(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019522012
(43)【公表日】20190808
(54)【発明の名称】ペンタクロロプロパンの製造及び転化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/10 20060101AFI20190712BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20190712BHJP
   C07C 17/23 20060101ALI20190712BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190712BHJP
【FI】
   !C07C17/10
   !C07C19/01
   !C07C17/23
   !C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】2019503566
(86)(22)【出願日】20170724
(85)【翻訳文提出日】20190307
(86)【国際出願番号】US2017043473
(87)【国際公開番号】WO2018022491
(87)【国際公開日】20180201
(31)【優先権主張番号】62/366,680
(32)【優先日】20160726
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518459466
【氏名又は名称】オキシデンタル ケミカル コーポレーション
【住所又は居所】アメリカ合衆国 75254 テキサス,ダラス,ノース ダラス パークウェイ 14555
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドーキンス,ジョン エル
【住所又は居所】アメリカ合衆国 67037 カンザス ダービー オーク フォレスト 114
(72)【発明者】
【氏名】ホリス,ダレル
【住所又は居所】アメリカ合衆国 67031 カンザス コンウェイ スプリングス ノース 12 ストリート 421
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー,キース エス
【住所又は居所】アメリカ合衆国 67002 カンザス アンドーヴァー イースト クレセント レイクス ドライブ 609
(72)【発明者】
【氏名】カルダーウッド,ブライアン
【住所又は居所】アメリカ合衆国 67212 カンザス ウィチタ ウェスト パー レイン 9801
(72)【発明者】
【氏名】ガーモン,マイケル エイ
【住所又は居所】アメリカ合衆国 77578 テキサス マンヴェル パロミノ トレイル 3719
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC30
4H006AD11
4H006BA19
4H006BA37
4H006BA67
4H006BB12
4H006BC11
4H006BD84
4H006BE53
4H006EA02
4H039CA50
4H039CD10
4H039CD20
(57)【要約】
必要に応じ四塩化炭素の存在で1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、およびルイス酸触媒を導入して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する方法において、前記ルイス酸をスラリーとして塩素化炭化水素に導入することを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要に応じ四塩化炭素の存在で1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、およびルイス酸触媒を導入して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する方法において、前記ルイス酸をスラリーとして塩素化炭化水素に導入することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スラリーを前記1,1,1,3−テトラクロロプロパンと前記塩素に導入する前に前記スラリーは連続撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連続撹拌は連続撹拌されるスラリー槽内で起こる、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記連続撹拌は、スラリー閉流路を経て前記スラリーを連続循環させることで起こる、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記塩素化炭化水素は四塩化炭素である、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ルイス酸は塩化第二鉄である、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、およびルイス酸触媒は反応器内に導入され、前記スラリー閉流路は前記反応器内の圧力よりも高い圧力で維持される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリーは四塩化炭素中有に分散または溶解したルイス酸触媒を約1〜約15wt%含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラリー中のルイス酸濃度は実質的に均一である、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記スラリー閉流路内のスラリーの温度は、四塩化炭素の沸点よりも低い温度に維持される、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ルイス酸触媒の存在で反応性蒸留により1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを1,1,2,3−テトラクロロプロペンに転化する方法において、蒸留塔および再沸器内で反応または堆積物の形成を阻害する条件で運転される再沸器内で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよびルイス酸触媒を含む粗生成物流を加熱することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ルイス酸は塩化第二鉄である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記再沸器は蒸留塔と流体連通している強制循環式再沸器である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記再沸器を通る粗生成物流の速度は少なくとも1m/sである、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粗生成物流は前記再沸器の管側を通る、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記再沸器は複数の管を備え、前記管全体の熱流束は44kW/m2未満である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(i)ルイス酸触媒のスラリーを塩素化炭化水素内に供給すること、
(ii)反応器と流体連通するスラリー閉流路を経て前記スラリーを連続循環させること、および
(iii)前記反応器に1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、および前記スラリーを導入することを含む、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する方法。
【請求項18】
(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとルイス酸触媒の混合物を供給すること、
(ii)強制再循環式再沸器内で前記混合物を加熱すること、および
(iii)加熱した混合物を前記強制再循環式再沸器から塔に導入して、これによりルイス酸触媒の存在で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを加熱して生成された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを蒸気化することを含む、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを1,1,2,3−テトラクロロプロパンに転化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年7月26日に提出された米国仮特許出願第第62/366,680号の利益を主張するものであり、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の実施形態は、塩素化炭化水素、特に1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよび1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ヒドロフルオロオレフィン類(HFO)は「第四世代」の冷却剤として提案されている。また、これらの化合物は、発泡剤、殺生物剤、および単量体原料としても提案されている。最も工業的に有用な合成技術は、HFOを製造するのに塩素化炭化水素原料を必要とする。特に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)原料を用いて製造することができる。
【0004】
米国公開第2009/0216055A1には、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)を脱ヒドロ塩素化することで1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造する方法が教示されている。この特許公開公報には、1,1,1,3−テトラクロロプロパン(HCC−240fa)、塩素、およびルイス酸触媒の反応混合物を加熱することで単一の反応容器内で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造することができることが教示されている。ルイス酸触媒は1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱ヒドロ塩素化して、1,1,3−トリクロロプロペンを生成し、次いで、1,1,3−トリクロロプロペンを触媒の存在で塩素と反応させて1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する。一般にこの触媒(例えば、塩化第二鉄)を連続して、あるいは定期的に反応器に添加して30〜1000ppmに維持する。生成物を連続して、あるいは定期的に反応性蒸留系に供給し、そこで1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを脱ヒドロ塩素化して、塩化第二鉄などのルイス酸触媒の存在で1,1,2,3−テトラクロロプロペンとする。用いられる蒸留系は、反応領域、分離領域、および濃縮領域を含む。反応領域の液体を加熱・撹拌する。内部熱交換器または外部熱交換器により容器のジャケットを介して熱を供給し、ポンプ循環または撹拌により撹拌を行うことができる。
【0005】
1,1,2,3−テトラクロロプロペンは特定のHFOの合成に重要な原料であるので、1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造方法の効率の向上が望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態は、必要に応じ四塩化炭素の存在で1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、およびルイス酸触媒を導入して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する方法において、前記ルイス酸をスラリーとして塩素化炭化水素に導入することを特徴とする方法を提供する。
【0007】
本発明の他の実施形態は、ルイス酸触媒の存在で反応性蒸留により1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを1,1,2,3−テトラクロロプロペンに転化する方法において、蒸留塔および再沸器内で反応または堆積物の形成を阻害する条件で運転される再沸器内で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンおよびルイス酸触媒を含む粗生成物流を加熱することを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の実施形態は、(i)ルイス酸触媒のスラリーを塩素化炭化水素内に供給すること、(ii)反応器と流体連通するスラリー閉流路を経て前記スラリーを連続循環させること、および(iii)前記反応器に1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、および前記スラリーを導入することを含む、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを製造する方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに他の実施形態は、(i)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンとルイス酸触媒の混合物を供給すること、(ii)強制再循環式再沸器内で前記混合物を加熱すること、および(iii)加熱した混合物を前記強制再循環式再沸器から塔に導入して、これによりルイス酸触媒の存在で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを加熱して生成された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを蒸気化することを含む、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを1,1,2,3−テトラクロロプロパンに転化する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する系の概略図であり、この方法はルイス酸を反応器に送り込むスラリー閉流路を備える。
【図2】ルイス酸の存在で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを脱ヒドロ塩素化する系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、少なくとも部分的に1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素化して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを合成する方法の発見に基づいている。ここで、塩化第二鉄など、1種以上のルイス酸触媒をスラリー系から反応容器に送り込んで、この触媒を塩素化炭化水素(例えば、四塩化炭素)中でスラリーとする。触媒スラリーを個別に調製することで、効率を得ることができ、ルイス酸触媒に関連する問題(例えば、取扱いに関する問題やその水を吸収する傾向)を回避することができると考えられている。また、この方法は、触媒を反応器に導入する際により限定した制御が可能になるという利点がある。
【0012】
他の実施形態によれば、強制循環式再沸器内の粗生成物を加熱する蒸留技術により1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物を反応性蒸留で脱ヒドロ塩素化して1,1,2,3−テトラクロロプロペンとする。再沸器内の流速および熱流束を維持して蒸留系内の汚れを防ぐ。実際、蒸留系内の局所的に熱い箇所により系の表面に触媒の残部が焼き付くことが分かっている。従って、従来では、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物を反応性蒸留により直接処理して1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成することができることが教示されているが、本明細書で特定の蒸留系により処理効率が上がることが期待されている。また、しきい値のルイス酸触媒(例えば、塩化第二鉄)の存在で反応性蒸留は起こるが、ルイス酸触媒を塩素化反応器に送り込む同じまたは同様のスラリー系を用いることでさらなる効率向上が期待されている。
【0013】
<1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの合成>
本発明の実施形態によれば、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素、ルイス酸触媒、および場合によっては四塩化炭素を導入して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する。これに関連して、米国公開第2009/0216055A1を参照により本明細書に組み込む。当業者には自明であるように、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは反応条件で液体であり、従って塩素とルイス酸触媒を1,1,1,3−テトラクロロプロパン液体に添加する。1,1,1,3−テトラクロロプロパン液体は四塩化炭素との混合物内に含まれていてもよい。1つ以上の実施形態では、塩素を気体として添加し、例えば、この液体に浸した管を経て、あるいは液体中の1種以上の気体分散体により1,1,1,3−テトラクロロプロパン液体に添加することができる。当業者には自明であるように、数種のルイス酸触媒が塩素化触媒として用いられており、本発明の実施形態の実施は特定のルイス酸触媒に限定されない。塩化第二鉄は一般的な塩素化触媒および/または脱ヒドロ塩素化触媒であり、従って、塩化第二鉄を参照して本発明の特定の実施形態を記載するが、本明細書の教示が他の塩素化触媒にも容易に拡張することができることは当業者には自明である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、塩化第二鉄などのルイス酸は反応条件で反応媒質に部分的に可溶であり、四塩化炭素などの塩素化炭化水素液体中に分散された(かつ部分的に溶解した)スラリーとして1,1,1,3−テトラクロロプロパン液体に導入される。1つ以上の実施形態では、連続撹拌により触媒を分散液中に維持する。連続撹拌は、例えば、1,1,1,3−テトラクロロプロパン液体を含む容器と連通している連続循環閉流路により行われてもよい。
【0015】
図1を参照して本発明の1つ以上の実施形態による方法を記載する。図示のように、系11は、循環閉流路41を経て反応器51(塩素化反応器51と言う場合がある)と流体連通しているルイス酸混合槽21を備える。スラリー槽21は、導入口22から塩素化炭化水素(例えば、四塩化炭素)31を、導入口23からルイス酸触媒33を受け入れる。また、スラリー槽21は、場合によっては導入口26から他の材料34(例えば、追加の溶媒、触媒、触媒配位子、または方法の下流で捕捉される再循環流)を受け入れてもよい。1つ以上の実施形態では、四塩化炭素31を導入口22からスラリー槽21に連続供給してもよく、他の実施形態では一定期間ごとに注入してもよい。同様に、ルイス酸触媒33をスラリー槽21に定期的に添加してもよく、他の実施形態では連続供給装置を用いてルイス酸触媒33をスラリー槽21に連続充填してもよい。例えば、無塵バケツ型供給器を用いてルイス酸触媒33をスラリー槽21に充填してもよい。
【0016】
1つ以上の混合要素24によりスラリー槽21内の混合物を撹拌して四塩化炭素31とルイス酸触媒33のスラリー35を形成する。混合要素は撹拌装置または邪魔板を含んでいてもよい。混合要素24は、塩素化炭化水素液体(例えば、四塩化炭素)中にルイス酸触媒が実質的に分散するように運転されてもよい。特に複数の実施形態では、撹拌は、塩素化炭化水素内のルイス酸濃度が実質的に均一になるのに十分なものである。
【0017】
反応器51の上流にある1つ以上のポンプ43によりスラリー35を循環閉流路41経由で連続して循環させる。また、利点としてこれらのポンプは、閉流路41内の圧力を維持してもよい。また、閉流路41がスラリー35を反応器51に送り込む下流(すなわち閉流路41内の弁47の下流)にある背圧弁49の補助により適切な圧力を閉流路41内で維持してもよい。閉流路41を通って移動するスラリー35は、加熱要素または冷却要素45により加熱あるいは冷却されてもよい。また、場合によっては他の材料34(例えば、上記のもの)を閉流路41に注入してもよい。1つ以上の実施形態では、1つ以上のインラインミキサー(図示せず)によりスラリー35中の各種構成成分の混合が高められてもよい。また、循環閉流路41は弁47を備える。弁47が開位置にあるとき、スラリー35を反応器51に供給することができる。弁47が閉位置にあるとき、スラリー35は閉流路41を経て混合槽21に循環する。弁47は、信号流センサーまたは同様の装置により制御することができる制御弁または電磁弁を含んでいてもよい。
【0018】
反応器51は、閉流路41からのスラリー35を導入口53から受け入れる。また、反応器51は導入口55から塩素61を、導入口57から1,1,1,3−テトラクロロプロパン65を受け入れる。また、場合によっては、反応器51は他の材料の供給34(例えば、上述のもの)を受け入れてもよい。反応器流出物63は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物流71として取出口59で反応器51から出て行く。
【0019】
1つ以上の実施形態では、スラリー35の反応器51への流れは、少なくとも部分的には弁47により調節されているが、1,1,1,3−テトラクロロプロパン65と塩素61の反応器51への供給速度に比例していてもよい。
【0020】
1つ以上の実施形態では、閉流路41は、反応器51内の圧力よりも高い圧力で維持されている。特に複数の実施形態では、閉流路41の圧力は、起こりうる重力の助けを考慮にいれつつ、(弁47が開いているとき)反応器51への流れを形成するのに十分なものである。当業者には自明であるように、弁47が背圧弁49による反応器51への流れをもたらしながら、閉流路41内で十分な圧力を維持してもよい。弁49は、信号流センサーまたは同様の装置により制御することができる制御弁または電磁弁を含んでいてもよい。1つ以上の実施形態では、温度制御(例えば、要素45)により冷却して、スラリー35の温度を塩素化炭化水素の沸点(例えば、四塩化炭素の場合77℃未満)に維持してもよい。特定の実施形態では、閉流路の温度を約0〜約80℃、他の実施形態では約5〜約60℃、他の実施形態では約10〜約40℃に維持する。
【0021】
1つ以上の実施形態では、スラリー35中のルイス酸(例えば、塩化第二鉄)33の濃度は、液体の重量中の固体(分散されているものと可溶性のもの両方)の百分率として表されてもよい。1つ以上の実施形態では、スラリー35中の塩化第二鉄の固体の百分率は約1〜約15wt%、他の実施形態では約2〜約10wt%、他の実施形態では約3〜約7wt%であってもよい。
【0022】
<1,1,2,3−テトラクロロプロペンの合成>
本発明の実施形態によれば、反応性蒸留により1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物流を直接処理して1,1,2,3−テトラクロロプロペンを生成してもよい。この手順は一般に、当該分野で知られており、従ってこの点に関して米国公開第2009/0216055A1を参照により本明細書に組み込む。上に示唆したように、本発明の実施形態によれば、強制循環式再沸器内で粗生成物流を加熱することで反応性蒸留が起こる。
【0023】
図2を参照して1つ以上の実施形態の反応性蒸留法を記載する。図2は、蒸留塔103と再沸器123を備える反応性蒸留系101を示している。一般に当該分野で知られているように、塔103は底部領域103Aを含む。ここで、液体の形態(一般に約3〜5%の固体を含む)で塔底液106が集まってきて、液面106Aを形成している。また、塔103は、充填領域103Bを含む、充填領域には充填材料104(例えば、格子状材料)および/または棚104が引出棚108と共に配置されている。塔103はその上端部に塔頂空間103Cを含み、そこを通って蒸気は塔103から出て行く。
【0024】
1つ以上の実施形態では、再沸器123(強制再循環式沸騰器123とも言うことがある)は単一経路または多経路の再沸器を含んでいてもよい。本明細書の以下で記載する特定の実施形態では、加熱流体または媒体は再沸器123の胴体側を通る。本発明の実施は用いられる加熱流体の種類によって限定されず、例えば、水蒸気を含んでいてもよい。
【0025】
蒸溜塔103と再沸器123は再沸器の閉流路111を経て流体連通している。1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物71は塔103、より具体的には液面106Aあるいはその付近で底部103Aに入る。ここで、粗生成物71は塔底液106に含まれるようになる。例えば、(上述した)スラリー35を経て追加のルイス酸触媒を粗生成物71に導入してもよい。塔底液106は取出口105を経て閉流路111に入る。閉流路111を流れる塔底液106の速度は、例えば、ポンプ115により調節されている。1つ以上の実施形態では、閉流路111を流れる塔底液106の速度は、再沸器123内で管壁の温度を下げるのに十分な速度に維持され、これにより再沸器123内での反応および/または堆積物の形成を阻害している。塔底液106は導入口125で再沸器123に入り、再沸器123の管側を循環する。1つ以上の実施形態では、再沸器123を通る塔底液106の速度は少なくとも1m/s、他の実施形態では少なくとも3m/s、他の実施形態では少なくとも5m/sである。これらまたは他の実施形態では、再沸器123を通る塔底液106の速度は、約1〜約20m/s、他の実施形態では約2〜約12m/s、他の実施形態では約3〜約9m/sである。
【0026】
上に示唆したように、塔底液106は再沸器123の管側を通り、そこで導入口126から塔底液106の胴体側に導入される加熱流体127(例えば、水蒸気)から伝わる熱に曝される。1つ以上の実施形態では、再沸器123内の管全体の熱流束は44kW/m2未満であり、他の実施形態では33kW/m2未満であり、他の実施形態では22kW/m2未満である。これらまたは他の実施形態では、再沸器123内の管全体の熱流束は、約5〜約44kW/m2、他の実施形態では約7〜約33kW/m2、他の実施形態では約10〜約22kW/m2である。
【0027】
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロペンとルイス酸触媒(例えば、塩化第二鉄)を含む塔底液106を加熱すると1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの脱ヒドロ塩素化が起こり、1,1,2,3−テトラクロロプロペンが生成される。
【0028】
塔底液106は加熱された液体として取出口129で再沸器から出て行き、充填領域103Bの下に配置されている導入口107で塔103に注入される。特に複数の実施形態では、塔底液106は液面106Aまたはその付近で塔に入る。塔103に入る際に生じる圧力差により少なくとも特定の目的の構成成分(例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペン)がブクブク(すなわち沸騰)し、少なくともその一部が充填空間103Bを通って塔頂空間103Cに移動し、最終的に蒸気取出口109から出て行く程度まで取出口129から再沸器123を出る塔底液106を加熱する。また、1つ以上の実施形態では、再沸器123を蒸留塔103の底部に対して低い位置に配置し、これにより十分な静水圧を発生させて、再沸器123内の塔底液の未熟な沸騰を防いでもよい。従って、閉流路111を通る流速、再沸器123内の熱還流、および閉流路111内で維持される圧力の組み合わせは、反応および/または管壁あるいは蒸留塔103内での堆積物の形成を防ぐように作用する。
【0029】
1つ以上の実施形態では、(塔底液106の加熱からの)蒸気は部分的に充填空間103Bで濃縮されてもよく、少なくともその一部は引出棚108を通って塔103から取り出されてもよい。1,1,2,3−テトラクロロプロペンが多いこの濃縮物を、いくつかの有益な使用のために過程に再循環させてもよい。例えば、引出流117B(シール端面フラッシュ液117Bと言う場合がある)を1つ以上のポンプ(例えば、ポンプ117A)に向けて定期的にシールに注水してもよい。これにより、回転シール端面で一定の圧力を維持し、長期間シールが適切に作用するという利点がある。また、引出流117C(装置フラッシュ液117Cとも言う場合がある)を1つ以上の装置(例えば、底部領域103A内の水位計など)に向けて計器に定期的に注水し、これにより装置に固体が堆積するのを阻害してもよい。また、これらまたは他の実施形態では、引出棚108からの濃縮物を槽117で採取してもよい。これにより、例えば、次の反応器の起動時に用いることができるような体積の蓄積が得られるという利点がある。
【0030】
当業者には自明であるように、所望の1,1,2,3−テトラクロロプロペンは蒸気流132として蒸留塔103の取出口109を通って蒸留塔103から出て行く。次いで、蒸気流132は濃縮器136を通ってもよく、これにより所望の塩素化炭化水素138(すなわち1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、濃縮物流138とも言う場合がある)の濃縮が起こる。軽質材料(および非濃縮性材料)は軽質最終流140として出て行く。濃縮物流138の一部は、供給器(図示せず)を経て流139、塔頂空間103Cを通って塔103に戻されて、充填材料を再還流してもよい。濃縮物138の残部を所望の生成物として採取する。所望の精製の程度にもよるが、下流の処理で濃縮物138のさらなる蒸留および精製を行ってもよい。
【0031】
また、図1および図2の両方に示すように、循環閉流路41からのルイス酸を含むスラリー35を、弁48を経た1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物流71と混合して、十分なルイス酸を供給し、脱ヒドロ塩素化反応を触媒してもよい。図2に具体的に示すように、スラリー35を、粗生成物流71が塔103に入る前に1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン粗生成物流71と混合してもよい。他の実施形態(図示せず)では、スラリー35を塔103または閉流路111に直接導入してもよい。
【0032】
本発明の範囲および精神を逸脱しない範囲での各種の修正および変更は、当業者には自明である。本発明は、本明細書に記載した例示としての実施形態に限定されるものでは全くない。
【図1】
【図2】
【国際調査報告】