(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
工程c)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加して、工程d)の間又は後にpH値を7.5〜12の範囲、好ましくは8〜11.5、最も好ましくは8.5〜11に再調整するさらなる工程f)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
工程a)の水性懸濁液の固形分が、水性懸濁液の総重量を基準にして10〜70重量%の範囲、好ましくは15〜60重量%の範囲、最も好ましくは15〜40重量%の範囲であり;及び/又はBET窒素法で測定した表面改質された炭酸カルシウムの比表面積は、20〜250m2/gの範囲、好ましくは25〜200m2/gの範囲、最も好ましくは35〜150m2/gの範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
工程b)で添加される少なくとも1つの塩基が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、第一級、第二級及び第三級アミン、及びそれらの混合物から選択され、水酸化カルシウムが好ましい、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
工程a)の水性懸濁液のpH値が、方法の工程b)において7.8〜11.5の範囲、より好ましくは8〜11の範囲に調整される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
工程d)が、45〜115℃の範囲、好ましくは50〜105℃、より好ましくは80〜100℃の温度で、及び/又は1秒〜60分の範囲の期間に実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
工程e)が、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして、0.005〜15重量%の範囲、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、より好ましくは0.05〜5重量%の範囲になるまで実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
工程f)で添加される少なくとも1つの塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3から12のいずれか一項に記載の方法。
工程e)の後又は間に、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集するさらなる工程g)を含み、好ましくは工程g)が、工程e)の間に実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
方法の全ての工程が、完全に又は部分的にバッチ処理又は連続処理であり、工程a)〜d)及びf)ではバッチ処理が好ましく、工程e)では連続処理が好ましい、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
ポリマー組成物、製紙、紙コーティング、農業用途、塗料、接着剤、シーラント、建築用途、製薬用途及び/又は化粧品用途における、請求項16に記載の表面処理された炭酸カルシウムの使用。
ゴムの架橋用、シート成形化合物における、バルク成形化合物、好ましくはパイプ及びケーブル用の架橋性ポリオレフィン系配合物における、架橋性ポリ塩化ビニルにおける、不飽和ポリエステルにおける及びアルキド樹脂における、請求項16に記載の表面処理された炭酸カルシウムの使用であって、表面処理された炭酸カルシウムが、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、完全に又は部分的に中和された一又は二置換無水コハク酸含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの表面処理剤で表面処理されている、使用。
請求項15に記載の表面処理された炭酸カルシウム及び硬化剤の、架橋性化合物、好ましくは、ゴム、ポリオレフィン系配合物、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル及びアルキド樹脂の、架橋のための使用であって、硬化剤が過酸化物、又は硫黄をベースとする硬化剤である、使用。
【発明を実施するための形態】
【0063】
<工程a)の特徴付け:少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの提供>
本発明の方法の工程a)によれば、水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液が、提供される。
【0064】
本発明の意味における「少なくとも1つの」表面改質された炭酸カルシウムという用語は、表面改質された炭酸カルシウムが1つ以上の表面改質された炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれ(ら)からなることを意味する。
【0065】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムは、1つの表面改質された炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。代替的に、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムは、2つ以上の表面改質された炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムは、2つ又は3つの表面改質された炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれらからなる。
【0066】
好ましくは、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムは、1つの表面改質された炭酸カルシウムを含み、より好ましくはそれからなる。
【0067】
表面改質された炭酸カルシウムは、天然重質炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素及び1つ以上のH
3O
+イオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素はH
3O
+イオン供与体処理によってその場で形成されるか、及び/又は外部供給源から供給される。
【0068】
本発明との関連でH
3O
+イオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、表面改質された炭酸カルシウムは、(a)天然又は沈降炭酸カルシウムの懸濁液を提供する工程、(b)20℃で0以下のpK
a値を有する又は20℃で0〜2.5のpK
a値を有する少なくとも1つの酸を工程a)の懸濁液に添加する工程、及び(c)工程(b)の前、間又は後に工程(a)の懸濁液を二酸化炭素で処理する工程を含む方法によって得られる。別の実施形態によれば、表面改質された炭酸カルシウムは、(A)天然又は沈降炭酸カルシウムを提供する工程、(B)少なくとも1つの水溶性酸を提供する工程、(C)気体のCO
2を提供する工程、(D)工程(A)の天然又は沈降炭酸カルシウムを工程(B)の少なくとも1つの酸及び工程(C)のCO
2と接触させる工程を含み、(i)工程B)の少なくとも1つの酸は、その第1の利用可能な(available)水素のイオン化に関連して、20℃で2.5より大きくかつ7以下のpK
aを有し、対応するアニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することができるこの第1の利用可能な水素の損失時に形成され、(ii)少なくとも1つの酸を天然又は沈降炭酸カルシウムと接触させた後、水素含有塩の場合、その第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で7より大きいpK
aを有し、その塩アニオンが水溶性カルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供されることを特徴とする方法によって得られる。
【0070】
「天然重質炭酸カルシウム」(GCC)は、好ましくは、大理石、チョーク、石灰石及びこれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウムを含む鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩等のような天然に存在する成分をさらに含むことができる。
【0071】
一般に、天然重質炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式粉砕工程であることができ、例えば、粉砕が主に二次体との衝突から生じるような条件の下で任意の従来の粉砕装置、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー(de−clamper)、ナイフカッター、又は当業者に知られている他のそのような装置の1つ以上で行うことができる。炭酸カルシウム含有鉱物材料が湿式の重質炭酸カルシウム含有鉱物材料を含む場合、粉砕工程は自己粉砕が行われるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に知られている他のそのような方法によって行うことができる。このようにして得られた湿式処理された重質炭酸カルシウム含有鉱物材料は、洗浄し、及び周知の方法、例えば、乾燥前に凝集、濾過又は強制蒸発によって脱水することができる。乾燥の後に続く工程(必要であれば)は、噴霧乾燥のような単一の工程で、又は少なくとも2つの工程で行うことができる。このような鉱物材料が不純物を除去するための選鉱工程(浮選、漂白又は磁気分離工程等)を受けることも一般的である。
【0072】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に水性環境中での二酸化炭素と水酸化カルシウムの反応に続く沈殿、又は溶液からのカルシウムイオン及び炭酸イオン、例えば、CaCl
2及びNa
2CO
3の沈殿によって得られる合成材料である。PCCを製造するさらなる考えられる方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副産物であるソルベイ法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形、即ち、カルサイト、アラゴナイト及びバテライトで存在し、これらの結晶形の各々に多くの異なる多形(晶癖)が存在する。カルイサイトは、偏三角面体(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六角柱状、ピナコイド状、コロイド状(C−PCC)、立方体及び角柱状(P−PCC)等の典型的な晶癖を有する三方構造を有する。アラゴナイトは、双晶六角柱状結晶、薄い細長い角柱状、湾曲したブレード状、鋭いピラミッド状、チゼル状の結晶、枝分かれしたツリー、及びサンゴ又は虫のような形態の多様な取り合わせの典型的な晶癖を有する斜方晶系構造である。バテライトは六方晶系に属する。得られたPCCスラリーを機械的に脱水し、乾燥させることができる。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、好ましくはアラゴナイト、バテライト又はカルサイト鉱物結晶形、又はそれらの組合せを含む沈降炭酸カルシウムである。
【0074】
沈降炭酸カルシウムは、上記のように天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるものと同じ手段によって、二酸化炭素及び少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体で処理する前に粉砕することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.05〜10.0μm、好ましくは0.2〜5.0μm、より好ましくは0.4〜3.0μm、最も好ましくは0.6〜1.2μm、特に0.7μmの重量メジアン粒径d
50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.15〜55μm、好ましくは1〜40μm、より好ましくは2〜25μm、最も好ましくは3〜15μm、特に4μmのトップカット粒径d
98を有する粒子の形態である。
【0076】
天然及び/又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥して使用してもよいし、又は水中に懸濁させてもよい。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量を基準にして1重量%〜90重量%の範囲、より好ましくは3重量%〜60重量%、さらにより好ましくは5重量%〜40重量%、最も好ましくは10重量%〜25重量%内の天然又は沈降炭酸カルシウム含有率を有する。
【0077】
表面反応した炭酸カルシウムの調製に使用される1つ以上のH
3O
+イオン供与体は、調製条件下でH
3O
+イオンを生成する任意の強酸、中−強酸若しくは弱酸、又はそれらの混合物であることができる。本発明によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、調製条件下でH
3O
+イオンを生成する酸性塩であってもよい。
【0078】
一実施形態によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、20℃で0以下のpK
aを有する強酸である。
【0079】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、20℃で0〜2.5のpK
a値を有する中−強酸である。20℃におけるpK
aが0以下である場合、酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、又はそれらの混合物から選択される。20℃でのpK
aが0〜2.5である場合、H
3O
+イオン供与体は、好ましくは、H
2SO
3、H
3PO
4、シュウ酸、又はそれらの混合物から選択される。少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体はまた、酸性塩例えば、Li
+、Na
+又はK
+等の対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHSO
4―又はH
2PO
4―、、又はLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+又はCa
2+等の対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されてているHPO
42−であることができる。少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、1つ以上の酸と1つ以上の酸性塩との混合物であってもよい。
【0080】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、20℃で測定した場合、第1の利用可能なイオン化に関連して、2.5より大きく7以下のpK
a値を有し、水溶性カルシウム塩を形成することができる対応するアニオンを有する弱酸である。続いて、水素含有塩の場合には、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定した場合に7を超えるpK
aを有し、その塩アニオンが水不溶性のカルシウム塩を形成することができる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供される。好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃で2.5を越え5までのpK
a値を有し、より好ましくは弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、カチオンはナトリウム又はカリウムである。水溶性塩の例示的なアニオンは、ホスフェート、二水素ホスフェート、モノ水素ホスフェート、オキサレート、シリケート、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、アニオンは、ホスフェート、二水素ホスフェート、一水素ホスフェート、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、アニオンは、二水素ホスフェート、一水素ホスフェート、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下又は一段階で行うことができる。滴下添加の場合、この添加は好ましくは10分以内に行われる。一段階で塩を添加することがより好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、H
2PO
4―であって、Li
+、Na
+又はK
+等の対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されいるもの、HPO
42−であってLi
+、Na
+、K
+、Mg
2+又はCa
2+等の対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されいるもの及びそれらの混合物からなる群から選択され、、より好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体はリン酸である。
【0082】
1つ以上のH
3O
+イオン供与体は、濃縮溶液又はより希釈した溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、天然又は沈降炭酸カルシウムに対するH
3O
+イオン供与体のモル比は、0.01〜4、より好ましくは0.02〜2、さらにより好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.58である。
【0083】
代替的に、天然又は沈降炭酸カルシウムが懸濁される前に、H
3O
+イオン供与体を水に添加することも可能である。
【0084】
次の工程において、天然又は沈降炭酸カルシウムは二酸化炭素で処理される。硫酸又は塩酸のような強酸を天然又は沈降炭酸カルシウムのH
3O
+イオン供与体処理に使用する場合、二酸化炭素は自動的に形成される。追加的に、または代替的に、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。
【0085】
H
3O
+イオン供与体処理及び二酸化炭素による処理を同時に行うことができ、これは強い又は中程度の強酸を使用する場合にあてはまる。例えば、20℃で0〜2.5の範囲のpK
aを有する中強酸を用いて、最初にH
3O
+イオン供与体処理することも可能であり、ここでは二酸化炭素はその場で形成され、したがって、二酸化炭素処理がH
3O
+イオン供与体処理と同時に自動的に行われ、続いて外部供給源から供給された二酸化炭素によるさらなる処理を行うことも可能である。
【0086】
好ましくは、懸濁液中の気体の二酸化炭素の濃度は、体積に関し、(懸濁液の体積):(気体のCO
2の体積)の比が1:0.05〜1:20、さらにより好ましくは1:0.05〜1:5であるようなものである。
【0087】
好ましい実施形態では、H
3O
+イオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態によれば、少なくとも1つのH
3O
+イオン供与体は、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10〜約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分、時には約1時間以上かけて添加される。
【0088】
H
3O
+イオン供与体処理及び二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定した水性懸濁液のpHは、当然、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、それにより6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面改質された天然又は沈降炭酸カルシウムが調製される。
【0089】
表面改質された天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO00/39222A1、WO2004/083316A1、WO2005/121257A2、WO2009/074492A1、EP2264108A1、EP2264109A1及びUS2004/0020410A1に開示されており、これらの参考文献の内容は本出願に含まれる。
【0090】
同様に、表面改質された沈降炭酸カルシウムが得られる。WO2009/074492A1から詳細に理解できるように、表面改質された炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムをH
3O
+イオン、及び水性媒体中で可溶化され、水不溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと水性媒体中で接触させ、表面改質された沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、表面改質された沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成されたアニオンの不溶性の少なくとも部分的に結晶質のカルシウム塩を含む。
【0091】
可溶化カルシウムイオンは、H
3O
+イオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成される可溶化されたカルシウムイオンと比較して、過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、H
3O
+イオンは、アニオンに対して対イオンの形態、即ち、酸又は非カルシウム酸塩の形態でのアニオンの添加により、及びさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン発生源の不存在下で、単独に提供される。
【0092】
過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性中性又は酸性カルシウム塩の添加によって、又は可溶性中性又は酸性カルシウム塩をその場で生成する酸又は中性又は酸性の非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0093】
H
3O
+イオンは、前記アニオンの酸又は酸性塩の添加によって、又は過剰の可溶化カルシウムイオンの全部又は一部を提供するよう同時に働く酸又は酸性塩の添加によって、提供することができる。
【0094】
表面改質された天然又は沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい実施形態では、天然又は沈降炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム又はアルミン酸カリウム等のアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、酸及び/又は二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸及び/又は二酸化炭素を添加する前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0095】
代替的に、天然又は沈降炭酸カルシウムと酸及び二酸化炭素との反応が既に始まっているときに、ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩及び/又は酸化マグネシウム成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1つのケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下での表面改質された天然又は沈降炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316A1に開示されており、この参考文献の内容は、本出願に含まれる。
【0096】
表面改質された炭酸カルシウムは、任意選択的に分散剤によりさらに安定化させて、懸濁状態で維持することができる。当業者に既知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースから構成される。
【0097】
代替的に、上記の水性懸濁液を乾燥させることにより、固体の(即ち、乾燥しているか、液体形態でないように水をほとんど含まない)表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムを顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
【0098】
表面反応した炭酸カルシウムは、例えば、バラ、ゴルフボール及び/又は脳の形状のような異なる粒子形状を有することができる。
【0099】
好ましい実施形態では、表面改質された炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定した20m
2/g〜250m
2/g、好ましくは25m
2/g〜200m
2/g、より好ましくは30m
2/g〜160m
2/g、さらにより好ましくは35m
2/g〜150m
2/g、最も好ましくは35m
2/g〜145m
2/gの比表面積を有する。例えば、表面改質された炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定した35m
2/g〜50m
2/g又は125m
2/g〜145m
2/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の表面積を粒子の質量で割ったものとして定義される。その中で使用されるように、比表面積は、窒素ガスを用いたBET等温線(ISO 9277:2010)を用いた吸着によって測定され、m
2/gで特定される。
【0100】
さらに、表面改質された炭酸カルシウム粒子は、1〜75μm、好ましくは2〜50μm、より好ましくは3〜40μm、さらにより好ましくは4〜30μm、最も好ましくは5〜15μmの体積メジアン粒径d
50(体積)を有することがさらに好ましい。
【0101】
さらに、表面改質された炭酸カルシウム粒子は、2〜150μm、好ましくは4〜100μm、より好ましくは6〜80μm、さらにより好ましくは8〜60μm、最も好ましくは10〜30μmの粒径d
98(体積)を有することがさらに好ましい。
【0102】
値d
xは、粒子のx%がd
x未満の直径を有する直径を表す。これは、d
98値が全粒子の98%がより小さい粒径であることを意味する。d
98値は「トップカット」とも呼ばれる。d
x値は、体積又は重量パーセントで与えることができる。したがって、d
50(重量)値は重量メジアン粒径であり、即ち、全粒子の50重量%がこの粒径よりも小さく、d
50(体積)値は体積メジアン粒径、即ち、全粒子の50体積%がこの粒径よりも小さい。
【0103】
体積メジアン粒径d
50は、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを用いて評価した。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction Systemを用いて測定したd
50又はd
98値は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、Mie理論を用いて、粒子屈折率1.57及び吸収指数0.005で分析する。
【0104】
重量メジアン粒径は沈降法によって決定され、沈降法は重量分野における沈降挙動の分析である。測定は、マイクロメリティックス・インストルメント社のSedigraph(商標) 5100又は5120で行う。この方法及び装置は、当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般に使用される。測定は、0.1重量%Na
4P
2O
7の水溶液中で行う。サンプルを高速撹拌機を用いて分散させ、超音波処理した。
【0105】
この方法及び装置は当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径を決定するために一般的に使用される。
【0106】
比細孔容積は、0.004μm(ほぼnm)のラプラススロート(Laplace throat)直径に等しい、水銀414MPa(60000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定を用いて測定される。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。サンプル材料は、分析のために5cm
3のチャンバーパウダーペネトローターに封入される。データは、ソフトウェアPore−Compを使用して、水銀圧縮、ペネトロメータ拡大、サンプル材料圧縮のために補正される(Gane、PAC、Kettle、JP、Matthews、GP及びRidgway、CJ、「圧縮可能なポリマー球の空隙構造及び強化された炭酸カルシウム紙コーティング配合物(Void Space Structure of Compressible POlymer Spheres and Consolidated Calccium Carbonate Paper−Coating Formulations)」、Industrial and Engineering Chemistry Research、35(5)、1996、1753〜1764頁)。
【0107】
累積圧入データに見られる総細孔容積は2つの領域に分離することができ、214μmから約1〜4μmまでの圧入データは強く寄与する凝集構造間のサンプルの粗い充填を示す。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内の細孔も有する場合、この領域は双峰性の様相を呈し、モード転換点よりも細かい、即ち、二峰性の変曲点よりも細かい細孔への、水銀により圧入された比細孔容積を得ることにより、比粒子内細孔容積が定義される。これらの3つの領域の合計は、粉末の全細孔容積を与えるが、その分布の粗い細孔端における粉末の元のサンプル圧縮/沈降に強く依存する。
【0108】
累積圧入曲線の一次導関数を取ることによって、必然的に細孔遮蔽を含む等価なラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間の細孔領域及びもし存在するならば粒子内の細孔領域を明らかにする。粒子内細孔直径範囲を知ることにより、総細孔容積から残りの粒子間及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積(比細孔容積)を単位として、内部細孔の所望の細孔容積のみを与えることが可能である。当然のことながら、同じ引き算の原理は、関心のある他の細孔径領域のいずれかを分離するために適用される。
【0109】
好ましくは、表面改質された炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算して0.1〜2.3cm
3/gの範囲、より好ましくは0.2〜2.0cm
3/g、特に好ましくは0.4〜1.8cm
3/g、最も好ましくは0.6〜1.6cm
3/gの粒子内圧入比細孔容積を有する。
【0110】
表面改質された炭酸カルシウムの粒子内細孔径は、好ましくは水銀ポロシメトリー測定によって決定された0.004〜1.6μmの範囲、より好ましくは0.005〜1.3μmの範囲、特に好ましくは0.006〜1.15μm、最も好ましくは0.007〜1.0μm、例えば、0.01〜0.9μmである。
【0111】
本発明者らは、驚くべきことに、表面処理が湿潤状態で行われる場合、即ち、表面処理が水性溶媒、好ましくは水の存在下で行われる場合、表面処理剤が表面改質された炭酸カルシウム粒子表面に、より強固に付着することを見出した。
【0112】
したがって、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムが、水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する水性懸濁液の形態で提供されることが本発明の1つの要件である。好ましい実施形態によれば、水性懸濁液の固形分は、水性懸濁液の総重量を基準にして10〜70重量%の範囲、より好ましくは15〜60重量%の範囲、最も好ましくは15〜40重量%の範囲である。
【0113】
「水性」懸濁液という用語は、液相が水を含み、好ましくは水からなる系を指す。しかし、前記用語は、水性懸濁液の液相が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を含む群から選択される少量の少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含むことを排除するものではない。水性懸濁液が少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む場合、水性懸濁液の液相は、水性懸濁液の液相の総重量を基準にして0.1〜40.0質量%、好ましくは0.1〜30.0重量%、より好ましくは0.1〜20.0重量%、最も好ましくは0.1〜10.0重量%の量で少なくとも1つの水混和性有機溶媒を含む。例えば、水性懸濁液の液相は水からなる。
【0114】
好ましい実施形態によれば、水性懸濁液は、水及び少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムからなる。
【0115】
代替的に、水性の表面改質された炭酸カルシウム懸濁液は、さらなる添加剤を含む。
【0116】
追加的に、または代替的に、水性の表面改質された炭酸カルシウム懸濁液は、分散剤、例えば、ポリアクリレートを含む。
【0117】
<工程b)の特徴付け:pH値の調整>
本発明の方法の工程b)によれば、工程a)の水性懸濁液のpH値は7.5〜12の範囲に調整される。
【0118】
pH値を所望の範囲に調整する1つの選択肢は、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムを製造するために塩基性出発材料を使用することである。本発明の方法の工程b)による別の好ましい選択肢は、pH値を7.5〜12の範囲に調整するために、工程a)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加することである。
【0119】
本発明者らは、驚くべきことに、工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整することにより、本発明による表面処理剤が、表面改質された炭酸カルシウムの表面に、そのようなpH値の調整がない場合及び/又はそのpH範囲外である場合よりも強固に付着し、したがって得られた表面処理された炭酸カルシウムの疎水性を改善することを見出した。
【0120】
好ましくは、工程a)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加することにより、工程b)においてpH値が調整される。
【0121】
本発明の意味における「少なくとも1つの」塩基という用語は、塩基が1つ以上の塩基を含み、好ましくはそれ(ら)からなることを意味する。
【0122】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの塩基は、1つの塩基を含み、好ましくはそれからなる。代替的に、少なくとも1つの塩基は、2つ以上の塩基を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの塩基は、2つ又は3つの塩基を含み、好ましくはそれらからなる。
【0123】
好ましくは、少なくとも1つの塩基は、1つの塩基を含み、より好ましくは1つの塩基からなる。
【0124】
少なくとも1つの塩基は、それが工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整するのに適している限り、特定の塩基に限定されない。
【0125】
工程b)において添加される少なくとも1つの塩基は、好ましくは、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、第一級、第二級及び第三級アミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、少なくとも1つの塩基は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの塩基は、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ナトリウム及び/又は水酸化アンモニウムである。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基は水酸化カルシウムである。水酸化カルシウムは、表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液に外来カチオン不純物を与えないので、有利に添加される。
【0126】
本発明の意味における第一級、第二級及び第三級アミンは、1つ以上の水素原子がアルキル基又はアリール基のような置換基で置換されたアンモニアの誘導体である。
【0127】
塩基は、「固体」形態又は「液体」形態で、又は「気体」として使用することができる。
【0128】
例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムは、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で固体である。少なくとも1つの塩基が固体形態である場合、それは、例えば、粉末、錠剤、顆粒、フレーク等として工程a)の水性懸濁液に添加することができる。
【0129】
しかし、固体塩基はまた、水に溶解/分散/懸濁され、溶液又は懸濁液又は分散液として、即ち、液体として、好ましくは水を溶媒として使用することにより、工程a)の水性懸濁液に添加することができる。
【0130】
例えば、本発明による水酸化アンモニウムは、水中のアンモニア(NH
3)の溶液であり、したがって水酸化アンモニウムは液体として使用される。さらに、いくつかの第一級、第二級又は第三級アミン、例えば、プロピルアミン、ジエチルアミン及びトリエチルアミンは、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で液体である。少なくとも1つの塩基が液体形態である場合、それは工程a)の水性懸濁液に、例えば、純粋な液体として、又は液体塩基が水と混合された溶液として添加することができる。
【0131】
いくつかの第一級、第二級又は第三級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン及びトリエチルアミンは、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で気体である。少なくとも1つの塩基が気体の形態である場合、それは工程a)の水性懸濁液に通して湧き出させてもよい。
【0132】
工程a)の水性懸濁液への少なくとも1つの塩基の添加は、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。好ましくは、添加は、混合及び/又は均質化及び/又は粒子分割条件下で実施することができる。当業者は、これらの混合及び/又は均質化及び/又は粒子分割条件、例えば、混合速度、分割及び温度をその当業者の方法の装置に合わせて適合させるであろう。
【0133】
例えば、混合及び均質化は、プラウシェアミキサーによって行うことができる。プラウシェアミキサーは、機械的に製造された流動床の原理によって機能する。プラウシェアブレードは、水平円筒形ドラムの内壁の近くで回転し、混合物の成分を生成物床から開放した混合空間に運ぶ。機械的に製造された流動床は、大きなバッチでも非常に短時間で激しい混合を保証する。チョッパー及び/又はディスパーサーは、乾いた操作で塊を分散させるために使用される。本発明の方法で使用することができる装置は、例えば、ドイツのゲブリューダー・レディゲ・マシネンバウ社(Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH)又はドイツのビスコ・ジェット・リュールシステメ社(VISCO JET Ruhrsysteme GmbH)から入手可能である。
【0134】
既に上述したように、工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に、好ましくは少なくとも1つの塩基を添加することによって調整することが、本発明の1つの要件である。
【0135】
一実施形態によれば、工程a)の水性懸濁液のpH値は、工程b)において7.8〜11.5の範囲、より好ましくは8〜11の範囲に調整される。
【0136】
本発明のpH調整は、懸濁液中のpHを測定するために使用できる任意のpHメーター、例えば、Mettler Toledo InLab(登録商標) Expert Pro pH電極を備えたMettler Toledo Seven Easy pHメーターで測定することができる。pHは25℃で測定され、5分以内に+/−0.2単位以内のpH値の変化がない場合、本発明によればpHは安定である。
【0137】
好ましくは、方法の工程b)は、15〜40℃、好ましくは20〜30℃、最も好ましくは約25℃の温度で実施される。
【0138】
一実施形態によれば、工程b)で得られた水性懸濁液は、工程c)が実施される前に予熱される。即ち、工程b)の塩基及び少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を含む、工程b)で得られた水性懸濁液は、工程c)が実施される前に、30〜120℃、好ましくは45〜115℃、より好ましくは50〜105℃、最も好ましくは80〜100℃の温度で予熱される。例えば、工程b)で得られた水性懸濁液は90℃±5℃の温度で予熱される。
【0139】
工程b)から得られた水性懸濁液の予熱を行うための処理時間は、30分以下の期間に、好ましくは20分以下の期間に、最も好ましくは15分以下の期間に、例えば、1秒〜15分の期間に実施される。
【0140】
本発明の一実施形態によれば、工程b)から得られた水性懸濁液は、工程c)が実施される前に、30〜120℃、好ましくは45〜115℃、より好ましくは50〜105℃、最も好ましくは80〜100℃の温度で、30分以下の期間、好ましくは20分以下の期間、より好ましくは15分以下の期間、例えば、1秒〜15分間予熱される。
【0141】
本発明の一実施形態では、工程b)から得られた水性懸濁液の予熱は、混合工程d)中に実施される温度にほぼ等しい温度で実施される。
【0142】
本発明の意味における「等しい」温度という用語は、混合工程d)中に実施される温度を、最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは10℃、最も好ましくは最大で5℃下回る又は上回る予熱温度を指す。
【0143】
工程b)から得られた水性懸濁液の予熱は、混合条件下で行われる。当業者は、これらの混合条件(混合パレットの構成及び混合速度等)をその当業者の方法の装置に従い、適合させるであろう。
【0144】
<工程c)の特徴付け:少なくとも1つの表面処理剤の添加>
本発明の工程c)によれば、少なくとも1つの表面処理剤が、工程b)で得られた水性懸濁液に、工程a)で提供された少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な(accessible)表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加される。少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0145】
本発明の意味における「少なくとも1つの」表面処理剤という用語は、表面処理剤が1つ以上の表面処理剤を含み、好ましくはそれ(ら)からなることを意味する。
【0146】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの表面処理剤は、1つの表面処理剤を含み、好ましくはそれからなる。代替的に、少なくとも1つの表面処理剤は、2つ以上の表面処理剤を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの表面処理剤は、2つ又は3つの表面処理剤を含み、好ましくはそれらからなる。
【0147】
好ましくは、少なくとも1つの表面処理剤は、1つの表面処理剤を含み、より好ましくはそれからなる。
【0148】
少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物及び/又は一置換又は二置換コハク酸含有化合物及び/又は一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物であることができる。
【0149】
「無水コハク酸含有化合物」という用語は、無水コハク酸を含有する化合物を指す。ジヒドロ−2,5−フランジオン、コハク酸無水物又はスクシニルオキシドとも呼ばれる「無水コハク酸」という用語は、分子式C
4H
4O
3を有し、コハク酸の酸無水物である。
【0150】
本発明の意味における「一置換」無水コハク酸含有化合物という用語は、1つの水素原子が別の置換基で置換されている無水コハク酸を指す。
【0151】
本発明の意味における「二置換」無水コハク酸含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基で置換されている無水コハク酸を指す。
【0152】
「コハク酸含有化合物」という用語は、コハク酸を含有する化合物を指す。「コハク酸」という用語は、分子式C
4H
6O
4を有する。
【0153】
本発明の意味における「一置換」コハク酸という用語は、1つの水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸を指す。
【0154】
本発明の意味における「二置換」コハク酸含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸を指す。
【0155】
「コハク酸塩含有化合物」という用語は、活性酸性基が部分的又は完全に中和されているコハク酸を含有する化合物を指す。「部分的に中和された」コハク酸塩含有化合物という用語は、40〜95モル%の範囲、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜95%、最も好ましくは70〜95%の活性酸性基の中和度を指す。「完全に中和された」コハク酸塩含有化合物という用語は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸性基の中和度を指す。好ましくは、活性酸性基は部分的又は完全に中和されている。
【0156】
コハク酸塩含有化合物は、好ましくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、アミン塩は直鎖状又は環状である。一方又は両方の酸性基が塩の形態であり得、好ましくは両方の酸性基が塩の形態であることが理解される。
【0157】
本発明の意味における「一置換」コハク酸塩という用語は、1つの水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸塩を意味する。
【0158】
本発明の意味における「二置換」コハク酸含有化合物という用語は、2つの水素原子が別の置換基で置換されているコハク酸塩を指す。
【0159】
したがって、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、又は一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物は置換基R
1及び/又はR
2を含む。
【0160】
表面処理された炭酸カルシウムの表面に位置する表面処理剤は、表面処理された炭酸カルシウムを取り囲む材料との反応を受けるのに適していることが理解される。したがって、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、又は一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物は、架橋性二重結合を含む置換基R
1及び/又はR
2を含むことが好ましい。
【0161】
架橋性二重結合は、置換基R
1及び/又はR
2の末端及び/又は側鎖に位置する。
【0162】
架橋性二重結合を含む置換基R
1及び/又はR
2は、好ましくは、イソブチレン基、ポリイソブチレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はそれらの混合物から選択される。
【0163】
例えば、表面処理剤は、1000〜300000mPa・sの範囲の25℃でのブルックフィールド粘度を有するポリイソブチレン無水コハク酸である。追加的に、または代替的に、表面処理剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸1g当たり水酸化カリウム10〜80mgの範囲の酸価を有する、ポリイソブチレン無水コハク酸である。
【0164】
好ましくは、表面処理剤は、1000〜300000mPa・sの範囲の25℃でのブルックフィールド粘度、及びポリイソブチレン無水コハク酸1g当たり水酸化カリウム10〜80mgの範囲の酸価を有する、ポリイソブチレン無水コハク酸である。
【0165】
一実施形態では、表面処理剤は、1000〜300000mPa・sの範囲の25℃でのブルックフィールド粘度、及び/又はマレイン化ポリブタジエン1g当たり水酸化カリウム10〜300mgの範囲の酸価、及び/又はマレイン化ポリブタジエン100g当たりヨウ素100〜1000gの範囲のヨウ素価を有する、マレイン化ポリブタジエンである。例えば、表面処理剤は、1000〜300000mPa・sの範囲の25℃でのブルックフィールド粘度、又はマレイン化ポリブタジエン1g当たり水酸化カリウムの10〜300mgの範囲の酸価、又はマレイン化ポリブタジエン100当たりヨウ素100〜1000gの範囲のヨウ素価を有する、マレイン化ポリブタジエンである。代替的に、表面処理剤は、1000〜300000mPa・sの範囲の25℃でのブルックフィールド粘度、及びマレイン化ポリブタジエン1g当たり水酸化カリウム10〜300mgの範囲の酸価、及びマレイン化ポリブタジエン100g当たりヨウ素100〜1000gの範囲のヨウ素価を有する、マレイン化ポリブタジエンである。
【0166】
「マレイン化」という用語は、架橋性二重結合を含む置換基R
1及び/又はR
2と無水マレイン酸の二重結合との反応後に無水コハク酸が得られることを意味する。
【0167】
一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、又は一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物は置換基R
1のみを含むことが好ましい。したがって、前記化合物は、好ましくは、置換基R
1を含む一置換無水コハク酸含有化合物、一置換コハク酸含有化合物又は一置換コハク酸塩含有化合物である。
【0168】
追加的に、または代替的に、少なくとも1つの表面処理剤は、不飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸の塩から選択される。
【0169】
本発明の意味における「不飽和脂肪酸」という用語は、炭素及び水素から構成される直鎖又は分枝鎖の不飽和有機化合物を意味する。前記有機化合物は、炭素骨格の末端に配置されたカルボキシル基をさらに含む。
【0170】
不飽和脂肪酸は、好ましくはミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、不飽和脂肪酸である表面処理剤は、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、不飽和脂肪酸である表面処理剤は、オレイン酸及び/又はリノール酸、好ましくはオレイン酸又はリノール酸であり、最も好ましくはリノール酸である。
【0171】
追加的に、または代替的に、表面処理剤は不飽和脂肪酸の塩である。
【0172】
「不飽和脂肪酸の塩」という用語は、活性酸性基が部分的又は完全に中和されている不飽和脂肪酸を指す。「部分的に中和された」不飽和脂肪酸という用語は、40〜95モル%の範囲、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜95モル%、最も好ましくは70〜95モル%の活性酸性基の中和度を指す。「完全に中和された」不飽和脂肪酸という用語は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸性基の中和度を指す。好ましくは、活性酸性基は部分的又は完全に中和されている。
【0173】
不飽和脂肪酸の塩は、好ましくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、アミン塩は直鎖又は環状である。例えば、表面処理剤は、オレイン酸及び/又はリノール酸、好ましくはオレイン酸又はリノール酸、最も好ましくはリノール酸の塩である。
【0174】
追加的に、または代替的に、少なくとも1つの表面処理剤は、リン酸の不飽和エステル及び/又は不飽和リン酸エステルの塩である。
【0175】
したがって、リン酸の不飽和エステルは、1つ以上のリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルと任意選択的に1つ以上のリン酸トリエステルとのブレンドであってもよい。一実施形態では、前記ブレンドはさらにリン酸を含む。
【0176】
例えば、リン酸の不飽和エステルは、1つ以上のリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルとのブレンドである。代替的に、リン酸の不飽和エステルは、1つ以上のリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルとリン酸とのブレンドである。代替的に、リン酸の不飽和エステルは、1つ以上のリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルと1つ以上のリン酸トリエステルとのブレンドである。代替的に、リン酸の不飽和エステルは、1つ以上のリン酸モノエステルと1つ以上のリン酸ジエステルと1つ以上のリン酸トリエステルとリン酸とのブレンドである。
【0177】
例えば、前記ブレンドは、ブレンド中の化合物のモル総和を基準にして、≦8モル%、好ましくは≦6モル%、より好ましくは≦4モル%、例えば、0.1〜4モル%の量でリン酸を含む。
【0178】
本発明の意味における「リン酸モノエステル」という用語は、アルコール置換基中のC6〜C30、好ましくはC8〜C22、より好ましくはC8〜C20、最も好ましくはC8〜C18の炭素原子の総数を有する不飽和、分枝又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0179】
本発明の意味における「リン酸ジエステル」という用語は、アルコール置換基中のC6〜C30、好ましくはC8〜C22、より好ましくはC8〜C20、最も好ましくはC8〜C18の炭素原子の総数を有する同じ又は異なる不飽和、分枝又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0180】
本発明の意味における「リン酸トリエステル」という用語は、アルコール置換基中のC6〜C30、好ましくはC8〜C22、より好ましくはC8〜C20、最も好ましくはC8〜C18の炭素原子の総数を有する同じ又は異なる不飽和、分枝又は直鎖、脂肪族又は芳香族アルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0181】
追加的に、または代替的に、表面処理剤は不飽和リン酸エステルの塩である。一実施形態では、不飽和リン酸エステルの塩は、少量のリン酸塩をさらに含むことができる。
【0182】
「不飽和リン酸エステルの塩」という用語は、活性酸性基(複数可)が部分的又は完全に中和されている不飽和リン酸エステルを指す。「部分的に中和された」不飽和リン酸エステルという用語は、40〜95モル%の範囲、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜95モル%、最も好ましくは70〜95モル%の活性酸性基(複数可)の中和度を指す。「完全に中和された」不飽和リン酸エステルという用語は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸性基(複数可)の中和度を指す。好ましくは、活性酸性基(複数可)は部分的又は完全に中和されている。
【0183】
不飽和リン酸エステルの塩は、好ましくはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、アミン塩は直鎖状又は環状である。
【0184】
追加的に、または代替的に、少なくとも1つの表面処理剤は、アビエチン酸(アビエタ−7,13−ジエン−18−酸とも呼ばれる)である。
【0185】
追加的に、または代替的に、表面処理剤はアビエチン酸の塩である。
【0186】
「アビエチン酸の塩」という用語は、活性酸性基が部分的又は完全に中和されているアビエチン酸を指す。「部分的に中和された」アビエチン酸という用語は、40〜95モル%の範囲、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜95モル%、最も好ましくは70〜95モル%の活性酸性基の中和度を指す。「完全に中和された」アビエチン酸という用語は、>95モル%、好ましくは>99モル%、より好ましくは>99.8モル%、最も好ましくは100モル%の活性酸性基の中和度を指す。好ましくは、活性酸性基は部分的又は完全に中和され、より好ましくは完全に中和されている。
【0187】
アビエチン酸の塩は、好ましくはそのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、ストロンチウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩及び/又はアンモニウム塩からなる群から選択される化合物であり、ここで、アミン塩は直鎖状又は環状である。
【0188】
少なくとも1つの表面処理剤は、工程b)で得られた水性懸濁液に、工程a)で提供された表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加されることが必要である。
【0189】
本発明の一実施形態によれば、工程c)で添加される少なくとも1つの表面処理剤の量は、炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり表面処理剤0.07〜9mgの範囲、好ましくは炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり表面処理剤0.1〜8mgの範囲、最も好ましくは炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり表面処理剤0.11〜5mgの範囲である。
【0190】
工程b)で得られた水性懸濁液に少なくとも1つの表面処理剤を1つ以上の工程で添加する工程は、好ましくは混合条件下で行われる。当業者は、これらの混合条件(混合パレットの構成及び混合速度等)をその当業者の方法の装置に従い、適合させるであろう。
【0191】
本発明の一実施形態では、方法は連続法であることができる。この場合、工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を、工程c)の間に一定濃度の少なくとも1つの表面処理剤が提供されるように一定流量で添加することができる。
【0192】
代替的に、少なくとも1つの表面処理剤は工程b)で得られた水性懸濁液に1工程で添加され、少なくとも1つの表面処理剤は好ましくは一度に添加される。
【0193】
別の実施形態では、本発明の方法はバッチ処理であることができ、即ち、少なくとも1つの表面処理剤は、工程b)で得られた水性懸濁液に2つ以上の工程で添加され、少なくとも1つの表面処理剤は、好ましくはほぼ等しいポーションで添加される。代替的に、工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を等しくないポーション、即ち、より多いポーション及びより少ないポーションで添加することも可能である。
【0194】
本発明の一実施形態によれば、工程c)は、バッチ処理又は連続法で、0.1〜1000秒の期間実施される。例えば、工程c)は連続法であり、1つ又は複数の接触工程を含み、全接触時間は0.1〜20秒、好ましくは0.5〜15秒、最も好ましくは1〜10秒である。
【0195】
表面処理剤は、「固体」形態で、又は「液体」として使用することができる。
【0196】
しかし、固体表面処理剤は溶媒に溶解/分散/懸濁され、溶液又は懸濁液又は分散液として、即ち、液体として、工程b)で得られた水性懸濁液に添加されてもよい。
【0197】
表面処理剤を希釈/溶解/分散/懸濁するために使用され得る溶媒は、水及び/又は水と混和性の有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン又はプロパノール等の有機溶媒であることができる。好ましい実施形態によれば、溶媒は水からなる。別の好ましい実施形態によれば、溶媒は、水と、水と混和性である少なくとも1つの有機溶媒との混合物である。好ましくは、溶媒は、水とエタノールとからなる混合物であり、より好ましくは、水:エタノール混合物は、溶媒の重量を基準にして2:1〜1:2の比を有し、最も好ましくは、水:エタノール混合物は、溶媒の重量を基準にして1:1の比を有する。
【0198】
本発明の一実施形態によれば、溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液の固形分は、懸濁液/溶液/分散液の総重量を基準にして、0.1〜15重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲、より好ましくは1.5〜8重量%の範囲、最も好ましくは2〜6重量%の範囲である。
【0199】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液は、添加工程c)が実施される前に予熱される。即ち、少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液は、添加工程c)が実施される前に、30〜120℃、好ましくは45〜115℃、より好ましくは50〜105℃、最も好ましくは80〜100℃の温度で処理される。
【0200】
少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液の予熱を行うための処理時間は、30分以下の期間、好ましくは20分以下の期間、より好ましくは15分以下の期間である。
【0201】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液は、添加工程c)が実施される前に、30〜120℃、好ましくは45〜115℃、より好ましくは50〜105℃、最も好ましくは80〜100℃の温度で、30分以下の期間、好ましくは20分以下の期間、より好ましくは15分以下の期間予熱される。
【0202】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液の予熱は、混合工程d)中に実施される温度にほぼ等しい温度で行われる。
【0203】
本発明の意味における「等しい」温度という用語は、混合工程d)中に実施される温度を最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは10℃、最も好ましくは最大で5℃下回る又は上回る予熱温度を指す。
【0204】
少なくとも1つの表面処理剤又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液/分散液の予熱は、好ましくは混合条件下で行われる。当業者は、これらの混合条件(混合パレットの構成及び混合速度等)をその当業者の方法の装置に従い、適合させるであろう。
【0205】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの表面処理剤、即ち、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、不飽和脂肪酸、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物、又は溶媒及び少なくとも1つの表面処理剤を含む希釈/溶解/分散された溶液/懸濁液は、その対応する塩を得るために、添加工程c)の前に塩基で処理することができる。
【0206】
塩基は、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム及び/又は水酸化ナトリウムから選択することができ、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0207】
表面処理剤への少なくとも1つの塩基の添加は、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。好ましくは、添加は、混合条件下で実施することができる。当業者は、これらの混合条件、例えば、混合速度及び温度を、その当業者の方法の装置に従い、適合させるであろう。
【0208】
塩基は、表面処理剤、即ち、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、不飽和脂肪酸、リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、及びそれらの混合物に、表面処理剤の乾燥重量を基準にして0.1〜15重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲、より好ましくは1.5〜8重量%の範囲、最も好ましくは2〜6重量%の範囲の量で添加することができる。
【0209】
<工程d)の特徴付け:工程c)で得られた水性懸濁液の混合>
本発明の工程d)によれば、工程c)で得られた水性懸濁液は30〜120℃の範囲の温度で混合される。
【0210】
工程c)で得られた水性懸濁液の混合は、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。当業者は、混合条件、例えば、混合速度及び温度を、その当業者の方法の装置に応じて適合させるであろう。さらに、混合は、均質化及び/又は粒子分割条件下で行うことができる。
【0211】
例えば、混合及び均質化は、プラウシェアミキサーによって行うことができる。プラウシェアミキサーは、機械的に製造された流動床の原理によって機能する。プラウシェアブレードは、水平円筒形ドラムの内壁の近くで回転し、混合物の成分を生成物床から開放された混合空間に運ぶ。機械的に製造された流動床は、大きなバッチでも非常に短時間で激しい混合を保証する。チョッパー及び/又はディスパーサーは、乾いた操作で塊を分散させるために使用される。本発明の方法で使用することができる装置は、例えば、ドイツのゲブリューダー・レディゲ・マシネンバウ社又はドイツのビスコ・ジェット・リュールシステメ社から入手可能である。
【0212】
工程d)では、工程c)で得られた水性懸濁液が30〜120℃の範囲の温度で混合されることが必要である。一実施形態によれば、混合工程d)は、45〜115℃の範囲、好ましくは50〜105℃、より好ましくは80〜100℃の範囲の温度で実施される。例えば、混合工程d)は、90℃±5℃の温度で実施される。混合工程d)中のこのような温度の利点は、本発明の表面処理剤が、そのような温度を実施しない場合よりも表面改質された炭酸カルシウムの表面に強固に付着し、得られる表面処理された炭酸カルシウムの疎水性を改善することである。
【0213】
一実施形態では、混合工程d)は、少なくとも1秒、好ましくは少なくとも1分、例えば、少なくとも10分、15分、30分、又は45分実施される。追加的に、または代替的に、工程d)は、最大で60分間、好ましくは最大で45分間、例えば、最大で30分実施される。
【0214】
例えば、混合工程d)は、1秒〜60分の範囲の期間、好ましくは15分〜45分の範囲の期間に実施される。例えば、混合工程d)は30分±5分の期間に実施される。
【0215】
混合工程d)は、好ましくは、30〜120℃の範囲の温度で、1秒〜60分の範囲の期間に実施されることが理解される。
【0216】
一実施形態では、工程d)は、45〜115℃の範囲、好ましくは50〜105℃、より好ましくは80〜100℃の範囲の温度で、及び/又は1秒〜60分の範囲の期間に実施される。例えば、混合工程d)は、45〜115℃の範囲、好ましくは50〜105℃、より好ましくは80〜100℃の範囲の温度で、1秒〜60分の範囲の期間に実施される。代替的に、混合工程d)は、45〜115℃の範囲、好ましくは50〜105℃、より好ましくは80〜100℃の範囲の温度、又は1秒〜60分の範囲の期間に実施される。
【0217】
方法の工程c)及びd)は、別々に又は同時に実施され得ることが理解される。一実施形態では、方法の工程c)及びd)は、別々に、即ち、所定の順序で実施される。代替的に、方法の工程c)及びd)は同時に実施される。
【0218】
工程c)及びd)を同時に行うことが好ましい。これは、より時間効率の良いやり方で方法を実施できるので有利である。
【0219】
一実施形態では、好ましくは遠心分離又は濾過による機械的脱水が工程d)の間に行われ、及び/又は工程d)の間及び/又は工程d)の後に表面処理された炭酸カルシウムは水で洗浄される。例えば、好ましくは遠心分離又は濾過による機械的脱水が工程d)の間に行われ、及び工程d)の間及び/又は工程d)の後、好ましくは工程d)の後に表面処理された炭酸カルシウムが水で洗浄される。代替的に、好ましくは遠心分離又は濾過による機械的脱水が工程d)の間に実施されるか、又は工程d)の間及び/又は工程d)の後、好ましくは工程d)の後に表面処理された炭酸カルシウムが水で洗浄される。
【0220】
このような機械的脱水は、水性懸濁液の含水率を減少させるための当業者に周知の全ての技術及び方法によって行われ得る。機械的脱水は、好ましくは遠心分離又は濾過によって、例えば、垂直プレート圧力フィルター、チューブプレス又は真空フィルター中で実施される。好ましくは、機械的脱水は加圧下で行われる。
【0221】
洗浄は、表面処理された炭酸カルシウムから、十分に付着していない量の表面処理剤を洗い流すための、当業者に周知の全ての技術及び方法によって行われ得る。洗浄は、例えば、表面処理された炭酸カルシウム又は任意選択的に機械的に脱水された表面処理された炭酸カルシウムを水ですすぐことによって行うことができる。任意選択的に、表面処理された炭酸カルシウム又は任意選択的に機械的に脱水された表面処理された炭酸カルシウムは、水と、水と混和する有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、エチレングリコール、グリセリン又はプロパノール等の有機溶媒とを含む混合物ですすがれる。表面処理された炭酸カルシウムは、工程d)の間及び/又は工程d)の後に水で洗浄される。一実施形態によれば、表面処理された炭酸カルシウムは、工程d)の間及び後に水で洗浄される。代替的に、表面処理炭酸カルシウムは、工程d)の間又は工程d)の後、好ましくは工程d)の後に水で洗浄される。
【0222】
<工程e)の特徴付け:工程d)の間又は後の水性懸濁液の乾燥>
本発明の工程e)によれば、水性懸濁液は、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、周囲圧力又は減圧下で40〜160℃の範囲の温度で、工程d)の間又は後に乾燥される。
【0223】
したがって、方法の工程e)を40〜160℃の範囲の温度で実施することが必要である。例えば、方法の工程e)は、50〜155℃の範囲、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜145℃の温度で実施される。例えば、方法の工程e)は、120℃±5℃の温度で実施される。
【0224】
方法の工程e)は、周囲圧力又は減圧下で実施することができることが理解される。好ましくは、乾燥は周囲圧力で実施される。
【0225】
したがって、方法の工程e)は、好ましくは周囲圧力で40〜160℃の範囲の温度で実施される。例えば、方法の工程e)は、周囲圧力で50〜155℃の範囲、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜145℃の温度で実施される。好ましくは、方法の工程e)は、周囲圧力で120℃±5℃の温度で実施される。
【0226】
代替的に、方法の工程e)は、減圧下で40〜160℃の範囲の温度で実施される。例えば、方法の工程e)は、減圧下で50〜155℃の範囲、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜145℃の温度で実施される。好ましくは、方法の工程e)は、減圧下で120℃±5℃の温度で実施される。
【0227】
本発明によれば、水性懸濁液は、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、工程d)の間又は後に乾燥される。
【0228】
「含水率」は重量測定で150℃での重量損失として測定される。
【0229】
好ましくは、乾燥工程e)は、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.005〜15重量%の範囲、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、より好ましくは0.05〜5重量%になるまで実施される。
【0230】
本発明者らは、驚くべきことに、前述の方法により、改善された表面特性、特に高い疎水性を有する表面処理された炭酸カルシウムを調製することが可能であることを見出した。さらに、本発明による方法により、従来の方法、特に乾式法により調製された表面処理された炭酸カルシウムと比較して、表面処理剤が炭酸カルシウム表面に、より強固に付着した表面処理された炭酸カルシウムを提供することができる。さらに、本発明者らは、本発明による方法が水中で実施でき、このため本発明の方法では有機溶媒を低減又は回避することができることを見出した。さらに、遊離体(educts)を混合することによって本発明による方法を準備することができ、このため本方法では中間工程を回避することができる。
【0231】
<さらなる方法工程>
本発明の一実施形態によれば、本方法は、工程d)の間または後に、工程c)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加してpH値を7.5〜12の範囲、好ましくは8〜11.5、最も好ましくは8.5〜11に再調整するさらなる工程f)を含む。
【0232】
本発明の意味における「少なくとも1つの」塩基という用語は、塩基が1つ以上の塩基を含み、好ましくはそれ(ら)からなることを意味する。
【0233】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの塩基は、1つの塩基を含み、好ましくはそれからなる。代替的に、少なくとも1つの塩基は、2つ以上の塩基を含み、好ましくはそれらからなる。例えば、少なくとも1つの塩基は、2つ又は3つの塩基を含み、好ましくはそれらからなる。
【0234】
好ましくは、少なくとも1つの塩基は、1つの塩基を含み、より好ましくはそれからなる。
【0235】
少なくとも1つの塩基は、好ましくは、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、第一級、第二級及び第三級アミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの塩基は、水酸化カルシウム及び/又は水酸化ナトリウム及び/又は水酸化アンモニウムである。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基は水酸化カルシウムである。水酸化カルシウムは、表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液に外来カチオン不純物を与えないので、有利に添加される。
【0236】
工程b)及び任意の工程f)で使用される少なくとも1つの塩基は、同じであっても異なっていてもよいことが理解される。好ましくは、工程b)及び任意の工程f)で使用される少なくとも1つの塩基は同じである。
【0237】
少なくとも1つの塩基は、「固体」形態で、又は「液体」又は「気体」として使用することができる。
【0238】
例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムは、298.15K(25℃)の温度及び正確に100000Pa(1バール、14.5psi、0.98692気圧)の絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で固体である。少なくとも1つの塩基が固体形態である場合、それは方法の段階f)で、例えば、粉末、錠剤、顆粒、フレーク等として使用することができる。
【0239】
しかし、固体塩基はまた、水に溶解/分散/懸濁させて、方法の工程f)で溶液又は懸濁液又は分散液として、即ち、液体として使用してもよい。
【0240】
方法の工程f)における少なくとも1つの塩基の添加は、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。この点について、本発明の方法の工程b)で添加される少なくとも1つの塩基の技術的詳細を論じる際に上記で提供された説明を参照する。
【0241】
方法の工程f)は、工程d)の間又は後に、好ましくは工程d)の間に行うことができることが理解される。
【0242】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、表面改質された炭酸カルシウムの表面処理方法であって、該方法は
a) 水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b) 工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整する工程;
c) 工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を、工程a)で提供された表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加する工程であって、少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される工程;
d) 工程c)で得られた水性懸濁液を30〜120℃の範囲の温度で混合する工程;
e) 工程d)の間又は後に水性懸濁液を、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、40〜160℃の範囲の温度で周囲圧力又は減圧下に乾燥させる工程;及び
f) 工程c)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加して、工程d)の間又は後にpH値を7.5〜12の範囲に再調整する工程
を含む方法に言及する。
【0243】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、工程e)の後又はその間に、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集するさらなる工程g)を含み、好ましくは工程g)は工程e)の間に実施される。例えば、本方法は、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集するさらなる工程g)を工程e)の後に含む。代替的に、本方法は、工程e)の間に、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集するさらなる工程g)を含む。
【0244】
本発明の意味における「解凝集」という用語は、脱水工程及び/又は乾燥工程中に形成された凝集物の破砕を指す。
【0245】
解凝集は、解凝集に適した当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。例えば、解凝集工程は乾式粉砕工程であることができ、例えば、粉砕が主に二次体との衝突から生じるような条件の下で任意の従来の粉砕装置、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に知られている他のそのような装置の1つ以上で行うことができる。
【0246】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、表面改質された炭酸カルシウムの表面処理方法であって、該方法は
a) 水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b) 工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整する工程;
c) 工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を、工程a)で提供された表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加する工程であって、少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される工程;
d) 工程c)で得られた水性懸濁液を30〜120℃の範囲の温度で混合する工程;及び、
e) 工程d)の間又は後に水性懸濁液を、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、で40〜160℃の範囲の温度で周囲圧力又は減圧下に乾燥させる工程;及び
f) 任意選択的に、工程c)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加して、工程d)の間又は後にpH値を7.5〜12の範囲に再調整する工程;及び
g) 工程e)の後又はその間に、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集する工程
を含む方法に言及する。
【0247】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明の方法は連続法であることができる。この場合、工程a)の少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を、工程b)の少なくとも1つの塩基及び工程c)の少なくとも1つの表面処理剤と、工程a)の少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウム、工程b)の少なくとも1つの塩基及び工程c)の少なくとも1つの表面処理剤の一定濃度が提供されるように、一定流量で接触させることができる。
【0248】
代替的に、工程a)の少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を、工程b)の少なくとも1つの塩基及び工程c)の少なくとも1つの表面処理剤と1工程で接触させ、ここで少なくとも1つの表面処理剤は一度に添加することが好ましい。
【0249】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法はバッチ処理であることができ、即ち、工程a)の少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を、工程b)の少なくとも1つの塩基及び工程c)の少なくとも1つの表面処理剤と2つ以上の工程で接触させ、ここで表面処理剤は好ましくはほぼ等しいポーションで添加される。代替的に、工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を等しくないポーション、即ち、より多いポーション及びよい少ないポーションで添加することも可能である。
【0250】
本発明の一実施形態によれば、方法の全ての工程は完全に又は部分的にバッチ処理又は連続処理であり、バッチ処理は工程a)〜d)及び存在するならば工程f)について好ましく、連続処理は工程e)について好ましい。
【0251】
<表面処理された炭酸カルシウム>
本発明の一態様によれば、本発明の方法により得ることができる表面処理された炭酸カルシウムが提供される。
【0252】
したがって、本発明の表面処理された炭酸カルシウムは、以下の工程、即ち、
a) 水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b) 工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整する工程;
c) 工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を、工程a)で提供された表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加する工程であって、少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される工程;
d) 工程c)で得られた水性懸濁液を30〜120℃の範囲の温度で混合する工程;及び
e) 工程d)の間又は後に水性懸濁液を、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、40〜160℃の範囲の温度で周囲圧力又は減圧下に乾燥させる工程
を含む方法によって得ることができる。
【0253】
一実施形態によれば、本発明の表面処理された炭酸カルシウムは、以下の工程、即ち、
a) 水性懸濁液の総重量を基準にして5〜80重量%の範囲の固形分を有する少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムの水性懸濁液を提供する工程;
b) 工程a)の水性懸濁液のpH値を7.5〜12の範囲に調整する工程;
c) 工程b)で得られた水性懸濁液に、少なくとも1つの表面処理剤を、工程a)で提供された表面改質された炭酸カルシウムの利用可能な表面積1m
2当たり0.05〜10mgの範囲の表面処理剤の量で添加する工程であって、少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される工程;
d) 工程c)で得られた水性懸濁液を30〜120℃の範囲の温度で混合する工程;
e) 工程d)の間又は後に水性懸濁液を、得られた表面処理された炭酸カルシウムの含水率が、表面処理された炭酸カルシウムの総重量を基準にして0.001〜20重量%の範囲になるまで、40〜160℃の範囲の温度で周囲圧力又は減圧下に乾燥させる工程;及び
f) 工程c)の水性懸濁液に少なくとも1つの塩基を添加して、工程d)の間又は後にpH値を7.5〜12の範囲に再調整する工程;及び/又は
g) 工程e)の後又はその間に、工程d)又はe)の表面処理された炭酸カルシウムを解凝集する工程
を含む方法によって得ることができる。
【0254】
本発明の別の態様によれば、表面処理された炭酸カルシウムが提供される。表面処理された炭酸カルシウムは、
a) 表面改質された炭酸カルシウムを含み、表面改質された炭酸カルシウムは天然の重質炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと二酸化炭素及び1つ以上のH
3O
+イオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素はH
3O
+イオン供与体処理によってその場で形成されるか、及び/又は外部供給源から供給され、及び
b) 表面処理剤は、表面改質された炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部に処理層として位置しており、
− 処理層は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される処理剤、及び/又はその反応生成物からなり、及び
− 表面改質された炭酸カルシウムの全表面積上の表面処理剤の総重量は、工程a)の表面改質された炭酸カルシウムを基準にして0.05〜10mg/m
2である。
【0255】
表面処理された炭酸カルシウム、表面改質された炭酸カルシウム、表面処理剤及びそれらの好ましい実施形態の定義に関しては、本発明の方法の技術的詳細を論じる際に上記で述べた説明を参照するる。
【0256】
本発明の意味における「反応生成物」という用語は、少なくとも1つの表面改質された炭酸カルシウムを少なくとも1つの表面処理剤と接触させることによって得られる生成物を指し、即ち、少なくとも1つの表面処理剤は、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸含有化合物、一置換又は二置換コハク酸塩含有化合物;不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩;アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。反応生成物は、塗布された表面処理剤の少なくとも一部と表面改質された炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0257】
本発明の表面処理された炭酸カルシウムは、改善された表面特性、特に高い疎水性を有することが理解される。
【0258】
本発明の一実施形態によれば、本発明による表面処理された炭酸カルシウムは、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定された水:エタノールの体積比が2.3:1未満の疎水性を有する。例えば、本発明による表面処理された炭酸カルシウムは沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定された水:エタノールの体積比が2.2:1未満、好ましくは2.1:1未満、最も好ましくは2.0:1未満の疎水性を有する。例えば、表面処理された炭酸カルシウムは、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定された水:エタノールの体積比が1.9:1の疎水性を有する。最も好ましくは、表面処理された炭酸カルシウムは、沈降法を用いて+23℃(±2℃)で測定された水:エタノールの体積比が1:1〜1.9:1の範囲の疎水性を有する。
【0259】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、表面処理剤が、従来の方法、特に乾式法によって調製された表面処理された炭酸カルシウムと比較して、本発明の表面改質された炭酸カルシウムの表面に、より強固に付着することを見出した。
【0260】
表面処理された炭酸カルシウムの使用
本発明の別の態様によれば、ポリマー組成物、製紙、紙コーティング、農業用途、塗料、接着剤、シーラント、建築用途、製薬用途及び/又は化粧品用途における、表面処理された炭酸カルシウムの使用が提供される。
【0261】
別の態様によれば、一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、完全に又は部分的に中和された一置換又は二置換無水コハク酸含有化合物、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の塩;リン酸の不飽和エステル、不飽和リン酸エステルの塩、アビエチン酸、アビエチン酸の塩及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの表面処理剤で表面処理されている炭酸カルシウムは、ゴムの架橋用、シート成形化合物において、バルク成形化合物、好ましくはパイプ及びケーブル用の架橋性ポリオレフィン系配合物において、架橋性ポリ塩化ビニルにおいて、不飽和ポリエステルにおいて及びアルキド樹脂において使用される。
【0262】
このように、本発明の表面処理された炭酸カルシウムは、表面処理された炭酸カルシウム、即ち、表面改質された炭酸カルシウムの表面に位置する表面処理剤が、周囲材料との反応を受けるように、周囲材料に使用されることが好ましい。
【0263】
本発明の意味における「周囲材料」という用語は、表面処理された炭酸カルシウムを含むマトリックス材料を指す。
【0264】
先に既に述べたように、本発明者は驚くべきことに、従来の方法、特に乾式法によって調製された表面処理された炭酸カルシウムと比較して、表面処理剤が本発明の表面改質された炭酸カルシウムに、より強固に付着することを見出した。
【0265】
本発明の表面処理された炭酸カルシウムは、ポリマー組成物等の最終用途製品、製紙、紙コーティング、農業用途、塗料、接着剤、シーラント、建築用途、製薬用途及び/又は化粧品用途において使用されるか、ゴムの架橋用、シート成形化合物における、バルク成形化合物、好ましくはパイプ及びケーブル用の架橋性ポリオレフィン系配合物における、架橋性ポリ塩化ビニルにおける、不飽和ポリエステルにおける及びアルキド樹脂に使用される場合、これは従来の方法、特に乾式法により調製された表面処理された炭酸カルシウムが使用される同じ製品と比較して、製品の品質の改善をもたらす。表面改質された炭酸カルシウムの表面への表面処理剤のより強固な付着のために、より少量の表面処理剤が表面改質された炭酸カルシウムから剥離する。このことは、望ましいことである。なぜならば、剥離した表面処理剤が製品中の「遊離」の表面処理剤として存在し得るので、そのような製品に、例えば、機械的特性及び/又は光学的特性に、悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0266】
さらなる態様によれば、架橋性化合物の架橋のための硬化剤及び表面処理された炭酸カルシウムが提供され、硬化剤は過酸化物、又は硫黄をベースとする硬化剤である。好ましくは、架橋性化合物は、ゴム、ポリオレフィン系配合物、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル及びアルキド樹脂から選択される。
【0267】
本発明によるゴムは、任意の天然又は合成ゴムである。例えば、ゴムは、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム、ポリアクリレートゴム、スチレン−ブタジエンゴム及びそれらの混合物であることができる。
【0268】
本発明によるポリオレフィン系配合物は、モノマーとしての単純オレフィン(一般式C
nH
2nを有するアルケンとも呼ばれる)から製造されるポリマーの種類のいずれかである。例えば、ポリエチレンは、オレフィンであるエチレンを重合することによって製造されるポリオレフィンである。ポリプロピレンは、オレフィンであるプロピレンから製造される別の一般的なポリオレフィンである。
【0269】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、ポリ塩化ビニルホモポリマー又は塩化ビニルと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーを含む。ポリ塩化ビニルのホモポリマーが提供される場合、ポリ塩化ビニル樹脂は塩化ビニルのみからなるモノマーを含む。
【0270】
ポリ塩化ビニルについてのさらなる詳細は、例えば、EP2612881A1に開示されており、この参考文献の内容は参照により本願に組み込まれる。
【0271】
本発明による不飽和ポリエステルは、主鎖にエステル官能基を含むポリマーを指す。本発明により使用される不飽和ポリエステルは、α,β−エチレン性不飽和を含むジカルボン酸若しくはその無水物又はそれらの混合物をジアルコール又はジアルコールの混合物又はそれらのエーテルと縮合させることによって調製される。不飽和ジカルボン酸又は無水物の例としては、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びクロロマレイン酸が挙げられる。少量の不飽和ジカルボン酸(25モル%まで)は、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸又はメチルコハク酸等の飽和ジカルボン酸で置き換えることができる。ジアルコール又はそれらのエーテルは、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレンオキシド及びそれらの混合物を含む群から選択することができる。好ましくは、不飽和ポリエステルはポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エチレンプロピレンフマレート)、ポリ(ジプロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンジプロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンイソフタレート/フマレート)等である。
【0272】
本発明によるアルキド樹脂は、脂肪酸及びトリグリセリド油から調製されるポリマーを指す。アルキド樹脂は、フェノール樹脂、スチレン、ビニルトルエン、アクリルモノマー、又はポリウレタンで変性することができる。
【0273】
硬化剤は過酸化物であるか、又は硬化剤は硫黄をベースとする。
【0274】
硬化剤が過酸化物である場合、硬化剤は、ペルエステル、ペルケタール、ヒドロペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド及びケトンペルオキシドを始めとする、非常に広い範囲から選択することができる。このような過酸化物の例としては、t−ブチルペルオクタノエート、ペルベンゾエート、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート等が挙げられる。所望であれば、2つ以上の過酸化物の混合物を使用することができる。
【0275】
硫黄系の硬化剤は、元素状硫黄、又は硫黄含有系、例えば、チオ尿素、例えば、エチレンチオ尿素、N,N−ジブチルチオ尿素、N,N−ジエチルチオ尿素等;チオウラムモノスルフィド及びジスルフィド、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTMS)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTDS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTDS)、テトラエチルチウラムモノスルフィド(TETMS)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(DPTH)等;ベンゾチアゾールスルフェンアミド、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)等;2−メルカプトイミダゾリン、N,N−ジフェニルグアナジン、N,N−ジ−(2−メチルフェニル)−グアナジン、チアゾール促進剤、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールジスルフィド、亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾール等;ジチオカルバメート促進剤、例えば、テルルジエチルジチオカルバメート、銅ジメチルジチオカルバメート、ビスマスジメチルジチオカルバメート、カドミウムジエチルジチオカルバメート、鉛ジメチルジチオカルバメート、亜鉛ジエチルジチオカルバメート及び亜鉛ジメチルジチオカルバメートであることができる。所望であれば、2つ以上の硫黄系硬化剤の混合物を使用することができる。
【0276】
本発明による「架橋反応」は、周囲材料と、表面改質された炭酸カルシウムの表面に位置する表面処理剤の二重結合との間の反応として定義される。この反応のために、周囲材料と表面改質された炭酸カルシウムの表面に位置する表面処理剤との間に結合が形成され、その結合は共有化学結合又はイオン結合である。
【0277】
本発明の範囲及び関心は、本発明のある実施形態を例証するためであり、非限定的な以下の実施例に基づいてより深く理解される。
【実施例】
【0278】
1 測定方法
以下では、実施例で実施された測定方法について説明する。
【0279】
<炭酸カルシウムの含水率>
10gの粉末サンプルを、質量が20分間一定になるまでオーブン中で、150℃で加熱した。質量損失を重量測定法で測定し、初期のサンプル質量に基づく重量%損失として表した。この質量損失はサンプルの湿度に起因していた。
【0280】
<吸湿感受性>
本明細書で言及される材料の吸湿感受性は、+23℃(±2℃)の温度で2.5時間、相対湿度10%及び85%の雰囲気にそれぞれ暴露した後のmg水分/gで決定した。この目的のために、サンプルを最初に相対湿度10%の雰囲気下で2.5時間保持し、次に85%の相対湿度に雰囲気を変更し、ここでサンプルをさらに2.5時間保持する。次に10%の相対湿度及び85%の相対湿度の間の重量増加を使用して、サンプルのmg水分/gで表される吸湿を計算した。
【0281】
m
2/gで表される比表面積(比表面積BETを基準にして計算)で割ったmg/gで表される吸湿感受性は、サンプルのmg/m
2で表される「正規化された吸湿感受性」に相当する。
【0282】
<揮発性発現温度>
「揮発性発現温度」は、熱重量分析(TGA)曲線の分析によって決定した。以下に説明するTGA分析は、残存サンプルの質量(y軸)を温度(x軸)の関数としてプロットするTGA曲線上で観測されるように、以下に定義するそのような曲線の作成及び解釈が、発展し始めた。TGA分析法は、質量の損失及び揮発性発現温度に関する情報を非常に正確に提供し、一般的な知識である。例えば、それは第31章798〜800頁の 「機器分析の原理(Instrumental analysis Principles)」、第5版、Skoog、Holler、Nieman、1998(第1版、1992)及び他の多くの一般に知られている参考文献に記載されている。TGAは、500+/−50mgのサンプル及び70ml/分の空気流下で20℃/分の速度での25℃〜550℃の走査温度に基づくMettler Toledo TGA 851を使用して実施した。
【0283】
当業者は、以下のようにTGA曲線を分析することにより「揮発性発現温度」を決定することができる。即ち、TGA曲線の一次導関数を得、150〜350℃の間の曲線上の変曲点を特定する。水平線に対して45°より大きな接線勾配値を有する変曲点のうち、150℃を超える最も低い関連温度を有するものを特定する。一次導関数曲線のこの最低温度変曲点に関連する温度値が「揮発性発現温度」である。
【0284】
<疎水性>
異なる水及びエタノールの種々の混合物を調製した。報告されたデータは、体積/体積比に基づく。以下に、異なる工程を示す。
a) 100mLガラスビーカーを50mLの水/エタノール混合物で満たした。
b) ふるい(メッシュサイズ:約1mm)を通して、被覆された鉱物材料0.5gを液体表面の上部に添加した。
c) 30秒後、ビーカーの底に沈んだ材料の量を特定した(視覚的評価)。
【0285】
材料の50%がビーカーの底に沈む組成物が特定されるまで、異なる水/エタノールブレンドを用いてこの手順を繰り返した。
【0286】
<pH>
Mettler Toledo Seven Easy pHメーター及びMettler Toledo InLab(R) Expert Pro pH電極を使用して、23±2℃で懸濁液のpHを測定した。機器の3点較正(セグメント法による)を、20℃でpH値が4、7及び10である市販の緩衝溶液(アルドリッチ製)を用いて最初に行った。報告されたpH値は、機器によって検出された終点値である(終点は、測定された信号が直近の6秒間の平均値から0.1mV未満しか異ならない場合である)。
【0287】
<固形分>
以下の設定、即ち、温度120℃、自動スイッチオフ3、標準乾燥、5〜20gの生成物で、スイスのメトラー・トレド(Mettler−Toledo)の湿度分析計HR73を用いて、固形分(「乾燥重量」としても知られている)を測定した。
【0288】
<比表面積BET>
比表面積は、250℃で30分の期間加熱してサンプルを調整した後に、窒素を用いてISO 9277:2010に従ってBET法により測定した。このような測定の前に、サンプルをブフナー漏斗で濾過し、脱イオン水ですすぎ、オーブン中で90〜100℃で一晩乾燥させた。続いて、乾燥ケーキを乳鉢で十分に粉砕し、得られた粉末を一定重量に達するまで130℃でモイスチャーバランスに入れた。表面処理前に比表面積を測定した。表面処理はBET比表面積を変化させないと仮定する。
【0289】
<粒状材料の粒度分布(直径<Xの粒子の体積%)、d
50値(体積メジアン粒子直径)及びd
98値>
体積平均粒子直径d
50は、ミー(Mie)理論を用いて、1.57の粒子屈折率及び0.005の吸収指数を用いて、Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(英国マルバーン・インストルメンツ社(Malvern Instruments Plc))を用いて評価した。この方法及び装置は、当業者に知られており、充填剤及び他の粒状材料の粒径を決定するために一般に使用される。
【0290】
<ブルックフィールド粘度>
ブルックフィールド粘度は、適切なディスクスピンドル、例えば、スピンドル2〜5を備えたブルックフィールド粘度計タイプRVTの使用により、製造の1時間後及び25℃±1℃、100rpmでの1分間の撹拌後に測定した。
【0291】
<ヨウ素価>
ヨウ素価は、DIN53241/1に従って測定した。
【0292】
<酸価>
酸価は、ASTM D974に従って測定した。
【0293】
<粒子内圧入比細孔容積>
粒子内に圧入した比細孔容積は、0.004μmのラプラススロート直径に相当する水銀414MPa(60000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore IV 9500水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入ポロシメトリー測定から計算した。各加圧工程で使用される平衡時間は20秒である。サンプル材料を、分析のために5cm
3チャンバーパウダーペネトロメーターに封入する。データを、ソフトウェアPore−Compを使用して、水銀圧縮、ペネトロメーター拡大及びサンプル材料圧縮について補正する(Gane、PAC、Kettle、JP、Matthews、GP及びRidgway、CJ、「圧縮可能なポリマー球の空隙構造及び強化炭酸カルシウム紙−コーティング配合物(Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper−Coating Formulations)」、Industrial and Engineering Chemistry Research、35(5)、1996、1753〜1764頁)。
【0294】
累積圧入データに見られる総細孔容積は2つの領域に分離することができ、214μmから約1〜4μmまでの圧入データは、強く寄与する凝集構造間のサンプルの粗い充填を示す。これらの直径以下では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。粒子が粒子内細孔も有する場合、この領域は二峰性に見える。これらの3つの領域の合計は、粉末の全ての総体的な細孔容積を与えるが、その分布の粗細孔終端における粉末の元のサンプル圧縮/沈降に強く依存する。これらの3つの領域の合計は、粉末の全ての総体的な細孔容積を与えるが、その分布の粗細孔終端における粉末の元のサンプル圧縮/沈降に強く依存する。
【0295】
累積圧入曲線の一次導関数を取ることによって、必然的に細孔遮蔽を含む、等価のラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。微分曲線は、粗い凝集体の細孔構造領域、粒子間の細孔領域及びもし存在するならば、粒子内の細孔領域を明らかにする。粒子内細孔直径範囲を知ることにより、総細孔容積から残りの粒子間及び凝集体間細孔容積を差し引いて、単位質量当たりの細孔容積(比細孔容積)を単位として、内部細孔の所望の細孔容積のみを与えることが可能である。当然のことながら、同じ引き算の原理が、関心のある他の細孔径領域のいずれかを分離するために適用される。
【0296】
2. 出発物質
<2.1 表面処理剤>
【0297】
【表1】
【0298】
表1による処理剤1〜3のサンプルは、以下のように完全に中和された。即ち、処理剤を、それぞれ50/50重量%の比で脱塩水と個別に接触させ、運転下で90℃(+/−5℃)に加熱した。連続的に撹拌し、加熱しながら、30重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて懸濁液をpH11(+/−0.3)に調整した。pHが11+/−0.3単位で20分間安定したら、水酸化ナトリウムの添加を停止した。
【0299】
表3では、表面改質された炭酸カルシウム(MCC)の表面コーティングの前に水酸化ナトリウムで完全に中和された表面処理剤は、表1の名称の後に末尾−Naで印を付ける。
【0300】
<2.2 表面改質された炭酸カルシウム(=MCC)>
【0301】
【表2】
【0302】
<実験:>
乾燥処理法
400gの表面改質された炭酸カルシウムAをMTIミキサー(3000rpm)において120℃で10分間混合した。表面処理剤(表1による)を加え、ブレンドを120℃及び3000rpmでさらに10分間混合した。室温に冷却した後、サンプルをミキサーから取り出し、密閉容器に保存した。
【0303】
湿式処理法
懸濁液の総重量を基準にして約20重量%の水性懸濁液を得るために、400gのサンプルAを1600gの脱イオン水と混合した。懸濁液を、直径12cmの運転されたVISCO JET CRACK(300〜500rpm; ビスコ・ジェット・リュールシステメ社、ドイツ)を用いて室温で撹拌した。pHを表3に記載される塩基の水溶液で調整した。目標とするpHが+/−0.2単位内で5分間安定である場合pH調整を停止し、報告されたpH値は最終値である。
【0304】
懸濁液を絶え間なく撹拌しながら90℃(+/−5℃)に加熱した。表3に特定された表面処理剤を約3分間かけて添加した。ブレンドを90℃で30分間さらに撹拌した。次いで、懸濁液を120℃で10時間オーブンにおいて1重量%未満の含水率まで乾燥させた。得られた乾燥粉砕物をIKA A 11基本分析ミル中で5分間解凝集させ、その後密封容器に保存した。
【0305】
【表3】
【0306】
表3に与えられた疎水性は、50重量%の表面処理された炭酸カルシウムが沈む時点の、水/エタノール比として表される。50重量%の表面処理された炭酸カルシウムを沈ませるために水/エタノールブレンド中の高い含水率が必要な場合、充填剤の疎水性は低く、一方、50重量%の表面処理された炭酸カルシウムを沈ませるために水/エタノールブレンド中のより少ない量の水は、充填剤が高い疎水性を有することを意味する。表面処理された炭酸カルシウム(充填剤)の疎水性は、表面処理された炭酸カルシウムの表面処理の質と直接相関する。本発明による試験7〜9、11及び13と比較例1〜6、10及び12の比較は、本発明による方法が改良された疎水性を有する充填剤を製造することを可能にすることを示す。換言すれば、本発明の方法を適用することにより、改良された表面処理品質を有する充填材を得ることができる。