(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018515665
(43)【公表日】20180614
(54)【発明の名称】トランクピストンエンジンオイル組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 159/22 20060101AFI20180518BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20180518BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20180518BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20180518BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20180518BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20180518BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20180518BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20180518BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20180518BHJP
【FI】
   !C10M159/22
   !C10M101/02
   !C10M133/16
   !C10N20:04
   !C10N20:06 Z
   !C10N30:02
   !C10N30:04
   !C10N30:10
   !C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】2017560299
(86)(22)【出願日】20160518
(85)【翻訳文提出日】20171117
(86)【国際出願番号】EP2016061116
(87)【国際公開番号】WO2016184897
(87)【国際公開日】20161124
(31)【優先権主張番号】62/163,594
(32)【優先日】20150519
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
【住所又は居所】オランダ王国、ロッテルダム、3196 KD フォンデリンゲンプラート、ペトロリュームウェフ 32
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ホーテン、ヴィルヘルムス ペトリュス アントワーヌ
【住所又は居所】オランダ王国、ロッテルダム、3196 KD フォンデリンゲンプラート、ペトロリュームウェフ 32
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB22C
4H104BE11C
4H104DA02A
4H104EB07
4H104EB14
4H104LA01
4H104LA02
4H104LA05
4H104PA42
(57)【要約】
(a)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;(b)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む少なくとも1種以上の清浄剤;及び(c)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤;を含む低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物であって、前記スクシンイミド分散剤が、活性成分基準で1.20重量%より多く存在し、且つ前記組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、上記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;
(b)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む、少なくとも1種以上の清浄剤;及び
(c)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤;
を含む低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物であって、
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のアルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、前記スクシンイミド分散剤が、活性成分基準で1.2重量%より多く存在し、そして前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物。
【請求項2】
前記低硫黄船舶用留出物燃料が、0.1重量%未満の水を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記基油が、主要量のグループI基油を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記基油が、主要量のグループII基油を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のアルキル基の少なくとも90モル%がC20以上である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のアルキル基がC20からC28である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のTBNが、活性成分基準で150mgKOH/gより高い、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む少なくとも1種以上の清浄剤が、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む中過塩基性清浄剤、及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む高過塩基性清浄剤、を含む清浄剤組成物である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物のTBNが、5から25mgKOH/gである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記スクシンイミド分散剤が、エチレンカーボネートで後処理されるビス−スクシンイミド分散剤である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
(a)主要量のグループI基油;
(b)(i)直鎖状アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む中過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ前記中過塩基性清浄剤のTBNが活性成分基準で約100から300mgKOH/gである前記中過塩基性清浄剤;及び
(ii)直鎖状アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む高過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ前記高過塩基性清浄剤のTBNが活性成分基準で約300mgKOH/gより高い、前記高過塩基性清浄剤;
を含む清浄剤組成物:並びに
(c)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブチレン由来のエチレンカーボネートで後処理されるビス−スクシンイミド分散剤;
を含む低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物であって、
前記スクシンイミド分散剤が活性成分基準で1.20重量%より多く存在し、且つ前記組成物のTBNが、30mgKOH/g未満である、
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物。
【請求項12】
(a)エンジンに低硫黄船舶用留出燃料を燃料供給すること、並びに
(b)以下の潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑すること:
を含むトランクピストンエンジンを運転する方法であって、
前記潤滑油組成物は、(i)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む、少なくとも1種以上の清浄剤;及び(iii)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤、を含み、
前記スクシンイミド分散剤が活性成分基準で1.20重量%より多く存在し、且つ前記潤滑油組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、
方法。
【請求項13】
前記基油が主要量のグループII基油を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のアルキル基の少なくとも90モル%がC20以上である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のアルキル基がC20からC28である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の前記過塩基性塩のTBNが活性成分基準で150mgKOH/gより高い、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む清浄剤が、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む中過塩基性清浄剤、及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む高過塩基性清浄剤、を含む清浄剤組成物である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物のTBNが5から25mgKOH/gである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記スクシンイミド分散剤が主にビス−スクシンイミド分散剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記スクシンイミド分散剤が、エチレンカーボネートで後処理されるスクシンイミド分散剤である、請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、低硫黄留出燃料と共に使用するために設計されたトランクピストンエンジンオイル組成物であって、その潤滑油が低塩基価を有するが、酸化安定性、粘度増加抑制、及び改良された清浄性能を提供することができるトランクピストンエンジンオイル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トランクピストンエンジンは一般的に、中速度(300〜1000rpm)、4ストロークエンジンであり、ここでは単一の潤滑油が、エンジンの全領域の潤滑のために使用されるが、これは、クロスヘッドのシリンダー内とクランクケース内とで別の潤滑剤を使用することができるクロクヘッドエンジンとは対照的である。従って、トランクピストンエンジンオイル(TPEO)は、燃料の相溶性、酸化安定性、粘度増加抑制、及び清浄性について独自の要件を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
伝統的に、トランクピストンエンジンの運転に使用される燃料油は、重質船舶用残渣燃料から低硫黄留出燃料までの範囲に亘る。最近、健康及び環境問題に起因して、将来的にトランクピストンエンジンの運転のために低硫黄燃料の使用を義務付ける規則が設けられる可能性が高まってきた。低硫黄残渣燃料を使用するためには、精油所にて、妥当な価格と労力とで残渣燃料中の硫黄レベルを低下させられることが必要である。将来的に利用可能な十分な量の低硫黄残渣燃料油が存在するかどうか、又は、低硫黄留出燃料及びガス油がより広範に使用されるかどうか不明である。従って、低硫黄留出燃料と共に使用するために設計されたトランクピストンエンジンオイル組成物であって、その潤滑油が低塩基価を有するが、酸化安定性、粘度増加抑制、及び改良された清浄性能を提供することができるトランクピストンエンジンオイル組成物を提供することが望ましい。
【0004】
添加剤、特に金属含有アルカリ性清浄剤添加剤は、酸性燃焼ガスを中和し、エンジンを清浄に維持し、潤滑剤と残渣燃料油との相溶性を確保し、そして粘度増加を抑制するために、長年TPEOにおいて使用されてきた。しかし、残渣燃料油と共に使用するために開発された添加剤技術を利用して配合されたTPEOが、燃料の特性の相違及び燃料源の変化によるトランクピストンエンジンの環境の相違のため、実際に将来の低硫黄留出船舶用燃料に対して最適であるかどかは、依然として不明確である。船舶用残渣燃料を用いる運転の場合、トランクピストンエンジンオイルの重要な性能パラメーターは、ほぼ排他的に、アスファルテン汚染の影響を受ける。しかし、留出燃料を用いる運転の場合、燃料が有意なアスファルテンを含有しない場合、重要な性能パラメーターは留出燃料からの燃焼副生成物の影響を受ける。従って、船舶用残渣燃料を使用する場合と、低硫黄留出燃料を使用する場合とで、運転されるエンジンに対する要件は非常に異なっている。その結果、このために、船舶用残渣燃料を用いる運転から留出燃料を用いる運転へ又はその逆に、配合特性の看做し代用はできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特に高濃度での分散剤の添加は、船舶用残留燃料と共に使用するために設計されたグループI及び/又はグループIIベースのトランクピストンエンジンオイルの重要な性能パラメーターに有害であることが伝統的に判明している。驚くべきことに今や、低硫黄留出燃料で運転するトランクピストンエンジンの潤滑のために設計されたグループI及び/又はグループIIベースの船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物であって、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の塩を含む清浄剤を含有し、1400から3000の数平均分子量(Mn)を有するポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤と組み合わせて、当該アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、分散剤が、活性成分基準で1.2重量%より多く存在し、そして潤滑油組成物が30未満の全塩基価を有する船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物により、酸化安定性、粘度増加抑制及び高温清浄性の分野で最適な性能がもたらされることを発見した。
【0006】
本発明の一実施形態に従って、以下が提供される。
(a)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;
(b)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む、少なくとも1種以上の清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上である清浄剤;及び
(c)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤;
を含む低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物であって、
前記スクシンイミド分散剤が、活性成分基準で1.20重量%より多く存在し、且つ前記組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物。
【0007】
本発明の別の実施形態に従って、以下が提供される。
(a)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;
(b)(i)直鎖状アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む中過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ活性成分基準で前記中過塩基性清浄剤のTBNが約100から300mgKOH/gである、前記中過塩基性清浄剤;及び
(ii)直鎖状アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む高過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ活性成分基準で前記高過塩基性清浄剤のTBNが約300mgKOH/gより高い、前記高過塩基性清浄剤;
を含む清浄剤組成物;並びに
(c)1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブチレン由来のエチレンカーボネートで後処理されるビス−スクシンイミド分散剤;
を含む、低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物であって、
前記スクシンイミド分散剤が活性成分基準で1.2重量%より多く存在し、且つ前記組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、
前記低硫黄船舶用留出燃料トランクピストンディーゼルエンジン潤滑油組成物。
【0008】
本発明の別の実施形態に従って、以下が提供される。
(a)エンジンに低硫黄船舶用留出燃料を燃料供給すること、並びに
(b)以下の潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑すること:
を含むトランクピストンエンジンを運転する方法であって、
前記潤滑油組成物は、
(1)主要量のグループI基油若しくはグループII基油又はそれらの混合物;
(2)アルキル基の少なくとも90モル%がC 20以上であるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性塩を含む、少なくとも1種以上の清浄剤;及び
(3)数平均分子量(Mn)が1400〜3000のポリアルキレン由来のスクシンイミド分散剤;を含み、
前記スクシンイミド分散剤が活性成分基準で1.2重量%より多く存在し、且つ前記組成物のTBNが30mgKOH/g未満である、
方法。
【0009】
驚くべきことに今や、上記の組成物を含む、低硫黄留出燃料で運転するトランクピストンエンジンの潤滑のために設計された船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物により、酸化安定性、粘度増加制御、及び高温洗浄性がもたらされることを発見した。
【発明の詳細な説明】
【0010】
以下の用語は、本明細書を通じて使用され、他に断りのない限り以下の意味を有する。定義されていないいずれの用語、略語又は省略表現も、本出願の提出と同時期の当業者によって使用される通常の意味を有すると理解される。
「主要量(a major amount) 」は、少なくとも約50重量%の濃度を指す。幾つかの実施形態では、「主要量」は、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%の濃度を指す。
「低硫黄留出燃料」は、燃料が蒸留プロセスの蒸留カットである場合の燃料の全重量に対して、約0.1重量%以下、約0.3重量%以下、約0.01重量%以下、約0.002重量%以下、又は更に約0.001重量%以下の硫黄等の約1.5重量%以下の硫黄を有する燃料を指す。
【0011】
「残渣燃料」(“residual fuel”)は、炭素残渣を有する大型船舶用エンジンにおける可燃性物質であって、前記炭素残渣は国際標準化機構(ISO)10370で定義されているようなものであり、(燃料の全重量に対して)少なくとも2.5重量%(例えば、少なくとも5重量%、又は少なくとも8重量%)であり、50℃における粘度が14.0cStより高く、例えば、国際標準化機構仕様書ISO8217:2005「石油製品−燃料(クラスF)−船舶用燃料の仕様書」に定義されている船舶用残渣燃料を指し、その内容を、全体的に本明細書に援用する。残渣燃料は、主に原油蒸留の非沸騰留分である。製油所の蒸留プロセスにおける圧力及び温度並びに原油の種類に応じて、ボイルオフとなり得るガスオイルは多かれ少なかれ僅かに非沸騰留分に残り、種々の等級の残渣燃料を生じる。
【0012】
「船舶用残渣燃料」は、ISO8217:2010国際標準に記載されるような船舶用残渣燃料の仕様に適合している燃料を指す。「低硫黄舶用燃料」は、ISO8217:2010仕様書に記載されるような船舶用残渣燃料の仕様に適合し、加えて、燃料の全重量に対して、約1.5重量%以下、又は約0.5重量%以下の硫黄を有する燃料を指し、その燃料は蒸留プロセスの残渣生成物である。
留出燃料は、沸騰又は「蒸留」プロセスによって製油所において分離される原油の石油留分から構成される。「船舶用留出燃料」は、ISO8217:2010国際標準に記載されるような船舶用留出燃料の仕様に適合した燃料を指す。「低硫黄船舶用留出燃料」は、ISO8217:2010国際標準に記載されるような船舶用留出燃料の仕様に適合し、加えて、燃料の全重量に対して、約0.1重量%以下又は0.05重量%以下、又は更に約0.005重量%以下の硫黄を有する燃料を指し、その燃料は蒸留プロセスにおける蒸留カットである。
【0013】
「高硫黄燃料」は、燃料の全重量に対して1.5重量%より多い硫黄を有する燃料を指す。
「ブライトストック」の用語は、当業者によって使用されるように、脱アスファルト石油減圧残油の直接の生成物である基油、又は溶媒抽出及び/又は脱ろう等の更なる処理の後、脱アスファルト石油減圧残油由来の基油を指す。本発明の目的のために、それは、減圧残油プロセスの脱アスファルト留分カットもまた指す。ブライトストックは一般的に、100℃にて28から36mm/sの動粘度を有する。このようなブライトストックの一例として、ESSO.TM.Core2500基油がある。
「グループII金属」又は「アルカリ土類金属」の用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムを意味する。
【0014】
「カルシウム塩基」の用語は、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド等、及びそれらの混合物を指す。
「ライム(lime) 」の用語は、水酸化カルシウムを指し、これは、消石灰(slaked lime又はhydrated lime)としても知られている。
「アルキルフェノール」の用語は、1つ又はそれ以上のアルキル置換基を有するフェノール基であって、そのアルキル基の少なくとも1つが、得られるフェナート添加剤に油溶性を付与するのに十分な数の炭素原子を有するものを指す。
「全塩基価」又は「TBN」の用語は、ASTM標準番号D2896又は同等の手順に従う油サンプル中のアルカリ度のレベルを指し、これは、腐食性の酸を中和し続ける組成物の能力を示す。試験は、電気伝導度の変化を測定し、その結果は、mgKOH/g(1gの生成物を中和するのに必要とされるKOHのミリグラム当量数)として表す。従って、高いTBNは、強過塩基性生成物を表し、そして結果として、酸を中和するためのより高い塩基予備力(base reserve)を表す。
【0015】
本明細書で使用される「基油」の用語は、単一の製造者によって同じ仕様に(供給源又は製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、そして独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。
「活性成分基準で」の用語は、船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物全体の中における特定の添加剤の濃度又は量を決定する際に、その特定の添加剤の活性成分(単数または複数)のみを考慮することを示す。その添加物中の希釈油は除外される。
【0016】
以下の説明では、本明細書に開示されている全ての数字は、「約」又は「おおよそ」の表現がそれとの関連で使用されているかどうかにかかわらず、おおよその値である。それらは、1%、2%、5%、又は時には10から20%変化し得る。
本明細書中に記載されている潤滑油組成物、トランクピストンエンジン潤滑油組成物、及びトランクピストンエンジンオイル(TPEO)(「潤滑油組成物」と総称)は、任意のトランクピストンエンジン、船舶用トランクピストンエンジン又は圧縮点火(ディーゼル)船舶用エンジン、例えば4ストロークトランクピストンエンジン又は4ストロークディーゼル船舶用エンジンを潤滑するために使用できる。
【0017】
トランクピストンエンジン潤滑油組成物に含有される1種以上の清浄剤に関して、好適な清浄剤の代表的な例には、非限定的に、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェナート、アルキル又はアルケニル芳香族スルホナート、ホウ素化スルホナート、マルチヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホナート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテナート、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニルマルチ酸の金属塩等、及びそれらの混合物が含まれる。好適な金属清浄剤の他の非限定的な例には、非限定的に、金属スルホナート、フェナート、サリチラート、ホスホナート、チオホスホナート及びそれらの組み合わせが含まれる。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属等のスルホナート、フェナート、サリチラート又はホスホナート洗浄剤等を製造するのに適した任意の金属とすることができる。このような金属の例には、Ca、Mg、Ba、K、Na、Li等が含まれる。一実施形態では、清浄剤を製造するのに適した金属は、Ca又はMg等のアルカリ土類金属である。別の実施形態では、清浄剤を製造するのに適した金属はCaである。
【0018】
清浄剤は、任意の過塩基性又は中性清浄剤であり得る。一実施形態では、清浄剤は、過塩基性アルキルヒドロキシベンゾアート清浄剤等のアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩であり、例えばアルキル置換ヒドロキシ安息香酸清浄剤の過塩基性金属塩等、及びそれらの混合物である。一般的に、過塩基性清浄剤は、塩基源(例えば、石灰)及び酸性過塩基性化合物(例えば、二酸化炭素)の添加等のプロセスによって添加剤のTBNが増加した任意の清浄剤である。過塩基性金属清浄剤は、一般的に炭化水素、清浄剤酸、例えばスルホン酸、アルキルフェノール、カルボキシラート等、金属の酸化物又は水酸化物(例えば酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)及び促進剤、例えばキシレン、メタノール及び水の混合物を炭酸化することによって製造される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、炭酸化において、カルシウムの酸化物又は水酸化物は、気体の二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は過剰のCaO又はCa(OH)で中和されて、スルホナートを形成する。
【0019】
一実施形態では、清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり得る。好適なヒドロキシ芳香族化合物には、1から4個、好ましくは1から3個のヒドロキシル基を有するモノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール等が含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、活性成分基準で150mgKOH/gより高いTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、活性成分基準で約100から約600mgKOH/gである。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、活性成分基準で約150から約550mgKOH/gである。
【0020】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性金属塩は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩であり、アルカリ金属はリチウム、ナトリウム又はカリウムである。
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性金属塩は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ土類金属塩であり、アルカリ土類金属は、カルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムからなる群から選択され得る。カルシウム及びマグネシウムが好ましい。カルシウムがより好ましい。
別の実施形態において、1種以上の清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸とアルキル置換フェノールとの混合物の過塩基性塩(例えば、過塩基性アルカリ土類金属塩)である。別の実施形態では、1種以上の清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸及びアルキル置換フェノールの1種以上の非過塩基性塩との組合せにおける、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩及び/又はアルキル置換フェノールの過塩基性塩である。別の実施形態では、1種以上の清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩であって、(清浄剤の塩以外の)他の過塩基性塩ではない。これに関して、清浄剤は、アルキルヒドロキシベンゾアート(又はアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩)に関連する任意の好適な濃度のアニオン(例えば、有機アニオン)を含有することができる。
【0021】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10から約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導することができる。使用されるオレフィンは、直鎖状又は分枝鎖状であってもよい。オレフィンは、直鎖状オレフィンの混合物、異性化直鎖状オレフィンの混合物、分枝鎖状オレフィンの混合物、部分的に分枝した直鎖状の混合物又は前記のものの任意の混合物であってもよい。一実施形態では、使用できる直鎖状オレフィンの混合物は、1分子当たり約12から約30個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、少なくとも75モル%のC20以上の直鎖状ノルマルアルファ−オレフィンを含有する直鎖状ノルマルアルファ−オレフィンの残基である。一実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体又は液体の触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0022】
別の実施形態では、オレフィンは、約20から約80個の炭素原子を有する分枝鎖状オレフィンプロピレンオリゴマー又はその混合物、即ちプロピレンの重合由来の分枝鎖状オレフィンである。オレフィンは更に、他の官能基、例えばヒドロキシ基、カルボン酸基、ヘテロ原子等で置換されていてもよい。一実施形態では、分枝鎖状オレフィンプロピレンオリゴマー又はその混合物は、約20から約60個の炭素原子を有する。一実施形態では、分枝鎖状オレフィンプロピレンオリゴマー又はその混合物は、約20から約40個の炭素原子を有する。
別の実施形態では、清浄剤の中に含有されるアルキル基、例えばアルキル置換ヒドロキシ安息香酸洗浄剤の塩のアルキル基又はアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩のアルキル基の少なくとも約75モル%(例えば、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約99モル%)は、C20以上(例えば、C20からC40、C20からC35、C20からC30、C20からC28、又はC20からC25)である。別の実施形態では、清浄剤は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸由来のアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩であり、ここでアルキル基は、少なくとも75モル%のC20以上の直鎖状ノルマルアルファオレフィンを含有する直鎖状ノルマルアルファオレフィンの残基である。必要に応じて、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩(例えば、過塩基性塩)は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ土類塩(例えば、カルシウム又はマグネシウム)である。
【0023】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、C20からC28アルキル基の混合物を有する過塩基性塩であり、直鎖状アルファオレフィンカット、例えば、約20から28個の炭素原子を有するこれらのカットの混合物であるChevron Philips Chemical CompanyからノーマルアルファオレフィンC26からC28又はノーマルアルファオレフィンC20からC24の名称で市販されているものから調製することができる。
得られるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、オルト及びパラ異性体の混合物である。一実施形態では、生成物は約1から99重量%のオルト異性体及び99から1重量%のパラ異性体を含有する。別の実施形態では、生成物は約5から70重量%のオルト異性体及び95から30重量%のパラ異性体を含有する。
【0024】
一般的に、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%から約20重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、潤滑油組成物中に、約0.01重量%から約15重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、潤滑油組成物中に、約0.01重量%から約10重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、潤滑油組成物中に、約0.01重量%から約6重量%の範囲の量で存在する。
【0025】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む清浄剤は、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む中過塩基性清浄剤;及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む高過塩基性清浄剤、を含む清浄剤組成物である。
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む清浄剤は、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む中過塩基性清浄剤;及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む高過塩基性清浄剤を含む清浄剤組成物であって、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル基の少なくとも約90モル%がC20以上であり;且つアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル基の少なくとも約90モル%がC20以上である、清浄剤組成物である。
【0026】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の少なくとも1種の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む清浄剤は、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む中過塩基性清浄剤;及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む高過塩基性清浄剤を含む清浄剤組成物であって、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル基の少なくとも約90モル%がC20からC28アルキル基を含有する直鎖状ノルマルアルファオレフィンの残基であり;且つアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のアルキル基の少なくとも約90モル%が、C20からC28アルキル基を含有する直鎖状ノルマルアルファオレフィンの残基である、清浄剤組成物である。
【0027】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、活性成分基準で約100から約300mgKOH/gのTBNを有する過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、150から300mgKOH/gである。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、100から260mgKOH/gである。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、150から260mgKOH/gである。
【0028】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、活性成分基準で300mgKOH/gより高いTBNを有する過塩基性塩である。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは325から700mgKOH/gである。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、350から650mgKOH/gである。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、350から600mgKOH/gである。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のTBNは、400から600mgKOH/gである。
【0029】
一実施形態では、本発明で使用される清浄剤は、(i)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む中過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ活性成分基準での前記中過塩基性清浄剤のTBNが約100から300mgKOH/gである中過塩基性清浄剤;及び(ii)アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含む高過塩基性清浄剤であって、アルキル基の少なくとも90モル%がC20以上であり、且つ活性成分基準での前記高過塩基性清浄剤のTBNが約300mgKOH/gよりも高い高過塩基性清浄剤、を含む清浄剤組成物である。
【0030】
一般的に、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性及び高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%から約10.0重量%の範囲の量でそれぞれ存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から8.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から6.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から5.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、2.0から5.0重量%で存在する。
【0031】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から8.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から6.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から5.0重量%で存在する。一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1.0から4.0重量%で存在する。
一実施形態では、存在するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩対存在するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の比は、潤滑油組成物中に、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の重量%対アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の重量%に基づいて、0.1:1から10:1である。他の実施形態では、当該比は1.0:1から3.0:1、0.5:1から5:1、1.15:1から2.0:1及び0.1:1から5:1である。
【0032】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の中過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、例えば、米国特許出願公開第2007/0027043号の実施例3に記載の方法に従って、アルキルフェノールから調製することができ、その内容を全体的に参照により本明細書に援用する。
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の高過塩基性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、例えば、米国特許出願公開第2007/0027043号の実施例1に記載の方法に従って、アルキルフェノールから調製することができ、その内容を全体的に参照により本明細書に援用する。
【0033】
トランクピストンエンジン潤滑油組成物は、1種以上の無灰分散剤を含有する。好適な無灰分散剤の代表的な例には、非限定的に、架橋基を介してポリマー主鎖に結合したアミン、アルコール、アミド又はエステル極性部分が含まれる。本発明の無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はその無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド、及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシラート誘導体、ポリアミンが直接結合した長鎖脂肪族炭化水素、及び長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合させることによって形成されるマンニッヒ縮合生成物が挙げられる。
【0034】
カルボン酸分散剤は、少なくとも約34個、好ましくは少なくとも約54個の炭素原子を含むカルボン酸アシル化剤(例えば、酸、無水物、エステル)と、窒素含有化合物(例えば、アミン)、有機ヒドロキシ化合物(例えば、一価及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、又はフェノール及びナフトールを含む芳香族化合物)、及び/又は塩基性無機材料との反応生成物である。これらの反応生成物には、イミド、アミド、エステル及び塩が含まれる。
スクシンイミド分散剤は、カルボン酸分散剤の一種である。これらは、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を有機ヒドロキシ化合物と、又は窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含むモノアミン又はポリアミン等のアミンと、又はヒドロキシ化合物及びアミンの混合物と反応させることによって製造される。「コハク酸アシル化剤(succinic acylating agent) 」の用語は、炭化水素置換コハク酸又はコハク酸生成化合物を指し、後者にはその酸自体が包含される。このような材料には典型的に、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)及びハライドが含まれる。
【0035】
一実施形態では、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤とアルキレンポリアミンとの反応生成物により、モノ−スクシンイミド及びビス−スクシンイミドを含む化合物の混合物を含むスクシンイミド分散剤が得られる。生成されるモノアルケニルスクシンイミド及びビスアルケニルスクシンイミドの量は、アルキレンポリアミン対コハク酸基の装入モル比及び使用される特定のポリアミンに依存し得る。アルキレンポリアミン対コハク酸基の約1:1の装入モル比からは、主としてモノスクシンイミド分散剤が生成し得る。アルキレンポリアミン対コハク酸基の約1:2の装入モル比からは、主にビス−スクシンイミド分散剤が生成し得る。スクシンイミド分散剤の例には、例えば、米国特許第3,172,892号、第4,234,435号、及び第6,165,235号に記載されているものが含まれ、それらを参照により全体的に本明細書に援用する。主にビス−スクシンイミドであるスクシンイミド分散剤は、スクシンイミド分散剤中に存在し得るモノ−スクシンイミド等の他の化合物に対して主要量のビス−スクシンイミドを含有する。
【0036】
コハク酸をベースとする分散剤は、多種多様な化学構造を有する。コハク酸をベースとする分散剤の1つのクラスは、式Iによって表すことができる。
【化1】

式中、各Rは独立的に、ポリオレフィン由来の基のようなヒドロカルビル基である。典型的に、ヒドロカルビル基は、ポリイソブテニル基等のアルキル又はアルケニル基である。別の表現では、R基は約40から約500個の炭素原子を含有することができ、これらの原子は、脂肪族の形態で存在することができる。Rは、アルキレン基であり、通常、エチレン(C)基であり、zは1から11である。スクシンイミド分散剤の例には、例えば、米国特許第3,172,892号、第4,234,435号及び第6,165,235号に記載されているものが含まれる。
【0037】
スクシンイミド分散剤は、窒素官能基がアミン、アミン塩、アミド、イミダゾリン及びそれらの混合物の形態であり得るが、スクシンイミド分散剤は、通常、大部分がイミド官能基の形態の窒素を含有するので、そのように称される。スクシンイミド分散剤を調製するために、1種以上のコハク酸を生成する化合物と1種以上のアミンとを加熱して、典型的に水を除去するが、これは任意選択的に、実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で行う。反応温度は、約80℃から当該混合物又は生成物の分解温度まで及ぶことができ、それは典型的に約100℃から約300℃の間に入る。本発明のスクシンイミド分散剤を調製する手順の追加的な詳細及び例には、例えば、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,272,746号、第4,234,435号、第6,165,235号及び第6,440,905号に記載されているものが含まれる。
別の好ましい実施形態では、分散剤は、高分子量のアルケニル又はアルキル置換無水コハク酸と、1モル当り4から10個の窒素原子(平均値)、好ましくは5から7個の窒素原子(平均値)を有するポリアルキレンポリアミンとの反応によって調製されるスクシンイミドである。
【0038】
分散剤は、潤滑油に使用するための任意の好適な分散剤又は多数の分散剤の混合物であってもよい。一実施形態では、分散剤は、ポリアルキレンスクシンイミド(好ましくは、ポリイソブテンスクシンイミド)等のアルケニル又はアルキルスクシンイミド又はその誘導体を含む無灰分散剤等の無灰分散剤である。好ましい実施形態では、分散剤はスクシンイミド又はその誘導体である。別の実施形態では、分散剤は、ポリブテニル無水コハク酸とポリアミンとの反応によって得られるスクシンイミド又はその誘導体である。別の実施形態では、分散剤は、ポリブテニル無水コハク酸とポリアミンとの反応によって得られるスクシンイミド又はその誘導体であるが、当該ポリブテニル無水コハク酸は、ポリブテン及び無水マレイン酸から生成される(例えば、塩素及び塩素原子含有化合を使用しない熱反応法)。別の好ましい実施形態では、分散剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)と1種以上のアルキレンポリアミンとの縮合反応のスクシンイミド反応生成物である。PIBSAは、この実施形態では、高メチルビニリデンポリイソブテン(PIB)と無水マレイン酸との熱反応生成物であり得る。別の好ましい実施形態では、分散剤は、約1400〜3000、約1400〜2600、約1400〜2300、又は約2000〜3000の数平均分子量(Mn)を有するPIB由来の主にビス−スクシンイミド反応生成物である。別の好ましい実施形態では、分散剤は、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、少なくとも約2000、少なくとも約2100、少なくとも約2200、少なくとも約2300、少なくとも約2400、少なくとも約2500、少なくとも約2600、少なくとも約2700、少なくとも約2800、少なくとも約2900、少なくとも約3000のMnを有するPIB由来の主にビス−スクシンイミド反応生成物である。
【0039】
別の好ましい実施形態では、分散剤は、ホウ酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸、スクシンアミド、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド、ペンタエリスリトール、フェナート−サリチラートで後処理したアルケニル又はアルキルスクシンイミド及びそれらの後処理した類似体等、又はそれらの組合せ又は混合物を含む。好ましいスクシンイミドは、環状カーボネートで後処理することができる。最も好ましくは、スクシンイミドはエチレンカーボネートで後処理される。
別の好ましい実施形態では、分散剤は主に、2300MnPIB由来のビス−スクシンイミド反応生成物であり、続いてエチレンカーボネートと反応させる。別の好ましい実施形態では、分散剤は、1400〜3000の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブチレンから誘導され、エチレンカーボネートで後処理されるビス−スクシンイミド分散剤である。後処理されたスクシンイミド分散剤は、米国特許第5,334,321号及び第5,356,552号に記載されている方法に従って調製され、これらは参照により本明細書に援用される。一般に、スクシンイミドのポリアミン部分は、エチレンカーボネート等の環状カーボネートで修飾することができる。ポリアミン部分の1つ以上の窒素は、ヒドロカルビルオキシカルボニル、ヒドロキシヒドロカルビルオキシカルボニル、又はヒドロキシルポリ(オキシアルキレン)オキシカルボニル基等の置換基を含む環状カーボネートと反応する。
【0040】
一実施形態では、好ましいスクシンイミドはホウ素を含有しない。一実施形態では、好ましい後処理されたスクシンイミドはホウ素を含有しない。一実施形態では、潤滑油組成物は、ホウ素を含有するスクシンイミド分散剤を含有しない。
好ましくは、潤滑油組成物中の1種以上の分散剤の活性成分基準での濃度は、約1.2重量%より高く、約1.5重量%より高く、約1.8重量%より高く、又は更には約2.0重量%より高い。他の好ましい実施形態では、潤滑油組成物中の1種以上の分散剤添加剤の活性成分基準での濃度は、約1.2から8.0重量%、約1.2から6.0重量%、約1.2から5.5重量%、約1.2から5.0重量%、約1.5から5.0重量%、約1.5から3.0重量%、約1.5から4.0重量%%、又は更に約1.5から2.5重量%である。
【0041】
後処理されたアルケニル−又はアルキル−スクシンイミド無灰分散剤は、活性成分基準で70mgKOH/g未満のTBNを有することができる。一実施形態では、アルケニル又はアルキルスクシンイミド分散剤は、活性成分基準で60mgKOH/g未満のTBNを有する。一実施形態では、アルケニル−又はアルキル−スクシンイミド分散剤は、活性成分基準で50mgKOH/g未満のTBNを有する。一実施形態では、アルケニル−又はアルキル−スクシンイミド分散剤は、活性成分基準で40mgKOH/g未満のTBNを有する。一実施形態では、アルケニル−又はアルキル−スクシンイミド分散剤は、活性成分基準で30mgKOH/g未満のTBNを有する。
潤滑油組成物は、低硫黄留出燃料を使用して操作されるトランクピストンエンジンでの使用に適した任意のTBNを有することができる。例えば、幾つかの実施形態では、潤滑油組成物のTBNは30mgKOH/g未満である。他の実施形態では、潤滑油組成物のTBNは、5から25、6から20、8から18、10から16及び16mgKOH/gである。
【0042】
潤滑油組成物は、トランクピストンエンジンでの使用に適した任意の粘度を有することができる。一実施形態では、潤滑油組成物は、100℃で少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、又は少なくとも約20cStの粘度を有する。別の実施形態では、潤滑油組成物は、100℃で約5.6から21.9cSt、例えば100℃で約5.6から9.3cSt、100℃で約9.3から16.3cSt、100℃で約9.3から12.5cSt、100℃で約12.5から16.3cSt、又は100℃で約16.3から21.9cStの粘度を有する。潤滑油組成物の粘度は、ASTM D2270等の任意の好適な方法で測定することができる。
【0043】
一実施形態では、潤滑油組成物は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩を含有しない清浄剤を含有しない。
一実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも50モル%のC14からC18のアルキル基を有するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩を含む過塩基性清浄剤を含有しない。
本発明では、潤滑油組成物は、スルホン酸の塩を含有しない。
本発明では、潤滑油組成物の洗浄剤は、硫化金属アルキルフェナートを含有しない。
潤滑粘度の油
【0044】
本発明の潤滑油組成物で使用するための潤滑粘度の基油は典型的に、組成物の全重量に基づいて、主要量で、例えば、50重量%より高い、好ましくは約70重量%より高い、より好ましくは約80から約99.5重量%の、そして最も好ましくは約85から約98重量%の量で存在する。本明細書で使用されるような「基油」の表現は、単一の製造者により同じ仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、且つ独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味するように理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えば、エンジンオイル、船舶用シリンダー油、油圧油等の機能性流体、ギア油、トランスミッション流体等の、任意のそして全てのそのような用途に対する潤滑油組成物を配合する際に使用される潤滑粘度の任意の現在知られている又は後に発見される基油であり得る。加えて、本明細書で使用するための基油は、任意選択的に、粘度指数向上剤、例えばポリマーアルキルメタクリラート;オレフィンコポリマー、例えばエチレン−プロピレンコポリマー又はスチレン−ブタジエンコポリマー等及びそれらの混合物を含有し得る。
【0045】
当業者には容易に分かるように、基油の粘度は、その用途に依存する。従って、本明細書で使用するための基油の粘度は通常は、摂氏100度(100℃)で約2から約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般的に、エンジンオイルとして使用される基油は個々に、100℃で約2cStから約30cSt、好ましくは約3cStから約16cSt、そして最も好ましくは約4cStから約12cStの動粘度範囲を有し、所望の最終用途び最終的な油中の添加剤に応じて選択され又はブレンドされて、所望の等級のエンジンオイルを得る。ベースストックは、非限定的に、蒸留、溶媒精製、水素化処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含む種々の異なるプロセスを用いて製造することができる。再精製ストックには、製造、汚染又はそれまでの使用を介して混入した物質は実質的に含まれないものとする。本発明の潤滑油組成物の基油は、任意のグループI及び/又はグループIIの潤滑基油又はその混合物であり得る。
【0046】
基油は、天然潤滑油、合成潤滑油又はこれらの混合物から誘導できる。好適な基油には合成ろう及び軟ろう(スラックワックス)の異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族成分及び極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解して製造される水素化分解ベースストックが含まれる。好適な基油には、API刊行物1509、第14版、補遺I、1998年12月に定義されているようなAPIカテゴリーI及びIIにおけるものが含まれ、グループI及びIIの基油が本発明で使用するのに好ましい。
グループI及びIIの基油についての飽和物レベル、硫黄レベル及び粘度指数を、以下の表1に列挙する。
【表1-1】
【0047】
一実施形態では、基油はグループIIの基油、又は2種以上の種々のグループIIの基油のブレンドである。別の実施形態では、基油は、グループIの基油、又は2種以上の種々のグループIの基油のブレンドである。別の実施形態では、基油は、グループI及びグループIIの基油の混合物である。好適なグループIの基油には、例えば、任意のライト・ニュートラル、ミディアム・ニュートラル、及びヘビー・ニュートラルのベースストック等の減圧蒸留カラムからの軽質オーバーヘッドカット及びより重質サイドカット等が含まれる。更に、例えば、ブライトストック等の石油由来の基油は、残渣ストック又は底部留分を含み得る。ブライトストックは、従来の方法で残渣ストック又は底部(留分)から製造され、高度に精製且つ脱ろうされた高粘度基油である。ブライトストックは、40℃で約180cStより高い、40℃で約250cStより高い又は40℃で約500cStから約1100cStの範囲の動粘度を有し得る。
【0048】
有用な中性油には、鉱物潤滑油、例えば、液体石油、パラフィン系、ナフテン系又は混合パラフィン−ナフテン系の溶媒処理又は酸処理した鉱物潤滑油、石炭又はシェールから誘導された油、動物油、植物油(例えば、菜種油、ヒマシ油、及びラード油)等が含まれる。
潤滑油は、上記の種類の、天然、合成、又はそれらのうち任意の2種以上の混合物の未精製、精製及び再精製の油から誘導できる。未精製油は、更なる精製又は処理をすることなく、天然又は合成源(例えば、石炭、シェール又はタールサンドビチューメン)から直接得られるものである。未精製油の例には、非限定的に、レトルト操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油又はエステル化プロセスから直接得られるエステル油が含まれ、その後、これらの各々は、更なる処理をすることなく使用される。精製油は、1つ又はそれ以上の性質を改良するために1つ又はそれ以上の精製工程にて更に処理されたことを除いて、未精製油に類似している。これらの精製技術は、当業者に既知であり、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、ろ過、パーコレーション、水素化処理、脱ろう等が含まれる。再精製油は、精製油を得るのに使用されるプロセスに類似したプロセスにおいて、使用済みの油を処理することにより得られる。このような再精製油は再生又は再処理油としても知られ、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的とする技術によって追加的に処理されることが多い。
【0049】
ろうの水素異性化由来の潤滑油ベースストックもまた、単独で、又は、前述の天然及び/若しくは合成のベースストックと組み合わせて使用できる。このようなろう異性化油は、水素異性化触媒上で天然若しくは合成のろう又はそれらの混合物の水素異性化により製造される。
天然ろうは典型的には、鉱油の溶剤脱ろうにより回収された軟ろうである。合成ろうは典型的には、フィッシャー・トロプシュ法により製造されたろうである。
追加的な潤滑油添加剤
【0050】
本発明のプロセスによって調製される潤滑油組成物は、補助的な機能を付与するために他の従来の添加剤もまた含有し、これらの添加剤が分散又は溶解した最終的な潤滑油組成物を得ることができる。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、抗摩耗剤、無灰分散剤、清浄剤、防錆剤、曇り除去剤(dehazing agents)、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消泡剤、流動点降下剤、共溶媒、パッケージ相溶剤、腐食防止剤、染料、極圧剤等及びこれらの混合物とフレンドできる。種々の添加剤が知られており、販売されている。これらの添加剤又はそれらの類似の化合物は、通常のブレンド手順により本発明の潤滑油組成物の調製に使用できる。
【0051】
抗摩耗剤の例には、非限定的に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びジアリールジチオリン酸亜鉛、例えば、Bornらによる記事で、題名が「種々の潤滑メカニズムにおける幾つかの金属ジアルキル−及びジアリールジチオホスファートの化学的構造と有効性との間の関係(Relationship between Chemical Structure and Effectiveness of some Metallic Dialkyl− and Diaryl−dithiophosphates in Different Lubricated Mechanisms)」で、潤滑科学(Lubrication Science)4−2、1992年1月号(例えば97から100ページ参照)に掲載されているもの、アリールホスファート及びホスファイト、硫黄含有エステル、ホスホ硫黄(phosphosulfur)化合物、金属又は無灰ジチオカルバマート、キサンタート、アルキルスルフィド等、及びこれらの混合物が含まれる。
防錆剤の例には、非限定的に、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、及びポリエチレングリコールモノオレアート;ステアリン酸及び他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属石鹸;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;それらの部分エステル及びそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリールスルホナート、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩;その他、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0052】
摩擦調整剤の例には、非限定的に、アルコキシ化脂肪族(fatty)アミン;ホウ素化(borated)脂肪族エポキシド;脂肪族ホスファイト、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ素化アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ素化グリセロールエステル;及び脂肪族イミダゾリン(これらは米国特許第6,372,696号に開示されており、その内容を参照により本明細書に援用する。);CからC75、好ましくはCからC24、そして最も好ましくはCからC20の脂肪酸エステルとアンモニア及びアルカノールアミンからなる群から選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦調整剤等、並びにこれらの混合物が含まれる。
消泡剤の例には、非限定的に、アルキルメタクリラートのポリマー、ジメチルシリコーンのポリマー等及びこれらの混合物が含まれる。
【0053】
流動点降下剤の例には、非限定的に、ポリメタクリラート、アルキルアクリラートポリマー、アルキルメタクリラートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタラート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、及びこれらの組合せが含まれる。一実施形態では、流動点降下剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレン等及びそれらの組合せが含まれる。流動点降下剤の量は、約0.01重量%から約10重量%まで変化させることができる。
解乳化剤の例には、非限定的に、アニオン性界面活性剤(例えば、アルキルナフタレンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート等)、非イオン性アルコキシ化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のブロックコポリマー)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等及びこれらの組合せが含まれる。解乳化剤の量は、約0.01重量%から約10重量%まで変化させることができる。
【0054】
腐食防止剤の例には、非限定的に、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド、リン酸エステル、チオホスファート、アルキルイミダゾリン、サルコシン等及びこれらの組合せが含まれる。腐食防止剤の量は、約0.01重量%から約5重量%まで変化させることができる。
極圧剤の例には、非限定的に、硫化した動物性又は植物性の脂肪又は油、硫化した動物性又は植物性の脂肪酸エステル、リンの3価又は5価の酸の完全に又は部分的にエステル化したエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルとモノ不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル及びアルファ−オレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チアアルデヒド、チアケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペンと非環状オレフィンの共硫化ブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩等、並びにこれらの組合せが含まれる。極圧剤の量は、約0.01重量%から約5重量%まで変化させることができる。
【0055】
抗酸化剤の例には、非限定的に、ジフェニルアミン、フェニルアルファナフチルアミン、N,N−ジ(アルキルフェニル)アミン、アルキル化フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミン、及びそれらの混合物等のアミン類が含まれる。一実施形態では、アミン系抗酸化剤は、アルキル化ジフェニルアミンである。フェノール系抗酸化剤の例には、BHT、即ち立体障害を受けるアルキルフェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2−オクチル−3−プロパン酸)フェノール、及びこれらの混合物が含まれる。抗酸化剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.01重量%から約10重量%、約0.05重量%から約5重量%、又は約0.1重量%から約3重量%に変化し得る。幾つかの好適な抗酸化剤は、Leslie R. Rudnickによる 「Lubricant Additives: Chemistry and Applications」 ニューヨーク、マーセルデッカー、第1章、1〜28頁(2003年)に記載されており、これを本明細書に参照により援用する。
【0056】
前記添加剤の各々は、使用する場合には、潤滑剤に所望の特性を付与する機能的有効量で使用される。従って、例えば、添加剤が摩擦調整剤の場合、この摩擦調整剤の機能的有効量は、所望の摩擦調整特性を潤滑剤に付与するのに十分な量となるであろう。一般的に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用する場合には、特に断らない限り、潤滑油組成物の全重量に基づいて約0.001重量%から約20重量%、一実施形態では、約0.01重量%から約10重量%の範囲とすることができる。
本発明の別の実施形態では、本発明のプロセスによって調製される組成物は、添加剤パッケージ又は添加剤濃縮物として提供することができ、後者では、添加剤は実質的に不活性で、通常は液体の有機希尺剤、例えば、鉱物油、ナフサ、ベンゼン、トルエン又はキシレンに組込まれて、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は通常、約20重量%から約80重量%のこのような希釈剤を含有する。当該添加剤及び最終的な潤滑油と相溶性のある合成油及び他の有機液体もまた使用されるが、典型的には、100℃で約4から約8.5cSt、そして好ましくは100℃で約4から約6cStの粘度を有する中性油が希釈剤として使用されるであろう。添加剤パッケージもまた、典型的に上記の1種以上の種々の他の添加剤を、所望の量及び比で含有して、必要量の基油との直接的な組合せを容易にする。
【実施例】
【0057】
以下の非限定的な例により、本発明を例証する。
本発明の利点は、スクシンイミド分散剤と組み合わせてアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の塩を含む少なくとも1種の過塩基性清浄剤を含有するグループI及びグループIIベースのトランクピストンエンジンオイル組成物を試験することによって実証された。
【0058】
清浄剤A:米国特許出願第2007/0027043号の実施例1に記載された方法に従って調製されるC20からC28の直鎖状オレフィン由来のアルキル置換基を有する過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物。この添加剤は、5.35重量%のCa、及び約35.0重量%の希釈油(65%の活性成分)を含有し、そして150mgKOH/gのTBNを有した。
清浄剤B:米国特許出願第2007/0027043号の実施例1に記載された方法に従って調製されるC20からC28の直鎖状オレフィン由来のアルキル置換基を有する過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物。この添加剤は、12.5重量%のCa、及び約33.0重量%の希釈油(67%の活性成分)を含有し、そして350mgKOH/gのTBNを有した。
清浄剤C:C14からC18の直鎖状アルファオレフィン由来のアルキル置換基を有する過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物。この添加剤は、9.87重量%のCa、及び約40.0重量%の希釈油(60%の活性成分)を含有し、そして280mgKOH/gのTBNを有した。
清浄剤D:C14からC18の直鎖状アルファオレフィン由来のアルキル置換基を有する過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物。この添加剤は、6.25重量%のCa、及び約41.0重量%の希釈油(59%の活性成分)を含有し、そして175mgKOH/gのTBNを有した。
【0059】
分散剤A:2300MWのポリイソブチレン及び重質ポリアミン由来の、エチレンカーボネートで後処理される主にビス−スクシンイミド分散剤の油濃縮物。この添加剤は、1.0%のN、約43%の希釈油(57%の活性成分)を含有し、そして12.5mgKOH/gのTBNを有していた。
分散剤B:1000MWのポリイソブチレン及び重質ポリアミン/DETA(80/20重量/重量)由来の主としてビス−スクシンイミド分散剤の油濃縮物。この添加剤は、2.0%のN、約32%の希釈油(68%の活性成分)を含有し、そして38mgKOH/gのTBNを有していた。
分散剤C:1,000MWのポリイソブチレン及び重質ポリアミン由来の、ホウ素化で後処理された主にビス−スクシンイミド分散剤の油濃縮物。この添加剤は、2.2%のN、約45%の希釈油(55%の活性成分)を含有し、そして52mgKOH/gのTBNを有していた。
分散剤D:2300MWのポリイソブチレン及び重質ポリアミン由来の主にビススクシンイミド分散剤の油濃縮物。この添加剤は、エチレンカーボネートの後処理前の分散剤Aに対するビススクシンイミド前駆体である。この添加剤は、1.25%のN、約42%の希釈油(58%活性成分)を含有し、そして29mgKOH/gのTBNを有した。
分散剤E:1000MWのポリイソブチレン及び重質ポリアミン由来の、エチレンカーボネートで後処理される主にビス−スクシンイミド分散剤の油濃縮物。この添加剤は2.3%のN、約33%の希釈油(67%の活性成分)を含有し、そして29mgKOH/gのTBNを有した。
【0060】
最終的なトランクピストンエンジン潤滑油組成物は、適切なグループIベースストック、過塩基性カルシウムアルキルヒドロキシベンゾアート清浄剤、分散剤、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、解乳化剤及び消泡剤を一緒に混合することによって得られた。表1のトランクピストンエンジンオイル組成物は、約12mgKOH/gのTBN及びSAE40の粘度等級に配合された。表1のTPEOは、ほぼ等しい清浄剤石鹸濃度に配合された。
【表1-2】

使用したグループIベースストックは、ExxonMobil CORE(登録商標)600GroupIベースストック、ExxonMobilCORE(登録商標)150GroupIベースストック又はExxonMobilCORE(登録商標)2500BSGroupIブライトストック又はそれらの混合物であった。
【0061】
追加のトランクピストンエンジン潤滑油組成物は、主要量のグループIIベースストック、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム清浄剤、分散剤、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、解乳化剤及び消泡剤を一緒に混合することによって得られた。表2のトランクピストンエンジンオイル組成物は、約12mgKOH/gのTBN及びSAE40の粘度等級に配合された。表2のTPEOは、ほぼ等しい清浄剤石鹸濃度に配合された。
【表2】
【0062】
使用したグループIIベースストックは、Chevron Products Co.(カリフォルニア州、サンラモン)から入手可能なChevron RLOP 600Rであった。グループIベースストックは、ExxonMobil CORE(登録商標)150 GroupIベースストック、ExxonMobil CORE(登録商標)2500BS GroupIブライトストック又はそれらの混合物であった。
潤滑油組成物の評価に使用した試験は、高温洗浄性の尺度であるコマツホットチューブ(Komatsu Hot Tube)(KHT)試験、潤滑剤の酸化に基づく粘度増加に対する安定性の度合いである改正石油協会48(「MIP−48」)試験、及び試験油の薄膜酸化安定性を評価するのに使用される示差走査熱量計(DSC)試験である。潤滑剤の酸化に基づく粘度増加に対する洗浄性の尺度及び安定性の度合いは、トランクピストンエンジンオイルにとって重要な性能要因である。
【0063】
改正石油協会48試験(Modified Institute of Petroluem 48 Test)
MIP−48試験は、潤滑剤の酸化に基づく粘度増加に対する安定性の度合いを測定する。試験は、熱及び酸化部分から構成される。試験の両方の部分の間、試験サンプルはある時間の間加熱される。試験の熱部分では、窒素を24時間、加熱した油サンプルを通って流し、並行して、試験の酸化部分の間、空気を24時間、加熱した油サンプルを通って流す。サンプルを冷却し、両方のサンプルの粘度を測定した。酸化によって引き起こされた試験油の粘度増加を測定し、熱の影響による補正を行った。各船舶用トランクピストンエンジンオイル組成物の酸化に基づく粘度増加は、空気ブローサンプルについての200℃における動粘度から、窒素ブローサンプルについての200℃における動粘度を減算し、その減算した値を窒素ブローサンプルについての200℃における動粘度によって除算することによって算出した。
【0064】
コマツホットチューブ(Komatsu Hot Tube)(KHT)試験
コマツホットチューブ試験は、潤滑油の高温清浄性並びに熱及び酸化安定性の度合いを測定する潤滑工業用ベンチ試験である。試験中、試験油の特定量を、特定の温度に設定されたオーブン内に置かれたガラス管を通して上方に汲み上げる。油がガラス管に入る前に、空気を油流れに導入し、そして油と共に上方に流す。船舶用トランクピストンエンジン潤滑油の評価を、300℃〜320℃の間の温度で行った。冷却及び洗浄の後、試験結果を、ガラス試験管に堆積したラッカーの量を、1.0(非常に黒い)から10.0(完全にクリーン)の範囲の評定尺度と比較することによって決定する。結果を0.5の倍数で報告する。ガラス管が堆積物で完全に塞がれている場合、試験結果は「閉塞」と記録する。閉塞は、1.0の結果より下の堆積であり、その場合、ラッカーは、非常に厚く、暗いが、依然として流体は流れることができ、しかし、速度は使用可能な油に対しては全く不満足なものである。本発明の潤滑油組成物のKHT試験における好適な性能は、300℃で5.5以上の総合評定によって示される。
【0065】
示差走査熱量計(DSC)試験
DSC試験を使用して、ASTM D−6186に準拠して、試験油の薄膜酸化安定性を評価する。サンプルカップ中の試験油への及び試験油からの熱流を、試験の間、基準カップと比較する。酸化開始温度は、試験油の酸化が開始する温度である。酸化誘導時間は、試験油の酸化が開始する時間である。酸化反応は結果的に、発熱反応であり、これは熱流によって明確に示される。酸化誘導時間を計算して、試験油の薄膜酸化安定性を評価する。改良された薄膜酸化安定性を示す油は結果的に、比較試験油と比較してより高い酸化誘導時間となる。
MIP−48試験、KHT試験及びDSC酸化試験を、表1及び2に示す船舶用トランクピストンエンジン潤滑油組成物に適用した。その結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0066】
表3に示される結果から明らかなように、(活性成分基準で)1.2重量%より多い、2300の数平均分子量のポリイソブチレン基から誘導されたビス−スクシンイミド分散剤(分散剤A及びD)と組み合わせて、少なくとも90モル%のC20以上のアルキル基を有するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含むトランクピストンエンジン潤滑油組成物は、1000の数平均分子量(Mn)を有するポリイソブチレン基から誘導された後処理した又は後処理しないビス−スクシンイミド分散剤(分散剤B、C及びE)と組合せて、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸の過塩基性塩を含有する潤滑油組成物及び基準油(比較例1)と比較して、酸化に基づく粘度増加に対して驚くべき良好な安定性(<25%の粘度増加)を示し、且つKHT試験において300℃で5.5以上の評定を示した。本発明の潤滑油組成物は、DSC酸化試験結果によって明らかなように、匹敵し得る又は部分的に(指向的に)改良された薄膜酸化安定性性能を示した。
【0067】
一般的な説明又は例において上で説明した活性剤の全てが必要であるとは限らず、特定の活性剤の一部が必要でなくてもよく、説明された活性剤に加えて、1種以上の更なる活性剤を使用してもよいことに留意されたい。更に、活動が列挙される順序は、必ずしもそれらが使用される順序ではない。
前記明細書では、特定の実施形態を参照して概念を説明してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を行うことができることを理解する。従って、本明細書は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で考慮されるべきであり、そのような改変は全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。
本明細書で使用される場合、「含む(comprised)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」の用語又はそれらの任意の他の変形は、非排他的に包含物を含むことを意図する。例えば、特徴の列挙を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴だけに限定されず、明示的に列挙されていないか又はそのようなプロセス、方法、物品又は装置に固有の他の特徴を含み得る。更に、逆のことが明示的に記載されていない限り、「又は」は包括的又は排他的でないことを意味する。例えば、条件A又はBは、次のいずれか1つによって満たされる:Aが真(又は存在)且つBが偽(又は非存在)である、Aが偽(又は非存在)且つBが真(又は存在)である、そしてAとBの両方が真(又は存在)である。
【0068】
更に、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び構成要素を説明するために用いられる。これは、便宜上のためだけであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためである。この説明は、他の意味であることが明らかでない限り、1つ又は少なくとも1つを、そして単数形は、複数形も含むように読まれるべきである。
利点、他の利点、及び問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して上述されている。しかし、利益、利点、問題の解決策、及び利点、利点、又は解決策が発生又はより顕在化する可能性のある特徴(単数又は複数)は、いずれか又は全ての特許請求の範囲の重要な、必須の、又は本質的な特徴と解釈されるべきではない。
本明細書を読んだ後、当業者は、明瞭にするために、別個の実施形態の文脈で本明細書に記載される特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供され得ることもまた理解するであろう。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴を、別々に、又は任意のサブコンビネーションで提供することもまた可能である。更に、範囲内に記載された値への言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。

【国際調査報告】