(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021509171
(43)【公表日】20210318
(54)【発明の名称】第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求めるミリ波通信システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/46 20060101AFI20210219BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20210219BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20210219BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20210219BHJP
   G01S 3/28 20060101ALI20210219BHJP
   H01Q 3/30 20060101ALI20210219BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20210219BHJP
   G01S 5/12 20060101ALI20210219BHJP
【FI】
   !G01S3/46
   !H04B7/06 950
   !H04W64/00 140
   !H04W16/28
   !G01S3/28
   !H01Q3/30
   !H01Q1/24 Z
   !G01S5/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】2020533035
(86)(22)【出願日】20181012
(85)【翻訳文提出日】20200615
(86)【国際出願番号】JP2018038905
(87)【国際公開番号】WO2019181036
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】15/924,538
(32)【優先日】20180319
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内二丁目7番3号
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】パジョヴィック、ミルティン
【住所又は居所】アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ケンブリッジ、ブロードウエイ 201、ケアオブ・ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド
(72)【発明者】
【氏名】秋濃 俊昭
【住所又は居所】アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ケンブリッジ、ブロードウエイ 201、ケアオブ・ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド
(72)【発明者】
【氏名】オーリック、フィリップ
【住所又は居所】アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ケンブリッジ、ブロードウエイ 201、ケアオブ・ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB07
5J021CA06
5J021DB03
5J021FA06
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5J021GA02
5J021HA05
5J047AB02
5J047AB03
5J047AB09
5J047FD01
5J062AA13
5J062CC11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE34
5K067JJ53
5K067KK02
(57)【要約】
第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求めるミリ波(mmWave)通信システムが、一組のアンテナに接続されて、mmWaveのビームを通信し、第1のデバイス及び第2のデバイスを接続するチャネルの推定を行う送受信機と、ビーム値対を含むチャネルの推定の結果を記憶するメモリとを備える。各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、ビームフォーミング角を用いて通信されるビームのエネルギーとを含む。このシステムは、メモリに作動的に接続されたプロセッサであって、第1のデバイス及び第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対をメモリから選択し、選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルを評価することによって支配的パスの方向を求め、第2のデバイスのロケーションに対する支配的パスの方向に沿って配置された第1のデバイスのロケーションを求めるように構成されたプロセッサも備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求めるミリ波(mmWave)通信システムであって、
一組のアンテナに接続されて、mmWaveのビームを通信し、mmWaveビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記ビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルの推定を行う送受信機と、
ビーム値対を含む前記チャネルの推定の結果を記憶するメモリであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含む、メモリと、
前記メモリに作動的に接続されたプロセッサであって、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を前記メモリから選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を行うように構成された、プロセッサと、
を備える、通信システム。
【請求項2】
前記選択された複数のビーム値対は、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って互いに隣接するビームフォーミング角を有する2つのビーム値対を含み、前記支配的パスは、前記選択されたビーム値対からの前記隣接するビームフォーミング角によって規定される角度内における前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の最短パスである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記ビームフォーミングモデルは、該ビームフォーミングモデルが、前記選択された複数のビーム値対を用いて前記プロセッサによって解決される曖昧性を含むように、前記支配的パスからの前記ビームフォーミング角の前記ずれを、前記ビームの前記エネルギー及び前記ビームフォーミングを実行する送受信機の間の未知の距離に関係付ける、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記選択された複数のビーム値対は、前記チャネル推定中に受信された最も高いエネルギー値を有する第1のビーム値対を含み、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って前記第1の対の前記ビームフォーミング角に隣接する前記ビームフォーミング角を有する第2のビーム値対を含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記対応するビームフォーミング角から前記ビームフォーミングモデルに従って拡散される前記第1のビーム値対及び前記第2のビーム値対におけるビームの前記エネルギーと整合する前記支配的パスの前記方向を求める、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記選択された複数のビーム値対は、少なくとも3つのビーム値対を含み、前記プロセッサは、前記ビーム値を前記ビームフォーミングモデルに当てはめて、前記3つのビーム値対と整合する前記支配的パスを生成する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離を求め、前記支配的パスの前記方向に沿って前記距離に基づいて前記第1のデバイスの前記ロケーションを求める、請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記支配的パスにわたる前記ビームの伝播の飛行時間を取得し、該飛行時間に基づいて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の前記距離を求める、請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記飛行時間を測定するセンサー、
を更に備える、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記支配的パスの前記方向に最も近い前記ビームフォーミング角を用いて送信された前記ビームの前記エネルギーとともに、前記支配的パスの前記方向に沿ったmmWave信号伝播のパス損失モデルを用いて前記距離を求める、請求項7に記載の通信システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記支配的パスの前記方向にわたって進む前記距離に沿ったmmWave信号伝播のパス損失モデルを用いて、前記支配的パスが直接的な見通し線を介して前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続しているか否かを調べることと、
前記支配的パスが前記直接的な見通し線を介して前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続しているとき、前記支配的パスの前記方向に沿った前記第2のデバイスからの前記距離において前記ロケーションを決定することと、
そうでないとき、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを取り囲む環境の地図を用いて前記支配的パスの反射を特定し、該反射に従って前記第1のデバイスの前記ロケーションを調整することと、
を行う、請求項7に記載の通信システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
異なる組からのビーム値対が前記ビームフォーミングされた通信の異なる支配的パスを用いるような複数の組のビーム値対を前記メモリから選択することと、
各組のビーム値対の前記支配的パスを決定して一組の支配的パスを生成することと、
前記第2のデバイスの前記ロケーションを起点として前記支配的パスを三角測量して前記第1のデバイスの前記ロケーションを生成することと、
を行うように構成されている、請求項1に記載の通信システム。
【請求項13】
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスは、通信プロトコルの物理レイヤを用いて前記チャネル推定を実行し、前記チャネル推定の前記結果を前記通信プロトコルの媒体アクセス制御(MAC)レイヤに記憶し、前記プロセッサは、前記MACレイヤから取り出された情報のみを用いて前記支配的パスの前記方向を求める、請求項1に記載の通信システム。
【請求項14】
前記第2のデバイスは、前記第1のデバイスをネットワークに接続するアクセスポイント(AP)である、請求項1に記載の通信システム。
【請求項15】
送受信機は、前記チャネル推定中に求められた前記ビームフォーミング角を有するビームを用いて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間でデータを通信する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項16】
送受信機は、前記支配的パスの前記方向に沿った前記ビームフォーミング角を有するビームを用いて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間でデータを通信する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項17】
各ビームフォーミング角は、通信されるビームの発射角と、前記通信されるビームの到来角とを含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項18】
ミリ波(mmWave)ビームフォーミングを用いて、第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求める方法であって、該方法は、該方法を実施する記憶された命令と結合されたプロセッサを用い、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
前記ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含む前記チャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を含む、該方法のステップを実行する、方法。
【請求項19】
前記選択された複数のビーム値対は、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って互いに隣接するビームフォーミング角を有する2つのビーム値対を含み、前記支配的パスは、前記選択されたビーム値対からの前記隣接するビームフォーミング角によって規定される角度内における前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の最短パスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
方法を実行するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化される非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記方法は、
前記ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含む前記チャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を含む、非一時的コンピューター可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、通信システムに関し、より詳細には、mmWaveベースの屋内ロケーション特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリメートル波(mmWave)は、1ミリメートル(mm)〜10mmの範囲内の波長を有する電波であり、この範囲は、30ギガヘルツ(GHz)〜300GHzの無線周波数に対応する。国際電気通信連合(ITU)による定義によると、これらの周波数は、極高周波(EHF:Extremely High Frequency)帯域とも称される。
【0003】
mmWaveは、固有の伝播特性を呈する。例えば、より低い周波数の電波と比較して、mmWaveは、より高い伝播損失を被り、建物、壁、枝葉等の物体を通過する能力がより乏しく、空気中の粒子(例えば、雨粒)に起因する大気吸収、偏向及び散乱をより受けやすい。他方、mmWaveのより短い波長に起因して、比較的小さい面積により多くのアンテナを敷き詰めることができ、それによって、小さいフォームファクターにおける高利得のアンテナの実施が可能になる。
【0004】
mmWaveは、より低い周波数の電波よりも利用頻度が少ない。mmWave帯域において広範囲のスペクトルが利用可能である。例えば、60GHz周囲の周波数、通常60GHz帯域と称される周波数は、大半の国において無認可スペクトルとして利用可能である。
【0005】
屋内ロケーション特定の技術分野は、閉ざされた屋内エリアにおいて物体のロケーションを特定するシステム及び方法の開発を取り扱う。物体は、他の或るデバイスに対して信号を送信及び/又は受信するデバイス又はそのような機能を有しないエンティティとすることができる。ロケーション特定は、或る既定の基準座標における物体の座標を推定することを指す。或いは、ロケーション特定は、より大きな屋内エリア内のサブエリアレベルにおいて物体のロケーションを特定することを目的とする近接検出問題としての枠組みで捉えることもできる。多くのアプリケーションが、数例を挙げると、病院、倉庫、ショッピングモール、工場において人々及びリソースの位置を突き止める等の精密な屋内ロケーション特定を必要とする。例えば、技術支援生活のパラダイムが、正確なロケーション特定に基づいて構築される。
【0006】
全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)として知られている屋外ロケーション特定のよく知られた解決策は、屋内では効果的でない。なぜならば、GPS衛星群内の衛星から送信された電磁波は屋内に進入しないからである。
【0007】
屋内ロケーション特定における多くの手法は、屋内エリアに専用のハードウェアを設置することを必要とする。この手法は、正確なロケーション推定値を与える可能性もあるが、そのコストと、専用のシステムがロケーション特定タスクに必要とされることとによって望ましくない。この手法の一例は、市販されている超広帯域(UWB:ultra-wide band)無線ロケーション特定システムであるが、比較的高価であり、最後の手段としてのみ用いられる。他の例としては、ライダー、レーダー又は超音波に基づくシステムがあり、通常、精度が高いが、設置コスト及び維持コストも高い。mmWave通信の分野では、特許文献1に記載されたシステムが、mmWaveベースの屋内ロケーション特定システムを開示している。しかしながら、そのシステムは、mmWave周波数において動作する専用のインフラストラクチャの設置を必要とする。
【0008】
ロケーション特定に用いられるインフラストラクチャは、達成することができる精度とともに屋内ロケーション特定方法の選択において主な役割を果たす。例えば、フィンガープリンティングを必要としないインフラストラクチャフリーの屋内ロケーション特定が、コスト及び実装の観点から望ましい手法である。そのようなシステムは、他の幾つかのタスクに専用化された既存のインフラストラクチャを活用する。代表的な例は、アクセスポイントがローカルエリアネットワークにおいて無線接続を有効にするために専用化されたWiFiインフラストラクチャである。これらの方法は、通常、WiFi信号の伝播のパス損失モデル化に依拠している。これについては、例えば、特許文献2を参照されたい。しかしながら、mmWave通信の原理は、それよりも低い周波数における通信と非常に異なっており、WiFi信号に適した既存の方法は、mmWaveロケーション特定には実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第102914762号
【特許文献2】米国特許第9,282,531号
【発明の概要】
【0010】
幾つかの実施の形態は、ミリメートル波(mmWaVe)チャネルがmmWaveの伝播について幾つかの特定の特性を有するという認識に基づいている。より低い周波数の電波とは対照的に、mmWaveチャネルは、受信機アレイに衝突するmmWaveの到来数においてスパースである。加えて、伝播したmmWaveは、角度領域において拡散され、潜在的に特定の電力プロファイルを呈する可能性がある。さらに、mmWave信号伝播の高いパス損失に起因して、mmWave通信システムは、特定のビームフォーミング角を有するビームフォーミング手順を用いて形成されたmmWaveのビームを用いて通信する。本明細書において用いられるような各ビームフォーミング角は、通信ビームの発射角及び通信ビームの到来角のうちの一方又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
したがって、増大する数のmmWave通信システムが、mmWave伝播の異なる特性を活用するためにmmWaveチャネルを推定する。このチャネル推定は、通信リンクを確立することができる送信機と受信機との間のパスを見つけるビームトレーニングを含む。このビームトレーニング中に、送信機及び受信機は、異なるビームフォーミング角を用いて送信された或る特定の数のビームをプローブする。例えば、ビームトレーニング中に、送信機は、各ビームにおいてトレーニングシーケンスを順次送信し、受信機は、検査される全てのビームを順次ステアリングし、ステアリングされた各ビームからの信号の強度を測定する。
【0012】
そのようにして、mmWaveチャネル推定の結果は、本明細書においてビーム値と呼ばれる値の対を含む。各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、このビームフォーミング角を用いて通信されたビームのエネルギーとを含む。例えば、チャネル推定中に、ビームが10個の異なるビームフォーミング角にわたって通信され、そのようなビームフォーミング送信のエネルギーが測定される場合、このmmWaveチャネル推定の結果は、10個のビーム値対を含む。通常、チャネル推定中に受信された最も高いエネルギー値を有するビーム値対が、データのその後の通信用に選択される。
【0013】
幾つかの通信システムでは、mmWaveチャネル推定の結果は、mmWave通信システムによって用いられる通信プロトコルの媒体アクセス制御(MAC:medium access control)レイヤにおいて計算される。そのために、幾つかの実施の形態の目的は、MACレイヤから取り出される情報を用いてmmWaveスペクトル内で通信するように構成されたデバイスのロケーションを特定することである。
【0014】
理論上、ビーム値対において最も高いエネルギー値を有するビームフォーミング角は、2つのデバイスを接続する最短パスの方向に対応する。したがって、一方のデバイスのロケーションが既知である場合、これは、例えば、このデバイスがアクセスポイントであるときに該当するが、もう一方のデバイスのロケーションは、そのビームフォーミング角によって指定されるパス上に突き止めることができる。デバイスを接続するパスの角度が既知であるとき、様々な技法を用いてデバイスの間の距離を求めることができる。例えば、mmWave伝播の飛行時間モデル又は通過損失モデルを用いることができる。
【0015】
しかしながら、実際には、ビーム値対において最も高いエネルギー値を有するビームフォーミング角は、2つのデバイスを接続する最短パスの方向に対応していない。これは、チャネル推定を実行するのに用いられる解像度が、mmWave通信の目的にとっては十分なものとすることができるが、2つのデバイスを接続する支配的パスの検出及び/又は正確なロケーション特定には不十分な場合がある、すなわち、低すぎる場合があるからである。
【0016】
例えば、2つのデバイスを接続するパスの方向が或る座標系において37度であり、ビームフォーミングの解像度が5度であるとする。そのような解像度は、チャネル推定に用いられる隣接するビームフォーミング角の間の離隔距離を規定する。そのために、この例では、チャネル推定中、ビームは、5度の倍数であるビームフォーミング角にわたってステアリングされる。したがって、この例では、チャネル推定は、35度のビームフォーミング角が、最も高いエネルギー値を有するビームに対応すると判断する可能性が高い。なぜならば、35度の角度が、2つのデバイスを接続するパスの角度に最も近いからである。
【0017】
この例では、mmWaveのビームが幅狭の放射光線である場合、一方のデバイスから送信されたそのようなビームは、第2のデバイスに全く到達しない。しかしながら、mmWaveのビームは、特定の電力プロファイルに従って角領域において拡散される。そのために、35度の角度にわたって一方のデバイスから送信されたそのようなビームは、データ通信にとって十分なものとすることができる相対的に高いエネルギーを有する37度の角度にわたって位置するもう一方のデバイスに到達することができる。それが、多数のmmWave通信システムが高解像度チャネル推定を用いない理由のうちの1つである。
【0018】
しかしながら、2つのデバイスを接続するパスの方向が誤って求められた場合であっても、支配的パスから逸脱したそのパス上に送信されたビームのエネルギーは、ビーム拡散に起因して支配的パス上で受信機に依然として到達する。飛行時間方法又は通過損失方法等の2つのデバイスの間の距離を求める方法は、支配的パス上でのみ正確な結果を提供する。したがって、支配的パスからのビームフォーミング角のずれは、方向の特定及び距離の特定の双方において誤差をもたらし、幾つかのロケーション特定ベースのアプリケーションにとって許容できない誤差に達する可能性がある。
【0019】
幾つかの実施の形態は、ビームフォーミング角を用いて送信されたビームから支配的パス上で受信されるエネルギーと、支配的パスの方向からのビームフォーミング角のずれとの間に或る関係があるという理解に基づいている。そのような関係は、ビームを形成するのに用いられるハードウェアと、2つのデバイスの間の距離とに依存するが、支配的パスの方向を推定するのに潜在的に用いることができる。そのような関係は、本明細書では、支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、このビームフォーミング角を用いて送信され支配的パス上で受信されたビームのエネルギーに関係付けるビームフォーミングモデルと呼ばれる。
【0020】
しかしながら、そのようなビームフォーミングモデルは、デバイスの間の未知の距離に起因して劣決定であり、曖昧性を有する。しかしながら、幾つかの実施の形態は、チャネル推定中に求められる複数のビーム値が同じ支配的パスを共有するという理解に基づいている。例えば、上述した例では、35度及び40度のビームフォーミング角を用いたビームフォーミング送信は、37度の同じ支配的パスを共有する可能性が高い。したがって、幾つかの実施の形態は、これらの複数のビーム値を用いて、ビームフォーミングモデルの曖昧性を解決し、支配的パスの方向を求める。
【0021】
幾つかの状況では、支配的パスは、2つのデバイスを接続する最短パスである。しかしながら、mmWaveの送信ビームの反射に起因して、mmWaveチャネルは、受信機アレイに衝突するmmWaveの到来数が疎らであり、送信機デバイスと受信機デバイスとを接続する明確に区別できる支配的パスを複数有する可能性がある。そのために、支配的パスは、2つ又は複数のビームフォーミング角によって規定される角度内で2つのデバイスを接続する短絡パスである。例えば、屋内環境では、2つのデバイスの間のmmWaveチャネルは、3〜5つの支配的パスを有する可能性がある。
【0022】
支配的パスの方向が求められた後、幾つかの実施の形態は、デバイスの間の距離を求め、一方のデバイスのロケーションを、既知のロケーションを有するもう一方のデバイスからの支配的パスの方向に沿った距離に基づいて求める。例えば、1つの実施の形態は、支配的パスにわたるビームの伝播の飛行時間を取得し、この飛行時間に基づいて第1のデバイスと第2のデバイスとの間の距離を求める。別の実施の形態は、支配的パスの方向に最も近いビームフォーミング角を用いて送信されたビームのエネルギーとともに、支配的パスの方向に沿ったmmWave信号伝播のパス損失モデルを用いて距離を求める。更に別の実施の形態は、複数の支配的パスを求め、それらの支配的パスの三角測量を用いて、デバイスのロケーションを求める。
【0023】
したがって、1つの実施の形態は、第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求めるミリ波(mmWave)通信システムであって、一組のアンテナに接続されて、mmWaveのビームを通信し、mmWaveビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記ビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルの推定を行う送受信機と、ビーム値対を含む前記チャネルの推定の結果を記憶するメモリであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含む、メモリと、前記メモリに作動的に接続されたプロセッサであって、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を前記メモリから選択することと、前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることとを行うように構成されたプロセッサとを備える、通信システムを開示する。
【0024】
別の実施の形態は、ミリ波(mmWave)ビームフォーミングを用いて、第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求める方法であって、該方法は、該方法を実施する記憶された命令と結合されたプロセッサを用い、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含む前記チャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることとを含む、該方法のステップを実行する、方法を開示する。
【0025】
更に別の実施の形態は、方法を実行するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化される非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記方法は、前記ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含む前記チャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることとを含む、非一時的コンピューター可読記憶媒体を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】幾つかの実施形態による、ミリ波周波数範囲を用いて無線で通信するデバイス1及びデバイス2の2つのデバイスの概略図である。
【図2】図1のデバイスの例示的な構造の概略図である。
【図3】幾つかの実施形態による、デバイス101によって用いられるチャネル推定段階のブロック図である。
【図4】幾つかの実施形態によって用いられる送信方向及び受信方向を規定する例示的なチャネル推定解像度を示す概略図である。
【図5A】幾つかの実施形態によって用いられるマルチレベルビームトレーニングの1つの段階の概略図である。
【図5B】幾つかの実施形態によって用いられるマルチレベルビームトレーニングの別の段階の概略図である。
【図6A】幾つかの実施形態によって用いられるチャネル推定を示す概略図である。
【図6B】幾つかの実施形態に従って求められるビーム値対の例を記憶する表である。
【図7】幾つかの実施形態によって用いられるロケーション特定のブロック図である。
【図8】幾つかの実施形態によって用いられる支配的パスの概念を示す例示的な概略図である。
【図9A】幾つかの実施形態による支配的パス方向の推定用に選択される複数のビーム対の例を示す概略図である。
【図9B】幾つかの実施形態による支配的パス方向の推定用に選択される複数のビーム対の例を示す概略図である。
【図10】幾つかの実施形態による、フェーズドアレイを用いたビームフォーミングの概略図である。
【図11】幾つかの実施形態によって計算されるビームパターンのプロットである。
【図12】1つの実施形態による、2つのデバイスの間の支配的パスの方向を推定する3つ以上のビーム値対の使用例の概略図である。
【図13A】1つの実施形態による、デバイスのロケーションを推定する方法のブロック図である。
【図13B】幾つかの実施形態による、飛行時間(TOF:time-of-flight)測定を用いて2つのデバイスの間の距離を求める方法のブロック図である。
【図13C】TOFチップを用いる幾つかの実施形態によるTOF測定値を求める方法の概略図である。
【図14A】パス損失モデルを用いて2つのデバイスの間の距離を求める別の実施形態によって実施される方法の概略図である。
【図14B】幾つかの実施形態による、最大尤度を用いて2つのデバイスの間の距離を求める方法のブロック図である。
【図15A】幾つかの実施形態によって考慮される2つのデバイスの例示的な配置の概略図である。
【図15B】1つの実施形態による、第1のデバイス及び第2のデバイスを取り囲む環境の地図を用いた屋内ロケーション特定のブロック図である。
【図15C】幾つかの実施形態によって用いられる複数のパスに沿った2つのデバイスの間の例示的な通信の概略図である。
【図16A】2つのデバイスが2つ、3つ又は4つ以上のビーム値対を用いることによって無線で通信する支配的パスの方向を求めるために幾つかの実施形態によって用いられるチャネル推定の概略図である。
【図16B】幾つかの実施形態によって用いられる三角測量の概略図である。
【図16C】1つの実施形態によって用いられるロケーション特定のブロック図である。
【図17】通信プロトコルスタックのMACレイヤの上部において実施される幾つかの実施形態による屋内ロケーション特定の概略図である。
【図18】幾つかの実施形態による通信リンクを確立する図である。
【図19】ビームを送信及び受信するために幾つかの実施形態によって用いられるビームフォーミングを示す概略図である。
【図20】幾つかの実施形態によって考慮される通信デバイスの方位の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、幾つかの実施形態による、ミリ波周波数範囲を用いて無線で通信するデバイス1及びデバイス2の2つのデバイスの概略図を示している。一般性を失うことなく、この例では、デバイス1はモバイル端末101である一方、デバイス2はアクセスポイント102、基地局又は他の何らかのモバイル端末である。デバイス2のロケーションは事前に知られている一方、デバイス1のロケーションは未知である。幾つかの実施形態は、デバイス2に対するデバイス1のロケーションを推定する方法を開示している。このロケーションは、デバイス2に関連付けられた座標系におけるデバイス1の座標として表すことができる。2次元幾何学では、座標系は、デバイス1のロケーションが座標x104及びy106によって与えられるように、x軸103及びy軸105を用いて定義される。或いは、デバイス1のロケーションは、デバイス2からの距離r107及び方位角θ108として報告することができる。3次元幾何学への拡張は簡単であり、様々な実施形態によって用いられる。
【0028】
図2は、図1のデバイスの例示的な構造の概略図を示している。例えば、デバイス101及び102は、送受信機201及び202を用いてmmWave通信を実施し、これは、これらの2つのデバイスの間のデータ交換をいずれの方向にも行うことができることを意味する。各送受信機201及び202は、ビームフォーミング解像度まで或る所望の方向に対してビーム205及び206を生成する、すなわち、mmWave信号を送信/受信することが可能な一組のアンテナ203及び204にそれぞれ接続されている。アンテナの例として、直線フェーズドアレイ、平面フェーズドアレイ、円筒フェーズドアレイ、ホーンアンテナ等があるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
デバイス101及び102等の2つのmmWaveデバイスは、ビームを用いてmmWave通信リンクを確立する。これは、mmWaveが、壁及びキュービクルパーティション等の表面から反射するとき又はそのような障害物を貫通するときは言うまでもなく、2つのデバイスの間を見通し線に沿って伝播するときであっても急速に減衰するからである。したがって、2つのデバイスの間のリンクを閉じるためには、それらのデバイスは、mmWave信号に最小の減衰を課すパスに沿ってビームをステアリングする必要がある。そのために、チャネル推定中に、デバイスは、そのようなパスを見つけてmmWaveリンクの確立を目指す。
【0030】
図3は、幾つかの実施形態による、デバイス101によって用いられるチャネル推定段階のブロック図を示している。コントローラー302は、チャネル推定器301において実行されるチャネル推定プロトコルを実施する。アンテナ203と接続された送受信機201は、パイロット信号を送信ビーム方向304に送信し又は受信ビーム方向305から受信する。チャネル推定段階中、高レベルで、2つのデバイスは、全ての可能なビームの組み合わせに沿ってパイロット信号を送信及び受信する。コントローラー302は、どのビームの組み合わせを所与のタイムスロットにおいて検査するのかを指示する。チャネル推定の結果は、メモリ303に記録される。
【0031】
図4は、幾つかの実施形態によって用いられる送信方向及び受信方向を規定する例示的なチャネル推定解像度を示す概略図を示している。この例では、デバイス1は、全ての送信方向に対して一度に1つずつの方向にパイロット信号を送信する。デバイス2は、全ての可能な受信方向から一度に1つずつの方向でパイロット信号を受信する。具体的には、デバイス1は、複数のタイムスロットの間にビーム401によって規定される方向にパイロット信号を送信する。1つのタイムスロットにおいて、デバイス2は、方向421から信号を受信し、受信信号品質を記録する。次のタイムスロットにおいて、デバイス2は、ビーム422によって規定される方向から信号を受信し、受信信号品質を記録する。デバイス2は、方向423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、及び436から、すなわち、全ての方向が試行されるまで、信号エネルギーの受信及び測定を継続する。
【0032】
デバイス1は、次に、複数のタイムスロットにおいてビーム402に沿ってパイロット信号を繰り返し送信する。デバイス2は、ビーム421、422、...、436に沿って信号を受信し、信号品質を測定する。この場合、各タイムスロットにおいて1つのビームが試行される。全体のプロセスは、双方のデバイスが全ての可能なビームに沿って信号を送信及び受信するまで継続する。したがって、送信ビーム及び受信ビームの数をそれぞれG及びGとすると、この方式は、全ての可能な送信ビーム及び受信ビームの対をプローブするのにG×G個のチャネルの使用を必要とする。受信機は、例えば、各ビーム対の信号対雑音比(SNR)を介して信号品質を測定する。最大のSNRを与えるビーム対が、デバイスが通信リンクを確立するのに用いる必要があるステアリング角を決定するビーム対である。そのようにして、デバイス1は、異なる送信方向401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、及び416についてビームを送信し、これらの送信方向のそれぞれについて、デバイス2は、各受信方向421〜436についてエネルギーを測定する。本明細書において用いられているような送信方向は、ビームの発射角(AoD:angle of departure)によって定義することができる一方、受信方向は、ビームの到来角(AoA:angle of arrival)によって定義することができる。
【0033】
図5Aは、全ての可能な送信ビーム及び受信ビームをプローブする負担を削減するために幾つかの実施形態によって用いられるマルチレベルビームトレーニングの1つの段階の概略図を示している。マルチレベルビームトレーニングは、幅広ビームを用いてパイロット信号を送信及び受信することから開始し、より高い解像度ビームを用いてチャネルプローブを進める。図5Aを参照すると、2次元幾何学を仮定するとともに、デバイス1とデバイス2との間の最良の通信リンクを、反射器501から反射されるパス503に沿って確立することができると仮定する。角度基準502は、上方を指す垂直軸に対して規定される。マルチレベルビームトレーニングは、以下のように動作する。
【0034】
デバイス1は、まず、2つの連続したタイムスロットの間に角度(0度,180度)をカバーするビーム511を用いてチャネルをプローブする。デバイス2は、第1のタイムスロットにおいて角度(180度,360度)をカバーするビーム513をステアリングし、第2のタイムスロットにおいて角度(0度,180度)をカバーするビーム514をステアリングし、各タイムスロットの終了時に受信信号の品質を測定する。デバイス1は、次に、2つの連続したタイムスロットにおいて角度(180度,360度)をカバーするビーム512に沿ってパイロット信号を送信する。デバイス2は、ビーム513及び514から到来する信号を再び受信し、信号品質を測定する。それらの4つの信号品質測定値が与えられると、デバイス2は、2つのデバイスの間のリンクを、送信ビーム511及び受信ビーム513を用いて確立すべきであると判断する。
【0035】
図5Bは、幾つかの実施形態によって用いられるマルチレベルビームトレーニングの別の段階の概略図を示している。例えば、マルチレベルビームトレーニングの次の段階は、以前の段階から決定された送信ビーム内の或る特定の数のより高い解像度ビームを送信することと、以前の段階から決定された受信ビーム内の或る特定の数のより高い解像度ビームを用いて受信することとを含む。図5Bに示す一例示として、デバイス1は、角度(0度,90度)をカバーするビーム521を用いてチャネルをプローブし、角度(90度,180度)をカバーするビーム522を用いてチャネルをプローブする。同様に、デバイス2は、角度(270度,360度)をカバーするビーム528をステアリングし、角度(180度,270度)をカバーするビーム527をステアリングすることによってパイロット信号を受信する。この段階は、最良の送信ビーム及び受信ビームがそれぞれ521及び528であるという決定によって終了する。特に、ビーム524及び523の送信並びに525及び526に向けてステアリングすることによる受信が、このマルチレベルビームトレーニング方式では回避され、これによって、時間、チャネルリソース及び消費電力が節約される。
【0036】
図6Aは、幾つかの実施形態によって用いられるチャネル推定を示す概略図を示している。全体的に、チャネル推定段階によって、複数のビーム値対601が得られる。ビーム対における第1の要素611は、送信ビーム621及び受信ビーム622を規定するAoD角及びAoA角等の角度を含む。第2の要素622は、その特定の送信ビーム−受信ビームの或る品質尺度である。リンク品質は、SNR、信号強度等を用いて測定することができる。ビーム値対はメモリ303に記憶される。
【0037】
図6Bは、幾つかの実施形態に従って求められるビーム値対の例を記憶する表を示している。そのようにして、メモリに記憶された情報は表形式650を有する。2つのデバイスの間の通信リンクは、送信ビーム及び受信ビームによって規定されるパスに沿って確立され、その対応するリンク品質は最良である。例えば、650に記憶された測定値は、送信機及び受信機がそれぞれ22.5度及び45度に向けてビームをステアリングするときに最良のリンクが確立されることを示している。
【0038】
理論上、ビーム値対において最も高いエネルギー値を有するビームフォーミング角は、2つのデバイスを接続する最短パスの方向に対応する。したがって、一方のデバイスのロケーションが既知である場合、これは、例えば、このデバイスがアクセスポイントであるときに該当するが、もう一方のデバイスのロケーションは、そのビームフォーミング角によって指定されるパス上に突き止めることができる。デバイスを接続するパスの角度が既知であるとき、様々な技法を用いてデバイスの間の距離を求めることができる。例えば、mmWave伝播の飛行時間モデル又は通過損失モデルを用いることができる。
【0039】
しかしながら、実際には、ビーム値対において最も高いエネルギー値を有するビームフォーミング角は、2つのデバイスを接続する最短パスの方向に対応していない。これは、チャネル推定を実行するのに用いられる解像度が、mmWave通信の目的にとっては十分なものとすることができるが、2つのデバイスを接続する支配的パスの検出及び/又は正確なロケーション特定には不十分な場合がある、すなわち、低すぎる場合があるからである。
【0040】
例えば、2つのデバイスを接続するパスの方向が或る座標系において37度であり、ビームフォーミングの解像度が5度であるとする。そのような解像度は、チャネル推定に用いられる隣接するビームフォーミング角の間の離隔距離を規定する。そのために、この例では、チャネル推定中、ビームは、5度の倍数であるビームフォーミング角にわたってステアリングされる。したがって、この例では、チャネル推定は、35度のビームフォーミング角が、最も高いエネルギー値を有するビームに対応すると判断する可能性が高い。なぜならば、35度の角度が、2つのデバイスを接続するパスの角度に最も近いからである。
【0041】
この例では、mmWaveのビームが幅狭の放射光線である場合、一方のデバイスから送信されたそのようなビームは、第2のデバイスに全く到達しない。しかしながら、mmWaveのビームは、特定の電力プロファイルに従って角領域において拡散される。そのために、35度の角度にわたって一方のデバイスから送信されたそのようなビームは、データ通信にとって十分なものとすることができる相対的に高いエネルギーを有する37度の角度にわたって位置するもう一方のデバイスに到達することができる。それが、多数のmmWave通信システムが高解像度チャネル推定を用いない理由のうちの1つである。
【0042】
しかしながら、2つのデバイスを接続するパスの方向が誤って求められた場合であっても、支配的パスから逸脱したそのパス上に送信されたビームのエネルギーは、ビーム拡散に起因して支配的パス上で受信機に依然として到達する。飛行時間方法又は通過損失方法等の2つのデバイスの間の距離を求める方法は、支配的パス上でのみ正確な結果を提供する。したがって、支配的パスからのビームフォーミング角のずれは、方向の特定及び距離の特定の双方において誤差をもたらし、幾つかのロケーション特定ベースのアプリケーションにとって許容できない誤差に達する可能性がある。
【0043】
幾つかの実施形態は、ビームフォーミング角を用いて送信されたビームから支配的パス上で受信されるエネルギーと、支配的パスの方向からのビームフォーミング角のずれとの間に或る関係があるという理解に基づいている。そのような関係は、ビームフォーミングに用いられるハードウェアと、2つのデバイスの間の距離とに依存するが、支配的パスの方向を推定するのに潜在的に用いることができる。そのような関係は、本明細書では、支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、このビームフォーミング角を用いて送信され支配的パス上で受信されたビームのエネルギーに関係付けるビームフォーミングモデルと呼ばれる。
【0044】
しかしながら、そのようなビームフォーミングモデルは、デバイスの間の未知の距離に起因して劣決定であり、曖昧性を有する。しかしながら、幾つかの実施形態は、チャネル推定中に求められる複数のビーム値が同じ支配的パスを共有するという理解に基づいている。例えば、上述した例では、35度及び40度のビームフォーミング角を用いたビームフォーミング送信は、37度の同じ支配的パスを共有する可能性が高い。したがって、幾つかの実施形態は、これらの複数のビーム値を用いて、ビームフォーミングモデルの曖昧性を解決し、支配的パスの方向を求める。
【0045】
図7は、幾つかの実施形態によって用いられるロケーション特定のブロック図を示している。プロセッサ701は、メモリ303からビームトレーニング測定値を取り出し、ビームフォーミングモデル702を適用して、2つのデバイスの間の支配的パスの方向703を推定し、ロケーション推定値704をレンダリングする。
【0046】
様々な実施形態では、プロセッサ701は、選択されたビーム値対についてビームフォーミングモデル702を評価することによって支配的パスの方向を求める。ビームフォーミングモデルは、支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、ビームフォーミング角を用いて送信され支配的パス上で受信されたビームのエネルギーに関係付ける。上述したように、ビームフォーミングモデルは曖昧であるが、複数のビーム値対がこの曖昧性を解決し、幾つかの実施形態のロケーション特定方法が支配的パスの方向の知識を利用することを可能にする。
【0047】
支配的パスの方向が求められた後、プロセッサ701は、チャネル推定の結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、第2のデバイスのロケーションに対する、支配的パスの方向に沿って配置された第1のデバイスのロケーションを求める。例えば、プロセッサは、チャネル推定段階中にビームに適用されるビーム伝播のモデルを用いて、支配的パスの方向に沿った2つのデバイスの間の距離を求めることができる。
【0048】
幾つかの状況では、支配的パスは、2つのデバイスを接続する最短パスである。mmWaveの送信ビームの反射に起因して、mmWaveチャネルは、受信機アレイに衝突するmmWaveの到来数が疎らであり、送信機デバイスと受信機デバイスとを接続する明確に区別できる支配的パスを複数有する可能性がある。そのために、支配的パスは、2つ又は複数のビームフォーミング角によって規定される角度内で2つのデバイスを接続する短絡パスである。例えば、屋内環境では、2つのデバイスの間のmmWaveチャネルは、3〜5つの支配的パスを有する可能性がある。
【0049】
図8は、幾つかの実施形態によって用いられる支配的パスの概念を示す例示的な概略図を示している。この例では、チャネル推定段階は、デバイス1からデバイス2への通信リンクを確立するために、デバイス1がビーム820に沿って送信し、デバイス2がビーム830に沿って受信することを示している。ビーム820にわたる放射信号エネルギー及びビーム830にわたる受信信号エネルギーの分布は、デバイスのアンテナのタイプに依存し、ビームフォーミングモデルによって指定される。ほとんどの場合に、ビームフォーミングモデルは、最も強い送信信号がビーム820の中心に沿った方向821にあることを示す。同様に、受信機は、その最も強い感度がビーム830の中心831に沿うように調節される。しかしながら、障害物812が2つのデバイスの間の直接的な見通し線を遮断しているので、デバイス1からデバイス2への接続は、反射器811において反射される最短パスであるパス810に沿って確立される。この例では、反射されるパス810が2つのデバイスの間の支配的パスと呼ばれる。一般に、送信ビーム820及び受信ビーム830における最も強い光線は、不完全なビームフォーミング解像度のために支配的パスと一致していない。この不一致は、2つのデバイスの間の通信を著しく妨げることはない。他方、デバイス1及びデバイス2に対する支配的パスに関連した角度の推定は、デバイスロケーション特定の重要な側面である。この推定は、メモリ330に記憶されたビームトレーニング測定値と、ビームフォーミングモデル702とを用いてプロセッサ701において行われる。そのようにして、これらの実施形態は、2つのデバイスを直接及び/又は間接的に接続するパスを含む異なるタイプの支配的パスを考慮することができる。
【0050】
プロセッサ701は、ビームフォーミングモデル702を用いて2つのデバイスの間の支配的パスの方向を推定するために、メモリ303から複数のビーム対601を選択する。幾つかの実施態様において、プロセッサは、異なるビーム角を有するが、同じ支配的パスを共有するビーム対601を選択する。
【0051】
図9A及び図9Bは、幾つかの実施形態による、支配的パス方向の推定用に選択される複数のビーム対の例を示す概略図を示している。図9Aの例では、通信リンクは、チャネル推定段階におけるビームトレーニング測定値に基づいてデバイス2、102からデバイス1、101に情報を配信するために確立される。したがって、デバイス2は、ビーム930に沿って情報信号を送信するとともに、デバイス1は、ビーム910をステアリングすることによって情報信号を受信する。2つのデバイスを接続する、ビーム910及び930によって規定される角度内の最短パス901が支配的パスである。
【0052】
不完全なビームフォーミング解像度に起因して、各ビームに沿った最も強いエネルギーの伝播方向は、支配的パスと一致していない。したがって、支配的パス901は、ビーム910及び930のそれぞれの中心方向911及び931と一致していない。支配的パスが、送信ビーム及び受信ビームの中心方向と完全に一致している場合、それらの中心方向は、各デバイスの他方のデバイスに対する方位角を直ちに示すことになり、その場合、支配的パスの方向を推定するステップは完了する。しかしながら、完全な一致を期待することは、現実にはほとんど不可能である。したがって、支配的パスの方向を推定するために、デバイス1におけるプロセッサ701は、ビーム910だけでなく、ビーム910と同じ支配的パス901を共有するビーム920にも対応するチャネル測定値を考慮する。
【0053】
特に、一方のビーム値対は、送信ビーム930、受信ビーム910を規定する角度、並びにそれらの送信ビーム及び受信ビームを用いて確立されたリンクの品質の測定値からなる。他方のビーム値対は、送信ビーム930、隣接する受信ビーム920を規定する角度、並びにビーム930及び920を用いて確立されたリンクの品質の測定値を含む。この支配的パスも、隣接する受信ビーム920の中心方向921と一致していないことに留意されたい。
【0054】
一般に、第2のビーム値対について選択された受信ビームは、2つのデバイスの間の通信リンクを確立するために選ばれた1つの隣接する受信ビームである。幾つかの実施態様では、その個数がアレイ形状に依存する2つ又は複数の隣接するビームの中で、その対応するリンク品質が最大であるビームが、支配的パスの方向の推定を助けるために選択される。特に、全ての隣接するビームが同じ範囲の空間周波数をカバーする場合、支配的パスは、2つのビームの中心方向の間にある。図9Aを参照すると、支配的パス901は、中心方向911及び921の間にある。
【0055】
他方、多段階ビームトレーニングが用いられる場合には、隣接する受信ビーム920は、より広い範囲の空間周波数をカバーすることが起こり得る。図5A及び図5Bを参照すると、528は、通信リンクを確立するために選択された受信ビームとすることができる。チャネル推定段階中に測定された利用可能なビーム値は、受信ビーム527及び514に対応する。マルチステップビームトレーニングによって、受信ビーム525及び526を用いて確立されたリンクの品質の測定が回避されることに留意されたい。なぜならば、受信ビーム514に対応する測定値は、514の範囲内の方向に沿ったビームフォーミングが実行可能でないことを示しているからである。したがって、隣接するビーム920が異なる範囲の空間周波数をカバーするとき、より良好なリンク品質をもたらすビームを選ぶことができる。
【0056】
図9Aに示すように、2つのビーム値対は同じ送信ビーム930を含む。ただし、他の配置も可能である。例えば、図9Bに示すように、一方のビーム値対は、送信ビーム930、受信ビーム910及び対応するリンク品質測定値を含むことができるのに対して、他方のビーム値対は、隣接する送信ビーム940、受信ビーム910を対応するリンク測定値とともに含むことができる。特に、図9Bに示すように、支配的パス901の方向は、中心方向931及び941によって規定される角度の範囲内にある。既述したように、それは、ビーム930及び940が同じ範囲の空間周波数をカバーする場合である。
【0057】
図10は、幾つかの実施形態によるフェーズドアレイを用いるビームフォーミングの概略図を示している。幾つかの実施形態では、フェーズドアレイが、アンテナ素子において、適切に計算された位相シフトを用いて信号を位相シフトすることによって特定の方向に対して信号を送信/受信する。各ステアリング方向は、一組の位相シフトに関連付けられている。位相シフトからステアリング方向へのマッピングは、アンテナ素子の数、それらの幾何形状、それらの間の離隔距離及び信号波長に依存する。以下では、送信モードを前提とするが、同等の議論は受信モードにも同様に当てはまることを指摘する。
【0058】
図10を参照すると、着信する情報である方位角信号1001は、スプリッター1002を通過する。このスプリッターの出力の数はアンテナ素子の数に等しい。スプリッターからの信号は、位相シフトされ(1003)、アンテナ素子1005によって放射される。各位相シフターにおいて適用される位相シフトの量は、所望のステアリング方向1006に基づいて位相制御ユニット1004において計算される。ステアリング方向は、ここでは、上方を指す垂直ライン1007に対して規定される。ステアリング方向は、基準方向1007との角度1008を囲む。
【0059】
一例として、図10のような垂直ラインフェーズドアレイは、d=λ/2の等間隔で配置されたN個のアンテナ素子を備える。ここで、λ=c/fは、波の速さcと搬送波周波数fとの間の比として与えられる波長である。
【数1】
を虚数単位として、アンテナ素子n=1,...,Nが複素指数信号exp(j2πλd(n−1)cosθ)を送信する場合、アレイからの距離約10Ndにおいて、アンテナアレイによって放射される電磁場は、角度θ1008によって指定される方向1006に伝播する平面波である。ここで、方向1006は、上方を指す垂直ライン1007に対して規定される。したがって、平面波モデルは、以下の式によって与えられる。
【数2】
ここで、Tは転置演算子を表す。v(θ)は、垂直ラインフェーズドアレイの平面波モデルであることを強調しておく。v(θ)における複素指数関数の独立変数は、着信信号がθの方向にステアリングされるように着信信号1001に適用される必要がある位相シフトを決定する。
【0060】
信号は、或る特定の方向にステアリング又はビームフォーミングされるが、これは、全体の信号エネルギーが正確にその方向に伝播することを意味するものではない。実際、信号エネルギーは、所望のステアリング方向付近の方向に非ゼロのエネルギーを検出することができるように空間的に拡散される。これが、ビームを放射エネルギーの空間分布と呼ぶことができる理由である。垂直ラインアレイの場合、アンテナアレイが或る方向θに向かってステアリングするときの或る方向ψにおける信号は、以下のビームフォーミングモデルによって与えられる。
【数3】
【0061】
Sの大きさは、ビームパターンと呼ばれ、アレイが各方向に放射するエネルギーの量を示す。
【0062】
図11は、幾つかの実施形態によって計算されるビームパターンのプロットを示している。この例では、ビームパターンは、方向に対して20log10|S|dBとして計算される。したがって、1101は、アンテナアレイが90度に向かってステアリングされるときに、送信信号電力がどの程度方向に依存するのかを示している。特に、90度付近の方向にかなりの量の電力が存在する。さらに、相対的に小さい電力も、90度から離れた方向に見られる。
【0063】
ビームフォーミングモデル(2)は、アンテナ素子における信号が同じ単位の大きさを有するという仮定の下で導出される。換言すれば、ビームフォーマーは、アンテナ素子における信号間に均一な重みを適用する。ビームパターンが、ステアリング方向から離れると小さな放射エネルギー量を有することができるか、又は、かなりの放射エネルギー量を有するステアリング方向付近のより広い角度範囲を有することができるように、ビームパターンを調整することを目標としてアンテナ素子にわたって信号を重み付けする、異なる実施形態によって用いられる複数の他の窓関数がある。
【0064】
ビームフォーミングは、デジタル領域又はアナログ領域において実施することができる。システムの大部分は、今日では、デジタルビームフォーミングを実施し、位相シフトは、デジタル方式で実施される。デジタルビームフォーミングの利点のうちの1つは、適用することができる位相シフト値の自由度が大きいということである。技術的には、信号は、デジタルビームフォーマーにおいて実施される位相シフトの機械精度に達するまで任意の方向にステアリングすることができる。加えて、異なるアンテナ信号に対して異なる重みを適用する多種多様な窓関数も実施することができ、様々なビームパターンが得られる。
【0065】
デジタルビームフォーミングは、各アンテナに無線周波数(RF:radio frequency)チェーンを必要とする。すなわち、各アンテナにおける受信信号は、更なる処理の前にアナログ/デジタル変換(ADC:analog-to-digital conversion)を必要とする。同様に、各アンテナにおける送信信号は、送信前にデジタル/アナログ変換(DAC:digital-to-analog conversion)を必要とし、これは、幾つかのアプリケーションでは不利となる可能性がある。6GHz未満の周波数範囲において動作するマルチアンテナ通信システムは、各アンテナに1つのRFチェーンを実装するが、これは、ハードウェアに関連した問題に起因してmmWave送受信機には当てはまらない。すなわち、マルチGHz範囲信号に対してmmWave周波数において動作するADC及びDACは、高価であることに加えて、かなりの量の電力を消費する。したがって、mmWave送受信機が、mmWave周波数における波動減衰を克服するのに必要とされる長いアンテナアレイを実装し、ひいてはビームフォーミングを介して通信リンクを確立すると仮定すると、各アンテナに1つのRFチェーンを実装することは、大きなコスト及び消費電力をもたらすことになる。したがって、mmWave送受信機が実施することができるビームフォーミングは、全体又は一部がアナログである。通常、ハイブリッドビームフォーミングと呼ばれる一部がアナログであるビームフォーミングでは、実装されるRFチェーンは多くとも少数にすぎず、各RFチェーンは、アンテナ素子の全て又はサブセットに関連付けられている。
【0066】
より単純な実施態様であるにもかかわらず、アナログビームフォーミングに関する1つの課題はビームフォーミング解像度である。すなわち、mmWave送受信機におけるアナログ位相シフターは、着信信号に対して適用することができる有限個の、多くの場合に限られた数の位相シフトを有する。その結果、信号は、相対的に少数の方向にしかステアリングすることができない。mmWave送受信機設計における現時点での最新の技術水準の解像度は5度であり、これは、角領域における連続したビームが少なくとも5度の間隔を有することを意味する。これは図11に示されている。図11では、ビーム1102及び1103はビーム1101の隣接するビームである。図示するように、1101、1102及び1103のステアリング方向は5度の間隔を有する。
【0067】
ビームフォーミング解像度問題は、デジタルビームフォーミングにおいても生じることに留意されたい。すなわち、デジタルビームフォーマーが、2つのかなり接近した方向、例えば、90度及び90.01度に向けてビームをステアリングすることができるとしても、空間エネルギー拡散及び雑音に起因して、受信信号がこれらの2つの方向のいずれから実際に到来したものであるのかを検出することは困難である可能性がある。換言すれば、アレイサイズ及び雑音レベルに応じて、受信信号の方向を確実に特定することができる解像度限界が存在する。
【0068】
1つの実施形態は、2つのビーム値対に基づいて支配的パスの方向を推定する。図9Aを参照して、上方を指す垂直ライン906に対するビーム930の中心方向931の角度をαで表すことにする。906に対する支配的パス901の角度はθで表される。デバイス2は、チャネル推定段階中に方向931に沿ってパイロット信号を送信するので、支配的パス901に沿って送信された信号は、その場合、以下の式によって与えられる。
【数4】
ここで、B(α,θ)は(2)に導入されており、ここでは、支配的パスの方向θからのビームフォーミング角αのずれを、受信機に向かって伝播する信号エネルギーに関係付けるのに用いられる。特に、支配的パス901に沿った信号は重要なものである。なぜならば、この信号が受信機、この例ではデバイス1に到達する信号であるからである。
【0069】
図9Aを更に参照して、ビーム910及び920の中心方向911及び921が、上方を指す垂直ライン905と囲む角度をそれぞれβ及びγで表すことにする。支配的パス901が905と囲む角度はθで表される。したがって、911に向けてステアリングするときのデバイス1によって、支配的パス905に沿って伝播するパイロット信号に導入される利得は、以下の式によって与えられる。
【数5】
【0070】
同様に、デバイス1が921に向けてステアリングするときのこの利得は、以下の式によって与えられる。
【数6】
【0071】
ビームフォーミングモデルは、ここでは、支配的パスの角度θからの、受信機側に適用されるビームフォーミング角β及びγのずれを受信信号エネルギーに関係付けるのに用いられる。
【0072】
デバイス1が、チャネル推定段階中に測定されたリンク品質を考慮するために受信信号の大きさを記録すると仮定すると、911に向けてステアリングするときの受信信号の大きさは、以下の式によって与えられる。
【数7】
ここで、kは送信信号電力及び伝播減衰を考慮する係数であり、nはビームフォーミング後に結果として生じる雑音である。同様に、921に向けてステアリングするときに、受信パイロット信号の大きさは、以下の式によって与えられる。
【数8】
ここで、nはビームフォーミング後に結果として生じる雑音である。2つのデバイスの間の距離の影響は倍率係数kに組み込まれていることに留意されたい。
【0073】
様々な実施形態において、角度α、β及びγ並びに測定値z及びzは既知であり、2つのビーム値対から得られる。他方、角度θ及びθ並びにkは未知である。(6)と(7)との間の比を取り、雑音を無視すると、以下の式が得られる。
【数9】
【0074】
垂直ラインアレイの場合に、この比は、(2)を用いると、以下の式によって与えられる。
【数10】
【0075】
したがって、支配的パスが基準905と囲む角度θとして与えられる支配的パスの方向は、非線形方程式(9)を解くことによって得られる。支配的パス901の方向は911と921との間にあるので、min(β,γ)からmax(β,γ)の角度の範囲においてθの欲張り探索を行うことができる。この処理ステップの最終結果は、支配的パス方向θの推定値である。
【0076】
幾つかの実施形態は、チャネル推定段階からの結果には、支配的パスの方向について曖昧性があるという理解に基づいている。見識がない場合には、支配的パスは、デバイス1がデバイス2との通信リンクを確立するために適用すべきステアリング方向であるβによって与えられる方向を有すると推定することができる。それは、大きなロケーション特定誤差をもたらす。記載された方法は、ビームフォーミングモデルを適切に適用することによってこの問題を克服する。本質的に、ビームフォーミングモデルは、支配的パスの方向における曖昧性を解決するのに役立つ。
【0077】
1つの実施態様では、支配的パス方向の特性式(9)は、比z/zに対する雑音実現値n及びnの影響を無視することによって取得される。この仮定は、雑音項が、対応する信号項に対して小さくなるように、大きなSNRをもたらす大きなビームフォーミング利得の場合に正当化することができる。特に、mmWave通信システムは、実際、mmWaveの大きな減衰を軽減し、それによってリンクを閉じる手段として大きなビームフォーミング利得に依拠する。しかしながら、無視できない雑音の場合には、後述するように、3つ以上のビーム値対が必要とされ、同じように用いられる。
【0078】
上記例は垂直ラインフェーズドアレイを用いる。しかしながら、同じ論法は他のアレイ幾何形状にも当てはまる。また、図9Bに示す受信ビーム910並びに送信ビーム930及び940からなるビーム値対から支配的パス方向θを求めるのにも同じ手法を用いることができる。
【0079】
図12は、1つの実施形態による、3つ以上のビーム値対を用いて2つのデバイスの間の支配的パスの方向を推定する一例の概略図を示している。図12を参照すると、チャネル推定段階の結果、デバイス2は、信号を方向931にステアリングすることによって情報を送信するように指示され、デバイス1は、方向911に向けてステアリングすることによって信号を受信するように指示される。これによって、送信ビーム930及び受信ビーム910がもたらされる。支配的パス901が基準方向905と囲む角度を用いて表される支配的パス901の方向を推定するために、プロセッサ701は、メモリ303から3つのビーム値対を選択する。それらの対は、((α,β),z)、((α,γ),z)及び((α,δ),z)である。ここで、αは、送信ステアリング方向931が基準方向906と囲む角度であり、βは、受信ステアリング方向911が基準方向905と囲む角度であり、γ及びδは、隣接するビーム920及び1210の中心方向921及び1211が基準方向905と囲む角度であり、最後に、z、z及びzは、対応する受信信号の大きさである。
【0080】
(6)及び(7)と同様に、測定値zは以下の式によって与えられる。
【数11】
ここで、nは測定雑音である。
前述同様に、測定値z、z及びzのうちの任意の2つの対の間の比が、支配的パス方向を推定するために統計量として取られる。したがって、
【数12】
が得られる。ここで、wは、雑音及び近似誤差を集計したものである。同様に、
【数13】
が得られる。ここで、wは、雑音及び近似誤差を集計したものである。支配的パス方向の角度θは、例えば、最小二乗適合を用いて統計量t及びtから推定することができる。
【0081】
加えて又は代替的に、デバイス1は、支配的パス方向の正確な推定値を取得するために4つ以上のビーム対を利用することができる。また、ビーム対は、同じ受信ビーム方向を共有するとともに異なる送信ビームを用いることができる。さらに、ビーム値対における受信ビーム及び送信ビームの異なる組み合わせも可能である。例えば、2つのビーム対は、同じ送信ビームを共有するとともに異なる受信ビームを含むことができ、他の2つのビーム対は、同じ受信ビームを共有するとともに異なる送信ビームを含むことができる。全ての4つのビーム対における測定信号の大きさのモデルは、それらの全てのビームの未知の支配的パス方向及び既知のステアリング方向に依存する。
【0082】
2つのデバイスの間の支配的パスの方向は、デバイス2等の他方のデバイスに対するデバイス1等の一方のデバイスの方向を与える。図1に示すように、これは、支配的パス方向から角度θ108を直接求めることができることを意味する。しかしながら、デバイス2に対するデバイス1のロケーションを特定するには、これらの2つのデバイスの間の距離r107を推定する必要がある。
【0083】
図13Aは、1つの実施形態による、デバイスのロケーションを推定する方法のブロック図を示している。具体的には、この実施形態は、支配的パスの推定された方向703に沿って他方のデバイスに対する一方のデバイスのロケーションを特定する(1320)。換言すれば、この実施形態は、支配的パスの方向703に沿った2つのデバイスの間の距離を推定し(1310)、ロケーション推定値704を生成する。異なる実施形態は、異なる方法を用いて、支配的パスの方向に沿ったデバイスの間の距離を求める。
【0084】
図13Bは、幾つかの実施形態による、飛行時間(TOF)測定値を用いて2つのデバイスの間の距離を求める方法のブロック図を示している。TOFは、信号が一方のデバイスから他方のデバイスに伝播するのに要する時間間隔である。TOF測定値1311をτを用いて表すと、2つのデバイスの間の距離は以下のように計算される(1312)。
【数14】
ここで、cは、環境を通過する波の伝播速度であり、この例では、空気中の光の速度である。計算された距離dは、次に、デバイスロケーション特定1320に用いられる。TOF測定値は、複数の方法で取得することができる。
【0085】
図13Cは、TOFチップを用いる幾つかの実施形態による、TOF測定値を求める方法の概略図を示している。例えば、1つの実施形態は、一方又は双方のデバイスに組み込まれた市販のTOFチップを用いて図13Cの方法を実施する。加えて又は代替的に、別の実施形態は、デバイスによって実施される通信規格を用いて、2つのデバイスの間の信号のTOFを測定する。例えば、TOFは、一方のデバイス102から他方のデバイス101にパイロット信号1316を送信することによって測定することができる。このパイロット信号は、プリアンブル1314と、送信の時刻tを指定する1つのフィールド1313とを含むパケットを搬送する。他方のデバイスは、この送信信号を受信し、プリアンブルを検出し、受信の時刻tを記録する。2つのデバイスが同期されていると仮定すると、TOFは、τ=t−tによって与えられる。この同期は、チャネル推定段階中に実現することができる。或いは、TOFは、信号送信から、他方のデバイスからの肯定応答確認メッセージ受信までの、デバイスによって測定するラウンドトリップ時間(RTT)から測定することができる。TOFは、その場合、RTTの2分の1として与えられる。
【0086】
図14Aは、パス損失モデルを用いて2つのデバイスの間の距離を求めるために別の実施形態によって実施される方法の概略図を示している。パス損失モデルは、伝播信号の電力が、拡散及び減衰に起因して距離とともにどのように減少するのかを記述する。アクセスポイント(AP)1410は、基準距離d1412における基準受信信号強度(RSS)レベルz1411を用いて特徴付けられる。APの基準RSSレベルzは事前に求められる。
【0087】
APから発信し、デバイス1420によって受信される信号のレベルは、z1421を用いて表される。パス損失モデルは、RSS測定値zと、AP及びデバイスの間の距離d1415との間の以下の関係を記述する。
【数15】
ここで、ηはパス損失係数であり、vは測定雑音である。パス損失係数は、放射された信号電力がアクセスポイントからの距離の増加とともに減衰する速さを定量化するものである。自由空間伝播環境では、η=2である。パス損失係数は、屋内エリア等のより複雑な状況ではより高い値を有する。
【0088】
ガウス分布測定雑音vの場合、距離dの最大尤度(ML)推定値は、以下の式によって与えられる。
【数16】
【0089】
vのガウス雑音統計量は、実際に正当と認められた仮定である。
【0090】
幾つかの実施形態では、より正確な距離推定値を取得するために、減衰に起因した伝播損失が、パス損失モデルにおいて考慮されるべきである。単位距離当たりの減衰損失をαを用いて表すと、RSS zは以下の式によって与えられる。
【数17】
【0091】
その場合、距離dのML推定値は以下の式によって与えられる。
【数18】
この式は、非線形最適化ルーチンを用いて解かれる。
【0092】
パス損失係数η及び減衰αは、一般に未知である。しかしながら、mmWave伝播を伴う非常に多くの実験測定は、異なる環境におけるそれらの係数を報告している。その結果、1つの実施形態では、距離推定ブロックは、テーブルルックアップを実行して環境のタイプのそれらの値を収集し、その後、測定されたRSS値zに基づいてdを推定する。
【0093】
図14Bは、幾つかの実施形態による、減衰係数を用いて2つのデバイスの間の距離を求める方法のブロック図を示している。例えば、式(17)に従ってML推定を実施するプロセッサ1435は、パス損失及び減衰係数1430を、様々な環境についてのそれらの値を記憶するメモリから取得するとともに、実際にはビームエネルギー612である信号強度測定値1432及び他方のデバイスの送信電力1434を取得する。他方のデバイスの送信電力は、通常、チャネル推定段階に先行する初期デバイス関連付け段階中に取得される。1435において実施される非線形最適化ルーチンは、距離推定値1436を与える。
【0094】
幾つかの実施形態によれば、デバイス2に対するデバイス1のロケーションは、支配的パスの推定された方向
【数19】
と、2つのデバイスの間の距離
【数20】
とに基づいて求められる。一般に、デバイス1は、
【数21】
を用いて求められた方向に沿った距離
【数22】
に位置している。実施形態は、デバイスが互いの間の直接的な見通し線(LOS)にいる限り、正確なロケーション特定を提供する。しかしながら、代替の実施形態の場合、2つのデバイスは直接的なLOS通信を行わない。
【0095】
図15Aは、幾つかの実施形態によって考慮される2つのデバイスの例示的な配置の概略図を示している。1つの例では、デバイス2は、水平剛壁1505及び垂直剛壁1506からなるコーナーの近くのロケーション1501にある。支配的パス方向及び距離の推定値が与えられると、角度
【数23】
1510によって規定される方向に沿って距離
【数24】
1511を進み、デバイス1のロケーション1515を推定することができる。そのようなロケーション特定は、デバイス1が剛壁の背後にあることを暗に意味し、これは、壁を通過して伝播する能力が低いmmWave通信には当てはまらない場合がある。そのために、幾つかの実施形態は、エリアのフロアマップを用いて、デバイスの推定されたロケーションを補正する。これらの実施形態によって、デバイスの間に直接的及び/又は間接的な(反射された)通信リンクが存在する場合に、或るデバイスの、別のデバイスに対するロケーションを求めることが可能になる。
【0096】
図15Aのこの例では、受信されたmmWave信号強度が非常に小さいので、2つのデバイスが高い確実性で関連することはないことから、エリアのフロアマップが与えられると、実施形態は、デバイス1が1515に位置する可能性がないと結論付ける。このマップが与えられると、実施形態は、デバイス2の仮想ロケーションを自動的に計算する。それらの仮想ロケーションは、デバイス2をミラーリングしたロケーションであり、剛壁1506及び1505に対してそれぞれ1502及び1503に位置する。したがって、2つのデバイスの間のリンクが、反射パス1518に沿って確立された場合、このリンクは、デバイス1と通信する仮想デバイス2−2をロケーション1503に有するのと等価である。同様に、デバイス1とデバイス2との間のリンクが、壁1506から反射するパスに沿っている場合、このリンクは、デバイス1と通信する仮想デバイス2−1を1502に有するのと等価である。
【0097】
図15Bは、1つの実施形態による、第1のデバイス及び第2のデバイスを取り囲む環境の地図を用いる屋内ロケーション特定のブロック図を示している。この実施形態によれば、デバイス2に対するデバイス1のロケーション特定を実行するデバイスに地図1520が供給されると、実施形態は、デバイス2から生じる全ての仮想デバイスのロケーションをデバイス2の既知のロケーション1521に基づいて自動的に計算する(1525)。次に、実施形態は、推定された支配的パス方向及び距離1526を実際のデバイス及び仮想デバイスのそれぞれに適用する。
【0098】
図15Aを参照すると、実施形態は、デバイス2、デバイス2−1及びデバイス2−2のそれぞれからの角度
【数25】
及び距離
【数26】
におけるロケーションを計算し、地図と最も整合するロケーションを出力する(1530)。この例では、そのロケーションはロケーション1516である。図15Aの単純な例では、より多くのロケーションが地図と整合することが起こり得る。しかしながら、屋内エリアは、通常、より複雑であり、より多くの壁を考慮することによって、単一のロケーション推定値が得られる。最も整合するロケーション推定値1530が、最終的なロケーション推定値704である。
【0099】
幾つかの実施形態は、1530におけるルーチンの代替の実施態様を提供する。すなわち、デバイス1及びその虚像から角度
【数27】
及び距離
【数28】
におけるロケーションを直接見つけることの代替の形態は、屋内エリアを格子に分割し、各格子点の尤度関数を計算するものである。これを行うために、実施形態は、支配的パス方向推定及び距離推定の誤差モデルを指定する。推定値
【数29】
に対応する真の角度をβと仮定すると、誤差は、分散σβを有するゼロ平均ガウス分布としてモデル化することができる。同様に、真の距離dからの距離推定値
【数30】
の誤差は、分散σを有するゼロ平均ガウス分布としてモデル化することができる。これらの分散σβ及びσは、用いられるセンサーに基づいて較正又は評価することができる。例えば、現時点における現行技術水準のmmWaveTOFセンサーは、標準偏差15cmの距離推定値を与える。
【0100】
支配的パス方向及び距離推定の誤差モデルが与えられると、各格子点がデバイス2及びその虚像のそれぞれに対して角度
【数31】
及び距離
【数32】
にある尤度が求められる。例えば、格子点pがデバイス2の虚像iから角度α及び距離rにあると仮定する。その場合、尤度関数は以下の式によって与えられる。
【数33】
ここで、pは全ての格子点を対象にし、iは基準デバイス又はその虚像のうちの1つを指す。このロケーションは、その場合、全てのiにわたって最大尤度関数を与える格子点pに対応するロケーションとして推定される。α及び
【数34】
があまり異なっていない限り、支配的パスの方向を推定する際に作成される誤差のガウスモデルは優れたものであることに留意されたい。例えば、
【数35】
であり、α=10度であり、アンテナの数が例えば100である場合に、αと
【数36】
との間の相違から生じる尤度は、方向80度におけるビームパターンの大きさであって、ビームが80度の方向において10度に向かってステアリングされるときに対応するビームパターンの大きさから考慮することができ、これは0にかなり近い。
【0101】
実施形態は、2つのデバイスが反射パスに沿って通信すると判断した後、反射に起因した信号エネルギーの損失を考慮することによって距離推定値を任意選択で精緻化することができる。これは、実験から知られており、例えば、ルックアップテーブルとして表にされている反射損失を差し引くことによって行われる。非常に正確な距離推定値を取得するために、壁に用いられている材料のタイプ及びmmWaveが被る反射損失を含む詳細な地図が用いられる。
【0102】
幾つかの実施形態では、支配的パス方向の推定には、雑音だけでなく、例えば、反射に由来する干渉も伴う。すなわち、(10)における雑音nに加えて、ビームフォーマーを通過している反射に由来する全ての干渉をモデル化する項も存在する。しかしながら、デバイスは、1つの支配的パスの近くをステアリングしているので、他の方向、すなわち、他の支配的パスから到来する信号はかなり減衰される。したがって、干渉の影響は無視することができ、推定精度を著しく悪化させることはない。
【0103】
図15Cは、この態様について更に詳しく述べるために、幾つかの実施形態によって用いられる複数のパスに沿った2つのデバイスの間の例示的な通信の概略図を示している。この例では、これらのデバイスは、支配的パス1550に沿って通信リンクを確立するために、それぞれ送信ビーム1541及び受信ビーム1546を生成する。支配的パスの方向を推定するために、デバイス1は2つのビーム値対を用いる。一方のビーム値対はビーム1541及び1546を規定する角度を有し、他方のビーム値対はビーム1541及び1545を規定する角度を有する。図示するように、壁1553から反射する、1554及び1555からなる支配的パスも存在する。それは、デバイス2がビーム1541に沿って信号を送信すると、送信エネルギーの一部分が1554及び1555に沿って伝播し、受信機に到達することを意味する。したがって、デバイス1がビーム1546に沿ってステアリングするときの受信信号強度は、エネルギーのその一部分から生じる干渉を含む。同様に、ビーム1545に沿ってステアリングするときは、受信信号強度は、反射信号から生じる干渉も含む。しかしながら、双方の干渉項は相対的に小さい。なぜならば、方向1554に向けて漏出するデバイス2からの信号は、デバイス2のビームフォーミングが1541に向けてステアリングすることによって既に減衰されているからである。その結果、他の支配的パスに沿って伝播する信号からの干渉が支配的パス方向の推定精度に与える影響は無視することができる。
【0104】
図16Aは、2つのデバイスが2つ、3つ又はそれよりも多くのビーム値対を用いることによって無線で通信する支配的パスの方向を求めるために幾つかの実施形態によって用いられるチャネル推定の概略図を示している。特に、チャネル推定段階は複数の支配的パスをプローブし、2つのデバイスの間の通信リンクが、最も高い品質を示す支配的パスにわたって確立される。例えば、デバイス2が送信モードにあり、デバイス1が受信モードにあるような2つのデバイスが、均一なラインアレイを用いると仮定すると、図16Aは、チャネルトレーニング段階及び/又は推定段階中にプローブされた発射角(AoD)1601及び到来角(AoA)1602の組み合わせを図によって表している。チャネルトレーニング段階は、最良の通信リンク1631が、デバイス2がAoD角度範囲(135度,157.5度)内でビームをステアリングするとともに、デバイス1が角度範囲(45度,67.5度)に向けて受信ビームをステアリングするときに確立されるものであることを明らかにしている。
【0105】
上記例では、実施形態は、それらの送信ビーム及び受信ビーム内で支配的パスの方向を推定する。次に、デバイスの間の距離の推定値を用いて、実施形態は、デバイスロケーション特定を実行する。ただし、代替の実施形態は、複数の支配的パスにわたるチャネル測定値をロケーション特定に用いる。すなわち、図16Aに示すように、チャネル推定段階は、確立されるリンク、例えば、送信ビーム(0度,90度)及び受信ビーム(0度,90度)について確立されるリンク1610、同様に組み合わせ1611、1612、より高い解像度ビームを用いて確立されるリンク1621、1622、1623、並びにより一層高い解像度ビームを用いて確立されるリンク1631、1632、1633及び1634の品質を測定する。各送信受信ビームの組み合わせは或る特定の支配的パスに対応する。少なくとも2つのビーム値対を用いて支配的パス方向を求めるのと同様に、複数のグループのビーム値を利用して、複数の支配的パスの方向を求めることができる。ビーム値を選択する際には、より高い品質尺度に関連付けられたビーム値が優先される。
【0106】
図16Bは、幾つかの実施形態によって用いられる三角測量の概略図を示している。2つのグループのビーム対に基づいて、2つの支配的パスの方向が求められるものと仮定する。図16Bを参照して、それらの支配的パスに対応する角度を
【数37】
1641及び
【数38】
1642とする。したがって、それらの2つの角度に基づく三角測量は、デバイス1のロケーションを推定するのに十分である。具体的には、デバイスロケーション特定は、
【数39】
に対応する支配的パス1643がLOSパスである一方、
【数40】
に対応する支配的パス1644が、仮想デバイス2−1からのLOSと等価な反射点1645を有するパスであることを検出することからなる。
【0107】
図16Cは、1つの実施形態によって用いられるロケーション特定のブロック図を示している。この実施形態は、1つ以上のmmWave反射を説明する全ての仮想デバイスを特定する(1525)ために、エリアの地図1520と、この地図におけるデバイス2のロケーション1521とを用いる。チャネル推定段階において取得された複数組のビーム値対を用いて、実施形態は、次に、2つ以上の支配的パスの方向1650を求める。推定された角度と最も整合するロケーションが見つけられ(1660)、最終的なデバイスロケーション推定値704として宣言される。
【0108】
推定された角度と最も整合するロケーションは、複数の方法で求めることができる。例えば、1つの実施態様は、推定された角度を用いてデバイス2及びその虚像からのラインをトレースし、それらの交点を求め、地図、及び支配的パスに対応する可能なビーム値と最も整合する交点を見つける。別の実施態様は、地図を格子点に分割し、式(18)と同様に、各角度が尤度関数における1つの項に寄与する差分を用いて各格子点の尤度の値を求める。例えば、格子点が角度α及びβにあると仮定すると、尤度は以下の式によって与えられる。
【数41】
ここで、i、jはデバイス及び全てのその虚像からなる組からの任意の対である一方、σは、例えば、測定値から較正された推定誤差の分散である。全てのi、jの組み合わせ及び全ての格子点pにわたる最大の尤度を与えるデバイスロケーションpが、最終的なロケーション推定値を与える。
【0109】
幾つかの実施形態では、第1のデバイス及び第2のデバイスは、通信プロトコルの物理レイヤを用いてチャネル推定を実行し、通信プロトコルの媒体アクセス制御(MAC)レイヤにチャネル推定の結果を記憶し、プロセッサは、MACレイヤから取り出された情報のみを用いて支配的パスの方向を求める。そのようにして、幾つかの実施形態の屋内ロケーション特定は、通信プロトコルスタックのMACレイヤの上部において実施することができる。
【0110】
図17は、通信プロトコルスタックのMACレイヤの上部において実施される幾つかの実施形態による屋内ロケーション特定の概略図を示している。図17に示すように、2つのデバイス101及び102は、情報を無線で交換するためにmmWave通信プロトコルを実施する。送信機の物理レイヤ1703は、受信機の物理レイヤ1703において受信及び処理される信号波形1701を生成する。2つのデバイスの関連付け及びチャネル推定段階は、MACレイヤ1705によって制御される。チャネル推定結果、すなわち、送信ビーム及び受信ビームの異なる組み合わせによって形成されたリンクの品質は、MACレイヤのメモリに記憶される。屋内ロケーション特定方法1707は、概念的には、MACレイヤの上部において実施される。これは、屋内ロケーション特定方法が送信/受信信号波形に直接アクセスしないことを意味する。代わりに、屋内ロケーション特定方法は、MACレイヤのメモリから完全な又は部分的なチャネル状態情報(CSI:channel state information)1710を得るだけである。
【0111】
図17において説明した実施態様の利点は、コストの削減及びフレキシビリティの改善である。すなわち、新たなハードウェアを設計、購入及び設置する必要がない。方法全体を、mmWave通信チップセットのMACレイヤのファームウェアで実施することができる。加えて、上記の実施にあるように、屋内ロケーション特定はmmWave通信と干渉しない。なぜならば、屋内ロケーション特定は、通信プロトコルスタックのMACレイヤが通信を有効にすることを目的として既に有する情報を活用するからである。或る意味で、その情報の全て、すなわち、部分的なCSIは、実際には無料で得られ、屋内ロケーション特定を容易にするのに用いることができる。
【0112】
図18は、幾つかの実施形態による通信リンクを確立する図を示している。様々な実施形態において、送信機及び受信機は、チャネルトレーニング段階からの測定値を用いて、それらの間に通信リンクを確立する。特に、最も高いリンク品質を与える送信ビーム及び受信ビームの組み合わせは、送信機及び受信機がデータを通信するためにそれぞれ実施するビームである。図18を参照すると、それは、デバイス2が、931に向かって送信信号をステアリングし、ビーム930を生成するとともに、デバイス1が、その信号を受信するために921に向かってステアリングし、したがって、ビーム920を生成することを意味する。
【0113】
しかしながら、屋内ロケーション特定方法は、チャネル推定段階において求められた送信ビーム及び受信ビームを用いて囲まれる支配的パスの方向を推定するので、1つの実施形態では、デバイスは、支配的パスに沿って通信することもできる。特に、1つの実施態様では、屋内ロケーション特定方法が支配的パスの角度を推定した後、デバイスは、それらのビームをそれらの角度に向けてステアリングして、支配的パスに沿ったリンクを確立する。特に、そのようなリンクはより良好な品質のリンクである。図18を再度参照すると、屋内ロケーション特定方法は、2つのデバイスの間の支配的パス901の方向を求める。したがって、デバイス2は、支配的パス901の方向に向けて信号をステアリングすることによってその信号を送信することができるとともに、デバイス1は、支配的パス901の同じ方向に向けてステアリングすることによって信号を受信することができる。
【0114】
図19は、ビームを送信及び受信するために幾つかの実施形態によって用いられるビームフォーミングを示す概略図を示している。ビームフォーミング角のフォーマットは、デバイスに実装されるアレイのタイプに依存する。例えば、デバイスが均一なラインアレイを実装する場合には、1つの角度のみがビームフォーミング角を規定する。図19に示すように、基準方向1901に対して、波が送信又は受信される方向1903の角度1904が測定される。均一な垂直ラインアレイは、ビームフォーミング角を構成する、アレイの方向に対する仰角のみを決定することができる。アレイが波を送信する場合、この角度は発射角(AoD)と呼ばれる。他方、アレイが波を受信する場合、この角度は到来角(AoA)と呼ばれる。
【0115】
図20は、幾つかの実施形態によって考慮される通信デバイスの方位の概略図を示している。幾つかの実施態様では、双方のデバイスのアレイの方位は既知であり、支配的パスの方向の推定において考慮される。
【0116】
一般に、2つのデバイスは、任意のランダムな方位を有する場合がある。例えば、ユーザーによって保持されるモバイル端末は、任意の方位を有する場合がある。図20に示すように、デバイス1及びデバイス2のそれぞれのラインアレイ2010及び2020は、ランダムな方位を示すことができる。これらの方位は、基準方向2001及びそのコピー2002に対して測定される。したがって、デバイス1は基準方向に対して方位γ2011を有する一方、デバイス2は基準方向に対して方位φ2021を有する。支配的パスの方向は、角度β2002及びα2012を用いて記述される。これらの全ての角度は、関係2025、すなわち、α+β+γ+φ=πを満たす。他のアレイの幾何形状の場合も、他の類似の関係を確認することができる。関係2025から、幾つかの実施形態は、関与する4つの角度の中の少なくとも3つを推定する。
【0117】
まず、上述した方法を用いて支配的パスの角度β及びαを推定することができる。角度の推定が行われる箇所に関して多数の異なる組み合わせが可能である。すなわち、デバイスのそれぞれが、上記角度のうちの1つを推定することができ、必要に応じて、他のデバイスと推定値を共有することができる。或いは、双方の角度を1つのデバイスが推定することもでき、必要に応じて、他のデバイスと共有することができる。
【0118】
デバイスの方位γ及び/又はφを推定する方法も多数ある。第1に、これらの方位のうちの一方が固定され、事前に知られている場合がある。これは、デバイスのうちの一方が、ラインアレイを実施する場合にはその方位が常に知られており、平面アレイ等の他の或る幾何形状を実施する場合には少なくとも1つの方位が事前に知られているようなアクセスポイント又は基地局であるときに起こる。第2に、双方のデバイスのうちの一方が、方位を測定するセンサーを備えている場合がある。これは、デバイスのうちの一方が、その方位を追跡するジャイロスコープを既に組み込んでいるスマートフォンであるときに起こる。
【0119】
全体的に、支配的パス方向に関連した角度のサブセット及び双方のデバイスがラインアレイを実施する場合には4つの角度の中の少なくとも3つの推定値を与える方位のサブセットの測定の任意の組み合わせを用いることができる。また、屋内ロケーション特定方法の必要に応じて、この全体の推定プロセスを一方又は双方のデバイス上で実施することができ、結果を共有することができる。
【0120】
本発明の上記で説明した実施形態は、多数の方法のうちの任意のもので実施することができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせを用いて実施することができる。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピューターに設けられるのか又は複数のコンピューター間に分散されるのかにかかわらず、任意の適したプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行することができる。そのようなプロセッサは、1つ以上のプロセッサを集積回路部品に有する集積回路として実装することができる。ただし、プロセッサは、任意の適したフォーマットの回路類を用いて実装することができる。
【0121】
用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書において、コンピューター又は他のプロセッサをプログラミングし、上記で論じられたような本発明の種々の態様を実施するために用いることができる任意のタイプのコンピューターコード又は一組のコンピューター実行可能命令を指すために、一般的な意味において用いられる。
【0122】
コンピューター実行可能命令は、1つ以上のコンピューター又は他のデバイスによって実行された、プログラムモジュール等の多くの形式をとることができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、及びデータ構造を含む。通常、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望に応じて組み合わせることも分散させることもできる。関数を実行するか又は関数を実行するように構成されたプロセッサを、追加の変更なしにその関数を実行するようにプログラムされるか又は他の方法で構成される任意の好適なフォーマットの回路類を使用して実装することができる。
【0123】
また、本発明の実施形態は、例が提供された方法として実施することができる。この方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けすることができる。したがって、動作が示したものと異なる順序で実行される実施形態を構築することができ、これには、例示の実施形態では一連の動作として示されたにもかかわらず、幾つかの動作を同時に実行することを含めることもできる。
【0124】
請求項の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」等の序数の使用は、それ自体で、1つの請求項の要素の別の請求項の要素に対する優先順位も、優位性も、順序も暗示するものでもなければ、方法の動作が実行される時間的な順序も暗示するものでもなく、請求項の要素を区別するために、単に、或る特定の名称を有する1つの請求項の要素を、同じ(序数の用語の使用を除く)名称を有する別の要素と区別するラベルとして用いられているにすぎない。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【手続補正書】
【提出日】20200615
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求めるミリ波(mmWave)通信システムであって、
一組のアンテナに接続されて、mmWaveのビームを通信し、mmWaveビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたってビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルの推定を行う送受信機と、
ビーム値対を含むチャネル推定の結果を記憶するメモリであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含む、メモリと、
前記メモリに作動的に接続されたプロセッサであって、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を前記メモリから選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を行うように構成された、プロセッサと、
を備え
各ビームフォーミング角は、通信されるビームの発射角と、前記通信されるビームの到来角とを含む、
通信システム。
【請求項2】
前記選択された複数のビーム値対は、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って互いに隣接するビームフォーミング角を有する2つのビーム値対を含み、前記支配的パスは、前記選択されたビーム値対からの前記隣接するビームフォーミング角によって規定される角度内における前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の最短パスである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記ビームフォーミングモデルは、該ビームフォーミングモデルが、前記選択された複数のビーム値対を用いて前記プロセッサによって解決される曖昧性を含むように、前記支配的パスからの前記ビームフォーミング角の前記ずれを、前記ビームの前記エネルギー及び前記ビームフォーミングを実行する送受信機の間の未知の距離に関係付ける、請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記選択された複数のビーム値対は、前記チャネル推定中に受信された最も高いエネルギー値を有する第1のビーム値対を含み、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って前記第1のビーム値対の前記ビームフォーミング角に隣接する前記ビームフォーミング角を有する第2のビーム値対を含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記対応するビームフォーミング角から前記ビームフォーミングモデルに従って拡散される前記第1のビーム値対及び前記第2のビーム値対におけるビームの前記エネルギーと整合する前記支配的パスの前記方向を求める、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記選択された複数のビーム値対は、少なくとも3つのビーム値対を含み、前記プロセッサは、前記複数のビーム値対のビーム値を前記ビームフォーミングモデルに当てはめて、前記3つのビーム値対と整合する前記支配的パスを生成する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の距離を求め、前記支配的パスの前記方向に沿って前記距離に基づいて前記第1のデバイスの前記ロケーションを求める、請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記支配的パスにわたる前記ビームの伝播の飛行時間を取得し、該飛行時間に基づいて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の前記距離を求める、請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記飛行時間を測定するセンサー、
を更に備える、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記支配的パスの前記方向に最も近い前記ビームフォーミング角を用いて送信された前記ビームの前記エネルギーとともに、前記支配的パスの前記方向に沿ったmmWave信号伝播のパス損失モデルを用いて前記距離を求める、請求項7に記載の通信システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記支配的パスの前記方向にわたって進む前記距離に沿ったmmWave信号伝播のパス損失モデルを用いて、前記支配的パスが直接的な見通し線を介して前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続しているか否かを調べることと、
前記支配的パスが前記直接的な見通し線を介して前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続しているとき、前記支配的パスの前記方向に沿った前記第2のデバイスからの前記距離において前記ロケーションを決定することと、
そうでないとき、前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを取り囲む環境の地図を用いて前記支配的パスの反射を特定し、該反射に従って前記第1のデバイスの前記ロケーションを調整することと、
を行う、請求項7に記載の通信システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
異なる組からのビーム値対が前記ビームフォーミングされた通信の異なる支配的パスを用いるような複数の組のビーム値対を前記メモリから選択することと、
各組のビーム値対の前記支配的パスを決定して一組の支配的パスを生成することと、
前記第2のデバイスの前記ロケーションを起点として前記支配的パスを三角測量して前記第1のデバイスの前記ロケーションを生成することと、
を行うように構成されている、請求項1に記載の通信システム。
【請求項13】
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスは、通信プロトコルの物理レイヤを用いて前記チャネル推定を実行し、前記チャネル推定の前記結果を前記通信プロトコルの媒体アクセス制御(MAC)レイヤに記憶し、前記プロセッサは、前記MACレイヤから取り出された情報のみを用いて前記支配的パスの前記方向を求める、請求項1に記載の通信システム。
【請求項14】
前記第2のデバイスは、前記第1のデバイスをネットワークに接続するアクセスポイント(AP)である、請求項1に記載の通信システム。
【請求項15】
送受信機は、前記チャネル推定中に求められた前記ビームフォーミング角を有するビームを用いて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間でデータを通信する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項16】
送受信機は、前記支配的パスの前記方向に沿った前記ビームフォーミング角を有するビームを用いて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間でデータを通信する、請求項1に記載の通信システム。
【請求項17】
ミリ波(mmWave)ビームフォーミングを用いて、第2のデバイスの既知のロケーションに基づいて第1のデバイスのロケーションを求める方法であって、該方法は、該方法を実施する記憶された命令と結合されたプロセッサを用い、前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、
ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含むチャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスの前記ロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を含み、
各ビームフォーミング角は、通信されるビームの発射角と、前記通信されるビームの到来角とを含む、
該方法のステップを実行する、方法。
【請求項18】
前記選択された複数のビーム値対は、前記ビームフォーミングの前記解像度に従って互いに隣接するビームフォーミング角を有する2つのビーム値対を含み、前記支配的パスは、前記選択されたビーム値対からの前記隣接するビームフォーミング角によって規定される角度内における前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとの間の最短パスである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
方法を実行するプロセッサによって実行可能なプログラムが具現化される非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記方法は、
ビームフォーミングの解像度に従って分離された異なるビームフォーミング角にわたって前記mmWaveビームフォーミングを用いて通信されるビームのエネルギーを比較することによって第1のデバイス及び第2のデバイスを接続するチャネルを推定して、ビーム値対を含むチャネル推定の結果を生成することであって、各ビーム値対は、ビームフォーミング角と、該ビームフォーミング角を用いて通信される前記ビームのエネルギーとを含むことと、
前記第1のデバイス及び前記第2のデバイスを接続する同じ支配的パスを共有するビームフォーミング通信に対応する複数のビーム値対を選択することと、
前記選択されたビーム値対のビームフォーミングモデルであって、前記支配的パスからのビームフォーミング角のずれを、前記ビームフォーミング角を用いて送信されて前記支配的パス上で受信される前記ビームの前記エネルギーに関係付ける、ビームフォーミングモデルを評価することによって前記支配的パスの方向を求めることと、
前記チャネル推定の前記結果のうちの少なくとも幾つかを用いて、前記第2のデバイスのロケーションに対する前記支配的パスの前記方向に沿って配置された前記第1のデバイスの前記ロケーションを求めることと、
を含み、
各ビームフォーミング角は、通信されるビームの発射角と、前記通信されるビームの到来角とを含む、
非一時的コンピューター可読記憶媒体。
【国際調査報告】