(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019522667
(43)【公表日】20190815
(54)【発明の名称】オレフィンのオリゴマー化法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/32 20060101AFI20190719BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20190719BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20190719BHJP
   B01J 31/14 20060101ALI20190719BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190719BHJP
【FI】
   !C07C2/32
   !C07C11/02
   !B01J31/24 Z
   !B01J31/14 Z
   !C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】2019501563
(86)(22)【出願日】20160715
(85)【翻訳文提出日】20190308
(86)【国際出願番号】RU2016000443
(87)【国際公開番号】WO2018012997
(87)【国際公開日】20180118
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513322589
【氏名又は名称】パブリック・ジョイント・ストック・カンパニー・“シブール・ホールディング”
【住所又は居所】ロシア・626150・チュメニ・リージョン・トボリスク・イースタン・インダストリアル・エリア・ブロック・1・ナンバー・6・ビルディング・30
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウラジスラフ・アレクサンドロヴィッチ・カルダシ
【住所又は居所】ロシア・634523・トムスカヤ・オーブラスチ・トムスキー・ラヨン・クルレク・ウーリツァ・トラクトヴァヤ・4・クヴァルリーラ・1
(72)【発明者】
【氏名】デニス・アレクセヴィッチ・レネフ
【住所又は居所】ロシア・141407・モスクフスカヤ・オーブラスチ・ヒムキ・ウーリツァ・パンフィロヴァ・10・クヴァルリーラ・260
(72)【発明者】
【氏名】マキシム・ウラジミロヴィッチ・リプスキフ
【住所又は居所】ロシア・634059・トムスク・ウーリツァ・インテルナツィオナリストフ・19/1−89
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・アセベド・フォレロ
【住所又は居所】ロシア・643003・トムスク・ペレウロク・シュコリニ・21−51
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA04
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4H006BC19
4H006BC32
4H006BE50
4H039CA29
4H039CL19
(57)【要約】
本発明は、C〜Cオレフィンのオリゴマー化によってα−オレフィンを製造する方法に関する。この方法は、遷移金属源、アルキルアルミノキサンである活性化剤、及び式(I):ArArP−N(R)−PArAr[式I](式中、Ar1〜4は同じであるか異なり、置換又は非置換のC〜C10アリール基から選択され、Rは直鎖状又は分岐状のC〜Cアルキル基、置換又は非置換のC〜C10アリール基、及び置換又は非置換のC〜C10シクロアルキル基から選択される)の化合物を含む触媒システムの存在下で、C〜Cオレフィンのオリゴマー化によって行われ、前記のオリゴマー化が、二環式化合物又は複数の二環式化合物の混合物、好ましくはデカリンである溶媒中で行われる。請求項に係る方法は、オリゴマー化プロセス時の触媒の活性の顕著な増大をもたらし、その結果として、触媒単位の消費の低下、並びにポリマー副生物の形成の低下をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属源、アルキルアルミノキサンである活性化剤、及び下記式(I):
ArArP−N(R)−PArAr [式I]
(式中、Ar1〜4は同じであるか異なり、置換又は非置換のC〜C10アリール基から選択され、
Rは直鎖状又は分岐状のC〜Cアルキル基、置換又は非置換のC〜C10アリール基、及び置換又は非置換のC〜C10シクロアルキル基から選択される)
の化合物を含む触媒システムの存在下でのC〜Cオレフィンのオリゴマー化によるα−オレフィンの製造方法であって、
前記オリゴマー化のプロセスが、二環式化合物又は複数の二環式化合物の混合物である溶媒中で行われる、製造方法。
【請求項2】
前記オリゴマー化が三量化又は四量化である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
〜Cオレフィンがエチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遷移金属が、Ti、Zr、Hf、Ni、Cr、Fe、Co、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、好ましくは遷移金属がCrである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属源が、式:MeX(式中、Meは、Ti、Zr、Hf、Ni、Cr、Fe、Co、Pd、Pt、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される遷移金属であり;Xは有機又は無機置換基であり、互いに同じであるか又は異なり;nは1〜6の整数である)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Xは1〜20個の炭素原子を有する有機置換基であり、かつ、アルキル、アルコキシ、カルボキシル、アセチルアセトナート、アミノ、アミド、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Xは無機置換基であり、かつ、遷移金属のハライド、サルフェート、及びオキサイドを含む群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属源が式:CrXのCr化合物であって、塩化クロム(III)、酢酸クロム(III)、トリス-エチルヘキサン酸クロム(III)、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)ピロリド、酢酸クロム(II)、及びクロム(IV)ジオキシドジクロリドを含む群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
アルキルアルミノキサンがメチルアルミノキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
二環式化合物がデカリン(デカヒドロナフタレン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デカリンが、シスデカリン、トランスデカリン、又はそれらの混合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
デカリンが、30質量%以下の不純物しか含まない、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
触媒システムが亜鉛化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
亜鉛化合物が、アルキル亜鉛化合物、アリール亜鉛化合物、亜鉛アミド、亜鉛の酸素化物(zinc oxygenate)、ハロゲン化亜鉛、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
亜鉛化合物が亜鉛金属(Zn)である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
亜鉛化合物がジエチル亜鉛である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
Ar1〜4が、フェニル、トリル、エチルフェニル、クミル、及びナフチルを含む群から選択されるアルキルアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Rが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、アリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、及びシクロノニルを含む群から選択される基である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
触媒システムが、遷移金属源と式(I)の化合物を混合することによって調製され、前記混合が、均質な混合物を調製するために超音波への曝露下で行われ、調製された混合物が続いてアルキルアルミノキサンと混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
触媒システムが均一系又は不均一系である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
遷移金属源と式(I)の化合物の混合が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、及びクメン、好ましくはトルエン及びエチルベンゼンを含む群から選択される溶媒中で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
触媒システムを調製する時に亜鉛化合物を添加することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
触媒システム中のアルミニウム:遷移金属の比が10:1〜5000:1、好ましくは100:1〜1000:1、最も好ましくは200:1〜500:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
触媒システム中の式(I)の化合物:遷移金属の比が、2:1〜1:2、好ましくは1・5:1〜1:1.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
触媒システム中の亜鉛:遷移金属の比が2:1〜1000:1、好ましくは20:1〜200:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
a)触媒システムを二環式化合物又は複数の二環式化合物の混合物である溶媒と混合する工程;
b)得られた混合物をオリゴマー化反応器に供給する工程;及び
c)C〜Cオレフィンをオリゴマー化反応器に供給し、オリゴマー化を行ってα−オレフィンを調製する工程、
を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
オリゴマー化反応器が、撹拌機を備えた連続式反応器、バッチ式反応器、プラグフロー反応器、及び管状反応器を含む群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
触媒システムが、その調製後、60分、好ましくは20分、最も好ましくは5分を超えない時間で添加される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
オリゴマー化が、0〜160℃、好ましくは30〜120℃、最も好ましくは40〜80℃の温度で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
反応器内でのオリゴマー化の時間が30〜60分である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
水素ガスを供給することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
デカリン中の芳香族炭化水素の含有量が2質量%以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項33】
デカリンが実質的にテトラリンを含まない、請求項10に記載の方法。
【請求項34】
製造されたα−オレフィンがC〜C40α−オレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
α−オレフィンが好ましくはヘキセン−1及びオクテン−1を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
反応器からの流出物を100℃〜20℃の温度に、好ましくは95℃未満、90℃未満、85℃未満、80℃未満、75℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、又は25℃未満の温度に冷却する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
反応器からの流出物が20〜25℃の温度に冷却される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
反応器からの流出物を、水、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類、及びそれらの混合物を含む群から選択される失活剤で処理する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
失活剤が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール、及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
失活剤が、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピペラジン、ピリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
失活剤が、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、及びそれらの混合物を含む群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法によるC〜Cオレフィンのオリゴマー化によって製造されるα−オレフィン。
【請求項43】
ヘキセン−1又はオクテン−1である、請求項42に記載のα−オレフィン。
【請求項44】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法にしたがいC〜Cオレフィンのオリゴマー化によってα−オレフィンを製造する方法における、二環式化合物又は複数の二環式化合物の混合物である溶媒の使用。
【請求項45】
溶媒がデカリンである、請求項44に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン、特にプレミアムグレードの線状低密度ポリエチレン、流動抵抗低減剤のためのポリ−α−オレフィン及びプラストマーの製造に使用されるオクテン−1を製造するための、並びに線状低密度及び高密度ポリエチレン、ポリヘキセンなどの製造のために用いられるヘキセン−1を製造するための、オレフィンのオリゴマー化の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7550639号明細書(2009年6月23日に発行された。「住友化学社(日本国)」)には、クロム源、以下の式:(Ph1)(Ph2)P-N(R2)-P’(Ph3)(Ph4)(式中、Ph1-4は好ましくはフェニル、2-トリル、2-エチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、2-フェニルフェニル、3-メトキシフェニルなどであり;R2は水素原子、又はヒドロカルビル基、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、又はフェニルであることができる)の配位子を含む触媒システムの存在下、トルエン中での、エチレンのオリゴマー化の方法が開示されている。活性化剤は有機アルミニウム化合物、すなわちメチルアルミノキサン(MAO)とトリオクチルアルミニウムとの混合物である。この文献は、追加のアルミニウム化合物の添加が、オリゴマーに関して、そのシステムの効率を向上させることを教示している。その方法は、ヘキサン−1及びオクテン−1をそれぞれ最高で14.4質量%及び46質量%含む生成物をもたらす(実施例4)。この発明の明白な欠点は、顕著な量のオクテン−1を伴いながら、液状オリゴマーに基づいて27%の量のポリエチレンの形成である(実施例4)。
【0003】
エチレンのオリゴマー化の公知の方法は、クロム化合物及び一般式:R1R2P-N(R3)-P(R4)-NR5R6又はR1R2P-N(R3)-P(XR7)2(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は独立に、C1-C10アルキル、C6-C20アリール、C3-C10シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、又はトリアルキルシリル、最も好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロヘキシル、フェニル等である)の配位子、又は前記の配位子の環状誘導体を含む触媒システムの存在下(ここで、前記のPNPN又はPNP構造中の少なくとも1つのP又はNが環状システムの一部であり、Xは酸素又は硫黄原子である)で行われる(2015年2月4日に刊行された欧州特許出願公開第2832445号、Linde AG [DE]及びSaudi Basic Industries Corporation [SA] )。触媒活性化剤あるいは助触媒は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、MAO、変性MAO(MMAO)などである。特定の実施形態では、アルミニウム含有量は7重量%である。溶媒は芳香族炭化水素(トルエン、クロロベンゼン)である。この方法は、ヘキセン−1及びオクテン−1の同時製造、並びに高い選択性及び触媒活性を提供する。この方法の欠点は、複雑且つ多段階の手順で合成される非対称PNPN配位子及び変性メチルアルミノキサン(MMAO)を使用する必要があることである。この発明の一実施形態(実施例3**)では、この方法は、トルエン中10%溶液の形態で使用される未変性MAOの存在下で行われる。しかしながら、得られた結果は、MAOの使用が、好ましくはヘキセン−1の形成をもたらすこと、すなわち三量体化プロセスが優勢であることを示している。さらに、得られるC6及びC8オレフィンの総量に関して、α−オレフィンへの選択率は低い。したがって、実施例3**では、生成物中のそれらの含有量はそれぞれ45.8及び37.6重量%であった。C6−1及びC8−1への選択率は、それぞれ92.6%及び99.1%だった。さらに、C6及びC8オレフィンに加えて、大量のC10+オリゴマー(15.7重量%)が存在する。実施例Cでは、MAOもトルエン中10%溶液の形態で使用され、溶媒はクロロベンゼンである。この試験は、ヘキセンと比較して多量のオクテン(それぞれ46.5及び36.4重量%)の形成を示すが、ヘキセン−1及びオクテン−1に対する選択率は低い(それぞれ86.2及び99%)。さらに、多量のC10+オリゴマー(15.6重量%)及び多量のポリマー副生成物(全生成物の総重量(80 g)に基づいて7 g)の形成に注目すべきである。
【0004】
エチレンのオリゴマー化の他の方法は、クロム源;一般式:(Ph1)(Ph2)P-N(R2)-P’(Ph3)(Ph4)(式中、Ph1-4はフェニル基であり、Ph1-4置換基のうち少なくとも1つはそのオルト位にハロゲンが置換しているか又はオルト位に置換基を有しておらず、R2は水素原子、C1-C20炭化水素置換基、又はシリルである)の配位子;及び活性化剤(MAO)を含む触媒の存在下で行われる(米国特許第7,906,681号明細書、2011年3月15日刊行、「Nova Chemicals (International) S.A. [CH]」)。溶媒はトルエンである。この方法は、80%のエチレン転化率並びにヘキサン−1及びオクテン−1への高い選択率をもたらす。しかしながら、その方法は、4個のフェニル置換基中にフッ素原子を有する、高価で入手困難なジホスフィン配位子を必要とする。
【0005】
エチレンの四量化の他の公知の方法は、クロム源、一般式:(R1)mAXYの配位子、並びに有機アルミニウム化合物及び/又は有機ホウ素化合物(好ましくはMMAOが用いられる)である活性剤を含む触媒の存在下で行われる(国際公開第2014/181250号、2014年11月13日刊行、「Sasol Technology(Proprietary)Limited [ZA]」)。この方法は、溶媒中で、80〜120℃で行われる。配位子(R1)mAXYは、その構造がリン含有複素環Y中にリン原子、例えば、ホスホール又はジベンゾホスオールを含むことを特徴とする。配位子のこの新しい式は、高温での触媒安定性を高め、形成されたポリエチレンが溶液中に残る合成を可能にする。これにより、反応器、パイプ、熱交換器、及び他の機器を汚すことなく、かつ洗浄目的で運転停止することのないプロセスを可能にする。この方法はまた、生成物中に高含量のオクテン−1をもたらす。特定の実施形態では、オクテン−1の含有量は68.1質量%に達する。しかしながら、前述の方法は、高価で且つ入手困難な非対称ジホスフィン配位子を必要とする。さらに、それは多量のC10+オリゴマー(19.5重量%まで)の形成をもたらし、そしてオクテン−1の量が増えるにつれて、ポリマー副生成物の形成も増加する(13.6重量%まで)。
【0006】
別の既知の方法は、連続プロセス中に80〜115℃の温度にて活性化触媒の存在下でエチレンを四量化する方法である(米国特許出願公開第2015/0080629号、2015年3月19日刊行、「Sasol Technology (Proprietary) Limited [ZA]」)。活性化触媒は、クロム源、一般式:R1R2P1XP2R3R4のジホスフィン配位子を混合することによって調製することができ、式中、Xは-N(Ar)-N(Ar)- (Arはアリールである)、-N(Alk)-N(Alk)-(Alkはアルキル又はシクロアルキルである)であることができ;R1、R2、R3、及びR4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、トリル、キシリル、クミルなどである。触媒活性化剤はMMAOである。溶媒はメチルシクロヘキサンである。プロセス条件は、形成されたポリエチレンが溶液中に残る合成を可能にする。これにより、反応器、パイプ、熱交換器、及び他の機器を汚すことなく、且つ洗浄目的で運転停止することのないプロセスを可能にする。この方法の不利な点は、高価で且つ入手困難な配位子及び修飾活性化剤の使用である。加えて、形成される副生成物の量は、形成されたオクテン−1の増加量に応じて増える。
【0007】
エチレンの四量化の別の方法は、クロム源、一般式:(Ar1)(Ar2)P-N(R)-P’(Ar3)(Ar4)の配位子(Rは水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール等であり、Ar1-4は好ましくはフェニル又は置換フェニルである);及び金属含有活性化剤を含む触媒の存在下で行われる。活性化剤はMMAOである(米国特許第8,461,406号明細書、2013年6月11日刊行、「Sasol Technology (PTY) Limited [ZA]」)。反応器1内でエチレンの存在下で触媒を短時間予備活性化した後、反応器2内で前記の触媒を溶媒でさらに希釈してアルミニウム及びクロムの濃度を低下させ、これによってポリエチレンに対して液状オリゴマーへの選択率及び比活性の急激な上昇がもたらされる。溶媒は、環状化合物及びそれらの誘導体を含み得る脂肪族炭化水素から選択される。特定の実施形態では、ヘキセン−1及びオクテン−1への選択率はそれぞれ15及び69.3質量%である。この方法の不利な点は、2つの反応器を使用するために金属消費量が増大することである。加えて、生成物中のオクテン−1の高い含有量は、変性メチルアルミノキサン(MMAO)が使用され且つ溶媒がメチルシクロヘキサンであるときに達成される。この発明の記載はまた、MAO及び溶媒としてトルエンを用いた例を提供するが、生成物中のオクテン−1の含有量は0.5〜8.5重量%であり、すなわち三量化プロセスが優位である。
【0008】
エチレンの四量化の別の公知の方法は、クロム源及び一般式:一般式:(Ar1)(Ar2)P-N(R)-P’(Ar3)(Ar4)の配位子(Rは、水素原子、ヒドロカルビル基、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル基、又はハロゲンであり、Ar1-4は、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、クミルなどである)の配位子を混合することによって調製される触媒系の存在下で行われる(米国特許第8,859,696号明細書、2014年10月14日刊行、「Sasol Technology (PTY) Limited [ZA]」)。触媒活性化剤は、共活性剤(トリアルキルアルミニウム)と組み合わせた、一般式:[(R)xL*-H]*[B(R4)4]-の有機ホウ素化合物、又は有機アルミニウム化合物(変性メチルアルミノキサン(MMAO)など)である。さらに、反応物質に、ハロゲン化亜鉛、含酸素亜鉛、アルキル亜鉛などの亜鉛含有化合物を添加して、形成されるポリエチレンの量を低減させる。この方法の欠点は、触媒システムの追加の活性化剤及び共活性化剤を使用する必要があることである。さらに、この発明の説明は、オクテン−1及びヘキセン−1への選択率を示しておらず、オクテン及びヘキセンに対する全選択率のみを示している。
【0009】
さらに、米国特許出願公開第2015/0080629号明細書、米国特許第8,461,406号明細書、同8,859,696号明細書は、脂肪族溶媒に可溶性の変性メチルアルミノキサンMMAO、すなわち、C2-C20アルキル、例えばイソブチル又はオクチルを含有するメチルアルミノキサン(MMAO-4A及びMMAO-12A、Akzo Nobel社)の使用を含む方法を教示している。しかしながら、MMAOを製造する方法は複雑且つ多段階であり、そしてトリメチルアルミニウム以外の追加の有機アルミニウム化合物の使用を必要とする。従って、例えばMMAOを製造するための加水分解法は、例えば、最初に長鎖トリアルキルアルミニウムの加水分解、次に反応混合物へのトリメチルアルミニウムの添加、そしてその後、得られた混合物の追加の加水分解を必要とし、この手順を数回繰り返さなければならず、これは欧州特許出願公開第1352913号明細書(2003年10月15日刊行、「Tosoh Finechem Corp.[日本国]」)に開示されているとおりである。
【0010】
開発されたものに最も近い方法は、国際公開第2004/056479号(2004年7月8日、「Sasol Technology (PTY) LTD [ZA]」)に開示されているオレフィンの四量化法である。この方法は、クロム源、一般式:(R1)(R2)P-N(R5)-P(R3)(R4)(式中、R1-4は独立に、ベンジル、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどであり、R5は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ハロゲンなどである)の配位子;及び活性化剤(これはMAOである)を含む触媒システムの存在下で行われる。この方法は、生成物中、30質量%以上の四量体含有量をもたらす。
【0011】
しかしながら、入手可能な未変性メチルアルミノキサンの使用は、未変性MAOが脂肪族及び脂環式溶剤に不溶なので芳香族溶剤のみしか使用できないなどの多くの制限を有する。言い換えると、芳香族溶媒の使用は、触媒システムの低下した安定性をもたらす。さらには、芳香族溶媒中で未変性MAOを使用することによって得られる生成物は、芳香族溶媒が非常に有毒でありそして生成物中に微量で存在し得るので、用途が限られる。国際公開第2004/056479号は、PNP-MAO-Cr触媒システムがトルエン又はシクロヘキサン中での高い活性(20,000〜500,000 g/g Cr*h)によって特徴づけられることを示している(実施例2、22)。本発明の発明者らによって行われた比較実験は、実施例2及び22の結果(表1、600〜2,700 g/g Cr*hの活性)を再現することに成功しなかった(比較実験(例5及び6)を参照されたい)。比較実験で得られた結果はまた、Rosenthalらの論文に開示されたデータと整合している(Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 297(2009)1-8を参照されたい)。この文献はまた、Cr-PNP-MAOが用いられた場合に、トルエンに対するはるかに低い活性も示している(1,000〜2,000 g/g Cr*h)。さらに、かなりの量のポリエチレンスラリー(収率の50%まで)がトルエン中で形成すること、特に、使用した触媒システムが60分以上の貯蔵時間を有する場合にそのようになることが見出された。
【0012】
したがって、ヘキセン−1とオクテン−1の同時製造を目的としたエチレンのオリゴマー化の公知の方法は、入手困難且つ高価な配位子と活性化剤、例えば、複雑且つ多段階の方法によって合成され改良される変性MAOなどからなる触媒システムの使用が必要であることによって特徴づけられる。同時に、未変性MAOの使用は、四量体化(オクテン−1を形成する)よりもむしろ三量体化(ヘキセン−1を形成する)が主な反応になることをもたらす。
【0013】
加えて、これらの方法では、オクテン−1が最終生成物中で増加するにつれて、C10+及び/又はポリマーなどの副生成物の生成が増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,550,639号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2832445号明細書
【特許文献3】米国特許第7,906,681号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/181250号
【特許文献5】米国特許出願公開第2015/0080629号明細書
【特許文献6】米国特許第8,461,406号明細書
【特許文献7】米国特許第8,859,696号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1352913号明細書
【特許文献9】国際公開第2004/056479号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Rosenthalら, Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 297(2009)1-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、比較的安価で且つ容易に合成される配位子、例えば、式:(PhP)NR(PNP)の対称性の非置換フェニルホスフィン配位子と、活性化剤、例えば未変性MAOの存在下で、α−オレフィン類を製造するためのC〜Cオレフィンのオリゴマー化の効率的な方法、特に、ヘキセン−1及びオクテン−1を得るためのエチレンの三量化及び四量化の同時並行プロセスによる効率的な方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、C〜Cオレフィンのオリゴマー化によるα−オレフィン類の製造方法、すなわち、高効率及びより少ない副生成物の生成を特徴とするヘキセン−1及びオクテン−1の同時製造の方法を提供する。
【0018】
α−オレフィン類の製造方法は、遷移金属源、アルキルアルミノキサンである活性化剤、及び下記式(I):
ArArP−N(R)−PArAr [式I]
(式中、Ar1〜4は同じであるか異なり、置換又は非置換のC〜C10アリール基から選択され、Rは直鎖状又は分岐状のC〜Cアルキル基、置換又は非置換のC〜C10アリール基、及び置換又は非置換のC〜C10シクロアルキル基から選択される)
の化合物を含む触媒システムの存在下でのC〜Cオレフィン類のオリゴマー化によって行われる。
【0019】
このオリゴマー化プロセスは、二環式化合物(ビシクロ化合物)又は複数の二環式化合物(ビシクロ化合物)の混合物である溶媒中で行われる。
【0020】
特許請求の範囲に規定する方法は、このオリゴマー化プロセス時に増大した触媒活性(最大7,8000 gオレフィン/g金属/時間)をもたらし、その結果として、触媒単位の消費の低下をもたらす。さらに、この方法は、ヘキセン−1及びオクテン−1を調製する方法の効率の増大と、ポリマー副生成物の生成の低下(反応生成物の合計収量の1%まで)を可能にする。
【0021】
本発明の発明者は、二環式化合物(ビシクロ化合物)又は複数の二環式化合物(ビシクロ化合物)の混合物である溶媒の使用が、C〜Cオレフィンのオリゴマー化の触媒システムの増大した活性、及びポリマー副生成物の低減した形成を促進することを発見した。オリゴマー化プロセスにおける前記の溶媒の使用は、オリゴマー化に用いる触媒の活性を増大させ、α−オレフィン、特にヘキセン−1及びオクテン−1に対する選択率を向上させる。二環式化合物(ビシクロ化合物)は、デカリン(デカヒドロナフタレン、ビシクロ[4.4.0]デカン)及びその誘導体であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、エチレン四量化のためのPNP配位子のPMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、二環式化合物(ビシクロ化合物)又は複数の二環式化合物(ビシクロ化合物)の混合物である溶媒中で触媒システムの存在下におけるC〜Cオレフィンのオリゴマー化によってα−オレフィンを製造する方法に関する。
【0024】
溶媒として使用される二環式化合物は、デカリン又はその誘導体であることができる。 デカリンは、シスデカリン、トランスデカリン、又は任意の適切な比率のそれらの混合物であり得る。デカリンは30質量%以下の不純物、特に触媒に対して不活性な不純物、例えば、デカリンのアルキル誘導体、特に、1−メチルデカリン、2−メチルデカリン、エチルデカリン、プロピルデカリン、ブチルデカリン、並びにその他のアルキル及びイソアルキル誘導体;パーヒドロインダン(ビシクロ[4.3.0]ノナン)、パーヒドロアズレン(ビシクロ[5.3.0]デカン)、及びそれらのアルキル誘導体などを含んでいてもよい。
【0025】
上記二環式化合物及びそれらの誘導体、特にデカリン、パーヒドロインダン、パーヒドロアズレン、及びそれらの誘導体の源は、コールタール、及び重質熱分解樹脂(heavy pyrolysis resin)である。それらは、ナフタレン、アルキルナフタレン、インデン、及びアズレンを含み、それらは貴金属上での徹底的な水素化によって、対応するパーヒドロ誘導体に変換することができる。テトラヒドロナフタレン(テトラリン)は、ナフタレンの不完全水素化の大量生産生成物であり、褐炭のための溶媒として用いられ、デカリンはテトラリン生産のプロセスの副生成物である。
【0026】
本発明の発明者は、デカリンが、MAOの存在下での活性オリゴマー化、すなわち、三量化及び四量化を促進することを初めて発見した。
【0027】
特許請求の範囲に記載のオレフィンのオリゴマー化の方法は、遷移金属源、P−N−P配位子、及び活性化剤(これはアルキルアルミノキサンである)を含む触媒の存在下において、オリゴマー化条件下でα−オレフィン含有原料を反応させることを含む。前記の反応はデカリン中で進行する。
【0028】
特許請求の範囲に規定した方法は、オレフィンのオリゴマー化を含めて、様々なオリゴマー化のプロセスのために、例えば、C〜Cオレフィン、例えばエチレンの三量体化及び四量体化に使用することができる。
【0029】
上で示したように、オリゴマー化プロセスは、遷移金属源、P−N−P配位子、及び活性化剤(これはアルキルアルミノキサンである)を含む触媒の存在下で行われる。
【0030】
遷移金属は、Ti、Zr、Hf、Ni、Cr、Fe、Co、Pd、Ptなど、又はそれらの組み合わせであることができる。好ましくは、遷移金属は、クロム(Cr)、チタン(Ti)、又はジルコニウム(Zr)である。 最も好ましくは、遷移金属はクロム(Cr)である。
【0031】
遷移金属源は有機及び/又は無機化合物であり得る。金属の酸化度は、用いた金属に左右される。一般に、金属源は一般式MeXの化合物であり、MeはTi、Zr、Hf、Ni、Cr、Fe、Co、Pd、Ptなど、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属であり、Xは同一でも異なっていてもよく、nは1〜6の整数である。Xは有機又は無機置換基であることができる。Xが有機置換基である場合、それは1〜20個の炭素原子を含むことができ、かつ、アルキル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アセチルアセトナート基、アミノ基、アミド基等であることができる。Xの適切な無機置換基には、遷移金属のハライド、サルフェート、オキサイド、及びその他のものが含まれる。
【0032】
遷移金属源の例には、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、塩化ジルコニウム(IV)、オキシ塩化ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)ブトキシド、コバルト(II)エチルヘキサノエート、塩化ハフニウム(IV)、塩化ニッケル(II)、塩化鉄(III)、コバルト(II)エチルヘキサノエート、塩化パラジウム(II)、ヘキサクロロ白金酸(IV)などが含まれる。
【0033】
遷移金属がクロムの場合、クロム源は有機及び/又は無機クロム化合物であり得る。化合物中のクロムの酸化度はさまざまな値であることができ、0、+1、+2、+3、+4、+5、及び+6に等しいことができる。一般に、クロム源は一般式CrXの化合物であり、式中、Xは同一でも異なっていてもよく、nは1〜6の整数である。Xは有機又は無機置換基であることができる。Xが有機置換基である場合、それは1〜20個の炭素原子を含有することができ、そしてアルキル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アセチルアセトナート基、アミノ基、アミド基等であり得る。Xの適切な無機置換基には、ハライド、サルフェート、酸化クロムなどが挙げられる。クロム源の例には、塩化クロム(III)、酢酸クロム(III)、トリス-エチルヘキサン酸クロム(III)、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)ピロリド、クロム(II)アセテート、クロム(IV)ジオキシドジクロリド(CrOCl)などが含まれる。
【0034】
触媒システムの成分であるP−N−P配位子は下記一般式で表すことができる。
ArArP−N(R)−PArAr
式中、
Ar1−4は、同じでも異なっていてもよく、置換又は非置換のC〜C10アリール基、例えば、フェニル、トリル、エチルフェニル、クミル、ナフチル、最も好ましくはo−置換基を有さないアルキルアリール、特にp−トリル、m−エチルフェニル、又は非置換フェニルであり;
Rは、直鎖状又は分枝鎖状のC〜Cアルキル、置換又は非置換のC〜C10アリール、置換又は非置換のC〜C10シクロアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ベンジル、アリル、最も好ましくは1つのα−分岐を有するアルキル、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどである。
【0035】
P−N−P配位子は、塩基の存在下で、アルキルアミンとジアリールクロロホスフィン(1又は複数)とを反応させることによって調製することができる。
【0036】
カチオン性遷移金属錯体のための金属アルキル及び対イオン(アルミネート)を形成するための遷移金属のアルキル化に用いられる活性化剤は、未変性アルキルアルミノキサンである。未変性メチルアルミノキサン(アルミノキサン)が好ましい。MAOをトルエン中の10%溶液の形態で使用することがより好ましい。しかしながら、文献中のデータに基づくと、他のアルミノキサン類(エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン)の使用は、それらのより低いイオン化能力のためにあまり好ましくない(D.B. Malpass, Commercially Available Metal Alkyls and Their Use in Polyolefin Catalysts, p. 13 (part 1.5.4), Handbook of Transition Metal Polymerization Catalysts Ed. By Ray Hoff and Robert T. Mathers 2010 John Wiley & Sons, Inc)。
【0037】
クロム源、P−N−P配位子、及びアルキルアルミノキサンを含む触媒システムは、クロム源とP−N−P配位子とを混合し、その混合は好ましくは触媒システムを均質化するために超音波への曝露下で行われ、続いて、得られた混合物をアルキルアルミノキサンと混合することによって調製することができる。有機金属触媒は均一系でも不均一系でもよい。
【0038】
触媒システムの成分の比率は変えることができる。遷移金属:PNP配位子:アルミニウムのモル比は、1:0.1〜10:10〜5000、好ましくは1:0.5〜2:100〜1000、より好ましくは1:0.6〜1.5:200〜500であることができる。
【0039】
金属源とP−N−P配位子との混合は、金属源、特にクロムと配位子の両方を溶解している溶媒中で実施することができる。前記の溶媒は、芳香族及び脂肪族の両方、並びに脂環式溶媒であってよく、これらにはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クメン、及びその他の芳香族溶媒が含まれる。しかしながら、トルエン又はエチルベンゼンを用いることがより好ましく、なぜならこれらの溶媒を使用することによって調製された触媒はより高い安定性を示すからである。
【0040】
上で示した方法によって調製された有機金属触媒は、貯蔵寿命を延ばすために、低温、好ましくは−78℃以下で貯蔵するのが好ましい。
【0041】
前記の溶媒中の触媒濃度は、1〜15モル/L、好ましくは3〜10モル/L、さらに好ましくは5〜8モル/Lである。
【0042】
上記の方法によって得られた触媒システムは、オリゴマー化反応器に供給される前に、1:100〜1:10000、好ましくは1:150〜1:5000、最も好ましくは1:200〜1:2000の有機金属触媒:溶媒の質量比で、二環式化合物又は複数の二環式化合物の混合物、例えばデカリンである溶媒と混合される。
【0043】
上に示した触媒システムの成分と共に、オリゴマー化方法はさらに1種以上の亜鉛化合物を含むことができる。それらは、触媒システムを調製する段階で直接触媒システムに添加されてもよいし、あるいはオリゴマー化反応器に別々に添加されてもよい。亜鉛化合物は、触媒中心、特にクロムの活性化剤として用いることができる。亜鉛化合物は、亜鉛(Zn(0))、アルキル亜鉛、特に、ジアルキル亜鉛、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛;アリール亜鉛、例えば、ジフェニル亜鉛、ジトリル亜鉛;亜鉛アミド、例えば亜鉛ピロリド又は亜鉛−ポルフィリン錯体、例えば、亜鉛−5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン、亜鉛の酸素化物(zinc oxygenate)、例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛;ハロゲン化亜鉛、例えば、無水塩化亜鉛;又はそれらの組み合わせであることができる。オリゴマー化工程で使用される溶媒、特にデカリンに可溶な亜鉛化合物を使用することが好ましい。その亜鉛化合物は溶液の形態で使用することができる。
【0044】
亜鉛化合物を含めた触媒システム中の成分の比率はいろいろな値をとりうる。アルミニウム:遷移金属のモル比は、10:1〜5000:1、100:1〜1000:1、最も好ましくは200:1〜500:1であり得る。配位子:遷移金属のモル比は、2:1〜1:2、好ましくは1.5:1〜1:1.5まで変えることができる。亜鉛:遷移金属のモル比はいろいろな値をとることができ、2:1〜1000:1、好ましくは20:1〜200:1の範囲である。
【0045】
触媒システムの調製と反応器へのその供給との間の時間は60分、好ましくは20分、最も好ましくは5分を超えてはならない。触媒系システムの調製と反応器へのその供給との間の時間を制限し、それによって多量のポリマーの形成を最小にすることが好ましい。
【0046】
α−オレフィンを製造するための原料は、オレフィン類、例えば、エチレン(エテン)、プロピレン(プロペン)、及びブチレン(ブテン)などのオレフィンであることができる。好ましい態様において、出発オレフィンはエチレンである。
【0047】
オレフィンのオリゴマー化プロセスを実施して、高級オレフィンが得られる。工業的に重要なプロセスは、アルファ−オレフィン(α−オレフィン)を製造するための方法である。α−オレフィンは、α位に炭素−炭素二重結合(C=C)をもつ化合物である。オリゴマー化プロセスにおいて調製されるα−オレフィンは、様々なC〜C40オレフィン類及びそれらの混合物を含むことができる。例えば、オリゴマー化プロセスで調製されるα−オレフィンは、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1、より高級なα−オレフィン、又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、オリゴマー化プロセスは、エチレンを三量体化及び/又は四量体化してヘキセン−1及び/又はオクテン−1を形成するプロセスである。
【0048】
〜Cオレフィンのオリゴマー化によってα−オレフィン類を製造するための特許請求の範囲に記載された方法は、当技術分野において公知の任意の反応器中で行われる。二環式化合物(bicyclic compound)又は複数の二環式化合物の混合物ある溶媒、特にデカリンと混合された触媒システムを反応器に供給する。次いで、反応器にC〜Cオレフィン及び任意選択により場合によっては希釈剤としての水素を充填し、次いでオリゴマー化プロセスを実施してα−オレフィンを得る。
【0049】
オリゴマー化プロセスは、当技術分野において公知の任意の反応器中で実施することができる。適切な反応器には、撹拌機を備えた連続式反応器、バッチ式反応器、プラグフロー反応器、及び管状反応器が含まれる。反応器は、気液反応器、例えば、撹拌機を備えたオートクレーブ、並流若しくは向流の気液流を有する気泡塔(気泡反応器)、又はバブリングガスリフト反応器であり得る。
【0050】
本方法の好ましい実施形態では、オリゴマー化プロセスがヘキセン−1及びオクテン−1を製造するためのC〜Cオレフィン類、特にエチレンの三量体化及び四量体化である場合、C〜Cオレフィン類の圧力は1〜200バール、好ましくは5〜100バール、最も好ましくは20〜60バールの間で変えることができる。オリゴマー化速度を増大させるために圧力を高くすることが好ましい。
【0051】
オリゴマー化プロセスの温度は、0〜160℃、好ましくは30〜120℃の範囲であり得る。反応器内の温度を40〜80℃に維持することが最も好ましい。この温度において、ポリマー副生成物、特にポリエチレンは溶液から沈殿し、スラリーの形態で反応器から排出され、且つ触媒システムが最も活性且つ選択的である。より高い温度(80℃を超える)でのオリゴマー化プロセスは、触媒システムの失活を招く可能性がある。
【0052】
特許請求の範囲に規定する方法によれば、反応時間は様々に変えることができる。反応時間は、オリゴマー化反応ゾーンにおける原料と溶媒の滞留時間として定義することができる。連続フロー反応器の場合、反応時間は平均滞留時間として定義することができる。反応時間は、原料として用いられるオレフィン、反応の温度、圧力、及びその他のプロセスパラメータに応じて異なりうる。本方法の実施形態において、反応時間は1日を超えない。反応時間は、12時間未満、6時間未満、3時間未満、2時間未満、1時間未満、30分未満、15分未満、10分未満、5分未満、3分未満、2分未満、1分未満、30秒未満、15秒未満、10秒未満、5秒未満、3秒未満、及び1秒未満であることができる。30分から60分の反応時間が最も好ましい。
【0053】
特許請求の範囲に規定する方法によれば、オレフィン及び触媒システムは、オリゴマー化反応器に供給され且つ希釈剤として用いられる水素と接触することができる。水素は、オリゴマー化反応を促進し及び/又は有機金属触媒の活性を増大させることができる。さらに、水素は、形成されたポリマー副生成物の量を減少させ且つ装置の壁へのその付着を制限することができる。
【0054】
オリゴマー化プロセスにおける溶媒は二環式化合物(bicyclic compound)、すなわちデカヒドロナフタレン(デカリン)である。2質量%以下の芳香族化合物の含有量を有する、テトラリン不純物から精製されたデカリンが好ましい。デカリンは、様々な比率のシス−及びトランス−デカリンの混合物であり得る。シス−及びトランス−デカリンの質量比は1:99〜99:1、好ましくは2:98〜98:2、最も好ましくは3:97〜50:50の範囲であり得る。
【0055】
デカリンは、例えば米国特許出願公開第2007/0156003号明細書に開示されている方法に従って、硫酸で処理することによってテトラリン不純物から精製することができる。
【0056】
オレフィン類のオリゴマー化プロセスは、水と酸素の非存在下で行われる。水及び酸素の存在は、低酸化状態の有機金属化合物の加水分解及び酸化を引き起こし、触媒の完全な又は部分的な失活をもたらしうる。
【0057】
特許請求の範囲に規定した方法によれば、反応器からの流出物は有機金属触媒、種々の生成物、副生成物、溶媒、及びオリゴマー化中に形成されたポリマーを含有しうる。
【0058】
反応器からの流出物は失活剤で処理することができる。当技術分野において公知の適切な失活剤には、水、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類、及びそれらの混合物が含まれる。アルコール類には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール、及びそれらの混合物が含まれる。適切なアミン類の例には、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピペラジン、ピリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、及びそれらの混合物が含まれる。アミノアルコール類の例には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、及びそれらの混合物が含まれる。特許請求の範囲に規定する方法によれば、失活剤は水であることができる。
【0059】
反応器からの流出物は、任意選択により、例えば熱交換器を通過させることによって冷却することができる。反応器からの流出物の冷却は、反応器からの熱い流出物を冷却された流出物と混合することを含みうる。反応器からの流出物の冷却は、100℃〜20℃の温度、好ましくは95℃未満、90℃未満、85℃未満、80℃未満、75℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、又は25℃未満である温度へと行われる。反応器からの流出物は周囲温度、例えば20〜25℃に冷却することができる。反応器からの流出物が冷却される温度は、溶媒からのポリマー沈殿の制御を可能にする温度である。従って、反応器からの流出物はデカンター内で冷却することができ、デカンターからポリオレフィンスラリーが定期的に排出される。
【0060】
この方法は、オリゴマー化プロセス中の触媒活性の有意な増大(78,000gのオレフィン/1gの金属/時間)を可能にし、そしてその結果として、触媒単位の消費を低下させる。システムの能力がオレフィンに関して1000kg/hである場合、触媒消費量は遷移金属を基準にして12〜27.8g/hである。さらに、この方法は、ヘキセン−1及びオクテン−1を調製する方法の効率の向上、及びポリマー副生成物の形成の減少(反応生成物の全収率の1%まで)を可能にする。
【0061】
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0062】
[発明の態様]
用いた原料は、メチルアルミノキサン(トルエン中10%溶液)、ホスゲン(トルエン中10%溶液)、クロム(III)アセチルアセトナート(Aldrich社)、シクロヘキシルアミン、及びジフェニルホスフィン(Acros Organics社)だった。
【0063】
PNP配位子(PMRスペクトルを図1に示す)は、[Cooley N. A., Green S. M., and Wass D. F. Nickel Ethylene Polymerization Catalysts Based on Phosphorus Ligands// Organometallics 2001, Vol. 20, P. 4769-4771]に記載された方法によって、シクロヘキシルアミン及びジフェニルクロロホスフィンから合成した。
【0064】
ジフェニルクロロホスフィンは、[Henderson W.A. Jr., Buckler S. A., Day N. E., Grayson M. Preparation of Alkyl Chlorophosphines// J. Org. Chem. 1961. Vol. 26, P. 4770-4771]に開示されているとおりに、ジフェニルホスフィンとホスゲンから調製した。
【0065】
[例1.PNP配位子の合成]
窒素雰囲気下、100mLのジクロロエタン中のシクロヘキシルアミン(1.9g,19.3mmol,1当量)及びトリエチルアミン(3.9g,38.5mmol,2当量)の溶液と共に、ジフェニルクロロホスフィン(8.5g,38.6mmol,2当量)をフラスコに供給した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。50mlの量の水を添加し、攪拌し、そして有機層(ジクロロエタン中の溶液)を分液ロート中で分離し、次にセライト500を通して濾過した。その後、溶媒を蒸発させ、30mlのメタノールをその得られた蜂蜜様の物質に添加し、白色結晶が沈殿するまで冷却した。沈殿物を濾別し、減圧下、室温で乾燥させた。得られた化合物は白色結晶性固体(3.7g)である。31P NMR分析:50.7ppm,br; H NMR、図1参照されたい。
【0066】
[例2.デカリン中でのMAOを用いたオリゴマー化]
PNP配位子(179.8mg,0.385mmol)及びクロム(III)アセチルアセトナート(67.1mg,0.192mmol)をトルエン(5ml)中で超音波曝露下にて混合した。トルエン中のMAO(25.5mL,38.5mmol)を添加し、混合直後に、その青緑色の溶液を活性触媒の供給源として用いた。3mlの量の触媒を取り、窒素ボックス中で150mlの無水デカリンと混合した。
【0067】
生じた混合物を、50℃において、差圧によって、排気された250mlのParr反応器に移した。水素(1気圧)をその反応器に供給し、その内容物を、反応器のジャケット内部の冷却剤の循環により、撹拌下(800rpm)でサーモスタット制御して、温度を57〜62℃の範囲内で安定化させた。次いで、エチレンを反応器に31バールまでの全圧まで連続して供給し、そして反応物質を攪拌しながら、ガスが減るのに合わせて一定の圧力で供給を継続した(60〜70℃)。30〜60分後、エチレンの添加を止め、混合物を40℃に冷却し、脱気し、そして反応混合物を、下部ボールバルブを通して排出させた。液相を分析した(GC、GC−MS)。
試験結果を表1に示す。
【0068】
[例3.テトラリン不純物から精製されたデカリン中のMAOを用いたオリゴマー化]
プロセスの継続時間が15分であり、溶媒がテトラリン不純物から精製されたデカリンだったことを除いて、例2に記載されたようにプロセスを実施した。
【0069】
デカリンは以下のようにして精製した。
エチルベンゼン(0.5%)、ブチルベンゼン(0.5%)、インダン(0.5%)、及びテトラリン(6%)の不純物を含有する工業用デカリン(1.5L)を、ハイグレードの硫酸(96%溶液、1L)と混合し、室温で24時間激しく撹拌した。その後、攪拌を止め、得られた混合物が分離するようにさせておいた。上層を分離し、分液ロート中で500mLの10%炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、そして蒸留水でpH6〜7になるまで洗浄した。次に、その有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶融ナトリウム上で蒸留した。
試験の結果を表1に示す。
【0070】
[例4.減少したトルエン含有量を有する、テトラリン不純物から精製されたデカリン中でのMAOを用いたオリゴマー化]
この例で用いたデカリンは、例3に記載した手順に従って精製した。
PNP配位子(179.8mg,0.385mmol)及びクロム(III)アセチルアセトナート(67.1mg,0.192mmol)をトルエン(5ml)中、超音波曝露下で混合した。トルエン中のMAO(25.5mL,38.5mmol)、次いでデカリン(20mL)を添加し、20mLのトルエンを真空下で留去した。その青緑色の溶液を活性触媒の供給源として用いた。3mLの量の触媒を取り、窒素ボックス中で150mLの無水デカリンと混合した。
オリゴマー化プロセスは例2に記載したようにして実施した。
試験結果を表1に示す。
【0071】
[例5.トルエン中でのMAOを用いたオリゴマー化(プロトタイプの国際公開第2004/056479号の例2による比較試験)]
用いた溶媒がトルエンであり、配位子が式:(フェニル)P−N(シクロヘキシル)−P(フェニル)の化合物であることを除いて、国際公開第2004/056479号に従って、例2に記載したようにプロセスを実施した。
5mLのトルエン中の29.0mgのP−N−P配位子(0.073mmol)の溶液を、15mLのトルエン中のCrCl(テトラヒドロフラン)(0.033mmol)の溶液12.4mLを含むシュレンクフラスコ中に仕込んだ。得られた溶液を室温で5分間撹拌し、80℃にて、トルエンとMAO(9.9ミリモル)の混合物を含有する250mlのParr反応器に移した。次にエチレンをその反応器に投入した。反応器内の温度を85℃に維持し、エチレンの圧力を30バールに維持した。反応物質を1100rpmで撹拌した。60分後、エチレンの供給を止め、反応物質を40℃に冷却し、脱ガスした。反応物質を、エタノール及び10%塩酸(HCl)水溶液である失活剤で処理した。得られた混合物のサンプルを無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。このアッセイにおいて、ヘプタンを内部標準として使用した。
試験の結果を表1に示す。
【0072】
[例6.シクロヘキサン中でのMAOを用いたオリゴマー化(プロトタイプの国際公開第2004/056479号の実施例22にしたがう比較試験)]
シクロヘキサンに不溶であることからクロム(III)アセチルアセトナートをトルエン溶液の形態で反応系に導入したこと以外は、国際公開第2004/056479号にしたがう実施例22に記載されているようにしてプロセスを行った。用いた配位子は式:(フェニル)P−N(シクロヘキシル)−P(フェニル)の化合物だった。
例1で得られたP−N−P配位子(0.014mmol)のシクロヘキサン10ml中の溶液5.8mgを、10mLのトルエン中のクロム(III)アセチルアセトナート3.5mg(0.01mmol)の溶液を含むシュレンクフラスコに供給した。得られた溶液を室温で5分間撹拌した。次いで、その溶液及びトルエン中のMAO(2mmol)の7%溶液を、45℃において、シクロヘキサン(170ml)を含有する250mlのParr反応器へ差圧によって添加した。次にエチレンを反応器に投入した。反応物質を撹拌しながら、反応器内の温度を45℃に維持し、エチレンの圧力を45バールに維持した。39分後、エチレンの供給を止め、反応物質を40℃に冷却し、脱ガスした。反応物質を、エタノール及び10%塩酸(HCl)水溶液である失活剤で処理した。得られた混合物のサンプルを無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。このアッセイにおいて、ヘプタンを内部標準として使用した。
試験の結果を表1に示す。
【0073】
[例7.テトラリン不純物から精製されたデカリン中、ジエチル亜鉛の存在下でのMAOを用いたオリゴマー化]
PNP配位子(89.9mg,0.192mmol)及びクロム(III)アセチルアセトナート(67.1mg,0.192mmol)をトルエン(5ml)中、超音波曝露下で混合した。トルエン中のMAO(40mL,60.4mmol)を添加し、混合後直ちに、その青緑色溶液を活性触媒の供給源として用いた。3mLの量の触媒を取り、150mLの無水溶媒(デカリン)と混合し、ヘキサン中のジエチル亜鉛の1M溶液(0.38mL、0.38mmol)を窒素ボックス中で添加した。
次いで、混合物を、45℃において、差圧によって、排気された250mlのParr反応器に移した。水素(1気圧)をその反応器に供給し、反応器のジャケット内の冷却剤の循環により、内容物を撹拌下(800rpm)でサーモスタット制御して、温度を43〜47℃の範囲内で安定化させた。次いで、エチレンを最大で41バールの全圧になるように反応器に継続して供給し、反応物を撹拌しながら、ガスが枯渇するにつれて(45〜50℃)、供給を一定圧力で続けた。30分後、エチレンの供給を止め、混合物を30℃に冷却し、脱ガスし、反応混合物を下方のボールバルブを通して排出した。液相を分析した(GC)。
デカリンは例3に開示した手順に従って精製した。
試験の結果を表1に示す。
【0074】
[例8.2時間の貯蔵時間を有する触媒システムを用いる、テトラリン不純物から精製されたデカリン中でのMAOを用いたオリゴマー化]
溶媒と混合する前に触媒システムを2時間窒素雰囲気下に保った以外は例2に記載したようにしてプロセスを実施した。
試験の結果を表1に示す。
【0075】
[例9.ブチルインデンの合成]
ブチルリチウム(2.5M,300ml)を、氷冷下で2時間かけて、THF(216g)及びシクロヘキサン(400g)中のインデン(87g,0.75mol)の溶液に添加し、1時間かけて室温に温め、次いで、シクロヘキサン(100g)中の臭化ブチル(102.8g,0.75mol)の溶液を15分間かけて添加し、50℃で3時間加熱し、次いで25℃で16時間撹拌した。次に、飽和NaCl溶液(200mL)をその混合物に添加し、分液ロート中で震盪し、有機層を分離し、水(200mL)で洗浄し、次いで再び飽和NaCl溶液(200mL)を添加し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。有機層をロータリーエバポレーターで300ミリバール/65℃にて蒸発させ、残留物を真空下で蒸留し、120〜130℃/20ミリバールの沸点をもつ主留分を集めた。収量は77gであり、純度は79%であり、不純物(GC−MS)はジブチルインデンだった。
【0076】
[例10.デカリン中の1−ブチル−パーヒドロインダン。異性体の混合物]
例9の生成物を、精製したデカリン(100g)と混合し、5%Pt−10%Pd−C触媒(10g)上で250〜270℃及び100〜120バールにおいて72時間、水素化した。得られた生成物は2%未満の芳香族化合物を含んでいた(GC−MS)。触媒を濾別し、50mlのデカリンで洗浄し、混合した溶媒を例3において上述したように硫酸を用いた精製にかけ、次いでその混合物を真空下、ナトリウム上で蒸留した。混合物は、デカリン溶液中に、ブチル−パーヒドロインダンの4つのジアステレオマーペアを以下の量で含んでいた:5.4%;10.0%;1.1%;及び3.6%(デカリンの総量 - 74%PID面積)。
【0077】
[例11.パーヒドロインダン]
インデン(250ml)を5%Pt−10%Pd−C触媒(10g)上で250〜270℃及び100〜120バールにおいて72時間、水素化した。得られた生成物の純度は97%(シス−(69.2%)及びトランス−(26.1%)の異性体の混合物)だった。生成物を、硫酸を用いる精製にかけ、デカリン及びブチルパーヒドロインダンと同様に蒸留した。
【0078】
[例12.混合した溶媒中でのオリゴマー化]
PNP配位子(89.9mg,0.192mmol)及びクロム(III)アセチルアセトナート(67.1mg,0.192mmol)を超音波照射下でエチルベンゼン(4ml)中で混合した。トルエン中のMAO(25.5mL,38.5mmol)及びジエチル亜鉛(0.4mL)を添加し、混合後直ちに、その青緑色の溶液を活性触媒の供給源として用いた。3mLの量の触媒(1mgのクロムに相当する)を取り、窒素ボックス中で150mLの無水溶媒と混ぜた。触媒溶液の残りの部分を(−196)℃で凍結させ、合成の直前に0℃に解凍した。
【0079】
得られた混合物を、50℃において差圧によって、排気された250mlのParr反応器に移した。水素(1気圧)を反応器に供給し、その内容物を、反応器のジャケット内部の冷却剤の循環によって、撹拌下(800rpm)でサーモスタット制御して、温度を57〜62℃の範囲内で安定化させた。次いで、エチレンを反応器に最高で31バールの全圧まで連続的に供給し、そして反応物質を攪拌しながら、ガスが枯渇するにつれて一定の圧力で投入を継続した(60〜70℃)。30〜60分後、エチレンの供給を止め、脱気しながら下側ボールバルブを通して反応混合物を排出した。5gの量のシリカゲルを添加し、30分間保持した。液相を分析した(GC、GC−MS)。
試験の結果を表2に示す(例12.1〜12.4)。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
試験の結果は、オリゴマー化プロセスにおいて溶媒としてデカリンを使用することの利点を示している。表1から分かるように、デカリン中でのオリゴマー化プロセス中の触媒システムの活性は、1時間当たり1gのクロム当たり42,000gのオレフィンに達する(表1、例4)が、シクロヘキサン又はトルエン中でのオリゴマー化プロセスのあいだの触媒システムの活性は、それぞれ、1時間当たりクロム1g当たりわずか600及び2,300gのオレフィンにしか達しない(例5及び6)。アルキル亜鉛の添加もまた触媒システムの活性にプラスの効果を有する(例7,表1)。そのような場合、触媒システムの活性は、1時間当たりクロム1g当たり78,000gのオレフィンに達する。
【0084】
触媒消費量の減少もまた注目されるべきである。システムの能力が、オレフィンに関して、1000kg/hであるとき、触媒の消費量は、元素クロムに基づいて12.8〜27.8g/h以下である。
【0085】
オリゴマー化プロセスをデカリン中で行う場合、副生物の生成が0.08gに低下することにも留意すべきである(例3,表1)。さらに、得られたデータから分かるように、溶媒中のデカリンの含有量が70質量%未満の場合、触媒の活性及び生成物の収率は急激に低下する(表2,例12.2及び12.3)。したがって、溶媒中のデカリンの含有量が増大し、溶媒中の不純物の含有量が低下するにつれて、触媒の活性は増大する(表1,例2、3、及び4)。
【0086】
従って、二環式化合物(ビシクロ化合物)又は複数の二環式化合物の混合物の使用、特にデカリンの使用は、増大した触媒活性及びポリマー副生物の生成の低下をもたらすと結論付けることができる。
【図1】
【国際調査報告】