(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019530200
(43)【公表日】20191017
(54)【発明の名称】発光電気化学セル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190920BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20190920BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190920BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   !H05B33/14 B
   !H05B33/26 Z
   !H05B33/28
   !H05B33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】2018560175
(86)(22)【出願日】20170608
(85)【翻訳文提出日】20181210
(86)【国際出願番号】GB2017051668
(87)【国際公開番号】WO2017212277
(87)【国際公開日】20171214
(31)【優先権主張番号】1610075.2
(32)【優先日】20160609
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】513251463
【氏名又は名称】シーピーアイ イノベーション サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CPI INNOVATION SERVICES LIMITED
【住所又は居所】イギリス国 ティーズサイド ティーエス10 4アールエフ レッドカー ウィルトン ザ ウィルトン センター
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】アレックス コール
【住所又は居所】イギリス国 ティーエス21 3エフエイチ ダラム セッジフィールド ポーリーフォトニックス リミテッド ネットパーク
(72)【発明者】
【氏名】アダム グラハム
【住所又は居所】イギリス国 ティーエス21 3エフエイチ ダラム セッジフィールド ポーリーフォトニックス リミテッド ネットパーク
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA00
3K107AA01
3K107CC21
3K107CC45
3K107DD23
3K107DD27
3K107DD42Y
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3K107DD47Y
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3K107DD67
3K107DD70
3K107FF14
3K107GG06
3K107GG07
3K107GG28
(57)【要約】
発光電気化学セル(LEEC,21)を記載し、この発光電気化学セルは、第1電極(23)と;イオン性塩を含む追加的電極(26)と;第1電極(23)と追加的電極(26)との間の発光素子(25)とを具えている。発光電気化学セル(LEEC,21)を製造する方法を記載し、この方法は、第1電極(23)を形成するステップと;第1電極(23)を覆う発光素子(25)を形成するステップと;イオン性塩を含む物質を、発光素子(25)の面のうち第1電極(23)から最も遠い面に塗布することによって追加的電極(26)を形成するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
イオン性塩を含む追加的電極と、
前記第1電極と前記追加的電極との間の発光素子と
を具えている発光電気化学セル(LEEC)。
【請求項2】
前記イオン性塩がイオン液体を含む、請求項1に記載のLEEC。
【請求項3】
前記追加的電極が前記発光素子に直面して隣接する、請求項1または2に記載のLEEC。
【請求項4】
前記追加的電極が導電性粒子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のLEEC。
【請求項5】
前記導電性粒子が、金属粒子、銀粒子、炭素粒子、グラフェン、銀ナノワイヤ、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項4に記載のLEEC。
【請求項6】
前記第1電極が、酸化インジウムスズ(ITO)を含み、基板上にコーティングされている、請求項1〜5のいずれかに記載のLEEC。
【請求項7】
前記発光素子が発光ポリマーを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のLEEC。
【請求項8】
前記発光素子がイオン性遷移金属錯体(ITMC)を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のLEEC。
【請求項9】
前記発光素子が小分子リン光系を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のLEEC。
【請求項10】
前記発光素子がイオン性塩をさらに含む、請求項7〜9のいずれかに記載のLEEC。
【請求項11】
前記イオン性塩がイオン液体を含む、請求項10に記載のLEEC。
【請求項12】
発光電気化学セル(LEEC)を製造する方法であって、
第1電極を形成するステップと、
前記第1電極を覆う発光素子を形成するステップと、
イオン性塩を含む物質を、前記発光素子の面のうち前記第1電極から最も遠い面に塗布することによって、追加的電極を形成するステップと
を含むLEECの製造方法。
【請求項13】
前記追加的電極を、前記物質を前記発光素子上にスクリーン印刷することによって形成する、請求項12に記載のLEECの製造方法。
【請求項14】
前記イオン性塩がイオン液体を含む、請求項12または13に記載のLEECの製造方法。
【請求項15】
前記イオン性塩を、イオン性塩溶体の形で用意する、請求項12、13、または14に記載のLEECの製造方法。
【請求項16】
前記イオン性塩溶体が、溶媒1ml当たり50mgから100mgまでのイオン性塩を含む、請求項15に記載のLEECの製造方法。
【請求項17】
前記イオン性塩溶体が、溶媒1ml当たり100mgのイオン性塩を含む、請求項15または16に記載のLEECの製造方法。
【請求項18】
前記イオン性塩溶体の溶媒が、トルエン/メチルベンゼン、アセトン、キシレン、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランを含む、請求項12〜17のいずれかに記載のLEECの製造方法。
【請求項19】
前記物質が導電性ペーストを含む、請求項12〜18のいずれかに記載のLEECの製造方法。
【請求項20】
前記導電性ペーストが導電性粒子を含む、請求項19に記載のLEECの製造方法。
【請求項21】
前記物質が、前記導電性ペースト10ml当たり0.5mlから2mlまでのイオン性塩溶体を含む、請求項19に記載のLEECの製造方法。
【請求項22】
前記物質が、前記導電性ペースト10ml当たり1mlのイオン性塩溶体を含む、請求項19または21に記載のLEECの製造方法。
【請求項23】
発光電気化学セル(LEEC)内に正極層を形成するためのイオン性塩溶体を含む導電性物質。
【請求項24】
発光電気化学セル(LEEC)内に正極層を形成するためのイオン性塩溶体を含む導電性物質の使用方法。
【請求項25】
添付した図面を参照して以上に実質的に記載された装置。
【請求項26】
添付した図面を参照して以上に実質的に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光電気化学セル(LEEC:light emitting electrochemical cell)及びLEECを製造する方法に関するものである。特に、本発明はイオン性塩を含むLEECに関するものであるが、それだけではない。
【背景技術】
【0002】
発光電気化学セル(LEEC)は一般に、基板上に堆積した複数の層を含む。図1に、酸化インジウムスズ(ITO:indium tin oxide)層3を有する基板2を含む既知のデバイス1を示し、ITO層3は基板の一方の面上に堆積している。基板2はガラスで形成することができ、あるいはフレキシブルLEEC用にはPET(polyethylene terephthalate:ポリエチレン・テレフタレート、テレフタル酸ポリエチレン)のようなフレキシブル・ポリマーから形成することができる。PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):polystyrene sulfonate:ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):4-スチレンスルホ.ン酸)層4がITO層3の上にコーティングされている。PEDOT:PSS層4は、平坦化層及び緩衝材(バッファ)として機能し、正孔(ホール)注入を支援する仕事関数を提供することもできる。発光層5がPEDOT:PSS層4上に堆積している。発光層は一般にエレクトロルミネセント(電界発光)材料で形成され、その例はポリ(1,4−フェニレンビニレン)(PPV:poly(1,4-phenylene vinylene))またはその可溶性誘導体、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV:poly[2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene])、ポリ(1,4−フェニレン)(PPP:poly(1,4-phenylene))またはその種々の誘導体、ポリフルオレン(PFO:polyfluorene)、ポリ(チオフェン)またはその誘導体、ポリ(2,5−ピリジンビニレン)のような窒素含有ポリマー、イリジウム錯体を含有するもののような無機遷移金属、例えばヘテロレプティック・ビス−シクロメタル化インジウム(III)錯体、例えばトリス[2−フェニルピリジナート−C2,N]インジウム(III)である。使用される具体的材料は、PPV誘導体であるMerck社のSuperYellow(登録商標)、またはポリ−ビス−スピロ−フルオレンであるMerck社のSPG01T(登録商標)を含む。それに加えて、上記発光層はイオン性塩を含むことができる。このイオン性塩は、MAT(methyl-trioctylammonium trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸メチル−トリオクチルアンモニウム)、OTf(trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸)、TEA/OTf(tetraethylammonium trifluoromethansuffonate:トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム)、K/OTf(potassium trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸カリウム)、NH4/OTf(ammonium trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム)、Li/OTf(lithium trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、EMIM/PF6(1-ethyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate:ヘキサフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)、BMP/IMIDE(1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis(trifluoromethylsulfonate):ビス(トリフルオロメチルスルホン酸)イミド1−ブチル−1−メチルピロジニウム)、TBA/PF6(tetrabutylammonium hexafluorophosphate:ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム)、EMIM/OTf(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluoromethanesulfonate:トリフルオロメタンスルホン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)のいずれをも、あるいはその任意の組合せまたは他のあらゆる適切なイオン性塩を含むことができる。
【0003】
正極(カソード)層6は、一般にアルミニウムの熱蒸着によって発光層5上に形成される。
【0004】
例えば図1に示すようなLEECは、通常、上記層の各々を基板1上に順に堆積させることによって作製される。この堆積は、例えば蒸着によって、あるいはスピンコーティングによって行うことができる。しかし、このプロセスは一般に非常に時間を要し、従って、生産時間を低減することができる代わりの製造方法が望まれる。それに加えて、既存の方法は高価になり得る、というのは、スピンコーティングは比較的高い材料の損失量をもたらし得るし、蒸着層は真空及び高価なツール(例えば真空チャンバ)を必要とする。
【0005】
LEECのロール・ツー・ロール製造が以前に提案されている。しかし、蒸着を用いてITO層及び正極層を堆積させる現在の方法も、ロール・ツー・ロール・プロセスにおいて時間を要すると共に高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題を少なくとも部分的に軽減することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、発光電気化学セルが提供され、この発光電気化学セルは:
第1電極と、
イオン性塩を含む追加的電極と、
第1電極と追加的電極との間の発光素子と
を具えている。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、発光電気化学セル(LEEC)を製造する方法が提供され、この方法は:
第1電極を形成するステップと、
第1電極を覆う発光素子を形成するステップと、
イオン性塩を含む物質を、発光素子の面のうち第1電極から最も遠い面に塗布することによって追加的電極を形成するステップと
を含む。
【0009】
追加的電極は、発光電気化学セル(LEEC)における正極層を形成する。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、導電性物質が提供され、この導電性物質は、発光電気化学セル(LEEC)内に正極層を形成するためのイオン性塩溶体、一部の例ではイオン性溶液を含む。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、導電性物質の使用法が提供され、この導電性物質は、発光電気化学セル(LEEC)内に正極層を形成するためのイオン性塩溶体、一部の例ではイオン性溶液を含む。
【0012】
正極層を形成する追加的電極内のイオン性塩は、(正極層の平面に垂直な)z平面内で正極層の導電率を改善する。
【0013】
好適例では、正極層を形成する追加的電極が導電性粒子を追加的に含む。追加的電極層内の導電性粒子は、製造工程中にx−y平面内に整列しやすく、良好なx−y平面内の導電率をもたらすが、z平面内にはギャップを残す。
【0014】
従って、正極層を形成する追加的電極内のイオン性塩の存在は、正極層から発光素子によって規定される発光領域内への、電極のz平面内の導通を改善することに役立つ。こうした発光領域全体を出る移動が、本発明の原理によるLEECの動作の特徴である。
【0015】
本発明の特定の好適例は、ロール・ツー・ロール・プロセスを用いてLEECを既知の方法に比べてより効率的に製造することができる、という利点を提供する。特に、本発明の特定の好適例は、LEECの正極層を形成する追加的電極を、ロール・ツー・ロール・プロセスを用いて、例えばアルミニウムの蒸着のような既知の方法に比べてより効率的に製造することができる、という利点を提供する。
【0016】
本発明の特定の好適例は、正極層を形成する追加的電極をスクリーン印刷することができる、という利点を提供する。
【0017】
本発明の特定の好適例は、既知のデバイスに比べて寿命を向上させたLEECを製造することができる、という利点を提供する。
【0018】
本発明の特定の好適例は、LEECの効率、出力、または安定性について妥協することなしに正極層をスクリーン印刷することができる、という利点を提供する。
【0019】
以下、本発明の実施形態を、添付した図面を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】既知のLEEC構造を示す図である。
【図2】本発明の実施形態によるLEEC構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面中では、同様な参照番号は同様な部分を参照する。
【0022】
図2に、特定実施形態によるLEEC21を示す。LEEC21は基板22を含み、本例ではガラスである。この基板はITO層23でコーティングされ、ITO層23は第1電極を形成する。
【0023】
PEDOT:PSS層24がITO層上に存在する。PEDOT:PSS層24は任意の層であり、平坦化層及び緩衝材(バッファ)として機能してLEECの性能を改善することに役立つ。
【0024】
PEDOT:PSS層上には発光素子が存在し、この発光素子は発光層25を形成する。本例では、発光層25は発光ポリマーを含み、イオン性塩を含むこともできる。
【0025】
発光層25上には追加的電極26(正極)が存在する。この追加的電極は発光層に直面して隣接することが適切である。追加的電極26はイオン性塩を含む。
【0026】
本明細書中に用いる「イオン性塩」とは、イオン液体を含むあらゆるイオン性塩またはイオン性塩類を参照すべく用いる。「イオン性塩」とは、固体組成に限定されず、液状(液体形態)のイオン塩(即ち、イオン液体)を含むこともできる。「イオン液体」とは、具体的にはイオン性塩の副分類(サブクラス)を参照し、この副分類ではイオンが不完全に配位され、100℃未満では液体になる。
【0027】
イオン性塩はイオン性塩溶体として提供され、溶媒1ml当たり50mgから1000mgまでのイオン性塩を含む。このイオン性溶体は、溶媒1ml当たり50mgから500mgまでのイオン性塩を含むことが適切である。このイオン性溶体は、溶媒1ml当たり100mgから250mgまでのイオン性塩を含むことがより適切である。
【0028】
本例では、イオン性塩溶体が溶媒1ml当たり400mgのイオン性塩を含む。本例では、この溶媒はトルエン(メチルベンゼン)である。
【0029】
上記追加的電極は導電性粒子も含む。本例では、追加的電極26が銀粒子を含む。
【0030】
LEEC21は、まず第1電極を形成することによって製造することができる。この第1電極は、ITO層23を基板22上に蒸着させることによって形成することができる。
【0031】
(必要であれば)PEDOT:PSS層24を第1電極上に、スピン・コーティングによってITO層23に隣接するようにコーティングする。
【0032】
次に、発光層25を、スピン・コーティングまたは印刷により第1電極(または任意のPEDOT:PSS層24)上に堆積させる。次に、発光層25を、通常は80℃以上でおよそ5〜20分間焼成して乾燥させる。例えば、発光層25は、80℃〜120℃でおよそ10分間焼成して乾燥させることができる。
【0033】
次に、イオン性塩を含む物質を、発光層の面のうち第1電極から最も遠い面に塗布して、追加的電極26を形成する。この物質は、発光層25上にスクリーン印刷することによって塗布することができる。
【0034】
上述した例の代案として、フレキシブル基板22を用いることができる。このことは、ロール・ツー・ロール・プロセスを用いてLEECを製造することを可能にする。このフレキシブル基板は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)、PP(ポリプロピレン:polypropylene)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエテン:polycholrotrifluoroethene)、PEN(ポリエチレン・ナフタレート:polyethylene naphthalate)、PC(ポリカーボネート:polycarbonate)、PI(ポリイミド:polyimide)、PA(ポリアミド:polyamide)、または、(例えばコーニング社の”Willow(登録商標)Glass”のような)フレキシブルガラスで形成することができる。
【0035】
ロール・ツー・ロール製造工程の第1ステップでは、フレキシブル基板を選定する。このフレキシブル基板は、例えば耐熱PETとすることができる。
【0036】
次に、(製造されるLEECの負極(アノード)層を含む第1電極を形成する)ITO層を、フレキシブル基板上にスパッタリングすることによって堆積させて、ITOコーティングされた基板ロールを形成する。この工程は、ロール・ツー・ロール・スパッタリングマシンにおいて実行する。このITO層は、犠牲シャドーマスク層を用いることによって(例えば平行線の)パターンの形に堆積させることができる。一旦、すべての層が形成されると、このパターンは、ロールを個別のLEECデバイスに分割することに役立つ。
【0037】
次に、ITOでコーティングしたロールを、ロール・ツー・ロール印刷ツール内に装填する。
【0038】
第1スロットダイを用いて、PEDOT:PSSのストライプ形パターンを、ITOでコーティングした基板ロール上に堆積させる。次に、これを強制空気対流オーブン内でおよそ120〜130℃でおよそ0.5〜20分間乾燥させる。
【0039】
次に、このロールは第2スロットダイを通過し、第2スロットダイでは、発光材料を含む溶体(LEEC溶体)をストライプ形パターンの形に堆積させる。このストライプ形パターンは、幅16mmで10mmの間隔をおいたLEEC溶体のストライプを含むことができる。これによりLEECの発光層を形成する。次に、このロールを強制空気対流オーブン内で約120〜130℃で乾燥させる。
【0040】
次に、このロールはロータリースクリーン印刷システムを通過する。このロータリースクリーン印刷システムは、導電性粒子及びイオン性塩溶体を含むインクをロール上に印刷する。こうして印刷された層が追加的電極(正極)層を形成する。スロットダイを任意で用いて、正極層をストライプ形パターンの形に印刷する。
【0041】
次に、追加的電極層をUV(ultraviolet:紫外線)硬化させ、及び/または、およそ120〜130℃で強制空気対流オーブン内で熱乾燥させる。
【0042】
次に、上記ロールを巻き取って、第2のロール・ツー・ロール製造ツール上へ移動させる。第2のロール・ツー・ロール・ツールはカプセル封入ツールであり、窒素で不活性化されている。上記ロールをカプセル封入ツール内で封止し、カプセル封入ツールは空気を吐き出して高純度の窒素ガスに置き換える。このガスを、水及び酸素分子の各々のレベルが5ppm(100万個当たり5個)未満であることを保証するツールに通して再循環させる。酸素及び水は動作中にデバイスの不具合を生じさせ得るので、このことは重要である。水蒸気の浸透率は10-4g/m2/日(1日当たり10-4g/m2)未満であるべきであり、さもなければデバイスは時間と共に劣化する。
【0043】
上記ロールを、強制空気対流オーブンに通しておよそ120℃でさらに乾燥させる。この追加的な乾燥ステップは、PEDOT:PSS、発光層及び正極層を完全に乾燥させて、これらから酸素がなくなることを保証することに役立つ。
【0044】
次に、乾燥した感圧接着剤を用いて、水及び酸素に対して不浸透性のフレキシブルバリア膜を上記ロールの両面上に積層させ、水及び酸素はLEECの不具合を生じさせ得る。
【0045】
次に、上記ロールを、適切な切断装置、例えばレーザー、ナイフ、ブレード、またはハサミで個別のLEECデバイスに分割する。次に、圧着コネクタを用いて、第1電極(負極)層及び正極層への接続部を作成する。
【0046】
負極層と正極層とが交差する場合、それらの間に発光層が存在するものとすれば、デバイスは適切な電源に接続されると発光する。正極と負極との間に(即ち、発光層のストライプ形パターンの分離部分であることにより)発光層が存在しない部分では、発光が存在しない。
【0047】
以上に説明した詳細設計に種々の変更を加えることが可能である。例えば、イオン性塩を含む多数の異なる組成が、正極層を形成するのに適し得る。
【0048】
このイオン性塩はイオン液体を含むことができる。例えば、このイオン液体は、MAT(トリフルオロメタンスルホン酸メチル−トリオクチルアンモニウム)、OTf(トリフルオロメタンスルホン酸)、TEA/OTf(トリフルオロメタンスルホン酸テトラエチルアンモニウム)、K/OTf(トリフルオロメタンスルホン酸カリウム)、NH4/OTf(トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム)、Li/OTf(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、EMIM/PF6(ヘキサフルオロリン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)、BMP/IMIDE(トリフルオロメチルスルホン酸1−ブチル−1−メチルピロジニウム)、TBA/PF6(ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム)、EMIM/OTf(トリフルオロメタンスルホン酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)のいずれをも、あるいはその任意の組合せを含むことができる。
【0049】
上記イオン性塩は、イオン性塩及び溶媒を含むイオン性塩溶体の形で提供することができる。この溶媒は、あらゆる適切な溶媒、例えばトルエン(メチルベンゼン)、アセトン、キシレン、イソプロピルアルコール、またはテトラヒドロフランとすることができる。
【0050】
上記イオン化塩溶体は、溶媒1ml当たりおよそ100mgから1000mgまでのイオン化塩を含むことができる。このイオン性塩溶体は溶媒1ml当たり400mgのイオン性塩を含むことが適切である。
【0051】
正極は、イオン性塩またはイオン性溶体を含む導電性ペーストを用いてスクリーン印刷することができる。このペーストはスクリーン印刷可能なペーストであることが適切である。
【0052】
スクリーン印刷可能なペーストを形成するために、イオン性塩を直接、導電性ペースト中に混合することができる。その代わりに、イオン性塩はイオン性塩溶体として提供することができ、このイオン性塩溶体を導電性ペーストと混合することができる。
【0053】
上記スクリーン印刷可能なペーストは、導電性粒子を含むことができる。これらの導電性粒子は、例えば金属粒子、銀粒子、炭素粒子、グラフェン、銀ナノワイヤ、またはその任意の組合せとすることができる。
【0054】
上記導電性ペーストは、導電性ペースト10ml当たり0.5mlから4mlまでのイオン性塩溶体を含むことができる。上記導電性ペーストは、導電性ペースト10ml当たり1mlから2mlまでのイオン性塩を含むことができることが適切である。
【0055】
ITOでコーティングした基板を用いるのではなく、第1電極(負極)は現在技術において既知のあらゆる適切な形態のものとすることができる。例えば、基板は(ロール・ツー・ロールの製造を必要としない)ガラス基板とすることができる。その代わりに、ロール・ツー・ロールの製造を必要とする場合、あるいはフレキシブルなLEECデバイスを有することを望む場合、基板はフレキシブル基板とすることができる。このフレキシブル基板はポリマー材料から形成することができる。適切なフレキシブル基板は、PET(ポリエチレン・テレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエテン)、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PI(ポリイミド)、PA(ポリアミド)、または、(例えばコーニング社の”Willow(登録商標)Glass”のような)フレキシブルガラスで形成することができる。
【0056】
ITOコーティングを基板上に用いるのではなく、他の材料を用いることができる。例えば、基板は、カーボン・ナノワイヤ、グラフェン、金属グリッド、AlまたはFでドープしたZnO(AZOまたはFZO)、他の透明導電性酸化物、PEDOTまたは他の透明導電性ポリマーでコーティングすることができる。
【0057】
発光層(LEEC溶体)は、あらゆる適切な発光ポリマーとすることができ、そしてあらゆる適切なイオン性塩を含むこともできる。それに加えて、あるいはその代わりに、上記発光素子は、イオン性遷移金属錯体(ITMC:ionic transition metal complex)、あるいは小分子リン光系のいずれをも含むことができる。それに加えて、発光層はイオン性塩を含むことができる。このイオン性塩は、発光層を堆積させる前にLEEC溶体と混合する。
【0058】
上述した実施形態により、正極層内のイオン性塩は、正極層をスクリーン印刷することを可能にし、従って、LEECのロール・ツー・ロール製造を可能にする。
【0059】
正極層内のイオン性塩は、デバイスの(正極層の平面に垂直な)z平面内で正極層の導電率を向上させる。正極層内の導電性粒子は、印刷プロセス中にx−y平面内に整列しやすく、良好なx−y平面の導電率を与えるが、z平面内にはギャップを残す。正極層内のイオン性塩の存在は、正極層から発光層内に至るz平面内の電子の導通、及び発光層を出て正極層内に至る正孔(ホール)の導通を共に改善することに役立つ。
【0060】
上記イオン性塩は、スクリーン印刷された正極層を用いる際に発光層が正常に機能し続けることにも役立つ。以下の例で説明するように、LEECデバイスは、スクリーン印刷可能な正極層内のイオン性塩の存在なしでは、通常必要とされるよりもずっと高い電圧でも、アルミニウム正極を有する標準的なLEECに比べて薄暗い光を発光する。スクリーン印刷された正極層内にイオン性塩が存在する例では、このデバイスはより明るい光を発光し、かつより長い寿命を有し、アルミニウム正極を有する標準的なLEECに匹敵する。
【0061】
上述した製造方法はロール・ツー・ロールの製造方法であるが、LEECは他の適切な方法、例えばフラットベッド・スクリーン印刷、ドクターブレード法、またはシート・ツー・シート・システムによって製造することができることは明らかである。
【0062】

異なる正極層の効率を検査するために、標準的なLEECデバイス構造を試料毎に用いた。この試料は、ITOコーティングを有する4インチ(10.16cm)四方のガラス基板とした。このITO層を、エッチングプロセスを用いてパターン化して、6本の10mmの平行線を与えて、線どうしは10mmの間隔をおいた。次に、こうしたパターン化したITO層上に、平坦化層及び緩衝材(バッファ)の両方として機能すべきPEDOT:PSS層をスピンコーティングした。次に、黄色ポリマーのLEC(light emitting electrochemical:発光電気化学)溶体をデバイス上にスピンコーティングして発光層を形成し、デバイスを焼成して乾燥させた。ある範囲の異なる色のLEC溶体を用いることができる。本例では、このLEC溶体が、1のイオン性塩に対して50の発光ポリマーをホスト溶媒中に含む。
【0063】
正極層は、ITO層のストライプに直交する10mmのストライプの形でデバイスに追加し、これにより16個の、10mm四方の個別のデバイスを作成した。これらのデバイスの各々をガラス・エポキシ接着剤でカプセル封入した。
【0064】
蒸着アルミニウムから形成した正極層を有する比較対照試料を用意した。他のすべてのデバイスは、発光層上に堆積したスクリーン印刷による銀インク系の正極を有するものとした。
【0065】
市販のスクリーン印刷可能な導電性の銀ペーストを基材として用いて、5つの異なる銀インク系溶体(銀ペースト)を用意した。この銀インク系溶体は、ポリマー・バインダー(結合剤)とVOC(volatile organic compound:揮発性有機化合物)溶媒との溶体内に分散した銀粒子を含むペーストとした。
【0066】
トルエン1ml当たり100mgのイオン性塩の濃度でイオン性塩が溶解したトルエン(メチルベンゼン)の溶体も用意した。以下ではこの溶体をイオン性トルエン溶体と称する。
【0067】
次の銀ペースト組成から形成された正極層を有するLEEC試料を用意した:
1.10ml(22.7mg)の銀ペースト
2.10ml(22.7mg)の銀ペースト、1ml(100mg)のイオン性トルエン溶体
3.10ml(22.7mg)の銀ペースト、2ml(200mg)のイオン性トルエン溶体
4.10ml(22.7mg)の銀ペースト、1mlのトルエン
5.10ml(22.7mg)の銀ペースト、2mlのトルエン
【0068】
(アルミニウムの比較対照試料を含む)各試料を、光度、電流、及び電圧特性について検査した。
【0069】
比較対照試料のアルミニウム正極のデバイスは(予想通りに)8Vで発光し、1時間後に5Vまで低下させても50cd/m2で安定して発光した。
【0070】
正極層1、4及び5を有する試料は、8Vでは発光しなかった。これらの試料は、電圧を20Vまで増加させて初めて非常に薄暗く(4cd/m2まで)発光した。しかし、これらの試料の全部が、ほんの2〜3分後の電気的短絡により機能不全になり、これにより試料が破壊された。
【0071】
正極層2を有する試料は8Vで発光し、1時間後に5Vまで低下させた。この時点で、この試料は20cd/m2で発光していた。
【0072】
正極層3を有する試料は8Vで発光し、1時間後に5Vまで低下させた。この時点で、この試料は40cd/m2で発光していた。この正極層を有する試料は、2ヶ月またはそれ以上にわたって一定の出力で発光し続けた。このことは、アルミニウム正極を有する比較対照試料に匹敵する。
【0073】
このため、イオン性トルエン溶体を含有する正極層を有する試料は、標準的なスクリーン印刷の銀ペーストよりもずっと良好に機能し、かつずっと安定したデバイスであった。
【0074】
上述した実施形態のいずれかに関係して説明した特徴は、異なる実施形態間で互換的に適用可能であり得ることは、当業者にとって明らかである。上述した実施形態は、本発明の種々の特徴を説明するための例である。
【0075】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「具える」と「含む(含有する)」、及びそれらの変化形は、「含むがそれに限定されない」ことを意味し、他の部分、追加物、構成要素、数値、またはステップを排除することは意図していない(そして排除しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、特に断りのない限り、単数形は複数を包含する。特に、不定冠詞を用いている場合、本明細書は特に断りのない限り、単数と共に複数も考えに入れるものとして理解するべきである。
【0076】
本発明の特定の態様、実施形態、または例に関連して記載した特徴、数値、特性、化合物、化学的成分または化学基は、両立しないことがない限り、本明細書中に記載した他のあらゆる態様、実施形態または例に適用可能であるものと理解するべきである。(添付した特許請求の範囲、要約書、及び図面のいずれをも含めて)本明細書中に開示する特徴のすべて、及び/または本明細書中に開示するあらゆる方法またはプロセスのステップのすべては、こうした特徴及び/またはステップの少なくとも一部が互いに排他的である組合せを除いて、任意の組合せの形に組み合わせることができる。本発明は以上の実施形態のいずれの細部にも限定されない。本発明は、(添付した特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)本明細書中に開示する特徴のうちのあらゆる新規なもの、またはあらゆる新規な組合せ、あるいは本明細書中に開示するあらゆる方法のステップのうちのあらゆる新規なもの、またはあらゆる新規な組合せに拡張される。
【0077】
読者の注目は、本願に関連する本明細書と同時に、あるいはそれ以前に提出され、本明細書と共に一般閲覧向けに公開されるすべての文献及び文書に向けられ、こうした文献及び文書の内容は参照することによって本明細書に含める。
【図1】
【図2】
【国際調査報告】