(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
a)支持基材上に、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的に反応性希釈剤とを含む硬化性組成物の層を塗布することであって、前記硬化性組成物は、前記多官能性ウレタン及び存在する場合には前記任意選択的な反応性希釈剤の加重平均基準で250〜450g/当量の反応性基当量を有する、塗布する工程;
b)前記硬化性組成物の前記層を化学線又は熱に曝露して硬化層を形成する工程;及び
c)工程b)で得られた前記硬化層に少なくとも1つのセルを彫刻する工程
を含む、印刷版を製造する方法。
前記多官能性ウレタンは、2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、且つ前記硬化性組成物は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する1種以上の反応性希釈剤を更に含み、及び前記硬化性組成物の前記反応性基当量は、前記1種以上の反応性希釈剤及び前記多官能性ウレタンの反応性基当量の加重平均であり、且つ250〜450g/当量である、請求項1に記載の方法。
前記多官能性ウレタンは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能性アクリレート化ウレタンであり、及び前記反応性基当量は、250〜450g/当量であるアクリレート当量である、請求項1に記載の方法。
前記硬化性組成物は、前記反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、補助的な樹脂改質化合物、又はこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の樹脂改質剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
前記多官能性ウレタンは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタンを含み、前記開始剤は光開始剤であり、且つ前記任意選択的な反応性希釈剤は、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の反応性希釈剤を含み、及び前記組成物の前記反応性基当量は、前記1種以上の反応性希釈剤及び前記多官能性アクリレート化ウレタンのアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量であり、且つ250〜450g/当量である、請求項1に記載の方法。
前記多官能性ウレタンは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の反応性希釈剤、及び2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する補助的な樹脂改質化合物を含み、前記硬化性組成物の前記反応性基当量は、前記1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン、前記少なくとも1種の反応性希釈剤、及び前記補助的な樹脂改質化合物のアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量であり、且つ250〜450g/当量である、請求項1に記載の方法。
前記硬化性組成物は、300cp以下の粘度を有し、二官能性(メタ)アクリレートモノマー、二官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、三官能性(メタ)アクリレートモノマー、三官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせの群から選択される少なくとも1種の反応性希釈剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
前記塗布工程は、200〜20000cpの粘度を有する前記硬化性組成物をコーティングして、50.8〜3810μmの厚さを有する層を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記硬化性組成物をコーティングする工程は、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、ローラーコーティング、押出コーティング、刷毛塗り、リングコーティング、粉体コーティング、及びブレードコーティングから選択される、請求項10に記載の方法。
前記開始剤は光開始剤であり、及び前記曝露工程b)は、前記硬化性組成物層を紫外線、可視光、及び電子線照射から選択される化学線に曝露する工程を含む、請求項1に記載の方法。
前記曝露工程後、前記支持基材の反対側の前記硬化層の外表面を研磨して、2.54ミクロン未満のRz値を有する前記外表面を提供する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
支持基材と、前記支持基材に隣接する印刷面とを含む印刷版であって、前記印刷面は、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的に反応性希釈剤とを含む硬化性組成物の硬化層であり、前記組成物は、250〜450g/当量である前記多官能性ウレタン及び前記任意選択的な反応性希釈剤の反応性基当量によって特徴付けられる、印刷版。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その結果、経済的且つ環境に優しい方法でポリマー系印刷版前駆体を製造するために使用でき、塗工性、硬化性、及び彫刻性の望ましい組み合わせを有し、耐溶剤性、耐機械摩耗性、及び印刷品質の適切な組み合わせを有するポリマー系印刷版用である、特定のポリマーを主体とする組成物を明らかにすることが依然として必要とされている。ポリマー層は使用後に容易に取り除かれることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態は、a)支持基材上に、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的に反応性希釈剤とを含む硬化性組成物の層を塗布する工程であって、硬化性組成物が、多官能性ウレタン及び存在する場合には任意選択的な反応性希釈剤の加重平均基準で250〜450g/当量の反応性基当量を有する、塗布する工程;b)硬化性組成物の層を化学線又は熱に曝露して硬化層を形成する工程;及びc)工程b)で得られた硬化層に少なくとも1つのセルを彫刻する工程を含む、印刷版を製造する方法を提供する。
【0006】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが2つ以上のエチレン性不飽和基を有し、且つ硬化性組成物が、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する1種以上の反応性希釈剤を更に含み、及び硬化性組成物の反応性基当量が1種以上の反応性希釈剤及び多官能性ウレタンの反応性基当量の加重平均であり、且つ250〜450g/当量であることを規定する。
【0007】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能性アクリレート化ウレタンであり、及び反応性基当量が、250〜450g/当量であるアクリレート当量であることを規定する。
【0008】
別の実施形態は、硬化性組成物が、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、補助的な樹脂改質化合物、又はこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の樹脂改質剤を更に含むことを規定する。
【0009】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタンを含み、開始剤が光開始剤であり、且つ任意選択的な反応性希釈剤が、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の反応性希釈剤を含み、及び組成物の反応性基当量が、1種以上の反応性希釈剤及び多官能性アクリレート化ウレタンのアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量であり、且つ250〜450g/当量であることを規定する。
【0010】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の反応性希釈剤、及び2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する補助的な樹脂改質化合物を含み、硬化性組成物の反応性基当量が、1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン、少なくとも1種の反応性希釈剤、及び補助的な樹脂改質化合物のアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量であり、且つ250〜450g/当量であることを規定する。
【0011】
別の実施形態は、硬化性組成物が、300cp以下の粘度を有する少なくとも1種の反応性希釈剤を更に含み、且つ二官能性(メタ)アクリレートモノマー、二官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、三官能性(メタ)アクリレートモノマー、三官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせの群から選択されることを規定する。
【0012】
別の実施形態は、硬化性組成物が、ナノ粒子、ミクロ粒子、又はこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤を更に含むことを規定する。
【0013】
別の実施形態は、硬化性組成物が、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、分散剤、染料、並びに顔料から選択される1種以上の添加剤を更に含むことを規定する。
【0014】
別の実施形態は、支持基材がシリンダー又はシートの形態であることを規定する。
【0015】
別の実施形態は、支持基材がグラビア印刷シリンダーであることを規定する。
【0016】
別の実施形態は、塗布工程が、200〜20000cpの粘度を有する硬化性組成物をコーティングして、50.8〜3810μmの厚さを有する層を形成する工程を含むことを規定する。
【0017】
別の実施形態は、コーティング工程のための硬化性組成物が、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、ローラーコーティング、押出コーティング、刷毛塗り、リングコーティング、粉体コーティング、及びブレードコーティングから選択されることを規定する。
【0018】
別の実施形態は、曝露工程b)が硬化性組成物層を30℃〜252℃の温度まで加熱する工程を含むことを規定する。
【0019】
別の実施形態は、開始剤が光開始剤であり、及び曝露工程b)が、硬化性組成物層を紫外線、可視光、及び電子線照射から選択される化学線に曝露する工程を含むことを規定する。
【0020】
別の実施形態は、化学線が、1000〜30000mJ/cm
2のエネルギー密度を有する紫外線であることを規定する。
【0021】
別の実施形態は、曝露工程後、方法が、支持基材の反対側の硬化層の外表面を研磨して、2.54ミクロン未満のRz値を有する外表面を提供する工程を更に含むことを規定する。
【0022】
別の実施形態は、彫刻工程が電気機械式彫刻又はレーザー彫刻から選択されることを規定する。
【0023】
別の実施形態は、曝露工程後、組成物の硬化層が30〜200MPaの硬さを有することを規定する。
【0024】
別の実施形態は、曝露工程後、組成物の硬化層が40MPa以上の硬さを有することを規定する。
【0025】
別の実施形態は、a)上述の方法により、硬化層を有する印刷版を製造する工程;b)少なくとも1つのセルにインクを塗布する工程;及びc)インクをセルから印刷可能な基材に転写する工程を含む、印刷版を用いるグラビア印刷の方法であって、硬化層が層の重量基準で≦15%膨潤する、方法を提供する。
【0026】
別の実施形態は、支持基材と、支持基材に隣接する印刷面とを含む印刷版であって、印刷面が、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的に反応性希釈剤とを含む硬化性組成物の硬化層であり、組成物が、250〜450g/当量である多官能性ウレタン及び任意選択的な反応性希釈剤の反応性基当量によって特徴付けられる、印刷版を提供する。
【0027】
別の実施形態は、印刷面上の硬化性組成物が、ナノ粒子、ミクロ粒子、又はこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤;一官能性希釈剤、モノマー、補助的な樹脂改質化合物、又はこれらの組み合わせから選択される1種以上の樹脂改質剤;並びに接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、分散剤、染料、顔料、又はこれらの組み合わせから選択される添加剤から独立に選択される1種以上の任意選択的な成分を更に含むことを規定する。
【0028】
別の実施形態は、印刷面がインク用の彫刻されたセルを含むことを規定する。
【0029】
別の実施形態は、印刷版がポリマーを主体とするグラビア印刷版であることを規定する。
【0030】
別の実施形態は、印刷版が銅及び/又はクロムを含まないことを規定する。
【0031】
別の実施形態は、印刷面を形成する硬化層が約30〜200MPaの硬さを有することを規定する。
【0032】
別の実施形態は、印刷面を形成する硬化層が40MPa以上の硬さを有することを規定する。
【0033】
別の実施形態は、支持基材;及び、支持基材に隣接する硬化性組成物の層であって、硬化性組成物が、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的に反応性希釈剤とを含み、硬化性組成物が、多官能性ウレタン及び任意選択的な反応性希釈剤を基準として250〜450g/当量の反応性基当量を有する層を含む、印刷版前駆体を提供する。
【0034】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタンを含み、且つ組成物が、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の反応性希釈剤と、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する補助的な樹脂改質化合物とを更に含み、組成物の反応性基当量が、1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン、少なくとも1種の反応性希釈剤、及び補助的な樹脂改質化合物のアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量であり、且つ250〜450g/当量であることを規定する。
【0035】
別の実施形態は、多官能性ウレタンがホモポリマーのウレタンのオリゴマー又はモノマーであることを規定する。
【0036】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、ウレタンのオリゴマー又はモノマーと、2つ以上の反応性基を有し且つポリエステルオリゴマー、ポリエステルモノマー、エポキシオリゴマー、エポキシモノマー、及びポリエーテルオリゴマー、又はポリエーテルオリゴマーから選択される別のポリマーとのコポリマーであり、多官能性ウレタンオリゴマー又はモノマーがコポリマーの少なくとも50重量%であることを規定する。
【0037】
別の実施形態は、多官能性ウレタンが、少なくとも1種の軟らかい多官能性アクリレート化ウレタンと、少なくとも1種の硬い多官能性アクリレート化ウレタンとのブレンド物を含む多官能性アクリレート化ウレタンであることを規定する。
【0038】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、2つ以上の反応性基と300cp以下の粘度とを有し、二官能性(メタ)アクリレートモノマー、二官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、三官能性(メタ)アクリレートモノマー、三官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の反応性希釈剤を更に含むことを規定する。
【0039】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、ビニルエーテル;n−トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA);ヘキサメチレンジオールジアクリレート(HDDA);ブタンジオールジアクリレート(BDDA);ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA);トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT);エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(et−TMPT);及びトリメチルプロパントリメタクリレート(TMPTMA)から選択される少なくとも1種の反応性希釈剤を含むことを規定する。
【0040】
別の実施形態は、任意選択的な反応性希釈剤が、硬化性組成物の成分の総重量基準で0.2〜40重量%の量で存在することを規定する。
【0041】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、一官能性希釈剤、モノマー、補助的な樹脂改質化合物、又はこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の樹脂改質剤を更に含むことを規定する。
【0042】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、1つの反応性基と室温で1100cp未満の粘度とを有する1種以上の一官能性希釈剤を更に含み、1種以上の一官能性希釈剤が硬化性組成物の成分の総重量基準で0.2〜20重量%の量であることを規定する。
【0043】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、室温で300cp超の粘度を有する1種以上のモノマーを更に含み、1種以上のモノマーが硬化性組成物の成分の総重量基準で0.2〜20重量%の量であることを規定する。
【0044】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、エポキシ(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;ポリエステル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;ポリエーテル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;イソシアネートのアクリレート誘導体及びメタクリレート誘導体;並びにこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の補助的な樹脂改質化合物を更に含み、1種以上の補助的な樹脂改質化合物が硬化性組成物の成分の総重量基準で0.2〜35重量%の量であることを規定する。
【0045】
別の実施形態は、開始剤が、紫外線、可視光、及び電子線照射から選択される化学線に応答する光開始剤であることを規定する。
【0046】
別の実施形態は、開始剤が、30℃〜252℃の温度の熱に応答する熱開始剤であることを規定する。
【0047】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準として30〜95重量%の多官能性ウレタンと、0.1〜40重量%の1種以上の反応性希釈剤と、0.1〜15重量%の開始剤とを含むことを規定する。
【0048】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、ナノ粒子、ミクロ粒子、又はこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤を更に含むことを規定する。
【0049】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準として0.1〜55重量%の微粒子状充填剤を更に含み、微粒子状充填剤が酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化タングステン、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、粘土、カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック、炭素フィラメント、ポリ(テトラフルオロエチレン)、又はこれらの組み合わせから選択されることを規定する。
【0050】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、官能化されており且つアルミナ粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子から選択される微粒子状充填剤を更に含むことを規定する。
【0051】
別の実施形態は、微粒子状充填剤が、フェニル官能基を有するシラン、エポキシ官能基を有するシラン、又はビニル官能基を有するシランで官能基化されていることを規定する。
【0052】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、カーボンナノチューブ、グラファイト、カーボンブラック、炭素フィラメント、炭素内包シリカ、又はこれらの混合物から選択される微粒子状充填剤を更に含み、且つ硬化性組成物中の固形成分の合計を基準として1〜30重量%の量であることを規定する。
【0053】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が1〜35重量%のナノ粒子量で微粒子状充填剤を更に含むことを規定する。
【0054】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が1〜20重量%のミクロ粒子量で微粒子状充填剤を更に含むことを規定する。
【0055】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、スリップ剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、又はこれらの組み合わせから選択される1種以上の添加剤を更に含むことを規定する。
【0056】
別の実施形態は、1種以上の添加剤が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準として合計で10重量%以下で存在することを規定する。
【0057】
別の実施形態は、スリップ剤がアクリレート化シリコーンポリエーテルコポリマー及びフッ素化化合物から選択されることを規定する。
【0058】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が1〜30重量%の1種以上の染料及び/又は顔料を更に含むことを規定する。
【0059】
別の実施形態は、a)30〜95重量%の、2つ以上のエチレン性不飽和基及びエチレン性不飽和当量を有する少なくとも1種の多官能性ウレタン;b)0.1〜10重量%の少なくとも1種の開始剤;c)0.2〜40重量%の、2つ以上のエチレン性不飽和基及びエチレン性不飽和当量を有する少なくとも1種の反応性希釈剤;d)0〜55重量%の、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤;並びに任意選択的に、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、分散剤、染料、又は顔料から独立に選択される1種以上の添加剤を含む印刷版前駆体であって、各成分の重量%が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準とし、硬化性組成物の反応性基当量が、少なくとも1種の多官能性ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤のエチレン性不飽和当量の加重平均であり、且つ250〜450g/当量である、印刷版前駆体を提供する。
【0060】
別の実施形態は、a)合計で30〜95重量%の、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上のアクリレート化ウレタンである多官能性ウレタン;b)合計で0.1〜10重量%の、1種以上の光開始剤である開始剤;c)合計で0.2〜40重量%の、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の反応性希釈剤;d)1〜45重量%の、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤;並びに任意選択的に、最大で合計10重量%の、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、又は分散剤から独立に選択される1種以上の添加剤を含む印刷版前駆体であって、重量%が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準とし、硬化性組成物の反応性基当量が、1種以上のアクリレート化ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤の(メタ)アクリレート当量の加重平均であり、且つ250〜450g/当量である、印刷版前駆体を提供する。
【0061】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、e)0〜20重量%の1種以上の一官能性希釈剤;f)0〜20重量%の1種以上のモノマー;g)0〜35重量%の1種以上の補助的な樹脂改質化合物を更に含み、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、及び補助的な樹脂改質化合物の合計が硬化性組成物の40重量%以下であることを規定する。
【0062】
別の実施形態は、a)合計で30〜70重量%の、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上のアクリレート化ウレタンである多官能性ウレタン;b)合計で0.1〜10重量%の、1種以上の光開始剤である開始剤;c)合計で0.2〜35重量%の、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する1種以上の反応性希釈剤;d)1〜50重量%の、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤;並びに任意選択的に、0〜5重量%の接着促進剤;任意選択的に、0〜5重量%のフロー剤;任意選択的に、0〜2重量%の安定化剤;任意選択的に、0〜3重量%のスリップ剤を含む印刷版前駆体であって、重量%が、組成物の存在する固形成分の合計を基準とする、印刷版前駆体を提供する。
【0063】
別の実施形態は、印刷版前駆体の硬化性組成物が、支持基材上に少なくとも30MPaの硬さを有する硬化層を形成し、層が、インクを保持するためのセルを形成することができる外表面を有し、それにより印刷面を形成することを規定する。
【0064】
また別の実施形態は、a)30〜95重量%の、2つ以上の反応性基を有する少なくとも1種の多官能性ウレタン;b)0.1〜10重量%の少なくとも1種の開始剤;c)0〜40重量%の、2つ以上の反応性基を有する1種以上の反応性希釈剤;d)0〜20重量%の1種以上の一官能性希釈剤;e)0〜20重量%の1種以上のモノマー;f)0〜35重量%の1種以上の補助的な樹脂改質化合物;g)0〜55重量%の、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤;並びに任意選択的に、最大で合計10重量%の、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、又は分散剤から独立に選択される1種以上の添加剤を含む、印刷版における印刷面としての使用のための硬化性多官能性ウレタンポリマーであって、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、及び補助的な樹脂改質化合物の合計が、硬化性組成物の40重量%以下であり、重量%が、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準とし、硬化性組成物が、少なくとも1種の多官能性ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤の反応性基当量を有し、且つ250〜450g/当量であり、硬化性組成物が、支持基材上に少なくとも30MPaの硬さを有する硬化層を形成し、層が、インクを保持するためのセルを形成することができる外表面を有し、それにより印刷面を形成する、硬化性多官能性ウレタンポリマーを提供する。
【0065】
本実施形態のこれらの及び他の特徴及び有利性は、以下の詳細な説明を読むことで当業者により容易に理解されるであろう。また、明確にするため、別々の実施形態として前述又は後述される開示された実施形態の特定の特徴は、単一の実施形態の組合せにおいてもたらされ得る。反対にまた、単一の実施形態に関連して記載される開示された実施形態の様々な特徴は、別々に又は任意の下位の組合せにおいてもたらされ得る。
【0066】
本発明の様々な特徴及び/又は実施形態が以降に記載されている図面に示されている。これらの特徴及び/又は実施形態は代表的なものに過ぎず、図面に含めるためのこれらの特徴及び/又は実施形態の選択は、図面に含まれていない主題が本発明の実施に適切でないこと、又は図面に含まれていない主題が添付の請求項の範囲及びその均等物から除外されることを示すものとして解釈すべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本開示に関連して多くの用語が使用される。
【0069】
用語「多官能性ウレタン」は、ウレタン結合と2つ以上の重合性官能基とを含む少なくとも1種の未架橋モノマー又はオリゴマーを意味し、この重合性官能基はエチレン性不飽和基である。ほとんどの実施形態では、多官能性ウレタンは、ウレタン結合と、エチレン性不飽和基としての2つ以上の(メタ)アクリレート官能基とを含む少なくとも1種の未架橋モノマー又はオリゴマーである。ウレタン結合及び2つ以上の重合性官能基に加えて、多官能性ウレタンは他の重合性結合を含んでもよい。「アクリレート化ウレタン」、「ウレタンアクリレート」、又は「ウレタンアクリレート樹脂」、又は「多官能性アクリレート化ウレタン」は、2つ以上の(メタ)アクリレート化された基を有する多官能性ウレタンである。
【0070】
用語「ウレタン成分」は、存在する全ての多官能性ウレタンを指す。
【0071】
用語「エチレン性不飽和」は、付加重合して炭素−炭素鎖を形成することができる炭素−炭素二重結合を含む化合物上の基を指す。いくつかの場合、炭素−炭素三重結合を含む不飽和化合物は付加重合して炭素−炭素鎖を形成することができ、そのため「エチレン性不飽和」に含まれる。
【0072】
多官能性ウレタンに関する用語「多官能性」は、1分子当たり2つ以上の重合性基、すなわち1分子当たり2つ以上のエチレン性不飽和基を有するウレタンモノマー又はオリゴマーを意味する。
【0073】
アクリレート化ウレタン又は多官能性アクリレート化ウレタンに関する用語「多官能性」は、1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基(重合性基として)を有するウレタンモノマー又はオリゴマーを意味する。
【0074】
反応性希釈剤に関する用語「多官能性」は、1分子当たり2つ以上の重合性基、すなわちエチレン性不飽和基を有することを意味する。いくつかの実施形態では、多官能性反応性希釈剤は、1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する反応性希釈剤である。
【0075】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0076】
用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0077】
用語「反応性希釈剤」は、粘度及び他の特性(硬化する樹脂又はポリマーの濡れ及び含浸など)を修正するために使用される低粘度物質を指し、これは重合性基、すなわち例えば(メタ)アクリレート官能基などのエチレン性不飽和基を含む。溶剤と異なり、反応性希釈剤は最終的な硬化組成物の一部となる。反応性希釈剤は2つ以上の重合性基を含む。本明細書では、簡潔に表現するために、「反応性希釈剤」の代わりに用語「希釈剤」が使用される場合がある。
【0078】
用語「分子量」は、本明細書において特段の記載がない限り、重量平均分子量を意味する。
【0079】
用語「反応性基当量」((RGEW)又は(REW))は、反応性官能基1グラム当量を含む、少なくとも1種の多官能性ウレタン又は多官能性ウレタンの混合物のグラム単位での重量を意味する。したがって、反応性基当量は、ウレタン上のエチレン性不飽和官能基の数で割ったウレタンオリゴマーの分子量であり、グラム/当量の単位で表すことができる。反応性基当量は、反応性希釈剤に関しても使用することができ、その場合、反応性官能基1グラム当量を含む、少なくとも1種の反応性希釈剤又は反応性希釈剤混合物のグラム単位での重量を意味する。したがって、反応性基当量は、反応性希釈剤上のエチレン性不飽和官能基の数で割った反応性希釈剤の分子量である。反応性基当量という用語は、存在する場合には多官能性反応性希釈剤の影響も考慮する。2種以上の多官能性ウレタンと、任意選択的に1種以上の反応性希釈剤とを含有する硬化性組成物に関して、硬化性組成物の反応性基当量(RGEW)は、存在する多官能性ウレタン及び反応性希釈剤の合計を基準とした各多官能性ウレタン及び存在する場合には1種以上の反応性希釈剤の加重平均RGEWである。反応性基当量は、硬化性組成物の架橋密度の指標である。
【0080】
用語「アクリレート当量」((EW)又は(AEW))は、アクリレート官能基1グラム当量を含む、少なくとも1種の多官能性ウレタン又は多官能性ウレタン混合物のグラム単位での重量を意味する。したがって、アクリレート当量は、ウレタン上の(メタ)アクリレート官能基の数で割ったウレタンオリゴマーの分子量であり、グラム/当量単位で表すことができる。アクリレート当量は、反応性希釈剤に関しても使用することができ、その場合、(メタ)アクリレート官能基1グラム当量を含む、少なくとも1種の反応性希釈剤又は反応性希釈剤の混合物のグラム単位での重量を意味する。したがって、アクリレート当量は、反応性希釈剤上の(メタ)アクリレート官能基の数で割った反応性希釈剤の分子量である。アクリレート当量という用語は、存在する場合には多官能性反応性希釈剤の影響も考慮する。2種以上の多官能性ウレタンと、任意選択的に1種以上の反応性希釈剤とを含有する硬化性組成物に関して、照射硬化性組成物のアクリレート当量(AEW)は、存在する多官能性ウレタン及び反応性希釈剤の合計を基準とした、各多官能性ウレタン及び存在する場合には1種以上の反応性希釈剤の加重平均EWである。アクリレート当量は、硬化性組成物の架橋密度の指標である。
【0081】
用語「溶剤」は、組成物の粘度を低減させ、且つ組成物が処理される条件(温度など)で除去されるような揮発性を有する組成物の非反応性成分を指す。「溶剤フリー」の組成物は、溶剤を含まないか溶剤を実質的に含まない(すなわち、基材に塗布した後にゼロであるか組成物の約0.4重量%未満である微量の溶剤のみを含む)組成物であり、溶剤は上で定義した通りである。
【0082】
用語「グラビア印刷」は、印刷版の表面に1つ以上の窪みが彫刻又はエッチングされ、彫刻又はエッチングされた領域がインクで満たされ、その後、印刷版が紙又は別の物質などの基材にインク画像を転写することによって画像が形成されるプロセスを意味する。個々の彫刻又はエッチングされた窪みは「セル」と呼ばれる。
【0083】
用語「セル壁」は、あるグラビアセルを、隣接するグラビアセルと隔てる畝を指す。そのため、用語「セル壁厚さ」は、あるセルの端部から隣接するセルの端部までの畝の幅である。ほとんどの場合、セル壁厚さは彫刻された層の最表面で決定される。セル壁は、彫刻されたグラビア印刷版の他の非印刷領域と共に、典型的にはグラビア印刷版のランド領域と呼ばれる。
【0084】
用語「活版印刷」は、印刷版の表面上に隆起したレリーフ要素を形成するために非エラストマー層から材料を選択的に深さ方向に除去することによって画像が形成されるプロセスを意味し、隆起したレリーフ要素の最表面がインクを保持し、印刷版が隆起した要素から基材にインク画像を転写する。
【0085】
用語「フレキソ印刷」は、印刷版の表面上に隆起したレリーフ要素を形成するためにエラストマー層から材料が選択的に深さ方向に除去することによって画像が形成されるプロセスを意味し、隆起したレリーフ要素の最表面がインクを保持し、印刷版が隆起した要素から基材にインク画像を転写する。
【0086】
用語「印刷版」は、印刷用の表面にインクを塗布するために使用される物体(例えば、シリンダー、ロール、ブロック、又はプレートの形態)を意味する。
【0087】
用語「グラビア印刷版」は、グラビア印刷又は輪転式グラビア印刷によって表面にインクを塗布するために使用される物体(例えば、シリンダー、ロール、ブロック、又はプレートの形態)を意味する。
【0088】
用語「印刷版前駆体」、又は「印刷版ブランク」、又は「グラビア印刷版前駆体」、又は「グラビア印刷版ブランク」も、依然として彫刻されていない「印刷版」を意味するために本明細書で使用される場合がある。
【0089】
用語「室温」又は均等に「周囲温度」は、当業者に公知の通常の意味を有し、約10℃(50°F)〜約32℃(90°F)の範囲内の温度が含まれ得る。
【0090】
用語「溶剤系インク」は、水系インクと対照的に、有機溶剤を含むインクを意味し、典型的には有機溶剤は揮発性である。
【0091】
用語「硬化」は、化学添加剤、化学線(例えば、紫外線又は電子線)、及び/又は熱によって引き起こされる、ポリマー鎖の架橋による樹脂又はポリマー系材料の固化を指す。固化は、主にポリマー鎖の架橋によって生じる。分岐鎖又は直鎖の延長などのポリマー系材料又は樹脂中での他の相互作用も、ポリマー鎖の架橋と比べて比較的わずかではあるが生じ得る。
【0092】
用語「硬化性組成物」、「硬化性コーティング組成物」、「硬化性ポリマー系コーティング組成物」、又は「硬化性のポリマーを主体とする組成物」は、本明細書では、基材に塗布されてからフィルム又は層へと硬化される組成物を指す。硬化性組成物は硬化性ポリマー系物質又は樹脂を含み、また例えば硬化剤、反応性希釈剤、充填剤、樹脂改質剤、及び任意選択的に他の添加剤などの追加的な成分を含んでもよい。
【0093】
用語「開始剤」は、放射又は熱に曝露された際に重合反応を促進し、ラジカルへと分解する化合物又は化合物の組み合わせである。
【0094】
用語「放射」、「照射」、又は「化学線」は、典型的には光開始剤の存在下で、アクリル性又はメタクリル性の二重結合などのエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー及び/又はオリゴマーの重合を生じさせる放射を意味する。化学線には、紫外線、可視光、及び電子線照射が含まれ得る。化学線の発生源は、自然太陽光であっても人工放射源であってもよい。化学線としての紫外線の例としては、320ナノメートル(nm)〜400nmの波長範囲に含まれるUV−A線;280nm〜320nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−B線;100nm〜280nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−C線;400nm〜800nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−V線が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
用語「光開始剤」は、放射に曝露された際に重合反応を促進し、ラジカルへと分解する化合物である。光開始剤は、重合反応を促進する1種以上の化合物を、単独で又は組み合わせで包含する。
【0096】
用語「増感剤」は、別の化合物中での光反応を開始させるために放射を吸収する、光開始剤などの1つ又は複数の化合物であり、反応によっては消費されない。光開始剤系は少なくとも1種の増感剤と少なくとも1種の光開始剤とを含む。通常、光開始剤が放射の波長又は波長範囲を強く又は十分に吸収しない場合、光開始剤系が用いられ得る。
【0097】
用語「熱開始剤」は、加熱されるか熱に曝露された際に重合を促進し、ラジカルへと分解する化合物である。
【0098】
用語「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法方向が約1000nm(1ミクロン)未満の粒子を意味する。
【0099】
用語「ミクロ粒子」は、少なくとも1つの寸法方向が約1000nm(1ミクロン)以上の粒子を意味する。
【0100】
特段の指示がない限り、硬化性組成物の特定の成分の重量パーセントは、組成物中の固形成分の合計のパーセンテージ、すなわち組成物の硬化層中に存在しないであろう溶剤及び組成物中の任意の他の移動性の成分を除外した固形成分の重量パーセントを基準とする。硬化性組成物は、支持体上に組成物の層を形成するためのプロセスの1つ以上の工程を補助する1種以上の溶剤及び/又は他の成分を含んでもよいが、組成物層が硬化した後、溶剤及び組成物中の任意の他の移動性の成分は存在しない(又は本質的に存在しない、すなわち微量のみ含む)(組成物の層が形成(及び乾燥)された後には存在していても存在していなくてもよい)。そのため、溶剤及び他の移動性の成分は、硬化性組成物の成分の総重量には含まれない。固形成分の合計の重量パーセント基準の成分の重量パーセントは、本明細書では、硬化性組成物中の成分の総重量基準の成分の重量パーセントとして(これには溶剤及び移動性成分は含まれない)、又は重合性のコーティングされた層を基準とした成分の重量パーセントとして表される場合もある。
【0101】
本発明は、硬化性組成物から印刷版を製造する方法であり、特にポリマーを主体とする硬化性組成物からグラビア印刷版を製造する方法である。硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン及び開始剤、並びに任意選択的に1種以上の反応性希釈剤を含む。硬化性組成物は、多官能性ウレタン及び任意選択的な反応性希釈剤の、約250〜約450の反応性基当量によって特徴付けられる。ほとんどの実施形態では、硬化性組成物は、多官能性ウレタン及び任意選択的な反応性希釈剤の約250〜約450のアクリレート当量によって特徴付けられる。
【0102】
ほとんどの実施形態では、硬化性組成物の硬化層から得られる印刷版は、グラビア印刷用途における使用に適している。グラビア印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であり、画像領域は窪んでおり、インク又は印刷材料が入る小さい凹んだセル又はウエルからなり、非画像領域が版の表面である。いくつかの実施形態では、硬化性組成物の硬化層から得られる印刷版は、凸版印刷、特に活版印刷における最終使用印刷用途も有し得ると考えられる。活版印刷は、印刷版が画像領域から印刷する凸版印刷の方法であり、印刷版の画像領域は隆起しており、非画像領域は窪んでいる。通常、活版印刷用の凸版印刷版は、活版印刷版が非エラストマー系であり、フレキソ印刷版がエラストマー系である点でフレキソ印刷用の凸版印刷版と異なる。
【0103】
本方法により、グラビア印刷用の1つ以上の金属層を有する従来の印刷版よりも大幅に少ない時間で、少ないコストで、且つより環境に優しい方式で印刷版の製造が容易になる。驚くべきことに且つ予期外にも、請求項に記載の方法により、従来の金属グラビア印刷版に匹敵する優れた性能のための複数の適切な要件を満たすことができる特定の硬化性組成物から、ポリマーを主体とするグラビア印刷版が製造される。組成物は、容易に塗布されて比較的均一な層を支持基材上に形成でき、最小限の研削又は研磨のみを必要とすることから、特定の硬化性組成物は良好な塗工性を有する。組成物は放射への曝露によって迅速に硬化できることから、特定の硬化性組成物は良好な硬化性を有する。良好な塗工性及び硬化性により、最小限の後処理で、グラビア彫刻及び印刷に必要とされる厳密な許容誤差内で製造することができる組成物の高品質なコーティング層が得られる。更に、高品質のコーティング及び硬化が迅速に達成できることから、請求項に記載の方法は時間及びコストに関して無駄がなく、そのためグラビア印刷シリンダー用の従来の金属めっきプロセスと競合することができる。ほとんどの実施形態では、版は銅及びクロムの層を含まない。ほとんどの実施形態では、アクリレート化ポリウレタンと、開始剤と、任意選択的な反応性希釈剤との硬化性組成物の硬化層はエラストマー系ではない。すなわち、硬化層は変形させる力が取り除かれた際にその元の形状に回復することができない。いくつかの実施形態では、多官能性ウレタンと、開始剤と、任意選択的な反応性希釈剤との硬化性組成物の硬化層は、加熱した際に溶融しない熱硬化性ポリマー層である。いくつかの実施形態では、硬化性組成物の硬化層は非導電性である。
【0104】
特定の硬化性組成物の層が硬化した後、硬化層は彫刻性と、印刷インク及び洗浄溶液中で使用される溶剤に対する耐性との間の望ましいバランスを得ることで、100,000回以上の印刷実行について高品質の印刷を達成することができる。本発明の組成物の硬化層は、適切に彫刻されることで望ましいセル密度でセル壁厚さを有するセルを形成することができ、それにもかかわらず溶剤に対して十分に耐性があり、その結果、膨潤が最小限にされる。硬化層の耐溶剤性が十分にない場合、溶剤系インクからの溶剤の吸収が硬化層を過剰に膨潤させる場合がある。過剰な膨潤は、印刷品質及び画像担持体の耐久性に有害である。いくつかの別の実施形態では、特定の硬化性組成物の層が硬化した後、硬化層は、彫刻性と溶剤に対する耐性との間の望ましいバランスだけでなく、耐機械摩耗性及び耐スクラッチ性も得ることで、300,000回以上のより長期にわたる印刷実行の間、高品質の印刷を維持することができる。硬化層は、彫刻された際に明確な印刷セル構造を生じさせるレベルの硬さ、更にはドクターブレード、印刷基材、及びインク中に存在し得る研磨性の粒子との接触に起因する印刷時の摩耗及び引っ掻きに耐えるレベルの硬さを示す。印刷版のいくつかの実施形態では、本発明による硬化ポリマー層は、約40MPa超の硬さを有する。いくつかの別の実施形態では、硬化ポリマー層は約30Mpa以上の硬さを有する。別の実施形態では、硬化ポリマー層は約65Mpa以上の硬さを有する。また別の実施形態では、硬化ポリマー層は約30〜約200Mpaの硬さを有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、望ましい範囲内の反応性基当量を有する硬化性組成物の硬化層は、望ましい最小壁厚さで適切なセル密度まで彫刻されることができ、溶剤による膨潤に対する耐性を有することができる。ほとんどの実施形態では、望ましい範囲内のアクリレート当量を有する硬化性組成物の硬化層は、隣接するセル間の得られる最小壁厚さが典型的には約25μm以下で、少なくとも最大200ライン毎インチ(78.7ライン毎cm)の解像度でセル密度を有するように彫刻されることができ、非常に強い溶剤にさえ重量増加が約15重量%の増加未満であるような膨潤に対する耐性を有し、100,000回超及び好ましくはそれを超える印刷実行にわたって印刷することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、硬化層は、印刷実行後にその全体又は一部を例えばベース支持体又はグラビア印刷シリンダーなどの支持体印刷構造から容易に取り除くことができ、その結果、印刷シリンダーは再利用することができ、新たな硬化性組成物をその上に塗布して新しい画像をその中に彫刻することができる。
【0107】
硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン及び開始剤、並びに任意選択的に1種以上の反応性希釈剤を含む。本発明中での使用に好適な多官能性ウレタンは、2つ以上の反応性基、すなわち重合性基を有する多官能性材料である。多官能性ウレタンは、2つ、3つ、4つ、又はそれを超える多官能性基を有していてもよい。多官能性ウレタンは、重合性官能基の反応性基として1分子当たり2つ以上2つ以上のエチレン性不飽和基を含むウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーである。硬化性組成物は1種以上の多官能性ウレタンを含んでもよい。本明細書において、用語「ウレタン成分」又は「多官能性ウレタン」は、存在する全ての多官能性ウレタンを指す。ほとんどの実施形態では、多官能性ウレタンはエラストマーではなく、多官能性ウレタンの硬化性組成物の層は硬化後にエラストマーではない。ほとんどの実施形態では、多官能性ウレタン組成物は熱可塑性ではなく、加熱した際に溶融しない熱硬化性ポリマー層を形成する。
【0108】
ほとんどの実施形態では、多官能性ウレタンは、反応性基又は重合性基として1分子当たり2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含み、そのため、これは多官能性アクリレート化ウレタンと呼ばれる場合がある。多官能性アクリレート化ウレタンは、2つ、3つ、4つ、又はそれを超える多官能性基を有していてもよい。多官能性アクリレート化ウレタンは、複数の(メタ)アクリレート官能基を含むウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーである。硬化性組成物は1種以上の多官能性アクリレート化ウレタンを含んでもよい。本明細書において、用語「アクリレート化ウレタン」又は「多官能性アクリレート化ウレタン」は、存在する全てのアクリレート化ウレタンを指す。ほとんどの実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタンはエラストマーではなく、多官能性アクリレート化ウレタンの硬化性組成物の層は硬化後にエラストマーではない。ほとんどの実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタン組成物は熱可塑性ではなく、加熱した際に溶融しない熱硬化性ポリマー層を硬化後に形成する。
【0109】
ある実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタンは、(メタ)アクリル酸と、ポリオールと、多官能性イソシアネートとの化学反応生成物であってもよい。ウレタンアクリレートは、(メタ)アクリロイル基を含むアルコールと、ジ−又はポリ−イソシアネートとから製造される。アクリレート化ウレタンの製造方法は基本的には公知であり、例えば英国特許第1,159,551号明細書;米国特許第3,782,961号明細書;又は米国特許第4,225,695号明細書に記載されている。別の実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタンは予備形成することができる。すなわち、未架橋のアクリレート化ウレタンモノマー又はオリゴマーは、既に形成されているウレタン結合を有するが(すなわち、アクリレート化ウレタンはウレタンを形成する反応性成分(すなわち(メタ)アクリル酸、ポリオール、及び多官能性イソシアネート)を含まない)、複数の(メタ)アクリレート官能基は含まない。
【0110】
(メタ)アクリロイル基を含むアルコールは、例えば2−ヒドロキシエチル、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル、又は2−、3−、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこのような化合物の任意の望ましい混合物などの二価アルコールとのアクリル酸又はメタクリル酸の、フリーのヒドロキシル基を含む両方のエステルとして理解される。また、(メタ)アクリロイル基を含む一価のアルコール、又はそのようなアルコールから実質的に構成される、n価アルコールと(メタ)アクリル酸及び任意選択的に追加のジカルボン酸とのエステル化によって得られる反応生成物も使用することができる。様々なアルコールの混合物もアルコールとして使用することができ、そのためnは統計的な意味での2より大きく4まで、好ましくは3の整数又は分数を表し、上述のアルコール1モル当たりn−1モルの(メタ)アクリル酸が特に好ましく使用される。(メタ)アクリロイル基を含むそのような一価アルコールとε−カプロラクトンとの反応生成物を使用することもできる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの反応生成物が優先される。
【0111】
適切なジ−又はポリ−イソシアネートは、(シクロ)脂肪族、芳香脂肪族、及び芳香族化合物であってもよい。(シクロ)脂肪族化合物の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、又はこれらのウレタン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン構造を有する誘導体、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
入手可能な多官能性イソシアネート及びポリオールの多くの異なる構造形態のため、調節可能な製品特性を有するカスタマイズされた生成物を得ることが可能である。例えば、増加したアクリレート含量及びそれに応じた高い架橋密度は、より多官能性のポリオールによって得ることができる。適切な多官能性(通常、二官能性又は三官能性)イソシアネートを選択することにより、例えば耐光性又は柔軟性などの特性が影響を受け得る。そのようなアクリレート化ウレタンは、通常、アルコール又はエステルなどの有機溶剤に可溶である。しかし、例えばエトキシル化ユニットなどの非常に親水性のポリオール成分を使用することにより、水に分散可能な生成物を製造することもできる。
【0113】
多官能性ウレタンは、ウレタンホモポリマーであってもよく、又はウレタンオリゴマーと1種以上の他のポリマー(ポリエステル、エポキシ、及びポリエーテルが挙げられるがこれらに限定されない)とのコポリマーであってもよい。ウレタン結合及び2つ以上の重合性官能基に加えて、多官能性ウレタンは、例えばポリエステル結合、ポリエーテル結合、及びエポキシ結合などの他の重合性結合を含んでもよい。ただし、ウレタン結合が他の重合性結合よりも多い比率であることを条件とし、そのため、それでも多官能性ウレタンとみなされる。多官能性ウレタンオリゴマーのウレタン結合は、オリゴマーの主鎖及び側鎖を形成することができる。別の実施形態では、多官能性ウレタンオリゴマーはオリゴマーの側鎖を形成するウレタン結合を含み、他の重合性結合(すなわち非ウレタン)がオリゴマーの主鎖を形成する。また別の実施形態では、多官能性ウレタンオリゴマーはオリゴマーの主鎖を形成するウレタン結合を含み、他の重合性結合(すなわち非ウレタン)がオリゴマーの側鎖を形成する。多官能性ウレタンオリゴマーの反応性基当量は、この場合、重合性官能基、すなわちウレタン及び他のポリマー上のエチレン性不飽和基の数で割ったホモポリマー又はコポリマーの分子量である。ウレタン結合の位置(すなわち主鎖及び/又は側鎖上)に関わらず、多官能性ウレタンオリゴマーは、多官能性ウレタンオリゴマー基準で少なくとも50%のウレタン結合と、50%以下の他の重合性(すなわち非ウレタン)結合とを含む。
【0114】
アクリレート化ウレタンは、ウレタンホモポリマーであってもよく、又はウレタンオリゴマーと1種以上の他のポリマー(ポリエステル、エポキシ、及びポリエーテルが挙げられるがこれらに限定されない)とのコポリマーであってもよい。いくつかの実施形態では、アクリレート化ウレタンは、ウレタン結合を含むモノマー又はオリゴマーと、ポリエステル結合を含むモノマー又はオリゴマーとのコポリマーであり、少なくとも2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する。ある実施形態では、アクリレート化ウレタンは1種以上のウレタンアクリレートと1種以上のポリエステルアクリレートとのコポリマーである。いくつかの実施形態では、アクリレート化ウレタンは、ウレタン結合を含むモノマー又はオリゴマーと、エポキシ結合を含むモノマー又はオリゴマーとのコポリマーであり、少なくとも2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する。ある実施形態では、アクリレート化ウレタンは1種以上のウレタンアクリレートと1種以上のエポキシアクリレートとのコポリマーである。いくつかの別の実施形態では、アクリレート化ウレタンは、ウレタン結合を含むモノマー又はオリゴマーと、エーテル結合を含むモノマー又はオリゴマーとのコポリマーであり、少なくとも2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を有する。ある実施形態では、アクリレート化ウレタンは1種以上のウレタンアクリレートと1種以上のエーテルアクリレートとのコポリマーである。コポリマーとしてのアクリレート化ウレタンのほとんどの実施形態では、ウレタン成分は少なくとも2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む。コポリマーとしてのアクリレート化ウレタンのいくつかの別の実施形態では、ウレタン成分は少なくとも2つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含み、別のポリマー成分も(メタ)アクリレート官能基を含む。そのため、ウレタン結合及び2つ以上の(メタ)アクリレート官能基に加えて、アクリレート化ウレタンは、例えばポリエステル結合、ポリエーテル結合、及びエポキシ結合などの他の重合性結合を含んでもよい。ただし、ウレタン結合が他の重合性結合よりも多い比率であることを条件とし、そのため、それでもアクリレート化ウレタンとみなされる。
【0115】
いくつかの実施形態では、アクリレート化ウレタンオリゴマーのウレタン結合は、オリゴマーの主鎖及び側鎖を形成する。いくつかの別の実施形態では、アクリレート化ウレタンオリゴマーはオリゴマーの側鎖を形成するウレタン結合を含み、他の重合性結合(すなわち非ウレタン)がオリゴマーの主鎖を形成する。また別の実施形態では、アクリレートウレタンオリゴマーはオリゴマーの主鎖を形成するウレタン結合を含み、他の重合性結合(すなわち非ウレタン)がオリゴマーの側鎖を形成する。ウレタンオリゴマーのアクリレート当量は、この場合、ウレタン及び他のポリマー上の(メタ)アクリレート官能基の数で割ったホモポリマー又はコポリマーの分子量である。
【0116】
ある実施形態では、ウレタン結合の位置(すなわち主鎖及び/又は側鎖上)に関わらず、アクリレート化ウレタンオリゴマーは、アクリレート化ウレタンオリゴマー基準で少なくとも50%のウレタン結合と、50%以下の他の重合性(すなわち非ウレタン)結合とを含む。別の実施形態では、アクリレート化ウレタンオリゴマーは、少なくとも60%のウレタン結合と、40%以下の他の重合性結合(すなわち非ウレタン)結合とを含む。また別の実施形態では、アクリレート化ウレタンオリゴマーは、少なくとも80%のウレタン結合と、20%以下の他の重合性結合(すなわち非ウレタン)結合とを含む。個々の構造単位の選択次第で、適切なアクリレート化ウレタンは様々な分子量を有することができ、これは、ある実施形態では200〜3000g/molの範囲であり、別の実施形態では300〜1000g/molの範囲であり、また別の実施形態では250〜5000g/molの範囲である。アクリレート化ウレタンの分子量は約200〜約5000g/molに限定されず、アクリレートウレタンがアクリレート当量の範囲内に含まれる限り、約5000g/mol超であってもよい。市販のウレタンアクリレート系は、溶剤フリーで又は反応性希釈剤との組み合わせで提供されている。
【0117】
本発明での使用に適切なアクリレート化ウレタンは市販されており、例えばBayer Material Science AG(Leverkusen,Germany)から商標Desmolux(登録商標)として、Cytec Industries Inc.(Woodland Park,New Jersey,USA)から商標Ebecryl(登録商標)として、Allnex(Smyrna,GA,USA)からEbecryl(登録商標)及びDesmolux(登録商標)という商標で、BASF Polyurethanes North America((Wyandotte,Michigan,USA))から商標Elastollanとして、及びEstron Chemical((Calvert City,KY,USA))からIsocrylというブランド名で販売され得る。
【0118】
硬化性組成物は、反応性基を有する少なくとも1種の多官能性ウレタンと、任意選択的に反応性基を有する1種以上の反応性希釈剤と、開始剤とを含み、組成物は約250〜約450の反応性基当量を有する。別の実施形態では、硬化性組成物は、2種以上の多官能性ウレタンと、任意選択的に1種以上の反応性希釈剤とを含み、組成物は約250〜約450の反応性基当量を有する。ブレンド物又は混合物である、2種以上の多官能性ウレタン(及び任意選択的に反応性希釈剤)を有する硬化性組成物は、耐溶剤性と彫刻性との望ましいバランスの実現を容易にする。
【0119】
ある実施形態では、硬化性組成物は、1種の多官能性アクリレート化ウレタンと、任意選択的に1種以上の反応性希釈剤と、開始剤とを含み、組成物は約250〜約450のアクリレート当量を有する。別の実施形態では、硬化性組成物は、2種以上の多官能性アクリレート化ウレタンと、任意選択的に1種以上の反応性希釈剤とを含み、組成物は約250〜約450のアクリレート当量を有する。
【0120】
いくつかの別の実施形態では、硬化性組成物は、耐溶剤性と彫刻性との望ましいバランスの実現を容易にするために、少なくとも1種の軟らかい多官能性アクリレート化ウレタンと少なくとも1種の硬いアクリレート化ウレタンとのブレンド物である2種以上の多官能性アクリレート化ウレタンを含み、これは約250〜約450の(アクリレート化ウレタンブレンド物及び任意選択的な反応性希釈剤の)アクリレート当量を有する。「軟らかい」又は柔軟性のある多官能性アクリレート化ウレタンは、2つ以上のアクリレート基を有するウレタンオリゴマーであり、オリゴマーの構造及び/又はオリゴマーの長いフレキシブルな鎖(例えば、約4〜約15個の炭素原子)の存在が分子上のアクリレート基を隔離する。いくつかの実施形態では、軟らかい多官能性アクリレート化ウレタンは2つのアクリレート基を有する。「硬い」多官能性アクリレート化ウレタンは、2つ以上のアクリレート基を有するが、分子上のアクリレート基が分子上で互いに近くに位置している及び/又はアクリレート基を隔てる鎖が剛直である、すなわち環状又は多環式の基によって特徴付けられるウレタンオリゴマーである。別の実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタンは、少なくとも1種の軟らかい多官能性アクリレート化ウレタンと少なくとも1種の硬い多官能性アクリレート化ウレタンとのブレンド物であり、アクリレート当量は少なくとも1種の軟らかいアクリレート化ウレタン及び少なくとも1種の硬いアクリレート化ウレタンのそれぞれの官能基の加重平均に基づき、これは約250〜約450(アクリレート化ウレタンブレンド物及び任意選択的な反応性希釈剤について)である。少なくとも1種の軟らかい多官能性アクリレート化ウレタンと少なくとも1種の硬い多官能性アクリレート化ウレタンとのブレンド物である硬化性組成物は、米国特許出願公開第2014/0037874A1号明細書に開示されている。軟らかいアクリレート化ウレタン対硬いアクリレート化ウレタンのブレンド物は、2つの次の値のいずれかの間の比率範囲とすることができる:10対90;15対85;20対80;25対75;30対70;35対65;40対60;45対55;50対50;55対45;60対40;65対35;70対30;75対25;80対20;85対15;90対10。
【0121】
別の実施形態では、硬化性組成物は、ブレンド物又は混合物である、2種以上の多官能性アクリレート化ウレタン(及び任意選択的に反応性希釈剤)を含み、耐溶剤性と彫刻性との望ましいバランスの実現を容易にする。2種以上の多官能性アクリレート化ウレタンの組み合わせは、多官能性アクリレート化ウレタンが上述したように軟らかいか硬いかに基づいて選択される必要はない。本発明での使用のための多官能性アクリレート化ウレタンの選択に影響を与え得る他の要因には、耐スクラッチ性、耐摩耗性、及び靭性が含まれ得る。硬化性組成物中の2種以上の多官能性アクリレート化ウレタンのそれぞれの割合は限定されない。
【0122】
本発明で用いられる多官能性ウレタンは、各ウレタンモノマー又はオリゴマー上で利用できる複数の官能基(2つ以上の重合性基)によりネットワーク中へ迅速に硬化する重合性化合物である。1つのみの反応性基が存在する場合、望ましくない材料が硬化することで直鎖のネットワーク化されていない分子が生じるであろう。2つ以上の官能基、好ましくは3つ以上の多い官能基を有する多官能性ウレタンは、望ましいポリマーネットワークの形成を促進するために本発明において好適である。彫刻性と耐溶剤性との望ましいバランスを得るために、少なくとも1種の多官能性ウレタン及び任意選択的に1種以上の反応性希釈剤を含む硬化性組成物は、約250〜約450の範囲の反応性基当量(RGEW)を有する。硬化性組成物中に2種以上の多官能性ウレタン及び任意選択的に1種以上の反応性希釈剤が存在する場合、組成物の反応性基当量は各ウレタン成分及び存在する場合には反応性希釈剤の反応性基当量の加重平均である。硬化性組成物が1種以上の多官能性ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤を含む場合、組成物の反応性基当量(RGEW)は各ウレタン成分及び反応性希釈剤の反応性基当量の加重平均であり、これは約250〜約450の範囲である。約250未満の反応性基当量、特にアクリレート当量を有する硬化組成物の層は、通常、不十分な彫刻性を示す。約450超の反応性基当量、特にアクリレート当量を有する硬化組成物の層は、硬化層による溶剤の取り込みが劣る。すなわち、硬化層は1種以上の溶剤を過剰に吸収して膨潤する。1種以上の多官能性ウレタンは、硬化性組成物の成分の総重量、すなわち重量パーセント固形分に対して30重量%以上の量で硬化性組成物中に存在し、これが優れた彫刻性及び印刷特性を付与することが見出された。
【0123】
本発明で用いられる多官能性アクリレート化ウレタンは、各ウレタンモノマー又はオリゴマー上で利用できる複数の官能基(2つ以上の(メタ)アクリレート基)によりネットワークへと迅速に硬化する重合性化合物である。1つのみの(メタ)アクリレート官能基が存在する場合、材料が硬化すると直鎖のネットワーク化されていない分子となり、これは望ましくない。2つ以上の官能基、好ましくは3つ以上の官能基を有する多官能性アクリレート化ウレタンは、望ましいポリマーネットワークの形成を促進するために本発明において好適である。彫刻性と耐溶剤性との特性の望ましいバランスを得るために、少なくとも1種の多官能性アクリレート化ウレタン及び任意選択的に1種以上の反応性希釈剤を含む硬化性組成物は、約250〜約450の範囲のアクリレート当量(EW)を有する。硬化性組成物中に2種以上の多官能性アクリレート化ウレタン及び任意選択的に1種以上の反応性希釈剤が存在する場合、組成物のアクリレート当量は各ウレタン成分及び存在する場合には反応性希釈剤のアクリレート当量の加重平均である。硬化性組成物が1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤を含む場合、組成物のアクリレート当量(EW)は各ウレタン成分及び反応性希釈剤のアクリレート当量の加重平均であり、これは約250〜約450の範囲である。
【0124】
約250未満のアクリレート当量を有する硬化組成物の層は、通常不十分な彫刻性を示す。本発明では、約250未満のアクリレートEWを有する組成物は比較的高い架橋密度を有する硬化層を形成し、その結果、硬化層の彫刻性が特に電気機械式彫刻機での彫刻によって悪影響を受けるであろう。高度に架橋した硬化層は、脆く、砕けたり欠けたりし易く、及び/又は隣接するセル間に細かい又は薄い壁を形成及び保持できない場合がある。高度に架橋した層は、シリンダー表面に対する接着性が不十分な場合もある。高品質のグラビア印刷のためには、印刷版中の彫刻されたセルは、例えばいくつかの実施形態では170〜200ライン毎インチで、別の実施形態では150〜230ライン毎インチでなど、互いに近接して形成される必要があり、また約10〜約80μm、より典型的には10〜50μmのセル深さを有する。いくつかの場合、概してセル壁が、すなわち望ましいセル密度及び深さで形成される隣接したグラビアセル間に形成されるランド領域又は畝の幅が砕けるか、壊れるか、又は均一に形成されない場合、硬化組成物の層は不十分な彫刻性を示す。いくつかの別の場合、隣接するセル間のランド領域の幅を増加させてセル壁が砕けたり壊れたりせずに均一になるように、彫刻されるセルの密度及び/又は深さが調節される場合、硬化組成物の層は不十分な彫刻性を示す。ほとんどの実施形態では、硬化層中に彫刻されたセルが25ミクロン以下の平均のセル壁厚さを有する場合、硬化組成物は許容可能な彫刻性を有する。
【0125】
約450超のアクリレート当量を有する硬化組成物の層は、硬化層による溶剤の取り込みが劣る。すなわち、硬化層は1種以上の溶剤を過剰に吸収して膨潤する。本発明では、約450超のアクリレートEWを有する組成物は、比較的低い程度の架橋を有し、その結果、1種以上の溶剤による吸収に対する層の耐性が低い硬化層、すなわち溶剤と接触すると過剰に膨潤する層を形成するであろう。グラビア印刷に使用されるインクは典型的には溶剤を含み、いくつかの場合、溶剤は非常に強い場合がある。硬化層の耐溶剤性が十分にない場合、溶剤系インクからの溶剤の吸収が硬化層を過剰に膨潤させる場合があり、これは印刷品質及び画像担持体の耐久性に有害である。メチルエチルケトンは印刷インク中で典型的に使用される溶剤であり、また、トルエン;例えばプロパノール、ブタノールなどのアルコール;及び酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル等の他の可能なインク溶剤と比べて比較的強い溶剤であることから、ほとんどの場合、硬化組成物の層の耐溶剤性を決定するための溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)が選択される。別の場合、硬化層の耐溶剤性は、一般的に使用されている1種以上のインク溶剤に基づいて評価されてもよい。
【0126】
ほとんどの実施形態では、約250〜約450のアクリレートEWを有する組成物の硬化層は、彫刻性と耐溶剤性との両方の許容可能なバランスを示す。別の実施形態では、約255〜約440のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との両方の許容可能なバランスを示す。いくつかの別の実施形態では、約270〜約430のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との両方の許容可能なバランスを示す。また別の実施形態では、約300〜約400のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との両方の許容可能なバランスを示す。また別の実施形態では、約250〜約350のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との両方の許容可能なバランスを示す。
【0127】
約25ミクロン以下の平均セル壁厚さを有する彫刻されたセルと、数日間、典型的には7日間溶剤に浸漬した後に15%以下の重量増加である層との両方が達成できることから、約250〜約450のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との許容可能なバランスを示す。いくつかの実施形態では、約25ミクロン以下の平均セル壁厚さを有する彫刻されたセルと、7日間溶剤に浸漬した後に12%以下の重量増加である層との両方が達成できることから、約250〜約450のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との許容可能なバランスを示す。いくつかの実施形態では、22ミクロン以下の平均セル壁厚さを有する彫刻されたセルと、7日間溶剤に浸漬した後に11%以下の重量増加である層との両方が達成できることから、約250〜約450のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との許容可能なバランスを示す。いくつかの実施形態では、約15〜19ミクロンの平均セル壁厚さを有する彫刻されたセルと、7日間溶剤に浸漬した後に8%以下の重量増加である層との両方が達成できることから、約250〜約450のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との許容可能なバランスを示す。また別の実施形態では、25〜27ミクロン以下の平均セル壁厚さを有する彫刻されたセルと、7日間溶剤に浸漬した後に3%以下の重量増加である層との両方が達成できることから、約250〜約450のアクリレートEWを有する硬化組成物の層は、彫刻性と耐溶剤性との許容可能なバランスを示す。
【0128】
1種以上の多官能性アクリレート化ウレタンは、硬化性組成物の成分の総重量、すなわち重量パーセント固形分に対して30重量%以上の量で硬化性組成物中に存在し、これが優れた彫刻性及び印刷特性を付与することが見出された。多官能性アクリレート化ウレタンは、次の値のうちの任意の2つの間の量であってもよく、任意選択的にこれらを含む量であってもよい:硬化性組成物中の固形成分の総重量(溶剤及び存在する場合には移動性物質は除く)基準で30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98、及び99重量部。いくつかの実施形態では、多官能性アクリレート化ウレタンは、硬化性組成物中の固形成分の総重量の少なくとも30重量%で存在する。多官能性アクリレート化ウレタン成分は、硬化性組成物中の固形成分の総重量基準で、ある実施形態では約35〜95重量%の量で存在し、別の実施形態では約40〜95重量%の量で存在し、また約45〜80重量%の量で存在する。
【0129】
硬化性組成物は、化学線によって活性化することができる開始剤(すなわち光開始剤)、又は熱によって活性化することができる開始剤(すなわち熱開始剤)を含む。
【0130】
硬化性組成物は、望ましい硬化応答を得るのに十分な量で、化学線に暴露されると重合を開始する1種以上の光開始剤及び/又は増感剤を含む。光開始剤は、任意の単一の化合物であっても化合物の組み合わせであってもよく、これは化学線に対して感受性があり、過剰な停止なしにアクリレート基の反応を開始するフリーラジカルを生成する。光開始剤は、化合物のうちの1種が照射によって活性化される分光増感剤又は増感剤によって生じる際にフリーラジカルを与える化合物の混合物であってもよい。通常、分光増感剤は、反応を開始する成分、すなわち光開始剤と異なる波長で放射を吸収する物質であり、吸収したエネルギーを光開始剤に移動させることができ、その結果、活性化させる放射の波長を調整することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、組成物の層を暴露させるための化学線源によって放射される波長の範囲内の1つ以上の波長に反応する1種の光開始剤を含む。いくつかの別の実施形態では、硬化性組成物は2種の光開始剤を含む。この実施形態では、1種の光開始剤が硬化性組成物の層を深さ方向に(すなわち層の厚さ方向に)硬化させ、もう1種の光開始剤が層の外表面を硬化させる。2種の光開始剤を有する硬化性組成物のほとんどの実施形態では、両方の光開始剤とも組成物の層に暴露するための化学線源によって放射される波長の範囲内の1つ以上の波長に対して反応する。2種の光開始剤を有する硬化性組成物の別の実施形態では、それぞれの光開始剤が、異なる化学線源によって放射される異なる波長範囲内の1つ以上の波長に対して反応してもよい。
【0132】
ある実施形態では、開始剤は、硬化性組成物中の固形成分の総重量基準で約0.1重量%〜約15重量%の量で存在する1種以上の光開始剤を含む。1種以上の光開始剤は、次の値のうちの任意の2つの間の量であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:固形分の重量パーセント基準で0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、3、5、7、9、11、13、及び15重量%。別の実施形態では、1種以上の光開始剤は、硬化性組成物中の固形成分の総重量基準で約1重量%〜約5重量%の量で存在する。ほとんどの実施形態では、光開始剤は可視光又は紫外光に対して感受性を有する。
【0133】
当業者に公知のように、多くの光開始剤が本明細書に記載の本発明に好適であり得る。これらとしては、キノン;フェナントラキノン;多核キノン;ベンゾフェノン;例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾイン−iso−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;例えばアリールケトン、オキシスルホニルケトン、スルホニルケトン、アミノケトンなどのケトン;プロピオフェノン;ヒドロキシアルキルフェニルアセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、及び2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン;αハロゲンアセトフェノン;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チオフェニルモルホリノケトン;チオキサントン;メチルフェニルグロキシレート(methylphenylgloxylate);エチルフェニルピロキシレート(ethylphenylpyloxylate);アシルホスフィンオキシド;例えばビス(2,4,6,トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドなどのアルコキシフェニル置換ホスフィンオキシド;過酸化物;ビイミダゾール;ベンゾイルオキシムエステル;ホウ酸塩;及びミヒラーケトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
ある実施形態では、2種の光開始剤が硬化性組成物中に含まれ、この中のアルコキシフェニルホスフィンオキシドが硬化性組成物の層を深さ方向に硬化させる光開始剤であり、ケトンが層の外表面を硬化させる他方の光開始剤である。市販の光開始剤製品の組み合わせも適切である。Darocure(登録商標)1173、Darocure(登録商標)MBF、Darocure(登録商標)TPO若しくはIrgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)4265、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)2022、又はIrgacure(登録商標)2100などの市販の光開始剤製品(これらは全て現在BASF SE(Wyandotte,Michigan,USA.)から入手可能である)も適切である。Darocure(登録商標)及びIrgacure(登録商標)はBASF SEの登録商標である。別の実施形態では、光開始剤は、例えばESSTECH,Inc.の一事業部であるPL Industries(Essington,PA,USA)から市販されている光開始剤製品など、あらかじめ調製された2種以上の光開始剤化合物の混合物(又はブレンド物)であってもよく、これにはPL−600、PL−610、PL−620、PL−625、PL−630、PL−450、PL−460、PL−TPO、PL−TPO−L、PL−ITX、PL−907、PL−100、PL−150、及びPL−369が含まれる。
【0135】
熱開始剤は、熱の存在下で多官能性ウレタン及び任意選択的な樹脂改質剤などの付加重合性化合物の硬化反応を開始及び進行させるラジカル熱重合開始剤である。熱開始剤としては、芳香族ケトン;オニウム塩化合物;有機過酸化物;チオ化合物;ヘキサアリールビイミダゾール化合物;ケトキシムエステル化合物;ホウ酸塩化合物;アジニウム化合物;アジド化合物;キノンジアアジド(diaazide)化合物;メタロセン化合物;活性エステル化合物;炭素ハロゲン結合を有する化合物;ホウ酸塩;及びアゾ系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、重合を促進するための1種又は2種以上の熱開始剤を含んでもよい。
【0136】
ある実施形態では、開始剤は、硬化性組成物中の固形成分の総重量基準で約0.1重量%〜約15重量%の量で存在する1種以上の熱開始剤を含む。1種以上の熱開始剤は、次の値のうちの任意の2つの間の量であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:固形分の重量パーセント基準で0.1、0.5、1、3、5、7、9、11、13、及び15重量%。別の実施形態では、1種以上の熱開始剤は、硬化性組成物中の固形成分の総重量基準で約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0137】
本発明の硬化性組成物は、印刷に適した層及び/又は硬化層を形成するために、ポリマーを主体とする組成物に望ましい特性を付与する目的で、任意選択的に1種以上の樹脂改質剤を含んでもよい。樹脂改質剤は、架橋密度を増加させるため及び/又は架橋したネットワークを安定化するために使用することができ、これにより向上した耐溶剤性、耐摩耗性、及び/又は組成物の硬化層の向上した彫刻性など、向上した最終用途での特性を付与することができる。任意選択的な樹脂改質剤は、硬化性組成物及び/又は組成物の硬化層の1つ又は2つ以上の特性に対処するために添加することができる。反応性希釈剤などのいくつかの樹脂改質剤は、硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量に影響を与える2つ以上の重合性基を含む。重合性基を1つのみ有するモノマーなどのいくつかの他の樹脂改質剤は、ほとんどの実施形態では硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量に影響を与えない。
【0138】
硬化性組成物は、樹脂改質剤の1種として、通常、組成物の塗工性を高めるための1種以上の反応性希釈剤(本明細書では「希釈剤成分」という)を任意選択的に含んでもよい。反応性希釈剤は、硬化組成物の望ましい特性を維持しつつ硬化性組成物の望ましい粘度を得るために使用することができる。反応性希釈剤は、ウレタン成分中に組み込まれていてもよく、又は組成物に別個に添加されてもよい。反応性希釈剤は、2つ以上の重合性基、すなわちエチレン性不飽和基を有する希釈剤であり、これ自体が最終的な硬化組成物の一部になる。硬化性組成物が多官能性ウレタンと共に1種以上の反応性希釈剤を含む場合、組成物の反応性基当量はウレタン成分の反応性基当量と1種以上の反応性希釈剤の反応性基当量との加重平均である。
【0139】
ほとんどの実施形態では、反応性希釈剤は、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する希釈剤であり、これ自体が最終的な硬化組成物の一部になる。本明細書に記載の方法で使用するための好適な反応性希釈剤は、低分子量二官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマー、並びに三官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又はオリゴマーである。通常、反応性希釈剤は、5000未満、特に約500未満の分子量を有する。反応性希釈剤の粘度は、典型的には室温で約300cp未満である。希釈剤の化学構造、及び架橋密度をどの程度迅速にどの程度まで増加させるかに応じて、選択される具体的な希釈剤は、彫刻性及び溶剤の取り込みなどの硬化したコーティングの特性に大きい影響を与え得る。硬化性組成物が多官能性アクリレート化ウレタンと共に1種以上の反応性希釈剤を含む場合、組成物のアクリレート当量は、ウレタン成分のアクリレート当量と1種以上の反応性希釈剤のアクリレート反応性基当量との加重平均である。
【0140】
希釈剤が2つ以上の重合性基を有し、硬化性組成物のコーティングをし易くできる粘度を室温で有している限り、反応性希釈剤としての使用に適した化合物は限定されない。反応性希釈剤の粘度は、ほとんどの実施形態では室温で約300cp未満であるが、いくつかの別の実施形態では室温でそれを超える、すなわち約300〜約1100cpであってもよい。通常、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物すなわちモノマーが反応性希釈剤であってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有するモノマーが反応性希釈剤であってもよい。反応性希釈剤の非限定的な例としては、例えばジエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニルエーテル;n−トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA);ヘキサメチレンジオールジアクリレート(HDDA);ブタンジオールジアクリレート(BDDA);ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA);トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT);エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(et−TMPT);及びトリメチルプロパントリメタクリレート(TMPTMA)が挙げられる。下に示すトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(TCDDA)は、二官能性反応性希釈剤の1つの例である。
【0142】
1つ以上の環状脂肪族基を含み、及び/又は1つ以上の剛直な鎖を含み、及び/又は比較的短い鎖を含む反応性希釈剤は、特に、硬化性組成物の硬化層の耐溶剤性及び彫刻性を向上させるためのアクリレート化ウレタンへの添加剤である。ガラス転移温度T
gを補助し、組成物の硬化層のコーティングの収縮を最小限にするために、多環式の反応性希釈剤が通常好ましい。いくつかのアクリレート化オリゴマーは、ヘキサメチレンジオールジアクリレート(HDDA)及びジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)などの反応性希釈剤での希釈もされる。
【0143】
好適な三官能性希釈剤の例は、下に示すエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(et−TMPT)(CAS登録番号28961−43−5)である。
【0145】
いくつかの市販の樹脂としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)が挙げられる。
【0146】
いくつかの実施形態では、希釈剤は、硬化性組成物をコーティング温度で約200〜約20000cpの範囲の粘度を有する溶液又は液体として塗布して支持基材上に層を形成できるような十分多い量で、且つなおも硬化性組成物の耐薬品性及び他の特性を損なわないような十分少ない量で使用される。ある実施形態では、希釈剤は存在しない。別の実施形態では、希釈剤は、硬化性組成物の成分の総重量基準で約0.2〜約40重量%の量で硬化性組成物中に存在する。反応性希釈剤は、次の値のうちの任意の2つの間であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:硬化性組成物の固形成分の総重量基準で0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、及び40重量%。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、固形成分の重量パーセント基準で1種以上のアクリレート化ウレタンよりも多い量で存在する1種以上の反応性希釈剤を含む。
【0147】
別のタイプの樹脂改質剤は、一官能性希釈剤である。一官能性希釈剤は、熱反応又は光反応に関与して硬化組成物の一部になるが、その一官能性の基のためにポリマーの架橋密度に寄与しない反応性基を有する非架橋型の反応性希釈剤である。硬化性組成物は、任意選択的に、1つの重合性基、すなわちエチレン性不飽和基を有し、硬化組成物の一部になる1種以上の一官能性希釈剤を含む。いくつかの実施形態では、一官能性希釈剤は、エチレン性不飽和基として1つの(メタ)アクリレート基を有し、硬化組成物の一部になる。一官能性希釈剤は、架橋密度に加算されず、そのため硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量には含まれない。一官能性希釈剤は、溶液としてのコーティング用の硬化性組成物の特性を修正するため、及び/又は組成物の硬化層の特性を修正するために添加することができる。通常、一官能性希釈剤は5000未満、特に約500未満の分子量を有する。一官能性希釈剤の粘度は、ほとんどの実施形態では室温で約300cp未満であるが、室温でそれを超える、すなわち約300〜約1100cpであってもよい。一官能性希釈剤の粘度は、典型的には室温で約300cp未満である。選択される一官能性希釈剤及び組み込まれる量に応じて、化合物の存在は硬化性組成物の塗工性を高めることができるが、組成物の硬化層の耐溶剤性及び/又は彫刻性にも影響を与え得る。ある実施形態では、一官能性希釈剤は存在しない。別の実施形態では、一官能性希釈剤は、硬化性組成物の成分の総重量基準で約0.2〜約20重量%の量で硬化性組成物中に存在する。一官能性希釈剤は、次の値のうちの任意の2つの間であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:硬化性組成物の固形成分の総重量基準で0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、8、10、11、13、15、18、及び20重量%。
【0148】
フレキシブルな鎖、すなわち5個以上の炭素原子の鎖を有する一官能性希釈剤は、コーティング組成物の柔軟性を向上させることができるものの、溶剤の取り込みも増加する、すなわち低い耐溶剤性を有する傾向にある。そのため、硬化性組成物は、いくつかの実施形態では親溶剤性鎖を約5重量%以下で、いくつかの別の実施形態では約2重量%以下で有する1種以上の一官能性希釈剤を含むことができる。親溶剤性の一官能性希釈剤の例としては、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ヘキシルなどの5個以上の炭素を有するアルキルモノアクリレート、及びポリエーテルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。また別の一官能性希釈剤は、組成物の硬化層の耐溶剤性にそのような悪影響を与えない。1つ以上の環状脂肪族基を含む;及び/又は1つ以上の剛直な鎖を含み、及び/又は比較的短い鎖を含む一官能性希釈剤は、硬化性組成物の硬化層の溶剤更新にあまり影響を与えない一方、組成物の塗工性を高めることができる。そのため、硬化性組成物は、いくつかの実施形態では環状脂肪族基及び/又は剛直な側鎖を約15重量%以下で、いくつかの別の実施形態では約8重量%以下で、また別の実施形態では約5重量%以下で有する1種以上の一官能性希釈剤を含むことができる。環状脂肪族基及び/又は剛直な側鎖を有する好適な一官能性希釈剤の例としては、アクリル酸イソボルニル(「IBOA」)及びアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル(BASF Aktiengesellschaft,Ludwigshafen,GermanyからLaromer(登録商標)TBCHとして入手可能)が挙げられるが、これに限定されない。
【0149】
別の任意選択的な樹脂改質剤は、1種以上の光重合性反応基、すなわちエチレン性不飽和基を有し、最終的な硬化組成物の一部となるが、十分に高い粘度を有しているため、モノマーが硬化性組成物用の希釈剤として適切に機能しないと考えられるモノマーである。モノマー化合物の粘度は、いくつかの実施形態では室温で約300cp超であるが、別の実施形態では室温で約1100cp超であってもよい。1つ以上の反応性基と約300〜約1100cpの粘度とを有するいくつかの化合物は、硬化性組成物用の希釈剤(反応性又は一官能性)とみなされる場合があり、又はモノマーとみなされる場合がある。エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(et−TMPT)などのいくつかの樹脂改質剤は、幅広い分子量を有することができ、そのため幅広い粘度が可能である。また、硬化性組成物用の希釈剤(反応性又は一官能性)として機能させるための、又は最終的な硬化組成物の一部としての他の機能を付与するためのいくつかのモノマーの適合性は、基材への塗布のために望まれる硬化性組成物の粘度及び硬化性組成物を基材に塗布する方法にある程度依存し得る。樹脂改質希釈剤と同様に、2つ以上の反応性基を有する多官能性モノマーは硬化性組成物の反応性基当量の加重平均に含めるべきであり、1つの反応性基を有する一官能性モノマーは硬化性組成物の反応性基当量の加重平均に含めるべきではない。しかし、多官能性モノマーが比較的少量(例えば、約10重量%未満)で存在する場合、組成物が反応性基当量の範囲の端の近くにない限り、硬化性組成物の反応性基当量はあまり影響を受けないであろう。
【0150】
ほとんどの実施形態では、モノマーは1つ以上の(メタ)アクリレート基を有するアクリレート化モノマーである。次の樹脂改質化合物が、約1100cp超の粘度を有する範囲では、これらはモノマーとみなされ得、又は約300cp未満の粘度を有する範囲では、これらは希釈剤とみなされ得、又は約300〜約1100cpの粘度を有する範囲では、これらは硬化性組成物の粘度に対するこれらの影響に応じてモノマー又は希釈剤になり得る。次の樹脂改質剤は硬化性組成物中での使用に好適であり、アルコール及びポリオールのアクリル酸モノエステル;アルコール及びポリオールのアクリル酸ポリエステル;アルコール及びポリオールのメタクリル酸モノエステル;並びにアルコール及びポリオールのメタクリル酸ポリエステルが挙げられ、適切なアルコール及びポリオールとしては、アルカノール、アルキレングリコール、ペンタエリスリトール、及びポリアクリロールオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、モノマーは存在しない。別の実施形態では、モノマーは、硬化性組成物の成分の総重量基準で約0.2〜約20重量%の量で硬化性組成物中に存在する。モノマーは、次の値のうちの任意の2つの間であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:硬化性組成物の固形成分の総重量基準で0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、及び20重量%。
【0151】
硬化性組成物中で任意選択的である別の樹脂改質剤は、架橋密度、耐溶剤性、彫刻性、耐摩耗性、及びフィルム収縮の低減などの樹脂の特性を微調整するために含めることができる補助的な樹脂改質化合物である。補助的な樹脂改質化合物は、通常、非ウレタン化合物であり、エポキシ(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;ポリエステル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;並びにポリエーテル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。イソシアネートのアクリレート誘導体及びメタクリレート誘導体も好適である。ある実施形態では、補助的な樹脂改質化合物は存在しない。別の実施形態では、補助的な樹脂改質化合物は、硬化性組成物の成分の総重量基準で約0.2〜約35重量%の量で硬化性組成物中に存在する。補助的な樹脂改質化合物は、次の値のうちの任意の2つの間であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:硬化性組成物の固形成分の総重量基準で0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、22、25、28、30、32、及び35重量%。補助的な樹脂改質化合物が2つ以上の重合性基を含むモノマー又はオリゴマーである場合、架橋密度に対する多官能性の補助的な改質の影響は、硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量の加重平均によって含められる。しかし、多官能性の補助的な改質化合物が比較的少量(例えば、約10重量%未満)で存在する場合、組成物がアクリレート当量の範囲の端の近くにない限り、硬化性組成物のアクリレート当量(又は反応性基当量)はあまり影響を受けないであろう。補助的な樹脂改質化合物が重合性基を1つのみ有するモノマー又はオリゴマーである場合、これらの存在は硬化性組成物のアクリレート当量(又は反応性基当量)に含められない。
【0152】
いくつかの実施形態では、1種以上の又は組み合わせの樹脂改質剤は、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、及び補助的な樹脂改質化合物から選択され、硬化性組成物の成分の総重量基準で約0.2〜約40重量%の合計量で硬化性組成物中に存在する。樹脂改質剤の合計量は、次の値のうちの任意の2つの間であってもよく、任意選択的にこれらを含んでもよい:硬化性組成物の固形成分の総重量基準で0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、22、25、28、30、32、35、36、37、38、39、及び40重量%。
【0153】
硬化性組成物の粘度を下げることで、望ましい低粘度を得るために少ない反応性希釈剤のみが必要とされるように、アセトン又は酢酸n−ブチルなどの少量の溶剤を使用することができる。ある実施形態では、溶剤は硬化性組成物の10重量%未満で存在していてもよい。この方式で溶剤が使用される場合、コーティング時、又はコーティング後且つ硬化前に硬化性組成物が加熱されて溶剤が取り除かれる。別の実施形態では、硬化性組成物は溶剤フリーの組成物(これは「固形分100%」又は「コーティング固形分100%」の組成物と呼ばれる場合がある)である。
【0154】
任意選択的に、硬化性組成物は微粒子状充填剤を含んでもよい。硬化性組成物は、最大約55重量%の微粒子状充填剤を含んでもよく、これはナノ粒子、ミクロ粒子、又はナノ粒子及びミクロ粒子の組み合わせであってもよい。約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する多官能性ウレタンの本発明の組成物は、耐溶剤性と、グラビア印刷シリンダーとしての最終用途に適切な彫刻性のための硬さとの望ましいバランスを備えている。微粒子は、組成物の硬化層を有する印刷版の耐摩耗性及び耐スクラッチ性を付与又は向上させるために添加することができる。微粒子は、組成物の硬化層の彫刻性、特に電気機械式彫刻による彫刻性も向上させ得る。微粒子状充填剤は、修飾されていなくても修飾されていてもよい。微粒子状充填剤は、充填剤と、硬化性組成物の多官能性ウレタンなどの1種以上の成分との間の相互作用を向上させるために、例えば有機オニウム種などでコーティング又は表面処理されることにより修飾されていてもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、任意選択的な充填剤はナノ粒子、すなわち少なくとも1方向の寸法が約1000nm未満である粒子である。ある実施形態では、少なくとも1方向の寸法の値は、次の値のうちの任意の2つの間であり、任意選択的にこれらを含む:1、10、50、75、100、200、300、400、500、600、650、700、750、800、850、900、950、及び999nm。ある実施形態では、ナノ粒子充填剤は約1〜約500nmの少なくとも1方向の寸法、いくつかの実施形態では約1〜約100nmの少なくとも1方向の寸法、いくつかの別の実施形態では約10〜約999nmの少なくとも1方向の寸法を有する。ナノ粒子は硬さ及び剛性を向上させることができ、これにより組成物の硬化層の増加した耐摩耗性及び向上した彫刻性がもたらされ得る。
【0156】
別の実施形態では、任意選択的な充填剤は、約1000nm(1ミクロン)以上、通常、約1μm〜約5μmの少なくとも1方向の寸法を有するミクロ粒子である。ミクロ粒子は、硬化組成物の層に向上した耐摩耗特性及び耐スクラッチ性を付与するために、固体潤滑剤として硬化性組成物に添加することができる。ミクロ粒子は、電気機械式スタイラスの摩耗も減らすことができ、また硬化組成物の層の彫刻性も向上させることができる。
【0157】
ナノ粒子及び/又はミクロ粒子であってもよい微粒子状充填剤として好適な材料の例としては、酸化アルミニウム(例えば、アルミナ);シリカ;酸化亜鉛;酸化ジルコニウム;酸化チタン;酸化マグネシウム;酸化タングステン;炭化タングステン;炭化ケイ素;炭化チタン;窒化ホウ素;二硫化モリブデン;例えばラポナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、サポナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヴォルホンスコイト(volhonskoite)、ソーコナイト、マガダイト、メドモナイト、ケニヤアイト、バーミキュライト、蛇紋石、アタパルジャイト、クルケアイト、アレタイト、セピオライト、アロフェン、イモゴライトなどの粘土;ポリ(テトラフルオロエチレン)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。微粒子状充填剤の更なる例は、顔料(硬化組成物の層のレーザー彫刻性を高めることができる)としてもみなされてもよく、グラファイト;カーボンナノチューブ;カーボンブラック;炭素内包シリカ粒子;炭素フィラメント;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0158】
追加的な例としては、フェニル官能化シランで修飾されたアルミナ粒子、又はエポキシ官能化シランで修飾されたアルミナ粒子、又はビニル官能化シランで修飾されたアルミナ粒子が挙げられる。他の追加的な例としては、フェニル官能化シランで修飾されたシリカ粒子、又はエポキシ官能化シランで修飾されたシリカ粒子、又はビニル官能化シランで修飾されたシリカ粒子;及びフェニル官能化シランを有するジルコニア粒子、又はエポキシ官能化シランで修飾されたジルコニア粒子、又はビニル官能化シランで修飾されたジルコニア粒子が挙げられる。
【0159】
ナノ粒子、ミクロ粒子、又はナノ粒子及びミクロ粒子の組み合わせから選択される微粒子状充填剤は、次の値のうちの任意の2つの間の量及び任意選択的にこれらを含む量で存在していてもよい:硬化性組成物の固形成分の合計の重量基準で0、0.1、0.2、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、及び55重量%。ナノ粒子は、硬化性組成物中の固形成分の合計の重量基準で、ある実施形態では約0.1〜約55重量%の量で、別の実施形態では約1〜約40重量%の量で、いくつかの別の実施形態では約10〜約45重量%の量で存在していてもよい。ミクロ粒子は、硬化性組成物中の固形成分の合計の重量基準で、ある実施形態では約0.1〜約55重量%の量で、いくつかの実施形態では約4〜約40重量%の量で、いくつかの別の実施形態では約1〜約35重量%の量で存在していてもよい。
【0160】
硬化性組成物中の固形成分の合計の重量基準で、いくつかの別の実施形態では、ナノ粒子は約0.1〜約50重量%の量で存在していてもよく、ミクロ粒子は約0.1〜約5重量%存在していてもよく;また別の実施形態では、ナノ粒子は約0.5〜約40重量%存在していてもよく、ミクロ粒子は約0.5〜約15重量%存在していてもよく;またいくつかの別の実施形態では、ナノ粒子は約1〜約35重量%の量で存在していてもよく、ミクロ粒子は約1〜約20重量%存在していてもよい。
【0161】
硬化性組成物は、任意選択的に、組成物及び/又は組成物の硬化層の1つ以上の特性を付与又は向上又は強化させるための添加剤を含んでもよい。任意選択的な添加剤としては、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、分散剤、染料、並びに顔料が挙げられる。添加剤の列挙は完全に網羅することを意図しておらず、他の添加剤を硬化性組成物に含めることもできるであろう。別々の添加剤として個別に特定されているが、1種以上の上述の添加剤は、同じ又は類似の機能を果たすことができるか、又は硬化性組成物及び/又は組成物の硬化層に実質的に同じ1つ又は複数の特性を付与することができると見込まれる。それぞれの添加剤は、硬化性組成物及び/又は組成物の硬化層に2つ以上の特性又は機能を付与することができる。
【0162】
いくつかの添加剤は、硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量に影響を与え得る1つ以上の重合性基又は別の基を含み得る。2つ以上のエチレン性不飽和基などの重合性基を有するが、約5%未満、特に3%未満の量である添加剤は、硬化性組成物の反応性基当量又はアクリレート当量をあまり変化させないであろうと予想される。そのため、添加剤が存在するほとんどの実施形態では、添加剤は、望ましい範囲外の組成物の当量にあまり影響を与えることなしに、望ましい強化された特性を得るのに十分な最小限のレベルで組成物に含められる必要がある。いくつかの場合、反応性成分、すなわち多官能性ウレタン及び任意選択的な反応性希釈剤のアクリレート当量が反応性基当量又はアクリレート当量についての範囲の端に近い場合、添加剤は当量に影響を与え得る。
【0163】
1種以上の顔料及び1種以上の染料を除き、各任意選択的な添加剤は、硬化性組成物中の固形成分の合計を基準として、いくつかの実施形態10重量%以下;別の実施形態では5重量%以下;いくつかの別の実施形態では2重量%以下の比較的少量で硬化性組成物中に含めることができる。独立して、いずれか1つの任意選択的な添加剤は、次の値のうちの任意の2つの間の量及び任意選択的にこれらを含む量で存在していてもよい:硬化性組成物中の固形成分の合計の重量基準で0、0.01、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、0.8、1、1.5、2、3、4、5、5.5、6、7、8、9、及び10重量%。ほとんどの実施形態では、硬化性組成物中に存在する添加剤を合わせた合計は10重量%未満である。
【0164】
接着促進剤は、硬化性組成物をグラビア印刷シリンダーの鋼製ロールなどの印刷シリンダーの金属表面に、これらの間のプライマーの必要なしで接着させることを可能にする化合物である。これにより、プライマーのないコーティングが製造される。いくつかの実施形態では、接着促進剤は1つ以上のアニオン性基を含むポリマーである。リン酸エステルは接着促進剤の1つの例である。使用可能な市販の接着促進剤は、その製造業者によって三官能性酸のエステルであると説明されているSartomer CD9054であり、Sartomer USA,LLC,(Exton,Pennsylvania,USA)から入手可能である。使用に好適な接着促進剤の他の非限定的な例としては、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、及びメルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。存在する場合、接着促進剤は、硬化性組成物中の固形成分の合計の約0.1〜約5重量%で硬化性組成物中に含まれる。接着促進剤上のアニオン性基の存在が硬化性組成物のアクリレート当量に影響を与え得ることから、アクリレート当量が硬化性組成物についての約250〜約450g/当量である望ましい範囲外に調整されないように、接着促進剤は低いレベルで含められる必要がある。
【0165】
フロー及びレベリング剤並びに/又は湿潤剤(界面活性剤と呼ばれることもある)は、コーティングの均一性及び/又は硬化性組成物の層の外観を向上させるために含めることができる。フロー及びレベリング剤の非限定的な例としては、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンが挙げられる。ALTANA AG(Germany)から入手可能であり、BYK−USA(Wallingford,Connecticut,USA)により製造されている、BYK(登録商標)301、BYK(登録商標)306、BYK(登録商標)331、BYK(登録商標)333、BYK(登録商標)325、BYK(登録商標)358N、BYK(登録商標)352、又はBYK(登録商標)388などの市販のフロー及びレベリング剤が組成物中での使用に好適である。湿潤剤又は界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であってもよい。
【0166】
スリップ剤は、組成物の硬化層の耐摩耗性及び/又は耐スクラッチ性を強化するために含めることができる。スリップ剤の非限定的な例としては、アクリレート化シリコーンポリエーテルコポリマーが挙げられ、これはMomentive Perfomance Materials Inc.(Waterford,NY,USA)からブランド名CoatoSilとして市販されている。他のスリップ剤としては、フッ素化化合物及び含フッ素化合物が挙げられ、これは例えば米国特許出願公開第2014/0135524号明細書、米国特許出願公開第2014/0135535号明細書、米国特許出願公開第2014/0135518号明細書に開示されているパーフルオロ変性化合物などのモノマー又はポリマーであってもよい。
【0167】
可塑剤及び柔軟剤は、組成物のフィルム形成特性を調節するため、組成物の層に柔軟性を付与するため、及び/又は硬化の際の層の収縮を低減するために添加することができる。可塑剤は液体であっても固体であってもよく、また通常、低い蒸気圧の不活性な有機物質である。可塑剤の例はジブチルフタレートである。
【0168】
分散剤は、充填剤及び/又は顔料を分散させるため並びに粒子の集合及び凝集を防ぐために添加することができる。使用に好適な分散剤は、分散剤が充填剤及び/又は顔料を組成物中に均一に分布させることができ、適切な層が製造される程度に十分に硬化性組成物中の成分と適合性がある限り制限されない。多種多様の分散剤が市販されている。
【0169】
安定化剤は、早過ぎる重合を抑制して硬化性組成物のシェルライフを向上させ、及び/又はポットライフを向上させるために含めることができる。酸素の存在下で機能する安定化剤もあれば、酸素なしで機能するものもある。好適な重合防止剤としては、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤、リン型酸化防止剤、ヒドロキノンモノメチルエーテル、アルキル−及びアリール置換ヒドロキノン及びキノン、t−ブチル−カテコール又はピロガロール、ナフチルアミン、β−ナフトール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−トルキノン、及びクロラニルが挙げられるが、これらに限定されない。米国特許第4,168,982号明細書に開示されているニトロソ組成物も熱重合防止剤に有用である。使用に好適な市販の安定化剤は、リグニン安定化添加剤であるLignostab(登録商標)安定化剤(BASF)であり、これは酸素なしで機能する。重合防止剤を過剰に添加すると硬化効率が低下すると考えられることから、その量は、好ましくは硬化性層の固形分の総重量に対して約2重量%未満である。
【0170】
レーザー彫刻性を高めるために、硬化性組成物に1種以上の顔料及び/又は染料を添加することができる。顔料は、レーザー彫刻のための硬化性組成物中に約0.5〜約55重量%、ある実施形態では約1〜約30重量%の量で存在していてもよい。そのような顔料の例としては、黒色含ケイ素顔料(炭素内包シリカ粒子を含む)、及びカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されない。カーボンブラック及び炭素内包シリカ粒子などの特定の顔料は、充填剤としても機能することができる。
【0171】
本発明の具体的な実施形態としては次のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
ほとんどの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも、反応性基当量が約250〜約450g/当量である多官能性ウレタン成分と、開始剤とを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも、反応性基当量が約250〜約450g/当量である多官能性ウレタン成分と、開始剤とを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、開始剤は光開始剤であり、いくつかの別の実施形態では、開始剤は熱開始剤である。
【0175】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、反応性基当量が約255〜約440g/当量である1種以上の多官能性ウレタン成分と開始剤とを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分と、光開始剤と、1種以上の反応性希釈剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、存在するウレタン成分及び1種以上の反応性希釈剤の合計基準で約250〜約450g/当量の反応性基当量の加重平均を有する。
【0177】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、2つ以上の(メタ)アクリレート化反応性基を有するアクリレート化ウレタン成分を多官能性ウレタン成分として含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも、約250〜約450g/当量のアクリレートEWを有するアクリレート化ウレタン成分と、光開始剤とを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、2種以上のアクリレート化ウレタン成分であり、アクリレート当量が2種以上のアクリレート化ウレタン成分のアクリレートEWの加重平均であり、これは、約250〜約450g/当量である成分と、光開始剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1種のアクリレート化ウレタン成分と、光開始剤と、1種以上の反応性希釈剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、アクリレート当量は存在するアクリレート化ウレタン及び反応性希釈剤のアクリレート当量の加重平均であり、これは約250〜約450g/当量である。
【0181】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1種の軟らかいアクリレート化ウレタン成分及び少なくとも1種の硬いアクリレート化ウレタン成分を含む少なくとも1種のアクリレート化ウレタンと、光開始剤と、1種以上の反応性希釈剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、アクリレート当量は存在する少なくとも1種のアクリレート化ウレタン及び反応性希釈剤のアクリレートEWの加重平均であり、これは約250〜約450g/当量である。
【0182】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも2つの反応性基官能基を有し、ホモポリマーであるか、又はウレタンオリゴマーと1種以上の他のポリマー(ポリエステル、エポキシ、及びポリエーテルから選択される)とのコポリマーである少なくとも1種の多官能性ウレタン;少なくとも1種の開始剤;並びに任意選択的に少なくとも1種の反応性希釈剤成分を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0183】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;開始剤;及び1種以上の樹脂改質剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、組成物は少なくとも1種のウレタン成分及び存在する場合には1種以上の反応性希釈剤の合計基準で約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する。
【0184】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、任意選択的に、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、補助的な樹脂改質剤、又はこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の樹脂改質剤を含んでもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、任意選択的に、エポキシ(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;ポリエステル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;ポリエーテル(メタ)アクリレートのモノマー及びオリゴマー;イソシアネートのアクリレート誘導体及びメタクリレート誘導体;及びこれらの組み合わせから選択される補助的な樹脂改質化合物を含んでもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分と、少なくとも1種の光開始剤と、反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、及び補助的な樹脂改質剤から独立に選択される1種以上の樹脂改質剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、組成物は少なくとも1種のウレタン成分及び存在する場合には1種以上の反応性希釈剤を基準として約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する。
【0187】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;開始剤;1種以上の樹脂改質剤;及び微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、組成物は約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する。
【0188】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分と、少なくとも1種の開始剤と、少なくとも1種の反応性希釈剤成分と、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤とを含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0189】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;少なくとも1種の光開始剤;少なくとも1種の反応性希釈剤成分;及び微粒子状充填剤としてのナノ粒子を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0190】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;少なくとも1種の光開始剤;少なくとも1種の反応性希釈剤成分;及び微粒子状充填剤としてのミクロ粒子を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0191】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、2種以上のアクリレート化ウレタン成分;1種以上の光開始剤;1種以上の反応性希釈剤成分;並びにナノ粒子、ミクロ粒子、並びにナノ粒子及びミクロ粒子の組み合わせから選択される微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、接着促進剤、スリップ剤、フロー及びレベリング剤、湿潤剤、可塑剤、柔軟剤、安定化剤、酸化防止剤、分散剤、染料、顔料、並びにこれらの組み合わせから独立に選択される1種以上の添加剤を任意選択的に含んでもよい。
【0193】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;少なくとも1種の開始剤;1種以上の樹脂改質剤;微粒子状充填剤;及び任意選択的な1種以上の添加剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、組成物は約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する。
【0194】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の少なくとも1種の多官能性ウレタン成分;約0.1〜約15重量%の少なくとも1種の開始剤;0〜約40重量%の樹脂改質剤;0〜約55重量%の微粒子状充填剤;及び0〜約10重量%の添加剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、組成物は約250〜約450g/当量の反応性基当量を有する。
【0195】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の少なくとも1種の多官能性ウレタン;約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の開始剤;約0.2〜約40重量%の1種以上の樹脂改質剤;約0.1〜約40重量%の微粒子状充填剤;及び任意選択的に合計約10重量%の1種以上の添加剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0196】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の1種以上の多官能性ウレタン;約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の光開始剤;約0.2〜約40重量%の1種以上の樹脂改質剤;約1〜約35重量%のナノ粒子;及び約1〜約20重量%のミクロ粒子を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0197】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の1種以上の多官能性ウレタン;約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の光開始剤;反応性希釈剤、一官能性希釈剤、モノマー、及び補助的な樹脂改質化合物から選択される合計で約0.2〜約40重量%の1種以上の樹脂改質剤;約1〜約50重量%の微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0198】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の1種以上の多官能性ウレタン;約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の光開始剤;約0.2〜約40重量%の反応性希釈剤、約0.2〜約20重量%の一官能性希釈剤、約0.2〜約20重量%のモノマー、及び約0.2〜約35重量%の補助的な樹脂改質化合物から選択される合計で40重量%以下の1種以上の樹脂改質剤;並びに約0〜約50重量%の微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0199】
いくつかの実施形態では、樹脂改質剤は、1つの反応性基を有し、5000未満の分子量と室温で約300〜約1100cpの粘度とを有する一官能性希釈剤であり、硬化性組成物は、0〜約5重量%の、5個以上の炭素原子の1つ以上のフレキシブルな鎖を有する一官能性希釈剤;0〜約15重量%の、環状脂肪族基を有する一官能性希釈剤;0〜約15重量%の、4個未満の炭素原子の鎖を有する一官能性希釈剤;又は0〜約15重量%の、炭素原子の1つ以上の剛直な鎖を有する一官能性希釈剤から選択される一官能性希釈剤を含んでもよく、存在する一官能性希釈剤の合計は硬化性組成物の固形成分の20重量%以下である。
【0200】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、約30〜約95重量%の1種以上の多官能性ウレタン;約0.5〜約10重量%の少なくとも1種の光開始剤;約0.2〜約40重量%の1種以上の反応性希釈剤;及び約0.1〜約55重量%の微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよい。
【0201】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、a)合計約30〜約95重量%の、少なくとも2つのアクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン;b)約0.1〜10重量%の1種以上の光開始剤;及びc)合計約5〜35重量%の1種以上の反応性希釈剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、硬化性組成物は、アクリレート化ウレタン及び反応性希釈剤のアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量を有し、これは約250〜約450g/当量である。
【0202】
いくつかの実施形態、硬化性組成物は、a)合計約30〜約70重量%の、少なくとも2つのアクリレート基を有する1種以上の多官能性アクリレート化ウレタン;b)合計約0.1〜10重量%の2種の光開始剤;c)合計約0.2〜35重量%の1種以上の反応性希釈剤;並びにd)合計約1〜50重量%の、ナノ粒子、ミクロ粒子、及びこれらの組み合わせから選択される微粒子状充填剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、硬化性組成物は、アクリレート化ウレタン及び反応性希釈剤のアクリレート当量の加重平均であるアクリレート当量を有し、これは約250〜約450g/当量である。
【0203】
いくつかの実施形態では、1種以上の反応性希釈剤は、アクリル酸イソボルニル、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0204】
いくつかの実施形態では、微粒子状充填剤は、アルミナ、シリカ、及びジルコニア、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0205】
いくつかの実施形態では、微粒子状充填剤は、修飾されていないアルミナ、修飾されているアルミナ、修飾されていないシリカ、修飾されているシリカ、修飾されていないジルコニア、修飾されているジルコニア、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0206】
また別の実施形態では、印刷版のために使用される硬化性組成物は、組成物の存在する固形成分の合計を基準として、a)合計約35〜75重量%の1種以上のアクリレート化ウレタン;b)合計約1〜10重量%の1種以上の光開始剤;c)合計約15〜35重量%の1種以上の反応性希釈剤;d)約10〜50重量%の微粒子状充填剤;e)0〜15重量%の1種以上の一官能性希釈剤;並びに任意選択的に、f)0〜5重量%の接着促進剤と;g)0〜5重量%のフロー剤と;h)0〜2重量%の安定化剤と;i)0〜3重量%のスリップ剤とから選択される1種以上の添加剤を含んでもよく、又はこれらから本質的に構成されていてもよく、硬化性組成物は約250〜約450g/当量のアクリレート当量を有し、これは存在する1種以上のアクリレート化ウレタン及び1種以上の反応性希釈剤の加重平均アクリレート当量であり、任意選択的な添加剤成分f)、g)、h)、及びi)の合計の重量パーセントは10重量%以下である。
【0207】
任意の上述の実施形態は、互いに矛盾しない限り、1つ以上の別の実施形態と組み合わせることができる。当業者は、いずれの実施形態が互いに矛盾するか理解でき、その結果、本出願により予期される実施形態の組み合わせを容易に決定できるであろう。
【0208】
上述の実施形態、特定の実施形態、特定の実施例、及び実施形態の組み合わせによって示されるいずれの硬化性ポリマーを主体とする組成物も、印刷版前駆体を製造する方法及び前駆体から印刷版を製造する方法で使用することができる。
【0209】
方法
印刷版を製造する方法は、ポリマーを主体とする硬化性組成物を支持基材の表面に塗布して硬化性組成物の層を形成することを含む。組成物は、当該技術分野で周知の様々な手段によって支持基材に塗布することができる。本発明の方法は、特に、輪転グラビア印刷又は活版印刷のプロセスにおいて印刷ロール又は印刷シリンダーとして使用できる支持基材への、硬化性組成物の液体としての塗布に利用することができる。支持基材は、典型的には金属で構成される平面状の支持シートであってもよい。例えば印刷ロール又は印刷シリンダーなどの支持基材は、金属(例えば、アルミニウム又は鋼材)又はポリマー系材料で作られていてもよい。硬化性組成物の支持基材への塗布の前に、組成物を受ける支持基材の外表面は、改良されたフィルム又はコーティングのウェットアウト及び結合強度のために、支持基材の表面を洗浄及び/又は変える(すなわち表面張力を低下させる)ためのプラズマ前処理又はコロナ前処理によって前処理されてもよい。追加的に又は代わりに、硬化性(及び硬化)組成物の支持基材への接着を向上させるために、支持基材の外表面にプライマー溶液が塗布されてもよい。使用されるプライマー溶液は、後続のいずれかの製造工程時(すなわち研削、研磨、彫刻、印刷)に層が分離したり、持ち上ったり、砕けたりしないように、及び層の機能性に悪影響を与えないように、プライマーが適切に硬化性(及び硬化)層を基材へ接着させる限り、特に限定されない。プライマー溶液の例としては、エポキシ、ポリウレタン、及びポリビニルブチラールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
硬化性組成物は、射出、流し込み、液体注型、噴射、浸漬、噴霧、蒸着、及びコーティングなど(ただしこれらに限定されない)、任意の適切な方法によって支持基材に塗布することができる。コーティングの好適な方法の例としては、全て当該技術分野で公知の通り及び例えば英国特許第1,544,748号明細書に記載されている通り、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、ローラーコーティング、押出コーティング、刷毛塗り、リングコーティング、粉体コーティング、及びブレード(例えば、ドクターブレード)コーティングが挙げられる。ある実施形態では、硬化性組成物は、印刷ロール又は印刷シリンダーなどの支持基材の表面に硬化性組成物を噴霧することによって塗布される。噴霧は、当該技術分野で公知の技術によってノズルを使用することにより行うことができる。別の実施形態では、硬化性組成物は、米国特許第4,007,680号明細書に記載のものと同様の方法で刷毛塗りによって支持基材の外表面に塗布される。ほとんどの実施形態では、硬化性組成物は、印刷版のための連続的な印刷面を(硬化及び彫刻後に)与えるように、シリンダー状に成形された支持基材上に連続的な又は途切れのない層を形成するように塗布される。
【0211】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物の塗布は室温で行われる。別の実施形態では、硬化性組成物の塗布は室温より高い温度で行われる。ある実施形態では、硬化性組成物は、コーティング温度で約200〜約20,000cpの範囲の粘度を有する液体としてコーティングされて支持基材上に層を形成する。別の実施形態では、硬化性組成物は、コーティング温度で約1000〜約5000cpの範囲の粘度を有する液体としてコーティングされて支持基材上に層を形成する。硬化性組成物は、支持基材の表面に塗布されると、約2〜約150ミル(50.8〜3810μm)の厚さを有する層を形成する。任意選択的に、硬化性組成物層の厚さは、次の厚さのうちのいずれか2つを含む:2、4、8、10、12、16、20、30、50、100、150、200、250、及び300ミル(50.8、102、203、254、305、406、508、762、1270、2540、及び3810μm)。
【0212】
印刷版を製造する方法は、層を硬化させることを含む。硬化性組成物が支持基材に塗布された後、組成物の層は支持基材上で硬化して固まり、その結果、層は彫刻されることができる。ポリマー組成物の固化は、多官能性ウレタン及び存在する場合には任意選択的な反応性希釈剤のポリマー鎖の架橋によって生じる。いくつかの実施形態では、硬化は化学線に層を曝露することによって行われ、ほとんどの実施形態では、これは紫外線である。化学線の例としては、320ナノメートル(nm)〜400nmの波長範囲に含まれるUV−A線;280nm〜320nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−B線;100nm〜280nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−C線;400nm〜800nmの範囲に含まれる波長を有する放射であるUV−V線が挙げられるが、これらに限定されない。放射の別の例としては、e−ビームとしても知られる電子線を挙げることができる。多くの人工の放射源は、320nmより短波長のUV線を含む放射スペクトルを放出する。320nmよりも短波長の化学線は高いエネルギーを放出し、肌及び目にダメージを与え得る。UV−A又はUV−Vなどのより長い波長を用いた照射は低いエネルギーを放出し、UV−C又はUV−Bなどのより短い波長を用いた照射よりも安全であると考えられる。印刷版の前駆体として使用される光感受性要素の最も一般的な実施形態の光感受性は、室内光に対するより優れた安定性が得られることから、スペクトルのUV−A及び深可視光領域内にある。いくつかの実施形態では、化学線は300〜400nmの紫外線である。いくつかの別の実施形態では、化学線は200〜450nmの紫外線である。
【0213】
熱によるものか化学線によるものかに関わらず、硬化性組成物の層が十分に硬化したか否かを決定するためのある適切な方法は、接着性、耐摩耗性、及び耐溶剤性などの最終用途の性能特性に基づいた組成物のモデル調査を行うことによる。
【0214】
具体的な化学線源の適合性は、硬化性組成物の開始剤及び多官能性ウレタンの光感受性に支配される。使用時、光硬化性組成物の層は適切な線源からの化学線に曝される。化学線への曝露時間は、放射の強度及びスペクトルエネルギー分布、その光硬化性層からの距離、及び光硬化性組成物の特性及び量(例えば、層の厚さ)に応じて、数秒から数十分まで変動し得る。硬化性組成物の層は、ある実施形態では約0.5〜約20分、別の実施形態では約0.5〜約10分、化学線に曝露される。曝露温度は、好ましくは周囲温度であるか、又はそれよりわずかに高い。すなわち、約20℃〜約35℃である。曝露は、層の曝露された領域を支持基材に至るまで架橋させるのに十分な時間及びエネルギーである。いくつかの実施形態では、層を完全に硬化させるために必要とされる総放射曝露エネルギー(フルエンス又はエネルギー密度と呼ばれる場合もある)は、約1000〜30000mJ/cm
2であり、別の実施形態では約1500〜約20000mJ/cm
2である。
【0215】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物の層は、UV−A線の線源に曝されることによって硬化される。いくつかの別の実施形態では、硬化性組成物の層は、約250〜約450nmのスペクトル出力を有するUV線の線源に曝露されることによって硬化される。いくつかの別の実施形態では、硬化性組成物の層は、約320〜約450nmのスペクトル出力を有するUV−A線の線源に曝露されることによって硬化される。また別の実施形態では、硬化性組成物の層は、約320〜約550nmのスペクトル出力を有するUV−A線の線源に曝露されることによって硬化される。いくつかの実施形態では、硬化性組成物の層は、約1500〜約9000ミリジュール毎平方センチメートル毎分(mJ/cm
2/分)のエネルギー密度を与える紫外線の線源に約1.5〜約20分の曝露時間で曝露されることによって硬化される。いくつかの別の実施形態では、硬化性組成物の層は、約1500〜約7500mJ/cm
2/分のエネルギー密度を与える紫外線の線源に約10分〜約1分の曝露時間で曝露されることによって硬化される。
【0216】
適切な可視光及びUVの線源の例としては、炭素アーク、水銀蒸気アーク、蛍光灯、電子フラッシュユニット、電子線ユニット、及びレーザー、及び写真用照明が挙げられる。ある実施形態では、UV線の適切な線源は1種以上の水銀蒸気ランプである。水銀蒸気ランプは、硬化性組成物の層から、いくつかの実施形態では約1.5〜約60インチ(約3.8〜約153cm)の距離で、別の実施形態では約1.5〜約15インチ(約3.8〜約38.1cm)の距離で使用することができる。
【0217】
いくつかの別の実施形態では、硬化は、層の熱への曝露により、すなわち熱開始剤を反応させるのに十分な温度まで加熱し、それにより硬化性組成物の層を熱的に重合させることにより行われる。いくつかの実施形態では、硬化性組成物の層は、室温(すなわち周囲温度)超〜約250℃、すなわち約32℃(90°F)超〜約250℃の範囲の1つ以上の温度の温度組成まで加熱される。本明細書に記載の硬化性組成物は、約6時間未満で熱的に(すなわち加熱により)硬化させることができる。いくつかの実施形態では、硬化性組成物の層は、約1時間〜約2時間で熱的に硬化させることができる。また別の実施形態では、硬化性組成物の層は、約1時間以内に熱的に硬化させることができる。時間及び温度は具体的な硬化性組成物に依存するであろう。これは当業者によって容易に決定される。溶剤が硬化性ポリマー組成物中に存在する場合、最大250℃の温度での硬化は、硬化中のポリマーを主体とする層から溶剤を取り除くことにも役立つ。より具体的には、熱硬化のための温度は、次の値のうちの任意の2つの間の範囲、及び任意選択的にこれらを含む範囲である:30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、170、190、210、230、250、252℃。硬化は、1つの温度で行ってもよく、又は例えば80℃で1時間、その後に120℃で2時間など、範囲内の2つの温度で連続して行ってもよい。
【0218】
硬化性組成物の硬化層(支持基材表面に塗布されてから硬化した後)は、約2〜約300ミル(50.8〜7620μm)の厚さを有する。硬化層の厚さは、次の厚さのうちの任意の2つの間であり、任意選択的にこれらを含む:2、4、8、10、12、16、20、50、100、ミル(50.8、102、203、254、305、406、508、1270、2540μm)。
【0219】
任意選択的に、硬化層は、米国特許第5,694,852号明細書に開示されているように、彫刻の前に望ましい厚さ、円筒度、及び/又は平滑度まで研削及び/又は研磨されてもよい。硬化層の平滑度はRz値として報告することができる。ほとんどの実施形態では、硬化層の平滑度は約100マイクロインチ(2.54μm)未満のRz値を有し;別の実施形態では、Rz値は約80マイクロインチ(2.03μm)未満である。表面の粗さであるRzは、Mitutoyo America Corporation(Aurora,Illinois,USA)の表面粗さ計SJ−210型で、4mNの測定力、並びに5ミクロンの先端半径及び90°の先端角度のスタイラスプロファイルを有する検出器を使用して測定される。合計の測定長は0.157インチ(0.40cm)であり、これはISO4287:1998標準に従って5つのサンプリングセグメントに分割される。任意選択的に、彫刻された層は研磨されてバリが取り除かれてもよい。
【0220】
ポリマーを主体とする印刷版を製造する方法は、支持基材上の組成物の硬化層に少なくとも1つのセルを彫刻することを含む。硬化性組成物が基材に塗布されて硬化した後、硬化した組成物の層を彫刻することにより、固化した組成物が深さ方向に取り除かれて複数の独立したセルが層中に形成される。グラビア印刷に関して、層中の複数の独立したセルは、目的の画像を印刷する際に全体又は一部が転写されるインクを保持するためのものである。活版凸版印刷に関して、層中の複数の独立したセルの上に隆起した面が、目的の画像を印刷する際に全体又は一部が転写されるインクを保持する。支持基材上の硬化層中に複数のセルを彫刻することで、基材上に印刷することにより目的とする画像を複製することができる印刷面を有する印刷版又は均等に画像担持体が得られる。セルを形成するための彫刻は、当該技術分野で公知の様々な彫刻方法のいずれかにより行うことができる。例としては、電気機械式彫刻(例えば、ダイヤモンドスタイラスを用いて)及びレーザー彫刻が挙げられるが、これらに限定されない。これらの彫刻方法は、電子彫刻システムの一部であってもよい。ある実施形態では、彫刻はダイヤモンドスタイラス切削工具を用いて行われる。別の実施形態では、インクセルの形成のために直接レーザー非接触式彫刻が使用される。レーザーは、CO
2、YAG、又はダイオード型のレーザーであってもよい。いくつかの実施形態では、アクリレート化ウレタン組成物の硬化層を有する印刷版を製造する本方法は、従来のグラビアシリンダーの銅層の彫刻に使用される標準的な又は実質的に標準的な条件で従来の彫刻装置を使用して硬化層を彫刻できるという点で有利である。
【0221】
いくつかの実施形態では、印刷版はシリンダー又はプレートの形状である。いくつかの実施形態では、支持基材は金属又はポリマーである。ほとんどの実施形態では、印刷版はグラビア印刷に適している。グラビア印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であり、画像領域は窪んでおりインク又は印刷材料が入る小さい凹んだセル(又はウエル)からなり、非画像領域が版の表面である。ほとんどの実施形態では、印刷面は、彫刻によってグラビア印刷に適したインク受容セル表面が形成された、放射により硬化可能な組成物の硬化層である。いくつかの実施形態では、印刷版は、活版印刷版としての使用も含む凸版印刷に好適であり得るとも考えられる。凸版印刷は、印刷版が画像領域から印刷する印刷方法であり、印刷版の画像領域は隆起し、非画像領域は窪んでいる。凸版印刷に有用な印刷版に関して、少なくとも1つのセルを彫刻することにより、目的の画像を印刷するためのインクを保持しないであろう非画像領域が形成され、セルの上の隆起した面が、目的の画像を印刷するためのインクを保持する画像領域となる。いくつかの実施形態では、印刷面は凸版印刷に好適なレリーフ面である。
【0222】
更なる実施形態では、支持基材に隣接する又は均等に被覆する連続印刷面を含む印刷版であって、連続印刷面が、約250〜約450g/当量の反応性基当量によって特徴付けられる多官能性ウレタンと開始剤とを含むUV硬化性組成物から製造された硬化組成物の層である、印刷版が提供される。
【0223】
別の実施形態では、上述の通りに製造されるポリマーを主体とする印刷版を用いた印刷方法が提供される。いくつかの実施形態では、印刷方法は、製造された印刷版の硬化層に彫刻された少なくとも1つのセルにインク(典型的には溶剤系インク)を塗布することと、セルから印刷可能な基材へインクを転写することとを更に含む。別の実施形態では、印刷方法は、製造された印刷版の硬化層に彫刻されたセルの上の少なくとも1つの面にインクを塗布することと、隆起した面から印刷可能な基材へインクを転写することとを更に含む。好適な溶剤系インクとしては、限定するものではないが、アルコール、炭化水素(例えば、トルエン、ヘプタン)、アセテート(例えば、酢酸エチル)、及びケトン(例えば、メチルエチルケトン)などの有機溶剤を主体とするものが挙げられる。
【0224】
硬化層の耐溶剤性が十分にない場合、溶剤系インクからの溶剤の吸収が硬化層を過剰に膨潤させる場合がある。過剰な膨潤は、印刷品質及び画像担持体の耐久性に有害である。本明細書に記載の方法における硬化層の重量増加の観点からの膨潤量は約15重量%未満である。硬化層の重量増加に関する硬化層の膨潤量は、いくつかの実施形態では0〜約5重量%;別の実施形態では0〜8重量%;いくつかの別の実施形態では0〜10重量%;また別の実施形態では0〜12重量%である。多官能性ウレタンの構造は膨潤量に影響を与える。例えば、多官能性ウレタン中のポリマー鎖の架橋を増加させると膨潤の低減につながる場合がある。すなわち硬化層の耐溶剤性が改善される場合がある。反応性希釈剤の選択も硬化層の膨潤に大きい影響を与える場合がある。
【実施例】
【0225】
本発明は、以下の実施例において更に明らかにされる。これらの実施例が本発明の好ましい態様を示す一方、単に説明の目的で示されていることは理解されるべきである。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の必須の特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で、種々の用途及び条件に適合させるために本発明の種々の変更形態及び改変形態をなし得る。
【0226】
略語の意味は以下の通りである:「cm」はセンチメートルを意味し;「cp」はセンチポアズを意味し、0.001パスカル・秒に等しい粘度であり;「Des」はDesmolux(登録商標)を意味し;「Eb」はEbecryl(登録商標)を意味し;「EW」は当量(equivalent weight)を意味し;「equiv」は当量(equivalent)を意味し;「g」はグラムを意味し;「HDDA」はヘキサメチレンジオールジアクリレートを意味し、「IBOA」はアクリル酸イソボルニルを意味し、「MEK」はメチルエチルケトンを意味し;「mg」はミリグラムを意味し;「mL」はミリリットルを意味し;「mil」は0.001インチを意味し、0.0254ミリメートルに等しい長さであり;「min」は分を意味し;「mPa・s」はミリパスカル秒を意味し、「oz」はオンスを意味し;「TCDDA」はトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを意味し、「TMPT」はトリメチロールプロパントリアクリレートを意味し;「wt%」は重量パーセント(パーセンテージ)を意味し;「μm」はマイクロメートルを意味する。
【0227】
方法
コーティング配合物の調製
実施例1〜7及び比較例A〜C
樹脂成分及び添加剤(例えば、Sartomer CD9054、エトキシル化TMPT)をガラス瓶内に秤量した。光開始剤のIrgacure(登録商標)819及びIrgacure(登録商標)184を別の瓶内に秤量した。その後、これらを選択した反応性希釈剤であるTCDDA、HDDA、又はIBOA中に溶解させた。その後、樹脂成分が入っている第1の瓶に光開始剤パッケージを添加して手作業で混合した。その後、高せん断ミキサーを使用して成分を完全にブレンドした。その後、内容物を丸底フラスコに移し、軽く減圧して脱気し、磁気撹拌を行いながら50℃までわずかに温めた。その後、脱気した試料を、試験シリンダー及び溶剤取り込み試験片を作製するための以下に記載するコーティング手順で使用した。
【0228】
実施例8〜43
望ましい比率の2種の設計されたアクリレート化ウレタン21.0g(例えば、90:10の比率について、18.9gの樹脂1及び2.1gの樹脂2)を1oz(30mL)のガラス瓶内に秤量した。蓋をきつく締めてテープで止め、瓶を約55℃の水浴中で樹脂が軟らかくなり流動するまで数分間温めた。0.3gのIrgacure(登録商標)819、0.6gのIrgacure(登録商標)184、0.45gのエトキシル化TMPT、及び6.3gのTCDDAを別個の20mLのガラスバイアル内に秤量した。混合物を60℃の水浴中で温めながら、透明な溶液が形成されるまで撹拌した。その後、この第2の溶液を樹脂1及び2の混合物に添加し、0.9gのSartomer CD9054を添加した。得られた混合物を完全に均一になるまで手作業で撹拌した。その後、磁石を備えた200mLの一口フラスコ内に混合物を移した。フラスコを約50℃の水浴中で温めつつ磁気撹拌しながら、低真空にして溶液を脱気した。得られた配合物は耐溶剤性試験用の試料を作製するため及びグラビアシリンダーをコーティングするために使用した。
【0229】
粘度
硬化性樹脂組成物を調製し、約10gをブルックフィールド粘度計(LV型)のウエル内に入れ、25℃で平衡状態にした。コーティング組成物中につるしたスピンドルSC4−18を使用して測定されたせん断応力対せん断速度の比率として、センチポアズ(1cp=1mPa・s)単位での粘度を決定した。スピンドル速度は、%トルクが50〜80%となるように選択した。粘度がコーティング温度で200〜3500cpの範囲内である場合、組成物をシリンダー上にコーティング可能であるとみなした。
【0230】
耐溶剤性
硬化性組成物を調製し、15〜20ミル(381〜508μm)の間隙でドローダウンバーを用いてアルミニウム箔シート支持体上にコーティングして、ポリマーフィルム(すなわち層)を支持体上に形成した。ポリマーフィルム試料を実施例の記載に従って硬化させ、支持体から剥離した。フィルム断片(典型的には50〜100mg)を10〜20mLの規定の溶剤が入った瓶内に秤量した。フィルム断片を7日間浸漬してから拭き取って乾燥させ、秤量した。重量%変化は、
100*[重量(7日)−重量(最初)]/重量(最初)
として計算される。溶剤中で7日後に断片の重量%変化が15%未満の場合、その組成物は良好な耐溶剤性を有した。
【0231】
試験する硬化性組成物を上述の通りに混合した。次いで、アルミニウム箔又はポリイミドフィルムの清浄なシートを平らな面に置いた。約20mLの配合物を約6インチ(15cm)のラインに均一に流し込んだ。その後、6μmに設定した6インチのドローダウンブレードをアルミニウム箔の長さ方向に引き下ろして均一な6μmのフィルムを得た。フィルムを、換気ボックスと「D」バルブを備えたFusion 300W/inランプとからなるUV硬化チャンバー(Fusion UV Systems,Inc.,Gaithersburg,Maryland,USA)に移した。試料に0.5〜4分照射した。その後、硬化したフィルムをアルミニウム箔から剥がし、約2cm×3cmの小さい帯状片に切断した。帯状片を秤量して開始重量を得た後、蓋をした1oz(30mL)の瓶内で目的とする試験溶剤中に7日間浸漬した。7日後、試料を瓶から取り出し、ペーパータオルで拭き取って乾燥させてから秤量して最終重量を得た。%重量増加として差を報告した。
【0232】
彫刻性
硬化性組成物を調製し、シリンダー上にコーティングし、硬化させ、示されている通りに彫刻した。彫刻した領域は顕微鏡で調べ、少なくとも約20〜80個のセルを調べて最小のセル壁厚さを決定した。25μm以下の平均セル壁厚さで170〜200ライン毎インチのセルを形成するための試料の彫刻が実現できた場合、硬化樹脂試料が良好な彫刻性を有しているとみなした。
【0233】
摩耗
典型的なグラビア印刷方法を再現するための社内摩耗試験を確立した。摩耗試験のために、組成物の硬化層を有する(彫刻された)シリンダーを部分的にインクトレーに浸漬しながら回転させ、鋼製のドクターブレードと1回転当たり1回接触させた。試験に使用したインクは、Del Val Ink and Color IncのMultiprint Whiteインクであった。Hirox KH−7700顕微鏡で摩耗の程度を検査するために、彫刻されたシリンダーのセル領域を300,000回転(特段の記載のない限り)の前及び後に測定した。摩耗は、セル領域のパーセント減少として報告される。社内試験機により生じたセル領域の減少が10%未満の場合、硬化層が許容できる耐摩耗性を有するとみなした。
【0234】
印刷品質
印刷品質は、長期の印刷実行、すなわち100,000回より多い回数で決定した。これは、印刷品質(鮮鋭性、汚れなどの特性を考慮)が視覚的に許容できなくなるまでの回数について報告される。
【0235】
材料
次の材料はCytec Industries Inc.,Woodland Park New Jersey,USAから入手した:
Ebecryl(登録商標)220は、六官能性の芳香族ウレタンアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)270は、脂肪族ウレタンジアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)4827は、芳香族ウレタンジアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8210は、1級ヒドロキシル基を含む低粘度脂肪族ウレタンアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8301Rは、六官能性の脂肪族ウレタンアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8402は、低粘度脂肪族ウレタンジアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8405は、反応性希釈剤である1,6−ヘキサンジオールジアクリレートで20重量%希釈された脂肪族ウレタンテトラアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8701は、脂肪族ウレタントリアクリレートである。
Ebecryl(登録商標)8808は、希釈されていない脂肪族ウレタンジアクリレートである。
【0236】
次の材料はBayer MaterialScience AG,Leverkusen,Germanyから入手した:
Desmolux(登録商標)XP−2683/1(本明細書ではDes2683又はDesmolus2683/1と呼ばれる場合もある)は、23℃で約35,000mPa・sの粘度を有する、アクリル酸イソボルニル(「IBOA」)中65%で供給される、脂肪族ウレタンアクリレート側鎖又は末端を有するポリエステルコアを有するコポリマーである。
Desmolux(登録商標)XP−2666(本明細書ではDes2666と呼ばれる場合もある)は、23℃で約60,000mPa・sの粘度を有する脂肪族アロファネート系ウレタンアクリレートである。
Desmolux(登録商標)U500は、23℃で約6,000mPa・sの粘度を有する芳香族ウレタンアクリレートである。
DesmoluxXP2587は、23℃で約1500mPa・sの粘度を有する脂肪族ウレタンアクリレートである。
【0237】
次の材料はSigma−Aldrich Co.LLC,St.Louis,Missouri,USA(「Aldrich」)から入手した:
HDDA、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(CAS登録番号13048−33−4)
エトキシル化TMPT(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)(CAS登録番号28961−43−5)
本明細書で「IBOA」と呼ばれるアクリル酸イソボルニル(CAS登録番号5888−33−5)
本明細書で「MEK」と呼ばれるメチルエチルケトン(CAS登録番号78−93−3)
本明細書で「酢酸ブチル」と呼ばれる酢酸n−ブチル(CAS登録番号123−86−4)。
【0238】
TCDDA、トリシクロデカンジジアクリレート
【0239】
【化3】
は、Cytec Industries Inc(Woodland Park,New Jersey,USA)からEbecryl(登録商標)130として、又はSigma−Aldrich Co.から得た。
【0240】
Irgacure(登録商標)819及びIrgacure(登録商標)184は光開始剤であり、現在はBASFの一部であるCiba Inc.から入手した。これはBASF SE(Wyandotte,Michigan,USA)から現在入手可能である。Sartomer CD9054は三官能性酸エステル接着促進剤であり、Sartomer USA,LLC(Exton,Pennsylvania,USA)から入手した。
【0241】
Organosilicasol(商標)MEK−ST−Lは、メチルエチルケトン中に単分散されている(30〜31重量%)粒径が40〜50nmのコロイダルシリカであり、Nissan Chemical America Corporation(Houston,Texas,USA)から入手した。
【0242】
BYK(登録商標)388は流動促進剤であり、BYK−CHEMIE(Wallingford,Connecticut,USA)から入手した。
【0243】
NanoDur(登録商標)X1130は、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート中の50%コロイド分散液として供給される酸化アルミニウムナノ粒子の分散液であり、Nanophase Technologies Corporation(Romeoville,Illinois,USA)から入手した。
【0244】
実施例1〜7
硬化性組成物を上述の通りに調製、硬化、彫刻、及び試験した。それぞれの実施例について、硬化性組成物は以下に示されている。結果は表1に示されている。
【0245】
【表1】
【0246】
【表2】
【0247】
【表3】
【0248】
【表4】
【0249】
【表5】
【0250】
【表6】
【0251】
【表7】
【0252】
【表8】
【0253】
実施例1〜4は、強い溶剤であるMEKに対する非常に良好な耐溶剤性、比較的薄い平均壁厚さを形成することによる非常に良好な彫刻性、及び許容可能な耐摩耗性を示した。
【0254】
実施例6及び7に対しても溶剤としてのトルエン中で耐溶剤性試験を行った。耐溶剤性は、実施例6について0.5重量%の増加、及び実施例7について1.2重量%の増加のトルエン取り込みとして報告された。実施例6及び7は平均壁厚さによって決定される彫刻性のボーダーライン及びMEKに対しての耐溶剤性についての許容可能なボーダーラインであるものの、これらの実施例はトルエンに対する優れた耐溶剤性、及び非常に良好な耐摩耗性を示した。いくつかの場合、実施例6及び7の組成物は、許容できる彫刻、及びMEKよりも弱い溶剤を含むインクでの印刷が見込まれる。
【0255】
比較例A〜C
比較例A〜Cは、硬化することでMEK取り込みの点で不満足であり、不十分な彫刻性であり、及び/又は不十分な印刷品質である樹脂が形成される組成物を示している。各比較例についての組成物は下に示されており、結果は表2に示されている。
【0256】
【表9】
【0257】
【表10】
【0258】
【表11】
【0259】
【表12】
【0260】
本発明の450という上限の外側のアクリレート当量を全て有していた比較例A〜Cは、MEK又はトルエンである溶剤の少なくとも1つの中で許容できない耐溶剤性を示した。比較例Aは、トルエンに対して著しく許容できない耐溶剤性を示した。比較例Bは、MEK及びトルエンの両方中で耐溶剤性についてボーラ―ダインの性能を示した。比較例Cは、MEK及びトルエンの両方に対して著しく許容できない耐溶剤性を示した。
【0261】
実施例8〜43
彫刻性及び溶剤の取り込みに対するアクリレート基の当量の影響を決定するために一連の配合物を製造した。この試験のために、3以上の官能価を有する多官能性ウレタンアクリレートと二官能性ウレタンアクリレートとの2種の樹脂の組み合わせを使用して配合物を製造した。これらの2種の樹脂は、90:10、75:25、65:35、及び50:50で変化させた樹脂の重量比で使用した。いくつかの配合物では、片方又は両方の樹脂に反応性希釈剤が含まれており、これは樹脂及び反応性希釈剤に関して報告されているアクリレート当量値に反映されている。光開始剤(Irgacure(登録商標)819及びIrgacure(登録商標)184)、接着促進剤(Sartomer CD9054)、及び希釈剤(エトキシル化TMPT及びTCDDA)を含む配合物の全ての他の成分は一定に保った。配合物を製造し、上述の通りにMEKの取り込みについて試験した。一部をグラビアシリンダーにコーティングし、彫刻性について試験した。
【0262】
【表13】
【0263】
結果は表3及び図1に示されている。
【0264】
【表14】
【0265】
【表15】
【0266】
【表16】
【0267】
【表17】
【0268】
【表18】
【0269】
実施例8〜43からのデータは、硬化性組成物のアクリレート化ウレタン及び反応性希釈剤のアクリレート当量対MEK溶剤の取り込みとして図1にプロットした。これは、重量増加のパーセンテージ増加及び平均の最小壁厚さとして報告されている。データは、約450よりも大きい加重平均アクリレートEWを有するアクリレート化ウレタンと反応性希釈剤との組成物が不十分な耐溶剤性を示すこと、すなわちMEK溶剤の取り込みが約15%超であること;及び約250未満のアクリレートEWを有すると不十分な彫刻性を示すこと、すなわち最小壁幅が約28μm以上で厚過ぎることを示している。更に、データは、約250〜約450の加重平均アクリレートEWを有するアクリレート化ウレタンと反応性希釈剤との組成物が、15重量%未満のMEK溶剤の取り込みである良好な耐溶剤性と、約25ミクロン以下の最小平均セル壁厚さの彫刻性との両方を示すことを示している。
【0270】
表3は、反応性希釈剤の官能価を考慮しないアクリレート化ウレタン樹脂単独のアクリレート当量も示している。アクリレート化ウレタン樹脂単独のアクリレート当量は、上述したようなアクリレート化ウレタンと反応性希釈剤とを合わせたアクリレート当量での硬化組成物の耐溶剤性及び彫刻性をたどったものの、これは、硬化性組成物のアクリレート当量についての望ましい範囲を決定する際に反応性希釈剤を考慮する必要があることを示した。
【0271】
実施例44
次の実施例は、フレキソ印刷用のエラストマー系印刷プレートと比較した本発明による硬化した樹脂の層の硬さ及び弾性率の差を示している。
【0272】
本発明による、アクリレート化ウレタンと少なくとも1種の光開始剤とを含む下の表に記載の通りの樹脂組成物は、次の通りに調製した。樹脂成分及び添加剤をガラス瓶内に秤量した。光開始剤を別の瓶内に秤量した。その後、これらを選択した反応性希釈剤に溶解させた。次いで、樹脂成分が入っている第1の瓶に光開始剤パッケージを添加して手作業で混合した。その後、高せん断ミキサーを使用して成分を完全にブレンドした。その後、内容物を丸底フラスコに移し、軽く減圧して脱気し、磁気撹拌を行いながら50℃までわずかに温めた。調製した硬化性組成物を金属プレートの上にコーティングして6〜8ミル(0.015〜0.020cm)の乾燥厚さを有する層を形成した。樹脂組成物の層を、総紫外線曝露量1.9J/cm
2及びピーク出力4.49W/cm
2で、コンベアベルト上で上述の通りに「D」バルブを用いてFusion300W/inユニット上で一括露光することにより硬化させた。
【0273】
【表19】
【0274】
CYREL(登録商標)エラストマー系光重合印刷版、45NOW型を比較例として使用した。CYRELエラストマー系印刷版は、ポリエチレンテレフタレートの支持体と、支持体の上又は隣の光重合性組成物(ポリ(スチレン−イソプレン−スチレン)ブロックコポリマーのエラストマー系バインダー、1種以上のモノマー、光開始剤、及び他の添加剤を含む)の層とを含む。支持体の反対側の光重合性層の片面上のカバーシートを取り除いた後、版を前面から(マスクなし)及び支持体を通して(すなわち背面露光)UV線を照射して光重合性層を硬化させた。以降に記載するNanoHardness Indenterでの試験のために、版の試料を切断してスライドガラスの上に載せた。
【0275】
CYREL 45NOW版は約0.045インチの厚さを有し、これはほぼ支持体及び照射された光重合性層の厚さである。紫外線を照射して光重合性層を深さ方向に重合させたCYREL版の別の試料は、ショアA測定のために校正及び構成された装置上で測定される平均デュロメータが約77.2である。報告されているデュロメータは、各5回試験した版の2つの試料の平均である。ショアA測定のために校正及び構成された装置は、Zwick USA(Kennesay,GA,USA)のZwickデジタルショア電子硬度計(ショアA)である。
【0276】
CYRELエラストマー系印刷版の光重合性組成物はポリウレタン系組成物ではなく、そのため本発明の樹脂組成物との直接的な比較とはならないものの、本出願人らは、組成物用のバインダーがポリウレタンを主体としているか、CYREL印刷版中で使用されているバインダーのようなエラストマー系ブロックコポリマーを主体としているかに関わらず、フレキソ印刷用の凸版印刷層として使用するために配合されたいずれの組成物も、特に硬さ及び弾性率の点で実質的に同じか非常に類似した特性を有すると考えている。典型的には、フレキソ印刷用の光重合性エラストマー系印刷版の硬さはデュロメータで報告され、ショアA測定のために校正及び構成された装置で試験される。デュロメータは、典型的にはポリマー、エラストマー、及びゴムの硬さの尺度として使用される。本出願時、本出願人らは、凸版印刷面を形成するためのポリウレタンを主体とするエラストマー組成物の層を含む、フレキソ印刷版のための市販のレリーフ形成エラストマー系印刷版製品を認識していない。
【0277】
250DPC、45DFM、及び45DFRを含む3つの他のタイプのCYRELエラストマー系光重合性印刷版の試料は、UNHT圧子上で45NOW試料と一緒に試験できなかったことに留意されたい。エラストマー系印刷版のこれらの3つの試料に加重をかける試みは、UNHTの変位幅及び仕切られた変位により制限された。実施例44のウレタン樹脂試料と、これら3つの追加的なCYREL試料との両方を試験するための条件の妥協策のセットを見出すことは不可能であった。これら3つのエラストマー版試料は、照射してからデュロメータ用のZwickデジタルショア硬度計で上述のように試験した。ショアA測定用に構成されたZwick試験機によると、250DPCの平均デュロメータは34.4であり;45DFMでは67.4であり;45DFRでは73.9であった。
【0278】
実施例44A〜44Cの硬化樹脂のそれぞれの試料及び比較例は、ASTM規格E2546−07に従って圧子上で試験した。圧子は、CSM Instrumentsの、Berkovich圧子を備えたUNHT−Ultra NanoHardness Testerからのものであった。Berkovitch圧子はダイヤモンド製であり、鋭い先端を形成する三角すいの形状を有している。
【0279】
Ultra NanoHardness Test圧子は、2つの独立した垂直軸を使用する構造に基づいており、1つの軸がインデンテーション自体専用であり、1つの軸が活性面を参照するために使用される。各軸は独自のアクチュエータ、変位及び荷重センサを有している。両方の軸について、変位は別のピエゾアクチュエータによって行われる。圧子及びリファレンスの上の荷重は、容量センサで測定されるばねの変位から得られる。球状のリファレンス(3mmの典型的な直径)は圧子から2.5mm(特別な場合には9mm)離して配置される。圧子の変位は、差動容量センサによりリファレンスに対して測定される。リファレンスに加えられる力が一定のレベルに保たれることで、リファレンスが試料面の全ての変位を確実に正確に追尾する。圧子とリファレンスとの両方に対する垂直な力の連続的な制御は、正確なフィードバックループによって保証される。測定ヘッドで使用される重要な要素は、非常に低い熱膨張係数(0℃〜100℃の範囲にわたって0.01×10−6K−1)を有する材料であるZerodur(登録商標)製である。UNHTでは熱ドリフト及びフレームコンプライアンスの問題はほとんど完全に取り除かれることから、全ての測定は熱ドリフト又はフレームコンプライアンスのソフトウエア又はハードウエアの補正が全くない生データのみを含む。
【0280】
この装置は、既知の幾何形状の圧子を(試料の)表面に接触させ、その後、所定の速度で選択された荷重を加え、それから取り除き、それぞれ荷重曲線及び除荷曲線を生成する。荷重曲線及び除荷曲線は、実施例及び比較例の各硬化ポリマーを主体とする層の硬さ及び弾性率を計算するために使用される。材料の特性は、貫通−力曲線及び圧子の幾何形状を使用して、Oliver&Pharr法を用いたインデンテーションソフトウエアによって計算した。試験は室温で行った。各試料について、30秒の線形荷重で2ミリニュートンの荷重を印加し、120秒間休止し、それから2秒間線形除荷した。44A〜44Cの実施例の各試料に対して25回インデンテーションを行い、比較例に対して14回インデンテーションを行った。インデンテーション曲線は全ての試料で非常に密にグループ化され、均一な材料であることを示す低い標準偏差を有していた。硬さ及び弾性率の平均が下に報告されている。
【0281】
【表20】
【0282】
本発明の硬化したポリマーを主体とする組成物は、比較例と大きく異なる硬さ及び弾性率を有している。硬さ及び弾性率の標準偏差は試験の再現性を示す。実施例44A〜44Cの硬化組成物は、比較例の硬さよりも約36〜140倍大きい硬さを有していた。結果は、約40MPaよりも大きい硬さを有する本発明による組成物の硬化ポリマー層が、グラビア印刷用のポリマーを主体とする印刷版としての使用に好適であることを示した。更に、約15〜約40MPaの硬さを有する(及び更にはフレキソ印刷版のための硬さよりも約10〜31倍大きい)硬化ポリマー層は、印刷版のいくつかの実施形態(例えば、活版印刷用及び更にはいくつかのあまり厳密でないグラビア印刷用)に好適であり得るが、フレキソ印刷のためには使用されないと考えられる。約30〜約200MPaの硬さを有する硬化ポリマー層は、グラビア印刷のために使用される印刷版の実施形態に適していると考えられる。実施例44A〜44Cの硬化組成物は、比較例の弾性率よりも190〜420倍大きい弾性率を有していた。本発明の硬化したポリマーを主体とする組成物は、少なくとも約1700MPaの弾性率を有する。
【0283】
この実施例は、硬さ及び弾性率などの特性が、フレキソ印刷での最終用途のためのエラストマー系印刷版よりも、グラビア印刷版での最終用途のための硬化ポリマー層を有する印刷版で大きく異なることを示した。硬さ及び弾性率などの特性は、最終用途における印刷版の性能に追随する。