(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019522765
(43)【公表日】20190815
(54)【発明の名称】亜鉛合金被膜を有する拡張ダボ
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/06 20060101AFI20190719BHJP
   C25D 5/48 20060101ALI20190719BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20190719BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20190719BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20190719BHJP
【FI】
   !F16B13/06 A
   !C25D5/48
   !C25D5/26 F
   !C23C28/00 A
   !C23C28/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】2019502019
(86)(22)【出願日】20170627
(85)【翻訳文提出日】20190131
(86)【国際出願番号】EP2017065863
(87)【国際公開番号】WO2018010952
(87)【国際公開日】20180118
(31)【優先権主張番号】16179695.8
(32)【優先日】20160715
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所】リヒテンシュタイン国 9494 シャーン, フェルトキルヒャーシュトラーセ 100
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】タンヤ マインドルファー
【住所又は居所】スイス連邦共和国 9470 ブックス キルヒガッセ 17
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コンドラティウク
【住所又は居所】スイス連邦共和国 9470 ブックス ホステットガッセ 24
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥロ ゲバラ アリオラ
【住所又は居所】スイス連邦共和国 9470 ブックス ウェッティ 2
【テーマコード(参考)】
3J025
4K024
4K044
【Fターム(参考)】
3J025AA03
3J025BA02
3J025CA03
4K024AA18
4K024AA19
4K024AB01
4K024AB16
4K024BA02
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4K024BC10
4K024CA03
4K024DB04
4K024GA03
4K024GA04
4K044AA02
4K044AB05
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC01
4K044BC02
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA18
4K044CA53
4K044CA64
(57)【要約】
本発明の拡張ダボは、少なくとも1つのダボ本体とボルトとを含み、ボルトは拡張体を備え、拡張体がダボ本体に対して引抜き方向に変位する際にダボ本体を径方向外側に押し出す。拡張体上は腐食防止層と腐食防止層を覆う減摩層とを備える。本発明において、腐食防止層はZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜である。本発明は、この種の拡張ダボの製造方法にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのダボ本体(20)と、
ボルト(10)であって、当該ボルト(10)は拡張体(12)を備え、前記拡張体(12)が前記ダボ本体(20)に対して引抜き方向(101)に変位する際に前記ダボ本体(20)を径方向外側に押し出す、当該ボルト(10)と、
前記拡張体(12)上に設けられた腐食防止層(61)と当該腐食防止層(61)を覆う減摩層(62)と
を備えた拡張ダボにおいて、
当該腐食防止層(61)はZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜である、ことを特徴とする拡張ダボ。
【請求項2】
前記腐食防止層(61)の硬度は350HVから500HVである、ことを特徴とする請求項1に記載の拡張ダボ。
【請求項3】
前記Zn/Ni被覆は、アルカリ性電解液により被着されたZn/Ni被膜である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の拡張ダボ。
【請求項4】
前記拡張体(12)は鋼製である、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の拡張ダボ。
【請求項5】
前記減摩層(62)は水性減摩ワニスである、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の拡張ダボ。
【請求項6】
前記ダボ本体(20)は、少なくとも部分的に前記ボルト(10)を囲む拡張スリーブであり、前記拡張体(12)は拡張コーンである、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の拡張ダボ。
【請求項7】
前記拡張ダボはボルト型である、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の拡張ダボ。
【請求項8】
前記腐食防止層(61)は電気めっきにより被着させられることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1つに記載の拡張ダボを製造するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の記載に基づく拡張ダボに関する。この種の拡張ダボは、拡張スリーブとして構成されることが好ましい、少なくとも1つのダボ本体と、拡張体、好ましくは拡張コーンを備え、この拡張体がダボ本体に対して引抜き方向に変位する際にダボ本体を径方向外側に押し出すよう構成されたボルトと、拡張体、特にダボ本体に対する接触部に設けられた腐食防止層及びその腐食防止層を覆う減摩層と、を備えるよう構成されている。本発明は、請求項8の記載に基づくこの種類の拡張ダボを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
拡張ダボは、例えば、特許文献1から既知である。それらは、構成要素、例えば、壁又は天井等の基板(被留め付け材)の掘削孔に挿入される。ボルトに配置された拡張コーンを拡張スリーブとして構成されたダボ本体に引き込むことにより、ダボ本体は径方向に拡張して外部へと押し出され、よって拡張ダボは基板に留め付けられる。特許文献1では、摩擦低減被膜が拡張コーンとダボ本体との間の接触部に設けられている。
【0003】
特許文献2はダボの防食被膜、特に建物正面への打込みダボに亜鉛含有保護層を塗布するための方法に関する。この方法は、ダボ表面に機械洗浄を行う及び/又はダボ表面にプライマを塗布して乾燥させる工程と、少なくとも1つの亜鉛含有有機被膜材料の層を機械的に塗布する工程と、塗布された各亜鉛含有層を乾燥させる工程と、有機保護層を塗布する工程と、有機保護層を乾燥させる工程とを備える。
【0004】
特許文献3は、内層と内層を覆う外層とを有する二重被膜が拡張領域に配置されている拡張アンカであって、外層の隣接要素に対する摩擦係数が内層の隣接要素に対する摩擦係数よりも大きい、ことを特徴とする拡張アンカに関する。
【0005】
特許文献4には、拡張スリーブ要素が錫亜鉛で被覆された拡張ダボが記載されている。
【0006】
特許文献5は、オーステナイト系ステンレス鋼製のボルトであって、その表層は窒化層として形成され、続いて金属被覆、例えば、ニッケル亜鉛被膜により被覆される、ことを特徴とするボルトを記載している。
【0007】
特許文献6には、ボルトの多層被膜、特に亜鉛ニッケル層及び有機被覆層を有する多層被膜が記載されている。
【0008】
特許文献7は、自動車分野のホイールボルトであって、電気めっきにより亜鉛ニッケル合金被覆を被着することにより形成される外面と、さらなるシリケート減摩被膜とを有する、ことを特徴とするホイールボルトを開示している。
【0009】
特許文献8は、拡張要素に溶融亜鉛めっきが施された拡張ダボを記載している。
【0010】
特許文献9は、拡張スリーブの表面粗度が拡張ダボの後端の方向に向かって増加するよう構成された拡張ダボを記載している。
【0011】
特許文献10には、面圧が作用する面には耐ジャミング被膜が施されるよう構成されたステンレス鋼製のダボが記載されている。特に亜鉛めっき又は硝化により被覆を形成することができ、減摩ワニス、ワックス、又はグリースからできたさらなる層が任意に塗布される。
【0012】
特許文献11は拡張アンカを製造するための方法を開示している。開示された拡張アンカはその前端に減摩被覆が施されたコーンを備え、そのコーンの表面は減摩被膜を施す前に鋼製ブラシにより処理されて平行な溝が形成される。
【0013】
特許文献12は、熱収縮チューブの形態の被膜を有する拡張アンカを開示している。
【0014】
特許文献13に基づく拡張アンカでは、拡張体とダボ本体の摩擦の摩擦係数が方向に依存する。
【0015】
特許文献14には、ビッカース硬度が約218HVから約290HVの材料から形成される楔部材と、ビッカース硬度が約218HVから約290HVの材料から形成されるスリーブ要素と、を備えたアンカーボルトが記載されている。
【0016】
特許文献15には、拡張アンカにおいて、シャフトから拡張体への変移箇所で摺動リングを環状段部に挿入し、拡張体上の拡張スリーブの損傷を防止することが提案されている。
【0017】
特許文献16には、拡張部には少なくとも部分的にクレーターが形成されている、ことを特徴とする高級鋼製の拡張アンカが記載されている。
【0018】
特許文献17には、拡張体とダボ本体の間の中間層であって、滑らかな箔帯から形成され、拡張体とダボ本体との間で脱着不能に固定された中間層を有するよう構成された拡張アンカが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0514342号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0429880号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第15171632.1号
【特許文献4】米国特許第8491244号明細書
【特許文献5】欧州特許第0523298号明細書
【特許文献6】米国特許第4746408号明細書
【特許文献7】独国実用新案202004001155号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第3924133号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008050195号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第4225869号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第10118374号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第19716926号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第2876312号明細書
【特許文献14】欧州特許第2339186号明細書
【特許文献15】独国特許出願公開第102007057160号明細書
【特許文献16】独国特許出願公開第10248664号明細書
【特許文献17】独国特許出願公開第19522026号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、製造が容易であるとともに特に高信頼性で高性能、且つ多くの異なる用途に供する拡張ダボ及びその製造のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、請求項1の技術的特徴を有する拡張ダボ、及び請求項8の技術的特徴を有する対応の製造方法により達成される。拡張ダボの好ましい態様は、従属項に記載されている。
【0022】
本発明の拡張ダボは、腐食防止層がZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜である、ことを特徴とする。
【0023】
本発明において、亜鉛合金被膜、特に亜鉛/ニッケル被膜(Zn/Ni被膜)又は亜鉛/鉄被膜(Zn/Fe被膜)が腐食防止層として用いられ、亜鉛/ニッケル被膜は使用可能な硬度等その他の理由で好ましい。実験によれば、驚くべきことに、この種の腐食防止層が、2つの同程度な効果により、拡張ダボの性能を大きく向上し得ることが観察された。
【0024】
一方で、腐食防止層の一種の窪み、傷及びそれにともなう摩耗が、その上に設けられた減摩層の一種の側(横)方向変位により、ダボに応力が作用すると発生し得る面圧上昇の際に、頻繁に観察されたが、そのような状況は望ましくない摩擦挙動に繋がる可能性がある。対照的に、Zn/Ni被膜又はZn/Fe被膜として本発明に基づき構成された腐食防止層は、比較的硬度が高い。特に、100HV未満の硬度が頻繁に発生する純亜鉛の電解(ガルバニック)めっきによる被膜とは対照的に、本発明のZn/Ni被膜によって、例えば、350HVから500HVの範囲の硬度、好ましくは約425HVの硬度が得られる。この硬度は、特に腐食防止層の下にある、拡張体に一般的に用いられる鋼鉄の硬度の範囲であるか、又はこの鋼鉄の硬度よりも高い硬度である。基板(被留め付け材)の硬度の範囲内又はそれ以上の、比較的高いZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜の硬度により、本発明に基づく構成の腐食防止層では、上述の望ましくない窪み及びひび割れに容易且つ効果的に対応が可能であり、それ故特に高信頼性且つ高機能のダボを特に容易に得ることができる。そのため、本発明に基づき構成された腐食防止層は、機能性被膜として特に高硬度及び耐摩耗の基盤となる。
【0025】
一方、驚くべきことに、電解めっきによる亜鉛被膜と比較して、本発明のZn/Ni及びZn/Fe腐食防止層により得られる拡張体とダボ本体の間の摩擦の動摩擦係数と静摩擦係数との差が、特に小さいことが判明した。これは、ダボの荷重挙動においても都合がよい。やはり、静摩擦係数が動摩擦係数に近似していると、ダボ本体の拡張体上での滑動に対する抵抗が低く、再拡張挙動は特に良好となる。具体的には、例えば、亀裂の入ったコンクリートでの荷重の状態及び/又は掘削孔の寸法が仮に変化した場合、ダボ本体をさらに確実に拡張することができる。本発明では、この理由によっても特に高信頼性で高性能のダボが、特に亀裂の入ったコンクリートを対象としたときに、得ることができる。そのため、本発明の腐食防止層は、高面圧状態でも規定の摩擦係数を実現するために特に良好な摩擦を生み出す基盤ともなる。
【0026】
減摩層は腐食防止層を外部に対し被覆する、具体的には、腐食防止層が減摩層と両層を備える拡張体との間に設けられる。腐食防止層は直に拡張体上に直接、中間層なしで設けてよい。しかし、1つ又は複数の中間層を腐食防止層と拡張体の間に配置してもよい。減摩層は直に腐食防止層の上に配置してよく、具体的には、中間層なしで配置してよい。しかしながら、1つ又は複数の中間層を減摩層と腐食防止層との間に設けてもよい。特に、腐食防止層は、減摩層に面する面に、保護層、好ましくはクロム(III)保護層を設けてもよい。
【0027】
Zn/Ni被膜のニッケル含有量及びZn/Fe被膜の鉄含有量は、好ましくは8重量%から18重量%、特に好ましくは10重量%から16重量%である。含有量が高すぎる場合、被膜が脆弱になることがあり、よって接着性が失われ得る。含有量が低すぎる場合、腐食保護機能が失われ得る。
【0028】
本発明において、ダボ本体はボルトに沿って可動に配置され、特にボルトに留め付けられる。「径方向」及び「軸方向」とは、特にボルト及び/又は拡張ダボの長手方向軸について当てはまり、特にボルト又は拡張ダボの対称軸及び/又は中心軸でもよい。拡張ダボは、特に高耐久性拡張ダボであり得る。
【0029】
本発明において、ダボ本体が拡張体により径方向外側に押し出され、基板の掘削孔壁に押圧されるのは、ダボ本体に対して、拡張体が軸方向、ボルトの引抜き方向に変位する場合である。この操作、特に拡張体に設けられた斜面により、拡張スリーブとして構成されるダボ本体が拡張される、この操作により、拡張ダボは掘削孔に留め付けられる。引抜き方向は、ボルトの長手方向軸に平行及び/又は掘削孔の外に向かうことが好ましい。特に、ボルトの長手方向軸から拡張体表面の距離は、拡張体上の引抜き方向と反対方向に増加する。
【0030】
本発明の腐食防止層及び本発明の減摩層は、少なくとも拡張体とダボ本体の間の接触部、特に、ダボ本体が拡張体に当接し、拡張体がダボ本体に対して作用して後者を径方向外側へと押し出すことが可能な場所に設けられる。本発明の層は接触部を超えて延びるとともにボルト全体をも覆うように延び、それが何よりも製造上の優位性をもたらし得る。特に、本発明の層はボルトの後方の荷重を受ける器具、特に後方の雄ねじまで延ばしてもよい。
【0031】
腐食防止層の硬度は、350HVから500HVであることが特に好ましい。この範囲の硬度では、特に拡張体が鋼製の場合、上述の効果が特に発揮される。
【0032】
特に、Zn/Ni被膜はアルカリ性電解液から被着されたZn/Ni被覆である。特にこれにより一様な層厚が特に容易に得られ、特に均等な摩擦挙動の実現に有利となり得る。
【0033】
ダボ本体及び/又はボルト、特にボルトの拡張体は、金属材料からできていることが好ましく、鋼製であると特に好ましい。そのため、拡張体が鋼製、好ましくは炭素鋼(C-stahl)製であると特に好ましい。
【0034】
減摩層は水性減摩ワニス、特にアルキド樹脂ワニスであると優位となり得る。
【0035】
ダボ本体が少なくとも部分的にボルトを囲む拡張スリーブであり、及び/又は拡張体が拡張コーンであると特に優位性がある。周方向での特に一様な力のかかりが本願により達成される。ボルトの長手方向軸周りの拡張スリーブの拡張角度は、少なくとも270°である。本発明において、拡張コーンは拡張スリーブを拡張させるために、具体的には、拡張スリーブを径方向に広げるために設けられている。1つ又は複数のダボ本体及び対応する数の拡張体を配置してよい。拡張コーンは、数学的に厳密な円錐面を有してよいが、これは必ずしも必要ではない。
【0036】
本発明において、ボルトは、雄ねじ、雌ねじ又は頭部として構成することができる荷重を受ける器具を備えてよい。この荷重を受ける器具を用いて、引抜き方向の引張力を拡張ダボに作用させる。拡張体はボルトの第1の端部の領域に設けられると都合がよく、荷重を受ける器具はボルトの反対側の第2の端部の領域に設けられる。特に、拡張体の引抜き方向の方向ベクトルは、荷重を受ける器具に向けられ得る。ボルトの長手方向軸から拡張体の表面までの距離は、荷重を受ける器具からの距離の増加とともに増加することが好ましい。
【0037】
拡張ダボは、ボルト型の拡張ダボであることが好ましい。この種の拡張ダボにおいて、ボルトのダボ本体に対する軸方向運動により、ダボが設置されたときに拡張体がダボ本体に引き込まれる。ボルト型拡張ダボにおいて、ボルトは一体型の構成であることが好ましい。特に、拡張体は隣接するボルト領域と一体となるように構成されている。止め具、例えば、環状ショルダをボルトに形成することが好ましい。この止め具は、ダボ本体が拡張体からの離れるのを制限する。
【0038】
これに代わり、拡張ダボをスリーブ型の拡張ダボとしてもよい。スリーブ型の拡張ダボにおいて、ボルトは拡張体とは別のアンカーロッドを備え、拡張体は対応のねじを介してアンカーロッドに接続されることが好ましい。ダボを設置する場合の拡張体のダボ本体への引き込みは、好ましくは少なくとも部分的に行われるアンカーロッドの拡張体に対する回転であって、対応のねじによる軸駆動により、この回転にはアンカーロッドに対する拡張体の軸方向運動へと変換される。スリーブ型の拡張ダボにおいて、特に多部品構成でもよいダボ本体は、掘削孔の口まで延長してもよい。
【0039】
本発明は、本発明の拡張ダボを製造するための方法にも関し、その方法は腐食防止層が電気めっき、特にアルカリ浴により被着される、ことを特徴とする。腐食防止層が電気めっきにより被着された後に減摩層を、例えば、浸漬プロセス、特に遠心分離溶融亜鉛めっきプロセスにより塗布することができる。腐食層が電気めっきにより被着された後は、減摩層を塗布する前に、好ましくは腐食防止層を保護(不動態化)、特に好ましくはCr(III)で保護する。
【0040】
本発明は、添付の図面に概略的に描かれた好ましい実施例に基づき以下で詳細に説明されている。基本的に、本発明の技術的範囲内で、以下で記載する模範的実施例の個別の機能を、個別に又は任意に組み合わせて実施することが可能である。以下は概略的に示す図面である。
【0041】
同一の要素又は類似の機能を有する要素は、図面では同じ参照番号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施例に基づく、コンクリート基板に設置された本発明の拡張ダボの部分的縦断面図である。
【図2】図1の拡張ダボの、拡張体とダボ本体との間の接触部における、図1の円形で示した箇所の詳細図である。
【図3】図1及び図2の変形実施例における拡張ダボのボルトの側面図である。
【図4】別の実施例に基づく、コンクリート基板に設置された本発明の拡張ダボの部分的縦断面図である。
【図5】図4の拡張ダボの、拡張体とダボ本体との間の接触部における、図4の円形で示した箇所の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1及び図2は、本発明の拡張ダボの第1の実施例を示す。特に図1に示されている通り、拡張ダボはボルト10と、ボルト10を囲む拡張スリーブとして構成されるダボ本体20とを備える。ボルト10は、一定の断面部を有するネック部11と、ネック部11に続いてボルト10の前端部に位置し、ダボ本体20の拡張コーンとして構成される拡張体12であって、その表面が斜面13として構成された拡張体12とを有する。この場合、斜面13は回転対称に構成されている。この斜面13により、ボルト10はネック部11から自らの前端方向に向かう拡張体12で拡張している。ボルト10は、この拡張体12から反対方向、離れたところのネック部11の側面に、止め具17を有する。この止め具17は、拡張スリーブとして構成されるダボ本体20の、例えば、環状ショルダとして構成される。ボルト10は、拡張体12と反対側に位置する後端部に、ナット8のための雄ねじ18を備える。
【0044】
拡張ダボが設置された場合、図1に示す通り、ボルト10が基板(被留め付け体)5の掘削孔へ、ボルト10の長手方向軸100と平行な引抜き方向101に対して、拡張体12を先頭として押し込まれる。止め具17により、拡張スリーブとして構成されるダボ本体20も掘削孔へと導入される。その後、ボルト10は、長手方向軸100と平行な軸引抜き方向101で、例えば、締付ナット8を締め付けて、再度掘削孔から短い長さで引き抜かれる。掘削孔壁との摩擦により、拡張スリーブとして構成されたダボ本体20は後方に残り、ボルト10がダボ本体20に対し変位する。この変位の際に、ボルト10の拡張体12はダボ本体20に深く貫入し、ダボ本体20は拡張体12により径方向に拡張され、掘削孔壁に押し付けられる。この仕組みにより、拡張ダボは基板5に固定される。図1は基板5に固定された拡張ダボの設置状態を示す。付属物6は、ナット8により基板5に固定され得る。
【0045】
特に図2から明らかな通り、拡張体12は自らの斜面13上に形成されたダボ本体20との接触部に、内部腐食防止層61と外部減摩層62とから構成される二重被膜を有する。腐食防止層61は減摩層62と拡張体12との間に位置し、拡張体12は、特に一体的に接合された、2つの層61、62を備える。腐食防止層61はZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜であり、減摩層62は、例えば、水性減摩ワニス(wasserbasierter Gleitlack)である。
【0046】
拡張体12上に設けられた、層61、62から構成される二重被膜は、図1及び図2の実施例を対象として記載されている。しかし、層61、62を有する図3の二重被膜、具体的には、図3で概略的に描かれ且つ点線で大きく拡大された二重被膜は、さらにネック部11にまで延び、あるいはボルト10全体までにも延びてよいが、これは図示されていない。
【0047】
図1乃至図3の実施例のそれぞれにおいて、拡張ダボは、所謂ボルト型拡張ダボとして構成される。拡張ダボが所謂スリーブ型拡張ダボとして構成される、もう1つの実施例が図4及び図5に示されている。図1乃至図3の拡張ダボでは、拡張体12がボルト10の残りの部分に固定されるように軸方向に取り付けられ、特にボルト10の残りの部分と一体に構成されている。図4及び図5の実施例のボルト10は、図1乃至図3の拡張ダボとは対照的に、拡張体12と分離した(別体の)アンカーロッド15を備える。アンカーロッド15と拡張体12とは別々の要素である。斜面13を有する拡張体12は雌ねじを有し、雌ねじはボルト10のアンカーロッド15の雄ねじに対応する。さらに、図4及び図5の拡張ダボの場合に拡張スリーブとして構成され、分割も可能なダボ本体20は、掘削孔の口まで延びる。外ポリゴン構造を有し且つ幅広な頭部88は、ボルト10の後端部のアンカーロッド15に回転可能に固定されて設けられる。
【0048】
図4及び図5の拡張ダボを設置するためには、頭部88により、アンカーロッド15を長手方向軸100の周りで回転させる。対応するねじはアンカーロッド15のこの回転運動をアンカーロッド15及びダボ本体20に対する拡張体12の軸方向運動へと変換し、斜面13を有する拡張体12のダボ本体20への引き込みを発生させる。
【0049】
図4及び図5の拡張ダボにおいて、ボルト10の拡張体12は、拡張体12の斜面13に形成されたダボ本体20との接触部に、内部腐食防止層61と外部減摩層62とから構成される二重被膜をさらに有する。腐食防止層61はZn/Ni被膜又はZn/Fe被膜であり、減摩層62は、例えば、水性減摩ワニスである。

【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【国際調査報告】