(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019523968
(43)【公表日】20190829
(54)【発明の名称】電気化学エネルギー貯蔵デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20190802BHJP
   H01M 6/14 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20190802BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/44 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20190802BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20190802BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20190802BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20190802BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20190802BHJP
【FI】
   !H01M10/052
   !H01M6/14 A
   !H01M10/0569
   !H01M10/0568
   !H01M10/0567
   !H01M4/46
   !H01M4/38 Z
   !H01M4/40
   !H01M4/44
   !H01M4/42
   !H01M4/66 A
   !H01G11/60
   !H01G11/62
   !H01G11/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】42
(21)【出願番号】2018562185
(86)(22)【出願日】20170427
(85)【翻訳文提出日】20190123
(86)【国際出願番号】US2017029821
(87)【国際公開番号】WO2017204984
(87)【国際公開日】20171130
(31)【優先権主張番号】62/342,838
(32)【優先日】20160527
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【住所又は居所】アメリカ合衆国,カリフォルニア州 94607−5200,オークランド,フランクリン ストリート 1111,12番 フロア
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ルストムジ, サイラス
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92104, サンディエゴ, フロリダ ストリート 3759
(72)【発明者】
【氏名】メン, イン シャーリー
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92109, サンディエゴ, ベリル ストリート 1661
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ヤンユチェン
【住所又は居所】アメリカ合衆国 カリフォルニア 92037, ラ ホーヤ, ミラマー ストリート 9246シー
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H024
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA09
5E078AB01
5E078DA03
5E078DA05
5H017AA03
5H017CC15
5H017EE06
5H024AA06
5H024AA12
5H024EE03
5H024FF12
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM05
5H029AM07
5H029DJ07
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029EJ11
5H050AA07
5H050BA06
5H050BA16
5H050CA08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA04
(57)【要約】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、正電極と負電極との間で電荷を運ぶために、イオン伝導性の電解質溶液を利用する。デバイスの向上した電気化学安定性のために、電解質溶液は、溶媒と塩、さらなる成分または添加剤の混合物を使用する。例示的な実施形態では、電気化学デバイスは、電解質と電解質と接触する電極について加圧状態を与えるために、電解質と筐体とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスであって、
1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液とを含み、それぞれの圧縮ガス溶媒が、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、前記1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する、イオン伝導性の電解質と、
前記イオン伝導性の電解質を包み込み、前記1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液に対して加圧状態を与えるような構造の筐体と、
前記イオン伝導性の電解質と接触する電極の対とを備える、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記圧縮ガス溶媒が、フルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロエタン、ジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、二酸化炭素、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタンおよびジフルオロクロロメタンのうち1種類以上を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記1種類以上の塩が、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラガリウムアルミン酸リチウム、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、フッ化アルミニウムリチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、クロロアルミン酸リチウム、クロロチタン酸リチウム、ヘキサフルオロチタン酸リチウム、テトラブロモアルミン酸リチウム、テトラクロロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムおよびヘキサフルオロリン酸マグネシウムのうち1種類以上を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
さらに、二酸化硫黄、二硫化炭素、酸素、窒素およびアンモニアのうち1種類以上を含む、さらなる気体状電解質を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記電極の対のうち少なくとも1つが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、硫黄および酸素のうちいずれか1つで構成される、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
電気化学デバイスであって、
1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液とを含み、それぞれの圧縮ガスカソード液が、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、前記1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する、イオン伝導性のカソード液と、
前記イオン伝導性のカソード液を包み込み、前記1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液に対して加圧状態を与えるような構造の筐体と、
前記イオン伝導性のカソード液と接触するアノード電極とカソードカレントコレクタとを備える、電気化学デバイス。
【請求項7】
前記圧縮ガスカソード液が、フッ化チオニル、塩化フッ化チオニル、フッ化ホスホリル、塩化フッ化ホスホリル、フッ化スルフリルおよび塩化フッ化スルフリルのうち1種類以上を含む、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記1種類以上の塩が、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラガリウムアルミン酸リチウム、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、フッ化アルミニウムリチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、クロロアルミン酸リチウム、クロロチタン酸リチウム、ヘキサフルオロチタン酸リチウム、テトラブロモアルミン酸リチウム、テトラクロロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムおよびヘキサフルオロリン酸マグネシウムのうち1種類以上を含む、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
塩化リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、一塩化臭素、一フッ化臭素、塩化物およびフッ化物のうち1種類以上を含む添加剤をさらに含む、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記アノードが、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、カドミウム、鉛のうち1種類以上で構成される、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記カソードカレントコレクタが、活性炭、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種類以上で構成される、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
液化ガス電解質溶液を作成する方法であって、前記方法が、
所定の重量の塩をセルにロードし、前記所定の重量の塩が、前記塩の濃度と圧縮ガス溶媒の体積に依存することと、
前記セルを、前記圧縮ガス溶媒の供給源の第2の温度より低い第1の温度まで冷却することと、
前記供給源から、制御された量の前記圧縮ガス溶媒を蒸発させ、前記セル内で前記圧縮ガス溶媒を凝縮させることと、
前記セルを密封することとを含む、方法。
【請求項13】
前記凝縮させる操作が、前記セルに接続した管を介し、質量流量コントローラおよび質量流量計のうち1つを用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記密封する操作が、バルブ、プラグまたは溶接したカバーのうちいずれか1つを用いて行われる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2016年5月27日に出願された「NOVEL ELECTROCHEMICAL ENERGY STORAGE DEVICE」との名称の米国仮特許出願第62/342,838号に対する優先権と利益を主張する。上述の特許出願の内容全体が、本特許文書の開示の一部として参照により組み込まれる。
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
【0002】
本発明は、Department of Energy’s Advanced Research Projections Agency−Energy(ARPA−E)によって報償が与えられた、付与番号DE−AR0000646に基づく政府の支援によりなされた。政府は、本発明において、特定の権利を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示的な実施形態では、電気化学デバイスが開示される。電気化学デバイスは、1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液とを含み、それぞれの圧縮ガス溶媒が、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、前記1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する、イオン伝導性の電解質と;前記イオン伝導性の電解質を包み込み、前記1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液に対して加圧状態を与えるような構造の筐体と;前記イオン伝導性の電解質と接触する電極の対とを備える。
【0004】
例示的な電気化学デバイスでは、圧縮ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロエタン、ジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、二酸化炭素、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタンおよびジフルオロクロロメタンのうち1種類以上を含む。
【0005】
例示的な電気化学デバイスでは、1種類以上の塩は、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラガリウムアルミン酸リチウム、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、フッ化アルミニウムリチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、クロロアルミン酸リチウム、クロロチタン酸リチウム、ヘキサフルオロチタン酸リチウム、テトラブロモアルミン酸リチウム、テトラクロロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムおよびヘキサフルオロリン酸マグネシウムのうち1種類以上を含む。
【0006】
例示的な実施形態では、電気化学デバイスは、さらに、二酸化硫黄、二硫化炭素、酸素、窒素およびアンモニアのうち1種類以上を含む、さらなる気体状電解質を含む。
【0007】
例示的な電気化学デバイスでは、電極の対のうち少なくとも1つが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、硫黄および酸素のうちいずれか1つで構成される。
【0008】
別の例示的な実施形態では、電気化学デバイスは、1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液とを含み、それぞれの圧縮ガスカソード液が、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、前記1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する、イオン伝導性のカソード液と;前記イオン伝導性のカソード液を包み込み、前記1種類以上の塩と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液に対して加圧状態を与えるような構造の筐体と;前記イオン伝導性のカソード液と接触するアノード電極とカソードカレントコレクタとを備える。
【0009】
例示的な電気化学デバイスでは、圧縮ガスカソード液は、フッ化チオニル、塩化フッ化チオニル、フッ化ホスホリル、塩化フッ化ホスホリル、フッ化スルフリルおよび塩化フッ化スルフリルのうち1種類以上を含む。
【0010】
例示的な電気化学デバイスでは、1種類以上の塩は、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラガリウムアルミン酸リチウム、リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、フッ化アルミニウムリチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、クロロアルミン酸リチウム、クロロチタン酸リチウム、ヘキサフルオロチタン酸リチウム、テトラブロモアルミン酸リチウム、テトラクロロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウムおよびヘキサフルオロリン酸マグネシウムのうち1種類以上を含む。
【0011】
例示的な実施形態では、電気化学デバイスは、塩化リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、一塩化臭素、一フッ化臭素、塩化物およびフッ化物のうち1種類以上を含む添加剤をさらに含む。
【0012】
例示的な電気化学デバイスでは、アノードは、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、カドミウム、鉛のうち1種類以上で構成される。
【0013】
例示的な電気化学デバイスでは、カソードカレントコレクタは、活性炭、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうち1種類以上で構成される。
【0014】
液化ガス電解質溶液を作成する例示的な方法も開示される。例示的な方法は、所定の重量の塩をセルにロードし、前記塩の所定の重量が、前記塩の濃度と圧縮ガス溶媒の体積に依存することと、前記セルを、前記圧縮ガス溶媒の供給源の第2の温度より低い第1の温度まで冷却することと、前記供給源から、制御された量の前記圧縮ガス溶媒を蒸発させ、前記セル内で前記圧縮ガス溶媒を凝縮させることと、前記セルを密封することとを含む。
【0015】
液化ガス電解質溶液を作成する例示的な方法では、凝縮させる操作は、前記セルに接続した管を介し、質量流量コントローラおよび質量流量計のうち1つを用いて行われる。
【0016】
液化ガス電解質溶液を作成する例示的な方法では、密封する操作は、バルブ、プラグおよび溶接したカバーのうちいずれか1つを用いて行われる。
(背景技術)
【0017】
本特許出願は、電気化学材料および電気化学エネルギー貯蔵デバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、少ない重量%で種々の電解質添加剤成分を含むフルオロメタン中に5日間浸漬されたリチウム金属の例示的な光学画像を示す。
【0019】
【図2】図2は、リチウム金属アノードを有し、9:1の重量比のフルオロメタン:二酸化炭素中、0.2モル濃度(M)のリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)で構成される電解質を有する、リチウムコバルトオキシド(LiCoO)カソードの例示的な電気化学性能を示す。
【0020】
【図3】図3は、1mA/cm電流密度でサイクルを行う、19:1 フルオロメタン:CO溶媒中、0.2Mリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)塩を含む、例示的なリチウム|リチウム対称セルを示す。
【0021】
【図4】図4は、セル圧力の増加に起因する、例示的な電解質の導電率の増加を示す。
【0022】
【図5】図5は、例示的な電気化学デバイスを示す。
【0023】
【図6】図6は、別の例示的な電気化学デバイスを示す。
【0024】
【図7】図7は、リチウム金属LiCoOセルの電気化学インピーダンススペクトルを示す。
【0025】
【図8A】図8Aは、液化ガス溶媒の物理特性および化学特性を示す。
【図8B】図8Bは、液化ガス溶媒の物理特性および化学特性を示す。
【図8C】図8Cは、液化ガス溶媒の物理特性および化学特性を示す。
【図8D】図8Dは、液化ガス溶媒の物理特性および化学特性を示す。
【0026】
【図9A】図9Aは、ある温度にわたる液化ガス電解質の電解導電率を示す。
【図9B】図9Bは、ある温度にわたる液化ガス電解質の電解導電率を示す。
【図9C】図9Cは、ある温度にわたる液化ガス電解質の電解導電率を示す。
【図9D】図9Dは、ある温度にわたる液化ガス電解質の電解導電率を示す。
【0027】
【図10A】図10Aは、ジフルオロメタンの電気化学安定性と、電気化学キャパシタ中でのその使用を示す。
【図10B】図10Bは、ジフルオロメタンの電気化学安定性と、電気化学キャパシタ中でのその使用を示す。
【図10C】図10Cは、ジフルオロメタンの電気化学安定性と、電気化学キャパシタ中でのその使用を示す。
【0028】
【図11A】図11Aは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【図11B】図11Bは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【図11C】図11Cは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【図11D】図11Dは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【図11E】図11Eは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【図11F】図11Fは、フルオロメタンおよび二酸化炭素の電気化学安定性と、リチウム電池中でのその使用を示す。
【0029】
【図12】(図12A)図12Aは、リチウム金属表面生成物のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図12B)図12Bは、リチウム金属表面生成物のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図12C)図12Cは、リチウム金属表面生成物のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図12D)図12Dは、リチウム金属表面生成物のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図12E)図12Eは、リチウム金属表面生成物のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。
【0030】
【図13】(図13A)図13Aは、LiCoO電極のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図13B)図13Bは、LiCoO電極のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。(図13C)図13Cは、LiCoO電極のXPSスペクトルと、計算された組成%の割合を示す。
【0031】
【図14】図14は、液化ガス溶媒のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を示す。
【0032】
【図15】図15は、液化ガス溶媒の粘度を示す。
【0033】
【図16】図16は、ジフルオロメタン系の電解質の電解導電率を示す。
【0034】
【図17】図17は、電気化学キャパシタの性能を示す。
【0035】
【図18】図18は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属の光学画像を示す。
【0036】
【図19】図19は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属のXRDスペクトルを示す。
【0037】
【図20】図20は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属のFTIRスペクトルを示す。
【0038】
【図21】図21は、フルオロメタンの電気化学安定性を示す。
【0039】
【図22】図22は、従来の液体電解質におけるリチウムメッキとストリッピングのSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書において、章の見出しは、読みやすさを改善するために用いられており、記載されている実施形態の特徴および範囲を特定の章に限定するものではない。本文書において、「例示的な」との用語は、「一例」を意味するために用いられており、他の意味であると言及されていない限り、記載されている特徴が、いかなる様式でも理想的であること、または好ましいものであることを意味するものではない。
【0041】
電気化学エネルギー貯蔵デバイス(例えば、電池および二重層キャパシタ)は、正電極と負電極との間で電荷を運ぶために、イオン伝導性の電解質溶液を利用する。デバイスの向上した電気化学安定性のために、電解質溶液は、ある量の溶媒と塩、さらなる成分または添加剤の混合物を使用する。一般的な成分としては、特に、炭酸ビニル、炭酸フルオロエチレン、リチウムビス(オキサラト)ボレートが挙げられる。このような添加剤は、電極の表面改質、安全性の観点、または他の有用な様式に役立つ。
【0042】
電解質成分は、デバイス操作中に一般的に直面する温度およびデバイス内圧では、一般的に液体または固体である。このような温度および圧力で気体状のいくつかの成分(例えば、二酸化炭素)を、電解質溶液へのバブリングによって、電解質溶液に少量加え、溶液を気体状成分で飽和させてもよいが、その量は、溶解度に限りがあるため、1重量%未満に制限される。
【0043】
電気化学電池のエネルギー密度は、操作電圧と容量に比例する。電池デバイスの容量は、アノード電極およびカソード電極の容量に依存する。最も一般的には、アノードとカソードは、両方とも固体状態の材料から作られる。しかし、ある種の液体系の電極(すなわちカソード液)も、一次電池デバイスに使用されてきた。液体カソード液を電池電極として使用する1つの利点は、典型的な固体状態の電極よりも容量がかなり高いことである。これらの種類の一次電極は、典型的には、カレントコレクタの表面、典型的には高表面積炭素が、反応生成物によって電気的またはイオン的に絶縁されたとき、寿命の終わりに達する。これらの種類の電池の電圧は、放電中に、典型的には、安定であり、電池内の反応剤と化学反応生成物との間の電位差に依存して変わることがわかっている。したがって、高表面積カレントコレクタの寿命を向上させることによって容量を上げ、デバイスの電圧を上げることは、さらに高いエネルギー密度の電池デバイスを開発する際に有用であろう。典型的には、これらの一次電池は、カソード液が低融点材料であるため、優れた低温特徴も示す。
【0044】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスにとって並外れて有用なある種の電解質成分は、成分が気体であるという性質に起因して、実際の用途は限られている。この電解質成分は、標準的な室温および圧力で高い蒸気圧を有するため、ほんのわずかな電解質成分のみが電解質溶液に溶解し、その代わりに気体として逃げてしまう。これに加え、上述の成分が、標準的な室温(約20〜22℃)、標準的な圧力(約1.01325bar)で高い蒸気圧を有するため、電解質成分は、揮発しやすい傾向がある。
【0045】
例示的な実施形態では、電気化学デバイスは、デバイスが高い内圧で操作されるように、標準的な圧力より低い圧力で操作されてもよい。この高い圧力によって、典型的には、気体状電解質成分が、液相に留まるか、または気体濃度が高くなる。高い圧力で操作される内部セルを有することによって、もっと多くの電解質成分をセルに挿入することができる。このような成分の重量%が高いことは、セル操作にとって利点である。例えば、セルに含まれる二酸化炭素の量が多いと、正電極または負電極の上によりよい電極表面層が得られ、寄生電気化学反応が起こるのが抑制され得る。別の例は、電解質の可燃性を下げるための二酸化炭素の添加である。本特許文書に記載されるような二酸化炭素以外の化学物質が、同様の効果を有していてもよい。別の例は、電解質溶液の圧力を下げるか、または上げるための材料の追加である。
【0046】
いくつかの実施形態では、加圧下で液化されると、多くの気体状溶媒が、電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための溶媒として作用する。このような気体状溶媒の例としては、フルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロエタン、ジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタンなどが挙げられる。有利な性能についてデバイスを改良するような任意の量でこれらの溶媒に添加され得るさらなる気体状電解質成分としては、二酸化炭素、二酸化硫黄、二硫化炭素、酸素、窒素、アンモニアなどが挙げられる。
【0047】
図1に示されるように、フルオロメタン中、異なる質量%で種々の電解質成分を用いて一連の試験を行い、リチウム金属の分解を試験した。フルオロメタン自体が、リチウム金属をセラミック粉末へと分解することが知られている。フルオロメタン中、高い圧力下で10重量%の二酸化炭素を添加することによって、リチウム金属は、分解から高度に保護される。このリチウム金属の保護は、電気的に絶縁され、電解質成分のさらなる分解をブロックする、改良された表面−電解質の界相に起因する。図1は、少ない重量%で種々の電解質添加剤成分を含むフルオロメタン中に5日間浸漬されたリチウム金属の例示的な光学画像を示す。表は、種々の添加剤を含むフルオロメタン溶媒にリチウムを5日間浸漬した後のリチウム質量変化率%を示す。図1に示されるように、10重量%の二酸化炭素添加剤を含むフルオロメタン溶媒にリチウムを5日間浸漬したとき、リチウム質量は変化しなかった。結果として、いくつかの実施形態では、フルオロメタンに高い圧力下で10重量%の二酸化炭素を添加することによって、リチウム金属は、分解から保護される。
【0048】
図2は、リチウム金属アノードを有し、9:1の重量比のフルオロメタン:二酸化炭素中、0.2モル濃度(M)のリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)で構成される電解質を有する、リチウムコバルトオキシド(LiCoO)カソードの例示的な電気化学性能を示す。セルは、高い内圧で操作されたため、かなりの量の二酸化炭素が液体形態で電解質内にあった。
【0049】
さらに、例示的な電気化学エネルギー貯蔵デバイスの他の有利な特性としては、イオンを運ぶことが可能な、比較的高い電解質イオン導電率が挙げられる。さらに、この電解質は、金属表面にイオンを運んでいる間の望ましくない樹状物の生成を良好に抑制することを示す。図3は、通過する合計電荷が等しく、等しい時間量で、正の1mA/cm電流密度の後、負の1mA/cm電流密度のサイクルが行われる、19:1 フルオロメタン:CO溶媒中、0.2Mリチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)塩を含む、例示的なリチウム|リチウム対称セルを示す。この高電流サイクルは、一般的に、樹状物の生成と、2つの電極の短絡を示す。この樹状物の成長は起こらず、他の方法では電圧のほぼゼロまでの低下がみられるようなセルの短絡が起こらないことが示されている。このことは、リチウム金属上に良好な固体−電解質の界相(SEI)を形成するためのCOの有効性を示し、高レートで安定な電圧でサイクルを行い、樹状物の生成を抑制することができる。ナトリウム、マグネシウム、カリウムなどを含め、リチウム以外の金属をアノードに使用してもよく、同様の特徴を示し得る。リチウム電池に、優れたエネルギー密度を有するリチウム金属アノードを使用することができるため、樹状物の生成の抑制は、理想的である。
【0050】
いくつかの実施形態では、高い圧力をかけることによって生じる比誘電率の増加によって、電解質の導電率を上げることが可能である。図4は、セル圧力の増加に起因する、例示的な電解質の導電率の増加を示す。この例では、電解質溶液であるジフルオロメタン中の0.1M TBAPFの導電率および圧力。+48℃の温度で、電解質の熱膨張に起因して圧力が増加し、セルの容積全体を占め、次いで、温度が上昇すると、圧力が増加する。この圧力の増加により、電解質の比誘電率が増加し、次いで、電解質の導電率が増加する。典型的には、従来の電気化学デバイス内の圧力は、この圧力がほぼ大気圧になるように調整されているため、最小限である。調整中に外から誘発される圧力によって、例えば、不溶性気体(例えばアルゴンまたは窒素)によって圧力を加えることによってさらなる圧力を加えることによって、または例えば、電解質に溶解し得る二酸化炭素などの高圧気体を含むなどの電解質の化学組成によって、電解質の導電率の増加がみられ得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、圧縮ガス溶媒に由来する電解質を使用し、20℃で1.01325barの大気圧よりも大きな蒸気圧を有し、カソード表面での主な電気化学反応は、硫黄または酸素を含むか、またはこれらを取り扱い、硫化リチウムまたは酸化リチウムが生成し、これは可逆的な反応であり、再充電可能な電池デバイスを生成する。いくつかの実施形態では、圧縮ガス溶媒は、液体のみの相において、筐体中に存在し得る。例えば、図9Aの圧力グラフに示されるように、熱膨張中、液相中の溶媒の体積は、セル筐体全体を占め得る。いくつかの実施形態では、圧縮ガス溶媒は、気相と液相の組み合わせ中に存在し得る。例えば、図9Aの圧力グラフに示されるように、低い温度では、圧力曲線は、通常の溶媒蒸気圧に従い、これは液相と気相の組み合わせであることを暗示している。高い蒸気圧を有する特定の電解質溶媒が使用される場合、これらの反応剤は、これらの反応生成物が可溶性である従来の液体電解質とは対照的に、可溶性ではない。これらの反応剤の溶解度は、活性物質が電解質溶液自体の中で失われるため、これらの種類のエネルギー貯蔵デバイスの可逆性を制限するものである。このような高蒸気圧溶媒は、フルオロメタンまたはジフルオロメタンまたは二酸化炭素、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ジフルオロクロロメタンなどで構成されていてもよい。
【0052】
図5は、例示的な電気化学デバイス(500)を示す。電気化学デバイス(500)は、1種類以上の塩(512)と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液(508)とを含むイオン伝導性の電解質(506)を含み、それぞれの圧縮ガス溶媒の溶液(508)は、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液(508)が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する。電気化学デバイスは、さらに、イオン伝導性の電解質(506)を包み込み、1種類以上の塩(512)と1種類以上の圧縮ガス溶媒の溶液(508)に対して加圧状態を与えるような構造の筐体(502)と、イオン伝導性の電解質(506)と接触する電極の対(504)、(510)とを備えている。
【0053】
別の例示的な実施形態では、電解質溶液は、20℃で1.01325barの大気圧より大きな蒸気圧を示す圧縮ガスカソード液に基づき、液体電極またはカソード液として作用し、さらに化学反応剤として機能するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、圧縮ガスカソード液は、液体のみの相において、筐体中に存在し得る。例えば、図9Aの圧力グラフに示されるように、熱膨張中、液相中のカソード液の体積は、セル筐体全体を占め得る。いくつかの実施形態では、圧縮ガスカソード液は、気相と液相の組み合わせ中に存在し得る。例えば、図9Aの圧力グラフに示されるように、低い温度では、圧力曲線は、通常のカソード液蒸気圧に従い、これは液相と気相の組み合わせであることを暗示している。電池デバイス中の液体電極として使用される場合、改良された電池電圧、電力、容量、寿命または温度性能が観察される。液体電極として使用可能な、このような種類の圧縮ガス溶媒の例としては、フッ化チオニル、塩化フッ化チオニル、フッ化ホスホリル、塩化フッ化ホスホリル、フッ化スルフリル、塩化フッ化スルフリル、または同様に改良された電池特徴を示す任意の他の圧縮ガス溶媒、または2種類以上の圧縮ガス溶媒の混合物、または任意の数の圧縮ガス溶媒と従来の液体溶媒との混合物が挙げられる。液体電極(例えば、これらの基準を満たす二酸化硫黄)が存在するが、これらの液体電極は、液体溶媒に可溶化し、溶液の全体的な蒸気圧を、イオン性塩成分以外に20℃で1.01325barの大気圧より大きな蒸気圧を有する成分のみを必要とする開示されている技術に基づくデバイスの要求よりも下げてしまう。さらに、ある種の液体カソードは、一般的に化学的に反応して高蒸気圧物質を生成し、この物質により、全体的な溶液が、大気圧よりさらに高い圧力を有するようになる。しかし、これらの溶液の高い蒸気圧は、化学反応の生成物に起因し、反応剤には起因しない。
【0054】
例示的な実施形態では、上述のデバイスを密封し加圧した容器になるように構成することができるように、圧縮ガス溶媒は、液体カソードとして作用する。溶媒自体の蒸気圧に起因して、または圧力放出によって、圧力は、外から加えられてもよい。この圧力は、温度の変動、溶媒の蒸気圧の変化、または外から加えられる圧力または圧力放出に起因して変わってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、塩が、圧縮ガス溶媒または圧縮ガスカソード液にさらに添加され、伝導性溶液を生成する。使用可能なこの種の塩の例としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、テトラガリウムアルミン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、フッ化アルミニウムリチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、クロロアルミン酸リチウム、クロロチタン酸リチウム、ヘキサフルオロチタン酸リチウム、テトラブロモアルミン酸リチウム、テトラクロロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラクロロアルミン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸マグネシウム、または上述の種類の液体電極のいずれかと混合したときに伝導性溶液を生成する同様の塩が挙げられる。
【0056】
これらの溶液は、金属アノードとカソードカレントコレクタとの間の液体カソードおよび電解質として作用してもよい。このような金属アノードの例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、カドミウム、鉛または同様の金属が挙げられ得る。このようなカソードカレントコレクタの例は、一部が、活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または同様の高表面積材料で構成されていてもよい。
【0057】
さらに、任意の数の添加剤を液体カソードおよび電解質溶液に加え、電圧、容量、寿命、温度性能または安全性を高めることによって、電池性能を高めてもよい。このような添加剤としては、塩化リチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、一塩化臭素、一フッ化臭素、塩化物、フッ化物が挙げられるだろう。
【0058】
電池電極として機能する従来の液体溶媒は、一般的に液体溶媒に塩を添加し、伝導性溶液を生成することによって作られる電池電解質としても作用する。このような従来の電池デバイスの一例は、リチウムアルミニウム塩化物と混合して伝導性溶液を生成する塩化チオニル溶媒カソードと、リチウム金属アノードおよび液体カソードのためのカレントコレクタとしての高表面積カーボンブラックと、セルの短絡を防ぐ電気絶縁セパレータとで構成される。このようなデバイスは、典型的には、約3.65Vの電圧と、−60〜+85℃の操作温度範囲を示す。従来、これらの種類の電池は、リチウム金属上に保護層を生成し、この保護層を破壊する放電が行われるまで、リチウム金属と液体カソードとの間のさらなる化学反応が妨げられる。この種のデバイスに典型的な反応によって、一般的に、塩化リチウム生成物が生じ、これが液体溶液に不溶性であるため、炭素カレントコレクタの孔内に析出し、液体カソードと炭素カレントコレクタとの間の電気導電率を下げ、最終的に、デバイスの寿命を終わらせることがある。
【0059】
例示的な電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、デバイス性能を向上させるために、フッ素化圧縮ガス溶媒などの液体カソードを含む。比較例として、リチウムアノードとフッ化チオニルまたはフッ化スルフリルカソード液とに由来する電池は、これら2種の間の反応のエネルギーが高いことに起因して、従来のリチウムアノードと塩化チオニルの電池よりも高いセル電圧を与え得る。液体チオニル液体カソードを用いると塩化リチウムが生成するのとは異なり、さらに反応エネルギーが高いフッ化チオニル液体カソードを用いると、フッ化リチウムが生成するだろう。さらに、フッ化チオニル液体カソードは、塩化リチウム沈殿と比較してフッ化リチウム沈殿の粒径が小さいため、高表面積炭素表面全体を不動態化するのに必要なフッ化リチウム沈殿が多くなるため、高表面積炭素カレントコレクタの寿命を延ばし得る。さらに、フッ化チオニル圧縮ガス溶媒に由来するカソードは、塩化チオニルの従来の液体系カソードよりも融点が低く、低温での操作範囲がさらに広がり得る。最後に、フッ化チオニルの粘度が塩化チオニルと比較して低いことによって、より高い導電率の溶液が得られ、より高い電力のデバイスが可能になり得る。
【0060】
図6は、例示的な電気化学デバイス(600)を示す。電気化学デバイス(600)は、1種類以上の塩(612)と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液(608)とを含むイオン伝導性のカソード液(606)を含み、それぞれの圧縮ガスカソード液の溶液(608)は、液体のみの相の1つと、気相と液相の組み合わせの中にあり、1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液(608)が、室温で大気圧よりも大きな蒸気圧を有する。電気化学デバイス(600)は、さらに、イオン伝導性のカソード液(606)を包み込み、1種類以上の塩(612)と1種類以上の圧縮ガスカソード液の溶液(608)に対して加圧状態を与えるような構造の筐体(602)と、イオン伝導性のカソード液(606)と接触するアノード電極(604)とカソードカレントコレクタ(610)とを備える。
【0061】
電気化学キャパシタおよびLiイオン電池は、デバイス性能の向上を制限するその商業化から、その電解質の化学がほとんど変化しないことがわかっている。優れた物理特性および化学特性と、高い誘電流動性因子とを組み合わせると、標準状態で典型的には気体状である成分を使用する溶媒系に基づく電解質の使用は、拡張された温度範囲にわたって安定性および優れた性能の幅広い可能性の幅を示す。ジフルオロメタンを用いた電気化学キャパシタは、−78〜+65℃、高い操作電圧で、傑出した性能を示す。フルオロメタンを使用すると、サイクルを行うリチウム金属アノードについて約97%の高いクーロン効率を示し、これと合わせて、4Vリチウムコバルトオキシドカソードの良好なサイクル能と、優れた容量保持率で−60℃の低温での操作が可能になる。
【0062】
電気化学エネルギー貯蔵デバイス(例えば電気化学キャパシタおよび電池)を、通信から輸送までのあらゆるものに使用する。エネルギー密度の大幅な増加は、さらに高い電圧で操作可能な有機溶媒に基づく電解質の開発および使用によって、水系電解質について達成される。大部分の電解質は、液体溶媒および固体電解質系に留まるが、標準条件で典型的には気体状である電解質溶媒を用いると、ほとんどうまく機能しない。電解質として使用されないが、二酸化硫黄(T=−10℃)および塩化フッ化スルフリル(T=+7.1℃)は、再充電不可能な一次リチウム電池のカソード液として使用されてきたが、両方とも、室温で液体の電解質中のさらなる共溶媒として使用する。さらに、アンモニア(T=−33.3℃)を、アルカリ金属を溶媒和する能力に起因して、液体アノードとして使用してもよい。
【0063】
多くは、室温で気体状である物質は、典型的には非極性であり、分子間引力が小さいと推定され、室温で凝縮することが抑制されるか、または、冷却した液体状態または加圧した液体状態で塩を可溶化することが抑制される。このことは一般的には真実であろうが、分子の大きさが小さく、室温で気体状であることに起因して、低いロンドン分散力を示す、多くの合理的に極性の分子が存在する。例えば、ジクロロメタンの比誘電率(εDCM,20℃=8.9、T=+40℃)は、構造が似ているジフルオロメタンの比誘電率(εDFM,20℃=14.2、T=−52℃)よりかなり低いが、前者は、室温では液体であるのに対し、後者は気体である。低い温度で、または中程度の圧力では、これらの種類の極性気体は、液化され、塩を可溶化して液化ガス電解質を生成することができることが示されており、イオン輸送、酸化還元現象、他の基本的な試験が行われてきた。
【0064】
再充電可能なエネルギー貯蔵システムにおいて、室温および大気圧で気体状である液体のみで構成される液化ガス電解質系の使用が探求されている。多くの可能性のある液化ガス溶媒が評価されているが、その努力は、塩が溶解して伝導性の電解質を生成することができる中程度の比誘電率を有するヒドロフルオロカーボンに集中している。これらの電解質は、電気化学キャパシタにおいて、超低温操作、高いエネルギー密度を示し、電池における高容量リチウム金属アノードの潜在的な使用について、高いリチウムメッキとストリッピング効率を有する。ヒドロフルオロカーボン溶媒自体は一般的に非毒性であるが、非燃焼性のものから非常に燃焼性のものまでさまざまであり、燃焼生成物はヒトに毒性がある場合があるので、注意すべきである。さらに、これらの溶媒は、低い地球温暖化係数から高い地球温暖化係数までを示す。このように、これらの材料は、補助文書に与えられるさらなる情報を用いて適切に取り扱われるべきである。
【0065】
液化ガス溶媒の物理特性および化学特性
【0066】
ある範囲の液体および液化ガス溶媒の電気化学安定性を、これらの溶媒のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を計算することによって、定性的に概算し、図14および表1Aに示した。図14は、液化ガス溶媒のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を示す。DFTによって計算され、表1Aに示される、さまざまな溶媒群のイオン化ポテンシャルと電子親和力の値。
【0067】
表1Aは、液化ガス溶媒のイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を示す。DFTによって計算される、さまざまな溶媒群のイオン化ポテンシャル(IP)と電子親和力(EA)の値。
【表1A-1】
【表1A-2】
【0068】
最適な電気化学安定性および極性を有する溶媒から選択し、6種類の有望な液化ガス溶媒を特定し、図8Aで、従来の液体溶媒と比較している。図8Aは、DFTによって計算されたイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を示す。液化ガス溶媒としては、フルオロメタン(FM)、ジフルオロメタン(DFM)、フルオロエタン(FE)、1,1−ジフルオロエタン(1,1−DFE)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(1,1,1,2−TFE)、2 フルオロプロパン(2−FP)が挙げられる。液体溶媒:アセトニトリル(ACN)、炭酸プロピレン(PC)、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ビニル(VC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)。一般的に、これらの液化ガス溶媒は、従来の溶媒と比較して、向上した酸化還元耐性を示す。特に、これらの計算は、フルオロメタン(FM)およびジフルオロメタン(DFM)が、それぞれ高い還元電位および酸化電位で高い安定性を有することが知られているテトラヒドロフラン(THF)および炭酸エチレン(EC)よりも向上した電気化学安定性を有することを示唆している。図8Bは、静電ポテンシャルマップを示す。図8Bでは、比較のために、静電ポテンシャルマップが、これらの溶媒の物理的な構造の上に重ね合わされており、これを溶媒の電気化学的な還元安定性を定性的に決定するためのツールとして使用してもよい。最も静電ポテンシャルが高い領域(最も青色が強い領域)は、THF<FM<DFM<ECの順序で増加しており、これは、THFの高い電気化学的な還元安定性と十分に相関関係にあり、FMが同様に良好な還元安定性を有することを示している。最も静電ポテンシャルが低い領域(最も赤色が強い領域)は、EC<THF<FM<DFMの順序で増加しており、これは、ECおよびTHF中で比較的小さなLiカチオンが高い溶解度を示すことと十分に相関関係にあり、溶解度がDFM中よりもFM中で良好であることを示している。
【0069】
気体状溶媒の比誘電率(おおよそのε=10〜15)は、種々の塩を可溶化する能力を制限し得る従来の液体溶媒より顕著に低い。しかし、液化ガス溶媒の室温での粘度も、従来の液体溶媒より顕著に低い。液化ガス溶媒であるフルオロメタンおよびジフルオロメタンについてのこれらの特性を図8Cで比較している。図8Cは、(C)相対誘電率、粘度、誘電流動性値を示す。フルオロメタンおよびジフルオロメタンは、両方とも、電気化学キャパシタなどの高電力デバイスに一般的に使用されるアセトニトリルよりも液体粘度が約3分の1小さい。これらの並外れた低い粘度のために、これらの溶媒で構成される電解質において、イオン移動度は非常に高いと予想される。ある範囲の溶媒についての電解導電率の定性的な測定値として、粘度に対する比誘電率の比率
【化1】
、すなわち、溶媒の誘電流動性因子を、図8Cで比較している。液化ガス溶媒は、一般的に最も高い電解導電率のいくつかを示すアセトニトリルを含む従来の液体溶媒と比較して、優れた誘電流動性因子を有することがわかっている。この定性的な比較は、中程度の比誘電率しか有していないこれらの溶媒で、比較的高い電解導電率が予想され得ることを示す。さらに、これらの溶媒の粘度は、図15に示されるように、非常に低温でも望ましい状態のままであり、従来の溶媒だと凍結し得る温度で高い電解導電率が可能になり得る。図15は、液化ガス溶媒の粘度を示す。選択した液化ガス溶媒および比較例である従来の液体溶媒についての温度の関数としての粘度。
【0070】
ある温度範囲にわたって試験した6種類の液化ガス溶媒の蒸気圧曲線は、中程度であり、図8Dで比較されている。図8Dは、種々の従来の溶媒と液化ガス溶媒の液体範囲を用いた蒸気圧曲線を示す。試験した溶媒の中で、フルオロメタンおよびジフルオロメタンは、+25℃でそれぞれ、最も高い3.8MPaの蒸気圧および1.8MPaの蒸気圧を有する。それぞれの溶媒の融点は、−100℃未満である。これらの溶媒の沸点は全て室温未満であるが、本試験は、これらの溶媒を気密密封したセル内で自身の蒸気圧より下で液化している状態で利用し、この溶媒が通常は気体状である高い温度で電解質とセルの特性決定が可能である。さらに、これらの溶媒は、表1Bに詳細に示すように、かなり利用しやすい超臨界点を有する。超臨界相では表面張力がゼロであるため、これらの溶媒は、高表面積電極中のナノ孔に対する優れた濡れ性または接近性などのさらなる利点を与え得る。
【0071】
表1Bは、試験した液化ガス電解質の物理特性を示す。蒸気圧、密度、相対誘電率および粘度の値は、示されている場合を除き、+20℃、飽和蒸気圧での飽和液体として得られた。
【表1B】
【0072】
電解導電率の測定
【0073】
最も有望な溶媒を決定するために、液化ガス電解質の電解導電率の測定を行った。ある温度範囲にわたって種々の液化ガス溶媒および塩を試験し、これらの電解質が、典型的な温度に対する導電率曲線に従わないことがわかった。一般的に、液体電解質の電解導電率は、溶媒粘度の低下に起因して、温度上昇に伴ってほぼ線形に上昇する。しかし、液化ガス電解質は、ジフルオロメタン中の0.1M TBAPF(テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)について図9Aに示すように、広い温度範囲で導電率の3つの別個の領域を示する。図9Aは、ジフルオロメタン中の0.1M TBAPFを示す。低い温度での第1の領域は、温度上昇に伴う典型的な導電率の増加を示しており、これは、温度上昇に伴う粘度低下に起因するものである。
【化2】
。中程度の温度では、導電率の明確な最大が存在し、その後、徐々に低下する。溶媒が超臨界点(Tc,DFM=+78℃)に近づくと、導電率の低下が予想され、これは、イオン移動度を下げる比誘電率の低下に起因して起こる(εDFM,−57℃=28.2、εDFM,+20℃=14.2)。全ての溶媒は、一般的に、温度上昇に伴う比誘電率の低下を示すが、試験した溶媒は、既に室温で比較的低い比誘電率を有しており、温度が上昇すると、かなりの量のイオン対形成が起こりやすい。さらに高い温度では、導電率の急な変化が観察され、導電率曲線の第2の領域と第3の領域とを分割している。この鋭い変化は、超臨界点よりかなり低い温度で起こるため、なんらかの関連する事象がこの挙動に寄与するとは考えられない。この電解導電率の急な変化は、通常の溶媒蒸気圧を超えて、電解質溶液の急な圧力上昇と同時に起こることがわかった。この現象は、溶媒の熱膨張挙動を考慮することによって説明され得る。実際に、低い温度では、測定セルの体積のほぼ全部が液体溶媒で満たされており、一方、小さな体積は空のままであり、通常は熱蒸発によって気体状溶媒で満たされている。温度が上昇するにつれて、液相の体積は、熱膨張に起因して増加し(ρDFM,−60℃=1.24g・cc−1、ρDFM,+20℃=0.98g・cc−1)、蒸気相の体積は減少する。高い温度で、溶媒の熱膨張によって、液相がセルの体積全体を占め、温度がさらに上昇すると、液化ガス電解質の圧縮に起因して、圧力が定積増加する。溶媒の熱膨張がかなり制限される場合には、かなり高い圧力が観察され得ることに注意すべきである。ジフルオロメタンで圧力が増加すると、この溶媒の比誘電率がきわめて顕著に増加する場合がある。したがって、図9Aの第2の領域と比較して、第3の領域における電解導電率の急な変化は、溶媒の比誘電率の増加からのイオン移動度の向上に起因するものであり、これは、電解質系の圧力増加から生じる。この圧力によって誘発される効果は、全ての電解質に一般化され得るが、この溶媒の比誘電率が既に中程度であり、高い圧縮性を有することに起因して、特に顕著な効果である。
【0074】
調べた他の液化ガス電解質系についても、同様の電解導電率の現象が観察されるだろう。複数の液化ガス溶媒中の0.1M EMITFSI(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)の電解導電率は、図9Bに示されており、ジフルオロメタン、フルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、フルオロエタン、2−フルオロプロパンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンの順序で減少している。図9Bは、種々の液化ガス溶媒中の0.1M EMITFSIを示す。これは、表1Bにおいて既に記載した溶媒について、誘電流動性因子の減少する順序に従い、提案される単純な定性モデルに対する信頼性を与える(フルオロエタンおよび2−フルオロプロパンの比誘電率は、文献では入手不可能であった)。ジフルオロメタンは、最も高い電解導電率を示すことがわかっているため、種々の塩をこの溶媒中で試験し、図16に示した。図16は、ジフルオロメタン系の電解質の電解導電率を示す。ジフルオロメタン中の種々の塩についての温度の関数としての電解導電率。TBAPFは、ジフルオロメタンにおいて最も高い電解導電率を示すことがわかり、この電解質系のさらなる試験を、種々の濃度の塩を用いて行い、図9Cに示した。図9Cは、種々の濃度でのジフルオロメタン中のTBAPFを示す。0.02〜0.50Mの濃度のTBAPFの液化ガス電解質の導電率がかなり上昇しており、この塩が、比較的低い比誘電率であるにもかかわらず、ジフルオロメタンに良好な溶解度を有することを示す。0.50M溶液の電解導電率は、+30℃で31mS・cm−1の最大導電率を示す。しかし、さらに顕著なのは、−60℃で13mS・cm−1の優れた低温導電率である。導電率、融点および電位自由度に細心の注意をはらった液体系溶媒の二成分混合物の最適化が示されており、アセトニトリル:ギ酸メチル 3:1中の0.75MのTEABF(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート)について−60℃で同様の電解導電率が示されているが、この電解質の電位自由度は制限されていた。図9Cは、種々の濃度で、導電率曲線が、測定した温度全体で、電解導電率の同じ一般的な3つの領域を示すことを示す。第1の領域における導電率曲線の傾きの特徴的な変化は、最も顕著には、0.5Mの濃度のTBAPFでの変化は、これらの高い塩濃度を有する中程度の誘電率の溶媒において起こると予想されるイオン対形成の増加に起因すると考えられる。第2の領域と第3の領域を分割する温度が、0.02M〜0.5Mの塩濃度で、+35℃から+79℃まで徐々に変化している。このことは、塩濃度が増加しつつ、この溶液の熱膨張係数が低いことによって理解され得る。体積膨張を起こし、圧力の定積増加を作り出すのには、さらに多くの熱エネルギーが必要となり、導電率の急な変化が起こるだろう。
【0075】
ジフルオロメタンは、多くの塩類を用いると並外れた電解導電率を有することが知られており、この溶媒は、リチウム塩を可溶化することができないことがわかっていた。このことは、おそらく、隣接する溶媒分子の電気陰性度が非常に高いフッ素原子の立体的な嵩高さに起因するものであり、Liカチオンの周囲に溶媒和した殻が生成するのを防ぐ。さらなる研究は、リチウム ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)が、モノフッ素化液化ガス溶媒であるフルオロメタン、フルオロエタンおよび2−フルオロプロパンにのみ可溶化し得ることを示した。このことは、これらのモノフッ素化溶媒が、ジフルオロメタンよりも高い塩基性とLiカチオンへの結合エネルギーを有するという示唆と一致しており、図8Bの溶媒の既に示した静電ポテンシャルマップとも一致している。0.1M LiTFSIを含むこれら3種類のモノフッ素化液化ガス溶媒の電解導電率を図9Dで比較している。図9Dは、種々のモノフッ素化液化ガス溶媒中の0.1M LiTFSIを示す。フルオロメタンは、並外れて高い誘電流動性因子から予想されるように、3種類の溶媒のうち最も高い電解導電率を有することが示されている。1.2mS・cm−1の最大導電率は、−22℃でみられ、−60℃では1.1mS・cm−1の優れた低温導電率がみられる。比較のために、炭酸エステルおよび酢酸メチルの混合物中のLiPFの低温電解質は、−60℃で0.6mS・cm−1の電解導電率を有していたが、理想的ではない溶媒系に起因して、セル全体における性能は比較的良くないものであった。さらに高い濃度での電解導電率は、LiTFSI塩を用いてもわずかな向上しかみられなかった。さらに高い温度で、フルオロメタンが臨界温度に達したときに(Tc,FM=+44℃)、電解質からの塩の沈殿に起因する、導電率の急な低下がみられ、これは、リチウム系電解質の中で有用な安全性の特徴である。
【0076】
電気化学キャパシタ
【0077】
ジフルオロメタンは、非リチウム系の塩について最も高い電解導電率を示すため、この溶媒の電気化学安定性を試験した。図10Aは、+25℃および−60℃の両方でのジフルオロメタン中の0.1M TEABFのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。図10Aは、+25℃および−60℃でのジフルオロメタン中の0.1M TEABFのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。+25℃で、5.70Vの電位の幅を観察する。Ptに対して2.47Vの正の電位限界は、アニオン酸化の電位限界と十分に一致する。Ptに対して−3.23Vの開始電位で観察される顕著な還元電流は、逆の掃引方向における高い還元電流に連続して生じ、おそらく、作用電極の腐食に起因する。これらの電位限界は、同様の塩系を用いた以前の結果と良好な一致をみせている。−60℃で、この電解質は、6.83Vの優れた電気化学自由度を示し、これは、低い温度での反応速度がゆっくりであることに起因して、+25℃での自由度より広い。
【0078】
350Fの公称静電容量の市販の電気化学キャパシタを、ジフルオロメタン中の0.5M TEABFを用いて試験し、比較のためにアセトニトリル中の1M TEABF4で構成される標準的な液体電解質を用いて試験し、これらは、両方とも同一の機械的なセル条件で試験され、電解質に浸漬された。ある温度範囲にわたる静電容量および抵抗を図10Bに示す。図10Bは、−78℃から+65℃の温度でのジフルオロメタン中の0.5MのTEABFおよびアセトニトリル中の1M TEABFを用いた対称350F電気化学キャパシタの静電容量と抵抗の測定値を示す。一定の電流放電の間、静電容量を2.4Vから1.2Vまで測定した。抵抗は、電圧保持と一定の電流放電工程との間のiR低下によって測定された。+25℃で、両デバイスの静電容量は、約375Fであり、試験した温度範囲でかなり一定に保持されており、低い温度で約350Fまでほんのわずか低下する。ジフルオロメタンデバイスおよびアセトニトリルデバイスについて、+25℃でのそれぞれ8.5mΩおよび11.0mΩの抵抗は、高電力用途のための電気化学キャパシタに対する高い電解導電率と電解質の適用可能性を強調するものである。低い温度で、アセトニトリル系のデバイスは、その凍結点より少し上の−40℃で14.9mΩまで抵抗が徐々に増加したが、ジフルオロメタン系のデバイスは、−20℃で抵抗が5.8mΩまで減少する。このことは、この温度範囲周辺で電解導電率の最大を示す電解導電率の測定と一致している。さらに低い温度で、抵抗は、ゆっくりと上昇し、−78℃と+25℃でも同等であり、これは、この電解質の優れた低温性能を強調するものである。この操作温度は、市販のアセトニトリル系の電気化学キャパシタの公称値よりほぼ40℃低く、他の低温電解質の配合物では超えられないものである。+65℃の高い温度では、抵抗は、13.4mΩまでわずかに増加する。デバイスサイクリング性能も、超臨界相でのジフルオロメタンを用いて試験され、図17に示した。図17は、電気化学キャパシタの性能を示す。種々の温度での多数のサイクルにわたる、電気化学キャパシタの静電容量および抵抗の変化率。このデバイスの静電容量は維持されているが、比誘電率の減少に起因して、溶媒から塩が析出するため、+90℃で電解質の抵抗はかなり増加している(約1500%の増加)。温度が低くなると、塩が再び溶液に可溶化するため、抵抗は、公称値まで低下し、高温でのセル分解が促進されることに起因して、静電容量のわずかな低下を示す。
【0079】
新規なジフルオロメタン系電解質が、エネルギー密度という観点で利点を与えるかどうかを決定するために、3.0Vおよび+65℃の高い電圧および温度で1500時間にわたって電気化学キャパシタを試験し、図10Cに示した。図10Cは、−60℃から+65℃で、3.0Vでの促進寿命試験を用い、ジフルオロメタン中の0.5MのTEABFおよびアセトニトリル中の1M TEABFを用いた対称350F電気化学キャパシタの静電容量と抵抗の測定値を示す。一定の電流放電の間、静電容量を2.4Vから1.2Vまで測定した。抵抗は、電圧保持と一定の電流放電工程との間のiR低下によって測定された。アセトニトリル系の電解質を用いたデバイスは、これらの促進条件では、急速に故障し、抵抗のかなりの増加と、静電容量の低下を示しており、このことは、同様の条件での電気化学キャパシタの以前の研究と一致している。しかし、ジフルオロメタンデバイスは、同一の条件で、静電容量の低下をほとんど示さないか、または抵抗の増加をほとんど示さない。同様に、3.0V試験を−60℃で行い、デバイスの低温での寿命を試験し、静電容量または抵抗にほぼ変化がないことを示す。匹敵する静電容量を有することを既に示しているが、2.7V(典型的なアセトニトリルデバイスの場合)から3.0Vへの電圧の増加は、エネルギー密度の23%の増加に相当し、冷温エンジンクランキング、車両の始動−停止、ハイブリッドバスなど、ある範囲の電気化学キャパシタ用途にとって利点を与える。
【0080】
再充電可能なリチウム金属電池
【0081】
高い還元能のリチウム(NHEに対して−3.04V)に起因して、多くの一般的に使用される液体溶媒と接触すると、リチウム金属上に、薄く電気絶縁性であるがLiイオン伝導性の固体電解質界相がすぐに生成する。それぞれの液化ガス溶媒にリチウム金属を浸漬した後に得られた化学生成物の光学画像を図18に示す。図18は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属の光学画像を示す。比較のために露出したリチウム金属(大部分が画像に残る)を用い、6種類の異なる液化ガス溶媒にリチウム金属を浸漬した結果としての反応生成物。全てのサンプルを、全ての化学反応活性が終わったことが判明するまで溶媒に浸漬させ、その時間を表2に示している。ポリフッ素化溶媒(ジフルオロメタン、ジフルオロエタンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタン)は、それぞれ、リチウム金属上に安定なSEIを生成し、リチウム金属または溶媒のさらなる分解を防ぐ。これらの化学生成物では、これらの界面の十分な特性決定は行われなかったが、SEIは、顕著に種々のフルオロポリマーから構成されていると考えられる。モノフッ素化溶媒(フルオロメタン、フルオロエタン、2−フルオロプロパン)は、リチウム塩を可溶化することができ、それぞれが完全に、リチウム金属を粉末形態へと分解し、安定なSEIは生成しない。表2に詳細に示すように、液体フルオロメタン中、室温でリチウム金属が完全に分解する反応時間は、液体フルオロエタン中または2−フルオロプロパン中よりも顕著に遅い。
【0082】
表2は、リチウム金属浸漬試験の結果のまとめを示す。25℃で種々の溶媒にリチウム金属を浸漬して得られる反応剤の特徴。厚さが0.04cm、0.5cmのリチウム金属板を使用した。リチウム金属を浸漬し、反応を完結させた。
【表2】
【0083】
リチウム金属によるフルオロメタンの化学還元は、以下の通りであると仮定される。
【0084】
CHF+Li→LiF+CH
【0085】
Li+CH・→CHLi
【0086】
CH・+CH・→C
【0087】
化学生成物の中で、LiFおよびCHLiは、図19および図20に示されるX線回折(XRD)およびフーリエ変換赤外線分光(FTIR)スペクトルでそれぞれみとめられ、この反応スキームを裏付けている。図19は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属のXRDスペクトルを示す。フルオロメタン、二酸化炭素、FM:CO 19:1の混合物に5日間浸漬した後のリチウム金属のスペクトル。リチウム浸漬中、溶媒は、+25℃で全て液体状態であった。図20は、液化ガス溶媒に浸漬した後のリチウム金属のFTIRスペクトルを示す。フルオロメタン、二酸化炭素、FM:CO 19:1の混合物に5日間浸漬した後のスペクトル。リチウム浸漬中、溶媒は、25℃で全て液体状態であった。メチルリチウムのFTIRピークも同定した。フルオロメタンにおけるリチウム分解速度は、比較的遅く、図9Dからわかるようにリチウム塩を含む最も高い電解導電率を有する溶媒であるため、リチウム金属表面を可溶化する方法について調べた。フルオロメタン中の添加剤量における二酸化炭素の使用は、安定な炭酸リチウム表面層の生成に起因して、リチウム表面を安定化させるのに十分な量であることがわかった。この安定な界面の生成は、図19および図20に示されており、5重量%の二酸化炭素を添加すると、巨視的なレベルでSEI層にLiFまたはCHLiがほとんど存在しないことを示している。二酸化炭素は、Liイオン電池に使用するのに効果的な添加剤であるが、一般的な有機溶媒における溶解度が約0.5重量%に制限されており、温度に強く依存する。これとは逆に、二酸化炭素およびフルオロメタンは、混和性溶媒であり、この非常に効果的な添加剤を次世代電池に使用することが可能であり得る。
【0088】
リチウム金属上に安定なSEI層を生成するために二酸化炭素を添加しつつ、フルオロメタン系の液化ガス電解質の電気化学安定性をサイクリックボルタンメトリーによって決定し、これを図11Aに示し、さらに詳細に図21に示した。図11Aは、+25℃および−60℃で、電圧掃引速度が1mV・sec−1、酸化電位限界値が、200μA・cm−2のカットオフ電流を用いてなされる、フルオロメタン中の0.1M LiTFSIのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。図21は、フルオロメタンの電気化学安定性を示す。FM:CO 19:1中の0.2M LiTFSIのサイクリックボルタモグラム。WE=Pt、CEとRE=Li金属、掃引速度=1mV・sec−1
【0089】
電解質は、+25℃および−60℃でそれぞれLiに対して5.57Vおよび5.79Vでの酸化によって制限され、これは、低温での溶媒酸化速度が遅いことを示している。二酸化炭素の還元は、Liに対して2.1Vで始まることがわかっており、これは文献と十分に一致する。典型的なリチウム金属のメッキおよびストリッピングのピークは、Liに対して0V付近を中心に観察される。リチウムおよび白金アロイについてカソードの上側電位析出ピークは、同時に起こる二酸化炭素還元に起因して観察されないが、2つのアノードの上側析出電位ストリッピングピークが観察される。大きい方のピークに続き、小さい方のピークが、それぞれ0.58Vおよび1.32Vにある。−60℃で、リチウム核形成の比較的高い過電位も観察され、リチウムの分解は、Liに対して−0.39Vで始まる。
【0090】
リチウム金属は、従来の電解質において、クーロン効率が悪く、重大な樹状物の生成という問題があることが知られているが、全ての可能なアノードの中で最も高い重量容量を有する(3863mAh・g−1)ため、再充電可能な電池においてこのアノードを実現しようとする多くの試みがいまだなされている。低粘度の溶媒を用いるとき、電極での圧力増加と、LiFの表面被覆が、リチウム金属アノードのサイクル性を向上させ、樹状物生成の重大さを低減するための全ての有望な方法である。並外れて粘度が低く、蒸気圧が高いLiF化学還元生成物は全て、フルオロメタン液化ガス溶媒に固有の性質である。リチウム金属アノードを実現する際の提案された電解質系の有効性を調べるために、研磨したステンレス鋼電極について、リチウムメッキとストリッピングのクーロン効率を測定した。図11Bに示すように、フルオロメタン系の電解質は、攻撃的な1mA・cm−2のメッキおよびストリッピング速度で、各サイクルに1クーロンcm−2のリチウムが通過する400サイクルの間、約97%の安定で高いクーロン効率を示す。図11Bは、+25℃でのフルオロメタンと従来の液体系電解質を用いた400サイクルの間のSS316L作用電極についてリチウムメッキとストリッピングのクーロン効率を示す。比較のために、従来の液体電解質系(EC:DEC 1:1中の1M LiPF)は、同一のセル条件で、クーロン効率が良くなく、不安定であることが示されている。比較となるフルオロメタンおよび液体電解質のリチウムメッキとストリッピングのセルは、400サイクルで停止させ、走査型電子顕微鏡を用いてステンレス鋼基材を試験した。フルオロメタン系の電解質から堆積したリチウム層の表面形状は、ミクロンサイズの粒状の特徴を有し、樹状物の成長がみられない、非常に均一なものであることがわかる(図11C)。これは、液体電解質のサイクルから観察される、非常にポリマー性であり、樹状物のような表面とは対称的である(図22)。図11Cは、リチオ化された状態で、30°の傾きで画像化された、400サイクル後のフルオロメタンSS316L作用電極のSEMを示す。図22は、従来の液体電解質におけるリチウムメッキとストリッピングのSEM画像を示す。400回のリチウムメッキとストリッピングサイクルの後のリチウムメッキとストリッピング実験で使用され、30°の角度で、リチオ化された状態で画像化された、ステンレス鋼作用電極のSEM画像。さらに、フルオロメタンおよび比較例の液体電解質において析出したリチウム層の厚さは、それぞれ、約60μmおよび約460μmであることがわかっており、新規な電解質系のかなり優れたクーロン効率を反映している。リチウムメッキとストリッピングのクーロン効率を、ジエチルエーテル:テトラヒドロフラン 95:5(98%)(34)、2−メチルフラン(97%)(35)および1,2−ジオキソラン(98%)(36)といった報告された値と比較する。これらの系における高い効率は、LiF不動態層を生成するためにリチウム金属表面で還元された毒性のヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)塩を使用したときにのみ、みられる。フルオロメタン計では、還元されると、溶媒自体がLiF層を形成し、LiAsF塩の必要がなくなる。これに加え、炭酸リチウムを生成する二酸化炭素の還元は、リチウム金属アノードのインピーダンスとサイクル性を向上させることが示されており、これを使用し、本試験の電極を安定化させる。さらに近年、他の電解質系が、LiAsFを使用せずに高いリチウムメッキとストリッピング効率を有することが示されているが、これらのエーテル系電解質の高い電位での安定性が悪いことに起因して、従来の4Vカソード系と共に使用するための安定な酸化安定性を示すものはなかった(38)。これらの電解質は、ほとんどが、電位が低く、これらの溶媒の酸化が制限されるカソード化学物質に制限されているが、高電圧のインターカレーションカソードと共にリチウム金属アノードを使用する能力があれば、エネルギー密度も同様に顕著に上げるだろう。
【0091】
リチウムコバルトオキシド(LiCoO)カソードを使用し、従来のカソード材料を用いるフルオロメタン系の液化ガス電解質の高い酸化安定性と適合性を示した。同一のセル条件で、このカソードを試験するための比較のために、フルオロメタンおよび従来の液体系の電解質系を使用した。セルの全ての充電と放電は、高い温度で充電され、低い温度で放電されるのではなく、固定された温度で行われた。両方の電解質系における電極性能は、種々の温度およびCレートでの多くのサイクルについて示され(図11D)、対応する放電容量に対する電圧の曲線について示される(図11E)。図11Dは、種々の温度およびCレートでの放電容量を示す。また、図11Eは、種々の温度およびC/10レートでの放電容量に対する電圧を示す。+25℃で、C/10レートでの放電容量は、きわめてよく似ており、両電解質を用い、ほぼ133mAh・g−1を示している。さらに高いレートで、この液体電解質系の性能は、フルオロメタン系の電解質よりも顕著に高く、1Cレートで、それぞれ、87.2%および81.2%の容量保持率を示す。しかし、さらに低い温度で、フルオロメタン系の電解質の高レート性能は、かなり優れている。−10℃およびC/10レートで、フルオロメタンおよび液体系の電解質は、+25℃に対し、それぞれ98.3%および86.2%の放電容量保持率を示す。さらに高いレート、またはさらに低い温度で、この液体系の電解質は、高いセルインピーダンスに起因して、適切にサイクルを行うことができない。これとは対照的に、フルオロメタン系の電解質サイクルを利用するセルは、種々の温度で、さらに高いレートでもかなり良好であり、最も顕著には、従来の液体電解質は一般的に凍結してしまう−60℃、C/10レートで、60.6%の優れた容量保持率を示す。これは、かなり大きな容量の全セルを用い、−60℃、C/10レートで43.5%の放電容量保持率を有する特殊な開発された低温の液体系電解質と望ましく匹敵するものである。それぞれの温度でのセルのインピーダンススペクトルを図7に示し、フィッティングしたパラメータを表3に与えている。図7は、リチウム金属LiCoOセルの電気化学インピーダンススペクトルを示す。フルオロメタン(上側)および従来の液体(下側)に由来する電解質を用いる、カソードおよびアノードとしてそれぞれLiCoOおよびリチウム金属を用いるセルの電気化学インピーダンススペクトル。4.1Vのセル電圧で得たスペクトル。フィッティングされたインピーダンスデータを表3に示す。高周波数でのさらなるRC回路は、高圧力セルの固有の構築に起因する、電解質溶液に浸漬したワイヤと金属接点のアーチファクトであり、そのため、フィッティングしたパラメータR1は、全ての温度で、それぞれのセルについて一定を保持していた。
【0092】
フルオロメタン由来の電解質系の安定性を、図11Fにおいて、+25℃、C/2レートで液体電解質と比較する。図11Fは、リチウム金属アノードを有するLiCoO電極について、C/2レートでサイクルを行った放電容量とクーロン効率を示す。両電解質は、非常によく似た安定性を示し、フルオロメタン系の電解質は、100サイクル後に96.7%の容量保持率を示し、従来の4Vカソードとこの電解質系の高い適合性を示している。
【0093】
表3は、リチウム金属LiCoOセルについてのインピーダンス分光法フィッティングパラメータを示す。種々の温度で、2種類の電解質中のリチウム金属アノードとLiCoOカソードを用いるセルについての電気化学インピーダンス分光フィッティングパラメータ。フィッティングした回路と全インピーダンススペクトルを図23に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0094】
従来の液体電解質の低い導電率は、Liイオンセルの制限された低温性能の主な原因ではない。これらの制限の真の原因は、おそらく、電荷移動または固体電解質の界相インピーダンスに起因するものであり、使用する電極および電解質の種類によって敏感に変化する。これらの試験では同一のアノードとカソードを使用したため、このような低い温度でのフルオロメタン系電解質の高い性能は、電極上の顕著に改良されたSEI層に起因するものであると考えられる。フルオロメタン系電解質でみられる電極−電解質の界相をさらに調べるために、リチウム金属アノードとLiCoOカソードの両方に対し、X線光電子分光(XPS)分析を行った。図12でわかるように、フルオロメタンに浸漬されたリチウム金属表面は、かなりの部分がLiFおよびCHLiで構成されており、リチウム金属内の不純物に由来する少量のLiCOシグナルを伴っている。表面を安定化させるための二酸化炭素の添加が、さらにかなりの量のLiCO成分をSEIに付加し、CHLi成分が少なくなり、これはXRD分析およびFTIR分析と一致している。サイクルの後、表面成分は、従来の炭酸系の電解質に浸漬されたリチウム金属表面に作られる非常にポリマーに似たSEIとは対照的に、ほとんど化学的な変化を示さず、主にLiFおよびLiCOで構成される非常にセラミックに似たSEIを保持している。二酸化炭素還元による薄いLiCO層の生成と、非常にセラミック性の表面の粒界を通るリチウムイオンの高い移動度は、両方とも、アノードSEI層を通るインピーダンスがかなり減少することに寄与している。さらに、フルオロメタン系電解質においてみられるような化学的にきわめて均一な界面は、より均一な電流分布に寄与すると考えられ、樹状物の生成を防ぐ。
【0095】
アノードの改良は、セル性能を向上させることが予想されるが、以前の研究から、低温では、アノード上ではなく、カソード上で顕著に高いインピーダンスが発生することが示されている(44)。カソード−電解質の界相の化学をXPSによって試験し、図13に示した。サイクル前とサイクル後のLiCoO電極のXPSスペクトルを比較すると、驚くべき違いがある。少量の残留LiTFSI塩の証拠以外に、フルオロメタン系電解質中でサイクルを行った電極について、Li 1s、C 1s、F 1sおよびCo 2pスペクトルに変化はない。対照的に、従来の液体電解質中でサイクルを行った電極は、PFアニオンの分解から電極表面で顕著なLiFの増加を示す。O 1sは、他の研究と一致するポリマー型種の典型的な増加を示し、フルオロメタン系電解質中でサイクルを行った電極のO 1sスペクトルで生じる変化は、明確なものではない。二酸化炭素は、この電極表面でみられる電位で安定であると予想され、他の酸素供給源が存在しないため、O 1sスペクトルでみられるピークの増加は、LiCoO電極の表面酸素の変化に起因するものであると考えられ、電極上のさらなる表面層の生成には関係がない。リチウム金属上の改良されたSEIと、SEIをほとんど有さないか、または全く有さないカソードが、両方とも、これらの液化ガス電解質を用いるリチウム電池の低温での並外れて高い性能に寄与すると結論付けられる。
【0096】
結論
【0097】
優れた物理特性と化学特性の組み合わせによって、ヒドロフルオロカーボンに由来する液化ガス電解質は、エネルギー貯蔵デバイスに適していることが示されている。これらの液化ガス溶媒の低い融点と高い誘電流動性因子によって、ある温度範囲にわたって並外れて高い電解導電率が可能になる。それぞれ−78℃および−60℃といった低い温度での電気化学キャパシタおよびリチウム電池の高い性能は、航空用途および上層大気用途での潜在的な用途を示している。中程度の温度で従来の電解質に匹敵する導電率および性能も示されており、ハイブリッド車および電気自動車などのさらに主流の用途にも適用可能である。電解質溶媒としてジフルオロメタンを使用すると、促進された寿命条件で、高い電圧での電気化学キャパシタの操作が示され、これはエネルギー密度の23%の増加に相当する。電解質溶媒としてフルオロメタンを使用すると、リチウム金属のメッキとストリッピングについて、約97%の高いクーロン効率が得られ、樹状物の生成はみられず、従来の4V LiCoOカソードとの適合性を有し、このことは、高エネルギー密度の再充電可能なリチウム金属電池を開発する有望な道筋を与える。
【0098】
材料および方法
【0099】
材料:一実施例では、フルオロメタン(99.99%)およびジフルオロメタン(99.99%)は、Matheson Gasから得られ、フルオロエタン(97%)、1,1−ジフルオロエタン(99%)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(99%)および2−フルオロプロパン(98%)は、Synquest Labsから得られ、二酸化炭素(99.9%)は、Airgasから得られた。大気への放出を最小限にするために、全ての気体は、使用後に高圧冷蔵回収タンク中で保存された。テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(99.9%)およびリチウム ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(99.9%)といった塩は、BASFから購入し、一方、全ての他の塩(電気化学グレード)およびアセトニトリル(99.8%、無水)は、Sigma−Aldrichから購入した。比較試験のために、重量%でEC:DEC 1:1中の1M LiPFで構成される液体電解質を使用した(LP40、BASF)。FTIR測定のために、炭酸ジメチル(99%以上、無水)およびヌジョール油をSigma−Aldrichから購入した。アセトニトリルと炭酸ジメチルは、使用前にモレキュラーシーブで乾燥させたが、全ての他の物質は、受領したままの状態で使用した。
【0100】
一実施例では、リチウム電池電極のために、リチウムコバルトオキシド、カーボンブラックおよびリチウム金属を、それぞれ、Sigma−Aldrich、TimcalおよびFMCから購入した。リチウム電池およびリチウムのメッキとストリッピングの実験において、電極を、1個の多孔性の20μmポリプロピレンセパレータ(Celgard 2075)を用い、電気的に分離した。市販の電気化学キャパシタジェリーロール(公称350F)は、Maxwell Technologiesから寄付され、以前に電解質溶液とは接触したことがないものであった。
【0101】
電解導電率の測定
【0102】
電解導電率の測定を行った。簡単に言うと、特注で製造したホウケイ酸ガラス上に薄膜の白金をスパッタリングした電極を用い、4種類の電極の電解導電率の測定を行った。セル定数を、測定精度±6%で、0.1〜100mS・cm−1まで較正した。この薄膜電極は、試験した電解質から生じる高い圧力下で、確実に、幾何形状が変化せず、したがって、セル定数が変化しなかった。
【0103】
電気化学キャパシタ
【0104】
電気化学キャパシタ試験のために、ジェリーロールを高減圧下、+180℃で一晩乾燥させた。正確な抵抗測定値を得るために、ジェリーロールに4ワイヤ測定を行うために、特注のセルを設計した。全ての金属接点は、セル試験中の腐食の問題を避けるために、アルミニウムから作られた。セルの組み立ては、全てアルゴン雰囲気下で行った。
【0105】
抵抗(DCR)測定を、3Vに1時間保持した後の0.5アンペアの放電電流から得られる即時のiR低下(高解像度ポテンシオスタットで得た)から計算した。静電容量を以下のように測定した。
【0106】
静電容量=I・(t−t)/(V−V
【0107】
式中、I、VおよびVは、それぞれ、−0.5アンペア、2.4Vおよび1.2Vに設定された。
【0108】
再充電可能なリチウム金属電池
【0109】
再充電可能なリチウム金属電池試験のために、厚みが25μmのステンレス鋼316L箔の上で、重量比が8:1:1のLiCoO:カーボンブラック:PVDFバインダーで構成される電極スラリーを、適切な量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒と、ドクターブレードを用いて混合した。冷カレンダー成型した後のコーティングされた活性電極の厚さは、厚さ約40μmであった。活性物質保持量は、約0.9mAh・cm−2または6.6mg・cm−2であった(3.5V〜4.1Vの間でサイクルを行ったとき、理論容量は137mAh・g−1であると推定される)。セル試験のために、0.31cmの電極を使用した。リチウム金属は、FMCから購入し、全ての実験の前に、ガラススライドを用いてきれいな状態で試験片にされ、ポリエチレンロッドと共に巻き取られ、鏡面仕上げされた。電極は、1個の多孔性の20μmポリプロピレンセパレータを用い、電気的に分離され、両電極のためにステンレス鋼316Lカレントコレクタを取り付けた、高密度ポリエチレンで構築された特注のコインセルの内側に配置された。全てのセルの組み立てをアルゴン雰囲気下で行った。
【0110】
リチウムメッキとストリッピングのクーロン効率試験のために、セルを同様に調製したが、但し、LiCoO電極を使用せず、リチウムをステンレス鋼316Lカレントコレクタに直接メッキし、ここではこれを作用電極として使用し、研磨して鏡面仕上げした。全ての試験において、全ての濡らされる金属成分は、腐食の問題を避けるために、ステンレス鋼316であった。
【0111】
電解質の添加
【0112】
例示的な実施形態では、液化ガス電解質溶液を作成するために、まず、キャパシタまたは電池デバイス(例えば電極の対)と共に、所定の重量の塩を高電圧セル(例えば、ステンレス鋼セル)にあらかじめロードしておき、アルゴン雰囲気下で密封した。塩の所定の重量は、圧縮ガス溶媒の体積および塩の濃度に基づいて決定されてもよい。例えば、2リットル容積の圧縮ガス溶媒の0.2M溶液のために、0.2モルの塩を必要とし、ここで、1モルは、6.022x1023個の分子に相当する。次いで、セルを、圧縮ガス溶媒源の温度より低い温度まで冷却した。セルに接続した管を介し、質量流量コントローラ(MKS)または質量流量計のいずれかを用い、制御された量の溶媒を供給源から蒸発させ、セル内で凝縮させ、次いで、これを密封した。いくつかの実施形態では、セルを、取り付けたバルブを用いて密封する。いくつかの他の実施形態では、セルを、プラグまたは溶接したカバーを用いて密封する。制御された量の溶媒を選択し、塩を所定の濃度まで希釈してもよい(例えば、0.2M LiTFSI)。比較試験のために、セル密封の前に、従来の液体電解質をアルゴン雰囲気下で加えた。液体電解質を用いた比較試験のためのセルは、それ以外は、液化ガス電解質系のセルと機械的に同一であり、電極は、同様に電解質溶液に浸漬された。
【0113】
熱特性および電気化学特性の決定
【0114】
熱試験のために、試験を開始する前に、セルを温度チャンバ(Espec)の中で熱的に平衡状態にしておいた。−78℃で行う試験のために、ドライアイスを使用してセルを冷却した。温度測定は、不確実さが±2℃のK型熱電対を用いて行い、圧力測定は、測定した圧力の不確実さが±2%のデジタル圧力トランスデューサ(Omega Engineering)から記録した。温度および圧力の測定値は、デジタルデータ収集システム(Agilent)を用いて記録した。
【0115】
全ての電気化学試験は、試験電極に電気的に接続した電気フィードスルーを取り付けた高圧ステンレス鋼セル内で行った。1mV・sec−1の掃引速度で、サイクリックボルタンメトリー実験を行った。非リチウム系の電解質は、スパッタリングされた白金のカウンター電極および参照電極を使用した。リチウム系電解質は、リチウム金属のカウンター電極および参照電極を使用した。全ての電解質は、ホウケイ酸ガラス上にある、面積が1mm(露出面積は、厚さが約250nmの二酸化ケイ素不動態層によって規定される)のスパッタリングされた白金作用電極を使用した。アノードおよびカソードの電位領域のためと、作用電極の以前の分極からの影響を避けるために、それぞれの温度で、別個の白金作用電極を使用した。電流を200μA・cm−2を超えて増加させた時点で、電位自由度を計算した。5mVの正弦波のプローブ電圧を用いて電池の電気化学インピーダンス測定を行い、ZViewソフトウェアを用いてスペクトルをフィッティングした。全ての電気化学キャパシタのサイクル、サイクリックボルタンメトリーおよびインピーダンス測定は、SP−200ポテンシオスタット(Bio−Logic)を用いて行った。
【0116】
リチウム電池セルのサイクルを、電池サイクラー(Arbin)を用いて行った。LiCoOセル試験のために、サイクルは、全ての測定について、3.5〜4.1Vの100%深さの放電からなっていた。リチウムのメッキとストリッピング実験のために、1回のサイクルは、研磨したステンレス鋼316L作用電極に1mA・cm−2の電流密度で、全電荷移動1クーロンcm−2でリチウム金属をメッキし、その後、作用電極の電位がLi/Liに対して1Vより上に上昇するまで、1mA・cm−2でリチウムストリッピングすることからなっており、この時点で、電流はすぐに元に戻り、次のサイクルが行われた。クーロン効率は、単純に、以下のように計算された。
【0117】
効率%=100・(Qstrip)・(Qplate−1
【0118】
式中、Qstripは、リチウムストリッピングサイクル中に通過した電荷の量であり、Qplateは、それぞれのサイクルでメッキされた電荷の量(1クーロン・cm−2)である。
【0119】
材料の特性決定
【0120】
Bruker D8またはBruker D2 Phaserのいずれかで、Cu Kα照射を用い、サンプルの粉末X線回折(XRD)を集めた。スキャンレートが約0.02°・s−1、波長λ=0.154nmを用いる、10.0°〜80.0°までの角度をカバーする検出器の連続的な走査。空気に感受性のサンプルは、ポリエチレンのヒートシールした袋中、アルゴン雰囲気下で密封し、そのバックグラウンドは、XRDバックグラウンドスペクトルに含まれる。
【0121】
液体窒素で冷却したNicolet 6700 Analytical MCT FT−IR Spectrometerで、Attenuated Total Reflectance(ATR)付属装置(single bounce、Diamond/ZnSe crystal)を用い、フーリエ変換赤外(FTIR)測定を行った。リチウム金属の測定のために、アルゴン雰囲気下、サンプルをヌジョール鉱物油に浸漬した。次いで、サンプルを密封したバイアルに移し、次いで、ATR結晶にポリエチレンプラスチックを裏打ちしたものを用い、すぐにクランプ止めした。これにより、ヌジョール油をサンプル周囲に広げ、サンプルを大気から保護した。大気との反応に起因するFTIRスペクトルの変化が起こらないように、数分間にわたる測定を行った。
【0122】
FEI XL30 SFEGで、5keVのビームエネルギーでのUltra High Resolution(UHR)走査モードを用い、走査型電子顕微鏡画像を撮影した。大気曝露を最小限にするために、撮影されたリチウム金属サンプルを、迅速に、アルゴン雰囲気下で密封したバイアルからSEMチャンバに移した。膜の厚さを測定するために、鋭敏な刃を用い、膜の中央を切断し、30°の角度で、SEMで断面を観察した。
【0123】
Kratos Analytical Inc.製のAXIS Supraで、単色化されたAl Kα照射(hν=1486.7eV)をX線源として用い、ベース圧力10−8PaでX線光電子分光測定を行った。水分または空気曝露を避けるために、XPS分光計は、アルゴン雰囲気を満たしたグローブボックスに直接接続おり、その中でサンプルを分析のために調製した。全てのXPSスペクトルの分析領域は、300×700μmであった。通過エネルギー15kV、ステップサイズ0.05eVの高解像度スキャンを用いてXPSを行い、リチウム 1s、炭素 1s、酸素 1s、窒素 1s、フッ素 1sおよびコバルト 2pの領域について、ステップサイズ1/0eVのサーベイスキャンの後に集めた。全ての得られたXPSスペクトルをCasaXPSソフトウェアによって分析し、284.6eVでの炭化水素C1sシグナルを用いて較正した。非線形Shirley型バックグラウンドを用い、コアピークを実施した。この曲線を、重み付け最小自乗アルゴリズムを用いてなめらかにし、70%のGuassianと30%のLorentzianで構成される形状の直線にフィッティングした。リチウム金属サンプルは、洗浄しなかったが、液体電解質の場合には、表面から電解質の大部分を除去するために乾燥させた。XPS分析の前に、サイクルを行ったLiCoO電極を、Liに対して3.5Vになるまで放電し、残留する塩を除去するために、炭酸ジメチルで洗浄した。アルゴン雰囲気下でサンプルを準備した。
【0124】
数値計算
【0125】
溶媒のイオン化ポテンシャルと電子親和力を、気相中の単離された分子についてGaussian 09Wを用い、非経験的分子軌道理論によって計算した。溶媒の構造は、最初に、理論のB3LYP/6−31+g(d,p)レベルで、基底状態で幾何学的に最適化された。イオン化ポテンシャルと電子親和力を、垂直電子遷移(Franck−Condon原理)による同一の基底状態の幾何形状を用い、基底状態とラジカル溶媒分子の電子エネルギーの差から計算した。溶媒の静電マップは、GaussViewによって視覚化された。
【0126】
XPS分析
【0127】
フルオロメタンに3日間浸漬したリチウム箔のXPSスペクトルを図12Aに示す。図12Aは、フルオロメタン中に3日間浸漬した後のリチウム金属を示す。XPS分析の前に、リチウム電極の洗浄は行わなかった。Li 1sスペクトルにおける54.1eVおよび55.5eVの2つのピークは、それぞれ、CHLiおよびLiFに対応しており、それぞれ、図19および図20に示されるXRDデータとFTIRデータと一致している。C 1sスペクトルにおいて、CHLiに帰属される283.4eVのピーク(57)と、288eVの幅広いピークであるC−Fピークは、おそらく、プロトン吸収によるフルオロメタンの還元に由来するものであると考えられ、C−F結合は無傷なまま残っている。O 1sスペクトルにおける286.3eVの小さなC−Oピークと、531.3eVのピークは、他の酸素供給源が存在しないため、リチウム金属とフルオロメタン溶媒両方の酸素不純物から生じたものにちがいない。F 1sスペクトルにおけるLiF(684.6eV)およびC−F(686.7eV)のピークは、Li 1sスペクトルおよびC 1sスペクトルと一致する。得られた分析は、フルオロメタンがリチウム金属表面で分解し、LiFおよびCHLiが主な生成物であるという理論を裏付けている。しかし、リチウム表面に作られる層は、溶媒のさらなる還元を防ぐのに十分なほど圧縮されておらず、または電気的に絶縁しておらず、リチウム金属は完全に分解される。
【0128】
二酸化炭素は、リチウム表面で還元され、Li 1sスペクトル(54.5ev)およびC 1sスペクトル(289.5eV)の両方で実証されるように、薄く電気絶縁性のLiCO層を生成する。それぞれLi 1sおよびF 1sスペクトル中の55.5eVおよび684.7eVのLiFピークは、COを添加した場合であっても、フルオロメタンがリチウム表面でいまだ還元されていることを示している。しかし、COがCHLiと反応してCHCOLiを生成し、これがさらに他の化合物(さらに286.3eVおよび533.4eVのC−Oピークに寄与し得る)へと分解され得ると考えられるため、メチルリチウムは、SEIの塊中には存在しない。生成したSEIは、LiFおよびLiCOで構成されており、電解質系のさらなる化学還元を防ぐのに適した不動態層として作用する。
【0129】
メッキとストリッピング実験で使用されるリチウム金属カウンター電極の表面を、400サイクル後にXPSで分析し、データは図12Cに示されている。図12Cは、FM:CO 19:1中の0.2M LiTFSI中で400回のサイクルを行った後のリチウム金属を示す。XPS分析の前に、リチウム電極の洗浄は行わなかった。図12Bのサイクルを行っていないリチウム電池表面にみられる全てのピークも、533.4eVのC−Oピークを除き、サイクルを行ったリチウム金属表面に存在しており、これはおそらく、サイクル中のCHLi分解の生成速度が遅いことに起因するものである。図12Bは、FM:CO 19:1中に3日間浸漬した後のリチウム金属を示す。XPS分析の前に、リチウム電極の洗浄は行わなかった。C 1sスペクトルにおいて、C−F結合に起因して、さらなるピークが292.0eVにみられ、これは、SEI表面の痕跡量のLiTFSI塩に対応しているか、あるいは、還元されたTFSIイオンからのCHFに対応している。サイクルを行ったスペクトルと、サイクルを行っていないスペクトルをさらに比較すると、他の成分に対して、明らかにLiCOが増加しており、SEIの大部分を構成している。このことは、二酸化炭素の還元を示しており、5重量%でさえ、電極サイクル中のフルオロメタンの還元にとって好ましく、おそらくこれが、これらの新規電解質でみられる高く安定したメッキとストリッピングの効率の主な理由である。
【0130】
図12Dおよび図12Eは、それぞれ従来の電解質系(EC:DEC 1:1中の1M LiPF)に浸漬し、サイクル(400サイクル)を行ったリチウム金属の典型的なXPSスペクトルを示す。図12Dおよび図12Eは、それぞれ、EC:DEC 1:1中の1M LiPFに浸漬された後のリチウム金属と、EC:DEC 1:1中の1M LiPF中で400サイクルを行った後のリチウム金属を示す。XPS分析の前に、リチウム電極の洗浄は行わなかった。多くの従来の液体電解質および塩で処理されたリチウム金属電極は、包括的に、多くのグループによって、特にD.Aurbachのグループによって観察されてきた。以前の研究から、ECおよびDECは、両方ともリチウム表面でROCOLi種と少量のROLiに還元されることがわかっている。さらに、LiPFの分解によってLiFが生成するだろう。本願発明者らのXPS結果は、これらの結果と十分に一致している。Cの1sスペクトルにおいて、284.6、286.3、288.2、289.9eVでのピークは、それぞれ、炭化水素種、C−O種、O−C−O種、−OCOLi種に対応している。LiFの場合、スペクトルには55.5eVと684.7eVの両方のピークが現れる。53.5eVおよび527.8eVのピークも、ROLiの生成を反映しており、ROLiは、大きなRORO2Li型ポリマーの分解生成物であり得る。687.0eVの幅広いピークは、LiPF分解からのF−Pに割り当てられる。400サイクルの後、53.5eVおよび527.8eVでのROLiピークは消失し、ROCOLiに関連するピークの強度が大きくなった。533.3eVのピークは、サイクル後に大きくなっており、SEI相中のさらなるC−O結合種の生成に対応している。さらに、F−P種の割合も増加し、これは、電解質およびLiPF塩の両方がサイクル中に界面で連続的に分解することを示唆している。
【0131】
さらに高い電位で作られるSEI層を調べるために、C/10レート、+25°での5回のサイクルの前後にLiCoO電極でXPSも行った(分析の前に、Liに対して3.5Vまで放電)。図13Aは、サイクル前のLiCoO電極のXPSスペクトルを示す。図13Aは、3.5〜4.1Vの5回のサイクルの前後の電極を示す。Co 2pは、明確に区別されるプロファイルを示し、780.3eVと795.1eVに2p3/2成分と2p1/2成分を有する。サテライトピークは、予想される通り、主要なピークよりも結合エネルギーが10eV高いところに位置している。Li 1sおよびO 1sスペクトルにおける54.3eVおよび529.6eVのピークは、それぞれ、バルクLiCoOに対応している。O 1sスペクトルの531.6eVの幅広いピークは、有機種とLiCoOの表面欠陥の両方から生じ、欠陥座標を有している。Li 1sおよびF 1sスペクトルにおける290.7eVおよび688.0eVに位置するピークは、それぞれ、PVDFバインダー中に存在するC−F結合に帰属される。これらのピーク位置は、既に報告されているデータと十分に対応している。
【0132】
液化ガス電解質(FM:CO 19:1中の0.2M LiTFSI)における5サイクルの後、図13Bに示されるサイクル前のスペクトルからわずかな変化しかなかった。図13Bは、FM:CO 19:1中の0.2M LiTFSIを用いて5サイクルを行ったLiCoOを示す。炭酸ジメチルを用いた洗浄中に除去されなかった残留塩に対応して、Li 1s、C 1sおよびO 1sスペクトル中に小さなピークが存在する。二酸化炭素は、この電極表面でみられる電位で安定であると予想され、他の酸素供給源が存在しないため、O 1sスペクトルでみられるピークの増加は、LiCoO電極の表面酸素の変化に起因するものであると考えられ、電極上のさらなる表面層の生成には関係がない。XPSスペクトルにおいて他の主な変化はみられず、このことは、フルオロメタンに由来する電解質系においてカソード表面で生成するSEI層が、もしあったとしても非常にわずかであることを示している。
【0133】
フルオロメタン系電解質とは対照的に、従来の液体電解質(EC:DEC 1:1中の1M LiPF)において5サイクルの後、図13Cに示されるF 1sおよびO 1s XPSスペクトルにかなりの変化がある。図13Cは、EC:DEC 1:1中の1M LiPFを用いて5サイクルを行ったLiCoOを示す。図13Bおよび13CのXPSスペクトルは、炭酸ジメチルで洗浄した後、Li二対して3.5Vでのリチオ化した状態で得られた。685.2eVでの新しいピークは、LiFに特徴的なものであり、これは、Li 1sスペクトルにおける56.3eVでのLiFに特徴的なピークの出現によっても実証されている。LiF成分は、一般的に、カソード表面でのPFアニオンの分解生成物であると引用される。さらに、フルオロホスフェート中間体(すなわちLiPF)中の酸素原子に割り当てられる534.7eVのピークを含め、O 1sスペクトル中に現れる多くのピークが存在する。LiCoOカソード表面での電解質の分解および得られるSEIは、大部分は、特に低温でのカソードのインピーダンスの増加に寄与する。
【0134】
安全性および環境的な観点
【0135】
ヒドロフルオロカーボンは、一般的に、冷剤およびマイクロエレクトロニクス産業で使用される。エネルギー貯蔵デバイスのための電解質にこれらの溶媒を使用するのは一般的ではないため、関連する安全性および環境上の関心を記述することは重要である。高い揮発性を有し、水に難溶性であり、比較的化学的に安定な性質を有するため、ヒドロフルオロカーボン溶媒自体は、一般的に非毒性である。しかし、これらの燃焼生成物または分解生成物は、ヒトに対して非常に毒性であり得るフッ化水素を含んでいてもよい。この研究の範囲全体で、注意がはらわれ、燃焼事象は起こらなかった。しかし、比較的高い温度で、液体の2−フルオロプロパンの化学分解からフッ化水素が放出される事象が1回あり(損傷したガラス導電率測定電極内部の溶液によって示される)、その後、この溶媒の使用は止めた。ヒドロフルオロカーボン溶媒を、非燃焼性のものから非常に燃焼性のものまで、地球温暖化係数の低いものから高いものまで試験した。一般的に、さらに高度/低度にフッ素化された化合物は、さらに低い/さらに高い可燃性と、さらに高い/さらに低い地球温暖化係数を示すだろう。試験したヒドロフルオロカーボンの地球温暖化係数を表4に示している。
【0136】
表4は、液化ガス溶媒の地球温暖化係数を示す。試験した選択した液化ガス溶媒(69)の地球温暖化係数(GWP)
【表4】
【0137】
いくつかの実施形態では、大気への放出を制限するために、溶媒は、使用後に回収タンク中に保存した。これらの溶媒を、エネルギー貯蔵デバイスで大規模に使用する場合、適切に密封したセルは、大気への溶媒の放出を防ぐはずであり、適切な寿命後の再利用が組み込まれるはずである。ヒドロフルオロカーボンに関連する安全性および環境上の関心のさらに十分な総説は、他の箇所に示している。この試験の範囲全体で、溶媒の最も高い蒸気圧よりもかなり高いレート圧力で、高圧ステンレス鋼セルおよび管を使用した。溶媒の蒸気圧自体は中程度であるが、溶媒の熱膨張が制限される場合に、さらに高い温度でかなりの圧力が観察される場合があり、これらの事象に注意がはらわれるべきである。
【0138】
本特許文書は、多くの具体例を含んでいるが、これらは、任意の発明の範囲または請求され得る範囲に対する限定であると解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態にとって特定的であり得る特徴の記載であると解釈されるべきである。別個の実施形態の観点で特許文書に記載される特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて実施されてもよい。逆に、1つの実施形態の観点で記載される種々の特徴が、複数の実施形態で別個に、または任意の適切な部分的な組み合わせで実施されてもよい。さらに、特徴が特定の組み合わせで作用するように上に記載されて、さらに最初に請求されてもよいが、請求されている組み合わせからの1つ以上の特徴が、ある場合に、その組み合わせから実行されてもよく、その請求されている組み合わせが、部分的な組み合わせ、または部分的な組み合わせの変形例に関するものであってもよい。
【0139】
同様に、図面において操作が特定の順序で示されているが、これは、所望な結果を達成するために、このような操作を、示されている特定の順序で、または連続的な順序で行うことが必要であると理解すべきではなく、全ての示されている操作が行われることが必要であると理解すべきでもない。さらに、本特許文書に記載される実施形態における種々の系の成分の分離は、全ての実施形態においてこのような分離を必要とすると理解すべきではない。
【0140】
ほんのいくつかの実施および例が記載され、他の実施、改善例および変形例が、本特許文書に記載され、示されるものに基づいてなされてもよい。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【国際調査報告】