(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
組織の損傷に関連した疾患に罹患している対象の治療方法であって、該対象に、有効量の請求項1〜3のいずれか一項記載の単離ペプチド又は請求項4〜6のいずれか一項記載の医薬組成物を投与する工程を含む、前記方法。
前記組織の損傷に関連した疾患が、心血管疾患、心肺疾患、呼吸器疾患、腎臓病、泌尿器系の疾患、生殖系の疾患、骨疾患、皮膚疾患、胃腸疾患、内分泌異常、代謝異常、加齢、前糖尿病、認知機能障害、又は中枢もしくは末梢神経系の疾患又は障害である、請求項7記載の方法。
必要のある対象において、癌、腫瘍性障害、炎症、又は毒剤曝露を予防、治療、改善、又は管理する方法であって、該対象へ、有効量の請求項1〜3のいずれか一項記載の単離ペプチド又は請求項4〜6のいずれか一項記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
前記癌が、浸潤性乳癌、浸潤前の乳癌、炎症性の乳癌、パジェット病、転移性乳癌、再発性乳癌、虫垂癌、胆管癌、肝外胆管癌、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、腸癌、肝癌、膵癌、直腸癌、胃癌、副腎癌、膀胱癌、腎臓癌、陰茎癌、前立腺癌、精巣癌、尿路癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵管癌、卵巣癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、眼癌、頭頸部癌、顎の癌、喉頭癌、咽頭癌、口腔癌、鼻腔癌、唾液腺癌、副鼻腔癌、咽喉癌、甲状腺癌、舌癌、扁桃腺癌、ホジキン病、白血病、急性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、b-細胞リンパ腫、リンパ節癌、骨癌、骨肉腫、黒色腫、皮膚癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、肉腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、脳腫瘍、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫、下垂体癌、脊髄癌、肺癌、腺癌、燕麦細胞癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌又は中皮腫である、請求項11記載の方法。
前記炎症が、虫垂炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液嚢炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛羊膜炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、心内膜炎、子宮内膜炎、上顆炎、精巣上体炎、結合組織炎、胃炎、歯肉炎、舌炎、化膿性汗腺炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、心筋炎、筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、睾丸炎、骨炎、耳炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺臓炎(肺炎)、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、尿道炎、腟炎、外陰炎、喘息、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、腱炎、脈管炎、慢性気管支炎、膵炎、骨髄炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、糸球体腎炎、視神経炎、側頭動脈炎、脳炎、髄膜炎、横断性脊髄炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、壊疽性筋膜炎、肝炎、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎、腸炎、直腸炎、脈管炎、血管狭窄、再狭窄、低血圧、1型糖尿病、2型糖尿病、前糖尿病、薬物未投与の2型糖尿病、川崎病、デクム病、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、アテローム性動脈硬化症、強皮症、シェーグレン症候群、混合結合組織疾患、酒さ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、アルツハイマー病、成人発症スティル病、急性網膜色素上皮炎、ティーツェ症候群、ベーチェット病、白点症候群、急性後部多発性斑状色素上皮症、匐行性脈絡膜炎、散弾網脈絡膜炎、汎ブドウ膜炎を有する多病巣性脈絡膜炎、びまん性網膜下線維症症候群、点状内部脈絡膜症、多発一過性白点症候群、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、環状肉芽腫、過敏性大腸症候群、セリアック病、胃腸炎、グレーブス病、多発性硬化症、デュピュイトラン拘縮、移植片拒絶疾患、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、皮膚移植拒絶、固形臓器移植拒絶、骨髄移植拒絶、炎症性皮膚疾患、ヒト乳頭腫ウイルス、HIV又はRLV感染症から誘導されるものなどのウイルス性皮膚病、細菌性、真菌性、及び又は他の寄生性皮膚病、皮膚エリテマトーデス、高IgG4疾患、アレルギー、アレルギー性疾患、鈍的外傷から生じる炎症、挫傷から生じる炎症、炎症結果として生じるアレルギー、リウマチ性疾患、小児関節炎、関節リウマチ、チャーグ−ストラウス症候群、線維筋痛、巨細胞(側頭部)動脈炎、痛風、ヘノッホシェーンライン紫斑病、過敏性血管炎、強直性脊椎炎、被膜炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発性筋痛、変形性関節炎、結節性多発性動脈炎、ライター症候群、スポーツ関連の損傷、ランナー膝、テニス肘、五十肩、アキレス腱炎、足底筋膜炎、滑液嚢炎、オスグッド・シュラッター病、反復運動過多損傷、蓄積外傷疾患、フォーカルジストニア、手根管症候群、交差症候群、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、狭窄性腱鞘炎、ド・ケルヴァン症候群、バネ指/トリガー親指、胸郭出口症候群、腱炎、腱滑膜炎、橈骨神経管症候群、レイノー病、ガングリオン、ゲーマーの親指、ウィーアイティス、感染症から生じる炎症である、請求項13記載の方法。
哺乳動物から単離された応答性細胞、組織又は器官の生存度を保護、維持又は強化する方法であって、該細胞、組織又は器官を、請求項4〜6記載の医薬組成物に曝露することを含む、前記方法。
【発明の概要】
【0007】
(3. 要旨)
本明細書において、応答性細胞、組織又は器官において組織保護活性を有する単離ペプチド及びペプチド類似体が提供される。ある実施態様において、
【化1】
のコンセンサス配列を共有する、組織保護ペプチド及びペプチド類似体が、本明細書に提供される。ある実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化2】
からなる。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化3】
を含む。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化4】
からなる。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化5】
を含む。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化6】
からなる。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化7】
を含む。
【0008】
ある実施態様において、本明細書に提供される単離ペプチド又はペプチド類似体は、本明細書に提供されるペプチドのアミノ酸配列を特徴とする、長さ4〜約30個のアミノ酸を含む。ある実施態様において、本明細書に提供される単離ペプチドは、長さ10〜30個のアミノ酸を有し、且つ
【化8】
のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、提供される単離ペプチドは、長さ4〜30個のアミノ酸を有し、且つ
【化9】
のアミノ酸配列を含む。このような単離ペプチドはまた、本明細書記載のような、応答性細胞、組織、又は器官における組織保護活性も有する。
【0009】
ある実施態様において、少なくとも一つの組織保護活性を有する単離ペプチド及びペプチド類似体が、本明細書に提供される。組織保護活性の例は、応答する哺乳動物の細胞、組織又は器官の機能又は生存を保護、維持、強化、及び回復することを含むが、これらに限定されるものではない。従って一実施態様において、応答する哺乳動物の細胞及びそれらの関連細胞、組織及び器官の機能又は生存を保護、維持、強化又は回復する医薬組成物の調製のための、本明細書に提供される単離ペプチド及びペプチド類似体の使用が、本明細書に提供される。関連した実施態様において、この医薬組成物は、その必要がある対象に投与するためのものである。
【0010】
このような組織保護ペプチド及びペプチド類似体、及び医薬として許容し得る担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物、並びに前記組成物の製造方法、及び組織の損傷に関連した疾患及び障害を治療するためのそれらの使用が、本明細書に提供される。他の態様として、応答性組織傷害に対する保護用又はその予防用医薬組成物の調製のため、又はその必要がある対象の応答性組織もしくは応答性組織機能の回復もしくは復活のための、本明細書中に記載した単離ペプチド又はペプチド類似体の使用方法が、本明細書に提供される。一つの特定の態様において、応答性哺乳動物細胞及びそれらに関連した細胞、組織又は器官は、堅固な内皮細胞障壁の効力によって、脈管構造に対して遠位にある。別の特定の態様において、細胞、組織、器官又は他の体部位は、移植を意図したものなど、哺乳動物の体から単離される。一態様において、細胞、組織、又は器官は、興奮性である。ある種の態様において、興奮組織は、中枢神経系組織、末梢神経系組織、心臓組織又は網膜組織である。別の態様において、応答性細胞又はその関連する細胞、組織又は器官は、興奮細胞、組織又は器官ではなく、それらは興奮細胞又は組織を主に含まない。
【0011】
別の実施態様において、ペプチドの有効量を投与することによって、その必要がある患者の炎症、癌又は腫瘍性障害、又は毒剤への曝露を予防、治療、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。
【0012】
ある実施態様において、癌のメディエーターの活性、毒剤に対する身体の反応、及び炎症を調整する方法が、本明細書に提供される。特に本方法は、炎症メディエーターの活性を調整することに関する。ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、一つ以上の炎症メディエーターの作用を調整することが可能である。
【0013】
別の実施態様において、成長停止を必要とする細胞を有効量のペプチドと接触させることを含む、細胞の成長を停止する方法が、本明細書に提供される。
【0014】
別の実施態様において、癌又は腫瘍性細胞を有効量のペプチドと接触させることを含む、癌又は腫瘍性細胞の死を引き起こす方法が、本明細書に提供される。
【0015】
別の実施態様において、癌又は腫瘍性細胞への血管生成を阻害する、又は有糸分裂もしくは血管形成を引き起こす分子の産生を減らす方法が、本明細書に提供される。
【0016】
別の実施態様において、化学療法又は放射線療法に関連した副作用を治療又は予防する方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に、有効量のペプチドを投与することを含む方法が、本明細書に提供される。化学療法又は放射線療法に関連した副作用は、悪液質、低血球数、悪心、下痢、口腔病変及び脱毛症を含む。
【0017】
別の実施態様において、癌又は腫瘍性細胞を有効量のペプチドと接触させることを含む、患者の癌又は腫瘍性疾患を治療するか又は予防する方法が、本明細書に提供される。
【0018】
別の実施態様において、患者の癌又は腫瘍性疾患を治療又は予防する方法であって、このような治療又は予防を必要とする患者に有効量のペプチドを投与することを含む方法が、本明細書に提供される。
【0019】
ある実施態様において、非限定的に、その必要がある対象の癌又は腫瘍性障害を含む本明細書記載の疾患又は障害の予防、治療、改善又は管理のための医薬組成物の調製のための本ペプチドの使用が、本明細書に提供される。
【0020】
別の実施態様において、炎症又は炎症性状態に関連した症状を治療又は予防する方法が、本明細書に提供される。更なる実施態様において、その必要がある患者において炎症又は炎症性状態を、治療又は予防する方法が、本明細書に提供される。とりわけ本方法によって治療可能な炎症性状態には、アレルギー及びアレルギー性疾患、リウマチ性疾患、及び運動関連傷害がある。
【0021】
別の実施態様において、治療を必要とする人における毒剤への曝露の影響を、治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。とりわけ考慮される毒剤には、生物剤、化学薬品及び放射剤がある。
【0022】
別の実施態様において、中枢神経系又は末梢神経系の疾患又は障害の症状又は影響を、治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。
【0023】
別の実施態様において、非限定的に、坐骨神経損傷、表皮性神経線維の減少、ニューロパチー、疼痛、神経因性疼痛、神経痛、ヘルペス後神経痛、サルコイド小型線維ニューロパチー、腰痛、糖尿病性ニューロパチー又は手根管症候群などの、対象の末梢神経の外傷及び/又は炎症の症状又は影響を、治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。一実施態様において、ニューロパチー又は神経因性疼痛を、治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。
【0024】
別の実施態様において、I型真性糖尿病又はII型真性糖尿病又は前糖尿病などの、対象における内分泌異常又は代謝異常の症状を、治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。
【0025】
別の実施態様において、加齢の症状を治療、予防、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。
【0026】
ある実施態様において、その必要がある対象への投与のために上述した単離ペプチドを含む医薬組成物が、本明細書に提供される。この実施態様に従う特定の態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含む。このような医薬組成物は、経口的、鼻腔内、眼、鼻腔内、吸入、経皮、直腸、舌下、膣、又は非経口投与のために、あるいは、エクスビボでの細胞、組織又は器官の生存度を維持するための灌流液の形態で製剤化され得る。関連した実施態様において、対象は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0027】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照してより良く理解されるであろう。
【0028】
(4. 略語及び専門用語)
(4.1 略語)
本明細書中で用いられる、遺伝的にコードされたL-鏡像異性体アミノ酸の略語は、慣例に従い以下の通りである。
【表1】
【0029】
(4.2 専門用語)
別に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、提供されたペプチド、方法、組成物及び使用が属する技術分野の業者によって、一般に理解される意味を有する。本明細書中で用いられる、以下の用語は、別に明記しない限りそれらのものとされる意味を有する。
【0030】
(i)本明細書中で用いられる、用語「約」又は「ほぼ」は、数値と組み合わせて使用される場合、言及された数の1、5、10、15又は20%内の任意の数を指す。
【0031】
(ii)本明細書に提供される方法との関連で、用語「と組合せて投与される」は、疾患、障害、又は状態の発症の前、同時、及び/又は後に化合物を投与することを意味する。
【0032】
(iii)用語「アレルゲン」は、即時型過敏症(アレルギー)を生じることが可能な抗原性物質を指す。一般のアレルゲンは、細菌、ウイルス、動物寄生虫、昆虫及び昆虫針、化学物質(ラテックス)、塵、塵ダニ、カビ、動物の鱗屑、薬剤(例えば抗生物質、血清、サルファ剤、抗痙攣剤、インシュリン製剤、局所麻酔薬、ヨウ素及びアスピリン)、食品(例えば牛乳、チョコレート、イチゴ、卵、大豆、ナッツ、魚、甲殻類、小麦)、香水、植物、花粉及び煙を含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
(iv)用語「アレルギー性疾患」は、アレルギーによって引き起こされた、又は、それに関連した状態又は疾患を指す。アレルギー性疾患は、喘息、過敏性肺疾患、鼻炎、鼻副鼻腔炎、アトピー性湿疹、接触皮膚炎、アレルギー性結膜炎(断続的及び持続的)、春季カタル(花粉症)、アトピー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、蕁麻疹(発疹)、血管浮腫、過敏性肺炎、好酸球性気管支炎、脈管炎、過敏性血管炎、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連脈管炎、ウェーグナーの肉芽腫症、ヒスタミン反応、チャーグストラウス脈管炎、顕微鏡的多発性血管炎、側頭動脈炎、セリアック病、肥満細胞症及びアナフィラキシーを含むが、これらに限定されない。
【0034】
(v)用語「アレルギー症状」又は「アレルギー反応」は、アレルゲンに対する身体の反応を指す。アレルギー反応は、1つの領域(アレルゲンと接触した皮膚)に局在又は全身化することができる。アレルギー反応は、皮疹、そう痒、発疹、腫脹、呼吸困難、喘鳴、血管浮腫、嚥下困難、鼻づまり、鼻水、息切れ、悪心、胃痙攣、腹痛、嘔吐及び/又は低血圧を含むことができるが、これらに限定されない。
【0035】
(vi)用語「アレルギー」は、曝露後に有害な免疫学的反応を生じる、特定の抗原(アレルゲン)への曝露により誘発される過敏症の状態を指す。
【0036】
(vii)用語「アミノ酸」又は特定のアミノ酸の任意の言及は、天然のタンパク質起源アミノ酸、並びにアミノ酸類似体などの非天然のアミノ酸を含むことを意味する。当業者は、特に強調されない限り、この定義は、天然のタンパク質起源(L)-アミノ酸、これらの光学(D)-異性体、ペニシラミン(3-メルカプト-D-バリン)などのアミノ酸類似体を含む化学修飾アミノ酸、ノルロイシンなどの天然非タンパク質起源アミノ酸、及びアミノ酸の特徴を示す当該技術分野において公知の特徴を有する化学的に合成されたアミノ酸を含むことは理解するであろう。加えて、用語「アミノ酸等価物」は、天然アミノ酸の構造から外れるが、実質的にアミノ酸の構造を有する化合物を指し、これによりそれらは、ペプチド内で置換されることができ、置換にもかかわらずその生物活性を保持する。従って、例えば、アミノ酸等価物は、側鎖修飾又は置換を有するアミノ酸を含むことができ、さらに関連した有機酸、又はアミド等を含むことができる。用語「アミノ酸」は、アミノ酸等価物を含むことを意図する。用語「残基」は、アミノ酸及びアミノ酸等価物の両方を指す。また、一般に当該技術分野において公知であるように、アミノ酸は以下の群に分類されることができる:(1)酸性=Asp、Glu;(2)塩基性=Lys、Arg、His;(3)非極性(疎水性)=Cys、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Met、Trp、Gly、Tyr;及び(4)非荷電極性=Asn、Gln、Ser、Thr。非極性は、以下に細分されることができる:強疎水性=Ala、Val、Leu、Ile、Met、Phe;及び中程度疎水性=Gly、Pro、Cys、Tyr、Trp。代わりの方法において、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性=Asp、Glu;(2)塩基性=Lys、Arg、His、(3)脂肪族=Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、任意にSer及びThrは脂肪族ヒドロキシルとして別に分類される;(4)芳香族=Phe、Tyr、Trp;(5)アミド=Asp、Glu;及び(6)硫黄含有=Cys及びMetとして分類されることができる。(例えば、「生化学(Biochemistry)」、第4版, L. Stryer編集, WH Freeman and Co., 1995を参照し、これはその全体が本明細書中に引用により取り込まれている)。
【0037】
(viii)本明細書で用いられる用語「生物剤」は、ヒト、動物又は植物において疾患もしくは有害の原因となる、又は物質の劣化を生じる、生体又はそれから誘導される物質(細菌、ウイルス、真菌及び毒素など)を指す。これらの生物剤は、事実上遍在しており、戦争又はテロリズム(バイオテロリズム)用に設計され又は最適化され得る。これらの生物剤は、プリオン、ウイルス、微生物(細菌及び真菌)、及び一部の単細胞及び多細胞真核生物(すなわち、寄生虫)からなり得る。特に、生物剤(利用可能な、それらの慣用名、生物学的名称、及びNATO標準参照文字記号(NATO Standard Reference letter code)により同定される)は、制限されないが、以下を含む:真菌剤(コクシジオイデス・ミコシス(Coccidioides mycosis), OC, コクシジオイデス・ポサダシル(Coccidioides posadasil)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis))、細菌剤(炭疽菌(皮膚、吸入、胃腸)(炭疽菌(Bacillus anthracis), N及びTR)、疫病(鼠蹊腺腫、肺炎)(ペスト菌(Yersinia pestis), LE)、野兎病(野兎病菌(Francisella tularensis)、UL(schu S4)、TT(ウェット型)、ZZ(ドライ型)、及びSR及びJT(425))、コレラ(コレラ菌(Vibrio cholerae), HO)、ウシブルセラ病(AB)、ブタブルセラ病(US及びNX)、ヤギブルセラ病(AM及びBX)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitenis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、細菌赤痢(細菌性赤痢、カンピロバクター感染症、サルモネラ症)(Y)、鼻疽(鼻疽菌(Burkholderia mallei), LA)、類鼻疽(類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei), HI)、ジフテリア(ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae), DK)、リステリア症(リステリア菌(Listeria monocytogenes), TQ)、クラミジア剤(オウム病「オウム熱」(クラミドフィリア・プシティッシ(Chlamydophilia psittici), SI)、リケッチア薬(ロッキー山発疹熱(ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsia rickettsii), RI及びUY)、Q熱(コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetti)、OU、MN(ウェット型)、及びNT(ドライ型))、ヒト発疹チフス(発疹チフス・リケッチア(Rickettsia prowazekii), YE)、マウス発疹熱(リケッチア・チフス(Rickettsia typhi), AV))、ウイルス薬(黄熱(アルボウイルス・フラビビルダエ(Arbovirus flavivirdae), OJ, UT, 及びLU)、リフトバレー熱(RVFフレボウイルス・ブニヤビリダエ(Phlebovirus bunyaviridae), FA)、アルファ・ウイルス(例えば:東部ウマ脳炎(ZX)、西部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎(NU、TD及びFX))、天然痘(ZL)、日本B脳炎(AN)、オナガザルヘルペスウイルス1型(ヘルペスBウイルス)、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ウイルス性出血熱(フィロウイルス科(エボラ及びマールブルグ病ウイルス)、及びアレナウイルス科(ラッサ及びマチュポ))、サルポックスウイルス、再配列1918インフルエンザウイルス、南米出血熱ウイルス(フレクサル、グアナリト、フニン、マチュポ、サビア)、ダニ媒介性髄膜脳炎(TEBV)ウイルス(中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎、極東ダニ媒介性脳炎、キャサヌール森林病、オムスク出血熱、ロシア春及び夏のウイルス)、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、ハンタウイルス(韓国出血熱)、アフリカウマ病ウイルス、最適化されたブタ熱ウイルス、アカバネウイルス、鳥インフルエンザウイルス、ブルータングウイルス、ラクダポックスウイルス、古典的ブタ熱ウイルス、口蹄疫ウイルス、ヤギポックスウイルス、ランピースキン病ウイルス、悪性カタル熱ウイルス(アルセラフィン・ヘルペスウイルス1型)、メナングルウイルス、ニューカッスル病ウイルス、小反芻動物病ウイルス、狂犬病ウイルス、牛疫ウイルス、羊ポックスウイルス、豚水胞症ウイルス、水疱性口内炎ウイルス)、毒素(ボツリヌス毒素(クロストリジウム属、X及びXR)、リシン(トウゴマ(Ricinus communis), W及びWA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(UC及びPG)、サキシトキシン(麻痺性甲殻類中毒)(TZ及びSS)、テトロドトキシン(PP)、コノトキシン、ウェルシュ菌イプシロン毒素、トリコテセンマイコトキシン(T-2毒素)、志賀毒素)、及びシムアント(simuants)(モラシスレジジウム(molasis residium)(MR)、バチルス・グロビギイ(Bacillus globigii)(BG、BS及びU)、セラチア菌(Serratia marescens)(SM及びP)、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)変異体C-2(AF)、大腸菌(E.Coli)(EC)、バチルス・スルシジウス(Bacillus thursidius)(BT)、エルウィニアヘルビコラ(EH)、蛍光粒子(FP))、ライ麦麦角、ハンセン病、狂犬病、腸チフス、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)(ガス壊疸)、アフラトキシン、ネズミチフス菌、エンテロトキシン、アルゼンチン出血熱、多剤耐性結核(MTB)、ボリビア出血熱、レジオネラ・ニューモフィラ(legionella pneumophilia)、海洋毒素、脚気、マラリア、ペラグラ、デング熱、菌核ロリホイル(sclerotium rolfoil)、神経栄養脳炎、赤痢菌(Y)、SEB(UC)、及びマイコトキシン、ジアアセトキシシルペノール、コウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)、マイコプラズマ・カプリコルム(Mycoplasma capricolum) M.F38/M、マイコイデス・カプリ(Mycoides Capri)、マイコプラズマ・マイコイデス・マイコイデス(Mycoplasma mycoides mycoides)、アブリンである。生物剤は、ヒトに対して(例えば、天然痘、エボラウイルス、再配列1918インフルエンザウイルス、リシンなど)、家畜などの動物に対して(例えば、アフリカウマ病ウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、口蹄病など)、又は両方に対して(東部ウマ脳炎ウイルスなど)標的とされ得る。さらに、非致死的な生物剤でさえ、もしそれらが生物兵器としての使用のために高い致死性を目的として再設計されるなら、脅威を有し得る。従って、風邪の原因となるウイルスさえ、危険を有する可能性がある。
【0038】
(ix)本明細書で用いられる用語「癌」は、以下の悪性特性を示す任意の異常増殖を指す:(1)通常の限度と関係なく成長して分裂する能力、(2)隣接組織に侵入して、破壊する能力、及び(3)いくつかの例において、身体の他の位置に拡散する能力。癌は、中枢神経系、末梢神経系、胃腸/消化系、泌尿器生殖器系、婦人科学的、頭部及び頚部、血液学的/血液、筋骨格/柔組織、呼吸器、及び胸部の癌又は腫瘍性障害を含む。癌又は腫瘍性障害の更なる例は、制限されないが、以下を含む:脳(星状細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫)、脊髄、下垂体、胸部(浸潤性、浸潤前、炎症性癌、パジェット病、転移性及び再発性乳癌)、血液(ホジキン病、白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫)、リンパ節癌、肺(腺癌、燕麦細胞、非小細胞、小細胞、扁平上皮細胞、中皮腫)、皮膚(黒色腫、基底細胞、扁平上皮細胞、カポジ肉腫)、骨癌(ユーイング肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫)、頭頸部(喉頭、咽頭(鼻腔及び洞腔)、及び食道癌)、口腔(顎、唾液腺、咽喉、甲状腺、舌及び扁桃腺癌)、眼、婦人科学(子宮頸部、子宮内膜、卵管、卵巣、子宮、膣、及び外陰)、泌尿生殖器(膀胱、腎臓、陰茎、前立腺、精巣及び尿路癌)、副腎(皮質腺腫、皮質癌腫、クロム親和細胞腫)、及び胃腸(虫垂、胆管(肝外胆管)結腸、胆嚢、胃、腸、結腸、肝臓、膵臓、直腸、及び胃癌)、並びに以下に列挙したもの:(この種の障害のレビューに関して、Fishmanらの文献、1985, Medicine, 第二版, J.B. Lippincott Co., Philadelphiaを参照されたい。):白血病:急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加、胃癌、リンパ腫(悪性及び非悪性):ホジキン病、非ホジキン病、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、固形腫瘍肉腫及び癌腫:線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、口腔扁平上皮癌、肝細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌:嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、頸部腺癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺腺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、悪性神経膠腫、グリア芽細胞腫、多形性星状芽細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、又は網膜芽腫である。
【0039】
(x)本明細書で用いられる用語「化学薬品」は、ひどい死又は危害をヒト又は動物に生じる化学物質を指す。化学薬品が爆発兵器(munition)又は分散装置を用いて送達されるように最適化された範囲において、該薬品は化学兵器である。一般に、武器として使用する化学薬品は、例えば、血液剤、糜爛剤、神経剤、肺剤及び無能力化剤などのそれらの作用方法により分類されることができる。下記化学薬品の各々は、利用可能な、それらのNATO標準参照文字記号により同定される。
【0040】
(xi)「血液剤」は、細胞が酸素を使用するのを阻止する化学薬品を指す。このカテゴリ内の化学薬品は、制限されないが、以下を含む:アルシン(アダムサイト(ジフェニルアミンクロロアルシン)、クラークI(ジフェニルクロロアルシン)、クラークII(ジフェニルシアノアルシン))、及びシアニド(クロロシアン(CK)、シアン化水素(AC)など)化合物である。アルシン化合物は、腎不全に至る血管内溶血を起こす。シアニド化合物は、細胞が酸素を使用するのを阻止し、その後、該細胞は、代謝性アシドーシスに至る過剰の乳酸を生成する嫌気的呼吸を用いる。血液剤の犠牲者は、頭痛、眩暈、悪心、嘔吐、粘膜刺激、発声障害(dysponea)、意識障害、昏睡、痙攣、頻脈性及び徐脈性律動異常、低血圧、心血管虚脱、及びチアノーゼ(cyanosis)を含むが、これらに限定されない症状を示し得る。
【0041】
(A)「神経剤」は、酵素アセチルコリンエステラーゼを不活性化する化学薬品を指す。犠牲者のシナプスにおける神経伝達物質アセチルコリンの結果として生じる増加は、ムスカリン様及びニコチン性作用につながる。このカテゴリ内の化合物は、制限されないが、以下を含む:シクロサリン(シクロへキシルメチルホスホフルオリダート, GF)、サリン(イソプロピルメチルホスファノフルオリダート, GB)、チオサリン、ソマン(ピナコリルメチルホスファノフルオリダート, GC)、タブン(エチル N,N-ジメチルホスホルアミドシアニダート, GA)、VX (O-エチル-[s]-[2-ジイソプロピルアミノエチル-メチルホスホノチオラート)、VR (N,N-ジエチル-2-(メチル-(2-メチルプロポキシ)ホスホリル)スルファニルエタンアミン)、VE (O-エチル-S-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ホスホノチオエート)、VG (O,O-ジエチル-S-[2-(ジエチルアミノ)エチル]ホスホロチオエート)、VM (O-エチル-S-[2-(ジエチルアミノ)エチル]メチルホスホノチオエート)、エチルサリン (イソプロピルエチルホスホノフルオリダート, GE)、EDMP (エチル-2-ジイソプロピルアミノエチルメチルホスホナート)、DF (メチルホスホニルジフルオリド)、ノビチョク剤、GV (P-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N-ジメチルホスホンアミド酸フルオリド)、Gd42、Gd83、タメリンエステル、フルオロホスホコリン、ホスホチオコラート、DFP、及び殺虫剤(フェノチアジン、有機リン系(ジコロウス(dichorous)、マラチオン、パラチオン、フェンチオン、アミドン、パラオクソン、クロロピリホス、シストックス、ピロリン酸塩、TOCP))である。神経剤の犠牲者は、制限されないが、徐脈、縮瞳、過剰な唾液分泌、嘔吐、下痢、尿失禁、筋攣縮、初期脱分極性弛緩性麻痺、スパイク放電及び痙攣、中間の症候群、神経毒エステラーゼ抑制、及び有機リン系により誘発された後発性ニューロパチーを含む症状を示し得る。
【0042】
(B)「糜爛剤」は、熱傷及び呼吸困難を生じる、犠牲者の皮膚及び呼吸器系に損傷を与える酸形成化合物である薬剤を指す。このカテゴリ内の化学薬品は、制限されないが、以下を含む:硫黄マスタード(1,2-ビス(2-クロロエチルチオ)エタン(セスキマスタード、Q)、1,3-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-プロパン、1,4-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-ブタン、1,5-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-ペンタン、2-クロロエチルクロロメチルスルフィド、ビス(2-クロロエチル)スルフィド(HD)、ビス(2-クロロエチルチオ)メタン、ビス(2-クロロエチルチオメチル)エーテル、ビス(2-クロロエチルチオエチル)エーテル、ジ-2'-クロロエチルスルフィド及びそれらの組合せ(HT、HL、HQ))、ナイトロジェンマスタード (ビス(2-クロロエチル)エチルアミン(HN1)、ビス(2-クロロエチル)メチルアミン(HN2)、トリス(2-クロロエチル)アミン (HN3)、2-クロロ-N-(2-クロロエチル)-N-メチルエタンアミン-N-オキシド塩酸塩、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、メルファラン)、ルイサイト (2-クロロビニルジクロロアルシン、ビス(2-クロロビニル)クロロアルシン、トリス(2-クロロビニル)アルシン、ジクロロ(2-クロロビニル)アルシン)、エチルジクロロアルシン、メチルジクロロアルシン、フェニルジクロロアルシン、及びホスゲンオキシム(ジクロロホルムオキシム)である。糜爛剤の犠牲者は、制限されないが、紅斑、浮腫、壊死及び小水疱、黒皮症、気管気管支炎、気管支痙攣、気管支閉塞、出血性肺気腫、呼吸不全、細菌性肺炎、目紅斑、流涙、目の不快、目の激痛、ドライアイ、眼瞼痙攣、虹彩炎、失明、悪心、嘔吐、骨髄抑制、ルイサイトショック、肝臓壊死及び低循環に続く腎不全を含む症状を示し得る。
【0043】
(C)「肺剤」は、糜爛剤と類似するが、呼吸器系の冠水及び犠牲者窒息を生じる、呼吸器系により顕著な作用を有する薬剤を指す。このカテゴリ内の化学薬品は、アダムサイト、アクロレイン、ビス(クロロメチル)エーテル、塩素、クロロピクリン、ジホスホゲン、メチルクロロ硫酸塩、塩化第二スズ、塩化水素、酸化窒素及びホスゲンを含むが、これらに限定されない。肺剤の犠牲者は、灼熱感(目、鼻咽頭、中咽頭)、大量の涙、鼻漏、咳を伴う嗄声、呼吸困難、嚥下痛、結膜炎、角膜損傷、鼻口腔咽頭損傷/浮腫、声門構造の炎症、分泌、及び/又は喉頭痙攣による呼吸窮迫、急性呼吸症候群、及び反応気道機能不全症候群を含むがこれらに限定されない症状を示し得る。
【0044】
(D)「無能力化剤」は、致命的でなく、主に、生理的又は精神的作用又は両方を介して無能力にすることを目的とする薬剤を指す。無能力化剤の一般の種類は、催涙剤、涙、苦痛及び一時的な失明さえも引き起こす目を刺激する化学薬品である。催涙剤は、制限されないが、以下を含む:a-クロロトルエン、臭化ベンジル、ブロモアセトン(BA)、ブロモベンジルシアニド(CA)、ブロモメチルエチルケトン、カプサイシン(OC)、クロルアセトフェノン(CN)、クロロメチルクロロホルマート、ジベンゾオキサゼピン(CR)、エチルヨードアセタート、オルト-クロロベンジリデンマロニトリル(CS)、トリクロロメチルクロロホルマート及び臭化キシリルである。さらなる無能力化剤は、以下を含むが、これらに限定されない:3-キヌクリジニルベンジラート(幻覚剤;BZ)、シアン化水素酸(麻痺剤)、ジフェニルクロロアルシン(くしゃみ誘発剤、DA)、ジフェニルシアノアルシン(DC)、KOLOKOL-1(フェンタニル誘導体)、チョウセン朝顔、ヘルボルネ(Hellborne)、ベラドンナ、ヒオシアムスファレズレズ(Hyoscyamus falezlez)、インドール(リゼルギン酸ジエチルアミド(LSD-25))、マリファナ誘導体(DMHP)、アンフェタミン、コカイン、カフェイン、ニコチン、ストリキニーネ、メトラゾール、バルビツラート(メトヘキシタール)、オピオイド、抗精神病薬(ハロペリドール)、ベンゾジアゼピン、フェンタニル同属体、シロシビン、イボガイン、ハルミン、エクタシー(ectasy)、PCP、アトロピン、スコポラミン、オキシブチニン、ジトロパン(ditropan)、コリン抑制性抗ヒスタミン剤、ベナクチジン及び精神安定剤である。
【0045】
上記の化学物質の多くが、武器としてそれらの使用を越えた使用を有し、製造の範囲内で用いられる。従って、製造プラント又は化学プラントからこれらの化学薬品の偶然又は意図的な放出は、プラントの従業員、これらのプラント周辺に住む人々に対して危険を有するであろう。毒性の工業的製造化学物質の例を挙げると、制限されないが、以下を含む:アンモニア、アルシン、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、二硫化炭素、塩素、ジボラン、エチレンオキシド、フッ素、ホルムアルデヒド、臭化水素、塩化水素、シアン化水素、フッ化水素、硫化水素、硝酸、ホスゲン、三塩化リン、二酸化硫黄、硫酸、六フッ化タングステン、アセトンシアノヒドリン、アクロレイン、アクリロトリル、アリルアルコール、アリルアミン、アリルクロロカルボナート、三臭化ホウ素、一酸化炭素、硫化カルボニル、クロロアセトン、クロロアセチルニトリル、クロロスルホン酸、ジケトン、1,2-ジメチルヒドラジン、エチレンジブロミド、セレン化水素、メタン塩化スルホニル、臭化メチル、クロロギ酸メチル、メチルクロロシラン、メチルヒドラジン、イソシアン酸メチル、メチルメルカプタン、二酸化窒素、ホスフィン、オキシ塩化リン、五フッ化リン、六フッ化セレン、シリコーンテトラフルオリド、スチロイン(stiloine)、三酸化硫黄、塩化スルフリル、フッ化スルフリル、六フッ化テルル、n-オクチルメルカプタン、四塩化チタン、トリクロロアセチルクロリド、トリフルオロアセチルクロリド、イソチオシアン酸アリル、三塩化ヒ素、臭素、塩化臭素、五フッ化臭素、三フッ化臭素、フッ化カルボニル、五フッ化塩素、三フッ化塩素、クロロアセチルアルデヒド、クロロアセチルクロリド、クロトンアルデヒド、塩化シアン、硫酸ジメチル、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナート、クロロギ酸エチル、クロロチオギ酸エチル、エチルホスホノチオ酸ジクロリド、エチルホスホン酸ジクロリド、エチレンイミン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、ヨウ化水素、鉄ペンタカルボニル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸イソプロピル、イソシアン酸イソプロピル、クロロギ酸n-ブチル、イソシアン酸n-ブチル、一酸化窒素、クロロギ酸n-プロピル、パラチオン、ペルクロロメチルメルカプタン、イソシアン酸sec-ブチル、イソシアン酸tert-ブチル、テトラエチル鉛、ピロリン酸テトラエチル、テトラメチル鉛、トルエン2,4-ジイソシアナート、及びトルエン2,6-ジイソシアナートである。
【0046】
(xii)本明細書中で用いられる「有効量」は、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した任意の疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状を調整するのに十分なペプチドの量であって、例えば、癌、炎症又は毒剤への曝露に対する身体の反応を含むがこれらに限定されない、組織の損傷に関連した疾患又は障害に対する身体の反応の有害作用を阻害、抑制又は緩和するのに十分なペプチドの量を含む。加えて、「有効量」は、組織の損傷に関連した任意の疾患又は障害を緩和、改善、減弱又は予防するのに十分なペプチドの量、又は組織の損傷に関連した疾患又は障害に罹患した患者の治療的な利益を提供するのに十分なペプチドの量を含む。
【0047】
(xiii)「興奮組織」は、興奮細胞を含む組織を意味する。興奮細胞は、活動的に電気刺激に反応し、それらの細胞膜を横切る荷電差を有する細胞である。興奮細胞は、通常、活動電位を受けることが可能である。この種の細胞は、通常、電位作動型、リガンド依存型、及びストレッチチャネルなどのチャネルを発現し、膜を横切るイオン(カリウム、ナトリウム、カルシウム、塩化物など)の流れを可能にする。興奮組織は、神経組織、筋組織及び腺組織を含む。興奮組織は、制限されないが、以下を含む:末梢神経系(耳及び網膜)及び中枢神経系(脳及び脊髄)の組織などの神経組織;心臓及び関連する神経の細胞などの心血管組織;並びに、細胞間ギャップ結合に沿って、T-型カルシウムチャネルがインシュリンの分泌に参加する膵臓などの腺組織である。興奮組織の例証的なリストは、神経、骨格筋、平滑筋、心筋、子宮、中枢神経系、脊髄、脳、網膜、嗅覚系、聴覚系などを含む器官及び組織を含む。
【0048】
本明細書で用いられる用語「宿主細胞」は、核酸分子をトランスフェクトされた特定の対象細胞又はこのような細胞の子孫及び可能性のある子孫を指す。この種の細胞の子孫は、後世において起こり得る突然変異もしくは環境の影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組込みにより、核酸分子をトランスフェクトされる親細胞と同一ではなくてもよい。
【0049】
(xv)本明細書で用いられる用語「炎症性状態」は、機械的又は化学的に誘発されたかどうかに関係なく、炎症性成分を有する、様々な疾患又は外傷を指す。それは、脳、脊髄、結合組織、心臓、肺、腎臓、尿路、膵臓、眼及び前立腺を含むがこれらに限定されない1つ以上の器官又は組織において炎症を引き起こしている状態を含む。このような状態の非限定的な例を挙げると、制限されないが、以下を含む:虫垂炎、眼瞼炎、気管支炎、滑液嚢炎、子宮頸管炎、胆管炎、胆嚢炎、絨毛羊膜炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、心内膜炎、子宮内膜炎、上顆炎、精巣上体炎、結合組織炎、胃炎、歯肉炎、舌炎、化膿性汗腺炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、心筋炎、筋炎、腎炎、臍炎、卵巣炎、睾丸炎、骨炎、耳炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺臓炎(肺炎)、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、卵管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、扁桃炎、ブドウ膜炎、尿道炎、腟炎、外陰炎、喘息、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、腱炎、脈管炎、慢性気管支炎、膵炎、骨髄炎、関節炎(リウマトイド及び乾癬)、糸球体腎炎、視神経炎、側頭動脈炎、脳炎、髄膜炎、横断性脊髄炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、壊死性筋膜炎、肝炎、壊死性腸炎(necrotizing entercolitis)、骨盤内炎症性疾患、炎症性腸疾患(大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎及び腸炎)、直腸炎、脈管炎、血管狭窄、再狭窄、低血圧、1型糖尿病、川崎病、デクム(Decum's)病、慢性閉塞性肺疾患、乾癬、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、強皮症、シェーグレン症候群、混合結合組織疾患、酒さ、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、アルツハイマー病、成人発症スティル病、急性網膜色素上皮炎、ティーツェ症候群、ベーチェット病、白点症候群(急性後部多発性斑状色素上皮症、匐行性脈絡膜炎、散弾網脈絡膜炎、汎ブドウ膜炎を有する多病巣性脈絡膜炎、びまん性網膜下線維症症候群、点状内部脈絡膜症(punctuate inner choroidopathy)、多発一過性白点症候群、及びびまん性片側性亜急性神経網膜炎)、環状肉芽腫、過敏性大腸症候群、クローン病、セリアック病、胃腸炎、グレーブス病、多発性硬化症、デュピュイトラン拘縮、移植片拒絶疾患(同種移植片拒絶、及び移植片対宿主病を含む)、例えば、皮膚移植拒絶、固形臓器移植拒絶、骨髄移植拒絶、炎症性皮膚疾患、ヒト乳頭腫ウイルス、HIV又はRLV感染症から誘導されるものなどのウイルス性皮膚病、細菌性、真菌性、及び又は他の寄生性皮膚病、皮膚エリテマトーデス、及び高IgG4疾患である。更なる「炎症性状態」は、制限されないが、以下を含む虚血性又は非虚血性状態から生じる炎症を指すことができる:鈍的外傷、挫傷、アレルギー及びアレルギー性疾患、リウマチ性疾患(小児関節炎、関節リウマチ、チャーグ−ストラウス症候群、線維筋痛、巨細胞(側頭部)動脈炎、痛風、ヘノッホシェーンライン(Henoch-Schoenlin)紫斑病、過敏性血管炎、強直性脊椎炎、被膜炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、全身性エリテマトーデス、リウマチ性多発性筋痛、変形性関節炎(手、臀部、膝、その他)、結節性多発性動脈炎、ライター症候群、スポーツ関連の損傷(ランナー膝、テニス肘、五十肩、アキレス腱炎、足底筋膜炎、滑液嚢炎、オスグッド・シュラッター病)、反復運動過多損傷(蓄積外傷疾患、フォーカルジストニア、手根管症候群、交差症候群、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、狭窄性腱鞘炎(ド・ケルヴァン症候群、バネ指/トリガー親指)、胸郭出口症候群、腱炎、腱滑膜炎、橈骨神経管症候群、レイノー病、ガングリオン、ゲーマーの親指、ウィーアイティス(Wii-itis)、その他)、ウイルス、真菌及び細菌などの感染症である。「炎症性状態」は、急性又は慢性でもよい。
【0050】
(xvi)「単離された」又は「精製された」ペプチドは、タンパク質又はペプチドが誘導される細胞もしくは組織源由来の細胞物質もしくは他の不純タンパク質を実質的に含まない、又は化学的に合成されるときに化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。言語「細胞物質を実質的に含まない」は、ペプチドが、細胞の細胞成分から分離され、単離又は組換え的に産生される、ペプチドの調製物を含む。従って、細胞物質を実質的に含まないペプチドは、約30%、20%、10%又は5%未満(乾燥重量)の異種タンパク質(本明細書において「不純タンパク質」とも称される。)を有するペプチドの調製物を含む。ペプチドが組換え的に産生されるとき、培養培地を実質的に含まない、すなわち、培養培地はタンパク質調製物の容積の約20%、10%又は5%未満を占め得る。ペプチドが化学合成によって生成されるとき、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、タンパク質の合成に関与している化学前駆体又は他の化学物質から分離し得る。従って、このようなペプチドの調製物は、関心対象のペプチド以外の化学前駆体又は化合物を約30%、20%、10%、5%未満(乾燥重量)を有する。一実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、単離又は精製される。
【0051】
(xvii)「単離された」核酸分子は、該核酸分子の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されるものである。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技術によって生成される場合に他の細胞物質又は培地を実質的に含み得ない、又は化学的に合成される場合に化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含み得ない。特定の実施態様において、本明細書に提供されるペプチドをコードしている核酸分子は、単離又は精製される。
【0052】
(xviii)本明細書中で用いられる用語「管理」は、一実施態様において、患者がペプチドから引き出す組織の損傷に関連した疾患又は障害のダメージ、影響、又は症状を復帰させない一つ以上の有益な副作用の提供を含む。ある実施態様において、患者は、症状の進行又は悪化を予防するために、組織の損傷に関連した疾患又は障害の症状を「管理する」ためのペプチドを投与される。
【0053】
(xix)用語「調整する」、「調整」などは、調節活性の転写及び/又はタンパク質結合などの、組織の損傷に関連した疾患又は障害に対する身体の反応のメディエーターの機能及び/又は発現を増減する化合物の能力を指す。本明細書に記載されているように、調整は、該メディエーターと直接的もしくは間接的に関連した機能もしくは特徴の阻害、拮抗作用、部分的な拮抗作用、活性化、アゴニズムもしくは部分的なアゴニズム、及び/又は該メディエーターの発現の上方制御もしくは下方制御を含む。一実施態様において、調整は、直接的であり、且つ、調整は、部分的又は全体的に、刺激をブロックし、活性を減少、抑制、阻害、遅延し、シグナル伝達を不活性化、減感、又は下方制御するように結合する化合物である、メディエーターのインヒビター又はアンタゴニストを介して生じ得る。メディエーターの機能を阻害する本明細書に提供される方法に有用な特定のペプチドの能力は、生化学的アッセイ、例えば、結合アッセイ、細胞系アッセイ、例えば、一過性トランスフェクションアッセイ、あるいはインビボアッセイ、例えば、ラット又はマウスモデルなどのニューロン傷害、癌、炎症、又は化学的もしくは放射線傷害の動物モデルにおいて、示されることができる。
【0054】
(xx)本明細書中で使用されるように、ペプチド内の構造に関して、用語「モチーフ」は、ペプチド鎖のアミノ酸配列中の連続的なアミノ酸のセット、及び/又は前記ペプチドの二次及び/又は三次構造内の線形又は空間的に隣接するアミノ酸のセットを指す。該モチーフは、タンパク質フォールディングの結果として、全て又は部分的に形成されることができるため、記載されているモチーフにおいて隣接するアミノ酸は、ペプチドの線形アミノ酸配列中で、0、1以上、5以上、10以上、15以上又は20以上のアミノ酸により隔てられることができる。
【0055】
(xxi)本明細書中で用いられる用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に及びこれらの最も広い意味において使用され、束縛されたアミノ酸配列(すなわち、例えばβターン又はβプリーツシートを起こすか、又は例えばジスルフィド結合されたCys残基の存在によって環化されるアミノ酸の存在など、構造のいくつかの要素を有する)、又は束縛されていないアミノ酸(例えば線形)配列を指す。ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、30未満のアミノ酸から構成される。しかし、本開示の解釈において、当業者は、本明細書に提供される方法に有用なペプチドを区別するものは特定のペプチドの長さではなく、組織保護レセプター複合体に結合し、並びに/又は本明細書中に記載されているペプチドの結合と競合する能力であることを認識するであろう。また、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸等価物又は他の非アミノ酸基を含み、一方で、ペプチド又はタンパク質の所望の機能活性を依然保持する化合物も意味する。ペプチド等価物は、1以上のアミノ酸を、関連した有機酸(PABAなど)もしくはアミノ酸等価物などと置換、又は側鎖もしくは官能基の置換もしくは修飾によって、従来のペプチドとは異なり得る。
【0056】
(xxii)用語「組織の損傷に関連した疾患又は障害のダメージ、影響又は症状の予防」は、そのようなダメージ、影響又は症状の発生を遅延し、進行を妨げ、出現を妨げ、その発症に対し保護し、阻害し、もしくは排除し、又は発生率を低減することを意味する。用語「予防」の使用は、予防的療法を投与された患者集団の全ての患者が、予防のために標的とされる組織の損傷に関連した疾患又は障害に応答して、症状の影響を受けないか又は症状を発症しないことを暗示するのではなく、むしろ患者集団が、該疾患又は障害のダメージ、影響又は症状の軽減を示すことを暗示することを意味する。例えば、多くのインフルエンザワクチンは、該ワクチンを投与されたヒトにおいて、インフルエンザを予防することに100%有効であるわけではない。当業者は、制限されないが、様々な毒剤又は外傷に曝露され得る活動に係わろうとしている個人(例えば、軍事作戦に係わる兵士、化学もしくは食品加工労働者、救急隊員、又は初動対応者など)、又は毒剤への曝露を受け得る個人(例えば、化学、原子力もしくは製造施設の近くに住む個人、又は軍事もしくはテロリスト攻撃の脅威下の個人)など、予防療法が有益である患者及び状況を容易に確認できる。
【0057】
(xxiii)本明細書中で用いられる「予防的有効量」は、組織の損傷に関連した疾患又は障害から生じるダメージ、影響又は症状の予防となるのに十分なペプチドの量を指す。予防的有効量は、組織の損傷に関連した疾患又は障害から生じるダメージ、影響又は症状を予防するのに十分なペプチドの量を意味することができる。さらに、別の予防剤に関して、予防的有効量は、組織の損傷に関連した疾患又は障害から生じるダメージ、影響又は症状の予防において予防的利益を提供するペプチドと組み合わせたその予防剤の量を意味する。ペプチドの量に関連して使用される用語「予防的有効量」は、全体の予防を改善する量、又は予防的有効性を向上する量もしくは別の予防剤との相乗的効果を提供する量を包含することができる。
【0058】
(xxiv)用語「新生物」は、癌腫瘍の悪性特性を欠き、一般に軽度かつ非進行性の腫瘍である異常成長を指す。新生物は、あざ、子宮筋腫、甲状腺アデノーマ、副腎皮質アデノーマ、下垂体アデノーマ及びテラトーマを含むが、これらに限定されない。
【0059】
(xxv)本明細書で用いられる用語「放射線剤」は、対象を死傷させることができ、都市又は国の破壊を起こすように使用することができる任意の放射性物質を意味する。放射線剤への曝露は、武器の配備(核爆弾(核分裂、核融合、中性子、ブースト型核分裂又はコバルト等被覆爆弾(salted bomb))、劣化ウランを含むシェル)、テロリストの装置(「汚い爆弾」)、又は核兵器の爆発又は原子炉設備の故障から生じる放射性降下物によって発生する場合がある。放射性剤は、制限されないが、以下を含み得る:
137Cs、
60Co、
241Am、
252Cf、
192Ir、
238Pu、
90Sr、
226Ra、
91Sr、
92Sr、
95Zr、
99Mo、
106Ru、
131Sb、
132Te、
139Te、
140Ba、
141La、
144Ce、
233U、
235U、
238U、
228P、
229P、
230P、
231P、
232P、
233P、
234P、
235P、
236P、
237P、
238P、
239P、
240P、
241P、
242P、
243P、
244P、
245P、
246P、
247P、及び
131Iである。放射性剤への曝露は、発癌、減菌、白内障形成、放射線皮膚障害、ベータ熱傷、ガンマ熱傷、細胞(特に、骨髄、消化管細胞)の喪失、造血、胃腸、中枢神経、心血管、皮膚及び/又は生殖系へのダメージ、急性放射線症候群、慢性放射線症候群、及び皮膚放射線症候群を生じ得る。急性放射線症候群は、一般に、短期間で起こる対象の身体への大線量の放射から生じる。該症候群は、悪心、嘔吐、全身の病気及び疲労を始めとして、免疫抑制、毛髪の喪失、制御不能の出血(口、皮膚下、腎臓)、広範囲に及ぶ下痢、譫妄、昏睡及び死という、予測可能な経過を有する。皮膚放射線症候群は、急性放射線症候群の一部であり、制限されないが、炎症、紅斑、乾性もしくは湿性剥離、脱毛、水疱、発赤、潰瘍形成、皮脂腺及び汗腺へのダメージ、萎縮症、線維症、皮膚色素沈着の減少又は増加、及び壊死を含む、皮膚に対する放射線影響を指す。
【0060】
(xxvi)本明細書中で用いられる用語「対象」、「患者」及び「犠牲者」は、互換的に使用される。本明細書中で用いられる用語「対象」及び「対象(複数)」は、動物、例えば非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)及び霊長類(例えば、サル、類人猿又はヒト)などの哺乳動物を意味する。
【0061】
(xxvii)本明細書中で用いられる用語「腫瘍又は癌に関連した症候群」は、「腫瘤効果(mass effect)」(腫瘍による重要器官の圧迫)、又は「機能性腫瘍」(腫瘍に罹患した器官によるホルモンの過剰産生)を介して、腫瘍の直接作用から生じる症候群を指す。この種の症候群は、制限されないが、以下を含む:ベックウィズ-ヴィードマン症候群、SBLA症候群、リー-フラウメニ癌症候群、血管新生腫瘍(Vasoproliferation)、家族性大腸腺腫症(ガードナー症候群)、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、ターコット症候群、コーデン症候群、カーニートリアド症候群(Carney Triad syndrome)、多発性内分泌腫瘍症候群(ウェルマー(MEN-1)、シップル(MEN-2a、MEN-2b)、フォン・ヒッペル・リンドウ病、クッシング症候群、アディソン症候群、ヴェルナー・モリソン症候群、ゾリンジャー-エリソン症候群、WDHA症候群、膵性コレラ、アイザック症候群、波打つ筋肉症候群(Rippling muscle syndrome)、スティッフマン症候群、腫瘍随伴運動失調(Paraneoplastic Ataxia)、Yo症候群、Tr症候群、Hu症候群、CV-2症候群、CRMP-5症候群、眼球クローヌス/ミオクローヌス、Ma症候群、モルヴァン繊維舞踏病(Morvan's fibrillary chorea)、バナヤン-ライリー-ルナルカバ症候群(Bannayan-Riley-Runalcaba syndrome)、ポイツ-ジェガース症候群、ミュア-トール症候群、ヒルシュスプルング病、リンチ症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、重症筋無力症、神経筋緊張症、傍腫瘍性小脳変性症、傍腫瘍性辺縁系脳炎、スウィーツ症候群(Sweets syndrome)、バート-ホッジ-デューブ症候群、母斑様基底細胞癌症候群、全身類基底濾胞性症候群(Generalized Basaloid Follicular syndrome)、過誤腫症候群、バゼックス症候群、ブルックスピーグラー症候群(Brooke Spiegler syndrome)、家族性円柱腫症、多発性家族性毛包上皮腫(Multiple Familial Trichoepitheliomas)、アンドロゲン剥奪症候群、療法に関連した骨髄異形成症候群、嗜眠症候群、湾岸戦争症候群、及びソマトスタチン産生腫瘍症候群である。
【0062】
(xxviii)本明細書中で用いられる用語「組織保護活性」又は「組織保護」は、細胞、組織又は器官のダメージ又は死を阻害するか又は遅延させる作用を指す。別に明記しない限り、細胞、組織又は器官のダメージ又は死の「遅延」は、本明細書に提供されるペプチドの非存在下で、コントロール条件に対して評価される。組織保護活性は、制限されないが中枢神経系の組織などの、組織保護レセプター複合体を発現している組織、細胞及び/又は器官(すなわち、それぞれ応答性の組織、細胞及び/又は器官)に特有である。特定の実施態様において、応答性細胞は、赤血球前駆細胞ではない。
【0063】
(xxix)本明細書で用いられる用語「組織保護レセプター複合体」は、少なくとも1つのエリスロポエチンレセプターサブユニット及び少なくとも1つのβ共通レセプターサブユニットを含む複合体を意味する。組織保護レセプター複合体は、複数のエリスロポエチンレセプターサブユニット及び/又はβ共通レセプターサブユニット、並びに他の種類のレセプター又はタンパク質を含むことができる。本明細書中にその全体において引用により取り込まれているWO 2004/096148を参照されたい。
【0064】
(xxx)本明細書で用いられる用語「毒剤」は、前述の生物剤、化学薬品及び放射線剤を指す。
【0065】
(xxxi)2つのアミノ酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較を目的として整列配置される。その後、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占められる場合、該分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の重なり合う位置の数 × 100 / 位置の総数)。一実施態様において、2つの配列は、同じ長さである。別の実施態様において、該配列は、異なる長さであり、従って、パーセント同一性は、より長い配列の部分に対してより短い配列の比較を指し、その場合、該部分は、該より短い配列と同じ長さである。
【0066】
(xxxii)本明細書中で用いられる、用語「治療」は、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状から生じるダメージ、影響又は症状の排除、軽減、管理又は制御を含む。
【発明を実施するための形態】
【0068】
(6. 発明の詳細な説明)
(6.1 単離ポリペプチド)
組織の損傷に関連した疾患又は障害に対する身体の応答の影響を調整する方法が、本明細書に提供される。さらに、
【化14】
のコンセンサス配列を共有するペプチド又はペプチド類似体を投与することによって、組織の損傷に関連した疾患又は障害に罹患した患者のダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善又は管理する方法が、本明細書に提供される。ある実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化15】
からなる。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化16】
を含む。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化17】
からなる。別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化18】
を含む。さらに別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化19】
からなる。またさらに別の実施態様において、本ペプチドは、アミノ酸配列
【化20】
を含む。一実施態様において、本方法で使用されるペプチドは、組織保護性、神経保護性、神経突起生成性、又は抗アポトーシス性である。
【0069】
本明細書に提供されるペプチドは、アミノ酸配列
【化21】
を含むことができ、ここでこのペプチドは5個のアミノ酸から最大約30個のアミノ酸を含み、ここでアミノ酸配列は、ペプチド内のN-末端、C-末端又は任意の他の位置に位置する。さらに、保存的又は非保存的アミノ酸置換を、ペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基で、又はアミノ酸等価物との置換を行うことができる。保存的及び非保存的な置換の両方を行うことができる。別の実施態様において、2つ以上の置換を行うことができる。従って、一部の実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、1つのアミノ酸残基が保存的置換、非保存的置換、又はアミノ酸等価物により置き換えられたペプチドを含む。特定の実施態様において、アミノ酸配列
【化22】
を有する本明細書に提供されるペプチドは、1つの保存的置換を伴うアミノ酸配列を含む。本明細書記載のいずれかひとつの置換を有するペプチドは、本明細書記載のようなその組織保護活性を維持するペプチドを含み、これは、組織保護活性のアッセイに関する1つ以上の本明細書記載の方法を用いてアッセイすることができる。
【0070】
保存的置換は、アミノ酸の側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で行うものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、4つのファミリーに分けることができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸、(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性(疎水性)=システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、グリシン、チロシン;及び(4)非荷電極性=アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン。非極性は、以下に細分することができる:強疎水性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン;及び中程度疎水性=グリシン、プロリン、システイン、チロシン、トリプトファン。代わりの方法において、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン(任意にセリン及びトレオニンは脂肪族ヒドロキシルとして別に分類される);(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;及び(6)硫黄含有=システイン及びメチオニンとして分類されることができる。(例えば、Biochemistry, 第4版, L. Stryer編集, WH Freeman and Co., 1995を参照し、これはその全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。アミノ酸等価物は、天然のアミノ酸の構造から離れているが、実質的にアミノ酸の構造を有し、これによりこれらはペプチド内で置換されることができ、これは置換にもかかわらずその生物活性を維持する化合物を指す。従って例えば、アミノ酸等価物は、側鎖の修飾又は置換を有するアミノ酸を含むことができ、及びまた関連する有機酸、アミドなどを含む。
【0071】
従って、当業者は、単離ペプチドは、アミノ酸配列
【化23】
と、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、少なくとも50%、少なくとも45%、40%、少なくとも35%、少なくとも30%、又は少なくとも20%の配列同一性を有してよいことを認めるであろう。
【0072】
あらゆる特定の理論に結びつけられることを欲するものではないが、組織保護に関して、ペプチド中の荷電アミノ酸の対は、カルバミル炭素が、約3オングストローム(Å)〜約5Å離れるように、一実施態様においては約4Å〜約5Å離れるように、及び一実施態様においては約4.4Å〜約4.8Å離れるように、空間的に配向され得る。これは、例えば、単純な線状ペプチドにおいては隣接荷電アミノ酸により、又はαヘリックスを形成することができるペプチドに関して、介在アミノ酸残基により隔てられた荷電アミノ酸によりなど、多くの様式で達成することができる。ペプチドが、細胞外−細胞表面膜の境界などの、特定の微小環境にある場合、三次元構造(例えば、両親媒性ペプチド中のαヘリックス)もまた与えられることも注目される(Segrestの文献、1990、Proteins 8:103-117を参照し、これはその全体において引用により本明細書中に取り込まれている)。
【0073】
さらに、荷電アミノ酸の対を含み、荷電側鎖(陽性若しくは陰性、又は2つとも陰性)が互いに約6.5 Å〜約9 Åの範囲内に空間的に束縛されるようになっているペプチドについては、組織保護活性があると予測される。αへリックスにおけるこの束縛は、荷電した対が1つ又は2つのアミノ酸によって隔てられることによってもたらすことができ、それにより要求される約6.5 Å〜約9 Åの分離を伴う電荷が多かれ少なかれへリックスの同じ側に提供される。当業者は、荷電アミノ酸の好適な三次元位置を得るために一般に必要とされるペプチドに関する三次元構造、並びにペプチド内の電荷分離を模倣する小型分子のデザインを考案することができる。
【0074】
任意の2つのアミノ酸のカルバミル炭素の間の、又は任意の2つのアミノ酸の側鎖間の、空間距離は、当該技術分野において公知の任意の方法又は本明細書記載の方法により推定することができる。例えば、タンパク質の三次元構造が分かっている場合、該タンパク質の関心対象の部分内の2つの側鎖の電荷分離又は2つのカルバミル炭素間の空間距離は、該関心対象部分のアミノ酸残基の公表された又はそうでなければ当該技術分野において認められた三次元座標を基に、計算することができる。タンパク質の、従って関心対象の部分の三次元構造が不明であるか、あるいはその三次元構造が不明である完全合成ペプチドが本明細書の内容を基に構築される場合、2個の側鎖の電荷分離、又は該ペプチド内の2個のカルバミル炭素間の空間距離は、当該技術分野において公知のように、タンパク質モデリングソフトウェアにより予測される三次元構造を用いて、推定することができる。このようなソフトウェアの非限定的例は、Chemical Computing Group (Quebec, Canada)によるMOE(商標)及びAccelrys(San Diego、CA)によるModelerがある。同様にさらに前述の会社から入手可能なこのような予測ソフトウェアは、小型分子のデザインについても当該技術分野において公知であり、従って、当業者は、本明細書の内容を基に、開示された構造モチーフをまねする小型分子を作製することができるであろう。
【0075】
(6.2 キメラ)
「キメラ」ペプチドは、本明細書に提供されるアミノ酸配列、例えば非限定的に、
【化24】
などを組み込んでいる線状アミノ酸配列を含む。本方法及び組成物において有用なキメラペプチドは、単独のペプチドへの、個別のアミノ酸配列の構造エレメントの組合せからなることができる。別の言い方をすると、キメラペプチドは、構造エレメント/機能エレメントに隣接する本明細書に提供されるアミノ酸配列から構成されてよい。例えば、本ペプチドの効能は、両親媒性ペプチドヘリックスを付着することにより、増大されてよい。
【0076】
例えば、クラスB G-タンパク質共役型レセプターを介してシグナル伝達し(例えば、Segrestらの文献、1990, Proteins 8:103、これはその全体が引用により本明細書中に取り込まれている)、ペプチドリガンドを細胞膜に局在化させる機能を果たすペプチドに由来する、両親媒性ペプチドヘリックスは、当該技術分野において周知である。このようなヘリックスの例は、制限されないが、以下を含む:下記のものに由来する高度に疎水性の領域:カルシトニン
【化25】
コルチコトロピン放出ホルモン
【化26】
βエンドルフィン
【化27】
グルカゴン
【化28】
セクレチン
【化29】
血管作動性腸管ペプチド
【化30】
神経ペプチドY
【化31】
ゴナドトロピン放出ホルモン
【化32】
副甲状腺ホルモン
【化33】
膵ポリペプチド
【化34】
及び、カルシトニン遺伝子関連ペプチド
【化35】
(Graceらの文献、2004, PNAS 101:12836に開示され、これはその全体が引用により本明細書中に取り込まれている)。例えば、本明細書に提供される方法において有用なキメラペプチドは、キメラペプチド
【化36】
に関して、膵ポリペプチド
【化37】
の両親媒性ヘリックスへ、カルボキシ末端で連結された
【化38】
を伴うペプチドから作製されてよい。更なる修飾が、その組織保護特性に影響を及ぼすことなく、両親媒性ヘリックスのカルボキシ末端に行われてよい。従って、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状の治療に有用なペプチドの更なる例は、前記キメラペプチドの末端Proの、配列TRによる置き換えにより作製される
【化39】
。
【0077】
ある実施態様において、連結アームは、可動性を提供するために融合されたペプチドの間に存在し、これにより連結されたペプチドは、組織保護的レセプター複合体と結合するための適切な構造配向を呈することができる。このような融合ペプチドは、相乗作用を有し、その結果連携させた場合は個別での場合と対比的に、おそらく組織保護的レセプター複合体との増強された結合又は増大された生物学的半減期を介して個別にとは対照的にまとめて連結され、さらに大きい組織保護作用を獲得する。
【0078】
当業者は、本明細書の開示に従い毒剤への曝露から生じる、ダメージ、影響、又は症状を予防、治療、改善又は管理する方法における、単独のペプチドに様々な望ましい構造エレメントを組合せて、そのような化合物の有効性を最大化することの恩恵を認めるであろう。そのようなキメラは、アミノ酸ペプチド、及びリンカー又は架橋原子又は部分などの非アミノ酸エレメントを含んでよい。
【0079】
(6.3 融合ペプチド)
さらに本明細書において、上記の2つ以上のペプチド、誘導された断片又はキメラは、アルブミンなどの関連又は非関連タンパク質に結合することができることが意図されている。そのような融合ペプチドは、相乗的利点を達成するために生成することができ、該ペプチドの循環半減期を増加させ、又は血液脳関門、血液網膜障壁などの内皮障壁を透過するペプチドの能力を増加させ、又は逆もまた同様であり、すなわち、運搬機構として作用するペプチドの能力を増加させることができる。
【0080】
(6.4. ペプチドの製造)
本明細書に提供される方法に有用なペプチドは、当該技術分野において周知の組換え技術又は合成技術を用いて製造することができる。特に、固相タンパク質合成は、比較的短い長さのペプチドによく適し、より一貫性のある結果でより大きな収率を提供できる。さらに、固相タンパク質合成は、ペプチドの製造に関して、付加的な柔軟性を提供できる。例えば、所望の化学修飾は、合成段階でペプチドに組み込まれることができ:ホモシトルリンを、リジンと対照的にペプチドの合成に使用することによって、合成後にペプチドをカルバミル化する必要性を未然に取り除くことができ、又は保護官能基を有するアミノ酸を合成時に該ペプチド上に残すことができる。
【0081】
(合成)
本明細書に提供される方法に有用な単離ペプチド及びペプチド類似体は、従来の段階的溶液又は固相合成法を用いて調製することができる(例えば、Merrifield, R.B.の文献、1963, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154;「ペプチド及びタンパク質合成への化学的アプローチ(Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins)」, Williamsら編集, 1997, CRC Press, Boca Raton Fla.、及びそこに引用されている参考文献;「固相ペプチド合成:実践的アプローチ(Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach)」, Atherton & Sheppard編集, 1989, IRL Press, Oxford, England、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0082】
あるいは、本明細書に提供される方法において有用な該ペプチド及びペプチド類似体は、下記文献に記載されているセグメント縮合の方法により調製することができる:例えば、Liuらの文献、1996, Tetrahedron Lett. 37(7):933-936; Bacaらの文献、1995, J. Am. Chem. Soc. 117:1881-1887;Tamらの文献、1995, Int. J. Peptide Protein Res. 45:209-216;Schnolzer及びKentの文献、1992, Science 256:221-225;Liu及びTamの文献、1994, J. Am. Chem. Soc. 116(10):4149-4153;Liu及びTamの文献、1994, Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:6584-6588;Yamashiro及びLiの文献、1988, Int. J. Peptide Protein Res. 31:322-334。これは、特にGly(G)含有ペプチドを有するケースで適用される。本明細書に提供されるペプチド及びペプチド類似体の合成に有用な他の方法は、Nakagawaらの文献., 1985, J Am. Chem. Soc. 107:7087-7092に記載されている。
【0083】
(組換え技術)
様々な宿主発現ベクター系を利用して、該ペプチド及びペプチド類似体を産生することができる。このような宿主発現系は、関心対象のペプチドを産生し続いて精製できるビヒクルであるが、また、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換又はトランスフェクトする場合、改変エリスロポエチン遺伝子産物をインサイチュで示すことができる細胞でもある。これらは、制限されないが、細菌、昆虫、植物、ヒト宿主系などの哺乳動物を含み、制限されないが、該ペプチドコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;エリスロポエチン関連分子コード配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイク病ウイルス、TMV)で感染されるか又は組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された、植物細胞系;又は例えば、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばメタロチオネインプロモーター、又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター、例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kのプロモーターを含む、組換え発現構築物を保有している、ヒト細胞系などの哺乳動物細胞系、HT1080、COS、CHO、BHK、293、3T3、PERC6がある。
【0084】
さらに、挿入された配列の発現を調整するか、又は所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾及びプロセシングするように、宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾及びプロセシングは、タンパク質の機能にとって重要であってもよい。当業者に公知であるように、異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特定の機構を有する。適当な細胞株又は宿主系は、発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングが確実に生じるように選択されることができる。この目的のため、一次転写産物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞を使用することができる。ヒト宿主細胞などのこのような哺乳動物宿主細胞は、HT1080、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3及びWI38を含むが、これらに限定されない。
【0085】
組換えペプチドの長期の高い収率産生のために、安定な発現が意図される。例えば、組換え組織保護サイトカイン-関連分子遺伝子産物を安定に発現する細胞株を操作することができる。ウイルス複製開始点を含む発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞は、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、及び選択マーカーにより制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNA導入後、操作された細胞を、富栄養培地中で1〜2日間成長させることができ、その後、選択的培地に切り替える。組換えプラスミドの選択マーカーは、選択に対する抵抗性を与え、細胞が安定してプラスミドをそれらの染色体に組み込み、増殖させて、ひいてはクローン化及び細胞株に拡大され得る増殖巣を形成させる。この方法は、組織保護産物を発現する細胞株を操作するために、有利に用いることができる。
【0086】
(さらなる修飾)
ある実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、アミノ酸配列
【化40】
からなり、且つ化学修飾を保持する。より具体的実施態様において、化学修飾は、ペプチド結合の修飾である。あるより具体的実施態様において、化学修飾は、ペプチドのアミノ酸側鎖の修飾である。具体的には、第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九及び第十番目のアミノ酸の、本明細書に提供されるペプチドの任意の一つまでのアミノ酸の側鎖が、修飾される。一部の実施態様において、本明細書に提供されるペプチドのアミノ末端が修飾される。代わりに又は加えて、一部の実施態様において、本明細書に提供されるペプチドのカルボキシル末端が修飾される。一部の実施態様において、化学修飾は、本明細書記載の修飾であり、制限されないが、非-天然アミノ酸を生じる修飾、カルバミル化、アセチル化、スクシニル化、グアニジン化、ニトロ化、トリニトロフェニル化、アミド化、又はポリマーの付加(例えば、ポリエチレングリコール)を含む。本明細書記載の修飾のいずれか一つを有するペプチドは、本明細書記載のようなその組織保護活性を維持するペプチドを含み、これは、組織保護活性をアッセイする本明細書記載の方法の1つ以上を用いて、アッセイすることができる。
【0087】
追加の修飾を伴うペプチドを、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状の予防、治療、改善、又は管理をするための本明細書に提供される方法に使用することもできる。例えば、本明細書に提供されるペプチドは、一つ以上の(D)-アミノ酸により合成されることができる。(L)-又は(D)-アミノ酸を本明細書に提供されるペプチドに含む選択は、ペプチドの所望の特徴に部分的に依存する。例えば、一つ以上の(D)-アミノ酸の組み込みは、インビトロ又はインビボでのペプチドの安定性の増加を与えることができる。一つ以上の(D)-アミノ酸の組み込みは、例えば、本明細書中に記載されているバイオアッセイ又は当該技術分野において周知の他の方法を用いて決定されるように、ペプチドの結合活性を増減することもできる。
【0088】
(L)-アミノ酸の配列の全部又は一部の、鏡像異性的(D)-アミノ酸のそれぞれの配列による置換は、ペプチド鎖のそれぞれの部分の光学異性体構造を示す。(L)-アミノ酸の配列の全部又は一部の配列の反転は、ペプチドのレトロ類似体を示す。鏡像異性的(LからD又はDからL)置換及び配列の反転の組合せは、ペプチドのレトロ−インベルソ−類似体を示す。鏡像異性的ペプチド、それらのレトロ類似体及びそれらのレトロ−インベルソ−類似体が、親ペプチドとの重要なトポロジー関係を維持し、特に、高度の類似性が、多くの場合、親及びそのレトロ−インベルソ−類似体のために得られることは当業者に公知である。この関係及び類似性は、ペプチドの生化学的特徴、特にそれぞれのペプチド及び類似体のレセプタータンパク質との高度の結合性に反映され得る。ペプチドのレトロ−インベルソ類似体の特徴の合成は、例えば、「有機化学の方法(Methods of Organic Chemistry) (Houben-Weyl)」、「ペプチド及びペプチド模倣体の合成(Synthesis of Peptides and Peptidomimetics)」-Workbench Edition Volume E22c (編集主任Goodman M.) 2004 (George Thieme Verlag Stuttgart, New York)、及びそれらに引用されている参考文献に記載されており、それらの全ては、全体において本明細書中に引用により取り込まれている。
【0089】
アミノ酸「修飾」は、非天然アミノ酸を生じるための、天然アミノ酸の変更を指す。非天然アミノ酸を有する本明細書に提供されるペプチドの誘導体は、その全体において本明細書中に引用により取り込まれているChristopher J. Noren, Spencer J.Anthony-Cahill, Michael C. Griffith, Peter G. Schultzの文献、1989 Science, 244:182-188に記載されているように、化学合成によって、又は生合成の間に非天然アミノ酸をペプチドに部位特異的に組み込むことによって作製することができる。非天然のペプチドの非限定的例は、2-チエニルアラニン、アリルグリシン、3-メチルフェニルアラニン、3-ピリジルアラニン、4-チアゾリルアラニン、4,4’-ビフェニルアラニン、4-アミノメチルフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、3,4-ジクロロフェニルアラニン、ピペコリン酸、β-アラニン、β-ホモセリン、β-ホモフェニルアラニン、β-ホモリジン、β-ホモトリプトファン、2-アミノ-3-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-プロピオン酸、3-アミノ-3-(3-フルオロフェニル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(3,5-ジクロロフェニル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(3-ピリジル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(3-ピリジル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-プロピオン酸、3-アミノ-3-(6-メトキシピリジン-3-イル)-プロピオン酸、3-アミノ-4-(3,4-ジフルオロフェニル)-酪酸、3-アミノ-4-(4-フルオロフェニル)-酪酸、3-アミノ-5-ヘキサン酸、2-テトラヒドロイソキノリン-酢酸、3-アミノ-5-フェニルペンタン酸、及びアゼチジン-3-カルボン酸が挙げられる。
【0090】
治療的に有用なペプチドと構造的に類似しているペプチド模倣体を、等価な治療的又は予防的効果を生じるために用いることができる。通常、ペプチド模倣体は、模範ポリペプチド(すなわち、生化学的性質又は薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しているが、任意に、当該技術分野において公知の方法及びさらに下記文献に記載されている方法によって、--CH
2-NH--、--CH
2S--、--CH
2-CH
2--、--CH=CH-(シス及びトランス)、--COCH
2--、--CH(OH)CH
2--、及び-CH
2SO--からなる群から選択される結合と置き換えられる一つ以上のペプチド結合を有する:Spatola, A.F.の文献、「アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の化学及び生化学(Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins)」 B. Weinstein, 編集., Marcel Dekker, New York, p 267 (1983);Spatola, A.F.の文献、Vega Data (3月 1983), Vol. 1. Issue 3, 「ペプチド骨格修飾(Peptide Backbone Modifications)」(全般的総説);Morely, J.S.の文献、Trends Pharma Sci (1980) 463-468頁(全般的総説);Hudson, D.らの文献、(1979) Int J Pept Prot Re 14: 177-185 (--CH
2-NH--、--CH
2-CH
2--);Spatola, A.F.らの文献、(1986) Life Sci 38:1243-1249 (--CH
2-S--);Hann, M. M.の文献、(1982) J Chem Soc Perkin Trans I 307-314 (--CH=CH--, シス及びトランス);Almquist, R. G. らの文献、(1980) J Med Chem 23: 1392 (--COCH
2--);Jennings-White, Cらの文献、(1982) Tetrahedron Lett 23:2533 (--COCH
2--);Szelke, Mらの文献、European Appln. EP 45665 (1982) CA: 97: 39405 (1982) (--CH(OH)CH
2--);Holladay, M. W. らの文献、(1983) Tetrahedron Lett 24:4401-4404 (--C(OH)CH
2--);及びHruby, V.J.の文献、(1982) Life Sci 31:189-199 (--CH
2-S--);その各々は引用により本明細書中に取り込まれている。
【0091】
別の実施態様において、非ペプチド結合は、--CH
2NH--である。このようなペプチド模倣体は、例えば、以下を含むペプチド実施態様にわたって有意な利点を有することができる:より経済的な製造、より大きな化学安定性、薬理特性増強(半減期、吸収、効能、有効性など)、特異性の変更(例えば、生物活性の広域スペクトル)、抗原性低下、及びその他。
【0092】
ペプチド模倣体のための様々な設計が可能である。例えば、必要な構造が非ペプチドによって安定化される環状ペプチドは、特に意図されるものである。Loblらの米国特許第5,192,746号、Aversaらの米国特許第5,576,423号、Shashouaの米国特許第5,051,448号、及びGaetaらの米国特許第5,559,103号は、全て本明細書中に引用により取り込まれているが、これらはこのような化合物を作製する複数の方法を説明している。ペプチド配列を模倣する非ペプチド化合物の合成も、当該技術分野において公知である。Eldredらの文献、J. Med. Chem. 37:3882 (1994)(その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)は、ペプチド配列を模倣する非ペプチドアンタゴニストを記載している。同様に、Kuらの文献、J. Med. Chem 38:9 (1995)(その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)は、一連のこのような化合物の合成をさらに明らかにしている。
【0093】
合成後の更なる修飾を行うことができる。例えば、ペプチドはさらに、20030072737-A1に従って、化学修飾、すなわちカルバミル化、アセチル化、スクシニル化、グアニジン化、ニトロ化、トリニトロフェニル化、アミジン化などをされてもよい。
【0094】
さらに、ペプチドは、組換えペプチド−ミューテイン(mutein)からなることができる。開示される突然変異は、置換、内部欠失を含む欠失、融合タンパク質をもたらす付加を含む付加、又は「サイレント」変化を生じるアミノ酸配列内及び/又は該配列に隣接するアミノ酸残基の保存的置換、及び非保存的アミノ酸の変化及び大きな挿入及び欠失を含むことができる。
【0095】
前述のように、保存的又は非保存的アミノ酸置換のいずれかを、1つ以上のアミノ酸残基で行うことができる。保存的及び非保存的な置換の両方を行うことができる。保存的置換は、アミノ酸の側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で行うものである。遺伝的にコードされたアミノ酸は、4つのファミリーに分けることができる:(1)酸性=Asp(D)、Glu(E)、(2)塩基性=Lys(K)、Arg(R)、His(H)、(3)非極性(疎水性)=Cys(C)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Met(M)、Trp(W)、Gly(G)、Tyr(Y)、及び(4)非荷電極性=Asn(N)、Gln(Q)、Ser(S)、Thr(T)。非極性は、以下に細分することができる:強疎水性=Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Met(M)、Phe(F)、及び中程度疎水性=Gly(G)、Pro(P)、Cys(C)、Tyr(Y)、Trp(W)。代わりの方法において、アミノ酸レパートリーは、(1)酸性=Asp(D)、Glu(E);(2)塩基性=Lys(K)、Arg(R)、His(H)、(3)脂肪族=Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Ser(S)、Thr(T)、任意にSer(S)及びThr(T)は脂肪族ヒドロキシルとして別に分類される;(4)芳香族=Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W);(5)アミド=Asn(N)、Gln(Q);及び(6)硫黄含有=Cys(C)及びMet(M)として分類されることができる。(例えば、Biochemistry, 第4版, L. Stryer編集, WH Freeman and Co., 1995を参照し、これはその全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。
【0096】
あるいは、突然変異は、飽和突然変異誘発によるなどの、ペプチドのコード配列の全部又は一部に沿ってランダムに導入されることができ、結果として生じる突然変異体は、活性を保持する突然変異体を同定するために、生物活性についてスクリーニングされることができる。突然変異誘発の後、コードされたペプチドは、組換え的に発現されることができ、組換えペプチドの活性を決定することができる。
【0097】
別の実施態様において、ペプチドは、ペプチドの半減期を延長又はペプチドの組織保護効果を強化する目的において、ポリマー(ポリエチレングリコールなど)、糖又はさらなるタンパク質(融合構造物など)の付加を介してさらに修飾されることができる。このような修飾の例は、WO/04022577 A3及びWO/05025606 A1に開示されており、それらは本明細書に引用により取り込まれている。例えば、ポリエチレングリコールポリマーを、
【化41】
に結合させ、ペグ化類似体を形成することができる。
【0098】
選択される共役化学、及びペプチドに既に存在するか又は作製される反応部位の数に応じて、1種、2種又は選択された数のポリマーを、再現可能な方法で付加することができる。PEG及びその誘導体のペプチドへの結合の主要な様式は、ペプチドアミノ酸残基による非特異的結合である(例えば、米国特許第4,088,538号、米国特許第4,496,689号、米国特許第4,414,147号、米国特許第4,055,635号、及びPCT WO 87/00056を参照されたい。)。PEGをペプチドに結合する別の様式は、糖ペプチド上のグリコシル残基の非特異的酸化による(例えば、WO 94/05332を参照されたい。)。これらの非特異的方法において、PEGは、ペプチド骨格上の反応性残基に、ランダムな非特異的方法で加えられる。
【0099】
(7. ペプチドの試験アッセイ)
様々なアッセイを用いて、本明細書に提供される治療方法に使用するための上記のペプチドの有用性を決定することができる。組織保護のアッセイは、例えば、米国特許第6,531,121号;第7,345,019号;第7,410,941号;第7,767,643号;及び、第8,071,554号に記載されている。加えて、当業者は、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状の予防、緩和、又は治療をするペプチドの能力が、インビトロ及びインビボの双方の様々なアッセイを介して確認されることができるが、ある実施態様においては、インビボアッセイが使用される得ることを認めるであろう。
【0100】
(7.1 組織保護アッセイ及びモデル)
本方法に利用されるペプチドは、組織保護特性、すなわち抗アポトーシス、神経突起生成、神経保護などを示す。本明細書に提供されるペプチドは、組織保護活性、例えば、細胞、組織又は器官の保護について試験することができる。保護活性は、インビトロ及びインビボアッセイを用いてさらに試験することができる。組織保護活性を示すインビトロ試験は、例えば、細胞増殖アッセイ、細胞分化アッセイ、又は組織保護レセプター複合体、例えば、組織保護サイトカインレセプター複合体によって上方制御されたタンパク質又は核酸の存在、例えば、ヌクレオリン、ニューログロビン、サイトグロビン又はフラタキシンの活性を検出することを含む。ニューログロビンは、例えば、酸素の輸送又は短期間貯蔵の促進に関与し得る。従って、酸素輸送又は貯蔵アッセイは、組織保護活性を調整する化合物を同定又はスクリーニングするためのアッセイとして用いることができる。
【0101】
ニューログロビンは、低酸素症又は虚血に応答して中枢神経系の細胞及び組織中で発現され、傷害からの保護を提供することができる(Sunらの文献 2001, PNAS 98:15306-1531 1;Schmidらの文献、2003, J. Biol. Chem. 276:1932-1935、その各々は全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。サイトグロビンは、保護において類似の役割を果たすことができるが、様々な組織において様々なレベルで発現される(Pesceらの文献、2002, EMBO 3:1146-1151、その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。一実施態様において、細胞において上方制御されたタンパク質のレベルは、ペプチドを細胞に接触させる前後で測定することができる。ある実施態様において、細胞の組織保護活性に関連した上方制御されたタンパク質の存在は、ペプチドの組織保護活性を確認するために用いることができる。
【0102】
ヌクレオリンは、細胞をダメージから保護することができる。それは、細胞において、転写プロセス、配列特異的RNA-結合タンパク質、細胞質分裂、核形成、シグナル伝達、T細胞により誘導されたアポトーシス、クロマチンリモデリング又は複製の調整などの、多くの役割を果たす。また、それは、細胞表面レセプターDNA/RNAヘリカーゼ、DNA依存性ATPアーゼ、タンパク質シャトル、転写因子成分、又は転写抑制因子として機能することもできる(Srivastava及びPollardの文献、1999, FASEB J , 13:1911-1922;及び、Ginistyらの文献、1999, J. Cell Sci., 112:761-772、その各々は全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。
【0103】
上方制御されたタンパク質の発現は、細胞内のタンパク質に相当するmRNAレベルを検出することにより検出することができる。mRNAは、上方制御されたタンパク質をコードする核酸に特異的に結合するプローブにハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、ノーザンブロット、サザンブロット、アレイハイブリダイゼーション、アフィニティークロマトグラフィー又はインサイチュハイブリダイゼーションからなり得る。
【0104】
また、本明細書に提供されるペプチドの組織保護活性は、インビトロ神経保護アッセイを用いて検出することもできる。例えば、初代神経細胞培養液を、トリプシン処理によって、新しく生まれたラット海馬から調製し、当該技術分野において公知の任意の方法によって及び/又は本明細書中に記載されている任意の方法によって、例えば、MEM-II成長培地(Invitrogen)、20mM D-グルコース、2mM L-グルタミン、10% Nu-血清(ウシ;Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)、2% B27補充物(Invitrogen)、26.2mM NaHCO
3、100U/mlペニシリン、及び1mg/mlストレプトアビジン中で培養することができる(例えば、全体において本明細書中に引用により取り込まれているLeistらの文献、2004, Science 305:239-242を参照されたい。)。播種1日後に、1μMシトシンアラビノフラノシドを加える。その後、13日経った培養液を、関心対象のペプチドの漸増投与量(3〜3000pM)と共に24時間、プレインキュベーションする。14日目に培地を除去し、培養液を室温(RT)で、PBS中の300μM NMDAを用いてチャレンジする。5分後に、予め馴化した培地を該培養液に戻し、その後、24時間、インキュベーターに戻す。細胞を、パラホルムアルデヒド中で固定し、Hoechst 33342(Molecular Probes, Eugene, OR)により染色し、凝縮したアポトーシス核を計数することができる。NGF(50ng/ml)及びMK801(1μM)を、陽性対照として含ませる。
【0105】
動物モデル系を使用して、化合物の組織保護活性を示すか又は本明細書記載のスクリーニング方法により同定される化合物の安全性及び有効性を示すことができる。その後、アッセイにおいて同定される化合物は、関心対象のある種類の組織の損傷、疾患、状態又は症候群のための動物モデルを用いて、生物活性を試験することができる。これらは、機能的読み出しシステムに結合した組織保護レセプター複合体を含むように操作された動物、トランスジェニックマウスなどを含む。
【0106】
細胞の有効性又は同定された化合物の組織保護活性を試験するために用いることができる動物モデルは、当該技術分野において公知であり、例えば、ルイスラットの急性実験的アレルギー性脳脊髄炎の発症に対する保護;脳外傷、脳虚血(「脳卒中」)又は興奮性毒により刺激された発作を受けた後のマウスの減弱した認知機能からの回復又は保護(Brinesらの文献、2000, PNAS, 97:10295-10672、その全体において本明細書中に引用により取り込まれている。)、誘発された網膜虚血からの保護(Rosenbaumらの文献、1997, Vis. Res. 37:3443-51、その全体において本明細書中に引用により取り込まれている。)、坐骨神経に対する損傷からの保護、及び心臓に対する虚血-再灌流障害からの保護(インビトロにおける心筋細胞の研究及びインビボにおける虚血-再灌流障害、例えば、Calvilloらの文献、2003, PNAS 100:4802-4806、及びFiordalisoらの文献、2005, PNAS 102:2046-2051を参照し、各々の文献は全体において本明細書中に引用により取り込まれている。)を含む。このようなアッセイは、Grassoらの文献、(2004) Med Sci Monit 10: BR1-3、PCT公開番号WO02/053580、又はPCT出願番号PCT/US2006/031061にさらに詳細に記載されており、それらの各々の文献は、全体において本明細書中に引用により取り込まれている。ペプチドの組織保護活性を決定するための他のアッセイは、当業者にとって周知である。
【0107】
糖尿病がストレプトゾトシン(STZ)により誘発される糖尿病マウス又はラット(rate)モデルは、当業者に入手可能であり、且つ周知である。STZは、膵β細胞癌腫の治療において、化学療法薬として臨床使用される、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)から誘導されたグルコサミン-ニトロソウレア化合物である。STZは、膵β細胞にダメージを与え、低インスリン血症及び高血糖症を生じる。高投与量で、通常単回投与されるSTZは、細胞毒性ニトロソウレア化合物のそれに類似しているそのアルキル化特性により、β細胞を標的化する。低投与量で、一般に反復曝露で投与されるSTZは、恐らくグルタミン酸デカルボキシラーゼ自己抗原の放出に関連している、免疫反応及び炎症反応を誘発する。低投与量STZ-誘導において、β細胞の破壊及び高血糖状態の誘導は、細胞のリンパ球を含む炎症性浸潤の結果である。STZ-誘導した糖尿病マウス又はラットモデルは、Grahamらの文献(Grahamら、2011 Comp Med. 61: 356-360)及びLenzen S.の文献(Lenzen S. 2008 Diabetologia 51:216-226)に説明されている。
【0108】
Beiswengerらの文献により明らかにされたように、マウスにおける熱引き込み潜時(thermal withdrawal latency)の増加は、表皮神経支配の喪失と相関しており、これはSTZ-誘導性糖尿病の開始後4週間での、表皮内神経線維の密度の減少として示される(Beiswengerらの文献、2008 Neurosci Lett. 442:267)。Smithらはまた、表皮内神経線維の喪失は、ニューロパチーの重症度及び進行の正当な代理測定であることを報告した(Smithらの文献、2006 Diabates Care 29:1294)。従ってSTZ-誘導性糖尿病マウスにおける熱引き込み潜時に対するペプチドの組織保護効果は、糖尿病性ニューロパチーにおける神経ダメージから保護するその能力を明らかにするために、試験することができる。
【0109】
糖尿病性ニューロパチーマウスモデルにおいてペプチドを試験するために、雄のSwiss Websterマウスには、STZ(180mg/kg i.p.)を単回注射し、インスリン-欠損糖尿病を誘導する。高血糖症は、3日後に確認し、十分なニューロパチーの誘導を確実にし、15mmol/lを超える血糖値を伴うマウスのみを使用する。糖尿病未治療で4週間後、組織保護ペプチド又は対照処置(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))を、点眼薬(5日/週に両眼に50ナノモル溶液を50マイクロリットル)として投与する。米国特許第8,853,358号の配列番号:282のペプチドを、陽性対照として使用する。12週間の処置後、マウスを、足の熱感受性について試験する。熱引き込み潜時を測定するために、マウスを、温めた硝子床の囲い中に配置し、移動式放射熱源を、片方の後肢の足底面に向ける。熱を、毎秒0.9℃上昇させ、熱感受性C-繊維の活性化に関与した足引き込み反応を確実にする(Yeomansらの文献、 1996 Pain 68:133)。加熱開始から足引き込みまでの時間を、5分間隔の4回の個別の試験により記録し、各マウスについて、最後の3回の試験の中央値を使用する。足引き込み時間を、プロットし、ペプチド-処置群と対照群の間で比較する。
【0110】
同様に、神経因性疼痛の動物モデルを使用し、組織保護ペプチドの有効性を試験することができる。本試験に使用したラットは、8週齢の雌のSprague-Dawleyラット(Charles River, Maastricht, The Netherlands)である。動物に、セボフルランの6%導入及び3%維持により麻酔をかける。動物の左後肢の外側面に、小さい切開を加え、筋肉を露出させる。坐骨神経三枝分岐点を、大腿二頭筋の2つの頭部の間の鈍的調製により露わにする。次に、脛骨神経と総腓骨神経を、ラットにおいて5-0シルクで、マウスにおいて6-0シルクできつく結紮し、遠位神経の2〜4mmを切断除去する。腓腹神経は、無傷のまま残す。自発的な神経再結合を防止するために、切断した神経をずらす。外科手技の間は、坐骨神経又は腓腹神経が伸びたり触れたりしないよう注意する。創傷を、ラットにおいて4-0シルクで、マウスにおいて6-0シルクで、二層で閉鎖し、術後疼痛を軽減するために、ラット及びマウスに、各々、0.01及び0.05mg/kgブプレノルフィンの単回投与量を投与する。露出後、神経部分損傷(SNI)が誘導され且つ創傷が4-0(ラット)又は6-0(マウス)シルクにより二層で閉鎖され、且つ術後疼痛を軽減するために、0.01(ラット)mg/kgブプレノルフィンの単回投与量が投与される。外科手技の間は、露出した神経が伸びたり触れたりしないよう注意する。
【0111】
SNIの誘導後24時間で、処置を開始し、これは2日間隔で、組織保護ペプチド又は対照の腹腔内注入を含む。米国特許第8,853,358号の配列番号:282のペプチドを、陽性対照として使用する。接触性異痛症を、罹患した後肢の足底面上に発揮される漸増力を引き起こす、剛性の増加する(0.004〜15g)様々なvon Frey hairs (Semmes-Weinstein Monofilaments, North Coast Medical Inc., San Jose, CA)を使用し、試験する。このフィラメント(hairs)を、被験領域内のわずかに異なる位置に、1〜2秒間隔で、10回あてる。素早い(brisk)足の引き込みによる疼痛反射の誘発に必要な力を記録し、反応を示す足には、更なるフィラメントはあてない。記録した力を、ペプチド-処置群と対照群の間で比較する。
【0112】
同様に、比較アッセイを、ペプチドが組織保護性であるかどうかを決定するために利用することができる。
【0113】
96ウェルプレートにおいて、適切な成長培地中の8つの1:2系列希釈の公知の組織保護化合物/バイオマーカー、並びに同じ系列希釈の公知の組織保護化合物/バイオマーカー及び過剰な関心対象のペプチドを播種する。各希釈の最終容量は約100μlとすべきである。また、上記開示のようにBaF3細胞をプレートに播種し、インキュベートする。適当な時間の後、細胞を洗浄し、プレートを、蛍光プレートリーダー又はバイオマーカーの検出に当該技術分野において公知の任意の他の適切な方法によって読み込む。公知の組織保護化合物/バイオマーカー及び関心対象のペプチドを含むプレート及び/又はウェルの読み出しが、公知の組織保護化合物/バイオマーカーのみを含むプレートの読み出しより少ない場合、関心対象のペプチドは組織保護性である。
【0114】
すべての公知のサイトカインなどの、現在までに発見された多くのタンパク質因子は、一つ以上の因子依存的細胞増殖アッセイにおいて活性を示し、従ってこれらのアッセイがサイトカイン活性の便利な確認法として役立つ。ペプチドの活性は、制限されないが、32D、DA2、DA1G、T10、B9、B9/11、BaF3、MC9/G、M+(preB M+)、2E8、RB5、DA1、123、T1165、HT2、CTLL2、TF-1、Mo7e及びCMKなどの、細胞株のための多くのルーチン的な因子依存的細胞増殖アッセイのいずれか一つにより明らかにすることができる。これらの細胞は、ペプチドの存在又は非存在で培養され、細胞増殖を、例えば、トリチウム化チミジンの組み込みを測定すること、又は3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)の代謝分解に基づく比色アッセイにより検出することができる(Mosmanの文献、1983, J. Immunol. Meth. 65:55-63、その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。
【0115】
さらに、1つ以上のリン酸化中間体の測定による、細胞シグナル伝達経路の活性化の測定もまた、当業者に周知である。例えば、本明細書記載のペプチドの活性は、様々なサイトカインレセプターを介したシグナル伝達に必須である、Jak2の活性化のアッセイにより (Parganasらの文献、1998, Cell 93:385-395)、又は当該技術分野において周知の方法を使用するリン酸化によるAKTの活性化の測定(Liuらの文献、2014, Nature 508:541-545)及び/又は実施例2に記載した方法により、測定することができる。当業者は、このようなシグナル伝達経路の活性化は、本明細書記載のペプチドの組織保護活性をアッセイする間接的方法であることを認めるであろう。1つ以上の追加の本明細書記載の組織保護アッセイと組合せたシグナル伝達経路(例えばリン酸化)の活性化の測定は、本明細書記載のペプチドの組織保護活性の証拠をさらに提供することができる。
【0116】
リン酸化によるAKTの活性化の一つのアッセイにおいて、HUVECをCell Applications(San Diego、CA)から購入し、2%ウシ胎仔血清(FCS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を補充した培地EGM-2において、加湿したインキュベーター内で、5%CO
2を含有する大気下、37℃で増殖させる。予備実験を、組織保護レセプターを活性化した化合物による刺激後の、Aktのリン酸化の時間経過を決定するために行うことができる。一部のアッセイにおいて、Aktのリン酸化は、組織保護レセプターを活性化した化合物による刺激後10分で最大に到達する。HUVECが組織保護ペプチド又は対照により処理された後、細胞溶解液が調製され、抗-Akt及び抗-ホスホ-Akt抗体(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)を用いて、ウエスタンブロットが実行される。ウエスタンブロットを実行するために、細胞溶解液を、SDS-PAGEに供し、ニトロセルロースメンブレン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)へ移す。このメンブレンを、2% BSA及び0.05% Tween 20含有PBSにより、室温で1時間ブロックする。ブロットを、ホスホ-Aktに対する一次抗体と共に、4℃で一晩、又は室温で4時間インキュベーションし、引き続き二次ホースラディッシュペルオキシダーゼ-複合抗体と共に1時間インキュベーションする。次に、ブロットを、Aktに対する抗体により再プロービングし、同等のタンパク質負荷を確認する。免疫反応性バンドを、ECL(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)を用いて可視化する。一部のアッセイにおいて、リン酸化されたAktバンドの強度を、対照細胞とペプチド処理細胞の間で比較する。一部のアッセイにおいて、リン-Aktバンドの強度の総Aktバンドの強度に対する比を、対照細胞とペプチド-処理細胞の間で比較する。
【0117】
ペプチドが組織保護活性を示す場合、当業者は、制限されないがP-19及びPC-12細胞アッセイなどの当業者に公知の神経保護アッセイ及び組織保護アッセイのうちの1つを用いて、結果を検証することが有益であると認識するであろう。さらに、脊髄損傷、虚血性脳卒中、末梢神経損傷、創傷、又は心臓、目、腎臓などへのダメージに関連した動物モデルなどの様々なインビボモデルは、ペプチドをさらに特徴付けするのに有用である。
【0118】
(7.2 特定の指標のためのアッセイ)
(毒剤)
本明細書に提供される方法の範囲内で用いられる単離ペプチドは、当該技術分野において公知の様々なアッセイ又は本明細書中に記載されているアッセイを用いて、インビトロ又はインビボで毒剤への曝露から生じるダメージ、影響又は症状を阻害することを示すことができる。
【0119】
本明細書に提供される方法の範囲内で使用される更なるペプチドは、毒剤への曝露から生じるダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善又は管理するそれらの能力を決定するために、当該技術分野において、様々なインビトロアッセイにおいて試験され得る。一般に、これは、適当な細胞株を選択し、その細胞を関心対象の毒剤に曝露し、かつ細胞の一部分を関心対象のペプチドで処置し、かつ毒剤の存在下と毒剤及び関心対象のペプチドの存在下で、細胞生存又は反応を決定することにより達成される。細胞がペプチドの存在下で改善された生存又はダメージ、影響もしくは症状の減少を示す場合、該ペプチドは、毒性曝露に対して潜在的な治療薬であるとみなすことができる。さらに、当業者は、保護剤としてのペプチド能力を、毒剤への曝露前に細胞を該ペプチドで処理することにより評価することができると認識するであろう。
【0120】
例えば、毒剤のための適切なアッセイは、以下を含むが、これらに限定されない:化学薬品:a) J-774(マウスマクロファージ誘導細胞株)、CHO-K1(チャイニーズハムスター卵巣細胞から誘導される上皮細胞株の系統)、及びHeLa(ヒト子宮頸癌)などの皮膚細胞株(Sawyer, T.らの文献、「発疱薬により誘発された皮膚損傷の付属物としての低体温(Hypothermia as an adjunct to vesicant-induced skin injury)」, Eplasty 2008; 8:e25);b) 発疱薬のための角膜細胞株(Amir, A.らの文献、「硫黄マスタード眼性損傷の角膜上皮−インビトロ及びエクスビボ研究(The corneal epithelium in sulfur mustard ocular injury - In vitro and ex vivo studies)」Proceedings of the U.S. Army Medical Defense Bioscience Review, Aberdeen Proving Ground, MD (2004));c) マクロファージ(Amir A.らの文献、「マクロファージの硫黄マスタード毒性:デキサメタゾンの影響(Sulfur mustard toxicity in macrophages: effect of dexamethasone)」, J Appl Toxicol, 20 Suppl 1:S51-8 (2000));d) 上気道細胞株(Andrew, D.J.及びC.D. Lindsayの文献、「グルチオンエステルによる、硫黄マスタード毒性に対するヒトの上気道細胞株の保護(Protection of human upper respiratory tract cell lines against sulphur mustard toxicity by gluthione esters)」Hum Exp Toxicol 17(7):387-95 (1998);Calvetらの文献、「硫黄マスタード曝露後の気道上皮のダメージ及びヒト肺実質の炎症性メディエーターの放出(Airway epithelial damage and release of inflammatory mediators in human lung parenchyma after sulfur mustard exposure)」, Hum Exp Toxicol 18(2):77-81(1999);Langford, A. M.らの文献、「ラット肺切片のグルタチオンレベルにおける硫黄マスタードの影響及びアリールチオール及びシステインエステルでの処置の影響(The effect of sulphur mustard on glutathione levels in rat lung slices and the influence of treatment with arylthiols and cysteine esters)」Hum Exp Toxicol 15(8):619-24);e) 皮膚モデル(Blahaらの文献、「2つの皮膚モデルの炎症性メディエーター、熱ショックタンパク質70A、組織学及び超微細構造におけるCEESの効果(Effects of CEES on inflammatory mediators, heat shock protein 70A, histology and ultrastructure in two skin models)」、J Appl Toxicol 20 Suppl 1:S 101-8(2000);Henemyre-Harrisらの文献、「皮膚硫黄マスタード損傷の有効な治療のための薬理学的介入をスクリーニングするためのインビトロ創傷治癒モデル(An in vitro wound healing model to screen pharmacological interventions for the effective treatment of cutaneous sulfur mustard injuries)」Proceedings of the U.S. Army Medical Defense Bioscience Review, Aberdeen Proving Ground, MD (2004)(一般に、適切なインビトロ研究における追加の文献についてはwww.counteract.rutgers.edu/invitro.htmlを参照されたい。);放射線剤:a) 内皮細胞(Abderrahmani, R.らの文献、「放射線により誘発された内皮細胞アポトーシスのプラスミノーゲン活性化因子阻害剤1型の役割(Role of plasminogen activator inhibitor type-1 in radiation-induced endothelial cell apoptosis)」)、Radioprotection 2008, vol 43, no. 5;b) 神経免疫細胞(求心性神経、腸感覚神経、肥満細胞)(Wang, J.らの文献、「神経免疫相互作用:腸の放射線傷害の緩和又は治療のための潜在的標的(Neuroimmune interactions: potential target for mitigating or treating intestinal radiation injury)」, British Journal of Radiology (2007) 80, S41-S48);c) 血液又はリンパ球培養液(Lloyd DCらの文献、Phys Med Biol 18(3):421-31 (1973); Lloyd DCらの文献、Mutat. Res. 179(2): 197-208 (1987);Blakely WFらの文献、Stem Cells 13 (Suppl 1):223-30 (1995);Gotoh Eらの文献、Int. J Radiation. Biol. 81(l):33-40 (2005));生物剤:(a) 末梢血単核細胞(Rasha、H.らの文献、「インビトロ反応をインビボ反応に相関させるための、SEBにより誘発された宿主遺伝子発現のモデリング:生物防衛及び環境用途のためのマイクロアレイ(Modeling of SEB-induced host gene expression to correlate in vitro to in vivo responses: Microarrays for biodefense and environmental applications)」, Biosensors and Bioelectrics (2004) vol. 20, no. 4, 719-727)。
【0121】
更なる、毒剤曝露における治療薬の効果を評価するための適切なインビボアッセイが、当該技術分野において公知である。ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、フェレット、イヌ及び非ヒト霊長類を用いる動物モデルは、毒剤に特に影響されやすいトランスジェニック動物(CD46マウス)と同様に意図される。特に、当該技術分野において公知のアッセイは、以下を含むが、これらに限定されない:化学薬品:(1) Reid, F.M.の文献、「臨床的及び組織病理学的に評価される離乳仔ブタの硫黄マスタードにより誘発された皮膚熱傷(Sulfur mustard induced skin burns in weanling swine evaluated clinically and histopathologically)」, Journal of applied toxicology, vol. 20 (S1), ページS153-S160 (2001);(2) Isidore, M. A.らの文献、「c57bl/6マウスを使用する、皮膚発疱薬損傷2-クロロエチルエチルスルフィドの背部モデル(A dorsal model for cutaneous vesicant injury 2-chloroethyl ethyl sulfide using c57bl/6 mice)」, Cutaneous and ocular toxicology, Vol. 26 (3), 265-276 (2007);(3) 一般にwww.counteract.rutgers.edu/animal.htmlを参照;(4) Kassa J.らの文献、「選択:神経薬に対するHI-6、パラドキシム、又はオビドキシム?(The Choice: HI-6, pradoxime or Obidoxime against Nerve Agents?)」、www.asanlte.com/ASANews-97/Antidot-Choice.html;(5) Shih, TMらの文献、「有機リン神経薬により誘導される発作、及び抗痙攣薬治療としてのアトロピン硫酸塩の有効性(Organophosphorus nerve agents-induced seizures and efficacy of atropine sulfate as anticonvulsant treatment)」, Pharmacol-Biochem-Behav. 1999 Sep, 64(1), 147-53;(6) Luo, Cらの文献、「神経薬-阻害されたサル及びヒトのアセチルコリンエステラーゼのオキシム再活性化及び老化の比較(Comparison of oxime reactivation and aging of the nerve agent-inhibited monkey and human acetylcholineterases)」, Chemico-Biological Interactions, 175(1-3), 261-266 (2008);放射線剤:(1) W.F. Blakelyらの文献、「部分的身体線量曝露のインビトロ及び動物モデル:不均一線量曝露及び放射線損傷の評価のための細胞発生及び分子バイオマーカーの使用(In Vitro and Animal Models of Partial-Body Dose Exposure: Use of Cytogenic and Molecular Biomarkers for Assesment of Inhomogeneous Dose Exposures and Radiation Injury)」, PB-Rad-Injury 2008 Workshop, May 5-6, 2008 AFRRI, Bethesda, Maryland;(2) Augustine, Aらの文献、「会議報告:放射線損傷、保護及び療法の動物モデル(Meeting Report: Animal Models of Radiation Injury, Protection and Therapy)」, Radiation Research 164: 100-109 (2005);(3) Houchen, Cらの文献、「放射線傷害のPGE
2の生存促進及び抗アポトーシスの効果は、腸のEP
2レセプターにより媒介される(Prosurvival and antiapoptotic effects of PGE
2 in radiation injury are mediated by EP
2 receptor in intestine)」, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol, 284: G490-G498, 2003;(4) Jichun Chenの文献、「後天的骨髄機能不全症候群のための動物モデル(Animal Models for Acquired Bone Marrow Failure Syndromes)」, Clinical Medicine & Research 3(2): 102-108;生物剤:(1) 「生物防御:研究方法論及び動物モデル(Biodefense: Research Methodology and Animal Models)」, James R. Swearengen (編集) 2006 CRC Press。
【0122】
(炎症)
加えて、炎症のさまざまなインビトロモデルは、身体上の炎症のダメージ、症状又は影響を保護又は治療するペプチド能力を評価するために用いることができる。最初に、炎症性メディエーターを調整するペプチドの能力は、制限されないがELISA、血球計算ビーズアレイ分析、高感度及び免疫ネフェロメトリーアッセイなどの公知方法によって、ペプチドによる処理後に、炎症性アッセイにおいて炎症性メディエーターのレベルを測定することによって確認することができる。例えば、ペプチドがTNF-α又はIL-1のいずれかを調整するかどうかを決定するために、LPS媒介サイトカイン産生のマウスモデルを行うであろう。マウスモデルの幾つかのマウスは、関心対象のペプチドで前処理し、その後LPSによりチャレンジされ、他方は生理食塩水処置される。その後、血液を回収し、血液中のTNF-α及びIL-1レベルをELISAキットで測定することができる(OPT-EIAマウスTNF-α及びIL-1 ELISAキット(BD Biosciences))。処置動物のTNF-αレベルが、生理食塩水処置動物のTNF-αレベルより低い場合、該ペプチドは、TNF-αを調整すると考えられ得る。一部の実施態様において、ペプチドは、2以上の炎症性メディエーターを調整するその能力のために試験され、一実施態様において、それはTNF-α以外又は追加のメディエーターであり、一実施態様において、それはヒスタミンであろう。同様に、ペプチドは、限定されないが、以下の文献に開示されているものなどのインビトロアッセイにおいてさらに試験することができる:Lopata, Andreas L.の文献、「過敏症の評価における特殊インビトロ診断方法−概要(Specialized in vitro Diagnostic Methods In The Evaluation Of Hypersensitivity -An Overview)」Current Allergy & Clinical Immunology, March 2006, Vol. 19, No.1, (ヒスタミン及びトリプターゼアッセイ)、及びArulmozhiらの文献、「炎症の様々なインビトロ及びインビボモデルにおける、サピンヅス・トリホリアツスの薬理学的調査(Pharmacological Investigations of Sapindus trifoliatus in various in vitro and in vivo models of inflammation)」, Indian Journal of Pharmacology, vol. 37:2, 96-102 (2005) (5-リポキシゲナーゼ(5-LO)、シクロ-オキシゲナーゼ(COX)、ロイコトリンB4 (LTB4)、一酸化窒素シンターゼ(NOS))。
【0123】
さらに、炎症のインビボアッセイは、毒剤に対する治療薬としてのペプチド有用性を評価することに役立ち得る。インビボアッセイは、制限されないが、以下を含む:マウスEAEモデル、重度大腸炎MDBiosciences DSS IBDマウスモデル、炎症性腸疾患のMDBioscience TNBS IBDマウスモデル、米国特許第6,437,216号に開示されるIL-1ノックアウトマウスを含むモデル、又は以下の文献に開示されるTNF-αを含むトランスジェニックマウスのモデル:Probertらの文献「腫瘍壊死因子αのCNS特異的発現を示すトランスジェニックマウスの自然炎症性脱髄性疾患(Spontaneous inflammatory demyelinating disease in transgenic mice showing CNS-specific expression of tumor necrosis factor α)」 Proc. Natl Acad. Sci 1995 USA 92, 11294-11298、Kontoyiannisらの文献「TNF AU-リッチエレメントを欠くマウスのTNF生合成のオン/オフ調節の障害:関節及び消化管関連免疫病理学に対する意味(Impaired on/off regulation of TNF biosynthesis in mice lacking TNF AU-rich elements: implications for joint and gut-associated immunopathologies.)」Immunity 10:387-398, 1999、Kefferらの文献「ヒト腫瘍壊死因子を発現するトランスジェニックマウス:関節炎の前兆となる遺伝子のモデル(Transgenic mice expressing human tumour necrosis factor: a predictive genetic model of arthritis.)」EMBO J. 1991 Dec;10(13):4025-31などのトランスジェニックマウスを利用するもの、又はJPET 307:373-385, 2003に開示される喘息及び慢性閉塞性肺疾患のモデルなどの炎症を誘発する化学的又は合成的チャレンジを用いるモデル、EP 1 777 234に開示されるアジュバント関節炎モデル;マウスLPSショックモデル、マウスLPS肺モデル、急性足炎症モデル、又はBrins M.及びCerami A.の文献、2012, Molecular Medicine 18:486-496に説明されるヒスタミンチャレンジ膨疹形成モデル。
【0124】
さらに、ヒトにおける化合物の有効性は、Ravensbergらの文献「喘息におけるハウスダストダニに対する気道応答の確認された安全予測(Validated safety predictions of airway responses to house dust mites in asthma)」 Clinical and Experimental Allergy, 37:100-107 (2007)に開示される皮膚プリックテスト及び気管支誘因試験;Diamantらの文献「新規抗喘息療法の臨床開発において使用する方法(Methods used in clinical development of novel anti-asthma therapies)」 Respiratory Medicine (2008) 102, 332-338に開示される喘息研究;又は、Bootらの文献「鼻一酸化窒素:アレルギー性鼻炎患者の長期再現性及び鼻アレルゲンチャレンジの影響(Nasal Nitric oxide: longitudinal reproducibility and the effects of a nasal allergen challenge in patients with allergic rhinitis)」 Allergy 2007:62:378-384に開示される鼻アレルゲンチャレンジなどの周知の臨床研究を用いる。
【0125】
(癌)
本明細書に提供される方法の範囲内で用いられる単離ペプチドは、当該技術分野において公知の又は本明細書中に記載された様々なアッセイを用いて、インビトロ又はインビボで、腫瘍細胞増殖、細胞形質転換、及び腫瘍形成を阻害することを示すことができる。このようなアッセイは、癌細胞株の細胞又は患者からの細胞を使用することができる。当該技術分野において周知の多くのアッセイは、このような生存及び/又は増殖を評価するために用いることができ;例えば、細胞増殖は、
3H-チミジン取り込みを測定することによって、直接細胞数を数えることによって、プロトオンコジーン(例えば、fos、myc)又は細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、D1、D2、D3又はE)などの公知の遺伝子の転写、翻訳又は活性の変化を検出することによって、評価することができる。このようなタンパク質及びmRNA及び活性のレベルは、当該技術分野において周知の任意の方法により測定することができる。例えば、タンパク質は、市販の抗体を用いて、ウエスタンブロッティング又は免疫沈降などの公知の免疫診断方法によって、定量化することができる(例えば、多くの細胞周期マーカー抗体は、Santa Cruz, Inc.から提供されている)。mRNAは、当該技術分野において周知かつ慣習的な方法によって、例えば、ノーザン分析、RNアーゼ保護、逆転写に関連したポリメラーゼ連鎖反応などによって、定量化することができる。細胞生存度は、当該技術分野において公知のトリパンブルー染色又は他の細胞死マーカーもしくは生存度マーカーを用いて評価することができる。分化は、形態学的変化などに基づいて、視覚的に評価することができる。
【0126】
制限されないが以下を含む、当該技術分野において公知の様々な技術による、細胞周期及び細胞増殖分析が、本明細書に提供される:
【0127】
一つの例として、ブロモデオキシウリジン(「BRDU」)取り込みは、増殖細胞を同定するためのアッセイとして使用することができる。BRDUアッセイは、新しく合成されたDNAへのBRDUの組み込みによって、DNA合成を行う細胞集団を同定する。その後、新しく合成されたDNAを、抗BRDU抗体を用いて検出することができる(Hoshinoらの文献、1986, Int. J. Cancer 38, 369; Campanaらの文献、1988, J. Immunol. Meth. 107, 79を参照されたい。)。
【0128】
細胞増殖は、(
3H)-チミジン取り込みを用いて検討することもできる(例えば、Chen, J.の文献、1996, Oncogene 13:1395 403; Jeoung, J.の文献、1995, J. Biol. Chem. 270:18367 73を参照されたい。)。このアッセイは、S期DNA合成の定量的特徴付けを可能にする。このアッセイにおいて、DNAを合成する細胞は、
3H-チミジンを新しく合成されたDNAに取り込むであろう。その後、取り込みを、シンチレーションカウンター(例えば、Beckman LS 3800 Liquid Scintillation Counter)において放射性同位体を計数するなどの当該技術分野における標準技術によって測定することができる。
【0129】
増殖性細胞核抗原(PCNA)の検出を、細胞増殖を測定するために用いることもできる。PCNAは36キロダルトンのタンパク質であり、その発現は増殖細胞において、特に、細胞周期のG1初期及びS期において上昇し、従って、増殖細胞のマーカーとして役立ち得る。陽性細胞は、抗PCNA抗体を用いて免疫染色することにより同定される(Liらの文献、1996, Curr. Biol. 6:189 199; Vassilevらの文献、1995, J Cell Sci. 108: 1205 15を参照されたい。)。
【0130】
細胞増殖は、時間とともに、細胞集団のサンプルを計数することにより(例えば、毎日の細胞数)、測定することができる。細胞は、血球計及び光学顕微鏡(例えば、HyLite血球計、Hausser Scientific)を用いて計数することができる。細胞数は、関心対象の集団の成長曲線を得るために、時間に対してプロットすることができる。一実施態様において、この方法により計数される細胞は、生細胞が色素を排除し、細胞集団の生存可能なメンバーとして計数されるように、色素トリパンブルー(Sigma)と最初に混合される。
【0131】
細胞のDNA含有量及び/又は分裂指数を、例えば、細胞のDNA倍数値に基づいて、測定することができる。例えば、細胞周期のG1期の細胞は、一般に、2N DNA倍数値を含む。DNAは複製されたが、有糸分裂を経て進行していない細胞(例えば、S期の細胞)は、2Nよりも高い倍数値、及び最大4N DNA含有量を示すであろう。倍数値及び細胞周期速度論は、ヨウ化プロピジウムアッセイ(例えば、Turner, T.らの文献、1998, Prostate 34:175 81を参照されたい)を用いて、さらに測定することができる。あるいは、DNA倍数は、コンピューター制御されたマイクロデンシトメトリー染色システムにおけるDNAフォイルゲン染色(それは、化学量論的様式でDNAと結合する)の定量化によって測定することができる(例えば、Bacus, S.の文献、1989, Am. J. Pathol. 135:783 92を参照されたい。)。別の実施態様において、DNA含有量は、染色体スプレッドの調製により分析することができる(Zabalou, S. の文献、1994, Hereditas. 120:127 40;Pardueの文献、1994, Meth. Cell Biol. 44:333 351)。
【0132】
細胞周期タンパク質(例えば、CycA、CycB、CycE、CycD、cdc2、Cdk4/6、Rb、p21又はp27)の発現は、細胞又は細胞集団の増殖状態に関する重要な情報を提供する。例えば、抗増殖シグナル伝達経路の同定は、p21cip1の誘導により示すことができる。細胞におけるp21発現の増加したレベルは、細胞周期のG1への遅れた参加を生じる(Harperらの文献、1993, Cell 75:805 816;Liらの文献、1996, Curr. Biol 6:189 199)。p21誘導は、商業的に利用可能な特異的抗p21抗体(例えば、Santa Cruz, Inc.提供)を用いて免疫染色することによって、同定することができる。同様に、細胞周期タンパク質は、市販の抗体を用いて、ウエスタンブロット分析により検討されることができる。別の実施態様において、細胞集団は、細胞周期タンパク質の検出の前に同期化される。また、細胞周期タンパク質は、関心対象のタンパク質に対する抗体を用いて、FACS(蛍光細胞分析分離装置)分析により検出することもできる。
【0133】
細胞周期の長さ又は細胞周期の速度の変化の検出は、本明細書に提供されるペプチドによる細胞増殖の阻害を測定するために用いることもできる。一実施態様において、細胞周期の長さは、細胞の集団の倍加時間で測定される(例えば、本明細書に提供される一つ以上のペプチドと接触又は非接触の細胞を用いる)。別の実施態様において、FACS分析を使用して、細胞周期進行の段階を分析し、又はG1、S及びG2/M画分を精製する(例えば、Delia, D.らの文献、1997, Oncogene 14:2137 47を参照されたい。)。
【0134】
細胞周期チェックポイントの経過、及び/又は細胞周期チェックポイントの誘導は、本明細書中に記載されている方法によって、又は当該技術分野において公知の任意の方法によって、試験することができる。限定されるものではないが、細胞周期チェックポイントは、特定の細胞事象が特定の順序で生じることを確実にする仕組みである。チェックポイント遺伝子は、後の事象が先の事象の終了前に生じる突然変異により定義される(Weinert, T.及びHartwell, L.の文献、1993, Genetics, 134:63 80)。細胞周期チェックポイント遺伝子の誘導又は阻害は、例えば、ウエスタンブロット分析又は免疫染色などによって、評価することができる。細胞周期チェックポイントの経過は、特定の事象が先に生じることなく、該チェックポイントを経る細胞の進行によりさらに評価することができる(例えば、ゲノムDNAの完全な複製のない、細胞分裂の進行)。
【0135】
特定の細胞周期タンパク質の発現の作用に加えて、細胞周期に関係するタンパク質の活性及び翻訳後修飾は、細胞の制御及び増殖状態において統合された役割を果たすことができる。当該技術分野において公知の任意の方法によって、検出された翻訳後修飾(例えば、リン酸化)に関係するアッセイが、本明細書に提供される。例えば、リン酸化されたチロシン残基を検出する抗体は市販されており、ウエスタンブロット分析に用いて、このような修飾を伴うタンパク質を検出することができる。別の例において、ミリスチル化などの修飾は、薄層クロマトグラフィー又は逆相HPLCにおいて検出することができる(例えば、Glover, Cの文献、1988, Biochem. J. 250:485 91;Paige, Lの文献、1988, Biochem J; 250:485 91を参照されたい。)。
【0136】
シグナル伝達及び細胞周期タンパク質並びに/又はタンパク質複合体の活性は、多くの場合、キナーゼ活性により媒介される。ヒストンH1アッセイなどのアッセイによる、キナーゼ活性の分析も提供される(例えば、Delia, D.らの文献、1997, Oncogene 14:213747を参照されたい。)。
【0137】
また、本明細書に提供される方法の範囲内で使用されるペプチドは、当該技術分野において周知の方法を用いて、インビトロで、培養細胞の細胞増殖を変更することを示すことができる。細胞培養モデルの具体例は、制限されないが、以下を含む:肺癌に関して、始原ラット肺腫瘍細胞(Swaffordらの文献、1997, Mol Cell Biol, 17:1366 1374)及び大細胞未分化癌細胞株(Mabryらの文献、1991, Cancer Cells, 3:53 58);大腸癌のための結腸直腸細胞株(Park及びGazdarの文献、1996, J Cell Biochem. Suppl. 24:131 141);乳癌のための複数の樹立細胞株(Hamblyらの文献、1997, Breast Cancer Res. Treat. 43:247 258;Gierthyらの文献、1997, Chemosphere 34:1495 1505; Prasad及びChurchの文献、1997, Biochem. Biophys. Res. Commun. 232:14 19);前立腺癌のための多くの良く特徴付けされた細胞モデル(Webberらの文献、1996, Prostate, Part 1, 29:386 394; Part 2, 30:58 64; 及びPart 3, 30:136 142; Boulikasの文献、1997, Anticancer Res. 17:1471 1505);尿生殖器癌に関して、持続的ヒト膀胱癌細胞株(Ribeiroらの文献、1997, Int. J. Radiat. Biol. 72:11 20);移行上皮癌の器官培養物(Boothらの文献、1997, Lab Invest. 76:843 857)、及びラット進行モデル(Vetらの文献、1997, Biochim. Biophys Acta 1360:39 44);並びに、白血病及びリンパ腫のための樹立された細胞株(Drexlerの文献、1994, Leuk. Res. 18:919 927;Tohyamaの文献、1997, Int. J. Hematol 65:309 317)。
【0138】
また、本明細書に提供されるペプチドは、インビトロで細胞形質転換(又は悪性表現型への進行)を阻害することを示すことができる。この実施態様において、形質転換された細胞表現型を有する細胞を、本明細書に提供される一つ以上のペプチドと接触させ、形質転換された表現型に関連する特徴(インビボ腫瘍形成能に関連した一連のインビトロ特徴)の変化、例えば、制限されないが、軟寒天培地のコロニー形成、より丸い細胞形態、よりゆるい基層接着、接触阻害の喪失、足場依存の喪失、プラスミノーゲン活性化因子などのプロテアーゼの放出、糖輸送の増加、血清必要量の減少、又は胎児性抗原の発現などについて試験する(Luriaらの文献、1978, General Virology, 第3版, John Wiley & Sons, New York, 436446頁を参照されたい。)。
【0139】
侵襲性の喪失又は接着の減少は、本明細書に提供される方法で使用されるペプチドの抗癌作用を示すために用いることもできる。例えば、転移性癌の形成の重大な局面は、疾患の原発性部位から分離し、続発性部位で成長する新規コロニーを構築する前癌細胞又は癌細胞の能力である。末梢部位に侵入する細胞の能力は、癌状態の可能性を反映する。侵襲性の喪失は、例えば、Eカドヘリンにより媒介される細胞-細胞接着の誘導を含む、当該技術分野で公知の様々な技術により測定することができる。このようなEカドヘリン媒介接着は、表現型逆転及び侵襲性の喪失を生じ得る(Hordijkらの文献、1997, Science 278:1464 66)。
【0140】
侵襲性の喪失は、細胞移動の阻害によって、さらに試験することができる。様々な二次元及び三次元細胞マトリックスは、商業的に入手可能である(Calbiochem-Novabiochem Corp. San Diego, Calif.)。マトリックスを横切る又はマトリックス内への細胞移動は、顕微鏡、時間経過フォトグラフィーもしくはビデオグラフィーによって、又は細胞移動の測定が可能な当該技術における任意の方法により試験することができる。関連した実施態様において、侵襲性の喪失は、肝細胞増殖因子(HGF)への応答により試験される。HGFにより誘発された細胞分散は、メイディン-ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞などの、細胞の侵襲性と関係している。このアッセイは、HGFに応答して細胞の分散活性を喪失した細胞集団を同定する(Hordijkらの文献、1997, Science 278:1464 66)。
【0141】
あるいは、侵襲性の喪失は、ケモタキシスチャンバー(Neuroprobe/Precision Biochemicals Inc. Vancouver, BC)を介して、細胞移動により測定することができる。このようなアッセイにおいて、化学誘引剤は、チャンバー(例えば、下部チャンバー)の片側においてインキュベートされ、細胞は、反対側(例えば、上部チャンバー)を分離しているフィルター上に播種される。細胞が上部チャンバーから下部チャンバーへと通過するために、該細胞はフィルターの小さい孔を通って能動的に移動しなければならない。その後、移動した細胞数のチェッカーボード分析(Checkerboard analysis)は、侵襲性と関係し得る(例えば、Ohnishi, T.の文献、1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 193:518 25を参照されたい。)。
【0142】
本明細書に提供される方法で使用されるペプチドは、インビボにおいて、腫瘍形成を阻害することを示すこともできる。腫瘍形成及び転移拡散を含む、過増殖性疾患の膨大な数の動物モデルは、当該技術分野において公知である(「ハリソン内科学(Harrison's Principles of Internal Medicine)」第13版の「新生物形成の原理(Principles of Neoplasia)」、Isselbacherら, 編集, McGraw-Hill, N.Y., 1814頁の表317-1、チャプター317、及びLovejoyらの文献、1997, J. Pathol. 181 :130 135を参照されたい。)。具体例は、以下を含む:肺癌に関して、ラットへの腫瘍小結節の移植(Wangらの文献、1997, Ann. Thorac. Surg. 64:216 219)、又はNK細胞の枯渇したSCIDマウスの肺癌転移の確立(Yono及びSoneの文献、1997, Gan To Kagaku Ryoho 24:489 494);大腸癌に関して、ヌードマウスへのヒト大腸癌細胞の大腸癌移植(Gutman及びFidlerの文献、1995, World J. Surg. 19:226 234)、ヒト潰瘍性大腸炎のワタボウシタマリンモデル(Warrenの文献、1996, Aliment. Pharmacol Ther. 10 Supp 12:45 47)、及び腺腫ポリポーシス腫瘍サプレッサーの突然変異を有するマウスモデル(Polakisの文献、1997, Biochim. Biophys. Acta 1332:F127 F147);乳癌に関して、乳癌のトランスジェニックモデル(Dankort及びMullerの文献、1996, Cancer Treat. Res. 83:71 88;Amundadittirらの文献、1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:119 135)、及びラットにおける腫瘍の化学誘導(Russo及びRussoの文献、1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:7-20);前立腺癌に関して、化学誘発及びトランスジェニック齧歯目モデル及びヒト異種移植モデル(Royaiらの文献、1996, Semin. Oncol. 23:35 40);尿生殖器癌に関して、ラット及びマウスにおける誘発された膀胱腫瘍(Oyasuの文献、1995, Food Chem. Toxicol 33:747 755)、及びヌードラットへのヒト移行上皮癌の異種移植(Jarrettらの文献、1995, J . Endourol. 9:1 7);並びに、血液癌に関して、動物における移植された同種異系髄(Appelbaumの文献、1997, Leukemia 11 (Suppl. 4):S15 S17)。さらに、制限されないが以下を含む、多くの種類の癌に適用できる一般的動物モデルが開示されている:p53-欠損マウスモデル(Donehowerの文献、1996, Semin. Cancer Biol. 7:269 278)、Minマウス(Shoemakerらの文献、1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332:F25 F48)、及びラットの腫瘍に対する免疫応答(Freyの文献、1997, Methods, 12:173 188)。
【0143】
例えば、本明細書に提供される方法で使用されるペプチドを、試験動物に、一実施態様において、ある種の腫瘍を発症しやすくした試験動物に投与し、その後、本明細書に提供されるペプチドを投与していない動物と比較して、該試験動物を腫瘍形成の減少した発生率について試験することができる。あるいは、本明細書に提供されるペプチドを、腫瘍を有する試験動物(例えば、悪性、腫瘍性、又は形質転換された細胞の導入によって又は発癌物質の投与によって、腫瘍が誘発された動物)に投与し、続いて、本明細書に提供されるペプチドを投与していない動物と比較して、腫瘍退縮について該試験動物の腫瘍を検査することができる。
【0144】
ある実施態様において、細胞株(例えば、mJ774などの、マウスマクロファージ細胞株)を、リポ多糖体により刺激し、TNFαを分泌するアッセイを使用し、本明細書記載のペプチドの活性を試験することができる。このアッセイは、Bohrらの文献、2015, Journal of Molecular Medicine 93(2):199-210に詳細に説明されている。
【0145】
(8. 治療的使用)
(8.1. 身体の反応のメディエーターの調整)
当業者は、本明細書に提供されるペプチドが組織の損傷に関連した疾患又は障害に対して身体の反応を調整するために用いることができると認識するであろう。特に、上記のペプチドを調整のために用いることができるメディエーターの1つの例は、制限されないが以下を含む炎症性モジュレーターである:血漿由来炎症性メディエーター、例えば、ブラジキニン、C3、C5a、第XII因子、膜攻撃複合体、ハーゲマン因子、プラスミン、トロンビン、リンホカイン(マクロファージ活性化因子(MAF)、マクロファージ遊走阻止因子(MMIF)、マクロファージ走化因子(MCF)、白血球遊走阻止因子(LMIF)、ヒスタミン放出因子(HRF)、及びトランスファーファクタ(TF)など);インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4... IL-15);腫瘍壊死因子(TNF-α(カケクチン)、TNF-β(リンフォトキシン));インターフェロン(IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IFN-ω、IFN-τ);コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、及び複数コロニー刺激因子(IL-3));ポリペプチド成長因子(酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF);神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、及び血管内皮成長因子(VEGF));トランスフォーミング成長因子(TGF-α及びTGF-β)、α-ケモカイン(IL-8、好中球活性化タンパク質2(NAP-2)、血小板因子-4(PF-4)、及びβ-トロンボグロブリン(βTG));β-ケモカイン(単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)、MCP-3、MIP-1α、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、正常なT細胞が発現した活性化に応じて制御されて分泌されると考えられるケモカイン(RANTES))、及びストレスタンパク質(熱ショックタンパク質(HSP)、グルコース関連タンパク質(GSP)、ユビキチン及びスーパーオキシドジスムターゼ(Mn))、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチン(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、血小板塩基性タンパク質(PBP)、リソソーム顆粒、ヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンB4、一酸化窒素及び/又はプロスタグランジン。一部の実施態様において、該ペプチドは、メディエーターの活性を阻害し又は抑制し、一部の実施態様において、該ペプチドは、TNF-α、ヒスタミン、一酸化窒素及びインターロイキンの活性を阻害する。一部の実施態様において、該ペプチドは、2以上の炎症性メディエーターの活性を阻害する。
【0146】
(8.2 様々な疾患、障害及び状態の治療又は予防)
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、様々な疾患、障害及び状態の治療又は予防のための治療薬としても有用である。当業者は、このようなペプチド及びペプチド類似体が、組織保護レセプター複合体、例えば、組織保護サイトカイン複合体の調整を達成するために用いることができることも認識するであろう。例えば、先に開示された本発明のアッセイにより同定される化合物の治療的適用を評価するために用いることができるインビトロ及びインビボ技術の双方は、PCT出願番号PCT/US01/49479、米国特許出願番号第10/188,905号及び第10/185,841号において、開示されている。
【0147】
上述した本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、主に神経学的又は精神医学的な症状を有する中枢神経系又は末梢神経系のヒト疾患又は障害、眼の疾患、心血管疾患、心肺疾患、呼吸器疾患、腎臓、泌尿器及び生殖疾患、骨疾患、皮膚疾患、結合組織疾患、胃腸疾患及び内分泌及び代謝異常、及び老化の予防、治療的処置又は予防的処置に一般に役立ち得る。使用の例を挙げると、制限されないが、脳(虚血性脳卒中、鈍的外傷、くも膜下出血)、脊髄(虚血、鈍器殴傷、病巣)、末梢神経(座骨神経損傷、糖尿病性ニューロパチー、手根管症候群)、網膜(黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、緑内障)、及び心臓(心筋梗塞症、慢性心不全、進行性心不全)への外傷から生じる損傷及び炎症を生じる損傷に対する保護及びそれらの修復がある。特に、このような疾患、障害及び状態は、応答性組織、例えば、制限されないが、第4.2節(xii)の上記のもの、又はそれらの応答性細胞組織又は器官を含む興奮組織などに悪影響を与える、低酸素状態を含む。従って、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、様々な状態及び状況の低酸素状態から生じる応答性組織へのダメージを治療又は予防するために用いることができる。このような状態及び状況の非限定的な例は、本明細書中に下記の表に提供される。
【0148】
組織保護ペプチド及びペプチド類似体はまた、幹細胞活性の調整においても興味深く、損傷の領域への移動を刺激し、かつ修復プロセス、例えば、再生役割を補助する。
【0149】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能及び予防可能なニューロン組織病態の保護の例において、このような病態は、ニューロン組織の減少した酸素化から生じるものを含む。ストレス、ダメージ、及び最終的にニューロン細胞死を生じる、ニューロン組織への酸素の利用可能性を低下させる任意の状態は、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療することができる。低酸素症及び/又は虚血と一般に呼ばれるこれらの状態は、制限されないが、以下から生じる、又は以下を含む:脳卒中、脳卒中(虚血性/灌流性)、脳卒中(中大脳動脈)、血管閉塞、出生前又は出産後の酸素欠乏、窒息、チョーキング、溺水、一酸化炭素ガス中毒、煙吸入、手術及び放射線療法を含む外傷、仮死、癲癇、低血糖、慢性閉塞性肺疾患、気腫、肺気腫、成人呼吸窮迫症候群、低血圧ショック、敗血性ショック、アナフィラキシーショック、インスリンショック、鎌状赤血球発症、致命的肢虚血、心停止、律動不整、窒素による昏睡、低酸素血症性低酸素症(高所病、高地肺水腫、高地脳浮腫、睡眠時無呼吸、呼吸低下、呼吸停止、シャント)、メタエモグロビン血症(methaemoglobinaemia)、組織毒性低酸素症、子宮内低酸素症、及び心肺バイパス手術手順により生じる神経学的欠損。
【0150】
一実施態様において、例えば、上記のアッセイを用いて同定された本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、外科手技又は医学的手技の前、その間もしくはその後の損傷又は組織の損傷のリスクから生じる損傷又は組織の損傷を予防する組成物を単独で又はその一部として投与されることができる。例えば、外科手技は、腫瘍切除又は動脈瘤修復を含むことができ、医学的手技は、分娩又は出産を含むことができる。本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能である低血糖から引き起こされるか又は生じる他の病態は、医原性高インスリン血症とも呼ばれるインシュリン過量、インスリノーマ、成長ホルモン欠乏、低コルチソリズム、薬剤過量、及び特定の腫瘍を含む。
【0151】
興奮性ニューロン組織の損傷から生じる他の病態は、癲癇、痙攣又は慢性発作疾患などの発作疾患を含む。他の治療可能な状態及び疾患は、脳卒中、多発性硬化症、低血圧、心停止、慢性心不全、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳性麻痺、脳又は脊髄外傷、エイズ認知症、認識機能の年齢関連性の損失、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症、発作疾患、アルコール依存症、網膜虚血、緑内障から生じている視束損傷及びニューロン損失などの疾患を含むが、これらに限定されない。
【0152】
本明細書に提供される特定の組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、物理的又は化学的に誘発された炎症などの、疾患状態又は様々な外傷から生じる炎症を治療又は予防するために用いることができる。組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、制限されないが、脳、脊髄、結合組織、心臓、肺、腎臓及び尿路、膵臓、眼及び前立腺を含む一つ以上の器官又は組織の炎症性状態の治療及び予防についても意図される。このような外傷の非限定的な例は、第4.2節(xv)に列挙されるものを含むが、これらに限定されない。さらに、組織保護ペプチドは、制限されないが、アレルギー、アレルギー性疾患、アレルギー性症状、リウマチ性疾患、スポーツ関連の損傷、毒剤への曝露、ウイルス、真菌及び細菌などの感染症を含む虚血性及び非虚血性状態から生じる炎症を治療又は予防するために用いることができ、このような状態の更なる例は、第4.2節(iv)、(v)及び(xv)において上記に開示される。炎症は、急性又は慢性であってもよい。さらに、炎症の分野における適用は、2004年9月29日に出願されたPCT/US2004/031789で強調され、WO 2005/032467として公表されている。
【0153】
本明細書に提供される特定の組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、ミエリン鞘の脱髄又は障害から生じる中枢神経及び末梢性神経系疾患を治療するために用いることができる。これらの疾患は、大脳白質萎縮症などのミエリン形成欠乏性疾患、及び明らかな原因による疾患を除いて、原因不明の炎症性ミエリン鞘病変に主に関与するように定義される。多発性硬化症(MS)は、脱髄性疾患の中の典型的疾患であり、病理学的に、変化、主に炎症性脱髄及びグリオーシスによって特徴付けされる。その病因が未知であるので、その診断は、その臨床特徴、すなわち、中枢神経系病変の空間多様性及び時間に渡る多様性に基づいて行われる。さらに、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、炎症性拡散硬化症、急性及び亜急性壊死性出血性脳脊髄炎、及び横断性脊髄炎は、脱髄性疾患に含まれる。また、末梢神経組織は、ミエリン鞘を維持するためにシュワン細胞に依存し、これらの細胞が損なわれる場合、末梢性脱髄性疾患が生じる。
【0154】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、以下を含む心臓及び/又は関連組織(例えば、心膜、大動脈及び他の関連する血管)に関与する任意の慢性又は急性病理学的事象などの心臓の状態及び心臓へのダメージを治療又は予防するために用いることができる:虚血-再灌流損傷;鬱血性心不全;心停止;心筋梗塞;アテローム性動脈硬化症、僧帽弁漏出、心房粗動、薬剤(例えば、ドキソルビシン、ハーセプチン、チオリダジン及びシサプリド)などの化合物によって生じる心毒性;寄生性感染症(細菌、真菌、リケッチア及びウイルス、例えば、梅毒、慢性トリパノソーマ・クルージ感染症)による心臓損傷;劇症心臓アミロイド症;心臓手術;心収縮/弛緩、心臓移植;血管形成術、腹腔鏡手術、外傷性心臓損傷(例えば、鋭的又は鈍的心損傷、及び大動脈弁破裂)、胸部の大動脈瘤の外科的修復;副腎大動脈瘤;心筋梗塞又は心不全による心臓性ショック;神経原性ショック及びアナフィラキシー。本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体はまた、心不全(すなわち、心臓が、新陳代謝する組織によって必要とされる速度で血液を汲み出すことができない場合、又は心臓が、高い充填圧力だけによって血液を汲み出す場合)などの心臓疾患のリスクがあるそれらの個人を治療するために用いることもできる。そのようなリスクがある患者は、心筋梗塞、冠動脈疾患、心筋炎、化学療法、心筋症、高血圧症、心臓弁膜症(多くの場合、僧帽弁閉鎖不全及び大動脈弁狭窄)、及び毒素により誘発された心筋症(例えばエタノール、コカインなど)を有する又はこれらを有するリスクがある患者を含むであろう。
【0155】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、眼(例えば、網膜組織)の状態及びそれへのダメージを治療又は予防するために用いることができる。このような障害は、網膜虚血、黄斑変性、網膜剥離、色素性網膜炎、動脈硬化症性網膜症、高血圧の網膜症、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、網膜水腫、低血圧及び糖尿病性網膜症を含むが、これらに限定されない。
【0156】
別の実施態様において、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体並びに本明細書記載の原理は、毒剤への曝露から生じる損傷、すなわち、応答する組織への放射線又は化学的ダメージを予防又は治療するために用いることができる。一実施態様において、上記ペプチドは、毒剤への身体の反応のメディエーターを調整する、又はこのようなモジュレーターの活性を抑制もしくは阻害する、治療薬として有用である。さらに、上記ペプチドは、毒剤への曝露のダメージ、影響又は症状の治療、予防、改善又は管理のための治療薬として有用である。該ペプチドは、生物剤、化学薬品又は放射線剤を含む様々な毒剤への曝露を治療するために用いることができる。
【0157】
これらのペプチドは、第4.2節(viii)において先に列挙されたそれらの生物学的毒素を含むが、これらに限定されない、プリオン、ウイルス、微生物(細菌及び真菌)、及び一部の単細胞及び多細胞真核生物(すなわち、寄生虫)などの生物剤によるダメージ、影響又は症状を治療するために用いることができる。さらに、本明細書に提供されるペプチドは、化学薬品によるダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善又は管理するために用いることができる。このような薬剤は、血液剤、糜爛剤、神経剤、肺剤及び無能力化剤を含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書に提供されるペプチドは、制限されないが、第4.2節(x)に列挙されるものを含む、工業用化学薬品への毒性曝露によるダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善又は管理するために用いることができる。放射線剤への暴露によるダメージ、影響又は症状は、本明細書に提供されるペプチドを用いて予防可能、治療可能、又は管理可能である。該ペプチドは、アルファ、ベータ、又はガンマ放射線を含み、より特定すると、制限されないが、以下を含み得る放射線剤によるダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善、又は管理することができる:
137Cs、
60Co、
241Am、
252Cf、
192Ir、
238Pu、
90Sr、
226Ra、
91Sr、
92Sr、
95Zr、
99Mo、
106Ru、
131Sb、
132Te、
139Te、
140Ba、
141La、
144Ce、
233U、
235U、
238U、
228P、
229P、
230P、
231P、
232P、
233P、
234P、
235P、
236P、
237P、
238P、
239P、
240P、
241P、
242P、
243P、
244P、
245P、
246P、
247P、及び
131I。さらに、当業者は、該ペプチドは、これらの毒剤の累積的又は相乗的使用(すなわち、犠牲者が生物剤により影響されるように生物剤を分散させる前の放射性剤の使用、犠牲者が避難又は援助を事実上求めることができないように神経剤と組み合わせて発疱薬を投与すること、治癒方法を阻害又は複雑にするために生物剤又は放射性剤で弾丸又は破片を汚染することなど)によるダメージ、影響又は症状を予防、媒介、治療、又は改善するために使用することができることを認識するであろう。一実施態様において、本明細書に提供されるペプチドは、幾つかの異なる型の細胞、器官又は組織、例えば、2以上の下記の中枢神経、末梢神経、眼、心血管、心肺、呼吸器、腎臓、泌尿器、生殖器、筋骨格、皮膚、結合組織、胃腸、造血、内分泌、及び代謝において、毒性作用を治療、媒介、改善又は予防することができる。さらに、本明細書に提供されるペプチドは、同じクラスの2種以上の毒剤に対する治療薬又は予防薬(すなわち、化学薬品、生物剤又は放射性剤の2以上の種類に対する ― 例えば、発疱薬及び神経剤に対する予防)、又は異なるクラスの毒剤(すなわち、放射性剤及び化学薬品への暴露に対する治療薬)として有効である。本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体の更なる有用性は、以下などの中毒の治療におけるものである:ニューロトキシン中毒(例えば、ドウモイ酸貝毒)、毒素(エタノール、コカイン、その他);放射線曝露の化学療法剤の結果として(例えば、シスプラチン神経毒);神経ラチリズム;グアム病;筋萎縮性側索硬化症;及びパーキンソン病。
【0158】
また上記したように、上記の組織保護ペプチドの末梢投与によって、哺乳動物の応答性細胞、組織及び器官の組織機能の強化に使用するための、組織保護ペプチド及びペプチド類似体が、本明細書に提供される。様々な疾患及び状態は、この方法を使用する治療に従う。例えば、この方法は、任意の状態又は疾患のない場合でさえ、認知機能の増加を生じる興奮組織の機能を強化することに役立つ。さらに、組織保護サイトカインは、創傷治癒(例えば、重篤な虚血における創傷治癒及びパンチ生検治癒における創傷治癒)の質を改善し、治癒に必要な時間を減らし、治癒された組織の質を改善し、かつ創傷から生じる癒着の発生率を低下させることに役立つ。2004年9月29日に出願され、WO 2005/032467として公開されたPCT/US2004/031789を参照されたい。さらに、本明細書に提供される組織保護ペプチドは、糜爛剤もしくは発疱薬又は工業用化学薬品などの化学薬品により誘導される皮膚上の病変又は呼吸経路に沿った病変を治療、予防又は管理するのに役立ち得る。
【0159】
本明細書に提供されるペプチドのこれらの使用は、以下にさらに詳細に記載され、ヒト及び非ヒト哺乳動物の双方の学習及び訓練の強化を含む。
【0160】
別の実施態様において、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、中枢神経系、末梢神経系、胃腸/消化系、尿生殖器系、副腎、婦人科学的、頭頸部、血液学的/血液、筋骨格/軟部組織、呼吸器及び乳房の様々な癌又は腫瘍性障害の予防、治療的処置、予防的処置又は管理に一般に役立ち得る。使用の例を挙げると、制限されないが、第4.2節(ix)及び(xxiv)に列挙される癌又は腫瘍性障害から生じる損傷に対する保護及びそれらの修復がある。さらに、本明細書に提供されるペプチドは、制限されないが、第4.2節(xxvii)に先に列挙されたものを含む、新生物又は癌に関連した様々な症候群の予防、治療的処置、予防的処置又は管理のために使用することができる。該ペプチドは、上記の症候群に対処するために、本明細書に提供される方法に従って使用することができる。例えば、該ペプチドは、リー・フラウメニ、遺伝非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性腺腫様ポリープ症、及びフォンヒッペルリンドウ病などの遺伝症候群を、該疾患の新生物性態様の発症の遅延、該症候群に関連した新生物増殖の数の減少、又は一般にこれらの状態に罹患したそれらの患者の生活の質又は寿命を向上させることのいずれかにより、対処するために投与することができる。また、該ペプチドは、アンドロゲン剥奪症候群などの、腫瘍性障害又は癌の特定の治療、化学療法又は放射線療法、脊髄形成異常症候群又は傾眠症候群に関連した療法に関連した症候群を、該症候群を予防するか又は該症候群の重症度を減らすことを希望して、対処するために予防的に投与することができる。
【0161】
さらに、該ペプチドは、悪液質及び悪液質に関連した疾患を治療又は予防するために用いることができる。このような疾患は、癌悪液質、摂食障害、無力症、貧血、結核、エイズ、鬱血性心不全、腎不全、肝不全、慢性閉塞性肺疾患、気腫、肺気腫、筋萎縮症、糖尿病及びエンドトキシン血症を含むが、これらに限定されない。
【0162】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能又は予防可能な状態及び疾患は、制限されないが、気分障害、不安障害、うつ病、自閉症、注意欠陥多動障害及び認知機能障害を含む。これらの状態は、ニューロン機能の強化から利益を得る。本明細書に提供される教示によって治療可能な他の障害は、睡眠障害、例えば、睡眠時無呼吸及び移動関連の障害;くも膜下及び動脈瘤ブリード、低血圧ショック、震盪性損傷、外傷性脳損傷、敗血性ショック、アナフィラキシーショック及び様々な脳炎及び髄膜炎の後遺症、例えば、ループスなどの結合組織疾患関連脳炎を含む。他の使用は、ドウモイ酸貝毒、神経ラチリズム及びグアム病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病などのニューロトキシンによる中毒;塞栓又は虚血性損傷のための術後治療;全脳照射;鎌状赤血球危機;及び子癇の予防又はそれらからの保護を含む。
【0163】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能又は予防可能な状態の更なるグループは、ニューロン損傷及び死により代表される様々な神経系疾患の原因である、遺伝性又は後天性のいずれかのミトコンドリア機能不全を含む。例えば、リー病(亜急性壊死性脳症)は、ニューロン脱落及びミオパシーによる、進行性視力喪失及び脳症によって特徴付けされる。これらの症例において、不完全なミトコンドリア代謝は、興奮細胞の代謝を刺激するのに十分な高エネルギー基質を供給することができない。組織保護ペプチド又はペプチド類似体は、様々なミトコンドリア疾患における機能不足を最適化する。上記したように、低酸素状態は、興奮組織に悪影響を与える。興奮組織は、以下を含むが、これらに限定されない:末梢神経系(耳及び網膜)及び中枢神経系(脳及び脊髄)の組織などのニューロン組織;心臓及び関連する神経の細胞などの心血管組織;及び細胞間ギャップジャンクションとともにT-型カルシウムチャネルがインシュリンの分泌に参加する膵臓などの腺組織。興奮組織の典型的なリストは、神経、骨格筋、平滑筋、心筋、子宮、中枢神経系、脊髄、脳、網膜、嗅覚系及び聴覚系を含む器官及び組織を含むが、これらに限定されない。上記の状態に加えて、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、一酸化炭素及び煙吸入などの吸入中毒、重度の喘息、成人呼吸窮迫症候群及びチョーキング及び溺水の治療に役立つ。低酸素状態を引き起こすか又は他の手段によって興奮組織の損傷などの応答性組織を誘導する更なる状態は、インシュリンの不適当な投与、又はインシュリン産生性新生物(インスリノーマ)で生じ得る低血糖を含む。
【0164】
興奮組織の損傷から生じると記載される様々な神経心理学的障害は、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能である。ニューロン損傷を伴い、本発明のペプチド及びペプチド類似体による治療又は予防可能性な慢性的障害は、以下を含む:中枢神経系及び/又は末梢神経系に関する障害、例えば、認知機能の年齢関連的損失及び老年性認知症など、慢性発作疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、記憶喪失、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、結節状硬化症、ウィルソン病、脳性及び進行性核上麻痺、グアム病、レヴィー小体認知症、プリオン疾患、例えばクロイツフェルト-ヤコブ病のような海綿状脳障害、ハンチントン舞踏病、神経炎性ジストロフィー、ニューロパチー、ニューロパチー(シスプラチン誘導性)、ニューロパチー(糖尿病誘導性)、ニューロパチー(自律神経性;糖尿病誘導性)、ニューロパチー(炎症性)、ニューロパチー(末梢性)、疼痛、重積性癲癇(post-status epilepticus)、筋強直性ジストロフィー、フリートライヒ運動失調症及び他の運動失調症、並びに、ジルドラトゥーレット症候群、癲癇及び慢性発作疾患などの発作疾患、脳卒中、脳又は脊髄外傷、エイズ認知症、アルコール依存症、自閉症、網膜虚血、緑内障、高血圧症及び睡眠障害などの自律機能障害、並びに、非限定的に、統合失調症、分裂情動障害、注意欠陥障害、気分変調性障害、大うつ病性障害、躁病、強迫性障害、精神活性物質使用障害、不安、パニック障害、並びに単極及び双極感情障害を含む神経精神病学的障害。更なる神経精神病学的及び神経変性障害は、例えば、アメリカ精神医学会の精神疾患診断統計マニュアル(American Psychiatric Association's Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)(DSM)に列挙されるものを含む。
【0165】
本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体を用いて治療可能又は予防可能な状態の更なる群は、腎動脈閉塞、腎損傷、急性腎損傷、腎動脈の閉塞及び再灌流、腎不全、急性及び慢性、慢性腎疾患、腎虚血、腎虚血-再灌流、両側性腎虚血、及び腎症(例えば、腎臓のダメージ、糖尿病性腎症、収縮性又は高血圧性腎症)などの腎疾患を含む。腎臓への血液供給は、血流を襲う感染症(敗血症)によるショック、内部又は外部の大量出血、出血性ショック、多臓器不全、重度の下痢又は熱傷の結果としての身体からの流体の損失、輸血に対する反応、心停止又は不整脈、外科的外傷及び腎移植などの幾つかの原因のために、中断され得る。上記の状態から生じる腎臓に対する血流低下は、急性の腎損傷又は急性腎不全の発症を引き起こすのに十分に大きな時間、危険な低レベルへと血流を低下させ得る。また、抑制された血流は、腎臓において、壊死又は組織死を生じ、腎尿細管細胞に損傷を与える。腎不全は、疾患(間質性及び糖尿病)ネフローゼ症候群、感染症、損傷(CPB誘発)、毒素(造影剤誘発、化学療法誘発、シクロスポリン)、自己免疫炎症(例えばループス、赤血球増加症など)からも生じ得る。本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体は、この損傷の修復又は予防に役立ち、急性腎不全を改善するのを助ける。さらに、本明細書に提供されるペプチドは、制限されないが、尿路感染症、過敏膀胱、膀胱上皮細胞への細菌の侵入、及び膀胱に対する外傷又は放射線傷害などの尿路の疾患又は障害を治療、予防又は改善するために用いることができる。
【0166】
表1は、上述した組織保護ペプチド及びペプチド類似体による治療に従う、様々な状態及び疾患に関して更なる典型的な非限定的な適応症を示す。
【0167】
表1 組織保護ペプチド及びペプチド類似体による治療に従う疾患及び障害
【表2】
【0168】
上記したように、これらの疾患、障害又は状態は、本明細書に提供される組織保護ペプチド及びペプチド類似体により提供される利点の範囲を単に例示するだけである。従って、本開示は、一般に、機械的外傷の結果の又はヒト疾患の予防、治療的又は予防的処置を提供する。CNS及び/又は末梢神経系の疾患、障害又は状態のための予防又は治療的もしくは予防的処置が、意図される。精神医学的な成分を有する疾患、障害又は状態のための予防又は治療的もしくは予防的処置を提供する。制限されないが、眼、心血管、心肺、呼吸器、腎臓、泌尿器、生殖器、胃腸、内分泌器、又は代謝の成分を有するものを含む、疾患、障害又は状態のための予防又は治療的もしくは予防的処置を提供する。該ペプチドは、脳、脊髄、結合組織、皮膚、消化管、生殖器、肝臓、心臓、肺、腎臓、尿路、膵臓、眼及び前立腺を含むがこれらに限定されない1つ以上の、一部の実施態様においては少なくとも2つの器官又は組織において、組織の損傷に関連した疾患又は障害、並びに、それらのダメージ、影響又は症状の予防、治療的処置、予防的処置、又は管理に有用であり得る。
【0169】
(8.3 疾患、障害、又は状態のダメージ、影響、又は症状の予防、治療、改善、又は管理)
さらなる実施態様において、本明細書に提供される治療方法は、上記の疾患及び障害のダメージ、影響又は症状を予防、治療、改善又は管理することに役立つ。特に、本治療方法は、制限されないが、以下を含む症状に対処するために使用することができる:悪液質、発癌、不妊、白内障形成、放射線皮膚障害、ベータ熱傷、ガンマ熱傷、細胞の喪失(特に骨髄、消化管細胞);造血、胃腸、中枢神経、心血管、皮膚、皮膚サイトカインレベル、及び/又は生殖系へのダメージ;急性放射線症候群(悪心、嘔吐、全身疾患及び疲労の感覚、免疫抑制、脱毛、制御不能の出血(口、皮膚下、腎臓)、体の一部へのガンマ線照射後の循環炎症促進性サイトカインの減少、大量の下痢、譫妄、昏睡及び死)、慢性放射線症候群、皮膚放射線症候群(炎症、紅斑、乾性又は湿性剥脱、脱毛、疱疹、発赤、潰瘍化、皮脂腺及び汗腺へのダメージ、萎縮、線維症、減少又は増加皮膚着色、及び壊死)、頭痛、眩暈、悪心、嘔吐、粘膜刺激、呼吸困難、意識障害、昏睡、痙攣、頻脈性及び徐脈性律動異常、低血圧、心血管虚脱;心筋症、進行性心不全、末梢動脈不全、チアノーゼ、徐脈などの慢性心血管疾患;筋炎、過剰な唾液分泌、下痢、尿失禁、筋攣縮、初期脱分極性弛緩性麻痺、スパイク放電及び痙攣、中間の症候群、神経毒エステラーゼ阻害、有機リン酸塩により誘発された後発性ニューロパチー、紅斑、浮腫、壊死及び小水疱、黒皮症、気管気管支炎、気管支痙攣、気管支閉塞、出血性肺水腫、呼吸不全、細菌性肺炎、眼紅斑、流涙、目の不快、目の激痛、眼瞼痙攣、虹彩炎、失明、骨髄抑制、ルイサイトショック、肝臓壊死、低灌流に続発する腎不全、灼熱感(目、鼻咽頭、中咽頭)、熱傷、大量の涙、鼻漏、咳による嗄声、呼吸困難、嚥下痛、結膜炎、角膜損傷、鼻口腔咽頭損傷/浮腫、声門構造の炎症、分泌、及び/又は喉頭痙攣による呼吸窮迫、急性呼吸症候群、見当識障害、行動修正、及び反応気道機能不全症候群。
【0170】
上記したように、組織の損傷に関連したこれらの疾患もしくは障害、又はそれから生じるダメージ、影響もしくは症状は、本明細書に提供される方法に使用されるペプチドにより対処されることができる障害の範囲の単なる例示である。従って、本開示は一般に、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状の予防、治療的、又は予防的処置を提供する。
【0171】
組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状は、本明細書に提供されるペプチドの有効量の投与により治療又は予防することができる。ある実施態様において、本明細書中に記載の疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、該疾患又は障害を有する対象に、該疾患又は障害を治療又は予防するために有効な量の本明細書に提供されるペプチドを投与する工程を含む方法が、本明細書に提供される。一実施態様において、本明細書に提供される1以上のペプチド又はその医薬として許容し得る塩の有効量を含む組成物を投与する。
【0172】
(8.4 累積的効果又は相乗効果のための他の治療法と併用した治療)
ある実施態様において、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状を治療、媒介、改善又は予防する方法であって、その必要がある患者に、ペプチド及び別の適切な治療薬の有効量を投与することを含み、各々は、該医薬品に適したレジメンに従い投与される方法が、本明細書に提供される。これは、ペプチド及び治療薬の効果の相加的、相乗的、又は相殺的(治療薬の副作用を中和する)利点を達成することができる。これは、ペプチド及び適切な治療薬の同時、実質的に同時、又は非同時の投与を含む。ペプチド及び適切な治療薬の非同時の投与は、ペプチド及び適切な治療薬の逐次、交互、及び急性対慢性的投与を含む。また、ペプチド及び適切な治療薬は、同一又は別々の医薬組成物で投与することができ、別々に投与される場合、それらは、同一投与経路又は異なる経路を介して投与することができる。適切な治療方法及び薬剤は、制限されないが、以下を含む:カルバマート(ピリドスチグミン、フィゾスチグミン、アミノスチグミン、ネオスチグミン、シノスチグミン(synostigmine)、エパスチグミン(Epastigmine)、モバム(Mobam)、デカルボフラン)、抗コリン作用薬(anticholingerics)(トリヘキシフェニジル、ベナクチジン、ビペリデン、スコポラミン、アプロフェン、アトロピン、ヒオスシン、アジフェニン、カラミフェン、ペントメトニウム(pentmethonium)、メカミラミン、トリヘキシフェニジル) PANPAL、アミノフェノール(エセロリン)、有機リン酸塩(TEPP、パラキソン(Paraxon)、エチル-4-ニトロフェニルリン酸)、タクリン、7-MEO-TA、ヒューペルジンA、コリンエステラーゼ(BuChE、AChE、トリエステラーゼ、パラオキソナーゼ)、オキシム/再賦活薬(HI-6、PAM、オビドキシム、トリメドキシム、メトキシム、Hlo-7、BI-6、K048、K033、塩化プラリドキシム(2-PAM Cl)、P2S、TMB4、2-PAMI)、スラミン、ベンゾジアゼピン、ツボクリン、メマンチン、プロシクリジン、ニモジピン、クロニジン、プラリドキシム、ジアゼパム、エンケファリン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、重炭酸ナトリウム、ビタミンE類似体(コハク酸α-トコフェロール、γ-トコトリエノール)、スーパーオキシドジスムターゼ/カタラーゼ模倣体(EUK189)、セレン、ベンジルスチリルスルホン、切断型フラジェリン、スタチン、ゲニステイン、ガランタミン、ヒポテルミア、5-アンドロステンジオール、CpG-オリゴデオキシヌクレオチド、抗微生物薬、幹細胞移植片、膵島細胞移植、アミホスチン、テンポール、イソフラボン、ベンジルスルホン類似体、GM-CSF、G-CSF、ヨウ化カリウム、水酸化アルミニウム、プルシアンブルー、キレート化剤(ジエチレントリアミンペンタアセタート(Ca-DTPA)、亜鉛ジエチレントリアミンペンタアセタート(Zn-DTPA))、ケラチノサイト成長因子、腸ペプチドホルモン、ベータグルカン、オクトレオチド、ペントキシフィリン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンIIレセプター遮断薬、メトヘモグロビン形成体(亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウム、コバルト化合物(ヒドロキシコバラミン(ビタミンB12a)、トキソイド、抗毒素、ワクチン、受動的抗体;化学療法剤、制限されないがメトトレキサート、タキソール、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシ尿素、シタラビン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン(procarbizine)、エトポシド、カンパセシン(campathecins)、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、アスパラギナーゼ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルを含む;放射線:γ-放射線;アルキル化剤;ナイトロジェンマスタード:シクロホスファミド、イホスファミド トロフォスファミド、クロラムブシル;ニトロソ尿素:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、アルキルスルホナートブスルファン、トレオスルファン;トリアゼン:ダカルバジン;白金含有化合物:シスプラチン、カルボプラチン、植物アルカロイド;ビンカアルカロイド:ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン;タキソイド:パクリタキセル、ドセタキソール;DNAトポイソメラーゼ阻害剤、エピポドフィリン:エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトセシンイリノテカン(Campto (登録商標))、クリスナトール;マイトマイシン:マイトマイシンC、マイトマイシンC;抗代謝剤、抗-葉酸:DHFR阻害剤:メトトレキサート、トリメトレキサート、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤:ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリンEICAR;リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤:ヒドロキシ尿素;デフェロキサミン;ピリミジン類似体:ウラシル類似体、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド(Ratitrexed);シトシン類似体:シタラビン(ara C) シトシンアラビノシドフルダラビン;プリン類似体:メルカプトプリン、チオグアニン;ホルモン療法:レセプターアンタゴニスト:抗エストロゲン、タモキシフェン、ラロキシフェンメゲストロール;LHRHアゴニスト:ゴセレリン、酢酸ロイプロリド;抗アンドロゲン:フルタミド、ビカルタミド;レチノイド/デルトイドビタミンD3類似体:EB 1089、CB 1093、KH 1060;光力学療法:ベルトポルフィン(BPD-MA)、フタロシアニン光増感剤、Pc4デメトキシ-ヒポクレリンA(2BA-2-DMHA)、サイトカイン:インターフェロン-α、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子;イソプレニル化阻害剤:ロバスタチン;ドーパミン作動性ニューロトキシン:1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン;細胞周期阻害剤:スタウロスポリン、アクチノマイシン:アクチノマイシンD、ダクチノマイシン;ブレオマイシン:ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン; アントラサイクリン:ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン;MDR阻害剤:ベラパミル;Ca
2+ ATPアーゼ阻害剤:タプシガルジン;TNF-a阻害剤/サリドマイド脈管形成阻害剤3-(3,4-ジメトキシフェニル)-3-(1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-プロピオンアミド(SelCIDs(商標)) ImiDs(商標)、Revlimid(商標)、Actimid(商標)。別の態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、組織保護機能性を示す少なくとも1つの小分子を含む製剤内にペプチドを含むことができる。適切な小分子は、制限されないが、以下を含む:ステロイド(例えば、ラザロイド及びグルココルチコイド)、抗酸化剤(例えば、コエンザイムQ
10、アルファリポ酸及びNADH)、抗異化作用酵素(例えば、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジムターゼ、カタラーゼ、合成触媒捕捉剤、並びに模倣体)、インドール誘導体(例えば、インドールアミン、カルバゾール及びカルボリン)、硝酸中和剤、アデノシン/アデノシンアゴニスト、植物化学物質(フラバノイド)、ハーブ抽出物(ギンコビロバ及びウコン)、ビタミン(ビタミンA、E及びC)、オキシダーゼ電子アクセプター阻害剤(例えば、キサンチンオキシダーゼ電子阻害剤)、ミネラル(例えば、銅、亜鉛及びマグネシウム)、非ステロイド抗炎症剤(例えば、アスピリン、ナプロキセン及びイブプロフェン)、及びそれらの組み合わせ。制限されないが以下を含むさらなる薬剤は、本医薬組成物と併用して用いることができる:抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、プレドニゾン及びヒドロコルチゾン)、グルココルチコイド、ステロイド、非ステロイド抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク及びCOX-2阻害剤)、ベータ-アゴニスト、抗コリン作用薬及びメチルキサンチン)、免疫調節剤(例えば、小有機分子、T細胞レセプターモジュレーター、サイトカインレセプターモジュレーター、T細胞減少剤、サイトカイン拮抗剤、モノカイン拮抗剤、リンパ球阻害剤、又は抗癌剤)、金注射薬、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管新生剤(例えば、アンギオスタチン)、TNF-α拮抗剤(例えば、抗TNFα抗体)、及びエンドスタチン)、ダプソン、ソラレン(例えば、メトキサレン及びトリオキサレン)、抗マラリア薬(例えば、ヒドロキシクロロキン)、抗ウイルス薬、抗ヒスタミン及び抗生物質(例えば、エリスロマイシン及びペニシリン)。
【0173】
他の実施態様において、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状を治療、媒介、改善又は予防する本方法は、化学療法、放射線療法(X線照射、高エネルギーメガ電圧(1MeVより大きいエネルギーの照射)、電子ビーム、常用電圧X線照射、ガンマ線照射ラジオアイソトープ(ラジウム、コバルト及び他の元素の放射性同位元素))、高圧酸素室、心臓バイパス装置、血管形成術、低体温、手術、血管形成術などの治療方法と組み合わせた、該ペプチドの投与をさらに含み、連動してペプチド及び治療方法の効果の相加的、相乗的、又は相殺的(治療方法の副作用を中和する)利点を達成することができる。例として特定の実施態様において、ペプチドは、化学療法又は放射線療法と並行して、癌治療として手術を受けた患者に投与することができる。別の特定の実施態様において、化学療法剤又は放射線療法は、ペプチド投与前又は後、少なくとも1時間、5時間、12時間、1日、1週、1月、又は数カ月(例えば、最高3ヵ月)で投与される。加えて、化学療法又は放射線療法があまりに有毒であると判明又は判明の可能性がある場合、例えば、治療される患者にとって容認できない又は耐え難い副作用を生じる場合、該化学療法又は放射線療法の代わりとして、ペプチドを用いた癌又は腫瘍性疾患の治療方法が、本明細書に提供される。あるいは、該ペプチドが、治療方法の毒性副作用を予防又は改善するための試みにおいて、化学療法又は放射線を用いた治療の前、同時、又は後に投与される治療方法が、本明細書に提供される。実施例2に示すように、本方法に従って投与されるペプチドは、公知の化学療法薬シスプラチナム(cis-platinum)の副作用を改善することができる。上記の例は癌の治療に関するが、該ペプチドは、炎症及び毒剤への暴露などの組織の損傷及び影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状に関して、技術的に他の治療方法と組み合わせて投与され、相乗的、相加的、又は相殺的結果を達成することができることが理解される。
【0174】
(8.5 ペプチドの製剤化及び投与)
一実施態様において、本明細書に提供される方法は、ペプチドを含む医薬組成物が全身的に投与され、標的とされた細胞、組織又は器官を保護又は処置することを提供する。このような投与は、吸入又は経粘膜的、例えば、経口、頬内、経鼻、直腸、膣内、舌下、眼、粘膜下、又は経皮を介して、非経口的であってもよい。一部の実施態様において、投与は、例えば、静脈内又は腹膜内注射を介して非経口的であり、さらには制限されないが動脈内、筋肉内、皮内及び皮下投与も含む。
【0175】
灌流液、器官への注入、又は他の局所投与の使用などの他の投与経路に関して、上記のペプチドの同レベルの結果をもたらす医薬組成物が提供されるであろう。約15pM〜30nMのレベルを使用することができる。
【0176】
本明細書に提供される医薬組成物は、治療的有効量の化合物及び医薬として許容し得る担体を含むことができる。特定の実施態様において、用語「医薬として許容し得る」は、連邦又は州政府の監督官庁により承認されていること、又は動物及びより詳細にはヒトへの使用に関して、米国薬局方もしくは他の一般に認められている外国の薬局方において収載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルをいう。このような薬学的担体は、滅菌液体、例えば水中の生理食塩水溶液、及びピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油であり得る。生理食塩水溶液は、医薬組成物が静脈内に投与される場合に担体とし得る。生理食塩水溶液及び水性デキストロース溶液及びグリセロール溶液も、液体担体、特に注射用溶液として使用することができる。適切な薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。また、該組成物は、所望の場合、微量の湿潤剤もしくは乳化剤又はpH緩衝剤を含むことができる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。該組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体と共に坐薬として製剤化できる。本明細書に提供される化合物は、中性又は塩形態として製剤化できる。医薬として許容し得る塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるものなどの遊離アミノ基とともに形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものなどの遊離カルボキシル基とともに形成されるものを含む。適切な医薬担体の例は、E.W. Martin「レミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に記載されており、該文献はその全体において本明細書中に引用により取り込まれている。このような組成物は、患者への適当な投与の形態を提供するように、担体の適切な量と共に、精製された形態において、治療的有効量の化合物を含む。製剤は、投与様式に合わせるべきである。
【0177】
また、長期間作用性ペプチドなどのペプチドの経粘膜吸着を増加させるための製剤も意図される。経口投与に適合する医薬組成物は、カプセル剤又は錠剤として;散剤又は顆粒剤として;液剤、シロップ剤又は懸濁剤(水性であるか非水溶液体)として;食用発泡剤又はホイップとして;又は乳剤として提供されることができる。錠剤又は硬ゼラチンカプセル剤は、ラクトース、デンプン又はその誘導体、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、ステアリン酸又はそれらの塩を含むことができる。軟ゼラチンカプセル剤は、植物油、ワックス、脂肪、半固体又は液体ポリオールなどを含むことができる。液剤及びシロップ剤は、水、ポリオール及び糖を含むことができる。
【0178】
経口投与を意図する活性物質は、消化管における活性物質の分解及び/又は吸収を遅延させる物質(例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートを使用することができる)で被覆又は混合することができる。従って、活性物質の徐放性は、多くの時間に渡って達成することができ、必要に応じて、活性物質は、胃内での分解から保護されることができる。経口投与のための医薬組成物は、特定のpH又は酵素条件のため、特定の胃腸位置で活性物質の放出を促進するように製剤化されることができる。
【0179】
経皮投与に適合する医薬組成物は、長期間のレシピエントの表皮と密接な接触を維持することを意図する個々のパッチとして提供され得る。局所投与に適合する医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、泥膏、ゲル、スプレー、エアゾール又は油として提供され得る。皮膚、口、目又は他の外部の組織に対する局所投与のために、好ましくは、局所用軟膏又はクリームを使用することができる。軟膏で製剤化される場合、活性成分は、パラフィン又は水混和性軟膏基剤とともに使用され得る。あるいは、活性成分は、水中油ベース又は油中水ベースのクリームで製剤化され得る。眼への局所投与に適合する医薬組成物は点眼薬を含む。これらの組成物において、活性成分は、適切な担体、例えば、水性溶媒中に溶解又は懸濁化され得る。口の局所投与に適合する医薬組成物は、トローチ剤、香錠及びうがい薬を含む。
【0180】
鼻及び肺投与に適合する医薬組成物は、粉末(例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する)などの固体担体を含むことができる。粉末は、嗅ぎタバコが摂取される方法で、すなわち、鼻の近くに保持される粉末の容器から鼻による迅速な吸入によって投与され得る。あるいは、鼻投与に採用される組成物は、例えば、点鼻スプレー又は点鼻薬のように、液体担体を含むことができる。あるいは、肺への化合物の直接吸入は、中咽頭への深い吸入又はマウスピースを介した導入により達成されることができる。これらの組成物は、活性成分の水溶液又は油溶液を含むことができる。吸入による投与のための組成物は、制限されないが、活性成分の予め定められた投与量を提供するように構築され得る加圧エアロゾル、噴霧器又は通気器を含む特別に構成された装置で供給されることができる。一実施態様において、本明細書に提供される医薬組成物は、直接鼻腔に、又は鼻腔もしくは中咽頭を経て肺に投与される。
【0181】
直腸投与に適合する医薬組成物は、坐薬又は浣腸として提供され得る。膣内投与に適合する医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、泥膏、発泡体又はスプレー製剤として提供され得る。
【0182】
非経口投与に適合する医薬組成物は、水性及び非水溶無菌注射溶液、又は懸濁液を含み、これは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び組成物を意図されるレシピエントの血液と実質的に等張性とする溶質を含むことができる。このような組成物に存在することができる他の成分は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリン及び植物油を含む。非経口投与に適合する組成物は、単回用量又は複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアル中に存在することができ、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、注射用滅菌生理食塩水溶液の添加のみを必要とする、冷凍乾燥(凍結乾燥)させた状態で保存することができる。即座の注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。一実施態様において、ペプチドの注射可能な溶液を含む自動インジェクターは、救急車、緊急治療室、及び戦場の状況による緊急使用のために、さらには、家庭内の環境、特に外傷性切断の可能性が、例えば、芝刈り機の軽率な使用などにより生じ得る場合における自己投与のために提供され得る。切断された足又は足指の細胞及び組織が再接着後に生存する可能性は、現場で医療関係者の到着前に、又は緊急治療室で、牽引されている切断された足指に苦しむ個人の到着前に、可能な限り早く、切断部分の複数部位にペプチドを投与することにより増加し得る。
【0183】
一実施態様において、該組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合する医薬組成物として、ルーチン的手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、該組成物は、可溶化剤及び注射部位における疼痛を緩和するリドカインなどの局所麻酔薬を含んでいてもよい。通常、該成分は、別々に供給されるか、又は単位剤形において、例えば、活性物質の量を示すアンプル又はサシェなどの密封容器内に凍結乾燥粉末又は非含水濃縮物として、ともに混合される。該組成物が注入により投与される場合、無菌医薬品等級の水又は生理食塩水を含む輸液ボトルと共に供給される。該組成物が注射により投与される場合、該成分が投与の前に混合されることができるように、無菌生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0184】
坐薬は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を含み;経口製剤は、10%〜95%の活性成分を含むことができる。
【0185】
灌流液組成物は、インサイチュ灌流での使用のために提供され得る。このような医薬組成物は、個人への急性もしくは慢性、局所的又は全身的な投与に不適切なペプチドのレベル又はペプチドの形態を含むが、処置器官又は組織を規則的循環に曝露又は戻す前に、そこに含まれるペプチドのレベルを除去又は減少する前の器官浴、器官灌流液又はインサイチュ灌流液として本明細書中で意図される機能を果たすであろう。
【0186】
また、本明細書に提供される医薬組成物の成分の1種以上を充填した1つ以上の容器を含む医薬パック又はキットも、本明細書に提供される。このような容器に任意に付随するものは、医薬又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を管理する政府機関によって定められる形式の注意書であり、その注意書は、ヒト投与のための製造、使用、又は販売の機関による承認を反映する。
【0187】
別の実施態様において、例えば、ペプチドを、制御された放出システムにおいて送達することができる。例えば、該ペプチドは、静脈内点滴、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又は他の投与様式を用いて投与されることができる。一実施態様において、ポンプを用いることができる(Langerの文献、前掲;Seftonの文献、1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldらの文献、1980, Surgery 88:507;Saudekらの文献、1989, N. Engl. J. Med. 321 :574を参照し、その各々は、全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。別の実施態様において、該化合物は、ベシクル、特にリポソームにおいて送達されることができる(Langerの文献、Science 249:1527-1533 (1990);Treatらの文献、「感染症疾患及び癌の療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」, Lopez-Berestein及びFidler (編集), Liss, New York, 353-365頁 (1989);WO 91/04014; 米国特許第4,704,355号;Lopez-Beresteinの文献、同書、317-327頁を参照されたい;一般に前記箇所を参照されたい。)。別の実施態様において、高分子物質を使用することができる(「制御放出の医薬応用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer及びWise(編集), CRC Press: Boca Raton, Florida, 1974;「制御された薬剤の生物学的利用可能性、薬剤製品設計、及び成果(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen及びBall (編集), Wiley: New York (1984);Ranger及びPeppasの文献、J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61, 1953を参照されたい;また、Levyらの文献、1985, Science 228:190;Duringらの文献、1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardらの文献、1989, J. Neurosurg. 71:105も参照されたい(その各々は全体において本明細書中に引用により取り込まれている。))。
【0188】
さらに別の実施態様において、制御放出システムは、治療の標的、すなわち、標的細胞、組織又は器官の近くに配置することができ、従って、全身投与量の一部のみを必要とする(例えば、Goodsonの文献、115-138頁, 「制御放出の医薬応用(Medical Applications of Controlled Release)」, vol. 2, 前掲, 1984を参照し、それは全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。他の制御放出システムは、Langerによる総説において述べられている(1990, Science 249:1527-1533。その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。
【0189】
別の実施態様において、適切に製剤化されるように、ペプチドは、鼻、頬内、経口、直腸、膣、眼、経皮、非経口、吸入又は舌下投与で投与され得る。
【0190】
特定の実施態様において、治療を必要とする領域に本明細書に提供されるペプチドを局所的に投与することが所望されてもよく;これは、例えば、制限されないが、手術時の局所点滴、局所適用、例えば手術後の創傷包帯とともに、注射により、カテーテルにより、坐薬により、又はインプラントにより達成され得、前記インプラントは、シラスティック膜などの膜類、又はファイバーを含む、多孔性、非多孔性、又はゼラチン性材料のものである。このような実施態様の非限定的な例は、脈管構造、管路などの部分に移植される本明細書に提供されるペプチドで覆われたステント又は他の足場であろう。
【0191】
有効投与量の選択は、当業者に公知の幾つかの要因の考慮に基づいて当業者により容易に決定可能であろう。このような要因は、ペプチドの特定の形態、及び生物学的利用能、代謝、半減期などのその薬物動態学的パラメータを含み、それらは、医薬化合物についての規制認可を得る際に、典型的に使用される通常の開発手順の間に確立されているであろう。投与量を考慮する際の更なる要因は、治療される状態又は疾患、又は正常な個人において達成される利益、患者の体重、投与経路、投与が急性か慢性か否か、併用薬、及び投与される医薬品の有効性に影響を与えることが周知の他の要因を含む。従って、正確な投与量は、熟練者の判断及び各患者の状況に従って、例えば、個々の患者の状態及び免疫状態に応じて、及び標準的臨床技術に従って決定されるべきである。
【0192】
別の態様において、灌流液又は灌流溶液は、移植のための器官の灌流及び貯蔵のために提供され、該灌流溶液は、応答性細胞及び関連細胞、組織又は器官を保護するのに効果的なペプチド又はペプチド類似体の量を含む。移植は、制限されないが、以下を含む:器官(細胞、組織もしくは他の身体の部分を含む)を1のドナーから収集し、これを異なるレシピエントに移植するが、ここで、両者が同じ種である、同種移植;器官を1つの身体の部分から摘出し、他の身体の部分と取り替える、自己移植(器官を摘出し、腫瘍摘出など、エクスビボで切除し、修復し、もしくは他の処置を施した後、元の位置に戻す作業台外科手技を含む);又は、組織もしくは器官が異種間で移植される、異種移植。一実施態様において、灌流溶液は、5%ヒドロキシエチルデンプン(約200,000〜約300,000の分子量を有し、エチレングリコール、エチレンクロロヒドリン、塩化ナトリウム及びアセトンを実質的に含まない);25mM KH
2PO
4;3mMグルタチオン;5mMアデノシン;10mMグルコース;10mM HEPES緩衝液;5mMグルコン酸マグネシウム;1.5mM CaCl
2;105mMのグルコン酸ナトリウム;200,000ユニットのペニシリン;40ユニットのインシュリン;16mgデキサメタゾン;12mgフェノールレッド;を含み、本明細書に提供されるペプチドの適量を補充して、7.4〜7.5のpH及び約320mOsm/lの重量オスモル濃度を有する、ウィスコンシン大学(UW)溶液である(米国特許第4,798,824号、その全体において本明細書中に引用により取り込まれている)。この特定の灌流液は、ペプチドの有効量の包含によって、現在の使用に適合することができる多くのこのような溶液の単なる例示にすぎない。さらなる実施態様において、灌流溶液は、約1〜約500ng/mlのペプチド、又は約40〜約320ng/mlのペプチドを含む。上述したように、ペプチドの任意の形態を、本発明のこの態様において使用することができる。
【0193】
全体にわたって本明細書中のこの目的に対するペプチドの好ましいレシピエントはヒトであるが、本明細書中の方法は、他の哺乳動物、特に家庭的動物、家畜、ペット、及び動物園の動物に等しく当てはまる。しかし、本開示は、そのようには制限されず、利点を任意の哺乳動物に適用することができる。
【0194】
エクスビボ方法の更なる態様において、限定的ではないが上記のもののような任意のペプチドを使用することができる。
【0195】
別の態様において、内皮細胞障壁によって脈管構造から分離されない細胞、組織もしくは器官において、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状を予防、治療、又は管理する方法及び組成物は、ペプチドを含む医薬組成物に直接的に細胞、組織又は器官を曝露することによって、又はペプチドを含む医薬組成物を組織又は器官の脈管構造に投与もしくは接触させることによって提供される。
【0196】
エリスロポエチンに基づく他の組織保護化合物と同様に、本明細書に提供されるペプチドは、例えば、脳、網膜及び精巣を含む内皮細胞密着結合を有する器官の毛細管の内皮細胞の管腔表面から基底膜表面まで輸送される可能性がある。従って、障壁全体にわたる細胞において、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状の影響を治療することができる。いずれか特定の理論に束縛されることは望まないが、該ペプチドの経細胞輸送後に、例えば、ニューロン、眼(例えば、網膜)、脂肪、結合性細胞、毛髪、歯、粘膜、膵臓、内分泌、耳、上皮、皮膚、筋肉、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸、副腎(例えば副腎皮質、副腎髄質)、毛細管、内皮、精巣、卵巣、幹細胞、又は子宮内膜細胞などの細胞上の組織保護レセプターと相互作用することができ、レセプター結合は、応答性細胞又は組織内の遺伝子発現プログラムの活性化を生じるシグナル伝達カスケードを始動し、毒剤への曝露、炎症、低酸素症などのダメージから細胞又は組織又は器官の保護を生じる。別の実施態様において、該ペプチドは、本明細書中に引用により取り込まれているPCT出願番号PCT/US01/49479、米国特許出願第10/188,905号、及び第10/185,841号の教示に従って、障壁全体にわたって輸送されるよう障壁を横断することができる化合物に架橋結合することができる。
【0197】
従って、組織の損傷もしくは影響に関連したダメージに関連した疾患又は障害、あるいは該疾患又は障害の症状から組織を保護する方法は、本明細書中に以下で詳述する。
【0198】
一実施態様の実施において、哺乳動物の患者は、例えば、神経、肺、心臓、卵巣、睾丸の損傷などの有害作用を通常有する放射線療法を含む、癌治療のための全身的化学療法を受けている。上記の組織保護ペプチド又はペプチド類似体を含む医薬組成物の投与は、様々な組織及び器官を化学療法剤による損傷から保護するために、例えば、精巣を保護するために、化学療法及び/又は放射線療法前及びその間に行われる。化学療法剤の循環値が哺乳動物の身体に対する潜在的脅威レベル以下に落ちるまで、治療を続けることができる。
【0199】
別の実施態様の実施において、様々な器官は、多くのレシピエントへの移植のために、自動車事故の犠牲者から集められることが計画され、その一部は、長距離及び長期間の輸送を必要とした。器官収集の前に、本明細書中に記載されているように、ドナーは組織保護ペプチド及びペプチド類似体を含む医薬組成物を輸注される。輸送のため収集された器官は、本明細書中に記載されている組織保護ペプチド又はペプチド類似体を含む灌流液で灌流され、組織保護ペプチド又はペプチド類似体を含む浴内に保管される。特定の器官は、本開示に従う組織保護ペプチド及びペプチド類似体を含む灌流液を利用する、拍動性灌流装置で連続的に灌流される。器官機能の最小の悪化が、インサイチュで、該器官の輸送の間、及び移植及び再灌流時に生じる。
【0200】
別の実施態様において、個人を毒剤に曝す危険な活動の関係者で、ある人は、毒剤への曝露の影響を予防(すなわち、その発症の遅延、阻害、又は阻止)、それに対する保護、又は緩和するのに十分なペプチドを含む医薬組成物の用量を摂取することができる。特に、この治療方法は、毒剤との接触を伴う様々な職業、例えば、鉱員、化学物質製造業者、軍人(兵士、落下傘降下兵)、救急人員(警官、消防士、EMS、及び災害救助人員)、建築作業員、食品加工業者及び原子炉作業員などにおいて、適用することができる。
【0201】
別の実施態様において、心臓弁を修復する外科手技は、一時的な心臓麻痺及び動脈閉塞を必要とする。手術の前に、患者は、組織保護ペプチド又はペプチド類似体を注入される。このような治療は、特に再灌流の後、低酸素性虚血性細胞損傷を予防する。加えて、本明細書に提供される医薬組成物を予防的に使用して、個人に、外科手技に関連する外傷を制限し、又は外科手技から個人の回復における援助するために手術に向けた準備をさせることができる。組織保護ペプチド及びペプチド類似体を含む医薬組成物を用いる本治療方法は、外科手技のための予防的使用を提供するが、それは、制限されないが、バイパス処置(冠動脈バイパス)、血管形成術、切断術及び移植を含む一時的な虚血事象を誘発する処置、並びに脳及び脊髄手術及び開胸心臓処置などの応答性細胞、組織又は器官に直接に行われる処置において特に有用であり得る。このような処置は、心肺(心臓と肺の)バイパスの使用を伴うことができる。
【0202】
別の実施態様において、心肺バイパス手術などの任意の外科手技において、本明細書に提供される組織保護ペプチド又はペプチド類似体を用いることができる。一実施態様において、上記の組織保護ペプチド及びペプチド類似体を含む医薬組成物の投与は、バイパス手技の前、その間、及び/又はその後に行われ、脳、心臓及び他の器官の機能を保護する。
【0203】
ペプチドが、組織の損傷に関連した疾患又は障害、又はそれから生じるダメージ、影響又は症状を治療するためのエクスビボ適用、又はインビボ適用に使用される前述の例において、毒剤への曝露に対するダメージ及び影響又はその症状の予防、治療、又は管理に適合する単位剤形の医薬組成物であって、約0.01pg〜30mg、0.5pg〜25mg、1pg〜20mg、500pg〜10mg、1ng〜10mg、500ng〜10mg、1μg〜10mg、500μg〜10mg、又は1mg〜10mgの範囲内の量のペプチド、及び医薬として許容し得る担体を含む前記医薬組成物が、本明細書に提供される。一実施態様において、ペプチドの量は、約0.5pgから1mgの範囲内である。一実施態様において、製剤は、非赤血球生成性ペプチドを含む。
【0204】
さらに、この回復性の態様は、細胞、組織又は器官の機能不全の回復用医薬組成物を調製するための本明細書中の任意のペプチドの使用に関し、ここで治療は、該機能不全の原因となる初期損傷の後及びかなり後に開始される。さらに、本明細書に提供されるペプチドを用いる治療は、急性期並びに慢性期の間の疾患又は状態の過程に及ぶことができる。
【0205】
本明細書に提供されるペプチドは、1回投与あたり、約1ng〜約300μg/kg体重、例えば約5〜150μg/kg-体重、又は約10〜100μg/kg-体重の投与量で全身投与することができる。例えば、投与は、臨床的に必要である限り、1時間毎、毎日、又は適当な間隔後、例えば、1〜12時間毎、6〜12時間毎;2〜6日毎、2〜4日毎;1〜12週毎、又は1〜3週毎に、繰り返すことができる。一実施態様において、有効量のペプチド及び医薬として許容し得る担体は、単回投与量バイアル又は他の容器中に包装することができる。別の実施態様において、本明細書中に記載されている活性を発揮することが可能であるが、ヘモグロビン濃度又はヘマトクリットの増加を生じない該ペプチドを使用する。このようなペプチドは、本明細書に提供される方法が慢性的に提供されることを意図する例において使用することができる。
【実施例】
【0207】
(実施例)
下記実施例は、限定のためではなく、例証のために提供される。
【0208】
(実施例1: 神経因性疼痛モデルにおける有効性)
この実施例は、組織保護ペプチドは、神経損傷及び疼痛から動物を保護することを示す。
【0209】
本試験に使用したラットは、8週齢の雌のSprague-Dawleyラット(Charles River, Maastricht, The Netherlands)であった。動物には、セボフルランの6%導入及び3%維持で麻酔をかけた。動物の左後肢の外側面に、小さい切開を加え、筋肉を露出させた。坐骨神経三枝分岐点を、大腿二頭筋の2つの頭部の間の鈍的調製により露わにした。次に、脛骨神経と総腓骨神経を、ラットにおいて5-0シルクで、マウスにおいて6-0シルクできつく結紮し、遠位神経の2〜4mmを切断除去した。腓腹神経は、無傷のまま残す。自発的な神経再結合を防止するために、切断した神経をずらした。外科手技の間は、坐骨神経又は腓腹神経が伸びたり触れたりしないよう注意した。創傷を、ラットにおいて4-0シルクで、マウスにおいて6-0シルクで、二層で閉鎖し、術後疼痛を軽減するために、ラット及びマウスに、各々、0.01及び0.05mg/kgブプレノルフィンの単回投与量を投与した。露出後、神経部分損傷(SNI)が誘導され且つ創傷が4-0(ラット)又は6-0(マウス)シルクにより二層で閉鎖し、且つ術後疼痛を軽減するために、0.01(ラット)mg/kgブプレノルフィンの単回投与量を投与した。外科手技の間は、露出した神経が伸びたり触れたりしないよう注意した。
【0210】
SNIの誘導後24時間で、処置を開始する:2日間隔で、5回の、30μg/kgペプチド
【化42】
の腹腔内注入。米国特許第8,853,358号の配列番号:282のペプチドを、陽性対照として使用した。接触性異痛症を、罹患した後肢の足底面上に発揮される漸増力を引き起こす、剛性の増加する(0.004〜15g)様々なvon Frey hairs (Semmes-Weinstein Monofilaments, North Coast Medical Inc., San Jose, CA)を使用し、試験した。このフィラメント(hairs)を、被験領域内のわずかに異なる位置に、1〜2秒間隔で、10回あてた。素早い足の引き込みによる疼痛反射の誘発に必要な力を記録し、反応を示す足には、更なるフィラメントはあてなかった。
【0211】
図1に示したように、ビヒクルを受け取る動物は、接触に対する増大した感受性を示す。対照的に、本明細書に提供されるペプチドを受け取る動物は、増大した感受性を示さない。
【0212】
(実施例2:AKTリン酸化の活性化)
この実施例は、組織保護ペプチドは、AKTを活性化することを示す。
【0213】
HUVECは、Cell Applications(San Diego、CA)から購入し、2%ウシ胎仔血清(FCS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を補充した培地EGM-2において、加湿したインキュベーター内で、5%CO
2を含有する大気下、37℃で増殖させた。予備実験は、Aktのリン酸化は、組織保護レセプターを活性化した化合物による刺激後10分で最大に到達したことを示した。HUVECを
【化43】
ペプチドにより処理した後、細胞溶解液を調製し、抗-Akt及び抗-ホスホ-Akt抗体(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)を用いて、ウエスタンブロットを実行した。簡単には、細胞溶解液を、SDS-PAGEに供し、ニトロセルロースメンブレン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)へ移した。このメンブレンを、2% BSA及び0.05% Tween 20含有PBSにより、室温で1時間ブロックした。ブロットを、ホスホ-Aktに対する一次抗体と共に、4℃で一晩、又は室温で4時間インキュベーションし、引き続き二次ホースラディッシュペルオキシダーゼ-複合抗体と共に1時間インキュベーションした。次に、ブロットを、Aktに対する抗体により再プロービングし、同等のタンパク質負荷を確認した。免疫反応性バンドを、ECL(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)を用いて可視化した。
【0214】
図2に示したように、
【化44】
ペプチドは、AKTを活性化した。
【0215】
(実施例3:GDKA (配列番号:3)ペプチドの組織保護活性)
この実施例は、組織保護ペプチドは、動物を、神経ダメージ及びニューロパチーから保護することを示す。
【0216】
Beiswengerらの文献により明らかにされたように、熱引き込み潜時の増加は、表皮神経支配の喪失と相関しており、これはマウスにおけるSTZ-誘導性糖尿病の開始後4週間での、表皮内神経線維の密度の減少として示される(Beiswengerらの文献、2008 Neurosci Lett. 442:267)。Smithらはまた、表皮内神経線維の喪失は、ニューロパチーの重症度及び進行の正当な代理測定であることをを報告した(Smithらの文献、2006 Diabates Care 29:1294)。従ってSTZ-誘導性糖尿病マウスにおける熱引き込み潜時に対するアミノ酸配列
【化45】
を持つペプチドの効果を、糖尿病性ニューロパチーにおける神経ダメージから保護するその能力を明らかにするために、試験した。
【0217】
簡単には、雄のSwiss Websterマウスに、STZ(180mg/kg i.p.)を単回注射し、インスリン-欠損糖尿病を誘導した。高血糖症を、3日後に確認し、十分なニューロパチーの誘導を確実にし、15mmol/lを超える血糖値を伴うマウスのみを使用した。糖尿病未治療で4週間後、組織保護ペプチド又は対照処置(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))を、点眼薬(5日/週に両眼に50ナノモル溶液を50マイクロリットル)として投与した。米国特許第8,853,358号の配列番号:282のペプチドを、陽性対照として使用した。12週間の処置後、マウスを、足の熱感受性について試験した。熱引き込み潜時を測定するために、マウスを、温めた硝子床の囲い中に配置し、移動式放射熱源を、片方の後肢の足底面に向けた。熱を、毎秒0.9℃上昇させ、熱感受性C-繊維の活性化に関与した足引き込み反応を確実にした(Yeomansらの文献、 1996 Pain 68:133)。加熱開始から足引き込みまでの時間を、5分間隔の4回の個別の試験により記録し、各マウスについて、最後の3回の試験の中央値を使用した。
【0218】
図3に示したように、PBS処置を受け取る糖尿病性マウスは、増大した熱潜時(熱閾値)を示し、これはニューロパチーの発生と一致している。対照的に、
【化46】
ペプチドを受け取るマウスは、非糖尿病性マウス又は陽性対照で処置した糖尿病性マウスのそれと同等の、正常な熱閾値を示した。
【化47】
ペプチドを受け取るマウスの熱閾値はまた、PBS-処置した糖尿病性マウスよりも有意に低かった。これらの結果は、
【化48】
ペプチドは、神経ダメージ及びニューロパチーから、動物を保護することを明らかにしている。
【0219】
本開示は、記載された具体的実施態様による範囲には限定されず、具体的実施態様は本開示の個別の態様の単なる例証として意図され、且つ機能的に同等の方法及び成分は、本開示の範囲内である。本明細書に示され且つ記載されたものに加え、実際本開示の様々な変更は、前述の説明及び添付図面から当業者には明らかになるであろう。このような変更は、添付された請求の範囲内であることが意図される。
【0220】
本明細書に引用された全ての参考文献は、あらゆる目的のためにそれらの全体が引用により本明細書中に取り込まれている。