(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2019533286
(43)【公表日】20191114
(54)【発明の名称】発電機およびモーターのためのエポキシ樹脂基剤の電気絶縁系
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/60 20060101AFI20191018BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20191018BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20191018BHJP
   H02K 3/32 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   !H01B17/60 B
   !C08G59/24
   !C08G59/40
   !H02K3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】2019517012
(86)(22)【出願日】20170925
(85)【翻訳文提出日】20190328
(86)【国際出願番号】EP2017074173
(87)【国際公開番号】WO2018060113
(87)【国際公開日】20180405
(31)【優先権主張番号】16191081.5
(32)【優先日】20160928
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
【住所又は居所】スイス国ツェーハー−4057 バーゼル,クルイベックシュトラーセ 200
(71)【出願人】
【識別番号】508014039
【氏名又は名称】イソボルタ・アクチエンゲゼルシヤフト
【住所又は居所】オーストリア・2355ビーナーノイドルフ・アイゼット ノ−ズード シュトラーセ3
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイセル,クリスティアン
【住所又は居所】ドイツ79379ミュールハイム・アムツィールベルク1
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,ダニエル
【住所又は居所】スイス4125リーエン・ウンタームシェレンベルク120
(72)【発明者】
【氏名】シュテヒャー,ハラルド
【住所又は居所】デンマーク9520スコーピン・ホーセンスビュヴァイ7
【テーマコード(参考)】
4J036
5G333
5H604
【Fターム(参考)】
4J036AA02
4J036AD08
4J036GA06
4J036JA05
5G333AA02
5G333AA03
5G333AB05
5G333AB16
5G333BA05
5G333CA03
5G333CB15
5G333DA04
5G333DA26
5H604AA01
5H604BB01
5H604BB04
5H604BB08
5H604CC01
5H604DA09
5H604DA15
5H604DB02
5H604DB25
5H604DB26
5H604PA05
5H604PA06
5H604PB03
(57)【要約】
(A)熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能であり、そして式BX3・NR123またはR12N−A−NR12[式中、Xはハロゲンを表わし、R1、R2およびR3はそれぞれ相互に独立して、水素、C1−C12アルキル、C5−C30アリール、C6−C36アラルキルあるいは未置換でもまたは1個以上のC1−C12アルキル基により置換されてもよいC6−C14シクロアルキルであり、Aは2価の脂肪族芳香族または脂環式基である]のアミンとの三ハロゲン化ホウ素の錯体を含む、エンジンの運転中に通電可能な前記電気式エンジンの部品を包むためのマイカペーパーもしくはマイカテープ、(B)実質的に、または好ましくは、前記エポキシ樹脂配合物用の熱活性化可能な硬化開始剤を全く含まない、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび場合によりビスフェノールFジグリシジルエーテルを含む前記減圧含浸用熱硬化性の槽配合物:を含む、前記電気式エンジンの通電組み立て部品(current−carrying construction parts)のための無水物非含有絶縁系が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能であり、そして式BX3・NR123またはR12N−A−NR12
[式中、
Xはハロゲンを表わし、
1、R2およびR3はそれぞれ相互に独立して、水素、C1−C12アルキル、C5−C30アリール、C6−C36アラルキルあるいは未置換でもまたは1個以上のC1−C12アルキル基により置換されてもよいC6−C14シクロアルキルであり、
Aは2価の脂肪族芳香族または脂環式基である]
で表わされるアミンと三ハロゲン化ホウ素との錯体を含む、エンジンの運転中に通電可能な前記電気式エンジンの部品を包むためのマイカペーパーもしくはマイカテープ、
(B)実質的に、または好ましくは、前記エポキシ樹脂配合物用の熱活性化可能な硬化開始剤を全く含まない、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび場合によりビスフェノールFジグリシジルエーテルを含む、減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物:
を含む、前記電気式エンジンの通電組み立て部品用の無水物非含有絶縁系。
【請求項2】
前記マイカペーパーもしくはマイカテープは、前記減圧含浸工程中に前記マイカペーパーもしくはマイカテープおよび前記エンジンの組み立て部分により取り込まれる前記エポキシ樹脂配合物を硬化するのに十分量の、第三アミンとのBCl3の錯体を含む、請求項1記載の絶縁系。
【請求項3】
前記マイカペーパーもしくはマイカテープ(A)は、前記マイカペーパーもしくはマイカテープ1m2当り約0.01ないし約100g/m2、好ましくは約2.0ないし約50g/m2、より好ましくは約2.0ないし約20g/m2の量の、第三アミンとのBX3の錯体を含む、請求項1または2記載の絶縁系。
【請求項4】
第三アミンとのBX3の前記錯体は、BCl3・N(CH33(三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体)またはBCl3・N(CH32817(三塩化ホウ素−ジメチルn−オクチルアミン錯体)である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の絶縁系。
【請求項5】
前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物(B)は、式:
【化1】
[式中、nは0に等しい、もしくはそれを超える数、とりわけ0ないし0.3であり、そして前記の適用された樹脂の全分子にわたる平均を表わす]
を有するビスフェノールAのジグリシジルエーテル、および前記減圧含浸用の槽配合物(B)の重量に基づいて、0ないし20重量%のビスフェノールFジグリシジルエーテルを含む、または本質的にそれらからなる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の絶縁系。
【請求項6】
前記熱硬化性の槽配合物は更に、a)エピクロロヒドリン、並びにビスフェノールAおよびビスフェノールF以外のフェノール化合物、から誘導されるポリグリシジルエーテル、b)エピクロロヒドリンおよび非環式アルコールから誘導されるジグリシジルエーテル並びにc)脂環式環に縮合された少なくとも2個のオキシラン環を含む脂環式エポキシ樹
脂、からなる群から選択される1種以上の反応性希釈剤を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の絶縁系。
【請求項7】
前記熱硬化性の槽配合物(B)は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、0ないし30重量%のビスフェノールFのジグリシジルエーテルおよび2ないし10重量%の前記反応性希釈剤を含む、または本質的にそれらからなる、請求項6記載の絶縁系。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂槽配合物は、60℃で約75mPa.s以下、より好ましくは60℃で約50mPa.s以下の粘度を有する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の絶縁系。
【請求項9】
前記熱硬化性エポキシ槽配合物(B)は更に、金属もしくは半金属酸化物、炭化物または窒化物から、とりわけ金属もしくは半金属炭化物または窒化物から選択される微粒子、ナノ粒子またはそれらの混合物、好ましくはナノ粒子および場合により湿潤化剤を含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の絶縁系。
【請求項10】
請求項1に規定された通りの、第三アミンとのBX3の錯体を含む、熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能なマイカテープ。
【請求項11】
前記マイカテープ1m2当り約0.01ないし約100g/m2、好ましくは約2.0ないし約50g/m2、より好ましくは約2.0ないし約20g/m2の量の、第三アミンとのBX3の錯体を含む、請求項10記載のマイカテープ。
【請求項12】
第三アミンとのBX3の錯体として、BCl3・N(CH33(三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体)またはBCl3・N(CH32817(三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体)のいずれかを含む、請求項10または11記載のマイカテープ。
【請求項13】
電気式発電機またはモーターの回転子もしくは固定子の製造における、請求項1ないし9のいずれか1項に請求される通りの部品のキット形態の、電気式エンジンの通電組み立て部品用の無水物非含有絶縁系の使用。
【請求項14】
電気式発電機またはモーターの回転子もしくは固定子の製造における、請求項1ないし9のいずれか1項に請求の通りの電気式エンジンの通電組み立て部品のための無水物非含有絶縁系または、請求項10ないし12のいずれか1項に記載のマイカテープ、を使用する方法であって、
(a)前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分の通電可能な部品は、熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能であり、そして、減圧含浸工程期間に前記マイカテープおよび前記エンジンの組み立て部分により取り込まれる前記エポキシ樹脂を硬化するための十分量を前記マイカテープにより含まれる、請求項1に規定される通りの、第三アミンとのBX3の錯体を含む、1種の/前記のマイカペーパーもしくはマイカテープで包まれ、
(b)前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分は容器内に挿入され、
(c)前記容器は排気され、
(d)請求項1に規定された通りの前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物は、前記の排気された容器中に供給され、その後、前記配合物が、前記マイカテープと、前記構成部品にかけられる前記真空と高圧との間の差圧により強制的に形成される、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分の構造物中に存在する間隙および空隙とを、所望時間内に透過することを可能にするために十分に前記容器内の前記熱硬化性の槽配合物の粘度を低下させるために、場合により注意深い加熱下で、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分を含む前記容器に対して、例えば乾燥空気または窒素の過圧がかけら
れる期間が続き、
(e)前記の残留する熱硬化性の槽配合物は前記容器から取り出され、そして
(f)前記熱硬化性の槽配合物で含浸された前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分は前記容器から取り出され、そして前記容器から取り出し後に、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分により含まれる前記熱硬化性の槽配合物を硬化するために、加熱される、方法。
【請求項15】
前記熱硬化性の槽配合物(B)は、貯蔵槽から、工程(d)において排気された容器中に供給され、そして工程(e)において前記容器から取り出し後に再度、前記の貯蔵槽に戻され、そして更なる使用のために、場合により冷却下で、前記貯蔵槽内に貯蔵される、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂を基剤とする、電気機器、とりわけ大型電気機器の減圧(vacuum pressure)含浸(impregnation)のための新規の電気絶縁系に関する。本発明は更に、前記の絶縁系と一緒の使用のための特定のマイカペーパーもしくはマイカテープおよび、電気式発電機またはモーターの回転子もしくは固定子の製造における前記の絶縁系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所に使用される発電機、または大型電気式モーターのような電気式エンジンは、相互に対して、そして/または、それなくしては、それらが直接接触すると考えられる前記エンジンの別の導電性部品(electroconductive parts)に対して、電気絶縁される必要がある通電部品(current−carrying parts)、例えばワイヤおよび/またはコイルを含む。中程度の電圧または高電圧のエンジンにおいては、この絶縁は典型的に、マイカペーパーもしくはマイカテープにより提供される。その通電部品を前記マイカペーパーもしくはマイカテープで巻いた後に、前記の機器全体またはその一部のみのいずれかを前記マイカペーパーもしくはマイカテープをも透過する、硬化性の、しばしばエポキシ基剤の液体樹脂配合物で含浸させる。この含浸は好都合には、いわゆる減圧含浸(VPI)法を使用して実施される場合がある。この目的のために、含浸されなければならない前記エンジンの組み立て構成部品(construction components)は容器内に挿入され、次に、前記マイカペーパーもしくはマイカテープ内の間隙(gaps)および空隙(voids)を含む、前記容器内の構成部品(components)の間隙および空隙から湿度および空気を除去するように排気される(evacuated)。次に、含浸配合物が前記の排気された容器中に供給され、その後、適度な期間内に適当な含浸を可能にするのに十分に前記含浸配合物の粘度を低下させるために、場合により注意深い加熱下で、前記構成部品を含む容器に対して、例えば乾燥した空気もしくは窒素の過圧をかける期間が続き、そして前記の配合物は、前記マイカペーパーもしくはテープと、前記構成部品にかけられる真空と高圧との間の差圧により強制形成される、前記構成部品内に存在する間隙および空隙とを透過する。その後、前記の残留含浸配合物は、前記容器から貯蔵槽に除去され、場合によっては新配合物を再補充され、そしてその次の使用のために、しばしば冷却下で保存される。前記の含浸された構成部品もまた、前記容器から取り出され、そして前記構成部品のマイカで巻かれた通電部品を、相互に機械的に固定しそして/またはこれらの部品または前記構成部品全体を電気絶縁ポリマー塊(mass)中に埋封するために熱硬化される。構成部品の含浸と、更なる使用までの前記含浸配合物の暫定的貯蔵との、このサイクルは通常、前記配合物の硬化後に、適切な電気絶縁を確保するための適当な時間内に、前記含浸配合物の粘度が、前記配合物が前記構成部品の空隙にもはや透過することができない程度まで十分に高まるまで、反復される。
【0003】
特に大型電気式エンジンまたはそれらの構成部品の、有効な(successful)工業的減圧含浸のための材料の適合性(suitability)に関しては、幾つかの重要な様相(aspects)が存在する。
【0004】
前記含浸配合物の粘度は、大部分、前記配合物の含浸有効性(effectiveness)および性能(capability)を決定する。前記配合物の粘度が低いほど、それは前記の含浸された構成部品中そして前記マイカペーパーもしくはマイカテープ中の間隙および空隙を、より完全にそしてより急速に充填する場合がある。
【0005】
更に、前記配合物の前述の初期粘度、すなわち前記配合物が初めて使用されるときのその粘度は、前記配合物を使用する含浸のため並びに、前記配合物がかなりの含浸有効性および性能を維持し、そしてかなり長期間にわたり新配合物で置き換えられなくてもよく、そしてこれは好ましくは、それが使用されていないときは前記配合物を冷却する必要がないように、その後の使用と使用との間の、前記配合物の保存のために適用される温度で、時間をかけて、非常に緩徐にのみ増加されなければならない。
【0006】
これに反して、含浸後の前記配合物の急速な硬化を確実するためには、前記含浸配合物の反応性は好ましくは、より高温において高くなければならない。
【0007】
その作業環境に対して有害である可能性のある化合物の放出を意味する作業衛生(working hygiene)は、含浸配合物の取り扱いに関連する更なる重要な様相(aspect)である。
【0008】
前記エンジンの含浸された構成部品の長期の耐久性および耐用年数を確保するためには、更に、前記の硬化済み含浸配合物の長期の熱安定性、その電気的特性およびその機械的特性は良好でなければならない。
【0009】
ポリマーを基剤にした電気絶縁系の、特に重要な記述子(descriptor)は、20000時間の作業寿命に対して確立された前記絶縁系に適用可能な、最高の連続作業温度によって、前記の系またはその硬化済みポリマー配合物を分類する、前記の系またはその硬化済みポリマー配合物の「熱等級(thermal class)」である。モーターまたは発電機のような、中型および大型の電気式エンジンに対する、2つの、特に重要な熱等級は「等級F」および「等級H」であり、それぞれ155℃および180℃の前記硬化済み絶縁材の最高到達可能な連続使用温度を可能にする。
【0010】
硬化済み電気絶縁材の、別の、特に重要なパラメーターは、交流電場における、通常、熱の形態の、前記絶縁材に対して固有に喪失される電気エネルギーを数値で表わすパラメーターである、その誘電正接(dielectric dissipation factor)tanδである。前記tanδは低いδ値において、印加電力に対する前記絶縁材中に喪失される電力の比率に相当し、従ってしばしば、百分率として表わされ、例えば0.1のtanδはこの表記に従うと10%に相当する。従って、より低い誘電正接は、前記絶縁材中の電力の、比較的低いロスを示し、そして概括的に、運転中の前記絶縁材の温度上昇(heating−up)を低下させ、従って、その熱による分解(decomposition)および破壊(destruction)を低下させるために望ましい。しかし、前記誘電率(permittivity)εおよび従って前記誘電正接は、前記絶縁材の化学組成に左右されるのみならずまた、前記絶縁材の硬化度、空隙、湿度および不純物等のその含量、のような幾つかの処理(processing)パラメーターにより左右される。従って電気絶縁材の最終的誘電率εおよび誘電正接は予測または制御されることができず、それらは前記の完成絶縁材上で決定される場合があるだけである。一定の周波数に対するポリマー材の誘電正接は、前記材料の温度とともに増加する。前記エンジンの適切な絶縁を確保し、損傷を防止するために、前記材料の熱等級に従う前記の最高の許容可能な作業温度においても、それは一般に、約10%未満でなければならない。
【0011】
それらの一般的に良好な全体的特性および特徴のおかげで、エポキシ樹脂配合物はしばしば電気工学のための高品質の絶縁系の調製のために使用される。
【0012】
電気的構成部品の減圧含浸(vacuum pressure impregnation)絶縁のために近年最も広範に使用されるエポキシ樹脂配合物は、硬化剤(curing agent)(hardener)としてのビスフェノールAおよび/またはビス
フェノールFのジグリシジルエーテル並びに/あるいは脂環式エポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロフタール酸無水物(MHHPA)もしくはヘキサヒドロフタール酸無水物(HHPA)並びに例えば、ナフテン酸亜鉛のような適切な硬化触媒(硬化促進剤)を基剤にする。これらの無水物含有配合物を基剤にした絶縁体は通常、等級H絶縁体であると分類される。前記無水物硬化剤はまた、室温またはその近位温度においても、これらの配合物の極めて低い初期粘度および極めて良好な含浸効果を提供する。しかし、化学薬品に対する拡大している規制枠のおかげで、エポキシ樹脂配合物中への無水物硬化剤の使用は、呼吸器感作物質(sensitizer)としてのそれらのR42ラベルのために、近い将来制限されると考えられる。従って、幾つかの無水物は、REACH規制のSVHC候補のリスト(極めて高い憂慮物質)上にすでに乗せられている。すべての、既知の無水物はR42ラベルされ、そして未知の無水物でも、毒物学者によりR42ラベルされることが予測されているので、数年後には、エポキシ樹脂および前述のものと同様な無水物硬化剤を基剤にした含浸配合物はもはや、特別の許可なしには使用されない場合があるようである。
【0013】
無水物硬化剤を含まない減圧絶縁用のエポキシ樹脂基剤の配合物は既知である。例えばARALDITE(登録商標) XD 4410のような、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはビスフェノールFジグリシジルエーテルまたはそれらの混合物および、単独重合のための潜在的(latent)硬化触媒を基剤とした一成分エポキシ樹脂組成物が市販されている。これらのような含浸配合物は、その消費者(end user)が前記エポキシ樹脂を前記無水物硬化剤と混合するための混合装置を、現場に有する必要がないという、更なる利点を有するが、他方では、前記無水物硬化剤はこれらの系中に含まれないために、前記含浸槽はむしろ高い初期粘度を有するという欠点を有する。従って、この種の配合物は通常、十分な含浸効果を達成するために、約60℃の温度に暖められなければならない。その結果、非使用期間中のこれらの配合物の粘度の上昇もまた比較的高い。
【0014】
単独重合されようと、または無水物硬化剤を使用して硬化されようと、エポキシ樹脂は一般に、硬化するために、促進剤とも呼ばれる潜在的触媒を必要とする。前記の用語「潜在的(latent)」は、前記促進剤が、統合される構成部品の含浸時に必要とされる温度までの温度においては本質的には不活性であるが、前記含浸の完了後には、より高温における前記硬化を触媒すると考えられることを意味する。優秀で、以前から知られた潜在的促進剤はナフテン酸亜鉛である。前記促進剤は好ましくは、前記含浸エポキシ樹脂中には含まれず、マイカペーパーもしくはマイカテープ(前記の残留配合物槽から前記構成部品の取り出し後にその効率的熱硬化を可能にするために、含浸される前記構成部品により取り込まれる前記配合物のその部分に対して、前記含浸工程期間に十分な硬化触媒が確実に放出される量の)のような、含浸される構成部品中に含まれる。この場合は、促進剤が、組み込まれる(integrated)前記構成部品と接触する前には、前記槽配合物中に促進剤が全く含まれないか、または極僅かな残留量の促進剤が含まれるために、時間が経てば(over time)このような含浸槽の粘度の増加は、適切な限界内に保持される場合がある。従って、これらの促進剤を含まない配合物基剤の含浸槽は一般に、優良な保存期間を有する。それにも拘わらず、これらの促進剤を含まない配合物は、使用されないときは冷却を必要とする場合がある。
【0015】
二人の本発明者等による刊行物の非特許文献1において、メチル−ヘキサヒドロフタール酸無水物(=MHHPA)を使用して硬化されるビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(=BADGE)の硬化における促進剤としてのBCl3自体、または前記のそのアミン錯体の使用が開示されている(非特許文献1参照)。この刊行物は、BADGEの蒸留および場合により更にMHHPAの精製は、これらを含むVPI樹脂槽の23℃における熱安定度を改善する場合があることを開示している。
【0016】
特許文献1は、促進剤としてBF3−アミン錯体塩を含むワニスでコートされたマイカテープ並びに脂環式エポキシ樹脂および無水物硬化剤を使用するこのようなテープの前記減圧含浸を開示している(特許文献1参照)。BF3−アミン錯体中のアミンは、モノエチルアミン、ピペリジンまたはベンジルアミである場合がある。
【0017】
特許文献2は均質溶液中のエポキシ樹脂に対する潜在的硬化剤としての三塩化ホウ素と第三アミンとの付加生成物を開示している(特許文献2参照)。前記錯体中の最も好ましいアミンはトリメチルアミンである。本刊行物は、均質エポキシ系におけるそれらの硬化性においてBCl3のトリメチルアミン錯体とBF3のモノエチルアミン錯体とを比較している。
【0018】
ハンツマン アドバンスト マテリアルズ(Huntsman Advanced Materials)は、エポキシ硬化の促進剤として前記BCl3−ジメチルオクチルアミン錯体を商品名DY9577として広告している。DY9577のデータシートは、DY9577が、樹脂100部当り1ないし5重量部の量で使用されると、無水物硬化剤の不在時にエポキシ樹脂を硬化するために均質混合物中に使用される場合があることを開示している。
【0019】
従って、とりわけ減圧含浸に適する、改善された、無水物非含有エポキシ樹脂の絶縁系の需要がいまだ存在する。従って、とりわけ、含浸効力、貯蔵安定性、硬化速度、達成可能な熱伝導度および熱等級並びに長期の熱的、機械的および、とりわけ等級Fおよび等級Hの絶縁系に許容され得るすべての作業温度(working temperature)において十分に低い誘電正接を含む電気的特性、に関する、液体エポキシ樹脂および無水物硬化剤を基剤にした減圧含浸のための、前述の現代の「最も基準になる(gold−standard)」系のものに匹敵する処理の特徴、またはそれより優れた特性を有する、このような絶縁系を提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第3,991,232A号明細書
【特許文献2】米国特許第3,395,121A号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】英国のバーミンガムにおける2013年5月19日〜31日のInsucon会議、「電気機器の減圧含浸のための伝統的および新規のエポキシ系(Traditional and New Epoxy Systems for Vacuum Pressure Impregnation of Electrical Machines)]
【発明の概要】
【0022】
今や、前述の目的は、
(A)熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能であり、そして、式、BX3・NR123またはR12N−A−NR12
[式中、 Xはハロゲンを表わし、
1、R2およびR3はそれぞれ他と独立して、水素、C1−C12アルキル、C5−C30アリール、C6−C36アラルキルあるいは未置換でも、または1個以上のC1−C12アルキル基により置換されてもよいC6−C14シクロアルキルであり、
Aは2価の脂肪族芳香族または脂環式基である]
で表されるのアミンとの三ハロゲン化ホウ素の錯体(complex)を含む、エンジン
の運転中に通電可能な、前記電気式エンジンの部品を包むためのマイカペーパーもしくはマイカテープ、
(B)実質的に、または好ましくは、前記エポキシ樹脂配合物用の熱活性化可能な硬化開始剤を全く含まない、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび場合によりビスフェノールFジグリシジルエーテルを含む、前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物:
を含む、前記電気式エンジンの通電組み立て部品のための、無水物非含有絶縁系により解決されることが見いだされた。
【0023】
前記減圧含浸工程中に、前記マイカペーパーもしくはマイカテープおよび前記エンジンの組み立て部分により取り込まれるエポキシ樹脂配合物中の硬化開始剤の量は、硬化されるエポキシ樹脂槽配合物の性質(nature)および所望される重合条件に左右される。適量は、幾つかの試験的試みを使用して当業者により決定される場合がある。前記の量は好ましくは、前記エポキシ樹脂に基づいて、約0.01ないし約15重量パーセント、好ましくは0.05ないし約10重量パーセント、より好ましくは約0.1ないし約5重量パーセント、例えば約1〜約3重量パーセントの間である。
【0024】
マイカペーパーおよびマイカテープは当該技術分野で周知である。
【0025】
本発明の目的のための用語マイカペーパーは、場合により、特定の時間にわたり(例えば、約5分ないし1時間)、約550ないし約850℃の温度に加熱されて、それらが一部脱水され、そして水溶液中で微粒子に粉砕され、次に従来の製紙技術によりマイカペーパーに形成される、雲母粒子、とりわけ白雲母(muscovite)または金雲母(phlogophite)粒子の、シート様集合体を表わすためのその通常の意味で使用される。場合により、その特性を改善または改変するために、前記マイカペーパーの形成中に、雲母強化(consolidation)添加剤、例えば、分散剤、増粘剤、粘度改変剤、等、並びに例えばリン酸ホウ素またはホウ酸カリウムのような無機の樹脂および例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂またはシリコーン樹脂のような有機樹脂、を含む樹脂が添加される場合がある。
【0026】
本願中に使用される通りの用語マイカテープは、少量の(マイカペーパー1m2当り約1ないし約10g/m2)の樹脂、好ましくはエポキシもしくはアクリル樹脂またはそれらの混合物を使用する、シート様支持材料、通常、ガラスまたはアルミナ織物のような非金属の無機織物あるいはポリエチレン・テレフタレートまたはポリイミドのようなポリマーフィルムにのり付けされた、前述の通りの、1枚以上のマイカペーパーからなる、シート様複合材を表わす。前記マイカペーパーと前記織物との凝集(agglutination)は好都合には、接着性樹脂の融点を超える温度で、プレス(press)または圧延カレンダー中で実施される。
【0027】
次に前記マイカペーパーもしくは前記マイカテープは、プロピレンカーボネート(PC)またはメチルエチルケトン(MEK)、γ−ブチロ−ラクトン、等またはそれらの混合物のような適切な低沸点溶媒中に前記BX3−アミン錯体を含む溶液で含浸される。
【0028】
BX3−アミン錯体で含浸されるマイカペーパーおよびマイカテープはまだ新規であり、従って本発明の更なる主題である。
【0029】
本発明に従うマイカペーパーもしくはマイカテープの調製のためには、エポキシ樹脂の単独重合のためのBX3−アミン錯体またはこのような開始剤の混合物は、例えば、プロピレンカーボネートまたはメチルエチルケトン等のような、適切な低沸点溶媒中に溶解される。前記マイカペーパーもしくはマイカテープは、例えば、その中への浸漬により、または噴霧により前記溶液と接触され、そして前記溶媒は除去されて、前記マイカペーパー
もしくはテープの構造物上そして/またはその内部に、前記のBX3−アミン錯体を残す。前記含浸溶液中のBX3−アミン錯体の濃度は重要ではなく、そして例えば、BX3−アミン錯体の約0.1ないし約25重量パーセントの間にばらつく場合がある。BX3−アミン錯体の前記濃度が高いほど、含浸工程中に達成される前記マイカペーパーもしくはマイカテープの最終含浸量(final load)は高い。
【0030】
本発明に従うマイカペーパーもしくはマイカテープは、前記減圧含浸期間中に前記マイカペーパーもしくはマイカテープにより、そして最終的には前記エンジンの組み立て部分により取り込まれる前記エポキシ樹脂を硬化するのに十分量の前記BX3−アミン錯体を含有しなければならない。
【0031】
前記BX3−アミン錯体が前記マイカテープ上に吸収されるかもしくはその中に含浸される場合に、エポキシ含有含浸槽の重量(mbath、グラム)に対するBX3−アミン錯体の重量(macc、グラム)の比率Rは好ましくは、0.01ないし0.10の範囲内:
【0032】
【数1】
【0033】
[ここで前記の記号は上記に定義された通りである]
にあることが、本発明等者により見いだされた。式(1)によると、その表面の1平方メートル当りのBX3−アミン錯体の一定量maccを含むマイカペーパーもしくはマイカテープの面積Aは、170℃で12時間そして20barの圧力下で、すべての記号が上記に定義された通りの、
【0034】
【数2】
【0035】
であるエポキシ含有含浸物の量mbathおよび、マイカペーパーもしくはマイカテープの面積Aに好ましくは接着しそして/またはその中に含浸されているエポキシ含有含浸物の前記の量mbath、のような通常の硬化条件下で典型的に硬化するのに「十分な」BX3−アミン錯体を含む場合がある。
【0036】
あるいはまた、前述のRはまた、以下:
【0037】
【数3】
【0038】
[ここで、MWaccは前記マイカテープもしくはマイカペーパー中に含まれる前記BX3−アミン錯体の分子量(グラム/モル)であり、EEWbathは前記エポキシ含有含浸槽のエポキシ当量(グラム/モル)であり、そして(3)に現れる最も右側の指数(quotient)は1モルのエポキシ基を硬化するために使用されるBX3−アミン錯体のモル数rである]の通りに表わされる場合がある。本発明者等は更に、前記BX3−アミン錯体が本発明に従って前記マイカテープもしくはマイカペーパー上に吸収される、またはその
中に含浸される場合に、(3)に現れる前記の最も右側の指数は好ましくは、0.01ないし0.025の範囲内にあることを見いだした。式(3)に従うと、その表面1平方メートル当りのBX3−アミン錯体の一定量maccを含むマイカペーパーもしくはマイカテープの面積Aは、170℃、20barの圧力で12時間、すべての記号が上記に定義されている、
【0039】
【数4】
【0040】
であるエポキシ含有含浸物の量mbathおよび、好ましくはマイカペーパーもしくはマイカテープのその面積Aに付着しそして/またはその中に含浸されているエポキシ含有含浸物の前記の量mbath、のような通常の硬化条件下で典型的に硬化するために「十分な」BX3−アミン錯体、を含む場合がある。
【0041】
この目的のための、前記マイカペーパーもしくはマイカテープは好ましくは、前記マイカペーパーもしくはマイカテープ1m2当り約0.01ないし約100g/m2、好ましくは約2ないし約50g/m2、より好ましくは約2.0ないし約20g/m2の量の、前記BX3−アミン錯体を含む。
【0042】
BX3−アミン錯体は好ましくはBF3−またはBCl3−アミン錯体である。
【0043】
BF3−およびBCl3−アミン錯体は知られており、そしてある程度は市販されている。
【0044】
適切なBF3−アミン錯体の例はBF3−アニリン錯体、BF3−2,4−ジメチルアニリン錯体、BF3−ベンジルアミン錯体、BF3−ジブチルアミン錯体、BF3−エチルアミン錯体、BF3−イソプロピルアミン錯体、BF3−N−メチルシクロヘキシルアミン錯体、BF3−ピペリジン錯体およびBF3−イソホロンジアミン錯体である。
【0045】
前記BX3−アミン錯体は好ましくは、式BCl3・N(CH321を有し、R1は1ないし10個の炭素原子の非分枝アルキルである。
【0046】
前記BX3−アミン錯体はより好ましくは、BCl3・N(CH33(三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体)またはBCl3・N(CH32817(三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体)である。
【0047】
前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物のエポキシ樹脂は原則的に、前記ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび場合によりビスフェノールFジグリシジルエーテルに対して更に、約20ないし約60℃のような外界温度またはやや高温において液体であるあらゆるモノ−もしくはポリエポキシ化合物を含む場合がある。従ってこれらのポリエポキシ化合物は反応性希釈剤として働く。
【0048】
適切な、モノ−およびポリエポキシ化合物の具体的例は以下である:
幾つかの適切な例は、トリルグリシジルエーテル、p−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、n−ドデシル−/n−テトラデシルグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレンジグリシジルエーテルのようなポリグリシジルエーテル、シクロヘキサン−ジメタノールジグリシジ
ルエーテル、ネオデカン酸およびシクロヘキサンジカルボン酸のグリシジルエステル:である。
【0049】
A)2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、n−ドデシル−/n−テトラデシルグリシジルエーテルおよびC10−C16アルキルグリシジルエーテルのようなモノグリシジルエーテル。
【0050】
B)エピクロロヒドリンおよび、単核フェノール、典型的にはレソルシノールもしくはヒドロキノン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)エタンのような、ビスフェノールAおよびビスフェノールF以外のフェノール化合物から、並びにホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロラールまたはフルフルアルデヒドのようなアルデヒドの、好ましくはフェノールもしくはクレゾールのようなフェノールと、または塩素原子またはC1−C9アルキル基により前記の核内で置換されたフェノール、例えば4−クロロフェノール、2−メチルフェノールまたは4−tert−ブチルフェノールとの縮合により得られるノボラックから、誘導されるポリグリシジルエーテル。
【0051】
C)エピクロロヒドリンおよび非環式アルコールから、典型的にはエチレングリコール、ジエチレングリコールおよび、より高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、1,2−プロパンジオールもしくはポリ(オキシプロピレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4,6−ヘキサントリオール、グリセロール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールから、並びにポリエピクロロヒドリンから誘導されるジグリシジルエーテル。それらはまた、1,3−もしくは1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたは1,1−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ−3−エンのような脂環式アルコールから誘導される場合がある、あるいはそれらは、N、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンのような芳香族核を含む。
【0052】
D)前記エポキシ化合物の分子内の脂環式環に縮合された少なくとも2個のオキシラン環を含む脂環式エポキシ樹脂。好ましい例は、例えばジシクロヘキサジエンもしくはジシクロペンタジエンのジエポキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよび3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(Huntsman,SwizerlandからARALDITE(登録商標)CY179−1として市販)のような樹脂を含む。
【0053】
前記反応性希釈剤は好ましくは、トリルグリシジルエーテル(2,3−エポキシプロピルo−トリルエーテル)およびp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテル(2,3−エポキシプロピル−p−tert−ブチルフェニルエーテル)からなる群から選択され、それは好ましくは、トリルグリシジルエーテルまたはp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテルのいずれかであるが、両方ではなく、そして最も好ましくは、それはp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテル単独である。
【0054】
一つの特に好ましい態様において、前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物(B)は、
式:
【0055】
【化1】
【0056】
[式中、nはゼロに等しい、またはそれを超える数、とりわけ0ないし0.3であり、そしてすべての分子にわたる平均を表わす]を有する、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含むか、または本質的にそれらからなる。本態様において、前記熱硬化性の槽配合物は好ましくは、前記の式のビスフェノールAの2種のジグリシジルエーテルの混合物を含み、第1のジグリシジルエーテルに対しては前記のnは、0ないし0.1、好ましくは0ないし0.05の範囲のような、ほぼ正確にゼロであり、そして第2のジグリシジルエーテルに対しては、前記のnは、0ないし0.3、好ましくは0.1ないし0.3の範囲内にあり、但し第2のジグリシジルエーテルに対するnは、第1のジグリシジルエーテルに対するnより大きいこととする。第2のジグリシジルエーテルに対する第1のジグリシジルエーテルの質量比は好ましくは、5:1ないし15:1の範囲内、より好ましくは8:1ないし12:1の範囲内にある。
【0057】
別の特に好ましい態様において、前記減圧含浸のための熱硬化性の槽配合物(B)は直前に説明された通りの、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに対して更に、式:
【0058】
【化2】
【0059】
[式中、mは0ないし0.3である場合があるが、0.3ないし0.5のような、より高い場合もあり、そしてすべての分子にわたる平均を表わす]を有する、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含む。更なるビスフェノールFのジグリシジルエーテルの量は、前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物の総量に基づいて0ないし30重量%である場合がある。ここでも再度、より好ましくは、前記減圧含浸のための熱硬化性の槽配合物(B)は本質的に、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールFのジグリシジルエーテルからなる。
【0060】
前記指数nおよびmが低いほど、これらの樹脂の粘度は、より低い。従って、本発明の前記目的のためには、nは少なくとも、好ましくは、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂1kg当りに約5.85エポキシ当量ないし、ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂1kg当りに約4.8エポキシ樹脂に相当する、0ないし0.3の範囲内の、ゼロに等しい、または実質的にゼロに等しい。mが、例えば0ないし0.3の範囲内の、ゼロに等しい、または実質的にゼロに等しい場合は、これは、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂1kg当り約6.4エポキシ当量、ないしビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂1kg当り約5.3エポキシ当量に相当する。
【0061】
1kg当り約5.7ないし5.9エポキシ当量を伴うビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂のような、nが実質的にゼロに等しいビスフェノールAのジグリシジルエーテルは、より高いnを有するビスフェノールAの対応する未精製(raw)ジグリシジルエーテルの蒸留により得られる。同様に、1kg当り約6.0ないし6.4エポキシ当量を伴うビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂のような、mが実質的にゼロに等しいビスフェノールFのジグリシジルエーテル樹脂は、より高いmを有するビスフェノールFの対応する未精製ジグリシジルエーテルの蒸留により得られる。ビスフェノールAもしくはFの前記の蒸留ジグリシジルエーテルは更に、一般に減少した量の別の副産物および/または不純物を含み、従って通常、改善された保存期間を有する。
【0062】
別の、特に好ましい態様において、前記熱硬化性の槽配合物は、前記の式のビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含むが、そのnは0.3ないし1.5のように、ゼロより有意に大きい。これはn=正確にゼロ、を伴う最低の同族体(homologue)の外に、有意な量の、より高次の同族体を含むビスフェノールAのジグリシジルエーテルの混合物に対応する。
【0063】
一つの代替的な好ましい態様において、前記熱硬化性の槽配合物は、約100:1ないし約3:1、より好ましくは約100:1ないし約10:1、更により好ましくは約100:2ないし10:1の重量比の、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよび場合によるビスフェノールFジグリシジルエーテルの混合物(sum)と反応性希釈剤の混合物とを含む。本態様内で、前記熱硬化性の槽配合物は再度、好ましくは、第1のジグリシジルエーテルに対しては前記のnは、0ないし0.1、好ましくは0ないし0.05の範囲内のような、ほぼ正確にゼロであり、そして第2のジグリシジルエーテルに対しては前記のnは、0ないし0.3、好ましくは0.1ないし0.3の範囲内にあり、但し第2のジグリシジルエーテルに対するnは第1のジグリシジルエーテルに対するnより大きい、前記の式のビスフェノールAの2種のジグリシジルエーテルの混合物を含む。本態様内で、第1のジグリシジルエーテル対、第2のジグリシジルエーテルの質量比は、再度、好ましくは、5:1ないし15:1の範囲内にあり、より好ましくは、前記質量比は8:1ないし12:1の範囲内にある。本態様内で、前記反応性希釈剤は再度、好ましくは、トリルグリシジルエーテルおよびp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテルからなる群から選択され、それは好ましくは、トリルグリシジルエーテルまたはp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテルのいずれかであるが両方ではなく、そして最も好ましくは、それはp−tert.−ブチル−フェニルグリシジルエーテル単独である。
【0064】
本発明に従う前記エポキシ樹脂の槽配合物の粘度は好ましくは、60℃で約75mPa.sを超えず、より好ましくは、60℃で約50mPa.sを超えない。
【0065】
本発明に従う前記熱硬化性エポキシ槽のエポキシ樹脂は一方で、約20℃ないし約60℃の、室温またはやや高温において非常に低い粘度を与え、そして他方では、本発明に従う硬化開始剤/共開始剤系を使用して熱硬化されるときに、絶縁等級FまたはHの硬化済み絶縁材をもたらす、すなわちその絶縁材は更に、155℃で有意に10%未満である優れた誘電正接(tanδ)を示す、それぞれ155℃および180℃の最高継続使用温度を可能にする。
【0066】
本発明に従う減圧含浸用の前記熱硬化性の槽配合物(B)は場合により、更に、これらの薬剤が、例えばその保存寿命または粘度に対して、そして/または前記の最終的に得られる硬化済み絶縁材の本質的特性に対して、とりわけ、その誘電正接に対するそしてその熱等級に対するような、硬化前の前記エポキシ槽配合物の特性に対して不都合な影響をもたない量で使用される限り、金属もしくは半金属酸化物、炭化物または窒化物およびそれらのための湿潤剤からなる群から選択される微粒子および/またはナノ粒子のような、前
記の硬化済み絶縁材の熱伝導度を改善するための強化剤(tougheners)または補助剤のような、前記熱硬化性エポキシ槽配合物および/またはそれから誘導される前記硬化済み絶縁材の特性を改善するための添加剤を含む場合がある。
【0067】
本発明の目的に適する強化剤は例えば、液体アミン−もしくはカルボキシル−末端ブタジエンアクリロニトリルゴムのような反応性液体ゴム、例えば商品名Kane Ace(登録商標)MXとして市販されているような低粘度のエポキシ樹脂中のコアシェルゴムの分散物を含む。
【0068】
適切な金属もしくは半金属酸化物、炭化物または窒化物は例えば、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO2)、シリカ(SiO2)、炭化ホウ素(B4C)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)並びに立方晶窒化ホウ素(c−BN)および、特に、場合により、前記充填剤と前記エポキシ母材間の境界面および付着を改善するために知られた方法で、例えばγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランによる処理により表面改変される場合がある六方晶窒化ホウ素(h−BN)を含む窒化ホウ素(BN)、を含む。金属、半金属酸化物、炭化物および/または窒化物ももちろん使用される場合がある。
【0069】
金属および半金属窒化物、とりわけ窒素化アルミニウム(AlN)および窒化ホウ素(BN)、とりわけ六方晶窒化ホウ素(h−BN)は特に好ましい。
【0070】
前記充填剤粒子が、含浸される前記マイカテープ並びに前記組み立て部分の間隙および空隙をまだ透過可能である場合は、本願の目的のための微粒子は、約1μm以上の平均粒度の粒子を含むものと理解される。前記微粒子は好ましくは、約10μmまで、より好ましく約0.1ないし約5μm、とりわけ約0.1ないし約3μm、例えば約0.5ないし1μmのいわゆる体積直径(volume diameter)D(v)50を有し、xμmの体積直径D(v)50は、その粒子の体積の50%がxμm以下の粒度を有し、そして50%がxμmを超える粒度を有する充填剤サンプルを規定する。D(v)50値は例えば、レーザー回折計により決定される場合がある。
【0071】
微粒子は、とりわけ、前記絶縁材の熱伝導度の改善のために含まれるときに、好ましくは、本発明に従う熱硬化性エポキシ樹脂配合物の総重量に基づいて2ないし約60重量%の量、より好ましくは、約5ないし約40重量%、なかでも約5ないし約20重量%の量で添加される。
【0072】
本願の目的のためのナノ粒子は約100nm以下の平均粒度の粒子を含むと考えられる。前記ナノ粒子は好ましくは、約10ないし約75nmまで、より好ましくは約10ないし約50nm、とりわけ約15ないし約25nm、例えば約20nmの体積直径D(v)50を有する。
【0073】
ナノ粒子は、より大量においては時々、類似量の微粒子よりも前記槽の粘度を上昇させる傾向を有するために、典型的には微粒子よりも少量を使用される。ナノ粒子の適量は好ましくは、本発明に従う熱硬化性エポキシ樹脂配合物の総重量に基づいて約1ないし約40重量%まで、より好ましくは、約5ないし約20重量%、とりわけ約5ないし約15重量%の範囲内にある。
【0074】
微粒子およびナノ粒子はまた、添加物(admixture)中に一緒に使用される場合もある。
【0075】
微粒子およびナノ粒子は好ましくは、前記エポキシ樹脂と、より適合性にさせるために
表面を改変され、例えばγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されるか、または前記の目的のための湿潤化剤と組み合わせて使用される。
【0076】
本発明に従う絶縁系の特に好ましい態様において、前記熱硬化性エポキシ槽配合物(B)は金属もしくは半金属酸化物、炭化物または窒化物から、とりわけ金属もしくは半金属炭化物または窒化物から選択される微粒子、ナノ粒子またはそれらの混合物、好ましくは、ナノ粒子、および場合により湿潤化剤を含む。
【0077】
前記熱硬化性エポキシ槽配合物(B)は好ましくは、前記エポキシ樹脂配合物のための熱活性化可能な硬化開始剤を全く含まない。これは、前述の通りのBX3−アミン錯体の非含有(freedom)を含み、それはまた、Zn−ナフテネート、第三アミンまたはスルホニウム塩のような先行技術の促進剤の非含有をも含む。あらゆるこれらの促進剤の「非含有」は、熱硬化性エポキシ槽配合物(B)に基づいてそれぞれのこのような促進剤に対して0.1重量%未満を意味することとされる。
【0078】
本発明に従う絶縁系は、電気式発電機またはモーター、とりわけ大型発電機またはモーターの回転子もしくは固定子の製造における用途に特に適する。従って、この用途は本発明の別の主題である。
【0079】
本発明に従う電気絶縁系は例えば、
(a)前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分の通電可能な部品は、熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能でありそして、減圧含浸工程期間に、前記マイカテープと前記エンジンの組み立て部分とにより取り込まれる前記エポキシ樹脂を硬化するための十分量を前記マイカテープにより含まれる、前記に規定された通りの第三アミンとのBX3の錯体を含む、1種の/前記のマイカペーパーもしくはマイカテープで巻かれ、
(b)前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分は容器中に挿入され、
(c)前記容器は排気され、
(d)上記に規定された通りの前記減圧含浸用の熱硬化性の槽配合物は、前記排気済み容器中に供給され、その後、前記配合物が、前記マイカテープ並びに、前記構成部品にかけられる真空と高圧との間の差圧により強制形成される、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分の構造物内に存在する間隙および空隙を、所望時間内に透過することを可能にするのに十分に、前記容器内の前記熱硬化性の槽配合物の粘度を低下させるために、場合により注意深い加熱下で、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部品を含む容器に、例えば、乾燥空気または窒素の過圧がかけられる期間が続き、
(e)前記の残留熱硬化性の槽配合物は前記容器から取り出され、そして
(f)前記の熱硬化性の槽配合物で含浸された前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分は前記容器から取り出され、そして前記容器から取り出し後に、前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分により含まれた前記熱硬化性の槽配合物を硬化するために加熱される、
工程に従って、電気式発電機またはモーターの回転子もしくは固定子の製造に使用される場合がある。
【0080】
本発明に従う無水物非含有絶縁系を使用するための対応する方法は、本発明の更なる主題である。
【0081】
前記容器に前記過圧をかける期間の長さは例えば、前記熱硬化性の槽配合物の粘度、使用される前記マイカペーパーもしくはマイカバンドの構造および含浸性、含浸されるべき前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分のサイズ並びにそれらの構造の複雑さ、に応じて当業者により選択される場合があり、そして好ましくは約1ないし約6時
間にわたる。
【0082】
前記回転子もしくは固定子またはそれらの組み立て部分により含まれる前記熱硬化性の槽配合物の硬化を実施するために、それらは加熱される。前記硬化温度は、適用される前記エポキシ樹脂配合物および適用される前記の1種以上の特定のスルホニウム塩硬化開始剤に左右され、そして一般に、約60ないし約200℃、好ましくは約80ないし約160℃にわたる。
【0083】
回転子、固定子またはそれらの組み立て部品の製造における本発明に従う絶縁系を使用するための前記の方法の、特に好ましい実施態様において、前記熱硬化性の槽配合物は、貯蔵槽から、前記の排気された容器中に供給され、そして前記容器からの取り出し後に、前記貯蔵槽に再度戻され、そして、更なる使用のために、場合により冷却下で前記の槽中に貯蔵される。更なる使用の前には、前記使用済み槽配合物は新配合物を再補充される場合がある。
【0084】
更なる様相において、本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂配合物を使用する減圧含浸により含浸可能でありそして、エポキシ樹脂の単独重合のための1種以上の熱活性化性スルホニウム塩硬化開始剤を含む、上記の絶縁系と一緒の使用のための前記マイカペーパーもしくはマイカテープに関する。
【0085】
前記マイカペーパーもしくはマイカテープは好ましくは、前記マイカペーパーもしくはマイカテープ1m2当り約0.01ないし約100g/m2、好ましくは約2.0ないし約50g/m2、より好ましくは約2.0ないし約20g/m2の量の前記BX3−アミン錯体を含む。
【0086】
本発明に従うマイカペーパーもしくはマイカテープの好ましい態様は、BCl3・N(CH33(三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体)またはBCl3・N(CH32817(三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体)を含む。
【0087】
本発明のテープの柔軟性は、所望される場合は、先行技術のマイカテープに対して知られてきた通りの更なる団結樹脂(consolidating resins)または添加剤を使用することにより高められる場合がある。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は本発明を説明する役割を有する。別記されない限り、その温度は摂氏度数で与えられ、部は重量部であり、そして百分率は重量パーセント(重量パーセント)に関連する。重量部はリッターに対するキログラムの比率における容量部に関連する。
【0089】
(A)実施例中に使用される成分の説明
MY790−1CH: 蒸留ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、エポキシ当量:5.7ないし5.9当量/kg、供給会社、Huntsman,Switzerland、
PY306、PY306CH: ビスフェノールFジグリシジルエーテル(BFDGE)、エポキシ当量:6.0ないし6.4当量/kg、供給会社:Huntsman,Switzerland、
GY250: 未蒸留BADGE、エポキシ当量:5.3ないし5.45当量/kg、供給会社:Huntsman,Switzerland;
DY023: 2,3−エポキシプロピルo−トリルエーテル、反応性希釈剤、供給会社:Huntsman,Switzerland;
DY−P US: 2,3−エポキシプロピル−p−tert−ブチルフェニルエーテ
ル、反応性希釈剤、供給会社:Huntsman,Switzerland;
HY1102: メチルヘキサヒドロフタール酸無水物(MHHPA)、供給会社:Huntsman,Switzerland;
XD4410: BADGE、BFDGEおよび2,3−エポキシプロピル−o−トリルエーテル基剤の一成分エポキシ基剤VPI−樹脂、高度に潜在的促進剤を含む、供給会社:Huntsman,Switzerland;
DY9577: 未処理の三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体(1:1)、供給会社:Huntsman,Switzerland、
EP455: 未処理三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体(1:1)、供給会社:Syntor,UK
PC: プロピレン−カーボネート:供給会社:Huntsman。
【0090】
マイカテープは、場合により、前記マイカペーパーと、機械的支持のための非反応性もしくは反応性接着剤により、前記マイカペーパーに接着される、E−ガラスから製造される軽量のガラス織物またはポリマーフィルムとの団結(consolidation)のための1種以上の添加剤または樹脂を含むマイカペーパーからなる。以下の対照マイカテープが実施例中に使用された:
Poroband ME 4020: 亜鉛ナフテネートを含むマイカテープ、供給会社:Isovolta,Austria、
Poroband 0410: 促進剤を含まないマイカテープ、供給会社:Isovolta,Austria。
【0091】
本発明に従うマイカペーパーおよびマイカテープの調製並びにそれらの適用試験
(C1) 前記BX3−アミン錯体として三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体を含むマイカテープ
160g/m2の面積重量をもつ未焼結雲母片を基材とするマイカペーパーのシートを200×100mmサイズの長方形に切断した。マイカペーパーの含浸のためには、3重量%のDY9577を含む、メチルエチルケトン(MEK)中のDY9577の溶液が調製された。前記マイカシートを2.0gの前記溶液で含浸し、前記溶媒を120℃のオーブン中で3分間除去した。このように調製されたマイカペーパーは3g/m2の三塩化ホウ素−ジメチルオクチルアミン錯体を含んだ。更に、前記マイカシートは、同様な工程または、団結樹脂を使用する第2の工程のいずれかにおいて含浸された。前記団結樹脂に対し、MEK中にポリオール、ポリエステルあるいは改変ポリエステルおよび/またはポリオールの5%溶液が調製された。前記マイカシートは1.6gの本溶液で含浸された。前記溶媒は120℃のオーブン内で3分間除去されて、4g/m2の団結樹脂(ポリオール、ポリエステルあるいは改変ポリエステルおよび/またはポリオール)を生成した。
【0092】
前記の処理されたマイカペーパーはガラス織物スタイル792(23g/m2、26×15、5.5tex/5.5tex)と組み合わせて使用された。
【0093】
一つの代替態様において、前記ガラス織物は6ないし8g/m2のポリエスル、ポリオールまたはポリエステル/ポリオール樹脂混合物で前以てコートされた。前記のコートされたガラスは前記の処理済みマイカペーパーの上に配置され、130℃
の成形装置内で30秒間張り合わされた。(C1−1)と以下に命名されるマイカテープが得られた。
【0094】
別の代替態様において、前記ガラス織物は3g/m2のエポキシ/アクリル樹脂混合物で前以てコートされた。前記のコートされたガラス織物は約100℃の融点を有する固体エポキシ樹脂を使用して前記マイカテープに接着された。この目的のために前記固体のエポキシ樹脂は前記の処理済みマイカペーパー上に均一に分散された。次に前記ガラス織物
をその上に配置した。前記試験体は加熱された圧縮機中に入れられて、前記エポキシ樹脂を融解した(130℃で30秒)。以下に(C1−2)として命名されるマイカテープが得られた。
【0095】
マイカテープの前記の二つの代替態様のいずれにおいても、前記ガラス織物と前記マイカペーパーは堅く接着した。
【0096】
(C2) 前記BX3−アミン錯体としての三塩化ホウ素−トリメチルアミン錯体を含むマイカテープ
160g/m2の面積重量をもつ未焼結雲母片を基材とするマイカペーパーのシートを200×100mmサイズの長方形に切断した。マイカペーパーの含浸のために、1.5%のEP455を含む、MEK中のEP455の溶液を調製した。前記マイカシートを2.66gの前記溶液で含浸した。前記溶媒を110℃のオーブン内で1分間除去して、2g/m2のEP455を生成した。更に、前記マイカシートは前記と同様な工程、または団結樹脂を含む第2の工程のいずれかにおいて含浸された。前記団結樹脂としては、MEK中に、ポリオール、ポリエステルあるいは改変ポリエステルおよび/またはポリオールの5%溶液が調製された。前記マイカシートは1.6gの本溶液で含浸された。前記溶媒は120℃のオーブン内で3分間除去されて、4g/m2の団結樹脂(ポリオール、ポリエステルあるいは改変ポリエステルおよび/またはポリオール)を生成した。
【0097】
前記の処理済みマイカペーパーは、前記の同様なガラス織物と組み合わせ、そして(C1)に記載された通りの前記の2種の被覆および接着の代替方法のいずれかに使用された。接着されるマイカペーパーと、ポリエステル/ポリオール樹脂であるガラス織物とを含む、(C2−1)として以下に命名されるマイカテープ並びに接着されるマイカペーパーと、固体エポキシ樹脂であるガラス織物とを含む(C2−2)として以下に命名されるマイカテープが得られた。
【0098】
再度、前記の二つの代替態様(C2−1)および(C2−2)のいずれにおいても、前記ガラス織物および前記のマイカペーパーは堅く接着された。
【0099】
前記の、得られたマイカテープの試験体(C1−1)、(C1−2)、(C2−1)および(C2−2)はそれぞれ半分に切断されて、二つの等しい100×100mmサイズのサンプルを与えた。
【0100】
本発明のマイカテープおよび対照のマイカテープおよび含浸樹脂を含む、4−層複合体の調製、並びにそれらの試験
(C1−1)からの二つの100×100mmのサンプルおよび(C1−2)からの二つの100×100mmのサンプルは、各マイカテープ層の後に交互に1.625gの均一に分配された含浸樹脂を使用してそれぞれの上に重ねられて、それぞれの場合に6.5gの総樹脂重量を有する4−層のマイカテープ複合体(composites)を与えた。
【0101】
同様に、Znナフテネート含有マイカテープ(ProbandME4020)または促進剤非含有マイカテープ(poroband0410)いずれかの4枚の100×100mmのサンプルを、各マイカテープ層の後に交互に、1.625gの均一に分配された含浸樹脂を使用して相互の上に重ねて、それぞれの場合に6.5gの総樹脂重量を有する二つの更なる4−層のマイカテープ対照複合体を与えた。
【0102】
使用された含浸樹脂および以下の試験中に使用された通りの、生成された4−層複合体の名称は表1に示される。
【0103】
【表1】
【0104】
更なる比較の目的のために、前記の本発明の含浸4−層マイカテープ複合体(Inv I−1)ないし(Inv F−2)中に使用された含浸樹脂はそれぞれ、更に、マイカテープの不在において、少量のDY9577またはEP455のいずれかと均一に混合され、そしてあらゆるマイカテープの不在において硬化された。これらの組成物、更にマイカテープ非含有対照配合物および以下の試験に使用された通りのそれらの名称(designation)は表2に示される。
【0105】
【表2】
【0106】
すべてのサンプルに対する硬化条件は以下の通りである:
・ DY9577を含む複合体(Inv I−1)、(Inv H−1)、(Inv G−1)、(Inv F−1)および(Inv K−1):加熱成形機(press);1
00℃、20barで4時間、次に20barで10時間、170℃に温度を高めた。
・ EP455を含む複合体(InvI−2)、(Inv H−2)、(Inv G−2)および(Inv F−2):加熱成形機;125℃、20barで4時間、次に20barで12時間、170℃に温度を高めた。
・ EP455を含む複合体(Inv K−2):加熱成形機;125℃、20barで4時間、次に20barで10時間、170℃に温度を上げた。
・ 対照複合体(Ref−1):加熱成形機;160℃、20barで12時間。
・ 対照複合体(Ref−2):加熱成形機;125℃、20bar、4時間、次に20barで12時間、170℃に温度を上げた。
・ EP455を含む対照配合物(H−2)、並びにDY9577を含む(H−1)、(I−1)および(K−1):加熱可能な金型;100℃で4時間、次に170℃で10時間に温度を上げた。
・ DY9577を含む対照配合物(F−1)、(G−1):加熱可能な金型;100℃で4時間、次に170℃で12時間に温度を上げた。
【0107】
EP455を含む対照配合物(I−2)、(G−2)、(F−2)および(K−2):加熱可能な金型;125℃で4時間、次に170℃で12時間に温度を上げた。
【0108】
すべての硬化済み4−層複合体および硬化済み対照配合物は以下の試験を受けた:
1)400V/50Hzにおけるガードリング電極を使用するTettex装置において155℃でIEC60250に従うtanδ測定、
2)ガラス遷移温度Tg。前記の4−層配合物に対しては、最大tanδがTgとして観察される温度を使用し、IEC61006に従い、5℃/分の速度におけるDMAにより、50mm×10mmの複合体の試験体上で測定された。前記対照配合物に対してはDSCにより直接測定された。
【0109】
硬化済み4−層複合体は更に、700℃/15分において灰化させ、灰化の前後のサンプル重量を比較することにより、硬化済み有機物含量に対する促進剤の質量比について、50mm×10mmの複合体の試験体上で分析された。この比率は概説において説明されたR=macc/mbathである。
【0110】
上記の試験結果は以下の表3(4−層の本発明の複合体および対照複合体に対する)および以下の表4(対応する対照配合物に対する)に要約される。
【0111】
【表3】
【0112】
対照マイカテープおよび対照配合物との、本発明の含浸マイカテープの比較に基づく結論
第1に、すべての本発明の4−層複合体は、均一に混合された相当するBCl3アミン錯体を含む前記の相当する含浸槽と同様に良好に硬化した。これは、すべてが約130℃を超える観察されたTg値から由来される(derived from)場合がある。それらはZn−ナフテネートマイカテープおよび更に、均一に混合されたBCl3アミン錯体を含む前記対照の4−層複合体(Ref−1)に匹敵して良好に硬化する。それらは、均一に分散された高度に潜在的な硬化促進剤を含む標準の一成分含浸槽を含む前記の対照の4−層複合体(Ref−2)より良好に硬化する。
【0113】
本質的に純粋なBADGE(蒸留済みの、前記に概説の式中のn=0ないし0.3)からなる含浸樹脂槽を使用する方法は、硬化後に、促進剤としてZn−ナフテネートを含む、前記の対照4−層複合体(Ref−1)に匹敵する、本発明のマイカテープを含むDY9577またはEP455のいずれかによる最高のtanδ値を与える[(Inv−F)および(Inv F−2)参照]。
【0114】
本発明のマイカテープと組み合わせた、本質的に純粋なBADGE(蒸留済み、前記概説の式中でn=0ないし0.3)および前記含浸槽に基づいて0ないし約20重量%の標準(未精製)BADGEからなる含浸樹脂槽を使用する方法は、多くの場合、硬化後に、前述の、対応するが均一に混合されたBCl3アミン錯体を含む同様な含浸樹脂槽よりも、優れたtanδ値を与えるように見える:[(Inv F−1)対(F−1)、(Inv F−2)対(F−2)、(Inv G−2)対(G−2)を参照されたい。]
本発明の系において、tanδ値の保持を伴う反応性希釈剤を同時使用することは可能である。とりわけ、このような反応性希釈剤として、前記の可能な変異誘発性(mutagenic)2,3−エポキシプロピルo−トリルエーテルの代わりに、前記の非変異誘発性代替物2,3−エポキシプロピル−p−tert−ブチルフェニルエーテルを使用することは可能である。前記tanδ値は本質的に前記の不均質な例(促進剤が前記マイカテープ中に含まれる)および均質な対照例(促進剤が前記含浸樹脂槽中に均質に含まれる)の両方において保持される。
【0115】
本発明の系は促進剤DY9577およびEP455の両方を含む結晶化樹脂に関わる必要条件を満たす。両方の促進剤を含む本発明の含浸系およびマイカテープは更に、tanδおよびTg値に関する必要条件を満たす。本発明に従って使用される促進剤は前記の先行技術の促進剤の亜鉛ナフテネートから知られるように、前記マイカペーパー上に同様な団結効果を有するために、更なる団結添加剤は必要でない。
【0116】
本発明の系中に使用される減圧含浸用の槽配合物は、前記tanδおよびTg値を調整するためにBADGE以外の更なるエポキシ樹脂を含む場合がある。
【0117】
本発明の系に使用される減圧含浸用のあらゆる槽配合物は、問題の前記減圧含浸用槽配合物が室温で保存される場合に結晶化する傾向をもたなければならない場合でも、結晶化を回避するために70℃のような高温で保存される場合がある。
【0118】
例えば、本発明のマイカテープが前記BX3−アミン錯体として、前記の好ましいBCl3・N(CH321を含む場合には、その中に含まれる1ないし10のR1の鎖長のばらつきは許容される場合がある:DY9577は鎖長8を有し、またEP455は鎖長1を有する。これは、前記アミン上の置換基の鎖長が非常に重要であることはない、ことを暗示している。
【0119】
それらはまた、tanδまたはTg値に対する極僅かな影響を伴ってBX3−アミン錯体の含量(g/m2)のばらつきを極めて十分に許容する場合がある。しかし、前記tanδおよびTg値は、硬化温度および時間を適切に選択することにより調節される場合が
ある。
【国際調査報告】