(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドに特異的に結合する結合ドメインを含む免疫グロブリン結合タンパク質であって、前記結合ドメインが、
(a)
i.配列番号31に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号32に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号33に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;
ii.配列番号25に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号26に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号27に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;または
iii.配列番号37に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号38に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号39に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント
を含むVLドメイン、ならびにVHドメイン;あるいは
(b)
i.配列番号28に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号29に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号30に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;
ii.配列番号22に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号23に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号24に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;または
iii.配列番号34に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号35に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号36に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含むVHドメイン、ならびにVLドメイン;あるいは
(c)(a)の前記VLドメインおよび(b)の前記VHドメイン
を含む、免疫グロブリン結合タンパク質。
前記結合ドメインが、scFv、タンデムscFv、scFv−Fc、タンデムscFv−Fc、scFv二量体、scFv−ジッパー、ダイアボディ、ダイアボディ−Fc、ダイアボディ−CH3、scダイアボディ、scダイアボディ−Fc、scダイアボディ−CH3、ナノボディ、ミニボディ、ミニ抗体、トリアボディ、テトラボディ、Fab、F(ab)’2、scFab、Fab−scFv、Fab−scFv−Fc、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2−scFv2、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)分子、DART、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリ、scFv−CH3−KIHアセンブリ、KIH Common Light−Chain抗体、TandAb、Triple Body、TriBiミニボディ、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2−scFv2、四価のHCab、イントラボディ、CrossMab、Dual Action Fab(DAF)(トゥーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT−IgG、Charge Pair、Fab−アームExchange、SEEDbody、Triomab、LUZ−Y、Fcab、κλ−ボディ、直交Fab、DVD−IgG、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L,H)−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、Zybody、またはDVI−IgG(フォーインワン)を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質。
多重特異的結合タンパク質を含み、前記多重特異的結合タンパク質が、前記タグペプチドに特異的に結合する結合ドメインおよび前記タグペプチドではない少なくとも1つの標的に特異的に結合する結合ドメインを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質。
請求項1〜25のいずれか一項に記載の結合ドメインを含む細胞外成分、およびエフェクタードメインを含む細胞内成分を含み、前記細胞外成分と細胞内成分が、膜貫通ドメインによって接続されている、融合タンパク質。
細胞傷害剤、放射性同位体、放射性金属、または検出可能な作用剤をさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、または請求項26〜28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
(a)請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、または(b)請求項26〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質、および薬学的に許容される担体もしくは賦形剤を含む組成物。
(a)請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質または(b)請求項26〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、7、および13のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは100%の同一性を有するポリヌクレオチド;ならびに/または
(b)配列番号4、9、および15のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項31に記載のポリヌクレオチド。
前記ポリヌクレオチドまたは前記発現構築物が、前記免疫グロブリン結合タンパク質または前記融合タンパク質をコードし、前記宿主細胞が、コードされた前記免疫グロブリン結合タンパク質またはコードされた前記融合タンパク質を発現する、請求項31〜33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項34に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドを細胞表面に発現するタグ付き細胞またはタグ付き細胞の集団を識別するための方法であって、
(i)1つまたは複数のタグ付き細胞を含む対象由来の試料を、請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、または請求項26〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質と接触させることと;
(ii)前記免疫グロブリン結合タンパク質または前記融合タンパク質の前記1つまたは複数のタグ付き細胞との特異的結合を検出することとを含み、
それによって、前記タグペプチドを発現する1つまたは複数の細胞を識別する、方法。
前記検出可能な部分が、1つまたは複数の酵素、色素、蛍光標識、またはペプチドタグを含み、ただし、前記ペプチドタグは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含まないかまたはそれからならない、請求項45に記載の方法。
前記蛍光標識が、シアニン色素、クマリン、ローダミン、キサンテン、フルオレセインもしくはそのスルホン化誘導体、蛍光タンパク質、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項50に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質または前記融合タンパク質が特異的に結合した前記タグ付き細胞または前記タグ付き細胞の集団が、磁気カラムクロマトグラフィーによって、試料の他の構成成分から濃縮されるかまたは単離される、請求項39〜55のいずれか一項に記載の方法。
配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドをその細胞表面に発現するように改変された免疫細胞を活性化するための方法であって、前記改変された免疫細胞を、請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、または請求項26〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、前記改変された免疫細胞の活性化を誘導するのに十分な条件下および時間で、接触させることを含む、方法。
前記タグ付き細胞表面タンパク質が、CAR、TCR、マーカー、またはそれらの組合せを含み、必要に応じて、前記マーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択される、請求項63に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質が、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズに結合している、請求項39〜66のいずれか一項に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質が、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズに結合している、請求項72または73に記載の方法。
前記細胞を、抗CD27結合タンパク質、抗CD28結合タンパク質、抗CD137結合タンパク質、抗OX40結合タンパク質、またはそれらの任意の組合せとインキュベートすることをさらに含み、前記結合タンパク質のうちの1つまたは複数が、固体表面に結合している、請求項75〜76のいずれか一項に記載の方法。
前記抗CD27結合タンパク質、抗CD28結合タンパク質、抗CD137結合タンパク質、抗OX40結合タンパク質、またはそれらの任意の組合せが、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズに結合している、請求項77に記載の方法。
前記機能的に改変されたT細胞が、ウイルス特異的細胞、腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞、メモリーT幹細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、またはCD4+CD25+調節T細胞である、請求項81に記載の方法。
前記細胞表面タンパク質が、CAR、TCR、マーカー、またはそれらの組合せを含み、必要に応じて、前記マーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択される、請求項83に記載の方法。
前記結合ドメインが、抗体の抗原結合断片を含み、前記抗原結合断片が、scFv、タンデムscFv、scFv−Fc、scFv二量体、scFvジッパー、ダイアボディ、ミニボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、F(ab’)2、scFab、ミニ抗体、ナノボディ、ナノボディ−HSA、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、scダイアボディ、scダイアボディ−CH3、またはscFv−CH3ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリである、請求項86〜89のいずれか一項に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質が、二重特異的であり、前記タグペプチドに結合するのと同時に、(a)T細胞マーカーまたは(b)NK細胞マーカーに結合することが可能である、請求項93に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質が、二重特異的scFv、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)分子、ナノボディ、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、scダイアボディ−CH3、ダイアボディ−CH3、Triple Body、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv−CH3 KIH、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2、F(ab’)2−scFv2、scFv−KIH、Fab−scFv−Fc、四価のHCab、scダイアボディ−Fc、ダイアボディ−Fc、タンデムscFv−Fc、イントラボディ、Dock and Lock融合タンパク質、ImmTAC、HSAbody、scダイアボディ−HSA、タンデムscFv、crossMab、DAF(トゥーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT−IgG、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリ、KIH Common Light−Chain抗体、Charge Pair、Fab−アームExchange、SEEDbody、Triomab、LUZ−Y、Fcab、κλ−ボディ、直交Fab、DVD−IgG、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L,H)−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、Zybody、またはDVI−IgG(フォーインワン)を含む、請求項94または95に記載の方法。
前記免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物が、前記タグ付き免疫治療用細胞の存在に関連する少なくとも1つの有害事象を有する前記対象に投与される、請求項91〜99のいずれか一項に記載の方法。
前記in vivo追跡が、磁気粒子;超常磁性酸化鉄(SPIO);フルオロデオキシグルコース(18F);蛍光化合物;またはそれらの任意の組合せにコンジュゲートした前記免疫グロブリン結合タンパク質または前記融合タンパク質の使用を含む、請求項101に記載の方法。
前記タグ付き免疫治療用細胞が、T細胞、NK細胞、NK−T細胞、造血幹細胞、組織細胞、間葉細胞、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項91〜103のいずれか一項に記載の方法。
前記対象が、1つまたは複数のタグ付き免疫治療用細胞を含む移植後に、移植片対宿主病(GvHD)、宿主対移植片病(HvGD)、またはサイトカイン放出症候群(CRS)を有するかまたは有することが疑われる、請求項91〜104のいずれか一項に記載の方法。
(a)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドをコードする発現ベクターまたはポリヌクレオチド、および前記ベクターまたはポリヌクレオチドを宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬;ならびに
(b)(i)請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、
(ii)請求項23〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質、
(iii)請求項30に記載の組成物、
(iv)請求項31〜33のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは請求項34〜37のいずれか一項に記載の発現ベクター、および前記ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬、および/または
(v)請求項38に記載の宿主細胞
を含む、キット。
(i)請求項1〜25および29のいずれか一項に記載の免疫グロブリン結合タンパク質、または請求項26〜29のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含むマトリックス組成物;および
(ii)免疫共刺激分子に特異的に結合する結合ポリペプチドであって、前記結合によって前記免疫共刺激分子の活性レベルが増加する、結合ポリペプチド
を含むマトリックス組成物。
(i)および(ii)のうちの一方または両方が、固体表面、アガロースビーズ、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズに配置されている、請求項109に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示は、Strep(登録商標)−Tag II(WSHPQFEK、配列番号19)を含むかまたは発現する組換えタンパク質および宿主細胞を識別、ソート、追跡、および選択的にモジュレートするための組成物および方法を提供する。ある特定の態様では、例えば、養子細胞治療のために、タグ付き免疫細胞をモジュレートするのに有用な免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、およびこれらを発現する宿主細胞が提供される。
【0010】
背景として、遺伝子改変されたT細胞の養子移入は、様々な悪性疾患に対する強力な治療法として出現した。最も広く利用されている戦略は、腫瘍関連抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現する患者由来T細胞の注入である。このアプローチは、T細胞を細胞表面抗原に標的化すること、腫瘍エスケープ機構としての主要組織適合性遺伝子複合体の喪失を回避すること、および、いずれの患者の処置にもヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプに関係なく単一のベクター構築物を用いることに使用され得る。例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)についてのCAR臨床試験では、悪性リンパ系細胞上はもちろん正常B細胞上にも発現するCD19、CD20またはCD22抗原が、これまでに標的とされたことがある(Brentjens et al., Sci Transl Med 2013;5(177):177ra38; Haso et al.,Blood 2013;121(7):1165-74; James et al., J Immunol 2008;180(10):7028-38; Kalos et al., Sci Transl Med 2011;3(95):95ra73; Kochenderfer et al., J Clin Oncol 2015;33(6):540-9; Lee et al., Lancet 2015;385(9967):517-28; Porter et al., Sci Transl 25 Med 2015;7(303):303ra139; Savoldo et al., J Clin Invest 2011;121(5):1822-6; Till et al., Blood 2008;112(6):2261-71; Till et al., Blood 2012;119(17):3940-50; Coiffier et al., N Engl J Med 2002;346(4):235-42)。
【0011】
養子細胞治療のためのツールとしては、PCT特許出願公開第WO2015/095895号(そのタグ付きエフェクター分子が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものなどの、タグ付きキメラエフェクター分子が挙げられる。この開示では、高い特異性および忠実度を有するそのようなタグ付き分子を発現する細胞を識別およびモジュレートする(例えば、活性化する、増殖を誘導する、損なう、または殺滅する)ことが可能であることが示された免疫グロブリン結合タンパク質が産生された。
【0012】
本開示をより詳細に示す前に、本明細書で使用されるある特定の用語の定義を提供することは、本開示の理解の助けになり得る。さらなる定義は、本開示を通して示される。
【0013】
本説明では、任意の濃度範囲、百分率範囲、比の範囲、または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数の値、および適宜、それらの分数(例えば、整数の十分の一および百分の一)を含むと理解するべきである。また、任意の物理的特徴、例えば、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さに関して本明細書で列挙される任意の数値範囲は、別段の指示がない限り、列挙されている範囲内の任意の整数を含むと理解すべきである。本明細書で使用される用語「約」は、別段の指示がない限り、示されている範囲、値または構造の±20%を意味する。用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、列挙されている構成要素のうちの「1または複数(one or more)」を指すと理解すべきである。選択肢(例えば、「または」)の使用は、それらの選択肢のうち1つ、両方、または任意の組合せを意味すると理解すべきである。本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」、「有する」および「含む(comprise)」は、同義で使用され、これらの用語およびそれらの異表記は、非限定的と解釈されることを意図したものである。
【0014】
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、その後に記載される要素、成分、事象または状況が、起こることもあり、または起こらないこともあること、およびその記載が、要素、成分、事象または状況が起こる事例とそれらが起こらない事例とを含むことを意味する。
【0015】
さらに、本明細書に記載される構造および置換基の様々な組合せから得られる個々の構築物または構築物の群は、あたかも各構築物または構築物の群が個々に示されたのと同程度に、本願により開示されると理解すべきである。したがって、特定の構造または特定のサブユニットの選択は、本開示の範囲内である。
【0016】
用語「から本質的になる」は、「含む」と同等ではなく、請求項の明記された材料もしくはステップ、または特許請求された主題の基本的特徴に実質的に影響を与えない材料もしくはステップを指す。例えば、タンパク質のドメイン、領域もしくはモジュール(例えば、結合ドメイン、ヒンジ領域、またはリンカー)またはタンパク質(これは、1もしくは複数のドメイン、領域もしくはモジュールを有し得る)は、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質のアミノ酸配列が、組み合わせて、ドメイン、領域、モジュールまたはタンパク質の長さの多くても20%(例えば、多くても15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%または1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)またはタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合親和性)に実質的に影響を与えない(すなわち、活性の低減が、50%を超えない、例えば、40%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下または1%以下である)、伸長、欠失、変異またはそれらの組合せ(例えば、アミノ末端もしくはカルボキシ末端にある、またはドメイン間にあるアミノ酸)を含む場合、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸はもちろん、天然に存在するアミノ酸と同じように機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物も指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝コードによってコードされたもの、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基と結合しているα−炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持するが、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じように機能する、化合物を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「変異」は、参照または野生型核酸分子またはポリペプチド分子とそれぞれ比較したときの核酸分子またはポリペプチド分子の配列の変化を指す。変異は、ヌクレオチド(複数可)またはアミノ酸(複数可)の置換、挿入または欠失を含む、配列のいくつかの異なるタイプの変化をもたらすことができる。
【0019】
「保存的置換」は、特定のタンパク質の結合特性に有意な影響を与えない、または特定のタンパク質の結合特性を有意に変化させない、アミノ酸置換を指す。一般に、保存的置換は、置換されるアミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられることである。保存的置換は、次の群のうちの1つの中で見いだされる置換を含む:第1群:アラニン(AlaまたはA)、グリシン(GlyまたはG)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT);第2群:アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはZ);第3群:アスパラギン(AsnまたはN)、グルタミン(GlnまたはQ);第4群:アルギニン(ArgまたはR)、リジン(LysまたはK)、ヒスチジン(HisまたはH);第5群:イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、バリン(ValまたはV);および第6群:フェニルアラニン(PheまたはF)、チロシン(TyrまたはY)、トリプトファン(TrpまたはW)。加えてまたは代替的に、アミノ酸は、類似した機能、化学構造または組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、もしくは硫黄含有)により、保存的置換群に分類することができる。例えば、脂肪族分類は、置換を目的として、Gly、Ala、Val、Leu、およびIleを含み得る。他の保存的置換群は、硫黄含有:Metおよびシステイン(CysまたはC);酸性:Asp、Glu、Asn、およびGln;小さい脂肪族、非極性または微極性残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;極性、負荷電残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;極性、正荷電残基:His、Arg、およびLys;大きい脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに大きい芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrpを含む。追加情報は、Creighton (1984) Proteins, W.H.Freeman and Companyにおいて見つけることができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマーを指す。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸ポリマーにはもちろん、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣物である、アミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーにも当てはまる。ポリペプチドは、タグ、標識、生理活性分子、またはそれらの任意の組合せなどの他の成分(例えば、共有結合した)をさらに含有してもよい。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、断片であってもよい。本明細書で使用される場合、「断片」は、参照配列に見られる1つまたは複数のアミノ酸を欠くポリペプチドを意味する。断片は、参照配列に見られる結合ドメイン、抗原、またはエピトープを含み得る。参照ポリペプチドの断片は、参照配列のアミノ酸配列のうち、少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多いアミノ酸を有し得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、単一鎖内に少なくとも2つの明確に異なるドメインを有するタンパク質であって、自然には前記ドメインが一緒にタンパク質内に見られないタンパク質を指す。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、PCRを使用して構築されること、組換え操作されることなどがあり、またはそのような融合タンパク質を合成することができる。融合タンパク質は、タグ、リンカーまたは形質導入マーカーなどの、他の成分をさらに含有することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞(例えば、T細胞)により発現または産生される融合タンパク質は、細胞表面に位置し、前記融合タンパク質は、細胞膜に(例えば、膜貫通ドメインによって)繋留されており、細胞外部分(例えば、結合ドメインを含有する)および細胞内部分(例えば、シグナル伝達ドメイン、エフェクタードメイン、共刺激ドメインまたはそれらの組合せを含有する)を含む。
【0022】
「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、天然サブユニット(例えば、プリンもしくはピリミジン塩基)または非天然サブユニット(例えば、モルホリン環)で構成され得る、共有結合的に連結されているヌクレオチドを含むポリマー化合物を指す。プリン塩基は、アデニン、グアニン、ヒポキサンチンおよびキサンチンを含み、ピリミジン塩基は、ウラシル、チミンおよびシトシンを含む。核酸分子は、ポリリボ核酸(RNA)、ポリデオキシリボ核酸(DNA)(これは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含む)を含み、これらはいずれも、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。一本鎖の場合、核酸分子は、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。アミノ酸配列をコードする核酸分子は、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列の一部のバージョンは、イントロンが同時転写機構または転写後機構によって除去されることになる場合には、イントロンも含むことができる。言い換えると、異なるヌクレオチド配列が、遺伝コードの重複性もしくは縮重の結果として、またはスプライシングにより、同じアミノ酸配列をコードすることもある。
【0023】
本開示の核酸分子のバリアントも企図される。バリアント核酸分子は、本明細書に記載の被定義もしくは参照ポリヌクレオチドの核酸分子と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%同一、好ましくは、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.9%同一であるか、または約65〜68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、もしくは約42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドというストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でポリヌクレオチドとハイブリダイズするものである。核酸分子バリアントは、標的分子に特異的に結合することなどの本明細書に記載される機能性を有する融合タンパク質またはその結合ドメインをコードする能力を保持する。
【0024】
「配列同一性パーセント」は、配列を比較することにより決定されるような、2つまたはそれより多くの配列の間の関係を指す。配列同一性を決定する好ましい方法は、比較されることになる配列間のベストマッチをもたらすように設計される。例えば、配列は、最適な比較のためにアラインメントされる(例えば、最適なアラインメントのためにギャップを第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入することができる)。さらに、非相同配列は、比較のために無視されることもある。本明細書で言及される配列同一性パーセントは、別段の指示がない限り、参照配列の長さにわたって計算される。配列同一性および類似性を決定する方法は、公開されているコンピュータプログラムの中で見つけることができる。配列アラインメントおよび同一性パーセント計算は、BLASTプログラム(例えば、BLAST 2.0、BLASTP、BLASTN、またはBLASTX)を使用して行うことができる。BLASTプログラムで使用される数学的アルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res.25:3389-3402, 1997において見つけることができる。本開示に関して、配列分析ソフトウェアが分析に使用される場合、分析結果が、言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは、理解されるであろう。「デフォルト値」は、初回開始時にソフトウェアに元々ロードされている値またはパラメーターの任意のセットを意味する。
【0025】
用語「単離された」は、材料がその元の環境(例えば、その材料が天然に存在する場合には天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生存動物に天然に存在する核酸またはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系内に共存する材料の一部または全てから分離された同じ核酸またはポリペプチドは、単離されている。そのような核酸は、ベクターの一部であることもあり、および/またはそのような核酸もしくはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の一部であることもあるが、それでもやはり、そのようなベクターもしくは組成物が核酸もしくはポリペプチドの天然環境の一部でないという点で単離されていることであり得る。用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味し、このセグメントには、コード領域の前および後の領域(「リーダーおよびトレーラー」)ならびに個々のコードセグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる。
【0026】
「機能的バリアント」は、本開示の親または参照化合物と構造的に同様であるまたは実質的に構造的に同様であるが、わずかに組成が異なる(例えば、1つの塩基、原子または官能基が異なる、付加されている、または除去されている)、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドであって、したがって、ポリペプチドまたはコードされたポリペプチドが、コードされた親ポリペプチドの少なくとも1つの機能を、その親ポリペプチドの活性の少なくとも50%の効率、好ましくは、少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%の活性レベルで行うことができる、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。言い換えると、本開示のポリペプチドまたはコードされたポリペプチドの機能的バリアントは、結合親和性を測定するためのアッセイ(例えば、会合(Ka)または解離(K
d)定数を測定する、Biacore(登録商標)またはテトラマー染色)などの、選択されたアッセイにおいて、親または参照ポリペプチドと比較して性能の50%を超える低下を示さない場合、「同様の結合」、「同様の親和性」または「同様の活性」を有する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「機能的部分」または「機能的断片」は、親または参照化合物のドメイン、部分(portion)または断片のみを含む、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指し、このポリペプチドまたはコードされたポリペプチドは、親もしくは参照化合物のドメイン、部分もしくは断片に関連する少なくとも50%の活性、好ましくは、親ポリペプチドの少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、もしくは100%の活性レベルを保持するか、または生物学的利益(例えば、エフェクター機能)を提供する。本開示のポリペプチドまたはコードされたポリペプチドの「機能的部分」または「機能的断片」は、その機能的部分または断片が、結合親和性を測定するためのアッセイまたはエフェクター機能(例えば、サイトカイン放出)を測定するためのアッセイなどの、選択されたアッセイにおいて、親または参照ペプチドと比較して50%を超える性能の低下を示さない場合(好ましくは、親和性に関して親または参照物と比較して20%もしくは10%以下または対数差分以下)、「同様の結合」または「同様の活性」を有する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「異種」または「非内在性」または「外因性」は、宿主細胞もしくは対象にとってネイティブでない任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子もしくは活性、または変更された宿主細胞もしくは対象にとってネイティブの任意の遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子もしくは活性を指す。異種、非内在性、または外因性は、構造、活性、または両方が、ネイティブ遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子と変更された遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子との間で異なるように変異または別様に変更された、遺伝子、タンパク質、化合物または核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、異種、非内在性または外因性遺伝子、タンパク質、または核酸分子(例えば、受容体、リガンドなど)は、宿主細胞にとっても対象にとっても内在性でないことがあり、その代わり、そのような遺伝子、タンパク質または核酸分子をコードする核酸をコンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションなどにより宿主細胞に付加することができ、付加された核酸分子は、宿主細胞ゲノムに組み込まれることがあり、または染色体外遺伝物質として(例えば、プラスミドもしくは他の自己複製ベクターとして)存在することができる。用語「相同(の)」または「相同体」は、宿主細胞、種もしくは株に見られる、または宿主細胞、種もしくは株から得られる、遺伝子、タンパク質、化合物、核酸分子または活性を指す。例えば、ポリペプチドをコードする異種または外因性ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、ネイティブポリヌクレオチドまたは遺伝子と相同であることがあり、相同ポリペプチドまたは相同の活性をコードすることがあるが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、変更された構造、配列、発現レベル、またはそれらの任意の組合せを有することもある。非内在性ポリヌクレオチドまたは遺伝子はもちろん、コードされたポリペプチドまたは活性も、同じ種からのものであることがあり、異なる種からのものであることがあり、またはそれらの組合せからのものであることがある。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「内在性」または「ネイティブ」は、宿主細胞中または対象体内に通常存在するポリヌクレオチド、遺伝子、タンパク質、化合物、分子、または活性を指す。
【0030】
用語「発現」は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドが、遺伝子などの核酸分子のコード配列に基づいて産生されるプロセスを指す。このプロセスは、転写、転写後制御、転写後修飾、翻訳、翻訳後制御、翻訳後修飾、またはそれらの任意の組合せを含み得る。発現された核酸分子は、通常は、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されている。
【0031】
用語「作動可能に連結された」は、1つの核酸分子の機能が他の核酸分子による影響を受けるような、単一核酸断片上の2つまたはそれより多くの核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターとコード配列は、プロモーターが、そのコード配列の発現に影響を与えることができる(すなわち、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合、作動可能に連結されている。「連結されていない」は、会合している遺伝子エレメントが、互いに密接に会合しておらず、1つの遺伝子エレメントの機能が他の遺伝子エレメントに影響を与えないことを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、好適な宿主において核酸分子の発現を生じさせることができる好適な制御配列に作動可能に連結されている核酸分子を含有するDNA構築物を指す。そのような制御配列には、転写を生じさせるプロモーター、そのような転写を制御するための必要に応じたオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳の終結を制御する配列が含まれる。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、ウイルス、または単に潜在的ゲノム挿入物であり得る。好適な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムから独立して複製および機能することができ、または一部の場合には、自体を宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。本明細書では、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」および「ベクター」は、同義で使用されることが多い。
【0033】
核酸分子を細胞に挿入する文脈での用語「導入される/された」は、「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」を意味し、核酸分子を細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドまたはミトコンドリアDNA)に組み込むことができる、自律レプリコンに変換することができる、または(例えば、トランスフェクトされたmRNAを)一過性に発現することができる、真核または原核細胞への核酸分子の組込みへの言及を含む。本明細書で使用される場合、用語「操作された」、「組換え(の)」または「非天然(の)」は、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された生物、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された微生物、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により改変された細胞、少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により修飾された核酸分子、または少なくとも1つの遺伝子変更を含むかもしくは外因性核酸分子の導入により修飾されたベクターであって、そのような変更または改変/修飾が、遺伝子操作(すなわち、人間の介入)により導入される、生物、微生物、細胞、核酸分子またはベクターを指す。遺伝子変更は、例えば、タンパク質、融合タンパク質もしくは酵素をコードする発現可能な核酸分子を導入する修飾、または他の核酸分子付加、欠失、置換、または細胞の遺伝物質の他の機能破壊を含む。追加の修飾は、例えば、修飾がポリヌクレオチド、遺伝子またはオペロンの発現を変更する、非コード調節領域を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「宿主」は、目的のポリペプチド(例えば、本開示の融合タンパク質)を産生するために異種核酸分子での遺伝子修飾の標的とされる細胞(例えば、T細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、B細胞など)または微生物を指す。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、例えば異種タンパク質の生合成に関係するまたは関係しない所望の特性を付与する他の遺伝子修飾(例えば、検出可能なマーカーの組み入れ;内在性TCRの欠失、変更もしくは短縮化;または共刺激因子発現の増加)を、必要に応じて、既に有することもあり、または含むように修飾されることもある。
【0035】
本明細書に記載されるように、1つより多くの異種核酸分子を、別々の核酸分子として、複数の個々に制御された遺伝子として、ポリシストロニック核酸分子として、融合タンパク質をコードする単一の核酸分子として、またはそれらの任意の組合せとして、宿主細胞に導入することができる。2つまたはそれより多くの異種核酸分子が宿主細胞に導入される場合、これら2つまたはそれより多くの異種核酸分子が、単一の核酸分子として(例えば、単一のベクターで)導入されることもあり、別々のベクターで宿主染色体の単一の部位もしくは複数の部位に組み込まれることもあり、またはそれらの任意の組合せであることもあることは理解される。言及された異種核酸分子またはタンパク質活性の数は、コードする核酸分子の数またはタンパク質活性の数を指し、宿主細胞に導入される別々の核酸分子の数を指さない。
【0036】
用語「構築物」は、組換え核酸分子を含有する任意のポリヌクレオチドを指す。構築物は、ベクター(例えば、細菌ベクター、ウイルスベクター)中に存在することもあり、またはゲノムに組み込まれていることもある。「ベクター」は、別の核酸分子を輸送することができる核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクターであることもあり、または染色体の、非染色体の、半合成のもしくは合成の核酸分子を含み得る線状もしくは環状DNAもしくはRNA分子であることもある。本開示のベクターは、トランスポゾン系(例えば、スリーピング・ビューティー、例えば、Geurts et al., Mol.Ther.8:108, 2003: Mates et al., Nat. Genet. 41:753(2009)を参照されたい)も含み得る。例示的なベクターは、それらが連結する核酸分子の自律複製(エピソームベクター)または発現(発現ベクター)を可能にするベクターである。
【0037】
本明細書で使用される場合、混合物中の細胞型の量に関して「濃縮された/される」または「枯渇された/される」は、1つまたは複数の濃縮または枯渇プロセスまたはステップの結果として生じる、細胞の混合物中の「濃縮」型の数の増加、「枯渇」細胞の数の減少、または両方を指す。したがって、濃縮プロセスに供された細胞の元となる集団の供給源に依存して、混合物または組成物は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のもしくはそれを超える(数または計数値の点で)、「濃縮された」細胞を含有し得る。枯渇プロセスに供された細胞は、結果として、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%パーセントもしくはそれ未満(数または計数値の点で)の「枯渇された」細胞を含有する混合物または組成物になる。ある特定の実施形態では、混合物中のある特定の細胞型の量が濃縮されることになり、異なる細胞型の量が枯渇されることになる;例えば、CD4
+細胞の濃縮と同時にCD8
+細胞を枯渇させること、またはCD62L
+細胞の濃縮と同時にCD62L
−細胞を枯渇させること、またはそれらの組合せ。
【0038】
「処置する」または「処置」または「改善する」は、対象(例えば、ヒト、または非ヒト動物、例えば、霊長類、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウスもしくはラット)の疾患、障害または状態の医学的管理を指す。一般に、本開示の融合タンパク質を発現する宿主細胞と、必要に応じてアジュバントとを含む、適切な用量および処置レジメンは、治療的または予防的恩恵を生じさせるのに十分な量で投与される。治療的または予防的/防止的恩恵は、臨床成績の向上;疾患に関連する症状の緩和もしくは軽減;症状の発生率低下;生活の質向上;より長い無病状態;疾患の程度の低下;病状の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;生存期間延長;またはそれらの任意の組合せを含む。
【0039】
本開示の融合タンパク質または融合タンパク質を発現する宿主細胞の「治療有効量」または「有効量」は、統計的に有意な形での、臨床成績の向上;疾患に関連する症状の緩和もしくは軽減;症状の発生率低下;生活の質向上;より長い無病状態;疾患の程度の低下;病状の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;または生存期間延長を含む、治療効果をもたらすのに十分な、融合タンパク質または宿主細胞の量を指す。単独で投与される個々の活性成分または単一活性成分を発現する細胞に言及する場合、治療有効量は、単独でのその成分のまたはその成分を発現する細胞の効果を指す。組合せに言及する場合、治療有効量は、活性成分の合計量、または活性成分を発現する細胞と合わせた補助活性成分の合計量であって、順次投与されるのか並行して投与されるのかを問わず、治療効果を生じさせる結果となる合計量を指す。組合せはまた、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むタグペプチドに特異的に結合する2つの異なる融合タンパク質(例えば、CAR)などの、1つより多くの活性成分を発現する細胞であることもあり、または本開示の1つの融合タンパク質であることもある。
【0040】
用語「薬学的に許容される賦形剤または担体」または「生理的に許容される賦形剤または担体」は、ヒトまたは他の非ヒト哺乳動物対象への投与に好適であり、一般に、安全であるまたは重篤な有害事象を引き起こさないと認識されている、本明細書中でより詳細に説明される生体適合性ビヒクル、例えば、生理食塩水を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「統計的に有意な」は、スチューデントt検定を使用して計算されたときの0.050またはそれ未満のp値を指し、測定される特定の事象または結果が偶然に生じた可能性が低いことを示す。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「養子免疫療法」または「養子免疫治療」は、天然に存在する、または遺伝子操作された、疾患抗原特異的免疫細胞(例えば、T細胞)の投与を指す。養子細胞免疫治療は、自己(免疫細胞がレシピエントからのものである)、同種異系(免疫細胞が、同じ種のドナーからのものである)、または同系(免疫細胞が、レシピエントと遺伝的に同一のドナーからのものである)であり得る。
【0043】
免疫グロブリン結合タンパク質
ある特定の態様では、本開示は、strep−タグペプチドに特異的に結合する結合ドメインを含む免疫グロブリン結合タンパク質を提供する。本明細書で使用される場合、用語「strep−タグペプチド」は(本明細書において、「strep−タグ」、「strepタグ」、「ST」、および「タグペプチド」(文脈がそれ自体を明確に示し、目的のタンパク質(例えば、Myc、His、またはFlag)をタグ付けするために使用される異なるタイプのペプチドを示さない場合)とも呼ばれる)、ストレプトアビジン(Streptomyces avidiniiから精製される四量体タンパク質であり、ビオチンに対するその高い親和性により分子生物学のプロトコールにおいて広く使用される)またはストレプトアビジンの操作された変異タンパク質であるStreptactin(登録商標)に特異的に結合することが可能なペプチドを意味する。本開示の例示的なstrep−タグペプチドは、ストレプトアビジンまたはその変異タンパク質もしくはバリアント(例えば、Streptactin(登録商標))への結合に関してビオチンと競合し、例えば、Strep(登録商標)タグ(WRHPQFGG、配列番号48);Strep(登録商標)Tag II(本明細書において、「STII」とも呼ばれ、アミノ酸配列WSHPQFEK(配列番号19)からなる);ならびに、例えば、Schmidt and Skerra, Nature Protocols, 2:1528-1535 (2007)、米国特許第7,981,632号;およびPCT特許出願公開第WO2015/067768号(これらのstrep−タグペプチド、step−タグ−ペプチド含有ポリペプチド、およびその配列は、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものを含むそれらのバリアントを含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、strep−タグペプチドに特異的に結合することが可能な結合ドメインを含み、結合ドメインは、モノクローナル抗体3E8、5G2、または4E2に従って、CDRを含むV
HドメインおよびV
Lドメイン、またはそのバリアントを含む。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、(a)(i)配列番号25に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号26に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号27に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;(ii)配列番号31に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号32に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号33に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;または(iii)配列番号37に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号38に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号39に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアントを含むV
Lドメイン、ならびにV
Hドメイン(実施形態では、配列番号2、8、または14のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%の同一性を有する場合がある);あるいは(b)(i)配列番号22に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号23に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号24に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;(ii)配列番号28に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号29に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号30に示されるCDR3アミノ酸配列、もしくはそのバリアント;または(iii)配列番号34に示されるCDR1アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、配列番号35に示されるCDR2アミノ酸配列、もしくはそのバリアント、および配列番号36に示されるCDR3アミノ酸配列、またはそのバリアントを含むV
Hドメイン、ならびにV
Lドメイン(実施形態では、配列番号3、10、または16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%の同一性を有する場合がある);あるいは(c)(a)のV
Lドメインおよび(b)のV
Hドメインを含む。特定の実施形態では、V
Hドメインは、(i)配列番号22で示されるCDR1アミノ酸配列、(ii)配列番号23で示されるCDR2アミノ酸配列、および(iii)配列番号24で示されるCDR3アミノ酸配列を含み;V
Lドメインは、(iv)配列番号25で示されるCDR1アミノ酸配列、(v)配列番号26で示されるCDR2アミノ酸配列、および(vi)配列番号27で示されるCDR3アミノ酸配列を含む。
【0045】
他の実施形態では、V
Hドメインは、(i)配列番号28で示されるCDR1アミノ酸配列、(ii)配列番号29で示されるCDR2アミノ酸配列、および(iii)配列番号30で示されるCDR3アミノ酸配列を含み;V
Lドメインは、(iv)配列番号31で示されるCDR1アミノ酸配列、(v)配列番号32で示されるCDR2アミノ酸配列、および(vi)配列番号33で示されるCDR3アミノ酸配列を含む。
【0046】
他の実施形態では、V
Hドメインは、(i)配列番号34で示されるCDR1アミノ酸配列、(ii)配列番号35で示されるCDR2アミノ酸配列、および(iii)配列番号36で示されるCDR3アミノ酸配列を含み;V
Lドメインは、(iv)配列番号37で示されるCDR1アミノ酸配列、(v)配列番号38で示されるCDR2アミノ酸配列、および(vi)配列番号39で示されるCDR3アミノ酸配列を含む。
【0047】
上述の実施形態のいずれかまたは本明細書において開示される他の実施形態においても、strep−タグペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0048】
「結合ドメイン」または「結合領域」は、本明細書で使用される場合、標的(例えば、抗原、リガンド)を特異的に認識し、それと非共有結合により会合する能力を有するタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、もしくはペプチド(例えば、抗体、受容体)またはその部分もしくは断片を指す。結合ドメインは、目的の生体分子または別の標的に対する、任意の天然に存在する、合成の、半合成の、または組換えによって生成された結合パートナーを含む。例示的な結合ドメインとしては、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域(例えば、ドメイン抗体、sFv、単鎖Fv断片(scFv)、Fab、F(ab’)
2)、受容体細胞外ドメイン、またはリガンドが挙げられる。免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、scFv、Fab)は、本明細書において、「免疫グロブリン結合ドメイン」と呼ばれる。特定の標的に特異的に結合する本開示の結合ドメインを識別するための様々なアッセイ(ウエスタンブロット、ELISA、およびBiacore(登録商標)分析を含む)が公知である。ある特定の実施形態では、結合ドメインは、キメラ、ヒト、またはヒト化である。
【0049】
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、より大きなポリペプチドまたはタンパク質の部分であり、「結合タンパク質」と呼ばれる。「免疫グロブリン結合タンパク質」または「免疫グロブリン様結合タンパク質」は、1つまたは複数の免疫グロブリン結合ドメインを含有するポリペプチドであって、抗体もしくはその抗原結合断片、scFv−Fc融合タンパク質、または2つまたはそれより多いそのような免疫グロブリン結合ドメインもしくは他の結合ドメインを含む融合タンパク質などの様々な免疫グロブリン関連タンパク質の足場または構造のいずれかの形態であってもよい、ポリペプチドを指す。
【0050】
結合ドメインの供給源としては、ヒト、齧歯類、鳥類、ウサギ、およびヒツジを含む、様々な種からの抗体可変領域が挙げられる。結合ドメインのさらなる供給源としては、他の種、例えば、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダ、またはラマからのもの;Ghahroudi et al., FEBS Letters 414: 521, 1997;Vincke et al., J. Biol. Chem. 284: 3273, 2009;Hamers-Casterman et al., Nature 363: 446, 1993およびNguyen et al., J. Mol. Biol. 275: 413, 1998)、テンジクザメ(Roux et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 95: 11804, 1998)、スポッテッドラットフィッシュ(Nguyen et al., Immunogenetics 54: 39, 2002)、またはヤツメウナギ(Herrin et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. (USA) 105: 2040,2008およびAlder et al., Nature Immunol. 9: 319, 2008)からの抗体の可変領域が挙げられる。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使用して抗原結合領域を形成することができるようであり、すなわち、これらの機能的抗体は、重鎖のみのホモダイマーである(「重鎖抗体」と呼ばれる)(Jespers et al., Nature Biotechnol. 22: 1161, 2004;Cortez-Retamozo et al., Cancer Res. 64: 2853, 2004;Baral et al., Nature Med. 12: 580, 2006;およびBarthelemy et al., J. Biol. Chem. 283: 3639, 2008)。
【0051】
抗体技術の当業者によって理解される用語は、本明細書において明示的に別に定義されない限り、当技術分野において得られる意味をそれぞれ与えられる。例えば、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むインタクト抗体(軽鎖を欠く重鎖抗体もまた、用語「抗体」に包含されると理解されるが)、ならびにインタクト抗体によって認識される抗原標的分子に結合する能力を有するかまたは保持するインタクト抗体の任意の抗原結合部分または断片、例えば、scFv、Fab、またはFab’2断片を指す。よって、用語「抗体」は、本明細書において、最も広い意味で使用され、インタクト抗体およびその機能的(抗原結合)抗体断片(断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、単鎖可変断片(scFv)を含む単鎖抗体断片、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む)を含むポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。この用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作されたおよび/またはそれ以外の修飾形態、例えば、イントラボディ、ぺプチボディ(peptibody)、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異的、例えば、二重特異的抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムdi−scFv、タンデムトリ−scFvを包含する。別段に述べられない限り、用語「抗体」は、その機能的抗体断片を包含するものと理解されるべきである。この用語は、任意のクラスまたはサブクラスの抗体(IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む)を含むインタクトまたは全長抗体も包含する。
【0052】
用語「V
L」および「V
H」は、それぞれ、抗体軽鎖および重鎖からの可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知の、別個の、十分に定義された下位領域から構成される。用語「相補性決定領域」および「CDR」は、「超可変領域」または「HVR」と同義であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与するTCRまたは抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことは当技術分野において公知である。一般的に、免疫グロブリン結合タンパク質の各可変領域において、3つのCDRが存在し;例えば、抗体では、V
HおよびV
L領域は、6つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3;LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む。本明細書で使用される場合、CDRの「バリアント」は、最大1〜3個のアミノ酸置換、欠失、またはそれらの組合せを有するCDR配列の機能的バリアントを指す。免疫グロブリン配列は、番号付けスキーム(例えば、Kabat, EU, International Immunogenetics Information System (IMGT) and Aho)に対してアラインメントすることができ、これにより、Antigen receptor Numbering And Receptor Classification(ANARCI)ソフトウェアツール(2016, Bioinformatics 15:298-300)を使用する等価残基位置へのアノテーションの付与および異なる分子の比較が可能になり得る。
【0053】
本明細書で使用される場合の「抗原」または「Ag」は、免疫応答を誘発する免疫原性分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、補体経路の活性化、特異的な免疫学的コンピテント細胞(例えば、T細胞)の活性化、またはその両方に関与し得る。抗原(免疫原性分子)は、例えば、ペプチド、糖ペプチド、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質などであり得る。抗原を合成、組換えにより産生、または生体試料から得ることができることは、容易に分かる。1つまたは複数の抗原を含有することができる例示的な生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、生体液、またはそれらの組合せが挙げられる。抗原は、抗原を発現するように改変されたまたは遺伝子操作された細胞によって産生され得る。
【0054】
用語「エピトープ」または「抗原エピトープ」は、免疫グロブリン、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体または他の結合分子、ドメインもしくはタンパク質などの、同族結合分子により認識され、特異的に結合される、任意の分子、構造、アミノ酸配列またはタンパク質決定基を包含する。エピトープ決定基は、一般に、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的活性表面集団を含有し、特異的三次元構造特性および特異的電荷特性を有することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」または「に特異的な」は、試料中のいずれの他の分子または成分とも有意に会合も一体化もしない、10
5M
−1に等しいかまたはそれより高い(これは、この会合反応についてのオンレート[K
on]のオフレート[K
off]に対する比に相当する)親和性またはK
a(すなわち、単位が1/Mである、特定の結合相互作用の平衡会合定数)での、結合タンパク質または結合ドメイン(もしくはその融合タンパク質)と標的分子(例えば、WSHPQFEKのアミノ酸配列(配列番号19)を含むかもしくはからなるタグペプチド)の会合または一体化を指す。結合タンパク質または結合ドメイン(またはそれらの融合タンパク質)は、「高親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもあり、または「低親和性」結合タンパク質もしくは結合ドメイン(もしくはそれらの融合タンパク質)として分類されることもある。「高親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、少なくとも10
7M
−1、少なくとも10
8M
−1、少なくとも10
9M
−1、少なくとも10
10M
−1、少なくとも10
11M
−1、少なくとも10
12M
−1、または少なくとも10
13M
−1のK
aを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。「低親和性」結合タンパク質または結合ドメインは、最大で10
7M
−1、最大で10
6M
−1、または最大で10
5M
−1のK
aを有する、結合タンパク質または結合ドメインを指す。あるいは、単位がMである(例えば、10
−5M〜10
−13M)、特定の結合相互作用の平衡解離定数(K
d)として、親和性を定義することができる。
【0056】
ウエスタンブロット、ELISA、分析超遠心分離、分光法および表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))分析などの、特定の標的に特異的に結合する本開示の免疫グロブリン結合タンパク質および結合ドメインを識別するための、および結合ドメインまたは結合タンパク質の親和性を決定するための様々なアッセイが公知である(例えば、Scatchard et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660, 1949;Wilson, Science 295:2103, 2002;Wolff et al., Cancer Res. 53:2560, 1993;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、またはその均等物を参照されたい)。親和性または見かけの親和性または相対的親和性を評定するためのアッセイも公知である。ある特定の例では、免疫グロブリン結合タンパク質に関する見かけの親和性は、様々な濃度のテトラマーとの結合を評定することにより、例えば、標識されたテトラマーを使用してフローサイトメトリーにより測定される。一部の例では、免疫グロブリン結合タンパク質の見かけのK
dは、ある濃度範囲の標識されたテトラマーの2倍希釈物を使用して測定され、続いて、非線形回帰により結合曲線が決定され、半最大結合を生じさせたリガンドの濃度として見かけのK
dが決定される。
【0057】
用語「CL」は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」または「軽鎖定常領域」、すなわち、抗体軽鎖からの定常領域を指す。用語「CH」は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」または「重鎖定常領域」を指し、これは、抗体のアイソタイプに応じて、CH1、CH2、およびCH3(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3、およびCH4ドメイン(IgE、IgM)へとさらに分割可能である。「Fab」(抗原に結合する断片)は、抗原に結合する抗体の部分であり、鎖間ジスルフィド結合を介して軽鎖に連結した重鎖の可変領域およびCH1を含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質のV
Lドメインは、配列番号3、10、および16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%同一であるアミノ酸配列を含み、V
Hドメインは、配列番号2、8、および14のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質のV
Lは、配列番号3、10、および16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、V
Hは、配列番号2、8、および14のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0059】
特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は:
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Lドメイン、および配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Hドメイン;(ii)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Lドメイン、および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Hドメイン;または配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Lドメイン、および配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるV
Hドメインを含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「Fc領域部分」は、抗体からのFc断片の重鎖定常領域セグメント(「断片結晶性」領域またはFc領域)を指し、CH2、CH3、CH4、またはそれらの任意の組合せなどの1つまたは複数の定常ドメインを含むことができる。ある特定の実施形態では、Fc領域部分は、IgG、IgA、もしくはIgD抗体のCH2およびCH3ドメインもしくはそれらの任意の組合せ、またはIgMもしくはIgE抗体のCH3およびCH4ドメイン、およびそれらの任意の組合せを含む。他の実施形態では、CH2CH3またはCH3CH4構造は、同じ抗体アイソタイプからの下位領域ドメインを有し、ヒト、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、またはIgM(例えば、ヒトIgG1からのCH2CH3)である。バックグラウンドとして、Fc領域は、免疫グロブリンのエフェクター機能、例えば、ADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害)、CDC(補体依存性細胞傷害)および補体結合反応、Fc受容体(例えば、CD16、CD32、FcRn)への結合、Fc領域を欠くポリペプチドに対してin vivoでのより長い半減期、プロテインA結合、およびおそらく、さらには経胎盤移行(Capon et al., Nature 337: 525, 1989を参照のこと)を担う。ある特定の実施形態では、本開示の免疫グロブリン様結合タンパク質に見られるFc領域部分は、これらのエフェクター機能のうちの1つまたは複数を媒介することが可能であり、例えば、当技術分野において公知の1つまたは複数の変異によって、これらの活性のうちの1つもしくは複数またはすべてを欠くことになる。例えば、Fc機能性を改変する(例えば、改善する、低減する、またはアブレーションする)アミノ酸修飾(例えば、置換)としては、T250Q/M428L;M252Y/S254T/T256E;H433K/N434F;M428L/N434S;E233P/L234V/L235A/G236+A327G/A330S/P331S;E333A;S239D/A330L/I332E;P257I/Q311;K326W/E333S;S239D/I332E/G236A;N297Q;K322A;S228P;L235E+E318A/K320A/K322A;L234A/L235A;およびL234A/L235A/P329G変異が挙げられ、これらの変異は、InvivoGen(2011)によって出版された「Engineered Fc Regions」にまとめられアノテーションが付与されており、www. invivogen.com/PDF/review/review-Engineered-Fc-Regions-invivogen.pdf?utm_source=review&utm_medium=pdf&utm_ campaign=review&utm_content=Engineered-Fc-Regionsにおいてオンラインで利用可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
さらに、抗体は、典型的には、FabとFc領域の間に位置するヒンジ配列を有する(しかし、ヒンジのより下流のセクションはFc領域のアミノ末端部分を含んでもよい)。バックグラウンドとして、免疫グロブリンのヒンジは、Fab部分が空間を自由に移動することが可能になる、柔軟性スペーサーとして作用する。定常領域とは対照的に、ヒンジは構造的に多様であり、免疫グロブリンクラス間、さらにはサブクラスの中で、配列と長さの両方を変化させる。例えば、ヒトIgG1ヒンジ領域は、自由に柔軟性であり、これにより、Fab断片は、それらの対称軸の周りを回転し、2つの重鎖間ジスルフィド架橋の第1の架橋を中心とする球内に移動することが可能になる。比較すると、ヒトIgG2ヒンジは比較的短く、4つの重鎖間ジスルフィド架橋によって安定化した堅いポリプロリン二重らせんを含有し、この二重らせんが柔軟性を制限する。ヒトIgG3ヒンジは、その固有の伸長したヒンジ領域(IgG1ヒンジの約4倍の長さ)の点で他のサブクラスとは異なり、このヒンジ領域は、62個のアミノ酸(21個のプロリンおよび11個のシステインを含む)を含有し、非柔軟性ポリプロリン二重らせんを形成するが、Fab断片がFc断片から比較的遠くに離れているので、より大きい柔軟性をもたらす。ヒトIgG4ヒンジは、IgG1より短いが、IgG2と同じ長さを有し、その柔軟性は、IgG1とIgG2の柔軟性の中間である。免疫グロブリン構造および機能は、例えば、Harlow et al., Eds., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 1988)で概説されている。
【0062】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合部分を含む。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、モノクローナル抗体3E8を含む。さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、モノクローナル抗体5G2を含む。さらに他の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、モノクローナル抗体4E2を含む。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、免疫グロブリン結合タンパク質は、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体またはそれらの抗原結合部分であってもよい。提供される免疫グロブリン結合タンパク質の中に、抗体断片もある。「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部分を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが:Fv;Fab;Fab’;Fab’−SH;F(ab’)
2;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);タンデムscFv;scFv−Fc;タンデムscFv−Fc;scFv二量体;scFv−ジッパー;ダイアボディ−Fc;ダイアボディ−CH3;scダイアボディ;scダイアボディ−Fc;scダイアボディ−CH3;ナノボディ;TandAb;ミニボディ;ミニ抗体;トリアボディ;テトラボディ;scFab;Fab−scFv;Fab−scFv−Fc;scFv−CH−CL−scFv;およびF(ab’)2−scFv2が挙げられる。
【0063】
特定の実施形態では、抗体は、可変重鎖領域、可変軽鎖領域またはその両方を含む単鎖抗体断片、例えば、scFvである。
【0064】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。
【0065】
抗体断片は、例えば、インタクト抗体のタンパク質分解性消化および組換え宿主細胞による産生などの様々な技術によって作製することができる。一部の実施形態では、抗体は、組換えにより産生された断片、例えば、合成リンカー、例えば、ペプチドリンカーによって連結された2つもしくはそれより多くの抗体領域もしくは抗体鎖を有するものなどの、天然に存在しない配置を含む断片および/または天然に存在するインタクト抗体の酵素的消化によって産生される断片である。一部の態様では、抗体断片(例えば、結合ドメイン)は、scFvを含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号3、10、および16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%同一であるV
Lドメイン、ならびに配列番号2、8、および14のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または99.9%同一であるV
Hドメインを含む。
【0066】
本開示の任意のscFvを、V
LドメインのC末端が短いペプチド配列によってV
HドメインのN末端に連結される、または逆に、V
HドメインのC末端が、短いペプチド配列によってV
LドメインのN末端に連結される(すなわち、(N)V
L(C)−リンカー−(N)V
H(C)、または(N)V
H(C)−リンカー−(N)V
L(C))ように、操作することができる。
【0067】
ある特定の実施形態では、結合ドメインは、scFvを含み、scFvは、モノクローナル抗体3E8のV
LおよびV
Hを含む。特定の実施形態では、scFvは、配列番号5または6のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0068】
他の実施形態では、結合ドメインは、scFvを含み、scFvは、モノクローナル抗体5G2のV
LおよびV
Hを含む。ある特定の実施形態では、scFvは、配列番号11または12のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0069】
さらに他の実施形態では、結合ドメインは、scFvを含み、scFvは、モノクローナル抗体4E2のV
LおよびV
Hを含む。特定の実施形態では、scFvは、配列番号17または18のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。本開示の実施形態のいずれにおいても、scFvリンカーは、Gly
xSer
yの1から約10の繰り返しを有するグリシン−セリンアミノ酸鎖を含むことができ、ここで、xおよびyは、それぞれ独立して、0から10の整数であり、ただし、xとyは両方が0ではない(例えば、(Gly
4Ser)
2(配列番号20)、(Gly
3Ser)
2(配列番号21)、Gly
2Ser、またはそれらの組合せ、例えば、((Gly
3Ser)
2Gly
2Ser)(配列番号49))。
【0070】
ある特定の態様では、免疫グロブリン結合タンパク質は、多重特異的結合タンパク質を含み、多重特異的結合タンパク質は、タグペプチドに特異的に結合する結合ドメインおよびタグペプチドではない少なくとも1つの標的に特異的に結合する結合ドメインを含む。特定の実施形態では、多重特異的結合タンパク質は、二重特異的結合タンパク質を含む。二重特異的結合タンパク質に関するフォーマットは、本明細書に記載される抗体断片を含み、例えば、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリ、scFv−CH3−KIHアセンブリ、KIH Common Light−Chain抗体、TandAb、Triple Body、TriBiミニボディ、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2−scFv2、四価のHCab、イントラボディ、CrossMab、Dual Action Fab(DAF)(トゥーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT−IgG、Charge Pair、Fab−アームExchange、SEEDbody、Triomab、LUZ−Yアセンブリ、Fcab、κλ−ボディ、直交Fab、DVD−IgG、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L,H)−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、Zybody、およびDVI−IgG(フォーインワン)を包含する。二重特異的抗体断片に関するフォーマットは、当技術分野において公知であり、例えば、Spiess et al., Mol. Immunol. 67(2):95(2015)およびBrinkmann and Kontermann, mAbs 9(2):182-212(2017)に記載されており、これらの抗体および抗体断片フォーマットは、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、二重特異的結合タンパク質は、タグペプチドに結合し、タグペプチドではない少なくとも1つの標的は、免疫細胞マーカーである。具体的な実施形態では、免疫細胞マーカーは、CD3またはCD16である。一部の実施形態では、二重特異的結合タンパク質は、strep−タグペプチドに結合し、strep−タグペプチドではない少なくとも1つの標的は、疾患または障害に関連する抗原、例えば、CD19、CD20、CD22、ROR1、EGFR、EGFRvIII、EGP−2、EGP−40、GD2、GD3、HPV E6、HPV E7、Her2、L1−CAM、Lewis A、Lewis Y、MUC1、MUC16、PSCA、PSMA、CD56、CD23、CD24、CD30、CD33、CD37、CD44v7/8、CD38、CD56、CD123、CA125、c−MET、FcRH5、WT1、葉酸受容体α、VEGF−α、VEGFR1、VEGFR2、IL−13Rα2、IL−11Rα、MAGE−A1、MAGE−A3、MAGE−A4、SSX−2、PRAME、HA−1、PSA、エフリンA2、エフリンB2、NKG2D、NY−ESO−1、TAG−72、メソテリン、NY−ESO、5T4、BCMA、FAP、炭酸脱水酵素9、ERBB2、BRAF
V600E、またはCEA抗原から選択される。
【0071】
一部の実施形態では、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質は、一価(すなわち、単一結合ドメインを有し、この結合ドメインはタグペプチドに特異的に結合する)または多価(すなわち、2つ以上の結合ドメインを有し、その結合ドメインのうちの少なくとも1つがタグペプチドに特異的に結合する)であり、この場合、これらは多重特異的であり得る。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、多価である。特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、二価である。
【0072】
一部の態様では、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質は、融合タンパク質に含まれる。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、本明細書に開示される結合ドメインを含む細胞外成分、およびエフェクタードメインを含む細胞内成分を含み、細胞外成分と細胞内成分は、膜貫通ドメインによって接続されている。さらなる実施形態では、結合ドメインは、scFvを含み、細胞外成分は、ヒンジを含むコネクター領域をさらに含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「エフェクタードメイン」は、適切なシグナルを受け取ったときの細胞における生物学的または生理的応答を直接または間接的に促進することができる、融合タンパク質または受容体の細胞内部分またはドメインである。ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、結合されたときに、あるいはタンパク質もしくはその一部分またはタンパク質複合体が、標的分子と直接結合し、エフェクタードメインからのシグナルを誘発したときにシグナルを受け取る、タンパク質もしくはその一部分またはタンパク質複合体からのものである。
【0074】
エフェクタードメインは、それが、1つまたは複数のシグナル伝達ドメインまたはモチーフ、例えば、共刺激分子に見られるような細胞内チロシンベース活性化モチーフ(Intracellular Tyrosine−based Activation Motif:ITAM)を含有する場合、細胞応答を直接促進することができる。理論により拘束されることを望まないが、ITAMは、T細胞受容体によるまたはT細胞エフェクタードメインを含む融合タンパク質によるリガンド結合後のT細胞活性化に重要であると考えられる。ある特定の実施形態では、細胞内成分は、ITAMを含む。例示的なエフェクタードメインは、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD3ε、CD3δ、CD3ζ、CD25、CD27、CD28、CD79A、CD79B、CARD11、DAP10、FcRα、FcRβ、FcRγ、Fyn、HVEM、ICOS、Lck、LAG3、LAT、LRP、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、Wnt、ROR2、Ryk、SLAMF1、Slp76、pTα、TCRα、TCRβ、TRIM、Zap70、PTCH2、またはそれらの任意の組合せからのものを含む。ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、リンパ球受容体シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ζ)を含む。
【0075】
さらなる実施形態では、融合タンパク質の細胞内成分は、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40(CD134)またはそれらの組合せから選択される、共刺激ドメインまたはその部分を含む。ある特定の実施形態では、細胞内成分は、CD28共刺激ドメインもしくはその部分(これは、ネイティブCD28タンパク質の186〜187位にLL→GG変異を必要に応じて含み得る(Nguyen et al., Blood 102:4320, 2003を参照されたい))、4−1BB共刺激ドメインもしくはその部分、または両方を含む。
【0076】
ある特定の実施形態では、エフェクタードメインは、CD3ζまたはその機能的部分を含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD27からの部分またはドメインを含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、CD28からの部分またはドメインを含む。なおさらなる実施形態では、エフェクタードメインは、4−1BBからの部分またはドメインを含む。さらなる実施形態では、エフェクタードメインは、OX40からの部分またはドメインを含む。
【0077】
本開示の細胞外成分および細胞内成分は、膜貫通ドメインによって接続されている。「膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用される場合、細胞膜に挿入することまたは細胞膜を通過することができる、膜貫通タンパク質の一部分である。膜貫通ドメインは、細胞膜内で熱力学的に安定している三次元構造を有し、一般に、長さが約15アミノ酸〜約30アミノ酸の範囲である。膜貫通ドメインの構造は、アルファヘリックス、ベータバレル、ベータシート、ベータヘリックス、またはそれらの任意の組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、膜貫通ドメインは、公知の膜貫通タンパク質を含むまたは公知の膜貫通タンパク質に由来するもの(すなわち、CD4膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD27膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、またはそれらの任意の組合せ)である。
【0078】
ある特定の実施形態では、融合タンパク質の細胞外成分は、結合ドメインと膜貫通ドメインの間に配置されたリンカーをさらに含む。結合ドメインと膜貫通ドメインを接続する融合タンパク質の成分に言及するときに本明細書で使用される場合、「リンカー」は、リンカーによって接続された2つの領域、ドメイン、モチーフ、断片またはモジュール間に柔軟性および立体構造移動の余地を与えることができる、約2アミノ酸〜約500アミノ酸を有するアミノ酸配列であり得る。例えば、本開示のリンカーは、融合タンパク質を発現する宿主細胞の表面から離れた位置に結合ドメインを置いて、宿主細胞と標的細胞間の適切な接触、抗原結合、および活性化を可能にすることができる(Patel et al., Gene Therapy 6: 412-419, 1999)。選択される標的分子、選択される結合エピトープ、または抗原結合ドメインのサイズ(seize)および親和性に基づいて、抗原認識を最大にするようにリンカー長を変えることができる(例えば、Guest et al., J. Immunother.28:203-11, 2005;PCT公開番号WO2014/031687を参照されたい)。例示的なリンカーとしては、Gly
xSer
y(ここで、xおよびyは、各々独立して0〜10の整数であり、ただし、xおよびyが両方ともに0ではない)の1〜約10の反復を有するグリシン−セリンアミノ酸鎖を有するもの(例えば、(Gly
4Ser)
2(配列番号20)、(Gly
3Ser)
2(配列番号21)、Gly
2Ser、またはそれらの組合せ、例えば、((Gly
3Ser)
2Gly
2Ser)(配列番号49)が挙げられる。
【0079】
本開示のリンカーは、免疫グロブリン定常領域(すなわち、任意のアイソタイプのCH1、CH2、CH3またはCL)およびそれらの部分も含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、CH3ドメイン、CH2ドメイン、または両方を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。さらなる実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、各々、同じアイソタイプである。特定の実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、IgG4またはIgG1アイソタイプである。他の実施形態では、CH2ドメインおよびCH3ドメインは、各々、異なるアイソタイプである。特定の実施形態では、CH2は、N297Q変異を含む。理論により拘束されることを望まないが、N297Q変異を有するCH2ドメインは、FcγRに結合しないと考えられる(例えば、Sazinsky et al., PNAS 105(51):20167 (2008)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、リンカーは、ヒト免疫グロブリン定常領域またはその一部分を含む。
【0080】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、リンカーは、ヒンジ領域またはその一部分を含み得る。ヒンジ領域は、可変長および配列(通常はプロリンおよびシステインアミノ酸を多く含む)の柔軟なアミノ酸ポリマーであり、免疫グロブリンタンパク質の柔軟性がより高い領域とより低い領域を接続する。例えば、ヒンジ領域は、抗体のFc領域とFab領域を接続し、TCRの定常領域と膜貫通領域を接続する。ある特定の実施形態では、リンカーは、免疫グロブリン定常領域またはその一部分、およびヒンジ領域またはその一部分を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは、配列番号20もしくは21もしくは49に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列番号20、21もしくは49に示されるアミノ酸配列からなる、グリシン−セリンリンカーを含む。
【0081】
ある特定の実施形態では、細胞外成分、結合ドメイン、リンカー、膜貫通ドメイン、細胞内成分または共刺激ドメインのうちの1つまたは複数は、接合部アミノ酸を含む。「接合部アミノ酸」または「接合部アミノ酸残基」は、タンパク質の2つの隣接するドメイン、モチーフ、領域、モジュールまたは断片間の、例えば、結合ドメインと隣接リンカーの間、膜貫通ドメインと隣接細胞外もしくは細胞内ドメインの間、または2つのドメイン、モチーフ、領域、モジュールもしくは断片を連結するリンカーの一方もしくは両方の末端上(例えば、リンカーと隣接結合ドメインの間、またはリンカーと隣接ヒンジの間)の、1つまたは複数(例えば、約2〜20)のアミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、融合タンパク質の構築物設計の結果として生じ得る(例えば、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの構築中の制限酵素部位または自己切断ペプチド配列の使用の結果として生じるアミノ酸残基)。例えば、融合タンパク質の膜貫通ドメインは、アミノ末端、カルボキシ末端、または両方に、1つまたは複数の接合部アミノ酸を有し得る。
【0082】
一部の実施形態では、本開示の融合タンパク質は、タンパク質タグ(本明細書ではペプチドタグまたはタグペプチドとも呼ばれる)をさらに含み、ただし、前記タンパク質タグは、strep−タグペプチドではない。タンパク質タグは、目的のタンパク質に固定もしくは遺伝的に融合されているか、またはその一部である特有のペプチド配列であり、例えば、異種または非内在性同族結合分子または基質(例えば、受容体、リガンド、抗体、炭水化物、または金属マトリックス)によって認識または結合され得る。タンパク質タグは、特に、タグ付きタンパク質が細胞の異種集団(例えば、末梢血のような生体試料)の一部である場合に、目的のタグ付きタンパク質を検出、識別、単離、追跡、精製、濃縮、標的化、または生物学的もしくは化学的に修飾するのに有用である。提供された融合タンパク質において、同族の結合分子によって特異的に結合されるタグの能力は、標的分子(すなわち、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチド)に特異的に結合する結合ドメインの能力とは別個であるか、またはそれに付加される能力である。ある特定の実施形態では、タンパク質タグは、Mycタグ、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Nusタグ、Sタグ、Xタグ、SBPタグ、Softag、V5タグ、CBP、GST、MBP、GFP、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組合せである。
【0083】
具体的な実施形態では、融合タンパク質は、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体を含む。「キメラ抗原受容体」(CAR)は、天然には存在しないかまたは宿主細胞において天然には存在しない方法で、一緒に連結した2つまたはそれより多い天然に存在するアミノ酸配列を含有するように操作された本開示の融合タンパク質を指し、この融合タンパク質は、細胞表面に存在する場合に受容体として機能することができる。本開示のCARは、膜貫通ドメインおよび1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン(必要に応じて、共刺激ドメインを含む)に連結した抗原結合ドメイン(すなわち、がん抗原に特異的な抗体もしくはTCRに由来するscFv、またはNK細胞由来のキラー免疫受容体に由来するかもしくはそれから得られる抗原結合ドメインなどの免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子から得られるかまたはそれに由来する)を含む細胞外部分を含む(例えば、Sadelain et al., Cancer Discov., 3(4):388(2013)を参照されたい;また、Harris and Kranz, Trends Pharmacol. Sci., 37(3):220(2016);Stone et al., Cancer Immunol. Immunother., 63(11):1163(2014)を参照されたい)。
【0084】
「T細胞受容体」(TCR)とは、MHC受容体に結合した抗原ペプチドと特異的に結合することができる免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域および短い細胞質側テールを有する;例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3
rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)を指す。TCRは、細胞の表面にまたは可溶性形態で見られることがあり、一般に、α鎖およびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても公知)、またはγ鎖およびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても公知)を有するヘテロダイマーから構成される。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、次の2つの免疫グロブリンドメインを含む:N末端における可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメインまたはV
α、β鎖可変ドメインまたはV
β;通常は、Kabat番号付け(Kabat et al., "Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5
th ed.)に基づいてアミノ酸1〜116)、および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはC
α、通常はKabatに基づいてアミノ酸117〜259、β鎖定常ドメインまたはC
β、通常はKabatに基づいてアミノ酸117〜295)。また、免疫グロブリンのように、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって分離される相補性決定領域(CDR;超可変領域またはHVRとも呼ばれる)を含有する(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990;Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたい;また、Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003を参照されたい)。一般的に、TCR可変ドメインのCDR3は、主に、ペプチド抗原に接触するCDRであり、一方、CDR1および2は、主に、MHCに接触する。ある特定の実施形態では、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、CD3複合体と会合している。本開示で使用される場合のTCRの供給源は、様々な動物種、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギまたは他の哺乳動物からのものであり得る。
【0085】
「主要組織適合遺伝子複合体分子」(MHC分子)は、ペプチド抗原を細胞表面に送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜通過α鎖(3つのαドメインを有する)と非共有結合的に会合しているβ2ミクログロブリンとからなるヘテロダイマーである。MHCクラスII分子は、2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβ、で構成されており、これらの両方が膜にまたがっている。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、サイトゾルに由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこでペプチド:MHC複合体は、CD8
+T細胞により認識される。MHCクラスII分子は、小胞系に由来するペプチドを細胞表面に送達し、そこで、それらは、CD4
+T細胞によって認識される。MHC分子は、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヤギ、ウマまたは他の哺乳動物を含む、様々な動物種からのものであり得る。
【0086】
CARを含む融合タンパク質を作製する方法は、例えば、米国特許第6,410,319号;米国特許第7,446,191号;米国特許出願公開第2010/065818号;米国特許第8,822,647号;PCT特許出願公開第WO2014/031687号;米国特許第7,514,537号;Walseng et al., Scientific Reports 7:10713, 2017;およびBrentjens et al., 2007, Clin. Cancer Res. 13:5426に記載されており、これらの手法は、参照により本明細書に組み込まれる。操作されたTCRを産生する方法は、例えば、Bowerman et al., Mol.Immunol., 46(15):3000 (2009)に記載されており、この参考文献の手法は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片は、TCR VαおよびVβドメインのTCR両方を含むが単一のTCR定常ドメイン(CαまたはCβ)しか含まない、単鎖TCR(scTCR)を含む。ある特定の実施形態では、TCRの抗原結合断片、またはキメラ抗原受容体は、キメラ(例えば、1つより多くのドナーもしくは複数の種からのアミノ酸残基もしくはモチーフを含む)、ヒト化(例えば、ヒトにおける免疫原性のリスクを低下させるように変更もしくは置換されている非ヒト生物からの残基を含む)、またはヒトである。
【0088】
組換えにより産生された可溶性免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を単離および精製するのに有用な方法は、例として、可溶性タンパク質を培養培地に分泌する好適な宿主細胞/ベクター系から上清を得るステップ、および次いで市販のフィルターを使用して培地を濃縮するステップを含み得る。濃縮後、濃縮物を単一の好適な精製マトリックスに、または一連の好適なマトリックス、例えば、アフィニティーマトリックスもしくはイオン交換樹脂に、適用することができる。1つまたは複数の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製方法は、免疫原をその天然環境から単離するときに利用することもできる。本明細書に記載される単離された/組換え可溶性タンパク質の1つまたは複数についての大規模産生方法は、好適な培養条件を維持するためにモニタリングおよび制御される、バッチ細胞培養を含む。本明細書に記載される、当技術分野で公知である、ならびに自国および外国の規制機関の法律およびガイドラインと適合する方法に従って、可溶性タンパク質の精製を行うことができる。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば、化学療法剤、または細菌毒素)、放射性同位体、放射性金属、または検出可能な作用剤をさらに含む。例示的な検出可能な作用剤としては、酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)などの発色レポーター酵素)、色素、(例えば、シアニン色素、クマリン、ローダミン、キサンテン、フルオレセインまたはそのスルホン化誘導体、およびShaner et al., Nature Methods (2005)に記載されるものを含む蛍光タンパク質)、蛍光標識または部分(moiety)(例えば、PE、Pacific blue、Alexa fluor、APC、およびFITC) DNAバーコード(例えば、5から最大75ヌクレオチド長の範囲)、およびペプチドタグが挙げられ、ただし、ペプチドタグは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含まないかまたはそれからならない。本明細書で使用される場合、「ペプチドタグ」または「タンパク質タグ」または「非strep−タグペプチドタグ」または「非strep−タグタンパク質タグ」は、目的のタンパク質(例えば、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質)に固定されるか、それに融合されるか、またはその部分であり;strep−タグペプチドではなく;異種または非内在性同族結合分子によって特異的に結合される(特に、タグ付きペプチドもしくはタンパク質が、タンパク質もしくは他の材料の異種集団の部分である場合、またはタグ付きペプチドもしくはタンパク質が、細胞の異種集団(例えば、生体試料)の部分である場合に、その結合特性を使用して、タグ付きペプチドもしくはタンパク質またはタグ付きペプチドもしくはタンパク質を発現する細胞を検出、識別、単離もしくは精製、追跡、濃縮、または標的とすることができる)特有のペプチド配列を指す。例示的な非strep−タグペプチドタグとしては、Mycタグ、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Nusタグ、Sタグ、Xタグ、SBPタグ、Softag、V5タグ、CBP、GST、MBP、GFP、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0090】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む組成物を提供する。診断および治療用途に関する薬学的に許容される担体は、薬学の技術分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A.R. Gennaro (Ed.), 18
th Edition, 1990)およびCRC Handbook of Food, Drug, and Cosmetic Excipients, CRC Press LLC(S.C. Smolinski, ed., 1992)に記載されている。例示的な薬学的に許容される担体としては、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、希釈剤、保存薬、色素/着色剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、乳化剤、またはそれらの任意の組合わせが挙げられる。例えば、生理的pHの滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水は、好適な薬学的に許容される担体であり得る。保存薬、安定剤、色素などは、医薬組成物中に提供されることもある。さらに、抗酸化剤および懸濁剤が使用されることもある。医薬組成物は、希釈剤、例えば、水、緩衝液、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、低分子量ポリペプチド(約10残基未満)、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、デキストリン)、キレート剤(例えば、EDTA)、グルタチオン、ならびに他の安定剤および賦形剤も含有してもよい。中性緩衝生理食塩水または非特異的血清アルブミンと混合された生理食塩水は、例示的な希釈剤である。
【0091】
(a)発現ベクターまたは配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドをコードするポリヌクレオチド、およびベクターまたはポリヌクレオチドを宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬;ならびに(b)本開示の免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、組成物、単離されたポリヌクレオチド、または発現ベクター、およびポリヌクレオチドまたは発現ベクターを宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬、および/またはポリヌクレオチドまたは発現構築物を含む宿主細胞を含むキットであって、宿主細胞が、コードされた免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を発現する、キットも本明細書において提供される。
【0092】
別の態様では、(i)本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を含むマトリックス組成物、および(ii)免疫共刺激分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含むマトリックス組成物であって、結合によって免疫共刺激分子の活性レベルが増加する、マトリックス組成物が提供される。ある特定の実施形態では、マトリックス組成物は、アルギネート、基底膜マトリックス、もしくはバイオポリマー、またはそれらの任意の組合せをさらに含む。
【0093】
さらに別の態様では、(i)本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質;および(ii)免疫共刺激分子に特異的に結合する結合ポリペプチドを含むデバイスであって、結合によって免疫共刺激分子の活性レベルが増加する、デバイスが提供される。デバイスの特定の実施形態では、(i)および(ii)のうちの1つまたは両方が、固体表面、アガロースビーズ、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズ上に配置されている。
【0094】
ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
ある特定の態様では、本明細書に記載の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質のうちのいずれか1つまたは複数をコードする核酸分子が提供される。ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、(a)配列番号1、7、および13のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドならびに(b)配列番号4、9、および15のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の同一性を有するポリヌクレオチドのうちの1つまたは両方を含む。
【0095】
所望の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、ある配列を、それを含むことが公知のベクターから導出することによって、またはある配列もしくはその一部分を、それを含有する細胞もしくは組織から直接単離することによって、所望の配列またはその一部分を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングすることなどの標準的手法を使用して、当技術分野において公知の組換え方法を使用して、入手または生成することができる。あるいは、目的の配列は、合成によって生成することもできる。
【0096】
本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、本開示のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞に対してコドン最適化されてもよい(例えば、Scholten et al., Clin. Immunol. 119:135-145(2006)を参照されたい)。本明細書で使用される場合、「コドン最適化された」ポリヌクレオチドは、宿主細胞のtRNAレベルの存在量に対応するサイレント変異で改変されたコドンを有する異種ポリヌクレオチドである。
【0097】
さらなる態様では、発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結した本開示のポリヌクレオチドを含む発現構築物が提供される。ある特定の実施形態では、発現構築物は、目的の宿主細胞(例えば、B細胞、CHO細胞、HEK−293細胞、T細胞、NK細胞、またはNK−T細胞)への導入用ベクターに含まれる。例示的なベクターは、そのポリヌクレオチドが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド、または宿主生物において複製することができるポリヌクレオチドを含むことができる。ベクターの一部の例としては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミドなどが挙げられる。導入される宿主細胞において自律複製が可能であり得るベクター(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)もあるが、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る、または宿主細胞への導入の際にポリヌクレオチド挿入物の組込みを促進し、それによって宿主ゲノムとともに複製し得るベクター(例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター)もある。加えて、一部のベクターは、それらが作用的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる(これらのベクターは、「発現ベクター」と呼ばれることもある)。関連実施形態に従って、1つまたは複数の作用剤(例えば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)が対象に共投与される場合には、各作用剤が、別々のベクターまたは同じベクターの中に存在することができ、複数のベクター(各々が異なる作用剤または同じ作用剤を含有する)を細胞もしくは細胞集団に導入することができ、または対象に投与することができることは、さらに理解される。
【0098】
ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドを、ベクターのある特定のエレメントに作用的に連結させることができる。例えば、ポリヌクレオチド配列であって、ポリヌクレオチド配列がライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを生じさせる必要があるポリヌクレオチド配列を、作用的に連結させることができる。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;効率的RNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;ならびにことによると、タンパク質分泌を増進する配列を挙げることができる。発現制御配列は、発現制御配列が、目的の遺伝子と、および目的の遺伝子を制御するようにトランスでまたは少し離れて作用する発現制御配列と近接している場合、作用的に連結されていてよい。
【0099】
ある特定の実施形態では、ベクターは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターを含む。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病および水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびに二本鎖DNAウイルスが挙げられ、二本鎖DNAウイルスには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘およびカナリアポックス)が含まれる。他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが挙げられる。レトロウイルスの例としては、トリ白血症−肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV−BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが挙げられる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0100】
「レトロウイルス」は、RNAゲノムを有するウイルスであって、このRNAゲノムが、逆転写酵素を使用してDNAに逆転写され、次いで、逆転写されたDNAが宿主細胞ゲノムに組み込まれる、ウイルスである。「ガンマレトロウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。例示的なガンマレトロウイルスとしては、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、およびトリ細網内皮症ウイルスが挙げられる。
【0101】
「レンチウイルスベクター」は、本明細書で使用される場合、遺伝子送達のためのHIVベースのレンチウイルスベクターであって、組込み型であることもあり、または非組込み型であることもあり、比較的大きいパッケージング容量を有し、様々な異なる細胞型に形質導入することができる、レンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、産生細胞内への3つ(パッケージング、エンベロープおよび移入)またはそれより多くのプラスミドの一過性トランスフェクション後に通常は生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と細胞表面の受容体との相互作用によって標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、二本鎖線状ウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNA中へのウイルス組込みの基質である。
【0102】
ウイルスベクターは、ある特定の実施形態では、ガンマレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターであり得る。他の実施形態では、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルス由来ベクターであり得る。HIV−1由来ベクターは、このカテゴリーに属する。他の例としては、HIV−2、FIV、ウマ伝染性貧血ウイルス、SIV、およびマエディ・ビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来する、レンチウイルスベクターが挙げられる。レトロウイルスおよびレンチウイルスウイルスベクターの使用方法、およびCAR導入遺伝子を含有するウイルス粒子で哺乳動物宿主細胞に形質導入するための細胞のパッケージング細胞は、当技術分野において公知であり、以前に、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchli et al., PLoS One 6:327930, 2011; Zhao et al., J. Immunol.174:4415, 2005; Engels et al., Hum.Gene Ther.14:1155, 2003; Frecha et al., Mol.Ther.18:1748, 2010;およびVerhoeyen et al., Methods Mol.Biol.506:97, 2009に記載されている。レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター構築物および発現系は、市販もされている。他のウイルスベクターも、ポリヌクレオチド送達に使用することができ、それらには、例えばアデノウイルスベースのベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターを含む、DNAウイルスベクター;アンプリコンベクター、複製欠損HSVおよび弱毒化HSVを含む、単純ヘルペスウイルス(HSV)に由来するベクターが含まれる(Krisky et al., Gene Ther.5:1517, 1998)。
【0103】
ウイルスベクターのゲノムが、別々の転写物として宿主細胞において発現される複数のポリヌクレオチドを含む場合、ウイルスベクターはまた、バイシストロニックなまたはマルチシストロニックな発現を可能にする2つ(またはそれより多い)転写物間に追加の配列を含んでもよい。ウイルスベクターにおいて使用されるそのような配列の例としては、配列内リボソーム進入部位(IRES)、フューリン切断部位、ウイルス2Aペプチド、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0104】
本明細書に記載の実施形態のいずれにおいても、ポリヌクレオチドは、自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができ、自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとマーカーをコードするポリヌクレオチドの間に位置する。
【0105】
ある特定の実施形態では、自己切断ポリペプチドは、ブタのテッショウウイルス−1(P2A;配列番号40または41)、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A;配列番号42または43)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A;配列番号44または45)、または口蹄疫ウイルス(F2A)からの2Aペプチドを含む。さらなる例示的な核酸およびアミノ酸配列である、2Aペプチドは、例えば、Kimら(2A核酸およびアミノ酸配列が、それら全体が参照により本明細書に組み込まれるPLOS One 6:e18556, 2011)に示される。
【0106】
遺伝子治療用に開発された他のベクターも、本開示の組成物および方法とともに使用することができる。そのようなベクターとしては、バキュロウイルスおよびαウイルスに由来するもの(Jolly, D J. 1999. Emerging Viral Vectors. pp 209-40 in Friedmann T. ed. The Development of Human Gene Therapy. New York: Cold Spring Harbor Lab)、またはプラスミドベクター(例えば、スリーピング・ビューティーもしくは他のトランスポゾンベクター)が挙げられる。
【0107】
目的の融合タンパク質の遺伝子操作および産生に使用される発現ベクターの構築は、当技術分野において公知の任意の好適な分子生物学操作手法を使用することにより遂行することができる。効率的な転写および翻訳を達成するために、各組換え発現構築物中のポリヌクレオチドは、目的のタンパク質またはペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に(すなわち、作用的に(operatively))連結された少なくとも1つの適切な発現制御配列(調節配列とも呼ばれる)、例えば、リーダー配列および特にプロモーターを含む。
【0108】
マーカーは、これを用いて形質導入された宿主細胞による異種ポリヌクレオチドの発現を識別もしくはモニタリングするために、または目的の融合タンパク質を発現する細胞を検出するために使用されることがある。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。ある特定の実施形態では、マーカーをコードするポリヌクレオチドは、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’側に位置する。他の実施形態では、マーカーをコードするポリヌクレオチドは、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’側に位置する。例示的なマーカーとしては、緑色蛍光タンパク質、ヒトCD2の細胞外ドメイン、短縮型ヒトEGFR(huEGFRt;Wang et al., Blood 118:1255(2011)を参照されたい)、短縮型ヒトCD19(huCD19t)、短縮型ヒトCD34(huCD34t);または短縮型ヒトNGFR(huNGFRt)が挙げられる。ある特定の実施形態では、コードされたマーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。
【0109】
本開示の免疫グロブリン結合タンパク質および融合タンパク質は、ある特定の態様では、宿主細胞の表面で発現されるかまたは宿主細胞によって分泌されるかもしくは宿主細胞から単離される場合がある。宿主細胞は、ベクターをもしくは核酸の組み入れを受け入れることができる、またはタンパク質を発現することができる、任意の個々の細胞または細胞培養物を含むことができる。この用語は、遺伝的にまたは表現型的に同じであるのか異なるのかを問わず、宿主細胞の子孫も包含する。好適な宿主細胞は、ベクターに依存し得、哺乳動物細胞、動物細胞、ヒト細胞、サル細胞、昆虫細胞、酵母細胞および細菌細胞を含み得る。ウイルスベクターの使用、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションによる形質転換、または他の方法によって、ベクターまたは他の材料を組み入れるように、これらの細胞を誘導することができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)を参照されたい。
【0110】
したがって、ある特定の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたは発現構築物を含む宿主細胞であって、ポリヌクレオチドまたは発現構築物が、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質をコードし、宿主細胞が、コードされた免疫グロブリン結合タンパク質またはコードされた融合タンパク質を発現する、宿主細胞が提供される。免疫グロブリン結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはクローニング/発現構築物は、形質転換、トランスフェクションおよび形質導入を含む、当技術分野において公知の任意の方法を使用して好適な細胞へと導入される。宿主細胞は、例えば、ex vivo遺伝子療法、および細胞療法で使用される同種異系または同系細胞を含むex vivo細胞療法を施される対象の細胞(例えば、T細胞または他の免疫細胞)を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、この開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を発現するよう形質導入された宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫系細胞である。本明細書で使用される場合、「造血前駆細胞」は、造血幹細胞または胎仔組織に由来する場合があり、成熟細胞型(例えば、免疫系細胞)へとさらに分化する可能性のある細胞である。例示的な造血前駆細胞としては、CD24
LoLin
−CD117
+表現型を有するもの、または胸腺に見られるもの(前駆胸腺細胞と呼ばれる)が挙げられる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「免疫系細胞」は、2つの主要な系列、骨髄系前駆細胞(これは、骨髄系細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球および顆粒球を生じさせる)およびリンパ系前駆細胞(これは、リンパ系細胞、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、およびNK−T細胞を生じさせる)、を生じさせる、骨髄中の造血幹細胞に由来する免疫系の任意の細胞を意味する。例示的な免疫系細胞としては、B細胞、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδ T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラー細胞(例えば、NK細胞またはNK−T細胞)、および樹状細胞が挙げられる。マクロファージおよび樹状細胞は、「抗原提示細胞」または「APC」と呼ばれることもあり、「抗原提示細胞」または「APC」は、ペプチドと複合体化したAPCの表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)受容体がT細胞の表面のTCRと相互作用したときT細胞を活性化することができる特殊化した細胞である。
【0113】
「T細胞」または「Tリンパ球」は、胸腺において成熟し、T細胞受容体(TCR)を産生する、免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブ(抗原に曝露されていない;T
CMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127およびCD45RAの発現増加、ならびにCD45ROの発現減少)、メモリーT細胞(T
M)(抗原を経験した、長寿命)およびエフェクター細胞(抗原を経験した、細胞傷害性)であり得る。T
Mは、さらに、セントラルメモリーT細胞(T
CM;ナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45ROおよびCD95の発現増加、ならびにCD54RAの発現減少)、幹細胞メモリーT細胞、およびエフェクターメモリーT細胞(T
EM、ナイーブT細胞またはT
CMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現減少、およびCD127の発現増加)のサブセットに分けることができる。
【0114】
エフェクターT細胞(T
E)は、抗原を経験したCD8
+細胞傷害性Tリンパ球であって、T
CMと比較して、CD62L、CCR7およびCD28の発現減少を有し、グランザイムおよびパーフォリンに対して陽性である、CD8
+細胞傷害性Tリンパ球を指す。ヘルパーT細胞(T
H)は、サイトカインを放出することにより他の免疫細胞の活性に影響を与えるCD4
+細胞である。CD4
+T細胞は、適応免疫応答を活性化することおよび抑制することができ、これら2つの機能のどちらが誘導されるのかは、他の細胞およびシグナルの存在に依存する。公知の技法を使用してT細胞を収集することができ、公知の技法により、例えば、抗体への親和性結合、フローサイトメトリーまたは免疫磁気選択により、様々な部分集団またはそれらの組合せを富化することまたは枯渇させることができる。他の例示的なT細胞としては、調節性T細胞、例えば、CD4
+CD25
+(Foxp3
+)調節性T細胞およびTreg17細胞、ならびにTr1、Th3、CD8
+CD28
−、およびQa−1拘束T細胞が挙げられる。
【0115】
「T細胞系列の細胞」は、それらの細胞を他のリンパ系細胞、および赤血球または骨髄細胞系列と区別する、T細胞またはその先駆体もしくは前駆体の少なくとも1つの表現型特性を示す細胞を指す。そのような表現型特性としては、T細胞に特異的な1つもしくは複数のタンパク質(例えば、CD3
+、CD4
+、CD8
+)の発現、またはT細胞に特異的な生理的、形態的、機能的もしくは免疫学的特徴を挙げることができる。例えば、T細胞系列の細胞は、T細胞系列に運命決定された前駆細胞または先駆細胞;CD25
+未熟および不活性化T細胞;CD4もしくはCD8系列に運命決定された細胞;CD4
+CD8
+二重陽性である胸腺細胞前駆細胞;単一陽性CD4
+もしくはCD8
+;TCRαβもしくはTCRγδ;または成熟および機能的または活性化T細胞であり得る。
【0116】
T細胞に所望の核酸をトランスフェクトする/T細胞に所望の核酸で形質導入する方法は、記載されており(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)、所望の標的特異性のT細胞を使用する養子移入手順も記載されており(例えば、Schmitt et al., Hum. Gen. 20:1240, 2009; Dossett et al., Mol. Ther. 17:742, 2009; Till et al., Blood 112:2261, 2008; Wang et al., Hum. Gene Ther.18:712, 2007; Kuball et al., Blood 109:2331, 2007;米国特許出願公開第2011/0243972号;米国特許出願公開第2011/0189141号;Leen et al., Ann. Rev. Immunol. 25:243, 2007)、したがって、今般開示される実施形態へのこれらの方法論の適用が、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質および融合タンパク質に関するものを含む本明細書における教示に基づいて企図される。
【0117】
この開示によるポリヌクレオチド、ベクター、またはタンパク質を保有する場合にこの開示の態様として企図される真核宿主細胞としては、ヒト免疫細胞(例えば、ヒト患者自身の免疫細胞)に加えて、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(発現された多価結合分子のグリコシル化パターンを改変することが可能な改変CHO細胞を含む、米国特許出願公開第2003/0115614号を参照されたい)、COS細胞(例えば、COS−7)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、HEK293細胞、HepG2細胞、N細胞、3T3細胞、Spodoptera frugiperda細胞(例えば、Sf9細胞)、Saccharomyces cerevisiae細胞、ならびにこの開示によるタンパク質またはペプチドを発現する、および必要に応じて単離するのに有用となる当技術分野において公知の任意の他の真核細胞が挙げられる。Escherichia coli、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、ストレプトミセス菌、またはこの開示によるタンパク質もしくはペプチドを発現する、および必要に応じて単離するのに好適となる当技術分野において公知の任意の原核細胞を含む原核細胞も企図される。特に、原核細胞からタンパク質またはペプチドを単離する際に、封入体からタンパク質を抽出するための当技術分野において公知の手法が使用され得ることが企図される。この開示の免疫グロブリン結合タンパク質および融合タンパク質をグリコシル化する宿主細胞が企図される。
【0118】
形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主細胞は、選択された宿主細胞の成長に必要とされる栄養素および他の成分を含有する培養培地中で、従来の手順に従って培養されてもよい。規定された培地および複合培地を含む種々の好適な培地は、当技術分野において公知であり、一般的に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミンおよびミネラルを含む。培地は、必要に応じて、増殖因子または血清などの成分を含むこともできる。一般的に、成長培地は、例えば、薬物選択または発現ベクターで運ばれるかまたは宿主細胞内へ同時トランスフェクトされる、選択可能なマーカーによって補足される必須栄養素の欠乏により、外因的に添加されたポリヌクレオチドを含有する細胞を選択することになる。
【0119】
実施形態では、この開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、宿主細胞の表面で発現され、その結果、タグペプチドへの結合が、宿主細胞からの活性または応答を誘引する。このような発現されたタンパク質は、T細胞結合、活性化または誘導の決定を含み、抗原特異的であるT細胞応答の決定も含む、宿主細胞(例えば、T細胞)活性をアッセイするための当技術分野において一般に認められている多数の方法論のいずれかに従って機能的に特徴付けることができる。例は、T細胞増殖、T細胞サイトカイン放出、抗原特異的T細胞刺激、MHC拘束T細胞刺激、CTL活性(例えば、前もって負荷された標的細胞からの
51Crまたはユーロピウムの放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化、およびT細胞機能の他の尺度の決定を含む。これらおよび類似のアッセイを行うための手順は、例えば、Lefkovits(Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques, 1998)において見つけることができる。Current Protocols in Immunology; Weir, Handbook of Experimental Immunology, Blackwell Scientific, Boston, MA (1986); Mishell and Shigii (eds.)Selected Methods in Cellular Immunology, Freeman Publishing, San Francisco, CA (1979); Green and Reed, Science 281:1309 (1998)およびこれらに引用されている参考文献も参照されたい。
【0120】
サイトカインレベルは、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色およびフローサイトメトリー、ならびにそれらの組合せ(例えば、細胞内サイトカイン染色とフローサイトメトリー)を含む、本明細書に記載されるおよび当技術分野において実施されている方法に従って、決定することができる。免疫応答の抗原特異的惹起または刺激の結果として生じる免疫細胞増殖およびクローン拡大は、末梢血液細胞またはリンパ節からの細胞の試料中の循環リンパ球などのリンパ球を単離し、前記細胞を抗原で刺激し、サイトカイン産生、細胞増殖および/または細胞生存率を、例えば、トリチウム化チミジンの取り込みまたは非放射性アッセイ、例えばMTTアッセイなどにより、測定することによって、決定することができる。Th1免疫応答とTh2免疫応答の間のバランスに対する本明細書に記載される免疫原の効果は、例えば、Th1サイトカイン、例えば、IFN−γ、IL−12、IL−2およびTNF−β、ならびに2型サイトカイン、例えば、IL−4、IL−5、IL−9、IL−10およびIL−13、のレベルを決定することによって、検査することができる。
【0121】
他の態様では、(a)本明細書に記載されるベクターまたは発現構築物およびベクターまたは発現構築物を宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬、ならびに(b)(i)本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、単離されたポリヌクレオチド、または発現ベクター、およびポリヌクレオチドまたは発現ベクターを宿主細胞に形質導入するための必要に応じた試薬、ならびに(c)この開示の宿主細胞を含むキットが提供される。
【0122】
使用
さらなる態様では、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有する(すなわち、それを含むかまたはそれからなる)タグペプチドを発現する細胞または細胞の集団を識別するために、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を使用するための方法が提供される。そのような方法は、例えば、養子細胞治療において使用されるタグ付き細胞がそれを必要とする対象に移入されるのに成功したかどうか、またはタグ付き細胞が養子細胞治療を施される対象において増殖したか、または存続したか、または目的の部位に局在したかどうかを決定するために有用であり得る。ある特定の実施形態では、方法は、(i)1つまたは複数のタグ付き細胞を含む対象由来の試料を、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質と接触させることと、(ii)免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質の1つまたは複数のタグ付き細胞への特異的結合を検出し、それによって、タグペプチドを発現する1つまたは複数の細胞を識別することとを含む。
【0123】
他の態様では、対象由来のタグ付き細胞またはタグ付き細胞の集団を濃縮または単離するための方法であって、(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドを細胞表面に発現する1つまたは複数の細胞を含む対象由来の試料を、本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質と接触させることと、(ii)免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質が特異的に結合したタグ付き細胞を選択またはソートし、それによって、タグペプチドを発現する1つまたは複数の細胞を濃縮または単離することとを含む、方法が提供される。そのような方法は、例えば、タグ付き細胞を使用して養子細胞治療に情報提供するためまたはそれを改善するための分析または操作に関して、対象または対象試料由来の(例えば、全血由来の、PBMC由来の、または腫瘍組織もしくは部位由来の)目的のタグ付き細胞を効率的にソートおよび単離する際に有用性を有する場合がある。
【0124】
ある特定の実施形態では、タグペプチドは、識別されるかまたは濃縮されるかまたは単離される細胞によって発現される細胞表面タンパク質に含有される。特定の実施形態では、細胞表面タンパク質は、CARまたはTCR(CARまたはTCRを発現する細胞を含む養子細胞治療において疾患関連抗原を標的とするために使用され得るものなど)、マーカー(例えば、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択される形質導入マーカーなどの、細胞表面で発現される検出可能なマーカー)、またはそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、細胞表面タンパク質は、マーカーを含む。さらなる実施形態では、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。1つまたは複数のタグペプチドを含有するCARなどの、代表的なタグ付きキメラエフェクター分子は、PCT公開番号WO2015/095895に記載されており、この参考文献のタグおよびタグ付きエフェクター分子は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的なタグペプチドとしては、細菌タンパク質であるストレプトアビジンに結合するStrep(登録商標)−Tag(WRHPQFGG、配列番号48)およびそのバリアントであるStrep(登録商標)−Tag II(WSHPQFEK、配列番号19)、ならびに親和性の高いその誘導体であるStrep−Tactinが挙げられる。例えば、米国特許第7,981,632号(それに由来するStrepタグは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0125】
本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、結合したタグ付き細胞を識別、追跡、濃縮、もしくは単離するのを助けるかまたはそれを可能にする検出可能な部分を含んでもよい。例えば、検出可能な部分は、1つまたは複数の酵素、色素、蛍光標識、またはペプチドタグを含むことができ、ただし、ペプチドタグは、strep−タグペプチドを含まない(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるペプチドタグを含まない)。
【0126】
一部の実施形態では、検出可能な部分は、酵素を含み、酵素は、発色レポーター酵素、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含む。本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質に連結され得る蛍光標識としては、シアニン色素、クマリン、ローダミン、キサンテン、フルオレセインもしくはそのスルホン化誘導体、蛍光タンパク質、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。本開示の方法において有用なペプチド標識としては、Mycタグ、Hisタグ、Flagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、HAタグ、Nusタグ、Sタグ、Xタグ、SBPタグ、Softag、V5タグ、CBP、GST、MBP、GFP、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。特定の実施形態では、検出可能な部分は、ペプチドタグを含み、ペプチドタグは、His−タグまたはMyc−タグを含む。実施形態では、蛍光部分は、PE、Pacific blue、Alexa fluor、APCまたはFITCから選択されてもよい。
【0127】
本開示の方法および組成物、ならびに関連する標識戦略およびイメージング手法(例えば、PET、MRI、NIR)のいずれかにおいて有用な追加の検出可能な部分としては、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれるFriese and Wu, Mol. Immunol. 67(200):142-152(2015)およびMoek et al., J. Nucl. Med. 58:83S-90S(2017)に開示されたものが挙げられる。ある特定の実施形態では、検出可能な部分は、放射性核種、放射性金属、MRI造影剤、マイクロバブル、カーボンナノチューブ、金粒子、フルオロデオキシグルコース、発色団、放射線不透過性マーカー、またはそれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、検出可能な部分は、
68Ga、
64Cu、
86Y、
89Zr、
124I、
99mTc、
123I、
111In、
177Lu、
131I、
76Br、
78Zr、
18F、および
124Tから選択される放射線核種を含む。そのようなある特定の実施形態では、検出可能に標識された免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、マレイミド−標識されたDOTA、N−ヒドロキシスクシンイミド−DOTA、およびデスフェリオキサミン(DFO)から選択される放射線核種キレーターをさらに含む。
【0128】
検出可能に結合したタグ付き細胞は、公知の手法を使用して、識別、選択、ソート、濃縮または単離することができる。例えば、ある特定の実施形態では、細胞または細胞の集団は、フローサイトメトリーを使用して、識別、選択、またはソートされる。一部の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質が特異的に結合するタグ付き細胞またはタグ付き細胞の集団は、磁気カラムクロマトグラフィーによって試料の他の成分から濃縮または単離される。
【0129】
一部の実施形態では、識別されるタグ付き細胞は、対象由来の試料中に含有される。ある特定の実施形態では、試料は、血液または組織である。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、対象は、ヒトであってもよい。
【0130】
他の態様では、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドをその細胞表面に発現するように改変された免疫細胞を活性化するための方法であって、改変された免疫細胞を、改変された免疫細胞の活性化を誘導するのに十分な条件下および時間で、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質と接触させることを含む、方法が提供される。手短に述べると、T細胞などの免疫細胞は、免疫応答機能を実施するために(例えば、サイトカインおよび細胞毒素を放出し、感染した細胞またはがん性細胞を殺滅する;シグナルを提供し、他の免疫細胞を動員するために)、外部刺激による活性化を必要とする。養子療法のためにCARまたはTCRを発現するT細胞をプライミングすることは、典型的には、発現されたCARまたはTCRをその同族抗原に曝露することによって、またはT細胞を細胞表面に存在する共刺激タンパク質(例えば、CD3またはCD28)に結合するマイクロビーズに連結した抗体に曝露することによって、実施される。
【0131】
本開示の免疫グロブリン結合タンパク質および融合タンパク質を使用して、例えば、免疫細胞によって発現されたCARまたはTCRに含有されるタグ(例えば、細胞外ヒンジ部分などの同族抗原に特異的に結合しないCARまたはTCRの部分に含有されるタグ)に結合させることなどによって、タグ付き免疫細胞を活性化し、それによって、抗原結合事象を模倣することができる。これによって、有利なことに、発現されたCARまたはTCRによる抗原認識と独立して、免疫細胞を活性化させることができる。あるいは、この開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を使用して、タグ付き免疫細胞を、タグ付き免疫細胞を活性化させる他の試薬に結合させ、それと近接させることができる(例えば、本開示の抗体を含むマイクロビーズおよびCD3またはCD28などの共刺激分子にアゴニスティックに結合する抗体を使用して)。そのようなアプローチは、タグペプチドが、活性化のためにシグナル伝達するタンパク質に含有されない場合に有用であり得る(例えば、タグペプチドが、EGFRtなどのマーカータンパク質に融合される場合)。ある特定の実施形態では、タグペプチドは、改変された免疫細胞によって発現される細胞表面タンパク質に含有される。さらなる実施形態では、細胞表面タンパク質は、CAR、TCR、マーカー、またはそれらの組合せを含み、必要に応じて、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択される。一部の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、固体表面、例えば、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズ(例えば、マイクロビーズまたはナノビーズ)に結合している。
【0132】
ある特定の実施形態では、タグ付き免疫細胞は、養子療法レジメンにおけるタグ付き免疫細胞の最初の投与前またはその後などに、in vitroまたはex vivoで活性化される。さらなる実施形態では、タグ付き免疫細胞を活性化するための方法は、それらの濃縮または単離の前に、活性化されたタグ付き免疫細胞の集団(例えば、対象由来の試料中の)を拡大する追加のステップを含む。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、タグペプチドを発現する細胞は、ヒトT細胞、NK細胞、またはNK−T細胞であるかまたはそれを含んでもよい。
【0133】
改変された免疫細胞の局所活性化のためのin vivoでの方法であって、(i)(a)本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質、および(b)共刺激分子(例えば、CD3、CD27、CD28、OX40、またはCD137)に特異的な結合ポリペプチドを含むマトリックス組成物またはデバイス、ならびに(ii)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドをその細胞表面に発現する改変された免疫細胞を対象に投与することを含み、タグペプチドが、CAR、TCR、マーカー、またはそれらの組合せに含有され、必要に応じて、マーカーが、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択され、サブパート(i)のマトリックス組成物の(a)と、細胞表面タグペプチドとの会合により、改変された免疫細胞が活性化される、方法も本明細書において提供される。一部の実施形態では、共刺激分子に特異的な結合ポリペプチドは、マトリックス組成物またはデバイス中の多重特異的免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質中に含まれる。そのようなin vivo方法は、例えば、細胞活性のための所望の部位でまたはその近くで、例えば、腫瘍部位または感染部位でまたはその近くで、タグ付き免疫細胞を活性化するのに有用であり得る。ある特定の実施形態では、マトリックス組成物は、アルギネート、基底膜マトリックス、またはバイオポリマーを含む。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、タグペプチドを発現する細胞は、ヒトT細胞、NK細胞、またはNK−T細胞であるかまたはそれを含んでもよい。免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質、結合ポリペプチド、および改変された免疫細胞の投与は、任意の順序で実施されてもよいが、典型的には、同時期にまたは同時に実施されることになる。
【0134】
さらに別の態様では、細胞増殖を促進するための方法であって、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドを発現する細胞を、(a)本開示の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質、および(b)増殖因子であるサイトカインと、タグ付き細胞の増殖を可能とするのに十分な条件下および時間で、接触させることを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、直接的に(例えば、CAR、TCR、または細胞によって発現される共刺激分子に含有されるタグペプチドに結合すること)または間接的に(例えば、免疫グロブリンタンパク質および必要に応じた抗CD3または抗CD28抗体を含むビーズを使用して;例えば、図3A〜4Bを参照されたい)のいずれかで、細胞を活性化することによって、増殖を促進することができる。一部の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質は、固体表面、例えば、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズ(例えば、マイクロビーズまたはナノビーズ)に結合している。任意の増殖因子であるサイトカインを使用して、本開示の方法に従って細胞増殖を促進することができるが、ただし、増殖因子であるサイトカインは細胞増殖を刺激する。そのようなサイトカインは当技術分野において公知であり、例えば、IL−12、IL−15など、およびこれらの組合せを含む。
【0135】
さらなる実施形態では、方法は、タグ付き細胞を、細胞によって発現される共刺激タンパク質にアゴニスティックに結合する作用剤とともに、インキュベートすることをさらに含む。ある特定の実施形態では、作用剤は、抗CD27結合タンパク質、抗CD28結合タンパク質、抗CD137結合タンパク質、抗OX40結合タンパク質、またはこれらの任意の組合せであり、結合タンパク質のうちの1つまたは複数が、固体表面に結合している。さらなる実施形態では、抗CD27結合タンパク質、抗CD28結合タンパク質、抗CD137結合タンパク質、抗OX40結合タンパク質、またはそれらの任意の組合せが、平坦な表面、アガロース、樹脂、3Dファブリックマトリックス、またはビーズに結合している。
【0136】
本開示の方法は、例えば、T細胞、NK細胞、またはNK−T細胞の増殖を促進するのに有用である。ある特定の実施形態では、細胞は、機能的な改変されたT細胞である。具体的な実施形態では、機能的に改変されたT細胞は、ウイルス特異的細胞、腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞、メモリーT幹細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターT細胞、またはCD4+CD25調節T細胞である。なおさらなる実施形態では、タグペプチドは、細胞によって発現される細胞表面タンパク質(例えば、CAR、TCR、共刺激分子、マーカー、またはそれらの組合せ;場合によって、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtから選択される)に含有されてもよい。
【0137】
タグ付き細胞の増殖は、本開示の方法のいずれかに従って、in vitro、in vivo、またはex vivoで、促進されるかまたは誘導され得る。特定の実施形態では、増殖は、in vivoまたはex vivoで促進されるかまたは誘導される。免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質および増殖因子であるサイトカインの投与は、任意の順序で起こりうるが(例えば、最初に投与された増殖因子であるサイトカインとともに)、典型的には、同時期にまたは同時に実施されることになる。
【0138】
なお他の態様では、in vivoイメージング方法であって、(a)配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドを発現する改変された細胞を受容した対象に、本開示の1つまたは複数の免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質を投与することであって、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質が、in vivoイメージングに好適な検出可能な部分をさらに含む、投与することと、(b)対象のイメージングを実施することとを含む、方法が提供される。そのような方法は、例えば、in vivoで、タグ付き細胞の追跡遊走、局在化、増殖、または存続に有用である。
【0139】
in vivoで、細胞の高品質で、情報価値のあるイメージを得ることは、例えば、高い保持率で細胞に選択的に結合し、迅速かつ必要な深さまで組織に浸透し、血液から迅速に取り除かれるイメージング剤の能力を含む、いくつかの因子に依存する。実施形態では、検出可能に標識された免疫グロブリン結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片を含む結合ドメインを含み、抗原結合断片は、in vivoイメージングを受けることができる形式または構造を有する。例えば、ある特定の実施形態では、抗原結合断片は、scFv、タンデムscFv、scFv−Fc、scFv二量体、scFvジッパー、ダイアボディ、ミニボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、F(ab’)2、scFab、ミニ抗体、ナノボディ、ナノボディ−HSA、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)、DART、scダイアボディ、scダイアボディ−CH3、またはscFv−CH3ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリを含む。
【0140】
in vivoイメージングに好適な任意の検出可能な部分を、本開示の方法において使用することができる。ある特定の実施形態では、検出可能な部分は、例えば、
68Ga、
64Cu、
86Y、
89Zr、
124I、
99mTc、
123I、
111In、
177Lu、
131I、
76Br、
78Zr、
18F、および
124Tなどの放射活性トレーサーを含む。ポジトロン断層法(PET)は、本発明の方法に従って放射活性標識された標的をイメージングするための例示的手法である。in vivoイメージングに有用な追加のイメージング手法としては、これらに限定されないが、磁気共鳴イメージング(MRI)および近赤外(NIR)イメージングが挙げられる。さらなる検出可能な部分としては、例えば、磁気粒子、超常磁性酸化鉄(SPIO)、フルオロデオキシグルコース(18F)、および蛍光化合物、例えば、蛍光タンパク質または部分が挙げられる。
【0141】
なお他の態様では、タグ付き免疫治療用細胞の標的アブレーションのための方法であって、本開示の(a)免疫グロブリン結合タンパク質、(b)融合タンパク質、または(c)組成物のうちの1つまたは複数を対象に投与することを含み、対象に、配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるタグペプチドを含む細胞表面タンパク質(例えば、CAR、TCR、またはEGFRtなどのマーカー)を発現するタグ付き免疫治療用細胞が以前に投与されており、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物は、タグ付き免疫治療用細胞のアブレーションを引き起こすのに十分な条件下および時間で、タグペプチドに結合すると、直接的にまたは間接的に細胞死を誘導することが可能である、方法が提供される。
【0142】
「標的アブレーション」は、本明細書で使用される場合、標的細胞(例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列を有するタグペプチドを発現する細胞)を(例えば、アポトーシスの誘導、溶解、貪食、細胞傷害剤の送達、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、補体指向性細胞傷害(CDC)により、または別の機構により)選択的に殺滅することを指す。本開示の標的アブレーション方法は、以前に投与されたタグ付き免疫治療用細胞(例えば、CARまたはTCRなどの抗原特異的細胞表面受容体を発現する免疫治療用細胞)が、望ましくない多数のものであるかまたは望ましくない活性(例えば、対象のオフターゲット細胞または組織に対する免疫応答を認識および誘引するもの)もしくは活性レベル(例えば、不適切に高い強度、不適切に長い持続期間、またはその両方の免疫応答、例えば、CRS事象を誘引するもの)を有する場合に有用である場合がある。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物は、タグ付き免疫治療用細胞の存在と関連する少なくとも1つの有害事象を有する対象に投与される。
【0143】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物は、細胞傷害剤、例えば、化学療法剤を含む。化学療法剤としては、これらに限定されないが、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA傷害剤、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、およびDNA修復阻害剤が挙げられる。例示的化学療法剤として、限定されないが、以下の群が挙げられる:代謝拮抗薬/抗がん剤、例えば、ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロクスリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));天然産物、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビンオレルビン)、微小管破壊剤、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテル、テモゾラミド(temozolamide)、テニポシド、トリエチレンチオホスホールアミドおよびエトポシド(VP16))を含む抗増殖性/有糸分裂阻害剤;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびミトマイシン;酵素(L−アスパラギンを全身代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力がない細胞を欠乏させるL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体(メトトレキセート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);繊維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗片頭痛剤;分泌抑制剤(ブレベルジン);免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニゾロン、プレドニゾン、およびプレニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、毒素、例えば、コレラ毒素、リシン、Pseudomonas外毒素、Bordetella pertussisアデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素、およびカスパーゼ活性化因子;およびクロマチン破壊剤。
【0144】
本開示の免疫グロブリン結合タンパク質(例えば、抗体−薬物コンジュゲート分子におけるもの)または融合タンパク質、ならびに関連する機構および方法を使用して細胞傷害剤または検出可能な作用剤を調製するための試薬および化学としては、その組成物、方法、および手法が参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、Nareshkumar et al., Pharm. Res. 32:3526-3540 (2015)に開示されたものが挙げられる。タンパク質−薬物コンジュゲートを生成するために有用なクリック化学としては、Meyer et al., Bioconjug. Chem. 27(12):2791-2807 (2016)に記載されるものが挙げられ、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる。
【0145】
タンパク質−薬物コンジュゲートを使用して送達可能な追加の細胞傷害剤および検出可能な作用剤として、その作用剤およびタンパク質−薬物コンジュゲートの設計原理が参照により本明細書に組み込まれる、Parslow et al., Biomedicines 4:14(2016)に開示されたものが挙げられる。
【0146】
さらなる実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、タグペプチドに結合すると、タグ付き免疫治療用細胞に対して、(a)オプソニン化;(b)貪食;(c)抗体指向性細胞介在性細胞傷害(ADCC);および(d)補体指向性細胞傷害(CDC)のうちの1つまたは複数を誘引することが可能である抗体を含む。
【0147】
さらに、免疫グロブリン結合タンパク質は、タグ付き免疫治療用細胞に対して細胞介在性細胞傷害を促進するように形式化されてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、二重特異的であり、タグペプチドに結合するのと同時に、(a)T細胞マーカー(例えば、CD3)または(b)NK細胞マーカー(例えば、CD28)に結合し、それによって、タグ付き細胞を、T細胞またはNK細胞に近接させて、タグ付き細胞に対する細胞傷害性活性を促進することが可能である。具体的な実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質は、二重特異的であり、二重特異的scFv、二重特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)分子、ナノボディ、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、scダイアボディ−CH3、ダイアボディ−CH3、Triple Body、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、scFv−CH3 KIH、Fab−scFv、scFv−CH−CL−scFv、F(ab’)2、F(ab’)2−scFv2、scFv−KIH、Fab−scFv−Fc、四価のHCab、scダイアボディ−Fc、ダイアボディ−Fc、タンデムscFv−Fc、イントラボディ、Dock and Lock融合タンパク質、ImmTAC、HSAbody、scダイアボディ−HSA、タンデムscFv、crossMab、DAF(トゥーインワンまたはフォーインワン)、DutaMab、DT−IgG、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)アセンブリ、KIH Common Light−Chain抗体、Charge Pair、Fab−アームExchange、SEEDbody、Triomab、LUZ−Y、Fcab、κλ−ボディ、直交Fab、DVD−IgG、IgG(H)−scFv、scFv−(H)IgG、IgG(L)−scFv、scFv−(L)IgG、IgG(L,H)−Fv、IgG(H)−V、V(H)−IgG、IgG(L)−V、V(L)−IgG、KIH IgG−scFab、2scFv−IgG、IgG−2scFv、scFv4−Ig、Zybody、またはDVI−IgG(フォーインワン)を含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、タグ付き免疫治療用細胞は、グラフトもしくは移植として(例えば、器官または組織のグラフトまたは移植)、または過剰増殖性障害などの疾患を処置するために以前に投与された。本明細書で使用される場合、「過剰増殖性障害」は、正常または非罹患細胞と比較して過剰な成長または増殖を指す。例示的な過剰増殖性障害としては、腫瘍、がん、新生物組織、癌、肉腫、悪性細胞、前悪性細胞、および非新生物性または非悪性過剰増殖性障害(例えば、腺腫、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、血管腫、線維症、再狭窄、ならびに自己免疫疾患、例えば、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、炎症性腸疾患など)が挙げられる。
【0149】
さらに、「がん」は、固形腫瘍、腹水腫瘍、血液もしくはリンパもしくは他の悪性疾患;結合組織悪性疾患;転移性疾患;器官または幹細胞の移植後の微小残存疾患;多剤耐性がん、原発性または二次性悪性疾患、悪性疾患に関係する血管新生、または他の形態のがんを含む、任意の加速された細胞増殖を指すことができる。
【0150】
前述の実施形態のいずれにおいても、細胞表面タンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、マーカー、またはそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、細胞表面タンパク質は、マーカーを含む。特定の実施形態では、マーカーは、EGFRt、CD19t、CD34t、またはNGFRtを含む。
【0151】
対象が、タグ付き免疫治療用細胞を含む移植または処置後に、タグ付き免疫治療用細胞に関連する1つまたは複数の有害事象、例えば、移植片対宿主病(GvHD)、宿主対移植片病(HvGD)、またはサイトカイン放出症候群(CRS)を明示した場合に必要なタグ付き免疫治療用細胞のアブレーションを決定することができる。タグ付き免疫治療用細胞のアブレーションに対する必要性を示すことができる症状としては、例えば、炎症、発熱、肺水腫または脳浮腫、血圧または心拍数の変化、健常細胞(例えば、白血球)の望ましくなく低い計数値、タグ付き細胞の望ましくなく高い計数値、サイトカインレベル上昇、発疹、疱疹、黄疸、下痢、嘔吐、腹部疝痛、疲労、疼痛、硬直、息切れ、体重減少、ドライアイまたは視力変化、口内乾燥、膣乾燥、および筋力低下が挙げられる。
【0152】
タグ付き免疫治療用細胞の標的アブレーションは、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物による処置後に、直接的にまたは間接的に決定することができる。例えば、ある特定の実施形態では、アブレーション後に、方法は:(i)対象のin vivoイメージングを実施すること;(ii)対象から得られた試料において、検出方法を実施すること;(iii)対象における1つまたは複数のサイトカイン(例えば、炎症促進性サイトカイン、例えば、IL−12、IL−18、またはIFN−γ)のレベルをモニタリングすること;(iv)対象におけるまたは対象から得られた試料中の、タグ付き免疫治療用細胞によって標的とされた標的細胞または組織(例えば、タグ付き抗CD19 CAR T細胞によって標的とされたB細胞)の存在および/または量を検出すること;(v)タグ付き免疫治療用細胞のin vivoでの追跡を実施すること;または(vi)それらの任意の組合せをさらに含む。
【0153】
例えば、(i)免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質;および(ii)磁気粒子、超常磁性酸化鉄(SPIO)、フルオロデオキシグルコース(18F)、蛍光化合物;またはこれらの任意の組合せを含むコンジュゲートを使用することによって、タグ付き免疫治療用細胞のin vivo追跡を実施することができる。一部の実施形態では、in vivo追跡は、MRI、PET、または近赤外イメージングの使用を含む。本発明の方法を使用して、in vivoで追跡することができるタグ付き免疫治療用細胞としては、T細胞、NK細胞、NK−T細胞、造血幹細胞、組織細胞、間葉細胞、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0154】
本発明によって処置することができる対象は、一般的に、ヒトおよび他の霊長類対象、例えば、獣医学目的でサルおよび類人猿である。上述の実施形態のいずれにおいても、対象は、ヒト対象であってもよい。対象は、男性であってもまたは女性であってもよく、乳幼児、若年、青年、成人、および老年対象を含む、任意の好適な年齢であってもよい。本開示による免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物は、医学技術分野の当業者により決定されるような、処置される疾患、状態、または障害に適切な方法で、投与することができる。上記実施形態のいずれにおいても、本明細書に記載されている免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物は、アブレーションすべきタグ付き細胞またはタグ付き免疫治療用細胞に遭遇するために、静脈内に、腹腔内に、腫瘍内に、骨髄中に、リンパ節中に、または脳脊髄液中に投与される。組成物の適切な用量、好適な投与期間および頻度は、患者の状態;疾患、状態または障害のサイズ、タイプおよび重症度;タグ付き免疫治療用細胞の望ましくないタイプまたはレベルまたは活性;活性成分の特定の形態;ならびに投与方法などの因子によって決定されることになる。
【0155】
本明細書において開示されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物も企図される。好適な賦形剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなどおよびそれらの組合せが挙げられる。実施形態では、医薬組成物は、好適な注入媒体をさらに含む。好適な注入媒体は、任意の等張媒体処方物、典型的には、通常の生理食塩水であり得、Normosol R(Abbott)またはPlasma−Lyte A(Baxter)、水中の5%デキストロース、乳酸リンゲル液を利用することができる。注入媒体は、ヒト血清アルブミンまたは他のヒト血清成分を補充されてもよい。
【0156】
医薬組成物は、医学技術分野の当業者により決定されるような、処置(または予防)される疾患または状態に適切な方法で、投与することができる。組成物の適切な用量ならびに好適な投与期間および頻度は、患者の健康状態、患者のサイズ(すなわち、体重、量(mass)または体面積)、患者の状態のタイプおよび重症度、タグ化された免疫療法細胞の望ましくないタイプもしくはレベルもしくは活性、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定される。一般に、適切な用量および処置レジメンは、治療的および/または予防的恩恵(例えば、臨床成績向上、例えば、より高頻度の完全もしくは部分的寛解、またはより長い無病および/もしくは全生存期間、または症状重症度の低下を含む、本明細書に記載されるもの)をもたらすのに十分な量で、組成物(複数可)を提供する。予防的使用のための用量は、疾患もしくは障害を予防する、疾患もしくは障害の発症を遅延させる、または疾患もしくは障害に関連する疾患重症度を低下させるのに、十分なものであるべきである。本明細書に記載される方法に従って投与される免疫原性組成物の予防的恩恵は、前臨床研究(in vitroおよびin vivoでの動物研究を含む)および臨床研究の実施、ならびにそこから得られるデータの適切な統計的、生物学的および臨床的方法および技法による分析によって決定することができ、前記方法および技法の全てが当業者によって容易に実施され得る。
【0157】
本明細書において企図される処置または予防のある特定の方法は、本明細書に記載の所望のポリヌクレオチドを含む宿主細胞(これは、自己、同種異系または同系であり得る)であって、前記ポリヌクレオチドが細胞の染色体に安定的に組み込まれている宿主細胞を投与するステップを含む。例えば、そのような細胞組成物を、自己、同種異系または同系免疫系細胞(例えば、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞)を使用してex vivoで生成して、融合タンパク質を発現する所望のT細胞組成物を養子免疫治療として対象に投与することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、造血前駆細胞またはヒト免疫細胞である。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、CD4
−CD8
−二重陰性T細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、またはそれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態では、免疫系細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、またはそれらの任意の組合せである。特定の実施形態では、細胞は、CD4+ T細胞である。
【0158】
本明細書で使用される場合、組成物の投与は、送達経路または送達方式にかかわらず、組成物を対象に送達することを指す。投与は、連続的または間欠的に、および非経口的に行われてもよい。投与は、認識された状態、疾患もしくは疾患状態を有すると既に確認された対象を処置するためのものであってもよく、またはそのような状態、疾患もしくは疾患状態が疑われるかもしくはそれを発症するリスクを有する対象を処置するためのものであってもよい。補助的療法に関する同時投与は、任意の順序で、かつ任意の投薬スケジュールで、複数の作用剤を同時および/または逐次的に送達することを含んでもよい(例えば、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または1つもしくは複数のサイトカインを含む組成物;カルシニューリン阻害剤などの免疫抑制療法、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはこれらの任意の組合せ)。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるとおりの免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、または組成物の複数の用量が、対象に投与されるが、これは、約2から約4週間の間の投与間隔で投与されてもよい。
【0160】
なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、免疫抑制治療、例えば、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ、またはそれらの任意の組合せをさらに受けている。なおさらなる実施形態では、処置されている対象は、非骨髄破壊的または骨髄破壊的造血細胞移植を受けたことがあり、この処置は、非骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも2カ月〜少なくとも3カ月後に投与することができ、移植された細胞に、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるペプチドで、必要に応じてタグを付けることができる。
【0161】
医薬組成物の有効量は、本明細書に記載されるような所望の臨床結果または有益な処置を達成するために、必要な投薬量でかつ必要な期間にわたって、十分な量を指す。有効量を1または複数回の投与で送達することができる。投与が、疾患または病状を有することが既に分かっているまたは確認された対象への投与である場合、用語「治療量」を、処置に関して使用することができ、これに対して「予防有効量」を、疾患もしくは病状(例えば、再発)に罹りやすいまたは疾患もしくは病状を発症するリスクがある対象に有効量を予防的コースとして投与することを記述するために、使用することができる。
【0162】
CTL免疫応答のレベルは、本明細書に記載されるおよび当技術分野において日常的に実施されている非常に多くの免疫学的方法のいずれか1つによって決定することができる。CTL免疫応答のレベルは、例えばT細胞により発現される本明細書に記載される融合タンパク質のいずれか1つの投与の前および後に、決定することができる。CTL活性を決定するための細胞傷害性アッセイは、当技術分野において日常的に実施されているいくつかの技法および方法のいずれか1つを使用して行うことができる(例えば、Henkart et al., "Cytotoxic T-Lymphocytes" in Fundamental Immunology, Paul (ed.) (2003 Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA), pages 1127-50およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
【0163】
抗原特異的T細胞応答は、観察されるT細胞応答を本明細書に記載されるT細胞の機能的パラメーター(例えば、増殖、サイトカイン放出、CTL活性、変更された細胞表面マーカー表現型など)のいずれかに従って比較することによって、通常は決定され、この比較は、適切な状況で同族抗原(例えば、免疫適合性抗原提示細胞により提示されたときにT細胞をプライミングまたは活性化するために使用される抗原)に曝露されるT細胞と、構造的に異なるまたは無関係の対照抗原の代わりに曝露される同じ供給源の集団からのT細胞との間で行われ得る。統計的有意性をもって、対照抗原に対する応答より大きい、同族抗原に対する応答は、抗原特異性を示す。
【0164】
本明細書に記載のタグ化タンパク質または細胞に対する免疫応答の存在およびレベルを決定するために、生体試料を対象から得ることができる。「生体試料」は、本明細書で使用される場合、血液試料(ここから、血清または血漿を調製することができる)、生検材料、体液(例えば、肺洗浄液、腹水、粘膜洗液、滑液)、骨髄、リンパ節、組織外植片、器官培養物、または対象もしくは生物学的供給源からの任意の他の組織もしくは細胞調製物であり得る。生体試料をいずれの免疫原性組成物を受ける前の対象から得ることもでき、この生体試料は、ベースライン(すなわち、免疫処置前)データを確立するための対照として有用である。
【0165】
本明細書に記載される医薬組成物は、単位用量または複数用量用容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに入っている状態で提供することができる。そのような容器を凍結して、製剤の安定性を保つことができる。ある特定の実施形態では、単位用量は、本明細書に記載される組換え宿主細胞を約10
7細胞/m
2〜約10
11細胞/m
2の用量で含む。例えば、非経口もしくは静脈内の投与または製剤を含む、様々の処置レジメンにおける、本明細書に記載される特定の組成物の使用に好適な投薬レジメンおよび処置レジメンの開発。
【0166】
対象組成物が非経口投与される場合、その組成物は、滅菌水性または油性溶液または懸濁液も含み得る。好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒としては、水、リンゲル液、等張塩類溶液、水との混合物での1,3−ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール(polythethylene glycol)が挙げられる。水溶液または水性懸濁液は、1つまたは複数の緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたは酒石酸ナトリウムをさらに含むことができる。もちろん、いずれの投薬単位製剤の調製に使用されるいずれの材料も、薬学的に純粋でなければならず、利用される量で実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性化合物を、徐放性調製物および製剤中に組み込むことができる。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、処置される対象にとって単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬担体と共同で所望の効果を生じさせるように計算された所定量の組換え細胞または活性化合物を含有し得る。
【0167】
一般に、適切な投薬量および処置レジメンは、治療的または予防的恩恵をもたらすのに十分な量で、活性分子または細胞を提供する。そのような応答は、処置されていない対象と比較して処置された対象において臨床成績向上(例えば、より高頻度の寛解、完全もしくは部分的、またはより長い無病生存期間)を確立することによって、モニタリングすることができる。腫瘍タンパク質に対する既存の免疫応答の増加は、一般に、臨床成績向上と相関する。そのような免疫応答は、標準的な増殖、細胞傷害性またはサイトカインアッセイを使用して、一般に評価することができ、前記アッセイは、当技術分野において日常的であり、処置前および後に対象から得た試料を使用して行うことができる。
【0168】
この開示による方法は、併用療法で疾患または障害を処置するための、1つまたは複数の追加の作用剤を投与することをさらに含んでもよい。例えば、ある特定の実施形態では、併用療法は、免疫グロブリン結合タンパク質または融合タンパク質(またはこれを発現する操作された宿主細胞)または組成物を、(同時に(concurrently)、同時に(simultaneously)、または逐次的に)免疫チェックポイント阻害剤とともに、投与することを含む。一部の実施形態では、併用療法は、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物(またはこれを発現する操作された宿主細胞)を、刺激性免疫チェックポイント剤のアゴニストと共に投与することを含む。さらなる実施形態では、併用療法は、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物(またはこれを発現する操作された宿主細胞)を、二次治療、例えば、化学療法剤、放射線療法、外科手術、抗体、またはこれらの任意の組合せとともに、投与することを含む。
【0169】
本明細書で使用される場合、用語「免疫抑制(immune suppression)剤」または「免疫抑制(immunosuppression)剤」は、免疫応答の制御または抑制を補助するための阻害性シグナルをもたらす1つまたは複数の細胞、タンパク質、分子、化合物または複合体を指す。例えば、免疫抑制剤は、免疫刺激を部分的にもしくは完全に遮断する、免疫活性化を減少、予防もしくは遅延させる、または免疫抑制を増加、活性化もしくは上方調節する分子を含む。標的化する(例えば、免疫チェックポイント阻害剤で)ための例示的な免疫抑制剤としては、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG3、CTLA4、B7−H3、B7−H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、IL−1RA、IL−35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5、Treg細胞、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0170】
免疫抑制剤阻害剤(免疫チェックポイント阻害剤とも呼ばれる)は、化合物、抗体、抗体断片もしくは融合ポリペプチド(例えば、Fc融合体、例えば、CTLA4−FcもしくはLAG3−Fc)、アンチセンス分子、リボザイムもしくはRNAi分子、または低分子量有機分子であり得る。本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、本開示の融合タンパク質(または前記融合タンパク質を発現する操作された宿主細胞)を、単独でのまたは任意の組合せでの下記の免疫抑制成分のいずれか1つに対する1つまたは複数の阻害剤とともに、投与することを含み得る。
【0171】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物は、PD−1阻害剤、例えば、PD−1特異的抗体またはその結合性断片、例えば、ピジリズマブ、ニボルマブ(Keytruda、以前のMDX−1106)、ペンブロリズマブ(Opdivo、以前のMK−3475)、MEDI0680(以前のAMP−514)、AMP−224、BMS−936558またはこれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。さらなる実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物は、PD−L1特異的抗体またはその結合性断片、例えば、BMS−936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(RG7446)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A、またはこれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0172】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物は、LAG3阻害剤、例えば、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS−986016、またはこれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0173】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、宿主細胞、または組成物は、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、CTLA4特異的抗体またはその結合性断片、例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、CTLA4−Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)、またはこれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0174】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、B7−H3特異的抗体またはその結合性断片、例えば、エノブリツズマブ(MGA271)、376.96、またはその両方と組み合わせて使用される。B7−H4抗体結合性断片は、例えば、Dangaj et al., Cancer Res. 73:4820, 2013に記載された、ならびに米国特許第9,574,000号およびPCT特許出願公開第WO2016/40724号および同第WO2013/025779号に記載されたscFvまたはその融合タンパク質であってもよい。
【0175】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、CD244の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0176】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、BLTA、HVEM、CD160、またはそれらの任意の組合せの阻害剤と組み合わせて使用される。抗CD−160抗体は、例えば、PCT特許出願公開第WO2010/084158号に記載されている。
【0177】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、TIM3の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0178】
ある特定の実施形態では、本開示の免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、Gal9の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0179】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、アデノシンシグナル伝達、例えば、デコイアデノシン受容体の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0180】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、A2aRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0181】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、KIRの阻害剤、例えば、リリルマブ(BMS−986015)と組み合わせて使用される。
【0182】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、阻害性サイトカイン(典型的には、TGFβ以外のサイトカイン)またはTreg発生もしくは活性の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0183】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、IDO阻害剤、例えば、レボ−1−メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liu et al., Blood 115:3520-30, 2010)、エブセレン(Terentis et al., Biochem. 49:591-600, 2010)、indoximod、NLG919(Mautino et al., American Association for Cancer Research 104th Annual Meeting 2013;Apr 6-10, 2013)、1−メチルトリプトファン(1−MT)−チラパザミン、またはそれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0184】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、アルギナーゼ阻害剤、例えば、N(オメガ)−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME),N−オメガ−ヒドロキシ−ノル−1−アルギニン(ノル−NOHA)、L−NOHA、2(S)−アミノ−6−ボロノヘキサン酸(ABH)、S−(2−ボロノエチル)−L−システイン(BEC)、またはこれらの任意の組合せと組み合わせて使用される。
【0185】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、VISTAの阻害剤、例えば、CA−170(Curis、Lexington、Mass.)と組み合わせて使用される。
【0186】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、TIGITの阻害剤、例えば、COM902(Compugen、Toronto、Ontario Canada)など、CD155の阻害剤、例えば、COM701(Compugen)など、またはその両方と組み合わせて使用される。
【0187】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、PVRIG、PVRL2、またはその両方の阻害剤と組み合わせて使用される。抗PVRIG抗体は、例えば、PCT特許出願公開第WO2016/134333号に記載されている。抗PVRL2抗体は、例えば、PCT特許出願公開第WO2017/021526号に記載されている。
【0188】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、LAIR1阻害剤と組み合わせて使用される。
【0189】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、CEACAM−1、CEACAM−3、CEACAM−5、またはそれらの任意の組合せの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0190】
ある特定の実施形態では、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、刺激性免疫チェックポイント分子の活性を増加させる(すなわち、アゴニストである)作用剤と組み合わせて使用される。例えば、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物は、CD137(4−1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX−40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383、またはMEDI0562など)、レナリドミド、ポマリドミド、CD27アゴニスト(例えば、CDX−1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80、またはCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP−870,893、rhuCD40L、またはSGN−40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL−2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT特許出願公開第WO2016/054638号に記載されるヒト化モノクローナル抗体など)、ICOSのアゴニスト(CD278)(例えば、GSK3359609、mAb 88.2、JTX−2011、Icos 145−1、Icos 314−8、またはそれらの任意の組合せなど)と組み合わせて使用され得る。
【0191】
本明細書において開示される実施形態のいずれにおいても、方法は、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物を、単独でまたはいずれかの組合せで、前述のいずれかを含む、刺激性免疫チェックポイント分子の1つまたは複数のアゴニストとともに投与することを含んでもよい。
【0192】
ある特定の実施形態では、併用療法は、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物および非炎症性固形腫瘍によって発現されるがん抗原に特異的である抗体またはその抗原結合断片、放射線処置、外科手術、化学療法剤、サイトカイン、RNAi、またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含む二次療法を含む。
【0193】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物を投与することを含み、放射線処置または外科手術を投与することをさらに含む。放射線療法は、例えば、X−線療法、例えば、ガンマ線照射、および放射線医薬品療法を含む。対象における所与のがんまたは非炎症型固形腫瘍の処置に適切な外科手術および外科的技法は、当業者には周知である。
【0194】
ある特定の実施形態では、併用療法の方法は、免疫グロブリン結合タンパク質、融合タンパク質、細胞、または組成物を投与することを含み、さらに、化学療法剤を投与することを含む。化学療法剤は、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA傷害剤、代謝拮抗薬(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(例えば、挿入剤)、およびDNA修復阻害剤を含むが、これらに限定されない。実例となる化学療法剤は、これらに限定されないが、以下の群を含む:代謝拮抗薬/抗がん剤、例えば、ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよび関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン));抗増殖性/抗有糸分裂剤、これには、天然産物、例えば、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)、微小管破壊剤、例えば、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾロミド(temozolamide)、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびエトポシド(VP16))が含まれる;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン;酵素(L−アスパラギンを全身代謝させ、独自のアスパラギンを合成する能力がない細胞を欠乏させる、L−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トリアゼン(trazene)−ダカルバジン(dacarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体(メトトレキサート);白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;分泌抑制剤(ブレフェルジン(breveldin));免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、テニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、およびプレニゾロン(prenisolone));成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、毒素、例えば、コレラ毒素、リシン、Pseudomonas外毒素、Bordetella pertussisアデニル酸シクラーゼ毒素、またはジフテリア毒素、およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチン破壊剤。
【0195】
サイトカインは、抗がん活性に対する宿主免疫応答を操作するために使用されている。例えば、Floros & Tarhini, Semin.Oncol.42(4):539-548, 2015を参照されたい。免疫抗がんまたは抗腫瘍応答の促進に有用なサイトカインとしては、例えば、単独での、または本開示の結合タンパク質もしくは結合タンパク質を発現する細胞との任意の組合せでの、IFN−α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−24、およびGM−CSFが挙げられる。
【実施例】
【0196】
(実施例1)
抗STIIモノクローナル抗体の開発および特徴付け
Strep(登録商標)−tag II(「STII」)−特異的mAbは、従来の免疫化およびハイブリドーマ方法を使用して開発された。手短に述べると、10〜12週例のメスのマウス(BALB/cもしくはCD1またはSwiss WebsterまたはB57BL/6)を、単一のSTIIペプチドで、またはKLHキャリアタンパク質にマレイミドカップリングしたSTIIペプチド配列(Ac−C(dPEG4)NWSHPQFEK−アミド(配列番号50)、H2N−CGNWSHPQFEK−アミド(配列番号51)、H2N−CGNWSHPQFEKGC−OH(配列番号52))の組合せで免疫処置することによって、抗STIIモノクローナル抗体ハイブリドーマのクローン4E2、5G2、および3E8を作成した。完全フロインドアジュバント/不完全フロインドアジュバントまたはAdjuplexアジュバントを用いる12週の追加免疫プロトコール後に、高力価マウスから脾臓細胞を単離し、FoxNY骨髄腫(BTX、Harvard Apparatus)に電気融合させた。ハイブリドーマが分泌するペプチド特異的抗体を識別し、ClonePix2(Molecular Devices)コロニーピッカーを使用して単離した。ピックアップしたクローン由来の抗体を、BSAキャリアタンパク質にマレイミドカップリングした、STIIペプチドを運ぶサイトメトリックビーズアレイを使用して、フローサイトメトリーによって、ペプチド結合について検証した。ClonePix2ピッカーを使用して、選択したハイブリドーマクローンをサブクローニングして、ペプチド結合について繰り返し検証した。IgGをコードするDNA配列を、各クローン(4E2、5G2、および3E8)に由来する複数のサブクローンから識別した。次いで、ハイブリドーマからアフィニティー精製したIgGを、in vitroおよびin vivoでさらに特徴付けた。
【0197】
最初に、1つ(CD19−1ST−4−1BBζ)、3つ(CD19−3ST−4−1BBζ)、または0個(CD19−4−1BBz)のSTIIタグを含有するCAR T細胞への特異的結合について、抗体をin vitroで検査した。別々の免疫処置から得たSTII mAbである4C4および3C9も検査した。CD19 Strep−タグCAR T細胞(1ST−4−1BBζおよび3ST−41BBζ)および対照細胞(CD19−4−1BBζ)を、STII特異的mAb(5G2、4E2、3E8、4C4、3C9)でまたは市販のSTII特異的抗体(Genscript)で、続いて、FITCコンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体で染色した。図1Aを参照されたい。これらの結果は、本開示のSTII mAbが、STIIタグ付きタンパク質、例えば、STIIタグ付きCAR T細胞を特異的に標的とすることを示す。
【0198】
マウスアイソタイピングキット(IsoStrip(商標)、Sigma−Aldrich)を使用して、5G2および4E2 mAbのアイソタイプを決定した。結果は、5G2 mAbがIgG2bであり、4E2 mAbがIgG2aであることを示す(図1B)。
【0199】
(実施例2)
STIIタグ付きCAR T細胞のin vivoでの標的化
STII特異的抗体は、STIIタグ付きCAR T細胞を用いる治療を改善するのに有用である場合がある。CAR T活性に関連する望ましくない副作用が、STII特異的抗体によって低減または逆転し得るかどうかを検査するために、in vivo B細胞枯渇アッセイを設計し(図2A)、ここで、CD45.2
+ C57/BL6マウスは、B細胞無形成症を誘導するために、亜致死線量照射(6Gy TBI)および5×10
6 CD45.1
+ STII−タグ付き(1STIIまたは3STII)抗CD19−CD28ζ_EGFRt CAR T細胞の注入を受容した。+37日目と+42日目に、マウスを、抗STII 5G2 mAbまたはセツキシマブ(STII−CAR形質導入マーカーEGFRtを標的とする)をマウス1頭当たり1mg、i.p.で処置した。図2Bに示すように、レシピエントマウスへの形質導入細胞の注入前に、マウスT細胞におけるEGFRtおよびSTII−CARの発現を、フローサイトメトリーを使用して形質導入の7日後に測定した。これらのデータは、1STII−CAR構築物と3STII−CAR構築物の両方が、T細胞によって発現されることを示す。
【0200】
次いで、マウスは、図2Aに示すスケジュールに従って、処置を受容した。健康な処置を受容したマウス由来のPBMC中のT細胞計数値およびB細胞計数値を、研究の経過中、フローサイトメトリーによってモニタリングした。照射および抗CD19−1STII CAR T細胞、続いて、抗体処置を受容したマウスにおけるB細胞回復を、図2Cに示す。照射および抗CD19−3STII CAR T細胞、続いて、抗体処置を受容したマウスにおけるB細胞回復を、図2Dに示す。
【0201】
手短に述べると、すべての群のマウスは、1日目に6Gy TBIを受容した。未処置群:マウスは照射のみが施され、いずれのT細胞の注入も施されなかった;mCD19 CAR群:マウスは、1日目に、mCD19−1STII−CD28zまたはmCD193STII−CD28z CAR T細胞を注入され、抗体処置を施されなかった;セツキシマブ群:マウスは、1日目に、mCD19II−1ST−CD28zまたは抗CD3STII−CD28z CAR T細胞が施され、35日目と42日目に、セツキシマブ(マウス1頭当たり1mg、i.p.)を受容した;5G2群:マウスは、1日目に、mCD19−1STII−CD28zまたはmCD19−3STII−CD28z CAR T細胞が施され、35日目と42日目に、抗STII 5G2 mAb(マウス1頭当たり1mg、i.p.)を受容した。
【0202】
結果は、抗STII mAbが、CAR−T細胞におけるサロゲートマーカーEGFRtを標的とする、mCD19−STIICAR−T細胞によって誘導されるB細胞無形成症を、セツキシマブと同程度に効率的にレスキューすることができることを実証する。
【0203】
(実施例3)
STIIタグ付きCAR T細胞の機能的刺激
抗STII mAbは、例えば、免疫治療としてのタグ付きCAR T細胞の患者への注入前に、タグ付きCAR T細胞を刺激するのに有用である場合もある。CD19−1STII CAR T細胞(CD28zまたは4−1BBz)を、抗原を発現するRaji細胞、抗体をコーティングしたマイクロビーズ(0.1μg、0.3μg、もしくは0.5μgの抗STII、または抗STIIと抗CD28をいずれも0.3μg)を使用して刺激した。対照は、抗原なしの培地のみ(Medium)におけるCD19−1STII CAR T細胞であった。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を使用して細胞を標識した。FACSによって増殖を測定した。図3Aに示すように、抗STIIでコーティングしたマイクロビーズによって増殖が刺激され、最も低いレベルの抗STII mAbが、培地のみと比較して、最も高い効果を有した。刺激されたCAR T細胞によるサイトカイン産生を測定した。図3Bに示すように、CAR T細胞によるIL−2およびIFN−γ産生は、抗STII mAbの存在量と共に増加した。最も高いレベルのサイトカイン産生は、抗STII/抗CD28でコーティングしたマイクロビーズを使用して刺激した細胞によるものであった。
【0204】
(実施例4)
STIIタグ付きCAR T細胞の拡大
タグ付き免疫治療用細胞をプライミングするための抗STII mAbの有用性をさらに調査するために、抗STII mAbのみまたは抗CD28抗体との組み合わせでコーティングしたマイクロビーズを使用して、CD8
+およびCD4
+STII含有CAR T細胞を3回刺激した。
【0205】
図4Aに示すように、各回の刺激によって、T細胞集団の実質的拡大が生じた。抗STIIと抗CD28の両方でコーティングしたマイクロビーズは、最も高い効果を有し、CD4
+CAR T細胞は、CD8
+細胞より拡大した。
【0206】
(実施例5)
刺激したSTIIタグ付きCAR T細胞の特徴付け
CAR T細胞(刺激前、または1回目、2回目、もしくは3回目の刺激後;実施例4を参照されたい)を、STIIおよびT細胞の成熟、活性化、または抑制(CD45RO、CD62L、CD28、CTLA4、およびPD1)のいくつかのマーカーの発現について調査した。各マーカーについて、抗体を使用して細胞を染色し、フローサイトメトリーを実施した。データを図4Bに示す。
【0207】
驚くべきことに、2回目および3回目の刺激後にも、刺激した細胞は、刺激前の細胞と比較して、すべてのマーカーについて同様かまたはさらに低減した発現を示した。これらのデータは、T細胞の抑制または消耗のリスクを増加させることなく、本開示の抗STII mAbを使用して、タグ付きCAR T細胞が、in vitroで効率的に拡大され、刺激され得ることを示す。
【0208】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を得ることができる。本明細書において言及する、および/または米国特許仮出願第62/555,017号に収載されている、および/または出願データシートに収載する、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公表文献の全ては、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。様々な特許、出願および公表文献の概念を利用するために必要に応じて実施形態の態様を修飾して、なおさらなる実施形態を得ることができる。
【0209】
上記の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、下記の特許請求の範囲において使用する用語は、本明細書および本特許請求の範囲において開示する特定の実施形態に、本特許請求の範囲を限定すると解釈すべきでなく、そのような特許請求の範囲に権利がある均等物の全範囲とともに全ての可能な実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。