(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019522450
(43)【公表日】20190808
(54)【発明の名称】信号強調
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20190712BHJP
【FI】
!H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】2019524143
(86)(22)【出願日】20170724
(85)【翻訳文提出日】20190322
(86)【国際出願番号】US2017043554
(87)【国際公開番号】WO2018022522
(87)【国際公開日】20180201
(31)【優先権主張番号】15/217,990
(32)【優先日】20160723
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514100946
【氏名又は名称】ギブソン ブランズ インコーポレイテッド
【住所又は居所】アメリカ合衆国 テネシー州 37217 ナッシュヴィル プラス パーク ブールバード 309
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】アンダートン クレイグ
【住所又は居所】アメリカ合衆国 テネシー州 37214 ナッシュヴィル ピーオーボックス 140535
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AB01
5D220AB08
(57)【要約】
第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路を含むオーディオ機器を提供する。このオーディオ機器は、第1の信号経路に平行な、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路を含む。このオーディオ機器は、第1の信号経路からの第1の信号と、第2の信号経路からの第2の信号と、音源からのクリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器をさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源からの、第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路と、
前記音源からの、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路と、
前記音源からの第3の信号経路と、
を含むことを特徴とするシグナルプロセッサ。
【請求項2】
前記ローパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項3】
前記選択的な周波数応答曲線は、フレッチャーマンソン曲線を含み、前記低周波ロールオフ点は、人間の聴力の低周波ロールオフ点を含む、
請求項2に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項4】
前記選択的な周波数応答曲線は、
人間の聴力、
ギターピックアップ、
ベースギターピックアップ、
のうちの1つ又は2つ以上に関連する、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項5】
前記ハイパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる高周波ロールオフ点に関連するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項6】
前記選択的な周波数応答曲線は、フレッチャーマンソン曲線を含み、前記高周波ロールオフ点は、人間の聴力の高周波ロールオフ点を含む、
請求項5に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項7】
前記第1の信号経路からの第1の信号と、前記第2の信号経路からの第2の信号と、前記第3の信号経路からのクリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器と、
前記加算信号を受け取るように構成された励起モジュールと、
をさらに含み、前記励起モジュールは、
シャープハイパスフィルタと、
高周波調波を生じるように構成された歪みユニットと、
を含む、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項8】
前記シグナルプロセッサは、
場内放送システム、
補聴器、
電話機、
スピーカ、
1又は2以上のヘッドホン、
コンピュータ、
楽器、
テレビ、
エンターテイメントシステム、
のうちの1つ又は2つ以上と共に使用されるように構成される、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項9】
前記歪みユニットは、10〜20kHzの範囲の高周波調波を生じるように構成される、
請求項7に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項10】
前記第1のダイナミックレンジエキスパンダ及び前記第2のダイナミックレンジエキスパンダの一方又は両方は、浮動閾値に基づいてダイナミックレンジ拡大を実行するように構成される、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項11】
前記第1の信号経路上のローパスフィルタからの第1の信号と、前記第2の信号経路上のハイパスフィルタからの第2の信号とを受け取るように構成された加算増幅器をさらに含む、
請求項1に記載のシグナルプロセッサ。
【請求項12】
第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路と、
前記第1の信号経路に平行な、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路と、
前記第1の信号経路からの第1の信号と、前記第2の信号経路からの第2の信号と、クリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器と、
を含むことを特徴とするオーディオ機器。
【請求項13】
前記ローパスフィルタは、人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有し、前記ハイパスフィルタは、人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、
請求項12に記載のオーディオ機器。
【請求項14】
前記オーディオ機器は、
場内放送システム、
補聴器、
電話機、
スピーカ、
1又は2以上のヘッドホン、
コンピュータ、
楽器、
テレビ、
エンターテイメントシステム、
のうちの1つ又は2つ以上を含む、
請求項12に記載のオーディオ機器。
【請求項15】
前記ローパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、
請求項12に記載のオーディオ機器。
【請求項16】
前記加算信号を受け取るように構成された励起モジュールをさらに含み、前記励起モジュールは、
シャープハイパスフィルタと、
高周波調波を生じるように構成された歪みユニットと、
を含む、
請求項12に記載のオーディオ機器。
【請求項17】
命令を記憶したコンピュータ可読有形媒体であって、前記命令は、実行時に、プロセッサに、
音源から受け取られた信号の範囲を動的に拡大して動的拡大信号を生成するステップと、
ローパスフィルタを通じて前記動的拡大信号をフィルタ処理して第1の処理済み信号を生成するステップと、
平行してハイパスフィルタを通じて前記動的拡大信号をフィルタ処理して第2の処理済み信号を生成するステップと、
を含む動作を実行するように指示する、
ことを特徴とするコンピュータ可読有形媒体。
【請求項18】
人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを用いて、前記ローパスフィルタを通じて前記動的拡大信号をフィルタ処理して前記第1の処理済み信号を生成するステップと、
人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを用いて、前記ハイパスフィルタを通じて前記動的拡大信号をフィルタ処理して前記第2の処理済み信号を生成するステップと、
を含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、
請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記第1の処理済み信号と、前記第2の処理済み信号と、前記音源からのクリーンな信号とを加算して加算信号にするステップと、
シャープハイパスフィルタを用いて前記加算信号をフィルタ処理することによって前記加算信号を励起し、前記加算信号を歪ませて高周波調波を生じさせるステップと、
を含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、
請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記信号の前記範囲の前記動的拡大を浮動閾値に従って調整するステップを含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、
請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
人間の聴力は、様々な偏心(eccentricities)の影響を受ける。例えば、耳/脳の組み合わせは、低ラウドネスレベルでは、オーディオ信号における中音域周波数をオーディオ信号における高及び低周波数よりも顕著なものとして知覚することができる。同様に、オーディオ信号の音量を高めると、耳/脳の組み合わせは、オーディオ信号における低及び高周波数を低音量レベルの時よりも顕著なものとして知覚することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
ある実施形態例では、音源からの、第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路を含むシグナルプロセッサを提供する。このシグナルプロセッサは、音源からの、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路、並びに音源からの第3の信号経路も含む。
【0003】
別の実施形態例では、第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路を有するオーディオ機器を提供する。このオーディオ機器は、第1の信号経路に平行な、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路を含む。オーディオ機器は、第1の信号経路からの第1の信号と、第2の信号経路からの第2の信号と、クリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器をさらに含む。
【0004】
さらに別の実施形態例では、実行時に、音源から受け取られた信号の範囲を動的に拡大して動的拡大信号を生成するようにプロセッサに指示する命令を記憶したコンピュータ可読有形媒体を提供する。このコンピュータ可読有形媒体は、実行時に、ローパスフィルタを通じて動的拡大信号をフィルタ処理して第1の処理済み信号を生成し、平行してハイパスフィルタを通じて動的拡大信号をフィルタ処理して第2の処理済み信号を生成するようにプロセッサに指示する命令も記憶する。
【0005】
この概要は、特許請求する主題の重要な又は必須の特徴を識別するためのものでも、特許請求する主題の範囲を限定する支援として使用するためのものでもない。
【0006】
当業者には、以下の図面、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を検討すれば本開示の他の特徴が明らかになるであろう。
【0007】
同じ要素を同じ数字で示す添付図面を参照しながら例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】様々な信号強調の実装による(単複の)シグナルプロセッサ例を示す図である。
【図2】異なるレベル強度における人間の耳の応答曲線に等しい周波数応答例を示す図である。
【図3】様々な信号強調の実施形態に関連する方法例を示す図である。
【図4】様々な信号強調の実施形態に関連する方法例を示す図である。
【図5】様々な信号強調の実装に従って使用できるコンピュータ装置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、本開示のいくつかの実施形態を理解できるように数多くの詳細を示す。しかしながら、当業者であれば、これらの詳細を伴わずに本発明のシステム及び/又は方法を実施することもでき、説明する実施形態からの数多くの変形例又は修正例も可能であると理解するであろう。
【0010】
本明細書で説明するように、信号強調に関連する様々な方法及び技術を用いて、人間の聴力、録音オーディオ信号などに欠けている音調範囲の動特性を強調することによって、人間の聴力、録音過程などの不完全性を補償することができる。1つの考えられる実装では、このような強調が、リスナーに対してオーディオ信号をさらにクリアすることができる。別の考えられる実装では、このような強調が、オーディオ信号をさらに生き生きとしたものにしてリスナーの情緒反応を高めることができる。別の考えられる実装では、例えば過度の騒音暴露、加齢などを含む様々な事象を通じて聴力が損なわれた人々のリスニング体験を改善することができる。
【0011】
信号処理例
図1に、様々な信号強調の実装によるシグナルプロセッサ例100を示す。シグナルプロセッサ100は、単独で使用することも、或いは楽器、ミキサ、携帯電話機、コンピュータ、場内放送システム、スピーカ(ヘッドホンを含む)、エンターテイメントシステム、テレビなどを含む当業で周知のあらゆるオーディオ機器に組み込むこともできる。
【0012】
図示のように、シグナルプロセッサ100は、音源102からのオーディオ信号を受け入れることができる。音源102は、例えばマイク、ギターピックアップ、ベースギターピックアップ、コンピュータ可読メモリ、シンセサイザ、キーボード、通信装置、場内放送システム、オーディオ再生装置などを含む、オーディオ信号の作成、受け入れ、記憶、送信、操作、感知、録音などが可能なあらゆる信号源又はその他の装置を含むことができる。
【0013】
1つの考えられる実装では、一時的成形及び拡大モジュール104が、音源102からの1又は2以上のオーディオ信号例(one or more instances of the audio signal)を受け入れて処理した後に等化強調モジュール106に受け渡すことができる。1又は2以上のオーディオ信号例は、等化強調モジュール106によって処理された後に加算増幅器108に送信することができ、1つの考えられる実装では、ここで1又は2以上のオーディオ信号例を音源102からのクリアな未処理のオーディオ信号例と加算して加算信号にすることができる。このようにして、音源102からのオリジナルオーディオ信号の様々な音調範囲をオーディオ信号の再生時に動的に引き上げて、さらにクリアで鮮明な生き生きとしたオーディオ信号がユーザに出力されるようにすることができる。加算増幅器108は、当業で周知のあらゆる加算増幅器を含むことができる。
【0014】
1つの考えられる実装では、一時的成形及び拡大モジュール104が、1又は2以上のダイナミックレンジエキスパンダ110、112を含むことができる。例えば、音源102からのオーディオ信号を分割した場合には、一方のオーディオ信号例をダイナミックレンジエキスパンダ110に送信して、もう一方のオーディオ信号例をダイナミックレンジエキスパンダ112に送信することができる。ダイナミックレンジエキスパンダ110、112は、あらゆるダイナミックレンジエキスパンダ及び/又は当業で周知のエキスパンダ、及びこれらのあらゆる組み合わせを含むことができる。
【0015】
1つの考えられる実装では、等化強調モジュール106が、1又は2以上のフィルタ114、116を含むことができる。これらは、例えばローパスフィルタ114及びハイパスフィルタ116を含むことができるが、当業で周知の他のいずれかのタイプのフィルタ、及びこれらのあらゆる可能な組み合わせを使用することもできる。本明細書で使用する「ローパスフィルタ」という用語は、低周波を通過させることができるいずれかの技術、又は技術の組み合わせを含むと理解されるであろう。同様に、本明細書で使用する「ハイパスフィルタ」という用語は、高周波を通過させることができるいずれかの技術、又は技術の組み合わせを含むと理解されるであろう。
【0016】
1つの考えられる実装では、励起モジュール118が、加算増幅器108からの加算信号を受け入れてさらに処理した後に第2の加算増幅器120に受け渡すことができる。第2の加算増幅器120は、当業で周知のあらゆる加算増幅器を含むことができ、励起モジュール118は、当業で周知のあらゆる励起技術を含むことができる。1つの考えられる実装では、励起モジュール118が、受信信号を歪ませて高調波を生じるように構成された機能を含むことができる。
【0017】
例えば、1つの考えられる実施形態では、励起モジュール118が、フィルタ122及び歪みモジュール124を含むことができる。フィルタ122は、例えば1又は2以上のバンドパスフィルタ、10kHzハイパスフィルタなどを含む、当業で周知のあらゆるタイプのフィルタ又はそのあらゆる可能な組み合わせを含むことができる。同様に、歪みモジュール124は、当業で周知のいずれかのタイプの歪み機能、及びそのあらゆる可能な組み合わせを含むことができる。歪みモジュール124は、例えば第2の高調波歪みモジュールを含むことができる。
【0018】
第2の加算増幅器120及び加算増幅器108は、2つの別個の加算増幅器を含むことができると理解されるであろう。これとは別に、又はこれに加えて、第2の加算増幅器120及び加算増幅器108は、シグナルプロセッサ100におけるオーディオ信号の処理中の異なる時点で呼び出される単一の加算増幅器を含むこともできる。
【0019】
図1に示すように、1つの考えられる実装では、音源102からのオーディオ信号を複数の経路に分割することができる。1つの考えられる実施形態では、1又は2以上の経路が、一時的成形及び拡大モジュール104、並びに等化強調モジュール106を通ってこれらによる処理を受けることができるのに対し、1又は2以上の他の経路は、これらの経路上の信号が一時的成形及び拡大モジュール104、並びに等化強調モジュール106による処理を受けないようにクリーンにすることができる。
【0020】
例えば、1つの考えられる実装では、第1の信号経路における音源102からのオーディオ信号例を、一時的成形及び拡大モジュール104のダイナミックレンジエキスパンダ110に送信した後で、等化強調モジュール106のローパスフィルタ114に送信することができる。1つの考えられる態様では、(例えば、ローパスフィルタ114のパラメータを含む)一時的成形及び拡大モジュール104及び/又は等化強調モジュール106におけるオーディオ信号処理のタイプ、程度などを、所与の周波数応答曲線に基づいて選択することができる。
【0021】
同様に、第2の信号経路上の音源102からのオーディオ信号例も、一時的成形及び拡大モジュール104のダイナミックレンジエキスパンダ112に送信した後で、等化強調モジュール106のハイパスフィルタ116に送信することができる。1つの考えられる態様では、(例えば、ハイパスフィルタ116のパラメータを含む)一時的成形及び拡大モジュール104及び/又は等化強調モジュール106におけるオーディオ信号処理のタイプ、程度などを、所与の周波数応答曲線に基づいて選択することができる。
【0022】
図2に、様々な信号強調の実装による、一時的成形及び拡大モジュール104において行われる(例えば、ダイナミックレンジエキスパンダ110、112の拡大率の選択を含む)処理、及び/又は等化強調モジュール106において行われる(例えば、ハイパスフィルタ116、ローパスフィルタ114などのフィルタのパラメータの決定を含む)処理を調整するために使用できる周波数応答曲線例200を示す。例えば、いくつかの考えられる実装では、音楽を聴きながらダイナミックレンジエキスパンダ110、112における所望の拡大率を追求できる一方で、ダイナミックレンジエキスパンダ110、112における他の所望の拡大率を使用して、様々な楽器などに関連する多少の劇的効果を生み出すことができる。
【0023】
図2に示す周波数応答曲線200は、人間の聴力に関連するフレッチャーマンソンの等ラウドネス曲線(Fletcher−Munson equal loudness contours)に対応する。このような曲線から、様々な周波数についての人間の聴力のロールオフ点を求めることができる。
【0024】
フレッチャーマンソン曲線に加えて、又はその代わりに、例えば様々な年齢層の人間の聴力に関連する周波数応答曲線200を含む当業で周知の他のいずれかの周波数応答曲線200を使用することもできる。ギターピックアップ、ベースピックアップ、マイクなどの様々なオーディオ機器に関連する周波数応答曲線200を使用することもできる。このような事例では、様々なオーディオ機器の特定の周波数応答に関連するロールオフ点を求め、このようなオーディオ機器によって生成される信号を処理するように等化強調モジュール106をカスタマイズすることができる。
【0025】
図1を参照すると、1つの考えられる実装では、シグナルプロセッサ100を人間の聴力に合わせるために、ハイパスフィルタ116を、例えば3〜96dBのオクターブスロープなどのフレッチャーマンソン曲線によって定められるような、人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を有するように選択することができる。このような構成を用いて、ハイパスフィルタ116によって処理される第2の信号経路上のオーディオ信号の周波数範囲を引き上げ、この範囲内の動特性を強調させることができる。1つの考えられる実装では、ダイナミックレンジ拡大を用いてこのような引き上げを知的に行うことができる。
【0026】
また、シグナルプロセッサ100を人間の聴力に合わせるために、ローパスフィルタ114も、例えば3〜96dBのオクターブスロープなどのフレッチャーマンソン曲線によって定められるような、人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を有するように選択することができる。このような構成を用いて、ローパスフィルタ114によって処理される第1の信号経路上のオーディオ信号の周波数範囲を引き上げ、この範囲内の動特性を強調させることができる。1つの考えられる実装では、ダイナミックレンジ拡大を用いてこのような引き上げを知的に行うことができる。
【0027】
この例を継続すると、1つの考えられる実装では、シグナルプロセッサ100において、(例えば、10kHzのコーナー周波数を有する36dB/オクターブスロープを含むハイパスフィルタなどの)シャープハイパスフィルタを含むフィルタ122の後に歪みモジュール124が続く励起モジュール118を通る第3の信号経路を追加することができる。1つの考えられる実装では、歪みモジュール124の構成を、例えば10〜20kHzの範囲の高周波調波を生じるように選択することができる。
【0028】
1つの考えられる実装では、シグナルプロセッサ100を、第3の信号経路においてダイナミックレンジ拡大が行われるように、又は行われないように構成することができる。例えば、励起モジュール118を通じて処理が行われる信号経路に加え、励起モジュール118内に処理が行われない平行な信号経路が存在して、両経路が励起モジュール118から離れた後に、加算増幅器120においてこれらを加算できるようにすることができる。
【0029】
1つの考えられる態様では、シグナルプロセッサ100内の信号経路のうちの1つ又は2つ以上が、例えばユーザが1又は2以上の信号経路に関連するオーディオエフェクトの量を変更できるようにする任意のレベル制御を含むことができる。これとは別に、又はこれに加えて、シグナルプロセッサ100内の信号経路のうちの1つ又は2つ以上に、共通シナリオのための複数の事前設定が存在することもできる。
【0030】
さらに別の考えられる実装では、積分器126を用いて、例えばダイナミックレンジエキスパンダ110、112を含む一時的成形及び拡大モジュール104内の1又は2以上の要素の自動浮動閾値(automatically floating threshold)を導入することもできる。このような構成では、ユーザが手動調整を行うことによってダイナミックレンジ拡大動作を設定する必要がなく、代わりにダイナミックレンジ拡大動作を自動的に改善及び/又は最適化する浮動閾値オプションをオンにする単一のボタンを提供することができる。浮動閾値は、オンになると自動的に音源102からのオーディオ信号を追いかけ、望ましい時にダイナミックレンジエキスパンダ110、112におけるオーディオ信号の拡大をトリガすることができる。
【0031】
例えば、1つの考えられる実施形態では、積分器126において、ダイナミックレンジエキスパンダ110、112が、音源102から一時的成形及び拡大モジュール104に供給されるオーディオ信号の平均ダイナミックレンジに常に基づいて動作するように浮動閾値を設定することができる。このようにして、例えばダイナミックレンジが広いクラシック音楽、及びダイナミックレンジが狭いポピュラー音楽などの多くの異なるタイプのオーディオ信号に合わせて一旦閾値を設定し、適合させることができる。
【0032】
別の考えられる実装では、このような浮動閾値が存在しない場合、ダイナミックレンジエキスパンダ110、112がオーディオ信号を拡大できる好適な閾値を選択するように、ユーザが手動で一時的成形及び拡大モジュール104を操作することができる。例えば、一時的成形及び拡大モジュール104によって加えられる強調の量をユーザが設定できるようにする単一のコントロールを提供することができる。ユーザは、必要であればオーディオ信号を聴きながらこの閾値をオンザフライで変更することができる。
【0033】
方法例
図3〜図4に、信号強調の態様を実装する方法例を示す。これらの方法を、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、様々なロジック、又はこれらのいずれかの組み合わせで実装できる一連の動作を表す論理フローグラフにおける一群のブロック及びその他の要素として示す。方法の説明順は限定であると解釈すべきではなく、あらゆる数の説明する方法ブロックをあらゆる順序で組み合わせてこれらの又は別の方法を実装することもできる。また、本明細書で説明する主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、個々のブロック及び/又は要素を方法から削除することもできる。ソフトウェアの文脈では、ブロック及びその他の要素が、1又は2以上のプロセッサによる実行時に列挙する動作を実行するコンピュータ命令を表すことができる。さらに、限定ではなく説明を目的として、図1〜2及び図5に示す要素を参照しながら方法の選択的態様を説明することもできる。
【0034】
図3に、信号強調の実施形態に関連する方法例300を示す。ブロック302において、音源102によって出力されたオーディオ信号などの第1及び第2のオーディオ信号例を一時的成形及び拡大モジュール104などの一時的成形及び拡大モジュールにおいて処理して、拡大された第1及び第2のオーディオ信号例を生成する。1つの考えられる態様では、第1及び第2のオーディオ信号例が、一時的成形及び拡大モジュールのダイナミックレンジエキスパンダ110、112などのダイナミックレンジエキスパンダによって処理される。
【0035】
ブロック304において、拡大された第1及び第2のオーディオ信号例を、一時的成形及び拡大モジュールから等化強調モジュール106などの等化強調モジュールに送信する。等化強調モジュールでは、拡大された第1及び第2のオーディオ信号例を処理して、強調された第1及び第2のオーディオ信号例を生成する。1つの考えられる態様では、拡大された第1及び第2のオーディオ信号例をローパスフィルタ114及び/又はハイパスフィルタ116などの1又は2以上のフィルタに通すことによってこの処理を行うことができる。これらのフィルタは、周波数応答曲線200などの1又は2以上の周波数応答曲線に基づいて、拡大された第1及び第2のオーディオ信号例の所望の音調範囲のラウドネスを引き上げるように設計することができる。
【0036】
ブロック306において、拡張された第1及び第2のオーディオ信号例にクリーンなオーディオ信号例を加算して加算信号を生成することができる。この加算信号は、様々な引き上げられた音調範囲を有することができ、さらにクリアで生き生きと聞こえるオーディオ信号をユーザに出力することができる。1つの考えられる実装では、この加算信号を励起モジュール118などの励起モジュールに送信し、ここで加算信号を高周波調波などの高調波で増強することができる。
【0037】
図4に、信号強調の実施形態に関連する方法例400を示す。ブロック402において、音源102などの音源から受け取られた信号の範囲を拡大して動的拡大信号を生成する。1つの考えられる実装では、ダイナミックレンジエキスパンダ110、112などの1又は2以上のダイナミックレンジエキスパンダによって信号が拡大される。
【0038】
ブロック404において、ハイパスフィルタ116などのハイパスフィルタを通じて1つの動的拡大信号例をフィルタ処理して第1の処理済み信号を生成する。
【0039】
ブロック406において、平行してローパスフィルタ114などのローパスフィルタを通じて第2の動的拡大信号例をフィルタ処理して第2の処理済み信号を生成する。
【0040】
1つの考えられる実装では、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタの性能を、周波数応答曲線200などの1又は2以上の周波数応答曲線に基づいて設定することができる。例えば、第1の処理済み信号を人間の聴力に合わせるには、ハイパスフィルタを、例えば6〜48dBのオクターブスロープ(例えば24dBを含む)などのフレッチャーマンソンの等ラウドネス曲線によって定められる人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を有するように選択することができる。同様に、第2の処理済み信号を人間の聴力に合わせるには、ローパスフィルタを、例えば(例えば、24dBを含む)3〜96dBのオクターブスロープなどのフレッチャーマンソンの等ラウドネス曲線によって定められる人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を有するように選択することができる。
【0041】
1つの考えられる実装では、加算増幅器108などの加算増幅器において、第1の処理済み信号及び第2の処理済み信号に音源からのクリーンなオーディオ信号例を加算して、ダイナミックレンジエキスパンダ、並びにハイパス及びローパスフィルタにおいて行われる処理を通じて様々な周波数のラウドネスレベルを引き上げた音源からのオリジナルオーディオ信号を含む加算信号を生成することができる。本明細書でオーディオ信号に関して使用する「クリーンな」という用語は、オーディオ信号をさらに処理する必要があることを意味することができる。
【0042】
(単複の)コンピュータ装置例
図5に、本開示において説明する信号強調の様々な実施形態を実施するように構成された信号強調モジュール506をホストするプロセッサ502及びメモリ504を含む装置例500を示す。1つの考えられる実装では、本明細書で説明する様々なオーディオ機器が、装置例500の全部又は一部を含むことができる。さらに、シグナルプロセッサ100の全部又は一部は、装置例500の全部又は一部及び/又は他の様々な機能を用いて実装することができる。例えば、一時的成形及び拡大モジュール104、等化強調モジュール106、加算増幅器108、120及び励起モジュール118の全部又は一部は、(例えば、信号強調モジュール506内の様々なサブモジュールなどの)装置例500に実装することができる。これとは別に、又はこれに加えて、一時的成形及び拡大モジュール104、等化強調モジュール106、加算増幅器108、120及び励起モジュール118の一部又は全部は、電子回路などの他の機能を用いて実装することもできる。
【0043】
メモリ504は、1又は2以上のデータベースをホストすることもでき、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの1又は2以上の形態の揮発性データ記憶媒体、及び/又は(リードオンリメモリ(ROM)、フラッシュメモリなどの)1又は2以上の形態の不揮発性記憶媒体を含むことができる。1つの考えられる実装では、メモリ504が、例えば識別情報、(単複の)センサ304によって測定されたデータなどを含む、本明細書で説明した様々なデータを記憶することができる。
【0044】
装置500は、コンピュータ装置又はプログラマブル装置の一例であり、装置500及び/又はその考えられるアーキテクチャの使用又は機能の範囲に関する何らかの限定を示唆するものではない。例えば、装置500は、1又は2以上のコンピュータ装置、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などを含むことができる。
【0045】
さらに、装置500は、装置500内に示す構成要素のうちの1つ又は組み合わせに関するいずれかの従属関係を有するものとして解釈すべきではない。例えば、装置500は、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、メインフレームコンピュータ、携帯電話機、オーディオミキサ、楽器、シンプルオンチップコンピュータ装置などのコンピュータ、或いはこれらのいずれかの組み合わせ又は集積物などのうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。
【0046】
装置500は、他の構成要素の中でもとりわけ、プロセッサ502、メモリ504及びローカルデータストレージ510などの様々な構成要素及び装置同士の通信を可能にするように構成されたバス508を含むこともできる。
【0047】
バス508は、様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用するメモリバス又はメモリコントローラ、周辺バス、加速グラフィクスポート、及びプロセッサ又はローカルバスを含む複数のタイプのバス構造のうちのいずれか1つ又は2つ以上を含むことができる。バス508は、有線及び/又は無線バスを含むこともできる。
【0048】
ローカルデータストレージ510は、固定媒体(例えば、RAM、ROM、固定ハードドライブなど)、及び取り外し可能媒体(例えば、フラッシュメモリドライブ、取り外し可能ハードドライブ、光学ディスク、磁気ディスクなど)を含むことができる。
【0049】
1又は2以上の入力/出力(I/O)装置512は、直接又はバス508を介してI/O装置512に接続できるユーザインターフェイス(UI)コントローラ514を介して通信することもできる。
【0050】
1つの考えられる実装では、ネットワークインターフェイス516が、装置500の外部で接続ネットワークを介して通信することができ、いくつかの実装ではハードウェアなどと通信することができる。
【0051】
1つの考えられる実施形態では、例えば様々な機器が入力/出力装置512としてバス508を介して装置500と通信することができる。
【0052】
媒体ドライブ/インターフェイス518は、フラッシュドライブ、光学ディスク、取り外し可能ハードドライブ、ソフトウェア製品などの取り外し可能な有形媒体520を受け入れることができる。1つの考えられる実装では、媒体ドライブ/インターフェイス518によって読み取ることができる取り外し可能媒体520上に、信号強調モジュール506の要素を含むロジック、コンピュータ命令、及び/又はソフトウェアプログラムが存在することができる。
【0053】
1つの考えられる実施形態では、(単複の)入力/出力装置512が、ユーザによる装置500へのコマンド及び情報の入力を可能にするとともに、ユーザ及び/又はその他の構成要素又は装置への情報提示を可能にすることができる。(単複の)入力装置512の例としては、例えばセンサ、キーボード、カーソル制御装置(例えば、マウス)、マイク、スキャナ、楽器、ピックアップ、及び当業で周知の他のいずれかの入力装置が挙げられる。出力装置の例としては、ディスプレイ装置(例えば、モニタ又はプロジェクタ)、スピーカ、プリンタ、ネットワークカードなどが挙げられる。
【0054】
本明細書では、信号強調モジュール506の様々な工程をソフトウェア又はプログラムモジュールの一般的な文脈で説明することができ、或いはこれらの技術及びモジュールは、純粋なコンピュータハードウェアで実装することもできる。一般に、ソフトウェアは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素及びデータ構造などを含む。これらのモジュール及び技術の実装は、何らかの形態の有形コンピュータ可読媒体に記憶し、又はこのような有形コンピュータ可読媒体を通じて送信することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ装置がアクセスできるあらゆる利用可能な有形の1又は複数のデータ記憶媒体とすることができる。従って、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体を含むことができる。「コンピュータ記憶媒体」は有形媒体を示し、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール又はその他のデータなどの情報を記憶するように実装された揮発性及び不揮発性の取り外し可能な及び取り外し不可能な有形媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、以下に限定するわけではないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)又はその他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するために使用できてコンピュータがアクセスできる他のいずれかの有形媒体を含む。
【0055】
上記では、ほんのいくつかの実施形態例を詳細に説明したが、当業者であれば、本開示から実質的に逸脱することなくこれらの実施形態例の多くの修正が可能であると容易に理解するであろう。従って、このような修正は、以下の特許請求の範囲に定める本開示の範囲に含まれるように意図される。さらに、本明細書で明確に説明しなかったいずれかの構成要素の不在下で実施形態を実行することもできる。
【0056】
特許請求の範囲におけるミーンズプラスファンクションの条項は、本明細書において列挙した機能を実行するものとして説明した構造及び構造的同等物のみならず、同等の構造も対象とするように意図される。従って、くぎとねじを挙げれば、くぎは円筒形の表面を用いて木製部品を互いに固定するのに対し、ねじはらせん状の表面を使用するという点でこれらは構造的同等物でないかもしれないが、木製部品を固定する環境ではくぎとねじを同等の構造物とすることができる。請求項において「〜のための手段」という用語を関連する機能と共に明確に使用している場合を除き、本明細書のあらゆる請求項のあらゆる限定について米国特許法第112条第6項を行使しないことが出願人の明確な意図である。
【0057】
本明細書で使用する「例示的な(illustrative)」という用語は、実施例、事例又は実例の役割を果たすことを意味する。本明細書において「例示的な」ものとして説明したあらゆる態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利なものとして解釈すべきではない。さらに、本開示では、別途指定しない限り、「1つの(英文不定冠詞)」は、「1又は2以上の」を意味する。さらに、「及び(and)」又は「又は(or)」の使用は、別途明確に示していない限り「及び/又は」を含むことが意図されている。例示的な実施形態は、標準的なエンジニアリング技術を用いた方法、装置又は製造の物品として実装することができる。
【0058】
例示的な実施形態
以下の実施形態は例示であり、開示する主題の範囲を限定するものではない。
【0059】
実施形態1。音源からの、第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路と、
音源からの、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路と、
音源からの第3の信号経路と、
を含むシグナルプロセッサ。
【0060】
実施形態2。ローパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0061】
実施形態3。選択的な周波数応答曲線は、フレッチャーマンソン曲線を含み、低周波ロールオフ点は、人間の聴力の低周波ロールオフ点を含む、実施形態2のシグナルプロセッサ。
【0062】
実施形態4。選択的な周波数応答曲線は、
人間の聴力、
ギターピックアップ、
ベースギターピックアップ、
のうちの1つ又は2つ以上に関連する、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0063】
実施形態5。ハイパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる高周波ロールオフ点に関連するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0064】
実施形態6。選択的な周波数応答曲線は、フレッチャーマンソン曲線を含み、高周波ロールオフ点は、人間の聴力の高周波ロールオフ点を含む、実施形態5のシグナルプロセッサ。
【0065】
実施形態7。第1の信号経路からの第1の信号と、第2の信号経路からの第2の信号と、第3の信号経路からのクリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器と、
加算信号を受け取るように構成された励起モジュールと、
をさらに含み、励起モジュールは、
シャープハイパスフィルタと、
高周波調波を生じるように構成された歪みユニットと、
を含む、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0066】
実施形態8。シグナルプロセッサは、
場内放送システム、
補聴器、
電話機、
スピーカ、
1又は2以上のヘッドホン、
コンピュータ、
楽器、
テレビ、
エンターテイメントシステム、
のうちの1つ又は2つ以上と共に使用されるように構成される、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0067】
実施形態9。歪みユニットは、10〜20kHzの範囲の高周波調波を生じるように構成される、実施形態7のシグナルプロセッサ。
【0068】
実施形態10。第1のダイナミックレンジエキスパンダ及び第2のダイナミックレンジエキスパンダの一方又は両方は、浮動閾値に基づいてダイナミックレンジ拡大を実行するように構成される、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0069】
実施形態11。第1の信号経路上のローパスフィルタからの第1の信号と、第2の信号経路上のハイパスフィルタからの第2の信号とを受け取るように構成された加算増幅器をさらに含む、実施形態1のシグナルプロセッサ。
【0070】
実施形態12。第1のダイナミックレンジエキスパンダとローパスフィルタとを含む第1の信号経路と、
第1の信号経路に平行な、第2のダイナミックレンジエキスパンダとハイパスフィルタとを含む第2の信号経路と、
第1の信号経路からの第1の信号と、第2の信号経路からの第2の信号と、クリアな信号とを受け取って加算信号を出力するように構成された加算増幅器と、
を含むオーディオ機器。
【0071】
実施形態13。ローパスフィルタは、人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有し、ハイパスフィルタは、人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、実施形態12のオーディオ機器。
【0072】
実施形態14。オーディオ機器は、
場内放送システム、
補聴器、
電話機、
スピーカ、
1又は2以上のヘッドホン、
コンピュータ、
楽器、
テレビ、
エンターテイメントシステム、
のうちの1つ又は2つ以上を含む、実施形態12のオーディオ機器。
【0073】
実施形態15。ローパスフィルタは、選択的な周波数応答曲線によって定められる低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを有する、実施形態12のオーディオ機器。
【0074】
実施形態16。加算信号を受け取るように構成された励起モジュールをさらに含み、励起モジュールは、
シャープハイパスフィルタと、
高周波調波を生じるように構成された歪みユニットと、
を含む、実施形態12のオーディオ機器。
【0075】
実施形態17。命令を記憶したコンピュータ可読有形媒体であって、この命令は、実行時に、プロセッサに、
音源から受け取られた信号の範囲を動的に拡大して動的拡大信号を生成するステップと、
ローパスフィルタを通じて動的拡大信号をフィルタ処理して第1の処理済み信号を生成するステップと、
ハイパスフィルタを通じて動的拡大信号を平行してフィルタ処理して第2の処理済み信号を生成するステップと、
を含む動作を実行するように指示する、コンピュータ可読有形媒体。
【0076】
実施形態18。人間の聴力の低周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを用いて、ローパスフィルタを通じて動的拡大信号をフィルタ処理して第1の処理済み信号を生成するステップと、
人間の聴力の高周波ロールオフ点と相関するコーナー周波数を含むオクターブスロープを用いて、ハイパスフィルタを通じて動的拡大信号をフィルタ処理して第2の処理済み信号を生成するステップと、
を含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、実施形態17のコンピュータ可読媒体。
【0077】
実施形態19。第1の処理済み信号と、第2の処理済み信号と、音源からのクリーンな信号とを加算して加算信号にするステップと、
シャープハイパスフィルタを用いて加算信号をフィルタ処理することによって加算信号を励起し、加算信号を歪ませて高周波調波を生じるステップと、
を含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、実施形態17のコンピュータ可読媒体。
【0078】
実施形態20。信号の範囲の動的拡大を浮動閾値に従って調整するステップを含む動作を実行するようにプロセッサに指示する命令をさらに含む、実施形態17のコンピュータ可読媒体。
【0079】
開示した主題の例示的な実施形態についての上記説明は、例示及び説明目的で示したものである。上記の説明は、包括的であることや、或いは本開示の主題を開示した精密な形に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして修正例及び変形例が可能であり、或いは本開示の主題を実践することによって変更例及び変形例を得ることができる。実施形態は、本開示の主題の原理を説明するために、また当業者が様々な実施形態において、検討される特定の用途に適した様々な修正を伴って本開示の主題を利用できるように本開示の主題の実用的応用として選択して説明したものである。本開示の主題の範囲は、本明細書に添付する特許請求の範囲及びその同等物によって定められるものとする。
【符号の説明】
【0080】
100 シグナルプロセッサ
102 音源
106 等化強調モジュール
108 加算増幅器
110 ダイナミックレンジエキスパンダ
112 ダイナミックレンジエキスパンダ
114 ローパスフィルタ
116 ハイパスフィルタ
118 励起モジュール
120 加算増幅器
122 フィルタ
124 歪みモジュール
126 積分器
【国際調査報告】