(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019524833
(43)【公表日】20190905
(54)【発明の名称】抗生物質を含む薬物の持続的局所送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20190809BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190809BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20190809BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20190809BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20190809BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190809BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20190809BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20190809BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20190809BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190809BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20190809BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190809BHJP
【FI】
   !A61K9/70
   !A61K45/00
   !A61K47/26
   !A61K47/34
   !A61K47/32
   !A61K47/10
   !A61K31/545
   !A61K31/4164
   !A61P31/00
   !A61P35/00
   !A61P25/04
   !A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】2019508877
(86)(22)【出願日】20170817
(85)【翻訳文提出日】20190412
(86)【国際出願番号】US2017047410
(87)【国際公開番号】WO2018035356
(87)【国際公開日】20180222
(31)【優先権主張番号】62/376,204
(32)【優先日】20160817
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517093511
【氏名又は名称】ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,キャドボロ ベイ ロード 204−2590
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャパニアン,ラフィ
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
(72)【発明者】
【氏名】ヘリウェル,ジェームズ,エー.
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
(72)【発明者】
【氏名】マロン,アマンダ
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
(72)【発明者】
【氏名】ペック,ヴィク
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
(72)【発明者】
【氏名】ロス,トロイ
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
(72)【発明者】
【氏名】グダルジ,アザデ
【住所又は居所】カナダ国 ブリティッシュ コロンビア州 ブイ8アール 5ジェイ2,ヴィクトリア,ユニット 204,キャドボロ ベイ ロード 2590,ユープラシア ファーマシューティカルズ インク.内
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA82
4C076AA94
4C076BB32
4C076CC01
4C076CC27
4C076CC32
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF31
4C084AA17
4C084MA32
4C084MA56
4C084MA67
4C084NA12
4C084ZA082
4C084ZB262
4C084ZB322
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086CC15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA56
4C086MA67
4C086NA12
4C086ZA08
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC75
(57)【要約】
外科的予防のために薬物(例えば抗生物質)を局所的に放出することができる、多孔質コーティングで被覆された薬物担持膜を含む持続放出複合フィルムを、本明細書に記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数の薬物粒子を有する薬物担持膜;
前記薬物担持ポリマー膜と接触し、第1界面を形成する第1多孔質コーティング;及び
前記薬物担持ポリマー膜と接触し、第2界面を形成する第2多孔質コーティング;
を含み、
前記薬物担持膜が約25〜500ミクロンの厚さを有し、及び前記複数の薬物粒子の少なくとも90%が10〜80ミクロンの範囲の直径を有し、及び前記薬物担持膜が、前記薬物担持膜中に20〜70体積%の前記複数の薬物粒子を含む、持続放出複合フィルム。
【請求項2】
少なくとも1つの薬物粒子が前記第1界面と接触し、及び少なくとも1つの薬物粒子が前記第2界面と接触する、請求項1に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項3】
前記第1多孔質コーティングが第1ポリマーと第1ポロゲンとを含み、及び前記第2多孔質コーティングが第2ポリマーと第2ポロゲンとを含む、請求項1又は2に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックス、前記第1ポリマー、及び前記第2ポリマーが、同じか又は異なり、及び独立してエラストマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックス、前記第1ポリマー、及び前記第2ポリマーが、同じか又は異なり、並びにポリトリメチレンカーボネート、ポリD,L−ラクチド、ポリラクチドグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリアジビン酸無水物、ポリセバシン酸、ポリビニルアルコール、それらのコポリマー及びターポリマーからなる群より独立して選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項6】
前記第1ポロゲン及び前記第2ポロゲンが、同じか又は異なり、及び独立して水溶性ポリマー又は塩若しくは糖の粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項7】
前記ポリマーマトリックスがポロゲンを更に含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項8】
前記第1多孔質コーティング及び前記第2多孔質コーティングの各々が、前記薬物担持膜の厚さの30%以下、又は20%以下、又は10%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項9】
前記第1多孔質コーティング及び前記第2多孔質コーティングの各々が、前記薬物担持膜の重量の30%以下、又は20%以下、又は10%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項10】
前記薬物担持膜の前記ポリマーマトリックスがpTMCを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項11】
前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレングリコール(PEG)、又はPLGA−コ−PEGのブロックコポリマー、又はPLDDA−コ−PEGのブロックコポリマー、又はpTMC−コ−PEGのブロックコポリマーを更に含む、請求項10に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項12】
前記第1多孔質コーティング及び第2多孔質コーティングがそれぞれpTMC及びPEGを含み、PEGが前記多孔質コーティングの約20〜70%w/wである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項13】
前記第1多孔質コーティング及び第2多孔質コーティングが、b−PLGA−コ−PEG、又はb−PLLDA−コ−PEG、又はb−PTMC−PEGを更に含む、請求項12に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項14】
前記薬物粒子が1以上の抗生物質を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項15】
前記抗生物質が、セファゾリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、リファンピン、セフォキシチン、ゲンタマイシン、アンピシリン、スルバクタム、フルコナゾール、アズトレオナム、アモキシシリン/クラブラネート、アンピシリン/スルバクタム、セフトリアキソン、セファゾリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、メトロニダゾール、ペニシリン、ピペラシリン/タゾバクタム、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、又はそれらの組み合わせである、請求項14に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項16】
手術部位に前記持続放出複合フィルムを配置してから7〜10日の期間後に前記薬物粒子の全部又は少なくとも90%が放出される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項17】
移植部位に前記持続放出複合フィルムを配置してから6時間から3ヶ月までの範囲の期間後に前記薬物粒子の全部又は少なくとも90%が放出される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項18】
前記薬物粒子が、1以上の抗がん剤若しくは鎮痛薬、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項19】
ポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数の薬物粒子を有する薬物担持膜;
前記薬物担持ポリマー膜と接触し、第1界面を形成する第1多孔質コーティング;及び
前記薬物担持ポリマー膜と接触し、第2界面を形成する第2多孔質コーティング;
を含む持続放出複合フィルムであって、
各薬物粒子は少なくとも1つの他の薬物粒子と接触し、並びに少なくとも1つの薬物粒子は前記第1界面と接触し、及び少なくとも1つの薬物粒子は前記第2界面と接触する、持続放出複合フィルム。
【請求項20】
前記薬物粒子が10〜80ミクロンの範囲の直径を有し、及び前記薬物担持膜が25〜500ミクロンの厚さである、請求項19に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項21】
移植部位に前記持続放出複合フィルムを移植してから6時間から3ヶ月の範囲の期間後に、前記薬物粒子の全部又は少なくとも90%が放出される、請求項19〜20のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項22】
手術部位に前記持続放出複合フィルムを移植した7〜14日後に前記薬物粒子の全てが放出される、請求項19〜21のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルム。
【請求項23】
前記薬物粒子が1つ以上の抗生物質を含む、請求項1〜16及び19〜22のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルムを手術部位に挿入することを含む、抗生物質予防投与を提供する方法。
【請求項24】
外科的処置後の抗生物質予防投与のための、請求項1〜16又は19〜22のいずれか1項に記載の持続放出複合フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/376,204号の米国特許法119条(e)項の下での優先権を主張し、前記仮特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、抗生物質等の活性医薬品(API:active pharmaceutical agents)の持続放出、及び外科的予防を含む、それを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
手術部位感染(SSI:Surgical site infection)は、術後30日以内又は手術時に補綴材料が埋め込まれた場合は90日以内に、外科的切開部位又はその近傍で起こる、手術手技に関連する感染である。SSIは切開部位に局在することが多いが、より深部の隣接組織又は構造中に及ぶこともあり得る。
【0004】
手術部位感染は、典型的には穿通性外傷、慢性創傷、及び感染した胆汁又は尿の存在下での胆道又は尿生殖路への侵入等の汚染された化膿創傷、気道、胃腸管、胆道、又は尿生殖路の術前穿孔に起因して発症する。SSIはまた、人工器官が挿入される無菌手術においても起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SSIを治療する現在の基準は、抗生物質の静脈内(IV)注射によるものである。しかしながら、多くの場合、IV注射は手術部位に十分に高い濃度の抗生物質を供給することができない。更に、抗生物質のIV注射は、抗生物質耐性菌の発生を引き起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の記載には、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数の薬物粒子を有する薬物担持膜;薬物担持ポリマー膜と接触し、第1界面を形成する第1多孔質コーティング;及び薬物担持ポリマー膜と接触し、第2界面を形成する第2多孔質コーティングを含む持続放出複合フィルムが含まれ、ここで、薬物担持膜は約25〜500ミクロンの厚さを有し、複数の薬物粒子の少なくとも90%は10〜80ミクロンの範囲の直径を有し、及び薬物担持膜は、薬物担持膜中に20〜70体積%の複数の薬物粒子を含む。
【0007】
別の実施形態は、ポリマーマトリックス中に埋め込まれた複数の薬物粒子を有する薬物担持膜;薬物担持ポリマー膜と接触し、第1界面を形成する第1多孔質コーティング;及び薬物担持ポリマー膜と接触し、第2界面を形成する第2多孔質コーティングを含む持続放出複合フィルムを提供し、ここで、各薬物粒子は少なくとも1つの他の薬物粒子と接触し、及び少なくとも1つの薬物粒子は第1界面と接触し、及び少なくとも1つの薬物粒子は第2界面と接触する。
【0008】
様々な実施形態では、薬物粒子は1以上の抗生物質を含む。
【0009】
様々な実施形態では、薬物粒子は、5〜14日間、又は7〜14日間若しくは7〜10日間の期間で完全に放出されるか、又はほぼ完全に放出される(少なくとも90%)。
【0010】
また、本明細書に記載の持続放出複合フィルムを手術部位に挿入することを含む抗生物質予防投与を提供する方法も提供され、ここで、薬物粒子は1以上の抗生物質を含む。
【0011】
以下の図は実施形態を示し、その中で同様の参照番号は同様の部分を表す。実施形態は、添付の図面の全てにおいて限定ではなく例として示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】一実施形態による持続放出複合フィルムを図式的に示す。
【図1B】持続放出複合フィルムの断面図を示す。
【図2A】薬物担持膜のSEM画像である。
【図2B】薬物放出後の薬物担持膜のSEM画像である。
【図3A】pTMCとPEGとのポリマーブレンドによって形成された多孔質ポリマー膜のSEM画像である。
【図3B】60/40の体積比でのpTMCとPEGのブレンドのDSCプロフィールを示す。
【図4A】PEGが浸出した後の多孔質ポリマーマトリックスのSEM画像である。
【図4B】PEGが浸出した後のpTMCのポリマーマトリックスのDSCプロフィールを示す。
【図5A】pTMC及びブロックコポリマーとブレンドしたpTMCのそれぞれのDSCプロフィールを示す。
【図5B】図5Aの2つのポリマーマトリックスの熱重量分析スペクトルを示す。
【図6A】メトロニダゾールのピーク積分値による抗生物質薬メトロニダゾールの標準曲線を示す。
【図6B】メトロニダゾール担持pTMCのDSCプロフィールを示す。
【図6C】薬物放出後のDSCプロフィールを示す。
【図7】pTMCマトリックス及び多孔質pTMC/PEGマトリックスからのメトロニダゾールの薬物放出を示す。
【図8】2つの複合フィルムからの薬物放出を示す。
【図9】薬物放出の前と後のメトロニダゾール担持多孔質ポリマーマトリックス(pTMC/PEG)のDSCプロフィールを示す。
【図10】PEGポロゲンを含む多孔質コーティングを有する複合フィルムを示す。
【図11】デキストロースポロゲンを含む多孔質コーティングを有する複合フィルムを示す。
【図12】pTMC/PEG多孔質コーティングを有する複合フィルムからの薬物放出と比較した、被覆されていないメトロニダゾール担持膜の累積放出データを示す。
【図13】pTMC/PEG多孔質コーティングを有する複合フィルムと比較した、pTMC/デキストロース多孔質コーティングを有する複合フィルムの累積放出を示す。
【図14A】放出後の複合フィルムと比較した、放出前のpTMC/PEG多孔質コーティングを有する複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。
【図14B】放出後の複合フィルムと比較した、放出前のpTMC/PEG多孔質コーティングを有する複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。
【図15A】放出後の複合フィルムと比較した、放出前のpTMC/デキストロース多孔質コーティングを有する複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。
【図15B】放出後の複合フィルムと比較した、放出前のpTMC/デキストロース多孔質コーティングを有する複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。
【図16】多孔質コーティング中の異なるポロゲン含量による薬物放出への影響を示す。
【図17A】多孔質コーティングの厚さを変化させることによる薬物放出への影響を示す。
【図17B】多孔質コーティングの厚さを変化させることによる薬物放出への影響を示す。
【図18A】薬物放出前及び放出開始から12日後のセファゾリン担持pTMC膜を示す。
【図18B】薬物放出前及び放出開始から12日後のセファゾリン担持pTMC膜を示す。
【図18C】薬物放出前及び放出開始から12日後のセファゾリン担持pTMC膜及びb−PLGA−コ−PEGブレンド膜を示す。
【図18D】薬物放出前及び放出開始から12日後のセファゾリン担持pTMC膜及びb−PLGA−コ−PEGブレンド膜を示す。
【図19】pTMCとb−PLGA−コ−PEGのポリマーブレンドからのセファゾリン放出と比較した、pTMC膜からのセファゾリン放出の百分率を示す。
【図20】被覆複合フィルムからのセファゾリン放出と比較した、被覆されていないポリマーマトリックスからのセファゾリン放出の百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一定期間にわたって持続的及び局所的に薬物を放出することができる持続放出性薬物担持複合フィルムを本明細書に記載する。多くの活性医薬品(API)を本明細書に記載の薬物担持複合フィルムに適切に製剤化し得るが、抗生物質担持複合フィルムは、外科的処置のための抗生物質予防投与として特に適切である。典型的には、複合フィルムは手術部位に配置することができ、抗生物質が制御された方法で直ちに放出され、放出は5〜14日間、又は好ましくは7〜14日間若しくは好ましくは7〜10日間持続される。有利には、複合フィルムは生分解性ポリマー又はポリマーブレンドから形成され、これは薬物放出が完了した後に完全に分解する。
【0014】
薬物放出機構は、一部には、薬物粒子(例えば薬物結晶)の溶解及びその後の溶解した薬物のポリマーマトリックスからの拡散に基づく。薬物粒子の完全な放出を確実にするために、薬物担持は特定の閾値レベル(即ちパーコレーション閾値)を上回り、それによって薬物粒子は互いに継続的に接触する(即ち、各粒子は少なくとも1つの他の粒子と接触する)。他のいかなる薬物粒子とも接触していない薬物粒子は、ポリマーマトリックス中に捕捉される傾向があり、ポリマーマトリックスが侵食されるか又は分解するまで放出されない。パーコレーション閾値を上回る薬物粒子については、溶解及び拡散の過程はポリマーマトリックス全体に多孔質ネットワークを作り出し、従って、一定期間にわたる薬物粒子の完全な放出を可能にする。
【0015】
薬物粒子の溶解特性に加えて、他の因子も放出速度又は放出期間に影響を及ぼす。特に、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックス内に更なる多孔性を作り出すポロゲン(porogen)を更に含み得る。ポリマーマトリックスは、埋め込まれた薬物粒子の吸水及び水和を促進する親水性ブロック疎水性ポリマー又はコポリマーも含み得る。更に、薬物担持ポリマーマトリックスを追加の多孔質ポリマーコーティング層で被覆することによって、放出期間を更に制御し、延長させ得る。
【0016】
図1Aは、一実施形態による持続放出複合フィルムを図式的に示す。図1Bは断面図を示す。図1Aに示すように、持続放出複合フィルム(100)は、ポリマーマトリックス(120)中に埋め込まれた複数の薬物粒子(図1Bにおいて114、114a、114b、114cとして示す)を有する薬物担持膜(110);薬物担持ポリマー膜(110)と接触して第1界面(134)を提供する第1多孔質コーティング(130);及び薬物担持ポリマー膜(110)と接触して第2界面(144)を提供する第2多孔質コーティング(140)を含み、ここで、薬物担持膜(110)は、例えば約50〜500ミクロンの厚さを有し、及び複数の薬物粒子(114)の少なくとも90%は、例えば25〜70ミクロンの範囲の直径を有し、及び複数の薬物粒子は薬物担持膜の約20〜70体積%を占める。
【0017】
様々な実施形態では、ポリマーマトリックス、第1ポリマー、及び第2ポリマーは生分解性エラストマーであり、可撓性の複合フィルムをもたらす。エラストマーは、典型的には薬物放出が完了した後に完全に分解するか又は侵食され、薬物枯渇した複合フィルムを除去する必要性をなくす。
【0018】
本明細書でより詳細に論じるように、薬物担持膜は、典型的には約50〜1500ミクロン、又は約100〜1000ミクロン、又は約25〜500ミクロン、又はより典型的には約100〜500ミクロンの厚さであり、この厚さは、第1界面(134)と第2界面(144)との間の最短距離「D」である。第1多孔質コーティング及び第2多孔質コーティングのd1とd2を合わせた厚さは、典型的にはDの40%未満である。例えば図1B参照。持続放出複合フィルムの全体の厚さ及び可撓性は特に限定されない。いくつかの実施形態では、複合フィルムは配置する部位(例えば手術部位)に適合することが好ましい。複合フィルムのサイズ(即ち、厚さ以外の寸法)に制限はなく、手術部位に応じて適切なサイズに切断し、成形することができる。様々な実施形態では、薬物粒子の全部又は大部分(90%以上)が5〜14日以内、又は好ましくは7〜14日以内、又は好ましくは7〜10日以内に放出される。
【0019】
これらの要素を以下でより詳細に論じる。
【0020】
薬物担持膜
薬物担持膜は、複合フィルムのコアとも称される、持続放出複合フィルムの薬物貯蔵部である。有利には、薬物担持膜は、担持される薬物の持続的で完全な放出(100%)又はほぼ完全な放出(少なくとも90%)を可能にするように構築される。特定の薬物担持レベル(例えば20〜70v/v%)で、図1Bに示すように、複数の薬物粒子の各々(114)は少なくとも1つの他の薬物粒子と接触しており、少なくとも1つの薬物粒子(114a)は第1界面(134)に達し、及び少なくとも1つの薬物粒子(114c)は第2界面(144)に達する。薬物粒子の分布はランダムであり得、粒子の島を形成し得る。
【0021】
このレベルの粒子分布では、界面における薬物粒子の存在及び多孔質コーティング(130及び140)の細孔(132、142)の存在によって、水性媒体(例えば手術部位の流体)との接触直後に薬物放出が起こる。図1Bにおいて、界面から複合フィルムの外側への流体経路を指示するために細孔(132及び142)を図式的に示している。ポリマーマトリックス内の薬物粒子(114b)が溶解し、溶解と拡散の間に継続的に作り出される細孔のネットワークを介してポリマーマトリックスから拡散するので、薬物放出は持続的でもある。
【0022】
薬物粒子
薬物粒子は、1以上の活性医薬成分(API)を含む固体の微粒子原薬である。いずれのAPIも本開示に適するが、抗生物質薬は、複合フィルムに大量の抗生物質薬を担持させることができ、局所的な溶解−制御放出が持続放出期間中実質的に一定であるので、特に適する。
【0023】
従って、様々な実施形態では、薬物粒子は、セファゾリン、バンコマイシン、及びメトロニダゾール等の抗生物質の粒子である。セファゾリンは、手術部位の創傷感染においてグラム陽性菌を処置するのに使用される主力抗生物質である。心臓弁置換術を受ける患者は、セファゾリンに加えてバンコマイシンで処置される。GI手術では、メトロニダゾールがグラム陰性菌を処置するために広く使用されている。他の抗生物質には、例えばクリンダマイシン、リファンピン、セフォキシチン、ゲンタマイシン、アンピシリン、スルバクタム、フルコナゾール、アズトレオナム、アモキシシリン/クラブラネート、アンピシリン/スルバクタム、セフトリアキソン、セファゾリン、シプロフロキサシン、ピペラシリン/タゾバクタム、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、レボフロキサシン、ペニシリン等が含まれ得る。
【0024】
他の様々な実施形態では、薬物又はAPIは、抗癌剤又は局所麻酔薬等の鎮痛薬であり得る。
【0025】
他の実施形態では、薬物又はAPIは、抗生物質と鎮痛薬との組み合わせ又は抗癌剤と鎮痛薬との組み合わせであり得る。
【0026】
溶解速度は、一部には、薬物又はAPIの溶解度に依存する。様々な実施形態では、薬物又はAPIは、0.05mg/ml〜100mg/mlの範囲の溶解度を有する。
【0027】
薬物粒子は、必ずしもそうとは限らないが、典型的には結晶質である。結晶性薬物粒子は薬物結晶とも称される。市販の薬物粒子は既に結晶形態であり得る。いくつかの実施形態では、薬物結晶は再結晶の産物であり、この工程は容易に微粉化及びサイズ調整することができる純粋な薬物を生じる。
【0028】
他の実施形態では、薬物粒子は、APIを1以上の可溶性の薬学的に不活性な成分と組み合わせることによって配合又は製剤化される固体粒子である。薬学的に不活性な成分は、溶解若しくは液体の取り込みを促進するか、又は細孔形成過程に関与する放出調節剤として作用し得る。薬学的に不活性な成分はまた、放出を調節することに加えて又はその代わりに、薬物粒子のサイズ又は薬物担持量を調節する充填剤、結合剤、マトリックス形成剤、又は増量剤としても働き得る。薬学的に不活性な成分の例には、限定されることなく、ラクトース、スクロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又は他の親水性成分が含まれる。
【0029】
所与の薬物粒子のサイズ又は直径は、その最も長い寸法を指す。様々な実施形態では、薬物粒子又は薬物結晶の全部又はほとんど全部(90%超)は、80ミクロン以下の直径を有する。他の実施形態では、全ての薬物粒子又は薬物結晶は50ミクロン以下の直径を有する。他の実施形態では、薬物粒子は20ミクロン以上、又は10ミクロン以上である。小さい結晶(20ミクロン又は10ミクロン未満)は、互いに容易には接触せず、ポリマーマトリックス中に捕捉される。従って、特定の実施形態では、ポリマーマトリックス中の薬物粒子の10%未満が20ミクロン未満である。他の実施形態では、ポリマーマトリックス中の5%未満の薬物粒子が20ミクロン未満である。特定の実施形態では、薬物粒子は10〜80ミクロンの範囲の直径を有する。
【0030】
狭い粒度分布が好ましい。典型的には、結晶化薬物(例えばメトロニダゾール)を微粉化し(例えば乳棒と乳鉢を用いて)、ふるい分けして狭い粒度分布の薬物結晶を提供し得る。粒度分布は、平均直径及び標準偏差として、又は特定の範囲内の粒子百分率によって表し得る。特定の実施形態では、ポリマーマトリックスに担持される薬物粒子の少なくとも90%は、10〜80ミクロン、又はより好ましくは20〜50ミクロンの直径を有する。他の実施形態では、複数の薬物粒子は、40ミクロンの平均直径及び平均直径の50%未満の標準偏差を有する。薬物粒子のサイズは、膜の厚さに基づいて設計することができる。薬物粒子又は薬物結晶の直径は、様々なメッシュサイズを使用してふるい分けすることによって制御することができ、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて直接測定することができる。図2Aは、ポリマーマトリックス(210)中に埋め込まれた複数の薬物粒子(214)を有する薬物担持膜(200)のSEM画像である。多孔質コーティングは存在しない。薬物粒子は直径20〜50ミクロンの範囲内にあることが示されている。
【0031】
薬物粒子は、全ての薬物粒子の完全な放出(100%)又はほぼ完全な放出(少なくとも90%)を可能にするのに十分な量でポリマーマトリックス中に担持される。図2Bは、薬物が完全に放出された後の図2Aの薬物担持膜(200)のSEM画像である。ポリマーマトリックス内の薬物粒子が捕捉されるのを回避するために、薬物粒子の量は、最低でもパーコレーション閾値に達するべきであり、これは、各薬物粒子が少なくとも1つの他の薬物粒子と接触し、及び少なくとも1つの薬物粒子がポリマーマトリックスの外面に達することを意味する(図1Bの薬物担持膜と多孔質コーティングとの間の界面参照)。薬物粒子が占める体積は、薬物粒子が放出された後にポリマーマトリックス中に作り出される全体的な多孔度に対応する。
【0032】
従って、様々な実施形態では、薬物粒子の体積百分率は薬物担持膜の約20〜70%である。体積百分率(又は「v/v%」)は、薬物担持膜の総体積中の全薬物粒子の総体積の百分率を指す。様々な実施形態では、薬物粒子の体積百分率は、薬物担持膜の約20〜60%、20〜50%、20〜40%である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」は、特定される値の±30%の範囲の値を指す。例えば、「約10マイクロメートル」という語句は、10マイクロメートルの±30%の範囲、すなわち7〜13マイクロメートルを含む。
【0034】
ポリマーマトリックス
ポリマーマトリックスは、その中に薬物粒子が組み込まれる足場である。ポリマーマトリックスは、1以上の生分解性ポリマーを含む。ポリマーの例としては、限定されることなく、ポリトリメチレンカーボネート、ポリD,L−ラクチド、ポリラクチドグリコリド、即ち、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリアジビン酸無水物、ポリセバシン酸、ポリビニルアルコール、及びそれらのコポリマー又はターポリマーが挙げられる。
【0035】
エラストマーは、そのゴム状で柔軟な特性のために特に適する。エラストマーで形成された膜又はフィルムは、手術部位等の投与部位に容易に適合する。適切なエラストマーは、典型的には37℃未満のガラス転移(Tg)温度を有する。
【0036】
特定の実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリトリメチレンカーボネート又はそれを含むブロックコポリマーで形成される。ポリトリメチレンカーボネート(pTMC)は−12.57℃のTgを有し、酸分解産物を生成することなく酸化及び/又は酵素加水分解による表面侵食によって分解する。pTMCの分解時間はその分子量の関数である。例えば、ラットの皮下に移植された150+/−50kDaの分子量を有するpTMCフィルムは1ヶ月以内に分解する。
【0037】
ポリマーマトリックスは内因性酵素の存在下で分解するか又は侵食されるが、適切なポリマーの分解期間は、典型的には薬物放出期間よりはるかに長い。従って、ポリマーマトリックスからの薬物粒子の放出は、ポリマーマトリックスの侵食よりもむしろ、ポリマーマトリックス内の多孔質ネットワークを介した溶解薬物の拡散に主に起因する。
【0038】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、薬物粒子が溶解及び拡散するときにのみ多孔質になる。他の実施形態では、ポリマーマトリックスはポロゲンを更に含んでもよく、ポロゲンは、ポリマーマトリックス内に細孔を作り出すが薬学的に不活性である物質である。ポロゲンは、薬物粒子のように溶解し、拡散するが、それ自体は薬学的に不活性である、塩又は糖の水溶性粒子(例えばデキストロース)であり得る。
【0039】
微粒子ポロゲンの存在は、薬物担持量、従って投与及び放出期間を調節することができる。ポロゲンが存在する場合、ポロゲンと薬物粒子との合計体積は、粒子がパーコレーション閾値に達することを確実にするために薬物担持膜の総体積の20〜70%(v/v)の範囲内であるべきである。
【0040】
他の実施形態では、ポリマーマトリックスは天然多孔質であってもよく、これは、薬物粒子又は微粒子ポロゲンの溶解及び拡散によって作り出される細孔とは無関係に本質的に多孔質であることを意味する。天然多孔質ポリマーマトリックスは、生分解性ポリマー(例えばpTMC)をポリエチレングリコール(PEG)等の水溶性ポリマーとブレンドすることによって調製し得る。典型的には、PEGは20kDa以下の低い分子量を有する。本明細書で使用される場合、「ブレンド」とは、化学結合を形成することなく、2以上のポリマー又は物質が物理的に組み合わされることを意味する。
【0041】
図3Aは、pTMCとPEGのポリマーブレンドによって形成された多孔質ポリマーマトリックス又は膜(300)のSEM画像である。薬物粒子は存在しない。膜は、ポリマーブレンドを共溶解し、型に流し込むことによって形成することができる。図3Aに示すように、膜は、膜全体に分布した細孔を有する多孔質である。
【0042】
多孔度、即ち、膜中の全ての細孔の体積百分率は、ガスベースの技術、重量法、又は流体再飽和法を用いて測定することができる。より具体的には、DSCを用いた熱分析を使用して、pTMCとPEGとのブレンドで形成された膜の多孔度及び細孔連結性を評価し得る。図3Bは、60/40の体積比でのpTMCとPEGのブレンドのDSCプロフィールを示す。DSCプロフィールにおけるピークは、PEG(60.71℃)及びpTMC(−14.48〜−15.48℃)の融点(Tm)に対応する。
【0043】
水性媒体中で水和すると、水溶性PEGはポリマーマトリックスから浸出し、ポリマーマトリックス内に更なる多孔質ネットワークを形成する。従って、微粒子ポロゲンと同様に、PEGもポロゲン(即ちポリマーポロゲン)として作用する。図4Aは、PEGが浸出した後の多孔質ポリマーマトリックス(300)のSEM画像である。示されるように、図4Aの細孔は、図3Aの細孔と比較して拡大している。
【0044】
図4Bは、PEGが浸出した後のpTMCのポリマーマトリックスのDSCプロフィールを示す。示されるように、PEGの量は実質的に減少しており、浸出したPEGの百分率は、水和の前後のPEG及びpTMCのそれぞれのピークの面積によって確認することができる。
【0045】
水和の結果としてのPEGの吸熱のエンタルピーの減少(Tm、ピーク=60.71℃)は、除去されたPEGのパーセント、並びに多孔度及び細孔連結性のレベルの指標として使用し得る。表1に示すように、60/40の体積比のpTMCとPEGとのポリマーブレンドでは、ほとんど全てのPEGが水和後に浸出し、一方、より少ないPEG含量を有するポリマーブレンドでは、いくらかのPEGが捕捉されたままであった。
【0046】
【表1】
【0047】
更なる実施形態では、pTMCを少なくとも2つの生分解性ポリマーを含むブロックコポリマーとブレンドする。典型的には、生分解性ポリマーのうちの1つは親水性ポリマー(例えばPEG)である。他の生分解性ポリマーは、ポリ(D,L乳酸)(PLDDA)などの疎水性ポリマーであり得る。それ自体がPLGA等のコポリマーであってもよい。より具体的には、ブロックコポリマーは、例えばb−PLGA−コ−PEG、b−PLDDA−コ−PEG、又はb−pTMC−コ−PEGであり得る。ブロックコポリマーは、親水性ブロックPEGに起因してポリマーマトリックス中への水の取り込みを促進する。pTMCと同様に、ブレンドされたポリマー又はコポリマーは、薬物粒子が放出された後、最終的に分解する。
【0048】
ブロックコポリマーは、5重量%から80重量%までの量でブレンドされ得る。その量は、ポリマーマトリックスへの水の取り込み又は拡散の速度に直接影響を及ぼし、それが次に薬物溶解及び薬物放出の速度、並びに放出期間の長さを制御し得る。様々な実施形態では、ブロックコポリマーは、5〜70重量%、30〜70重量%、40〜70重量%、50〜70重量%、又は60〜70重量%の量であり得る。
【0049】
ブロックコポリマーの組成は、水取り込みの速度を更に微調整するか、さもなければ調節することができる。例えば、コポリマー(例えばPEG及びPLGA)のモル比又はそれぞれの分子量は、水拡散の速度を増加又は減少させるように調整し得る。典型的には、より高い比率のPEG又はより低い分子量のPEGは、より速い水取り込み又は拡散をもたらし得る。具体的な実施形態では、ブロックコポリマーはb−PLGA−コ−PEGであり得、ここでPLGAブロックは75kDaの分子量を有し、PEGブロックは5kDaの分子量を有する。
【0050】
ブロックコポリマーは、典型的にはpTMCと十分にブレンドされて均一なブレンドを提供する。図5Aは、b−PLGA−コ−PEG(80:20の重量比)とブレンドしたpTMCのポリマーマトリックスと比較した、pTMCポリマーマトリックスのDSCプロフィールを示す。図5Bは、図5Aの2つのポリマーマトリックスの熱重量分析スペクトルを示す。ポリマーブレンドは均一と示されている。
【0051】
ポリマー粒子への薬物粒子の充填
本明細書で論じるように、ポリマーマトリックス(単一ポリマーであるかポリマーブレンドであるかコポリマーであるかにかかわらず)は、薬物粒子を収容する貯蔵庫である。薬物粒子は、放出中に、担持する薬物粒子がポリマーマトリックスの内部にほとんど(10%未満)又は全く捕捉されないことを確実にするために、一定の体積百分率でポリマーマトリックスに充填される。薬物担持量を調節するために、追加の微粒子ポロゲンがポリマーマトリックス中に存在してもよい。
【0052】
薬物粒子は、本明細書で論じるように、最初にポリマーと適切なサイズ及び粒度分布の薬物粒子との溶液を調製することによってポリマーマトリックスに組み込み得る。溶媒は、薬物粒子を溶解しないものであれば特に限定されない。典型的には、溶媒は、例えばジクロロメタン又はクロロホルムを含む極性有機溶媒である。
【0053】
次いで、ポリマー溶液を超音波処理及び/又は機械的混合によって混合して、均一な懸濁液を得る。懸濁液を不活性材料(例えばガラス)の型に注ぎ入れる。溶媒を除去すると、薬物担持ポリマー膜が形成される。
【0054】
別の実施形態では、無溶媒又は低溶媒条件下で、薬物粒子とポリマー又はポリマーブレンドとを混合し、シート又は膜に押出し得る。押出は、薬物粒子がホットメルト条件下で熱安定性であることを条件として、室温又は高温(ホットメルト)で行い得る。
【0055】
薬物担持膜の厚さは、押出パラメータによって、又は溶媒キャスティングの場合には、型に添加されるポリマー/薬物懸濁液の量若しくは濃度によって、あるいはマイクロメータ調節可能なフィルムキャスティングナイフを使用することによって制御することができる。様々な実施形態では、薬物担持膜は、約25〜500ミクロンの厚さ又は100〜500ミクロンの厚さである。より具体的な実施形態では、薬物担持膜は約100〜300ミクロンの厚さである。
【0056】
本明細書で論じるように、担持される複数の薬物粒子は狭い粒度分布を有し、例えば少なくとも90%の薬物粒子が20〜50ミクロン幅の範囲内の直径を有する。薬物担持レベルは約20〜70体積%である。薬物粒子(又は薬物粒子と糖粒子等の微粒子ポロゲンとの組み合わせ)を充填するために、薬物及びポリマーマトリックスのそれぞれの密度を考慮することによって、粒子の重量百分率を目標体積百分率から導き出すことができる。様々な実施形態では、薬物担持膜中の薬物粒子の重量百分率は約25〜55重量%である。
【0057】
多孔質コーティング
薬物担持膜は、薬物放出を更に制御するのに役立つ、即ち薬物担持膜からの薬物放出を遅らせることによって働く2つの多孔質ポリマーコーティングの間に挟まれている。薬物担持膜中に分散した薬物粒子の少なくとも一部は、膜と多孔質コーティングとの間のそれぞれの界面に達する。多孔質コーティング中の細孔は、薬物粒子と複合フィルムが配置されている組織環境(例えば手術部位)との間の流体連通のための経路を作り出す。
【0058】
各々の多孔質コーティングは、天然の多孔質ポリマー、又はポリマーとポロゲンとを含むポリマーブレンドで形成される。多孔質ポリマーマトリックスと同様に、ポロゲンは、微粒子(例えば塩若しくは糖結晶)又はPEG、HPMC若しくはペクチン等の水溶性ポリマーであり得る。ポリマーは、薬物担持膜のポリマーマトリックスと同じでもよく又は異なっていてもよい。好ましい実施形態では、多孔質コーティングのポリマーはポリマーマトリックスのポリマーと同じであり、それによって粘着性複合フィルムを作り出す。
【0059】
多孔質コーティングは、薬物担持膜の表面にポリマーブレンドの溶液を刷毛塗り又は噴霧することによって形成し得る。あるいは、薬物担持膜をポリマーブレンドの溶液に浸漬してもよい。多孔質コーティングの厚さは、浸漬溶液又はコーティング溶液中のポリマーの濃度によって制御し得る。また、コーティングの厚さを増すために浸漬又はコーティングを繰り返してもよい。様々な実施形態では、薬物担持膜の各面の多孔質コーティングの厚さは、薬物担持膜の厚さの20%以下、又は10%以下、又は5%以下である。
【0060】
多孔質コーティング中のポロゲンの量が多孔度を決定し、それが次に薬物放出に影響を及ぼす。様々な実施形態では、多孔質コーティングは、15〜40%の多孔度又は25〜35v/v%の多孔度を有する。具体的な実施形態では、多孔質コーティングは、60/40(v/v)のpTMCとPEGとのポリマーブレンドである。他の具体的な実施形態では、多孔質コーティングは、pTMCとデキストロース粒子とのポリマーブレンドである。
【0061】
複合フィルムからの薬物放出
本明細書に記載の複合フィルムは、6時間から2〜3ヶ月までの期間にわたる1以上のAPIの高度に局所化された長期送達に独自に適した持続放出プロフィールを示すように構築されている。
【0062】
持続放出特性は、とりわけ、薬物の溶解度、ポリマーマトリックスの多孔度、親水性ブロックコポリマーの量、ポリマー膜中の薬物担持量、及び多孔質コーティングの厚さと多孔度によって決定される。抗生物質については、様々な実施形態は、5〜14日間、又は好ましくは7〜14日間、又は好ましくは7〜10日間の持続放出を提供する。
【0063】
インビトロ薬物放出特性は重要な洞察を提供することができ、インビボ薬物放出と相関可能である。インビトロ薬物放出は、典型的には、時間の関数としての複合フィルムからの薬物放出量として評価される。薬物放出量は、ピーク積分の絶対値に基づき、H−NMR又はHPLCを用いて定量化し得る。
【0064】
薬物放出特性を評価するために、ピーク積分値(NMR又はHPLCスペクトルにおける)と薬物濃度の標準曲線を、薬物と既知の薬物濃度に特徴的なピークを用いて最初に作成する。図6Aは、メトロニダゾールのH−NMRピークのピーク積分値による抗生物質薬メトロニダゾールの標準曲線を示す。
【0065】
水性放出媒体中の放出された薬物の試料を所定の時間間隔で採取し、定量化のためにH−NMR又はHPLCに供する。放出量は、ピーク積分値を標準曲線と比較することによって確かめることができる。放出は、重水及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中で行った。
【0066】
あるいは、DSCプロフィール及びピーク強度も、薬物放出を定量化するために使用し得る。図6Bは、メトロニダゾール担持pTMCのDSCプロフィールを示す。このプロフィールは、強いシグナルが155℃のTmでのメトロニダゾールに対応することを示す。図6Cは、155℃にピークが存在しないことによって証明されるように、薬物放出が完了した後のDSCプロフィールを示す。
【0067】
薬物放出は、典型的には、非多孔質ポリマーマトリックスからよりも天然多孔質ポリマーマトリックスにおける方が速い。図7は、多孔質pTMC/PEGマトリックスからの放出と比較した、pTMCマトリックスからのメトロニダゾールの薬物放出を示す。示されるように、多孔質ポリマーマトリックス(pTMC/PEG)からの抗生物質薬放出ははるかに速く、5時間以内にほぼ完了に達した。対照的に、pTMCマトリックスからの薬物放出はより遅く、完全に放出するのにより長い時間(約10〜20時間)を要した。
【0068】
薬物担持膜からの薬物放出は、典型的には多孔質コーティングによって有意に妨げられる。多孔質コーティングを有さない薬物担持膜からの薬物放出(例えば図7参照)と比較して、本明細書に開示される複合フィルムは、数日間にわたって薬物を放出することができる。図8は、2つの複合フィルムからの薬物放出、及び約150〜240時間の持続放出が達成された(多孔質コーティングなしでの10〜20時間と比較して)ことを示す。
【0069】
使用方法及び投与経路
本明細書に記載の薬物担持複合フィルムは、薬物の高度に局所化された長期放出が有益である組織環境に配置するのに適する。特に好ましい実施形態では、複合フィルムは1つ以上の抗生物質の結晶を担持しており、外科的予防に使用される。特に、複合フィルムは、術後及び切開部の閉鎖前に手術部位に配置される。手術部位での液体による水和時に、抗生物質の即時放出が起こり、放出は7〜10日間持続可能であり、これは抗生物質の外科的予防使用の重要な期間である。
【実施例】
【0070】
実施例1
薬物担持膜
メトロニダゾールを再結晶化し、50μmのふるいを用いて分粒した。得られたメトロニダゾール結晶を、pTMC(分子量=150+/−50kDa)を含むジクロロメタンに懸濁し、フィルムに成形した。
【0071】
メトロニダゾールの重量による負荷レベルは33.3%(即ちメトロニダゾールとpTMCの総重量のうちのメトロニダゾールの重量百分率)であった。メトロニダゾール(1.45g/cm)及びpTMC(1.24g/cm)の密度を考慮すると、メトロニダゾール結晶の対応する体積百分率は30%v/vであった。
【0072】
実施例2
薬物担持多孔質膜
メトロニダゾール担持天然多孔質膜も実施例1と同様の方法で調製した。特に、メトロニダゾール結晶を60/40(v/v)のpTMC及びPEG(8kDa)に懸濁し、多孔質フィルムに成形した。図9は、薬物放出の前と後のメトロニダゾール担持多孔質ポリマーマトリックス(pTMC/PEG)のDSCプロフィールを示す。完全又はほぼ完全な薬物放出は、メトロニダゾールに特徴的なピーク(Tm=155℃)が存在しないことによって証明された。更に、PEGに特徴的なピーク(Tm=60℃)も放出後に消失し、PEGもポリマーマトリックスから浸出したことを示した。
【0073】
実施例3
PEGポロゲンを含む複合フィルム
実施例1の薬物担持膜を多孔質コーティングで被覆した。pTMCとPEG(重量で40/60)の溶液を調製して、40重量%のPEGの多孔質コーティングを形成した。多孔質コーティングは、薬物担持膜にpTMC/PEG溶液を刷毛塗りすることによって、又は薬物担持膜をポリマー溶液に浸漬することによって形成した。複合フィルムの全厚は、各々約5〜10μmの厚さの多孔質コーティングを含めて(浸漬後に厚さが合計10%増加する場合)、約250μmである。
【0074】
図10はPEGポロゲンを含む多孔質コーティングを有する複合フィルムを示す。左のパネルは複合フィルムの断面図(即ち厚さ寸法)であり、右のパネルは複合フィルムのコーティング表面である。コーティング表面は、pTMCとPEGとのポリマーブレンドの均一性(即ちpTMCとPEGとのポリマー鎖が点在して単相を形成している)のために滑らかな外観を有することが観察できた。
【0075】
実施例4
デキストロースポロゲンを含む複合フィルム
実施例1の薬物担持膜を多孔質コーティングで被覆した。pTMCとデキストロース結晶の溶液を調製して、33.3重量%のデキストロースポロゲンの多孔質コーティングを形成した。多孔質コーティングは、薬物担持膜にpTMC/デキストロース溶液を刷毛塗りすることによって、又は薬物担持膜をポリマー溶液に浸漬することによって形成した。複合フィルムの総厚は175μmであった。各々の多孔質コーティングは約5〜10μmの厚さであった。
【0076】
図11は、デキストロースポロゲンを含む多孔質コーティングを有する複合フィルムを示す。左のパネルは複合フィルムの断面図(即ち厚さ寸法)であり、右のパネルは複合フィルムのコーティング表面である。pTMCとデキストロース粒子とのポリマーブレンドの不均一性のために、コーティング表面は粗い(PEG/pTMCコーティングよりも滑らかでない)外観を有することが観察できた。
【0077】
実施例5
薬物放出の定量化
放出実験は2mlエッペンドルフチューブ中の重水中で行い、チューブを37℃に設定したシェーカー(Thermo Fisher)内に配置し、650rpmで撹拌した。飽和を避けるために、放出媒体を頻繁に交換した。
【0078】
1、2、4、7、24、48、72、144、及び240時間目に放出媒体の2ml試料を取り出した。各時間間隔での薬物放出量をH−NMRによって測定し、ピーク積分値を用いて、標準曲線と比較することによって薬物の量を確認した(例えば図5)。
【0079】
HPLCによる定量化も、時間の関数としてのPBS緩衝液中の薬物放出を評価するために使用し、同様の結果を得た。
【0080】
実施例6
pTMC/PEG被覆複合フィルムからの薬物放出
PEG/pTMC多孔質コーティングで被覆したメトロニダゾール/pTMC膜を有するメトロニダゾール担持複合フィルムからのメトロニダゾールの累積放出をHNMRによって評価した。メトロニダゾール担持pTMC膜試料を、33.3w/w%の理論的担持量のメトロニダゾールを含むより大きな膜から切断した。被覆していないTMC膜と被覆したTMC膜の両方を同じ膜から切り出した。多孔質PEG/pTMCコーティング層は40w/w%のPEGを含有した。コーティング層はメトロニダゾールを全く含有しなかった。コーティング層は、浸漬コーティング又は刷毛塗りのいずれかによって形成した。
【0081】
図12は、pH7.4でPBS中に放出された、非被覆メトロニダゾール担持膜、浸漬被覆メトロニダゾール担持複合フィルム、及び刷毛塗り被覆メトロニダゾール担持複合フィルムの2つの試料(S1及びS2)の累積放出データを示す。示されるように、被覆した複合フィルムは、被覆していないメトロニダゾール担持膜についての10時間未満と比較して、はるかに長期間のメトロニダゾールの放出(7日間にわたる)を提供する。
【0082】
図14A及び図14Bは、放出後と比較した、水和及び薬物放出前の複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。示されるように、PEG(コーティング層中)及び膜中の薬物に対応するピークは放出後に消失した。
【0083】
実施例7
pTMC/デキストロース被覆複合フィルムからの薬物放出
pTMC/デキストロース多孔質コーティングで被覆したメトロニダゾール/pTMC膜を有するメトロニダゾール担持複合フィルムからのメトロニダゾールの累積放出をHNMRによって評価した。図13は、pTMC/PEG多孔質コーティングを有する複合フィルムと比較した、この複合フィルムの累積放出を示す。示されるように、pTMC/デキストロースコーティングは、pTMC/PEGコーティングを有する複合フィルムよりも小さな程度で放出を遅らせた。
【0084】
図15A及び図15Bは、放出後と比較した、水和及び薬物放出前の複合フィルムのそれぞれのDSCプロフィールを示す。示されるように、デキストロース(コーティング層中)及び膜中の薬物に対応するピークは放出後に消失した。
【0085】
実施例8
ポロゲン含量によって影響を受ける薬物放出
図16は、薬物放出が多孔質コーティング中に存在するポロゲンの量によって影響され得ることを示す。実施例6に示される結果と一致して、多孔質コーティング(40%PEG又は60%PEG)を有する複合フィルムは、被覆していない薬物担持膜と比較した場合、より遅い放出を示した。図16は更に、異なるコーティングを有する複合フィルムからの放出が、多孔質コーティング中のポロゲンの量に依存して有意に異なり得ることを示す。より具体的には、40%PEGの多孔質コーティングを有する複合フィルムは、60%PEGの多孔質コーティングを有する複合フィルムと比較してはるかに遅い放出を示した。結果は、より高いPEG含量(60%)及びより高い多孔度では、多孔質コーティングは、より低いPEG含量(40%)の多孔質コーティングよりも小さな程度で薬物放出を妨げることを示す。
【0086】
実施例9
多孔質コーティングの厚さによって影響を受ける薬物放出
図17Aは、同じポロゲン百分率含量(40%)では、多孔質コーティングの厚さが薬物放出に影響を及ぼし得ることを示す。特に、多孔質コーティングが厚いほど(3×浸漬コーティング)、多孔質コーティングは薬物放出をより妨げた。
【0087】
図17Bは、30%PEGとブレンドしたpTMCによって形成された多孔質コーティングについての同様の傾向を示す。示されている百分率は、薬物担持膜の厚さに対するコーティング厚の百分率であり、0%は薬物担持膜が被覆されていなかったことを意味する。図17Aに示す結果と同様に、コーティングの厚さが増すにつれて薬物放出は遅くなった。
【0088】
実施例10
セファゾリン担持膜における薬物放出に対するポリマーマトリックスの多孔度の影響
アルミニウム箔で覆ったビーカー中でアセトンと水の混合物(50:50v/v、100ml)からセファゾリン(1.1g)を再結晶させた。セファゾリンを、最初に40℃で撹拌しながら完全に溶解した。室温に戻した後、アルミニウム箔にあけた穴を通して溶媒をゆっくり蒸発させた。2〜3日後、再結晶したセファゾリン結晶を分離し、乾燥し、粉砕して、53又は75μmのふるいに通した。
【0089】
再結晶したセファゾリンを2種類のポリマーマトリックスに充填して、薬物放出に対する膜ポリマー組成物の影響を決定した。より具体的には、<75μmのふるいを通した後、セファゾリン結晶を、(1)pTMCポリマーマトリックス及び(2)pTMCとb−PLGA−コ−PEG(PLGAの分子量=75kDa、PEGの分子量=5kDa)との80:20(重量)のポリマーブレンド中に33.3%w/wレベルで充填した。
【0090】
2つのセファゾリン担持膜をPBS緩衝液中で12日間、薬物放出について試験した。
【0091】
図18(A)及び図18(B)は、薬物放出前及び12日後のセファゾリン担持pTMC膜をそれぞれ示す。示されるように、薬物結晶の大部分は膜内に捕捉されたままであった。
【0092】
図18(C)及び図18(D)は、薬物放出前及び12日後のセファゾリン担持pTMC及びb−PLGA−コ−PEGブレンド膜をそれぞれ示す。示されるように、12日後には、ほぼ全ての薬物結晶が放出されており、膜中に捕捉された結晶はほとんど又は全く残っていなかった。
【0093】
図19は、pTMCとb−PLGA−コ−PEGとのポリマーブレンド(2つの試料)からのセファゾリン放出と比較した、pTMC膜からのセファゾリン放出の百分率を示す。図19は、同じ薬物担持量(33%w/w)を有するにもかかわらず、12日後に95%を超えるセファゾリンがポリマーブレンドマトリックスから放出されていたのに対し、同じ期間(12日)後に、半分以上のセファゾリン結晶がpTMCマトリックス中に捕捉されたままであったことを定量的に実証する。
【0094】
従って、親水性、水溶性、又は生分解性ポリマー又はブロックコポリマーを含むポリマーマトリックスは薬物放出の速度及び程度を有意に増大させることができることが実証される。ブロックコポリマー(PEG又はb−PLGA−コ−PEG、b−pTMC−コ−PEG、b−PLLDA−コ−PEG等)は、ポリマーマトリックス内での水の取り込み及び流体拡散を改善することができ、捕捉された薬物結晶をほとんど伴わずに完全な又はほぼ完全な薬物放出をもたらす。
【0095】
実施例11
多孔質コーティングを有するセファゾリン担持複合フィルム
実施例10のセファゾリン担持膜(80:20の重量比でのpTMCとb−PLGA−コ−PEGとのポリマーブレンド)を、pTMCとb−PLGA−コ−PEGとのポリマーブレンドの薄層によって膜の両面を更に被覆した。コーティングは、追加量のPEGポロゲンを含む、ポリマーマトリックスと同じポリマーブレンドを含んだ。異なるPEGポロゲン含量(30%、50%、及び70%)を有する3種類のコーティングブレンドを調製した。各コーティングは薬物担持ポリマーマトリックスの重量の10%以下であった。
【0096】
薬物溶解試験を実施し、結果を図20に示す。示されるように、非被覆ポリマーマトリックスからの薬物放出は、最初は迅速であり、速やかにほぼ完全な放出に達した。対照的に、被覆した複合フィルム(コーティング中に70%のPEGを有する)からの薬物放出は、非被覆膜と比較して緩やかな減速を示し、コーティングが膜からの薬物放出を妨げていたことを示す。最低量のPEGポロゲン(30%)を有する複合フィルムについては、薬物放出は有意に減速し、より少ない量のポロゲンが薬物拡散を更に妨げることを示す。従って、薬物担持膜上のポリマーコーティングは薬物放出を遅らせることができることが実証される。ポリマーコーティング内のポロゲンの量は、薬物放出の速度を更に調節するように調整することができる。
【0097】
本明細書で言及される、並びに/又は出願データシートに列挙される上記の米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19】
【図20】
【国際調査報告】