(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019522608
(43)【公表日】20190815
(54)【発明の名称】セラミックマトリックス複合部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20190719BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20190719BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20190719BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20190719BHJP
   C04B 35/185 20060101ALI20190719BHJP
   C04B 35/16 20060101ALI20190719BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20190719BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20190719BHJP
【FI】
   !C04B35/80 300
   !F02C7/00 C
   !F01D5/28
   !F23R3/42 B
   !F02C7/00 D
   !C04B35/185
   !C04B35/16
   !C04B35/50
   !C04B41/87 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】2018559258
(86)(22)【出願日】20170511
(85)【翻訳文提出日】20181226
(86)【国際出願番号】FR2017051128
(87)【国際公開番号】WO2017194886
(87)【国際公開日】20171116
(31)【優先権主張番号】1654200
(32)【優先日】20160511
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516299213
【氏名又は名称】サフラン・セラミックス
【住所又は居所】フランス国、33185・ル・アイヤン、リュ・ドゥ・トゥバン、レ・サンク・シュマン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブイヨン,エリク
【住所又は居所】フランス国、77550・モワシー−クラマイエル・セデックス、レオ−ロン−ポワン・ルネ・ラボー、サフラン・エアクラフト・エンジンズ・ペ・イ(ア・ジ・イ)気付
(72)【発明者】
【氏名】クレランブール,オレリア
【住所又は居所】フランス国、77550・モワシー−クラマイエル・セデックス、レオ−ロン−ポワン・ルネ・ラボー、サフラン・エアクラフト・エンジンズ・ペ・イ(ア・ジ・イ)気付
(72)【発明者】
【氏名】ピン,リサ
【住所又は居所】フランス国、77550・モワシー−クラマイエル・セデックス、レオ−ロン−ポワン・ルネ・ラボー、サフラン・エアクラフト・エンジンズ・ペ・イ(ア・ジ・イ)気付
(72)【発明者】
【氏名】マルサル,ダビド
【住所又は居所】フランス国、77550・モワシー−クラマイエル・セデックス、レオ−ロン−ポワン・ルネ・ラボー、サフラン・エアクラフト・エンジンズ・ペ・イ(ア・ジ・イ)気付
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202EA09
(57)【要約】
複合材料部品
本発明は、
− 原子百分率で1%以下の酸素含有率を示す炭化ケイ素繊維を含む繊維強化材;及び
− 繊維強化材の細孔内に存在し、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含むマトリックス
を少なくとも含む複合材料製の部品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 原子百分率で1%以下の酸素含有率を示す炭化ケイ素繊維を含む繊維強化材;及び
− 繊維強化材の細孔内に存在し、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含むマトリックス
を少なくとも含む複合材料製の部品。
【請求項2】
希土類ケイ酸塩が、化学式RESiO又はRESiを有し、式中REは希土類元素を表す、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
REが、Y、Yb、及びLuから選択される、請求項2に記載の部品。
【請求項4】
マトリックスが、ムライトを含む第1の相と、第1の相とは異なる、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩を含む第2の相とを少なくとも含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
第1の相が、炭化ケイ素繊維と第2の相との間に位置する、請求項4に記載の部品。
【請求項6】
マトリクッスが
− 少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含む少なくとも1種のケイ酸塩相;及び
− 炭化ケイ素繊維とケイ酸塩相との間に位置する、ケイ酸塩相とは異なるセラミック材料製の追加のマトリックス相
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
部品がタービンエンジン部品を構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の部品。
【請求項8】
部品が、分配器、燃焼室の壁、タービンリングセクタ、又はタービンエンジンブレード又は翼の少なくとも一部を構成する、請求項7に記載の部品。
【請求項9】
繊維強化材の細孔内にマトリックスを形成する工程を少なくとも含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の部品を製造する方法。
【請求項10】
マトリックスの少なくとも一部が焼結によって形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1200℃以上の温度が焼結中に課される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
マトリクッスが、少なくとも以下の工程、即ち、
− ムライト又はムライトの少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を繊維強化材の細孔に導入する工程、
− ムライトを含む第1のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に、導入された又は得られたムライトを焼結する工程;
− 第1のマトリックス相で高密度化された繊維強化材の細孔に希土類ケイ酸塩又は希土類ケイ酸塩の少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を導入する工程;及び
− 希土類ケイ酸塩を含む第2のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に導入された又は得られた希土類ケイ酸塩を焼結する工程
を実施することによって形成される、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
部品が1300℃以上の温度で使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の部品を使用する方法。
【請求項14】
部品が、酸化性の湿潤雰囲気で使用される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明の背景>
本発明は、1300℃以上、例えば、1300℃〜1450℃の範囲である高温で使用可能な複合材料製の部品に関する。本発明はまた、そのような部品を製造する方法、及びそれを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジン部品を製造するために最先端をいく様々な材料が提案されてきた。
【0003】
特に、化学気相浸透(CVI)によって形成される炭化ケイ素をベースとするマトリックスと一緒に炭化ケイ素繊維でできた繊維強化材を含むセラミックマトリックス複合(CMC)材料を使用することが知られている。そのような材料は、1300℃又は1400℃のオーダーの温度で、耐用年数について非常に良好な特性を示すが、CVI法を使用するため、製造コストが比較的高い。CMC製部品の製造コストを削減するために、他の解決法が開発されてきた。
【0004】
これに関連して、界面相コーティングでコーティングされた炭化ケイ素をベースとする繊維強化材と、非反応性又は反応性溶融含浸(MI又はRMI)によって形成されたマトリックスとを含む複合材料部品を形成する提案がなされてきた。それにもかかわらず、そのような材料は、マトリックス中に残留ケイ素が存在するために、1300℃より低い温度で使用されることに限定されることがある。酸化物マトリックスと共に酸化物繊維強化材を有する材料も提案されてきた。そのような材料は比較的低い製造コストを示すが、それらも利用温度に関して制限される。
【0005】
したがって、1300℃以上、又は1450℃以上の温度での利用に適合し、比較的低コストの方法によって製造することができる材料を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、その必要性を満たそうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<発明の目的及び概要>
この目的のために、その態様の1つにおいて、本発明は、
− 原子百分率で1%以下の酸素含有率を示す炭化ケイ素繊維を含む繊維強化材;及び
− 繊維強化材の細孔内に存在し、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト(3Al・2SiO)、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含むマトリックス
を少なくとも含む複合材料製の部品を提供する。
【0008】
本発明は、有利には、1300℃以上の温度での使用に適合し、比較的限定された製造コストで製造することができる部品を提供する。さらに、部品のマトリックスは環境バリア材を含むので、本発明の部品は、酸化性の湿潤雰囲気で使用することができる。
【0009】
したがって、マトリックスは、少なくとも1つのケイ酸塩相を含む。ケイ酸塩相は、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライトを含むことができ、又は実際にムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含む混合相であってもよい。
【0010】
一実施形態では、希土類ケイ酸塩は、化学式RESiO又はRESi(REは希土類元素を表す)を有することができる。好ましくは、希土類ケイ酸塩は化学式RESiを有する。
【0011】
希土類元素REは、例えば、Y(イットリウム);Er(エルビウム);Yb(イッテルビウム);Lu(ルテチウム);Dy(ジスプロシウム)である。好ましくは、希土類元素REは、Y;Yb;及びLuから選択することができる。
【0012】
一実施形態では、マトリックスは、ムライトを含む第1の相と、第1の相とは異なる、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩を含む第2の相とを少なくとも含むことができる。
【0013】
マトリックス中にムライトを組み込むことが希土類ケイ酸塩を組み込むよりも安価である限り、部品を製造するコストをさらに低減するために、そのようなマトリックスを使用することが有利である。
【0014】
一実施形態では、第1の相は、炭化ケイ素繊維と第2の相との間に位置することができる。換言すれば、そのような状況下では、ムライトを含む第1の相は繊維のそばに位置し、希土類ケイ酸塩を含む第2の相は、部品の外面のそばに位置する。
【0015】
一実施形態では、マトリクッスは
− 少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含む少なくとも1種のケイ酸塩相;及び
− 炭化ケイ素繊維とケイ酸塩相との間に位置する、ケイ酸塩相とは異なるセラミック材料製の追加のマトリックス相
を少なくとも含む。
【0016】
そのような追加のマトリックス相の存在は、有利には、複合材料部品の機械的特性をさらに改善するのに役立つ。
【0017】
一実施形態では、部品はタービンエンジン部品を構成することができる。
【0018】
部品は、航空エンジン又は産業用タービンのガスタービンの高温部品であることができる。特に、この部品は、分配器、燃焼室の壁、タービンリングセクタ、又はタービンエンジンブレード又は翼の少なくとも一部を構成することができる。
【0019】
また、本発明は、繊維強化材の細孔内にマトリックスを形成する工程を少なくとも含む、上記のような部品を製造する方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、マトリックスの少なくとも一部は焼結によって形成することができる。
【0021】
そのような特性は、有利には、実施コストを低減させる技術を用いて部品を製造するのに役立つ。
【0022】
一実施形態では、マトリックスの全てが焼結によって形成されてもよく、又は変形例では、マトリックスの一部のみを焼結によって形成することができる。
【0023】
特に、1200℃以上の温度を焼結中に課すことができる。
【0024】
そのような特性は、それによって、得られる部品の機械的特性をさらに向上させるために著しい焼結を行うことが可能になるので有利である。
【0025】
一実施形態では、マトリクッスは、少なくとも以下の工程、即ち、
− ムライト又はムライトの少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を繊維強化材の細孔に導入する工程、
− ムライトを含む第1のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に、導入された又は得られたムライトを焼結する工程;
− 第1のマトリックス相で高密度化された繊維強化材の細孔に希土類ケイ酸塩又は希土類ケイ酸塩の少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を導入する工程;及び
− 希土類ケイ酸塩を含む第2のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に導入された又は得られた希土類ケイ酸塩を焼結する工程
を実施することによって形成することができる。
【0026】
そのような方法は、ムライトと希土類ケイ酸塩との両方を含むマトリックスを製造することを可能にし、それは特に低い実施コストで所望の特性を有する部品を得ることを可能にする解決法を構成する。
【0027】
本発明はまた、1300℃以上、例えば、1300℃〜1450℃の範囲内にある温度で使用される、上記部品の使用方法を提供する。特に、部品は、酸化性の湿潤雰囲気中で使用することができる。
【0028】
マトリックスを形成するために使用される材料の性質を考慮すると、部品は、使用されている間、環境バリアコーティングを有さないことが有利である。具体的には、マトリックスは、部品に所望の耐食性を提供する。それにもかかわらず、部品が環境バリアコーティングを備えて使用されても本発明の範囲を超えないであろう。
【0029】
本発明は、非限定的な指示及び添付図面を参照して、以下に与えられる以下の説明を読むと、より深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の部品を製造する方法の第1の例における連続する工程を示す。及び
【図2】本発明の部品を製造する方法の第2の例における連続する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態の詳細な説明>
原子百分率で1%以下の酸素含有率を示す炭化ケイ素繊維は、例えば、日本の供給業者NGSによって「Hi−Nicalon−S」の名称で供給される繊維であることができる。これらの繊維を、以下、「SiC繊維」と呼ぶ。
【0032】
繊維強化材は、3次元又は多層織りによる単一品として、又は複数の2次元の繊維プライから、又は実際には複数の一次元の織物層から製造することができる。
【0033】
用語「3次元織」又は「3D織」は、少なくとも一部の縦糸が複数の横糸層の横糸と連結する織り技術として理解されるべきである。本明細書では、縦糸と横糸との間の役割を交換することが可能であり、その考えられる交換は、請求項によっても保護されると考えられるべきである。
【0034】
一例として、繊維強化材は、マルチサテン織り、即ち、各層の織りが従来のサテン織りと同等である複数の横糸層を有するが、織りの特定の点が横糸層同士市を連結する3次元織りによって得られた織物を呈することができる。変形例では、繊維強化材はインターロック織りを呈してもよい。「インターロック」織又は織物という用語は、縦糸の各層が横糸の複数の層同士を連結し、同じ縦カラムにおける全ての糸が織り面内に同じ動きを有する3D織りを意味するものとして理解されるべきである。繊維強化材の形成に使用するのに適した様々な多層織り技術は、特に文献WO2006/136755号に記載されている。
【0035】
また、SiC繊維の二次元織物又はSiC繊維の一方向シートのような繊維生地を使用して、そのような繊維生地で前者にひだをつけることによって繊維強化材を得ることも可能である。これらの生地は、任意に、繊維強化材を形成するために糸を縫合するか又は植え込むことによって相互につなげられてもよい。
【0036】
SiC繊維は、SiC繊維とマトリックスとの間に存在する界面相によってコーティングされてもよい。界面相は、単一層又は複数の層を含むことができる。界面相は、少なくとも1層の熱分解炭素(PyC)、窒化ホウ素(BN)、ケイ素をドープした窒化ホウ素(BN(Si))(ケイ素は5%〜40%の範囲内にある重量%で存在し、残部は窒化ホウ素)、又はホウ素をドープした炭素(BC、ホウ素は5〜20%の範囲内にある原子百分率で存在し、残部は炭素である)を含むことができる。そのような状況では、界面相の機能は、マトリックスを通って伝搬した後に界面相に達する亀裂を逸らすことを助け、それによりそのような亀裂による繊維の断裂を防止又は遅延させて、複合材料の脆化を緩和することである。
【0037】
マトリックスは、強化材の細孔に存在することによって繊維強化材を高密度化する。マトリックスは、繊維強化材の繊維を覆う少なくとも1つの連続したケイ酸塩相を含む。SiC繊維はマトリックス中に存在する。マトリックスは、繊維強化材中の接近可能な細孔の体積の大部分(即ち、50%超)を占めることができる。特に、マトリックスは接近可能な細孔の体積の75%超過、又は実際には実質的に全てを占めてもよい。
【0038】
マトリックスは、
− 少なくとも1種の希土類ケイ酸塩;又は
− ムライト;又は
− ムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物
を含む少なくとも1つのケイ酸塩相を含む。
【0039】
マトリックスは、有利には、繊維(又は界面相)とケイ酸塩相との間に位置するセラミック材料の追加のマトリックス相も含むことができる。この追加の相は、複合材料部品の機械的特性をさらに改善するのに役立つ。この追加の相は、ケイ酸塩相を構成する材料とは異なる材料によって構成される。追加の相は、炭化物又は窒化物を含むことができる。一例として、追加の相は、SiC、Si、SiN(O)、SiC(B)、又はそのような化合物の混合物を含むことができる。当然のことながら、そのような追加のマトリックス相が存在する場合、追加の相が製造された後に繊維強化材に残っている残留細孔は、ケイ酸塩相が形成されるのに十分である。変形例では、マトリックスはそのような追加の相を有する必要はない。
【0040】
マトリックスの少なくとも50重量%までは、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物によって構成されていてもよい。マトリックスの少なくとも80重量%までは、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物によって構成されていてもよい。特に、不可避の不純物を無視すると、マトリックスは、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物によって完全に構成されていてもよい。
【0041】
一実施形態では、マトリックスは、単一の希土類ケイ酸塩又は同じ希土類又は異なる希土類の複数のケイ酸塩を含む。希土類ケイ酸塩(複数可)は、RESiO又はRESiの形態であることができ、REは希土類元素を示す。例として、REは、イットリウムY、スカンジウムSc、及びランタニド、例えば、イッテルビウムYb、ルテチウムLu、ジスプロシウムDy、エルビウムEr及びランタンLaから選択することができる。上で述べたように、希土類ケイ酸塩(複数可)は有利には、REがY;Yb;及びLuのリストから選択される、RESiの形態を有することができる。
【0042】
本発明の部品を製造する方法の第1の例を、図1を参照して以下に説明する。
【0043】
第1の工程10は、SiC繊維から繊維強化材を製造することからなる。工程10の間に、部品の繊維強化材は、SiC繊維を用いて少なくとも1回の織物操作を行うことによって得ることができる。繊維強化材は、SiC繊維の多層又は三次元織りによって得ることができる。
【0044】
界面相を形成する前にSiC繊維の表面を処理する工程20は、特に繊維上に存在するサイジングを除去するために行われることが好ましい。
【0045】
工程30は、繊維強化材を形成するSiC繊維上にCVIによって脆弱化軽減界面相を形成することからなる。この界面相はPyCから作ることができる。一例として、界面相の厚さは、10ナノメートル(nm)〜1000nmの範囲内、例えば、10nm〜100nmの範囲内にあることができる。界面相が形成された後、繊維強化材は多孔質のままであり、最初に接近可能な細孔の少数部分のみが界面相で充填される。
【0046】
次に、前に形成された界面相上の繊維強化材の細孔内に追加のセラミックマトリックス相が形成される工程35が実行される。この追加の相は、CVIによって形成することができる。
【0047】
その後、工程40の間、例えば、スラリーの形態の含浸組成物は、それ自体既知の方法、例えば、注入によって、繊維強化材の細孔内に導入される。含浸組成物は、液体媒体中に懸濁液の粉末を含んでもよく、又はそれは溶液の形態であってもよい。含浸組成物は、マトリックスのケイ酸塩相を形成するのに使用される成分を供給するのに役立つ。含浸組成物は、既知の方法で結合剤を含むことができる。含浸組成物の組成は、得られるべきケイ酸塩相の組成に応じて決定される。含浸組成物は、以下の成分、即ち、希土類ケイ酸塩の粉末、希土類ケイ酸塩のゾル−ゲル前駆体、ムライト粉末、ムライトのゾル−ゲル前駆体、又はこれらの化合物の混合物の少なくとも1つを含むことができる。特に、含浸組成物は、a)ムライト粉末とムライトのゾル−ゲル前駆体との混合物、又はb)ムライト粉末と希土類ケイ酸塩のゾル−ゲル前駆体との混合物、又はc)希土類ケイ酸塩粉末と希土類ケイ酸塩のゾル−ゲル前駆体との混合物、又はd)希土類ケイ酸塩粉末とムライトのゾル−ゲル前駆体との混合物、又はe)ムライト粉末と希土類ケイ酸塩粉末との混合物、又は実際にf)希土類ケイ酸塩のゾル−ゲル前駆体とムライトのゾル−ゲル前駆体との混合物を含むことができる。含浸組成物中に存在する粉末(複数可)の粒子の平均サイズ(D50)は、5マイクロメートル(μm)以下、実際には1μm以下であることができる。
【0048】
繊維強化材が含浸されたら、それを乾燥させて脱バインダーし、次いで焼結によりケイ酸塩相を形成する(工程50)。1種以上のゾル−ゲル前駆体が含浸組成物に使用される場合、焼結のための熱処理を行う前に、ゾル−ゲル前駆体(複数可)をムライト粉末及び/又は希土類ケイ酸塩粉末に変換する目的で,より低い温度で第1の熱処理が行われる。
【0049】
焼結中に課される温度は、有利には1200℃以上、例えば、1200℃〜1400℃の範囲内にある。繊維強化材を構成するSiC繊維は、そのような温度での焼結工程中に損傷を受けないようにするのに必要な程度に熱安定性を示す。繊維強化材中に存在する粉末を1200℃を超えて焼結することは、得られるケイ酸塩相によってもたらされる機械的特性をさらに改善するのに役立つ。一例として、焼結は空気中で行うことができる。
【0050】
上記の図1は、マトリックスがただ1つのケイ酸塩相を有する状況を示す。それにもかかわらず、図2を参照して以下に説明するように、マトリクッスが複数の異なるケイ酸塩相を含むことは、本発明の範囲を超えないであろう。
【0051】
図2に示す例示的な方法では、工程10、20、30、及び35は、図1を参照して上述したものと同一である。追加のマトリックス相が形成された後、第1の含浸組成物が、繊維強化材の細孔に導入される(工程140)。第1の含浸組成は上記の通りである。第1の含浸組成物は、焼結後にマトリックスの第1のケイ酸塩相を形成するために有用な成分を送達する働きをする(工程150)。
【0052】
第1のケイ酸塩相が形成された後、第1の含浸組成物とは異なる第2の含浸組成物が繊維強化材の細孔に導入される(工程160)。第2の含浸組成は上記の通りである。第2の含浸組成物は、焼結後にマトリックスの第2のケイ酸塩相を形成するのに使用される成分を送達する働きをする(工程170)。第2のケイ酸塩相は、第1のケイ酸塩相を構成する材料とは異なる材料で構成される。
【0053】
第1及び第2のケイ酸塩相は一緒になって、繊維強化材の接近可能な細孔の体積の50%超、例えば、75%超、例えば、実質的に全てを占めることができる。
【0054】
複合材料部品の製造コストをさらに削減するために、第1及び第2のケイ酸塩相の少なくとも1つがムライトを含むことが有利であり得る。したがって、第1のケイ酸塩相はムライトを含むことができ、第2のケイ酸塩相は少なくとも1種の希土類ケイ酸塩を含むことができる。変形例では、第1のケイ酸塩相は少なくとも1種の希土類ケイ酸塩を含むことができ、第2のケイ酸塩相はムライトを含むことができる。ムライトは、複合材料部分の体積の10%〜25%を占めることができる。希土類ケイ酸塩は、複合材料部分の体積の5%〜30%を占めることができる。
【0055】
図示されていない変形例では、ケイ酸塩相(複数可)を形成した後、得られたマトリックスの結合をさらに改善するのに役立つ強化マトリックス相を作ることが可能である。この目的のために、ケイ酸塩相(複数可)にゾル−ゲル前駆体を含浸させ、次いで熱処理を行うことが可能である。熱処理は、ゾル−ゲル前駆体を、得ようとする強化マトリックス相の材料に変換することから始まり、続いて強化マトリックス相を形成するためにこのようにして得られた材料を焼結する。
【0056】
部品は、タービンエンジンの静止部品又は回転部品であることができる。本発明の例示的なタービンエンジン部品は上に述べられている。
【0057】
さらに、上で述べたように、得られた複合材料部品の外面に環境バリアコーティングを施す必要はない。これにより、水蒸気を含む高温の雰囲気での使用に適した部品の製造方法をさらに簡便にすることができる。得られる部品は、1300℃以上、例えば、1300℃〜1450℃の範囲内、例えば、1300℃〜1400℃の範囲内に ある温度で使用することができる。当然のことながら、部品を1300℃より低い温度で使用することは、本発明の範囲を超えないであろう。
【0058】
図1及び図2に示した実施形態では、繊維強化材が最初に形成され、次いで少なくとも1つの含浸組成物がその細孔に導入される。それにもかかわらず、部品が別に形成されることは、本発明の範囲を超えないであろう。
【0059】
したがって、変形例では、SiC繊維に上記の含浸組成物を含浸させることができ、繊維強化材はこのように含浸されたSiC繊維のフィラメントを巻き取ることによって製造される。その後、複合材料部品を得るために、繊維強化材は乾燥及び脱バインダー工程に供され、次いで上記のように焼結を行うことができる。
【0060】
変形例においても、上記の含浸組成物を含浸したSiC繊維を用いて一方向シートを形成することができる。このようにして形成された一方向シートでひだをつけることによって繊維強化材を得ることができ、次いで、上記のように焼結により部品を形成することができる。
【0061】
別の変形例では、繊維強化材は、含浸組成物で予め含浸された複数の二次元繊維プライでひだをつけることによって形成することができる。
【0062】
上記の3つの変形例の全てでは、含浸組成物で含浸する前に任意にSiC繊維上に界面相を形成することが当然のことながら可能であり、界面相は上記の通りである。
【0063】
「範囲内にある」という用語は、境界を含むものとして理解されるべきである。
【図1】
【図2】
【手続補正書】
【提出日】20190110
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 原子百分率で1%以下の酸素含有率を示す炭化ケイ素繊維を含む繊維強化材;及び
− 繊維強化材の細孔内に存在し、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含む焼結ケイ酸塩相を含むマトリックスであって、ムライトを含む第1の相と、第1の相とは異なる、少なくとも1種の希土類ケイ酸塩を含む第2の相とを少なくとも含むマトリックス、
を少なくとも含む複合材料製の部品。
【請求項2】
希土類ケイ酸塩が、化学式RESiO又はRESiを有し、式中REは希土類元素を表す、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
REが、Y、Yb、及びLuから選択される、請求項2に記載の部品。
【請求項4】
第1の相が、炭化ケイ素繊維と第2の相との間に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
マトリクッスが
− 少なくとも1種の希土類ケイ酸塩、ムライト、又はムライトと少なくとも1種の希土類ケイ酸塩との混合物を含む少なくとも1種のケイ酸塩相;及び
− 炭化ケイ素繊維とケイ酸塩相との間に位置する、ケイ酸塩相とは異なるセラミック材料製の追加のマトリックス相
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
部品がタービンエンジン部品を構成する、請求項1からのいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
部品が、分配器、燃焼室の壁、タービンリングセクタ、又はタービンエンジンブレード又は翼の少なくとも一部を構成する、請求項に記載の部品。
【請求項8】
繊維強化材の細孔内にマトリックスを形成する工程を少なくとも含み、ケイ酸塩相が焼結によって形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の部品を製造する方法。
【請求項9】
1200℃以上の温度が焼結中に課される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
マトリクッスが、少なくとも以下の工程、即ち、
− ムライト又はムライトの少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を繊維強化材の細孔に導入する工程、
− ムライトを含む第1のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に、導入された又は得られたムライトを焼結する工程;
− 第1のマトリックス相で高密度化された繊維強化材の細孔に希土類ケイ酸塩又は希土類ケイ酸塩の少なくとも1つのゾル−ゲル前駆体の少なくとも1種の粉末を導入する工程;及び
− 希土類ケイ酸塩を含む第2のマトリックス相を形成するために、ゾル−ゲル前駆体を変換した後に導入された又は得られた希土類ケイ酸塩を焼結する工程
を実施することによって形成される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
部品が1300℃以上の温度で使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の部品を使用する方法。
【請求項12】
部品が、酸化性の湿潤雰囲気で使用される、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】