(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
それぞれが、少なくとも1つのFabと、SEQ ID NO:01のCOMPドメインまたはSEQ ID NO:01の該COMPドメインのフラグメントとを含み、他のCOMPドメインと会合することができる、5つの単量体融合ポリペプチド
を含む、多量体多重特異性融合ポリペプチド。
前記5つの単量体融合ポリペプチドに関して互いに独立して、前記Fabが前記COMPドメインに直接またはペプチド性リンカーを介してコンジュゲートされている、請求項1に記載の多量体融合ポリペプチド。
前記5つの単量体融合ポリペプチドに関して互いに独立して、前記COMPドメインが前記FabのC末端またはN末端にコンジュゲートされている、請求項1または2に記載の多量体融合ポリペプチド。
前記半抗体が二量体半抗体であり、ここで、一方の単量体がホール突然変異を含みかつそれぞれ他方の単量体がノブ突然変異を含む、請求項5に記載の多量体融合ポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0050】
発明の詳細な説明
I. 定義
ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)二量体化モジュールおよび抗体工学におけるそれらの使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology,Volume 2,Number 1,February 1996,pp.73-73(1)に記載されている。
【0051】
抗体の重鎖のFc領域におけるCH3ドメインは、例えばWO96/027011、Ridgway,J.B.,et al,Protein Eng.9(1996)617-621およびMerchant,A.M.,et al,Nat.Biotechnol.16(1998)677-681にいくつか例を挙げて詳述されている「ノブ・イントゥ・ホール」技術によって、変更されることができる。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面が変更されて、これら2つのCH3ドメインを含有する両重鎖のヘテロ二量体化が増大する。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれは「ノブ」であることができ、その場合、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入はヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant,A.M.,et al,Nature Biotech.16(1998)677-681、Atwell,S.,et al,J.Mol.Biol.270(1997)26-35)、収量を増加させる。
【0052】
抗体重鎖のCH3ドメインにおける突然変異T366Wは「ノブ突然変異」と表され、抗体重鎖のCH3ドメインにおける突然変異T366S、L368A、Y407Vは「ホール突然変異」と表される(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。CH3ドメイン間の追加の鎖間ジスルフィド架橋も、例えば「ノブ突然変異」を有する重鎖のCH3ドメインにS354C突然変異を導入し(「ノブ-cys突然変異」と表される)、「ホール突然変異」を有する重鎖のCH3ドメインにY349C突然変異を導入する(「ホール-cys突然変異」と表される)ことなど(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)によって、使用することができる(Merchant,A.M.,et al.,Nature Biotech.16(1998)677-681)。
【0053】
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的情報は、Kabat, E.A., et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に与えられている。
【0054】
本明細書において使用する場合、重鎖および軽鎖のすべての定常領域および定常ドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載のKabatナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、これを本明細書では「ナンバリングはKabatに従う」という。具体的に述べると、κアイソタイプおよびλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLには、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(647〜660頁参照)が使用され、定常重鎖ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3)には、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661〜723頁参照)が使用され、この場合、本明細書では、「ナンバリングはKabat EUインデックスに従う」ということによってさらに明確にされる)。
【0055】
本発明の実行に有用な方法および手法は、例えばAusubel, F.M. (ed.), Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I〜III (1997); Glover, N.D., and Hames, B.D., ed., DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes IおよびII (1985), Oxford University Press; Freshney, R.I. (ed.), Animal Cell Culture - a practical approach, IRL Press Limited(1986); Watson, J.D., et al, Recombinant DNA, Second Edition, CHSL Press (1992); Winnacker, EX., From Genes to Clones; N.Y., VCH Publishers (1987); Celis, J., ed., Cell Biology, Second Edition, Academic Press (1998); Freshney, R.I., Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, second edition, Alan R. Liss, Inc., N.Y. (1987)に記載されている。
【0056】
組換えDNA技術の使用により、核酸の誘導体の生成が可能になる。そのような誘導体は、例えば、個々のヌクレオチド位置またはいくつかのヌクレオチド位置が、置換、変更、交換、欠失、または挿入によって改変されることができる。この改変および誘導体化は、例えば部位特異的突然変異誘発法を使って実行することができる。当業者は、そのような改変を容易に実行することができる(例えばSambrook, J., et al, Molecular Cloning: A laboratory manual (1999) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA; Hames, B.D., and Higgins, S.G., Nucleic acid hybridization - a practical approach(1985)IRL Press, Oxford, England参照)。
【0057】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって例えば、「細胞(a cell)」と書いた場合、それは、複数のそのような細胞および当業者に公知のそれらの等価物を包含する、などとなる。同様に、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では、相互可換的に使用されうる。「を含む(comprising)」、「を包含する(including)」および「を有する(having)」という用語が、相互可換的に使用されうることにも留意されたい。
【0058】
「約」という用語は、その後ろに続く数値の±20%の範囲を表す。一態様において、約という用語は、その後ろに続く数値の±10%の範囲を表す。一態様において、約という用語は、その後ろに続く数値の±5%の範囲を表す。
【0059】
「アフィニティー」とは、ある分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的相互作用の総計の強さを指す。別段の表示がある場合を除き、本明細書において使用する場合、「結合アフィニティー」は、結合対のメンバー(例えば抗体結合部位と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティーを指す。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティーは、一般に、解離定数(kd)によって表すことができる。アフィニティーは、本明細書に記載する方法を含む、当技術分野において公知の一般的方法によって測定することができる。
【0060】
「抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)」という用語はFc受容体結合によって媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下で抗体Fc領域によって媒介される標的細胞の溶解を指す。ADCCは、一態様では、新鮮単離PBMC(末梢血単核球)などのエフェクター細胞の存在下または単球もしくはNK(ナチュラルキラー)細胞のようなバフィーコートからの精製エフェクター細胞の存在下で、標的を発現する赤血球系細胞(例えば組換え標的を発現するK562細胞)の調製物を、Fc領域を含むヘテロ二量体で処理することによって測定される。標的細胞をCr-51で標識してから、ヘテロ二量体と共にインキュベートする。標識細胞をエフェクター細胞と共にインキュベートし、放出されたCr-51について上清を分析する。対照には、標的内皮細胞をヘテロ二量体なしでエフェクター細胞と共にインキュベートすることを含める。FcγRIおよび/またはFcγRIIAを組換え発現する細胞または(本質的にFcγRIIIAを発現する)NK細胞などのFcγ受容体発現細胞への結合を測定することによって、ADCCを媒介する初期段階を誘発するヘテロ二量体の能力を調べる。好ましい一態様では、NK細胞上のFcγRへの結合を測定する。
【0061】
「に結合する」という用語は、結合部位のその標的への結合、例えば抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとを含む抗体結合部位のそれぞれの抗原への結合を表す。この結合は、例えばBIAcore(登録商標)アッセイ(GE Healthcare、スウェーデン、ウプサラ)を使って、決定することができる。
【0062】
例えば、BIAcore(登録商標)アッセイの考えうる一態様では、抗原を表面に結合し、表面プラズモン共鳴(SPR)によって抗体結合部位の結合を測定する。結合のアフィニティーは、ka(会合定数:複合体を形成する会合に関する速度定数)、kd(解離定数:複合体の解離に関する速度定数)およびKD(kd/ka)の各項によって定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さおよび解離挙動に関して、リファレンスの応答シグナルと直接比較することができる。
【0063】
「CH1ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置118からEU位置215まで(EUナンバリングシステム)にわたる部分を表す。一態様において、CH1ドメインは
のアミノ酸配列を有する。
【0064】
「CH2ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置231からEU位置340まで(KabatによるEUナンバリングシステム)にわたる部分を表す。一態様において、CH2ドメインは
のアミノ酸配列を有する。CH2ドメインは、別のドメインと密接には対を形成していない点でユニークである。むしろ、無傷のネイティブFc領域の2つのCH2ドメインの間には、2つのN結合型分岐糖質鎖が差し挟まれている。この糖質はドメイン-ドメイン対形成の代用となって、CH2ドメインの安定化に役立つことができると推測されている。Burton, Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206。
【0065】
「CH3ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置341からEU位置446までにわたる部分を表す。一態様において、CH3ドメインは
のアミノ酸配列を有する。
【0066】
抗体またはFc領域の「クラス」は、重鎖またはそのフラグメントが保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要クラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分割することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0067】
「COMP」という用語は、5つのサブユニット(単量体)によって形成される細胞外非コラーゲン性マトリックスタンパク質である軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(
cartilage
oligomeric
matrix
protein)を表す。オリゴマー化は該タンパク質のコイルドコイルドメインによってトリガーされて、五本鎖コイルとジスルフィド結合とによる五量体の形成をもたらす。これには該タンパク質の64個のN末端アミノ酸残基が関与することになる(US 2016/0176944)。
【0068】
COMPは、そのオリゴマー化ドメインを含めて、1996年に記載されており(Efimov et al.;Proteins:Structure,Function,and Genetics 24:259-262(1996))、オリゴマー化ドメインは、ラットCOMPの場合、アミノ酸配列
または(ラット、残基27〜72)
である。
【0069】
COMPポリペプチドのアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号NP-000086.2として寄託されている。
【0070】
ヒトCOMPドメインは、アミノ酸配列
を有する。
【0071】
本発明において使用されるCOMPドメインは、アミノ酸配列
を有する。
【0072】
本明細書において使用する「細胞障害性作用物質」という用語は、細胞機能を阻害もしくは妨げ、かつ/または細胞の死または破壊を引き起こす物質を指す。細胞障害性作用物質としては、放射性同位体(例えばAt-211、I-131、I-125、Y-90、Re-186、Re-188、Sm-153、Bi-212、P-32、Pb-212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えばメトトレキサート、アドリアマイシン(adriamicin)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害性作用物質;酵素およびそれらのフラグメント、例えば核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば細菌由来、真菌由来、植物由来、または動物由来の低分子量毒素または酵素活性毒素(それらのフラグメントおよび/またはバリアントを含む);ならびに以下に開示するさまざまな抗腫瘍作用物質または抗がん作用物質が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0073】
「補体依存性細胞傷害(CDC)」という用語は、補体の存在下で、本明細書において報告する抗体のFc領域によって誘発される細胞の溶解を指す。CDCは、一態様では、標的を発現するヒト内皮細胞を、補体の存在下で、ヘテロ二量体で処理することによって測定される。一態様では、細胞をカルセインで標識する。ヘテロ二量体が、30μg/mlの濃度で20%またはそれ以上の標的細胞の溶解を誘発するのであれば、CDCが見いだされる。補体因子C1qへの結合はELISAにおいて測定することができる。そのようなアッセイでは、原則として、ある濃度範囲のヘテロ二量体でELISAプレートをコーティングし、そこに精製ヒトC1qまたはヒト血清を加える。C1q結合は、C1qに対する抗体とそれに続くペルオキシダーゼ標識コンジュゲートによって検出される。結合の検出(最大結合Bmax)は、ペルオキシダーゼ基質ABTS(登録商標)(2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホネート])に関して、405nmにおける光学密度(OD405)として測定される。
【0074】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指し、それが由来する抗体クラスによってさまざまである。抗体エフェクター機能の例として、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC); Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0075】
Fc受容体結合依存的エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特殊化した細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介されうる。Fc受容体は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体の貪食による抗体被覆病原体の除去と、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)による赤血球およびFc領域を提示する他のさまざまな細胞標的(例えば腫瘍細胞)の溶解とを、どちらも媒介することが示されている(例えばVan de Winkel, J.G. and Anderson, C.L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524参照)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するそれぞれの特異性によって規定され、IgGタイプのFc領域に対するFc受容体はFcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えばRavetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492; Capel, P.J., et al, Immunomethods 4 (1994) 25-34; de Haas, M., et al, J. Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341; Gessner, J.E., et al, Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
【0076】
IgGタイプの抗体のFc領域に対する受容体(FcγR)の架橋は、貪食、抗体依存性細胞性細胞傷害、および炎症性メディエーターの放出、ならびに免疫複合体クリアランスおよび抗体産生の調節を含む、多種多様なエフェクター機能の引き金を引く。ヒトでは、3つのFcγRクラスが特徴決定されており、それらは以下のとおりである。
- FcγRI(CD64)は、単量体IgGに高いアフィニティーで結合し、マクロファージ、単球、好中球および好酸球上に発現する。アミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、およびP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つにおけるIgGのFc領域中の改変は、FcγRIへの結合を低減する。IgG1およびIgG4中に置換された233〜236番目のIgG2残基は、FcγRIへの結合を10
3分の1に低減し、抗体感作赤血球細胞に対するヒト単球応答を排除した(Armour, K.L., et al, Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
- FcγRII(CD32)は、複合体化したIgGに、中〜低アフィニティーで結合し、広く発現している。この受容体は2つのサブタイプFcγRIIAおよびFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、死滅に関与する多くの細胞(例えばマクロファージ、単球、好中球)に見いだされ、死滅プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすと思われ、B細胞、マクロファージならびに肥満細胞および好酸球上に見いだされる。これは、B細胞上では、さらなる免疫グロブリン産生および例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制する機能を果たすようである。FcγRIIBは、マクロファージ上では、FcγRIIAによって媒介される貪食を阻害するように作用する。このB型は、好酸球および肥満細胞上では、IgEがその別個の受容体に結合することによるこれらの細胞の活性化を抑制するのに役立ちうる。FcγRIIAに対する結合の低減は、例えばアミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292、およびK414(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つに突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体に見いだされる。
- FcγRIII(CD16)は中〜低アフィニティーでIgGに結合し、2つのタイプが存在する。FcγRIIIAはNK細胞、マクロファージ、好中球ならびに一部の単球およびT細胞上に見いだされ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは好中球に高発現している。FcγRIIIAへの結合の減少は、例えばアミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、およびD376(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つに突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体に見いだされる。
【0077】
Fc受容体に対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の突然変異部位ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
【0078】
作用物質、例えば薬学的製剤の「有効量」とは、所望の治療結果または予防結果を達成するのに、必要な投薬量および期間で、有効な量を指す。
【0079】
「エピトープ」という用語は、所与の標的のうち、その標的と結合部位との間の特異的結合に要求される部分を指す。エピトープは、連続的である場合、すなわち標的中に存在する隣り合った構造要素によって形成される場合もあるか、または、不連続である場合、すなわち標的の一次配列中では、例えば標的としてのタンパク質のアミノ酸配列中では、異なる位置にあるが、体液などの自然環境中で標的がとる三次元構造中では近接している構造要素によって形成される場合もある。
【0080】
本明細書において使用する「Fc受容体」という用語は、受容体に付随する細胞質ITAM配列の存在を特徴とする活性化受容体を指す(例えばRavetch, J.V. and Bolland, S., Annu. Rev. Immunol. 19 (2001) 275-290参照)。そのような受容体はFcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIAである。「FcγRの結合がない」という用語は、10μg/mlの抗体濃度において、NK細胞への本明細書において報告する抗体の結合が、WO 2006/029879において報告されている抗OX40L抗体LC.001について見いだされる結合の10%またはそれ未満であることを表す。
【0081】
IgG4は低減したFcR結合を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。ただし、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc糖質の喪失)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434、およびHis435は、変更された場合、同様に低減したFcR結合を与える残基である(Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Lund, J., et al, FASEB J. 9 (1995) 115-119; Morgan, A., et al, Immunology 86 (1995) 319-324;およびEP 0 307 434)。
【0082】
「Fc領域」という用語は、本明細書では、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を画定するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を包含する。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226から、またはPro230から、またはAla231から、カルボキシル末端までにわたる。ただしFc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。
【0083】
本発明による多量体融合ポリペプチドにおける単量体融合ポリペプチドは、Fc領域を、一態様ではヒト由来のFc領域を含みうる。一態様において、Fc領域は、ヒト定常領域のすべての部分を含む。Fc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化、およびFc受容体結合に直接関与する。C1qへの結合は、Fc領域中の所定の結合部位によってもたらされる。そのような結合部位は、現在の当技術分野では公知であり、例えばLukas, T.J., et al, J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560; Brunhouse, R., and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917; Burton, D.R., et al, Nature 288 (1980) 338-344; Thommesen, J.E., et al, Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004; Idusogie, E.E., et al, J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184; Hezareh, M., et al, J. Virol. 75 (2001) 12161-12168; Morgan, A., et al, Immunology 86 (1995) 319-324;およびEP 0 307 434に記載されている。そのような結合部位は、例えばL234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、およびP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)である。サブクラスIgG1、IgG2およびIgG3の抗体が、通常、補体活性化、C1q結合およびC3活性化を示すのに対し、IgG4は補体系を活性化せず、C1qに結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者には周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて画定される。一態様において、Fc領域はヒトFc領域である。一態様において、Fc領域は、突然変異S228Pおよび/またはL235Eおよび/またはP329G(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG4サブクラスのものである。一態様において、Fc領域は、突然変異L234AおよびL235Aを含み、任意でP329Gを含む(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)、ヒトIgG1サブクラスのものである。
【0084】
「ヒンジ領域」という用語は、野生型抗体重鎖中でCH1ドメインとCH2ドメインとを接合している部分、例えばKabatのEUナンバーシステム(number system)で216番目あたりから230番目あたりまで、またはKabatのEUナンバーシステムで226番目あたりから230番目あたりまでを表す。他のIgGサブクラスのヒンジ領域は、IgG1サブクラス配列のヒンジ領域システイン残基との整列によって決定することができる。
【0085】
ヒンジ領域は、通常、同一のアミノ酸配列を有する2つのポリペプチドからなる二量体分子である。ヒンジ領域は、一般的には、約25個のアミノ酸残基を含み、かつ、フレキシブルであり、付随する標的結合部位が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は、3つのドメイン、すなわち上部(upper)、中央(middle)、および下部(lower)ヒンジドメインに細分することができる(例えばRoux, et al., J. Immunol. 161 (1998) 4083参照)。
【0086】
「野生型Fc領域」という用語は、自然に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一なアミノ酸配列を表す。野生型ヒトFc領域としては、ネイティブヒトIgG1Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、ネイティブヒトIgG2Fc領域、ネイティブヒトIgG3Fc領域、およびネイティブヒトIgG4Fc領域、ならびにその天然バリアントが挙げられる。
【0087】
「バリアント(ヒト)Fc領域」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸突然変異」によって「野生型」(ヒト)Fc領域アミノ酸配列とは異なっているアミノ酸配列を表す。一態様において、バリアントFc領域はネイティブFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有し、例えばネイティブFc領域中に約1〜約10個のアミノ酸突然変異、一態様では約1〜約5個のアミノ酸突然変異を有する。一態様において、(バリアント)Fc領域は野生型Fc領域と少なくとも約80%の相同性を有し、一態様において、バリアントFc領域は少なくとも約90%の相同性を有する。一態様において、バリアントFc領域は少なくとも約95%の相同性を有する。
【0088】
バリアント(ヒト)Fc領域は、含まれているアミノ酸突然変異によって規定される。したがって、例えばP329Gという用語は、親(野生型)Fc領域との比較でアミノ酸位置329にプロリンからグリシンへの突然変異を有するバリアントFc領域を表す(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)。野生型アミノ酸の実体は明記されていなくてもよく、その場合、上述のバリアントは329Gと呼ばれる。「突然変異」という用語は、天然アミノ酸への変化も非天然アミノ酸への変化も表す(例えばUS 6,586,207、WO 98/48032、WO 03/073238、US 2004/0214988、WO 2005/35727、WO 2005/74524、Chin, J.W., et al, J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 9026-9027; Chin, J.W. and Schultz, P.G., ChemBioChem 11 (2002) 1135-1137; Chin, J.W., et al, PICAS United States of America 99 (2002) 11020-11024; Wang, L. and Schultz, P.G., Chem. (2002) 1-10参照)。
【0089】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、本明細書では相互可換的に使用されて、ネイティブ抗体構造と実質的に類似する構造を有する抗体を指す。
【0090】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は、相互可換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を包含し、それらには、初代形質転換細胞とそこから派生する子孫とが継代数を問わずに包含される。子孫は、核酸内容物が親細胞と完全には同一でなくて、変異を含有してもよい。最初に形質転換された細胞において選別または選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異型子孫は、本明細書に包含される。
【0091】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の分子、例えば限定するわけではないが細胞障害性作用物質などにコンジュゲートされた、本明細書において報告する多量体融合ポリペプチドである。
【0092】
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物として、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えばヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、および齧歯類(例えばマウスおよびラット)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある特定の態様において、個体または対象はヒトである。
【0093】
「単離された」多量体融合ポリペプチド、すなわち五量体融合ポリペプチドは、その天然環境の構成要素から分離されたものである。いくつかの態様において、多量体融合ポリペプチドは、例えば電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えばイオン交換または逆相HPLC)による決定で、純度95%超または99%超まで精製される。純度を評価するための方法に関する総説として、例えばFlatman, S. et al, J. Chromatogr. B 848 (2007) 79-87を参照されたい。
【0094】
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、その核酸を通常含有する細胞に含まれている核酸分子が包含されるが、この核酸分子は染色体外に存在するか、その天然の染色体位置とは異なる染色体上の位置に存在する。
【0095】
「単量体融合ポリペプチドをコードする単離された核酸」とは、それぞれが単鎖ポリペプチドをコードする、核酸分子を指し、単一ベクター中または別々のベクター中のそのような核酸分子、および宿主細胞中の1つまたは複数の場所に存在するそのような核酸分子を包含する。
【0096】
「軽鎖」という用語は、ネイティブIgG抗体の短い方のポリペプチド鎖を表す。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの一方に割り当てることができる。
【0097】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、例えば天然の突然変異を含有しまたはモノクローナル抗体の産生時に生じ、存在量が一般に少量である、バリアント抗体などといった考えうるバリアント抗体を除けば、該集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、何か特定の方法による抗体の産生を必要とするとみなしてはならない。例えば本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定するわけではないがハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を用いる方法などといったさまざまな手法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的方法は、本明細書において説明する。
【0098】
「ネイキッド多量体融合ポリペプチド」とは、何らかの部分(例えば細胞障害性部分)または放射性ラベルにコンジュゲートされていない多量体融合ポリペプチドを指す。ネイキッド多量体融合ポリペプチドは薬学的製剤中に存在しうる。
【0099】
「ネイティブ抗体」とは、さまざまな構造を有する天然の免疫グロブリン分子を指す。例えばネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合された2本の同一軽鎖および2本の同一重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインともいう可変領域(VH)と、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)とを有し、第1定常ドメインと第2定常ドメインとの間にヒンジ領域が位置する。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインともいう可変領域(VL)と、それに続く定常軽鎖(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの一方に割り当てることができる。
【0100】
「添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通例含まれており、適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌、および/または当該治療製品の使用上の注意に関する情報を含んでいる、説明書を指すために使用される。
【0101】
「パラトープ」という用語は、所与の抗体分子のうち、標的と結合部位との間の特異的結合に必要な部分を指す。パラトープは、連続的である場合、すなわち結合部位中に存在する隣り合ったアミノ酸残基によって形成される場合もあるし、不連続である場合、すなわちアミノ酸残基の一次配列中では、例えばアミノ酸残基のCDRのアミノ酸配列中では、異なる位置にあるが、結合部位がとる三次元構造中では近接しているアミノ酸残基によって形成される場合もある。
【0102】
「ペプチド性リンカー」という用語は、天然起源および/または合成起源のリンカーを表す。ペプチド性リンカーは、20種類の天然アミノ酸を、ペプチド結合によって接続されるモノマービルディングブロックとする、アミノ酸の線状鎖からなる。この鎖は、1〜50個のアミノ酸残基、好ましくは1〜28個のアミノ酸残基、とりわけ好ましくは3〜25個のアミノ酸残基の長さを有する。ペプチド性リンカーは、反復アミノ酸配列または天然ポリペプチドの配列を含有しうる。ペプチド性リンカーは、単量体融合ポリペプチドのドメインが正しく折りたたまれることおよびドメインが適正に提示されることを可能にすることによって、それらのドメインがそれぞれの生物学的活性を発揮できることを保証する機能を有する。好ましくは、ペプチド性リンカーは、グリシン、グルタミン、および/またはセリン残基に富むように設計された「合成ペプチド性リンカー」である。これらの残基は、例えば、
などの、5個のアミノ酸までの小さな繰り返し単位で、配置される。この小さな繰り返し単位は、2〜5回繰り返されて、例えば
などのマルチマー単位を形成することができる。マルチマー単位のアミノ末端および/またはカルボキシ末端には、任意の天然アミノ酸を6個まで追加することができる。他の合成ペプチド性リンカーは、例えば、リンカー
中のセリンなどの、10〜20回繰り返される単一アミノ酸で構成され、アミノ末端および/またはカルボキシ末端に任意の天然アミノ酸をさらに6個まで含みうる。すべてのペプチド性リンカーは核酸分子によってコードすることができるので、組換え発現させることができる。リンカーはそれ自体がペプチドであるから、抗融合性ペプチド(antifusogenic peptide)は、2つのアミノ酸の間に形成されるペプチド結合によって、リンカーに接続される。
【0103】
「薬学的製剤」という用語は、そこに含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつその製剤を投与されることになる対象にとって許容できないほどに毒性である追加の構成成分を含有しない、調製物を指す。
【0104】
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0105】
本明細書において使用する場合、「処置(treatment)」(およびその文法上の変形、例えば「処置する(treat)」または「処置すること(treating)」)は、処置される個体の自然の過程を変更させようとする臨床的介入を指し、これは、予防のために行うか、臨床的病変の経過中に行うことができる。処置の望ましい効果としては、疾患の発生または再発を防止すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の縮減、転移の防止、疾患進行速度を減じること、疾患状態の改善または一時的軽減、および寛解または予後の改善が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発達を遅延させるためまたは疾患の進行を遅くするために使用される。
【0106】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体重鎖または抗体軽鎖のうち、抗原への抗体の結合に関与するドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似する構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)とを含んでいる(例えばKindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007) 91頁参照)。抗原結合特異性を付与するには単一のVHドメインまたはVLドメインで十分でありうる。さらにまた、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVHドメインまたはVLドメインを使ってそれぞれ相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって、単離することができる(例えばPortolano, S., et al, J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T., et al, Nature 352 (1991) 624-628参照)。
【0107】
本明細書において使用する「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させる能力を有する核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターも、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも包含する。ある特定のベクターは、それらが機能的に連結された核酸の発現を指示する能力を有する。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター」という。
【0108】
以下に、単量体融合ポリペプチドの具体的な形態を使って、本発明を例示する。これらは本発明を例示するために提示されるにすぎない。これを限定と解釈する必要はない。真の範囲は特許請求の範囲に記載される。
【0109】
II. COMPドメイン融合ポリペプチド
本発明は、少なくとも部分的には、SEQ ID NO:01のCOMPドメインを使って抗体由来の結合部位を多量体化させることができるという発見に基づいている。これらの多量体は良好な収率で生成することができる(COMP-FabおよびCOMP-IgG)。発現産物が示す凝集物および単量体のレベルは低い。
【0110】
本発明は、少なくとも部分的には、IgG抗体に基づいてヒトIgM様分子を再構築するのに、SEQ ID NO:01のCOMPドメインを使用することができるという発見に基づく。
【0111】
ヒト軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質のコイルドコイルドメインは五量体化ドメインである。SEQ ID NO:01のCOMPドメインは、完全長IgG抗体またはFabフラグメントを五量体化させるために使用できることがわかった。そこで、ノブ・イントゥ・ホール完全長ヒトIgG1抗体のノブ重鎖のC末端側に、ペプチド性リンカー、例えばG4Sリンカー(SEQ ID NO:03)を介して、SEQ ID NO:01のCOMPドメインを融合した。別のコンストラクトでは、ヒトFabフラグメントのCH1ドメインのC末端に、SEQ ID NO:01のCOMPドメインを融合した。
【0112】
本明細書において、抗体軽鎖可変ドメインと抗体重鎖可変ドメインの対によって形成される少なくとも1つの結合部位と、SEQ ID NO:01の(SEQ ID NO:01からなる)COMPドメインまたはその結合機能性フラグメントとをそれぞれが含む5つの(同一のまたは異なる)単量体融合ポリペプチドを含む、多量体融合ポリペプチドを開示する。
【0113】
本明細書において、抗体軽鎖可変ドメインと抗体重鎖可変ドメインの対によってそれぞれ形成される2つの結合部位と、SEQ ID NO:01の(SEQ ID NO:01からなる)COMPドメインまたはその結合機能性フラグメントとをそれぞれが含む5つの(同一のまたは異なる)単量体融合ポリペプチドを含む、多量体融合ポリペプチドを開示する。
【0114】
本明細書において、抗体軽鎖可変ドメインと抗体重鎖可変ドメインの対によってそれぞれが形成される2つまたはそれ以上の結合部位と、SEQ ID NO:01のCOMPドメインまたはその結合機能性フラグメントとをそれぞれが含む5つの(同一のまたは異なる)単量体融合ポリペプチドを含む、多量体融合ポリペプチドであって、各単量体中の両結合部位は互いに共有結合的にコンジュゲートされ、それらのうちの1つはCOMPドメインのN末端にコンジュゲートされている、多量体融合ポリペプチドも開示する。
【0115】
本明細書において、抗体軽鎖可変ドメインと抗体重鎖可変ドメインの対によってそれぞれが形成される2つまたはそれ以上の結合部位と、SEQ ID NO:01のCOMPドメインまたはその結合機能性フラグメントとをそれぞれが含む5つの(同一のまたは異なる)単量体融合ポリペプチドを含む、多量体融合ポリペプチドであって、各単量体中の1つの結合部位がCOMPドメインのN末端にコンジュゲートされ、1つの結合部位がCOMPドメインのC末端にコンジュゲートされている、多量体融合ポリペプチドも開示する。
【0116】
III. 結合部位
III.1. 抗体フラグメント由来の結合部位
ある特定の態様において、単量体融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。
【0117】
ある特定の態様において、単量体融合ポリペプチドの結合部位は抗体フラグメントである。抗体フラグメントとしては、Fab、Fab'、Fab'-SH、およびFvフラグメントが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある特定の抗体フラグメントに関する総説として、Hudson, P.J. et al, Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。scFvフラグメントの総説として、例えばPlueckthun, A., In; The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol.113, Rosenburg and Moore(eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp.269-315を参照されたい。また、WO 93/16185; US 5,571,894およびUS 5,587,458も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、延長したインビボ半減期を有するFabフラグメントに関する議論については、US 5,869,046を参照されたい。
【0118】
抗体フラグメントは「二重作用性Fab(Dual Acting Fab)」、すなわち「DAF」であることもできる(例えばUS 2008/0069820参照)。
【0119】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部または軽鎖可変ドメインの全部または一部を含む抗体フラグメントである。ある特定の態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(Domantis, Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えばUS 6,248,516参照)である。
【0120】
抗体フラグメントは、本明細書に記載するように、さまざまな手法によって、例えば限定するわけではないがインタクト抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞(例えば大腸菌またはファージ)による産生などによって、作製することができる。
【0121】
結合部位がFabである場合、Fabは通常のFab、CrossFab、または二重特異性Fab(DutaFab)であることができる。
【0122】
通常のFabの場合、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、それぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含む。これらのドメインの順序は、それらの連結および(機能的)結合部位の形成が可能である限り(すなわち妨げられない限り)、どの順序でもよい。
【0123】
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CLを含む。
【0124】
CrossFabの場合、結合ドメインの両部分は抗体可変ドメインと抗体定常ドメインの少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体定常ドメイン)とを含み、可変ドメインと定常ドメインとの対は互いに天然ではない形で連結していて、重鎖ドメインと軽鎖ドメインとのドメイン交差/交換によって得られる。これはVHとVLとの交換またはCH1とCLとの交換であることができる。これらのドメインの順序は、それらの連結および(機能的)結合部位の形成が可能である限り(すなわち妨げられない限り)、どの順序でもよい。
【0125】
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含む。
【0126】
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含む。
【0127】
コグネイト結合ドメインの連結は、CrossFabにおけるドメイン交換だけでなく、電荷の導入によって、さらに促進することができる。
【0128】
二重特異性Fab(DutaFab)の場合、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含み、該結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との相補的な対の中に2つの非オーバーラップパラトープを含み、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。
【0129】
一態様において、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。
【0130】
一態様において、結合部位の重鎖可変ドメインはヒトVH3ファミリー重鎖配列に基づき、結合部位の軽鎖可変ドメインはヒトVκ1ファミリー軽鎖配列に基づく。
【0131】
一態様において、結合部位の重鎖可変ドメインはヒトVH3ファミリー重鎖配列に基づき、結合部位の軽鎖可変ドメインはヒトVλ1ファミリー軽鎖配列に基づく。
【0132】
III.2. キメラ抗体由来およびヒト化抗体由来の結合部位
ある特定の態様において、単量体融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインは、キメラ抗体、例えばヒト化抗体に由来するキメラドメインである。
【0133】
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVR配列とFR配列は一般にVH(またはVL)中に、以下の順序で現れる: FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0134】
本明細書において使用する「超可変領域」または「HVR」という用語は、抗体可変ドメインのうち、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造上明確なループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触部」)を含有する領域のそれぞれを指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、3つはVHに(H1、H2、H3)、そして3つはVL(L1、L2、L3)中にある。
【0135】
HVRは、
(a) アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b) アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242);
(c) アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996));および
(d) アミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)および94〜102(H3)を含む(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ
を含む。
【0136】
別段の表示がある場合を除き、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えばFR残基)は、本明細書では、前掲のKabatらに従ってナンバリングされる。
【0137】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基とを含む抗体を指す。ある特定の態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質上すべてを含み、その可変ドメインでは、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質上すべてが非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質上すべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含みうる。抗体の、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0138】
ある特定の態様において、キメラ抗体はヒト化抗体である。通例、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティーを保ちつつヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR、(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つまたは複数の可変ドメインを含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば抗体の特異性またはアフィニティーを回復または改良するために、非ヒト抗体(例えばHVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0139】
ヒト化抗体およびそれらの作製方法については、例えばAlmagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633に総説があり、例えばRiechmann, I. et al, Nature 332 (1988) 323-329; Queen, C. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033; US 5,821,337、US 7,527,791、US 6,982,321およびUS 7,087,409; Kashmiri, S.V. et al, Methods 36 (2005) 25-34(特異性決定領域(SDR)移植に関する記載がある); Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498(「リサーフェイシング(resurfacing)」に関する記載がある); Dall'Acqua, W.F. et al, Methods 36 (2005) 43-60(「FRシャフリング」に関する記載がある);ならびにOsbourn, J. et al, Methods 36 (2005) 61-68およびKlimka, A. et al, Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチに関する記載がある)にも、さらに記載されている。
【0140】
ヒト化に使用しうるヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法を使って選択されるフレームワーク領域(例えばSims, M.J. et al., J. Immunol. 151(1993)2296-2308参照);特定サブグループの軽鎖または重鎖可変領域のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えばCarter, P. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(1992)4285-4289;およびPresta, L.G. et al, J. Immunol. 151(1993)2623-2632参照);ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えばAlmagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13(2008)1619-1633参照);およびFRライブラリーのスクリーニングによって得られるフレームワーク領域(例えばBaca, M. et al, J. Biol. Chem. 272(1997)10678-10684およびRosok, M.J. et al, J. Biol. Chem. 271(19969 22611-22618参照)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0141】
III.3. ヒト抗体由来の結合部位
ある特定の態様において、単量体融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインはヒト抗体に由来する。
【0142】
ヒト抗体は、当技術分野において公知のさまざまな手法を使って産生することができる。ヒト抗体は、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374およびLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459に概説されている。
【0143】
ヒト抗体は、抗原による攻撃に応答して無傷のヒト抗体またはヒト可変領域を有する無傷の抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製しうる。そのような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有しており、それらは内在性免疫グロブリン遺伝子座と置き換わっているか、または染色体外に存在するか、もしくはその動物の染色体にランダムに組み込まれている。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法に関する総説として、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23(2005)1117-1125を参照されたい。また、例えばXENOMOUSE(商標)技術が記載されているUS 6,075,181およびUS 6,150,584; HUMAB(登録商標)技術が記載されているUS 5,770,429; K-M MOUSE(登録商標)技術が記載されているUS 7,041,870; VELOCIMOUSE(登録商標)技術が記載されているUS 2007/0061900;免疫再構成マウスが記載されているWO 2007/131676も参照されたい。そのような動物によって生成された無傷の抗体からのヒト可変領域は、さらに改変されることができる。
【0144】
ヒト抗体はハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株については記載がある(例えばKozbor, D., J. Immunol. 133 (1984) 3001-3005; Brodeur, B.R. et al, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp.51-63;およびBoerner, P. et al, J. Immunol. 147 (1991) 86-95を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されたヒト抗体も、Li, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103(2006)3557-3562に記載されている。さらなる方法として、例えばUS 7,189,826(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生に関する記載がある)およびNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマに関する記載がある)に記載されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937およびVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191にも記載されている。
【0145】
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。そのような可変ドメイン配列は、次に、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための手法を以下に説明する。
【0146】
III.4. ライブラリー由来の抗体結合部位
ある特定の態様において、単量体融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインは、1種類または複数種類の所望の活性を有する抗体について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離される。
【0147】
例えば当技術分野では、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特徴を保有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするためのさまざまな方法が公知である。そのような方法は、例えばHoogenboom, H.R. et al, Methods in Molecular Biology 178 (2001) 1-37に総説があり、また例えばMcCafferty, J. et al, Nature 348 (1990) 552-554; Clackson, T. et al, Nature 352 (1991) 624-628; Marks, J.D. et al, J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597; Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175; Sidhu, S.S. et al, J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310; Lee, C.V. et al, J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093; Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;およびLee, C.V. et al, J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132に、さらに記載されている。
【0148】
ある特定のファージディスプレイ法では、Winter, G. et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455に記載されているように、VH遺伝子とVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個別にクローニングし、それらをファージライブラリーでランダムに組み換えた後、そのライブラリーを抗原結合性ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的には、抗体フラグメントを、単鎖Fv(scFv)フラグメントとして、またはFabフラグメントとして、ディスプレイする。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に対する高アフィニティー結合部位を与える。あるいは、Griffiths, A.D. et al, EMBO J. 12 (1993) 725-734に記載されているように、免疫化を一切行わずに、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングして、広範な非自己抗原に対する抗体、そしてまた自己抗原に対する抗体の、単一の供給源とすることもできる。最後に、Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227(1992)381-388に記載されているように、幹細胞から非再編成V遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使って高度に可変なCDR3領域をコードすると共に、インビトロで再編成を行うことにより、ナイーブライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーが記載されている特許公報としては、例えば、US 5,750,373、ならびにUS 2005/0079574、US 2005/0119455、US 2005/0266000、US 2007/0117126、US 2007/0160598、US 2007/0237764、US 2007/0292936、およびUS 2009/0002360が挙げられる。
【0149】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書では、ヒト抗体またはヒト抗体フラグメントとみなされる。
【0150】
IV. ヘテロ多(二)量体化ドメイン
COMPドメインが完全長抗体にコンジュゲートされる場合、該完全長抗体は非対称であり、かつ重鎖はヘテロ二量体を形成する。
【0151】
個々の重鎖が正しく会合してヘテロ二量体を形成することを確実にするためには、さまざまな技術を使用することができる。それらの一つは、いわゆる「ノブ・イン・ホール」工学である(例えばUS 5,731,168)。ヘテロ二量体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果を工作すること(WO 2009/089004); 2つまたはそれ以上のポリペプチドを架橋すること(例えばUS 4,676,980およびBrennan, M. et al, Science 229 (1985) 81-83参照);ロイシンジッパーを用いること(例えばKostelny, S.A. et al, J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553参照)によって、作製してもよい。
【0152】
ヘテロ二量体化をサポートすることを目的とするCH3改変のためのいくつかのアプローチは、例えば、WO 96/27011、WO 98/050431、EP 1870459、WO 2007/110205、WO 2007/147901、WO 2009/089004、WO 2010/129304、WO 2011/90754、WO 2011/143545、WO 2012/058768、WO 2013/157954、WO 2013/096291に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0153】
通例、当技術分野において公知のアプローチでは、1つの操作されたCH3ドメインを含む重鎖が同じ構造の別の重鎖とはもはやホモ二量体化できない(例えば、CH3操作第1重鎖は別のCH3操作第1重鎖とはもはやホモ二量体化できず、CH3操作第2重鎖は別のCH3操作第2重鎖とはもはやホモ二量体化できない)ように、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインをどちらも相補的に操作する。これにより、1つの操作CH3ドメインを含む重鎖は、相補的に操作されたCH3ドメインを含む別の重鎖とのヘテロ二量体化を強いられる。この態様のために、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインは、第1重鎖と第2重鎖とはヘテロ二量体化を強いられ、第1重鎖および第2重鎖は(例えば立体的理由で)もはやホモ二量体化することができないように、アミノ酸置換によって相補的に操作される。
【0154】
ヘテロ二量体のCH3ドメインは、例えばWO 96/027011、Ridgway, J.B., et al, Protein Eng. 9 (1996) 617-621;およびMerchant, A.M., et al, Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681にいくつか例を挙げて詳述されている「ノブ・イントゥ・ホール」技術によって、変更されることができる。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面が変更されて、これら2つのCH3ドメインを含有する両重鎖のヘテロ二量体化が増大する。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれは「ノブ」であることができ、その場合、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al, J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収量を増加させる。
【0155】
好ましい一態様において、ヘテロ二量体は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン中にT366W突然変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメイン中にT366S、L368A、Y407V突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。例えば「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C突然変異を導入し、「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C突然変異またはS354C突然変異を導入することなどによって、CH3ドメイン間に追加の鎖間ジスルフィド架橋を使用することもできる(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech.16 (1998) 677-681)。したがって、別の好ましい一態様において、ヘテロ二量体は、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を含み、かつ2つのCH3ドメインの他方にE356C、T366S、L368A、およびY407V突然変異を含むか、またはヘテロ二量体は、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を含み、かつ2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、およびY407V突然変異を含む(一方のCH3ドメイン中の追加Y349C突然変異と他方のCH3ドメイン中の追加E356CまたはS354C突然変異とが鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0156】
ただし、上記に代えてまたは上記に加えて、EP 1 870 459 A1に記載されている他のノブ・イン・ホール技術を使用することもできる。一態様において、ヘテロ二量体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を含み、かつ「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0157】
一態様において、ヘテロ二量体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、およびY407V突然変異を含み、さらに「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0158】
一態様において、ヘテロ二量体は、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を、また2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、およびY407V突然変異を含むか、ヘテロ二量体は、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を、また2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368AおよびY407V突然変異を含み、さらに「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0159】
「ノブ・イントゥ・ホール技術」とは別に、重鎖のCH3ドメインを改変してヘテロ二量体化を強制するための他の方法も、当技術分野では公知である。これらの技術、とりわけWO 96/27011、WO 98/050431、EP 1870459、WO 2007/110205、WO 2007/147901、WO 2009/089004、WO 2010/129304、WO 2011/90754、WO 2011/143545、WO 2012/058768、WO 2013/157954、およびWO 2013/096291に記載されているものは、ここでは、ヘテロ二量体との組み合わせで、「ノブ・イントゥ・ホール技術」の代替的選択肢として考えられる。
【0160】
一態様において、第1重鎖および第2重鎖のヘテロ二量体化をサポートするために、EP 1870459に記載のアプローチが使用される。このアプローチは、両者間、すなわち第1重鎖と第2重鎖との間のCH3/CH3ドメイン境界面における特別なアミノ酸位置に、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することに基づく。
【0161】
したがって、この態様は、抗体の三次構造において、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインとが、それぞれの抗体CH3ドメイン間に位置する境界面を形成し、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、単量体重鎖の三次構造において、それぞれ、該境界面内に位置する一組のアミノ酸を含み、一方の重鎖のCH3ドメイン中の境界面に位置する一組のアミノ酸のうち、第1のアミノ酸は正電荷アミノ酸で置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメイン中の境界面に位置する一組のアミノ酸のうち、第2のアミノ酸は負荷電アミノ酸で置換されている、CH3-CH3ヘテロ二量体に関する。この態様によるヘテロ二量体を、本明細書では、「CH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチド」ともいう(「+/-」はそれぞれのCH3ドメインに導入された反対電荷を有するアミノ酸を意味する)。
【0162】
CH3(+/-)操作ヘテロ二量体の一態様において、正荷電アミノ酸はK、RおよびHから選択され、負荷電アミノ酸はEまたはDから選択される。
【0163】
CH3(+/-)操作ヘテロ二量体の一態様において、正荷電アミノ酸はKおよびRから選択され、負荷電アミノ酸はEまたはDから選択される。
【0164】
CH3(+/-)操作ヘテロ二量体の一態様において、正荷電アミノ酸はKであり、負荷電アミノ酸はEである。
【0165】
CH3(+/-)操作ヘテロ二量体の一態様において、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、409番目のアミノ酸RはDで置換され、番目のアミノ酸KはEで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、399番目のアミノ酸DはKで置換され、357番目のアミノ酸EはKで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0166】
ヘテロ二量体の一態様では、第1重鎖と第2重鎖のヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2013/157953に記載のアプローチが使用される。該ヘテロ二量体の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。該ヘテロ二量体化の別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換され、351番目のアミノ酸LはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0167】
ヘテロ二量体の別の態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換され、351番目のアミノ酸LはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。加えて、次に挙げる置換のうちの少なくとも1つが他方の重鎖のCH3ドメインに含まれている:349番目のアミノ酸YがEで置換されている置換、349番目のアミノ酸YがDで置換されている置換、および368番目のアミノ酸LがEで置換されている置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。一態様において、368番目のアミノ酸LはEで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0168】
ヘテロ二量体の一態様では、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2012/058768に記載のアプローチが使用される。一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはYで置換され、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはAで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。別の一態様では、上述の置換に加えて、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、411番目(元々はT)、399番目(元々はD)、400番目(元々はS)、405番目(元々はF)、390番目(元々はN)および392番目(元々はK)のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。好ましい置換は、
- N、R、Q、K、D、E、およびWから選択されるアミノ酸による411番目のアミノ酸Tの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- R、W、YおよびKから選択されるアミノ酸による399番目のアミノ酸Dの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- E、D、R、およびKから選択されるアミノ酸による400番目のアミノ酸Sの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- I、M、T、S、V、およびWから選択されるアミノ酸による405番目のアミノ酸Fの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- R、K、およびDから選択されるアミノ酸による390番目のアミノ酸Nの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、ならびに
- V、M、R、L、F、およびEから選択されるアミノ酸による392番目のアミノ酸Kの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)
である。
【0169】
(WO 2012/058768に従って操作された)別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはYで置換され、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはVで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。ヘテロ二量体の別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはAで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。最後に挙げた態様では、該他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、392番目のアミノ酸KはEで置換され、411番目のアミノ酸TはEで置換され、399番目のアミノ酸DはRで置換され、400番目のアミノ酸SはRで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0170】
一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/143545に記載のアプローチが使用される。一態様において、両重鎖のCH3ドメインにおけるアミノ酸改変は、368番目および/または409番目に導入される(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0171】
一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/090762に記載のアプローチが使用される。WO 2011/090762は「ノブ・イントゥ・ホール」技術によるアミノ酸改変に関する。CH3(KiH)操作ヘテロ二量体の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはWで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはAで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。CH3(KiH)操作ヘテロ二量体の別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはYで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはTで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0172】
IgG2アイソタイプである一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/090762に記載のアプローチが使用される。
【0173】
一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2009/089004に記載のアプローチが使用される。一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、392番目のアミノ酸KまたはNは負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、399番目のアミノ酸D、356番目のアミノ酸EもしくはD、または357番目のアミノ酸Eは正荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではKまたはRで、好ましい一態様ではKで)置換されている(好ましい一態様では399番目または356番目のアミノ酸がKで置換されている)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。さらなる一態様では、前述の置換に加えて、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、409番目のアミノ酸KまたはRは負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。さらに一つの態様では、前述の置換に加えて、または前述の置換に代えて、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、439番目のアミノ酸Kおよび/または370番目のアミノ酸Kは互いに独立して負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0174】
一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2007/147901に記載のアプローチが使用される。一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、253番目のアミノ酸KはEで置換され、282番目のアミノ酸DはKで置換され、322番目のアミノ酸KはDで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、239番目のアミノ酸DはKで置換され、240番目のアミノ酸EはKで置換され、292番目のアミノ酸KはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0175】
一態様において、ヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2007/110205に記載のアプローチが使用される。
【0176】
本明細書において報告するすべての局面の一態様において、ヘテロ二量体は、IgGタイプ抗体の定常ドメイン構造を有する。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、ヘテロ二量体は、該ヘテロ二量体が、ヒトサブクラスIgG1のFc領域、または突然変異L234AおよびL235Aならびに任意でP329Gを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、ヘテロ二量体は、該ヘテロ二量体がヒトサブクラスIgG2のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、ヘテロ二量体は、該ヘテロ二量体がヒトサブクラスIgG3のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、ヘテロ二量体は、該ヘテロ二量体が、ヒトサブクラスIgG4のFc領域、または追加の突然変異S228PおよびL235Eならびに任意でP329Gを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域を含むことを特徴とする。
【0177】
V. 組換えの方法および組成物
多量体融合ポリペプチド含有抗体由来結合部位様の抗体は、例えばUS 4,816,567に記載されている組換えの方法および組成物を使って産生しうる。一態様では、本明細書に記載する単量体融合ポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。さらなる一態様では、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる一態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一態様において、宿主細胞は真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球系細胞(例えばY0、NS0、Sp2/0細胞)である。一態様では、多量体融合ポリペプチドを作製する方法であって、上記で提供した多量体融合ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、多量体融合ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程、および、任意で、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から多量体融合ポリペプチドを回収する工程を含む、方法が提供される。
【0178】
多量体融合ポリペプチドを組換え産生するためには、抗体をコードする核酸、例えば上述のものを単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は従来の方法を使って容易に産生しうる。
【0179】
多量体融合ポリペプチドをコードするベクターのクローニングまたは発現のための適切な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば、多量体融合ポリペプチドは、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要でない場合は特に、細菌中で産生しうる。細菌における抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、例えばUS 5,648,237、US 5,789,199およびUS 5,840,523を参照されたい(大腸菌における抗体フラグメントの発現についての記載があるCharlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology、Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp.245-254も参照されたい)。発現後に、多量体融合ポリペプチドを細菌細胞ペーストから可溶性画分に単離して、さらに精製することができる。
【0180】
原核生物だけでなく、糸状菌または酵母などの真核微生物も、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する多量体融合ポリペプチドの産生をもたらす真菌株および酵母株を含めて、多量体融合ポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主である(Gerngross, T.U., Nat. Biotech.22 (2004) 1409-1414; Li, H. et al, Nat. Biotech.24 (2006) 210-215参照)。
【0181】
グリコシル化された多量体融合ポリペプチドを発現させるための適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎生物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎生物細胞の例として、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と一緒に使用しうるバキュロウイルス株は、数多く同定されている。
【0182】
植物細胞培養物を宿主として用いることもできる(例えばUS 5,959,177、US 6,040,498、US 6,420,548、US 7,125,978、およびUS 6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術に関する記載がある)参照)。
【0183】
脊椎動物細胞も宿主として使用しうる。例えば、懸濁状態での成長に適応した哺乳動物細胞株は役立ちうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(Graham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74に記載の293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252などに記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);Mather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68などに記載のTRI細胞; MRC5細胞;およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株として、DHFR
- CHO細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説としては、例えばYazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C.(ed.), Humana Press, Totowa, NH (2004) pp.255-268を参照されたい。
【0184】
VI. アッセイ
本明細書において提供する多量体融合ポリペプチドは、ポリペプチドのその標的への結合を決定するための当技術分野において公知のさまざまなアッセイによって、同定すること、スクリーニングすること、またはそれらの物理的/化学的特性および/もしくは生物学的活性を特徴決定することができる。
【0185】
VII. イムノコンジュゲート
本発明は、1つまたは複数の細胞障害性作用物質、例えば化学療法剤または化学療法薬、成長阻害性作用物質、毒素(例えばタンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物由来の酵素活性毒素、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書において報告する多量体融合ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートも提供する。
【0186】
一態様において、イムノコンジュゲートは、多量体融合ポリペプチドが、以下に限定するわけではないが以下を含む1つまたは複数の薬物にコンジュゲートされている、多量体融合ポリペプチド-薬物コンジュゲートである:メイタンシノイド(US 5,208,020、US 5,416,064およびEP 0 425 235 B1参照);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(US 5,635,483、US 5,780,588、およびUS 7,498,298参照);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(US 5,712,374、US 5,714,586、US 5,739,116、US 5,767,285、US 5,770,701、US 5,770,710、US 5,773,001およびUS 5,877,296; Hinman, L.M. et al, Cancer Res. 53 (1993) 3336-3342;およびLode, H.N. et al, Cancer Res. 58 (1998) 2925-2928参照);アントラサイクリン、例えばダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz, F. et al, Curr. Med. Chem. 13 (2006) 477-523; Jeffrey, S.C. et al, Bioorg. Med. Chem. Lett. 16 (2006) 358-362; Torgov, M.Y. et al, Bioconjug. Chem. 16 (2005) 717-721; Nagy, A. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 829-834; Dubowchik, G.M. et al, Bioorg. & Med. Chem. Letters 12 (2002) 1529-1532; King, H.D. et al, J. Med. Chem. 45 (20029 4336-4343;およびUS 6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン類、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;およびCC1065。
【0187】
別の一態様において、イムノコンジュゲートは、以下に限定するわけではないが以下を含む酵素活性毒素またはそのフラグメントにコンジュゲートされた、本明細書において報告する多量体融合ポリペプチドを含む:ジフテリア毒素A鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害因子、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害因子、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類。
【0188】
別の一態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートが形成されるように放射性原子にコンジュゲートされた、本明細書において報告する多量体融合ポリペプチドを含む。放射性コンジュゲートの作製にはさまざまな放射性同位体を用いることができる。例として、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばTC
99mまたはI
123を含むか、核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られている)用のスピンラベル、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄を含みうる。
【0189】
多量体融合ポリペプチドと細胞障害性作用物質のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジプイミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などといった、さまざまな二官能性タンパク質カップリング剤を使って作製しうる。例えばリシンイムノトキシンは、Vitetta, E.S. et al., Science 238 (1987) 1098-1104に記載されているように調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、単量体融合ポリペプチドに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするための例示的キレート剤である(WO 94/11026参照)。リンカーは、細胞における細胞障害性薬の放出を容易にする「切断可能リンカー」でありうる。例えば酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari, R.V. et al., Cancer Res. 52 (1992) 127-131;US 5,208,020)を使用しうる。
【0190】
本明細書におけるイムノコンジュゲートでは、架橋試薬を使って調製された、例えば限定するわけではないが(Pierce Biotechnology, Inc.、米国、イリノイ州ロックフォードから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を使って調製された、上述のコンジュゲートが特に考えられるが、それらに限定されるわけではない。
【0191】
VIII. 診断および検出のための方法および組成物
ある特定の態様において、本明細書において提供する多量体融合ポリペプチドはいずれも、生物学的試料におけるその標的の存在を検出するのに役立つ。本明細書において使用する「検出する」という用語は、定量的検出または定性的検出を包含する。ある特定の態様において、生物学的試料は血液、血清、血漿、細胞、または組織を含む。
【0192】
一態様では、診断方法または検出方法に使用するための、多量体融合ポリペプチドが提供される。さらなる一局面では、生物学的試料における多量体融合ポリペプチドの標的の存在を検出する方法が提供される。ある特定の態様において、本方法は、生物学的試料を、本明細書に記載の多量体融合ポリペプチドと、多量体融合ポリペプチドのその標的への結合を許容する条件下で、接触させる工程、および多量体融合ポリペプチドとその標的との間に複合体が形成されるかどうかを検出する工程を含む。そのような方法はインビトロ法またはインビボ法でありうる。一態様において、多量体融合ポリペプチドは、該多量体融合ポリペプチドによる治療に適格な対象を選択するために使用される。
【0193】
ある特定の態様では、標識された多量体融合ポリペプチドが提供される。ラベルとしては、直接的に検出されるラベルまたは部分(例えば蛍光ラベル、発色団ラベル、高電子密度ラベル、化学発光ラベル、および放射性ラベル)、ならびに例えば酵素反応または分子相互作用などによって間接的に検出される部分、例えば酵素またはリガンドが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例示的ラベルとして、放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3H、および
131I、発蛍光団、例えば希土類キレート化合物またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を使って色素前駆体を酸化する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼまたはマイクロペルオキシダーゼと共役させた複素環オキシダーゼ、例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定フリーラジカルなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0194】
IX. 薬学的製剤
本明細書に記載する多量体融合ポリペプチドの薬学的製剤は、所望の純度を有するそのような多量体融合ポリペプチドを1種類または複数種類の任意選択の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.)(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度において受容者にとって一般に無毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖、二糖、および他の糖質、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)などがあるが、それらに限定されるわけではない。本明細書における、例示的な薬学的に許容される担体としては、間質薬物分散剤、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)が、さらに挙げられる。rhuPH20を含むある特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は、US 2005/0260186およびUS 2006/0104968に記載されている。一局面では、sHASEGPが、1種類または複数種類の追加グリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと併用される。
【0195】
例示的な凍結乾燥抗体製剤はUS 6,267,958に記載されている。水性抗体製剤としてはUS 6,171,586およびWO 2006/044908に記載されているものが挙げられ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0196】
本明細書における製剤は、処置される特定適応症の必要に応じて、2種類以上の活性成分、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有しうる。そのような活性成分は、適宜、意図した目的に有効な量で組み合わされて存在する。
【0197】
活性成分は、例えばコアセルベーション法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入するか、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に封入するか、またはマクロエマルションに封入することができる。そのような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16
th, Osol, A. (ed.)(1980)に開示されている。
【0198】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、単量体融合ポリペプチドを含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスであって、マトリックスがフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態にある、半透過性マトリックスが挙げられる。
【0199】
インビボ投与に使用される製剤は一般に滅菌状態にある。滅菌性は例えば滅菌濾過膜による濾過などによって容易に達成することができる。
【0200】
本明細書において言及するあらゆる文献(科学文献、書物、または特許)は参照により本明細書に組み入れられる。
【0201】
以下の実施例、配列、および図面は本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。記載した手法には、本発明の要旨から逸脱することなく、改変を加えることができると理解される。
【実施例】
【0203】
本発明の方法および組成物の以下の実施例は例示のために提供される。上述の一般的説明を考慮すれば、他にもさまざまな態様を実施しうると理解される。
【0204】
材料および方法
組換えDNA法
Sambrook, J. et al, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているように、標準的方法を使ってDNAをマニピュレートした。分子生物学的試薬は製造者の説明書に従って使用した。
【0205】
遺伝子およびオリゴヌクレオチドの合成
所望の遺伝子セグメントは、Geneart GmbH(ドイツ、レーゲンスブルク)において、化学合成によって調製された。合成された遺伝子フラグメントを増殖/増幅用の大腸菌(E. coli)プラスミドにクローニングした。サブクローニングされた遺伝子フラグメントのDNA配列をDNAシークエンシングによって検証した。あるいは、短い合成DNAフラグメントを、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドのアニーリングによって集合させるか、PCRによって集合させた。各オリゴヌクレオチドは、metabion GmbH(ドイツ、プラネック-マルティンストリート)によって調製された。
【0206】
試薬類
市販の化学品、抗体、およびキットはすべて、別段の言明がある場合を除き、製造者のプロトコールに従って、提供された製品をそのまま使用した。
【0207】
実施例1
COMP-Fab用の発現プラスミドの構築
抗VEGF-Aモノクローナル抗体フラグメント(Fab)をコードする核酸(すなわち重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメント)を遺伝子合成によって産生した。
【0208】
重鎖フラグメント-COMP融合ポリペプチド(SEQ ID NO:25)をコードする核酸および軽鎖フラグメント(SEQ ID NO:26)をコードする核酸をそれぞれ1つの発現ベクター(すなわち2つのベクター)にクローニングした。
【0209】
正しい配列であることを配列決定によって決定した。
【0210】
次に挙げる機能的要素を含む各転写単位を使用した。
- イントロンAを含むヒトサイトメガロウイルスからの前初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
- ヒト重鎖免疫グロブリン5’-非翻訳領域(5’UTR)、
- マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
- それぞれのポリペプチドをコードする核酸、および
- ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0211】
基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、発現させようとする所望の遺伝子を含む発現単位/カセットの他に、
- 大腸菌(E.coli)におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
- 大腸菌におけるアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
【0212】
実施例2
COMP-Fabの発現
懸濁培養に適応したHEK293F(FreeStyle 293-F細胞、Invitrogen)細胞で一過性発現を行った。
【0213】
トランスフェクション前に、200μgのプラスミドDNA(100μgの各プラスミド)を、予熱(水浴、37℃)したOpti-MEM(Gibco)で、10mlの最終体積に希釈した。その溶液を穏やかに混合し、最長5分間、室温でインキュベートした。次にPEIproトランスフェクション試薬を、DNA-OptiMEM溶液に加えた。その後、その溶液を穏やかに混合し、15〜20分間、室温でインキュベートした。混合物の全量を、400mlのHEK細胞培養体積で、1L振とうフラスコに加えた。
【0214】
37℃、7%CO
2、湿度85%、135rpmで7日間、インキュベート/振とうする。
【0215】
上清を、2,000rpm、4℃で10分にわたる1回目の遠心分離工程によって収穫した。次に、上清を新しい遠心フラスコに移して、4,000rpm、4℃で20分にわたる2回目の遠心分離を行った。その後、無細胞上清を0.22μmボトルトップフィルタで濾過し、冷凍庫(-20℃)で保存した。
【0216】
定量には250μlの上清を使用した。上清中のCOMP-Fabの量は58.5mgであった。
【0217】
実施例3
COMP-Fab五量体の精製
滅菌濾過した抗体含有培養上清を2つのクロマトグラフィー工程によって精製した。
【0218】
PBS(1mM KH
2PO
4、10mM Na
2HPO
4、137mM NaCl、2.7mM KCl)、pH7.4で平衡化したKappaSelect樹脂(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、Fab多量体を捕捉した。結合していないタンパク質を平衡緩衝液で洗浄することによって除去し、抗体を25mMクエン酸緩衝液、pH3.0で回収し、溶出後直ちに、1Mトリス塩基、pH9.0でpH6.0に中和した。それぞれのクロマトグラムを図1に示す。フラクションA1〜C1をプールし、Amicon超遠心フィルタユニットで濃縮した。
【0219】
HiLoad 26/60 Superdex 200(商標)(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーを、第2精製工程として使用した。このサイズ排除クロマトグラフィーは20mMヒスチジン緩衝液、0.14M NaCl、pH6.0中で行った。クロマトグラムを図2に示す。抗体含有フラクションB3〜D3を合わせて、-80℃で保存した。
【0220】
プールしたフラクションを、CaliperのLabChip GXII Systemを使って非還元条件下および還元条件下で分析し、COMP-Fabの組成を確認した(図3)。
【0221】
試料を濃縮し、分析用SECで分析した。
【0222】
精製された生成物の最終的な量は、五量体COMP-Fabが、濃度1.5mg/mlおよび純度100%で18.75mgであった。
【0223】
精製したCOMP-Fabを質量分析法でさらに分析し、理論的質量を実験的に確認することができた。
【0224】
実施例4
VEGF結合アッセイ
BIAcore T200機器(GE Healthcare)を使用し、表面プラズモン共鳴によって、結合を調べた。実験はすべて、ランニング緩衝液および希釈緩衝液としてHBS-P(10mM HEPES、140mM NaCl、0.05%PS20、pH7.4)を使用して、25℃で行った。標準的なアミンカップリング化学を使って組換えヒトVEGF R2(R&D Systems、#357-KD)をSeries S CM5 Sensor Chip(GE Healthcare)上に固定化することで、約9,500RUの表面密度にした。10nMのVEGF-A-121を、0.39nMから200nMまでの範囲のFab、IgG、またはCOMP-抗VEGF-Fab分子のいずれかの希釈系列と共に、プレインキュベートした。VEGF-A-121/抗VEGF抗体混合物を5μl/分の流量で60秒間、表面上に注入した。次に、10mMグリシン溶液(pH2.0)を60秒間注入した後、5mM NaOHを5μl/分の流量で60秒間注入することによって、表面を再生した。モック表面から得られた応答を差し引くことによってバルク屈折率差を補正した。ブランク注入を差し引いた(二重参照)。引き出された結合シグナル(レゾナンスユニットRU)を抗体濃度に対してプロットすることでIC
50値を算出した。
【0225】
Fabの場合、10nM VEGFにおけるIC
50は5nMと決定された(最大60%阻害)。
【0226】
IgGの場合、10nM VEGFにおけるIC
50は8nMと決定された(最大50%阻害)。アビディティ効果は結合曲線に対する強い影響を示した。
【0227】
COMP-Fabの場合、10nM VEGFにおけるIC
50決定は、アビディティ効果が結合曲線に及ぼす強い影響のために、不可能であった(図4参照)。
【0228】
実施例5
COMP-IgG用の発現プラスミドの構築
抗細胞表面受容体モノクローナル抗体をコードする核酸を遺伝子合成によって産生した。軽鎖については核酸が1つ、ホール突然変異を含む重鎖については核酸が1つ、かつ、ノブ突然変異を含みCOMPドメインがペプチド性リンカーを介してC末端に融合されている重鎖については核酸が1つ。
【0229】
正しい配列であることを配列決定によって決定した。
【0230】
3つの核酸を3つの別々の発現プラスミドにクローニングした。
【0231】
次に挙げる機能的要素を含む各転写単位を使用した。
- イントロンAを含むヒトサイトメガロウイルスからの前初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
- ヒト重鎖免疫グロブリン5’-非翻訳領域(5’UTR)、
- マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
- それぞれのポリペプチドをコードする核酸、および
- ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
【0232】
基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、発現させようとする所望の遺伝子を含む発現単位/カセットの他に、
- 大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
- 大腸菌におけるアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
【0233】
実施例6
COMP-IgGの発現
懸濁培養に適応したHEK293F(FreeStyle 293-F細胞、Invitrogen)細胞で一過性発現を行った。
【0234】
トランスフェクション前に、200μgのプラスミドDNA(モル比1:1:2(重鎖ホール:重鎖ノブ:軽鎖)を、予熱(水浴、37℃)したOpti-MEM(Gibco)で、10mlの最終体積に希釈した。その溶液を穏やかに混合し、最長5分間、室温でインキュベートした。次にPEIproトランスフェクション試薬を、DNA-OptiMEM溶液に加えた。その後、その溶液を穏やかに混合し、15〜20分間、室温でインキュベートした。その混合物の全量を、HEK細胞培養体積が400ml(1.6〜1.8×10
6 HEK293F細胞)である1L振とうフラスコに加えた。
【0235】
37℃、7%CO
2、湿度85%、135rpmで7日間、インキュベート/振とうする。
【0236】
上清を、2,000rpm、4℃で10分にわたる1回目の遠心分離工程によって収穫した。次に、上清を新しい遠心フラスコに移して、4,000rpm、4℃で20分にわたる2回目の遠心分離を行った。その後、無細胞上清を0.22μmボトルトップフィルタで濾過し、冷凍庫(-20℃)で保存した。
【0237】
上清中のCOMP-IgGの量は32〜90mg/lであった。
【0238】
実施例7
COMP-IgG五量体の精製
滅菌濾過した抗体含有培養上清をアフィニティークロマトグラフィー工程によって精製した。
【0239】
PBS(1mM KH
2PO
4、10mM Na
2HPO
4、137mM NaCl、2.7mM KCl)、pH7.4で平衡化したMabSelect(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体を捕捉した。結合していないタンパク質を平衡緩衝液で洗浄することによって除去し、抗体を100mMクエン酸緩衝液、pH3.0で回収し、溶出後直ちに、1M Tris塩基、pH9.0でpH6.0に中和した。それぞれのクロマトグラムを図5に示す。フラクションA2を収集し、Amicon超遠心フィルタユニットで濃縮した。
【0240】
分子量が高いので、標準的なカラムSuperdex S200(GE Healthcare Life Sciences)を使ったサイズ排除クロマトグラフィーによるさらなる精製工程は行わなかった。
【0241】
プールしたフラクションを、キャピラリー電気泳動を使って還元条件下で分析し、COMP-IgGの組成を確認した(図6、1×LC、1×HCホール、1×HC-COMPノブ)。
【0242】
試料を濃縮し、分析用SECで分析したところ(図7)、92.3%の純度が示された。
【0243】
実施例8
結合アッセイ
ヒト抗原:
結合分析は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づく技術によって実行した。384ウェルマイクロタイタープレート(SAプレート、11974998)のウェルにおいて、抗原(ビオチン化ヒト細胞表面受容体エクトドメイン)を、25μLのPBS、0.5%BSAおよび0.05%Tween中、0.1μg/mLの濃度で固定化した。以下の工程が終わるごとに、PBS90μLの分注および吸引を3回行う洗浄ルーチンを行った:
(1)未結合の表面を飽和させるブロッキング工程(1時間、2%BSA)、
(2)増加する一連の濃度のCOMP-IgG、1時間、
(3)検出抗体、希釈度=1:3000(抗ウサギF(ab)
2、ロバPOD、NA9340V Amersham、または抗マウスIgGヒツジPOD RPN4201 Amersham、または抗huIgG-POD_JIR 109-036-006)。
【0244】
基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Piercenet、カタログ番号34021)を添加した20〜30分後に、光学密度を370nmで決定した。GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使って4変数ロジスティックモデルでEC
50を算出した。
【0245】
マウス抗原:
結合分析は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づく技術によって実行する。384ウェルマイクロタイタープレート(SAプレート、11974998)のウェルにおいて、抗原(ビオチン化マウス細胞表面受容体エクトドメイン)を、25μLのPBS、0.5%BSAおよび0.05%Tween中、0.1μg/mLの濃度で固定化する。以下の工程が終わるごとに、PBS90μLの分注および吸引を3回行う洗浄ルーチンを行う:
(1)未結合の表面を飽和させるブロッキング工程(1時間、2%BSA)、
(2)増加する一連の濃度のCOMP-IgG、1時間、
(3)検出抗体、希釈度=1:3000(抗ウサギF(ab)
2、ロバPOD、NA9340V Amersham、または抗マウスIgGヒツジPOD RPN4201 Amersham、または抗huIgG-POD_JIR 109-036-006)。
【0246】
基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Piercenet、カタログ番号34021)を添加した20〜30分後に、光学密度を370nmで決定する。GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使って4変数ロジスティックモデルでEC
50を算出する。
【0247】
カニクイザル抗原:
結合分析は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づく技術によって実行する。384ウェルマイクロタイタープレート(SAプレート、11974998)のウェルにおいて、抗原(ビオチン化カニクイザル細胞表面受容体エクトドメイン)を、25μLのPBS、0.5%BSAおよび0.05%Tween中、0.1μg/mLの濃度で固定化する。以下の工程が終わるごとに、PBS90μLの分注および吸引を3回行う洗浄ルーチンを行う:
(1)未結合の表面を飽和させるブロッキング工程(1時間、2%BSA)、
(2)増加する一連の濃度のCOMP-IgG、1時間、
(3)検出抗体、希釈度=1:3000(抗ウサギF(ab)
2、ロバPOD、NA9340V Amersham、または抗マウスIgGヒツジPOD RPN4201 Amersham、または抗huIgG-POD_JIR 109-036-006)。
【0248】
基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB、Piercenet、カタログ番号34021)を添加した20〜30分後に、光学密度を370nmで決定する。GraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使って4変数ロジスティックモデルでEC
50を算出する。
【0249】
実施例9
FACS
ヒト細胞表面受容体へのCOMP-IgGの結合を、ヒト細胞表面受容体と対応するヒト補助タンパク質とで安定にトランスフェクトされたHEK293細胞において、FACS分析によって試験した。細胞を遠心分離によって収穫し、PBSで1回洗浄し、1.5×10
5細胞を、COMP-IgGまたは対照抗体の1.5pM〜10nMの希釈系列と共に、50μLのPBS/5%FCS中、氷上で1時間インキュベートした。PBS/5%FCSで3回洗浄した後、細胞を、フィコエリトリン(Jackson Immunoresearch)にカップリングされたヤギ抗ヒトIgG(COMP-IgG)またはヤギ抗ウサギIgG(対照抗体)と共に、1:50の希釈度で、PBS/5%FCS中、氷上で0.5時間インキュベートした。細胞を再び洗浄し、PBS/5%FCSに再懸濁し、フィコエリトリンの蛍光をiQue-Plus機器(IntelliCyt)で測定した。結果を図8に示す。