(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018513172
(43)【公表日】20180524
(54)【発明の名称】がんおよび感染症を処置する際に使用するための免疫チェックポイントモジュレーターの阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20180420BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20180420BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20180420BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20180420BHJP
【FI】
   !A61K45/00
   !A61P43/00 111
   !A61P37/04
   !A61P35/00
   !A61P35/02
   !A61P31/12
   !A61P31/04
   !A61P31/10
   !A61P33/00
   !A61P31/22
   !A61P43/00 121
   !A61P31/14
   !A61P31/20
   !A61P31/18
   !A61K39/395 N
   !A61K39/395 D
   !A61K31/7105
   !A61K39/395 T
   !A61K48/00
   !A61K31/337
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   !A61K31/506
   !A61K31/4375
   !A61K31/4523
   !A61K31/404
   !A61K31/517
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】115
(21)【出願番号】2017554859
(86)(22)【出願日】20160415
(85)【翻訳文提出日】20171211
(86)【国際出願番号】US2016027870
(87)【国際公開番号】WO2016172010
(87)【国際公開日】20161027
(31)【優先権主張番号】62/150,140
(32)【優先日】20150420
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/260,917
(32)【優先日】20151130
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516235820
【氏名又は名称】イーフェクター セラピューティクス, インコーポレイテッド
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92121, サンディエゴ, ローゼル ストリート 11180
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター, ケビン アール.
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92127, サンディエゴ, パロミノ メサ ロード 15346
(72)【発明者】
【氏名】ゴエル, ヴィカス
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92130, サンディエゴ, ティバートン ロード 13349
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB371
4C084ZC021
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4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
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4C086BC13
4C086BC21
4C086BC42
4C086CB05
4C086EA16
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
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4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC02
4C086ZC55
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、がんおよび感染性疾患などのある特定の疾患における免疫抑制を阻害または放出するための、免疫チェックポイントタンパク質PD−1、PD−L1、LAG3などの免疫抑制成分および/またはIL−10などの免疫抑制サイトカインを阻害するMNK特異的阻害剤の使用に関する。免疫応答を誘導するまたは増強する方法であって、治療有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与し、それによって、免疫応答を誘導するまたは増強することを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫応答を誘導するまたは増強する方法であって、治療有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与し、それによって、免疫応答を誘導するまたは増強することを含む、方法。
【請求項2】
誘導されるまたは増強される免疫応答を必要とする前記被験体が、免疫耐性と関連する疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫耐性と関連する前記疾患が、がんまたは感染症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記感染症が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症または寄生虫感染症である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス感染症が、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
誘導されるまたは増強される前記免疫応答が、抗原特異的T細胞応答である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
免疫抑制成分の阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、抗体またはsiRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体またはsiRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
抗がん応答を誘導するまたは増強する治療を投与することをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
誘導されたまたは増強された前記抗がん応答が、抗腫瘍応答である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
抗がん応答を誘導するまたは増強する前記治療が、ワクチン、免疫抑制成分の阻害剤、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
免疫抑制シグナルの阻害剤が、抗体またはsiRNAである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体またはsiRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、LAG3、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記化学療法剤が、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤またはこれらの任意の組合せである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記化学療法剤が、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドセタキセルまたはこれらの任意の組合せである、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤が、同時に、併せて、逐次的にまたはこれらの任意の組合せで投与される、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記MNK特異的阻害剤および抗がん応答を誘導するまたは増強する治療が、同時に、併せて、逐次的にまたはこれらの任意の組合せで投与される、請求項15から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記MNK特異的阻害剤が、PD−1、PD−L1およびLAG3の発現を低減させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
PD−1およびLAG3の発現が、T細胞で低減する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
PD−L1の発現が、抗原提示細胞または疾患と関連する細胞で、低減する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記MNK特異的阻害剤が、eIF4Eをリン酸化するMNKの能力を低減させるまたは最小化する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤を、調節不全の免疫抑制シグナル伝達経路の緩和を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記免疫抑制シグナル伝達経路の阻害が、既存の内在性の免疫を促進する、または新規の内在性の免疫を促進する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記免疫抑制シグナル伝達経路の緩和を必要とする前記被験体が、がんまたは感染症を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記免疫抑制シグナル伝達経路が、PD−1および/またはLAG3の免疫抑制シグナル伝達経路である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記がんが、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記感染症が、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症または寄生虫感染症である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ウイルス感染症が、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ウイルス感染症が、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
免疫抑制成分の阻害剤を投与することをさらに含む、請求項31から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、抗体またはsiRNAである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体またはsiRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
抗がん応答を誘導するまたは増強する治療を投与することをさらに含む、請求項33から35または39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
誘導されたまたは増強された前記抗がん応答が、抗腫瘍応答である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
抗がん応答を誘導するまたは増強する前記治療が、ワクチン、免疫抑制成分の阻害剤、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せである、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、抗体またはsiRNAである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体またはsiRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、LAG3、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記化学療法剤が、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤またはこれらの任意の組合せである、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記化学療法剤が、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドセタキセルまたはこれらの任意の組合せである、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤が、同時に、併せて、逐次的にまたはこれらの任意の組合せで投与される、請求項39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記MNK特異的阻害剤および抗がん応答を誘導するまたは増強する治療が、同時に、併せて、逐次的にまたはこれらの任意の組合せで投与される、請求項45から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記MNK特異的阻害剤が、PD−1、PD−L1およびLAG3の発現を低減させる、請求項31から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
PD−1およびLAG3の発現が、T細胞で低減する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
PD−L1の発現が、抗原提示細胞または疾患と関連する細胞で、低減する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記MNK特異的阻害剤が、eIF4Eをリン酸化するMNKの能力を低減させるまたは最小化する、請求項31から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
PD−1活性、PD−L1活性、LAG3活性またはこれらの任意の組合せを低減させる方法であって、免疫細胞の活性を増加させるため、または免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させるために、細胞を有効量のMNK特異的阻害剤と接触させることを含む、方法。
【請求項62】
前記MNK特異的阻害剤が、以下の式(I):
【化13】
[式中、
およびWは、独立して、O、SもしくはN−OR’(R’は低級アルキルである)であり;
Yは、−N(R)−、−O−、−S−、−C(O)−、−S=O、−S(O)−もしくは−CHR−であり;
は、水素、低級アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルであり、ここで、任意の低級アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換され;
nは、1、2もしくは3であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキレン、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキレンであり、ここで、任意のアルキル、アリール、アラアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキレン、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキレンは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換され;
または、RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここで、任意のシクロアルキルもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換され;
4aおよびR4bは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ヒドロキシアルキレン、シアノ、アルキル、アルコキシ、アシル、チオアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロシクリルであり;
は、水素、シアノもしくは低級アルキルであり;
または、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される、縮合ヘテロシクリルを形成し;
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、ここで、任意のアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換され;
または、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される、縮合ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し;
Jは、−SH、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NH、−S(O)NR、−NH、−NR、−COOH、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)−NH、−C(O)−NR、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、アルキル、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、シアノアルキレン、アルキルアミニル、NH−C(O)−アルキレン、NR−C(O)−アルキレン、−CHR−C(O)−低級アルキル、−C(O)−低級アルキル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、−CHR−C(O)−シクロアルキル、−C(O)−シクロアルキル、−CHR−C(O)−アリール、−CHR−アリール、−C(O)−アリール、−CHR−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクリルアミニルもしくはヘテロシクリルであり;
または、同じ炭素原子もしくはヘテロ原子に結合する任意の2個のJ基は、一緒になってオキソを形成してよく;
は、水素、低級アルキルもしくはOHである]
またはこの立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記MNK特異的阻害剤が、以下の式(Ia):
【化14】
[式中、
は、水素または低級アルキルであり;
nは、1、2または3であり;
およびRは、独立して、出現する毎に、水素、アルキル、炭素環、炭素環アルキル、複素環または複素環アルキルであり、ここで、このようなアルキル、炭素環、炭素環アルキル、複素環または複素環アルキルは、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換され;
あるいは、RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、炭素環または複素環を形成し、ここで、このようなカルボシクリルまたはヘテロシクリルは、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換され;
は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルケニルまたはシクロアルキルであり;
は、水素または低級アルキルであり;
あるいは、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換された縮合複素環を形成し;
、RおよびRは、独立して、出現する毎に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、アルキルアミニルまたはシクロアルキルアミニルであり、このそれぞれのアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、アルキルアミニルまたはシクロアルキルアミニルは、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換され;
あるいは、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換された縮合複素環を形成し;
Jは、ハロゲン、アミノ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アミノまたはアミノアルキルであり、あるいは任意の2個のJ基が同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合する場合、一緒になってオキソを形成してよい]
またはこの立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤を含む、組合せ。
【請求項65】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、抗体またはsiRNAである、請求項64に記載の組合せ。
【請求項66】
前記抗体またはsiRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的である、請求項65に記載の組合せ。
【請求項67】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項65に記載の組合せ。
【請求項68】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項65に記載の組合せ。
【請求項69】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項65に記載の組合せ。
【請求項70】
抗がん応答を誘導するまたは増強する治療をさらに含む、請求項64から69のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項71】
誘導されたまたは増強された前記抗がん応答が、抗腫瘍応答である、請求項70に記載の組合せ。
【請求項72】
抗がん応答を誘導するまたは増強する前記治療が、ワクチン、免疫抑制成分のさらなる阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せである、請求項70または71に記載の組合せ。
【請求項73】
前記化学療法剤が、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤またはこれらの任意の組合せである、請求項72に記載の組合せ。
【請求項74】
前記化学療法剤が、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドタキセルまたはこれらの任意の組合せである、請求項72に記載の組合せ。
【請求項75】
免疫抑制成分の前記さらなる阻害剤が、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、LAG3、KIR、CD244、B7−H3、B7−H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、A2aRまたはこれらの任意の組合せに対して特異的な抗体またはsiRNAである、請求項72に記載の組合せ。
【請求項76】
PD−1に対して特異的な前記抗体が、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブまたはこれらの任意の組合せである、請求項75に記載の組合せ。
【請求項77】
PD−L1に対して特異的な前記抗体が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718Cまたはこれらの任意の組合せである、請求項75に記載の組合せ。
【請求項78】
CTLA4に対して特異的な前記抗体が、トレメリムマブ、イピリムマブまたは両方である、請求項75に記載の組合せ。
【請求項79】
MNK特異的阻害剤、免疫抑制成分の阻害剤および化学療法剤を含む、組合せ。
【請求項80】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、ピジリズマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブから選択されるPD−1に対して特異的な抗体である、請求項79に記載の組合せ。
【請求項81】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AまたはMSB0010718Cから選択されるPD−L1に対して特異的な抗体である、請求項79または80に記載の組合せ。
【請求項82】
免疫抑制成分の前記阻害剤が、トレメリムマブまたはイピリムマブから選択されるCTLA4に対して特異的な抗体である、請求項79から81のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項83】
前記化学療法剤が、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドタキセルまたはこれらの任意の組合せである、請求項79から81のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項84】
前記化学療法剤が、ダブラフェニブおよびトラメチニブである、請求項79から81のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項85】
前記MNK特異的阻害剤が、請求項62または63の化合物である、請求項64から84のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項86】
がん抗原または感染性疾患抗原に対して特異的なキメラ抗原受容体を含有するT細胞をさらに含む、請求項64から85のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項87】
請求項64の組合せ、または請求項79の組合せを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
T細胞媒介性免疫応答は、T細胞受容体(TCR)による抗原認識を通じて引き起こされる。T細胞応答の最終的な大きさおよび質は、免疫チェックポイントによって調節され、これは、共刺激および共阻害のシグナルのバランスを制御する。免疫チェックポイントは、感染症に対する免疫応答中の自己寛容の維持および損傷からの組織の保護において必要不可欠である。しかしながら、腫瘍による免疫チェックポイントタンパク質の調節不全発現は、重要な免疫耐性機構をもたらす。組織におけるT細胞のエフェクター機能を調節する阻害性リガンドおよび受容体は、腫瘍微小環境の腫瘍細胞または非形質転換細胞において、しばしば過剰発現する。腫瘍細胞における免疫チェックポイントリガンドの発現の2つの一般的な機構が明らかになっている。一部の腫瘍において、恒常的な発癌性シグナル伝達は、腫瘍において阻害剤リガンドの発現を誘導して、生得的な免疫耐性をもたらす。あるいは、阻害性リガンドは、活性な抗腫瘍免疫応答(適応免疫耐性)によって生じる炎症シグナルに応答して誘導され得る。前臨床および臨床データは、免疫チェックポイントの阻害が、内在性の抗腫瘍免疫を増強できることを示している(例えば、Pardoll、Nat. Rev. Cancer 12巻、252頁、2012年を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Pardoll、Nat. Rev. Cancer 12巻、252頁、2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本技術分野において、代替の免疫チェックポイント経路の効果的なモジュレーターについての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、このような必要性に対するものであり、さらに他の関連する利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1A】図1A〜1Dは、MNK特異的阻害剤が、細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、形質転換されたT細胞株(ジャーカット)における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。(A)および(B)フローサイトメトリーによって検出されるように、PD−1の発現は、PHAおよびPMAと接触したジャーカット細胞において刺激される一方で、PD−1の発現は、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)による用量依存的様式で低減される。(C)ELISAアッセイにより、PHAおよびPMAと接触したジャーカットT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇が検出され、これは、ジャーカットT細胞が、それらのTCRを介して活性化されたことを示す。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させず、T細胞活性化が、MNK特異的阻害剤によって影響されないことを示す。(D)上記(A)のように、PHAおよびPMAで、またはPHA、PMAおよび化合物107で処置されたジャーカット細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。
【図1B】図1A〜1Dは、MNK特異的阻害剤が、細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、形質転換されたT細胞株(ジャーカット)における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。(A)および(B)フローサイトメトリーによって検出されるように、PD−1の発現は、PHAおよびPMAと接触したジャーカット細胞において刺激される一方で、PD−1の発現は、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)による用量依存的様式で低減される。(C)ELISAアッセイにより、PHAおよびPMAと接触したジャーカットT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇が検出され、これは、ジャーカットT細胞が、それらのTCRを介して活性化されたことを示す。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させず、T細胞活性化が、MNK特異的阻害剤によって影響されないことを示す。(D)上記(A)のように、PHAおよびPMAで、またはPHA、PMAおよび化合物107で処置されたジャーカット細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。
【図1C】図1A〜1Dは、MNK特異的阻害剤が、細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、形質転換されたT細胞株(ジャーカット)における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。(A)および(B)フローサイトメトリーによって検出されるように、PD−1の発現は、PHAおよびPMAと接触したジャーカット細胞において刺激される一方で、PD−1の発現は、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)による用量依存的様式で低減される。(C)ELISAアッセイにより、PHAおよびPMAと接触したジャーカットT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇が検出され、これは、ジャーカットT細胞が、それらのTCRを介して活性化されたことを示す。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させず、T細胞活性化が、MNK特異的阻害剤によって影響されないことを示す。(D)上記(A)のように、PHAおよびPMAで、またはPHA、PMAおよび化合物107で処置されたジャーカット細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。
【図1D】図1A〜1Dは、MNK特異的阻害剤が、細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、形質転換されたT細胞株(ジャーカット)における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。(A)および(B)フローサイトメトリーによって検出されるように、PD−1の発現は、PHAおよびPMAと接触したジャーカット細胞において刺激される一方で、PD−1の発現は、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)による用量依存的様式で低減される。(C)ELISAアッセイにより、PHAおよびPMAと接触したジャーカットT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇が検出され、これは、ジャーカットT細胞が、それらのTCRを介して活性化されたことを示す。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させず、T細胞活性化が、MNK特異的阻害剤によって影響されないことを示す。(D)上記(A)のように、PHAおよびPMAで、またはPHA、PMAおよび化合物107で処置されたジャーカット細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。
【図2A】図2A〜2Eは、(A)転移性のヒト乳がん細胞株であるMDA−MB−231、(B)散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプであるHBL−1、(C)ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549、(D)ヒト乳腺癌細胞株であるMDA−MB−361、および(E)ヒト形質細胞腫細胞株であるAMO−1において、ウエスタンブロットによって検出されるPD−L1の発現が、DMSOビヒクル対照(カラムに「−」を表示)と比較して、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。
【図2B】図2A〜2Eは、(A)転移性のヒト乳がん細胞株であるMDA−MB−231、(B)散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプであるHBL−1、(C)ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549、(D)ヒト乳腺癌細胞株であるMDA−MB−361、および(E)ヒト形質細胞腫細胞株であるAMO−1において、ウエスタンブロットによって検出されるPD−L1の発現が、DMSOビヒクル対照(カラムに「−」を表示)と比較して、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。
【図2C】図2A〜2Eは、(A)転移性のヒト乳がん細胞株であるMDA−MB−231、(B)散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプであるHBL−1、(C)ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549、(D)ヒト乳腺癌細胞株であるMDA−MB−361、および(E)ヒト形質細胞腫細胞株であるAMO−1において、ウエスタンブロットによって検出されるPD−L1の発現が、DMSOビヒクル対照(カラムに「−」を表示)と比較して、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。
【図2D】図2A〜2Eは、(A)転移性のヒト乳がん細胞株であるMDA−MB−231、(B)散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプであるHBL−1、(C)ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549、(D)ヒト乳腺癌細胞株であるMDA−MB−361、および(E)ヒト形質細胞腫細胞株であるAMO−1において、ウエスタンブロットによって検出されるPD−L1の発現が、DMSOビヒクル対照(カラムに「−」を表示)と比較して、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。
【図2E】図2A〜2Eは、(A)転移性のヒト乳がん細胞株であるMDA−MB−231、(B)散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプであるHBL−1、(C)ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549、(D)ヒト乳腺癌細胞株であるMDA−MB−361、および(E)ヒト形質細胞腫細胞株であるAMO−1において、ウエスタンブロットによって検出されるPD−L1の発現が、DMSOビヒクル対照(カラムに「−」を表示)と比較して、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。
【図3A】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3B】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3C】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3D】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3E】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3F】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図3G】図3A〜3Gは、MNK特異的阻害剤が、T細胞の生存率または活性化に影響を及ぼすことなく、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された新鮮なT細胞における種々の免疫チェックポイントタンパク質の発現を阻止することができることを示す。フローサイトメトリーは、(A)および(B)PD−1の発現ならびに(C)および(D)LAG3が、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化された一次T細胞においてそれぞれ増加する一方、PD−1およびLAG3の発現が、それぞれ、MNK特異的阻害剤である化合物107(0.01、0.1、1、3および10μMで使用)の存在下で用量依存的様式で低減されることを示す。(E)ELISAアッセイにより、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞におけるヒトIL−2産生のレベルの上昇を検出した。MNK特異的阻害剤である化合物107の存在は、IL−2産生を検出可能に変化させなかった。(F)抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率、または化合物107の存在下で抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞の生存率は、固定可能な死細胞株(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して検出される死細胞の割合によって決定されるように、影響されなかった。(G)免疫抑制サイトカインであるIL−10の発現は、化合物107によって、用量依存的様式で、一次T細胞中で阻害された。
【図4A】図4Aおよび4Bは、MNK特異的阻害剤単独、または抗PD−1抗体と組み合わせたMNK特異的阻害剤が、(A)in vivoでのマウスCT26同種移植腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を阻害することができ、(B)体重に影響を及ぼさない(これは、忍容性を示す)ことを示す。
【図4B】図4Aおよび4Bは、MNK特異的阻害剤単独、または抗PD−1抗体と組み合わせたMNK特異的阻害剤が、(A)in vivoでのマウスCT26同種移植腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を阻害することができ、(B)体重に影響を及ぼさない(これは、忍容性を示す)ことを示す。
【図5】図5は、MNK特異的阻害剤単独、抗PD−1抗体単独、または抗PD−1抗体と組み合わせたMNK特異的阻害剤での処置に応答したマウスが、再チャレンジにおいてCT26腫瘍を拒絶したことを示す。腫瘍の成長は、同じCT26同種移植腫瘍を移植されたナイーブBALB/cマウスと比較して、さらなる薬物処置なしで評価し、これは、MNK特異的阻害剤による前処置が、長期間の免疫記憶を確立したことを示す。
【図6】図6は、MNK特異的阻害剤単独、または抗PD−1抗体と組み合わせたMNK特異的阻害剤が、マウスCT26同種移植腫瘍から処置後4日で単離された腫瘍の浸潤性リンパ球(TIL)の集合におけるTエフェクター細胞とT調節性細胞の、in vivoでの比率を変化させることができることを示す。
【図7】図7は、MNK特異的阻害剤で48時間処置された散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株TMD8におけるHLA−II(HLA−DQA1)タンパク質レベルのウエスタンブロット分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本開示は、例えば、免疫抑制分子の誘導によって媒介される、免疫耐性と関連する疾患を軽減すること、および適応免疫応答に関与する分子の低減による、免疫モジュレーションのための組成物および方法に関する。例えば、免疫チェックポイントタンパク質(プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)またはそのリガンド(PD−L1、PD−L2)など)、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10)または調節性T細胞の不適当なレベルまたは活性は、セリン/スレオニンキナーゼ(MKNKまたはMNK)特異的阻害剤と相互作用するMAPキナーゼの使用を通じて、正すことができるか、または正常化することができる。一方、このようなMNK特異的阻害剤は、T細胞または免疫記憶に対する抗原提示のために重要な、主要組織適合抗原(MHC、またはヒトにおけるHLA)分子の発現を回復させるためまたは増加させるために使用し得る。
【0007】
背景として、ヒト適応免疫系の細胞媒介性免疫応答の一部は、リンパ球(T細胞)の活性化に関与して、病原性細胞または異常細胞および関連分子の破壊を媒介する。T細胞は、細胞(例えば、がん細胞)の外部(例えば、侵入病原体)または内部が起源の外来抗原を提示する細胞によって活性化され得る。この応答は、異常な応答が、宿主に対して損傷を引き起こし得るので、種々の免疫チェックポイントを通じて高度に調節される。正常な状態下では、免疫チェックポイント系は、T細胞による過剰な活性化またはエフェクター活性を防止する、複雑な一連の細胞シグナルおよび分子相互作用である。しかしながら、正(共刺激)と負(抑制)のシグナル伝達のこのバランスは、非正常状態によって破壊され、免疫応答または免疫監視を抑制する異常な微小環境をもたらし得る。このような免疫耐性は、がんまたは感染症などのある特定の病原性状態をもたらし得る。
【0008】
T細胞活性化の代表的な負の初期調節因子の1つは、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)である。細胞傷害性T細胞の活性化は、細胞表面においてCTLA−4の発現をもたらし、次いで、これは、抗原提示細胞(APC)に対するそれらの相互共有リガンドであるB7−1(CD80)またはB7−2(CD86)について、共刺激分子であるCD28と競合する。これらの競合する正および負のシグナルは、同時に、自己限定的な方法でT細胞が機能し続けることを可能にしながら、チェックにおける初期段階の細胞傷害性活性を保持する(例えば、Teftら、Ann. Rev. Immunol. 24巻、65頁、2006年を参照)。
【0009】
T細胞表面において見いだされる代表的な後期阻害性受容体は、PD−1であり、これは、APCにおいて見いだされる、そのリガンドの1つである、PD−L1(B7−H1、CD274)またはPD−L2(B7−DC、CD73)によって結合した場合に、阻害性シグナルを伝達することができる。PD−1は、炎症中の末梢組織におけるT細胞のエフェクター機能を制限し、寛容を維持することを助ける(すなわち、自己免疫を最小化する)(Franciscoら、Immunol. Rev. 236巻、219頁、2010年を参照)。T細胞表面において見いだされるさらなる代表的な阻害性受容体は、CD200R、LAG3、BTLA、KIR、SIRPα、TIM3およびA2aRを含む。
【0010】
本開示は、PD−1、PD−L1、LAG3およびIL−10などの1つまたは複数の種々の免疫抑制成分の低減を、媒介または促進するためのMNK特異的阻害剤の驚くべき能力、ならびに調節性T細胞(Treg)の量をモジュレートするための能力およびエフェクターT細胞(T)の機能の抑制を効果的に低減させるまたは最小化する能力を述べる。加えて、MNK特異的阻害剤は、主要組織適合複合体(MHCまたはHLA)クラスII分子の発現の増加を媒介するまたは促進する能力があり、これは抗原提示を促進することができる。MNK特異的阻害剤は、免疫チェックポイント分子の阻害剤またはモジュレーター(例えば、抗PD−1、抗PD−L1または抗CTLA−4抗体;例えば、Pardol、Nature Rev. Cancer 12巻、252頁、2012年を参照)などの免疫抑制成分の特異的阻害剤または特異的モジュレーターの可能な代替として、またはこれらと組み合わせて使用することができる。
【0011】
免疫抑制活性(例えば、MHC/HLA発現の増加)を低減または克服することができる他の分子にも影響を及ぼし得る、MNK特異的阻害剤の投与による1つまたは複数の免疫抑制成分(例えば、PD−1、PD−L1、LAG3、IL−10)のこのような低減は、例えば、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性を増加させること;免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させること;免疫応答を誘導するまたは増強すること;免疫応答を延長すること;抗原特異的T細胞応答を刺激すること;などによる疾患の進行を、処置するためまたは低減させるために使用することができる。例えば、免疫耐性と関連する疾患(例えば、PD−1、PD−L1またはLAG3の調節不全が関与する疾患などの免疫抑制成分が媒介する疾患)を有する被験体(例えば、ヒト)を、MNK特異的阻害剤で処置して、被験体における免疫応答を、誘導するまたは増強することができる。代表的な免疫耐性と関連する疾患は、がんおよび感染性疾患を含む。加えて、MNK特異的阻害剤は、非抑制的な(正常な、誘導されたまたは増強された)免疫応答が有利である疾患を処置するために、免疫チェックポイント分子に対して特異的な抗体(例えば、抗PD−1、抗PD−L1、抗LAG3、抗CTLA−4、キナーゼ阻害剤)などの免疫抑制成分に対する(さらに増強する)他の治療と組み合わせて使用することができる。
【0012】
本開示をより詳細に説明する前に、本明細書において使用される特定の用語の定義を提供することは、その理解を助けるために有用であり得る。追加の定義を、本開示全体にわたって説明する。
【0013】
本明細書において、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率の範囲または整数の範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むものと理解されるべきである。また、本明細書において、ポリマーのサブユニット、サイズまたは厚さなどの任意の物理的特徴に関して列挙された任意の数字の範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数を含むものと理解されるべきである。本明細書において使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、指示された範囲、値または構造の±20%を意味する。「から本質的になる」という用語は、特許請求の範囲を、特定の材料もしくはステップ、または特許請求の範囲に記載された発明の基礎的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本明細書において使用される「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、列挙された成分の「1つまたは複数(one or more)」を指すことが理解されるべきである。選択肢(例えば、「または(or)」)の使用は、選択肢のいずれか1つ、両方またはこれらの任意の組合せを意味すると理解されるべきである。本明細書において使用される場合、「含む(include)」「有する(have)」および「含む(comprise)」という用語は、同意語として使用され、この用語およびこれらの変形は、非限定的であると解釈されることを意図している。
【0014】
「アミノ」は、−NH置換基を指す。
【0015】
「アミノカルボニル」は、−C(O)NH置換基を指す。
【0016】
「カルボキシル」は、−COH置換基を指す。
【0017】
「カルボニル」は、−C(O)−または−C(=O)−基を指す。両方の表示は、本明細書において互換可能に使用される。
【0018】
「シアノ」は、−C≡N置換基を指す。
【0019】
「シアノアルキレン」は、−(アルキレン)C≡N置換基を指す。
【0020】
「アセチル」は、−C(O)CH置換基を指す。
【0021】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、−OH置換基を指す。
【0022】
「ヒドロキシアルキレン」は、−(アルキレン)OH置換基を指す。
【0023】
「オキソ」は、=O置換基を指す。
【0024】
「チオ」または「チオール」は、−SH置換基を指す。
【0025】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子(C〜C12アルキル)、1〜8個の炭素原子(C〜Cアルキル)、または1〜6個の炭素原子(C〜Cアルキル)を有する、炭素原子および水素原子のみからなる、飽和の、直鎖または分枝状の炭化水素鎖ラジカルを指し、これは、単結合によって、分子の残部と結合する。代表的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)、3−メチルヘキシル、2−メチルヘキシルなどを含む。
【0026】
「低級アルキル」は、上記定義のアルキルと同じ意味を有するが、1〜4個の炭素原子(C〜Cアルキル)を有する。
【0027】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合、および2〜12個の炭素原子(C〜C12アルケニル)、2〜8個の炭素原子(C〜Cアルケニル)、または2〜6個の炭素原子(C〜Cアルケニル)を有する、不飽和のアルキル基を指し、これは、単結合によって、分子の残部と結合し、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどである。
【0028】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合、および2〜12個の炭素原子(C〜C12アルキニル)、2〜10個の炭素原子(C〜C10アルキニル)、2〜8個の炭素原子(C〜Cアルキニル)、または2〜6個の炭素原子(C〜Cアルキニル)を有する、不飽和のアルキル基を指し、これは、単結合によって、分子の残部と結合し、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどである。
【0029】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、それぞれ、炭素および水素のみからなる、分子の残部がラジカル基と連結する、直鎖または分枝状の二価の炭化水素(アルキル)鎖を指す。アルキレンは、1〜12個の炭素原子を有することができ、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n−ブチレンなどである。アルキレン鎖は、単結合または二重結合を介して分子の残部と結合する。アルキレン鎖の分子の残部への結合点は、鎖中の1個の炭素または任意の2個の炭素を介してであってよい。「任意選択で置換されるアルキレン」は、アルキレンまたは置換アルキレンを指す。
【0030】
「アルケニレン」は、二価のアルケンを指す。アルケニレンの例は、限定されず、エテニレン(−CH=CH−)、ならびにその全ての立体異性体および配座異性体を含む。「置換アルケニレン」は、二価の置換アルケンを指す。「任意選択で置換されるアルケニレン」は、アルケニレンまたは置換アルケニレンを指す。
【0031】
「アルキニレン」は、二価のアルキンを指す。アルキニレンの例は、限定されず、エチニレン、プロピニレンを含む。「置換アルキニレン」は、二価の置換アルキンを指す。
【0032】
「アルコキシ」は、式−OR(Rは、上記定義の指示された数の炭素原子を有するアルキルである)のラジカルを指す。アルコキシ基の例は、限定されず、−O−メチル(メトキシ)、−O−エチル(エトキシ)、−O−プロピル(プロポキシ)、−O−イソプロピル(イソプロポキシ)などを含む。
【0033】
「アシル」は、式−C(O)R(Rは、指示された数の炭素原子を有するアルキルである)のラジカルを指す。
【0034】
「アルキルアミニル」は、式−NHRまたは−NR(それぞれのRは、独立して、上記定義の指示された数の炭素原子を有するアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0035】
「シクロアルキルアミニル」は、式−NHR(Rは、本明細書に定義のシクロアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0036】
「アルキルカルボニルアミニル」は、式−NHC(O)R(Rは、本明細書に定義の指示された数の炭素原子を有するアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0037】
「シクロアルキルカルボニルアミニル」は、式−NHC(O)R(Rは、本明細書に定義のシクロアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0038】
「アルキルアミノカルボニル」は、式−C(O)NHRまたは−C(O)NR(それぞれのRは、独立して、本明細書に定義の指示された数の炭素原子を有するアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0039】
「シクロアルキルアミノカルボニル(Cyclolkylaminocarbonyl)」は、式−C(O)NHR(Rは、本明細書に定義のシクロアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0040】
「アリール」は、水素原子、6〜18個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系ラジカルを指す。代表的なアリールは、水素原子および6〜9個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系ラジカル;水素原子および9〜12個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系ラジカル;水素原子および12〜15個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系ラジカル;または水素原子および15〜18個の炭素原子および少なくとも1個の芳香環を含む炭化水素環系ラジカルである。本発明の目的のために、アリールラジカルは、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってよく、これは、縮合環系または架橋環系を含んでいてよい。アリールラジカルは、限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから誘導されるアリールラジカルを含む。「任意選択で置換されるアリール」は、アリール基または置換アリール基を指す。
【0041】
「アリーレン」は、二価のアリールを意味し、「置換アリーレン」は、二価の置換アリールを指す。
【0042】
「アラルキル」または「アラアルキレン」は、互換可能に使用されてよく、式−R−R(Rは、本明細書に定義のアルキレン鎖であり、Rは、本明細書に定義の1つまたは複数のアリールラジカルである)のラジカルを指し、例えば、ベンジル、ジフェニルメチルなどである。
【0043】
「シクロアルキル」は、炭素原子および水素原子のみからなる、安定な、非芳香族の、単環式または多環式炭化水素ラジカルを指し、これは、3〜15個の炭素原子、好ましくは3〜10個の炭素原子、3〜9個の炭素原子、3〜8個の炭素原子、3〜7個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、3〜5個の炭素原子を有する縮合環系または架橋環系、4個の炭素原子を有する環または3個の炭素原子を有する環を含んでいてよい。シクロアルキル環は、飽和または不飽和であってよく、単結合によって分子の残部と結合する。単環式ラジカルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。多環ラジカルは、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどを含む。
【0044】
「シクロアルキルアルキレン」または「シクロアルキルアルキル」は、互換可能に使用されてよく、式−R(Rは、本明細書に定義のアルキレン鎖であり、Rは、本明細書に定義のシクロアルキルラジカルである)のラジカルを指す。ある特定の実施形態では、Rは、シクロアルキルアルキレンが2個のシクロアルキル部分を含むように、シクロアルキル基でさらに置換される。シクロプロピルアルキレンおよびシクロブチルアルキレンが、代表的なシクロアルキルアルキレン基であり、少なくとも1個のシクロプロピル基または少なくとも1個のシクロブチル基をそれぞれ含む。
【0045】
「縮合」は、本発明の化合物において、存在する環構造と縮合した本明細書に記載の任意の環構造を指す。縮合環がヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、縮合ヘテロシクリル環または縮合ヘテロアリール環の一部になる、存在する環構造上の任意の炭素原子は、窒素原子と置き換わってよい。
【0046】
「ハロ」または「ハロゲン」は、ブロモ(臭素)、クロロ(塩素)、フルオロ(フッ素)またはヨード(ヨウ素)を指す。
【0047】
「ハロアルキル」は、アルキル基の1つまたは複数の水素原子が、上記定義のハロゲン(ハロラジカル)で置換された、本明細書に定義の指示された数の炭素原子を有するアルキルラジカルを指す。ハロゲン原子は、同一または異なっていてよい。代表的なハロアルキルは、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、3−ブロモ−2−フルオロプロピル、1,2−ジブロモエチルなどである。
【0048】
「ヘテロシクリル」、「複素環」または「複素環式環」は、2〜12個の炭素原子、ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される、1〜6個のヘテロ原子、例えば、1〜5個のヘテロ原子、1〜4個のヘテロ原子、1〜3個のヘテロ原子、または1〜2個のヘテロ原子からなる、安定な3〜18員の飽和または不飽和ラジカルを指す。代表的な複素環は、限定されず、安定な3〜15員の飽和もしくは不飽和ラジカル、安定な3〜12員の飽和もしくは不飽和ラジカル、安定な3〜9員の飽和もしくは不飽和ラジカル、安定な8員の飽和もしくは不飽和ラジカル、安定な7員の飽和もしくは不飽和ラジカル、安定な6員の飽和もしくは不飽和ラジカル、または安定な5員の飽和もしくは不飽和ラジカルを含む。
【0049】
本明細書において特に明記しない限り、ヘテロシクリルラジカルは、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってよく、これは、縮合環系または架橋環系を含んでいてよく;ヘテロシクリルラジカルにおける窒素原子、炭素原子または硫黄原子は、任意選択で酸化されてよく;窒素原子は、任意選択で四級化されてよく;ヘテロシクリルラジカルは、部分的または完全に飽和であってよい。非芳香族ヘテロシクリルラジカルの例は、限定されないが、アゼチジニル、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、チエタニル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1−オキソ−チオモルホリニル、および1,1−ジオキソ−チオモルホリニルを含む。ヘテロシクリルは、本明細書に定義のヘテロアリール、および以下のヘテロアリールの定義において列挙される芳香族ヘテロシクリルの例を含む。
【0050】
「ヘテロシクリルアルキル」または「ヘテロシクリルアルキレン」は、式−R(Rは、本明細書に定義のアルキレン鎖であり、Rは、上記定義のヘテロシクリルラジカルであり、ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルである場合、ヘテロシクリルは、窒素原子でアルキルラジカルと結合してよい)のラジカルを指す。
【0051】
「ヘテロアリール」または「ヘテロアリーレン」は、水素原子、1〜13個の炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜6個のヘテロ原子、ならびに少なくとも1個の芳香環を含む、5〜14員の環系ラジカルを指す。本発明の目的のために、ヘテロアリールラジカルは、少なくとも1個のヘテロ原子、少なくとも2個のヘテロ原子、少なくとも3個のヘテロ原子、少なくとも4個のヘテロ原子、少なくとも5個のヘテロ原子または少なくとも6個のヘテロ原子を含む、安定な5〜12員環、安定な5〜10員環、安定な5〜9員環、安定な5〜8員環、安定な5〜7員環または安定な6員環であってよい。ヘテロアリールは、単環式、二環式、三環式または四環式環系であってよく、これは、縮合環系または架橋環系を含んでいてよく;ヘテロアリールラジカルにおける窒素原子、2個の炭素原子または硫黄原子は、任意選択で酸化されてよく;窒素原子は、任意選択で四級化されてよい。ヘテロ原子は、芳香環または非芳香環のメンバーであってよく、但しヘテロアリールにおける少なくとも1つの環は芳香族である。例は、限定されないが、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4−ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2−オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1−オキシドピリジニル、1−オキシドピリミジニル、1−オキシドピラジニル、1−オキシドピリダジニル、1−フェニル−1H−ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、およびチオフェニル(すなわち、チエニル)を含む。
【0052】
「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアリールアルキレン」は、式−R(Rは、上記定義のアルキレン鎖であり、Rは、上記定義のヘテロアリールラジカルである)のラジカルを指す。
【0053】
「チオアルキル」は、式−SR(Rは、1〜12個の炭素原子、少なくとも1〜10個の炭素原子、少なくとも1〜8個の炭素原子、少なくとも1〜6個の炭素原子、または少なくとも1〜4個の炭素原子を含有する上記定義のアルキルラジカルである)のラジカルを指す。
【0054】
「ヘテロシクリルアミニル」は、式−NHR(Rは、上記定義のヘテロシクリルラジカルである)のラジカルを指す。
【0055】
「チオン」は、飽和または不飽和の(C〜C)環式または(C〜C)非環式部分の炭素原子と結合した=S基を指す。
【0056】
「スルホキシド」は、硫黄原子が2個の炭素原子に共有結合した、−S(O)−基を指す。
【0057】
「スルホン」は、六価の硫黄が、二重結合を介して2個の酸素原子のそれぞれと結合し、共有単結合を介して2個の炭素原子とさらに結合した−S(O)−基を指す。
【0058】
「オキシム」という用語は、−C(R)=N−ORラジカル(Rは、上記定義の、水素、低級アルキル、アルキレンまたはアリーレン基である)を指す。
【0059】
本発明の化合物は、種々の異性体、ならびに、単一の互変異性体および互変異性体の混合物の両方を含む、1つまたは複数の互変異性形態として存在し得る。「異性体」という用語は、化合物の互変異性形態を含む、本発明の化合物の全ての異性体を包含することを意図する。
【0060】
本明細書に記載の一部の化合物は、不斉中心を有していてよく、したがって、異なるエナンチオマー形態およびジアステレオマー形態で存在していてよい。本発明の化合物は、光学異性体またはジアステレオマーの形態であってよい。したがって、本発明は、ラセミ混合物を含む、これらの光学異性体、ジアステレオマーおよびこれらの混合物の形態の、本明細書に記載の本発明の化合物およびそれらの使用を包含する。本発明の化合物の光学異性体は、不斉合成、キラルクロマトグラフィーまたは光学活性分割剤の使用による立体異性体の化学的分離などの、公知の手法によって得ることができる。
【0061】
別段の指示がない限り、「立体異性体」は、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まない化合物の1つの立体異性体を意味する。したがって、1つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の逆のエナンチオマーを実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。典型的な立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%超のその化合物の1つの立体異性体および約20重量%未満のその化合物の他の立体異性体を含み、例えば、約90重量%超のその化合物の1つの立体異性体および約10重量%未満のその化合物の他の立体異性体、または約95重量%超のその化合物の1つの立体異性体および約5重量%未満のその化合物の他の立体異性体、または約97重量%超のその化合物の1つの立体異性体および約3重量%未満のその化合物の他の立体異性体を含む。
【0062】
表された構造およびその構造に与えられた名称の間に食い違いがある場合、表された構造が優先される。さらに、構造または構造の一部の立体化学が、例えば、太線または破線で示されていない場合、構造または構造の一部は、その全ての立体異性体を包含するものとして解釈されるべきである。しかしながら、場合によっては、1個より多くのキラル中心が存在する場合、構造および名称は、それぞれの立体化学の記載を助けるために、単一のエナンチオマーとして表す場合がある。有機合成の当業者にとっては、化合物が、それを調製するために使用された方法から単一のエナンチオマーとして調製されるかどうかは公知であろう。
【0063】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の、薬学的に許容される、有機酸もしくは無機酸または塩基の塩である。代表的な薬学的に許容される塩は、例えば、酢酸塩、アムソン酸塩(4,4−ジアミノスチルベン−2,2−ジスルホン酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フィウナル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルニサル酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1−メタン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩、エインボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロ酸、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩(sulfosaliculate)、スラム酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(alkali earth salts)、アンモニウム塩、水溶性および水不溶性塩を含む。薬学的に許容される塩は、その構造内に1つより多くの荷電した原子を有し得る。この例において、薬学的に許容される塩は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の荷電した原子および/または1つまたは複数の対イオンを有し得る。
【0064】
加えて、本明細書に記載の構造および置換基の種々の組合せから誘導される、個々の化合物または化合物群は、各化合物または化合物群を個々に説明する場合と同じ程度で本明細書によって開示されることが理解されるべきである。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本開示の範囲内である。
【0065】
本明細書において使用される場合、「誘導体」という用語は、酵素を用いるまたは用いない、化学的または生物学的手段による化合物の修飾を指し、この修飾された化合物は、親化合物に構造的に類似しており、(実際にまたは理論的に)その親化合物から誘導可能である。一般に、親化合物が、「誘導体」を得るための出発物質であってよく、一方、親化合物が「アナログ」を得るための出発物質として使用される必要がなくてよい点で、「誘導体」は、「アナログ」と相違する。誘導体は、親化合物と比較して、より親水性であるか、または変化した反応性を有するなど、親化合物と、異なる化学的、生物学的または物理的性質を有していてよい。誘導体化(すなわち、修飾)は、分子内の1つまたは複数の部分の置換基が関与してよい(例えば、官能基の変化)。例えば、水素は、フッ素または塩素などのハロゲンで置換されてよく、ヒドロキシル基(−OH)は、カルボン酸部分(−COOH)で置き換えられてよい。他の代表的な誘導体化は、グリコシル化、アルキル化、アシル化、アセチル化、ユビキチン化、エステル化およびアミド化を含む。
【0066】
「誘導体」という用語は、親化合物の、全ての溶媒和物、例えば、水和物または付加物(例えば、アルコールとの付加物)、活性代謝物および塩も指す。塩の種類は、化合物内の部分の性質に依存する。例えば、カルボン酸基などの酸性基は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を形成することができる(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および生理学的に忍容できる四級アンモニウムイオンとの塩、ならびにアンモニア、および、例えばトリエチルアミン、エタノールアミンまたはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの生理学的に忍容できる有機アミンとの酸付加塩)。塩基性基は、例えば、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸と、あるいは酢酸、クエン酸、乳酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸もしくはp−トルエンスルホン酸などの有機カルボン酸または有機スルホン酸と、酸付加塩を形成することができる。塩基性基および酸性基、例えば、塩基性の窒素原子に加えてカルボキシル基を同時に含有する化合物は、双性イオンとして存在し得る。塩は、当業者に公知の通常の方法によって、例えば、溶媒または希釈剤中で、化合物を、無機酸もしくは有機酸または塩基と組み合わせることによって、あるいは他の塩からカチオン交換またはアニオン交換によって得ることができる。
【0067】
「プロドラッグ」という用語は、患者への投与に際して、活性な薬理作用のある薬剤になる前に代謝プロセスによる化学的変換を受けなければならない化合物である、薬物の前駆体を指す。式Iに従う化合物の代表的なプロドラッグは、エステル、アセトアミドおよびアミドである。
【0068】
本明細書において使用される場合、「免疫細胞」は、造血幹細胞(例えば、骨髄中)が起源である免疫系の任意の細胞を意味し、これは、骨髄系前駆細胞(骨髄系由来サプレッサー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球などの骨髄系細胞が挙げられる)およびリンパ球系前駆細胞(T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球系細胞が挙げられる)の2つの主要系列を挙げることができる。代表的な免疫系細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、調節性T細胞、抗原提示細胞(APC)、ナチュラルキラー細胞および樹状細胞を含む。マクロファージ、樹状細胞および疾患細胞(例えば、がん細胞)は、「抗原提示細胞」または「APC」として言及することができ、これは、MHC(HLA)受容体が、T細胞表面上でTCRと相互作用するAPCの表面上で抗原性ペプチドと複合体を形成したときに、T細胞を活性化することができる細胞である。ある特定の実施形態では、APCは、がん細胞または腫瘍細胞である。
【0069】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」という用語は、免疫細胞、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓によって産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を指し、選択的な損傷をもたらして、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん性細胞、または自己免疫もしくは病理学的炎症の場合において正常なヒト細胞もしくは組織を、破壊またはヒト体内から排除する。ある特定の実施形態では、免疫応答は、抗原特異的T細胞応答を含む。
【0070】
「免疫応答を誘導するまたは増強する」という語句は、免疫細胞(例えば、T細胞)の原因となり、またはこれを刺激して、維持または増幅された生理学的機能を有することを指す。例えば、誘導されたまたは増強されたT細胞応答は、CD8T細胞によるサイトカイン産生の増加、増殖の増加、または介入前の応答に対する抗原応答性の増加を含む。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤と接触後の増強された免疫細胞(例えば、T細胞)の応答のレベルは、MNK特異的阻害剤と接触していない免疫細胞と比較して、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%またはそれ超である。免疫応答を誘導するか否かまたは増強するか否かを決定するサイトカインのレベル(例えば、IL−2、IL−10、IFNγ)を検出するためのアッセイは、Dossusらによって記載されたマルチプレックスアッセイである(J. Immunol. Methods 350巻、125頁、2009年)。免疫応答を誘導するか否かまたは増強するか否かを決定するT細胞の増殖を検出するためのアッセイは、Liuらによって記載されたアッセイである(Clin. Cancer Res. 21巻、1639頁、2015年)。抗原応答性の増加を決定するためのアッセイは、Tumehらによって記載されたアッセイである(Nature 515巻、568頁、2014年)。
【0071】
「免疫応答を延長する」という語句は、免疫細胞(例えば、T細胞)の原因となり、またはこれを刺激して、維持または増幅された生物学的機能を発揮し続けることを指す。ある特定の実施形態では、延長された免疫応答は、処置を停止した後、一定の抗原特異的な細胞傷害性T細胞の、経時的な腫瘍の成長もしくはサイズの低減、または検出可能な疾患の低減である。例えば、腫瘍のサイズは、処置の開始時の腫瘍サイズと比較して、同じサイズを維持または収縮し得る。一部の実施形態では、延長された免疫応答は、処置の期間と少なくとも同じ期間、または処置の期間の少なくとも1.5倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍またはそれ超、持続し得る。
【0072】
免疫細胞または免疫応答の「ダウンモジュレーションが低減する」という語句は、抑制成分またはシグナルから免疫細胞または免疫系を開放するまたは放出することを指す。例えば、ダウンモジュレーションの低減は、CD8T細胞によるサイトカイン(例えば、IFNγ)産生の増加、腫瘍中の免疫細胞(例えば、T細胞)の数の増加、腫瘍中のT細胞クローンの数の増加、T細胞とTreg細胞の比率の増加またはこれらの任意の組合せを含んでいてよい。ある特定の実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)または免疫応答のダウンモジュレーションの低減のレベルは、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%またはそれ超の、検出可能な疾患(例えば、腫瘍のボリューム、感染病原体)の低減である。他の実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)または免疫応答のダウンモジュレーションの低減のレベルは、無憎悪生存期間の増加であり、この要因は、処置されるがんに応じて変化し、この要因は、当業者には公知である。
【0073】
「主要組織適合性複合体分子」(MHC分子)は、互換可能に使用され、ヒトのカウンターパートである「ヒト白血球抗原」(HLA分子)を指すこと、細胞表面にペプチド抗原を送達する糖タンパク質を指すことも理解される。MHCまたはHLAクラスI分子は、膜貫通α鎖(3つのαドメインを有する)および非共有結合的に結合するβ2ミクログロブリンからなるヘテロ二量体である。MHCまたはHLAクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質αおよびβで構成され、この両方は、膜を貫通する。それぞれの鎖は、2つのドメインを有する。MHCまたはHLAクラスI分子は、サイトゾルに起源をもつペプチドを細胞表面に送達し、そこで、ペプチド:MHC(または、ヒトにおいてはペプチド:HLA)複合体は、CD8T細胞によって認識される。MHCクラスI分子と複合体を形成するT細胞ペプチド抗原(すなわち、T細胞によって認識されるエピトープを含有する)は、MHCクラスIエピトープとして言及される。MHCクラスIエピトープは、T細胞受容体(TCR)によって認識され、一般に、約8アミノ酸〜約11アミノ酸の範囲の長さを有するペプチド抗原において見いだされる。MHCクラスII分子は、小胞系に起源をもつペプチドを細胞表面に送達し、そこで、これらはCD4T細胞受容体によって認識される。MHCクラスII分子によって提示されたT細胞ペプチド抗原は、MHCクラスIIエピトープとして言及される。MHCクラスIIエピトープは、一般に、約13〜約17アミノ酸の範囲の長さを有するペプチド抗原において見いだされる。MHC分子は、ヒト(HLA)、マウス、ラットまたは他の哺乳動物を含む、種々の動物種からのものであってよい。
【0074】
「T細胞受容体」(TCR)は、T細胞(または、Tリンパ球)の表面において見いだされる分子を指し、これは、CD3と関連して、一般に、MHC(HLA)分子に結合する抗原を認識するための原因となる。TCRは、ほとんどのT細胞において、高度に可変性のα鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)のジスルフィド連結したヘテロ二量体を有する。T細胞のサブセットにおいて、TCRは、可変性のγおよびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)のヘテロ二量体で作られている。TCRのそれぞれの鎖は、免疫グロブリンのスーパーファミリーのメンバーであり、1つのN末端免疫グロブリンの可変性ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域およびC末端における短い細胞質側末端を有する(Janewayら、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease、第3版、Current Biology Publications、4:33頁、1997年を参照)。
【0075】
本明細書において使用される場合、「抗原特異的T細胞応答」という用語は、MHC(HLA)クラスIまたはクラスIIと複合体を形成するペプチド抗原と特異的に結合するTCRを有するT細胞による応答を指す。CD8エフェクターT細胞は、抗原性ペプチドを制限するHLAクラスIを認識し、同種抗原を発現する標的の細胞を直接死滅させることが可能である。CD4ヘルパーT細胞は、抗原性ペプチドを制限するHLAクラスIIを認識し、炎症およびエフェクター免疫応答を媒介する種々のサイトカインを産生する。CD4ヘルパーT細胞は、CD8エフェクターT細胞およびB細胞の活性化も促進する。調節性T細胞(Treg)は、免疫応答を阻害するCD4T細胞であり、TGFβ、IL−10、IL−4、IL−1RAおよびIL−35などの阻害性サイトカインを産生する。抗原特異的刺激に対するT細胞による応答の非限定的な例は、活性化、増殖およびサイトカイン産生(例えば、IL−2、IFNγ産生)を含む。
【0076】
本明細書において使用される場合、「免疫抑制成分」という用語は、免疫応答の制御または抑制を支援する阻害性シグナルを提供する、1つまたは複数の細胞、タンパク質、分子、化合物または複合体を指す。例えば、免疫抑制成分は、免疫刺激を部分的もしくは完全に阻止する;免疫活性化を低下させる、防止するもしくは遅らせる;または、免疫抑制を増加させる、活性化するもしくは上方調節する、これらの分子を含む。「免疫応答を制御するまたは抑制する」とは、本明細書において使用される場合、抗原提示、T細胞の活性化、T細胞の増殖、T細胞のエフェクター機能、サイトカインの分泌または産生、および標的細胞の溶解の任意の1つまたは複数を低減させることを意味する。このようなモジュレーション、制御または抑制は、過剰増殖疾患または障害(例えば、がん、慢性感染症)の持続を促進または許容することができる。
【0077】
代表的な免疫抑制成分は、免疫チェックポイントリガンド(PD−L1、PD−L2、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、アデノシン、GAL9など)、免疫チェックポイント受容体(PD−1、CTLA−4、BTLA、KIR、LAG3、TIM3、A2aRなど)、代謝酵素(アルギナーゼ、インドールアミン、2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)など)、免疫抑制サイトカイン(IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35など)、Treg細胞またはこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、免疫抑制成分は、免疫チェックポイント分子であり、これは、抗原特異的T細胞応答をモジュレートする(例えば、阻害する)ことなどによるリガンド−受容体相互作用を通じて免疫抑制シグナルを引き起こし得る。例えば、T細胞は、その表面において、免疫チェックポイント受容体(例えば、PD−1、LAG3)を発現してよく、抗原提示細胞は、その表面において、免疫チェックポイント受容体リガンド(例えば、PD−L1、MHC/HLA分子)を発現してよい。さらなる実施形態では、免疫抑制成分は、リンパ球、特にT細胞の生存および機能に関して必須のアミノ酸の局所的な欠乏を通して免疫応答を阻害する代謝酵素である。よりさらなる実施形態では、免疫抑制成分は、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)などのシグナル伝達分子であってよい。よりさらなる実施形態では、免疫抑制成分は、免疫応答を阻害する能力、および免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−13、IL−1RA)を産生または放出する能力を有するCD4reg細胞を含む。
【0078】
さらにまた、免疫抑制成分(例えば、IL−10)は、主要組織適合複合体(MHC)またはヒト白血病抗原(HLA)分子の発現またはレベルの低減を引き起こしてよく、これは、順番に、抗原提示を低減させ、それによってT細胞活性化および対応する免疫応答を低減、妨害または検出可能に阻止することができる。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、免疫抑制成分の量の低減または活性の阻害を引き起こしてよく、これは、順番に、MHC/HLA分子(例えば、クラスII)の発現の増加をもたらすことができる。MNK特異的阻害剤によって媒介される免疫抑制成分の低減または阻害によるこのようなMHC/HLAのレベルの増加は、免疫抑制成分の低減または阻害なしと比較して、抗原提示を改善することができ、または免疫応答を誘導もしくは増強することができる。
【0079】
「免疫耐性」という用語は、細胞または生物体(例えば、がん細胞、ウイルス感染細胞、細菌細胞、真菌、寄生虫)のどれかによる、免疫系による認識または排除を、抵抗する、最小化する、逃れるまたは回避するプロセスを指す。免疫耐性は、(a)免疫抑制もしくは寛容の増加、(b)免疫抑制もしくは寛容の、活性化を改変する、増加する、増強する、促進する、強めるもしくは上方調節するための細胞もしくは生物体の能力、または(c)細胞もしくは生物体によって発現した抗原の免疫系の無知もしくは遮断を促進するための細胞もしくは生物体の能力、あるいはこれらの任意の組合せが原因であってよい。ある特定の実施形態では、免疫耐性は、がん、腫瘍もしくは慢性感染症などの疾患または障害と関連する。
【0080】
本明細書において使用される場合、「免疫耐性と関連する疾患」は、ある特定の免疫チェックポイント経路を利用して、免疫系を抑制する疾患または障害を意味し、したがって、疾患または障害は、特に、例えば、腫瘍または感染性疾患抗原に対して特異的なT細胞に対する免疫耐性の表現型とともに存在する。
【0081】
本明細書において使用される場合、「MNK」という用語は、「マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)と相互作用するセリン/スレオニンキナーゼ」または「MKNK」としても公知であり、成長因子であるホルボールエステルとRasおよびMosなどのオンコジーンに応答して、ならびにストレスシグナル伝達分子およびサイトカインによって誘発される、p42 MAPキナーゼERK1およびERK2、ならびにp38−MAPキナーゼによってリン酸化されるキナーゼを指す。MNKは、インターロイキン−1受容体が関連するキナーゼ2(IRAK2)およびIRAK4によって影響を受ける追加のMAPキナーゼによってリン酸化されるキナーゼも指し、これは、トール様受容体(例えば、TLR7)を通じた生得的な免疫応答のシグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼである(例えば、Wanら、J. Biol. Chem. 284巻、10367頁、2009年を参照)。MNKタンパク質のリン酸化は、真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)に対するそれらのキナーゼ活性を刺激し、これは、順番に、キャップ依存性タンパク質の翻訳開始、およびhnRNPA1およびPSF(PTB(ポリピリミジントラクト結合タンパク質)が関連するスプライシング因子)を含む、他のエフェクター配列の会合を調節する。例えば、ある特定のmRNA(例えば、サイトカイン)の調節性のAUリッチ領域(ARE)の3’−UTRと結合するタンパク質は、MNKによってリン酸化される。したがって、タンパク質のMNKリン酸化は、真核生物のmRNAの5’−または3’−UTRと結合するこれらのタンパク質の能力を変化させることができる。特に、MNKが媒介する低減したhnRNPA1のリン酸化は、サイトカイン−AREへのその結合を低下させる(例えば、Buxade'ら、Immunity 23巻、177頁、2005年;JoshiおよびPlatanias、Biomol. Concepts 3巻、127頁、2012年を参照)。MNKは、2つの異なる遺伝子のMNK1およびMNK2によってコードされ、これは、両方とも選択的スプライシングに供される。MNK1aおよびMNK2aは、全長転写物を表し、一方、MNK1bおよびMNK2bは、MAPK結合ドメインを欠いたスプライスバリアントである。したがって、MNKは、MNK1もしくはそのバリアント(MNK1aまたはMNK1bなど)、MNK2もしくはそのバリアント(MNK2aまたはMNK2bなど)、またはこれらの組合せを指してよい。特定の実施形態では、MNKは、ヒトMNKを指す。
【0082】
「モジュレートする」、「モジュレーション」などの用語は、免疫チェックポイント分子または関連するサイトカイン(例えば、PD−1、PDL−1、LAG3、IL−10など)などの免疫抑制成分の機能、活性またはレベルを増加または低下させる化合物の能力を指す。種々の形態における「モジュレーション」は、免疫チェックポイント分子または免疫抑制サイトカインなどの免疫抑制成分と関連する活性の、阻害、アンタゴニズム、部分的アンタゴニズム、活性化、アゴニズムまたは部分的アゴニズムを包含することを意図する。例えば、活性の低下または阻害を含むモジュレーションは、免疫チェックポイント分子または免疫抑制サイトカインなどの免疫抑制成分の発現の低減によって間接的に引き起こされてよい。免疫チェックポイント分子または免疫抑制サイトカインなどの免疫抑制成分を、直接的または間接的にモジュレートする化合物の能力は、本技術分野において公知の生化学的および細胞系アッセイにおいて実証することができる(例えば、実施例1〜3を参照)。
【0083】
「阻害する」または「阻害剤」という用語は、(1)対照、内在性または基準の標的もしくは経路、または(2)標的もしくは経路の欠如に対する標的またはシグナル伝達経路の発現、量または活性における、直接的または間接的な、変化、干渉、低減、下方調節、阻止、抑制、抑止または分解を指し、ここで、変化、干渉、低減、下方調節、阻止、抑制、抑止または分解は、統計学的、生物学的または臨床的に有意である。
【0084】
例えば、「MNK阻害剤」は、MNK活性(例えば、キナーゼ活性または翻訳効果)を、阻止、不活性化、低減もしくは最小化してよく、または、MNKの分解の促進によって、活性は、無処置のMNKと比較して、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、もしくはそれ超で低減する。ある特定の実施形態では、MNK阻害剤は、eIF4E、hnRNPA1、PSFまたはこれらの組合せをリン酸化するMNKの能力を阻止、不活性化、低減もしくは最小化する。さらなる実施形態では、MNK阻害剤は、腫瘍細胞またはAPC(例えば、PD−L1)に対するリガンド、T細胞(例えば、PD−1、LAG3)の受容体、またはこのような細胞(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)によって産生される免疫抑制サイトカインなどの免疫抑制成分の発現を、低減または最小化する。阻害剤の非限定的な例は、小分子、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi分子などを含む。
【0085】
本明細書において使用される場合、「MNK特異的阻害剤」は、(a)MNK酵素(キナーゼ)活性を阻害する、(b)宿主細胞キノーム(kinome)(すなわち、MNK酵素以外)の残部に対して少なくとも約25倍劣る活性を有する、および(c)T細胞によるIL−2産生を著しく低減または阻害しない、化合物である。本明細書において使用される場合、「宿主細胞キノーム」は、表Aに列挙した412個のタンパク質および脂質キナーゼを指し(MNK酵素を含まない)、これは、目的の特定の生物体または細胞(例えば、ヒト)からのものであってよい。特定のMNK阻害剤がMNK特異的阻害剤であるか否かを決定するためのFRET系アッセイは、Rodemsらの方法を使用して、宿主細胞キノームにおいて行われる(Assay. Drug Dev. Technol. 1巻、9頁、2002年)。
【0086】
ある特定の実施形態では、表Aの宿主細胞キノームは、ヒト細胞からのものである。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、小分子であり、表Aに列挙した生物体または細胞のセリン/スレオニンキノームに対して少なくとも50倍劣る活性を有し、T細胞によるIL−2産生を著しく低減または阻害しない。特定の実施形態では、表Aのセリン/スレオニンキノームは、ヒト細胞からのものである。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、表Aのセリン/スレオニンキノーム酵素以外の、表Aのキノーム酵素に対して少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約55倍、少なくとも約60倍、少なくとも約65倍、少なくとも約70倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍劣る、少なくとも約200倍劣る、少なくとも約250倍劣る、少なくとも約300倍劣る、少なくとも約400倍劣る、少なくとも約500倍劣る、少なくとも約750倍劣る、少なくとも約1000倍劣る、またはさらに劣る活性を有し、T細胞によるIL−2産生を著しく低減または阻害しない。
【0087】
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【表A-5】
【表A-6】
【0088】
任意の上述の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、eIF4E、hnRNPA1、PSFまたはこれらの任意の組合せをリン酸化するMNK1a、MNK1b、MNK2a、MNK2bまたはこれらの任意の組合せの能力をさらに阻止、不活性化、低減もしくは最小化することができる。任意の上述の実施形態におけるMNK特異的阻害剤は、任意選択で、(i)T細胞の生存率、(ii)T細胞の増殖、(iii)APCにおけるMHCもしくはHLA分子の発現、または(iv)T細胞によるIL−2、CD25、IFNγもしくはこれらの任意の組合せの産生を、著しく低減または阻害しなくてよい。さらに、任意選択で、任意の上述の実施形態におけるMNK特異的阻害剤は、T細胞、APCまたは両方における1つまたは複数の免疫抑制成分(例えば、免疫チェックポイント分子、免疫抑制サイトカイン)の発現を、著しく低減または阻害することもできる。T細胞の生存率を測定するためのアッセイは、Mosmannによって記載されたアッセイである(J. Immunol. Meth. 65巻、55頁、1983年)。
【0089】
MNK特異的阻害剤に関して、「T細胞によるIL−2産生を著しく低減または阻害しない」とは、T細胞によるIL−2産生の低減または阻害が、MNK特異的阻害剤に曝露または接触していない同じT細胞と比較して、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、またはそれ未満であることを意味する。
【0090】
また、MNK特異的阻害剤に関して、「T細胞の生存率を著しく低減または阻害しない」、「T細胞の増殖を著しく低減または阻害しない」、「T細胞、APCまたは両方におけるMHCまたはHLA分子の発現を著しく低減または阻害しない」および「T細胞によるIL−2、CD25、IFNγまたはこれらの任意の組合せの産生を著しく低減または阻害しない」とは、T細胞の生存率;T細胞の増殖;T細胞、APCもしくは両方におけるMHCもしくはHLA分子の発現;またはT細胞によるIL−2、CD25、IFNγもしくはこれらの任意の組合せの産生;の低減または阻害が、MNK特異的阻害剤に曝露または接触していない同じ対応する細胞と比較して、それぞれ、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、またはそれ未満であることを指す。
【0091】
また、MNK特異的阻害剤に関して、「1つまたは複数の免疫抑制成分の発現を著しく低減または阻害する」とは、T細胞、APCまたは両方における1つまたは複数の免疫抑制成分の発現の低減または阻害が、MNK特異的阻害剤に曝露または接触していない同じT細胞またはAPCと比較して、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%または約75%であることを意味する。ある特定の実施形態では、APCは、がん細胞または腫瘍細胞である。
【0092】
阻害剤の存在下または非存在下でキナーゼ活性を検出するための他のアッセイは本技術分野において周知であり、これは、Karamanらによって教示されたアッセイ(Nat. Biotechnol. 26巻、127頁、2007年)などの、特定のMNK阻害剤が、MNK特異的阻害剤であることを示すためのFRET系宿主細胞キノームアッセイのバックアップとして使用することができる。サイトカインのレベル(例えば、IL−2、IL−10、IFNγ)を検出するためのアッセイは、R&D SystemsによるDuoSet(登録商標)ELISAアッセイ(製造者の説明書を使用する)など、本技術分野において公知である。T細胞の生存率、T細胞の増殖、MHCまたはHLA分子の発現、および免疫チェックポイント分子であるPD−1、PD−L1、LAG3などのような免疫抑制成分の発現を検出するためのアッセイは、実施例1〜3に記載のものである。
【0093】
免疫調節性活性の変化
生得的な免疫は、侵入病原体に対する防御の第1の選択であり、マクロファージ、単球、好酸球(eiosinophil)、好塩基球およびナチュラルキラー細胞を含む、常在性の免疫エフェクター細胞からなる(MedzhitovおよびJaneway、N. Engl. J. Med. 343巻、338頁、2000年;Vivierら、Science 331巻、44頁、2011年)。しかしながら、適応免疫は、高等真核生物における免疫応答に特異性を与えるものである。抗原は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI(MHC−I)またはクラスII(MHC−II)分子を通じてT細胞に提示される(Bracialeら、Immunol. Rev. 98巻、95頁、1987年)。MHCクラスII遺伝子は、CD4T細胞への結合およびペプチドの提示に関与する、細胞表面の糖タンパク質をコードする。これらの遺伝子は、多型のHLA−DR、−DQおよび−DP分子をコードし、これらは、α−およびβ−鎖ヘテロ二量体として、細胞表面で発現する。MHCクラスII分子は、細胞性および体液性の免疫応答の開始の中心である。しかしながら、抗原が排除されると、残った免疫系のチェックを確実にするために、調節性T細胞(CD25CD4Foxp3であるTreg)は、免疫学的な自己寛容および免疫恒常性の維持において積極的に関与するために誘導される。免疫抑制分子(例えば、PD−1、CTLA4、LAG3、IL−10、TGF−β)の発現の増加において特有であってよい腫瘍微小環境は、その環境において細胞が、免疫監視を回避することを可能にしてよい。さらに、最近の証拠は、複数の腫瘍タイプにおけるMHCクラスIおよびクラスIIの発現の抑制が、腫瘍の免疫回避における役割も果たし得ることを示している(Garridoら、Cancer Immunol. Immunother. 59巻、13頁、2010年)。
【0094】
ある特定のMNK阻害剤である、本開示の化合物は、MNK1およびMNK2の強力な選択的阻害剤である(例えば、化合物107を含む、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbの化合物)。MNK1およびMNK2は、真核生物翻訳開始因子4E(eIF4E)および他のmRNA結合タンパク質をリン酸化することによる、いくつかの発癌性および免疫シグナル伝達経路からのシグナルをインテグレートし、これは、腫瘍の成長および生存について重要な選択mRNAの安定性および翻訳を調節する。
【0095】
本開示は、MNK特異的阻害剤の使用によって、PD−1、PD−L1、LAG3またはIL−10のレベルまたは活性を低減させる方法、エフェクターT細胞(T)とT調節性(Treg)細胞の比率を変化させる方法、MHCまたはHLAクラスII分子の発現を誘導する方法またはこれらの任意の組合せを提供し、これらは、PD−1、PD−L1およびLAG3を含む免疫チェックポイントタンパク質ならびに関連する免疫抑制サイトカイン(IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35など)などの種々の免疫抑制成分の発現を予想外に低減または下方調節する。加えて、本開示のMNK特異的阻害剤は、MHCまたはHLAクラスII分子の発現を誘導することができる。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞でPD−1、LAG3または両方のレベルを低減させ、任意選択で、eIF4E、hnRNPA1、PSFまたはこれらの任意の組合せをリン酸化するMNKキナーゼの能力を阻止または低減させ、さらに任意選択で、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)の産生を阻止または低減させる。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞でPD−L1のレベルを低減させ、eIF4E、hnRNPA1、PSFまたはこれらの任意の組合せをリン酸化するMNKキナーゼの能力を阻止または低減させる。
【0096】
本開示のMNK特異的阻害剤は、他のキナーゼ阻害剤(その一部は、MNK活性を非特異的に阻害してもよく、本明細書において「別のキナーゼ阻害剤」または「非特異的MNK阻害剤」と称する)と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施形態では、別のキナーゼ阻害剤または非特異的MNK阻害剤は、MNKキナーゼ活性を、直接的または間接的に、低減または阻害する薬剤であり、そのため、その基質であるeIF4Eは、MNKによって効率的または実質的にリン酸化されない。特定の実施形態では、別のキナーゼ阻害剤または非特異的MNK阻害剤は、MNKを(例えば、ユビキチン依存性分解を介して)分解する薬剤である。
【0097】
MNK特異的阻害剤は、免疫モジュレーションを必要とする被験体(例えば、がんまたは感染症を有する被験体)に投与することができる。免疫モジュレーションの代表的な方法は、本明細書に記載の、免疫細胞の活性を増加させること;免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させること;免疫応答を誘導するもしくは増強すること;免疫応答を延長すること;抗原特異的T細胞応答を刺激すること;免疫抑制シグナル伝達経路を阻害すること;内在性の免疫(例えば、抗がんなどの、既存もしくは新規のもの)を促進すること;ワクチンが誘導する免疫応答を増強すること;または免疫耐性と関連する疾患(例えば、がん、感染症)を阻害することを含む。
【0098】
代表的なMNK特異的阻害剤は、MNK1およびMNK2キナーゼ活性の両方を阻害することができる。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MNK2キナーゼ活性よりもMNK1キナーゼ活性を選択的に阻害するか、またはMNK1キナーゼ活性よりもMNK2キナーゼ活性を選択的に阻害する。他の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MNK1bおよびMNK2bのキナーゼ活性よりも、全長アイソフォームであるMNK1aおよびMNK2aのキナーゼ活性を選択的に阻害する。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MNK1キナーゼ活性またはMNK2キナーゼ活性のいずれかを選択的に阻害する。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、全長アイソフォームであるMNK1a、MNK1b、MNK2aもしくはMNK2bのいずれか1つのキナーゼ活性を選択的に阻害するか、または全てのMNKアイソフォームのキナーゼ活性を阻害する。
【0099】
さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、化合物、アンチセンス分子、リボザイム、RNAi分子、または低分子量の有機分子であってよい。
【0100】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、以下の構造(I):
【化1】
[式中、
およびWは、独立して、O、SもしくはN−OR’(R’は低級アルキルである)であり;
Yは、−N(R)−、−O−、−S−、−C(O)−、−S=O、−S(O)−もしくは−CHR−であり;
は、水素、低級アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルであり、ここで、任意の低級アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される;
nは、1、2もしくは3であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキレン、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキレンであり、ここで、任意のアルキル、アリール、アラアルキレン、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキレン、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルもしくはヘテロシクリルアルキレンは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される;
または、RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルもしくはヘテロシクリルを形成し、ここで、任意のシクロアルキルもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される;
4aおよびR4bは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、ヒドロキシアルキレン、シアノ、アルキル、アルコキシ、アシル、チオアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロシクリルであり;
は、水素、シアノもしくは低級アルキルであり;
または、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される、縮合ヘテロシクリルを形成し;
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルであり、ここで、任意のアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリルは、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される;
または、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換される、縮合ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し;
Jは、−SH、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NH、−S(O)NR、−NH、−NR、−COOH、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)−NH、−C(O)−NR、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、アルキル、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、シアノアルキレン、アルキルアミニル、NH−C(O)−アルキレン、NR−C(O)−アルキレン、−CHR−C(O)−低級アルキル、−C(O)−低級アルキル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、−CHR−C(O)−シクロアルキル、−C(O)−シクロアルキル、−CHR−C(O)−アリール、−CHR−アリール、−C(O)−アリール、−CHR−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクリルアミニルもしくはヘテロシクリルであり;または、同じ炭素原子もしくはヘテロ原子に結合する任意の2個のJ基は、一緒になってオキソを形成してよく;
は、水素、低級アルキルもしくは−OHである]
を有する化合物またはこの立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩である。
【0101】
構造(I)の一実施形態では、本開示は、以下の構造(Ia)を有する化合物、およびこの立体異性体、互変異性体、または薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】
【0102】
式Iaの化合物について、置換基Rは、水素または低級アルキルであり、添字nは、1、2または3である。式Iaにおける置換基RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルであり、任意のこのようなアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキルは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。
【0103】
式Iaにおける置換基RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリルを形成することができ、任意のこのようなシクロアルキルまたはヘテロシクリルは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される。式Iaにおいて、R4aは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルケニルまたはシクロアルキルであり、置換基Rは、水素または低級アルキルである。
【0104】
あるいは、置換基群RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される、縮合ヘテロシクリルを形成する。
【0105】
一実施形態では、置換基R、RおよびRは、独立して、出現する毎に、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、アルキルアミニルまたはシクロアルキルアミニルであり、任意のこのようなアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、アルキルアミニルまたはシクロアルキルアミニルは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される。式Iaに従う一部の化合物について、RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換された縮合ヘテロシクリルを形成する。
【0106】
式Iaにおける変数Jは、−SH、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NH、−S(O)NR、−NH、−NR、−COOH、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)−NH、−C(O)−NR、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、アルキル、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、シアノアルキレン、アルキルアミニル、NH−C(O)−アルキレン、NR−C(O)−アルキレン、−CHR−C(O)−低級アルキル、−C(O)−低級アルキル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、−CHR−C(O)−シクロアルキル、−C(O)−シクロアルキル、−CHR−C(O)−アリール、−CHR−アリール、−C(O)−アリール、−CHR−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクリルアミニルまたはヘテロシクリルである。式Iaによる本発明化合物の一部について、同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合する任意の2個のJ基は、一緒になってオキソ基を形成してよい。
【0107】
一部の実施形態では、式Iaにおける変数Jは、ハロゲン、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルアミニル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。あるいは、ある特定の式Iaの化合物について、同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合する場合、任意の2個のJ基は、一緒になってオキソ基を形成してよい。
【0108】
さらなるMNK特異的阻害剤は、以下に示す式IIaによる化合物であり、ここで、変数Yは、−N(R)−であり、添字「n」は、1である。
【化3】
【0109】
一実施形態によれば、式Iにおける変数Yは、−O−、−S−、−C(O)−、スルホキシド、スルホン、−CHR−または−CH−であり、添字「n」は、1であり、本発明の化合物は、式IIbに一致する。式IIbにおいて、「Y」が−CHR−である場合、置換基Rは、水素、低級アルキルまたはヒドロキシである。
【化4】
【0110】
より多くのMNK特異的阻害剤の実施形態では、式Iにおける変数「Y」は、−N(R)−であり、添字「n」は、2または3であり、化合物は、それぞれ、式IIIaまたは式Ivaに一致する。
【化5】
【0111】
あるいは、ある特定の実施形態では、式Iにおける変数「Y」は、−O−、−S−、−C(O)−、スルホキシド、スルホン、−CHR−または−CH−であり、「n」は、2または3であり、化合物は、それぞれ、式IIIbおよび式IVbに一致する。式IIIbまたは式IVbにおいて、「Y」が−CHR−である場合、置換基Rは、水素、低級アルキルまたはヒドロキシのいずれかである。
【化6】
【0112】
MNK特異的阻害剤である式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbによる化合物について、変数WおよびWは両方オキソである。式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物についてのある特定の実施形態では、Wはオキソであり、Wはチオン基である。一実施形態によれば、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物は、Wにオキソ、Wに=N−OR’基を含む。また、Wにチオン基、Wにオキソ基を有する、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物は、本MNK特異的阻害剤の範囲内に包含される。
【0113】
式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物について、置換基RおよびRのそれぞれは、RおよびRが結合する炭素原子がキラル炭素ではない場合、同じであってよい。ある特定の実施形態では、しかしながら、置換基RおよびRは、異なる。したがって、RおよびRが結合する炭素原子は、キラルであり、その結果、化合物は立体異性体を有する。
【0114】
ある特定のMNK特異的阻害剤の実施形態では、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbにおけるそれぞれのRおよびRは、水素である。あるいは、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbにおけるRまたはR基の一方は、水素であり、他の基は、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されるアルキルである。式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbのある特定の化合物について、RおよびRは、両方とも、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されるアルキル基である。
【0115】
式IIaまたは式IIbに従う一部の化合物について、Rは、アルキルであり、Rは、1、2または3個のJ基で置換されたアルキルである。代表的なこのカテゴリーの式IIaおよび式IIbの化合物は、以下の通りである:Rがアルキル、Rがハロアルキルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるシクロアルキルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるシクロペンチルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるアリールである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるフェニルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるシクロアルキルアルキレンである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるアラルキレンである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるベンジルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるヘテロシクリルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるヘテロアリールである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、チオフェニル、チアゾリルもしくはピリジニルである置換基を有する化合物;Rがアルキル、Rが、無置換または1、2もしくは3個のJ基により置換されたヘテロシクリルアルキレンである置換基を有する化合物;またはRがアルキル、Rが、1、2もしくは3個のJ基により任意選択で置換されるヘテロアリールアルキレンである置換基を有する化合物。
【0116】
一部の実施形態では、式IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物について、それぞれのRおよびRは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキレンであり、任意のこのようなアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、ヘテロシクリルまたはヘテロシクリルアルキレンは、任意選択で、ハロゲン、アミノ、アルキルアミニルおよびアルキルからなる群から独立して選択される、1、2または3個のJ基で置換されてよい。
【0117】
ある特定の式IIIa、IIIb、IVaおよびIVbの化合物について、RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成する。
【0118】
Yが、−N(R)−であり、添字「n」が、1であり、RおよびRが、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環「A」を形成する式Iの化合物も考慮される。そのような化合物は、式Vaに一致し、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環「A」は、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。
【化7】
【0119】
あるいは、一部の実施形態では、式IにおけるYは、−O−、−S−、−C(O)−、スルホキシド、スルホン、−CHR−または−CH−であり、「n」は1であり、RおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環Aを形成する。そのような化合物は、式Vbに一致し、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環「A」は、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。式Vbにおいて、「Y」が−CHR−である場合、置換基Rは、水素、低級アルキルまたはヒドロキシのいずれかである。
【化8】
【0120】
式Vaおよび式Vbの化合物について、WおよびWは、両方オキソであり、環Aは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されるシクロアルキルである。環Aが、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される、縮合シクロアルキルである;環Aが、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されるシクロアルキルである;環Aが、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり、例えば、J基は、ハロゲン、アミノ、アルキルアミニルおよびアルキルからなる群から選択される、式Vaおよび式Vbの化合物も考慮される。
【0121】
一部の実施形態について、式Vaまたは式Vbの環Aは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されるヘテロシクリルである。代表的なこのようなヘテロシクリル基は、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、チエタニルまたはアゼチジニルである。一実施形態では、上記で例示したヘテロシクリルのそれぞれは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。ある特定の式Vaまたは式Vbの化合物について、環Aは、シクロアルキルの同じ炭素原子に結合した少なくとも2個のJ基で置換されたシクロアルキルであり、同じ炭素原子に結合した2個のJ基は、一緒になってオキソ基を形成する。別の実施形態では、式Vaまたは式Vbの環Aは、同じヘテロ原子に結合した少なくとも2個のJ基で置換されたヘテロシクリルであり、このような2個のJ基は、一緒になってオキソ基を形成する。一部の式Vaまたは式Vbの化合物について、シクロアルキルまたはヘテロシクリル環Aは、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、N−メチルアミノ、メチル、ジフルオロエチレンおよびメチレンニトリルからなる群から選択されるJ基により置換される。
【0122】
本発明は、式VIに従う化合物、またはその立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩も提供する。式VIは、Yが−N(R)−であり、置換基群RおよびRが、それらが結合する原子と一緒になって、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい、複素環式環(heterocycle ring)Bを形成する、式Iの下位の属である。
【化9】
【0123】
変数「Y」が−N(R)−であり、置換基群RおよびRが、それらが結合する原子と一緒になって縮合環Cを形成する式Iの化合物も、本MNK特異的阻害剤の範囲内に包含される。このような化合物、または立体異性体、互変異性体もしくは薬学的に許容される塩は、式VIIaに一致する。式VIIaの化合物について、環Cは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。
【化10】
【0124】
一実施形態によれば、式Iにおける変数「Y」は、−O−、−S−、−C(O)−、スルホキシド、スルホン、−CHR−または−CH−であり、置換基群RおよびRは、それらが結合する原子と一緒になって縮合環Cを形成する。このような化合物、およびそれらの立体異性体、互変異性体または薬学的に許容される塩は、式VIIbに一致する。「Y」が−CHR−である式VIIbの化合物について、置換基Rは、水素、低級アルキルまたはヒドロキシであってよい。
【化11】
【0125】
式VIIbの化合物について、縮合環Cは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。MNK特異的阻害剤の一実施形態では、式VI、式VIIaおよび式VIIbの化合物について、WおよびWは、両方オキソである。
【0126】
本開示のMNK特異的阻害剤は、さらに、Rが水素、またはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、sec−ブチルまたはtert−ブチルから選択される低級アルキル基である、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbの化合物、例えば、Rがメチルである化合物に対する。
【0127】
ある特定の式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbの化合物について、R4aは、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルケニルおよびシクロアルキルからなる群から選択される一方、置換基R4bは、水素またはハロゲンである。式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbにおけるRは、水素または低級アルキルである一方、置換基R、RおよびRは、水素である。
【0128】
本開示のある特定の実施形態では、式VIにおけるRおよびRは、両方とも水素である一方、ある特定の式VIIaおよび式VIIbの化合物については、Rは、水素である。
【0129】
本開示のMNK特異的阻害剤は、さらに、置換基群RおよびRが、両方とも水素であり、Rが、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルからなる群から選択される、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、VaおよびVbの化合物に対する。これらの化合物に関して、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換される。ある特定の実施形態では、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびシクロアルキルアミニルからなる群から選択される。このような化合物について、任意のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、アミノ、アルキルアミニル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルカルボニルアミニル、ヘテロシクリルアミニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルまたはシクロアルキルアミニルは、1、2または3個のJ基により任意選択で置換されてよい。したがって、ある特定の実施形態は、置換基群RおよびRが両方とも水素であり、Rがアミノである;置換基群RおよびRが両方とも水素であり、Rがアルキルアミニルである;置換基群RおよびRが両方とも水素であり、Rが−NHCHである;置換基群RおよびRが両方とも水素であり、Rがシクロアルキル、例えばシクロプロピルである;置換基群RおよびRが両方とも水素であり、Rが、1〜3個のJ基、例えばハロゲンで置換されたシクロアルキルアミニルである、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、VaおよびVbの化合物を提供する。
【0130】
一実施形態では、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、VaおよびVbに従う化合物について、置換基群RおよびRは、両方とも水素であり、Rは、−NHCH(CF)シクロプロピル、シクロアルキルカルボニルアミニル、−NHC(O)シクロプロピル、シクロアルキルアルケニレンおよび−CH=CHシクロプロピルからなる群から選択される。
【0131】
式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbに従う任意の化合物について、Jは、−SH、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NH、−S(O)NR、−NH、−NR、−COOH、−C(O)OR、−C(O)R、−C(O)−NH、−C(O)−NR、ヒドロキシ、シアノ、ハロゲン、アセチル、アルキル、低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロアルキル、チオアルキル、シアノアルキレン、アルキルアミニル、NH−C(O)−アルキレン、NR−C(O)−アルキレン、−CHR−C(O)−低級アルキル、−C(O)−低級アルキル、アルキルカルボニルアミニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキレン、シクロアルキルアルケニレン、シクロアルキルカルボニルアミニル、シクロアルキルアミニル、−CHR−C(O)−シクロアルキル、−C(O)−シクロアルキル、−CHR−C(O)−アリール、−CHR−アリール、−C(O)−アリール、−CHR−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクリルアミニルまたはヘテロシクリルであり、Rは、水素、低級アルキルまたは−OHである。さらに、2個のJ基が同じ炭素原子またはヘテロ原子に結合する場合、一緒になってオキソを形成してよい。
【0132】
式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbによるある特定の化合物について、Jは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはシアノアルキレンである。説明として、アルキルまたはアルキレン鎖は、C〜C10炭素原子、C〜C炭素原子、C〜C炭素原子、C〜C炭素原子、C〜C炭素原子、ならびにエチルおよびメチル基を有するものである。あるいは、Jがアルケニルまたはアルキニルである場合、その炭素鎖は、少なくとも1個の二重結合または三重結合をそれぞれ有し、およびC〜C10炭素原子、C〜C炭素原子、C〜C炭素原子、C〜C炭素原子またはC〜C炭素原子を有する。
【0133】
式(I)ならびに式Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbのMNK特異的阻害剤は、異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられた1つまたは複数の原子を有することにより、同位体標識されていてよい。構造(I)の化合物に組み込まれ得る同位体の例は、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体を含む。これらの放射標識された化合物は、例えば、作用の部位もしくはモードまたは薬理学的に重要な作用部位に対する結合親和性を特徴付けることによって、化合物の有効性を決定または測定するのに有用であり得る。ある特定の同位体標識された式(I)の化合物、例えば、放射性同位元素を組み込んだものは、薬物または基質の組織分布の研究に有用である。放射性同位元素であるトリチウム、すなわち、H、および炭素−14、すなわち、14Cは、それらの組み込みの容易さおよび迅速な検出手段の観点から、この目的のために特に有用である。
【0134】
重水素、すなわちHなどの重い同位元素での置換は、より大きな代謝安定性からもたらされるある特定の治療上の利点、例えば、in vivoでの半減期の増加、または必要投与量の低減を提供してよく、したがって、一部の環境において好ましくあり得る。
【0135】
11C、18F、15Oおよび13Nなどの陽電子放出同位体での置換は、基質の受容体占有を調べるための陽電子放出組織分布(PET)研究において有用であり得る。同位体標識された式(I)ならびに式Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbの化合物は、通常、当業者に公知の従来技術によって、または2015年6月24日に出願された「MNK Inhibitors and Methods Related Thereto」という名称の米国特許出願第14/748,990号に示されたような調製および実施例に記載のものに類似するプロセスによって調製することができ、この化合物および合成方法は、それらの全体が本明細書に組み込まれ、以前に使用された非標識試薬の代わりに適切に同位体標識された試薬が使用される。
【0136】
本開示の実施形態は、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbのMNK特異的阻害剤のin vivoでの代謝産物を包含することも意味する。このような産物は、主に酵素的プロセスに起因する、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などから生じ得る。したがって、本開示は、本開示のMNK特異的阻害剤を、その代謝産物が生じるのに十分な期間、哺乳動物に投与することを含むプロセスによって産生する化合物を含む。このような産物は、典型的には、ラット、マウス、モルモット、サル、またはヒトなどの動物に、検出可能な用量で、放射標識された本明細書に記載のMNK特異的阻害剤を投与し、代謝が起こるのに十分な時間を与え、尿、血液または他の生体試料から変換産物を単離することよって同定される。
【0137】
一部の実施形態では、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbによる化合物のいずれか1つのMNK特異的阻害剤は、薬学的に許容される塩の形態であり、これは、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。
【0138】
この目的で、「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的な有効性および性質を保持するそれらの塩を指し、これは、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではなく、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2−オキソ−グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などの有機酸を用いて形成される。
【0139】
同様に「薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的な有効性および性質を保持するそれらの塩を指し、これは、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない。これらの塩は、遊離酸への無機塩基または有機塩基の添加によって調製される。無機塩基から誘導される塩は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などを含む。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。有機塩基から誘導される塩は、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの、第一級、第二級および第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩を含む。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0140】
結晶化により、しばしば、MNK特異的阻害剤である本開示の化合物の溶媒和物が生成する。本明細書において使用される場合、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物の1つまたは複数の分子と1つまたは複数の溶媒の分子とを含む集合体を指す。溶媒は水であってよく、この場合において、溶媒和物は水和物であってよい。あるいは、溶媒は有機溶媒であってよい。したがって、MNK特異的阻害剤である本開示の化合物は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物、および対応する溶媒和形態として存在していてよい。MNK特異的阻害剤である本開示の化合物は、完全溶媒和物であってよいが、他の場合において、化合物は、単に外来性の水を保持していてよく、または水と一部の外来性の溶媒の混合物であってよい。
【0141】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合した同じ原子からなるが、異なる三次元構造を有する化合物を指し、これは、相互変転換可能ではない。本開示は、種々の立体異性体およびその混合物を考慮し、「エナンチオマー」を含み、これは、分子が互いに重ねることができない(non-superimposeable)鏡像体である分子の2つの立体異性体を指す。
【0142】
本開示のMNK特異的阻害剤またはこれらの薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の不斉中心を含有してよく、したがって、(R)−もしくは(S)−として、またはアミノ酸について(D)−もしくは(L)−として、絶対立体化学で定義され得る、エナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を挙げることができる。本開示は、このような可能な全ての異性体、ならびにこれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことを意味する。光学的に活性な(+)および(−)、(R)−および(S)−、または(D)−および(L)−異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製してよく、または従来技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別再結晶を使用して分割してよい。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または、例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(またはラセミ体の塩もしくは誘導体)の分割を含む。本明細書に記載の化合物が、オレフィン性の二重結合または他の幾何学的非対称中心を含有する場合、特に定めがない限り、化合物が、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことを意図する。同様に、全ての互変異性体を含むことも意図する。
【0143】
「互変異性体」という用語は、分子の1つの原子から、同じ分子の別の原子にプロトンがシフトすることを指す。例えば、Wがオキソであり、RがHである場合、本開示は、以下に示す式Iの化合物の互変異性体を提供する。
【化12】
【0144】
同様の互変異性体が、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIbの化合物について存在する。化合物は、従来の合成方法を使用して、より具体的には、一般的方法および2015年6月24日に出願された「MNK Inhibitors and Methods Related Thereto」という名称の米国特許出願第14/748,990号に見られる実施例の具体的な合成プロトコールを使用して、合成され、この化合物および合成方法は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0145】
代表的なMNK特異的阻害剤である本開示の化合物は、表1および米国特許出願公開第2015/0376181号に示され、これらの化合物は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。同様に、米国仮特許出願第62/247,953号(名称「Isoindoline, Azaisoindoline, Dihydroindenone and Dihydroazaindenone Inhibitors of MNKl and MNK2」)および米国仮特許出願第62/247,966号(名称「Pyrrolo-, Pyrazolo-, Imidazo-Pyrimidine and Pyridine Compounds that Inhibit MNK1 and MNK2」)の化合物およびその製造方法は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。このような化合物は、説明の目的のために提供されるが、限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【0146】
本開示のMNK特異的阻害剤と組み合わせて使用してよい他のMNK阻害剤の例、および本明細書に記載の方法のいずれかによる例は、セルコスポラミド;SEL201;CGP57380(Knaufら、Mol. Cell. Biol. 21巻、5500〜5511頁、2001年を参照);CGP52088(Tschoppら、Mol. Cell. Biol. Res. Commun. 3巻、205〜211頁、2000年を参照);YYC−37(Schmid、「Targeting cap-dependent translation for cancer therapy: Identification of novel Mnk kinase inhibitors with enzymatic assays」www.fhnw.ch/lifesciences/master/master-thesis/MS_MT_Schmid_Raffaela_2014.pdf、2014年);レチンアミド、レチノイン酸代謝遮断剤(レチンアミドRAMBAとしても公知)(例えば、VNLG−152)(PCT出願公開第WO2010/036404号;Ramalingamら、Oncotarget 5巻、530〜543頁、2014年;Mbatiaら、J. Med. Chem. 58巻、1900〜1914頁、2015年参照);米国特許第8,901,138号に開示されるようなスルホキシイミン置換キナゾリン誘導体;米国特許第8,697,713、PCT出願公開第WO2013/174743号またはPCT出願公開第WO2014/044691号に開示されるようなピロールピリミジン化合物;米国特許第8,486,953号、米国出願公開第2010/0143341号、PCT出願公開第WO2013/174744号またはPCT出願公開第WO2014/118229号に開示されるようなチエノピリミジン化合物;PCT出願公開第WO2014/088519号に開示されるようなピペラジン系化合物(例えば、ETC036またはETC037);PCT出願公開第2013/147711号に開示されるような二環式複素環誘導体(例えば、化合物20、359または416);米国特許第8,071,607号に開示されるようなピラゾロピリミジン化合物;PCT出願公開第WO2014/135480号に開示されるような置換チアゾロピリミジン化合物;米国特許出願公開第2014/0296231号、米国特許出願公開第2014/0288069号、米国特許出願公開第2014/0228370号、米国特許出願公開第2014/0194430号、PCT出願公開第WO2013/149909号、PCT出願公開第WO2013/144189号、PCT出願公開第WO2013/087581号、PCT出願公開第WO2014/128093号、PCT出願公開第WO2014/076162号またはPCT出願公開第WO2014/118135に開示されるような置換イミダゾピリダジン化合物;PCT出願公開第WO2014/118226号に開示されるような置換ピラゾロピリミジニルアミノ−インダゾール化合物;PCT出願公開第WO2014/048894号またはPCT出願公開第WO2014/048869号に開示されるような置換インダゾール−ピロロピリミジン化合物;PCT出願公開第WO2013/174735号に開示されるような置換ベンゾチエノピリミジン化合物;PCT出願公開第WO2014206922号に開示されるようなスルホキシイミン置換キナゾリン化合物;あるいは、PCT出願公開第WO2012/175591号に開示されるようなヘテロシクリルアミノイミダゾピリダジン化合物を含む(これらの文献のそれぞれの化合物は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0147】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaおよびVIIb、または表1または表2Aのいずれか1つの化合物であり、これは、哺乳動物(例えば、ヒト)への医薬組成物の投与において、目的の特定の疾患または状態(例えば、がん、慢性感染症)を処置するために有効な量の医薬組成物として製剤化される。特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のMNK特異的阻害剤および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0148】
これに関して、「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」は、ヒトまたは飼育動物において使用するために許容されるような、米国食品医薬品局によって承認されている任意の補助剤、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、等張剤、溶媒または乳化剤を含む。
【0149】
さらに、「哺乳動物」は、ヒト、サルおよび類人猿などの霊長類、ならびに実験動物およびペットを含む飼育動物(例えば、例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)および野生生物などの非飼育動物などの非霊長類を含む。
【0150】
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載のMNK特異的阻害剤を適切な薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組合せるかまたは製剤化することにより調製することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、微粒子剤またはエアゾール剤などの固体状、半固体状、液体状またはガス状形態の調製物に製剤化してよい。このような医薬組成物を投与する代表的な経路は、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、頬側、直腸、膣および鼻腔内を含む。本明細書において使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射または点滴の手法を含む。本開示の医薬組成物は、患者への投与の際に、その内部に含有される有効成分を生物が利用可能にすることを可能にするように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、1つまたは複数の投与量単位の形態をとり、ここで、例えば、錠剤は単一投与量単位であってよく、エアゾール形態における本明細書に記載のMNK特異的阻害剤の容器は、複数回の投与量単位を保持してよい。このような剤形を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者には明らかである;例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science、2000年)を参照。投与される組成物は、いかなる場合でも、本明細書の教示に従って目的の疾患または状態の処置において免疫応答のモジュレーションを助けるために、治療有効量の本開示のMNK特異的阻害剤またはこれらの薬学的に許容される塩を含有する。
【0151】
本明細書に記載のMNK特異的阻害剤の医薬組成物は、固体または液体の形態であってよい。一態様では、担体は、粒子状であるので、組成物は、例えば錠剤または粉末の形態である。担体は、組成物とともに液体であってよく、例えば、経口シロップ、注射液またはエアゾールであってよく、これは、例えば、吸入投与に有用である。経口投与を目的とする場合、本開示のMNK特異的阻害剤の医薬組成物は、好ましくは、固体状また液体状の形態のいずれかであり、半固体状、半液体状、懸濁状およびゲル状の形態は、固体または液体のいずれかのような、本明細書で考慮される形態に含まれる。
【0152】
経口投与用の固体組成物としては、本明細書に記載のMNK特異的阻害剤の医薬組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、オブラート剤などの形態に製剤化されてよい。このような固体組成物は、典型的には、1つまたは複数の不活性希釈剤または食用担体を含有する。加えて、1つまたは複数の以下のものが存在していてよい:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプン、ラクトースまたはデキストリンなどの賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、トウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックスなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料などの香味剤;および着色剤。
【0153】
医薬組成物がカプセル形態、例えば、ゼラチンカプセルである場合、上記の種類の物質に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含有していてよい。
【0154】
医薬組成物は、液体剤の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、溶液剤、乳剤または懸濁剤であってよい。液体剤は、2つの例として、経口投与用または注射による送達用であってよい。経口投与を目的とする場合、好ましい組成物は、MNK特異的阻害剤に加えて、1つまたは複数の甘味剤、保存剤、色素/着色剤および香味増強剤を含有する。注射による投与を目的とする組成物において、1つまたは複数の界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤および等張剤を含んでいてよい。
【0155】
MNK特異的阻害剤の液体医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液または他の同様の形態であろうとなかろうと、1つまたは複数の以下の補助剤を含有していてよい:注射用水、食塩水、好ましくは生理的食塩水、リンゲル液、等張食塩水、溶媒または懸濁媒体としての役目を果たす合成モノまたはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの浸透圧の調整剤。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入することができる。生理的食塩水が好ましい補助剤である。注射可能な医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0156】
非経口または経口投与のいずれかを目的とするMNK特異的阻害剤の液体医薬組成物は、適切な投与量を得るような本開示のMNK特異的阻害剤の量を含有しなければならない。
【0157】
MNK特異的阻害剤の医薬組成物は、局所投与を目的としていてよく、この場合において、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏またはゲル基剤を適切に含んでいてよい。基剤は、例えば、1つまたは複数の以下のものを含んでいてよい:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤および安定化剤。局所投与用の医薬組成物中に、増粘剤が存在していてよい。経皮投与を目的とする場合、本開示のMNK特異的阻害剤の組成物を、経皮パッチまたはイオン導入装置に含めてよい。
【0158】
MNK特異的阻害剤の医薬組成物は、例えば、坐剤の形態で、直腸投与を目的としていてよく、これは、直腸で融けて、薬物を放出する。直腸投与用の組成物は、適切な非刺激性の賦形剤として、油性基剤を含有していてよい。このような基剤は、例えば、ラノリン、カカオバターまたはポリエチレングリコールを含む。
【0159】
MNK特異的阻害剤の医薬組成物は、固体または液体の投与量単位の物理的形態を改変する種々の物質を含んでいてよい。例えば、組成物は、有効成分の周囲にコーティングシェルを形成する物質を含んでいてよい。コーティングシェルを形成する物質は、典型的には不活性で、例えば、糖、シェラックおよび他の腸溶性コーティング剤から選択されてよい。あるいは、有効成分は、ゼラチンカプセルに封入されてよい。
【0160】
固体または液体形態の本開示の医薬組成物は、本明細書に記載のMNK特異的阻害剤と結合して、それによって化合物の送達を支援する薬剤を含んでいてよい。この能力で作用し得る適切な薬剤は、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、タンパク質またはリポソームを含む。
【0161】
MNK特異的阻害剤の医薬組成物は、エアゾールとして投与され得る投与量単位から構成されてよい。エアゾールという用語は、コロイド的性質のものから加圧包装からなるシステムまでの様々な範囲のシステムを表すために使用される。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによって、または有効成分を分注する適切なポンプシステムによってであってよい。MNK特異的阻害剤のエアゾールは、有効成分を送達するために、単相、二相または三相系で送達されてよい。エアゾールの送達は、必要な容器、活性剤、バルブ、サブコンテナなどを含み、これらは一緒にキットを形成してよい。当業者であれば、過度の実験をすることなく、好ましいエアゾール製剤および送達モードを決定し得る。
【0162】
本開示の医薬組成物は、製薬分野において周知の方法論によって調製してよい。例えば、注射による投与を目的とする医薬組成物は、溶液を形成するために本明細書に記載のMNK特異的阻害剤を無菌溶媒と混合することによって調製することができる。界面活性剤は、均一溶液または懸濁液の形成を促進するために添加されてよい。界面活性剤は、水性の送達システム中での化合物の溶解または均質懸濁を促進するために、本開示の化合物と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0163】
本明細書において使用される場合「組合せ」は、MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤を含む組合せを指し、これらのそれぞれは、連続で(逐次的に)、併せてまたは同時に、本明細書に記載のように、投与されてよい。例えば、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbのいずれか1つのMNK特異的阻害剤は、(a)ピジリズマブ、ニボルマブもしくはペムブロリズマブなどのPD−1に対して特異的な抗体;(b)MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AもしくはMSB0010718CなどのPD−L1に対して特異的な抗体;(c)トレメリムマブもしくはイピリムマブなどのCTLA4に対して特異的な抗体;(d)ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセルもしくはドタキセルなどの化学療法剤;(e)ウレルマブなどの抗CD137(4−1BB)抗体;(f)MDI6469(OX−40アゴニスト)などの抗CD134(OX−40)抗体;(g)レナリドミドもしくはポマリドミド;または(h)これらの任意の組合せと組み合わせることができる。
【0164】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤と免疫抑制成分の阻害剤の組合せは、さらに化学療法剤を含み、これらのそれぞれは、連続で(逐次的に)、併せてまたは同時に、本明細書に記載のように、投与されてよい。例えば、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbのいずれか1つのMNK特異的阻害剤は、(a)ピジリズマブ、ニボルマブもしくはペムブロリズマブなどのPD−1に対して特異的な抗体;(b)MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AもしくはMSB0010718CなどのPD−L1に対して特異的な抗体;(c)トレメリムマブもしくはイピリムマブなどのCTLA4に対して特異的な抗体;(d)MDI6469(OX−40アゴニスト)などの抗CD134(OX−40)抗体;(e)レナリドミドもしくはポマリドミド;または(f)ウレルマブなどの抗CD137(4−1BB)抗体;およびベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセルまたはドタキセルなどの化学療法剤と組み合わせることができる。
【0165】
免疫モジュレーションの活性を変化させる方法
本明細書に記載のMNK特異的阻害剤は、免疫抑制経路としても公知の、免疫阻害経路に関与する免疫抑制成分(例えば、免疫チェックポイント分子、免疫抑制サイトカイン)のレベルを予想外に低減させることができる。ある特定の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与することによる免疫モジュレーションのための方法を提供する。代表的な免疫モジュレーションの形態は、免疫細胞の活性を増加させること;免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させること;免疫応答を誘導するまたは増強すること;免疫応答を延長すること;抗原特異的T細胞応答を刺激すること;免疫抑制シグナル伝達経路を阻害すること;内在性の免疫(既存または新規のもの)を促進すること;免疫耐性と関連する疾患(例えば、がん)を阻害すること;ワクチンが誘導する免疫応答を増強すること;またはこれらの任意の組合せを含む。さらなる実施形態では、免疫モジュレーションを必要とする被験体は、過剰増殖障害(例えば、がん)、感染症または感染性疾患(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症、原虫感染症)を有する。特定の実施形態では、免疫モジュレーションを必要とする被験体は、免疫耐性と関連する過剰増殖障害(例えば、がん)または免疫耐性に関与する感染性疾患(例えば、慢性感染症)を有している。任意の上述の実施形態では、処置される被験体はヒトである。
【0166】
(本開示のMNK特異的阻害剤によってモジュレートされる)代表的な免疫阻害または抑制経路は、PD−1またはCD279としても公知のプログラム細胞死タンパク質1によって媒介され、これは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面受容体であり、T細胞(CD8+エフェクターT細胞、CD4+ヘルパーT細胞、Tregまたはこれらの任意の組合せ)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞およびB細胞において発現する。PD−1は、PD−L1(B7−H1またはCD274としても公知)およびPD−L2(BC−DCまたはCD273としても公知)の2つのリガンドと結合する。本開示のMNK特異的阻害剤は、PD−L1のレベルも低減させる。
【0167】
背景として、PD−1およびそのリガンドは、末梢組織において抗原を認識するT細胞による組織の炎症反応を調節するために主に作用する。PD−1の発現は、例えば、抗原提示細胞においてPD−1リガンドの発現を誘導する組織における活性化したT細胞および炎症シグナルに誘導される。リガンドの結合において、PD−1は、SHP2フォスファターゼを介するT細胞活性化が関与するキナーゼを阻害し、TCRが媒介する活性化、増大、サイトカイン産生の阻害、およびCD8+エフェクターT細胞のエフェクター機能の獲得をもたらす。PD−1が媒介する免疫応答の減弱は、損傷から末梢組織を保護し、自己寛容の維持を助ける。IFNγの分泌は、PD−L1の誘導のためのシグナルであり、これは、主にヘルパーT(T1)細胞1によって行われる。PD−1受容体シグナル伝達の活性は、本技術分野において公知の方法を使用して、T細胞の増殖およびサイトカイン産生(例えば、IFNγ、IL−2)を調べることによって検出されてよい。
【0168】
PD−1は、Treg細胞においても高度に発現し、Treg細胞においてPD−1が媒介するシグナル伝達は、Tregの発生および機能を促進することによってエフェクター免疫応答のさらなる抑制をもたらし得る(Franciscoら、Immunol. Rev. 236巻、219頁、2010年)。PD−1シグナル伝達はまた、NK細胞およびB細胞におけるその効果を介して、NK細胞の活性化、ならびに細胞傷害性および抗体産生を弱め得る(Bensonら、Blood 116巻、2286頁、2010年;Thibultら、Int. Immunol. 25巻、129頁、2013年)。
【0169】
慢性的な抗原の曝露(例えば、がん、慢性感染症)の結果として生じ得る高レベルの持続的なPD−1の発現は、同種抗原特異的なT細胞の中で、消耗およびアネルギーを誘導し得る(Barberら、Nature 438巻、682頁、2006年)。
【0170】
PD−1シグナル伝達による、免疫応答、例えば、T細胞応答の下方調節は、がんまたは感染症の持続を促進し得る。PD−1リガンドは、通常、多数の腫瘍および腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)のがん細胞の表面において上方調節され、これは、局所的な抗腫瘍T細胞応答を制限する。PD−L1発現の上方調節は、メラノーマ、卵巣がん、肺がん、腎臓がん、乳がんおよび多くの他のがんにおいて認められており、予後不良(上記のPardollにおいて概説)と関連している。PD−L2の上方調節も、ある特定のB細胞リンパ腫に対して報告されている(同上)。
【0171】
PD−1またはLAG3様の免疫チェックポイントタンパク質などのある特定の免疫抑制成分は、慢性感染症の持続における役割も果たし得る。PD−1は、HIVに感染した患者のT細胞において上方調節されていることが示されており、これは、ウイルス負荷およびT細胞消耗と関連し、細胞の増殖、細胞傷害性機能およびサイトカイン分泌の低下をもたらす(Eichbaum、Curr. Med. Chem. 18巻、3971頁、2011年およびHofmeyerら、J. Biomed. Biotech. 2011巻、451694頁、2011年において概説)。PD−1が媒介するT細胞消耗もB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびLCMVなどの他の慢性感染症の持続において重要であり、細菌感染症(例えば、Helicobacter pylori、Mycobacterium)、トリパノソーマ感染症(例えば、Leishmania donovani)、寄生性原虫感染症(例えば、Toxoplasma gondii)、蠕虫感染症(例えば、Schistosoma mansoni)および単純ヘルペスウイルス1感染症(例えば、HSV1)の持続または再活性化において関係する(上記Hofmeyerら)。
【0172】
別の代表的な免疫抑制成分は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3、CD223としても公知)であり、これは、Treg細胞において高度に発現し、Treg細胞の免疫抑制の活性を増強する役割を有する(GoldbergおよびDrake、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 344巻、269頁、2011年)。LAG3は、Treg細胞を介した効果とは独立してCD8エフェクターT細胞も直接阻害する(Grossoら、J. Clin. Invest. 117巻、3383頁、2007年)。LAG3はまた、細胞表面でCD3−TCR複合体と結合する活性化CD4およびCD8Tリンパ球において発現し、シグナル伝達を負に調節する(Hannierら、J. Immunol. 161巻、4058頁、1998年;Darlingtonら、J. Exp. Med. 195巻、1337頁、2002年)。T細胞応答の下方調節におけるLAG3の役割は十分に確立されており(Matsuzakiら、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 107巻、7875頁、2010年)、ホジキンリンパ腫(Gandhiら、Blood 108巻、2280頁、2006年)および前立腺がん(Sfanosら、Clin. Cancer Res. 14巻、3254頁、2008年)などのがんにおける腫瘍浸潤性T細胞の調節機能のその関与の証拠が増加している。LAG3、MHC/HLAクラスII分子のリガンドは、一部の上皮性がん(例えば、メラノーマ)および腫瘍浸潤性のマクロファージおよび樹状細胞において上方調節される。開発されたいくつかのLAG3阻害剤があり、LAG3−MHCクラスII結合を阻止しないLAG3抗体でさえ、T細胞増殖およびエフェクター機能を増強することがさらに可能である(上記Pardollにおいて概説)。
【0173】
本開示は、免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させることによって疾患を処置する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体(例えば、ヒト)に投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、過剰増殖障害(例えば、がん)または感染症もしくは感染性疾患に対して、免疫応答を増強することまたは免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させることにおける使用のための、PD−1、PD−L1またはLAG3シグナル伝達を低減させるまたは阻止する方法を提供する。ある特定の態様では、本開示は、治療有効量のMNK特異的阻害剤を、誘導されたもしくは増強された免疫応答を必要とする被験体または免疫細胞のダウンモジュレーションもしくは抑制の低減を必要とする被験体に、投与することによって、PD−1、PD−L1、LAG3またはこれらの組合せのレベルまたは活性を低減させ、任意選択で、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10)の産生を阻止するまたは低減させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、がんまたは慢性感染症を有する被験体において、免疫応答を誘導するもしくは増強するため、または免疫細胞のダウンモジュレーションもしくは抑制を低減させるために使用される。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、表1もしくは表2Aの化合物のいずれか1つ、または式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaもしくはVIIbの構造を有するいずれかの化合物である。よりさらなる実施形態では、誘導されるまたは増強される免疫応答は、抗原特異的T細胞応答を含み、低減されるダウンモジュレーションまたは抑制は、抗原特異的なT細胞のものである。
【0174】
特定の実施形態では、本方法は、抗体もしくはその結合断片、融合タンパク質(例えば、Fc融合)、siRNAなどの免疫抑制成分の阻害剤を投与することをさらに含み、これは、他の免疫抑制成分(IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35のような免疫抑制サイトカインなど)に対する、またはTreg細胞などの他の免疫抑制成分をモジュレートする(例えば、T細胞に対してTreg細胞を低減させる)、PD−1、PD−L1、LAG3またはこれらの組合せの阻害剤であってよい。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、本明細書に記載のようにして、任意選択で、MHCまたはHLA分子のレベルの上昇を媒介して、抗原提示を促進または増強する。
【0175】
よりさらなる実施形態では、本開示は、PD−1媒介性、PD−L1媒介性またはLAG3媒介性の免疫耐性と関連する疾患を処置する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0176】
任意の上述の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、表1もしくは表2Aの化合物のいずれか1つ、または式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaもしくはVIIbの構造を有するいずれかの化合物である。よりさらなる実施形態では、誘導されるまたは増強される免疫応答は、抗原特異的T細胞応答である。特定の実施形態では、本方法は、抗体もしくはその結合断片、融合タンパク質、siRNAなどの免疫抑制成分の阻害剤を投与することをさらに含む。
【0177】
よりさらなる実施形態では、本開示は、PD−1、PD−L1、LAG3またはこれらの組合せなどの調節不全免疫チェックポイントタンパク質と関連する免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与すること、任意選択で、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10)の産生を阻害することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、表1もしくは表2Aの化合物のいずれか1つ、または式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaもしくはVIIbの構造を有するいずれかの化合物である。よりさらなる実施形態では、誘導されるまたは増強される免疫応答は、抗原特異的T細胞応答である。特定の実施形態では、本方法は、抗体もしくはその結合断片、融合タンパク質、siRNAなどの免疫抑制シグナルの阻害剤を投与することをさらに含む。
【0178】
より多くの実施形態では、本開示は、調節不全のPD−1、PD−L1および/またはLAG3免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤を、それを必要とする被験体に投与すること、任意選択で、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10)の産生を阻害することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、表1もしくは表2Aの化合物のいずれか1つ、または式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaもしくはVIIbの構造を有するいずれかの化合物である。より多くの実施形態では、本方法は、免疫抑制シグナル伝達経路のPD−1、PD−L1および/またはLAG3などの免疫抑制成分を阻害して、調節不全または不適当な免疫抑制を修正し、内在性の免疫(例えば、既存または新規)を促進する。ある特定の実施形態では、本開示は、免疫抑制成分を阻害して、内在性の免疫を促進する方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤および免疫抑制阻害剤を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法を提供し、ここで、(a)MNK特異的阻害剤は、免疫抑制阻害剤の存在下で、抗原に対する応答のために、抗原特異的T細胞を予備刺激する、または(b)MNK特異的阻害剤は、内在性の免疫の促進において、免疫抑制阻害剤の効果を増強するまたは延長する。よりさらなる実施形態では、誘導されるまたは増強される免疫応答は、抗原特異的T細胞応答である。特定の実施形態では、本方法は、抗体もしくはその結合断片、融合タンパク質、siRNAなどの免疫抑制成分の阻害剤を投与することをさらに含む。
【0179】
本明細書に記載のMNK特異的阻害剤の使用の方法は、任意選択で、免疫抑制成分または免疫抑制成分の産生を標的とする阻害剤と組み合わせて使用してよい。代表的な免疫抑制成分の標的は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35、アルギナーゼ、IDOまたは免疫抑制サイトカイン(例えば、IL−10)を含む。免疫抑制成分の阻害剤は、化合物、抗体、抗体断片もしくは融合ポリペプチド(例えば、CTLA4−FcまたはLAG3−FcなどのFc融合)、アンチセンス分子、リボザイムまたはRNAi分子または低分子量有機分子であってよい。
【0180】
ある特定の実施形態では、免疫抑制成分の阻害剤は、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35、アルギナーゼ、IDOまたはこれらの任意の組合せに対して特異的な、抗体もしくはその結合断片、融合タンパク質またはsiRNAである。
【0181】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0680(以前はAMP−514)、MK−3475、AMP−224、BMS−936558もしくはこれらの任意の組合せなどのPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、BMS−936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、MSB0010718C、RG7446もしくはこれらの任意の組合せなどのPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS−986016もしくはこれらの任意の組合せなどのLAG3特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。さらに多くの実施形態では、MNK特異的阻害剤は、PD−1阻害剤およびCTLA4阻害剤と組み合わせて使用される。他の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、PD−L1阻害剤およびCTLA4阻害剤と組み合わせて使用される。さらに他の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、PD−1阻害剤およびLAG3阻害剤、またはPD−L1阻害剤およびLAG3阻害剤と組み合わせて使用される。
【0182】
CD152としても公知の細胞傷害性T−リンパ球関連タンパク質4(CTLA4)は、T細胞によってもっぱら発現する受容体であり、T細胞活性化の負の調節因子として働く。CTLA4は、主に、T細胞共刺激受容体CD28の活性に対抗する。CTLA4およびCD28は、同じリガンドCD80(B7.1としても公知)およびCD86(B7.2としても公知)を共有し、これらは、抗原提示細胞の表面上で発現する。CD80またはCD86によるCD28の結合は、T細胞受容体がその同種抗原と結合する場合、T細胞増殖およびIL−2産生のみを活性化する。TCRおよびCD28を通じたT細胞活性化は、CTLA4の発現を誘導する。CTLA4は、その両方のリガンドについて、CD28よりも高い親和性を有する。理論に縛られることは望まないが、CTLA4が、T細胞に対するリガンド結合および阻害性シグナルの伝達のためにCD28を打ち負かすことによって、T細胞活性化を弱めることを示唆する(上記Pardollにおいて概説)。CTLA4は、複数のT細胞サブセットにおいて発現し、シグナル伝達は、CD8+エフェクターT細胞、CD4+ヘルパーT細胞の活性のダウンモジュレーションおよびTreg活性を増強してよい。
【0183】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、CTLA4−Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)もしくはこれらの任意の組合せなどのCTLA4特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。
【0184】
B7−H3(CD276としても公知)およびB7−H4(B7−S1、B7xおよびVCTN1としても公知)などの他のB7ファミリー阻害性リガンドは、免疫阻害性の役割を有していてよい(Yiら、Immunol. Rev. 229巻、145頁、2009年)。B7−H3およびB7−H4に対する受容体は、まだ特定されていない。しかし、B7−H3およびB7−H4は、腫瘍細胞および腫瘍浸潤性細胞において上方調節される(Heら、Clin. Dev. Immunol. 2011巻、695834頁、2011年)。
【0185】
より多くの実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MGA271、376.96もしくは両方などのB7−H3特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。B7−H4抗体結合断片は、例えば、Dangajら、Cancer Res. 73巻、4820頁、2013年に記載されているようなscFvまたはその融合タンパク質であってよい。
【0186】
ナチュラルキラー細胞受容体2B4としても公知のCD244は、ナチュラルキラー細胞、γδ T細胞およびメモリーCD8+(αβ)T細胞において発現する細胞表面受容体である。CD244に対するリガンドは、CD48であり、これは、造血細胞において発現する。CD244シグナル伝達は、CD244の発現レベルおよびクロスリンク度に応じて、活性化および阻害の様式の両方で、NK−細胞の細胞溶解活性をモジュレートすると考えられる(Chlewickiら、J. Immunol. 180巻、8159頁、2008年)。
【0187】
BおよびTリンパ球アテニュエータ(BLTA、CD272としても公知)は、T細胞活性化中に発現が誘導される阻害性受容体である。このリガンドは、ヘルペスウイルス侵入受容体(HVEM、TNFRSF14としても公知)である。HVEMは、複数の組織/細胞タイプにおいて広く発現する。HVEMはまた、例えば、メラノーマ、リンパ腫、前立腺がん、結腸直腸がん、尿路上皮がんおよび腫瘍浸潤性リンパ球を含む、ある特定の腫瘍タイプにおいて上方調節される。BTLA−HVEMトランス相互作用は、T細胞における阻害効果をもたらす(Shuiら、J. Leukoc. Biol. 89巻、517頁、2011年によって概説)。T細胞におけるHVEM−BTLAのシス結合は、阻害性機能を有していてもよく、これは、可溶性LIGHT(TNFSF14またはCD258としても公知)によって安定化される(上記Shuiら)。
【0188】
T細胞膜タンパク質3(TIM3、HAVCR2としても公知)は、T細胞ならびにTH1およびTH17サイトカイン分泌の負の調節因子である、CD4+Tヘルパー1(TH1)特異的細胞表面タンパク質である(Hastingsら、Eur. J. Immunol. 39巻、2492頁、2009年)。このリガンドは、ガレクチン9(GAL9)である。IFNγ産生によって特徴付けられるTH1細胞は、抗がんおよび抗ウイルス免疫応答のために重要である。IL−17およびIL−22産生によって特徴付けられるTH17細胞は、粘膜の病原性細菌および病原性真菌に対する免疫応答のために重要である。
【0189】
アデノシンA2a受容体(A2aR)は、T細胞アネルギーを誘導することによるおよびCD4+T細胞におけるFOXP3の発現を促進することによるT細胞応答、ならびにTreg細胞への発達を阻害する(Zarekら、Blood 111巻、251頁、2008年)。A2aRのリガンドはアデノシンである。アデノシンは、細胞死中に放出される(例えば、腫瘍、ウイルス感染症)。
【0190】
キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR、CD158としても公知)は、ナチュラルキラー細胞およびT細胞サブセットにおいて見いだされる細胞表面タンパク質である。KIRは、MHCクラスI分子と相互作用し、NK細胞の細胞傷害活性を抑制する。個々のKIRは、別々のMHCクラスIアロタイプのサブセットを認識する。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、リリルマブ(BMS−986015)などのKIRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0191】
TGFβ、IL−10およびIL−35を含む、阻害性サイトカインは、TH1タイプ応答を抑制し、Treg細胞の発生を促進することによって免疫応答を阻害し得る(BettiniおよびVignali、Curr. Opin. Immunol. 21巻、612頁、2009年)。
【0192】
インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)は、トリプトファンのN−ホルミル−キヌレニンへの分解を触媒する酵素である。IDOは、IFNγによって誘導され、細胞の微小環境からのトリプトファンの局所的な分解によってT細胞応答を抑制する(Mellor、Biochem. Biophys. Res. Comm. 338巻、20〜4頁、2005)。理論に縛られることは望まないが、T細胞のトリプトファン欠乏およびトリプトファン分解経路からの毒性分解産物の生成は、T細胞の抑止およびアポトーシスを誘導し、T細胞を不活性にすると考えられる(Solimanら、Cancer J. 16巻、354〜9頁、2010年)。IDOは、浸潤性骨髄細胞(例えば、樹状細胞)によって発現する(MellorおよびMunn、Nat. Rev. Immunol. 4巻、762〜74頁、2004年)。IDOは、様々な範囲の腫瘍タイプのがん細胞によっても発現し、腫瘍に対する免疫応答を阻害し得る(Munn、Update Cancer Ther. 1巻、175〜185頁、2006年)。
【0193】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、左旋性−1−メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liuら、2010年、Blood 115巻、3520〜30頁)、エブセレン(Terentisら、2010年、Biochem. 49巻、591〜600頁)、インドキシモド、NLG919(Mautinoら、American Association for Cancer Research、第104回年会、2013年;2013年4月6日〜10日)、1−メチル−トリプトファン(1−MT)−チラパラザミンまたはこれらの任意の組合せなどのIDO阻害剤と組み合わせて使用される。
【0194】
オルニチンおよび尿素へのアルギニンの代謝は、細胞質およびミトコンドリアに位置する2つの別個の遺伝子によってコードされる、アルギナーゼIおよびアルギナーゼIIによって触媒される。オルニチンは、細胞周期進行に必要なポリアミンの産生のための主要物質である。アルギニンは、誘導性の一酸化窒素シンターゼによって代謝されて、シトルリンおよび一酸化窒素を産生することもでき、これは、細胞傷害機構において重要な役割を果たす。アルギナーゼは、CD3ζ鎖の発現の減少によってT細胞アネルギーを引き起こすこともできる(Rodriguezら、Cancer Res. 64巻、5839頁、2004年)。アルギナーゼは、骨髄に由来するサプレッサー細胞によって産生され、この発現はいくつかの腫瘍細胞株において観察されている(RodriguezおよびOchoa、Immunol. Rev. 222巻、180〜191頁、2008年)。
【0195】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、N(オメガ)−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)、N−オメガ−ヒドロキシ−ノル−l−アルギニン(ノル−NOHA)、L−NOHA、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)、S−(2−ボロノエチル)−L−システイン(BEC)またはこれらの任意の組合せなどのアルギナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される。
【0196】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、他の免疫モジュレーション分子を標的とする薬剤と組み合わせて使用される。例えば、MNK特異的阻害剤は、抗CD137(4−1BB)抗体(ウレルマブなど)、抗CD134(OX−40)抗体(MDI6469(OX−40アゴニスト)など)、レナリドミド、ポマリドミドまたはこれらの組合せと組み合わせて使用され得る。
【0197】
本明細書において使用される場合、「過剰増殖障害」または「過剰増殖疾患」は、正常細胞または非疾患細胞と比較して、過剰成長または増殖を指す。代表的な過剰増殖障害は、異形成症、腫瘍症、非接触阻害された細胞または腫瘍形成的に形質転換された細胞、腫瘍、がん、癌腫、肉腫、悪性細胞、前悪性細胞、および非腫瘍性または非悪性の過剰増殖障害(例えば、腺腫、線維腫、脂肪腫、筋腫、血管腫、線維症、再狭窄など)を含む。ある特定の実施形態では、本開示の組成物および方法による免疫モジュレーションによって処置されるがんは、癌腫(上皮性)、肉腫(結合組織)、リンパ腫もしくは白血病(造血細胞)、生殖細胞腫瘍(多能性細胞)、芽腫(未成熟な「前駆」細胞または胚組織)またはこれらの任意の組合せを含む。これらの種々の形態の過剰増殖疾患は、本技術分野において公知であり、診断および分類のための基準は確立されている(例えば、HanahanおよびWeinberg、Cell 144巻、646頁、2011年;HanahanおよびWeinberg、Cell 100巻、57頁、2000年;Cavalloら、Canc. Immunol. Immunother. 60巻、319頁、2011年;Kyrigideisら、J. Carcinog. 9巻、3頁、2010年)。
【0198】
固形腫瘍および白血病を含む、広範な過剰増殖障害は、本明細書に開示の組成物および方法がモジュレートする免疫に対して受け入れられる。本開示の免疫モジュレーションによって処置され得る代表的ながんは、乳房、前立腺および直腸の腺癌;全ての形態の肺の気管支原性肺癌;骨髄腫(myeloid);メラノーマ;肝細胞腫;神経芽細胞腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;および癌腫(例えば、ウォーカー癌腫、基底細胞癌、基底扁平細胞癌、ブラウン・ピアース癌、腺管癌、エールリッヒ腫瘍、クレブス2癌、メルケル細胞癌、粘液性癌、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、スキルス癌、細気管支癌、気管支原性癌、扁平上皮細胞癌、および移行上皮癌)を含む。処置され得る追加の代表的ながんは、組織球性障害;悪性組織球増殖症;免疫増殖性小腸疾患;形質細胞腫;細網内皮症;メラノーマ;軟骨芽細胞腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;エナメル上皮腫;セメント質腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫;および絨毛性腫瘍を含む。
【0199】
代表的な血液系悪性腫瘍は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)(例えば、濾胞性リンパ腫、散在性の大細胞型B細胞リンパ腫または慢性リンパ性白血病)または多発性骨髄腫(MM)を含む。
【0200】
よりさらなる代表的な過剰増殖障害は、腺腫;胆管腫;真珠腫;円柱腫(cyclindroma);嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;半陰陽性卵巣腫瘍;肝細胞腫;汗腺腫;膵島細胞腫瘍;ライディッヒ細胞腫瘍;セルトリ細胞腫瘍;莢膜細胞腫;平滑筋腫(leimyoma);平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫(myomma);筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和性傍神経節腫;角化血管腫;好酸球性血管リンパ球増殖症;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管外皮腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症;および子宮頚部異形成を含む。
【0201】
特定の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、免疫細胞の活性を増加させるための方法を提供する。
【0202】
他の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させるための方法を提供する。
【0203】
さらに他の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、免疫応答を向上する、増強するまたは延長するための方法を提供する。
【0204】
さらに他の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、刺激される抗原特異的T細胞応答は、腫瘍関連抗原(TAA)に対して特異的である。
【0205】
より多くの態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、免疫抑制シグナル伝達経路を阻害するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、免疫抑制シグナルは、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35またはこれらの任意の組合せと関与する。ある特定の実施形態では、免疫抑制シグナルは、免疫耐性と関連する疾患を有する被験体において生じる、1つまたは複数の調節不全の免疫チェックポイントタンパク質と関与し、被験体は、疾患(例えば、がん)に対する免疫応答を誘導または増強するために、不適切な免疫抑制シグナル伝達経路をモジュレートするMNK特異的阻害剤を用いる処置を必要とする。特定の実施形態では、免疫耐性と関連する免疫抑制成分は、PD−1、PD−L1、LAG3、IL−10、Treg細胞またはこれらの組合せである。ある特定の実施形態では、阻害される免疫抑制シグナル伝達経路は、PD−1経路またはLAG3経路である。例えば、MNK特異的阻害剤は、PD−1、PD−L1、LAG3または3つ全ての発現を下方調節することができ、またはPD−1、PD−L1、LAG3または3つ全てを間接的に阻害することができ、それによって、これらの免疫抑制経路を阻害される。
【0206】
さらなる実施形態では、免疫抑制シグナルは、過剰な調節性T細胞(Treg)を誘導し、ここで、MNK特異的阻害剤は、エフェクターT細胞(T)とTreg細胞の比率を変化させる。ある特定の実施形態では、T細胞とTreg細胞の比率は、MNK特異的阻害剤の存在下で、阻害剤の非存在の場合と比較して、増加する。さらに他の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MHC/HLA分子(例えば、MHC/HLAクラスII)の発現を下方調節または低減させて抗原提示を最小化する免疫抑制シグナルと対抗し、MNK特異的阻害剤は、MHC/HLAクラスII分子などのMHC/HLA分子のレベルを調節する(すなわち、増加させる)ことによって抗原提示を促進または増強する。
【0207】
さらなる態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、内在性の抗がん免疫を促進するための方法を提供する。「内在性」という用語は、外因的に獲得されるものとは対照的に、例えば、免疫グロブリン治療、養子T細胞治療、遺伝子組換えT細胞治療(例えば、キメラ抗原受容体、組換えT細胞受容体)によって、被験体に存在する抗がん免疫応答を指す。ある特定の実施形態では、促進される内在性の抗がん免疫は、抗原特異的T細胞応答を含む。
【0208】
よりさらなる態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、固形腫瘍、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、腎臓がん、血液がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、結腸がん、直腸がん、胃がん、食道がん、膀胱がん、頭頸部がん、甲状腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、尿路上皮がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝細胞がん、骨髄腫、多発性骨髄腫、白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、脳がん、CNSがん、悪性神経膠腫またはこれらの任意の組合せを有する被験体に投与することによる、免疫耐性と関連する疾患を阻害するための方法を提供する。ある特定の実施形態では、免疫耐性と関連する疾患は、PD−1、PD−L1またはLAG3の免疫抑制シグナル伝達経路によって媒介される。特定の実施形態では、免疫耐性の阻害は、PD−1、PD−L1、LAG3またはこれらの組合せを下方調節すること、発現を低減させることまたは間接的に阻害することを含む。ある特定の他の実施形態では、免疫耐性の阻害は、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35、アルギナーゼ、IDOまたはこれらの任意の組合せを下方調節することまたは間接的に阻害することを含む。
【0209】
本明細書に記載の免疫モジュレーションのための組成物および方法は、感染症または感染性疾患(例えば、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、原生動物、蠕虫)の状況において使用されてもよい。ある特定の態様では、本開示は、有効量のMNK特異的阻害剤を、慢性感染症などの感染症を有する被験体(例えば、ヒト)に投与することによる、(1)免疫細胞の活性を増加させる;(2)免疫細胞のダウンモジュレーションを低減させる;(3)免疫応答を誘導する、増強するもしくは延長する;(4)抗原特異的T細胞応答を刺激する;(5)免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する;(6)内在性の抗感染性因子の免疫を促進する;(7)ワクチンが誘導する免疫応答を増強する;または(8)免疫耐性と関連する疾患を阻害する;ための方法を提供する。
【0210】
感染性疾患は、感染病原体と関連するものを含み、任意の様々な細菌(例えば、病原性のE.coli、S.typhimurium、P.aeruginosa、B.anthracis、C.botulinum、C.difficile、C.perfringens、H.pylori、V.cholerae、Listeria spp.、Rickettsia spp.、Chlamydia spp.、Staphylococci、Streptococci、Pneumonococci、Meningococciなど)、マイコバクテリアおよび寄生虫(原虫、トリパノソーマ、マラリア、ジアルジア属、トキソプラズマの任意の公知の寄生虫のメンバーを含む)を含む。感染性ウイルスは、アデノウイルス、ブニヤウイルス、サイトメガロウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)、ヘルペスウイルス、パボーバウイルス、パピローマウイルス(例えば、HPV)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス)、ポリオウイルス、風疹ウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザ)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア)、レオウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV)、ヒトT白血病ウイルス(HTLV1、HTLV2)、水痘帯状疱疹ウイルス、人畜共通感染症ウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エボラウイルスおよびウエストナイルウイルス)などの真核生物ウイルスを含む。感染性真菌は、例えば、Candida、CryptococcusおよびAspergillusを含む。ある特定の実施形態では、免疫細胞の活性を増加させるまたはダウンモジュレーションを低減させるための方法は、有効量の本開示のMNK特異的阻害剤を、その抗原がMHCまたはHLAクラスI分子によってプロセシングおよび提示される、サイトゾル病原体に感染した被験体に投与することを含む。
【0211】
任意の上述の実施形態では、免疫細胞は、T細胞(例えば、CD8エフェクターT細胞、CD4ヘルパーT細胞または調節性T細胞)、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、骨髄細胞(単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球または顆粒球など)またはこれらの任意の組合せなどのリンパ球である。特定の実施形態では、免疫細胞は、CD8+エフェクターT細胞(細胞傷害性Tリンパ球またはCTLとしても公知)などのT細胞である。
【0212】
任意の上述の実施形態では、免疫応答は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、骨髄細胞またはこれらの任意の組合せによって媒介される。ある特定の実施形態では、免疫応答は、CD8+エフェクターT細胞などのT細胞によって媒介される。
【0213】
任意の上述の実施形態では、免疫耐性は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、骨髄細胞またはこれらの任意の組合せに対して耐性である。ある特定の実施形態では、免疫耐性は、CD8+エフェクターT細胞などのT細胞に対して媒介される。
【0214】
本明細書に記載の組成物および方法の任意の態様における、免疫細胞もしくは免疫応答の、活性の増加、または誘導、増強、延長もしくは刺激、あるいは免疫抑制シグナル伝達経路または免疫耐性の阻害は、本技術分野において公知の方法を使用して、例えば、免疫細胞の増殖、免疫細胞の活性/エフェクター機能、免疫細胞の持続、抗体産生またはサイトカイン産生を測定することにより、測定してよい。例として、T細胞活性の増加は、MNK特異的阻害剤の存在および非存在下、T細胞増殖の増加(H−チミジン取り込みアッセイ、CFSE希釈アッセイ)、T細胞共刺激の増強、T細胞活性化細胞表面マーカーの発現(フローサイトメトリー)、細胞溶解活性(51クロム放出アッセイ)、IFNγまたはIL−2分泌の増加(ELISA、フローサイトメトリー)によって実証され得る。
【0215】
さらなる態様では、本開示は、抗原特異的な免疫応答の増強を促進するための方法であって、有効量のMNK特異的阻害剤および抗原(例えば、ワクチン)を、それを必要とする被験体に投与することを含み、抗原特異的免疫応答が、MNK特異的阻害剤を用いる処置のない場合よりも、MNK特異的阻害剤との組合せにおいてより有効である方法を提供する。抗原特異的免疫応答の有効性は、本技術において公知の方法を使用して、例えば、免疫細胞の活性化、免疫細胞のエフェクター機能、免疫細胞の増殖、免疫細胞の生存、免疫細胞、免疫細胞サイトカイン産生によって確認され得る。ある特定の実施形態では、抗原特異的免疫応答は、T細胞応答である。本明細書において使用される場合、「ワクチン」という用語は、抗原特異的な免疫応答を誘導する生物学的な調製物を指す。ワクチンは、抗原を含み、これは、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質またはこれらの免疫原性断片;糖タンパク質またはこれらの免疫原性断片;ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくは糖タンパク質またはこれらの免疫原性断片をコードする核酸;糖脂質;炭水化物または分子含有炭水化物;脂質分子;あるいは細胞または細胞調製物であってよい。ある特定の実施形態では、ワクチンは、抗原をコードするポリヌクレオチド;ポリヌクレオチドを含むリコンビナント発現ベクター;抗原もしくは抗原をコードするポリヌクレオチドが誘導する免疫細胞または他の細胞、(生、減弱、死)細胞、細胞膜調製物、細胞小器官調製物、あるいは細胞のエキソソームを含む。ワクチンは、予防的または治療的であってよい。ワクチンは、感染病原体または内在性の細胞(例えば、がん細胞)に対するものであってよい。ある特定の実施形態では、ワクチンは、がん細胞抗原または腫瘍関連抗原に対して特異的である。ある特定の実施形態では、ワクチン抗原は、MHC(HLA)クラスIエピトープ、MHC(HLA)クラスIIエピトープまたはこれらの組合せを含む。
【0216】
「処置」、「処置する」または「回復させる」とは、被験体(すなわち、患者)の疾患、障害または状態の医学的管理を指し、これは治療的、予防的/予防性(preventative)またはこれらの処置の組合せであってよい。処置は、少なくとも1つの疾患の症状の重症度を改善または減少させ、疾患の悪化もしくは進行を遅らせ、またはさらなる関連疾患の発症を遅らせるもしくは防ぐものであってよい。「疾患を発症する危険性を低減させる」とは、疾患の発症、または、1つもしくは複数の疾患(例えば、がん)の症状の再発を予防するまたは遅らせることを指す。ある特定の実施形態では、本開示のMNK特異的阻害剤によって提供される免疫モジュレーションは、処置のレジメンを助けるもしくは増強し、または宿主生物の免疫系を助けるもしくは増強する。
【0217】
「患者」または「被験体」は、ヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ニワトリ、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットなどの動物を含む。動物は、非霊長類および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物であってよい。一実施形態では、患者は、ヒトの乳幼児、子供、青年または成人などのヒトである。
【0218】
本開示のMNK特異的阻害剤またはこれらの薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の他の治療剤またはレジメンの投与と同時に、前にまたは後に投与されてもよい。このような組合せ治療は、本開示のMNK特異的阻害剤および1つまたは複数のさらなる活性薬剤(例えば、免疫抑制成分の阻害剤)を含有する、単一の医薬投与製剤の投与、ならびに本開示のMNK特異的阻害剤およびそれぞれの活性薬剤のそれ自体別々の医薬投与製剤での投与を含む。例えば、本開示のMNK特異的阻害剤および別の活性薬剤は、錠剤もしくはカプセル剤または液体剤などの単一の経口投与組成物中で一緒に患者に投与することができ、またはそれぞれの薬剤は、別々の経口投与製剤で投与されてよく、あるいは、それぞれの薬剤は、異なる投与経路(例えば、経口および非経口)によって投与されてよい。さらなる活性薬剤は、がんもしくは感染症(例えば、ワクチン、化学療法剤)または新たに登場した治療(例えば、1つまたは複数の免疫抑制成分に対する抗体)などの特定の疾患状態または障害のための標準的な処置として、本技術分野において許容されるものであってよい。別々の投与製剤を使用する場合、本開示のMNK特異的阻害剤および1つまたは複数のさらなる活性薬剤は、実質的に同じ時に、すなわち、併せて、または別々に時間をずらして、すなわち、逐次的に投与することができ;組合せ治療は、これらレジメンの全てを含むものと理解される。本開示のMNK特異的阻害剤の投与は、単一用量として投与されてよく、または投与は、数回行ってよく、複数の用量が、それを必要とする被験体に与えられる。
【0219】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤を含む組合せは、そのそれぞれが連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与されてよく、被験体(例えば、ヒト)における疾患(がんまたは感染症など)を処置するために使用される。例えば、がんまたは感染性疾患を処置するために有用な組合せは、(a)ピジリズマブ、ニボルマブもしくはペムブロリズマブなどのPD−1に対して特異的な抗体;(b)MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AもしくはMSB0010718CなどのPD−L1に対して特異的な抗体;(c)トレメリムマブもしくはイピリムマブなどのCTLA4に対して特異的な抗体;(d)ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセルもしくはドタキセルなどの化学療法剤;(e)ウレルマブなどの抗CD137(4−1BB)抗体;(f)MDI6469(OX−40アゴニスト)などの抗CD134(OX−40)抗体;(g)レナリドミドもしくはポマリドミド;または(h)これらの任意の組合せと組み合わせた、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbのMNK特異的阻害剤のいずれか1つを含む。
【0220】
任意の上述の実施形態では、処置または免疫モジュレーションの方法は、化学療法剤をさらに含む組合せの使用を含み、組合せのそれぞれの成分は、本明細書に記載のように、連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与されてよい。例えば、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbのMNK特異的阻害剤のいずれか1つは、(a)ピジリズマブ、ニボルマブもしくはペムブロリズマブなどのPD−1に対して特異的な抗体;(b)MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AもしくはMSB0010718CなどのPD−L1に対して特異的な抗体;(c)トレメリムマブもしくはイピリムマブなどのCTLA4に対して特異的な抗体;(d)MDI6469(OX−40アゴニスト)などの抗CD134(OX−40)抗体;(e)レナリドミドもしくはポマリドミド;または(f)ウレルマブなどの抗CD137(4−1BB)抗体;などの免疫抑制成分の阻害剤、およびベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドタキセルなどの化学療法剤と組み合わせることができる。
【0221】
任意の上述の実施形態では、処置または免疫モジュレーションの方法は、がん抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA))に対して特異的なCARを含有するT細胞、もしくは感染した細胞で発現される抗原、または両方をさらに含む組合せの使用を含み、組合せのそれぞれの成分は、本明細書に記載のように、連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与されてよい。例えば、式I、Ia、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VI、VIIaまたはVIIbのMNK特異的阻害剤のいずれか1つは、(a)ピジリズマブ、ニボルマブもしくはペムブロリズマブなどのPD−1に対して特異的な抗体;(b)MDX−1105、BMS−936559、MEDI4736、MPDL3280AもしくはMSB0010718CなどのPD−L1に対して特異的な抗体;(c)トレメリムマブもしくはイピリムマブなどのCTLA4に対して特異的な抗体;(d)MDI6469(OX−40アゴニスト)などの抗CD134(OX−40)抗体;(e)レナリドミドもしくはポマリドミド;または(f)ウレルマブなどの抗CD137(4−1BB)抗体;などの免疫抑制成分の阻害剤、およびCD3、CEACAM6、c−Met、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EphA2、IGF1R、GD2、O−アセチルGD2、O−アセチルGD3、GHRHR、GHR、FLT1、KDR、FLT4、CD44v6、CD151、CA125、CEA、CTLA−4、GITR、BTLA、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、ルイスA、ルイスY、TNFR1、TNFR2、PD1、PD−L1、PD−L2、HVEM、MAGE−A、メソセリン、NY−ESO−1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、CD40、CD137、TWEAK−R、LTβR、LIFRβ、LRP5、MUC1、OSMRβ,TCRα,TCRβ、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD52、CD56、CD80、CD81、CD86、CD123、CD171、CD276、B7H4、TLR7、TLR9、PTCH1、PTCH1、Robo1、α−胎児タンパク質(AFP)、Frizzled、OX40(CD134ともいう)またはCD79bなどのがん抗原(例えば、腫瘍関連抗原(TAA))に対して特異的なCARを含有するT細胞;またはアデノウイルス、ブニヤウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、パボーバウイルス、パピローマウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス、HPV)、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザ)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア)、レオウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV)、フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス、HCV;B型肝炎ウイルス、HBV)からの分子などの感染した細胞で発現される抗原に対して特異的なCARを含有するT細胞と組み合わせることができる。
【0222】
さらなる実施形態では、1つまたは複数の用量のMNK特異的阻害剤は、1つまたは複数の用量の免疫抑制成分の阻害剤、および任意選択で、1つまたは複数の用量の化学療法剤または感染した細胞において発現するTAAもしくは抗体に対して特異的なCARを含有するT細胞とともに、連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与される。よりさらなる実施形態では、複数回用量のMNK特異的阻害剤は、複数回用量の免疫抑制成分の阻害剤および複数回用量の化学療法剤とともに連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与される。よりさらなる実施形態では、複数回用量のMNK特異的阻害剤は、1〜約4回用量の免疫抑制成分の阻害剤および1〜約4回用量の化学療法剤とともに連続して(逐次的に)、併せてまたは同時に投与される。全ての上記実施形態では、MNK特異的阻害剤は、最初に投与されてよく、または、免疫抑制成分の阻害剤は最初に投与されてよく、または化学療法剤は最初に投与されてよい。
【0223】
本組合せは、組合せキットとして存在していてよい。本明細書において使用される「組合せキット」または「キットの部分」という語句は、本開示にしたがって、MNK特異的阻害剤、免疫抑制成分の阻害剤、および任意選択で化学療法剤を投与するために使用される1つまたは複数の医薬組成物を意味する。MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤が同時に投与される場合、組合せキットは、錠剤、バイアルまたは両方などの、単一の医薬組成物中または別々の医薬組成物中にMNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤を含有してよく、ならびにバイアル中に化学療法剤を含有してよい。MNK特異的阻害剤および免疫抑制成分の阻害剤が同時に投与される場合、組合せキットは、錠剤、バイアルまたは両方などの、単一の医薬組成物中または別々の医薬組成物中にMNK特異的阻害剤および化学療法剤を含有してよく、ならびにバイアル中に免疫抑制成分の阻害剤を含有してよい。MNK特異的阻害剤ならびに免疫抑制成分の阻害剤および/または任意選択で化学療法剤が同時に投与されない場合、組合せキットは、別々の医薬組成物中に、MNK特異的阻害剤、免疫抑制成分の阻害剤および任意選択で化学療法剤を含有し、MNK特異的阻害剤、免疫抑制成分の阻害剤および任意選択で化学療法剤は、いずれも単一包装中、または別々の包装の別々の医薬組成物中にある。
【0224】
一態様では、以下の構成要素を含むキットの部分が提供される:(a)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中のMNK特異的阻害剤;(b)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中の免疫抑制成分の阻害剤;および任意選択で(c)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中の化学療法剤。
【0225】
ある特定の実施形態では、キットの部分は、以下の構成要素:(a)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中のMNK特異的阻害剤;(b)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中の免疫抑制成分の阻害剤;および任意選択で(c)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中の化学療法剤を含み、構成要素は、連続、別々および/または同時の投与のために適切な形態で提供される。
【0226】
ある特定の実施形態では、キットの部分は、(1)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中にMNK特異的阻害剤を含む第1の容器;および(2)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中に免疫抑制成分の阻害剤を含む第2の容器、および任意選択で(3)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤中に化学療法剤を含む第3の容器を含む。組合せキットは、投薬および投与の指示などの説明書とともに提供されてもよい。このような投薬および投与の指示は、例えば、薬物の製品ラベルによって、医師に提供される種類のものであってよく、またはこれらは、患者への説明書などの、医師によって提供される種類のものであってよい。
【0227】
本明細書において使用される「負荷量」という用語は、例えば、薬物の血中濃度レベルを素早く上昇させるために、被験体に投与される維持量よりも高投与量の、MNK特異的阻害剤または免疫抑制成分の阻害剤もしくは化学療法剤の単一用量または短期間レジメンを意味すると理解されるべきである。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の使用のための短期間レジメンは、1〜約14日;1〜約7日:1〜約3日;約3日間;約2日間;または1日間である。一部の実施形態では、「負荷量」は、治療的に有効なレベルに、化合物(例えば、本開示のMNK特異的阻害剤)の血中濃度を上昇させることができる。一部の実施形態では、「負荷量」は、化合物の維持量と併せて、治療的に有効なレベルに化合物(例えば、本開示のMNK特異的阻害剤)の血中濃度を上昇させることができる。「負荷量」は、1日当たり1回、または1日当たり2回以上(例えば、1日当たり4回まで)投与することができる。ある特定の実施形態では、「負荷量」は、1日当たり1回投与される。一部の実施形態では、負荷量は、維持量の2〜約100倍;約2〜約10倍;約2〜約5倍;または約2倍から約3倍;約4倍;もしくは約5倍の量である。他の実施形態では、負荷量は、1〜約7日;1〜約5日:1〜約3日;1日間;約2日間;約3日間投与され、その後投与プロトコールが維持される。
【0228】
本明細書において使用される「維持量」という用語は、連続的に投与される用量(すなわち、少なくとも2回)を意味すると理解され、これは、化合物(例えば、本開示のMNK特異的阻害剤)の血中濃度のレベルを治療的に有効なレベルにゆっくりと上昇させるか、または所望の期間にわたって(例えば、時間、日、週、月、年)、このように治療的に有効なレベルを維持することのいずれかを意図する。ある特定の実施形態では、維持量は、1日当たり1回または2回投与され、1日維持量は、総1日負荷量よりも低い。
【0229】
本明細書において使用される場合、「RNA干渉剤」(RNAi剤)という用語は、典型的には標的のmRNA分子の切断によって、標的遺伝子の発現を減少させるまたは阻害する能力を有する、短い一重鎖または二重鎖RNAポリヌクレオチドを指す。RNAi剤の非限定的な例は、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)およびPIWI干渉RNA(piRNA)を含む。
【0230】
前述の実施形態のいずれかでは、本方法は、MNK特異的阻害剤および任意選択で抗がん応答を誘導するまたは増強する化合物を投与することを含む。ある特定の実施形態では、誘導されたまたは増強された抗がん応答は、抗腫瘍応答である。さらなる実施形態では、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療は、ワクチン、免疫抑制シグナルの阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療は、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤またはVEGFR阻害剤などの化学療法剤である。
【0231】
本明細書において使用される場合、「B−Raf阻害剤」という用語は、B−Raf癌原遺伝子としても公知のB−Rafの活性を低減させるまたは阻害する任意の薬剤を指す。B−Rafは、MAPキナーゼ/ERKシグナル伝達経路の調節において役割を果たすセリン/スレオニンキナーゼであり、これは、細胞分裂、分化および分泌に影響する。B−Raf阻害剤の非限定的な例は、ソラフェニブ、ベムラフェニブおよびダブラフェニブを含む。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブまたはこれらの任意の組合せなどのB−Raf阻害剤と組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、B−Raf阻害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、B−Raf阻害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、B−Raf阻害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、B−Raf阻害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0232】
本明細書において使用される場合、「MEK阻害剤」という用語は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼであるキナーゼ酵素MEK1および/またはMEK2の活性を低減させるまたは阻害する任意の薬剤を指す。MEK阻害剤の非限定的な例は、トラメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD−325901、コビメチニブ、CI−1040およびPD035901を含む。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、トラメチニブ、セルメチニブ、ビニメチニブ、PD−325901、コビメチニブ、CI−1040、PD035901またはこれらの任意の組合せなどのMEK阻害剤と組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MEK阻害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MEK阻害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MEK阻害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、MEK阻害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0233】
本明細書において使用される場合、「血管内皮成長因子阻害剤」または「VEGF阻害剤」という用語は、VEGFの活性を低減させるまたは阻害する任意の薬剤を指す。VEGFは、脈管形成、血管新生を促進し、血管透過性を増加させる血管新生促進因子である。VEGFは、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−Eまたはこれらの任意の組合せを指してよい。VEGF阻害剤の非限定的な例は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、AZD2171、カンナビジオール(cannbidiol)、THCまたはこれらの任意の組合せを含む。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGF阻害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGF阻害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGF阻害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGF阻害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0234】
本明細書において使用される場合、「血管内皮成長因子受容体阻害剤」または「VEGFR阻害剤」という用語は、VEGF特異的なチロシンキナーゼ受容体であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3またはこれらの任意の組合せの活性を阻害する任意の薬剤を指す。VEGFR阻害剤の非限定的な例は、アキシチニブ、スニチニブ、バタラニブ、ソラフェニブ、GW−786034、CP−547632、AG−013736、レンバチニブ、モテサニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、CDP−791またはこれらの任意の組合せを含む。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGFR阻害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGFR阻害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGFR阻害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、VEGFR阻害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0235】
本明細書において使用される場合、「チロシンキナーゼ阻害剤」という用語は、チロシンキナーゼを阻害する任意の薬剤を指す。チロシンキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼおよびアロステリック阻害剤の触媒結合部位で競合的なATP阻害をもたらす阻害剤を含む。チロシンキナーゼ阻害剤の非限定的な例は、アキシチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バンデタニブおよびダサチニブを含む。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バンデタニブ、ダサチニブまたはこれらの任意の組合せなどのチロシンキナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0236】
本明細書において使用される場合、「細胞傷害剤」という用語は、細胞成長を阻害し、細胞増殖を阻害して、細胞死などをもたらす任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤は、アクチノマイシン、ブレオマイシン(belomycin)、プリカマイシン、マイトマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン(pirarubucin)、アクラルビシン、ミトキサントロンまたはこれらの組合せなどの細胞傷害剤と組み合わせて使用される。抗有糸分裂剤または抗微小管剤は、パクリタキセル、ドタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンまたはこれらの組合せであってよい。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞傷害剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞傷害剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞傷害剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、細胞傷害剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0237】
ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤による免疫モジュレーションは、少なくとも1つの抗がん剤とともに使用される。抗がん剤は、化学療法薬を含む。化学療法剤は、例えば、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬物、DNA損傷剤、代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログおよび糖修飾アナログなど)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(挿入剤など)またはDNA修復阻害剤を含む。さらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、化学療法剤およびPD−1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、化学療法剤およびPD−L1特異的抗体またはその結合断片と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、化学療法剤およびCTLA4特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。よりさらなる実施形態では、MNK特異的阻害剤は、化学療法剤およびLAG3特異的抗体もしくはその結合断片または融合タンパク質と組み合わせて使用される。
【0238】
化学療法剤は、例えば、以下の群を含む:ピリミジンアナログ(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリンアナログ、葉酸アンタゴニストおよび関連する阻害剤(メトトレキセート、ペメトレキセド、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの代謝拮抗剤/抗がん剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)などの天然物質、タキサン(パクリタキセル、ドタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、エリブリンおよびナベルビンなどの微小管かく乱物質を含む抗増殖剤/抗有糸分裂剤;エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド);DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾラミド、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミドおよびエトポシド(VP16));DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(アザシチジン);ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミスラマイシン)およびマイトマイシンなどの抗生物質;酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝し、それら自身がアスパラギン合成能を持たない細胞を欠乏させるL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート(ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)およびアナログ、ストレプトゾシン)、トリアゼン(ダカルバジン(DTIC))などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸アナログ(メトトレキセート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);血栓溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン、ポマリドミド)およびziv−アフリベルセプトなどの成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤;線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アポトーシスタンパク質(IAP)アンタゴニストの阻害剤(ビリナパント);ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、モセチノスタット、アベキシノスタット、ベリノスタット、エンチノスタット、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、SB939);プロテアソーム阻害剤(イキサゾミブ);アンジオテンシン受容体遮断剤;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、セツキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、アレムツズマブ、アブシキシマブ、アトリズマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エファリズマブ、エロツズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン(brentuximb vedotin));キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤(フラボピリドール、ロスコビチン、ブリオスタチン−1)および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤;トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾンおよびプレニゾロン);PARP阻害剤(ニラパリブ、オラパリブ);接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤(デファクチニブ(VS−6063)、VS−4718、VS−6062、GSK2256098);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤(セジラニブ、ガルニセルチブ、ロシレチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、EGF816、AZD4547);c−Met阻害剤(カプマチニブ、INC280);ALK阻害剤(セリチニブ、クリゾチニブ);ミトコンドリア機能障害誘導剤;コレラ毒素、リシン、Pseudomonas外毒素、Bordetella pertussisアデニレートシクラーゼ毒素またはジフテリア毒素およびカスパーゼ活性剤などの毒素;ならびにクロマチンかく乱物質。
【0239】
ある特定の実施形態では、化学療法剤は、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤またはこれらの任意の組合せである。具体的な実施形態では、化学療法剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、パクリタキセル、ドセタキセルまたはこれらの任意の組合せである。
【0240】
ある特定の実施形態では、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療、例えば、ワクチン、免疫抑制シグナルの阻害剤、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せは、本明細書に記載の免疫モジュレーション方法において、MNK特異的阻害剤と組み合わせて使用され、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療は、1つまたは複数の阻害性免疫チェックポイント分子に対するMNK特異的阻害剤の阻害活性を、アンタゴナイズする、低減させる、弱めるまたは低下させることはない。MNK特異的阻害剤とのアンタゴニスト性の組合せは、1つまたは複数の阻害性免疫チェックポイント分子において、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療とともに、および伴わずに、MNK特異的阻害剤の阻害活性を読み取るように、T細胞活性化のレベルを測定することによって(例えば、本明細書の実施例2に記載)確認され得る。ある特定の実施形態では、MNK特異的阻害剤および抗がん応答を誘導するまたは増強する治療の組合せは、1つもしくは複数の阻害性免疫チェックポイント分子に対するMNK特異的阻害剤の阻害活性をアンタゴナイズせず、または1つまたは複数の阻害性免疫チェックポイント分子に対するMNK特異的阻害剤の阻害活性のみを、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、または約0.1%未満減少させる。
【0241】
感染症または感染性疾患の状況において、MNK特異的阻害剤による免疫モジュレーションは、抗ウイルス剤(例えば、抗HIV剤)、抗生剤、抗菌剤、抗寄生虫剤または抗真菌剤と組み合わせて使用される。抗HIV薬の例は、例えば、逆転写酵素阻害剤(例えば、AZT、ddl、3TCおよびd4T)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、メシル酸サキナビル、リトナビル、メシル酸ネルフィナビル、アンプレナビル、メシル酸デラビルジン、サキナビルおよびロピナビル/リトナビル)またはCCR5受容体アンタゴニストを含む。抗ウイルス剤は、例えば、抗ヘルペスウイルス剤、抗インフルエンザウイルス剤、インターフェロン−αおよびβまたは種々の免疫グロブリンを含む。
【0242】
MNK特異的阻害剤による免疫モジュレーションは、抗ウイルスワクチン、抗細菌ワクチン、抗真菌ワクチン、抗寄生虫ワクチンと一緒に使用されてよく、またはこのようなワクチンを有する製剤として製造されてよい。感染性疾患のためのワクチンは、例えば、ポリオワクチン、麻疹ワクチン、日本脳炎ワクチン、BCGワクチン、三種ワクチン、流行性耳下腺炎ウイルスワクチン、水痘ウイルスワクチン、インフルエンザワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、HIVワクチン、マラリアワクチンおよびコレラワクチンを含む。
【0243】
「それを必要とする被験体」とは、本明細書において提供される化合物またはその組成物を用いて処置または回復のために受け入れられる、疾患、障害または状態(例えば、がんのような過剰増殖障害、慢性感染症)の危険性があるかまたは患っている被験体を指す。本明細書に記載の治療剤の投与を必要とする被験体は、がんであると疑われる被験体、がんがあると示された被験体、がんワクチンを受けている被験体、感染病原体に感染していると疑われる被験体、感染症もしくは感染性疾患であると示された被験体、または感染病原体に対するワクチンを受けている被験体を含む。被験体は、ヒト、ペット、家畜、ショー動物、動物園の動物、または他の動物などのがんの発症または感染が可能な任意の生物体であってよい。例えば、被験体は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマなどであってよい。ある特定の実施形態では、必要とする被験体はヒトである。特定の実施形態では、必要とする被験体は、免疫耐性が関係する、がんまたは慢性感染症などの疾患を有する。
【0244】
任意の上述の実施形態では、MNK特異的阻害剤(例えば、構造(I)の化合物)を含む医薬組成物は、MNK特異的活性を阻害するおよび免疫抑制を低減させるために十分な量で、好ましくは、それに対して許容される毒性で、被験体に投与される。適切な濃度および投与量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0245】
MNK特異的阻害剤またはその薬学的に許容される塩は、治療有効量で投与され、これは、使用される特異的化合物の活性;化合物の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、全身の健康、性別および食事;投与の方法および時間;排泄の速度;薬物の組合せ;特定の障害または状態の重症度;ならびに治療を受けている被験体を含む、様々な要因に応じて異なる。
【0246】
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与される場合に、ヒトなどの哺乳動物の疾患の処置を助けるための、本明細書に定義の免疫抑制の緩和効果に十分である、本明細書に記載のMNK特異的阻害剤の量を指す。「治療有効量」をなすMNK特異的阻害剤の量は、化合物、状態およびその重症度、投与の様式および処置される哺乳動物の年齢に応じて異なるが、当業者であれば、その自身の知識および本開示を考慮して、日常的に決定することができる。個々の有効成分を指す場合、単独で投与される治療有効用量は、その単独の有効成分を指す。組合せについて言及する場合、治療有効用量は、連続して、併せてまたは同時にのいずれかで投与されて、治療効果をもたらす有効成分の組合せ量を指す。
【0247】
本明細書において提供される、免疫細胞の活性を増加させる;免疫応答を誘導する、増強するもしくは延長する;抗原特異的T細胞応答を刺激する;免疫抑制シグナル伝達経路を阻害する;内在性の抗がんのもしくは抗感染性因子の免疫を促進する;またはがん細胞もしくは感染病原体/感染細胞の免疫耐性を阻害する、治療的なMNK特異的阻害剤およびその医薬組成物は、がん、感染症もしくは感染性疾患を発症する危険性を有するまたは危険性がある被験体に、治療有効量または用量で投与される。このような用量は、特異的治療剤または医薬組成物、投与経路、被験体の状態、すなわち、疾患の段階、ウイルス/細菌/真菌/寄生虫の負荷、疾患によって引き起こされる症状の重症度、全身の健康状態、ならびに年齢、性別および体重を含む、種々の要因、ならびに医薬分野の当業者に明らかな他の要因に応じて、決定または調整することができる。同様に、疾患または障害を処置するための治療的用量は、医薬分野の当業者によって理解されるパラメータに従って決定することができる。
【0248】
単独治療が抗がん治療として十分であり得る例は、強い、内在性の(既存の)抗がん免疫応答を有する患者の状況においてである。例えば、腫瘍は、抗原特異的な腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の大きな集団を有していてよい。しかし、腫瘍微小環境における活性な抗がん免疫応答は、腫瘍細胞および腫瘍関連マクロファージを誘導して、抗がん免疫応答をダウンモジュレートする免疫阻害性シグナル(例えば、PD−L1)を発現してよい。MNK特異的阻害剤などの免疫抑制シグナルの阻害剤の追加は、腫瘍の適応免疫耐性機構を阻害し、内在性の抗がん免疫応答(例えば、TIL)によって腫瘍の退縮を可能にする。ある特定の実施形態では、抗がん応答を促進する単独治療は、MNK特異的阻害剤、ワクチン、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤またはこれらの任意の組合せであってよい。ある特定の実施形態では、免疫抑制シグナル成分の阻害剤は、MNK、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35、アルギナーゼ、IDOまたはこれらの任意の組合せの阻害剤である。
【0249】
他の例において、組合せ治療は、弱い、内在性の抗がん免疫応答を有する患者の状況において有用であり得る。例えば、腫瘍の環境は、腫瘍が低い免疫原性であるので、より少数のTILを有していてよい。新規の抗がん応答を誘導するまたは増強する治療は、内在性の抗がん免疫応答を促進または増加させることができる。しかし、単一治療と同様に、この抗がん免疫応答の有効性は、免疫抑制シグナル成分(例えば、PD−L1)の上方調節によって制限され得る。例えば、抗がん応答を誘導するまたは増強する治療(「プライム」)と免疫抑制シグナルの阻害剤(「ブースト」)の組合せは、腫瘍の退縮の可能性を、誘導、促進または改善し得る。あるいは、組合せ治療は、免疫抑制シグナル成分の阻害剤(「プライム」)と、腫瘍の退縮の可能性を、誘導もしくは促進、または改善し得る抗がん応答を誘導または増強する薬剤(「ブースト」)を含んでいてよい。抗がん応答を誘導するまたは増強する治療(「プライム」)と免疫抑制シグナル成分の阻害剤または下方調節因子(「ブースト」)の組合せは、内在性の抗腫瘍免疫応答を可能にして、このように機能することによって、腫瘍の退縮を誘導し得る。ある特定の実施形態では、抗がん応答を誘導もしくは増強または促進する組合せ治療は、1つまたは複数の以下のものとともに使用されるMNK特異的阻害剤であってよい:ワクチン、B−Raf阻害剤、MEK阻害剤、VEGF阻害剤、VEGFR阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞傷害剤、化学療法剤、またはこれらの任意の組合せ。ある特定の実施形態では、免疫抑制シグナル成分の阻害剤は、MNK、PD−1、PD−L1、PD−L2、CTLA4、CD80、CD86、B7−H3、B7−H4、HVEM、BTLA、KIR、LAG3、GAL9、TIM3、2B4、アデノシン、A2aR、TGFβ、IL−10、IL−35、アルギナーゼまたはIDOの阻害剤である。ある特定の実施形態では、組合せ治療は、「プライム」および「ブースト」の処置を含み、それぞれの処置は、被験体に、同時にまたは併せて投与される。他の実施形態では、「ブースト」処置は、「プライム」処置の後に連続して投与される。
【0250】
一般に、治療剤は、治療有効量または用量で投与される。治療有効量または用量は、選択された投与経路、組成物の製剤、患者の応答、状態の重症度、被験体の体重および処方する医師の判断を含む、いくつかの要因に従って変更される。投与量は、個々の患者の必要性に応じて、経時的に増加または減少することができる。ある特定の例において、患者は、最初、低用量を与えられ、その後、患者の許容できる有効投与量に増加される。加えて、患者は、所定の期間および特定の時間増分(例えば、毎日、毎週、隔週、毎月、四半期、年2回、毎年など)にわたって、複数の用量を投与されてよい。有効量または投薬レジメンの決定は、十分に、当業者の能力内である。
【0251】
組合せを指す場合、治療的な有効用量は、連続してまたは同時にのいずれかで投与されて、治療効果をもたらす有効成分の組合せ量を指す(同じ製剤、または同時的では別々の製剤中)。最も効果的な用量は、一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を使用して決定され得る。本明細書に記載の治療剤(予防的利益のために投与される場合を含む)のための前臨床および臨床試験の設計および実行は、十分に、関連する分野における当業者の技能内である。
【0252】
治療剤の投与経路は、経口、腹腔内、経皮、皮下、静脈内または筋肉内注射、吸入、局所、病巣内、点滴;リポソームが媒介する送達;局所、髄腔内、歯肉ポケット、直腸、気管支内、経鼻、経粘膜、腸管、眼もしくは耳への送達、または本技術分野において公知の任意の他の方法であってよい。
【実施例】
【0253】
(実施例1)
MNK特異的な阻害は、免疫チェックポイント受容体およびリガンドの発現を減少させる
T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の活性化において、T細胞の増殖は、サイトカイン(例えば、IL−2)を産生し、免疫チェックポイント受容体の発現を誘導する。プログラム死1(PD−1)は、活性化されたT細胞および骨髄細胞の表面上で発現する阻害性チェックポイント受容体である。PD−1のリガンドである、プログラム死リガンド1(PD−L1、B7−H1/CD274)は、T細胞または正常な上皮細胞によって発現しないが、抗原提示細胞によって発現し、いくつかのがんにおいて過剰発現する。PD−1とPD−L1の相互作用は、T細胞における抗増殖効果、最終的にT細胞消耗およびアポトーシスをもたらす。活性化したT細胞および腫瘍細胞におけるMNKの役割を研究するために、免疫チェックポイント制御分子に対するMNK特異的阻害剤の効果を調べた。
【0254】
PD−1(CD279)の発現
PD−1の発現に対するMNK特異的阻害剤の効果を調べるために、ジャーカット細胞(クローンE6.1、ATCC、形質転換されたT細胞)を使用し、これは、T細胞受容体(TCR)のシグナル伝達を通じて活性化された場合に、PD−1を発現する。簡単には、ジャーカット細胞を、1×Pen/Strepおよび10%FBSを有する1×RPMI中で成長させ、次いで、約3×10のジャーカット細胞を1μg/mLのPHA(Sigma)および50ng/mLのPMA(Sigma)の存在下で活性化した。試験細胞を、種々の濃度のMNK特異的阻害剤である化合物107(0、0.01、0.1、1、3および10μM)で同時に処理した。48時間後、培養物の上清を収集し、ヒトIL−2 ELISA DuoSet(登録商標)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を使用して、IL−2の存在について、サンドイッチELISAにより調べた。ジャーカット細胞におけるPD−1のレベルを、固定できる死細胞株(1:20,000;BD Biosciences、San Jose、CA)とともに細胞を、4℃で15分間インキュベートし、フロー染色緩衝液(1×PBS、4%FBSおよび1mMのEDTA)で2回洗浄し、ヒトFcRブロックとともにインキュベートし、次いで、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化抗PD−1抗体(Biolegend、San Diego、CA)を4℃で30分間接触させ、フロー緩衝液で2回洗浄し、最終的に細胞を、固定化緩衝液を用いて4℃で20分間固定することにより調べた。固定後、細胞を、フロー緩衝液で2回洗浄し、フロー緩衝液に再懸濁し、BD Accuri C6フローサイトメーターを使用して蛍光を評価した。データをC6サイトメーターソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して分析した。
【0255】
図1Aおよび1Cに示すように、PHAおよびPMAによるジャーカットT細胞の活性化は、それぞれ、非誘導細胞(無刺激)と比較して、刺激されたジャーカット細胞の約25〜30%の細胞表面上でのPD−1の発現を誘導し、1,000倍上昇したIL−2サイトカイン産生を誘導した。MNK特異的阻害剤である化合物107を用いるPHA/PMA活性化ジャーカットT細胞の処理は、対照と比較して、最高濃度の50%低減まで、免疫阻害性受容体PD−1の発現の濃度依存的な低下をもたらした(図1Bを参照)。加えて、図1Cは、化合物107によるMNK特異的な阻害が、IL−2のレベルによって測定されるサイトカイン産生を変化させないので、PD−1のこの低減が、ジャーカットT細胞活性化自体における阻止のためではなかったことを示す(図1Cを参照)。最後に、化合物107によるMNK特異的な阻害は、細胞生存率に対する効果を有さなかった(図1D)。
【0256】
実際に、ジャーカットT細胞アッセイにおける種々の異なるMNK特異的阻害剤は、細胞生存率に影響を及ぼすことなく、免疫チェックポイント阻害剤を下方調節する能力を示した。このような化合物を表2Aにまとめる。
【0257】
【表2A-1】
【表2A-2】
【表2A-3】
【表2A-4】
【表2A-5】
【0258】
【表2B】
【0259】
一部の特異的なMNK阻害剤化合物は、わずかな抗PD−1活性を有し、一部は、細胞生存率に対する効果を有するが、試験された大部分の化合物は、検出可能な毒性がなく、免疫チェックポイント阻害剤を翻訳的に下方調節する能力があり、一方で、非特異的MNK阻害剤は、いずれも毒性があり、または免疫チェックポイント発現(PD−1)に対する効果を有さなかった。
【0260】
PD−L1(B7−H1、CD274)の発現
PD−1のリガンドであるPD−L1は、様々な腫瘍タイプにおいて上方調節することが示されている(Mahoneyら、Nat. Rev. Drug Discov. 14巻、561頁、2015年)。MNKの特異的な阻害がPD−L1の発現に対して効果を有するか否かを調べるために、恒常的にPD−L1を発現する、細胞を含むいくつかの腫瘍細胞株を、指示された濃度のeFT508またはビヒクル(DMSO)で48時間処理した。細胞を、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Biotool、Houston TX)を補充した1×RIPA溶解緩衝液(Millipore、Billerica MA)中で溶解した。細胞可溶化液中のタンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイ(ThermoFisher、Waltham MA)によって定量し、等量の全タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、抗PD−L1およびGAPDH抗体(Santa Cruz Biotechnology、Dallas TX)を用いて免疫ブロットし、LI−COR Odyssey imager(LI−COR、Lincoln NE)によって可視化した。A549(ヒト肺腺癌上皮細胞株)、HBL−1(散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株の活性化されたヒトB細胞様(ABC)サブタイプ)、AMO−1(ヒト形質細胞腫細胞株)、MDA−MB−361(ヒト乳腺癌細胞株)およびMDA−MB−231(転移性ヒト乳がん細胞株)を試験した。HBL−1細胞およびAMO−1細胞を、1×Pen/Strepおよび10%ウシ胎仔血清FBSを有する1×RPMI中で別々に成長させ、次いで、新鮮な培地中の2〜4×10のHBL−1細胞またはAMO−1細胞を、ビヒクルのみ(DMSO)または種々の濃度(0.01、0.1、1、3または10μM)のMNK特異的阻害剤である化合物107と、別々に、48時間接触させた。A549細胞、MDA−MB−361細胞およびMDA−MB−231細胞を、1×Pen/Strepおよび10%FBSを有する1×DMEM中で別々に成長させ、次いで、新鮮な培地中の2〜4×10のA549細胞、MDA−MB−361細胞またはMDA−MB−231細胞を、ビヒクルのみ(DMSO)または種々の濃度(0.01、0.1、1、3または10μM)のMNK特異的阻害剤である化合物107と、別々に、48時間接触させた。全ての細胞可溶化液を、1×プロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤(BioTool、Houston、TX)を補充した1×放射性免疫沈降分析アッセイ(RIPA)の緩衝液(Millipore、Billerica、MA)を使用して調製した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ試薬(Thermo Fisher、Waltham、MA)を用いて推定し、約25μgの全タンパク質を用いて4〜12%Bis−TrisSDS−PAGEゲル(Invitrogen)で分離し、以下の抗体:(a)PD−L1を検出するための抗PD−L1(EMD Milipore、Billerica、MA)、(b)リン酸化されたeIF4Eを検出するための抗リンeIF4e(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)、および(c)内部標準としてGAPDHを検出するための抗GAPDH抗体(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)を用いるウエスタンブロットにより探索した。ウエスタンブロットによって検出されるタンパク質レベルを、Image Studio(商標)Lite Software(LI−COR、Lincoln、NE)を使用して定量した。
【0261】
図2A〜2Eは、試験した全ての細胞株が、高度にグリコシル化された形態のPD−L1(上側のバンド、55kDa)および低度にグリコシル化された形態のPD−L1(33kDa)の発現を示したことを示す。MNK特異的な阻害は、試験された全てのがん細胞タイプ:(A)乳がんMDA−MB−231細胞;(B)B細胞リンパ腫HBL−1細胞;(C)肺腺癌A549細胞;(D)乳腺癌MDA−MB−361細胞;および(E)多発性骨髄腫AMO−1細胞において、高度にグリコシル化されたPD−L1タンパク質(上側のバンド)の約30〜40%の低減をもたらした。陽性対照として、eIF4Eは、MNK酵素活性の直接的な標的であるので(データを、図2Aおよび2Bのみに示す)、MNKの阻害を、eIF4Eリン酸化の抑止を検出することによって確認し、これは、キャップ依存翻訳による遺伝子発現の調節に影響を与え得る。
【0262】
結論
これらのデータは、MNKが、エフェクター細胞(例えば、T細胞におけるPD−1)および標的細胞(例えば、抗原提示細胞におけるPD−L1)の両方における免疫チェックポイント系分子の発現に影響を及ぼすことを実証する。MNK特異的阻害剤の存在は、サイトカイン(例えば、IL−2)産生および細胞生存率に対する効果が最小であるか効果を有さないので、データは、MNK機能の特異的な阻害が、T細胞機能を減少することなく、阻害性免疫チェックポイントシグナル伝達を除去するであろうことも示す。
【0263】
(実施例2)
一次T細胞における免疫チェックポイント受容体の発現に対するMNK特異的な阻害効果
MNKの特異的な阻害が、患者のT細胞におけるPD−1およびLAG3の発現に対して効果を有するか否かを調べるために、健康な提供者からの新鮮なヒトPan−T細胞(純度99%のCD3マーカー)をAll Cells(Alameda、CA)から購入し、これを、間接的な免疫磁気Pan−T標識システムを使用して、単核細胞からネガティブに単離し、試験した。約3×10のT細胞を、製造者のプロトコール(Dynabeads(登録商標)、Invitrogen、Carlsbad、CA)の通り、抗CD3/抗CD28磁気ビーズを使用して活性化した。簡単には、T細胞を活性化するために使用される新鮮な一次T細胞とビーズの比率は1:1であった(80,000個のT細胞毎に、2μlのビーズを添加)。試験細胞を、種々の濃度(0.01、0.1、1、3および10μM)のMNK特異的阻害剤である化合物107で同時に処理した。48時間後、培養物の上清を収集し、ヒトIL−2 ELISA DuoSet(登録商標)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を使用して、IL−2の存在について、サンドイッチELISAにより調べた。PD−1の発現、LAG3の発現および他のT細胞マーカーのレベルを、固定できる死細胞株(1:20,000;BD Biosciences)とともに細胞を、4℃で15分間インキュベートし、フロー染色緩衝液(1×PBS、4%FBSおよび1mMのEDTA)で2回洗浄し、ヒトFcRブロックとともにインキュベートし、次いで、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化抗PD−1抗体(Biolegend、San Diego、CA)またはアロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化抗LAG3抗体(eBioscience、San Diego、CA)ならびにフィコエリトリン(PE)標識化抗CD3(BD Biosciences、San Jose、CA)およびPE標識化抗CD45(BD Biosciences、San Jose、CA)を4℃で30分間接触させ、フロー緩衝液で2回洗浄し、最終的に細胞を、固定化緩衝液(Cytofix(商標)、BD Sciences、San Jose、CA)を用いて4℃で10分間固定することにより調べた。固定後、細胞を、フロー緩衝液で2回洗浄し、フロー緩衝液に再懸濁し、BD Accuri C6フローサイトメーターを使用して蛍光を評価した。データをC6サイトメーターソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して分析した。
【0264】
PD−1(CD279)の発現
ジャーカットT細胞における観察と一致して、抗CD3/抗CD28ビーズで活性化されたT細胞は、約50%の活性化されたT細胞においてPD−1の細胞表面の発現が増加し(図3A)、これは、T細胞が、これらのT細胞受容体(TCR)によって活性化されたことを示した。新鮮な一次T細胞の活性化は、サイトカイン応答の誘導を調べることにより、さらに確認された。特に、図3Eは、IL−2が、抗CD3/抗CD28ビーズへの曝露において1,000倍を超えて誘導されたことを示し、これは、TCRによる活性化をさらに示した。活性化されたT細胞のMNK特異的阻害剤である化合物107による処理は、10μMで観察された76%の最大阻害とともに、免疫阻害性受容体PD−1の発現の用量依存的な低下をもたらした(図3Bを参照)。加えて、化合物107によるMNK特異的な阻害は、IL−2のレベルによって測定されるサイトカイン産生の活性化を検出可能に変化させず(図3Eを参照)、T細胞活性化が、MNK特異的阻害剤によって影響されないことを示した。最後に、化合物107によるMNK特異的な阻害は、T細胞生存率に対する効果を有さなかった(図3F)。
【0265】
LAG3(CD223)の発現
ジャーカットT細胞における観察とも一致して、抗CD3/抗CD28クロスリンキングによるT細胞受容体(TCR)を介した一次T細胞の刺激は、LAG3の発現を誘導し、これは、これらの細胞表面におけるLAG3についておよそ20%のポジティブなT細胞染色をもたらし(図3C)、同様にIL−2産生の増加をもたらした(図3E)。LAG3は、CD8+T細胞およびTreg細胞において見いだされ、これは、生得的な免疫応答を阻害するために機能する。CD3/CD28抗体ビーズで活性化されたT細胞のMNK特異的阻害剤である化合物107による処理は、免疫阻害性受容体LAG3の発現の濃度依存的な低下をもたらし、10μMで62%の低減が観察された(図3D)。
【0266】
IL−10の産生
IL−10は、複数の細胞タイプ(例えば、Treg、Th1、Th2、細胞傷害性T細胞、樹状細胞、マクロファージ、骨髄由来サプレッサー細胞)によって分泌される免疫抑制サイトカインであり、これは、腫瘍の微小環境の状況において、免疫応答を阻害することができる(例えば、Rabinovichら、Annu. Rev. Immunol. 25巻、267頁、2007年;Rowlettら、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 294巻、G452頁、2008年;およびRuffellおよびCoussens、Cancer Cell 27巻、462頁、2015年を参照)。興味深いことに、化合物107は、いくつかの他のMNK特異的阻害剤化合物のように(表3)、10μMで96%の最大阻害とともに、用量依存的にIL−10の産生を阻害した(図3G)。
【0267】
【表3-1】
【0268】
結論
実施例1の結果と併せて、これらのデータは、MNKが、直接的にまたはタンパク質の翻訳レベルのいずれかで、複数の免疫チェックポイント受容体(例えば、T細胞におけるPD−1およびLAG3)およびリガンド(例えば、抗原提示細胞におけるPD−L1)の発現を制御することを実証する。加えて、MNKの特異的な阻害は、免疫抑制サイトカインであるIL−10の産生の低減をもたらした。最終的に、正常なT細胞機能は、TCR刺激から生じるIL−2発現またはT細胞生存率によって評価されるように、化合物107によって減少しないことが明らかになり、細胞のシグナル伝達経路に対する化合物107の選択的な効果を再度実証している。
【0269】
(実施例3)
抗原提示および免疫認識に対するMNK特異的阻害剤の効果
HLAクラスIIタンパク質のレベルを調節するMNK特異的阻害剤化合物の能力を、散在性の大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞株であるTMD8において評価した。簡単には、ヒトDLBCL細胞株TMD8(ATCC)を、ペニシリンG(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%FBSを補充したRPMI培地で、5%COの加湿雰囲気中、37℃を維持して培養した。約2〜4×10のTMD8細胞を、薬物で処理する前24時間に10cmプレートに播種した。次の日、細胞を、ビヒクル対照(DMSO)または指示された濃度の化合物107のいずれかで処理した(図7)。細胞を処理の48時間後に収集した。
【0270】
処理した細胞を収集し、PBSで洗浄し、1×RIPA緩衝液(Thermo Fisher)に4℃で15分間溶解した。可溶化液を、14,000×rpmで15分間遠心分離することによって清澄化し、上清を回収した。可溶性分画中のタンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Scientific)を使用して決定した。タンパク質を、4〜20%のBis−Tris勾配ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)に溶解し、ニトロセルロース膜に移した。得られたブロットを、Odysseyブロッキング溶液(LI−COR)を用いて室温で1時間ブロックし、次いで、抗HLA−DQA1(Abcam、ab128959;1:5000希釈)、抗リンeIF4E(Millipore)および抗eIF4E(Santa Cruz)とともに、4℃で終夜インキュベートした。次の日、ブロットを、TBSTで10分間、3回洗浄し、ヤギ抗ウサギ蛍光コンジュゲート化二次抗体(IRDye 800CW、1:20,000;LI−COR)とともに、室温で1時間インキュベートした。ブロットを洗浄し、スキャンし、特異的なタンパク質を、LI−COR Odyssey infrared imagerを使用して検出した。使用した負荷対照は、β−アクチン(Cell Signaling Technology、1:3000)であった。
【0271】
結果
HLAクラスIIタンパク質HLA−DQA1の発現およびeIF4Eのリン酸化を、ウエスタンブロット分析により分析した。化合物107は、eIF4Eタンパク質の総レベルに影響を及ぼすことなく、eIF4Eのリン酸化を強力に阻害した。HLA−DQA1タンパク質の基礎レベルは、リンパ腫TMD8細胞株において低かった。しかしながら、300nMまたは10μMのいずれかの化合物107による処理の48時間後、HLA−DQA1タンパク質レベルの用量依存的な増加が観察されたが(EC50が約300nMと推定)、β−アクチン(対照)のレベルは変化しなかった(図7)。
【0272】
結論
DLBCLにおけるHLAクラスII遺伝子およびタンパク質発現の検出可能な減少は、腫瘍免疫監視の低下および不十分な患者の生存率に関連している。化合物107によるDLBCL細胞株TMD8の処理は、HLA−II HLA−DQA1のタンパク質発現の用量依存的な増加をもたらした。これらの結果は、特異的なMNK特異的阻害剤が、HLA/MHCクラスIIタンパク質のレベルを調節することによって、抗原提示における重要な役割を果たすことができ、これは、免疫応答の誘発のために重要であり得る。
【0273】
(実施例4)
MNK特異的阻害剤または免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせたMNK特異的阻害剤のin vivoの効果
がんにおけるMNK特異的阻害剤の有効性を評価するために、in vivo同種移植腫瘍モデルを使用した。簡単には、10%FBSを補充したDMEM中で成長させたCT26(マウス直腸癌)細胞を、指数関数的な成長中に収集し、免疫適格性のBALB/cマウスへの腫瘍の接種のためにカウントした。それぞれのマウスについて、成長培地(0.1ml)およびMatrigel(登録商標)matrix(0.1ml)(BD Biosciences、San Jose CA)中に1:1の比率(体積対体積)の細胞を含む、0.2ml体積で、右側腹部領域に、0.3×10のCT26腫瘍細胞を接種した。腫瘍を、研究を開始する前に100〜200mmに成長させた。処置を開始する前に、全ての動物の体重を量り、腫瘍体積を、ノギスを使用して測定した。腫瘍体積は、任意に与えられた処置の有効性に影響を及ぼし得るので、腫瘍が同様のサイズに達した後、マウスを、ビヒクルおよび試験物処置群に無作為に割り当てた。各調査群は8匹のマウスを含有し、各群は以下の処置の1つを受けた:(1)10% 1−メチル−2−ピロリジノンおよび90%プロピレングリコール中の化合物107、1mg/kgの用量を経口で1日1回与えた;(2)PBS中の抗PD1(BioXcell、Lebanon、NH)、0.5mg/マウスの用量を腹腔内に4日毎に1回与えた(Weiら、PLoS One 8巻、e84927頁、2013年によって記載);(3)1mg/kgの化合物107を経口で1日1回および0.5mg/マウスの抗PD1を腹腔内に4日毎に1回の組合せ;(4)ビヒクルのみの対照。
【0274】
研究の間、腫瘍のサイズ(皮下の移植片)を、週に2回、ノギスを用いて長さおよび幅を測定した。腫瘍体積は、NCI標準に従って、式L×W×W/2によって計算した。腫瘍の成長阻害(TGI%)は、抗腫瘍有効性の指標であり、これは、以下のようにして表される:TGI(%)=100×(1−(ΔT/ΔC))。ΔTおよびΔCは、処置開始時の腫瘍体積の平均に対する、処置群および対照群の腫瘍体積の平均の変化であった。群の平均腫瘍体積が約2000〜2,500mmのサイズに達するまで、全ての実験を継続した。平均腫瘍サイズが、約2000mm〜2,500より大きくなった群は、薬物の有効性について腫瘍の質を確認するために安楽死させた。また、それぞれのマウスの体重を、研究の開始前に少なくとも1回、および研究中は週に2回回収した。体重の変化は忍容性の指標であり、体重変化の割合は以下のようにして計算される:体重の変化(%)=100×(体重終了時−体重開始時)/体重開始時。マウスは、投薬中の死亡率、移動度、猫背の姿勢、立毛または他の苦痛の兆候についても毎日観察した。マウスが、毒性または毒性および腫瘍の負荷の組合せによって体重の20%超減少した場合、安楽死させた。明らかに毒性がある場合、マウスは処置から外し、臨床的観察および体重の測定を毎日行った。
【0275】
結果
化合物107を、BALB/cマウスの同種移植CT26直腸癌腫瘍モデルにおいて、単一薬剤、および抗PD−1モノクローナル抗体との組合せについて、in vivoで評価した。測定した腫瘍の成長阻害(TGI)および体重変化を表3にまとめる。
【0276】
【表3-2】
【0277】
1日1回(QD)の1mg/kgの化合物107の経口処置は、15日の処置期間中に、約34%の中程度の腫瘍の成長阻害を生じたが(図4A)、数匹の化合物107処置動物が、投薬の休止後、退行が継続する腫瘍を有していた(22日で約55%)ことに注意することが重要である。4日毎に1回の0.5mg/マウスの用量での抗PD−1抗体によるCT26同種移植腫瘍を有するマウスの腹腔内処置も、いくらか低い約23%の腫瘍の成長阻害をもたらした。化合物107群と同様に、複数の抗PD−1処置動物は、処置の中止後、退行が継続する腫瘍を有していた(22日で約33%)。体重には、有意な影響がなく(図4B)、処置が良好に忍容されたことを意味する。驚くべきことに、化合物107と抗PD−1抗体の組合せは、15日で、顕著に相乗的な約99%の腫瘍の成長阻害を生じ(図4A)、大部分の動物は、試験の最後には腫瘍がなくなった(22日)。
【0278】
腫瘍の再チャレンジ
各処置群の治療に応答したかまたは腫瘍がなくなった(処置の8日後)、先に処置された同種移植マウスに、新たなCT26腫瘍を再移植し、ナイーブBALB/cマウスと比較して腫瘍の成長を評価することにより、長期間の免疫記憶の発生について、試験した。簡単には、処置されたマウスは、再移植され、ナイーブは、前と同様に、0.1mlの成長培地および等しい0.1ml体積比のMatrigel(登録商標)matrix(1:1の体積対体積比)で、左側腹部領域に、腫瘍細胞を初回移植した。これらの未処置マウスの腫瘍を、本明細書に記載の移植に続き、測定した。再チャレンジの実験の結果を表4にまとめる。
【0279】
【表4】
【0280】
全ての再チャレンジしたマウスは、前に化合物107に曝露された動物の0/4、前に抗PD−1に曝露された動物の0/4、および前に化合物107と抗PD−1の組合せに曝露された動物の0/7で、CT26腫瘍の形成に対して抵抗性で、任意に測定可能な腫瘍を示した(図5)。対照的に、全てのナイーブBALB/c対照マウス(10/10)は、測定可能なCT26腫瘍を形成した。予想外に、この結果は、化合物107単独治療または化合物107と抗PD−1の組合せに対して前に応答を示したマウスが、CT26腫瘍において発現する腫瘍抗原に対する長期間の免疫記憶を有していたことを示す。
【0281】
(実施例5)
reg細胞に対するMNK特異的阻害剤のin vivoの効果
腫瘍が誘導する免疫抑制は、T調節性(Treg)細胞などの腫瘍の微小環境における免疫抑制性浸潤の蓄積を含む、複数の機構が関与する。Treg細胞が、がんにおける免疫回避機構において役割を果たし得ること、および腫瘍が、TReg細胞を通じて抗腫瘍免疫を強力に抑止し得ることの証拠が増え続けている(Schabowskyら、Curr. Opin. Investig. Drugs 8巻、1002頁、2007年;Liuら、J. Immunol. 182巻、6160頁、2009年)。変化した免疫チェックポイント機構がCT26同種移植モデルにおけるTreg細胞に対する効果を有するか否かを調べるために、処置されたマウスから単離された腫瘍中の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)について、Tエフェクター(CD8)およびT調節性の(FOXP3)細胞の集合における変化について調べた。
【0282】
確立されたCT26腫瘍(100〜200mm)を有するマウスを、実施例4に記載のようにして、化合物107、抗PD1抗体または化合物107および抗PD−1抗体の組合せで処置した。処置の4日後、マウスを安楽死させ、腫瘍を切除した。切除した腫瘍をカミソリの刃を用いて細かく解体し、RPMI中でコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼおよびDNAse I(Worthington Biochemical、Lakewood NJ)とともにインキュベートし、1×トリプシン−EDTA中でインキュベートし、最終的に、70ミクロンの細胞濾過フィルター(BD Biosciences、San Jose CA)を通過させることによって、単一細胞の懸濁液が生じた。腫瘍中に存在するTエフェクター(T、CD3/CD8)細胞およびT調節性(Treg、CD4/FOXP3)細胞の量を分析するために、細胞を固定できる死細胞株(1:20,000;BD Biosciences、San Jose、CA)とともに4℃で15分間インキュベートし、フロー染色緩衝液(1×PBS、4%FBSおよび1mMのEDTA)で2回洗浄し、ヒトFcRブロック(Miltenyi Biotech、San Diego CA)とともにインキュベートし、製造者のプロトコールに従って、CD45(CD45 PerCP−Cy5.5、BD Biosciences、San Jose CA)、CD3(CD3−APC、EBiosciences、San Diego CA)およびCD8(CD8−PE、BD Biosciences、San Jose CA)に対して特異的な抗体混合物、またはCD45(CD45 PerCP−Cy5.5、BD Biosciences)およびCD4(CD4−APC、BD Biosciences)に対して特異的な抗体カクテルを用いて染色した。試料をCD45/CD3/CD8について評価するために、細胞をフロー緩衝液で2回洗浄し、固定化緩衝液とともに4℃で10分間インキュベートした。固定後、細胞を、フロー緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のために、フロー緩衝液に再懸濁した。CD45/CD4について評価された試料を、製造者のプロトコールに従って、抗FOXP3抗体(FOXP3−PE、BD Biosciences)およびFOXP3/転写因子染色緩衝液セット(eBiosciences、San Diego CA)を使用して、FOXP3の細胞内染色のために、さらに処理した。細胞を1×透過処理緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のために透過処理緩衝液に再懸濁した。データを回収し、BD Accuri C6 flow cytometer(BD Biosciences、San Jose CA)を使用して分析した。T細胞とTreg細胞の比率を、CD45リンパ球の集合中に存在するCD3/CD8細胞の割合を決定し、同じ集合中に存在するCD4/FOXP3の割合で割ることによって、計算した。
【0283】
結果
ビヒクル対照において、平均T:Treg比率は3.4であった(図6)。化合物107で処置されたマウスは、平均T:Treg比率が9.7に増加したことを示した。同様の結果が抗PD−1抗体で観察され、処置は平均T:Treg比率を8.8に増加させ、これは、この化合物についての以前の報告と一致した(Duraiswamyら、Cancer Res. 73巻、3591頁、2013年)。最終的に、化合物107と抗PD−1抗体の組合せは、平均T:Treg比率を8.4に増加させた。
【0284】
結論
これらの結果は、MNK特異的阻害剤が、in vivoで腫瘍内のTILの集合をモジュレートすることができ、Treg細胞の数を低減させ、T細胞をより効率的な明らかな病原細胞にすることを実証する。
【0285】
本明細書に記載の種々の実施形態は、提供されたさらなる実施形態と組み合わせることができる。本明細書において言及されたおよび/または出願データシートに列挙された、全ての特許、特許出願公開、特許出願および非特許刊行物は、それらの全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて、よりさらなる実施形態を提供するために、種々の特許、出願および刊行物の概念を使用して、改変することができる。
【0286】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、このような特許請求の範囲に付与されるものと十分に均等な範囲にそって、全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【国際調査報告】