(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021509437
(43)【公表日】20210325
(54)【発明の名称】熱間プレス成形用めっき鋼板、これを用いた成形部材及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20210226BHJP
   C23C 2/28 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   !C23C2/12
   !C23C2/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】2020535206
(86)(22)【出願日】20181221
(85)【翻訳文提出日】20200812
(86)【国際出願番号】KR2018016546
(87)【国際公開番号】WO2019132461
(87)【国際公開日】20190704
(31)【優先権主張番号】10-2017-0180338
(32)【優先日】20171226
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
【住所又は居所】大韓民国 キョンサンブク−ド ポハン−シ ナム−グ ドンヘアン−ロ 6261(コエドン−ドン)
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ファン、 ヒョン−ソク
【住所又は居所】大韓民国 57807 チョルラナム−ド クァンヤン−シ ポッポサラン−ギル 20−26 クァンヤン アイアン アンド スティール ワークス 気付
(72)【発明者】
【氏名】パク、 イル−ジョン
【住所又は居所】大韓民国 57807 チョルラナム−ド クァンヤン−シ ポッポサラン−ギル 20−26 クァンヤン アイアン アンド スティール ワークス 気付
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ミュン−ス
【住所又は居所】大韓民国 57807 チョルラナム−ド クァンヤン−シ ポッポサラン−ギル 20−26 クァンヤン アイアン アンド スティール ワークス 気付
【テーマコード(参考)】
4K027
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB02
4K027AB05
4K027AB28
4K027AB48
4K027AC12
4K027AC32
4K027AC52
4K027AC64
4K027AC72
4K027AE03
4K027AE22
4K027AE33
(57)【要約】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板は、素地鋼板と、上記素地鋼板の少なくとも一面に形成されたAl−Zn系めっき層と、上記素地鋼板と上記Al−Zn系めっき層の間に形成されたFe−Al系界面合金層と、を含み、上記Al−Zn系めっき層は、重量%で、Zn:10〜30%、Fe:1%以下、残りのAl及び不純物を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板と、
前記素地鋼板の少なくとも一面に形成されたAl−Zn系めっき層と、
前記素地鋼板と前記Al−Zn系めっき層の間に形成されたFe−Al系界面合金層と、を含み、
前記Al−Zn系めっき層は、重量%で、Zn:10〜30%、Fe:1%以下、残りのAl及び不純物を含む、熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項2】
前記Fe−Al系界面合金層は、重量%で、Al:30〜60%、Fe:30〜60%、Si:20%以下、及びその他の不純物を含む、請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項3】
前記Al−Zn系めっき層は、重量%で、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含む、請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項4】
前記Al−Zn系めっき層は、重量%で、2%以下のMgを含む、請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項5】
前記Al−Zn系めっき層及びFe−Al系界面合金層の厚さ合計は平均5〜40μmである、請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項6】
前記Fe−Al系界面合金層は、前記Al−Zn系めっき層及び前記Fe−Al系界面合金層の厚さ合計に対して5〜35%の厚さを有する、請求項1に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項のめっき鋼板を熱間プレス成形して製造される、熱間プレス成形部材。
【請求項8】
素地鋼板を設ける段階と、
重量%で、Zn:10〜30%、Si:5〜15%、残りのAl及びその他の不純物を含むめっき液に前記素地鋼板を浸漬する段階と、
前記めっき液から排出された鋼板を350℃の温度範囲まで15〜25℃/sで冷却する段階と、を含み、
前記熱間プレス成形用めっき鋼板は、前記素地鋼板の少なくとも一面に形成されたAl−Zn系めっき層と、前記素地鋼板と前記Al−Zn系めっき層の間に形成されたFe−Al系界面合金層と、を含む、熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記Fe−Al系界面合金層は、前記Al−Zn系めっき層及び前記Fe−Al系界面合金層の厚さ合計に対して5〜35%の厚さを有するように形成される、請求項8に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記めっき液は、重量%で、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含む、請求項8に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記めっき液は、重量%で、2%以下のMgを含む、請求項8に記載の熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか1つの製造方法で製造されためっき鋼板をAc3変態点以上の温度範囲で加熱する段階と、
前記加熱されためっき鋼板を前記温度で熱間プレス成形する段階と、
前記熱間プレス成形されためっき鋼板を冷却する段階と、を含む、熱間プレス成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間プレス成形用めっき鋼板、これを用いた成形部材及びこれらの製造方法に関し、詳細には、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの発生を効果的に抑制した熱間プレス成形用めっき鋼板、これを用いた成形部材及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性及び燃費効率性などの要求が増加するにつれて、自動車の軽量化のための高強度鋼の適用が増える傾向にある。高強度鋼は、重量に対して高強度特性を確保することができるが、加工中の素材の破断が発生したり、又はスプリングバック現象が発生して複雑且つ精密な形状の製品の成形に難しさが伴う。したがって、高強度鋼に伴うかかる問題点を解決するための方法として最近、熱間プレス成形の適用が拡大している。
【0003】
熱間プレス成形は、通常800〜900℃の温度に加熱した鋼板をプレス加工するため鋼材の成形が容易であり、金型を介して急冷を行うため成形品の強度を効果的に確保することができる。しかし、熱間プレス成形のために鋼板を高温で加熱することから、鋼板の表面に腐食や脱炭などのような現象が発生し、成形品の表面品質が低下するという問題がある。したがって、成形品の表面品質の低下を防止するために、熱間プレス成形時に、亜鉛系又はアルミニウム系めっき層を備えるめっき鋼板の使用が増加する傾向にある。
【0004】
特許文献1は、鋼板の表面にアルミニウム系めっきを行って熱間加熱後の成形部品にもアルミニウム不働態皮膜が形成されるようにして、スケールを一部抑制し、脱炭を防止する技術を提案する。しかし、アルミニウムめっき鋼板の場合には、めっき鋼板の加熱時に表面が酸化されて、形成後にスケールを除去する工程が必要であり、残留するスケールによる耐食性及び塗装性の低下が問題となることが知られている。また、アルミニウムは、亜鉛に比べて素地鉄のスケールを抑制する犠牲防食能力が著しく不足し、素地鉄が外部に露出する場合には耐食性が急激に低下するという問題がある。
【0005】
特許文献2は、耐食性を確保する熱間プレス加工用鋼板として溶融亜鉛めっき鋼板を提案する。溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板を熱間プレス成形すると、成形品の表面に鉄−亜鉛相が存在し、優れた耐食性特性を確保することができる。但し、熱間プレス成形時に亜鉛めっき鋼板を用いる場合には、高温の加工過程中に融点以上に加熱されためっき層の亜鉛が素地鉄に液体状態で浸透して発生する液体金属脆性破壊(LME、Liquid Metal Embrittlement)、及び固相の亜鉛が素地鉄の粒界に拡散して数十マイクロメートル程度のマイクロクラック(Microcrack)の発生が問題となる可能性がある。成形時に発生したクラックは、疲労破壊と密接な関連があるため、自動車メーカーでは熱間プレス加工用鋼板の品質を厳しく管理する。すなわち、自動車メーカーでは、熱間プレス加工用鋼材のLME発生を許容せず、マイクロクラックの許容サイズを厳しく制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6296805号明細書(2001.10.02.公告)
【特許文献2】特開2006−022395号公報(2006.01.26.公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの発生を効果的に抑制した熱間プレス成形用めっき鋼板、これを用いた成形部材、及びこれらの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の課題は上述した内容に限定されない。当業者であれば、本明細書の全体的な内容から本発明の追加的な課題を理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板は、素地鋼板と、上記素地鋼板の少なくとも一面に形成されたAl−Zn系めっき層と、上記素地鋼板と上記Al−Zn系めっき層の間に形成されたFe−Al系界面合金層と、を含み、上記Al−Zn系めっき層は、重量%で、Zn:10〜30%、Fe:1%以下、残りのAl及び不純物を含むことができる。
【0010】
上記Fe−Al系界面合金層は、重量%で、Al:30〜60%、Fe:30〜60%、Si:20%以下、及びその他の不純物を含んでもよい。
【0011】
上記Al−Zn系めっき層は、重量%で、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含んでもよい。
【0012】
上記Al−Zn系めっき層は、重量%で、2%以下のMgを含んでもよい。
【0013】
上記Al−Zn系めっき層及びFe−Al系界面合金層の厚さ合計は平均5〜40μmであってもよい。
【0014】
上記Fe−Al系界面合金層は、上記Al−Zn系めっき層及び上記Fe−Al系界面合金層の厚さ合計に対して5〜35%の厚さを有してもよい。
【0015】
本発明の一側面による熱間プレス成形部材は、上記めっき鋼板を熱間プレス成形して製造されてもよい。
【0016】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法は、素地鋼板を設ける段階と、重量%で、Zn:10〜30%、Si:5〜15%、残りのAl及びその他の不純物を含むめっき液に上記素地鋼板を浸漬する段階と、上記めっき液から排出された鋼板を350℃の温度範囲まで15〜25℃/sで冷却する段階と、を含み、上記熱間プレス成形用めっき鋼板は、上記素地鋼板の少なくとも一面に形成されたAl−Zn系めっき層と、上記素地鋼板と上記Al−Zn系めっき層の間に形成されたFe−Al系界面合金層と、を含むことができる。
【0017】
上記Fe−Al系界面合金層は、上記Al−Zn系めっき層及び上記Fe−Al系界面合金層の厚さ合計に対して5〜35%の厚さを有するように形成されてもよい。
【0018】
上記めっき液は、重量%で、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含んでもよい。
【0019】
上記めっき液は、重量%で、2%以下のMgを含んでもよい。
【0020】
本発明の一側面による熱間プレス成形部材の製造方法は、上記製造方法で製造された熱間プレス成形用めっき鋼板をAc3変態点以上の温度範囲で加熱する段階と、上記加熱されためっき鋼板を上記温度で熱間プレス成形する段階と、上記熱間プレス成形されためっき鋼板を冷却する段階と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一側面によるめっき鋼板及びその製造方法は、熱間プレス成形時の液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの発生を効果的に抑制可能なめっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。
【0022】
これにより、本発明の一側面による成形部材及びその製造方法は、耐食性及び耐久性を効果的に確保した熱間プレス成形部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(c)は本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、及びアルミニウムめっき鋼板の断面を概略的に比較した図である。
【図2】(a)〜(f)はそれぞれのめっき浴により製造されためっき鋼板の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真である。
【図3】(a)及び(b)は試験片4及び5の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真である。
【図4】試験片5に対して熱間プレス成形を行った後の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、熱間プレス成形用めっき鋼板、これを用いた成形部材及びこれらの製造方法に関する。以下、本発明の好ましい実施例を説明する。本発明の実施例は、様々な形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明される実施例に限定されると解釈されてはいけない。本実施例は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。
【0025】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板は、素地鋼板、及び上記素地鋼板の少なくとも一面に形成されためっき層を含むことができる。本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板のめっき層は、素地鋼板と隣接したFe−Al系界面合金層、及びFe−Al系界面合金層と接触するAl−Zn系めっき層を含むことができる。
【0026】
亜鉛めっき鋼板は、アルミニウムめっき鋼板に比べて耐食性に優れるものの、めっき層内に含まれる亜鉛(Zn)が素地鋼板に直接接触する場合には、液体金属脆性破壊(LME、Liquid Metal Embrittlement)及びマイクロクラック(Microcrack)を誘発する可能性がある。したがって、本発明の発明者らは、耐食性を確保するためにZn成分をめっき層内に含ませ、且つめっき層に含まれるZn成分が素地鋼板と直接接触することを抑制して、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの形成を最大限に抑えためっき層に対する研究を繰り返して本発明を導出した。
【0027】
図1(a)〜(c)は本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、及びアルミニウムめっき鋼板の断面を概略的に比較した図である。
【0028】
図1(a)に示すように、本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板は、素地鉄、及び素地鉄の一側のめっき層を含むことができる。めっき層は、Al−Zn系めっき層、及びAl−Zn系めっき層と素地鋼板の間に形成されるFe−Al系界面合金層に区分されることができる。以下、説明の便宜のために、Al−Zn系めっき層はAl−Zn系上部めっき層、Fe−Al系界面合金層はFe−Al系下部めっき層と称する。
【0029】
Fe−Al系下部めっき層は、素地鋼板に隣接して位置し、Al−Zn系上部めっき層は、Fe−Al系下部めっき層と隣接して形成されることができる。すなわち、Fe−Al系下部めっき層は、素地鋼板とAl−Zn系上部めっき層の間に備えられることから、Al−Zn系上部めっき層に含まれるZn成分が素地鋼板に直接接触することを最小限に抑えることができる。
【0030】
これに対し、図1(b)は一般的なアルミニウムめっき鋼板の断面を概略的に示す図であり、図1(c)は一般的な亜鉛めっき鋼板の断面を概略的に示す図である。
【0031】
図1(b)に示すように、一般的なアルミニウムめっき鋼板は、素地鋼板上にアルミニウムめっき層を備え、アルミニウムめっき層は、拡散防止層(Fe−Al)及びアルミニウムめっき層(Al)を備える。これにより、アルミニウムめっき鋼板は、Zn成分が素地鋼板に直接接触することを根本的に防止することができる。但し、アルミニウムめっき鋼板を熱間プレス成形して提供された熱間プレス成形部材の場合には、高温の環境で形成された酸化アルミニウムがアルミニウムめっき層の表面に残存し、それに応じて、自動車車体用部材に不可欠な溶接性を確保できないという問題がある。また、Znのような犠牲防食特性がないAlは、車両用部材に要求される十分なレベルの耐食性を提供することができない。
【0032】
また、図1(c)に示すように、一般的な亜鉛めっき鋼板は、亜鉛めっき層(Zn)を備えることから、素地鋼板にZn成分が直接接触するようになる。そのため、亜鉛めっき鋼板を熱間プレス成形して提供された熱間プレス成形部材の場合には、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの問題が発生する可能性がある。
【0033】
したがって、本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板に含まれるめっき層は、素地鋼板に隣接して備えられるFe−Al系下部めっき層、及びFe−Al系下部めっき層と隣接して備えられるAl−Zn系上部めっき層を含むことから、素地鋼板とZn成分が直接接触することを防止することで、熱間プレス成形した後、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックが発生することを効果的に防止することができるとともに、めっき層内にZn成分を含むことで犠牲防食を介してめっき鋼板の耐食性を効果的に確保することができる。
【0034】
また、本発明の素地鋼板は、熱間プレス成形用めっき鋼板の製造に用いられる素地鋼板である。ここで、成分含量及び製造方法は特に制限しない。
【0035】
以下、本発明の一側面によるめっき層についてより具体的に説明する。
【0036】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板に備えられるめっき層は、重量%で、Zn:10〜30%、Si:5〜15%、残りのAl及びその他の不可避不純物を含むことができる。
【0037】
本発明の発明者らは、めっき浴内のAlとZnの含有量比がめっき層に与える影響に対する実験を行い、次のような結果を導き出すことができた。それぞれのめっき浴組成及びめっき条件は、以下の表1のとおりである。図2はそれぞれのめっき浴により製造されためっき鋼板の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真である。
【0038】
【表1】
【0039】
図2(a)〜(f)はめっき浴2〜7によって製造されためっき鋼板の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真である。図2に示すように、めっき浴2〜5の場合には、Zn成分の含有量が減少するにつれて、Zn成分が素地鋼板に接触する面積が減少するものの、素地鋼板との界面にZn成分が依然として存在するため素地鋼板に直接接触することが確認できる。これに対し、めっき浴6及び7の場合には、Zn成分が素地鋼板に直接接触しないことが確認できる。すなわち、めっき浴の成分のうちZnの含有量が30%のレベルであるめっき浴6の場合には、素地鋼板との界面側にFe−Al−(Si,Mn)層が形成され、Fe−Al−(Si,Mn)層の上部にAl−Zn層が形成され、且つFe−Al−(Si,Mn)層によってAl−Zn層と素地鋼板が物理的及び化学的に離隔されるため、素地鋼板とZn成分の直接的な接触を効果的に防止することができることが確認できる。したがって、本発明の一実施例による熱間プレス成形用めっき鋼板に備えられるめっき層は、Znの含有量を30%以下に制限することができる。
【0040】
また、Znは、犠牲防食性の効果のためにめっき層に含まれる元素であるころから、十分な耐食性を確保するために、本発明は、めっき層に含まれるZnの含有量を10%以上に制限することができる。
【0041】
尚、本発明の一側面によるめっき層は、5〜15%のSiをさらに含むことができる。
【0042】
Siは、めっき層に含まれるAl及び素地鋼板に含まれるFeの合金化を調節するために添加される元素である。すなわち、Siの含有量に応じてFe−Al系下部めっき層の厚さが調節されることができる。また、Siは、Alの融点低下を誘発してめっき浴の温度を下げることができ、それに応じて、めっき浴のアッシュ(ash)発生などを効果的に抑制する元素である。
【0043】
Siの含有量が少なすぎる場合には、素地鋼板のFeとめっき浴のAlとの反応性が増大し、厚いFe−Al系下部めっき層が形成される可能性がある。この場合、脆性が強いFe−Al系下部めっき層は、素材の加工中にめっき層が脱落する原因として作用するおそれがある。したがって、本発明は、めっき層に含まれるSiの含有量を5%以上に制限することができる。一方、Siの含有量が過多の場合には、Fe−Al系下部めっき層が過度に薄く形成されて、Al−Zn系上部めっき層のZn成分が素地鋼板と接触する確率が高くなり、それに応じて、マイクロクラックが発生する可能性が高まる。したがって、本発明は、めっき層に含まれるSiの含有量を15%以下に制限することができる。
【0044】
本発明のFe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層とは、本発明のめっき層を定義するために導入した用語であって、Fe−Al系下部めっき層が必ずFe及びAl成分で構成され、Al−Zn系上部めっき層が必ずAl及びZn成分で構成されることを意味するものではない。但し、Fe−Al系下部めっき層は、Fe及びAlを主成分として含み、めっき層の形成において不可避に添加される不純物をさらに含むことができるが、Fe−Al系下部めっき層に含まれるZnの含有量が積極的に抑制されためっき層を意味することができる。
【0045】
本発明のFe−Al系下部めっき層は、重量%で、30〜60%のZn、30〜60%のFe、20%以下のSi、及びその他の不純物を含むことができる。また、本発明は、Fe−Al系下部めっき層に含まれるZnの含有量を積極的に抑制し、Fe−Al系下部めっき層にZnが流入されても、その含有量を3%以下に積極的に制限することができる。Fe−Al系下部めっき層に含まれるZn成分の好ましい上限は2%であることができ、より好ましい上限は1%であることができる。
【0046】
Al−Zn系上部めっき層には、全めっき層に対する重量%で、10〜30%のZn、1%以下のFeが含まれることができる。すなわち、Al−Zn系上部めっき層は、全めっき層に含まれるZnの含有量の大部分を含むことから、めっき層の表層部側にZn成分が濃化されることができる。これにより、Zn成分の犠牲防食性によってめっき鋼板の耐食性を効果的に確保することができる。また、Alは、Znに比べてFeとの反応性がより高いため、素地鋼板のFeは大部分Alと反応してFe−Al系下部めっき層を形成し、Al−Zn系上部めっき層に流入されるFeの含有量はごくわずかなレベルである。したがって、Al−Zn系上部めっき層に含まれるFeの含有量は、全めっき層の重量%で1%以下のレベルであることができる。これにより、Al−Zn系上部めっき層及びFe−Al系下部めっき層は、Fe及びZn成分の含有量によって区別されることができる。
【0047】
Beは、高温においてめっき層の表面に薄い酸化膜を形成してZnの揮発を抑制し、熱間プレス成形後の表面を美麗にするという効果がある元素である。Mnは、めっき層の凝固過程中にAlと反応して表面に微細な晶出物を形成することができ、熱間プレス成形のための熱処理過程中に金型とめっき層の焼着を抑制するという効果がある元素である。Tiは、熱間プレス成形時の熱処理性に寄与する元素である。したがって、本発明のめっき層は、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含むことができ、これらの元素の添加の場合でも、得られる本発明の効果は同一である。
【0048】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板は、めっき層に含まれるMgの含有量を2%以下に制限することができる。すなわち、本発明は、めっき層に含まれるMgの含有量を積極的に抑制し、Mgが不可避に含まれても2%以下のレベルに制限することができる。
【0049】
Mgは、めっき層の腐食過程中に腐食生成物のpHを安定化させて、サイモンコライト相がZnOに変化する過程を遅延させて耐食性の向上をもたらすことができる。しかし、Mgは、熱間プレス成形中に素地鋼板のFeと反応せず、めっき層に濃化されて低融点を有する領域として孤立される可能性があり、それに応じて、マイクロクラックの発生原因として作用するおそれがある。したがって、マイクロクラックの発生を抑制するために、本発明のめっき層に含まれるMgの含有量を2%以下に制限することができる。
【0050】
但し、Mgがやや含まれても、Alとの反応性差異により、大部分Al−Zn系上部めっき層に分布され、めっき層の表層部に濃化されたMg成分はめっき鋼板の耐食性向上に寄与することができる。
【0051】
加えて、本発明の一実施例による熱間プレス成形用めっき鋼板に備えられるめっき層の厚さは5〜40μmであることができ、Fe−Al系下部めっき層は、全めっき層の平均厚さに対して5〜35%レベルの平均厚さを有することができる。
【0052】
熱間プレス成形用めっき鋼板は、主に自動車車体に用いられる鋼材であるため、長期間の腐食に対応するための十分な耐食性を確保する必要がある。したがって、熱間プレス成形に提供されるめっき鋼板のめっき層は、耐食性を確保するために5μm以上の厚さを有する必要がある。これに対し、熱間プレス成形に提供されるめっき鋼板のめっき層の厚さが一定レベルを超えると、熱間プレス成形中に素地鋼板のFeがめっき層内に十分に拡散しないため、めっき層内に融点が一部低い領域が存在する可能性があり、それに応じて、液体金属脆性破壊が発生する可能性が高くなる。したがって、本発明のめっき層の厚さは40μm以下に制限されることができる。
【0053】
本発明のFe−Al系下部めっき層は、めっき層内のZn成分が素地鋼板と直接接触することを防止する役割を果たすことから、かかる効果を達成するために、Fe−Al系下部めっき層の平均厚さは、全めっき層の平均厚さの5%以上の厚さを有するように備えられることができる。また、Fe−Al系下部めっき層は、硬質の合金めっき層であって、めっき層内に過度に含まれる場合には、めっき層の剥離現象が発生するおそれがあることから、Fe−Al系下部めっき層の平均厚さは、全めっき層の平均厚さの35%以下の厚さを有するように備えられることができる。
【0054】
したがって、本発明の一実施例による熱間プレス成形用めっき鋼板は、素地鋼板に隣接して形成されるFe−Al系下部めっき層を含むことで、Zn成分が素地鋼板に直接接触する現象を効果的に抑制することができるとともに、Fe−Al系下部めっき層に隣接して形成されるAl−Zn系上部めっき層は、Zn成分を含むことで、Zn成分の犠牲防食性によってめっき鋼板の耐食性を効果的に確保することができる。
【0055】
本発明の一側面による熱間プレス成形部材は、上述した熱間プレス成形用めっき鋼板を熱間プレス成形して製造することができる。本発明の熱間プレス成形部材は、素地鋼板上のめっき層に含まれるZn成分と素地鋼板の直接的な接触を抑制することにより、液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの発生を効果的に防止することができる。尚、めっき層に含まれるZn成分の犠牲防食性によって熱間プレス成形部材の耐食性を効果的に確保することができる。
【0056】
以下、本発明の製造方法についてより具体的に説明する。
【0057】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法は、素地鋼板を設けた後、上記素地鋼板をZn及びAlを含むめっき液に浸漬してめっき層を形成し、350℃の温度範囲まで15〜25℃/sの冷却速度で冷却することで、めっき鋼板を製造することができる。
【0058】
本発明のめっき液は、重量%で、Zn:10〜30%、Si:5〜15%、残りのAl及びその他の不純物不純物を含むことができる。また、本発明のめっき液は、重量%で、Be、Ti、及びMnからなる群より選択された1種以上を0.05〜10%さらに含むことができる。加えて、本発明のめっき液は、重量%で、2%以下のMgを含むことができる。
【0059】
本発明のめっき液の組成及びその含有量は、上述しためっき層の組成及び含有量に対応するため、本発明のめっき液の組成及びその含有量制限の理由についての説明は、上述しためっき層の組成及び含有量の制限理由についての説明に代替する。
【0060】
本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法において、めっき層は、公知のめっき方法を介して形成されることができる。好ましくは、溶融めっき法を介して形成されることができる。
【0061】
本発明のめっき層形成時に、AlはZnに比べてFeとの反応性がより高いため、めっき層形成初期の段階において、めっき液内のAlと素地鋼板のFeが相互拡散過程によってFe−Alの合金組織を形成し、その後、Al−Zn系上部めっき層を形成することができる。このとき、Fe−Al系下部めっき層は、全めっき層に対して平均厚さ5〜35%レベルの平均厚さで形成されることができ、全めっき層は、5〜40μmの平均厚さで形成されることができる。Fe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層の組成含有量は、上述しためっき鋼板のFe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層の組成含有量に対応するため、本発明のFe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層の組成含有量についての説明は、上述しためっき鋼板のFe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層の組成含有量についての説明に代替する。
【0062】
したがって、本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法は、めっき層の形成時にFe−Al系下部めっき層及びAl−Zn系上部めっき層を順に形成するため、Zn成分が素地鋼板に直接接触する現象を効果的に抑制することができるとともに、めっき鋼板の表層部に配置されるZn成分によりめっき鋼板の耐食性を効果的に確保することができる。
【0063】
また、本発明の一側面による熱間プレス成形用めっき鋼板の製造方法は、めっき層の形成後に冷却を行うことができる。このときの冷却条件は、通常、溶融めっきに適用される冷却条件であることができる。具体的には、めっき浴から排出されるめっき鋼板に対してエアワイピング作業を行った後、350℃の温度範囲まで15〜25℃/sの冷却速度でめっき鋼板を冷却することができる。
【0064】
本発明の一側面による熱間プレス成形部材は、上述した製造方法で製造されためっき鋼板をAc3変態点以上の温度範囲で加熱して熱間プレス成形し、熱間プレス成形されためっき鋼板を冷却して製造されることができる。
【0065】
本発明の一側面による熱間プレス成形部材は、当該技術分野における一般的に用いられる熱間プレス成形方法を介して熱間プレス成形部材を製造することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0067】
(実施例)
厚さ1.5mmの熱間プレス成形用冷延鋼板を素地鋼板として設けた。素地鋼板としては、重量%で、C:0.22wt%、Si:0.24%、Mn:1.56%、B:0.0028%、残りのFe及びその他の不可避不純物を含む冷延鋼板を用いた。次に、5%水素が含有された窒素雰囲気の焼鈍炉において800℃の温度で素地鋼板を熱処理して素地鋼板の表面を還元処理し、660℃の引込温度で設けられたそれぞれのめっき浴に浸漬して、めっき鋼板試験片を製造した。めっき浴の成分はそれぞれ、下記表2のとおりである。めっき浴浸漬後にエアーナイフを用いてめっき量を一定に調節した後、冷却した。
【0068】
それぞれの試験片を900℃の温度に加熱して180秒間維持した。その後、急冷設備が備えられた金型においてオメガ形状に加工して熱間プレス成形部材試験片を製造した。また、走査顕微鏡を用いて、それぞれの熱間プレス成形部材試験片のめっき層を観察した、その結果は下記表2のとおりである。また、それぞれの熱間プレス成形部材に対して3.5%NaCl水溶液で定電位法を用いた分極試験を行った。それによる犠牲防食性の評価結果は、下記表2のとおりである。下記表2における比較例6〜8のめっき層の割合は、Fe−Al拡散防止層を意味する。
【0069】
【表2】
【0070】
本発明のめっき浴成分を満たす試験片3〜5の場合には、Fe−Al系下部めっき層によって素地鋼板とZn成分が接触せず、耐食性も良好であることが確認できる。また、Al−Zn系上部めっき層の成分分析の結果、試験片3〜5の場合には1%未満のFeを含むことが確認できた。これに対し、本発明のめっき浴成分を満たさない試験片1、2、6〜10の場合には、素地鋼板とZn成分が接触したり、又は耐食性が低下したことが確認できる。
【0071】
図3(a)及び(b)は試験片4及び5の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真であって、素地鋼板とAl−Zn系上部めっき層の間にFe−Al系下部めっき層が形成され、Fe−Al系下部めっき層によって素地鋼板とAl−Zn系上部めっき層の接触が遮断されることが確認できる。
【0072】
図4は試験片5に対して熱間プレス成形を行った後の断面を電子走査顕微鏡で観察した写真であって、Fe−Al系下部めっき層により、素地鋼板にはクラックが発生せず、Al−Zn系上部めっき層によって耐食性が確保されることが確認できる。
【0073】
したがって、本発明の一側面によるめっき鋼板及びその製造方法は、熱間プレス成形時の液体金属脆性破壊及びマイクロクラックの発生を効果的に抑制可能なめっき鋼板及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の一側面による成形部材及びその製造方法は、耐食性及び耐久性を効果的に確保した熱間プレス成形部材及びその製造方法を提供することができる。
【0074】
以上、実施例を通じて本発明を詳細に説明したが、これと異なる形の実施例も可能である。したがって、以下に記載された特許請求範囲の技術的思想及び範囲は実施例に限定されない。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【国際調査報告】