(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018508517
(43)【公表日】20180329
(54)【発明の名称】テトラヒドロピラニルエステルを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/10 20060101AFI20180302BHJP
   C07D 309/12 20060101ALI20180302BHJP
【FI】
   !C07D309/10
   !C07D309/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】27
(21)【出願番号】2017546076
(86)(22)【出願日】20160304
(85)【翻訳文提出日】20171023
(86)【国際出願番号】EP2016054632
(87)【国際公開番号】WO2016139338
(87)【国際公開日】20160909
(31)【優先権主張番号】15157835.8
(32)【優先日】20150305
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 67056 ルートヴィヒスハーフェン・アム・ライン カール−ボッシュ−シュトラーセ 38
【住所又は居所原語表記】Carl−Bosch−Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルーデナウアー,ステファン
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 69469 ヴァインハイム,マルク−オーレル−ヴェーク 42
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ティモン
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 68642 ビュルシュタット ボブシュタット,マンハイマー シュトラーセ 9
(72)【発明者】
【氏名】ペルツァー,ラルフ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 37699 フュルステンベルク,イム シュロスガルテン 3
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン,フォルカー
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 67063 ルートヴィヒスハーフェン,ヤコブ−ビンダー−シュトラーセ 22
(72)【発明者】
【氏名】クロス,マルガレーテ
【住所又は居所】ドイツ連邦共和国 67240 ボベンハイム ロクスハイム,ブルンヒルドシュトラーセ 3
【テーマコード(参考)】
4C062
【Fターム(参考)】
4C062AA17
(57)【要約】
本発明は、テトラヒドロピラニルエステルを、対応する4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物から、ケテン化合物との反応によって製造するための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールであり、
R5は、水素又は直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキルであり、
Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素であり、又は、いずれの場合においても非置換の若しくは置換されているC1〜C12アルキル、C5〜C8シクロアルキル若しくはC6〜C14アリールである)
のテトラヒドロピラニルエステルを製造するための方法であって、一般式(II)
【化2】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、上記に定義のとおりである)
の少なくとも1種の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物を用意し、一般式(II)を有する化合物をケテン(III)
CRaRb=C=O (III)
(式中、Ra及びRbは、上記に定義のとおりである)
と反応させる、方法。
【請求項2】
R1が、直鎖状若しくは分岐状C1〜C6アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C6アルケニル又はフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はフェニルであり、好ましくはn-プロピル又はイソブチルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R2、R3及びR4が、すべて水素である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
R5が、メチル又はエチルであり、好ましくはメチルである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
Ra及びRbが、両方とも水素である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
一般式(II)の化合物を、0℃から150℃までの範囲、好ましくは10℃から120℃までの範囲の温度でケテン(III)と反応させる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
一般式(II)の化合物を、添加触媒の非存在下でケテン(III)と反応させる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
一般式(II)の化合物を、好ましくは亜鉛塩、特に好ましくはカルボン酸の亜鉛塩から選択される触媒、特に酢酸亜鉛の存在下でケテン(III)と反応させる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
触媒が、化合物(II)の総量に対して0.01重量%から2重量%までの量、特に好ましくは0.02重量%から0.5重量%までの量で使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般式(I.1)
【化3】
(式中、R1は、水素、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-メチルテトラヒドロピラニルエステルを製造するための方法であって、一般式(II.1)
【化4】
(式中、R1は、上記に定義のとおりである)
の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを用意し、一般式(II.1)の化合物をケテン(III.1)
CH2=C=O (III.1)
と反応させる、方法。
【請求項12】
一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを用意するために、
a) 酸性触媒の存在下で式(IV)
【化5】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させ、一般式(II.1)(式中、R1は、上記に定義のとおりである)の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを含む反応混合物を得、
b) 場合により、ステップa)から得た反応混合物を分離させて、一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ少なくとも1つの画分を得る、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロピラニルエステルを、対応する4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物から、ケテン化合物との反応によって製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の官能特性を有する消費財又は消耗品、すなわち、香りに関する有利な特性(嗅覚特性)又は風味に関する有利な特性(味覚特性)を有する製品を製造するためには、数多くの香料(フレグランス及び風味剤)を用いることが可能であるが、理由としては、これらの物質の応用分野が並外れて多様であるという点がある。ここで、例えば効率の向上又は純度の向上を伴いながら、個々の香料の提供を可能にする、新規な改良型の製造法が常時必要とされている。これらの製造方法は、比較的大きな規模、特に工業的な規模での製品の製造のためにも適しているべきである。
【0003】
高級アルコールのエステルは、高級アルコールとカルボニルハライド又はカルボン酸無水物との反応によって製造できることが知られている。カルボニルハライドとの反応の欠点は、この反応中にハロゲン化水素酸が形成されてしまい、一般には結果として、腐食の課題が発生し、第三級アルコールの場合には水の脱離という課題も発生し、これにより、おびただしい重合が起きることである。カルボン酸無水物との反応の欠点は、等モル量の対応するカルボン酸が反応混合物中に形成されることであり、このカルボン酸は、後処理によって除去しなければならず、反応混合物の再使用が技術的に複雑なものになり得る。
【0004】
特に、Biosci. Biotech. Biochem. 59 (4) 725〜727頁、1995においてPandeyらは、4-アルカノイルテトラヒドロピランエステルを、対応するアルコールとアルカノイルクロリド及びトリエチルアミンとの反応によって製造することを記述している。
【0005】
WO2009/130192 A1では特に、酸無水物及び酸塩化物によるテトラヒドロピラニルエステルのアセチル化が記述されている。
【0006】
さらに、酢酸エステルは、ヒドロキシル基含有化合物とケテンとの反応によって製造できることが知られている。ヒドロキシル基含有化合物とケテンとの反応のために、様々な触媒、例えば、硫酸、p-トルエンスルホン酸、リン酸、硫酸水素カリウム等のブレンステッド酸、又は三フッ化ホウ素若しくは三フッ化ホウ素エーテラート等のルイス酸が使用され得る。しかしながら、触媒の作用下におけるケテンの反応に関しては、様々な欠点も記述されてきた。例えば、酸性触媒により、金属製装置の腐食が起き、又は、望ましくない樹脂状の不純物が形成するおそれがある。さらに、これらの触媒を反応混合物から除去することも困難であることが多い。
【0007】
ケテンを製造するための方法及び装置は、例えば、Organic Syntheses, Coll.第1巻、330頁(1941)及び第4巻、39頁(1925)並びにthe Chemiker Zeitung [The Chemists Journal] 97、No. 2、67〜73頁(1979)において記述されている。
【0008】
EP0949239 A1では、触媒としての亜鉛塩の存在下でリナロールをケテンと反応させることによって、リナリルアセテートを製造するための方法が記述されている。
【0009】
多様な置換テトラヒドロピラン化合物を香料として使用できることが知られている。したがって、例えば、一般式(A)
【化1】
の2,4,4-置換テトラヒドロピラニルエステルは、有用な香料である。
【0010】
EP0383446 A2では、RIが、メチル又はエチルであり、RIIが、直鎖状又は分岐状C2〜C4アルキル又はC2〜C4アルケニルである、相異なる数多くの2,4,4-三置換テトラヒドロピラニルエステル(A)の合成及びこれらのエステルの嗅覚特性が記述されている。この合成を目的とした場合、最初に酸性触媒の存在下で3-メチルブタ-3-エン-1-オールを式RII-CHOのアルデヒドと反応させ、一般式(B)
【化2】
の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを含む反応混合物を得る。
【0011】
次いで中間体(B)を、酸性条件下におけるカルボン酸無水物との反応によってアシル化する。
【0012】
4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物、特に2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランは、香料としての使用に有用な化合物でもあり、4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物を製造するための多様な方法が、EP1493737 A1、WO2011/147919、WO2010/133473、WO2011/154330及びPCT/EP2013/071409から当業者に公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2009/130192 A1
【特許文献2】EP0949239 A1
【特許文献3】EP0383446 A2
【特許文献4】EP1493737 A1
【特許文献5】WO2011/147919
【特許文献6】WO2010/133473
【特許文献7】WO2011/154330
【特許文献8】PCT/EP2013/071409
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Pandeyら, Biosci. Biotech. Biochem. 59 (4) 725〜727頁、1995
【非特許文献2】Organic Syntheses, Coll.第1巻、330頁(1941)及び第4巻、39頁(1925)
【非特許文献3】the Chemiker Zeitung [The Chemists Journal] 97、No. 2、67〜73頁(1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、驚くべきことに、4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物、特に2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランとケテンとの反応を用いて、非常に高い収率と高い純度とを両立させながら簡便な方法によって、テトラヒドロピラニルエステル、特に2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラニルエステルを製造できることが発見された。したがって、好ましいことに、従来技術から公知の方法を用いた場合に比べて純度が向上しているためフレグランス品質が改良されたテトラヒドロピラニルエステルを得ることが、可能となる。有利なことに、複雑な精製ステップを省略することができる。この省略は、使用されたケテンの高い反応性を考慮すると、驚くべきことである。
【0016】
発見された上記方法のさらなる利点は、外部溶媒が存在しない場合であっても、製品が高い収率及び高い純度で反応中に得られるという点、並びに、反応の経過を非常に容易に制御することができ、したがって、反応を良く制御することができるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、一般式(I)
【化3】
(式中、
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールであり、
R5は、水素又は直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキルであり、
Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素であり、又は、いずれの場合においても非置換の又は置換されているC1〜C12アルキル、C5〜C8シクロアルキル若しくはC6〜C14アリールである)
のテトラヒドロピラニルエステルを製造するための方法であって、
一般式(II)
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、上記に定義のとおりである)
の少なくとも1種の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物を用意し、一般式(II)を有する化合物をケテン(III)
CRaRb=C=O (III)
(式中、Ra及びRbは、上記に定義のとおりである)
と反応させる、方法に関する。
【0018】
好ましい一実施形態は、一般式(I.1)
【化5】
(式中、R1は、水素、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/又はC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-メチルテトラヒドロピラニルエステルを製造するための方法であって、一般式(II.1)
【化6】
(式中、R1は、上記に定義のとおりである)
の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを用意し、一般式(II.1)の化合物をケテン(III.1)
CH2=C=O (III.1)
と反応させる、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
そうではないとのより詳細な定めが下記にない限り、本発明との関連において、
「テトラヒドロピラニルエステル」という用語と、
「4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物」という用語と、
「2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」という用語と、
「2-置換4-メチルテトラヒドロピラニル-4-アセテート」
という用語は、任意の組成のシス型とトランス型との混合物及び純粋な配座異性体を指す。上記用語は、これらの化合物の純粋な形態のエナンチオマーのすべて並びにさらに、これらの化合物のエナンチオマーのラセミ混合物及び光学活性混合物を指す。
【0020】
下記において、化合物(I)のシス型及びトランス型ジアステレオ異性体を対象としている場合は、いずれの場合においても、エナンチオマー型の一方のみが示されている。説明を目的としたものにすぎないが、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテートの異性体(I.1a)を一例として以下に示す。
【0021】
【化7】
【0022】
本発明との関連において、直鎖状又は分岐状アルキルという表現は、好ましくはC1〜C6アルキル、特に好ましくはC1〜C4アルキルを表す。特に、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル又はn-ヘキシルである。特に、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル又はイソブチルである。
【0023】
本発明との関連において、直鎖状又は分岐状アルコキシという表現は、好ましくはC1〜C6アルコキシ、特に好ましくはC1〜C4アルコキシを表す。特に、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ又はn-ヘキシルオキシである。特に、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ又はイソブチルオキシである。
【0024】
本発明との関連において、直鎖状又は分岐状アルケニルという表現は、好ましくはC2〜C6アルケニル、特に好ましくはC2〜C4アルケニルを表す。アルケニル残基は、単結合の他にも、1個以上の、好ましくは1個から3個までの、特に好ましくは1個又は2個の、特に好ましくは1個のエチレン性二重結合を有する。特に、アルケニルは、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル又は2-メチル-2-プロペニルである。
【0025】
本発明との関連において、シクロアルキルは、3個から10個まで、特に好ましくは5個から8個までの炭素原子を好ましくは有する、脂環式残基を指す。特に、シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルである。特に、シクロアルキルは、シクロヘキシルである。
【0026】
置換シクロアルキル基は、環のサイズに応じて、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個又は5個)の置換基を有し得る。好ましくは、これらの置換基はそれぞれ独立に、C1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシから選択される。置換されている場合、シクロアルキル基は好ましくは、1個以上の、例えば1個、2個、3個、4個又は5個のC1〜C6アルキル基を有する。特に、置換シクロアルキル基の例は、2-及び3-メチルシクロペンチル、2-及び3-エチルシクロペンチル、2-、3-及び4-メチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-エチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-プロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-イソプロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-ブチルシクロヘキシル並びに2-、3-及び4-イソブチルシクロヘキシルである。
【0027】
本発明との関連において、「アリール」という表現は、6個から14個まで、特に好ましくは6個から10個までの炭素原子を一般的に有する、単環式又は多環式芳香族炭化水素残基を含む。アリールの例は、特に、フェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル等であり、特にフェニル又はナフチルである。
【0028】
置換アリールは、環系の数及びサイズに応じて、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個又は5個)の置換基を有し得る。好ましくは、これらの置換基はそれぞれ独立に、C1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシから選択される。置換アリール残基の例は、2-、3-及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-及び4-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジプロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2-、3-及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、3-及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル並びに2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルである。
【0029】
一般式(II)の化合物とケテン(III)との反応に好適な下記の条件は、そうではないとの記載がない限り、一般式(II.1)の化合物とケテン(III.1)との反応にも等しく当てはまる。
【0030】
式(I)、(II)、(I.1)及び(II.1)の化合物において、R1は、好ましくは、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル又は直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニルである。特に好ましくは、R1は、直鎖状若しくは分岐状C1〜C6アルキル又は直鎖状若しくは分岐状C2〜C6アルケニルである。さらなる好ましい一実施形態において、R1は、フェニルである。
【0031】
したがって、残基R1は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はフェニルである。
【0032】
R1は、特に好ましくは、n-プロピル又はイソブチル(2-メチルプロピル)である。
【0033】
R2、R3及びR4は、好ましくは、すべて水素である。
【0034】
R5は、好ましくはメチル又はエチルであり、特に好ましくはメチルである。
【0035】
Ra及びRbは、好ましくは、両方とも水素である。
【0036】
本発明による方法における使用に適した一般式(II)の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物及び当該化合物の製造のための方法は、原則的に、当業者に公知である。
【0037】
特定の一実施形態では、本発明による方法において、一般式(II.1)
【化8】
(式中、R1は、上記に定義のとおりである)
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが使用される。
【0038】
好ましくは、一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを用意するために、
a) 酸性触媒の存在下で式(IV)
【化9】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖状若しくは分岐状C1〜C12アルキル、直鎖状若しくは分岐状C2〜C12アルケニル、合計で3個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、又は、合計で6個から20個までの炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル置換及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させ、一般式(II.1)(式中、R1は、上記に定義のとおりである)の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを含む反応混合物を得、
b) 場合により、ステップa)から得た反応混合物を分離させて、一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ少なくとも1つの画分を得る。
【0039】
このような方法は例えば、EP1493737 A1、WO2011/147919、WO2010/133473、WO2011/154330及びPCT/EP2013/071409において記述されているが、ここをもって、これらの全部分への参照をなしたものとする。
【0040】
特定の一実施形態において、ステップa)から得た反応混合物を分離させて、一般式(I.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ少なくとも1つの画分及び一般式(I.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが激減した画分を得る(=ステップb))。
【0041】
本発明による方法のステップa)のための出発物質の一つは、式(IV)
【化10】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)である。
【0042】
イソプレノールは、イソブテン及びホルムアルデヒドから公知の方法によって任意の規模で容易に入手することができるし、市販されてもいる。本発明によって使用すべきイソプレノールの純度、品質又は製造法に関して、特定の要件はない。本発明によって使用すべきイソプレノールは、本発明による方法のステップa)において、商用の品質及び純度で使用してもよい。90重量%以上の純度、特に好ましくは95重量%から100重量%までの純度、特に好ましくは97重量%から99.9重量%までの純度又はさらにより好ましくは98重量%から99.8重量%までの純度を有するイソプレノールが、好ましくは使用される。
【0043】
本発明による方法のステップa)のためのさらなる出発物質は、式(V) R1-CHO (ここで、式(V)のR1は、上記に定義のとおりである)のアルデヒドである。
【0044】
使用すべき好ましい式(V)のアルデヒドは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、ベンズアルデヒド、シトラール、シトロネラールである。本発明によって使用すべき特に好ましい式(V)のアルデヒドは、ブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド及びベンズアルデヒドであり、特にブチルアルデヒド及びイソバレルアルデヒドである。
【0045】
ステップa)の3-メチルブタ-3-エンオール(IV)及びアルデヒド(V)は、好ましくは約1対2から約2対1までのモル比、特に好ましくは0.7対1から2対1までのモル比、特に1対1から2対1までのモル比で使用される。特定の一実施形態において、ステップa)の3-メチルブタ-3-エンオール(IV)及びアルデヒド(V)は、1対1から1.5対1までのモル比で使用される。
【0046】
ステップa)の反応は好ましくは、酸性触媒の存在下で実施される。原則的に、任意の酸性触媒、すなわち、ブレンステッド酸性又はルイス酸性を有する任意の物質が、ステップa)の反応のために使用され得る。適切な触媒の例は、プロトン酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸、基本的な酸性分子型化合物、例えば塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、四塩化亜鉛及び四塩化チタン、酸性酸化物固体、例えばゼオライト、シリケート、アルミネート、アルミノシリケート、クレー及び強酸性イオン交換体である。
【0047】
ここで、強酸性カチオン交換体という用語は、強酸性基を有するH+型のカチオン交換体を意味すると理解されている。強酸性基は一般に、スルホン酸基である。酸性基は一般に、例えばゲル形態又はマクロ多孔性であってよい、ポリマーマトリックスに結合している。したがって、本発明による方法の好ましい一実施形態は、スルホン酸基を有する強酸性カチオン交換体が使用されることを特徴とする。適切な強酸性カチオン交換体は、参照により本明細書に全部分を援用するWO2010/133473及びWO2011/154330において記述されている。
【0048】
ステップa)の反応は、場合により、反応条件下において不活性な外部有機溶媒の存在下で実施してもよい。適切な溶媒は例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、デカリン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、トルエン又はキシレンである。前記溶媒は、単独で使用してもよいし、又は、各溶媒の混合物の形態で使用してもよい。好ましくは、ステップa)の反応は、外部有機溶媒の添加なしで実施される。
【0049】
好ましくは、ステップa)から得た反応混合物を、ステップb)において蒸留によって分離させて、一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ少なくとも1つの画分及び一般式(II.1)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが激減した画分を得る。蒸留分離に適した装置は、バブルキャップ、シーブプレート、シーブトレー、規則充填物、不規則充填物、バルブ、側方抜出部等を装着していてもよいトレー塔等の蒸留カラム、薄膜エバポレータ、流下膜式エバポレータ、強制循環エバポレータ、Sambayエバポレータ(撹拌式薄膜エバポレータ)等のエバポレータ及びこれらの組合せを含む。蒸留カラムは、分離処理用トレー、規則充填物、例えば金属板充填物又は織物充填物、例えばSulzer Mellapak (登録商標)、Sulzer BX、Montz B1若しくはMontz A3又はKuhni Rombopak、又は、不規則的な層状になった不規則充填物、例えばディクソンリング、ラシヒリング、高流量リング(High-Flow ring)若しくはラシヒスーパーリングから好ましくは選択される、分離処理用内部装置を有してもよい。強酸性カチオン交換体の存在下で3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)を適切なアルデヒドと反応させ、続いて、隔壁型カラム内での蒸留又は熱の流通がある形態で相互連結した2つの蒸留塔内での蒸留によって単離する又は分離させることにより、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノールを調製及び単離するための好ましい方法が、WO2011/154330において記述されている。この文献WO2011/154330の開示は、参照により本明細書に援用する。
【0050】
本発明によれば、本発明による方法において、一般式(II)又は(II.1)の少なくとも1種の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物が、式(III)又は(III.1)のケテンと反応する。
【0051】
一般式(III)CRaRb=C=O(式中、Ra及びRbはそれぞれ独立に、水素であり、又はいずれの場合においても非置換の若しくは置換されているC1〜C12アルキル、C5〜C8シクロアルキル若しくはC6〜C14アリールである)のケテン化合物は一般に、本発明による方法における使用に非常に適している。
【0052】
ケテン化合物の最も単純な代表例は、式(III.1)CH2=C=O(エテノン)のケテンである。好ましくは、この式(III.1)のケテンは、本発明によって使用される。
【0053】
好ましくは、ケテン(III.1)は、一般に650℃超の温度において、アセトン又は酢酸を高温熱分解することによって精製される。ケテン(III.1)を生成するための温度は、好ましくは650℃から1000℃までの範囲、特に好ましくは700℃から900℃までの範囲である。
【0054】
特定の一実施形態において、ケテン(III.1)は、減圧下で製造される。圧力は、好ましくは約100mbarから約900mbarまでの範囲、特に好ましくは300mbarから500mbarまでの範囲、特に350mbarから450mbarまでの範囲である。代替的な一実施形態において、ケテン(III.1)は、(「加圧されていない」)周囲圧力で製造される。この場合、圧力は好ましくは、約950mbarから約1050mbarまでの範囲である。
【0055】
ケテン化合物(III)、特にケテン(III.1)は、ダイマー化してジケテンを形成する強い傾向がある、並外れて反応性の良い化合物であるため、好ましくは事前にごく短時間で製造されたケテン化合物が、本発明による方法において使用される。例えばアセトン、酢酸若しくは無水酢酸の熱開裂又はトリエチルアミン等の塩基を使用したアセチルクロリドの脱塩化水素によって、本発明による方法の反応直前に製造されたケテン(III.1)を使用する場合、本発明による方法は、特に有利なものとなる。
【0056】
本発明による方法の第1の変形形態において、ケテン(III.1)は、ケテン(III.1)が反応混合物に流入するように、反応混合物の液面より下に導入される。ケテンが大量に転化して、比較的多量の気相になることがないように、激しく撹拌しながらケテンを反応混合物中に供給することが、有利である。ケテン(III.1)の圧力は、場合により不活性気体流、例えば窒素流によって保護されている、投入ケテンより上方の反応混合物の静水圧を上回るために十分なほど高くなければならない。
【0057】
ケテン(III.1)は、適切な任意の装置によって導入することができる。ここで、良好な分配及び迅速な混合が重要である。適切な装置は例えば、所定位置に固定することが可能なスパージ用ランスであり、又は、好ましくはノズルである。ノズルは、反応器の底部のところ又は底部の付近に設けることができる。このように設けることを目的とした場合、ノズルは、反応器を取り囲んでいる中空チャンバの開口部として構成され得る。しかしながら、適切な供給管路につながった浸漬ノズルを使用することが、好ましい。例えば、複数のノズルが、環の形態をなすように配設されていてもよい。ノズルは、上向きであっても下向きであってもよい。好ましくは、ノズルは、斜め上に向いている。
【0058】
本発明による方法の第2の変形形態において、ケテン(III.1)を減圧下で製造し、減圧下で一般式(II)の少なくとも1種の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物と反応させる。ケテン(III.1)の製造及び反応中の圧力は、好ましくは約100mbarから約900mbarまでの範囲、特に好ましくは300mbarから500mbarまでの範囲、特に350mbarから450mbarまでの範囲である。
【0059】
エテノンを製造するための方法及び装置は例えば、Organic Syntheses, Coll.第1巻、330頁(1941)及び第4巻、39頁(1925)並びにder Chemiker Zeitung [The Chemists Journal] 97、No. 2、67〜73頁(1979)において記述されている。本発明による方法においてケテン化合物CRaRb=C=O(III)を使用すべき場合で、Ra及びRbが水素ではないとき、ケテン化合物の製造は、原則的に、公知の方法によって実施することができる。これらの公知の方法には例えば、隣接水素を有するカルボニルハライドからのハロゲン化水素の脱離が挙げられる。このような方法は例えば、Organikum、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften、第16版、Berlin 1986、第3.1.5章、特に234頁において記述されている。ケテン化合物の製造は、カルボニルハライドとジアゾメタンとの反応によるArndt-Eistert合成を用いて行うことも可能である。
【0060】
過剰なケテン化合物(III)(又は(III.1))は、望ましくない副反応を起こす可能性がある。したがって、一般式(II)の化合物とケテン(III)との反応は、最大でも等モル量までのケテン化合物(III)を使用して実施されることが好ましい。わずかにモル過剰な一般式(II)の化合物が、好ましい。
【0061】
好ましくは、一般式(II)の4-ヒドロキシテトラヒドロピラン化合物は、反応混合物中へのケテン化合物の蓄積が反応中の全時間を通して回避されるように、ケテン化合物(III)、特にケテン(III.1)と反応する。
【0062】
一般式(II)の化合物とケテン(III)との反応は好ましくは、化合物(II)が本質的に完全に反応するまでケテンが反応混合物中に導入されるように、実施される。ここで、「本質的に反応する」は、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の変換を意味するように理解されている。
【0063】
一般式(II)の化合物は好ましくは、0℃から150℃までの範囲、好ましくは10℃から120℃までの範囲の温度でケテン(III)と反応する。
【0064】
第1の好ましい実施形態において、一般式(II)(又は(II.1))の化合物は、添加触媒の非存在下でケテン(III)(又は(III.1))と反応させる。
【0065】
第2の好ましい実施形態において、一般式(II)(又は(II.1))の化合物は、触媒の存在下でケテン(III)(又は(III.1))と反応させる。水和物又は多水和物としても存在し得る、触媒としての少なくとも1種の亜鉛塩を使用することが好ましい。
【0066】
触媒としてカルボン酸の亜鉛塩、特に、1個から18個までの炭素原子を有するモノカルボン酸又は2個から18個までの炭素原子を有するジカルボン酸を使用することが、特に好ましい。これらのカルボン酸の亜鉛塩には例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、コハク酸亜鉛又はシュウ酸亜鉛が挙げられる。酢酸亜鉛が、特に好ましい。
【0067】
一般に、非常に少量の触媒を使用するだけでよければ、本発明による方法において非常に有利であり、結果として、本方法の費用効果が向上し、反応混合物の後処理が容易になる。このことは、触媒として亜鉛塩を使用したときに特に当てはまる。
【0068】
好ましくは、触媒は、化合物(II)(又は(II.1))の総量に対して0.01重量%から2重量%までの量、特に好ましくは0.02重量%から0.5重量%までの量で使用される。
【0069】
本発明による反応の実施は、前記本発明による反応が、良好な撹拌装置及び/又は混合装置、ケテン用の計量装置、反応の開始及び後反応中の反応温度の維持のための加熱装置、発熱反応の反応熱を取り除くための冷却装置並びに真空ポンプを本質的な構成要素として備える、適切な反応容器内で実施されるように進行することが、有利である。
【0070】
最適な反応様式のためには、過剰なケテンが反応混合物中に決して存在せず、反応混合物が常に徹底的に混合されるように、ケテンを量り取ることが有利である。
【0071】
最適な反応様式のためには、急速すぎるケテンの添加を回避し、反応の終了を明確に判定することが、さらに有利である。
【0072】
ケテンは、例えば特徴的なカルボニルの振動による赤外分光法を用いて検出することができる。
【0073】
本発明による方法により、技術的に簡便な方法によって一般式(I)の化合物を、高い純度にしながらも非常に良好な収率及び空時収率で製造することができる。反応物質が、ほぼ完全に生成物に変換されるため、本発明による方法は、アトムエコノミー(atom economy)が最大であることを特徴とする。
【0074】
特に有利なことに、本発明による方法によって得ることができる組成物は、フレグランスとして適しており、又はフレグランスの提供のために適している。
【0075】
所望するならば、フレグランスとしての使用のための本発明による組成物は、フレグランスに関する応用領域において慣例的な少なくとも1種の溶媒によって希釈することができる。適切な溶媒の例は、エタノール、ジプロピレングリコール若しくはジプロピレングリコールエーテル、フタレート、プロピレングリコール又はジオールのカルボネートであり、好ましくはエタノールである。水もまた、本発明によるフレグランス組成物を希釈するための溶媒として適しており、適切な乳化剤と有利に併用することができる。
【0076】
成分どうしが構造的及び化学的に類似しているため、本発明による方法によって得られたフレグランスは、高い安定性及び耐久性を有する。
【0077】
本発明による方法によって得られたフレグランスは、下記でより詳細に記述されているような化粧用組成物並びに実用品及び消費財又は作用物質への組み込みに適しており、これらのフレグランスは、上記の品物に組み込まれていてもよいし、又は、上記の品物に適用されていてもよい。ここで、本発明全体において、官能的に有効な量は、所期の態様で使用されたときに使用者又は消費者に香気の印象を抱かせるのに十分な量を特に意味するものとして理解すべきである。
【0078】
適切な化粧用組成物は、すべての慣例的な化粧用組成物である。対象とする化粧用組成物は、好ましくは香水、オードトワレ、デオドラント、石けん、シャワージェル、ジェル型入浴剤、クリーム、ローション、日焼け止め、髪のクレンジング及びケアのための組成物、例えばシャンプー、コンディショナー、ヘアジェル、液体又はフォームの形態の整髪用組成物及び髪を対象にした他のクレンジング用組成物又はケア用組成物、装飾目的での人体への適用のための組成物、例えばスティック型化粧品、例えばリップスティック、リップケアスティック、コンシーリングスティック(コンシーラー)、ほお紅、アイシャドウペンシル、リップライナーペンシル、アイライナーペンシル、アイブロウペンシル、修正ペンシル、スティック型日焼け止め、スティック型抗にきび剤及び同等の製品並びにマニキュア液及びネイルケア用の他の製品である。
【0079】
本発明による方法によって得られたフレグランスは、例えばオードトワレ等の香水、シャワージェル、ジェル型入浴剤及びボディデオドラント中への使用に特に適している。
【0080】
本発明による方法によって得られたフレグランスは、当該フレグランスを組み込んだ又は当該フレグランスを適用した消費財又は実用品に芳香を付加し、これにより、心地良いフレッシュグリーン感を際立たせるためにも適している。消費財又は実用品の例は、室内気用デオドラント(エアケア)、テキスタイル(特に、洗剤、繊維製品用柔軟剤)用のクリーニング用組成物又はケア用組成物、テキスタイル処理用組成物、例えばアイロンがけ助剤、研磨剤、クリーニング用組成物、表面、例えば家具、床、キッチン器具、板ガラス及び窓並びにモニターを処理するためのケア用組成物、漂白剤、トイレブロック(toilet block)、ライムスケールリムーバー、肥料、建築資材、離型剤、消毒剤並びに自動車及び車両のケア用製品等である。
【0081】
下記の例は、本発明の説明に役立つものであるが、本発明に制限することは決してない。
【実施例】
【0082】
ガスクロマトグラフィー分析を、次の方法によって実施した。
カラム:DB WAX 30m×0.32mm
内径0.25μm、
インジェクタ温度:200℃、検出器温度250℃
温度プログラム:開始温度が60℃で、2℃/分で120℃に達した後、
20℃/分で230℃に達する
保持時間:trans-ピラニルアセテート tR=15.1分
cis-ピラニルアセテート tR=18.8分
trans-ピラノール tR=19.6分
cis-ピラノール tR=21.5分
【0083】
得られた生成物の濃度(重量%)を、内部標準を使用したGC分析によって測定した。
【0084】
[実施例1]
(ケテンとの反応によるピラノールからのピラニルアセテートの調製)
127.08gのピラノール(0.74mol、組成に関しては表1を参照、0時間の時点における試料)を、90℃で装入した。700℃におけるアセトン(0.411ml/分)の熱分解によって得たケテンを、90℃に冷却した後で、激しく撹拌しながら液面より下に導入した。熱分解における変換は、(単離された未反応のアセトンに対して)約48%であり、熱分解ガス中のケテン含量は、23%〜24%だった。7時間の反応時間後、ケテンの導入を中断し、翌日も中断したままにしておいた。合計で10時間の反応時間後、出発物質が変換されたら、実験を終了した。この実験中には、合計で92.6gのアセトン(1.59mol、単離された未反応のアセトンに対して2.15当量)が、熱分解中に反応した。試料の組成は、表1に与えられている。ピラニルアセテートの収率は、89%だった。
【0085】
cis-及びtrans-ピラニルアセテートを、NMR分光法によって特性分析した。
cis-ピラニルアセテート:13C-NMR (125MHz、CDCl3):δ=21.7ppm、22.3ppm、22.5ppm、23.2ppm、24.3ppm、37.7ppm、43.8ppm、45.4ppm、64.6ppm、72.7ppm、80.0ppm、170.3ppm。
trans-ピラニルアセテート:13C-NMR (125MHz、CDCl3):δ=22.37ppm、22.39ppm、23.2ppm、24.3ppm、26.2ppm、36.3ppm、42.5ppm、45.1ppm、63.4ppm、70.9ppm、79.3ppm、170.4ppm。
【0086】
【表1】
【0087】
比較例1
最初に、ピラノール(5.0g、29mmol、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(35mg、0.3mmol、0.01当量)及びトリエチルアミン(9.69g、96mmol、3.3当量)をトルエン(44g)中に装入し、撹拌しながら90℃に加熱した。次いでアセチルクロリド(7.52g、96mmol、3.3当量)を、2時間以内に滴下添加した。合計で4時間後、混合物を30℃に冷却し、反応を水(25g)の添加によって停止した。GC分析によるピラニルアセテートの収率は、32%だった。
【0088】
比較例2
最初に、ピラノール(5.0g、29mmol、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(35mg、0.3mmol、0.01当量)及びトリメチルアミン(9.69g、96mmol、3.3当量)を、溶媒を用いることなく撹拌しながら90℃で装入した。次いで、アセチルクロリド(7.52g、96mmol、3.3当量)を慎重に滴下添加すると、激しい反応によってピラニルアセテートが形成されたが、反応混合物は、かなり不均一だった。添加が完了した後、混合物を90℃で60分さらに撹拌し、次いで30℃に冷却し、水(50g)を混合物に慎重に添加し、混合物をトルエン(30g)によって抽出した。GC分析によるピラニルアセテートの収率は、26%だった。
【手続補正書】
【提出日】20171102
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
ガスクロマトグラフィー分析を、次の方法によって実施した。
カラム:DB WAX 30m×0.32mm
内径0.25μm、
インジェクタ温度:200℃、検出器温度250℃
温度プログラム:開始温度が60℃で、2℃/分で120℃に達した後、
20℃/分で230℃に達する
保持時間:trans-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテート tR=15.1分
cis-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテート tR=18.8分
trans-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オール tR=19.6分
cis-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オール tR=21.5分
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
[実施例1]
(ケテンとの反応によるテトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オールからのテトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテートの調製)
127.08gのテトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オール(0.74mol、組成に関しては表1を参照、0時間の時点における試料)を、90℃で装入した。700℃におけるアセトン(0.411ml/分)の熱分解によって得たケテンを、90℃に冷却した後で、激しく撹拌しながら液面より下に導入した。熱分解における変換は、(単離された未反応のアセトンに対して)約48%であり、熱分解ガス中のケテン含量は、23%〜24%だった。7時間の反応時間後、ケテンの導入を中断し、翌日も中断したままにしておいた。合計で10時間の反応時間後、出発物質が変換されたら、実験を終了した。この実験中には、合計で92.6gのアセトン(1.59mol、単離された未反応のアセトンに対して2.15当量)が、熱分解中に反応した。試料の組成は、表1に与えられている。テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテートの収率は、89%だった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
cis-及びtrans-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテートを、NMR分光法によって特性分析した。
cis-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテート:13C-NMR (125MHz、CDCl3):δ=21.7ppm、22.3ppm、22.5ppm、23.2ppm、24.3ppm、37.7ppm、43.8ppm、45.4ppm、64.6ppm、72.7ppm、80.0ppm、170.3ppm。
trans-テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテート:13C-NMR (125MHz、CDCl3):δ=22.37ppm、22.39ppm、23.2ppm、24.3ppm、26.2ppm、36.3ppm、42.5ppm、45.1ppm、63.4ppm、70.9ppm、79.3ppm、170.4ppm。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
比較例1
最初に、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オール(5.0g、29mmol、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(35mg、0.3mmol、0.01当量)及びトリエチルアミン(9.69g、96mmol、3.3当量)をトルエン(44g)中に装入し、撹拌しながら90℃に加熱した。次いでアセチルクロリド(7.52g、96mmol、3.3当量)を、2時間以内に滴下添加した。合計で4時間後、混合物を30℃に冷却し、反応を水(25g)の添加によって停止した。GC分析によるテトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテートの収率は、32%だった。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0088】
比較例2
最初に、テトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラン-4-オール(5.0g、29mmol、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(35mg、0.3mmol、0.01当量)及びトリメチルアミン(9.69g、96mmol、3.3当量)を、溶媒を用いることなく撹拌しながら90℃で装入した。次いで、アセチルクロリド(7.52g、96mmol、3.3当量)を慎重に滴下添加すると、激しい反応によってピラニルアセテートが形成されたが、反応混合物は、かなり不均一だった。添加が完了した後、混合物を90℃で60分さらに撹拌し、次いで30℃に冷却し、水(50g)を混合物に慎重に添加し、混合物をトルエン(30g)によって抽出した。GC分析によるテトラヒドロ-2-イソブチル-4-メチルピラニル-4-アセテートの収率は、26%だった。
【国際調査報告】