【実施例】
【0073】
実施例の紹介
TYSABRI(登録商標)の標準間隔投与(SID)及び延長間隔投与(EID)中の進行性多巣性白質脳症(PML)の個人のリスクを評価するために、タッチデータベース(Touch Database)から取得した患者データの大規模解析を行い、これには、抗JCV抗体の血清状態が陽性であることが既知及び以前の免疫抑制剤使用の状態が既知である全患者を含んだ。タッチデータベースには、患者の人口統計、TYSABRI(登録商標)投与情報、抗JCV抗体の状態、PMLの状態、及び免疫抑制療法による以前の処置歴が含まれていた。2連続注入の間隔が12週間超(「投薬ギャップ」)または3週間未満(「過剰投与」)の病歴のある患者は除外した。患者データの3つの解析は、表1に示すように、SIDとEIDの定義された投与量定義を使用して各解析で実行した。3つの計画解析、ならびにそれぞれのEID及びSID選択基準は、PML事象に対して盲検の条件下で開発し、完成した。
【0074】
統計解析
調査母集団全体及び各EID解析コホートの人口統計及び処置履歴データを、記述統計によって要約した。3つの計画された解析について、累積リスクのカプラン・マイヤー推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)解析を、EID及びSIDコホートに対して実行した。事象発生までの時間は、ナタリズマブ処置開始後の時間に基づいていた。ログランク検定を実行して、EIDコホートとSIDコホートの間の事象発生までの時間を比較した。各曝露エポック(一連の12回の注入として定義)におけるPMLの条件付き確率は、EID及びSIDコホートについて、以前の免疫抑制剤の使用によって層別化された生命表法を使用して導き出された(患者の5%のみが以前に免疫抑制剤を使用していたため、データは、事前に使用していない患者を示している)。EID及びSIDコホートのPMLハザード比(HR)は、ナタリズマブ処置開始の年齢、性別、暦年で調整された時変共変量Cox回帰モデル、ならびに共変量としての以前の免疫抑制剤の使用(はい/いいえ)、ならびに時変共変量としての注入の累積数を使用して推定した。
【0075】
各解析について、PML HR推定(EID対SID)及びCoxモデルからのその95%信頼区間(CI)が推論の主要な基礎であった。具体的には、HRの95%CI上限が1未満の場合、EIDコホートはSIDコホートよりもPMLのリスクが低いと見なされる。HRポイントの推定値が≧0・9でかつ≦1・1の場合、EID及びSIDコホートは、同様のリスクがあると見なされる。HRの95%CI下限が1より大きい場合、EIDコホートはリスクが高いと見なされる。解析計画の仕様の時点で、上記の推論の規則で定義されているように、予想される調査母集団サイズ及び予想されるPML事象数によって、約85%の検出力で≧50%(ハザード比≦0.5)リスクの低下が検出されると予想した。
【0076】
統計解析計画は、PML事象を知らされていない条件下で開発し、最終化した。Tysabri Global Safety DatabaseのPMLデータは、解析計画が完成した後にTOUCHと統合された。
【表1】
【0077】
実施例1−一次解析:PML症例は、SID−1コホートと比較してEID−1コホートで減少した。
一次解析は、記録された注入履歴の最後の18カ月間に関連したPMLのリスクを評価した。EIDコホートは次のように定義した:治療の最後の18か月(月は30日と定義)では、注入の総数は15以下であった。最後の18か月に定義された投与パターンの患者は、EIDコホートに含まれた。SIDコホートは以下のとおり定義した:処置の最後の18か月(月は30日と定義)では、注入の総数は16以上であった。過去18か月に定義された投与パターンの患者は、SIDコホートに含まれた。EID及びSIDコホートで抗JCV抗体陽性であった患者の数を表2に示す。患者の人口統計を表3に示す。
【表2】
【表3】
【0078】
SID及びEIDコホートのTYSABRI(登録商標)注入の合計数(表4)及びTYSABRI(登録商標)処置の合計期間(表5)を決定した。EID/SID処置レジメンの開始前(表6)及び開始時/開始後(表7)のTYSABRI(登録商標)注入の回数も、SID及びEIDコホートについて決定された。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0079】
累積リスクのカプラン・マイヤー推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)解析を、免疫抑制剤の以前の使用によって層別化されたEID及びSIDコホートに対して実行した。免疫抑制剤の以前の使用の各階層内(はい/いいえ)で、ログランク検定を実行して、EIDコホートとSIDコホート間の事象発生までの時間を比較した。
【0080】
免疫抑制剤による以前の処置のある患者とそのような以前の処置のない患者の両方で、TYSABRI(登録商標)による治療過程全体でSIDコホートと比較して、1,000人の患者あたりのPMLリスク推定値は、一貫してEIDコホートで低かった(表8)。表8は、この実施例に記載されている投与スケジュールに従ってグループ分けされた1,000人の抗JCV抗体陽性患者あたりのPMLリスク推定値の表を示している。上記のように、延長間隔投与(EID)コホートは、過去18か月(月を30日と定義)内の注入の総数が15以下の患者として定義された。標準間隔投与(SID)コホートは、過去18か月(月を30日と定義)内の注入の総数が16以上の患者として定義された。PMLリスク推定値は、以前に免疫抑制剤で治療された患者(以前の免疫抑制(IS))及び以前に免疫抑制剤治療を受けていない患者(以前のISなし)で得た。
【表8】
【0081】
患者1人あたりのPML症例数は、SIDコホートと比較して、EIDコホートでは72か月(図1A)及び120か月(図1D)にわたって有意に減少した。EIDコホートでは、事前の免疫抑制処置なし(図1B)及び以前の免疫抑制処置あり(図1C)の患者のSIDコホートと比較して、1患者あたりのPML症例数が有意に減少した。
【0082】
これらの結果によって、EIDレジメンが過去18か月間に15回以下の注入として定義され、SIDレジメンが過去18か月間に16回以上の注入と定義された場合、EMLレジメンで処置された患者では、SIDレジメンで処置された患者と比較して、PML症例数が有意に減少したことが実証された。
【0083】
実施例2−二次解析:PML症例は、SID−2コホートと比較してEID−2コホートで減少した。
二次解析は、PMLのリスクの患者の注入の履歴においてEIDのいずれかの長期間の効果を評価した。EIDコホートは以下のように定義された。処置の最後の365日間で、注入の総数は10以下であった。過去365日間に定義された投与パターンの患者はEIDコホートに含まれ、6か月以上連続してEID注入を受けた。SIDコホートは以下のように定義された:処置の最後の365日間で、注入の総数は11回以上であった。過去365日間に定義された投与パターンの患者はSIDコホートに含まれ、6か月以上連続してSID注入を受けた。EID及びSIDコホートで抗JCV抗体陽性であった患者の数を表9に示す。患者の人口統計を表10に示す。
【表9】
【表10】
【0084】
SID及びEIDコホートのTYSABRI(登録商標)注入の合計数(表11)及びTYSABRI(登録商標)処置の合計期間(表12)を決定した。EID/SID処置レジメンの開始前(表13)及び開始時/開始後(表14)のTYSABRI(登録商標)注入回数も、SID及びEIDコホートについて決定した。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0085】
免疫抑制剤の以前の使用によって層別化されたEID及びSIDコホートに対して、累積リスクのカプラン・マイヤー推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)の解析を行った。免疫抑制剤の以前の使用の各階層内(はい/いいえ)で、ログランク検定を実行して、EIDコホートとSIDコホート間の事象発生までの時間を比較した。
【0086】
免疫抑制剤による処置歴のある患者とそのような処置歴のない患者の両方について、TYSABRI(登録商標)による処置の過程全体でSIDコホートと比較して、1,000人の患者あたりのPMLリスク推定値は一貫してEIDコホートで低かった(表15)。上記のように、表15は、この実施例に記載されている投与スケジュールに従ってグループ分けした抗JCV抗体陽性患者1,000人あたりのPMLリスク推定値の表を示している。SIDコホートは、過去365日以内に11回以上の注入を受けた患者として定義した。EIDコホートは、過去365日以内に10回以下の注入を受けた患者として定義した。PMLリスク推定値は、以前に免疫抑制剤で処置された患者(事前IS(Prior IS))及び以前に免疫抑制剤処置を受けていない患者(事前ISなし(No Prior IS))で得た。
【表15】
【0087】
72カ月(図2A)及び120カ月(図2D)にわたって、SIDコホートと比較して、EIDコホートでは患者あたりのPML症例数が大幅に減少した。EIDコホートでは、事前の免疫抑制処置なし(図2B)及び以前の免疫抑制処置あり(図2C)の患者のSIDコホートと比較して、患者あたりのPML症例数が有意に減少した。
【0088】
これらの結果によって、EIDレジメンが処置投与直前の365日間の10回以下の注入として定義された、かつSIDレジメンが、処置投与直前の365日間の11回以上の注入として定義された場合、SIDレジメンで治療された患者と比較して、EIDレジメンで処置された患者でPML症例数が有意に減少したことが実証された。
【0089】
実施例3−三次解析:PML症例は、SID−3コホートと比較してEID−3コホートで減少した。
三次解析では、主にEIDからなる投与履歴がPMLリスクに及ぼす影響を評価した。EIDコホートは以下のように定義された:1年あたりの平均注入回数は、治療期間全体で10回以下であった。治療期間全体にわたって定義された投与パターンの患者は、EIDコホートに含まれていた。SIDコホートは以下のように定義された:1年あたりの平均注入回数は、処置期間全体で10回を超えていた。処置期間全体にわたって定義された投与パターンの患者は、SIDコホートに含まれていた。EID及びSIDコホートにおいて抗JCV抗体陽性であった患者の数を表16に示す。患者の人口統計を表17に示す。
【表16】
【表17】
【0090】
SID及びEIDコホートのTYSABRI(登録商標)注入の合計数(表18)及びTYSABRI(登録商標)処置の合計期間(表19)を決定した。
【表18】
【表19】
【0091】
免疫抑制剤の以前の使用によって層別化されたEID及びSIDコホートに対して、累積リスクのカプラン・マイヤー推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)の解析を行った。免疫抑制剤の以前の使用の各階層内(はい/いいえ)で、ログランク検定を実行して、EIDコホートとSIDコホート間の事象発生までの時間を比較した。
【0092】
免疫抑制剤による処置歴のある患者とそのような処置歴のない患者の両方について、TYSABRI(登録商標)による治療過程全体でSIDコホートと比較して、1,000人の患者あたりのPMLリスク推定値は一貫してEIDコホートで低かった(表20)。上記のように、表20は、この実施例に記載されている投薬スケジュールに従ってグループ分けされた1,000人の抗JCV抗体陽性患者あたりのPMLリスク推定値の表を示している。SIDコホートは、平均して1年あたり10回以下の注入の患者と定義された。EIDコホートは、平均して1年あたり10回以上の注入の患者と定義した。PMLリスク推定値は、以前に免疫抑制剤で処置された患者(事前IS(Prior IS))及び以前に免疫抑制剤処置を受けていない患者(事前ISなし(No Prior IS))で取得した。
【表20】
【0093】
72カ月(図3A)及び120カ月(図3B)にわたって、SIDコホートと比較して、EIDコホートでは患者あたりのPML症例数が有意に減少した。EIDコホートでは、事前の免疫抑制処置なし(図3C)及び以前の免疫抑制処置あり(図3D)の患者のSIDコホートと比較して、患者あたりのPML症例数が有意に減少した。
【0094】
これらの結果によって、EIDレジメンが処置投与直前の365日間の10回以下の注入として定義され、かつSIDレジメンが、処置投与直前の365日間の11回以上の注入として定義され場合、SIDレジメンで治療された患者と比較して、EIDレジメンで処置された患者でPML症例数が有意に減少したことが実証された。
【0095】
一次、二次、及び三次解析の結果の概要(実施例1−3)
この研究に登録された90,038人の患者のうち、35,521人は抗JCV抗体陽性であり、この研究に適格であった(図4)。事前指定されたEID及びSIDの選択基準を適用した後、研究集団には、一次解析で1,988人のEID及び13,132人のSIDの患者、二次解析で3,331人のEID及び15,424人のSIDの患者、三次解析で815人のEID及び23,168人のSIDの患者が含まれていた。患者を除外する最も一般的な理由は、治療歴(一次、二次、及び三次解析に適用される基準)における投薬ギャップまたは過剰投与の存在、ならびに18か月未満の利用可能な投薬データ(一次解析のみ)であった。
【0096】
EID及びSID群のベースライン人口統計は、3つの解析全体で十分バランスが取れていた(表3、10、及び17)。3つの解析全てで、EID患者はSID患者よりもナタリズマブ注入が多く、かつナタリズマブ処置の合計期間が長かった。一次解析に含まれるEID患者は、EIDを開始する前に中央値(範囲)37(1〜117)の注入を受けていた。二次解析(各注入がEIDまたはSIDとして定義された)では、EID−2患者は、EIDを開始する前に25(1−121)注入の中央値(範囲)を受けていた。3つの解析全てについて、治療期間全体の平均投与間隔(ADI)は、EID患者では35.0〜43.0日、SID患者では29.8〜30.5日であった。
【0097】
PMLのカプラン・マイヤー推定累積リスクは、SIDよりもEIDの方が有意に低かった(図1D、図2D及び図3D)。一次及び二次解析では、累積リスクは、24〜36か月後に分離するように見え、後の時点で分離が増大した。Cox回帰解析では、一次解析と二次解析でEID処置によりPMLリスクが有意に減少したことも特定された(両方ともp<0・001;表21)。一次解析での共変量調整HRは0.06(95%CI、0・01−0・22)で、EID−1°患者対SID−1°患者の相対リスクが94%減少したことに相当する。二次解析では、共変量調整HRは、0.12(95%CI、0・05−0・29)で、EID−2°患者対SID−2°患者の相対リスクが88%減少したことに相当する。三次解析でEIDを使用してPML症例が観察されなかったので、リスク削減ポイントの推定値は100%で、Cox回帰モデル95%CIは推定不能であった。
【表21】
【0098】
以前の免疫抑制剤の使用は、PMLリスクを有意に増大させた。共変量調整HRは、一次解析で2.92(95%CI、1.67〜5.11;p<0・001)、二次解析で2.90(95%CI、1.60〜5.27;p=0・001)であった(表21)。しかし、この観察の重要性は、免疫抑制剤を使用している少数の患者によって制限されている(EID−1°の場合は95、EID−2°の場合は175)。
【0099】
実施例4
上記の実施例1〜3では、SIDは3週間以上〜5週間未満の平均投与間隔(ADI)に基づいており、EIDは5週より長い〜12週間以下のADIに基づいていた。次に、事前に指定された2つの感度解析を行い、JCV抗体検査の前に発生したPML症例の包含を評価し、EIDの代替定義を調査した。最初に、TOUCHでの抗JCV抗体検査結果の収集前に発生したPML症例を、抗JCV抗体陽性であると想定し、上記の3つの計画解析に追加した。第2の感度解析では、過去18か月で13回以下の注入、及び任意の12か月間にわたって9回以下の注入という代替EID定義を、それぞれ一次及び二次EID解析群に含めて用いた。三次解析の代替選択基準は試験しなかった。
【0100】
3つの解析のロバストネスを評価して、研究デザインの決定が結果に与える影響を判断した。最初の感度解析では、全てが抗JCV抗体陽性であるという仮定の下で、2012年より前に発生したPML症例を含めることにより、抗JCV抗体状態が不明な患者を除外する効果を調べた。これにより、一次解析に1例のEID及び67 SID PML症例が追加され、二次解析に5例のEID及び65例のSID PML症例が追加され、三次解析に0例のEID及び71例のSID PML症例が追加された。最初の解析と同じ2012年以降の母集団の分母を使用すると(抗JCV抗体の状態は2012年以前の母集団ではほとんど不明であるため)、EID対SIDのHRは3つ全ての解析で<0.01から0.09の範囲であった(表22)。
【0101】
第2の感度解析は、代替EIDの適格基準を用いることによってEID群に含めるために必要なEID用量の数の効果を調べた。PMLのリスクは、一次解析で過去18か月に注入13回以下(HR、0.10;95%CI、0.02−0.45)、または二次解析で12か月に注入9回以下(HR、0.01;95%CI、<0.01−0.09)という代替EID選択基準を使用して、SIDよりもEIDの方が有意に低かった(表22)。三次解析における代替のEID選択基準は検討しなかった。
【0102】
EID解析コホートの構成に対する潜在的な選択バイアスの影響に対処するために、2つの事後解析を実行した。PMLリスクの3つの計画された解析に投薬ギャップのある患者を含めることにより、投薬ギャップのある患者(2回の注入の間隔が12週間より長い)を除外する効果を評価したところ、結果のHRは0.08から0.16の範囲であった(表22)。
【0103】
この研究に含まれる全ての患者は試験したところ、少なくとも1回は抗JCV抗体陽性であったが、抗JCV抗体の血清陽性の持続時間がリスク推定に影響したか否かを評価するために、2回目の事後解析を行った。時変共変量としての縦方向の抗JCV抗体状態(ある時点での陰性から陽性への抗体状態変換)を、Cox回帰モデルに組み込んだ。結果のHR(95%CI)推定値は、一次解析で0.05(0.11〜0.18)、二次解析で0.11(0.04〜0.26)であった(表22)。この感度解析は、計画された三次解析では実行しなかった。
【0104】
EIDは、EID及びSIDの3つの定義全てについて、ナタリズマブ処置の連続する各エポックにおけるPMLの条件付きリスクの低下と関連していた(表23)。最初の4つの処置エポック(48回以下の注入)にわたって、EID群で観察されたPML症例(二次解析)は1つだけであった;一次及び三次解析で症例は観察されなかった。5番目と6番目のエポック(49〜72回の注入)では、PMLリスクは、3つの解析全てでSIDよりもEIDの方が大幅に低かった(表23)。
【0105】
13のPML症例は、一次及び二次のEID選択基準を満たす患者間で特定した。1つの症例は一次解析基準のみを満たし、10の症例は二次解析基準のみを満たし、2つの症例は両方の解析の基準を満たした。三次解析ではPML症例はなかった。PML診断の時点で、全て二次解析に含まれていた13人の患者のうち8人が、EIDから切り替わってSIDに戻り、PML診断の直前に28週間以上SIDであった(図5)。EIDの履歴のあるPML患者は、ナタリズマブ処置期間が長く、EIDレジメンを開始する前のナタリズマブ注入が多く、平均ナタリズマブ注入の合計は、それぞれの全体的なEIDコホートよりも多かった(表24)。以前の免疫抑制剤の使用も、EID PML症例では全体的なEIDコホートよりも一般的であった(一次解析:33%対5%、二次解析:17%対5%)。PML前の抗JCV抗体インデックス値が利用可能であった7つのPML症例のうち、6つは1.5を超えるインデックス値を有した(図5)。
【0106】
したがって、実施例1〜3で説明されている主要な解析結果は、EID間隔の定義、研究の包含/除外基準、及びPML定義の変更に対してロバストであり、米国では、ナタリズマブEIDが、ナタリズマブSIDと比較してJCV抗体+患者における、統計的に有意な、臨床的に意味のあるPMLリスクの低減と関連しているというさらなる証拠を提供する。
【表22】
CI=信頼区間。EID=延長間隔投与。HR=ハザード比JCV=JCウイルス。NA=解析せず。PML=進行性多巣性白質脳症。SID=標準間隔投与。
*抗JCV抗体陽性であると想定され、2012年以前に発生したPML症例を解析集団に追加した。これにより、一次解析で1例のEID及び67例のSID症例、二次解析で5例のEID及び65例のSID症例、三次解析で0例のEID及び71例のSID症例を追加した。†代替のEID定義は、一次解析では過去18か月で13回以下の注入、及び二次解析では12か月にわたって9回以下の注入であった。三次解析の代替定義は検討しなかった。注入間の投薬ギャップが12週間を超える患者を、2012年以前のPML症例感度解析コホートに追加した。§時変共変量としてのJCV状態のCox回帰モデリング、EID対SID。このモデルは、三次解析では試験しなかった。EID−3°群ではPML症例が発生しなかったので、¶95%のCIは推定不能である。
【表23】
PMLリスクは、一次及び二次定義に事前にISを使用していない抗JCV抗体陽性患者の1000人の患者あたりの発生率(リスクのある調整済み患者数あたりのPML症例数)として示される。事前にISを使用した患者は、患者数が不十分なため解析できなかった。リスクのある調整済みの患者数は、EID−1°群で95人、SID−1°群で689人、EID−2°群で171人、及びSID−2°群で747人であった。EIDの三次解析ではPMLリスクを計算できなかったが、これはこの解析ではPML症例が発生しなかったためである。一次、二次、三次解析におけるEID及びSIDの定義については、図4を参照のこと。EID=延長間隔投与。IS=免疫抑制剤。JCV=JCウイルス。PML=進行性多巣性白質脳症。SID=標準間隔投与。
*6年を超えるデータは示していない。
【表24】
PMLリスクは、一次及び二次定義に事前にISを使用していない抗JCV抗体陽性患者の1000人の患者あたりの発生率(リスクのある調整済み患者数あたりのPML症例数)として示される。事前にISを使用した患者は、患者数が不十分なため解析できなかった。リスクのある調整済みの患者数は、EID−1°群で95人、SID−1°群で689人、EID−2°群で171人、及びSID−2°群で747人であった。EIDの三次解析ではPMLリスクを計算できなかったが、これはこの解析ではPML症例が発生しなかったためである。一次、二次、三次解析におけるEID及びSIDの定義については、図4を参照のこと。EID=延長間隔投与。IS=免疫抑制剤。JCV=JCウイルス。PML=進行性多巣性白質脳症。SID=標準間隔投与。*6年を超えるデータは表示していない。
【0107】
実施例5
この研究の主な目的は、継続したSID処置に関して、ナタリズマブの標準間隔投与(SID)で以前に少なくとも12か月処置された対象のナタリズマブ(300mg IV注入)延長間隔投与(EID)の有効性を評価することである。
【0108】
二次的な目的は、継続的なSID処置との関連で少なくとも12か月間のナタリズマブSIDの追加の再発ベースの臨床有効性基準、継続的なSID処置に関して、少なくとも12か月のナタリズマブSIDの追加の磁気共鳴画像(MRI)病変有効性基準、及び継続的なSID処置に関した少なくとも12か月間のナタリズマブSIDの安全性を評価することである。
【0109】
【表A】
【表B-1】
【表B-2】
【0110】
重要な選択基準:
・参加者が研究の目的及びリスクを理解し、国及び地域の参加者のプライバシー規制に従って機密の健康情報を使用するための署名済みかつ日付付きのインフォームドコンセント及び承認を提供する能力。
・マクドナルド基準による再発寛解型の多発性硬化症(RRMS)の診断。
・RRMSの疾患改変単剤療法としてのナタリズマブによる処置であって、無作為化前の最低12か月間の承認された投薬と一致している、処置。参加者は、無作為化の3か月前に服用し忘れなかった、無作為化前の12か月間に少なくとも11回ナタリズマブの投与を受けていなければならない。
・総合障害度スケール(Expanded Disability Status Scale)(EDSS)≦5.5 スクリーニング時。
・研究者を登録することによって決定した無作為化前の最後の12カ月で再発なし。
【0111】
重要な除外基準:
・一次及び二次進行性多発性硬化症(MS)。
・スクリーニング時のGd増強病変に対してMRI陽性。
・MRIが禁忌である参加者(例えば、禁忌のペースメーカーまたはその他の禁忌の埋め込み金属デバイスを使用しているか、Gdの副作用に苦しんでいるか、もしくはそのリスクがあるか、または医学的に管理できない閉所恐怖症がある)。
・任意の臨床的に重要な(治験責任医師が決定した)心臓病、内分泌学、血液学、肝臓、免疫学、代謝(糖尿病を含む)、泌尿器科、肺、神経(RRMSを除く)、皮膚科、精神医学、腎臓、または治験責任医師の意見で、臨床試験への参加を妨げるであろう他の主要な疾患の病歴。
・スクリーニング時の抗ナタリズマブ抗体の存在。
【0112】
実施例6
序文
このレポートによって、以下が示される
a.EID対SIDの詳細な後向き解析;
b.SIDに対するEIDのPMLリスク低減の観点から有効性及び安全性をさらに検討する方法に関する提案;及び
c.体重及び拡大投与間隔を考慮した最新のPK/PDモデリング。
【0113】
データの概要
a.EID対SIDの詳細な後向き解析
承認された処方情報の推奨されるナタリズマブ用量は、4週間ごとに1時間かけて300mgの静脈内注入である。ナタリズマブの有益性リスク評価に影響を与える最も重要な有害事象は、進行性多巣性白質脳症(PML)の発生である。PMLリスクは、抗ジョンカニンガム(John Cunningham)ウイルス(JCV)抗体の存在、治療期間の延長、及び免疫抑制剤(IS)療法の以前の使用によって増大される。PMLリスクに対する代替投薬レジメンの影響の厳密な評価は限られている。
【0114】
米国では、MS TYSABRI Outreach:United Commitment to Health(TOUCH)処方プログラムに登録されている処方者のみが、MSの処置のためにナタリズマブを処方し得る。TOUCHデータベースは、全てのナタリズマブ注入記録、人口統計情報、IS療法の以前の使用、及びJCV抗体状態(JCV抗体状態は2012年2月以降利用可能)を保存し、代替の投与間隔に関する情報を提供し得る。PML症例は、BiogenのTYSABRIGlobal Safety Database(PMLデータベース)に保存される。この解析は、TOUCHデータベース及びPMLデータベースの後向き解析を通じて、PMLリスクに対する標準間隔投与(SID)と比較した延長間隔投与(EID)の潜在的な影響を評価するために設計された。
【0115】
研究目的
主要目的
−TOUCHデータベースに基づく、現在の表示推奨SIDでTysabriを受けた患者と処置履歴中にEIDを受けた患者との間のPMLのリスクの比較。
この目的は、PMLのリスクに対する定義された処置計画としてのEIDの影響を調査することを意図としている。
【0116】
二次的な目的
−SIDに基づいて予想されるものと一致するTysabriへの全体的な暴露がある患者と、TOUCHデータベースに基づくEIDから予想されるものと一貫した全体的な暴露を有する患者との間のPMLのリスクの比較。
【0117】
この目的は、Tysabriへの全体的な暴露の減少がPMLのリスクに及ぼす影響を調査することを意図している。
【0118】
方法論
TOUCH処方プログラムデー及びと2017年6月1日までのPML症例がこの解析に含まれた。PMLデータベースのデータカットオフ(DCO)は、2017年6月1日の暴露データに合わせて調整された。統計解析計画(SAP)の計画及び最終決定を通じて、Biogenと非Biogenの全ての研究者はPMLデータを伏せられたままであった。PMLデータは、SAPの確定後にTOUCH処方プログラムデータと統合した。
【0119】
TOUCHデータベースは、現実世界の臨床診療、患者の選択、及び日常生活の考慮事項を反映しているため、ナタリズマブの投与頻度は患者間でかなり異なる。PMLのリスクに対するEIDの影響を判断するために、関連する期間が異なるEID及びSIDの3つの定義を評価した。これらの3つのEID及びSIDの定義は、少なくとも18か月間、毎月0.83回の投与頻度に基づいていた。
【表25-1】
【表25-2】
【0120】
全ての定義について、EID群及びSID群のPMLのリスクは、生命表法及びカプラン・マイヤー推定を使用して推定した。EID群及びSID群のPMLのハザードは、年齢、性別、IS療法の以前の使用、開始暦年、及び注入回数について調整したCox回帰モデルを使用して比較した。
【0121】
対象及びサンプルサイズ
解析母集団には、任意の時点で抗JCV抗体陽性の検査結果が判明している患者が含まれていた。
【0122】
IS療法の以前の使用を解析するために、IS療法には以下の報告された投薬条件が含まれていた:アザチオプリン、アザチオプリンまたはメルカプトプリンまたはチオグアニン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミコフェノール酸、及びノバントロン。
【0123】
投薬ギャップが12週間を超える(2回の連続注入の間隔が12週間を超えると定義される)または過剰投与(2回の連続注入の間隔が3週間未満と定義される)の出現がある患者は解析から除外した。
【0124】
2017年6月1日の時点で、TOUCHデータベースには90,038人の患者のデータが含まれていた。
【0125】
実施例4の包含及び除外の基準が適用された後、各定義について解析された患者の数は次のとおりであった:定義1a、1988人のEID患者及び13,132人のSID患者;定義1b:998人のEID患者及び14,122人のSID患者;定義2a、3331人のEID患者及び15,424人のSID患者;定義2b、1870人のEID患者及び17,902人のSID患者;そして、定義3a、815人のEID患者及び23,168人のSID患者。定義3aのPML症例が報告されなかったため、定義3bは解析されず、したがって、より限定的な定義3bについて何らかの意味のある結果が観察されるとは予想されなかった。
【0126】
2017年1月3日の時点で米国で報告された合計196のPML症例のうち90超が、抗JCV抗体状態チェックをTOUCH情報収集フォームに実装した後に発生したので、既知の抗JCV状態の集団で発生したと推定される。
【0127】
これらの潜在的な解析母集団のサイズ及びPML事象の概数を使用すると、主要比較は、EIDが50%以上リスクを低下し得る(すなわち、ハザード比[HR]≦0.5)と仮定して、PMLのリスクの減少の約85%の検出力を有することが予想された。2017年6月1日の計画されたDCOでの解析の結果が統計的方法に記載されている基準に基づいて決定的でない場合、任意の定義のEID群の患者数が現在のDCOでのサイズの2倍のサイズに達したとき、最新の解析を実行することになった。
【0128】
変数及びデータソース
この解析のデータソースは、TOUCH及びPMLデータベースであった。この解析には、人口統計及び処置履歴データ(年齢、性別、IS療法の以前の使用、ナタリズマブ処置の合計期間、及びナタリズマブ注入の総数を含む)、及びPML発生が含まれていた。
【0129】
統計的方法
事象解析までのカプラン・マイヤー時間
表25で説明されている各定義について、累積リスクのKM推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)解析を、IS治療の以前の使用によって層別化されたEID群及びSID群に対して実行した。事象解析までの時間は、ナタリズマブ注入の回数ではなく、ナタリズマブ処置開始からの時間に基づいていた。
【0130】
IS療法の以前の使用の各階層(はい/いいえ)内で、ログランク検定を実行して、EID群とSID群との間の事象発生までの時間を比較した。解析は、処置履歴の間のある時点でEIDレジメンでナタリズマブを投与された患者のPMLのリスクが、一貫したSIDレジメンでナタリズマブを投与された患者と比較して低下したか否かを判断することだけを意図したことに注意すべきである。
【0131】
EIDレジメンは、一般に多様な長さのSIDの処置の期間の後に開始されるべきである可能性が高く、処置期間のはるかに限られた長さを有する傾向があるので、解析では、SIDレジメンのものと比較してEIDレジメンの事象発生までの時間を決定せず、PMLのリスクに対するEID前のSID暴露の程度の効果を評価しなかった。
【0132】
事象解析までのCox回帰時間
表22で説明されている定義ごとに、Cox回帰モデルを使用した事象発生までの時間解析を実行して、EID群とSID群の間のPMLのハザードを、年齢、性別、累積注入数、ナタリズマブ処置開始の暦年、及びIS療法の以前の使用(はい/いいえ)を共変量として使用して比較した。事象解析までの時間は、ナタリズマブ注入の回数ではなく、ナタリズマブ処置開始からの時間に基づいていた。HR(EIDからSID)の推定値、及びCox回帰モデルからのその95%信頼区間(CI)は、EIDの各定義の推論の主要な基礎であった。具体的には、HRの95%CIの上限が1未満の場合、EID群はSID群よりもPMLのリスクが低いと見なされた。HRのポイント推定値が0.9以上かつ1.1以下の場合、EID群及びSID群は、PMLの同様のリスクがあると見なされた。HRの95%CIの下限が1より大きい場合、EID群は、SID群よりもPMLのリスクが高くなるはずであった。
【0133】
妥当性比例ハザードの仮定をチェックし、仮定からの大きな逸脱があったならば、ログランク検定に基づく解析が主要であると見なされた。
【0134】
人口統計学
ベースライン人口統計特性は、各EID定義のEID群及びSID群全体でバランスが取れていた。患者の大半(約68%)は女性であった。初回注入時の患者の年齢の中央値は約43.0歳(範囲:6歳〜84歳)であった。患者の約5%は以前にIS療法を受けていた。全ての患者について、ナタリズマブ処置中のある時点で抗JCV抗体陽性の検査結果が知られていた。
【0135】
ベースラインの人口統計学的特徴は、PML既知であるかまたはJCV抗体陽性の患者について、PML既知であるか、またはJCV抗体陽性の患者(処置ギャップのある患者を含む)について、及び処置ギャップのみのある患者について主な解析母集団と概ね一致していた。
【0136】
ナタリズマブ曝露
各EID定義について、ナタリズマブ処置の合計期間の中央値は、SID群(全ての定義にわたって25.0か月〜45.0か月[範囲:1〜131カ月])よりもEID群(全ての定義にわたって43.0か月〜63.0か月[範囲:3〜131カ月])において長かった。ナタリズマブ注入の総数の中央値は、SID群(全ての定義にわたって26.0注入〜46.0注入[範囲:1〜142注入])よりもEID群(全ての定義にわたって32.0注入〜53.0注入[範囲:2〜137注入])で高かった。EID群の患者の定義されたEID処置期間の開始前のナタリズマブ注入の中央値の回数は、定義1a及び1bの場合、それぞれ37.0注入(範囲:1〜117注入)及び40.0注入(範囲:1〜115注入)であり、定義2a及び2bの場合、それぞれ25.0注入(範囲:1〜121注入)及び30.0注入(範囲:1〜122注入)であった。定義2a及び2bの結果によって、EIDレジメンに切り替える前に2年より長くSIDレジメンで大多数の患者がナタリズマブを受けていたことが示されている。SID群の患者の定義されたSID処置期間の開始前のナタリズマブ注入の中央値の回数は、定義1a及び1bの場合、それぞれ27.0注入(範囲:0〜121注入)及び27.0注入(範囲:0〜121注入)、ならびに定義2a及び2bの場合、それぞれ1.0注入(範囲:1〜31注入)及び1.0注入(範囲:1〜21注入)であった。定義されたEIDまたはSIDの処置期間の開始時またはその後のナタリズマブ注入の中央値の回数は、SID群(定義1a、1b、2a、及び2bにわたって19.0注入〜28.0注入[範囲:6〜141注入])よりもEID群でより低かった(定義1a、1b、2a、及び2bにわたって12.0注入〜17.0注入[範囲:4〜120注入])。定義3aは、曝露の全体的な平均に基づいて定義された;したがって、EIDレジメンは定義しなかった。したがって、EID処置の開始前または開始後のナタリズマブ注入の回数は計算できなかった。2つのナタリズマブ注入の平均の平均持続時間は、EID定義1a、2a、3aに関して、SID群(29.8日〜30.5日)よりもEID群(35.0日〜43.0日)で長かった。
【0137】
PML既知またはJCV抗体陽性の患者について、PML既知またはJCV抗体陽性の患者(処置ギャップのある患者を含む)について、及び処置ギャップのみの患者についてのナタリズマブ暴露データは、一般的に主要解析集団と一致していた。ただし、定義1a及び2aの場合、PML既知であるか、または処置ギャップのある患者を含むJCV抗体陽性の患者は、メインの解析母集団(それぞれ、中央値50.0注入[範囲:11〜132注入]及び51.0注入[範囲:6〜137注入])よりも合計でナタリズマブ注入が少なかった(それぞれ中央値41.0注入[範囲:2〜132注入]及び45.0注入[範囲:3〜137回の注入])。さらに、定義1a及び2aの場合、PML既知であるか、または処置ギャップのある患者を含むJCV抗体陽性の患者は、メインの解析母集団(それぞれ中央値37.0注入[範囲:1〜117注入]及び25.0注入[範囲:1〜121注入])よりも、定義されたEID処置期間の開始前に少ないナタリズマブ注入を受けた(それぞれ、中央値30.0注入[範囲:0〜117注入]及び19.0注入[範囲:1〜121注入])。同じ傾向が、処置ギャップのみがある患者の定義1a及び2aで観察された。注:処置ギャップのある患者を含む感度解析では、曝露時間は最初の投与から最後の投与まで計算された;ギャップ期間は暴露時間の要約からは削除されなかった。
【0138】
結果
各EID群は、抗JCV抗体陽性患者のSID群と比較して、PMLの臨床的及び統計的に有意に低いリスクと関連していた。
【0139】
進行性多巣性白質脳症のリスク解析
全てのEID定義にわたって生命表法を使用した主要解析母集団のPMLのリスクは、IS療法を事前に使用しなかった場合、SID群よりもEID群の方が低かった。IS療法を以前に使用した患者のサンプルサイズは、解釈には不十分であった。理論に縛られることを望むものではないが、本発明者らは、IS療法の以前の使用を有すると分類された患者は、EID投与の結果としてPMLリスクの同様の減少を示すと考える。
【0140】
各EIDの定義について、PML既知またはJCV抗体陽性の患者(処置ギャップのある患者を含む)について、及び処置ギャップのみの患者についてPMLのリスクを評価する感度解析は、一般的に主要解析母集団と一致していた。
【0141】
各EIDの定義について、PMLまでの時間のKM解析では、EID群の患者のPMLのリスクが、主要解析母集団のSID群よりも低いことが示された(図1D、図2D、図3D、及び6〜7)。PML既知であるかまたはJCV抗体陽性の患者について、及びPML既知であるかまたは処置を受けた患者を含むJCV抗体陽性の患者について、PMLまでの時間のKM解析は、主要解析母集団と一致していた。
【0142】
進行性多巣性白質脳症のハザード
各EIDの定義について、時変共変量としての累積投与回数を含む、PMLまでの時間のCox回帰モデルによって、EID処置がSID処置よりもPMLのリスクが低いことに関連しており、HR値が0.014(95%CI 0.002〜0.091;p<0.0001)(定義2b)〜0.122(95%CI 0.051〜0.291;p<0.0001)(定義2a)の範囲に及ぶことが示された。定義3aについて報告されたPML症例はなかった。
【0143】
PML既知、またはJCV抗体陽性の患者、PML既知、またはJCV抗体陽性の患者(処置ギャップのある患者を含む)、及び処置ギャップのみの患者の結果は、主要解析集団の結果と一致した。
【0144】
各EID定義についてPMLまでの時間について、Cox回帰モデルの推定パラメーターについて同様の傾向が観察された。
【0145】
考察及び結論
この解析によって、抗JCV抗体陽性患者では、ナタリズマブEID処置がSID処置よりもPMLのリスクが低いことと関連していることが実証されている。この結果は、評価された全てのEID定義にわたって一貫している。
【0146】
EID集団は主に、SID処置を受けた後2年より後にEID処置に切り替えた患者で構成され、平均の平均投与間隔は約5〜6週間であった。したがって、これらの解析でのEIDとSIDとの間のPMLのリスクで観察された相対的な減少は、2年より長いナタリズマブ暴露後の抗JCV抗体陽性患者によって引き起こされる。
【0147】
これらの解析の結果を解釈する際に考慮すべき多数の制限及び潜在的なバイアスがある。
【0148】
最も重要な制限は、保存された有効性データの欠如である。そのため、SID処置と比較したEID処置の損益は、このデータセットでは評価不能である。この解析で観察されたPMLのリスクに対するEID処置の影響を考慮すれば、医薬品市販承認取得者(MAH)は、EIDの損益についてよりよく情報提供するために、ナタリズマブEID処置の有効性をさらに調査することに関心を持っている。
【0149】
さらに、インデックス値は、TOUCHデータベースでは利用できない;したがって、EID処置に関連する低いリスクが、低いインデックス値に関連するPMLのリスクの低下とどのように相互作用するか、及びSID処置と比較して、インデックス情報の欠如が、EID処置のPMLの観察された低いリスクに対してどちらに偏り得るかどうかは不明である。EID処置は通常、PMLのリスクを下げるために臨床診療で利用されるので、EID処置を受けた患者の方がSID処置を受けた患者よりもインデックス値が高くなる可能性があり、処置群に対してバイアスがかかると考えられる。各EID定義に含まれている患者には、潜在的なバイアスもある。EIDで処置された患者は、SIDで治療された患者よりも平均してナタリズマブへの総暴露量が多く、これで処置群に対して偏りがあったようである。EIDに切り替えたほとんどの患者は、2年より長くSIDを受けていたため、EID処置した患者は、EIDに切り替える前にSIDを受けていたがPMLを発症しなかったSID処置患者であったため、選択バイアスがあると考えられ得る;これは、処置群に向かって偏るであろう。
【0150】
さらに、抗JCV抗体の存在によりPMLのリスクが高まるので、既知の抗JCV抗体陽性検査結果の患者のみを解析集団に含んだ。TOUCHデータベースは、2012年後半以降のJCV抗体状態のデータのみを収集した;ただし、PML患者はこの時間以前に抗JCV抗体陽性であった可能性があることに注意のこと。感度解析では、全てのPML患者が抗JCV抗体陽性であると仮定され、解析に含まれた。
【0151】
PMLリスクに関してEID処置患者とSID処置患者との間の相違のロバストネス、一貫性、及び大きさを考えると、このセクションで説明されている潜在的なバイアスは、PMLのリスクが、抗JCV抗体陽性患者など、例えば、PMLのリスクが高い患者では、SID処置よりもEID処置で低いという結論に影響を与える可能性はほとんどないと考えられている。
【0152】
TOUCH処方プログラムは、有効性データを収集しないため、EID処置でナタリズマブの有効性が維持されているか否か、及びEIDの損益についてより適切に情報提供するために、追加の研究が達成され得る。
【0153】
この解析の結果は一般化できない。なぜなら、PMLのリスクに対するEID処置の観察された効果が異なる患者集団(例えば、体重が異なる患者及びPMLのリスクが米国の集団よりも高い場合がある他の患者集団)で維持されているか否かは不明だからである。
【0154】
b.SIDと比較したEIDのPMLリスク低減の観点から、有効性と安全性を高めるためのさらなる方法;
標準間隔投与(SID)で処置された患者と、6カ月以上延長間隔投与(EID)で処置された患者を比較したTOUCH解析からの前述の結果を考慮して、本発明者らは、SIDに対するEIDの有効性及び安全性を高めるための多段階アプローチを開発した。このアプローチは、無作為化、対照、非盲検、評価者盲検の臨床研究における臨床検証に適していると考えられている。これには、スポンサーの研究契約及び/またはMAH主導の後向き的協力による確立されたデータベースの後向き解析、ならびに前向き無作為化対照研究が含まれる。
【0155】
無作為化、対照、非盲検、評価者盲検臨床試験
この試験の主な目的は、継続的なSIDに関連してSIDで少なくとも12か月後のナタリズマブのEIDの有効性を評価することであり、高精度、狭い95%CI、及び小さいが臨床的に関連する相違を検出する十分な検出力を有するΔSID−EIDを推定するという主な目的を有する。
【0156】
この前向き研究デザインの概略図は、以下の研究評価項目とともに図8として提示されている。
【0157】
主要評価項目:
48週でのN/NE T2病変の数
・盲検的なセントラルリーディングによって、盲検が実行不可能な場合に、再発に対して、客観的な転帰の指標が得られる。
・N/NE T2は、Gd病変に対する累積的な指標(より一時的な指標)である。
二次的な評価項目:
・臨床転帰:最初の再発までの時間、ARR、(48週目及び72週目)、及び安全性
・MRI:24週目と72週目の新規または新しく拡大したT2病変の数、24週目、48週目、72週目の新規Gd+増強病変及び新しいT1低強度病変の数
PK、PD、及び探索的バイオマーカーの評価項目:
・α4−インテグリン飽和
・ナタリズマブ濃度
・リンパ球サブセット
研究母集団:
重要な選択基準
・18〜60歳、RMS、EDSS≦5.5
・SIDナタリズマブで少なくとも12か月間安定
・JCV−及びJCV+が含まれている
・ナタリズマブ前の疾患活動性:地域のラベルごと
・無作為化前の過去12か月間に再発がない
主要な除外基準
・以前の免疫抑制剤の使用
・MRIスクリーニング時のGd+病変
・一次的及び二次的進行性MS
【0158】
これは、過去12か月に再発することなく少なくとも12か月ナタリズマブSIDを投与されているRRMS患者を対象とした、前向き、無作為化、介入的、対照、非盲検、評価者盲検の第3b相試験である。(1)4週間の間隔または(2)6週間の間隔のいずれかでナタリズマブの投与を継続するために、対象は2アームのうち1アームに無作為化される。
【0159】
無作為化は、国/地域、体重(>90kg対≦90kg)、及びナタリズマブ曝露期間(>3年対≦3年)によって層別化される。全てのMRIスキャンは、中央施設で読み取られ、評価者は対象の割り当てについて知らされていない。
【0160】
対象を、定期的にスケジュールされたナタリズマブの用量の通院(±3日)でスクリーニングし、スクリーニングでのMRIのGd+増強病変によって明らかな疾患活動性がなく、他の全ての適格基準を満たしている場合は、次の月1回の通院で登録及び無作為化する。対象は、72週間の試験期間を通じて、割り当てられた頻度(±3日)で非盲検ナタリズマブを投与される。
【0161】
研究の根拠:
現在推奨されている用量(300mgのナタリズマブを4週間ごとに静脈内(IV)に投与)の安全性及び有効性は、臨床試験と現実の臨床実践で十分に確立されている。
【0162】
抗JCV抗体陽性患者において一部の医師により、ナタリズマブの投与間隔を延長している(例えば、6週間)。US TOUCH(Tysabri(登録商標)Outreach:United Commitment to Health)プログラム(n=18,755)でナタリズマブで治療された抗JCV抗体陽性患者の事前指定された後向き解析では、PMLのリスクを、標準間隔投与(SID)で処置された患者と、少なくとも6か月間(300mgの平均投薬間隔は5〜6週間)、延長間隔投薬(EID)で処置された患者との間で比較した。大多数の患者は、EIDに切り替える前に少なくとも1年間SIDで治療された(切り替え前の25のSID注入の中央値)。解析によって、EIDで治療された患者のPMLのリスクの臨床的及び統計的に有意な減少が実証された。いくつかの実施形態では、ナタリズマブの投与間隔を延長することが、患者の利益/リスクを改善し得るか否かは、本明細書に記載される前向き、無作為化、対照試験で確立される。
【0163】
この試験では、SIDでの疾患の安定性の少なくとも12か月(投与間隔4週間)の後、EIDへの切り替え(例えば、投与間隔6週間)の有効性、忍容性、及び安全性を評価する。
【0164】
この前向き研究は、SIDとEIDとの間の相違を95%の狭い信頼区間で、かつ十分な検出力で高精度に推定して、小さくかつ臨床的に関連する相違を検出することを目的とした高品質の有効性データを生成するように設計されている。このデータ生成作業には時間がかかるが、最終的には、PK/PDモデリング及びレジストリ解析から可能なレベルよりも高いレベルの証拠が提供される。
【0165】
この研究は、米国、カナダ;ドイツ;イタリア;英国;スペイン;フランス;オランダ;ベルギー、オーストラリア及びニュージーランドで行われる。最初の患者は、2019年第1四半期に登録される予定であり、最終結果は2021年第2四半期に予定されている。
【0166】
研究の目的及び評価項目:
一次的な目的及び評価項目:
研究の主な目的は、継続的なSID処置と関連して、狭い95%CIの高い精度でSIDとEIDとの相違を推定することを目標として、及び適切な検出力で小さいが臨床的に関連のある差異を検出するため、少なくとも12か月間ナタリズマブSIDで以前に処置された患者のナタリズマブEIDの有効性を評価することである。
【0167】
この目標に関連する主要な評価項目は、48週間での新規または新たに拡大するT2高強度病変の数である。
【0168】
二次的な目的及び評価項目は以下のとおりである:
継続的なSID処置との関連で、以前に少なくとも12か月間ナタリズマブSIDで処置された患者におけるナタリズマブEIDの追加の再発ベースの臨床有効性指標を評価すること。
【0169】
継続的なSID処置との関連で、以前に少なくとも12か月間ナタリズマブSIDで処置された患者におけるナタリズマブEIDの追加のMRI病変有効性指標を評価すること。
【0170】
継続的なSID処置との関連で、以前に少なくとも12か月間ナタリズマブSIDで処置された患者のナタリズマブEIDの安全性を評価すること。
【0171】
これらの目的に関連する副次的評価項目は以下のとおりである:
−最初の再発までの時間(再発は、独立神経評価委員会(Independent Neurology Evaluation Committee)により判定される)
−48週目と72週目の年間再発率
−48週目と72週目に再発する患者の割合
−24週目と72週目の新規または新たに拡大するT2病変の数
−24、48、及び72週目のGd+増強病変及びT1低強度病変の数
−有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)の安全性評価
【0172】
探索的目標及び評価項目は以下のとおりである。
継続的なSID治療に関連して、以前に少なくとも12か月間ナタリズマブSIDで処置された患者のナタリズマブEIDの処置を決定する場合に、臨床医にとって重要であり得る追加の臨床及びMRIの有効性、安全性、及び忍容性の指標を評価すること。
薬物動態(PK)、薬力学(PD)、バイオマーカー、及び患者の報告した結果(PRO)を評価するために、以前に少なくとも12カ月間、ナタリズマブSIDで治療された患者におけるEID切り替えに最適な応答者についての解析を可能にする。
【0173】
これらの目的に関する探索的評価項目は以下である:
探索的な臨床的有効性の転帰:
−48週目と72週目の総合障害度スケール(Expanded Disability Status Scale:EDSS)の進行(3か月間持続)
−48週目及び72週目でのEDSSの改善(3か月間持続)
−48週目と72週目の9ホールペグテスト(9HPT)時間、時限25フィート歩行(T25FW)時間、及びシンボルディジットモダリティテスト(SDMT)スコア
探索的安全性及び忍容性の転帰:
−スクリーニングならびに12、24、36、48、60、及び72週目の抗ナタリズマブ抗体
−ベースラインならびに24、48、及び72週目に評価される抗JCV抗体の状態
探索的MRIの転帰:
−Gd+増強、T2高強度、及び非増強T1低強度病変の48週及び72週目の容積
−48週目と72週目の脳容積変化(PBVC)の割合 探索的PK、PD、
バイオマーカー、及びPROの転帰:
−血清トラフナタリズマブ濃度(Ctrough)
−トラフα4−インテグリン飽和
−T細胞、B細胞、及びNK細胞(CD4、CD8、CD19、及びCD56)を含むリンパ球サブセットによるリンパ球カウント
−追加の血清、血漿、全血RNA、及びPBMCサンプルを、スポンサーの裁量で試験されるナタリズマブ処置応答またはMS疾患バイオマーカーに関連する探索マーカーの将来の可能性のある試験のために収集して保存する。
例えば、探索的バイオマーカーには、血清ニューロフィラメント軽鎖、可溶性血管細胞接着分子1(VCAM 1)、α4−インテグリン発現などが含まれ得るが、これらに限定されない。
−PRO:薬物処置の満足度アンケート(Treatment Satisfaction Questionnaire for Medication:TSQM)、神経学的生活の質(Neurology Quality of Life:Neuro−QoL)疲労アンケート、多発性硬化症影響スケール(Multiple Sclerosis Impact Scale)(MSIS−29)、EuroQol 5次元アンケート(EQ−5D−5L)、及び臨床全体の印象スケール(医師と患者)(12、24、36、48、60、及び72週目)。
【0174】
探索的CSFサブスタディの目的及び評価項目は以下のとおりである:
MS疾患活動性がない場合、EIDがCNSリンパ球活動の証拠につながるか否かを調査すること。
腰椎穿刺(lumber puncture)機能を備えた選択した数の部位について、同意を得た対象からCSFを収集し、スポンサーの裁量で試験されるナタリズマブ処置応答またはMS疾患バイオマーカーに関連する探索マーカーの将来の潜在的な試験のために保存する。例えば、探索的バイオマーカーとしては、限定するものではないが、ナタリズマブ濃度、リンパ球数、リンパ球サブセット、ニューロフィラメント光レベル、免疫グロブリンインデックスオリゴクローナルバンド(OCB)、または他の炎症マーカーなどが挙げられ得る。
【0175】
用量及びスケジュールの選択の根拠:
ナタリズマブの推奨用量は、4週間ごとに300mgの静脈内(IV)注入である。米国のナタリズマブで治療された抗JCV抗体陽性患者の事前指定された後向き解析(n=18755)では、PMLのリスクを、SIDで処置された患者とEIDで処置された患者(5〜6週間の平均投与間隔で300mg)との間で比較した。大部分の患者は、EIDに切り替える前に少なくとも1年間SIDで処置した。この解析によって、EIDで処置した患者のPMLのリスクの臨床的及び統計的に有意な減少が実証された。この研究では、推奨用量を維持することとの関連で、EIDへの切り替えの有効性(6週間の投与間隔など)を評価する。
【0176】
研究参加の期間:
個々の対象は、4週間のスクリーニング期間、72週間の無作為化処置、12週間の追跡期間を含む88週の間、この研究に参加する。
フォローアップ期間:12週間
【0177】
研究場所:
北米(約70%)、欧州(約25%)、及びオーストラリア(約5%)の約80の施設を予定している。
【0178】
計画された対象の数:
約480名の対象が登録される予定である。対象はSIDまたはEID処置に対して1:1の比率で無作為化される。無作為化は、国/地域、体重(90kg以下対90kg超)、及びナタリズマブ曝露期間(3年超対3年以下)によって層別化されている。
【0179】
サンプルサイズの決定:
アルファレベル0.05(両側)で48週間にわたる新規または新たに拡大するT2病変の平均数の増大を検出するために、400対象(アームあたり200対象)のサンプルサイズによって以下が得られる:
−平均0.3(この集団におけるSID投与アームの期待される有効性)から0.5への増大を検出する80%超の検出力
−平均0.3から0.6への増大を検出する90%以上の検出力。
新規または新たに拡大するT2病変と再発との関係に関するメタ解析を含む、MS処置に関する履歴データは、48週間にわたる平均の新規または新たに拡大するT2病変の差が0.2未満という臨床的関連性をほとんどまたは全く示唆していない。脱落率約17%を占める約480人の対象が登録される。
【0180】
研究集団:
選択基準
この研究への参加資格を得るには、候補者は、無作為化の時点、またはリストされた個々の資格基準で指定された時点で、以下の適格基準を満たす必要がある:
1.対象が研究の目的及びリスクを理解し、国及び地域の対象のプライバシー規制に従って機密の健康情報を使用するための署名及び日付を付けたインフォームドコンセント及び承認を提供する能力。
2.インフォームドコンセントの時点で18〜55歳(包括的)。
3.RRMSの診断
無作為化前の最低12か月間の承認された投薬と一致するナタリズマブによる処置。対象は、無作為化の前12か月に少なくとも11用量のナタリズマブを投与され、無作為化の前3か月は投与を逃していない。
4.スクリーニング時のEDSS<5.5。
5.登録している治験責任医師により決定された、無作為化前の過去12か月間に再発がない。
6.妊娠の可能性がある全ての女性は、研究中及び研究処置の最後の投与後3か月間、効果的な避妊を実践する必要がある。
【0181】
除外基準
任意の以下の除外基準が無作為化の時点で、または列挙された個々の基準で特定された時点で存在する場合、候補者は研究登録から除外される。
1.ヒト免疫不全ウイルスの既往歴。
2.C型肝炎(C型肝炎ウイルス抗体[HCV Ab]の検査)またはB型肝炎ウイルス(B型肝炎表面抗原[HBsAg]及び/またはB型肝炎コア抗体[HBcAb]の検査)の既往歴。
3.スクリーニング時のGd増強病変に対してMRI陽性。
4.MRIが禁忌である(例えば、禁忌のペースメーカーまたはその他の禁忌の埋め込み金属デバイスを有するか、Gdの副作用に苦しんでいるか、もしくはそのリスクがあるか、または医学的に管理できない閉所恐怖症がある)対象。
5.任意の臨床的に重要な(治験責任医師により決定された)心臓、内分泌、血液、肝臓、免疫、代謝(糖尿病を含む)、泌尿器、肺、神経(RRMSを除く)、皮膚科、精神科、腎臓、または治験責任医師の意見で、臨床試験への参加を妨げるその他の主要な疾患の病歴。
6.固形腫瘍及び血液系悪性腫瘍を含む悪性疾患の病歴(完全に切除され、治癒したと考えられる皮膚の基底細胞及び扁平上皮癌を除く)。
7.移植歴または任意の抗拒絶反応療法の履歴。
8.重度のアレルギー反応またはアナフィラキシー反応の病歴、または任意の抗体薬物療法に対する既知の過敏症。
9.スクリーニング前30日以内の臨床的に重要な感染症(例えば、蜂巣炎、膿瘍、肺炎、敗血症)、または任意の時点でのPMLもしくはその他の日和見感染症。
10.スクリーニング時の抗ナタリズマブ抗体の存在。
11.治験責任医師が決定した、病歴、身体診察、または臨床検査に基づいた、任意の深刻な感染を示唆する兆候または症状。
処置歴
12.クラドリビン、ミトキサントロン、T細胞またはT細胞受容体の予防接種、シクロホスファミド、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、またはミコフェノール酸モフェチルによる事前処置。
13.無作為化前の24か月以内のナタリズマブ以外の任意の治療用モノクローナル抗体による以前の処置。
14.全リンパ球照射による事前処置。
15.無作為化前の12か月以内のIV免疫グロブリン(IVIg)、血漿交換、または細胞除去療法による事前処置。
16.無作為化前3か月以内のIVまたは経口コルチコステロイド(局所用コルチコステロイドは許容される)または関連製品による処置。
種々雑多
17.研究中に妊娠することを検討している女性対象、または妊娠中もしくは現在授乳中の女性対象。
18.治験責任医師の判断による、登録前2年以内の薬物またはアルコール乱用の履歴。
19.任意の他の研究処置または疾患研究における現在の登録。
20.研究の要件を遵守することができない。
21.治験責任医師またはBiogenの意見で、対象を登録に適さなくする、他の詳細不明の理由。
【0182】
再スクリーニング基準:
一過性の感染によりスクリーニングに失敗した対象は、30日以内に1回再スクリーニングしてもよい。
【0183】
処置群:
SID群:約240人の対象が4週間(28±3日)ごとに300mgのIV注入としてナタリズマブを投与される。
EID群:約240人の対象に、ナタリズマブを6週間(42±3日)ごとに300mgのIV注入として投与する。
【0184】
通院スケジュール:所定の対象は、スクリーニング及び追跡期間を含む、この研究中にクリニックへの合計21回以下の通院が期待され得る。
【0185】
用量制限毒性の定義:
用量制限毒性の定義は適用されない。
【0186】
個々の対象の救助及び治療のオプション
以下の条件のいずれか1つ以上が決定された場合、救急処置が対象に指示される。
−この研究の一部として実行された以前のスキャンと比較して、任意のサイズの4つ以上の新規または拡大性のT2病変
−以前の評価と比較したEDSSで1.5以上の増大(最初の増大から少なくとも12週間で確認された)
−発熱または感染に関連しない、新たなまたは再発性の神経症状を伴う2つの臨床的再発であって、最低期間は24時間で、以下のいずれかである:1)EDSSの2機能スケール以上でグレード1以上の増大;または2)EDSSの1機能スケールでグレード2以上の増大;または3)以前のEDSSが5.5以下の場合はEDSSで1以上の増大か、もしくは以前のEDSSが6以上の場合は0.5以上の増大(以前のEDSSが0と等しい場合はEDSSで1.5以上の増大)、臨床的再発。
【0187】
ナタリズマブEIDで治療された対象が、上記の状態のいずれかを経験した場合、治験責任医師は、疾患の活動を示したMRIの日付または少なくとも3か月間のEDSS進行の確認のいずれかの日付から4週間以内に、彼/彼女の裁量で、ナタリズマブSIDに救急処置として戻してもよい。ナタリズマブSIDとは異なる救急治療を受けた対象は、研究から除外される。
【0188】
急性の臨床的再発を経験した対象に対しては、再発処置のための局所標準治療(最大5日)のとおり高用量のコルチコステロイド処置を行ってもよい。
【0189】
処置の中止:
対象が、以下のいずれかの理由により、治験の処置を永久に中止しなければならない:
−対象が妊娠する。治験の処置は直ちに中止されなければならず、妊娠が報告されるべきである。
−対象が持続的な抗ナタリズマブ抗体を発現する(2連続の測定値)。
−対象がPMLを発症する。
−対象が同意を取り下げる。
−対象が研究処置の永久的な中止を必要とする医学的緊急事態を経験する。
−医学的理由により治験責任医師の裁量で
−非遵守の理由により治験責任医師またはスポンサーの裁量で。
【0190】
治験の処置を中止した対象は試験に残り、プロトコルに必要な試験及び評価を継続してもよい。対象が研究を中止することを選択した場合、早期終了訪問(Early Termination Visit)は、できるだけ早く、ただし、研究処置の最後の投与後4週間以内に行うべきであり、さらに、全ての試験終了(EOS)評価は、治験処置の最終投与を受けた後12週間(±3日)に別のEOS通院で実施する必要がある。治験の処置を中止する主な理由は、対象の電子症例報告フォームに記録する必要がある。
【0191】
有効性評価:
MRI有効性評価
−T2高強度病変の数及び容積
−Gd+増強病変の数及び容積
−T1低強度病変の数及び容積
−PBVC
【0192】
臨床有効性評価
−再発(臨床的再発は、24時間以上の発熱または感染に関連しない、新しいかまたは再発した神経症状による定義のとおり評価される)
−神経学的検査及びEDSS
−9HPT、T25FW、SDMT
−TSQM、Neuro−QoL疲労、MSIS−29、EQ−5D−5L
安全性評価:AE、SAE、抗ナタリズマブ抗体、及び抗JCV抗体の状態。
治験処置の濃度評価:
血清トラフのナタリズマブ濃度。
薬力学的パラメーター:
−トラフα4−インテグリン飽和。
−T細胞、B細胞、及びNK細胞(CD4、CD8、CD19、CD34、及びCD56)を含むリンパ球サブセットによるリンパ球カウント。
−血清、血漿、全血RNA、PBMC、CSF(オプション)、及びDNA(オプション)は、スポンサーの裁量で試験されるべき、ナタリズマブ処置応答またはMS疾患バイオマーカーに関連する探索マーカーの将来の可能性のある試験のために収集及び保存される。
【0193】
DNA/RNA/プロテオミクスサンプル収集:
理論的根拠:患者の利益/リスクを最適化する適切な用量レジメンの選択をサポートするために、EIDレジメンに対する処置関連反応の潜在的な予測及び/または薬力学的マーカーを開発することが重要な場合がある。オプションで全血RNAの発現、及び/またはMS疾患活動性のプロテオミクスプロファイリング、及び/またはナタリズマブ処置反応(スポンサーの裁量で実施される試験)のためにサンプルを収集及び保存する。DNAサンプルは同意のある対象から収集し、必要に応じてナタリズマブまたはMS疾患の経過に対する反応に影響し得る遺伝子を特定する。遺伝子研究への参加は患者にとって自由意志であり、薬理ゲノム学的分析は、探索的である(試験はスポンサーの裁量で行われるべきである)。潜在的に、処置に対する臨床反応の何らかの不均一性は、患者の遺伝的変異と関連している場合がある。ただし、現在、特定の遺伝子多型がナタリズマブへの反応に関連していることを示唆するデータはない。
【0194】
実験室評価のサンプル:
重複するサンプルは取得されない;しかし、元のサンプルが失われるか、または評価できない場合のバックアップとして元のサンプルのアリコートを保存する。
【0195】
統計的ステートメント及び解析計画:
主要評価項目である、48週目の新規または新たに拡大するT2病変は、処置を分類変数として、体重(≦90kg対>90kg)、EDSS、及び領域を共変量として用いて負の二項回帰モデルを使用して解析する。
【0196】
SID対EIDの平均病変数の比率(EID/SID)は、95%信頼区間(CI)と関連するp値を有するモデルから導き出される。p値(両側)が0.05未満の場合、処置は異なると見なし得る。SID群と比較して、EID群の平均病変数が2倍に増大する可能性は、95%CIの上限が2未満である場合は除外されると考えられ得る。新規または新規拡大T2病変の患者の割合は、上記と同じ共変量のロジスティック回帰モデルを使用して解析する。他の時点での新規または新たに拡大するT2病変、ならびにGd+病変も同様に解析する。再発の主要な副次的評価項目も、負の二項回帰モデルを使用して解析する。事象の評価項目までの時間を、Cox回帰モデル及びカプラン・マイヤー推定を使用して解析する。性能試験の転帰及びPDバイオマーカーは、反復測定の混合モデルを使用して解析する。PK濃度と有効性評価項目(MRI病変及び再発)との間の関係、及びPDバイオマーカーと有効性評価項目との間の関係は、負の二項回帰モデルまたはロジスティック回帰モデルを使用して評価する。PK濃度カテゴリー及びα−インテグリン飽和レベルカテゴリーによって定義されたサブグループの処置の違いも評価する。
【0197】
無作為化処置期間中のAEの発生率は、処置群、重症度、及び研究処置との関係によって表にされる。表形式の要約には、システム臓器クラス別、及び優先項目別の発生率が含まれている。試験中止に至ったAE及びSAEは、処置群ごとにまとめられている。臨床検査パラメーターの臨床的に関連する異常は、処置群ごとに識別される。
【0198】
暫定的解析:
6か月時点の新規または新たに拡大するT2病変の数に基づく、暫定的な無益性解析は、対象の50%が6か月以上の無作為化治療を受けたときに行われる。暫定的な無益性解析は、EID群で臨床的に意味のある効力の損失が発生している場合、研究を早期に停止して、EIDの潜在的な有効性の欠如の結果として、制御されていないMS疾患活動性の治験参加者に対する不要なリスクを防ぎ得ることを確実にするように設計されている。
【0199】
治験中止規則:
暫定的な無益性解析が、SID群と比較してEID群の新規または新たに拡大するT2病変によって測定された有効性の統計的に有意な悪化を示した場合、研究は中止される。この研究は、治験責任医師に通知した後、いつでも終了し得る。調査が保留、完了、または終了した場合、治験責任医師に通知される。
【0200】
研究の終わり:研究の終わりは最後の対象、最後の通院である。
【0201】
合格/不合格基準:該当なし
c.体重と延長された投与間隔を考慮した最新のPK/PDモデリング。
データ及びモデリング及びシミュレーションの結果を以下に示す。
以下の各用量レジメンでのナタリズマブ処置の1年間のCavg、Ctrough、及びインテグリン飽和(%)のシミュレーション結果:300mgを4週間ごと(Q4W)、5週間ごと(Q5W)、6週間ごと(Q6W)、7週間ごと(Q7W)、8週間ごと(Q8W)、10週間ごと(Q10W)、及び12週間ごと(Q12W)を、図9に示す。
予測は、4つの体重群(40〜<60kg、60〜<80kg、80〜<100kg、及び100〜<120kg)のそれぞれについて提示される。1年間の処置(0〜52週間)にまたがる平均血清ナタリズマブ濃度、及び平均インテグリン飽和(%)の時間経過を、全ての治療群と体重群についてプロットしている。
【0202】
示されているように、臨床的評価項目(Gd+病変数、ARRなど)を有する、以前に公開されたPK−PDモデル(Muralidharan 2017)は、Tysabriナイーブな個人向けに開発され、さまざまな用量レベルでのQ4W投与を評価するように設計されている。そのため、これらのモデルを直接適用して、300mgのQ4Wのラベルの投薬レジメンを個人がしばらく行ってから、異なる頻度(例えば、Q6WまたはQ8W)の投与に移行した状況をシミュレートすることはできない。理論に拘束されるつもりはないが、本発明者らは、インテグリン飽和の低下など、システムに明らかなPD遅延があり、PK濃度の急激な低下にかかわらず、標準的な治療の中止後しばらくの間Gd+病変の再発が起こらなかったと考えている。このような見かけ上の遅延は、Tysabriナイーブな個人がシミュレートされた場合には重要ではなかったため、PK有効性モデルでは考慮されていない。しかし、Q4W投与とQ6W投与への移行が安定している患者におけるナタリズマブの有効性をモデル化する場合、これらの見かけ上の遅延を考慮する必要がある。
【0203】
本研究では、この見かけ上の遅延に対処する更新されたモデリングアプローチの結果、及びモデルからの後続のシミュレーションが提供される。要約すると、更新されたシミュレーション結果により、インテグリン飽和の観点から、Q4W及びQ5W投与で全ての体重にわたって高いレベルで有効性が維持されることが示されている。有効性は、Q6Wの2つのより高い体重カテゴリーでより顕著に減少し始め、より少ない頻度の投薬で徐々に悪化する。
【0204】
方法
モデリングのためのデータ
研究101MS205(RESTORE)は、無作為化前に少なくとも12か月間MS再発なしで少なくとも12か月間ナタリズマブ処置を受けていた、再発型の多発性硬化症(MS)の患者における前向き無作為化試験であった。治験登録前に12か月以上にわたって300mgのナタリズマブIVを投与された患者は、それぞれ、ナタリズマブ、プラセボ、または代替療法(筋肉内インターフェロンベータ1a、酢酸グラチラマー、またはメチルプレドニゾロン)に1:1:2の比率で無作為に割り当てられた。無作為化は0週目に行った(その時点で全ての患者が最後のナタリズマブ注入を受けた)。28週目に、患者はプラセボまたは代替療法を中止し、非盲検ナタリズマブを再開した。この研究でのナタリズマブ処置中止後のPK及びPD変化のタイミングを特徴付けるために行われた解析では、ナタリズマブ処置が中断された患者の平均トラフナタリズマブ濃度は、中止後4週目の38.4μg/mLから12週目の3.8μg/mLまで急速に低下した[Plavina 2017]。しかし、α4−インテグリン飽和レベルは、4週目の平均89.4%から12週目の31.3%までゆっくりと低下し、次いで16週目以降は約10%〜15%でプラトーに達した。ナタリズマブ処置が中断された患者では、4週目または8週目に、磁気共鳴画像法(MRI)の救済基準(容積が0.8cm3を超える1つの病変または任意のサイズの2つ以上の病変)を満たすGd+病変はなかった。
【0205】
しかし、MRI救済基準を満たすGd+病変を有する患者の割合は、12週目に2.5%に増大し、さらに16週目に41.8%に増大した。ナタリズマブ処置が中断された患者の臨床的再発も、12週目以降に頻度が増えた[Fox2014]。RESTOREのデータによって、ナタリズマブ処置で少なくとも12か月安定している患者では、ナタリズマブの中止によるα4−インテグリン飽和レベルの低下が、薬物濃度レベルと比較して遅延し、疾患活動性の回復が飽和レベルの低下率に対応しているようであるということが示唆されている。
【0206】
関係性を評価するために、α4−インテグリン飽和レベルのデータ;4、8、12、及び16週目のGd+病変;及びRESTORE治験においてナタリズマブ処置で12か月以上事前に安定していた患者集団からの、最大16週目までの臨床的再発の発生をモデリングに使用した。ナタリズマブ中断患者の大部分は、疾患活動性の復帰後の16週目からナタリズマブを再開したため[Fox 2014]、16週目以降のデータはモデリングから除外した。
【0207】
101MS206治験(REFINE)は、MS再発のない標準的な投薬レジメンで少なくとも12か月間ナタリズマブを投与されている患者を対象に、ナタリズマブのさまざまな投薬レジメンをさらに評価する前向き無作為化試験であることに注意すべきである。研究されたレジメンには、300mgのIV Q4W及びQ12Wレジメンが含まれていた。ただし、MRIスキャン、神経学的検査、及びα4−インテグリン飽和レベルの採血は12週間の間隔で行ったので、REFINEデータを、モデル構築データセットの一部としてではなく、Q4W及びQ12W投与のシミュレーション結果の検証データセットとして使用した。
【0208】
モデル1:Gd+病変発生の確率
4、8、12、16週での病変の発生(はい/いいえ)を反復測定相関応答変数として含み、対応する時点でのα4−インテグリン飽和レベルを説明変数として含む、一般化推定方程式(GEE)モデルを使用してデータに適合させた。
【0209】
平均応答は、ロジットリンク関数を使用して、時点間で交換可能な作業相関行列によってモデル化した。具体的には、γijがj回目の通院時の患者iのGd+病変状態を表すと仮定する、j=1、...、4、病変発生の確率μijのモデルは、g(μij)=β0+xijβ1であり、xijは、j回目の通院時の患者iの飽和レベルであり、二項基底分布を伴うロジットリンク関数g(μij)=log(μij/[1−μij])である。所与の飽和レベルに対するμ(病変発生の確率)の予測値は、分散のロバスト推定を使用してモデルから導出された。
【0210】
MRI救済基準を満たしている患者の場合、実際のスキャン結果に関係なく、その後の通院時の応答値は「Y」と帰属した。
【0211】
モデル2:Gd+病変の平均数
同様のGEEモデルも構築し、4、8、12、16週目の病変数と、対応する時点のα4−インテグリン飽和レベルとの関係を評価した。負の二項基底分布を伴う対数リンク関数を、病変の平均数のモデルで使用した。時点間の交換可能な作業相関行列も想定された。
【0212】
飽和レベルが与えられた場合のμ(病変の平均数)の予測値は、分散のロバスト推定を使用してモデルから導出された。
【0213】
MRI救済基準を満たしている患者の場合、実際のスキャン結果に関係なく、救済時に観察された病変の数を使用して、その後の通院時の応答値を帰属した。
【0214】
モデル3:臨床的再発の発生確率
臨床的再発の発生確率は、反復測定応答変数として、0〜4週目、5〜8週目、9〜12週目、及び13〜16週目の期間で再発の発生(はい/いいえ)、ならびに説明変数として4週目、8週目、12週目、及び16週目のα4−インテグリン飽和レベルを用いる、同様のGEEモデルを使用して評価した。二項基底分布を伴うロジットリンク関数を使用した。時点間の交換可能な作業相関行列も想定された。飽和レベルが与えられた場合のμの予測値(再発の確率)は、分散のロバスト推定値を使用してモデルから導出された。
【0215】
再発を経験した患者の場合、後続の全ての時間間隔での応答値は「Y」として帰属した。
【0216】
投薬レジメンによるトラフα4−インテグリン飽和レベル
以下の各投薬レジメン(300mg Q4W、Q5W、Q6W、Q7W、Q8W、Q10W、及びQ12W)の52週目でのトラフα4−インテグリン飽和を、体重カテゴリー(40〜<60kg、60〜<80kg、80〜<100kg、及び100〜<120kg)ごとに、1つの投薬レジメン群あたり10,000例の患者で、PK−α4インテグリンモデルから事前にシミュレートした。結果として得られた分布(表26及
び図10)を使用して、さまざまなシミュレーションされた母集団の定常状態のトラフ飽和レベルの無作為サンプルを抽出した。
【表26】
【0217】
用量レジメンによる有効性のためのシミュレーション
Gd+病変を有する患者の割合、Gdの+病変の平均数、及び所定の患者集団での再発の累積確率は、下の2段階に従ってシミュレーションを行った。
【0218】
ステップ1:
所定の体重分布を備えたサイズNの所定の母集団について、N人の患者の無作為なサンプルを、投薬レジメン及び体重により、上記のトラフα4−インテグリン飽和レベル分布から抽出した。切断正規分布(レベル0%と100%で打ち切られた)を仮定した。52週目のトラフα4インテグリン飽和レベルの以前のシミュレーション結果は、一般的な定常状態レベルを表すと想定されていた。
【0219】
ステップ2:
シミュレーションされた各患者について、病変の予測される確率または予測される平均数及び予測値の分散は、上記のステップ1のトラフα4−インテグリン飽和レベルに基づいて、各モデル(上記のモデル1、2、及び3)から導き出した。次に、シミュレーションされた個々の患者の病変(または再発)の発生または病変の数のバイナリ応答(はい/いいえ)を、予測値及び分散を使用して二項分布または負の二項分布から無作為に抽出した。
【0220】
上記のステップは、各用量レジメンを10,000回(10,000シミュレーション)を繰り返し、各患者集団を考慮した。GEE [Zeger 1988年モデル構築は、SAS(バージョン9.4)GENMOD手順を用いて行った。シミュレーションのための無作為サンプリングは、SAS乱数生成機能(random number generating functions)RANNOR、RANBIN、及びRANDを使用して行った。
【0221】
結果
モデル1
モデルパラメーターの推定値(±標準誤差[SE])は、以下:ロジット応答のβ0=−0.59±0.28及びβ1=−0.09±0.01(p<0.0001)であった。結果として得られた95%信頼限界のGd+病変発生確率の近似曲線を図11に示す。α4−インテグリン飽和レベルの分布を示すために、平均及び95%予測区間も、投与レジメンQ4W、Q6W、及びQ12Wについて図11にプロットしている。
【0222】
この結果は、Q4Wの投与レジメンの予想トラフ飽和範囲で、病変の発生の確率は非常に低いが、Q12Wの予想範囲で先鋭に上昇することが示される。
【0223】
Q6W用量レジメンの平均トラフ予想飽和レベルは、Q4W及びQ12Wのものと比較して、病変発生の確率が低い領域で、ただし、より高い変動性であるように見える。
【0224】
モデル2
モデルパラメーターの推定値(±SE)は以下のとおりである;ログ応答のβ0=1.22±0.36及びβ1=−0.13±0.02(p<0.0001)。信頼限界が95%のGd+病変の平均数の結果として得られた近似曲線を図12に示す。
【0225】
モデル3
モデルパラメーターの推定値(±SE)は以下のとおりである:ロジット応答のβ0=−2.18±0.31及びβ1=−0.02±0.01(p<0.0001)。信頼限界が95%の再発発生確率の結果として得られた近似曲線を図13に示す。再発発生の確率は、病変発生の確率とは対照的に、飽和レベルの低下に伴ってゆっくりと上昇し、高い飽和レベルでも、ゼロを超えたままであり、臨床的再発がMRI病変の発生よりも疾患活動性のより複雑な症状であり得ることを示唆している。
【0226】
REFINE研究集団の用量レジメンQ4W及びQ12Wの転帰のシミュレーション
治験101MS206(REFINE)は、標準的な投薬レジメンでナタリズマブを少なくとも12か月間受けており、MS再発のない患者で、ナタリズマブのさまざまな投薬レジメンを評価する前向き無作為化試験であった。300mgのIVのQ4W及びQ12WのREFINE研究データを、このモデルからのシミュレーション結果の検証データセットとして使用した。
【0227】
研究における300mg IV Q4W及びQ12Wの群のサンプルサイズ及び体重分布は、Gd+病変を有する患者の割合、病変の平均数、及び研究における再発の累積確率のシミュレーションの基礎であった。51人と45人の患者の研究集団は、それぞれQ4WとQ12Wの投与レジメンで10,000回シミュレーションした。治験のIV Q12W群の患者の20%超が24週後に救急処置を受けたので、シミュレーション結果及び実際の観察結果の比較は、24週までのデータに制限されていた。変動範囲内で、RESTOREデータから構築されたモデルを使用した、Gd+病変の発生のシミュレートした確率、Gd+病変の平均数、及び再発の累積確率は、REFINE研究で観察された結果と同様であった(表27)。
【表27】
【0228】
Q4W投与レジメンのシミュレーション結果は、実際の観測結果より一貫して低いように見えるが、全てが観測結果の95%信頼区間内にあったことに注意のこと。したがって、REFINE治験は、本明細書で説明されているモデルを相互検証する。
【0229】
投与レジメン300mg Q4W、Q5W、Q6W、Q7W、Q8W、Q10W、及びQ12Wの有効性転帰のシミュレーション(体重のカテゴリー別)
表28〜30は、Gd+病変を有する患者の割合、Gd+病変の平均数、及び各500人の患者の集団における48週目の再発の累積確率の、投与レジメン及び体重のカテゴリーごとにシミュレートされた転帰を提供する。シミュレーションのシナリオでは、ナタリズマブの有効性は、体重とともに、投与間隔が長くなるにつれて低下した。ただし、Q5W及びQ6Wの有効性の転帰は、Q4W投与レジメンでのものと近かった。有効性の喪失は、投与間隔Q8W以降で加速するように見える。
【表28】
【表29】
【表30】
【0230】
結論
有効性の転帰とα4−インテグリン飽和レベルとの間の関係を特徴付けるモデルは、101MS205試験(RESTORE)のデータを使用して開発された。次いで、これらのモデルを使用して、検証として101MS206試験(REFINE)の有効性の転帰をシミュレートした。シミュレートされた結果は、REFINEの実際の観測結果とほぼ同じであった。次に、モデルを使用して、Gd+病変のある患者の割合、Gd+病変の平均数、及びさまざまな投薬レジメンに対する48週目の再発の累積確率を体重のカテゴリーごとにシミュレートした。Q4W及びQ5W投与により、全ての体重にわたって有効性を高レベルで維持する。それはQ6Wの2つのより高い重量のカテゴリーでより顕著に減少し始め、より少ない頻度の投薬で次第に悪化する。TysabriのPKは、平均±SD半減期が16±4日であることを特徴としている。したがって、延長された投与間隔への切り替え後、安定したトラフ濃度には約15〜24週間後に到達する。
【0231】
ナタリズマブPKは、線形及び非線形の除去を示し得る。PKの非線形性により、インテグリン結合に変化が生じ、濃度に不均衡になり、場合によってはα4−インテグリン飽和レベルの変動性が高くなる場合がある。いくつかの実施形態では、シミュレーション結果は、不均一な変動性のこの制限を考慮して解釈される。モデリングは、救済(16週目)までのRESTOREデータに基づいていたため、再発エピソードが1つを超える患者はおらず、そのため、いくつかの実施形態では、モデルはARRではなく、再発の累積確率のみを推定し得る。
【0232】
科学的な考察
TOUCHデータベース及びPMLデータベースの解析は、抗JCV抗体陽性患者では、EID処置がSID処置よりもPMLのリスクが低いことに関連していることを最終的に示している。
【0233】
有効性データが含まれていない場合がある。場合によっては、提供されたデータセットに有効性データが含まれていないため、EID対SIDの同等の損益を評価できない。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載される前向き研究と組み合わせた、TOUCHデータの最新の解析からの結果は、ナタリズマブで以前に治療されたことのない患者を含む、米国母集団の患者に一般化可能である。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載される前向き研究と組み合わせた、TOUCHデータの最新の解析からの結果は、ナタリズマブで以前に処置されたことのない患者を含む、米国及びEU集団の患者に一般化可能である。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載される前向き研究と組み合わせた、TOUCHデータの最新の解析からの結果は、以前にナタリズマブで処置されたことのない患者を含む、α4インテグリン阻害剤による処置を必要とする患者に一般化可能である。
【0234】
EID及びSIDの両方の群でのPMLのハザードを、年齢、性別、IS療法の以前の使用、開始暦年、及び注入回数で調整されたCox回帰モデルを使用して比較した。これらの人口統計学的特性は、両方の群間でバランスが取れていた;しかし、ナタリズマブの薬物動態特性とモデリング及びシミュレーションの研究では、体重が有効性の要因となり得ることが示されているが、体重及び体重の分布に関する情報は提供されていない(パートCを参照)。いくつかの実施形態では、MAHによって、体重に関するEID対SIDの提供された後向き解析の詳細なサブグループ解析が得られる。体重の四分位数とさまざまな体重のカットオフに取り組んで、特定のサブグループのPMLリスクをより適切に評価してもよい。
【0235】
SIDに対するEIDのPMLリスク低減の観点から有効性及び安全性をさらに検討するための提案;
一般に、ナタリズマブの有効性がEID処置で維持されているか否かをさらに検討し、特別な患者集団におけるEIDの損益についてよりよく情報提供するための臨床治験の実施は承認されている。MAHは包括的な提案を提供する:
【0236】
TysabriのPKは、平均±SD半減期が16±4日であることを特徴としている。したがって、延長された投与間隔への切り替え後、安定したトラフ濃度には約15〜24週間後に到達される。その結果、計画された研究の主要な臨床評価項目は、終わりに向かってシフトされ、72週に設定される必要がある。
【0237】
パートAで概説されているように、体重は有効性に関する要因であり、よく支えられた計画された治験(パートB)において取り組まれる。しかし、以下の考慮事項に起因して、提案されている90kgの重量カットオフポイントは完全にはサポートされていない。
【0238】
−MS患者の大半は女性である;90kgを超えるBW基準を満たすと予想される患者は比較的少数だけである。
【0239】
−現在のモデリング及びシミュレーションの結果に基づけば、EID処置(Q6W)により、体重が80kg以上の患者のCtrough及びアルファインテグリンの飽和レベルが低くなる可能性がある。
【0240】
したがって、比較解析での90kgの選択は高すぎると見なされ、臨床的及び統計的に正当化された低い値に設定する必要がある。さらに、体重は、計画された研究における有効性に対する体重の明確な影響をよりよく評価するために、体重に関する補足解析の連続変数として含まれるべきである。
【0241】
体重及び延長投与間隔を考慮する最新のPK/PDモデリング
最新のPK/PDモデルのモデルに基づく結論は、Q6W投与が有効性/効力を大幅に失うことなくサポートされ得るが、中程度の不確実性が残っていることを示している。
【0242】
PK/PDモデリングの更新に関連して、3つのインテグリン飽和対有効性転帰モデルを、RESTOREデータのみに基づいて確立した。
【0243】
一般化された推定方程式を使用して、インテグリン飽和レベルを3つの有効性パラメーター、すなわち、病変の発生確率、平均病変数、及び再発の確率をトラフインテグリン飽和レベルによって比較した。一部の患者では、実際のスキャン結果に関係なく、観察された病変の数などの応答値が帰属されている。
【0244】
3つのモデルそれぞれの2つのモデルパラメーター(β0、β1)の推定値±標準誤差にもかかわらず、これらのモデルのそれ以上の評価は提供されていない(観測されたデータは示されず、詳細なモデリングレポートはなく、モデルの構築及びモデルの検証のためのデータ/モデルの選択に関する明確な根拠はなく、帰属された観測値に関する影響及び感度に関する情報はない)。出願人は、モデルの妥当性及び不確実性をより適切に評価するために、詳細な情報を提供するよう求められる。
【0245】
確立されたモデルの検証には、許容できると考えられるREFINE治験のデータが使用されている。インテグリン飽和データ(Q4W、Q12W)及び有効性データに基づいて、モデルベースの予測は、観測値と比較して有効性転帰の過小評価の傾向を示した。
【0246】
モデルベースのシミュレーション中の重要なポイントは、インテグリンの飽和を反映するXij−Matrixであり、したがって、有効性及びPDパラメーターへのリンクに相当する。
【0247】
さまざまなレジメン(Q4W、Q5W、Q6W、…Q12W)のCtrough及びインテグリン飽和のさらなるシミュレーションは、以前のPK/PDモデル(Muralidharan et al.2016)に基づいており、許容できると見なされている。
【0248】
出願人は他の全ての関連研究から集められた観察に関連して、RESTORE関連の飽和データ対ナタリズマブの血清濃度を示すように求められる。
【0249】
RESTOREモデリングに基づく有効性転帰のさらなるシミュレーションによって、Q4W及びQ5W投与で全ての体重にわたって有効性が維持されることが示唆されている。それはQ6Wで2つのより高い体重のカテゴリー(>80kg)でより顕著に減少し始め、より少ない頻度の投与で徐々に悪化する。
【0250】
MAHは、延長投与に切り替える前のナタリズマブのレベルを考慮して、研究期間全体にわたってPK(Ctrough)及びインテグリン飽和をシミュレートするように求められる。以前の報告と同様に、40kg〜120kgまでのさまざまな体重範囲で結果を分類して提供する必要がある。これらのシミュレーションは、計画された治験(パートBを参照)の体重に関する比較解析のカットオフポイントをどこに設定するかについて、さらに洞察を提供し得る。
【0251】
前向き治験中の体重の適切な一次解析は、300mg Q6Wが全ての対象に許容可能であるという証拠を提供するために、または一部のサブグループについての薬量学のさらなる調整が必要な場合に必要であると見なされる。
【0252】
特に、Cavg、Ctrough、及びインテグリン飽和に関するシミュレーション結果では、MAHは以前のPSUR応答に関した。しかし、これはIVシミュレーションのみを含む;SCを与えたさまざまなレジメンのシミュレーションは示されなかった。SCデータ及びSCモードのアプリケーションは、MAHの考慮事項から完全に除外されている。SCプログラムQ6W(Fに対して調整済み)は、6週目のより低いまたは同様のCavgで、より高いCtrough/飽和に対して有利であり得る。このラインでは、延長投与に切り替えた後のさらなる時間経過のプロットは提供されていない。
【0253】
全体的な結論
パートA(TOUCH):
提供された解析から、各EID群は、抗JCV抗体陽性患者(及びIS処置歴のない患者)のSID群と比較して、臨床的及び統計的に有意に低いPMLのリスクと関連すると結論付けられ得る。いくつかの実施形態では、特定のサブグループにおけるリスクをよりよく評価し、これらの結果を、計画された治験の結果と比較、対比、または調和させるために、体重に関する層別解析が提供される。
【0254】
パートB(第3b相治験)::
一般に、ナタリズマブの有効性がEID処置で維持されているか否かをさらに検討し、特別な患者集団におけるEIDの損益についてよりよく情報提供するための臨床治験の実施は承認されている。しかし、MAHの提案は、いくつかの局面に関して再検討及び修正する必要がある。マージンの定義及び正当化については、EMAの科学的アドバイスの手順(EMA Scientific Advice procedure)で考察され得る。
【0255】
パートC(PK/PD解析):
モデル化の結果は、体重及び投与間隔の期間の増大に伴う有効性の低下を示している。RESTOREモデリングに基づく有効性の転帰のさらなるシミュレーションによって、Q4W及びQ5W投与で全ての体重にわたって有効性が維持されることが示唆される。それはQ6Wで2つのより高い体重のカテゴリー(>80kg)でより顕著に減少し始め、より少ない頻度の投与で徐々に悪化する。モデルに基づく結論は、Q6Wが80kg未満の体重の患者に対してサポートできることを示しているが、中程度の不確実性が残っている。MAHは、モデルに基づく証拠を増やし、定量的モデルの予測可能性をより適切に評価するために、いくつかの追加の解析及びシミュレーションを実行するように求められる。
【0256】
規制への影響
EIDの大きなPMLリスク軽減効果、及び延長投与間隔の投薬が有効性に大きな影響を与えないという最新のpk/pdモデリングの結果(例えば、体重<80kgの患者において)を考慮すると、規制の更新及びこれらの新しいデータの通信が必要である。MAHは提案を行うように求められる。これは、提案されたCTの最終結果が2021年第2四半期に予想され、CT治験結果を待つことが現在の知識に基づいて受け入れられないため、必要であると見なされる。
【0257】
パートA(TOUCH):
1.MAHは、体重に関するEID対SIDの後向き解析の詳細なサブグループ解析を提供するように求められる。体重の四分位数だけでなく、他の臨床的に意味のある体重のカットオフも対処され得る。TOUCHからの解析は、より多くのデータ及び体重に関するデータが蓄積されたときに更新すべきである。この解析は、計画された第3b相試験で無作為化に使用されるカットオフをさらに正当化するために使用する必要がある。
【0258】
パートB(計画された第3b相治験):
2.計画された研究の主要な臨床評価項目は、終わりに向かってシフトされ、72週に設定される必要がある。
3.カットオフが90kgの体重による階層化は、最適ではないと見なされる。第1に、サブグループ>90kgはかなり小さいと予想されるため、無作為化のバランスが十分取れていない可能性が高い。第2に、カットオフとしての90kgの正当化は、TOUCHデータを含む他の臨床試験からは理解できない。MAHは、第3b相での体重のカットオフを再検討し、カットオフの根拠を提供するよう求められる。さらに、体重は、計画された研究における有効性に対する体重の明確な影響をよりよく評価するために、体重に関する補足解析の連続変数として含まれるべきである。
4.現在、主要な統計解析は、信頼区間のみに基づいており、明確に事前に指定された成功基準はない。しかし、これは非劣性検定に基づく必要がある。これには、臨床的及び統計的根拠に基づく非劣性マージンの事前指定及び正当化が含まれる(非劣性マージンの選択に関するガイドライン:EMEA/CPMP/EWP/2158/99を参照のこと)。このマージンは、比率ではなくレートの差に対して定義することが好ましく、要求された主要評価項目のデータに基づく必要がある。
5.暫定的にEIDに対するSIDの優位性を試験すれば、信頼区間の幅及びマージンの幅にのみ依存して、評価項目の有効性と非劣性が同時に有意に低下され得るので、MAHは必ずしも積極的研究を除外する必要はないことに注意する必要がある。したがって、適切な無益性解析を事前に指定する必要がある。
6.MAHは、欠落データとして誤ってラベル付けされることが多い(推定値のICH E9(R1)Draft Addendumを比較;EMA/CHMP/ICH/436221/2017)、解析で不適切に扱われた、媒介性の事象(救急投薬の開始、AEまたは有効性の欠如による処置レジメンの切り替え、AEによる処置の中止、有効性の欠如による処置の中止など)の取り扱いに関する詳細を提供する必要がある。MAHは、計画された推定値、すなわち、何を推定するか、これらの事象が一次解析でどのように処理されるか、及びどの感度解析または補足解析が予測されるかを詳述する必要がある。
7.現在、無作為化及び一次解析で使用される層別化因子は、うまく調整されていない。ナタリズマブへの曝露期間は、無作為化の際に(他の要因の中でも)使用されるが、EDSSが代わりに一次解析で使用される。臨床試験でのベースライン共変量の調整に関するガイドライン(EMA/CHMP/295050/2013)には、「管理上の理由だけで使用されない場合、層別変数は通常、予後値に関係なく一次解析に共変量または層別変数として含まれるべきである。一次解析における層別化と調整の間の非管理的共変量の任意の不一致を、説明し、正当化する必要がある。」と記載されている。したがって、MAHは適用された層別化変数を変更または正当化する必要がある。さらに、モデルに保持されている場合、EDSSが一次解析モデル(すなわち、線形共変量またはカテゴリーの効果)でどのように扱われるかを明確にする必要がある。
8.プロトコルでは、事前に計画されたサブグループ解析を予測すべきである。これらには、特に体重のサブグループ解析が含まれる(事前に指定されたカットオフを使用)。適切な損益考察を可能にするために、有効性及び安全性の両方の結果をこれらのサブグループに提示すべきである。
9.非劣性マージンを含む研究デザインの定義及び正当化については、EMAの科学的アドバイスの手順(EMA Scientific Advice procedure)で考察すべきである。統計解析方法及びサンプルサイズ計画の両方で、これらの考慮事項を適切に反映すべきである。
【0259】
パートC(PK/PD解析):
10.3つのモデルのそれぞれの2つのモデルパラメーター(β0、β1)の推定値±標準誤差にもかかわらず、これらのモデルのさらなる評価は提供されていない(観測されたデータは示さず、詳細なモデリングレポートも、モデル構築及びモデル検証のためのデータ/モデル選択に関する明確な根拠も、帰属された観測値に関する影響及び感度に関する情報もない)。出願人は、モデルの妥当性及び不確実性をより適切に評価するために、それぞれのガイドラインに従って詳細な情報を報告するよう求められる。
11.さまざまなレジメン(Q4W、Q5W、Q6W、…Q12W)のCtrough及びインテグリン飽和のさらなるシミュレーションは、許容できると見なされている以前のPK/PDモデル(Muralidharan et al.2016)に基づいていた。出願人は、他の全ての関連研究から集められた観察に関連して、RESTORE関連の飽和データ対ナタリズマブの血清濃度を示すように求められる。
12.MAHは、延長投与に切り替える前のナタリズマブのレベルを考慮して、研究期間全体にわたってPK(Ctrough)及びインテグリン飽和をシミュレートするように求められる。以前のレポートと同様に、結果は、40kg〜120kgの意味のある体重範囲で分類して提供すべきである。
【0260】
規制上の帰結
13.EIDの大きなPMLリスク軽減効果、及び延長投薬用量が有効性に大きな影響を与えないという最新のpk/pdモデリングの結果(少なくとも体重<80kgの患者では)を考慮すると、規制の更新及びこれらの新しいデータの通信が必要である。したがって、MAHは、更新されたSmPCの提案、及びPRACによるレビューのために草案のDear Healthcare Provider Communication(DHPC)を提供するように要求される。製品情報の変更は、進行中の手順LEG 066中にPRACと合意すべきであり、その後、後続のタイプIBバリエーションの一部として実装すべきである。
【0261】
実施例7:ナタリズマブ延長間隔投与による進行性多巣性白質脳症のリスクの低減
要約
目的
Tysabri Outreach:Unified Commitment to Health(TOUCH(登録商標))プログラムの大きなデータセットを使用して、進行性多巣性白質脳症(PML)リスクを、ナタリズマブ延長間隔投与対多発性硬化症患者の標準間隔投与と比較する。
【0262】
方法
この後向きコホート研究には、2017年6月1日の時点でTOUCHデータベースにおける投与間隔が3週間より長く、かつ12週間未満の抗JCウイルス抗体陽性患者(N=35,521)が含まれていた。PMLリスクに対するEIDの影響を、3つの計画した解析で評価した。EID及びSIDコホートの累積PMLリスクは、以前の免疫抑制剤の使用によって層別化されたカプラン・マイヤー法を使用して推定した。PMLのリスクは、年齢、性別、以前の免疫抑制剤、ナタリズマブ開始後の時間、及び注入の累積数で調整されたCox回帰によって解析された。
【0263】
結果
この研究には35,521人の患者が含まれていた(一次解析:1988人のEID、13,132人のSID、二次解析:3331人のEID、15,424人のSID、三次解析:815人のEID、23,168人のSID)。平均投与間隔は、EIDコホートとSIDコホートでそれぞれ35.0〜43.0日と29.8〜30.5日であった。EID対SIDのPMLリスクのハザード比(95%CI)は、一次解析で0.06(0.01−0.22;p<0.001)、及び二次解析で0.12(0.05−0.29;p<0.001)であった。一次解析及び二次解析のEIDを支持する相対的なリスク低減はそれぞれ94%及び88%であった。三次解析では、EIDでのPML症例はなかった。
【0264】
結論
ナタリズマブEIDはSIDよりも臨床的及び統計的に有意に低いPMLのリスクと関連している。さらなる研究がEIDの有効性を評価するために必要である。
【0265】
序文
α4−インテグリン細胞接着分子に対するモノクローナル抗体であるナタリズマブは、無作為化臨床試験
1,2及び実際のデータ
3,4によって示されているように、再発型の多発性硬化症(MS)の有効な処置である。推奨される処置スケジュール(4週間ごとに300mgの静脈内注入)は、投与後約1か月間、単核細胞α4β1−インテグリン受容体の80%を超える飽和を提供するように選択した
5,6。JCウイルス(JCV)に以前に暴露された患者に関しては、ナタリズマブ処置は、進行性多巣性白質脳症(PML)のリスクと関連する
7。抗JCV抗体陽性患者におけるPMLの確立された危険因子には、抗JCV抗体インデックスによって評価される血清中の抗JCV抗体のレベル、ナタリズマブ開始前の免疫抑制療法の使用、及びナタリズマブ処置の期間が挙げられる
8,9。
【0266】
現実世界の診療では、処置の中止、処置の中断、及び推奨される処置スケジュールからの逸脱は珍しいことではない。PMLのリスクを低減しながらナタリズマブの有効性を維持することを目的として、いくつかの後向き研究で、延長間隔投与(EID)スケジュール(4週間より長い注入間隔)の影響を調査した
10、11。これらの研究によって、無作為化されていない設計、患者集団が小さいこと、及びEIDの変数の定義によって制限されるにもかかわらず、ある期間の標準間隔投与(SID)の後に患者がナタリズマブEIDに切り替えることは引き続き良好であることが示唆されている。しかし、PMLは稀な事象であるため、これらの研究には、EIDがSIDに比べてPMLのリスク低減に関連しているか否かを評価するのに十分な統計的検出力がなかった。したがって、PMLのリスクに対するナタリズマブEIDの安全性は完全には知られていない。
【0267】
Tysabri Outreach:Unified Commitment to Health(TOUCH(登録商標))プログラムは、米国食品医薬品局によって義務付けられたリスク評価及び軽減戦略であり
7,12、PML及びその既知のリスク要因について医療提供者と患者に通知するように;抗腫瘍剤、免疫抑制剤、または免疫調節剤の同時使用を警告するように;処置中のPML及びその他の重篤な日和見感染症の発症について患者を監視するように、設計されている。TOUCHデータベースは、全てのナタリズマブ注入記録、患者の人口統計情報、以前の免疫抑制療法、及び抗JCV抗体状態データ(2012年2月以降)を保存する。これは、ナタリズマブの代替投与間隔に関連する安全性情報を提供し得る世界最大のデータセットである。
【0268】
方法
研究設計
この後向きコホート研究には、2017年6月1日の時点でTOUCHプログラムで収集されたデータが含まれ、抗JCV抗体の血清状態が陽性が既知であり、及び以前の免疫抑制剤使用の状態が既知である全ての患者が含まれていた。2017年6月1日までのBiogenのTysabri Global Safety DatabaseからのPMLデータもこの研究に含まれていた。2回の連続注入の間に任意の間隔が12週間より長く(「投薬ギャップ」)または3週間未満(「過剰投与」)の病歴のある患者は除外した。3つの計画された解析及びそれぞれのEID及びSID選択基準は、PML事象が伏せられた条件下で開発して、最終化した。
【0269】
主な研究課題
この研究の目的は、大規模な現実のTOUCHデータセットを使用して、ナタリズマブEIDがSIDと比較してPMLリスクの低下に関連しているか否かを判断することであった。ナタリズマブがPMLを引き起こす機構、または投与スケジュールがPMLリスクにどのように影響し得るかについての正確な理解がないため、それぞれ異なるEID選択基準を有する3つの計画解析を使用して、PMLリスクに対するEIDの影響と潜在的な機構の両方を評価した。
【0270】
証拠の分類
この研究は、再発寛解型多発性硬化症の患者において、ナタリズマブEIDがSIDと比較してPMLリスクの統計的及び臨床的に有意な減少と関連しているというクラスIVの証拠を提供する。
【0271】
データ収集
TOUCHで収集された患者データは、人口統計情報、各ナタリズマブ注入の日付及び用量、過去12カ月で行われた抗JCV抗体検査(2012以降)の日付及び結果、ならびに過去6カ月の免疫調節/免疫抑制療法による処置が含まれる。PML症例の記録は、別のファーマコビジランスデータベース(Tysabri Global Safety Database)に保存され、維持される。
【0272】
計画された解析及び選択基準
TOUCHデータセットによって、米国の臨床診療において、意図的か非意図的かにかかわらず、ナタリズマブ投与にかなりのばらつきがあることが実証される。さらに、最適なEID注入間隔及び処置期間は不明である。したがって、この研究では、EID対SIDの3つの異なる解析を計画した。各解析では、PMLリスクに対するEIDの潜在的な影響に関するさまざまな仮説を検証するために、指定された期間中に受けた投与回数に基づいて、EID及びSIDの患者に異なる選択基準(定義)を採用した(図14A−C)。患者は、1を超える解析の選択基準を満たす場合がある。
【0273】
一次解析では、記録した注入履歴のうち過去18か月に関連するPMLリスクを評価した。処置の過去18か月の治療で15回以下の注入を受けた患者は、一次EID(EID−1°)解析群に含まれた;処置の過去18か月で15回を超える注入を受けた患者は、一次SID(SID−1°)解析群に含まれていた。
【0274】
二次解析では、患者の注入歴における任意の長期のEIDのPMLリスクへの影響を評価した。この解析では、個々の注入はEIDまたはSIDとして分類した。EID注入は、過去365日間に10回以下の注入が先行する任意の注入として定義した。このようなEID注入を連続して6か月以上受けている患者は、二次EID(EID−2°)解析群に含まれていた。同様に、SID注入は、過去365日間に10回を超える注入が先行する任意の注入として定義され、そのような注入を6か月以上連続して受けた患者は、二次SID(SID−2°)解析群に含まれた。EID−2°投与の6カ月以上及びSID−2°投与の6カ月以上の両方の履歴のある患者は、EID−2°コホートのみに含まれた。EID−2°レジメンが1を超える患者を除外し、解析の厳密さを増した。
【0275】
三次解析では、主にEIDからなる投与履歴がPMLリスクに及ぼす影響を評価した。治療歴全体で年間10回以下の注入を受けた患者(年次注入回数)は、三次EID(EID−3°)解析群に含まれた;年間10回を超える注入を受けた患者は、三次SID(SID−3°)解析群に含まれていた。
【0276】
2つの事前に指定された感度解析を行った。最初に、2012年より前(TOUCHでの抗JCV抗体試験結果の収集前)に発生したPML症例は、抗JCV抗体陽性であると想定され、上記の3つの計画解析に追加された。第二の感度解析では、過去18か月で13回以下の注入、及び任意の12か月間で9回以下の注入という代替EID定義を、それぞれ一次及び二次EID解析群に含めるために用いた。三次解析の代替選択基準は試験しなかった。
【0277】
規制当局の要求に応じてナタリズマブの安全性を監視するために、全ての解析は、患者の同意を得てTOUCHプログラムで収集された匿名化データ、及び標準的なファーマコビジランスプラクティスを通じて収集されたPMLデータに対して行った。追加のインフォームドコンセントは必要ではなかった。
【0278】
統計解析
研究の母集団全体及び各EID解析コホートの人口統計及び処置履歴のデータを、記述統計によって要約した。3つの計画された解析について、累積リスクのカプラン・マイヤー推定値を使用した事象発生までの時間(PML発生)解析を、EID及びSIDコホートに対して実行した。事象発生までの時間は、ナタリズマブ処置開始後の時間に基づいていた。ログランク検定を実行して、EIDコホートとSIDコホートとの間の事象発生までの時間を比較した。各曝露エポック(一連の12回の注入として定義される)におけるPMLの条件付き確率は、以前の免疫抑制剤の使用によって層別化された生命表法を使用して、EID及びSIDコホートについて導き出された。EID及びSIDコホートのPMLハザード比(HR)は、ナタリズマブ処置開始の年齢、性別、暦年で調整された時変共変量Cox回帰モデル、ならびに共変量としての以前の免疫抑制剤の使用(はい/いいえ)、及び時変共変量としての注入の累積数を使用して推定した。
【0279】
各解析について、PML HR推定(EID対SID)及びCoxモデルからの95%信頼区間(CI)が、推論の主要な基礎であった。具体的には、HRの95%CI上限が1未満の場合、EIDコホートはSIDコホートよりもPMLのリスクが低いと見なされる。HRポイントの推定値が0.9以上かつ1.1以下の場合、EID及びSIDコホートは、同様のリスクがあると見なされる。HRの95%CI下限が1より大きい場合、EIDコホートはリスクが高いと見なされる。解析計画の仕様の時点では、上記の推論規則で定義されているように、予想される試験の母集団のサイズ及び予想されるPML事象の数により、約85%検出力で50%以上(すなわち、HR≦0.5)のリスク低減が検出されると予測された。
【0280】
統計解析計画は、PML事象について盲検である条件下で開発され、最終化された。Tysabri Global Safety DatabaseのPMLデータは、解析計画が完成した後にTOUCHと統合した。
【0281】
結果
患者
2017年6月1日の時点でTOUCHに登録した90,038人の患者のうち、35,521人が抗JCV抗体陽性であり、この研究に適格であった(図15)。事前指定されたEID及びSIDの選択基準を適用した後、研究集団には、1988人のEID患者及び13,132人のSID患者が一次解析で、3331人のEID患者及び15,424人のSID患者が二次解析で、ならびに815人のEID患者及び23,168人のSID患者が三次解析で含まれていた。患者を除外する最も一般的な理由は、治療歴(一次、二次、及び三次解析)における投薬ギャップまたは過剰投与、及び18か月未満の利用可能な投薬データ(一次解析のみ)の存在であった。
【0282】
EID群及びSID群のベースライン人口統計は、3つの解析全体でバランスが取れていた(表31)。3つの解析全てにおいて、EID患者は、SID患者よりも多くのナタリズマブが注入され、及びナタリズマブ処置の合計期間が長かった。一次解析に含まれるEID患者は、EIDを開始する前に中央値(範囲)37(1〜117)の注入を受けていた。二次解析(各注入がEIDまたはSIDとして定義された)では、EID−2°患者は、EIDを開始する前に25(1−121)注入の中央値(範囲)を受けていた。3つの解析全てについて、処置期間全体の平均投与間隔(ADI)は、EID患者では35.0〜43.0日、SID患者では29.8〜30.5日であった。
【表31-1】
【表31-2】
略語:ADI=平均投与間隔(処置歴全体);EID=延長間隔投与;IS=免疫抑制剤;Q1=第1四分位;Q3=第3四分位;SID=標準間隔投与。一次、二次、三次解析におけるEID及びSIDの定義については、図14及び説明を参照のこと。
a各群の患者の1%未満では、患者の性に関する情報が欠けていた。
b各群の患者の4%〜5%について、以前のIS療法に関する情報が欠けていた。
【0283】
リスクアセスメント
PMLのカプラン・マイヤー推定累積リスクは、SIDの場合よりもEIDの場合の方が有意に低かった(図16A〜図16C)。一次及び二次解析では、累積リスクは24〜36か月後に分離するように見え、分離は後の時点で増大した。Cox回帰分析では、一次解析と二次解析でEID処置によりPMLリスクの有意な減少も確認された(両方ともp<0.001;表32)。一次解析での共変量調整HRは0.06(95%CI0.01−0.22)で、EID−1°患者対SID−1°患者の相対リスクが94%減少したことに相当する。二次解析では、共変量調整HRは、0.12(95%CI0.05−0.29)で、EID−2°患者対SID−2°患者の相対リスクが88%減少したことに相当する。3次解析でEIDを使用してPML症例が観察されなかったため、リスク削減ポイントの推定値は100%で、Cox回帰モデル95%CIは推定不能であった。
【表32】
略語:CI=信頼区間;EID=延長間隔投与;HR=ハザード比;IS=免疫抑制剤;PML=進行性多巣性白質脳症;SID=標準間隔投与。一次、二次、三次解析におけるEIDとSIDの定義については、図14及び説明を参照のこと。統計的に有意な結果は太字で示されている。
aモデルには、年齢、性別、ISの以前の使用、EID/SID群、及びナタリズマブ処置開始時の暦年が共変量として含まれる。三次解析EID群でPML事象が発生しなかったので、三次解析でモデリングは実行できなかった。
【0284】
以前の免疫抑制剤の使用は、PMLリスクを有意に増大させた。共変量調整HRは、一次解析で2.92(95%CI 1.67−5.11;p<0.001)、及び二次解析で2.90(95%CI 1.60−5.27;p=0.001)であった(表32)。ただし、この観察の重要性は、免疫抑制剤を使用している少数の患者によって制限されている(EID−1°の場合は95、及びEID−2°の場合は175)。
【0285】
感度及び事後解析
3つの分析のロバストネスを評価して、研究デザインの決定が結果に与える影響を判断した。最初の感度解析では、全てが抗JCV抗体陽性であるという仮定の下で、2012年より前に発生したPML症例を含めることにより、抗JCV抗体状態が不明な患者を除外する効果を調べた。これにより、1次解析に1例のEID及び67例のSIDのPML症例が追加され、2次解析に5例のEID及び65例のSIDのPML症例が追加され、3次解析に0例のEID及び71例のSIDのPML症例が追加された。計画された解析と同じ2012年以降の母集団の分母を使用すると(抗JCV抗体の状態は2012年以前の母集団ではほとんど不明であるため)、EID対SIDのHRは、3つ全ての解析で<0.01から0.09の範囲であった(表33)。
【表33】
略語:CI=信頼区間;EID=延長間隔投与;HR=ハザード比;JCV=JCウイルス;NA=解析せず;PML=進行性多巣性白質脳症;SID=標準間隔投与。一次、二次、三次解析におけるEID及びSIDの定義については、図14及び説明を参照のこと。
a抗JCV抗体陽性であると想定され、2012年より前に発生したPMLの症例を解析母集団に追加した。これにより、1次解析で1例のEID及び67例のSID症例、2次解析で5例のEID及び65例のSID症例、ならびに3次解析で0例のEID及び71例のSID症例を追加した。
b代替EID定義は、一次解析では過去18か月で13回以下の注入、二次解析では12か月で9回以下の注入であった。三次解析の代替定義は検討されなかった。
c注入間で12週間を超える投薬ギャップのある患者を、2012年以前のPML症例感度解析コホートに追加した。
【0286】
第2の感度解析では、代替の適格基準を使用して、EID群に含めるために必要なEIDの投与回数の影響を検討した。PMLのリスクは、一次解析で過去18か月に13回以下の注入(HR0.10;95%CI0.02〜0.45)という代替EID選択基準、または二次解析で12か月にわたって9回以下の注入(HR0.01;95%CI<0.01−0.09)を使用してEIDの方がSIDよりも有意に低かった(表33)。EID−3°PML症例が観察されなかったので、三次解析における代替EID選択基準は検討されなかった。
【0287】
EID解析コホートの構成に対する潜在的な選択バイアスの影響に対処するために、2つの事後解析を実行した。PMLリスクの3つの計画解析に投薬ギャップのある患者を含めることにより、投薬ギャップのある患者を除外する効果(2回の注入の間隔が12週間より長い)を評価した場合、結果のHRは0.08から0.16の範囲であった(表33)。
【0288】
この研究に含まれる全ての患者は少なくとも1回は抗JCV抗体陽性と試験されたが、抗JCV抗体の血清陽性の持続時間がリスク推定に影響したか否かを評価するために、2回目の事後解析を行った。時変共変量としての縦方向の抗JCV抗体の状態(すなわち、ある時点での陰性から陽性への抗体状態の変換)をCox回帰モデルに組み込んだ。結果のHR(95%CI)推定値は、一次解析で0.05(0.11〜0.18)、二次解析で0.11(0.04〜0.26)であった(表33)。この感度解析は、3次解析では実行しなかった。
【0289】
EIDは、EID及びSIDの3つの定義全てについて、ナタリズマブ処置の連続する各エポックにおけるPMLの条件付きリスクの低下と関連していた(表34)。最初の4つの処置エポック(注入48回以下)では、EID群で観察されたPML症例は1つだけ(2次解析で)であった;一次及び三次解析で症例は観察されなかった。5番目と6番目のエポック(49〜72回の注入)では、3つの解析全てで、EIDのPMLリスクはSIDよりも有意に低かった(表34)。
【表34】
略語:EID=延長間隔投与;IS=免疫抑制剤;JCV=JCウイルス;PML=進行性多巣性白質脳症;SID=標準間隔投与。PMLリスクは、一次及び二次定義に事前にISを使用していない抗JCV抗体陽性患者の1000人の患者あたりの発生率(リスクのある調整済み患者数あたりのPML症例数)として示される。以前にISを使用した患者は、患者数が不十分なため解析不能であった。リスクのある調整済みの患者数は、EID−1°群で95人、SID−1°群で689人、EID−2°群で171人、及びSID−2°群で747人であった。EIDの三次解析ではPMLリスクを計算できなかったが、これはこの解析ではPML症例が発生しなかったためである。一次、二次、及び三次解析におけるEIDとSIDの定義については、図14及び説明を参照のこと。
a6年を超えるデータは示されていない。
【0290】
EID PMLの症例
13のPML症例を、一次及び二次のEID選択基準を満たす患者間で特定した。1つの症例は一次解析基準のみを満たし、10の症例は二次解析基準のみを満たし、2つの症例は両方の解析の基準を満たした。三次解析ではPML症例はなかった。PML診断の時点で、全て二次解析に含まれていた13人の患者のうち8人が、EIDから切り替わってSIDに戻り、PML診断の直前に28週間以上SIDであった(図17)。EIDの既往歴のあるPML患者は、ナタリズマブ処置期間が長く、EIDレジメンを開始する前のナタリズマブ注入が多く、平均ナタリズマブ注入の合計は、それぞれの全体的なEIDコホートよりも多かった(表35)。以前の免疫抑制剤の使用も、EID PML症例では全体的なEIDコホートよりも一般的であった(一次解析:33%対5%、二次解析:17%対5%)。PML前の抗JCV抗体インデックス値が利用可能であった7つのPML症例のうち、6つは>1.5のインデックス値を有した(図17)。
【表35】
略語:EID=延長間隔投与;IS=免疫抑制剤;Q1=第1四分位;Q3=第3四分位;SID=標準間隔投与。一次、二次、三次解析におけるEIDとSIDの定義については、図14及び説明を参照のこと。三次解析における患者の特性は示していないが、これはこの解析ではPML症例が発生しなかったためである。
【0291】
考察
EIDによるPMLリスクの問題に対処するために、本発明者らは、TOUCHプログラムによって収集された患者データを使用して、後向きコホート研究を実施した。これは、これまでのナタリズマブEIDに関連するPMLリスクの最大の研究であり、またREMSプログラムから導き出された現実のデータをどのように厳密に解析して、臨床的に意味のあるリスク低減の問題に対処できるかという例も示す。PMLは珍しい事象であるが、TOUCHデータセットのサイズによって、ロバストでかつ統計的に有意な結果を生成するのに十分な検出力が得られた。本発明者らは、ナタリズマブEIDの3つの選択基準のいずれかを満たした抗JCV抗体陽性患者のPMLリスク対SIDの患者のリスクを、3つの異なる事前特定解析を使用して評価し、現実の臨床診療で利用されている幅広い投薬パターンを検討した。3つの異なる解析のそれぞれについて、SIDと比較して、ナタリズマブEIDのPMLリスクは実質的に減少した。
【0292】
EID群とSID群全体の間の投与間隔の差は比較的小さかった(AIDはEIDで35〜43日であるのに対してSIDでは30〜31日)。これらの値は、さまざまな処置の実施と投与パターンとを組み合わせたものであるが、この結果から、投与間隔を1〜2週間だけ延長すると、PMLリスクが大幅に減少する可能性があることが示唆されている。履歴において、任意の投与間隔が3週間未満または12週間を超える患者は、計画された解析から除外され、及びEIDコホートの第3四分位(75パーセンタイル)ADI範囲は37〜45日であったので、ADI範囲のいずれかの端で、この研究の主な結論が外れ値の影響を受けた可能性は低い。
【0293】
以下の2つの研究設計要素が結果に及ぼす影響を評価するために、事前に指定された感度解析を行った:(1)既知の陽性抗JCV抗体状態の患者のみを含めること、及び(2)EID−1°群またはEID−2°群に包括するために必要なEID注入の数。さらに、事後感度解析を実施して、投薬ギャップの履歴のある患者(投与間が12週間より長い)を除外することの影響を評価した。感度解析と事後解析の両方の結果は、3つの計画解析の結果に匹敵し、リスク推定のロバストネスを示し、リスクのある患者ではナタリズマブEIDがSIDよりもPMLリスクが低いということに関連するという主な結論をさらに強化している。
【0294】
医師がJCV血清陽性の持続期間が長い患者をEIDに切り替える可能性が高いという可能性により、EIDコホートの構成に潜在的な選択バイアスが生じた。抗JCV抗体陽性の状態が2番目の事後解析で時変共変量として説明された場合、結果のHR及び95%CIは、元の事前指定解析で生成されたものと類似しており、この潜在的なバイアスが主な研究の結論に影響を与えなかったことを示している。
【0295】
EID−1°群及び/またはEID−2°群の5249人の患者を合わせたうち13例のPML症例の特定により、これらのEIDレジメンは、SIDよりも有意に低いPMLリスクに関連しているが、リスクが完全に排除されていないことが示されている。EID−3°群は比較的小さかったが(n=815)、より厳密な三次解析ではPMLの症例は観察されなかった。本明細書で説明するEID PML症例のほとんどは、ナタリズマブの全体的な処置期間がより長い、EIDに切り替える前のSIDの期間がより長い、及び対応する全体的なEIDコホートの患者よりも以前の免疫抑制剤の使用の可能性が高いなど、PMLの複数の危険因子を有していた。さらに、いくつかのEID PML症例は、PML診断の前にSIDに戻っていた。ナタリズマブEIDを受けた患者での以前に公開されたPMLの症例報告では、影響を受けた患者は、EIDに先行する長期のSID及び抗JCV抗体インデックス>1.5を含む、PML危険因子の上昇もあった
13。
【0296】
観察されたPMLリスク低減の根底にある生物学的機構には、追加の研究が必要であるが、受容体飽和の低下、可溶性血管細胞接着分子発現の増大、及びナタリズマブ誘発末梢リンパ球増大の減少など、ナタリズマブの薬力学的効果の部分的な逆転が、最後の投与後4〜8週間後に発生すると報告されており
14、中枢神経系における一部の免疫監視の再確立が可能になり得る。
【0297】
この研究の結論は、いくつかの固有のバイアスによって制限されている。EID患者は、SID患者よりも多くの用量のナタリズマブを投与され、これは、ナタリズマブ暴露が既知のPML危険因子であるため、EIDコホートではより多くのPML症例を支持する選択バイアスをもたらした可能性がある。逆に、ほとんどの患者は、EIDを開始する前にPMLを発症せずに2年を超えるSID処置を受けていたため、EID群にはPMLのリスクがもともと低下した患者が含まれている可能性があり、それによって、EID群でPML症例が少なくなるような選択バイアスが導入される。また、抗JCV抗体インデックスデータは、TOUCHの全ての患者で利用できるわけではない;したがって、EIDコホートとSIDコホートの間でインデックス値が異なるか否か、及びこのような任意の相違がこの研究で観察されたリスク低減に役割を果たすか否かは不明である。EIDは、PMLリスクを低減するための臨床診療における適応外戦略として使用されるので、ナタリズマブEIDの後向き研究で観察されたように、抗JCV抗体インデックス値は、SID患者よりもEID患者で高くなる可能性がある。
11これが当てはまる場合、本明細書で説明するEIDコホートで見られるリスクの低減は、抗JCV抗体インデックス値の分布が同じであるEID及びSIDの患者集団で潜在的にさらに大きくなる可能性がある。
【0298】
最後に、最も重要なことに、TOUCHプログラムは、治療効果に関する情報を収集しないので、SIDと比較してEIDの損益プロファイルを評価し得なかった。ナタリズマブの中止後の患者の転帰に関するいくつかの研究では、MS疾患の活動が少なくとも6週間、可能性としては最後の投与後12週間も抑制されることが示されている
15−18。さらに、2つの後向き研究は、EIDレジメンによってナタリズマブの有効性が損なわれないことを示唆している
10、11。しかし、後者の研究の結果は、非無作為化デザイン、小規模な研究集団、可変投薬法、及びEID研究集団における潜在的な選択バイアスによって制限される。臨床結果とは対照的に、ナタリズマブ暴露のモデルベースのシミュレーションによって、EIDレジメン(6〜8週間の間隔)がMS疾患活動性からの十分な保護を与えない場合があることが示唆されている
19。ナタリズマブEIDの長期的な損益プロファイルに関する不確実性を踏まえると、SIDをEIDに置き換える必要があることを示唆するのは時期尚早である。EID対SIDの計画された無作為化前向き研究により、ナタリズマブEIDの有効性及び安全性の両方についてより包括的な理解が得られる。
【0299】
参考文献
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【0300】
実施例8:ナタリズマブの6週間の延長間隔投与の有効性及び安全性を、前向きな対照、無作為化、非盲検、評価者盲検第3b相試験(NOVA)で評価する
序文
再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の非常に効果的な治療法であるナタリズマブはまた、PMLのリスクとも関連している。(1−5)TOUCHデータセットの最近の解析では、EIDが抗JCウイルス抗体陽性患者の標準間隔投与(SID)よりも有意に低いPMLリスクと関連していることが実証された。(6)現在まで、ナタリズマブのEID及びSIDの有効性を比較する無作為化研究はない。無作為化された有望な有効性データがない場合、EIDの損益プロファイルは確立されていない。
【0301】
目的
SIDの継続期間と比較したSIDの安定期間後のEIDナタリズマブへの切り替えの有効性を評価するためのフェーズ3b研究のデザインについて説明する。
【0302】
方法
延長間隔投与対承認用量を比較する、ナタリズマブ、第3b相、前向き、無作為化、非盲検試験(NOVA)は、介入的で、対照の、評価者が盲検化された全体的な治験となる(clinicaltrials.gov no.NCT03689972)。患者選択基準には、18〜60歳、総合障害度スケールスコア(Expanded Disability Status Scale score)≦5.5、RRMSの診断、ナタリズマブSIDの安定性(11回以上の投与を受け、過去12か月間に再発がない)、免疫抑制剤の使用歴がない、及びスクリーニング時にガドリニウム増強(Gd+)病変がない、を含む。
【0303】
約480人の患者がNOVAに登録される。患者は、1:1でナタリズマブSID(300mg静脈内[IV]を4週間[26−33日]ごと)またはEID(300mg IVを6週間[40−47日]ごと)に無作為化される。研究期間は88週間(4週間のスクリーニング、72週間の無作為化処置、12週間のフォローアップ)になる(図18)。
【0304】
主要評価項目は、48週の時点で新規/新たに拡大するT2病変の数である。主要な副次的評価項目には、再発までの時間、再発率、新しい放射線病変の数、及び重篤な有害事象の発生率を含む。探索的評価項目には、時限25フィートウォーク(T25FW)、9ホールペグテスト(9HPT)、及びシンボルディジットモダリティテスト(Symbol Digit Modality Test)(SDMT)スコア、及び障害の悪化または改善の確認が含まれる。
【0305】
ナタリズマブの血清濃度、アルファ4インテグリン飽和度、リンパ球数、及び体重に関するデータを収集して、薬物動態(PK)/薬力学(PD)と有効性との間の関係を調査する。
【0306】
研究の論拠
NOVAのEID間隔は、TOUCH解析で観察されたPMLのより低いリスクに関連する現実の投薬間隔を含むように選択された(図19)。(6)無作為に割り当ててEIDに切り替える前にSIDで12か月以上のSIDの疾患安定性を必要とする根拠は以下のとおりである:独立した研究で、SIDの1〜2年後にEIDに切り替えた患者でのSIDとEIDとの間で同等の効果が示唆されている。(7−9)モデル化により、EIDで患者を開始すると、臨床及び磁気共鳴画像(MRI)疾患活動性からの保護が不十分になり得ることが示されている。(10)AFFIRM患者の解析では、ナタリズマブの有効性が処置の最初の年の後に改善することが実証されている(図20A)。(11)
【0307】
ナタリズマブの4つの非盲検治験からの患者のプールされたコホートの解析によって、免疫抑制剤のインデックスまたは以前の使用に関係なく、処置の最初の年におけるPMLのリスクが低いことが示されている(図20B)。(12)したがって、本発明者らは、PMLリスク軽減戦略としてのEIDのインセンティブは、処置の最初の1年間は低いと仮定する。
【0308】
主要評価項目の選択のための48週での新規または新たに拡大するT2高強度病変の数は、ナタリズマブの有効性の客観的かつ高感度な指標である。非盲検試験では、評価者盲検MRI評価項目は完全に客観的なままであるが、再発ベースの評価項目は、これらの状況でバイアスをかける傾向がある。T2高強度病変は、脱髄の持続的なフットプリントを表し、疾患活動性の高感度検出を提供する。(13)サンプルサイズ(N=480)は、80%超の検出力を提供し、平均の新規または新しく拡大するT2病変の0.3(この母集団のSID群の予測値)と0.5との間の差を検出する。
【0309】
文献
EIDは、ナタリズマブ関連PMLのリスクを軽減する適応外の戦略として一部の医師によって実践されている。いくつかの後向き研究により、ナタリズマブの有効性は、EID投与スケジュールが4週間を超えても維持され得ることが示唆されている。(7、8)しかし、ナタリズマブの薬力学的効果の部分的な逆転は、最後の投与の4〜8週間後に発生すると報告されている。(17)この研究は、ナタリズマブEIDで処置された患者の最初の無作為化された、対照有効性データを提供し、ナタリズマブEIDの有効性と安全性の両方のより包括的な理解をもたらす。
【0310】
参考文献
1.Miller DH,et al.N Engl J Med.2003;348:15−23;
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17.Plavina T et al.Neurology.2017;89:1584−1593.
***
【0311】
本明細書に開示される全ての参照、特許、及び特許出願は、全体として、及びあらゆる目的のために、ならびに特に、それぞれが引用される主題に関して、場合によっては文書の全体を包含し得るものに関して、参照により組み込まれる。
【0312】
本明細書及び特許請求の範囲において、本明細書で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0313】
反対に明確に示されていない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む本明細書で請求される任意の方法では、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも本発明のステップまたは行為が列挙されている順序に限定されないことも理解されたい。
【0314】
特許請求の範囲及び上記の明細書では、「含む、備える(comprising)」、「含む、備える、挙げられる(including)」、「運ぶ、保持する(carrying)」、「保持する、有する(having)」、「含む、含有する(containing)」、「関与する(involving)」、「保持する(holding)」、「構成する(composed of)」などの全ての移行句は、制限のないものとして、すなわち、限定することなく含むことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続マニュアル第2111.03項に規定されているように、「からなる(consisting of)」及び「本質的にからなる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。
【0315】
数値に先行する「約」及び「実質的に」という用語は、列挙された数値の±10%を意味する。
【0316】
値の範囲が提供される場合、範囲の上限と下限の間の各値は、本明細書で具体的に企図され、説明されている。
【0317】
実施形態
例示的な実施形態は、対象において進行性多巣性白血病(PML)を発症するリスクを低減する方法を含み、この方法は以下を含む:a.4週間の間隔の標準間隔投与(SID)スケジュールでナタリズマブ療法を受けているPMLリスクの低い対象を特定すること;b.ナタリズマブ療法中に、対象がPMLリスクの低い対象からPMLリスクの高い対象に切り替わったか否かを判断すること;及びc.対象が高PMLリスクの対象に切り替えた場合、4週間を超える間隔(例えば、少なくとも5週間の間隔)の延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法の高PMLリスク対象を特定すること。
【0318】
例示的な実施形態は、0.9以下の抗JCV抗体インデックスレベルを有する対象に、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブを投与すること、その後、その対象が1.5を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有した後に、4週間を超える間隔(例えば、少なくとも5週間の間隔)の延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を対象に施すこと、を含む方法を含む。
【0319】
例示的な実施形態は、対象においてPMLを発症するリスクを低減する方法を含み、この方法は、a.4週間の間隔のSIDスケジュールで治療有効量のナタリズマブを対象に投与することであって、ここでこの対象が低PMLリスク対象である、投与すること;b.この対象がSIDナタリズマブ療法中に低PMLリスクの対象から高PMLリスクの対象に切り替わったか否かを決定すること、及びc.この対象が高PMLリスクの対象に切り替わった場合、少なくとも5週間の間隔のEIDスケジュールで治療有効量のナタリズマブをこの対象に投与することを含む。
【0320】
例示的な実施形態は、対象においてPMLを発症するリスクを低減する方法を含み、この方法は、少なくとも5週間の間隔のEIDスケジュールでナタリズマブ療法の対象を特定することを含み、ここでこの対象は抗JCV抗体について血清陽性と試験され、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けている。
【0321】
例示的な実施形態は、対象においてPMLを発症するリスクを低減する方法を含み、この方法は、少なくとも5週間の間隔のEIDスケジュールでナタリズマブの治療上有効な量を対象に投与することを含み、ここでこの対象は抗JCV抗体について血清陽性と試験され、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けている。
【0322】
例示的な実施形態は、対象においてPMLを発症するリスクを低減する方法を含み、この方法は、a.抗JCV抗体について血清陽性と試験され、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けた対象を特定すること;及びb.少なくとも5週間の間隔のEIDスケジュールでナタリズマブの治療上有効な量を対象に投与することを含む。
【0323】
例示的な実施形態は、対象において多発性硬化症(MS)を処置する方法を含み、この方法は以下を含む:a.4週間の間隔の標準間隔投与(SID)スケジュールでナタリズマブ療法を受けているMSを有するPMLリスクの低い対象を特定すること;b.ナタリズマブ療法中に、対象がPMLリスクの低い対象からPMLリスクの高い対象に切り替わったか否かを判断すること;及びc.対象が高PMLリスクの対象に切り替えた場合、少なくとも5週間の間隔の延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法の高PMLリスク対象を特定すること。
【0324】
例示的な実施形態は、対象においてクローン病を処置する方法を含み、この方法は以下を含む:a.4週間の間隔の標準間隔投与(SID)スケジュールでナタリズマブ療法を受けているクローン病を有するPMLリスクの低い対象を特定すること;b.ナタリズマブ療法中に、対象がPMLリスクの低い対象からPMLリスクの高い対象に切り替わったか否かを判断すること;及びc.対象が高PMLリスクの対象に切り替わった場合、少なくとも5週間の間隔の延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法の高PMLリスク対象を特定すること。
【0325】
例示的な実施形態は、対象においててんかんを処置する方法を含み、この方法は以下を含む:a.4週間の間隔の標準間隔投与(SID)スケジュールでナタリズマブ療法を受けているてんかんを有するPMLリスクの低い対象を特定すること;b.ナタリズマブ療法中に、対象がPMLリスクの低い対象からPMLリスクの高い対象に切り替わったか否かを判断すること;及びc.対象が高PMLリスクの対象に切り替えた場合、少なくとも5週間の間隔の延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法の高PMLリスク対象を特定すること。
【0326】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ステップ(a)は、0.9以下の抗JCV抗体インデックスレベルを有する低PMLリスク対象を特定することを含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ステップ(b)は、対象の抗JCV抗体インデックスレベルを決定することを含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ステップ(c)の高PMLリスク対象は、1.5を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ステップ(c)の高PMLリスク対象は、0.9を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。
【0327】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、延長間隔投薬(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象は、1.5を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、延長間隔投薬(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象は、0.9を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、標準間隔投薬(SID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象は、0.9以下の抗JCV抗体インデックスレベルを有する。
【0328】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、例えば、標準間隔投与(SID)でナタリズマブ療法を施された後、対象から以前に得られた延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象由来のサンプル(複数可)は、1.5を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、例えば、標準間隔投与(SID)でナタリズマブ療法を施された後、対象から以前に得られた延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象由来のサンプル(複数可)は、0.9を超える抗JCV抗体インデックスレベルを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、例えば、延長間隔投与(EID)の前に、対照から以前に得られた、延長間隔投与(EID)スケジュールでナタリズマブ療法を施されている対象由来のサンプル(複数可)は、0.9以下の抗JCV抗体インデックスレベルを有する。
【0329】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、5〜10週間の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、5〜8週間の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、4週間より長く12週間以下の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、4週間より長く10週間以下の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、4週間より長く8週間以下の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、4週間より長く6週間以下の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、6週間の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、7週間の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、8週間の間隔である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、9週間の間隔である。
【0330】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合において、対象は、少なくとも6カ月、1年、18カ月、2年、または5年間にわたって、4週間の間隔でSIDスケジュールのナタリズマブ療法を受けている。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、少なくとも6カ月、1年、18カ月、2年、または5年間にわたって、4週間の間隔でSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受ける。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、少なくとも6カ月、1年、18カ月、2年、または5年間にわたって、4週間の間隔でSIDスケジュールでナタリズマブ療法を施される。
【0331】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は自己免疫状態と診断されている。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は自己免疫状態を有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、ナタリズマブ療法により自己免疫状態が処置される。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、自己免疫状態は多発性硬化症である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、自己免疫状態はクローン病である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、自己免疫状態は関節リウマチである。
【0332】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象はてんかんと診断されている。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象はてんかんを有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、ナタリズマブ療法により自己免疫状態が処置される。
【0333】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、免疫抑制の既往歴を有する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象を、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受ける前に、免疫抑制剤で処置した。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ナタリズマブの単回用量は300mgである。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象においてPMLを発症するリスクは、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けている対象においてPMLを発症するリスクと比較して少なくとも10%減少する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象においてPMLを発症するリスクは、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けている対象においてPMLを発症するリスクと比較して少なくとも20%低減される。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象においてPMLを発症するリスクは、4週間の間隔のSIDスケジュールでナタリズマブ療法を受けている対象においてPMLを発症するリスクと比較して少なくとも50%低減される。
【0334】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法の有効性は、SIDスケジュールでのナタリズマブ療法の有効性の80%であるか、または少なくとも80%である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法の有効性は、SIDスケジュールでのナタリズマブ療法の有効性の90%であるか、または少なくとも90%である。
【0335】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ナタリズマブ療法の有効性は、トラフα4−インテグリン飽和(>50%)の維持を含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールのナタリズマブ療法は、少なくとも、または少なくとも約65%のトラフα4インテグリン飽和を維持する。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ナタリズマブ療法の有効性は、EID及び/またはSIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目のGd+病変の平均リスクを含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールのナタリズマブ療法は、EIDスケジュールのナタリズマブ療法の48週目にGd+病変の平均リスクが約20%、15%、10%、または5%未満であることを示す。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、約0.1%〜約20%、約0.1%〜約15%、約0.1%〜約10%、または約0.1%〜約5%のEIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目のGd+病変の平均リスクを示す。
【0336】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ナタリズマブ療法の有効性は、EID及び/またはSIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目におけるGd+病変の平均予想数を含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、約1.5、1.25、1、0.8、0.65、0.4、0.2、または0.15未満のEIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目でのGd+病変の平均予想数を示す。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールのナタリズマブ療法は、約0〜約1.5、約0〜約1.25、約0〜約1、約0〜約0.8、約0〜約0.65、約0〜約0.4、約0〜約0.2、または約0〜約0.15のEIDスケジュールのナタリズマブ療法の48週目でのGd+病変の平均予想数を示す。
【0337】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、ナタリズマブ療法の有効性は、EID及び/またはSIDスケジュールにおけるナタリズマブ療法の48週目での再発の累積確率を含む。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、約30%、27%、25%、20%、15%、または10%未満のEIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目での再発の累積確率を示す。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、EIDスケジュールでのナタリズマブ療法は、約5%〜約30%、約5%〜約25%、約5%〜約20%、または約5%〜約15%のEIDスケジュールでのナタリズマブ療法の48週目での再発の累積確率を示す。
【0338】
1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は体重が約120kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が約100kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が約99kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が約80kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、少なくとも約40kgの体重である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が少なくとも約40kg〜体重が約120kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が少なくとも約40kg〜体重が約100kg未満である。1つ以上の例示的な実施形態のいくつかの場合には、対象は、体重が少なくとも約40kg〜体重が約80kg未満である。