(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019523763
(43)【公表日】20190829
(54)【発明の名称】エラスターゼ阻害活性を有するベータヘアピンペプチド模倣体及びそのエアロゾル剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20190802BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20190802BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20190802BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20190802BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190802BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20190802BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20190802BHJP
【FI】
   !A61K38/12ZNA
   !A61K9/12
   !A61P11/00
   !A61P11/08
   !A61P43/00 111
   !A61K9/72
   !C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】45
(21)【出願番号】2018562561
(86)(22)【出願日】20170531
(85)【翻訳文提出日】20190128
(86)【国際出願番号】EP2017025156
(87)【国際公開番号】WO2017207117
(87)【国際公開日】20171207
(31)【優先権主張番号】16020210.7
(32)【優先日】20160531
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】512029010
【氏名又は名称】ポリフォー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】POLYPHOR AG
【住所又は居所】スイス、ツェーハー−4123アルシュヴィル、ヘーゲンハイマーマットヴェーク125番
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ルーディン
【住所又は居所】スイス4104オーバーヴィル、イム・ドリッセル24番
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ケラー
【住所又は居所】ドイツ81379ミュンヘン、ノインキルヒナー・シュトラーセ60番
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076FF67
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA24
4C084CA59
4C084DC41
4C084NA06
4C084NA10
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZC20
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA01
4H045BA05
4H045BA16
4H045BA30
4H045DA56
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、ヒト好中球エラスターゼに対する阻害活性を有する、式シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)で示されるβヘアピンペプチド模倣体又は医薬として許容されるその塩を含む医薬用エアロゾルに関する。さらに、そのようなエアロゾルを調製し投与するための固体又は液体の医薬組成物及びキットに関する。本発明は、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の感染症、若しくは疾患若しくは病態の予防、管理又は治療に使用することができる。そのため、本発明はさらに、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む医薬組成物又は医薬用エアロゾルに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルであって、該分散液相が、
(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり;DProはD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み;
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し;および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する、医薬用エアロゾル。
【請求項2】
活性化合物の対イオンが酢酸イオンである、請求項1に記載のエアロゾル。
【請求項3】
少なくとも約0.1mL/分の分散液相の速度でエアロゾル発生器から放出される、請求項1又は2に記載のエアロゾル。
【請求項4】
活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩が、少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度でエアロゾル発生器から放出される、請求項1又は2に記載のエアロゾル。
【請求項5】
約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲の濃度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアロゾルを調製するための液体医薬組成物。
【請求項6】
約0.8ミリパスカル〜約1.7ミリパスカルの範囲の動粘度を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
約25mN/m〜80mN/mの範囲内の表面張力を有する、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1種類の味覚修飾添加剤を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の液体組成物を調製するための固体医薬組成物であって、組成物が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物は水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物が約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で該活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む、固体医薬組成物。
【請求項10】
活性化合物の対イオンが酢酸塩である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルの調製及び送達のためのキットであって、
該分散液相が
(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり;DProはD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み;
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し;および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有し、
該キットが、
噴霧器と、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲の濃度で活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む液体組成物とを含むか、
又は噴霧器と、液体組成物を調製するための固体医薬組成物とを含み、組成物が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物が水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物が、該活性化合物任意の医薬として許容されるその塩を約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で含む、
キット。
【請求項12】
活性化合物の対イオンが酢酸イオンである、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
噴霧器が、ジェット噴霧器、超音波噴霧器、圧電噴霧器、ジェット衝突噴霧器、電気流体力学噴霧器、毛細管力噴霧器、穿孔膜噴霧器及び穿孔振動膜噴霧器からなる群から選択される、請求項11又は12に記載のキット。
【請求項14】
噴霧器が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の少なくとも約0.8mg/分の速度で、液体組成物をエアロゾル化することができるように適合されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の充填用量の少なくとも約70重量%が、約5μm以下の質量中央径を有する液滴で構成される、請求項11〜14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
肺投与用のエアロゾルを調製及び送達する方法であって、
(a)約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む液体医薬組成物を提供する工程、又は該液体組成物を調製するための固体医薬組成物を提供する工程であって、組成物が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物が水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物が、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度の活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む、工程;
(b)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度で該液体医薬組成物をエアロゾル化することができる噴霧器を提供する工程であって、該噴霧器が、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する分散液相を含むエアロゾルを放出するように適合される工程;および
(c)該液体医薬組成物をエアロゾル化するために該噴霧器を作動させる工程、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、具体的に、WO2006/087001に開示され、ヒト好中球エラスターゼに対する阻害活性を有する式シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)のβヘアピンペプチド模倣体、又はその医薬として許容される塩を含む医薬用エアロゾルに関する。さらに、そのようなエアロゾルを調製し、投与するための固体又は液体の医薬組成物及びキットに関する。本発明は、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態、例えば、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在する肺の疾患若しくは病態を引き起こす肺の感染症の予防、管理又は治療に使用することができる。そのため、本発明はさらに、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む医薬組成物又は医薬用エアロゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
セリンプロテアーゼファミリーメンバーのヒト好中球エラスターゼ(ヒトNE)は、重要な治療標的の構成要素となっている。カテプシンGやプロテイナーゼ3に加え、ヒトNEはサイトカイン及びそれらの受容体の活性の調節に密接に関与している。特に、炎症部位で、高濃度のヒトNEが、炎症性サイトカインのレベルの上昇と密接に時間的に相関する浸潤性多形核細胞から放出されることは、このプロテアーゼが、サイトカインの生物活性及び可用性の制御に関与していることを強く示す(U.Bank,S.Ansorge,J.Leukoc.Biol.2001,69,177−90)。ヒトNEは、細胞外タンパク質分解に主に関与することが知られており、多種多様なマトリックス高分子、血漿タンパク質、炎症性メディエーター、及び細胞表面受容体の加水分解を触媒することにより、重要な局所的及び全身の結果を伴う組織の損傷に関与する(C.A.Oven;E.J.Campbell;J.Leukoc.Biol.1999,65,137−150)。そのため、ヒトNEの阻害剤は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような肺疾患、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、嚢胞性線維症(CF)及び虚血−再灌流傷害を含む感染性炎症性疾患のための価値のある新規な薬物候補である(H.Ohbayashi,Expert Opin.Investig.Drugs 2002,11,965−980;B.Korkmaz,T.Moreau,F.Gauthier,Biochimie 2008,90,227)。それらは、これらの疾患又は病態を効果的に予防若しくは治療及び/又は軽減する新しい治療法の重要なニーズを満たすことができる。
【0003】
投与経路は、薬物の効果が局所的(局所投与)であるか、又は全身性(経腸又は非経口投与)であるかで分類することができる。気管支や肺への医薬品の送達(肺への薬物送達)は、呼吸器系の疾患及び病態の局所治療に使用されてきた。しかしながら、吸収のために肺の大きな表面を利用する全身性疾患の治療のための投与の代替経路としての吸入の可能性は、同様に実証されている(J.S.Patton,P.R.Byron,Nat.Rev.Drug Discov.2007,6,67−74;M.Hohenegger,Curr.Pharm.Des.2010,16,2484−2492)。
【0004】
特に、薬物物質は、エアロゾル化乾燥粉末又はエアロゾル化液体として呼吸器系に送達することができ、後者は、薬物物質の溶液か懸濁液などの分散液である。固体又は液体の組成物を、吸入を可能にするエアロゾルに変換するために、様々な装置が開発されてきた。水性薬物物質の溶液又は懸濁液を吸入エアロゾルに変換するために、ネブライザーが通常使用されている。それらは、高い肺用量を必要とする疾患(例えばCF)や患者(例えば他の吸入装置の使用に必要な流速を調整又は達成することができない子供に特に有用である(M.Knoch,M.Keller,Expert Opin.Drug Del.2005,2,377−390)。
【0005】
薬物物質の吸入は、呼吸器感染症及び/若しくは好中球エラスターゼ活性に関連する疾患の予防及び/又は治療に有利であり得る。好中球による気道浸潤は、細胞外区画内での好中球エラスターゼの増加をもたらし、それによって、有害な作用を誘発するという証拠がある。好中球アレルゲン負荷のマウスモデルにおいて、シベレスタットによる好中球エラスターゼの阻害は、気道過敏性及び炎症を減衰することが実証され得る(H.Koga,N.Miyahara et al.,Respir.Res.2013,14:8)。異なるマウスモデルにおいて、エラスターゼ阻害剤アルファ−1タンパク質分解酵素阻害剤(alpha1PI)の組み換え型である非グリコシル化rhalpha1PIを鼻点滴によってCD−1マウスの気道表面へ送達すると、エラスターゼ介在性傷害に対して非常に保護的であり、さらに、グリコシル化された血液由来のalpha1PIよりも著しくより保護的であることが判明した。これらの結果から、rhalpha1PIのエアロゾル送達が、嚢胞性線維症の肺疾患と関連するエラスターゼ依存性病態生理を制御するのに効果的な計画であり得ることが示唆される。最近、R.Siekmeierは、遺伝性alpha1PI欠損又は嚢胞性線維症の患者が吸入したalpha1PIの肺沈着を目的とするこれまでに終了した臨床試験の結果をまとめた(Eur.J.Med.Res.2010,15[補遺II],164)。両方の治療分野について、試験のほとんどは、吸入によるalpha1PIの投与が過剰な炎症性タンパク質及び好中球エラスターゼを中和する強力な療法として役立ち得ることを示している。後者の効果は、患者の肺機能の改善を自動的にはもたらさないが、alpha1PI治療後の明らかな気道炎症の低減は、肺構造の変化よりも重要である(M.Griese,P.Latzin et al.,Eur.Respir.J.2007,29,240)。
【0006】
一般的に、吸入による薬物物質送達の利点は、例えば、呼吸器疾患の場合に、全身毒性のリスクを最小限に抑えながら、十分な治療投与量の薬物を主要な作用部位に直接送達することができることである。さらに、全身薬物暴露に伴う不十分な薬物動態及び/又は薬力学は回避され得る。さらに、(自宅での)吸入は、(病棟での)静脈内注射よりも便利な投与様式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
依然として、吸入薬物物質の送達に基づく治療の有効性は、主に選択される薬物、吸入に適するその医薬組成物及び使用される装置に依存する。そのため、現在知られている療法の結果を改善し、かつ/又は現在知られている療法の欠点を克服する、ヒトの好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する疾患若しくは病態の予防、管理又は治療に適するさらなる医薬組成物、エアロゾル及び治療用キットが強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルを提供する。該分散液相は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又はその任意の医薬として許容される塩を含む水性液滴を含む。該分散相の液滴は、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、液滴サイズ分布は約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する。さらに、本発明によって提供されるのは、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルであり、該分散液相は、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療の方法において使用するための、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含む。
【発明の効果】
【0009】
別の態様において、本発明は、上記エアロゾルが調製され得る元の液体及び固体の医薬組成物を提供する。該液体組成物は、それぞれ、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲、好ましくは、約17mg/mL〜約95mg/mLの範囲、又は約35mg/mL〜約95mg/mL、より好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、噴霧器及び液体又は固体の組成物を含むキットを提供し、該噴霧器は、上記のように、液体組成物をエアロゾルにエアロゾル化するように適合されている。さらに、本発明によって提供されるのは、噴霧器及び液体又は固体の組成物を含むキットであり、該噴霧器は、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療の方法において使用するために、上記のように、液体組成物をエアロゾルにエアロゾル化するように適合されている。
【0011】
さらに別の態様において、本発明はさらに、肺投与用のエアロゾルを調製及び送達する方法を開示する。この方法は、それぞれ、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲、好ましくは、約17mg/mL〜約95mg/mLの範囲、又は約35mg/mL〜約95mg/mL、より好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む液体医薬組成物を提供する工程、又は活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む液体組成物を調製するための固体医薬組成物を提供する工程であって、該固体組成物は水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物は、それぞれ、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲、好ましくは、約17mg/mL〜約95mg/mLの範囲、又は約35mg/mL〜約95mg/mL、より好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物又は任意の医薬として許容されるその塩を含む工程、かつ平均送達速度が少なくとも約0.8mg/分で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩の前記液体医薬組成物をエアロゾル化できる噴霧器を提供する工程であって、該噴霧器が、さらに、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する分散液相を含むエアロゾルを放出するように適合されている工程、を含む。次の工程で、該噴霧器は、最終的に哺乳類によって、より好ましくは、ヒト対象によって吸入され得る液体医薬組成物をエアロゾル化するように作動される。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療の方法で使用するための、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩、及び必要に応じて、1以上の医薬として許容される希釈剤、添加剤又は担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩、及び添付文書を含むキットであって、該添付文書が、該活性化合物を用いて、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の対象を治療するための説明を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ラットの好中球活性化のLPS/fMLPモデルにおける吸入によって投与されたシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の効果を示す。死んだラットの気管からのBAL上清を、好中球エラスターゼ活性について分析した。データは、ビヒクル対照に対して示されている。データは平均値として示されている。
【図2】ラットの好中球活性化のLPS/fMLPモデルにおける吸入によって投与されたシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の効果を示す。死んだラットの気管からのBAL上清を、好中球エラスターゼ活性について分析した。データは、ビヒクル対照に対して示されている。データは、平均およびs.e.m.値と共に、個々のデータポイントとして示されている。
【図3】嚢胞性線維症の患者に吸入によって投与された単一漸増用量(コホート当たり80mg、160mg及び320mg)のシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の平均血漿濃度−時間曲線を示す。これらの曲線は、健康な対象によって吸入された同等用量の活性化合物から生じる曲線のプロファイルと類似の典型的なプロファイルを示す。
【図4】単一漸増用量(コホート当たり80mg、160mg及び320mg)として嚢胞性線維症患者に吸入によって投与されたシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の平均痰濃度を示す。データは対時間表示である。痰(図4)及び血漿(図3)中の活性化合物の濃度の比較により、痰中の活性化合物の濃度が血漿中よりも約10倍高いことが示される。
【図5】単一漸増用量(コホート当たり80mg、160mg及び320mg)として嚢胞性線維症患者に吸入によって投与されたシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)によって誘導された嚢胞性線維症患者の痰中の活性好中球エラスターゼに対する効果を示す。データは対時間表示で、平均値として示されている。さらに、プラセボのデータを同様に示す。全用量群における活性化合物の単回用量投与後数時間にわたる痰中の活性エラスターゼの強力な阻害(90%超)が導出され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルを提供する。該分散液相は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含む。該分散相の液滴は、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、液滴サイズ分布は約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する。
【0016】
本発明のエアロゾルは、エアロゾルの経口吸入によって好適に達成される肺送達のためのものである。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる、肺送達とは、いわゆる、深部肺、末梢肺、肺胞、気管支及び細気管支を含む肺の任意の部分又は主要部へのエアロゾル送達を意味する。
【0017】
本発明のエアロゾルを用いて、哺乳類、より好ましくは、ヒト対象の予防、管理又は治療が潜在的に有用である肺の標的領域の病態は、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態、例えば、特に、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在する肺の疾患若しくは病態を引き起こす肺の感染症を含む。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、エアロゾルは、気相中の固相及び/又は液相の分散物である。不連続相とも呼ばれる分散相は、複数の固体及び/又は液体粒子を含む。エアロゾルの両方の基本的な物理的種類、すなわち、気相中の固体及び液体の分散物は、医薬用エアロゾルとして使用することができる。
【0019】
本発明によれば、エアロゾルは、分散液相及び連続気相を含む。そのようなエアロゾルは、時々、「液体エアロゾル」又はエアロゾル化液体と呼ばれる。分散液相の要件は、固相の存在を排除するものではないことに留意すべきである。特に、分散液相自体は、液体中の固体粒子の懸濁液などの分散物であり得る。
【0020】
連続気相は、医薬として許容される任意の気体又は気体の混合物から選択される。例えば、気相としての空気又は圧縮空気は、エアロゾル発生器として噴霧器を用いる吸入療法の中で最も一般的である。あるいは、酸素富化空気、又は窒素と酸素の混合物などの他の気体及び気体の混合物が使用され得る。連続気相としての空気の使用が最も好ましい。
【0021】
活性化合物は、ヒト好中球エラスターゼに対する阻害活性を有するシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩である。構造的には、該活性化合物は、ホモデティック環状トリデカペプチドであり、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり、ProはD−プロリンである。残りのアミノ酸残基についての略語(3文字コード)は、一般的に認識されているとおりである。全てのアミノ酸残基は、1つのD−プロリン残基を除いてL配置にある。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)は、それぞれの溶媒和物を含むと理解されるべきである。
【0023】
溶媒和物並びに塩は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)を医薬組成物中の活性成分として使用することができる形態のカテゴリーである。
【0024】
塩は、イオン、すなわち、陽イオン及び陰イオンで構成される中性化合物である。活性化合物が酸のように作用することができる場合は、潜在的に有用な塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び/若しくはアンモニウムなどの無機陽イオン、又はアルギニン、リジン、グリシン、及び/若しくはエチレンジアミンに由来するものなどの有機カチオンで形成することができる。該活性化合物(又はその一部)は、例えば、シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)のアミノ酸残基の1つであるLys残基のような塩基として作用することができ、潜在的に有用な塩は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩(モノ塩基性又は二塩基性)、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸、フマル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、n−プロピルスルホン、スルホン酸イソプロピル、乳酸、リンゴ酸、及び/又はクエン酸などの無機アニオンで形成することができる。
【0025】
医薬として許容される塩又は医薬塩という用語は、対イオンと組み合わさって、中性の複合体を形成したイオン化可能な薬物又は活性化合物を指すために使用される。このプロセスを経て薬物又は活性化合物を塩に変換すると、例えば、その化学的安定性を改善させ、複合体の投与をより容易にさせ、かつ/又は薬剤の薬物動態プロファイルの操作を可能にすることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、活性化合物の対イオンは酢酸イオンである。
【0027】
エアロゾルはさらに、分散液相の液滴が約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、液滴サイズ分布が約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有することを特徴とする。本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、質量中央径(MMD)は、レーザー回折によって測定されるような分散液相の質量中央径である。Malvern MasterSizer X又はMalvern SprayTecなどのMMDを決定するための様々な適切な分析装置は、知られており、市販されている。エアロゾル化液体粒子又は液滴の幾何標準偏差(GSD)を含む幾何学的分布は、MMDと同時に決定することができる。GSDは、広がりの程度が数の集合であることを説明し、その好ましい平均は、幾何平均である。
【0028】
好ましい実施形態において、エアロゾルは、肺送達のためのものであり、そのようなエアロゾルの分散液相は、約2.0μm〜約4.5μmの範囲のMMDを有し、約1.2〜約1.7の範囲のGSDを有する。より好ましくは、本発明のエアロゾルは、約2.5μm〜約3.5μmの範囲のMMDを有し、約1.4〜約1.6の範囲のGSDを有する。これらの組み合わせのセットの各々は、エアロゾル化された活性化合物の量に対して、気管支及び細気管支を含む、肺中の活性化合物の高い局所濃度を達成するために特に有用である。
【0029】
別の好ましい実施形態において、該エアロゾルは、少なくとも約0.1mL/分の速度でエアロゾル発生器から放出される。別の実施形態において、該エアロゾルがエアロゾル発生器から放出される速度である(総)出力速度は、実用的な目的のためにその密度が1g/mLに近いそれらの液体エアロゾルについては少なくとも約0.150mL/分又は少なくとも約150mg/分であり、すなわち、約0.95g/mL〜約1.05g/mLの範囲内である。さらなる実施形態において、出力速度は、それぞれ約200mg/分〜約700mg/分、又は約250mg/分〜約650mg/分の範囲内である。
【0030】
別の好ましい実施形態において、該エアロゾルは、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度でエアロゾル発生器から放出される。薬物又は活性化合物の(平均)送達速度は、患者が治療期間中に与えられることが予想される薬物又は活性化合物の量を決定するための、例えば、Ph.Eur.(欧州薬局方)2.9.44及び/又はUSP(米国薬局方)1601に従って定義及び測定される2つの別個のメトリクス又はパラメータの1つである。さらなる実施形態において、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の平均送達速度は、それぞれ、約3mg/分〜約25mg/分の範囲内、又は約5mg/分〜約18mg/分の範囲内である。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲に記載のエアロゾルを生成するのに適する適切なエアロゾル発生器、特に、噴霧器については、以下でより詳細に説明する。
【0032】
別の態様において、本発明は、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む、上記のエアロゾルを調製するための液体医薬組成物を対象とする。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲で定義されるように、液体医薬組成物は、少なくとも1種類の活性化合物及び少なくとも1種類の医薬として許容され、薬理学的に実質的に不活性な添加剤を含む液体材料である。用語「液体組成物」は、必ずしも固体材料が存在しないことを意味するものではないことに留意すべきである。例えば、連続液相中の固体粒子の分散を表す懸濁液はまた、上記の用語に包含される。
【0034】
好ましくは、エアロゾルが調製される液体組成物は、水性組成物であり、その結果、水は、そのような組成物の主な液体成分である。水以外の溶媒及び補助溶媒は避けるべきである。別の実施形態において、該組成物は、水を少なくとも約80重量%含む。さらに別の実施形態において、該組成物の液体成分の少なくとも約90重量%は水である。
【0035】
エタノール、グリセロール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどの非水性溶媒の配合を避けることができない場合、添加剤は、注意深く、該組成物のその生理学的許容性及び治療用途を考慮して選択すべきである。好ましい実施形態によれば、該組成物は、非水性溶媒を実質的に含まない。
【0036】
液体組成物中の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の濃度は、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内である。好ましくは、上記活性化合物又は任意の医薬として許容されるその塩の濃度は、それぞれ、約17mg/mL〜約95mg/mL又は約35mg/mL〜約95mg/mL、又はより好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内である。エアロゾル化に適する組成物中の高濃度の活性化合物は、患者の利便性及びコンプライアンスを提供する:そのような濃度が高いほど、吸入される有効用量の活性化合物を含む液体組成物の総体積は小さくなり、かつそのような有効用量の吸入に必要である合計時間は短い。
【0037】
液体組成物の動粘度は、噴霧の効率及び噴霧によって形成されるエアロゾルの粒度分布に影響を与える。動粘度は、好ましくは、約0.8ミリパスカル〜約1.7ミリパスカルの範囲に調整されるべきである。他の実施形態において、動粘度は、それぞれ、約1.0ミリパスカル〜約1.7ミリパスカルの範囲、又は約1.2ミリパスカル〜約1.6ミリパスカルの範囲である。
【0038】
肺投与に非常に適するエアロゾルを得るために、本発明の液体組成物の表面張力は、好ましくは、約25mN/m〜約80mN/mの範囲、より好ましくは、約30mN/m〜約70mN/mの範囲、又はさらにより好ましくは、約45mN/m〜約55mN/mの範囲に調整されるべきである。
【0039】
一般的に、エアロゾルの品質及び噴霧化の効率は、上記で提示した実施形態の下側部分に悪影響を与え得る。しかしながら、以下に説明する研究の結果は、上記の点で、本発明の液体組成物の性能に有意な変化がないことを示している。
【0040】
水性液体組成物に界面活性剤を添加すると、表面張力が水又は生理的緩衝溶液の表面張力よりもかなり顕著に低下し得ることは当技術分野で周知である。したがって、意図する用途に応じて、それぞれの場合において妥協点が見出されなければならない。
【0041】
十分に忍容性であるために、エアロゾルは、可能な限り、生理的張度又は浸透圧を有するべきである。そのため、エアロゾルの浸透圧を制御するための浸透活性添加剤を配合することが望ましい場合がある。そのような添加剤、又は複数の添加剤は、例えば、物質の組み合わせが使用される場合、理想的には、生理学的流体の浸透圧からあまり逸脱しないエアロゾルの浸透圧、すなわち、約150mOsmol/kgに達するように選択されるべきである。しかしながら、一方の物理化学的医薬ニーズと、他方の生理的要求との間で妥協点を見出されなければならない。一般的に、約800mOsmol/kgまでの浸透圧が許容され得る。特に、約200mOsmol/kg〜約600mOsmol/kgの範囲の浸透圧が好ましい。さらなる実施形態において、浸透圧は、約250mOsmol/kg〜約500mOsmol/kgの範囲内、又はそれぞれ約300mOsmol/kg〜約450mOsmol/kgの範囲にある。
【0042】
該組成物の有効性及び/又は効力を改善するための1つのアプローチは、目的領域におけるエアロゾルの沈着後の組成物の局所的な滞留時間を増強することであり得る。例えば、肺における堆積した組成物の滞留時間が延びると、作用部位における活性化合物の高い連続暴露につながり得る。同時に、それは、必要な投与頻度を減らし、そのため、患者の利便性及びコンプライアンスを向上させ得る。
【0043】
一般に、活性化合物の長期保持を達成するために、様々な製剤計画は、例えば、高度に水溶性の活性化合物を難溶性塩などの溶解性の低い固体形態に変換することを追求することができる。その結果、該化合物は、マイクロ懸濁液又はナノ懸濁液の形態などの溶解していない形態のエアロゾルに存在する。エアロゾル液滴が堆積すると、該組成物の液相は、生理的流体、例えば、粘液と組み合わさって、薬物が溶解するのを可能にする。
【0044】
異なる製剤計画は、以下に記載のポリマー添加剤が、製剤からの活性化合物の放出、及び/又は目的組織上への堆積後の組成物の局所滞留時間に影響を及ぼし得るという事実に基づいている。したがって、そのような添加剤は、同様の作用部位で活性化合物の局所バイオアベイラビリティに影響を与える。
【0045】
好適な実施形態の1つにおいて、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、徐放及び局所的保持の延長をもたらすために、ポリマー添加剤と共に製剤化される。潜在的に適切なポリマーには、特に、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、ガラクトマンナン、デキストラン、寒天、グアーガム、トラガカント、及びそれらの混合物などの医薬として許容される水溶性又は水分散性ポリマーが含まれる。
【0046】
1種又はいく種類かのポリマー添加剤が本発明の液体組成物中に存在する場合、効率的なエアロゾル化を確実にするために、そのような組成物の動粘度への影響に注意を払わなければならない。そのため、動粘度は、約1.7ミリパスカルを超えるべきではない。一般に、そのような液体組成物中のポリマーの含有量を決定するために、ポリマーの正確なグレードおよび他の添加剤の存在について考慮すべきである。
【0047】
他の添加剤、すなわち、シクロデキストリンなどの錯化剤、カルシウムマグネシウム又はアルミニウムの塩などの二価又は多価金属塩、その塩を含むエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、又はリン脂質又はレシチンなどの両親媒性の薬剤は、例えばポリマー添加剤と同様に、活性化合物の放出を延長することができることが知られている。
【0048】
本発明の液体組成物は、さらなる医薬として許容される添加剤、例えば、無機塩などの浸透剤;有機又は無機の塩、酸及び塩基などのpHを調整及び/又は緩衝するための添加剤、スクロース及びラクトースなどの増量剤並びに凍結乾燥助剤、マンニトール、ソルビトール、及びキシリトールのような糖アルコール、その誘導体を含むビタミンEなどの安定化剤及び酸化防止剤、その誘導体を含むリコピン及びアスコルビン酸、リン脂質及びポリソルベートなどのイオン性及び非イオン性界面活性剤、味覚修飾剤、崩壊剤、着色剤、甘味料、及び/又は香味料を含み得る。
【0049】
好ましい実施形態のうちの1つにおいて、本明細書において上記で概説した好ましい範囲内の値に浸透圧を調節するために、塩化ナトリウムなどの1以上の浸透圧剤が該組成物中に配合される。より好ましい実施形態において、浸透圧剤は塩化ナトリウムである。
【0050】
十分に忍容性のあるエアロゾルを提供するために、本発明による調製は、体水分正常状態の(euhydric)pHに調整されるべきである。用語「体水分正常状態」は、薬学的要件と生理学的要件の間に違いがあり得、その結果、例えば、一方で調製物は貯蔵時に十分安定であるが、他方では、なお十分に許容性があることを確実にする妥協点が見いだされなければならないことを示唆する。好ましくは、pH値は、弱酸性〜中性領域、すなわち、約4〜約8である。一般に、弱酸性環境に向かう逸脱は、アルカリシフトよりも良好に忍容性がある。特に好ましいのは、pHが約4.5〜約7.5の範囲内である組成物である。
【0051】
本発明の組成物のpHを調整し、かつ/又はそのような組成物を緩衝するために、生理学的に許容される酸、塩基、塩、及びこれらの組み合わせが使用され得る。pH値を低下させるのに、かつ/又は緩衝系の酸性成分として適する添加剤は、硫酸及び塩酸などの強鉱酸である。リン酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、メチオニン、乳酸、酢酸、グルクロン酸などの中強度の無機酸及び有機酸、並びにナトリウム又はカリウムを有する水素リン酸などの酸性の塩は、同様に使用することができる。pH値を上昇させるのに適する添加剤及び/又は緩衝系の基本的な構成要素は、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、又は水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの他のアルカリ及びアルカリ土類の水酸化物並びに酸化物、又は水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウムなどの塩基性アンモニウム塩、又はリジンなどの塩基性アミノ酸、又は炭酸ナトリウム若しくは炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩、又はクエン酸ナトリウムなどのクエン酸である。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、pHを調整するための少なくとも1種類の添加剤を含む。より好ましい実施形態において、添加剤は水酸化ナトリウムである。
【0053】
主に医薬的な理由により、さらなる添加物によって、本発明の組成物の化学的安定性を示すことができる。水性調製物中で化学的に定義された活性化合物の最も一般的な分解反応は、特に、主に至適pH調整、及び酸化反応によって制限され得る加水分解反応を含む。活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)は、第1級アミノ基を有するリジン残基を含むので、後者は、例えば、酸化攻撃を受ける可能性がある。したがって、抗酸化剤、又は相乗作用物質と組み合わせた抗酸化剤の添加は、得策であるか、又は必要であり得る。
【0054】
抗酸化剤は、活性化合物の酸化を防止若しくは阻害することができる天然物質又は合成物質である。抗酸化剤は、主に、酸化可能なアジュバント及び/又は酢酸トコフェロール、リコペン、還元グルタチオン、カタラーゼ、過酸化物ジスムターゼなどの還元剤として作用する。さらに適切な抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム及び他の塩及びアスコルビン酸の誘導体、例えば、パルミチン酸アスコルビル、フマル酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩である。
【0055】
相乗作用物質は、酸化プロセスにおける反応物として直接作用しないが、間接的なメカニズムによって、例えば、酸化プロセスにおいて触媒作用することが知られている金属イオンの錯体形成によってそのようなプロセスに対抗するものである。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩及び誘導体、クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩は、キレート剤として作用し得るそのような相乗作用物質である。
【0056】
実施形態のうちの1つにおいて、本発明の組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤を含む。さらなる実施形態において、該組成物は、抗酸化剤とキレート剤の両方を含む。
【0057】
上述したように、本発明の組成物は、味に影響を与える添加剤を含んでよい。悪い味は、特に吸入投与において非常に不快で刺激性であり、非コンプライアンスになり、そのため、治療が失敗し得る。悪い味は、吸入中に口腔咽頭域に沈殿するエアロゾルのその部分を介して患者によって知覚される。エアロゾルの粒径は、わずかな画分の調製物が上記領域中に沈殿するように最適化することができる場合であっても(口腔、咽頭又は鼻の粘膜が標的組織でない限り、前記画分は治療のために失われる)、活性化合物の悪い味はもはや知覚されないような程度まで前記画分を減らすことは、現在ほとんど不可能である。したがって、組成物の味又は活性化合物の味のマスキングの改善が重要であり得る。
【0058】
該組成物の味を改善するために、ナトリウムサッカリン、アスパルテーム、界面活性剤などの糖、糖アルコール、塩、香味料、錯化剤、ポリマー、甘味料の群からの1種以上の潜在的に有用な添加剤が配合され得る。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1種の味覚修飾添加剤を含む。より好ましい実施形態において、前記味覚修飾添加剤は、サッカリンナトリウムである。
【0060】
別の実施形態において、該組成物は、さらなる活性化合物を含み、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)との組み合わせは、組み合わされた治療効果、又は、理想的には、相乗的な治療効果を有する。
【0061】
エアロゾル化用の液体製剤が、市場に適する製剤として機能するのに十分に長い貯蔵寿命を有し得ない場合には、代わりに固体組成物を提供することが有益であり得る。このような固体組成物は、一般に、液体組成物と比較して、より長い貯蔵寿命の可能性を有する。
【0062】
本発明の固体組成物は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又はその任意の医薬として許容される塩、及び少なくとも1種類の添加剤を含む。一般的には、既に上述したのと同じ添加剤を選択することができる。該固体組成物の製造プロセス/方法に応じて、1種以上の追加の添加剤が有用であり得る。該固体組成物が、例えば、そのような固体組成物を調製する好ましい方法の1つであるフリーズドライ(凍結乾燥)によって調製される場合、少なくとも1種類の増量剤及び/又は凍結乾燥助剤、例えば、スクロース、フルクトース、グルコース、トレハロースなどの糖、又はマンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルトなどの糖アルコールを配合することが有利であり得る。
【0063】
固体組成物はさらに、それが水性液体溶媒に溶解可能又は分散可能であることを特徴とする。本明細書及び特許請求の範囲において定義される用語「溶解可能」とは、固体組成物と水性液体溶媒を組み合わせて、溶液又はコロイド溶液を形成することができることを意味するが、用語「分散可能」は、液体分散物、特に、エマルジョン及びマイクロ懸濁液の形成を含むと解釈されるべきである。用語「水性」は、溶媒の主要な液体成分が水であることを意味する。水以外の溶媒及び補助溶媒は避けるべきである。別の実施形態において、水性液体溶媒は、少なくとも約80重量%の水を含む。さらに別の実施形態において、溶媒の液体成分の少なくとも約90重量%は水である。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどの非水性溶媒の配合を避けることができない場合には、添加剤は、注意深く、組成物のその生理学的許容性及び治療用途を考慮して選択すべきである。好ましい実施形態によれば、組成物は、非水性溶媒を実質的に含まない。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどの非水性溶媒の配合を避けることができない場合には、上記と同じ予防策を考慮しなければならない。別の好ましい実施形態によれば、固体組成物を溶解又は分散する水性溶媒は、非水性溶媒を実質的に含まない。
【0064】
固体組成物中の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容される塩のその量は、水性液体溶媒への溶解又は分散後に、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度に対応しなければならない。より好ましくは、上記活性化合物又は任意の医薬として許容されるその塩の量は、水性液体溶媒への溶解又は分散後に、それぞれ、約17mg/mL〜約95mg/mL、又は約35mg/mL〜約95mg/mL、又はより好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内の濃度に対応しなければならない。
【0065】
さらなる実施形態において、固体組成物中の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の対イオンは、酢酸イオンである。
【0066】
再構成のための本発明の固体組成物は、医薬キットの一部であり得る。そのようなキットは、好ましくは、無菌形態の固体組成物を含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語「無菌の」又は「無菌性」は、通常の薬学的意味に従って定義され、そのため、再生することができる細菌の非存在として理解すべきである。無菌性は、関連する薬局方に定義されている適切な試験を用いて決定される。現在の科学的基準に従って、10−6の無菌性保証レベル(SAL)、すなわち、生存可能な微生物が滅菌物品中に存在するのは1百万分の1未満の見込みの保証)は、無菌調製物に許容されるとみなされる。実際には、汚染率が高くなる可能性があり、かつ無菌的に製造される調製物についての汚染率は、約10−3に達し得る。実用上の理由から、絶対的な意味での無菌性を要求することは依然として困難である。したがって、本発明の組成物の無菌性は、前記組成物が無菌性に対する関連薬局方の要件を満たすように、本明細書及び特許請求の範囲において理解されるべきである。
【0067】
本発明の固体組成物は、エアロゾル化用に準備される液体組成物と同様の液体組成物を調製した後、それを乾燥させる、例えば、凍結乾燥することによって調製することができる。同様に、乾燥することによって固体組成物を調製する元の液体組成物は、例えば、再構成用の液体担体が1種以上の添加剤を含むように設計されている場合には、準備される液体組成物の固体成分を全て含まなくてもよいことを意味する。液体組成物のこれら2種類の成分の濃度が同一であることも必要ではない。本発明の固体組成物は、例えば、粉末形態の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩、必要に応じて少なくとも1種類の添加剤を調製した後、そのような粉末を残りの添加剤を含む粉末と混合し、最終的に粉末混合物を形成することによって調製することさえ可能である。
【0068】
別の態様において、本発明は、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルの調製並びに送達のための医薬キットであって、該分散液相は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する医薬キットを提供する。該キットはさらに、エアロゾル噴霧器及び約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲の濃度で活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む組成物を含むか、又は噴霧器及び液体組成物を調製するための固体医薬組成物を含み、該組成物は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物は、水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物は、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物又は任意の医薬として許容されるその塩を含むことを特徴とする。
【0069】
噴霧器は、液体をエアロゾル化することができる装置である。好ましくは、本発明のキットの噴霧器は、ジェット噴霧器、超音波噴霧器、圧電噴霧器、ジェット衝突噴霧器(jet collision nebulizer)、電気流体力学噴霧器、毛細管力噴霧器(capillary force nebulizer)、穿孔膜噴霧器(perforated membrane nebulizer)及び穿孔振動膜噴霧器(perforated vibrating membrane nebulizer)から選択される(M.Knoch,M.Keller,Expert Opin.Drug Deliv.,2005,2,377)。特に好ましいのは、圧電噴霧器、電気流体力学及び/又は穿孔膜型噴霧器、例えば、薬物送達プラットフォームMystic(商標)(Battelle Pharma [Battelle Memorial Institute]、米国)、eFlow(商標)(Pari GmbH、ドイツ)、Aeroneb(商標)、Aeroneb Pro(商標)、Aero Dose(商標)(Aerogen社、米国)である。噴霧器のこれらのタイプは、エアロゾルが気管支及び/又は肺に送達される場合に特に有用である。
【0070】
好ましくは、該噴霧器は、少なくとも約0.1mL/分の速度で液体組成物をエアロゾル化することができるように選択又は適合される。より好ましくは、該噴霧器は、実用的な目的のためにその密度が1g/mLに近い、すなわち、約0.95g/mL〜約1.05g/mLの範囲内であるそれらの液体組成物の(合計)出力速度(エアロゾルがエアロゾル発生器から放出される速度)が少なくとも約0.150mL/分又は少なくとも約150mg/分であり得る。さらなる実施形態において、該噴霧器の出力速度は、それぞれ約200mg/分〜約700mg/分、又は約250mg/分〜約650mg/分の範囲内である。
【0071】
該噴霧器はまた、好ましくは、少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の液体組成物をエアロゾル化及び放出することができるように選択又は適合させる。薬物又は活性化合物の(平均)送達速度は、患者が治療期間中に与えられると予想される薬物又は活性化合物の量を決定するパラメータである。さらなる実施形態において、該噴霧器は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の平均送達速度が、それぞれ約3mg/分〜約25mg/分の範囲、又は約5mg/分〜約18mg/分の範囲になるように選択又は適合される。
【0072】
さらに好みに応じて、該噴霧器は、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の充填用量の少なくとも約70重量%をエアロゾル化及び放出することができるように選択又は適合され、前記充填用量の画分は、約5μm以下の質量中央径を有する液滴から構成される。前記サイズの液滴は、大きな液滴とは対照的に、気管及び咽頭の代わりに肺に堆積する見込みが高いので、約5μm以下の液滴サイズを有する分散相の画分は、吸入性画分と呼ばれる場合が多い。より好ましくは、噴霧器に充填される用量の少なくとも約80重量%は、約5μm以下のサイズの液滴をエアロゾル化し、装置から放出される。eFlow(商標)薬物送達プラットフォーム(Pari GmbH、ドイツ)からの噴霧器などの振動穿孔膜設計に基づき、必要に応じてカスタマイズされた電子噴霧器を用いて選択されるそのような装置が最良であり得る。さらにより好ましい実施形態によれば、それぞれ充填用量の少なくとも約85重量%及び約90重量%が、約5μm以下のサイズの液滴にエアロゾル化され、放出される。
【0073】
別の態様において、本発明は、肺投与用のエアロゾルを調製及び送達する方法であって、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で含む液体医薬組成物を提供する工程、又は該液体組成物を調製するための固体医薬組成物を提供する工程であって、該組成物が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物が、水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物が、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含み、少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度で該活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)若しくは任意の医薬として許容されるその塩の前記液体医薬組成物をエアロゾル化することができる噴霧器を提供する工程であって、該噴霧器が、さらに、約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する分散液相を含むエアロゾルを放出するように適合される工程、並びに該液体医薬組成物をエアロゾル化するために噴霧器を作動させる工程を含む方法を提供する。
【0074】
液体か、最初は固体であるか若しくは最終的にエアロゾル化される本発明の組成物、又は該組成物を含む医薬キットは、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態、例えば、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在する肺の疾患若しくは病態を引き起こす肺の感染症などの肺疾患の予防、管理又は治療に使用することができる。
【0075】
本明細書で使用する用語「予防」/「予防すること」、例えば、予防的治療(preventive treatment)は、予防的治療(prophylactic treatment)を含む。予防用途では、本発明の医薬組成物又は医薬用エアロゾルは、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態を有するか、又は発症するリスクがあると疑われる対象に投与される。
【0076】
本明細書で使用する用語「管理」は、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の症状、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態と関連する特徴の出現までの時間を延長すること、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の症状の重症度の増加を遅延させることを意味する。さらに、本明細書で使用される「管理」は、疾患進行の逆転又は阻害を含む。対象における疾患の進行又は疾患の合併症の「阻害」は、対象における疾患の進行及び/若しくは疾患の合併症を予防又は低減することを意味する。
【0077】
本明細書で使用される用語「治療」/「治療する」は、(1)該状態、疾患若しくは病態に罹患しているか、又はなりやすいが、該状態、疾患若しくは病態の臨床症状又は準臨床症状をまだ経験していないか、若しくは示さない動物、特に哺乳類、及び特にヒトにおける状態、疾患又は病態の臨床的症状の出現の遅延;(2)状態若しくは病態の阻害(維持療法、その少なくとも1つの臨床症状又は亜臨床症状の場合には、例えば、疾患の発症若しくはその再発の阻止、低減又は遅延);並びに/又は(3)病態の緩和(すなわち、状態、疾患若しくは病態又はその臨床症状若しくは亜臨床症状の少なくとも1つの退行を引き起こすこと)を含む。治療される患者への利益は、統計学的に有意であるか、又は患者若しくは医師に少なくとも知覚される。しかしながら、薬剤が疾患を治療するために患者に投与される場合、結果は必ずしも効果的な治療になり得ないことを理解されたい。
【0078】
治療用途では、該医薬組成物は、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態に既に罹患している患者などの対象に、疾患若しくは病態の症状を治癒するか、又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で通常投与される。この使用に有効な量は、疾患の重症度及び経過、過去の治療、対象の健康状態及び薬物に対する応答、並びに治療する医師の判断に依存する。
【0079】
対象の状態が改善しない場合には、本発明の医薬組成物又は医薬用エアロゾルは、対象の疾患若しくは病態の症状を寛解するか、又はそうでなければ、制御若しくは制限するために、対象が生存している期間を含めて長期間にわたって、慢性的に投与することができる。
【0080】
対象の状態が改善しない場合には、該医薬組成物又は医薬用エアロゾルは、連続的に投与してよく、或いは、投与される薬物の用量を、一時的に減少させるか、又は一定期間、一時的に中断してよい(すなわち、「休薬期間」)。
【0081】
患者の病態の改善が起きたら、維持用量の本発明の医薬組成物又は医薬用エアロゾルが、必要に応じて、投与される。その後、投与量又は投与の頻度、又はその両方は、必要に応じて症状の関数として、改善された疾患が保持されるレベルまで低減される。
【0082】
したがって、別の態様において、本発明は、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するため、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための方法において使用するための、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGが(S)−2−アミノデカン酸であり、DProがD−プロリンである]若しくは任意の医薬として許容されるその塩と、場合により、1以上の医薬として許容される希釈剤、添加剤又は担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0083】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための薬剤の製造のための、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の治療のための薬剤の製造のための、本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0084】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の治療のための、本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0085】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の治療のための方法であって、本明細書に記載の医薬組成物を前記対象に投与すること、例えば、本明細書に記載の治療有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法を提供する。
【0086】
本明細書で使用する用語「医薬として許容される希釈剤、添加剤又は担体」は、過度の有害な副作用(毒性、刺激、およびアレルギー応答など)なしに、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び/又は動物での使用に適する担体又は添加剤又はまたは希釈剤を指す。それは、対象に本発明の化合物を送達するための、医薬として許容される溶媒、懸濁剤又はまたはビヒクルであり得る。
【0087】
治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。いくつかの実施形態において、治療有効量の活性化合物又はまたはその医薬として許容される塩は、(i)対象の痰中の活性エラスターゼの濃度を低減することができ、ii)対象の痰中のヒト好中球エラスターゼ活性の活性を阻害することができる。様々な実施形態において、該量は、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の症状のうちの1以上を寛解、緩和、軽減、及び/又は遅延するのに十分である。
【0088】
治療有効量は、対象、治療される疾患若しくは病態、対象の体重及び年齢、疾患若しくは病態の重症度、及び投与様式に応じて変化してよく、当業者によって容易に決定され得る。
【0089】
一実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在する肺の疾患又は病態を引き起こす肺の感染症などの肺疾患である。
【0090】
好ましい実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、肺疾患であり、該肺疾患は、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)又は嚢胞性線維症(CF)である。
【0091】
より好ましい実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、肺疾患であり、該肺疾患は嚢胞性線維症(CF)である。
【0092】
一実施形態において、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルとして対象に投与され、該分散液相は、
(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり;DProはD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み;
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し;および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する。
【0093】
好ましくは、該エアロゾルは、少なくとも約0.1mL/分の速度で分散液相がエアロゾル発生器から放出されるものである。
【0094】
同じく好ましくは、該エアロゾルは、少なくとも約0.8mg/分の平均送達速度で、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩がエアロゾル発生器から放出されるものである。
【0095】
該エアロゾルは、好ましくは、上記の好ましい実施形態に記載の速度及び平均送達速度でエアロゾル発生器から放出されるものである。
【0096】
一実施形態において、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物は、本明細書に記載のエアロゾルを調製するための液体医薬組成物であり、該液体医薬組成物は、それぞれ、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲、好ましくは、約17mg/mL〜約95mg/mLの範囲、又は約35mg/mL〜約95mg/mL、より好ましくは、約70mg/mL〜約95mg/mLの範囲内の濃度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む。
【0097】
別の態様において、本発明は、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、またはそれに起因する肺の疾患または病態の予防、管理または治療のための方法において使用するための、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルであって、該分散液相は、(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり;DProはD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み;
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し;および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する、
医薬用エアロゾルを提供する。
【0098】
該エアロゾルは、好ましくは、上記の好ましい実施形態に記載の速度及び平均送達速度でエアロゾル発生器から放出されるものである。
【0099】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための医薬の製造のための、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための医薬の製造のための、本明細書に記載の医薬用エアロゾルの使用が提供される。
【0100】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための、本明細書に記載の医薬用エアロゾルの使用が提供される。
【0101】
また、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法、好ましくは、対象におけるヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための方法であって、本明細書に記載の医薬用エアロゾルを前記対象に投与すること、例えば、治療有効量の本明細書に記載の医薬用エアロゾルを、前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0102】
一実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、α−1アンチトリプシン欠損症(AATD)、嚢胞性線維症(CF)、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)、若しくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又はヒト好中球エラスターゼ活性が介在する肺の疾患又は病態を引き起こす肺の感染症などの肺疾患である。
【0103】
好ましい実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、肺疾患であり、該肺疾患は、非嚢胞性線維症気管支拡張症(NCFB)又は嚢胞性線維症(CF)である。
【0104】
より好ましい実施形態において、ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態は、肺疾患であり、該肺疾患は嚢胞性線維症(CF)である。
【0105】
対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物の対イオンは、上記活性化合物について記載したとおりであり、好ましくは酢酸イオンである。
【0106】
対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルは、通常、対象に経口吸入又は気管内に投与され、好ましくは、経口吸入によって投与される。
【0107】
本明細書に提供される方法における、医薬組成物又は医薬用エアロゾルに含まれる活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の投薬計画は、例えば、適応症、投与経路、及び病態の重症度に依存して変化し得る。投与経路に応じて、適切な用量は、体重、体表面積、又は臓器サイズに従って計算することができる。考慮され得るさらなる因子には、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、及び療法に対する耐性/応答が含まれる。量、例えば、治療有効量の活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又はその医薬として許容される塩は、所望の治療エンドポイントを達成するために、単回用量又は複数回用量で提供され得る。
【0108】
投薬の頻度は、投与される活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又はその医薬として許容される塩の薬物動態パラメータ、投与経路、及び治療される特定の疾患に依存する。投与の用量及び頻度はまた、薬物動態及び薬力学、並びに毒性及び治療効率データに依存し得る。例えば、活性化合物又はその医薬として許容される塩に関する薬物動態学的及び薬力学的情報は、前臨床インビトロ及びインビボ試験を通して収集され、後に臨床試験の過程でヒトにおいて確認することができる。そのため、本明細書で提供される方法において使用される活性化合物又はその医薬として許容される塩についての治療有効用量は、生化学及び/又は細胞ベースのアッセイから最初に推定することができる。その後、投与量は、望ましい循環濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて製剤化することができる。ヒトでの試験が行われるので、様々な疾患及び病態のための適切な投与量レベル及び治療期間に関するさらなる情報が明らかになるであろう。
【0109】
活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又はその医薬として許容される塩の毒性及び治療上の有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性の影響と治療効果の間の用量比は、典型的には、LD50/ED50比として表される「治療指数」である。大きな治療指数を示す、すなわち、毒性用量が有効用量よりも実質的に高い化合物が好ましい。このような細胞培養アッセイ及びさらなる動物研究から得られるデータは、ヒトで使用するための用量の範囲で製剤化するのに使用することができる。このような化合物の用量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲である。
【0110】
例示的な治療計画は、1日1回、1日2回、1日3回、毎日、2日ごとに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに、週2回、週1回の投与を伴う。該活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、通常、複数の機会に投与される。単回投与の間隔は、例えば、1日未満、1日、2日、3日、4日、5日、6日又は1週間であり得る。本発明の組み合わせは、連続的で中断されない治療として与えられ得る。本発明の組み合わせはまた、対象が休薬又は非治療期間によって中断される治療サイクル(投与サイクル)を受ける計画で与えられ得る。
【0111】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約0.1〜約10000mg/日の用量で該対象に投与される。
【0112】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約0.001〜約100mg/kgの用量で該対象に投与される。
【0113】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約5〜約1000mg/日の用量で該対象に投与される。
【0114】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約20〜約960mg/日の用量で該対象に投与される。
【0115】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約80〜約320mg/日の用量で該対象に投与される。
【0116】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約20、約60、約120、約240、約480又は約960mg/日の用量で該対象に投与される。
【0117】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための医薬組成物又は医薬用エアロゾルの活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩は、約80、約160、又は約320mg/日の用量で該対象に投与される。
【0118】
別の態様において、本発明は、分散液相及び連続気相を含む肺投与用の医薬用エアロゾルの調製並びに送達のためのキットであって、該分散液相が
(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGは(S)−2−アミノデカン酸であり;DProはD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み;
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し;および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有し;
該キットが、
噴霧器と、約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲の濃度の活性化合物若しくは任意の医薬として許容されるその塩を含む液体組成物を含むか、又は噴霧器と、液体組成物を調製するための固体医薬組成物を含み、組成物が、活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含み、該固体組成物が水性液体溶媒中に溶解可能又は分散可能であり、該液体組成物が、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法において使用するための活性化合物又は任意の医薬として許容されるその塩を約4mg/mL〜約100mg/mLの範囲内の濃度で含む、
キットを提供する。
【0119】
また、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための医薬の製造のための、好ましくは、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための医薬の製造のための本明細書に記載のキットの使用が提供される。
【0120】
また、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための、好ましくは、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療のための本明細書に記載のキットの使用が提供される。
【0121】
また、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法、好ましくは、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態の治療の方法であって、前記対象に本明細書に記載のキットの医薬用エアロゾルを投与すること、例えば、前記対象に本明細書に記載のキットの治療有効量の医薬用エアロゾル投与することを含む方法が提供される。
【0122】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法で使用するためのキットの噴霧器は、ジェット噴霧器、超音波噴霧器、圧電噴霧器、ジェット衝突噴霧器、電気流体力学噴霧器、毛細管力噴霧器、穿孔膜噴霧器及び穿孔振動膜噴霧器から選択される。
【0123】
一実施形態において、対象においてヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患若しくは病態の予防、管理又は治療のための方法で使用するためのキットの噴霧器は、少なくとも約0.8mg/分の速度で活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の液体組成物をエアロゾル化することができるように適合されている。
【0124】
一実施形態において、該キットに含まれる活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の充填用量の少なくとも約70重量%は、約5μm以下の質量中央径を有する液滴から構成される。
【0125】
一実施形態において、該キットに含まれる活性化合物の対イオンは、上記活性化合物について記載されているとおりであり、好ましくは酢酸イオンである。
【0126】
別の態様において、本発明は、
活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)[ここで、OctGが(S)−2−アミノデカン酸であり;DProがD−プロリンである]又は任意の医薬として許容されるその塩;および
ヒト好中球エラスターゼ活性が介在するか、若しくはそれに起因する肺の疾患又は病態について、該活性化合物を用いて対象を治療するための説明書を含む添付文書
を含むキットを提供する。
【0127】
一実施形態において、該キットは、分散液相及び連続気相を含む肺投与用のエアロゾルとして活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含み、
該分散液相は、
(a)活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩を含む水性液滴を含み、
(b)約1.5μm〜約5μmの質量中央径を有し、および
(c)約1.2〜約1.7の幾何標準偏差を有する液滴サイズ分布を有する。
【0128】
一実施形態において、本キットに含まれる活性化合物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)又は任意の医薬として許容されるその塩の充填用量の少なくとも約70重量%は、約5μm以下の質量中央径を有する液滴から構成される。
【0129】
一実施形態において、本キットに含まれる活性化合物の対イオンは、上記活性化合物について記載されているとおりであり、好ましくは酢酸イオンである。
【0130】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0131】
実施例1:
93.03%(以下の計算を参照されたい)の正味のペプチド含有量に基づき、230.88gの正味のペプチドに対応する248.18gのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を、0.5%(w/w)の塩化ナトリウム水溶液に溶解した。この溶液を、154gの1M 水酸化ナトリウムでpH5.5に調整し、最後に、0.5%(w/w)の塩化ナトリウム水溶液を添加して2957gの総重量とした。2×0.22μmの孔径フィルターで滅菌濾過した後、生成物を、フルオロポリマーコーティングしたブロモブチルゴム栓とはぎ取り式の無地のアルミニウムオーバーシールを備えた欧州薬局方1型ガラスバイアルに詰めた。溶液の強度は80mg/mLであった。
【0132】
薬物物質(活性化合物)の正味のペプチド含有量の計算:
正味のペプチド含有量[%]=[(100−不純物[%]/100)×(100−含水率[%]/100)×(100−残留溶媒[%]/100)×(100−残留TFA/100)×遊離塩[%]/100]×100=[(100−0.7/100)×(100−2.5/100)×(100−0.013/100)×96.1/100]×100=93.03%。
【0133】
実施例2:
0.6%(w/w)の塩化ナトリウム水溶液を使用したことを除き、実施例1に記載したとおりに、実施例2の製剤を調製した。
【0134】
実施例3:
95%純度に補正した4.2gのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を、40mLの0.6%(w/w)塩化ナトリウム水溶液に溶解した。この溶液を、1M 水酸化ナトリウムでpH5.5に調整し、最後に、0.6%(w/w)の塩化ナトリウム溶液を加えて総体積50mLとした。0.2μmのPES(ポリエーテルスルホン)シリンジフィルターを用いて無菌条件下で滅菌濾過(層流)した後、製剤を、滅菌テフロンコーティングしたゴム栓を有する無菌の5mLのバイアルに等分し、それぞれ5±3℃及び室温(25±2℃)で冷蔵保存した。溶液の強度は80mg/mLであった。12週間、この溶液を安定性について観察した。eFlow(登録商標)30 XL電子噴霧器(Pari Pharma GmbH,Starnberg,ドイツ)によって調製し、送達したエアロゾルの物理化学的パラメータ(表1)及びエアロゾル特性(表2)を、観察期間の開始時及び終了時に決定した。エアロゾル特性の物理化学的特徴付け及び決定(Malvern Mastersizer X, V.2.15 [Malvern Instruments GmbH,Herrenberg,ドイツ]でのレーザー回折)は、薬局方に準拠した方法に従ってPari Pharma GmbH,BU Pharma,Grafeling、ドイツが行った。
【0135】
表1:実施例3の製剤の物理化学的特性
【表1】
【0136】
表2:三重に測定した実施例3の製剤のエアロゾル特性
【表2】
【0137】
それぞれ5℃及び25℃で、12週間の貯蔵の間に、質量中央径、幾何標準偏差及び吸入性画分(5μm未満)において有意な(P=95%、n=3)変化は観察されなかった。5℃の試料の総出力速度のみがわずかに低下した。
【0138】
実施例4:
95%純度に補正した1.05gのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を、0.9%(w/w)塩化ナトリウム水溶液に溶解し、総体積を10mLにした。溶液の強度は100mg/mLであった。eFlow(登録商標)30 XL電子噴霧器によって調製し、送達したエアロゾルの物理化学的パラメータ(表3)及びエアロゾル特性(表4)は、上述したとおり、Pari Pharma GmbH,BU Pharma,Grafeling、ドイツによって測定された。
【0139】
表3:実施例4の製剤の物理化学的特性
【表3】
【0140】
表4:三重に測定した実施例4の製剤のエアロゾル特性
【表4】
【0141】
実施例5:
95%純度に補正した1.05gのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を、0.9%(w/w)塩化ナトリウム水溶液に溶解し、総体積を10mLにした。その後、0.02%(w/w)のポリソルベート80を添加した。溶液の強度は100mg/mLであった。eFlow(登録商標)30 XL電子噴霧器によって調製し、送達したエアロゾルの物理化学的パラメータ(表5)及びエアロゾル特性(表6)は、上述したとおりに、Pari Pharma GmbH,BU Pharma,Grafeling、ドイツによって測定された。
【0142】
表5:実施例5の製剤の物理化学的特性
【表5】
【0143】
表6:三重に決定した実施例5の製剤のエアロゾル特性
【表6】
【0144】
実施例6a〜e:
93.03%の正味のペプチド含有量に基づき(以下の計算を参照されたい)、5.023gの正味のペプチドに対応する5.4gのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を、0.5%(w/w)の塩化ナトリウム水溶液に溶解した。この溶液を、1M 水酸化ナトリウムでpH5.5に調整し、最後に、0.5%(w/w)の塩化ナトリウム溶液を添加し、総体積を71.8mLとした。溶液の強度は70mg/mLであった(実施例6a)。
【0145】
35mg/mL(実施例6b)、17.4mg/mL(実施例6c)、8.8mg/mL(実施例6d)及び4.3mg/mL(実施例6e)の強度を有する希釈溶液を、プラセボ(0.5%[w/w]塩化ナトリウム水溶液)を用いて、表7にしたがって調製した。
【0146】
表7:実施例6b、6c、6d及び6eの希釈液の調製スキーム
【表7】
【0147】
実施例6f:
実施例6fの製剤を、実施例1に記載の手順に従って調製した。溶液の強度は80mg/mLであった。
【0148】
実施例6a、6c、6e及び6fの送達速度(平均)並びに総送達用量の決定
送達速度及び総送達用量の測定は、70mg/mL(実施例6a)、17.4mg/mL(実施例6c)及び4.3mg/mL(実施例6e)の製剤については三重で、及び80mg/mL(実施例6f)の製剤については五重で、Pari eFlow(登録商標)XL 30装置(Pari Pharma,Starnberg,ドイツ)及びシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を含む製剤の前記測定に適する薬局方に準拠した方法を用いてIntertek Melbourn Scientific(Melbourn,英国)によって実施された。結果(平均値)を表8にまとめる。
【0149】
表8:実施例6a、6c、6e及び6fの送達速度並びに総送達用量
【表8】
【0150】
実施例6a、6c、6e及び6fの空気力学的粒径分布(APSD)の測定
APSDの測定は、70mg/mL(実施例6a)、17.4mg/mL(実施例6c)及び4.3mg/mL(実施例6e)の製剤については三重で、及び80mg/mL(実施例6f)の製剤については五重で、Next Generation Impactor(NGI)及びPari eFlow(登録商標)XL 30装置(Pari Pharma,Starnberg,ドイツ)及びシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を含む製剤のAPSDに適する薬局方に準拠した方法を用いて、Intertek Melbourn Scientific(Melbourn,英国)により実施された。結果(平均値)を表9にまとめる。
【0151】
表9:実施例6a、6c、6e及び6fの空気力学的粒径分布(APSD)の測定
【表9】
【0152】
上記の結果から、薬物合計濃度の低下の影響を除いて、提示される範囲内では、異なる強度の溶液の性能における有意な変化は見られなかった。
【0153】
ラットにおけるGLPに準拠した28日間の吸入毒性試験
チャールズ・リバー・ラボラトリーズ前臨床サービス(Charles River Laboratories Preclinical Services)(Tranent,英国エディンバラ)が実施したGLPに準拠した28日間のラットにおける吸入毒性試験において、実施例2に記載の製剤及びその希釈液並びにビヒクルを、28日間、1日当たり100分間、Pari eFlow(登録商標)XL 30噴霧器装置(Pari Pharma,Starnberg,ドイツ)を用いて投与し、その後2週間の回復期間を設けた。ラットを、ビヒクル(医薬グレードの1M HClでpH5.5に調整した0.6%[w/w]塩化ナトリウム水溶液)又は、それぞれ、0、11、53及び119mg/kg/日の薬物用量を達成した全体平均群に対応する0.15、0.73及び1.63mg/Lのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)を含有するエアロゾルで処置した。10匹の動物を主な毒性試験に使用し、さらに回復期のために5匹の動物を使用した。評価パラメータには、臨床徴候、体重、食物消費量、眼科検査、臨床病理学、剖検所見、臓器重量及び病理組織学的検査が含まれた。ビヒクル対照群と比較して、体重増加のわずかな減少が、119mg/kg/日の雄で観察された。これは、処置された動物における食物消費の減少と関連していた。28日〜42日の間の回復期間中に、体重増加の良好な回復が認められた。臨床徴候又は眼の所見は認められなかった。
【0154】
毒物学的に関連すると考えられた臨床病理学(血液学、凝固、臨床化学及び尿検査の調査)での所見は認められなかった。薬物での処置後の臓器重量又は全体所見において治療に関連した変化はなかった。喉頭の組織病理学によって、全群において異形成の細胞異型のない病巣の最小限の扁平上皮化生が明らかになった。これらの変化は、回復期間中に消散し、軽度の刺激に対する非有害な適応応答と考えられた。肺の組織病理学により、全群において最小から中程度の多病巣肺胞マクロファージの蓄積が明らかになった。マクロファージの蓄積のこのわずかな増加は、肺のクリアランス容量を超える高濃度の物質の吸入に非特異的な反応と考えられた。結論として、体重増加及び食物摂取及び喉頭における組織病理学的所見の変化は非有害とみなされたため、無有害作用量(NOAEL)は119mg/kg/日であった。
【0155】
サルにおけるGLPに準拠した28日間の吸入毒性試験
チャールズ・リバー・ラボラトリーズ前臨床サービス(Charles River Laboratories Preclinical Services)(Tranent,英国エディンバラ)が実施したGLPに準拠した28日間のカニクイザルにおける吸入毒性試験において、実施例2に記載の製剤及びその希釈液並びにビヒクルを、28日間、1日当たり60分間、口腔鼻吸入マスクを有するPari eFlow(登録商標)XL 30噴霧器装置(Pari Pharma,Starnberg,ドイツ)を用いて投与し、その後2週間の回復期間を設けた。サルを、ビヒクル(医薬グレードの1M HClでpH5.5に調整した0.6%[w/w]塩化ナトリウム水溶液)又はそれぞれ0、11.2、30.1及び112mg/kg/日の薬物用量を達成した推定平均に対応するエアロゾル化したシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩で処置した。回復を含め毒性試験の各用量について、合計5匹の雄及び5匹の雌を使用した。評価パラメータには、臨床徴候、体重、心電図、眼科検査、臨床病理学、血漿中の毒物動態パラメータ、肉眼剖検所見、臓器重量及び組織病理学的検査が含まれた。薬物処置に起因する体重変化、臨床徴候、眼科若しくは心電図の所見又は尿パラメータの変化はなかった。血液学及び臨床病理学において、いくつかの小さな有意でない毒性変化が観察された。これらの所見はいずれも、応答の程度が小さく、ほとんどの所見が一方の性別に限定され、かつ/又は両方の性別が影響を受けた場合には退行のエビデンスを示したので、毒性学的に重要とは考えられなかった。肉眼所見には、112mg/kg/日で、雄で肺重量の増加、及び肺のまだらの外観及び気管気管支リンパ節の拡大が含まれた。組織病理学的所見は、肺胞マクロファージ、血管周囲/細気管支周囲の浸潤物、及び肺における顆粒好酸球沈着物の数の増加、及び気管気管支リンパ節におけるリンパ過形成を含め、全ての薬物用量レベルで観察されたが、完全な回復を示した。これらの所見は、回復中に完全な可逆性を実証し、正常な肺クリアランス容量を超える(特に112/kg/日)物質の吸入によるものと考えられた。結論として、上記の変化は全て非有害と考えられたので、本試験でのNOAELは112mg/kg/日であった。
【0156】
経口吸入される単回用量のシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩製剤の安全性及び忍容性を調査するための健常対象におけるファーストインマン試験
Inamed GmbH(ドイツ,ガウティング)が行った、48人(6つの用量群についてそれぞれ8人)の健常者における吸入単回用量のこの無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群(用量レベル当たり)用量漸増試験では、実施例1に記載の製剤及びその希釈液並びにプラセボ(医薬グレードの1M HClでpH5.5に調整した0.5%[w/w]塩化ナトリウム水溶液)の制御された経口吸入を、Pari eFlow(登録商標)XL 30噴霧器装置(Pari Pharma,Starnberg,ドイツ)により行った。シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)(活性化合物)の用量レベル及び対応する濃度を表10にまとめる。
【0157】
表10
【表10】
【0158】
プラセボ噴霧器溶液の容量は、特定用量レベルでの活性化合物の容量と対応するようにした。吸入期間は、噴霧器溶液の全量に応じて、数分〜約1時間の範囲であった。有害事象は、国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)の現在のバージョンに応じて集計し、まとめた。
【0159】
安全性及び忍容性の結果
試験期間中、死亡、重篤な有害事象(AE)及び他の有意なAEはなかった。合計27のAEのうち、13対象において24件の治療中に発生した有害事象(TEAE)が記録された(27.1%)。これらの対象は全て活性化合物を投与していた。プラセボ溶液を吸入した対象については、AEは報告されなかった。AEの数並びにそれらの程度及び試験薬剤との因果関係について、他の用量レベルと比較した場合、AEのより高い総数及び関連するAEが、最高用量の活性化合物を吸入する群(960mg;用量群6)から報告された。報告されたAE及び症状の大部分は、「咳」、「気道炎症」、増加した粘液産生又は最初の1秒間における強制呼気容量(FEV)の一過性の減少等、呼吸器系に関連するものであった。特に活性化合物のより高い用量を吸入する群における、呼吸器症状及び呼吸AEのより高い発生率は、おそらく長い吸入時間に関連している可能性がある。これらのAEは、必ずしも、実施例1の製剤及びその希釈液自体には関連していない可能性があり、手技上のAEかもしれない。局所忍容性に関しては、3件の吸入関連有害事象(「咳」)があった。全体的な忍容性は対象の大多数(97.9%)について「非常に良い」又は「良い」と判断された。本試験をとおして、臨床検査値の大部分は、それぞれの基準範囲内に収まった。身体検査、バイタルサインの測定、心電図(ECG)記録及び肺機能の結果の個々の結果のほとんどは、一般的に受け入れられている臨床検査基準の範囲内であった。測定した安全性パラメータに対する活性化合物の時間依存の明かな影響はなかった。異なる用量群の間で特に差はなかった。
【0160】
ファーストインマン試験の上記の結果は、実施例1の製剤及びその希釈液が、広範囲の濃度でのエアロゾル化に非常に適しており、高濃度(80mg/mL)でもヒトでの吸入投与に適用可能であることを示している。
【0161】
ラットにおける好中球活性化のインビボモデルにおけるシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の吸入投与の効果
本試験(Envigo CRS Limited,Alconbury,イギリスハンティンドンによって行われた)の目的は、ラットにおける好中球活性化のLPS/fMLPモデルにおいて、吸入投与したシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の効果を評価することであった。
【0162】
製剤の調製
試験動物群1用の製剤(ビヒクル)は、1M HClでpH5.5に調整し、0.2μmフィルターで濾過した0.5%(w/v)の生理食塩水であった。
【0163】
試験動物群2〜4用の製剤を以下のように調製した:
適切な量のシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩を秤量し、適切な量のpH5.5の0.5%(w/v)生理食塩水を添加して、83.28mg/mLの処方濃度とした。最終溶液のpHを1M NaOHで5.5に調整した。
83.28mg/mLのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の適切な量を、適切な量のビヒクルに添加して15.62mg/mLの製剤を得た。
最後に、15.62mg/mLのシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の適切な量を、適切な量のビヒクルに添加して5.21mg/mLの製剤を得た。次いで、これら3つの製剤溶液(83.28mg/mL、15.62mg/mL、5.21mg/mL)を、0.2μmフィルターで濾過した。
【0164】
これらの製剤は、投与の1日前に調製し、使用の日まで暗所で2〜8℃にて保存し、使用日にそれらを冷蔵庫から取り出して室温(25℃以下)で維持し、少なくとも投与前の1時間穏やかに振盪した。
【0165】
1.041であるシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩/遊離塩基の比を考慮して、試験動物群1〜4用に調製した製剤の濃度を表11にまとめる。すなわち、これらの製剤は、実施例1に記載の製剤及びその希釈液に相当する。
【0166】
表11
【表11】
【0167】
吸入治療コホートについての手順
動物に、エアロゾル化LPS(リポ多糖、1mg/mL)を30分間負荷した。LPS負荷の終了後約3時間の時点で、動物にビヒクル又は上記のシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩製剤のいずれかを、eFlow(登録商標)30 XL電子噴霧器(Pari Pharma GmbH,Starnberg,ドイツ;鼻のみに暴露)を用いて、30分かけて吸入により投与した(群1〜4)。LPS負荷の完了の約4時間後に、全ての動物に、一過的な気体麻酔下、気管内経路を介して用量体積1mL/kgのfMLP(N−ホルミル−Met−Leu−Phe、5mg/kg)を投与した。fMLPの投与後約2時間の時点で、動物を死亡させ、気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、炎症性細胞浸潤及び好中球エラスターゼ活性を評価した。吸入治療コホートについての手順を表12にまとめる。
【0168】
表12
【表12】
【0169】
fMLPの用量及び時点を公開データ(例えば、S.Yasui,A.Nagai,K.Aoshiba et al.,Eur.Respir.J.,1995,8,1293;T.Yang,J.Zhang,K.Sun et al.,Inflamm.Res.2012,61,563;R.Corteling,D.Wyss,A.Trifilieff,BMC Pharmacology,2002,2,1を参照されたい)及びEnvigo CRS株式会社での経験に基づいて選択した。薬物の用量選択は、Envigo CRS株式会社での以前の気管内の研究に基づいた。この以前の研究では、薬物の0.03〜3mg/kgの気管内用量は、この動物モデルにおいて有効であることが見出された。
【0170】
試験項目に関連する臨床徴候は、投与期間から試験終了時の間は観察されなかった。群1(ビヒクル)の2匹は、深い麻酔により、fMLPの投与直後に死亡した。
【0171】
気管支肺胞洗浄(BAL)
死の確認後に、動物の気管を単離し、気管カニューレを挿入し、所定の位置に固定し、気道を3mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。洗浄を2回繰り返し、合計で、3mLのPBSの3つのロットを使用した。細胞を含有する第1の洗浄アリコートを、湿潤氷上の15mLの遠心チューブ(チューブA)に入れた。第2の2つの洗浄液からプールしたBAL液を、第2のチューブ(チューブB)に入れた。遠心分離するまで、チューブA及びBを湿潤氷上に置いた。遠心分離は、約4℃で、10分間、800×gで行い、上清を回収した。好中球エラスターゼ分析まで、上清を約80℃で保存した。
【0172】
好中球エラスターゼ活性
BAL上清の2つのアリコートを、以下のように好中球エラスターゼ活性について分析した:アリコート1からの120μLのBAL上清を96ウェルプレート(コーニング#3650)に移した。並行して、市販のヒト好中球エラスターゼ(hNE、Serva番号20927.01)の1.6〜0.025mU/ウェルの範囲の希釈液を調製した。各hNE希釈液120μLを二重に96ウェルプレートに移した。酵素反応を開始し、500μΜの最終濃度で80μLの蛍光ペプチド基質(MeOSuc−Ala−Ala−Pro−val−AMC)を各ウェルに添加し、プレートを、事前に37℃に温めておいたvictor2v蛍光リーダーに直ちに配置した。蛍光(λexc.485nm、λem.535nm)を37℃で2時間記録した。全ての試料の酵素初期速度(RFU/分)を計算し、ヒト好中球エラスターゼ標準範囲のプロット(hNE希釈液のRFU/分対mU/mL)から得られた線形回帰式を用いて、mU/mLのhNE当量に変換した。アリコート2からのBAL上清を用いてアッセイを繰り返した。報告された好中球エラスターゼデータは、両方のアリコートからの好中球エラスターゼ活性の平均値である。BAL液中の好中球エラスターゼ活性を表13及び図1及び2に示す。
【0173】
表13
【表13】
【0174】
LPS負荷の3時間後で、fMLP負荷の1時間前に、吸入経路によって0.3、3及び30mg/kgの用量で投与した薬物シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)は、LPS負荷の6時間後に採取したBAL液中の好中球エラスターゼ活性を有意に阻害した。
【0175】
嚢胞性線維症患者におけるシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の経口吸入単回投与の安全性、忍容性及び薬物動態を調べるフェーズ1b試験
この無作為化二重盲検、プラセボ対照、並行群(用量レベル当たり)用量漸増試験において、嚢胞性線維症(CF)患者に吸入により投与したシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の酢酸塩の単一漸増投与(SAD)の安全性及び忍容性を調べた。さらに、血漿及び痰中の単一漸増投与後の薬物の薬物動態及び痰中の好中球エラスターゼ活性に対するその薬力学的効果を評価した。
【0176】
治療
Inamed GmbH,Gauting、ドイツが行ったこの試験では、全ての選択基準を満たし、除外基準も存在しない嚢胞性線維症の24人の対象が含まれており、無作為化治療を受けた。彼らを、各8人の対象の3つの用量群にグループ化した。6人の対象に、実施例1に記載の製剤及びその希釈液を与え、2人の対象にプラセボ(医薬品グレードの1M HClでpH5.5に調整した0.5%[w/w]の塩化ナトリウム水溶液)を与えた。上記製剤及びプラセボの経口吸入を、Pari eFlow(登録商標)XL 30噴霧器装置(Pari Pharma GmbH,Starnberg,ドイツ)によって行った。シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)(活性化合物)の用量レベル及び対応する濃度を表14にまとめる。
【0177】
表14
【表14】
【0178】
プラセボ噴霧器溶液の量は、特定の用量レベルの活性化合物のそれに相当した。吸入時間は7〜20分であると推定された。有害事象は、国際医薬用語集の現在のバージョンに応じて集計し、まとめた。
【0179】
安全性及び忍容性の結果
試験期間中に、死亡、重篤な有害事象(AE)及び他の顕著なAEは生じなかった。吸入に関連した局所AEはなかった。24人の対象はいずれも、AEが原因で早めに試験が終了することはなかった。
【0180】
合計6のAEは全て治療下で発現した有害事象(TEAE)であり、6人の対象において記録された。最も頻繁に報告された事項は、「めまい」及び「頭痛」で、それぞれ2つの事象があった。6つのTEAEは全て、活性化合物に関連していないとされた。TEAEはいずれも重篤と評価されなかった。AE期間は一過性であった。全6つのAEは、後遺症もなく解消した。AEの数並びにそれらの強度及び試験薬剤との因果関係について、用量レベルの間には明白な違いは明らかにならなかった。本試験を通して、臨床検査値だけでなく、ECG及びバイタルサインの結果の大半は、それぞれの基準範囲内にとどまった。逸脱所見は、臨床的に関連せず、通常は、CF患者での試験で観察された偏差の程度と一致していた。肺機能検査の結果の大部分は、CF患者について予想されるとおりであった。
【0181】
薬物動態学的評価
以下の薬物動態パラメータを、シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)(活性化合物)について評価した。
血漿:
主要変数として血漿中の活性化合物のAUC0−∞、AUC0−∞/D、Cmax、Cmax/D及び二次変数として血漿中の活性化合物のtmax、T1/2、λ、AUC0−tlast
【0182】
痰:
痰中の活性化合物の濃度を計算し、Cmax及びAUC0−tlastを決定した。
【0183】
血漿試料のサンプリング及び試料処理
活性化合物の血漿濃度を決定するための血液試料を以下の時点で採取した:
1日目は、投与前、投与後(吸入開始後)10分、及び0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、15時間、及び並びに2日目は投与後24時間。
【0184】
試料を、閉じたK3−EDTA血漿サンプリングチューブ(Monovette(登録商標) Sarstedt、ドイツ)に収集した。個々の試験試料について試料取扱手順に許容される時間間隔、すなわち、試料採取から試料の遠心分離までの時間は、60分を超えてはならず、遠心分離の終了から試料凍結までの時間も60分を超えてはならなかった。
【0185】
試料を、15分間、2200×gで、約4℃(±2℃)で遠心分離した。次いで、得られた血漿上清を、2本のポリプロピレンチューブに移し(少なくとも1mLの第1のアリコート及びバックアップ)、20℃以下で、直立位置で凍結した。試料を、試料採取の翌日から生物分析場所(Pharmacelsus GmbH,Saarbrucken、ドイツ)に出荷する(温度ロギング装置と共にドライアイス)まで、20℃以下の連続温度制御下の冷凍庫内で保存した。
【0186】
痰試料のサンプリング及び試料処理
PK評価のための自発痰試料を、以下の時間間隔/期間中に収集した:
1日目の、対象が試験場所到着後できるだけ早く(ブランクPK)、1日目の吸入開始後1時間〜3時間、および2日目の朝、吸入開始後約24時間。さらに、吸入開始後0〜1時間に自発痰の喀出を収集した。
【0187】
自発痰試料を、ポリスチレンペトリ皿に収集し、直ちに氷上に置いた。全ての処理工程は、冷たい試薬で、可能な限り氷上で行わなければならなかった。プラグを唾液から分離したが、後者は廃棄しなかった。痰試料を痰分析のPKと好中球エラスターゼ活性の両方のために採取した場合、プラグを、約2等分に分割した。一方はPK解析のために、他方は痰中の好中球エラスターゼ活性の評価のために処理した。
【0188】
PK処理のために、得られたプラグをほぼ2等分に分割した。これらは、PKの評価(SP1)及びPKバックアップ(SP3)のための2本の移送管に移した。最高1.0mLの唾液を、PK評価のために別の移送管(SP2)に移した。ペトリ皿に残った唾液を捨てた。痰試料(SP1+SP3)の重量を測定し、全ての試料を凍結のためにドライアイスの上にすぐに置いた。凍結後、試料を−80±10℃で、直立位置で保存した。PK評価(SP1+SP2)のため、痰および唾液試料を、ドライアイス上でPharmacelsus GmbHに出荷した。バックアップ痰試料(SP3)を、Inamed GmbH,Gauting、ドイツで−80±10℃で保存した。
【0189】
生物分析方法
血漿中の活性化合物の分析のために、有効な高感度液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)法を使用した。痰中の活性化合物の分析のために、有効な、又は利用できない場合は「目的に合った」高感度液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)法を用いた。
【0190】
生物分析の手順を、生物分析アッセイのための現在の優良試験所基準(GLP)規制、米国食品医薬品局(FDA)及びEMA検証要件に従って実施し、ルーチン分析の規制及び分析のための一般的な規制を含む適用可能な標準業務手順書(SOP)に概説した。
【0191】
導出された薬物動態パラメータ
上述の薬物動態パラメータを、非コンパートメント手順を用いて、実際の血液及び痰のサンプリング時間に基づいて計算した。
【0192】
シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の血漿濃度−時間曲線及び導出された薬物動態パラメータ
活性化合物の平均血漿濃度−時間曲線を図3に示す。
【0193】
活性化合物の曲線は、典型的なプロファイルを示し、健常対象が吸入する活性化合物の同等用量の結果に類似しており、その最初の血漿濃度は、CF患者に早期に検出された。
【0194】
活性化合物の血漿濃度は上昇し、用量群1では1.3時間、用量群2では1.5時間及び用量群3では2.3時間でそれぞれのピーク(tmax、平均値)に到達した。その後、活性化合物の血漿濃度は低下し、平均終末半減期(mean terminal half−life)は、用量群1では4.1時間、用量群2では3.5時間及び用量群3では3.8時間であった。吸入後24時間の時点で、活性化合物は、全用量群の対象において依然として検出することができ、平均血漿濃度は、用量群1では2.8ng/mL、用量群2では4.4ng/mL、及び用量群3では15.2ng/mLであった。
【0195】
シクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)の痰濃度
活性化合物の平均痰濃度を図4に示す。
【0196】
吸入後の最初の痰サンプリング時点(0〜1時間のサンプリング間隔)で既に、活性化合物は、全用量群の対象の大部分で検出された。痰中の活性化合物の濃度は、用量によって増加し、濃度の最高平均(SD)値は、0.6(0.79)g/L(用量群1、1〜3時間のサンプリング間隔)、1.1(1.23)g/L(用量群2、0〜1時間のサンプリング間隔)及び1.8(1.81)g/L(用量群3、0〜1時間のサンプリング間隔)であった。活性化合物は、吸入後24時間の時点で、全用量群の対象の痰中で依然として検出することができた。
【0197】
薬力学的評価
活性化合物の漸増単一用量の薬力学的効果を、PBSでの等分化及び凍結後にFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイを用いて、痰中の好中球エラスターゼ(NE)活性を評価することによって調べた。
【0198】
痰試料のサンプリング及び試料処理
好中球エラスターゼ(NE)活性の評価のための自発痰試料を、以下の時間間隔/期間中に収集した:
NE活性のベースライン評価のためにスクリーニングの日(可能な場合)、1日目のNE活性のベースライン評価のために対象が試験場所に到着した後できるだけ早い時点、1日目の吸入開始後1時間〜3時間の間、及び2日目の朝の吸入開始後約24時間の時点。
【0199】
自発痰試料を、ポリスチレンペトリ皿に収集し、直ちに氷上に置いた。全ての処理工程は、冷たい試薬で、可能な限り氷上で行わなければならなかった。プラグを唾液から分離したが、後者は廃棄しなかった。痰試料を、痰分析のPKとNE活性の両方のために採取した場合、プラグを約2等分に分割した。上記のように、一方は痰中のNE活性の評価のために、他方はPK解析のために処理した。
【0200】
痰中のNE活性の評価のために、最初に、痰試料の重量を測定し、精製した痰1グラムあたり8mLの冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加した。試料を室温(15〜24℃)で、30秒間ボルテックスした。次いで、可溶性画分を遠心分離(10分間、1000×g、4℃)により痰ペレットから分離した。上清を新しいチューブに移した。
【0201】
残りの不溶性粒子は、4℃で、15分間、3500×gで第2の遠心分離工程によって分離した。上清をすぐに等分しなかった場合は、PBS/痰上清を新しいチューブに移した。
【0202】
50μL PBS/痰の10アリコートを、評価のために移送管に移した。さらに、50μL PBS/痰の4アリコートを、バックアップとして移送管に移した。残りがあった場合には、残りの量を、評価のために直ちに移送管に移した。2.0mLを超えて残ったものは廃棄した。
【0203】
試料をすぐに凍結し、−80±10℃で、直立位置で保存した。PBS/痰試料を、ドライアイス上でMLM Medical Labs GmbH,Monchengladbach、ドイツへ出荷した。PBS/痰バックアップ試料を、Inamed GmbH,Gauting、ドイツで、−80±10℃で保存した。
【0204】
生物分析方法
痰中のNE活性を、Nature Protocols,2008,3,991(B.Korkmaz,S.Attucci,M.A.Juliano et al.)に記載のアッセイから適合されたFRETエラスターゼアッセイを用いて評価し、MLM Medical Labs GmbH,Monchengladbach、ドイツが確認した。
【0205】
アッセイは、基質2Abz−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Met−Arg−Arg−Gln−Tyr(3NO)−OH(GeneCust Europe S.A.,Ellange,Luxembourg、番号P160301−SY452824)とヒト好中球エラスターゼの反応に基づく。基質溶液を添加することにより酵素反応を開始し、試料中に存在するエラスターゼは、添加した基質と反応する。反応生成物を蛍光測定により検出し、初期反応速度を決定する。未知の試料中の活性エラスターゼの濃度を、標準物質から計算した検量線を用いて逆算する。
【0206】
既知の酵素活性を有するエラスターゼ基準原液(ヒト好中球エラスターゼ[ELA2]、Holtzel Diagnostika,Koln,ドイツ,♯PN31255)を調製した。正確な活性エラスターゼ酵素濃度を、規定濃度で、アルファ1アンチトリプシン溶液(Athens Research and Technology,Athens,米国、番号16−16−011609)に対する滴定によって決定した。活性エラスターゼ基準原液を、PBSを添加することによって3000nMの濃度に調整し、アリコートを−80℃で保存した。
【0207】
FRETアッセイを、96ウェル白色マイクロタイタープレート中でウェル当たり100μLの合計量で行った。エラスターゼ反応緩衝液中の1:5、1:50及び1:100のPBS痰希釈液(50mM HEPES、pH7.4、750mM 塩化ナトリウム、0.05%[v/v] NP−40)を調製し、ウェル当たり5μLを添加し、90μLのエラスターゼ反応緩衝液を添加した。30%(v/v) N,N−ジメチルホルムアミド/水中2Abz−Ala−Pro−Glu−Glu−Ile−Met−Arg−Arg−Gln−Tyr(3NO)−OHの5mMの基質原液を調製し、さらにエラスターゼ反応緩衝液を添加することにより400nMまで希釈した。5μLの400nM 基質溶液をウェルに添加し、反応速度Viを、Exc:320nm−Emiss:420nmでFRETにより決定した。PBS痰中の活性エラスターゼの濃度を、活性エラスターゼ基準原液から定義された希釈液の反応速度の比較により決定した。
【0208】
この方法の分析測定範囲は、115.00〜2880.00ng/mLであった。アッセイ内及びアッセイ間の変動係数は、それぞれ17.14%以下及び8.96%以下であった。
【0209】
痰中の活性好中球エラスターゼ
活性NEの平均濃度を図5に示す。
【0210】
活性NE濃度の結果は、全体を通して大きく変動した。FRETアッセイによって測定した場合、1日目(投与前)の痰中の活性NEの平均(SD)濃度は、用量レベル1については18823.6(19758.72)ng/mL、用量レベル2については9548.7(6222.55)ng/mL及び用量レベル3については10480.7(10528.00)ng/mLであった。プラセボ対象についての平均(SD)活性NE濃度は、46711.8(48456.86)ng/mLであった。
【0211】
痰中の活性NEの濃度は、活性化合物を吸入した後に、対象において大きく減少した。吸入後1〜3時間の時点で、平均(SD)濃度の値は、用量レベル1については612.5(1218.62)ng/mL並びに用量レベル2及び3については115.0(0.00)ng/mLであった。吸入後1〜3時間の時点でのプラセボを吸入する対象の平均(SD)値は、34370.0(19988.11)ng/mLであった。
【0212】
吸入後24時間の時点での痰中の平均(SD)活性NE濃度は、用量レベル1については1467.7(2154.43)ng/mL、用量レベル2については16849.4(23518.56)ng/mL及び用量レベル3については7712.5(11394.04)ng/mLであった。プラセボ対象の24時間の時点での平均(SD)活性NE濃度は、19338.8(9062.32)ng/mLであった。
【0213】
薬力学的な結論
CF患者の痰中の活性NEの平均濃度は、実施例1に記載の製剤によって、投与される活性化合物の単回用量吸入後に大きく減少した。検討した用量範囲において、この応答の程度は、投与される用量とは無関係であるようにみえた。データの変動が大きく判断するのが難しいが、痰中の活性NEの平均濃度は、活性化合物の吸入後24時間の時点で、明らかにベースラインレベルに戻った。プラセボ溶液の吸入は、痰中の活性NEの平均濃度に明確な影響を与えなかった。これらの臨床結果は、実施例1に記載の製剤により投与されるシクロ(−OctG−Glu−Thr−Ala−Ser−Ile−Pro−Pro−Gln−Lys−Tyr−Pro−Pro−)が、CF患者の痰中でNEを阻害することを示している。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【国際調査報告】