(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021501121
(43)【公表日】20210114
(54)【発明の名称】二環式エノールエーテルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/00 20060101AFI20201211BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201211BHJP
【FI】
   !C07D307/00
   !C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】2020508515
(86)(22)【出願日】20181008
(85)【翻訳文提出日】20200214
(86)【国際出願番号】EP2018077254
(87)【国際公開番号】WO2019086207
(87)【国際公開日】20190509
(31)【優先権主張番号】17199582.2
(32)【優先日】20171101
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所】スイス国 1242 サティニー リュ ド ラ ベルジェール 7
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デニス ヤコビー
【住所又は居所】スイス国 メイラン リュ ド ラ ベルジェール 7 ピー.オー.ボックス 148 フィルメニッヒ ソシエテ アノニム
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ファンクハウザー
【住所又は居所】スイス国 メイラン アヴニュ ド マテナン 109
【テーマコード(参考)】
4C037
4H039
【Fターム(参考)】
4C037AA01
4H039CA61
4H039CH40
(57)【要約】
本出願は、式(II)の化合物から出発して、塩基及び水素源の存在下でのルテニウム錯体により触媒される、式(I)の化合物を製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体異性体のいずれか1つ又はそれらの混合物の形態の、式(I)
【化1】
[式中、Rは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜5アルカンジイル又はアルケンジイル基を表し、かつRは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す]の化合物を製造する方法であって、
立体異性体のいずれか1つの形態の、式(II)
【化2】
[式中、R及びRは、式(I)において定義されたものと同じ意味を有する]の化合物を、
ルテニウム触媒を用い、かつ塩基及び水素源の存在下で反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
が、線状又は分岐状のC1〜4アルカンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、線状又は分岐状のC2〜3アルカンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
が、1,2−プロパンジイル基又は1,2−エタンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
が、線状又は分岐状のC4〜9アルカンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
が、線状又は分岐状のC6〜9アルカンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
が、1,8−オクタンジイル基を表すことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物が、12−オキサビシクロ[6.3.1]ドデカ−8−エン、10−メチル−12−オキサビシクロ[6.3.1]ドデカ−8−エン、13−オキサビシクロ[7.3.1]トリデカ−9−エン、11−メチル−13−オキサビシクロ[7.3.1]トリデカ−9−エン、14−オキサビシクロ[8.3.1]テトラデカ−10−エン、12−メチル−14−オキサビシクロ[8.3.1]テトラデカ−10−エン、15−オキサビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−11−エン、13−メチル−15−オキサビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−11−エン、16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エン及び15−メチル−17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エンからなる群から選択されていてよいことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式(II)の化合物が、シクロウンデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロウンデカン−1,5−ジオン、シクロドデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロドデカン−1,5−ジオン、シクロトリデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロトリデカン−1,5−ジオン、シクロテトラデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロテトラデカン−1,5−ジオン、シクロペンタデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオン、シクロヘキサデカン−1,5−ジオン及び3−メチルシクロヘキサデカン−1,5−ジオンからなる群から選択されていてよいことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ルテニウム触媒が、式
[Ru(X)] (III)
[式中、Xは、アニオン性配位子を表し;かつnが1〜4の整数である場合には、Pは、モノホスフィン単座配位子を表すか;又はnが1〜2の整数である場合には、Pは、ビホスフィン二座配位子を表す]のものであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ルテニウム触媒が、[Ru(H)(Cl)(PPh]、[Ru(H)(PPh]、[Ru(OAc)(PPh]、[Ru(OPiv)(PPh]、[Ru(Cl)(PBu]及び[Ru(Cl)(PPh]からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が、ピリジン、トリメチルアミン、ルチジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、アルカリ金属アルコキシド、カルボキシレート、炭酸塩又は水酸化物及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素源が、少なくとも1個の第二級アルコール官能基を含み、かつ110℃以上の沸点を有する炭化水素であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記水素源が、式
【化3】
[式中、R及びRは、互いに独立して、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C1〜10線状アルキル基、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C2〜10線状アルケニル基、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C3〜10分岐状又は環状アルキル又はアルケニル基、又は任意に1〜5個のC1〜3アルキル又はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子により置換された、フェニル基を表すか;又はR及びRは、一緒になった場合に、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C2〜10線状又は分岐状アルカンジイル又はアルケンジイルを表す]のものであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水素源が、1−フェニルエタン−1−オール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロヘキサノール、4−メチルペンタン−2−オール、シクロペンタノール又はオクタン−2−オールであることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成の分野に関し、より具体的には、ルテニウム錯体により触媒される、式(I)の化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)の二環式エノールエーテル誘導体は、より有用な化合物、例えば飽和又は不飽和の環状ケトンに向けての典型的な中間体である。例えば、16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン又は14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エンは、高く評価されている香料成分、例えばExaltenone又はMuscenone(登録商標)(Firmenich SAの商標)に向けての鍵となる中間体である。前記中間体は、大環状ジオン、例えば1,5−シクロペンタデカンジオン又は3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオンをジ還元して、対応する大環状ジオール、例えば1,5−シクロペンタデカンジオール又は3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオールにし、続いて脱水素及び脱水して、大環状エノールエーテルを形成することで、数十年前から得られていた。該ジオン出発物質からの直接エノールエーテル形成は、全く報告されていなかった。
【0003】
したがって、二環式エノールエーテルに対する、そのような、より直接的なアプローチを開発する必要性が依然として存在する。
【0004】
本発明は、式(II)の環状ジケトンから出発して、移動水素化条件下で、水素源として第二級アルコールを用いて、式(I)の化合物を得ることを可能にする。
【0005】
発明の要約
本発明は、式(II)の化合物から出発して、対応するジオールの形成及び単離工程を回避しながら、式(I)の化合物の製造を可能にする、新規な方法に関する。
【0006】
したがって、本発明の第1の対象は、式(I)
【化1】
[式中、Rは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜5アルカンジイル又はアルケンジイル基を表し、かつRは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つ又はそれらの混合物の形態の化合物を製造する方法であって、
式(II)
【化2】
[式中、R及びRは、式(I)において定義されたものと同じ意味を有する]の、その立体異性体のいずれか1つの形態の化合物を、
ルテニウム触媒を用い、かつ塩基及び水素源の存在下で反応させることを含む。
【0007】
発明の説明
驚くべきことに、式(I)の化合物を、移動水素化条件下での式(II)の化合物のワンポット還元及び環化−脱水型反応による有利な方法で製造することができることが目下見出された。本発明の条件は、対応するジオールの困難な取り扱いを回避することを可能にし、かつモノ還元に対して高度に選択的であり、かつ二環式エノールエーテルの形成をもたらす。
【0008】
したがって、本発明の第1の対象は、式(I)
【化3】
[式中、Rは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜5アルカンジイル又はアルケンジイル基を表し、かつRは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つ又はそれらの混合物の形態の化合物を製造する方法であって、
式(II)
【化4】
[式中、R及びRは、式(I)において定義されたものと同じ意味を有する]の、その立体異性体のいずれか1つの形態の化合物を、
ルテニウム触媒を用い、かつ塩基及び水素源の存在下で反応させることを含む。
【0009】
本発明のいずれかの実施態様によれば、かつその特定の態様から独立して、化合物(I)並びに対応する化合物(II)は、その立体異性体のいずれか1つ又はそれらの混合物の形態であってよい。分かりやすくするために、立体異性体の用語は、あらゆるジアステレオ異性体、エナンチオマー、ラセミ化合物を意味する。
【0010】
実際に、化合物(I)又は(II)は、異なる立体化学を有することができる、少なくとも1つの立体中心を有していてよい(すなわち2つの立体中心が存在する場合には、化合物(I)又は(II)は、(R,R)又は(R,S)配置を有することができる)。前記立体中心のそれぞれが、相対配置R若しくはS又はそれらの混合物であってよく、又は言い換えれば、式(II)又は(I)の前記化合物は、純エナンチオマー又はジアステレオ異性体の形態、又は立体異性体の混合物の形態であってよい。
【0011】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、式(II)の前記化合物は、C〜C20化合物である。
【0012】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、化合物(I)は、式
【化5】
[式中、Rは、式(I)において定義されたものと同じ意味を有し、かつRは、水素原子又はメチル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つの形態の化合物であってよい。
【0013】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、化合物(II)は、式
【化6】
[式中、Rは、式(I)において定義されたものと同じ意味を有し、かつRは、水素原子又はメチル基を表す]の、その立体異性体のいずれか1つの形態の化合物であってよい。
【0014】
本発明のいずれかの実施態様によれば、Rは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜5アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す。好ましくは、Rは、線状又は分岐状のC1〜4アルカンジイル基を表す。好ましくは、Rは、線状又は分岐状のC2〜3アルカンジイル基を表す。よりいっそう好ましくは、Rは、1,2−プロパンジイル基又は1,2−エタンジイル基を表す。よりいっそう好ましくは、Rは、1,2−プロパンジイル基を表す。
【0015】
本発明のいずれかの実施態様によれば、Rは、任意にフェニル基により置換された、線状又は分岐状のC1〜10アルカンジイル又はアルケンジイル基を表す。好ましくは、Rは、線状又は分岐状のC1〜10アルカンジイル基を表す。好ましくは、Rは、線状又は分岐状のC4〜9アルカンジイル基を表す。好ましくは、Rは、線状又は分岐状のC6〜9アルカンジイル基を表す。よりいっそう好ましくは、Rは、1,8−オクタンジイル基を表す。
【0016】
本発明のいずれかの実施態様によれば、Rは、水素原子又はメチル基を表す。好ましくは、Rは、メチル基を表していてよい。
【0017】
式(I)の適した化合物は限定されないが、例えば、12−オキサビシクロ[6.3.1]ドデカ−8−エン、10−メチル−12−オキサビシクロ[6.3.1]ドデカ−8−エン、13−オキサビシクロ[7.3.1]トリデカ−9−エン、11−メチル−13−オキサビシクロ[7.3.1]トリデカ−9−エン、14−オキサビシクロ[8.3.1]テトラデカ−10−エン、12−メチル−14−オキサビシクロ[8.3.1]テトラデカ−10−エン、15−オキサビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−11−エン、13−メチル−15−オキサビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−11−エン、16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エン又は15−メチル−17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エンが挙げられうる。好ましくは、式(I)の化合物は、16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン、17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エン又は15−メチル−17−オキサビシクロ[11.3.1]ヘプタデカ−13−エンであってよい。好ましくは、式(I)の化合物は、16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エン又は14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エンであってよい。よりいっそう好ましくは、式(I)の化合物は、14−メチル−16−オキサビシクロ[10.3.1]ヘキサデカ−12−エンであってよい。
【0018】
式(II)の適した化合物は限定されないが、例えば、シクロウンデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロウンデカン−1,5−ジオン、シクロドデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロドデカン−1,5−ジオン、シクロトリデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロトリデカン−1,5−ジオン、シクロテトラデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロテトラデカン−1,5−ジオン、シクロペンタデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオン、シクロヘキサデカン−1,5−ジオン又は3−メチルシクロヘキサデカン−1,5−ジオンが挙げられうる。好ましくは、式(II)の化合物は、シクロペンタデカン−1,5−ジオン、3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオン、シクロヘキサデカン−1,5−ジオン又は3−メチルシクロヘキサデカン−1,5−ジオンであってよい。好ましくは、式(II)の化合物は、シクロペンタデカン−1,5−ジオン又は3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオンであってよい。よりいっそう好ましくは、式(II)の化合物は、3−メチルシクロペンタデカン−1,5−ジオンであってよい。
【0019】
式(II)の化合物は、商業的に入手可能な化合物であるか、又は幾つかの方法、例えばHelvetica Chimica Acta 1967, 50, 705に、又は国際公開第2016/104474号(WO2016104474)又は国際公開第2016/184948号(WO2016184948)に報告された方法により、製造することができる。
【0020】
本発明のいずれかの実施態様によれば、該ルテニウム触媒は、式
[Ru(X)] (III)
[式中、Xは、アニオン性配位子を表し;かつnが1〜4の整数である場合には、Pは、モノホスフィン単座配位子を表すか;又はnが1〜2の整数である場合には、Pは、ビホスフィン二座配位子を表す]のものである。
【0021】
本発明の上記実施態様のいずれかによれば、Xは、アニオン性配位子を表す。アニオン性配位子は限定されないが、例えば、水素又はハロゲン原子、ヒドロキシ基、又はアルカリル、アルコキシ又はカルボン酸基が列挙される。
【0022】
用語“アルカリル(alkallyl)”は、当該技術分野において通常の意味を意味し;すなわちC=C−C部分を含む配位子である。
【0023】
本発明の上記実施態様のいずれかによれば、式(III)中で、各Xは、同時に又は独立して、水素又は塩素又は臭素原子、ヒドロキシ基、又はC〜Cアルカリル基、例えばメタリル、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ又はイソプロポキシ基、又はC〜Cカルボン酸基、例えばHCOO、CHCOO、CHCHCOO又はフェニルCOO基を表す。好ましくは、各Xは、同時に又は独立して、塩素又は臭素原子、メトキシ、エトキシ又はイソプロポキシ基を表す。よりいっそう好ましくは、各Xは、同時に又は独立して、塩素又は臭素原子を表す。
【0024】
本発明の上記実施態様のいずれかによれば、Pは、C〜C70モノホスフィン又はC〜C60ビホスフィン二座配位子を表す。好ましくは、Pは、C〜C30モノホスフィン、及び特に式PRのものを表し、式中、Rは、任意に置換された、C〜C12線状、分岐状又は環状アルキル、アルコキシ又はアリールオキシ基又は任意に置換された、フェニル、ジフェニル、フリル、ピリジル、ナフチル又はジナフチル基であり;ここで、可能な置換基は、1又は2個のハロゲン、ヒドロキシ基、C〜C10アルコキシ基、ハロ又はペルハロ炭化水素、COOR、NR、第四級アミン又はR基であり、ここで、Rは、C〜Cアルキル、又はC〜C12シクロアルキル、アリールキル(arylkyl)(例えばベンジル、フェネチル等)又は芳香族基であり、後者の基はまた、任意に1、2又は3個のハロゲン、スルホネート基又はC〜Cアルキル、アルコキシ、アミノ、ニトロ、スルホネート、ハロ又はペルハロ炭化水素又はエステル基により置換される。“ハロ又はペルハロ炭化水素”は、例えばCF又はCClHのような基を意味する。よりいっそう好ましくは、Rは、フェニル、トリル、ピリジル又はフリル又は任意にヒドロキシ又はN(CH基により置換された、線状、分岐状又は環状のC1〜8アルキル基である。よりいっそう好ましくは、Pは、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2−フリルホスフィン、(4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル)ジ−tert−ブチルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン及びトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンからなる群から選択される、C〜C70モノホスフィンを表していてよい。よりいっそう好ましくは、Pは、トリフェニルホスフィンである。
【0025】
式(III)の適したルテニウム触媒は限定されないが、例えば、[Ru(H)(Cl)(PPh]、[Ru(H)(PPh]、[Ru(OAc)(PPh]、[Ru(OPiv)(PPh]、[Ru(Cl)(PBu]又は[Ru(Cl)(PPh]が挙げられうる。好ましくは、該ルテニウム触媒は、[Ru(Cl)(PPh]であってよい。
【0026】
該ルテニウム触媒は、大きな範囲の濃度で、本発明の方法の反応媒体中へ添加することができる。限定するものではないが、例えば、金属濃度値として、基質の全量に対して10ppm〜200000ppmにわたる値が挙げられうる。好ましくは、該金属濃度は、100ppm〜10000ppm、又はさらには100ppmと500ppm又は1000ppmとの間に含まれる。該方法がより多くの触媒を用いても作用することは言うまでもない。しかしながら、金属の最適濃度は、当業者が知るように、該金属の種類、その基質の種類、その温度及び所望の反応時間に依存する。
【0027】
本発明のいずれかの実施態様によれば、本発明の方法は、塩基の存在下で実施される。適した塩基は限定されないが、例えば、第三級アミン、例えばピリジン、トリメチルアミン、ルチジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン又はアルカリ金属アルコキシド、カルボキシレート、炭酸塩又は水酸化物又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、該塩基は、アルカリ金属アルコキシド、カルボキシレート、炭酸塩又は水酸化物であってよいか又は第三級アミンとアルカリ金属炭酸塩との混合物であってよい。よりいっそう好ましくは、塩基は、アルカリ金属カルボキシレート又は炭酸塩であってよいか又は第三級アミンとアルカリ金属炭酸塩との混合物であってよい。よりいっそう好ましくは、塩基は、リチウム、ナトリウム又はカリウムのアセテート、エタノエート、プロピオネート、ブチレート、tert−ブチレート、ペンタノエート又はヘキサノエートであってよい。
【0028】
該塩基は、大きな範囲の濃度で、本発明の方法の反応媒体中へ添加することができる。限定するものではないが、例えば、塩基濃度値として、式(II)の化合物の量に対して、0.01%〜100%w/w、又はさらには0.1%〜5%w/wにわたる値が挙げられうる。塩基の最適濃度が、当業者が知るように、該塩基の種類、その基質の種類、その温度及び該方法中に使用される触媒、並びに所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0029】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、該水素源は、少なくとも1個の第二級アルコール官能基を含み、かつ110℃以上、好ましくは120℃を上回る沸点を有する炭化水素である。前記水素源は、ケトンを生成する間に水素を発生する。該水素源は、第二級アルコールであってよい。特に、該水素源は、式
【化7】
[式中、R及びRは、互いに独立して、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C1〜10線状アルキル基、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C2〜10線状アルケニル基、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C3〜10分岐状又は環状アルキル又はアルケニル基、又は任意に1〜5個のC1〜3アルキル又はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子により置換された、フェニル基を表すか;又はR及びRは、一緒になった場合に、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C2〜10線状又は分岐状アルカンジイル又はアルケンジイルを表す]のものであってよい。式(IV)の水素源は、C4〜10化合物である。
【0030】
用語“アリール基”は、当該技術分野において通常の意味、すなわち、任意に置換された、芳香族炭化水素基、例えばフェニル又はナフチル基を指す。該アリール基の任意の置換基は限定されないが、例えば、C1〜3アルキル又はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子が挙げられうる。
【0031】
上記実施態様のいずれか1つによれば、Rは、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C1〜10線状アルキル基又は任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C3〜10分岐状又は環状アルキル基、又は任意に1〜5個のC1〜3アルキル又はアルコキシ基、ヒドロキシ基又はハロゲン原子により置換された、フェニル基を表していてよい。好ましくは、Rは、任意にヒドロキシ基により置換された、C1〜10線状アルキル基又は任意にヒドロキシ基により置換された、C3〜10分岐状又は環状アルキル基を表していてよい。好ましくは、Rは、任意にヒドロキシ基により置換された、C3〜8線状又は分岐状アルキル基を表していてよい。よりいっそう好ましくは、Rは、任意にヒドロキシ基により置換された、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル基を表していてよい。
【0032】
上記実施態様のいずれか1つによれば、Rは、任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C1〜10線状アルキル基又は任意にヒドロキシ基又はアリール基により置換された、C3〜10分岐状又は環状アルキル基を表していてよい。好ましくは、Rは、メチル、エチル又はプロピル基を表していてよい。
【0033】
上記実施態様のいずれか1つによれば、R及びRは、一緒になった場合に、任意にヒドロキシ基により置換された、C4〜7線状、分岐状アルカンジイル又はアルケンジイルを表していてよい。好ましくは、R及びRは、一緒になった場合に、C4〜7線状アルカンジイルを表していてよい。よりいっそう好ましくは、R及びRは、一緒になった場合に、C4〜5線状アルカンジイルを表していてよい。
【0034】
適した水素源は限定されないが、例えば、1−フェニルエタン−1−オール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロヘキサノール、4−メチルペンタン−2−オール、シクロペンタノール又はオクタン−2−オールが挙げられうる。好ましくは、該水素源は、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、シクロペンタノール、又は4−メチルペンタン−2−オールであってよい。
【0035】
該水素源は、大きな範囲の濃度で、本発明の方法の反応媒体中へ添加することができる。限定するものではないが、例えば、水素源濃度値として、式(II)の化合物の量に対して、1当量〜50当量、又はさらには1当量〜5当量にわたる値が挙げられうる。水素源の最適濃度が、当業者が知るように、該水素源の種類、その基質の種類、その温度及び該方法中に使用される触媒、並びに所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0036】
本発明の方法は、バッチ又は連続条件下で実施される。
【0037】
該反応は、溶剤の不在下で実施することができる。
【0038】
本発明の方法の温度は、120℃〜300℃に含まれていてよく、より好ましくは150℃〜250℃に含まれる範囲内であってよい。もちろん、当業者は、該水素源及びその出発物質及び最終生成物の融点及び沸点並びに所望の反応又は転化時間の関数として、好ましい温度を選択することもできる。
【0039】
本発明の方法は、大気圧下又はわずかな真空下で実施されてよい。本発明の方法は、不活性雰囲気、例えば窒素又はアルゴン下で実施されてよい。
【0040】
本発明の上記実施態様のいずれか1つによれば、本発明の方法中に生成される、より揮発性の化合物は、本発明の方法中に連続的に除去される。本発明の方法中に形成される、より揮発性の前記化合物、例えば水及びケトンの除去は、本発明の方法中に蒸留されてよい。
【実施例】
【0041】
本発明は、目下、次の例によってさらに詳細に記載され、ここで、省略形は、当該技術分野において通常の意味を有し、温度は、摂氏度(℃)で示され;NMRスペクトルデータは、H及び13Cについて360又は400MHz装置を用いてCDCl(他に記載されない場合)中で記録されたものであり、化学シフトδは、標準としてのTMSに対するppmで示され、結合定数Jは、Hzで表現される。
【0042】
例1
式(II)の化合物から出発する、式(I)の化合物の製造
機械式撹拌機、充填塔、還流冷却器を備えた1lガラス反応器中に、3−メチル−1,5−シクロペンタデカンジオン250g(0.99mol)、水素源の一部又は全部(第1表参照)、ルテニウムジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)(0.92g、0.00096mol)、プロピオン酸ナトリウム(0.96g、0.0099mol)を、大気圧で又は真空下に添加した(第1表参照)。混合物を撹拌し、かつ還流に加熱し(温度は溶剤の種類に依存している、第1表参照)、同時に該反応中に形成された軽い留分(水及び生じるケトン)をフラスコ中へ蒸留した。22h後、反応混合物を100℃に冷却し、該溶剤の残部を真空下で濃縮した。残留する油状物(230g)を、フラッシュ蒸留し(170℃、1mbar)、かつ留出物をGCにより分析した(第1表参照)。
【0043】
第1表:式(II)の化合物からの式(I)の化合物の製造
【表1】
1) 該方法の開始時に全部添加。
2) 全投入量の20%を予め添加、ついで残りを16hにわたって添加。
【国際調査報告】