(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019523007
(43)【公表日】20190822
(54)【発明の名称】保存寿命が延長された食用油製品の製造方法およびそれにより得られる食用油製品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/04 20060101AFI20190726BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20190726BHJP
【FI】
   !A23D9/04
   !C11C3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】2019504830
(86)(22)【出願日】20170724
(85)【翻訳文提出日】20190322
(86)【国際出願番号】IB2017054461
(87)【国際公開番号】WO2018020388
(87)【国際公開日】20180201
(31)【優先権主張番号】102016000078129
(32)【優先日】20160726
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519026375
【氏名又は名称】コスタ・ドーロ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】COSTA D’ORO S.P.A.
【住所又は居所】イタリア06049スポレート(ペルージャ)、ヴィア・クリスピーノ・メリニ1番
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】マウロ・レオナルディ
【住所又は居所】イタリア05110テルニ、ヴィア・フォンターナ・ディポーロ1/エンネ番
(72)【発明者】
【氏名】イヴァーノ・モチェッティ
【住所又は居所】イタリア01023ボルセーナ(ヴィテルボ)、ロカリータ・モンテククロ113/チ番
【テーマコード(参考)】
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B026DC04
4B026DC05
4B026DG01
4B026DP10
4B026DX01
4H059BA17
4H059BC13
4H059CA82
4H059EA03
(57)【要約】
本発明は、所与量の食用油中へ所定数の全オリーブを挿入することを含む、食用油製品、特にエキストラバージンオリーブオイルの製造方法であって、全オリーブは、オリーブの総重量に対して1〜5%の範囲にあるポリフェノール含有量を有し、食用油中へ導入される前に、2.5〜15kgrayの範囲内に含まれる吸収線量で電離放射線を照射される製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
− 所与量の食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイルを提供すること;
− 所定数の全オリーブを上記の量の食用油中へ挿入すること、ここで、該全オリーブは、オリーブの総重量に対して1〜5%の範囲にあるポリフェノール含有量を有し、該食用油中へ導入される前に、2.5〜15kgrayの範囲内に含まれる吸収線量で電離放射線を照射されることを特徴とする、
を含む、食用油製品、特にエキストラバージンオリーブオイルの製造方法。
【請求項2】
該吸収線量が2.5〜5kgray未満の範囲内に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該食用油製品がエキストラバージンオリーブオイルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該所定数のオリーブが、油1リットルあたり1から4の間に含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該オリーブが、熟成開始前のグリーンオリーブである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該オリーブがCoratina栽培品種に属する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
該オリーブの内径が、100グラムあたりのオリーブの数として表される20〜22の範囲である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、増加したポリフェノール含有量を有する、食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイル。
【請求項9】
ボトルにパッキングされている、請求項8に記載の食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延長された保存寿命という利点を有する食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイルの製造方法、ならびに本発明の方法により得られる食用油に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州規制EU 432/2012は、エキストラバージンオリーブオイル中のポリフェノールが酸化ストレスからの血中脂質の保護に寄与することを提供する。
【0003】
さらに、EFSA(欧州食品安全局)は、オリーブオイルポリフェノールが酸化ストレスを防ぎ、抗酸化作用を有し、脂肪代謝を改善し、LDL画分を酸化損傷から保護することができると認識している。
【0004】
したがって、本発明の方法およびその生成物は、特にオリーブオイルの特別なフェノール化合物に関して、オリーブオイルの生物栄養学的(bio−nutritional)および健康品質を経時的に改善するための新しい戦略を同定するために、発明者らにより行われた研究の結果である。
【0005】
上記の目的は、以下の工程:
− 所与量の食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイルを提供すること;
− 所定数の全オリーブを上記の量の食用油中へ挿入すること、ここで、該全オリーブは、オリーブの総重量に対して1〜5%の範囲にあるポリフェノール含有量を有し、該食用油中へ導入される前に、2.5〜15kgrayの範囲内、さらにより好ましくは2.5〜5kgray以下の範囲内に含まれる吸収線量で電離放射線を照射されることを特徴とする、
を含む、食用油、とりわけオリーブオイル、よりとりわけエキストラバージンオリーブオイルの製造方法により達成される。特に好ましい吸収線量は、約4.5kgrayである。
【0006】
欧州特許EP 2416664 B(Costa d’Oro S.p.A.)は、7%と15%の間の量の水の除去を達成するような脱水処理を受けた後、食用油中へ導入する前に、全オリーブを防カビ剤で処理する食用油の製造方法を開示する。
【0007】
1999年10月21日の国際特許出願WO 99/52377 A(UNILEVER NV(NL);UNILEVER PLC(GB))(10.21.1999)は、オリーブオイル中に全オリーブを浸漬することにより、オリーブオイル中にポリフェノール含有量を増加させる方法を開示する。WO 99/52377 Aも、オリーブ果実成分の果実から油への輸送を増加させることができる脱水処理により、オリーブ果実の成分の果実から油へのかかる移動をさらに増加させることができることを開示する。
【0008】
EFSTATHIOS Z.PANAGOU:「Greek dry−salted olives: Monitoring the dry−salting process and subsequent physico−chemical and microbiological profile during storage under different packing conditions at 4 and 20°C」,LWT−FOOD SCIENCE AND TECHNOLOGYは、21%の水の除去までのオリーブの脱水、それに続く該オリーブの保存寿命を延長するソルビン酸カリウムでの処理を含む方法を開示する。
【発明の概要】
【0009】
本発明に従う方法は、油中の最終ポリフェノール含有量を増加させることを有利に可能にする。オリーブ中に含有されるポリフェノールは、油量内で経時的に放出され、天然の抗酸化剤の役割を果たす。
【0010】
従来技術の方法と比較して、電離放射線の照射は極めて有効な技術である。実際、電離放射線は、オリーブ中に存在し、その後食用油中へ導入されるあらゆる芽、寄生生物、バクテリア、ウイルスまたは微生物を破壊することができる。電離放射線の照射は、加工食品中における有毒物質の形成を引き起こさないこともまた実証されている。結果として、電離放射線の照射は、滅菌および微生物学的安全性のために現在必要とされている全ての従来の処理を回避することを可能にする。
【0011】
電離放射線の照射は、極めて簡単な技術でもある:照射されるオリーブは、コンベヤーベルト上に配置され、コバルト60または電子発生器により放出された放射線のビームの下を通過する。後者の場合、これらは有機体および微生物のDNA鎖を切断する非常に短い波長(70nm)の放射線であり、そのためその複製は妨げられる。
【0012】
以下の実施例から明らかになるように、本発明の方法で得られる食用油は、先行技術の欧州特許EP 2416664 Bに開示される方法で処理された同じ油と比較してより高いポリフェノール含有量をも特徴とする。保存状態の改善もまた注目され、該目的のために使用される従来のパラメーター、すなわち過酸化物の数ならびにU.V.K232およびK270分光光度指数を用いて測定することができる。
【0013】
食用油の官能特性は、経時的に実質的に安定したまま、またはパネルにより試験した場合には知覚的により良好な感覚スコアのままである。
【0014】
本発明はまた、本発明の方法で得られる食用油、とりわけエキストラバージンオリーブオイルにも関し、その特徴は実施例の節に詳細に説明される。
【0015】
本発明の方法の好ましい実施形態において、熟成開始前のグリーンオリーブ、すなわち、果実の完熟の段階にまだ達しておらず、該果皮の色が、まだ熟していないオリーブの典型的な深い緑色から、赤紫から黒まで栽培品種により異なり得る最終的な色に変化するオリーブが使用される。熟成開始前のオリーブの使用は、熟したオリーブと比較して、より多量のポリフェノールを含有し、したがって改善された外観を特徴とする最終製品を提供することができる上、最高の抗酸化機能を発揮することができるため、好ましい。
【0016】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、食用油中へ挿入されるオリーブはCoratina栽培品種に属し、これはイタリア栽培品種の中で最もポリフェノールが豊富である。
【0017】
なおさらなる好ましい実施形態において、該方法は、油1リットルあたり1〜4の数のオリーブの使用を含む。
【0018】
さらにより好ましくは、本発明の方法で使用されるオリーブは、100グラムあたりのオリーブの数として表される20〜22の内径を有する。かかる内径は、約35mmのネック径を有する油用ボトル等の油容器中へのオリーブの挿入のための技術的自動化プロセスにおける使用に、特に適していることが証明されている。
【0019】
以下の実施例は、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の範囲の非限定的な例示のためにのみ提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施例1:微生物学的分析
Coratinaオリーブのサンプルを、従来技術に従う処理(「処理1」と呼ぶ)および本発明に従う処理(「処理2」と呼ぶ)に供した。
【0021】
処理1:オリーブを120℃のストーブで部分脱水し、果実から10%の水分を除去した。
【0022】
処理2:オリーブに、4.5kgrayの吸収線量で電離放射線を照射した。
【0023】
下記の表1A(ここで、t=時間)は、処理1を受けたオリーブおよびその保存油中において、該オリーブの該油中への挿入からタイム0、6ヶ月後および1年後に測定された微生物学的パラメーターの値を示す。
【0024】
下記の表1B(ここで、t=時間)は、処理2を受けたオリーブおよびその保存油中において、該オリーブの該油中への挿入からタイム0、6ヶ月後および1年後に測定された微生物学的パラメーターの値を示す。
【0025】
【表1A】
【0026】
【表1B】
【0027】
表1に示される微生物学的分析から、オリーブに対して行われた両方の処理が効果的であり、油中における該果実の適切な微生物学的安定化を維持することができること、および保存油の汚染の危険性がないことは、明らかである。
【0028】
実施例2:抗酸化剤の放出の分析、ならびに油の保存寿命効果および官能特性の評価
実施例1で得られた微生物学的結果に基づいて、本発明の方法(「処理2」)で、または「処理1」と呼ばれる先行技術の方法で処理された全オリーブを添加して、同じエキストラバージンオリーブオイルの主な物理化学的パラメーターの対照試験を行った。
【0029】
全オリーブを添加しない、そのままのエキストラバージンオリーブオイル(AS)を対照として使用した。
【0030】
結果を下記表2に示す。
【0031】
【表2-1】
【0032】
【表2-2】
【0033】
【表2-3】
【0034】
【表2-4】
【0035】
【表2-5】
【0036】
【表2-6】
【0037】
結果は、以下を示す:
(i)処理1を受けたオリーブは、そのままの油と比較して、添加される油貯蔵条件を改善することができる。これは、オリーブオイル中に含有されるポリフェノールの油への部分的な放出により決まる。ポリフェノールは、実際、強力な抗酸化剤である。
(ii)処理2を受けたオリーブは、そのままの油と比較して、および処理1を受けたオリーブを含有する油サンプルと比較して、添加される油貯蔵条件を改善することができる。これは、該オリーブが、処理1を受けたオリーブと比較してより多くの量のポリフェノールを油中へ放出することができるという事実により決まる。
【0038】
したがって、本発明に従って電離放射線で処理されたオリーブは、先行技術に従って部分脱水により処理されたオリーブと比較して、油の保存寿命に対してさらにより効果的で改善された効果を有する。
【0039】
実施例3:
欧州規制EU 432/2012は、製品が少なくとも250mg/kgのヒドロキシチロソールおよびその誘導体(例えば、オレウロペインおよびチロソール;総バイオフェノールからリグナルは除かれるべきである)を含有してさえいれば、ポリフェノールの有益な健康効果の表示をラベル上に付すことができると言明する。該表示には、「オリーブオイル20gの日々の摂取により有益な効果が得られる」という消費者への情報を付すべきである。
【0040】
該理由のために、表2の試験を受けたサンプルについて、ポリフェノール単独の分析に関してさらなる調査を行った。これらの調査は、HPLC技術を用いてポリフェノールの分析を実施することからなっていた。HPLC技術は、実際、ポリフェノールを溶出し、それらを個々のクラスに分離することを可能にする。これは、オリーブから油中へ放出される全ポリフェノールにおいて、下記の表3の1〜7に列挙されるような、健康上の利益を主張することができる化合物のクラス、すなわちヒドロキシチロソール、チロソールおよびそれらの誘導体が実際に存在しているかを検証することを可能にする。
【0041】
【表3-1】
【0042】
【表3-2】
【0043】
【表3-3】
【0044】
【表3-4】
【0045】
【表3-5】
【0046】
【表3-6】
【0047】
【表3-7】
【0048】
本特許出願の実験の節に提示された分析データは、以下を示す。
(i)以前に処理され、電離放射線で安定化されたオリーブのエキストラバージンオイルへの添加は、同じそのままのエキストラバージンオリーブオイル(AS)と比較して、官能特性を変化させないが、それとは対照的に、製品の特色(peculiarities)を有意に強化する。
(ii)1年後、本発明に従って処理されたオリーブの添加は、そのままの油と比較して、および先行技術に従って処理された油と比較して、油のより良好な保存(より良好な分析的および官能特性)に寄与する。
(iii)ポリフェノールの分析は、本発明の方法で処理され、瓶詰めされたエキストラバージンオリーブオイルに添加されたオリーブが、対照サンプルと比較してポリフェノール含有量の有意な増加を引き起こすことを示す。
(iv)HPLC分析は、健康上の利益を主張することができるフェノールの有意な放出があることを示す。
【0049】
該結果はまた、健康上の利益を主張するのに必要なポリフェノール含有量より低いポリフェノール含有量を特徴とする油を、出発物質として使用することで、ポリフェノールに富み、本発明の方法で処理したオリーブの添加の2ヶ月後、健康上の利益の認識に十分な油中のポリフェノール含有量の増加があることを示す。
【0050】
したがって、本発明に従う方法は、食用油、とりわけオリーブオイル、よりとりわけエキストラバージンオリーブオイルに極めて有利な特徴、主に、有益な生物栄養学的およびその健康効果を増進するポリフェノールのより高い含有量を提供すると結論付けることができる。
【国際調査報告】