(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2018516585
(43)【公表日】20180628
(54)【発明の名称】HIF−1αのメチル化を標的とする血管新生抑制剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/48 20060101AFI20180601BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20180601BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180601BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180601BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20180601BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
   !C12Q1/48 ZZNA
   !C12Q1/02
   !A61P9/10
   !A61P27/02
   !A61P35/00
   !A61P35/04
   !A61K45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】51
(21)【出願番号】2017564132
(86)(22)【出願日】20161109
(85)【翻訳文提出日】20171208
(86)【国際出願番号】KR2016012853
(87)【国際公開番号】WO2017122917
(87)【国際公開日】20170720
(31)【優先権主張番号】10-2016-0003321
(32)【優先日】20160111
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0147534
(32)【優先日】20161107
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SNU R&DB FOUNDATION
【住所又は居所】大韓民国 151−015 ソウル クァナック クァナックロ 1
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ベク ソンヒ
【住所又は居所】大韓民国 06276 ソウル ガンナムグ ソルルンロ 221、405−304
(72)【発明者】
【氏名】キム ユンホ
【住所又は居所】大韓民国 06994 ソウル ドンジャクグ ドンジャクデロ 43ギル 36、506
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヘジン
【住所又は居所】大韓民国 08819 ソウル クァナック シルリムロ 19ギル 50、302
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ79
4B063QR06
4B063QR48
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA20
4C084ZA332
4C084ZA362
4C084ZB262
(57)【要約】
本願は、HIF1−αタンパク質とSET7/9メチルトランスフェラーゼまたはLSD1デメチラーゼとの相互作用を標的とする血管新生抑制剤をスクリーニングする方法を開示し、本願による方法によってスクリーニングされた物質は、網膜症または抗癌剤などのような血管新生の抑制が必要な多様な疾患の治療剤として有用に開発できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップと、
前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップであって、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定されるステップと、
前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップと、
前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合において、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合に、前記試験物質を候補物質として選別するステップとを含む、血管新生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
HIF1−αタンパク質およびLSD1(Lysin Specific demehtylase1)タンパク質を準備するステップであって、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として32番目のリシン残基にメチル化されているステップと、
前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップであって、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定されるステップと、
前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップと、
前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合において、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合に、前記試験物質を候補物質として選別するステップとを含む、血管新生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記HIF1−αタンパク質の30番目の残基は、アルギニンからグルタミンまたはアスパラギン残基に置換されたものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記HIF1−αタンパク質、SET7/9タンパク質、またはLSD1タンパク質は、前記タンパク質を発現する細胞またはヒトを除く動物の形態で準備されるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞株は、HEK−293T(human embryonickidney cell)、HeLa(human cervical cancer cell)またはMDA−MB231(human breast cancer cell)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記メチル化は、前記HIF1−αタンパク質のヒドロキシル化および前記HIF1−αタンパク質のVHLへの結合に非依存的なものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記血管新生抑制剤は、網膜症または癌治療剤または癌の転移抑制剤として使用されるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
癌細胞でHIF1−αタンパク質の配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化を調節して動物の血管新生を調節する方法。
【請求項9】
前記癌細胞のHIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として30番目の残基は、アルギニンからグルタミンまたはアスパラギンに置換されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メチル化の調節は、前記HIF1−αタンパク質とSET7/9タンパク質との相互作用、または前記相互作用を調節する物質によるものである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIF−1αのメチル化を標的とする血管新生抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素−誘導因子−1(hypoxia-induciblefactor-1;HIF−1)は、低酸素関連の反応を媒介し、血管新生性、侵入および代謝に関連する遺伝子の発現を調節する。HIF−1は、異種性二重の転写因子で酸素調節されるα小単位(HIF−1αまたはHIF−2α)と、コンスティテューティブに発現するβ小単位(HIF−1β)とから構成されている。HIF−1α/βヘテロダイマーは正常酸素条件では不安定であり、HIF−1αは低酸素環境では安定化する。
【0003】
HIF−1αは、内皮細胞のマスター調節因子であるVEGFを直接的に調節することにより、病理生理学的な血管生成において重要な役割を果たす。マウスでHIF−1αの機能が獲得されると、VEGF、微細血管の密度、肉腫成長および血管形成の発現を増加させ、マウスでHIF−1αの機能が損失すると、肉腫成長および血管形成を抑制する(Ravi,R.et al.Regulation of tumor angiogenesis by p53-induceddegradation of hypoxia-inducible factor1alpha.Gene.Dev.14,34-44(2000);Stoeltzing,O.et al.Role of hypoxia-induciblefactor 1alpha in gastric cancer cell growth,angiogenesis、およびvessel maturation.J.Natl.Cancer Inst.96,946-956(2004))。
【0004】
韓国公開特許番号第10−2015−0018457号は、「プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤またはヒストン脱アセチラーゼ阻害剤、および抗生剤を含む骨疾患の予防または治療用薬学的組成物」に関するもので、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を用いてHIF−1αを安定化させて癌治療をする方法が公開されている。
【0005】
韓国公開特許番号第1492435号は、「HIF−1α siRNAを有効成分として含有するTSLPによって媒介される疾患の予防または治療用薬剤学的組成物」に関するもので、siRNAを用いてHIF−1αの活性を抑制することで、HIF−1α関連疾患の治療を目的としている。
【0006】
しかし、HIF−1αの様々な転写後修飾のうち、HIF−1αのメチル化の機序および生理的な役割はよく明らかにされておらず、前記機序の究明およびそれに基づく血管新生抑制剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なHIF−1αのメチル化の機序を標的とする血管新生抑制剤をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一様態において、本願は、HIF1−αタンパク質のメチル化の調節による血管新生抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0009】
一実現例において、本願による方法は、HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップ;前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップで、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定され;前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップ;並びに前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0010】
他の実現例において、本願による方法に使用されるHIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として30番目の残基がアルギニンからグルタミンまたはこれと化学的に同等の残基、例えば、側鎖にアミド基を有するアスパラギンに置換されたものが使用できる。特定の癌において前記30番目の残基で突然変異が発生し、本願では、この場合、32番目の残基におけるメチル化が減少することを究明した。
【0011】
さらに他の実現例において、HIF1−αタンパク質およびLSD1(LysinSpecific demehtylase1)タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1を基準として32番目のリシン残基にメチル化されており、前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップで、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定され、前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップ;並びに前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0012】
本願による方法に使用されるタンパク質は、これを発現する細胞または動物の形態で発現でき、タンパク質の発現のためにこれをコーディングする遺伝子を細胞または動物に伝達することを含む。
【0013】
本願によるスクリーニング方法で選別された物質は、血管新生に関連する多様な疾患、例えば、網膜症、癌、特に癌の転移を抑制、治療に有用に使用できる。
【0014】
本願によるスクリーニング方法は、従来知られたHIF1−αタンパク質のヒドロキシル化およびHIF1−αタンパク質のVHLへの結合とは独立した、すなわち非依存的な方法である。従来、HIF−1aの調節機序としてヒドロキシル化を用いた薬物の開発は進んだものの、本願による新たな機序に基づく薬物の開発は、従来の薬物に反応しない癌や、従来開発された薬物と共にカクテル療法に適用されて、HIF−1aに依存的な多様な癌をより効果的に治療するのに有用に使用されるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本願で究明されたHIF−1αの特定残基におけるメチル化および脱メチル化に関与するタンパク質および機序を用いた血管新生抑制剤のスクリーニング方法は、癌の成長と転移を防止可能な物質の開発に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、SET7/9によってHIF−1αのK32にメチル化が起こることを示すものである。(a)HIF−1αの潜在的SET7/9標的サイトがあることを明らかにした。(b)Mass分析によりHIF−1α K32サイトでメチル化が起こることを確認した。(c)co−IPによりHIF−1αとSET7/9とが相互作用することを確認した。MG132を処理した状況と処理していない状況とで比較した。(d)HIF−1α WTとK32A、SET7/9WTとSET7/9酵素活性のないH297Aをもってインビトロメチル化実験を行った。(e)HeLa細胞でメチル化されたリシンを認知する抗体を用いてHIF−1αのメチル化を確認した。SET7/9WTとH297Aが発現する状況で確認した。(f)WT MEFとSet7/9−/−MEFでMG132を処理した状況と処理していない状況とでHIF−1αのメチル化を確認した。(g)HIF−1α抗体で免疫沈降を行った後、HIF−1α−me抗体で免疫ブロットをした。(h)HeLa細胞株から核と細胞質とを分離した。そして、HIF−1α−me抗体でHIF−1αのメチル化を確認した。低酸素環境に定められた時間だけインキュベーションし、MG132を処理した状況と処理していない状況とで比較した。ラミン(Lamin)A/Cを核マーカーとして、チューブリン(tubulin)を細胞質マーカーとして使用した。(i)HeLa細胞株にHIF−1α WTとK32Aを過発現させた。MG132を処理した状況と処理していない状況とで低酸素環境に定められた時間だけインキュベーションした後、Flag抗体(赤)で染色した。核はDAPI(青)で染色した。
【図2】図2は、LSD1によるHIF−1αの脱メチル化がHIF−1αの安定性を増加させることを示すものである。(a)低酸素環境でFlag M2アガロースビーズを用いてHEK293T細胞からHIF−1αと相互作用するタンパク質を精製した。相互作用するタンパク質をSDS−PAGEした後、LC−MS/MSで分析した。(b)MG132を処理した状況と処理していない状況とでHIF−1αとLSD1を共同−免疫沈降させた。(c、d)定められた時間だけ低酸素環境を処理した後、WT MEFから得た核溶解物(lysate)でLSD1とHIF−1αのタンパク質の発現量を確認し(c)、また、LSD1 mRNAを確認(d)した。(e)Lsd1+/−MEFとLsd1−/−MEFを低酸素環境にて6時間処理した後、核溶解物を得て、HIF−1αタンパク質の量を確認した。(f)Lsd1−/−MEFにLSD1 WTとLSD1酵素活性のないK661Aを再び発現させた細胞株でHIF−1αタンパク質の量を確認した。(g)Lsd1+/−MEFにパルギリン(pargyline)を12時間処理した後、低酸素環境にて6時間インキュベーションし、核にあるHIF−1αの発現量を確認した。(i)HeLa細胞株で特定抗体による免疫蛍光実験を行った。細胞はMG132を処理した状況と処理していない状況それぞれ、低酸素環境にて6時間インキュベーションした後、実験した。(j)HeLa細胞で免疫ブロット実験を行った。(k)HeLa細胞株を低酸素環境に6時間インキュベーションした後、CHX(20mg/ml)を定められた時間だけ処理し、免疫ブロット実験でHIF−1αタンパク質を確認した。(l)表示されたplasmidをtransfectionしたHeLa細胞から得た溶解物をNi2+−NTAビーズで精製した。HIF−1αのユビキチン化をHIF−1α抗体で確認した。(m)MG132が処理された状況でDMOGを処理した状況と処理していない状況とでHIF−1α WT、K32A、P2A、P2A/K32Aのヒドロキシル化を確認した。(n)MG132が処理され、Flag−HIF−1α WT、K32A、P2A、P2A/K32Aが過発現した状況でFlag抗体で沈殿させ、HIF−1α−me抗体で免疫ブロットを行った。(o)HIF−1α WTとK32A、P2Aが過発現した状況でSET7/9によるユビキチン化を確認した。ユビキチン化実験は(l)の通りに行った。
【図3】図3は、Hif1aKA/KA knock−inマウスでエリスロポエチン(erythropoietin)の発現が増加して血液学的に異常な表現型を呈することを示すものである。(a)Hif1aKA/KA knock−inマウスを作る過程を示すものである。部位−特異的変異(Site-directed mutagenesis)によりリシンをアラニンに代替し、この時、AfeIサイトが生じるようにした。(b)WT、Hif1a+/KA、およびHif1aKA/KAマウスの遺伝型を分析した。Hif1aKA/KA染色体はAfeIによって切断された。(c)WT、Hif1a+/KA、およびHif1aKA/KA MEFでHIF−1αのメチル化を確認した。(d)7日間PBSまたはDMOGを処理し、マウスの表現型を観察した。左側:足裏と鼻、中間:脾臓、右側:腹腔(e)7日間PBSまたはDMOGを処理したマウスの肺と脾臓でHIF−1αの発現を確認した。(f)WTマウスとHif1aKA/KAマウスとで血液学的指標を比較した。RBC:赤血球、Hb:ヘモグロビン、Hct:赤血球容積(g)WTとHif1aKA/KA MEFでVegf−a、Glut−1、Epo mRNAの量を確認した。左側は低酸素環境にて定められた時間だけインキュベーションした後に比較し、右側はDMOGを処理し比較した。(h)WTとHif1aKA/KAマウスの肺でVegf−a、Glut−1、Epo mRNAの量を確認した。左側は低酸素環境で14日間育てた後に比較し、右側はDMOGを7日間処理し比較した。
【図4】図4は、Hif1aKA/KA MEFで細胞移動、コロニー形成、腫瘍成長がすべて増加することを示すものである。(a)WTとHif1aKA/KA MEFを表示された時間だけ低酸素環境にてインキュベーションした後、HIF−1αタンパク質の量を確認した。(b)WTとHif1aKA/KA MEFを6時間低酸素環境にてインキュベーションした後、CHXを処理し、HIF−1αタンパク質の半減期を測定した。(c)マウスを10%酸素濃度に14日間育てた後、マウスの肺で免疫ブロット実験を行った。(d)MEFにSET7/9とLSD1を過発現させた後、Scratch-cell motility実験を行った。表示された時間の間、低酸素環境でインキュベーションした。(e)WTとHif1aKA/KA MEFを用いてtranswell cell migration実験を行った。一般酸素濃度環境または12時間低酸素環境で実験した。(f)WTとHif1aKA/KA MEFをもってanchorage independent細胞成長実験を行った。(g)HIF−1α shRNAが持続的に発現するMDA−MB−231乳癌細胞株にHIF−1α WTとK32Aを再び入れた後、xenograft実験を行った。
【図5】図5は、Hif1aKA/KA knock−inマウスで網膜血管生成が促進されることを示すものである。(a−d)生まれて5日目のWTとHif1aKA/KAマウスの生理学的網膜血管生成を示すものである。(a)5日目のマウスの網膜全体を固定してCD31とHIF−1α抗体で染色したものである。(b−d)血管の半径長さ、血管密度、HIF−1αの染色程度などを比較した。(e−j)WTとHif1aKA/KAマウスのOIRモデルで疾病学的網膜血管生成を示すものである。(e)生まれて17日目のOIRモデルマウスの網膜全体を固定してCD31抗体で染色した。(f、g)血管が生成されない部分と新たに血管が生成された部分をWTマウスとHif1aKA/KAマウスとで比較した。(h)17日目のOIRモデルマウスの網膜をisolectin B4(iB4)とVEGF HIF−1α抗体で染色した。(i、j)HIF−1αとVEGFの染色程度を比較した。
【図6】図6は、HIF−1α K32の修飾が腫瘍の成長と血管生成を促進することを示すものである。(a−l)腫瘍細胞を移植して18日後に摘出して組織学的分析を行った。(a)WTとHif1aKA/KAマウスで腫瘍の成長曲線を示すものである。(b)腫瘍の重量の比較を示すものである。(c)腫瘍をsectionした後、H&E染色を行った。黒い点線は腫瘍内の壊死した部分を意味する。(d)腫瘍内の壊死程度を比較した。(e、f)腫瘍内部と腫瘍周辺のCD31で染色された血管を比較した。白い点線は腫瘍の境界を意味する。(g、h)腫瘍内の低酸素環境の部分を比較したものである。(i、j)腫瘍中心のKi67で染色された、増殖する細胞を比較したものである。(k、l)腫瘍中心でcaspase3抗体で染色された、細胞死滅の起こる細胞を比較したものである。
【図7】図7は、ヒト癌におけるHIF−1αのメチル化の重要性を示すものである。(a)多様な癌患者と癌細胞株から知られたHIF−1αのmutationを示すものである。(b、c)SET7/9によるHIF−1αのメチル化とそれによる安定性の調節を確認した。(d)HIF−1α WT、K32A、癌患者から知られたHIF−1αの突然変異などでインビトロメチル化実験を行った。(e)Hif1α−/−MEFにHIF−1α WTとその他表示されたmutantを過発現させた後、transwell cell migration実験を行った。(f)一般酸素濃度環境下、細胞質ではヒドロキシル化によってHIF−1αが分解されるが、SET7/9によるHIF−1αのメチル化は核内でヒドロキシル化とは独立して行われることを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願は、HIF−1αが特定残基でSET7/9メチルトランスフェラーゼによってメチル化されないか、リシン−特異的デメチラーゼ(Lysin-specific demethylase)によって脱メチル化されると、HIF−1αの安定化が増加し、このようなHIF−1αの安定化によって血管生成が増加するという発見に基づくものである。
【0018】
具体的には、本願では、特に核内でHIF−1αがSET7/9メチルトランスフェラーゼと相互作用/結合して、SET7/9によって前記HIF−1αの32番目の残基位置にメチル化が行われると、HIF−1αの安定性が減少して分解され、反面、HIF−1αはさらにリシン−特異的デメチラーゼ1と相互作用/結合によって前記位置で脱メチル化されてHIF−1αの安定性が増加し、このような現象は癌の発生につながることを究明した。
【0019】
本願で究明したHIF−1αのメチル化は、細胞質内でHIF−1αの安定化に寄与するプロリン残基におけるヒドロキシル化とは独立したものであり、長期間の低酸素条件で核内に移動して、ここでメチル化によって安定性が調節される(例えば、図7fの図式的に表示された機序参照)。特に、メチル化−欠乏Hif1aKA/KA対立遺伝子を有するノックアウトマウスでは、メチル化によって安定性が増加したHIF−1αによって網膜の血管新生(retinal angiogenesis)と腫瘍血管化(tumourvascularization)が増加したことが分かった。
【0020】
また、ヒトの癌で発生するHIF−1αの32番目の残基(配列番号1の配列を基準とし、残基の位置を明確に表示するためのもので、前記配列に限定されるものではない)におけるメチル化が、28番目の位置と30番目の位置における突然変異(S28Y、R30Q)に関連していることを究明した。具体的には、28、30番目の残基に突然変異が発生した場合、32番目のメチル化に影響を及ぼし、32番目の残基でSET7/9によるメチル化またはLSD1による脱メチル化を抑制する。
【0021】
さらに、本願では、網膜や癌などのような疾患の進行に血管新生が伴う場合、32番目の残基におけるメチル化または脱メチル化の調節によりHIF−1αの分解を促進して、前記のような疾患の血管生成を抑制することができる。したがって、HIF−1αの32番目の残基のメチル化を調節する物質は血管新生を抑制できるため、本願で究明された機序を用いて血管新生抑制剤をスクリーニングすることが可能である。
【0022】
そこで、一様態において、本願は、本願で究明されたメチル化残基を含むHIF−1αタンパク質およびSET7/9メチルトランスフェラーゼ、またはHIF−1αタンパク質およびLSD1デメチラーゼを標的とする血管新生抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
【0023】
一実現例において、前記方法は、HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップで、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定され、前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップ;並びに前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0024】
本願による方法に使用されるHIF−1αタンパク質は、30番目の残基が野生型のアルギニンからグルタミンまたはこれと化学的に同等のアミノ酸、例えば、同じアミド残基を有するアスパラギンに置換されたものが使用され、グルタミンへの置換は特定の癌で発見される。
【0025】
本願では、R30Q突然変異の場合には、SET7/9によって32番目の残基におけるメチル化が阻害されて、メチル化の程度が野生型と比較して低くなることを究明した(図7d参照)。したがって、前記突然変異を利用して当該抑制されたメチル化を再び戻す薬物は、前記突然変異を有する癌患者に有用に使用できる。
【0026】
本願による方法を利用して究明された物質は、32番目の残基のメチル化を増加させ、結局、HIF1−αタンパク質を安定化させて、血管新生抑制剤としての発生および進行がそれに関連づけられている多様な疾患の治療に有用に使用できるであろう。
【0027】
本願ではさらに、リシン−特異的デメチラーゼ1とHIF−1αとの相互作用/結合によって前記位置で脱メチル化されると、HIF−1αの安定性が増加し、濃度が増加して癌が発生することを究明した。
【0028】
したがって、他の様態において、本願は、LSD1(LysinSpecific demehtylase1)タンパク質によってHIF1−αタンパク質の脱メチル化を抑制させる機序に基づく血管新生抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
【0029】
一実現例において、前記方法は、HIF1−αタンパク質およびLSD1(LysinSpecific demehtylase1)タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1を基準として32番目のリシン残基にメチル化されており、前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップで、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定され、前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップ;並びに前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0030】
上述のように、30番目の残基の突然変異は、SET7/9によるメチル化を抑制し、この場合、LSD1もHIF1−αタンパク質に結合するという本願の結果(図2のa、h)に基づいて、脱メチル化も抑制すると判断され、したがって、前記方法において、HIF1−αタンパク質における30番目の残基がグルタミンまたは野生型でない他の残基、特にグルタミンと同等の化学的性質を有するアミノ酸、例えば、アスパラギンに置換されたものが使用できる。
【0031】
LSD1は、メチル化されたHIF1−αタンパク質を脱メチル化させ、結局、前記タンパク質を安定化させて血管新生を促進させて癌の発生を促進するため、本願で究明された残基におけるHIF1−αタンパク質の脱メチル化を抑制する物質は血管新生抑制剤として有用に使用できるであろう。
【0032】
本願において、前記「HIF1−α(hypoxia-induciblefactor-1)」は、低酸素関連の反応を媒介する異種性二重の転写因子で、酸素濃度によって調節されるα小単位(HIF−1αまたはHIF−2α)と、恒常発現するβ小単位(HIF−1β)とから構成されており、HIF−1αは低酸素環境では安定化する。HIF−1αは、内皮細胞のマスター調節因子のVEGFを直接的に調節することにより、病理生理学的に血管を生成させる。
【0033】
HIF−1αの安定性の調節は、低酸素環境に適応するための重要なステップである。正常酸素条件では、HIF−1αは、プロリルヒドロキシラーゼドメイン(prolyl hydroxylase domain;PHD)−含有タンパク質1/2/3によってヒドロキシル化(hydroxylation)され、当該ヒドロキシル化されたHIF−1αをフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau;VHL)腫瘍抑制タンパク質が認知して、カリン2(cullin2)E3リガーゼ複合体によって分解される。反面、低酸素環境では、PHDは補助因子として酸素を使用し、PHDの酵素的活性は減少する。したがって、HIF−1αのヒドロキシル化は減少し、HIF−1αの安定化をもたらす。ヒドロキシル化のほか、SUMO化(SUMOylation)、アセチル化およびリン酸化を含む他の転写後修飾がHIF−1αの機能を調節することが知られた。SENP1がHIF−1αを脱SUMO化(desumoylation)し、HIF−1αとVHLとの間の相互作用を抑制して安定化する。p38によるHIF−1αのリン酸化は、局所貧血でVHLへの結合を抑制して安定化に寄与する。これと対照的に、HIF−1αのアセチル化は、VHL−媒介HIF−1αのユビキチン化を誘導することが分かった。
【0034】
本願のHIF−1αのメチル化は、前記HIF1−αタンパク質調節のためのヒドロキシル化およびVHLへの結合とは独立した新たな調節機序である。本願による新たな機序に基づく薬物の開発は、従来の薬物に反応しない癌や、従来開発された薬物と共にカクテル療法に適用されて、HIF−1αに依存的な多様な癌をより効果的に治療するのに有用に使用されるであろう。
【0035】
本願によるHIF1−αまたはタンパク質の配列は、本願による効果を達成する限り、多様な形態およびそれ由来のものが使用できる。一実現例では、哺乳類、特にヒト来由のHIF1−αまたはこれと機能的に同等の変異体が使用され、そのタンパク質および核酸配列はそれぞれ配列番号1または2で表示されてもよいし、または、それぞれNP_001521.1およびNM_001530.3と公知である。本願による一実現例では、配列番号1のHIF1−αタンパク質の配列が使用される。また、上述のように、本願では、配列番号1の配列を基準として30番目の残基がグルタミンまたは野生型でない他の残基、特にグルタミンと同等の化学的性質を有するアミノ酸、例えば、アスパラギンに置換されたものが使用できる。
【0036】
本願による方法に使用されるSET7/9タンパク質(遺伝子名:SETD7(geneID:80854))は、SETドメイン−含有メチルトランスフェラーゼであって、ヒストンH3K4およびDNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)、E2F1、およびSTAT3を含む非−ヒストンタンパク質に作用する。DNMT1およびE2F1のSET7/9−依存性メチル化は、これらタンパク質の安定性を調節する。SET7/9タンパク質および核酸配列はそれぞれ、NP_085151.1およびNM_030648.3と公知である。
【0037】
本願による方法に使用されるLSD1(Lysin-specificdemethylase1)タンパク質(遺伝子名:KDM1A(geneID:23028))は、KDM1Aともいうフラビン−依存性モノアミンオキシダーゼであって、モノ−およびジ−メチル化されたリシン、特にヒストン3、リシン4および9(H3K4およびH3K9)を脱メチル化させることができる。LSD1は、インビボおよびインビトロでアンドロゲン受容体と相互作用をし、アンドロゲン受容体−依存性転写を促進する(30)。LSD1は、アンドロゲン遺伝子調節の脈絡から、基質をH3K4me1/2からH3K9me1/2に転換させることができると知られている。ヒストンデメチラーゼとしての役割のほか、LSD1は、p53およびDNMT1のような非−ヒストンタンパク質も脱メチル化する。LSD1は、脱メチル化によってp53の腫瘍抑制活性を調節する。LSD1は、Dnmt1の脱メチル化を調節することにより、胚幹細胞におけるグローバルDNAのメチル化において必須の役割を果たす。LSD1タンパク質および核酸配列はそれぞれ、NP_055828.2およびNM_015013.3と公知である。
【0038】
本願による方法に使用されるタンパク質は、当業界における公知の方法、例えば、前記開示された配列を参照して、PCR方法(Saiki et al.,Science,230:1350-1354,1985;Saiki etal.,Science,239:487-491,1988)を利用して製造できる。
【0039】
本願による方法のタンパク質は、本願による効果を達成する限り、全長または切断された形態の断片とも含まれ、特にSET7/9およびLSD1との相互作用に必要な領域およびメチル化残基を含む。
【0040】
本願に含まれるタンパク質は、同一の宿主、例えば、ヒト由来のものでも、特定個人、地域、環境などに応じて配列変異があり得、これはもちろん、一部の配列が変異(欠失、置換、付加)したものの、機能的に同等の変異体がすべて本発明に使用できる。
【0041】
本願による方法のタンパク質またはこれと機能的に同等の変異体を含む場合、例えば、前記ベクターを公知の方法によって細胞培養システムで適切な細胞にトランスフェクションして発現させた後、タンパク質を精製して使用することができる。このような本発明のタンパク質は、例えば、精製されたタンパク質、水溶性タンパク質、または標的細胞への伝達または投与のために担体に結合された形態のタンパク質またはアミノ酸残基と融合された形態のものを含むものである。
【0042】
タンパク質のメチル化有無の分析のための方法は公知のもので、例えば、質量分光分析器(Mass spectrometer)、メチル化された残基を特異的に認識する、抗体のような物質を用いた、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、組織免疫染色、免疫沈降分析法(Immunoprecipitation Assay)、FACS、タンパク質チップ(proteinchip)などが挙げられる。
【0043】
本願によるタンパク質は、これを発現する細胞または動物、特に哺乳動物、特にマウスの形態で提供される。例えば、これに制限するわけではないが、タンパク質の発現のために、遺伝子伝達が容易なHEK−293T(human embryonic kidney cell line)、遺伝子伝達および低酸素露出時に反応性に優れたHeLa(human cervical cancer cell)、乳癌が進む時、HIF−1αが重要な役割を果たすと知られている乳癌細胞株、例えば、MDA−MB231が使用できる。
【0044】
前記方法に使用される検出試薬は公知のものであって、例えば、抗原−抗体反応、前記メチル化または脱メチル化されたタンパク質に特異的に結合する基質、核酸またはペプチドアプタマー、前記メチル化または脱メチル化されたタンパク質と特異的に相互作用する受容体またはリガンドまたは補助因子との反応により検出されるか、または質量分光分析器を用いてもよい。前記本願のメチル化または脱メチル化されたタンパク質と特異的に相互作用または結合する試薬または物質は、チップ方式またはナノ粒子(nanoparticle)と共に使用できる。上述した検出/分析過程による最終的なシグナルの強度を分析して、すなわち、対照群試料のシグナルと対照を行うことにより、タンパク質のメチル化の有無を検出することができる。
【0045】
本願の方法に使用される試験物質は、上述した標的タンパク質のメチル化および/または脱メチル化を調節すると期待される物質で、例えば、薬物のスクリーニングの目的のためには、化合物は低分子量の治療効果を有するものが使用できる。例えば、重量が400Da、600Daまたは800Daといった約1000Da前後の化合物が使用できる。目的に応じて、このような化合物は化合物ライブラリの一部を構成することができ、ライブラリを構成する化合物の数字も数十個から数百万個まで多様である。このような化合物ライブラリは、ペプチド、ペプトイドおよびその他環状または線状のオリゴマー性化合物、および鋳型を基本とする低分子化合物、例えば、ベンゾジアゼピン、ヒダントイン、ビアリール、カルボサイクルおよびポリサイクル化合物(例えば、ナフタレン、フェノチアジン、アクリジン、ステロイドなど)、カルボハイドレートおよびアミノ酸誘導体、ジヒドロピリジン、ベンズヒドリルおよびヘテロサイクル(例えば、トリアジン、インドール、チアゾリジンなど)を含むものであってもよいが、これは単に例示的なもので、これに限定されるものではない。
【0046】
前記試験物質は、生物学的特徴の観点からは、HIF−1αの相互結合を強くできる物質またはSET7/9のメチル化作用に重要なSET領域の活性を増加させる物質、またはSET7/9によるメチル化に重要な役割を果たすメチル供与者のS-adenosylmethionineを基質により高い効率で伝達可能な物質である。同時に、LSD1が使用される場合には、アミンオキシダーゼ系の脱メチル化酵素であるため、アミンオキシダーゼ抑制効果を奏したり、基質との結合を抑制する物質、FAD(flavin adenine dinucleotide)依存的な酵素であるため、FADを抑制する効果を有することができる。
【0047】
候補物質は、前記試験物質で処理された細胞と前記試験物質で処理されていない対照群細胞とで前記HIF−1αのメチル化の有無を比較して、前記試験物質で処理された細胞における前記HIF−1αのメチル化が、前記対照群のHIF−1αのメチル化と比較して増加した場合、これを血管新生抑制剤候補物質として選別することができる。
【0048】
また、候補物質は、LSD1を標的として用いた場合、脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記残基のうち1つ以上の残基の脱メチル化が減少した場合、これを血管新生抑制剤候補物質として選別することができる。
【0049】
本願の方法によって選別された血管新生抑制剤は、HIF−1αをメチル化、またはメチル化を増加させることにより、HIF−1αを分解させて血管が形成されるのを防止する。前記のような血管新生抑制剤は、血管新生が伴う多様な疾患、例えば、固形腫瘍や網膜症、慢性関節リウマチまたは粥状動脈硬化症などのような血管新生病の予防および治療に有効である。具体的には、血管形成(vasculogenesis)および病的な血管新生(angiogenesis)に関連する分子機序の究明によって、疾患は次の2種類、すなわち、血管新生治療によって損傷した組織が治癒可能な疾患(動脈硬化、心筋梗塞、四肢虚血など)と、血管新生治療によって疾患自体が治療されたり疾患の進行が遅延可能な疾患(例えば、網膜症、悪性および陽性血管新生性腫瘍、悪性腫瘍の転移など)(Timar J et al.,Pathol Oncol Res.2001;7(2):85-94)が挙げられる。したがって、本願による血管新生抑制剤は、前記疾患の治療剤として有用に使用できる。
【0050】
本願の前記方法は、試験管で前記タンパク質を混合して複合体を形成して行うか、または前記タンパク質を発現する遺伝子を細胞、特に真核細胞にトランスフェクションして、または前記細胞を哺乳動物に移植して行われる。
【0051】
本方法で使用される細胞の種類および試験物質の量および種類などは、使用する具体的な実験方法および試験物質の種類に応じて異なり、当業者であれば適切な量を選択できるであろう。実験結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質の存在下、前記タンパク質をメチル化させる物質を候補物質として選別する。
【0052】
以下、本発明の理解のために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
<実験方法>
−細胞培養−
【0053】
MEF(Mouse embryonic fibroblast)、HEK293T、HeLa細胞株は、10%ウシ血清とペニシリン、ストレプトマイシン(Streptomycin)が入ったDMEM(Dulbecco’s modifiedEagle’s medium)に培養した。細胞株はすべてマイコプラズマ汚染テストをした。
−抗体−
【0054】
HIF-1α(NB100-132, Novus; 10006421,Cayman; MAB1536, R&D systems); HIF-2α(NB100-122, Novus); Xpress(R910-25,Invitrogen); FLAG(F3165, Sigma); methyl-Lys(ab23366, Abcam); anti-CD31(clone2H8, MAB1398Z, Millipore); anti-HA(MMS-101R,Covance); VEGF(AF493NA, R&Dsystem); EPO(sc-7956), Brn3b(sc-6026)はSanta Cruz社にて作製し、LSD1(#2139)、hydroxyl-HIF-1α(#3434)、Caspase3(#9661)、Ki-67(#9027)、SET7/9抗体(#2813)はCellSignallingにて作製した。HIF-1α K32メチル化抗体はAbfrontier社にて作製した。
−動物−
【0055】
8−10週齢の雄C57BL/6Jマウスを実験に用いた。マウスは表示された時間だけ10%酸素濃度のチャンバで育てた。DMOG処理のために、phosphateバッファー0.1mlにDMOG2mgを溶かした後、腹腔注射をした。すべての実験手順はソウル大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee of Seoul NationalUniversity)から承認された。
【0056】
<Hif1aKA/KA knock−inマウスの作製>
【0057】
HIF−1αの32番目のリシンをアラニンに置換するために、NheIサイトをHIF−1αの2番目のエクソン(exon)にFRTが両方にあるPuro抵抗遺伝子カセットと共に挿入した。リシンをアラニンに変異させながらAfeIサイトが生じるようにした。作られた標的ベクターを電気穿孔(electroporation)方法でマウスのES cellに注入した。Hif−1α遺伝子において相同組換え(homologous recombination)が起こったES cellを選んで、Cre組換え酵素(recombinase)を用いてpuro抵抗遺伝子カセットを無くした。Hif1αKA/+ES細胞クローンをマウスの胚盤胞に注入して突然変異体の染色体を有するキメラ(chimeric)マウスを得た。7世代の間に逆交配を進行させ、尾DNAで対立形質の遺伝子特定プライマーを用いてPCRを行った後、AfeI制限酵素で切断してマウスの遺伝型を確認した。使用したプライマーは次の通りである。
【0058】
Forward:5’−GTAGGTGGGAAGGTATTGATG−3’
Reverse:5’−AGAACTCACCG GCATCCAGAAG−3’
<定量的RT−PCR>
【0059】
mRNAの量を測定するために、ABI Prism 7500systemとYBR Green(Enzynomics)を使用した。プライマーは、増幅された時、90−200bpの特定mRNA片となるように作製し、melting curve分析により適当なプライマーであるかを確認した。PCR条件は、95℃(15分)の後に、95℃(30秒)、60℃(30秒)、および72℃(30秒)の過程を40回繰り返すようにした。mRNAの量はΔΔCt方法で計算し、β−アクチンにより量を補正した。すべての反応は3回繰り返した。使用したプライマーは次の通りである。
【0060】
Vegf−a Forward:5’−TGATGGAAGACTAGACAAAGTTCA−3’
Vegf−a Reverse:5’−TTTTCCACCAGTTCCA ACTTGA−3’
Glut1 Forward:5’−AGAGGTGTCACCTACAGCTC−3’
Glut1 Reverse:5’−AA CAGGATACACTGTAGCAG−3’
Epo Forward:5’−gctggcttagccctctcac−3’
Epo Reverse:5’−ctgtccgctcctagcatgt−3’
Lsd1 Forward:5’−CGGCATCTACAAG AGGATAAAACC−3’
Lsd1 Reverse:5’−CGCCAAGATCAGCTACATAGTTTC−3’
Hif−1α Forward:5’−CAGAGCAGGAAAGAGAGTCATAGAAC−3’
Hif−1α Reverse:5’−TTTCGCTTCCTCTGAGCATTC−3’
<ユビキチン化実験>
【0061】
HeLa細胞にHismax−ユビキチンと共にDNAプラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションして48時間後に、MG132(10mg/ml)を6時間処理した。その後、buffer A(6M guanidium-HCl、0.1M Na2HPO4/NaH2PO4、0.01MTris-HCl[pH8.0]、5mMイミダゾールおよび10mMb-mercaptoethanol)で細胞を壊し、Ni2+−NTAビーズと共に常温で4時間インキュベーションさせた。ビーズを、buffer A、buffer B(8M urea、0.1M Na2PO4/NaH2PO4、0.01MTris-Cl[pH8.0]、10mM β-mercaptoethanol)、buffer C(8M urea、0.1M Na2PO4/NaH2PO4、0.01MTris-Cl[pH6.3]、および10mMβ-mercaptoethanol)の順に洗った後、ビーズに付いているタンパク質を、bufferD(200mM imidazole、0.15M Tris-Cl[pH6.7]、30%glycerol、0.72M 2-mercaptoethanol、および5%SDS)で抽出した。そして、免疫ブロットで分析した。
<ソフト寒天培地コロニー形成分析(Soft agar colonyformation assay)>
【0062】
MEFを3T3方式で死なないようにした。Anchorageに依存せずに育つMEFを分析するために、soft agarでコロニーが生成されることを確認した。10個の細胞を5%COインキュベータで、5週間0.4%noble agar(Sigma、A5431)上でDMEMと10%FBSメディアに育てた。
<OIRマウスモデルの作製>
【0063】
新たに生まれて7日目のマウスを母マウスと一緒に75%酸素濃度のチャンバ(ProOx Model110、BioSpherix、NY)で5日間おいた後、一般酸素濃度に戻して5日間放置した。17日目の日にマウスの網膜を得た。マウスはARVOステートメント(ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and VisionResearch)に従って取り扱った。
<網膜血管生成の組織学的分析>
【0064】
網膜は、イソレクチン(isolectin)B4(L2140、Sigma)と1つ以上の抗体と共に、一晩インキュベーションした。使用した抗体は次の通りである。ハムスターanti−CD31単クローン抗体(monoclonal antibody)、ウサギanti−HIF−1α多クローン抗体(polyclonalantibody)、ヤギanti−VEGF多クローン抗体、またはヤギanti−Brn3b多クローン抗体。数回洗った後、FITCの付いているストレプタビジン(streptavidin、BD Pharmingen社)またはFITCの付いているハムスターIgG(JacksonImmunoResearch社)、Cy3の付いているヤギIgG、Cy3、Cy5の付いているウサギIgGなどと共に、4時間常温でインキュベーションした。対照実験のために、抗体がないかまたは免疫反応が起こる前の血清(serum)を使用した。全体または一部(section)を固定した後、染色した網膜を見るために、ツァイス(Zeiss)LSM510または780共焦点顕微鏡を用いた。網膜の形態測定分析は、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij)とLSM ImageBrowser(Carl Zeiss)を用いて行われた。血管の半径長さは、4つの部分の網膜で視神経の頭部分から周辺の血管前までの最も短い長さを測定した。全体網膜の血管密度は、全体網膜の面積においてCD31+によって染色された血管密度で割ったものをパーセンテージで表現した。OIR実験でNVTと血管が生成されない部分は、アドビフォトショップ(登録商標)ソフトウェアのラッソツール(Lasso tool of Adobe Photoshop software)を用いて測定した。血管が生成されない部分のHIF−1αの染色程度は、Image J softwareを用いて測定した。
<腫瘍モデルおよび組織学的分析>
【0065】
マウスLLC細胞株はATCC(American TypeCulture Collection)から購入した。腫瘍を生成するために、LLC cellに溶けている溶液をマウスの背の両側に注入した。腫瘍の体積は2日ごとにキャリパを用いて測定した。腫瘍の体積は0.5×A×B公式(A:腫瘍の最も長い半径、B:腫瘍の垂直高さ)を用いた。腫瘍を移植して18日後にマウスを麻酔下で腫瘍を摘出した。そして、切断して組織分析を行った。50mmに凍結切断した腫瘍組織をハムスターanti−CD31、anti−Ki67、またはanti−カスパーゼ(caspase)3抗体と共に、一晩インキュベーションさせた。数回洗う過程を経た後、Cy3またはFITCの付いている抗−ハムスターIgGやCy3の付いている抗−ウサギIgGと共に、2時間インキュベーションさせた。その後、サンプルを固定させ、LSM510共焦点顕微鏡(Carl Zeiss社)を用いて顕微鏡写真を得た。血管の密度、低酸素部分、apoptosis部分、壊死部分はImage-J softwareを用いて測定した。Ki67+細胞は直接数えて平均を計算した。腫瘍の低酸素部分を分析するために、ハイポキシプローブ(Hypoxyprobe)-1(60mg/kg、NaturalPharma International)を血管注射により注入した後、1時間経過後に固定させた。その後、腫瘍を得てFITCの付いている抗−ハイポキシプローブ抗体で染色して分析した。
<異種移植分析(Xenograft assay)>
【0066】
shHIF−1αが持続的に発現する細胞に、shRNAに抵抗するHIF−1α WTとHIF−1α K32Aを再び入れた。腫瘍が形成されるために、マトリゲル(matrigel、BD Biosciences社)を細胞の体積と同量を混合した後、5週齢の免疫反応が抑制された雌マウスの左皮下にはHIF−1α WTが発現する細胞株を、右皮下にはHIF−1α K32Aが発現する細胞株を注入した。腫瘍の大きさは週ごとに測定した。腫瘍を注入してから4週後に実験を終えて、腫瘍を摘出して重量を測定した。腫瘍の体積は1/2×長さ×幅で計算した。
<インビトロメチル化および脱メチル化分析>
【0067】
インビトロメチル化実験は、GST−HIF−1αとGST−SET7/9タンパク質をバッファー(50mM Tris-HCl[pH8.5]、20mM KCl、10mM MgCl2、10mMb-mercaptoethanol、and 250mM sucrose)と1μCi of H−SAMを混合して30℃で一晩反応させて行われた。In vitro脱メチル化実験のために、GST−HIF−1αのメチル化実験を行った。以後、メチル化が起こったHIF−1αの付いているビーズをバッファー(50mM NaH2PO4[pH8.0]、10mMTris-HCl[pH8.0]、500mM NaCl、and0.5%TritonX-100)で洗って、ビーズに付いているSET7/9を除去した。以後、His−LSD1と共に、バッファー(50mM Tris-HCl[pH8.5]、50mM KCl、5mM MgCl2、5%glycerol、and 0.5mM PMSF)に入れて反応させた。37℃で一晩反応させた後に反応バッファーを除去し、2Xサンプリングバッファーを入れた。以後、10分間沸かしてからSDS−PAGEを付着させてautoradiographyで確認した。
<免疫沈降分析法>
【0068】
インビボ免疫沈降のために、HeLa細胞を定められた時間の間低酸素チャンバに入れて、6時間5μM MG132を処理した後に取った。細胞は1mLのEBC200バッファー(50mM Tris-HCl pH8、200mM NaCl0.5%NP-40)で壊した後、15分間13000rpmでダウンさせて、計900mlの細胞溶解物(lysate)を得た。前記溶解物を定められた抗体と共に、4℃で一晩インキュベーションをした後、タンパク質G、タンパク質AのセファロースビーズとIP150(25mM TrisHCl pH7.8、1mM EDTA、10%glycerol、150mM NaCl and 0.1%NP-40)を50%ずつ混合して、2時間インキュベーションした。その後、IP150で5回洗った後、SDS−PAGEと免疫ブロットで確認した。免疫ブロットに使用した抗体は、PBS−T溶液に3%BSAが溶けているバッファーに溶かして使用した。
<HIF−1α結合タンパク質の精製>
【0069】
Flag−HIF−1αを発現するHEK293T細胞の抽出物からHIF−1α結合タンパク質を精製した。対照群として空ベクターを発現するHEK293T細胞株のlysateを使用した。HIF−1α結合タンパク質をFlag−M2 agaroseビーズを用いて沈殿させた。Lysateとビーズを4℃で一晩インキュベーションした後、BC150バッファー(20mM Tris-HCl[pH7.9]、15%Glycerol、1mM EDTA、1mM DTT、0.2mMPMSF、0.05%Nonidet P40、and 150mMKCl)で3回、BC300バッファー(20mM Tris-HCl[pH7.9]、15%Glycerol、1mM EDTA、1mM DTT、0.2mM PMSF、0.05%NonidetP40、and 300mM KCl)で2回、IP150バッファーで2回、TBSバッファー(50mM Tris-HCl[pH7.4]、and 150mM NaCl)で3回ビーズを洗った。その後、Flagペプチド(0.1mg/ml)でHIF−1α結合タンパク質を抽出した。SDS−PAGEをした後、LC−MS/MSで分析した。
<免疫蛍光分析法>
【0070】
HeLa細胞株をポリDリシン(poly D lysine)でコーティングされたカバースリップで育てた。免疫蛍光実験のために、細胞をPBSで2回洗い、2%ホルムアルデヒドで30分間固定させた。その後、細胞を0.1%triton−X100が溶けているPBSで2回洗った。抗体の侵入のために、細胞を0.5%triton−X100が溶けているPBSで5分間インキュベーションさせた後、ブロッキング溶液(5%BSA in 0.1%PBS-T)でブロッキングさせた。その後、一次(primary)抗体をブロッキング溶液に入れて細胞とインキュベーションさせた。以後、0.1%PBS−T溶液で4回洗った後、二次(secondary)抗体と共にインキュベーションさせた。以後、再び0.1%PBS−T溶液で洗った後、ベクタシールド(vectashield)(H−1000)で固定し、顕微鏡で写真を得た。
<統計分析>
【0071】
GraphPad Prism softwareを用いて、グループの差を見るためにStudent t-testを、条件の差とグループの差をそれぞれ見るためにone-wayANOVAを、そしてグループの差と条件の差を一緒に見るためにtwo-way ANOVAを行って、データを分析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
(実施例1.核内で現れるSET7/9メチル化酵素によって起こるHIF−1αのメチル化)
【0072】
HIF−1αのユビキチン化、SUMO化、アセチル化、ヒドロキシル化などがHIF−1αの機能を調節するのに重要な役割を果たすことが究明されたにもかかわらず、HIF−1αのメチル化はまだ明らかにされていない。タンパク質のメチル化はメチル化酵素によって起こるため、HIF−1αが特定メチル化酵素によってメチル化可能と知られたアミノ酸配列を有しているかを確認した。32番目のリシン残基付近で、SET7/9メチル化酵素がメチル化させることが可能な特定配列の「[K/R]−[S/T/A]−K(メチル化の起こるリシン)」があることを発見した(図1a)。液体クロマトグラフィーマス分析(LC-MS/MS analysis)によりHIF−1αが32番目のリシンでメチル化が起こることを確認した(図1b)。26Sプロテアソーム抑制剤のMG132がある状況とない状況とでいずれもHIF−1αとSET7/9とが細胞内で相互作用をすることを確認した(図1c)。一般的な酸素濃度で細胞内のHIF−1αはMG132を処理した時にのみ発見できるため、MG132を処理した状況でHIF−1αとSET7/9との相互作用を確認した。
【0073】
本発明者は、細胞外で精製されたGST−SET7/9を酵素とし、GST−HIF−1αを基質としてメチル化実験を行った。実験結果、HIF−1α WTは正常にメチル化が起こることを見ることができるが、メチル化が起こると予想される32番目のリシンをアラニンに変えたHIF−1αはメチル化が起こらないことを確認した(図1d)。SET7/9がHIF−1αをメチル化させる時、SET7/9の酵素活性が重要であるかを確認するために、酵素活性のあるSET7/9WTと酵素活性のないSET7/9H297Aとをもって実験した結果、SET7/9WTが入った時にのみHIF−1αのメチル化が現れることを確認した(図1e)。これにより、HIF−1αのメチル化が起こる時、SET7/9のメチル化酵素活性が必要であることが分かった。HIF−1α K32のメチル化を認知する抗体を作製し、ドットブロット(dot blot)分析によりこの抗体がメチル化されているHIF−1αペプチドを特定的に認識することを確認した。マウス胚線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast、MEF)からHIF−1αのメチル化を確認した時、MG132を処理した状況で、SET7/9のないMEFではHIF−1αのメチル化が現れておらず、WT MEFでのみHIF−1αのメチル化を観察することができた。
【0074】
次に、HIF−1αのメチル化がいつどこで起こるかを確認した。HIF−1αのメチル化は、MG132を処理して26Sプロテアソームを抑制した時、一般酸素濃度で観察され、低酸素環境が持続するほどHIF−1αのメチル化が減少することを観察した(図1g)。ところが、低酸素環境が持続すると、HIF−1αのメチル化が回復することを観察することができた。本発明者は、HIF−1αのメチル化がどこで起こるかを知るべく、核と細胞質とに分けてHIF−1αのメチル化を確認した結果、核でのみHIF−1αのメチル化が現れることを確認した(図1h)。我々は、HIF−1αのメチル化がHIF−1αの位置に影響を与えるかを確認した結果、メチル化が起こるHIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32Aがいずれも核内でのみ発見されることを確認した。この実験結果により、SET7/9によって起こるHIF−1αのメチル化は、細胞質でない核内でのみ起こることが分かった。
(実施例2.LSD1によるHIF−1αの脱メチル化によるHIF−1αタンパク質の安定性増加の確認)
【0075】
HIF−1αのメチル化の機能を知るために、HIF−1αと相互作用するタンパク質のうち、メチル化や脱メチル化に関連するタンパク質があるかを複合体の精製により調べた。LC−MS/MS分析結果、LSD1の脱メチル化酵素がHIF−1αと相互作用することを明らかにした(図2a)。共同−免疫沈降実験により細胞内でMG132を処理した時、低酸素状況で実際に相互作用することを確認した(図2b)。また、LSD1のタンパク質の発現が低酸素環境で増加することを確認した。LSD1 mRNAも確認した結果、低酸素環境でわずかに増加することを確認した(図2d)。
【0076】
LSD1が欠損しているMEFでHIF−1αのタンパク質の発現が著しく減少していることを確認した(図2e)。本発明者は、前記現象がLSD1の脱メチル化酵素活性と関連があるかを調べるために、LSD1欠損しているLsd1−/−MEFにLSD1 WTとLSD1の酵素活性がないLSD1 K661Aを入れて、HIF−1αタンパク質の発現量を確認した。確認した結果、LSD1 WTを入れた時は低酸素環境でHIF−1αの発現がよく増加したが、LSD1 K661Aを入れた時はHIF−1αの発現の増加がよく現れなかった(図2f)。また、LSD1の酵素活性抑制剤のパルギリン(pargyline)を処理した時もHIF−1αの不安定化が起こることを確認した(図2g)。HIF−1αがSET7/9によってメチル化が起こるため、本発明者は、HIF−1αのメチル化がLSD1によって脱メチル化されるかを確認した。実際に、LSD1によってHIF−1αの脱メチル化が起こることをインビボとインビトロで確認した(図2h)。ところが、LSD1の酵素活性は、HIF−1αとLSD1との相互作用に影響を与えなかった。そして、HIF−1αとLSD1は、LSD1のN末端で直接的に結合することを確認した。また、SET7/9メチル化酵素を過発現させた時とさせなかった時とにおけるLSD1とHIF−1αとの相互作用を確認した結果、差がないことを確認した。これにより、HIF−1αのメチル化状態がLSD1とHIF−1αとの相互作用に影響を及ぼさないことを確認した。予想した通り、LSD1が欠損しているMEFでは、HIF−1α標的遺伝子の転写が減少しており、SET7/9が欠損しているMEFでは、HIF−1α標的遺伝子の転写が増加していることを確認した。
【0077】
メチル化によるHIF−1αの安定化をさらに確認するために、MG132がない状況と処理した状況とで免疫蛍光実験を行った。SET7/9が一緒に入った時、低酸素環境でHIF−1αの発現が減少していることを確認した。しかし、酵素活性のないSET7/9を入れた時は、HIF−1αの発現が減少しなかった(図2i)。また、MG132を処理した状況では、SET7/9が一緒に発現してもHIF−1αの発現が減少しなかった。免疫ブロットにより確認した時も、SET7/9が過発現する時はHIF−1αの発現が減少し、LSD1が一緒に過発現する時はHIF−1αの発現が減少する効果が無くなることを見ることができた。しかし、酵素活性のないLSD1が一緒に発現する時は、依然としてSET7/9によるHIF−1αの発現の減少が現れた(図2j)。タンパク質合成抑制剤のシクロヘキサミド(CHX)を処理し、HIF−1αタンパク質の半減期を調べた結果、SET7/9を過発現した時はHIF−1αの半減期が減少したのに対し、LSD1を過発現した時はHIF−1αの半減期が増加したことを見ることができた(図2k)。26SプロテアソームによるHIF−1αタンパク質の分解について調べるために、MG132を処理したまま、SET7/9とLSD1によるHIF−1αのユビキチン化の変化を調べた。実際に、SET7/9はHIF−1αのユビキチン化を増加させ、LSD1は減少させた。
【0078】
HIF−1αは、一般酸素濃度の時、細胞質でPHD1/2/3酵素によってヒドロキシル化が起こり、これにより、CUL2 E3 ligase複合体によって分解される。低酸素環境でPHDの活性が減少し、HIF−1αのヒドロキシル化の減少は、結局、HIF−1αの安定化をもたらす。したがって、本発明者は、HIF−1αのメチル化がヒドロキシル化に影響を及ぼすかを確認した。メチル化が起こらないHIF−1α K32AがWTのようにヒドロキシル化が起こり、PHD抑制剤のDMOGによってヒドロキシル化が減少することを確認した(図2m)。これは、HIF−1αのメチル化がヒドロキシル化と独立した作用であることをいう。これと平行に、HIF−1αのヒドロキシル化が起こらないP2A(P402A/P564A)の場合、HIF−1α WTのように正常にメチル化が起こることを確認した(図2n)。これは、HIF−1αのヒドロキシル化がメチル化に影響を与えないことを意味する。我々は、HIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32A、ヒドロキシル化が起こらないHIF−1α P2Aにおけるユビキチン化を比較した。MG132を処理し、SET7/9を過発現させた時、HIF−1α WTとHIF−1α P2Aはユビキチン化が増加するのに対し、メチル化が起こらないHIF−1α K32Aはユビキチン化の増加が現れなかった(図2o)。また、メチル化が起こったHIF−1αが同時にヒドロキシル化が起こり得ることも確認した。まとめてみれば、これらの結果は、低酸素環境でHIF−1αによって起こったメチル化がLSD1によって脱メチル化され、これにより、HIF−1αが26Sプロテアソームによって分解されることが防止されることを示す。そして、このような機序がHIF−1αのヒドロキシル化とは独立していることを示す。
(実施例3.Hif1aKA/KA knock−in miceが血液学的に異常な表現型を呈する)
【0079】
生体内でHIF−1αのメチル化が有する機能を調べるために、メチル化が起こらないHIF−1αが発現するHif1aKA/KA knock−in miceを作製した。マウス遺伝体においてHIF−1αの32番目のリシン残基をアラニンに変えるために、FRTの側にピューロマイシン(puromycin)抵抗遺伝子とHIF−1αの2番目のエクソンを含む標的ベクターを作った。このベクターでリシンをアラニンに置換できるようにDNA配列を変えた。この時、AfeI制限酵素によって切断可能な配列を有するように作製した(図3a)。AfeI制限酵素で切断することとPCRにより、Hif1aKA/KA knock−in miceがよく作製されたことを確認した(図3b)。作られたHif1aKA/KA knock−in miceは少なくともC57BL/6背景のマウスで7世代の逆交配を進行させた。Hif1aKA/KA knock−in miceは、生まれる時から成体に育つまで特異な表現型が現れなかった。また、受精にも問題がなかったし、メンデルの遺伝の法則通りに子の遺伝型が現れた。まず、作られたWT、Hif1aKA/KA knock−in heteroマウスとHif1aKA/KA knock−in homoマウスからMEFを取り出してHIF−1αのメチル化状態を確認した。免疫沈降実験により確認した結果、Hif1aKA/KA knock−in homoから取り出したMEFでHIF−1αのメチル化が発見されなかった(図3c)。HIF−1αとHIF−2αのタンパク質の発現量を比較した結果、HIF−2αは、WTやHif1a+/KA、Hif1aKA/KAとも大差がなかった。
【0080】
HIF−1αタンパク質の発現量の増加は、エリスロポエチン(EPO)タンパク質の増加に関連し、これは結局、赤血球増加症(erythrocytosis)につながる。Hif1aKA/KA knock−inマウスでHIF−1αのメチル化の欠損がHIF−1αタンパク質の発現の増加を誘発して赤血球増加症が現れるかを調べるために、WTとHif1aKA/KA knock−inマウスでDMOG(HIF−1αのhydroxylationを抑制)を処理し、血液に関連する表現型を検査した。外的な表現型を調べた結果、Hif1aKA/KA knock−inマウスの鼻部分と足裏、腹腔が赤くなっていることを見ることができ、脾臓が大きくなっていることを確認した(図3d)。そして、HIF−1αタンパク質の量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺と脾臓でWTマウスより増加していることを確認した(図3e)。また、血液学的指標を比較した。Hif1aKA/KA knock−inマウスで赤血球が確実に増加しており、ヘモグロビンの比率も増加していることを確認した。ヘマトクリット比率も、Hif1aKA/KA knock−inで増加していることを確認した(図3f)。しかも、Vegf−a、glut−1、そしてEpoのmRNAがHif1aKA/KA MEFで低酸素環境の時とDMOGを処理した時に増加していることを確認した(図3g)。Vegf−a、Glut−1、そしてEpo mRNAの量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺でも、低酸素環境で14日間あったりDMOGを7日間処理した時に増加していることを確認した(図3h)。免疫ブロット分析により、Epoタンパク質の量も、Hif1aKA/KA knock−inマウスの肺で増加していることを確認した。これをまとめてみれば、Hif1aKA/KA knock−inマウスは、血液学的な異常表現型を呈し、HIF−1αのタンパク質の発現が増加していることが分かる。
(実施例4.Hif1aKA/KA knock−inマウスで細胞移動と腫瘍の成長が増加している)
【0081】
低酸素環境で時間帯別にHIF−1αタンパク質の量を比較した時、Hif1aKA/KA MEFでHIF−1αタンパク質の量が増加していることを確認した(図4a)。シクロヘキサミド(CHX)を処理してタンパク質の合成を抑制した後、HIF−1αタンパク質の半減期を測定した時、Hif1aKA/KA MEFのHIF−1αは半減期が増加していることを確認した(図4b)。我々はまた、マウスの肺でHIF−1αタンパク質の量とメチル化を比較した。マウスを10%酸素濃度の低酸素環境で14日間育てた後に分析した時、HIF−1αタンパク質の量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺で増加していることを確認し、HIF−1αのメチル化が低酸素環境に露出した時、WTマウスで減少することを確認した(図4c)。
【0082】
SET7/9とLSD1が細胞の移動を調節するかを調べるために、SET7/9とLSD1を過発現させ、通常の環境と低酸素環境とで細胞の移動を分析した。低酸素環境でSET7/9を過発現させた時は細胞移動が減少し、LSD1が過発現した時は細胞移動が増加することを確認した(図4d)。HIF−1αの発現の増加は癌の発達に関係があるため、Hif1aKA/KA knock−in MEFで細胞移動とコロニー形成が増加しているかを確認した。WT MEFと比較した時、Hif1aKA/KA knock−in MEFで細胞移動が増加していることを確認した(図4e)。しかも、細胞コロニー形成分析においても、Hif1aKA/KA knock−in MEFがより良く形成することを確認した(図4f)。HIF−1αのメチル化が腫瘍形成を抑制することをインビボで証明するために、HIF−1αをノックダウン(knockdown)した後、HIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32Aを発現させたMDA−MB231乳癌細胞株を、免疫抑制されたマウスの皮下に注入した。以後、腫瘍形成程度を測定した結果、HIF−1α K32Aを発現する細胞株を注入した時、腫瘍形成と腫瘍の体積、腫瘍の重量が増加していることを確認した(図4g)。したがって、メチル化が起こらないHIF−1αを発現させた時、腫瘍成長を誘導することが分かる。
(実施例5.Hif1aKA/KA knock−inマウスで網膜血管生成が増加する)
【0083】
低酸素環境によるHIF−1αの安定は、血管生成を増加させる因子をコーディングするいくつかの標的遺伝子の転写が活性化され、生理学的病理学的に血管生成が増大する。生理学的にHIF−1αのメチル化の役割を調べるために、生後5日後に、WT、Hif1a+/KA、Hif1aKA/KAマウスの網膜血管の発達状態を調べた。WTマウスとHif1a+/KAマウスの網膜の血管発達半径と血管発達密度が大差はなかった。しかし、Hif1aKA/KAマウスでは、血管発達半径および密度がいずれも増加していることを確認した(図5a−c)。WTマウスに比べて、Hif1aKA/KAマウスでHIF−1αタンパク質の量も網膜の血管のない部分で増加していることを確認した(図5a、d)。HIF−1αのメチル化が疾病学的にどのような機能をするかを調べるために、虚血性網膜病症と類似の酸素濃度による網膜病症のマウスモデルを作った。このマウスで血管のない部分と新たな血管生成面積とを比較した結果、WTマウスよりHif1aKA/KAマウスが血管のない部分は76%減少したが、新たに血管が生成された部分は43%増加したことを確認した(図5e−g)。反面、Hif1a+/KAマウスは、WTと大差がないことを確認した。Hif1aKA/KAマウスの網膜では、HIF−1αとVEGFの発現がWTより増加していることを確認した(図5h−j)。この結果は、Hif1aKA/KAマウスでHIF−1αが安定化しており、これにより、血管のない領域で血管生成が活発に行われ、虚血の状況で異常な血管生成が行われることを意味する。
(実施例6.Hif1aKA/KAマウスで腫瘍の成長と血管生成が増加する)
【0084】
HIF−1αのメチル化が腫瘍の成長と腫瘍の血管生成にどのような影響を及ぼすかを確認するために、ルイス肺癌(Lewis Lung Carcinoma、LLC)細胞株をWTマウスとHif1aKA/KAマウスの皮下に移植した。腫瘍細胞を移植し、18日後に腫瘍の体積と重量を比較した時、WTよりHif1aKA/KAマウスに移植した腫瘍が、体積は24%、重量は26.1%増加したことを確認した(図6a、b)。併せて、腫瘍内の細胞死滅も、WTマウスに比べて、Hif1aKA/KAマウスで31.7%減少していることを確認した(図6c、d)。また、WTマウスよりHif1aKA/KAマウスで腫瘍周辺の血管と腫瘍内の血管がそれぞれ47.2%、44.1%増加していることを確認した(図6e、f)。これは、Hif1aKA/KAマウスで腫瘍血管生成が促進されていることをいう。このような腫瘍血管生成によって、Hif1aKA/KAマウスがWTより腫瘍内の低酸素状態が減少していることを観察することができた(図6g、h)。腫瘍に関連してより詳細に調べた結果、細胞死滅はWTマウスとHif1aKA/KAマウスとで大差がないのに対し、腫瘍細胞増殖はHif1aKA/KAマウスでより活発に起こることが分かった(図6i、j)。このような結果をまとめてみれば、HIF−1αのメチル化の欠損は腫瘍血管生成を促進させ、結局、腫瘍成長を誘導する。
(実施例7.ヒト癌におけるHIF−1αのメチル化の生物学的意味性)
【0085】
本発明者は、HIF−1αのメチル化と癌の進行の関係を明らかにするために、ヒト癌で現れるHIF−1αの突然変異を探した。本発明者は、癌で現れる体細胞の突然変異に関連するデータベースのCOSMICと、癌細胞株で現れる突然変異関連データベースのCCLEとを用いて、HIF−1αの突然変異を探した。データベースでSET7/9によってメチル化が起こるHIF−1α K32の突然変異は探せなかったものの、ヒトの癌の時、K32付近のS28とR30で突然変異がよく現れることを確認した(図7a)。例えば、食道癌、血液癌、リンパ癌などでHIF−1α S28Y突然変異が報告され、皮膚癌でR30Q突然変異が報告された。
【0086】
癌で現れる突然変異がHIF−1αのメチル化に影響を与え、それによってHIF−1αの安定性を調節するかを調べるために、癌で現れる多様な突然変異をもってHIF−1αのメチル化を確認した。S14R、R17G、R18Q、R19QではHIF−1αのメチル化が正常に起こったが、S28Y、R30QではK32Aのようにメチル化が現れなかった(図7b)。与えられたS28とR30は、螺旋−環−螺旋構造(helix-loop-helix)のドメインにあるSET7/9標的配列であって、本発明者は、前記S28YとR30Q突然変異がこのSET7/9によるメチル化が起こらないことで、結局、HIF−1αの安定化が誘導されるとの仮説を立てた。前記仮説が正しいかを確認するために、SET7/9によって突然変異体の安定性が変わるかを確認してみた。実際に、R17G、R18Q、R19QはSET7/9によって安定性が減少したが、S28YとR30QはSET7/9によるタンパク質の分解が現れなかった(図7c)。これと共に、インビトロメチル化実験でも、R17Gはメチル化が起こるが、R30QとK32Aはメチル化が起こらないことを確認した(図7d)。
【0087】
また、本発明者は、トランスウェル細胞移動(Transwellcell migration)実験を行った。HIF−1αがないMEFにそれぞれHIF−1α WT、K32A、R17G、R30Qを再び入れた後、SET7/9またはLSD1によって細胞移動がどのように変わるかを確認した結果、WTとR17Gは、SET7/9によって細胞移動が減少し、LSD1によって増加することを観察した。しかし、K32AとR30Qは、SET7/9やLSD1に影響されないことを観察することができた(図7e)。この結果は結局、ヒト癌でSET7/9によって起こるHIF−1αのメチル化は重要性を有していることを意味する。
【0088】
いくつかの論文によれば、癌でSET7/9が強力な役割を果たすという。p53のSET7/9−媒介メチル化は、アセチル化を促進させて、p53タンパク質の安定性を増加させる。LSD1は多くの癌で過発現しており、アミンオキシダーゼ阻害剤でLSD1を阻害すると癌増殖が抑制される(Kashyap,V.et al.The lysine specificdemethylase-1(LSD1/KDM1A)regulates VEGF-A expression in prostatecancer.Mol.Oncol.7,555566(2013);Lim,S.et al.Lysine-specific demethylase1(LSD1)ishighly expressed in ER-negative breast cancers and a biomarker predictingaggressive biology.Carcinogenesis31,512520(2010);Schulte,J.H.etal.Lysine-specific demethylase1 is strongly expressed in poorly differentiatedneuroblastoma:implications for therapy.Cancer Res.69,20652071(2009).)。さらに、LSD1は、前立腺および乳癌細胞でそれぞれアンドロゲン受容体−およびエストロゲン受容体依存性転写を促進させる。癌でLSD1の過発現がHIF−1αを安定化させ、腫瘍血管生成を促進する本願のデータにより、LSD1がホルモン依存性癌だけでなく、他のタイプの癌もどのように促進させるかが分かる。
【0089】
多様なヒト癌で遺伝的変化によって引き起こされたHIF−1αが過発現すると報告されている。HIF−1αの過発現に関連づけられた通常の遺伝的変化も多くの頻度で癌患者に起こる。例えば、遺伝的変化によるVHL(Von Hippel-Lindau)の機能喪失によってHIF−1αが構成的に発現し、また、網膜およびCNS血管芽細胞腫(haemangioblastomas)、透明細胞腎細胞癌、褐色細胞腫(pheochromocytoma)、膵島細胞腫(pancreatic islet cell tumour)および網膜、膵膓および精巣上体嚢腺腫(epididymal cysts)に脆弱な特徴がある遺伝性家族力癌症候群のVHL疾病が始まる。p53が機能を喪失すると、癌でHIF−1αタンパク質のレベルおよびHIF−1α転写活性が増加することが知られている。
【0090】
以上、本願の例示的な実施例について詳細に説明したが、本願の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本願の権利範囲に属する。
【0091】
本発明で使われるすべての技術用語は、別途に定義されない以上、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するのと同じ意味で使われる。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は本発明に導入される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【手続補正書】
【提出日】20171208
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIF−1αのメチル化を標的とする血管新生抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素−誘導因子−1(hypoxia-induciblefactor-1;HIF−1)は、低酸素関連の反応を媒介し、血管新生性、侵入および代謝に関連する遺伝子の発現を調節する。HIF−1は、異種性二重の転写因子で酸素調節されるα小単位(HIF−1αまたはHIF−2α)と、コンスティテューティブに発現するβ小単位(HIF−1β)とから構成されている。HIF−1α/βヘテロダイマーは正常酸素条件では不安定であり、HIF−1αは低酸素環境では安定化する。
【0003】
HIF−1αは、内皮細胞のマスター調節因子であるVEGFを直接的に調節することにより、病理生理学的な血管生成において重要な役割を果たす。マウスでHIF−1αの機能が獲得されると、VEGF、微細血管の密度、肉腫成長および血管形成の発現を増加させ、マウスでHIF−1αの機能が損失すると、肉腫成長および血管形成を抑制する(Ravi,R.et al.Regulation of tumor angiogenesis by p53-induceddegradation of hypoxia-inducible factor1alpha.Gene.Dev.14,34-44(2000);Stoeltzing,O.et al.Role of hypoxia-induciblefactor 1alpha in gastric cancer cell growth,angiogenesis、およびvessel maturation.J.Natl.Cancer Inst.96,946-956(2004))。
【0004】
韓国公開特許番号第10−2015−0018457号は、「プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤またはヒストン脱アセチラーゼ阻害剤、および抗生剤を含む骨疾患の予防または治療用薬学的組成物」に関するもので、プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤を用いてHIF−1αを安定化させて癌治療をする方法が公開されている。
【0005】
韓国公開特許番号第1492435号は、「HIF−1α siRNAを有効成分として含有するTSLPによって媒介される疾患の予防または治療用薬剤学的組成物」に関するもので、siRNAを用いてHIF−1αの活性を抑制することで、HIF−1α関連疾患の治療を目的としている。
【0006】
しかし、HIF−1αの様々な転写後修飾のうち、HIF−1αのメチル化の機序および生理的な役割はよく明らかにされておらず、前記機序の究明およびそれに基づく血管新生抑制剤の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なHIF−1αのメチル化の機序を標的とする血管新生抑制剤をスクリーニングする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一様態において、本願は、HIF1−αタンパク質のメチル化の調節による血管新生抑制剤のスクリーニング方法を提供する。
【0009】
一実現例において、本願による方法は、HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップ;前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップで、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定され;前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップ;並びに前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0010】
他の実現例において、本願による方法に使用されるHIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として30番目の残基がアルギニンからグルタミンまたはこれと化学的に同等の残基、例えば、側鎖にアミド基を有するアスパラギンに置換されたものが使用できる。特定の癌において前記30番目の残基で突然変異が発生し、本願では、この場合、32番目の残基におけるメチル化が減少することを究明した。
【0011】
さらに他の実現例において、HIF1−αタンパク質およびLSD1(LysinSpecific demehtylase)タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1を基準として32番目のリシン残基にメチル化されており、前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップで、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定され、前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップ;並びに前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0012】
本願による方法に使用されるタンパク質は、これを発現する細胞または動物の形態で発現でき、タンパク質の発現のためにこれをコーディングする遺伝子を細胞または動物に伝達することを含む。
【0013】
本願によるスクリーニング方法で選別された物質は、血管新生に関連する多様な疾患、例えば、網膜症、癌、特に癌の転移を抑制、治療に有用に使用できる。
【0014】
本願によるスクリーニング方法は、従来知られたHIF1−αタンパク質のヒドロキシル化およびHIF1−αタンパク質のVHLへの結合とは独立した、すなわち非依存的な方法である。従来、HIF−1aの調節機序としてヒドロキシル化を用いた薬物の開発は進んだものの、本願による新たな機序に基づく薬物の開発は、従来の薬物に反応しない癌や、従来開発された薬物と共にカクテル療法に適用されて、HIF−1aに依存的な多様な癌をより効果的に治療するのに有用に使用されるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本願で究明されたHIF−1αの特定残基におけるメチル化および脱メチル化に関与するタンパク質および機序を用いた血管新生抑制剤のスクリーニング方法は、癌の成長と転移を防止可能な物質の開発に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、SET7/9によってHIF−1αのK32にメチル化が起こることを示すものである。(a)HIF−1αの潜在的SET7/9標的サイトがあることを明らかにした。(b)Mass分析によりHIF−1α K32サイトでメチル化が起こることを確認した。(c)co−IPによりHIF−1αとSET7/9とが相互作用することを確認した。MG132を処理した状況と処理していない状況とで比較した。(d)HIF−1α WTとK32A、SET7/9WTとSET7/9酵素活性のないH297Aをもってインビトロメチル化実験を行った。(e)HeLa細胞でメチル化されたリシンを認知する抗体を用いてHIF−1αのメチル化を確認した。SET7/9WTとH297Aが発現する状況で確認した。(f)WT MEFとSet7/9−/−MEFでMG132を処理した状況と処理していない状況とでHIF−1αのメチル化を確認した。(g)HIF−1α抗体で免疫沈降を行った後、HIF−1α−me抗体で免疫ブロットをした。(h)HeLa細胞株から核と細胞質とを分離した。そして、HIF−1α−me抗体でHIF−1αのメチル化を確認した。低酸素環境に定められた時間だけインキュベーションし、MG132を処理した状況と処理していない状況とで比較した。ラミン(Lamin)A/Cを核マーカーとして、チューブリン(tubulin)を細胞質マーカーとして使用した。(i)HeLa細胞株にHIF−1α WTとK32Aを過発現させた。MG132を処理した状況と処理していない状況とで低酸素環境に定められた時間だけインキュベーションした後、Flag抗体(赤)で染色した。核はDAPI(青)で染色した。
【図2】図2は、LSD1によるHIF−1αの脱メチル化がHIF−1αの安定性を増加させることを示すものである。(a)低酸素環境でFlag M2アガロースビーズを用いてHEK293T細胞からHIF−1αと相互作用するタンパク質を精製した。相互作用するタンパク質をSDS−PAGEした後、LC−MS/MSで分析した。(b)MG132を処理した状況と処理していない状況とでHIF−1αとLSD1を共同−免疫沈降させた。(c、d)定められた時間だけ低酸素環境を処理した後、WT MEFから得た核溶解物(lysate)でLSD1とHIF−1αのタンパク質の発現量を確認し(c)、また、LSD1 mRNAを確認(d)した。(e)Lsd1+/−MEFとLsd1−/−MEFを低酸素環境にて6時間処理した後、核溶解物を得て、HIF−1αタンパク質の量を確認した。(f)Lsd1−/−MEFにLSD1 WTとLSD1酵素活性のないK661Aを再び発現させた細胞株でHIF−1αタンパク質の量を確認した。(g)Lsd1+/−MEFにパルギリン(pargyline)を12時間処理した後、低酸素環境にて6時間インキュベーションし、核にあるHIF−1αの発現量を確認した。(i)HeLa細胞株で特定抗体による免疫蛍光実験を行った。細胞はMG132を処理した状況と処理していない状況それぞれ、低酸素環境にて6時間インキュベーションした後、実験した。(j)HeLa細胞で免疫ブロット実験を行った。(k)HeLa細胞株を低酸素環境に6時間インキュベーションした後、CHX(20mg/ml)を定められた時間だけ処理し、免疫ブロット実験でHIF−1αタンパク質を確認した。(l)表示されたplasmidをtransfectionしたHeLa細胞から得た溶解物をNi2+−NTAビーズで精製した。HIF−1αのユビキチン化をHIF−1α抗体で確認した。(m)MG132が処理された状況でDMOGを処理した状況と処理していない状況とでHIF−1α WT、K32A、P2A、P2A/K32Aのヒドロキシル化を確認した。(n)MG132が処理され、Flag−HIF−1α WT、K32A、P2A、P2A/K32Aが過発現した状況でFlag抗体で沈殿させ、HIF−1α−me抗体で免疫ブロットを行った。(o)HIF−1α WTとK32A、P2Aが過発現した状況でSET7/9によるユビキチン化を確認した。ユビキチン化実験は(l)の通りに行った。
【図3】図3は、Hif1aKA/KA knock−inマウスでエリスロポエチン(erythropoietin)の発現が増加して血液学的に異常な表現型を呈することを示すものである。(a)Hif1aKA/KA knock−inマウスを作る過程を示すものである。部位−特異的変異(Site-directed mutagenesis)によりリシンをアラニンに代替し、この時、AfeIサイトが生じるようにした。(b)WT、Hif1a+/KA、およびHif1aKA/KAマウスの遺伝型を分析した。Hif1aKA/KA染色体はAfeIによって切断された。(c)WT、Hif1a+/KA、およびHif1aKA/KA MEFでHIF−1αのメチル化を確認した。(d)7日間PBSまたはDMOGを処理し、マウスの表現型を観察した。左側:足裏と鼻、中間:脾臓、右側:腹腔(e)7日間PBSまたはDMOGを処理したマウスの肺と脾臓でHIF−1αの発現を確認した。(f)WTマウスとHif1aKA/KAマウスとで血液学的指標を比較した。RBC:赤血球、Hb:ヘモグロビン、Hct:赤血球容積(g)WTとHif1aKA/KA MEFでVegf−a、Glut−1、Epo mRNAの量を確認した。左側は低酸素環境にて定められた時間だけインキュベーションした後に比較し、右側はDMOGを処理し比較した。(h)WTとHif1aKA/KAマウスの肺でVegf−a、Glut−1、Epo mRNAの量を確認した。左側は低酸素環境で14日間育てた後に比較し、右側はDMOGを7日間処理し比較した。
【図4】図4は、Hif1aKA/KA MEFで細胞移動、コロニー形成、腫瘍成長がすべて増加することを示すものである。(a)WTとHif1aKA/KA MEFを表示された時間だけ低酸素環境にてインキュベーションした後、HIF−1αタンパク質の量を確認した。(b)WTとHif1aKA/KA MEFを6時間低酸素環境にてインキュベーションした後、CHXを処理し、HIF−1αタンパク質の半減期を測定した。(c)マウスを10%酸素濃度に14日間育てた後、マウスの肺で免疫ブロット実験を行った。(d)MEFにSET7/9とLSD1を過発現させた後、Scratch-cell motility実験を行った。表示された時間の間、低酸素環境でインキュベーションした。(e)WTとHif1aKA/KA MEFを用いてtranswell cell migration実験を行った。一般酸素濃度環境または12時間低酸素環境で実験した。(f)WTとHif1aKA/KA MEFをもってanchorage independent細胞成長実験を行った。(g)HIF−1α shRNAが持続的に発現するMDA−MB−231乳癌細胞株にHIF−1α WTとK32Aを再び入れた後、xenograft実験を行った。
【図5】図5は、Hif1aKA/KA knock−inマウスで網膜血管生成が促進されることを示すものである。(a−d)生まれて5日目のWTとHif1aKA/KAマウスの生理学的網膜血管生成を示すものである。(a)5日目のマウスの網膜全体を固定してCD31とHIF−1α抗体で染色したものである。(b−d)血管の半径長さ、血管密度、HIF−1αの染色程度などを比較した。(e−j)WTとHif1aKA/KAマウスのOIRモデルで疾病学的網膜血管生成を示すものである。(e)生まれて17日目のOIRモデルマウスの網膜全体を固定してCD31抗体で染色した。(f、g)血管が生成されない部分と新たに血管が生成された部分をWTマウスとHif1aKA/KAマウスとで比較した。(h)17日目のOIRモデルマウスの網膜をisolectin B4(iB4)とVEGF HIF−1α抗体で染色した。(i、j)HIF−1αとVEGFの染色程度を比較した。
【図6】図6は、HIF−1α K32の修飾が腫瘍の成長と血管生成を促進することを示すものである。(a−l)腫瘍細胞を移植して18日後に摘出して組織学的分析を行った。(a)WTとHif1aKA/KAマウスで腫瘍の成長曲線を示すものである。(b)腫瘍の重量の比較を示すものである。(c)腫瘍をsectionした後、H&E染色を行った。黒い点線は腫瘍内の壊死した部分を意味する。(d)腫瘍内の壊死程度を比較した。(e、f)腫瘍内部と腫瘍周辺のCD31で染色された血管を比較した。白い点線は腫瘍の境界を意味する。(g、h)腫瘍内の低酸素環境の部分を比較したものである。(i、j)腫瘍中心のKi67で染色された、増殖する細胞を比較したものである。(k、l)腫瘍中心でcaspase3抗体で染色された、細胞死滅の起こる細胞を比較したものである。
【図7】図7は、ヒト癌におけるHIF−1αのメチル化の重要性を示すものである。(a)多様な癌患者と癌細胞株から知られたHIF−1αのmutationを示すものである。(b、c)SET7/9によるHIF−1αのメチル化とそれによる安定性の調節を確認した。(d)HIF−1α WT、K32A、癌患者から知られたHIF−1αの突然変異などでインビトロメチル化実験を行った。(e)Hif1α−/−MEFにHIF−1α WTとその他表示されたmutantを過発現させた後、transwell cell migration実験を行った。(f)一般酸素濃度環境下、細胞質ではヒドロキシル化によってHIF−1αが分解されるが、SET7/9によるHIF−1αのメチル化は核内でヒドロキシル化とは独立して行われることを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願は、HIF−1αが特定残基でSET7/9メチルトランスフェラーゼによってメチル化されないか、リシン−特異的デメチラーゼ(Lysin-specific demethylase)によって脱メチル化されると、HIF−1αの安定化が増加し、このようなHIF−1αの安定化によって血管生成が増加するという発見に基づくものである。
【0018】
具体的には、本願では、特に核内でHIF−1αがSET7/9メチルトランスフェラーゼと相互作用/結合して、SET7/9によって前記HIF−1αの32番目の残基位置にメチル化が行われると、HIF−1αの安定性が減少して分解され、反面、HIF−1αはさらにリシン−特異的デメチラーゼ1と相互作用/結合によって前記位置で脱メチル化されてHIF−1αの安定性が増加し、このような現象は癌の発生につながることを究明した。
【0019】
本願で究明したHIF−1αのメチル化は、細胞質内でHIF−1αの安定化に寄与するプロリン残基におけるヒドロキシル化とは独立したものであり、長期間の低酸素条件で核内に移動して、ここでメチル化によって安定性が調節される(例えば、図7fの図式的に表示された機序参照)。特に、メチル化−欠乏Hif1aKA/KA対立遺伝子を有するノックアウトマウスでは、メチル化によって安定性が増加したHIF−1αによって網膜の血管新生(retinal angiogenesis)と腫瘍血管化(tumourvascularization)が増加したことが分かった。
【0020】
また、ヒトの癌で発生するHIF−1αの32番目の残基(配列番号1の配列を基準とし、残基の位置を明確に表示するためのもので、前記配列に限定されるものではない)におけるメチル化が、28番目の位置と30番目の位置における突然変異(S28Y、R30Q)に関連していることを究明した。具体的には、28、30番目の残基に突然変異が発生した場合、32番目のメチル化に影響を及ぼし、32番目の残基でSET7/9によるメチル化またはLSD1による脱メチル化を抑制する。
【0021】
さらに、本願では、網膜や癌などのような疾患の進行に血管新生が伴う場合、32番目の残基におけるメチル化または脱メチル化の調節によりHIF−1αの分解を促進して、前記のような疾患の血管生成を抑制することができる。したがって、HIF−1αの32番目の残基のメチル化を調節する物質は血管新生を抑制できるため、本願で究明された機序を用いて血管新生抑制剤をスクリーニングすることが可能である。
【0022】
そこで、一様態において、本願は、本願で究明されたメチル化残基を含むHIF−1αタンパク質およびSET7/9メチルトランスフェラーゼ、またはHIF−1αタンパク質およびLSD1デメチラーゼを標的とする血管新生抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
【0023】
一実現例において、前記方法は、HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップで、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定され、前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップ;並びに前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0024】
本願による方法に使用されるHIF−1αタンパク質は、30番目の残基が野生型のアルギニンからグルタミンまたはこれと化学的に同等のアミノ酸、例えば、同じアミド残基を有するアスパラギンに置換されたものが使用され、グルタミンへの置換は特定の癌で発見される。
【0025】
本願では、R30Q突然変異の場合には、SET7/9によって32番目の残基におけるメチル化が阻害されて、メチル化の程度が野生型と比較して低くなることを究明した(図7d参照)。したがって、前記突然変異を利用して当該抑制されたメチル化を再び戻す薬物は、前記突然変異を有する癌患者に有用に使用できる。
【0026】
本願による方法を利用して究明された物質は、32番目の残基のメチル化を増加させ、結局、HIF1−αタンパク質を安定化させて、血管新生抑制剤としての発生および進行がそれに関連づけられている多様な疾患の治療に有用に使用できるであろう。
【0027】
本願ではさらに、リシン−特異的デメチラーゼ1とHIF−1αとの相互作用/結合によって前記位置で脱メチル化されると、HIF−1αの安定性が増加し、濃度が増加して癌が発生することを究明した。
【0028】
したがって、他の様態において、本願は、LSD1(LysinSpecific demehtylase1)タンパク質によってHIF1−αタンパク質の脱メチル化を抑制させる機序に基づく血管新生抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
【0029】
一実現例において、前記方法は、HIF1−αタンパク質およびLSD1(LysinSpecific demehtylase1)タンパク質を準備するステップで、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1を基準として32番目のリシン残基にメチル化されており、前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップで、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定され、前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップ;並びに前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合、前記試験物質を候補物質として選別するステップを含む。
【0030】
上述のように、30番目の残基の突然変異は、SET7/9によるメチル化を抑制し、この場合、LSD1もHIF1−αタンパク質に結合するという本願の結果(図2のa、h)に基づいて、脱メチル化も抑制すると判断され、したがって、前記方法において、HIF1−αタンパク質における30番目の残基がグルタミンまたは野生型でない他の残基、特にグルタミンと同等の化学的性質を有するアミノ酸、例えば、アスパラギンに置換されたものが使用できる。
【0031】
LSD1は、メチル化されたHIF1−αタンパク質を脱メチル化させ、結局、前記タンパク質を安定化させて血管新生を促進させて癌の発生を促進するため、本願で究明された残基におけるHIF1−αタンパク質の脱メチル化を抑制する物質は血管新生抑制剤として有用に使用できるであろう。
【0032】
本願において、前記「HIF1−α(hypoxia-induciblefactor-1)」は、低酸素関連の反応を媒介する異種性二重の転写因子で、酸素濃度によって調節されるα小単位(HIF−1αまたはHIF−2α)と、恒常発現するβ小単位(HIF−1β)とから構成されており、HIF−1αは低酸素環境では安定化する。HIF−1αは、内皮細胞のマスター調節因子のVEGFを直接的に調節することにより、病理生理学的に血管を生成させる。
【0033】
HIF−1αの安定性の調節は、低酸素環境に適応するための重要なステップである。正常酸素条件では、HIF−1αは、プロリルヒドロキシラーゼドメイン(prolyl hydroxylase domain;PHD)−含有タンパク質1/2/3によってヒドロキシル化(hydroxylation)され、当該ヒドロキシル化されたHIF−1αをフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau;VHL)腫瘍抑制タンパク質が認知して、カリン2(cullin2)E3リガーゼ複合体によって分解される。反面、低酸素環境では、PHDは補助因子として酸素を使用し、PHDの酵素的活性は減少する。したがって、HIF−1αのヒドロキシル化は減少し、HIF−1αの安定化をもたらす。ヒドロキシル化のほか、SUMO化(SUMOylation)、アセチル化およびリン酸化を含む他の転写後修飾がHIF−1αの機能を調節することが知られた。SENP1がHIF−1αを脱SUMO化(desumoylation)し、HIF−1αとVHLとの間の相互作用を抑制して安定化する。p38によるHIF−1αのリン酸化は、局所貧血でVHLへの結合を抑制して安定化に寄与する。これと対照的に、HIF−1αのアセチル化は、VHL−媒介HIF−1αのユビキチン化を誘導することが分かった。
【0034】
本願のHIF−1αのメチル化は、前記HIF1−αタンパク質調節のためのヒドロキシル化およびVHLへの結合とは独立した新たな調節機序である。本願による新たな機序に基づく薬物の開発は、従来の薬物に反応しない癌や、従来開発された薬物と共にカクテル療法に適用されて、HIF−1αに依存的な多様な癌をより効果的に治療するのに有用に使用されるであろう。
【0035】
本願によるHIF1−αまたはタンパク質の配列は、本願による効果を達成する限り、多様な形態およびそれ由来のものが使用できる。一実現例では、哺乳類、特にヒト来由のHIF1−αまたはこれと機能的に同等の変異体が使用され、そのタンパク質および核酸配列はそれぞれ配列番号1または2で表示されてもよいし、または、それぞれNP_001521.1およびNM_001530.3と公知である。本願による一実現例では、配列番号1のHIF1−αタンパク質の配列が使用される。また、上述のように、本願では、配列番号1の配列を基準として30番目の残基がグルタミンまたは野生型でない他の残基、特にグルタミンと同等の化学的性質を有するアミノ酸、例えば、アスパラギンに置換されたものが使用できる。
【0036】
本願による方法に使用されるSET7/9タンパク質(遺伝子名:SETD7(geneID:80854))は、SETドメイン−含有メチルトランスフェラーゼであって、ヒストンH3K4およびDNAメチルトランスフェラーゼ1(DNMT1)、E2F1、およびSTAT3を含む非−ヒストンタンパク質に作用する。DNMT1およびE2F1のSET7/9−依存性メチル化は、これらタンパク質の安定性を調節する。SET7/9タンパク質および核酸配列はそれぞれ、NP_085151.1およびNM_030648.3と公知である。
【0037】
本願による方法に使用されるLSD1(Lysin-specificdemethylase1)タンパク質(遺伝子名:KDM1A(geneID:23028))は、KDM1Aともいうフラビン−依存性モノアミンオキシダーゼであって、モノ−およびジ−メチル化されたリシン、特にヒストン3、リシン4および9(H3K4およびH3K9)を脱メチル化させることができる。LSD1は、インビボおよびインビトロでアンドロゲン受容体と相互作用をし、アンドロゲン受容体−依存性転写を促進する(30)。LSD1は、アンドロゲン遺伝子調節の脈絡から、基質をH3K4me1/2からH3K9me1/2に転換させることができると知られている。ヒストンデメチラーゼとしての役割のほか、LSD1は、p53およびDNMT1のような非−ヒストンタンパク質も脱メチル化する。LSD1は、脱メチル化によってp53の腫瘍抑制活性を調節する。LSD1は、Dnmt1の脱メチル化を調節することにより、胚幹細胞におけるグローバルDNAのメチル化において必須の役割を果たす。LSD1タンパク質および核酸配列はそれぞれ、NP_055828.2およびNM_015013.3と公知である。
【0038】
本願による方法に使用されるタンパク質は、当業界における公知の方法、例えば、前記開示された配列を参照して、PCR方法(Saiki et al.,Science,230:1350-1354,1985;Saiki etal.,Science,239:487-491,1988)を利用して製造できる。
【0039】
本願による方法のタンパク質は、本願による効果を達成する限り、全長または切断された形態の断片とも含まれ、特にSET7/9およびLSD1との相互作用に必要な領域およびメチル化残基を含む。
【0040】
本願に含まれるタンパク質は、同一の宿主、例えば、ヒト由来のものでも、特定個人、地域、環境などに応じて配列変異があり得、これはもちろん、一部の配列が変異(欠失、置換、付加)したものの、機能的に同等の変異体がすべて本発明に使用できる。
【0041】
本願による方法のタンパク質またはこれと機能的に同等の変異体を含む場合、例えば、前記ベクターを公知の方法によって細胞培養システムで適切な細胞にトランスフェクションして発現させた後、タンパク質を精製して使用することができる。このような本発明のタンパク質は、例えば、精製されたタンパク質、水溶性タンパク質、または標的細胞への伝達または投与のために担体に結合された形態のタンパク質またはアミノ酸残基と融合された形態のものを含むものである。
【0042】
タンパク質のメチル化有無の分析のための方法は公知のもので、例えば、質量分光分析器(Mass spectrometer)、メチル化された残基を特異的に認識する、抗体のような物質を用いた、ウェスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、組織免疫染色、免疫沈降分析法(Immunoprecipitation Assay)、FACS、タンパク質チップ(proteinchip)などが挙げられる。
【0043】
本願によるタンパク質は、これを発現する細胞または動物、特に哺乳動物、特にマウスの形態で提供される。例えば、これに制限するわけではないが、タンパク質の発現のために、遺伝子伝達が容易なHEK−293T(human embryonic kidney cell line)、遺伝子伝達および低酸素露出時に反応性に優れたHeLa(human cervical cancer cell)、乳癌が進む時、HIF−1αが重要な役割を果たすと知られている乳癌細胞株、例えば、MDA−MB231が使用できる。
【0044】
前記方法に使用される検出試薬は公知のものであって、例えば、抗原−抗体反応、前記メチル化または脱メチル化されたタンパク質に特異的に結合する基質、核酸またはペプチドアプタマー、前記メチル化または脱メチル化されたタンパク質と特異的に相互作用する受容体またはリガンドまたは補助因子との反応により検出されるか、または質量分光分析器を用いてもよい。前記本願のメチル化または脱メチル化されたタンパク質と特異的に相互作用または結合する試薬または物質は、チップ方式またはナノ粒子(nanoparticle)と共に使用できる。上述した検出/分析過程による最終的なシグナルの強度を分析して、すなわち、対照群試料のシグナルと対照を行うことにより、タンパク質のメチル化の有無を検出することができる。
【0045】
本願の方法に使用される試験物質は、上述した標的タンパク質のメチル化および/または脱メチル化を調節すると期待される物質で、例えば、薬物のスクリーニングの目的のためには、化合物は低分子量の治療効果を有するものが使用できる。例えば、重量が400Da、600Daまたは800Daといった約1000Da前後の化合物が使用できる。目的に応じて、このような化合物は化合物ライブラリの一部を構成することができ、ライブラリを構成する化合物の数字も数十個から数百万個まで多様である。このような化合物ライブラリは、ペプチド、ペプトイドおよびその他環状または線状のオリゴマー性化合物、および鋳型を基本とする低分子化合物、例えば、ベンゾジアゼピン、ヒダントイン、ビアリール、カルボサイクルおよびポリサイクル化合物(例えば、ナフタレン、フェノチアジン、アクリジン、ステロイドなど)、カルボハイドレートおよびアミノ酸誘導体、ジヒドロピリジン、ベンズヒドリルおよびヘテロサイクル(例えば、トリアジン、インドール、チアゾリジンなど)を含むものであってもよいが、これは単に例示的なもので、これに限定されるものではない。
【0046】
前記試験物質は、生物学的特徴の観点からは、HIF−1αの相互結合を強くできる物質またはSET7/9のメチル化作用に重要なSET領域の活性を増加させる物質、またはSET7/9によるメチル化に重要な役割を果たすメチル供与者のS-adenosylmethionineを基質により高い効率で伝達可能な物質である。同時に、LSD1が使用される場合には、アミンオキシダーゼ系の脱メチル化酵素であるため、アミンオキシダーゼ抑制効果を奏したり、基質との結合を抑制する物質、FAD(flavin adenine dinucleotide)依存的な酵素であるため、FADを抑制する効果を有することができる。
【0047】
候補物質は、前記試験物質で処理された細胞と前記試験物質で処理されていない対照群細胞とで前記HIF−1αのメチル化の有無を比較して、前記試験物質で処理された細胞における前記HIF−1αのメチル化が、前記対照群のHIF−1αのメチル化と比較して増加した場合、これを血管新生抑制剤候補物質として選別することができる。
【0048】
また、候補物質は、LSD1を標的として用いた場合、脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合、前記残基のうち1つ以上の残基の脱メチル化が減少した場合、これを血管新生抑制剤候補物質として選別することができる。
【0049】
本願の方法によって選別された血管新生抑制剤は、HIF−1αをメチル化、またはメチル化を増加させることにより、HIF−1αを分解させて血管が形成されるのを防止する。前記のような血管新生抑制剤は、血管新生が伴う多様な疾患、例えば、固形腫瘍や網膜症、慢性関節リウマチまたは粥状動脈硬化症などのような血管新生病の予防および治療に有効である。具体的には、血管形成(vasculogenesis)および病的な血管新生(angiogenesis)に関連する分子機序の究明によって、疾患は次の2種類、すなわち、血管新生治療によって損傷した組織が治癒可能な疾患(動脈硬化、心筋梗塞、四肢虚血など)と、血管新生治療によって疾患自体が治療されたり疾患の進行が遅延可能な疾患(例えば、網膜症、悪性および陽性血管新生性腫瘍、悪性腫瘍の転移など)(Timar J et al.,Pathol Oncol Res.2001;7(2):85-94)が挙げられる。したがって、本願による血管新生抑制剤は、前記疾患の治療剤として有用に使用できる。
【0050】
本願の前記方法は、試験管で前記タンパク質を混合して複合体を形成して行うか、または前記タンパク質を発現する遺伝子を細胞、特に真核細胞にトランスフェクションして、または前記細胞を哺乳動物に移植して行われる。
【0051】
本方法で使用される細胞の種類および試験物質の量および種類などは、使用する具体的な実験方法および試験物質の種類に応じて異なり、当業者であれば適切な量を選択できるであろう。実験結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質の存在下、前記タンパク質をメチル化させる物質を候補物質として選別する。
【0052】
以下、本発明の理解のために実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
<実験方法>
−細胞培養−
【0053】
MEF(Mouse embryonic fibroblast)、HEK293T、HeLa細胞株は、10%ウシ血清とペニシリン、ストレプトマイシン(Streptomycin)が入ったDMEM(Dulbecco’s modifiedEagle’s medium)に培養した。細胞株はすべてマイコプラズマ汚染テストをした。
−抗体−
【0054】
HIF-1α(NB100-132, Novus; 10006421,Cayman; MAB1536, R&D systems); HIF-2α(NB100-122, Novus); Xpress(R910-25,Invitrogen); FLAG(F3165, Sigma); methyl-Lys(ab23366, Abcam); anti-CD31(clone2H8, MAB1398Z, Millipore); anti-HA(MMS-101R,Covance); VEGF(AF493NA, R&Dsystem); EPO(sc-7956), Brn3b(sc-6026)はSanta Cruz社にて作製し、LSD1(#2139)、hydroxyl-HIF-1α(#3434)、Caspase3(#9661)、Ki-67(#9027)、SET7/9抗体(#2813)はCellSignallingにて作製した。HIF-1α K32メチル化抗体はAbfrontier社にて作製した。
−動物−
【0055】
8−10週齢の雄C57BL/6Jマウスを実験に用いた。マウスは表示された時間だけ10%酸素濃度のチャンバで育てた。DMOG処理のために、phosphateバッファー0.1mlにDMOG2mgを溶かした後、腹腔注射をした。すべての実験手順はソウル大学動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee of Seoul NationalUniversity)から承認された。
【0056】
<Hif1aKA/KA knock−inマウスの作製>
【0057】
HIF−1αの32番目のリシンをアラニンに置換するために、NheIサイトをHIF−1αの2番目のエクソン(exon)にFRTが両方にあるPuro抵抗遺伝子カセットと共に挿入した。リシンをアラニンに変異させながらAfeIサイトが生じるようにした。作られた標的ベクターを電気穿孔(electroporation)方法でマウスのES cellに注入した。Hif−1α遺伝子において相同組換え(homologous recombination)が起こったES cellを選んで、Cre組換え酵素(recombinase)を用いてpuro抵抗遺伝子カセットを無くした。Hif1αKA/+ES細胞クローンをマウスの胚盤胞に注入して突然変異体の染色体を有するキメラ(chimeric)マウスを得た。7世代の間に逆交配を進行させ、尾DNAで対立形質の遺伝子特定プライマーを用いてPCRを行った後、AfeI制限酵素で切断してマウスの遺伝型を確認した。使用したプライマーは次の通りである。
【0058】
Forward:5’−GTAGGTGGGAAGGTATTGATG−3’
Reverse:5’−AGAACTCACCG GCATCCAGAAG−3’
<定量的RT−PCR>
【0059】
mRNAの量を測定するために、ABI Prism 7500systemとYBR Green(Enzynomics)を使用した。プライマーは、増幅された時、90−200bpの特定mRNA片となるように作製し、melting curve分析により適当なプライマーであるかを確認した。PCR条件は、95℃(15分)の後に、95℃(30秒)、60℃(30秒)、および72℃(30秒)の過程を40回繰り返すようにした。mRNAの量はΔΔCt方法で計算し、β−アクチンにより量を補正した。すべての反応は3回繰り返した。使用したプライマーは次の通りである。
【0060】
Vegf−a Forward:5’−TGATGGAAGACTAGACAAAGTTCA−3’
Vegf−a Reverse:5’−TTTTCCACCAGTTCCA ACTTGA−3’
Glut1 Forward:5’−AGAGGTGTCACCTACAGCTC−3’
Glut1 Reverse:5’−AA CAGGATACACTGTAGCAG−3’
Epo Forward:5’−gctggcttagccctctcac−3’
Epo Reverse:5’−ctgtccgctcctagcatgt−3’
Lsd1 Forward:5’−CGGCATCTACAAG AGGATAAAACC−3’
Lsd1 Reverse:5’−CGCCAAGATCAGCTACATAGTTTC−3’
Hif−1α Forward:5’−CAGAGCAGGAAAGAGAGTCATAGAAC−3’
Hif−1α Reverse:5’−TTTCGCTTCCTCTGAGCATTC−3’
<ユビキチン化実験>
【0061】
HeLa細胞にHismax−ユビキチンと共にDNAプラスミドをトランスフェクションした。トランスフェクションして48時間後に、MG132(10mg/ml)を6時間処理した。その後、buffer A(6M guanidium-HCl、0.1M Na2HPO4/NaH2PO4、0.01M Tris-HCl[pH8.0]、5mMイミダゾールおよび10mMb-mercaptoethanol)で細胞を壊し、Ni2+−NTAビーズと共に常温で4時間インキュベーションさせた。ビーズを、buffer A、buffer B(8M urea、0.1M Na2PO4/NaH2PO4、0.01M Tris-Cl[pH8.0]、10mM β-mercaptoethanol)、buffer C(8M urea、0.1M Na2PO4/NaH2PO4、0.01M Tris-Cl[pH6.3]、および10mMβ-mercaptoethanol)の順に洗った後、ビーズに付いているタンパク質を、bufferD(200mM imidazole、0.15M Tris-Cl[pH6.7]、30%glycerol、0.72M 2-mercaptoethanol、および5%SDS)で抽出した。そして、免疫ブロットで分析した。
<ソフト寒天培地コロニー形成分析(Soft agar colonyformation assay)>
【0062】
MEFを3T3方式で死なないようにした。Anchorageに依存せずに育つMEFを分析するために、soft agarでコロニーが生成されることを確認した。10個の細胞を5%COインキュベータで、5週間0.4%noble agar(Sigma、A5431)上でDMEMと10%FBSメディアに育てた。
<OIRマウスモデルの作製>
【0063】
新たに生まれて7日目のマウスを母マウスと一緒に75%酸素濃度のチャンバ(ProOx Model110、BioSpherix、NY)で5日間おいた後、一般酸素濃度に戻して5日間放置した。17日目の日にマウスの網膜を得た。マウスはARVOステートメント(ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and VisionResearch)に従って取り扱った。
<網膜血管生成の組織学的分析>
【0064】
網膜は、イソレクチン(isolectin)B4(L2140、Sigma)と1つ以上の抗体と共に、一晩インキュベーションした。使用した抗体は次の通りである。ハムスターanti−CD31単クローン抗体(monoclonal antibody)、ウサギanti−HIF−1α多クローン抗体(polyclonalantibody)、ヤギanti−VEGF多クローン抗体、またはヤギanti−Brn3b多クローン抗体。数回洗った後、FITCの付いているストレプタビジン(streptavidin、BD Pharmingen社)またはFITCの付いているハムスターIgG(JacksonImmunoResearch社)、Cy3の付いているヤギIgG、Cy3、Cy5の付いているウサギIgGなどと共に、4時間常温でインキュベーションした。対照実験のために、抗体がないかまたは免疫反応が起こる前の血清(serum)を使用した。全体または一部(section)を固定した後、染色した網膜を見るために、ツァイス(Zeiss)LSM510または780共焦点顕微鏡を用いた。網膜の形態測定分析は、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij)とLSM ImageBrowser(Carl Zeiss)を用いて行われた。血管の半径長さは、4つの部分の網膜で視神経の頭部分から周辺の血管前までの最も短い長さを測定した。全体網膜の血管密度は、全体網膜の面積においてCD31+によって染色された血管密度で割ったものをパーセンテージで表現した。OIR実験でNVTと血管が生成されない部分は、アドビフォトショップ(登録商標)ソフトウェアのラッソツール(Lasso tool of Adobe Photoshop software)を用いて測定した。血管が生成されない部分のHIF−1αの染色程度は、Image J softwareを用いて測定した。
<腫瘍モデルおよび組織学的分析>
【0065】
マウスLLC細胞株はATCC(American TypeCulture Collection)から購入した。腫瘍を生成するために、LLC cellに溶けている溶液をマウスの背の両側に注入した。腫瘍の体積は2日ごとにキャリパを用いて測定した。腫瘍の体積は0.5×A×B公式(A:腫瘍の最も長い半径、B:腫瘍の垂直高さ)を用いた。腫瘍を移植して18日後にマウスを麻酔下で腫瘍を摘出した。そして、切断して組織分析を行った。50mmに凍結切断した腫瘍組織をハムスターanti−CD31、anti−Ki67、またはanti−カスパーゼ(caspase)3抗体と共に、一晩インキュベーションさせた。数回洗う過程を経た後、Cy3またはFITCの付いている抗−ハムスターIgGやCy3の付いている抗−ウサギIgGと共に、2時間インキュベーションさせた。その後、サンプルを固定させ、LSM510共焦点顕微鏡(Carl Zeiss社)を用いて顕微鏡写真を得た。血管の密度、低酸素部分、apoptosis部分、壊死部分はImage-J softwareを用いて測定した。Ki67+細胞は直接数えて平均を計算した。腫瘍の低酸素部分を分析するために、ハイポキシプローブ(Hypoxyprobe)-1(60mg/kg、NaturalPharma International)を血管注射により注入した後、1時間経過後に固定させた。その後、腫瘍を得てFITCの付いている抗−ハイポキシプローブ抗体で染色して分析した。
<異種移植分析(Xenograft assay)>
【0066】
shHIF−1αが持続的に発現する細胞に、shRNAに抵抗するHIF−1α WTとHIF−1α K32Aを再び入れた。腫瘍が形成されるために、マトリゲル(matrigel、BD Biosciences社)を細胞の体積と同量を混合した後、5週齢の免疫反応が抑制された雌マウスの左皮下にはHIF−1α WTが発現する細胞株を、右皮下にはHIF−1α K32Aが発現する細胞株を注入した。腫瘍の大きさは週ごとに測定した。腫瘍を注入してから4週後に実験を終えて、腫瘍を摘出して重量を測定した。腫瘍の体積は1/2×長さ×幅で計算した。
<インビトロメチル化および脱メチル化分析>
【0067】
インビトロメチル化実験は、GST−HIF−1αとGST−SET7/9タンパク質をバッファー(50mM Tris-HCl[pH8.5]、20mM KCl、10mM MgCl2、10mM b-mercaptoethanol、and 250mM sucrose)と1μCi of H−SAMを混合して30℃で一晩反応させて行われた。In vitro脱メチル化実験のために、GST−HIF−1αのメチル化実験を行った。以後、メチル化が起こったHIF−1αの付いているビーズをバッファー(50mM NaH2PO4[pH8.0]、10mMTris-HCl[pH8.0]、500mM NaCl、and0.5%TritonX-100)で洗って、ビーズに付いているSET7/9を除去した。以後、His−LSD1と共に、バッファー(50mM Tris-HCl[pH8.5]、50mM KCl、5mM MgCl2、5%glycerol、and 0.5mM PMSF)に入れて反応させた。37℃で一晩反応させた後に反応バッファーを除去し、2Xサンプリングバッファーを入れた。以後、10分間沸かしてからSDS−PAGEを付着させてautoradiographyで確認した。
<免疫沈降分析法>
【0068】
インビボ免疫沈降のために、HeLa細胞を定められた時間の間低酸素チャンバに入れて、6時間5μM MG132を処理した後に取った。細胞は1mLのEBC200バッファー(50mM Tris-HCl pH8、200mM NaCl0.5%NP-40)で壊した後、15分間13000rpmでダウンさせて、計900mlの細胞溶解物(lysate)を得た。前記溶解物を定められた抗体と共に、4℃で一晩インキュベーションをした後、タンパク質G、タンパク質AのセファロースビーズとIP150(25mM TrisHCl pH7.8、1mM EDTA、10%glycerol、150mM NaCl and 0.1%NP-40)を50%ずつ混合して、2時間インキュベーションした。その後、IP150で5回洗った後、SDS−PAGEと免疫ブロットで確認した。免疫ブロットに使用した抗体は、PBS−T溶液に3%BSAが溶けているバッファーに溶かして使用した。
<HIF−1α結合タンパク質の精製>
【0069】
Flag−HIF−1αを発現するHEK293T細胞の抽出物からHIF−1α結合タンパク質を精製した。対照群として空ベクターを発現するHEK293T細胞株のlysateを使用した。HIF−1α結合タンパク質をFlag−M2 agaroseビーズを用いて沈殿させた。Lysateとビーズを4℃で一晩インキュベーションした後、BC150バッファー(20mM Tris-HCl[pH7.9]、15%Glycerol、1mM EDTA、1mM DTT、0.2mMPMSF、0.05%Nonidet P40、and 150mMKCl)で3回、BC300バッファー(20mM Tris-HCl[pH7.9]、15%Glycerol、1mM EDTA、1mM DTT、0.2mM PMSF、0.05%NonidetP40、and 300mM KCl)で2回、IP150バッファーで2回、TBSバッファー(50mM Tris-HCl[pH7.4]、and 150mM NaCl)で3回ビーズを洗った。その後、Flagペプチド(0.1mg/ml)でHIF−1α結合タンパク質を抽出した。SDS−PAGEをした後、LC−MS/MSで分析した。
<免疫蛍光分析法>
【0070】
HeLa細胞株をポリDリシン(poly D lysine)でコーティングされたカバースリップで育てた。免疫蛍光実験のために、細胞をPBSで2回洗い、2%ホルムアルデヒドで30分間固定させた。その後、細胞を0.1%triton−X100が溶けているPBSで2回洗った。抗体の侵入のために、細胞を0.5%triton−X100が溶けているPBSで5分間インキュベーションさせた後、ブロッキング溶液(5%BSA in 0.1%PBS-T)でブロッキングさせた。その後、一次(primary)抗体をブロッキング溶液に入れて細胞とインキュベーションさせた。以後、0.1%PBS−T溶液で4回洗った後、二次(secondary)抗体と共にインキュベーションさせた。以後、再び0.1%PBS−T溶液で洗った後、ベクタシールド(vectashield)(H−1000)で固定し、顕微鏡で写真を得た。
<統計分析>
【0071】
GraphPad Prism softwareを用いて、グループの差を見るためにStudent t-testを、条件の差とグループの差をそれぞれ見るためにone-wayANOVAを、そしてグループの差と条件の差を一緒に見るためにtwo-way ANOVAを行って、データを分析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
(実施例1.核内で現れるSET7/9メチル化酵素によって起こるHIF−1αのメチル化)
【0072】
HIF−1αのユビキチン化、SUMO化、アセチル化、ヒドロキシル化などがHIF−1αの機能を調節するのに重要な役割を果たすことが究明されたにもかかわらず、HIF−1αのメチル化はまだ明らかにされていない。タンパク質のメチル化はメチル化酵素によって起こるため、HIF−1αが特定メチル化酵素によってメチル化可能と知られたアミノ酸配列を有しているかを確認した。32番目のリシン残基付近で、SET7/9メチル化酵素がメチル化させることが可能な特定配列の「[K/R]−[S/T/A]−K(メチル化の起こるリシン)」があることを発見した(図1a)。液体クロマトグラフィーマス分析(LC-MS/MS analysis)によりHIF−1αが32番目のリシンでメチル化が起こることを確認した(図1b)。26Sプロテアソーム抑制剤のMG132がある状況とない状況とでいずれもHIF−1αとSET7/9とが細胞内で相互作用をすることを確認した(図1c)。一般的な酸素濃度で細胞内のHIF−1αはMG132を処理した時にのみ発見できるため、MG132を処理した状況でHIF−1αとSET7/9との相互作用を確認した。
【0073】
本発明者は、細胞外で精製されたGST−SET7/9を酵素とし、GST−HIF−1αを基質としてメチル化実験を行った。実験結果、HIF−1α WTは正常にメチル化が起こることを見ることができるが、メチル化が起こると予想される32番目のリシンをアラニンに変えたHIF−1αはメチル化が起こらないことを確認した(図1d)。SET7/9がHIF−1αをメチル化させる時、SET7/9の酵素活性が重要であるかを確認するために、酵素活性のあるSET7/9WTと酵素活性のないSET7/9H297Aとをもって実験した結果、SET7/9WTが入った時にのみHIF−1αのメチル化が現れることを確認した(図1e)。これにより、HIF−1αのメチル化が起こる時、SET7/9のメチル化酵素活性が必要であることが分かった。HIF−1α K32のメチル化を認知する抗体を作製し、ドットブロット(dot blot)分析によりこの抗体がメチル化されているHIF−1αペプチドを特定的に認識することを確認した。マウス胚線維芽細胞(Mouse embryonic fibroblast、MEF)からHIF−1αのメチル化を確認した時、MG132を処理した状況で、SET7/9のないMEFではHIF−1αのメチル化が現れておらず、WT MEFでのみHIF−1αのメチル化を観察することができた。
【0074】
次に、HIF−1αのメチル化がいつどこで起こるかを確認した。HIF−1αのメチル化は、MG132を処理して26Sプロテアソームを抑制した時、一般酸素濃度で観察され、低酸素環境が持続するほどHIF−1αのメチル化が減少することを観察した(図1g)。ところが、低酸素環境が持続すると、HIF−1αのメチル化が回復することを観察することができた。本発明者は、HIF−1αのメチル化がどこで起こるかを知るべく、核と細胞質とに分けてHIF−1αのメチル化を確認した結果、核でのみHIF−1αのメチル化が現れることを確認した(図1h)。我々は、HIF−1αのメチル化がHIF−1αの位置に影響を与えるかを確認した結果、メチル化が起こるHIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32Aがいずれも核内でのみ発見されることを確認した。この実験結果により、SET7/9によって起こるHIF−1αのメチル化は、細胞質でない核内でのみ起こることが分かった。
(実施例2.LSD1によるHIF−1αの脱メチル化によるHIF−1αタンパク質の安定性増加の確認)
【0075】
HIF−1αのメチル化の機能を知るために、HIF−1αと相互作用するタンパク質のうち、メチル化や脱メチル化に関連するタンパク質があるかを複合体の精製により調べた。LC−MS/MS分析結果、LSD1の脱メチル化酵素がHIF−1αと相互作用することを明らかにした(図2a)。共同−免疫沈降実験により細胞内でMG132を処理した時、低酸素状況で実際に相互作用することを確認した(図2b)。また、LSD1のタンパク質の発現が低酸素環境で増加することを確認した。LSD1 mRNAも確認した結果、低酸素環境でわずかに増加することを確認した(図2d)。
【0076】
LSD1が欠損しているMEFでHIF−1αのタンパク質の発現が著しく減少していることを確認した(図2e)。本発明者は、前記現象がLSD1の脱メチル化酵素活性と関連があるかを調べるために、LSD1欠損しているLsd1−/−MEFにLSD1 WTとLSD1の酵素活性がないLSD1 K661Aを入れて、HIF−1αタンパク質の発現量を確認した。確認した結果、LSD1 WTを入れた時は低酸素環境でHIF−1αの発現がよく増加したが、LSD1 K661Aを入れた時はHIF−1αの発現の増加がよく現れなかった(図2f)。また、LSD1の酵素活性抑制剤のパルギリン(pargyline)を処理した時もHIF−1αの不安定化が起こることを確認した(図2g)。HIF−1αがSET7/9によってメチル化が起こるため、本発明者は、HIF−1αのメチル化がLSD1によって脱メチル化されるかを確認した。実際に、LSD1によってHIF−1αの脱メチル化が起こることをインビボとインビトロで確認した(図2h)。ところが、LSD1の酵素活性は、HIF−1αとLSD1との相互作用に影響を与えなかった。そして、HIF−1αとLSD1は、LSD1のN末端で直接的に結合することを確認した。また、SET7/9メチル化酵素を過発現させた時とさせなかった時とにおけるLSD1とHIF−1αとの相互作用を確認した結果、差がないことを確認した。これにより、HIF−1αのメチル化状態がLSD1とHIF−1αとの相互作用に影響を及ぼさないことを確認した。予想した通り、LSD1が欠損しているMEFでは、HIF−1α標的遺伝子の転写が減少しており、SET7/9が欠損しているMEFでは、HIF−1α標的遺伝子の転写が増加していることを確認した。
【0077】
メチル化によるHIF−1αの安定化をさらに確認するために、MG132がない状況と処理した状況とで免疫蛍光実験を行った。SET7/9が一緒に入った時、低酸素環境でHIF−1αの発現が減少していることを確認した。しかし、酵素活性のないSET7/9を入れた時は、HIF−1αの発現が減少しなかった(図2i)。また、MG132を処理した状況では、SET7/9が一緒に発現してもHIF−1αの発現が減少しなかった。免疫ブロットにより確認した時も、SET7/9が過発現する時はHIF−1αの発現が減少し、LSD1が一緒に過発現する時はHIF−1αの発現が減少する効果が無くなることを見ることができた。しかし、酵素活性のないLSD1が一緒に発現する時は、依然としてSET7/9によるHIF−1αの発現の減少が現れた(図2j)。タンパク質合成抑制剤のシクロヘキサミド(CHX)を処理し、HIF−1αタンパク質の半減期を調べた結果、SET7/9を過発現した時はHIF−1αの半減期が減少したのに対し、LSD1を過発現した時はHIF−1αの半減期が増加したことを見ることができた(図2k)。26SプロテアソームによるHIF−1αタンパク質の分解について調べるために、MG132を処理したまま、SET7/9とLSD1によるHIF−1αのユビキチン化の変化を調べた。実際に、SET7/9はHIF−1αのユビキチン化を増加させ、LSD1は減少させた。
【0078】
HIF−1αは、一般酸素濃度の時、細胞質でPHD1/2/3酵素によってヒドロキシル化が起こり、これにより、CUL2 E3 ligase複合体によって分解される。低酸素環境でPHDの活性が減少し、HIF−1αのヒドロキシル化の減少は、結局、HIF−1αの安定化をもたらす。したがって、本発明者は、HIF−1αのメチル化がヒドロキシル化に影響を及ぼすかを確認した。メチル化が起こらないHIF−1α K32AがWTのようにヒドロキシル化が起こり、PHD抑制剤のDMOGによってヒドロキシル化が減少することを確認した(図2m)。これは、HIF−1αのメチル化がヒドロキシル化と独立した作用であることをいう。これと平行に、HIF−1αのヒドロキシル化が起こらないP2A(P402A/P564A)の場合、HIF−1α WTのように正常にメチル化が起こることを確認した(図2n)。これは、HIF−1αのヒドロキシル化がメチル化に影響を与えないことを意味する。我々は、HIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32A、ヒドロキシル化が起こらないHIF−1α P2Aにおけるユビキチン化を比較した。MG132を処理し、SET7/9を過発現させた時、HIF−1α WTとHIF−1α P2Aはユビキチン化が増加するのに対し、メチル化が起こらないHIF−1α K32Aはユビキチン化の増加が現れなかった(図2o)。また、メチル化が起こったHIF−1αが同時にヒドロキシル化が起こり得ることも確認した。まとめてみれば、これらの結果は、低酸素環境でHIF−1αによって起こったメチル化がLSD1によって脱メチル化され、これにより、HIF−1αが26Sプロテアソームによって分解されることが防止されることを示す。そして、このような機序がHIF−1αのヒドロキシル化とは独立していることを示す。
(実施例3.Hif1aKA/KA knock−in miceが血液学的に異常な表現型を呈する)
【0079】
生体内でHIF−1αのメチル化が有する機能を調べるために、メチル化が起こらないHIF−1αが発現するHif1aKA/KA knock−in miceを作製した。マウス遺伝体においてHIF−1αの32番目のリシン残基をアラニンに変えるために、FRTの側にピューロマイシン(puromycin)抵抗遺伝子とHIF−1αの2番目のエクソンを含む標的ベクターを作った。このベクターでリシンをアラニンに置換できるようにDNA配列を変えた。この時、AfeI制限酵素によって切断可能な配列を有するように作製した(図3a)。AfeI制限酵素で切断することとPCRにより、Hif1aKA/KA knock−in miceがよく作製されたことを確認した(図3b)。作られたHif1aKA/KA knock−in miceは少なくともC57BL/6背景のマウスで7世代の逆交配を進行させた。Hif1aKA/KA knock−in miceは、生まれる時から成体に育つまで特異な表現型が現れなかった。また、受精にも問題がなかったし、メンデルの遺伝の法則通りに子の遺伝型が現れた。まず、作られたWT、Hif1aKA/KA knock−in heteroマウスとHif1aKA/KA knock−in homoマウスからMEFを取り出してHIF−1αのメチル化状態を確認した。免疫沈降実験により確認した結果、Hif1aKA/KA knock−in homoから取り出したMEFでHIF−1αのメチル化が発見されなかった(図3c)。HIF−1αとHIF−2αのタンパク質の発現量を比較した結果、HIF−2αは、WTやHif1a+/KA、Hif1aKA/KAとも大差がなかった。
【0080】
HIF−1αタンパク質の発現量の増加は、エリスロポエチン(EPO)タンパク質の増加に関連し、これは結局、赤血球増加症(erythrocytosis)につながる。Hif1aKA/KA knock−inマウスでHIF−1αのメチル化の欠損がHIF−1αタンパク質の発現の増加を誘発して赤血球増加症が現れるかを調べるために、WTとHif1aKA/KA knock−inマウスでDMOG(HIF−1αのhydroxylationを抑制)を処理し、血液に関連する表現型を検査した。外的な表現型を調べた結果、Hif1aKA/KA knock−inマウスの鼻部分と足裏、腹腔が赤くなっていることを見ることができ、脾臓が大きくなっていることを確認した(図3d)。そして、HIF−1αタンパク質の量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺と脾臓でWTマウスより増加していることを確認した(図3e)。また、血液学的指標を比較した。Hif1aKA/KA knock−inマウスで赤血球が確実に増加しており、ヘモグロビンの比率も増加していることを確認した。ヘマトクリット比率も、Hif1aKA/KA knock−inで増加していることを確認した(図3f)。しかも、Vegf−a、glut−1、そしてEpoのmRNAがHif1aKA/KA MEFで低酸素環境の時とDMOGを処理した時に増加していることを確認した(図3g)。Vegf−a、Glut−1、そしてEpo mRNAの量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺でも、低酸素環境で14日間あったりDMOGを7日間処理した時に増加していることを確認した(図3h)。免疫ブロット分析により、Epoタンパク質の量も、Hif1aKA/KA knock−inマウスの肺で増加していることを確認した。これをまとめてみれば、Hif1aKA/KA knock−inマウスは、血液学的な異常表現型を呈し、HIF−1αのタンパク質の発現が増加していることが分かる。
(実施例4.Hif1aKA/KA knock−inマウスで細胞移動と腫瘍の成長が増加している)
【0081】
低酸素環境で時間帯別にHIF−1αタンパク質の量を比較した時、Hif1aKA/KA MEFでHIF−1αタンパク質の量が増加していることを確認した(図4a)。シクロヘキサミド(CHX)を処理してタンパク質の合成を抑制した後、HIF−1αタンパク質の半減期を測定した時、Hif1aKA/KA MEFのHIF−1αは半減期が増加していることを確認した(図4b)。我々はまた、マウスの肺でHIF−1αタンパク質の量とメチル化を比較した。マウスを10%酸素濃度の低酸素環境で14日間育てた後に分析した時、HIF−1αタンパク質の量がHif1aKA/KA knock−inマウスの肺で増加していることを確認し、HIF−1αのメチル化が低酸素環境に露出した時、WTマウスで減少することを確認した(図4c)。
【0082】
SET7/9とLSD1が細胞の移動を調節するかを調べるために、SET7/9とLSD1を過発現させ、通常の環境と低酸素環境とで細胞の移動を分析した。低酸素環境でSET7/9を過発現させた時は細胞移動が減少し、LSD1が過発現した時は細胞移動が増加することを確認した(図4d)。HIF−1αの発現の増加は癌の発達に関係があるため、Hif1aKA/KA knock−in MEFで細胞移動とコロニー形成が増加しているかを確認した。WT MEFと比較した時、Hif1aKA/KA knock−in MEFで細胞移動が増加していることを確認した(図4e)。しかも、細胞コロニー形成分析においても、Hif1aKA/KA knock−in MEFがより良く形成することを確認した(図4f)。HIF−1αのメチル化が腫瘍形成を抑制することをインビボで証明するために、HIF−1αをノックダウン(knockdown)した後、HIF−1α WTとメチル化が起こらないHIF−1α K32Aを発現させたMDA−MB231乳癌細胞株を、免疫抑制されたマウスの皮下に注入した。以後、腫瘍形成程度を測定した結果、HIF−1α K32Aを発現する細胞株を注入した時、腫瘍形成と腫瘍の体積、腫瘍の重量が増加していることを確認した(図4g)。したがって、メチル化が起こらないHIF−1αを発現させた時、腫瘍成長を誘導することが分かる。
(実施例5.Hif1aKA/KA knock−inマウスで網膜血管生成が増加する)
【0083】
低酸素環境によるHIF−1αの安定は、血管生成を増加させる因子をコーディングするいくつかの標的遺伝子の転写が活性化され、生理学的病理学的に血管生成が増大する。生理学的にHIF−1αのメチル化の役割を調べるために、生後5日後に、WT、Hif1a+/KA、Hif1aKA/KAマウスの網膜血管の発達状態を調べた。WTマウスとHif1a+/KAマウスの網膜の血管発達半径と血管発達密度が大差はなかった。しかし、Hif1aKA/KAマウスでは、血管発達半径および密度がいずれも増加していることを確認した(図5a−c)。WTマウスに比べて、Hif1aKA/KAマウスでHIF−1αタンパク質の量も網膜の血管のない部分で増加していることを確認した(図5a、d)。HIF−1αのメチル化が疾病学的にどのような機能をするかを調べるために、虚血性網膜病症と類似の酸素濃度による網膜病症のマウスモデルを作った。このマウスで血管のない部分と新たな血管生成面積とを比較した結果、WTマウスよりHif1aKA/KAマウスが血管のない部分は76%減少したが、新たに血管が生成された部分は43%増加したことを確認した(図5e−g)。反面、Hif1a+/KAマウスは、WTと大差がないことを確認した。Hif1aKA/KAマウスの網膜では、HIF−1αとVEGFの発現がWTより増加していることを確認した(図5h−j)。この結果は、Hif1aKA/KAマウスでHIF−1αが安定化しており、これにより、血管のない領域で血管生成が活発に行われ、虚血の状況で異常な血管生成が行われることを意味する。
(実施例6.Hif1aKA/KAマウスで腫瘍の成長と血管生成が増加する)
【0084】
HIF−1αのメチル化が腫瘍の成長と腫瘍の血管生成にどのような影響を及ぼすかを確認するために、ルイス肺癌(Lewis Lung Carcinoma、LLC)細胞株をWTマウスとHif1aKA/KAマウスの皮下に移植した。腫瘍細胞を移植し、18日後に腫瘍の体積と重量を比較した時、WTよりHif1aKA/KAマウスに移植した腫瘍が、体積は24%、重量は26.1%増加したことを確認した(図6a、b)。併せて、腫瘍内の細胞死滅も、WTマウスに比べて、Hif1aKA/KAマウスで31.7%減少していることを確認した(図6c、d)。また、WTマウスよりHif1aKA/KAマウスで腫瘍周辺の血管と腫瘍内の血管がそれぞれ47.2%、44.1%増加していることを確認した(図6e、f)。これは、Hif1aKA/KAマウスで腫瘍血管生成が促進されていることをいう。このような腫瘍血管生成によって、Hif1aKA/KAマウスがWTより腫瘍内の低酸素状態が減少していることを観察することができた(図6g、h)。腫瘍に関連してより詳細に調べた結果、細胞死滅はWTマウスとHif1aKA/KAマウスとで大差がないのに対し、腫瘍細胞増殖はHif1aKA/KAマウスでより活発に起こることが分かった(図6i、j)。このような結果をまとめてみれば、HIF−1αのメチル化の欠損は腫瘍血管生成を促進させ、結局、腫瘍成長を誘導する。
(実施例7.ヒト癌におけるHIF−1αのメチル化の生物学的意味性)
【0085】
本発明者は、HIF−1αのメチル化と癌の進行の関係を明らかにするために、ヒト癌で現れるHIF−1αの突然変異を探した。本発明者は、癌で現れる体細胞の突然変異に関連するデータベースのCOSMICと、癌細胞株で現れる突然変異関連データベースのCCLEとを用いて、HIF−1αの突然変異を探した。データベースでSET7/9によってメチル化が起こるHIF−1α K32の突然変異は探せなかったものの、ヒトの癌の時、K32付近のS28とR30で突然変異がよく現れることを確認した(図7a)。例えば、食道癌、血液癌、リンパ癌などでHIF−1α S28Y突然変異が報告され、皮膚癌でR30Q突然変異が報告された。
【0086】
癌で現れる突然変異がHIF−1αのメチル化に影響を与え、それによってHIF−1αの安定性を調節するかを調べるために、癌で現れる多様な突然変異をもってHIF−1αのメチル化を確認した。S14R、R17G、R18Q、R19QではHIF−1αのメチル化が正常に起こったが、S28Y、R30QではK32Aのようにメチル化が現れなかった(図7b)。与えられたS28とR30は、螺旋−環−螺旋構造(helix-loop-helix)のドメインにあるSET7/9標的配列であって、本発明者は、前記S28YとR30Q突然変異がこのSET7/9によるメチル化が起こらないことで、結局、HIF−1αの安定化が誘導されるとの仮説を立てた。前記仮説が正しいかを確認するために、SET7/9によって突然変異体の安定性が変わるかを確認してみた。実際に、R17G、R18Q、R19QはSET7/9によって安定性が減少したが、S28YとR30QはSET7/9によるタンパク質の分解が現れなかった(図7c)。これと共に、インビトロメチル化実験でも、R17Gはメチル化が起こるが、R30QとK32Aはメチル化が起こらないことを確認した(図7d)。
【0087】
また、本発明者は、トランスウェル細胞移動(Transwellcell migration)実験を行った。HIF−1αがないMEFにそれぞれHIF−1α WT、K32A、R17G、R30Qを再び入れた後、SET7/9またはLSD1によって細胞移動がどのように変わるかを確認した結果、WTとR17Gは、SET7/9によって細胞移動が減少し、LSD1によって増加することを観察した。しかし、K32AとR30Qは、SET7/9やLSD1に影響されないことを観察することができた(図7e)。この結果は結局、ヒト癌でSET7/9によって起こるHIF−1αのメチル化は重要性を有していることを意味する。
【0088】
いくつかの論文によれば、癌でSET7/9が強力な役割を果たすという。p53のSET7/9−媒介メチル化は、アセチル化を促進させて、p53タンパク質の安定性を増加させる。LSD1は多くの癌で過発現しており、アミンオキシダーゼ阻害剤でLSD1を阻害すると癌増殖が抑制される(Kashyap,V.et al.The lysine specificdemethylase-1(LSD1/KDM1A)regulates VEGF-A expression in prostatecancer.Mol.Oncol.7,555566(2013);Lim,S.et al.Lysine-specificdemethylase1(LSD1)is highly expressed in ER-negative breast cancers and abiomarker predicting aggressivebiology.Carcinogenesis31,512520(2010);Schulte,J.H.et al.Lysine-specificdemethylase1 is strongly expressed in poorly differentiatedneuroblastoma:implications for therapy.Cancer Res.69,20652071(2009).)。さらに、LSD1は、前立腺および乳癌細胞でそれぞれアンドロゲン受容体−およびエストロゲン受容体依存性転写を促進させる。癌でLSD1の過発現がHIF−1αを安定化させ、腫瘍血管生成を促進する本願のデータにより、LSD1がホルモン依存性癌だけでなく、他のタイプの癌もどのように促進させるかが分かる。
【0089】
多様なヒト癌で遺伝的変化によって引き起こされたHIF−1αが過発現すると報告されている。HIF−1αの過発現に関連づけられた通常の遺伝的変化も多くの頻度で癌患者に起こる。例えば、遺伝的変化によるVHL(Von Hippel-Lindau)の機能喪失によってHIF−1αが構成的に発現し、また、網膜およびCNS血管芽細胞腫(haemangioblastomas)、透明細胞腎細胞癌、褐色細胞腫(pheochromocytoma)、膵島細胞腫(pancreatic islet cell tumour)および網膜、膵膓および精巣上体嚢腺腫(epididymal cysts)に脆弱な特徴がある遺伝性家族力癌症候群のVHL疾病が始まる。p53が機能を喪失すると、癌でHIF−1αタンパク質のレベルおよびHIF−1α転写活性が増加することが知られている。
【0090】
以上、本願の例示的な実施例について詳細に説明したが、本願の権利範囲はこれに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本願の権利範囲に属する。
【0091】
本発明で使われるすべての技術用語は、別途に定義されない以上、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するのと同じ意味で使われる。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は本発明に導入される。
【0092】
この特許は、韓国未来創造科学部の財源により韓国研究財団の支援を受けて行われた研究に基づくものである[NRF−2017R1A3B1023387]。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質を準備するステップと、
前記HIF1−αタンパク質およびSET7/9タンパク質の複合体に、前記SET7/9を活性化させると期待される試験物質を処理するステップであって、前記SET7/9の活性化は、HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化で測定されるステップと、
前記32番目の残基におけるメチル化を検出するステップと、
前記メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合において、前記32番目の残基にメチル化が増加した場合に、前記試験物質を候補物質として選別するステップとを含む、血管新生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項2】
HIF1−αタンパク質およびLSD1(Lysin Specificdemehtylase1)タンパク質を準備するステップであって、前記HIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として32番目のリシン残基にメチル化されているステップと、
前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質の複合体に、前記LSD1の活性を抑制すると期待される試験物質を処理するステップであって、前記LSD1の活性化は、前記HIF1−αタンパク質における配列番号1の配列を基準として32番目の残基の脱メチル化で測定されるステップと、
前記32番目の残基における脱メチル化を検出するステップと、
前記脱メチル化の検出結果、試験物質で処理されていない対照群と比較して、試験物質で処理された場合において、前記32番目の残基の脱メチル化が減少した場合に、前記試験物質を候補物質として選別するステップとを含む、血管新生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記HIF1−αタンパク質の30番目の残基は、アルギニンからグルタミンまたはアスパラギン残基に置換されたものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記HIF1−αタンパク質またはSET7/9タンパク質は、前記タンパク質を発現する細胞またはヒトを除く動物の形態で準備されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、HEK−293T(humanembryonic kidney cell)、HeLa(human cervical cancer cell)またはMDA−MB231(human breast cancer cell)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記メチル化は、前記HIF1−αタンパク質のヒドロキシル化および前記HIF1−αタンパク質のVHLへの結合に非依存的なものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記血管新生抑制剤は、網膜症または癌治療剤または癌の転移抑制剤として使用されるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
癌細胞でHIF1−αタンパク質の配列番号1の配列を基準として32番目の残基のメチル化を調節して動物の血管新生を調節する方法。
【請求項9】
前記癌細胞のHIF1−αタンパク質は、配列番号1の配列を基準として30番目の残基は、アルギニンからグルタミンまたはアスパラギンに置換されたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記メチル化の調節は、前記HIF1−αタンパク質とSET7/9タンパク質との相互作用、または前記相互作用を調節する物質によるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記HIF1−αタンパク質およびLSD1タンパク質は、前記タンパク質を発現する細胞またはヒトを除く動物の形態で準備されるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、HEK−293T(human embryonickidney cell)、HeLa(human cervical cancer cell)またはMDA−MB231(human breast cancer cell)である、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】