(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019500630
(43)【公表日】20190110
(54)【発明の名称】時計の脱進装置およびそのような装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/06 20060101AFI20181207BHJP
【FI】
   !G04B15/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】2018551524
(86)(22)【出願日】20161221
(85)【翻訳文提出日】20180820
(86)【国際出願番号】EP2016082258
(87)【国際公開番号】WO2017109004
(87)【国際公開日】20170629
(31)【優先権主張番号】01887/15
(32)【優先日】20151221
(33)【優先権主張国】CH
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】514299479
【氏名又は名称】デトラ ソシエテ アノニム
【住所又は居所】スイス連邦 1028 プレヴェレンジュ ル トルジ 3
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツ, シュアン マイ
【住所又は居所】スイス セアシュ−1024 エキュブラン, シュマン ド ラ シェサーズ 19
(57)【要約】
第1のがんぎ車(1)と、第2のがんぎ車(2)と、ブロッカ(3)とを備える脱進装置(400)であって、第2のがんぎ車が第1のがんぎ車とブロッカの間に介設され、特に第2のがんぎ車は、一方で第1のがんぎ車と、他方でブロッカと、接触により協働する脱進装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計輪列の車(1b、1b’、1b’’、1b*)と振動体(4、5)の間に介設された脱進装置(400、400’、400’’、400*)の動作方法であって、前記脱進装置が、第1の軸(A1、A1’、A1’’、A1*)に従って枢動する第1のがんぎ車(1、1’、1’’、1*)と、第2の軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に従って枢動する第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)と、ブロッカ(3、3’、3’’、3*)とを備える動作方法において、
− 前記第2のがんぎ車に対して、
− 前記第1のがんぎ車の第1の力(F2、F20、F21、F22)と、
− 前記ブロッカの第2の力(F3、F30、F31、F32)であって、その強さが前記第1の力の強さ未満、特にその強さが前記第1の力の強さの0.5倍未満、さらには0.3倍未満、さらには0.2倍未満である第2の力と
を同時に加える解除段階を含む方法。
【請求項2】
前記第1のがんぎ車が、前記第1のがんぎ車の軸、前記第2のがんぎ車の軸または前記振動体の軸に関してほぼ正放線方向に向かう第3の力を前記振動体に対して直接、または前記第2のがんぎ車に対して直接加える衝撃段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の動作方法。
【請求項3】
前記第2のがんぎ車が、前記第2のがんぎ車の軸、前記ブロッカの軸または前記振動体の軸に関してほぼ正放線方向に向かう第4の力を前記振動体に対して直接、または前記ブロッカに対して直接加える衝撃段階を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の動作方法。
【請求項4】
前記第1のがんぎ車から前記第2のがんぎ車または前記振動体に伝達されるトルクの大きさが、解除段階に前記第1のがんぎ車から前記第2のがんぎ車に伝達されるトルクの大きさの1.5倍超、さらには2倍超である衝撃段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の動作方法。
【請求項5】
第1のがんぎ車(1、1’、1’’、1*)と、第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)と、ブロッカ(3、3’、3’’、3*)とを備える脱進装置(400、400’、400’’、400*)であって、前記第2のがんぎ車が前記第1のがんぎ車と前記ブロッカの間に介設され、特に前記第2のがんぎ車は、一方で前記第1のがんぎ車と、他方でブロッカと、接触により協働する脱進装置。
【請求項6】
前記第1のがんぎ車、前記第2のがんぎ車および前記ブロッカが、前記脱進装置の解除段階では前記振動体(4、5)による制御を受ける前記ブロッカの力が前記第2のがんぎ車を介して前記第1のがんぎ車に伝達されるように成形され、構成されることを特徴とする、請求項5に記載の脱進装置。
【請求項7】
前記第1のがんぎ車、前記第2のがんぎ車および前記ブロッカが、前記脱進装置の解除段階では前記第1のがんぎ車の第1の力が前記第2のがんぎ車に加えられ、前記ブロッカの第2の力が前記第2のがんぎ車に加えられ、前記第2の力の強さは前記第1の力の強さを下回り、とりわけ前記第2の力の強さは前記第1の力の0.5倍未満、さらには0.3倍未満、さらには0.2倍未満であるように成形され、構成されることを特徴とする、請求項5または6に記載の脱進装置。
【請求項8】
前記第1のがんぎ車、前記第2のがんぎ車および前記ブロッカが、前記脱進装置の衝撃段階では、
− 前記第2のがんぎ車に直接加えられるか、もしくは振動体(4、5)に直接加えられる前記第1のがんぎ車の第3の力が、前記第1のがんぎ車の軸(A1、A1’、A1’’、A1*)に関して、もしくは前記第2のがんぎ車の軸(2a’、2a’’、2a*)に関して、もしくは前記振動体の軸A4、A4’、A4’’、A4*に関してほぼ正放線方向に向かい、かつ/または
− 前記ブロッカに直接加えられるか、もしくは振動体に直接加えられる前記第2のがんぎ車の第4の力が、前記第2のがんぎ車の軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に対して、もしくはブロッカの軸(A3、A3’、A3’’、A3*)に対して、もしくは前記振動体の軸(A4、A4’、A4’’、A4*)に対してほぼ正放線方向に向かうように
成形され、構成される請求項5から7のいずれか一項に記載の脱進装置。
【請求項9】
前記第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)が第2のかな(2b)であること、または前記第2のがんぎ車(2’、2’’、2*)が第2のかな(2b’、2b’’、2b*)および第2の歯車(2a’、2a’’、2a*)を備えることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の脱進装置。
【請求項10】
前記第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)が第2のかな(2b’、2b’’、2b*)を備え、前記第2のかなは、前記第1のがんぎ車と協働するように構成され、前記第1のがんぎ車、とりわけ前記第1のがんぎ車の第1の歯車は前記第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)の前記第2のかなの直径を上回る、特にその1.5倍超の、さらには2倍超の直径を有することを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の脱進装置。
【請求項11】
前記第2のがんぎ車(2、2’、2’’、2*)が、前記第2のがんぎ車の軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面(201b’、201b’’、201b*)、および/もしくは停止面(200b、200b’、200b’’、200b*)であって、前記面に対する接線と、前記停止面レベルにおける前記第2のがんぎ車の軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関する正放線ベクトル(O2、O2’、O2’’、O2*)との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度(β、β’、β’’、β*)をなすように向きづけられた停止面を備えること、かつ/または前記ブロッカが、前記ブロッカの前記軸(A3、A3’、A3’’、A3*)に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面(31b’’、301b*、311b*)、および/もしくは前記ブロッカの前記軸(A3、A3’、A3’’、A3*)に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた停止面(30b、30c、30b’、30c’、30b’’、30c’’、30b*、30c*)を備えることを特徴とする、請求項5から10のいずれか一項に記載の脱進装置。
【請求項12】
前記第2の歯車が、前記第2の車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた衝撃面(201a*)、および/もしくは前記第2の車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に対して少なくともほぼ径方向に向きづけられた停止面(200a’’)を備えること、かつ/または前記第2のかなが、前記第2の車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面(201b、201b’、201b*)、および/もしくは停止面(200b、200b’、200b’’、200b*)であって、前記面に対する接線と、前記停止面レベルにおける前記第2の車の軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関する正放線ベクトル(O2、O2’、O2’’、O2*)との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度(β、β’、β’’、β*)をなすように向きづけられた停止面を備えることを特徴とする、請求項9または10に記載の脱進装置。
【請求項13】
前記第1のがんぎ車、前記第2のがんぎ車および前記ブロッカが、前記脱進装置の解除段階には、前記第1のがんぎ車の前記第2のがんぎ車に対する第1の接点における第1の力(F2、F20、F21、F22)が前記第1の接点における前記第2のがんぎ車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)に関する径方向ベクトル(D、D’、D’’、D*)との間に50°未満、さらには30°未満、さらには20°未満の角度(α、α’、α’’、α*)を形成するように成形され、構成されること、および/または前記第1のがんぎ車、前記第2のがんぎ車および前記ブロッカが、解除段階には、
− 前記第2のがんぎ車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)を始点とする半直線であって、前記第1のがんぎ車の第1の力(F2、F20、F21、F22)が前記第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、
− 前記第2のがんぎ車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)を始点とする半直線であって、前記第2のがんぎ車の前記軸(A1、A1’、A1’’、A1*)を通る半直線とが、
10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成するように、
かつ/もしくは、
− 前記第1のがんぎ車の前記軸(A1、A1’、A1’’、A1*)を始点とする半直線であって、前記第2のがんぎ車の前記軸(A2、A2’、A2’’、A2*)を通る半直線と、
− 前記第1のがんぎ車の前記軸(A1、A1’、A1’’、A1*)を始点とする半直線であって、前記第1のがんぎ車の第1の力(F2、F20、F21、F22)が前記第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とが、
5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成するように、
成形され、構成されることを特徴とする、請求項5から12のいずれか一項に記載の脱進装置。
【請求項14】
請求項5から13のいずれか一項に記載の脱進装置を含む時計ムーブメント(500、500’、500’’、500*)、とりわけ時計輪列(1b’、1b’’、1b*)、振動体(4、5)および請求項5から13のいずれか一項に記載の脱進装置を含む時計ムーブメントであって、前記脱進装置が前記時計輪列と前記振動体の間に介設された、時計ムーブメント。
【請求項15】
請求項5から13のいずれか一項に記載の脱進装置または請求項14に記載の時計ムーブメントを含む時計(600、600’、600’’、600*)。
【請求項16】
トルクを伝達するための、特に可変トルクおよび/または香箱からのトルクをがんぎ歯車(2a’、2aa’’、2a*)に伝達するための時計用の機械的伝達装置であって、
− 停止面(200b’、200b’’、200b*)および衝撃面(201b’、201b’’、201b*)を有するかな(2b’、2b’’、2b*)であって、前記がんぎ歯車(2a’、2a’’、2a*)と同じ軸に取り付けられたかなと、
− 香箱からのトルクを受ける歯車または第1のがんぎ車(1’、1’’、1*)と
を備える機械的伝達装置において、
衝撃段階に前記歯車または前記第1のがんぎ車(1’、1’’、1*)によって前記かな(2b’、2b’’、2b*)に伝達されるトルクが解除段階に前記歯車(1’、1’’、1*)によって前記かな(2b’、2b’’、2b*)に伝達されるトルクよりも明らかに高くなるように前記停止面(200b’、200b’’、200b*)および前記衝撃面(201b’、201b’’、201b*)が構成されることを特徴とする機械的伝達装置。
【請求項17】
前記面(200b’、200b’’、200b*)に対する法線と直線(D’、D’’、D*)の間の前記角度(α’、α’’、α*)が0から60°であることを特徴とする、請求項16に記載の機械的伝達装置。
【請求項18】
前記かな(2b’、2b’’、2b*)の歯数が前記がんぎ歯車(2a’、2a’’、2a*)の歯数と同じであることを特徴とする、請求項16または17に記載の機械的伝達装置。
【請求項19】
前記かな(2b’、2b’’、2b*)の歯数が前記がんぎ歯車(2a’、2a’’、2a*)の歯数の2倍であることを特徴とする、請求項16または17に記載の機械的伝達装置。
【請求項20】
前記がんぎ歯車(2a’、2a’’、2a*)の歯数が10以下であることを特徴とする、請求項16から19のいずれか一項に記載の機械的伝達装置。
【請求項21】
請求項16から20のいずれか一項に記載の機械的伝達装置を装備した時計(600、600’、600’’、600*)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計の脱進装置の動作方法に関する。本発明はさらに、時計の脱進装置に関する。本発明はさらに、そのような装置を備える時計ムーブメントに関する。本発明は最後に、そのような装置またはそのような時計ムーブメントを備える時計に関する。本発明はまた、伝達装置、およびそのような伝達装置を備える時計に関する。
【背景技術】
【0002】
スイスレバー脱進機や、特許文献1などに記載されているロビン型脱進機のような既知の脱進装置は従来、がんぎ車およびブロッカを備えている。がんぎ車は、時計ムーブメントの時計輪列と係合するか、またはその一部をなす第1のがんぎかなと、振動体、とりわけてん輪−ひげぜんまい、特にてん輪−ひげぜんまいの振り石と接触して協働するように設けられたブロッカに対してそれ自体も接触して協働するように設けられたがんぎ歯車とからなる。解除段階では、振り石がブロッカをブロッカのフォークを通して直接動かすと、今度はブロッカががんぎ歯車に対して直接作用する。こうした脱進装置の効率は30%から40%と、比較的低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第122617号
【特許文献2】国際公開第2013182243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の欠点を是正し、従来技術で既知の時計の脱進装置を改善することのできる時計の脱進装置を提供することにある。とりわけ、本発明は機械効率が改善された脱進装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかわる動作方法は請求項1によって規定される。
【0006】
動作方法の様々な実施形態は従属請求項2から4によって規定される。
【0007】
本発明にかかわる脱進装置は請求項5によって規定される。
【0008】
脱進装置の様々な実施形態は従属請求項6から13によって規定される。
【0009】
本発明にかかわる時計ムーブメントは請求項14によって規定される。
【0010】
本発明にかかわる時計は請求項15によって規定される。
【0011】
本発明にかかわる伝達装置は請求項16によって規定される。
【0012】
伝達装置の様々な実施形態は従属請求項17から20に規定される。
【0013】
本発明にかかわる時計は請求項21によって規定される。
【0014】
添付の図面は本発明による時計の2つの実施形態を例として示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の停止位置にある脱進機の第1の実施形態の第1の変形形態を含む、本発明による時計の第1の実施形態の模式図である。
【図2】第2の位置にある脱進機の第1の実施形態の第1の変形形態の図である。
【図3】第3の停止位置にある脱進機の第1の実施形態の第1の変形形態の図である。
【図4】第4の位置にある脱進機の第1の実施形態の第1の変形形態の図である。
【図5】第5の衝撃位置にある脱進機の第1の実施形態の第1の変形形態の図である。
【図6】脱進機の第1の実施形態のブロッカの第1の変形形態の詳細図である。
【図7】脱進機の第1の実施形態のブロッカの第2の変形形態の詳細図である。
【図8】脱進機の第1の実施形態のブロッカの第3の変形形態の詳細図である。
【図9】第1の停止位置にある脱進機の第2の実施形態の第1の変形形態を含む、本発明による時計の第2の実施形態の第1の変形形態の模式図である。
【図10】図9と同じ図中に接触力を示した図である。
【図11】第2の衝撃位置にある脱進機の第2の実施形態の第1の変形形態の図である。
【図12】第1の停止位置にある脱進機の第2の実施形態の第2の変形形態を含む、本発明による時計の第2の実施形態の第2の変形形態の模式図である。
【図13】第2の衝撃位置にある脱進機の第2の実施形態の第2の変形形態の図である。
【図14】第1の停止位置にある脱進機の第2の実施形態の第3の変形形態を含む、本発明による時計の第2の実施形態の第3の変形形態の模式図である。
【図15】第2の衝撃位置にある脱進機の第2の実施形態の第3の変形形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
時計600の第1の実施形態について、図1から8を参照しながら以下に説明する。時計はたとえば携帯時計であり、とりわけ腕時計である。時計は、時計ムーブメント500、とりわけ機械式ムーブメントの第1の実施形態を含む。ムーブメントは、輪列と振動体4、5の間に配設された脱進装置400の第1の実施形態の第1の変形形態を含む。
【0017】
輪列は、香箱のような動力源を脱進機に連結するために設けられる。そのため、輪列は動力源のエネルギーを脱進機に伝達することを可能にする。一方、脱進機は、そのエネルギーを振動体に供給してその振動が維持されるようにする。
【0018】
振動体はたとえばてん輪4−ひげぜんまい5のタイプの振動体である。てん輪は軸A4に従って枢動する。
【0019】
脱進装置400は、軸A1に従って枢動する第1のがんぎ車1、軸A2に従って枢動する第2のがんぎ車2、および軸A3に従って枢動するブロッカ3を主に備える。第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の解除段階では、振動体4、5による制御を受けるブロッカの力が第2のがんぎ車を介して第1のがんぎ車に伝達されるように成形され、構成される。解除段階は特に、振動体4、5による制御下での第2の車2の歯列からのブロッカのブロック手段の解除段階を含む。すなわち、ブロッカの位置は振動体の位置によって決定される。
【0020】
第1のがんぎ車1は、直接であるとないとにかかわらず時計振動体に作用し得る第1のがんぎ歯車1aを備える。時計輪列の第1のかな1bは第1のがんぎ歯車1aと回転一体とされ、特に第1のがんぎ歯車1aに固定され、とりわけ第1のがんぎ歯車1aに同軸に固定される。
【0021】
脱進装置の第1の実施形態では、第2のがんぎ車は単一かつ唯一の第2のがんぎかな2bを備える。
【0022】
第1の実施形態の特別な変形形態では、脱進装置は、ロビン型脱進装置とほぼ同様の動作原理を有する直接衝撃式の脱進装置である。その脱進装置はたとえばてん輪4−ひげぜんまい5のタイプの振動体と協働するようにすることができる。
【0023】
第1のがんぎ歯車1aは、その1本の歯であって、脱進装置の各衝撃段階にてん輪4の振り座40の衝撃つめ石40bに対して作用する歯を介して、てん輪4−ひげぜんまい5を直接動かすように設けられる。それにより、てん輪は衝撃段階に第1のがんぎ歯車1aから直接エネルギーを受け取る。それにより、間接衝撃式脱進装置のブロッカによって生じる摩擦損失を防ぐ。そこで、第1のがんぎ歯車1aは第1のかな1bを介して時計ムーブメントの動力源と運動学的に連結される。
【0024】
てん輪によって供給しなければならない解除エネルギーを可能な限り最小化するため、第1のがんぎ歯車1aは、第1の車1とブロッカ3の間に介設された第2のがんぎ車2bを介してブロッカ3によってブロックされることができる。そうするために、ブロッカ、第1のがんぎ車および第2のがんぎ車の構成は、解除段階には、第2のがんぎ車とブロッカ3の間の力が第1のがんぎ車と第2のがんぎ車の間の力よりも明らかに小さくなるタイプのものとする。より具体的には、ブロッカ、第1のがんぎ車および第2のがんぎ車の構成は、第2のがんぎかな2bとブロッカ3の間の力が第1のがんぎ歯車1aと第2のがんぎかな2bの間の力よりも小さくなるようにする。
【0025】
図1は脱進装置の第1の停止位置を示している。この図では、てん輪4の振り座40は反時計回りに回転し、てん輪4の振り座40の解除用つめ石または振り石40aはブロッカ3のフォーク3aから遠ざかる。歯車1aの歯10aは、動力源によって生じるトルクの作用により、かな2bの歯20bの停止面200bに対して力F2を及ぼす。軸A2のほぼ近傍を通る力F2は第2のかな2bを反時計回りに枢動させる傾向を有するトルクを発生させ、それによってブロッカ3のブロック手段3b − 特につめ石3b − の停止面30bに対するかな2bの歯21bの押力F3を生じる。停止面30bは力F3の方向がほぼ軸A3を通るように構成される。これらの力は、それに続く解除段階では摩擦角を除いて同じである。
【0026】
力ベクトルF2と、歯車1a、かな2b間の接点を始点とする半直線であって軸A2を通る半直線との間に形成される(または、力ベクトルF2と、軸A2に関して径方向のベクトルDであって、歯車1a、かな2b間の接点を始点とするベクトルDとの間に形成される)角度αは明らかに50°未満、特に30°未満、さらには20°未満であることがわかる。
【0027】
停止時、摩擦を無視すると:
F3=F2×(DO2/DO3)
ただし、
F2およびF3:面200bおよび30bのそれぞれに対する押力の強さの値、
DO2:軸A2に対する力F2のレバーアームの値、
DO3:軸A2に対する力F3のレバーアームの値である。
DO2<<DO3であることから、力F3の強さは力F2の強さよりも明らかに小さいことがわかる。
【0028】
図2は、図1に示した第1の停止位置に続く解除段階直後の脱進装置を示している。図2では、てん輪4の振り座40は時計回りに回転している。解除段階では、てん輪4の振り座40の解除つめ石40aはブロッカ3のフォーク3aと接触しており、ブロッカ3を反時計回りに枢動させている。図2では、この接触およびこの動作が保たれている。この動作により、かな2bの歯21bが停止面30bから解放されている。この解除の際に摩擦に打ち勝って車およびブロッカを動かすに至るまでにてん輪によって供給されるエネルギーは、ロビン型の従来の脱進装置で供給されるエネルギーよりも明らかに小さい。
【0029】
このエネルギー消費の少なさは、力F3の強さが押力F2の強さよりも明らかに小さいことによって説明される。この力F3の強さは、車1、2およびブロッカ3の慣性が極力最小化されることによって可能な限り最小化される。好ましくは、かな2bの全直径D2bは可能な限り小さくして、かな2bの慣性およびブロッカ3の寸法を極力最小化する。そのため、好ましくは、かな2bの全直径D2bは第1の歯車1aの全直径D1aよりも明らかに小さい。たとえば、かな2bの全直径D2bは第1の歯車1aの全直径D1aの30%未満、さらには第1の歯車1aの全直径D1aの20%未満である。
【0030】
解除段階後、かな2bは反時計回りに回転する。このかなの歯22bはブロッカ3の第2のブロック手段3cの停止面30cに接近し、その面上で第2の停止位置で停止する。
【0031】
図3はその第2の停止位置を表している。この図では、てん輪4の振り座40のつめ石40aはブロッカ3のフォーク3aから遠ざかる。歯車1aの歯10aは、動力源のトルクの作用により、かな2bの歯20bの停止面200bに対して力F2*を及ぼす。軸A2のほぼ近傍を通る力F2*はかな2bを反時計回りに枢動させる傾向を有するトルクを発生させ、それによってブロッカ3のつめ石3cの停止面30cに対する歯22bの押力F3*を生じる。停止面30cは力F3*の方向がほぼ軸A3を通るように構成される。これらの力は、それに続く解除段階では摩擦角を除いて同じである。
【0032】
停止時、摩擦を無視すると:
F3*=F2*×(DO2*/DO3*)
ただし、
F2*およびF3*:面200bおよび30cのそれぞれに対する押力の強さの値、
DO2*:軸A2に対する力F2*のレバーアームの値、
DO3*:軸A2に対する力F3*のレバーアームの値である。
【0033】
DO2*<<DO3*であることから、力F3*の強さは力F2*の強さよりも明らかに小さいことがわかる。
【0034】
図4は、図3に示した第2の停止位置に続く解除段階直後の脱進装置を表している。図4では、てん輪の振り座は反時計回りに回転している。解除段階では、てん輪の振り座の解除つめ石40aはブロッカ3のフォーク3aと接触しており、ブロッカ3を時計回りに枢動させている。図4では、この接触およびこの動作が保たれている。この動作により、かな2bの歯22bが停止面30cから解放されている。前述したところと同様の理由から、この解除の際に摩擦に打ち勝って車およびブロッカが動き出すところに持って行くためにてん輪によって供給されるエネルギーは、ロビン型の従来の脱進装置で供給されるエネルギーよりも明らかに小さい。
【0035】
この解除後、第1のがんぎ歯車1aは加速して第2のかな2bを反時計回りに押し、とりわけ接線方向に押す。同時に、がんぎ歯車の歯11aはてん輪の振り座の衝撃つめ石40bに接近し、衝撃段階でつめ石40bに対する歯11aの作用によっててん輪にエネルギーを伝達する。好ましくは、歯11aからつめ石40bに伝達される力は軸A1およびA4に対してほぼ接線方向である。
【0036】
図5は衝撃段階の終盤における脱進機の位置を示している。図5では、歯11aとつめ石40bはそれぞれの端部によって接しており、かな2bの歯20bはブロッカ3のつめ石3bの停止面30bに接近している。歯20bがブロッカ3に接触し、歯10aが第2のがんぎ車2に接触するに至ると、図1に示した構成に戻る。
【0037】
第1の実施形態のこの変形形態による脱進装置は非常に高い効率を有するが、それは、解除時にてん輪によって供給されるエネルギーを著しく減らすことができるためであり、また、とりわけ第1のがんぎ車からてん輪に直接ほぼ接線方向に伝達される力を媒介とすることにより、がんぎ歯車1aからてん輪への直接的な衝撃によってエネルギー伝達の効率を高めることができるためである。このような脱進装置のもう1つの利点は、解除時にてん輪によって伝達しなければならないエネルギーが小さいことによるてん輪−ひげぜんまいの等時性の保持、したがってその最適化にある。
【0038】
好ましくは、ブロッカ3のブロック手段3b、3cの停止面30b、30cは、それらの面に対するかな2bの歯20bの位置決め精度が保証されるように凹形をなす。たとえば、それらの凹面は、図6に示すように好ましくは120°から170°の角度をなす2つの傾斜面によってそれぞれ形成されることができる。
【0039】
脱進装置の第2の変形形態では、ブロッカ3は、力F2、F2*を補う形で、かな2bを第1のがんぎ歯車1aと反対向きに回転させることのできる突起3d、3eなどの機械的伝達手段3d、3eをさらに備えることができる。それにより、これらの伝達手段は、第2のがんぎ車を反時計方向に回転させるために力F2、F2*の作用を補う作用を及ぼすことができる。作用は、たとえば、第2のがんぎ車の停止面レベルで伝達手段を介してブロッカによって及ぼされる。第2の変形形態による脱進装置のブロッカの一例はたとえば図7に示されている。
【0040】
脱進装置の第3の変形形態では、ブロッカ3は、図8に示すようなてん輪の補完的振り座41と協働して、衝撃を受けたときにブロッカが意図に反した動きをすることがないように設けられた、けん先3fをさらに備えることができる。この第3の変形形態は、第1および第2の変形形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0041】
第1の実施形態の各種変形形態では、脱進機の各要素の幾何学形状は以下に記すようなものであることができる。
【0042】
第1のがんぎ車1は複数の歯10a、特に20本の歯を備える。歯は切っ先の形である。歯は、第1の車の軸に関する径方向との間に20から45°の角度をなす方向で下流側(歯の動きを基準に)に向きづけられる。それぞれの歯の自由端はノミの形であることができる。
【0043】
第2のがんぎ車2は複数の歯20b、特に4本の歯を備える。歯は約45°の扇形にほぼ沿って広がる。それぞれの歯は、第2の車の軸A2に関する正放線方向(direction orthoradiale)との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度βを形成するように向きづけられた停止面200bを備える。角度βは、停止面における接線と軸A2に関する正放線ベクトルO2の間で測った鋭角であって、歯車1a、かな2b間の接点を頂点とする鋭角である。この向きづけは、停止段階および解除段階でブロッカに対して第2の車を回転させる傾向を有する小さなトルクを生み出すことができる。それぞれの歯は、軸A2に関してほぼ径方向に向きづけられた少なくとも1つの側面202bによっても制限される。
【0044】
そのため、角度αと角度βは摩擦角(歯車1a、かな2b間の接点レベルにおける摩擦角)を除いて同じである。
【0045】
ブロッカ3は停止面30b、30cを備える。ブロッカの停止面は軸A3に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられている。
【0046】
停止段階では、歯10aの端部は第2のがんぎ車の歯20bの停止面200bに押支され、第2のがんぎ車の別の歯21bの側面202bはブロッカの停止面30b、30cのいずれかに押支される。
【0047】
有利には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第2のがんぎ車の軸A2を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F2が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、第2のがんぎ車の軸A2を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A1を通る半直線とは、10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成する。
【0048】
有利には、かつ補完的または代替的には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第1のがんぎ車の軸A1を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A2を通る半直線と、第1のがんぎ車の軸A1を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F2が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とは、5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成する。
【0049】
時計600’、600’’、600*の第2の実施形態について、図9から15を参照しながら以下に説明する。時計はたとえば携帯時計であり、とりわけ腕時計である。時計は、時計ムーブメント500’、500’’、500*、とりわけ機械式ムーブメントの第2の実施形態を含む。ムーブメントは、輪列と振動体4、5の間に配設された脱進装置400’、400’’、400*の第2の実施形態を含む。
【0050】
輪列は、香箱のような動力源を脱進機に連結するために用意されている。したがって、輪列は動力源のエネルギーを脱進機に伝達することを可能にする。一方、脱進機は、そのエネルギーを振動体に供給してその振動が維持されるようにすることができる。
【0051】
振動体はたとえばてん輪4−ひげぜんまい5のタイプの振動体である。てん輪は軸A4’、A4’’、A4*に従って枢動する。
【0052】
脱進装置400’、400’’、400*は、軸A1’、A1’’、A1*に従って枢動する第1のがんぎ車1’、1’’、1*、軸A2’、A2’’、A2*に従って枢動する第2のがんぎ車2’、2’’、2*および軸A3’、A3’’、A3*に従って枢動するブロッカ3’、3’’、3*を主に備える。第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の解除段階では振動体4、5による制御を受けるブロッカの力が第2のがんぎ車を介して第1のがんぎ車に伝達されるように成形され、構成される。
【0053】
第1のがんぎ車は、時計振動体に間接的に作用し得る第1のがんぎ歯車1a’、1a’’、1a*を備える。時計輪列の第1のかな1b’、1b’’、1b*は第1のがんぎ歯車1a’、1a’’、1a*と回転一体に設けられ、特に第1のがんぎ歯車1a’、1a’’、1a*に固定され、とりわけ第1のがんぎ歯車1a’、1a’’、1a*に同軸に固定される。第1の変形形態では、脱進装置は、ロビン型脱進装置のものと同じと見なし得る動作原理を有する直接衝撃式の脱進装置である。その脱進装置はたとえばてん輪4−ひげぜんまい5のタイプの振動体と協働するようにすることができる。
【0054】
脱進装置の第2の実施形態では、第2のがんぎ車は第2のがんぎかな2b’、2b’’、2b*および第2の歯車2a’、2a’’、2a*を備える。第2の歯車2a’、2a’’、2a*は第2のがんぎかな2b’、2b’’、2b*と一体であり、特に第2の歯車2a’、2a’’、2a*は第2のがんぎかな2b’、2b’’、2b*に対して、または両者は主客逆転して、固定される。ブロッカは第2のがんぎかな2b’、2b’’、2b*との間で、また両者は主客逆転して、第2のがんぎ歯車2a’、2a’’、2a*を介して協働する。第1の実施形態による脱進装置と同様に、第2のかな2b’、2b’’、2b*は、時計ムーブメントの時計輪列の第1のかな1b’、1b’’、1b*と回転一体に設けられた第1の歯車1a’、1a’’、1a*と直接協働するようにされている。
【0055】
第2の実施形態の第1の変形形態では、脱進装置は直接衝撃式である。その動作原理はロビン型脱進装置の場合と同じと見なし得るものである。脱進装置はたとえばてん輪−ひげぜんまいのタイプの振動体と協働するようにすることができる。
【0056】
第2の実施形態の第1の変形形態では、てん輪−ひげぜんまいに対する衝撃が第2のがんぎ歯車2a’の歯20aによって行われる点で、脱進装置は第1の実施形態のものとは異なっている。
【0057】
解除段階では、脱進装置は第1の実施形態と同等の動作を示す。
【0058】
この第1の変形形態では、第2の歯車2a’は第2のかな2b’と同じ歯数、すなわち6を持つ。
【0059】
図9は、そのような脱進装置の解除段階の前の停止位置であって、図3に示した第1の実施形態による装置のものと同じと見なし得る位置を示している。
【0060】
歯車1a’の歯10a’は、動力源のトルクの作用により、かな2b’の歯20b’の停止面200b’に対して力F20を及ぼす。軸A2’のほぼ近傍を通る力F20はかな2b’を反時計回りに枢動させる傾向を有するトルクを発生させ、それによってブロッカ3’のブロック手段3c’の停止面30c’に対する歯20a’の押力F30を生じる。停止面30c’は力F30の方向がほぼ軸A3’を通るように構成される。これらの力は、それに続く解除段階では摩擦角を除いて同じである。
【0061】
停止時、摩擦を無視すると:
F30=F20×(DO20/DO30)
ただし、
F20およびF30:面200b’および30c’のそれぞれに対する押力の強さの値
DO20:軸A2’に対する力F20のレバーアームの値、
DO30:軸A2’に対する力F30のレバーアームの値。
【0062】
DO20<<DO30であることから、力F30の強さは力F20の強さよりも明らかに小さいことがわかる。
【0063】
解除段階に摩擦に打ち勝って車およびブロッカを動かすに至るまでにてん輪によって供給されるエネルギーは、ロビン型の従来の脱進装置で供給されるエネルギーよりも明らかに小さい。
【0064】
このエネルギー消費の少なさは、力F30の強さが押力F20の強さよりも明らかに小さいことによって説明される。
【0065】
ここでも、力ベクトルF20と、歯車1a’、かな2b’間の接点を始点とする半直線であって、軸A2’を通る半直線との間に形成される(または、力ベクトルF20と、軸A2’に関して径方向のベクトルD’であって、歯車1a’、かな2b’間の接点を始点とするベクトルD’の間に形成される)角度α’は明らかに50°未満、さらには30°未満、さらには20°未満であることがわかる。
【0066】
この力F30の強さは、車1’、2’およびブロッカ3’の慣性が極力最小化されることによって可能な限り最小化される。好ましくは、かな2b’の全直径D2b’は可能な限り小さくして、かな2b’の慣性およびブロッカ3’の寸法を極力最小化する。そのため、好ましくは、かな2b’の全直径D2b’は第1の歯車1a’の全直径D1a’を明らかに下回り、特に第1の歯車1a’の全直径D1a’の50%未満、さらにはその40%未満である。
【0067】
要素1a’および2b’の歯列の輪郭は、衝撃段階に第1の歯車1a’から第2のかな2b’に伝達されるトルクが解除時に伝達されるトルクを明らかに上回るように成形されることもできる。
【0068】
図9に描かれた停止段階に続く解除段階に入ると、かな2b’レベルにおけるトルクC2dは、摩擦を無視した場合、歯車1a’レベルにおけるトルクC1dとの関係で次のように表すことができる。
C2d=C1d×(DO20/DO10)
ただし、
DO10:軸A1’に対する力F20のレバーアームの値、
DO20:軸A2’に対する力F20のレバーアームの値。
【0069】
図11に示すような衝撃段階に入ると、第2のかな2b’の衝撃面201b’’は伝達される力F20’が歯車1a’、かな2b’間の接点の軌跡に対してほぼ接線方向となるように向きづけられる。換言すれば、衝撃段階に入った時点で、力F20’は、軸A1’を始点とする半直線であって、軸A2’を通る半直線に対してほぼ垂直をなす。
【0070】
この衝撃段階に入ると、かな2b’レベルにおけるトルクC2iは、摩擦を無視した場合、歯車1a’レベルにおけるトルクC1iとの関係で次のように表すことができる。
C2i=C1i×(DO20’/DO10’)
ただし、
DO10’:軸A1’に対する力F20’のレバーアームの値、
DO20’:軸A2’に対する力F20’のレバーアームの値。
【0071】
DO20/DO10<<DO20’/DO10’であり、C1d=C1iであることから、衝撃段階にかな2b’に伝達されるトルクC2iは解除段階にかな2b’に伝達されるトルクC2dを明らかに上回る。そのため、解除段階にてん輪によって供給しなければならないエネルギーは最小化され、衝撃段階に動力源によって脱進装置に伝達されるエネルギーは最大化される。そのため、このような脱進装置は、従来技術における既知の脱進装置と比べて、30〜40%程度という標準的な平均効率と比べて120〜160%程度と、最大化された効率を有するという利点を持つ。このような装置は、振動体の外乱を最小化するという利点も有しており、それによって、従来技術の既知の脱進装置と協働する振動体と比べて最適化された等時性を持つ振動体の実施が可能となる。
【0072】
第2の実施形態の第1の変形形態では、脱進機の各要素の幾何学形状は以下に記すようなものであることができる。
【0073】
第1のがんぎ車1’は複数の歯10a’、特に20本の歯を備える。歯は、第1の車の軸A1’に関する径方向との間にたとえば20°から45°の角度をなす方向で(歯の動きに関して)下流側に向きづけられる。それぞれの歯の自由端はノミの形であることができる。
【0074】
第2のがんぎかな2b’は複数の歯20b’、特に6本の歯を備える。歯は約30°の扇形にほぼ沿って広がる。それぞれの歯は、第2の車の軸A2’に関する正放線方向O2’との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度β’を形成するように向きづけられた停止面200b’を備える。角度β’は、停止面に対する接線と軸A2に関する正放線ベクトルO2’との間で測った鋭角であって、歯車1a’、かな2b’間の接点を頂点とする鋭角である。この向きづけは、停止段階および解除段階で第2の車をブロッカに対して回転させる傾向を持つ小さなトルクを生み出すことができる。それぞれの歯は、軸A2’に関してほぼ径方向に向きづけられた少なくとも1つの側面によっても制限される。その少なくとも1つの側面は衝撃面201b’である。
【0075】
したがって、角度α’と角度β’は摩擦角(歯車1a’、かな2b’間の接点レベルにおける摩擦角)を除いて同じである。
【0076】
ブロッカ3は停止面30b’、30c’を備える。ブロッカの停止面は軸A3’に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられる。
【0077】
停止段階では、歯10a’の端部は第2のがんぎ車の歯20b’の停止面200b’に押支され、第2のがんぎ車の歯20a’の端部はブロッカの停止面30b’、30c’に押支される。
【0078】
有利には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第2のがんぎ車の軸A2’を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F20が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、第2のがんぎ車の軸A2’を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A1’を通る半直線とは、10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成する。
【0079】
有利には、かつ補完的または代替的には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第1のがんぎ車の軸A1’を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A2’を通る半直線と、第1のがんぎ車の軸A1’を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F20が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とは、5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成する。
【0080】
図12および13に図示した第2の実施形態の第2の変形形態では、脱進装置は間接衝撃式である。その基本的な動作原理はスイスレバー脱進装置の場合と同じと見なし得るものである。第2の実施形態の第2の変形形態による脱進装置は、たとえばてん輪−ひげぜんまいのタイプの振動体と協働するようにすることができる。
【0081】
このような脱進装置は、てん輪−ひげぜんまいに対する衝撃が、てん輪4’’、特にてん輪の振り座40’’、とりわけてん輪の振り石40a’’のみと協働するようにされたフォーク3a’’を持つブロッカ3’’を通して行われるという点で第2の実施形態の第1の変形形態とは異なる。
【0082】
図12は、そのような脱進装置の解除段階の前の停止位置を示している。
【0083】
歯車1a’’の歯10a’’は、動力源のトルクの作用により、かな2b’’の歯20b’’の停止面200b’’に対して力F21を及ぼす。軸A2’’のほぼ近傍を通る力F21はかな2b’’を反時計回りに枢動させる傾向を有するトルクを発生させ、それによってブロッカ3’’のブロック手段3c’’の停止面30c’’に対する歯20a’’の押力F31を生じる。停止面30c’’は力F31の方向がほぼ軸A3’’を通るように構成される。これらの力は、それに続く解除段階では摩擦角を除いて同じである。
【0084】
停止時、摩擦を無視すると:
F31=F21×(DO21/DO31)
ただし、
F21:面200b’’に対する押力の強さの値、
F31:面30c’’に対する押力の強さの値、
DO21:軸A2’’に対する力F21のレバーアームの値、
DO31:軸A2’’に対する力F31のレバーアームの値。
【0085】
DO21<<DO31であることから、力F31の強さは力F21の強さよりも明らかに小さいことがわかる。
【0086】
したがって、解除の際に摩擦に打ち勝って車およびブロッカを動かすに至るまでにてん輪によって供給されるエネルギーは、従来のスイスレバー脱進装置で供給されるエネルギーよりも明らかに小さい。
【0087】
このエネルギー消費の少なさは、力F31の強さが押力F21の強さよりも明らかに小さいことによって説明される。
【0088】
ここでも、力ベクトルF21と、歯車1a’’、かな2b’’間の接点を始点とする半直線であって、軸A2’’を通る半直線との間に形成される(または、力ベクトルF21と、軸A2’’に関して径方向のベクトルD’’であって、歯車1a’’、かな2b’’間の接点を始点とするベクトルD’’との間に形成される)角度α’’は明らかに50°未満、さらには30°未満、さらには20°未満であることがわかる。
【0089】
この力F31の強さは、車1’’、2’’およびブロッカ3’’の慣性が極力最小化されることによって可能な限り最小化される。好ましくは、かな2b’’の全直径D2b’’は可能な限り小さくしてかな2b’’の慣性およびブロッカ3’’の寸法を極力最小化する。そのため、好ましくは、かな2b’’の全直径D2b’’は第1の歯車1a’’の全直径D1a’’を明らかに下回り、特に第1のがんぎ歯車1a’’の全直径D1a’’の60%未満、さらには第1のがんぎ歯車1a’’の全直径D1a’’の50%未満である。
【0090】
要素1a’’および2b’’の歯列の輪郭は、衝撃段階に第1の歯車1a’’から第2のかな2b’’に伝達されるトルクが解除時に伝達されるトルクを明らかに上回るように成形されることもできる。
【0091】
図12に示す停止段階に続く解除段階に入ると、かな2b’’レベルにおけるトルクC2d’は、摩擦を無視した場合、歯車1a’’レベルにおけるトルクC1d’との関係で次のように表すことができる。
C2d’=C1d’×(DO21/DO11)
ただし、
DO11:軸A1’’に対する力F21のレバーアームの値、
DO21:軸A2’’に対する力F21のレバーアームの値。
【0092】
図示しない衝撃段階に入ると、第2のかな2b’’の衝撃面201b’’は、第1のがんぎ車によって第2のがんぎ車に伝達される力F21’が歯車1a’’、かな2b’’間の接点の軌跡に対してほぼ接線方向となるように向きづけられる。換言すれば、衝撃段階に入った時点で、力F21’は、軸A1’’を始点とする半直線であって、軸A2’’を通る半直線に対してほぼ垂直をなす。
【0093】
この衝撃段階に入ると、かな2b’’レベルにおけるトルクC2i’は、摩擦を無視した場合、歯車1a’’レベルにおけるトルクC1i’との関係で次のように表すことができる。
C2i’=C1i’×(DO21’/DO11’)
ただし、
DO11’:軸A1’’に対する力F21’のレバーアームの値、
DO21’:軸A2’’に対する力F21’のレバーアームの値。
【0094】
DO21/DO11<<DO21’/DO11’およびC1i’=C1d’であることから、衝撃段階にかな2b’’に伝達されるトルクC2i’は解除段階にかな2b’’に伝達されるトルクC2d’を明らかに上回る。そのため、解除段階にてん輪によって供給しなければならないエネルギーは最小化され、衝撃段階に動力源によって脱進装置に伝達されるエネルギーは最大化される。そのため、このような脱進装置は、従来技術の既知の脱進装置と比べて、30〜40%程度という標準的な平均効率と比べて120〜160%程度と、最大化された効率を有するという利点を持つ。このような装置は、振動体に対する外乱を最小化するという利点も有しており、それによって、従来技術の既知の脱進装置と協働する振動体と比べて最適化された等時性を持つ振動体の実施が可能となる。
【0095】
第2の実施形態の第2の変形形態では、脱進機の各要素の幾何学形状は以下に記すようなものであることができる。
【0096】
第1のがんぎ車1’’は複数の歯10a’’、特に20本の歯を備える。歯は、第1の車の軸A1’’に対する径方向との間にたとえば20°から45°の角度をなす方向で(歯の動きに関して)下流側に向きづけられる。それぞれの歯の自由端はノミの形であることができる。
【0097】
第2のがんぎかな2b’’は複数の歯20b’’、特に10本の歯を備える。歯は約10°の扇形にほぼ沿って広がる。それぞれの歯は、第2の車の軸A2’’に関する正放線方向O2’’との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度β’’を形成するように向きづけられた停止面200b’’を備える。角度β’’は、停止面に対する接線と軸A2’’に関する正放線ベクトルO2’’との間で測った鋭角であって、歯車1a、かな2b間の接点を頂点とする鋭角である。この向きづけは、停止段階および解除段階でブロッカに対して第2の車を回転させる傾向を持つ小さなトルクを生み出すことができる。それぞれの歯は、軸A2’’に関してほぼ径方向に向きづけられた2つの側面によっても制限される。その2つの側面のうちの1つは衝撃面201b’’である。
【0098】
したがって、角度α’’と角度β’’は摩擦角(歯車1a’’、かな2b’’間の接点レベルにおける摩擦角)を除いて同じである。
【0099】
第2のがんぎ歯車2a’’は複数の歯20a’’、特に5本の歯を備える。歯は腕の形である。第2の歯車のそれぞれの歯は、その歯がブロッカと接触するときにブロッカの軸A3’’に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた停止面200a’’を備える。第2の歯車のそれぞれの歯は、その歯がブロッカと接触するときにブロッカの軸A3’’に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた衝撃面201a’’によっても制限される。
【0100】
ブロッカ3は、ブロッカの軸A3’’に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた停止面30b’’、30c’’と、ブロッカの軸A3’’に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面31b’’、31c’’とを備える。
【0101】
停止段階および解除段階では、歯10a’’の端部は第2のかなの歯20b’’の停止面200b’’に押支され、第2の歯車の歯20a’’の停止面200a’’はブロッカの停止面30b’’、30c’’に押支される。
【0102】
有利には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第2のがんぎ車の軸A2’’を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F21が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、第2のがんぎ車の軸A2’’を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A’’1を通る半直線とは、10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成する。
【0103】
有利には、かつ補完的または代替的には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第1のがんぎ車の軸A1’’を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A2’’を通る半直線と、第1のがんぎ車の軸A1’’を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F21が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とは、5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成する。
【0104】
衝撃段階には、歯10a’’の端部は第2のかなの歯20b’’の衝撃面201b’’に押支され、第2の歯車の歯20a’’の衝撃面201a’’はブロッカの衝撃面31b’’に押支される。
【0105】
図14および15に図示した第2の実施形態の第3の変形形態では、脱進装置は特許文献2で開示されている装置と同じと見なし得る動作原理を有する。その脱進装置はたとえばてん輪−ひげぜんまいのタイプの振動体と協働するようにされている。
【0106】
これは間接衝撃式の脱進装置である。そのため、てん輪−ひげぜんまいに対する衝撃は、てん輪4、特にてん輪の振り座40*、特にてん輪の振り石40a*のみと協働するようにされたフォーク30a*を持つブロッカ3*を通して行われる。このような脱進装置は、ブロッカ3*が互いに運動学的に連結された2つの個別部品30*、31*で作られるという点で上述の各変形実施形態とは異なる。第1の部品30*は軸A30*の周りを枢動する。第1の部品30*は、フォーク30a*、第2の歯車2a*の歯列20a*との接触によって作用するようにされたブロック手段30b*、および第2の部品31*の歯列31c*と歯合するようにされた歯列30c*を備える。第2の部品31*は軸A31*の周りを枢動する。第2の部品31*もまた、第2の歯車2a*の歯列20a*との接触によって作用するようにされたブロック手段31b*を備える。
【0107】
図14は、そのような脱進装置の解除段階前の停止位置を示したものである。
【0108】
歯車1a*の歯10a*は、動力源のトルクの作用により、かな2b*の歯20b*の停止面200b*に対して力F22を及ぼす。力F22は軸A2*のほぼ近傍を通る。力F22はかな2b*を反時計回りに枢動させる傾向を有するトルクを発生させ、それによってブロッカ3*の部分30*のブロック手段30b*の停止面300b*に対する歯20a*の押力F32を生じる。停止面300b*は力F32の方向がほぼ軸A30*を通るように構成される。これらの力は、それに続く解除段階では摩擦角を除いて同じである。
【0109】
停止時、摩擦を無視すると:
F32=F22×(DO22/D032)
ただし、
F22:面200b*に対する押力の強さの値、
F32:面300b*に対する押力の強さの値、
DO22:軸A2*に対する力F22のレバーアームの値、
DO32:軸A2*に対する力F32のレバーアームの値。
【0110】
DO22<<DO32であることから、力F32の強さは力F22の強さよりも明らかに小さい。
【0111】
解除の際に摩擦に打ち勝って車およびブロッカを動かすに至るまでにてん輪によって供給されるエネルギーは、従来のスイスレバー脱進装置で供給されるエネルギーよりも明らかに小さい。
【0112】
このエネルギー消費の少なさは、力F32の強さが押力F22の強さよりも明らかに小さいことによって説明される。
【0113】
ここでも、力ベクトルF22と、歯車1a*、かな2b*間の接点を始点とする半直線であって、軸A2*を通る半直線との間に形成される(または、力ベクトルF20と、軸A2*に関して径方向のベクトルD*であって、歯車1a*、かな2b*間の接点を始点とするベクトルD*との間に形成される)角度α*は明らかに50°未満、特に30°未満、さらには20°未満であることがわかる。
【0114】
この力F32の強さは、車1*、2*およびブロッカ3*の慣性が極力最小化されることによって可能な限り最小化される。好ましくは、かな2b*の全直径D2b*は可能な限り小さくしてかな2b*の慣性およびブロッカ3*の寸法を極力最小化する。そのため、好ましくは、かな2b*の全直径D2b*は第1の歯車1a*の全直径D1a*を明らかに下回り、特に第1のがんぎ歯車1a*の全直径D1a*の30%未満、さらには第1のがんぎ歯車1a*の全直径D1a*の20%未満である。
【0115】
要素1a*および2b*の歯列の輪郭は、衝撃段階に第1の歯車1a*から第2のかな2b*に伝達されるトルクが解除段階に伝達されるトルクを明らかに上回るように成形されることもできる。
【0116】
図14に示した停止段階に続く解除段階に入ると、かな2b*レベルにおけるトルクC2d*は、摩擦を無視した場合、歯車1a*レベルにおけるトルクC1d’’との関係で次のように表すことができる。
C2d’’=C1d’’×(DO22/DO12)
ただし、
DO12:軸A1*に対する力F22のレバーアームの値、
DO22:軸A2*に対する力F22のレバーアームの値。
【0117】
図15に示すように衝撃段階に入ると、第2のかな2b*の衝撃面201b*は伝達される力F22’が歯車1a*、かな2b*間の接点の軌跡に対してほぼ接線方向となるように向きづけられる。換言すれば、衝撃段階に入った時点で、力F22’は、軸A1*を始点とする半直線であって、軸A2*を通る半直線に対してほぼ垂直をなす。
【0118】
この衝撃段階に入ると、かな2b*レベルにおけるトルクC2i’’は、摩擦を無視した場合、歯車1a*レベルにおけるトルクC1i’’との関係で次のように表すことができる。
C2i’’=C1i’’×(DO22’/DO21’)
ただし、
DO21’:軸A1*に対する力F22’のレバーアームの値、
DO22’:軸A2*に対する力F22’のレバーアームの値。
【0119】
DO22/DO12<<DO22’/DO21’であり、C1i’’=C1d’’であることから、衝撃段階にかな2b*に伝達されるトルクC2i’’は解除段階にかな2b*に伝達されるトルクC2d’’を明らかに上回る。そのため、解除段階にてん輪によって供給しなければならないエネルギーは最小化され、衝撃段階に動力源によって脱進装置に伝達されるエネルギーは最大化される。そのため、このような脱進装置は、特許文献2で開示されているもののような従来技術の既知の脱進装置と比べて最大化された効率を有するという利点を持つ。このような装置は、振動体に対する外乱を最小化するという利点も有しており、それによって、従来技術の既知の脱進装置と協働する振動体と比べて最適化された等時性を持つ振動体の実施が可能となる。
【0120】
第2の実施形態の第3の変形形態では、脱進機の各要素の幾何学形状は以下に記すようなものであることができる。
【0121】
第1のがんぎ車1*は複数の歯10a*、特に40本の歯を備える。歯はたとえば伸開線の輪郭またはほぼ伸開線の輪郭を有する。
【0122】
第2のがんぎかな2b*は複数の歯20b*、特に6本の歯を備える。歯は約30°の扇形にほぼ沿って広がる。それぞれの歯は、第2の車の軸A2*に関する正放線方向O2*との間に10°から50°、さらには20°から35°の範囲の角度β*を形成するように向きづけられた停止面200b*を備える。角度β’は、停止面に対する接線と軸A2に関する正放線ベクトルO2*との間で測った鋭角であって、歯車1a、かな2b*間の接点を頂点とする鋭角である。この向きづけは、停止段階および解除段階でブロッカに対して第2の車を回転させる傾向を持つ小さなトルクを生み出すことができる。それぞれの歯は、軸A2*に関してほぼ径方向に向きづけられた2つの側面によっても制限される。その2つの側面のうちの1つは衝撃面201b*である。
【0123】
したがって、角度α*と角度β*は摩擦角(歯車1a*、かな2b*間の接点レベルにおける摩擦角)を除いて同じである。
【0124】
ブロッカ3*は、ブロッカの軸A3*に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた停止面300b*、310b*と、ブロッカの軸A3*に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面301b*、311b*とを備える。
【0125】
停止段階および解除段階では、歯10a*の歯面は第2のかなの歯20b*の停止面200b*に押支され、第2の歯車の歯20a*の端部200a*はブロッカの停止面310b*、300b*に押支される。
【0126】
有利には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第2のがんぎ車の軸A2*を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F22が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、第2のがんぎ車の軸A2*を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A1*を通る半直線とは、10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成する。
【0127】
有利には、かつ補完的または代替的には、停止段階および解除段階において(第2のがんぎ車がブロッカに押支されている限り)、第1のがんぎ車の軸A1*を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A2*を通る半直線と、第1のがんぎ車の軸A1*を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F22が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とは、5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成する。
【0128】
衝撃段階では、歯10a*の歯面は第2のかなの歯20b*の衝撃面201b*に押支され、第2の歯車の歯20a*の端部200a*はブロッカの衝撃面301b*、311b*に押支される。
【0129】
それぞれの実施形態および変形形態で、第1および第2のがんぎ車およびブロッカは、低密度の材料、たとえばシリコンやシリコン合金で製作されることが好ましい。シリコン製の脱進装置の構成品の場合、その機械的強度を高め、装置の摩擦特性を最適化するように、それらをSiO2またはSi4N3の層で被覆することが好ましい。このような装置は、たとえば潤滑を必要としないものとすることができよう。
【0130】
好ましくは、実施形態や変形形態にかかわらず、ブロッカのブロック手段の停止面は、それらの面に対する第2の車2、2’、2’’、2*の位置決めの正確さが保証されるように凹形をなす。それらの凹面は、たとえば好ましくは120°から170°の角度をなす2つの傾斜面などによって形成されることができる。
【0131】
好ましくは、実施形態や変形形態にかかわらず、ブロッカは、第2のがんぎ車を第1のがんぎ車とは逆の向きに回転させることのできる機械的伝達手段を備えることができる。その手段は、第2のがんぎ車に、特に第2のがんぎ車の衝撃面または停止面に、接触して作用する突起または歯からなることができる。
【0132】
好ましくは、実施形態や変形形態にかかわらず、ブロッカは、てん輪の補完的振り座と協働して、衝撃を受けたときにブロッカが意図に反した動きをすることがないように設けられたけん先を備えることができる。
【0133】
それぞれの実施形態および変形実施形態では、脱進装置は時計振動体の振動を最適化された形で維持できるようにされる。上で見たように、装置は、解除段階に、すなわち、がんぎ車がブロッカによって回転を阻止されている状態で振動体がブロッカを動かす際に、振動体によって供給されなければならないエネルギーを最小化することができる。
【0134】
それぞれの実施形態および変形実施形態では、脱進装置は、従来技術の既知の脱進装置と比べて最大化された効率を有するという利点を持つ。このような装置は、振動体の外乱を最小化するという利点も有しており、それによって、従来技術の既知の脱進装置と協働する振動体と比べて最適化された等時性を持つ振動体の実施が可能となる。そこで、それぞれの実施形態および変形実施形態では、脱進装置は、それが解除段階にあるか、衝撃段階にあるかによって変化するトルクを第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達するタイプのものである。解除段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクは、衝撃段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクよりも低い。衝撃段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクは一定またはほぼ一定であることができる。同様に、解除段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクは一定またはほぼ一定であることができる。解除段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクは、停止段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクと同じか、またはほぼ同じであることができる。
【0135】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第1のがんぎ車と第2のがんぎ車は、トルクを伝達するための、特に可変トルクおよび/または香箱からのトルクを伝達するための時計用の機械的伝達装置を形成することができる。あるいは、第1のがんぎ車と第2のがんぎ車は、トルクを伝達するための、特に可変トルクおよび/または香箱からのトルクを伝達するための時計用の機械的伝達装置の一部をなすことができる。
【0136】
反対に、従来技術では、脱進装置の各衝撃段階に振動体の振動の維持に必要な高いトルクは、そこまでのレベルのトルクが必要とされないときであっても、特に脱進装置の各解除段階にも、がんぎ歯車によって伝達される。摩擦によって失われるエネルギーはブロッカに対するがんぎ歯車の歯列の押力に比例し、押力そのものはがんぎ歯車によって伝達されるトルクに比例する。そのため、効率はかなり低いものとなる。また、時計では、香箱などの動力源が時計輪列を介してがんぎ歯車に、ほぼ一定のトルクをがんぎ歯車に供給する。したがって、がんぎ歯車に伝達されるトルクは常に高く、そのため、ブロッカの解除を可能とするために振動体によって提供されなければならないエネルギーも常に高いものとなる。
【0137】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、脱進装置は、解除段階には、第1のがんぎ車と運動学的に連結された第2のがんぎ車に対してブロッカが直接作用するタイプのものであることが好ましい。
【0138】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、脱進装置は、
− 脱進装置の解除段階の間に第2のがんぎ車レベルに伝達されるトルクが最小化されるように、かつ/または
− 脱進の衝撃段階の間に第2のがんぎ車レベルまたは振動体レベルに伝達されるトルクが最大化されるように、かつ/または
− 解除段階と衝撃段階に第1のがんぎ車から異なるトルクが伝達されるように
構成され、成形されたブロッカと、第1のがんぎ車と、第2のがんぎ車とを備える。
【0139】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、脱進装置400、400’、400’’、400*は、好ましくは、第1のがんぎ車1、1’、1’’、1*、第2のがんぎ車2、2’、2’’、2*およびブロッカ3、3’、3’’、3*を備える。第2のがんぎ車は好ましくは第1のがんぎ車とブロッカの間に介設され、特に第2のがんぎ車は、一方で第1のがんぎ車と、他方でブロッカと、接触により協働することができる。
【0140】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の解除段階では振動体4、5による制御を受けるブロッカの力が第2のがんぎ車を介して第1のがんぎ車に伝達されるように成形され、構成されることが好ましい。
【0141】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の解除段階では第1のがんぎ車の第1の力が第2のがんぎ車に加えられ、ブロッカの第2の力が第2のがんぎ車に加えられ、第2の力の強さは第1の力の強さを下回り、とりわけ第2の力の強さは第1の力の0.5倍未満、さらには0.3倍未満、さらには0.2倍未満であるように成形され、構成されることが好ましい。
【0142】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の衝撃段階では、
− 第2のがんぎ車に直接加えられるか、もしくは振動体4、5に直接加えられる第1のがんぎ車の第3の力が、第1のがんぎ車の軸A1、A1’、A1’’、A1*に関して、もしくは第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関して、もしくは振動体の軸A4、A4’、A4’’、A4*に関してほぼ正放線方向に向かい、かつ/または
− ブロッカに直接加えられるか、もしくは振動体に直接加えられる第2のがんぎ車の第4の力が、第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に対して、もしくはブロッカの軸A3、A3’、A3’’、A3*に対して、もしくは振動体の軸A4、A4’、A4’’、A4*に対してほぼ正放線方向に向かうように
成形され、構成されることが好ましい。
【0143】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第2のがんぎ車2、2’、2’’、2*は第2のかな2bであることができ、または第2のがんぎ車2’、2’’、2*は第2のかな2b’、2b’’、2b*および第2の歯車2a’、2a’’、2a*を備えることができる。
【0144】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第2のがんぎ車2、2’、2’’、2*は第2のかな2b’、2b’’、2b*を備えることができ、第2のかなは第1のがんぎ車と協働するように構成され、第1のがんぎ車、特に第1のがんぎ車の第1の歯車は第2のがんぎ車2、2’、2’’、2*の第2のかなの直径を上回る、特にその1.5倍超の、さらには2倍超の直径を有する。
【0145】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第2のがんぎ車2、2’、2’’、2*は、第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面201b’、201b’’、201b*、および/もしくは停止面200b、200b’、200b’’、200b*であって、その停止面に対する接線と、その停止面レベルにおける第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関する正放線ベクトルO2、O2’、O2’’、O2*との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度β、β’、β’’、β*をなすように向きづけられた停止面を備えることができ、かつ/またはブロッカは、ブロッカの軸A3、A3’、A3’’、A3*に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面31b’’、301b*、311b*、および/もしくはブロッカの軸A3、A3’、A3’’、A3*に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた停止面30b、30c、30b’、30c’、30b’’、30c’’、30b*、30c*を備えることができる。
【0146】
第2の実施形態のそれぞれの変形形態では、第2の歯車は、第2の車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関して少なくともほぼ正放線方向に向きづけられた衝撃面201a’’、および/もしくは第2の車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に対して少なくともほぼ径方向に向きづけられた停止面200a’’を備えることができ、かつ/または第2のかなは、第2の車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関して少なくともほぼ径方向に向きづけられた衝撃面201b、201b’、201b*、および/もしくは停止面200b、200b’、200b’’、200b*であって、その停止面に対する接線と、その停止面レベルにおける第2の車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関する正放線ベクトルO2、O2’、O2’’、O2*との間に15°から50°、さらには20°から45°の範囲の角度β、β’、β’’、β*をなすように向きづけられた停止面を備えることができる。
【0147】
それぞれの実施形態および変形実施形態で、第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、脱進装置の解除段階には、第1のがんぎ車の第2のがんぎ車に対する第1の接点における第1の力F2、F20、F21、F22が第1の接点における第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*に関する径方向ベクトルD、D’、D’’、D*との間に50°未満、さらには30°未満、さらには20°未満の角度α、α’、α’’、α*を形成するように成形され、構成されることができ、かつ/または
第1のがんぎ車、第2のがんぎ車およびブロッカは、解除段階には、
− 第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F2、F20、F21、F22が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線と、
− 第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A1、A1’、A1’’、A1*を通る半直線とが、
10°超、さらには20°超、さらには30°超の角度を形成するように、
かつ/もしくは
− 第1のがんぎ車の軸A1、A1’、A1’’、A1*を始点とする半直線であって、第2のがんぎ車の軸A2、A2’、A2’’、A2*を通る半直線と、
− 第1のがんぎ車の軸A1、A1’、A1’’、A1*を始点とする半直線であって、第1のがんぎ車の第1の力F2、F20、F21、F22が第2のがんぎ車にかかる第1の接点を通る半直線とが、
5°超、さらには10°超、さらには20°超の角度を形成するように、
成形され、構成されることができる。
【0148】
それぞれの実施形態によれば、時計ムーブメント500、500’、500’’、500*は前述のような脱進装置を含むことができ、とりわけ、時計輪列1b’、1b’’、1b*、振動体4、5および前述のような脱進装置を含むことができる。脱進装置は時計輪列と振動体の間に介設される。
【0149】
それぞれの実施形態によれば、時計600、600’、600’’、600*は前述のような脱進装置、または前述のような時計ムーブメント、または前述のような時計伝達装置を含むことができる。
【0150】
脱進装置、特に前述のような脱進装置の動作方法の実施形態について以下に詳しく説明する。
【0151】
方法は、第2のがんぎ車に対して
− 第1のがんぎ車の第1の力F2、F20、F21、F22と、
− ブロッカの第2の力F3、F30、F31、F32と
を同時に加える解除段階を含むことができる。
【0152】
第2の力の強さは第1の力の強さ未満であることができ、特に第2の力の強さは第1の力の強さの0.5倍未満、さらには0.3倍未満、さらには0.2倍未満であることができる。
【0153】
方法は、第1のがんぎ車が、第1のがんぎ車の軸、第2のがんぎ車の軸または振動体の軸に関してほぼ正放線方向に向かう第3の力を振動体に対して直接、または第2のがんぎ車に対して直接加える衝撃段階を含むことができる。
【0154】
方法は、第2のがんぎ車が、第2のがんぎ車の軸、ブロッカの軸または振動体の軸に関してほぼ正放線方向に向かう第4の力を振動体に対して直接、またはブロッカに対して直接加える衝撃段階を含むことができる。
【0155】
方法は、衝撃段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車または振動体に伝達されるトルクの大きさが、解除段階に第1のがんぎ車から第2のがんぎ車に伝達されるトルクの大きさの1.5倍超、さらには2倍超である衝撃段階を含むことができる。
【0156】
「車」とは、本明細書全体を通して、歯車もしくはかなまたは歯車および/もしくはかなの組合せをいう。
【0157】
「歯車」とは、本明細書全体を通して、トルク、力または運動を伝達することをその機能とする歯付きのあらゆる回転装置をいう。
【0158】
「かな」とは、本明細書全体を通して、トルク、力または運動を伝達することをその機能とする歯付きのあらゆる回転装置であって、その直径および/または歯数がそれと歯合するか、またはそれと一体で回転する歯車のものを明らかに下回る回転装置をいう。
【0159】
本明細書全体を通して、別段の指示がある場合を除き、角度は向きづけられた角度である。慣例により、その角度の正の向きは脱進機の動作時の第2のがんぎ車の回転の向きとする。具体的実施形態を示すすべての図面において、この角度の向きづけの正の向きは左回り、すなわち反時計回りである。
【0160】
「軸に関して径方向」とは、本明細書全体を通して、その軸に対して垂直でその軸を通るすべての方向をいう。径方向ベクトルはその径方向に沿い、その軸の方に向きづけられる。
【0161】
「軸に関して正放線方向」とは、本明細書全体を通して、その軸に対して垂直で、その軸に関する径方向に対して垂直なすべての方向をいう。所与の点における軸に関する正放線方向は、その所与の点におけるその軸に関する接線方向でもある。正放線ベクトルはその径方向に対して垂直で、正放線ベクトルと径方向ベクトルの間の角度が向きづけられた+90°の角度となるように向きづけられる。
【0162】
「軸に関してほぼ正放線方向」とは、本明細書全体を通して、好ましくは、その軸に対して正放線方向であるか、またはその軸に関する正確な正放線方向との間に30°未満、さらには20°未満の角度をなすあらゆる方向をいう。
【0163】
「軸に対してほぼ径方向」とは、本明細書全体を通して、好ましくは、その軸に対して径方向であるか、またはその軸に関する正確な径方向との間に30°未満、さらには20°未満の角度をなすあらゆる方向をいう。
【0164】
本明細書全体を通して、面の向きづけは、好ましくは、がんぎ車および/またはブロッカの枢動軸に対して垂直な面内におけるその面の接線方向によって規定される。
【0165】
「第2のがんぎ車の衝撃面」とは、好ましくは、本明細書全体を通して、脱進装置の衝撃段階に第1のがんぎ車またはブロッカと接触し得る第2のがんぎ車のすべての面をいう。
【0166】
「第2のがんぎ車の停止面」とは、好ましくは、本明細書全体を通して、脱進装置の停止段階または解除段階に第1のがんぎ車またはブロッカと接触し得る第2のがんぎ車のすべての面をいう。
【0167】
「ブロッカの衝撃面」とは、好ましくは、本明細書全体を通して、脱進装置の衝撃段階に第2のがんぎ車と接触する可能性のあるブロッカのすべての面をいう。
【0168】
「ブロッカの停止面」とは、好ましくは、本明細書全体を通して、脱進装置の停止段階または解除段階に第2のがんぎ車と接触し得るブロッカのすべての面をいう。
【0169】
「がんぎ車」とは、好ましくは、本明細書全体を通して、輪列からブロッカに力を伝達するあらゆる歯車体であって、伝達する力の方向が脱進サイクルの間に変化するように、特に顕著に変化するように成形され、かつ/または構成された車をいう。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【国際調査報告】