またはb)の上記方法のあらゆる可能性のある組合せを包含する。しかしながら、場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた好ましい実施形態では、本発明の方法[2]は、
a)本発明のエステルポリマーコンジュゲートを含有する有機溶液と(ii)生物学的に活性な化合物の有機溶液または分散液を混合する工程、および
b)工程a)で得られた混合物に二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えることにより前記エステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和する工程
を含んでなる。
【0106】
本発明の特定の実施形態では、場合により、上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、水性アルコール混合物は、1:1(v/v)(水/アルコール)である。場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた別の特定の実施形態では、前記水性アルコール混合物は、0.5〜5%、好ましくは1〜3%(v/v)の二価金属源を含んでなる。さらなる特定の実施形態では、前記二価金属源は、0.5〜1%(w/v)の対応する塩を含んでなる水溶液である。
【0107】
場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせたさらなる特定の実施形態では、工程a)の混合物中の本発明のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物との重量比は、1:0.01〜1:0.20、好ましくは1:0.02〜1:0.15、より好ましくは1:0.03〜1:0.10の範囲に含まれる。
【0108】
非限定的な実例では、BACがドセタキセルまたはパクリタキセルである場合、1:0.05または1:0.10のエステルポリマーコンジュゲート:BAC重量比で良好な結果が得られる。同様に、BACがカンプトテシンである場合、1:0.03または1:0.06のエステルポリマーコンジュゲート:BAC重量比で良好な結果が得られる。
【0109】
場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた特定の実施形態では、本発明の方法[2]の終了時に得られる混合物中の有機/水性アルコール比(v/v)は1:1〜1:4であり、好ましくは1:2である。
【0110】
本発明の1つの変形形態では、本発明によるナノ粒子を生産するための前記方法は、有機媒体を除去する除去する(例えば、減圧下での蒸発による)、および/または場合により精製する(例えば、濾過技術、遠心分離または超遠心分離による)付加的工程c)を含んでなる。同様に、所望により、本発明の前記方法[2]は、本発明のナノ粒子を粉末の形態で得るために、形成したナノ粒子を乾燥させる付加的工程d)を含んでもよい。前記ナノ粒子のこの剤形はそれらの安定性に寄与し、さらに医薬製剤におけるそれらの最終適用に特に有用である。
【0111】
実際に、この乾燥工程を実施するためには、ナノ粒子を乾燥させるのに好適ないずれの従来の技術または方法も使用可能であるが、特定の実施形態では、ナノ粒子を含有する懸濁液の乾燥は、噴霧乾燥によるかまたはフリーズドライ(凍結乾燥)により、好ましくはフリーズドライにより行われる。この処理は一般に、糖類、例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、マルトデキストリン、グルコース、ソルビトール、マルトースなど、およびそれらの混合物などの、前記ナノ粒子の好適な保護剤をナノ粒子の懸濁液に加えることによって行われる。前記保護剤は本発明のナノ粒子を乾燥プロセス中の分解ならびに酸化から保護する。
【0112】
本発明の方法[2]により得ることができるナノ粒子は、本発明のナノ粒子の特徴を有する。従って、本発明の方法[2]により得られるナノ粒子、すなわち、a)有機媒体中で本発明のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物を混合すること、およびb)二価金属の存在下でアルコールおよび水を加えることにより前記エステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和することを含んでなる方法により生産される、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスと生物学的に活性な化合物とを含んでなるナノ粒子は、本発明のさらなる態様を成す。
【0113】
特に、(i)本発明のエステルポリマーコンジュゲートを含有する有機溶液と(ii)生物学的に活性な化合物の有機溶液または分散液を混合すること、およびb)工程a)で得られた混合物に二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えることにより前記エステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和することを含んでなる方法により得られた、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスとBACを含んでなるナノ粒子は、場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせて、本発明のさらなる態様を成す。
【0114】
ナノ粒子の適用
本発明により提供されるナノ粒子(すなわち、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子、ならびに本発明の方法[2]により直接得られるナノ粒子)は、相当量の生物学的に活性な化合物の封入、および医薬組成物へのその配合を可能とする。前記ナノ粒子は、懸濁液の形態で、好ましくは水性媒体中に提供することもできるし、あるいはまた、それらは乾燥粉末の形態で、例えば、BACを安定な状態で維持し、かつ、その長期間の保存を可能とする凍結保護剤を伴った凍結乾燥品として提供すること、もできる。
【0115】
本発明のナノ粒子は、粘液層を通過し、腸細胞の表面と緊密に相互作用することができ、経口粘膜を経た薬物の吸収を改善すると思われる。重要なこととして、本発明により提供されるナノ粒子は、BACの経口バイオアベイラビリティを高め、持続的かつ一定の血漿レベルを与える。従って、別の態様において、本発明は、医学において使用するための、本発明によるナノ粒子、または本発明の方法[2]により得られるナノ粒子に関する。あるいは、本発明は、必要とする対象に本発明のナノ粒子、または本発明の方法[2]により得られるナノ粒子を投与することを含んでなる、疾患の予防または治療のための方法に関する。
【0116】
BACによる処置を必要とする対象に投与される、本発明のナノ粒子の積載用量は、経時的に患者に有益な治療応答を惹起するのに十分なものであるべきである。よって、ナノ粒子は、疾患からの症状および/または合併症を予防する、緩和する、軽減する、治癒させるまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で患者に投与される。これを達成するために十分な量は、「治療上有効な用量」と定義される。この用量は広範囲に可変であり、他の特徴の中でも、BACの性質、その活性または効力、ナノ粒子当たりのBACの量によって異なる。単に例示として、対象に投与される積載済みナノ粒子の用量は、例えば、体重kg当たりおよそ0.01〜およそ10mgの間、好ましくは体重kg当たり0.1〜2mgの間に含まれ得る。
【0117】
BACの特定のものは「定義」の節で、また本発明のナノ粒子に関しても述べられ、参照により本明細書の一部とされる。ナノ粒子に含まれるBACは、処置される疾患に応じて選択される。場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた特定の実施形態では、BACは抗腫瘍薬であり、より詳しい実施形態では、BACは、ドセタキセル、カンプトテシンおよびパクリタキセルからなる群から選択される。よって、別の態様において、本発明は、癌の予防または治療の方法において使用するための、BACが抗腫瘍薬である場合の、本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスとBACを含んでなるナノ粒子(すなわち、本発明のナノ粒子または本発明の方法[2]によって得られるナノ粒子)に関し、言い換えれば、本発明はまた、必要とする対象に、BACが抗腫瘍薬である場合の本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子を投与することを含んでなる、癌の予防または治療のための方法に関する。
【0118】
別の態様において、本発明は、医薬組成物の製造における本発明のナノ粒子、または本発明の方法[2]により得られるナノ粒子の使用に関する。
【0119】
別の態様において、本発明は、i)少なくとも1種類の本発明のナノ粒子または少なくとも1種類の本発明の方法[2]により得られるナノ粒子と、ii)薬学上許容可能な担体またはビヒクルとを含んでなる医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」という)に関する。特定の実施形態では、前記本発明の医薬組成物は、複数の本発明のナノ粒子および/または複数の本発明の方法[2]により得られるナノ粒子を含んでなる。ナノ粒子の特定のものはすでに上記に定義されており、参照により本明細書の一部される。
【0120】
有利には、本発明の医薬組成物中のナノ粒子は、10〜900nm、好ましくは50〜550、より好ましくは100〜500nm、いっそうより好ましくは150〜400nm、なおより好ましくは約250nmの範囲に含まれる平均サイズを有する。
【0121】
本発明の医薬組成物は、固体(例えば、錠剤、カプセル剤、コーティング錠、顆粒、坐剤、液体形態とするために再構成可能な無菌結晶性または非晶質固体など)、液体(例えば、ナノ粒子の懸濁液または分散液など)または半固体(ゲル、ポマード、クリームなど)医薬投与形で処方され得る。記載の医薬組成物は、各処方物に好適な担体またはビヒクルを含んでなる。さらに、医薬組成物は、適当であれば、安定剤、懸濁液、保存剤、界面活性剤などを含有することができる。これらの賦形剤は、選択される医薬投与形に応じて選択される。
【0122】
特定の実施形態では、前記医薬組成物は、経粘膜経路によるその投与に好適な医薬投与形として処方される。好ましい実施形態では、本発明により提供される医薬組成物は経口投与され、従って、担体またはビヒクルは、経口経路による投与に許容可能な1以上の医薬賦形剤を含んでなる。経口処方物は当業者に公知の方法により慣例的に作製される。有効成分の種々の形態の投与、使用される賦形剤、およびそれらを製造するための方法に関する総説は、書籍“Tratado de Farmacia Galenica”, C. Fauli i Trillo, 第10版, 1993, Luzan 5, S.A. de Edicionesに見出すことができる。
【0123】
別の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、乾燥粉末の形態で、例えば、凍結乾燥品として作製される。
【0124】
本発明による医薬組成物は、BACまたは有効成分を0.05%〜50%、好ましくは、0.1%〜30%、より好ましくは0.5%〜25%、いっそうより好ましくは1%〜20%の範囲の量で含有してよく、上記パーセンテージは組成物または投与形の総重量に対するw/wである。しかしながらやはり、好適な割合は配合されるBACの各場合によって異なる。
【0125】
別の態様において、本発明は、医学において使用するための本発明の医薬組成物に関する。別の態様において、本発明は、疾患の予防または治療のための薬剤の作製における本発明の医薬組成物の使用に関する。あるいは、本発明は、必要とする対象に本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる、疾患の予防または治療のための方法に関する。
【0126】
投与される医薬組成物の治療上有効な用量は個々の場合によって異なり、慣例として、最適な効果となるように個々の場合の条件に適合される。よって、それは当然のことながら、投与頻度ならびに治療または予防のための各場合で使用されるBACの効力および作用期間によって異なるだけでなく、疾患および症状の性質および重篤度、ならびに処置される対象の性、齢、体重、同時投薬および個々の反応性、およびその療法が急性的であるか予防的であるかによっても異なる。用量は対象によって、また、小児投与向けに適合させることができる。
【0127】
場合により上記または下記の種々の実施形態の1以上の特徴と組み合わせた特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、i)本発明のエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスとBACとを含んでなる少なくとも1種類のナノ粒子(すなわち、本発明のナノ粒子または本発明の方法[2]により得られるナノ粒子)、ここで、前記BACは抗腫瘍薬である、およびii)薬学上許容可能な担体またはビヒクルを含んでなる。好ましくは、抗腫瘍薬は、ドセタキセル、カンプトテシンおよびパクリタキセルからなる群から選択され、好ましくはドセタキセルである。
【0128】
BACが抗腫瘍薬であるこの特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、癌の予防または治療の方法において使用可能である。
【0129】
よって、さらなる態様において、本発明は、必要とする対象に治療上有効な量の、抗腫瘍薬を含んでなる本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる癌予防および/または治療のための方法に関し、あるいは、本発明はまた、癌の予防または治療のための薬剤の作製における、抗腫瘍薬を含んでなる本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0130】
より詳しい実施形態では、本発明の医薬組成物は、
a)38%〜47%の、PVM/MAとポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;
a)38%〜47%の、PVM/MAとメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;ならびに
a)30%〜40%の、PVM/MAとメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)0.08%〜1.5%のカンプトテシン、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物
からなる群から選択される。
【0131】
本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態のあらゆる可能性のある組合せを包含する。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、ポリ(ビニルメチルエーテルおよび無水マレイン酸)コポリー(PVM/MAまたはGantrez(登録商標)AN)とポリエチレングリコールまたはヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体とのエステルポリマーコンジュゲートの製造および特徴を記載する。加えて、以下の実施例は、PVM/MAと種々のタイプのポリエチレングリコールまたはヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体との前記エステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な分子に基づくナノ粒子の製造および特徴を記載する。これらのナノ粒子はi)相当量の生物学的に活性な化合物(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルおよびカンプトテシン)を封入すること、およびii)粘液層を通過し、腸細胞の表面と緊密に相互作用する(薬物の吸収を改善する)ことができることが特に見出された。
【0133】
前記の例に見て取れるように、ドセタキセルが生物学的に活性な化合物として使用される場合、前記ナノ粒子へのその組み込みは前記薬物の一定かつ持続的血漿レベルを少なくとも72時間維持可能とする。同様に、生物学的に活性な化合物として本発明のナノ粒子中にカンプトテシンが含まれる場合、血漿レベルは少なくとも48時間維持される。
【0134】
まず、一般材料を記載する。
【0135】
材料
ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)またはポリ(無水物)(PVM/MA)[Gantrez(登録商標)AN 119]はISP(バルセロナ、スペイン)から購入した。カンプトテシン(99.0%)、パクリタキセル(USP 26、等級>99.5%)およびドセタキセル(99.0%)は21CECpharm(ロンドン、UK)により供給された。タキソテール(登録商標)は、Aventis−Pharma(セデックス、フランス)から入手した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、パンクレアチン、メトキシポリエチレングリコール2,000(mPEG2)およびポリエチレングリコール2,000、6,000および10,000(PEG2、PEG6およびPEG10)はSigma−Aldrich(スペイン)により提供された。ペプシン、アセトン、エタノールおよびアセトニトリルは、Merck(ダルムシュタット、ドイツ)から入手した。脱イオン試薬水(抵抗18.2MΩ)は水精製システム(Wasserlab、スペイン)により調製した。使用する試薬および化学物質は総て分析級のものであった。
【0136】
これらの実施例は例として示すものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【0137】
実施例1
従来型PVM/MAナノ粒子の作製
空の従来型PVM/MAナノ粒子(NP)の作製
100mgのPVM/MAを5mLのアセトンに溶かし、エタノールと水の混合物(1:1、v/v)を加えることによりナノ粒子を形成した。次に、減圧下での蒸発により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、27,000xgで20分間の遠心分離により2回精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。最後に、スクロース(5%w/w)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらは空のPVM/MAナノ粒子(以下、NP処方物(NP)という)である。
【0138】
パクリタキセル(PTX)を封入する従来型PVM/MAナノ粒子の作製
パクリタキセル積載PVM/MAナノ粒子は、若干改変した溶媒置換法により作製した。簡単に述べれば、10mgのパクリタキセルを、100mgのPVM/MAを含有する5mLのアセトンに分散させた。得られた混合物を室温で1時間、磁気振盪下で維持した。その後、10mLのエタノールの添加とその後の20mgのエデト酸二ナトリウムを含有する水溶液10mLの添加によりナノ粒子を形成させた。10分間の磁気振盪によるホモジナイゼーションの後、減圧下での蒸発(Buchi R−144、スイス)により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液をビバスピンチューブにて3000xgで20分間のタンデンシャル濾過により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製プロセスを2回繰り返し、最後に、スクロース(5%)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらの処方物はPTX積載PVM/MAナノ粒子(以下、PTX処方物という)である。
【0139】
ドセタキセル(DTX)を封入する従来型PVM/MAナノ粒子の作製
ドセタキセル積載PVM/MAナノ粒子は、若干改変した溶媒置換法により作製した。簡単に述べれば、10mgのドセタキセルを、100mgのPVM/MAを含有するアセトン5mLに分散させた。得られた混合物を室温で1時間、磁気振盪下で維持した。その後、10mLのエタノールの添加とその後の20mgのエデト酸二ナトリウムを含有する水溶液10mLの添加によりナノ粒子を形成させた。10分間の磁気振盪によるホモジナイゼーションの後、減圧下での蒸発(Buchi R−144、スイス)により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液をビバスピンチューブにて3000xgで20分間のタンデンシャル濾過により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製プロセスを2回繰り返し、最後に、スクロース(5%)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらの処方物はDTX積載PVM/MAナノ粒子(以下、DTX処方物という)である。
【0140】
カンプトテシン(CPT)を封入する従来型PVM/MAナノ粒子の作製
100mgのPVM/MAおよび10mgのカンプトテシンをそれぞれ2および3mLのアセトンに溶解および分散させた。カンプトテシンに1分間音波処理を施し、PVM/MA溶液と混合した。すぐに、エタノールと水の混合物(1:1、v/v)の添加によりナノ粒子を形成させた。次に、減圧下での蒸発により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、27,000xgで20分間の遠心分離により2回精製した。最後に、スクロース(5%w/w)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらの処方物はCPT積載PVM/MAナノ粒子(以下、CPT処方物という)である。
【0141】
実施例2
従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子の作製
空の従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(PEG trad)の作製
ペグ化PVM/MAナノ粒子を、溶媒置換法により作製した。簡単に述べれば、12.5mgのポリエチレングリコール(PEG2、PEG6またはPEG10)を3mLのアセトンに溶かした後、2mLの同有機溶媒中、100mgのPVM/MAの溶液に加えた。得られた混合物を室温で1時間、磁気振盪下で維持した。その後、10mLのエタノールの添加とその後の10mLの水の添加によりナノ粒子を形成させた。減圧下での蒸発(Buchi R−144、スイス)により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液をビバスピンチューブにて3000xgで20分間のタンデンシャル濾過により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製プロセスを2回繰り返し、最後に、スクロース(5%)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。得られたペグ化PVM/MAナノ粒子は、PEG2 trad、PEG6 tradおよびPEG10 trad処方物である。
【0142】
パクリタキセルを封入する従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(PEG−PTX trad)の作製
パクリタキセルを含有するペグ化PVM/MAナノ粒子は、若干改変した溶媒置換法により作製した。簡単に述べれば、一方で、12.5mgのポリエチレングリコール(PEG2、PEG6またはPEG10)を3mLのアセトンに溶かした後、2mLの同有機溶媒中、100mgのPVM/MAの溶液に加えた。得られた混合物を磁気振盪下で維持した。並行して、10mgのパクリタキセルを0.5mLのアセトンに溶かし、ポリマー混合物に加えた。次に、有機相(パクリタキセル、PVM/MAおよびPEGを含有)を室温で1時間、磁気撹拌した。その後、10mLのエタノールの添加とその後の20mgのエデト酸二ナトリウムを含有する水溶液10mLの添加によりナノ粒子を形成させた。10分間の磁気振盪によるホモジナイゼーションの後、減圧下での蒸発(Buchi R−144、スイス)により有機溶媒を除去し、得られた懸濁液をビバスピンチューブにて3000xgで20分間のタンデンシャル濾過により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製プロセスを2回繰り返し、最後に、スクロース(5%)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。よって、PTX積載従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子、(以下、PEG2−PTX trad、PEG6−PTX tradおよびPEG10−PTX trad処方物という)が利用可能である。
【0143】
ドセタキセルを封入する従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(PEG−DTX trad)の作製
まず、ポリエチレングリコール2,000(12.5mg)を3mLのアセトンに溶かし、同じく2mLのアセトン中、100mgのPVM/MAの溶液に加えた。得られた混合物を磁気振盪下で維持した。他方、ドセタキセルを0.5mLのアセトンに溶かし、前記溶液に加えた。次に、ドセタキセル、PVM/MAおよびPEG2を含有する有機相を室温、磁気撹拌下で約1時間インキュベートした。その後、10mLのエタノールの添加とその後のグリシン(50mg)とエデト酸二ナトリウム(18mg)を含有する水溶液10mLの添加によりナノ粒子を形成させ、10分間ホモジナイズした。減圧下での蒸発により有機溶媒を除去し、最終容量をグリシン溶液で10mLに調整した。この懸濁液をビバスピンチューブ(300,000MWCO、Sartorius Group、ドイツ)にて4,000xgで15分間のタンデンシャル濾過により精製した。ペレットを水に再懸濁させ、この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした。よって、DTX積載従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(以下、PEG2−DTX trad処方物という)が利用可能である。
【0144】
カンプトテシンを封入する従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(PEG−CPT trad)の作製
ポリマー/CPT/PEG比1/0.03/0.125のペグ化ナノ粒子を作製した。PEG2またはPEG6、およびカンプトテシンをアセトンに溶かし、種々の条件で混合した。すぐに、エタノール、水、グリシンおよびエデト酸二ナトリウムの混合物の添加によりナノ粒子を形成した。10分間のホモジナイゼーションの後、減圧下での蒸発により有機溶媒を除去した。次に、得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、ビバスピンチューブ(300,000MWCO、Sartorius Group、ドイツ)にて3000xgで20分間、2回精製した。最後に、スクロース(5%、w/w)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。よって、CPT積載従来型ペグ化PVM/MAナノ粒子(以下、PEG2−CPT tradおよびPEG6−CPT trad処方物という)が利用可能である。
【0145】
実施例3
PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートの作製および特徴
3.1 PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートの作製
この場合、種々の分子量2,000、6,000または10,000のポリエチレングリコールおよびメトキシ−ポリエチレングリコール2000を試験した。
【0146】
エステルポリマーコンジュゲートを作製するため、5gのPVM/MAを250mlの有機溶媒(すなわち、アセトン)に溶かし、種々の量のポリエチレングリコールまたはその誘導体とともに50℃で、磁気撹拌下、3時間インキュベートした。試験したヒドロキシル基末端分子:(PVM/MA)比は:
・mPEG:(PVM/MA) 1:5;mPEG2用
・PEG:(PVM/MA) 1:20;1:8;PEG2、PEG6およびPEG10用
であった。
【0147】
インキュベーション後、溶媒を除去し、得られたエステルポリマーコンジュゲートを減圧蒸発蒸発(Buchi R210、スイス)により乾燥させた。最後に、得られた乾燥エステルポリマーコンジュゲートを、未反応のヒドロキシル基末端分子の痕跡が薄層クロマトグラフィー(TLC)により液体中に検出されなくなるまで、ジクロロメタン(CHCl)で洗浄し、真空下で濾過する(オールガラスフィルター、Merck Millipore、ドイツ)ことにより精製した。この目的で、移動相としてのジクロロメタン/メタノール CHCl/CHOH(9:1)の混合物および可視化のためのヨウ素を用いた。この工程により、有機溶媒中での新規ポリマーコンジュゲートの溶解度が向上する。
【0148】
3.2 PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートの特性決定
合成後、得られたPVM/MAとPEG2、PEG6およびPEG10とのエステルポリマーコンジュゲート(PEG:PVM/MA比1:8)およびPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート(mPEG:PVM/MA比1:5)を、PVM/MA主鎖修飾の証拠を得るとともに置換度(DS)および分子量(M)を評価するために物理化学的に特性決定した。
【0149】
以下の技術を使用した:
赤外線分光法(IR): IR分光法は、反射率技術に基づくNicolet Avatar 360FT−IR装置(Thermo、USA)にて行った。この技術により、ヒドロキシル基末端分子(PEGまたはmPEG)の−OH官能基とPVM/MA無水物基との結合を同定することができた。
【0150】
元素分析(CHN): 総てのプレフォームエステルポリマーコンジュゲートをCHN−900 Leco装置(Leco Corporations、USA)で分析した。この技術は、ポリマーの組成を決定し、PVM/MA構造にヒドロキシル基末端分子(PEGまたはmPEG)が組み込まれる場合にC/H含量関係における違いを検出する助けとなる。
【0151】
滴定: PVM/MAまたはそのエステルポリマーコンジュゲートをまず水和し、それらが完全に可溶化するまで水に分散させた。この時、ポリマーの水溶液を、指示薬として用いるフェノールフタレインの存在下、0.2NのNaOH溶液で滴定した。滴定は遊離カルボキシル(−COOH)基のパーセンテージを測定するために使用した。非修飾PVM/MAポリマーと比べた場合のエステルポリマーコンジュゲート中の遊離カルボキシル基の減少が分子結合の証拠となった。
【0152】
サイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱(SEC−MALLS): SEC−MALLS技術は、溶液中のポリマーの分子質量を決定するために重要である。この技術では、サイズ排除カラムでの分子質量に対する溶出時間の検量線を使用し、1つのポリマーの1回の測定でその分子量を知ることができる。
【0153】
動的光散乱(DLS): この技術は、ポリマーの流体力学的半径(R)を提供し、溶液中のポリマーの最も可能性の高いコンフォメーションの評価を与える。DLS測定値は、248チャネルマルチタウコリレーターおよびペルティエ効果温度単位(Protein Solutions Inc、USA)を備えたDynaPro−MS/X光子相関分光計を用いて、散乱角90°で行った。レーザーの波長は100%強度で852.2nmであった。ポリマーコンジュゲートを、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて25℃で測定した。
【0154】
核磁気共鳴法(H−NMR): H−NMRスペクトルは、パルスプログラムzg30およびパルス間待機時間(D)1秒を用い、400MHzのBruker Avance 400装置(Bruker、USA)で記録した。プレフォームエステルポリマーコンジュゲートを溶媒としての重水素化アセトン(アセトン−d)に溶かした。
【0155】
3.3 結果
プレフォームエステルポリマーコンジュゲートの赤外線分光法試験は、PEGまたはmPEGのヒドロキシルとPVM/MAの無水物基との反応の結果として配向される新たなエステルカルボニル基ν(C=O)のストレッチに関連した約1705cm−1での新規結合の形成を示した(図1参照)。
【0156】
IRによりポリマーとヒドロキシル基末端分子の間に結合が生じていたという証拠が得られたところで、ポリマーの修飾の証拠を得るためのさらなる研究を行った。
【0157】
表1は、原型PVM/MAポリマーとそのエステルポリマーコンジュゲートに関して決定された炭素(C)、水素(H)および酸素(O)組成をまとめたものである。元素分析はC%の低下およびO%の増加を示し、これにより非修飾PVM/MAに比べてPVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートの組成の著しい変化が確認され、エステルポリマーコンジュゲートの場合には原型コポリマーよりもC対O比(C/O比)が低かった。
【0158】
【表1】
【0159】
他方、滴定によれば、無水物環がヒドロキシル基末端分子(PEGまたはmPEG)結合により湿られているために遊離−COOH基の量の減少が確認された(表2)。
【0160】
【表2】
【0161】
DLSは、PVM/MAの、およびPVM/MAとPEGまたはmPEGとのエステルポリマーコンジュゲートの流体力学的半径の値を示した。非修飾PVM/MAポリマーに比べてわずかに低いが極めて類似した値を示すPVM/MA−メトキシポリエチレングリコール2,000コンジュゲートを除き、総ての場合で、最初のPVM/MAよりも流体力学的半径が増大している(表3)。これは、ポリマーコンジュゲートが有機溶媒に溶解される際の分子コンフォメーションの変化を示していると思われる。mPEG分子のメトキシ基に水素原子が存在しないことが、PEG分子に存在するヒドロキシル基よりも低級で分子の折り畳みを促進するのであろう。
【0162】
【表3】
【0163】
最後に、エステルポリマーコンジュゲートのH−NMRスペクトルは、総ての場合で、 分子(PEGまたはmPEG)中の−O−CH−CH−ポリ(エチレン)単位に相当する化学シフトの存在を示した(図2)。
【0164】
得られたエステルポリマーコンジュゲート中のヒドロキシル基末端分子のパーセンテージ(D.S.)を評価するために、PVM/MA分子中の「1」プロトンに関連するピーク面積(図2A参照)と1つの特徴的なヒドロキシル基末端分子ピークの面積の間の比(図2B〜2Eにおいて強調されたエステルポリマーコンジュゲートの新規化学シフト)を計算せいた。
【0165】
これらの結果を用い、得られたコンジュゲートの平均分子量(M)も評価し、SEC−MALLSにより計算したところ、Gantrez(登録商標)AN 119の分子量は95.5kDaと考えられる(表4)。
【0166】
【表4】
【0167】
エステルポリマーコンジュゲートが精製および特性決定されたところで、ナノ粒子の作製を行い、それらの特性の試験も行った。
【0168】
実施例4
PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子の作製
PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなる空のナノ粒子(PEG conjまたはmPEG conj)の作製
ナノ粒子の作製は次のように行った。ポリエチレングリコール2,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール10,000[使用したPEG2:(PVM/MA)、PEG6:(PVM/MA)およびPEG10:(PVM/MA)比は1:20であった]またはメトキシポリエチレングリコール2,000[mPEGプレフォームエステルポリマー2:(PVM/MA)比は1:5であった]とコンジュゲートしたPVM/MAの100mgを5mLのアセトンに溶かし、室温で磁気撹拌下、CaCl0.8%(w/v)水溶液1%(v/v)を含有する水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)10mLを加えることにより脱溶媒和した。有機溶媒を減圧下での蒸発(Buchi R210、スイス)により除去した。得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、4℃、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。このように、VM/MAとPEG2、PEG6、PEG10またはmPEG2とのプレフォームエステルポリマーコンジュゲートから未積載ナノ粒子を得た:それぞれPEG2 conj、PEG6 conj、PEG10 conjおよびmPEG2 conj処方物。
【0169】
パクリタキセルを封入するPVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(mPEG2−PTX conj)の作製
PVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000[mPEG2:(PVM/MA)比1:5]のプレフォームエステルポリマーコンジュゲート100mgを4mLのアセトンに溶かした。並行して、10mgのパクリタキセルを1mLのアセトンに分散させた。コンジュゲートの溶液とパクリタキセルの分散液を室温、磁気撹拌下で混合した後、CaCl0.8%(w/v)水溶液1%(v/v)を含有する水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)10mLを加えることによりナノ粒子を形成させた。有機溶媒を減圧下での蒸発(Buchi R210、スイス)により除去した。得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、4℃、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらはmPEG2−PTX conjナノ粒子処方物である。
【0170】
パクリタキセルを封入するPVM/MAとポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(PEG2−PTX conj)の作製
PVM/MAとポリエチレングリコール2,000[PEG2:(PVM/MA)比1:20]のプレフォームエステルポリマーコンジュゲート100mgを4mLのアセトンに溶かした。並行して、10mgのパクリタキセルを1mLのアセトンに分散させた。コンジュゲートの溶液とパクリタキセルの分散液を室温、磁気撹拌下で混合した後、CaCl0.8%(w/v)水溶液1%(v/v)を含有する水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)10mLを加えることによりナノ粒子を形成させた。減圧下での蒸発(Buchi R210、スイス)により有機溶媒を除去した。得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、4℃、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらはPEG2−PTX conjナノ粒子処方物である。
【0171】
ドセタキセルを封入するPVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(mPEG2− DTX conj)の作製
PVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000[mPEG2:(PVM/MA)比1:5]とのプレフォームエステルポリマーコンジュゲート100mgを4mLのアセトンに溶かした。並行して、10mgのドセタキセルを1mLのアセトンに分散させた。コンジュゲートの溶液とドセタキセルの分散液を室温、磁気撹拌下で混合し、CaCl0.8%(w/v)水溶液1%(v/v)を含有する水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)10mLを加えることによりナノ粒子を形成させた。減圧下での蒸発(Buchi R210、スイス)により有機溶媒を除去した。得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、4℃、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらはmPEG2−DTX conjナノ粒子処方物である。
【0172】
ドセタキセルを封入するPVM/MAとポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(PEG2−DTX conj)の作製
PVM/MAとポリエチレングリコール2,000[PEG2:(PVM/MA)比1:20]とのプレフォームエステルポリマーコンジュゲート100mgを4mLのアセトンに溶かした。並行して、10mgのドセタキセルを1mLのアセトンに分散させた。コンジュゲートの溶液とドセタキセルの分散液を室温、磁気撹拌下で混合した後、CaCl0.8%(w/v)水溶液1%(v/v)を含有する10mLの水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)を加えることによりナノ粒子を形成させた。減圧下での蒸発(Buchi R210、スイス)により有機溶媒を除去した。得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、4℃、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。この精製工程を2回繰り返した。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらはPEG2−DTX conjナノ粒子処方物である。
【0173】
カンプトテシンを封入するPVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子(mPEG2−CPT conj)の作製
PVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000[mPEG2:(PVM/MA)比1:5]とのプレフォームエステルポリマーコンジュゲート100mgを4mLのアセトンに溶かした。並行して、3mgのカンプトテシンを1mLのアセトンに分散させ、30秒間、音波処理を施した。コンジュゲートの溶液とカンプトテシンの分散液を室温、磁気撹拌下で混合した後、CaCl0.8%(w/v)水溶液3%(v/v)を含有する水性アルコール混合物1:1(v/v)(水/エタノール)10mlを加えることによりナノ粒子を形成させた。減圧下で有機溶媒を排出した後(Buchi R210、スイス)、得られた懸濁液を0.45μm膜で濾過し、17,000rpmで20分の遠心分離(Sigma 3 K30、ドイツ)により精製した。上清を除去し、ペレットを水に再懸濁させた。最後に、スクロース(5%w/v)を凍結保存剤として用いて、処方物を凍結およびフリーズドライした(Genesis 12EL、Virtis、USA)。これらはmPEG2−CPT conjナノ粒子処方物である。
【0174】
実施例5
ナノ粒子の物理化学的特徴
これらの試験を行うために、実施例1、2および4に記載のナノ粒子の処方物を用いた。
【0175】
5.1 材料および方法
ナノ粒子の平均流体力学的直径およびゼータ電位を、Zetasizerアナライザーシステム(Brookhaven Instruments Corporation、ニューヨーク、USA)を用い、それぞれ光子相関分光法(PCS)および電気泳動レーザードップラー流速計により決定した。ナノ粒子の直径は超純水に分散させた後(1:10)に決定し、25℃で動的光散乱角90℃により測定した。ゼータ電位も同じ装置で次のように測定した:200μLの同じサンプルを2mLの0.1mM KCl溶液に希釈した。
【0176】
処方物の表面形態の検討もまた、デジタル画像システム(Point Electronic GmBh、ドイツ)と接続したZeiss DSM940デジタル走査型電子顕微鏡(Oberkochen、ドイツ)での走査電子顕微鏡観察(SEM)により行った。事前に、ナノ粒子を脱イオン水で希釈し、4℃、17,000rpm(Sigma 3 K30、ドイツ)で20分間遠心分離した。ペレットを乾燥させ、Emitech K 550 Sputter−Coater(Ahsford、UK)にて9nmの金層でシェードを付けた。最後に、重量測定によりナノ粒子の作製に用いたポリマーの初期量とフリーズドライサンプルの重量との差からナノ粒子形成の収率を計算した。
【0177】
【数1】
【0178】
ナノ粒子のパクリタキセル含量
ナノ粒子に積載されたパクリタキセルの量をAgilentモデル1200シリーズLCおよび228nmに設定したダイオードアレイ検出器でのHPLC−UVにより定量した。クロマトグラフィーシステムは逆相150mm×3mm C18 Phenomenex Geminiカラム(粒径5μm)およびプレカラム(Phenomenex SecurityGuard C18)を装備した。0.5mL/分で送る移動相は、リン酸バッファー(0.01M、pH2)とアセトニトリル(50:50、v/v)の混合物であった。カラムは30℃に設定し、注入容量は100μLとした。ドセタキセルを内部標準として用いた。検量線は80〜7000ng/mL(r>0.999)の間で設計した。定量限界は40ng/mLであると計算された。分析のため、ナノ粒子をアセトニトリル(1:5v/v)で可溶化した。サンプルをオートサンプラーバイアルに移し、蓋をし、HPLCオートサンプラーに入れた。各サンプルを3反復でアッセイし、結果をナノ粒子1mg当たりのパクリタキセル量(μg)として表した。
【0179】
ナノ粒子のドセタキセル含量
ナノ粒子に積載されたドセタキセルの量をAgilentモデル1200シリーズLCおよび228nmに設定したダイオードアレイ検出器でのHPLC−UVにより定量した。クロマトグラフィーシステムは逆相150mm×3mm C18 Phenomenex Geminiカラム(粒径5μm)およびプレカラム(Phenomenex SecurityGuard C18)を装備した。0.5mL/分で送る移動相は、リン酸バッファー(0.01M、pH2)とアセトニトリル(50:50、v/v)の混合物であった。カラムは30℃に置き、注入容量は100μLとした。パクリタキセルを内部標準として用いた。検量線は1.25〜320μg/mL(r>0.999)の間で設計した。定量限界は60ng/mLであると計算された。分析のため、ナノ粒子をアセトニトリル(1:8v/v)で可溶化した。サンプルをオートサンプラーバイアルに移し、蓋をし、HPLCオートサンプラーに入れた。各サンプルを3反復でアッセイし、結果をナノ粒子1mg当たりのパクリタキセル量(μg)として表した。
【0180】
ナノ粒子のカンプトテシン含量
ナノ粒子に積載されたカンプトテシンの量をAgilentモデル1100シリーズLCならびに励起および発光をそれぞれ380nmおよび418nmに設定した蛍光検出器でのHPLC−FLDにより定量した。クロマトグラフィーシステムは逆相150mm×3mm C18 Phenomenex Geminiカラム(粒径5μm)およびプレカラム(Phenomenex SecurityGuard C18)を装備した。1mL/分で送る移動相は、アセトニトリルとトリフルオロ酢酸0.01%(v/v)の50:50(v/v)混合物からなった。カラムは30℃に置き、注入容量は20μLとした。ドセタキセルを内部標準として用いた。検量線は0.48〜8000ng/mL(r>0.999)の範囲で設計した。定量限界は1.3ng/mLであると計算された。
【0181】
分析のため、ナノ粒子をアセトニトリル(1:10v/v)で可溶化した。サンプルをオートサンプラーバイアルに移し、蓋をし、HPLCオートサンプラーに入れた。各サンプルを3反復でアッセイし、結果をナノ粒子1mg当たりのカンプトテシン量(μg)として表した。
【0182】
5.2 結果
種々の未積載ナノ粒子処方物の主要な物理化学的特徴を表5にまとめる。
【0183】
【表5】
【0184】
mPEG2−conjナノ粒子中のヒドロキシル基末端分子(配位子)含量が残りのポリマーコンジュゲートナノ粒子に比べて有意に高いことに気づくことができる。PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートを形成するために使用されたmPEG2の最初の量はPEG2、PEG6またはPEG10に関してはずっと多いことから、これは必然的である。
【0185】
パクリタキセル積載ナノ粒子の特性決定
パクリタキセルを積載した種々のナノ粒子処方物(PEG−PTX)の主要な物理化学的特徴を表6にまとめる。第一に、PEG2コンジュゲート(PVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート)を含有するナノ粒子は、mPEG2コンジュゲート(PVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート)を用いたナノ粒子よりも大きな粒径を示した。PEG2コンジュゲートでは、粒径は400nmに近く、mPEG2コンジュゲートを含有する他の処方物では、粒径はより小さく、300nm前後であった。
【0186】
ゼータ電位については、mPEG2コンジュゲートを含有する積載ナノ粒子は、−38mV前後というややより負の表面電荷を呈した。PEG2コンジュゲートを用いて処方したナノ粒子は−33mV前後の表面電荷を示した。さらに、この方法の収率は、両処方物とも70%前後であると計算された。ナノ粒子に付加されたPTXの量に着目すると、mPEG2およびPEG2コンジュゲートでは、160μg/mg NP前後であると計算された。
【0187】
【表6】
【0188】
PEG2−PTX trad処方物とPEG2−PTX conj処方物の間でナノ粒子収率を比較すると、形成されたナノ粒子のパーセンテージは、PVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲートを用いた場合で高かった。
【0189】
ドセタキセル積載ナノ粒子の特性決定
コンジュゲートナノ粒子は溶媒置換法により首尾良く作製された。ドセタキセルを積載した種々のナノ粒子処方物(PEG−DTX)の主要な物理化学的特徴を表7にまとめる。第一に、PEG2コンジュゲート(PVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート)を含有する積載ナノ粒子は、mPEG2コンジュゲート(PVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート)を用いた積載ナノ粒子よりも大きな粒径を示した。PEG2では、粒径は400nmに近く、mPEG2を含有する他の処方物では、粒径はより小さく、300nm前後であった。
【0190】
ゼータ電位については、mPEG2を含有するナノ粒子は、−39mV前後というややより負の表面電荷を呈した。PEG2コンジュゲートを用いて処方したナノ粒子は、−33mV前後の表面電荷を示した。
【0191】
さらに、この方法の収率は、両処方物とも60%前後であると計算された。ナノ粒子に付加されたドセタキセルの量に着目すると、mPEG2およびPEG2コンジュゲートでは、100μg/mg NP前後であると計算された。
【0192】
【表7】
【0193】
カンプトテシン積載ナノ粒子の特性決定
得られたカンプトテシン含有ナノ粒子の物理化学的特徴を表8にまとめる。ナノ粒子にカンプトテシンを積載する場合、mPEG2 conj(PVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート)ナノ粒子では、平均粒径はおよそ195nmであった。多分散性指数(PDI)は0.3未満であり、これは均質な処方物を意味する。ナノ粒子のゼータ電位を考えると、処方物は−36mV前後の負の表面電荷を有する粒子により形成されたものである。さらに、この方法の収率はおよそ70%であった。薬物積載量については、コンジュゲート由来のナノ粒子に封入されたカンプトテシンの量は11μg/mgに達した。従来型ペグ化ナノ粒子に積載されたカンプトテシンの量は、従来型PEG2−CPTの方が従来型PEG6−CPTよりもやや高く、9μg/mgナノ粒子に達した。
【0194】
【表8】
【0195】
走査電子顕微鏡観察による形態分析(図3)は、総てのポリ(無水物)ナノ粒子種が光子相関分光法により測定されたものと同様の大きさの球形粒子の均質な集団からなっていたことを示した。ナノ粒子の表面は平滑と見え、それらの表面に目に見える凹凸は無かった。
【0196】
実施例6
ドセタキセルのin vitroおよびin vivo試験
6.1 ドセタキセルのin vitro放出試験
放出試験は、ドセタキセルの可溶化剤として0.5%ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)を含有する人工胃液(SGF;pH1.2;ペプシン0.32%w/v)および腸液(SIF;pH6.8;パンクレアチン 1%w/v)を用い、37℃、浸漬条件下で行った。これらの試験は、ナノ粒子を適当な媒体に分散させた後、Vortemp 56(商標)振盪インキュベーター(Labnet International Inc.、NJ、USA)にて振盪下で行った。
【0197】
各時点で、ナノ粒子中の50μgドセタキセル処方物を2mLの対応する人工液に再懸濁させた。アッセイした処方物は、DTXナノ粒子(ドセタキセルを封入する従来型のPVM/MAナノ粒子)、PEG2−DTX trad(ドセタキセル封入するPEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子)、mPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)およびPEG2−DTX conj(ドセタキセルを封入するPVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子)であった。
【0198】
ドセタキセルに関する浸漬条件を評価するために、放出媒体中のナノ粒子の濃度を調整した。種々の処方物をSGF中では2時間、SIF中では12時間維持した。種々の時点で、サンプルチューブを回収し、27,000xgで20分間遠心分離した。最後に、上清を濾過し、処方物から放出されたドセタキセルの量をHPLCにより定量した(SGFおよびSIFから得た上清中の遊離ドセタキセルの検量線、r>0.999)。放出プロフィールを累積放出パーセンテージとして表し、時間に対してプロットした。
【0199】
6.2 Balb/cマウスにおけるドセタキセル封入ナノ粒子のin vivo薬物動態試験
マウスへのDTX積載ナノ粒子の投与
薬物動態試験は、Harlan(バルセロナ、スペイン)から入手したBalb/c雌マウス(20〜22g)で行った。試験は、動物実験に関する欧州規則(86/609/EU)に準拠し、施設内動物実験倫理委員会により承認された実験動物での研究に関する倫理指針およびポリシー(プロトコール番号E21−12)に従って行った。実験前に動物を1週間、食物および飲用水を自由に摂らせて順応飼育した(22±2℃;12時間明および12時間暗周期;相対湿度50〜60%)。処方物の経口投与前に、吸収による干渉を避けるために動物を一晩絶食させ、なお、水は自由に摂らせた。
【0200】
薬物動態試験では、マウスを採血時間に基づき無作為に群に分けた。各時点で動物3個体に相当した。試験群は、DTX、PEG2−DTX trad、mPEG2−DTX conj、およびPEG2−DTX conjナノ粒子であった。対照として、1群の動物にタキソテール(登録商標)を静脈内(i.v.)に施し、別の群は市販の処方物で経口処置した。各動物に30mg/kg体重の用量に相当する量のドセタキセルを、鈍針で食道から胃へ経口的に、または尾静脈から静脈内に施した。
【0201】
血液サンプルを投与後の設定された時点(0、10分、30分、1時間、1.5時間、3時間、6時間、8時間、24時間、48時間および72時間)で採取した。EDTAを抗凝固剤として使用した。血液量は、体温に予熱した等量の生理食塩水を用いて腹膜内に戻した。サンプルをすぐに氷上に置き、2,500xgで10分間遠心分離した。血漿を清浄なチューブに分離し、HPLC分析まで−20℃で凍結維持した。
【0202】
血漿サンプル中のDTXのHPLC定量
血漿中のドセタキセルの量をHPLC−UVにより決定した。DTX/PTXクロマトグラフィー面積を濃度に変換するために検量線を用いた。較正および品質対照は、適当な容量の標準ドセタキセルエタノール溶液を薬物不含血漿に加えることにより作製した。検量線は100〜6250ng/mL(r>0.999)の範囲で設計した。血漿アリコート(200μL)と25μLの内部標準溶液(パクリタキセル、エタノール中10μg/mL、予め蒸発)を混合した。ボルテックス混合の後、ボルテックスで穏やかに振盪(1分)させた後に4mLのtert−ブチルメチルエーテルを加えることで、液−液抽出を行った。この混合物を3000xgで10分間遠心分離した後、有機層を清浄なチューブに移し、乾燥するまで蒸発させた(Savant、バルセロナ、スペイン)。最後に、残渣を125μLの再構成溶液(アセトニトリル−リン酸バッファー0.01M pH=2; 50:50、v/v)に溶かし、オートサンプラーバイアルに移し、蓋をし、HPLCオートサンプラーに入れた。各サンプルの100μLアリコートをHPLCカラムに注入した。
【0203】
薬物動態データ分析
種々のDTX処方物の投与後に得られた時間データに対してプロットした血漿濃度の薬物動態分析を、WinNonlin 5.2ソフトウエア(Pharsight Corporation、USA)を用いるノンコンパートメントモデルを用いて分析した。以下のパラメーターを評価した:最大血漿濃度(Cmax)、最大濃度に到達する時間(Tmax)、時間0〜∞までの濃度−時間曲線下面積(AUC)、平均滞留時間(MRT)、クリアランス(Cl)、分布容積(V)および終末相の半減期(t1/2z)。
【0204】
さらに、ドセタキセルの相対的経口バイオアベイラビリティF(%)を下式により推定した:
【0205】
【数2】
【0206】
式中、AUC i.v.およびAUC oralはそれぞれ、静脈内投与および経口投与の場合の曲線下面積に相当する。
【0207】
統計分析
データは少なくとも3回の実験の平均±S.D.として表す。統計的差異を検討するためにノンパラメトリックなクラスカル・ワリス検定、次いでマン・ホイットニーU検定を用いた。総ての場合で、p<0.05は統計的に有意であると考えられた。データ処理は総て、GraphPad Prism 6.0統計ソフトウエアプログラム(GraphPad Software、CA、USA)を用いて行った。
【0208】
6.3 結果
ドセタキセルin vitro放出試験
ナノ粒子処方物からのドセタキセル放出プロフィールは、2つの異なる媒体、すなわち、可溶化剤として0.5%Tween80(w/v)を含有する人工胃液および腸液中でのそれらのインキュベーション後に評価した。図4は、DTXナノ粒子、PEG2−DTX trad、PEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conjナノ粒子処方物からのドセタキセルの放出プロフィールを、時間の関数として放出される薬物の累積パーセンテージとして示す。総ての場合で、ナノ粒子をSGFに分散させた際には、薬物放出は見られなかった。対照的に、ナノ粒子をSIFに分散させた際にはドセタキセルが放出された。
【0209】
PEG2−DTX tradでは、SIF中での放出パターンは、最初の30分の積載薬物の約75%の重要なバースト効果の後に10時間までより持続的な送達期間が続くという特徴を示した。他方、DTXナノ粒子では、SIF中でのドセタキセルの放出曲線は、PEG2−DTX tradよりも遅いドセタキセル放出を示し、その後、それらの積載物のほとんど総てが放出された試験の終了時までより一定の放出が続いた。
【0210】
PEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conjナノ粒子処方物はいずれも、類似の放出プロフィールを示した。SIFの存在下、ドセタキセル放出は、積載薬物の最大90%の急速な初期バースト放出と、その後のより時速的な送達相を特徴とする二相型の放出パターンを示した。DTXの完全な放出は総てのサンプルで、試験開始後10〜11時間に見られた。
【0211】
Balb/cマウスにおけるドセタキセル含有ナノ粒子の薬物動態試験
雌Balb/cマウスへのタキソテール(登録商標)(30mg/Kgの単回用量)のi.v.投与後のドセタキセルの血漿濃度−時間プロフィールを図5に示す。薬物血漿濃度は二相系で経時的に急速に低下し、データはノンコンパートメントモデルに対して補正した。血漿中のドセタキセルのレベルは投与12時間後まで定量可能であった。
【0212】
図6は、市販のタキソテール(登録商標)として投与するか、または種々のポリ(無水物)ナノ粒子処方物、すなわち、従来型PVM/MAナノ粒子(DTX処方物)、PEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子(PEG2−DTX trad)またはPVM/MAとPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子(PEG2−DTX conj)またはPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子(mPEG2−DTX conj)に封入された場合の、Balb/cマウスへのドセタキセル(30mg/kgの単回用量)の経口投与後の時間に対する血漿濃度のプロフィールを示す。市販のタキソテール(登録商標)を経口経路によりマウスに投与した場合、ドセタキセル漿レベルは、クロマトグラフィー分析技術の定量限界を常に下回ることが判明した。対照的に、ドセタキセルをナノ粒子に積載した場合には、これらの処方物は、持続的血漿レベルを示した。総ての場合で、最初の1.5〜2時間に抗癌薬の血漿レベルに初期の急激な上昇が見られCmaxに達し、その後、DTX処方物では少なくとも8時間(図6A参照)、PEG2−DTX trad、PEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conj処方物では約70時間(図6B参照)延長される緩慢な低下が続いた。PEG2−DTX tradとPEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conjを比較すると、ドPVM/MAとPEG2000およびmPEG2000とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子で到達したセタキセルの血漿レベルは、PEG2000でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子の場合よりも高かった。
【0213】
表9に、種々のドセタキセル処方物をマウスに投与した後に得られた実験データのノンコンパートメント分析を用いて計算した薬物動態パラメーターをまとめる。第一に、i.v.経路により投与された市販の処方物では、AUCの平均値は143μg h/mLであった。最大濃度(Cmax)は198μg/mLであり、Tmaxは0時間であった。MRTは1.4時間であり、曲線の終末相の半減期(t1/2z)は1.5時間であると推定された。
【0214】
他方、ポリ(無水物)ナノ粒子中のドセタキセルのCmax値は1.3〜2μg/mlの間であり、このパラメーターの順位は、mPEG2−DTX conj=PEG2−DTX conj>PEG2−DTX trad>DTXであった。さらに、Cmaxはタキソテール(登録商標)のi.v.投与後0時間で達成され、それはDTX処方物では0.8時間に、mPEG2−DTX conj、およびPEG2−DTX conj処方物では1.5〜2時間に遅延された。
【0215】
従来型PEGとコンジュゲート処方物を比較すると、PEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conjでは、AUC値はそれぞれ1.3および1.8倍であり、PEG2−DTX tradで得られたAUCより高く、これはより高いタキサンの経口吸収促進能を示した。さらに、血漿中の薬物の平均滞留時間(MRT)およびその終末相の半減期(t1/2z)は、エステルポリマーコンジュゲート処方物(mPEG2−DTX conj、PEG2−DTX conj)中で経口経路により投与された場合には大幅に延長された。
【0216】
【表9】
【0217】
同様に、コンジュゲートナノ粒子に積載された場合の抗癌薬の分布容積(V)(PEG2−DTX conjでは225mLおよびmPEG2−DTX conjでは240mL)は、薬物がタキソテール(登録商標)の形で静脈内に投与された場合(8mL)より大きく、また、薬物が従来型のPVM/MAナノ粒子(15mL)または従来型のペグ化PVM/MAナノ粒子(192mL)に封入されて経口投与された場合よりも大きかった。対照的に、ドセタキセルのクリアランスは常に同等であり、使用した処方物と投与経路の両方に依存していた。
【0218】
最後に、従来型のペグ化ナノ粒子(PEG2−DTX trad)で送達されたドセタキセルの相対的経口バイオアベイラビリティは、32%前後であると計算された。非ペグ化ナノ粒子では、経口バイオアベイラビリティは、わずか5%であることが分かった。コンジュゲート処方物では、得られたデータは高く、PEG2−DTX conjおよびmPEG2−DTX conjでは40〜57%まで変動していた。驚くことに、エステルポリマーコンジュゲートから作製された処方物は、ドセタキセルの相対的経口バイオアベイラビリティを高めた。
【0219】
要するに、従来型PEGおよびコンジュゲートナノ粒子処方物はドセタキセルを積載することができ、それらの経口投与に好適な特徴を呈した。経口投与される場合、これらのナノ粒子は3日間、ドセタキセルの延長された持続的血漿レベルを与えた。しかしながら、「裸の」ナノ粒子では、ドセタキセル血漿濃度は初期には高いが急速に低下し、投与12時間後では定量可能なレベルは見られなかった。加えて、薬物動態研究では、特に、従来型ペグ化ナノ粒子の1.8倍という57%に近い経口バイオアベイラビリティに達したmPEG2−DTX conjでの、ドセタキセルの経口バイオアベイラビリティを高めるコンジュゲートナノ担体のより高い能力が明らかとなった。
【0220】
実施例7
カンプトテシンのin vitroおよびin vivo試験
7.1 カンプトテシンin vitro放出試験
放出試験は、人工胃液(SGF;pH1.2;ペプシン0.32%w/v)および腸液(SIF;pH6.8;パンクレアチン 1%w/v)を用い、37℃、浸漬条件下で行った。これらの試験は、ナノ粒子を適当な媒体に分散させた後、Vortemp 56(商標)振盪インキュベーター(Labnet International Inc.、NJ、USA)にて振盪下で行った。
【0221】
各時点で、PEG2でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子(PEG2−CPT trad)またはPEG6でペグ化された従来型PVM/MAナノ粒子(PEG6−CPT trad)およびPVM/MAとmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子(mPEG2−CPT conj)中の0.8μgカンプトテシンの処方物を1mLの対応する人工液に再懸濁させた。種々の処方物をSGF中では2時間、SIF中では14時間維持した。種々の時点で、サンプルチューブ(simple tubes)を回収し、ビバスピンューブ(300,000MWCO、Sartorius group、ドイツ)にて3,000xgで5分間遠心分離した。処方物から放出されたカンプトテシンの量をHPLCにより定量した(SGFおよびSIFから得た上清中の遊離カンプトテシンの検量線、r>0.999)。
【0222】
7.2 ウィスターラットにおけるカンプトテシン封入ナノ粒子のin vivo薬物動態試験
ラットへのカンプトテシン積載ナノ粒子の投与
薬物動態試験は、Harlan(バルセロナ、スペイン)から入手した雄ウィスターラットで行った。試験は、動物実験に関する欧州規則(86/609/EU)に準拠し、施設内動物実験倫理委員会により承認された実験動物での研究に関する倫理指針およびポリシー(プロトコール番号058−12)に従って行った。
【0223】
実験前に動物を1週間、食物および飲用水を自由に摂らせて順応飼育した(22±2℃;12時間明および12時間暗周期;相対湿度50〜60%)。処方物の経口投与前に、吸収による干渉を避けるために動物を一晩絶食させ、なお、水は自由に摂らせた。
【0224】
薬物動態試験では、ラットを無作為に2群に分けた(n=6)。対照として、1群の動物に1mg/kg用量のカンプトテシン懸濁液を経口で施し(食道から胃に鈍針で)、他の群にはカンプトテシン懸濁液を静脈内に施した(尾静脈から)。試験群には、mPEG2−CPT conjおよびPEG2−CPT tradナノ粒子中に処方した等用量のカンプトテシンを経口的に施した。
【0225】
血液サンプルを投与後の設定された時点(0、0.5、1、2、4、6、8、24、30および48時間)で採取した。EDTAを抗凝固剤として使用した。血液量は、体温に予熱した等量の生理食塩水を用いて腹膜内に戻した。サンプルをすぐに氷上に置き、2,500xgで10分間遠心分離した。血漿を清浄なチューブに分離し、HPLC分析まで−20℃で凍結維持した。
【0226】
血漿サンプル中のカンプトテシンのHPLC定量
カンプトテシンの量をAgilentモデル1100シリーズLCならびに励起および発光をそれぞれ380nmおよび418nmに設定した蛍光検出器でのHPLC−FLDにより決定した。クロマトグラフィーシステムは逆相150mm×3mm C18 Phenomenex Geminiカラム(粒径5μm)およびプレカラム(Phenomenex SecurityGuard C18)を装備した。1mL/分で送る移動相は、アセトニトリルとトリフルオロ酢酸0.01%(v/v)の50:50(v/v)混合物からなった。カラムは30℃に置き、注入容量は100μLとした。検量線および品質対照は、ジメチルスルホキシド/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸 1:8.9:0.1(v/v/v)中、適当な容量の標準カンプトテシンを薬物不含血漿に加えることにより0.48〜8000ng/mL(r>0.999)の範囲で設計した。
【0227】
血漿タンパク質の沈降を達成するために、血漿のアリコート(100μL)を4容量のアセトニトリルと混合し、2分間ボルテックスにかけた。遠心分離(5000xg、5分)後、上清を回収し、乾燥するまで蒸発させた(Savant、バルセロナ、スペイン)。最後に、残渣を120μLの再構成溶液ジメチルスルホキシド/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸 1:8.9:0.1(v/v/v)に溶かし、オートサンプラーバイアルに移し、蓋をし、HPLCオートサンプラーに入れた。定量限界は、相対標準偏差4.6%で、2.6ng/mLであると計算された。
【0228】
薬物動態データ分析
種々のカンプトテシン処方物の投与後に得られた時間データに対してプロットした血漿濃度の薬物動態分析を、WinNonlin 5.2ソフトウエア(Pharsight Corporation、USA)を用いるノンコンパートメントモデルを用いて分析した。以下のパラメーターを評価した:最大血漿濃度(Cmax)、最大濃度に到達する時間(Tmax)、時間0〜∞までの濃度−時間曲線下面積(AUC)、平均滞留時間(MRT)、クリアランス(Cl)、分布容積(V)および終末相の半減期(t1/2z)。
【0229】
さらに、カンプトテシンの相対的経口バイオアベイラビリティFを、アッセイした処方物の0から∞までの濃度−時間曲線下面積(AUC)と投与されたCPTの経口懸濁液の1つとの間の比として表した。
【0230】
統計分析
処方物の物理化学的および薬学的特性決定では、データは少なくとも3回の実験の平均±S.D.として表す。
【0231】
薬物動態in vivoパラメーターを統計的に分析した。統計的差異を検討するためにノンパラメトリックなクラスカル・ワリス、次いでマン・ホイットニーU検定を用いた。総ての場合で、0.05より小さいP値を統計的に有意な差と見なした。データ処理は総て、GraphPad Prism 5.0統計ソフトウエア(GraphPad Software、USA)を用いて行った。
【0232】
7.3 結果
カンプトテシンin vitro放出試験
ナノ粒子からのカンプトテシン放出動態を人工胃液および腸液(カンプトテシンの可溶化剤としてポリソルベート80を含有)(図7)中で評価した。このパターンは、ナノ粒子をSGFに分散させた場合には最初の非放出工程、および(ナノ粒子をSIFに分散させた場合)薬物が初期に急速に放出され、次いで、より持続的な送達相が続くという放出工程を特徴とした。従来型ペグ化ナノ粒子(PEG2−CPT tradおよびPEG6−CPT trad)では、このより速い放出は(SIF中でのインキュベーション後)最初の5時間効果を生じ、持続放出の最終工程は、ナノ粒子がそれらの積載物の100%の放出を完了するままで11時間かかった。mPEG2−CPT conjからのカンプトテシン放出動態は、3つの異なる相に分けることができる放出プロフィールを示した。最初のものでは、最初の2時間にナノ粒子をSGFに分散させた場合、放出されるカンプトテシンの量は極めて低かった(約10%)。次に、ナノ粒子をSIFに移した場合、バースト放出効果が見られた。よって、積載された初期薬物の90%前後がナノ粒子処方物から唐突に放出された。最後に、第三の工程は、残っている薬物の緩徐的かつ持続的放出を特徴とし、それは試験の次の12時間(試験開始後14時間)内に完全に放出された。
【0233】
ウィスターラットにおけるカンプトテシン含有ナノ粒子の薬物動態試験
用量1mg/kgでの単回静脈内投与後のカンプトテシンの血漿濃度−時間プロフィールを図8に示す。カンプトテシンは、粒径1,500±144nmおよびPDI 0.44±0.05の懸濁液として投与した。データはノンコンパートメントモデルにより分析した。カンプトテシン血漿濃度は投与後急速に低下し、投与6時間後では検出不能であった。投与後、薬物血漿濃度は430ng/mL(Cmax)に達し、AUCおよびt1/2zの値はそれぞれ0.39μg h/mLおよび0.69時間であった。薬物のクリアランスおよび分布容量はそれぞれ755mL/hおよび683mLと計算された(表10)。
【0234】
図9は、懸濁液としてまたはナノ粒子に積載して雄ウィスターラットに単回経口用量(1mg/kg)の投与を行った後のカンプトテシンの血漿濃度プロフィールを示す。薬物懸濁液を経口投与した場合、血漿レベルは急速に上昇し、投与30分後にCmaxに達した。その後、薬物の持続的血漿レベルが少なくとも4時間維持され、最後に、カンプトテシン レベルは急速に低下した。その後、投与10時間後、血漿中に検出可能なレベルのカンプトテシンは見られなかった。
【0235】
ナノ粒子に積載され、同用量(1mg/kg)で投与されたカンプトテシンでは、水性懸濁液処方物を用いる場合の主要な違いは、より長時間血漿中に薬物レベルが定量可能であったということであった。よって、従来型ペグ化ナノ粒子(PEG2−CPT trad)に含まれたカンプトテシンを受容した動物は、最初の1.5時間、血漿中の薬物レベルが上昇することを特徴とする初期相と、その後、24時間まで定量可能なレベルのカンプトテシンの緩徐的かつ長時間の低下相を示した。AUCは、薬物が懸濁液として経口投与された場合の約2倍であることが判明した。加えて、統計的な違いは見られなかったものの、これらのペグ化ナノ粒子中で投与された薬物分布容積は、懸濁として経口投与された裸の薬物のそれの1.5倍であった。
【0236】
同用量(1mg/kg)で投与されたPVM/MAのエステルポリマーコンジュゲート(mPEG2−CPT conj)由来のナノ粒子では、血漿曲線の初期プロフィールは極めて類似していたが、定量された薬物量は従来の処方物よりも高く、より重要には、投与48時間までの時間内で血漿レベルが持続した。全体的に見れば、mPEG2−CPT conjの経口投与後に血漿中に見られたカンプトテシンのレベルは、水性懸濁液および従来型ペグ化 ナノ粒子(PEG2−CPT trad)の場合よりも高く、AUCはそれぞれ7.6倍および4.2倍であった。
【0237】
表10に、種々の処方物をラットに投与した後に得られた試験データのノンコンパートメント分析を用いて評価された主要な薬物動態パラメーターをまとめる。mPEG2−CPT conjでは、カンプトテシンAUCは、薬物の水性懸濁液の場合よりも有意に高い(p<0.05)ことが判明した。ナノ粒子と懸濁液の間のもう1つの違いは薬物の平均滞留時間(MRT)であった。この場合、MRTは、裸の薬物とmPEG2−CPT conjの間で有意に異なったが(p<0.01)(10倍)、対照とPEG2−CPT tradの間では有意差は見られなかった。同様に、曲線の終末相の半減期(t1/2z)も、従来型懸濁液として処方された場合よりもカンプトテシンがmPEG2−CPT conjに封入された場合で有意に高かったが、PEG2−CPT trad中に処方された場合はそうではなかった。この結果によれば、mPEG2−CPT conj中で投与された場合の薬物のクリアランスは、懸濁液として投与された場合に得られた値の約11分の1であった(p<0.01)。同様に、mPEG2−CPT conj処方物をPEG2−CPT tradと比較すると、AUCは有意に高いことが分かり(p<0.05)、MRTおよびt1/2zに関しても統計的有意性が認められた(p< 0.01)。
【0238】
【表10】
【0239】
要約すると、カンプトテシンを封入する両タイプのナノ粒子(PEG2−CPT tradおよびmPEG2−CPT conj)は、それらが腸管条件下でインキュベートされるまで薬物の放出が見られなかったことを考えれば、in vitroアッセイにおいて経口投与に好適であると思われる。しかしながら、in vivoアッセイでは、mPEG2−CPT conjは、PEG2−CPT tradのそれの4.3倍という著しく高いバイオアベイラビリティを示した。
【0240】
実施例8
ナノ粒子の生体分布試験
PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲートのマトリックスを含んでなるナノ粒子の分布および消化管粘膜と相互作用する能力を可視化および評価するために、蛍光顕微鏡試験を行った。
【0241】
8.1 ルモゲン積載ナノ粒子の作製
空の従来型PVM/MAナノ粒子およびPVM/MAとメトキシポリエチレングリコール2,000のエステルポリマーコンジュゲート(mPEG2 conj)のマトリックスを含んでなるナノ粒子をルモゲンレッドで蛍光標識した。
【0242】
ルモゲン積載ナノ粒子は、実施例1および4に記載されるようなナノ粒子の形成前に、PVM/MA(Gantrez(登録商標)AN)またはそのmPEG2とのエステルポリマーコンジュゲート(mPEG2−LUM conj)を含有するアセトン相(5mL)中に0.5mgのルモゲン(登録商標)レッドを加えることにより作製した。LUMおよびmPEG2−LUM conj処方物をそれぞれ得た。
【0243】
8.2 ウィスターラットの消化管粘膜におけるルモゲン積載ナノ粒子のin vivo分布試験
生体分布試験を、ルモゲンレッドを封入する蛍光標識ナノ粒子を用いて行った。
【0244】
動物実験は、動物実験に関する欧州規則に沿った、施設内動物実験倫理委員会により承認されたプロトコール(プロトコール番号059−13)に従って行った。10mgの蛍光標識ナノ粒子を含有する水性懸濁液1mLの単回用量を雄ウィスターラットに経口投与した。2時間後、動物を犠牲にし、消化管を摘出した。1cmの回腸部分を採取し、組織プロシーディング媒体Tissue−Tek(登録商標)OCT中で保存し、−80℃で冷凍した。次に、各部分をクリオスタットで5μmの切片とし、スライドグラスに載せた。最後に、これらのサンプルをホルムアルデヒドで固定し、カバーアセンブリの前に15分DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)とともにインキュベートした。
【0245】
腸管粘膜における蛍光標識ナノ粒子の存在をCCDカメラ(a coupled camera)(Axiocam ICc3、Zeiss)および蛍光源(HBO 100、Zeiss)を備えた蛍光顕微鏡(Axioimager M1、Zeiss)で可視化した。
【0246】
8.3 結果
ルモゲン積載ナノ粒子は、空のナノ粒子で決定されたものと類似の物理化学的特性を示した:LUMナノ粒子では215nm、−36mV、およびmPEG2−LUM conj処方物では205nm、−35mV。
【0247】
驚くことに、mPEG2−LUM conjナノ粒子は、回腸粘膜内でLUMナノ粒子とは異なる分布を示した。従来型PVM/MAナノ粒子は腸管上皮を覆う粘液層に捕捉されると見られるが(図10A、10B)、PVM/MAのエステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子は、粘液層を通過し、および腸細胞の表面とより緊密に相互作用する能力を有していた(図10C、10D)。この所見から、エステルポリマーコンジュゲート由来のナノ粒子の表面が原型PVM/MAの場合とは異なることが確認される。ナノ粒子の形成中に、コンジュゲートの親水性領域が水相に配向してナノ粒子の表面に親水性コロナを形成し、これが得られたナノ粒子に「滑りのよい」特性および従って粘液層を通過して腸細胞の表面に到達する能力を付与するという仮説を立てることができる。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【手続補正書】
【提出日】20171225
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機媒体中でエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物とを混合する工程、および
b)二価金属の存在下でアルコールおよび水を加えることによりエステルポリマーコンジュゲートを脱溶媒和する工程
を含んでなる、ナノ粒子を生産するための方法であって、
エステルポリマーコンジュゲートが、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子とのコンジュゲートであり、
ヒドロキシル基末端分子が、ポリエチレングリコールおよびヒドロキシル基末端反応性基を含有するその誘導体から選択される、方法
【請求項2】
工程b)が、工程a)で得られた混合物に、二価金属を含んでなる水性アルコール混合物を加えることにより行われる、請求項に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の混合物中のエステルポリマーコンジュゲートと生物学的に活性な化合物との重量比が、1:0.01〜0.20、好ましくは1:0.02〜0.15、より好ましくは1:0.03〜0.10である、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
エステルポリマーコンジュゲートが、以下の工程:
(a)有機溶媒中でポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子とを反応させる工程、および
(b)有機溶媒を除去する工程
を含んでなる方法により得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
エステルポリマーコンジュゲートを精製する工程をさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の溶液中のポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とヒドロキシル基末端分子との重量比が、1:0.01〜0.25、好ましくは1:0.015〜0.2、より好ましくは1:0.05〜0.125である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシル基末端分子が、ポリエチレングリコール1,000(PEG1)、ポリエチレングリコール2,000(PEG2)、ポリエチレングリコール6,000(PEG6)およびポリエチレングリコール10,000(PEG10)からなる群より選択されるポリエチレングリコールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロキシル基末端反応性基を含有するポリエチレングリコール誘導体が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、ポリエチレングリコールメチルエーテルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリエチレングリコールメチルエーテルが、メトキシ−ポリエチレングリコール1,000(mPEG1)、メトキシ−ポリエチレングリコール2,000(mPEG2)、メトキシ−ポリエチレングリコール6,000(mPEG6)およびメトキシ−ポリエチレングリコール10,000(mPEG10)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生物学的に活性な化合物が抗腫瘍薬である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の方法により得られるナノ粒子。
【請求項13】
医学において使用するための、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
i)請求項12に記載の少なくとも1種類のナノ粒子と、ii)薬学上許容可能な担体またはビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
抗腫瘍薬を含んでなる、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
a)38%〜47%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;
a)38%〜47%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)3%〜5%のドセタキセル、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物;ならびに
a)30%〜40%の、ポリ(メチルビニルエーテル−コ−無水マレイン酸)とメトキシ−ポリエチレングリコール2,000とのエステルポリマーコンジュゲート、
b)0.08%〜1.5%のカンプトテシン、
c)0.1%〜0.2%のカルシウム、および
d)15%〜40%の糖類、
を含んでなる医薬組成物であって、割合は総て組成物の総重量に対する重量によるものである医薬組成物
からなる群から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
医学において使用するための、請求項1416のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】