(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021500872
(43)【公表日】20210114
(54)【発明の名称】腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20201211BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20201211BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20201211BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20201211BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201211BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20201211BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20201211BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20201211BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20201211BHJP
【FI】
   !C12N15/63 ZZNA
   !C12N1/15
   !C12N1/19
   !C12N1/21
   !C12N5/10
   !C12N7/01
   !C12N15/113 Z
   !A61K35/761
   !A61P35/00
   !A61P35/02
   !A61K48/00
   !A61K31/7105
   !A61K31/713
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】70
(21)【出願番号】2020518660
(86)(22)【出願日】20180703
(85)【翻訳文提出日】20200520
(86)【国際出願番号】CN2018094264
(87)【国際公開番号】WO2019062251
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】201710899291.6
(32)【優先日】20170928
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520106404
【氏名又は名称】ハンジョウ コンバート カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANGZHOU CONVERD CO.,LTD.
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
【住所又は居所原語表記】7th Floor,Building #4,2959 Yuhangtang Road,Yuhang District Hangzhou,Zhejiang 311121 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シォン,ジーポ
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジン
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ,ロンファ
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】ヂン,ユン
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】カン,サンマオ
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
(72)【発明者】
【氏名】フー,ファン
【住所又は居所】中華人民共和国 311121 ジェジアン ハンジョウ,ユハン ディストリクト,ユハンタン ロード 2959,ビルディング ナンバー4,セブンス フロア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
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4B065AB01
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4C086MA01
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4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB02
4C086ZB09
4C086ZB21
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムは、腫瘍細胞によるPDL1発現を阻害することができる外来性のshRNAのコード配列をインテグレーションされる。正常な初代細胞内でのウイルスの複製能力は腫瘍細胞内でのウイルスの複製能力よりもかなり低い。その上、発現されたshPDL1は、腫瘍細胞によって高発現されるPDL1蛋白質のレベルを有意に縮減し得る。それゆえに、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍溶解性殺傷効果および免疫細胞の抗腫瘍免疫刺激効果は相乗効果を生ずる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムが、腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができる外来性のshRNAのコード配列をインテグレーションされる、単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【請求項2】
外来性のshRNAのコード配列が配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【請求項3】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムがE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3領域の全ての遺伝子を欠失する、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【請求項4】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムがE1A遺伝子のコード配列を含み、好ましくは、E1A遺伝子のコード配列がCMVプロモーターのコントロール下にある、請求項1または3に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【請求項5】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスがアデノウイルス5型を遺伝子改変することによって得られる、請求項1に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【請求項6】
医薬組成物が、活性成分としての請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物が組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを5×10から5×1012vp/日の範囲である用量で含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが、腫瘍内注射によって投与または静脈内投与されるように製剤される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ベクターがプロモーターのコントロール下の外来性のshRNAのコード配列を含み、shRNAのコード配列が配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを調製するためのベクター。
【請求項10】
ベクターがpShuttleを基本バックボーンとして用い、基本バックボーンが、作動可能に連結された外来性のshRNAのコード配列の発現をコントロールするプロモーター、外来性のshRNAのコード配列、E1A遺伝子のコード配列の発現をコントロールするプロモーター、およびE1A遺伝子のコード配列を順に含む、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
請求項9または10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
宿主細胞がベクターを安定発現する、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
shRNAのコード配列が配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りであり、shRNAが腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができる、単離されたshRNA。
【請求項14】
腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの使用。
【請求項15】
腫瘍および/または癌が、肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含する、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与することを含む、腫瘍および/または癌を処置するための方法。
【請求項17】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが、5×10から5×1012vp/日の範囲である用量で、1日1回または2回、連続1から7日に渡って与えられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍内注射によって投与または静脈内投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
腫瘍および/または癌が、肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムがE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3領域の全ての遺伝子を欠失し、好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムがE1A遺伝子のコード配列を含み、より好ましくは、E1A遺伝子のコード配列がCMVプロモーターのコントロール下にある、単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に、特に、腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2013年1月に世界保健機関ウェブサイトで公開された人口の死因についての最新の報告に従うと、約760万人が2008年に癌で死んだ。これらは世界のトータルの死の13%を占めており、この数は毎年急速に増加している。この数は2030年までに1310万を超えるであろうということが見積もられている。中国では、悪性腫瘍の発生率は年あたり3%から5%の率で増大している。2002年に、中国における悪性腫瘍の新たなケースの数は219万に達した。2020年までに、新たな患者数は毎年300万を超えるであろう。癌は世界の抜きん出た死因の1つになっている。その上、腫瘍の処置は今日の医療分野の重点かつ難点になっており、増々多くの注目を受けている。
【0003】
腫瘍発生は多因子かつ多ステップのプロセスである。主な理由は、細胞が外的な発癌性因子(物理的な放射線、化学物質、およびウイルスなどを包含する)によって刺激され、細胞が損傷し、細胞内のDNA(デオキシリボ核酸)などの遺伝子材料が変化を生じ、さらに細胞内のシグナル変換経路の異常および乱れを引き起こし、細胞が狂った増殖を示し、アポトーシスに抵抗し、分化を停止し、組織侵入および移動の能力を備え、最終的に、人体の重要な臓器の機能に影響して生命を脅かすことである。今のところ、腫瘍の主な処置方法は外科治療、放射線治療、化学療法、生物学的治療、および免疫療法を包含する。これらの方法はいくらかの程度までは腫瘍をコントロールすることを助け得るが、それらはなお問題を根本的には解決し得ない。
【0004】
腫瘍溶解性ウイルス治療もまた生物学的治療の分野に属する。腫瘍溶解性ウイルスの研究は1950年代まで遡り得る。当時、ある子宮頚癌患者が狂犬病ウイルスに感染した後に腫瘍退縮を有することが見いだされた。いくつかの癌患者では腫瘍はそれらがウイルスに感染した後で自然寛解したという現象を受けて、腫瘍溶解性ウイルスの研究の第一波の盛り上がりはここから始まった。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に感染した後に標的細胞内で選択的に複製し、最終的には腫瘍細胞が溶解し死ぬことを引き起こし得るウイルスのクラスを言う。この型のウイルスは、それらの特異性に依拠して腫瘍細胞内で複製して腫瘍細胞を溶解し、細胞溶解後に放出されるウイルスはさらに周辺の腫瘍細胞に感染し得る。同時に、それらは、正常細胞および組織には損傷効果を有さないかまたは小さめに影響する。腫瘍溶解性ウイルスは通常は2つのクラスに分けられ得る。1つのクラスは野生型ウイルスおよび天然に変異した弱毒ウイルス株であり、かかるウイルス、例えばレオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、および自律複製するパルボウイルスなどは、ある種の腫瘍細胞に対する親和性を天然に有する。これらのウイルスはある種の腫瘍細胞内で増幅し細胞を溶解し得、天然の特異的な腫瘍溶解活性を有する。もう1つのクラスは、ウイルスゲノムが遺伝子操作された後にのみ腫瘍細胞内で複製し得るウイルスである。今のところ、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、およびヒトワクシニアウイルスが遺伝子操作されている。腫瘍溶解性ウイルスとしてのアデノウイルスの研究は相対的に早く、腫瘍溶解メカニズムは相対的にはっきりしている。さらにその上、アデノウイルス5型の研究はアデノウイルスのなかでもよりはっきりしている。アデノウイルスが発見されて間もなく、それは頭頸部悪性物を処置するために用いられた。アデノウイルスの注射後に、腫瘍は異なる程度に縮小したが、腫瘍は処置後に再発しがちであり、効果は維持することが困難であった。1996年までに、ビショフらは、E1Bの一部を除去された組換え体アデノウイルスOnyx−015がp53異常の腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍殺傷を引き起こし得るということを最初に報告した。腫瘍溶解性アデノウイルス研究はもう一度広範な注目を受けており、急速に発展している。よって、多くの新たな型の腫瘍溶解性アデノウイルスが現れている。2006年に、中国は、上海三維生物技術有限公司によって開発されたヒト組換え体アデノウイルス5型H101(E1B55KおよびE3遺伝子を削除された腫瘍溶解性アデノウイルス)を承認した(NDA:国薬准字S20060027)。このヒト組換え体アデノウイルスはp53変異体腫瘍細胞内で特異的に複製し、腫瘍細胞を溶解し得る。腫瘍溶解性アデノウイルスは日増しに悪性腫瘍の処置のための新たな方法になっている。
【0005】
加えて、腫瘍免疫療法もまた腫瘍との戦いにおける非常に重要な手段である。それは主に抗体治療、T細胞療法、および腫瘍ワクチンを包含する。抗体は癌の新たな創薬標的と呼ばれる。それらは、腫瘍の周りの免疫細胞を標的化することによってエフェクター細胞を活性することを助け、より有効な抗腫瘍免疫を促進し得る。それらは、補体依存的な細胞傷害性によってまたは腫瘍細胞アポトーシスを誘導することによってもまた腫瘍細胞を殺傷し得る。T細胞療法は、インビトロで拡大培養された腫瘍特異的な自家T細胞(例えばCAR−T)を体に静脈内投与する方法である。腫瘍ワクチン療法は、体の免疫系を制御することによって特異的抗体およびエフェクターT細胞を産生する方法であり、これは特異的能動免疫療法ともまた呼ばれる。大量の臨床実験が、腫瘍免疫療法は腫瘍の処置に非常に有益な効果を有するということを証明しているが、腫瘍免疫療法の最も困難な問題は腫瘍の逃避である。腫瘍の免疫逃避メカニズムと腫瘍に対する体の免疫応答との間には非常に込み入った関係性がある。腫瘍免疫療法のプロセスでは、腫瘍特異的なCD8T細胞が早い段階で活性化され、腫瘍がより後の段階まで成長するとそれらの殺傷機能を失う。通常は、第1のシグナルに加えて、T細胞活性化は一連の共刺激分子が第2のシグナルを提供することを要求し、それによって初めてT細胞が生理的な活性化の閾値に達し、正常な免疫応答を生ずるようにさせることができる。第1のシグナルは、APCによって提示されるMHC−抗原ペプチドを介して抗原特異的なT細胞に提供される。共刺激分子によって提供される第2のシグナルが不在である場合には、それはT細胞の不応性または特異的な免疫寛容性に、およびアポトーシスにさえも至るであろう。よって、正および負の共刺激シグナルとそれらの間のバランスとの制御は、体の免疫応答のプロセス全体において重要な制御的役割を発揮する。
【0006】
腫瘍および/または癌の免疫療法では、より有効な処置レジメンおよびそのために開発された医薬の必要がなおある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
当分野の上述の問題を解決するために、本開示は、腫瘍および/または癌の処置のための医薬のための単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス、医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。
【0008】
具体的には、本開示は次を提供する。
(1) 単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムは、腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができる外来性のshRNAのコード配列をインテグレーションされる。
(2) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、外来性のshRNAのコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである。
(3) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3領域の全ての遺伝子を欠失する。
(4) (1)または(3)に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1A遺伝子のコード配列を含み、好ましくは、E1A遺伝子のコード配列はCMVプロモーターのコントロール下にある。
(5) (1)に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスはアデノウイルス5型を遺伝子改変することによって得られる。
(6) 医薬組成物であって、医薬組成物は、活性成分としての(1)から(5)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む。
(7) (6)に従う医薬組成物であって、医薬組成物は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを5×10から5×1012vp/日の範囲である用量で含む。
(8) (6)に従う医薬組成物であって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与されるように製剤される。
(9) (1)から(5)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを調製するためのベクターであって、ベクターはプロモーターのコントロール下の外来性のshRNAのコード配列を含有し、shRNAのコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである。
(10) (9)に従うベクターであって、ベクターはpShuttleを基本バックボーンとして用い、基本バックボーンは、作動可能に連結された外来性のshRNAのコード配列の発現をコントロールするプロモーター、外来性のshRNAのコード配列、E1A遺伝子のコード配列の発現をコントロールするプロモーター、およびE1A遺伝子のコード配列を順に含む。
(11) (9)または(10)に従うベクターを含む宿主細胞。
(12) (11)に従う宿主細胞であって、宿主細胞はベクターを安定発現する。
(13) 単離されたshRNAであって、shRNAのコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りであり、shRNAは腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができる。
(14) 腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、(1)から(5)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの使用。
(15) (14)に従う使用であって、腫瘍および/または癌は肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含する。
(16) 腫瘍および/または癌を処置するための方法であって、(1)から(5)のいずれか1つに従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与することを含む。
(17) (16)に従う方法であって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、5×10から5×1012vp/日の範囲である用量で、1日1回または2回、連続1から7日に渡って与えられる。
(18) (16)に従う方法であって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与される。
(19) (16)に従う方法であって、腫瘍および/または癌は肺癌、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含する。
(20) 単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであって、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3遺伝子領域の全ての遺伝子を欠失し、好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1A遺伝子のコード配列を含み、より好ましくは、E1A遺伝子のコード配列はCMVプロモーターのコントロール下にある。
【0009】
本発明は先行技術と比較して次の利点および有益な効果を有する。
【0010】
本発明は、E1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、および全てのE3遺伝子のコード領域を腫瘍溶解性アデノウイルスから欠失させることと、同時に、腫瘍溶解性アデノウイルスが外来性のshRNAのコード配列を保有するようにさせ、それによって、もたらされる組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞内で選択的に複製しかつ腫瘍細胞によるPDL1発現を阻害することができるshRNAを発現するようにさせることとを最初に提案する。この概念によって提供される腫瘍溶解性アデノウイルスは優れた腫瘍殺傷効果を有し、正常細胞内でのその複製能力は腫瘍細胞内でのものよりもかなり低く、その結果、正常細胞に対するその毒性は低く、その安全性は改善された。加えて、腫瘍細胞によるPDL1蛋白質の発現レベルはウイルスが発現するshRNAによって顕著に縮減され得、よって、Tリンパ球に対する腫瘍細胞の免疫抑制は縮減された。結果として、TおよびNKリンパ球の抗腫瘍免疫殺傷効果は強化された。本発明は、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍溶解殺傷効果とTまたはNKリンパ球の抗腫瘍免疫刺激効果との相乗効果が、腫瘍溶解性アデノウイルスにshRNAコード配列をインテグレーションすることによって達成され得るということをもまた見いだした。
【0011】
加えて、本発明の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは腫瘍細胞内で選択的に複製し、同時に、腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができるshRNAを発現するので、免疫細胞(Tリンパ球およびNK細胞を包含する)の抗腫瘍免疫効果は強化された。よって、体の抗腫瘍免疫応答は相乗的に刺激され得、それゆえに、本発明の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスはNK細胞と共に用いられ得る。本発明の概念に基づいて提供される医薬組成物および方法は、腫瘍細胞内で選択的に複製し、および腫瘍細胞を殺傷し、さらに体の爾後の免疫応答を引き起こす組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの役割を充分に発揮し、同時に、腫瘍細胞を殺傷するNK細胞の機能をもまた充分に発揮する。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞内で選択的に複製し得るという利点もまた巧妙に利用され、その結果、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを含有する腫瘍細胞がNK細胞の特異的標的になるようにした。これは、さらに、腫瘍殺傷機能の改善された相乗効果をもたらす。
【0012】
さらにその上、本開示に従う研究によって、組み合わせ治療にとって最も良好な相乗効果を達成し、同時に相互の制約を回避するような、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞のそれぞれの用量レベル、それらの投与順序、および投与間隔が提供され、それによって腫瘍および/または癌のための有効な処置を提供した。
【0013】
定義
本願において用いられる用語「腫瘍」、「癌」、「腫瘍細胞」、および「癌細胞」は、当分野において通常認識される意味を包摂する。
本願において用いられる用語「腫瘍溶解性ウイルス」は、腫瘍細胞内で選択的に複製し、腫瘍細胞を溶解し得るウイルスを言う。
本願において用いられる用語「治療有効量」は、検出測定可能な治療もしくは阻害効果を見せるかまたは抗腫瘍応答を誘起するために有用な機能性薬剤または医薬組成物の量を言う。効果は当分野において公知のいずれかのアッセイ方法によって検出測定され得る。
本願において用いられる用語「投与する」または「投与」は、化合物、複合物、または組成物(ウイルスおよび細胞を包含する)を対象に提供することを言う。
本願において用いられる用語「患者」はヒトまたは非ヒト生物を言う。それゆえに、本願に記載される方法および組成物はヒトおよび獣類の疾患両方に適用可能である。ある種の実施形態では、患者は腫瘍を有する。いくつかのケースでは、患者は同時に1つ以上の型の癌に罹患し得る。
本願において用いられる用語「相乗効果」は、それらの個々の効果の合計よりも多大な効果を生ずる2つ以上の薬剤から生起する効果を言う。
本願において用いられる用語「pfu」または「プラーク形成単位」はプラークを形成するウイルス数を言う。
本願において用いられる用語「VP」はウイルス粒子数を言う。
本願において用いられる用語「VP/kg」は患者の体重のキログラムあたりのウイルス粒子数を言う。
本願において用いられる用語「TCID50」は50%培養組織感染量を表し、培養細胞の50%において感染に至り、細胞変性効果を引き起こすウイルス用量を言う。
本願において用いられる用語「MOI」または「多重感染度」は、ウイルス数および細胞数の間の比、すなわち細胞あたりのウイルス感染を開始するために用いられるウイルス粒子数を言う。MOI=pfu/細胞数、すなわち細胞数×MOI=トータルのPFU。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、PCRによって増幅されたアデノウイルス5型のE1A遺伝子のゲル電気泳動像を示している。レーンMはDNA分子量マーカーであり、レーン1はH101ゲノムDNA鋳型から増幅されるPCR産物である。
【図2】図2は、pShuttle−E1Aプラスミドの陽性クローンのPCRスクリーニング結果を示している。レーンMはDNA分子量マーカーであり、レーン1〜3は候補クローンである。
【図3】図3は、pShuttle−E1Aプラスミドの構築プロセスおよび構築されたプラスミドのマップを示している。
【図4】図4は、pShuttle−E1AプラスミドからPCRによって増幅されるE1A発現カセットの略図(左)およびゲル電気泳動像(右)を示している。レーンMはDNA分子量マーカーであり、レーン1〜2はPCR産物である。
【図5】図5はpShuttle−MCS−E1Aプラスミドの候補のPCRスクリーニング結果を示している。レーンMは分子量マーカーであり、レーン1〜13は候補プラスミドであり、レーンNCはPCR系の負のコントロールであり(すなわち、水を鋳型として用いることによって増幅されたPCR産物)、レーンPCはPCR系の正のコントロールである(すなわち、鋳型は目当ての断片を含有するpShuttle−E1AプラスミドDNAである)。
【図6】図6は、BglIIによる消化後のpShuttle−MCS−E1Aプラスミドの候補の鑑定結果を示している。レーンMは分子量マーカーであり、サンプル1〜3は候補プラスミドであり、各サンプルは2つのレーンを有する。レーンNは未消化の候補プラスミドであり、レーンBはBglIIによる消化後の候補プラスミドである。
【図7】図7は、pShuttle−MCS−E1Aプラスミドの構築プロセスおよび構築されたプラスミドのマップを示している。
【図8】図8は、U251およびH460細胞のヒトPDL1のmRNAに対する本開示の実施形態に従う3種類のshPDL1の阻害効果を示している。横軸は、U251およびH460細胞が4種類のshRNAによって処置された24hおよび48h後に採集された細胞サンプルの4つの群を表し、縦軸は、細胞がコントロールshRNAによって処置された後の細胞のPDL1のmRNAの発現レベルに対して、細胞が各shRNAによって処置された後の細胞のPDL1のmRNAの発現レベルの比を表す。
【図9】図9は、293T細胞の外来性のhPDL1発現に対する本開示の実施形態に従う3種類のshPDL1の阻害効果を示している。左図はウエスタンブロットの結果であり、これは、異なるshPDL1による処置後の細胞サンプルのhPDL1(FLAGタグを包含する)発現の変化および細胞の細胞内蛋白質参照β−アクチンの発現を示している。右図は、ウエスタンブロットの結果に基づいて、細胞内蛋白質参照β−アクチンを正規化参照として用いてhPDL1バンドのグレースケールスキャン値を示している。横軸は、サンプルが異なるshPDL1によって処置された後の293細胞サンプルの群を表す。「コントロール」は、hPDL1(FLAGタグを含有する)を発現するpcDNA3.3−hPDL1−FLAGのみをトランスフェクションしたコントロール群を指す。縦軸はβ−アクチンによって正規化した標的蛋白質のグレースケールスキャン値である。
【図10】図10は、pShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドの構築プロセスおよび構築されたプラスミドのマップを示している。
【図11】図11は消化後のpShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドの鑑定結果を示している。レーンMは分子量マーカーであり、レーンCはKpnI/HindIIIによる消化後のコントロールプラスミド(pShuttle−MCS−E1A)であり、レーン1〜7はKpnI/HindIIIによる消化後の候補プラスミドである。
【図12】図12は、BJ5183細菌におけるpShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1AプラスミドおよびpAdEasy−1の間の相同組換えプロセスの略図を示している。
【図13】図13は、pAdEasy−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドの構築過程におけるpShuttle関連プラスミドおよびpAdEasy−1の間の相同組換えのプロセスの略図を示している。
【図14】図14は、PacIによる消化後の構築された陽性のpAdEasy−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドの鑑定結果を示している。レーンMは分子量マーカーであり、レーン1〜8は異なるプラスミドのPacI消化産物である。具体的には、レーン1はC−4.5KのPacI消化産物であり、レーン2は1−4.5KのPacI消化産物であり、レーン3はC−3KのPacI消化産物であり、レーン4は1−3KのPacI消化産物であり、レーン5は2−4.5KのPacI消化産物であり、レーン6は3−4.5KのPacI消化産物であり、レーン7は2−3KのPacI消化産物であり、レーン8は3−3KのPacI消化産物である。
【図15】図15は、AD293細胞におけるそれぞれpAdEasy−U6−shPDL1−CMV−E1AプラスミドおよびpAdEasy−CMV−E1Aコントロールプラスミドからのウイルスパッケージングのプロセスの略図である。
【図16】図16は本開示の実施形態に従う12ウェルプレートのサンプル配置の略図を示している。図に示されている通り、細胞をそれぞれOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、OAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K)、およびコントロール腫瘍溶解性ウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって指示されているMOI値で処置した。「NC」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を意味する。
【図17】図17は、例1で本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))の異なる細胞内での複製の比較結果を示している。OAd−C−4.5K(C−4.5K)は系のコントロールウイルスとして用いた。横軸は腫瘍溶解性ウイルスの異なる群を表し、縦軸は細胞のGAPDH遺伝子を正規化参照として用いた腫瘍溶解性アデノウイルス特異的遺伝子E1Aのコピー数の倍数を表す。
【図18】図18は、例2の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのU251細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸は細胞がウイルスによって処置された後の細胞成長の阻害率(%)を表す。左図は48時間の実験の結果を示し、右図は72時間の実験の結果を示す。「***」はp<0.001を指示する。
【図19】図19は、例2の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのA549細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸は細胞がウイルスによって処置された後の細胞成長の阻害率(%)を表す。左図は48時間の実験の結果を示し、右図は72時間の実験の結果を示す。
【図20】図20は、例2の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのHela細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸は細胞がウイルスによって処置された後の細胞成長の阻害率(%)を表す。左図は48時間の実験の結果を示し、右図は72時間の実験の結果を示す。
【図21】図21は、例2の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101の異なる細胞に対するIC50(72h)用量の比較結果を示している。横軸は異なる種類の腫瘍細胞群を表し、縦軸は、細胞が72時間に渡ってウイルスとインキュベーションされたときに対応する腫瘍細胞の50%を殺傷し得るウイルス数(単位:MOI)を表す。
【図22】図22は、例3の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101の、A549/hPD−L1−FLAG細胞株の過剰発現されたhPD−L1に対する阻害効果を示している。上図はウエスタンブロットの結果を示しており、これは、異なるウイルスによる処置後の細胞サンプルのhPDL1(FLAGタグを包含する)の発現変化および細胞の細胞内蛋白質参照β−アクチンの発現を指示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。下図は、ウエスタンブロットの結果に基づいて、細胞内蛋白質参照β−アクチンを正規化参照として用いて得られたhPDL1バンドのグレースケールスキャン値を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸はグレースケールスキャン値を表す。
【図23】図23は、例3の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、ならびにコントロール群H101のHela/hPD−L1−FLAG細胞株の過剰発現されたhPD−L1に対する阻害効果を示している。上図はウエスタンブロットの結果を示しており、これは、異なるウイルスによる処置後の細胞サンプルのhPDL1(FLAGタグを包含する)の発現変化および細胞の細胞内蛋白質参照β−アクチンの発現を指示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。下図は、ウエスタンブロットの結果に基づいて、細胞内蛋白質参照β−アクチンを正規化参照として用いて得られたhPDL1バンドのグレースケールスキャン値を示している。
【図24】図24は、細胞内のp53およびRbシグナル伝達経路の略図を示している。
【図25】図25は、例4の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのHCT116細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸はウイルスによる処置後の細胞成長の阻害率(%)を表す。図Aは48時間の実験の結果を示し、図Bは72時間の実験の結果を示す。
【図26】図26は、例4の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのPANC1細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸はウイルスによる処置後の細胞成長の阻害率(%)を表す。図Aは48時間の実験の結果を示し、図Bは72時間の実験の結果を示す。
【図27】図27は、例4の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのHT29細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸はウイルスによる処置後の細胞成長の阻害率(%)を表す。図Aは48時間の実験の結果を示し、図Bは72時間の実験の結果を示す。
【図28】図28は、例4の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101およびコントロール群パクリタキセルのH460細胞に対する殺傷効果を示している。横軸は細胞を処置するために用いた異なるウイルス感染用量(単位:MOI)を表し、縦軸はウイルスによる処置後の細胞成長の阻害率(%)を表す。図Aは48時間の実験の結果を示し、図Bは72時間の実験の結果を示す。
【図29】図29は、例4の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(OAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)、OAd−shPDL1#2−4.5K(2−4.5K)、およびOAd−shPDL1#3−4.5K(3−4.5K))、および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)、ならびにコントロール群H101の異なる細胞に対するIC50(72h)用量の比較結果を示している。横軸は異なる型の腫瘍細胞群を表し、縦軸は、細胞が72時間に渡ってウイルスとインキュベーションされたときに対応する腫瘍細胞の50%を殺傷し得るウイルス数(単位:MOI)を表す。
【図30】図30は、例5の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)のヒト乳癌細胞MDA−MB−231のhPDL1発現に対する阻害効果を示している。図Aはウエスタンブロットの結果を示しており、これは、異なるウイルスによる処置後の細胞サンプルのhPDL1の発現変化および細胞の細胞内蛋白質参照β−アクチンの発現を指示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。図Bは、ウエスタンブロットの結果に基づいて、細胞内蛋白質参照β−アクチンを正規化参照として用いたhPDL1バンドのグレースケールスキャン値を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸はグレースケールスキャン値である。
【図31】図31は、例5の、細胞が本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された後の、FACSによって検出測定された細胞膜上のhPDL1を発現するMDA−MB−231腫瘍細胞のパーセンテージ変化を示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。横軸は異なる群を表し、縦軸はhPDL1を発現する細胞のパーセンテージ(%)を表す。
【図32】図32は、例5の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)による処置後の、FACSによって検出測定された細胞膜上のhPDL1を発現するHCT116腫瘍細胞のパーセンテージ変化を示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。横軸は異なる群を表し、縦軸はhPDL1を発現する細胞のパーセンテージ(%)を表す。
【図33】図33は、例5の、BALB/Cヌードマウスの背中に皮下接種されたHCT116細胞のhPDL1発現に対する、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)の阻害効果を示している。これはウエスタンブロットによって検出測定されている。ウエスタンブロットの結果が図に示されており、これは異なるウイルスによる処置後の細胞サンプルのhPDL1の発現変化および細胞の細胞内蛋白質参照β−アクチンの発現を指示している。「コントロール」はいずれかのウイルス処置なしのブランクコントロール群を言う。図では、各群について3つのローディングウェルがあり、各ローディングウェルのサンプルはそれぞれ同じ群の3匹の異なるヌードマウスからである。
【図34】図34は、図33のウエスタンブロットの結果に基いて、細胞内蛋白質参照β−アクチンを正規化参照として用いて得られたhPDL1バンドのグレースケールスキャン値を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸はグレースケールスキャン値を表す。
【図35】図35は、例6の、HCT116細胞に対する本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)(MOI=1)およびNK細胞(E:T=5:1)の組み合わせの相乗的な殺傷効果を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値を表す。
【図36】図36は、例6の、HCT116細胞に対する本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)(MOI=3およびNK細胞(E:T=5:1)の組み合わせの相乗的な殺傷効果を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値を表す。
【図37】図37は、例6の、A549細胞に対する本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)(MOI=30)およびNK細胞(E:T=5:1)の組み合わせの相乗的な殺傷効果を示している。横軸は異なる群を表し、縦軸は対応する阻害率のパーセンテージ値を表す。
【図38】図38は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116腫瘍を持つNOD−SCID免疫不全マウスの腫瘍体積の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は腫瘍体積(mm)を表す。
【図39】図39は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116腫瘍を持つNOD−SCID免疫不全マウスのT/Cの変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸はT/C(%)を表す。
【図40】図40は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116腫瘍を持つNOD−SCID免疫不全マウスの体重の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は体重(g)を表す。
【図41】図41は例7の屠殺後のマウスから取られた腫瘍の写真を示している。マウスはHCT116腫瘍を持つNOD−SCID免疫不全マウスであり、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された。
【図42】図42は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスの腫瘍体積の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は腫瘍体積(mm)を表す。
【図43】図43は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスにおける腫瘍の相対的な増殖率(T/C)の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸はT/C(%)を表す。
【図44】図44は、例7の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスの体重の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は体重(g)を表す。
【図45】図45は例7の屠殺後のマウスから取られた腫瘍の写真を示す。マウスはHCT116を持つBALB/Cヌードマウスであり、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された。
【図46】図46は、例8の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスの腫瘍体積の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は腫瘍体積(mm)を表す。
【図47】図47は、例8の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスの相対的な増殖率(T/C)の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸はT/C(%)を表す。
【図48】図48は、例8の、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置されたHCT116を持つBALB/Cヌードマウスの体重の変化を示している。横軸上の灰色の三角は投与の時点を指示し、横軸は投与後の時間(日)を表し、縦軸は体重(g)を表す。
【図49】図49は、例8の、屠殺したマウスから取られた腫瘍の写真(図A)および各群の腫瘍重量の統計結果(図B)を示している。マウスはHCT116を持つBALB/Cヌードマウスであり、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された。図Bでは、横軸は異なる群を表し、縦軸は腫瘍重量(g)を表す。
【図50】図50は、例8でFACSによって測定されたマウスの各群の腫瘍、血液、および脾臓のNK細胞数の正規化された統計結果を示している。マウスはHCT116を持つBALB/Cヌードマウスであり、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された。図Aは腫瘍の結果を示し、図Bは血液の結果を示し、図Cは脾臓の結果を示す。各グラフの横軸は実験で設けた異なる群を表し、縦軸は正規化後のNK細胞数を表す。
【図51】図51は、例8でFACSによって測定されたマウスの各群の腫瘍、血液、および脾臓のT細胞数の正規化された統計結果を示している。マウスはHCT116を持つBALB/Cヌードマウスであり、本開示に従って構築された腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1#1−4.5K(1−4.5K)および系のコントロールウイルスOAd−C−4.5K(C−4.5K)によって処置された。図Aは腫瘍の結果を示し、図Bは血液の結果を示し、図Cは脾臓の結果を示す。各グラフの横軸は実験で設けた異なる群を表し、縦軸は正規化後のT細胞数を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、付随する図面を参照して好ましい実施形態の次の詳細な記載によってさらに説明される。ただし、これは本発明を限定するわけではない。種々の改変または改善が本開示の範囲から外れることなしに然るべくなされ得、よって、これらは本開示の範囲内であるということは当業者には明らかであろう。
【0016】
本開示では、用語「腫瘍」、「癌」、「腫瘍細胞」、および「癌細胞」は当分野において通常認識される意味を包摂する。
【0017】
人体は、呼吸器系、循環器系、消化器系などを包含する十大システムを含む複雑なシステムである。これらのシステムは協調連携し、これが全ての種類の込み入った生命活動の正常な機能を許す。腫瘍が生ずるときには、人体は複数の密接に相関する免疫効果またはメカニズムによって抗腫瘍応答を発生し、細胞媒介性免疫および液性免疫を包含し、種々の免疫エフェクター分子およびエフェクター細胞が関わる。通常は、細胞媒介性免疫は抗腫瘍プロセスにおいて主導的な役割を発揮し、液性免疫はいくつかの状況では相乗的な役割を発揮するということが信じられている。本開示は、腫瘍細胞内で選択的に複製し腫瘍細胞を殺傷する腫瘍溶解性アデノウイルスの特徴を利用することと、同時に、腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞によるPDL1発現を阻害することができる外来性のshRNAのコード配列を保有するようにさせ、それによって組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍を選択的に溶解し体の抗腫瘍免疫効果を強化する役割を相乗的に発揮することを可能にすることとを提案する。本概念に基づいて、本開示の発明者は、実験研究および理論的検討から、上の相乗効果が、腫瘍溶解性アデノウイルスのE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、および全てのE3遺伝子のコード領域を欠失させることと、外来性のshRNAコード配列をそのゲノムにインテグレーションすることとによって達成され得るということを見いだした。
【0018】
加えて、アデノウイルスなどの多くのDNAウイルスはホストの細胞周期を変調させ得る。これは、主に、ウイルスが、宿主細胞の細胞周期制御蛋白質に作用して静止期細胞が細胞周期に入ることを許す蛋白質を産生するからであり、それによってウイルスDNAの複製を容易化する。異なるウイルスが異なるメカニズムで細胞周期に影響し、アデノウイルスは主にRbおよびp53細胞シグナル伝達経路(図24)を介して宿主細胞周期に干渉する(Chen Jianfa et al.,Research Progress of Oncolytic Adenovirus,Tumor Prevention and Cure Research,2004,31(4):243−245参照)。腫瘍溶解性アデノウイルスの腫瘍溶解機能は、この原理に基づいて宿主細胞のサイクリンの発現を変調させることによって達成される。アデノウイルスのゲノムは制御機能を有する4つの初期転写単位(すなわち、E1、E2、E3、およびE4)と1つの後期転写単位とを含む。図24に示されている通り、E1は2つの部分E1AおよびE1Bに分けられる。E1AはRbに結合し、遊離のE2Fを放出し、細胞はG1期からS期に入る。アデノウイルスは2つの蛋白質E1B55kおよびE1B19kをコードおよび産生し、それぞれp53およびBaxを阻害する。その結果、宿主細胞の分裂および増殖はp53細胞シグナル伝達経路によって阻害されず、大量の宿主細胞が静止期から分裂期に入る。結果として、アデノウイルスは大量に複製および繁殖する。しかしながら、E1A遺伝子が除去されたアデノウイルスは、宿主細胞に感染したときに遊離のE2Fを放出するためのE1A蛋白質をコードし得ず、G1期細胞はS期に入り得ない。類似に、E1B遺伝子が除去されたアデノウイルスはE1A蛋白質を産生して宿主細胞がG1期からS期に入ることを許し得るものの、分裂周期に入る細胞はp53シグナル伝達経路を介してアポトーシスを生ずるか、または分裂阻害されるであろう。よって、E1AまたはE1B遺伝子を欠失するアデノウイルスは正常なRbおよびp53細胞シグナル伝達経路を有する宿主細胞内では複製および増殖し得ず、異常なRbまたはp53シグナル伝達経路を有する腫瘍細胞内でのみ増殖し得る。初期の腫瘍溶解性アデノウイルスOnyx−015およびH101は、両方とも、アデノウイルスのE1B55K遺伝子の削除(E3領域の配列の部分的なまたは完全な削除)によってp53変異体腫瘍細胞内でのそれらの選択的複製を達成する。かかるウイルスが正常な宿主細胞に感染したときには、E1A蛋白質をコードおよび産生してRb−E2F結合体が分離して遊離のE2Fを放出するようにさせ得、感染した細胞がG1期からS期に入る場合であっても、細胞内のアデノウイルスは有効に複製し得ない。なぜなら、p53抑制蛋白質E1B55Kがコードおよび産生され得ず、分裂期に入る感染した細胞はp53シグナル伝達経路を介する分裂阻害またはアポトーシスを生じるからである。異常なp53シグナル伝達経路を有する細胞では、分裂段階に入る感染した細胞はp53シグナル伝達経路を介する分裂阻害またはアポトーシスを生じないであろう。その結果、細胞は大量に増殖し、細胞内のアデノウイルスは大量に複製して細胞溶解を引き起こす。しかしながら、後に、実験は、正常細胞内の前記2種類のウイルスの選択的複製が予想ほど理想的ではないということを証明した。理由は、それらがE1B55Kのみを削除されており、E1B19Kの正常な発現をなお保持し、図24に従うと、E1B55KおよびE1B19Kはp53シグナル伝達経路において類似の効果を行使するということであり得る。よって、E1B55Kの削除は野生型p53の機能を阻害し得ないが、E1B19K蛋白質の正常な発現はp53の下流のBaxの機能をなお阻害し得、その結果、腫瘍溶解性アデノウイルスは正常細胞内でもまた複製し得る。本開示に記載される腫瘍溶解性アデノウイルスでは、E3領域の削除に加えて、E1B55KおよびE1B19K遺伝子が両方とも同時に削除されており、その結果、ウイルスは先行技術の腫瘍溶解性アデノウイルスと比較して腫瘍細胞内でのより良好な選択的複製、正常細胞内でのより低い複製能力、および正常細胞に対するより良好な安全性を有した。
【0019】
他方で、PD−L1(PDL1またはB7−H1ともまた呼ばれる)はB7ファミリーに属し、IgVおよびIgC様領域、膜貫通領域、ならびに細胞質領域を有する。この分子は広い組織発現スペクトルといくつかの腫瘍細胞株における高発現とを有する。多くの研究は、分子が腫瘍の免疫逃避メカニズムに関係しているということを示した。腫瘍の周りの微小環境は腫瘍細胞上のPD−L1の広い発現を誘導し得、発現されたPD−L1は腫瘍の発生および成長にとって有利である。腫瘍細胞および腫瘍微小環境中のAPCによって発現されたPD−L1はT細胞上の受容体PD1と相互作用して、PD−1/PD−L1シグナル伝達経路によって腫瘍抗原特異的T細胞の活性化を抑制し、T細胞によって媒介される腫瘍免疫応答を下方制御する。加えて、PD−L1/PD−1シグナル伝達経路をブロックすることが、腫瘍抗原特異的T細胞の増殖を促進し、浸潤CD8T細胞によるIFN−ガンマの分泌を上方制御し、腫瘍成長を有効に阻害し得るということを示す研究がある。これは、PD−1/PD−L1シグナル伝達経路をブロックすることが、免疫応答を誘導することを目的とする腫瘍免疫応答における重要な役割を発揮するということを指示している。その上、実験は、腫瘍ワクチンと組み合わせて抗PD−L1モノクローナル抗体を用いる腫瘍免疫療法が、腫瘍ワクチンの免疫活性化効果を有効に強め、処置効果に対する腫瘍微小環境の影響を縮減し得るということを証明した。
【0020】
上の理論的な研究および検討に基づいて、本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスは、それがより強い腫瘍溶解殺傷能力を具備するようにさせるためにそのゲノムを再構成されたのみならず、shPDL1(PDL1発現を阻害するためのshRNA)を発現することができるコードカセットをもまた追加された。細胞内PDL1のmRNAはshPDL1によって効率的に分解され得、それによって、PDL1の遺伝子サイレンシング、腫瘍細胞によるPDL1の発現の縮減、T細胞阻害シグナルに向かうPD1/PDL1シグナル伝達経路の伝達の減弱、および腫瘍に対するT細胞の殺傷効果の強化を実現することが期待される。よって、本開示の腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解剤として単独で用いられ得るのみならず、shPDL1コードカセットのための有効なベクターとしてもまた用いられ得て、ウイルス複製と併せてshPDL1が大量に発現されることを許し、それによってウイルス治療および遺伝子治療の二重の機能を同時に発揮する。
【0021】
従って、本開示は単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを提供し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムは、腫瘍細胞によるPDL1発現を阻害することができる外来性のshRNAのコード配列をインテグレーションされる。
【0022】
好ましくは、外来性のshRNAのコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである。
【0023】
好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスはE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3領域の全ての遺伝子を欠失する。
【0024】
それが腫瘍細胞に入った後に腫瘍溶解性ウイルスによって引き起こされる腫瘍細胞溶解の可能なメカニズムは次の通りである。(1)ウイルス蛋白質の直接的な細胞傷害性:例えばアデノウイルスによって産生される細胞死蛋白質および後期蛋白質は両方とも腫瘍細胞の溶解を有効に媒介し得る。(2)抗腫瘍免疫応答の発生:一方で、ウイルスは、種々のサイトカインに対する腫瘍細胞の敏感さを増大させることによって腫瘍を殺傷し得る。例えば、アデノウイルスは、感染した腫瘍細胞内で複製およびE1A蛋白質を発現することによって、腫瘍壊死因子によって媒介される腫瘍殺傷を強化する。他方で、腫瘍細胞がウイルスに感染した後に、腫瘍細胞表面のウイルス抗原は主要組織適合遺伝子複合体クラスI抗原との複合体を形成し、これは細胞傷害性Tリンパ球によって容易に認識され得、それによってウイルス感染した腫瘍細胞に対する特異的な攻撃を媒介する。(3)放射線療法および化学療法に対する腫瘍細胞の敏感さの強化:アデノウイルスE1A遺伝子の発現産物は強力な化学増感剤である。腫瘍細胞内で、E1A遺伝子の発現産物はp53蛋白質の高レベル発現を誘導し得、それによって、化学療法および放射線療法によって引き起こされるDNAの損傷を強化する。
【0025】
よって、好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1A遺伝子コード配列を包含する。より好ましくは、E1A遺伝子コード配列はCMVプロモーターのコントロール下にあり、それによって、E1Aの発現を増大させることによって腫瘍細胞に対する腫瘍溶解殺傷効果を強化する。
【0026】
好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスはアデノウイルス5型を遺伝子改変することによって得られる。アデノウイルス5型の1つの例はH101である。
【0027】
好ましい実施形態では、腫瘍溶解性アデノウイルスゲノムは、ES配列後に、U6プロモーターおよびヒトPDL1のshRNA(shPDL1)を包含するコードカセットとCMVプロモーター、E1Aコード領域およびその3’UTR領域、ならびにSV40ポリAを包含するE1A発現カセットとをインテグレーションする。
【0028】
本開示の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは種々のヒト腫瘍細胞に対する強い殺傷効果を有する(例えば、ヒト神経膠細胞腫細胞U251、ヒト肺癌細胞A549、ヒト子宮頚癌細胞Hela、ヒト大細胞肺癌H460、ヒト結腸直腸癌細胞HCT116、ヒト膵臓癌細胞PANC1、ヒト結腸癌細胞HT29など)。正常なヒト初代細胞内でのウイルスの複製能力はヒト腫瘍細胞内でのウイルスの複製能力よりもかなり低い(約2桁の差)。ウイルスによって発現されたヒトshPDL1は、ヒト腫瘍細胞の高発現されるPDL1蛋白質のレベルを有意に縮減し得る。
【0029】
本開示によって開発された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスに基づいて、本開示は医薬組成物をもまた提供し、医薬組成物は活性成分としての本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスと薬学的に許容される添加剤とを含む。
【0030】
好ましくは、医薬組成物は治療有効量の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを含む。より好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの治療有効量は5×10から5×1012vp/日の範囲である用量である。
【0031】
腫瘍溶解性ウイルスは当分野の通常の投与経路によって投与され得る。例えば腫瘍内注射によって投与または静脈内投与される。
【0032】
本開示の医薬組成物は、当分野において公知の他の活性成分、例えばインターロイキン−2(IL−2)、IL−15、IL−18、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などをもまた含有し得、その用量および投与経路はそれらのそれぞれの従来の様式で行われ得る。他の活性成分が含まれる場合には、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは他の活性成分と混合されることなしに独立して医薬組成物中に存在し得る。例えば、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは別個の容器に別個に含有される。
【0033】
当業者は、本開示の医薬組成物が好適な薬学的に許容される添加剤をさらに包含し得ることを理解するであろう。
【0034】
別の態様では、本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを調製するためのベクターが提供され、ベクターはプロモーターのコントロール下の外来性のshRNAコード配列を含み、shRNAコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りである。
【0035】
具体的な実施形態では、ベクターはpShuttleを基本バックボーンとして用い、基本バックボーンは、作動可能に連結された外来性のshRNAコード配列の発現をコントロールするプロモーター、外来性のshRNAコード配列、E1A遺伝子コード配列の発現をコントロールするプロモーター、およびE1A遺伝子コード配列を順に含む。
【0036】
別の態様では、本開示に従うベクターを含有する宿主細胞が提供される。好ましくは、宿主細胞はベクターを安定発現する。
【0037】
別の態様では、単離されたshRNAが提供され、shRNAのコード配列は配列番号16、19、および22のいずれか1つに示されている通りであり、shRNAは腫瘍細胞によるPDL1の発現を阻害することができる。
【0038】
別の態様では、腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの使用が提供される。
【0039】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の別の態様は、腫瘍および/または癌を処置するための方法をもまた提供し、本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与することを含む。
【0041】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0042】
本開示の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、治療有効量で、1日1回または2回、連続1から7日に渡って投与される(連続1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日を包含する)。治療有効量は好ましくは5×10〜5×1012vp/日の範囲である用量である(例えば、5×10から5×1012vp/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)。
【0043】
必要な場合には、本開示の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、他の医薬、例えばインターロイキン−2(IL−2)、IL−15、IL−18、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などとの組み合わせでもまた用いられ得、その用量および投与経路はそれらのそれぞれの従来の様式で行われ得る。
【0044】
具体的な状況および必要に基づいて、本開示に従う腫瘍および/または癌の処置のための方法は患者に1回または複数回適用され得る。
【0045】
腫瘍溶解性ウイルスは当分野の通常の投与経路によって投与され得る。例えば、それらは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与され得る。
【0046】
本開示の別の態様に従うと、単離された組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが提供され、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルスであり、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1B19K遺伝子、E1B55K遺伝子、およびE3領域の全ての遺伝子を欠失する。好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスのゲノムはE1A遺伝子コード配列を含み、より好ましくは、E1A遺伝子コード配列はCMVプロモーターのコントロール下にある。
【0047】
腫瘍溶解性アデノウイルスは強い腫瘍殺傷効果を有し、正常細胞内でのその複製能力は腫瘍細胞内でのその複製能力よりもずっと低い。よって、それは正常細胞に対する低い毒性、ゆえに改善された安全性を有する。
【0048】
本開示の別の態様では、本開示の発明者は、システム思考との組み合わせによる上述の腫瘍溶解性アデノウイルスに基づく新たな組み合わせ治療をもまた提案する。現行では、多くの非細胞傷害性の抗腫瘍医薬は化学療法と組み合わせられたときに腫瘍患者の長期生存を改善しない。その原因は、これらの化学療法におけるシステム思考の欠如であり得る。例えば、従来の化学療法は主として細胞ライフサイクルのある種の段階、例えばRNAまたはDNAの合成および有糸分裂に干渉するので、主として成長が速い細胞を標的化する。結果的に、これらの化学療法は腫瘍細胞を殺傷すると同時に、免疫系の損傷をもまた引き起こし得る。免疫系が減弱するときには、腫瘍細胞は必然的に「頭をもたげる」。システム思考は全体観に基づくアプローチであり、医薬作用、疾患、システム、および人体の間の相関および相互作用を総合的に考慮する。上述のシステム思考に基づいて、本発明は、免疫機能を改善するための他のアプローチを採用し、種々の治療を系統的に組み合わせることによって、効力を最大化し、同時に免疫系の損傷を最小化することが可能である。従って、本発明は新規の組み合わせ治療を提供し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を組み合わせて用いることによって腫瘍および/または癌を処置する。特に、本発明は、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を組み合わせて用いることのみによって相乗効果を達成し得る。
【0049】
よって、本開示は、さらに、
(a) 第1の薬学的に許容される担体中に本開示の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを含む第1の医薬組成物と、
(b) 第2の薬学的に許容される担体中にNK細胞を含む第2の医薬組成物と、
を含む治療薬を提供する。
【0050】
好ましくは、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物は互いに混合されることなしに独立して医薬組成物中に存在する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1の薬学的に許容される担体および第2の薬学的に許容される担体は同じである。他の実施形態では、第1の薬学的に許容される担体および第2の薬学的に許容される担体は異なる。
【0052】
いくつかのケースでは、治療薬は医薬の組み合わせとしてもまた解釈され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の医薬組成物の活性成分は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスであり、第2の医薬組成物の活性成分はNK細胞である。いくつかの実施形態では、第1の医薬組成物は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを治療有効量で含み(好ましくは、第1の医薬組成物は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを5×10〜5×1012vp/日、より好ましくは5×10から1.5×1012VP/日、より好ましくは5×10から1×1012VP/日、より好ましくは1×10から5×1011VP/日、なおより好ましくは3×1010から3×1011VP/日の範囲の用量で含む)、第2の医薬組成物はNK細胞を1×10から1×1010細胞/日の範囲の用量で含む(好ましくは1×10から5×10細胞/日、より好ましくは1×10から4×10細胞/日、なおより好ましくは1×10から3×10細胞/日)。
【0054】
本開示は医薬組成物をもまた提供し、医薬組成物の活性成分は本開示の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスとNK細胞とを包含する。好ましくは、医薬組成物の活性成分は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞からなる。
【0055】
好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞は互いに混合されることなしに独立して医薬組成物中に存在する。
【0056】
腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を殺傷するメカニズムは通常は類似である。種々の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与される。腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞との接触をするときに、それらは腫瘍細胞に感染し、それらに入るであろう。腫瘍溶解性ウイルスは主に腫瘍細胞内で複製および生殖するが、正常細胞内では複製しないかまたはほとんど複製しないので、感染した腫瘍細胞内では、大量の子孫腫瘍溶解性ウイルスが産生され、腫瘍細胞の溶解および死に至り得る。腫瘍細胞が溶解するときには、大量の腫瘍抗原および子孫腫瘍溶解性ウイルスが放出され得、それから、抗原がさらにインビボの免疫系を活性化し得、インビボのNK細胞およびT細胞を刺激して残りの腫瘍細胞を攻撃し続ける。同時に、子孫腫瘍溶解性ウイルスはまだ感染していない腫瘍細胞に感染し得る。
【0057】
NK細胞は幅広いスペクトルの腫瘍細胞を殺傷し得る免疫細胞であり、NK細胞は腫瘍細胞を正常細胞から見分け得る。NK細胞が腫瘍細胞との接触をするときに、それらは腫瘍細胞を異常細胞として認識し得、多種の相乗的プロセス、例えば受容体認識、抗体による標的認識(ADCC)、ならびに腫瘍細胞を間接的に殺傷することができるグランザイム、パーフォリン、およびインターフェロンの放出を介して腫瘍細胞を殺傷するであろう。インビトロの研究は、健康なNK細胞はそのライフサイクルの間に最高で27個の腫瘍細胞を殺傷し得るということを指示している。
【0058】
NK細胞は抗ウイルス機能をもまた有する。正常細胞がウイルスによって感染される場合には、ウイルスは大量に複製し、感染した細胞は老化変性を呈し、それらの細胞膜上の蛋白質群の組成変化を示すであろう。このプロセスの間に、NK細胞は感染した細胞を敏感かつ有効に認識し、上に記載されているようにそれらが腫瘍細胞を殺傷するために用いる類似のアプローチによってこれらの細胞を殺傷し得、それによって正常細胞内でのウイルスの複製および増殖を阻害する。その後、抗原の刺激およびインターフェロンなどの免疫因子の効果の存在下で、他の型の免疫細胞がウイルスと戦い続けるであろう。
【0059】
本開示では、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞の個々の特徴を考慮しており、それらを巧妙に組み合わせようとする。一緒に組み合わせられたときには、NK細胞の抗ウイルスメカニズムは腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞にもまた適用可能であり、NK細胞の抗腫瘍メカニズムを補完する。加えて、組み合わせ治療は、腫瘍溶解性ウイルスに感染した腫瘍細胞がNK細胞の特異的標的になることを許し、これはそれらの腫瘍殺傷効果を改善し得る。腫瘍溶解性ウイルスは癌細胞内で選択的に複製するのみならず、それらを内側から殺傷するが、細胞膜上の蛋白質受容体群が変化することをもまた引き起こし、それゆえにNK細胞による癌細胞の認識を容易化し得る。その結果、NK細胞は癌細胞を外側から攻撃し得る。よって、腫瘍溶解性ウイルスおよびNK細胞は癌細胞を相乗的に殺傷し、改善された効力を達成する。
【0060】
本開示のNK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞を包含する。NK細胞はインビトロ拡大されたNK細胞であり得る。NK細胞の大量インビトロ拡大培養技術は当分野において公知であり、高度に発展している(例えば、“Somanchi SS,Lee DA.Ex Vivo Expansion of Human NK Cells Using K562 Engineered to Express Membrane Bound IL21.Methods Mol Biol.2016;1441:175−93”または“Phan MT,Lee SH,Kim SK,Cho D.Expansion of NK Cells Using Genetically Engineered K562 Feeder Cells.Methods Mol Biol.2016;1441:167−74”参照)。臨床データからは、自家NK細胞、半同種NK細胞(同種NK細胞に属する)、または臍帯血由来NK細胞が、人体への再輸注後に、毒性または長期依存性が観察されず、処置が安全かつ有効であることが確認されている。
【0061】
処置に有用なNK細胞の純度は自家NK細胞では85%以上、同種NK細胞では90%以上であり得、その中の不純物細胞はNK−Tおよび/またはγδT細胞であり得る。好ましくは、NK細胞活性(生存率)は90%以上であり、NK細胞殺傷活性は80%以上である。
【0062】
本開示の組み合わせ戦略に基づいて、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞のそれぞれの用量レベル、それらの投与順序、および投与の間隔についてさらなる検討および改善がなされる。これらは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの抗腫瘍効力、NK細胞の抗腫瘍効力、および腫瘍細胞に対する2つの組み合わせの最も良好な相乗的な殺傷効果を決定する上で極めて重要である。
【0063】
よって、好ましくは、医薬組成物または治療薬は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを治療有効量で含み(好ましくは、医薬組成物または治療薬は、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを、5×10〜5×1012vp/日、より好ましくは5×10から1.5×1012VP/日、より好ましくは5×10から1×1012VP/日、より好ましくは1×10から5×1011VP/日、なおより好ましくは3×1010から3×1011VP/日の用量で含む)、医薬組成物または治療薬はNK細胞を1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量で包含する(好ましくは1×10から5×10細胞/日、より好ましくは1×10から4×10細胞/日、なおより好ましくは1×10から3×10細胞/日)。
【0064】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは当分野において通常用いられる経路によって投与され得る。例えば、それらは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与され得る。
【0065】
NK細胞は当分野において通常用いられる経路によって投与され得る。例えば、それらは静脈内投与され得る。
【0066】
具体的な実施形態では、本開示に従う医薬組成物または治療薬の活性成分は、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを5×10から5×1012VP/日の範囲である用量で(例えば、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日など)、NK細胞を1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量で(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、1×10から3×10細胞/日など)包含する。好ましくは、医薬組成物または治療薬の活性成分は、5×10から5×1012VP/日の範囲である用量の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルス(例えば、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日など)と、1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量のNK細胞(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、1×10から3×10細胞/日など)とからなる。
【0067】
当業者は、本開示に従う医薬組成物または治療薬が好適な医薬添加剤をもまた包含し得ることを理解し得る。
【0068】
本開示に従う医薬組成物または治療薬は、当分野において公知の他の活性成分、例えばインターロイキン−2(IL−2)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)などをもまた包含し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物または治療薬は1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。医薬製剤は当分野において公知の手続きによって調製され得る。例えば、化合物および同類を包含する活性成分は、通常の添加剤、希釈剤(例えば、リン酸緩衝液または食塩水)、組織培養培地、および担体(例えば、自家血漿またはヒト血清アルブミン)によって製剤され、懸濁液として投与され得る。他の担体はリポソーム、ミセル、ナノカプセル、ポリマーナノ粒子、固体脂質粒子を包含し得る(例えばE.Koren and V.Torchilin,Life,63:586−595,2011参照)。本願において開示される医薬組成物または治療薬の製剤のための技術の詳細は科学および特許文献に良く記載されている。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co., Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照。
【0070】
本開示に従う医薬組成物または治療薬は種々の腫瘍および/または癌を処置するために用いられ得、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含するが、これらに限定されない。
【0071】
本開示の医薬組成物または治療薬の適用方法は次の通りである。最初に、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与する。それから、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18〜72時間(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)後に、NK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する。「組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18〜72時間(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)後に、NK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する」は、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの最初の投与との間の時間間隔が18〜72時間の範囲であるか(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)、またはNK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔が18〜72時間の範囲である(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)ということを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔は18〜72時間の範囲である(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔は24〜48時間の範囲である。
【0072】
本開示の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは治療有効量で(例えば、5×10から5×1012vp/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)、1日1回または2回、連続1から7日に渡って(例えば、1日1回、連続1から6日に渡って)与えられ、NK細胞は、1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、または1×10から3×10細胞/日)、1日1回、連続1から6日に渡って与えられる。本開示の別の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、治療有効量で(例えば、5×10から5×1012vp/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)、隔日で連続2から6日に渡って与えられ、NK細胞は、1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、または1×10から3×10細胞/日)、隔日で連続2から6日に渡って与えられる。NK細胞が組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18から72時間後に腫瘍および/または癌患者に与えられるはずである限りは、上述の実施形態のいずれか1つまたはいずれかの他の代替的な実施形態が本開示に従って採用され得る。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞は間をおいて投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第1日に投与し、NK細胞を第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第3日に投与し、NK細胞を第4日に投与するなど)、または逐次に投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第1日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第3日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第4日に投与するなど)、あるいは他の用量レジメンを用いて投与され得る(例えば、最初に、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを連続1から7日に渡って1日1回または2回(例えば、連続1から6日に渡って1日1回)投与し、18から72時間の間隔の後に、NK細胞を連続1から6日に渡って1日1回投与する)。好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは最初に投与され、NK細胞は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの全ての用量を投与した18から72時間後に投与される。本開示の好ましい実施形態では、最初に、腫瘍および/または癌患者は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを与えられ、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは治療有効量で1回のみ与えられる(例えば、5×10から5×1012vp、5×10から1.5×1012VP、5×10から1×1012VP、1×10から5×1011VP、3×1010から3×1011VP)。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18から72時間後に、腫瘍および/または癌患者はNK細胞を投与され、NK細胞は1×10から1×1010細胞の範囲である用量レベルで1回のみ投与される(例えば、1×10から5×10細胞、1×10から4×10細胞、または1×10から3×10細胞)。
【0073】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは腫瘍または癌細胞内で選択的に複製し得、それらの量は一定時間後にピークに達するであろう。本開示の発明者は、一定時間のウイルス複製後に、腫瘍細胞内の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスが腫瘍細胞に対するNK細胞の殺傷効果を促進し得ることを発見した。よって、本開示において提案される組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞の投与の間隔は、それらの機能のピーク値がオーバーラップすることを可能にし得る。
【0074】
本開示は、腫瘍および/または癌の処置のための医薬の調製のための、本開示の治療薬の使用をもまた提供する。
【0075】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含するが、これらに限定されない。
【0076】
本開示は、腫瘍および/または癌の処置のための相乗効果を有する組み合わせ医薬のキットをもまた提供し、本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを含有する第1の容器とNK細胞を含有する第2の容器とを包含し、第1の容器は第2の容器とは別個である。キットは、さらに、投与のタイミングおよび経路を定める説明書を含む。好ましくは、キットは、それぞれ本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を含有する独立した容器と、投与のタイミングおよび経路を定める説明書とからなる。
【0077】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌を包含するが、これらに限定されない。
【0078】
好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを含有するキットの第1の容器は治療有効量の組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを包含し(例えば、5×10から5×1012VP/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)、NK細胞を含有する第2の容器は、1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量を提供するために十分である量のNK細胞を包含する(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、1×10から3×10細胞/日など)。
【0079】
NK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。NK細胞はインビトロ拡大から得られる自家NK細胞またはインビトロ拡大から得られる同種NK細胞であり得る。
【0080】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは当分野において通常用いられる経路によって投与され得る。例えば、それらは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与され得る。
【0081】
NK細胞は当分野において通常用いられる経路によって投与され得る。例えば、それらは静脈内投与され得る。
【0082】
別の態様では、本開示は、腫瘍および/または癌の処置のための方法をもまた提供し、逐次の様式で次のステップを含む。
1) 本開示に従う組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを腫瘍および/または癌患者に投与すること、
2) 組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18〜72時間(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)後に、本開示に従うNK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与すること。
【0083】
「組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18〜72時間(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)後に、本開示に従うNK細胞を腫瘍および/または癌患者に投与する」は、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの最初の投与との間の時間間隔が18〜72時間の範囲であるか(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)、またはNK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔が18〜72時間の範囲である(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)ということを意味する。好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔は18〜72時間の範囲である(例えば、20〜70時間、22〜48時間、24〜48時間、30〜48時間など)。より好ましくは、NK細胞の最初の投与と組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの直近の投与との間の時間間隔は24〜48時間の範囲である。
【0084】
腫瘍および/または癌は、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、黒色腫、頭頸部癌、肝臓癌、脳腫瘍、結腸直腸癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頚癌、リンパ腫、胃癌、食道癌、腎臓癌、前立腺癌、膵臓癌、白血病、骨癌、および精巣癌などを包含するが、これらに限定されない。
【0085】
本開示の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、治療有効量で(例えば、5×10から5×1012vp/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)、連続1から7日に渡って1日1回または2回(例えば、連続1から6日に渡って1日1回)与えられ、NK細胞は、1×10から1×1010細胞/日の範囲である用量レベルで(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、または1×10から3×10細胞/日)、連続1から6日に渡って1日1回与えられる。本開示の別の好ましい実施形態では、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは、治療有効量で(例えば、5×10から5×1012vp/日、5×10から1.5×1012VP/日、5×10から1×1012VP/日、1×10から5×1011VP/日、3×1010から3×1011VP/日)、連続2から6日に渡って隔日で与えられ、NK細胞は、1×10から1×1010細胞/日の用量レベルで(例えば、1×10から5×10細胞/日、1×10から4×10細胞/日、または1×10から3×10細胞/日)、連続2から6日に渡って隔日で与えられる。NK細胞が組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18から72時間後に腫瘍および/または癌患者に与えられるはずである限りは、上述の実施形態のいずれか1つまたはいずれかの他の代替的な実施形態が本開示に従って採用され得る。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞は間をおいて投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第1日に投与し、NK細胞を第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第3日に投与し、NK細胞を第4日に投与するなど)、または逐次に投与され得るか(例えば、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを第1日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第2日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第3日に投与し、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスおよびNK細胞を逐次の順番で第4日に投与するなど)、あるいは他の用量レジメンを用いて投与され得る(例えば、最初に、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを連続1から7日に渡って1日1回または2回(例えば、連続1から6日に渡って1日1回)投与し、18から72時間の間隔の後に、NK細胞を連続1から6日に渡って1日1回投与する)。好ましくは、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは最初に投与され、NK細胞は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの全ての用量を投与した18から72時間後に投与される。本開示の好ましい実施形態では、最初に、腫瘍および/または癌患者は組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスを与えられ、組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは治療有効量で1回のみ与えられる(例えば、5×10から5×1012vp、5×10から1.5×1012VP、5×10から1×1012VP、1×10から5×1011VP、3×1010から3×1011VP)。組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスの投与の18から72時間後に、腫瘍および/または癌患者はNK細胞を投与され、NK細胞は1×10から1×1010細胞の範囲である用量レベルで1回のみ投与される(例えば、1×10から5×10細胞、1×10から4×10細胞、または1×10から3×10細胞)。
【0086】
具体的な状況および必要に基づいて、本開示に従う腫瘍および/または癌の処置のための方法は患者に1回または複数回適用され得る。
【0087】
NK細胞は自家NK細胞および同種NK細胞から選択され得る。NK細胞はインビトロ拡大から得られる自家NK細胞またはインビトロ拡大から得られる同種NK細胞であり得る。
【0088】
組換え体腫瘍溶解性アデノウイルスは当分野において通常用いられるそれぞれの経路によって投与され得る。例えば、それらは腫瘍内注射によって投与または静脈内投与され得る。
【0089】
NK細胞は当分野において通常用いられる経路によって投与され得る。例えば、それらは静脈内投与され得る。
【0090】
本願の以降においては、本開示は例によってさらに説明または記載されるが、これらの例は本開示の保護の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例】
【0091】
別様に定められていない限り、次の例に用いられる実験法は生物工学の分野の従来の実験手続き、操作、材料、および条件を用いて行う。
【0092】
別様に定められていない限り、それぞれの試薬の全てのパーセンテージ濃度(%)は体積によるパーセンテージ(%(v/v))を指示する。
【0093】
次の例に用いた材料は次の通りである。
【0094】
1. 細胞AD293、MRC−5、Hela、A549、U251、HCT116、PANC1、HT29、H460、MDA−MB−231はATCCから購入した。HUVECはAllCellsバイオテクノロジー(上海)社から購入した。
【0095】
2. 腫瘍溶解性アデノウイルスH101は上海三維生物技術有限公司から購入した。
【0096】
3. NK細胞
実験に用いたNK細胞の起源は次の通りである。
各例に用いたNK細胞は杭州康万達医薬科技有限公司によって培養および凍結保存されたヒトNK細胞であった。ヒトNK細胞は次のプロセスによって調製した。当分野の通常用いられる技術として、採血針を尺骨静脈に挿入して、免疫細胞PBMCの抽出のために健康人の末梢静脈血を採集した。放射線照射済みK562フィーダー細胞(杭州鼎云生物技術有限公司から購入)を用いて、自家血漿培養によってNK細胞を拡大し、NK細胞は最高で90%の最終純度、最高で90%の生存可能性、および最高で85%のインビトロ腫瘍細胞殺傷率を有した。
【0097】
4. マウスは北京維通利華実験動物技術有限公司から購入した。
【0098】
5. PBS調合:8mMのNaHPO、136mMのNaCl、2mMのKHPO、2.6mMのKCl、pH7.2〜7.4。
【0099】
6. 次の例に用いた細胞計数方法を下に記載する。
CCK8アッセイ:10μlのCCK8溶液を各ウェルの細胞に追加し、それから細胞をインキュベータ内で、37℃で1〜4時間に渡ってインキュベーションし、それからシェーカー上で低速で5分に渡って振盪した。結晶物を充分に溶解および均一混合させ、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度値(OD450)を測定した。阻害率の計算式は次の通りである。細胞増殖阻害率(IR%)=1−(OD450試験産物−OD450ブランク)/(OD450負のコントロール−OD450ブランク)×100%。
MTTアッセイ:10μlのMTT溶液(5mg/ml)を各ウェルの細胞に追加し、それから細胞をインキュベータ内で、37℃で4時間に渡ってインキュベーションし、培養培地を吸って捨て、150μlのDMSOを各ウェルに追加し、それからシェーカー上で低速で10分に渡って振盪した。結晶物を充分に溶解および均一混合させ、マイクロプレートリーダーを用いて490nmの吸光度値(OD490)を測定した。阻害率の計算式:細胞増殖阻害率(IR%)=1−(OD490試験産物−OD490ブランク)/(OD490負のコントロール−OD490ブランク)×100%。
トリパンブルー染色法を用いる細胞計数:細胞をPBSによって洗浄し、トリプシンを用いて消化し、それから細胞をPBSに懸濁した。懸濁液に、0.04%(w/v)の終濃度でトリパンブルー溶液を追加した。それから、細胞計数を顕微鏡下で行った。これの間に、死細胞は青く染色され、生細胞は未染色のままであった。生細胞数を最終的なデータとして用いた。
【0100】
7. 培養プレート
各例に用いた6ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり2ml)、12ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり1ml)、24ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり500μl)、96ウェル細胞培養プレート(ウェルあたり100μl)は全てコーニング社から得た。
【0101】
調製例1: E1A遺伝子発現ベクターの構築
2つのPCRプライマー(P1:GGAAGATCTGGACTGAAAATGAG(配列番号1)およびP2:TGAGGTCAGATGTAACCAAGATTA(配列番号2)。注:プライマーP1の5’端にはBglII制限部位を追加し、これは下線で示す)を、ヒトアデノウイルス5型(AD5)ゲノムDNA配列(NCBI(すなわち、国立生物工学情報センター。https://www.ncbi.nlm.nih.gov)のGenbankのアクセッション:AC_000008)に基づいて設計した。上海三維生物技術有限公司によって産生された腫瘍溶解性ウイルス(H101)のゲノムDNAを抽出し、鋳型として用い、AD5ゲノムDNAの551〜1714の1164bp配列を高フィデリティPCRによって鋳型から増幅した。実際のサイズは1173bpである(図1参照)。この配列はE1A遺伝子のコード領域(E1Aプロモーター配列を包含しない)および部分的な3’UTR領域を包含する。得られたPCR産物をBglIIによって消化し、ベクターpShuttle−CMV(Agilentから購入)のマルチクローニング部位領域(MCS)のBglIIおよびEcoRV部位の間にクローニングし、それによって中間体ベクターpShuttle−E1Aを得た。得られたpShuttle−E1A陽性クローンはP1およびP2によるPCRによって確認した。結果は図2に示し、構築プロセスは図3に示した。得られた陽性クローンをシーケンシングし、シーケンシング結果はAD5ゲノムDNA上の対応する配列と完全に一致した。
【0102】
PCRプライマーP3およびP4(P3:CGCGTCGACTACTGTAATAGTAATCAATTACGG(配列番号3)およびP4:GACGTCGACTAAGATACATTGATGAGTTTGGAC(配列番号4)。注:各プライマーの5’端にはSalI制限部位を追加し、これは下線で示す)をさらに設計し、得られたpShuttle−E1A陽性クローンを高フィデリティPCR増幅の鋳型として用いた。PCR産物はCMVプロモーターとE1A遺伝子断片とSV40ポリAとを包含するE1A発現カセットを含有する。PCR産物のサイズは2017bpである(図4)。
【0103】
E1A発現カセットの得られたPCR産物をSalIによって消化し、pShuttleベクター(Agilentから購入)のMCS領域のSalI部位にクローニングした。E1A発現カセットを挿入された陽性クローンをプライマーP3およびP4によるPCRによってスクリーニングし(図5)、BglIIによる消化によって確認した。E1A発現カセットが正しい向きに挿入されたクローンはBglII酵素消化後に7200bpおよび1400bp断片を生じ、E1A発現カセットが反対向きに挿入されたクローンはBglII酵素消化後に7970bpおよび630bp断片を生ずるであろう(図6)。図6のプラスミド#2を爾後の実験のために選択した。中間体ベクターpShuttle−MCS−E1Aが最後に得られた。構築プロセスは図7に示す。得られたpShuttle−MCS−E1A陽性クローンをシーケンシングし、結果は予想される配列と完全に一致した。
【0104】
調製例2: shRNA発現ベクターの構築
それぞれPDL1のコード領域のmRNAの168〜190、430〜452、および589〜611の3つの領域を標的化する3つのshRNA配列(shPDL1−1(shPDL1−#1ともまた言う)、shPDL1−2(shPDL1−#2ともまた言う)、およびshPDL1−3(shPDL1−#3ともまた言う)。これらはそれぞれ配列番号16、配列番号19、および配列番号22である)を、NCBIウェブサイトのGenbankのヒトPDL1バリアント1配列(アクセッション:NM_014143)に基づいて設計した。加えて、ヒトPDL1のmRNAとは無関係である負のコントロール配列shPDL1−NCを設計した。配列は次の通りである。
【0105】
(1)shPDL1−1
合成センス配列(配列番号14):
【0106】
【化1】
【0107】
合成アンチセンス配列(配列番号15):
【0108】
【化2】
【0109】
shRNAのDNA(配列番号16):
【0110】
【化3】
【0111】
(2)shPDL1−2
合成センス配列(配列番号17):
【0112】
【化4】
【0113】
合成アンチセンス配列(配列番号18):
【0114】
【化5】
【0115】
shRNAのDNA(配列番号19):
【0116】
【化6】
【0117】
(3)shPDL1−3
合成センス配列(配列番号20):
【0118】
【化7】
【0119】
合成アンチセンス配列(配列番号21):
【0120】
【化8】
【0121】
shRNAのDNA(配列番号22):
【0122】
【化9】
【0123】
(4)shPDL1−NC
合成NCセンス配列(配列番号23):
【0124】
【化10】
【0125】
合成NCアンチセンス配列(配列番号24):
【0126】
【化11】
【0127】
shNCのDNA(配列番号25):
【0128】
【化12】
【0129】
shRNA配列の両端のそれぞれBbsIおよびHindIIIに対して相補的な付着末端を用いて、4つの配列をpSGU6/GFP/Neoベクター(上海生工生物技術有限公司から入手可能)上のBbsIおよびHindIII部位の間に繋げた。結果として、shPDL1を発現することができる4つのベクター(pSGU6/GFP/Neo−shPDL1−NC、pSGU6/GFP/Neo−shPDL1−1、pSGU6/GFP/Neo−shPDL1−2、およびpSGU6/GFP/Neo−shPDL1−3)が得られた。
【0130】
試験例1: shPDL1の阻害効果の検出測定
hPDL1のmRNA(ヒトPDL1のmRNA)に対するshPDL1の阻害効果をU251およびH460細胞において検出測定した。U251およびH460細胞をそれぞれ12時間前に12ウェルプレートにウェルあたり2×10細胞で播種した。各ウェルのU251およびH460細胞を1.6μgのshRNA発現ベクターDNA:4μlのlipofectamin2000の比でトランスフェクションした。2つの細胞サンプルをそれぞれ24時間および48時間に取った。トータルRNAを抽出し、逆転写を行った後に、GAPDH遺伝子のmRNAレベルをコントロールとしてリアルタイムPCRを行って、細胞のヒトPDL1のmRNAの発現レベルを検出測定した。結果は、コントロールと比較して、shPDL1−#1、2、3の全てが一定時間以内にhPDL1のmRNAに対する阻害効果を見せるということを示した。shPDL1−#1はhPDL1のmRNAに対する最も有意な阻害効果を有した(図8)。
【0131】
加えて、3つのshPDL1の阻害効果を蛋白質レベルでもまた試験した。293T細胞を、それぞれプラスミドpSGU6/GFP/Neo−shPDL1−NC、pSGU6/GFP/Neo−shPDL1−1、pSGU6/GFP/Neo−shPDL1−2、およびpSGU6/GFP/Neo−shPDL1−3によって、pcDNA3.3−hPDL1−3×FLAGと共に等モル比(1:1)で一過的にトランスフェクションした。プラスミドpcDNA3.3−hPDL1−3×FLAGは3×FLAGタグと融合したヒトPDL1蛋白質を発現する。48時間後に細胞サンプルを採集し、細胞溶解後にウエスタンブロット分析を行った。結果は、shPDL1−#1が過剰発現されたhPDL1を有意に縮減し得ることを証明した(図9参照)。
【0132】
pcDNA3.3−hPDL1−3×FLAGプラスミドの構築プロセスは次の通りであった。最初に、2つのプライマー(P11:CGCGTCGACATGAGGATATTTGCTGTCTTTAT(配列番号11)、P12:CCGCTCGAGCGTCTCCTCCAAATGTGTATCAC(配列番号12))をNCBIのヒトPDL1遺伝子のmRNA配列に基づいて設計した。U251細胞のトータルRNAをTrizolによって抽出し、鋳型として用いてRT−PCRを行ってhPDL1のcDNAを得た。これをそれからpShuttle−IRES−hrGFP−1ベクター(Agilentから購入)にクローニングし、hPDL1をその下流のFLAGタグと融合して発現し、中間体ベクターpShuttle−HPDL1−IRES−hrGFP−1を得た。別のプライマー(P15:CGCCTATTACACCCACTCGTGCAG(配列番号13))を設計し、プライマーP11と一緒に用いて、pShuttle−hPDL1−IRES−hrGFP−1上のhPDL1cDNA−FLAG−IRES−hrGFPを包含する配列を増幅した。それから、断片をpcDNA3.3−TOPOベクター(Invitrogenから購入)にクローニングしてpcDNA3.3−hPDL1−FLAGベクターを得た。挿入された断片をシーケンシングし、配列が完全に正しいことを確認した。
【0133】
調製例3: 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)のゲノムDNAの調製
1. shPDL1の阻害効果が確認された後に、U6プロモーターおよびshPDL1の配列全体を包含するコードカセットをpShuttle−MCS−E1Aベクターにクローニングした。pSGU6/GFP/Neo−shPDL1ベクターをSacIによって消化し、それによって形成された付着末端をT4DNAポリメラーゼによって消化して平滑末端を得た。それから、エタノール/酢酸アンモニウムを用いて沈殿および回収を行った。U6プロモーターおよびshPDL1配列を包含するコードカセット配列をKpnIによる消化によって回収した。同時に、pShuttle−MCS−E1AベクターをKpnIおよびEcoRVによって消化し、回収した。最後に、3つのshPDL1コードカセットをそれぞれpShuttle−MCS−E1Aベクターに繋げて、図10に示されている通り最終的なベクターpShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1Aを得た。いくつかのコロニーをプラスミド抽出のために選択し、KpnI/HindIII消化によって鑑定した。正しいクローンは370bpのバンドを生ずるであろう(図11参照)。正しいpShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドをシーケンシングのために選択した。結果は、配列が完全に正しいことを示した。
【0134】
2. 4つのプラスミドpShuttle−MCS−E1A(コントロールプラスミド)、pShuttle−U6−shPDL1−1−CMV−E1A、pShuttle−U6−shPDL1−2−CMV−E1A、およびpShuttle−U6−shPDL1−3−CMV−E1AをPmeIによって消化して線状化し、BJ5183株にトランスフェクションした。これの中で、トランスフェクションされたプラスミドとAD5アデノウイルスゲノムDNA(E1およびE3領域を欠失する)を含有するpAdEasy−1プラスミド(Agilentから購入)との間において相同組換えを行った。よって、CMV−E1A−SV40pA発現カセットおよび/またはU6−shPDL1コードカセットがアデノウイルスAD5のゲノムDNA中にインテグレーションされ、それによって、目当ての遺伝子を発現しかつ複製し得る腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)のゲノムDNAを得た(図12)。
【0135】
具体的な実験プロセスは次の通りである。
【0136】
(1) BJ5183コンピテントセルの調製
我々の研究室において−80℃に保存したBJ5183株(pAdEasy−1プラスミドが移入された)をLB/Amp培地に接種し、37℃かつ200RPMにおいて一晩培養し活性化させた。BJ5183コンピテント細菌を生工生物工程株式会社のスーパーコンピテントセル調製キット(B529303−0040)を用いて調製し、チューブに100μlずつ小分けし、用時まで−80℃で保存した。
(2) pShuttle関連プラスミドとpAdEasy−1プラスミドとの間の相同組換え
各pShuttle−MCS−E1A、pShuttle−U6−shPDL1−1−CMV−E1A、pShuttle−U6−shPDL1−2−CMV−E1A、およびpShuttle−U6−shPDL1−3−CMV−E1Aの1μgのプラスミドDNAを取り、それぞれ1μlのPmeIによって消化した。37℃での1.5時間の反応後に、1μlのアルカリホスファターゼを追加して線状化DNA断片を脱リン酸化した。それから、消化産物を100μlのBJ5183コンピテント細菌に直接的に追加して、従来の形質転換を行った。最後に、形質転換された細菌溶液をKana耐性LBプレートに広げ、37℃で一晩培養した。次の日に、プレート上に現れたコロニーを拾い、LB/Kanaに接種し、一晩培養してプラスミドDNAを抽出し、従来のPacI消化を行った。消化産物を電気泳動によって分析した。相同組換えが起こる位置に依存して、相同組換えの3種類の異なるモードが起こり得る(図13)。PacIによる消化後に4.5Kbまたは3Kb断片を生じ得るプラスミドは、正しい相同組換えを起こしたプラスミドである。消化産物の電気泳動結果(図14)は、正しい相同組換えがpAdEasy−1プラスミドとそれぞれpShuttle−MCS−E1A、pShuttle−U6−shPDL1−1−CMV−E1A、pShuttle−U6−shPDL1−2−CMV−E1A、およびpShuttle−U6−shPDL1−3−CMV−E1Aとの間において起こり、腫瘍溶解性アデノウイルス(全てOAd−shPDL1と呼ぶ)およびそのコントロールウイルスをパッケージングするためのゲノムDNA(pAdEasy−U6−shPDL1#1−CMV−E1A、pAdEasy−U6−shPDL1#2−CMV−E1A、pAdEasy−U6−shPDL1#3−CMV−E1A、およびpAdEasy−CMV−E1A)が首尾よく得られたということを証明している。もたらされた陽性クローン内に挿入されたshPDL1コードカセットおよびE1A発現カセットをシーケンシングし、完全に正しいことを確認した。
【0137】
調製例4: 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)のパッケージングおよび増幅
(1) 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)をパッケージングするためのゲノムDNAの調製
pAdEasy−CMV−E1A、pAdEasy−U6−shPDL1#1−CMV−E1A、pAdEasy−U6−shPDL1#2−CMV−E1A、およびpAdEasy−U6−shPDL1#3−CMV−E1Aのそれぞれの2μgのプラスミドDNAに、2μlのPacI酵素を追加し、37℃での2時間の反応後に、エタノール/酢酸アンモニウムによるDNAの沈殿を行い、70%エタノールによってリンスした。それから、DNA沈殿を10μlの純ddHOに溶解し、AD293にトランスフェクションしてウイルスパッケージングを行った。
【0138】
(2) 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)のパッケージング
良好な成長状態のAD293細胞を1日前に6ウェルプレートに接種し、接種細胞数は、次の日にトランスフェクションを行うときに細胞の60〜70%コンフルエントを達成することが適当である。調製した線状化DNA(約2μg)およびQIAGENから購入したAttracteneトランスフェクション試薬(6μl)を均一混合し、AD293細胞に追加した。混合物を上下左右に均一混合し、細胞インキュベータ(37℃、5%CO)内に置き、さらに約10〜14日に渡って培養する。細胞変性を2〜3日毎に観察する。細胞の小片が「数珠状」になり、大量の細胞が脱落するまで徐々に拡大したときに、細胞を穏やかに吹き叩いて細胞および培養上清を収穫し得る。これらは−80℃で保存するか、または直接的にさらなる増幅を行った。プロセスを図15に示す。
【0139】
(3) 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の増幅
類似に、良好な成長状態のAD293細胞を1日前に6cmペトリ皿に接種し、接種細胞数は、次の日にトランスフェクションを行うときに細胞の70〜80%コンフルエントを達成することが適当である。先に採集したウイルス上清の800〜1000μlを各6cmペトリ皿に追加し、混合物を上下左右に均一混合した後に、細胞培養培地によってさらに培養した。通常は、大量の細胞が48時間後に丸くなり、剥離した。このときに細胞および培養上清を採集し得る。爾後に、ウイルスのさらなる増幅を10cmペトリ皿で行い、細胞密度はウイルスが接種されるときに好ましくは約70%である。先に採集したウイルス上清の1200〜1500mlを各10cmペトリ皿に追加し、48時間後に大量の細胞が変性剥離したときに細胞および上清を採集した。最後に、ウイルスをさらに15cmペトリ皿で増幅し、細胞密度が約70%であるときに、10cmペトリ皿から採集したウイルス培養上清の2mlを追加した。均一混合後に、細胞をさらに48時間に渡って培養して細胞および培養上清を採集した。ウイルスはそれから15cmペトリ皿で所望のウイルス量まで反復的に増幅され得る。
【0140】
(4) 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)力価の決定
アデノウイルスの力価を測定するための方法は、VP法、GTU/BFU法、プラーク法、TCID50法、およびHexon染色(キット)法を包含する。TCID50法およびHexon染色法はより正確であり、再現率が高い。この例では、得られたウイルス上清中の活性なウイルス粒子数(単位:PFU/ml)をHexon染色法によって測定した。結果を下に示す。本開示に記載される3種類のpShuttle−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドおよび1種類のコントロールプラスミドpShuttle−MCS−E1AをpAdEasy−1プラスミドと相同組換えさせて、6種類のpAdEasy−U6−shPDL1−CMV−E1Aプラスミドおよび2種類のpAdEasy−CMV−E1Aを生じた(図13参照。各種類のプラスミドは2つの正しい様式の相同組換えを行い得、そして2つの正しいプラスミドを得る。PacIによる消化後に、それぞれ4.5Kまたは3Kのバンドを生じ得る)。相同組換えによって得られた8種類のプラスミドを用いて、AD293によってウイルスをパッケージングして、8種類の腫瘍溶解性ウイルスOAd−C−4.5K、OAd−C−3K、OAd−shPDL1#1−4.5K、OAd−shPDL1#1−3K、OAd−shPDL2#1−4.5K、OAd−shPDL1#2−3K、OAd−shPDL1#3−4.5K、およびOAd−shPDL1#3−3Kを得た。これらはそれぞれ次の通り略称される。C−4.5K、C−3K、1−4.5K、1−3K、2−4.5K、2−3K、3−4.5K、および3−3K。それらのうち、C−4.5KおよびC−3Kは同じ配列を有する同一種類のウイルスであり、1−4.5Kおよび1−3Kは同じ配列を有する同一種類のウイルスであり、2−4.5Kおよび2−3Kは同じ配列を有する同一種類のウイルスであり、3−4.5Kおよび3−3Kは同じ配列を有する同一種類のウイルスである。
【0141】
【表1】
【0142】
例1: 細胞(腫瘍細胞および正常細胞)内での腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の複製能力
細胞(HUVEC、MRC−5、Hela、A549、およびU251)をウェルあたり1.5×10細胞の量で12ウェルプレートに播種した。培養培地の体積(HUVEC細胞はAllcells専用培地で培養した。細胞および培地両方はAussels Biotechnology(上海)有限公司から購入した。MRC−5細胞はMEM+10%FBS培地で培養した。Hela細胞はRPMI1640+10%FBS培地で培養した。A549細胞はDMEM/F12+10%FBS培地で培養した。U251細胞はMEM+10%FBSで培養した。全ての培地はGibco社から購入した)は1mlであった。12時間後に、培地を除去し、細胞をPBSによって1回リンスし、500μlのウイルス懸濁液(調製例4によって調製した)を図16に示されている通り10のウイルス多重感染度(MOI)で追加した。ウイルスを細胞と一緒に90分に渡ってインキュベーションした後で、ウイルス懸濁液を除去し、細胞をPBSによって2回リンスした。この時点を0時間と見なし、細胞サンプルの一部をトリプシン処理によって取った。細胞サンプルの別の一部を48時間後に取った。0時間および48時間に収穫した細胞サンプルのゲノムDNAをそれぞれ抽出し、アデノウイルス5型E1A遺伝子(P5:TCCGGTTTCTATGCCAAACCT(配列番号5)およびP6:TCCTCCGGTGATAATGACAAGA(配列番号6))、Hexon遺伝子(P7:CCATTACCTTTGACTCTTGTGT(配列番号7)およびP8:GGTAGTCCTTGTATTTAGTATC(配列番号8))、ならびにヒトGAPDH遺伝子(P9:CATGCCTTCTTGCCTCTTGTCTCTTAGAT(配列番号9)およびP10:CCATGGGTGGAATCATATTGGAACATGTAA(配列番号10))の特異的プライマーを用いてQ−PCRを行った。ウイルスが48時間に渡って細胞に感染した後の細胞内でのウイルスの複製能力をQ−PCR結果に基づいて分析した。異なる細胞内での腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の複製能力の比較は図17に示されている通りであった。
【0143】
図17に示されている結果は、本開示に従って構築された4種類の腫瘍溶解性アデノウイルス(コントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5K)が、試験された細胞内での異なる複製能力を有するということを指示した。本開示に従う腫瘍溶解性ウイルスは試験された腫瘍細胞内で非常に強い複製能力を見せ、不死化ヒト胎児肺線維芽細胞株内での強い複製能力をもまた見せた。しかしながら、それらはヒト初代細胞HUVEC内では非常に低い複製能力を見せた。ヒト正常細胞内での複製能力は腫瘍細胞株または腫瘍形成傾向を有する細胞株(例えば、不死化ヒト胎児肺線維芽細胞株MRC5)内でのものよりも約42〜444倍低い。よって、本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスは選択的複製の面では強い腫瘍細胞選好性を示し、それゆえに将来の臨床応用の面ではより高い安全性を有し、ウイルスの使用量の面ではより大きい余地を有するということが信じられる。
【0144】
例2: 腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の殺傷能力
この例では、本開示に従う腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の殺傷能力をCCK8アッセイによって試験した。細胞(U251、Hela、およびA549)をウェルあたり1.5×10細胞で96ウェルプレートに播種した。培養培地の体積(U251細胞はMEM+10%FBSで培養した。Hela細胞は培地RPMI1640+10%FBSで培養した。A549細胞は培地DMEM/F12+10%FBSで培養した。全ての培地はGibco社から購入した)は各ウェルについて100μlである。12時間後に、50μlの培地を除去し、ウイルス(それぞれ調製例4で調製したコントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5K)および純粋な培地の50μl混合物をそれぞれ1、3、10、30、100、および300の多重感染度(MOI)で追加した(この時点を0時間として記録した)。各MOIについて3つのデュプリケートを設けた。10μlのCCK8(同仁化学研究所から購入)を48時間および72時間の時点で追加した。450nmの培養物の吸光度値を1時間のインキュベーション後に測定した。得られた吸光度値に従って、細胞に対する異なるウイルスの殺傷能力を決定した。市販の腫瘍溶解性アデノウイルスH101をコントロールとして用いた。実験では、同じ細胞を同じMOIのウイルス量によって処置し、同じ時点で吸光度値を測定した。加えて、1μMのパクリタキセル溶液を系の正のコントロールとして用いた。3種類の腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の用量依存的殺傷効果および半数殺傷用量(IC50)を図18〜21に示した。
【0145】
結果は、U251、A549、およびHela細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルス(コントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5K)の殺傷効果が有意な用量依存性を見せるということを示した。市販の腫瘍溶解性アデノウイルスH101と比較して、本開示に従う腫瘍溶解性アデノウイルスは類似の殺傷効果を示し、U251細胞に対する殺傷効果はH101のものより優れてさえもいた。これは殺傷効果の統計分析によって有意な差を有した。加えて、72hにおける異なる細胞に対する本開示の腫瘍溶解性ウイルスの半数殺傷用量(IC50)を比較することによって、ヒトグリオーマ細胞U251に対する腫瘍溶解性ウイルスのIC50が最も低いことが見いだされる。これは、腫瘍溶解性ウイルスがヒトグリオーマの処置においてより重要な臨床的価値を有し得ることを指示している。
【0146】
例3: 腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)によって発現されたshPDL1の効力
本開示の腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)によって発現されたshPDL1の効力の検出測定を容易化するために、この例では、FLAGタグ付きhPDL1を安定発現し得る2つの細胞株A549/hPDL1−FLAGおよびHela/hPDL1−FLAGを構築した。構築プロセスは次の通り略述される。例2に従って得られたpcDNA3.3−hPDL1−FLAGベクター(pcDNA3.3−hPDL1−FLAG−IRES−hrGFPベクターともまた言う)をlipofectamin2000によってA549細胞およびHela細胞にトランスフェクションした。ベクターはネオマイシン遺伝子を保有するので、G418を追加して3回のスクリーニングを行い、FLAGタグ付きhPDL1およびGFP蛋白質を安定発現することができるA549/hPDL1−FLAGおよびHela/hPDL1−FLAG細胞株を最後に得た。
【0147】
上の2つの細胞株を、H101および本開示に従う4種類の腫瘍溶解性アデノウイルス(調製例4で調製したコントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5K)によって10の多重感染度(MOI)で処置した。細胞サンプルをウイルス感染の48時間後に収穫し、溶解後にウエスタンブロット分析を行って、FLAGタグ付きhPDL1の発現レベルの変化を、抗FLAG抗体を用いて検出測定した。結果を図22および23に示した。ウエスタンブロットの結果は、A549細胞およびHela細胞が腫瘍溶解性アデノウイルスによって処置された後に、hPDL1の発現レベルが異なる程度で増大するということを示した。しかしながら、同じ細胞がそれぞれ3種類のOAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって処置された後には、hPDL1のもともと増大した発現は異なる程度で阻害された。特に、OAd−shPDL1−1(1−4.5K)は最も有意な阻害効果を見せた。結果は先のQ−PCR結果およびコトランスフェクション後のウエスタンブロット結果と一致した。
【0148】
調製例5: 腫瘍溶解性アデノウイルスの超遠心精製手続き
1) 超遠心前の腫瘍溶解性アデノウイルスの溶液の調製
293細胞を15CM皿上で、調製例4で得られたアデノウイルス培養上清によってウイルス上清対細胞培養培地の2:20の体積比(AD:DMEM=2:20)で感染させ、37℃の5%COインキュベータ内で約36時間に渡ってさらにインキュベーションした。細胞の約50%の細胞変性効果(CPE)が顕微鏡下で観察され、細胞が浮いたときに、吹き叩くことまたは掻き取ることなどによってペトリ皿の細胞および培養液を採集し、4℃で短時間保存、または−20℃もしくは−80℃で長期保存した。一般的に、1回の超遠心によって精製されるウイルス量は、60から80個の15cmペトリ皿(培地上清および感染した293細胞を包含する)によって産生されるウイルス量である。採集した腫瘍溶解性ウイルスを含有する293細胞および培養上清を3000RPMで30分に渡って4℃において遠心した。上清および沈殿をそれぞれ爾後の実験に付した。A) 遠心上清は新たなフラスコに移し、4℃で一時的に保存し、細胞に感染させることによってウイルス増幅に用いた。ウイルス増幅の終わりまでに、全ての上清をPEG8000溶液(20%PEG8000を含有する2.5MのNaClの水溶液)と2:1の比で混合し、氷上で1時間または一晩に渡って沈殿させた。それから、20分の12000RPMの遠心後に、上清を捨て、ウイルス沈殿を保持した。最後に、それが完全に分散されるまで、ウイルス沈殿を適当量の10mMのTris−Cl(pH8.0)溶液に再懸濁した。5分の7000RPMの遠心後に、ウイルス含有上清を保持し、ウイルス含有上清を超遠心のための勾配塩化セシウム遠心チューブに直接的にローディングした。B) 遠心後の細胞沈殿は、小量の10mMのTris−Cl(pH8.0)によって穏やかに(吹き叩くことなしに)洗浄して、細胞表面の培地を洗浄および除去した。10から12個の15cmペトリ皿からの細胞沈殿を3mlのTris−Clに再懸濁し、細胞懸濁液を小分けし、−20℃で保存した。精製前の保存時間は2ヶ月よりも多くはない。サンプルを採集した後に、細胞懸濁液を37℃の水浴によって融解し、30秒に渡って激しく振盪し、−80℃冷凍庫に戻すか、またはドライアイス/純粋なエタノール混合物中に置いて細胞懸濁液を急速凍結した。凍結融解プロセスを3〜5回繰り返して、細胞膜を完全に破壊し、それによってウイルスを細胞から放出してウイルス溶液を得た。ウイルス溶液を直ちに精製しない場合には、それは−20℃で保存され得る。超遠心による精製前に、このステップで得られたウイルス溶液を37℃の水浴によって融解し、16000RPMの速度で室温において10分に渡って遠心した。ウイルス含有上清を採集し、これは一時的に氷上で低温保存され得る。
【0149】
2) 塩化セシウム密度勾配遠心によるADウイルス精製
塩化セシウム密度勾配遠心は種々のウイルスの単離および精製のためになお最も常用される方法である。主に、これはCsCl溶液中における異なるウイルスの異なる浮遊密度に依拠しており、細胞ライセート中の他の成分からそれらを分離する。標的ウイルスの特異的なバンドを採集した後で、PD−10脱塩カラムを用いて塩化セシウムを除去し、精製されたウイルスが最後に得られた。非常に高純度のウイルスがこの方法を用いて得られ得る。具体的な精製手続きは次の通りである。
【0150】
1. 最初の超遠心のための塩化セシウム密度勾配の調製:1.6mlの軽いCsCl(1.2g/ml)をベックマン超遠心チューブに追加した後に、1.05mlの重いCsCl(1.45g/ml)をゆっくり底部に追加した。超遠心チューブの体積に応じて、追加される軽いCsClおよび重いCsClの体積は2.5mlの軽いCsClおよび2.5mlの重いCsClにもまた変えられ得る(注:このステップでは、軽いCsClおよび重いCsClを混合しない。それらの間のはっきりした境界を維持する)。
【0151】
2. 3〜7mlのウイルス含有上清を軽いCsClの液体表面上に穏やかに追加し、それから超遠心チューブを遠心スリーブに入れた。2つの対向する遠心チューブを秤量して釣り合わせ、それから遠心ローターの対応する2つのフックに掛けた(注:操作はプロセス全体を通して穏やかでなければならない)。
【0152】
3. 遠心チューブを完全にきちんと掛けた後で、遠心を40000RPMで1時間15分に渡って20℃において行った。
【0153】
4. 遠心が終了した後に、バイオセーフティキャビネット内の鉄製の架台上のユニバーサルクランプに遠心チューブをしっかり固定した。18G針を取り付けた5mlシリンジを用いて、無傷のウイルス粒子の最も下のバンドの下(〜1cm)で遠心チューブを注意深く穿刺し、バンドのみを吸い出し、氷上で短時間保存した。
【0154】
5. 第2の超遠心のためのCsCl溶液の調製:等体積で均一混合した6mlのCsCl溶液(3mlの軽いCsClおよび3mlの重いCsCl)を超遠心チューブに追加し、ステップ4で採集したウイルス溶液を、調製したCsCl溶液の液体表面上に注意深く灌注した。灌注したチューブもまた超遠心チューブスリーブに注意深く入れ、遠心ローター上に置かれるべき対向する2つのチューブを秤量し、釣り合わせた。それから、釣り合った遠心チューブを遠心ローターに掛けた(注:操作はプロセス全体を通して穏やかでなければならない)。
【0155】
6. 遠心パラメータを設定する:20℃、40,000RPM、18時間遠心。
【0156】
7. 遠心が終了した後に、バイオセーフティキャビネット内の鉄製の架台上のユニバーサルクランプに遠心チューブを注意深くしっかり固定した。18G針を取り付けた5mlシリンジを用いて、無傷のウイルス粒子のバンドの下(〜1cm)で遠心チューブを注意深く穿刺し、バンドを吸い出し、氷上で短時間保存した。
【0157】
8. バイオセーフティキャビネット内で、PD−10脱塩カラム(カラム体積は5mlである)を取り出し、カラムの底部の端を切り落とし、それからカラムを鉄製の架台上に固定する。その結果、カラム内の保存液は重力の作用下で自然に流れ出し得る。カラム体積の3から4倍(15から20ml)の透析溶液(1mMのMgClおよび10%グリセロールを含有する10mMのTris溶液(pH7.4)。濾過滅菌後に4℃で保存)を追加して、脱塩カラムを徹底的に洗浄し、保存溶液を完全に交換した。
【0158】
9. 10個の付番した1.5ml遠心チューブをウイルス採集のために用意した。
【0159】
10. 追加した透析液が完全に流れ出た後に、第2の超遠心によって採集したウイルス溶液を空のPD−10カラムに追加した。体積差に応じて、用意した遠心チューブによってカラム内の濾過された溶液を採集した(1.2〜1.5ml/チューブ)。
【0160】
11. 透析液をさらに追加して濾過を行った。追加量は各回に2.5mlである。10個の遠心チューブが採集されるまで、濾過された溶液を用意した遠心チューブに連続的に採集した。
【0161】
12. 11個の1.5ml遠心チューブを用意し、90μlの0.1%(w/v)SDSを各チューブに追加した。10μlのウイルスを10個のウイルス採集チューブのそれぞれから取り、前もってSDSを追加し然るべく付番した遠心チューブに追加した。10μlの透析液を、SDSを追加した遠心チューブに追加し、系のコントロールとした。ウイルスおよびSDS溶液を十分に混合した後に、混合物を時々振盪しながら15〜30分に渡って室温に置いた。それから、260nmおよび280nmの吸光度値を測定し、ウイルス溶液中のウイルス粒子数の光学濃度を式(1OD260=1×1012VP)に従って計算した。OD260値は採集液中のウイルスDNA濃度を反映し、OD280値は採集液中の蛋白質濃度を反映する。OD260/OD280の比は約1.2〜1.3である。
【0162】
13. 得られたウイルスを然るべく希釈した後で、適当な希釈度の2つの希釈液を選択し、それぞれについて100μlを取って、24ウェルプレートに接種された適切な濃度のAD293細胞に感染させる。48時間後に、アデノウイルス力価測定キット(上海コウ翔生物技術有限公司)によってウイルスの正確な力価を検出測定する。
【0163】
濃度および実験要件に応じて、超遠心精製した高品質ウイルス液を異なる体積の異なるきれいな遠心チューブに分けた。それらは日付およびウイルス名をマークして用時まで−80℃で保存した。
【0164】
例4: 腫瘍細胞(HCT116、PANC1、HT29、およびH460)に対する腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の殺傷能力
この例では、腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の殺傷能力をMTTアッセイによって試験した。ヒト腫瘍細胞(HCT116、PANC1、HT29、およびH460)を96ウェルプレートに播種し、ウェルあたりの播種細胞数は3×10細胞であり、各ウェルの培養培地は100μlであった(HCT116細胞は培地マッコイ5A+10%FBSで培養した。PANC−1細胞は培地DMEM+10%FBSで培養した。HT29細胞は培地DMEM/F12+10%FBSで培養した。H460細胞はRPMI1640+10%FBSで培養した。全ての培地はGibco社から購入した)。12時間後に、50μlの培地を捨て、ウイルス(用いたウイルスはそれぞれコントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5Kであった。これらは調製例5に記載されている方法に従って調製した)および血清不含培地の50μl混合物を追加し(この時点を0時間として記録した)、多重感染度(MOI)はそれぞれ1、3、10、30、100、および300であった。各MOIについて3つのデュプリケートを設けた。10μlのMTT溶液(索莱宝生物科技有限公司から購入)(5mg/ml、すなわち0.5%MTT)をそれぞれ48時間および72時間の時点で各ウェルに追加し、4時間に渡ってさらにインキュベーションを行った。それから、細胞に接触することおよび捨てることなしに、全ての培養培地を注意深く捨てた。150μlのDMSOを各ウェルに追加し、シェーカー上で低速で10分に渡って振盪して結晶物を十分に溶解し、490nmの吸光度値をマイクロプレートリーダーによって測定した。市販の腫瘍溶解性アデノウイルスH101をコントロールとしてこの実験に用い、同じ細胞を同じMOIのウイルス量によって処置し、吸光度値を同じ時点で同時に測定した。加えて、1μMパクリタキセル溶液を系の正のコントロールとして用いた。データはグラフパッドプリズム5.04を用いて分析し、用量反応曲線をプロットし、IC50を計算した。阻害率の計算式は次の通りである。細胞増殖の阻害率(IR%)=1−(OD試験サンプル−ODブランク)×100%。4種類の腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルス(OAd−shPDL1)の用量依存的殺傷効果および半数殺傷用量(IC50)の結果を図25〜29に示した。
【0165】
結果は、本開示に従って調製した腫瘍溶解性アデノウイルス(コントロールウイルスC−4.5K、OAd−shPDL1ウイルス1−4.5K、2−4.5K、および3−4.5K)のHCT116、PANC1、HT29、およびH460に対する殺傷効果が顕著な用量依存性を見せ、全てのウイルスが強い殺傷能力を有することを示した。市販の腫瘍溶解性アデノウイルスH101と比較して、本開示に従うウイルスは類似の殺傷効果を有した。将来の臨床応用上、本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスは上述の種類の腫瘍の処置に用いられ得ることが期待される。
【0166】
例5: 腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1によって発現されたhPDL1の効力
この例は、細胞によるインビトロ機能アッセイおよび腫瘍を持つマウスモデルによるインビボ機能アッセイを包含する。実験に用いた腫瘍溶解性アデノウイルスはコントロールウイルスC−4.5KおよびOAd−shPDL1ウイルス1−4.5Kであった(用いたウイルスは調製例5に従って調製した)。
【0167】
1. インビトロの腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1によって発現されたshPDL1機能を検出測定するための細胞アッセイ
(1) ヒト乳癌細胞MDA−MB−231に対する細胞アッセイ
実験に用いた細胞株はヒトPDL1の発現レベルが高いヒト乳癌細胞株MDA−MB−231であった。MDA−MB−231細胞を6ウェルプレートの3つのウェルにウェルあたり1×10細胞の量で播種した。12時間後に、1×10PFU(MOI=10)の腫瘍溶解性アデノウイルスC−4.5Kまたは1−4.5Kを含有するウイルスおよび血清不含L15培地(L15培地はGibcoから購入した)の100μl混合物を、それぞれ、2つのウェルのそれぞれに追加した。100μlの血清不含培地を残りの1つのウェルに追加し、ブランクコントロールとした。6ウェルプレートを穏やかに上下左右に均一混合して、ウイルスが可能な限り培養ウェル内に均一に分布するようにさせた。37℃かつ5%COの24時間のインキュベーション後に、細胞をトリプシン消化した後に、細胞サンプルを収穫した。収穫した細胞サンプルをきれいなPBSによって2回リンスし、収穫した細胞ペレットを、プロテアーゼ阻害剤を加えたRIPA緩衝液(50mMのTris−Cl(pH7.4)、150mMのNaCl、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、および1/20のカクテルプロテアーゼ阻害剤)に懸濁し、氷上に置いて、30分に渡って溶解した。細胞サンプルを時々振盪しながら均一混合し、12000RPMで5分に渡って遠心し、それから上清および細胞ペレットを収穫し、それぞれ−20℃で保存した。MDA−MB−231細胞の3つの群の収穫した上清のhPDL1蛋白質レベルを従来のウエスタンブロッティングによって検出測定した。一次抗体はNovusbioからのウサギ由来PDL1抗体(Cat.No.NBP2−15791)であった。各群はトリプリケートであった。ウエスタンの結果およびグレースケールスキャン値分析を図30に示した。
【0168】
ウエスタン実験の上の結果に従うと、本開示に従うOAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって処置されたMDA−MB−231細胞のhPDL1の発現レベルは有意に変化したことが分かる。OAd−shPDL1処置群(1−4.5K群)のMDA−MB−231細胞のhPDL1の発現レベルはコントロール群と比較して約72.4%縮減されたが、腫瘍溶解性ウイルスコントロール群(C−4.5K群)のMDA−MB−231細胞のhPDL1の発現レベルは有意に変化しなかった。
【0169】
次に、MDA−MB−231細胞を12ウェルプレートの3つのウェルにウェルあたり1×10細胞で接種した。12時間後に、1×10PFU(MOI=10)の腫瘍溶解性アデノウイルスC−4.5Kまたは1−4.5Kおよび血清不含培地の混合物をそれぞれ3つのウェルのうち2つのウェルに追加した。等体積の血清不含培地を残りの1つのウェルに追加し、ブランクコントロールとした。12ウェルプレートを穏やかに上下左右に均一混合して、ウイルスが可能な限りウェル内に均一に分布するようにさせた。37℃の5%COインキュベータ内で24時間に渡って培養した後に、細胞サンプルを収穫し、CD274フローサイトメトリー抗体(ebioscienceから購入)を用いてFACSを行い、細胞サンプル中のhPDL1を発現する細胞のパーセンテージを検出測定した。全ての群はトリプリケートであった。フローサイトメトリー結果を図31に示した。
【0170】
実験結果は、MDA−MB−231細胞が本開示に従う腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1によって処置された後には、細胞膜上のhPDL1が検出測定され得る細胞のパーセンテージはいずれかの処置なしのブランクコントロール群と比較して約5%縮減されるが、腫瘍溶解性ウイルスコントロール群(C−4.5K群)では、hPDL1が検出測定され得る細胞のパーセンテージはいずれかの処置なしのブランクコントロール群と比較して約9%増大することを示した。これは、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を刺激した後に腫瘍細胞表面のhPDL1発現の増大を誘導し得るという関連文献の申し立てと整合している(例えば、科学文献“Dmitriy Zamarin,et al.PD−L1 in tumor microenvironment mediates resistance to oncolytic immunotherapy.J Clin Invest.2018;128(4):1413-1428.”;“Zuqiang Liu, et al.Rational combination of oncolytic vaccinia virus and PD−L1 blockade works synergistically to enhance therapeutic efficacy.Nat Commun.2017 Mar 27;8:14754−14765.”;または“Praveen K.Bommareddy,et al.Integrating oncolytic viruses in combination cancer immunotherapy.Nat Rev Immunol.2018 May 9.doi:10.1038/s41577−018−0014−6”参照)。結果は、MDA−MB−231細胞をOAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって処置した後では、腫瘍溶解性ウイルスの刺激によって誘導されるhPDL1発現が増大した腫瘍細胞のパーセンテージが、刺激前のパーセンテージの95%に縮減され得るということを指示した。OAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって発現されたshPDL1が、MDA−MB−231腫瘍細胞のhPDL1の発現レベルを実際にノックダウンし、MDA−MB−231腫瘍細胞表面にhPDL1を発現する細胞数を減少させるということもまた充分に証明された。
【0171】
(2) ヒト結腸癌細胞HCT116に対する細胞アッセイ
ヒト結腸癌細胞HCT116を12ウェルプレートの3つのウェルにウェルあたり1×10細胞で播種した。12時間後に、1×10PFU(MOI=10)の腫瘍溶解性アデノウイルスC−4.5Kまたは1−4.5Kおよび血清不含培地の混合溶液をそれぞれ2つのウェルに追加した。等体積の血清不含培地マッコイ5Aを残りの1つのウェルに追加し、ブランクコントロールとした。12ウェルプレートを穏やかに上下左右に均一混合して、ウイルスが可能な限りウェル内に均一に分布するようにさせた。37℃の5%COインキュベータ内で24時間に渡って培養した後に、細胞サンプルをトリプシン消化によって収穫し、CD274のフローサイトメトリー抗体を用いてFACSを行って、細胞サンプル中のhPDL1を発現する細胞のパーセンテージを検出測定した。全ての群はトリプリケートであった。フローサイトメトリー結果を図32に示した。
【0172】
実験結果は、HCT116細胞が本開示に従う腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1によって処置された後に、hPDL1が細胞膜上に検出測定され得る細胞のパーセンテージはいずれかの処置なしのブランクコントロール群と比較して約19.1%縮減されるが、腫瘍溶解性ウイルスコントロール群(C−4.5K群)では、hPDL1が検出測定され得る細胞のパーセンテージはいずれかの処置なしのブランクコントロール群と比較して約5.3%増大するということを示した。これは、腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍細胞を刺激した後に腫瘍細胞表面のhPDL1発現の増大を誘導し得るという関連文献の申し立てと整合している(例えば、科学文献“Dmitriy Zamarin,et al.PD−L1 in tumor microenvironment mediates resistance to oncolytic immunotherapy.J Clin Invest.2018;128(4):1413-1428.”;“Zuqiang Liu,et al.Rational combination of oncolytic vaccinia virus and PD−L1 blockade works synergistically to enhance therapeutic efficacy.Nat Commun.2017 Mar 27;8:14754−14765.”;または“Praveen K.Bommareddy, et al.Integrating oncolytic viruses in combination cancer immunotherapy.Nat Rev Immunol.2018 May 9.doi:10.1038/s41577−018−0014−6”参照)。結果は、HCT116細胞をOAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって処置した後に、腫瘍溶解性ウイルスの刺激によって誘導されるhPDL1発現が増大した腫瘍細胞のパーセンテージは、刺激前のパーセンテージの80.9%まで縮減され得るということを指示した。OAd−shPDL1腫瘍溶解性ウイルスによって発現されたshPDL1が、HCT116腫瘍細胞のhPDL1の発現レベルを実際にノックダウンし、HCT116腫瘍細胞表面にhPDL1を発現する細胞数を減少させるということもまた充分に証明された。
【0173】
2. インビボの腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1によって発現されたshPDL1の機能の検出測定のための腫瘍を持つマウスモデルの実験
この部では、ヒト結腸癌細胞HCT116を9匹のBALB/Cヌードマウスの背中に皮下接種した。各ヌードマウスに接種した細胞数は5×10であった。約9日後に、腫瘍が皮下に形成した後に、マウスをランダムに3群に分けた。第1の群はいずれかの処置なしのブランクコントロール群であった。第2の群では、腫瘍内注射によって皮下腫瘍にコントロール腫瘍溶解性アデノウイルスC−4.5Kを注射した。ヌードマウスあたりの注射したウイルス量は1×10PFUであり、注射体積は100μlであった。第3の群でもまた、腫瘍内注射を用いて、腫瘍溶解性アデノウイルス1−4.5Kを皮下腫瘍に注射した。ヌードマウスあたりの注射したウイルス量は1×10PFUであり、注射体積は100μlであった。注射はかかる用量および様式で3日に渡って1日1回行い、第4日には処置を行わなかった。ヌードマウスを第5日に屠殺して腫瘍組織を収穫した。プロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液(調合は上述と同じである)を組織サンプルの一部に追加し、これらをそれからホモジナイズして組織の蛋白質を抽出した。腫瘍組織のhPDL1の蛋白質発現レベルをウエスタンブロットによって検出測定した。結果は図33および図34に示した。
【0174】
図33に示されているウエスタン結果のバンドをスキャンしてグレー値に変換し、これらはそれぞれのハウスキーピング遺伝子(β−アクチン)のグレー値に対して正規化し、それから図34の散乱分布マップを得た。それぞれの中央値に基づいて、BALB/Cの皮下接種されたHCT116細胞をコントロール腫瘍溶解性アデノウイルス(C−4.5)によって処置した後には、この群のhPDL1の発現レベルはいずれかの処置なしのブランクコントロール群と比較して20%上方制御されたということが分かる。対照的に、BALB/Cの皮下接種されたHCT116細胞を腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1によって処置した後には、この群のhPDL1の発現レベルは腫瘍溶解性アデノウイルスコントロール群のものと比較して25%縮減され、発現レベルはいずれかの処置なしのブランクコントロール群のものよりもまた低かった。よって、この結果は、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5)によって発現されたshPDL1がインビボのヒト腫瘍細胞移植物のhPDL1の発現を実際に縮減することを証明した。
【0175】
例6: ヒト腫瘍細胞株に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1およびヒトNK細胞の組み合わせ殺傷実験
本開示の腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1は1つのshPDL1発現カセットを含み、これは感染した腫瘍細胞内でshPDL1を発現し得、それによって腫瘍細胞のhPDL1の発現レベルをノックダウンし、腫瘍細胞表面のhPDL1の存在を縮減する。最終的に、免疫細胞(T細胞またはNK細胞を包含する)のPD1への腫瘍細胞表面のhPDL1の結合によって引き起こされる免疫細胞活性化に対する免疫抑制効果が、減弱または抹消され得る。よって、この例は、主に細胞レベルで、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)(調製例5に記載されている方法によって調製した)およびヒトNK細胞がヒト腫瘍細胞を殺傷する上で相乗効果を有するかどうかを検出測定した。実験では、トリパンブルー染色法を用いて、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびヒトNK細胞がヒト結腸癌細胞HCT116およびヒト肺癌細胞A549に対する組み合わせ殺傷プロセスの相乗効果を見せるかどうかを検出測定した。
【0176】
トリパンブルー染色は死/生細胞を計数するための古典的方法である。細胞が損傷しているかまたは死んでいるときには、トリパンブルーは変性した細胞膜を透過し得、崩壊したDNAに結合および染色するが、生細胞は色素が細胞に入ることを防止する。それゆえに、死細胞および生細胞は鑑別され得る。
【0177】
1. ヒト結腸癌細胞HCT116に対する細胞アッセイ
トリパンブルー染色試験によって、HCT116細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の殺傷用量が約MOI=1〜3であるときに、殺傷率は40%および60%の間であるということが決定された。HCT116細胞に対するヒトNK細胞の殺傷用量がNK:HCT116(E:T比)を約5:1とするときには、殺傷率は10%および20%の間である。殺傷用量はそれぞれ比較的好適であり、これらは組み合わせ殺傷実験に適していた。
【0178】
最初に、HCT116細胞を24ウェルプレートにウェルあたり2×10細胞で播種した。12時間後に、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を異なるMOI(MOI=1、3)で追加した。均一に混合した後に、37℃のCOインキュベータに戻し、さらに6時間に渡ってインキュベーションした。それから、ウイルスを含有する培地上清を除去し、細胞をきれいなPBSによって1回穏やかに洗浄し、それから新しい完全培地(マッコイ5A+10%FBS)を追加した。ウイルスの除去の18時間後に、エフェクター細胞対標的細胞の所定の比(E:T=5:1)に従って、活性化NK細胞(凍結NK細胞を回復後に培養した)を各ウェルに追加した。実験群は1−4.5K+NK群であった。NK細胞を追加した24時間後に細胞を収穫し、トリパンブルーによって染色し、生細胞数を計数した。実験では、1つのHCT116細胞群を、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)またはNK細胞のいずれも追加しないブランクコントロール群として用いた。1つの群では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を対応する時点で追加したが、ただしNK細胞を追加せず、1−4.5K群とした。1つの群では、NK細胞を対応する時点で追加したが、ただし腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を追加せず、NK群とした。全てのコントロール群は対応する時点で対応する培地交換操作を行った。全ての実験は3回以上繰り返し、平均を統計分析に用いた。
【0179】
腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)のMOIが1であり、かつNK細胞のエフェクター対標的細胞比(E:T)が5:1であるときの結果を図35に示した(X軸は異なる群を表し、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージを表す)。腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびNK細胞の組み合わせ投与はHCT116細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約83%であるということが示された。対照的に、この実験では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)単独の投与の阻害率は約51%であり、NK細胞単独の投与の阻害率は約14%であった。図では2つの合計を点線で示した。加えて、ブランク群の阻害率は約0であった(図には示されていない)。
【0180】
腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)のMOIが3であり、かつNK細胞のエフェクター対標的細胞比(E:T)が5:1であるときの結果を図36に示した(X軸は異なる群を表し、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージを表す)。腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびNK細胞の組み合わせ投与はHCT116細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約91%であるということが示された。対照的に、この実験では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)単独の投与の阻害率は約58%であり、NK細胞単独の投与の阻害率は約14%であった。図では2つの合計を点線で示した。加えて、ブランク群の阻害率は約0であった(図には示されていない)。
【0181】
2. ヒト肺癌細胞A549に対する細胞アッセイ
トリパンブルー染色試験によって、A549細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の殺傷用量が約MOI=30であるときには、殺傷率は40%および60%の間であるということが決定された。A549細胞に対するヒトNK細胞の殺傷用量が約5:1のE:T比であるときには、殺傷率は10%および20%の間である。殺傷用量はそれぞれ比較的好適であり、これらは組み合わせ殺傷実験に適していた。
【0182】
最初に、A549細胞を24ウェルプレートにウェルあたり2×10細胞で播種した。12時間後に、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)をMOI=30で追加した。均一に混合した後に、37℃のCOインキュベータに戻し、さらに6時間に渡ってインキュベーションした。それから、ウイルスを含有する培地上清を捨て、細胞をきれいなPBSによって穏やかに1回洗浄し、それから新しい完全培地(DMEM/F12+10%FBS)を追加した。ウイルスを除去した18時間後に、エフェクター細胞対標的細胞の所定の比(E:T=5:1)に従って、活性化NK細胞(凍結NK細胞を回復後に培養した)を各ウェルに追加した。実験群は1−4.5K+NK群であった。NK細胞を追加した24時間後に、細胞を収穫し、生細胞数をトリパンブルー染色によって計数した。実験では、1つのA549細胞群では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)またはNK細胞のいずれも追加せず、ブランクコントロール群とした。1つの群では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を対応する時点で追加したが、NK細胞は追加せず、1−4.5K群とした。1つの群では、NK細胞を対応する時点で追加したが、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)は追加せず、NK群とした。全てのコントロール群は対応する時点で対応する培地交換操作を行った。全ての実験は3回以上繰り返し、平均を統計分析に用いた。
【0183】
結果を図37に示した(X軸は異なる群を表し、Y軸は対応する阻害率のパーセンテージを表す)。腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびNK細胞の組み合わせ投与はA549細胞に対する有意な相乗的な殺傷効果を有し、相乗的な阻害率は約83%であるということが示された。対照的に、この実験では、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)単独の投与の阻害率は約45%であり、NK細胞単独の投与の阻害率は約16.9%であった。図では2つの合計を点線で示した。加えて、ブランク群の阻害率は約0であった(図には示されていない)。
【0184】
例7: 免疫不全マウスに皮下接種されたヒト腫瘍細胞に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1のインビボ成長阻害アッセイ
この例では、NOD−SCID免疫不全マウスにヒト結腸癌細胞HCT116を皮下接種して(マウスあたりの皮下接種した細胞数は5×10細胞であった)、腫瘍を持つマウスモデルを調製した。これを用いて、HCT116に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の成長阻害効果を検出測定した。コントロール腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを負のコントロールウイルスとして用いた。実験に用いたコントロールウイルスC−4.5KおよびOAd−shPDL1ウイルス1−4.5Kは調製例5に記載されている方法によって調製した。腫瘍を皮下接種された体積要件を満たす12匹の腫瘍を持つマウスを選択し(腫瘍体積は90〜120mmであった)、ランダムな群分けの様式で群あたり3匹のマウスで4つの群に分ける。第1群はコントロール群(ブランクコントロール)であり、各マウスには100μlのアデノウイルス保存溶液(すなわち、1mMのMgClおよび10%グリセロールを含有する10mMのTris溶液(pH7.4))を毎回注射した。第2群は中用量コントロール腫瘍溶解性ウイルス群(C−4.5K(中))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第3群は中用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(中))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第4群は高用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(高))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。実験ではトータルで3回の投与を行い、医薬は隔日で投与した。最初の投与は群分けの日に始めた(第0日として記録した)。マウスの腫瘍直径および体重を週に2回測定した。第21日の後に、マウスを屠殺し、撮像のために腫瘍を取った。実験結果をそれぞれ図38、39、40、および41に示した。
【0185】
上の結果のまとめ:NOD−SCID免疫不全マウスに皮下接種されたHCT116腫瘍細胞を腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を用いて処置したときには、腫瘍細胞の成長をある程度まで阻害し得る。中用量群(1−4.5K(中))およびコントロールウイルス群(C−4.5K(中))と比較して、高用量群(1−4.5K(高))は優れた成長阻害活性を示し、有意な用量依存的挙動を示したが(図38参照)、相対的な腫瘍増殖率(T/C%)は40%以下には達しなかった(図39参照)。腫瘍成長を阻害する面では、等しい用量のOAd−shPDL1(1−4.5K)およびコントロールバックボーンウイルスC−4.5K群を比較すると、OAd−shPDL1(1−4.5K)ウイルスによって発現されたshPDL1は腫瘍細胞のhPDL1の発現レベルの減少を引き起こしたが、より良好な腫瘍抑制効果を示さなかった(図38、39、41参照)。マウスの全ての群について体重の有意な変化はなく、腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびコントロールウイルス群(C−4.5K)がNOD−SCID欠損マウスに対する有意な毒性を示さないということを指示した(図40参照)。
【0186】
次に、BALB/Cヌードマウスにヒト結腸癌細胞HCT116を皮下接種して(マウスあたりの皮下接種された細胞数は5×10細胞であった)、腫瘍を持つマウスモデルを調製した。これを用いて、HCT116に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の成長阻害効果を検証した。コントロール腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを負のコントロールウイルスとして用いた。腫瘍を皮下接種された腫瘍体積要件を満たす25匹の腫瘍を持つマウスを選択し(腫瘍体積は90〜120mmであった)、ランダムな群分けの様式で群あたり5匹のマウスで5つの群に分ける。第1群はコントロール群(ブランクコントロール)であり、各マウスには100μlのアデノウイルス保存溶液を毎回注射した。第2の群は中用量コントロール腫瘍溶解性ウイルス群(C−4.5K(中))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第3の群は低用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(低))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第4の群は中用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(中))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第5の群は高用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(高))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。実験ではトータルで5回の投与を行い、医薬は隔日で投与した。最初の投与は群分けの日に始めた(第0日として記録した)。マウスの腫瘍直径および体重を週に2回測定した。第28日の後に、マウスを屠殺し、撮像のために腫瘍を取った。実験結果をそれぞれ図42、43、44、および45に示した。
【0187】
上の結果のまとめ:BALB/Cヌードマウスに皮下接種されたHCT116腫瘍細胞を処置するために用いた腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の実験では、高用量群および中用量群両方は優良な抗腫瘍効果を示した(図42参照)。高用量群の相対的な腫瘍増殖率(T/C%)は40%未満に達し、中用量群の相対的な腫瘍成長率(T/C%)もまた実験中に40%未満に達した(図43参照)。より重要なことに、高用量群のヌードマウスの背中の腫瘍は顕著な「腫瘍溶解性」現象を示した。すなわち、表面が潰瘍化し、潰瘍化部分の痂皮化および脱落後に、初期の接種部位の腫瘍組織は基本的に除去された。動物の身体状態および体重の観点からは、高用量群の1匹のヌードマウスでは、腫瘍細胞が背中の脊柱筋に付着し、OAd−shPDL1(1−4.5K)の阻害効果があまり顕著ではなく、高用量群の他の4匹のヌードマウスでは、背中に接種された腫瘍細胞の成長は有効に阻害され、これらの4匹のヌードマウスの体は他の群のヌードマウスよりも滑らかかつ強壮であった。OAD−shPDL1(1−4.5K)による処置後に、4匹のヌードマウスのうち2匹のヌードマウスの背中に接種された腫瘍細胞は肉眼では見えなかった(図44および45参照)。同じ用量のバックボーンコントロール腫瘍溶解性ウイルス群(C−4.5K)およびOAd−shPDL1(1−4.5K)中用量群を比較することによって、OAd−shPDL1(1−4.5K)中用量群のヌードマウスに皮下接種された腫瘍の成長もまた相対的に有意な阻害効果を示すということが見いだされた(図42、43、および45参照)。よって、OAd−shPDL1(1−4.5K)中用量群のshPDL1発現カセットによって発現されたshPDL1によって引き起こされる腫瘍細胞のHPDL1発現レベルの減少は、腫瘍成長を抑制する上で鍵となる役割を発揮するということが信じられた。ウイルス保存溶液群のヌードマウスは有意な体重減少を示し、それらのほとんどは腫瘍成長に関連する悪性の消耗症体質を示した。
【0188】
例8: BALB/Cヌードマウスに皮下接種されたヒト腫瘍細胞HCT116に対する腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1の成長阻害の検証
BALB/Cヌードマウスに皮下接種されたHCT116細胞に対する成長阻害についてOAd−shPDL1(1−4.5K)の有効な用量をさらに確認するために、この例は動物モデルのサンプルサイズを拡大して、OAd−shPDL1(1−4.5K)の有効な用量をさらに検証した。ヒト結腸癌細胞HCT116をBALB/Cヌードマウスに皮下接種して、腫瘍を持つマウスモデルを調製した。各ヌードマウスの細胞接種量は5×10細胞であった。腫瘍を皮下接種された腫瘍体積要件を満たす35匹の腫瘍を持つマウスを選択し(腫瘍体積は80〜130mmであった)、ランダムな群分けの様式で群あたり7匹のマウスで5つの群に分ける。第1群はコントロール群(ブランクコントロール)であり、各マウスには100μlのアデノウイルス保存溶液(すなわち、1mMのMgClおよび10%グリセロールを含有する10mMのTris溶液(pH7.4))を毎回注射した。第2の群は中用量コントロール腫瘍溶解性ウイルス群(C−4.5K(1×10))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第3の群は高用量コントロール腫瘍溶解性ウイルス群(C−4.5K(1×10))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルスC−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第4の群は中用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(1×10))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。第5の群は高用量腫瘍溶解性ウイルス群(1−4.5K(1×10))であり、各マウスには1×10PFUの腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kを含有する100μlのウイルス懸濁液を毎回注射した。実験ではトータルで5回の投与を行い、医薬は隔日で投与した。最初の投与は群分けの日に始めた(第0日として記録した)。マウスの腫瘍直径および体重を週に2回測定した。コントロール群およびコントロール腫瘍溶解性ウイルス群の腫瘍を持つヌードマウスの腫瘍が潰瘍化したので、第25日に実験を止め、全ての35匹のマウスを屠殺した。腫瘍を秤量および撮像のために取り、同じマウスの血液および脾臓と一緒に、それぞれ細胞懸濁液を調製した。BALB/CヌードマウスのNK細胞およびT細胞を検出測定するために、フローサイトメトリー抗体(抗マウスCD49b抗体および抗マウスCD3抗体。これらの両方はEbioscience社から購入した)をそれらに追加し、染色後に、FACSを行って、腫瘍の腫瘍細胞、血液、および脾臓のNKおよびT細胞の割合の変化を分析した。実験結果をそれぞれ図46、図47、図48、図49、図50、および図51に示す。
【0189】
血液細胞懸濁液の調製:マウスの眼球を摘出した後に、血液を取り、抗凝固チューブに追加し、振盪して均一混合し、それから氷上に置いた。血液を500×gで5分に渡って遠心した後に上清を捨て、それから赤血球溶解溶液(天根生化科技(北京)有限公司から購入、Cat.No.:#122−02)を細胞沈殿に追加し、これを徹底的に混合し、室温で10〜15分に渡って反応させた。再び5分の500×gの遠心後に、上清を捨て、細胞沈殿を保持した。細胞を、1%BSAを含有するPBSに再懸濁し、500×gで5分に渡って遠心し、それから上清を捨てて、細胞沈殿を保持した。細胞沈殿を2つの部分に分けた。1つの部分はいずれかの処置なしのコントロールとして用い、別の部分には抗BALB/CマウスCD3およびCD49bフローサイトメトリー抗体を追加し、均一混合し、室温において30分に渡って暗所で反応させ、それからFACSを行った。
【0190】
脾臓細胞懸濁液の調製:マウスを解剖し、マウスの脾臓を取り、1.5ml遠心チューブ内に置き、一時的に氷上で保存した。1%BSAを含有する5mlのPBS溶液をきれいな6cmペトリ皿に追加した。脾臓をナイロンメッシュによって包み、ペトリ皿上で磨り潰して、脾臓細胞を充分に放出した。細胞懸濁液を500×gで5分に渡って遠心した後に、上清を捨て、赤血球溶解溶液を細胞沈殿に追加し、これを徹底的に混合し、室温で10〜15分に渡って反応させた。再び5分の500×gの遠心後に、上清を捨て、細胞沈殿を保持した。細胞を、1%BSAを含有するPBSに再懸濁し、500×gで5分に渡って遠心し、それから上清を捨てて細胞沈殿を保持した。細胞沈殿を2つの部分に分けた。1つの部分はいずれかの処置なしのコントロールとして用い、別の部分には抗BALB/CマウスCD3およびCD49bフローサイトメトリー抗体を追加し、均一混合し、室温において30分に渡って暗所で反応させ、それからFACSを行った。
【0191】
腫瘍組織細胞懸濁液の調製:マウスを解剖し、皮下腫瘍を取り、1.5ml遠心チューブ内に置き、一時的に氷上で保存した。各腫瘍組織から等体積の小片を切り取り、別の一連の遠心チューブ内に置く。それから500μlのコラゲナーゼを追加した。眼科剪刀によって腫瘍を細かい小片に切り、37℃で30分に渡って反応させた。細胞懸濁液を500×gで5分に渡って遠心した後に、上清を捨て、赤血球溶解溶液を細胞沈殿に追加し、徹底的に混合し、室温で10〜15分に渡って反応させた。再び5分の500×gの遠心後に、上清を捨て、細胞沈殿を保持した。細胞を、1%BSAを含有するPBSに再懸濁し、500×gで5分に渡って遠心し、それから上清を捨てて細胞沈殿を保持した。細胞沈殿を2つの部分に分けた。1つの部分はいずれかの処置なしのコントロールとして用い、別の部分には抗BALB/CマウスCD3およびCD49bフローサイトメトリー抗体を追加し、均一混合し、室温において30分に渡って暗所で反応させ、それからFACSを行った。
【0192】
上の結果のまとめ:BALB/Cヌードマウスに皮下接種されたHCT116腫瘍細胞を処置するために用いた腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)の実験では、高用量群および中用量群両方は優良な抗腫瘍効果を示した(図46参照)。中用量群の相対的な腫瘍増殖率(T/C%)は40%に達し、高用量群は40%未満に達した(図47参照)。コントロールウイルスC−4.5K(1×10)群および目的の腫瘍溶解性ウイルス1−4.5K(1×10)群によって達成されたHCT116細胞に対する成長阻害効果を比較することによって、腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kが優れた成長阻害効果を示し、腫瘍体積の統計分析では、2つの群の間に非常に有意な差があることが見いだされた。コントロールウイルスC−4.5K(1×10)群および目的の腫瘍溶解性ウイルス1−4.5K(1×10)群によって達成されるHCT116細胞の成長に対する阻害効果を比較することによって、投与の初期段階においては、両方のウイルスが皮下接種されたHCT116に対する非常に強い成長阻害効果を示すが、実験の第10日には、1−4.5K群とは違って、C−4.5K群は腫瘍成長に対する持続的な阻害効果を見せないということが見いだされた。C−4.5K(1×10)群のヌードマウスの皮下腫瘍は成長し始めたが、1−4.5K(1×10)群のヌードマウスの皮下腫瘍は実験の第17日まで持続的に阻害された。2つの群の間には腫瘍体積の有意な差もまたあった。上の結果を総合的に分析すると、C−4.5Kおよび1−4.5K腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解性ウイルスの特徴を充分に見せたということが信じられる。その上、1−4.5KはshPDL1を発現し得るので、C−4.5Kと比較してHCT116細胞の成長に対するより長い阻害効果を示した。この例は、腫瘍溶解性ウイルス1−4.5Kによって発現されたshPDL1がヒト腫瘍細胞のhPDL1の発現レベルを変化させ、これが腫瘍細胞の周りの免疫抑制効果を減弱または抹消し得、それによって周囲の免疫細胞を活性化するということを充分に反映した。従って、腫瘍に対する組み合わせ殺傷効果が達成された。マウスの全ての5つの群の体重に有意な変化はなく、BALB/Cヌードマウスに対する有意な毒性は腫瘍溶解性アデノウイルスの両方で見いだされないということを指示している(図48参照)。マウスの各群の腫瘍を撮像および秤量した後に(図49参照)、1−4.5K実験群およびC−4.5K実験群の腫瘍重量の間には有意な差があることが見いだされた。腫瘍、血液、および脾臓のNKおよびT細胞のFACS分析によって、1−4.5K腫瘍溶解性ウイルスを投与されたマウスの腫瘍組織および血液中のNK細胞は、コントロール群(対照群)およびC−4.5コントロール腫瘍溶解性ウイルス群のものよりも大いに高いということが見いだされた。1−4.5K腫瘍溶解性ウイルス群の血液中のNK細胞はコントロール群の血液中のものの2倍高く、腫瘍組織中のNK細胞はコントロール群のものよりも5倍高かった。動物の各群の脾臓のNK細胞は有意に変化しなかった(図50参照)。T細胞の分析は、各群の血液中のT細胞の割合は有意に変化しないが、1−4.5K(1×10)実験群の脾臓および腫瘍組織のT細胞はC−4.5K(1×10)群の同じ組織のT細胞と比較して有意に増大するということを明らかにした(図51参照)。
【0193】
上の実験結果(例7および8参照)の総合的な分析は、遺伝学的バックグラウンドが異なる2種類の免疫不全マウスに皮下接種されたヒト結腸癌細胞HCT116を処置するために同じ腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)を用いたときに、腫瘍阻害効果の有意な差が得られるということを示した。OAd−shPDL1(1−4.5K)は、BALB/Cヌードマウスの皮下接種されたHCT116について優良な腫瘍成長阻害および腫瘍クリアランスの効果を示したが、NOD−SCID免疫不全マウスに皮下接種された同じ種類の細胞に対する同じ用量(1×10)のOAd−shPDL1(1−4.5K)腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果は、顕著ではなかった。BALB/Cヌードマウスに皮下接種されたHCT116を、shPDL1発現カセットを含有しない別のバックボーンコントロールウイルス(C−4.5K)によって同じ濃度(1×10)で処置したときには、投与の初期段階においてのみ、OAd−shPDL1(1−4.5K)腫瘍溶解性ウイルスに類似の腫瘍阻害効果を見せた。しかしながら、OAd−shPDL1(1−4.5K)とは違って、バックボーンコントロールウイルス(C−4.5K)は投与を止めた後に持続的に腫瘍成長を阻害し得ない。通常、体の免疫系による殺傷およびクリアランスを回避するために、腫瘍細胞はPDL1またはPDL2などのリガンドをそれらの表面に高発現するであろう。PD−1へのこれらのリガンドの結合は、PD−1の細胞内ドメインのチロシンリン酸化に至り、チロシンホスファターゼSHP−2をリクルートし、それによってTCRシグナル伝達経路のリン酸化を縮減し、TCR経路の下流の活性化シグナル、T細胞活性化、およびサイトカイン産生を縮減するであろう。よって、免疫細胞が不活性状態である免疫抑制性の微小環境が腫瘍の周りに形成されるであろう。加えて、免疫不全マウス株の観点からは、NOD−SCID免疫不全マウスはより高レベルの免疫不全を有し、T細胞が体内に欠失し、B細胞は存在するが機能を欠失し、NK細胞の機能は極めて低い。また、BALB/Cヌードマウスの免疫不全の程度は低く、T細胞がまた体内に欠失し、B細胞は存在するが機能を欠失するものの、マウスは機能が無傷のNK細胞、マクロファージ、および主に樹状細胞からなる抗原提示細胞を保持する。文献では、マウスのNK、マクロファージ、または樹状細胞が腫瘍成長阻害プロセスにおいて重要な組み合わせ殺傷効果を発揮し得るということが報告されている(例えば次の科学文献を参照:“Kevin C.Barry,et al.,A natural killer−dendritic cell axis defines checkpoint therapy−responsive tumor microenvironments.Nat Med.2018 Jun 25.doi:10.1038/s41591−018−0085−8.”)。腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびそのバックボーンコントロールウイルスC−4.5Kは、前者がshPDL1を発現し得る発現カセットを含有するという点で異なる。これは感染した腫瘍細胞内でshPDL1を発現し得、shPDL1はヒト腫瘍細胞のhPDL1レベルを縮減し、これは腫瘍の周りの環境における免疫抑制性状態をさらに減弱または除去する。最終的に、それは腫瘍成長に対するより長い阻害を維持するであろう。加えて、文献では、マウス免疫細胞表面のPD1およびヒト細胞表面のPDL1が互いに結合し、免疫抑制性のシグナルを伝達し得るということが報告されている。翻って、ヒト腫瘍細胞のhPDL1の発現はshPDL1発現によって縮減された(例えば次の科学文献を参照:“David Yin−wei Lin, et al.The PD−1/PD−L1 complex resembles the antigen−binding Fv domains of antibodies and T cell receptors.Proc Natl Acad Sci US A.2008 Feb 26;105(8):3011−6.”;“Clement Viricel.et al.human PD−1 binds differently to its human ligands: A comprehensive modeling study.J Mol Graph Model.2015 Apr;57:131−42.”;または“Aaron T.Mayer,et al.Practical ImmunoPET radiotracer design considerations for human immune checkpoint imaging.J Nucl Med.2017 Apr;58(4):538−546.”)。よって、ヒト腫瘍細胞HCT116内で腫瘍溶解性アデノウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)によって発現されたshPDL1は腫瘍細胞のhPDL1発現の減少をもたらし、これが腫瘍組織の周囲の免疫細胞(NK、マクロファージ、または樹状細胞)に対する阻害効果を減弱および解除し、それによって、HCT116の成長を阻害する持続的能力を見せたということが信じられる。
【0194】
この部の結果もまた、腫瘍溶解性ウイルスOAd−shPDL1(1−4.5K)およびヒトNK細胞がインビトロの腫瘍細胞の組み合わせ殺傷プロセスにおいて示した上記の相乗効果と整合している。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図15】
【図16】
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【図32】
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【図34】
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【図36】
【図37】
【図38】
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【図40】
【図41】
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【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【配列表】
2021500872000001.app
【国際調査報告】