(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019521489
(43)【公表日】20190725
(54)【発明の名称】二次元材料発光層を有する有機/無機ハイブリッドエレクトロルミネッセントデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/14 20060101AFI20190704BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20190704BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190704BHJP
   C09K 11/68 20060101ALN20190704BHJP
   C09K 11/88 20060101ALN20190704BHJP
【FI】
   !H05B33/14 Z
   !H05B33/02
   !H05B33/10
   !C09K11/68
   !C09K11/88
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】2018568341
(86)(22)【出願日】20170626
(85)【翻訳文提出日】20190219
(86)【国際出願番号】GB2017051857
(87)【国際公開番号】WO2018002594
(87)【国際公開日】20180104
(31)【優先権主張番号】62/355,591
(32)【優先日】20160628
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/625,310
(32)【優先日】20170616
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】509295262
【氏名又は名称】ナノコ テクノロジーズ リミテッド
【住所又は居所】イギリス国 エム13 9エヌティー マンチェスター、グラフトン ストリート 46
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタッブス,スチュアート
【住所又は居所】イギリス国 エム13 9エヌティー マンチェスター,グラフトン ストリート 46
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトレッグ,ステフェン
【住所又は居所】イギリス国 エム13 9エヌティー マンチェスター,グラフトン ストリート 46
(72)【発明者】
【氏名】ピケット,ナイジェル
【住所又は居所】イギリス国 エム20 6ティーアール マンチェスター,ディズベリー,バーロウ ムーア ロード 8エー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ズガン
【住所又は居所】イギリス国 エム13 9エヌティー マンチェスター,グラフトン ストリート 46
【テーマコード(参考)】
3K107
4H001
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107CC06
3K107CC21
3K107CC45
3K107DD17
3K107DD54
3K107DD57
3K107GG06
4H001XA16
4H001XA34
4H001XA42
(57)【要約】
【解決手段】無機二次元(2D)EL活性材料を有する有機発光ダイオードは、プラスチック又はガラス基板上に複数の層を備える。そのデバイスは、EL層に加えて、正孔注入層と、正孔輸送層/電子阻止層と、電子輸送層/正孔阻止層と、電子注入層と、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)のような任意選択的な緩衝層とを備えてよい、緩衝層は、2D材料への電荷注入のバランスを保ち、電界を再分布するのに役立つ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機二次元(2D)エレクトロルミネッセンス(EL)活性層を備える2D-OLEDハイブリッドデバイス。
【請求項2】
2D EL活性層は、遷移金属ジカルコゲナイドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
隣接するアノード層を有する基板を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
隣接するカソード層を有する基板を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
緩衝層を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
緩衝層は、ポリ(メチルメタクリレート)を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
可撓性基板を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
2D EL活性層は、実質的に単層である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
a.アノード材料でコーティングされた基板を用意する工程と、
b.正孔注入層を堆積させる工程と、
c.正孔輸送層/電子阻止層を堆積させる工程と、
d.2D EL活性層を堆積させる工程と、
e.電子輸送層/正孔阻止層を堆積させる工程と、
f.電子注入層を堆積させる工程と、
g.カソード層を堆積させる工程と、
を含む、2D-OLEDハイブリッドデバイスを調製するための方法。
【請求項10】
2D EL活性層は、溶液処理によって堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2D EL活性層は、2Dナノ粒子を用いて堆積される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
2Dナノ粒子は、リガンドで官能化されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
リガンドは、短鎖リガンド及びエントロピックリガンドからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
デバイスを封じ込める工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
a.カソード材料でコーティングされた基板を用意する工程と、
b.電子注入層/電子輸送層/正孔阻止層を堆積させる工程と、
c.2D EL活性層を堆積させる工程と、
d.正孔輸送層/電子阻止層を堆積させる工程と、
e.正孔注入層を堆積させる工程と、
f.アノード層を堆積させる工程と、
を含む、2D-OLEDハイブリッドデバイスを製造する方法。
【請求項16】
2D EL活性層は、溶液処理によって堆積される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
2D EL活性層は、2Dナノ粒子の溶液又は分散液の形態で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
2Dナノ粒子は、リガンドで官能化されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リガンドは、短鎖リガンド及びエントロピックリガンドからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
デバイスを封じ込める工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2016年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/355,591号の非仮出願であり、その内容の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
[関連する技術分野の記載]
本発明は、一般にエレクトロルミネッセント(EL)デバイスに関する。より詳細には、本発明は、有機/無機ハイブリッドELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)材料の二次元(2D)ナノシートは、それらの独特の光学的及び電子的特性から、触媒作用、センシング、エネルギー貯蔵及び光電子デバイスに渡る用途について注目が増している。
【0003】
単層及び数層のTMDCは、組成、構造及び寸法に依存したバンドギャップ及びキャリアタイプ(n−又はp−型)の変化を伴う直接バンドギャップ半導体挙動を示すことが分かっており、一方、多層TMDCは、間接バンドギャップ半導体特性を示す。価電子バンド及び伝導バンドのオフセットが計算されており、層数の関数であることが分かっている[J. Kang, S. Tongay, J. Shou, J. Li and J. Wu,Appl. Phys. Lett., 2013, 102, 012111/1]。
【0004】
2DのTMDCのうち、半導体WSe及び半導体MoSは、特に関心が持たれている。それらの材料の寸法が単層又は数層に減少されると、バルク特性の大半が維持される一方で、量子閉じ込め効果によって更なる特性が生じるからである。WSe及びMoSの場合、これら特性には、厚さが1つ又は数個の単分子層に減少した場合における、強い励起子効果を伴って、間接から直接へのバンドギャップ遷移を示すことが含まれる。これによって、フォトルミネッセンス(PL)効率が大幅に向上し、光電子デバイスへの応用の新たな機会が開かれる。関心が持たれている他の材料には、WS及びMoSeが挙げられる。
【0005】
第4乃至7族のTMDCは主に層状構造で結晶化しており、それらの電気的、化学的、機械的及び熱的性質に異方性をもたらしている。各層は、共有結合を介してカルコゲン原子の2つの層の間に挟まれた金属原子のヘキサゴナル充填層(hexagonally packed layer)を含む。隣接している層は、ファンデルワールス相互作用によって弱く結び付けられており、これは、機械的又は化学的方法によって容易に壊されて、単層構造及び数層構造が作製されることが望ましい。
【0006】
半導体用途に関心のある他の種類の2D材料には、第14族元素の二元化合物と、第13−15(III−V)族化合物とが挙げられる。
【0007】
最近、電界の影響下で、多層TMDCのEL発光経路が、完全無機(all-inorganic)デバイスにおいて間接バンドギャップ発光から直接バンドギャップ発光へと変化することが分かっている[D. Li, R. Cheng, H. Zhou, C.Wang, A. Yin, Y. Chen, N.O. Weiss, Y. Huang and X. Duan, Nat. Commun.,2015, 6, 7509]。この例では、EL強度は、1乃至50層のMoSで維持された。
【0008】
酸エッチングプロセスを使用して、MoSの2D材料において、1に近い(near-unity)PL効率が実証されている[M. Amani, D.-H. Lien, D. Kiriya, J. Xiao, A.Azcatl, J. Noh, S.R. Madhvapathy, R. Addou, S. KC, M. Dubey, K. Cho, R.M.Wallace, S.-C. Lee, J.-H. He, J.W. Ager III, X. Zhang, E. Yablonovitch and A.Javey, Science, 2015, 350, 1065]。これは、非常に効率的なELデバイスを達成する可能性を実証している。
【0009】
緩衝層は、発光材料への正孔及び電子の電荷注入のバランスを最適化して、スタック内の電界を再分布するために使用されてよい。
【0010】
様々な2D材料についてのバンドオフセット計算が、Kangらによってなされている[J. Kang, S. Tongay, J. Shou, J. Li and J. Wu, Appl.Phys. Lett., 2013, 102, 012111/1]。
【0011】
無機系ELデバイスは、Kretininらによって実証されている[A.V. Kretinin, Y. Cao, J.S. Tu, G.L. Yu, R. Jalil, K.S. Novoselov, S.J. Haigh, A.Gholinia, A. Mishchenko, M. Lozada, T. Georgiou, C.R. Woods, F. Withers, P.Blake, G. Eda, A. Wirsig, C. Hucho, K. Watanabe, T. Tanaguchi, A.K. Geim and R.V. Gorbachev, Nano Lett., 2014, 14, 3270]。EL強度レベルが、多層MSエミッタ(M=Mo;W)で維持され得ることが示された。
【0012】
近年、有機発光ダイオード(OLED)が、ディスプレイ製造業で大きな関心が持たれている。大量生産が十分に確立されると、OLEDデバイスの溶液加工性が、低生産コストにつながり、そして、可撓性基板上にデバイスを製造することを可能にし、ロールアップディスプレイなどの新しい技術をもたらし得ると、考えられている。OLEDデバイスでは、画素は直接発光して、複数の液晶ディスプレイ(LCD)と比較してより大きなコントラスト比とより広い視野角とを可能にする。更に、LCDとは対照的に、OLEDディスプレイは、バックライトを必要とせず、OLEDのスイッチが切られた場合に真の黒を可能にする。OLEDは、LCDよりも速い応答時間をもたらす。しかしながら、有機発光材料の寿命のために、OLEDデバイスは通常、安定性及び寿命に劣っている。青色OLEDは、現在のところ、緑色及び赤色OLEDよりも遙かに低い外部量子効率を示している。更に、大抵のOLEDは、発光が広い。ディスプレイ用途では、より良い色純度を得るために発光が狭いことが望ましい。
【0013】
従って、安定性及び寿命が十分であって、改善された青色発光を有する溶液処理可能な発光デバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一態様は、2D無機EL活性層を有する2D−OLEDハイブリッドデバイスであり、プラスチック又はガラス基板上に複数の層を備えてよい。このデバイスは、EL層に加えて、正孔注入層と、正孔輸送層/電子阻止層と、電子輸送層/正孔阻止層と、電子注入層と、2D材料への電荷注入のバランスと電界の再分布を助ける任意選択的な緩衝層とを含んでよい。2D EL活性層は遷移金属ジカルコゲナイドを含んでよい。デバイスは、隣接するアノード層を有する基板を含んでよい。或いは、デバイスは、隣接するカソード層を有する基板を含んでよい。デバイスは、緩衝層を更に含んでよい。任意選択的な緩衝層は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)であることが望ましい。デバイスは、可撓性基板を更に含んでよい。幾つかの実施形態では、2D EL活性層は実質的に単層である、
【0015】
デバイス構造を構築するために、溶剤ベースの溶液コーティング及び/又は熱処理が使用されてよい。本発明の他の態様は、2D-OLEDハイブリッドデバイスを調製するための方法であって、
a.アノード材料でコーティングされた基板を用意する工程と、
b.正孔注入層を堆積させる工程と、
c.正孔輸送層/電子阻止層を堆積させる工程と、
d.2D EL活性層を堆積させる工程と、
e.電子輸送層/正孔阻止層を堆積させる工程と、
f.電子注入層を堆積させる工程と、
g.カソード層を堆積させる工程と、
を含む。
【0016】
2D EL活性層は、溶液処理によって堆積されてよい。2D EL活性層は、2Dナノ粒子を用いて堆積されてよい。任意選択的に、2Dナノ粒子はリガンドで官能化されてよい。更に任意選択的に、リガンドは、短鎖リガンド及びエントロピックリガンドを含む群から選択されてよい。この方法は更にデバイスを封じ込める工程を含んでよい。
【0017】
本発明の更なる態様は、2D−OLEDハイブリッドデバイスを調製するための方法であって、
a.カソード材料でコーティングされた基板を用意する工程と、
b.正孔注入層を堆積させる工程と、
c.正孔輸送層/電子阻止層を堆積させる工程と、
d.2D EL活性層を堆積させる工程と、
e.電子輸送層/正孔阻止層を堆積させる工程と、
f.電子注入層を堆積させる工程と、
g.アノード層を堆積させる工程と、
を含む。
【0018】
2D EL活性層は、溶液処理によって堆積されてよい。2D EL活性層は、2Dナノ粒子の溶液又は分散液の形態で堆積されてよい。任意選択的には、2Dナノ粒子はリガンドで官能化されてよい。更に任意選択的に、リガンドは、短鎖リガンド及びエントロピックリガンドを含む群から選択されてよい。この方法は更にデバイスを封じ込める工程を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に基づくELデバイスの概略図である。
【0020】
【図2】図2は、本発明の実施形態に基づく、反転構造を有するELデバイスの概略図である。
【0021】
【図3】図3は、発光中心として作用するMoSeの無機単層を有する例示的な有機系LED構造のエネルギーバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「2D-OLEDハイブリッドデバイス」は、1又は複数の有機層と、2D材料を含むエレクトロルミネッセント(EL)活性層とを有する多層発光デバイスを指す。本明細書では、「ハイブリッド」は、少なくとも2つの異なる種類の材料を含むことを意味する。幾つかの実施形態において、本発明による2D-OLEDデバイスは、無機2D材料と複数の有機成分とを含む。本発明の更に別の実施形態は、追加の無機成分を含む。「ハイブリッド」は、また、デバイスにおける2D材料と非2D材料の両方の存在を指すことがある。非2D材料は、バルク材料又は従来の量子ドットのような他の種類のナノ粒子であってよい。
【0023】
無機2D EL活性材料を有する2D-OLEDハイブリッドデバイスは、図1に示される層の幾つか又は全てを含んでよく、図1は、従来のデバイススタック(100)を示している。本明細書では、「従来のデバイススタック」及び「従来のデバイス構造」は、アノードが基板に隣接しているデバイスを指す。代替的な実施形態では、2D EL活性層を有する2D-OLEDハイブリッドデバイスは、図2に示されるように、反転デバイススタック(200)を含んでよい。本明細書では、「反転デバイススタック」及び「反転デバイス構造」は、カソードが基板に隣接しているデバイスを指す。
【0024】
材料は、プラスチック又はガラス基板などの、適切な基板(10)上で処理されてよく、適切な基板には、硬質基板と可撓性基板の両方が挙げられる。適切なプラスチック基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、 ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリアクリレート(PAR)、多環式オレフィン(PCO)、及びポリイミド(PI)を含むが、これらに限定されない。
【0025】
従来のデバイススタック(100)では、アノード材料(20)は基板上に堆積されてよい。反転デバイススタック(200)では、カソード材料(90)は基板上に堆積されてよい。従来のデバイススタックでは、適切なアノード材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、ジルコニウムドープ酸化亜鉛(ZZ0)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、並びに、それらの合金及びドープ誘導体などの透明導電性酸化物を含んでよいが、これらに限定されない。反転デバイススタックでは、それらの材料はカソードとして作用する。
【0026】
正孔注入層(HIL;30)は、三酸化モリブデン(MoO)、1,4,5,8,9,11−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、又は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)のような導電性ポリマ等の材料を含んでよいが、これらに限定されない。
【0027】
正孔輸送層/電子阻止層(HTL/EBL;40)は、ポリ−(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリ(4−ブチルフェニル−ジフェニル−アミン)(ポリ−TPD)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−alt−N−(4−sec−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)、トリス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アミン(TCTA)、及びN、N'-ジ(1−ナフチル)−N、N'−ジフェニル−(1,1'-ビフェニル)−4,4'−ジアミン(NPB)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0028】
緩衝層(60)は、2D材料への電荷注入のバランスと、電界を再分布することを助けるために使用されてよい。適切な緩衝層材料は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、酸化アルミニウム、エトキシル化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(9−ビニルカルバゾール)(PVK)、炭酸セシウム(CsCO)、及びポリビニルピロリドンを含むが、これらには限定されない。
【0029】
2D EL活性層(50)は、励起子生成が可能な1又は複数の2D材料から構成されてよい。一実施形態では、2D EL活性層の厚さは1乃至5単層である。例えば、材料の2D特性を維持するために、及び/又は積層を避けるために、単一の単層の厚さを有する2D EL活性層を使用する工程が望まれるかも知れない。適切な材料には、以下のような2D半導体材料が含まれるが、これらに限られない。
【0030】
例えば、WO、WS、WSe、WTe、MoO、MoS、MoSe、MoTe、ScO、ScS、ScSe、CrO、CrS、CrSe、CrTe、NiO、NiS、NiSe、NbS、NbSe、PtS、PtSe、ReSe、HfS、HfSe、TaS、TaSe、TiS、TiSe、ZrS、ZrSe、VO、Vs、VSe、及びVTeのような遷移金属ジカルコゲニド(TMDC)。
【0031】
例えば、ZrS、ZrSe、HfS、及びHfSeのような遷移金属トリカルコゲニド。
【0032】
例えば、AlN、GaN、InN、InP、InAs、InSb、GaAs、BP、BAs、GaP、AlSb、及びBSbのような13−15(III−V)族化合物。
【0033】
例えば、GaS、GaSe、Ga、GaSe、InS、InSe、In、及びInSeのような13−16(III−VI)族化合物。
【0034】
例えば、SnS、SnSe、SnO、SnS、SnSe、GeS、GeS、及びGeSeのような14−16(IV−VI)族化合物。
【0035】
例えば、Sb、SbSe、SbTe、Bi、及びBiSeのような15−16(V−VI)族化合物。
【0036】
例えば、MnInSe、MgInSe、ZnIn、PbBiSe、SnPSe、CdPSe、CuPS、及びPdPSeのような三元金属カルコゲナイド。
【0037】
例えば、SiC、GeC、SnGe、SiGe、SnSi、及びSnCのような14族(IV)元素の二元化合物。
【0038】
更に、上記の材料の合金及びドープ誘導体。
【0039】
電子輸送層/正孔阻止層(ETL/HBL;70)は、バソクプロイン(BCP)、酸化亜鉛ナノ粒子、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)、及び2,2’,2”−(1,3,5−ベンジルトリイル)−トリス(1−フェニル−1−H-ベンズイミダゾール)(TPBi)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0040】
電子注入層(EIL;80)は、フッ化リチウム(LiF)のような有機金属キレートを含んでよい、これに限定されない。
【0041】
従来のデバイススタック(100)において、適切なカソード(90)材料はアルミニウムを含んでよいが、これに限定されない。反転デバイススタック(200)では、前述の材料はアノードとして作用する。
【0042】
溶媒ベースの溶液コーティング及び/又は熱処理、例えば、これらに限定されないが、熱蒸発及びスパッタコーティングのような化学蒸着(CVD)及び物理蒸着(PVD)が使用されて、デバイス構造を構築されてよい
【0043】
溶液ベースの堆積方法は当該技術分野において周知である。例は、スピンコーティング、スリットコーティング、ドクターブレード、スプレーコーティング、スロットダイコーティング、及びインクジェット印刷を含むが、これらに限定されない。溶液ベースの堆積の利点には、高い材料利用率が挙げられ、それは低コスト、高処理量プロセスをもたらし得る。
【0044】
ある実施形態では、2D EL活性層は2Dナノ粒子で堆積される。ナノ粒子ベースの堆積アプローチは、多くの潜在的な利点を提供する。2Dナノ粒子の調製は、本出願人が所有する米国特許出願第62/355,428号、第62/393,387号、第62/453,780号、第62/440,745号及び第62/461,613号に記載されており、それらの全体は、参照により本明細書の一部となる。ナノ粒子合成の「ボトムアップ」手法は、それらのスケーラビリティのために特に有利であり、均一な組成、サイズ及び形状をもたらし、それらは、反応条件を操作することによって調整できる。ナノ粒子は、様々な溶媒に溶解性を与え得る有機リガンドで表面官能化されてよい。特定の実施形態では、ナノ粒子の側方寸法は量子閉じ込め領域内にあることが望ましく、ナノ粒子の側方寸法を変えることによって、ナノ粒子の光学的、電子的及び化学的特性が操作されてよい。例えば、側方寸法が約10nm以下のMoSe及びWSeなどの材料の金属カルコゲナイド単層ナノ粒子は、電気的に励起されるとサイズ調整可能な発光などの特性を示し得る。これは、2Dナノ粒子の側方寸法を操作することによってデバイスのエレクトロルミネッセンス極大(ELmax)を調整可能にする。例えば、Jinらは、粒子の横方向の寸法を2.5nmから9.7nmの間で変えることによって、420nmから750nmの間でフォトルミネッセンスを示すWSe単層ナノ粒子の合成を報告した[H. Jin, M. Ahn, S. Jeong, J.H. Han, D. Yoo, D.H.Son and J. Cheon, J. Am. Chem. Soc., 2016, 138, 13253]。
【0045】
ナノ粒子は、合成中にリガンドで官能化されてよい。更なる実施形態では、改善された溶液加工性及び/又は良好な電荷注入などの特定の機能を与えるために、ナノ粒子合成中に、ナノ粒子表面に着いた固有のリガンドが、代替リガンドに交換されてよい。リガンド交換手順は当技術分野において周知である。ある実施形態では、ナノ粒子は短鎖リガンドで表面官能化されてよい。本明細書では、「短鎖リガンド」は、8個以下の炭素の炭化水素鎖を有するリガンドを指す。適切な短鎖リガンドの例には、例えば、1−オクタンチオール、1−ヘプタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ペンタンチオール、1−ブタンチオール、1−プロパンチオールなどのアルカンチオールと、オクタン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ペンタン酸、ブタン酸、及びプロパン酸などカルボン酸とが挙げられるが、これらに限定されない。短鎖リガンドは、電荷輸送を向上させるためにナノ粒子の最密充填を可能にすることが望ましい。代替的実施形態では、ナノ粒子はエントロピックリガンドで表面官能化されてよい。本明細書中では、「エントロピックリガンド(entropic ligand)」とは、不規則に分岐したアルキル鎖を有するリガンドを指す。適切なエントロピックリガンドの例には、例えば2−メチルブタンチオール、及び2−エチルヘキサンチオールなどの不規則に分岐したチオールと、例えば4−メチルオクタン酸、4−エチルオクタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘプチルデカン酸、及び2-ヘキシルデカン酸などの不規則に分岐したアルカン酸とが挙げられるが、これらに限定されない。エントロピックリガンドは、ナノ粒子の加工性を補助する一方で、デバイスにおけるそれらの性能を維持又は向上させることが分かっている[Y. Yang, H. Qin, M. Jiang, L.Lin, T. Fu, X. Dai, Z. Zhang, Y. Niu, H. Cao, Y. Jin, F. Zhao and X. Peng, NanoLett., 2016, 16, 2133]。
【0046】
2D EL活性層を溶液処理するために、2D材料を適切な溶媒に溶解させてよい。特定の実施形態では、溶媒の蒸気圧は低い。低蒸気圧溶媒の使用は処理中の溶媒の蒸発を防いで、所謂「コーヒーリング(coffee ring)」形成や表面粗さなどの問題を軽減できる。本明細書では、用語「低蒸気圧溶媒」は、20℃で約2kPa以下の蒸気圧を有する溶媒、例えばクロロベンゼンやオクタンを指すが、これらに限定されない。代替的実施形態では、他の適切な溶媒として、エタノール、イソプロパノール、トルエン、及び水が挙げられる、これらに限定されない。
【0047】
代替的実施形態では、2D EL活性層は、CVD、原子層堆積(ALD)、分子線エピタキシー(MBE)、ラテラルヘテロエピタキシー(lateral heteroepitaxy)、及び気固成長(vapor-solid growth)のような熱処理によって堆積されてよいが、これらに限定されない。
【0048】
本発明によるELデバイスは、以下の利点を提供するだろう。
・完全溶液処理(all-solution processed)手法が、低コストで高スループットである。
・デバイスを可撓性基板上に構築でき、ロールアップディスプレイのような新しい技術を導く。
・溶液処理は、高い材料利用率と低い材料消費量につながる。
デバイスは、無機2D材料の固有の安定性に起因して、良好な安定性及び寿命をもたらす。
・2D発光材料からの高効率の青色発光は、青色OLEDの限界を克服するのに役立つ。
【実施例】
【0049】
2D−OLEDハイブリッドデバイスを調製するためのプロセスを、以下の実施例で説明する。
【0050】
[実施例1:従来のデバイス構造を有する2D-OLEDハイブリッドELデバイス]
ITO被覆ガラス基板を、湿式及び乾式洗浄プロセスによって洗浄した。乾式洗浄プロセスでは、ITO被覆基板をUVオゾンで(空気中)10分間処理した。
【0051】
PEDOT:PSSを、0.45μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルタを通して濾過した。50nmのPEDOT:PSS HILを、スピンコーティングにより堆積させて、次に、200℃で10分間空気中でアニーリングした。
【0052】
12mg/mLのポリ−TPDクロロベンゼン溶液を、N下でポリ-TPDをクロロベンゼンに添加して、完全に溶解するまで振とうすることによって、調製した。0.2μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを通して溶液を濾過した後、50nmのポリTPD HTLを、N下で、1,500rpmで1分間スピンコーティングすることによって堆積させた。N下110℃で1時間、フィルムをベーキングした。
【0053】
2D MoS単層ナノ粒子のトルエン溶液を、0.2μmフィルタを通して濾過し、次に、2,000rpmでスピンコートして、15乃至20nmの2Dフィルムを堆積させた。このフィルムを、N充填グローブボックス内のホットプレート上で110℃で10分間上向きにしてベーキングした。
【0054】
110℃アニーリングのベーキング工程の後直ぐに、Alq、LiF及びAl源と一緒に、デバイス領域を画定するために使用されるシャドーマスクを有する蒸発器に基板を装填した。真空が10−7ミリバールに達すると、35nmの膜が堆積されるまで、Alqを、0.1乃至0.2nm/sの速度で堆積させた。供給源が冷却されると、チャンバをベントして、マスクをカソード堆積マスクに交換した。10−7ミリバールの真空下で、LiFについては0.1nm/s未満、Alについては0.2nm/sを超える速度でLiF及びAlを堆積させた。
【0055】
1ppm未満の酸素及び水分レベルを有するN環境下で、デバイスを解放して、キャップの底部に乾燥剤ゲッタと、縁にUV樹脂があるキャビティ深さ0.35mmのガラスキャップに封じ込めた。UV水銀灯の下で5分間、樹脂を硬化した。有機層及び2D層はUV光への曝露中に保護された。
【0056】
[実施例2:反転デバイス構造を有する2D-OLEDハイブリッドELデバイス]
ITO被覆ガラス基板を、湿式及び乾式洗浄プロセスによって洗浄した。乾式洗浄プロセスでは、ITO被覆基板を、UVオゾンで(空気中)10分間処理した。
【0057】
続いて、ZnOナノ粒子のエタノール溶液を、30mg/mLの濃度及び2000rpmの回転速度でスピンコートして、50nmの層厚を達成した。次に、N充填グローブボックス内で120℃の温度で20分間、フィルムをベーキングした。ZnO層は、電子注入層及び電子輸送層/正孔阻止層の両方として機能し得る。
【0058】
2D MoS単層ナノ粒子のトルエン溶液を、0.2μmのフィルタを通して濾過して、次に2,000rpmでスピンコートして、15乃至20nmの2Dフィルムを堆積させた。N充填グローブボックス内で、ホットプレート上で110℃で上向きにして10分間。フィルムをベーキングした。
【0059】
アニーリングの後直ぐに、TCTA、MoO及びAl源と一緒に、デバイス領域を画定するために使用されるシャドーマスクを有する蒸発器に、基板を装填した。真空度が10−7ミリバールに達すると、40nmの膜が堆積するまで、0.1乃至0.2nm/sの速度でTCTAを堆積させた。線源が冷却されたら、チャンバをベントしてマスクを交換した。10-7ミリバールの真空下で、MoOについては0.1nm/s未満、及びAlについては0.2nm/sを超える速度で、MoO及びAlを堆積させた。
【0060】
1ppm未満の酸素及び水分レベルを有するN環境下で、デバイスを解放して、キャップの底部に乾燥剤ゲッタと、縁にUV樹脂があるキャビティ深さ0.35mmのガラスキャップに封じ込めた。UV水銀灯の下で5分間、樹脂を硬化した。有機層及び2D層はUV光への曝露中に保護された。
【0061】
以上、本発明の原理を具体化したシステムの特定の実施形態を示した。当業者は、本明細書に明示的に開示されていなくてもそれらの原理を具体化し、従って本発明の範囲内にある代替的形態及び変形形態を考えることができるであろう。本発明の特定の実施形態が示され、説明されてきたが、それらは、この特許に含まれるものを限定することを意図しない。当業者であれば、文言上及び均等物として特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正がなされ得ることを理解するであろう。
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】