(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019521939
(43)【公表日】20190808
(54)【発明の名称】多層中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20190712BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20190712BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20190712BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20190712BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20190712BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20190712BHJP
   B60J 1/00 20060101ALN20190712BHJP
【FI】
   !C03C27/12 F
   !B32B27/28
   !B32B17/10
   !C08L23/08
   !C08L53/02
   !C08K9/02
   !B60J1/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】54
(21)【出願番号】2018559372
(86)(22)【出願日】20170508
(85)【翻訳文提出日】20181207
(86)【国際出願番号】US2017031509
(87)【国際公開番号】WO2017196707
(87)【国際公開日】20171116
(31)【優先権主張番号】62/333,371
(32)【優先日】20160509
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】513206153
【氏名又は名称】クラレ・アメリカ・インコーポレイテッド
【住所又は居所】アメリカ合衆国、テキサス州 77058、ヒューストン、ベイ・エリア・ブールバード 2625、スイート 600
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベニソン、スティーブン
【住所又は居所】アメリカ合衆国、デラウェア州 19803、ウィルミントン、アラポカス・ドライブ 110
(72)【発明者】
【氏名】スミス、チャールズ・アンソニー
【住所又は居所】アメリカ合衆国、ウエストバージニア州 26105、ビーナ、グレンブルック・ドライブ 5231
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、スティーブン・エム.
【住所又は居所】アメリカ合衆国、デラウェア州 19803、ウィルミントン、チルトン・ロード 6
(72)【発明者】
【氏名】井口 利之
【住所又は居所】新潟県胎内市倉敷町2−28
(72)【発明者】
【氏名】スミス、レベッカ・エル.
【住所又は居所】アメリカ合衆国、ウエストバージニア州 26105、ビーナ、メリーウッド・レーン 8
(72)【発明者】
【氏名】楠藤 健
【住所又は居所】岡山県倉敷市玉島乙島7471
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓哉
【住所又は居所】岡山県倉敷市玉島乙島7471
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
4J002
【Fターム(参考)】
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4J002GF00
4J002GN00
(57)【要約】
特定のアイオノマースキン層及び遮音制振中間層を含む多層中間膜、及びそのような中間膜を含む積層体を提供し、この積層体は、輸送用及び建築用の様々な最終用途での使用に適した、遮音、曲げ強度、及び光学特性の望ましい組み合わせを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層中間膜であって、
(1)場合により1種以上の添加剤を含有する第1の熱可塑性樹脂の層である第1のスキン層Aと、
(2)場合により1種以上の添加剤を含有する第2の熱可塑性樹脂の層である第2のスキン層Cと、
(3)前記第1のスキン層Aと前記第2のスキン層Cとの間の遮音制振層Bとを含み、
(I)前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂とは同一または異なっており、(II)前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂の少なくとも一方が第1のアイオノマー樹脂であり、(III)前記遮音制振層Bが、場合により1種以上の添加剤を含有する熱可塑性エラストマー樹脂の層であり、かつ
前記第1のアイオノマー樹脂が、
(a)エチレン、
(b)約10〜約30wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸、及び
(c)約2wt%〜約15wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸誘導体の共重合単位を含む少なくとも部分的に中和されたエチレン酸共重合体であり、
ただし、(i)前記共重合単位の重量パーセントは前記エチレン酸共重合体の総重量を基準とし、前記共重合単位の総重量パーセントは100wt%であり、(ii)炭素原子3〜10個を有する前記少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸の誘導体が、α,β−不飽和カルボン酸エステルを含み、(iii)前記α,β−不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成することを特徴とする、前記多層中間膜。
【請求項2】
前記第1のアイオノマー樹脂が、
(i)エチレン、
(ii)約10wt%〜約30wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸、及び
(iii)約5wt%〜約15wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸エステルの共重合単位を含む、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の多層中間膜。
【請求項3】
(i)炭素原子3〜10個を有する前記少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸が、本質的にメタクリル酸からなるか、または(ii)炭素原子3〜10個を有する前記少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸エステルが、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、及びメタクリル酸イソブチルのうち1つ以上であるか、または(iii)前記エチレン酸共重合体中に存在するカルボン酸基の総量の約20%〜約30%が中和されているか、または(iv)前記第1のアイオノマー樹脂の前記対イオンが、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、亜鉛カチオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるか、または(v)(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の1つ以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の多層中間膜。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマー樹脂が、
(i)芳香族ビニル重合体ブロックを基準にして約60モル%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含む芳香族ビニル重合体ブロック(a)と、
(ii)脂肪族不飽和重合体ブロックを基準として約60モル%以上の共役ジエンモノマー単位を含む脂肪族不飽和重合体ブロック(b)とを有するブロック共重合体の水素添加物であり、
前記脂肪族不飽和重合体ブロック(b)が、前記共役ジエンモノマー単位としてイソプレン単位とブタジエン単位とを合計で約50モル%以上含有し、かつ
共役ジエンモノマー単位から誘導された前記脂肪族不飽和重合体ブロックに結合する残余の炭素−炭素二重結合の量が約2〜約40モル%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項5】
B層が、tanδのピーク温度がそれぞれ異なり、好ましくはtanδのピーク温度の差が約5℃以上である2種以上の熱可塑性エラストマー樹脂の層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項6】
前記遮音制振層Bが第1のスキン層Aと直接接触しているか、または前記遮音制振層Bが第1のスキン層Aと第2のスキン層Cの両方と直接接触していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項7】
前記第1のスキン層Aが前記アイオノマー樹脂の層であり、第2のスキン層Bが異なる熱可塑性樹脂の層であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項8】
第1のスキン層Aと第2のスキン層Cの両方が前記第1のアイオノマー樹脂の層であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー樹脂が、カルボキシル基を含むオレフィンポリマー、好ましくは無水マレイン酸変性エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーを添加剤として含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項10】
A層及びC層の両方に遮熱材が含まれており、かつ、(i)前記遮熱材がセシウムドープ酸化タングステンであり、約0.17g/m2〜約0.35g/m2の量で含まれているか、または(ii)前記遮熱材がスズドープ酸化インジウムであり、約0.3g/m2〜約0.6g/m2の量で含まれているか、または(iii)前記遮熱材がセシウムドープ酸化タングステンとスズドープ酸化インジウムの混合物であり、セシウムドープ酸化タングステンが約0.05g/m2〜約0.15g/m2、スズドープ酸化インジウムが約0.4g/m2〜約0.5g/m2の量で含まれていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項11】
B層の厚さが約20μm以上かつ約300μm以下であり;A層及びC層それぞれの厚さが、約100μm以上かつ約500μm以下であり、前記A層及びC層を組み合わせた厚さの合計が、約300μm以上かつ約750μm以下であり;B層の厚さの合計/A+C層の厚さの合計が、約1/1以下かつ約1/30以上であり;多層積層体の厚さの合計が、約320μm以上かつ約1250μm以下であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項12】
2枚のガラス板の間に前記多層中間膜を積層して積層体を製造する場合に、前記積層体が約33以上の音響透過クラス、少なくとも約0.4の積層体損失係数、少なくとも約70N.mの等価曲げ剛性率、少なくとも約2.8mmの有効厚さ、及び約0.6未満の積層体ヘイズの組み合わせを有し、すべてが本明細書に記載のように測定されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項13】
少なくとも約100N.mまたは少なくとも約130N.mの等価曲げ剛性率を有する、請求項12に記載の多層中間膜。
【請求項14】
前記中間膜が実質的に可塑剤を含まないことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の多層中間膜。
【請求項15】
多層中間膜が間に挟まれた第1の外側板と第2の外側板とを含み、前記多層中間膜が請求項1〜14のいずれか1項に記載のものであることを特徴とする積層体。
【請求項16】
前記第1の外側板と前記第2の外側板の両方がガラス板であることを特徴とする、請求項15に記載の積層体。
【請求項17】
前記第1のガラス板と前記第2のガラス板の厚さが異なることを特徴とする、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
約33以上の音響透過クラス、少なくとも約0.4の積層体損失係数、少なくとも約70N.mの等価曲げ剛性率、少なくとも約2.8mmの有効厚さ、及び約0.6未満の積層体ヘイズの組み合わせを有し、すべてが本明細書に記載のように測定される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項19】
少なくとも約100N.mまたは少なくとも約130N.mの等価曲げ剛性率を有する、請求項18に記載の積層体。
【請求項20】
前記積層体が、約7kg/m2〜約10kg/m2、または約8kg/m2〜約9.5kg/m2の範囲の質量を有する、請求項15〜19のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項21】
第1のガラス板と第2のガラス板を有し、その間に熱可塑性多層中間膜を挟んだ合わせガラスであって、前記積層体が、約7g/cm2〜約10g/cm2の範囲の質量を有し、かつ、約33以上の音響透過クラス、少なくとも約0.4の積層体損失係数、少なくとも約70N.mの等価曲げ剛性率、少なくとも約2.8mmの有効厚さ、及び約0.6未満の積層体ヘイズの組み合わせを有し、すべてが本明細書に記載のように測定される、前記合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、多層中間膜及びそのような中間膜を含む合わせガラスに関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つのアイオノマースキン層及び少なくとも1つの遮音性中間層を含む多層中間膜に関し、そのような中間膜を含む合わせガラスは、遮音制振、音響遮蔽性、曲げ強度、曲げ剛性、及び光学特性の望ましい組み合わせ、ならびに場合によっては太陽熱遮蔽特性を有し、結果として得られる合わせガラスの重量を低減させることが可能である。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスなどに使用されている板ガラスは、耐久性及び光学特性に優れているが、その遮音制振性能及び音響遮蔽性能(屈曲振動に対するtanδ)、ならびに耐破砕性は、多くの最終用途には不十分な可能性がある。これは、薄板ガラスを要する軽量板ガラス要素が必要とされる用途の場合、特に当てはまる。
【0003】
合わせガラスは一般に、2枚のガラスをプラスチック中間膜上に積層することによって製造される。中間膜は、比較的厚いガラス板と比較して、積層体の耐破砕性能、遮音制振性能、及び音響遮蔽性能を大幅に改善することができるが、光学特性、曲げ強度、剛性、及びその他の特性に劣る場合が多い。
【0004】
合わせガラスの用途の多くは、透明性と耐破砕性の高さに加えて、優れた遮音性(内外両方の音に対して)、ならびに外部荷重の影響下での曲げ強度及び剛性(例えば、ガラス建材及び自動車の最終用途)の望ましい組み合わせを必要とする。
【0005】
ポリビニルブチラールに代表されるポリビニルアセタールは、種々の有機基材または無機基材への接着性または相溶性、及び有機溶剤への溶解性に優れており、種々の接着剤、またはセラミック用、各種インク用、塗料用などのバインダー、ならびに安全ガラス中間膜フィルムとして広範に利用されている。
【0006】
ポリビニルアセタールと可塑剤を含有するフィルムは、ガラスとの接着性に優れることから合わせガラス用中間膜フィルムとして広範に利用されている。良好な透明性、機械的強度及び柔軟性、ならびに耐破砕性を備える、そのような中間膜を含む合わせガラスを製造することができる。
【0007】
窓などの遮音性が求められる場所にガラスを施工する場合には、ガラスの厚さを厚くして重量により遮音効果を高めること、また2枚以上のガラス板の間に遮音制振性中間膜を積層して遮音効果を高めることができる。中間膜を使用する後者の方法では、制振性能を有する中間膜フィルムを使用することで窓ガラスの遮音性を向上させている。この中間膜フィルムはまた、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する能力を有し、それにより振動エネルギーを吸収することができる。
【0008】
遮音性を向上させる方法のひとつとして、外側の2層の熱可塑性ポリマー材料の間にポリスチレン共重合体中間膜が存在する多層中間膜を2枚のガラスの間に積層したものが提案されている(例えば、JP2007−91491Aを参照)。熱可塑性ポリマー材料の例として、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂が挙げられる。しかしながら、この積層体の曲げ強度は十分ではなく、外部荷重の影響下での使用には不適切である。
【0009】
他のプラスチック材料に安全積層体での幅広い用途が見出されている。例えば、US7951865B1は、積層安全ガラスを製造するための中間膜として、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸共重合体(アイオノマー)の使用を開示している。この種のアイオノマーは、曲げ強度及びガラスへの接着性に優れ、また良好な光学特性を有するが、このようなアイオノマー中間膜から作製された積層体は良好な遮音制振性を有さない。
【0010】
別の方法として、ポリビニルブチラールからなり、一定の耐衝撃性及び遮音性を有する合わせガラス用中間膜フィルムが提案されている(例えば、US7452608B2を参照)。この中間膜フィルムは、単層であっても多層であってもよいが、この場合も積層体の曲げ強度が外部荷重の影響下での使用には不十分である。
【0011】
上記に加えて、ポリビニルアセタール中間層の少なくとも1つが遮音制振品質を有する、ポリビニルアセタール樹脂の多層フィルムを製造するため、多数の開発がなされている。例えば、遮音層を3層のPVBフィルムなどで構成する方法が提案されている(例えば、US2013/0183507A1を参照)。しかしながら、提案されたシステムの遮音性は、広い温度範囲にわたっては高レベルに維持されなかった。
【0012】
中間のポリビニルアセタール遮音制振層を、例えば、US7121380B2に開示されているような粘弾性アクリル層、JP2009−256128Aに開示されているような熱接着樹脂を含んだ層の間にスチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体を含む層、US2012/0204940A1に開示されているようなポリオレフィンを含む層、WO2015/013242A1に開示されているようなエチレン/酢酸ビニルポリマーを含む層、及びWO2015/085165A1に開示されているようなエチレン酸共重合体を含む層に置き換えた他の材料が提案されている。
【0013】
輸送分野では、例えば、車両を軽量化させ、燃費を向上させる目的で、近年、ガラスの薄板化が進んでいる。しかし、ガラスを薄板化すると、コインシデンス限界周波数(コインシデンス限界周波数とは、質量則により予測されるものに比べて、高周波数域において遮音性能が落ち込むコインシデンス効果が生じる周波数域のうち最低の周波数を意味する)が高周波数側にシフトし、その結果、高周波数域での遮音性能が低下する。従来の遮音性を有する中間膜を使用した合わせガラスでは上記現象が起こりやすく、改善が求められていた。
【0014】
加えて、ガラスの薄板化は、積層体の耐荷重能力及び剛性を低下させるため、軽量板ガラスの設計上、構造的信頼性に問題が生じる。
【0015】
高周波数域での遮音性を改善した合わせガラスを得るために、多層中間膜の各層の厚さ及びポリビニルアセタール樹脂のヒドロキシル基量を調整する方法(例えば、US2013/0183507A1を参照)、各層を構成するポリビニルアセタール樹脂と可塑剤から得られる可塑剤溶液の曇点が所定の関係となるように、多層中間膜の各層のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を選択する方法(例えば、US8741439B2を参照)、遮音層を架橋する方法(例えば、JP2012−214305Aを参照)、ポリビニルアセタール樹脂とのSP値の差が所定の値以上となるような可塑剤を使用する方法(例えば、US8883317B2を参照)などが提案された。しかしながら、高周波数域での遮音性の改善は十分ではなかった。
【0016】
先に示したように、ポリビニルアセタール(特にポリビニルブチラール)は、合わせガラスの中間膜として使用される主要な熱可塑性材料である。これらの材料は高度に可塑化された形態で使用される。換言すれば、中間膜として使用されるポリビニルアセタールには多量の可塑剤が添加されている。
【0017】
合わせガラスを作製する際には、オートクレーブなどを使用して加熱処理が行われる。しかしながら、可塑化成分を含む多層中間膜フィルムを加熱すると、層間で可塑剤の移動が起こり、可塑剤の分布が変化する。合わせガラスの作製後、常温で時間が経過すると可塑剤の分布は元に戻るが、可塑剤が他の層へ移動することを考慮すると、平衡状態に達するまでは遮音性などの物性が不安定になる。そのような理由から、従来の多層中間膜を使用して合わせガラスを作製する場合は、遮音性能が安定するまでの一定期間、作製した合わせガラスを保持しておく必要がある。この保持時間は生産性の観点から問題があり、遮音機能を有する合わせガラスでは改善が求められている。
【0018】
また、可塑剤の平衡は温度に依存するため、常温において高い遮音性を有する合わせガラス用中間膜であっても、夏季または冬季には遮音性が大幅に低下するという問題があった。そのため、広い温度範囲にわたって高レベルで遮音性を発揮できる合わせガラスが求められていた。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、2枚の窓ガラスの間に積層したとき、遮音、曲げ強度、剛性、及び光学特性の望ましい組み合わせを有し、望ましくは遮熱性、さらにより望ましくは広範囲の環境条件にわたる遮熱性を有する合わせガラスを可能にする多層中間膜を提供することによって上記の問題に対処する。
【0020】
第1の実施形態によれば、本発明は、
(1)場合により1種以上の添加剤を含有する第1の熱可塑性樹脂の層である第1のスキン層Aと、
(2)場合により1種以上の添加剤を含有する第2の熱可塑性樹脂の層である第2のスキン層Cと、
(3)第1のスキン層Aと第2のスキン層Cとの間の遮音制振層Bとを含み、
(I)第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とは同一または異なっており、(II)第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂の少なくとも一方が第1のアイオノマー樹脂であり、ならびに(III)遮音制振層Bは、場合により1種以上の添加剤を含有する熱可塑性エラストマー樹脂の層であり、かつ
第1のアイオノマー樹脂は、
(a)エチレン、
(b)約10〜約30wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸、及び
(c)約2wt%〜約15wt%の、炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸誘導体の共重合単位を含む少なくとも部分的に中和されたエチレン酸共重合体であり、
ただし、(i)共重合単位の重量パーセントはエチレン酸共重合体の総重量を基準とし、共重合単位の総重量パーセントが100wt%であり、(ii)炭素原子3〜10個を有する少なくとも1つのα,β−不飽和カルボン酸の誘導体は、α,β−不飽和カルボン酸エステルを含み、(iii)α,β−不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する、多層中間膜を提供する。
【0021】
より具体的な実施形態では、熱可塑性エラストマー樹脂は、
(i)芳香族ビニル重合体ブロックを基準にして約60モル%以上の芳香族ビニルモノマー単位を含む芳香族ビニル重合体ブロック(a)と、
(ii)脂肪族不飽和重合体ブロックを基準として約60モル%以上の共役ジエンモノマー単位を含む脂肪族不飽和重合体ブロック(b)とを有するブロック共重合体の水素添加物であり、
脂肪族不飽和重合体ブロック(b)が、共役ジエンモノマー単位としてイソプレン単位とブタジエン単位とを合計で約50モル%以上含んでおり、
共役ジエンモノマー単位から誘導された脂肪族不飽和重合体ブロックに結合する残余の炭素−炭素二重結合の量が約2〜約40モル%である。
【0022】
第2の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の多層中間膜が間に挟まれた第1の外側板と第2の外側板とを含み、少なくとも1つの外側板がガラス板である積層体を提供する。
【0023】
より具体的な好ましい実施形態では、第1及び第2の板は両方ともガラス板であり、同種類のガラスであるか、またはそれぞれが異なる種類のガラスである。積層体は、ガラスが対称(両方のガラス板が実質的に等しい厚さ)であっても、または非対称(第1及び第2のガラス板が異なる厚さ)であってもよい。さらに、中間膜全体が対称であり、実質的に均一な厚さを有してもよく、または中間膜の一部が別の部分よりも厚い非対称(例えば、後述する「くさび」)であってもよい。さらに、積層体は、実質的に透明であっても、全部または一部に着色を有してもよい(例えば、後述する「遮光帯」)。
【0024】
本発明による多層中間膜を使用することにより、遮音特性、曲げ強度、及び剛性に優れた合わせガラスを作製することができる。これによれば、建築用ガラス建材及び自動車用のサンルーフまたはリアガラスなどの外部荷重の影響及び遮音性に良好さが求められる場所に合わせガラスを適用することが可能となる。一方、この合わせガラスは曲げ強度及び剛性に優れていることから、合わせガラスに使用されるガラスを薄板化することも可能となり、許容される合わせガラスの強度及び剛性を維持しながら、合わせガラスの軽量化を実現することができる。
【0025】
また、本発明によれば、コインシデンス現象に起因する高周波数域での遮音性能の低下が抑制され、遮音性に優れた合わせガラスを作製することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、合わせガラス作製後の経時的な遮音性能の変化が小さく、遮音性能の安定性に優れた合わせガラスを提供することができる。
【0027】
上記に加え、本発明によれば、広い温度範囲にわたり遮音性に優れた合わせガラスを提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、総合的な光学特性に優れた合わせガラスを作製することができる。
【0029】
したがって、本発明による積層体は、輸送用及び建築用の様々な最終用途での使用に適した、遮音、曲げ強度、剛性、及び光学特性の望ましい組み合わせ、ならびに望ましくは太陽熱遮蔽特性を備える。
【0030】
以下の詳細な説明を読めば、本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態、特徴及び利点を当業者は容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による、異なるスキン層を有する多層中間膜を含む積層体である第1の実施形態の図である。
【図2】本発明による、同じスキン層を有する多層中間膜を含む積層体である第2の実施形態の図である。
【図3】本発明による、異なるスキン層を有する多層中間膜を含む、厚さ及び種類の異なるガラスとの積層体である第3の実施形態の図である。
【図4】本発明による、他よりも厚い部分を有することで「全くさび」構造をなす1つのスキン層を有する非対称の多層中間膜を含む、厚さ及び種類が同じガラスとの積層体である第5の実施形態の図である。
【図5】本発明による、他よりも厚い部分を有することで「部分くさび」構造をなす1つのスキン層を有する非対称の多層中間膜を含む、厚さ及び種類が同じガラスとの積層体である第4の実施形態の図である。
【図6】本発明による、同じスキン層を有し、遮音層の一部とスキン層との間に着色層を有することで偏った「遮光帯」構造をなす多層中間膜(3層)を含む積層体である第6の実施形態の図である。
【図7】本発明による、同じスキン層を有し、2層の中央(遮音)層の間のほぼ中心に着色層を有することで中央「遮光帯」構造をなす多層中間膜(4層)を含む積層体である第7の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、多層中間膜、そのような多層中間膜を含む合わせガラス、及びそのような合わせガラスの様々な最終用途に関する。さらなる詳細を以下に示す。
【0033】
本発明の記載に関連して、本明細書で言及する刊行物、特許出願、特許、及び他の引用文献はすべて、特に記載のない限り、目的を問わず全て記載されたままその全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0034】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書が優先される。
【0035】
特に明記しない限り、商標は大文字で示されている。
【0036】
特に明記しない限り、百分率、部、比率などはすべて重量による。
【0037】
特に記載がない限り、psi単位で表される圧力はゲージであり、kPa単位で表される圧力は絶対値である。ただし、圧力差は絶対値として表される(例えば、圧力1は圧力2より25psi高い)。
【0038】
量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲または上限値及び下限値の一覧として与えられる場合、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、これは任意の上限範囲及び下限範囲の任意の対で構成されるあらゆる範囲を具体的に開示するものとして理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書に列挙されている場合、特に記載のない限り、その範囲には、その端点、及びその範囲内にあるすべての整数及び分数を含むことを意図する。本開示の範囲は、範囲を定義する際に列挙される特定の値に限定されることを意図しない。
【0039】
用語「約」が使用される場合、一定の許容誤差内で一定の効果または結果が得られることを意味する際に使用され、その許容誤差を得る方法は当業者に知られている。用語「約」が値または範囲の端点を記述する際に使用される場合、本開示は、参照される特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、またはその任意の他の変化形は、非排他的な包含を対象とすることを意図する。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない他の要素、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。
【0041】
「からなる」という移行句は、特許請求の範囲で指定されていない任意の要素、工程、または成分を除外し、それらに通常付随する不純物を除き、列挙された以外の材料を特許請求の範囲に包含しない。「からなる」という句が、プリアンブルの直後ではなく特許請求の範囲の本文の条項にある場合、この句はその条項に記載された要素のみを限定し、他の要素は全体が特許請求の範囲から除外されない。
【0042】
「本質的に〜からなる」という移行句は、請求項の範囲を、特定の材料または工程、及び特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を与えないものに限定する。「本質的に〜からなる」というクレームは、「からなる」形式で記述される閉鎖クレームと、「含む」形式で起草される完全な開放クレームとの中間的位置を占める。本明細書で定義される任意の添加剤(そのような添加剤に適したレベル)、及び少量の不純物は、「本質的に〜からなる」という用語によって組成物から除外されることはない。
【0043】
さらに、反することが明示されていない限り、「または」及び「及び/または」は包含的であり、排他的ではないことを意味する。例えば、AまたはB、またはA及び/またはBという条件は、Aが真(または存在する)でBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)でBは真(または存在する)、ならびにAとBのどちらも真(または存在する)のうち、いずれか1つを満たす。
【0044】
本明細書の様々な要素及び構成要素の記述に使用される「a」または「an」は、単に便宜上のものであり、本開示の一般的な意味を示しているに過ぎない。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、単数形は、それが他の意味であることが明らかでない限り、複数形も含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「主部分」は、特に本明細書で定義されない限り、参照される物質の50%超を意味する。指定されていない場合、パーセントは、分子(水素及びエチレンなど)に対する言及である場合にはモル基準であり、それ以外の場合は重量基準である(添加剤含有量に関するものなど)。
【0046】
用語「欠乏した」または「減少した」は、本来の存在量から減少したことと同義である。例えば、ある流れからある物質の相当部分が除去されると、その物質が実質的に欠乏している物質欠乏状態の流れが生じることになる。逆に、用語「濃縮した」または「増加した」は、本来の存在量よりも多いことと同義である。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「共重合体」とは、2つ以上のコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを指す。これに関連して、共重合体は、その構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量を基準として、例えば「エチレンと15重量%のアクリル酸を含む共重合体」、または同様の記述で本明細書に記載される場合がある。このような記述は、コモノマーを共重合単位と呼ばない点、共重合体の従来の命名法(例えば、国際純正・応用化学連合(IUPAC)命名法)を含まない点、プロダクトバイプロセスの用語を使用していない点、または別の理由から、非公式とみなされることがある。しかしながら、本明細書で使用される場合、構成コモノマーまたはその構成コモノマーの量を基準とした共重合体の記述は、共重合体が特定のコモノマーの(特定されている場合には指定量の)共重合単位を含むことを意味する。当然の帰結として、限定された状況においてそうであることが明示的に述べられていない限り、共重合体は所定のコモノマーを所定量で含む反応混合物の生成物ではない。
【0048】
用語「ジポリマー」とは、本質的に2つのモノマーからなるポリマーを指し、用語「ターポリマー」とは、少なくとも3つのモノマーを含むポリマーを指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「酸の共重合体」とは、α−オレフィン、α,β−エチレン不飽和カルボン酸、及び場合により他の適切なコモノマー(複数可)、例えばα,β−エチレン不飽和カルボン酸エステルといった共重合単位を含む共重合体を指す。
【0050】
用語「(メタ)アクリル」は、本明細書において単独で、または「(メタ)アクリレート」のように複合形態で使用される場合、アクリルまたはメタクリル、例えば「アクリル酸またはメタクリル酸」、または「アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキル」を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「アイオノマー」は、カルボキン酸塩、例えばカルボン酸アンモニウム、カルボン酸アルカリ金属、カルボン酸アルカリ土類、カルボン酸遷移金属、及び/またはそのようなカルボン酸塩の組み合わせであるイオン基を含むポリマーを指す。そのようなポリマーは、一般に、本明細書で定義される酸の共重合体である前駆体または親ポリマーのカルボン酸基を、例えば塩基との反応によって部分的にまたは完全に中和することによって生成される。本明細書で使用されるアルカリ金属アイオノマーの例は、ナトリウムアイオノマー、例えば共重合メタクリル酸単位のカルボン酸基の全部または一部がカルボン酸ナトリウムの形態である、エチレンとメタクリル酸の共重合体である。本明細書で使用される混合金属アイオノマーの例は、亜鉛/ナトリウムアイオノマー(すなわち亜鉛/ナトリウムで中和された混合アイオノマー)、例えば共重合メタクリル酸単位のカルボン酸基の全部または一部がカルボン酸亜鉛及びカルボン酸ナトリウムの形態である、エチレンとメタクリル酸の共重合体である。
【0052】
本明細書に記載するものと同様または同等である方法及び材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載している。したがって、本明細書の材料、方法、及び例は単なる例示であり、具体的に記載されない限り、限定を意図するものではない。
【0053】
中間膜及び積層構造体
上記に示すように、本発明の中間膜は、2つのスキン層(A層及びC層)の間に遮音層(B層)を有する多層構造体である。
【0054】
本発明の積層体は、少なくとも1つ(好ましくは両方)がガラス板である2枚の材料の間に積層された多層中間膜を含む積層体である。
【0055】
一実施形態では、B層はA層及びC層の両方と直接接触しているが、中間層を後述するように利用することもできる。
【0056】
本発明による多層中間膜(10)及び合わせガラス(12)の好ましい実施形態を図1に示す。多層中間膜(10)は、上記に概説し、後に詳述するアイオノマー樹脂である第1のスキン層A(14)を含む。多層中間膜(10)は、以下に詳述するように、合わせガラスでの使用に適した任意の熱可塑性樹脂であり得る第2のスキン層C(16)をさらに含む。第1のスキン層A(14)と第2のスキン層C(16)との間には、熱可塑性エラストマー樹脂である遮音制振層(18)が挟まれている。多層中間膜(10)は、2枚のガラス板(20)の間に積層される。図1では、2枚のガラス板(20)は、例示のために種類及び大きさが同じ(対称ガラス)である。
【0057】
別の好ましい実施形態は、2つのスキン層(14)A及びCの両方が、上記に概説し、後に詳述するアイオノマー樹脂である多層中間膜(24)である。スキン層A及びC(14)の間には、熱可塑性エラストマー樹脂である遮音制振層(18)が挟まれている。多層中間膜(24)を2枚のガラス板(20)の間に積層して、合わせガラス(22)を作製する。図2では、2枚のガラス板(20)は、例示のため、ここでも種類及び大きさが同じ(対称積層体)である。
【0058】
図3に示すさらに別の好ましい実施形態は、図1について上述したような多層中間膜(10)を含む合わせガラス(26)を示しているが、第1のガラス板(28)が第2のガラス板(29)とは厚さ及び種類が異なっている(非対称ガラス)。
【0059】
図4に示す別の好ましい実施形態は、くさび形の多層中間膜(44)を含む積層体(38)である。
【0060】
図4に示すような「標準くさび」では、中間膜は通常、厚さが一方の端から他方の端まで徐々に変化する等脚台形または直角台形であり、くさび角度が通常、約0.1mrad〜約0.7mrad、厚い側と薄い側との差が通常約0.1mm超である。
【0061】
図4に示すように、スキン層(40)はくさび形であり、遮音層(18)及びスキン層(16)は長方形である。外側ガラス板(20)はスキン層(16)に接触し、実質的にそれと平行であるが、外側ガラス板(42)はスキン層(40)の非平行面に接触しているため、板(20)とは平行ではない。
【0062】
図5に示す別の好ましい実施形態は、「部分くさび」と呼ばれる積層体(32)である。部分くさびの場合、中間膜(30)は通常、幅の少なくとも約20%にわたり厚さ断面が均一であり、その後、均一な厚さの領域よりも厚さが減少するくさび形断面となっており、くさび角及び他の較差は標準くさび形と同様にすべきである。
【0063】
図5に示すように、スキン層(34)は部分的にくさび形であるが、遮音層(18)及びスキン層(16)は長方形である。外側ガラス板(20)はスキン層(16)に接触し、実質的にそれと平行であるが、外側ガラス板(36)はスキン層(34)の非平行部分に接触してそれに沿うため、その部分に関しては板(20)と平行ではない。
【0064】
一般に、「くさび」に関しては、多層構造全体がくさび形(すべての層)であっても、各層のうち任意の1層または各層の組み合わせがくさび形であってもよく、例えば、外側層の一方または両方がくさび形でコア層(複数可)が長方形であっても、またはコア層がくさび形で外側層(複数可)が長方形であってもよい。くさび中間膜及び積層体の追加の説明及び詳細については、例えばUS8574706B2、US9067386B2、及びUS5639538を参照することにより知ることができる。
【0065】
図6に示す別の好ましい実施形態は、遮音層(18)とスキン層(14)との間の片端に挟まれた着色層(50)を中間膜(46)構造内に有する積層体(48)である。この構成は、遮光帯積層体の代表例である。図6に示すように、中間膜(46)は、着色層(50)が中間膜(46)及び積層体(48)の中心から偏っている3層システムと考えられる。
【0066】
図7に示す別の好ましい実施形態は、着色層(56)が実質的に中間膜(52)及び積層体(54)の中心にある型の遮光帯である。そのような変形例では、遮音層の2つの層(18a)及び(18b)が存在し、中間膜(52)が4層システム(A/B1/B2/C)になっている。
【0067】
遮光帯中間膜及び積層体の追加詳細については、例えば、US4316868、US8075983B2、及びUS7842395B2を参照することにより知ることができる。
【0068】
この場合も、これらの構成は単なる例示に過ぎず、以下の説明から、関連技術分野の当業者には多くの追加構成が明らかであろう。
【0069】
多層中間膜
B層−遮音制振層(複数可)
粘弾性体に正弦波形のひずみを加えたときの応力応答を複素弾性率と定義する。このとき、加えられるひずみの正弦波と応答として得られる応力の正弦波との間に位相のずれが生じ、この位相差をδで表す。また、複素弾性率は、複素数を用いた等式で表され、複素弾性率の実部は貯蔵弾性率、その虚部は損失弾性率と呼ばれる。特に、せん断モードで粘弾性体の動的粘弾性特性を測定する場合は、それぞれを、複素せん断弾性率、せん断貯蔵弾性率、及びせん断損失弾性率と呼ぶ。損失弾性率を貯蔵弾性率で除算して得られる値は、損失正接と呼ばれ、tanδで表される。このtanδの値が損失係数であり、ある温度での損失係数が高いほど、その温度における遮音性が高いことを意味する。
【0070】
2種類の粘弾性体からなる構造物におけるtanδの値を測定温度ごとにプロットすると、一般的に二峰性の曲線となる。低温側のピーク(極大点)は比較的軟質の粘弾性体由来のピークであり、高温側のピーク(極大点)は比較的硬質の粘弾性体由来のピークである。本実施形態では、低温側のピークがB層由来のピーク(ピークが複数ある場合、本ピークは高さが最大のものを意味する)であり、高温側のピークがスキン層由来のピークである。
【0071】
B層は、特定の熱可塑性エラストマー樹脂系のものである。B層に含まれる樹脂は、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を実施して測定したときのtanδが最大となるピークを約−40℃以上、または約−30℃以上、または約−20℃以上に有することが望ましい。加えて、B層に含まれる樹脂は、tanδが最大となるピークを約30℃以下、または約10℃以下、または約0℃以下に有することが望ましい。B層に含まれる樹脂のtanδが最大となるピークが約30℃以下である場合、広い温度範囲で優れた遮音性を発揮する。B層に含まれる樹脂のtanδが最大となるピークが約−40℃以上に存在する場合、B層のせん断貯蔵弾性率が適切な値であり、高周波数域での遮音性に優れている。
【0072】
具体的には、B層に含まれる樹脂のtanδは、以下の方法により測定することができる。JIS K 7244−10に準拠して、平行平板振動レオメーターとして、円板の直径が8mmである、ひずみ制御型動的粘度測定装置(Rheomix,ARES製)を使用する。B層の単層シート(厚さ0.76mm)を円板形状の試験シートとして使用する。シートを使用するまで温度20℃及び湿度60%RHで24時間貯蔵する。2枚の平板間の隙間に試験シートを完全に充填する。ひずみ量1.0%で、試験シートに周波数1Hzで振動を加え、−40℃から100℃まで1℃/分の定速で昇温する。せん断損失弾性率及びせん断貯蔵弾性率の測定値に変化がなくなるまで、試験シートと円板の温度を保つ。その後、B層のtanδのピーク高さ及びピーク温度を決定することができる。
【0073】
B層に含まれる樹脂のtanδが最大となるピークを約−40℃〜約30℃に調整する方法としては、例えば、ブロック共重合体(例えば、芳香族ビニル重合体ブロックと脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックを有するブロック共重合体)の総質量に対して、ハードセグメント(例えば、芳香族ビニル重合体ブロック)の含有量が約5質量%以上かつ約40質量%以下である熱可塑性エラストマーを使用する方法;例えば、共役ジエンブロックにおける分岐モノマーの含有比、1,4−結合、1,2−結合、及び3,4−結合の比率または水素添加率が適正範囲内に収まるようにソフトセグメントの構造を含む方法が例示される。
【0074】
分岐モノマーの含有比に関しては、例えば、ブタジエンとイソプレンとの共重合体の場合、共重合体中のイソプレン単位の含有比は、約20質量%以上、または約50質量%以上であることが好ましい。1,4−結合、1,2−結合、及び3,4−結合の比率に関しては、1,2−結合と3,4−結合の合計比が、1,4−結合、1,2−結合、及び3,4−結合の合計モル数に対して、約20モル%以上、または約30モル%以上、または約40モル%以上、または約50モル%以上であることが好ましい。水素添加率は、約60モル%以上、または約65モル%以上、または約70モル%以上、または約75モル%以上であることが好ましい。
【0075】
本発明に用いられるB層は、特定の樹脂のみから構成されていてもよく、または樹脂と他の成分とを含むものであってもよい。
【0076】
記載したように、本発明の中間膜はB層に熱可塑性エラストマーを含んでいる。一実施形態では、B層は、tanδのピーク温度(tanδが最大となるピークの温度)が互いに異なる2種以上の熱可塑性エラストマーを含んでいる。tanδのピーク温度と関連して特定温度付近では遮音性が高くなるため、熱可塑性エラストマーを含むB層に、tanδのピーク温度が互いに異なる2種以上の熱可塑性エラストマーを含んでいるという点で、より広い温度範囲にわたって遮音性を高めることができる。
【0077】
また、室温付近で適切な遮音特性を発揮させるためには、周波数1Hzの条件下での複素せん断粘弾性試験においてtanδのピーク温度を約0℃以下、または約−5℃以下、または約−10℃以下に調節することが好ましい。この場合、物理的または化学的架橋部位を有するエラストマーを使用することにより、合わせガラスが高温に露出された場合のガラスの偏差を抑制することができる。また、熱可塑性エラストマーをエラストマーとして使用することにより、共押出法による製膜を実施できるため特に好ましい。
【0078】
また、tanδのピーク温度が互いに異なる少なくとも2種の熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニルモノマーとビニルモノマーもしくは共役ジエンモノマーとの共重合体、または共重合体の水素添加物を含む、熱可塑性エラストマーが好ましい。芳香族ビニルモノマーとビニルモノマーもしくは共役ジエンモノマーとの共重合体、または共重合体の水素添加物は、適度な粘弾性を有する。そのため、このような熱可塑性エラストマーが中間膜に含まれていることから、適度な遮音性が発揮される。
【0079】
さらに、熱可塑性エラストマーを含むB層を内部層とし、接着層として機能するA層及びC層を最外層のそれぞれとして有する中間膜を形成することにより、ガラスとの接着性を向上させつつ遮音性を向上させた合わせガラス用中間膜を提供することができる。
【0080】
上記に加えて、熱可塑性エラストマーを含むB層に含まれる、tanδのピーク温度が互いに異なる2種以上の熱可塑性エラストマーに関しては、tanδのピーク温度の差が、約5℃以上、または約10℃以上、または約15℃以上であることが好ましい。tanδのピーク温度の差が約5℃未満の場合、損失係数が約0.2以上である温度範囲の幅が狭くなるため、広い温度範囲にわたる遮音性を発揮しにくい傾向がある。
【0081】
さらに、本発明の中間膜では、熱可塑性エラストマーを含むB層が2層以上からなる場合、少なくとも一方のB層に含まれる熱可塑性エラストマーのtanδのピーク温度と、他方のB層に含まれる熱可塑性エラストマーのtanδのピーク温度との差が、約5℃以上、または約10℃以上、または約15℃以上であることが好ましい。少なくとも2つのB層に含まれる熱可塑性エラストマー間のtanδのピーク温度の差が約5℃未満の場合、損失係数が約0.2以上である温度範囲の幅が狭くなるため、広い温度範囲にわたる遮音性を発揮しにくい傾向がある。
【0082】
本発明に使用されるB層では、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を実施して測定したときのtanδの少なくとも1つのピーク高さが、約0.5以上、または約0.75以上、または約0.8以上であることが好ましい。また、遮音性をさらに向上させるという観点から、B層では、tanδが最大となるピーク高さが、約1.0以上、または約1.3以上、または約1.5以上であることが好ましい。B層において、tanδのピーク高さが約0.5未満である場合、得られる合わせガラス用中間膜の遮音性が低下する傾向がある。
【0083】
B層に含まれる樹脂のtanδのピーク高さを約0.5以上に調節する方法としては、例えば、ブロック共重合体(例えば、芳香族ビニル重合体ブロックと脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックを有するブロック共重合体)の総量に対して、ハードセグメント(例えば、芳香族ビニル重合体ブロック)の含有量が約40質量%以下、または約30質量%以下である熱可塑性エラストマーを使用する方法;直鎖ジエン(例えばブタジエン)と分岐状ジエン(イソプレン)とを共重合する際の分岐状ジエン(例えば、イソプレン)成分の比率が約10質量%以上、または約30質量%以上であるソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーを使用する方法;ジエンモノマー中の1,4−結合の含有量と1,2−結合の含有量の合計に対して、1,2−結合の含有比が、約20モル%以上、または約40モル%以上であるソフトセグメントを有する熱可塑性エラストマーを使用する方法;そのほか、ハードセグメントまたはソフトセグメントを構成するモノマーの種類、ポリマーの結合及び架橋、それぞれのセグメント自体のガラス転移温度などを調整する方法などが例示される。
【0084】
また、遮音性をさらに向上させるという観点から、B層に含まれる樹脂のガラス転移温度が、約10℃以下、または約−5℃以下であることが好ましい。B層に含まれる樹脂のガラス転移温度の下限は特に限定されないが、B層に含まれる樹脂のガラス転移温度が、約−50℃以上、または約−40℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度の測定方法としては、示差走査熱量測定法(DSC)を採用することができる。
【0085】
遮音性の経時的な変化が少ない合わせガラスを作製する、または広い温度範囲で優れた遮音性を有する積層体を作製するという観点から、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzで複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、本発明に使用されるB層(またはB層に含まれる樹脂)のせん断貯蔵弾性率は、温度25℃で、約0.1MPa以上、または約0.2MPa以上、または約0.3MPa以上であることが好ましい。また、上記の観点から、B層のせん断貯蔵弾性率は、約5.0MPa以下、または約4.0MPa以下、または約3.0MPa以下、または約1.0MPa以下、または約0.8MPa以下、または約0.6MPa以下であることが好ましい。A層のせん断貯蔵弾性率が約0.1MPa未満である場合、積層体の製造時に取り扱い性を損なったり、膜厚むらが発生したりする懸念がある。また、B層のせん断貯蔵弾性率が約5.0MPaを超えると、合わせガラス用中間膜としての制振性能が低くなり、それにより遮音膜としての機能が低下する傾向がある。
【0086】
せん断貯蔵弾性率が約0.1MPa以上かつ約5.0MPa以下であるB層は、例えば、B層に含まれる樹脂として、ハードセグメントとソフトセグメントから構成される樹脂であり、ブロック共重合体として、ハードセグメントの含有量が約5質量%以上かつ約30質量%以下である熱可塑性エラストマーを選択することにより、ハードセグメント(例えば、芳香族ビニル重合体ブロック)の含有量を調整する方法;あるいは、ハードセグメントまたはソフトセグメントを構成するモノマーの種類、ポリマーの結合及び架橋、それぞれのセグメント自体のガラス転移温度などを調整する方法によって得ることができる。
【0087】
さらに、コインシデンス現象に起因する高周波数域での遮音性能の低下が抑制された、遮音性に優れる合わせガラスを作製するという観点から、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzで複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、本発明に使用されるB層(またはB層に含まれる樹脂)のせん断貯蔵弾性率は、温度25℃で、約0.6MPa以上、または約0.8MPa以上、または約1.0MPa以上であることが好ましい。また、上記の観点から、B層のせん断貯蔵弾性率は、約3.0MPa以下、または約2.0MPa以下、または約1.5MPa以下であることが好ましい。B層のせん断貯蔵弾性率が約0.6MPa未満である場合、積層体の剛性が低下する傾向がある。また、B層のせん断貯蔵弾性率が約3.0MPaを超えると、成形性または取り扱い性が低下する傾向がある。
【0088】
せん断貯蔵弾性率が約0.6MPa以上かつ約3.0MPa以下であるB層は、例えば、ブロック共重合体(例えば、芳香族ビニル重合体ブロックと脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックとを有するブロック共重合体)を、B層を構成する樹脂組成に含有される樹脂として使用し、ハードセグメント(例えば、芳香族ビニル重合体ブロック)の含有量が総量に対して約14質量%以上かつ約40質量%以下である熱可塑性エラストマーを使用することにより、ハードセグメントの含有量を調整する方法;あるいは、ハードセグメントまたはソフトセグメントを構成するモノマーの種類、ポリマーの結合及び架橋、それぞれのセグメント自体のガラス転移温度などを調整する方法によって得ることができる。
【0089】
せん断貯蔵弾性率は、物体に対する外力とひずみにより生じたエネルギーのうち、物体の内部に保存される成分の指標であり、ひずみ制御型動的粘弾性測定装置における測定温度の等速昇温下での動的弾性率と温度との関係から求めることができる。
【0090】
せん断貯蔵弾性率の測定条件は適宜、設定することができるが、例えば、周波数を1Hz及び温度を−40℃〜100℃に設定して測定を実施することができる。JIS K 7244−10の試験方式には、応力制御方式とひずみ制御方式がある。
【0091】
JIS K 7244−10では、試験装置に平行平板振動レオメーターを使用することができる。平行平板振動レオメーターは、2枚の同軸で剛性の平行円板で構成される。試験シートを円板の間に置き、円板の一方を固定し、他方を一定周波数で振動させることにより、せん断損失弾性率やせん断貯蔵弾性率などの動的粘弾性特性を測定することができる。
【0092】
円板の直径は一般に20mm以上かつ50mm以下であり、試験シートの厚さは、円板間の距離で規定される。測定誤差を最小にするためには、約3g以上かつ5g以下の試験シートを用い、試験シートの厚さが0.5mm以上かつ3mm以下の範囲に収まることが望ましい。また、円板の直径と試験シートの厚さとの比が10以上かつ50以下の範囲にあることが望ましい。試験シートは、射出成形、圧縮成形、またはシートからの切り出しによって円板形状にする。そのほかに、ペレット、液体、または溶融ポリマーを円板の間に充填してもよい。また、試験シートを2枚の平板間の隙間に完全に充填する。
【0093】
ひずみ制御方式では、一定の角周波数で正弦波変位を加え、結果として発生する正弦波トルクと、トルク−角度変位間の位相差とを測定する。トルク測定装置を一方の平板に接続し、試験シートを変形させるのに必要なトルクを測定する。角度変位測定装置を可動側の平板に接続し、角度変位及び周波数を測定する。試験シートに一定の周波数で正弦波のトルクまたは角度変位のいずれかを与え、測定したトルクと変位、及び試験シート寸法から、せん断損失弾性率及びせん断貯蔵弾性率を決定する。
【0094】
加えて、試験装置を試験温度まで加熱することにより、試験装置を熱平衡状態にさせる必要がある。試験温度は、温度計を固定側の円板に接触させるか、または温度計を固定側の円板に埋め込むことにより測定することが望ましい。加熱は、強制対流、高周波加熱、または適切な方法によって行う。試験装置がせん断損失弾性率及びせん断貯蔵弾性率の測定値に変化がなくなるような試験温度で熱平衡状態に達するまで、十分に試験シートと円板とを保持する。平衡時間は15分以上かつ30分以下であることが望ましい。
【0095】
成形性と遮音性とを互いに両立させるという観点から、B層に使用される樹脂は熱可塑性エラストマー(単に「エラストマー」と呼ぶ場合もある)である。好適な熱可塑性エラストマーの例としては、ポリスチレン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリブタジエン、ポリイソプレン/ハードセグメント:ポリスチレン)、ポリオレフィン系エラストマー(ソフトセグメント:エチレンプロピレンゴム/ハードセグメント:ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリ塩化ビニル/ハードセグメント:ポリ塩化ビニル)、ポリウレタン系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル、ポリエステル、またはポリカーボネート/ハードセグメント:ポリウレタン)、ポリエステル系エラストマー(ソフトセグメント:脂肪族ポリエステル/ハードセグメント:芳香族ポリエステル)、ポリエーテルエステル系エラストマー(ソフトセグメント:ポリエーテル/ハードセグメント:ポリエステル)、ポリアミド系エラストマー(ソフトセグメント:ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステル、またはポリエーテル/ハードセグメント:ポリアミド(ナイロン樹脂など))、ポリブタジエン系エラストマー(ソフトセグメント:非晶質ブチルゴム/ハードセグメント:シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン樹脂)、アクリルエラストマー(ソフトセグメント:ポリアクリル酸エステル/ハードセグメント:ポリメタクリル酸メチル)が挙げられる。なお、上記熱可塑性エラストマー類は単独で用いても、その2種以上を併用してもよい。
【0096】
熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約10質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上であることが好ましい。ハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約40質量%以下、または約30質量%以下、または約20質量%以下であることが好ましい。ハードセグメントの含有量が約5質量%未満である場合、B層の成形が困難になる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、あるいは高周波数域での遮音性が低下するといった傾向がある。ハードセグメントの含有量が約40質量%を超えると、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくい、遮音性能の安定性が低下する、あるいは室温付近の遮音特性が低下するといった傾向がある。
【0097】
熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約80質量%以上であることが好ましい。ソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマーの総量に対して、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下であることが好ましい。ソフトセグメントの含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくい傾向がある。ソフトセグメントの含有量が約95質量%を超えると、B層の成形が困難になる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、あるいは高周波数域での遮音性が低下するといった傾向がある。本明細書では、複数の熱可塑性エラストマーを混合する場合、熱可塑性エラストマー中のハードセグメントとソフトセグメントの含有量はそれぞれ、混合物の平均値であるとみなされる。
【0098】
成形性と遮音性とを互いに両立させるという観点から、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体を熱可塑性エラストマーとして使用することがより好ましい。さらに、遮音性をさらに向上させるという観点から、ポリスチレン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0099】
また、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムなどの架橋ゴムを熱可塑性エラストマーとして使用してもよい。
【0100】
熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニルモノマーとビニルモノマーもしくは共役ジエンモノマーとの共重合体、または共重合体の水素添加物であることが好ましい。共重合体は、遮音性を発揮するゴムとしての機能とプラスチックとしての機能とを互いに両立させるという観点から、芳香族ビニル重合体ブロックと脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックとを有するブロック共重合体、例えばポリスチレン系エラストマーであることが好ましい。
【0101】
芳香族ビニル重合体ブロックとビニル重合体ブロックまたは共役ジエン重合体ブロックとを有する共重合体、例えば、芳香族ビニル重合体ブロックと脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックとを有するブロック共重合体を熱可塑性エラストマーとして使用する場合、これらの重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直鎖状の結合形態、分岐状の結合状態、放射状の結合形態、及びこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよい。その中でも直鎖状の結合形態が好ましい。
【0102】
芳香族ビニル重合体ブロックを「a」で、脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックを「b」で表したとき、直鎖状の結合形態の例としては、a−bで表されるジブロック共重合体、a−b−aまたはb−a−bで表されるトリブロック共重合体、a−b−a−bで表されるテトラブロック共重合体、a−b−a−b−aまたはb−a−b−a−bで表されるペンタブロック共重合体、(a−b)X型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、及びこれらの混合物が挙げられる。その中でも、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体が好ましく、トリブロック共重合体は、a−b−aで表されるトリブロック共重合体であることがより好ましい。
【0103】
ブロック共重合体における芳香族ビニルモノマー単位及び脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の合計量は、全モノマー単位に対して、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上であることが好ましい。なお、ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックは、一部またはすべてが水素添加されていてもよい。
【0104】
ブロック共重合体中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロック共重合体の全モノマー単位に対して、約5質量%以上、または約7質量%以上、または約8質量%以上、または約14質量%以上、または約16質量%以上、または約18質量%以上であることが好ましい。芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロック共重合体の全モノマー単位に対して、約40質量%以下、または約30質量%以下、または約25質量%以下、または約20質量%以下であることが好ましい。
【0105】
ブロック共重合体中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約5質量%未満である場合、A層の成形が困難になる、熱によるガラスの偏向が生じる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、あるいは高周波数域での遮音性が低下するといった傾向がある。ブロック共重合体中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量が約40質量%を超えると、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくい、あるいは遮音性能の安定性が低下するといった傾向がある。
【0106】
ブロック共重合体中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は、ブロック共重合体を合成する際の各モノマーの仕込み比、またはブロック共重合体のH−NMRなどの測定結果から求めることができる。本明細書の実施例では、モノマー種の割合をH−NMRの測定結果から求め、各モノマーの割合を質量%で記載した。本明細書では、複数のブロック共重合体を混合する場合、ブロック共重合体中の芳香族ビニルモノマー単位の含有量は混合物の平均値であるとみなされる。
【0107】
芳香族ビニル重合体ブロック中には、少量であれば、芳香族ビニルモノマー以外のモノマーが共重合されていてもよい。芳香族ビニル重合体ブロック中の芳香族ビニルモノマー単位の割合は、芳香族ビニル重合体ブロック中の全モノマー単位に対して、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上であることが好ましい。
【0108】
芳香族ビニル重合体ブロックを構成する芳香族ビニルモノマーの例としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、及び4−ドデシルスチレンなどのアルキルスチレン;2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、及び2−ビニルナフタレンなどのアリールスチレン;ハロゲン化スチレン;アルコキシスチレン;ビニル安息香酸エステルなどが挙げられる。これらの芳香族ビニルモノマーは単独で用いても、その2種以上を併用してもよい。
【0109】
ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロック共重合体の全モノマー単位に対して、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約75質量%以上、または約80質量%以上であることが好ましい。ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロック共重合体の全モノマー単位に対して、約95質量%以下、または約92質量%以下、または約90質量%以下、または約88質量%以下、または約86質量%以下、または約84質量%以下、または約82質量%以下であることが好ましい。
【0110】
ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくい、あるいは遮音性能の安定性が低下するといった傾向がある。ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量が約95質量%を超えると、B層の成形が困難になる、tanδのピーク高さが低くなる、積層体の曲げ剛性が小さくなる、あるいは高周波数域での遮音性が低下するといった傾向がある。
【0111】
ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は、ブロック共重合体を合成する際の各モノマーの仕込み比、またはブロック共重合体のH−NMRなどの測定結果から求めることができる。本明細書の実施例では、モノマー種の割合をH−NMRの測定結果から求め、各モノマーの割合を質量%で記載した。本明細書では、複数のブロック共重合体を混合する場合、ブロック共重合体中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の含有量は混合物の平均値であるとみなされる。
【0112】
脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロック中には、少量であれば、脂肪族不飽和炭化水素ビニルモノマー以外のモノマーが共重合されていてもよい。脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロック中の脂肪族不飽和炭化水素モノマー単位の割合は、脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロック中の全モノマー単位に対して、約80質量%以上、または約95質量%以上、または約98質量%以上であることが好ましい。
【0113】
脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックを構成する脂肪族不飽和炭化水素モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6−フェニル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン、2−フルオロプロペン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、3−フルオロプロペン、トリフルオロエチレン、3,4−ジクロロ−1−ブテン、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、アセチレンなどが挙げられる。これらの脂肪族不飽和炭化水素モノマーは単独で用いても、その2種以上を併用してもよい。
【0114】
脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、入手しやすさ及び取り扱い性の観点から、2個以上の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素、または4個以上の炭素原子を有する脂肪族炭化水素であることが好ましく、12個以下の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素、または8個以下の炭素原子を有する脂肪族炭化水素であることが好ましい。その中でも、ブタジエン、イソプレン、及びブタジエンとイソプレンとの組み合わせが好ましい。
【0115】
また、脂肪族不飽和炭化水素モノマーは、入手しやすさ及び取り扱い性、ならびに合成のしやすさの観点から、共役ジエンが好ましい。熱安定性を向上させる観点から、脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックの構成単位として共役ジエンを使用する場合は、その一部または全部を水素添加して得られる水素添加物であることが好ましい。その際の水素添加率は、80%以上、または90%以上であることが好ましい。本明細書で称する場合、水素添加率とは、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
【0116】
ブロック共重合体の重量平均分子量は、機械的特性及び成形加工性の観点から、約30,000以上、または約50,000以上であることが好ましく、約400,000以下、または約300,000以下であることが好ましい。ブロック共重合体の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、約1.0以上であることが好ましく、約2.0以下、または約1.5以下であることが好ましい。本明細書では、重量平均分子量とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定によって求められるポリスチレン換算の重量平均分子量を指し、数平均分子量とは、GPC測定によって求められるポリスチレン換算の数平均分子量を指す。
【0117】
ブロック共重合体の製造方法は特に限定されないが、ブロック共重合体は、例えばアニオン重合法、カチオン重合法、ラジカル重合法などにより製造することができる。例えばアニオン重合の場合、その具体例として、
(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として使用し、芳香族ビニルモノマー、共役ジエンモノマー、次いで芳香族ビニルモノマーを逐次重合させる方法;
(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として使用し、芳香族ビニルモノマー及び共役ジエンモノマーを逐次重合し、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;
(iii)ジリチウム化合物を開始剤として使用し、共役ジエンモノマー、次いで芳香族ビニルモノマーを逐次重合させる方法などが挙げられる。
【0118】
脂肪族不飽和炭化水素モノマーとして共役ジエンを使用する場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を添加することによって、熱可塑性エラストマーの1,2−結合量及び3,4−結合量を増やすことができ、また有機ルイス塩基の添加量によって、熱可塑性エラストマーの1,2−結合量及び3,4−結合量を容易に制御することができる。結合量を制御することにより、tanδのピーク温度またはピーク高さを調節することができる。
【0119】
有機ルイス塩基の例としては、酢酸エチルなどのエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、及びN−メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、及びジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
【0120】
非水素添加ポリスチレン系エラストマーに水素添加反応を施す場合、得られた非水素添加ポリスチレン系エラストマーを水素添加触媒に対して不活性な溶媒に溶解させるか、または非水素添加ポリスチレン系エラストマーを反応液から単離せずにそのまま使用して、水素添加触媒の存在下で水素と反応させることにより水素添加反応を行うことができる。水素添加率は、約60%以上、または約80%以上、または約90%以上であることが好ましい。
【0121】
水素添加触媒の例としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、及び/またはNiなどの金属を炭素、アルミナ及び/または珪藻土などの担体に担持した不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物及び/またはアルキルリチウム化合物との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒などが挙げられる。水素添加反応は一般に、水素圧約0.1MPa以上かつ約20MPa以下、及び反応温度約20℃以上かつ約250℃以下の条件下で、約0.1時間以上かつ100時間以下の反応時間の間、行うことができる。
【0122】
好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントブロックが島成分として含まれ、ソフトセグメントブロックが海成分として含まれる海島相分離構造を有する。合わせガラス用中間膜に用いられる層では、島成分の相分離サイズが増加することがあり、その結果、合わせガラスの製造時に合わせガラス用中間膜が収縮したり、合わせガラスのヘイズが減少したりすることが見出されている。また、特定の構造を有する合わせガラス用中間膜を使用した合わせガラスは、薄板化しても優れた遮音性を有し、また収縮率も低いことが見出されている。
【0123】
より具体的には、本実施形態では、熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックを含み、B層は、ハードセグメントブロックが島成分として含まれ、ソフトセグメントブロックが海成分として含まれる海島相分離構造を有し、小角X線散乱測定によってA層に関して得たハードセグメントブロックまたはソフトセグメントブロックによる周期的散乱または干渉性散乱の方位角強度分布において強度が最大になる方位角を含む、180°の任意の方位角範囲における最大強度値及び最小強度値に基づいて配向度(1)が以下の式(i)で定義されるとき、配向度(1)が約0.9以下である。
【0124】
配向度(1)=(最大強度値−最小強度値)/(最大強度値+最小強度値) (i)
以下の式(ii)で定義される配向度(2)は、約10以下であることが好ましい。
【0125】
配向度(2)=最大強度値/最小強度値 (ii)
B層と実質的に平行な面に沿ってB層の厚さ方向の中心領域をスライスすることによって得られた切片面上の任意の5箇所で、200nm×200nm範囲の領域を原子間力顕微鏡で観察して得られる各相画像において、ほぼ楕円形状またはほぼ連続線形状を有する島成分から、長軸サイズが最も大きい島成分を選択したとき、選択された島成分の長軸サイズの平均値が約100nm以下であることも好ましい。
【0126】
好適な熱可塑性エラストマーの具体例は、例えば、US2010239802A1を参照することにより知ることができる。
【0127】
ある好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物単位から主として構成される重合体ブロック(A)と、1,3−ブタジエン単位から主として構成される、またはイソプレン単位及び1,3−ブタジエン単位から主として構成される重合体ブロック(B)を少なくとも含むブロック共重合体を水素添加することにより形成される水素添加ブロック共重合体であり、その場合、重合体ブロック(A)の含有量は、水素添加ブロック共重合体の総量を基準として、約5質量%〜約40質量%であり、重合体ブロック(B)の水素添加率は約70%以上であり、水素添加ブロック共重合体のガラス転移温度は約−45℃〜約30℃である。
【0128】
別の好ましい実施形態では、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル化合物単位から主として構成される重合体ブロック(C)と、1,3−ブタジエン単位から主として構成される、またはイソプレン単位及び1,3−ブタジエン単位から主として構成される重合体ブロック(D)を少なくとも含むブロック共重合体を水素添加することにより形成される水素添加ブロック共重合体であり、その場合、重合体ブロック(C)の含有量は、水素添加ブロック共重合体の総量を基準として、約10質量%〜約40質量%であり、重合体ブロック(D)の水素添加率は約80%以上であり、水素添加ブロック共重合体のガラス転移温度は約−45℃未満である。
【0129】
上記2つの好ましい実施形態では、芳香族ビニル化合物はスチレンであり、及び/または重合体ブロック(B)及び(D)は、イソプレン単位及び1,3−ブタジエン単位から主として構成され、及び/または水素添加ブロック共重合体は、A1−B−A2型またはC1−D−C2型の構造を有するトリブロック共重合体であることが望ましい。
【0130】
B層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱剤、接着改質剤など、またはそれらの混合物を必要に応じて他の成分として添加してもよい。酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び接着改質剤の例としては、後述するB層に含有されるものが挙げられる。
【0131】
例えば、無機遮熱性微粒子または遮熱化合物を遮熱材としてB層に配合して、積層体に遮熱機能を付与し、それによって合わせガラスを作製する場合、波長1,500nmでの透過率を約50%以下に調節することができる。遮熱材の詳細については後述する。
【0132】
B層に熱可塑性エラストマー以外の成分を含有させる場合、B層を構成する熱可塑性エラストマーを含む組成物において、熱可塑性エラストマー成分の含有量が、約60質量%以上、または約70質量%以上、または約80質量%以上、または約90質量%以上、または約95質量%以上であることが好ましい。B層中の熱可塑性エラストマーの含有量が約60質量%未満である場合、熱可塑性エラストマーとしての特性が発揮されにくい、あるいは光学特性が損なわれるといった傾向がある。
【0133】
有利な点として、B層の熱可塑性エラストマーに可塑剤が不要であり、上記のような可塑剤の移動という不都合が回避される。そのような場合、B層は実質的に可塑剤を含まない(本質的に樹脂用の可塑剤を含まない)とみなされる。
【0134】
本発明の中間膜では、中間膜の総質量を基準として、約5質量%以上、または約10質量%以上、または約13質量%以上の量で熱可塑性エラストマーが含有されていることが好ましい。中間膜中の熱可塑性エラストマーの含有量が約5質量%未満である場合、遮音性が低下する傾向がある。
【0135】
スキン層
本発明の中間膜に使用されるスキン層では、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzで複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、せん断貯蔵弾性率が、温度25℃で、約1MPa以上、及び/または約2MPa以上であることが好ましい。温度25℃でのせん断貯蔵弾性率が約1MPa未満である場合、スキン層の粘着性が増加し、合わせガラスの製造工程において加工時間枠が低下する傾向がある。
【0136】
さらに、ガラスの薄板化(軽量化)に伴う合わせガラスの強度低下を補う必要がある場合には、温度25℃でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上であることが好ましい。例えば、25℃でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上であるスキン層を最外層として使用することにより、取り扱い性に優れた中間膜を得ることができる。温度25℃でのせん断貯蔵弾性率は、約12.0MPa以上、または約20.0MPa以上、または約40.0MPa以上、または約60.0MPa以上、または約80.0MPa以上であることが好ましい。上記条件下でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa未満である場合、好適なせん断貯蔵弾性率及び最大損失係数を維持できず、合わせガラス用中間膜の遮音性または曲げ剛性が低下する傾向がある。せん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上のスキン層は、例えば、ポリビニルアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂100質量部を基準として、可塑剤の量を約50質量部以下に調節することにより得ることができる。また、25℃でのせん断貯蔵弾性率の上限は特に限定されないが、積層体の成形性及び取り扱い性の観点から、約900MPa以下であることが好ましい。
【0137】
本発明の中間膜において最外層として機能するスキン層は、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び接着性官能基を含むポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。これらの熱可塑性樹脂の一般的な説明及び例は、PCT/JP2015/81664、PCT/JP2015/81665、PCT/JP2015/81666、PCT/JP2015/81667、及びPCT/JP2015/81668に先に組み込まれている内容を参照することにより知ることができる。
【0138】
スキン層が上記熱可塑性樹脂を含有する組成物で構成されている場合、合わせガラス用中間膜の耐候性または強度を向上させることができるか、あるいは得られる合わせガラスの曲げ強度または耐貫通性を向上させることができる。
【0139】
また、本発明のスキン層に関して、長さ300mm、幅25mm、及び厚さ1.9mmの2枚のフロートガラスの間に本発明の積層体を挟む際、中央加振法により20℃で測定したとき、4次共振周波数での損失係数が約0.2以上であり、かつ、ISO 16940(2008)に準拠して計算したとき、4次共振周波数での曲げ剛性が約150N・m以上であるように積層体を選択する。このような規定を満たす樹脂は特に限定されないが、その例として上記熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0140】
さらに、本発明のスキン層に使用される樹脂は、ガラスとの接着性を有する樹脂を含むことが好ましい。そのような特性を有する樹脂は特に限定されないが、その例として上記熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0141】
スキン層A及びCに、ポリビニルアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂以外の成分として、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着改質剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱剤(例えば、それぞれ赤外線吸収能を有する無機遮熱性微粒子または有機遮熱性材料)などを必要に応じて添加してもよい。そのような添加剤を以下でさらに詳細に記載する。
【0142】
有利な点として、アイオノマーを使用する場合、可塑剤が不要であり、上述のような可塑剤の移動という不都合が回避される。そのような場合、スキン層A及び/またはCは実質的に可塑剤を含まない(本質的に樹脂用の可塑剤を含まない)とみなされる。加えて遮音層Bにも可塑剤が含まれない場合、中間膜全体が実質的に可塑剤を含まない(本質的に中間膜用の可塑剤を含まない)ものであり得る。
【0143】
ターポリマーアイオノマー
上記のように、スキン層A及びスキン層Cの少なくとも一方(及び好ましくは両方)は、特定の種類のターポリマーアイオノマーであり、好ましくは以下の共重合単位で構成される少なくとも部分的に中和されたエチレン酸共重合体である:
(i)エチレン、
(ii)約10wt%から、または約15wt%から、または約18wt%から、または約20wt%から、約30wt%まで、または約25wt%まで、または約23wt%まで、または約22wt%までの、3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸、
(iii)約2wt%から、または約3wt%から、または約4wt%から、または約5wt%から、約15wt%まで、または約12wt%まで、または約11wt%まで、または約10wt%までの、3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸、及び
(iv)場合により、(iii)+(iv)が約15wt%以下、または約12wt%以下、または約11wt%以下となるような量の(iii)以外のα,β−不飽和カルボン酸の誘導体。
【0144】
ただし、共重合単位の重量パーセントはエチレン酸共重合体の総重量を基準とし、共重合単位の総重量パーセンが100wt%であり、α,β−不飽和カルボン酸のカルボン酸基の少なくとも一部が中和されて、対イオンを有するカルボキシレート基を含むアイオノマーを形成する。
【0145】
このようなアイオノマーは一般に、WO2015/199750A1及びWO2014/100313A1に開示されている。
【0146】
好適な第1のα,β−エチレン不飽和酸コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びそれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある好ましい共重合体では、このα,β−エチレン不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの2つ以上の混合物から選択される。別の好ましい共重合体では、このα,β−エチレン不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
【0147】
エチレン酸共重合体は、α、β−エチレン不飽和カルボン酸エステルなどの1種以上の追加のコモノマー(複数可)の共重合単位をさらに含む。炭素数3〜10、または好ましくは3〜8のアルキルエステルが好ましい。不飽和カルボン酸の好ましいエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ウンデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジメチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びそれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある好ましい共重合体では、好適な追加コモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、及びそれらの2つ以上の混合物から選択される。より好ましい実施形態では、好適な追加のコモノマーは、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、及びメタクリル酸イソブチルのうち1つ以上であり、さらにより好ましくはアクリル酸n−ブチル及びアクリル酸イソブチルのいずれかまたは両方である。
【0148】
好適なエチレン酸共重合体は、ASTM法D1238−89に準拠して190℃及び2.16kgで測定したとき、メルトフローレート(MFR)が、約1g/10分から、または約2g/10分から、約4000g/10分まで、または1000g/10分まで、または約400g/10分までである。
【0149】
最後に、好適なエチレン酸共重合体は、例えば、US3404134、US5028674、US6500888、US6518365、US8334033、またはUS8399096に記載されているように合成することができる。一実施形態では、US8399096に記載された方法を使用し、第2のα,β−エチレン不飽和カルボン酸の誘導体が十分に高水準の相補量で反応混合物中に存在する。
【0150】
アイオノマーを得るには、エチレン酸共重合体を1種以上の塩基との反応によって部分的に中和する。エチレン酸共重合体を中和するための好適な手順の例は、US3404134及びUS6518365に記載されている。中和後、エチレン酸共重合体中に存在するカルボン酸基の水素原子の約1%または約10%または約15%または約20%〜約90%または約60%または約55%または約30%が他のカチオンで置換されている。それに代わる表現として、エチレン酸共重合体中に存在するカルボン酸基の総含有量の約1%または約10%または約15%または約20%〜約90%または約60%または約55%または約30%が中和されている。それに代わる別の表現として、中和されていないエチレン酸共重合体について計算または測定したときのエチレン酸共重合体中に存在するカルボン酸基の総含有量を基準にして、約1%または約10%または約15%または約20%〜約90%または約60%または約55%または約30%のレベルでカルボン酸基が中和されている。中和レベルは具体的な最終用途に合わせて調整することができる。
【0151】
アイオノマーは、カルボン酸アニオンに対する対イオンとしてカチオンを含む。好適なカチオンとして、アイオノマー組成物が合成され、加工され、使用される状況下で安定である任意の正荷電種が挙げられる。好適なカチオンを2つ以上組み合わせて使用してもよい。いくつかの好ましいアイオノマーでは、カチオンは金属カチオンであり、これは一価、二価、三価、または多価であり得る。有用な一価金属カチオンとして、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀、水銀、銅などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な二価金属カチオンとして、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、銅、カドミウム、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な三価金属カチオンとして、アルミニウム、スカンジウム、鉄、イットリウムなどのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な多価金属カチオンとして、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、タングステン、クロム、セリウム、鉄などのカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。金属カチオンが多価である場合、US3404134に記載されているように、ステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、及びフェノール酸のラジカルなどの錯化剤が含まれていてもよい。別の好ましい組成物では、使用される金属カチオンは、一価または二価の金属カチオンである。好ましい金属カチオンは、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛、カリウム、及びそれらの金属カチオンの1つ以上の組み合わせである。より好ましい組成物では、カチオンは、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、亜鉛カチオン、及びそれらの組み合わせである。
【0152】
得られた中和アイオノマーは、ASTM法D1238−89に準拠して190℃及び2.16kgで測定したとき、対応するエチレン酸共重合体よりも低いメルトインデックスを有する。アイオノマーのメルトインデックスは、エチレン酸共重合体のメルトインデックス、共重合した酸の量、中和レベル、カチオンの同一性及びその価数を含む多くの要素に応じて変化する。さらに、アイオノマーのメルトインデックスの目標値を、その意図される最終用途によって決定してもよい。ただし、アイオノマーは、ASTM法D1238−89に準拠して190℃及び2.16kgで測定したとき、メルトインデックスが約1000g/10分以下、または約750g/10分以下、または約500g/10分以下、または約250g/10分以下、または約100g/10分以下、または約50g/10分以下、または約25g/10分以下、または約20g/10分以下、または約10g/10分以下、または約7.5g/10分以下であることが好ましい。
【0153】
添加剤
多層積層体の種々の層に典型的な添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着改質剤、及び遮熱材料(赤外線吸収剤)が挙げられる。
【0154】
酸化防止剤の例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。その中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0155】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート及び2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリル酸系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、及びトリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、及び2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基を含むフェノール系化合物などが挙げられる。
【0156】
リン系酸化防止剤の例としては、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸フェニルジイソデシル、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)、亜リン酸トリス(ジノニルフェニル)、亜リン酸トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチル)、亜リン酸トリス(シクロヘキシルフェニル)、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、及び10−デシルオキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12−C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12−C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などが挙げられる。そのうちモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0157】
硫黄系酸化防止剤の例としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0158】
これらの酸化防止剤は単独で用いても、その2種以上を併用してもよい。酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂/エラストマー100質量部を基準として、約0.001質量部以上または約0.01質量部以上であることがより好ましい。加えて、酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂/エラストマー100質量部を基準として、約5質量部以下または約1質量部以下であることが好ましい。酸化防止剤の量が約0.001質量部より少ないと、十分な効果を発揮しにくくなる懸念があり、対して約5質量部を超えても顕著な効果が期待できない。
【0159】
B層に使用する場合、酸化防止剤の面密度は、約0.1g/m以上、または約0.2g/m以上、または約0.5g/m以上であることが好ましい。B層中の酸化防止剤の面密度が約0.1g/m未満である場合、B層が酸化されやすくなり、合わせガラスを長期間使用した場合に、色差変化が大きくなることなどにより、耐候性が低下する傾向がある。
【0160】
B層の酸化防止剤の面密度は、約2.5g/m以下、または約2.0g/m以下、または約1.5g/m以下あることが好ましい。A層中の酸化防止剤の面密度が約2.5g/mを超えると、B層の色調が損なわれる傾向、または合わせガラスのヘイズが低下する傾向がある。
【0161】
また、紫外線吸収剤の例としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、及び2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)トリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸、及び4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸などの安息香酸系紫外線吸収剤などが挙げられる。このような紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂/エラストマーに対する質量比で、約10ppm以上、または約100ppm以上であることが好ましい。加えて、紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂/エラストマーに対する質量比で、約50,000ppm以下、または約10,000ppm以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の添加量が約10ppmより少ないと、十分な効果を発揮しにくくなる懸念があり、対して紫外線吸収剤の添加量が約50,000ppmを超えても顕著な効果が期待できない。これらの紫外線吸収剤は、その2種以上を併用することもできる。
【0162】
紫外線吸収剤がB層に含有されている場合、B層中の紫外線吸収剤の面密度(g/m)が、約0.1g/m以上、または約0.2g/m以上、または約0.5g/m以上であることが好ましい。B層中の紫外線吸収剤の面密度(g/m)が約0.1g/m以上になると、合わせガラスを作製する場合に、ヘイズが向上する傾向、耐候性が維持される傾向、または色差変化が抑制される傾向がある。
【0163】
紫外線吸収剤をB層に含有する場合、B層中の紫外線吸収剤の面密度(g/m)が、約10以下、または約9以下、または約8以下であることが好ましい。B層中の紫外線吸収剤の面密度(g/m)が約10を超えると、合わせガラスを作製する場合に、可視光線透過率が低下する傾向、ヘイズが悪化する傾向、耐候性が低下する傾向、または色差変化が大きくなる傾向がある。
【0164】
いくつかの実施形態では、2種類以上の紫外線吸収剤を併用することも可能である。
【0165】
他の実施形態では、紫外線吸収剤は添加されないか、または積層体が実質的に紫外線吸収剤を含まない。
【0166】
光安定剤の例としては、Adeka Corporation製の「ADEKA STAB LA−57」(商標名)、及びCiba Specialty Chemicals Inc.製の「TINUVIN 622」(商標名)などのヒンダードアミン系材料が挙げられる。
【0167】
加えて、得られた積層体のガラスへの接着性などを必要に応じて制御することも可能である。接着性を制御する方法としては、一般に、接着剤を添加して、合わせガラスの接着改質剤として使用する方法、接着性を改良するための各種添加剤を添加する方法などが挙げられる。このような方法により、接着改質剤及び/または接着性を改良するための各種接着剤を含有する合わせガラス用中間膜が得られる。
【0168】
接着改質剤としては、例えばWO03/033583A1に開示されているものを使用することができる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を使用することが好ましく、その例として、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどの塩が挙げられる。塩の例としては、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、及びギ酸などの有機酸の塩;塩酸及び硝酸などの無機酸の塩などが挙げられる。
【0169】
US2010/0108125A1及びUS2011/0105681A1に開示されているようなシランも、接着改質剤として使用することができる。一実施形態では、アイオノマーを熱可塑性樹脂として使用する場合、シランカップリング剤をA層及びC層に使用する。シランカップリング剤の例としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−ビニルベンジルプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシ−プロピル−トリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
シランカップリング剤は、アイオノマー組成物の総重量を基準にして、約0.01wt%または約0.05wt%〜約5wt%または約1wt%のレベルでアイオノマー組成物中に組み込むことが好ましい。
【0171】
官能基が、カルボキシル基及びカルボキシル基の誘導体基(以下、本明細書でカルボキシル基と呼ぶ)から選択される少なくとも1つの基である反応性官能基を含むオレフィンポリマー(以下、本明細書でカルボキシル基を含むオレフィンポリマーと呼ぶ)を接着改質剤として使用することができる。一実施形態では、反応性官能基を含むオレフィンポリマーをB層に使用する。
【0172】
好適なカルボキシル基を含むオレフィンポリマーは、カルボキシル基を含んでいるオレフィンポリマーであれば特に限定されないが、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素化合物、及び8〜12個の炭素原子を有する芳香族不飽和炭化水素化合物から選択される少なくとも1つの化合物のポリマー、またはその水素添加分子であり、カルボキシル基が分子鎖の末端または側鎖に含まれていることが好ましい。
【0173】
本発明に使用されるカルボキシル基を含むオレフィンポリマーを従来から既知の方法に従って作製して使用することができる。例えば、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族不飽和炭化水素化合物、及び8〜12個の炭素原子を有する芳香族不飽和炭化水素化合物から選択される少なくとも1つの化合物と、カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物との共重合、またはポリオレフィン、好ましくは炭素−炭素二重結合を有するポリオレフィンと、カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物とのグラフト重合により得ることができる。カルボキシル基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水テトラヒドロフタル酸のような不飽和カルボン酸及びその無水物;(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、及びマレイン酸ナトリウムのような不飽和カルボン酸塩;ならびに(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、及びマレイン酸ジメチルのような不飽和カルボン酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
カルボキシル基を含むオレフィンポリマーの好ましい例は、エチレン系ポリマーまたはプロピレン系ポリマーなどのポリオレフィンを無水マレイン酸を用いて変性(例えば、グラフト化)して得たものであり、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。例えば、US7989083B2を参照のこと。
【0175】
使用にあたって、B層中のカルボキシル基を含むオレフィンポリマーの量は、B層中のカルボキシル基の量が、原子換算で約1μeq/gから、または約2μeq/gから、または約3μeq/gから、約1500μeq/gまで、または約700μeq/gまで、または約500μeq/gまでであることが好ましいが、特に限定されない。カルボキシル基の量は、カルボキシル基に含まれるカルボニル基を考慮して算出した値を示す。カルボキシル基の量が約1μeq/g未満である場合、層間の接着性に改善がみられない場合がある。一方、カルボキシル基の量が約1500μeq/gを超えると、層間の接着性が(それより量が少ない場合と比較して)顕著に改善されないだけでなく、カルボキシル基を含むオレフィンポリマーの製造コストが上昇するほか、カルボキシル基を含むオレフィンポリマーと樹脂との相溶性が低下する場合がある。
【0176】
接着改質剤の至適添加量は、使用する添加剤によって異なるが、得られる積層体のガラスへの接着力が、パンメル試験(WO03/033583A1などに記載)において、一般に約3以上かつ約10以下になるように調整することが好ましい。特に、耐貫通性が求められる場合には、接着力が約3以上かつ約6以下となるように接着改質剤の添加量を調整することがより好ましく、一方、高いガラス飛散防止性が求められる場合には、接着力が約7以上かつ約10以下となるように接着改質剤の添加量を調整することがより好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合に、接着改質剤を添加しないことも有用な方法である。
【0177】
好適な遮熱材は以下で記載する。
【0178】
中間膜及び積層体
本発明の積層体は、上記の特性を有する少なくとも2つのスキン層AとCとの間に、上記の特性を有する1つ以上のB層が挟まれている中間膜からなる。このような構成にすることにより、遮音性、曲げ強度、剛性、及び光学特性、さらに望ましくは太陽熱遮蔽性にも優れた積層体をそのような中間膜から得ることができる。
【0179】
本発明の中間膜の製造方法は特に限定されないが、B層を構成する樹脂組成物を均一に混練した後に、既知の製膜方法、例えば、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスト法、及びインフレーション法によりB層を作製し、樹脂を用いて同様の方法でA層及びC層を作製して、これらの層をプレス成形などによって積層する方法、あるいはB層とA層及びC層、ならびに他の必要な層を共押出法により成形する方法によって中間膜を作製することもできる。
【0180】
既知の製膜方法の中でも、特に、共押出機を使用した中間膜の製造方法を採用することが適切である。押出時の樹脂温度は、約150℃以上、または約170℃以上であることが好ましい。加えて、押出時の樹脂温度は、約250℃以下、または約230℃以下であることが好ましい。樹脂温度が高すぎると、使用した樹脂が分解を引き起こし、それにより樹脂が劣化する懸念がある。逆に温度が低すぎると、押出機からの吐出が安定せず、その結果、機械トラブルが発生する。揮発性物質を効率的に除去するには、押出機の脱気口からの圧力量を下げることで揮発性物質を除去することが好ましい。
【0181】
本発明の中間膜では、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzの条件下で複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、せん断貯蔵弾性率が、温度25℃で、約1.3MPa以上、または約2.00MPa以上、または約3.00MPa以上であることが好ましい。上記条件下でのせん断貯蔵弾性率が約1.30MPa以上である場合、合わせガラス用中間膜を使用する際に曲げ強度が向上する。一方、合わせガラス用中間膜の外観をより良好にし、合わせガラスの製造を容易にする観点から、中間膜では、上記条件でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以下、または約8.00MPa以下、または約6.00MPa以下であることが好ましい。上記条件で測定したせん断貯蔵弾性率が約1.30MPa以上である中間膜は、例えば、tanδが最大となるピークが約−40℃〜約30℃の範囲内であるエラストマーを含有する組成物を含むB層と、温度25℃でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上である複数の層A/Cとを、B層が少なくともA及びCの2層の間に挟まれるように積層することにより得ることができる。
【0182】
本発明の中間膜では、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzの条件下で複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、せん断貯蔵弾性率が、温度50℃で、約1.3MPa以上、または約1.50MPa以上、または約2.00MPa以上であることが好ましい。上記のせん断貯蔵弾性率が約1.30MPa以上である場合、特に積層体の温度が50℃以上に上昇した場合でも、合わせガラス用中間膜を使用する際に曲げ強度が向上する。一方、外観をより良好にし、合わせガラスの製造を容易にする観点から、積層体では上記条件でのせん断貯蔵弾性率が約6.0MPa以下、または約4.00MPa以下、または約3.00MPa以下であることが好ましい。上記条件で測定したとき、温度50℃でのせん断貯蔵弾性率が約1.30MPa以上である積層体は、tanδが最大となるピークが約−40℃〜約30℃の範囲内であるエラストマーを含有する組成物を含むA層と、温度25℃でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上である複数のB層とを、A層が少なくとも2つのB層の間に挟まれるように積層することにより得ることができる。
【0183】
B層の膜厚は、約20μm以上、または約25μm以上、または約30μm以上、または約50μm以上、または約100μm以上であることが好ましい。加えて、B層の膜厚は、約500μm以下、または約400μm以下、または約300μm以下であることが好ましい。B層の膜厚が約20μm未満である場合、遮音性が低下する傾向があり、対してB層の膜厚が約400μmを超えると、合わせガラスを作製する場合に耐貫通性などの機械的特性が低下し、合わせガラスとしての安全性能が損なわれる傾向がある。本発明の積層体に複数のB層が含まれる場合、B層全体の厚さの合計が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0184】
AまたはC層の膜厚は、約100μm以上、または約150μm以上、または約200μm以上であることが好ましい。AまたはC層の膜厚は、約650μm以下、または約500μm以下、または約350μm以下、または約300μm以下であることが好ましい。AまたはC層の膜厚が約100μm未満である場合、積層体の曲げ剛性が小さくなり、高周波数域での遮音性が低下する傾向があり、対してAまたはC層の膜厚が約650μmを超えると、周波数域を問わず遮音性が低下したり、または遮音性能の経時的な変化が生じやすくなり、遮音性能の安定性が低下するといった傾向がある。
【0185】
A層とC層を組み合わせた厚さの合計は、約300μm以上、または約400μm以上、または約500μm以上、または約600μm以上であることが好ましい。A層とC層を組み合わせた厚さの合計は、約750μm以下、または約720μm以下、または約700μm以下であることが好ましい。A層とC層を組み合わせた厚さの合計が約300μm以上である場合、積層体の曲げ強度が大きくなる傾向があり、対してA層とC層を組み合わせた厚さの合計が約750μm以下である場合、成形性が向上し、その結果、得られる積層体をロール状に巻き取りやすくなる。
【0186】
スキン層(例えばA及びC)の厚さの合計に対する遮音層(複数可)(例えばB層)の厚さの合計の比((B層の厚さの合計)/(A+C層の厚さの合計))は、約1/1以下、または約1/2以下、または約1/3以下であることが好ましい。A+C層の厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比は、約1/30以上、または約1/15以上、または約1/6.5以上、または約1/5以上であることが好ましい。上記の比が約1/30より小さいと、積層体の遮音効果が小さくなる傾向がある。一方、上記の比が約1/1を超えると、積層体の曲げ剛性が小さくなる、高周波数域での遮音性が低下する、遮音性能の経時的な変化が生じやすくなり、遮音性能の安定性が低下する、または積層体のせん断貯蔵弾性率が低下し、積層体の曲げ強度が低下するといった傾向がある。
【0187】
例えば、B層に含有される熱可塑性エラストマーが1種類のみである場合(またはB層に2種類以上の熱可塑性エラストマーが含有されている場合でも、tanδのピーク温度の差が約5℃未満である熱可塑性エラストマーが使用されている場合)、熱可塑性エラストマー層のtanδのピーク温度が約−20℃以下であるとき、熱可塑性エラストマー層の膜厚が、約20μm以上または約30μm以上であることが好ましく、かつ、約120μm以下または約100μm以下であることが好ましい。熱可塑性エラストマーを含有するB層のtanδのピーク温度が約−20℃より高く、約−15℃以下である場合、熱可塑性エラストマーを含有するB層の膜厚が、約50μm以上または約70μm以上であることが好ましく、かつ、約200μm以下または約160μm以下であることが好ましい。熱可塑性エラストマーを含有するB層のtanδのピーク温度が約−15℃より高い場合、熱可塑性エラストマーを含有するB層の膜厚が、約80μm以上または約100μm以上であることが好ましく、かつ、約300μm以下または約260μm以下であることが好ましい。熱可塑性エラストマーを含有するB層の膜厚が好ましい範囲を外れると、室温での遮音性が低下する、または得られる合わせガラスの曲げ強度が低下するといった傾向がある。
【0188】
一般に、本発明の積層体は、B層がA層とC層との間に挟まれた積層構成を有している。積層体の積層構成は目的に応じて決定されるが、(A層)/(B層)/(C層)の積層構成に加え、(A層)/(B層)/(C層)/(B層)、(A層)/(B層)/(A層)/(B層)/(C層)、または(A層)/(B1層)/(B2層)/(C層)の積層構成であってもよい。積層体を(A層)/(B層)のように2層構成にすると、合わせガラス用中間膜の遮音性または曲げ強度が低下する傾向がある。
【0189】
A層、B層、及びC層以外の層(「D層」と呼ぶ)として、1つ以上の追加型の層を含めることもできる。例えば、(A層)/(B層)/(D層)/(C層)、(A層)/(B層)/(C層)/(D層)、(A層)/(D層)/(B層)/(D層)/(C層)、(A層)/(D層)/(B層)/(C層)/(D層)、(A層)/(B層)/(D層)/(C層)/(D層)、(D層)/(A層)/(B層)/(C層)/(D層)、(D層)/(A層)/(B層)/(D層)/(C層)/(D層)、(D層)/(A層)/(D層)/(B層)/(D層)/(C層)/(D層)などの積層構成を採用してもよい。また、上記の積層構成において、D層の各成分は互いに同一であっても異なっていてもよい。このことは、A層、B層、またはC層の成分にも当てはまる。
【0190】
積層体の膜厚の合計は、約320μm以上または約420μm以上であることが好ましい。加えて、積層体の膜厚の合計は、約1250μm以下または約1,000μm以下であることが好ましい。積層体の膜厚が薄すぎると、合わせガラスを作製する際に積層をうまく形成できない懸念がある。積層体の膜厚が厚すぎると、コストが上昇するため好ましくない。
【0191】
なお、D層として既知の樹脂からなる層が利用可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルのうちポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、硫化ポリフェニレン、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリビニルアセタール(例えばポリビニルブチラール)などを使用することができる。
【0192】
加えて、D層に、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材(例えば、それぞれ赤外線吸収能を有する、無機遮熱性微粒子、有機遮熱材)、及び/または接着促進剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0193】
例えば、遮熱材として遮熱性微粒子または遮熱化合物を本発明の積層体に配合し、積層体に遮熱機能を付与して合わせガラスを作製すると、波長1,500nmでの透過率を約50%以下に調節することができる。遮熱性微粒子は、必要に応じて、A層、B層、C層、及び/またはD層のいずれに含有されていてもよい。遮熱性微粒子は、一層のみに含有されていても、複数の層に含有されていてもよい。遮熱性微粒子を配合する場合には、光学的な凹凸を抑制する観点から、遮熱性微粒子を少なくとも1つのB層に含有させることが好ましい。遮熱性微粒子の例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)などの金属ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)などの金属ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などの金属ドープ酸化亜鉛、一般式MWO(Mは金属元素;mは約0.01以上かつ約1.0以下であり;nは約2.2以上かつ約3.0以下である)で表される金属元素複合酸化タングステン、アンチモン酸亜鉛(ZnSb)、六ホウ化ランタンなどが挙げられる。その中でも、ITO、ATO、及び金属元素複合酸化タングステンが好ましく、金属元素複合酸化タングステンがより好ましい。金属元素複合酸化タングステン中のMで表される金属元素の例としては、Cs、Tl、Rb、Na、Kなどが挙げられ、特にCsが好ましい。遮熱性の観点から、mは約0.2以上または約0.3以上であることが好ましく、かつ、約0.5以下または約0.4以下であることが好ましい。
【0194】
遮熱性微粒子の含有量は、積層体を構成する層に使用される樹脂全体に対して、約0.01質量%以上、または約0.05質量%以上、または約0.1質量%以上、または約0.2質量%以上であることが好ましい。加えて、遮熱性微粒子の含有量は、約5質量%以下または約3質量%以下であることが好ましい。遮熱性微粒子の含有量が約5質量%を超えると、可視光の透過率に影響を与える懸念がある。積層体の透明性の観点から、遮熱性微粒子の平均粒径は、約100nm以下または約50nm以下であることが好ましい。なお、本明細書で参照する場合、遮熱性粒子の平均粒子径とは、レーザー回折装置で測定したものを意味する。
【0195】
遮熱性化合物の例としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物などが挙げられる。遮熱性をさらに向上させる観点から、遮熱性化合物に金属が含まれていることが好ましい。金属の例としては、Na、K、Li、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、V、Ca、Alなどが挙げられ、Niが特に好ましい。
【0196】
遮熱性化合物の含有量は、積層体を構成する層に使用される樹脂全体に対して、約0.001質量%以上、または約0.005質量%以上、または約0.01質量%以上であることが好ましい。加えて、遮熱性化合物の含有量は、約1質量%以下または約0.5質量%以下であることが好ましい。遮熱性化合物の含有量が約1質量%を超えると、可視光の透過率に影響を与える懸念がある。
【0197】
加えて、従来から既知の方法により、本発明の中間膜の表面にメルトフラクチャー及び/またはエンボス加工などの凹凸構造を形成することが好ましい。メルトフラクチャーまたはエンボス加工の形状は特に限定されず、従来から既知のものを採用することができる。
【0198】
合わせガラス用中間膜の少なくとも片面(より好ましくは両面)を成形することが好ましい。合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面を成形することにより、合わせガラスを製造する場合に、合わせガラス用中間膜とガラスとの界面に存在する気泡が、合わせガラスの外側に脱けやすくなるため、合わせガラスの外観を良くすることができる。エンボスロール法、メルトフラクチャーなどにより、合わせガラス用中間膜の少なくとも片面を成形することが好ましい。合わせガラス用中間膜の表面を成形することにより、合わせガラス用中間膜の表面に凹部及び/または凸部が形成される。
【0199】
合わせガラス用中間膜の表面を成形する方法の例としては、従来から既知のエンボスロール法、異形押出法、及びメルトフラクチャーを利用した押出リップエンボス法が挙げられる。その中でも、均一かつ微細な凹凸部が形成された合わせガラス用中間膜を安定して得るにはエンボスロール法が好ましい。
【0200】
エンボスロール法に使用されるエンボスロールは、例えば、目的とする凹凸パターンを有する彫刻ミル(マザーミル)を使用して凹凸パターンを金属ロール表面に転写することにより製造することができる。さらに、レーザーエッチングを用いてエンボスロールを製造することもできる。さらに、上述のように金属ロールの表面に微細な凹凸パターンを形成した後、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、またはガラスビーズなどの研磨材を用いて微細凹凸パターンのある表面にブラスト処理を施すことにより、さらに微細な凹凸パターンを形成することもできる。
【0201】
さらに、エンボスロール法に使用されるエンボスロールには、離型処理が施されていることが好ましい。離型処理が施されていないエンボスロールを使用すると、合わせガラス用中間膜をエンボスロールから離型することが困難になる。離型処理方法の例としては、シリコーン処理、Teflon(登録商標)処理、及びプラズマ処理などの既知の方法が挙げられる。
【0202】
エンボスロール法などにより成形された合わせガラス用中間膜の表面の凹部の深さ及び/または凸部の高さ(以下、「エンボス部の高さ」と呼ぶ場合もある)は、約5μm以上、または約10μm以上、または約20μm以上であることが好ましい。エンボス部の高さが約5μm以上であると、合わせガラスを作製した場合に、合わせガラス用中間膜とガラスとの界面に存在する気泡が残りにくくなるため、合わせガラスの外観が向上する傾向がある。
【0203】
エンボス部分の高さは、約150μm以下、または約100μm以下、または約80μm以下であることが好ましい。エンボス部の高さが約150μm以下であると、合わせガラスを作製した場合に、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が良好になるため、合わせガラスの外観が向上する傾向がある。
【0204】
本発明において、エンボス部の高さとは、JIS B 0601(2001)に規定されている最大高さ粗さ(Rz)を指す。エンボス部の高さは、例えば、レーザー顕微鏡などの共焦点原理を利用して測定することができる。なお、エンボス部の高さ、すなわち凹部の深さまたは凸部の高さは、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更してもよい。
【0205】
エンボスロール法などによって付与される形状の例として、格子状、斜め格子状、斜め楕円形、楕円形、斜め溝状、及び溝状が挙げられる。その中でも、気泡が良好に脱けるという観点から、斜め格子状、斜め溝状などの形状が好ましい。傾斜角度は、フィルムの流れ方向(MD方向)に対して10°〜80°であることが好ましい。
【0206】
エンボスロール法などによる成形は、合わせガラス用中間膜の片面に行っても、両面に行ってもよいが、両面に行うことがさらに好ましい。さらに、成形パターンは、規則的なパターンであっても、ランダムなマットパターンなどの不規則なパターンであっても、US7351468B2に開示されているようなパターンであってもよい。
【0207】
合わせガラス
本発明の積層体の構成をガラス内部に含めると、曲げ強度に優れた合わせガラス、遮音性、特に高周波数域での遮音性に優れた合わせガラス、遮音性及び遮音性能の安定性に優れた合わせガラス、及び広い温度範囲にわたり遮音性に優れた合わせガラスを得ることが可能である。
【0208】
そのため、本発明の合わせガラスは、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、またはヘッドアップディスプレイ用ガラス;窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、ショーウィンドウ、バルコニー、手すり壁などの建築部材;会議室の仕切りガラス部材などに好適であり得る。本発明の積層体の構成が内部に含まれている合わせガラスをヘッドアップディスプレイ用ガラスに適用する場合、使用する積層体の断面形状は、片側の端面側は厚く、もう片側の端面側は薄いことが好ましい。その場合、断面形状は、片側の端面側からもう片側の端面側に向かって徐々に薄くなるような、全体がくさび形である形状であっても、片側の端面ともう片側の端面との間の任意の位置まで厚さが同一であり、前述の任意の位置からもう片側の端面に向かって徐々に薄くなるような、断面の一部がくさび形である形状であってもよい。
【0209】
一般に、本発明の合わせガラスには2枚のガラスが使用される。本発明の合わせガラスを構成するガラスの厚さは特に限定されないが、約100mm以下であることが好ましい。加えて、本発明の積層体は、曲げ強度及び剛性に優れているため、厚さが約2.8mm以下の薄板ガラスを使用して合わせガラスを作製した場合でも、合わせガラスの強度または柔軟性を損なうことなく、合わせガラスの軽量化を実現することができる。軽量化の観点から、ガラスの厚さに関して、少なくとも1枚のガラス板の厚さが約2.8mm以下、または約2.5mm以下、または約2.0mm以下、または約1.8mm以下であることが好ましい。特に、片側のガラスの厚さを約1.8mm以上に調節し、もう片側のガラスの厚さを約1.8mm以下に調節し、かつ、それぞれのガラスの厚さの差を約0.2mm以上に調節することにより、曲げ強度を損なうことなく薄型軽量化を実現した合わせガラスを作製することができる。それぞれのガラスの厚さの差は、約0.5mm以上であることが好ましい。
【0210】
軽量化に関して、一実施形態では、本発明による合わせガラスは、約10kg/m2以下、または約9.5kg/m2以下の質量(面密度)を有する。別の実施形態では、本発明による合わせガラスは、約7kg/m2から、または約7.5kg/m2から、または約8kg/m2から、約10kg/m2まで、または約9.5kg/m2まで、または約9kg/m2までの範囲の質量を有する。
【0211】
一般的な遮音特性
合わせガラスの遮音性は、ASTM E90−09に規定されているような音響透過損失(STL)法を用いて直接測定することができる。この方法では、2つの隣接する残響室を用意し、その間の開口に試験試料を設置する。音源室である第1室におおよその拡散音場を生成する。試験区画に入射した音により試験区画が振動し、受音室である第2室に音場が生成される。2室の空間平均音圧レベル及び時間平均音圧レベルを決定する。加えて、試験片を所定の位置に置いて受音室の吸音率を測定する。2室の音圧レベル、受音室の吸音率、及び試験片の面積を用いて音響透過損失を計算する。これは、試料の遮音性により得られる音圧の変化の尺度である。透過損失は周波数の関数であるため、一連の周波数帯で測定を行う。
【0212】
試験周波数の範囲にわたる音響透過損失挙動が複雑である可能性がある。異なる合わせガラス構造間の比較を迅速化するために、音響遮蔽性能を音響透過クラス(STC)と呼ばれる単一数値の分類評価によって単純に表すことができる。STC分類は、ASTM E413−10に規定された手順に従って、STL測定値に標準参照曲線を適合させることにより決定される。STCの値が高いほど、優れた音響遮蔽性能を表す。
【0213】
以下のように測定したとき、STCが約32以上、または約33以上であることが好ましい。
【0214】
STLは、50Hz〜10,000Hzの周波数範囲にわたって1/3オクターブバンドで測定された。495mm×495mmの試料サイズを使用し、すべての測定をASTM E90−09に準拠して20℃で実施した。ASTM E413−10に規定された分析手順に従って、STL測定値からSTCを決定した。
【0215】
合わせガラスの積層体損失係数及びその等価曲げ剛性率は、合わせガラスのSTLと関係している。損失係数及び等価曲げ剛性率は、ISO16940:2008(E)に従って、ガラス梁試料の入射インピーダンスの測定から決定することができる。入射インピーダンスは、ある点に入射された力と速度との間の伝達関数である。この伝達関数は、システムの応答の最大値(所与の振動モードに対する共振周波数)に対応する共振を有する。
【0216】
一実施形態では、ISO16940:2008(E)に従って測定したときの3次振動モードでの積層体損失係数は、少なくとも約0.4、または少なくとも約0.41、または少なくとも約0.42、または少なくとも約0.44、または少なくとも約0.45である。
【0217】
別の実施形態では、ISO16940:2008(E)に従って測定したときの3次振動モードでの等価曲げ剛性率は、少なくとも約70N.m、または少なくとも約100N.m、または少なくとも約130N.m、または少なくとも約160N.mである。
【0218】
最大損失係数
合わせガラスの遮音性は、中央加振法によるダンピング試験によって得られる損失係数でも評価することができる。ダンピング試験は、周波数または温度に応じて損失係数がとる値を評価する試験である。周波数を一定にしたとき、ある温度範囲において最大となる損失係数を最大損失係数と呼ぶ。中央加振法によるダンピング測定によれば、一定温度下での周波数に対する損失係数の値が得られる。最大損失係数を得るには、温度をそれぞれ0℃、10℃、20℃、30℃、40℃、及び50℃と変化させて測定を実施し、得られた値から一定周波数下での温度に対する損失係数の線形を得ることができる。最大損失係数は、ダンピングの効力を表す指標であり、具体的には板状の物体に発生した屈曲振動がどの程度の速さで減衰するかを表す指標である。すなわち、最大損失係数は遮音性の指標であり、合わせガラスの最大損失係数が高いほど、合わせガラスの遮音性が高いといってよい。
【0219】
別の実施形態では、積層体を合わせガラス用中間膜として使用して合わせガラスを作製し、得られた合わせガラスに中央加振法によるダンピング試験を行った場合、周波数2,000Hz及び温度0〜50℃における最大損失係数が、約0.20以上、または約0.25以上、または約0.28以上であることが好ましい。上記の条件下での最大損失係数が約0.20未満の場合は、合わせガラスの遮音性が乏しくなり、その結果、得られる合わせガラスは遮音を目的とした用途に適さないものになる。上記条件で測定した最大損失係数が約0.20以上である合わせガラスは、tanδが最大となるピークが約−40℃〜約30℃の範囲内であるエラストマーを含有する組成物を含むB層と、複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、温度25℃でのせん断貯蔵弾性率が約10.0MPa以上である複数の層(A層及びC層)とを、B層が少なくともA及びCの2層の間に挟まれるように積層することにより得ることができる。
【0220】
高周波数域における遮音性
本明細書では、コインシデンス現象に起因する高周波数域での遮音性能の低下を抑制できる合わせガラスという観点から、長さ300mm、幅25mm、及び厚さ1.9mmの2枚のフロートガラスの間に本発明の積層体を挟んで合わせガラスを作製する場合、中央加振法により20℃で測定したとき、4次共振周波数での損失係数が約0.2以上、または約0.4以上、または約0.6以上であることが好ましい。4次共振周波数での損失係数が約0.2未満である場合、遮音性が不十分になる傾向がある。4次共振周波数での損失係数を約0.2以上に調節するには、例えば、B層を構成する熱可塑性エラストマーに対して、ハードセグメントの含有量が所定割合以上(例えば、約14質量%以上)である材料を使用して、積層体の保護層として機能するA+C層の厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比を所定分以上(例えば、1/6.5以上)に調節する方法、またはその他の方法によって達成することが可能である。
【0221】
4次共振周波数での損失係数は、例えば、以下の方法によって測定することができる。市販のフロートガラス(長さ300mm×幅25mm×厚さ1.9mm)2枚の間に積層体を挟み、真空バッグ法により合わせガラスを作製する(条件:60分間で30℃から160℃へと昇温した後、160℃で30分間保持する)。その後、機械インピーダンス装置の加振器のインピーダンスヘッドに内蔵された加振力検出器の先端部に、合わせガラスの中央部を固定し、周波数0〜10,000Hzの範囲で合わせガラスの中央に振動を与え、この点の加振力と加速度波形を検出することで、中央加振法による合わせガラスのダンピング試験を行う。得られた加振力と、加速度信号を積分して得られた速度信号に基づいて、加振点(振動を与えた合わせガラスの中央)の機械インピーダンスを求め、横軸を周波数、縦軸を機械インピーダンスにそれぞれ設定して得られるインピーダンス曲線において、4次モードのピークを示す周波数と半値幅から、4次共振周波数での合わせガラスの損失係数を決定することができる。
【0222】
加えて、コインシデンス現象に起因する高周波数域での遮音性能の低下を抑制できる合わせガラスを作製するという観点から、長さ300mm、幅25mm、及び厚さ1.9mmの2枚のフロートガラスの間に本発明の積層体を挟んで合わせガラスを作製する場合、ISO 16940(2008)に従って測定したとき、4次共振周波数での曲げ剛性が約150N・m以上または約200N・m以上であることが好ましい。4次共振周波数での曲げ剛性が約150N・m未満である場合、コインシデンス現象が発生しやすくなり、その結果、高周波数域での遮音性が低下する傾向がある。4次共振周波数での曲げ剛性を約150N・m以上に調節するには、例えば、B層を構成する熱可塑性エラストマーに対して、ハードセグメントの含有量が所定割合以上(例えば、約14質量%以上)である材料を使用して、積層体の保護層として機能するA+C層の厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比を所定分以上(例えば、1/1以下)に調節する方法、またはその他の方法によって達成することが可能である。
【0223】
加えて、4次共振周波数での損失係数及び曲げ剛性を用いて、ISO 16940(2008)に従って計算された6,300Hzでの音響透過損失が、約43dB以上または約45dB以上であることが好ましい。8,000Hzでの音響透過損失は、約50dB以上または約53dB以上であることが好ましい。10,000Hzでの音響透過損失は、約56dB以上または約60dB以上であることが好ましい。
【0224】
遮音性能の安定性
本明細書では、合わせガラス作製後の経時的な遮音性能の変化が小さく、遮音性能の安定性に優れた合わせガラスを作製するという観点から、本発明の積層体は、スキン層A及びCの間にB層が位置し、本発明の積層体を厚さ2mmのガラスの間に挟んで、温度140℃、圧力1MPa下で60分間という条件下で保持して圧着することにより作製される合わせガラスに関して、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzにおける損失係数αが約0.2以上であり、かつ、1か月間18℃で保持した後、合わせガラスに関して、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzでの損失係数βの損失係数αに対するβ/α比が約0.70以上であることを満たす積層体であるか、スキン層A及びCの間にB層が位置し、積層体を含む合わせガラスに関して、合わせガラスを1か月間18℃で保持した後、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃で2,000Hzでの損失係数βが約0.2以上であり、かつ、合わせガラスを加熱して18℃で1か月間、100℃で24時間保持した後の合わせガラスに関して、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzでの損失係数γの損失係数βに対するγ/β比が約0.80以上かつ約1.30以下であることを満たす積層体が好ましい。
【0225】
例えば、後述する中央加振法によるダンピング試験で測定したとき、損失係数α、β、及びγに関する合わせガラスの所定の要件を満たすことができる積層体を得る方法として、以下の積層体を構成する方法が挙げられる。
【0226】
第1の構成は、B層が、少なくとも1種の芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1種の脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックとを有するブロック共重合体、またはその共重合体の水素添加物を含有する層であり;A層はアイオノマー樹脂を含む層であり、C層はアイオノマー樹脂またはポリビニルアセタール樹脂を含み、可塑剤を含まないかまたは(特にポリビニルアセタール樹脂の場合)可塑剤を含む層であり、可塑剤を含む場合には、可塑剤の含有量が、樹脂100質量部を基準として、0を超え約30質量部以下(好ましくは約25質量部以下、または約20質量部以下、または約15質量部以下、または約10質量部以下)であり;A+C層の厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比((B層の厚さの合計)/(A+C層の厚さの合計))が、約1/30〜約1/3の範囲であるような構成である。
【0227】
加えて、第2の構成は、B層がスキン層AとCの間に位置し、B層が少なくとも1種の芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1種の脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックとを有するブロック共重合体、またはその共重合体の水素添加物を含有する層であり;A層はアイオノマー樹脂を含む層であり、C層はアイオノマー樹脂またはポリビニルアセタール樹脂を含み、可塑剤を含まないかまたは可塑剤を含む層であり、可塑剤を含む場合(特にポリビニルアセタール樹脂の場合)には、可塑剤の含有量が、樹脂100質量部を基準として、0を超え約25質量部以下(または約20質量部以下、または約15質量部以下、または約10質量部以下、または約3質量部以下)である構成を有する積層体である。この場合、スキン層A+Cの厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比が、約1/30〜約1/1の範囲であることが好ましい。加えて、ブロック共重合体としては、B層の項で説明したようなブロック共重合体を使用することが好ましい。
【0228】
なお、これらの構成を採用する際には、アイオノマー樹脂またはポリビニルアセタール樹脂として、スキン層A及びCの項で説明したアイオノマー樹脂またはポリビニルアセタール樹脂を使用することが好ましい。これらの構成は、本発明の積層体の構成を例示するものに過ぎず、本発明の積層体はこれらの構成に限定されない。加えて、これらの構成に使用されるA層またはC層に含まれ得る可塑剤は、それぞれ融点が約30℃以下であるかまたは非晶質であり、かつまたヒドロキシル価が約15〜約450mgKOH/g以下であるエステル系可塑剤またはエーテル系可塑剤である。
【0229】
厚さ2mmの2枚のガラスの間に積層体を挟んで、温度140℃、圧力1MPa下で60分間という条件下で圧着して作製される、本発明の積層体から得られる合わせガラスでは、作製後(例えば作製直後)の合わせガラスが、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzで約0.2以上、または約0.25以上、または約0.30以上の損失係数αを有する。上記の条件下での損失係数αが約0.2以上であるとき、合わせガラスは十分に高い遮音性を有する。なお、用語「合わせガラスの作製直後」とは、合わせガラスを作製し、室温までの冷却が完了してから2時間以内の時間を意味する。
【0230】
加えて、作製した合わせガラスを1か月間18℃で保持した後の合わせガラスに関して、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzでの損失係数βの損失係数αに対するβ/α比が、約0.70以上、または約0.80以上、または約0.87以上であることが好ましい。さらに、β/αが約1.20以下、または約1.10以下であることが好ましい。β/αが約0.70以上であると、遮音性能の安定性が向上する。一方、β/αが約1.20以下であると、保持時間を短縮することができる。
【0231】
加えて、合わせガラスを加熱して18℃で1か月、100℃で24時間保持した後の合わせガラスに関して、中央加振法によるダンピング試験によって測定したとき、20℃、2,000Hzでの損失係数γの損失係数βに対するγ/β比が、約0.80以上、または約0.87以上、または約0.90以上であることが好ましい。さらに、γ/βは、約1.30以下、または約1.20以下、または約1.10以下である。γ/βが約0.80以上、または約1.30以下であると、遮音性能の安定性を向上させることができ、保持時間を短縮することができる。
【0232】
広い温度範囲にわたる遮音性
本明細書では、広い温度範囲にわたり遮音性に優れる合わせガラスを得るという観点から、中央加振法によって測定したとき、3次モードの最大損失係数が、約0.2以上、または約0.23以上、または約0.25以上であることが好ましい。3次モードでの損失係数が約0.2未満である場合、遮音性が不十分になる傾向がある。3次モードの損失係数を約0.2以上に調節するには、例えば、遮音層として機能する内部層(B層)として、JIS K 7244−10に準拠して周波数1Hzの条件で複素せん断粘度試験を実施して測定したとき、tanδが最大となるピーク(このピークを「tanδのピーク温度」と略記する場合がある)が、約−40℃以上かつ約−30℃以下の範囲である層を使用するか、もしくはB層を構成する熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントの含有量が所定分以下(例えば、約50質量%)であるエラストマーを使用し、かつ、遮音層として機能する内部層(B層)の厚さを約20μm以上に調節する方法、またはその他の方法によって達成することが可能である。加えて、20℃での損失係数が、約0.2以上、または約0.25以上であることが好ましい。20℃での損失係数が約0.2未満である場合、室温での遮音性が不十分になる傾向がある。20℃での損失係数を約0.2以上に調節するには、例えば、B層のtanδのピーク温度とB層の厚さのバランスが適切な範囲内に収まるような方法が挙げられる。
【0233】
3次モードでの損失係数は、例えば、以下の方法によって測定することができる。市販のフロートガラス(幅50mm×長さ300mm×厚さ3mm)2枚の間に積層体を挟み、真空バッグ法により合わせガラスを作製する(条件:60分間で30℃から160℃へと昇温した後、160℃で30分間保持する)。その後、機械インピーダンス装置の加振器のインピーダンスヘッドに内蔵された加振力検出器の先端部に、合わせガラスの中央部を固定し、周波数0〜8,000Hzの範囲で合わせガラスの中央部に振動を与え、この点の加振力と加速度波形を検出することで、中央加振法による合わせガラスのダンピング試験を行った。得られた加振力と、加速度信号を積分して得られた速度信号に基づいて、加振点(振動を与えた合わせガラスの中央)の機械インピーダンスを求め、3次モードのピークを示す周波数と半値幅から、合わせガラスの損失係数を決定することができる。
【0234】
上記の方法で求めた損失係数から、損失係数が0.2以上となる温度範囲の幅を求めることができる。損失係数が0.2以上である温度範囲の幅は、約15℃以上、または約20℃以上、または約23℃以上、または約25℃以上であることが好ましい。損失係数が0.2以上である温度範囲の幅が約15℃未満である場合、広い温度範囲にわたる遮音性を発揮できず、その結果、低温域及び/または高温域での合わせガラスの遮音性が低下する傾向がある。
【0235】
損失係数が0.2以上である温度範囲の幅を広げる方法の例として、熱可塑性エラストマーの種類に応じて内部層(B層)の厚さを最適化する方法;tanδのピーク温度が互いに異なる2種以上の熱可塑性エラストマーの混合物を内部層(B層)として使用する方法;内部層(B層)を2層以上で構成し、その少なくとも1層に使用される熱可塑性エラストマーのtanδのピーク温度とは異なるtanδのピーク温度を有する熱可塑性エラストマーを、先の層とは異なる層に使用する方法;tanδのピーク温度が互いに異なる2種以上の熱可塑性エラストマーとして、tanδのピーク温度の差が大きいものを使用する方法などが挙げられる。一般に、2種のエラストマーの混合物を使用する場合でも、これらの2種のエラストマーは互いに相溶化して1つのピークを示すが、2つのピークが認められる場合には、tanδのピーク温度のいずれか一方が本発明の所定の範囲内に含まれていればよい。
【0236】
遮熱性
本発明の合わせガラスが遮熱材を含む場合、波長1,500nmでの透過率が約50%以下、または約20%以下であることが好ましい。波長1,500nmでの透過率が約50%以下であると、赤外線の遮蔽率が高い傾向にあり、合わせガラスの遮熱性能が向上する。
【0237】
ヘイズ
ヘイズとは、特定の角度で散乱される光束の割合である。
【0238】
一実施形態では、本発明の合わせガラスに関して、それぞれ厚さ1.6mmの2枚のガラス板の間に多層中間膜を積層して積層体を製造する場合、ASTM D1003−61(方法A)に準拠して、積層体を通過する非散乱光の経路によって規定される軸から2.5°より大きい角度で測定したとき(BYK−Gardner USA of Columbia,MD,USA製のHazegard−iヘイズメーターを使用)、そのヘイズが、約0.6%以下、または約0.55%以下、または約0.5%以下、または約0.45%以下であることが好ましい。
【0239】
本発明の合わせガラスの別の実施形態では、厚さ2mmの2枚のフロートガラスの間に厚さ0.75mmの中間膜を積層した場合、JIS K 7136に準拠して測定したそのヘイズが、約5未満、または約3未満、または約2未満、または約1未満、または約0.5未満であることが好ましい。ヘイズが約5以上であると、合わせガラスの透過性が低下する傾向がある。
【0240】
破断強度
本発明の積層体を長さ26mm×幅76mm×厚さ2.8mmの2枚のフロートガラスの間に挟むことにより得られる合わせガラスでは、3点曲げ試験(温度:20℃、支点間距離:55mm、試験速度:0.25mm/分)におけるその破断強度が、約0.3kN以上、または約0.5kN以上、または約0.6kN以上であることが好ましい。上記条件で測定した破断強度が約0.3kN未満である場合、合わせガラスの強度が低下する傾向がある。
【0241】
曲げ時の積層体の有効厚さ
合わせガラスの剛性挙動の特性は、積層体の有効厚さteff(Reference Shitanoki et.al.,ASTM E1300−09)によって決定することができる。有効厚さは、ISO1288−4:2016に従って積層体の4点曲げ挙動の分析から決定される。留意点として、積層体の有効厚さの値が大きいほど、積層体の剛性挙動が高い。
【0242】
曲げ時の積層体の有効厚さteffは、以下の手順から決定される:
1.変形させる試料サイズ500mm×360mm、支持スパン300mm(L1)、負荷スパン150mm(L2)での4点曲げ試験−ISO 1288−4:2016を用いて、荷重(P)−たわみ(δ)の挙動を測定する。
2.積層体の有効厚さteffを式1を用いて算出する。
【数1】
ここで、Eはガラスのヤング率(=71.6GPa)、bは試料幅(=360mm)、及びL3=(L1−L2)/2(=150mm)である。
【0243】
留意点として、0.1mm/秒の負荷速度を用い、すべての測定を20℃で実施する。
【0244】
ISO1288−4:2016に準拠するが、本発明の積層体を長さ500mm×幅360mm×厚さ4.0mmの2枚のフロートガラスの間に挟むことにより得られる合わせガラスを使用して測定したとき、4点曲げ試験(温度:20℃、支持スパン=300mm及び負荷スパン=150mm、試験速度:0.1mm/秒)におけるその有効厚さが、約2.8mm以上、または約3.0mm以上、または約3.4mm以上であることが好ましい。
【0245】
複屈折性
2枚のガラスの間に挟まれたときの中間膜は、約0〜約140nmの複屈折位相差を有することが好ましい。
【0246】
合わせガラスの製造方法
本発明の合わせガラスは、従来から既知の方法で製造することが可能である。その例として、真空ラミネーターを用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法などが挙げられる。また、仮圧着の後、得られた積層体をオートクレーブに入れて本接着する方法も利用することができる。
【0247】
真空ラミネーターを用いる場合には、例えば、太陽電池の製造に使用される既知の装置を用いて、約1×10−6MPa以上かつ約3×10−2MPa以下の減圧下で、温度約100℃以上または約130℃以上、かつ約200℃以下または約170℃以下で集合体を積層する。真空バッグまたは真空リングを用いる方法は、例えばEP1235683A1(CA2388107A1)の明細書に記載されており、例えば、約2×10−2MPaの圧力下で約130℃以上かつ約145℃以下で集合体を積層する。
【0248】
合わせガラスの作製方法に関して、ニップロールを用いる場合には、例えば、スキン樹脂の流動開始温度以下の温度で最初の仮圧着を行った後、流動開始温度に近い条件でさらに仮圧着を実施する方法が例示される。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどにより約30℃以上かつ約100℃以下で集合体を加熱した後、ロールで脱気し、さらに約50℃以上かつ約150℃以下で加熱した後、ロールによる圧着を実施して接着または仮接着を行う方法が例示される。
【0249】
また、本発明の積層体の構成を合わせガラス内部に含むように、B層を塗布したガラスをA層の両面に合わせて積層することによって合わせガラスを作製してもよい。
【0250】
仮圧着後に付加的に行われるオートクレーブ工程は、モジュールの厚さまたは構成に応じて異なるが、例えば、圧力約1MPa以上かつ約15MPa以下、温度約120℃以上かつ約160℃以下で、約0.5時間以上かつ約2時間以下実施される。
【0251】
合わせガラスを作製する際に使用するガラスは特に限定されない。フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、及びそれ以外の無機ガラス、ならびにポリメタクリル酸メチル及びポリカーボネートなどの従来から既知の有機ガラスなどを使用することができる。このようなガラスは無色、有色、透明、または不透明いずれのガラスであってもよい。これらのガラスは単独で用いても、その2種以上を併用してもよい。
【0252】
具体的実施形態
以下は、上記の説明に基づく本発明の具体的実施形態の例示である。これらの具体的実施形態は単なる例示に過ぎず、場合によって関連技術分野の当業者に一般的に知られている追加情報と合わせ、上記の説明から多くの追加の具体的実施形態が関連技術分野の当業者には明らかであろう。
【0253】
A層とC層の厚さの合計に対するB層の厚さの合計の比((B層の厚さの合計)/(A+C層の厚さの合計))が、約1/30〜約1/1の範囲である中間膜。
【0254】
波長1,500nmでの透過率が約50%以下である積層体。
【0255】
B層またはA層及び/またはC層の少なくとも1層に遮熱材が含まれている中間膜。
【0256】
前記遮熱材が、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、アンチモン酸亜鉛、金属ドープ酸化タングステン、フタロシアニン化合物、アルミニウムドープ酸化亜鉛、及び六ホウ化ランタンから選択される少なくとも1種の材料である中間膜。
【0257】
金属ドープ酸化タングステンがセシウムドープ酸化タングステンである中間膜。
【0258】
A層及びC層の両方に前記遮熱材が含まれている中間膜。
【0259】
前記遮熱材がセシウムドープ酸化タングステン(CWO)であり、A層及びC層の両方に含まれ、約0.17g/m2〜約0.35g/m2の量で含まれている中間膜。
【0260】
前記遮熱材がスズドープ酸化インジウム(ITO)であり、A層及びC層の両方に含まれ、約0.3g/m2〜約0.6g/m2の量で含まれている中間膜。
【0261】
前記遮熱材がCWOとITOの混合物であり、A層及びC層の両方に含まれ、CWOが約0.05g/m2〜約0.15g/m2、ITOが約0.4g/m2〜約0.5g/m2の量で含まれている中間膜。
【0262】
A層及びC層の少なくとも一方もしくは両方、またはA層、B層、及びC層すべてに紫外線吸収剤が含まれている中間膜。
【0263】
紫外線吸収剤がA層及びC層の両方に、層の総重量を基準にして約0.2wt%〜約1wt%の量で含まれている中間膜。
【0264】
紫外線吸収剤がB層に層の総重量を基準にして約0.25wt%〜約0.5wt%の量で含まれている中間膜。
【0265】
紫外線吸収剤が、A層及びC層の両方に層の総重量を基準にして約0.2wt%〜約1wt%の量で含まれ、B層に層の総重量を基準にして約0.25wt%〜約0.5wt%の量で含まれている中間膜。
【0266】
ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、マロン酸エステル系化合物、及びシュウ酸アニリド系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の紫外線吸収剤が含まれている中間膜。
【0267】
紫外線吸収剤が塩素化ベンゾトリアゾールである前記紫外線吸収剤を含有する中間膜。
【0268】
A層及びC層の少なくとも一方もしくは両方、またはA層、B層、及びC層すべてに光安定剤が含まれている中間膜。
【0269】
光安定剤がA層及びC層の両方に、層の総重量を基準にして最大約0.8wt%の量で含まれている中間膜。
【0270】
光安定剤がB層に層の総重量を基準にして最大約0.4wt%の量で含まれている中間膜。
【0271】
光安定剤が、A層及びC層の両方に層の総重量を基準にして最大約0.8wt%の量で含まれ、B層に層の総重量を基準にして最大約0.4wt%の量で含まれている中間膜。
【0272】
A層及びC層の少なくとも一方もしくは両方、またはA層、B層、及びC層すべてに酸化防止剤が含まれている中間膜。
【0273】
酸化防止剤がA層及びC層の両方に、層の総重量を基準にして最大約0.2wt%の量で含まれている中間膜。
【0274】
酸化防止剤がB層に層の総重量を基準にして最大約0.1wt%の量で含まれている中間膜。
【0275】
酸化防止剤が、A層及びC層の両方に層の総重量を基準にして最大約0.2wt%の量で含まれ、B層に層の総重量を基準にして最大約0.1wt%の量で含まれている中間膜。
【0276】
フェノール/亜リン酸塩の組み合わせである酸化防止剤が含まれている中間膜。
【0277】
自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、またはヘッドアップディスプレイ用ガラスである合わせガラス。
【0278】
合わせガラスを構成する各ガラス板が、厚さ約2.8mm以下の薄板ガラスである前記合わせガラス。
【0279】
片側の前記ガラス板の厚さが約1.8mm以上、もう片側の前記ガラス板の厚さが約1.8mm以下であり、かつ、前記それぞれのガラス板の厚さの差が約0.2mm以上である合わせガラス。
【0280】
それぞれ厚さ1.6mmの2枚のガラス板の間に積層して積層体を製造したとき、前記得られる積層体が約33以上の音響透過クラス(STC)(上述のASTM E90−9及びASTM E413−10に準拠した場合)、少なくとも約0.4の積層体損失係数(上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定した場合)、少なくとも約70N.m、または少なくとも約100N.m、または少なくとも約130N.mの等価曲げ剛性率(上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定した場合)、少なくとも約2.8mmの有効厚さ(ISO1288−4:2016に準拠して決定した場合(上述のように変更、式−1を参照))、及び約0.6未満の積層体ヘイズ(上述のASTM D1003−61(方法A)に準拠して決定した場合)の組み合わせを有する多層中間膜。
【0281】
第1のガラス板と第2のガラス板を有し、その間に熱可塑性多層中間膜を挟んだ合わせガラスであって、前記合わせガラスが、約7kg/m2〜約10kg/m2の範囲の質量を有し、約33以上の音響透過クラス(STC)(上述のASTM E90−9及びASTM E413−10に準拠した場合)、少なくとも約0.3または少なくとも約0.4の積層体損失係数(上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定した場合)、少なくとも約100N.m、または少なくとも約130N.mの等価曲げ剛性率(上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定した場合)、少なくとも約2.6mm、または少なくとも約2.8mmの有効厚さ(ISO1288−4:2016に準拠して決定した場合(上述のように変更、式−1を参照))、及び約0.6未満の積層体ヘイズ(上述のASTM D1003−61(方法A)に準拠して決定した場合)の組み合わせを有する、前記合わせガラス。
【実施例】
【0282】
以下の合わせガラスの特性に関する具体例から本発明をさらに理解できるであろう。ただし、これらの実施例は、いかなる場合にも本発明の範囲の限定とはみなされないものと理解される。
【0283】
以下の実施例A−1〜A−5、B−1〜B−3、C−1〜C−3、D−1、及び比較例CEX−1〜CEX−6で得た合わせガラスについて、以下の物性評価を実施した。
【0284】
材料
以下の実施例で使用する材料は以下の通りである。
【0285】
メルトインデックス(MI)を、ASTM D1238に準拠して、ポリマー溶融温度190℃、荷重2.16kgで測定した。
【0286】
実施例で使用したソーダ石灰シリカフロートガラス(1.6mm公称厚さ)は、Technical Glass Products,Inc.(Ivyland,PA,USA)から入手した。
【0287】
PVB1−商標「BUTACITE」でKuraray America,Inc.(Wilmington,DE,USA)から販売されている単層PVB中間膜。
【0288】
AC−PVB−商標「S−LEC Sound Acoustic Film」でSekisui America,LLCから販売されている3層PVB遮音中間膜。
【0289】
CI1−E.I.du Pont de Nemours & Co.(Wilmington,DE,USA)から入手した少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ジポリマーアイオノマー(21.7%メタクリル酸、Na26%中和、MI=1.8)。
【0290】
シート1−CI1から作製した、商標「SENTRYGLAS」でKuraray America,Inc.(Wilmington,DE,USA)から販売されている単層アイオノマー中間膜。
【0291】
I1−少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ターポリマーアイオノマー(22%メタクリル酸、10%アクリル酸n−ブチル、Na26%中和、MI=6.3)。
【0292】
I2−少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ターポリマーアイオノマー(21.7%メタクリル酸、10%アクリル酸n−ブチル、Zn25%中和、MI=3.9)。
【0293】
I3−少なくとも部分的に中和されたエチレン酸ターポリマーアイオノマー(21.7%メタクリル酸、6.5%アクリル酸i−ブチル、Zn25%中和、MI=3.8)。
【0294】
TPE1−1,2−結合及び3,4−結合の含有量が75%である水素添加ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体熱可塑性エラストマー。ハードブロック/ソフトブロック比[Mw(A1)/Mw(A2)]が1.00、ガラス転移温度が−15℃、スチレン含有量が21質量%、水素添加率が84%、及び重量平均分子量が120,000。
【0295】
TPE2−水素添加ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体熱可塑性エラストマー。ハードブロック/ソフトブロック比[Mw(A1)/Mw(A2)]が0.30、ガラス転移温度が−30℃、スチレン含有量が13質量%、水素添加率が85%、及び重量平均分子量が130,000。
【0296】
MAN−PP−Sanyo Chemicalから商標名UMEX1010で販売されている、官能基としてカルボン酸無水物基を含む無水マレイン酸変性低分子量ポリプロピレン。
【0297】
多層膜の作製
アイオノマー樹脂ペレット及び添加剤(マスターバッチ中)をスキン層押出機に送出した。ポリマーを押出機の各ゾーンを通して溶融及び加熱し、溶融温度約385゜F(196℃)で吐出した。アイオノマー溶融物を加熱溶融ラインによってフィードブロックに搬送し、そこでアイオノマー流を分割して中間膜構造体の2つの外側層(A及びC)を形成した。
【0298】
熱可塑性エラストマー樹脂ペレット及び添加剤(マスターバッチ中)をコア層押出機に送出した。エラストマーポリマーを押出機を通して溶融及び加熱し、溶融温度約415゜F(213℃)で吐出した。エラストマー溶融物を加熱溶融ラインによって、約400゜F(204℃)に維持したフィードブロックに搬送した。エラストマー溶融物はフィードブロックを通って流れ、エラストマーの上下で、分割されたアイオノマー層と接触し3層シート構造を形成した。
【0299】
溶融相を約400゜F(204℃)に維持した押出ダイに送り、ダイリップを通して押し出した。スキン(アイオノマー)押出機及びコア(エラストマー)押出機からの流速は、最終シートで目標とするスキン対コア層の厚さ比が得られるように調整した。各ポリマー相の溶融粘度がうまく適合するように各押出機の溶融温度を調整し、シートの流れ不安定性及び光学的歪みを防止した。シートの幅全体にわたり厚さ(キャリパー)の均一性を調整及び改善できるように、ダイリップ上のアジャスターを開閉した。目標とする総シート厚さ(シート厚さ)が得られるようにライン速度を調整した。
【0300】
押出ダイを出た溶融物を一連の冷却ロールに通して溶融物を冷却し、シート製品を形成した。加熱されていない搬送ローラー一式を横断させてシートを搬送し、シートをさらに冷却した。固体シートを、ライン速度を制御して一定に維持するように設定されたニップロールに通した。次いで、ニップロールと巻取部との間で、巻取部(シートに一定の張力を維持するように設定されている)の芯にシートを巻き取った。
【0301】
合わせガラスの作製
室温でポリマー中間膜積層体とガラスとを希望する順序に重ねた予備圧着集合体を使い捨て真空バッグに入れ、25〜30水柱インチの真空下で60分間保持し、予備圧着集合体の層間に含まれる空気を除去する。バッグを減圧しながら予備圧着集合体を空気圧式オートクレーブに入れた。試料及びバッグを100psigの静水圧を加えた状態で135℃に加熱した。135℃に達した後にバッグへの減圧を解除し、静水圧100psigを加えた空気圧式オートクレーブ中に積層体を90分間保持した。次いで、試料を定圧下で約4℃/分の速度で冷却した。約25分の冷却後、空気温度が約50℃未満になったら、過剰圧力を排出し、積層体を室温まで冷却してオートクレーブから取り出した。
【0302】
実施例で使用されている方法は、合わせガラスを製造する際の多くの標準的な工業的方法と類似するものであり、透明度が高く、欠陥(気泡など)が最小限である材料が得られた。
【0303】
物性評価
実施例及び比較例それぞれについて、以下の特性を測定した。
【0304】
STC−上述のASTM E430−10に準拠してSTLから導出。
【0305】
積層体損失係数(3次モード)−上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定。
【0306】
積層体曲げ剛性率(3次モード)−上述のISO16940:2008(E)に準拠して決定。
【0307】
積層体有効厚さ−上述のような変更を加えISO1288−4:2016に準拠して決定。
【0308】
積層体ヘイズ−上述のASTM D1003−61(方法A)に準拠して決定。
【0309】
面密度は、材料の単位面積あたりの重量の尺度である。これらの実施例では、面密度は、STC評価に使用される積層体の重量及び面積を測定することにより決定した。面密度は重量(kg)を試料の投影面積(m)で割ったものである。
【0310】
積層体構造及び測定結果は以下の通りである。結果からわかるように、本発明による中間膜を使用した場合のみ、遮音制振、音響遮蔽、曲げ強度、曲げ剛性、及び光学特性の組み合わせが全体的に望ましい積層体が得られた。
【0311】
【表1】
【表2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【国際調査報告】