(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】2021510307
(43)【公表日】20210422
(54)【発明の名称】抗グリコMUC1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20210326BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20210326BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210326BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210326BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20210326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20210326BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20210326BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20210326BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210326BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20210326BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20210326BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210326BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20210326BHJP
【FI】
   !C12N15/13
   !C07K16/30ZNA
   !C07K16/46
   !C07K19/00
   !C12N15/62 Z
   !A61P35/00
   !A61K45/00
   !A61K47/68
   !A61K39/395 T
   !A61K38/07
   !A61K38/16
   !A61K31/437
   !A61K31/407
   !G01N33/574 A
   !C12N15/867 Z
   !C07K14/725
   !C12N5/10
   !C12N5/0783
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】127
(21)【出願番号】2020543460
(86)(22)【出願日】20171024
(85)【翻訳文提出日】20200622
(86)【国際出願番号】US2017058036
(87)【国際公開番号】WO2019083506
(87)【国際公開日】20190502
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.プルロニック
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520145399
【氏名又は名称】ジーオー セラピューティクス,インコーポレイテッド
【住所又は居所】アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 02142,ケンブリッジ,ブロードウェイ 1
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,セイヤー
【住所又は居所】アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01920,ボックスフォード,トップスフィールド ロード 63ビー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA44
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4C084NA13
4C084ZB261
4C085AA14
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4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB03
4C086CB05
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4C086MA03
4C086MA05
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明の開示は、MUC1のがん特異的なグリコシル化バリアントに特異的に結合する抗グリコMUC1抗体およびその抗原結合フラグメント、ならびに関連の融合タンパク質および抗体−薬物コンジュゲート、加えてこのような生体分子をコードする核酸に関する。本発明の開示はさらに、がん療法のための、抗体、抗原結合フラグメント、融合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲートおよび核酸の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.正常細胞と比較して、がん細胞上で過剰発現されるグリコMUC1エピトープに優先的に結合し;
b.乳がん細胞株MCF7またはT47Dへの結合に関して、配列番号3の重鎖可変(VH)配列および配列番号4の軽鎖可変(VL)配列を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合する抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項2】
a.精製された組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼであるGalNAc−T1、GalNAc−T2、およびGalNAc−T4を使用してインビトロでグリコシル化されたMUC1タンデムリピート(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)(以下、「第1のエピトープ」と称する)に結合し;かつ、
b.乳がん細胞株MCF7またはT47Dへの結合に関して、配列番号3の重鎖可変(VH)配列および配列番号4の軽鎖可変(VL)配列を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合する、
抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項3】
配列番号33のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項4】
CDR−H1が、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項5】
CDR−H1が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項6】
CDR−H1が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項7】
CDR−H1が、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項8】
CDR−H2が、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項9】
CDR−H2が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項10】
CDR−H3が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項11】
CDR−L1が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項12】
CDR−L1が、配列番号26のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項13】
CDR−L2が、配列番号27のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項14】
CDR−L3が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項15】
前記VHが、配列番号5〜7の相補性決定領域(CDR)を含み、前記VLが、配列番号8〜10のCDRを含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項16】
前記VHが、配列番号23〜25の相補性決定領域(CDR)を含み、前記VLが、 配列番号26、27、および10のCDRを含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項17】
前記VHが、配列番号28、29、および25の相補性決定領域(CDR)を含み、前記VLが、配列番号30、9、および31のCDRを含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項18】
キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項19】
前記VHが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項20】
前記VHが、配列番号3と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項21】
前記VHが、配列番号3と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項22】
前記VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項23】
多価である、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項24】
単鎖可変フラグメント(scFv)の形態である、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項25】
前記scFvが、軽鎖可変フラグメントのN末端側に重鎖可変フラグメントを含む、請求項24に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項26】
前記scFvの重鎖可変フラグメントおよび軽鎖可変フラグメントが、4〜15アミノ酸のリンカー配列に共有結合している、請求項24に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項27】
多重特異性抗体の形態である、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項28】
前記多重特異性抗体が、前記第1のエピトープと異なる第2のエピトープに結合する二重特異性抗体である、請求項27に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項29】
前記二重特異性抗体が、CrossMab、Fabアーム交換抗体、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)、または二重親和性再標的化分子(DART)である、請求項28に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項30】
前記二重特異性抗体が、CrossMabである、請求項29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項31】
前記二重特異性抗体が、CrossMabFABである、請求項30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項32】
前記二重特異性抗体が、CrossMabVH−VLである、請求項30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項33】
前記二重特異性抗体が、CrossMabCH1−CLである、請求項30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項34】
前記二重特異性抗体が、Fabアーム交換抗体である、請求項29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項35】
前記二重特異性抗体が、二重親和性再標的化分子(DART)である、請求項29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項36】
前記二重特異性抗体が、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)である、請求項29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項37】
前記第2のエピトープが、MUC1エピトープである、請求項28に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項38】
前記第2のエピトープが、正常細胞と比較して、がん細胞上で過剰発現されるMUC1エピトープである、請求項28に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項39】
前記第2のエピトープが、T細胞エピトープである、請求項28に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項40】
前記T細胞エピトープが、CD3エピトープ、CD8エピトープ、CD16エピトープ、CD25エピトープ、CD28エピトープ、またはNKG2Dエピトープを含む、請求項39に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項41】
前記T細胞エピトープが、CD3エピトープを含み、前記CD3エピトープは、任意選択でヒトCD3に存在するエピトープである、請求項40に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項42】
前記CD3エピトープが、CD3ガンマエピトープ、CD3デルタエピトープ、CD3イプシロンエピトープ、またはCD3ゼータエピトープを含む、請求項41に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項43】
検出可能な部分にコンジュゲートされている、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項44】
検出可能なマーカーが、酵素、放射線同位体、または蛍光標識である、請求項43に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項45】
少なくとも第2のアミノ酸配列に作動可能に連結した、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントのアミノ酸配列を含む融合タンパク質。
【請求項46】
前記第2のアミノ酸配列が、4−1BB、CD3−ゼータ、またはそのフラグメントのアミノ酸配列である、請求項45に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
前記第2のアミノ酸配列が、融合ペプチドのアミノ酸配列である、請求項45に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
前記融合ペプチドが、CD28−CD3−ゼータ融合ペプチドまたは4−1BB(CD137)−CD3−ゼータ融合ペプチドである、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
前記第2のアミノ酸配列が、T細胞の活性化のモジュレーターまたはそのフラグメントのアミノ酸配列である、請求項45に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
前記T細胞の活性化のモジュレーターが、IL−15またはIL−15Raである、請求項49に記載の融合タンパク質。
【請求項51】
請求項24に記載のscFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項52】
アミノ末端からカルボキシ末端の順で、ヒトCD8リーダーペプチド、前記scFv、ヒトCD8ヒンジドメイン、ヒトCD8膜貫通ドメイン、およびCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項51に記載のCAR。
【請求項53】
細胞傷害性物質にコンジュゲートした、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントを含む抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項54】
前記細胞傷害性物質が、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、アルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ドラスタチン、メイタンシノイド、またはビンカアルカロイドである、請求項53に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項55】
前記抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントが、リンカーを介して前記細胞傷害性物質にコンジュゲートされている、請求項54に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項56】
前記リンカーが、細胞内条件下で切断可能である、請求項55に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項57】
切断可能なリンカーが、細胞内のプロテアーゼによって切断可能である、請求項56に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項58】
前記リンカーが、ジペプチドを含む、請求項57に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項59】
前記ジペプチドが、val−citまたはphe−lysである、請求項58に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項60】
切断可能なリンカーが、5.5未満のpHで加水分解性である、請求項56に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項61】
加水分解性のリンカーが、ヒドラゾンリンカーである、請求項60に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項62】
切断可能なリンカーが、ジスルフィドリンカーである、請求項56に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
【請求項63】
請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントのコード領域を含む核酸。
【請求項64】
前記コード領域が、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項63に記載の核酸。
【請求項65】
請求項63に記載の核酸を含むベクター。
【請求項66】
ウイルスベクターである、請求項65に記載のベクター。
【請求項67】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項66に記載のベクター。
【請求項68】
請求項63に記載の核酸を発現するように操作された宿主細胞。
【請求項69】
請求項51に記載のCARを発現するように操作されたヒトT細胞である宿主細胞。
【請求項70】
請求項65に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項71】
請求項51に記載のCARをコードするベクターを含むT細胞である宿主細胞。
【請求項72】
(a)請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント、および
(b)生理学的に好適な緩衝液、アジュバントまたは希釈剤
を含む医薬組成物。
【請求項73】
がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項74】
前記対象が、乳がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、食道がん、または結腸直腸がんを罹っている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
生物学的サンプルにおいてがんを検出する方法であって、サンプルを、請求項1または2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントと接触させること、および前記抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントの結合を検出することを含む方法。
【請求項76】
前記抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントの結合を定量化することをさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記結合が、陰性/ベースライン対照としての正常な組織対照と比較される、および/または陽性対照としてのがん性組織対照と比較される、請求項75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、これによりその全体が参照により組み入れられる。前記ASCIIコピーは、2017年10月24日に作成され、GOT−001WO_Sequence_Listing.txtと名付けられ、33,265バイトのサイズである。
【背景技術】
【0002】
2.背景
ヒトムチンMUC1は、単層上皮および腺上皮の頂端表面上に発現される多形性の膜貫通糖タンパク質である(Taylor-Papadimitriou et al., 1999)。MUC1は、腺癌で高度に過剰発現され、異常にO−グリコシル化される。ムチンの細胞外ドメインは、5つの可能性のあるO−グリコシル化のための部位を有する20アミノ酸残基の可変数タンデムリピート(TR)(25〜125)を含有する。O−グリカンは、がん細胞中で不完全にプロセシングされ、結果として汎癌(pancarcinoma)炭水化物抗原Tn(GalNAcα1−O−Ser/Thr)の発現が起こる(Springer, 1984)。単純なムチン型O−グリカンであるTnは腺癌(乳房および卵巣がんを含む)で広く発現され、正常な成人組織では限定された分布を示す(Springer, 1984)。がんにおけるこれらのO−グリカンの発現は、予後不良と相関しており、がん患者ではこれらの炭水化物ハプテンに対する天然抗体が増加する(Miles et al., 1995;Soares et al., 1996;Werther et al., 1996)。当業界においてがん細胞で過剰発現されるグリコMUC1エピトープを利用する治療法への必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
3.要約
本開示は、グリコMUC1のがん特異的なエピトープに選択的な抗体および抗原結合フラグメントに基づく治療剤および診断剤を提供することによって、グリコペプチドバリアントの腫瘍特異性を獲得するものである。
【0004】
本発明の開示は、MUC1のがん特異的なグリコシル化バリアントに結合する抗グリコMUC1抗体およびその抗原結合フラグメントを提供する。本発明の開示はさらに、抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質および抗体−薬物コンジュゲート、ならびに抗グリコMUC1抗体、抗原結合フラグメントおよび融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0005】
本発明の開示はさらに、がん療法のための、抗グリコMUC1抗体、抗原結合フラグメント、融合タンパク質、抗体−薬物コンジュゲートおよび核酸の使用方法を提供する。
【0006】
特定の態様において、本開示は、MUC1のがん特異的なグリコシル化バリアントと、第2のエピトープとに結合する、二重特異性および他の多重特異性を有する抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントを提供する。第2のエピトープは、MUC1それ自体、がん細胞上でMUC1と共発現される別のタンパク質、または活性化T細胞などの異なる細胞上に存在する別のタンパク質のいずれの上にあるものでもよい。さらに、コドン最適化されたコード領域を含む核酸、および特定の宿主細胞における発現にコドン最適化されていないコード領域を含む核酸などの抗体をコードする核酸も開示される。
【0007】
抗グリコMUC1抗体および結合フラグメントは、融合パートナーを含有する融合タンパク質の形態であり得る。融合パートナーは、第2の機能、例えば、T細胞シグナル伝達タンパク質のシグナル伝達ドメインのシグナル伝達機能、T細胞活性化のペプチドモジュレーター、または標識システムの酵素的な要素を提供するのに有用であり得る。例示的なT細胞シグナル伝達タンパク質としては、4−1BB、CO3C、ならびに融合ペプチド、例えば、CD28−CD3−ゼータおよび4−1BB−CD3−ゼータが挙げられる。4−1BB、またはCD137は、T細胞の共刺激受容体であり、CD3−ゼータは、T細胞抗原受容体のシグナル伝達要素である。第2の機能を提供する部分は、T細胞活性化のモジュレーター、例えばIL−15、IL−15Ra、またはIL−15/IL−15Ra融合であってもよく、またはインビボまたはインビトロでの結合の程度および/または場所をモニターするのに有用な標識システムの標識または酵素的な要素をコードしていてもよい。T細胞、例えば自己T細胞の状況下に置かれた、これらの予防および治療活性を有する生体分子をコードするコンストラクトは、本開示の一部の実施形態において、様々ながんを防止または処置するための、養子導入されたT細胞を補充するための強力なプラットフォームを提供する。
【0008】
特定の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、表1に記載の重鎖および/または軽鎖可変配列を含む(またはヌクレオチド配列によってコードされる)。明確にするために、この文書中で用語「抗グリコMUC1抗体」が使用される場合、それは、文脈上別段の指示がない限り、単一特異性および多重特異性(二重特異性を含む)抗グリコMUC1抗体、単一特異性および多重特異性抗体の抗原結合フラグメント、ならびに抗体およびその抗原結合フラグメントを含有する融合タンパク質およびコンジュゲートを含むことが意図される。同様に、用語「抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント」が使用される場合、それはまた、文脈上別段の指示がない限り、単一特異性および多重特異性(二重特異性を含む)抗グリコMUC1抗体およびその抗原結合フラグメントに加えて、このような抗体および抗原結合フラグメントを含有する融合タンパク質およびコンジュゲートも含むことが意図される。
【0009】
他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、表1〜3に記載の重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む(またはヌクレオチド配列によってコードされる)。表1に記載のCDR配列は、CDRの境界を定義するための、IMGT(Lefranc et al., 2003, Dev Comparat Immunol 27:55-77, Kabat (Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.)、およびChothia(Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol 273:927-948)のスキームに従って定義されるCDR配列を含む。表2に記載のCDR配列は、表1に示されるCDR配列の組み合わされたオーバーラップ領域であり、IMGT、KabatおよびChothia配列は下線の太字で示される。表3に記載のCDR配列は、表1に示されるCDR配列の共通のオーバーラップ領域である。このような抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントのフレームワーク配列は、表1に記載の天然マウスのフレームワーク配列であってもよいし、または非天然(例えば、ヒト化された、またはヒト)フレームワーク配列であってもよい。
【0010】
【表1-1】
【0011】
【表1-2】
【0012】
【表1-3】
【0013】
【表1-4】
【0014】
【表2】
【0015】
【表3】
【0016】
特定の態様において、本開示は、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、番号付けされた実施形態3から17に記載のCDR組合せのいずれかのアミノ酸配列を含むCDRを含むことを提供する。したがって、特定の実施形態において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む。一部の実施形態において、CDR−H1は、配列番号5、23、28、または32のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CDR−H2は、配列番号6または24のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CDR−H3は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CDR−L1は、配列番号30または26のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CDR−L2は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CDR−L3は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号5〜7の重鎖CDRおよび配列番号8〜10の軽鎖CDRを含む。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号23〜25の重鎖CDRならびに配列番号26、27、および10の軽鎖CDRを含む。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号28、29、および25の重鎖CDRならびに配列番号30、9、および31の軽鎖CDRを含む。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号32、24、および7の重鎖CDRならびに配列番号26、27、および10の軽鎖CDRを含む。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号33、29、および25の重鎖CDRならびに配列番号8、9、および31の軽鎖CDRを含む。抗体または抗原結合フラグメントは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体またはこれらの抗原結合フラグメントであってもよい。
【0017】
さらなる態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号3および4の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合する。さらに他の態様において、本開示は、それぞれ配列番号3および4の少なくとも95%、98%、99%、または99.5%の配列同一性を有する重鎖および軽鎖可変領域を有する抗MUC1抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0018】
さらに他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)である。例示的なscFvは、軽鎖可変フラグメントのN末端側に重鎖可変フラグメントを含む。一部の実施形態において、scFvの重鎖可変フラグメントおよび軽鎖可変フラグメントは、4〜15アミノ酸のリンカー配列に共有結合している。scFvは、二重特異性T細胞誘導体の形態であってもよいし、またはキメラ抗原受容体(CAR)内であってもよい。
【0019】
抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントは、単鎖可変フラグメントの多量体、二重特異性単鎖可変フラグメント、および二重特異性単鎖可変フラグメントの多量体の形態であってもよい。一部の実施形態において、単鎖可変フラグメントの多量体は、2価単鎖可変フラグメント、トリボディ(tribody)またはテトラボディ(tetrabody)から選択される。これらの実施形態の一部において、二重特異性単鎖可変フラグメントの多量体は、二重特異性T細胞誘導体である。
【0020】
本開示の他の態様は、本開示の抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントをコードする核酸に関心を寄せている。一部の実施形態において、抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸の部分は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。特定の態様において、本開示は、配列番号11または配列番号13と少なくとも95%、98%、99%、または99.5%の配列同一性を有する重鎖ヌクレオチド配列、および配列番号12または配列番号14と少なくとも95%、98%、99%、または99.5%の配列同一性を有する軽鎖ヌクレオチド配列によってコードされた重鎖および軽鎖可変領域を有する抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントを提供する。核酸を含むベクター(例えば、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクター)および宿主細胞も本開示の範囲内である。重鎖および軽鎖をコードする配列は、単一のベクターに存在していてもよいし、または別個のベクターに存在していてもよい。
【0021】
本開示のさらに別の態様は、抗グリコMUC1抗体、抗原結合フラグメント、核酸(または核酸の対)、ベクター(またはベクターの対)または本開示による宿主細胞、および生理学的に好適な緩衝液、アジュバントまたは希釈剤を含む医薬組成物である。
【0022】
本開示のさらに別の態様は、キメラ抗原受容体を作製する方法であって、コード領域の発現に好適な条件下で、本開示による核酸またはベクターを含む細胞をインキュベートすること、およびキメラ抗原受容体を収集することを含む方法である。
【0023】
本開示の別の態様は、がんを検出する方法であって、細胞または組織サンプルを、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントと接触させること、および抗体が細胞または組織サンプルに結合しているかどうかを検出することを含む方法である。
【0024】
本開示のさらに別の態様は、がんを処置する方法であって、予防的または治療的有効量の本開示による抗グリコMUC1抗体、抗原結合フラグメント、核酸、ベクター、宿主細胞または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】MUC1に対するグリコMUC1へのGO2の結合特異性を示すELISAアッセイの結果を示す図である。
【図2】結腸がん組織へのGO2の結合を示す図である。mAbのGO2を使用する浸潤性の結腸癌組織および隣接する健康な組織の免疫組織化学的な標識。mAbのGO2は、結腸がん組織への別個の結合を示し、がん細胞の細胞内と表面構造の両方で高い反応性を有する。対照的に、健康な結腸細胞の表面構造への反応性は見られない。
【図3】膵臓がん組織へのGO2の結合を示す図である。mAbのGO2を使用する膵臓がん組織の免疫組織化学的な標識。mAb GO2は、膵臓がん細胞への別個の結合を示す。対照的に、周囲の健康な組織への反応性はないかまたは限定的であった。
【図4】乳がん組織へのGO2の結合を示す図である。mAbのGO2を使用する乳がん組織の免疫組織化学的な標識。mAb GO2は、浸潤性の乳がん細胞への別個の結合を示した。
【図5】抗体GO2および抗チューブリン剤であるモノメチルオーリスタチンF(MMAF)にコンジュゲートした二次抗体を用いた抗体依存性細胞傷害アッセイの結果を示す図である。
【図6】GO2を使用して循環腫瘍細胞を定量化するELISAアッセイの結果を示す図である。X軸は、細胞の数を示し、Y軸は、OD450値を示す。
【図7】MUC1陽性TMA腫瘍のコアの代表的な画像を示す図である。図7A:乳がん;図7B:非小細胞肺がん;図7C:卵巣がん;図7D:結腸直腸がん;図7E:前立腺がん。
【図8】例示的な抗グリコMUC1および抗CD3T細胞二重特異性抗体(TCB)の略図である。
【図9A】未消化の患者由来の腫瘍サンプル(気管支および肺の悪性新生物:中葉、気管支または肺、扁平上皮癌)および50nMの異なるTCBを用いたJurkat−NFAT活性化アッセイを示す図である。
【図9B】未消化の患者由来の腫瘍サンプル(気管支および肺の悪性新生物:中葉、気管支または肺、扁平上皮癌)および5nMの異なるTCBを用いたJurkat−NFAT活性化アッセイを示す図である。
【図10】未消化の患者由来の腫瘍サンプル(気管支および肺の悪性新生物:下葉、気管支または肺、非角化型扁平上皮癌)および50nMの異なるTCBを用いたJurkat−NFAT活性化アッセイを示す図である。
【図11】未消化の患者由来の腫瘍サンプル(気管支および肺の悪性新生物:上葉、気管支または肺、腺房型を有する腺癌)および50nMの異なるTCBを用いたJurkat−NFAT活性化アッセイを示す図である。
【図12A】フローサイトメトリーによって測定された、MCF7 cs細胞上で発現されたMUC1へのGO2 TCBの結合を示す図である。
【図12B】フローサイトメトリーによって測定された、T3M4 pzfv細胞上で発現されたMUC1へのGO2 TCBの結合を示す図である。
【図13-1】2人の健康なドナー由来のPBMCの存在下における、CD4T細胞およびCD8T細胞上のCD25およびCD69の上方調節、加えて、T3M4 pzfv上でのGO2 TCBによるIL6、IL8、IL10、IFNγ、TNFαおよびグランザイムBの放出によって測定された、腫瘍細胞の致死およびT細胞の活性化の誘導を示す図である(ドナー1 図13A〜13L)。図13A〜13Xのそれぞれにつき凡例は同じである。
【図13-2】2人の健康なドナー由来のPBMCの存在下における、CD4T細胞およびCD8T細胞上のCD25およびCD69の上方調節、加えて、T3M4 pzfv上でのGO2 TCBによるIL6、IL8、IL10、IFNγ、TNFαおよびグランザイムBの放出によって測定された、腫瘍細胞の致死およびT細胞の活性化の誘導を示す図である(ドナー1 図13A〜13L)。図13A〜13Xのそれぞれにつき凡例は同じである。
【図13-3】2人の健康なドナー由来のPBMCの存在下における、CD4T細胞およびCD8T細胞上のCD25およびCD69の上方調節、加えて、T3M4 pzfv上でのGO2 TCBによるIL6、IL8、IL10、IFNγ、TNFαおよびグランザイムBの放出によって測定された、腫瘍細胞の致死およびT細胞の活性化の誘導を示す図である(ドナー2 図13M〜13X)。図13A〜13Xのそれぞれにつき凡例は同じである。
【図13-4】2人の健康なドナー由来のPBMCの存在下における、CD4T細胞およびCD8T細胞上のCD25およびCD69の上方調節、加えて、T3M4 pzfv上でのGO2 TCBによるIL6、IL8、IL10、IFNγ、TNFαおよびグランザイムBの放出によって測定された、腫瘍細胞の致死およびT細胞の活性化の誘導を示す図である(ドナー2 図13M〜13X)。図13A〜13Xのそれぞれにつき凡例は同じである。
【図14】PBMCの存在下におけるMCF7 cs上のGO2 TCBを用いたCD8T細胞およびCD4T細胞上のCD25およびCD69の上方調節によって測定された、腫瘍細胞の致死(図14A〜14B)およびT細胞の活性化の誘導を示す図である(それぞれ図14C〜14F)。図14A〜14Fのそれぞれにつき凡例は同じである。
【図15】MCF10A(ヒト非腫瘍形成性乳房上皮細胞株)(図15A)およびHBEpiC(ヒト気管支上皮細胞)(図15B)へのGO2 TCBおよびHMFG1 TCBの結合を示す図である。
【図16】PBMCの存在下における、MCF10A細胞上のGO2 TCBおよびHMFG1 TCBによる、CD4T細胞(図16B)およびCD8T細胞(図16C)上でのCD25の上方調節によって測定された、腫瘍細胞の致死(図16A)およびT細胞の活性化の誘導を示す図である。
【図17】グリコペプチドがカップリングされたフローセルを通って流動するGO2およびGO2 TCBのイラストである。
【図18A】ヒトおよびカニクイザル(cynomolgous)のグリコペプチドへのGO2の結合を示すセンサーグラムである。
【図18B】ヒトおよびカニクイザルのグリコペプチドへのGO2 TCBの結合を示すセンサーグラムである。
【図19-1】図19A〜B:ヒトおよびカニクイザルのグリコペプチドへのGO2抗体の結合(結合活性)、および「見かけの」KDの推測値を示す図である。
【図19-2】図19C〜D:ヒトおよびカニクイザルのグリコペプチドへのGO2 TCBの結合(結合活性)、および「見かけの」KDの推測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
5.詳細な説明
5.1 抗体
本発明者は、腫瘍細胞上に提示されるMUC1のグリコフォームに向けられた新規の抗体を開発した。これらは抗体5F7によって例示され、本明細書では「GO2」と称される。腫瘍細胞上に提示されるMUC1のグリコシル化パターンを模擬するように、精製された組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼであるポリペプチドのGalNAc−T2、GalNAc−T4、およびGalNAc−T1でグリコシル化された、MUC1中に存在するタンデムリピートの1つ、VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG(配列番号50)のグリコシル化された60−merの代表的な3つのコピーに結合する抗体に関するスクリーニングでGO2を同定した。
【0027】
本開示の抗グリコMUC1抗体は、抗体GO2によって例示され、がんの診断および療法におけるツールとして有用である。
【0028】
したがって、特定の態様において、本開示は、腫瘍細胞上に提示されるMUC1のグリコフォーム(本明細書では「グリコMUC1」と称される)に、好ましくは、米国特許第6,465,220号明細書に記載される、GalNAc−T2、GalNAc−T4、およびGalNAc−T1でグリコシル化された60−merのペプチド(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)(配列番号47)に結合する抗体および抗原結合フラグメントを提供する。
【0029】
本開示の抗グリコMUC1抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作された、および/またはそれ以外の方法で性質が改変されたものであってもよく、例えば、これらに限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、霊長類化抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、二重可変ドメイン抗体などが挙げられる。様々な実施形態において、抗体は、抗体の定常領域の全部または一部を含む。一部の実施形態において、定常領域は、IgA(例えば、IgAまたはIgA)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG、IgG、IgGまたはIgG)、およびIgMから選択されるアイソタイプである。具体的な実施形態において、本開示の抗グリコMUC1抗体は、IgGの定常領域のアイソタイプを含む。
【0030】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術を介して産生された抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、あらゆる真核、原核、またはファージクローンを含み、これらは、当業界において利用可能な、または公知のあらゆる手段によって単一のクローンから誘導される。本発明の開示において有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せの使用を含む当業界において公知の様々な技術を使用して調製することができる。ヒトにおける抗グリコMUC1抗体のインビボでの使用を含む本発明の開示の多くの使用において、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を、好適に使用することができる。
【0031】
用語「キメラ」抗体は、本明細書で使用される場合、非ヒト免疫グロブリン、例えばラットまたはマウス抗体由来の可変配列と、典型的にはヒト免疫グロブリンテンプレートから選ばれるヒト免疫グロブリン定常領域とを有する抗体を指す。キメラ抗体を産生するための方法は、当業界において公知である。例えば、この参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Morrison, 1985, Science 229(4719):1202-7;Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214-221;Gillies et al., 1985, J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号明細書;第4,816,567号明細書;および第4,816397号明細書を参照されたい。
【0032】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ免疫グロブリンである。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むと予想される。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体ヒト化の方法は、当業界において公知である。例えば、全てが参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Riechmann et al., 1988, Nature 332:323-7;Queenらの米国特許第5,530,101号明細書;第5,585,089号明細書;第5,693,761号明細書;第5,693,762号明細書;および第6,180,370号明細書;欧州特許第239400号明細書;PCT国際公開第91/09967号パンフレット;米国特許第5,225,539号明細書;欧州特許第592106号明細書;欧州特許第519596号明細書;Padlan, 1991, Mol. Immunol., 28:489-498;Studnicka et al., 1994, Prot. Eng. 7:805-814;Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. 91:969-973;ならびに米国特許第5,565,332号明細書を参照されたい。
【0033】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、さらに、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離された抗体、または1つまたは複数のヒト免疫グロブリンに関してトランスジェニックであり、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から単離された抗体を含む。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ方法などの当業界において公知の様々な方法によって作製することができる。これらのそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第4,444,887号明細書および第4,716,111号明細書;ならびにPCT国際公開第98/46645号パンフレット;国際公開第98/50433号パンフレット;国際公開第98/24893号パンフレット;国際公開第98/16654号パンフレット;国際公開第96/34096号パンフレット;国際公開第96/33735号パンフレット;および国際公開第91/10741号パンフレットを参照されたい。ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用することにより産生することもできる。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、PCT国際公開第98/24893号パンフレット;国際公開第92/01047号パンフレット;国際公開第96/34096号パンフレット;国際公開第96/33735号パンフレット;米国特許第5,413,923号明細書;第5,625,126号明細書;第5,633,425号明細書;第5,569,825号明細書;第5,661,016号明細書;第5,545,806号明細書;第5,814,318号明細書;第5,885,793号明細書;第5,916,771号明細書;および第5,939,598号明細書を参照されたい。選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイドされる選択」と称される技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体は、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドするのに使用される(Jespers et al., 1988, Biotechnology 12:899-903を参照)。
【0034】
「霊長類化抗体」は、サル可変領域およびヒト定常領域を含む。霊長類化抗体を産生するための方法は、当業界において公知である。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,658,570号明細書;第5,681,722号明細書;および第5,693,780号明細書を参照されたい。
【0035】
本開示の抗グリコMUC1抗体は、全長(無傷)抗体分子と、グリコMUC1と結合することが可能な抗原結合フラグメントの両方を含む。抗原結合フラグメントの例としては、一例として、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、単鎖Fvフラグメントおよび単一ドメインフラグメントが挙げられる。
【0036】
Fabフラグメントは、軽鎖(CL)の定常ドメイン、および重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’フラグメントは、抗体のヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個の残基の付加によってFabフラグメントと異なる。F(ab’)フラグメントは、F(ab’)ペプシン消化生成物のヒンジシステインにおけるジスルフィド結合の切断によって産生される。抗体フラグメントの追加の化学的カップリングは、当業者公知である。FabおよびF(ab’)フラグメントは無傷抗体のFcフラグメントを欠き、無傷抗体より迅速に動物の循環から排除され、無傷抗体より少ない非特異的な組織結合を有する可能性がある(例えば、Wahl et al., 1983, J. Nucl. Med. 24:316を参照)。
【0037】
「Fv」フラグメントは、完全な標的認識および結合部位を含有する抗体の最小フラグメントである。この領域は、しっかりとした非共有結合による会合での1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体(V−V二量体)からなる。この立体配置で、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−V二量体の表面上の標的結合部位が規定される。しばしば6つのCDRは、抗体に標的結合特異性を付与する。しかしながら、一部の場合において、単一の可変ドメイン(または標的に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体より低い親和性ではあるが標的を認識してそれに結合する能力を有する場合がある。
【0038】
「単鎖Fv」または「scFv」抗原結合フラグメントは、抗体のVおよびVドメインを含み、この場合、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが標的結合にとって望ましい構造を形成することを可能にする。
【0039】
「単一ドメイン抗体」は、グリコMUC1に十分な親和性を示す単一のVまたはVドメインで構成される。具体的な実施形態において、単一ドメイン抗体は、ラクダ化抗体である(例えば、Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38を参照)。
【0040】
また本開示の抗グリコMUC1抗体は、二重特異性および他の多重特異性抗体であってもよい。二重特異性抗体は、同一または異なる抗原上の2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、多くの場合、ヒトまたはヒト化抗体抗体である。本発明の開示において、結合特異性の一方は、グリコMUC1に向けられていてもよく、他方は、他のあらゆる抗原、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来のタンパク質、ウイルスによってコードされたエンベロープタンパク質、細菌由来のタンパク質、または細菌表面タンパク質などに向けられていてもよい。特定の好ましい実施形態において、二重特異性および他の多重特異性を有する抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントは、第2のMUC1エピトープ、がん細胞上でMUC1と共発現される別のタンパク質上のエピトープ、または活性化T細胞などの異なる細胞上に存在する別のタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。本開示の二重特異性抗体は、IgG様式の二重特異性抗体および単鎖ベースの二重特異性抗体を含む。
【0041】
IgG様式の本開示の二重特異性抗体は、当業界において公知の様々な種類のIgG様式の二重特異性抗体のいずれか、例えば、クアドローマ二重特異性抗体、「ノブ−イン−ホール(knobs-in-hole)」二重特異性抗体、CrossMab二重特異性抗体、電荷対を有する二重特異性抗体、一般的な軽鎖二重特異性抗体、1アームの単鎖Fab−免疫グロブリンガンマ二重特異性抗体、ジスルフィドで安定化されたFv二重特異性抗体、DuetMab、制御されたFabアーム交換二重特異性抗体、鎖交換操作されたドメインボディの二重特異性抗体、2アームのロイシンジッパーヘテロ二量体モノクローナル二重特異性抗体、κλボディの二重特異性抗体、二重可変ドメイン二重特異性抗体、および交差二重可変ドメイン二重特異性抗体であってもよい。例えば、この参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256:495-497;Milstein and Cuello, 1983, Nature 305:537-40;Ridgway et al., 1996, Protein Eng. 9:617-621;Schaefer et al., 2011, Proc Natl Acad Sci USA 108:11187-92;Gunasekaran et al., 2010, J Biol Chem 285:19637-46;Fischer et al., 2015 Nature Commun 6:6113;Schanzer et al., 2014, J Biol Chem 289:18693-706;Metz et al., 2012 Protein Eng Des Sel 25:571-80;Mazor et al., 2015 MAbs 7:377-89;Labrijn et al., 2013 Proc Natl Acad Sci USA 110:5145-50;Davis et al., 2010 Protein Eng Des Sel 23:195-202;Wranik et al., 2012, J Biol Chem 287:43331-9;Gu et al., 2015, PLoS One 10(5):e0124135;Steinmetz et al., 2016, MAbs 8(5):867-78;Klein et al., 2016, mAbs, 8(6):1010-1020;Liu et al., 2017, Front. Immunol. 8:38;およびYang et al., 2017, Int. J. Mol. Sci. 18:48を参照されたい。
【0042】
一部の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、CrossMabである。CrossMab技術は、この参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、国際公開第2009/080251号パンフレット、国際公開第2009/080252号パンフレット、国際公開第2009/080253号パンフレット、国際公開第2009/080254号パンフレット、国際公開第2013/026833号パンフレット、国際公開第2016/020309号パンフレット、およびSchaefer et al., 2011, Proc Natl Acad Sci USA 108:11187-92で詳細に記載されている。簡単に言えば、CrossMab技術は、正しい鎖会合を促進する二重特異性IgGの1つのFabアーム内の重鎖と軽鎖との間のドメインの交差に基づく。本開示のCrossMab二重特異性抗体は、二重特異性IgG抗体の一方のアームのFab部分の重鎖および軽鎖が交換されている「CrossMabFAB」抗体であってもよい。他の実施形態において、本開示のCrossMab二重特異性抗体は、二重特異性IgG抗体の一方のアームのFab部分の重鎖および軽鎖の可変ドメインのみが交換されている「CrossMabVH−VL」抗体であってもよい。さらに他の実施形態において、本開示のCrossMab二重特異性抗体は、二重特異性IgG抗体の一方のアームのFab部分の重鎖および軽鎖の定常ドメインのみが交換されている「CrossMabCH1−CL」抗体であってもよい。CrossMabCH1−CL抗体は、CrossMabFABおよびCrossMabVH−VLとは対照的に、予測された副産物を有さず、それゆえに、一部の実施形態において、CrossMabCH1−CL二重特異性抗体が好ましい。Klein et al., 2016, mAbs, 8(6):1010-1020を参照されたい。本開示のCrossMabのさらなる実施形態は、セクション5.2で後述される。
【0043】
一部の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、制御されたFabアーム交換二重特異性抗体である。Fabアーム交換二重特異性抗体を作製するための方法は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、PCT国際公開第2011/131746号パンフレットおよびLabrijn et al., 2014 Nat Protoc. 9(10):2450-63に記載されている。簡単に言えば、制御されたFabアーム交換二重特異性抗体は、CH3ドメイン中に単一の一致する点突然変異を含有する2つの親IgG1を別々に発現させること、インビトロで、酸化還元条件下で親IgG1を混合して、半分の分子の組換えを可能にすること、および還元体を除去して鎖間のジスルフィド結合を再酸化し、それにより二重特異性抗体を形成することによって作製することができる。
【0044】
本開示の二重特異性抗体は、第1および第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含んでいてもよい。一実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。別の実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。より具体的な実施形態において、Fcドメインは、S228位におけるアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228P(Kabat EUインデックスの番号付け)を含むIgG Fcドメインである。このアミノ酸置換は、インビボにおいてIgG抗体のFabアーム交換を低減させる(Stubenrauch et al., 2010, Drug Metabolism and Disposition 38:84-91を参照)。さらなる特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。よりさらに特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。ヒトIgG Fc領域の例示的な配列は、配列番号42に示される。
【0045】
特定の実施形態において、Fcドメインは、Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も大規模なタンパク質−タンパク質相互作用の部位は、CH3ドメイン中にある。したがって、一実施形態において、前記改変は、FcドメインのCH3ドメイン中にある。
【0046】
具体的な実施形態において、前記Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進する改変は、いわゆる「ノブ−イントゥー−ホール(knob-into-hole)」改変であり、これは、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」の改変、およびFcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール(whole)」の改変を含む。ノブ−イントゥー−ホール技術は、例えば米国特許第5,731,168号明細書;米国特許第7,695,936号明細書;Ridgway et al., 1996, Prot Eng 9:617-621、およびCarter, J, 2001, Immunol Meth 248:7-15に記載されている。一般的に、本方法は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように、突起部が空洞に入ることができるように、第1のポリペプチドの境界に突起部(「ノブ」)、および第2のポリペプチドの境界に対応する空洞(「ホール」)を導入することを含む。突起部は、第1のポリペプチドの境界からの小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構築される。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えばアラニンまたはスレオニン)で置き換えることによって、第2のポリペプチドの境界に、突起部と同一または類似のサイズを有するそれに見合った空洞が作り出される。
【0047】
したがって、一部の実施形態において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン中のアミノ酸残基を、より大きい側鎖の体積を有するアミノ酸残基で置き換えることによって、第1のサブユニットのCH3ドメイン内に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に入ることができる突起部が生じ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン中のアミノ酸残基を、より小さい側鎖の体積を有するアミノ酸残基で置き換えることによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起部を入れることができる空洞が生じる。好ましくは、より大きい側鎖の体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)からなる群から選択される。好ましくは、より小さい側鎖の体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、およびバリン(V)からなる群から選択される。突起部および空洞は、例えば部位特異的突然変異誘発によってポリペプチドをコードする核酸を変更することにより、またはペプチド合成により作製することができる。例示的な置換は、Y470Tである。
【0048】
特定のこのような実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位におけるスレオニン残基は、トリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位におけるチロシン残基は、バリン残基で置き換えられ(Y407V)、任意選択で366位におけるスレオニン残基は、セリン残基で置き換えられ(T366S)、368位におけるロイシン残基は、アラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、加えて、354位におけるセリン残基は、システイン残基で置き換えられ(S354C)、または356位におけるグルタミン酸残基は、システイン残基で置き換えられ(E356C)(特に354位におけるセリン残基は、システイン残基で置き換えられている)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、加えて、349位におけるチロシン残基は、システイン残基によって置き換えられている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の実施形態において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354CおよびT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368AおよびY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0049】
一部の実施形態において、固定のステアリング(例えば、Gunasekaran et al., 2010, J Biol Chem 285(25):19637-46に記載される通り)を使用して、Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進することができる。
【0050】
一部の実施形態において、Fcドメインは、Fc受容体および/またはエフェクター機能への結合を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0051】
特定の実施形態において、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施形態において、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施形態において、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態において、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRIまたはFcγRIIaであり、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。一実施形態において、エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、およびサイトカイン分泌の群から選択される1つまたは複数である。特定の実施形態において、エフェクター機能は、ADCCである。
【0052】
典型的には、同じ1つまたは複数のアミノ酸置換は、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに存在する。一実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸置換は、FcドメインのFc受容体への結合親和性を低減する。一実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸置換は、FcドメインのFc受容体への結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、または少なくとも10分の1にする。
【0053】
一実施形態において、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331およびP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施形態において、Fcドメインは、L234、L235およびP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一部の実施形態において、Fcドメインは、アミノ酸置換L234AおよびL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような実施形態の一つにおいて、Fcドメインは、IgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施形態において、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態において、アミノ酸置換は、P329AまたはP329G、特にP329Gである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一実施形態において、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297およびP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施形態において、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297DまたはP331Sである。特定の実施形態において、Fcドメインは、P329、L234およびL235の位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より特定の実施形態において、Fcドメインは、アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329Gを含む(「P329G LALA」、「PGLALA」または「LALAPG」)。具体的には、特定の実施形態において、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329Gを含む(Kabat EUインデックスの番号付け)、すなわち、Fcドメインの第1および第2のサブユニットのそれぞれにおいて、234位におけるロイシン残基は、アラニン残基で置き換えられ(L234A)、235位におけるロイシン残基は、アラニン残基で置き換えられ(L235A)、329位におけるプロリン残基は、グリシン残基によって置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような実施形態の一つにおいて、Fcドメインは、IgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。
【0054】
本開示の単鎖ベースの二重特異性抗体は、当業界において公知の様々な種類の単鎖ベースの二重特異性抗体、例えば二重特異性T細胞誘導体(BiTE)(二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体)、ダイアボディ、タンデム(tandam)ダイアボディ(tandab)、二重親和性再標的化分子(DART:dual-affinity retargeting molecule)、および二重特異性キラー細胞誘導体のいずれかであり得る。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Loffler et al., 2000, Blood 95:2098-103;Holliger et al., 1993, Proc Natl Acad Sci USA, 90:6444-8;Kipriyanov et al., 1999, Mol Biol 293:41-56;Johnson et al., 2010, Mol Biol 399:436-49;Wiernik et al., 2013, Clin Cancer Res 19:3844-55;Liu et al., 2017, Front. Immunol. 8:38;およびYang et al., 2017, Int. J. Mol. Sci. 18:48を参照されたい。
【0055】
一部の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)である。BiTEは、2つの抗原結合ドメインを有する単一のポリペプチド鎖分子であり、抗原結合ドメインの一方がT細胞抗原に結合し、第2の抗原結合ドメインが標的の表面上に提示される抗原に結合する(参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、PCT国際公開第05/061547号パンフレット;Baeuerle et al., 2008, Drugs of the Future 33: 137-147;Bargou, et al., 2008, Science 321:974-977を参照)。したがって、本開示のBiTEは、T細胞抗原に結合する抗原結合ドメイン、およびグリコMUC1に向けられた第2の抗原結合ドメインを有する。
【0056】
一部の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、二重親和性再標的化分子(DART)である。DARTは、会合して(特に共有結合による相互作用を介して)少なくとも2つのエピトープ結合部位を形成する少なくとも2つのポリペプチド鎖を含み、これらのエピトープ結合部位は、同一のエピトープを認識してもよいし、または異なるエピトープを認識してもよい。DARTのポリペプチド鎖のそれぞれは、免疫グロブリン軽鎖可変領域および免疫グロブリン重鎖可変領域を含むが、これらの領域は、相互作用してエピトープ結合部位を形成しない。そうではなく、DARTポリペプチド鎖の一方の(例えば、第1の)免疫グロブリン重鎖可変領域は、異なる(例えば、第2の)DART(商標)ポリペプチド鎖の免疫グロブリン軽鎖可変領域と相互作用して、エピトープ結合部位を形成する。同様に、DARTポリペプチド鎖の一方の(例えば、第1の)の免疫グロブリン軽鎖可変領域は、DARTポリペプチド鎖の異なる(例えば、第2の)免疫グロブリン重鎖可変領域と相互作用して、エピトープ結合部位を形成する。DARTは、単一特異性、二重特異性、三重特異性などであってもよく、したがって、1、2、3またはそれより多くの異なるエピトープ(これらは、同じまたは異なる抗原のものであってもよい)と同時に結合することができる。DARTは、加えて、1価、2価、3価、4価、5価、6価などであってもよく、したがって、1、2、3、4、5、6つまたはそれより多くの分子と同時に結合することができる。DARTのこれら2つの特性(すなわち、特異性の程度および原子価を組み合わせて、例えば、4価の(すなわち、エピトープの4つのセットと結合することが可能な)二重特異性抗体(すなわち、2つのエピトープと結合することが可能な)などを産生することができる。DART分子は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、PCT国際公開第2006/113665号パンフレット、国際公開第2008/157379号パンフレット、および国際公開第2010/080538号パンフレットに開示されている。
【0057】
本開示の二重特異性抗体の一部の実施形態において、結合特異性の1つは、グリコMUC1に向けられ、他方は、免疫エフェクター細胞上で発現される抗原に向けられる。用語「免疫エフェクター細胞」または「エフェクター細胞」は、本明細書で使用される場合、活性化されて標的細胞の生存能に影響を与えることができる、哺乳類免疫系中の細胞の天然レパートリー内の細胞を指す。免疫エフェクター細胞としては、リンパ球系細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性T細胞を含むT細胞、またはB細胞が挙げられることに加えて、単球またはマクロファージ、樹状細胞および好中性顆粒球などの骨髄系細胞も、免疫エフェクター細胞とみなすことができる。したがって、前記エフェクター細胞は、好ましくは、NK細胞、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞または好中性顆粒球である。異常な細胞へのエフェクター細胞の補充は、エフェクター細胞が、それらが補充される異常な細胞を直接致死させるか、またはその致死を間接的に開始させることができるように、免疫エフェクター細胞が、異常な標的細胞に近接して取り込まれることを意味する。非特異的な相互作用を回避するために、本開示の二重特異性抗体は、体内の他の細胞と比較して、これらの免疫エフェクター細胞によって少なくとも過剰発現される免疫エフェクター細胞上の抗原を特異的に認識することが好ましい。免疫エフェクター細胞上に提示される標的抗原としては、CD3、CD8、CD16、CD25、CD28、CD64、CD89、NKG2DおよびNKp46を挙げることができる。好ましくは、免疫エフェクター細胞上の抗原は、T細胞上で発現されるCD3である。
【0058】
「CD3」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)およびげっ歯類(例えばマウスおよびラット)などの哺乳動物を含むあらゆる脊椎動物源由来のあらゆる天然CD3を指す。この用語は、「全長」のプロセシングされていないCD3に加えて、細胞中でのプロセシングに起因するCD3のあらゆる形態を包含する。この用語はまた、CD3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも包含する。免疫エフェクター細胞上の最も好ましい抗原は、CD3イプシロン鎖である。この抗原は、異常な細胞へのT細胞の補充において非常に有効であることが示されている。したがって、本開示の二重特異性抗体は、好ましくは、CD3イプシロンを特異的に認識する。ヒトCD3イプシロンのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)受託番号P07766(バージョン144)、またはNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1で示される。カニクイザル[カニクイザル(Macaca fascicularis)]CD3イプシロンのアミノ酸配列は、NCBI GenBank番号BAB71849.1で示される。ヒトの治療的使用の場合、CD3結合ドメインがヒトCD3(例えば、ヒトCD3イプシロン鎖)に特異的に結合する二重特異性抗体が使用される。非ヒト動物や細胞株における前臨床試験の場合、前臨床試験に利用される種(例えば、霊長類の試験の場合、カニクイザルCD3)においてCD3結合ドメインがCD3に特異的に結合する二重特異性抗体を使用することができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、特定の種由来の標的抗原に「特異的に結合する」またはそれを「特異的に認識する」結合ドメインは、他の種由来の抗原への結合またはその認識を除外せず、したがって、結合ドメインの1つまたは複数が種間の交差反応性を有する抗体を包含する。例えば、ヒトCD3に「特異的に結合する」またはそれを「特異的に認識する」CD3結合ドメインはまた、カニクイザル(cyomolgus)CD3に結合する、またはそれを認識することもでき、逆もまた同様である。
【0060】
一部の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、CD3のエピトープとの結合に関して、モノクローナル抗体H2C(PCT国際公開第2008/119567号パンフレットに記載される)と競合することができる。他の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、CD3のエピトープとの結合に関して、モノクローナル抗体V9(Rodrigues et al., 1992, Int J Cancer Suppl 7:45-50および米国特許第6,054,297号明細書に記載される)と競合することができる。さらに他の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、CD3のエピトープとの結合に関して、モノクローナル抗体FN18(Nooij et al., 1986, Eur J Immunol 19:981-984に記載される)と競合することができる。さらに他の実施形態において、本開示の二重特異性抗体は、CD3のエピトープとの結合に関して、モノクローナル抗体SP34(Pessano et al., 1985, EMBO J 4:337-340に記載される)と競合することができる。
【0061】
本開示の抗グリコMUC1抗体は、誘導体化された抗体を含む。例えば、ただし限定されないが、誘導体化された抗体は、典型的には、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解による切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結によって改変される。様々な化学修飾のいずれも、これらに限定されないが、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などの公知の技術によって行うことができる。加えて、誘導体は、例えばambrxの技術を使用して、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含有していてもよい(例えば、Wolfson, 2006, Chem. Biol. 13(10):1011-2を参照)。
【0062】
抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントは、少なくとも1つの定常領域が媒介する生物学的なエフェクター機能を変更するようにその配列が改変されている抗体またはフラグメントであり得る。例えば、一部の実施形態において、抗グリコMUC1抗体は、改変されていない抗体と比べて、少なくとも1つの定常領域が媒介する生物学的なエフェクター機能を低減するように改変されてもよく、例えば、Fc受容体(FcγR)への結合を低減するように改変される。FcγRへの結合は、FcγR相互作用に必要な特定の領域で抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによって低減させることができる(例えば、Canfield and Morrison, 1991, J. Exp. Med. 173:1483-1491;およびLund et al., 1991, J. Immunol. 147:2657-2662を参照)。抗体のFcγR結合能の低減はまた、FcγR相互作用を頼る他のエフェクター機能、例えばオプソニン化、貪食および抗原依存性細胞傷害(「ADCC」)も低減することができる。
【0063】
本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントは、少なくとも1つの定常領域が媒介する生物学的なエフェクター機能を獲得するか、または改変されていない抗体に比べて改善する、例えば、FcγR相互作用を強化するように改変された抗体および/または結合フラグメントを含む(例えば、米国特許出願公開第2006/0134709号明細書を参照)。例えば、本開示の抗グリコMUC1抗体は、対応する野生型定常領域より大きい親和性でFcγRIIA、FcγRIIBおよび/またはFcγRIIIAと結合する定常領域を有していてもよい。
【0064】
したがって、本開示の抗体は、オプソニン化、貪食、またはADCCの増加または減少を引き起こす生物学的活性における変更を有していてもよい。このような変更は、当業界において公知である。例えば、ADCC活性を低減する抗体における改変は、米国特許第5,834,597号明細書に記載されている。例示的なADCCを低下させるバリアントは、残基236が欠失し、残基234、235および237(EUの番号付けを使用)がアラニンで置換された「突然変異体3」に相当する(米国特許第5,834,597号明細書の図4に示される)。
【0065】
一部の実施形態において、本開示の抗グリコMUC1抗体は、低いレベルのフコースを有するか、またはフコースを欠く。フコースを欠く抗体は、特に低用量の抗体で、ADCC活性の強化との相関が示されている。Shields et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Shinkawa et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:3466-73を参照されたい。フコースが少ない抗体を調製する方法としては、ラット骨髄腫YB2/0細胞(ATCC CRL1662)での増殖が挙げられる。YB2/0細胞は、ポリペプチドのフコシル化に必要な酵素であるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8 mRNAを低いレベルで発現する。
【0066】
さらに別の態様において、抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントは、例えば、FcRn相互作用に関与する特定の領域で免疫グロブリン定常領域セグメントを突然変異させることによって、胎児Fc受容体、FcRnへのその結合親和性を増加または減少させる改変を含む(例えば、国際公開第2005/123780号パンフレットを参照)。特定の実施形態において、IgGクラスの抗グリコMUC1抗体は、重鎖定常領域のアミノ酸残基250、314、および428の少なくとも1つが、例えば250および428位、または250および314位、または314および428位、または250、314、および428位で、単独で、またはそれらのいずれかの組合せで置換されるように突然変異しており、具体的な組合せは250および428位である。250位の場合、置換されるアミノ酸残基は、スレオニン以外のいずれのアミノ酸残基であってもよく、例えば、これらに限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、またはチロシンなどであってもよい。314位の場合、置換されるアミノ酸残基は、ロイシン以外のいずれのアミノ酸残基であってもよく、例えば、これらに限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、またはチロシンなどであってもよい。428位の場合、置換されるアミノ酸残基は、メチオニン以外のいずれのアミノ酸残基であってもよく、例えば、これらに限定されないが、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、またはチロシンなどであってもよい。好適なアミノ酸置換の具体的な組合せは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,217,797号明細書の表1で特定されている。このような突然変異は、FcRnへの結合を増加させ、それにより抗体を分解から保護し、その半減期を増加させる。
【0067】
さらに他の態様において、本開示の抗原結合フラグメントの抗グリコMUC1抗体は、例えばJung and Pluckthun, 1997, Protein Engineering 10:9, 959-966;Yazaki et al., 2004, Protein Eng. Des Sel. 17(5):481-9. Epub 2004 Aug. 17;および米国特許出願第2007/0280931号明細書に記載されるように、その高度可変領域の1つまたは複数に挿入された1つまたは複数のアミノ酸を有する。
【0068】
診断適用に特に有用なさらに他の態様において、本開示の抗原結合フラグメントの抗グリコMUC1抗体は、検出可能な部分に取り付けられている。検出可能な部分としては、放射性部分、比色分子、蛍光部分、化学発光部分、抗原、酵素、検出可能なビーズ(例えば磁気または高電子密度(例えば、金)ビーズ)、または別の分子に結合する分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン))が挙げられる。
【0069】
放射性同位体または放射性核種は、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iを挙げることができる。
【0070】
蛍光標識としては、ローダミン、ランタニド蛍光、フルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、GFP(GFPは「Green Fluorescent Protein(緑色蛍光タンパク質)」を表す)、ダンシル、ウンベリフェロン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(phthaldehyde)、およびフルオレサミンを挙げることができる。
【0071】
酵素標識としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)、アルファ−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼおよびペルオキシダーゼを挙げることができる。
【0072】
化学発光標識または化学発光物質(chemiluminescer)、例えばイソルミノール、ルミノールおよびジオキセタン
【0073】
他の検出可能な部分としては、ビオチン、ジゴキシゲニンまたは5−ブロモデオキシウリジンなどの分子が挙げられる。
【0074】
特定の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、GO2またはGO2の重鎖および軽鎖可変領域を含む抗体もしくは抗原結合フラグメント(それぞれ配列番号3および4)と競合する。
【0075】
競合は、GO2と結合するグリコMUC1エピトープを発現する細胞で、またはGO2と結合するエピトープを含有するグリコシル化MUC1ペプチド、例えば、米国特許第6,465,220号明細書に記載される、GalNAc−T2、GalNAc−T4、およびGalNAc−T1でグリコシル化された60−merのペプチド(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)でアッセイすることができる。対照として、エピトープを発現しない細胞またはグリコシル化されていないペプチドを使用することができる。
【0076】
競合アッセイを行うことができる細胞としては、これらに限定されないが、乳がん細胞株MCF7またはT47D、およびグリコMUC1エピトープを発現するように操作される組換え細胞が挙げられる。1つの非限定的な例において、CHO IdID細胞は、UDP−Gal/GalNAcエピメラーゼを欠き、それぞれGalNAcおよびGalの外因性の付加の非存在下でGalNAcのO−グリコシル化およびガラクトシル化が不十分なものであり、これは、MUC1を発現するように操作され、GalNAcの非存在または存在下で増殖し、後者の場合、GO2が結合するMUC1のTnグリコフォームを発現する細胞を生じる。MUC1のグリコシル化されていない形態を発現する細胞は、陰性対照として使用することができる。
【0077】
競合に関するアッセイとしては、これらに限定されないが、放射活性物質標識によるイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、サンドイッチELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイおよびBiacoreアッセイが挙げられる。
【0078】
参照抗体と試験抗体との間の抗体競合アッセイ(種またはアイソタイプに関わりなく)を実行することにおいて、最初に、後続の同定が可能になるように、検出可能な標識、例えばフルオロフォア、ビオチンまたは酵素標識(または放射性標識でも)で参照を標識してもよい。この場合、グリコMUC1を発現する細胞は、標識されていない試験抗体とインキュベートされ、標識された参照抗体が添加され、結合した標識の強度が測定される。試験抗体が、オーバーラップするエピトープに結合することによって標識された参照抗体と競合する場合、強度は、試験抗体なしで行われた対照反応と比較して減少すると予想される。
【0079】
このアッセイの具体的な実施形態において、アッセイ条件(例えば、特定された細胞密度)下における最大の結合の80%をもたらす標識された参照抗体の濃度(「conc80%」)がまず決定され、競合アッセイは、標識されていない試験抗体の10×conc80%および標識された参照抗体のconc80%行われる。
【0080】
阻害は、阻害定数、またはKとして表すことができ、これは、以下の式:
=IC50/(1+[参照Ab濃度]/K
に従って計算され、式中、IC50は、参照抗体の結合の50%低減をもたらす試験抗体の濃度であり、Kは、参照抗体の解離定数であり、これは、グリコMUC1に対するその親和性の尺度である。本明細書で開示される抗グリコMUC1抗体と競合する抗体は、本明細書に記載されるアッセイ条件下で、10pMから10nMのKを有し得る。
【0081】
様々な実施形態において、使用される特定のアッセイ条件下で最大の結合の80%である参照抗体濃度、および参照抗体濃度の10倍高い試験抗体濃度で、少なくとも約20%またはそれより多く、例えば、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくはそれよりさらに多く、または前述の値のいずれかの間の範囲のパーセンテージで、試験抗体が参照抗体の結合を減少させる場合、試験抗体は参照抗体と競合するとみなされる。
【0082】
競合アッセイの一例では、グリコシル化MUC1である60−merのペプチドを、プレートをペプチドの溶液と接触させることによって(例えば、PBS中1μg/mLの濃度で4℃で一晩)、固体表面、例えばマイクロウェルプレート上に接着させる。プレートを洗浄し(例えば、PBS中の0.1%Tween 20)、ブロックする(例えば、Superblock、Thermo Scientific、Rockford,ILで)。ELISA緩衝液(例えば、PBS中の1%BSAおよび0.1%Tween 20)中の飽和未満の量のビオチン化GO2(例えば、80ng/mLの濃度での)および連続希釈した(例えば、2.8μg/mL、8.3μg/mL、または25μg/mLの濃度での)標識されていないGO2(「参照」抗体)または競合する抗グリコMUC1抗体(「試験」抗体)抗体の混合物をウェルに添加し、プレートを穏やかに振盪しながら1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、各ウェルにELISA緩衝液で希釈した1μg/mLのHRPがコンジュゲートしたストレプトアビジンを添加し、プレートを1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、基質(例えば、TMB、Biofx Laboratories Inc.、Owings Mills、MD)の添加によって結合した抗体を検出した。停止緩衝液(例えば、Bio FX Stop試薬、Biofx Laboratories Inc.、Owings Mills、MD)の添加によって反応を止め、マイクロプレートリーダー(例えば、VERSAmax、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して、吸光度を650nmで測定する。
【0083】
GO2と別の抗グリコMUC1抗体との競合を試験するのに、この競合アッセイにおけるバリエーションも使用することができる。例えば、特定の態様において、抗グリコMUC1抗体は参照抗体として使用され、GO2は試験抗体として使用される。加えて、グリコシル化MUC1である60−merのペプチドの代わりに、培養中に細胞表面上で(例えば上述の細胞型の1つの表面上で)発現される膜結合型グリコMUC1を使用してもよい。一般的に、約10から10個の形質転換体、例えば、約10個の形質転換体が使用される。競合アッセイの他の様式は当業界において公知であり、採用することができる。
【0084】
様々な実施形態において、本開示の抗グリコMUC1抗体は、抗グリコMUC1抗体が、0.08μg/mL、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、100μg/mLの濃度で、または前述の値のいずれかの間の範囲の濃度で(例えば、2μg/mLから10μg/mLの範囲の濃度で)使用される場合、標識されたGO2の結合を、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または前述の値のいずれかの間の範囲のパーセンテージで低減させる(例えば、本開示の抗グリコMUC1抗体は、標識されたGO2の結合を、50%から70%低減させる)。
【0085】
他の実施形態において、GO2が、0.4μg/mL、2μg/mL、10μg/mL、50μg/mL、250μg/mLの濃度で、または前述の値のいずれかの間の範囲の濃度で(例えば、2μg/mLから10μg/mLの範囲の濃度で)使用される場合、GO2は、本開示の標識された抗グリコMUC1抗体の結合を、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または前述の値のいずれかの間の範囲のパーセンテージで低減させる(例えば、GO2は、本開示の標識された抗グリコMUC1抗体の結合を、50%から70%低減させる)。
【0086】
前述のアッセイにおいて、GO2抗体は、GO2のCDRまたは重鎖および軽鎖可変領域を含むあらゆる抗体または抗原結合フラグメント、例えばGO2のヒト化またはキメラカウンターパートで置き換えることができる。
【0087】
特定の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、表1に記載の重鎖および/または軽鎖可変配列を含む(またはヌクレオチド配列によってコードされる)。他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、表1に記載の重鎖および/または軽鎖CDR配列を含む(またはヌクレオチド配列によってコードされる)。このような抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントのフレームワーク配列は、表1に記載の天然マウスフレームワーク配列であってもよいし、または非天然(例えば、ヒト化またはヒト)フレームワーク配列であってもよい。
【0088】
さらに他の態様において、本開示は、それぞれ配列番号3および4と少なくとも95%、98%、99%、または99.5%の配列同一性を有する重鎖および軽鎖可変領域を有する抗MUC1抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
【0089】
さらに他の態様において、本開示の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)である。例示的なscFvは、軽鎖可変フラグメントのN末端側に重鎖可変フラグメントを含む。一部の実施形態において、scFvの重鎖可変フラグメントおよび軽鎖可変フラグメントは、4〜15アミノ酸のリンカー配列に共有結合している。scFvは、二重特異性T細胞誘導体の形態であってもよいし、またはキメラ抗原受容体(CAR)内であってもよい。
【0090】
5.2 抗グリコMUC1および抗CD3二重特異性抗体
一部の態様において、本開示の二重特異性抗体は、CD3(例えば、表4に記載のCDRまたはVHおよびVLを含むもの)に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、およびグリコMUC1に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含んでいてもよい。第2の抗原結合ドメインは、上記でグリコMUC1抗体に関して記載された特徴を、単独で、または組み合わせて含んでいてもよい(例えば、表1〜3で同定されたCDRの組合せ、例えば下記の番号付けされた実施形態3から17に記載のCDR組合せのいずれかのアミノ酸配列を含むCDRの組合せ、または表1で特定されたVHおよびVL配列を含む)。
【0091】
【表4-1】
【0092】
【表4-2】
【0093】
一部の実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号34の重鎖CDR−H1、配列番号35のCDR−H2、および配列番号36のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号37の軽鎖CDR−L1、配列番号38のCDR−L2および配列番号39のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0094】
一部の実施形態において、第2の抗原結合ドメインは、例えば番号付けされた実施形態3から17に記載のCDR組合せのいずれかのアミノ酸配列を含むCDR、例えば(i)配列番号5の重鎖CDR−H1、配列番号6のCDR−H2、および配列番号7のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号8の軽鎖CDR(CDR−L)1、配列番号9のCDR−L2および配列番号10のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0095】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、
(i)CD3に特異的に結合し、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR−H1、配列番号35のアミノ酸配列を含むCDR−H2、および配列番号36のアミノ酸配列を含むCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む、第1の抗原結合ドメイン;ならびに
(ii)グリコMUC1に特異的に結合し、(i)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−H1、より好ましくは配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR−H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、より好ましくは配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR−H1、および配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3、より好ましくは配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR−L2および配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3、より好ましくは配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む、第2の抗原結合ドメイン
を含む。
【0096】
一部の実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む。
【0097】
一部の実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号40の重鎖可変領域配列および配列番号41の軽鎖可変領域配列を含む。
【0098】
一部の実施形態において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む。
【0099】
一部の実施形態において、第2の抗原結合ドメインは、配列番号3の重鎖可変領域配列および配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。
【0100】
一部の実施形態において、第1および/または第2の抗原結合ドメインは、Fab分子である。一部の実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変または定常領域のいずれかが交換されている交差Fab分子である。このような実施形態において、第2の抗原結合ドメインは、好ましくは、従来のFab分子である。
【0101】
一部の実施形態において、二重特異性抗体の第1および第2の抗原結合ドメインが両方ともFab分子であり、抗原結合ドメインの一方(特に第1の抗原結合ドメイン)において、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変ドメインVLおよびVHが互いに置き換えられており、
i)第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、正電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、負電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);または
ii)第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、正電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、負電荷を有するアミノ酸で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0102】
二重特異性抗体は、i)およびii)で述べる改変の両方を含まない。VH/VLの交換を有する抗原結合ドメインの定常ドメインCLおよびCH1は、互いに置き換えられていない(すなわち、それらは交換されないままである)。
【0103】
より具体的な実施形態において、
i)第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);または
ii)第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0104】
このような実施形態の一つにおいて、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0105】
さらなる実施形態において、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0106】
特定の実施形態において、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0107】
さらに特定の実施形態において、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0108】
よりさらに特定の実施形態において、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、アルギニン(R)で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0109】
特定の実施形態において、上記の実施形態によるアミノ酸置換が、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLおよび定常ドメインCH1においてなされる場合、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLは、カッパアイソタイプの定常ドメインCLである。
【0110】
一部の実施形態において、第1および第2の抗原結合ドメインは、任意選択でペプチドリンカーを介して、互いに融合している。
【0111】
一部の実施形態において、第1および第2の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、(i)第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているか、または(ii)第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているかのいずれかである。
【0112】
一部の実施形態において、二重特異性抗体は、CD3への1価の結合を提供する。
【0113】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、CD3に特異的に結合する単一の抗原結合ドメイン、およびグリコMUC1に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインを含む。したがって、一部の実施形態において、二重特異性抗体は、グリコMUC1に特異的に結合する第3の抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態において、第3の抗原部分は、第1の抗原結合ドメインと同一である(例えば、Fab分子でもあり、同じアミノ酸配列を含む)。
【0114】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、第1および第2のサブユニットで構成されるFcドメインをさらに含む。一実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。別の実施形態において、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。より具体的な実施形態において、Fcドメインは、S228位におけるアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG Fcドメインである(Kabat EUインデックスの番号付け)。さらなる特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。よりさらに特定の実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。ヒトIgG Fc領域の例示的な配列は、配列番号42に示される。
【0115】
一部の実施形態において、第1、第2、および存在する場合、第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、(a)(i)第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているか、または(ii)第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているかのいずれかであり;(b)第3の抗原結合ドメインは、存在する場合、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。
【0116】
特定の実施形態において、Fcドメインは、例えば、セクション5.1に記載される通り、Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。
【0117】
一部の実施形態において、Fcドメインは、例えばセクション5.1に記載されるような、Fc受容体および/またはエフェクター機能への結合を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。
【0118】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、
(i)CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、交差Fab分子であり、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変または定常領域のいずれか、特に可変領域は、交換されている、第1の抗原結合ドメイン;
(ii)グリコMUC1に特異的に結合する第2および第3の抗原結合ドメインであって、配列番号5の重鎖CDR−H1、配列番号6のCDR−H2、および配列番号7のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号8の軽鎖CDR−L1、配列番号9のCDR−L2および配列番号10のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含み、第2および第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、特に従来のFab分子である、第2および第3の抗原結合ドメイン;
(iii)安定な会合が可能な、第1および第2のサブユニットで構成されるFcドメイン
を含み、
第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。
【0119】
一実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号34の重鎖CDR−H1、配列番号35のCDR−H2、および配列番号36のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号37の軽鎖CDR−L1、配列番号38のCDR−L2および配列番号39のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0120】
一実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む。
【0121】
一実施形態において、第1の抗原結合ドメインは、配列番号40の重鎖可変領域配列および配列番号41の軽鎖可変領域配列を含む。
【0122】
一実施形態において、第2および第3の抗原結合ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む。好ましくは、抗原結合ドメインは、番号付けされた実施形態3から17に記載のCDR組合せのいずれかのアミノ酸配列を含むCDRを含む。一実施形態において、第2および第3の抗原結合ドメインは、配列番号3の重鎖可変領域および配列番号4の軽鎖可変領域を含む。
【0123】
上記の実施形態によるFcドメインは、Fcドメインに関して上記で説明した特徴の全てを単独で、または組み合わせて含んでいてもよい。
【0124】
一部の実施形態において、抗原結合ドメインおよびFc領域は、ペプチドリンカーによって、例えば配列番号45および配列番号46におけるようなペプチドリンカーによって、互いに融合している。
【0125】
一実施形態において、(ii)の第2および第3のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、リシン(K)またはアルギニン(R)で、特にアルギニン(R)で置換されており(Kabatによる番号付け)、(ii)の第2および第3のFab分子の定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0126】
一実施形態において、二重特異性抗体は、配列番号43の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一な配列を含むポリペプチド(好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む)、配列番号44の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一な配列を含むポリペプチド(好ましくは、表4に記載のCD3重鎖および軽鎖CDR配列を含む)、配列番号45の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一な配列を含むポリペプチド(好ましくは、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3を含む)、および配列番号46の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一な配列を含むポリペプチド(好ましくは、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3、配列番号37のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号38のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む)を含む。
【0127】
一実施形態において、二重特異性抗体は、配列番号43の配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、配列番号44の配列を含むポリペプチド、配列番号45の配列を含むポリペプチド、および配列番号46の配列を含むポリペプチドを含む。
【0128】
5.3 抗体−薬物コンジュゲート
本開示の別の態様は、本開示の抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメントを含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)に関する。ADCは、一般的に、1つまたは複数のリンカーを介して1つまたは複数の細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質がそれに連結された、本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体および/または結合フラグメントを含む。具体的な実施形態において、ADCは、構造式(I):
[D−L−XY]−Ab
による化合物またはその塩であり、式中、各「D」は、それぞれ独立して、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質(「薬物」)を表し;各「L」は、それぞれ独立して、リンカーを表し;「Ab」は、抗グリコMUC1抗原結合ドメイン、例えば本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントを表し;各「XY」は、リンカー上の官能基Rと抗体上の「相補的」官能基Rとの間で形成された連結を表し、nは、ADCに連結された薬物の数、またはADCの薬物対抗体の比率(DAR)を表す。
【0129】
ADCを含み得る様々な抗体(Ab)の具体的な実施形態は、上述した抗グリコMUC1抗体および/または結合フラグメントの様々な実施形態を含む。
【0130】
構造式(I)のADCおよび/または塩の一部の具体的な実施形態において、各Dが同じであり、および/または各Lが同じである。
【0131】
本開示の抗グリコMUC1 ADCを構成し得る細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質(D)およびリンカー(L)に加えて、ADCに連結された多数の細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質の具体的な実施形態を、以下でより詳細に説明する。
【0132】
5.3.1.細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質
細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、細胞、特にがんおよび/または腫瘍細胞の増殖および/または複製を阻害する、および/またはそのような細胞を致死させることがわかっているあらゆる薬剤であり得る。細胞傷害性および/または細胞増殖抑制特性を有する多数の薬剤が文献公知である。細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質のクラスの非限定的な例としては、一例として、これらに限定されないが、放射性核種、アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、DNA挿入剤(例えば、副溝結合剤、例えば副溝バインダー)、RNA/DNA代謝拮抗物質、細胞周期モジュレーター、キナーゼ阻害剤、タンパク質合成阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ミトコンドリア阻害剤、および抗有糸分裂剤が挙げられる。
【0133】
これらの様々なクラスのうち特定のものの範囲内の薬剤の具体的な非限定的な例を以下に示す。
【0134】
アルキル化剤:アサレー(asaley)((L−ロイシン、N−[N−アセチル−4−[ビス−(2−クロロエチル)アミノ]−DL−フェニルアラニル]−、エチルエステル;NSC167780;CAS登録番号3577897));AZQ((1,4−シクロヘキサジエン−1,4−ジカルバミン酸、2,5−ビス(1−アジリジニル)−3,6−ジオキソ−、ジエチルエステル;NSC182986;CAS登録番号57998682));BCNU((N,N’−ビス(2−クロロエチル)−N−ニトロソウレア;NSC409962;CAS登録番号154938));ブスルファン(1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート;NSC750;CAS登録番号55981);(カルボキシフタラト)白金(NSC27164;CAS登録番号65296813);CBDCA((cis−(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)ジアンミン白金(II));NSC241240;CAS登録番号41575944));CCNU((N−(2−クロロエチル)−N’−シクロヘキシル−N−ニトロソウレア;NSC79037;CAS登録番号13010474));CHIP(イプロプラチン;NSC256927);クロラムブシル(NSC3088;CAS登録番号305033);クロロゾトシン((2−[[[(2−クロロエチル)ニトロソアミノ]カルボニル]アミノ]−2−デオキシ−D−グルコピラノース;NSC178248;CAS登録番号54749905));シスプラチン(シスプラチン;NSC119875;CAS登録番号15663271);クロメソン(clomesone)(NSC338947;CAS登録番号88343720);シアノモルホリノドキソルビシン(NCS357704;CAS登録番号88254073);シクロジソン(cyclodisone)(NSC348948;CAS登録番号99591738);ジアンヒドロガラクチトール(5,6−ジエポキシズルシトール;NSC132313;CAS登録番号23261203);フルオロドパン(fluorodopan)((5−[(2−クロロエチル)−(2−フルオロエチル)アミノ]−6−メチル−ウラシル;NSC73754;CAS登録番号834913);ヘプスルファム(NSC329680;CAS登録番号96892578);ヒカントン(NSC142982;CAS登録番号23255938);メルファラン(NSC8806;CAS登録番号3223072);メチルCCNU((1−(2−クロロエチル)−3−(trans−4−メチルシクロヘキサン)−1−ニトロソウレア;NSC95441;13909096);マイトマイシンC(NSC26980;CAS登録番号50077);ミトゾロミド(mitozolamide)(NSC353451;CAS登録番号85622953);ナイトロジェンマスタード((ビス(2−クロロエチル)メチルアミンヒドロクロリド;NSC762;CAS登録番号55867);PCNU((1−(2−クロロエチル)−3−(2,6−ジオキソ−3−ピペリジル)−1−ニトロソウレア;NSC95466;CAS登録番号13909029));ピペラジンアルキル化薬((1−(2−クロロエチル)−4−(3−クロロプロピル)−ピペラジンジヒドロクロリド;NSC344007));ピペラジンジオン(NSC135758;CAS登録番号41109802);ピポブロマン((N,N−ビス(3−ブロモプロピオニル)ピペラジン;NSC25154;CAS登録番号54911));ポルフィロマイシン(N−メチルマイトマイシンC;NSC56410;CAS登録番号801525);スピロヒダントインマスタード(NSC172112;CAS登録番号56605164);テロキシロン(teroxirone)(トリグリシジルイソシアヌレート;NSC296934;CAS登録番号2451629);テトラプラチン(NSC363812;CAS登録番号62816982);チオテパ(N,N’,N’’−トリ−1,2−エタンジイルチオホスホルアミド;NSC6396;CAS登録番号52244);トリエチレンメラミン(NSC9706;CAS登録番号51183);ウラシルナイトロジェンマスタード(デスメチルドパン(desmethyldopan);NSC34462;CAS登録番号66751);Yoshi−864((ビス(3−メシルオキシプロピル)アミンヒドロクロリド;NSC102627;CAS登録番号3458228)。
【0135】
トポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシン(NSC94600;CAS登録番号7689−03−4);様々なカンプトテシン誘導体および類似体(例えば、NSC100880、NSC603071、NSC107124、NSC643833、NSC629971、NSC295500、NSC249910、NSC606985、NSC74028、NSC176323、NSC295501、NSC606172、NSC606173、NSC610458、NSC618939、NSC610457、NSC610459、NSC606499、NSC610456、NSC364830、およびNSC606497);モルホリンイソキソルビシン(morpholinisoxorubicin)(NSC354646;CAS登録番号89196043);SN−38(NSC673596;CAS登録番号86639−52−3)。
【0136】
トポイソメラーゼII阻害剤:ドキソルビシン(NSC123127;CAS登録番号25316409);アモナフィド(ベンゾイソキノリンジオン;NSC308847;CAS登録番号69408817);m−AMSA((4’−(9−アクリジニルアミノ)−3’−メトキシメタンスルホンアニリド;NSC249992;CAS登録番号51264143));アントラピラゾール誘導体((NSC355644);エトポシド(VP−16;NSC141540;CAS登録番号33419420);ピラゾロアクリジン((ピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2(6H)−プロパンアミン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロ−、モノメタンスルホネート;NSC366140;CAS登録番号99009219);ビサントレンヒドロクロリド(NSC337766;CAS登録番号71439684);ダウノルビシン(NSC821151;CAS登録番号23541506);デオキシドキソルビシン(NSC267469;CAS登録番号63950061);ミトキサントロン(NSC301739;CAS登録番号70476823);メノガリル(NSC269148;CAS登録番号71628961);N,N−ジベンジルダウノマイシン(NSC268242;CAS登録番号70878512);オキサントラゾール(oxanthrazole)(NSC349174;CAS登録番号105118125);ルビダゾン(rubidazone)(NSC164011;CAS登録番号36508711);テニポシド(VM−26;NSC122819;CAS登録番号29767202)。
【0137】
DNA挿入剤:アントラマイシン(CAS登録番号4803274);チカマイシンA(CAS登録番号89675376);トマイマイシン(CAS登録番号35050556);DC−81(CAS登録番号81307246);シビロマイシン(CAS登録番号12684332);ピロロベンゾジアゼピン誘導体(CAS登録番号945490095);SGD−1882((S)−2−(4−アミノフェニル)−7−メトキシ−8−(3−4(S)−7−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−5−オキソ−5,11a−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−8−イル)オキシ)プロポキシ)−1H−ベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5(11aH)−オン);SG2000(SJG−136;(11aS,11a’S)−8,8’−(プロパン−1,3−ジイルビス(オキシ))ビス(7−メトキシ−2−メチレン−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[e]ピロロ[1,2−a][1,4]ジアゼピン−5(11aH)−オン);NSC694501;CAS登録番号232931576)。
【0138】
RNA/DNA代謝拮抗物質:L−アラノシン(NSC153353;CAS登録番号59163416);5−アザシチジン(NSC102816;CAS登録番号320672);5−フルオロウラシル(NSC19893;CAS登録番号51218);アシビシン(NSC163501;CAS登録番号42228922);アミノプテリン誘導体N−[2−クロロ−5−[[(2,4−ジアミノ−5−メチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル−]L−アスパラギン酸(NSC132483);アミノプテリン誘導体N−[4−[[(2,4−ジアミノ−5−エチル−6−キナゾリニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]L−アスパラギン酸(NSC184692);アミノプテリン誘導体N−[2−クロロ−4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]L−アスパラギン酸一水和物(NSC134033);葉酸代謝拮抗薬(antifo)((Nα−(4−アミノ−4−デオキシプテロイル)−N−ヘミフタロイル−L−オルニチン;NSC623017));ベーカー(Baker)の可溶性葉酸代謝拮抗薬(antifol)(NSC139105;CAS登録番号41191042);ジクロロアリルローソン(lawsone)((2−(3,3−ジクロロアリル)−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン;NSC126771;CAS登録番号36417160);ブレキナル(NSC368390;CAS登録番号96201886);フトラフル((プロドラッグ;5−フルオロ−1−(テトラヒドロ−2−フリル)−ウラシル;NSC148958;CAS登録番号37076689);5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン(NSC264880;CAS登録番号62402317);メトトレキセート(NSC740;CAS登録番号59052);メトトレキセート誘導体(N−[[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]−1−ナフタレニル]カルボニル]L−グルタミン酸;NSC174121);PALA((N−(ホスホノアセチル)−L−アスパルテート;NSC224131;CAS登録番号603425565);ピラゾフリン(NSC143095;CAS登録番号30868305);トリメトレキセート(NSC352122;CAS登録番号82952645)。
【0139】
DNA代謝拮抗物質:3−HP(NSC95678;CAS登録番号3814797);2’−デオキシ−5−フルオロウリジン(NSC27640;CAS登録番号50919);5−HP(NSC107392;CAS登録番号19494894);α−TGDR(α−2’−デオキシ−6−チオグアノシン;NSC71851 CAS登録番号2133815);アフィジコリングリシネート(NSC303812;CAS登録番号92802822);ara C(シトシンアラビノシド;NSC63878;CAS登録番号69749);5−アザ−2’−デオキシシチジン(NSC127716;CAS登録番号2353335);β−TGDR(β−2’−デオキシ−6−チオグアノシン;NSC71261;CAS登録番号789617);シクロシチジン(NSC145668;CAS登録番号10212256);グアナゾール(NSC1895;CAS登録番号1455772);ヒドロキシ尿素(NSC32065;CAS登録番号127071);イノシングリコジアルデヒド(NSC118994;CAS登録番号23590990);マクベシンII(NSC330500;CAS登録番号73341738);ピラゾロイミダゾール(NSC51143;CAS登録番号6714290);チオグアニン(NSC752;CAS登録番号154427);チオプリン(NSC755;CAS登録番号50442)。
【0140】
細胞周期モジュレーター:シリビニン(CAS登録番号22888−70−6);没食子酸エピガロカテキン(EGCG;CAS登録番号989515);プロシアニジン誘導体(例えば、プロシアニジンA1[CAS登録番号103883030]、プロシアニジンB1[CAS登録番号20315257]、プロシアニジンB4[CAS登録番号29106512]、アレカタニン(arecatannin)B1[CAS登録番号79763283]);イソフラボン(例えば、ゲニステイン[4%5,7−トリヒドロキシイソフラボン;CAS登録番号446720]、ダイゼイン[4’,7−ジヒドロキシイソフラボン、CAS登録番号486668];インドール−3−カルビノール(CAS登録番号700061);ケルセチン(NSC9219;CAS登録番号117395);エストラムスチン(NSC89201;CAS登録番号2998574);ノコダゾール(CAS登録番号31430189);ポドフィロトキシン(CAS登録番号518285);酒石酸ビノレルビン(NSC608210;CAS登録番号125317397);クリプトフィシン(NSC667642;CAS登録番号124689652)。
【0141】
キナーゼ阻害剤:アファチニブ(CAS登録番号850140726);アキシチニブ(CAS登録番号319460850);ARRY−438162(ビニメチニブ)(CAS登録番号606143899);ボスチニブ(CAS登録番号380843754);カボザンチニブ(CAS登録番号1140909483);セリチニブ(CAS登録番号1032900256);クリゾチニブ(CAS登録番号877399525);ダブラフェニブ(CAS登録番号1195765457);ダサチニブ(NSC732517;CAS登録番号302962498);エルロチニブ(NSC718781;CAS登録番号183319699);エベロリムス(NSC733504;CAS登録番号159351696);フォスタマチニブ(NSC745942;CAS登録番号901119355);ゲフィチニブ(NSC715055;CAS登録番号184475352);イブルチニブ(CAS登録番号936563961);イマチニブ(NSC716051;CAS登録番号220127571);ラパチニブ(CAS登録番号388082788);レンバチニブ(CAS登録番号857890392);ムブリチニブ(CAS366017096);ニロチニブ(CAS登録番号923288953);ニンテダニブ(CAS登録番号656247175);パルボシクリブ(CAS登録番号571190302);パゾパニブ(NSC737754;CAS登録番号635702646);ペガプタニブ(CAS登録番号222716861);ポナチニブ(CAS登録番号1114544318);ラパマイシン(NSC226080;CAS登録番号53123889);レゴラフェニブ(CAS登録番号755037037);AP23573(リダフォロリムス)(CAS登録番号572924540);INCB018424(ルキソリチニブ)(CAS登録番号1092939177);ARRY−142886(セルメチニブ)(NSC741078;CAS登録番号606143−52−6);シロリムス(NSC226080;CAS登録番号53123889);ソラフェニブ(NSC724772;CAS登録番号475207591);スニチニブ(NSC736511;CAS登録番号341031547);トファシチニブ(CAS登録番号477600752);テムシロリムス(NSC683864;CAS登録番号163635043);トラメチニブ(CAS登録番号871700173);バンデタニブ(CAS登録番号443913733);ベムラフェニブ(CAS登録番号918504651);SU6656(CAS登録番号330161870);CEP−701(レスタウルチニブ(lesaurtinib))(CAS登録番号111358884);XL019(CAS登録番号945755566);PD−325901(CAS登録番号391210109);PD−98059(CAS登録番号167869218);ATP競合TORC1/TORC2阻害剤、例えばPI−103(CAS登録番号371935749)、PP242(CAS登録番号1092351671)、PP30(CAS登録番号1092788094)、Torin 1(CAS登録番号1222998368)、LY294002(CAS登録番号154447366)、XL−147(CAS登録番号934526893)、CAL−120(CAS登録番号870281348)、ETP−45658(CAS登録番号1198357797)、PX866(CAS登録番号502632668)、GDC−0941(CAS登録番号957054307)、BGT226(CAS登録番号1245537681)、BEZ235(CAS登録番号915019657)、XL−765(CAS登録番号934493762)など。
【0142】
タンパク質合成阻害剤:アクリフラビン(CAS登録番号65589700);アミカシン(NSC177001;CAS登録番号39831555);アルベカシン(CAS登録番号51025855);アストロマイシン(CAS登録番号55779061);アジスロマイシン(NSC643732;CAS登録番号83905015);ベカナマイシン(CAS登録番号4696768);クロルテトラサイクリン(NSC13252;CAS登録番号64722);クラリスロマイシン(NSC643733;CAS登録番号81103119);クリンダマイシン(CAS登録番号18323449);クロモサイクリン(CAS登録番号1181540);シクロヘキシミド(CAS登録番号66819);ダクチノマイシン(NSC3053;CAS登録番号50760);ダルフォプリスチン(CAS登録番号112362502);デメクロサイクリン(CAS登録番号127333);ジベカシン(CAS登録番号34493986);ジヒドロストレプトマイシン(CAS登録番号128461);ジリスロマイシン(CAS登録番号62013041);ドキシサイクリン(CAS登録番号17086281);エメチン(NSC33669;CAS登録番号483181);エリスロマイシン(NSC55929;CAS登録番号114078);フルリスロマイシン(CAS登録番号83664208);フラマイセチン(ネオマイシンB;CAS登録番号119040);ゲンタマイシン(NSC82261;CAS登録番号1403663);グリシルシクリン、例えばチゲサイクリン(CAS登録番号220620097);ハイグロマイシンB(CAS登録番号31282049);イセパマイシン(CAS登録番号67814760);ジョサマイシン(NSC122223;CAS登録番号16846245);カナマイシン(CAS登録番号8063078);ケトライド、例えばテリスロマイシン(CAS登録番号191114484)、セスロマイシン(CAS登録番号205110481)、およびソリスロマイシン(CAS登録番号760981837);リンコマイシン(CAS登録番号154212);ライムサイクリン(CAS登録番号992212);メクロサイクリン(NSC78502;CAS登録番号2013583);メタサイクリン(ロンドマイシン(rondomycin);NSC356463;CAS登録番号914001);ミデカマイシン(CAS登録番号35457808);ミノサイクリン(NSC141993;CAS登録番号10118908);ミオカマイシン(CAS登録番号55881077);ネオマイシン(CAS登録番号119040);ネチルマイシン(CAS登録番号56391561);オレアンドマイシン(CAS登録番号3922905);オキサゾリジノン、例えばエペレゾリド(CAS登録番号165800044)、リネゾリド(CAS登録番号165800033)、ポジゾリド(posizolid)(CAS登録番号252260029)、ラデゾリド(CAS登録番号869884786)、ランベゾリド(ranbezolid)(CAS登録番号392659380)、ステゾリド(CAS登録番号168828588)、テジゾリド(CAS登録番号856867555);オキシテトラサイクリン(NSC9169;CAS登録番号2058460);パロモマイシン(CAS登録番号7542372);ペニメピサイクリン(CAS登録番号4599604);ペプチジルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、クロラムフェニコール(NSC3069;CAS登録番号56757)ならびにアジダムフェニコール(CAS登録番号13838089)、フロルフェニコール(CAS登録番号73231342)、およびチアンフェニコール(CAS登録番号15318453)、およびプロイロムチリン、例えばレタパムリン(CAS登録番号224452668)、チアムリン(CAS登録番号55297955)、バルネムリン(CAS登録番号101312929)などの誘導体;ピルリマイシン(CAS登録番号79548735);ピューロマイシン(NSC3055;CAS登録番号53792);キヌプリスチン(CAS登録番号120138503);リボスタマイシン(CAS登録番号53797356);ロキタマイシン(CAS登録番号74014510);ロリテトラサイクリン(CAS登録番号751973);ロキシスロマイシン(CAS登録番号80214831);シソマイシン(CAS登録番号32385118);スペクチノマイシン(CAS登録番号1695778);スピラマイシン(CAS登録番号8025818);ストレプトグラミン、例えばプリスチナマイシン(CAS登録番号270076603)、キヌプリスチン/ダルホプリスチン(CAS登録番号126602899)、およびバージニアマイシン(CAS登録番号11006761);ストレプトマイシン(CAS登録番号57921);テトラサイクリン(NSC108579;CAS登録番号60548);トブラマイシン(CAS登録番号32986564);トロレアンドマイシン(CAS登録番号2751099);タイロシン(CAS登録番号1401690);ベルダマイシン(verdamicin)(CAS登録番号49863481)。
【0143】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤:アベキシノスタット(CAS登録番号783355602);ベリノスタット(NSC726630;CAS登録番号414864009);チダミド(chidamide)(CAS登録番号743420022);エンチノスタット(CAS登録番号209783802);ギビノスタット(givinostat)(CAS登録番号732302997);モセチノスタット(CAS登録番号726169739);パノビノスタット(CAS登録番号404950807);キシノスタット(CAS登録番号875320299);レスミノスタット(CAS登録番号864814880);ロミデプシン(CAS登録番号128517077);スルホラファン(CAS登録番号4478937);チオウレイドブチロニトリル(Kevetrin(商標);CAS登録番号6659890);バルプロ酸(NSC93819;CAS登録番号99661);ボリノスタット(NSC701852;CAS登録番号149647789);ACY−1215(ロシリノスタット(rocilinostat);CAS登録番号1316214524);CUDC−101(CAS登録番号1012054599);CHR−2845(テフィノスタット(tefinostat);CAS登録番号914382608);CHR−3996(CAS登録番号1235859138);4SC−202(CAS登録番号910462430);CG200745(CAS登録番号936221339);SB939(プラシノスタット;CAS登録番号929016966)。
【0144】
ミトコンドリア阻害剤:パンクラチスタチン(NSC349156;CAS登録番号96281311);ローダミン−123(CAS登録番号63669709);エデルフォシン(edelfosine)(NSC324368;CAS登録番号70641519);d−アルファ−コハク酸トコフェロール(NSC173849;CAS登録番号4345033);化合物11β(CAS登録番号865070377);アスピリン(NSC406186;CAS登録番号50782);エリプチシン(CAS登録番号519233);ベルベリン(CAS登録番号633658);セルレニン(CAS登録番号17397896);GX015−070(Obatoclax(登録商標);1H−インドール、2−(2−((3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−イル)メチレン)−3−メトキシ−2H−ピロール−5−イル)−;NSC729280;CAS登録番号803712676);セラストロール(トリプテリン;CAS登録番号34157830);メトホルミン(NSC91485;CAS登録番号1115704);ブリリアントグリーン(NSC5011;CAS登録番号633034);ME−344(CAS登録番号1374524556)。
【0145】
抗有糸分裂剤:アロコルヒチン(allocolchicine)(NSC406042);オーリスタチン、例えばMMAE(モノメチルオーリスタチンE;CAS登録番号474645−27−7)およびMMAF(モノメチルオーリスタチンF;CAS登録番号745017−94−1;ハリコンドリンB(NSC609395);コルヒチン(NSC757;CAS登録番号64868);コルヒチン(cholchicine)誘導体(N−ベンゾイル−デアセチルベンズアミド;NSC33410;CAS登録番号63989753);ドラスタチン10(NSC376128;CAS登録番号110417−88−4);メイタンシン(NSC153858;CAS登録番号35846−53−8);リゾキシン(rhozoxin)(NSC332598;CAS登録番号90996546);タキソール(NSC125973;CAS登録番号33069624);タキソール誘導体((2’−N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]グルタメート(glutaramate)タキソール;NSC608832);チオコルヒチン(3−デメチルチオコルヒチン;NSC361792);トリチルシステイン(NSC49842;CAS登録番号2799077);硫酸ビンブラスチン(NSC49842;CAS登録番号143679);硫酸ビンクリスチン(NSC67574;CAS登録番号2068782)。
【0146】
これらの薬剤のうち、抗体への取り付け部位を含むか、または抗体への取り付け部位を含むように改変できるものはいずれも、本明細書で開示されるADCに含めることができる。
【0147】
具体的な実施形態において、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、抗有糸分裂剤である。
【0148】
別の具体的な実施形態において、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、オーリスタチン、例えば、モノメチルオーリスタチンE(「MMAE」)またはモノメチルオーリスタチンF(「MMAF」)である。
【0149】
5.3.2.リンカー
本開示の抗グリコMUC1 ADCにおいて、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、リンカーによって抗体に連結されている。ADCの抗体に細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を連結するリンカーは、短い、長い、疎水性、親水性、フレキシブルな、または硬いリンカーであってもよく、またはリンカーが異なる特性を有するセグメントを含み得るように、それぞれ独立して上述の特性の1つまたは複数を有するセグメントで構成されていてもよい。リンカーは、それらが1つより多くの薬剤を抗体上の単一の部位に共有結合で連結するように多価であってもよいし、またはそれらが単一の薬剤を抗体上の単一の部位に共有結合で連結するように1価であってもよい。
【0150】
当業者は理解していると予想されるように、リンカーは、一方の位置で細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質への共有結合による連結を形成し、他方の位置で抗体への共有結合による連結を形成することによって、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を抗体に連結する。共有結合による連結は、リンカー上の官能基と薬剤および抗体上の官能基との反応によって形成される。本明細書で使用される場合、「リンカー」という表現は、(i)リンカーを細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質に共有結合で連結することが可能な官能基と、リンカーを抗体に共有結合で連結することが可能な官能基とを含む、リンカーのコンジュゲートしていない形態;(ii)リンカーを抗体に共有結合で連結することが可能であり、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質に共有結合で連結されている官能基を含むか、またはその逆である、リンカーの部分的にコンジュゲートした形態;および(iii)細胞傷害性物質ならびに/または細胞増殖抑制性物質および抗体の両方に共有結合で連結されている、リンカーの完全にコンジュゲートした形態を含むことが意図される。本開示のリンカーおよび抗グリコMUC1 ADCに加えて、リンカー−薬剤を抗体にコンジュゲートするのに使用されるシントンの一部の具体的な実施形態において、リンカー上の官能基およびリンカーと抗体との間で形成された共有結合による連結を含む部分は、それぞれRおよびXYとして具体的に例示される。
【0151】
リンカーは、好ましくは、ただし必ずしもそうでなくてもよいが、細胞の外側の条件に対して化学的に安定であり、細胞の内部で切断される、破壊される、および/またはそれ以外の方法で特異的に分解するように設計されていてもよい。代替として、細胞の内部で特異的に切断または分解されるように設計されていないリンカーを使用してもよい。安定なリンカーと不安定なリンカーとの選択は、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質の毒性によって決まる場合がある。正常細胞に対して毒性の薬剤の場合、安定なリンカーが好ましい。正常細胞に対して選択的であるかまたはそれを標的化して毒性を低める薬剤を利用してもよく、細胞外環境に対するリンカーの化学的安定性は、それほど重要ではない。ADCの状態で薬物を抗体に連結するのに有用な様々なリンカーは、当業界において公知である。これらのリンカーのいずれか、および他のリンカーは、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を、本開示の抗グリコMUC1 ADCの抗体に連結するのに使用することができる。
【0152】
多くの細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を単一抗体分子に連結するのに使用できる例示的な多価リンカーは、例えば、その内容が参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、国際公開第2009/073445号パンフレット;国際公開第2010/068795号パンフレット;国際公開第2010/138719号パンフレット;国際公開第2011/120053号パンフレット;国際公開第2011/171020号パンフレット;国際公開第2013/096901号パンフレット;国際公開第2014/008375号パンフレット;国際公開第2014/093379号パンフレット;国際公開第2014/093394号パンフレット;国際公開第2014/093640号パンフレットに記載されている。例えば、Mersanaらにより開発されたFleximerリンカー技術は、優れた物理化学的な特性を有する高DARのADCを可能にする能力を有する。以下に示すように、Mersana技術は、エステル結合の配列を介して可溶性のポリアセタールバックボーンに薬物分子を取り込むことに基づく。この手法は、優れた物理化学的な特性を維持しながら高度にローディングされたADC(最大20のDAR)をもたらす。
【0153】
樹枝型のリンカーのさらなる例は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2006/116422号明細書;米国特許出願公開第2005/271615号明細書;de Groot et al. (2003) Angew. Chem. Int. Ed. 42:4490-4494;Amir et al. (2003) Angew. Chem. Int. Ed. 42:4494-4499;Shamis et al.(2004) J. Am. Chem. Soc. 126:1726-1731;Sun et al.(2002) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sun et al.(2003) Bioorganic & Medicinal Chemistry 11:1761-1768;King et al.(2002) Tetrahedron Letters 43:1987-1990に見出すことができる。
【0154】
使用できる例示的な1価リンカーは、例えば、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Nolting, 2013, Antibody-Drug Conjugates, Methods in Molecular Biology 1045:71-100;Kitson et al., 2013, CROs/CMOs--Chemica Oggi--Chemistry Today 31(4):30-38;Ducry et al., 2010, Bioconjugate Chem. 21:5-13;Zhao et al., 2011, J. Med. Chem. 54:3606-3623;米国特許第7,223,837号明細書;米国特許第8,568,728号明細書;米国特許第8,535,678号明細書;および国際公開第2004010957号パンフレットに記載されている。
【0155】
一例として、これらに限定されないが、本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る一部の切断可能および切断不可能なリンカーは、後述される。
【0156】
5.3.3.切断可能なリンカー
特定の実施形態において、選択されたリンカーは、インビボで切断可能である。切断可能なリンカーは、化学的または酵素的に不安定な、または分解可能な連結を含んでいてもよい。切断可能なリンカーは、一般的に、薬物を開放する細胞の内部のプロセス、例えば細胞質内での還元、リソソーム中での酸性条件への曝露、または細胞内の特異的なプロテアーゼまたは他の酵素による切断を頼る。切断可能なリンカーは、一般的に、化学的または酵素的のいずれかで切断可能な1つまたは複数の化学結合を取り込んでおり、それと同時に、リンカーの残部は、切断不可能である。特定の実施形態において、リンカーは、化学的に不安定性の基、例えばヒドラゾンおよび/またはジスルフィド基を含む。化学的に不安定性の基を含むリンカーは、血漿と一部の細胞質内区画との間で特性が異なることを利用する。ヒドラゾンを含有するリンカーの場合の薬物放出を容易にする細胞内条件は、エンドソームおよびリソソームの酸性環境であり、一方、ジスルフィドを含有するリンカーは、高いチオール濃度、例えばグルタチオンを含有するサイトゾル中で還元される。特定の実施形態において、化学的に不安定性の基を含むリンカーの血漿安定性は、化学的に不安定性の基付近の置換基を使用して立体障害を導入することによって増加させることができる。
【0157】
酸不安定性の基、例えばヒドラゾンは、血液の中性pH環境(pH7.3〜7.5)での体循環の間は無傷のままであるが、ADCが細胞の弱酸性のエンドソーム(pH5.0〜6.5)およびリソソーム(pH4.5〜5.0)の区画に内在化されると加水分解を受けて薬物を放出する。このpH依存性の放出メカニズムは、薬物の非特異的な放出と関連付けられている。リンカーのヒドラゾン基の安定性を増加させるために、リンカーは、循環中での損失を最小化しながらもリソソーム中でのより効率的な放出を達成するように調整できる化学修飾、例えば置換によって変更してもよい。
【0158】
ヒドラゾンを含有するリンカーは、追加の切断部位、例えば追加の酸不安定性の切断部位および/または酵素不安定性の切断部位を含有していてもよい。例示的なヒドラゾンを含有するリンカーを含むADCは、以下の構造を含む。
【0159】
【化1】
式中、DおよびAbは、それぞれ細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質(薬物)およびAbを表し、nは、抗体に連結された薬物−リンカーの数を表す。特定のリンカー、例えばリンカー(Ig)において、リンカーは、2つの切断可能な基、すなわちジスルフィド部分およびヒドラゾン部分を含む。このようなリンカーの場合、改変されていない遊離の薬物の有効な放出は、酸性pHまたはジスルフィド還元および酸性pHを必要とする。(Ih)および(Ii)などのリンカーは、単一のヒドラゾン切断部位に有効であることが示されている。
【0160】
体循環の間は無傷のままであるがADCが酸性細胞区画の内部に内在化されると加水分解を受けて薬物を放出する追加のリンカーとしては、カーボネートが挙げられる。このようなリンカーは、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質が、酸素を介して共有結合で取り付けることができる場合、有用な可能性がある。
【0161】
リンカー中に含まれ得る他の酸不安定性の基としては、cis−アコニチルを含有するリンカーが挙げられる。cis−アコニチル化学は、酸性条件下でのアミド加水分解を促進するために、アミド結合に並置されたカルボン酸を使用する。
【0162】
切断可能なリンカーはまた、ジスルフィド基も含み得る。ジスルフィドは、生理学的なpHで熱力学的に安定であり、細胞の内部に内在化されると薬物を放出するように設計され、この場合サイトゾルは、細胞外の環境と比較してより有意に高い還元性の環境を提供する。ジスルフィド結合の分離は、一般的に、ジスルフィドを含有するリンカーが循環中で適度に安定であり、サイトゾル中で薬物を選択的に放出するように、細胞質内のチオール補因子、例えば(還元された)グルタチオン(GSH)の存在を必要とする。また、細胞内酵素タンパク質であるジスルフィドイソメラーゼ、またはジスルフィド結合の切断が可能な類似の酵素も、細胞の内部におけるジスルフィド結合の優先的な切断に寄与する可能性がある。およそ5つの腫瘍細胞において、循環中でGSHまたはシステイン(これは最も豊富な低分子量チオールである)がより有意に低い濃度であることと比較して、GSHは、0.5〜10mMの濃度範囲で細胞中に存在することが報告されており、この場合、不規則な血流が低酸素状態を引き起こし、還元性酵素の活性が強化され、それゆえにグルタチオン濃度がより一層高くなる。特定の実施形態において、ジスルフィドを含有するリンカーのインビボでの安定性は、リンカーの化学修飾によって、例えば、ジスルフィド結合に隣接する立体障害の使用によって強化することができる。
【0163】
例示的なジスルフィドを含有するリンカーを含むADCは、以下の構造を含む。
【0164】
【化2】
式中、DおよびAbは、それぞれ薬物および抗体を表し、nは、抗体に連結された薬物−リンカーの数を表し、Rは、各出現につき、例えば水素またはアルキルから独立して選択される。特定の実施形態において、ジスルフィド結合に隣接する立体障害を増加させることは、リンカーの安定性を増加させる。(Ij)および(Il)などの構造は、1つまたは複数のR基が低級アルキルから選択され、例えばメチルである場合、インビボにおける増加した安定性を示す。
【0165】
使用することができる別のタイプの切断可能なリンカーは、酵素によって特異的に切断されるリンカーである。このようなリンカーは、典型的にはペプチドベースであるか、または酵素の基質として作用するペプチド領域を含む。ペプチドベースのリンカーは、血漿および細胞外環境中で、化学的に不安定性のリンカーより安定である傾向がある。リソソームのタンパク質分解酵素は、内因性阻害剤およびリソソームと比較して都合悪く高いpH値の血液のために、血液中で非常に低い活性を有するため、一般的に、ペプチド結合は血清中で優れた安定性を有する。抗体からの薬物の放出は、具体的にはリソソームのプロテアーゼ、例えばカテプシンおよびプラスミンの作用に起因して起こる。これらのプロテアーゼは、特定の腫瘍細胞中において高いレベルで存在する場合がある。
【0166】
例示的な実施形態において、切断可能なペプチドは、Gly−Phe−Leu−Gly(配列番号128)、Ala−Leu−Ala−Leu(配列番号129)などのテトラペプチド、またはVal−Cit、Val−Ala、Met−(D)Lys、Asn−(D)Lys、Val−(D)Asp、Phe−Lys、Ile−Val、Asp−Val、His−Val、NorVal−(D)Asp、Ala−(D)Asp5、Met−Lys、Asn−Lys、Ile−Pro、Me3Lys−Pro、フェニルGly−(D)Lys、Met−(D)Lys、Asn−(D)Lys、Pro−(D)Lys、Met−(D)Lys、Asn−(D)Lys、AM Met−(D)Lys、Asn−(D)Lys、AW Met−(D)Lys、およびAsn−(D)Lysなどのジペプチドから選択される。特定の実施形態において、より長いペプチドは疎水性であるため、ジペプチドが、より長いポリペプチドより好ましい。
【0167】
ドキソルビシン、マイトマイシン、カンプトテシン、ピロロベンゾジアゼピン、タリソマイシン(tallysomycin)およびオーリスタチン/オーリスタチンファミリーメンバーなどの薬物を抗体に連結するのに有用な様々なジペプチドベースの切断可能なリンカーが記載されている(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Dubowchik et al., 1998, J. Org. Chem. 67:1866-1872;Dubowchik et al., 1998, Bioorg. Med. Chem. Lett. 8(21):3341-3346;Walker et al., 2002, Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:217-219;Walker et al., 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:4323-4327;Sutherland et al., 2013, Blood 122: 1455-1463;およびFrancisco et al., 2003, Blood 102:1458-1465を参照)。これらのジペプチドリンカー、またはこれらのジペプチドリンカーの改変されたバージョンの全ては、本開示の抗グリコMUC1 ADCで使用することができる。使用できる他のジペプチドリンカーとしては、Seattle Geneticsのブレンツキシマブベドチン(Vendotin)SGN−35(Adcetris(商標))、Seattle GeneticsのSGN−75(抗CD−70、Val−Cit−モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、Seattle GeneticsのSGN−CD33A(抗CD−33、Val−Ala−(SGD−1882))、Celldex Therapeuticsのグレンバツムマブ(CDX−011)(抗NMB、Val−Cit−モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、およびサイトジェン(Cytogen)PSMA−ADC(PSMA−ADC−1301)(抗PSMA、Val−Cit−MMAE)などのADCに見出されるものが挙げられる。
【0168】
酵素的に切断可能なリンカーとしては、酵素的切断部位から薬物を空間的に分離するための自壊性スペーサーを挙げることができる。ペプチドリンカーへの薬物の直接の取り付けは、タンパク質分解による薬物のアミノ酸付加物の放出を引き起こすことができ、それによってその活性が損なわれる。自壊性スペーサーの使用は、アミド結合の加水分解の後に、十分活性な化学的に改変されていない薬物の脱離を可能にする。
【0169】
1つの自壊性スペーサーは、二機能性のパラアミノベンジルアルコール基であり、これは、アミノ基を介してペプチドに連結されてアミド結合を形成するが、アミンを含有する薬物は、リンカー(PABC)のベンジルのヒドロキシル基にカルバミン酸官能性を介して取り付けられていてもよい。得られたプロドラッグは、プロテアーゼ媒介の切断で活性化され、1,6脱離反応を引き起こし、改変されていない薬物、二酸化炭素、およびリンカー基の残部を放出する。以下のスキームは、p−アミドベンジルエーテルのフラグメント化および薬物の放出を描写する。
【0170】
【化3】
式中、X−Dは、改変されていない薬物を表す。
【0171】
この自壊性基の複素環式バリアントも記載されている。例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,989,434号明細書を参照されたい。
【0172】
一部の実施形態において、酵素的に切断可能なリンカーは、β−グルクロン酸ベースのリンカーである。薬物の容易な放出は、リソソーム酵素であるβ−グルクロニダーゼによるβ−グルクロニドグリコシド結合の切断を介して実現することができる。この酵素は、リソソーム内に豊富に存在し、一部の腫瘍タイプにおいて過剰発現されるが、細胞の外側での酵素活性は低い。β−グルクロン酸ベースのリンカーは、β−グルクロニドの親水性の性質のために凝集を受けるADCの傾向を回避するのに使用することができる。一部の実施形態において、β−グルクロン酸ベースのリンカーは、疎水性薬物に連結されたADCのためのリンカーとして好ましい。以下のスキームは、β−グルクロン酸ベースのリンカーを含有するADCからの薬物の放出を描写する。
【0173】
【化4】
【0174】
オーリスタチン、カンプトテシンおよびドキソルビシン類似体、CBI副溝バインダー、およびプシムベリン(psymberin)などの薬物を抗体に連結するのに有用な、様々な切断可能なβ−グルクロン酸ベースのリンカーが記載されている(それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Nolting, Chapter 5 “Linker Technology in Antibody-Drug Conjugates,” In: Antibody-Drug Conjugates: Methods in Molecular Biology, vol. 1045, pp. 71-100, Laurent Ducry (Ed.), Springer Science & Business Medica, LLC, 2013;Jeffrey et al., 2006, Bioconjug. Chem. 17:831-840;Jeffrey et al., 2007, Bioorg. Med. Chem. Lett. 17:2278-2280;およびJiang et al., 2005, J. Am. Chem. Soc. 127:11254-11255を参照)。これらのβ−グルクロン酸ベースのリンカーは全て、本開示の抗グリコMUC1 ADCで使用することができる。
【0175】
加えて、フェノール基を含有する細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、フェノールの酸素を介してリンカーに共有結合で結合させることができる。1つのこのようなリンカーは、国際公開第2007/089149号パンフレットに記載されており、ジアミノ−エタン「SpaceLink」を、フェノールを送達するために従来の「PABO」ベースの自壊性基と共に使用する手法を頼る。リンカーの切断は、以下に模式的に描写され、式中、Dは、フェノールのヒドロキシル基を有する細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を表す。
【0176】
【化5】
【0177】
切断可能なリンカーは、切断不可能な部分またはセグメントを含んでいてもよいし、および/または切断可能なセグメントまたは部分は、それを切断可能にするために、それ以外の切断不可能なリンカー中に含まれていてもよい。単なる例として、ポリエチレングリコール(PEG)および関連するポリマーは、ポリマーバックボーン中に切断可能な基を含んでいてもよい。例えば、ポリエチレングリコールまたはポリマーリンカーは、1つまたは複数の切断可能な基、例えばジスルフィド、ヒドラゾンまたはジペプチドを含んでいてもよい。
【0178】
リンカー中に含まれ得る他の分解可能な連結としては、PEGのカルボン酸または活性化されたPEGのカルボン酸と生物活性薬剤上のアルコール基との反応によって形成されたエステル連結が挙げられ、この場合、このようなエステル基は一般的に生理学的条件下で加水分解して生物活性薬剤を放出する。加水分解で分解可能な連結としては、これらに限定されないが、炭酸連結;アミンとアルデヒドの反応の結果生じるイミン連結;アルコールをリン酸基と反応させることによって形成されたリン酸エステル連結;アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタール連結;ギ酸塩とアルコールの反応生成物であるオルトエステル連結;ならびにこれに限定されないが、ポリマーの末端のホスホアミダイト基、およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基によって形成されたオリゴヌクレオチド連結が挙げられる。
【0179】
特定の実施形態において、リンカーは、酵素的に切断可能なペプチド部分、例えば、構造式(IVa)または(IVb):
【0180】
【化6】
を含むリンカーまたはその塩を含み、式中、ペプチドは、リソソーム酵素によって切断可能なペプチド(C→Nで例示され、カルボキシおよびアミノ「末端」は示されていない)を表し;Tは、1つまたは複数のエチレングリコール単位もしくはアルキレン鎖、またはそれらの組合せを含むポリマーを表し;Rは、水素、アルキル、スルホネートおよびメチルスルホネートから選択され;pは、0から5の範囲の整数であり;qは、0または1であり;xは、0または1であり;yは、0または1であり;
【0181】
【化7】
は、リンカーの細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質への取り付け点を表し;は、リンカーの残部への取り付け点を表す。
【0182】
特定の実施形態において、ペプチドは、トリペプチドまたはジペプチドから選択される。特定の実施形態において、ジペプチドは、Val−Cit;Cit−Val;Ala−Ala;Ala−Cit;Cit−Ala;Asn−Cit;Cit−Asn;Cit−Cit;Val−Glu;Glu−Val;Ser−Cit;Cit−Ser;Lys−Cit;Cit−Lys;Asp−Cit;Cit−Asp;Ala−Val;Val−Ala;Phe−Lys;Val−Lys;Ala−Lys;Phe−Cit;Leu−Cit;Ile−Cit;Phe−Arg;およびTrp−Citから選択される。特定の実施形態において、ジペプチドは、Cit−Val;およびAla−Valから選択される。
【0183】
本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る構造式(IVa)によるリンカーの特定の例示的な実施形態としては、以下で例示されるリンカーが挙げられる(例示されるように、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基を含む):
【0184】
【化8-1】
【0185】
【化8-2】
【0186】
本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る構造式(IVb)によるリンカーの特定の例示的な実施形態としては、以下で例示されるリンカーが挙げられる(例示されるように、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基を含む):
【0187】
【化9-1】
【0188】
【化9-2】
【0189】
【化9-3】
【0190】
【化9-4】
【0191】
特定の実施形態において、リンカーは、酵素的に切断可能なペプチド部分、例えば、構造式(IVc)または(IVd):
【0192】
【化10】
を含むリンカーまたはその塩を含み、式中、ペプチドは、リソソーム酵素によって切断可能なペプチド(C→Nで例示され、カルボキシおよびアミノ「末端」は示されていない)を表し;Tは、1つまたは複数のエチレングリコール単位もしくはアルキレン鎖、またはそれらの組合せを含むポリマーを表し;Rは、水素、アルキル、スルホネートおよびメチルスルホネートから選択され;pは、0から5の範囲の整数であり;qは、0または1であり;xは、0または1であり;yは、0または1であり;
【0193】
【化11】
は、リンカーの細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質への取り付け点を表し;は、リンカーの残部への取り付け点を表す。
【0194】
本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る構造式(IVc)によるリンカーの特定の例示的な実施形態としては、以下で例示されるリンカーが挙げられる(例示されるように、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基を含む):
【0195】
【化12】
【0196】
本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る構造式(IVd)によるリンカーの特定の例示的な実施形態としては、以下で例示されるリンカーが挙げられる(例示されるように、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基を含む):
【0197】
【化13-1】
【0198】
【化13-2】
【0199】
特定の実施形態において、構造式(IVa)、(IVb)、(IVc)、または(IVd)を含むリンカーは、酸性媒体への曝露によって切断可能なカーボネート部分をさらに含む。特定の実施形態において、リンカーは、酸素を介して細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質に取り付けられる。
【0200】
5.3.4.切断不可能なリンカー
切断可能なリンカーは一定の利点を提供し得るが、本開示の抗グリコMUC1 ADCを含むリンカーは、必ずしも切断可能でなくてもよい。切断不可能なリンカーの場合、薬物の放出は、血漿と一部の細胞質内区画との間で特性が異なることに依存しない。薬物の放出は、抗原媒介エンドサイトーシスを介したADCの内在化とリソソーム区画への送達の後に起こり、そこで抗体は、細胞内タンパク質分解を介してアミノ酸レベルに分解されると仮定されている。このプロセスは、薬物、リンカー、およびリンカーが共有結合で取り付けられたアミノ酸残基によって形成される薬物誘導体を放出する。切断不可能なリンカーとのコンジュゲートからのアミノ酸薬物代謝産物は、切断可能なリンカーとのコンジュゲートと比較して、より親水性であり、一般的にはより低い膜透過性であり、それにより、より少ないバイスタンダー作用およびより少ない非特異的な毒性が生じる。一般的に、切断不可能なリンカーとのADCは、循環中で切断可能なリンカーとのADCより大きい安定性を有する。切断不可能なリンカーは、アルキレン鎖であってもよく、または天然の重合体、例えば、ポリアルキレングリコールポリマー、アミドポリマーベースのものであってもよいし、またはアルキレン鎖、ポリアルキレングリコール(glocol)および/またはアミドポリマーのセグメントを含んでいてもよい。
【0201】
薬物を抗体に連結するのに使用される様々な切断不可能なリンカーが記載されている。それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Jeffrey et al., 2006, Bioconjug. Chem. 17;831-840;Jeffrey et al., 2007, Bioorg. Med. Chem. Lett. 17:2278-2280;and Jiang et al., 2005, J. Am. Chem. Soc. 127:11254-11255を参照されたい。これらのリンカーはいずれも、本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれていてもよい。
【0202】
特定の実施形態において、リンカーは、インビボで切断不可能であり、例えば、構造式(VIa)、(VIb)、(VIc)または(VId)によるリンカーであり(例示された通り)、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基:
【0203】
【化14】
またはその塩を含み、式中、Rは、水素、アルキル、スルホネートおよびメチルスルホネートから選択され;Rは、リンカーを抗体に共有結合で連結することが可能な官能基を含む部分であり;
【0204】
【化15】
は、リンカーの細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質への取り付け点を表す。
【0205】
本開示の抗グリコMUC1 ADC中に含まれ得る構造式(VIa)〜(VId)によるリンカーの特定の例示的な実施形態としては、以下で例示されるリンカーが挙げられる(例示されるように、リンカーは、リンカーを抗体に共有結合で連結するのに好適な基を含み、
【0206】
【化16】
は、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質)への取り付け点を表す。
【0207】
【化17】
【0208】
5.3.5.リンカーを抗体に取り付けるのに使用される基
リンカー−薬物シントンを抗体に取り付けてADCを得るために、様々な基を使用することができる。取り付け基は、本質的に求電子性であってもよく、その例としては、マレイミド基、活性化ジスルフィド、活性エステル、例えばNHSエステルおよびHOBtエステル、ギ酸ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキルおよびベンジル、例えばハロアセトアミドが挙げられる。以下で論じられるように、本開示に従って使用することができる「自己安定化」マレイミドおよび「架橋形成ジスルフィド」に関する新興の技術もある。使用される具体的な基は、抗体への取り付け部位に一部依存すると予想される。
【0209】
抗体コンジュゲーション条件下で自発的に加水分解して安定性が改善されたADC種を生じる「自己安定化」マレイミド基の一例を以下の略図に描写する。米国特許出願公開第20130309256号明細書;さらに、Lyon et al., Nature Biotech published online, doi:10.1038/nbt.2968も参照されたい。
【0210】
【化18】
【0211】
【化19】
【0212】
Polythericsは、天然ヒンジジスルフィド結合の還元から誘導されたスルフヒドリル基の対を架橋する方法を開示している。Badescu et al., 2014, Bioconjugate Chem. 25:1124-1136を参照されたい。この反応を以下の略図に描写する。この手法の利点は、IgGの完全な還元(スルフヒドリルの4つの対を生じる)とそれに続く4当量のアルキル化剤との反応によって富化したDAR4 ADCを合成する能力である。「架橋されたジスルフィド」を含有するADCも、安定性が増加したと述べられている。
【0213】
【化20】
【0214】
同様に、以下で描写されるように、スルフヒドリル基の対を架橋することが可能なマレイミド誘導体(1、以下)が開発されている。国際公開第2013/085925号パンフレットを参照されたい。
【0215】
【化21】
【0216】
5.3.6.リンカー選択の考察
当業者公知のように、特定のADCのための選択されたリンカーは、これらに限定されないが、抗体への取り付けの部位(例えば、lys、cysまたは他のアミノ酸残基)、薬物の薬理作用団の構造的な拘束、および薬物の親油性などの様々な要因によって影響を受ける可能性がある。具体的なADCのための選択されたリンカーは、具体的な抗体/複合薬に対してこれらの様々な要因のバランスをとることが求められることになる。ADCにおけるリンカーの選択によって影響を受ける要因の総論に関して、Nolting, Chapter 5 “Linker Technology in Antibody-Drug Conjugates,” In: Antibody-Drug Conjugates: Methods in Molecular Biology, vol. 1045, pp. 71-100, Laurent Ducry (Ed.), Springer Science & Business Medica, LLC, 2013を参照されたい。
【0217】
例えば、ADCは、抗原陽性腫瘍細胞の近くに存在するバイスタンダー抗原陰性細胞を致死させることが観察されている。ADCによるバイスタンダー細胞致死のメカニズムは、ADCの細胞内プロセシング中に形成された代謝産物が役割を果たし得ることを示した。抗原陽性細胞中でのADCの代謝によって生成した中性の細胞傷害性の代謝産物は、バイスタンダー細胞致死において役割を果たすようであるが、電荷を有する代謝産物は、膜を介した媒体への拡散が阻止される可能性があり、それゆえにバイスタンダー致死に影響を与えることができない。特定の実施形態において、リンカーは、ADCの細胞代謝産物によって引き起こされるバイスタンダー致死作用を弱めるように選択される。特定の実施形態において、リンカーは、バイスタンダー致死作用を増加させるように選択される。
【0218】
またリンカーの特性も、使用および/または貯蔵条件下でADCの凝集に影響を与える可能性がある。典型的には、文献で報告されたADCは、抗体分子1個当たり3〜4個以下の薬物分子を含有する(例えば、Chari, 2008, Acc Chem Res 41:98-107を参照)。より高い薬物対抗体の比率(「DAR」)を得ようとする試みは、特に薬物とリンカーの両方が疎水性の場合、ADCが凝集するため失敗することが多い(King et al., 2002, J Med Chem 45:4336-4343;Hollander et al., 2008, Bioconjugate Chem 19:358-361;Burke et al., 2009 Bioconjugate Chem 20:1242-1250)。多くの例において、3〜4より高いDARが、効力増加の手段として有益であり得る。細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質が本質的に疎水性である例において、特に3〜4より大きいDARが望ましい例において、ADC凝集を低減させる手段として、相対的に親水性のリンカーを選択することが望ましい場合がある。したがって、特定の実施形態において、リンカーは、貯蔵および/または使用中にADCの凝集を低減する化学成分を取り込んでいる。リンカーは、ADCの凝集を低減するために、極性または親水性基、例えば電荷を有する基または生理学的なpHで電荷を有するようになる基を取り込んでいてもよい。例えば、リンカーは、生理学的なpHで、例えばカルボン酸を脱プロトン化する、または例えばアミンをプロトン化する、電荷を有する基、例えば塩または基を取り込んでいてもよい。
【0219】
20もの高いDARをもたらすと報告されている、多数の細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を抗体に連結するのに使用できる例示的な多価リンカーは、その内容が参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、国際公開第2009/073445号パンフレット;国際公開第2010/068795号パンフレット;国際公開第2010/138719号パンフレット;国際公開第2011/120053号パンフレット;国際公開第2011/171020号パンフレット;国際公開第2013/096901号パンフレット;国際公開第2014/008375号パンフレット;国際公開第2014/093379号パンフレット;国際公開第2014/093394号パンフレット;国際公開第2014/093640号パンフレットに記載されている。
【0220】
特定の実施形態において、貯蔵または使用中のADCの凝集は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した場合、約10%未満である。特定の実施形態において、貯蔵または使用中のADCの凝集は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した場合、10%未満、例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満であるか、またはそれよりさらに低い。
【0221】
5.3.7.抗グリコMUC1 ADCを作製する方法
本開示の抗グリコMUC1 ADCは、周知の化学的方法を使用して合成することができる。選択された化学的方法は、数ある中でも、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質、リンカーを抗体に取り付けるのに使用されるリンカーおよび基の性質に依存すると予想される。一般的に、式(I)によるADCは、以下のスキームに従って調製することができる:
D−L−R+Ab−R→[D−L−XY]−Ab (I)
式中、D、L、Ab、XYおよびnはこれまでに定義した通りであり、RおよびRは、上記で論じられたように、互いに共有結合による連結を形成することが可能な補完的な基を表す。
【0222】
およびR基の性質は、シントンD−L−Rを抗体に連結するのに使用される化学的方法に依存すると予想される。一般的に、使用される化学的方法は、抗体の完全性、例えばその標的に結合するその能力を変更しないものであるべきである。好ましくは、コンジュゲートした抗体の結合特性は、コンジュゲートしていない抗体の結合特性に極めて類似していると予想される。分子を抗体などの生体分子にコンジュゲートするための様々な化学的方法および技術が当業界において公知であり、特に抗体にコンジュゲートするためのものが周知である。例えば、Amon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,” in: Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. Eds., Alan R. Liss, Inc., 1985;Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” in: Controlled Drug Delivery, Robinson et al. Eds., Marcel Dekker, Inc., 2nd Ed. 1987;Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in: Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al., Eds., 1985;“Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,” in: Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al., Eds., Academic Press, 1985;Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58;PCT国際公開第89/12624号パンフレットを参照されたい。これらの化学的方法のいずれも、シントンを抗体に連結するのに使用することができる。
【0223】
接近可能なリシン残基にシントンを連結するのに有用な官能基Rの数および化学的方法は公知であり、一例としては、これらに限定されないが、NHS−エステルおよびイソチオシアネートが挙げられる。
【0224】
システイン残基の接近可能な遊離のスルフヒドリル基にシントンを連結するのに有用な官能基Rの数および化学的方法は公知であり、一例としては、これらに限定されないが、ハロアセチルおよびマレイミドが挙げられる。
【0225】
しかしながら、コンジュゲーションの化学的性質は、利用可能な側鎖基に限定されない。アミンなどの側鎖は、適切な小分子をアミンに連結することによって、他の有用な基、例えばヒドロキシルに変換することができる。この戦略は、抗体の接近可能なアミノ酸残基の側鎖に多官能性の小分子をコンジュゲートすることによって抗体上の利用可能な連結部位の数を増加させるために使用することができる。次いで、これらの「変換された」官能基にシントンを共有結合で連結するのに好適な官能基Rが、シントンに含まれる。
【0226】
抗体はまた、コンジュゲーションのためのアミノ酸残基を含むように操作することができる。ADCの状態で薬物をコンジュゲートするのに有用な非遺伝子コード化アミノ酸残基を含むように抗体を操作するためのアプローチは、非コード化アミノ酸にシントンを連結するのに有用な化学的方法および官能基と共に、Axupet al., 2012, Proc Natl Acad Sci USA. 109(40):16101-16106によって記載されている。
【0227】
典型的には、シントンは、抗体のアミノ酸残基の側鎖に、例えば、接近可能なリシン残基の一級アミノ基または接近可能なシステイン残基のスルフヒドリル基などに連結されている。遊離のスルフヒドリル基は、鎖間のジスルフィド結合を還元することにより得ることができる。
【0228】
がスルフヒドリル基である場合(例えば、Rがマレイミドである場合)の連結では、一般的に、抗体はまず完全または部分的に還元して、システイン残基間の鎖間のジスルフィド架橋を崩壊させる。
【0229】
1つまたは複数のコドンの突然変異によって、ジスルフィド架橋に参加しないシステイン残基が抗体に入るように操作することができる。これらの対応のないシステインの還元により、コンジュゲーションに好適なスルフヒドリル基が生じる。操作されたシステインを取り込むのに好ましい位置としては、一例として、これらに限定されないが、ヒトIgG重鎖上の、S112C位、S113C位、A114C位、S115C位、A176C位、5180C位、S252C位、V286C位、V292C位、S357C位、A359C位、S398C位、S428C位(Kabatの番号付け)、およびヒトIgカッパ軽鎖上の、V110C位、S114C位、S121C位、S127C位、S168C位、V205C位(Kabatの番号付け)が挙げられる(例えば、米国特許第7,521,541号明細書、米国特許第7,855,275号明細書および米国特許第8,455,622号明細書を参照)。
【0230】
当業者により理解されていると予想されるように、抗体分子に連結された多数の細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質は、一部の抗体は1つの連結された薬剤を含有する、一部の抗体は2つの連結された薬剤を含有する、一部の抗体は3つの連結された薬剤を含有するなど(一部の抗体は連結された薬剤を含有しない)、ADCの集合体が本質的に不均質であり得るように変更することが可能である。不均質性の程度は、数ある中でも、細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を連結するのに使用される化学的方法に依存すると予想される。例えば、抗体が還元されて取り付けのためのスルフヒドリル基が生じる場合、分子1個当たり0、2、4、6または8個の連結された薬剤を有する抗体の不均質な混合物が産生されることが多い。さらに、取り付け化合物のモル比を制限することによって、分子1個当たり0、1、2、3、4、5、6、7または8個の連結された薬剤を有する抗体が産生されることが多い。したがって、文脈に応じて、述べられるDARは、抗体の集合体の平均であり得ることが理解されると予想される。例えば、「DAR4」は、特定のDARピークを単離するために精製に供されておらず、抗体1個当たりの取り付けられた細胞増殖抑制性物質および/または細胞傷害性物質の数が異なる(例えば、抗体1個当たり0、2、4、6、8個の薬剤)ADC分子の不均質な混合物を含み得るが、平均の薬物対抗体の比率が4であるADC調製物を指すことができる。同様に、一部の実施形態において、「DAR2」は、平均の薬物対抗体の比率が2である不均質なADC調製物を指す。
【0231】
富化した調製物が望ましい場合、既定の数の連結された細胞傷害性物質および/または細胞増殖抑制性物質を有する抗体は、不均質な混合物の精製を介して、例えば、カラムクロマトグラフィー、例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィーを介して得ることができる。
【0232】
純度は、当業界において公知のように、様々な方法によって評価することができる。具体的な例として、ADC調製物は、HPLCまたは他のクロマトグラフィーを介して分析してもよく、純度は、得られたピークの曲線下面積を分析することによって評価してもよい。
【0233】
5.4 キメラ抗原受容体
本発明の開示は、本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0234】
本開示のCARは、典型的には、膜貫通ドメインに作動可能に連結した細胞外ドメインを含み、これが順にシグナル伝達のための細胞内ドメインに作動可能に連結している。
【0235】
本開示のCARの細胞外ドメインは、抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメントの配列(例えば、セクション5.1または実施形態1から90に記載される通り)を含む。
【0236】
例示的な膜貫通ドメイン配列および細胞内ドメイン配列は、それぞれセクション5.4.1および5.4.2に記載されている。
【0237】
本明細書に記載される数々の融合タンパク質(例えば、実施形態92および94〜96)は、CARであり、CARに関連する開示は、このような融合タンパク質に適用される。
【0238】
5.4.1.膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、CARは、CARの細胞外ドメインに作動可能に連結された(例えば、融合した)膜貫通ドメインを含むように設計することができる。
【0239】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれに由来するものでもよい。源が天然である場合、ドメインは、あらゆる膜結合または膜貫通タンパク質由来であり得る。この開示における特定の用途の膜貫通領域は、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154のアルファ、ベータまたはゼータ鎖由来であってもよい(すなわち、その少なくとも膜貫通領域を含んでいてもよい)。一部の場合において、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジなどの様々なヒトヒンジも同様に採用することができる。
【0240】
一実施形態において、膜貫通ドメインは、合成である(すなわち、天然に存在しない)。合成膜貫通ドメインの例は、ロイシンおよびバリンなどの主として疎水性の残基を含むペプチドである。好ましくは、合成膜貫通ドメインの各末端に、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組が見出されると予想される。任意選択で、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、好ましくは2から10アミノ酸の長さのものが、膜貫通ドメインとCARの細胞質内シグナル伝達ドメインとの間に連結を形成することができる。グリシン−セリンの二つ組は、特に好適なリンカーを提供する。
【0241】
一実施形態において、本開示のCARにおける膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。一実施形態において、CD8膜貫通ドメインは、アミノ酸配列YLHLGALGRDLWGPSPVTGYHPLLを含む。
【0242】
一実施形態において、本開示のCARにおける膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。一実施形態において、CD28膜貫通ドメインは、アミノ酸配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVを含む。
【0243】
一部の場合において、本開示のCARの膜貫通ドメインは、CD8aヒンジドメインを含む。一実施形態において、CD8aヒンジドメインは、アミノ酸配列TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACを含む。
【0244】
5.4.2.細胞内ドメイン
本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが発現される免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を指す。例えばT細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを変換し、細胞が特殊化した機能を実行するように方向付けるタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が採用できるが、多くの場合において、鎖全体を使用することは必ずしも必要ではない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮化された部分が使用される限りにおいて、このような短縮化された部分は、それがエフェクター機能シグナルを変換しさえすれば、無傷の鎖の代わりに使用することができる。したがって細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを変換するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインのあらゆる短縮化された部分を含むことを意味する。
【0245】
本開示のCARで使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの好ましい例としては、抗原受容体と結合した後に協同的に作用してシグナル伝達を開始させるT細胞受容体(TCR)および補助受容体の細胞質内配列、加えて、これらの配列のあらゆる誘導体またはバリアント、および同じ機能的な能力を有するあらゆる合成配列が挙げられる。
【0246】
TCR単独により生成したシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分な場合があり、二次または共刺激シグナルも必要である。したがって、T細胞の活性化は、2つの別個のクラスの細胞質内シグナル伝達配列、すなわち、TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始させるシグナル伝達配列(一次細胞質内シグナル伝達配列)、および抗原非依存性の方式で作用して、二次または共刺激シグナルをもたらすシグナル伝達配列(二次細胞質内シグナル伝達配列)によって媒介されると言うことができる。
【0247】
一次細胞質内シグナル伝達配列は、刺激によるか、または阻害によるかのいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節する。刺激による方式で作用する一次細胞質内シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含有していてもよい。
【0248】
本開示のCARにおいて特定の用途を有するITAMを含有する一次細胞質内シグナル伝達配列の例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d由来のものが挙げられる。本開示のCARにおける細胞質内シグナル伝達分子は、CD3−ゼータ由来の細胞質内シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。
【0249】
好ましい実施形態において、CARの細胞質内ドメインは、ITAMを含有する一次細胞質内シグナル伝達配列ドメイン(例えば、CD3−ゼータのもの)そのものを含む、または本開示のCARの状況で有用な他のあらゆる望ましい細胞質内ドメインと組み合わせて含むように設計される。例えば、CARの細胞質内ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達領域を含んでいてもよい。
【0250】
共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子は、リンパ球の抗原への効率的な応答に必要な、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例としては、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。
【0251】
本開示のCARの細胞質内シグナル伝達部分内の細胞質内シグナル伝達配列は、ランダムな、または特定された順番で互いに連結されていてもよい。任意選択で、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、好ましくは2から10アミノ酸の長さのものが、連結を形成することができる。グリシン−セリンの二つ組は、特に好適なリンカーを提供する。
【0252】
一実施形態において、細胞質内ドメインは、CD3−ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含む。別の実施形態において、細胞質内ドメインは、CD3−ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4−1BBのシグナル伝達ドメインを含む。
【0253】
5.5 核酸、組換えベクターおよび宿主細胞
本発明の開示は、抗グリコMUC1抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子をコードする核酸分子、このような核酸を含むベクター、および本開示の抗グリコMUC1抗体を産生することが可能な宿主細胞を包含する。特定の態様において、核酸分子は、本開示の抗グリコMUC1抗体および抗原結合フラグメント(例えば、セクション5.1および実施形態1〜90に記載される通り)、加えて、それらを含有する融合タンパク質(例えば、実施形態91〜96に記載される通り)およびキメラ抗原受容体(例えば、セクション5.4および実施形態97〜98に記載される通り)をコードし、宿主細胞は、それらを発現することが可能である。本開示の例示的なベクターは、実施形態111〜113に記載されており、例示的な宿主細胞は、実施形態114〜117に記載されている。
【0254】
本開示の抗グリコMUC1抗体は、宿主細胞中での免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の組換え発現によって調製することができる。抗体を組換え発現するために、宿主細胞は、抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNAフラグメントを有する1つまたは複数の組換え発現ベクターをトランスフェクトされ、それにより、軽鎖および重鎖が宿主細胞中で発現され、任意選択でそれらは宿主細胞が培養される培地に分泌され、その培地から抗体を回収することができる。標準的な組換えDNA手法は、抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み込み、ベクターを、宿主細胞に、例えば、Molecular Cloning;A Laboratory Manual, Second Edition (Sambrook, Fritsch and Maniatis (eds), Cold Spring Harbor, N. Y., 1989), Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel, F. M. et al., eds., Greene Publishing Associates, 1989)および米国特許第4,816,397号明細書に記載されるものに導入するのに使用される。
【0255】
このような抗グリコMUC1抗体をコードする核酸を生成するために、まず、軽鎖および重鎖可変領域をコードするDNAフラグメントを得る。これらのDNAは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、軽鎖および重鎖可変配列をコードする生殖細胞系DNAまたはcDNAを増幅および改変することにより得ることができる。ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、当業界において公知である(例えば、「VBASE」ヒト生殖細胞系配列データベースを参照されたい;Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242;Tomlinson et al., 1992, J. Mol. Biol. 22T:116-198;and Cox et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:827-836も参照されたい;これらそれぞれの内容は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0256】
抗グリコMUC1抗体関連のVおよびVセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントはさらに、標準的な組換えDNA技術によって操作して、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VまたはVをコードするDNAフラグメントは、別のタンパク質、例えば抗体定常領域またはフレキシブルなリンカーをコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結されている。用語「作動可能に連結される」は、この状況で使用される場合、2つのDNAフラグメントによってコードされたアミノ酸配列がフレーム内に残るように2つのDNAフラグメントが合体することを意味することが意図される。
【0257】
領域をコードする単離されたDNAは、VをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH、CH、CH、および任意選択でCH)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当業界において公知であり(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S.Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242を参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であってもよいが、特定の実施形態において、IgGまたはIgGの定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子の場合、VをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結されていてもよい。
【0258】
領域をコードする単離されたDNAは、VをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(加えてFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当業界において公知であり(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S.Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242を参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であってもよいが、特定の実施形態において、カッパ定常領域である。
【0259】
scFv遺伝子を作製するために、VおよびVをコードするDNAフラグメントは、VおよびV配列が、VおよびV領域がフレキシブルなリンカーによって合体した連続する単鎖タンパク質として発現できるように、フレキシブルなリンカーをコードする別のフラグメント、例えばアミノ酸配列(Gly〜Ser)をコードする別のフラグメントに作動可能に連結されていてもよい(例えば、Bird et al., 1988, Science 242:423-426;Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;McCafferty et al., 1990, Nature 348:552-554を参照)。
【0260】
本開示の抗グリコMUC1抗体を発現させるために、上述したようにして得られた部分的なまたは全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように発現ベクターに挿入される。この文脈において、用語「作動可能に連結した」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するそれらの意図した機能を発揮するように、抗体遺伝子がベクターにライゲートされることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞に適合するように選ばれる。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別個のベクターに挿入されていてもよいし、またはより典型的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。
【0261】
抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位ライゲーション、または制限部位が存在しない場合、平滑末端のライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。抗グリコMUC1抗体関連の軽鎖または重鎖配列の挿入の前に、発現ベクターは、すでに抗体定常領域配列を有していてもよい。例えば、抗グリコMUC1モノクローナル抗体関連のVおよびV配列を全長抗体遺伝子に変換するための1つのアプローチは、Vセグメントがベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、Vセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、重鎖定常および軽鎖定常領域をそれぞれ予めコードする発現ベクターにそれらを挿入することである。加えて、または代替として、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードしていてもよい。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがフレーム内で抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンのシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0262】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif., 1990に記載されている。当業者であれば、調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現のレベルなどのような要因によって決まる可能性があることを理解していると予想される。哺乳類宿主細胞発現に好適な調節配列としては、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ならびにポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーが挙げられる。ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明に関して、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号明細書、Bellらによる米国特許第4,510,245号明細書、およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号明細書を参照されたい。
【0263】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などの追加の配列を有していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらによる、米国特許第4,399,216号明細書、第4,634,665号明細書および第5,179,017号明細書を参照)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞に付与する。好適な選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(DHFR宿主細胞でメトトレキセート選択/増幅と共に使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどの、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入のために一般的に使用される様々な技術を包含することが意図される。
【0264】
原核または真核宿主細胞のいずれかで本開示の抗体を発現することが考えられる。特定の実施形態において、抗体の発現、または適切にフォールディングされ免疫学的に活性な抗体の最適な分泌は、真核細胞、例えば、哺乳類宿主細胞で実行される。本開示の組換え抗体を発現するための例示的な哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、Urlaub and Chasin, 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されるDHFRCHO細胞などであり、これは、例えば、Kaufman and Sharp, 1982, Mol. Biol. 159:601-621に記載されるようなDHFR選択可能マーカーと共に使用される)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞中での抗体の発現または宿主細胞が増殖する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたり、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる。宿主細胞も、無傷抗体の一部、例えばFabフラグメントまたはscFv分子を産生するために使用することができる。上記の手順のバリエーションは本発明の開示の範囲内であることが理解される。例えば、本開示の抗グリコMUC1抗体の軽鎖または重鎖のいずれか(ただし両方ではない)をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることが望ましい場合がある。
【0265】
本開示のCARの発現に関して、例えばセクション5.4として、さらに実施形態97および98に記載される通り、好ましくは、宿主細胞はT細胞であり、好ましくはヒトT細胞である。一部の実施形態において、宿主細胞は、細胞が腫瘍細胞上のMUC1と架橋されると、抗腫瘍免疫を示す。本開示のT細胞を産生するための詳細な方法は、セクション5.5.1に記載されている。
【0266】
組換えDNA技術はまた、グリコMUC1への結合に必ずしも必要ではない軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部または全部を除去するのに使用することもできる。このような短縮化されたDNA分子から発現される分子も、本開示の抗体に包含される。
【0267】
本開示の抗グリコMUC1抗体の組換え発現のために、宿主細胞は、2つの本開示の発現ベクター、すなわち、重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクターをコトランスフェクトされてもよい。2つのベクターは、同一な選択可能マーカーを含有していてもよく、またはそれらは、それぞれ別の選択可能マーカーを含有していてもよい。代替として、両方の重鎖および軽鎖ポリペプチドをコードする単一のベクターを使用してもよい。
【0268】
核酸が抗グリコMUC1抗体の1つまたは複数の部分をコードするようになれば、例えば、異なるCDR配列を有する抗体、Fc受容体への親和性が低減した抗体、または異なるサブクラスの抗体をコードする核酸を生成するように、さらなる変更または突然変異をコード配列に導入することができる。
【0269】
本開示の抗グリコMUC1抗体はまた、化学合成によって(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984 The Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.に記載される方法によって)産生することもできる。バリアント抗体も、無細胞プラットフォームを使用して生成することができる(例えば、Chu et al., Biochemia No.2, 2001 (Roche Molecular Biologicals)およびMurray et al., 2013, Current Opinion in Chemical Biology, 17:420-426を参照)。
【0270】
組換え発現によって本開示の抗グリコMUC1抗体が産生されたら、免疫グロブリン分子の精製に関する当業界において公知のあらゆる方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、分別溶解によって、または他のあらゆる標準的なタンパク質精製技術によってこれを精製することができる。さらに、本発明の開示の抗グリコMUC1抗体および/または結合フラグメントは、精製を容易にするために、本明細書に記載される、またはそれ以外の当業界において公知の異種ポリペプチド配列に融合させることができる。
【0271】
抗グリコMUC1抗体は、単離されたら、必要に応じて、例えば高速液体クロマトグラフィーによって(Fisher, Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology, Work and Burdon, eds., Elsevier, 1980を参照)、またはSuperdex(商標)75カラム(Pharmacia Biotech AB、Uppsala、Sweden)でのゲルろ過クロマトグラフィーによってさらに精製してもよい。
【0272】
5.5.1.T細胞におけるCARの組換え産生
一部の実施形態において、本開示の抗グリコMUC1 CARをコードする核酸は、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターを使用して細胞に送達される。CARを発現するレトロウイルスおよびレンチウイルスベクターは、担体として形質導入された細胞を使用して、またはカプセル化された、結合した、または裸のベクターの無細胞の局所または全身送達を使用して、異なるタイプの真核細胞に、さらには組織および生物全体にも送達することができる。使用される方法は、安定な発現が必要であるかまたは十分なあらゆる目的のための方法であり得る。
【0273】
他の実施形態において、CAR配列は、インビトロで転写されたmRNAを使用して細胞に送達される。インビトロで転写されたmRNA CARは、担体としてトランスフェクトされた細胞を使用して、またはカプセル化された、結合した、または裸のmRNAの無細胞の局所または全身送達を使用して、異なるタイプの真核細胞に、さらには組織および生物全体にも送達することができる。使用される方法は、一過性発現が必要であるかまたは十分なあらゆる目的のための方法であり得る。
【0274】
別の実施形態において、望ましいCARは、トランスポゾンによって細胞中で発現させることができる。
【0275】
本開示のRNAトランスフェクション方法の1つの利点は、RNAトランスフェクションは、本質的に一過性であり、ベクターを含まないことであり、すなわちRNA導入遺伝子は、リンパ球に送達され、短時間のインビトロにおける細胞活性化の後、いかなる追加のウイルス配列も必要とせずに、最小限の発現カセットとしてそこで発現される。これらの条件下で、宿主細胞ゲノムへの導入遺伝子の組込みが起こる可能性は低い。細胞のクローニングは、必ずしもRNAのトランスフェクション効率やリンパ球集団全体を均一に改変するその能力によるわけではない。
【0276】
インビトロで転写されたRNA(IVT−RNA)でのT細胞の遺伝学的改変は、両方とも様々な動物モデルで継続的に試験されている2つの異なる戦略を利用する。細胞に、リポフェクションまたはエレクトロポレーションによって、インビトロで転写されたRNAをトランスフェクトする。好ましくは、移入されたIVT−RNAの持続的な発現を達成するために、様々な改変を使用してIVT−RNAを安定化させることが望ましい。
【0277】
一部のIVTベクターが、インビトロでの転写のためのテンプレートとして標準化された方式で利用されており、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝子改変されていることが文献公知である。現在のところ、当業界で使用されるプロトコールは、以下の構造:RNA転写を可能にする5’RNAポリメラーゼプロモーター、それに続き3’および/または5’のいずれかで非翻訳領域(UTR)に隣接する目的の遺伝子、および50〜70個のAヌクレオチドを含有する3’ポリアデニルカセットを有するプラスミドベクターに基づく。インビトロでの転写の前に、環状プラスミドを、ポリアデニルカセットの下流でII型制限酵素(認識配列は切断部位に対応する)によって線形化する。したがってポリアデニルカセットは、転写物中の後期ポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、一部のヌクレオチドは、線形化後に酵素切断部位の一部として残り、3’末端におけるポリ(A)配列を伸長させるかまたはマスキングする。この非生理学的なオーバーハングが、このようなコンストラクトから細胞内で産生されたタンパク質の量に影響を与えるかどうかは不明確である。
【0278】
RNAは、より伝統的なプラスミドまたはウイルスアプローチを超える数々の利点を有する。RNA源からの遺伝子発現は、転写を必要とせず、タンパク質生成物は、トランスフェクションのすぐ後に産生される。さらに、RNAは、核ではなく細胞質に侵入するだけでよいため、典型的なトランスフェクション方法は、極めて高いトランスフェクション率をもたらす。加えて、プラスミドベースアプローチは、研究中の細胞中で目的の遺伝子の発現を駆動させるプロモーターを活性にすることを必要とする。
【0279】
別の態様において、RNAコンストラクトは、エレクトロポレーションによって細胞に送達することができる。例えば、米国特許出願公開第2004/0014645号明細書、米国特許出願公開第2005/0052630号明細書、米国特許出願公開第2005/0070841号明細書、米国特許出願公開第2004/0059285号明細書、米国特許出願公開第2004/0092907号明細書で教示されるような、哺乳類細胞への核酸コンストラクトのエレクトロポレーションの配合物および手法を参照されたい。あらゆる公知の細胞型のエレクトロポレーションに必要な電場強度などの様々なパラメーターは、一般的に、この分野の関連する研究文献に加えて多数の特許および出願において公知である。例えば、米国特許第6,678,556号明細書、米国特許第7,171,264号明細書、および米国特許第7,173,116号明細書を参照されたい。エレクトロポレーションの治療適用のための装置、例えば、MedPulser(商標)DNAエレクトロポレーション治療システム(Inovio/Genetronics、San Diego、Calif.)が商業的に利用可能であり、米国特許第6,567,694号明細書;米国特許第6,516,223号明細書、米国特許第5,993,434号明細書、米国特許第6,181,964号明細書、米国特許第6,241,701号明細書、および米国特許第6,233,482号明細書などの特許に記載されており、エレクトロポレーションは、例えば米国特許出願公開第20070128708号明細書で記載されるように、インビトロでの細胞のトランスフェクションのためにも使用することができる。またエレクトロポレーションは、インビトロで核酸を細胞に送達することにも利用することができる。したがって、当業者公知の多くの利用可能なデバイスおよびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用する、発現コンストラクトを含む核酸の細胞へのエレクトロポレーション媒介投与は、標的細胞に目的のRNAを送達するためのエキサイティングな新しい手段を提供する。
【0280】
5.5.1.1 T細胞源
T細胞源は、増加させ遺伝学的に改変する前に、対象から得られる。用語「対象」は、免疫応答を惹起できる生物(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。対象の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0281】
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織、および腫瘍などの多数の源から得ることができる。本発明の開示の特定の実施形態において、当業界において入手可能な様々なT細胞株を使用することができる。本発明の開示の特定の実施形態において、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者公知の様々な技術を使用して対象から収集された血液単位から得ることができる。好ましい一実施形態において、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスにより得られる。アフェレーシス生成物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核の白血球、赤血球、および血小板を含有する。一実施形態において、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、それに続く処理工程のために、細胞を適切な緩衝液または媒体中に入れることができる。本開示の一実施形態において、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。代替の実施形態において、洗浄溶液は、カルシウムを欠いており、マグネシウムを欠いていてもよく、または部分的であっても多くの2価カチオンを欠いていてもよい。ここでも、驚くべきことに、カルシウムの非存在下における最初の活性化工程は、一層の活性化をもたらす。当業者であれば容易に理解していると予想されるように、洗浄工程は、当業者公知の方法によって、例えば、製造元の指示に従って半自動化「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991セルプロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによって達成してもよい。洗浄後、細胞は、様々な生体適合性の緩衝液、例えば、Ca非含有、Mg非含有PBS、PlasmaLyte A、または緩衝液含有もしくは非含有の他の塩類溶液などに再懸濁してもよい。代替として、アフェレーシスサンプルの不要な成分を除去して、細胞を培養培地に直接再懸濁してもよい。
【0282】
別の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解させ、例えばPERCOLL(商標)勾配による遠心分離または対向流遠心溶出法により単球を枯渇させることによって末梢血リンパ球から単離される。T細胞の特定の部分集団、例えばCD3、CD28’、CD4、CD8、CD45RAおよびCD45ROT細胞は、陽性または陰性選択技術によってさらに単離することができる。例えば、一実施形態において、T細胞は、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28個の)コンジュゲートビーズ、例えばDYNABEADS(登録商標)M−450 CD3/CD28Tと、望ましいT細胞の陽性選択に十分な期間にわたりインキュベートすることによって単離される。一実施形態において、期間は、約30分である。さらなる実施形態において、期間は、30分から、36時間またはそれより長い時間の範囲、その間の全ての整数値の範囲である。さらなる実施形態において、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。さらに別の好ましい実施形態において、期間は、10から24時間である。好ましい一実施形態において、インキュベーション期間は、24時間である。白血病を有する患者からのT細胞の単離の場合、より長いインキュベーション時間、例えば24時間の使用は、細胞収量を上昇させることができる。より長いインキュベーション時間は、腫瘍組織または免疫不全個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する場合のように、他の細胞型と比較してT細胞が極めて少ないあらゆる状況でT細胞を単離するのに使用することができる。さらに、より長いインキュベーション時間の使用は、CD8+T細胞の捕捉効率を増加させることができる。したがって、単にT細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を短くするまたは長くすることによって、および/またはビーズのT細胞に対する比率を増加または減少させることによって(本明細書でさらに記載される通り)、培養開始のときに、またはプロセス中の他のタイムポイントで、T細胞の部分集団を、存在するかしないかにかかわらず優先的に選択することができる。加えて、ビーズまたは他の表面上の抗CD3および/または抗CD28抗体の比率を増加または減少させることによって、培養開始のときに、または他の望ましいタイムポイントで、T細胞の部分集団を、存在するかしないかにかかわらず優先的に選択することができる。当業者であれば、本開示の状況において複数回の選択も使用できることを認識しているものと予想される。特定の実施形態において、選択手順を実行し、活性化および増加プロセスで「選択されなかった」細胞を使用することが望ましい場合がある。「選択されなかった」細胞はまた、さらなる回数の選択に供することもできる。
【0283】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に固有な表面マーカーに対する抗体を併用して達成することができる。1つの方法は、陰性選択された細胞上に提示される細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する陰性磁気免疫接着またはフローサイトメトリーを介したセルソーティングおよび/または選択である。例えば、陰性選択によってCD4細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA−DR、およびCD8に対する抗体を含む。特定の実施形態において、典型的にはCD4、CD25、CD62Lhi、GITR、およびFoxP3を発現する調節性T細胞を富化する、またはそれらを陽性選択することが望ましい場合がある。代替として、特定の実施形態において、調節性T細胞は、抗C25コンジュゲートビーズまたは他の類似の選択方法によって、枯渇される。
【0284】
陽性または陰性選択による望ましい細胞集団の単離のために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度は、様々であってもよい。特定の実施形態において、ビーズおよび細胞を一緒に混合する体積を顕著に減少させ(すなわち、細胞の濃度を増加させる)、細胞およびビーズの最大の接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、一実施形態において、1ml当たり細胞20億個の濃度が使用される。一実施形態において、1ml当たり細胞10億個の濃度が使用される。さらなる実施形態において、1ml当たり細胞1億個より多くが使用される。さらなる実施形態において、1ml当たり細胞1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞濃度が使用される。さらに別の実施形態において、1ml当たり細胞7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個からの細胞濃度が使用される。さらなる実施形態において、1ml当たり細胞1億2500万または1億5000万個の濃度が使用されてもよい。高濃度の使用は、細胞収量の上昇、細胞の活性化、および細胞の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、目的の標的抗原の発現が弱い可能性がある細胞、例えばCD28陰性T細胞のより効率的な捕捉、または多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(すなわち、白血病の血液、腫瘍組織など)からの捕捉を可能にする。このような細胞集団は、治療的価値を有する可能性があり、入手が望ましいと予想される。例えば、高濃度の細胞の使用は、通常CD28発現が比較的弱いCD8T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0285】
関連する実施形態において、より低い細胞濃度を使用することが望ましい場合がある。T細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を顕著に希釈することによって、粒子と細胞との間の相互作用が最小化される。これは、粒子に結合させようとする望ましい抗原を大量に発現する細胞を選択する。例えば、CD4T細胞は、より高いレベルのCD28を発現し、希薄な濃度でCD8T細胞より効率的に捕捉される。一実施形態において、使用される細胞濃度は、5×10/mlである。他の実施形態において、使用される濃度は、約1×10/mlから1×10/ml、およびその間のあらゆる整数値の範囲であってもよい。
【0286】
他の実施形態において、細胞は、回転器において、様々な長さの時間にわたり、様々な速度で、2℃〜10℃または室温のいずれかでインキュベートしてもよい。
【0287】
刺激のためのT細胞はまた、洗浄工程後に凍結してもよい。理論に縛られるつもりはないが、凍結およびそれに続く融解工程は、細胞集団中の顆粒球やある程度の単球を除去することによって、より均質な生成物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄工程後に、細胞を凍結溶液中に懸濁してもよい。多くの凍結溶液およびパラメーターが当業界において公知であり、この状況において有用であると予想されるが、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンおよび7.5%DMSO、もしくは31.25%Plasmalyte−A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、および7.5%DMSOを含有する培養培地、または例えばHespanおよびPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結培地を使用することを含み、次いで細胞は、1°/分の速度で−80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中に貯蔵される。他の制御冷凍方法も、−20℃で即座の、または液体窒素中の制御されていない冷凍と同様に使用することができる。
【0288】
特定の実施形態において、本発明の開示の方法を使用して活性化する前に、低温保存された細胞を融解し、本明細書に記載される通り洗浄し、室温で1時間そのまま静置する。
【0289】
また、本明細書に記載される増加した細胞が必要と思われるときの前の期間に、対象から血液サンプルまたはアフェレーシス生成物を収集することも本開示の状況において予期される。したがって、増加させようとする細胞の源は、必要なあらゆるタイムポイントで収集でき、望ましい細胞、例えばT細胞を、T細胞療法によって利益を得ると予想される様々な疾患または状態、例えば本明細書に記載される疾患または状態のためのT細胞療法での後の使用のために単離および凍結することができる。一実施形態において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、全体的に健康な対象から採取される。特定の実施形態において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、疾患を発症させるリスクがあるが疾患をまだ発症させていない全体的に健康な対象から採取され、目的の細胞は、後の使用のために単離および凍結される。特定の実施形態において、T細胞は、その後の時間で増加する、凍結する、および使用することが可能である。特定の実施形態において、サンプルは、本明細書に記載される特定の疾患の診断の直後に、ただしいずれかの処置の前に、患者から収集される。さらなる実施形態において、様々な関連する処置法、例えば、これらに限定されないが、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法剤、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸塩、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および放射線照射などの薬剤での処置の前に、細胞は、対象からの血液サンプルまたはアフェレーシスから単離される。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子によって誘導されたシグナル伝達にとって重要なp70S6キナーゼを阻害するか(ラパマイシン)のいずれかである。(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991;Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)。さらなる実施形態において、細胞は、化学療法剤、例えばフルダラビン、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミドのいずれかを使用する骨髄もしくは幹細胞移植またはT細胞除去療法を併用する(例えば、その前の、それと同時の、またはその後の)後の使用のために、患者ごとに単離され、凍結される。
【0290】
本発明の開示のさらなる実施形態において、T細胞は、処置の直後に患者から得られる。これに関して、特定のがん処置の後、特に免疫系に損傷を与える薬物での処置の後、患者が通常処置から回復すると予想される期間中の処置の直後に、得られたT細胞の品質は、そのエクスビボで増加する能力に関して最適であるかまたは改善されている可能性があることが観察されている。同様に、本明細書に記載される方法を使用するエクスビボでの操作の後、これらの細胞は、生着およびインビボでの増加の強化にとって好ましい状況にある可能性がある。したがって、本発明の開示の状況において、この回復期間中、T細胞、樹状細胞、または他の造血系統の細胞を含む血液細胞を収集することが予期される。さらに、特定の実施形態において、動員(例えば、GM−CSFでの動員)およびコンディショニングレジメンは、特に療法後の既定された時間枠中に特定の細胞型の再定着、再循環、再生、および/または増加にとって好ましい、対象における状態を生じさせるために使用することができる。例示的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、および他の免疫系細胞が挙げられる。
【0291】
5.5.1.2 T細胞の活性化および増加
T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;第6,534,055号明細書;第6,905,680号明細書;第6,692,964号明細書;第5,858,358号明細書;第6,887,466号明細書;第6,905,681号明細書;第7,144,575号明細書;第7,067,318号明細書;第7,172,869号明細書;第7,232,566号明細書;第7,175,843号明細書;第5,883,223号明細書;第6,905,874号明細書;第6,797,514号明細書;第6,867,041号明細書;および米国特許公開公報第20060121005号明細書に記載されるような方法を使用して活性化および増加される。
【0292】
一般的に、本開示のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤およびT細胞表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが取り付けられた表面と接触させることによって増加される。特に、T細胞集団は、例えば、抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または表面上に固定された抗CD2抗体と接触させることによって、またはカルシウムイオノフォアと共にプロテインキナーゼC活性化剤(例えば、ブリオスタチン)と接触させることによって、本明細書に記載されるように刺激することができる。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子と結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4T細胞またはCD8T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例としては、9.3、B−T3、XR−CD28(Diaclone、Besancon、France)が挙げられ、一般的に当業界で公知の他の方法と同様に使用できる(Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998;Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999;Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999)。
【0293】
特定の実施形態において、T細胞に関する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、様々なプロトコールによって提供することができる。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液の形態であってもよいし、または表面にカップリングされていてもよい。表面にカップリングされる場合、薬剤は、同じ表面に(すなわち、「cis」構成で)または別の表面に(すなわち、「trans」構成で)カップリングされていてもよい。代替として、一方の薬剤が表面にカップリングされ、他方の薬剤が溶液の形態であってもよい。一実施形態において、共刺激シグナルを提供する薬剤が、細胞表面に結合しており、一次活性化シグナルを提供する薬剤が、溶液の形態であるかまたは表面にカップリングされている。特定の実施形態において、両方の薬剤が、溶液の形態であってもよい。別の実施形態において、薬剤は、可溶性の形態であってもよく、次いで、Fc受容体を発現する細胞などの表面に、または薬剤に結合すると予想される抗体もしくは他の結合剤に架橋されてもよい。これに関して、例えば、本発明の開示においてT細胞の活性化および増加での使用に関して予期される人工抗原提示細胞(aAPC)に関して、米国特許出願公開公報第20040101519号明細書および第20060034810号明細書を参照されたい。
【0294】
一実施形態において、2つの薬剤は、同じビーズ上、すなわち「cis」、または別のビーズ上、すなわち「trans」のいずれかで、ビーズ上に固定される。一例として、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、抗CD3抗体またはその抗原結合フラグメントであり、共刺激シグナルを提供する薬剤は、抗CD28抗体またはその抗原結合フラグメントであり、両方の薬剤は、同等の分子の量で同じビーズ共に固定される。一実施形態において、CD4T細胞の増加およびT細胞増殖のために、1:1比率のビーズに結合した各抗体が使用される。本発明の開示の特定の態様において、1:1の比率を使用して観察された増加と比較してT細胞増加における上昇が観察されるような、ビーズに結合した抗CD3:CD28抗体の比率が使用される。1つの特定の実施形態において、1:1の比率を使用して観察された増加と比較して、約1から約3倍の上昇が観察される。一実施形態において、ビーズに結合したCD3:CD28抗体の比率は、100:1から、1:100の範囲、およびその間の全ての整数値の範囲である。本発明の開示の一態様において、抗CD3抗体より多くの抗CD28抗体が粒子に結合しており、すなわち、CD3:CD28の比率は、1未満である。本開示の特定の実施形態において、ビーズに結合した抗CD28抗体の抗CD3抗体に対する比率は、2:1より大きい。1つの特定の実施形態において、1:100のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。別の実施形態において、1:75のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。さらなる実施形態において、1:50のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。別の実施形態において、1:30のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。好ましい一実施形態において、1:10のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。別の実施形態において、1:3のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。さらに別の実施形態において、3:1のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。
【0295】
1:500から500:1、およびその間のあらゆる整数値の粒子の細胞に対する比率が、T細胞または他の標的細胞を刺激するのに使用することができる。当業者であれば容易に理解できるように、粒子の細胞に対する比率は、標的細胞に対する粒度によって決まる可能性がある。例えば、小さいサイズのビーズは数個の細胞としか結合できないが、より大きいビーズは多くの細胞と結合できる。特定の実施形態において細胞の粒子に対する比率は、1:100から100:1の範囲、およびその間のあらゆる整数値であり、さらなる実施形態において、比率は、1:9から9:1の範囲、およびその間のあらゆる整数値を含み、これらもT細胞を刺激するのに使用することができる。T細胞刺激が起こる抗CD3および抗CD28がカップリングした粒子とT細胞の比率は、上述したように様々であってもよいが、特定の好ましい値としては、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、および15:1が挙げられ、1つの好ましい比率は、少なくとも1:1の粒子のT細胞に対する比率である。一実施形態において、1:1またはそれより低い粒子の細胞に対する比率が使用される。1つの特定の実施形態において、好ましい粒子:細胞の比率は、1:5である。さらなる実施形態において、粒子の細胞に対する比率は、刺激の日に応じて変更することができる。例えば、一実施形態において、粒子の細胞に対する比率は、1日目に1:1から10:1であり、その後、10日まで、追加の粒子が、1:1から1:10の最終的な比率で(添加の日の細胞数に基づく)毎日または1日おきに細胞に添加される。1つの特定の実施形態において、粒子の細胞に対する比率は、刺激の1日目に1:1であり、刺激の3日目および5日目に1:5に調整される。別の実施形態において、粒子は、毎日または1日おきに添加され、1日目に1:1の最終的な比率に、刺激の3日目および5日目に1:5にする。別の実施形態において、粒子の細胞に対する比率は、刺激の1日目に2:1であり、刺激の3日目および5日目に1:10に調整される。別の実施形態において、粒子は、毎日または1日おきに添加され、1日目に1:1の最終的な比率に、刺激の3日目および5日目に1:10にする。当業者は、様々な他の比率が、本発明の開示で使用するのに適している可能性があることを理解しているものと予想される。特に、比率は、粒度および細胞のサイズおよびタイプに応じて様々であると予想される。
【0296】
本発明の開示のさらなる実施形態において、細胞、例えばT細胞を、薬剤でコーティングされたビーズと合わせ、その後、ビーズおよび細胞を分離し、次いで細胞を培養する。代替の実施形態において、培養の前に、薬剤でコーティングされたビーズおよび細胞を分離しないが、一緒に培養する。さらなる実施形態において、まず磁力などの力の適用によってビーズおよび細胞を濃縮し、その結果として細胞表面マーカーのライゲーションを増加させ、それによって細胞の刺激を誘導する。
【0297】
一例として、細胞表面タンパク質は、抗CD3および抗CD28が取り付けられている常磁性ビーズ(3×28個のビーズ)をT細胞と接触させることによってライゲートさせることができる。一実施形態において、細胞(例えば、10から10個のT細胞)およびビーズ(例えば、1:1の比率のDYNABEADS(登録商標)M−450CD3/CD28T常磁性ビーズ)を、緩衝液中で、好ましくはPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの2価カチオンを含まない)中で合わせる。ここでも当業者は、あらゆる細胞濃度が使用できることを容易に理解することができる。例えば、標的細胞は、サンプル中で非常に希少であってもよいし、サンプルの0.01%を構成するだけでもよく、またはサンプル全体(すなわち、100%)が目的の標的細胞で構成されていてもよい。したがって、あらゆる細胞数が、本発明の開示の内容に含まれる。特定の実施形態において、粒子および細胞が一緒に混合される体積を有意に減少させて(すなわち、細胞の濃度を増加させて)、細胞と粒子との最大の接触を確実にすることが望ましい場合がある。例えば、一実施形態において、1ml当たり細胞約20億個の濃度が使用される。別の実施形態において、1ml当たり細胞1億個より多くが使用される。さらなる実施形態において、1ml当たり、細胞1000万個、1500万個、2000万個、2500万個、3000万個、3500万個、4000万個、4500万個、または5000万個の細胞濃度が使用される。さらに別の実施形態において、1ml当たり、細胞7500万個、8000万個、8500万個、9000万個、9500万個、または1億個の細胞濃度が使用される。さらなる実施形態において、1ml当たり細胞1億2500万個または1億5000万個の濃度が使用されてもよい。高濃度の使用は、細胞収量の上昇、細胞の活性化、および細胞の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、目的の標的抗原の発現が弱い可能性がある細胞、例えばCD28陰性T細胞のより効率的な捕捉を可能にする。このような細胞集団は、治療的価値を有する可能性があり、特定の実施形態において入手が望ましいと予想される。例えば、高濃度の細胞の使用は、通常CD28発現が比較的弱いCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0298】
本発明の開示の一実施形態において、混合物は、数時間(約3時間)から約14日にわたり、またはその間の整数値のいずれかの時間で培養することができる。別の実施形態において、混合物は、21日間培養することができる。本開示の一実施形態において、ビーズおよびT細胞は、約8日間、一緒に培養される。別の実施形態において、ビーズおよびT細胞は、2〜3日間、一緒に培養される。T細胞の培養時間を60日またはそれより長くできるように、数サイクルの刺激が望ましい場合もある。T細胞培養に適切な条件としては、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン−2(IL−2)、インスリン、IFN−γ、IL−4、IL−7、GM−CSF、IL−10、IL−12、IL−15、TGFβ、およびTNF−αなどの増殖および生存に必要な因子、または当業者公知の細胞増殖のための他のあらゆる添加剤を含有していてもよい適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640または、X−vivo15(Lonza))が挙げられる。細胞増殖のための他の添加剤としては、これらに限定されないが、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN−アセチル−システインおよび2−メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地としては、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加された、無血清か、または適切な量の血清(または血漿)または既定されたセットのホルモン、および/またはT細胞の増殖および増加に十分な量のサイトカインが補充されたかのいずれかの、RPMI1640、AIM−V、DMEM、MEM、α−MEM、F−12、X−Vivo 15、およびX−Vivo 20、Optimizerを挙げることができる。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養でのみ含まれ、対象に注入しようとする細胞の培養には含まれない。標的細胞は、増殖を支持するのに必要な条件下で、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気に加えて5%CO)下で維持される。
【0299】
様々な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特徴を示し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスを受けた末梢血単核細胞生成物は、細胞傷害性またはサプレッサーT細胞集団(T、CD8)より大きいヘルパーT細胞集団(T、CD4)を有する。エクスビボでのCD3およびCD28受容体を刺激することによるT細胞の増加は、約8〜9日目の前、主としてT細胞からなるT細胞の集団を産生するが、約8〜9日目の後、T細胞の集団は、より一層大きいT細胞の集団を含む。したがって、処置の目的に応じて、主としてT細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが、有利な場合がある。同様に、T細胞の抗原特異的なサブセットが単離された場合、このサブセットをより高度に増加させることが有益な場合がある。
【0300】
さらに、CD4およびCD8マーカーに加えて、細胞増加プロセスの経過中、他の表現型マーカーは、顕著に、ただし大部分は再現性よく変化する。したがって、このような再現性は、活性化T細胞生成物を特定の目的に合わせる能力を可能にする。
【0301】
5.6 組成物
本開示の抗グリコMUC1抗体および/または抗グリコMUC1 ADCは、抗グリコMUC1抗体および/またはADC、ならびに1つまたは複数の担体、賦形剤および/または希釈剤を含む組成物の形態であってもよい。組成物は、特定の使用のために、例えば、獣医学的な使用またはヒトでの医薬的な使用のために製剤化されてもよい。使用される組成物(例えば、乾燥粉末、液体配合物など)ならびに賦形剤、希釈剤および/または担体の形態は、抗体および/またはADCの意図される使用によって、さらに治療的使用、投与様式ごとに決まると予想される。
【0302】
治療的使用の場合、組成物は、医薬的に許容される担体を含む滅菌された医薬組成物の一部として供給されてもよい。この組成物は、あらゆる好適な形態であり得る(患者にそれを投与する望ましい方法に応じて)。医薬組成物は、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、クモ膜下、外用または局所などの様々な経路によって患者に投与することができる。いずれかの所与の場合における最も好適な投与経路は、特定の抗体および/またはADC、対象、ならびに対象の疾患および身体的な状態の性質および重症度によって決まると予想される。典型的には、医薬組成物は、静脈内または皮下投与されると予想される。
【0303】
医薬組成物は、1用量当たり予め決定された量の本開示の抗グリコMUC1抗体および/または抗グリコMUC1 ADCを含有する単位剤形で都合よく提供することができる。単位用量に含まれる抗体および/またはADCの量は、処置されている疾患、加えて当業界において周知の他の要因によって決まると予想される。このような単位投薬は、単回投与に好適な抗体および/またはADCの量を含有する凍結乾燥された乾燥粉末の形態であってもよいし、または液体の形態であってもよい。乾燥粉末の単位剤形は、キット中に、シリンジ、好適な量の希釈剤および/または投与に有用な他の成分と共にパッケージ化されていてもよい。液体形態での単位投薬は、単回投与に好適な量の抗体および/またはADCで予め充填されたシリンジの形態で都合よく供給することができる。
【0304】
医薬組成物はまた、複数回投与に好適な量のADCを含有するバルクの形態で供給されてもよい。
【0305】
医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液として貯蔵するために、望ましい純度を有する抗体および/またはADCを、当業界において典型的に採用される任意選択の医薬的に許容される担体、賦形剤または安定剤(これらは全て、本明細書では「担体」と称される)、すなわち、緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張化剤、非イオン性デタージェント、抗酸化剤、および他の混成の添加剤と混合することによって調製してもよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition (Osol, ed.1980)を参照されたい。このような添加剤は、受容者に対して、採用された投薬および濃度で非毒性であるべきである。
【0306】
緩衝剤は、pHを生理学的条件に近い範囲に維持することを助ける。緩衝剤は、様々な濃度で存在していてもよいが、典型的には約2mMから約50mMの範囲の濃度で存在すると予想される。本発明の開示で使用するために好適な緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム−クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸−クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸−コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸−水酸化ナトリウム混合物、コハク酸−コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸−酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸−酒石酸カリウム混合物、酒石酸−水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸−フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸−フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム−フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸−グルコン酸ナトリウム(sodium glyconate)混合物、グルコン酸−水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸−グルコン酸カリウム(potassium glyuconate)混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸−シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸−水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸−シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸−乳酸ナトリウム混合物、乳酸−水酸化ナトリウム混合物、乳酸−乳酸カリウム混合物など)および酢酸緩衝液(例えば、酢酸−酢酸ナトリウム混合物、酢酸−水酸化ナトリウム混合物など)などの、有機および無機酸の両方ならびにその塩が挙げられる。加えて、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液およびトリメチルアミン塩、例えばトリスを使用することができる。
【0307】
微生物の増殖を妨害するために、保存剤が添加されていてもよく、約0.2%〜1%(w/v)の範囲の量で添加することができる。本発明の開示で使用するために好適な保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、塩化ヘキサメトニウム、およびアルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、ならびに3−ペンタノールが挙げられる。等張化剤は、時には「安定剤」としても公知であり、本発明の開示の液体組成物の等張性を確実にするために添加することができ、その例としては、多価糖アルコール、例えば3水酸基またはそれより多くの水酸基を有する糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールが挙げられる。安定剤は、賦形剤の広義のカテゴリーを指し、これは、増量剤から、治療剤を可溶化したり、または変性または容器壁への接着の防止を助けたりする添加剤まで機能面で様々なものであり得る。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上記列挙されたもの);例えばアルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L−ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなどのアミノ酸、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクチトール、グリセロールなど、例えばシクリトール、例えばイノシトールなどの有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄を含有する還元剤;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基またはそれより少ない残基のペプチド);例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなどの単糖;例えばラクトース、マルトース、スクロースおよびトレハロースなどの二糖類;ならびに例えばラフィノースなどの三糖(trisaccacharide);ならびに例えばデキストランなどの多糖類であり得る。安定剤は、ADCの重量に対して0.5から10wt%の範囲の量で存在していてもよい。
【0308】
非イオン界面活性剤またはデタージェント(「湿潤剤」としても公知)は、糖タンパク質の可溶化を助けることに加えて、撹拌により誘発される凝集から糖タンパク質を保護するために添加されてもよく、それにより、タンパク質変性を引き起こすことなく配合物がストレスを受けた剪断面に曝されることも許容する。好適な非イオン界面活性剤としては、ポリソルベート(20、80など)、ポロキサマー(polyoxamer)(184、188など)、およびプルロニックポリオールが挙げられる。非イオン界面活性剤は、約0.05mg/mLから約1.0mg/mLの範囲、例えば約0.07mg/mLから約0.2mg/mLの範囲で存在していてもよい。
【0309】
追加の混成の賦形剤としては、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)、および共溶媒が挙げられる。
【0310】
5.7 使用方法
本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントは、様々な診断アッセイで使用することができる。例えば、抗体および結合フラグメントは、イムノアッセイ、例えば競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ、例えば、免疫組織化学法、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、およびウェスタンブロットなどで採用することができる。
【0311】
本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または結合フラグメントはまた、インビボの放射線撮影画像化にも有用であり、その場合、放射線不透過性の薬剤または放射線同位体などの検出可能な部分で標識された抗体が、対象に、好ましくは血流に投与され、標識された抗体の宿主中の存在および位置がアッセイされる。この画像化技術は、悪性腫瘍の病期分類および処置において有用である。
【0312】
本明細書に記載される抗グリコMUC1抗体または結合フラグメント、ADCおよびCARは、グリコMUC1を発現するがん、特に上皮がん、例えば乳がん、卵巣がん、膵臓がん、および肺がんを処置するのに有用である。
【0313】
療法に本開示のCARを使用する場合、本開示の治療方法は、グリコMUC1を発現する腫瘍を有する対象に、例えばセクション5.4または実施形態97または実施形態98に記載されるように、本開示のCARを発現するように操作された遺伝子改変細胞の有効量を投与することを含む。CARを発現するように細胞、特にT細胞を改変する方法は、セクション5.5.1に記載されている。
【実施例】
【0314】
[実施例1]
抗グリコMUC1抗体の同定
6.1.1.概要
異なるO−グリカン密度およびTn(GalNAcα1−O−Ser/Thr)グリコフォームを有する複数反復MUC1グリコペプチドの化学酵素的合成を、組換えグリコシルトランスフェラーゼを使用して開発した。異なるポリペプチドであるGalNAc−トランスフェラーゼアイソフォームを使用して、O−グリカンの占有部位を割り当てた(Bennett et al., 1998)。最適なワクチン設計は、高いO−グリカン密度を有するTnグリコフォームであることが見出され、KLHにコンジュゲートしたグリコペプチドは、耐性を克服することが見出された。野生型Balb/cマウスにおいて、完全なO−グリカン占有を有するグリコペプチドは、乳がん細胞株で発現されるMUC1と反応する最も強い抗体応答を惹起したことから、これが最も有効なワクチン設計の代表である。惹起された体液性免疫応答は、がん細胞に驚くべき特異性を示した。
【0315】
6.1.2.材料および方法
6.1.2.1 多量体Tn MUC1グリコペプチドの化学酵素的合成
MUC1の60−mer(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)n=3(配列番号47)ペプチドを、Fontenot et al., 1993によって最初に報告されたようにして合成した。使用された対照ペプチドは、MUC2(PTTTPISTTTMVTPTPTPTC)(配列番号51)およびMUC4(CPLPVTDTSSASTGHATPLPV)(配列番号52)のタンデムリピート(TR)から得た。米国特許第6,465,220号明細書に記載される通り、精製された組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼであるポリペプチドのGalNAc−T2、GalNAc−T4、およびGalNAc−T1(Bennett et al., 1998;Schwientek et al., 2002)を使用して、ペプチドをインビトロでグリコシル化した。ペプチドのGalNAcグリコシル化を、25mMのカコジル酸緩衝液(pH7.4)、10mMのMnCl2、0.25%Triton X−100、および2mMのUDP−GalNAcを含有する反応混合物(ペプチド1mg/mL)中で実行した。1mgのTR1つ当たり2つのGalNAcを有する60−merのペプチド(MUC160Tn6)のグリコシル化を、GalNAc−T1を使用して達成した。TR1つ当たり3つのGalNAcの取り込み(MUC160Tn9)を、GalNAc−T2を使用して達成した。MUC1 TR(MUC160Tn15)中の全ての5つの推定上のO−グリコシル化部位の置換を、GalNAc−T4との反応で基質としてMUC160Tn9を使用して実行した。グリコシル化を、ナノスケールの逆相カラム(Poros R3、PerSeptive Biosystems、Framingham、MA)およびMALDI−TOF質量分析を使用してモニターした。グリコペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)および0〜80%アセトニトリルの勾配を使用した、1100 Hewlett Packardシステム(Avondale、PA)におけるZorbax 300SB−C3カラム(9.4mm×25cm)(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。グリコシル化反応の収量の定量化および推測を、標準として重さ10μgのペプチドを使用したUV210吸光度によるHPLCピークの比較によって実行した。ペプチドのGalNAcグリコシル化の収量は、全体的に80〜90%の回収率であった。精製されたグリコペプチドは、ディレイドエクストラクションを備えたVoyager DEまたはVoyager DE Pro MALDI−TOF質量分析計(PerSeptive Biosystems)でのMALDI−TOF質量分析によって特徴付けられた。MALDIマトリックスは、0.1%TFAと30%アセトニトリル水溶液との2:1混合物中に溶解した10g/Lの2,5−ジヒドロキシ安息香酸(Aldrich、Milwaukee、WI)であった。0.1%TFA中に約1pmol/uLの濃度に溶解したサンプルを、1μLのサンプル溶液をプローブチップに入れ、続いて1uLのマトリックスを入れることによって分析のために調製した。全ての質量スペクトルをリニアモードで得た。データ処理を、GRAMS /386ソフトウェア(Galactic Industries、Salem、NH)を使用して行った。
【0316】
6.1.2.2 免疫化プロトコール
グリコペプチドを、グルタルアルデヒドを使用してKLH(Pierce、Rockford、IL)にカップリングした。コンジュゲーションの効率を、画分の抗MUC1 ELISAを使用したPD−10カラムでのサイズ排除クロマトグラフィーにより反応を分析することによって評価した。本質的に全ての反応性が、排除された画分で見出され、ペプチドを含有することが予測される排除されなかった画分で、有意ではない反応性が見出された。さらなる評価には、ELISAでの対応するグリコペプチドとのKLHコンジュゲートの比較滴定分析が含まれていた。コンジュゲーションが完全に近いと、1:300の、KLHのグリコペプチドに対する比率がもたらすはずであり、両方の分析はコンジュゲーションが完全に近いことを示した。雌Balb/c野生型マウスに、総体積200uLの10または15μgの(糖)ペプチド(フロイントアジュバント、Sigmaとの1:1の混合物)を皮下注射した。マウスは14日の間隔をあけて4回の免疫化を受け、3回目および4回目の免疫化から1週間後に尾部または目からの出血によって血液サンプルを得た。
【0317】
6.1.2.3 マウスMAb抗Tn−MUC1の生成
KLHにカップリングされた完全にGalNAcでグリコシル化された60−merのMUC1グリコペプチドで免疫化された野生型Balb/cマウスからMAbを産生した。スクリーニングは、グリコペプチドのELISA、それに続く乳がん細胞株(MCF7およびT47D)を用いた免疫細胞学およびがん組織を用いた免疫組織学に基づいてなされた。選択は、同じマウスの総血清に類似した反応性パターンに基づいてなされた。
【0318】
6.1.2.4 ELISA
ELISAを、96−ウェルMaxiSorpプレート(Nunc、Denmark)を使用して実行した。プレートを、重炭酸−炭酸緩衝液(pH9.6)中の1μg/mLのグリコペプチドで、4℃で一晩コーティングし、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックし、続いて血清(PBSで希釈した)またはMAbと共に室温で2時間インキュベートした。結合した抗体を、ペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗マウス免疫グロブリン(DakoCytomation、Glostrup、Denmark)またはアイソタイプ特異的な抗体であるペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、またはIgG3(Southern Biotechnology Associates、Birmingham、AL)で検出した。プレートをO−フェニレンジアミンタブレット(DakoCytomation)で展開し、492nmで読んだ。対照抗体には、抗MUC1抗体であるHMFG2およびSM3(Burchell et al., 1987)ならびに抗炭水化物抗体5F4(Tn)および3F1(STn)(Mandel et al., 1991)が含まれていた。対照血清には、KLHに連結されたMUC4ムチンペプチドで免疫化されたマウスが含まれていた。
【0319】
6.1.3.結果
GalNAc−MUC1に対するグリコペプチド特異的なmAbを、免疫原としてKLHにコンジュゲートしたGalNAc−MUC1の60−merのグリコペプチドを使用して産生した。ELISAアッセイを使用したところ、生成したmAb GO2(5F7)は、精製された組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼであるGalNAc−T1、GalNAc−T2、およびGalNAc−T4を使用してインビトロでグリコシル化されたMUC1タンデムリピート(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)(配列番号47)と特異的に反応し、GalNAc−残基を有さない対応するMUC1ペプチドまたは同じタイプのTnグリコフォームを有する無関係のグリコペプチドとは反応しなかった。図1に、ELISAアッセイの結果を示す。
【0320】
[実施例2]
抗グリコMUC1抗体の特徴付け
6.2.1.概要
モノクローナル抗体GO2(5F7)を、がん細胞に関連するMUC1のTnグリコフォームへのその結合の特異性に関して特徴付けた。
【0321】
6.2.2.材料および方法
6.2.2.1 免疫細胞化学
細胞株を氷冷したアセトンまたはメタノール:アセトン中で10分固定した。固定した細胞を、マウス血清(1:200/1:400/1:800)またはMAbと共に5℃で一晩インキュベートし、続いてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートウサギ抗マウス免疫グロブリン(DakoCytomation)と共に室温で45分インキュベートした。スライドをp−フェニレンジアミンを含有するグリセロール中でマウントし、Zeiss蛍光顕微鏡(FluoresScience、Hallbergmoos、Germany)で検査した。
【0322】
6.2.2.2 免疫組織化学
乳癌のホルマリン固定したパラフィンワックス包埋組織を得た。全てのケースを組織型によって慣習的に分類した。免疫染色には、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体方法を使用した。パラフィン切片からワックスを取り除き、再水和し、メタノール中の0.5%Hで30分処理した。切片をTBS中で濯ぎ、ウサギ非免疫血清と共に20分インキュベートした。切片を濯ぎ、一次抗体と共に5℃で一晩インキュベートした。切片を濯ぎ、TBSで1:200に希釈したビオチンで標識されたウサギ抗マウス血清(DakoCytomation)と共に30分インキュベートし、TBSで濯ぎ、アビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(DakoCyto−mation)と共に1時間インキュベートした。切片をTBSで濯ぎ、0.1%Hを含有する0.05M TBS中の新たに調製した0.05%3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリドを用いて展開した。切片をヘマトキシリンで染色し、脱水し、マウントした。
【0323】
6.2.3.結果
結腸直腸癌、膵臓癌、および浸潤性乳腺癌の免疫組織化学をGO2を用いて行った。結腸直腸がん組織の染色(図2)から、がん細胞の大部分における細胞内および表面構造の強い標識が実証された。対照的に、健康な円柱上皮細胞に対する反応性は、見られなかったか極めて低かった。健康な細胞における標識は、細胞内構造に制限された。これは、結腸の円柱上皮などの高い分泌能力を有する細胞中に大量の生合成中間体(GalNAc改変糖タンパク質)が存在することに起因すると予想される。類似のパターンが膵臓(図3)および乳がん組織(図4)で観察され、がん細胞とは強い反応性を示したが、周囲の健康な上皮または結合組織細胞における細胞内構造とは、反応性がないか限定的な反応性しかなかった。
【0324】
[実施例3]
抗グリコMUC1抗体の配列分析
モノクローナル抗体GO2(5F7)を産生するハイブリドーマからのmRNAを調製し、逆転写し、シーケンシングした。
【0325】
重鎖および軽鎖可変領域をそれらのシグナル配列と共にコードするヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号11および配列番号12に記載される。配列番号11および配列番号12によってコードされた重鎖および軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号1および配列番号2に記載される。予測された成熟可変領域配列(シグナルペプチドの切断後)は、それぞれ配列番号3および配列番号4に記載され、それぞれ配列番号13および配列番号14によってコードされる。予測された重鎖CDR配列(IMGTの定義)は、それぞれ配列番号5〜7に記載され、予測された軽鎖CDR配列(IMGTの定義)は、それぞれ配列番号8〜10に記載される。
【0326】
[実施例4]
抗グリコMUC1抗体を用いたがん細胞への薬物送達
6.4.1.概要
モノクローナル抗体GO2(5F7)を、標的細胞に細胞傷害性物質を送達するその能力に関して試験した。
【0327】
6.4.2.材料および方法
OVCarヒト卵巣癌細胞を、24−ウェル細胞培養プレートに細胞1,000個/ウェルで添加した。モノクローナル抗体GO2および抗チューブリン剤であるモノメチルオーリスタチンF(MMAF)(抗mFc−NC−MMAF)(Moradecカタログ番号AM−101−AF)にコンジュゲートした二次抗体をプレートに添加して、以下の濃度(μg/mlで)のGO2およびADCを得た。
【0328】
【表5】
【0329】
プレートを37℃で48時間インキュベートした。48時間のインキュベーション後、AlamarBlue(登録商標)(Invitrogen)を各ウェルに添加し、600nmでの蛍光を測定した。
【0330】
6.4.3.結果
図5に結果を示す。結果は、細胞毒性が、一次抗体(GO2)の濃度および抗体の存在、ならびに二次ADCコンジュゲート抗体の濃度および存在に依存することを示す。言い換えれば、GO2は、細胞傷害性物質MMAFを有する二次抗体とカップリングされた場合、このがん細胞株の細胞毒性を誘発する。
【0331】
[実施例5]
抗Muc1抗体を用いた循環腫瘍細胞の定量化
6.5.1.概要
モノクローナル抗体GO2(5F7)を、循環腫瘍細胞を定量化するのに使用されるその能力に関して試験した。
【0332】
6.5.2.材料および方法
GO2を磁気分離ビーズにコンジュゲートし、異なる濃度の腫瘍細胞のサンプルと相互作用させた。細胞およびビーズを磁石を用いて溶液から引き出し、数回洗浄して、未結合の材料を除去した。次いで、ホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたGO2を、結合したがん細胞を含有する磁気分離ビーズにアプライし、インキュベートし、次いで未結合のコンジュゲートしたGO2を洗浄して除いた。基質としてTNBを使用して比色反応を実行した。反応を硫酸を用いて終結させ、次いでサンプルのOD450の読み取り値を取った。
【0333】
6.5.3.結果
図6に結果を示す。アッセイの結果は、GO2腫瘍細胞の結合を実証した。
【0334】
[実施例6]
抗グリコMUC1抗体を使用した腫瘍組織の免疫組織化学的染色
6.6.1.材料および方法
6つのホルマリン固定したパラフィン包埋(FFPE)組織マイクロアレイ(TMA)からの切片を2.5μmの厚さにカットした。乳がん(BC)、結腸直腸がん(CRC)、卵巣がん(OVC)、非小細胞肺がん(NSCLC)および前立腺がん(PrC)腫瘍からのTMAを研究に使用した。TMA1つ当たり25〜47個の腫瘍組織コアが評価に利用可能であった。コアサイズはTMAに応じて1mm、2mmまたは3mmであった。各組織コアは、1人の患者の標本である。
【0335】
染色を、Discovery XTオートステイナー(Ventana Medical Systems)で実行した。細胞条件1(CC1)溶液(Ventana Medical Systems)を用いた抗原賦活化後、GO2を、Dakoグリーンメディウム(green medium)抗体希釈剤中、1μg/mLの濃度で適用し、37℃で60分インキュベートした。腫瘍細胞へのGO2の結合を、DABで可視化(茶色の沈殿)したOptiview DAB IHC検出キット(Ventana Medical Systems)を使用して検出した。
【0336】
6.6.2.結果
図7に、MUC1陽性TMA腫瘍コアの代表的な画像を示す。BCおよびOVC TMAにおいて、スポットの大部分(>90%)が、中程度のまたは強い腫瘍細胞へのGO2の結合を示した。NSCLCおよびCRCのケースの70%および51%が、それぞれ中程度のおよび強い腫瘍細胞への抗体の結合を示した。前立腺がんでは、抗原の発現はより少ないようであった。TMA1におけるスポットの28%のみが、GO−2を適用した場合、中程度のまたは強い染色強度を示した。染色パターンは常に細胞質内であり、多くの場合において膜結合型であった。頂端膜染色パターンはほとんどのコアで観察されなかった。
【0337】
[実施例7]
T細胞の二重特異性(TCB)様式での抗MUC1抗体の産生および精製
6.7.1.材料および方法
6.7.1.1 発現ベクターの産生
Fc領域中にノブ−イントゥー−ホールおよびP329G/L234A/L235A(「PGLALA」)突然変異、ならびにMUC1 CH1(147E/213E;「EE」)およびCL(123R/124K;「RK」)領域中に電荷を有する残基を含むTCB様式に、GO2抗体を変換した(配列番号43〜46を参照)。図8に、TCB抗体を例示する。簡単に言えば、GO2 mAbの可変重鎖および可変軽鎖を合成し(Geneart、Regensburg、Germany)、それらが適切なヒト定常重鎖またはヒト定常軽鎖に融合される好適な発現ベクターに挿入した。これらのベクター中の発現カセットは、5’UTRおよびBGHポリアデニル化部位と共に、CMVプロモーター、イントロンAからなる。加えて、プラスミドは、EBV核抗原(EBNA)を内包するHEK293細胞における安定な維持のために、エプスタイン−バーウイルス由来のoriP領域を含有する。
【0338】
6.7.1.2 一過性トランスフェクションおよび産生
以下のようにPEI媒介トランスフェクション手順を使用してHEK293EBNA細胞中で、抗体を一時的に産生した。HEK293EBNA細胞は、6mMのL−グルタミンを含有するExcell培養培地中の無血清の懸濁液中で培養される。500ml振盪フラスコでの抗体の産生のために、トランスフェクションの24時間前に、3億個のHEK293EBNA細胞をシーディングする(したがって代替のスケールの場合、全量を調整する)。トランスフェクションのために、細胞を210×gで10分遠心分離し、上清を、予め温めた20mlのCD CHO培地で交換する。発現ベクターを20mlのCD CHO培地中に混合して、最終的なDNA量を200μgにする。540μlのPEIを添加した後、溶液を15秒ボルテックスで混合し、その後室温で10分インキュベートする。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、500mlの振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気を含むインキュベーター中で37℃で3時間インキュベートする。インキュベーション後、6mMのグルタミン、1.25mMのバルプロ酸および12.5%Pepsoyを含有する160mlのEx−cell(登録商標)培地(Sigma−Aldrich)を添加し、細胞を24時間培養する。トランスフェクションの1日後、12%フィード7(48mL)+3g/Lグルコースを添加する。7日後、3000×gで45分の遠心分離による精製のために培養上清を収集する。溶液を滅菌ろ過し(0.22μmフィルター)、0.01%w/vの最終濃度のアジ化ナトリウムを添加する。次いで溶液を4℃で貯蔵する。
【0339】
6.7.1.3 抗体精製
分泌されたタンパク質を、プロテインAを使用するアフィニティークロマトグラフィー、それに続きサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を、20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウムpH7.5で平衡化したProtein A MabSelect SuReカラム(GE Healthcare)にローディングした。平衡緩衝液で洗浄することによって未結合のタンパク質を除去した。結合したタンパク質を、20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン、pH3.0を用いて作製した段階的(標準IgG)または勾配(二重特異性抗体)溶出のいずれかを使用して溶出させた。収集した画分のpHを、1/10(v/v)の0.5Mリン酸ナトリウムpH8.0を添加することによって調整した。タンパク質を濃縮し、ろ過し、その後、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にローディングした。
【0340】
溶出した画分の集合体の内容物を、分析的サイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。したがって、30μlの各画分を、200mMのアルギニン、25mMのKPO、125mMの塩化ナトリウム、0.02%NaN、pH6.7で平衡化したTSK G3000SWXLカラム(東ソー株式会社、7.8mm×30cm)にアプライした。2%未満のオリゴマーを含有する画分をプールし、遠心濃縮装置(Millipore、Amicon(登録商標)ULTRA−15、30k MWCO)を使用して1〜1.5mg/mlの最終濃度に濃縮した。精製されたタンパク質を−80℃で貯蔵した。
【0341】
6.7.2.結果
表5に、GO2 TCB抗体の産生収率および品質を示す。
【0342】
【表6】
【0343】
[実施例8]
エクスビボでの未消化の患者由来の腫瘍サンプルにおける標的発現をモニターするためのJurkat−NFATレポーターアッセイ
6.8.1.概要
Jurkat NFATレポーターアッセイを使用して、エクスビボでの未消化の初代ヒト腫瘍サンプルにおける標的発現(グリコMUC1)を、GO2 TCBを使用してモニターした。
【0344】
6.8.2.材料および方法
6.8.2.1 材料
・GO2 TCB(実施例7を参照)
・DP47 TCB(非標的化陰性対照)
・Matrigel(アイテム番号734−1101、Corning/VWR、Switzerland)
・Corning(登録商標)Costar(登録商標)Ultra−Lowアタッチメントマルチウェルプレート(アイテム番号CLS7007−24EA、Sigma)
・細胞培養マイクロプレート、96ウェル(アイテム番号655098、Greiner Bio−one、Switzerland)
・RPMI1640培地(アイテム番号42401−018、FisherScientific、Schweiz)
・Jurkat培地:2g/lのD−グルコース、2g/lのNaHCO、10%FCS、25mMのHEPES、2mMのL−グルタミン、1×NEAA、1×ピルビン酸ナトリウム、200μg/mlのハイグロマイシンBを含むRPMI1640培地
・Jurkat NFATルシフェラーゼレポーター細胞(Promega)
・Indivumed GmbH、Germanyから受け取った腫瘍サンプル。サンプルは一晩かけて輸送培地中で送られた。外科手術の約24時間後、サンプルを細かくカットした。
【0345】
6.8.2.2 方法
96−ウェル細胞培養マイクロプレートを、17μlの冷たいMatrigelを添加することによって調製した。プレートを37℃で2分インキュベートし、その後、腫瘍断片を添加した(3連)。ウェルごとに33μlの冷たいMatrigelを添加し、プレートを再度37℃で2分インキュベートした。ウェルごとに100μl(50nMまたは5nM)のTCB抗体希釈(ハイグロマイシン非含有であるが2×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するJurkat培地で希釈した)を添加した。Jurkat−NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存率を評価した。細胞を350×gで7分遠心分離し、その後、それらをハイグロマイシン非含有のJurkat培地に再懸濁した。ウェルごとに50μlの細胞懸濁液を添加した(細胞50,000個/ウェル)。加湿したインキュベーター中でプレートを37℃で4から5時間インキュベートし、その後、発光の読み出しのためにそれを取り出した。50μlのONE−Glo溶液を各ウェルに添加し、暗所で、室温で10分インキュベートした。WALLAC Victor3 ELISAリーダー(PerkinElmer2030)を5秒/ウェルの検出時間で使用して、発光を検出した。
【0346】
6.8.3.結果
図9〜11に、3人の患者からの腫瘍サンプルからの結果を示す。図9に示される結果は、気管支および肺の悪性新生物:中葉、気管支または肺、扁平上皮癌を有する患者から得られた腫瘍サンプルからのものである。図10に示される結果は、気管支および肺の悪性新生物:下葉、気管支または肺、非角化型扁平上皮癌を有する患者から得られた腫瘍サンプルからのものである。図11に示される結果は、気管支および肺の悪性新生物:上葉、気管支または肺、腺房型を有する腺癌を有する患者から得られた腫瘍サンプルからのものである。図9〜11に記載の各バーは、3連の平均を表す。標準誤差は、エラーバーによって示される。点線は、TCBをまったく用いずに腫瘍サンプルと共にインキュベートされたJurkat NFAT細胞の発光を示す。対応のない両側t検定を統計的分析に使用した。0.05未満のP値を有意とみなし、星印と共に示した(P≦0.05;**P≦0.001;***P≦0.001)。図9〜11のそれぞれにおいて、GO2 TCBと共にインキュベートした腫瘍サンプルは、DP47陰性対照TCBと共にインキュベートしたサンプルより有意に高い発光を呈した。
【0347】
[実施例9]
インビトロにおけるGO2 TCBの特徴付け
6.9.1.概要
腫瘍特異的な異常にグリコシル化されたMUC1を認識するGO2 TCB(実施例7)を、MUC1を発現する腫瘍細胞で機能的に特徴付けた。
【0348】
6.9.2.材料および方法
6.9.2.1 細胞株およびPBMC
T3M4 pfzvおよびMCF7 csで操作された腫瘍細胞株を、10%FCSおよび2mMグルタミンを含むDMEM中で培養した。MCF10Aは、ヒト非腫瘍形成性乳房上皮細胞株(ATCC(登録商標)CRL−10317)である。HBEpiCは、ヒト気管支上皮細胞(Sciencell番号3210)である。健康な志願者からの全血を使用した勾配遠心分離によってPBMCを単離した。
【0349】
6.9.2.2 フローサイトメトリーによる標的結合
示された標的細胞を細胞解離緩衝液を用いて回収し、PBSで洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁した。96−ウェルの丸底プレート中で抗体染色を実行した。ウェル1つ当たり200,000個の細胞をシーディングした。プレートを400gで4分遠心分離し、上清を除去した。試験抗体をFACS緩衝液で希釈し、30μlの抗体溶液を、4℃で30分かけて細胞に添加した。未結合の抗体を除去するために、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、その後、希釈した二次抗体(PEコンジュゲートAffiniPure F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG Fcγフラグメント特異的、Jackson ImmunoResearch番号109−116−170)を添加した。4℃で30分インキュベートした後、未結合の二次抗体を洗浄して除去した。測定の前に、細胞を200μlのFACS緩衝液に再懸濁し、BD Fortessaを使用したフローサイトメトリーによって分析した。アッセイを3連で実行した。
【0350】
6.9.2.3 T細胞によって媒介される腫瘍細胞の致死およびT細胞の活性化
標的細胞をトリプシン/EDTAを用いて回収し、計数し、生存率をチェックした。細胞をそれらそれぞれの培地に細胞300,000個/mlの最終濃度で再懸濁した。次いで100μlの標的細胞懸濁液を96−平底プレートの各ウェルに移した。インキュベーター中で、プレートを37℃で一晩インキュベートして、細胞をプレートに接着させた。次の日、PBMCを全血から単離した。血液をPBSで2:1に希釈し、Leucosepチューブ中の15mlのHistopaque−1077(番号10771、Sigma−Aldrich)の上に重ね、ブレーキをかけずに450gで30分遠心分離した。遠心分離の後、細胞を含有するバンドを10mlピペットを用いて収集し、50mlチューブに移した。チューブにPBSを50mlまで満たし、遠心分離した(400g、10分、室温)。上清を除去し、ペレットをPBSに再懸濁した。遠心分離の後(300g、10分、室温)、上清を捨て、2本のチューブをプールし、洗浄工程を繰り返した(このときは350g、10分、室温の遠心分離)。その後、細胞を再懸濁し、細胞係数のためにペレットを50mlのPBS中にプールした。細胞を計数した後、遠心分離し(350g、10分、室温)、2%FCSおよび2nMグルタミンを含むRPMI中に細胞600万個/mlで再懸濁した。プレーティングした標的細胞から培地を除去し、2%FCSおよび2nMグルタミンを含むRPMIで希釈した試験抗体を添加した。エフェクター細胞溶液の300,000個の細胞を各ウェルに移し、10:1の比率のE:Tを得た。最大の放出を決定するために、標的細胞をTriton X−100で溶解させた。24時間および48時間後、細胞傷害性検出キット(1644793、Roche Applied Science)を使用してLDH放出を決定した。腫瘍細胞致死後のT細胞における活性化マーカーの上方調節を、フローサイトメトリーによって測定した。簡単に言えば、PBMCを回収し、96−ウェルの丸底プレートに移し、FACS緩衝液で希釈したCD4APC(300514、BioLegend)、CD8FITC(344704、BioLegend)、CD25BV421(302630、BioLegend)、CD69PE(310906、BioLegend)抗体で染色した。4℃で30分インキュベートした後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。BD Fortessa IIを使用して蛍光を測定する前に、細胞を200μlのFACS緩衝液に再懸濁した。アッセイを3連で実行した。
【0351】
6.9.2.4 サイトメトリービーズアレイによるサイトカイン/ケモカイン放出
製造元のガイドラインに従ってサイトメトリービーズアレイ(CBA)を使用したフローサイトメトリーによって、上清中のサイトカイン/ケモカイン分泌を測定した。T細胞媒介致死アッセイからの上清を収集し、−20℃で貯蔵した。その後、上清を融解させ、製造元の説明書に従って試験した。以下のCBAキット(BD Biosciences)を使用した:CBAヒトインターフェロンガンマ(IFNγ)Flexセット(E7)、CBAヒトグランザイムB Flexセット(D7)、CBAヒトIL6 Flexセット(A7)、CBAヒトIL8 Flexセット(A9)、CBAヒトIL10 Flexセット(B7)およびCBAヒト腫瘍壊死因子(TNF)Flexセット(D9)。BD FACS Canto IIを使用してサンプルを測定し、Divaソフトウェア(BD Biosciences)を使用して分析を実行した。アッセイを3連で実行した。
【0352】
6.9.3.結果
両方とも異常にグリコシル化されたMUC1を発現するように操作された乳がん細胞株MCF7および膵臓がん細胞株T3M4へのGO2 TCBの結合を確認した(図12)。その後、新たに単離したPBMCを使用して、両方の腫瘍細胞株、MCF7およびT3M4におけるGO2 TCBの活性を試験した(図13および図14)。24時間後に、両方の細胞株の腫瘍細胞の致死が検出され、48時間後にはより一層強くなっていた。これと同時に、2つの活性化マーカーCD25およびCD69の上方調節、ならびにIL6、IL8、IL10、IFNγ、TNFαおよびグランザイムBの上清への放出によって決定されたCD4T細胞およびCD8T細胞の強い活性化が起こった。陰性対照として、それぞれの非標的化TCBが含まれている。
【0353】
GO2 TCBが、上皮細胞上の正常にグリコシル化されたMUC1に結合しないことを証明するために、ヒト非腫瘍形成性乳房上皮細胞株であるMCF10A、および初代ヒト気管支上皮細胞であるHBEpiCへの結合を試験した。陽性対照として、正常な細胞上で発現されたMUC1と腫瘍細胞上で発現されたMUC1とを識別しないHMFG1 TCBが含まれていた。HFMG1 TCBは、両方の試験した細胞に結合することが見出されたことから、MUC1の発現が確認されるが、GO2 TCBはこれらの細胞に結合することができなかった(図15)。加えて、GO2 TCBを試験して、それがMUC1を発現する正常な上皮細胞の存在下で致死またはT細胞の活性化を誘導するかどうかを見た。これをMCF10A細胞で試験したところ、GO2 TCBで検出可能な致死またはT細胞の活性化はなく、それに対してHMFG1 TCBは、致死に加えてT細胞の活性化も誘導した(図16)。
【0354】
[実施例10]
表面プラズモン共鳴によるGO2およびGO2 TCB抗体の機能的な特徴付け
6.10.1.概要
GO2およびGO2 TCB(実施例7)を、表面プラズモン共鳴によって特徴付けた。
【0355】
6.10.2.材料および方法
6.10.2.1 固定されたグリコペプチドへのGO2およびGO2 TCBの結合
ヒトおよびカニクイザルのグリコペプチドへのGO2抗体およびGO2 TCBの結合(表6)を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した。全てのSPR実験を、Biacore T200で、25℃で、ランニング緩衝液としてHBS−EP(0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%界面活性剤P20、Biacore、Freiburg/Germany)を用いて実行した。
【0356】
【表7】
【0357】
ビオチン化したグリコペプチドをPBS中に溶解し、最終濃度を0.9から1.8mg/mlの間にした(表6)。ビオチン化したグリコペプチドをストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接カップリングした。最大880共鳴単位(RU)の固定レベルを使用した。フローセルを通る30μL/分のフローを用いて、240秒にわたり、1000nMの濃度で、GO2抗体またはGO2 TCBを注入した(図17)。解離を500秒にわたりモニターした。バルクの屈折率差を、タンパク質が固定されていない参照フローセルで得られた応答を引くことによって補正した。
【0358】
6.10.2.2 固定されたグリコペプチドへのGO2およびGO2 TCBの結合活性
GO2およびGO2 TCBの結合活性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した。全てのSPR実験を、Biacore T200で、25℃で、ランニング緩衝液としてHBS−EP(0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%界面活性剤P20、Biacore、Freiburg/Germany)を用いて実行した。ビオチン化したグリコペプチド(表6)をストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接カップリングした。最大200共鳴単位(RU)の固定レベルを使用した。
【0359】
フローセルを通る30μL/分のフローを用いて、120秒にわたり、3.9から1000nM範囲の濃度で(1:2希釈)、GO2抗体またはGO2 TCBを注入した。解離を400秒モニターした。バルクの屈折率差を、タンパク質が固定されていない参照フローセルで得られた応答を引くことによって補正した。相互作用の2価性にもかかわらず、Biaevalソフトウェア(GE Healthcare)を使用して曲線を1:1のラングミュア結合に当てはめることによって、KDを得た。それゆえに「見かけの」KDは、比較目的でのみ使用することができる。
【0360】
6.10.3.結果
図18のセンサーグラムから見ることができるように、GO2抗体(図18A)およびGO2 TCB(図18B)は、ヒトおよびカニクイザルグリコペプチドの両方と結合する。GO2抗体およびGO2 TCBは、ヒトグリコペプチドより高い結合活性で、カニクイザルグリコペプチドに結合する。
【0361】
図19から見ることができるように、ヒトグリコペプチドへの2価のGO2バインダー(IgG、TCB)の結合は、3桁のナノモル濃度であり(図19Aおよび19C)、それに対してカニクイザルグリコペプチドへの結合は、2桁のナノモル濃度である(図19Bおよび19D)。
【0362】
[実施例11]
カニクイザルにおけるGO2 TCBの探索的単回用量の薬物動態学的および忍容性研究
6.11.1.概要
この研究の目的は、カニクイザルへの単回の静脈注射によって与えられる場合の、実施例7に記載されるGO2 TCBの薬物動態学および忍容性を決定するためである。
【0363】
6.11.2.材料および方法
6.11.2.1 GO2 TCBの調製
GO2 TCB(2.12mg/mL)および配合緩衝液(20mMのヒスチジン、140mMのNaCl、0.01%Tween 20;pH6.0)の凍結したストック溶液の融解を、4℃で維持されるように設定された冷蔵庫で一晩行う。試験項目の投与配合物を、滅菌条件下で、配合緩衝液での希釈によって用量レベルの必要条件を満たす適切な濃度に調製する。
【0364】
投与配合物は、注射前の2時間以内に調製され、使用まで室温で貯蔵される。投与配合物の調製および貯蔵には、吸着を防止するためにポリプロピレン容器が使用される。投与配合物は、ろ過すべきではなく、撹拌または振盪もすべきではない。いずれの混合も、穏やかなピペッティングまたは穏やかな容器のスイングのいずれかによってなされる。
【0365】
6.11.2.2 動物
2〜4歳であり体重4kg未満のカニクイザル(カニクイザル(Macaca fascicularis))が研究に使用される。動物は、投与開始前の少なくとも6週間、試験施設である霊長類毒物学施設に順化させる。
【0366】
投与開始の前の週の間、動物は、十分な獣医学的検査(到着直後に実行される)、臨床的な観察記録、体重のプロファイルおよび臨床病理学的調査に基づき、実験への参加について承認を受ける。
【0367】
研究のために選択された動物は、供給されたグループ適合性の情報と次いで支給された個々の研究数に基づいてランダムにケージに割り当てられる。動物は、最大5つのグループでケージに割り当てられる。
【0368】
6.11.2.3 管理
動物を、可能であれば、2つの階の動物群の囲いに性別ごとに最大5つのグループに社会的に隔離し、下の階で1.61×1.66×2.5m、上の階で1.61×1.66×2.03mを測定する。土台の材料は、木材の削りくずである。土台中には研究目的に干渉すると予想される公知の汚染物質はない。
【0369】
動物室の環境の標的化条件は、以下の通りである:
温度:18〜24℃
湿度:40〜70%
換気:1時間当たり最低限10回の空気交換
光サイクル:12時間の明期および12時間の暗期(研究手順/活動により中断されるときを除く)。
【0370】
温度および湿度の自動制御が行われ、これは、連続的にモニターされ、記録される。光サイクルの自動制御が行われる。
【0371】
特別食供給(SDS:Special Diets Service)MP(E)ショートSQC食(Short SQC Diet)が、研究中にわたり1日分の配給として提供される。動物1匹当たりおよそ200グラムの餌の配給が1日1回提供される。餌中には研究目的に干渉すると予想される公知の汚染物質はない。動物は、共同の供給源から制限なく水を摂取する。水中には研究目的に干渉すると予想される公知の汚染物質はない。
【0372】
社会的相互作用、遊び、および調査が促進されるように、動物の室内環境を豊かにする。動物は、安全な場所、およびプラスチックのおもちゃ、ボール、よじ登りのためのフレームおよびステンレス鋼の鏡などの資材を有する。これらは、慣れを低減するために頻繁に交換される。交換の前に、全てのおもちゃおよびよじ登りのためのフレームは、交差汚染を回避するために徹底的にクリーニングされる。動物はまた、通常は毎日、飼料混合物、野菜、堅果、ビスケットおよび果物などの様々な他のごほうびも提供される。
【0373】
研究の経過中にわたり、獣医学的ケアを受けることが可能であり、臨床徴候または他の変化により当然と認められた場合、動物は獣医科のスタッフによる検査を受ける。
【0374】
6.11.2.4 実験設計
1匹の雄および1匹の雌の動物にGO2 TCBを投与する。
【0375】
【表8】
【0376】
GO2 TCBは、少なくとも8日間あけて、伏在静脈または尾静脈における単回の静脈内へのゆっくりとしたボーラス注射(1〜2分)によって適切な動物に投与される。これは、どの1日においても1匹の雄および1匹の雌のみが新しい用量レベルを受けるように時間差でなされる。以前の用量レベルからの観察(臨床病理学データを含む)に基づいて、次の用量グループでは用量を増加または減少させる。各用量レベルにはナイーブ動物が使用される。用量は、Vygon注射針が取り付けられたシリンジを使用して与えられる。
【0377】
投与の約72時間後(最後の計画的なサンプルを採取した後)に動物の検死を行う。重度の臨床症状のために計画的な日付の前に終結させなければならない全ての動物に関して、臨床病理学(可能であれば終結前の追加のサンプリング)および組織病理学の完全なパネルが分析される。
【0378】
静脈注射による投与経路は、臨床的な適用の可能な経路であるため、この経路がこの研究に選択されている。臨床的に重要な用量範囲を網羅し、動物への起こり得る傷害を最小化するような低用量および高用量レベルを選択した。低用量は、類似の効力を有する類似のT細胞二重特異性抗体を用いたカニクイザルにおける経験に基づき選択され、高用量は、それを3倍に増加した量に相当する。
【0379】
6.11.3.結果
GO2 TCBは、試験した用量で許容される。
【0380】
7.具体的な実施形態、参考文献の引用
様々な具体的な実施形態を例示し記載したが、本開示の本質および範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができることが理解されると予想される。本発明の開示は、以下に記載の番号付けされた実施形態によって例示される。
【0381】
1.a.正常細胞と比較して、がん細胞上で過剰発現されるグリコMUC1エピトープに優先的に結合し;
b.乳がん細胞株MCF7またはT47Dへの結合に関して、配列番号3の重鎖可変(VH)配列および配列番号4の軽鎖可変(VL)配列を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合する抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0382】
2.a.精製された組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼであるGalNAc−T1、GalNAc−T2、およびGalNAc−T4を使用してインビトロでグリコシル化されたMUC1タンデムリピート(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)(以下、「第1のエピトープ」と称する)に結合し;かつ、
b.乳がん細胞株MCF7またはT47Dへの結合に関して、配列番号3の重鎖可変(VH)配列および配列番号4の軽鎖可変(VL)配列を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合する抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0383】
3.配列番号33のアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)H1、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR−H3、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR−L1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR−L2、および配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L3を含む、実施形態1または実施形態2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0384】
4.CDR−H1が、配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0385】
5.CDR−H1が、配列番号23のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0386】
6.CDR−H1が、配列番号28のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0387】
7.CDR−H1が、配列番号32のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0388】
8.CDR−H2が、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態3から7のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0389】
9.CDR−H2が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、実施形態3から7のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0390】
10.CDR−H3が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、実施形態3から9のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0391】
11.CDR−L1が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、実施形態3から10のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0392】
12.CDR−L1が、配列番号26のアミノ酸配列を含む、実施形態3から10のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0393】
13.CDR−L2が、配列番号27のアミノ酸配列を含む、実施形態3から12のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0394】
14.CDR−L3が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態3から13のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0395】
15.VHが、配列番号5〜7の相補性決定領域(CDR)を含み、VLが、配列番号8〜10のCDRを含む、実施形態1または実施形態2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0396】
16.VHが、配列番号23〜25の相補性決定領域(CDR)を含み、VLが、配列番号26、27、および10のCDRを含む、実施形態1または実施形態2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0397】
17.VHが、配列番号28、29、および25の相補性決定領域(CDR)を含み、VLが、配列番号30、9、および31のCDRを含む、実施形態1または実施形態2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0398】
18.キメラ抗体またはヒト化抗体である、実施形態1から17のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0399】
19.VHが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号4と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から18のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0400】
20.VHが、配列番号3と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号4と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から18のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0401】
21.VHが、配列番号3と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号4と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1から18のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0402】
22.VHが、配列番号3のアミノ酸配列を含み、VLが、配列番号4のアミノ酸配列を含む、実施形態1または実施形態2に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0403】
23.多価である、実施形態1から22のいずれかに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0404】
24.単鎖可変フラグメント(scFv)の形態である、実施形態1から22のいずれかに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0405】
25.scFvが、軽鎖可変フラグメントのN末端側に重鎖可変フラグメントを含む、実施形態24に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0406】
26.scFvの重鎖可変フラグメントおよび軽鎖可変フラグメントが、4〜15アミノ酸のリンカー配列に共有結合している、実施形態24に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0407】
27.多重特異性抗体の形態である、実施形態1から22のいずれかに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0408】
28.多重特異性抗体が、第1のエピトープと異なる第2のエピトープに結合する二重特異性抗体である、実施形態27に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0409】
29.二重特異性抗体が、CrossMab、Fabアーム交換抗体、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)、または二重親和性再標的化分子(DART)である、実施形態28に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0410】
30.二重特異性抗体が、CrossMabである、実施形態29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0411】
31.二重特異性抗体が、CrossMabFABである、実施形態30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0412】
32.二重特異性抗体が、CrossMabVH−VLである、実施形態30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0413】
33.二重特異性抗体が、CrossMabCH1−CLである、実施形態30に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0414】
34.二重特異性抗体が、Fabアーム交換抗体である、実施形態29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0415】
35.二重特異性抗体が、二重親和性再標的化分子(DART)である、実施形態29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0416】
36.二重特異性抗体が、二重特異性T細胞誘導体(BiTE)である、実施形態29に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0417】
37.第2のエピトープが、MUC1エピトープである、実施形態28から35のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0418】
38.第2のエピトープが、正常細胞と比較して、がん細胞上で過剰発現されるMUC1エピトープである、実施形態28から35のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0419】
39.第2のエピトープが、T細胞エピトープである、実施形態28から36のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0420】
40.T細胞エピトープが、CD3エピトープ、CD8エピトープ、CD16エピトープ、CD25エピトープ、CD28エピトープ、またはNKG2Dエピトープを含む、実施形態39に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0421】
41.T細胞エピトープが、CD3エピトープを含み、CD3エピトープは、任意選択でヒトCD3に存在するエピトープである、実施形態40に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0422】
42.CD3エピトープが、CD3ガンマエピトープ、CD3デルタエピトープ、CD3イプシロンエピトープ、またはCD3ゼータエピトープを含む、実施形態41に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0423】
43.検出可能な部分にコンジュゲートされている、実施形態1から42のいずれか一つに記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0424】
44.検出可能なマーカーが、酵素、放射線同位体、または蛍光標識である、実施形態43に記載の抗グリコMUC1抗体または抗原結合フラグメント。
【0425】
45.CD3(任意選択でヒトCD3)に結合する第1の抗原結合ドメインおよびグリコMUC1に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗体であって、二重特異性抗体は、乳がん細胞株MCF7またはT47Dへの結合に関して、配列番号3の重鎖可変(VH)配列および配列番号4の軽鎖可変(VL)配列を含む抗体または抗原結合フラグメントと競合し、第1の抗原結合ドメインは、配列番号34の重鎖CDR−H1、配列番号35のCDR−H2、および配列番号36のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号37の軽鎖CDR−L1、配列番号38のCDR−L2および配列番号39のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む、二重特異性抗体。
【0426】
46.第2の抗原結合ドメインが、(i)配列番号5のCDR−H1、配列番号6のCDR−H2、および配列番号7のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号8の軽鎖CDR−L1、配列番号9のCDR−L2および配列番号10のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態45に記載の二重特異性抗体。
【0427】
47.第1の抗原結合ドメインが、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む、実施形態45または実施形態46に記載の二重特異性抗体。
【0428】
48.第1の抗原結合ドメインが、配列番号40の重鎖可変領域配列および配列番号41の軽鎖可変領域配列を含む、実施形態47に記載の二重特異性抗体。
【0429】
49.第2の抗原結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む、実施形態45から48のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0430】
50.第2の抗原結合ドメインが、配列番号3の重鎖可変領域配列および配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む、実施形態49に記載の二重特異性抗体。
【0431】
51.第1および/または第2の抗原結合ドメインが、Fab分子である、実施形態45から50のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0432】
52.第1の抗原結合ドメインが、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変または定常領域のいずれかが交換されている交差Fab分子である、実施形態51に記載の二重特異性抗体。
【0433】
53.二重特異性抗体の第1および第2の抗原結合ドメインが両方ともFab分子であり、抗原結合ドメインの一方(特に第1の抗原結合ドメイン)において、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変ドメインVLおよびVHが互いに置き換えられており、
a.第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、正電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、負電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);または
b.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、正電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、負電荷を有するアミノ酸で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
VH/VLの交換を有する抗原結合ドメインの定常ドメインCLおよびCH1は、互いに置き換えられていない、実施形態52に記載の二重特異性抗体。
【0434】
54.a.第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け);または
b.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態53に記載の二重特異性抗体。
【0435】
55.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸または213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態54に記載の二重特異性抗体。
【0436】
56.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態55に記載の二重特異性抗体。
【0437】
57.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、リシン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)で独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態55に記載の二重特異性抗体。
【0438】
58.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態57に記載の二重特異性抗体。
【0439】
59.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位におけるアミノ酸は、リシン(K)で置換されており(Kabatによる番号付け)、123位におけるアミノ酸は、アルギニン(R)で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位におけるアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施形態57に記載の二重特異性抗体。
【0440】
60.第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLが、カッパアイソタイプの定常ドメインCLである、実施形態53から59のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0441】
61.第1および第2の抗原結合ドメインが、任意選択でペプチドリンカーを介して、互いに融合している、実施形態45から60のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0442】
62.第1および第2の抗原結合ドメインが、それぞれFab分子であり、(i)第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているか、または(ii)第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているかのいずれかである、実施形態61に記載の二重特異性抗体。
【0443】
63.二重特異性抗体が、CD3への1価の結合を提供する、実施形態45から62のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0444】
64.グリコMUC1に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインを含む、実施形態63に記載の二重特異性抗体。
【0445】
65.グリコMUC1に特異的に結合する2つの抗原結合ドメインが、同じアミノ酸配列を含む、実施形態64に記載の二重特異性抗体。
【0446】
66.二重特異性抗体が、第1および第2のサブユニットで構成されるFcドメインをさらに含む、実施形態45から65のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0447】
67.Fcドメインが、IgG Fcドメインである、実施形態66に記載の二重特異性抗体。
【0448】
68.Fcドメインが、IgG Fcドメインである、実施形態67に記載の二重特異性抗体。
【0449】
69.Fcドメインが、IgG Fcドメインである、実施形態67に記載の二重特異性抗体。
【0450】
70.IgG Fcドメインが、S228位におけるアミノ酸置換(Kabat EUインデックスの番号付け)、好ましくはアミノ酸置換S228Pを含む、実施形態69に記載の二重特異性抗体。
【0451】
71.Fcドメインが、ヒトFcドメインである、実施形態66に記載の二重特異性抗体。
【0452】
72.Fcドメインが、ヒトIgG Fcドメインであり、ヒトIgG Fcドメインは、任意選択で、配列番号42を含んでいてもよい、実施形態71に記載の二重特異性抗体。
【0453】
73.第1、第2、および存在する場合、第3の抗原結合ドメインが、それぞれFab分子であり、(a)(i)第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているか、または(ii)第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しているかのいずれかであり;(b)第3の抗原結合ドメインは、存在する場合、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している、実施形態66から72のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0454】
74.Fcドメインが、Fcドメインの第1および第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む、実施形態66から73のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0455】
75.Fcドメインが、Fc受容体および/またはエフェクター機能への結合を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、実施形態66から74のいずれか一つに記載の二重特異性抗体。
【0456】
76.a.CD3に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、交差Fab分子であり、Fab軽鎖およびFab重鎖の可変または定常領域のいずれか、好ましくは可変領域は、交換されている、第1の抗原結合ドメイン;
b.グリコMUC1に特異的に結合する第2および第3の抗原結合ドメインであって、配列番号5の重鎖CDR−H1、配列番号6のCDR−H2、および配列番号7のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号8の軽鎖CDR−L1、配列番号9のCDR−L2および配列番号10のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含み、第2および第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子である、第2および第3の抗原結合ドメイン;
c.安定な会合が可能な、第1および第2のサブユニットで構成されるFcドメイン
を含み、
第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している、実施形態45に記載の二重特異性抗体。
【0457】
77.第1の抗原結合ドメインが、配列番号34の重鎖CDR−H1、配列番号35のCDR−H2、および配列番号36のCDR−H3を含む重鎖可変領域;ならびに配列番号37の軽鎖CDR−L1、配列番号38のCDR−L2および配列番号39のCDR−L3を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態77に記載の二重特異性抗体。
【0458】
78.第1の抗原結合ドメインが、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な軽鎖可変領域配列を含む、実施形態77に記載の二重特異性抗体。
【0459】
79.第1の抗原結合ドメインが、配列番号40の重鎖可変領域配列および配列番号41の軽鎖可変領域配列を含む、実施形態78に記載の二重特異性抗体。
【0460】
80.第2および第3の抗原結合ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な重鎖可変領域配列、および配列番号4のアミノ酸配列と少なく&