(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019521707
(43)【公表日】20190808
(54)【発明の名称】オルガノイドを培養するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20190712BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20190712BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20190712BHJP
【FI】
   !C12N5/071
   !C12M1/00 A
   !C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】2019523191
(86)(22)【出願日】20170711
(85)【翻訳文提出日】20190311
(86)【国際出願番号】GB2017052026
(87)【国際公開番号】WO2018011558
(87)【国際公開日】20180118
(31)【優先権主張番号】1611982.8
(32)【優先日】20160711
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519012091
【氏名又は名称】セレス リミテッド
【住所又は居所】イギリス CF14 4UJ カエルディズ カーディフ ヒース パーク カーディフ メディセンター ユニット 18
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリス,マリアンヌ ジェイ
【住所又は居所】イギリス SN16 9JW ウィルトシャー マームスベリー テッドベリー ヒル ザ オールド オーチャード 2 セレス リミテッド内
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリー,ジュリアン
【住所又は居所】イギリス SN16 9JW ウィルトシャー マームスベリー テッドベリー ヒル ザ オールド オーチャード 2 セレス リミテッド内
(72)【発明者】
【氏名】デール,トレバー クライブ
【住所又は居所】イギリス SN16 9JW ウィルトシャー マームスベリー テッドベリー ヒル ザ オールド オーチャード 2 セレス リミテッド内
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
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4B029DA03
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4B029GB09
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4B065BC46
4B065BD07
4B065BD09
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4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、a)未処置のオルガノイドを解離して細胞懸濁液を生成すること;b)該細胞懸濁液をセルストレーナーでふるいにかけて、約10μm〜約1mm径の細胞を含有するふるいにかけられた細胞懸濁液を保持すること;及びc)細胞外支持マトリックス(extracellular support matrix)を含む細胞培地中のバイオリアクターに、該ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞を播種すること、を含む、オルガノイドを培養するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)未処置のオルガノイドを解離して細胞懸濁液を生成すること;
b)前記細胞懸濁液をセルストレーナーでふるいにかけて、約10μm〜約1mm径の細胞を含有するふるいにかけられた細胞懸濁液を保持すること;及び
c)細胞外支持マトリックス(extracellular support matrix)を含む細胞培地中のバイオリアクターに、前記ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞を播種すること、
を含む、オルガノイドを培養するための方法。
【請求項2】
前記バイオリアクターが、灌流式バイオリアクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイオリアクターが、供給プレート型(fed−plate)バイオリアクターである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給プレート型バイオリアクターが、平底型バイオリアクターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞培地が、約1%〜約99%v/vの前記細胞外支持マトリックスを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記細胞培地が、約5%〜約85%v/vの前記細胞外支持マトリックスを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外支持マトリックスが、可溶化された基底膜調製物である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記細胞外支持マトリックスが、マトリゲル(Matrigel)又はカルトレックス(Cultrex) BMEである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記セルストレーナーが、約30μm〜約50μmのメッシュサイズを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記細胞を前記バイオリアクター内で培養して、ステージIオルガノイドを形成させることをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
e)前記バイオリアクターから前記ステージIオルガノイドを取り出し、前記オルガノイドを細胞培地に懸濁させて、オルガノイド懸濁液を形成させること;及び
f)前記オルガノイド懸濁液を異なるメッシュサイズを有する少なくとも2つのセルストレーナーでふるいにかけて、約20μm〜約200μmの径を有するステージIIオルガノイドの懸濁液を得ること、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(e)が、前記オルガノイドを細胞培地に懸濁する前に、前記ステージIオルガノイドを細胞回収溶液と共にインキュベートすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記セルストレーナーが、約40μm及び約85μmのメッシュサイズを有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステージIIオルガノイドを凍結させることをさらに含む、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記供給プレート型バイオリアクターにおいて、並列で供給されるバイオリアクターの配列を含む、請求項3〜14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の方法により生成されるオルガノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノイドを培養するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新薬候補を動物又はヒトにおいてインビボで試験する前には通常、初代細胞培養物又は細胞株のいずれかを利用してインビトロ試験が実施される。しかし、この試験の結果は、細胞培養物がインビボ系をあまり十分に模倣しないため、信頼できない可能性がある。このため、一部の良好な薬物がインビトロステージで却下される可能性があり、一部の不良な薬物がインビボ試験に進められる場合がある。
【0003】
オルガノイドは、インビボ組織と同様に機能する異種組織の三次元構造である。言い換えれば、これらの三次元の組織構造は、伝統的な細胞培養単層よりも良好に臓器を模倣する。それゆえオルガノイドは、疾患の原因をより良好に理解して可能な処置を同定するために研究され得る疾患細胞モデルを作出する機会を提供する。
【0004】
オルガノイドは多くの場合、幹細胞から作製され、大脳、腎臓、心臓血管及び他のタイプのオルガノイドに分化され得る。オルガノイドの技術は、ヒト結腸癌進行のモデルを作出するのにも用いられてきた。これらのオルガノイドは、癌細胞に形質転換するように変異された正常な腸細胞から作出される場合があり、又は腫瘍細胞自体に由来する場合がある。腫瘍から作出されたオルガノイドは、元の腫瘍の良好な反映物であることが示されており、改善されたインビトロ薬物試験の機会を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、今日までオルガノイドは、実験室環境のみで培養されてきており、そのような環境は、関与する技術者の技能に大きく依存し、少数のオルガノイドを生成する。それゆえオルガノイドは、薬物試験のために即座に多数を利用することができない。さらに、それらの培養の技能への依存性のせいで、培養間の標準化がほとんどなされておらず、つまり異なるバッチのオルガノイドで実施された試験を直接比較できない場合がある。
【0006】
それゆえ、多数のオルガノイドを生成すること、並びに一貫した形態及び機能のオルガノイドを生成することが、求められている。これにより、薬物試験においてオルガノイドのより広範の使用が可能になり、試験結果の比較可能性が改善されよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明は、a)未処置のオルガノイドを解離して細胞懸濁液を生成すること;b)該細胞懸濁液を少なくとも1つのセルストレーナーでふるいにかけて、約10μm〜約1mm径の細胞を含有するふるいにかけられた細胞懸濁液を保持すること;及びc)細胞外支持マトリックス(extracellular support matrix)を含む細胞培地中のバイオリアクターに、該ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞を播種すること、を含む、オルガノイドを培養するための方法を提供する。細胞懸濁液をふるいにかけることで、該ふるいにかけられた細胞のサイズ範囲が制御され得る、という特有の利点が提供される。例えば、活発に成長している細胞から、細胞培地に播種する細胞を狭いサイズ範囲で選択することが、容量比に対して一貫したサイズ/表面積を有する均質なオルガノイドの培養物を導き、変動性の低下及び品質の改善が得られる。理論に拘束されるものではないが、全てのオルガノイドが確実に細胞外支持マトリックスとの良好な接触を有し、加えて良好な栄養利用及びO分圧を有するように、細胞/オルガノイドのサ
イズを最適化することができると考えられる。これにより確実に、オルガノイドの全細胞が適度に発達して高品質となり、つまり多数のオルガノイドが薬物スクリーニングなどの様々な用途に利用可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
オルガノイドという用語は、単に臓器に類似していることを意味している。オルガノイドは、典型的には3つの特性:自己組織化、多細胞性及び機能性により定義される(Lancaster及びKnoblich)。このため該細胞は、インビボでの臓器の特徴である三次元(3D
)組織にインビトロで自ら配列し、得られた構造は、個々の臓器及び細胞が通常、臓器内で実施する機能の少なくとも一部を実行する際に見出される複数の細胞型からなる。例えば原形のオルガノイドであるマウス腸オルガノイドは、ドメインに組織化された単層上皮として成長するため、腸の異なる細胞型(腸細胞、杯細胞、パネト細胞、腸内分泌細胞及び幹細胞)を含み、嚢胞の内腔を取り囲む、インビボの腸陰窩−繊毛構造に類似している(Satoら)。
【0009】
本明細書で用いられる未処置のオルガノイドは、培養期間のいずれのふるい又はサイジングステップも受けていない組織試料の初代培養物から調製されたオルガノイドを指す。未処置のオルガノイドは、消化管、乳房、前立腺、肺、肝臓、卵巣、膵臓、皮膚、腎臓、脳及び精巣をはじめとする組織の正常及び腫瘍生検をはじめとする組織試料から単離されてもよい。
【0010】
本発明によれば、未処置のオルガノイドは、解離して(主に)単一細胞に分解される。ふるいに通した後、大きな細胞塊はフィルター上に残留する。濾液(即ち、ふるいにかけられた細胞懸濁液)は、約10μm〜約1mm径、好ましくは約10μm〜約200μm径、より好ましくは約10μm〜約60μm径であり得る、大部分が単一の細胞及び/又は2個以上の細胞からなる小さな細胞塊を含有する。これらはその後、細胞外支持マトリックスを含む細胞培地に播種される。培養におけるさらなる成長により、生細胞が分裂して、多細胞のオルガノイド(本明細書ではステージIオルガノイドと称される)になる。これらは、以下に記載される通り、細胞外支持マトリックスからまるごと「回収」されて様々なサイズのふるいに通され、約20μm〜約200μmの所望のサイズ範囲のオルガノイド(ステージIIオルガノイド)を抽出することができる。
【0011】
未処置のオルガノイドの解離は、タンパク質を分解するタンパク質分解酵素のトリプシンを用いて、接着細胞を互いに解離する、及び/又はそれらが培養されている容器から接着細胞を解離する、細胞解離の工程を指す場合がある。トリプシンは、細胞培養物に添加されると、細胞を容器に接着させるタンパク質を分解する。トリプシン処理は多くの場合、細胞を新たな容器に継代するのに用いられる。代替的/補助的解離技術として、EDTAをはじめとするキレート化剤を用いて、細胞−細胞接合を分解することができる。
【0012】
細胞培地は、当該技術分野で周知であり、当業者に熟知されているであろう。典型的には細胞培地は、アミノ酸、塩、グルコース及びビタミンを含み、鉄及びフェノールレッドを含む場合もある。本発明での使用に適した培地は、既存の細胞培地の改変により作製されてもよい。例えば該細胞培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)であってもよく、栄養混合物(例えば、ハムF12)、抗生物質/抗真菌剤(例えば、ペニシリン/ストレプトマイシン)、緩衝剤(例えば、HEPES)、グルタミン、及びn−アセチルシステインなどの1種又は複数の追加成分を含んでいてもよい。該細胞培地は、N2サプリメント及び/又はB27サプリメントなどの無血清サプリメントを追加で含んでいてもよい。
【0013】
該細胞培地は、約1%〜約99%v/vの細胞外支持マトリックス、好ましくは約5%
〜約85%v/v又は約10%〜約85%v/vの細胞外支持マトリックスを含んでいてもよい。本発明の好ましい実施形態において、該細胞培地は、約85%v/vの細胞外支持マトリックスを含んでいてもよい。細胞培地中の細胞外支持マトリックスの含量を減少させることで、100%の細胞外マトリックスを使用することが典型的である先行技術を超える特有のコスト上の利点が提供され得る。驚くべきことに本発明者らは、オルガノイドの成長を損なうことなく細胞外マトリックス含量を本発明の方法で低減し得ることを見出した。
【0014】
好ましくは、該細胞外支持マトリックスは、ゲルを基剤とする細胞外マトリックスであり、合成又は天然由来であってもよい。追加又は代わりとして、該細胞外支持マトリックスは、可溶化された基底膜調製物であってもよい。例えば適切な基底膜調製物は、ラミニン、コラーゲンIV型、ヘパリン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン/ニドゲン、及び複数の成長因子のような細胞外マトリックスタンパク質が豊富な腫瘍であるエンゲルブレス−ホルム−スワーム(EHS)マウス肉腫から抽出されてもよい。好ましくは、該細胞外支持マトリックスは、2種の異なるタイプのコラーゲン、又はコラーゲンとラミニンなど、少なくとも2種の別個の糖タンパク質を含む。本発明の実施形態において、該細胞外支持マトリックスは、マトリゲル(Matrigel)(商標)(ラミニン、エンタクチン及びコラーゲンIV型を含む)又はカルトレックス(Cultrex)(商標)BME(ラミニン、エンタクチン、コラーゲンIV型及びヘパリン硫酸プロテオグリカンを含む)であってもよい。好ましくは、該細胞外支持マトリックスは、マトリゲル(商標)である。或いは該細胞外支持マトリックスは、フィブロネクチン、コラーゲン及び/又はラミニン中に存在する配列に基づくペプチドを含む合成マトリックスであってもよい。
【0015】
培地を、細胞外支持マトリックスの上部に載せてもよく、必要に応じて該培地を除去及び補充することができる。本発明の実施形態において、該バイオリアクターは、培地の連続流を提供し、それによりオルガノイドを連続的に供給する。培地の組成は、オルガノイドの均一な成長が最大になるように経時的に調整されてもよい。
【0016】
未処置のオルガノイドの解離に続いて得られた細胞懸濁液を、先に記載された通り、セルストレーナーでふるいにかけて、ふるいにかけられた細胞懸濁液を保持する。該ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞は、単一細胞であっても、又はオルガノイドを形成するように接合された2個以上の細胞であってもよい。該ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞又はオルガノイドのサイズは、セルストレーナーのメッシュサイズにより制御され得る。例えば該セルストレーナーは、約10μm〜約1mm、又は約10μm〜約500μmのメッシュサイズを有していてもよい。好ましくは、該セルストレーナーは、約20μm〜約100μm、より好ましくは約30μm〜約50μmのメッシュサイズを有する。本発明の実施形態において、主に単一細胞が、該ふるいにかけられた細胞懸濁液中に必要となる場合、該セルストレーナーは、約40μmのメッシュサイズを有していてもよい。適切なセルストレーナーは、当業者に熟知されていると思われ、pluriStrainerなどがある。
【0017】
未処置のオルガノイドのふるいに続いて、該ふるいにかけられた細胞懸濁液を、好ましくはバイオリアクターに播種する。伝統的な(二次元の)細胞培養物は、典型的には平坦な表面(ペトリ皿又は組織培養処理されたフラスコなど)に単離された細胞を載せること、及び該細胞に栄養培地を補充すること、を含む。細胞を、典型的には5%COに暴露しながら37℃で静的に貯蔵する。対照的にバイオリアクターは、三次元の細胞−細胞及び細胞−マトリックス相互作用を可能にし、加えて生化学的及び物理学的シグナルの空間的及び時間的勾配、並びに異なる臓器系の間でクロストークすることなどの全身的調節を提供する。それによりバイオリアクターは、細胞をオルガノイドなどの三次元組織構造に分化させる。バイオリアクターの重大な特色は、それが伝統的な細胞培養の静的培養系と
いうよりむしろ動的培養系を提供することである。静的培養では、物質の輸送が拡散に基づき、一般に酸素分圧の降下及び毒性代謝産物の濃度上昇により組織発達を0.2mm未満の厚さに限定する。対照的にバイオリアクターは、動的な物質輸送を提供して、組織の発達をミリメートル〜センチメートル規模で可能にする。
【0018】
本発明の実施形態において、該バイオリアクターは、流加式バイオリアクター又は灌流式バイオリアクターであってもよく、それらは両者とも、培地の流動を生成して栄養素拡散を改善する。流加式バイオリアクターは典型的には、通常数日間隔で交換される培地が別個の量で補充される。流加式バイオリアクターとしては、撹拌フラスコ型バイオリアクター又は回転壁型バイオリアクターを挙げることができ、それらは両者とも、培地の対流を提供して、栄養分布を増進する。撹拌フラスコ型バイオリアクターは、典型的には磁気撹拌棒を使用して対流を生成し、培地の連続混合を可能にする。回転壁型バイオリアクターは、培地の動的層流を提供する。本発明の好ましい実施形態において、該バイオリアクターは、灌流式バイオリアクターである。灌流式バイオリアクターは、連続式又は非連続式で培地を細胞又は組織に灌流し得るポンプシステムを利用する。灌流式バイオリアクターシステムでは、酸素及び栄養素が、拡散及び対流の両方により構造内部に供給される。流速は、制限栄養因子(limiting nutrient)に対して最適化され得、該制限栄養因子の多くは、培地への低溶解度に起因する酸素である。灌流式バイオリアクターは、オルガノイドへの栄養素の連続流を提供することができ、本発明者らは、それが改善されたオルガノイドの成長を導くことを見出した。
【0019】
灌流式バイオリアクターとしては、供給プレート型(fed−plate)バイオリアクター又は流動床型バイオリアクターを挙げることができる。供給プレート型バイオリアクターは、当業者に熟知されていると思われ、典型的には、培地が連続で通る一方の側の入口(複数可)と、反対側の出口(複数可)と、を有する蓋が付き、典型的にはプラスチックで形成された使い捨て皿を含む。ゲルを基剤とする細胞外マトリックスが、典型的には皿の基部を覆い、オルガノイドを含む。供給プレート型バイオリアクターは、オルガノイドへの栄養素の連続流を提供することができ、本発明者らは、それが改善されたオルガノイド成長を導くことを見出した。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、供給プレート型バイオリアクターの使用が、当該技術分野で従来から用いられるものよりも少ない細胞外マトリックスでオルガノイドを培養させると考える。該バイオリアクターは、追加として、培養工程の効率改善を導くことができ、コスト上の利点も提供することができる。
【0020】
供給プレート型バイオリアクターは、好ましくは平底型バイオリアクターなどの浅いリアクターである。該バイオリアクターは、1m×1m、又は150mm若しくは100mmなどのより小さい平底型バイオリアクターであってもよい。本発明の実施形態において、6ウェルマルチウェルプレートなどのより小さな容器が、用いられてもよい。或いは複数のバイオリアクターを、並列又は直列に連結してもよく、積み重ねて供給プレート型バイオリアクターのアレイを並列で提供してもよい。例えば該供給プレート型バイオリアクターは、同様の培地を送達する同様のポンプにより並列で供給されるように、互いの最上部に積み重ねられたバイオリアクターのアレイを含んでいてもよい。
【0021】
本発明の実施形態において、該バイオリアクターは、オルガノイドへの栄養素の連続流を提供することができる。該栄養素は、典型的には、例えば先に記載されたような、細胞培地などの液体供給物の形態で提供され、培地成分の濃度は、オルガノイドの均一な成長が最大になるように経時的に上昇又は低下させることができる。例えば、一定濃度の液体から様々な希釈率で連続して供給することができ、又は可変的濃度の供給物から一定して供給することができる。本発明の代わりの実施形態において、栄養素は、パルス供給されてもよく、つまり液体供給物又は他の成分の用量を別個の量で、しかし規則的頻度でバイ
オリアクターに添加することができる。例えばパルス供給は、1分又は1時間又は1日の間隔で別個の量の液体供給物又は培地を投与することを含んでいてもよい。
【0022】
該ふるいにかけられた細胞懸濁液の細胞は、約20,000細胞/ml〜約10,000,000細胞/ml、好ましくは約200,000細胞/ml〜約800,000細胞/ml、より好ましくは約400,000細胞/ml〜約600,000細胞/mlの濃度でバイオリアクターに播種されてもよい。該細胞は、本明細書に記載された細胞外支持マトリックスを含む細胞培地に播種されてもよい。該細胞培地は、追加としてRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤などの1種又は複数のキナーゼ阻害剤を含んでいてもよい。そのような阻害剤は、播種された細胞の回収及び成長を増進する場合がある。キナーゼ阻害剤は、約0.1μM〜約100μM、好ましくは約1μM〜約20μMの濃度で存在してもよい。本発明の実施形態において、該細胞培地は、キナーゼ阻害剤を約10μMの濃度で含んでいてもよい。
【0023】
該ふるいにかけられた細胞懸濁液の播種に続いて、細胞を、好ましくはバイオリアクター内で培養して、ステージIオルガノイドを形成させる。好ましくは、少なくとも100,000又は少なくとも250,000のステージIオルガノイドが作製される。本発明の実施形態において、およそ500,000のステージIオルガノイドが、作製されてもよい。しかし、作製されたステージIオルガノイドの数は、およそ1,000,000又はおよそ5,000,000又はおよそ10,000,000以上になり得る。該オルガノイドは、24時間以上又は36時間以上の期間、培養されてもよい。本発明の実施形態において、該オルガノイドを約24〜約96時間、好ましくは約36〜約72時間の期間、培養してもよい。本発明の好ましい実施形態において、該オルガノイドは、約48時間、培養される。
【0024】
細胞培地/細胞外マトリックス混合物を遠沈管に移すこと、及び該管を遠心分離して、細胞外マトリックスにより形成されたゲル層を保持すること、により、ステージIオルガノイドをバイオリアクターから回収してもよい。該ゲル層をその後、細胞回収溶液と共にインキュベートし、遠心分離してオルガノイドペレットを形成させてもよい。
【0025】
細胞回収溶液は、当該技術分野で周知であり、当業者に熟知されているであろう。該細胞回収溶液は、細胞外支持マトリックスを分解して、オルガノイドを損傷させずに放出する作用がある。適切な細胞回収溶液としては、Corningセルリカバリーソリューションが挙げられる。
【0026】
バイオリアクターからのステージIオルガノイドの取り出しに続いて、オルガノイド(オルガノイドペレットの形態であってもよい)を、好ましくはハムF12などの栄養素混合物を含んでいてもよい細胞培地に懸濁する。該オルガノイドをその後、異なるメッシュサイズを有する少なくとも2つのセルストレーナーでふるいにかけて、約20μm〜約200μmの径を有するステージIIオルガノイドの懸濁液を得てもよい。
【0027】
上述の通り、オルガノイドのサイズは、セルストレーナーのメッシュサイズにより制御され得る。例えば該セルストレーナーは、約20μm及び約200μm、好ましくは約30μm及び約100μm、より好ましくは約40μm及び約85μmのメッシュサイズを有していてもよい。より詳細には、回収されたステージIオルガノイドを含む懸濁液を、大きなメッシュサイズ(例えば、85μm)を有する第一のセルストレーナーに通してもよく、そのメッシュサイズよりも大きなオルガノイドを全て、廃棄してもよい。濾過された内容物をその後、第一のセルストレーナーよりも小さなメッシュサイズ(例えば、40μm)を有する第二のセルストレーナーに通してもよく、そのメッシュサイズよりも小さな細胞片を全て、廃棄してもよい。保持されたステージIIオルガノイドのサイズはそれ
ゆえ、第一及び第二のセルストレーナーのメッシュサイズにより決定されるであろう。上記の例において、ステージIIオルガノイドは、約40μm〜約85μmの間の径であろう。
【0028】
該ステージIIオルガノイドは、貯蔵又は輸送用に凍結されてもよい。より詳細には、該ステージIIオルガノイドは、約10,000〜約500,000オルガノイド/200μl凍結培地、好ましくは約20,000〜約300,000オルガノイド/200μl凍結培地、より好ましくは約50,000〜約100,000オルガノイド/200μl凍結培地の濃度で凍結培地に再懸濁されてもよい。懸濁されたオルガノイドはその後、−80℃で凍結されてもよい。
【0029】
凍結培地は、当業者に熟知されていると思われ、典型的には細胞培地とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合物を含み、場合によりウシ胎仔血清(FCS)も含む。適切な凍結培地は、市販されており、Gibco Recovery細胞培養フリージング培地などがある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここに、本発明を1つ又は複数の具体的実施形態に関連して記載する。
【図1A】図1A及び図1Bは、オルガノイドの標準的なベンチスケール培養と、本発明の供給プレート型バイオリアクターとの比較を示す。図1Aは、細胞培地を合計12ml、マトリゲル1.2ml及び細胞480万個を含む24プレートを示す。
【図1B】図1A及び図1Bは、オルガノイドの標準的なベンチスケール培養と、本発明の供給プレート型バイオリアクターとの比較を示す。図1Bは、細胞培地15ml、マトリゲル又はマトリゲル:培地混合物6ml、及び細胞240万個を含む100mm供給プレート型バイオリアクターを示す。
【図2】図2は、ステージIオルガノイドを異なるメッシュサイズの2つのセルストレーナーでふるいにかけて、ステージIIオルガノイドの懸濁液を得る、分画工程の略図を示す。右下のパネルは、85μm及び40μmのメッシュサイズのセルストレーナーを用いて得られたステージIIオルガノイドのサイズ分布を示す。
【図3A】図3A及び図3Bは、本発明による供給プレート型バイオリアクターを用いて培養されたオルガノイドに及ぼすWEE1阻害剤の影響を示す。培養されたオルガノイドを、1〜2.5μM MK1775(WEE1阻害剤)を含有する成長培地25μlと共に供給した(8重測定)。図3A:5日後に、オルガノイドを固定し、ヘキスト(DNA、即ち真核細胞の核に特異的)及びファロイジン(F−アクチンに特異的)で染色した。未処置の培養物中での、又は低濃度の阻害剤でのオルガノイドの全体的形状は、円形及び嚢胞様から包旋形及び分枝状まで様々であった。阻害剤の濃度が上昇すると、細胞は、オルガノイドの外層から脱離されて、複雑性がなくなり、全体的サイズが減少する。
【図3B】図3A及び図3Bは、本発明による供給プレート型バイオリアクターを用いて培養されたオルガノイドに及ぼすWEE1阻害剤の影響を示す。培養されたオルガノイドを、1〜2.5μM MK1775(WEE1阻害剤)を含有する成長培地25μlと共に供給した(8重測定)。図3B:オルガノイドパラメータの形態計測分析により、毒性の観察を確認した。阻害剤の濃度が上昇すると、オルガノイドのサイズが減少するが、アポトーシス性核及び核の円形度(アポトーシス前の膨張による)は両者とも、薬物濃度に応じて増加する。
【実施例】
【0031】
実施例1−大腸オルガノイド培養プロトコル
1.未処置オルガノイドの維持
全ての維持プロトコルを、クラスII層流キャビネット内で実施して、滅菌状態を維持する。
【0032】
3+培地は、HEPES、1×GlutaMax及びペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mL)が補充されたAdvanced DMEM/F12(高グルコース及びピルバートを含む)を含有する。
【0033】
6+培地は、HEPES、1×GlutaMax、ペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mL)、1×B27、1×N2及び1.25mM n−アセチルシステインが補充されたAdvanced DMEM/F12(高グルコース及びピルバートを含む)を含有する。
【0034】
1.1 手作業のトリチュレーションのプロトコル(ISO50、ISO78)
トリチュレーションを、補充されていないDMEM/F12培地を用いて実施し、予め4℃に維持させる。凍結されたアリコットに貯蔵された新鮮なマトリゲルを解凍して、氷上で液化形態を維持する。
【0035】
24ウェルプレート内の重合マトリゲル中のオルガノイド上の培地を、冷却された培地と交換する。マトリゲルのドームを、1000μLピペットチップの先端で破壊する。3ウェル以下の内容物を、氷上の15ml試験管内でひとまとめにする。冷却された培地を添加して、用いられたマトリゲルを希釈する。その後、オルガノイドを1000rpmでの3分間の遠心分離によりペレット化して、古い培地及びマトリゲルを吸引により除去する。複数の試験管から得られたペレット化オルガノイドを、約400μl容量の培地中でひとまとめにし、1000μLピペットチップ内を少なくとも100回、上下に通すことにより、脱凝集を実施する。冷却された培地を添加して、オルガノイドを遠心分離によりペレット化し、培地を吸引により除去して、乾燥したペレットを残留させる。必要な容量の新鮮な100%マトリゲルを添加して、混合物を24ウェルプレートの1ウェルあたり50μLで沈着させる(plated out)(又は必要に応じて)。Matrigelを室温で少なくとも15分間、重合させた後、「6+」陰窩培地(crypt culture medium)500μLを各ウェルに添加して、プレートを37℃及び5%COの加湿インキュベータ内で培養する。オルガノイドがマトリゲルに対して過度に大きく、又は高密度に成長して、トリプシン処理又はトリチュレーションにより反復脱凝集を必要とするようになるまでは、培地を2〜3日ごとに交換する。
【0036】
1.2 トリプシン処理(ISO72)
トリプシン処理手順は、補充されていないDMEM/F12培地及びTrypLEを用いて実施し、予め室温に維持させる。凍結されたアリコットに保持された新鮮なマトリゲルを解凍して、氷上で液化形態を維持する。
【0037】
マトリゲル中のオルガノイドをPBSで洗浄し、その後、TrypLE(250μL/マトリゲルドーム50μL)中、37℃で3分間インキュベートする。酵素を同容量のDMEM/F12+10%FBS又は規定のトリプシンインヒビター(Invitrogen)で阻害することにより、反応を停止させる。マトリゲル及び培地混合物を、1000μLピペットチップ内で10〜20回、上下にピペッティングして、脱凝集を支援する。最大3ウェルの内容物を、15ml円錐形試験管でひとまとめにする。DMEM/F12培地を添加して、用いられたマトリゲルを希釈し、1000rpmで3分間の遠心分離に続いて吸引する。必要となる容量の100%マトリゲルを乾燥したオルガノイドペレットに添加して、混合物を24ウェルプレートの1ウェルあたり50μLで沈着させる(又は必要に応じて)。マトリゲルを室温で少なくとも15分間、重合させた後、「6+」陰窩培地500μLを各ウェルに添加して、プレートを37℃及び5%COの加湿インキュベータ内で培養する。オルガノイドがマトリゲルに対して過度に大きく、又は高密度に成長して、トリプシン処理又はトリチュレーションにより反復脱凝集を必要とするようにな
るまでは、培地を2〜3日ごとに交換する。
【0038】
2.バイオプロセッサーのプロトコル
図1Bは、100mm平底型バイオリアクター、及びそれと24ウェルプレート(図1A)との比較を示している。
【0039】
2.1 バイオプロセッサー
バイオプロセシングは、オルガノイドを「平底型」バイオリアクター内の100mm皿で培養し、その後、85μm及び40μmのPluristrainerを用いた分画により異なるサイズに分離し(4節を参照)、所望の寸法のオルガノイドを得る。
【0040】
100mm皿の平底型バイオリアクターは、入口及び出口弁に特別に適応された蓋を有し、皿内に含まれるオルガノイド/マトリゲル混合物の表面への培地の添加、及び該表面からの培地の吸引を容易にしている。新鮮な成長培地が、HEPAフィルター及び浸漬管が取り付けられた「供給槽」ボトル内に含まれる。同型のボトルが、廃棄槽である。これらのボトルへの配管が、ポンプマニホールド管に隣接し、チューブクリップによって蠕動ポンプに取り付けられ、適宜、新鮮な培地を培地ボトルからマトリゲル表面に注入させる、又は廃棄培地を廃棄槽に除去させる。こうして該システムは、培地交換が手作業での介入を要しないことから「供給プレート型」バイオリアクターと称される。
【0041】
2.2 「供給プレート型」バイオリアクターの播種(ISO50)
バイオリアクターの部品は全て、滅菌されている。部品は必要に応じて、オートクレーブにかけられるか、あるいは70%アルコールに浸漬することにより滅菌される。予め37℃に加温された6+成長培地を、「供給」槽に入れる。
【0042】
先のプロトコル(1.2 トリプシン処理)に従い、オルガノイドをTrypLEとのインキュベーションによりトリプシン処理する。ひとまとめにされたトリプシン処理済みオルガノイドからの古いマトリゲルの吸引に続いて、ペレットを冷却されたDMEM/F12 10mLで再懸濁させて、40μmセルストレーナーに通す。得られた濾液は、主に単一細胞からなる(必要ならば、ストレーナーに捕捉されたより大きな凝集物を採取して、使用することができる)。100mm培養皿に、総容量6mLの100%マトリゲル又はマトリゲル:6+培地混合物(2%〜99.9%マトリゲル)中の400,000〜600,000細胞/mLを播種する。室温又は37℃でのマトリゲルの重合に続いて、ROCK阻害剤を含有する6+成長培地15mLを添加する。そのプレートを静的条件下で24時間、インキュベートする。
【0043】
2.3 バイオプロセッサーの使用
マトリゲル中に播種された(2.1 「供給プレート型」バイオリアクターの播種を参照)細胞を含む100mm皿の蓋を、滅菌された「供給プレート型」バイオリアクターの蓋と交換する。バイオリアクター、培地ボトル及び接続された配管を、流速0.59ml/時間を維持する0.9rpmのポンプと共に、37℃及び5%COの加湿インキュベータ内で保持する。オルガノイドは通常、回収、分画及び凍結の前に48時間、培養される(以下のプロトコル参照)。
【0044】
3.マトリゲル(又はマトリゲル/培地混合物)からの全オルガノイドの回収
この工程全体で、滅菌性が維持されなければならない。
【0045】
マトリゲル/オルガノイド層を、PBSで洗浄する。冷却された「細胞回収」溶液(Invitrogen)10mLを添加して、マトリゲル層を1000mLチップの先端で破壊する。プレートを氷上で25分間、穏やかに撹拌しながらインキュベートする。その
後、皿の内容物を50mL試験管に入れ、DMEM/F12で50mLにする。1000rpmで3分間の遠心分離により、又はオルガノイドペレットが可視化されるまで、オルガノイドをペレット化する。用いられたマトリゲル/培地混合物を吸引して、分画の前に、オルガノイドをDMEM/F12 5〜10mLで再懸濁させる。
【0046】
4.分画(サイジングのプロトコル)
「回収された」オルガノイド懸濁液(前節を参照)を逐次、セルストレーナーに通して、必要な寸法のオルガノイドを収集する。図式(図2)は、85μm及び40μmのストレーナーを用いた工程を示している。オルガノイドの数及びサイズの推定値は、40%グリセロールを含むIsoton II緩衝液及び400μmの細孔を利用したBeckman Coulter MS3を用いて、各分画で得られる。TrypLEを用いて少量の濾液を単一細胞にトリプシン処理し、オルガノイド中の総細胞数と、それによりオルガノイドあたりの平均細胞数の推定値を与えるためにカウントする。
【0047】
5. オルガノイドを384ウェルプレートに播種するための凍結プロトコル
オルガノイドを遠心分離によりペレット化し、オルガノイド500,000個/mLでクライオバイアルあたり200μL(オルガノイド100,000個)になるように、市販の凍結混合物で再懸濁する。クライオバイアルを「Mr Frosty」コンテナに移して、−80℃冷凍庫に少なくとも24時間入れる。その後、バイアルを他のコンテナに移して、−80℃で長期間貯蔵することができる。
【0048】
実施例2−大腸オルガノイドの検証
薬物トリチュレーションアッセイの結果
ISO50(単離番号50)の大腸癌オルガノイドを、供給プレート型バイオリアクター内で3日間培養し、マトリゲルから回収して、−80℃で凍結貯蔵した。次にそれらを再生して、マトリゲル12μlのウェルあたりオルガノイド350個の密度で384ウェルプレートに播種するために用いた。オルガノイドに、0〜2.5μM MK1775(WEE1阻害剤)を含有する成長培地25μlを供給した(8重測定)。5日後に、オルガノイドを固定し、ヘキスト(DNA、即ち真核細胞の核に特異的な青色蛍光染色剤)及びファロイジン(F−アクチン用の桃色染色剤)で染色した。
【0049】
共焦点顕微鏡測定に、青色の細胞核と、桃色に染色されたアクチン繊維が示されている(図3A参照)。アクチン繊維を構造全体に広がっているが、オルガノイドの中央にある管腔ではより高密度である。代表的オルガノイドを、各濃度の選択されたウェルで撮像している。未処置培養物又は低濃度阻害剤のオルガノイドの全体的形状は、円形及び嚢胞様から包旋形及び分枝状まで様々になり得る。阻害剤の濃度が上昇すると、細胞がオルガノイドの外層から脱離されて、複雑性がなくなり、全体的サイズが減少する。
【0050】
1000を超えるオルガノイドパラメータの形態計測分析により、毒性の観察を確認した。実施例のグラフを、図3Bに示している。阻害剤の濃度が上昇すると、オルガノイドのサイズが減少する。アポトーシス性核及び核の円形度(アポトーシス前の膨張による)は両者とも、薬物濃度に応じて増加する。
【0051】
参考資料
Lancaster MA, Knoblich JA (2014) Organogenesis in a dish: modeling development and disease using organoid technologies. Science 345:1247125-1247125.
【0052】
Sato T, Vries RG, Snippert HJ, van de Wetering M, Barker N, Stange DE, van Es JH, Abo A, Kujala P, Peters PJ et al (2009) Single Lgr5 stem cells build crypt villus structures in vitro without a mesenchymal niche. Nature 459:262-265.
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【国際調査報告】