(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019523828
(43)【公表日】20190829
(54)【発明の名称】980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20190802BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20190802BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20190802BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20190802BHJP
【FI】
   !C22C38/00 301A
   !C22C38/14
   !C21D9/46 T
   !C21D8/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】2018566512
(86)(22)【出願日】20170619
(85)【翻訳文提出日】20181219
(86)【国際出願番号】CN2017088962
(87)【国際公開番号】WO2017219938
(87)【国際公開日】20171228
(31)【優先権主張番号】201610450203.X
(32)【優先日】20160621
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
【住所又は居所】中華人民共和国201900 上海市宝山区富▲錦▼路885号
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 煥 榮
【住所又は居所】中華人民共和国201900 上海市宝山区富▲錦▼路885号
(72)【発明者】
【氏名】楊 阿 娜
【住所又は居所】中華人民共和国201900 上海市宝山区富▲錦▼路885号
(72)【発明者】
【氏名】張 建 蘇
【住所又は居所】中華人民共和国201900 上海市宝山区富▲錦▼路885号
(72)【発明者】
【氏名】王 巍
【住所又は居所】中華人民共和国201900 上海市宝山区富▲錦▼路885号
【テーマコード(参考)】
4K032
4K037
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA05
4K032AA16
4K032AA21
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4K037EA01
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4K037FB06
4K037FB07
4K037FC03
4K037FC04
4K037FD04
4K037FD05
4K037FE01
(57)【要約】
化学成分が、重量百分率で、C:0.15〜0.30%、Si:0.8〜2.0%、Mn:1.0〜2.0%、P≦0.02%、S≦0.005%、O≦0.003%、Al:0.5〜1.0%、N≦0.006%、Nb:0.01〜0.06%、Ti:0.01〜0.05%であり、残部がFe及び不可避不純物であり、かつ0.05%≦Nb+Ti≦0.10%、2.5≦Al/C≦5.0との関係を同時に満足する、980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼及びその製造方法。前記鋼のミクロ組織がフェライト+ベイナイトであり、フェライトの平均結晶粒のサイズが5〜10μm、ベイナイトの等価結晶粒サイズが20μm以下、降伏強度が600MPa以上、引張強度が980MPa以上、伸び率が15%以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分が、重量百分率で、C:0.15〜0.30%、Si:0.8〜2.0%、Mn:1.0〜2.0%、P≦0.02%、S≦0.005%、O≦0.003%、Al:0.5〜1.0%、N≦0.006%、Nb:0.01〜0.06%、Ti:0.01〜0.05%であり、残部がFe及び不可避不純物であり、かつ前記元素が0.05%≦Nb+Ti≦0.10%、2.5≦Al/C≦5.0との関係を同時に満足する、980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項2】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、C:0.20〜0.25%である請求項1に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項3】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Si:1.2〜1.8%である請求項1に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項4】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Mn:1.4〜1.8%である請求項1に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項5】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Nb:0.03〜0.05%である請求項1に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項6】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Ti:0.02〜0.04%である請求項1に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項7】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼のミクロ組織がフェライト+ベイナイトであり、フェライトの体積割合が20〜35%、フェライトの平均結晶粒のサイズが5〜10μm、ベイナイトの体積割合が65〜80%、ベイナイトの等価結晶粒サイズが20μm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項8】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の降伏強度が600MPa以上、引張強度が980MPa以上、伸び率が15%以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼。
【請求項9】
1) 製錬、鋳造
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化学成分になるように製錬し、精錬して、スラブ又はインゴットに鋳造し;
2) スラブ又はインゴットの加熱
加熱温度が1100〜1200℃であり、加熱時間が1〜2時間であり;
3) 熱間圧延+段階冷却+巻き取り
圧延開始温度を1030〜1150℃とし、1000℃以上で、累積変形量が50%以上になるように3〜5バスの粗圧延を行い、中間スラブの保持温度を900〜950℃とし、さらに累積変形量が70%以上になるように3〜5バスの仕上げ圧延を行い、最終圧延温度を800〜900℃とし、最終圧延が終了した後に、100℃/sの冷却速度で鋼板を600〜700℃に水冷し、3〜10秒間で空冷して、さらに30〜50℃/sの冷却速度で350〜500℃に水冷し、巻き取りを行い、巻き取った後に、20℃/h以下の冷却速度で室温に冷却する、
との工程を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の製造方法。
【請求項10】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼のミクロ組織がフェライト+ベイナイトであり、フェライトの体積割合が20〜35%、フェライトの平均結晶粒のサイズが5〜10μm、ベイナイトの体積割合が65〜80%、ベイナイトの等価結晶粒サイズが20μm以下である請求項9に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の製造方法。
【請求項11】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の降伏強度が600MPa以上、引張強度が980MPa以上、伸び率が15%以上である請求項9又は10に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延高強度鋼分野に属し、具体的に980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商用車、特に大型トラックの車輪用の鋼は、通常に二相鋼から製造されるが、一部の経済的な車の車輪(リムおよびスポークを含む)についてコストを削減するために鋼製車輪をも使用する。高強度二相鋼から製造された車輪は、車輪の重量を効果的に減らすことができる。例えば、通常のQ345鋼と比較して、DP600(即ち、引張強度600MPa級の二相鋼)は、車輪の重量を約10〜15%削減することができる。引張強度780MPa級のDP780二相鋼は、車輪の重量をさらに約5〜10%削減することができる。現在、中国の多く車輪工場で使用されている二相鋼は、ほとんど600MPa以下の低強度二相鋼であり、DP780のような強度がより高い二相鋼はあまり使用されていない。
【0003】
自動車用車輪に二相鋼を広く使用する理由は、主に、二重鋼自体が有する低降伏強度と高引張強度即ち低降伏比、連続降伏、及び良好な加工成形性などである。しかし、フェライト+ベイナイト系の高強度二相鋼が自動車用車輪の製造に使用される場合、その拡孔性能が不足であるという最大の欠点がある。同じ強度レベルでは、フェライトとマルテンサイト二相鋼は、拡孔率が最も低いものである。主な理由は、フェライト相とマルテンサイト相が機械的性質では差異が大きく、加工硬化率が高く、打ち抜き孔の周辺に微小な亀裂が生じやすく、孔を拡張・形成する時に割れが生じることになる。一方、同じ強度レベルのベイナイトまたはフェライト+ベイナイトの組織は、より良好な拡孔性能を示す。フェライト+ベイナイト二相鋼は、比較的に低い降伏比及び良好な拡孔性、可塑性と衝撃靱性を有するので、超高強度車輪用鋼の分野(例えば、≧780MPa)において、フェライト+ベイナイト二相鋼は、フェライト+マルテンサイト二相鋼より大きな適用可能性がある。
【0004】
既存の二相鋼は、主にフェライト+マルテンサイト二相鋼であり、そのうち、主に冷間圧延フェライト+マルテンサイト二相鋼であり、強度レベルが780MPa以上である熱間圧延フェライト+マルテンサイト系二相鋼がほとんどなく、高強度(≧780MPa)のフェライト+ベイナイト系二相鋼がより少ない。
【0005】
中国特許CN101033522Aは、製造工程が簡単であるが、組成のデザインでアルミニウムの含有量が高くて製造が難しく、製造コストが高く、引張強度が700〜900MPaであるフェライトベイナイト二相鋼を公開した。中国特許CN102443735Aは、段階冷却を採用するが、引張強度が450MPaだけである炭素マンガン系フェライトベイナイト二相鋼を公開した。中国特許CN101603153Aは、655MPa級のフェライトベイナイト二相鋼を開示した。当該二相鋼も段階冷却を採用したが、その空冷時間が12〜15秒間と比較的に長いであり、薄型の熱間圧延帯鋼の実現に困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、600MPa以上の降伏強度、980MPa以上の引張強度、15%以上の伸び率を有する980MPa級熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼及びその製造方法の提供を目的とする。当該二相鋼は、優れた強度と可塑性と靭性のマッチングを示し、良好な成形性を示し、高強度と薄型化が要求される車輪などの部品に適用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の技術案は以下のようである。
本発明は、比較的に高い含有量のSiを添加することにより、限られた熱間圧延空冷時間内で一定の数量のフェライト組織を形成し、かつフェライト形成のプロセスウィンドウを拡大することを保証することができ、比較的に高い含有量のAlを添加することにより、主に圧延後の空冷段階で所要数量のフェライトを形成することができ、Nb及びTiを複合的に添加することにより、主に仕上げ圧延段階でオーステナイト結晶粒を最大限度に微細化させ、相変態の後に形成されたフェライトをさらに微細化させ、鋼板の強度及び可塑性の向上を寄与することができる。本発明は、組織中のフェライトとベイナイトの含有量を正確に制御することで、降伏強度が600MPa以上、引張強度が980MPa以上である高強度のフェライトベイナイト二相鋼を得ることができる。
【0008】
化学成分が、重量百分率で、C:0.15〜0.30%、Si:0.8〜2.0%、Mn:1.0〜2.0%、P≦0.02%、S≦0.005%、O≦0.003%、Al:0.5〜1.0%、N≦0.006%、Nb:0.01〜0.06%、Ti:0.01〜0.05%であり、残部がFe及び不可避不純物であり、かつ前記元素が0.05%≦Nb+Ti≦0.10%、2.5≦Al/C≦5.0との関係を同時に満足する980MPa級熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼である。
【0009】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、C:0.20〜0.25%であることが好ましい。
【0010】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Si:1.2〜1.8%であることが好ましい。
【0011】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Mn:1.4〜1.8%であることが好ましい。
【0012】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Nb:0.03〜0.05%であることが好ましい。
【0013】
前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の化学成分において、重量百分率で、Ti:0.02〜0.04%であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼のミクロ組織がフェライト+ベイナイトであり、フェライトの体積割合が20〜35%、フェライトの平均結晶粒のサイズが5〜10μm、ベイナイトの体積割合が65〜80%、ベイナイトの等価結晶粒サイズが20μm以下である。
【0015】
本発明の前記熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の降伏強度が600MPa以上、引張強度が980MPa以上、伸び率が15%以上である。
【0016】
本発明の鋼の成分設計において、
炭素:炭素は、鋼における基本的な元素であり、本発明にとって重要な元素の1つでもある。炭素は、オーステナイトの相領域を拡大させ、オーステナイトを安定させる。炭素は、鋼における格子間原子として、鋼の強度の向上に対して非常に重要な役割を有し、鋼の降伏強度と引張強度に対する影響が最も大きいである。本発明では、引張強度980MPa級の高強度二相鋼を得るために、炭素の含有量が0.15%以上であることを保証しなければならない。しかし、炭素の含有量が0.30%を超えてはいけなく、でなければ、熱間圧延の二段階式の冷却過程で所要数量のフェライトを形成し難い。よって、本発明の鋼における炭素含有量を0.15〜0.30%の範囲、好ましくは0.20〜0.25%の範囲に制御する必要がある。
【0017】
ケイ素:ケイ素は、鋼における基本的な元素であり、本発明にとって重要な元素の1つでもある。その理由は、引張強度が980MPa以上であるフェライトベイナイト二相鋼を得るように、フェライトのサイズと数量を制御するとともに、ベイナイトの強度を向上する必要があるため、成分の設計で炭素とマンガンの含有量を適当に増加する必要があるが、炭素及びマンガンは、いずれもオーステナイトの相領域を拡大させ、オーステナイトを安定させる元素であり、熱間圧延の空冷過程におけるとても短い時間内(通常≦10s)に十分な量のフェライトを形成することが困難であるので、比較的に高い含有量のケイ素を添加する必要がある。ケイ素の添加は、フェライトの形成を顕著に促進し、フェライト形成のプロセスウィンドウを拡大し、フェライトを浄化することができると共に、部分的に強化する役割も奏する。ケイ素の上記のような役割は、含有量が0.8%以上に達成しなければ表現できない。しかし、Siの含有量が高すぎてはならなく、でなければ、圧延後の鋼板の衝撃靱性が低下する。よって、本発明の鋼におけるケイ素含有量を0.8〜2.0%の範囲、好ましくは1.2〜1.8%の範囲に制御する必要がある。
【0018】
マンガン:マンガンは、鋼における最も基本的な元素であり、本発明にとって重要な元素の1つでもある。マンガンが、鋼の臨界焼入れ速度を低下させ、オーステナイトを安定化させ、結晶粒を微細化させ、オーステナイトのパーライトへの変態を遅延させるオーステナイト相領域を拡大する重要な要素であることはよく知られている。本発明では、鋼板の強度を確保するために、マンガンの含有量を通常に1.0%以上とし、マンガンの含有量が少なすぎると過冷却のオーステナイトが十分に安定せず、空冷時にパーライト型構造に転換しやすくなり、一方、マンガンの含有量が2.0%を超えてはならなく、2.0%を超えると、製鋼中にMn偏析が発生するだけでなく、圧延後の空冷段階で十分なフェライト量が容易に形成されず、スラブ連続鋳造時にも熱間割れが発生しやすくなる。よって、本発明の鋼におけるMn含有量を1.0〜2.0%の範囲、好ましくは1.4〜1.8%の範囲に制御する必要がある。
【0019】
リン:リンは、鋼中の不純物元素であり、粒界に偏析しやすく、鋼中のリン含有量が高い(≧0.1%)と、FePが生成し、結晶粒の周囲に析出して、鋼の可塑性及び靭性を低下させる。よって、リン含有量が低いほど良好であり、一般に0.02%以内に制御され、製鋼コストを増加させないことが好ましい。
【0020】
硫黄:硫黄は鋼中の不純物元素である。鋼中の硫黄は、通常、マンガンと結合してMnS介在物を形成し、特に硫黄及びマンガンの含有量がいずれも多いと、鋼中に多くのMnSが生成し、MnS自体がある程度の塑性を有し、後続の圧延過程でMnSが圧延方向に沿って変形し、鋼板の横方向の引張特性を低下させる。従って、鋼中の硫黄含有量が低いほど好ましく、実際の生産の時に通常0.005%以内に制御される。
【0021】
アルミニウム:アルミニウムは、本発明における重要な合金元素の1つである。本発明に関わる高強度のフェライトベイナイト二相鋼は、成分設計では、他の低強度レベルのフェライトベイナイト二相鋼に比べて、鋼における炭素及びマンガンの含有量がより高く、オーステナイトがより安定であり、圧延後の段階冷却・空冷段階ではフェライトを形成することが困難である。これに対して、アルミニウムはフェライト形成を促進する重要な元素の1つである。よって、本発明において、アルミニウムの含有量は、通常の鋼よりも一桁高くなる。鋼におけるアルミニウムの添加量は、主に炭素の含有量に相関があり、その含有量が2.5≦Al/C≦5.0を満足すべきである。アルミニウム含有量が少ないと、空冷段階で十分な量のフェライトを生成できず、高すぎると、溶鋼の鋳込が困難となり、スラブに表面縦割れなどの欠陥が生じやすくなる。よって、本発明では、鋼におけるアルミニウム含有量は、0.5〜1.0%に制御され、かつ2.5≦Al/C≦5.0の関係式を満足する。
【0022】
窒素:窒素は本発明において不純物元素であり、含有量が少ないほど良好である。窒素は鋼中の不可避元素でもあり、通常、製鋼プロセス中に特別な制御が行われないと、鋼中の窒素の残留量が通常0.006%以下になる。これら固溶または遊離の窒素元素は、ある種の窒化物を形成することによって固定されなければならず、でなければ、鋼の衝撃靱性に非常に好ましくなく、帯鋼圧延の過程に全長にわたる鋸歯状の欠陥を形成しやすい。本発明では、チタン元素を添加することにより、窒素と結合して安定なTiNを形成し、窒素原子を固定する。よって、本発明の鋼における窒素含有量は、0.006%以内に制御され、かつ低いほど良好である。
【0023】
ニオブ:ニオブは、本発明における重要な元素の1つでもある。圧延空冷段階でフェライト相の生成を促進させるためには、980MPa以上の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼に通常に多くのケイ素を添加する必要があるが、高ケイ素の添加は一般的にベイナイトの脆性を上昇する場合がある。本発明では、炭素自体の含有量が≦0.30%だけであるが、一定量のフェライトが析出した後、フェライト中の炭素原子が排出され、未変態のオーステナイト中に入るため、残留オーステナイト中の炭素量が富化し、最終に形成されたベイナイトに炭化物の含有量が高くなり、衝撃靱性に不利である。高Si型のフェライトベイナイト二相鋼の衝撃靱性をできるだけ向上させるために、合金の成分設計で微量のニオブを添加することにより、結晶粒を微細化させ、二相鋼の衝撃靱性を効果的に向上させることができる。ニオブの添加は、2つの役割を果たす。その1は、高温段階で固溶のニオブがオーステナイト粒成長に対して溶質引きずりの役割を果たす。その2は、仕上げ圧延段階で、ニオブの炭窒化物を介してオーステナイトの粒界をピン止めし、オーステナイト結晶粒を微細化させ、最終的に変態されたフェライトとベイナイトを微細化させて二相鋼の衝撃靭性を改善する役割を果たす。よって、本発明の鋼におけるニオブ含有量を0.01〜0.06%の範囲、好ましくは0.03〜0.05%の範囲に制御する必要がある。
【0024】
チタン:チタンは、本発明における重要な元素の一つである。チタンは、本発明において主に2つの役割を奏する。その1は、チタンが鋼中の不純物元素である窒素と結合してTiNを形成し、窒素固定効果を発揮する。その2は、チタンがニオブと協力してオーステナイト結晶粒を微細化させる最適の役割を奏する。鋼中の遊離窒素原子は、鋼の衝撃靱性に対して非常に不利である。微量のチタンを添加することにより、遊離の窒素を固定できるが、本発明においてチタンの含有量が多過ぎると、サイズが大きいTiNを形成しやすく、鋼の衝撃靱性に対して不利であるため、好ましくない。試験によれば、鋼にTiを添加せず、Nbのみを添加すると、連続鋳造の生産プロセスにおいて連続鋳造スラブに角割れが起こりやすく、微量のチタンの添加は角割れ問題を効果的に改善できることが証明される。それとともに、本発明におけるNbとTiの含有量を0.05%≦Nb+Ti≦0.10%の成分範囲に制御すれば、良好な結晶粒微細化効果を果たすだけではなく、コストも低い。よって、本発明の鋼中のチタン含有量を0.01〜0.05%の範囲、好ましくは0.02〜0.04%の範囲に制御する必要がある。
【0025】
酸素:酸素は製鋼プロセスにおいて不可避的に存在する元素であり、本発明では、一般にアルミニウムの脱酸後に鋼中の酸素含有量が30ppm以下になり、鋼板の性能に顕著な悪影響を及ぼすことはない。よって、鋼中の酸素含有量を30ppm以内に制御すればよい。
【0026】
本発明に記載の980MPa級の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼の製造方法は、下記の工程を含む。
【0027】
1) 製錬、鋳造
上述した化学成分になるように製錬し、精錬して、スラブ又はインゴットに鋳造する。
【0028】
2) スラブ又はインゴットの加熱
加熱温度が1100〜1200℃であり、加熱時間が1〜2時間である。
【0029】
3) 熱間圧延+段階冷却+巻き取り
圧延開始温度を1030〜1150℃とし、1000℃以上で、累積変形量が50%以上になるように3〜5バスの粗圧延を行い、中間スラブの保持温度を900〜950℃とし、さらに累積変形量が70%以上になるように3〜5バスの仕上げ圧延を行い、最終圧延温度を800〜900℃とし、最終圧延が終了した後に、100℃/sの冷却速度で鋼板を600〜700℃に水冷し、3〜10秒間で空冷して、さらに30〜50℃/sの冷却速度で350〜500℃に冷却し、巻き取りを行い、巻き取った後に、20℃/h以下の冷却速度で室温に冷却する。
【0030】
本発明の製造プロセス設計の理由は、以下のようである。
本発明の圧延プロセスの模式図は、図1に示されている。圧延プロセスの設計では、粗圧延と仕上げ圧延の段階で、圧延のプロセスのリズムは、できるだけ早く完了する必要がある。最終圧延が終了した後に、高い冷却速度(≧100℃/s)で中間冷却停止温度までに急速に冷却する必要がある。その理由は、圧延終了後、冷却速度が遅くなると、鋼板内部で変態されたオーステナイトが短時間内で再結晶化を完了し、その時点でオーステナイト結晶粒が成長するためである。比較的に粗いオーステナイトでは、後続の冷却プロセスにおいてフェライト変態を起こる時に、最初のオーステナイトの粒界に沿って形成されたフェライト結晶粒が粗くなり、通常に10〜20μmになり、鋼板の強度の向上に不利である。
【0031】
本発明の鋼板組織の設計思想は、微細な等軸フェライト及びベイナイト組織に対して、引張り強度980MPa級に達成しようとする場合、フェライトの平均結晶粒のサイズを10μm以下に制御しなければならない。これについて、仕上げ圧延終了後、鋼板を所望の中間冷却停止温度まで急冷する必要がある。本発明は低炭素鋼であるため、フェライトが変態の駆動力が大きいであることで容易に形成される。よって、帯鋼の最終圧延後の冷却速度は、冷却中にフェライトが生成されないように十分に速い(≧100℃/s)とする必要がある。
【0032】
本発明の段階冷却プロセスにおける第1段階の冷却停止温度は、600〜700℃の温度範囲内に制御する必要がある。これは、熱間連続圧延ラインの帯鋼の運転速度が速く、水冷段階の長さが制限されるため、長時間の空冷を行うことができないからである。第1段階の冷却停止温度は、フェライト析出の最適温度領域にできるだけ制御すべきである;第2段階の水冷の主な目的は、所要のベイナイトを生成することであるので、第2段階の水冷速度は、30〜50℃/sに制御する必要があり、冷却速度が高すぎると、鋼板内部に過大な応力が発生し、帯鋼の形状が不良になる。巻き取り温度は、350〜500℃に制御すればよい。具体的な冷却プロセスの模式図を図2に示す。
【0033】
本発明は、巧妙的、合理的な成分設計と、革新的な熱間圧延プロセスによって、優れた強度と塑性を有する高強度の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼を得ることができる。鋼板の組織は、微細なフェライトとベイナイトであり、フェライトの体積割合が20〜35%、フェライトの平均結晶粒のサイズが5〜10μm、ベイナイトの体積割合が65〜80%、ベイナイトの等価結晶粒サイズが20μm以下である。成分設計では、理論的な分析及び試験研究によって、NbとTiの合計量が0.05%≦Nb+Ti≦0.10%を満足し、炭素とアルミニウムの添加量が2.5≦Al/C≦5.0を満足する必要があり、これとともに、所要の圧延プロセスを合わせて、これにより、本発明の低降伏比、高強度の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼を得て、かつ良好な可塑性と良好な衝撃靱性を有するものを得ることができる。
【0034】
本発明は以下の有益効果を有する。
(1) 本発明は、比較的に経済的な成分設計の思想を採用するとともに、従来の熱間連続圧延ラインを合わせることにより、低降伏比、高強度の熱間圧延フェライトベイナイト二相鋼を生産することができる。
【0035】
(2) 本発明で製造された、降伏強度≧600MPa、引張強度≧980MPa、伸び率≧15%、および厚さ≦6mmの熱間圧延高強度フェライトベイナイト二相鋼板は、優れた強度と可塑性と靭性のマッチングを示し、かつ優れた成形性能を示し、同時に低い降伏比を有し、高強度と薄型化を必要とする車輪のような部品に適用することができ、良好な適用見込みを有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の加熱及び圧延プロセスの模式図を示す。
【図2】本発明の圧延後の冷却プロセスの模式図を示す。
【図3】本発明の実施例1の鋼の典型的な金相写真を示す。
【図4】本発明の実施例2の鋼の典型的な金相写真を示す。
【図5】本発明の実施例3の鋼の典型的な金相写真を示す。
【図6】本発明の実施例4の鋼の典型的な金相写真を示す。
【図7】本発明の実施例5の鋼の典型的な金相写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに説明する。
表1は本発明の実施例の鋼の成分を示し、表2は本発明の実施例の鋼の製造プロセスのパラメーターを示し、表3は本発明の実施例の鋼の性能を示す。
【0038】
本発明の実施例のプロセスの流れは、転炉又は電気炉製錬→真空炉2次精錬→スラブ又はインゴットの鋳造→鋼スラブ(インゴット)の加熱→熱間圧延+圧延後の段階冷却→鋼の巻き取りを含み、そのうち、肝心なプロセスのパラメーターを表2に示す。
【0039】
図3〜図7は、それぞれ実施例1〜5の鋼の典型的な金相写真を示す。図3〜図7から分かるように、本発明の鋼板のミクロ組織は、微細なフェライト及びベイナイト(図中、白色い組織がフェライト、灰色い組織がベイナイト)であり、フェライト結晶粒の大部は、最初のオーステナイトの粒界に分布し、等価結晶粒サイズが5〜10μmであり、ベイナイトの等価結晶粒サイズが約20μmである。ミクロ組織は鋼板の性能によく対応することができ、組織中のフェライトは、低い降伏強度を鋼板に付与し、多くのベイナイト(体積割合が65〜80%)の存在が、高い引張り強度を鋼板に付与し、本発明の前記フェライトベイナイト二相鋼が成形しやすく、強度と可塑性と靱性のマッチング良いなどの特徴を有し、高強度と薄型化を必要とする車輪などの分野に特に適用することができる。
【0040】
表3から分かるように、本発明で製造された980MPa級のフェライトベイナイト二相鋼は、降伏強度≧600MPa、引張強度≧980MPa、伸び率≧15%であり、かつ低い降伏比を有し、優れた強度と可塑性と靱性のマッチングを示し、高強度と薄型化を必要とする車輪などの分野に特に適用することができる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【国際調査報告】